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1957-02-19 第26回国会 衆議院 商工委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十二年二月十九日(火曜日)    午前十時四十六分開議  出席委員    委員長 福田 篤泰君    理事 小笠 公韶君 理事 鹿野 彦吉君    理事 小平 久雄君 理事 笹本 一雄君    理事 加藤 清二君 理事 松平 忠久君       阿左美廣治君    内田 常雄君       大倉 三郎君    佐々木秀世君       齋藤 憲三君    椎名悦三郎君       島村 一郎君    鈴木周次郎君       田中 角榮君    中村庸一郎君       村上  勇君    片島  港君       佐々木良作君    田中 武夫君       多賀谷真稔君    中崎  敏君       帆足  計君    水谷長三郎君       八木  昇君  出席国務大臣         通商産業大臣  水田三喜男君         国 務 大 臣 宇田 耕一君  出席政府委員         経済企画政務次         官       井村 徳二君         総理府事務官         (経済企画庁調         整部長)    小出 榮一君         総理府事務官         (経済企画庁計         画部長)    大來佐武郎君         通商産業政務次         官       長谷川四郎君         通商産業事務官         (大臣官房長) 松尾 金藏君         通商産業事務官         (重工業局長) 鈴木 義雄君         通商産業事務官         (軽工業局長) 齋藤 正年君         通商産業事務         官         (鉱山局長)  森  誓夫君         通商産業事務         官         (石炭局長)  讃岐 喜八君         通商産業事務官         (公益事業局         長)      岩武 照彦君         中小企業庁長官 川上 為治君  委員外出席者         通商産業事務官         (通商局次長) 樋詰 誠明君         専  門  員 越田 清七君     ————————————— 二月十九日  委員田中龍夫君辞任につき、その補欠として横  井太郎君が議長の指名で委員に選任された。     ————————————— 二月十八日  特別鉱害復旧臨時措置法の一部を改正する法律  案(内閣提出第二四号)  輸出検査法案内閣提出第二五号)(予) 同月十五日  中小企業団体法制定に関する請願唐澤俊樹君  紹介)(第八八四号)  同(亀山孝一紹介)(第八八五号)  同(塚原俊郎紹介)(第八八六号)  同(長井源紹介)(第八八七号)  同(砂田重政紹介)(第八八八号)  同(粟山博紹介)(第九五八号)  同外一件(田中久雄紹介)(第九五九号)  同外二件(木村俊夫紹介)(第九六〇号)  同外一件(眞鍋儀十君紹介)(第九六一号)  ココム制限撤廃に関する請願菅野和太郎君紹  介)(第九五七号) 同月十六日  中小企業団体法制定に関する請願川野芳滿君  紹介)(第九九九号)  同(山本正一紹介)(第一〇〇〇号)  同(宇都宮徳馬紹介)(第一〇六七号)  同外一件(小林かなえ紹介)(第一〇六八  号)  同外一件(長井源紹介)(第一〇六九号)  同外三件(鳩山一郎紹介)(第一〇七〇号)  同(山崎巖紹介)(第一〇七一号)  同外二件(山本粂吉紹介)(第一〇七二号)  同(横井太郎紹介)(第一〇七三号)  同外二件(早稻田柳右エ門紹介)(第一〇七  四号)  揮発油適正価格に関する請願關谷勝利君紹  介)(第一〇六五号)  同(中居英太郎紹介)(第一〇六六号) の審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  地方自治法第百五十六条第六項の規定に基き、  工業品検査所出張所設置に関し承認を求め  るの件(内閣提出承認第二号)  日本経済総合的基本施策に関する件  通商産業基本施策に関する件     —————————————
  2. 福田篤泰

    福田委員長 これより会議を開きます。  地方自治法第百五十六条第六項の規定に基き、工業品検査所出張所設置に関し承認を求めるの件を議題といたします。  本案については別に質疑並びに討論もないようでありますので、直ちに採決に入ることに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 福田篤泰

    福田委員長 御異議なしと認めます。よって地方自治法第百五十六条第六顔の規定に基き、工業品検査所出張所設置に関し承認を求めるの件について採決いたします。本案承認するに賛成の諸君の起立を求めます。   〔総員起立
  4. 福田篤泰

    福田委員長 起立総員。よって本件承認すべきものと決しました。  なおお諮りいたします。本件に関する委員会報告書の作成につきましては委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 福田篤泰

