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1957-02-20 第26回国会 衆議院 商工委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十二年二月二十日(水曜日)     午前十時十九分開議  出席委員    委員長 福田 篤泰君    理事 小笠 公韶君 理事 鹿野 彦吉君    理事 小平 久雄君 理事 笹本 一雄君    理事 西村 直己君 理事 加藤 清二君    理事 松平 忠久君       阿左美廣治君    内田 常雄君       大倉 三郎君    川野 芳滿君       齋藤 憲三君    椎名悦三郎君       島村 一郎君    首藤 新八君       鈴木周次郎君    田中 角榮君       中村庸一郎君    南  好雄君       横井 太郎君    片島  港君       佐竹 新市君    田中 武夫君       多賀谷真稔君    中崎  敏君       帆足  計君    水谷長三郎君       八木  昇君  出席国務大臣         通商産業大臣  水田三喜男君         国 務 大 臣 宇田 耕一君  出席政府委員         総理府事務官         (経済企画庁長         官官房長)   酒井 俊彦君         総理府事務官         (経済企画庁調         整部長)    小出 榮一君         検     事         (刑事局長)  井本 臺吉君         法務事務官         (入国管理局         長)      内田 藤雄君         通商産業政務次         官       長谷川四郎君         通商産業事務官         (大臣官房長) 松尾 金藏君         通商産業事務官         (通商局長)  松尾泰一郎君         通商産業事務官         (重工業局長) 鈴木 義雄君         通商産業事務官         (軽工業局長) 齋藤 正年君         通商産業事務官         (繊維局長)  小室 恒夫君         通商産業事務官         (鉱山局長)  森  誓夫君         通商産業事務官         (石炭局長)  讃岐 喜八君         通商産業事務官         (公益事業局         長)      岩武 照彦君         特許庁長官   井上 尚一君         中小企業庁長官 川上 爲治君         工業技術院長  黒川 眞武君  委員外出席者         外務事務官         (経済局次長) 佐藤 健輔君         通商産業事務官         (通商局次長) 樋詰 誠明君         通商産業事務官         (重工業局鉄鉱         業務課長)   井上  亮君         通商産業技官         (重工業局製鉄         課長)     松本  豊君         専  門  員 越田 清七君     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  通商産業基本施策に関する件     ―――――――――――――
  2. 福田篤泰

    福田委員長 これより会議を開きます。  前会に引続き、日本経済総合的基本施策並びに私的独占の禁止及び公正取引に関し質疑を継続いたします。笹本一雄君。
  3. 笹本一雄

    笹本委員 私はわが国産業経済の発展にとって最も基本的な重要な四つの部分に関しまして、大臣並びに事務当局に対して質問をいたしたいと思うのであります。その四つの部門と申しまするのは、すなわち石炭、電気、石油及び鉄鋼でございます。この順序によりまして質問をいたしたいと思うのでありまするが、長い時間を食う関係上一問一答の形式を避けまして、総括質問の形で進みたいと思うのであります。どうか十分メモをとられまして、落ちなく明快なる御答弁をお願いいたします。  まず第一に石炭問題でありますが、政府は最近上高しつつありまするところの経済事情を考慮して、三十二年度の石炭計画としては、石炭の換算六千五百カロリー換算で、必要燃料動力を一億三百七十二万六千トンを算出されまして、そのうち国内炭の生産を五千三百万トン程度を見込んで、この出炭態勢を着々整えておられるようでありますが、この出炭計画は果して可能なのでありましようか、これに対して政府の計画基礎具体的説明と、不測の事態に応ずる対策とをお伺いしたいのであります。なぜならば、申すまでもないことでありますが、石炭鉱業なるものは他の一般産業と異なって、生産の調節ということは非常に困難な地下資源開発産業でありますが、それと同時に基幹産業として、他産業一般に及ぼす影響がすこぶる大きいものがありますだけに、正確な需要を測定して生産量を指示することが、非常に重要なことであると同時に、たとえば将来ストその他の障害の発生が絶無とは断じられないので、国内炭生産に支障を生じた場合の対策をも、十分に立てられておらねばならぬと思うのであります。次に問題といたしたいのは、基幹産業としての石炭鉱業はどうしても長期安定操業がはかられなければならぬということは、消費増による石炭の飛躍的な増産目標の達成ということとともに、需要に対応して生産コストの安定ということから強く要請されるのであります。この石炭鉱業の長期安定という時代的課題に対して、政府はいかなる見解と対策を持っておられるのか、以下これに対する具体的問題について逐一御伺いしたいのであります。  現存する炭鉱の合理化方策であります。縦坑、深部区域の開発、機械化と新技術導入低能率炭鉱の集約整備問題と、それに伴う労働問題については、どういうお考えを持っておられるか。また新鉱の開発の問題でありますが、現有炭鉱出炭能力は、ほぼ十年か十五年で頭打ちとなり、能率の面でも現在の三割程度の向上が一応の限界だといわれております。これに対して、新鉱の開発をどのように進めていかれるか、これに対するお答えを願いたいのであります。  次に資金と税制の問題でありますが、石炭の増産費・新鉱の開発には多額の資金が必要でありますが、この場合、増資と借入金、すなわち外部資金に依存せざるを得ないが、これに対してどのような措置をとられますか。また内部資金の充実を期するためにはどのように措置するか。追加投資引当会制度、あるいは鉱害引当金制度など、税負担の面をどうするか、特に追加投資引当金の問題でありますが、これは石炭価格を下げる上において最も重大なことでありまして、これは大臣が特に大蔵大臣と御相談の上、この処置は急速に運んでいただきたいことを希望するものであります。  次に輸送関係でありますが、石炭貨車、港湾の積み込み施設などの対策も伺いたいのであります。たとえば、三十二年度石炭積み出し見込みに対して、すでに各主要港の現能力は不足も来たしている。またたとえば苅田や唐津などのように、ほとんど積出港としての形をなしていけないものがあるのであります。各港に必要な施設が増強されねば、せっかく出炭された石炭が、産業界に出てこないことになる。これらをどうするのか。以上、石炭問題に関する質問を申しあげました。なお石炭については、火力用炭の問題がありますが、これは次の電気問題の中に包含してお伺いしたいと思います。  続いて電気の問題についてお尋ねを申し上げたいと思うのであります。わが国産業発展上の三大降路の一つが、この電気問題であることは今や世間の常識でありますが、この電気に関する問題点をしぼって、私は次の五点すなわち料金問題、資金問題、資材の問題、つまり石炭、石油という燃料源の問題、需用供給の問題、九電力と電発の問題といたしたいと思います。  まず第一に料金問題でありますが、電気料金の値上げ問題は、その影響するところきわめて大きいので、これを極力避けねばならないことは申すまでもありませんが、私はこの料金問題を次の二つに細分してお伺いしたいのであります。その一つは、いわゆる三割の頭打ち制度の問題であります。昭和二十九年、電気料金値上げが実施される際、これを三割に頭を押えた制度が、二度の継続で今日に至っているのでありますが、その際政府は税や金利の面で業者負担の軽減をはかる一方、業者はまた業者で自己の会社の合理化その他に努め、両々相待って値下げの方向を作ることになっていながら、その後実際には政府は金利の軽減という面には何らの手も打たず、ただ税の面のみを、すなわち租税特別措置法を改正して法人税免税措置をとったのみであります。ところでそもそもこの三割頭打ち制度というものはまことに不合理なものであって、七燈以下という零細需用者たる大衆には何ら恩典が及んでおらず、料亭とか待合とか会社とかいう、負担力が十分ある向きのみが恵まれるというものなのであるから、よしんばこれを廃止して料金値上げとなっても、実質的には大衆生活に何らの影響もないのであって、この意味から申せば、この制度は当然廃止されてよいのでありますが、ただ問題は電気料金値上げという事実が世人に与える心理的影響であり、ましてや国鉄運賃値上げという事実や、その他をもしんしゃく勘案して、政治的には慎重を期さなければならぬという性質のものなのであります。ところが他方、法人税における業者への免税には、増資免税重要物産免税とがあって、これを三十二年度に存続すると、両者合計で約十五億円となるのであります。かりにこの存続を廃止するとしても、一方、三割頭打ちをさらに続けようとは政府としても言い得ないところだろうと私はそんたくするのでありますが、ただいま問題になっております電気料金値上げについて政府はどう措置されるのか、これをお伺いする意味で私は次の点を質問するのでありますが、この三割頭打ちをある期間、一年なり半年なり延長し、それとともに、業者に対する免税措置を存続するというと、これは電力コストにどう響くのか。つまり、この二方策の併用は電気料金値上げを誘発するのかしないのかという根本点について、当局の御見解を伺いたいのであります。その次は、東北、北陸両電力会社の値上げ問題であります。最近電力の需用が急増して電力が不足のため、来たる四月から東京、関西、中部より九億キロワット時の電力融通措置を受けることになっているこの両電力会社値上げ申請に対して、政府はどう措置されるのか。料金問題について、右の二点をお伺いいたします。  さらに第二の資金問題でありますが、昨年末策定された電力新五カ年計画によれば水火力合計七百万キロワットが開発されることになり、すでに、着々実施されてもいるようでありますが、これを完遂するためには、昭和三十二年度以降は年々二千億ないし二千六百億の資金を確保しなければならない。ところが、最近の金融事情の逼迫や三十二年度財政投融資計画などから考えても、この資金確保はきわめて至難であると思われるのでありますが、これに対して政府はどう措置をされるのか。開銀の融資額、社債の発行、増資等々に関して、政府の対策を具体的に御説明願いたいと思う次第であります。昨日の佐々木委員の質問に対しまして、この点に触れて大臣の一応の説明がありましたようですが、重ねて御説明を願いたいのであります。  第三は、資材の問題であります。電力用炭としては、三十一年度は九百万トンだったのが来年度は千三百万トンを見込んでおられるようでありますが、果してこの数量が確保されるものかどうかについて、私は深い危具を抱くのであります。なぜならば、三十二年夏の石炭採掘五千三百万トンであるから、これは実にその二割に当ることであり、電気のみに二割を充てるということは、ほとんど極限であるといわれているのであります。しかるに三十五年度にはこれがまた千五百万トンと増大見込みをされているのでありますが、この電力用炭について通産当局は果して自信がおありなのかどうか、どういうまかないをされるおつもりなのか、お伺いしたいのであります。なお不足分に対しては外国炭を輸入されるおつもりであろうと思いますが、アメリカは炭価が高く、中共炭は安価ではあっても、政治的な面もあってなかなか大量に、かつ安く輸入できないように思われる。こう見てくると、外国炭は百万トンの確保も容易ではないと思われるのであります。また電力のために重油を二百万キロ近く輸入する予定のようですが、これとても安心できないのであります。ここで私は声を大きくして申し上げたのは、電力用炭のみについて申し上げましても、以上のようにきわめて不安材料が多いのであります。当局はもっと真剣に根本対策を考え、熱心にその樹立をはかるべきではないかと思うのであります。輸入炭や重油を押えてばかりきたその行政の欠陥を私は指摘して、新大臣の御意見を伺いたいのであります。この不満は、石炭対策ばかりでなく、電気対策にも同様であります。行政のずれ、その場の間に合せ政策だとの非難すら世にはあるのであります。たとえば、低品位炭の回収や活用は電気の分野では使えもし、利用もできるのでありますが、これ増産よりも安上りであることに着目していただきたい、これはほんの一例であります。今やエネルギー源の絶対不足時代に突入しているのであります。通産当局におかれては電気、石炭、石油等について、最も合理的にして根本的なエネルギー政策を真剣に考え、一日もすみやかに確立していただきたいことをつけ加えて、次の第四の需要供給の問題に移りたいと思います。  新五カ年計画で電源開発が進められ、毎年百二十万キロワットくらいの成果を期待されていますが、これは果して実現可能でありましょうか。万一にも計画にそごを来たせば、その産業経済界に及ぼす影響はけだし巨大なるものがあるのであります。なぜならば、電力メーカーはただいまフルに操業していて、全力を傾注しておりまして、その実情から見ましても、電力がものになるにはどうしても水力電気のごときは三、四年はかかり、他の一般産業は一年もあれば大体よろしいので、その計画のずれが一般経済界に甚大な連鎖反応的な悪影響を及ぼすことは申すまでもありません。この意味から私は、電気のみでなく石炭、石油、鉄鋼及び輸送という重要部門に行政の重点を置いて、他の部門は押えていく必要があるのではないかということを申し上げたいのであります。次は、現在すでに見られる各地域における電力需給の過不足、つまり需給の不均衡という問題であります。ある地域では電力が豊富で供給も楽であるかと思えば、他の地域では電力が不足で、需用に応じられぬという実情であります。この電力需給の不均衡をならして、もっと合理的に需給を調整する方策なきやということであります。これについては種々な利害の立場や事情や論点もあろうとは思いますが、問題はそういうことでなく、もっと大きく高い観点に立って、わが国産業の伸びに貢献する方策、電力会社相互の融通による相互扶助的な調節方策、これが樹立されてよろしいのではないかという問題の提起であります。これらについて当局の御見解をお伺いいたします。最後に電発の運営及び司発と九電力との関係の問題でありますが、通産当局は電発の運営をいかに持っていこうとするおつもりなのか、また九電力との関係をどのように位置づけ、かつ関係づけられるお考えなのかについて、御説明をいただきたいのであります。なぜならば、電発と九電力会社とは、いずれもともに電気事業者として協力融和の関係を保つべきであるにかかわらず、最近の新聞等によりますと、とかく小発電所の開発や送電線建設問題などで種々の論議が多いようであります。これは結局政府の電力政策が明確になっていないことによって誘発される結果ではないかと思うのでありますが、ところで電源開発会社の設立は、民間九電力会社では容易に着手し得ない大規模水力地点の開発を目的として、国家資本を投入して作られたものであることは世間周知のところでありますが、この意味においては九電力会社による電気供結体制を前提として、その補完的役割を負っているものと解している向きが多いようであります。従って、電発が建設する発電所が完成するに従い、これを九電力会社に譲渡または貸し付けられるのが建前であると考えられていたのであります。私もまた、この電発の設立趣意を以上のように理解しているのでありますが、最近ややもすると、電気供給事業体制が変更されつつあるのではないかというように思われる点があります。たとえば、電発が小規模の水力発電所を建設するとか、あるいは超高圧送電線を全国的に建設して、みずから九電力会社地域間の電力融通をはかろうとしているなどとと、憶測やそんたくが盛んに行われているのでありまして、通産当局電力行政の真意について疑念を持つ者もある現在でありますから、あえてこの点についての政府の見解と方策を、つまり第一に、現在の電気供給事業体制に変更を加える必要があると考えておられるのか、考えているとすればその理由、第二には、電発をどのように運営していかれるつもりなのか、その形態は電力の融通会社としてか、または九電力会社との関係づけをどう置くのか、これについて御説明願って電力行政の方向をお示し願いたいのであります。  続いて第三の大きな部門、すなわち石油の問題に入ることにいたします。申すまでもなく、今後のエネルギー源として重要性を増すのは石油であります。この石油の重要性比重増大は、石油化学飛躍的増加もあって、将来のエネルギー需給構成体系を変えるであろうといわれるくらいであります、しかしながらこの石油問題には、たとえば数量の確保にしても、価格の安定にしても種々複雑な問題が山積しておりますので、私はこれらをしぼって、次のように個条的に列挙してその対策を論じていくことにいたします。石油類供給源の確保、すなわち現在世界的傾向として消費地精製主義であるから、石油の供給を安定させるためには、わが国でも原油の確保に力を入れねばならない。ところが輸入原油の八〇%は中東であり、この中東への依存度は今後ますます増大するものと思われるが、中東は政情が不安定である上に、また他面、国際的な大石油会社石油供給の道は握られているので、問題はなかなか困難であります。従ってその対策としては、国内的には新油田の開発を進めるとともに、対外的には、買付交渉地の政情および経済事情に応じた適切な手段を講じ、また国際的な原油の供給計画に積極的に参加するとか、世界石油会議等国際機関との連絡を緊密にしていかなければならないと思うのであります。  重油については、技術の進歩によって重質油の需要が増しつつある世界傾向であるから、重油が不足するとともに揮発油の供給過剰を見ることになると思う。これに対処するために、当局はどんな対策を持っているか。各油種の用途転換とか原油の処理増加とか、揮発油需要促進とかを考うべきでないかと思うのであります。これに対するお答えを願いたい。  また次にタンカーの確保でございます。石油製品の原価は、その八〇%が原油価格海上運賃だという。大いに大型タンカーを造船して、海上輸送に当らせたら、原油輸送が安定するとともに、運賃、外貨の大きな節約となると思うのであります。それについては、建造資金の調達が問題でありますが、政府はこれに対して必要な援助対策を講ずべきだと思うが、それに対する御意見を伺いたい。港湾施設の整備でありますが、これらの海上輸送に伴い、港湾の荷役設備の整備が必要であり、立地条件によってはパイプ輸送も考えねばならないと思う、これらに対してはどう考えられるか。貯蔵タンクの増設でありますが、買付を合理的に行うために、つまり安いときに大工を買い付け得るように貯蔵タンクを増設して、常に三、四ヵ月、半年分程度の原油をストックしておくことによって、国内における需要の調節と価格の安定とを期待し得られるのでありますが、これから石油化学もどんどん進むに従いまして、スエズ運河の問題のごとき問題が起きまして、せっかく重油発電にしましても、あるいはその他石油化学にいたしましても、企業を興したものが、油が不足してストップするようなことがありましたら、これはまことに重大な問題でありますので、この貯蔵タンクに対するところの大臣の御見解を承わりたいのであります。次に精製設備の拡充と近代化であります。製品供給力を安定させるためには、設備の適正増強近代化をはかって将来の需要変化やそれに対応する技術進歩に努める必要があると思うのであります。次に資金、税制の問題でありますが、以上種々の対策を講ずるとき、当然資金の確保が問題となるが、これの調達および租税の面において政府は十分援助して必要措置を講ずべきだと思うのであります。  以上、石油というわが国エネルギー源重要物資の数量の確保と価格の安定とは、わが国の経済にとって必要だと信ずる余りに、私見を交えて論じ来ったのでありますが、この石油問題に関して大臣はいかにお考えになるか、いかなる方策をおとりになるつもりであるか、お聞かせいただきたいのであります。  次に続いて鉄鋼問題についてお尋ね、いたしますが、昨年は鉄鋼の需給が均衝を失い、そのために鉄鋼価格が非常に高騰し、しかも異常な鋼材不足という事態を示したのであります。たとえば、昨年四月ごろまでは五万円以下だった棒鋼が九月には九万八千円という市中相場となり、それでもなお現物不足で、そのために中小の材料業者建築業者鋼材不足による苦心は非常に深刻であったことは、すでに御存じの通りであります、最近はこの需給状況が昨年の秋ごろに比べて、幾らか緩和されつつあるやに思われるが、市中価格は依然として高く、鋼材需要者のみ悩みは解決されていないというのが実情であります。しかもなお、このような鉄鍋不足が今後も相当長期にわたって続くものと思われるので、私は鉄鋼問題の基本的なものについて政府にお伺いしたいのであります。  ところで、鉄鋼の需給問題において最も重要な対策は、鉄源をどうするか  ということでなければならないのでありますが、この鉄源、すなわち鉄鉱石スクラップに対する十分な対策がなければ、たとい増産計画を口にしても、それは単なる机上プランにとどまって、その所期の成果を上げ得ないことは自明の理であります。この鉄鋼不足のために、通産当局は一体どのような措置をとり、またこの需給の問題の根本対策として、どのような方策をとっておられるか、これについて、御説明を願いたいのであります。  次に、鋼材を輸入して需給の均衡回復をはかるということは、わが国内の増産が設備面で限度に来ていて、これ以上望めないという現段階にあっては、当然最も有効な措置であるとは思うのでありますが、この輸入に当って当局の適切な措置をぜひ願わなければならぬ面があるのであります。その一つは現在、鋼材には一五%の関税がかかっており、このために輸入される鋼材の価格が割高になっているが、一方、たとえば造船の面においては、鋼材先方持ち外国発注のものには税がかからぬという不均衡があるのでありますが、これを全面的に無税とすれば、わが国造船界に活気を与え、どしどし船が作り得ることになる。この船をもって貿易に従事させれば、船質みでも非常に助かり、わが通商にも大きなプラスとなると思うのであります。この輸入鋼材の関税についてぜひ適切な措置を講ずべきだと思うのであります。  その二は、輸入のいわば技術面のことであります。たとえば鉄源の一つであるスクラップの輸入に当って、わが国の商社は各自が無用な競争をして、そのため米国の業界を異様に刺激し、その結果としていわゆる太平洋相場という、太平洋岸におけるスクラップ価格の暴騰を来たしているのであります。これは放置しておかるべき問題ではないと私は思うのであります。同様なことが、鉄鉱石についても言えるのであります。すなわちインドに対しても、中共に対しても、業者はそれぞれ勝手に買付競争をしているために、結局先方に完全に牛耳られているというのが実情であります。これに対して、政府はどう処置されるつもりであるか、お伺いしたいのであります。私の意見としては、これらの輸入、買付に際しては、ヨーロッパにおけるシューマン計画とか、あるいは英国におけるビスコのように、長期計画の上に立った共同購入システムをわが国においても確立すべきだと信ずるものであります。この体制が整うということはひとりわが国の利益であるばかりでなく、相手国のためにも必要であり、ためになるのではないかと思うのであります。これらの鉄源についての、現状と将来の構想について政府当局の御説明を願いたいのであります。あわせて、私が提案しました輸入体制についての御見解も、お聞かせ願いたいと思います。  最後に、先般来の鉄鋼価格の暴騰に伴って起って参りましたところの、建値と市中価格とのはなはだしい差、従って言いかえると、この両者の開きによる膨大臣額な利益、これはことごとく中間業者のふところに入っているのでありますが、何ら労することもなく不当な利益をぬくぬくとふところにしたこれらの中間業者の収得に対しては、当然徴税の対象になし得るものではないかと思うのでありますが、これに対する措置をどうされるおつもりなのか、お伺いする次第であります。  以上石炭、石油、電気、鉄鋼に対しまして総括的に質問を申し上げたのでありまするが、これに対しまして逐次大臣から御答弁を願いたいのであります。
  4. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 御質問に対しまして逐次お答えいたします。非常に多項目にわたっておりますので、大きい問題だけ私からお答えしまして、特にこまかい御説明を要するようなものは事務当局からお答えしたいと思います。  まず第一に石炭の問題でございますが、出炭計画は万全かという御質問でございました。今通産省の計画しております出炭計画は大体ことし五千二百万トンでございます。原料炭はことし四百三十万トンくらい必要であるという見通しと、それから電力用炭が、一部は重油に切りかえても百万トンくらい不足するので、これを輸入に仰ぐという方針を一応立てまして、外国からの輸入が五百三十万トン、国内の出炭が五千二百万トン、五千七百三十万トンが大体今年度の需要であるというふうに見通しを立てまして、この五千二百万トン、昨年よりも三百五十万トン以上の増産になるわけですが、これに対しては、坑内の施設に対する問題、生産資材の問題とか、輸送の問題、これは石炭増産についてはしばしば政府としてこういうものに対する手を打っている経験が過去においてございますので、三百五十万トンもことし一拠に増産態勢を立てなければならぬということでしたら、それに対する必要な手は打たなければなりませんので、私どもとして万全を期して障害の克服をやりたいと思っております。ところが次の御質問にもございましたように、外部から買う外炭の輸入の手当は大丈夫かという問題がございました。御承知のように、百万トンことし外炭を輸入するという見通しを持っておりますが、相当需給の逼迫が出て参りましたので、繰り上げ輸入をやるということで、過日緊急にここで四十万トン入れるという措置をとりまして、目下その実現のためのいろいろな措置を講じておりますが、一挙に百万トンを入れるということはそう簡単なことでございませんので、一応こういう予定は立てておりますものの、国内増産で間に合うのならそれに越したことはないと私どもは思っておりますが、業界の方では、外炭を百万トン入れる計画はいいが、自分たちの手でそれくらいは一つ増産してみよう、五千三百万トン出すという熱意を持って、業界自身今私どもにいろいろ申し出がございますが、できればそれに増したことはございませんので、五千二百万トン程度の手配は私ども自信はあるといたしましても、さらに措置を強化して五千百三万トンくらい出す施策をいろいろ講じたい、こう考えております。もしそれができない場合には外炭の輸入も大体それくらい見通せばことしの石炭需給計画は一応支障なくやっていけるじゃないかと考えております。  その次の問題は、炭鉱合理化とか新鉱の開発、つまり将来対策をどういうふうにするか、石炭長期安定策に対してどういう考えを持っているかということでございますが、先般産業合理化審議会のエネルギー部会に将来の見通しというようなものの研究をお願いしてございまして、その答申がございましたが、それによりますと、昭和五十年における国内生産は六千五百万トンどうしても必要である、そのうち八百六十万トンくらいは新鉱の開発による生産に待たなければならないというものが出ておりますので、この答申を参考にして私どもは将来新鉱の開発に対する計画を立てたいと思います。そのためには比較的悪い自然条件を克服してやっていかなければなりませんので、鉄道とか港湾とか、そういう産業の関連施設整備というようなことをすることがやはり新鉱開発の前提条件になると存じますので、そういう点の総合計画をこれから立てて、既存の山を開発していく限度というものは、せいぜい五千七百万トン程度だと思われまするので、その不足分の八百六十万トンは新規炭鉱開発するという計画を今から立ててこれに対処する方法をとりたいと思います。従来ございます石炭合理化法は、当初これを作ったときの情勢と現在はだいぶ変ってきまして、いろいろな変化を起してきましたが、しかし石炭業を長期に安定させるためには、やはりこういう考えに基いた合理化対策は今後もやっていかなければならぬだろうと考えています。今でも中小炭鉱で買収、買いつぶしてくれという要望はございますので、それを買いつぶしておりますとともに、また新しい山を今掘っておるという両方のことが行われているときでございますので、御質問の労働問題は、この合理化法を進めていっても、あの当時に考えたような失業対策とうものはほとんど心配ないという状態になっておりますので、今までの方針通り産業の合現化運動はやりながら進んでいっても、労働問題は当初心配したようなむずかしい問題がなくて処理できるのではないかと今考えております。  それからその次にはこれだけの出炭計画をするための資金関係をどうするかという御質問でしたが、昭和三十二年度における石炭鉱業の事業費は、大体私どもは二百四十億円くらいと予想しております。設備資金の返済額を含めますと四百億円くらいと予想されますので、この資金計画は開銀とか長、興銀の金融機関に対して、そのうち百三十億円くらいの融資を期待する。その他の社債、増資等に約二十億円、残額の二百五十億円を自己資金によってまかなってもらう、こういう予定でございますが、自己資金によって相当多くまかなわせるというためには、御質問のような内部資金の優遇についての税の問題が出て参りますので、今私どもは長い間要望されておった追加投資引当金というような問題について政府部内の相談に入っております。なかなか引当金という形で今解決するのがむずかしいので、損金範囲を拡大すると’いう方向で実際の目的には沿うようにしようではないかというような今事務折衝をやっている最中でございますが、この点についてここでちょっと途中できょうまでの経過を事務当局から説明してもらいます。
  5. 讃岐喜八

