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1957-02-12 第26回国会 衆議院 大蔵委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十二年二月十二日(火曜日)     午前十時五十七分開議  出席委員    委員長 山本 幸一君    理事 有馬 英治君 理事 黒金 泰美君    理事 小山 長規君 理事 平岡忠次郎君    理事 横錢 重吉君       淺香 忠雄君    大平 正芳君       加藤 高藏君    川島正次郎君       吉川 久衛君    竹内 俊吉君       内藤 友明君    夏堀源三郎君       古川 丈吉君    坊  秀男君       前田房之助君    山手 滿男君       山本 勝市君    有馬 輝武君       井上 良二君    石村 英雄君       春日 一幸君    久保田鶴松君       田万 廣文君    横路 節雄君       横山 利秋君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 池田 勇人君  出席政府委員         大蔵事務官         (主計局長)  森永貞一郎君         大蔵事務官         (主税局長)  原  純夫君         大蔵事務官         (理財局長)  河野 通一君         国税庁長官   渡邊喜久造君  委員外出席者         農林事務官         (食糧庁総務部         長)      武田 誠三君         専  門  員 椎木 文也君     ――――――――――――― 二月十一日  委員生田宏一君辞任につき、その補欠として久  野忠治君が議長の指名で委員に選任された。     ――――――――――――― 二月十一日  食糧管理特別会計法の一部を改正する法律案(  内閣提出第一〇号)  補助金等臨時特例等に関する法律の一部を改  正する法律案内閣提出第一一号)  産業投資特別会計法の一部を改正する法律案(  内閣提出第一二号) 同月八日  経営伝習農場土地建物無償払下げに関する請  願(伊東岩男紹介)(第四〇八号)  信用保証協会に対する政府出資に関する請願(  愛知揆一君紹介)(第四五〇号)  たばこ耕作反別規制撤廃等に関する請願(池  田清志紹介)(第四五一号)  こと及び三弦に対する物品税軽減請願(小西  寅松君紹介)(第四五三号)  プロ野球入場税据置きに関する請願鈴木周  次郎紹介)(第四五四号)  在外資産補償問題解決促進に関する請願山中  貞則紹介)(第四五五号)  国民金融公庫資金増額に関する請願山中貞則  君紹介)(第四五六号)  同(池田清志紹介)(第四五七号)  元満鉄社員会社に対する債権国家補償に関  する請願外一件(足立篤郎紹介)(第四五八  号)  同外一件(池田清志紹介)(第四五九号)  同外一件(田中龍夫紹介)(第四六〇号)  同(原捨思君紹介)(第四六一号)  揮発油税及び軽油引取税引上げ反対に関する請  願外一件(池田清志紹介)(第四六二号)  揮発油税率引上げ反対に関する請願池田清志  君紹介)(第四六三号)  同(鈴木周次郎紹介)(第四六四号)  揮発油税及び地方道路税引上げ反対に関する  請願鈴木周次郎紹介)(第四六五号)  国立たばこ試験場設置に関する請願粟山博君  紹介)(第四六六号)  同(鈴木直人紹介)(第四六七号) 同月九日  元満鉄社員会社に対する債権国家補償に関  する請願外一件(池田清志紹介)(第五三八  号)  鉄びんに対する物品税免除に関する請願外一件  (黒金泰美紹介)(第五三九号)  囲碁、将棋具に対する物品税引下げ等に関する  請願外一件(黒金泰美紹介)(第五四〇号)  揮発油税及び地方道路税引上げ反対に関する  請願外一件(藤枝泉介紹介)(第五四一号) 同月十一日  国家公務員等の旅費に関する法律の一部改正に  関する請願田中利勝紹介)(第六〇六号)  揮発油税率引上げ反対に関する請願池田清志  君紹介)(第六三二号)  機械漉和紙物品税課税反対請願越智茂君  紹介)(第六三三号)  国立たばこ試験場設置に関する請願山下春江  君紹介)(第六三四号)  経営伝習農場土地建物無償払下げに関する請  願(片島港君紹介)(第六七四号) の審査を本委員会に付託された。 二月十一日  恩給担保貸付資金増額に関する陳情書  (第二六七号)  税制改正に関する陳情書  (第一七三号)  国民金融公庫延滞利子取扱に関する陳情書  (第一八〇号)  銀行の両建預金禁止に関する陳情書  (第一八一号)  不渡防止対策に関する陳情書  (第一八二号)  インフレ防止対策に関する陳情書  (第一八三号)  生糸課税反対に関する陳情書  (第一八四号)  揮発油税率引上げ反対等に関する陳情書外三件  (第一八五号)  国民金融公庫資金増額に関する陳情書外二十一  件(第一  八六号) を本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  税制に関する件  金融に関する件     ―――――――――――――
  2. 山本幸一

    山本委員長 これより会議を開きます。  大蔵大臣より発言を求められておりますから、これを許します。大蔵大臣
  3. 池田勇人

    池田国務大臣 昨年末石橋内閣が成立いたしまして、不肖私が大蔵大臣を拝命することになりました。時あたかも非常に重要なときでございます。駑馬にむち打ちまして、渾身の努力を払いたいと考えております。何分とも皆様方の御支援をお願いしてやみません。どうぞよろしくお願いいたします。(拍手)  なお、私は予算委員会中心とし、各委員会に出ることが多いので、本筋の大蔵委員会に今後も十分出席いたしまして、皆様方とともにお話しする機会が少かろうと思いまするが、何分とも一つお許しを願いまして、機会あるごとにできるだけ努めて出席いたしたいと考えております。従来の例からいって、あまり来れないようなこともあるかと思いますので、前もって御了承を得たいと思います。  なお、今国会におきましては、大蔵委員会はいつもそうでありまするが、他の委員会よりも重要案件が非常に多いのでありまして今回は特に税法の画期的な改正がございますし、また金融方面におきましても、支払い準備金制度の創設、その他金融に関する改正も出る見込みでございます。また特別会計も新たに三つ新設する等、いろいろ事務が山積すると思うのでございまするが、十分御審議いただきまして、早く通知するようこの機会にお願いいたして、一応ごあいさつといたします。(拍手
  4. 山本幸一

    山本委員長 引き続いて税制に関する件及び金融に関する件につきまして質疑を許します。有馬輝武君。
  5. 有馬輝武

    有馬(輝)委員 私は大臣財政演説中心といたしまして、特に食糧管理特別会計の問題につきまして、二、三お尋ねをいたしたいと存じます。  大臣はその財政演説におきまして、特に「産業活動及び国民生活の面における不均衡を是正しながら、全体として経済力を強化、拡大し、社会保障充実をはかっていくことが、今後における施策の眼目であると存じます。」ということを前提とされまして、ただいま申し上げました農業政策につきましては、特に「農林漁業経営の安定をはかるため、新農村建設事業を強力に推進し、農業協同組合整備農林漁業研究充実森林資源の維持、漁港修築工事促進についても配意するとともに、農林漁業金融公庫融資を拡張いたしました。これに加えて、寒冷地農業対策として新たな施策を講ずることといたしております。」と、特に強調されておられます。私は少くとも積極財政を説かれてしかもこういった形で、農業政策について重点的に取り上げられたのでありまするから、当然予算裏づけというものがなされて薫ると期待いたしておりました。少くとも三十一年度予算に比べまして、一千二十五億円の増加でございまするから、当然国民過半数を占める農家の期待にこたえる予算裏づけがなされておると、こういうふうに期待いたしたのであります。ところが実際予算を拝見いたしますと、農林予算に関しまする限り、わずか四億二千五百万円の増にすぎません  私がここでお伺いしたいのは、私、先ほど読み上げましたこれらの諸点について、特に積極的に農業政策を推進していくんだと強調せられたゆえんを、この予算との関連の中で御説明をいただきたいのであります。
  6. 池田勇人

    池田国務大臣 財政演説で申し上げました通り、各般の施策を講じて参りました。農林関係の方につきましても、従来の予算の仕組み方にのっとっていきますことはもちろん、私が特に力を入れましたのは、村作りと申しますか、干拓事業につきまして特別会計を設け、そうして食糧増産をやっていこう、これは画期的なことでございます。それからまた現状から見まして、農林漁業金融公庫を設けまして、その後ずっと経過を見ておるのでございますが、何と申しましても、安い金利にこしたことはない、こういうので、実は前年に比べまして激増する、七十億円の出資をする。気持といたしましては、十分配意したつもりでございます。なお、各部門につきましてのどれだけの予算を見たかということは、主計局長から答弁いたさせます。
  7. 森永貞一郎

    森永政府委員 来年度の農林省所管予算は八百十二億円でございましてただいまお話がございました通り、四億円の増加にとどまっておるのでありますが、これは、農林省関係予算、北海道の関係その他も含めた数字でごらんいただきますと、八戸九十五億円でございまして、前年度は八百七十七億、従いまして十八億円の増加に相なっております。なお内容を御検討いただきますと、災害復旧費が約二十四億円減っております。また鉱害復旧費が五億減っております。そういう減少を差し引いて十八億円の増加でございますから、実質的にはただいま申し上げました当然減の金額、約三十億でございますが、それを加えた程度の実質的な増加になっておると御承知おき願いたいのであります。  このほかにも、たとえば学校給食における二億の減少であるとか、当然減少数字を拾いますと、約二十億くらいにはなるわけでございまして、そういう点をあわせお考えいただきますと、金額的にも相当増強になっておるということがご理解願えるのではないかと存じます。  項目別に申し上げますと、一番力を入れました点は、農林漁業経営の安定をはかるための施策でございまして、そのために新農山漁村建設事業におき、ましては、前年度二十二億をことしは三十四億円、またそれに関連のある予算といたしましては、農山漁村建設のにない手である青年に対する施策を強化いたしまして、約一億円くらいのものを特に計上いたしております。  さらにまた、三十一年度からの引き続きの施策でございますが、農業改良資金につきましても六億円を計上いたしまして、事業におきましては三十一億円、前年度よりも若干増加いたしております。また農林漁業生産増強のためにとりました施策といたしましては、食糧増産対策事業におきまして一百六十九億円、前年度より二十二億円の増加でございます。なおこの関連土地改良特別会計を作りまして、干拓並びに国営土地改良を営むこととし、事業の進捗を期した次第でございます。  漁港につきましても三十一億円、前年度は二十一億でございますので八億円の増加、林道は二十億円で三億円の増加、またこれは一般会計ではございませんが、農林漁業金融公庫融資におきましては三百五十億でございまして、前年度より六十億円の増加、それぞれ生産増強をはかっておる次第でございます。  さらにまた農林漁業経営改善の基本となる農林水産関係の諸施設につきましても、それぞれ施策充実をはかっておる次第でございまして農林省所管だけで申しますと四億円でございますが、実質的には、ただいま申しました諸般の点にわたりまして増強をいたしておりますことを御了承いただきたいと思います。
  8. 有馬輝武

