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1957-04-09 第26回国会 衆議院 商工委員会 第24号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十二年四月九日(火曜日)     午前十時四十四分開議  出席委員    委員長 福田 篤泰君    理事 小笠 公韶君 理事 鹿野 彦吉君    理事 小平 久雄君 理事 笹本 一雄君    理事 西村 直己君 理事 加藤 清二君    理事 松平 忠久君       今松 治郎君    内田 常雄君       大倉 三郎君    岡崎 英城君       川野 芳滿君    椎名悦三郎君       島村 一郎君    首藤 新八君       薄田 美朝君    田中 角榮君       竹内 俊吉君    中村庸一郎君       南  好雄君    横井 太郎君       佐竹 新市君    田中 武夫君       多賀谷真稔君    中崎  敏君       永井勝次郎君    帆足  計君  出席国務大臣         通商産業大臣  水田三喜男君  出席政府委員         公正取引委員会         委員長     横田 正俊君         大蔵事務官         (銀行局長)  東條 猛猪君         通商産業政務次         官       長谷川四郎君         通商産業事務官         (大臣官房長) 松尾 金藏君         通商産業事務官         (通商局長) 松尾 泰一郎君         通商産業事務官         (繊維局長)  小室 恒夫君         中小企業庁長官 川上 爲治君  委員外出席者         参  考  人         (近江絹糸紡績         株式会社取締役         会長)     夏川嘉久次君         参  考  人         (近江絹 糸紡         績株式会社常任         監査役)    西村 貞蔵君         参  考  人         (株式会社三菱         銀行常務取締         役)      宇佐美 洵君         参  考  人         (株式会社住友         銀行常務取締         役)      降旗 英弥君         参  考  人         (株式会社日本         勧業銀行副頭         取)      後藤 幸雄君         参  考  人         (中央労働委員         会委員)    中島 徹三君         専  門  員 越田 清七君     ――――――――――――― 四月九日  委員佐々木秀世君、篠田弘作君、鈴木周次郎君  及び前田正男君辞任につき、その補欠として今  松治郎君、竹内俊吉君、薄田美朝君及び岡崎英  城君が議長の指名で委員に選任された。 四月五日  中小企業組織法案水谷長三郎君外二十三名提出衆法第二号)  中小企業産業分野確保に関する法律案水谷長三郎君外二十三名提出衆法第五号)  商業調整法案水谷長三郎君外二十三名提出衆法第六号)  中小企業組織法施行に伴う関係法律整理に関する法律案水谷長三郎君外二十三名提出衆法第七号)  中小企業団体法案内閣提出第一三〇号) 同月六日  機械工業振興臨時措置法の一部を改正する法律案内閣提出第一三四号)(予)  の審査を本委員会に付託された。 四月八日  中小企業団体法制定に関する陳情書  (第七三二号)  同外三件(第七六九号)  同(第八一八号)  同  (第七三三号)  石油資源開発促進に関する陳情書  (第七六一号)  中小企業振興対策費増額等に関する陳情書  (第七七〇号)  ココム制限撤廃等に関する陳情書  (第七七二号)  電力料金値上げ反対等に関する陳情書  (第七七九号)  電力料金値上げ反対に関する陳情書外二件  (第七九二号)  下関市に日中輸出入組合支所誘致に関する陳情  書(第八一六号)  中小企業対策推進に関する陳情書  (第八一七号)  小売商振興法制定に関する陳情書  (第八一九号)  県営獺越因原発電計画実施に関する陳情書  (第八二九号)  を本委員会参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  中小企業団体法案内閣提出第一二〇号)  中小企業組織法案水谷長三郎君外二十三名提出衆法第二号)  中小企業組織法施行に伴う関係法律整理に関する法律案水谷長三郎君外二十三名提出衆法第七号)  中小企業産業分野確保に関する法律案水谷長三郎君外二十三名提出衆法第五号)  商業調整法案水谷長三郎君外二十三名提出衆法第六号)  貿易に関する件  私的独占の禁止及び公正取引確保に関し参考人より意見聴取     ―――――――――――――
  2. 福田篤泰

    福田委員長 これより会議を開きます。  去る五日本委員会に付託せられました内閣提出中小企業団体法案、同じく去る五日、本委員会に付託せられました水谷長三郎君外二十三名提出中小企業組織法案中小企業組織法施行に伴う関係法律整理に関する法律案中小企業産業分野確保に関する法律案及び商業調整法案、以上各案を一括議題とし、審査に入ります。  まず提出者よりそれぞれその趣旨説明を求めます。水田通商産業大臣
  3. 水田三喜男

    水田国務大臣 ただいま議題となりました中小企業団体法案につきまして、その提案理由を御説明申し上げます。  政府は、中小企業問題の重要性にかんがみまして、かねてから各般の施策を講じてその解決に努力いたして参ったのでありますが、特に中小企業組織化によってその経営合理化競争力強化等をはかることをその基本的対策の一として推進してきたのであります。御承知の通り中小企業組織に関する制度といたしましては、中小企業等協同組合法による協同組合中小企業安定法による調整組合との二つがあるのでありまして、それぞれ、前者は共同経済事業による経営合理化を、また後者は調整事業による経営の安定を目途として運営してきたのであります。この二つ制度は、中小企業経済的地位維持向上のためにきわめて大きな役割を果してきたのでありまして、その意義はすこぶる大きいものがあるのであります。しかしながら、今日なお、わが国の中小企業の多くは、その資本力の弱小、業者相互間における過度競争等により依然として経営の不振と不安定に悩んでおることに思いをいたしますと、この際、中小企業振興施策を思い切って強化する必要があると存ずる次第であります。昨年六月、内閣中小企業振興審議会を設置し、中小企業振興対策に関する広範な諮問を行なったのもかかる見地から出たものであります。政府といたしましては、同審議会の答申を尊重するとともに、これに対する関係方面意見についても慎重に検討を重ねました結果、中小企業界の現状にかんがみ、中小企業振興のための最も基本的な施策として中小企業組織の充実、団結強化をはかることがまずもっての急務であり、そのため、中小企業組織に関する基本法として本法律を制定する必要があるとの結論に到達した次第であります。  本法律案概要について申し上げますと、第一に、現行調整組合制度廃止して、新たに調整事業共同経済事業をあわせ行5ことのできる組合として、商工組合制度を設けることであります。共同経済事業をもあわせ行うことは、組合員たる中小企業者団結強化並びに経営の安定と合理化のためにきわめて適切な事柄であり、また従来の中小企業等協同組合法による協同組合中小企業安定法による調整組合の二重設立による運営の煩を免れるためにも最も実情に即したものと考えられます。  第二に、すべての業種について、一定の要件を備える場合には、商工組合によって調整事業実施することができるようにすることであります。中小企業安定法によりますと、特定の工業部門のみ調整事業を行うことができるようになっておりますが、現在中小企業業界はおしなべて激しい過当競争に悩んでおりますので、工業以外の各分野におきましても、業界秩序維持のための調整事業実施することができるようにする必要があるからであります。  第三に、組合がその調整事業に関して組合外の者と交渉を行うときは、その相手方は、誠意をもってこれに応じなければならないこととし、特に必要がある場合には、その交渉が円満に妥結するよう政府において特に設ける調停審議会意見を聞き、適切な勧告ができるようにすることであります。業界の安定のために行う組合調整事業につきましては、組合の外にいる者にもできるだけこれに協力してもらい、調整事業が一そう効果的に運営される必要がありますので、組合がこの趣旨によりまして取引関係または競争関係にある組合員外のものと交渉をする場合には、その話し合いが円滑に行われるように政府としても善処する必要があるからであります。第四に、組合調整事業が、員外者事業活動のため効果をあげることができず、ために業界の安定に重大な悪影響があり、国民経済上もこれを放置することができない事態に立ち至りましたときは、政府は、その業界におけるすべての中小企業者組合に加入せしめ、または、組合員たる資格を有するすべての者の事業活動を規制する命令を出すことができるようにすることであります。いわゆる員外者の行為を規制する必要がある場合、まず中小企業界が完全に団結すれば不況事態の克服が可能と思われるときは、中小企業のすべてを組合に加入させて自主的調整に参加させるようにし、その他の場合におきましては、現行中小企業安定法におけるがごとき員外者規制命令を発する必要があるからであります。  第五に、共同経済事業を通じて、中小企業者経営合理化をはかるための組織である協同組合制度につきましては、この制度実施以来相当の年月を経て最近ますますその基礎を固め、制度運営効果もはなはだ大なるものがあるのでありまして、中小企業者組織化による経済的地位向上のためにはきわめて適切な制度でありますので、本法においてはこの制度をそのまま取り入れ、協同組合組織運営等につきましては従来の中小企業等協同組合法の定めるところによることとした次第であります。もちろん過去の実施の経験にかんがみ、所要改善はなるべく近い機会に行う所存であります。  本法は、以上述べました商工組合協同組合との二つ制度一つ法律のもとに規定することにより、従来の中小企業等協同組合法中小企業安定法との二本建の法律による組合設立管理等に関する煩を避けるとともに、中小企業者がその希望するところに従い、実態に応じていずれの制度をも選択し得るようにし、同時に、両制度相互の移行についてもでき得る限りこれを容易に行い得るように規定する等、中小企業者一つ法律制度の下に、みずからの経営の安定と合理化のための事業を最も合理的かつ効果的に遂行することができるよう措置しようとするものであります。  以上が中小企業団体法案趣旨であります。何とぞ慎重御審議の上、御賛同下されんことをお願いいたします。
  4. 福田篤泰

  5. 永井勝次郎

    永井委員 日本社会党提出中小企業組織法案中小企業産業分野確保に関する法律案商業調整法案、この三案につきましては、過般本会議におきまして御説明を申し上げましたので、この場合省略いたしたいと存じます。その際、中小企業組織法施行に伴う関係法律整理に関する法律案説明を落してありましたので、ここであらためて申し上げたいと存じます。  この法案は、前述いたしましたわが党提出の三つの法律施行するに当りまして、関係法律改正を行う等の必要が生じて参ります。従ってこれらの所要整理を行おうとするものであります。何とぞ慎重御審議のほどをお願い申し上げたいと存じます。  この際、わが党の中小企業に対する基本的な考え方、そういう基本的な考え方からただいま四つの法案提出しておりますし、これから十数件の法律案を用意し、四十数件の行政措置を用意してあるのでありますから、それらの概要を簡単に申し上げて、これからの御審議をいただく上の御参考に資していただきたいと存ずるのであります。  わが党の中小企業に対する基本的な態度は、まずどういうふうに診断しているかということでありますが、本会議説明でも申し上げました通りに、一つ過度競争である。一つ原料高製品安金融難税金高施設不備技術後進性外資導入圧迫、こういうような事項であると思うのであります。上の方からは大企業中小企業分野にどんどん食い込んでくる。下の方からは潜在失業者がどんどん洪水のごとく流れ込んできて、中小企業失業者のたまり場になっておる。さらに横の方からは外資導入されてその圧迫を受ける、こういうようなところから過度競争が起っておるわけでありますから、過度競争になっておるこれらの原因を取り除くことが中小企業対策一つの方途であると考えるのであります。  それから原料高製品安でありますが、これは経済企画庁で発表いたしました昨年六月末現在の大企業中小企業経営状態内容検討で明らかでありますように、大企業は前年度に比べて一八・九%内外より生産を高めていない。これに対して中小企業は二三%の生産増を示しております。大企業よりもずっと生産を上げておるのであります。しかるに収益どらであるかといえば、収益は大企業は五六・七%、中小企業はわずかに三・二%、いかに大企業に搾取されているかということが明らかになっておるのであります。これは売上高構成費を見ましても、大企業原料費をずっと安くしておる。中小企業の方は原料費が前年に比べてずっと高くなっております。それから人件費どらかといえば、大正業の方はベース・アップによって高くなっておる。中小企業の方は切り下げておる。賃金を安くして増産して原料費をたくさんとられて収益がわずかである。こういうような状況でありますから、これらの独占資本独占価格にメスを入れなければならないという考え方に立っているわけであります。  それから金融でありますが、これは財閥関係金融機関は普通の銀行をやっておる、信託銀行を営んでおる、あるいは生命保険火災保険というような金融機関を持っておりまして、資金をぐっと集める、集めた資金は交互に協調融資をして助け合う、そこに集中融資がされておる。あるいは郵便貯金簡易保険というような零細な金が全国から吸い上げられて、政府資金運用部資金となって、これが投融資の資金となっておるのでありますが、これらも地方へ還元されるというよりは、大企業へ集中されておる割合が非常に多いのであります。こういうような金融仕組みの中におきましては、中小企業金融難に陥ることは当然でありますから、わが党はこの点については銀行法等改正を行いまして、集中融資制限する、あるいは中小企業信用不足から金が借りられないという実情でありますから、信用保証保険法とかその他いろいろな信用を補強する方法を講じまして、金融の道を開いていく、あるいは各金融機関に対するところの、現在集中融資をされる仕組みのいろいろな法律を改めていきたい、かように考えておるわけであります。  それから税金でありますが、これは租税特別措置法によりまして、今まで年間一千億に近い大企業への減税が特別措置されていた。従って三十一年度の税金の実績を見ますと、電力会社のごときは当然納むべき税金の二六%より納めていない。銀行は当然納むべき税金の四七%より納めていない。大体半分程度の税金より納めていないというような状況である。そのしわ寄せが中小企業へかぶさって参りまして、力以上の大きな税の負担を中小企業にかぶされておるという状態でありますので、わが党におきましてはさらに所得税法改正法人税法改正租税特別措置法廃止物品税廃止、こういうような法的措置を講じまして、大企業のしわが中小企業に寄せられておるものを排除する措置を講じたい、かように考えておるのであります。  施設不備につきましては、これの近代性資本蓄積を多くして、施設改善にこれが振り向けられるような財政経済的ないろいろな措置を講じていきたいと考えておるのであります。また技術後進性の問題につきましては、国の教育制度から、あるいは職場におけるところの技術教育、そういう万般の施設を拡充整備いたしまして、近代的な技術を修得できるような諸条件を整備せしめて参りたいと考えておるのであります。  また、外資導入におけるところの圧迫については、ミシンがよき例であります。あるいはアルミの関係がこの実例であります。また資金関係からいえばおもちゃ関係とかなんとかいろいろだくさんございますが、そういうような国の民族産業圧迫するような弊害のある外資導入に対しましては、わが党におきましてはこれを断固退けまして、外資導入は、導入することによって国の産業振興に役立つ部面にのみ導入をする、こういう厳格な制限を置く法的措置あるいは行政措置、そういうものを講じていきたい、かように考えるのであります。  大企業独占によるところのいろいろな圧迫については、下請代金支払い遅延防止法であるとか、あるいは百貨店法改正であるとか、あるいは会社更生法改正であるとか、あるいは商工会議所法改正、さらに賃金の問題については最低賃金法家内労働法、あるいは健保、厚生年金失業保険労災法、あるいは技能者養成法というような社会保障制度及び社会教育制度、そういうものをあわせまして広範な分野から中小企業振興をはかろうと考えておるのであります。これらに対する基本的な考え方は、中小企業をこの法律あるいは財政経済措置によって保護するのではなくて、これを振興するのだ、自立できるような、そういう振興対策を政策の性格としております。政府のように、強制加入員外強制統制というような強権によって組織を作り、カルテルを強行しようというような性格のものではなくて、中小企業みずからの自主的な組織によってみずからの業態を改革していく、こういう性格において考えております。従って、喜んで入る協同組合、こういうものを作り上げなければいかぬ。従って法的な立法をするばかりではなくて、財政経済、そういった面の政府の義務としての裏づけをすべきことを法律に定めまして、協同組合に入らなければ損だ、喜んで入るんだというふうな協同組合を作り上げる、こういうことを考えておるのであります。もちろんこれは中小企業者利益をはかるものだけではなくて、国民経済的な立場で問題の解決をしなければなりませんから、もちろん消費者などの立場利益を守るべきことは当然であります。そうして憲法に定められている精神、独禁法で制限されている条件、そういうもの、既存のこの大きな基本となる法律を土台といたしまして、ただいま申し上げました考え方を骨組みとし、十数件の今後来たるべき法律、四十数件の行政措置、これを肉づけといたしまして、広範な分野から画期的な中小企業振興対策を確立しようというのがわが党の案の中小企業対策内容でありますことをここに明らかにいたしまして、提案の御説明にかえる次第であります。
  6. 福田篤泰

    福田委員長 なおこの際、中小企業団体法案について、政府委員より補足説明をいたしたいとの申し出がありますので、これを許します。川上中小企業庁長官
  7. 川上爲治