    ○讃岐政府委員 大臣からお話がありました点、補足して御説明申し上げます。追加投資引当金の問題、それからもう一つ質問の鉱害賠償引当金の問題につきましては、かねて商工委員会でいろいろお話がございまして御鞭撻を受けましたが、政府部内におきまして事務的に折衝を進めてきた次第でございます。今日まで政府部内でまとまりましたところを申し上げますと、まだ十分結論には達していないのでございますが、引当金という形をとることは追加投資にいたしましても鉱害賠償にしましてもこれは一応取りやめまして、追加投資につきましては採掘箇所の深部移行、また坑内条件の悪化に対処いたしまして、生産を維持するために必要な坑道なり、あるいは運搬施設なり、そういうものはできるだけ損金で処理していくということ、なお坑外から打ちます縦坑等につきましては特別償却で参ろうというようなことで今相談を進めております。なお鉱害賠償の問題につきましては、これも引当金を取りやめまして未払金処理で損金に入れていこうということで話を進めているわけでございます。その場合、鉱害賠償につきましては、既発生の安定した鉱害の問題、将来発生する鉱害の問題をどうするかということと、問題が二点ございますが、これは両方とも未払金に充当しまして損金で処理して参るということで、今相談を進めているところでございます。結論はいましばらくお待ち願いますれば、後刻御報告できる段階に達するのではないかと考えております。
  6. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 今御説明しました通り、今まで要望されておった税制面の問題は徐々に解決の方向へいっておりますので、いま少したてばはっきりと決定することと思います。  それから石炭問題の御質問につきましては、もう一つ石炭積出港の問題がございましたが、この問題とことしの予算との関係、これも一つ局長から……。
  7. 讃岐喜八

    ○讃岐政府委員 石炭輸送の問題につきましては、この前の商工委員会で大へん御審議を願いましたが、石炭積出港等の施設に対する問題につきましても御審議を願いましたところでございますが、当時の問題としましては、一番の問題は、室蘭港の第二坤頭の補助ベルト・コンベヤということでございました。この点につきましては国鉄の方で非常にその後進めていただきまして、もう完成しているころじゃないかと存じます。なおそのほかに北炭と東京瓦斯との連携によりまして、特設埠頭を設けるという話も進んでおります。そういうことを御報告申し上げます。  なおただいま御質問の点につきましては、三十二年度の出炭は先ほど大臣から申し上げました通り、本年度よりも三百五十万トンないし四百万トンの増でございます。従いまして港湾から積み出す量も本年度に比べまして来年度は相当の増加になると思います。御質問の九州では若松、唐津、苅田、それから北海道では室蘭、小樽、それから中国の宇部港等におきまして相当積み出し能力不足が訴えられておるわけでございます。私ども事務的に調査いたしましたところでは、来年度の積み出しの予定数量に対しまして、能力の余裕のあるのは若松と戸畑だけでございます。その他苅田におきましては五十一万トン、唐津におきましてはこれも五十一万トン、宇部では二十六万トン、室蘭は百六十四万トン、小樽五十八万トン、留萌十六万トンというような能力不足考えられております。これにつきましては運輸省及び国鉄と常に緊密に連絡をとりまして、この施設の増強について要望しておる次第でございますが、予算的にも相当措置されたようでございます。ただいま連絡をとっておりますが、具体的にどうなったかという結論は今のところいただいておりませんので、これもいましばらくお待ち願いますれば、もう少し明瞭に、この港はこういうふうにいたしますというような資料でお答えできるのではないかと存じます。目下のところ国鉄当局から具体的な資料をいただいておりませんので、御了承を願いたいと思います。
  8. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 その次は電力問題に対する御質問でございますが、このいわゆる三割題打ちの問題をどうするかという問題でございますが、私どもの考えはやはり重要物産免税電力については続けたい。それから他の産業は相当増資を急いで今までやっておりますが、電力会社増資はこれから本格的に始まるのだという事情がありますので、増資配当免税は続けなければいかぬという考えで今までおりましたし、現に今政府部内でもこれを折衝しておりますが、いろいろな問題ががございまして、なかなか難航をしておるという状態でございます。そうしますとお説のように、確かにことし十億円以上の負担増をかけるということになりますので、今まで政府は、こういうことでめんどうを見てやるから三割の頭打ちをがまんせい、来年はもういいからというふうに、二度押えて来ておりますので、今度は何とかしなければならないということに今なっておることは事実です。もしこういう方面で十分電力会社開発態勢をわれわれが見てやれるというのでしたら、まあ二度あることは三度、でもう一ぺんくらいがまんさせようかということを、実は私個人の考えとしては持っておりましたが、この問題とからんでやはり私は研究したいと思います。一部の地域の実態調査をやりましたところが、やはりさっきおっしゃられたような問題がございまして、一般家庭に影響するということはほとんどないという地域の調査も出て参っておりますのて、この三割頭打ちをやめても一般産業影響するところもないし、一般の中流以下の家庭に影響するところもないということでしたら、やはり減税の措置とにらみ合せて、そこらは再検討してどちらかにきめたい、こう考えています。  それから東北、北陸の値上げ問題をどう措置するかという御質問でしが、これはきのう佐々木さんの質問お答えいたしました通りで、あまり豊水の利益に恵まれなかったということと、開発が進むにつれて資本費の増高とか、あるいは融通受電電力量の増加ということから、この東北と北陸は特にはっきりしたコスト高でございまして、現行料金でこのコスト高が吸収できるかどうかは、私どもも非常に困難ではないかと思っておりますので、これは今そういう事情の検討中でございますので、その上で適当な措置をしたいと考えています。  それからその次は、これだけ急がれており、また膨大な開発計画を立てた三十二年度において、それだけの資金計画が果してできているか、これを円満にやっていける自信があるかという御質問でございましたが、これも昨日お答えしましたように、三十一年度の大体工事資金の実績の見通しを申しますと、九電力が一千五百六十八億円、電発が三百七十三億円、公営事業者が百五十億円、その他事業者、自家発電業者等合せて四十三億円、合計二千百三十四億円というのがことしの大体工事費の実績だろうと思います。そうしますと、三十二年度の予想は九電力その他業者で二千二百十億円、電源開発が四百三十億円、公営事業者が百五十億円、合計して二千八百億円ということになりますので、昨年に比べて七百億円近い資金増ということになろうと思います。この二千八百億円のほかに、さらに返済金が約九百億円というのですから、電力関係会社の所要資金は、全部でことし三千七百億円という膨大な資金でございますので、これの調達については、私どもも非常に心配して、今いろいろな措置考えているところでございます。電源開発の方は、御承知の通り一応の手配はいたしておりますが、一般九電力の方は、開発銀行で見る予定が二百五十億円となっておりますが、これはきのうもお答えしましたように、必要に応じてことしもっと開発銀行のワクはふやす用意を持っておりますので、これは当初の計画はそうであっても、もう少し工事の進行につれて、この措置はいたしたいと思います。あとは増資、社債の発行、そういうものに応じられる応勢を私どもが考えればいいのですが、この点につきましては、政府の財政資金で市中銀行の手持ちの金融債を買ってやって、そこへ余裕をつけて電力債を買わせるとか、政府としてできるだけの処置は今とるつもりでおります。と同時に、今大蔵省の中に、資金委員会にかわるべきものとして資金審議会というものができておりますが、ここを中心にして所要資金を重点的に、国の計画に協力するような金の出し方をみなやろうという話し合いで、必要によれは融資順位をつけるという問題も起ってくるかもしれませんが、そういう形で必要部門には優先的にその金を回すという、民間の金融機関も自主的にそういう態勢をとるというような方向へいっておりますので、こういう審議会の協力を願うというような形でも、電力資金だけは最優先的に私どもは調達したい、こう考えておりますので、それに対するあらゆる措置をとって対処したいと考えております。  それから電力用炭が果して確保できるかというお話ででございましたが、昭和三十二年度の火力発電用燃料は、石炭換算で大体一千二百八十万トンということに考えております。そのうち重油は、燃焼施設もタンク能力等の関係から百万キロリットル、石炭換算して百八十万程度と思われますので、これを重油によってまかなうといたしますと、一千百万トンの石炭を予定すれば大体いいのじゃないかということになりますが、そのうちで五千二百万トンの出炭計画から見て、電力に回せるのはせいぜい千万トンだと思われますので、今のところ百万トン足らないという見込みになります。この百万トンを外炭の輸入によってまかなう。もしそこまで行かなくて、国内炭増産がそれ以上になればそれに越したことはないということで、いずれかにおいてこの千百万トンの電力用炭は必ず確保したいと考えております。またこれは確保できるのじゃないかと今のところは考えております。  その次の御質問は、電源開発会社と九電力関係をどうするか、現在の電気事業の体制に変更を加える意思があるかという問題ですが、これは局長から答弁してもらいます。
  9. 岩武照彦