    有馬(輝)委員 今大臣主計局長から御説明ございましたが、実費的には三十億近いものが増加しておる、要約するとこういうことだったと思います。私がお尋ねいたしておりますのは、大臣財政演説の中で重点的に、しかも一千数一億の予算拡張の中で取り上げられておるのでありますから、それらの諸点についてやはりそれなり考慮が払われていなければならない、こういう観点から御質問を申し上げたのであります。  たとえば、農業協品組合等についても考慮するということでありますが、農業協同組合連合会整備促進等に必要な経費が十三万円減らされておる。それから寒冷地振興について特に大きくうたわれておりますが、ふえたのは畜産と農業振興に関する経費五十九万と五十四万であります。それから今主計局長からも御説明がありましたが、農村建設青年隊事業に必要な経費、これもわずかに二百万に足らないものがふえている。やっと農村青年実践活動促進に必要な経費ということで、昨年度になかったものが上せられておるにすぎない状況であります。また漁港修築の点についても強調せられたのでありまするが、御承知のように、指定漁港の四百何港についてさえも、例年ほとんど何にもできない状態の中で、遅々として修築は進んでいない。ましてや全部の漁港考える場合に、それがいかに微細なものであるかは、これは主計局長大臣、百も御承知のところだろうと思います。問題は積極財政を説かれながらも、国民過半数を占めるところの農家経済に対して、このような程度で、予算をふやしたんだ、そしてここでうたっているような農林漁業経営の安定をはかるために、これらの重点的な施策を講ずるんだということが、果して言えるかどうか。これは常識的に考えていただきたいと思うのであります。ただ十万、二十万ふえているからということで説明したんじゃ、これは答弁にならないだろうと思います。いま一度大臣の御見解をお伺いいたしたいと存じます。
  9. 森永貞一郎

    森永政府委員 まず数字の問題でございますので、私から一応申し上げます。ただいま御説明いたしました点に関する数字でございますが、農林漁業組合再建整備費が六億五千四百万円でありまして、前年度より七千八百万円増加いたしております。ここでも当然減の数字が若干ございますので、これを考慮して考えますと、実質的には約一億円増加しております。なお寒冷地農業対策でございますが、計上額は七億円でございまして、前年度よりも相当増強いたしておることを御了承いただきたいと存じます。また青年関係予算は、先ほども申し上げましたが、一億円でありまして前牛皮よりこれまた飛躍的に増加をいたしております。前年度は四千万円でございまして十万、二十万ではなくて、相当増強いたしておりますので、その点は御了解いただきたいと存じます。
  10. 有馬輝武

    有馬(輝)委員 私、あえて十万、二十万という表現を使いましたけれども、池田さんがかつて吉田内閣大蔵大臣をしておられたころの農林予算と、現在の農林予算とを比べていただいたらわかるだろうと思います。主計局長は、今十万や二十万じゃないという答弁をいたしましたけれども、当時の半額になっておるじゃありませんか、農林省予算が。問題はここにあるのです。私はあえて先ほど数字をあげてお尋ねいたしましたけれども、現在の石橋内閣は、この国民過半数を占めるところの農民に対してどのような施策を講じていくか、その基本的な態度というものが、今申し上げましたような諸点に現われておるので、あえて私は質問いたしたのであります。しかし私は、この点について深追いはいたしません。しかし先ほどの答弁では、全国の農民は納得いかないだろうと思いますから、この点はしっかりと肝に銘じておいていただきたいと思います。  次に、先ほど申し上げましたように、本日は食管特別会計の問題を中心にして二、三お尋ねをいたしたいと存じます。まず第一にお尋ねいたしたいことは、昨日の正午の記者会見で、石田官房長官が、食管制度調査会についての構想組織等については、大体でき上ったけれども、人選その他の面で若干問題があって、まだ閣議決定までに至らないというような談話を発表しておられます。また現在まで少くともこの食糧管理制度につきましては、大蔵省としてもそれなり考え方を持ってこられたのでありますし、当然池田さんとしては、この特別調査会に臨む態度、その構想について、それなりの抱負、構想を持っておられるだろうと思います。私がここでお尋ぬしたいのは、それができてからそこで論議すればいいというような形の御答弁じゃなくして今申し上げますような立場から、大蔵大臣としてのこの問題に対する見解をお伺いしたいのであります。  この点と関連して思い起しますのは、池田さんがかつて吉田内閣大蔵大臣のときに、時の農林大臣である根本龍太郎氏が食管特別会計について、主要食糧統制撤廃ということで問題を提起されました当時、これは国民世論の反撃も非常に強うございまして、またGHQの方でも、大体輸入食糧の見通しはどうなんだ、財政的な裏づけはできるのか、あるいは凶作のとき、それに対処する基盤というものはできておるのか、価格の安定については十分な措置ができるのか、いろいろな角度から検討して、遂にお流れになったことは御承知通りであります。あなたのかわりに純情なる根本龍太郎氏は、農相をやめなければならなかった。その当時から少くとも食糧管理制度については、あなたなりの構想を持っておられるだろうと思いまするので、今度の特別調査会に臨む、食管特別会計に対する大臣としての考え方を、この際明らかにしていただきたいと思うのであります。
  11. 池田勇人

    池田国務大臣 食糧、特にお米に対する行政につきましては、いろいろ議論のあるところでございます。従いまして、食管会計についてどうするかという問題は、多年の懸案であり、今回の米の値上げの問題につきまして、この際食管会計合理化をはかってみようという結論に相なりました。そうして特別調査会内閣に置くことになったのであります。特別調査会組織並びに構成員につきましては、まだきまっていないようであります。われわれといたしましては、この特別調査会食管会計、ことに米の問題につきましての再検討をお願いいたしたい、こういう立場になっておるのであります。この際大蔵大臣としてこの問題についてどう考えるかということについての結論は、申し上げない方がいいのではないかと思います。
  12. 有馬輝武

    有馬(輝)委員 それではその点については、あとでまた具体的な問題を通じてお伺いいたしたいと思いますが、そういった観点から、まず第一にお伺いいたしたいのは、食管特別会計赤字の問題であります。これについて、国会に出されました資料を見ますと、昭和二十七年度に百四十億、二十八年度に二百五億、二十九年度に百二十九億、三十年度に百九十四億、また今年は、今のままでいくと百六、七本億の赤字が見込まれるのではないかという工合にいわれております。大臣が以前吉田内閣におられましたころには、相当の黒字かありましたけれども、それを現在は食いつぶして、もう二十七年度以降ずっと赤字が続いておるのは御承知通りであります。この赤字について、買い入れ価格配給価格との差の問題、あるいは三十年度の場合なんかは、減収加算額の問題、あるいは検査規格の問題、あるいは時期別格差、いろいろな原因があるだろうと思いますが、こういった問題についてどのような方向でこれを是正していけるか、防止し得るか。少くともうちの党の河野氏の質問に対しまして、財政的な面から、とにかく経済生き物だという御答弁がありました。これは、例のとり方がまずいかもしれませんが、やはり今最後に申し上げました時期別格差の問題なり、あるいは豊凶の問題、こういった問題は、食管特別会計については生き物であった、予測できないような面が非常に濃いのじゃないか、私はこのように考えております。この点について、将来どのように配慮やられるか、そこら辺について、これは大臣でなくても、食糧庁の幹部の方でもけっこうでございますから、御答弁いただきたいと存じます。
  13. 池田勇人

    池田国務大臣 お話し通り昭和二十四年から二十七年くらいまで、は、一般会計の方から売買損として三百億近く、あるいはまたインベントリーファイナンスとしまして二百数十億円、その他輸入補助金等で七、八十億と、六百億余りの一般会計からの繰り入れがあったのであります。それが今は、この四、五年の間にずっと赤字が出てくるようになりまして、何とかしなければならぬという状況に相なっておるのであります。それで、今度の特別調査今ができたのであります。  お話しの二年にわたる豊作によりまして、食管会計在庫量がふえたために、金利あるいは倉敷等で余分の経費が要ることにも相なりますし、またいろいろな価格差の問題、いろんな点がございますが、そういう点につきましては、先ほど申し上げましたように、特別調査会で十分の御検討を願う。そうして、その結果によりましてわれ上れば善処しようという立場になってるのであります。個々の問題について大蔵大臣がどうやる、どういう考えを持っていると言うことは、まだ早いのではないかと思います。
  14. 有馬輝武

    有馬(輝)委員 それでは、次に価格の問題についてお伺いいたしたいと存じます。これは、米価審議会で例年論議されてくるところでありますけれども、基礎になりましたバルク・ライン、方式なりパリティ方式というものの信憑性について、若干の疑問を持って去ります。それは、基準年度になりました九、十、十一年度、この際の物価のとり方マル公によってとられておる。ですから、ほんとう価格より下回ったものが基礎になってきておるので、昭和二十五、六年ごろまではまだよかったけれども、やはり政治的な考慮を加えなければ、最終的な米価決定まで至らないという事態がその後起きてきたのじゃなかろうか、このように考えております。とにもかくにも現在の一万円米価生産者米価というものが、大臣のお考えでは低過ぎるか、高過ぎるか、ここら辺についてお考えを伺いたいと存じます。
  15. 池田勇人

    池田国務大臣 生産者米価決定につきましては、御承知通り大へん問題がありまして、米価審議会の意見と最終の政府決定とが一致しない場合が多いのでございます。こういう問題につきましては、もちろん米価審議会の方で御議論願わなきゃならぬのでございまするが、どういうパリティ方式でいくか、あるいは所得方式でいくか、いろんな点がございます。これまた先ほどお答えしたように、大蔵大臣が、今こういう方式がいいということはなかなか言えないので、こういう問題は、食管合理化をはかるときにおきまして特別調査会で御研究になり、またそれがもとになりまして政府がきめて米価審議会の力に諮問することと思います。私は直接所管でございませんので、米価がきまった場合に、食管会計をどうするかということになって私の仕事に相なりますので、しばらく見たいと思っております。
  16. 有馬輝武