    川上政府委員 先ほど中小企業団体法案につきまして、大臣から提案理由説明がございましたので、私はこの内容につきまして若干補足的な御説明をいたしたいと思います。  お手元に中小企業団体法案要綱というのが配付してありますが、この要綱に従いまして御説明申し上げます。  第一は目的でございます。「この法律は、中小企業者その他の者が協同して経済事業を行うために必要な組織又は中小企業者が自主的に事業活動を調整するために必要な組織を設けることができるようにし、これらの者の公正な経済活動機会確保し、及びその経営の安定を図り、もって国民経済の健全な発展に資することを目的とするものとすること。」これは要するに、現在の協同組合組織そのものは現在のままにしておくということ、それからもう一つは、現在の中小企業安定法に基きます調整組合制度を改めまして、商工組合制度というのを作るわけですが、これをこの法律によりましては、この協同組合組織とそれから商工組合制度を一本の法律としてまとめていくということでございます。この前段の方の「中小企業者その他の者が協同して経済事業を行うために必要な組織」、これが協同組合組織でございまして、これは現行協同組合法趣旨と全く同じでございます。後段の「中小企業者が自主的に事業活動を調整するために必要な組織を設けることができるようにし、」これが商工組合制度でございます。  それから第二は、中小企業団体等の種類でございます。「この法律による中小企業団体は、次に掲げるものとすること。」として一から六までありますが、この一から四までのものは現在の協同組合法にありますものをそのままここへ掲げてあるわけでございます。五、六が新しい商工組合制度でございます。  それから中央会につきましては、その次に「この法律による中小企業団体中央会は、次に掲げるものとすること。」一、都道府県中小企業団体中央会、第二は全国中小企業団体中央会、これは現在協同組合等中央会というのが地方中央にございますが、これに今回の商工組合を加入できるようなことにいたしますので、名前も中小企業団体中央会ということにいたしたわけでございます。  それから第三につきましては、先ほども申し上げましたように、この法律によりましては協同組合関係もかぶせてあるわけでございますけれども、協同組合関係につきましてはある程度現在の制度を修正する点もございましたが、時間の関係もありましたので、この次の機会に譲ることにいたしまして、一応この第三におきましては事業協同組合信用協同組合協同組合連合会及び企業組合については、中小企業等協同組合法の定めるところによるものとすることということにしまして、現在の協同組合法にそのままよるということにいたしたわけであります。  それからその次からは商工組合及び商工組合連合会に関する規定をずっと書いてあるわけでございます。  まず第一に商工組合制度におきます中小企業者定義でございますが、この第四に、「商工組合及び商工組合連合会に関する規定において「中小企業者」とは、次の各号の一に該当する者をいうものとすること。」一、「常時使用する従業員の数が三百人以下の者であって、工業、鉱業、運送業その他の業種に属する事業を主たる事業として営むもの」二、「常時使用する従業員の数が三十人以下の者であって、商業又はサービス業に属する事業を主たる事業として営むもの」三、「常時使用する従業員の数がその業種ごと政令で定める数以下の者であって、その政令で定める業種に属する事業を主たる事業として営むもの」ということになっておりますが、要するにその中小企業者定義につきましては、いわゆる製造業者につきましては、従業員三百人以下のものということにいたしたわけでありまして、これに属するものは一般の製造業、あるいは石炭産業、あるいは鉱山関係それから運送業というものが入るわけでございます。それから第二におきましては、商業とかあるいはサービス業につきましては、従業員の数が三十人以下ということに限定をいたしたわけでございます。これは現在協同組合法におきましても、あるいは安定法におきましても、大体こういう趣旨になっておるわけでございますが、第三のところで、その中小企業につきましても、その中小企業性そのものが、この原則に当てはまらないというような場合がございます。たとえば問屋におきましては、三十人以下ということが妥当であるかどうか疑問もありまして、これはある程度引き上げた方がよくはないかというような意見もありますし、また石炭産業とかあるいは金属工業というようなものにつきましては、この三百人以下ということでは適当ではないというような意見もありますので、そういう種類のものにつきましては、これは政令でその業種を指定いたしまして、従業員の数の特例を設けたいというふうに考えておるわけでございます。  それから第五は名称でございますが、この商工組合につきましては、商工組合という名前をつけなければならぬ。それからまた連合会につきましては、商工組合連合会ということにいたすわけなのですが、これは原則でありまして、製造業者については工業組合、あるいはまた商業関係のものにつきましては、商業組合という名前をつけてもよろしいということにいたしたわけでございます。  それから第六は設立の問題でありますが、「商工組合は一定の地域において一定の種類の事業を営む中小企業者競争が正常の程度をこえて行われているため、その中小企業者事業活動に関する取引の円滑な運行が阻害され、その相当部分の経営が著しく不安定となっており、又はなるおそれがある場合に限り、設立することができるものとすること。」となっておりまして、いわゆる商工組合はただ勝手に設立することはできない。少くとも過当競争が行われまして、そのために、中小企業者事業活動に関する取引の円滑な運行が阻害されておるとか、あるいはまた阻害ざれるおそれがあるとか、しかもその中小企業者の相当部分の経営が不安定になっておるというような場合に、初めて商工組合設立することができるというふうにいたしておるわけであります。相当部分というのは、大体過半数というふうに考えておるわけでございます。  それから第七は、「商工組合の地区は、資格事業の種類の全部又は一部が同一である他の商工組合の地区と重複するものであってはならないものとすること。」要するに商工組合は、一業種につきましては地区が重複してはいけない。しかしながら後段のところに書いてありますが、商店街商工組合につきましては、特別に地区は重複してもよろしいということを書いてあるわけであります。  それから第八は、「商工組合組合員たる資格を有する者は、その地区内において資格事業を営む中小企業者及び第六に掲げる事態を克服するため必要がある場合において定款で定めたときは次に掲げる者とするものとすること。」一、「その地区内において資格事業を営む者であって、中小企業者以外のもの」二、「事業協同組合協同組合連合会企業組合商工組合商工組合連合会、農業協同組合、農業協同組合連合会、水産業協同組合、森林組合又は森林組合連合会であって、その他区内において資格事業を行うもの。だし、その資格事業がこれらの団体の種類ごとに政令で定める業種に属する場合に限る。」要するにその商工組合組合員たる資格を有する者は、原則としまして中小企業者であるということになるわけでございますけれども、場合によりましては、第一に書いてありますように、資格事業を営む者であって、中小企業者以外のものである大企業も加入きせることができるということになっているわけであります。それからもう一つは、これは事業を営む者ということになっているわけなんですが、しかし営利事業者でなくても、いわゆるその資格事業を行うものであって、どうしてもこの第二に書いてありますような組合に加入させなければ困るというような場合においては、この商工組合員の資格を付与することができるということになっているわけでございますが、そういう団体は政令に上りまして指定することにいたしているわけでございます。たとえば農協等におきまして特別な事業を行なっていて、どうしてもそういうようなものはこの商工組合に加入させた方がよろしいというような場合におきましては、政令で定める業種に指定をいたしまして、これを加入させるということができるようにいたしておるわけでございます。  それから第九は、「商工組合は、組合員たる資格を有する者の二分の一以上が組合員となるのでなければ、設立することができないものとすること。」この一、二項につきましては、それぞれ一定の制限規定を置いているわけでございます。  第十は商工組合連合会設立でございますが、商工組合連合会を、同業種のものにつきましては設立することができるのですが、それ以外に、きわめて密接な関係のある組合とか、そうして同時に、その密接な関係のあるものもひっくるめて総合調整の必要があるもの、そういうようなものにつきましては、一緒に商工組合連合会設立することができるということを、ここにずっと規定をしているわけでございすして、この規定につきましては、現在の安定法調整組合連合会と同じようなことにいたしているわけでございます。  それから第十三、これは商工組合事業でございますが、「商工組合は、次の事業の全部又は一部を行うものとすること。」一、二、三、四、五、六、七、八、ここまでが、いわゆるその生産制限でありますとか、あるいはその販売方法に関する協定でありますとか、あるいはその価格の協定とか、そういうような調整事業でございます。それから第二項の、「商工組合は、前項の事業のほか、次の事業の全部又は 部を行うことができるものとすること。」というふうに書いてありまして、これはいわゆる現在の協同組合事業を、この商工組合においてもあわせて行うことができるということを規定してあるわけでございます。この第一をの方におきましては、「全部又は一部行うものとすること。」従いまして商工組合を作る以上は調整事業を行わなければならないということにしてあるわけでございまして、経済的な共同事業につきましては次の事業の全部または一部を行うことができるものとするというふうに書き分けてございます。これは現在、たとえば尾西地区の毛織物の製造業者でありますとか、あるいは陶磁器業者でありますとか、こうした方面から強い要望もありまして、どうしても調整事業と一緒に経済的な共同事業もやらしてもらいたい、またそういうことでなければ調整事業そのものがうまくいかないということでありましたので、われわれとしましては、この調整事業に合せまして経済的な事業ができるようにいたしておるわけでございます。それから調整事業につきましては、いろいろなほかの調整事業をやってみてなおらまくいかないというよらな場合、あるいはこの七に書いてありますように、技術的な理由によってどうしても価格統制以外のことができないというような場合に初めて不況克服の一つの最後的な手段として、価格協定ができるということにいたしておるわけでございます。それから第三項は、「商工組合は、その事業に関し組合員のためにする組合協約を締結することができるものとすること。」これはあとで出てきますが、取引先あるいは関係方面に対しまして組合交渉ができるということを規定しておるわけでございます。  それから第十四は、調整規程の認可に関する規定でございます。「商工組合は、その実施しようとする第十三の第一項の事業」いわゆるその調整事業「に関し、次の事項を定めた規程を設定し、主務大臣の認可を受けなければならないものとすること。」一、二、三というような規定を作りまして、所管大臣の認可を受けなければならぬということにいたしておるわけでございます。また調整規程の設定、変更及び廃止につきましては総会の特別の議決を経なければならぬということにしまして、調整規程そのものにつきましては厳重な監督規定をつけておるわけでございます。  それから第十五は、「主務大臣は、第十四の第一項の認可の申請に係る調整規程が次の各号に適合すると認めるときでなければ、同条の認可をしてはならないものとすること。」調整規程につきましては、他の関係方面に及ぼす影響がありますので、たとえば「第六に掲げる事態を克服するため必要な最少限度をこえないこと。」とか、「不当に差別的でないこと。」とか、「一般消費者及び関連事業者の利益を不当に害するおそれがないこと。」とか、こういう場合に初めて調整規程の認可をすることになっておるわけでございます。  それからなお第十六におきましては、従来の安定法に基きます調整組合制度の経験にもかんがみまして、少くとも二カ月以内にこの認可または不認可の通知を主務大臣はしなければならないということにいたしておるわけでございます。  それから、第十七、第十入、第十九、これがいわゆる組合交渉に関する規定でございます。  まず、第十八から御説明申し上げますが、「次の各号の一に該当する者は、商工組合の代表者が、政令で定めるところにより、調整規程又はその案を示してその調整規程による調整事業に関し第十三の第三項の組合協約を締結するため交渉をしたい旨を申し出たときは、その交渉に応ずるように誠意をもって措置しなければならないものとすること。」これは、要するに組合交渉をする場合におきましては、まず第一に、その商工組合の代表者でなければならないということ、しかも調整規程またはその案を示して交渉をしなければならない、いわゆる調整事業に関する問題だけについて交渉をしなければならないということを書いてあるわけであります。それから「政令で定めるところにより、」というのは、この代表者につきまして、少くとも人数につきましては、あまりたくさんの者が行って交渉するようなことは、そのためにかえって弊害の生ずることがありますので、そういうような人数につきまして制限するとか、あるいはその組合の代表者は理事者でなければいけないとか、そういうような制限規定をここには置きたいというふうに考えておるわけでございます。そういうふうに交渉につきましてきわめて紳士的にやってもらい、同時にまた調整事業に関するものだけということにいたしまして、そういうようなことにより、交渉の申し入れがありましたとき相手方は誠意をもってその交渉に応じなければならないことにいたしておるわけでございます。ではどういうものと交渉ができるかということが一、二、三、四に書いてございますが、一、二は縦の関係でございまして、三、四は横の関係でございます。一の「商工組合組合員と資格事業に関し取引関係のある事業者であって、中小企業者以外のもの」、これは大企業者でございます。二の「商工組合組合員と資格事業に関し取引関係のある事業者をもって組織する第八の第二号に掲げる団体又は輸出組合若しくは輸入組合」これは、いわゆる中小企業者を相手にする場合にはその団体と交渉するということにしてあるわけでございまして、団体につきましてもはっきり明記いたしているわけでございます。三は横の関係でございます。「商工組合組合員たる資格を有する者であって、中小企業者以外のもの」いわゆる横の関係の大企業者。四の「地区内において資格事業を行う事業者(資格事業を営む者を除く。)であって、商工組合組合員たる資格を有しないもの」、これは生協でありますとか、あるいは農協でありますとか、そういうものを称しておるわけでございますけれども、そういう場合は政令で限定することにいたしておるわけでございます。こういう組合交渉の相手方を規定しておるわけでございますが、その交渉に応じないとか、交渉がなかなかまとまらない場合におきましては、第十九におきまして、「主務大臣は、第十八の第一項の規定により申出が行われた場合において、その商工組合組合員たる中小企業者経営の安定のため特に必要があると認めるときは、その商工組合又はその交渉の相手方に対し、組合協約の締結に関し必要な勧告をすることができるもの とすること。」としてありまして、その交渉がまとまるように勧告することになっておるわけでございます。この勧告につきましては、三十三に書いてあります中央中小企業調停審議会にかけまして、その意見を聞いてすることに相なっておるわけでございます。またこの勧告に従わない場合はどうするかという問題は、別に罰則とかあるいはその裁定とかそういう規定はつけておりません。これはあくまでも社会的な一種の制裁規定と申しますか、訓示規定と申しますか、そういうことにいたしておるわけでございます。  それから第十七におきまして、組合協約につきまして、特別なものについては主務大臣の認可を受けなければならないことにいたしておるわけでありまして、「商工組合がその行う調整事業に関し組合員たる資格を有する者と締結する第十三第三項の組合協約は、」というふうに、横の関係について、特別なものにつきましてはその主務大臣の認可を受けなければならないということにいたしておるわけでありまして、主務大臣が認可をする場合におきましては、消費者関係とか関連事業者の関係とかを考えて認可をしなければならないということにいたしておるわけでございます。なおこの認可をする場合におきましては、独禁法との関係も考慮いたしまして、あとへ出て参りますが、公取の同意を得なければならないということに相なっておるわけでございます。  二十は商工組合連合会事業に関する規定でございます。いわゆる総括的な調整事業ができ、同時にまた検査とか調査とか監査とか、そういう附帯事業ができるということを規定しております。  二十一におきましては、総合調整規程につきましてはやはり主務大臣の許可を受けなければならないということにいたしております。  それから、この商工組合は先ほども申し上げましたように経済的な共同事業もできるということにいたしておりますので、出資ができるということを第二十二には書いてあるわけでございますが、非常に特別な場合あるいは零細企業者というようなものにつきましては、組合の承諾を得まして出資をしなくてもよろしいということにいたしておるわけであります。  第二十三はこれが設立の認可についてのいろいろな手続についての規定でございます。  第二十四はいわゆる強制加入命令規定でございます。法律には第五十五条に書いてありますが、「主務大臣は、次の各号に掲げる要件を備える商工組合の地区内において資格事業を営む中小企業者であって組合員以外のものの事業活動が第六に掲げる事態の克服を阻害しており、このような状態が継続することは、その地区内において資格事業を営む中小企業者経営の安定に重大な悪影響を及ぼし、国民経済の健全な発展に著しい支障を生じるおそれがあると認められる場合において、その商工組合がその地区内において資格事業を営むすべての中小企業者事業活動を自主的に調整することによって第六に掲げる事態を克服することができ、かつ、その方法によることがその事態を克服するのに最も適当であると認められるときは、政令で定めるところにより、その地区内において資格事業を営む中小企業者であって組合員以外のものに対し、その商工組合に加入すべきことを命ずることができるものとすること。」そして条件としまして一、二、三と書いてありますが、要するに強制加入命令につきましては中小企業者だけに限定されている。大企業などを強制加入させることはできない。大企業関係につきましては、次の第二十五のところの事業活動の規制に関する命令、いわゆる員外の統制、命令によって拘束することができるということにいたしておりまして、どこまでもこれは中小企業者だけだ。要するに中小企業者が自主的に調整事業を行おうとして、そして員外中小企業者が若干おるためになかなかその調整事業がらまくいかないというような場合に強制加入命令は出すのであるということを規定しておるわけでございます。しかもこれは勝手に出すのではなくて、少くとも中小企業者経営の安定にアウトサイダーの企業が重大な悪影響を及ぼすかあるいはまた国民経済の健全な発展に著しい支障を生ずるおそれがあると認められる場合に限定して強制加入命令は出すのだということにいたしておるわけでございます。従いましてこの趣旨は、あくまでも中小企業者が自分たちだけで自主的にこの調整事業をやって、そしてアウトサイダーがおるためになかなかうまくいかない場合に、政府の方でそれに対して援助を与えて、アウトサイダーである中小企業者を加入させてその組合調整事業がらまくいくようにするのだという意味でございまして、こういうような相当きびしい条件を付してありますので、別に私どもの方としましては憲法に違反するという考えは持っていないわけでございます。それから二項、三項につきましては、命令を発した場合におきまして、その効果がどういうふうになっているかということを書いてあるわけでございますし、出資につきましては、別に強制はしないということをうたっておるわけでございます。  それから第二十五、これは先ほども申し上げましたように、大企業に対しましては、いわゆる員外者規制命令を出すということになっておりますが、その規定と、それから中小企業者が自主的に調整事業ができない、しかもそれをほうっておいてはいけないというような場合におきまして、初めてこの中小企業者に対しましても、アウトサイダーの命令が出し得るということにいたしているわけでございます。「主務大臣は、次の各号に掲げる要件を備える商工組合組合員たる資格を有する者であって組合員以外のもの(中小企業者を除く。)の事業活動が第六に掲げる事態の克服を阻害しており、またはその商工組合組合員たる資格を有する者の事業活動を自主的に調整することによっては第六に掲げる事態を克服することができず、」というふうに、前段の方におきましては大企業者に対する規制命令でございますが、後段の方につきましては、中小企業者に対する規制命令というふうに書き分けてあるわけでございます。それからその次のぺ-ジに一、二、三というふうにいろいろな条件を付しているわけでございます。  第二十六は、これは商工組合連合会につきましてもやはり同様な規制命令が必要でございますので、この規制をここに書いているわけでございます。  それから第二十七は、強制加入命令あるいはアウトサイダー規制命令というような命令につきましては、その組合が総会の特別議決を経て申し出た場合でなければ、この命令を発することができないというふうにしてあるわけでございます。それから命令を出す場合におきましては、その次のところに遅滞なく命令は出すか出さぬかということを通知しなければならないというらことを書いてあるわけでございます。  なお第二十八のところにおきましては、強制加入命令とかアウトサイダーの命令というものは、これは対消費者関係あるいは関連産業関係、そういうことを十分考えなくちゃなりませんので、広く聴聞を行いまして一般の意見を聞かなければならないということにいたしているわけでございます。  それから第二十九、三十のところは、これは事務処理の関係とかあるいは手数料関係、それを規定しているわけでございます。  それからなお三十一におきましては、商工組合に関する解散の命令でございますが、いわゆる不況要件というものがなくなりましたならば、商工組合というものは解散しなければならないということを書いているわけであります。「主務大臣は、商工組合が第六または第九に掲げる要件を欠くに至ったと認めるときは、その商工組合に対し、解散を命ずることができるものとすること、」それからその次は連合会に関するやはり解散の命令でございます。こういうふうに商工組合は、中小企業者過当競争、不況により非常に困っているという場合に、一つの対症療法として商工組合を作って、調整事業をもってその安定をはかるのだ、その安定をはかることができましたならば、そのあとは、そういう不況要件がなくなりましたならば解散させられるのだということになっておるわけでございます。これは協同組合基本的に違う点でございます。  それから三十二は中小企業安定審議会でございます。これは現在の安定法にもあるわけなのですが、それと同じような規定を置いておるわけでございまして、先ほども申し上げました、あるいはその強制加入命令であるとか、あるいはアウトサイダーの命令でありますとか、そういうようなものにつきましてはこの中小企業安定審議会に諮問しなければならないということに相なっておるわけでございまして、まず第一は、「安定審議会は、関係大臣の諮問に応じ、組合調整事業に関する重要事項を調査審議するものとすること。」組合調整事業に関しては、重要な問題につきまして調査審議をすると同時に、この第三のところで、「主務大臣は、第二十四の第一項、第二十五又は第二十六の規定による命令をしようとするときは、安定審議会に諮問しなければならないものとすること。」、要するに強制加入命令でありますとかあるいはアウトサイダーの命令につきましては安定審議会に諮問をしなければならないということにいたしまして、消費者その他に対する影響を十分考慮に入れておるわけでございます。  それから組合交渉についてのいわゆる勧告の関係につきましては、その次の中小企業調停審議会というものを中央地方に設けるということにいたしまして、この勧告をいたしますときはその中小企業調停審議会に諮らなければならないというようなことにいたしておるわけでありますし、また組合協約に関する重要事項につきましても、この調査審議をするといことにいたしておるわけでございます。  それから第三十四は、これは独禁法適用除外の規定を書いておるわけでございまして、現在の安定法にも同様な規定があるわけでございます。  次に第三十五におきましては、公正取引委員会との関係規定しておるわけでございまして、この第一のところはいわゆる価格の協定――あるいは組合協約によりまして価格協定というものができる場合、そういう場合の主務大臣の認可というものにつきましては、公正取引委員会の同意を得なければならないということにいたしまして、対消費者関係につきましては公取とも相談をいたしまして、その同意を得た上で主務大臣が認可をするということにいたしておるわけでございます。その他のもの、たとえば強制加入の問題とか、あるいはアウトサイダー規制の問題とか、そういうものにつきましては、その次にありますようにやはりこれも関係方面に影響することがありますので、公正取引委員会に協議をしなければならないということになっておるわけでございます。  それからこの法律の主務大臣というのは、これは三十六に書いてありますが、「この法律における主務大臣は、組合の資格事業を所管する大臣とするものとすること。」、従いまして現在の安定法によりましてはこれは共管ということになっておりますけれども、この法律によりましては、あとに出ておりますが、特別な場合を除きましては組合の資格事業を所管する大臣が主管大臣であるということに規定をいたしておるわけでございます。  それから第三十七は、これは都道府県の知事でありますとか、あるいは地方の支分部局長に対しまして権限を委任することができるという規定でございます。  それから三十八は、これは商工組合が総会の決議を経まして、組織を変更して事業協同組合になることができるとか、あるいはまた事業協同組合が一定の条件を備えた場合におきましては、これまた商工組合組織を変更することができる、この組織変更について比較的容易にできるようにしてあるわけでございます。  それからその次は中小企業団体中央会でございますが、これは先ほども申し上げましたように、現在の協同組合中央会制度は大体同じでございますが、商工組合もその中に加入することができるようにいたしておりますので、名前も中小企業団体中央会ということにいたしたわけでございます。  なお四十におきましては、現在の安定法に基きます調整組合または調整組合連合会につきましては、商工組合に対しまして簡単に移行ができるということにいたしておるわけであります。  以上中小企業団体法案につきましての要綱を簡単に御説明いたしましたが、なおこの法律関係いたしております関係法律整理に関する法律案につきましては現在いろいろ検討いたしておりますが、来週中には提案ができるというふうに考えております。簡単でございましたが、要綱を御説明いたしました。
  8. 福田篤泰

    福田委員長 以上各案に対する質疑は後日に行うことにいたします。
  9. 内田常雄

    ○内田委員 この際、議事進行について委員長にお願いがあるのであります。それはこの中小企業団体法ではございません。中小企業の資産再評価に関する法律案が別途政府から衆議院に提出されておりまして、それが大蔵委員会審査中でありますが、これは中小企業にとりまして非常に重要な問題でありまして、ことにその税率とかあるいは再評価税の納付の方法等につきまして、今まで大企業に対して行われました第三次の資産再評価の方法とかなり違っておりまして、考えようによりましては、せっかくの中小企業に対する資産再評価ということが中小企業者にとりまして不利益の場合がありますので、これはぜひ当委員会におきましても重要案件として取り上げていただきたいのであります。日本商工会議所を初め全国経済団体等からわれわれ商工委員に対して期待するものが非常に多くありますので、大蔵委員会におきましてそれの審査を結了する以前におきまして、何らかの方法において大蔵当局等をして当委員会説明をさせ、また必要によっては連合審査等の方法について、理事会等の御協議をもってその方法をお諮り願いたいので、動議を提出いたします。
  10. 福田篤泰

    福田委員長 お申し出の件は後日理事会にお諮りすることにいたします。     ―――――――――――――
  11. 福田篤泰

    福田委員長 次に貿易に関する件について調査を進めます。質疑の通告がありますので順次これを許します。加藤清二君。
  12. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 私は、幸い通産大臣も久方ぶりにいらっしゃったことでございますので、この際、先般行われましたところの外貨割当、輸出保険法、輸出検査法等々に関連いたしまして、二、三の質問をいたしたいと存じます。  まず第一番にお尋ねしたいことは岸総理大臣は石橋さんの方針についてこれを受け、これを実現するのだと、こら述べられておられまするが、通産大臣は事外貨予算につきましては石橋通産大臣の方針と違いまするか、それとも岸総理の言う通りこれを受け、これを行われるのでございまするか、その点をまずお聞きいたします。
  13. 水田三喜男

    水田国務大臣 外貨予算の問題につきましては、石橋総理の方針を大体岸総理も受け継がれておる、従って私どもも、その方針を受け継いで編成したということでございます。
  14. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 一兆億予算の審議つきましては、本国会で数カ月を要して慎重審議をいたされまするが、金額にいたしますると一兆億予算よりもはるかに上回るところの外貨予算の審議は、これは一向に委員会にもかけられません。当委員会にも新聞発表が行われた後に基本方針が説明されるというような状態で、新聞発表よりも国会の方が軽視をされているように思われますが、一体外貨予算の審議というものは、それほど秘密主義でなければ目的が達成できないものでございましょうか、この点をまず伺っておきたい。
  15. 水田三喜男

    水田国務大臣 外貨予算の編成は、大体従来の慣例がございまして、最後には閣僚審議会がきめるということになっておりますが、本年度はいろいろな問題もございますので、この審議会が非常におくれて三月の末ぎりぎりになって開かれてきまった、こういう事情になっておりますので、従って御審議を願う時間もなかったというようなことでございますが、例年も大体そういうふうでございますので、今までの慣例に従って編成したということでございます。
  16. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 石橋さんにも通産大臣の折にこのことを質問いたしました。石橋ざんは、秘密がよそに漏れても差しつかえない問題については、できる限り前もって委員会にも諮りましょう、こういうことを言っておられたのでございます。本年度のたっぷり予算は、一言にして言えば石橋さんの拡大均衡の具体的な表われとも見られますが、これをこの国会にかけずにやみからやみに進行することは、やがて国民に不安を与える。猜疑の眼をもって見る。やがてこれが大蔵官僚その他の汚職、疑獄を生む原因をなしているではないかと思われるわけでございます。幸い事後においても慎重審議をするとおっしゃいますので、一つでき得る限りたっぷりと時間をとって、この審議をさせていただきたいと存じますが、大臣、いかがでございますか。
  17. 水田三喜男

    水田国務大臣 これはたっぷり時間をとって審議していただいてもけっこうでございます。
  18. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 御承知の通りただいま外貨事情は、予算はたっぷり組まれましたけれども、国際的に見て必ずしもよい傾向とは考えられないのでございます。特に手持ちポンドの減少は、日本の手形の信用度の低落を来たしております。また銀行の引受手形の金利は標準よりも一%くらい上回るという状況になってきております。また外国の日本側銀行に与えた信用のワクはだんだん引き締められてきておるようでございます。一体なぜそうなっているかと調べてみますと、昨年の今ごろ手持ちポンドが一億程度あったのでございますが、ことしの三月には二千万ポンド程度に減っている。なおかつ三月の大幅支払いが八千万ドル余に上っておりますが、この傾向が続く限り、日本円とポンドあるいはドルとの換算やみ相場も低下の一途をたどっておるようでございます。すなわち三十一年の六月に、三百六十円がえが三百九十三円であったのが、ついこの一月から二月の初めにかけましても、四百八円と日本円の下落を示しておるのであります。一例を申し上げましても、かように外国為替相場の日本円は低落の一途でございます。一体このままに放置してよろしいものでしょうか。それはやがて輸出入貿易業者の非常に難渋するところと相なるのでございまして、やみ金融業者の喜ぶところでございます。一体この点を大臣はどのようにお考えでございましょうか。
  19. 水田三喜男

    水田国務大臣 外貨事情はあまりよくないことは事実でございますが、しかし私どもは三十一年度の国際収支の状態を見て特に心配な状態だとは今考えておりません。と申しますのは、なるほど輸入が非常に多かった、従って国際収支は赤字になっているというようなことがございましても、ほんとうの実質的な国際収支はどうだったかと申しますと、要するに、外貨で日本が保有するのか、輸入原材料で保有するかという問題でございまして、昨年あれだけの大きい輸入がございましても、これが消費にならずに在庫の補充になっている部門――これは最低二億五千万ドルから最高四億ドル以上のものといういろいろな見方がございますが、かりに三億ドル前後のものといたしましても、それだけ日本は輸入原材料を持っているということになりますので、金で持っておるか、物で持っておるかの違いでありまして、物で持っておることも外貨で持っておるのと同じでございますから、そこらを入れて計算いたしましたら、昨年度の国際収支は実質的にはりっぱに黒字だったというふうに私どもは考えております。その間においてポンドの減少とか、いろいろな心配すべき問題がございますが、これはポンドの不足をドルによって操作する方法もございますし、いろいろな点を考えまして、今まで程度の国際収支ならそう心配しなくても済む状態になると思っております。
  20. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 それでは昭和三十二年度予算の年度末に一体国際収支がどのようになるかの結論を承わりたいのでございます。それともう一点は、大臣のおっしゃいまする通り、なるほど物で持つか、金で持つかの相違でございまして、物で持っておれば決してこれは実質的な赤字になったわけではございません。しかし大臣、問題は為替相場ということは、物でたくさん持っているからというて、必ずしもこれは国際相場の日本円を好転させるものではございません。何と申しましてもドルかポンドの手持ちがそのポイントでございます。従って私はだんだん質問を進めまして、実質的に黒字をいかにしてふやすかの質問を試みたいと存じまするが、まず最初の一点だけ。
  21. 水田三喜男

    水田国務大臣 国際収支の年度末の予想でございますが、これは非常に極端から極端な見方が今専門家の間でも行われておりまして、赤字が三億ドルくらいに上るだろうという見方と、反対に黒字が三億ドルくらいになるだろう、こういう有力な見方が対立していることは事実でございます。で、私どもの考え方を申しますと、まず昨三十一年度の実績を見ますと、年間の外貨予算は四十二億五千万ドルでございました。この予算に対して輸入通関額は大体三十六億ドル、それだけのものが日本へ着いている。そしてそれに対する現実の為替支払い金額は三十億七千万ドル程度に三十一年度は大体とどまったということから考えてみますと、三十二年度は、上半期の予算はこの間申しました通りでございますが、年間結局四十二、三億ドルということになると思います。その程度の外貨予算から考えてみますと、年度末の輸入通関額が三十八億三千万ドル前後ではないかと想像しています。そして無為替運賃円払いというような六億三千万ドルくらいのものを引きますと、現実の為替支払い金額は三十二億ドル前後にとどまるのじゃなかろうか、政府の経済計画によって三十八億ドル前後の物資が日本に着けば、日本の拡大経済の計画は支障なくやっていけると思いますので、そのくらいのものが入るという予想をしますと、現実の支払いが三十二億ドル前後になるのじゃないか、こういうふうに考えています。そうしますと、大体この前に御説明しましたような国際収支の数字にやはり落ちついてきますので、国際収支は大体少し赤字になるかもしれないというような考え方はいたしますが、全体として収支はことし均衡させられるのじゃないか、上半期の今支払いが多いのは、これは御承知の通り去年の下半期あれだけ大きい外貨予算でまかなったのでございますから、支払いが今期にずれてくる金額は非常に多い。それから考えますと、下期にいきますと、輸出も上期よりは多く見てございますので、そういう点で収支は改善ざれる、こういうふうに私どもは見ております。
  22. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 三十一、三十二年度と外貨の赤字続きを私は懸念いたしますが、かりに私のこの考え方が間違ったとしても、私はあなたのおっしゃるように黒字になることを祈るものでございます。あなたの考え方が一年先にやはり正しかった、こう言われたいのでございします。  そこで承わりますが、この赤字解消の第一は、石橋さんの時代にも言われましたけれども、常に慢性的貿易の赤字を繰り返しておりますアメリカとの貿易の調整問題でございますが、承われば、近く岸総理大臣がかの地に渡られるというお話でございます。その原因はいろいろあるでございましょうが、私はこれは淺沼書記長が言いましたように、参勤交代でなくしていただきたいと思うのでございます。岸さんは参勤交代でないと言われました。しかし事実アメリカへ行っても、いつも売りが少くて買いが多いということを押しつけられて参りますると、それはあたかも徳川に搾取を命ぜられた諸大名の参勤交代と、心持は違うかしらぬが、結果は同じことに相なるのでございます。そこでぜひ岸さんの言われまするように、あの時代の参勤交代でないと言われまするならば、少くともこの慢性的になっておりまする二億ドル余の赤字を解消の方向へ持っていっていただきたいものだ、こう思います。  そこで考えられまする第一点は、東南アジアとの三角貿易でございますが、この東南アジアに対する新特需、新域外買付は、もし向うとの会談において、これが話し合いに出たならば、どのような態度に出られようとするのか、通産省としては、どういうことを岸さんに期待されているのか、もうしばらくたてば向うへ渡られるということでございまするから、それぞれ相談が行われていると思いまするが、この際漏らせるだけの点は漏らしていただきたい。これはひとり岸総理大臣のみならず、全国民にアッピールして、国民の声として、世論の国であるアメリカに訴えていただきたい、こう思うわでございます。  私が思いまする点は、この二億ドルの赤字は、どうしてもアメリカ以外の国へ、アメリカの手をもってして売るという道、すなわち三角貿易を考えなければ、とうていここ数年は解消できないと思います。三角貿易で一番考えられまする点は、東南アジアでございます。特にこの点は高碕経審長官時代にも言うておられましたが、すでにインドネシアと日本とアメリカとの三角貿易は、アメリカから日本が綿花を買い、その綿花を加工してインドネシアに売り、インドネシアはその代金をゴム、すず等々によってアメリカへ返す、この問題はさきの通産大臣も、あの河野農林大臣までが賛成されまして、実行に移す約束になっているはずでございますが、これなどは一体いかが相なっておりますか。また特需のうちにも何も繊維だけじゃございません。機械、兵器その他あまた東南アジア向けのものがあるはずでございますが、これ等については、一体通産省としてはどう考えて、岸首相にどう具現方をさせようとなさっていらっしゃるか、この点をはっきり承わりたい。
  23. 水田三喜男