    福田委員長 御異議なしと認め、さよう決定いたします。     —————————————
  6. 福田篤泰

    福田委員長 前会に引き続き、日本経済総合的基本施策並びに私的独占の禁止及び公正取引に関し、質疑を継続いたします。佐々木良作君。
  7. 佐々木良作

    佐々木(良)委員 経済関係一般質問でありまするので、私は水田通産大臣並びに宇田長官に対しまして、むしろ大上段に振りかぶりまして、石橋内閣経済政策根本問題についてお伺いいたしたいと思うのであります。順次根本的な問題についてお伺いいたしたいと思いますが、その前に私は水田さんに一つ水田さんは今度通産大臣になられまして、通産大臣として特別にどういうところに持ち味を出されようと思っておられるか、ちょっと抱負をお伺いいたしたいと思うのです。というのは水田さんは野におられる場合におきましては、いろいろな角度からいろいろな抱負を述べられておったわけでありまするが、大臣になられますと、大体書いてあるものを朗読されるような格好でありまして、がっかりいたしておるようなわけであります。少くとも一般的な理屈上の諸政策を行うということのほかに、大体特に保守党の場合には大臣の個人的な持ち味というものが非常に大きな意味を持ってくるというふうに思うからでして、これはまあ妙な話ですけれども、私は前内閣におきましても、商工委員という立場から、特に経審長官の高碕さんに対しましては、従来の彼の実際家としての手腕だとか国際経済に対する敏感な感覚だとかいうものを十分に発揮しなさいということをまず要請しました。それからまた石橋通産大臣に対しましは、特に通産行政の中でだんだんと強くなりつつありまする官僚行政においに対しまして、石橋さんは最も適任の感があるので、むしろこの官僚行政においに対して石橋さんらしい野人的な、反官僚的な持ち味が十分に発揮されることがいいのじゃないか、そのことは決して私だけの個人的な希望でなくて、当時の国民的な希望期待でもあったのだという意味で私は質問をかねて要請したのであります。当時の答え答えでありましたけれども、実際に私どもが要請したことに対する高碕さんや石橋さんの答え大臣として生かされたかどうかというのは非常に大きな疑問を持っておるわけであります。いずれにいたしましても私は特に保守党内閣経済担当大臣の場合にはその持ち味というものが非常に大事だと思うわけであります。そのような意味におきまして特に水田さんは、従来党におられる場合には政策最高責任者でもあったという意味から、私の最大の期待は、経済政策合理性をずっと筋を通して推し進めてもらいたい。政治的にここが工合が悪ければ工合が悪い、しかしながら本筋はこうあるべきだ、しかし現実にはこういう工合の悪いところもあるから、その面はこうするとしても、本筋はこうであるということで、水田さんの場合には政策合理性を貫くというところに一番持ち味が出してほしいわけであります。質問に入ります前に、この点につきまして率直な御意見を承わりまして、質問を進めさせていただきたいと思います
  8. 水田三喜男

    水田国務大臣 非常にむずかしい御質問ですが、通産行政をどういう方向でやっていくかということは、この間ここで重点施策ということを中心にして述べた通りですが、もし私の持ち味を出せというのでしたら、これから少しずつ出そうと考えていますが、まず私の今考えておりますことは、今まで通産行政にしろ、各行政にしろ、実際は国会が非常に忙しくて、一年の大半を国会で暮すというようなことから、各行政長官ほんとう行政に身を入れてやる時間があまりなかったと思うのです。従って解決していい問題もなかなか解決せずに、その日暮しでマンネリズムで過ぎたという傾向が最近非常に強いと思いますので、私はまず第一にそういう行政面にもう少し力を入れて、そうして今まで各省との関係におい解決ができなかったとか、踏み切りのつかなかったというものを順次解決していくということをまず一つやりたいと思います。それにはたとえば貿易自由化というようなものも長い間言われておりましたが、これを実際にやろう、そういう方向に持っていこうとするのなら、まずさしあたり農林省との問題が出てくる。国内生産をどう保護して摩擦を避けていくかという対策を持たなければならぬ。同時にまた通産関係においては中小企業との摩擦の問題がございまして、これをどういうふうに措置していくなら、一歩一歩そういう方向へ向って従来の行政を直していけるかという問題がございますが、各省間の話がついていなかったり、そういうほんとう根本方針がきまっていないというときには、一省だけで自分がやろうとしてもやれませんので、そういう意味から関係閣僚会議というものをこれから定期的に持って、そういうものをどう解決しながら貿易自由化なら自由化方向へ一歩前進させるかというような問題を解決したいということが一つ。それから貿易を伸ばすということについても問題がたくさんございまして、ほんとう政府部内の統一というのが、まだあまり今までなかった。従って根本方針がきまっていなかった。たとえば一国の貿易を推進するという場合に、ちょっとでもこっちが売り越しになって、その金が焦げつく心配があるからといって、それで輸出をとめるというような方法を、従来のようなそういう頭でやっている以上は、東南アジアの各国に対して貿易を伸ばすということは非常にむずかしい。相当日本が貸し越しになる、焦げつきになってもこういう形でこの貿易を進めるのだという政府方針がきまれば、これに対処して貿易を伸ばす方法もたくさんあるだろうと思うのですが、そういう問題でつかえている点もありますので、こういう問題はもっぱら、今まで通産省考え方と大蔵省の考え方に、これはだれが何と言っても、若干そういうところに食い違いはあると思いますので、こういう問題をどっちかへ統一して、そうして踏み切りをつけるというような問題。それから商社を育成する、そうして対外競争力をやはり増す、過当競争を防いで対外競争力を増すということをいかに言っても、戦時統制以来の惰性から、日本としてはやはり需要者割当というような制度をほとんど全面的にとっているというのですが、これが将来の貿易のあり方として、砂糖を見ましても、菓子屋砂糖を使うのだから、菓子屋の組合へ砂糖外貨割当をやるのだ、そうするとつけもの屋が、おれの方も砂糖を使うのだから、つけもの屋にも割り当てろというような、徹底した需要者割当という方向が果していい方向かどうかということは、通産行政としましてはやはり考えなければならぬ。私どもは党におったときの主張としましては、やはりこれはだんだんに、いわゆる商社割当という方向へ姿を移していくということが一つ方向だろうと考えますが、これはなかなかむずかしくて、一つ手を触れようとしても、農村行政と衝突するというところがたくさんあって、それを政府部内で解決していないから、むしろ方向としては外貨割当なんかは逆の方へ、逆の方へと方向をとっていくような問題もあると思いますので、こういう問題は私どもが長年党にいていろいろの調整役をやった経験から、閣内へ来たら自分の固有の通産行政というだけでなくして、いろいろな政策方向についての政府部内の統一といいますか調整、そういうところへ少し力を発揮して、そういう問題の解決をやっていこうというような、いろいろなことを私個人としては考えていますが、まだ御承知通り就任したばかりで、本格的にそういうところへ乗り出していくという活動をやっておりませんので、この点は申しわけないと思いますが、将来そういうような形で、私どもが党におって考えておった抱負を実現する方向にできるだけやって参りたいと考えております。
  9. 佐々木良作