    有馬(輝)委員 池田さんらしい御答弁なんで、しかも大蔵大臣らしい答弁で、ほんとうの意味での池田さんらしい答弁ではないと思います。常に米価審議会結論についても、ぴしゃっと押えてしまうのはあなたなんです。それでいながら、まあ時期的にまずかろうというならともかくといたしまして、自分自身でそういった基本的な態度というものは、少くとも大蔵委員会あたりでは御発表になるのが親切な行き方じゃなかろうかと思うのでありまするけれども、あえて深追いはいたしません。  次にお尋ねいたしたいのは、シェーレの拡大の問題についてであります。この点につきましては、私は具体的な数字で申し上げますが、米の場合をとりまして、昭和二十四年に一升百四十三円だったものが二十五年で九十九円、二十六年で百四十円、二十七年で百十四円、二十八年で百三十四円、二十九年で百三十三円というような鈍いカーブを描いております。これに対しまして硫安十貫当りでありますが、昭和二十四年には五百八十七円、二十五年には七百二円、二十六年には八百四十円、二十七年には千円、二十八年には九百四十円、二十九年には八百九十円、こういう形で、ほとんど二倍に近いような上昇率を示しているのであります。これがまた農家経済を圧迫する大きな要因になっておるかと思いますが、先ほど私は、農林予算全般の問題の際に御質問いたしましたけれども、あのささやかな農業予算を組んでおられるのですから、やはり農家経済の安定のためには、ほかに何らかの手を打たれないと、こういったシェーレの問題一つ取り上げて見ましただけでも、農家経済はさらに追い詰められていくであろうことは、予想されるところであります。それで私は、このシェーレの拡大その他に対してどのような手を打たれようとしているのか、この点についてお伺いいたしたいと存じます。
  17. 池田勇人

    池田国務大臣 米の価格差の問題につきましてどの程度がいいかということは、これは私の専門外でございまするが、今お話しの硫安の相当な値上り、すなわち昭和二十四年ごろには、硫安に価格補給金を相当出しております。硫安の価格自体はそう上っておりませんが、補給金を徐々になくした関係上上ってきているのであります。しかして硫安というものは、やっぱりパリティのうちに入っておりますので、私は大体今までの分は、大筋としては通っているのではないかと考えております。
  18. 有馬輝武

    有馬(輝)委員 次に、これは食糧庁の総務部長にお伺いいたしたいと思いますが、農産物等買い入れ費の運営についてであります。これは予算編成のときに特に問題になるだろうと思いますけれども、澱粉なり菜種なりというものを込みにして出しておりますが、これについて、明確に年度初めにおいて区分けをする考え方はないかどうか、この点をちょっとお伺いしておきたいと思います。
  19. 森永貞一郎

    森永政府委員 食管会計では、お話しのように、米麦のほかにテンサイ糖、農産物価格安定法に基く澱粉その他飼料等、いろいろごっちゃまぜにして取り扱っておるわけでありますが、その間、おのずから目的の違い等もございまして、これをいろいろ区分して経理するというような問題も確かに一つの問題でございます。私どもといたしましても、たとえば農産物価格安定法に暴く系統の損益につきましては、これを米麦等の一般の経理と区分して経理して、その分の損益を別に処理するということも場合によっては必要でないかというふうに考えておりますが、それらの点も、食糧管理特別会計につきましての根本的検討をお願いいたしまする特別調査会結論に従って合理的に処理いたしたい、さように考えております。
  20. 有馬輝武

    有馬(輝)委員 年別調査会が隠れみのになっては困るのですけれども、この点は、昨年度の澱粉の値下りその他から考慮いたしまして、やはり買い入れ数量、それから予算のトータルというものを明示していただくことが、やはり価格の安定に大きなささえになるだろうと思います。大体これは前の政府の責任でありまするけれども、法律で十月末日までに政府買い入れ価格をきめればいいのだといえば、ぴったり末日にきめてしまって、澱粉の出盛り期で価段は下って百姓は手をあげてしまうという実にお寒い状況になっておりますので、やはり今申し上いけましたような点を、これは大蔵省の方から、食糧庁の方がこうした方がいいのじゃないかというような形で、この調査会を隠れみのにするのじゃなくて、調査会に積極的に意見を出していただきたいと思います。これは、私の要望であります。  次に、大臣お尋ねいたしますが、臨時税制調査会で米穀所得課税の特例について答申いたしておることは、御承知通りであります。これについて御配慮いただけなかった理由、この点について大臣の所見を承わりたいと存じます。
  21. 池田勇人

    池田国務大臣 農家の所得の計算につきまして特別の措置を講じておることは、御承知通りでございます。そして臨時税制調査会におきまして、この措置を廃止すべしという意見が出ておりまするが、今の現状からかんがみまして、私は、まだしばらく続けていった方がいい、こう考えまして、臨時税制調査会の意向によらず、今までの措置を続けることにいたしたのであります。これは、お医者さんに対しましての処置と同様に取り扱います。
  22. 有馬輝武

    有馬(輝)委員 この点につきまして、少くとも不均衡是正ということをうたっておられてしかもこういったものを、一部の農家に恩恵を施すような形のものを残しておくという行き方は、これはやはり相当考慮していただかなければならないと思います。その段階でない、時期でないという御意見ですけれども、そこいら辺をいま少し、なぜその時期でないのか、お答えをいただきたいと存じます。
  23. 池田勇人

    池田国務大臣 農家の今の現状から見まして、こういう減免税措置をすぐやめるということは、なかなか政治的に困難な点があるのでございます。お医者さんの方のそれも、一点単価の問題がございますか、そういうものとあわせて考えていきたいというので、今回は廃止をやめました次第でございます。
  24. 有馬輝武

    有馬(輝)委員 次に、外国食糧、外国の農業との関連について、日本の農業の価格その他の政策について若干お伺いしたいと思うのであります。  少くとも現在の農業は、国際農業の中でもみくちゃにされる、これは争えない事実だろうと思います。それについて、今度は余剰農産物の受け入れについては、閣議決定で御承知のような結論を出していただきました。しかし実際の状態は、各国がほとんど過剰傾向にあることは、御承知通りであります。特にアメリカにおきましては、昨年の五月末、これはアメリカの商品金融公社というのですか、そこの在庫量を見てみますと、小麦が十億四千四百万ブッシェル、トウモロコシが十一億四千六百ブッシェル、米が二千七百万袋、綿花が千三百万俵というような膨大な滞貨を持っております。問題は、このような滞貨を持っておるアメリカが、しかもその対策としての耕地封鎖銀行ですか、そういったものまで作りまして邦貨で約二千七百億円くらいの補償をやっておるという状況の中で、今後も先ほど御決定をいただいたような形で拒否し得るかどうかという問題について、御見解を承わりたいと思います。講和条約のときには、とにかく唯一のおみやげがMSA小麦であったというような関連もありますので、ここら辺について明確な見通しをお話しいただきたいと存じます。
  25. 池田勇人

    池田国務大臣 私が以前大蔵大臣をしておりますころは、日本の米麦は、外国のそれに比べまして非常に安かったのであります。私は、国際価格にさや寄せするというふうなことを言っておりましたが、今では必ずしもそうではなしに、どちらかというと、逆になったような状況に相なっております。だといって今の農家の現状からいきまして、外国並みということもなかなかむずかしい。そこで生産者米価、また麦価等が問題になってくると思うのであります。私はこういう点につきましても、また特別調査会に逃げるわけではございませんけれども、根本的に検討しなければならぬ問題だと思います。アメリカの農業政策は、お話し通りでございまして、滞貨も相当ございます。今回もアメリカは、余剰農産物の処理として三十億ドルに相当する農産物を外国に売ろうといたしております。大体十億ドル近くは、余剰農産物として日本以外の各国に受け入れられる状態になっております。日本は、御承知通り二年に続く豊作もございます。また第二次余剰農産物の受け払いと申しますか、日本の供与もまだおくれております。そういう関係で、今回は余剰農産物の受け入れをやめようということにいたして、将来の農業政策につきまして、根本的な検討を加えるべきときじゃないか。これは国内的にも、また国際的な見地からも、考えなければならぬ問題だと思います。何と申しましても、国民の半数に近い者が農業関係の方でございまするから、そういう点も十分頭に入れまして善処いたしたいという考えでございます。
  26. 井上良二

    ○井上委員 ちょっと関連して二、三。いずれ食管特別会計法の一部改正が本委員会に上程されると思います。なおまた私、予算の分科会で十分この問題については御査問申し上げようと思っておりますが、大蔵大臣には、いろいろな関係で出席願って質問する機会がなかなかないものでありますから、この際一、二点とっくり確かめておきたいと思うのでありますが、大蔵大臣のお考えでは、予算はすべて均衡の予算を組む、収支相償うという建前でずっとやられておるのです。一般会計はそういうことになっておりますが、食管特別会計だけ、どういうわけで収支相償わぬ赤字のままの予算をお出しになっておるのです、それを伺いたい。
  27. 池田勇人

    池田国務大臣 米の値上げの問題が解決いたしますれば、これは赤字を組まずに済むように相なるのであります。しかし米の問題が延びましたので、それまで一つ赤字でやっていこう。しかし各特別会計を通じまして、資金がそれだけ借金で行くんだというのでは、私のいわゆる健全財政に沿いませんので、産業投資会計におきまして、昭和三十二年度に使わない予定の千百五十億円を持ってきております。これを食管の方に持っていくというわけではございませんが、ただ特別会計全体を通じまして食管は百四、五十億の赤字だが、片一方の別の会計——これは橋は渡っておりません、渡っておりませんが、千百五十億の資金をのけておりまして格好としては均衡にしておる次等でございます。
  28. 井上良二

    ○井上委員 今の大蔵大臣の御答弁は、はなはだ妥当を欠くと思うのです。大蔵大臣は、最初井出農林大臣お話しになって消費者米価を一升当り八円五十銭上げて、百十七円五十銭に消費者米価を改定するというふうに政治的意見が一致した。ところが、その後国民の一部、あるいはまた党内において猛烈な反対が起って参って、閣議決定を急に変更せざるを得ないことになった。その政治的いきさつはともかくといたしまして、今大蔵大臣が御答弁になりましたような、米価の値上げをすれば赤字はなくなるという、その米価の値上げをするかしないかという政治的責任の所在は、一体どこにおありになると考えますか。米価を上げて食管会計のつじつまを合わす、あるいは上げずに合わすという、いわゆる伝えられるがごとき合理化によって食管のつじつまを合わせていくというが、その合理化するという責任は一体どこにあるのです。その責任は、今度作ろうとする食管制度特別調査会といいますか、その調査会が負うのですか。これは政府が負うのじゃないんですか。政府が閣議で決定して、それで米価を上げるとか、食管合理化するとかいうのであれば、その政治責任は政府にあるのじゃないですか。食管制度調査会にあるのじゃないんじゃないですか。その政府が負わなければならぬ米価決定の責任を、何か調査会が負うような印象を与えて、調査会の結論を出せば何とかしますという。調査会は官制によるものでもなければ、法的根拠があるものでもありません、そういうどだいわけのわからぬようなものが、どこでどう相談してくるのかわからぬが、そうきまったから、そこで、政府の方はそれを認めました、そういうだらしのないことで、一体予算審議ができますか。しかもその調査会はまだ、できていない。結論はついていない。それで、予算は今月一ぱいに衆議院を大体通過させなければならぬ。そういう段階にあってどっちか結論がつきまっしゃろうから通して下さいと、こうですか、大蔵大臣、一体それでいいとお考えになりますか。米価値上げの決定権を握っておるのは政府であると私は考えておりますが、政府にはないのですか、この点を明確に願いたいです。
  29. 池田勇人