    水田国務大臣 岸総理が渡米されるに当りまして、今特に岸総理に要望するいろいろの事項を関連各省で研究をしておるという状態でございまして、通産省としましても、もし総理が米国と通商問題を話されるという場合には、こういう問題を話してもらいたいという事項について、今省内で検討中でございまして、この内容はまだきまっておりませんので、そのらち結論を出したいと考えております。
  24. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 こういう調子でいつも逃げられて、遂に国会はつんぼさじきに置かれる、こういうことなんです。ただここで御発表になることが差しさわりがあるということでございまするならば、委員長、秘密会を催してでも、私は与野党一致して相談しておくべきだ。波打ちぎわから向うへの問題につきましては、ぜひ与党野党を問わず、国家経済の建設のために一致した考え方を持ち、一致して当るべきだと思います。そのために、どうしても公けの席上では言えないのだ、事前にそんなことは向うへは言えないのだということであれば、これは秘密会でもけっこうです。しかしアメリカといえども、岸さんが向うへ行かれる以上は、それぞれ日本の国内において相談してくるであろうくらいのことはよく御存じのはずなのです。また与党だけの意見であるよりも、野党も一致しての考え方であるというならば、一そう向うも受けやすいではないか、こう思われるわけでございます。従って岸さんが行かれる前に、野党の意見も正しいものは取り入れて、それを向うへのみやげにする用意があるかないか、あくまで本省だけの秘密事項で行かれようとするのか、その点を一つ……。
  25. 水田三喜男

    水田国務大臣 そのこともまだ別に相談を受けてはおりませんが、そういり問題は別に特に秘密を必要とする問題ではございませんので、野党側の意見、与党側の意見というようなものを、事前に総理から徴されるというここは、あるいはあり得るのじゃないかと思います。
  26. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 では商工委員会を開かれなければ、せめて三者会談とか四者会談とかいうような会談でも設ける用意がありますか。それとも具体的に、この商工委員会を秘密会にして、ここは経済のくろうとの集まりでございますから、ここであまねく意見を徴されようとするのでございますか。その点はいかがです。
  27. 水田三喜男

    水田国務大臣 今申しましたように、そういう問題は政府の中でまだ全然議題ともなっておりませんので、そういう方針はきまっていないと思います。今後おそらく現実に渡米される前にそういう問題が出てくると思いますので、あとで党首の会談とかそういうものはあり得るのじゃないかと私は思っておりますが、まだその方針は政府としてきまっておりません。
  28. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 通産行政の最高責任者である通産大臣は、個人的にどのようにお考えでございますか。
  29. 水田三喜男

    水田国務大臣 私は、通産省として今どういう問題を要望するかの検討をやっているときでございまして、それが必要である場合には、皆さん方の御意見を聞くということもやってかまわないだろうと思っておりますが、問題は国際問題でございますので、大きい国策の問題、将来の日米の国交の調整というような問題で行く場合に、事前にそういうものを討議して行くということがいいか悪いか、外交上の問題でございますので、ここでちょっと簡単に私からは言いにくいのであります。
  30. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 それでは審議の具体的方法については、大臣は私の意見と相似たものである。ところが、それでは今度は内容について承わりまするが、通産省として今御計画中であるところの内容ですね。それは何々でございますか、言えませんか。
  31. 水田三喜男

    水田国務大臣 やはり貿易の改善という問題は、大きい一つの問題だろうと思います。それから、御承知のように今私たちが努力しておりますことは、中共及び共産圏に対する貿易の拡大ということを日本としては考えておりますが、これは国際的な協調のもとで行われるのでなかったらいけませんので、関係各国がきめたいろいろな事項に日本が違反して、日本独自の行動をとる、それによって国際的な信義にそむくというようなことは、これからの日本の伸ばし方、日本の輸出の伸ばし方、こういうものに大きい関係を持つものでございますから、私どもが考えているそういう一つの方法を、どうしても国際的な協調のもとにやるという方針をとらなければなりません。そのためには米国を初めとする各国とのいろいろな話し合い、了解運動というようなことも、当面の問題として重要だと考えておりますので、こういう問題も、総理が渡米されるときには、私どもは一つの話し合いの題目として取り上げていただきたいということは考えておりますが、そのほかの問題は、まだ全然考えておりません。
  32. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 岸首相渡米の大目的一つが、貿易の赤字解消である。この点も意見が完全に一致しているようでございます。その内訳でございまするが、私はまず第一番には、この赤字解消は米国と日本国との貿易そのもののうちにあると思う。たとえて言うと、余剰米綿などをあまり無理やりに買わされないこと、それからフィルムなども、日本がイギリス、フランス、イタリア等々から買いたいと思うていても、なおアメリカから買わされなければならないような仕組みにされていること、すなわち、マッカーサーの占領時代そのままの施策がフィルムなどについては今もなお行われている。占領の落し子がここにもある。こういうわけでございまするが、これ等も解消されれば赤字解消の基礎にもなるわけでございまするが、いずれにいたしましても、かの国からの資材の輸入、しかも大臣のいうところのたっぷり予算は、資材を多く買い付けるためだ、こういうことでありますと、二億ドル前後のこの赤字は、ちょっと解消が困難じゃないか。しかもなお赤字を解消させなければならない状況下にあります今日、どうしても先ほど私が申し上げましたところの三角貿易にたよるよりほかに道はないじゃないか。東南アジアに向けての輸出拡大、それをアメリカの手を借りてもなお行うことが必要ではないか。当然またこの程度のことならば、アメリカとしては日本に資材をたくさん売りつける関係上、やってしかるべきではないか。こう思われるのでございまするが、この第一のアメリカと日本との、国と国との間における赤字解消の方法、それから三角貿易、東南アジアを通じて行うこの方法、これについて大臣はいかようにお考えでございましょうか。
  33. 水田三喜男

    水田国務大臣 そういう個々のいろいろな問題につきましては、これは両国政府にそれぞれ機関があり、日本政府としましては、そういう貿易問題の担当官庁は通産省でございますので、われわれの手でやれることはわれわれの手でやりたいと思っております。一国の総理が向うへ行かれた場合の話し合いということでしたら、もっと大きい、日米関係の根本的な友好樹立に関する問題というようなことが議題になるのであろうと思いますので、個々の貿易のやり方とかいうものについて通産省として岸総理にお願いするという考えは今持っておりません。
  34. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 この点少し考え方が違うようございます。私は何も個人的な意見を言うておるのでもございません。この三角貿易の問題はあなたは小さいとおっしゃっておりました。さきの通産大臣、さきの経審長官それから河野農林大臣等々が余剰農産物買付の問題で審議をいたしました折に、ともに約束されたことでございます。その当時、もう今はなくなられました重光さんも御同席で、四大臣が一致して、これはけっこうなことだから大いに促進するんだと言われたことでございます。あなたは、これを受けこれを行うというのがあなたの趣旨だとさっきおっしゃったにもかかわりませず、それは小さいことでそんなことは知らぬと言われたら、これを受けこれを行うとは違うのじゃないですか、どうなんですか。
  35. 水田三喜男

    水田国務大臣 先ほどお話のインドネシアとの問題あるいはビルマとの問題、これはずでにもう現実に行なっていることでございまして、そういう方向で今推進されておりますからして、新しい問題ではございません。
  36. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 それは緒についただけで完全に行われておるわけではございません。それは貿易収支を見たってはっきりしておることなんです。しかしもう時間がなんでございまするから、それじゃあなたの希望に従って、もう少し大きい問題についてお尋ねいたします。  先ほどちょっとあなたのお言葉にもありましたが、中共貿易の拡大の問題、これは日本とアメリカ国との間のみならずココム、チンコムの問題でございまするから、イギリスと中国との関係にもなる問題でございます。西ドイツと中国との関係にもなる問題でございます。その国等はすでに日本よりもはるかにココム、チンコムの拡大特認を得たところの貿易を実行しておるようでございまするが、これについては大臣としてはいかがお考えでございますか。岸さんにみやげとして持たせられる中へ、この問題はぜひ入れてもらいたいというのが産業界、実業界の心からの声でございますがいかがなものでございましょうか。村田省蔵氏の追悼会にあなたのメッセージも出ておりました。あの折立たれる人立たれる人がこぞってこの中共貿易拡大の必要性を説き、今にしてこのことをなさずんば悔いを千載に残すであろうとひとしく意見は一致したようでございました。まさか死んで行った人に対してうそを言うほど日本人は悪うつではないと思いますが、いかがでございますか。
  37. 水田三喜男

    水田国務大臣 この特認という例外措置の活用は大体日本もほかの関係国並みに現在行なっておるのでございまして、この差はあまりないと思っております。問題はやはり、かりに今の禁輸の緩和ができない場合にしたところでも、協定の改善によって拡大する余地というものは十分ある。決済方式の問題も同様ですし、それから値段の問題もございますが、こういう点の改善によって中共貿易というものは拡大の余地が十分ございますので、一方において今度の第四次協定におきまして日本側の要望のいれられた新しい方式の協定ができれば、これによって相当の期待ができる、あわせてこの制限の緩和という、これは大きい外交の問題でございますが、この点もわれわれが努力することによって躍進的な拡大が見られるだろう、こういう考えで今私どもは今後の中共貿易の拡大に対処したいと思います。
  38. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 時間が迫っておるからあとに回せということでございますので、それではもう一点質問いたします。  先ほど来輸出保険法、輸出検査法等等が審議されたわけでございますが、この投資保険の内訳を見てみますと、御承知の通り中共にはびた一文も行われておらないわけでございます。しかし中国にやがて行われるであろうところの輸出のうちの化学繊維の紡織工場、それから自動車の輸出に伴うところのサービス・センター及び修理工場ないしは将来にいけば組み立て工場等々を考えますると、これはどうしてもその海外投資ということに相なると存じますが、このことはせつなせつなやっておられては計画が立たないのでございます。海外投資ということになりますとどうしても数年の計画を要しまするので、この点政府としてはほんとうに伸ばす気があり、業界に親切心があるならば、前もって、事前に政府の態度を明らかにしておくということが何よりも必要なことと考えられます。従いまして今度のココム、チンコムの拡大、あるいは拡大されなくても中国に対して化学繊維の紡織工場あるいは自動車工場等の海外投資を許される用意がありやいなや、これが第一点。  第二点は、話が飛びますけれども、予算の編成についてききの石橋さんは、貿易拡大の見地からAA制を拡大するんだ、それで徐々にそれは拡大の傾向にあったわけでございますが、このたびの外貨の割当を見ますと、AA制の拡大はほんの申しわけ程度でございまして、石橋さんのあの意気込み、各地の商工会議所で行われたあの説明趣旨にももとっておるように思われまするが、この点いかがでございまするか。  質問はまだこれ途中で、ほんとうはこれから本論に入るところでございますが、時間の都合上、それではこれで一応打ち切ります。残余の質問はぜひこの次の機会に……。
  39. 水田三喜男

    水田国務大臣 AA制の拡大の問題ですが、まず方針は変っておりません。従来もらすでにAA制は相当拡大されてきておりますので、今回は三十三品目にとどまりましたが、漸次拡大の方向へ持っていきたいと思っております。  それから輸出保険法そのほかの問題ですが、別に国の法律が地域的に適用される場合に差別することにはなっておりませんので、いかなる国に対してもあの法律は適用されるのでございます。そこで、問題は、現実にそういうことが起るか起らぬかということでございまして、現実問題となってくれば、私ども、中共であろうとどこの国であろうとあの法律を適用して、同じように運用していくという考えでございます。
  40. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 適用される……。
  41. 水田三喜男

    水田国務大臣 当然でございます。     ―――――――――――――
  42. 福田篤泰

    福田委員長 この際お諮りいたします。本日午後一時より私的独占の禁止及び公正取引確保に関し、すでに公報に掲載いたしました通り、長谷川、西村、小笠原、降旗、後藤、中島の各参考人より意見を聴取することになっておりましたが、これら参考人のうち、株式会社三菱銀行頭取小笠原光雄君は、本日病気のため出席できない旨の申し出がありました。つきましては、同行常務取締役宇佐美洵君を参考人として同君より意見を聴取することにいたしたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  43. 福田篤泰

    福田委員長 御異議なしと認め、さよう決定いたします。  午後一時まで休憩いたします。    午後零時三十一分休憩      ――――◇―――――    午後一時三十七分開議
  44. 福田篤泰

    福田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  私的独占の禁止及び公正取引確保に関し調査を進めます。まずご出席の参考人より、株式会社三菱銀行ほか六行の近江絹糸紡績株式会社に対する協調融資等に関する問題につき、御意見を承ることにいたします。  御出席の参考人は、近江絹糸紡績株式会社取締役会長夏川嘉久次君、近江絹糸紡績株式会社常任監査役西村貞蔵君、株式会社三菱銀行常務取締役宇佐美洵君、株式会社住友銀行常務取締役降旗英弥君、株式会社日本勧業銀行副頭取後藤幸雄君、中央労働委員会委員中島徹三君、以上六名の方々であります。  参考人の方々には、御多用中のところ本委員会に御出席いただきまして厚くお礼申し上げます。  参考人の御意見御開陳の時間は、一人おおむね十五分程度とし、その順序は勝手ながら委員長にお任せ願いたいと存じます。なお御意見御発表の後、委員の側から種種の質疑もあろうかと存じますのでお含みの上お願いいたします。  それでは最初に夏川参考人よりお願いいたします。
  45. 夏川嘉久次

    ○夏川参考人 本日は商工委員会に私どもの意見についてお取り上げいただいて非常に恐縮で存ずる次第でございます。このことはすでに新聞などで報道されておりますように、私どもは七行からいろいろお世話になりまして、近江絹糸の発展にいろいろ御配慮をいただいて感謝しておったのでありますが、たまたま昭和二十九年の争議を契機として、だんだんに問題が変わって参りまして、最初は銀行から争議後の経営強化するという意味合いのお話を伺っておったのでありますが、その後順次その内容が変って参りまして、銀行からお入り下さった五人の方も、私どもと全然立場の異なったような動きができて参りましたし、さらに副社長あるいは社長などがおいでになりますに至りましては、会社の重役陣は全く二つに分れました、そうして私どもの考えておりますような経営強化がなされておるとは考えられない次第でありまして、さような問題をお取り上げいただきまして非常に恐縮しておる次第であります。御質問に応じまして順次御答弁いたしたいと思いますが、とりあえずお礼かたがたごあいさつを申し上げさせていただきます。
  46. 福田篤泰

    福田委員長 次に西村参考人にお願  いいたします。
  47. 西村貞蔵

    西村参考人 私から近江絹糸の労働問題の事情に関しまして御報告を申し上げたいと存じます。  近江絹糸の争議の真の原因は当時の報道機関などによって社会的に伝えられましたが、当時は混乱の状況にありましたからいきさかその事情を異にしておりますことがあります。また争議中から争議後に至るまでの間に、近江絹糸が二、三の銀行から諸種の干渉に類する指図を受けましたことなどにつきましては、最近の新聞等によってすでに御承知をいただいておる点でございます。さきに公正取引委員会におかれましては、近江絹糸に関する審査をお取り上げになりまして、また今般は国家の最高機関たる衆議院の商工委員会においてお取り調べをわずらわすことになりましたことは、まことに恐縮の至りに存ずるのでございます。  仄聞するところによりますと、近江絹糸から銀行推薦の重役が手を引くと再び労働争議が起るおそれありとの風評をなすものがあるとのことでございますが、近江絹糸の内部の真相と事実とは決してさようなことはないのであります。その理由といたしまして、争議後から今日までの状況を御報告申し上げます。  昭和二十九年九月十六日争議解決後におきましては、労使双方ともきわめて真剣に、きわめて熱心に団体交渉をいたしました。その回数も数十回に及びまして、感情の融和と意思の疎通をはかりました。しこうしまして諸種の協約協定も着々成立いたしまして、労使の交渉の形式も整い、これに伴いまして工場における生産高も毎月向上回復の状況に立ち至っておったのであります。すなわち、昭和二十九年十一月以後の生産高は、十一月におきまして四百九十万ポンド、十二月におきましては五百十万ポンド、三十年の一月度におきましては四百九十五万ポンド、二月度におきましては四百九十七万ポンド、三月度におきましては実に五百七十五万ポンドまで生産が回復しておったのでございます。しかるにいろいろの事情のために、四月以降は生産高が減って参りました。四月度においては五百十万ポンド、五月度においては四百九十七万ポンド、六月度においては四百八十七万ポンド、七月度においては四百九十五万ポンド、八月度においては四百七十五万ポンドと低迷を続けてきたのであります。しかもその間昭和二十九年十一月には三〇%のベース・アップの交渉も妥結成立いたしました。また労働協約もすでに会社側において原案も作成してその交渉開始の段階に進んでおったのであります。  しかるに昭和二十九年の十一月の末におきまして、銀行団の要求によりまして取締役五名が就任せられました。一方組合との交渉の実務担当者であった不肖西村は専務を罷免せられることになったのであります。当時経営の民主化という言葉が中労委のあっせん案にあったかのごとく三菱銀行から大蔵省に提出せられております答弁書には書いてございますけれども、経営の民主化ということはまことにけっこうではございますが、その言葉は決して中労委のあっせん案にはなかったのであります。これはおそらく銀行において御製造になったのではないかと考えております。そうしてこういうふうな人事の干渉のために、今まで労働組合と各種の交渉や協定案等を検討いたしておりました経過が根本的にくつがえされるような結果になってしまったのでございます。労働協約のごときも、これがために自来二カ年半を経過いたしました今日なお成立していない結果になっておるのでございます。二カ年間も労働協約が結ばれず今なお労使間が不安定であると、銀行側が手を引けば再び争議が起るとの風説を立てるものがあるとせば、その目的が果して何であるかは推測することができると思うのであります。  しかも銀行団推薦の重役の方々は、その就任後、本来の任務よりも別の特殊な任務に非常に御熱心であったようであります。すなわち、昭和三十年の三月ころにおいては、夏川社長排斥の方に努力を傾注しておられたのであります。国税局の御調査に際しては、夏川社長排斥のため、その協力を求められた事実があります。国税局の係官から、この会社には二種類の重役があり、事情が複雑のようであるが、自分たちは公平無私にやりますから御安心願いたいという注意を受けたことも事実でございます。さらに銀行御推薦の重役の方々は、会社の内外にわたって夏川社長及び不肖西村の悪評を放つことにはきわめて熱心に努力せられました。夏川、西村は再び経営界に立てない人間であるとまでの酷評を直接、間接に会社の内外に向って繰り返し行われた事実がございます。これがためでありましょうか、昭和三十年四月以降は、ただいま御報告いたしましたように、生産高が減少し、三月まで順調な生産向上の傾向は頓挫するに至りまして、それ以後は生産高はほとんど上昇しないまま今日に及んでいるのでございます。  かかる状況のもとに昭和三十年六日二十七日、突然夏川、西村は三菱銀行本店重役室に出頭を命ぜられまして、夏川が会長になること、水野嘉友氏が副社長に入社せられること、西村監査役の業務に制限されること、全重役の辞表を提出すること等の申し渡しを受けたのであります。水野副社長は昭和三十年六月二十九日、入社とともに、三菱銀行より加勢忠雄氏なる人物を出向として近江絹糸に帯同して参られまして、近江絹糸の企画部長として任命せられているのであります。加勢氏は元三菱銀行の労働組合の執行委員長の実力を有せられ、三菱内切っての頭取候補と目される優秀なる人材であと当時水野氏より御紹介がありました。その加勢氏が一年四カ月にわたり社内に革新的企画と人事を行われましたが、その間労働協約だけはいかなる理由であるか存じませんが、結ばれていないのでございます。今日近江絹糸のことをお取り上げになりまして、まだ労働協約さえもできていないではないか、なるほど労使間はまだ不安定であると御判断になられる方もおありではないかと思いますが、かような御判断をなされる状況近江絹糸が置かれているということは、果して何の目的のために考え出されたのでございましょうか、まことにすぐれた知能的なひらめきさえも感ぜられるのでございます。  今日の労組の立場として考えますに、近江絹糸が三菱レイヨンとかその他の大会社や財閥に吸収、合併せられた場合、組合員はもちろん幹部の者の運命もいかなる結果になるかは、当然推測されるところでございます。また近江絹糸に比較的多数の青年社員を有するのでありまして、これらの純真なる青年社員諸君の人生の希望という点から見ましても、近江絹糸が他の会社に合併になるならば、それらの青年社員諸君の人生の前途はいかなるものになるかは当然推測されるところであります。従いまして、今日近江絹糸の労働組合は、すでに相当の成長を遂げていると見られるのでありまして、今回公取問題等が起りましたけれども、きわめて冷静沈着なる態度を持しているのでございます。はたまた青年社員諸君の人生の希望がいかなるものであるかは、もちろん経営陣として十分了解しているところであります。従って新経営陣ができましても、これらの多数の青年社員の希望を十分に了解して、良識ある経営が行われるでございましょうから、労使共同の理想のもとに社業が伸展せられることは間違いないと考えられるのであります。従いまして、銀行が手を引けば争議が起るというがごときは、まことにあり得ないところであると信ずるのでございます。むしろ銀行が手を引けば争議が起るというがごとき風説は、その逆の場合のことが考えられるのではないかと思うのでございます。  いずれにいたしましても、有力にして巨大なる財閥の前にふるえおののくあわれな弱体企業会社の姿を、何とか有力なる皆様のお力をもってお守り下さるように切にお願いを申し上げる次第でございます。そらしてはなはだしい弱肉強食の不安からのがれて、おのおのがその生業にいそしんで、国民生活の安定と社会共同の責任に貢献ができますような世の中になることが、真に国民の切実な願いであることをおくみ取り願いたいのでございます。
  48. 福田篤泰

    福田委員長 次に宇佐美参考人にお願いいたします。
  49. 宇佐美洵

    ○宇佐美参考人 私は三菱銀行におきまして常務をいたしております宇佐美と申します。近江絹糸と三菱銀行との取引は非常に古いのでございまして、昭和十年に始まったように記憶いたしております。従いましてすでに二十余年の取引をいたしておるわけでございます。その間経営者の皆さんの御努力でだんだん大きくなって参りまして、また日本経済の拡大に伴いまして当然に大企業の様相を呈してこられたわけでございます。終戦前のことはしばらくおきまして、終戦後におきましても紡績界が日本の復興という問題に非常に力を入れて参りまして、それにつれまして近江絹糸も急速に大きくなられたわけでございますが、不幸にして二十九年に争議が起ったわけでございます。その前から、近江絹糸が急に大きくなられましたので近代的の――従来はむしろ個人的の色彩が強い会社でございましたので、われわれもだんだん近代的な民主化された経営に移していただく、これはどんな会社でもそういう傾向があったわけでございますが、そういうふうに考えておった次第でございます。ところが突然に争議が起りましたので、私どももその解決について心ひそかに心配いたしておったわけでございます。争議の経過並びにその後の処置につきましては、皆様御承知でいらっしゃいますので省略いたしまして、私どもの念願いたしておるところを一言申し上げてみたいのでございます。  私どもが融資をいたす場合のことといたしましては、私どもの融資のお金というものは全部預金者のお金でございますので、その安全といいますか、別な言葉でいいますと債権の確保ということが当然必要になって参ります。その債権の確保と申しますのは、むろん物的の確保も必要でございますが、根本的に申しますと、企業の場合は、その企業が安定いたしまして、そうしてだんだん成長していくという企業でないと、なかなか債権の確保ということはむずかしいのでございます。これは申し上げるまでもないことでございます。そういう点からいいまして、また融資の場合はそのほかあるいは日本の特殊性と申しますか、基幹産業に大いに出すとか、あるいは中小企業に大いに力をそそぐ、外国為替に力を注ぐとかいろいろございますが、根本的にはやはり預金者のお金の安全ということを考えて融資しなければならぬと考えております。そういう意味におきまして、近江絹糸にいろいろの事件がございましたことは、今後のわれわれが融資をいたす上におきまして非常に心配されたような次第でございます。私どもはそのためにいろいろ夏川氏に、当時社長でございましたが御相談し、そうして融資の面あるいはさらにその会社の安定という意味におきまして、人事につきましても御相談申し上げた次第でございます。従って私どもはあくまでも取引先としての近江絹糸さんというふうに考えておりまして、それ以上のことは少しも考えておらない。何とかしてりっぱな会社になっていただきたいということを念願いたして今日に至っておるような次第でございます。従ってただいまもお話がございましたが、私どもとしては決してわれわれの人事を強要するとか――一々御相談をして参ったつもりでおるのでございます。その点は私どもまた財閥的というお話もございましたが、そういう考えは少しもございません。今日におきましても何とかして経営者の皆さんが力を合わせて近江絹糸の安定、発展のために力を尽していただければ、こう考えておる次第でございます。  そのことを申し上げましてなお御質問がございましたらお答え申し上げたいと思います。
  50. 福田篤泰

    福田委員長 次に降旗参考人にお願いいたします。
  51. 降旗英弥

    ○降旗参考人 ただいま御指名にあずかった住友銀行の降旗でございます。私からは特に申し上げることはないのでございますが、せっかく機会を与えられましたので、住友銀行近江絹糸株式会社との関係につきまして簡単に一言申し上げます。  住友銀行からは実は直接に重役を送ったりあるいは幹部職員を送ったりしたような関係はございません。従って直接の関係取引関係並びに株主関係があるだけでございます。そこで取引関係でございますが、取引は昭和二十五年に始めたのでありまして、歴史は比較的浅いのであります。株主関係につきましては、現在百六十万株を所有しておるのでありますが、これも夏川さんの御依頼によりまして所有したのでございまして、市場において自主的にこれを買い取ったというような事情ではないのでございます。以上簡単でございますが関係だけを申し上げておきます。  さらに根本論といたしましては、何としても近江絹糸がますます栄えるのを熱願しておるのでありまして、誤解その他がございますならばこれを解きまして、おのおの力を合わして会社の発展を念願しておるような次第でございます。なお争いになっておる点等につきましては、後刻御質問がございますれば考えておるところを申し上げたいと存ずる次第でございます。  以上簡単でございますが私のごあいさつといたします。
  52. 福田篤泰