    ○岩武政府委員 事務的に考えているところを申し上げたいと思います。現在の体制は、御質問がありましたように九電力の一般供給事業、それから電発あるいは府県営その他の卸売供給事業という二つに分れております。御質問の要点は九電力電発関係に集約されておりますが、現在の九電力は、御承知のように再編成によりまして、九つの地域供給独占という形で成立しておるものです。再編成後ちょうど五年半たっております。いろいろその体制の功罪について御議論もあるようですが、われわれ事務当局の見るところでは、いい意味競争原理が行われて、各会社の企業努力、つまり開発の意欲でありますとか、ロスの軽減でありますとか内部経理の適正化でありますとかいう形で相当な成果をおさめております。むしろ欠点といわれておりました融通あるいは地域差という問題についてこれをどうしたらいいかという御議論があるかと思いますが、融通につきましては、先ほど大臣も申し上げたように、今年度あたりは相当画期的な融通考えまして、明年度の電力需給の面からいたしますと、今までにない大きな、約十九億キロワット・アワーという融通の話も進めております。大体仕上げに近づいておりますが、送電能力あるいは変電所の能力の許す限り、各地のバランスをとって融通し合うということを考えております。私たち公平に見まして、明年度の融通計画は、一応九社の体制としてはよく話がいったと考えております。地域差の問題は、私の方ではこういうふうに見ております。現在各地の電力原価の差が相当あります。しかしむしろそれは火力地帯と水力地帯との差に現われていると思います。だんだん水力地帯の開発が進み、このように需用がふえて参りますと、水力地帯もどうしても火力がないとやっていけないわけであります。すでに東北電力も火力が入っております。また北陸電力も関西地区に専用の水火力を委託して共同設備をするという話がきまっております。そうしてだんだんに水力地帯の原価が上って地域差が縮まるという方向にいくと思っております。従って、今まで欠点といわれておりました融通並びに地域差の問題が逐次平準化して片づいていくのではないかと見ております。  それから電発につきましては、この会社の性格はすでに開発会社ができます際の国会の答弁ではっきりしておりますように、開発困難な地点の大規模な開発を行い、あわせて電気事業者電気供給するということになっております。完成設備の貸与、譲渡等の点もございますが、そういうことで卸売電気業者という性格になったわけであります。いろいろ大きな点の開発をやります結果、その合理的運用をはかるというふうな問題もございますが、送電線等も適当な計画であればわれわれ許可する方針であります。現に佐久間の東西幹線並びに北海道の十勝の幹線等電発が建設して運転をいたしております。そういうことで、われわれとしましては、法律の規定通り性格を考えている次第であります。
  10. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 次は石油の問題に関する御質問でございます。一番最初の将来の石油確保について、重油不足して揮発油が過剰になることに対してどういう対策考えているかという問題でございますが、今日本で原油輸入する場合は、揮発油が幾ら必要であるかということを計算して、それによって輸入量をきめるというようなやり方をやっておりますので、必要な揮発油はできるが重油が足らなくなるということになっております。これはおっしゃられる通り、世界的な傾向だろうと思います。もしそれを変えて重油を十分にすることを基準にした原油輸入とかなんとかいうことをやったら、揮発油を輸出することをやらなければならぬ。これはなかなかむずかしい問題で、今の日本は揮発油の輸出というようなことは考えられない。従って、これに対処する方法としましては、やはり原油からの油種生産割合について設備とか技術上の改善、指導というようなことと、さっき御指摘になりましたような用途の転換と申しますか改訂といいますか、そういうことと、やはり足らない以上はこれの輸入対策に手ぬかりのないようにするとかいうようないろいろな考慮を払うよりほか仕方がないだろうと考えております。  次はタンカー建造について援助を考えているかという問題でございますが、これは考えておりまして、タンカー計画造船の中に入れております。十二次造船まで約三十三隻、四十五万六千五百二十トン、今度の十三次造船では八万トンを計画して、それぞれ建造の助成を予定しておるというふうに政府でも援助を考えておりますが、しかしこれは輸送業者の持つタンカー建造への援助でございまして、ほんとうは各メーカーの自家用のタンカーを持たせることが一番安定しますので、これに対する援助をしたい。これを計画造船に入れてやるという方法をとりたいと思っておりますが、なかなか計画造船にこれを割り込ませるということは今までむずかしいことでして、きょうまでできておりませんが、今後そういう方向でやはり援助したいと私どもは考えています。  次は貯油タンクを増強することについての質問でありますが、これはなかなか必要であってむずかしい問題でございまして、現在のところは各社がそれぞれ計画を持っておりますので、政府としては、ぜひそうやってくれといういろいろな勧奨をする程度で、具体的なこれについてのはっきりした援助というものはまだしておりません。しかし、もし各社がタンクを増設するということなれば、政府資材のあっせんとか資金の問題について極力援助するということは申し入れて今勧奨しているという程度で、今までこれについての積極的な援助というものはいたしてなかったと言ってもいいかと思いますが、今後、必要が出て参りましたので、これについては援助したいと思っております。それから石油港の問題ですが、大型タンカーの受け入れ態勢を至急作る必要がありますので、この三十二年度から三カ年計画で、国港湾管理者及び受益者の三者の負担によりまして泊地の深さを十二メートルくらいにいたしたいという計画を立てまして、今年度分としては、石油港として考えられている七港のうちで、京浜と四日市の二港だけ今年度の予算でこの計画を実施したい。三年計画でこの七港を全部整備して石油輸入に差しつかえないような態勢をとりたいと考えております。  それから石油設備近代化について、金融とか税制上の措置をどう考えているかというお話でございましたが、今まで設備近代化資金というものは、日本の石油会社は、ほとんど外国資金でやってきたという状況になっています。従って今後精製施設の強化というものについては、外資の導入、技術提携の認可あるいは機械の輸入関税の免除あるいは減価償却の特例、固定資産税の減免あるいは開銀の融資等の措置も講ずる。現在開銀でもこの資金を少し出しておりますが、そういう措置をさらに講ずるというようなことで、この合理化はますます促進させたいと思っています。今までの政府はタンクの方の応援をあまりしなかったのですが、こちらの方は相当やっておりまして、今までの外資導入の状態を見ますと、株式の取得が五十四億円、借入金が百三十八億円、技術援助契約も二十件政府が許可している。それらか輸入関税の免除額をきょうまで約十億円やっている。減価償却の特例、固定資産税の減免の対象となった設備の投資額も約三十億円ある。また開銀の融資も昨年の九月までに十五億円やっているというようなことで、御質問設備近代化については、政府は金融及び税制上の措置は相当手厚くやっているといって差しつかえなかろうかと思います。  その次は鉄の問題についてでございますが、鉄鋼不足についてどういう措置をとったか、その対策はどうかということでございますが、鉄鋼不足に対して今までとりました措置は、去年の六月から、鋼材の緊急輸入措置をまず講じまして、現在まで約百五十万トンの鋼材輸入の外貨資金の割当を行なっております。その措置によって去年の十二月までに約二十万トンの鋼材が入っておる。さらに本年の六月までに五十五万トン入る予定がほぼ確実になっております。こういう緊急の輸入措置をとったということが一つ。それから本来の増産対策は非常に進んでおりまして、昨年度一年分の増産は約二割、これは現実に増産しておりますし、本年度の増産の予定は大体一割ということになっていますが、これは先ほど申しますようなスクラップそのほかの対策が完全にできるならば、ことしは一割の増産ができるだろうと思います。それから昭和三十年度には鉄鋼製品を大体二百万トンくらい外国に輸出しましたが、国内需要がこういうふうになってきましたので、これを相当抑制して、昭和三十一年度の輸出は百二十万トンくらいだ。従って三十年度に比べて八十万トンを国内需要に回す、こういうようないろいろな一連の措置をとるということと、さらに中小企業とかあるいは住宅、学校建設あるいはもっと小口の需要家に対して鋼材のあっせん所を作って需給調節をはかった、こういうような措置を去年はとって一応切り抜けて参りましたが、ことしも同様そういう方向でとり得る措置をとりたいと思っております。まず第一は鉄鋼増産でございますが、これは高炉及び転炉を中心とする設備の拡充をことしはやって、そうして今まで拡充計画をやってきた成果とあわせて一割くらいの増産をやりたいということ。それから設備の拡張と同時に東南アジア、インド、中南米等における鉄鉱石の鉱山に対して設備投資を行なって、原料確保措置をとりたいということ。それから輸入もことしは引き続いて百二十万トンくらいの輸入考え、その措置をとりたいということ、それから増産に対して鉄くずの問題となりますが、これについては御承知のようにただいま業界の代表と政府側からも米国へ行って日本の実情を述べ、将来の計画説明して今交渉中でございますので、これはまだはっきりしたところがわかりませんが、極力鉄くずの輸入については私どもは手を尽したいと思っています。と同時にこの間も御説明しましたようにわが国鉄鋼価格が諸外国に比べて価額の変動が非常にひどい。そのために産業界に与える影響も大きいですから、こういう意味から鉄鋼需給価格長期安定というようなことを目的として、鉄鋼需給法案というものを私どもは考えて、この国会に提出して御審議を願いたい。それによって今年度のいろいろな需要に対処したいというふうなことを今ことしの措置としては考えておるところでございます。  次は鋼材輸入についての関税の問題でございますが、これはもうお説の通り鉄鋼需給が逼迫してその価格が非常に上ってくるという場合には、政会で品種とか期間をきめて、関税を減免する措置をとりたいと考えまして、政府部内の折衝も大体終りましたので、近く改正法案をこの国会に提出したい、こう考えております。  それからスクラップの問題ですが、これは今お話ししましたように目下交渉中でございますが、ついでに今までのことを御報告いたしますと、昭和三十一年度におきます鉄くずの総需要量は約九百二十万トン、そのうち六百五十万トンは国内でできる、鉄鋼業の自家発生くず及び市中くずということになりますので、残りの二百七十万トンが輸入くずとなっております。そのうち米国に依存したのが約二百万トンということでございます。ところが本年度は先ほど申しましたような一割増産の態勢から見まして、どうしても鉄くずの輸入に仰ぐという部門が三百十万トンくらいほしい、そのうち米国に二百五十万トンくらいを期待したい、こういうことで今米国と折衝しておりますが、これは御承知の通り欧州との関係で、米国の国内業者との問題からなかなか交渉はむずかしいと思いますが、これはもう私どもはできるだけの努力をして、この確保については何とかしたいと考えています。しかしいつまでもこういう外国からの鉄くずに依存するという鉄の計画をやっておるわけには参りませんので、高炉、転炉を中心とした設備の増強、ことにスクラップを使わない形の増産態勢というものを立てなければなりませんので、おそらくもう三、四年のところが相当鉄くずに期待しなければいかぬという時期で、それから先はどんどん外国に仰ぐ量というものは減っていくということにしたいと思っておりますし、またそうさせるつもりでありますので、その間の事情も今十分米国に説明して、二、三年のところの問題を援助してくれという交渉をやっておりますので、これはまだただいまのところ結果がわからないということでございます。  それから鉄源についての御質問でございましたが、これは重工業局長から御説明いたさせます。
  11. 鈴木義雄

    鈴木(義)政府委員 それでは鉄源の問題について御説明いたします。  ただいまスクラップの問題については大臣から御説明があったので、特に詳しく申し上げる必要もないと存じます。  鉄鉱石について申し上げますと、昭和三十一年度におきまして、鉄鉱石の総需要数量は千百四十五万トンでございました。これに対する供給国内鉱石、これは国内鉱石、砂鉄酸澤等でありますが、これが三百八十五万トンであります。残りの七百六十万トンが輸入鉱石。七百十万トンの輸入鉱石の内訳はマレーが二百二十万トン、フィリピンが百五十万トン、ゴアが百十万トン、米国が百万トン、インドが百万トン、その他八十万トン、こういうことになっております。今後大体われわれの予想では、年々百万トンずつの輸入鉄鉱石需要量が増大していくように考えておりますが、これを充足するために、フィリピン、マレー、インド等について鉄鉱石鉱山の開発のため必要な措置をとる、また鉱石専用般等についても考慮し、また中南米等の鉄鉱石についても確保方を研究していきたい、かように考えております。大体以上であります。
  12. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 あとは建値と市中価格の問題で、中間業者が非常に利益をとっておるようだが、これをどうするかというのですが、これはどうも今の税金が所得課税ですから、うんと中間業者がもうけたとすれば、もうけただけ税金を大蔵省がとってくれると思いますので、これは私の方から特別にどうするという考えはございません。以上であります。
  13. 笹本一雄

    笹本委員 大臣はさきには経審長官をされて、また党に返っては政調会会長という重職にあって、その識見は高く、また視野は広く、政策家として知識と経験は非常に豊富な方でございます。石炭の問題は二十一年のあの石炭危機のときの――伊藤先生もきておられるようですが、あの石炭増産協力会をやりましたときに、その指導の立場にあって石炭増産をやられた。石炭は特に大臣は関心を持っておられるのでありますが、けさの新聞を見ますというと、石炭業界ときのう大臣が懇談をして、増産についての懇談をされたようであります。かくのごとくやはり石炭関係の人も大いに大臣に期待されているばかりでなく、今質問を申し上げました鉄にしましても、あるいは電気にしましても非常に期待をされておるのでありますから、今の御答弁によりまして再質問をし、もっと聞きたいのでありますけれども、他の質問者の関係もありますし、またわれわれ与党ですありまから、時にふれて伺うことにいたしますが、どうか今御説明になったような熱意のあるところの行政をもって、この通産行政及び日本経済発展を実行に移していただきたい。昨日の佐々木委員質問に対しましても率直に隠すことなく答弁されておったというので、野党の社会党の人たちの話に聞きましても、非常に大臣はいい、これは大いに協力しようというような期待を持たれておる。どうか非は非、是は是というような意味におきまして、委員会と一体となって行政を行うことができる仕組みになっておりますので、一段の御奮起をお願いいたしまして、私の質問を終ります。
  14. 福田篤泰

    福田委員長 帆足計君。
  15. 帆足計

    ○帆足委員 いろいろお尋ねしたいこともありますが、時間の都合もありますから、きょうは中国貿易の問題につきまして、今問題になっておる解決を急ぐ主要の点をお尋ねをし、要望もしたいと思います。議員というものは、政府質問をする呼び出し係でもありませんから、私どもの意見を述べて、そしてそれが合理的である限りにおいては、施策の中に盛り込んでいただきまして、国民の利益になることは相共同して解決することが私どもの職務であろうと存じますので、さような観点から発言をいたします。  第一にはことしの秋に武漢、広州で日本商品の展覧会をいたします。これと相競って、英国が北京で大展覧会を計画しておりますので、これにひけをとらないような措置が必要であろうと私は思うのです。英国にとってインド市場が重要であり、またフランスにとってアフリカ市場が重要であり、またアメリカにとってカナダ、中南米が重要であるとするならば、日本と中国との関係は過去においてそれに匹敵するのであったのですから、政府としても立ちおくれしないように努力していただきたいと思います。同時にそれと互恵平等の関係において、日本で中国の商品展覧会を名古屋と福岡でやりたいという計画が進んでおりまして、名古屋では県並びに市の関係方面ですでに計画が進んで、中国側も実現したいということを希望しております。福岡も同じ計画が進んで、これはまだ中国と最後の折衝をしていないようでございますが、こういう問題につきましても、まずわれわれ常識で考えて妥当なことであろうと思いますので、政府の十分なる御理解、御努力を要望したいのですが、大臣の所見をお伺いいたします。
  16. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 政府としても十分援助したいと考えております。今の武漢、広州の見本市に対しましては去年と同じようにことしの予算でも六千万円を私どもは計上してございまして、極力援助したいと考えております。
  17. 帆足計

    ○帆足委員 それから今の名古屋の展覧会、それから中国側が承知すれば福岡における武漢、広州に相呼応する展覧会のことについて、政府の御了解を得られますでしょうか。
  18. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 予算措置はとってありませんが、予算はあまり要らないということでございますので、この二カ所で中国の見本市を開くということは、政府は賛成でございまして、極力援助したいと思います。
  19. 帆足計

    ○帆足委員 政府は中国との貿易の過去の伝統を考え、将来を考えて、積極的態度をとろうと努力されておることは、国民の大いに期待するところですが、遺憾ながら諸般の情勢でまだ十分な実績が上っていないと思います。これはできることで、まだ解決がつかないことが多々あるのでありますから、その要点を逐次指摘して御努力をお願いしたいのですが、第一は昨年の協定によりまして民間の駐在員をお互いに交換しょうということに話が進みまして、大体のアウト・ラインについては政府当局の御了解も得ているはずでございます。中国側も譲歩してきまして、今の国際関係のもとで公けの商務官の駐在は困難であろうから、民間的性格のものでしょうではないかということになっておりますが、例の指紋問題なども、もう論じ尽されておりますけれども、また議員連盟の代表理事の池田君があっせんに努めてくれまして、運用上で解決するというような方向に御研究になっていることも十分了承しておりますけれども、昨日法務大臣にちょっとお目にかかりました節に伺いますと、どうもまだ御研究が足りないような状況のように承わっておりますから、これはこの席で御答弁をいただかなくてもけっこうですが、至急貿易担当の大臣である通産大臣から外務省、法務省当局に対して十分な御連絡を願いたいと思います。でございませんと、三月下旬から第四次協定の相談が始まりますから、それまでに解決しておきませんと、つまらぬことで貿易の障害になりますから、ぜひともいま一般の御努力をお願いしたい。私どもこう考えるのです。この問題はむずかしいことでなく、貿易立国をしておる日本が、指紋のことなどで外国のお客さんに――中国だけでなく、ソ連またアジア諸国の一部もこれをいやがっておりますから、こういうことで貿易の阻害になるなどということは私はつまらぬことだと思うのです。敗戦国にりまして人の往来が少し奔放になりましたために、犯罪人取締りのため指紋をとるのであろうと存じますが、最近聞くところによるとアメリカでもやはり外国のお客がこれをいやがるというので緩和したということが新聞に出ておりますから、私はむしろ除外例を設けて、両大臣が必要と認めるときは、公けの資格を持った使節、また公けに準ずる商工会議所の使節とか学術団体の使節とか、権威ある文化使節、そういうツーリストに対しては、両大臣が必要と認めるときは指紋を免じて写真で済むようにしたらよかろう、これはアメリカの商工会議所の使いに対しても同様で、欧州の商工会議所の使いに対してされてもよろしいし、また共産圏の使節などはほとんど官吏に準ずるような形で来ることになるわけでありますから、純粋なプライベートな、身元のはっきりしないような個人を除きまして、そういう博覧会で来るとか商工会議所から来るとかいうような人たちに対しては、貿易国として、また日本は観光国ですから、そういう人に対しては指紋を免じてもよいという特例を一条出入国管理会に加えればいいのです。ただいま即答をいただかなくてもけっこうですが、一つそういう研究もされてはいかがでしょうか。御答弁を願いたいと思います。
  20. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 従来この問題は外務省と法務省だけでいろいろ相談しておったようですが、今言われておるような問題もおっしゃられたような方向でやる余地も十分考えられると思いますので、通産省もこの相談の仲間入りにこれからなって、この問題は至急に何らかの解決をしようと考えております。
  21. 帆足計

    ○帆足委員 ただいまの御答弁で満足でありますが、今の総理の石橋さんが通産大臣であられたとき、日本は貿易国であるのにこういうことをいつ実行したのであろうか、まことにむだなことである、ということを言われたのです。今総理になっておられますから解決は容易であろうと存じますが、こういうばかなことはぜひともやめていただきたいと思うのです。日本は貿易国ですから、貿易の額によって一国の繁栄の限界が大体きまるのです。これは党派をこえた国民の要求だと思う。この点は、ソ連とかアメリカのように広大な自給自足のできる国と違って、日本は原料の大部分と食糧の相当部分を輸入せねばならぬ国ですから、あまりぜいたくなことを言うべきじゃないと思うのです。外国の公けのお客さんまで全部指紋をとろうなどということは、これは法務省のぜいたくというものです。ぜいたくは国民の敵だ、こう言ってもいいと思うのです。中国との貿易はやっと四年間ですが、輸出入合計一億五千万ドルになりまして、輸入は九千万ドルまでこぎつけましたから、人口に換算すると大体三百万の人口を養い得る程度になりました。子供に換算すると四百万の四才以下の子供を養い得るわけですから、中国貿易が開始されて以後新たに増加した子供は全部中国貿易で養ったというくらいの数字になっているのです。ことしさらに二、三割増加するとすれば、ことし生まれてくる子供たちもまず中国貿易で養える。ですから、金額は非常に小さいようですけれども、島国日本にとってはやはり相当の意味を持っておると思います。従いまして中国との貿易の問題をただイデオロギーとか選挙用の宣伝スローガンというふうにお考えにならずに、やはり貿易に関することは島国の日本民族にとって非常に重要なことでありますから、なるべくむだなことを避けていただきたいと思うのです。  その次にお尋ねいたしたいのは、ココム並びにチンコムの緩和のことですけれども、せっかくそういう方向に進んでおりましたときに、アメリカ政府から、多少やきもちや誤解も加わって抗議が出たということを聞いておりますが、外務省当局でもけっこうですから、最近の結論だけ簡単に承わりたいと思います。
  22. 佐藤健輔

    ○佐藤説明員 ただいま帆足先生から、アメリカからの申し入れについて御質問がございましたので簡単に申し上げますが、先般外務省の情報文化局長が新聞で申し上げましたように、アメリカから、東欧の事態、またハンガリーの事態にかんがみて、今の統制を強化したいという申し入れが非公式にございましたことは事実でございます。ただそれの回答につきましては、いろいろほかの西欧諸国との関係もございますので、まだ正式にと申しますか、向うに伝えておりませんで、研究中の事項になっております。
  23. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 今外務省からお答えした通りでございますが、私どもの方ではこの間予算委員会の分科会でもお話し申し上げましたように、フェアレス委員会に対しても日本のいろいろな事情を十分説明して、いろいろな予防的なことを相当やりましたが、こういう努力を今後われわれがすることによって、一応今考えられているような、そうきつい事態というものは避けられて、やはり特認制度の活用というようなものによってこれを合理的に今後伸ばしていく方法は十分あると考えられております。国際問題でございますから、何か中共貿易促進ということを言うと即日本の外国への不協力という印象を与える傾向がございますので、そういうことにとってもらっては困るのだ、日本が隣の大陸に対して全貿易量の五%や一〇%の貿易を拡大することはもう自然の形であって、禁輸物資だけの問題を避けたって普通の物資でそのくらいの貿易ができるのは自然の姿なんだから、今後われわれは列国とは十分協力する、そうして日本だけが不信行為をするというような事態は避けるが、しかし日本と中共との貿易は今の何倍か進めるつもりなんで、これが進んだからといって対外非協力という問題ではないのだ、そういう誤解のないようにしてもらいたいということは事ごとに私たちも努力していますし、そういう方向でそう国際的な摩擦なしに私どもは日本と中共との貿易を進めることはできるだろうと今考えております。
  24. 帆足計