    池田国務大臣 予算の編成権も内閣でございます。従いまして、そのもとになりまする米価決定内閣でございます。ただ決定をいたします場合におきまして国民の各位のお知恵を借りて、そしてその意見によるといっては語弊があるかもしれません、その意見を参考として内閣がこれをきめるのでございます。それは井上さんのお考えと何ら変りはございません。
  30. 井上良二

    ○井上委員 それでは伺いますが、現行米価というものは、御存じの通り生産者米価は玄米でもって石当り二万七十円、これを中間経費をかけて石当り二万九百円で売っているのです。これはどんなやり方をしたって、どうはじいたって赤字が出るじゃないか、これを何か魔術を設けて赤字が出ぬようにできるとお考えになりますか、それを一つ明らかにしてもらいたい。
  31. 池田勇人

    池田国務大臣 そこがむずかしいので、なかなかいい知恵が出ませんので、特別調査会の方の意見も聞いてみようというのでございます。
  32. 井上良二

    ○井上委員 問題は、だれでもわかり切ったことがいかにもわからぬように、それで政府の責任を特別調査会の責任に転嫁させて、特別調査会がかような結論を出し答申したから、政府もこの結論をのんだ、こういう形に持っていこうとする姿がありありと見えることなのです。なるほど八千五、六百億に達する膨大な食管会計でありますから、この会計内容を詳細に検討されてたとえば農産物支持価格に基くものを国の一般会計の方から補うなり、あるいは食糧管理の国が持つべき性質のものは国が負担するなり、あるいはまた運賃に対し、金利に対し、あるいは保管料に対し等々の検討を加えまして、ここになんぼかの冗費を省き合理化をする点は、私はあり得ると思います。そういうことは、国から高い俸給をいただいて、その地位を持って、これに専門的にとっ組んでいる食管の当局者や、またこれの予算を組んでいる大蔵当局といたしましても、当然国家に奉仕する任務として検証すべき責任はある。これはあってよろしい。調査会の結論を待つまでもない、ふだんにやらなければならぬことなのです。ところが、現実に算数ではじき出せば当然赤字の出るということがはっきりしておるものを、いかにも何とか手品を設ければこの赤字は出なくなるような、あるいは米の消費者価格は値上げをしなくても済むような魔術がそこに含まれておるような印象を、あまり事情のわからぬ大衆に持たしめるということは、政治責任をのがれる一つのやり方でしかありませんじゃないですか。筋の通ったことをやりたがるあなたが、一体何でそんなことになったのです。そんな男らしくない話はありませんよ。何としても、それは国民を納得せしめる方法じゃない。あなたの昨日の予算委員会における御説明では、在外資産の補償に関連する十億の利子補給という問題についても、本予算の審議中に、元本なり、利率なり、発行時期なり等をそれぞれ検討して予算成立に間に合うように必要な処置を講じますというお話でございますが、それと同じに、食管のこの会計も、本予算の成立するまでにすみやかに結論を出すべきです。出さずに、何か一時借入金で間に合わしてあるから、そう急がなくてもよいといっても、借入金をやればやるほど金利を払っていかなければならないですよ。ただの金ではないです。それならば、それだけやはり消費者負担がふえていくことになるのです。消費者負担を軽くしようとか、消費者負担をできるだけ重くするなという論があるのに、政府がやっておることは、逆に、消費者負担を大きくすることを考えているではないか。その間選挙でもやったら、またそれはどうにかなるから、当面選挙が終るまでと考えておるかもしれませんけれども、現状の態勢では、そう心やすく選挙はできませんよ。だから、日ごろ非常な健全財政、均衡財政、非常につじつまの合った、筋の通った予算を組もうとするあなたとしては、池田財政の一大黒星ですよ。何といわれても、あなたは答弁の方法はありますまい。そろばんの答えが出ているのだから、出ているものをどうごまかすことができますか。特別調査会に法的な根拠を持たせてちゃんと権威のあるものにして、この特別調査会の答申は政府が必ず実行しなければならぬという、政府を拘束するだけの権限を特別調査会に与えるならばいいですよ。もしそれ特別調査会が、大蔵当局に異なった答申をした場合、大蔵当局は、一体何という処置をするのです。今までいろいろな答申がいろいろな機関でなされましたけれども、それを予算化する場合は、政府はなかなかその答申案通り実行したことはありません。これは、政府を拘束するだけの力を持っていない。単なる諮問機関、単なる答申機関としての役割だけしかやらせていないのであって、意見を聞くにすぎない。しかし、政府、大蔵当局の意見はきまっているのです。きまっておるのに、ことさら大蔵当局だけが世間から風当りを食らって、何か大蔵省だけが、池田さんだけが米の値上げをするような悪いことを言われれてははなはだ迷惑するから、時と時間とをかせぎ、風当りの強い時期を過ぎれば、そのうちに寒さも済んで春になって、桜も咲いてくる、人のうわさも七十五日、こういうことになって順次世の中から忘れられる時分に、ぽつぽつ米も少くなってくる。(笑声)内地米も不足してくる。そうなってくると、あちらでもこちらでも米をくれと言ってくる。そのときに値上げをすれば、ちょうどいいとお考えになっていやしないかと私は考えておる。しかし、そうなかなか世の中はうまくいきませんから、何としてもあなたとしては、従来あなたが一貫して貫かれておる健全財政、均衡財政、池田主義を貫きなさい。どうですか。この予算成立までに裏づけができますか。これを明確に御答弁願いたい。
  33. 池田勇人

    池田国務大臣 先ほど申し上げました通り特別調査会の機構、構成員につきましては、まだきまっておりません。従いまして、こういう大問題は一カ月や二カ月ではなかなか結論が出ないんじゃないかと思います。従いまして、その結論を待って善処することにいたしておるのであります。食管赤字財政を作ったということは、これはほめたことではございますまい。しかし、先ほど申し上げましたように、政府全体のやりくりといたしましては、それに似たようなお金は別の会計にとってあるのでございます。調査会の結論が出ましたら、それによって適当な措置を考える、これが私は順序だと思うのであります。
  34. 井上良二

    ○井上委員 池田さん、えらい言葉を返すようですけれども、あなたは、この食管会計のような状態は非常に大きな問題で、こう言うけれども、この赤字は、全体の予算ワクから比べればわずかなものですよ。そんなにあなたが驚くほど大きな金額ではないのです。あなたは他の費目には惜しげもなく、どこへは何百億使った、ここへは何十億使ったと誇らしく言っておって、ここだけには、何か大きな問題であるように申してわれわれをごまかそうとしておるが、そうはいかない。それは、きのうの在外資産の問題でもそうです。十億円という金を何の裏づけもなしにひょこひょこと出しておる。これこそもう少し検討し、慎重にやらぬと、たとえば戦災住宅をどうしてくれる、戦災で死んだ人の補償をどうしてくれる、あるいは農地を取り上げられた旧地主は、農地をおれに返してくれ、この補償をどうしてくれるということを言ってきておるのですよ。この在外資産の補償問題こそ、もう少し筋の通ったはっきりした数字でやっておかなかったらえらいことになるのに、それは心やすうやってしまって、こっちの方のわかり切ったことは、これはいけない、そんなあなた都合のいいことを言われては、たまったものではない。私はまた別の機会農林大臣と渡り合うつもりですから、きょうはこの程度にしておきますが、今の大蔵大臣答弁は納得しかねます。一応私の関連質問はこの程度で終っておきます。
  35. 有馬輝武

    有馬(輝)委員 次に、輸入食糧関連についてお伺いいたしたいと思うのですが、ことしは昨年度に比べまして三百四十五億くらい減らされておりますが、この関連はどうなっておるのか。それから二つは、たとえば小麦がFOB価格で五十五ドル七十セント、カナダのものが六十四ドル六十七セント、こういうことと本年度の第四・四半期は受け入れておりますが、この価格が将来安定したものであるかどうか、こういうこと。第三点は、雑穀や麦がはずされましたが、これらの内地麦が、今入ってくる外麦の影響をどのような形に受けておるか。この三点についてお伺いいたしたいと思います。
  36. 武田誠三

    ○武田説明員 私から御説明申し上げておきたいと思います。最初の輸入数量の問題でございますが、これは、昨米穀年度におきまして、内地米の非常な豊作に伴います大量の集荷等にも影響を受けまして、外米の消費量が相当に低下をいたしております。それに伴いまして、政府の手持ち数量も非常にふえているのであります。それらの関係から、三十二米穀年度におきます主要食糧中の準内地米並びに外米につきましての需要量も、それほど大きな伸びは考えられないという状態にございます。持越量が非常に大きうございますところへもってきて、需要の方が必ずしも伸びないという見通しでございますので、輸入数量も、それに伴って大幅に減少をするという状態であるわけであります。  それからその次に、輸入単価の見通しの問題でございますが、これは連年輸入単価が安くなってきております。過去におきます単価の低減率——昨年及び一昨年の低減率を考慮いたしまして、来会計年度におきましては、輸入価格もやや安くなるというふうに考えておりますが、来会計年度程度価格で、今後生産事情等に極端な変化がありませんければ、おおむね横ばいをしていくのではないかというふうに考えております。  それから第三点の、雑穀等の輸入につきましての管理をはずしたことに伴っての影響がどのようになってきておるかというお話でありますが、これは特に大豆とか、そういったものについての御質問でございましょうか。
  37. 有馬輝武

    有馬(輝)委員 麦を含めてです。
  38. 武田誠三

    ○武田説明員 麦につきましては、御承知のように、食管特別会計において  一応一括買い入れをしております。その形において、国内の麦の買い入れ価格等とは遮断をされておる現状であるわけであります。従いまして現在の外麦等の輸入が直ちに国内の麦の生産価格等に直接的な影響を与えておるというようには考えておらないのであります。
  39. 有馬輝武

