○
横山委員 あなたがミツマタ業者に対して深い理解があるということは、初めてお伺いいたしました。何か聞くところによれば、ミツマタ業者は、最近東京に押しかけるそうでありますが、さぞかしあなたは、けんけん服膺して善処されることと思うわけであります。それはそれといたしまして、先ほどあなたは、いかにも私が、事務上は納得したというような印象を持たれておるといたしましたならば、これは間違いでありますから、私から念のために申し上げておきます。便利であるか不便利であるかということは、やはり階層によって違うのであります。明らかに便利があるのは、銀行
関係でありましょう。計算に便利でありましょう。しかし明らかに不便利でありますのは、庶民大衆であります。一万円のお札を出しておつりをくれといって惑わない者が今の庶民の中にだれがありましょうか。私は、給料袋の中に一万円札と百円札が二、三枚ちょろちょろと入っておる圧倒的な千数百万人の人をお考え願いたいと思うわけであります。
このような事務的な問題は、それくらいにいたしましても、政治的に各方面がそれに対してどういう反応を表わしておるかということであります。少くとも一般の各層の反響は、昨年秋以来、一万円札についてはやはり批判的であります。一番賛成だと患われる銀行
関係がそうでありましょう。これは、
理財局長はおそらく御
承知だと思うのでありますが、昨年十一月十五日の銀行懇談会は何を言っているかというと、「経済の先行きに対し警戒論が出され、物価は上りぎみであり、スエズ問題をはじめ国際情勢も楽観を許さないとき、一万円札を出すことはインフレ人気をあおる。銀行窓口の手数がはぶけ合理化に役立つというが、逆に両替がひんぱんになり、かえって手間がかかる。為替管理は厳重であるにもかかわらず、ヤミ円が海外で流通しており、一万円札が出ると円の流出流入の危険が一層増す」と言っておる。こういうことを考えますと、一番賛成しそうな銀行
関係が反対をしておるならば、あとは言うは愚かな話といわなければなりません。また読売の報道でありますが、勝田経済研究所長勝田貞次氏はこう言っておる。「今の日本の資力は一万円札をもらったとたんに百円札とか千円札に両替えする必要のある資力である。従って一万円札は一般大衆のうちに流通し、とけ込まない。大
会社と銀行の間に流通する位のものであるから、一万円札は流通しないとみられる。スエズをめぐる戦乱からインフレになるようなら、一万円札の発行はインフレに拍車をかけるようなものにたるので、いま直ちに一万円札を出すのはどうかと思う。発券コストを引下げることも計算を簡易化することも、流通性のない通貨の場合はできない。」こう言っておるのであります。ひやかし半分に新聞の漫画でも、あるいは産業短信とかいうような妙なところでは、一斉に攻撃の声を上げて、一万円札の発行に対して非難しやゆし、そして冗談めいた言い方をして、
政府のやり方について警告を発しておるわけであります。こういうような一般世論の動向というものは、
池田さんが大阪で一万円札といったところで、それに対して変化を与えておらないのであります。にもかかわらず、どうしても一万円札を発行しなければならぬという
理由がない。今
理財局長は、支障がなければ——その支障が見つからぬと言ったのだが、私が言うのは、どうしても発行しなければならぬという
理由というものは一体どこか。それはあなたの方から言わなければなりません。支障があるなら言ってくれという言い方じゃなくて、どうしても発行しなければならぬ
理由というものを、あなたの方から
説明なさる義務と責任があるわけです。そういう義務と責任から、その
理由について一つ御
説明を願いたいと思う。