    福田委員長 次に後藤参考人にお願いいたします。
  53. 後藤幸雄

    ○後藤参考人 私、勧業銀行の後藤であります。  近江絹糸と勧業銀行との関係は相当古うございます。古いことはしばらく省略さしていただきまして、近江絹立は御承知のように昭和二十九年に不幸なストがありました。これは長い間かかってようやく解決し、その間に会社の方も内容が悪くなると申しますか、損失も出て参るというような状態になりましたので、非常に憂慮いたしまして、一方会社の健全な立ち上りと申しますか、復興を考えると同時に債権の確保にも必要な限度のことはいたしまして、一方会社の再建にいろいろ努力して参りました。従いまして私ども、かりに融資の面から見ましても債権確保に必要な限度のことはさしていただきましたが、また会社が再建していくのに必要な資金はどんどん出してきたような次第でございます。要するに銀行としては、別に近江絹糸に対して他意はないのでございまして、近代的な、健全な安定した経営をしていってもらいたい、それを念願して今日まで参った次第でございます。大体銀行考え方としては、簡単でございますが以上のようでございます。御質問がございますれば、後刻御返事申し上げます。
  54. 福田篤泰

    福田委員長 次に中島参考人にお願いいたします。
  55. 中島徹三

    ○中島参考人 私、中労委の公益委員をやっております中島でございます。本日は、昭和二十九年夏の近江絹糸の争議について、何か御質問があるかもしれないというお申しつけでございましたので、それについての御質問でもあればお答えしたいと思って参ったわけでございます。  御承知のように二十九年の近江絹糸の争議に中労委が正式に関与、たしましたのは、たしか同年七月十五日の全繊同盟による不当労働行為の申請がありました以後、あるいは七月十七日であったかと思いますが、第一次のあっせん申請、職権あっせんに乗り出すということを決定いたしました以後、同年の九月の十二日に最後の中山委員長によりますあっせん案が出まして、それが九月の十六日に正式調印されるまでの期間、いわばこの間が中労委としてこの争議に正式に関与いたした期間でございます。従いまして私としては、それ以前の状態あるいは自後の状態については全然関知するところではございません。何かその争議自体について、また御質問があればお答えしたいと思います。  ただせっかくお呼びでございましたので、一言あの争議について私の感想を申し上げておきますと、昭和二十九年と申しますと、例のデフレ時代でございまして、いろいろな争議が起ったときであります。一方においては尼鋼、日鋼室蘭等の首切り争議もありました。また他方におきましては地方銀行、証券取引所といったような一群の職場においても争議行為がありました。その間に近江絹糸の争議というのも中労委で扱ったわけでございます。争議の経過その他については、皆さん方十分御承知の通りであろうと思うのであります。端的に申しますと、世間では人権争議という言葉で言い表わしておりました争議の特色の一面があったし、他面では、全繊同盟が昭和二十四年以来、近江絹糸の労組を組織化しようとした組織化闘争の一面を持っておった、この両面の本質があったのが近江絹糸の争議であった、こういうふうに私は判断しております。なおこまかなことにつきまして、争議のワク内の御質問でありましたならば私にもお答えできると思いますので、御質問がありましたときにお答えしたいと思います。
  56. 福田篤泰

    福田委員長 以上で参考人各位の御意見の開陳は終りました。  質疑に入ります。通告がありますので、順次これを許します。薄田美朝君。
  57. 薄田美朝

    薄田委員 終戦後に金融資本すなわち銀行産業資本の分野に不当に進出をして、経済界に相当大きな問題を起しておるような次第であります。その中には計画的に産業資本の中に入り込んで、会社を乗っ取ろうというふうな計画があるということさえ言われているので、世間の注目を引いておるのであります。銀行がこういう計画について、あるいは自分の債権を確保するために人を送り込む、それから定年になった行員の古い人を送り込むというようなことが表面に現われたのであります。戦後銀行から進出して重役になった者が二百六十九名、重役以外の者を合計すると相当大きな数になるわけであります。大体証券市場で上場されている銘柄の工場が六百四十社でありますが、上場会社に大体一人の重役という割合で入っておるというふうな状況であります。その例はいろいろございますが、この一つの例は昭和電気製鋼株式会社であります。この会社は昭和二十四年の秋、ドッジ・ラインの影響でもって非常な打撃を受けまして、主として横浜興信銀行がいろいろ融資しておったわけでありますが、昭和二十五年の春にその銀行から命令を発しまして、代表取締役を会社に送る。前の社長の天野定次郎氏は、十年間苦心して営々としてこの会社を経営しておったのでありますが、一片の銀行の指図であって相談役に低下するというふうな工合でありまして、重役もほとんど更迭させられる。銀行では融資を打ち切るというような脅迫の言葉を絶えず用いまして、ほとんど社長というものが関与できないようなことにしたのであります。しかしながら内容をだんだん調査してみますと、この社長の天野氏、その関係者が持っておる株は六五%の株であります。それから会社の資産も三億からあるのでありますが、興信銀行が融資している金はわずかに四千五百万円、手形の割引が当時八千万円ぐらいございました。これを合併いたしましても、ようやくこの会社の資産の半分というような状況であります。にもかかわらず会社からは、興信銀行に対しては第一担保として土地、建物を全部提供しておる。そういうふうな状況にもかかわらず、こういうふうな相当過酷なことをやっておる。当時の状況としましては金を借りないとどうにもならないのでありますから、いやいやながらそういう圧迫に服しておったというふうな状況であります。こういうような例は至るところにあるのでありまするが、商工委員会で昨年問題になりました近江絹糸の問題も、ちょうどそういうふうな一つの例でございます。私はいろいろな問題がございますが、きょうは近江絹糸の問題に集中して、公取委員長なり、きょうおいでになりました参考人の方々にいろいろ御状況を聞いてみたいと思う。東條政府委員も見えておりますから、大蔵省にもいろいろ質問をいたしたいと思っております。  第一番目に、私は公取の委員長に質問をいたしたいと思うのであります。要するに私的独占禁止法違反の問題は、今後の一般金融機関のどういうふうにあるべきかというあり方として、産業支配の制限を設ける上においての重大点であると考えるのであります。公取委員会におきましては、昨年の秋十一月二十一日に、近江絹糸の問題をちょうど審査開始いたしたのでありますが、すでに五カ月をこえる長きにわたって調査されておるのでありまするが、いまだにその結論が発表されておらないのであります。うわさによりますと、財閥銀行の抵抗が非常に旺盛だ、だから遠慮しておるのだ、こういうふうなうわさもあります。また一方においては、こういうことが問題になって、再び各銀行近江絹糸から手を引いたら争議が再発するんじゃないか、またそういうふうなことになったならば、経営が事実上困難になってくるんじゃないかというふうな、いろいろな脅迫におそれて、むしろ発表を控えようじゃないかということも言うておるのであります。また国会がちょうど今開会中でありますから、国会開会中にこんなことが論議されるとうるさいから、国会が済んでからゆっくり発表した方がいいというふうなことを考えておるんじゃないか、そういうことを世間が言うておるのであります。そういう問題につきまして、公取ではちょうど昨年の十一月二十一日の審査状況がどうなっておるか、大体いつごろその審査の結果を発表するか、いろいろ公取の委員の中にも御意見があるそうでありまするが、きょうは一つ、今までうわさがあるのでありますが、そのうわさが果して事実であるかどうか、いつごろ発表されるかどうかということについて公取委員長の明確な答面を一ついただきたいと思います。
  58. 横田正俊

    ○横田政府委員 この近江絹糸の問題につきましては、ただいま御指摘のように、昨年の十一月から審査を開始いたしました。その間大へん期間がたちまして、私自身も遺憾に思っておりますが、問題がかなり複雑でございますので、事実の把握に努めまして、ことに坊間いろいろなうわさもございますので、そういううわさなども打ち消す意味におきまして、事実の把握はあくまでも正確にいたしたいと存じまして、かなり慎重に会社側、銀行側、あるいは労働争議当時にさかのぼりまして、その関係、あるいは組合関係等、諸方面にわたりまして、大体三月一ぱいをもちまして、事務局の審査の段階を終りて、ただいまは委員会でもって、最後の結論を出すべく検討しておる次第でございます。いっその結論が出るかということにつきましては、ここで明確な期日まで申し上げることはできませんが、私の考えでは、できるだけ早く結論を出したいと考えております。なお財閥をおそれておるとか、あるいはいろいろその後の問題等を考え過ぎておるんじゃないかというようなことでございまするが、なるほどいろいろな点は考慮いたしておりまするが、財閥なるがゆえにとかいうような、そんなことは全然考えておりませんし、できるだけ早い機会に結論を出したいと思っております。
  59. 薄田美朝

    薄田委員 今お話がございましたが、会社には銀行から重役が入っております。その重役の連中は、銀行の債権確保というのが主たる目的でもって、現在入っておる。状況をいろいろ聞いてみますと、会社の経営なんということはわからぬ、主として債権確保のために入っているといいようなことで、会社の方はいろいろな重役の系統があって、そこで非常にうまくいかないというふうなことも想像にかたくないのであります。そういうふうな状況であるのでありますから、もう半年近くたっておるのでありますが、公取といたしましても大体の結論を得ておるのでありますから、ぜひ一つ大至急に発表してもらう、今お話し申しました通り、国会最中はうるさいから、国会が済んでからゆっくりしょうというふうなことがあっては大へんなのであります。しかも公取は、総理府所管の委員会でありますが、裁判官のように、公取の委員長委員審査員はそれぞれ身分保障をされております。何もそういうようなことについて遠慮する必要もないのであります。また公取が正しい審判の判決を出すことによりまして、おのずからこういう問題が自然な道を通るのであります。そのいろいろな点について行政的な考え方 政治的な考え方は、公取としてすべきものではないのであります。私は重ねてお願いしますが、ぜひ国会開会中に結論を出していただきたい。ちょうど昨年の商工委員会で、当時篠田委員も十二月中に結論を出してもらいたいという要望をされておるのであります。私どもの想像では、それほどむずかしい法律問題でもないのであります。どらか国会開会中に結論を出してもらいたいと思っておるのでありますが、公取委員長のもう一応の御答弁を求めるのであります。
  60. 横田正俊

    ○横田政府委員 国会の開会中を避けるというような意思は毛頭ございません。先ほど申し上げた通りでありまして、できますればもちろん国会の開会中に結論を出したいと考えております。
  61. 薄田美朝

    薄田委員 銀行が持っている株は、それぞれ四%であります。法律によりますと一割以上持てないのでありますが、その四%の株を七行の大きな銀行がそれぞれ持っておって、結局二八%になるのであります。こういうので事実上法律の精神をくぐっておるのであります。これは独禁法の第十一条、金融会社の株式保有の制限ということに該当いたすのであります。現実に、先ほどからお話がありました通り、会社側といたしましては非常に不当な圧迫を受けております。銀行の方では、これは債権の確保だと申しておるのでありますが、いずれあとから参考人の方々に伺いたいと思いますが、債権の確保も程度を越えますと干渉になるのであります。しかも先ほど西村参考人のお話では、三菱銀行でもって頭取が会社の社長、副社長を呼んで退職願をとった。重役をかえる、社長、副社長をかえるというようなことは、これはもう債権の確保を越えたものであります。すなわち法律の精神からいっても、明白なる独禁法違反になるのであります。しかも現実に今社長、副社長が外部から入って、重役でも相当な人が入っております。そうして今相当会社の経営について容易でないような状況でありますから、一日も早くこれを法の発動をいたしまして、公取の判決を一つ早くしてもらうということを、私は強硬に要望しておくのであります。  先ほど西村参考人のお話もございましたが、三菱銀行の本店において、昭和三十年六月二十七日に、今の小笠原頭取は堀勧銀頭取と小川住友銀行常務に立ち会いを求めまして、当時の夏川社長、赤塚専務、西村監査役を招致いたしまして、これらの人々列席の上で水野三菱銀行監査役近江絹糸取締役副社長に、夏川社長は取締役会長に就任することを指示したのであります。そして職務管掌などを指示しまして担当などを命じております。こういうことは独禁法第二条第七項第四号「相手方の事業活動を不当に拘束する条件」に該当すると思います。それからまた第九条の違反にもなると思いますが、こういう点についての公取の意見はどんなものでございますか、一つ伺いたいと思います。
  62. 横田正俊

    ○横田政府委員 銀行が債権確保というような名目をもちまして取引先の会社に役員を送り込む、あるいは役員の選任についていろいろ指図がましいことをいたします点は、独占禁止法の不公正な取引方法の一つといたしまして九号に、正当な理由がないのに、相手方である会社の役員の選任についていろいろ条件をつける、あるいは自己の承認を受ける、こういうことを条件といたしまして取引をするのは不公正な取引方法として指定してございます。なお同じ不公正取引方法の十号というのがございまして、取引上の地位が優越しておりますことを利用いたしまして、正常な商慣習に反して著しく不利益条件を相手方に押しつけて取引をするということも一つの不公正な取引方法になっておりますが、大体その二つのいずれかに該当するわけでございます。問題は結局正当な理由がないのに、あるいは正常な商慣習に反しているというような点に問題があるわけでございまして、公正取引委員会といたしましては、今までこの種の事件を幾つか扱いましたが、結局銀行の場合について申しますれば、先ほど宇佐美常務取締役から申されましたように、債権確保の必要がある場合にはある程度においてそういうことも許されるという解釈でございますので、ケース・バイ・ケースにこの問題を処理して参ってきたわけでございます。この三菱銀行の問題につきましても、事務局の調査いたしました結果につきましては、お手元に事実の概要というのを差し上げてあるかと思いますが、これをごらんになるとわかりますように、かなり強力な指示が役員の選任についてなされておるようでございます。ただいま申しました不公正な取引方法に該当する問題として検討する余地が非常にあるように考えております。
  63. 薄田美朝

    薄田委員 三菱銀行小笠原頭取は昭和三十年六月二十九日に開催されました近江絹糸株主総会の終了後に、役員全部の辞表を一方的に提出させまして、これを保管しておったと申されておりますが、これは明らかに独禁法第二条七の条項に該当すると思っております。独禁法第九条にも該当すると思いますが、こういう点についての公取の解釈はいかがですか。
  64. 横田正俊

    ○横田政府委員 これはただいま申し上げた通りでございまして、そういう辞表をあらかじめ取り上げておくというようなことは、いわゆる役員の選任についていわば白紙委任を受けておるというような形でございまして、これは最も強力なる条件のつけ方だと思います。たしか日本冶金の場合につきましても同様の事例があったやに伺っております。
  65. 薄田美朝

    薄田委員 現在の近江絹糸の取締役会は、問題になっている銀行から七名、中立銀行系から二名、中立が二名、夏川派が三名、こういうふうな状況だそらであります。従って内部の重役が一致しないというようなことで、最近会社の営業状態もうまくいっていないというふうな状況であります。これなどは早く公取の方で結果を発表することによりましてこういう問題は解決されるのじゃないか。同時にまた争議のことですが、状況を聞いてみますと再び争議を繰り返すようなことはない。銀行が、自分たちが重役を引くと争議が起きると言うのはおかしい。いろいろならわさがあって、銀行が争議を指導したというふうなうわささえあるのでありますから、早くそういうふうな処置を講じて会社の再建をさせることが一番いいことだと思うのでございます。公取の内部の審決の状況――これはうわさに聞いたのでありますが、公取では社長、副社長が退陣すればいいじゃないか、あとの重役はそのままでいいじゃないかというふうなうわさもあるそうでありますが、そういうふうな点については今発表の限りじゃないだろうと思うけれども、大体の委員長のお心持ちを聞いておきたいと思います。  それから市中銀行近江絹糸の株を四%持っておるのでありますが、公取の精神から言うと一割以上持ってはいかぬということになっておりますが、七行の銀行が集まると二割八分になる。こういうようなことが世の中の誤解を生ずるもとでありますから、公取の方では、こういう誤解を解くために、銀行が持っておる株を公開するような方法を講ずるお考えはないかどうか、委員長のお考えを伺いたいと思います。
  66. 横田正俊

    ○横田政府委員 この事件の最後の結論の内容でございますが、独占禁止法の言葉をもっていたしますと、いわゆる排除措置内容をどういうふうにきめるかということが一番大事なことでございますが、実はこれからその結論を出す段階でございまして、今ここで私からお答え申し上げることはむずかしいと存じますが、ただいまの役員何人というふうな点は、先ほども申しました債権確保の程度の問題に関連する問題でございまして、具体的にここではっきり申し上げることは困難だと存じます。  それから銀行の株式の保有につきましては、御承知のように一行がある会社の株式の一割までは持てるということに、昭和二十八年の独禁法の改正でなっておるわけでございます。従いまして、一行が一割以下のものを持っております場合には、それを違反として取り上げるということはもちろんできないのでございます。これが集まりまして何割かになりましても、そのこと自体が独禁法違反ということにはならないのでございます。しかしこれはいろいろな点もございまして、もし銀行の方でそういういろいろな誤解を受けるようなことは好ましくないというふうにお考えになって、銀行の方で任意に処分せられるということになれば、これはまた別問題でございます。法律規定に従いましてこれを直させるということは、現在の独禁法の上ではちょっと困難だと思います。
  67. 薄田美朝

    薄田委員 法律の条項によりまして一割まで持っていいというのでありますが、集まって集団的に暴力をするということになると非常に不当なのであります。従いまして法律の精神からいえば、公取の委員長意見としては、そういうふうな問題が起った時分に、各銀行がそういうものを持っているということはかえって問題を起すから、こういう際には公開でもした方がいいという御意見でありますか、どらですか。一つ意見を承わっておきたい。
  68. 横田正俊

    ○横田政府委員 これは法律を離れましての問題といたしますれば、いろいろ世間から問題のあるような株式の保有は銀行としては避けられた方がいいのではないかと私個人としては考えております。
  69. 薄田美朝

    薄田委員 それでは大体公取に対する質問はまたあとから申すといたしまして、一応大蔵省の政府委員に対してお伺いいたします。  歩積みの問題は、昭和三十年の暮れに次官通牒で、弊害を認めて全国の各銀行に対してこれを禁止するようにということを言うておるのでありますが、昭和三十一年におきまして市中銀行が申し合せをして、近江絹糸に対して一方的に各銀行の株式の売却を強要して、その代金をもって預金をさした、そうして借入金の返済に充当せしめなかったというような事実があるのであります。こういうふうなことは通牒違反であります。大蔵省としてはどういうふうな考えを持っているか、一つ大蔵省の意向を承わりたいと思います。
  70. 東條猛猪

    ○東條政府委員 ただいまのお話は、いわゆる銀行における歩積み両建預金の抑制に関する問題についてのお尋ねと承わりましたが、もちろん銀行取引関係を持っております相手方は、申すまでもなく日常の取引におきまして、あるいは預金を持ち、あるいは貸付を受けるということで、預金と借り入れとが並行するということは通常の取引において当然なことでございますが、問題はそういう預金者が預金を引き出したいという場合におきまして、不当に、いわば拘束を受けるというようなことがありますことは、取引の相手方の経済的な負担、金利負担ということを考えてみますと適当でないということで、金融機関がそういう非常に拘束性の強い預かり金をすることを慎しむようにという趣旨の通牒を出しておるわけであります。問題になっております近江絹糸と関係取引先銀行の問題につきまして、果してそういう事実上の強度の拘束性の預金に該当するかどうかという事実上の認定につきましては、私今ここでお答えを申し上げる準備をしておりませんが、一般的な考え方を申し上げますれば、いわゆる債務者預金というものが銀行の強い拘束を受けて預金のままで置いておかれるということは、全体の方針としては望ましくないというのが一般的な方針でございます。
  71. 薄田美朝

    薄田委員 今の東條政府委員のお話ですが、そういうような事例が今近江絹糸に現実にあるのであります。どうかそれを一つ調査して、いずれ調査の結果を承知したいと思います。  それから近江絹糸の場合に見られるように、そのような銀行の圧力で、定年の銀行員が相当近江絹糸に入っておった、こういうふうな弊害については、これは著しい弊害かと思うのであります。最近の傾向としては、大学なんか卒業した連中は、事業会社に入るより銀行に入る。銀行に入ると、そういうふうな工合でいろいろ事業会社の重役に送り込まれるというので、争って銀行に入るのが出世の道だというようなことを大言しておるような状況であります。一体大蔵省は各銀行に対する監督といいますか、いろいろな場合には非常に親切でありますが、そういう銀行が自分の持っているものにものを言わせて、著しく集団的な暴力をやる、非常にむちゃなことをやっているのに対して、非常に寛大なように思われるのであります。そういうふうなことで、近江絹糸などについては、先ほどいろいろ質問をいたしましたが、ああいう各銀行の態度に対して、どういうふうな考えを持っているか、また将来どうしようと思っておるかについて、明確な答弁を求めたい。
  72. 東條猛猪

    ○東條政府委員 お答え申し上げます。金融機関と取引先との間におきまして、たとえば金融機関からの債権がある、その債権の確保をいたしますがために、たとえば経営者を送り込む、重役を送り込むということが、債権保全のためにぜひ必要であるという場合におきましては、どうしても債権保全のために、一面におきましては管理的な色彩を帯びるような人事が行われましても、これは私はやむを得ないことではなかろうかと思います。また金融機関と取引先の相手方のことでございますので、お互いの話し合いによりまして、たとえば経理担当関係の人をもらいたい、また差し出しましょうというようなことで行われるということも、これまたあることでありまして、私はとがむべきではないと思います。問題はさような金融機関から企業に人が出されます場合、また受け取ります場合におきまして、要は金融機関のそういう債権保全的な関係において、またお互いの経理関係において、行き過ぎがあるかどうかという個別的な問題であろうと思います。私どもも実は話を近江絹糸の問題に移して参りたいと思うわけでありますが、先般来いろいろ各方面からの御意見もありまするし、また御注意もありまするし、銀行局といたしましても、いろいろと事情を聴取いたしたわけであります。ただいまのところ私どもの考え方といたしましては、公正取引委員会の方でいろいろとまた私どもの手の及ばないような面にまで進みまして、この事実関係をいろいろ御調査になっているというふうに承知いたしておりますので、公正取引委員会の御意見の方向のきまるのを待って、大蔵当局といたしましては考えを定めたい。かように考えております。  はなはだくどくなりましたが、要は金融機関と取引の相手方との間の人事のやり取りがあるということは、一般的には一つの原則をもって律するわけにはいかない、しかし金融人には金融人としての一つの限界があるべきであって、行き過ぎがあることは適当でない、こういう見解に立っております。
  73. 薄田美朝

    薄田委員 昨年の商工委員会の席上において、東條政府委員はよく事情はわからぬ、いずれもっと調査してからというふうなお話であったのであります。そうしますと、公正取引委員会の結果を待って大蔵省としては何か発表する、また行き過ぎがあれば何か処置を講ずる、こういうふうに承知しておいていいのでありますか。
  74. 東條猛猪

    ○東條政府委員 その後私どもといたしましても、いろいろ事情は聴取いたしたのでありますが、今日のところでは公正取引委員会の方の何らかの決定ないしは意思表示がありましたのをよく承わりまして、大蔵省としては考え方を定めたい、こういうことでおります。
  75. 薄田美朝

    薄田委員 大蔵省としてはこういうふうな近江絹糸のような世間で騒いだ問題について、十分その後調査して大体の結論を得ているというふうに承知していいのでありますか、公取の判定の結果を見て、それから監督官庁として調査するというふうなお考えなんですか。
  76. 東條猛猪

    ○東條政府委員 私どもといたしましても、いろいろ事情を取り調べましたが、金融機関の監督官庁として今直ちに大蔵省の調べました範囲におきましては、是正をしなければならない、こういうふうに是正を命ずべきであるという結論にまでは実は立ち至っておらないわけでございます。そこで公正取引委員会のいろいろな調査の結果を待ちまして、大蔵省といたしましては方針をきめたい、調べることは調べておりまするが、決定はさようにいたしたい、こういうわけであります。
  77. 薄田美朝

    薄田委員 この二月十六日の商工委員会におきまして水田通産大臣はこういうふうに答弁しております。金融機関産業界支配の行き過ぎは、二年前に政府並びに党に強く警告を銀行全般に与えている、こういうことを言っておるのであります。この趣旨からいっても、銀行局長は、当然今までこういうふうな、先ほど申しました通り、私どもが公平に見て三菱銀行の行き過ぎだと思う点につきまして何らかの処置をしなければならないと思うのであります。今のお話では公取の意見によっていろいろな処置をするというのでありますが、こういうことはもう起きてしまってからでは仕方がないのでありますから、起きる前に政府からも党からもこういうふうに警告しておるというのでありますが、こういう警告があったのかどうか、もしあったのなら何かそういうふうな処置をしているかどうかという点についても一つあなたの御意見を伺いたい。
  78. 東條猛猪

    ○東條政府委員 今それに基きまして、具体的に大蔵大臣の命によりましてこういう通牒を出しましたということを、私ここで申し上げる記憶がございません。私銀行局長になりましてそういう特定の問題を取り上げまして通牒を出した記憶はございません。ただ、私申し上げたいと思いますることは、金融人として一つのやり方に限界があらねばならぬということは、役所の、官庁方面からのそういう通牒、警告を待つまでもなく、金融機関の良識ある経営者としては当然心得ておるべきことでありまするし、私としては当然心得ておると思っております。また正式の通牒ではございませんにいたしましても、私どもといたしましては、金融機関経営者との間には意見交換をいたします機会はひんぱんにあるわけであります。こういう国会で近江絹糸の問題その他のいろいろの事例につきまして、御批判がある場合におきましては、私といたしましてはそういう問題につきまして機会あるごとに金融界の方々、経営者に対しましてそういう事実を指摘し、また反省を常に求めるということは私いたしておりまするので、先ほど仰せになりました党あるいは国会方面の御趣旨は十分に金融人に伝わっておるというのが私の所信でございます。
  79. 薄田美朝