    有馬(輝)委員 ごまかしを言っちゃいけません。私が輸入価格を最初にお尋ねしたのも、第三点の問題をお伺いしたいからお尋ねしたのであります。どうして外麦の影響を内麦は受けていないということを言い切れるのですか。中小の精麦業者はどんどん倒産していく。また大蔵省は、昔から消費者価格を上げるべし、内地麦の価格を引き下げるべし、これはもう一貫した方針を持ってきておられる。その中で、弱い内地炎がどのように悲惨な目にあっておるか。私はきょうは答弁を求めませんから、いま一度じっくり見て下さい。今の御答弁は少し不見識ですから、この点だけは注意いたしておきます。
  40. 武田誠三

    ○武田説明員 私の御説明が足りなかった面もあるようでありますが、内地麦の今のお話は、むしろ精麦業界あるいは製粉業界に関しての問題であろうかというふうに思うのでありますが、これらの面につきましては、御承知のように、最近、現在の市場実勢等に基きまして売り渡し価格の一部引き下げ等も実施いたしまして、できるだけ実態に即応するように対処いたして参っておるわけでございます。
  41. 有馬輝武

    有馬(輝)委員 最後に、私は希望意見として特に大臣に申し上げておきたいと存じます。それは、池田さんも井出さんもやっかいなことになってお因りだろうと思いますが、河野さんのいわゆるなしくずし統制撤廃、新集荷制度を初め、希望配給、いろいろうたわれてきて、もうどうともならなくなってしまった食管制度の締めくくりを考えなければならない立場に追い込まれているのが、私は実情なんじゃないかと思います。しかし、ここに考えなければならないのは、たとえば赤字の処理をどうするかという小手先の問題ではなくして少くとも現在食糧管理制度それ自体が、生産者に対しましても、消費者に対しましても、保護政策になっておる事実を私たちは見のがしてはならないと思うのであります。こういった立場から、やはり諸外国におきましても、事食糧に関しましては、膨大な財政的な支出をいたしておるのでありますから、やはり食管制度を維持していくという立場から、特に特別調査会にも臨んでいただきたい。また最終的な政府結論を出される際に、最高指針としていただきたい。このことは特にお願いいたしておきたいと存じます。この赤字の問題につきましては、一般会計から繰り入れるか、消費者価格を上げるか、あるいは年度末まで食糧証券その他でとにかくやっていくか、道は限られております。しかもその中で、現在の消費者保護、生産者保護の立場をとるためにはどうすべきか、これは、私が申し上げなくてもはっきりしておるはずであります。私が今まで質問いたして参りましたのは、このいろいろな欠陥を持っております食糧管理制度が、先ほど申し上げましたように、生産者を、そして消費者を保護しておる、この事実をお忘れなく、今度の結論を出していただきたい。たとえば八千何百億のうち、わずか九十億に足りないような事務費、こういったものを節減すればどうにかなるのだとかなんとかいろいろなことがいわれておりますけれども、そういった小手先きの問題じゃなくしてこの諸君が食糧管理制度を守っていくような立場において事を処理していただきたい。このことを切に要望いたしまして私の質問を終ります。
  42. 山本幸一

    山本委員長 この際ちょっと申し上げますが、理事会の申し合せで、本日は一時三十分ないしおそくとも三十分までには質疑を打ち切ることになっておりますので、その意味を御了承の上、主として大臣に対する質疑を願いたいと思います。横山君。
  43. 横山利秋

    ○横山委員 大臣にお伺いいたしたいことがいろいろありますが、きょう私は、税及び税制一般についてお伺いをいたします。先にお断わりをしておきますが、ものの考え方を伺いたいのでありますから、局長初めその他の人は、私が求めるまでしばらく一つ黙っておっていただきたいと思います。  その前に、大臣に一つ苦言を呈しておきたい。先般文書課長から、われわれ大蔵委員会に付託されるべき法案を聞きましたら、五十三あるということでありました。先ほどあなたも、だいぶあるらしいけれども、なかなか忙しいから来られぬ。まあよう来るつもりだけれども、よろしゅう頼む、こういうお話がございました。しかもこの五十三の中で、今や国会は、きょうは十二日になっておるのに、わずか六つくらいの法案である。しかもその六つも、二つだけは、とにかく出したが早いかすぐ通してくれというわけで、去年の暮れに出すべきものを今まで延ばしておいてあした通してくれ、こういうしかけである。あとの四つは、ほかの委員会が上らなければ、関連がないからだめだという法律案である。肝心の重要な所得税とか法人税とか租税特別措置法の法律は、まだなかなか出ないようだ。聞くところによりますと、租税特別措置法に至っては来月だ。  一体どういうことをわれわれにこれからやらそうとするのです。こんなことを続けておったのでは、三月は初めから本格的に税制の審議にかかって、そして一体何をわれわれに求めるつもりか、いざとなって、もう特別がないといったって、私どもは知りません。あなたの減税は、仁徳以来だというお話でありますから、われわれも勉強して、慎重に準備をいたし、検討いたしたいと思っておるのでありますが、かかることでは、あなたの所期に反することになりますから、このことは、事務上の問題でなく、政治的の問題としてあなたに厳重に注意を喚起いたしたいと思うのですが、いかがですか。
  44. 池田勇人

    池田国務大臣 予算関連をする法律案は、同時に出すべき筋合いでございます。しかし、今までの慣例は、予算関係法案がおくれることがたびたびあるのであります。こういうことにかんがみまして少くとも重要法案については、ことに予算関係ある重要法案につきましては、急いで出すようにときつく申しております。従いまして、最も大きい改正の所得税法並びに法人税法につきましては、きょう実は午前中に御説明申し上げようかというので、議会に提案しております。その次の問題の租税措置法につきましては、おそくとも二十日ごろまでには出す計画でおります。その他の法案につきましても、金融関係の方は、調査会に今かけておりますので、少しおくれるかもわかりませんが、予算関係の分は、努めて早く出すように処置いたしたい所存で進めておりますので、御了承願いたいと思います。
  45. 横山利秋

    ○横山委員 租税措置法は、全文を書き改めておやりになるそうで、それはけっこうなことだ、けっこうなことだけれども、今のあなたの言うように、二十日までにほんとうに出せるんですか、それだけ一つ簡単に……。
  46. 池田勇人

    池田国務大臣 二十日までというのは、二十日ごろぐらいにしてもらったら大丈夫です。しかし、大体の構想につきましては、今印刷中でございまするから、法案はできませんけれども、御質問にお答えいたします。
  47. 横山利秋

    ○横山委員 法案がなければ審議はできませんよ。その点は、御承知通りだから十分に留意して下さい。  第一に、あなたに税についてお伺いしたいのは、考えてみますと、あなたはシャウプ勧告のときに大蔵大臣におなりになってそうしてあのときの税制改正は、多少の修正はなさいましたが、シャウプ勧告に大綱を求められておるわけです。しかし、その税制のあなたの担当せられたものは、シャウプが主としてやったということになっておる。今度の税制改正も、またあなたの就任前に、一年かかって税制調査会が行なって、そうしてあなたの意思、あなたの考え方が入らない答申ができて、あなたはそれに対して若干の修正をなさった。このように考えてみますと、池田主義といいますか、先ほども井上さんが言ったが、池田主義というものが税制の中に本格的な妙味を発揮したというものはないと私は思う。シャウプ勧告を多少修正し、今回の答申も多少あなたの気持を加えたといたしましても、池田さんの税というものに対する本格的な妙味、本格的な思想というものは今日まで出ておりません。  そこで、私はお伺いしたいのだけれども、池田さんは一体税のあり方について、税制の今後についてあなたのほんとうの気持は一体那辺にあるのか。私は、こまかいことを聞こうとは思いません。大筋として池田さんがこれからやっていこうとする税についてのものの考え方を、一つ重点を示してもらいたいと思います。
  48. 池田勇人

    池田国務大臣 お話し通り税制に関しまするシャウプ勧告は、占領治下でございまして、そうしてこれは、全体として施行すべしという命令でございます。より食いをしてはいかない、何とかむずかしい英語が使ってありました。われわれ聞いたことがないような英語でございましたが、一部抜かすというようなことはいかぬ、全体としてやれというので、占領下でございますから、やったのでございます。その後におきましても、ある程度改正は加えました。しかし今回の臨時税制調査会の意向というものは、大体審議中にも、私は委員ではございませんが、いろいろ大蔵省からお話を聞いておりました。大体税制自体としてはいいものだと私は考えます。しかし、これを実際に今すぐ行うかという問題につきましては、なお私は、政治的に補正しなければならぬ点がありますので、ある程度の補正をいたします。で、税につきましては、いろいろの原則がございます。しかし、何と申しましても一番大切なことは、租税の公平でございましょう。これは生命ともいうべきもの、しかし公平一点ばりで産業政策その他の経済政策等にマッチしないという点は、やはり税における経済政策として考えていかなければならぬ。私の租税に関する考え方は、公平の原則を守りながら、経済政策を加味していくということにあると思っております。
  49. 横山利秋

    ○横山委員 今のあなたの話を聞きますと、シャウプ勧告のときは占領下であるから、これはある程度至上的なものなのだ、こういうお話です。私は、従来野にあったときも、そしてまたこういうふうにお目にかかっても、あなたという人が、曲げることのない信念というものを持っておられる。しんの強さというものをお互いに考えているわけです。従いまして今のお話も、シャウプの勧告が至上的なものであっても、あなたがその中に、背骨的にこれは正しいのだ、この点については自分としても全く同感であるという、その大綱というものをあなたもお感じになって、多少のことを修正せられたのではないかと思うのであります。それともあなたのおっしゃるように、シャウプ勧告それ自体が至上的なものであるから、自分の信念に反して了承を与えたのだ、こういうお考えでありましようか。
  50. 池田勇人

    池田国務大臣 そういう意味ではございません。シャウプが勧告いたしますにつきましても、約二、三カ月というものはほとんど毎日のように会いまして、私の言うべきことは言っております。しかし向うにも一つの考え方があり、こっちにも考え方があります。そこで意見は戦わしましたが、全部私の言う通りにはならなかった点があるのであります。そこで、今回の臨時税制調査会の答申に対しまする私の気持とシャウプのときとは、ある程度違っているということを申し上げたのです。シャウプ勧告につきましても、私は、勧告につきましてできるだけ参画いたしております。あるいは東京においてあるいは軽井沢において、いろいろ会談をいたしましてやったのでございますが、まだ十分ふに落ちない点も中にあったということは事実でございます。
  51. 横山利秋