    佐々木(良)委員 水田さんの抱負を承わりまして、大体の中心点を、現実的な問題を解決するために党内及び閣内調整役を買って出ながら、順次解決していきたいという話でありまして、私はまことに通産大臣としてけっこうだと思います。御努力をお願いいたしたいと思いますが、ただ特に希望を申し上げておきますのは、そういう調整役から現実的な問題解決ということとともに、今、日本経済はある意味では一つの曲り角に来ているような意味で、理論的なあるいは方針的な問題の検討をしなければならなくなった部分が相当出てきていると思います。たとえば五カ年計画なら五カ年計画の性格について、あるいはまたエネルギー政策ならエネルギー政策という、その中の従来の惰性だけでは行ききれない問題について、それらにつきまして一つ筋の通った、つまり合理主義を通した経済政策を展開されますように、その面につきましても格段の持ち味を生かされんことを希望申し上げまして、本論に入っていきたいと思います。  先ほど申し上げましたように、一般質問でありますので、私は水田さんにというよりは、水田さんは大蔵大臣ともこ経済閣僚中心になられると思いますので、石橋内閣自身の本年度経済方針について伺いたいと思います。三十二年度予算案は、御承知のように、いわゆる一千億の減税と一千億の積極政策という、派手な看板でデビューされたわけでありまして、池田大蔵大臣は絶対の自信を持って、終始一貫、強気一点張り説明を続けて、今このための予算委員会が進行しつつありますことは御承知通りでありまして、私ども国民経済発展あるいは国民生活の安定という観点からは、減税もでき、積極的な経済政策も行えるという二枚看板が、池田さんの言われる通りに実現することをむしろ衷心からこいねがっておるわけです。しかしながら現実にこの二枚看板が相当困難だという見方がだんだんと出てきておるようでありまして、正直なところ、この二枚看板現実の足を担当されておるのは水田さんであるような気がいたしまして、同情しておるような次第であります。言うまでもなくこの二枚看板を実現するためには、二千億程度の自然増収というやつを当てにしたものでありますことは御承知通りでありまして、この二千億の自然増収当てにするためには、昨年からずっと続いてきたところのこれまで通り景気がよくて、第一には昨年末から明らかにぶち当ってきましたところの生産隘路、特にこれは水田さんが担当されなければならぬことになると思いますけれども、電力、鉄鋼、輸送等中心にした生産隘路打開されて、そして生産の上昇が従来通りに続くこと、このことが一つ条件になっておることと、もう一つ世界景気好況の波に乗って発展してきましたところの貿易がさらに同じような格好で——これは一二、三%という表現をされておるようでありますが、一二、三%という形で貿易前進が続くこと、この生産隘路打開され、生産が上昇することと貿易がそのまま前進を続けるというこの二つ条件が今言いましたところの二千億の自然増収のもとになっておる。この意味で、貿易の進展も、生産隘路打開も、大体この二つとも水田さん自身が担当して、その効果をおさめなければならないことになっておりますから、池田さんの方からの注文は非常に簡単だと思いますけれども、それを実際に担当される水田さんとしては、なかなか大へんなことでありまして、むしろ私はひそかに同情をいたしておるようなつもりでおるわけであります。従いまして私の質問の第一は、石橋内閣が正面から振りかぶって本年度予算大綱として示し、従って今年度経済方針基礎となっておりますところの貿易拡大生産隘路打開、この二つ予定通りにやれるかどうかという点にあるわけでありまして、それに対する担当大臣たる水田さんの自信のほどと、具体的な施策を追及するというところから始めることになるわけであります。繰り返して言うようでありますけれども、この二つ条件が達成されない限り、二千億の自然増収は具体化できなくなってくるのでありまして、そうすれば当然に減税積極政策というものは本質的には絵にかいたもちとなって、むしろ経済発展国民生活安定のためには有害なる施策と化ける危険性があり、政府経済政策根本から崩壊せざるを得ないということになるわけであります。従ってこの問題の実施ということは作文行政みたいなことではとても考えられないほど重要性を持っておると私は思います。質問の順序といたしまして念のために伺いますが、池田大蔵大臣予算提案説明を見ましても、また経済企画庁の本年度経済計画大綱という中に盛られてある方針を見ましても、またせんだっての通産大臣の三十二年度における通産省重点施策という説明を承わりましても、一貫して、今まで説明いたしましたような意味で今年度経済政策の大方針前提貿易拡大生産険路打開に置いて、この二つ予定通りに成果を上げることを期待して、その前提に立って今のような経済拡大方針が進められておる。そしてインフレのない繁栄をもたらそうというふうな政策がとられておると思いますけれども、そういう大方針の私の理解の仕方は間違っておりませんかどうか、簡単に一つ答え願いたいと思います。
  10. 水田三喜男