    薄田委員 東條政府委員のお話よくわかりましたが、大体抽象的に一般的にこういうことはいかぬというふうな御注意はもちろんしょっちゅうしておると思うのでありますが、こういうような著しく権限を越えたような問題については、やはりこの際公取の判定の後でけっこうでありますが、断固たる措置をとってはっきりした方向を示していかないと非常にみんなが不安なのであります。私は今すぐに結論を出せというふうなことを申しませんが、どうか一つ十分に調査して、行き過ぎのないように――これは近江絹糸の問題だけを言っておるのではないのであります。一般的に各方面でそういうふうな意向があるのでありますから、そういう点を十分御調査いただいて、私どもの方にも満足のいくような回答をしていただきたいということを切望して私の質問を終ります。
  80. 福田篤泰

    福田委員長 中崎敏君。
  81. 中崎敏

    ○中崎委員 最初私は私どもの立場をはっきりして質問してみたいと思います。すなわち、この近江絹糸に関する問題はああした世人の心胆を寒からしめるような大きな、いわゆる人権争議として取り扱われたことはすでに言うまでもないことなのであります。そうしたことが一つの大きな契機となって、勢いまた銀行に乗ぜられといいますか、そういう間隙を与えたということも事実だと思うのでありまして、そうした意味において、その後の運用の実情を見ましても必ずしもそうした問題が十二分に反省をされておるとも見られないのでありまして、こういう点について強く批判の上に立って質問をするものであると同時に、一面において金融資本が産業資本を圧迫して、そうして自己の取引上の優越せる他位、それも著しく優越をするところの地位を利用して、自分たちの立場、主張を必要以上に実現するがために幾多経済界に好ましからざる事例が終戦以来ことに露骨であるということを考えてみたときに、もう少し金融人のあり方というものを、先ほど東條銀行局長が言いましたように、真に良識の上に立った運営がなさるべきものであるというようなことも考えておりますので、その両方の立場からこの問題について私は質問を続けていってみたいと考えておるのであります。  そこでまず第一に尋ねたいのでありますが、先ほど西村常任監査役からの説明によりますと、争議は起したけれども、その後において生産が漸次向上の方向にあった、組合側ともある種の話し合いも進めながら生産の増強に進んでいった、ところがその後突如として銀行方面の経営に対する強力なる介入によって、その後生産が漸次減退したということを言われておるのであります。さらにその問題について、実際そういう実情であったかどうかということを宇佐美三菱銀行の常務取締役から聞きたいのであります。  もう一つつけ加えてお尋ねしたいのは、近年、ことに繊維産業整理法安ができてから以来というものは、ことに紡績方面は相当活況を呈しておるのが事実であります。ことに中小紡などに至っても一時は非常に将来を憂慮されておったのでありますが、立ち直りも相当著しいものがある。これら全体として見たときに、相当に好転しておるのであります。そのさ中において、一体この近江絹糸のごときその後における内部のあつれき等が大きく災いをして、そらした繊維業界、ことに紡績業界における好転にかかわらず、業績が必ずしもよくないばかりではなく、逆に何だか逆転しておるような印象を持つのでありますが、そこらの実情一つここで御説明願いたいと思います。
  82. 西村貞蔵

    西村参考人 お答えを申し上げます。ただいまここにございます新聞に、「近江絹糸が銀行管理による損害は五十億円をこすか」という記事が載っております。私専門の立場からこの記事を拝見いたしまして、おおむね当らずといえども遠からずであるということを申し上げられるのであります。必要がございますればこの記事を朗読いたしますが、いかがでございましょう。(中崎委員「大体ざっとしたことで」と呼ぶ)そうですか……。この記事は大体当らずといえども遠からざる結果を出しておりますが、大体御質問の通り、昨年度において繊維業界が非常に好況であったにもかかわらず、近江絹糸はそういう一流紡績と同格の会社の実績と比べて五分の一ないし十分の一しか利益が上っておらぬことは事実でございます。
  83. 中崎敏

    ○中崎委員 それではどうしてそれだけの、五十億円になんなんとするような損失が生まれてきたか、ここに経営上の大きな欠陥があるのか、あるいは内部の重役のあつれき――ことに先ほど東條局長が言われたように、銀行には銀行金融業者には金融業者としての限界があるというのは、私に言わせれば、一つには金融機関のそうした公共的社会的使命と、同時に、そうしたものが産業経営にタッチした場合においては必ずしも適当でない、消極的であって、財布の口ばかり締めておって、そして時宜に適した、腹のすわった経営ができないというのが大体銀行家の常識である。私も十数年間銀行におって、銀行はどんなものであるかということもよく知っておるだけに、銀行家としては東條局長が言われたように、その限界を越えてやることは好ましくない姿だと考えておりますが、そうしたことがおもな原因となって、その後における五十億円になんなんとする膨大なる損失をもたらしたのかどうか、そのほかに大きな原因があるのかどうか、そこらについて一つ説明を願いたいのであります。
  84. 宇佐美洵

    ○宇佐美参考人 ただいま争議後の生産あるいは収益について御質問がございましたが、私どもが会社の当局から聞いておるところによりますと、争議が終了いたした直後におきましては非常に生産が落ちておる、利益も従って非常な赤字であったようでございますが、漸次生産も上って参り、また利益もふえて参りまして、現に相当増資いたしましたが、それでも配当を復活いたしまして、さらにただいまも配当を継続いたしておるような状態でございます。ただほかの紡績と比較してなおはなはだ不十分であるということは私どもも感ぜられるわけでございます。しかしこれはあれだけの争議をした後でございますので、いろいろ不十分な点もございます。また私どもが聞きましてこれは不十分だなということを一番感じましたのは、技術方面におきましても非常に急速に会社が発展したのが大きな原因だと思いますが、技術面における不足もございまして、今日のように各社が非常に競争激甚で必死の発展を遂げている際でございますので、なかなか優秀なるいわゆる十大紡等に追いういていくことがむずかしい。この点は非常に不十分であることは事実でございますが、争議後のいろいろの経過を考えますと、漸次よくなってきておるというふうに考えておる次第でございます。
  85. 中崎敏

    ○中崎委員 一般繊維業界ないしは財界全体として不況であるというふうな場合においては、争議の影響もあったでありましょうし、相当旧式なものは急速に大きな成長をしちゃって、そこに幾多不つり合いなものもあるということも感じられる。ところが十大紡以下のいわゆるもろもろの中小新紡、新々紡のごときもそれぞれ相当の業績を上げている。ところがこの近江絹糸に限って、こうして書かれたものが的確かどらか知りませんが、大体当らずといえども遠からずであろうという五十億円程度の損失ということを考えてみた場合に、これはやはり銀行方面が入っていって、プラスになったというよりも逆にマイナスになっているのではないか、そうすると、預金者の利益擁護のためだ、預金保護のためだといって入っていったのが、逆に預金者のためにもならず、同時にこの会社の株主等に対してもそうだし、また債権者も不安定な状態にみずから入って、自縄自縛になっているのではないかというふうな気がしてならないのですが、その点どういうふうにお考えになっていらっしゃるか。
  86. 宇佐美洵

    ○宇佐美参考人 お答え申し上げます。私どもは直接経営に参加いたしておるわけでございませんので、会社の報告によってお答え申し上げるわけでございますが、ただいまお話しの通り、新々あるいは十大紡以下でいい成績を上げているところもあるというふうに聞いておりますが、しかし何といいましてもあれだけの争議の影響というものはやはりなかなか、まだ争議が終ってからもそう長い月日もたっておりませんし、また業界も、いいとはいいましてもいろいろ困難がございます。必ずしも最優秀の成績を上げているわけではございません。しかしただいまのような膨大なる損失は、どういうふうに御計算になっているか存じませんが、最近の業績としてそれだけ出ているということは私ども想像がつかないのであります。なお会社によく聞きまして、むろん反省するところは反省しなければならぬと考えているわけでございます。  なお銀行員の限度ということについてお話がござい富したが、一般論といたしまして、われわれがやたらに産業界に出ていっていろいろ支配するというような能力がないことはみずからわかっている次第でございます。しかしこれは一般論でございまして、やはりケースによりましては過渡的にあるいは一時的に、あるいはまた全体の経営といたしまして多少いろいろの人事もやむを得ないのではないかと考えている次第でございます。
  87. 中崎敏

    ○中崎委員 実はこういう例があるのであります。群馬県のある大きな地方銀行でありましたが、それから相当の借り入れ、手形割引等を受けておりました。ところがその銀行がやはりその会社を支配して、その銀行から代表者を入れて、そうして金を貸してやるのだ、再建をやらしてやるのだということで、行っても間もなく一切の財産を押えてしまった、凍結してしまって銀行のみが財産をふんだくってしまった、そのために一般の零細な債権者がひどい目にあわされたという前例がある。この場合も銀行がそういうふうにして、――この近江絹糸が現在どういう状態であるかということをまだ十分に聞いておらないというのでありますが、これなんか非常に怠慢で、無責任だ。銀行事業会社を乗っ取り、支配しておいて、しかも社長まで強引に送り込み、五名も重役を送り込んでおいて、そしてその会社がどういう状態になっているか聞いていない、これから調べてなんという、そういうなまぬるい、無責任なことを言うところにわれわれは銀行の能力そのものを疑う。であるからして、こうしたような問題があって、全く能力のない人間が、しかも内部の大混乱の中に事業をやっていってうまくいきようがない。そして行き詰まったような場合において、一体銀行はどういう責任をとるのですか。多数の従業員、多数の債権者、こういうような者に対する責任は一体どういうふうにとるかということをお尋ねしたいのであります。
  88. 宇佐美洵

    ○宇佐美参考人 ただいまの御質問でございますが、その数字を承わったのはこの席で初めてでありますので、そういうふうに申し上げたようなわけであります。  それから責任の問題でございますが、銀行の限度の責任といいますと、やはり債権確保が限度の責任であろうと考えております。さらに大きい意味におきましては、むろん日本の産業界について協力するということも必要でございますが、小さい意味におきましては、やはり債権の確保が限度のように考えております。
  89. 中崎敏

    ○中崎委員 今の五十億円云々の問題でありますが、私が言うのは、必ずしも五十億円が妥当であるか、正当であるか私にもわからない。だから、あなたの方で、自分の方で責任を持ってやっている範囲においては五十億ではないのだ、三十億なんだ、あるいは三十二億なんだ、あるいは全然ないのだ、こういうことが言うてもらいたい。であるから、私は五十億が絶対であると考えていないので、その数字が間違っているなら間違っているということを言ってもらいたい。あなた方は大きな財閥銀行を代表して、その預金なり貸金の上に立ってこの会社を押えているわけです。そういう大きな責任を持っておられるから、ことにこうした問題が国会において去年から問題になっている。公正取引委員会においても、これは長い間問題として取り上げている。であるからして、それはどういう実情であるくらいのことがわからぬということでは、われわれとしては無責任きわまると思う。そういう意味において、やはりこの責任の所在を明らかにするということについて――これは単に近江絹糸だけの問題ではない。最近における金融機関は、ややもすれば産業支配をする。それは預金保護というところに名をかりているけれども、たとえばこの近江絹糸の場合においても辞表まで書かして取り上げておいて、そして強引に天下り的に銀行から推す重役を入れなければならぬかどうか、一般の場合においては貸金という生殺与奪の権を握っている。だから君の方が銀行が納得のいくような、安心のいくような方法でやってくれなければ、おれの方は金を出さぬのだ、金を引き揚げるのだというようなことは、その限度においては僕は何ら異議がない。当然だと思うからそれはそうすべきだと思うのだけれども、それを辞表を取り上げておいて、そうしなければだめだということでおっぽり出してしまうというような行き方は、われわれはどうも限界を越えていると思う。銀行局長が何と言おうとも、これは明らかにわれわれは越えていると思う。だから私は近江絹糸の場合がどうのこうのというのではない。一般の銀行がそういうふうなむちゃなことを言って、赤ん坊の手をひねるようなことをやらぬでも、十分銀行の意図に沿うようなことはやれる。実際やっておる。たとえば、何千億円の金をあなた方は預かっておられる。そして何千何万という事業家に融資をされているわけです。それで十分一般の預金を保護する使命を果しておられると思う。今日銀行が赤字で行き詰まったということも聞いていない。そういうようなことを考えてみたときに、何といったって私はその前にもら一ぺん銀行としてこれならば線を越えていないというような、こういう運営の仕方があるのではないかと思う。  そこで、これは過去のことですからあまり近江絹糸の側に立ってしつこく弁解いたしませんが、その点は十分に納得してもらえると思うのでありますが、いずれにしても近く公正取引委員会からも何らか公正な、またわれわれはそれを信頼しておるのでありますが、判断が下された場合において、そうしたところの国法を順守して、良識の上に立って、この社会的使命を果される考え方を持っておるかどうか、それをお尋ねしたいのであります。
  90. 宇佐美洵

    ○宇佐美参考人 お答え申し上げます。ただいまお話がございましたが、私どもにおきましても、むろん公取の御決定に対しましてはあくまでも尊敬いたしまして、その御決定の御趣旨を十分承わりまして善処いたしたいと考えております。
  91. 福田篤泰

    福田委員長 委員諸君に申し上げますが、中島参考人は、やむを得ざる所用のために、三時半ごろまでに退席いたしたいそうでありますので、中島参考人に対する御質疑があれば、先にお願いいたしたいと存じます。とになっておりました。それから非常に争議が長引いて、われわれあっせん委員の一人といたしまして、その間の調整にはかなり苦労したのでございますが、ともかく組合側の事実関係を申し上げますとそういう点があったということだけは申し上げられると思います。
  92. 田中武夫

    田中(武)委員 組合側の事実関係だけを申し上げるとそういう点があったということは、すなわち当時の夏川社長は労働組合組織を心から認めるというような点には、当時まだその心境に達していなかった、こういうことを意味しておるのでございますか、いかがでございましょうか。
  93. 中島徹三

    ○中島参考人 私たちとしてはあっせん委員立場といたしまして、できるだけ全繊同盟と会社側との間の平和的関係の確立ということに努力したわけでございます。夏川さん御自身の御心境に至っては私の関知するところではございません。
  94. 田中武夫

    田中(武)委員 それはあとでまた夏川現会長にお伺いしたいと思っておりますが、とにもかくにも中労委のあっせん等によりましてあの争議も解決したわけですが、さてその解決のときに当って一体どのような条件をつけて解決をせられたのか。その解決の動機が――これはまた心境はわからないとおっしゃるかもわかりませんが、夏川社長がほんとうに組合を認めるとかあるいは労働者の立場を理解するとかいう態度が現われることによって解決したのか、それとも世論の非難に抗しかねた、あるいはまた中労委の調停案をやむを得ずのんだというような状態において解決したのか、すなわち解決条件及び労使のそのときの状況一つ伺いたいと思います。
  95. 中島徹三

    ○中島参考人 あれだけ激しい長期間のストの結末でございますから、両当事者の立場から心境としてはいろいろなことがあったろうと想像いたされます。でありますがともかくも幾多の紆余曲折を経まして、全繊同盟も加えて団体交渉に入る、立ち上り資金等についてはこれこれの手当をする、あるいはユニオン・ショップの条項についてはこういうふうにするという根幹的なあっせん案の条項が究極においては労使双方のいれるところとなりまして解決したのでありますが、お許し願いたいのはどうも心境にまで立ち入りまして私が申し上げるのはその立場でございませんので、その点はちょっとお答えできかねると思います。  それから条件の要点でありますが、ユニオン・ショップの確認、全繊同盟を認めて全繊同盟も団体交渉の相手方とするというような表現になっておったと思います。それから立ち上り資金の問題がかなり出ておりました。今数字を持って参りませんでしたが、一人当り幾らといったもの、それからたしか一項目には労務管理機構の刷新強化といったようなものがあったのではないでしょうか。それはたしかあっせん案の中に書いてあったと思います。明確な表現の記憶はありませんけれども、そのような一項目はたしかあったと存じております。その程度に記憶いたしております。
  96. 田中武夫

    田中(武)委員 実は私も地労委をしばらくやっておりまして、いろいろな労働争議に関係したことがあります。労働争議のあっせんないじ調停をやっておりました際に、往々にして労働者の立場、労働組合組織を十分に理解せられない経営者は、われわれが提示した条件をただ争議を解決し世論を押えるというだけでのまれる場合が多くて、そのあとについては十分この条件を履行せられない例が多いわけであります。中労委といたしましては、そういうような提示された条件によって労働争議が解決したあとこの条件がどのように履行せられ、あるいはまたこの条件について当時会社側は十分のむ用意があったことを確かめられたか、これをお伺いいたします。
  97. 中島徹三

    ○中島参考人 あっせん案がともかくも労使双方から受諾されているわけでありますから、そのときには双方誠意をもってこれを履行するというお心組みで受けられたということは十分想定できるわけであります。ただ労働委員会のあっせん行為というのは、一応あっせん案が出て双方の受諾によって解決いたしますと手を引く。そのあと履行の状態その他はいわば事務的にやるという立場でありまして、それ以上にまであっせん委員なり労働委員会なりが正式に立ち入るという権限はないものですから、はっきり申しまして、私個人としては、その後の労使関係がどうなっているかというこまかなことは存じておりません。
  98. 田中武夫

    田中(武)委員 たしかあの当時労働争議で組合側が叫んでおったスローガンの一つに、夏川社長の追放ということがあったと思いますが、当時解決のときには組合側はそのような件についてどういうような主張をいたしておりましたか。と申しますのは、今問題になっておりますこの銀行筋の近江絹糸乗っ取り事件といわれているこの事案に対しましても、先ほど西村参考人でしたか、使用せられましたこの新聞にも、労働勢力を利用して反夏川運動を盛り上げて云々ということが言われているので、争議当時掲げておった夏川社長追放の件は、争議解決のときに組合は取り下げておったのか、その問題はまだ残ったままに解決になっておったのか、その点いかがでしょうか。
  99. 中島徹三

    ○中島参考人 今のお尋ねの時期は、たしか八月の下旬から九月の初めごろにかけての状況だと思いますが、あっせん案としては、もちろんそのこと自体を扱ってはおりません。ただ組合といたしましては、あっせんの最終段階に至りますまで、その種のことを非常に強く要望しておったという事実は今思い出せます。
  100. 田中武夫

    田中(武)委員 いわゆる夏川社長追放ないし重役に対する不信の問題については、中労委としてはそれ自体は取り扱っていない。しかしながら、あのときたしか労働組合の掲げた要求の中にあったと思うのです。それはあっせん過程においてどのような姿で出てきたのか、あるいは組合が出さなかったのか、出てきたが中労委はこれを扱わなかったのか、あるいはあなた自体が労働問題の調整者として、高度の立場から調整していくという立場からあの争議自体をながめられて、組合の言っておる夏川社長追放ということが、もっともだといいますか、組合の側が無理を言っているというようにお考えになりましたか。あるいはそのようなことは全然考えられずに調停に臨まれたか。もしそういうことを考えられずに調停に臨まれたとするならば、ほんとうにその裏の裏まで立ち入っての条件を見ずしてなざれた調停のように考えられますが、いかがでしょうか。
  101. 中島徹三

    ○中島参考人 御承知だったと思いますが、あのあっせんは、実は中山会長みずからがあっせん委員長をやりまして、私はいわばわき役のあっせん委員という役割だったのでありますから、その種の非常にデリケートな問題については、ほんとうは中山あっせん委員長みずからが答えられる立場にあって、私はどうもその立場にないように思います。ただしかし、あっせん委員の一人としては、もちろんその仕事をやったわけでありますから、私で答え得る限度と申しますか、私の記憶にありますところだけをお伝えすることといたしますと、労働組合側がそのときに退陣云々の問題を、あっせん委員に対しまする正式の要求事項としておったのか、あるいは正式でない単なる要望事項としてアッピールしてきておったのかどうかということの問題は、ちょっとデリケートな雰囲気にあったのじゃないかと思います。しかしそういうふうな言葉をアッピールとしてわれわれはしばしば聞いた事実はあるのであります。しかしながら、われわれ第三者のあっせん委員といたしましては、その種の問題には触れない、特に会社の最高経営首脳陣の人事問題であるからして、われわれはストレートに、争議そのものをほぐしていくという解決の努力をその他の面でやるという考え方でやりまして、その面には触れることを避けたわけであります。
  102. 田中武夫

    田中(武)委員 御承知のように、あの労働争議の要求の中の具体的な問題は、いわゆる労働条件についてのことでありますが、それの原動力となっておるというか、その源となっておるものは、いわゆる夏川社長にあったと思うのです。従って、その具体的な労働条件解決するに当っても、いわゆる組合側が叫んでおったその種の問題について、ある程度の見通しといいますか、考え方を確かめなければ、あっせん自体が十分に成功しないと思いますが、いかがでしょうか。(「その通り」)そのときにはそういう問題について、組合側の意見を特に求めるというようなことはせられなかったのですか。
  103. 中島徹三

    ○中島参考人 むろん労働争議のあっせんでございますから、御承知のようにいろいろな話し合い等をいたします。立ち入った意見交換等もやった場合があったと存じますが、しかし直接のあっぜん対象としては、あるいはあっせん事項としては、そういう問題に触れるのを避けた。避けても、ともかく一応この長期間の激烈な争議に終止符を打たねばならぬというつもりで、あのあっせん案を書かれております。
  104. 田中武夫

    田中(武)委員 まだお伺いしたいことはたくさんあるのですが、三時半ということですから、私はこれで質問を終りたいと思いますが、率直に申し上げまして、私も先ほど申し上げましたように、労働争議のあっせん調停にいささか経験があるのです。そのときに当って、あっせん委員会の席上等において、経営者側の発言態度等々から考えまして、まあ組合が言っていることがもっともだ、こう思われる節があったような場合も多々あります。そこであなたが直接あっせんに当られましたときに、夏川社長自体がとられた態度、言語、あるいは組合との間に行われる話の節といいますか、話し合いをしている空気のうちから、これは適当な経営者である、あるいは、労働組合がかくほど立ち上がらねばならないような経営でもあったであろうというようなことも、推測できるような態度等を持っておられたか、あなた方自体があっせんに当てられたときに、そのあっせんの過程において、夏川社長が行われた言動についてどういうようなお考えを持たれたか、もしよかったら率直に述べ願いたいと思います。  それからもう一つ、先ほど申しましたように、今問題になっている事件が、この労働争議のあと――労働者の反夏川勢力を盛り上げて伝=といわれることも伝えられている今日でありますので、これがもし事実とするならば、そのあっせん自体が十分な成功をしていなかったということにもなるのじゃないかと、こう思うのですが、いかがでしょうか。
  105. 中島徹三

    ○中島参考人 第一の問題は、私何ともお答えのしようがございません。のみならず私はあっせんの過程にも、残念ながら夏川さん個人とはあまり面接の機会がございませんでした。主として中山さんがやられたので、残念ながら私は全くのわき役だったということであります。  それから第二は、これも釈迦に説法ではなはだ恐縮でありますが、やはりあっせんは、とりあえずは争議を解決するということであります。争議を解決したあとは、できるだけ第三者は出ない方がいい。やはり労調法の根本精神にもありますように、当事者の自主的解決というのが本旨であろうと思いますから、われわれはそれを期待しながら、それ以上は手を出してはいけない、いざというときにわれわれが出るまでだ、こういうふうに考えておりますから、それ以後積極的には手を出しておりません。
  106. 田中武夫

    田中(武)委員 先ほどのやつで終ろうと思ったのですが、今の御答弁でもう一点簡単にお伺いいたします。いわゆる労働争議は自主的に解決せられることが望ましく、これがほんとうの姿であろうと思います。従って、あの争議もあっせんによって終止符を打ったのでありますが、そのときに当って、ほんとうに双方に自主的な交渉、自主的な解決というような姿が現われておったでしょうか、いかがでしょうか。
  107. 中島徹三

    ○中島参考人 あれだけ紛糾を見た労使関係でありますから、単に一片のあっせん案によって、一応の事態は静まりましても、労働関係そのものが根本的によくなるというのには、やはりかなりの時間を要すると思っておりました。それは皆さん方よく御存じの常識的な観測でありまして、多少と申しますか、かなりの時日を費して双方が積極的な努力をして初めて、近江絹糸の労働関係は安定するだろうという見通しを持ち、かつ期待を持っておったわけであります。
  108. 田中武夫

    田中(武)委員 それでは私これで終ります。
  109. 福田篤泰

    福田委員長 加藤清二君。
  110. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 皆さんは御承知の通り、本問題は争議の最初の目的とするところが、これは会社の内側の争いということが目的ではなかったはずなのです。ほんとうの目的は、あそこの近江絹糸の従業員の労働条件改善するということなんです。さればこそジャーナリストの方々はみな筆をそろえて人権争議だと言われ、今中島さんも同じように、人権争議だ、こう言われたわけなんです。しかしそれは糸へんの人絹でなくして、人間の権利の人権であったはずである。ところが、きょうここでだんだん参考人の公述なり何なりを聞いておりますと、本件がそっちのけにされてしまって、そこから生じてきたところの随伴的な問題が大きくクローズ・アップされておるようでございます。そこで私は本問題にもう一度返ってお尋ねするわけでございまするが、この争議の結果、近江絹糸における労働組合の労働条件改善されたかされないか。もしされたとすれば、その程度は中労委のあっせん案の通りに行われたかいなか。もし行われないとするならば、その原因が那辺にあるか。この問題について、あっせん役でありました中島さんにお尋ねしたいのでございます。  引き続きまして、あれ以来すでに二年有余を経ておりまするにもかかわりまぜず、なお労働協約が結ばれていないということでございます。これは争議を行なった方々の意図せざるところであり、思わざる結果であると思うわけでございます。そこでこの問題については、あとで現在の経営者の方々にお尋ねしたいと存じまするけれども、まず中島さんの御退場になる前に中島さんに、何がゆえに労働協約が二年有半たっても結ばれないか、その原因について中島さんのお考えをまず伺いたいのでございます。
  111. 中島徹三