    ○横山委員 それではさらに一歩を進めまして、シャウプと今回の政府案とには、非常な違いが各所に見受けられるわけであります。あなたが、シャウプとそれから今回の政府案とを通じて一貫して考えておられる問題について承わりたいのです。たとえば、今おっしゃったような公平の問題があるだろうと思います。また、たとえば法人の擬制説の問題があるだろうと思います。また、たとえば間接税と直接税の問題があるだろうと思います。これらの点を通じてあなたが一貫して主張なさってきたし、また今後も主張なされる問題、今日の日本の税制の中における重要なあなたの考え方を列挙してほしい。
  52. 池田勇人

    池田国務大臣 税制というものは、やっぱりそのときの経済情勢によっていかなければなりません。理論的に言いますと、今のお話の直接税と間接税の問題については、直接税を多くする方が適当であるということは、財政学者は大体認めておる点でございます。しかし経済事情によりまして、所得の把握が困難なときには、間接税の方に力を入れていくべきではないかという議論もあるのであります。私は、大体今の状態では、直接税、間接税、フィフティ・フィフティ、半々くらいでいいんではないかという気持を持っております。それから今の法人擬制説でございますが、これは、理論的にはシャウプの考え方も納得できると思います。これは、シャウプが来ます前にも、日本の税制では、法人というものは個人の延長だという考え方もあった時代があるのであります。だんだん擬制説が強くなって参りましたが、シャウプが来まして、この法人というものは、個人の延長だということをはっきり現わしました。しかし、このことにつきましては、議論があるのでございまするが、これを、一時に昔のように、法人というものを独立の経済団体と見るということがどうかという議論がございまするが、これをすぐ改めるということは、産業政策の上からいってなかなか至難でございます。しかし今度におきましては、なるべく私は、そういう点は是正していくべきじゃないかという気持を持っております。しかし、何分にも税制調査会の分を根本的にやりかえるということは困難でございますから、ある程度除々に産業界の状況を児ながらやっていこうというのが、私の趣旨であるのであります。その他につきましては、シャウプの主義といっても、特に申し上げる点はございませんが、シャウプは、大体直接税を主にしようというのが考え方のようでございます。
  53. 横山利秋

    ○横山委員 今の直接税、間接税の問題について、もう少し追及をいたしたいと思うのであります。この答申を見ますと、その点について、ずいぶんあなたと考え方を異にいたしておるわけです。シャウプ勧告については、「特に所得に対する税は、理論的にはすぐれているが、シャウプ勧告以来あまりに直接税に重点をおきすぎた結果、すでに指摘したように、直接税について実測的な不公平や能率の阻害等種々の弊害が生じている。これは、わが国経済の現状において、直接税の比重が重すぎ、その課税が限度にきているためである。直接税、特に所得に対する税は間接税とのつりあいのとれた組合せによって初めて全体として担税力に適応することが可能となる。」というふうな構想をもって、その基調は、方向と重点の第二で、「税負担の比重を直接税から間接税へある程度移行させる」という重要な方向を出しておるわけです。あなたが、今自分は大体とんとんでいいとおっしゃったのだけれども、しかしながら今後の方向が、あなたが今おっしゃった方向でそのままいくものであるかどうか。これは、あなたが最も責任者の立場にありまするから、今回物品税をあなたは阻止をされた。そのほか間接税についての若干の問題がありますけれども、一方では、ガソリン税はまさに仁徳天皇以来の大増税が行われておる。こうなりますと、あなたのものの考え方も非常に微妙であります。答申を尊重する、その中の答申の重要な間接税移行主義というものを、あなたは、ここで大蔵大臣としての所信なり今後の方向として大体半々が今日の状況と適合しておる、こうお考えでありましようか。
  54. 池田勇人

    池田国務大臣 私は臨時税制調査会の考え方が、そこまで突き詰めたものと思っておりません。それは間接税と申しましても、売上税あるいは取引高税というものは、理論的にいえば、間接税でなしに流通税として取り扱わるべき性質のものでございます。日本の状態として、大体今は五十、五十でいくのが適当じゃないか。しかし理論的には、直接税を多くするという考え方が従来の財政理論であったのであります。今回私が、臨時税制調査会の答申でこれをやめたのは、もちろん間接税というべき物品税、あるいは原糸課税の問題は、私は今やるべきときでないと考えたからやめたのでございます。ここいう結果から申しますると、大体今度の税制改正によりましての直接税、間接税の分は、その他の税を入れまして大体五十、五十になっておるのじゃ、ないかと思っております。
  55. 横山利秋

    ○横山委員 私のお伺いしているのは、今の問題ではありません。池田さんの税に対する考え方をお伺いしておるのでございます。私は、あなたの以前の大蔵大臣当時の記録をずっと見てみました。そしてあなたが税に対してどういう考え方を持っておられるかということも、いささか検討したつもりであります。当時においても、あなたは今の主張を重ねておられるのであります。たとえば、これは昭和二十五年の三月、あなたが大臣として租税制度について言うておられるわけでありますが、「直接税と間接税の比率の問題は、租税制度の根本をなす重要な問題であるのであります。従いまして、従来この点につきまして相当検討を重ねまして戦時中におきましては、国税におきまして、直接税が六十四、五パーセントになったときもあるかと記憶いたしております。今回は大体直接税が国税におきまして、五五%、間接税が専売益金を入れまして四四%に相なっておると記憶いたしておるのでありますが、租税制度の本来の姿といたしましては、私はやはり直接税中心主義が租税制度としてはいいと思います。ただお話のように、所得税の把握が非常にむずかしいときにおきましては、えてして間接税の方に重点が行くのであります。私は敗戦後の一、二年、二、三年のところは、ああいう状態でありますので、間接税に相当重みを持たしてもいいと思っておったのであります。今後はやはり直接税中心主義で行くのが、理想的なやり方ではないかと考えております。直接税と間接税以外に、いわゆる流通税のごときものを入れるという税制考え方もあるのであります。しかし流通税は、取引高税以外におきまして、あまり収入の期待ができません。取引高税は、一面にはいいところはありまするが、施行してみますると、御承知通りに非常に悪い面が出ましたので、やめたのであります。しからば、今後間接税のどこに力を入れるかということになりますと、御承知通りたばこの益金も相当高いし、酒も外国にその例を見ないほど高いのでございまして、もうほかに間接税に持って行く手はないと思うのであります。今後の問題といたしましては、私は直接税を下げると同時に、間接税につきましても、引当下げなければいけない。大体比率といたしましては、流通税を除外いたしました場合におきましては、五十五か六十、間接税が四十程度ぐらいがまあいいところではないかと考えております。地方税を加えますると、五十五の直接税が六十余りになって来ると思うのでありますが、これはやはり租税制度としては、先ほど来申し上げましたように直接税中心主義で行き、そうして間接税は消費の面からこれを補って行くという考え方がいいだろうと思います。従って直接税中心主義で行くとすれば、所得の把握について十分の努力をしなければならぬということは御説の通りであります。大体経済も常道に乗って来つつありますので、中央地方を通じまして、所得の把握につきましては今後とも十分力を入れて、課税の適切公平を期して行きたいと思っております。」このお考え方は、今あなたがおっしゃった考え方とそう違いはございません。大筋としては一致いたしております。しかりといたしましたならば、あなたが今後大蔵大臣として、税制改正ほんとうにあなたの手でおやりになるときに、やはりこの所信をお持ち続けになるであろうと思うのであります。ただ私どもが心配をいたしますゆえんのものは、この答申の根幹を流れておるのは、どうしても間接税に重みがかかっておるわけであります。これは、一つには税制の問題から議論さるべきでありましょう。もう一つは、いわゆる経済の秩序から論ずべきでもありましょう。しかしシャウプ勧告のときと今日のところとは、経済情勢も違っております。なおかつあなたは、直接税中心主義を堅持せられる。答申は、間接税移行主義を想定して唱えておるのであります。そこで、私が最後にお伺いをいたしたいのは、今日国民一般は、いまなお売上税について心配が絶えておりません。物品税については、時限爆弾だと思っておるわけです。そのほか流通税、あるいはその他の間接税についても、必ずこれが再燃することを心配をしておるわけであります。ですから、ここで私がお伺いしたいのは、あなたはシャウプ勧告のときの理論及び今日おっしゃったあなたの理論を、今後とも池田主義として貫いてお行きになるものであるかどうか、その点をお伺いをいたしたい。
  56. 池田勇人

    池田国務大臣 この税制調査会の答申は、私は売上税、取引高税のようなものをやりたいというお気持が非常に多かったんじゃないかと思います。しかし、御承知通り二度やりまして、問題を起した税でございまするから、これをやめて、間接税の方で原糸課税と物品税の増徴ということを考えられたようでございます。しかし、私は、今の状態で新税を設けることは賛成できない。また新たに物品税に手をつけることも、もうしばらく待とう、こういうので結論を出したわけであります。今後の問題として、税制自体としては、村税制度としては、売上税その他を各国がやつておりまするから、これにならうべしという議論は相当あると思います。しかし、政治的に見ていきますると、売上税を今日本でやるということは、なかなか困難な問題でございまするから、私といたしましては、十年先、二十年先は別でございます。今の状態で直ちに取引高税をやって、流通税体系、直接税体系以外の体系を整備拡充するという気持はございません。
  57. 横山利秋

    ○横山委員 それでは第一の問題については、あなたが当時及び今日の直接税中心主義の考え方を変えないというお答えと了承いたしまして次の問題に移りたいと思います。  第二番目の問題は、国民の側から見た税金と、それからわれわれ政党が選挙に当って国民に約束した立場における税金、それからあなたの最近本会議においても委員会におきましても問題としております、政策上の立場から見た税金、この三つが今一般国民の中に輻湊をしておるわけです。国民の中から大まかに言って六つの問題が提起されておる。一つは、税金というと汚職、疑獄を思い出すという立場からする国民の租税に対する信頼感の喪失です。それからいま一つは、高いということです。それから第三番目には、税制上、非常な不公平があるということです。第四番目には、徴収上非常に不公平があるということです。それから第五番百は、税金が非常にむずかしいという百民の非難です。第六番品は、税務署の職員及び税務行政に従事をしておる人々が不親切であるという評判です。この六つの国民の税に対する認識については、別な角度から見れば、議論のあるところはございましょう。しかし、国民がおしなべて税金でこの六つの意見を共通に持っておるということは、争えない事実であります。それから保守であろうと革新であろうと、あらゆる政党側が共通して国民に言ってきましたことは、第一には低額所得者に対する減税であります。第二番目には、税制を簡素化するということであったわけであります。第三番日には、公平ということであったのであります。第四番目には、中小企業に対する減税ということであります。今度の政策の面から今問題になっておりますのは、先般も鈴木委員長でありましたか、和田会長でありましたか、積極財政をあなたが今後展開をされるのか、さらに減税の道をたどるのかという質問をしました。あなたはそのとき、非常に抽象的な答弁をされて、これに対して明快な返答を与えられなかったのであります。今この三つの部面から見まするときに、何を一体重点にさるべきかということが、われわれが税制に当って審議するときに必要な課題であろうと思います。あなたが先ほど二点をあげて、公平が何よりともかく重点である、こうおっしゃいました。私も全く同感であります。高いということは事実である。事実であるけれども、今日の日本の経済情勢の中でも、国民が納得さえするならば、多少高くても今日まだがまんできるという印象こそ、民主政治の上で私は大事であろうと思う。そういう意味合いにおきまして各方面から出ておる問題について、あなたが今どういうふうなお考えを持っておられるか、きわめて抽象的ではありまするけれども、この税に対するこれからの行政措置なり、あるいは立法上、具体的に今度はどういうふうにあなた、はやろうとしておられるか、当事の問題としてお伺いいたしたいと思います。
  58. 池田勇人

