○鹿野
委員 宇田大臣、今あなたが言われるようないわゆる
貿易の増進、
経済の
拡大によって完全雇用を作るんだということは、前鳩山
内閣においても言われたことであり、昨年の当
委員会におきましても、高碕
長官と
石橋湛山
通産大臣が列席の上、私はこの問題を御
質問申し上げたわけですが、今回私が申し上げたいことは、
石橋内閣は完全雇用という問題を特別に一枚
看板に掲げたというところに問題があるのではないか。
日本の現在の
繁栄は、これは
日本独自の努力によったものではなく、
世界的な
好況に幸いされて、午前に
水田通産大臣も話しておられますごとく、予測しなかったところの好
景気が、
日本にきておるわけでございます。こうした好
景気の波に乗って漫然と
日本の
拡大を考え、完全雇用というようなことを考えておったならば、非常に危険ではあるまいか。
日本は、もちろん
宇田長官も御
承知の
通り、労働人口といいますか、
生産人口は年々非常な勢いでふえております。国土は非常に狭い。こうした状態
において、国民が
希望を持ちながら
日本再建のために努力するところの基本は、完全雇用でなければならない。ところが、完全雇用は、
アメリカの場合における、カナダの場合における、豪州の場合における、インドの場合におけるものと、全く違う。
アメリカや、カナダや、豪州、ソビエト、中国その他のいわゆる恵まれたる国々は、今
宇田長官の言われたように、
貿易の増進、
経済の
拡大をはかっていくということだけによって完全雇用を達成するという
見通しがはっきり得られる。しかしながら、
日本、ドイツ、イギリス、フランスその他の小さい国土に人口の多い国々は、全くその
立場を異にする。ところが、ドイツ、イギリス、フランスその他の国々と
日本の
立場を考えてみるときに、全く比較にならないほど違った
条件が
一つあります。それは何かというと、ドイツ、イギリス、フランスその他の諸国には、無限に移民という道が開かれておる。いわゆる恵まれた豪州へ、恵まれたカナダヘ、
アメリカヘ、その他の国々に対して、移民という道が無限に開かれておる。しかも悪い
条件ではない。いい
条件で、何とかして迎えようという必死の努力をもって移民の募集をされておるというような国国です。
日本にはこうした道もふさがれておる。ですから、
日本は、
世界のどの国とも比較のできない、
日本独自の
立場に置かれておる。この独自の
立場に置かれておるところの
日本経済自立のためには、完全雇用というものがまず大切だ、このような
考え方で、
石橋内閣が完全雇用という
看板を掲げたものと私は解釈いたしておるわけです。ですから、私はこの
石橋内閣の掲げた完全雇用というものには、特別なるところの
意味があるものと非常なる
期待をいたしておったわけですけれ
ども、先般来の御答弁、お
考え方によりますと、従来と全く変らない、同じような
立場をとられておるというところに、私は非常なる不満を持っておるものでございますが、この問題について
宇田長官に再び御
質問することはやめまして、具体的な私の考えを申し述べてあなたの御所見を承わりたいと思います。
かくのごとき
立場にあるわれわれ
日本にとって、何といっても一番大切なのは、雇用の創造を積極的にやることでなければならない。雇用の創造をやるといえば
日本としてどういう
方法があるだろうか。これは
日本の識者が、少くともものを考える能力のある人々みんながこの問題に集中して考えてもよろしいと思うほど重大な問題でなければならぬと思うのであります。私
どもの考えでは、これは先般高碕
経済企画庁長官にも申し述べたのでございますが、
日本の国土の約六八%というものは山間地帯でございます。この山間地帯をいかに活用するかというところに、
日本の
経済再建、
経済自立、完全雇用のことごとくが、この問題の
解決いかんによって
解決されるものと私は思います。この国土の六八%の山間地帯を積極的に利用する
方法として、栽培林業を行う。ところがこの栽培林業を行うにつきましては、従来このような考えを持っておった人もあるようでございますが、採算の問題で行き詰まっておった。ところが御
承知のごとく、このごろ非常な発達をいたして参りました木材化学によって、栽培したところの木材を利用いたしますときには、栽培林業がりっぱに成り立つ。すなわちポプラ、アカシヤ、ユーカリというようなものを、八年から十年くらいで伐採をしていくというような
方法をとれば、栽培林業が成り立つ。そうすれば
日本の国土の二万五千町歩に及ぶところの山林地帯をある程度分割いたしまして、そのうち一千町歩栽培林業をやるというようなことを仮定いたしてみますと、これは私は確信があるわけではございませんが、大体の想像ですが、二百万家族くらいの雇用を新しく創造することができるのではないか。しかしてこれを処理するところの木材化学による労働力としては、やはり何十万かの雇用を創造することができる。またこの木材化学から生まれるところのガソリン、フルフラール、アルコール、
砂糖、あるいは酵母というようないろいろなものがあるわけですが、このうち酵母を非常に安い値段で酪農経営に供給いたしますときに、そこから生まれるところのバター、チーズ、牛乳、牛肉などというものは、たとえば豪州のそうした酪農製品に劣らない安い値段で国民の前に供給することも可能になるでしょう。そうすれば
日本国民の食糧の改善というものがここに出て参りまして、年々何百万トンというものを輸入するというようなことを防ぐことができ、食糧の自給自足という目的も
解決することができる。この際酪農に対して非常に多くの雇用の創造を見ることができるでしょう。またこの間この問題を推進いたしていく過程について、
日本の山間地に道路をどんどんと作らなければならない。この道路を作るについての土木事業に対する新しい雇用という問題も生まれてくるでしょう。土木機械を作るについての機械産業における雇用という問題も生まれてくるでしょう。ということによって、新しくここに三百万くらいの雇用を作り上げることが十年間で可能になりましたならば、
日本の民族が年々百万ずつふえまして一億になり——私は一億五百万が学者の調べではピータであると開いておりますが、まず一億から一億五百万ぐらいになりました場合にも、新しくそのくらいの雇用を作り上げるということになりますれば、それに関していろいろとまた潜在失業者に対してもいい影響がもたらされると思いますから……。かくしてこそ初めてこれによってすなわち官庁の
行政整理、あるいはまた各会社の合理化、機械化——労働者諸君の、組合員諸君の積極的なる協力を得てこうした
行政整理、あるいは機械化、合理化というものも行われる。勢い
日本の
生産品は安くてりっぱなものがどんどんと
生産されることになる。もっともっと現在よりも強力なる態勢
において諸外国との
貿易合戦にも戦い勝つととができる。しかも栽培林業から生まれるところの木材資源は、太陽のエネルギーだけをもとにして十年間で還元してくるところの資源であり、非常に資源不足といわれる
日本が
世界で第六番目の木材資源を持っておるという
立場からいきまして、特別なる特徴を持った、
日本経済にとってふさわしい雇用の創造
方法ではあるまいか、このような
考え方を持ちまして、前
国会におきまして高碕
経済企画庁長官に御
質問いたしましたところ、全く同感です、来
年度から大いに考える、こういうようなお話でございました。ところがこうした
方向へ持っていきますについて、すなわち木材の利用合理化という問題が大きな問題であるにかかわらす、現在木材利用合理化に対するところの推進本部に与える補助金が先般六百五十万円であったものが、今回三百万円に減らされたというような実情は、
政府は果してこうしたことを知ってか知らないでか、何らの興味も持たないのか、雇用の創造ということが他に
方法があるのかどうか、こういうことについて一応
宇田長官の御所見を承わりたいと思います。