    ○帆足委員 ただいま御答弁のような御趣旨と御努力は大いに党派を越えて国民の期待するところだと思います。ハンガリーやエジプトの暴動は、強国の圧力に対して圧力を受けている国民が反撃したわけであって、従ってアメリカはむしろあまり押えていると日本もハンガリーのようになるぞということを心配して譲歩するのがほんとうであって、ハンガリーの教訓のくみ取り方がアメリカはさかしまになっているのではないかと思います。強い国が戦争で勝って敗戦国に対して圧力を加えたら暴動を起して反撃しても世界の国民はこれに同情するという空気のあるときですから、沖繩問題にしろココムの問題にしろ、これはおれの方がやり過ぎだ、ソ連の二の舞になると反省すべきである。それを逆に強化しようとするのは、論理学を知らないもってのほかのことだと思います。それからココムというのは戦略的目的のためにできている、こう言れわている。そうすると戦略とは何であるか、これは自由諸国が平和を守るための一般的なタクティックスだと思うのです。ところが私どもがずっと見るとこれは戦略ではなくて、たとえば英国やヨーロッパ諸国がやはりココムの緩和を経済上の必要から要望していた。それが日本に比べて非常に不利な状況にある、特にスエズ問題以後は、交通上の困難もあってヨーロッパは日本よりちょっと今度は立ちおくれになるであろう、見本市も立ちおくれた、そういうことから逆に英国及びヨーロッパ筋がココムの緩和はあまり急がぬでもいい、こういう発言をし始めた。これは英国のいろいろな商業雑誌を見れば歴然とその動向が現われている。そうなるとこれは戦略物資ではなくて商略物資だ。商業上の競争にココムという制度を利用しようとしている。これは私は不当だと思う。これは国際連合の精神に反する。国際的にきまった一つの方針を他の方針のために利用しようというふうな態度はまずいと思う。またアメリカが今不幸にして台湾及び中国との関係にはさまって苦労している。これは了としますけれども、そのためにアメリカが中国市場に出られない、自分が出られないから他のものも出させまいというような経済実利上の考慮も入っていると思うのです。そこで私は言うのですが、もしアメリカに、中南米との貿易を絶て、はい、そうでございますかというような政府があったら、一週間でつぶれると思います。英国にインドとの関係などまず第二でいいのではないか、ネールがときどきブルガーニンにこびを売るようだからあまり助けぬ方がいいのではないかと言って、それを承認するということであったならば一週間でつぶれる。同じことがフランスのアフリカに対する立場でも言えると思うのです。ちょうど同じ関係が過去における日本と中国大陸との関係であったのですから、中国と日本との経済関係にひどい圧力を加えようというのは友邦の態度ではないと思います。ただいま大臣が言われましたように、一定の見識を持って、言うべきことは言った方がアメリカのためになると思う。アメリカと日本との関係ももはや敗戦後十年ですから、互恵平等でなければならぬと思います。アメリカの世話になっておりますけれども、われわれもアメリカにずいぶんお世話をしてあげている。またアメリカからたくさんの商品を買ってあげておって、決して一方的なものではないと思うのです。金を貸したからといってこいつを押えつけようというのは高利貸や質屋のやることである。近ごろは質屋ですらもうそういうことはしはしません。従ってエジプトの問題及びハンガリー問題から学ばねばならぬことは、単にロシヤ側も反省しなければならぬということだけでなく、同時にアメリカ側も反省しなければならぬ。これは私はどっちもどっちだと思う。従いましてハンガリー問題が起ったからといって、アメリカだけが一方的に自分を反省せずに興奮するというのはやはり片手落ちであって、ソ連もアメリカも両方とも反省してもらいたい。そういう点で今の大臣の御答弁の趣旨はわれわれ多とするところですが、今のように商業上の競争、配慮がチンコム、ココムに反映するということは私は不当だと思いますが、大臣はどのようにお考えになりましょうか。
  25. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 従来は欧州の各国は一応ココムの制限を緩和するという方向に、みんな歩調を合せて動いていたことは事実でございますが、それがそういう商業政策上の考慮によって努力が鈍ってきているかどうか、私まだ十分存じませんが、私の聞いている範囲では、禁輸をもう一段強化しようという方向については、欧州の関係各国は一応みな消極的であるという情勢を聞いておりますので、果しておっしゃられるような傾向があるかどうか、今のところ私存じておりません。
  26. 帆足計

    ○帆足委員 外務省の方お急ぎですから一言だけ……。
  27. 佐藤健輔

    ○佐藤説明員 今通産大臣から御披露がございましたように、われわれが得ております情報では、英、仏、独いずれ政府中共貿易に対する禁輸強化に対しては、依然反対の態度をとっております。ただ帆足先生の御指摘のように、あるいは業界といたしましては、スエズが通れなくなったので、さしあたり少しインタレストを失っているということはあるかも存じませんが、われわれが接触いたしております政府関係におきましては、依然として強い緩和を要望しているようであります。
  28. 帆足計

    ○帆足委員 外務省の方は昼会議がありますのでお急ぎですから、もう一つだけお尋ねしますが、パリのココム本部に日本の代表が何名駐在しておりまして、イギリス、フランス、西ドイツ等は何名駐在しておりますか、それを一つお尋ねします。
  29. 佐藤健輔

    ○佐藤説明員 御指摘の日本の係官が何名行っているかという点でございますが、ただいまは参事官を長にいたしまして、書記官が三名、それに通産省からも御配慮を願いまして専門家が一名、合計五名になっております。それからほかの代表部の関係でございますが、正式にわかっておりますところは、米国が四名、英国が三名、フランスが二名、ドイツが二名、イタリアが三名、ただこれは常時そういう事務を扱っている人の数でございまして、いろいろ専門的な事項が起りますと、近くでございますので、本国からそれぞれ専門家が参りますから、その数に至りましてはその場合々々で異なって参ります。ただいま申し上げました数は常時そこでその事務を担任している者の数と御了解をいただきたいと思います。
  30. 帆足計

    ○帆足委員 私が伺っておるところによりますと、パリのココム本部では、日本代表は欧米主要国の代表の三分の一くらいの数で非常に弱勢であるということ、それから距離が遠いため、向うは簡単にロンドンへすぐ電話ができる、またベルリンにすぐ電話して一分間で話をどんどん進めるが、こちらはなかなか通信が容易でない。予算も少いために、返事が来るのが非常におそくて、商機を逸するということも聞いております。これはもう少し、私の方も調べますが、重要問題ですから通産省当局としても経済局とお打ち合せになって、そういう非常な立ちおくれのないように御研究のほどを願いたいと思います。  それから法務省の方からおいでになっておりますから、御研究をお願いしておきますが、商務駐在員の駐在につきましてもう一つ非常に重要な問題があるのです。それは住居、財産、生命、仕事の安全ということを先方は強く、要望しております。たとえば一種の暴力団が襲ったり、それから変な検事――検事局は御承知のように政治的に動かされてときどき悪いことをします。私なども戦争中一年も監獄にほうり込まれたのですが、検事というのはほんとうに困るのです、同じ東大の育ちでどうしてああいう爬虫類のような者が生まれるか、中にはりっぱな人も半数くらいはおるでしょうけれども、私を取り調べた検事などはまだ健在だそうでして、これはもう明らかに爬虫類です。そういうのがおるのが人類進化の過程ですから……。諸外国でも日本の憲兵はもちろん鬼のようにおそれておりますけれども、法務省というものがほんとうに民主化されておるかどうか、心配しておると思う。しかし昔に比べればだんだんよくなりつつあると私は確信し、信頼しておるのですけれども、そこで政治的に利用されたり、または出来高払いで手柄を立てようとして一騒動起す。それから教養が低いために疑心暗鬼が非常に多くて、空中楼閣を描く想像力が発達しておる、こういうために、率直に言って実際安心できるような検事局でないのです。国民代表である私どもからこういうことを言われるということは、法務省は恥かしいと思わなければならぬ。もちろんりっぱな人もたくさんおりますから、これは例外ですけれども、そういうような情勢下において、共産主義国から来る人たちが心配するのは――相手にも私はいろいろ言いたいことがありますけれども、外国の検事局の世話までこっちがするわけにいかない。評論家とすれば雑誌「世界」か何かに書けばいいことであって、国会の中ではやはりほんこうに真剣に合理的な司法機関をわれわれは期待する。そういう点から言うと、民間駐在員ということになると、非常に不安を感ずるといわれております。それに対して公使館か大使館のような待遇を与えることはもちろんできませんけれども、私は当然領事館に準ずるような措置を研究すべきだと思います。その研究の項目につきまして、私どもの調べたことを今谷大臣に差し上げておきましたから、本日御答弁いただくより、これは誠意をもって御研究願いたいと思います。資料には秘の判こを押しておきました。民間で作ったものですけれども、われわれ秘の判こを押して大いに敬意を表しておるわけです。御研究のほどをお願いいたします。誠実に御研究下さる意思があるかどうかだけを承わります。
  31. 井本臺吉

    ○井本政府委員 先ほど資料をちうだいいたしましたので、よく研究したいと存じております。
  32. 帆足計

    ○帆足委員 次にお尋ねいたしますが、中国との貿易について一番問題点となっているのは輸入です。日本は島国ですからどうしても安い原料を安定した形で近い国から入れるということが必要です。それで工業塩とか石炭鉄鉱石等の輸入を、安定した安い価格で入れ得れば、日本重工業の非常な、ささえになることは当然ですが、従来先一方と技術的にもまた長期の見通しをもっても十分に懇談するような機会が一度もないのです。従いまして、私は当然簡素な形で経済使節を石炭などについては派遣することがいいのじゃないかと思います。またこういう重要な原料を購入いたしますときに、商社が先を争って非合理的に値段をつり上げるということは国益にならないことだと思います。最近樺太炭を輸入するにつきまして、鉄鋼業者電力業者とガス業者の十二社がよく相談して、貿易商も輪番幹事をきめて、政府と連絡をよくして交渉しつつあるということですが、私はこれは独占の弊を招来しない限りにおいては、こういう方式が正しいのでないかと思います。昨年石炭輸入しょうとしましたときに、一社独占でやろうとしまして、どうも政府当局も多少そういう方向に一時行ったかのように見えまして、そのために二十万トンの石炭輸入の機会を失したことはつまらないことだと思います。それもこの席で伺いますと、政府は必ずしもそういうお考えでなかったということをあとで承わって釈然とはしましたけれども、行政指導が足らなかったせいか、去年の十一月ごろちゃんと話のきまるべきものがきまらないで、今に持ち越して、スエズ問題が起ったために石炭の値段は国際的にも暴騰している。こういうことで、とにかくわずかの金額でしたが、何億円の商機を失した。その何億円というものだけ国民に損害をかけたということになるわけです。ですから見通しがないということ、無知であることはやはり罪悪であるというのはほんとうだと思います。先の見通しを立てなければ経済というものは成立いたしませんから。従いまして、ことしの石炭事情は、先ほどお伺いいたしました中国及びソ連圏からも多少輸入するといたしますと、やはり商業の法則に従って、穏やかに先方と話し合いを今から開始する必要があると思うのです。それから商社も先方と日本側と相談して、何社かグループを作って、輪番幹事でも置いて話し合いをする、また粘結炭と一般炭の間にも有機的関係がありますから、鉄鋼電力、ガスなどは十分な連絡をとっておやりになる。中国から大体どのくらい石炭をことしお買いになる予定でしょうか。それを承わりたいと思います。同時に肥料の輸出やセメントの輸出などにつきましても、たとえばセメントは冬の間の寒いときに出せば値段が安くなりますし、また積み上げだとか包装なども買う方の土地に適合した方法をとれば、また安くすることもできるでしょう。またこういう大量物資については、どうせ戦争はないのです。また戦争をあらしめてはならないのです。戦争がないとすれば結局貿易をやったものの勝なんです。何のかんのと言っても、根本はやはり日本は貿易立国でなければならぬので、従いましてお得意さんに対してはイデオロギーを離れてやはり大事にするという気持が必要だと思うのです。ふろ屋を開いておって、自党の議員だけ入れて、社会党の議員が来たらつばをひっかける、共産党の議員が来たら追い返すというふろ屋さんはないと思います。貿易についても大体それと同じようなことが言えると思います。従いましてセメントの輸出にしましても、肥料の輸出にしましても、その他大量物資の輸出についても、やはり適当な形で先方経済使節を呼び、こちらからも経済使節が行くということに対して、商工当局はそれが純粋の貿易の仕事であるならば、できるだけ便宜をはかる。またおっくうがって左眄右顧して、そういう交渉をはばかっている向きに対しては、はばからないで済むような穏当な環境を内面指導するということも商工行政上必要だと思うのです。日本の鉄鋼業、電気産業と中国の業界とはまた全然接触がございません。そのために疑心暗鬼をしたり、ほとんど子供のような誤解が相互に生じたり、商機をとらえるのにとんでもない見当違いな思惑から商機を逸したりしておるような不幸な現状だと思うのです。こういうことをスマートに指導されることが貿易行政の任務の一つだと思いますが、大臣の御意見を伺います。
  33. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 御質問はこれまでのいきさつとも相当関係しているところがございますので、通商局長からお答えしたいと思います。
  34. 松尾泰一郎

    松尾(泰)政府委員 ただいまの御質問に対しましてお答え申し上げます。石炭のみならず大量物資につきまして向うから人を呼び、あるいはこちらから使節団を派遣いたしまして話し合いをする、これにつきましてはわれわれは非常にけっこうと存じておるわけでありまして、先生十分御存じのように、昨年十一月には肥料の使節団が参りまして、硫安はあのときは価格関係でできませんでしたが、その他の肥料について大量の取引ができましたことは御存じの通りであります。今セメントについても御指摘ありましたが、われわれといたしましては、業界でそういう御希望がありますれば、できるだけお手伝いを申したいと思います。輸入物資につきまして石炭の問題も、従来は粘結炭を年間約五、六十万トン輸入をいたしておりますが、最近ではいろいろ石炭事情関係から申しましても、一般炭の輸入の必要も非常に増加して参っておるわけであります。従いまして粘結炭のみならず一般炭につきましても、こういう大量物資につきましては、両者の間で何か一元的な話し合いが必要であることを痛感いたしておるわけでありまして、役所側としてはできるだけそういう話し合いにつきましては支援を申したいと思っております。特に御存じのように、最近該地向けの輸出が非常に伸びましたに関連いたしまして、輸入物資につきまして若干問題が生じておることは御存じの通りであります。もう少しやはり輸入を増大しなければ輸出が頭打ちになる情勢が出て参っておりまするので、われわれこういう大量物資につきましては、できるだけ円滑に輸入ができまするように、そういう話し合いはできるだけお手伝いを申し上げたいと、こういうふうに考えております。
  35. 帆足計

    ○帆足委員 お約束の時間に至りましたので、結論的に二、三のことをお尋ねしますが、石炭、塩、大豆、米などは今年度は中国からどのくらい輸入するお考えですか。
  36. 松尾泰一郎

    松尾(泰)政府委員 実は先生十分御存じのように、近く中国側との話し合いが開始されまするので、業界の方におきましても輸出入計画を立てておられるわけであります。われわれの方も間接にそれに御相談にあずかりまして、できるだけ中国との輸出入の規模を拡大したいということで、率直に申しますと、内部で小人数のグループを作りましてお手伝いをするような態勢も整えておるのでありますが、何分その交渉直前でございますので、各商品別に何ぼ何ぼという数字を申し上げるのは、まだちょっと時期尚早かと存じますので、その点は遠慮さしていただいた方がいいかと思います。
  37. 帆足計

    ○帆足委員 一昨日も国際貿易と輸出入組合と議員連盟、三団体でこの打合せをいたしまして、三月の末から第四次貿易協定の交渉に入られるわけでありますが、現在の外交関係から、政府が表面に出ることはできませんので、民間の三団体が政府の意をある程度体して、また業界の意向を体して、国民的な見地から超党派的にこの問題のお手伝いをしょう、こういうことになっております。今までは非常に困難な状況の中を、先を見、今日の時代が原子力の時代であることなど考えて、島国日本のためにだれかがその役割を引き受けて貿易の道を開かなければならぬというので、微力ながらも超党派的に同僚議員たちが集まって努力してきました。私は民間外交としては皆さんからもおほめにあずかってよかった。今にしては実績も上ったと思っておりますが、ここまで参りますと、国際連合も一段と強化される前夜にありますし、ことしはジェット機が戦闘機の第一線から去って誘導弾に移るでしょう。ジェット機は旅客機に移る。旅客機に移りますと、北京まで一時間でちょっと行けるという情勢なんでありますから、内外の狂欄怒濤の速力から考えまして、やはり一年は十年くらいの早さで動きますから、中国が国際連合に入るというような日も、時の勢いではそう遠くはないのじゃないかと思います。そういうことも考え、なお大陸と日本との数千年にわたる文化、経済、民族という諸関係考えて、これらの国の経済建設をソ連、東欧諸国または西ドイツ、英国の手にゆだねるのを傍観しておるわけには参りませんで、やはり合理的にして妥当な道筋において、日本の科学技術、日本の工業とか、互恵平等の平和の関係において協力し合うような関係考えておかなければならぬ。こうなると、ことしの貿易協定は、今までのように偶発的な思いつきの協定でなくて、もう少し実際的なものにする必要があると思います。ただいま通産当局から御答弁がありましたように、一方では単に貿易業者だけでなくて、重要商品については需要者、メーカーの御意見を尊重し、これは行政当局経済計画の一環に入るわけですから、その十分な御意見を伺ってしなければならぬ。業界ではことしは地についた協定を結んでくれと言いますけれども、その地がまだぶかぶかして固まっていないのですから、そう固いものはやはりできないと思います。しかし七割なら七割程度は通産省当局及び貿易業者並びに業種別需要者団体の意見を聞いて固めれば、ある程度実際的な案がそこでできると思います。それに二割か三割か将来のことを考えてふやしておく、弾力性のあるものにするとういようなことにすれば、実際に即したものになろうと思います。そこで政府が直接衝に当ることはできませんから、輸出入組合が新たに参画するということになりますから、この協定の準備に対して政府としては自由諸国の協調をそこなわない範囲において中国との貿易の拡大をはかるということが、国民に約束した公約でありますから、行政当局に十分な連絡ができますように、以前と違って十分下相談の上で事を進め得るように積極的な御指導なり御協力のほどを私ども三団体の協議会としては希望しておりますから、この点について大臣の御意見を伺います。
  38. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 私もそのつもりでおります。
  39. 帆足計