    池田国務大臣 お話しのように、なかなか抽象的でございまして、税の原則はいろいろございます。しかし重点的には、先ほど二点をあげましたが、これは税制の簡素化も必要でございましょう。また公平であり、経済政策をやらなければならぬということもあるのでございますが、もちろん税金は安いにこしたことはない。これはどこの国に参りましても、民間の議論として、あなたのおっしゃったようなことは各国で全部言っている事柄でございます。しかし、こういう問題につきましても、経済の安定拡大とつり合いましてだんだん改善せられた跡が見えるということは、非常に喜ばしいことだと思います。将来の問題として、減税でいくか、あるいは積極政策でいくかという問題でございます。それは、やはりそのときどきに応じてやらなければなりません。しかし、大蔵大臣としては、減税ということを忘れてはならないのであります。そして片一方で減税をいたしますにつきましては、産業基盤の拡大強化、国民所得の増強ということを考えなければ、減税もできないわけでありますから、これはうらはらの問題だと自分は思っておるのであります。
  59. 横山利秋

    ○横山委員 そのうらはらの問題というところが、実はあなたがもう少し明確になさるべきところではないかと思うわけです。基準年次には、国税、地方税を合わせて二十七円でございましたのが、本年は一万五千四百円であります。どんなに物価が上昇いたしましたにいたしましても、これは、重税は争えない事実であります。各国との対比を見ましても、税制それ自体については、議論があろうかと思いますが、国民所得から見ると非常に高い。そういういう中で、内容には議論がありますが、ここに一千億の減税が今行われようとしているけれども、その次に減税という方向け、あなたの時代にはおありになるのかということが、私は聞きたいのです。今あなたがおっしやる公平の問題についても、これから委員会の審議を待ってほんとうに公平であるかどうか議論をいたしますけれども、しかしながら、減税はもうこれで終りなのか。あなたの構想する税制に対するものの考え方として、機会さえあれば減税が行われるのかという点は、あなたが明らかになさる必要があろうかと思いますが、いかがですか。
  60. 池田勇人

    池田国務大臣 先ほど、大蔵大臣としては常に減税ということは考えなければならぬ、こう申し上げたのでありますが、これには間違いはございません。それから、減税をいたしましてそしてそれが貯蓄に向けられて、それが産業資金になり、そして産業の拡大強化をはかり、それから自然増収が多くなり減税をする、これがうらはらという意味でございます。
  61. 横山利秋

    ○横山委員 では、お答えが不十分でありますので、別な問題を一つ質問いたしてみます。それは明年度の自然増収が千九百億あるというあなた方の前提であります。今ここに千九百億が妥当であるかいなかという議論よりも、国民として、納税者としては、千九百億が、俗に言えばどういうふうにとられるであろうかという疑念の方が強い。自然増収と言えば、まことに体裁のいい言葉でありますが、結局は増徴でありまして、国民の方としては、ことしよりも来年税金をたくさん出さなければならぬという立場になります。最近税務署においていろいろな問題が起っております。たとえば昨年問題になりましたのが青色申告の問題であります。青色申告は、帳簿が出違っておるということが明確に指摘されなければ、更正決定ができないという権利を持っておるわけでありますが、国税庁の法人税課百長志場さんの所説によれば、大体今の青色申告なんていいかげんなものだから、どんどん原始的な調査をしろということを「企業会計」に書きましたために、非常な波乱を呼びまして、当時の長官は、本委員会においてそれを取り消しました。そういうことはしないと言いました。ところが、とんとそれが跡を断っていないのであります。必要ならば、私はその具体的な税務署の事情を列挙してもよろしいのでありますが、今その個所を読むのが問題ではありません。少くとも今日の税務行政というものが、重箱のすみっこをつついてぴしぴしやるという方向に向ってきたことは、争えない事実であろうと思います。これを裏書きするものが、三十一年度の税務運営方針であります。国税庁から出ております税務運営方針を拝見いたしますと、こういう文句があります。「青色申告法人に対する事務については、誠実な青色申告法人の育成という考え方をさらに徹底するとともに、誠実と認められない申告をした法人に対する調査及び調査後の指導等の措置を的確に行うこととして、青色申告法人の内容の向上を図るように事務のあり方を改善する。」、うまいことを言っておりますけれども、結局は、志場さんの考え方を裏書きしたものだと私は思うわけであります。今度千九百億の自然増収を確保するについては、やはり相当の努力が必要でありましょう。会社なり、あるいは個人の企業のところに行ってあなたのところは三割もうかっておる、四割もうかっておるということの前提に立たなければいかぬのであります。そこに、各所に紛争が起るであろうことはまた事実でありましょう。昨年来、本委員会においても議論を重ねられてきたお知らせなるものがまたそうであります。毎年予定申告のころになりますと、お知らせというものがくるのであります。お知らせが大体憲法違反じゃないかという議論も重ねたのでありますけれども、あなたのところはこれだけもうかっておるというおっかぶせであります。こういうことが、また今の税務行政の中に現われて参りました。こういう状況になりますと、千九百億の自然増収の確保という問題がどういう形で行われるであろうか、どういう問題が納税者と税務署の間に起きてくるであろうかということは、私は大蔵大臣として非常に慎重に考えてもらわなければならぬところではないかと思うわけです。私が大臣にお伺いしたいのは、起り得べき千九百億の増徴増税について、あなたがどういうふうに税務行政を指導なさろうとするか、その点についてお伺いをいたしたい。
  62. 池田勇人

    池田国務大臣 税務行政の運営は最もむずかしい、しかも最も注意しなければならぬ行政でございます。私も二十年近くやって参りまして、いろいろの事情を知っております。やはり税法の命ずるところによりまして、懇切丁寧に、納得のいくような方法で十分な調査をなければいけないのであります。公平の原則も、租税制度の公平と税務施行の公平、この両々相待っていかなければならないことはもちろんでございます。決して苛斂誅求の声をちまたに聞くようなことのないようにという指導をいたしておるのであります。
  63. 横山利秋

    ○横山委員 あなたのおっしゃるお言葉だけでは、国民は納得をいたしません。少くとも、千九百億の自然増収をはかる——あなたは、これを本会議においても、無理のない妥当な数字であると言っておられる。しかし国民の側では、千九百億という厖大な税金を、今年よりも来年よけいに納めなければならぬのであります。かりにその間において、どちらかに問題がありましょうとも、相当な波乱を起すであろうことは事実であります。そういう紛争が目に見えておるときに、あなたは具体的に、この税務行政にどういう方向を新しく打ち立てようとしておるのか、これを伺いたいと思う。これは大臣の御答弁と同時に、もうすでに国税庁としては、おそらく三十二年度の税務運営方針の立案にかかっておると思うのでありますが、長官からもあわせてその具体的な、千九百億の増徴増税についての方針を承わりたい。
  64. 池田勇人

    池田国務大臣 あらためて申し上げるまでもなく、先ほど申し上げたような趣旨で従来もやってこさせましたし、今度も税額が多くなりますので、ますますその気持を強くしていかなければならぬことは当然でございます。しかし千九百二十二億の分を、税務行政の運営によってとろうとしておるのでは全然ございません。昭和三十一年度におきしても、三十年度、すなわち前年に比べまして相当の増額になっております。千億以上の増額になっておる。当初の予算ではそうなっておりませんが、この自然増収が、三十一年度におきましても、大体九百億円を上回る状態であります。しこうして三十二年度におきましては、三十一年度の実績をまた相当上回る経済活動が見られ、また俸給の引き上げ等相当の好材料があるのであります。また直接税のみならず、間接税におきましても、消費の増が全体として相当見込まれますので、私は従来の税務運営方針をもっと注意深くやっていく、それで、自然増収が多いために何も運営方針を変える必要は全然ない、やはりよほど民意を聞きながらやっていけば、千九百二十億は出ると考えております。  なお、根拠につきましては、国税庁長官から御説明申し上げてよろしゅうございます。
  65. 渡邊喜久造

    ○渡邊政府委員 大体よく苛斂誅求が問題になりますのは、御承知のように、申告所得税の問題が一番問題になるだろうと思います。これは、横山さんよく御存じのところであります。千九百億の数字を見て参りますと、一応われわれの方で見積っておりますのは、一番大きな金額が法人税の八百三十四億、それから源泉の五百六十五億、申告分として見積っております自然増収分は六十二億九千万円、約六十三億であります。しかし、これによりまして申告所得税は六百八十九億になっておりますが、まあ本年は大体六百五十七億ぐらいというものを、予算は六百二十七億ですから、三十億ぐらい自然増収を見込め得る情勢になるということを考えますと、この六十三億という数字が、本年の結論からいいますと、さらに小さな数字になってくる。その他のものとしましては、たとえば酒の税金で百六十億でありますとか、揮発油税、物品税あるいは関税、そういったようなものでもって千九百億分は出てくるということから御判断願いまして、私の方としましてそう特にこの際千九百億の自然増収を捻出するために、税務行政においていわば苛斂誅求といったような気持は持っていないということが、一応御了承願えるのではないかと思います。それに対して、あるいは法人税の中には中小法人のものがあってそこで押してくるのじゃないかというようなお話でございますが、大体大きな会社相当の成績を上げておりまして、われわれの方としてそうひどい苛斂誅求——ただわれわれの方としましては、一応税法を的確に施行していくという、これは負担公平の問題と結びつきますけれども、そこに相当なむずかしさがございますが、かなり正確なる申告を出していただくということの努力はいたしますが、いわゆる苛斂誅求といった意味の税務行政を得なっていくということは、われわれの方としては毛頭考えておりません。
  66. 横山利秋