    ○中島参考人 非常に残念でありますが、昭和二十九年の争議の一応の解決後現在に至るまでの近江絹糸の労働条件内容あるいはなぜ労働協約が現在まで結ばれていないかということに対しては、私は不幸にしてその事実を存じておりません。はなはだ残念でございますけれども、知らないのです。
  112. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 それではあとで質問を参考人にお願いいたしまするが、その答弁のいかんによって、ただいまのようなことでございますると、問題の核心に触れないわけなんです。従って今度は委員長に要望いたしまするが、近江絹糸の労組の代表、それから直接あの当時の交渉に当ったところの全繊の代表が本日ここに参考人として呼ばれておりませんので、おそれ入りまするが、本問題を正しく理解し、正しく解決するために、労働組合の代表のうちの近江絹糸の代表と全繊の代表をいつかの機会にぜひ呼んでいただきまして、正確な把握ができるようにしていただきたいことを要望しておきます。
  113. 福田篤泰

    福田委員長 今の加藤君のお話は承わって理事会にかけますが、この委員会参考人をお呼びした次第は、産業資本と金融資本との問題が主題でありますから、この点誤解のないようにお願いいたします。(「そんなら問題があるよ」「理事会でやれ」と呼び、その他発言する者あり)発言を許しません。中崎敏君。
  114. 中崎敏

    ○中崎委員 それでは私最後に一点だけ、あといろいろ質問もあるようでありますからやろうと思います。(「だめだ」「ここで言わないであとで理事会で話したらいいじゃないか」と呼ぶ者あり)
  115. 福田篤泰

    福田委員長 静粛に購います。
  116. 中崎敏

    ○中崎委員 そこで今までずっと議論がありますように、夏川社長の当時の心境なりあり方、その後における動向等から見ましても、ことにまた仄聞したところによれば、労働組合側の考え方も必ずしも――といいますか、あまり当時の状態より夏川社長に対して信頼性を深めていないというふうな感じもしておりますのですが、それは一応それとして、そうしてまた銀行のこうした行き過ぎの問題については、いずれ公正取引委員会から何らかの決定、発表があると思うのであります。そうした際において私の望むところは、むしろ公正なるところの事業経営のエキスパート、これがそれぞれ両者側の立場、意向等も十分に尊重して、そうしてあとが円満にいけるような、こういうことが望ましいのでありますが、一体公正取引委員会の権限として、また考え方として、そういうところまで立ち入ることなしに、この事態に対する単なる判断、裁決だけで終るものであるのか、あるいは希望的といいますか、何らかその他一歩進んだような次の段階まで考えて、そうして問題の処理を公正妥当な方向に持っていくだけの用意があるのか、またそういうことがなし得るものであるかどうかをお尋ねしておきたいのであります。
  117. 横田正俊

    ○横田政府委員 これは先ほど申し上げました事件のいわば判決と申しますか、最終の排除措置内容の問題でございまして、私どもはこの会社のその後の問題にもわたりまして十分によく考えまして、排除措置内容をきめたいと思います。
  118. 福田篤泰

    福田委員長 首藤新入君。
  119. 首藤新八

    ○首藤委員 私は夏川嘉久次氏並びに三菱銀行の宇佐美きんに若干質問いたしたいと思います。  二十九年における近江絹糸の争議は、このときにおける労働争議の一番大きいものとして天下の耳目を聳動いたしたことは記憶に新たなところであります。ただし私のこの労働争議から受けた感じは、近江絹糸がきわめて短期間に非常な発展をいたした。そして久しい間牙城を築いておった十大紡に肉迫し、むしろその圏内に入っていく勢いを示した。これに対して十大紡は、近江絹糸の動向に相当の脅威を感じておった。もう一つは、この十大紡によって組織されておりまするところの全繊が、その以前からしばしば近江絹糸に対して全繊に加入を申し入れたけれども、なかなか組織に入らないということが争議の発端である。この後において人権問題あるいは待遇問題ということがいろいろ加えられておりますけれども、根本は、全繊の組織に入らない、従ってその面において全繊が近江絹糸の争議をあおった傾きがあるという印象を私たちは深く持っておるのであります。特にその当時は、私の記憶の違いかどらかわかりませんが、英国の労働運動の指導者が日本に来られて、そうしてその指導者もいろいろの面において争議をあおった形跡がありということを聞いて、非常に遺憾に思っておるのであります。私たちは終戦後の日本の経済をすみやかに復興しなければ相ならぬ、その経済の復興は個々の企業体において魂をぶち込んだ、情熱を傾けた経営者が一人でも多くできることを期待するのでありますこの面において利は当時夏川社長の経営力、それから会社の経営に全生命を打ち込んでおるのではないかという印象を受けたことによって、争議のすみやかな解決と、同時にその後において会社の経営がすみやかに正常化することを実は非常に祈ってきたのであります。夏川さんには今日私は初めてお目にかかった。しかしただいま申し上げたように、あなたのような経営者が終戦後に一人でもほしい、そうして日本の経済を全般的にできるだけすみやかに復興しなければならぬ、そのあなたがたまたま先ほど申し上げたような事情によって非常に大きな犠牲者となった。このことについては私は心から同情しておるものであります。と同時に、争議後におけるところの営業と争議前の営業成績がどろであるかということを注目しておりましたが、ただいま西村参考人の御説によると、五十億円の取るべき利益が取れなかったということであります。これは西村参考人個人の主観であろうから、どこまで正確かどらかわかりませんけれども、しかしこのパンフレットによって現在の重役陣を見ますると、またこれに関連する重役に準ずるところの主要な役割を持っておる方の陣容を見ますると、部長あるいは次長、これらを加えて二十二名ありますが、この中に本来の近江絹糸の経営に久しくタッチした、いわゆる労働争議以前からタッチしておった方はわずかに八名にすぎない。残りの十四名は実にその後において他から入った方によって構成されておる。しかもその入った方が同じところから入っておるならばまだともかくでありますが、出た母体が全部違っておる、完全な寄り合い世帯であると言われてもやむを得ないのじゃないかと思っております。いわゆる寄せ木細工であります。先ほど宇佐美きんが、銀行団がこれに乗り出したのは債権確保のためである、こう言われましたが、債権確保であるならばこの会社をできるだけすみやかに復興させる、できる限り正常な姿に返すように協力するのが銀行業者本来の責任ではないかと私は考えるのであります。これにもかかわらず近江絹糸の何らの歴史を知らず、近江絹糸の営業の内容を知らず、こういう第三者が二十二名のう十四名まで入って、全くの寄り合い世帯である。経営は人の和が第一の条件であります。そうして強力な指導者があることによってその企業は初めて発展するのであります。強力な指導者をのけ者にして、他からかような未経験者を十四名も入れて、そうしてこの会社があなた方が考えておるように非常にすみやかに正常の姿にお返りになるというふうなお考えが正しいと思われるかどうか、まずその点から一つ宇佐美さんにお伺いしたい。
  120. 宇佐美洵

    ○宇佐美参考人 お答え申し上げます。ただいま十四名の人が入っておるというお話がございましたが、私どもはどういう人が入っておるか実は存じておりません。私どもは先ほどからお話がございました通りなるべく銀行の限度を守るということに注意いたしておるわけでございまして、現在の経営者がそういう人事問題あるいはいろいろの経営の問題について一々申すことは、これはそれこそ非常な干渉であると心得ておりますので、そういう問題につきましては何ら相談に乗ったこともございませんし、十四名というのはどういう人か存じませんが、私どもは知っておる方がそこに入っておられたらば、たとえば水野社長とか副社長とかいう方が入っておられるならばそういう人たちは存じ上げておりますが、そのほかの人たちはどういうふうになっておりますか存じ上げておりません。要するに私どもは先ほどからお話がございました通りに、なるべく――なるべくというよりは極力現在の経営者の経営にまかしておくというふうに考えておる次第でございます。さよう御了承願いたいと思います。
  121. 首藤新八

    ○首藤委員 従来の経営者になるべくまかせておきたい、全く妥当な考え方で、それであるならば今さら私たちがここで質問する必要はないのであります。  しからば私は夏川さんにお聞きしますが、伊藤忠兵衛さんが昨年四月に三菱銀行を訪問いたして、そうして銀行独占的に経営しておる体制を一応変えて、夏川氏の信頼するところの新社長を選任して銀行の占領経営から離脱するような方法をとったらどうかということを申し入れた。ところが、いろいろの経路がありますが、六月二十三日に三菱銀行は夏川会長を招致して臨時総会招集の手続を一方的に強制し、そうしてこの七月二日付で株式名義書きか、え停止の公告を行わせる、さらにその後の総会において神前政幸氏を副社長に、あるいは水野副社長を社長に、こういうことを発表したということがこのパンフレットにありますが、夏川さん、この点はいかがでありますか、あなたから一つお聞きしたいと思う。
  122. 夏川嘉久次

    ○夏川参考人 ただいまの御質問にお答え申し上げます。ただいま御質問の通り、全くその通りであります。なお臨時株主総会招集に当りましては、たまたま伊藤忠兵衛さんのお話が続き合いでありましたので、私は強く拒んだのでありますが、どうしてもやれ、強制なさるのですかということも念を押してまで、結局私が株主総会の通知を発しなければならぬような立場に追い込まれたような形であります。
  123. 首藤新八

    ○首藤委員 宇佐美さん、今夏川参考人の主張はお聞きの通りであります。しかもあなたは三菱銀行におられる。昨年はあなたはいなかったのでありますか、また、おってもそういうことは聞いていないのでありますか、もう一度一つ回答して下さい。
  124. 宇佐美洵

    ○宇佐美参考人 お答えいたします。私は当時直接その交渉には当っておりませんで、小笠原頭取が当っておったように記憶いたしております。ただ聞いておりますところでは、確かに伊藤忠兵衛さんからお申し出があったのでございますが、私が交渉いたしておりませんのでその経過についてはっきりは申し上げかねますけれども、相当慎重にいろいろのお話し合いがあったようであります。私ども、当時伊藤さんのお申し出についていろいろお確かめいたしますと、不確かな点も多々ございました。また伊藤さんの方から、たとえば水野氏を引き続き置いてくれとかいろいろのお話もございましたが、私ども伊藤さんとはお取引がございませんので、その辺のところは一体どういうふうになるのか、ついに話がまとまらなかったような次第でございます。  それから株主総会の方でございますが、これは前から御承知の通り社長があいておりまして、水野副社長を入れますときから、できるだけ早い機会に社長を置かなければはなはだ妙な格好だというので、いろいろ社長について考慮をいたしておりました。また現に夏川さんの方から、たとえば今の伊藤忠兵衛さんのようなお話がありましたときは、さっそく慎重に、社長を置くことについて考慮いたしておったようなわけでございます。そこへたまたま今の副社長の神前さんのお話が出ましたので、一日も早い方がいいということで臨時総会をお願いしたように聞いておる次第でございます。
  125. 首藤新八

    ○首藤委員 あなたの先ほどの発言と今の発言は大きな食い違いがあるではありませんか。先ほどは、人事の面については一切存ぜぬということであった。ところが今のお話によると、夏川さんの主張に対してある程度あなたは同調された。そういう話は聞いた――しかも現実に臨時総会が開催されておるのであります。副社長がいないからそのまま放任できぬということをあなたは弁解の辞にしておるけれども、片一方では、伊藤忠兵衛という人がせっかく中に入って円満に解決しようという好意を示しておるにもかかわらず、そうしてその伊藤氏がたまたま旅行中で近く帰るという日程さえはっきりわかっておるにかかわらず、臨時総会をなぜしかくさように待ち切れずに開かなければならなかったか。第三者としての私たちは、このあなたの方の態度に対して非常な疑惑を持たざるを得ないのであります。結局今のお話を承わってみますると、一方ではなるべく知らぬ存ぜぬで逃げたい、しかし本質的には私たちが想像しているように非常な干渉をしておるということがきわめて明白であると私は断じたい。公取委員長はこういう方面もはっきり認識されて、調査を進められる必要があると私は考える。  もう一つは、夏川さんにお伺いしたい。今のあなたの方の資本金は二十億でありますが、株価は現在どの程度でありますか、あるいは配当は幾らしておるか、あるいは市場価格はどのくらいしておるか、こういうことをちょっと承わりたい。
  126. 夏川嘉久次

    ○夏川参考人 御答弁申し上げます。現在の株価は七十二、三円から六十九円までくらいが旧株であります。新株の方は六十七、八円のころであります。
  127. 首藤新八

    ○首藤委員 配当は。
  128. 夏川嘉久次

    ○夏川参考人 配当は年一割五分であります。それは一割であったのを増資のために一割五分にいたして体裁を保っておったような格好になっております。事実はそれほど利益が上っておりません。
  129. 首藤新八

    ○首藤委員 このパンフレットによりますと、あなたの方は銀行の株券を相当持たれておる。これはあなたの方の自主的希望で手持ちしたのでありますか、あるいはまた銀行の強き勧告によって手持ちを余儀なくされたのでありますか、その間の事情を一応承わっておきたい。
  130. 夏川嘉久次

    ○夏川参考人 ただいまの御質問に対してお答え申し上げます。最初は銀行取引の関係から銀行株を持たぬかというお話がありまして持つことから始まったのでありますが、その後私の方がだんだん増資するにつれまして、私の方の株を持っていただくようにお願いいたしました。続いて両方がふえて参りまして、結局七銀行に対しまして、片務的にならないように、私の方で持つ株と同数くらいなものはいつでも持っていただくという建前をとっておりましたが、争議以後の状態では、逆に私の方が二、三割多い程度持っておったのであります。大体現在は百六十万ずつ持ってもらっておりますが、増資前には八十万だったので、それが百六十万になっております。その当時私の方は、八十万のときやはり百万以上の株を持っておった次第であります。
  131. 首藤新八

    ○首藤委員 もう一つお聞きいたしたい。三菱、勧銀、住友、富士、協和、第一、三井、この銀行からの今の借入金額は表面五十七億があるが、そのうち手形を割引きしている量が二十四億、結局単名の借入高は三十三億となっておる。ところが、これに対して両建的な性格を帯ぶ十億円の預金があるということになっておりますが、この数字に間違いありませんか。
  132. 夏川嘉久次

    ○夏川参考人 御回答申し上げます。ただいまの数字に大体間違いないと存じます。
  133. 首藤新八

    ○首藤委員 もう一つお伺いしたいのでありますが、あなたの方の会社の不動産、動産その他一切の資産は現在時価で見積って大よそどのくらいありますか。
  134. 夏川嘉久次

    ○夏川参考人 ただいまの御答弁を申し上げます。時価の判定がはっきりわかりませんが、百五十億ないし二百億と算用ができると存じます。
  135. 首藤新八

    ○首藤委員 この点を一つ宇佐美さんにお伺いしたい。銀行団は近江絹糸の資産――不動産あるいは動産の総額を幾らとごらんになっておるかお伺いしたい。
  136. 宇佐美洵

    ○宇佐美参考人 お答えいたしますが、その前に、ちょっと先ほどの御質問について申し上げておきたいと思います。伊藤忠兵衛さんからお話がございまして、この話が受けるとか受けないとかきまらない前にほかの話をし、さらに臨時総会を開くということは、会社といたしましてもまたわれわれといたしましても当然慎しまなければならぬわけでございます。その臨時総会に関する人事がきまります前に、伊藤さんにはっきりお断わりというか、その話が進まないということを御返事申し上げておりますから、その点誤解のないようにお願いいたしたいと思います。  それからただいまの資産の問題でございますが、これはいろいろ資産のとり方もございますし、私ここではっきり申し上げかねますが、やはり相当のものであろうとは考えております。
  137. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 議事進行について。実はこの問題は現在公取が審判中でありまして、しかも公正取引委員会委員長を呼んで、その審決に影響があるような発言を議会がすべきではないと思う。これはきわめて具体的な問題であります。抽象的な問題ならともかくとして、具体的な個々の問題を取り上げて、その委員長を目の前に置いて、委員長にこういう点は注意してもらいたいとかいうことは、私は委員として慎しむべきであろうと思います。ですから質問者はその点を十分留意してもらいたい、かように考えます。
  138. 福田篤泰

    福田委員長 多賀谷委員の御発言については各委員の良識を信じます。
  139. 首藤新八

    ○首藤委員 私どもは個々の具体的な問題を取り上げておるのでありますから、その過程において質問することもやむを得ないと考えております。  そこで私は宇佐美さんにもら一ぺんお伺いしますが、今の近江絹糸の資産の総額ははっきりしないということでありますが、夏川さんは百五十億であるという。かりにこれを銀行がいうような健全な見方にしても百億くらいはあると推定されるのではありませんか。これに対してどういう見解を持っているか、お伺いしたい。
  140. 宇佐美洵

    ○宇佐美参考人 お答え申し上げます。百億あるか五十億あるかという問題につきましては、私ここに数字を持っておりませんので、お答えはいたしかねます。ただ先ほど意見として申し上げました通り、資産もむろん基礎をなすものでありますが、事業運営というか、安定した状態であるということも私ども非常に大きいと考えております。そういう状態における資産とのるいはそうでない場合の資産とも若干違うと思いますし、いろいろ場合がございますので、ここで幾ら幾らあるかといとことはお答えいたしかねます。
  141. 首藤新八

    ○首藤委員 わかりました。それではお聞きします。先ほどの質問で、今この七つか八つの銀行近江絹糸に対する融資は三十二億円、そのうち十億円の預金があるから、差引二十三億の融資といろ結論に達する。夏川さんの言われた会社の資産がかりに百五十億なくても、捨て値で売っても融資の差異約二十億、これ以上の資産があるということはあなたはお認めになりませんかどうか。この点一つお伺いいたしたい。
  142. 宇佐美洵

    ○宇佐美参考人 お答え申し上げます。そこにもございます通り、手形の割引の金額も相当あるのでございまして、毎月の運転資金として相当金が要るわけでございます。これをすぐ差し引いて預金が全部そこに回るという性質でもございません。むろん資産状態として今後この会社が非常にうまくいくという状態でございますれば、資産としては相当あるように考えます。
  143. 首藤新八

    ○首藤委員 このほかに運転資金が相当出ている、また商業手形が必ずしも確実でないという御意見らしい、これも私は了承します。ただし少くとも運転資金あるいは別個の固定の融資の合計から近江絹糸の資産を見た場合、あなたの方の唯一の目標である融資の確保については、私は第三者から見て近江絹糸に関する限りごうまつも心配はないと考える。もう一つの点は、経営の問題についてやはり安定しなければならぬということをあなたは言われる、これもわかります。しかし近江絹糸は、先ほど申し上げた通り、きわめて短期間にあれほどの発展をした。だれがこれをやったか。少くとも夏川社長が魂を打ち込み、情熱を傾けた経営、自分の運命とともにする覚悟の経営、これはおそらく世間の何人もこれに対して反対はしないと思う。むしろ経営者としては理想的な人と申し上げても過言でないと思う。この面から見て、資産には非常に余裕がある、経営者についてもすでに定評がある人だ。それにもかかわらずなおかつかような外部の人をたくさん入れなければ債権の確保ができない、それはどういうことでありますか。私には納得できない。この点私の理解できるように説明願いたい。  これはあなたのところだけでない。近来銀行業者が金融を背景にして専横きわまる行為をやる。これがために日本の伸びる産業を押えておることがきわめて多いのであります。金融業者が分限を越えて、経験も知識もない者が金を看板にして産業を乗っ取る、それを支配する、日本産業のためにきわめて嘆かわしい現象であります。今申し上げるように、資産の点、経営の面に私は一つも心配はないと考えるが、それ以外に何があるか、この点をお伺いしたい。
  144. 宇佐美洵

    ○宇佐美参考人 夏川さんが非常に苦労をなさって、会社をだんだん大きくなすったという点につきましては、私どももかねがね承わっております。しかし現在においては、やはり先ほど申し上げました通り、いろいろ要素もございますので、根本的には会社内部が一致団結するということも必要でございましょうし、そういうような点に向って私どもは何とかやっていただきたいと考えておる次第でございます。
  145. 首藤新八

    ○首藤委員 私は先ほど会社の経営はいろいろ条件があるが、人の和が一番大きな条件であるということを申し上げた。今まで長い間心魂をぶち込んで経営した夏川さんというものが今存在する。そうして短期間にあれほどの成績を上げた手腕を持っておる方である。そうして、その経営方針がどうであったか。一糸乱れざるところの統制下に置かれたところの経営があの結果を生んだと私は見ておる。それを、何ら経験のない者をいろいろの母体から勝手気ままに出して、それで会社の成績が上るとお思いになりますか。私は先ほど西村参考人が五十億の損失をこうむったというこの数字に対しては疑問を持ちますけれども、しかし、夏川さんが争議前と同様にいわゆる独裁的な経営で進んでおったならば、現在よりもさらにはるかに会社の営業成績は上っておったであろうことは、私は確信する。それにもかかわらず今日のような状態にあるということは、結局それはあなた方が何ら関係のない、知識のない者を、月給さえもらったらいいという人間だけをたくさん送り込んで、そうして内部の調和を欠いた。それが会社の成績が思うように上らぬ一番大きな原因だと申しても、私は過言ではないと思うのであります。結局あなた方は、債権確保は完全にできておるにもかかわらず、債権確保を看板にして近江絹糸を食いものにしておるというそしりを私は免れぬと思う。いやしくも三菱銀行という代表的な金融機関が、なぜこういうあさましいことをしなければいかぬのですか。もう少し紳士的な――金融マンには金融マンの分限があるはずです、金融家らしいところの行動をとったらどうですか。世間から見て非常な誤解を受けるような、しかもこの実態を今質問してみますと、これは疑惑でない、その通りなんであります。私は三菱銀行のためにきわめて遺憾な気持を持たざるを得ない。この事実、いわゆる資産の面、経営の面、銀行団が退却すれば、かえって会社の営業はよくなる、おれば会社の営業を悪くするということは、はっきりしたのでありますが、それでもなおかつあなた方は従来の方針を踏襲していくつもりでありますかどうか、この点を聞いておきたい。
  146. 宇佐美洵

    ○宇佐美参考人 お答えいたしますが、私どもは会社を食いものにするような気持は少しもございません。ただ会社がよくなるということのために、われわれ銀行も協力いたしておる次第でございます。その限度につきましては、むろん私どももよく反省しなければならぬと考えておりますが、これはやはりケース・バイ・ケースで考えていかなければならないと考えておる次第でございます。私どもは近江絹糸を食いものにするというような気持は毛頭ないことを申し上げておきます。
  147. 首藤新八

    ○首藤委員 当然ケース・バイ・ケースでなければなりません。従って私はケースによっては、金融業者がこの会社の内容を常に把握する立場から、会社だけの報告では信憑性が薄い、やはり内輪の者を入れておく必要があるというケースもあると思います。従ってそういう場合には代表者が入ることも、私は適当と思います。ただしそういう場合においても一人でけっこうだと私は考える。一人以上入れる必要はどこにもないと私は考える。ところが近江絹糸はそのケース・バイ・ケースに入れなければならぬ条件がないではありませんか。どこにもないと私は思う。債権を確保するという点においては、一人も入らなくても十分確保される態勢にあると私たちは見ております。それにもかかわらず、なおかつ、一人でない、二人でない、十何人も入れるということは、私は金融業者の行き過ぎといわなければならぬと思うのであります。しかもこれがためにかえって会社の経営を阻害しておる。これも否定できない事実だと私は考えます。そういう点について銀行業者はこのケースをもう一度慎重に冷静に御考究になって、すべからく、反省すべき点はすみやかに反省することを私は希望いたして、一応私の質問を終ります。
  148. 福田篤泰

    福田委員長 田中武夫君。
  149. 田中武夫

    田中(武)委員 先ほど来各委員が申されているように、またただいま首藤委員が申されたように、いわゆる金融資本が、銀行が融資をしている産業会社へ重役を送り、これを乗っ取るといいますか、あるいはそういうことによってその工場、会社の経営あるいは生産の能力を低下せしめておる、こういう事態は許せないものであるということは、みんなの意見が一致しておると思います。こういうことは、ただこの近江絹糸だけでなく、あらゆる産業において現在見られている状態であって、こういう問題についてはわれわれはこれを等閑視することは絶対できないのであります。しかしながら、本日近江絹糸の問題が特にこの委員会で取り上げられたということにつきましては、いざさか私不思議な感じを受けております。聞くところによると、夏川元社長がこの際復帰をねらって何らかの運動をなされた結果、こういうようにただ単なる一会社の問題がここに取り上げられておる、こういうふうにも聞いておるが、さて夏川参考人にお伺いいたしますが、あなたはこの問題について、あなた自体が復帰を希望せられた結果として、何らかの政治的運動ないし何らかの芝居を打たれた結果が、こういうふうになったのかどうか。あなたはこういうことについて政治的な運動をなされたかどうか、お伺いいたします。
  150. 夏川嘉久次

    ○夏川参考人 ただいまの御質問に対してお答えいたします。私はこの問題に対しまして復帰問題とからんで何も政治的に動いておりません。またこの問題は私の復帰問題とは違った意味のものと考えております。
  151. 田中武夫

    田中(武)委員 あなたは現在復帰についてどのようなお考えを持っておりますか、お伺いいたします。
  152. 夏川嘉久次

    ○夏川参考人 ただいまそういう問題はあがっておりませんから、それに対して意見は何もありません。
  153. 田中武夫

    田中(武)委員 先ほど私中島参考人に二十九年当時の争議についていろいろお伺いいたしました。あの私の質問は、そこで夏川参考人もお聞きになったと思いますが、夏川さんは現在その二十九年当時の争議を顧みられて、今あの争議についてどのように考えておられるか、一つ現在の心境をお伺いいたします。
  154. 夏川嘉久次

    ○夏川参考人 ただいまの御質問に対して御答弁申し上げます。私は争議の一方の経営者の責任者といたしまして、非常に責任を痛感いたしております。なおまたいろいろ中島委員にお尋ねになっておりましたが、中労委のあっせん案は全部正確に行われておりますのみならず、さらにあっせん案を越えまして、その直後約五カ月くらいの間に三割のベース・アップも無条件にのんでおるような次第であります。さらに西村監査役から御報告申し上げましたように、その後団体交渉なんかについてもきわめて友好裏に進んでおるのが実情でありまして、これは先刻西村監査役から御報告申し上げました次第でありまして、争議の感想については大体ただいま申し上げた次第であります。
  155. 田中武夫