    ○帆足委員 それから石炭問題にしても、戦前にはたしか三百万トン以上も中国から来ていたでしょう。鉄鉱石にしても百万トン以上も来ていたわけです。ところが鉄鉱石事情などは今だれに聞いても中国の事情はよく把握できない状況です。こういうことであってはならぬと思いますので、三団体から使節でも参り、また先方からも来るということになれば、もう少し正確な調査もしなければならぬと思っております。また中国と日本との間は、一衣帯水でもって原料及び製品関係において相互に有利であるとだれしも口にしてあいさつを述べるのですが、実際貿易ということになると、中国側も昔と違ってなかなか強硬でありまして、国際値段ということを主張するのです。しかし国際値段と申しましても、やはり近い距離であるから、船賃だけでも双方に有利であるということにならねば、西欧各国やアメリカに比べて中国の貿易が全く同じ国際値段であるというのであれば妙味がないと思うのです。スエーデンの鉄鉱石にしても、西ヨーロッパに売り付けるときに、必ずしも国際値段で売りつけるのではなくて、その需要国の立地条件に応じて需要国の産業の特色が伸びるような値段において取りきめる。また品質においても相談するのがこういう重要物資についての慣例でありますから、どうしても重要物資のお互いの売買についてはもう少し打ち解けた長期にわたる話し合いが双方の利益になろうと思います。今までは中国貿易といえば、はれものにさわるような立場で参ったこともやむを得ないことでありますけれども、もはや原爆は水爆となり、誘導弾の時代という新しい日が目前に来ておりますから、日本と中国との関係は自民党と社会党の関係だと思うのです。意見は違いますが、戦争はしない、なぐり合いはしない。大臣などは非常に思想の新しい人ですけれども、保守党の中には私どものような愛らしい人間も、あれは赤ではあるまいか、朝から晩まで赤大根でも食べているような、政治家が最初はいたわけです。私たちは反動政治家はきらいですけれども、保守政治家とはやはり話し合っていかねばならぬ。ちょうどアメリカとソ連の関係でも、日本と中国の関係でもそういうことである。お互いが反動的であるか、過度に過激であれば話はできませんけれども、お互いに合理的であれば話ができる。そういう観点で中国及び東南アジア諸国に対処することが、私は日本国民の利益になろうと思います。幸いにして通産大臣もそうですし、宇田企画庁長官もわれわれの議員連盟では同志の一人でありますし、お互いにそういう観点で、哲学的に言えばヒューマニズム、経済政策的にいえば合理主義、こういう観点で非常に親しく話ができるような立場に立っておる。国連の目標とするところもそうであろうと思うのです。私は一年ごとにそうなっていきつつあることを自分の体験を通じて、中国貿易の五カ年の経験を通じてもよく知っております。またこの前は水爆の実験反対の委員長福田さんの演説を聞いても私はそう思いました。そういう方向と歴史の方向とを結んで貿易が進むことが大事なことです。インドなどへ行きますと、私などは、日本ではそれほど歓迎されませんけれども、非常に歓迎される。帆足君の言うことはよくわかる、筋道が通る、こう言われる。これは私個人の光栄であるばかりではない。日本はインドに対しても、インドネシアに対しても、今独立して平和のうちに建設しようとする国民に対して、やはり理解と愛情を持つ必要がある。そういう哲学的な、常識的な背景を持ちながら貿易をすることは非常に重要だと思うのです。貿易は、いつか中共が、日本以外に売る場所がないから、泣きついてくるだろう、中国との貿易はフグ屋へ行ってフグを食うようなものだとか、座談会などでそういう言葉が出ておりますが、そういう人食い人種の座談会のような観点で中国や東南アジアに対処したのでは、それはやはりうまくいかないと思うのです。中国は中国としての歴史上の必然性があり、歴史上の悩みがあってああいう体制になった。その体制はソ連よりどちらかといえばはるかに寛大なものになって進みつつある。われわれとしては人権を尊重し、より寛大な道の社会主義になってもらいたいという思いを持ちながら折衝すれば、至誠天に通ずるというか、相呼応して貿易の道も進むでありましょうけれども、前の岡崎外務大臣というのになると、これは言語道断である。ああいうような態度で東南アジアや中国に対処したのでは、先方が相手にしないと思うのです。幸いにして新内閣の中にはヒューマニストの方も多々あられるし、総理もまたマンチェスター学派で自由の何であるかを知っておられる方でありますから、前よりもわれわれは大いに期待しておるわけです。従いまして、皆さんの方もわれわれを特殊な色めがねで見ないで、与党野党それぞれ分に応じてよく努力して、われわれにも日中貿易促進の功労章くらい下さるお気持で、協力していただければ仕合せであります。  きょうは最初の質問でありましたので、多少駄弁を弄しましたけれども、これで終ります。
  40. 中崎敏

    ○中崎委員 ちょっと資料要求を……。主要なる輸出入国別の最近一カ年間における輸出入金額、それを対照した表を出してもらいたいと思います。
  41. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 いつまででございますか。
  42. 中崎敏

    ○中崎委員 こまかい数字でなく、簡単なものでよろしゅうございますから、そう大してかからないと思います。
  43. 福田篤泰

    福田委員長 それではなるべく早く  出して下さい。   この際午後二時まで休憩いたし  ます。     午後零時四十二分休憩      ――――◇―――――     午後二時十五分開議
  44. 福田篤泰

    福田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  産業経済基本施策並びに私的独占の禁止及び公正取引に関し質疑を継続いたします。齋藤憲三君。
  45. 齋藤憲三

    齋藤委員 通商産業大臣は、過日本委員会において昭和三十二年度における通商産業省の重大施策につきその要旨を述べられたのでありますが、同日経済企画庁長官も、本委員会こおけるあいさつ要旨に、これを裏書きするごとく、昭和三十二年度の経済計画について御説明があったのであります。このことは申すまでもなくわが国経済発展成果のいかんを決する起点が通産行政のいかんにかかっておることを示すものでありまして、私も本委員会の一員として責任の重大なることを痛感いたしますがゆえに、あえて質問をいたさんとするのであります。  通産大臣は、過去二カ年における経済発展成果を基盤としてさらに健全な経済の拡大を積極的に推進し、完全雇用の達成と国民生活の水準を向上せしめることを期するとの二点を今後の通産行政の重大な眼目と定めて、総合的かつ重点的に施策を展開すべきであると述べておられることは私も全く同感の意を表するものであります。さらにこの重大眼目達成のための最重点施策は、貿易の振興をはかることであるとし、直接間接幾多緊急の施策を列挙せられておることもまた当然のことを賛意を表するのであります。しかし大臣も述べられている通り、昭和三十二年度の輸出見通しは二十八億ドル程度を期待しておられるのであるが、最近の米国を初めとする日本品の輸入制限傾向、西欧諸国の輸出競争力の強化等を考えるとき、海外市場の動向は必ずしも楽観を許さないものであると言うておられるのであります。また他面経済の拡大に応じた輸入確保経済安定のため欠くべからざる条件であることを考慮すれば、国際収支の維持改善の見地からも、輸出振興の責任は今後ますます重きを加えるものと考えていると結論づけられているのであります。これは大臣はもとより何人も当然お考えになることであると思いますが、大臣の言われている通り、輸出振興の要諦は、輸出品の対外競争力の強化と安定した海外市場の維持拡大をはかり、一時的な海外市場の変動に左右されない強固な輸出力を培養することにあることはもちろんでありますが、大臣の話された重点施策要旨の中に、最近の実情を顧みると、将来輸出貿易の中核をになうべき重化学工業品の対外競争力が弱く、反面比較的競争力ある軽工業に対する海外諸国の反発的傾向が依然根強いものがあるので、なかなか輸出の振興を将来も安全に考えることはむずかしいという御意思があるのでありますが、これが私の最も気がかりなのであります。そこで大臣考えておられる輸出振興対策の根本的なお考えの中で、輸出品の対外競争力の強化を実現し得るところの基本的な条件は一体何か、どういうふうにしたならば輸出品の対外競争力の強化ができるか、どういうお考えがあるかということを一つ承わりたい、こう思うのであります。
  46. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 対外競争力の強化につきましては、国内的な強化策、それから対外的な強化策という二つの対策をとらなければならぬと思いますが、国内的にはやはり産業基盤を強化するということが根本的だろうと思います。それには立地条件そのほかのいろいろな問題の解決も必要ですが、やはり合理化設備近代化、それから科学技術水準を上げる、この三つをやらなければ、直接的な対外競争力というものは出てこない。なかんずく今までの日本の実情から見ますと、単に陳腐化した設備をそのまま近代化していくというだけでは足りませんで、西欧諸国がどんどん科学水準が伸びていく、技術が伸びていくのですから、特に日本としてはそういう科学技術を一段と伸ばすことをやるのが将来に対する一番大きい対策ではあるまいかと考えております。
  47. 齋藤憲三

    齋藤委員 先ほども申し上げました通り、重点施策の要旨として述べられました二ページのまん中ほどに「将来輸出貿易の中核を担うべき重化学工業品の対外競争力」とこうあるのですが、これは局長でけっこうでございますが、この重化学工業という意味をどなたかからお教え願いたい。これはどういうことをいうているのですか。
  48. 松尾金藏

    松尾(金)政府委員 重化学工業の意味というても特に御説明する内容のものもないかと思いますが、御承知のように、重化学工業の輸出についての問題は、特にプラント輸出でございますとかがその著しい例だと思いますけれども、輸出部門に対して重化学工業を伸ばさなければならぬという意味でプラント機械類を中心とする重機械、さらにまた双眼鏡でありますとか写真機でありますとか、そういう意味の軽機械もやはり重機械類とあわせて重化学工業の中に入れて考えていると思います。また化学工業の中では、御承知のように肥料の関係でございますとか、肥料の輸出は、御承知のように日本の経済、地理的な関係で特に伸びておるのでございますが、これも肥料その他化学工業品全体を含めまして重化学工業の輸出を伸ばす、こういうふうに申し上げていると思います。
  49. 齋藤憲三

    齋藤委員 そうすると、ここにある重化学工業というのは、重工業と軽工業を一緒にしたものを重化学工業といっているのですか。
  50. 松尾金藏

    松尾(金)政府委員 そういう意味でございます。
  51. 齋藤憲三

    齋藤委員 いや、私のお伺いいたしましたのは、英国なんかでは重化学工業というものを特に重工業、軽工業と別に分類して、重化学工業というものには、はっきりした定義を加えているわけです。それですから、私としては重化学工業という字を使っているから、そういうふうな重化学工業を意味するのか、こういうことをお伺いしたのですが、ここにおける重化学工業というのは、それでは重工業と化学工業とを一緒にしたものか、それともまた軽工業というものを別に分類して考えているということですか、もう一度……。
  52. 松尾金藏

    松尾(金)政府委員 大体そういう概念で考えております。
  53. 齋藤憲三

    齋藤委員 それではその定義に従ってお伺いいたしますが、そうすると、ここにある「将来輸出貿易の中核を担うべき重化学工業品の対外競争力が弱く、」というとその内容を、局長でけっこうですから、どういうものを対外輸出品として重点的に通産省は考えているか、それがどういう角度から弱いというのか、そこを説明していただきたい。
  54. 松尾金藏

    松尾(金)政府委員 要約して申し上げますと、御承知のように重化学工業の製品については、その原料が非常に大きな役割を果すことは御承知の通りであります。御承知のように日本に重化学工業の原料として重要なものである、たとえば鉄鉱石でございますとか、あるいは強粘結炭でございますとか、あるいはくず鉄の関係も同様だと思います。さらに化学関係で申しますれば、工業塩でありますとか、こういう原料関係が、日本の国内の資源の関係で海外に仰がなければなりませんし、また相当高い運賃をかけて運ばなければならないというような関係で、まず原料面で日本の重化学工業は資源的にかなりつらい条件のもとにあると思います。そういうことのほかに、さらに国内で、御承知のような日本の産業の沿革から申しましても、重化学工業は最初国の育成のもとでだんだん伸びて参りましたけれども、西欧諸国に比べれば日本の重化学工業の沿革はまだ浅いわけであります。またその方面の技術その他も海外からどんどん新しい技術を入れては参りましたけれども、なお西欧諸国に比べれば十分でないと思います。そういう関係で日本の重化学工業を世界的な水準に比較いたしますと、やはり対外競争力は必ずしも十分でないという意味で申し上げておると思います。
  55. 齋藤憲三

    齋藤委員 日本で将来輸出貿易の中核をになうべき重化学工業というものは、ただいまの御説明によりますと、原材料がまず手薄である。これは前から言われておることでございまして、ことさら今日日本の原料資源の欠乏を訴える必要はない。ただ私の懸念しておりますのは、原料資源が非常に欠乏しておる。そうして日本の今日の重化学工業の水準が世界各国の重化学工業の水準にとうてい及ばないんだ。しかも原料が足りないんだ。だからこのまま推移していって世界の好景気が多少でも逆転して参るというと、日本の重化学工業というものはなかなか外国に輸出品として出にくいんだ。しかしわが国としてはどうしても軽工業に輸出の重点を置くのでは将来の伸びがないから、重化学工業に重点を置かなければいけないんだ。どうしてもそういうところを考えると非常に将来にも弱点があるんだ、こういうことを意味しておるのかどうかということをお伺いしておるのです。
  56. 松尾金藏

    松尾(金)政府委員 ただいま申しました原材料なり資源の関係から申しますれば、それはやはり宿命的なものであることはやむを得ませんが、技術関係その地われわれの努力によって今後日本の重化学工業の水準は世界的な水準を乗り越えていくように当然努力をいたすべきものだと思います。
  57. 齋藤憲三

    齋藤委員 それではここにある「軽工業品に対する海外諸国の反撥的傾向が依然根強い」というのは、具体的に御説明を願えば、軽工業中の何に一番世界の反発力が強いのですか。     〔委員長退席、笹本委員長代理着席〕
  58. 松尾金藏

    松尾(金)政府委員 軽工業品に対する海外諸国の反発的傾向が最近一番著しい例は、御承知のように綿製品でありますとか、繊維関係のものに一番著しい例が出ておると思います。もし御質問がございますれば繊維局長からその経過なりを御説明申し上げたいと思います。
  59. 齋藤憲三

    齋藤委員 ここの文章から私が感じますのは、比較的競争力のある軽工業品に対する海外諸国の反発的傾向が依然根強い。日本の輸出貿易全体から考えてみて、通産省としては比較的競争力のあるこの軽工業に将来どれだけの輸出貿易のウエートをかけていくのか、また重化学工業をどれくらい重く見ておるのか、たとえてみますれば、英国のごときはすでにランカシア綿紡は、放棄とまではいかないけれども、輸出品としてはほとんど考えておらない。というのは軽工業というものは後進国がどんどんやれる工業である。インドでもやればシナでもやれる、どこでもやれるのだ、だからこういう軽工業に将来の輸出貿易の運命をかけることは先進国としては時代おくれである。むしろそういうものを顧みる力があったならば、それをジェット機の生産であるとか、その他もっと近代的感覚の大きな需要を将来人類が持つところの工業に振り向けて輸出をはかって、英国自体の経済の立て直しをすべきものであるというのが英国式の考え方である。そういう考えで通産省はこの重化学工業を今後育成していかれるのか、それとも依然として軽工業は競争力が強いから、こっちの方を育成して輸出貿易のウエートを占めていこうとするのか、その基本の考えを、もし通産大臣にお考えがあったら伺いたい。
  60. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 それはここの「将来輸出貿易の中核を担うべき」という言葉が、大体将来の動向はこっちに持っていくという方針をここに出しておるのでございまして、軽工業品は今まで日本では非常に発達したのですから、今競争力を持っておる。しかしアジア各国の動向を見ましても、こういうものは国産化の方向にいっておりますし、各国ともおくれた国が工業化の方向をとっておるときですから、日本の将来としましては、たとい今競争力があるからといって重点をそこに置いた産業計画というものは立てられません、未開発の国が一段と水準か上れば、さらにその上をいった高水準の産業を興して、日本の輸出をはかっていくという方向へ当然政策としては転換しなければならぬと考えておりますので、そういう意味でこういう字を使ってあるのでございますから、今おっしゃる通りの方向に持っていきたいと思っ  ております。
  61. 齋藤憲三

    齋藤委員 この軽工業という中には化学繊維は入るのですか。
  62. 松尾金藏

    松尾(金)政府委員 私ども普通の意味で入れて考えております。
  63. 齋藤憲三

    齋藤委員 そうすると石炭化学工業とか石油化学工業というものは、通産省ではどういう観念を持っておりますか。
  64. 松尾金藏

    松尾(金)政府委員 御承知のように今御指摘のありましたようなものは、当然化学工業の中に入れております。前にお話のございました化学繊維なり何なりにつきましても、その原料部門のところは当然重化学工業の中に入れて考えるという通常の考え方でございます。
  65. 齋藤憲三

    齋藤委員 そうすると化学工業、石炭工業、石油工業から化学繊維が出るところまでは重化学工業になっているのですね。それからその繊維を加工するところは軽工業に入るということですか。
  66. 松尾金藏

    松尾(金)政府委員 私たち常識的にその程度考えているということであります。
  67. 齋藤憲三

    齋藤委員 それはその程度にしておきます。  それから今大臣からもお伺いしたのでございますが、将来重化学工業を輸出品の中核として育成強化をしていくという点から、午前中笹本委員鉄鋼電力その他に関する御質問お答えになったあれだけの御答弁では、私は非常に心もとない、そういうふうに感ずるのであります。しかし、大臣は、午前中とにかく電力問題に対しても石炭問題に対しても計画は大丈夫進行できるという決心をお示しになりましたから、私も一応それを了といたしまして、その実現を希望いたすのでございますが、午前中にも質問がございましたが、今度立案せられました電力五カ年計画を見ますと、昭和三十五年まで八百四十万キロの開発をしなければならぬ。しかも大臣のこの間の御答弁によりますと、三十二年度は二百万キロやりたいという。これは幾ら論議をいたしましてもやってみなければわかりませんから、私も実現できれば大へんいいなあとは思いますが、とにかく午前中の御質問にもありました通り、石炭換算昭和三十一年度から三十二年度までの開きを見ますと、三百数十万トンの石炭が必要だということですが、炭労の賃上げや最低賃金の要求というような騒然とした世の中において、こういうことが実現できていけばいいけれども、なかなかそういうふうにいかないと思うし、八百四十万キロワットの三十五年までの電力開発がうまくいったといたしましても、重化学工業の点を考えて参りますと非常に危惧の念があると思います。と申しますのは、今日本の鉄鋼事情考えてみましても、高炉、転炉を急速に大拡張しなければならぬ。昭和三十二年度に鉄鋼の大増産計画する。重化学工業の海外輸出の基本線は、普通今まであった高炉、転炉の大増産ができたとしても、果して日本の作り得るところの鋼材あるいは特殊鋼材をもって、日本の重化学工業が世界の市場に優秀製品として確保し得るだけの質的な条件を備えているかどうかということであります。結局海外市場におけるところの優位なる地歩を占めんとするならば、質と量と価格の低廉というものが前提とならなければならぬものですから、今だんだんそういう傾向になって参りまして、世の中はステンレス・スチールの時代だ。結局いろいろな品物を作って参りましても、重工業としていろいろな機械を作りましても、いろいろなものを作って海外市場に出しましても、その質的優劣が結局最後の決定をなすものであると私は考えます。鉄鋼部門に関しまして私がお伺いいたしたいのは、今どれだけの特殊鋼が日本において生産されているかということです。
  68. 井上亮