    ○横山委員 大臣や長官が毛頭考えなくとも、結局たとえばあなたの方で課長会議をやる、あるいは署長会議をやる。そうして、かりにかじ屋は三割ぐらいことしはもうかっておるという原則をきめて、その原則に沿ってあなたのところは大体平均三割だというお知らせから、そうして青色の原始調査を始めたりすれば始めたりじゃない、今すでにやっているようなことをすれば、どうしたってそういうことになってしまうのであります。そうおっしゃるなら、一つ長官にも、それから大臣にも具体的に一つだけお伺いしたい。先ほど私が言った志場法人税課長の青色申告に対する見解ですね、それと一体どういうふうに処理なさるのですか。志場さんの言うのはこういうことですよ。「大法人は経理組織や帳簿組織が完備していて内部牽制組織が確立しているから税務調査もこれにもとづいてやればいいが、中小法人はそうはいかない。帳簿はともかく、もっと原始的、即物的に調査をしなければならない。青色申告をしている法人でも認定推計課税をちゅうちょなくやるべきであり青色申告の取消しも的確に行う必要がある。経理・記帳が整っていても誠実な青色申告法人とはいえない。問題は精神が誠実であるかどうかということだ。しかし精神教育だけではダメだから徹底的に調査して反省させることが必要だ。これによって質を向上させなければならない。」こう言っているのですよ。これは税経通信という、税務についての相当な資料を常に提供しておる本ですよ。そういう木に、国税庁の法人税課長ともあろう者がこういうものを書いて、それであなたがこういう委員会で、いえ、そんなことはとおっしゃっても、そうはいかないのであります。それから中小企業が苛斂誅求であるとおっしゃる。しからば大企業はどうでしょう。私は、本年度の国税庁の予算を引っぱり出して調べてみました。大企業関係の調査査察事務に必要な経費は、あなたはどうしました。大臣お聞きですか、この調査査察事務費が、去年は前年度に比べて九・七%ふえたのでしょう。増加率は三・四%です。ほかの酒類密造取締りに要する費用は、なんと三二・五%ふえている。そのほかの項目を見ますと、こんな大企業の調査査察に必要な三・四%の増なんてところは、ほかにないのです。一番低いのです。重点が一体どこに向けられているか、実際の予算の中から私は感得せざるを得ないのであります。そういう意味からいって、もっと率直に、一つ大臣も長官も答えなければ困る。言葉の問題だけでは納得をいたしません。
  67. 渡邊喜久造

    ○渡邊政府委員 予算の点で、調査査察関係経費がふえ方が少いという点につきましては、最近調査査察の担当の分を、従来の資本金五百万円から千万円に上げた。従って重点的に、件数の上からいいますと、税務署の方にいく件数がずっとふえて参ります。従いまして、件数が、調査査察部で担当する会社の数がずっと減っております。しかし人員といたしましては、さしあたって調査査察部関係の人員を減らしておりません。そういったことから、われわれとしましては、何も大法人の方の調査を簡略にするというどころか、それだけの人数をむしろ大きな法人の調査に集中するという面において、その方面の調査については充実を期して参りたい、こういうふうに考えております。志場課長の所説につきまてはこれはわれわれとしてもいろいろ議論はあります。ただ全体としてのお答えといたしますと、青色法人が数が非常にふえて参りましただけに、  一面においては、いわば玉石混淆的なきらいはあるようであります。従いまして、われわれとしては、やはり単純に帳簿の上に出た数字だけでなくて、間接資料とか、そういうものも十分調べまして、そうしてその記帳の正しいか正しくないかという点を調査する必要はあろう、かように考えております。
  68. 横山利秋

    ○横山委員 率直にお伺いしますがね、長官、あなたは、この志場課長の意っている言葉を反省していっているのですか、反対して言っているのですか、それだけ一つ聞かしていただきたい。
  69. 渡邊喜久造

    ○渡邊政府委員 私は、志場課長の言っている言葉は、いささか刺激的に過ぎるということは考えております。しかし、現在の調査の場合におきまして、青色申告という場合において、単に帳面づらに現われている結果だけをそのまま信用していいという会社が全部であるというわけではない。会社の中には、やはり間接資料から調べてみますと、相当その帳簿記帳の中にかなりずさんなといいますか、わざと故意に売り上げを抜かしたり、あるいは仕入れをふくらましたりという事実は幾つか出ております。従いまして、そういう事実のあることも頭に置きながら調査をしなければならぬということは、われわれとしては考えなければならぬことだと思っております。
  70. 横山利秋

    ○横山委員 私は、よけいなことに時間を使いたくないのでありますが、それが出たからケリだけはっけたいと思います。法人税法は、青色申告は、帳簿の間違いの指摘をしなければ取り消しも更正決定もできないということになっておりますが、それをお認めになって話しておられるのかどうか、もしそういう帳簿の間違いを指摘しないでそういうことをやったら、無効であるという立場に立っておられるのかどうか、明確に一つ答えて下さい。
  71. 渡邊喜久造

    ○渡邊政府委員 帳簿の個々の具体的な事実を指摘しないで、ただ漫然と更正決定すべきものでない、これはその通りだと私は思っています。ただ、要するに一応調査して参ります場合においておのずから幾つかの点が出て参りましてその帳簿そのものの信憑性が問題になっております場合があります。そういうことだけを申し上げておきます。
  72. 横山利秋

    ○横山委員 では大臣に次の質問をいたします。最近の税法の中で、注目すべき問題があります。それは、先ほども長官が言ったのですが、あなたもおっしゃったのですが、税法通りにとるのだという言葉と、現実の問題であります。法律ではきまっておるのだけれども、基本通達なり、あるいは政令なり、あるいは行政の下部の解釈によって非常な違いがあるということであります。大臣が先ほどから重ね重ね言っておるように、租税法定主義の原則から非常にこのごろ離れておる。たとえば一例を申し上げましょうか、物品税がそうであります。法律できまっている。しかし政令によって、もう次から次へと免税点の引き上げが行われたり、引き下げが行われたりしておる。法律を見たところで全然わからぬという状況であります。私は、租税法定主義の原則からいうと、まことにこれは寒心にたえぬ。しかも、物品税について往々世間の申しますところは、いろいろな疑惑の眼を持っておるわけです。たとえば退職引当金、渇水準備金がそうであります。退職引当金は二十億、渇水準備金は二十億です。これは法律できめられておるのではありません。これは政令であります。膨大な額が法律にゆだねられずして、政令によってきめられておるわけであります。また通達によって行われておるわけであります。通達のないところは、税務署なり国税局の解釈によってまた行われておるのであります。いい方ならまたそれも了としましょう。最近株主相互金融会社に関する問題で判決がございました。御存じだと思うのでありますが、税務署の署長は、税法は一般私法とは異なった独立の目的を持つものであるから、税法上の用語が私法上の用語と全く同一である場合も、その概念は独自の目的に合致するよう解釈しなければならぬ。ちょっとややこしいことでありますが、そういう解釈を、われわれ独自の解釈というものがあるのだ、ほかの法律関係ない、こういう立場をとって税務署が裁判所で主張いたしました。判決は憲法八十四条が「あらたに租税を課し、又は現行の租税を変更するには、法律又は法律の定める条件によることを必要とする。」条文の解釈が恣意にわたることは当然許されないとして税務署の主張を退けたのであります。このことはほかにもまだあります。医療法人に関する国税庁通達に対する医療法人側の判決がなされました。これまたあなたの方の負けであります。ある会社の同族店員の常務役員について、役員賞与が支払われたことに対するあなたの方の主張も、また裁判所で負けました。このように考えてみますと、今日品の税務行政が、非常に通達なりあるいは政令によって大幅な解釈をしておるということが、争えない事実だろうと私は思うのであります。この際大臣としてこのような問題について善処する用意はないか、たとえば物品税について、われわれ社会党は常にこれを撤廃しろといっておるのでありますが、撤廃する気持——かりにまた百歩これを譲ってみましても、今日のような政令によってゆだねておるがゆえに、政令に書かれてない品物、たとえば清涼飲料であります。政令がないものだから、いつまでたっても残っておるのであります。そういう不公平というものが各所にたくさんあるわけであります。この点について、あなたの行政上に対するものの考え方を伺いたいと思います。
  73. 池田勇人

    池田国務大臣 税の問題につきましては、法律できめることが原則でございます。しかし百般の問題を法律で全部書き上げるということは、なかなかむずかしい問題であります。従いまして物品税等におきまして免税点を政令で譲って、そして行政にまかすということも、これは全体として好ましい状態ではございませんが、やむを得ぬ点も多々あるのではないかと思います。また万般の事象を全部所得税と法人税できめるといっても、なかなかこれは困難で、ことに税を税法で、法三章で簡単に書いてくれという要望も、また一方ではあるのであります。従いまして、私は、解釈につきまして争いを生ずることは昔からあるのでございますが、その解釈問題を全部法律で書いてしまうということは、実際問題としてなかなかむずかしいのではないかと思います。
  74. 横山利秋

    ○横山委員 私は、大筋の問題を聞いておるのでございますから、大臣もそのつもりになって聞いてもらわなければ話が合いません。私の言っておるのは、今日の全般の情勢からいうと、租税法定主義の原則を逸脱しておるところが非常に多い。その点をあなたは考えないのか、こう言っておるわけです。それによって不公平が非常に生じ、下部における紛争がたくさん出ておる。それを、単にあなたは法律ですべてきめるわけにはいかない、こうおっしゃるのだが、それは枝葉末節の御答弁にしかすぎません。大筋からいって、このような状況について改善の気持はないのか、こういって聞いておるわけであります。
  75. 池田勇人

    池田国務大臣 先ほどお答えしたように、できれば法律で全部きめてしまうのがいいと思います。しかし、百般の問題を全部法律に書くということは実際問題としてなかなかむずかしいのではございませんかと、こう答えておるのであります。
  76. 横山利秋

    ○横山委員 全部法律で書けと言っておるのではありません。私は、原則的な、あなたの税法の原則についてのものの考え方質問しておるのです。従って今日の欠陥というものを是正する気持がないということを聞いておるのですから、そのつもりで御答弁を願わなければなりません。
  77. 池田勇人

    池田国務大臣 先ほど申し上げましたように、原則として法律できめることが望ましい、こういうことであります。原則は法律できめることが望ましいと申し上げたのであります。
  78. 横山利秋

    ○横山委員 時間もございませんから、私はなお税法全般についての多くの質問を持っておるのでございますが、さらに大臣に対する質問を留保いたしましてきょうはこれで終ります。
  79. 山本幸一

    山本委員長 本日はこの程度で散会いたしまして明日は午前十時から委員会を開きます。     午後一時四分散会