    田中(武)委員 あの争議以前と現在を比べた場合、従業員、労働者の待遇は大いに改善せられておるということでありますが、もう少し具体的にお伺いするのと同時に、それはあの争議があったから改善になったのか。それともあの争議がなかったならばあなたはどういうような措置をとられるつもりでおられたのかお伺いいたします。
  156. 夏川嘉久次

    ○夏川参考人 時代の流れに従ってすべてベース・アップされておりますし、労働組合組織され、もちろん前にも労働組合があったのですが、争議後の労働組合交渉というものはだんだん尖鋭化しておりますが、私の考えでは、争議前の過去の近江絹糸の昇給率あるいは待遇改善の歩調でいきますと、そうした問題がなくてもあるいはより以上に待遇が改善ざれたかもしれません。現在では要求だけ上げておるような状態でありますが、私どもは会社を大きくして、りっぱにして、労働者の幸福福利増進をしたい、すべてのものを徹底的によくしたいという考えを持っておりましたから、私の理想が実現しておりましたならば、おそらくは数倍よくなっておったのではないかと思います。ただ争議のために大きな損害をし、先刻西村監査役から申し上げましたように五十億円の利益が上っておりましたならば、おそらく実にりっぱな会社ができておったのではないかと思います。
  157. 田中武夫

    田中(武)委員 あなたは現在あの争議を顧みて、あの当時あなたがとられた態度、あるいはあれ以前の会社の労働条件あるいは労働者に対する扱い方、幹部のこれに臨む態度についてどのように考えておられますか。若干の反省というようなことはしておられないでしょうか。
  158. 夏川嘉久次

    ○夏川参考人 私は労働争議に対しまして責任を痛感しておりますし、何か私どもの欠点がないかということについては大いに反省しておりますが、ただいま申し上げましたように、中労委のあっせん案というものより以上によくなっております。さらにまた西村監査役から御報告申し上げましたように、労働組合との交渉も、争議後銀行の方がお入りになるまでの間非常に平静に進んでおったことは事実であります。
  159. 田中武夫

    田中(武)委員 先ほど首藤委員は質問を通じて、あなたをまれに見る敏腕の経営者だと絶賛されました。あるいは見方によったらそうかもしれません。しかし私はあなたがいわゆる敏腕をふるわれた裏には、いわゆる短期間に業績をあげられた裏には、あの争議によって明らかにせられたような状態のもとに労働者がしいたげられておったという事実を考えなければならぬと思います。あなたは今首藤委員のあの絶賛の言葉を聞かれて、その陰に泣いておったところの労働者に対してどういうように考えておられますか。あるいはまた現在あなたは、ああいうふうにまれに見る優秀な経営者と言われて、しかしその陰には労働者があったということを認められるかどうですか。しかもそれが労働者のおかげであったということを言い切れますかどうですか。
  160. 夏川嘉久次

    ○夏川参考人 ただいまの御質問に対して御答弁申し上げます。もちろん事業は資本と経営、労働の三つによって成り立ちまして――首藤さんが私のことについておほめ下さいましたけれども、非常に恥かしい思いをしております。もちろん資本と労働者、これが一体にならなければできません。私どもはそれをモットーとしてやってきた。労働争議についてもいろいろ批判されておりますが、実際は争議の起ったときに八割までは労働争議に参加しない従業員があった。二割の人が工場に入れないでじゃまをした。それからまた労働争議が済んだときに、たとえば製品の発送をとめるとか高べいをこわすとか門をこわすとかいうふうな不法行為が百三十件ありましたけれども、それは全部無条件で告訴を取り下げて解決したくらいであります。またさらに当時労働委員の臨床尋問を受けましたが、私はけんかをするために生まれたのではない、労働者と手を握らなければならないということを強調したくらいでありますから、申すまでもなく労働者の力というものに対しては非常に敬意を払い、重きを置いている次第です。
  161. 田中武夫

    田中(武)委員 あなたが今そういうような発言をせられるならば、少し問題が横にそれるかもわからぬが、いろいろと労働問題についてあなたと意見を戦わさなければならぬと思うのです。あなたの工場において昭和二十六年新入者の歓迎式とか何かでミカンとじゅずとそれからお経の本ですかを渡して、映画をやっておるときに、フイルムに火がついて三十名近い人が死んだという事実、それ以来私はあなたの組合の内部は知っておるのですよ。そこであなたは今言われたことと同じことをもう一度確信をもって言われますか。
  162. 夏川嘉久次

    ○夏川参考人 もう一度御答弁申し上げますが、ただいま答弁したことは確信をもって申し上げております。
  163. 田中武夫

    田中(武)委員 それでは、争議の前に、私申し上げました二十六年のあの二十何名が死んだ事件がありましたね。あのときのことを一ぺん思い出していただきたいのですが、あのときの詳細を一ぺん言って下さい。
  164. 夏川嘉久次

    ○夏川参考人 ただいまの御質問に対し御答弁申し上げますが、二十六年に新入者の歓迎会をやりましたとき、たまたまフィルムに火が移りましたが、直ちに火は消えたのです。何分各方面のいなかからたくさん来て、初めて汽車に乗った人とか、初めて船に乗ったというような連中ばかり集まったために、その火を見てあわてて、またそのとき横浜の桜木町で焼け死んだ事件がありましたために、火を見たら死ぬものだとあわてた。それがために講堂の階段で圧死したのであります。そういう事件でありまして、最も遺憾に思っております。また死んだ人に対しては会社としてはできる限り深い気持で重く取扱いをしたつもりでおります。
  165. 田中武夫

    田中(武)委員 あのときに火が燃えて、初めていなかから出た子供だから騒いだことはあなたのおっしゃる通りです。ところが入口を締めてしまって、逃げ場がなくなって死んだのではないですか。
  166. 夏川嘉久次

    ○夏川参考人 ただいまの御質問に対して御答弁申し上げます。それはすでに裁判所で判決がありましたし、私が一々御説明申し上げるまでもなく、入口で焼死したということは絶対にございません。
  167. 田中武夫

    田中(武)委員 それは裁判も済んだことですし、そういうことを申し上げるつもりで私は質問をやったのではないのです。あなたがああいう答弁をなさるから、そういうことをいろいろと言わねばならない状態になったわけです。  そこであなたにお伺いをいたしますが、労働組合のうち二割だけが争議をやって、八割がそうでなかった、こういうふうにおっしゃったが、終いにだんだんと第一組合の方が大きくなってきて、ああいうことになったことも事実じゃないですか。しかもあのときの状態において、私争議の現場にも行きました。しかも、いわゆる秘密のとびら、あの仏間をあけて見ました。あの中には一体何が祭ってあったのか。夏川家先祖代々の位はいがありまして、そういうことについてあなたは今でも反省しておらないのでしょうか。
  168. 夏川嘉久次

    ○夏川参考人 ただいまの御質問に対して御答弁申し上げますが、仏間に夏川家の先祖が祭ってあるというのはうそです。それは前社長が私の先代でありましたために、父の位はいが祭ってあるというもので、夏川の先祖だとおっしゃるかもしれませんが、そのかかってある掛軸はなくなった従業員数百名の名前が載っておるのであります。これは事実をお調べになったらわかります。  それからさらに宗教強制の問題ですが、進駐軍が進駐した当時、私の方は航空機をやっておった関係から進駐軍がやってきました。そうしてやはり仏教の強制で疑われました。全従業員を調べた結果六五%が仏教徒、二五%がどうでもよい、五%が神教だというような数字が出まして、進駐軍といえども仏教の強制というものはわかりましたといって帰った。これは事実でありますから、このことも御答弁申し上げます。
  169. 田中武夫

    田中(武)委員 あなたはそういうふうにおっしゃるけれども、私は彦根の工場へ現に行った一人なのです。そうしてあの場所柄といいますか、四枚建のとびらをあけたのです。そこに何があったかということは私この目で見てきておるのです。それを今さらとやかく申しません。これを言うと三年前の社会労働委員会に逆戻りするようになりますから言いませんが、そういうことをあなたもぬけぬけと言われない方がよいのではないかと思う。私は現に見てきた一人なのです。そういうことはもうやめましょう。  そこで西村さんに一つお伺いいたします。先ほど中崎委員が会社の損失の問題についてお伺いいたしましたときに、この新聞をごらんになって五十億円云々ということをおっしゃった。この新日本新聞という新聞は、四月十五日付で、ともかくこの問題についてほとんど全紙を埋めるほど報道しておるわけなのです。ところが中崎委員の質問に対してこれを使って御答弁になったところを見ると、あなたもこれが出ておること及びこの中に書いてあることを御承知だと思いますが、この記事はあなたの方からお出しになったのですか。
  170. 夏川嘉久次

    ○夏川参考人 私は答弁をしなくてもいいということでありますが、仏間における位はいは私が見てきたとおっしゃるが、見てきたことが間違っておるから私は強く申し上げる。間違えられたことが新聞に伝えられておるから、私はこの機会に強く反抗するみたいでもはっきり申し上げておきます。
  171. 田中武夫

    田中(武)委員 私はそれを言わないと言っておるのですが、私自体は新聞を見たのではない。私自体はそれを見てきた一人なのです。
  172. 夏川嘉久次

    ○夏川参考人 見てきておることが間違いであれば間違いであると言ってもいいじゃありませんか。間違って見てきたのです。それは間違いありません。
  173. 西村貞蔵

    西村参考人 ただいまの御質問にお答え申し上げます。先ほど新日本新聞を引用して答弁いたしましたことについて、その新聞の発行に何かわれわれが関係があるかというお尋ねでありますが、私はその新聞をけさ見たのであります。たまたまその記事はわれわれ繊維業者として専門的の立場から見ておおむね妥当であるというふうに考えたのであります。新聞の発行には何ら関係はございません。
  174. 田中武夫

    田中(武)委員 私はなお質問を用意しておるし、なお金融機関の方々にも質問したいつもりでありましたが、ただいま夏川ざんの態度、言語及びその答弁のやり方等を考えましたときに、これ以上私は質問を続けることをやめます。
  175. 福田篤泰

  176. 小笠公韶

    ○小笠委員 ただいままで参考人の方々その他からいろいろお話を伺いまして、問題となるべき点は大体出尽したのではないかと考えるのでありますが、私は、本問題は、産業金融との関係を正常化して、日本の国の産業経済の発展に役立たしていきたいという念願から取り上げられておるものと確信いたすものであります。その意味で私は二、三の点について一般論としてお伺いいたしたいのでありますが、先ほど来参考人の方々の御意見で、金融の任務は最終的には預金者保護すなわち言葉をかえれば債権の確保にあるということを言っておる。債権の確保を中心とするということは、言葉をかえていえば、金融機関はあくまでも営利主義に堕しても預金者にのみサービスすればいいということになりかねないのであります。私はいま一つ、今日の日本の金融機関は高度な産業の育成、民生の安定という公共的使命を持つものであると思うのでありまして、先ほど宇佐美参考人は、小には預金者の保護、大きく言えば国の経済の伸展に寄与しなければならぬかもしれぬというふうな考え方を言われておったようでありまするが、この点に対して金融機関の方々の金融機関自身に対する考え方、この公共性という問題についていかなる観念を持っておられるか、問題の解決基本はここにあると私は考えるのであります。まことに重ねてで恐縮でありますが、三人の金融関係参考人のどなたからでもいいから御意見を伺いたい。
  177. 宇佐美洵

    ○宇佐美参考人 ただいまの御質問にお答えいたします。先ほど私が申し上げましたのは、やはり私どもの資金というものはほとんど百パーセントと言っていいくらい預金でございます。従いまして、預金者の大事なお金の完全な保全ということは、私どもがまず考えなければならぬことだと思います。しかし融資をいたします場合の相手といたしましては、ただいまお話がございました通り、日本の国家のために有用なものあるいはそのときどきの金融情勢によりまして、いろいろまた程度の差が生じましょうが、やはり国民の生活水準を向上するための企業事業というものに、さらに進めてまた日本といたしましては、今復興の非常に大事なときでございますので、そのためには基幹産業、険路産業と言われた方には優先的に出していく、さらに日本の非常に多くの部分を占めます中小企業につきましても、われわれは大いに考えていかなければならぬと考えております。私の記憶が間違いでございませんでしたら、貸し出しの件数にしますと、九〇先以上も中小企業に出しているようなわけでございます。そういうような点をよく考慮いたしまして貸し出しをいたしていることは、各銀行とも同様だろうと考えております。
  178. 小笠公韶

    ○小笠委員 ただいまの御答弁は、いわゆる金融機関の公共性という問題に対して新しい時代として当然に目ざめなければならぬ、そういうつもりだという御答弁だと了承いたします。それからただいまの御答弁の中で、金融機関の貸し出し件数の九〇%は中小企業向けだとおっしゃいましたが、金額においては三分の一でありますから、ちょっと申し上げておきます。  第二の点で伺いたいと思いますのは、今お話のような点はあると思いますが、日本の現状を見ますと、終戦後の日本は何と申しましても資金の不足であります。従いまして、今日の金融産業に優位な地位にあることも、これまた否定し得ないところであります。この優位なる地位を利用して知らず知らずのうちに産業に干渉しあるいは営利に走っているという事実もまた否定できない、私はそう考えるのであります。これは金融機関それ自身の意識的行為とは私は思いませんが、知らず知らずにその優位なる地位からきているものと考えるのであります。そこで先ほど来何回もお話が出ましたが、いわゆる金融機関は公共性を持ち、同時に一面において最小限度の任務である債権保全のためにとるべき限界をどう考えているかという問題であります。この限界論につきましては、答弁はいろいろあるようであります。ケース・バイ・ケースとも言っているようでありますが、もし金融機関性格がはっきりいたしますならば――はっきりするというより、はっきりみずから腹の中におさめるならば、たとえば両建預金の制度であるとか、あるいは役職員を関係企業に送り込むというような問題については、おのずから限界が出てくるものと考えるのであります。私はそういう意味においてこういうふうな役職員を融資先企業に送り込むという場合の当然の常識的限界があると思うが、その限界はどう考えておるか、重ねて伺いたい。
  179. 宇佐美洵

    ○宇佐美参考人 ただいまの御質問にお答えいたしますが、まず先ほどの数字は私が件数を申し上げたわけで、おっしゃる通りでございます。  それからただいまの限度の問題でございますが、これも今日取り上げられたような問題が起きないように私どもは十分考えていかなければならぬと思っておるわけでございます。余儀ない、やむを得ない事情とは申しながら、こういうことになりましたのは非常に遺憾でございまして、今後われわれとしてはこういう問題の起きないように何とか考えなければならぬと考えておる次第でございます。
  180. 小笠公韶

    ○小笠委員 そこで一般論としてはその程度にいたしまして、これまでの皆様方の御発言によって事実の確認の問題がほぼ終結してきておるものと考えるのであります。私が今申し上げましたように、現下の日本産業経済における金融産業に対する優位さから来る知らず知らずの、無意識的に出る行き過ぎという問題をどう是正していくかという問題については、これを是正する一つの目安がわが国にはあると私は思う。すなわち独占禁止法だと思うのであります。独占禁止法の第一条及び第二条が明らかに適正に適用される限りにおいては、私は問題は起ってこないものと考えるのであります。私はその意味において独占禁止法の諸規定について、専門家の横田公取委員長にお伺いいたしたいと思うのであります。  まず第一に、独占禁止法の目的、第一条――本件近江絹糸の問題は不公正な取引方法であるかどうかという認定にかかるものでありますが、不公正なる取引方法を禁止し、事業支配力の過度の集中を防止して、公正かつ自由な競争を促進し、事業者の創意を発揮させる目的をもって独占禁止法があることは御承知の通りであります。この目的をもちまして、第二条におきまして不公正競争定義をいたしており、第十九条におきまして不公正な取引方法を禁止いたしておりますことは御承知の通りであります。  そこで独占禁止法第二条の七項の四号、五号及びこれに基いて指定された昭和二十八年九月一日の公正取引委員会告示十一号の第九号及び第十号の適用の適正さを得るかいなかが、本問題解決のかぎになるものと私は考えるのであります。従いましてこの二十八年の公取委員会告示第十一号の適用は、あくまでも厳正公平であるべきものと考えます。こういう建前に立ちまして公取委員長に、今まで各委員及び答弁者側の御意見の中に出て参りました事項について、本告示第十一号の第九号及び第十号に該当すると認定するかどうか伺いたいのであります。  まず第一に、先ほど来もお話があったようでありますが、近江絹糸問題につきましては、労働争議に端を発して経営陣の更迭とのいわゆる交錯点にあるのでありまするが、先ほど中島参考人は、本問題はあくまで労働争議と切り離して、仲裁裁定は純然たる労働争議の立場に立ってやったと言われておったようでありまして、銀行団が会社の役員の更迭を指令したということが先ほど来議論になっておりまするが、本行為は告示第十一号の第九号に該当するというふうに委員長はお考えになるかどうか、まずその点から伺いたいと思います。
  181. 横田正俊

    ○横田政府委員 先ほど事務局の段階におきまして一応慎重に調べました結果につきましては、たしかお手元にきわめて簡単ではございますが事実を申し上げてあるかと思います。従いましてその事実がただいま御指摘の一般指定の第九号に当りますかどうかは主として、この九号にございます「正当の理由がないのに」ということになるかどうかにかかるわけでございます。この点はこれから委員会で最終の判断を下そうということでございます。ただいまこれにつきまして私の考えを申し上げることはお許し願いたいと思います。
  182. 田中武夫

    田中(武)委員 議事進行。先ほど同僚多賀谷委員からも、事は具体的に公正取引委員会において審議中であり審決前である、従ってその審決に間接的にせよ影響を与えるような発言は差し控えた方がいいのじゃないかというような発言もあったと思います。先ほど来委員各位の発言を聞いておりますと、あるいは国会開会中に結論を出せとかあるいはこれが具体的に何々に触れないかどうか、こういったような発言は現にやられているところの審決に大きな影響を与えると思うのです。公正取引委員会の審決はいわば一つの司法的な関係にあるような事案でありまして、一つの司法的な裁定であります。これに対して事前にこの裁定の内容に立ち入っての云々をするということは慎しむべきではないかと考えます。もしかりに公正取引委員会が下したところの審決が誤まっておるならば、後日公正取引委員会委員長にここに来てもらって、いろいろとその角度から追及するのが正しい形じゃないかと思うのです。従いまして本日のこの委員会は、参考人に対する質問はこの程度に打ち切って散会せられんことを望みます。
  183. 福田篤泰

    福田委員長 ただいま田中武夫君から発言がありましたが小笠公韶君がただいま発言中でありますので、その発言の趣旨は各委員が十分体しておりますから発言を許可したいと思います。続行願います。小笠公韶君
  184. 小笠公韶

    ○小笠委員 今同僚田中君からお話があったのでありますが、本問題は先ほど来申し上げましたように、事実認定はほぼ近づいている。それで法の適用の問題になると言われたことは、田中委員のおっしゃる通りでありますので、そういう発言の仕方はやめます。公正取引委員会委員長が、ただいまの御答弁の中で事務局で調べたもの、ここに配付してあるこのガリ版刷りのものがそうであると思うのでありますが、事務局で調べたと言われる言葉は、事務局がいろいろ調べた結果こういうことになりましたとこういうのが本筋だという趣旨に解釈していいかどうか、まずこれを伺いたい。
  185. 横田正俊

    ○横田政府委員 その通りでございます。
  186. 小笠公韶

    ○小笠委員 私は、これは田中委員のお許しを願いたいのでございますが、独占禁止法第十一条の金融業者の株式保有制限でありまするが、第十一条の規定は何の目的をもって制定された規定でありますか、その効果についてお伺いいたします。
  187. 横田正俊

    ○横田政府委員 これは御承知のように、主として金融機関事業会社を支配しがちなものであるということを前提といたしまして、他の事業会社間の株式保有についてはあれほどきびしい禁止の規定がないのでございますが、金融機関だけにつきまして、ああいう特別な制限規定を設けておるものと解しております。
  188. 小笠公韶

    ○小笠委員 第十一条の規定が今御答弁のような規定であるとすれば、形式的に一金融業者の場合が規定されておりますが、本規定のねらっているような効果を上げるような措置については、よしんばこの規定に触れなくともそういう場合は本条に該当しない、こう解釈してよろしゅうございますか。
  189. 横田正俊

    ○横田政府委員 十一条はきわめて形式的に、昔は五%でございましたが、現在は一〇%以上は持てないということになっておりますが、ただし金融機関につきましても御承知の第十条の適用はあるのでございまして、この両方合せまして、金融機関産業支配ということは論ぜられなければならないうのと考えます。
  190. 小笠公韶

    ○小笠委員 これは質問ではありませんが、同法第二十条に規定する当該行為の差しとめを命ずるという行為でありますが、差しとめはいかなる態様をなすものでありますか、この法律規定が想定しておる態様をまず伺いたい。
  191. 横田正俊

    ○横田政府委員 これは現在続けておりまする不公正取引方法をやめさせる、こういう内容を持っておると思います。
  192. 小笠公韶

    ○小笠委員 時間が来たようでありまするから、私は以上で大体質問、特に当面問題になっておりまする銀行団と近江絹糸との問題につきましてはそれ以上深入りしたくないのでありますが、先ほど来申し上げましたように、日本の国の現状から見て金融機関産業に対して有利である、知らず知らずの間に債権保全の気持その他から産業支配の道が起りがちでありまするが、こういうことは当分の間日本の経済の民主化という見地から見ると、いわゆる銀行法の第二十何条でありまするか、監督規定及びいわゆる行政処分の規定だけでは十分でない、さらにまた独占禁止法のこの裁定によっても不十分であります。意思なくして罪を犯すような弊を銀行家にさせないとも限らないのであります。そういうような趣旨からいたしまして、産業金融とのそれぞれの分を守っていくという上において、何らかの制度を創設する必要があるのではないかと考えるのであります。こういう点について、独占禁止法を長く施行担当せられた公取委員長は何らかの対案、お考えをお持ちになっておるか、まず伺いたい。
  193. 横田正俊

    ○横田政府委員 独占禁止法の規定並びに公正取引委員会の機構からいたしまして、必ずしも好ましくない金融機関産業支配ということを十分に取り締れないことをまことに残念に思いますが、さてこれにかわりまして、何か特殊な制度は考えられるかという点につきましてはまだ十分の検討をいたしておりませんが、しかしこれは大蔵当局等とよく話し合いまして、それらの問題について検討してみたいというふうに考えております。
  194. 小笠公韶

    ○小笠委員 私は今申し上げましたような趣旨から見て、この問題に対して一言提案をしてみたいのであります。国家公務員法第百三条第二項には、公務員は離職後二年間は、離職前五年間関係しておった企業に就職することを禁止されておる。ただし許可を受ければ別でありますが、公務員と、いわゆる行政をされる企業との関係を排除しようという考え方、これも経済が自由に――官僚の威力が不当に及ぶことを排除する趣旨にほかなりません。公正な行政の運営確保する趣旨にほかならないのでありますが、私が先ほど来申し上げましたような趣旨において、金融機関の今日の現状から見て、ともすれば意識的ではなくとも深入りしやすい、経理担当の重役だけでいいものがさらに副社長が入り、常務が入るということになりがちなのは人の人情だと思う。だがそういう制度をそのままにほうっておいては、ケース・バイ・ケースでは浜のまさごを数えるような、つかまえるようなたぐいになるのではないか、そういう意味において国家公務員法のような趣旨を考えて、何らかその間に規律を確立した方がいいのではないかと私は実は考えるのでありますが、こういうような趣旨におきまして、政府側において御検討をお願い申し上げたいと思いのであります。  いずれにいたしましても、私は最後に公正取引委員長並びに銀行局長にお願い申し上げたいのは、今申し上げましたように事案は一応審決に回り、場合によっては非常に時間がかかります、しかもいろいろな意味において、こういう問題が産業界において小なりといえども日々話題に上っておるのであります。そういう事実を率直に考えるときには、銀行法の検査の問題にいたしましても、あるいは独禁法の職権調査の問題にいたしましても、いま少し敏活なる活動をすることができたならばこういうふうな問題はなくなり、産業金融とがおのおのその分を守って、国の経済の繁栄に貢献し得ると思う。そういう趣旨において、銀行法の運用に当り、あるいは独禁法の運用に当りまして特に迅速なる措置、良識的なる配慮をお願い申し上げまして、私の質問を終えます。
  195. 福田篤泰

    福田委員長 加藤清二君。
  196. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 時間がだいぶ迫っておるようでございまするし、参考人の方もお疲れのようでございまするので、私は簡単に質問を試みたいと存じます。その質問の前に、私、委員長にも申し上げておきたいことがあるのですが、先ほど来お話がありまするように、裁判や審判の進行中は国会といえどもこれにタッチしない、それは裁判の公正に圧力を加える結果となってはならないからということなんです。にもかかわりませず、私どもがこの審議を本委員会に取り上げることに賛成いたしましたゆえんのものは、何も会社の経営上の内紛をここで聞こうなどということではない。もしそうだったとするならば、これは夏川さん以外の事件も過去においてずいぶんだくさんありまするし、現在においてもたくさんあるわけであります。それを一々取り上げておったら、国会はどれだけ暁の国会を繰り返してもできないわけなんです。私どもは問題は、中労委のあっせん案の実行程度――つまり労組の人権が問題だからでございます。人権は一日もゆるがせにすることができないのです。夏川さんが銀行から圧力を受けていらっしゃる、これももし事実とすれば確かにお気の毒なことでございます。しかしそれよりもなお数千人の働く人の人権はさらに私は重大であると思うのです。さればこそ私どもはこれに賛成したわけなんです。そこで私はそこへ問題をしぼってお尋ねしたいと思います。  第一点は、先ほど参考人の方々が争議以後の生産状況をお答えになっていらっしたのですが、生産が低下したということでございます。それが事実であるとすれば、これは全く不可思議なことでございます。三十年度、三十一年度と、日本の繊維工業は発展の一途をたどっておる。特にスフ、その他においては世界一だとまでいわれておる。あり余って困る、でき過ぎて困るとまでいわれておるのです。にもかかわりませず、近江絹糸だけが生産が低下したということは、これは何か特殊な原因があるのではないか。もし労働組合の怠慢のゆえであるとするならば、これは大へんでございます。あるいはまた経営者の経営手腕が低下したということであれば、これも大へんです。首藤さんの言われたように、和をもってたっとしとするところのその和が欠けているということであれば、これは国会に諮らなくても、会社同士で話し合いができることでございます。一体原因が那辺にあるのでございましょうか、設備か、労働者か、経営の問題か、この点を明らかにしていただきたい、こ思うわけでございます。まず夏川さん、次いで常任監査役の方からお願いいたします。
  197. 夏川嘉久次