    井上説明員 特殊鋼の現在の生産は、大体年間六十万トン程度になっております。
  69. 齋藤憲三

    齋藤委員 輸入はどのくらいになうておりますか。
  70. 井上亮

    井上説明員 輸入はいろいろな品種を合せまして大体千八百トンくらいだったと思います。二千トンには達しない程度数量でございます。
  71. 齋藤憲三

    齋藤委員 先ほども質疑応答の中”あったと思いますが、鋼材は三十二生度には九百十五万トンの生産計画が立てられておる。それで銑鉄が非常に不足なので、今度は五十万トンの輸入交渉が成立をした。それでもまだ銑鉄は足りない、こういう状態でございますが、ただいま特殊鋼というものは国内生産が六十万トンあることの御報告があったのでございますが、大体この特殊鋼六十万トンで、日本の特殊鋼に対する需給関係は満足にいっておるのでありますかどうでありますか、それを一つ伺いたい。
  72. 井上亮

    井上説明員 ただいま申しましたように、特殊鋼の生産といたしましては、年間大体六十万トン程度考えておりますが、まあ昭和三十二年度といたしましては、私どもとしては、国内生産はなかなかむずかしいというような規格材を若干輸入いたしまして、それで大体需給はマッチできるというふうに考えております。
  73. 齋藤憲三

    齋藤委員 そうしますと、ただいまの御説明によりますれば、特殊鋼六十万トンの生産が十分にできれば重化学工業の部門、重工業、しかも機械工業その他優秀なステンレスの材料を必要とする輸出品というものは、外国製品に比して劣らないということですか。十分その六十万トンの特殊鋼生産に信頼をささげて、日本の機械類とかその他重工業に属する商品の最もキー・ポイントとされるところでも、外国の商品に比較して劣らない商品ができるという確信がおありでありますか、どうですか。
  74. 鈴木義雄

    鈴木(義)政府委員 大体ただいま説明員から、私が来る前に御説明申し上げましたが、生産確保されれば、今後特殊鋼の需要もますますふえてくるとは思いますが、大体今年度においては何とかやっていけると私ども考えております。さらに今後の問題としましては、特殊鋼につきましてはいろいろ対策を目下考究中でございまして、今後の機械工業部門の伸びに応じまして、量、質ともにこれに対応するような日本の特殊鋼の問題の解決に当りたい、かように考えておる次第であります。
  75. 齋藤憲三

    齋藤委員 これはどうも従来の日本の製鉄体系から考えてみて、日本ステンレス・スチールというものは世界のステンレス・スチールに比較して品質に差のない優秀なものができるということは、われわれ考えていなかったのです。ところが今御説明を聞きますと、それができるというので私は非常に安心しておるんですが、果してそれが事実であるか事実でないか。ちまたの声を聞きますと、日本の商品というものはステンレス・スチール、いわゆる素材が悪いために、どうしても外国製品のように長持ちしないということをよく聞くのでありますが、それに対して十分な責任を持ってお答え願えるような状態にまで、日本のステンレス・スチールの製造は進歩したのかどうか、これを一つはっきり伺いたいのです。
  76. 鈴木義雄

    鈴木(義)政府委員 いろいろ御質問がございましたが、日本のステンレスは、御承知かと思いますが、相当よくなってきております。それで、先ほどあるいはもはや説明があったかと存じますが、相当輸出もしておる状態で、海外に出ております。数量は年に二万トン程度の輸出が特殊鋼全体でございますが、その相当部分はステンレスでございます。従いまして、日本のステンレスは相当競争力がある、かように考えてよろしいと思います。
  77. 齋藤憲三

    齋藤委員 なおこの際鉄鉱の問題について一言お伺しいたしておきたいのでありますが、鉄鉱石の原料といたしまして、昭和三十年度は砂鉄が七十二万六千トン、それから三十一年度は八十万トン、昭和三十二年度は百三万トン、高炉用の原鉱石として使用するという計数になっているようであります。これは資料としてちょうだいした中に書いてあるのでございますが、この資料は、高炉の砂鉄として出ておりますが、このほかに電気銑の原料として、砂鉄は一体今どのくらい使われておりますか、おわかりでしたらちょっと御説明願いたい。
  78. 鈴木義雄

    鈴木(義)政府委員 砂鉄全部の国内鉱の消費量は、資料で多分お手元にあると存じますが、昭和三十年度は電気銑それから高炉を含めまして七十二万六千トン、それから三十一年度で八十万トンというふうな推計になっております。
  79. 齋藤憲三

    齋藤委員 私のもらったものは、高炉銑生産という下にずっと鉄原料が書いてあるから、これは高炉銑に焼結して入れる砂鉄であって、ほかの電気鉄用はまた別だと思いますが、そうじゃないですか。わからなければあとで調べてからでけっこうです。
  80. 鈴木義雄

    鈴木(義)政府委員 ちょっと調べてお答えいたします。
  81. 齋藤憲三

    齋藤委員 私のお伺いいたしたいのは、こういうふうに高炉に焼結した砂鉄が相当多量に使われるようになってきている。しかし、これは非常に不経済な使い方であって、あれほど優秀な鉄鉱石が焼結されて、そして高炉に持っていって、普通の銑に落ちてくるということは、私から言うともう最低銑でも電気銑に持っていかなければ、砂鉄の価値というものは出てこない、こう考えているのであります。まだその他にスポンジ・アイアンにして優秀なステンレス・スチールに持っていくとか、いろいろな方法があると思います。それで本年度経済企画庁の調査によりますと、Fの五七に上げて、日本の青森及びその他一、二県に埋蔵されているところの砂鉄というものは、五一千万トン採掘可能の数量があると出ているのでありますが、こういうものに対して、今非常に原鉱石の窮迫を告げて、船足の少いときに、通産省はこういうものの大開発計画されて、そしてこの砂鉄の能性を生かして優秀なステンレスをどんどん作って、いわゆる海外市場の確保ということに努力されるが、私は一番いいじゃないかと思うのでありますが、こういうものに対す肥る御計画はおありでありますか。
  82. 鈴木義雄

    鈴木(義)政府委員 御指摘の通り、砂鉄を利用します電気銑というものは、非常に通産省としては注目いたしておりまして、実は一昨年来これの増産問題について努力いたしてきております。従来は大体、当時の計画によりますと、年産十五万トンくらいの電気銑の能力を五カ年度において三十万トンに上げる、かようなことで、電力輸送等についても十分めんどうを見ていくというようなことで、一昨年来これを推進して参っておりますが、現在の状況では、三十一年度の電気銑の生産は二十一万トン、三十二年度は二十八万トンと大体予想して、これに必要な鉱石をそれぞれ手配いたしております。なお、先ほど御指摘がありましたように、このほかにさらに砂鉄の増産によって、高炉銑にある程度砂鉄を食わしていく。ただし高炉銑に食わす砂銑の量は、チタンその他の分の関係から、七%とか八%とか一定の限度があると思います。電気銑の増産と同時に高炉銑の使用、これとかみ合せて、これに即応するように御指摘のありました青森、岩手あるいは千葉県、さような方面の砂鉄の開発にも大いに努力していきたい、かように考えております。
  83. 齋藤憲三

    齋藤委員 砂鉄利用その他特殊鋼の問題は、またいずれ機会があるときに技術的に御質問を申し上げたいと思いますのでそれに留保いたしておきます。  大臣もお忙しいようでありますがもう一点伺っておきたいのは、ただいま大臣のお説の中にも、日本の輸出品を海外市場において有力に伸張する基本の一つとしては、産業の合理化方策を確立しなければならない、これはもっともの御意見でございまして、われわれも何ら異存はないのであります。ただ産業の合理化と一言に言いますければも、これはなかなかむずかしい問題でございまして、まさに第三次の産業革命といわれておる時代がやって参りまして、だれ言うとなく、今の時代は原子力とオートメーションの時代である、こうり言っておるのであります。私は通産行政の中で、はっきり申し上げると、現実の問題として非常にやっかいな、しかし避くべからざる問題の一つとして、そのオートメーションというものをこなしていかなければならぬのじゃないか、こう思うのでありますが、まずオートメーション問題に突入いたします前に、オートメーションというものを通産省はどういうふうに考えておられるか、局長でけっこうでございますが御答弁願いたいと思います。
  84. 黒川眞武

    ○黒川政府委員 オートメーションにつきましては、技術的に申し上げますと、時代の変遷がございまして、産業革命の当時からあったとも言われておりますが、現在われわれがオートメーションと申しておりますのは、自動制御、遠隔管理というようなものを最初は申しておりましたが、現在におきましてはさらにこれに人間的の頭脳を注入いたしまして、品質管理、そういったようなものも自動的に行うような一つのメカニズムを高度に応用しましたものでございます。
  85. 齋藤憲三

    齋藤委員 その自動制御回路を伴った完全な自動設備、いわある記憶もあれば判断もあるし選択もあるし、そういう能力を持ったオートメーションというものが今生産態勢の中に入ってきておる。そういたしますと、いわゆる産業の合理化というものの考え方は、結局その合理化考えるトップ・レベルとして、オートメーションというものを掲げなければならぬ。あるいは将来もう少したつと原子力の応用という――原子力の応用などはすでに始まっていると思うのでありますが、いわゆる産業の合理化方策大臣は仰せられているのをこう解釈していいかどうかということです。いわゆる自然科学の最高を基本とした産業構造図を作らなければ、外国貿易、経済外交を進展する産業の合理化態勢というものは出てこないのじゃないか、私はこう考えておるのですが、これに対して大臣はどういうふうにお考えになりますか。
  86. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 結局はやはりそこまでいく方向でいかなければならぬと思っています。
  87. 齋藤憲三

    齋藤委員 私も常に日本の産業構造図――過去の産業構造図、現在の産業構造図、さらにこれから伸び行く日本の産業構造図というものがなければ、日本の生産態勢というものを世界的に角逐するような強力な態勢には持っていけない、こう考えておるのですが、資料として日本の現在における産業構造図、今まで論議をいたしました重化学を中核として伸びていくというような構想にわたる産業構造図というものは通産省にありますか。
  88. 松尾金藏

    松尾(金)政府委員 通産省としてのための特別の作業と申しますか、計画というものを策定したものはございませんけれども、経済企画庁を中心に従来しばしば長期計画が立てられたことは御承知と思いますが、その内容にもすでに日本の産業構造として当然重化学工業の方に重点を向けるような産業構造を考えるべきだということは、いずれ計画にもそういう思想がはっきりとうたわれております。
  89. 齋藤憲三

    齋藤委員 私の言うのは、通産大臣がお述べになりました通商産業省の重点施策というものは非常にけっこうだと言っておるのですよ、これは悪いと言ってないのです。ですから誤解のないようにしていただきたい。ただしお述べになりましたこの要旨を具体的な裏づけをもってどうして達成していくか、行政庁としてこの達成がどういうふうにして行われるのかということのために御質問を申し上げておる。それですから、私もこれを二、三回読みましたけれども、読んでみると、これを達成するには、まず過去の産業構造図から現在の産業にまで伸びてきた構造図、それからさらにこれが発展していくべきところの産業構造図というものがなければ、どれとどれとが関連して、どこに重点的な施策がどういうふうにして行わるべきだということの結論は、なかなか具体的には出てこないのだと思う。今あなたは至るところに重点的な産業構造図を作っているなんというけれども、そんなものじゃないと私は思う。通産行政をひっくるめた日本の産業構造図というものは、過去も現在も将来もあってしかるべきものじゃないか。そういうものがはっきりしておって、どこに重点施策を行なっていくべきであるかということの結論が出てくるのじゃないか、私はこう思っておるからそういう産業構造図をお持ちかどうか、こう伺っている。
  90. 松尾金藏

    松尾(金)政府委員 先ほど御説明いたしましたのは、通産省独自でそういうことを特別にやったことはないということでございますけれども、御承知のように、経済企画庁が日本産業構造の長期的な見通しなり計画をしばしば策定しておるのでありますが、その策定のときに当然通産省としてもその策定に参加をいたしまして、日本産業構造のあり方としては、当然重化学工業を中心にそちらの方に産業構造の大きな重点が向けられるべきだということをそのつど主張もいたしておりますし、またその計画の中には計数的にその点ははっきりとうたい込まれておる、こういう実情でございます。
  91. 齋藤憲三

    齋藤委員 まだどうも意思の疎通が欠けておりますが、これはあと回しにいたします。そこで簡単にお伺いいたしますが、ただいまオートメーションという定義を伺いますと、自動制御を完全に行い得る、すなわち記憶、判断あるいは選択、調整というような力を自動的に奪おるところの機会をその生産態勢に織り込んでいくという生産実態というものは、これは非常に大規模なものでなければならぬと私は思うのでありますが、日本の産業構造の中にどのぐらいオートメーション化される部分があるかという御判断でございますか。
  92. 黒川眞武

    ○黒川政府委員 ただいま申されたオートメーションというのは、非常に理想的な最高レベルに達した場合でございまして、現在日本の技術に関しましては、さような高度に達しておりますのはごくわずかでございまして、たとえば化学工業で申し上げますと石油化学工業、石油精製工業、ああいう部面において、相当高い程度のオートメーションが行われております。なお今後工作機械であるとか、そういった割合にまとまりやすい工業において逐次このオートメーションが応用せられるのではないかというふうに考えております。まだ先ほども申しましたような、非常に判断力を持った、これを調整するというような程度の高いものはごくわずかでございます。その一部分、たとえば原料を調整していく、あるいはまた混合を適宜な割合でしていく、そして悪い混合のときは戻すという程度の部分的なオートメーションは現在の各種産業に相当入っております。
  93. 齋藤憲三

    齋藤委員 現在どの程度にオートメーションが実施されておるかということも必要でありましょうけれども、世界の大勢としては、どうしてもオートメーション時代が実現する。とにかく自動制御回路を持ったオートメーションの設備というものは世界各国で行われておる。ですから良質、多量、低廉の品物を作るということになれば、どうしてもオートメーションをやってどんどん人間以上の作用を行う工場の生産にはかなわないことは事実なんです。それは当然将来の産業構造図の中にはどれとどれとがオートメーションに入っていかなければ、世界の市場において日本の商品は勝ちを得られないということははっきりわかっておる。それを通産大臣は言うておられるのだろうと思うのです。中核として重化学工業をやりたいんだが、そういうことの根本は、やはり時代の波に乗ったオートメーションというものがある産業とある産業に実施されて、オートメーションの性能の優劣ということによって、今度は世界の市場における品質、価格の問題というものは論ぜられるでしょう、私はそう考えている。ですから今はほとんど高度のオートメーションというものは日本に行われてないといったって、将来オートメーション化されるのでありますから、それは将来伸び行く産業の構造図の中に、これとこれとはオートメーション化しなくてはその商品というものは外国市場では角逐できないんだということになると、そのオートメーション実現ということに対して、今日はいかなる施策をもって中小企業その他と見合った政策の実行をされるかということは、オートメーション化されることによって中小企業のこうむる圧迫というものは強くなるか強くならないか。先ほど冒頭に申し上げました、大臣の言われたところの完全雇用というその域に、オートメーションというものがだんだん発展していくと、完全雇用というものが行われるようになるのか、行われないようになるのか。またそのオートメーション化される日本の産業の部分というものはどれだけを占めているのか。そういうことをりっぱな積算数によって現わしてこなければ、完全雇用、完全雇用といったって、一方ではオートメーションがどんどん発展して失業者が出てくるということであったならば、中小企業をどういうふうにして育成したならば、その失業者のしわ寄せというものを中小企業でもって吸収することができるかという結論が私は出てこないと思う。そういう具体策が通産行政の中にぴしっと当てはまってできていますか。
  94. 松尾金藏

    松尾(金)政府委員 御承知のように、将来の産業構造を策定するということになりましても、非常にむずかしい作業でございまして、現在までに政府全体としていろいろな機会に長期計画全体の中の産業構造の論議なり作業をいたしましても、今御指摘のようなところまでの精密な作業は、従来までのところは実際に不可能でございます。その点で御指摘のようなはっきりしたものは従来作業をやっていないという実情でございます。
  95. 齋藤憲三

    齋藤委員 オートメーションの問題はあとに譲ります。  次に、国内資源の開発でありますが、通産省は天然ガスの開発だけでも新規の要求として四億円に近い予算の要求をやったのでありますが、これが全部落ちてしまったという話を聞いて、実は私もがっかりしたんです。石油の資源開発には大臣のいろいろな御努力によりまして十五億の出資ができた。一方天然ガスの積極的開発がゼロになった。このバランスは大臣一体どうしてとったらいいかという御質問です。というのは石油開発会社に出資をした十五億の中から、石油開発会社をして天然ガスの開発に向わせる方法があるかどうかということですが、こういう点に対して何かお考えがありませんか。
  96. 森誓夫

    ○森(誓)政府委員 この問題は私から御説明申し上げた方がいいと思いますから、御了承願います。石油資源開発会社の来年度の出資は多額なものとなりまして、ほぼ所期の事業が運営できることになったことをわれわれは喜んでおるのであります。その探鉱の過程において、当然構造性ガスが出てくることになるわけでございます。他面から見ますると、天然ガスの開発あるいは試掘といいますか、さらに進んでは開発の面に非常に貢献するところが大きいというふうにわれわれは期待しておるわけでございます。そのほか天然ガスの事業の振興については、従来通り来年度も助成金二千万円が計上されており、従って従来程度の試掘の助成はできるわけでございますが、一方最近いろいろな大企業がこの天然ガスを使って化学工業をやろうというので、投資をどんどん始めておるというようなこともございまして、われわれとしては来年度は一応そういうふうな趨勢を促進して参りたいと思っておりますが、基本的には今後の天然ガスの開発を大規模にまた急速にやるために来年度予算に要求しましたが、遺憾ながら認められなかった。しかし天然ガスの埋蔵地域の基礎調査を徹底的にやらなければならないと考えておりまして、さらに今後その実現に努力して参りたいと考えております。
  97. 齋藤憲三

    齋藤委員 この天然ガスの大体の基礎調査は、ことし、三百五十万円ばかりの金でございましたが、特定地域に対してはやったのであります。非常に有望であるという中間報告が出たので、通産省は四億円を、埋蔵地域の基礎調査というものを立案して、要求した、それが認められないという状態で、国内資源の開発が積極的に行われるかどうかということを私は非常に心配するのであります。石油開発ももちろんこれは百万トンの石油増量というものを見込んで、本年は二年目の試さくをやるのでございますが、それと並行して天然ガスの開発はぜひとも国策としてやっていただかなければならないものと思っております。申すまでもなく、イタリア北部の天然ガスの開発によって、イタリアの重工業というものは非常な発展をなしておる。われわれから見ると、石油開発も非常に重要であるけれども、日本の埋蔵せられておる天然ガスの開発は、今局長は二千万円の助成金と言ったけれども、これは前から二千万円ある。今何もふえたのではなく、むしろ減っておるんです。だから四億円の埋蔵基本調査というものがあってこそ初めて天然ガスが国内質源として大きな脚光を浴びるか浴びないかということを決定するんです。それが今日本のように、国内資源の開発を急がなければならぬ、船足も足りない、化学工業はぐんぐん伸びつつあるとぎに、こういう予算が獲得できなかったということは非常に残念でありますが、三十二年度はやむを得ざるとしても、三十三年度の予算にはぜひともこの天然ガスの開発予算が組み入れられるように一つ御努力を願いたいと思います。  石炭局長がおられますから一つだけ伺っておきたいのでありますが、石炭の増量が非常に強く叫ばれている。しかし聞くところによると、洗炭泥流中に微粉炭が三百万トン流亡しておる。三百万トンの微粉炭が流亡しているということは、国家的に見ればゆゆしき大問題です。これに対して石炭局長としては対策があるかどうか伺っておきたい。
  98. 讃岐喜八