    水田国務大臣 大体間違っていないでその通りだと思います。
  11. 佐々木良作

    佐々木(良)委員 そうでありますならば、この二つ前提条件が満たされるかどうかという吟味に入っていけばよいのでありますので、まず第一にその貿易拡大見通しとその施策についてお伺いしたいと思います。貿易拡大見通しの中でまず一番問題になるのは、世界景気見通しについての見方だろうと思います。時間の関係上ずっと申し上げて恐縮でありますから、一つ聞いておいて返事をしてもらいたいと思いますが、昨日の予算委員会においても、土屋清君あたりは、大体私どもが持っているような心配をぶちまけて言っているようでありますが、水田さんも今年に入りましてから世界景気前途に対してだんだんこれを心配するような声が出てきつつあることを御承知だろうと思います。特にあれは二月四日でしたか、アメリカの元大統領のフーバーラジオ演説を通じまして、私はアメリカ経済発展前途に対して深刻な不安を感じているのだ、ここでインフレ傾向を押えないとアメリカ経済不況に見舞われることになるだろう、私は恐慌の気配が感ぜられているように思うという意味のことを述べました。それが二月五日。ころのニューヨークの株式市場の大暴落を引き起す一つ原因になったようでありまして、さらに引き続いて十一日には暴落をいたしまして、今年初め以来百三十八億ドルもの値下りがしたと伝えられております。しかし近時政府景気調節の力が強くなってきておるから恐慌は食いとめられるという説も行われておるようでありますけれどもフーバーはそういうことはないのだとまっこうからそういう考え方を否定いたしまして、恐慌はくるのだというふうに彼は見ておるようであります。御承知のように、現在の世界景気の基調は投資景気でありますが、この主要な原因は、第二次世界大戦前と戦争中に設備投資が極度に押えられておったことにあろうかと思います。この投資景気の山が、フーバーが言っておりますように大体世界的にはきておるのではなかろうかというのが、私どもを不安ならしめる一番の今年度景気に対する不安感基礎となっておるように思うのでありまして、どうもその見方がだんだんと当ってくるような気がするわけであります。一九五六年のアメリカ工業生産増加率は前年より二・五%しか増加しておらなかったようでありますし、最もその景気変動を現わすところの自動車の生産でありますとか、住宅建設あるいはラジオ、テレビ、家具、ミシン等消費者耐久財生産も、アメリカでもイギリスでも大体減少し始めておるようであります。拡大された生産設備が明らかに消費者購買力よりも大き過ぎたことをだんだんと証明しつつあるように思われます。またさらにアメリカ連邦準備銀行金利につきましても、昨年中に二度も引き上げられて現在の三%となっておりますが、これは一九三四年以来の最高水準率でありまするし、ドイツは五%に、イングランド銀行の金利も五・五%の高水準に引き上げられてきております。日本でも最近日銀の金利引き上げ論が起っておるようであります。この世界的な金利引き上げ傾向は、明らかに先ほど申し上げましたような投資抑制傾向意味しておりまして、それはそのまま現在の世界景気に対する赤信号であるべきだという、そういう意味におきまして、すでに世界財界筋は今年の景気動向にきわめて不安を感じておるのではないかというふうに見られるわけであります。四、五日以来のわが国株式市場も、どうやらそういう意味の反映をしておるような感じがするわけでありまして、私は今申し上げましたような一般的な見方からいたしましても、非常に世界景気見通しに対しまして不安を禁じ得ないのであります。これは水田さんに質問するよりも、ほんとう宇田さんに言った方がいいかもしれませんが、大体先ほど言いましたような今年度の大方針石橋さんが掲げられる際におきましても、従来五カ年計画だとかあるいは経済大綱だとかきめられる場合におきましても、私はどうも世界経済の動きに対する見方が甘いというか、それが唯我独尊みたいな格好で、国内市場希望というか、それを先に出していって、客観的な情勢を判断することにどうもあまり率直でないような気がするわけであります。今年度経済計画が立てられるに当りましても、現在までのわが国経済が、何か従来の保守党政策がよかったから経済繁栄がきたような、そういう印象を盛んに植えつけられようといたしておられまして、それが世界経済好況に基因しておる点に対する認識というか、宣伝というか、考え方というのが非常に私は不足し過ぎておるような気がするわけであります。従って今年度世界経済動向に対する分析もあまり行わずに、むしろことさらに回避するような格好で政治的に積極政策が打ち出されておるという見方を私はせざるを得ないのでありまするけれども、こういう私の見方に対して、これは経企長官に率直に聞いた方がいいかもしれませんが、まだ見えておりませんから、一つ同じような立場でありますから水田さんにお尋ねしたいと思います。
  12. 水田三喜男