    ○夏川参考人 ただいまの御質問に御答弁申し上げますが、私は現在の経営に対しましては、会長でありまして実務にタッチしてはいけないという制限を加えられておりますので、現在のことは言えませんが、争議後の措置がうまくいってないんじゃないかと想像するのであります。
  198. 西村貞蔵

    西村参考人 お答えいたします。ただいま夏川会長から御答弁申し上げましたように、争議後における人の和を得ていないのが原因だと一応考えております。
  199. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 第二点として、合併を心配している向きがある、こういうお話でございます。もし合併されれば、青年が希望を失う、こうもおっしゃっております。そこで近江絹糸がそういう心配をする、特に若い青年がそういう心配をするということでありますならば、一つ承わりたいことがございます。それは近江絹糸は一体どこへ合併されようとしておるのか、どこへ合併を計画されておるのか、合併された結果、青年はなぜ希望を失うのであるか、この点を承わりたいと思います。
  200. 西村貞蔵

    西村参考人 お答えを申し上げます。どこへ合併をされるかということはもちろんわれわれはわかりません。現在経営の主権をお持ちになっておられる銀行の方で、どういうふうな考えがあるかは想像できません。ただし新聞その他の情報を見ますと、あるいは三菱レーヨンとか、いろいろな名前が出ておりますので、あるいはそういうふうな気持を持っておるのではないかというように思います。また合併されれば青年社員たちが希望を失うであろうというようなことは、これももちろん一部の想像ではありましょうけれども、従来戦前におきましても、いろいろな会社が企業整理とかいろいろなことがありました。それでやはり主流になる会社の従業員は非常に優位に立ちます。被合併会社の従業員はどうしても下積みになるという例が多いようでございます。
  201. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 この合併の実権は銀行側が握っていらっしゃる、こういうお話でございますので、銀行側にお尋ねいたしますが、特に主流銀行――三菱さんでしたか、三菱さんは、一体近江絹糸をどこへ合併されようとするのか、合併するとすれば、なぜ合併しなければならないのか、合併した場合に近江絹糸の従業員を下積みにしてしまうのかしないのか、そういう計画も一つここでお漏らし願いたい。
  202. 宇佐美洵

    ○宇佐美参考人 お答えいたします。三菱レーヨンが合併を計画しているという話は、ただいま私初めて承わりました。今までうわさにも聞いたことがございません。従ってこれ以上お答えができないのでございます。もしできれば、ただいま新聞雑誌等でそういう話があるということですが、どういうところにそういう話があるか、参考のために聞かしていただければと思っているくらいでございまして、一向私は存じないことでございます。
  203. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 実権を握っていらっしゃる銀行側は初耳だと言われる。しかし先ほどの夏川さん及びもとの専務さんのお話によりますと、参考公述の中にはっきりとこのことをおっしゃったわけでございます。もしこれが事実であるとすれば、これは希望を失うのは青年よりも、営々と近江絹糸を育てていらっしゃった育ての親の方々が希望を失われるその量が一番大きいのではないか、従っていろいろ問題がかもし出されてくるということは、これはわかるわけでございます。そこで、銀行側はそうでないとおっしゃる、夏川さんの方はそうだとおっしゃる。そこで今度夏川さんにお尋ねしますが、銀行側は初耳だ、デマだ、そんなことはあり得ないと、こうおっしゃるようですが、そうなると夏川さんの方は、デマをお作りあそばしたのでございますか、それとも銀行側が、ここでは言い得ないからデマだと言うていらっしゃるのでございますか、夏川さんの先ほどの元気のいいところでお答えを願いたいのでございます。
  204. 夏川嘉久次

    ○夏川参考人 お答え申し上げます。私はそういうようなうわさを耳にいたしました、あるいはそういうようなことの書いた本も、雑誌や小説、新聞に載ったかもしれませんが、見たこともあります。さらにまたそのことが三菱財閥の事業の完成に使われるのだといううわさも聞きました。どの程度かわかりません。だからそういう問題は非常に関心があるわけであります。非常に心配しなければならぬと思って心配しております。それを銀行へ行って聞くわけに参りませんものですから、ひそかに心配しております。
  205. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 それでは今度銀行側にお尋ねいたしますが、この問題は、あなたは、夏川さんがあのようにおっしゃっても、なおデマだとおっしゃいますか、もう一度念のために――先ほどのように九〇%も中小企業に貸しているなんといううそは、本委員会では通用いたしません、みな知っておって聞いておるのでございますから、どうぞ率直にお答え願いたい。
  206. 宇佐美洵

    ○宇佐美参考人 お答えいたします。九〇%という話が何でございますか、これは件数で、私、こういうことははなはだなれませんので、言葉が足りませんでしたので、これは一つ御訂正を願います。  それからただいまのお話でございますが、デマだの小説だのというようなお話があったようでございますが、そういうことで御想像になっていろいろ言われることは、私としては迷惑以外の何ものでもないわけでございまして、むしろ先ほど申し上げました通りどういう雑誌であるか、どういう出どころであるかをはっきりおっしゃって教えていただきたいと思います。繰り返して申し上げますと、私が知っている限りにおきましてそういうことを聞いておりません。
  207. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 時間がないので急げという注文でございますから、何でもいいから簡単にお答えを願います。  ただいま銀行側は、そういうものは見たことない、聞いたことがない。こんなものは見たことないと歌の文句のようでございますが、夏川さんはあくまでそれは何か証拠をお持ちでございましょうか。
  208. 夏川嘉久次

    ○夏川参考人 その問題につきましては、ある三菱レーヨン関係の人を社長に推薦するという問題で、千金良さんと賀集さんとその社長になるという人が会って――その交渉を受けた人から直接には聞きませんけれども、その話を聞いたという人から間接に聞いたことでありますから、そういう話も話題にのったことがあるのじゃないか、あるいはそういうことが現在でも進行しているのじゃないかという疑いを持っております。
  209. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 それでは銀行側に承わりますが、将来近江絹糸を何かの会社に合併なさるような御計画がございますか、ございませんか。過去でなくして将来のこと、これは心して答えて下さい。そうでないと、あなたは国会を侮辱し、軽視したという結果になってはあなたの方にもお気の毒な結果になりますから……
  210. 宇佐美洵

    ○宇佐美参考人 お答え申し上げます。非常にむずかしい御注意をいただきながらの御質問でございますが、将来といっても非常にむずかしい問題でございます。しかし現在におきましてはそういう計画はないものと私は承知いたしております。
  211. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 三菱さん、私が聞いておりますのは、将来といってもばく然として私の質問が悪かったかもしれませんが、現在及び近き将来、つまり思考し得る範囲内においてそういう御計画があるかないか。ここで仲直りを皆さんがなさっても、またお帰りになってから会社同士で一番大事な和を乱すもとになってはいけないので、お互いが腹の探り合いで経営しておられますと、ますます品質、数量の低下を来たすおそれがありますから、念のためもう一度承わります。
  212. 宇佐美洵

    ○宇佐美参考人 お答えいたしますが、三菱レーヨンが合併するかどうかということは、これは三菱レーヨンがきめる問題だと私考えます。何かほかに計画があるかどうか、これは私ども、が今ここでとやかく申し上げることがすでに限度を越えておる問題じゃないかと考えます。ただ私が申し上げ得ることは、現在私どもは何も聞いておらないということだけを申し上げる以上には、それこそ限度を越える答えになるのではないかと思う次第でございます。
  213. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 労働問題について聞きたかったのでございますが、今委員長もお聞き及びのように、水かけ論になりますと、これは意図するところではございませんからぜひ一つ労組の委員長ないしはその責任者を呼んでいただいて、どちらの経営にゆだねた方がより会社を発展させるゆえんのものであるかを私はただしてみたいと思います。ぜひ一つ労働問題については、委員長ないしはその責任者を呼んでいただくようにしていただきたいと思います。最後にもう一点、今度は夏川さんに承わりますが、私が今まで聞いております範囲によりますと、中小企業がぶっ倒れそうになりました場合には、銀行管理を受けますと支柱をいただいたようなもので、つっかい棒をいただいたようなもので、かえって安心だという声を多く聞いておりますが、お宅の場合は銀行管理――乗っ取りとまで言われているようですが、私はこの問題はあえて銀行管理と申し上げます。今後銀行管理を受けた方がよろしいのか、それはでき得るものならば排除された方がよろしいのか。それから銀行側には、先ほど来いろいろ言われておりますように、その資本と投資とのバランスから見て、少し他の会社の管理の場合と比較しますとその員数が多いように見まするが、これだけの員数が乗り込まなければならないゆえんのものがございましたならば、その点をどうぞ。
  214. 夏川嘉久次

    ○夏川参考人 ただいまの御質問にお答え申し上げますが、事業が行き詰まりまして経済的に非常に窮迫を生じた場合に、銀行から出てきて応援していただくという例は多々ありますし、非常に効を奏する場合があります。近江絹糸の場合は、争議後経済状態はそこまで悪化しておりませんし、経済上におきましては独立性を持っておってそういう必要はなかったと思います。さらに銀行からおいで下さったあとの経過から見ますると、いろいろの面におきましてあまりよくいってないように感ずるのであります。
  215. 宇佐美洵

    ○宇佐美参考人 お答え申し上げます。員数の点でございますが、これは最初銀行が推薦いたしました員数はなるほどほかの会社よりも多いように考えられますが、その一人々々をごらんになるとおわかりになると思いますが、当時の争議対策として、労働関係あるいは経理関係というふうにそれぞれ分れて専門家が融資団以外から出ておるようなわけでございます。それからまた技術方面の副社長もまた私ども銀行団といたしましていろいろ考えた人事ではございますが、しかしこれもそういうところの推薦を受けてやった次第でございます。なるほど推薦した数から見ますと多いようでございますが、事情やむを得ないと考えております。
  216. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 委員長もお聞き及びの通り、ここでも意見がま二つに分れているようでございます。いわばこれは会社の内紛と申しましょうか、会社の内部の争いのようでございます。しかもこれが経営上の問題で内紛が行われている。こういうことを国会で取り上げるというその取り上げ方についても、私はある程度疑問を持ちますが、国会が会社の内紛に巻き込まれたり、国会が一会社に利用されるというようなこと、特にそれが審決前の公取に圧力を加えるような結果になることは、国会の権威を保つためにわれわれは考えなければならぬと思います。従いまして私どもは今後この問題を別な角度から取り上げてみたいと思います。与党も野党も一致して考えなければならないことは、日本の重要産業の第一位にあるところの繊維産業がいかにしたならば発達するか、どうしたならばよりよく発展するかという点にウエートを置いて審議を進めるべきではないか、かように考えるわけでございます。  最後に私は近江絹糸の会長さんに一言希望を申し述べておきますが、あなたのファイトたるやすばらしいものです。りっぱなものでございます。近江絹糸の発展は夏川さんの努力であると先ほど来皆さんが言われました。しかし、それは確かに一面ではありますが、日本繊維産業の発展は一にかかって社長さんの経営手腕もありますけれども、もう一面、労働者の献身的努力によるものであるということを、夏川さんどうぞお忘れなきよう御経営願いたい。そのことがやがてあなたが再び社長に復帰される重大な原因の一つになるからでございます。  社長の大邸宅と対照的に、寄宿舎のかげになく女工のあること――あなたの会社がそうだとは言いませんけれども、これを忘れてはならないと思います。重役の持つ、貴婦人の指先に光るダイヤは女工の涙である。社長のキャデラックの響きは、TBに苦しむところのラッセルに通ずるものであると私は考えております。女工哀史は、今や大企業の繊維産業から消え去ったとは言われておりますけれども、しかし当ってみれば、なお最低賃金制の必要を痛感するのでございまして、私はこの意味におきまして、国会において委員長の指名なくして立ち上ったあなたのあのファイト、このファイトを会社の発展と従業員の幸福のために向けられるならば、あなたも生きがいがあり、今まで近江絹糸を大きく育ててきた育てがいがあった、こうなるではないかと思われるわけでございます。何とぞ近江聖人のように、一々御奮闘あらんことをお願い申しまして、終ります。
  217. 福田篤泰

  218. 永井勝次郎

    永井委員 私一分ほど委員長に一応お伺いしたいと思います。私先ほど来ずっとこの委員会の議事を見ておりまして、非常に不愉快に聞いておりました。この委員会産業資本のあり方の問題について調査を進める、こういうことでありましたが、そういう問題を取り扱うとしては、取り上げた具体的な問題が適当でなかったではないか、ここでは会社の内紛を国会で取り上げたことは、タイムリーに取り上げたようにうかがわれます。しかもこの国会の取り上げ方の背景には、先ほど新聞で示したように、そういう新聞報道も全紙埋めて書いている、こういうような会社の内紛と、夏川前社長が復元をはかるといういろいろな動きがうわさされておるというような、そういう問題を背景として、タイムリーに、しかも審決がまさに下らんとしておる、そういう取り上げ方としてはタイムリーであっても、これは国会で取り上げる問題としては不適当ではないか、しかも議事の運びが本日の最初から最後まで適当な運びではなかったのではないか、私はこれはやはり国会の権威の上において、今後の運営のあり方について、相当問題が残ると思うのでありますから、委員長の本案件を取り上げました目的及びきょうの議事に対する所見を一応承わっておきたいと思います。
  219. 福田篤泰

    福田委員長 この問題はすでに御承知の通り昨年来三回国会で取り上げられております。同時にまた先般の理事会で再四にわたりまして、野党理事も入れて協議の上決定した次第でありますから、この問題については何ら御心配の御懸念はないと思います。なお議事の運びにつきましても、与党並びに野党相互に発言を許可しておりますから、非常に公平な取扱いをしていると考えます。
  220. 小平久雄

    ○小平(久)委員 本日の参考人諸君においで願っての委員会において、委員各位がいろいろな印象を受けたようでありますけれども、しかしながらわれわれが、あるいは理事会において、さらにこの委員会において、参考人に来ていただくということを決定いたしましたのは、ここに書いてあります通り私的独占の禁止及び公正取引確保に関し参考人に来ていただいた。たまたまこの近江絹糸の関係の皆様がおいでになられましたが、われわれはあくまでも金融産業の両者がそれぞれの立場において御活動願うことが最も適当である、そういう見地に立って本日は皆さんの御意見を承わろう、こういうことだったわけであります。これが本日の本来の姿であるべきでありまして、この問いろいろ新聞に出たとか、ああだとか、こうだとか言っておりますが、私はそういうことはあまり気にせぬでもよろしいのではないか、もしそれは何かためにせんがためにそういうことをなされた人があったとすれば、われわれとしてはいい迷惑でありまして、われわれは何らそれを意に介する必要はないと思うのであります。  そこで本日はたまたま近江絹糸の関係の皆さんが多く出席されたわけでありますが、まず公取の委員長さんに承わります。こういった例は金融機関があまりに金融の力にものを言わせて産業面に進出するというか、支配するというか、やり過ぎる、こういう事例はわれわれも大小幾つか知っておりまするが、この表向きになった問題というのは、どういうことが今までありましたか、また現にほかにもあると思いますが、その状況をこの際一つ説明願います。
  221. 横田正俊

    ○横田政府委員 これは昨年の当委員会であったかと思いますが、公正取引委員会で現在までに取り上げました銀行関係の問題を数件御報告をいたしたと存じます。たしか刷りものにいたしましてお配りいたしたことと存じます。なお最近におきましても二、三申告がございました事件があるようでございます。それはまだ事務局の手元にありまして、委員会には報告になっておりません。なお御承知のように、この種の事件はいろいろわれわれの耳にも入るのでございますが、正確なことはやはり申告がありませんとどらも取り上げにくいのでございます。ところがこの申告はやはり金融を断たれたり、不利益を受けるというようなおそれがありますので、なかなか思い切って申告をしてこないというようなことで、実際にどれだけのことがあるかということを把握いたすことは非常に困難でございますが、しかし現在でもこれは具体的に私は今ここで名前を覚えておりませんが、二、三申告なさったところがあるやに思います。
  222. 小平久雄

    ○小平(久)委員 現在も二、三件申告のあったものがある、ただし名前はよく覚えておらぬ、こういうお話ですが、その内容はどういうものですか。大体これはごく概略でよろしゅうございますが、こういった人をむやみに送り込むとかいったそういう内容のものですか。
  223. 横田正俊

    ○横田政府委員 やはり大体役員についての問題のように聞いております。
  224. 小平久雄

    ○小平(久)委員 そこで銀行局長さんに伺いますが、またこういった問題の解決一つの指標としては、確かに独禁法だろうと思いますが、現在の銀行を監督するという大蔵省の立場からいたしますと、この種の紛争が起きないように、また今後とも誤解が起きないように監督する道というものは、法律的なりあるいは行政指導の面なりにおいて、できることなんですか、できないことなんですか。
  225. 東條猛猪

    ○東條政府委員 お答え申し上げます。現在の銀行法その他の関係法規の建前から参りますと、いわゆる金融機関経営のやり方に関する問題は、私は金融系統の法規の関係から申し上げますれば、むしろ行政指導で行くべき問題であると思っております。そうしてはなはだ微力ではございますけれども、私どもといたしましても、案件がわかりましたような場合におきましては、私どものでき得る限りの事情を取り調べまして、金融機関としてこうあるべきだという判定をいたしました場合におきましては、指導と申しますか、勧告と申しますか、そういうことをいたしております。また結果としてきわめて遺憾なことでありますけれども、結局公正取引委員会の意思決定に仰がざるを得ないという事態に立ち至りました事後におきましても、私ども監督官庁の立場にあるものといたしましては、そういう事態においてもできるだけ最後的な審決が下るまでの間努力をすべきものである、かように考えまして、はなはだ微力ではございますが、努力はいたしておるつもりでございます。
  226. 小平久雄

    ○小平(久)委員 そこで金融機関の方に承わりますが、金融機関があまりにも産業方面に対して支配的である、こういう声はおそらく皆さんのお耳にもお入りだろうと思うのです。本日たまたまその一つの具体的な例として近江絹糸の問題がこうして話題になっておるわけでありますが、一応このような近江絹糸の問題としてでなく、いわば世論にこたえるという意味において、金融機関の中においては何か具体的に対策というか、今後のあり方についてお話し合い等がございますか。現にそういうことは何にもございませんか。その辺を一つ三菱さんの宇佐美さんにお伺いしたいと思います。
  227. 宇佐美洵

    ○宇佐美参考人 お答えいたします。何といいますか、そういう批判に対しましては私どもも深く反省しなければならぬと考えております。またこれは私の想像でございますが、頭取たちの間におきましても、それぞれそういうような批判に対して反省があるんじゃないかと考えられます。しかし現在のところこういう具体的にということはまだありませんが、これは各銀行におきましてそれぞれ慎重に考えなければならぬ、こういうふうに考えております。
  228. 小平久雄

    ○小平(久)委員 私は今の宇佐美さんのお答えならば、実ははなはだ申しわけありませんが、何といいますか、心もとない、そういうふうに受け取ったのです。本日は、実はあなたの方の小笠原頭取さんに来ていただく予定だったのが、委員長からの報告によると、本朝突然病気になられて来られない、こういうことです。御病気とあらばやむを得ませんが、しかしわれわれ委員としてははなはだ残念でもあるし、突然病気ということには若干不可解の念すら実は私は持っておるのです。何もあえて皆さんをお責めしようというのじゃなくて、事実を事実としてお尋ねしたい、こういうだけの話なんですから、そういう点がはなはだ残念に思っております。ただいまの御答弁からしても、頭取たちは何か考えているだろうというようなことであって、頭取さんのお考えを直接聞けないことがはなはだ残念であります。  それから重ねて宇佐美ざんに承わりますが、私先ほど来申し上げます通り近江絹糸の問題はたまたま一つの例として私どもは見ておるのでありすすが、先ほどわが党の小笠委員と公取委員長との質疑がありましたが、ここに公取からわれわれ委員に配付されました「株式会社三菱銀行ほか六行に対する件」という刷りものがあります。これはごらんになっておりましょうか。
  229. 宇佐美洵

    ○宇佐美参考人 拝見いたしておりません。
  230. 小平久雄

    ○小平(久)委員 ごらんになっておらないそうですが、先ほどの質疑の中に大体こういう事実だということは何かお認めになったようにも承知したんですが、それはいずれでもよろしゅうございますが、この中には、とにかく公取がたとい事務的処理とはいえ「事実の概要」というものをここにうたっております。この文章を見ると、われわれからいたしますと、常識的にいかにもふに落ちない文面になっております。というのは、まず第一に、近江絹糸の当時の夏川社長を三菱銀行に招致した、俗に言えば呼び寄せたということです。これを三十年の六月と三十一年の六月ですか、二回そういうことをやっておるわけです。そうして最初のときには五つばかりの要請をした。ところがそれを夏川社長が了承した。了承したというのはどういうことかよくわかりませんが、とにかくこの五つの項目のらち特に五として書いてある「将来他の六行と協議の上三菱銀行が社長を推任する場合これに現役員の人事権を賦与するため、あらかじめ現役員の進退一任の辞表を三菱銀行提出すること。」、これが要請の中の一つです。こういうことが大体このような誤解を招くもとだろうと思います。先ほどからあなたのお話を承わっておりますと、要するに、会社をよくしたい、それに協力するんだという建前で銀行はやるんだ、もちろん銀行本来の姿からして債権を確保するんだということもおっしゃっておられますが、一口に言えば、その事業にむしろ協力する立場においておやりになっておるのだ、こういうことであろうと思うのです。銀行側から言えばいかにも協力と言われるかもしれませんが、受ける方の感じからすれば、これは決して協力でなくして、逆にときには強要でさえある。そういうことがまずまず世の中のこういった場合の実相であろうと思うのです。そこでこの報告をみると、今読み上げました通り、一方には呼びつけ、しこうしてまだ社長がきまらぬ、将来決まった場合にその社長に人事権を一切与えるために、あらかじめ進退一任の辞表を三菱銀行に出させるというようなことは、これは常識的に考えて、いかに銀行が御親切であり協力的であろうとも、その方法としてわれわれはどうもこれは強要に近いと感ぜざるを得ないような気がするんですが、それはいずれにいしましても、今私の読み上げたようなことがここにうたってあるんですが、こういう事実があったということはお認めになられますか。
  231. 宇佐美洵

    ○宇佐美参考人 招致したというお言葉でございますが、実はそれを拝見いたしておりませんので何でございますが、そういう強い言葉で表されておりますが、これは銀行と会社の経営者との場合、ことに近江絹糸の場合は、大阪に本社がございまして、来ていただくという意味におきまして、決して招致するなんという言葉で表すようなことではなかったと考えております。  それから辞表をとりましたことは、これは当時社長が空席になっておりまして、なるべく早く社長を決めなければならぬという状態でございましたが、当時の近江絹糸の状態といたしまして、いろいろの人に社長になっていただくように交渉する上におきまして、やはり交渉をする相手にある程度の安心をして来ていただくというようなことのためにそういう方法が必要じゃなかったかというふうに考えております。実は私はその当時仕事としては関与いたしておりませんでしたが、そのことを聞きまして、やむを得ないことだというふうに考えておりました。
  232. 小平久雄

    ○小平(久)委員 一体近江絹糸という別個の会社の役員の辞表を取り上げる権限が銀行にはあるのですか。
  233. 宇佐美洵

    ○宇佐美参考人 権限があるといいますと大へんむずかしい問題になりますが、当時そういう交渉をいたしておりましたので、おそらくなるべくこの交渉を円滑にいたすためにそういうことを御相談して出していただいた、こういうふうに考えております。
  234. 小平久雄

    ○小平(久)委員 具体的にわかりやすく近江絹糸なら近江絹糸と名前をあげますが、近江絹糸の方の役員が、善処をお願いしたい、それにはこうしますからといって、その辞表をあっせん者として預かったというのなら、われわれもわかりますが、少くともここに公取がわれわれに配った書類から受ける印象は、呼びつけておいて取り上げた、そういうことになるとどうも常識的に考えてやや横暴に過ぎるようなことをなさったのではないかという印象を受けるのですが、これは私の見解ですからこれ以上申し上げません。いずれにいたしましても、このような問題がわれわれの委員会で取り上げないで済むように、特に金融機関の皆さんには御善処を要望申し上げまして私の質問を終ります。
  235. 福田篤泰

    福田委員長 なお委員各位に申し上げておきますが、先ほど来再度にわたりまして野党の委員から、ともすれば公正取引委員会の決定に対して影響を与えるような発言があるのではないかという御注意がございましたので、御報告を申し上げておきますが、委員長といたしましても、事前に横田委員長とよく打ち合せまして、実は横田委員長からこの前の週のうちに判決があるというふうに承わって、理事会に諮ってきょうの日を選んだわけでありまして、たまたま委員会の決定がおくれたためにそういう発言があったと存じますから、その点御了承を得ておきたいと思います。  他に御発言はありませんか。――参考人各位には御多用中のところ、長時間にわたり種々御意見を承わり、本問題調査に多大の参考になりましたことを厚く御礼申し上げます。  本日はこの程度にとどめます。次会は明十日午前十時より開会することとし、これにて散会いたします。    午後五時四十四分散会