    ○讃岐政府委員 沈澱微粉炭の問題につきましては、かねて各方面からいろいろ問題にされておるようでございます。私どももその問題解決のために十分衆知を集めて研究はいたしております。ここにおられます黒川技術院長ともしばしば会合をお願いして研究はいたしておりますが、今のところこれはどうしたらいいかというところまでは結論が出てない状況でございます。これは今後の問題として研究をなお続けさせていただきたいと存じます。
  99. 齋藤憲三

    齋藤委員 黒川工業技術院長はよく御存じだろうと思いますが、去年でございましたか、ドイツの石炭協会の首脳者のレーリンクという博士がやってきて、日本の泥水中の微粉炭回収の発明を非常に驚嘆的に見て、これをドイツに買っていきたいというのでドイツから注文がきたということを私は聞いておりますが、果して事実であるかどう外。またドイツのレーリンクが日本の微粉炭回収に対して驚嘆の眼を見張ったというそれ自体を、今直ちに政府の施策としてこれを利用いたしまするならば、日本の泥水中の微粉炭の回収はどの程度可能であるかということ、こういうことは一体技術的に見てどうお考えになるか御答弁を願いたい。
  100. 黒川眞武

    ○黒川政府委員 ただいま御質問になりました沈澱微粉の問題でございますが、これについては工業技術院の資源技術試験所で数年前から研究いたしておりまして、特に昨年度より特別研究費をいただき、これの研究を強化いたしております。沈澱微粉の判用につきましてはいろいろあります。今齋藤先生がお述べになりました炭素の問題もございますが、最も実際的な問題といたしましては、この沈澱微粉を原料として流動状態でガス化いたし、そのガスを都市燃料なり合成化学の原料に持っていこうという一つ技術がほぼ完成されつつあります。  もう一つ、先ほどあとで御質問いただきましたドイツのレーリンク博士の問題でございますが、これは同じ沈澱微粉でも特殊の沈澱微粉を使わないといけない問題でございまして、粘結炭の沈澱微粉を、ことに灰分の少いのを選び、そういう原料を使って特殊の技法で焼きますと、コークスにならないでれんがのような固い、いわゆるカーボンと称しておりますものができるのであります。しかし現在までの技術の段階において、いわゆる原子炉に使うカーボンのような、特に厳密な規格た要請されておるところまでいっておりませんので、溶鉱炉の羽口に使う炭表れんがあるいはその他高温に耐えるような炭素れんがは、実験量的にはできる段階になっております。この段階をたまたま来られたレーリンク博士が見まして、ぜひドイツでこれをさらにディヴェロップしていきたい。つまりこの基礎研究を伸ばしていきたいという念願にかられまして、そういうお話がございました。なぜかと申しますと、日本においては、カーボンは、アメリカから入るイースト・レイキの石油系のカーボンは比較的安く入りますので、それから作っております。日本では今の沈澱微粉を原料とするよりも、はるかに安い値段でできるのが現状でございます。ところがドイツにおいては、聞くところによりますと、日本に入る値段の約倍するのだそうであります。
  101. 齋藤憲三

    齋藤委員 実はそういうことじゃないのです。今、五十万トン増炭しなければならぬとか百万トン足りないとかいうよりも、現に泥流中に微粉炭が三百万トンあるというだから、これを取る方法さえあれば、まるまる三百万トンとれないとしても、二百万トンとれれば、微粉炭の燃焼状態さえ工夫すれば、それだけ石炭増産されたと同じ状態になる。石炭増産一つの助けとなる。泥流中の微粉炭回収をレーリンクが見て、この一式をドイツで買いたいと言った。そういうものがもしあったとしたら、通産省としては、石炭増産に血道をあげるのもよろしいけれども、そのほかに泥流中の微粉炭をどんどん回収して、それとあわせて石炭の使用量の増加をはかることが適切で一はないか。そういう質問なのです。ですから、そういうことを石炭局長は知っておるかどうか、もっぱらそういうことは新聞記事にもなり、われわれもその実験を見て、確かに泥流中の微粉炭は回収できるという特許がある。こういうのです。そういうものに対して万全の措置を講じておるかどうかという質問です。
  102. 讃岐喜八

    ○讃岐政府委員 まだ新米でございまして、そのことは実は存じません。さっそく研究いたしまして、もし実行に移せるものならばやりたいと考えます。
  103. 齋藤憲三

    齋藤委員 それは、前の石炭局長はよく覚えておられるのだろうと思うのですが、しかし引き継ぎがなかったとすれば、早く引き継いで下さい。  まだたくさんございますが、あまり一ぺんに出すと楽しみがなくなりますからよします。鉱山局長が来ておられますから、大臣御同席の上で一つ承わっておきたい。日本の鉱業法は昭和二十五年の暮れに改正をせられまして昭和二十六年から実施されたのでありますが、一体日本の鉱業法の根底を流れておる立法の大精神というものがあるのであります。それは日本人であればだれでも国有であるところの鉱石取得の権を得られるということ、そしてその鉱石取得の権利、いわゆる鉱業権の取得は先願が優先するということ、これは厳として動かすことのできない鉱業法の大精神だと考えておるのであります。これについて通産大臣は十分御承知だろうと思いますが、一つ御答弁を願いたいと思います。
  104. 森誓夫

    ○森(誓)政府委員 そういう点につきましてはまだ大臣によく説明を申し上げてありませんので、私からかわってこの席で申し上げさしていただきたいと思います。  現在の鉱業法の基本精神は先願主義といいまして、出願者の能力等のいかんにかかわらず、とにかく先に出願した者に鉱業権を設定するという考え方に立っております。この原則については必ずしもこれは万全なものとは言えませんので、ときどき望ましくない現象がその結果として起るのであります。従って他方能力、主義といいますか、出願者の能力を審査して、それによって鉱業権の許否をきめるというような考え方をとっておる国もあるわけであります。そういう二つの考え方が鉱業法の基本的精神として対立しておるわけでありますが、わが国の鉱業法は先願主義をとっているわけであります。できるだけそういうふうにして先願の者を日本の国籍を持っておる者であれば認めていくということになるのでありますが、鉱業法の三十五条には、「鉱物の掘採が経済的に価値がないと認めるとき、」はその許可をしないというような規定がありまして、そこでまた一つ関門を設けられておるわけでありますが、この運用についてはいろいろ具体的な場合に種々の問題が起って参りまして、これはその具体的な場合に応じてよく実情考えて処理しなければならないことになるわけでございます。ただそういう点ではいろいろと問題があるわけでございますが、基本的には先願主義ということでわが国の鉱業法はいっております。
  105. 齋藤憲三

    齋藤委員 能力主義という言葉を使われましたけれども、それはあとから出てくる条件であって、鉱業法の全般を貫くところの立法の根底の精神というものは、日本国人であったらこれはだれでもいいというて、能力の問題はいうてない。ただしその出願の形式というものは実に厳重をきわめたものであって、たとえば本籍の帯地を一審地間逢えても出願形式が不備だとして却下してよこす。なぜ一体そういうことをやるかというと、住民登録というものでもって日本国民であるということの実績があればだれでもいいのだ、能力なんかあったってなくたってそんなことはかまわない、日本人であれば出願は受理される。同時にこれは御承知の通り一分を争っている、特許権も先願主義である、しかし特許権よりはもっとシビアな先願主義でありますから、必ず時間証明をつけなければ出願というものは受理されない。だから私は昭和二十五年の末から論議されたところの鉱業法の旧法から新法に移るときの速記録を読んでみると、十分こういうことは論議し尽されておる。しかも先願がきまったということになればそこに一つの形成権ができるということすら出ておる。でありますからいかに日本の鉱業権というものは先願主義を重視したかということがわかる。その先願をさらに打ち破って不許可処分がどうい場合にできるかということを列挙してある。だからあとの問題なんです。しかし三十五条になぜ経済的価値なしという言葉を使ったかというと、旧法は鉱業権の価値がないという言葉を使っている、しかし鉱業権、鉱業というものの中には製錬事業も入るのだ、だから鉱業の価値なしということになったならば、非常に先願というものを狭めて許可の条件が悪くなるから、これを経済的価値なし、こういうておる。しかもこの三十五条を見ると、これはずいぶんいろいろな解釈に一使われるところの問題になっておる。私は、資料はまだ正式に出て参りませんが、地質調査所の所長がきょう見えておるかどうかわからぬが、地質調査所に、新法施行以来出願せられたるところの試掘権に対して鉱山局から経済的価値ありゃなしやの判定を求める調査を行なったことがあるかどうかといったらば、ないという話、これはあり得べからざることだと思うのだ。私は試掘権に対して、もしそこに経済的価値なしと判定し得るものがあったならば、過表の地質学の根底をくつがえすところの出願、たとえて申しますならば、古生層に石油試掘の出願をする古生層に石油が出るということになったならば今までの地質学が根底からくつがえる、また第三期層に金鉱脈があるということになったならば、今までの地質学がくつがえる、そういう点において経済的価値なしということが判定できるかもしれぬけれども、金、銀、銅、鉄、硫黄、鉛があるべきところの鉱床に対して出願した者があるのに対して、国費を使っていまだかつて経済的価値ありゃいなやという調査をやった実例がないというのが地質調査所の回答であります。従って今までの鉱業権の底を流れておるところの大精神というものは、日本人であればだれでもよろしいという、しかも先願主義。地質学の根底をくつがえすがごときばかな出願であったならばこれは例外とし、その他公共の福祉に害を及ぼすものであったならばこれは例外とし、普通の形であったならば先願を優先としてこれを許可するというのが鉱業法を流れておるところの大方針だと考えておるのですが、局長はこれに対して一体どうお考えになっておられますか、御答弁を願います。
  106. 森誓夫

    ○森(誓)政府委員 私は先ほど御説明いたしましたことが、趣旨が十分おわかりいただけなかったような点があると思いますので、その点訂正いたします。能力主義ということを申し上げましたが、日本の鉱業法では能力主義はとっていないということを申し上げたい。これは他の国でそういう主義をとっておる例があるということです。先願主義でいきますと実際開発する意図がない、他の者が開発するのを単に妨害しようという意図で出願して許可を受けて、ある期間開発をしないでほったらかしておくという事例が最近少くないのであります。そういう事例を考えますと、百パーセントの先願主義ということも反省しなければいけないのじゃないかということを最近われわれ担当の係の者は感じておる。けれどもそれは例外的な事例でありまするので、一応やはり先願主義でいくのが穏当であろうというような考え方でただいまおります。やはり先願主義が百パーセントいいということはないわけてあります。  ところでただいまの御質問でございますが、先願主義でいきますけれども、鉱業法の三十五条では、その先願といえども許可すべきでないという事由をいろいろあげてあるわけであります経済的、な価値かないということも一つですし、そのほか他の産業、その他の公益に反する場合等も許可すべきでないということが書かれております。具体的な事例の認定の問題でありますが、その条項に該当するかどうかということが実際の運用においてはいろいろ問題になるわけでありますが、この点はわれわれも今後従来の取扱い例あるいは判例等をよく調査いたしまして、それとの均衡を失しないような方向で問題を処理して参りたいと考えております。
  107. 齋藤憲三

    齋藤委員 私みたいに山師を長くやった者は鉱業法に興味を持っておりますけれども、大臣はやられないと思いますからあまり御存じないと思うが、今鉱山局長の答弁の中には、幾多われわれの承服しがたい問題がある。しかしこれはまた後刻に譲ることにいたします。  ただ私のあくまでも申し上げておきたいことは、ただいま局長が言われた中には試掘権をとっておいて、今度掘もしない者がある、それはありますよ。あるからこそ試掘権というものは期限を二年に切ってある。そうして二年たって試掘をちっともしない、探鉱もしない、それを延長を願い出たときにはそれを理由として不許可ができることにしてある。そういうものによって、これはやらないのだろうとか、これは人の山を妨害するのだろうというあやふやな認定のもとに先願権をじゅうりんし去るということはだれもできないということを言うておるのであります。これは今度またゆっくりやることにいたします。  大臣もお急ぎのようでございますから、大臣のおられる間にもう一点だけ、大臣御答弁は要りませんが、聞いておいていただきたいことがある。それは特許行政であります。特許庁長官がお見えになっておりますから、これはぜひとも大臣に聞いておいていただかなけれならない。私の考えから申しますと、日本の今後の産業のあり方というものは、結局外国依存じゃだめだということです。いずれこれは論議の対象として御質疑申し上げたいと田ふうのでありますが、石油化学工業にいたしましても、私も二回ほど外国を見て回りましたが、大体向うはスケールが違う。向うは単位が十万バーレルとか十五万バーレルとかでやっている。日本のようなちっぽけな石油会社で、そしてペトロール・ケミカルをやる、やるパテントはみな外国から買う、そうして化学繊維をやって、そしてエチレンがどうだとか、ポリエチレンがどうだと騒いでみたところで、スケールが違うのでありますから、結局労賃の格安なものを使う以外に海外市場においては外国の製品と相争うことができない。結局ほんとうに日本で、もってペトロール・ケミカルの新分野を開かんとするならば、日本人のプレーンから出てくる優秀な発明でも完成せぬ限りは、海外市場においては競争はできぬのじゃないかと思う。そうでなければ、海外市場に科学繊維がどんどん出てくると、国内市場においてたたきつけられるのは綿紡であり、絹紡であるということになってしまう。ただやっている企業者が違うだけで、品目が違うだけで、やっぱり国内の相剋摩擦の原動力になるしかない。そこで問題となるのは、日本の特許行政というものが日本人の創意工夫というものを十分生かし得るところの態勢になっておるかどうかということを検討してみますと、実に貧弱ぎわまりない現状にあるのであります。ことし七十人だか八十人だか人間をふえたといって、特許庁長官は鬼の首を取ったように喜んでおりますけれども、七十人や八十人の人間をふやしたからといって、今の特許行政が改善されるとは私は思わない。しかしこの特許行政を今日のままにしておいたならば、日本の新しい産業面開拓の原動力となるべき発明というものは、そのまま死んでしまうものがたくさんあると思うのです。なぜかと申しますと、まず第一に優秀な特許を出願する、この特許に対する今の審査期間というものは少なくとも一年半や二年かかるのであります。それも許可するのに一年半かかるならいいけれども、拒絶するのに一年半かかる。とどのつまり苦しくなると、官庁またはこれと同等の権威あるところの証明書をよこせとくるのです。そうしなければ、もうとにかく処理できないほど特許出願数はたまってしまった。ところが重要な特許を出願した者が――大体国内特許を得てから海外の特許を出願するのは、これが堂道なんです。ところが一年半もたってから拒絶をよこす、あるいは特許を受けたときには二年もたっている。今度は国内特許を得てから海外の特許を出願すると、その出願した日から効力が発生する。ところが特許を出願したときから一年以内に海外の出願をいたしますと、一年間優先権がある。日本に特許を出願した日にさかのぼって外国の特許の優先権がある。これは一年間ある。ですから絶対の要件として、日本の特許行政というものは一年間に特許の審査を終るということでなければ、重大な発明が外国の発明にしてやられるということがたくさん出てくるということになるのであります。それで私は前々から申し上げて――今の大臣じゃないのですけれども、やってきておりますけれども、ちっとも改善されない。これをどうして一体改善するか。八十名や九十名の審査員を今から養成していく、そういうような態勢でもって、この特許行政というものが改善されるとお考えになっておられるのかどうか、一つそれだけ承わっておきたいと思います。
  108. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 特許の審査能力が非常に不足しているというようなことは、私が就任してからもいろいろ当局から説明を受けました。戦前は件数が大体六万件だった、これを処理している人数が千人余りであった、それが現在では一年の申請数が十二万件にもなってないがら人員は八百人だ、従って年々審査がおくれていって、未処理の件数がふえていく。これをどうしてもここで改善しなければならぬといことから、大体急速に未処理のもの片づけるのにどのくらいの人員が要るかと申しますと、二百五、六十人ふやさなければとてもこの処理ができない。一応そういうような計数になりましたので、ことしは増員の交渉をやって結局百人ふやすことにいたしましたが、この百人も審査能力を持つまでには相当ひまがかかりますので、一年百人ふやすということは大へんなことで、工業技術院の職員を一時転換させるとか兼務させるとか、いろいろなことをやって養成の措置とあわせて百人ぐらいの増員をこらすのがやはり今のところせいぜいだろうということで、二百六十人ぐらいあればやっていけるという数字は出ましたが、とりあえずことしは百人にしましたので、これをさらに来年、再来年と同じぐらいの増員をやって、能力を与える方向に持つしていけば大体一年内に件数を処理できるという態勢ができると思いますが、今確かにそういう形で、何年もおくれているという状態で、これは非常に遺憾なことでございますので、今から三年計画ぐらいをもって審査のおくれることを解消しよう、こういう方針で現在進んでおります。
  109. 齋藤憲三

    齋藤委員 最近ひんぴんとして原子力関係の特許申請も新聞紙上に現われて参りました。また原子力の問題等につきましては、われわれも特許関係を非常に重視している。次の時代の火としていろいろ原子力の問題がやかましく言われて、今度は三十二年度の予算にも予算外国負担契納を含めて九十億という膨大な予算が盛られている。しかしこれはいよいよ原子力を平和的に利用しようと思っても、一番おそるべきことは外国特許に全部縛られて、日本というものはあがきがとれないような情勢になっているのではないか、こういうことを考えまして、われわれはどういうふうな国内の特許許可行政及び特許申請状態になっているかということを心配しておったのですが、最近新聞紙上でもってどんどん原子力関係の特許の申請が出てくる。だからこういうことは特許庁でもって調べて発表しておられるのかどうか、一つこれを伺いたいと思います。
  110. 井上尚一

    井上(尚)政府委員 原子力関係につきましての特許の出願が逐年増加しつつあることは今申された通りであります。この問題につきましては、特許庁としましては調査はやって参りました、そしてこれは、科学技術庁にはその出願の状況につきまして連絡して参っております。特許庁としまして正式に外部に発表したという事実は従来ないのであります。
  111. 齋藤憲三

    齋藤委員 原子力の特許はアメリカ、英国では特別の処置を講じておる。これは軍事に関係する部面もたくさんあるからそういう措置をとっているのだろうと思うのですけれども、私は原子力の特許だけを別個に取り扱えと言ったって、これは取り扱えるものでもないと思うのですが、こういうことができるかできないかということ、特許も先願主義でありましょうけれども原子力の特許というようなものは、最初にこれを荒審査をいたし、そして国際的に重要な特許であるということの認定を得られるようなものは、さっきお話し申し上げました通り、一年間の外国特許出願優先期間中に、これを許可するとかしないとかという便法がとれるものかどうか、これをお伺いしたい。
  112. 井上尚一

    井上(尚)政府委員 原子力に関するのみならず、一般的に特許出願中重要なる発明、優秀なる発明につきまして、外国に特許出願しまして特許になる可能性のあるものにつきましては、政府から補助金制度の道を講じて参っております。ですから原子力のみならず、一般的に優秀なる発明については、――今の審査の状況は、先刻来仰せの通り、残念ながら非常に月日を要して――おりますけれども、一年以内に優先権主張を援用する必要上、特許審査中といえども、われわれ特許庁の関係官におきまして、これは有望であると認めて、もちろんその前提として出願人から補助金交付の申請書がくる、そういう分につきましては、外国すなわち英国、米国、ドイツ等に対しまして、これはいいと認定しましたものにつきましては、審査中のものについても補助金交付の道を講じておるということを御承知願いたいと思います。
  113. 齋藤憲三