    水田国務大臣 世界経済見通しというのはなかなかむずかしい問題で、私ども自信はありませんが、今度の予算を作るとき、経済計画を立てるときに、ことしの世界経済はどうなるかという問題は当然論議しました。ことに経企長官から欧州及び米国のことしの見通しはこうだといういろいろな情勢分析がございまして、私どもも大体それを承知して、ことしの世界景気はまだ依然として好況を続けていく、こういう見通しを立てたわけです。というのは、結局米国に確かにいろいろな情勢が見られましても、日本と違ってアメリカは、財政アメリカ景気を左右する。財政の力というものが非常に大きいので、この調整力がある限り、決してアメリカ景気がことし心配するような方向へは行かないということと、欧州各国に見られる動きを見ますというと、みんな手放しの政策をとっていない。最初投資景気——投資が非常に多かったのですが、投資景気のあとに、初めて輸出景気が出てきていますので、従って今後輸出競争ということは非常に強くなって、日本あたりは外国の競争力に対して相当心配な部門が出てきていますが、そこまで行くというと、また欧州各国もいろいろな自衛手段をとる。共同市場の問題とかなんとか結局手放しじゃなくて不必要な投資は抑制する。そうして景気も一時的な景気じゃなくて、これを持続させるというために、小出し政策というものをイギリスでも欧州でも相当厳しくとっておる。こういう状況がむしろ世界経済の好調をやはり維持するだろうということのまた一つのあれにもなりますし、そういう意味で各国が今やっている政策というものを見ると、決して急激に経済が不況の方向に行くという情勢にはなっていない。そういうようないろいろな見方から、私どもは、当然それはいろいろな問題は起りましても、たとえばスエズの紛争があって、欧洲各国が石油の値段が上って相当苦境に立つだろうとか、あるいはドイツの失業者が正常の失業者は三%で、それ以下に下ったら、これは経済が頭打ちになり、弾力性を失ってドイツ経済はこれでとどまるだろうとか、いろいろなことが言われていましたが、やはり各国の施策を見ますと、そういう点を徐々に解決していく。スエズの紛争によるいろいろな欧洲経済の打撃というものも、とにかく克服の方向へ行っていますし、これが四月以後運河の通行が可能になるということになったら、これは欧州経済にとって悪材料がなくなる。いろいろな点を一応考えまして、今の情勢から世界経済はそう心配する方向には行かない。一応私どもはこういう見通しの上に立っているわけです。
  13. 佐々木良作