    齋藤委員 それは私も存じております。私の申し上げておるのは、特許出願した窓口なら窓口に二十人、三十人というエキスパートをつけておいて、そして出願するものを片っ端から予備審査をして、これは国際的に重要なものであるとかということをやらなければ、今のお話だと、一々特許出願をした者が特許庁へ行ってかけ合いを――かけ合いがやれるのかやれないのかわかりませんけれども、かけ合いをやらないというと、外国特許の価値があるものかどうか、出願した者はわからない。自分の特許というものがどれだけ重要な地位にあるものか、それを窓口なら窓口にエキスパートを置いて、受け付けたならばすぐ審査をして特許出願の価値を判断して、お前は重要な構想を持っているから、これなら外国特許を出願する意思があるならやった方がいいというアドヴアイスをやらなければ、今日の実情において日本人のプレーンというものは世界人を凌駕して、大きな産業構造の根底をなすような発明の完成に向わないのじゃないかと考えるわけであります。
  114. 井上尚一

    井上(尚)政府委員 原子力に限定しての御質問でございますので、原子力に関して申し上げてみたいと思います。原子力に関しましては、出願がきましたときには原子力関係の分だけは特別のしるしをつけまして別扱いをやっております。  それから原子力以外の一般のものにつきましては、化学、電気、機械等百般の技術分野に属しますものをふるいにかけて荒ごなしをして、これはいいというような認定がつかないかどうかという御質問でごいますが、これは特許庁としましては今申されましたように先願主義という建前と、それから技術の高度化、複雑化につれまして、その参りますものが非常に新しいといいますか、非常に進んだ特殊の専門的な分野に属するものであるという性質上、エキスパートがそれを全般的に見て、そこでふるいにかけるということは事実上困難であろうと思います。ですからわれわれとしましては、やはり出願がきましたものを分類をしまして、各専門々々の方に回しまして、そして先願主義の原則に従って逐次厳格に順序を追って審査をしていくというよりほかはないのではないかと考えておりますけれども、一般的に審査の促進につきましては、先刻申されましたように審査官の増員と審査官の質的向上と申しますか、そういった研修、質的向上を考えますこと、もう一つは資料文献の収集、もう一つは、最近われわれの強調しますことは出願自体の質的向上でございます。と申しますのは、特許について見ますれば百特許の出願がありまして合格しますものが三五%であります。すなわち六五%まで拒絶になっておる。この拒絶になっておる大部分というものは、既往の特許公報にすでに同じアィデアがあるというのが実情であります。言いかえますれば、出願人がこれまでの特許公報にいかに目を通していないかということの証拠でございます。  なおついでに申し上げますと、出願して参りますと、形式的な不備、説明書が書いてあるがわからないということで訂正補充の対象になりますのが約三割ございます。ですからこれは大きな数字でございます。そういったことが非常に審査能率を害しておるというのが現状でございますので、従って特許庁側の審査官の数的増加、同時に質的な向上と並行しまして、出願人側の方でも出願内容の質的向上について協力願いたいというふうな趣旨で、先般方針をきめまして、省令を公布しまして、来たる四月一日からこれを実施する準備を進めております。
  115. 齋藤憲三

    齋藤委員 ただいまの御構想によって日本の特許行政というものが革新的な面を開けば私は非常に幸いだと思っております。これはどんなに困難があっても大勢は現状のままに置くことは許さないと私は思うのです。  もう一つ、私の体験上からお伺いしておきたいと思いますことは、人間をふやすことと文献の収集、出願の質を向上せしめるということも非常に大切なことと思いますが、その出願の願意、文意と申しますか、その中に盛られておるごとで、図上検討だけでは見当のつかないことがたくさん出てくる。そこで奥の手を出して、官庁またはこれと同等の権成あるものの実験証明書をよこせという手を用いる。今はやっているかどうかわかりませんが、われわれは何回となくこの手を食らって拒絶を受けたわけであります。ですから私は、審査官というものは文献によって机上の推論を戦わすひまに、国立試験場にその出願の構想が実現可能であるか、また工業上から見て価値あるものであるかということの判定を、特許庁以外の国立試験場ないしはその他の機関にこれの調査を依頼することができるならば、今の審査は非常にスピーディになるのではないかというふうに、体験的に考えられるのですが、この点に対しては一体どうお考えですか。
  116. 井上尚一

    井上(尚)政府委員 大臣の方から先般申されましたが、実は大学及び各試験研究機関の各専門分野の専門家を特許庁に兼任、兼官するという構想を先般来工業技術院長その他と今準備中でございますので、そういったふうに各試験研究機関のある分野のエキスパートの方とのコネクションが、そういう形式上すなわち兼任、兼官という形でもってつながりが強化されますれば、今仰せのような便宜も増進が可能である、かように存じております。
  117. 齋藤憲三

    齋藤委員 特許行政に関しては、まだたくさん聞きたいことがありますけれども、このくらいにします。  中小企業庁に一つお伺いしますが、とにかく先ほどから私も申し上げております通り、世の中の産業構造というものは急速に変化しつつある。しかもその労働人口というものはどんどんふえていく。目標は常に完全雇用を目ざしつつ、日本の経済の立て直し、自立経済を目ざしていく、このバランスをどうとっていくかということになりますと、日本のごとく大きな幅を中小企業にゆだねております国情としては、中小企業におけるところの労働力の吸収というものが大きな望みとなってくるのであります。ところが一番われわれにわからないのは、中小企業の実態なんです。一体中小企業というけれども、聞いてみると、資金本が一千万円だとか、従業員が三百人以下だとか、そういうことを言うんです。そして中小企業の発展策というと、金をよけい回して、金利を引き下げてやるとか、こういうことを言うのですが、われわれから言うと、まず中小企業の大きな存続価値をこれ以上に伸展せしめようとするならば、第一に着手しなければならないことは、日本の中小企業の実態というものを種別的に整列しなければ私は結論が生まれてこない、こう思うのです。先ほど来私はなぜオートメーションのことを質問したかと申しますと、将来当然オートメーションによって支配せられるべきところの工業の分野に対して中小企業が熱を上げていったって、これはオートメーションにやられてしまう運命にある。ですから、中小企業の育成というものは、単に金だけ回してやって、それを低金利に運転するような仕組みにしてやればいいということでおさまりがつくものじゃのい。やはり業種別に将来の伸び行く姿というものを指導的に教えて、そして中小企業の将来のあり方というものを見てやらなければだめだと私は思うなですが、こういうことに対しまして、中小企業庁としては現在の日本の中小企業の実態をどの程度まで把握をしておられるか、これを一つ伺いたい。
  118. 川上爲治

    ○川上政府委員 今齋藤先生からお話がありましたように、中小企業の実態につきましては業種別に非常に精密な調査が実はできておりません。従いまして、実際の中小企業対策としましてはほんとうに精密な調査をしまして、その調査にのっとった業種別の対策をとるということが非常に大事なことではないかというふうにわれわれとしましても考えておるわけであります。従いまして、来年度におきましては、どうしてもこの調査につきましての相当の予算を獲得しまして、そして調査を徹底的に何カ年かにわたってやりたいというような考えで、一応約一億六千万円程度の予算の要求をいたしたのですが、その予算につきましては、結局は四千万円程度ついたわけであります。これは私の方からしますと、最初予定しました十分な調査はできませんけれども、少くとも来年からいわゆる詳細な調査をなし得る態勢になったということは言われるのじゃないかというふうに考えるわけであります。この四千万円を少くとも来年度におきましては最も有効に使いまして、中小企業の最も大事な面につきまして業種別な調査を始めたいというふうに考えております。これは必ずしも来年度において終るものとは考えておりません。少くとも再来年度におきましてはらさに多くの予算をもちいまして、もっと調査を十分にしまして、それにのっとりました中小企業のほんとうの意味の具体的な対策をさらに立てていきたいというふうに考えております。
  119. 齋藤憲三

    齋藤委員 中小企業庁長官としてまだ日本の中小企業の実態を精密に把握していないということは、われわれとしても全く遺憾にたえないのであります。できるだけ一つ御努力を願って、早急にその実態を把握していただきたいと思います。そうでないと、今日から将来に向って進展していく産業態勢、そういうものは結局えらい混乱に陥ってしまうのではないかと思う。先ほどからるる申し述べました通り、どうしても日本の産業を近代国家並みに引き上げていくには、ある部分、おそらく相当の分野がオートメーション化されると思うのです。そのオートメーション化されオートメーションの設備をそのまま外国から輸入してくるということになったならば、そこに働いている人がそのまま失業者になっていくという形も出てくると思うのです。しかし日本のオートメーション化を日本独力でもってやっていこうとするならば、やはり中小企業の分野において強力に伸張を策しなければならない分野というものが私はたくさん出てくるだろうと思う。その実態を把握せずして中小企業の態勢を強固にしようと思ったってこれは私はできないと思う。ですから、先ほどから私が産業構造図ができているかと申しているのはその点であります。一体今日日本の産業の実態を全部について把握して、どれとどれとの分野はこういうふうな形において将来伸びていく、だからこの伸びていく、オートメーション化する分野に対しては日本の力においてこれを製造していく、その分野、職場を広げていく、そこに多くの労働者、従業員を吸収する、そういう職場に働くところの人の素質というものはある一つの条件があるから、その条件をかなえるように教育を変えていかなければならない。全般に通じた総合的な見地から日本の産業というものの盛り上りを策していかなければならぬ。ただオートメーション化をやればいいといっても、外国から買ってくればすぐ失業者が出てきまして、あとは中小企業は何ら手を染めることができないということになる。だから、日本の産業構造図というものを世界的に持っていくその構想が生まれれば、どの分野に対してはどれだけの力を尽して、その分野の中小企業に対してはどういう指導方針によってどれだけの資金供給し、どれだけの設備をさして、どういうものを作らしていくというような将来の産業構造図というものが生まれてくるので、それをやってもらいたいと思っておるのに、今お話を承わると、中小企業庁長官はまだ日本の中小企業の実態もあまりよく把握していないということでは、これは幾ら論議を重ねても論議の対象にならぬと思う。ですから、われわれの理想的に考えていることを実現すると前提して、いち早く日本の中小企業の実態というものを把握していただきたい。私は今の日本の中小企業の中には将来望みなきものもあるから、職業を示唆してその方向に指導していかなければならないものもあると思う。と同時に、もっと強力に国家の力を差し伸べて発展を策していかなければならない産業もたくさんあると思う。そういうものを把握して初めて日本の現在の産業構造図というものの実態がわかり、それがあってこそ初めてどこへどれだけの力をやっていけばいいかというような構想も将来の産業構造図の中に生まれてくるじゃないかと思います。そういう意味におきまして、果して川上中小企業庁長官は構想をお持ちかどうか、その構想を承わりたいと思います。
  120. 川上爲治

    ○川上政府委員 全然わかっていないわけではないのです。現在においても、あるいはその企業の診断とか、そういうものを通しまして、ある程度の調査はできておるのであります。しかしながら先ほどもお話がありましたように、いわゆる精密な調査というものはできていないということを申し上げておるわけでありまして、アメリカあたりでは中小企業というものを業種別にとにかく人数なりそういうものによってはっきりきめまして、業種別の対策をとっておるというふうに聞いておるのであります。われわれの方としましても、早急に調査をいたしまして、そうして現在以上に相当精密な調査による業界の実態をはっきりつかんで、その上で先ほど申しましたような措置をとっていきたいというふうに考えまして、来年度におきましては四千万円の予算を、実はまだいただいておりませんが、いただくことになっておるわけであります。実は私はもっとほしかったんですけれども、結局そういうことになったのでありますから、齋藤先生のおっしゃいますように、少くとも来年度におきましては、その第一歩を踏み出したというふうにおとり願いたいと思います。
  121. 齋藤憲三

    齋藤委員 あまり長くなりますからやめますが、最後に一点醗酵工業についてお伺いしたい。これはこういうことを言うたならば聞きずらく聞えるかもしれませんが、私はおととし英国へ参りましたときに、英国では醗酵工業を将来の工業として非常に大きな期待をかけている日本における発酵工業に対する構想を承わりたい。
  122. 齋藤正年

    齋藤政府委員 発酵工業の構想と申しましても、具体的にどの業種についてどうするかということはわかりませんのですが、まあわれわれの所管しております発酵工業のうちで代表的なものを一つ二つあげますと、今われわれの局でアルコールを専売にしておりますので、工業用のアルコールを作っております。それからもう一つ比較的重要な工業製品といたしましては、アセトンとメタノールを発酵法で作っている。これらはいずれも御承知のように米国等では石油あるいは天然ガスから作っておりまして、現在日本ではエチル・アルコールは全部発酵法で、一つはイモないし糖蜜から作る。他は。パルプの廃液からとっております。それからアセトン、メタノールは大体糖蜜及びイモが原料になっておりますが、米国ではエチル・アルコールはだんだん発酵の分野が減っております。昨年あたり大体七割くらいが合成アルコールでありまして、三割くらいが発酵法のアルコールであります。御存じのように米国は石油あるいは天然ガスがいずれも日本に比べて段違いに安い国でありまして、そういった原料面からはるかに合成法が日本より有利なわけであります。また合成法の場合には必然的に企業と申しますか、生産の規模が大きくないといけませんが、その点もアルコールの需要数量が日本とは格段の差がございます。その両面から有利な米国でもなお三割くらいは発酵法が残っております。日本の現状ではまだ発酵法で十分アルコールはやっていけるのじゃないかというふうに考えております。それからアセトン及びメタノールの関係でございますが、これは現在計画されております石油化学工業の計画の中にもある程度アセトンの合成を計画しているところがございます。この合成石油化学につきましては、その基本になります原料、エチレンでありますとか、あるいはプロピレンでありますとか、そういった一番基礎の中間製品の価格がまだ作っておりませんので、正確なことはわかりませんが、その価格いかんによっては合成法で相当アセトンの生産が伸びるのじゃないか。ただ現在はこういったアセトン、メタノール、こういうものの需要が伸びておりますので、なお当分の間はまだ発酵法によってこういうものの相当部分は生産されていく。現在の発酵工業を整理縮小しなければならぬという程度にはならないのじゃなかろうか、ただしアセトン系統につきましては、石油化学からの進出が今後相当期待される。また通産省としてもそれは奨励していくべきものだといふうに考えております。それからもう一つ発酵法の問題で重要な問題は、主原料であります糖蜜が最近非常に値上りをいたしておりまして、もしこの値上りの傾向が今後とも長期にわたって継続していくようでございますれば、発酵法の原価が相当変って参りますので、その際には今申し上げましたことがもう少し合成法に有利になる可能性が出てくるというふうに考えております。
  123. 齋藤憲三

    齋藤委員 私の御質問申し上げたのは、あまりばく然としておわかりにならなかったようでありますが、結局発酵工業というものは微生物の世界をねらう工業という意味です。それでございますから、通産省所管の発酵研究所ですかに行ってみますと、実に貧弱なものであります。あれは局長の所管ですか。
  124. 齋藤正年

    齋藤政府委員 さようでございます。
  125. 齋藤憲三

    齋藤委員 まだ局長はおいでになったことはないと思うが、あの発酵工業を工業的に用いていく分野に対して、私が英国で聞いたところでは、これに非常に大きな将来の望みをかけているということです。ですから発酵工業の分野というものは、今局長がおっしゃったのはほんの一部分で、それよりもまだ広い範囲があるということです。それですから発酵工業にもう一ぺん通産省は検討を加えていただいて、あんなちっぽけな、何だか豚小屋みたいなものを並べた研究所でなく、やはり近代的感覚のある局長ならあのままにしておけないのじゃないかということを私は常に考えておるのです、それかあらぬか、偶然でありましたけれども、昭和三十一年度の予算の原子力予算の中から、わずかでありましたが、二百万円の予算を発酵研究所の微生物応用にさいたのです。その微生物の、これはあわもりの菌でありますが、あわもりを作る菌にコバルト60を照射した。全部突然変異であります。私はそういうことがもうすでに世界的の特許になっておるだろうと思う。しかし発酵工業というものは微生物を取り扱って、微生物の力によってあらゆる機能を工業の面に応用するものであるとすれば、いやしくも今日騒がれておる近代的感覚における製造工程の中にそういう分野が大きく取り入れられることは当然のことなんです。それが私の知ったときの発酵工業研究所というものは行政整理の対象だったのです。いかに通産行政の感覚が間違っておるかということがこれでわかる。それでようやくその二百万円の金をもってコバルト60をあわもりの原菌に照射して、出てくるやつが全部突然変異だということがわかって、今度は逆に原子力の方からも一千数百万円の研究費がついたはずです、通産省がようやく少しは予算をふやしたろうと思う。そういうところに大きなロスがある。私は何も自分の手柄話を言うのじゃありませんよ。ことしは電子工業に対して通産省はあわ食って予算を獲得した。ところが今までの電子工業の行政面を見ると、逆行しておったのです、局からだんだん小さくなって電子工業を取り扱っておる課は半分しかなかった。一課を半分にしたやつが電子工業であったのです。そうして二、三年前まではてん然として顧みなかった。ところがエレクトロ二クスという声を聞くと、今度は無我夢中で予算を獲得しなければならぬ。今度は部にするのでしょう。一体物の生産に全責任を持っておるところの通産省が、せっかく拡張すべきエレクトロニクスの分野を縮めて、一課のしかも半分の課にまで縮めておいてから、今度はあわ食ってまた大きくしたければならないというような醜態を演ずるということは、通産行政生産部門にタッチしておるとこをのすべてのものに累を及ぼす例だと考える。ですからどうか――軽工業局長は新しく任務を帯びて重要な地位におつきになった。私は軽工業局長は前の石炭局長をしておったころから有能な局長であるということで非常な敬意を表しておったのです。今度軽工業局長に来られたので、その他私は幾多軽工業の部門について御質問を申し上げたいことがありますが、それは後日に譲ります。局長は忘れないうちにさっそく発酵工業の根底をつかむために研究所なりを一ぺんごらんになってよく実態を把握してもらいたい。すべて行政官の通弊として、悪いところは、局長になっても所管の試験場なんか一つも回っておらないのです。行なったっておざなりに回るんだ。だからちっとも実態を把握していない。きょうは初日でございますから、この程度でやめますけれども、あとは具体的な問題について機会あるごとに御質問申し上げますから、私より、より以上勉強しておらぬと職責が相務まらぬということになる。ということは、私は与党の一員でございまするから、水田通産大臣がお述べになりましたこの通産行政というものに賛成しておるのです。しかしこれを漫然と文章の上で賛成するわけにいかない。これがほんとうに実行ができるかできないかということを行政の責任者であるあなた方にとことんまで質問して、これならできるとかできよいとかいう判定を下すのが、与党の責任だと思っている。与党だから文章に書いたやつをそのままのめというなら、委員会なんか要りはせぬ。ですから私は機会あるごとに局長、課長に具体的な問題で私も勉強して、これから毎日大臣の言われた要旨を事こまかに分析して、実体を掘り下げて御質問したいと思いますから、国家のために御勉強をお願いいたします。
  126. 笹本一雄

    笹本委員長代理 本日はこの程度にとどめまして、残余の質疑は次会に譲ることにいたします。  次会は明後二十二日午前十時より開会いたします、これにて散会いたします。     午後四時十二分散会