    佐々木(良)委員 これは考え方の追及でありまするので、大して質問ということにもならぬというか、勝手に答えられればいいようなことになると思います。そうして水田さんなかなか頭がいいから、適当にいいかげんに答えられると思いますけれども、しかし正直な話、そういう動きがあるとしましても、たとえば昨年の今ごろ経済計画を立てる場合に、現在の石橋内閣の前身というのか、その前の形であるような鳩山内閣の場合におきましても、当時の経済計画で予想されておりました世界経済並びに日本経済は、昨年中に展開されたところの世界経済並びに日本経済の規模とは非常に大きな違いがある。それは少し低く見過ぎておった感があって、非常に大きな相違があった。従いまして従来と似たような観点での、だろうだろうの見通しにつきましては、正直な話、日本経済界に聞いてごらんなさい。政府のそういう見方は決して信用してはいませんよ。作文行政をされるのならそれでいいのでありまするけれども、だんだんと現実的な政策を担当され遂行されようとする水田さんの場合には、もう少し謙虚に今の世界の動きなりあるいは経済界の動きなりを現象的にとらえて、そうしてごらんになった方がよかろうと私は思います。景気調節がある程度やり得るというのは最近の傾向でありまするけれども、それは限度があると同時に、その限度に対する危険を感じており、そうして投資景気が行き過ぎておって頭を打っておるというのが現状でありまするので、従いまして私はこの辺に大きな不安が存するわけでありまするけれども、その辺は一つ十分御考慮を願って、つまらぬことにとらわれずに、修正すべきものは早く修正されるような格好前進されることをこいねがいたい。特に海外景気に対しましては卒直な敏感な打診を続けながら経済政策を続けられるようお願いをいたしまして、今度は具体的に輸入、輸出貿易の問題に入りたいと思います。  今のような世界経済好況を完全に前提にされておるというところに私は不安を感じて、そうして輸入量、輸出量の内容を検討したわけでありまするが、輸入については、三十二年度の見込みは三十二億ドルということになっておりまして、これがうまくいくかどうかというのがまず問題点かと思います。通産省経済企画庁、大蔵省、それらの内部でも悲観、楽観の両論が対立しているようでありまして、楽観論によりますと、三十一年度内に輸入原料は大体四億ドル程度の増加を見ておるのだから、三十二年度にはむしろ落ちるだろうというふうな見方をされておりまして、従いまして、輸入は大体三十二億ドル見当で済むだろうというふうに見られておるようであります。しかし、輸入の原材料の在庫の実態は、詳しくこれを見ますと、在庫はなるほどふえてはおりますけれども生産がふえている結果、生産で在庫を割ったいわゆる在庫率というのは、それほどふえていないのでありまして、特に粘結炭であるとか、石油であるとか、あるいはくず鉄等におきましては、在庫不足が著しいようであります。石油のごときは、在庫は月精製高の半分ぐらいであるというふうに聞いております。従って、在庫補てんは終ったのだという見方は、私はきわめて楽観的であり、早計だろうと思います。それから、政府予算委員会等の答弁を聞いておりますと、物価高になれば手持ち外貨をくずして輸入すればこれを押えることができるのだというような含みを持っておられるようであります。そうしてこの手持ち外貨の量を大体どのくらいにすればいいかというのは、これは意見の分れるところでもありましょう。しかし、私どもは今の手持ち外貨というものに対しても、やはり不安を持たざるを得ないのであります。昨年末の手持ち外貨が十四億三千五百万ドル、本年の一月末には八千万ドルの大幅の減少を来たして十三億五千五百万ドルとなっております。このうちインドネシア等への焦げつきの債権二億八千万ドル、それから外銀ユーザンス等の短期債務を考慮しますと、実質手持高というのは、八億六千万ドル程度だろうと私どもは考えます。正常な保有高がどれくらいあるかということは議論が分れるとしましても、大体いろいろな方面からいわれておるところを見ますと、最低八億ドルから最高十一億ドル程度といわれておりますが、もし八億ドル程度とするならば、すでに手持ち必要量には達しておるといわなければならぬのでありまして、そういうふうに見ていきますと、この手持ち外貨をくずしていくという問題も、私はそう簡単な問題ではないと思います。それからまた、輸出の問題につきましても、三十二年度に二十八億ドルという目標が達成できるかどうかというのが問題の焦点になっておりまして、私どもは、激しい各国の輸出競争、それからスエズ運河の開通問題、アメリカ日本綿製品の輸入制限、また東南アジアヘの賠償が本格化することによる輸出との競合、国内物価高等の悪条件承知しておりますがゆえに、これが打開のために政府が述べられておるような、たとえば輸出入銀行の資金の拡充だとか、海外宣伝調査費の増加だとか、あるいは輸出保険制度の改善だとかいうくらいな程度の対策では、目標達成というものは非常に不安だという感じがしておるわけでありまして、最近財界だとかジャーナリズムも、大体警戒的であるようであります。この辺につきましても、私どもは具体的な論議をしたいのでありますけれども、時間もなさそうでありますから、意見の言いっぱなしみたいになって恐縮でありますが、まあいずれにいたしましても、こういうふうに輸出入を見ましても世界経済の赤信号的な傾向に対しまして事実上目をおおいながら輸出入の計画が立てられて、そして今のような、昨年度以来の惰性のような形で輸出入の目標が算術的にはじき出されているのであります。私は今申し上げましたような海外経済状況の動向、それから輸出、輸入のおのおのの持っておる問題等から見まして、非常に大きな不安を感じておるわけであります。私は率直に承わりますけれども、もしほんとうに本年度と変らぬような形の貿易拡大をせしめようとするならば、むしろその点はたった一つ、共産圏貿易に突破口をあけるだけだというように考えます。世界情勢の動きやらその他から見まして、その辺の伸びというものはほとんど期待できないのでありまして、従ってほんとう拡大経済の一本の足に貿易を持っていって、そして日本経済拡大しようとするならば、やっぱり私は一般に言われるように、共産圏貿易に突破口をあけることだというように考えざるを得ないのでありまして、ソ連のシベリア開発計画や中国の第二次五カ年計画というようなものは、私どもの国の貿易拡大にとりまして今絶好のチャンスを与えておるというように思います。こういうふうな共産圏貿易の壁を突き破ることと、それからインドの五カ年計画当てにする、インド並びに東南アジア諸国との経済提携を積極的に講ずること、この二つが、世界経済の赤信号的傾向にもかかわらず、積極的な貿易拡大期待し得る唯一の方法ではなかろうかと思う。にもかかわらず政府は従来通り方針をそのまま続けて、そしてむしろ、今私どもが突破口をあけなければならぬという方面につきましては、先ほど水田さんは暗になかなかその辺は閣内調整がむずかしいという感じを含めて答弁されておったようでありますけれども、その辺に決して積極的な方針を打ち出されておらない。そして今のような貿易の結果だけを期待されることに、私は非常に大きな不安を感じておるわけでありますが、一つ、むしろ合理的な私への反論を水田さんにお願いいたしたいと思います。
  14. 水田三喜男

    水田国務大臣 この間から国際収支の問題でいろいろ御心配がありまして、とんとんということが非常に問題になっておるようでございますが、この機会に私ども考え方をもう一ぺん申し上げますと、この間申しましたように、輸出は一応このくらいはいくだろうという、私どもとしては自信のある予想を立て、輸入の方の問題ですが、これは外貨をどのくらい持つのが正常かというようなことは非常にむずかしい問題でよくわかりませんが、昭和二十八年前後にとった日本政策は、やはり物よりもここで日本外貨を相当蓄積して経済の安定、通貨の安定をはかるのだというところに非常に意味があって、デフレ政策をとって、とにかく外貨をためるという方針をとったのですが、だんだんに変ってきまして、今日になりますと、私は、金を持つのか、物を持つのかということになりますと、現在のところでは外貨を使っても物にして持つという政策をとるのが一番適当な時期ではないかと考えております。そうしますと、ことし二十八億ドルの輸出ができて、貿易外の収入がこれだけある、ここまで外貨日本が獲得するのだという見通しがつけば、その外貨一ぱいは物を買ってよろしいのだ、外貨はためないのだという意思表示であれがあるというふうに見てくれれば問題はないのではないかと思います。それと、たまたま今手持ちの主要原材料の状態から見ましても、これ以上主要原材料を持つということは、業界としては金融の圧迫というものが非常にひどいですから、そう買えといってもなかなか買えない。問題は政府が将来外貨を押えるかどうかということが関心であって、国際収支を無理に合せるために、輸出が減ったら外貨も押えるのだという態度を政府がとるとしますと、相当無理をしてまだ輸入もしなければならぬ、物も持たなければならぬということになると思いますが、私どもは今の手持ちの主要原材量から見て、業界が産業拡大のために必要だというのなら必要な物資はどんどん入れる。国際収支の上からいろいろな問題がありましても、日本でとった収入だけはもう全部輸入に使うのだという方針をとって、そうして需給の逼迫による物価高というものは、国内で起さないのだという政策政府が立てることによって不必要な主要原材料が急いで多く入るというようなことはなくなってしまうので、そういう点から計算すると大体三十二億ドル前後の輸入でまかなえそうだというような積み重ねの予想の上からきましても、大体あんなところへ落ちついた、同時に外貨は残さないのだ、収入があったらそれだけみんな買っていいのだという意思表示で、収入一ぱい買うのだという態度をきめたのがあの予算ですから、ちょうどとんとんになってしかるべきで、一ぱいまで買わせるのですからとんとんになるのだ、こういうふうに解釈してくれればいいし、また政府方針もそこにあるのだということを一つ承知願いたいと思うのでございます。それによって実際やってみたら三十三億ドル余だったという事態が起っても、私はこれをちっとも拒まないので、輸入は抑制しない、需給の逼迫から来る物価高を起さない、そうして日本経済拡大を不均衡にしないという方針でこの外貨予算の運営はやっていきたいと考えています。  そうしますと今度問題はまた戻って輸出の方になるのですが、輸出はこの間も申しましたようにいろいろな仮定の条件とか、前提条件をもって予想しているわけですが、まず近いうちに、たとえば日英の協定ができるのだとかあるいは日豪の会談を開始して何かの解決をするというような、私どもが当初予定しておったいろいろな前提が、今のところ一つ一つ片づきそうな形勢に来ておりますので、その点では大体私どもの予想の通り輸出を持っていくことができるのじゃないかと考えています。当初の予想ではポンド圏域に対してあまり輸出を伸ばすということがちょっとむずかしい、ドル地域でもっぱら輸出が伸びる、それから今おっしゃられたようにインドとか中共、結局そういう方向に伸ばそうという一応の考えは持っていましたが、ポンド圏域においても日英の話し合いがつけば今の量よりもお互いに買ったり売ったりすることが多くなるという傾向になりますと、これはまたわれわれの予想にとっては一つのプラスの結果になるのじやないかというような、いろいろなことを考えてみまして、大体このくらいはいくだろう、しかしそのいく予想の中には、今おっしゃられたような問題、どこへ貿易をもう少し伸ばそうかという問題は予想の中に大体含まれているということだけお答えしておきたいと思います。
  15. 佐々木良作

    佐々木(良)委員 大いに意見がありましたけれども、時間があまりなさそうでありますので先へ急ぎます。ただ私は繰り返して申し上げまするけれども、今ここで私の質問に対しまして理屈の答弁を要求しておるのじゃなくて、一番大前提に申し上げましたように、水田さんは今度の石橋内閣根本的な経済政策現実に実をならせる責任を持っておられる大臣であります。先ほど言いましたように、貿易拡大はあなた自身現実にしなかったならば、今積極政策をとる一本の足が折れる危険性をはっきり持っておる。その足の問題を私は今言っておるわけでありまして、今言われておる御答弁は、予算委員会における質疑応答を見ておってもそういう答弁でありました。私はそれらの答弁に不満でありまして、非常に危険を感ずるがゆえに問題を提示したのでありまっすけれども、水かけ論のようでありますから一応先を急ぎます。ただ私はあくまでもこの貿易拡大というのは、従来のつまり昨年度傾向をそのまま持っていって伸ばす今の方針は、国際情勢の動きからも非常に甘いと思う。そしてここに活を入れるという方法があるならば、それはやはりすきでもきらいでも共産圏貿易なり、あるいはインドからアジアヘというのに対しまして、従来とは違った飛躍的な方法を講じなければならないだろうということだけを、私は忠告を申し上げて先に進みたいと思います。  今言いましたように減税と積極財政の二本の足の一本が貿易拡大であるならば、もう一本の足は去年の暮れまでにはっきりと出てきました国内生産の隘路の打開をして、そしてその隘路が打開されることを前提として、国内の生産がなお上昇を続けるということでありまして、これまた水田さんは隘路を打開させる責任と同時に、隘路を打開させながら期待されたところの生産を一般に拡大させるという任務を担当されるわけであります。三十二年度経済計画大綱というものの中を見ましても、はっきりと「一般経済部門と電力を中心とするエネルギー、鉄鋼および輸送力等の基礎的部門との間に不均衡を生じ、これが今後の経済発展のあい路となろうとする形勢にある。」とはっきり見てとって、そのための方策として、その重要施策の中で「電力需用の異常な伸長傾向に対処するため、電源開発計画を推進するほか、」云々という方針を述べ、また輸送需要は貨客ともに増大することが予想されるので、従って云々として輸送設備の飛躍的増強をはかることを述べられ、ことにまた基礎的工業材料である鉄鋼につきまして、はっきりと取り上げられて、高炉、転炉の増設等、こういう施策を掲げて、これらの隘路が打開されることを重要施策にうたっておられる。同時に先ほど言いましたように、繰り返して言うようでありますけれども、これらの隘路を打開することと同時に、打開された効果が今年中に現われて、従って今年度経済は隘路にぶち当らずに上昇することを前提として組まれておるわけであります。ここは水田さん、私は全然間違いない作文であると思いますけれども、この方針に変りありませんか。
  16. 水田三喜男

    水田国務大臣 大体そうです。
  17. 佐々木良作

    佐々木(良)委員 次々に問題を提示いたしまして一つずつ御答弁を要求したいと思います。大体私はこの考え方自身——ほんとうを言いますとこの作文を読み、この間水田さんがここで朗読されるのを聞いて、この作文と朗読に対しまして、私はむしろほんとうに憤りをさえ感じたのであります。何もわが国生産の隘路というのは、決して今度の好景気によって初めて現われた現象でないことは、水田さん十分御承知のことでしょう、いつでも、戦前におきましても、また戦争中におきましても、戦後のいかなる段階におきましても、いつでも同じように、日本経済拡大しようとする場合の生産の隘路は、エネルギーであり、鉄鋼であり、輸送であったはずであります。わが国生産技術の発展段階だとか、あるいは戦争経済のゆがみだとかいうことのために、たとえばそれが石炭という名前であったり、あるいはアルミニウムという名前であったり、あるいは船舶という名前であったりいたしましても、いつでも日本生産発展の隘路をなすものは、常にエネルギーであり、輸送であり、基礎工業材料であって、これはあくまでも日本経済生産拡大の三大ネックになっておったことは、十分承知のことであると私は思うわけでありまして、この三大ネックに対する打開対策がこれまで欠けており、あるいは一貫してそれを実施しなかったところに、いつでも経済が飛躍的な拡大をしようとするチャンスが訪れても、そのチャンスをつかみ切れずに、そのたびごとに今さらのごとにネック対策の重要性を言うて、そうしていたずらに責任を回避しておった、というのがこれまでの繰り返しだというふうに思うわけであります。従いまして、隘路打開対策の過去における無責任な繰り返しというものは、水田さんも十分御承知の上でこの問題に対処されていると思いますので、私は以下具体的に三、四、個条書きに質問いたしますからお答え願いたいと思います。なおほんとうの具体的な問題は、時間があって許されるならば、私はその例をエネルギー政策にとって説明いたしたいので、考え方だけを羅列いたしまして御答弁をお願いいたします。  第一は、経済五カ年計画等を中心とする諸年次計画の性格についてであります。従来保守党内閣は、これらの経済諸表の数字は実際には事務当局の見解と異なっておったのでありますけれども、いつでも自民党政府は、これらは単なる見通し的な価値しか持っておらないものであり、むしろある場合には景気観測的役割しか与えられておらなかったと思います。五カ年計画等の経済数字に対しましては、大体単なる見通しだとか、あるいは経済観測的な役割しか与えられておらなったと思いますけれども石橋内閣も同様な価値しかこの五カ年計画等にはお与えになりませんかどうか。これが第一点。  第二点は、自民党の経済政策は従来自由主義経済の原則に立脚をいたしておりまして、お医者さんの医療にたとえて申しますと、いわゆる対症療法というやり方でありまして、たとえば熱が出ればアスピリンを与えればよろしい、下痢をすれば下痢どめ剤を与えればよろしい、そうして体力の回復がおのずから病源を駆逐する、こういう筋のやり方を政策の大体の本筋としてやられておったようでありまして、そうしてそういう経済政策を実施するための体温計の役割を果す一応の基準が五カ年計画その他のものである、こういうふうな説明もされておりましたけれども、私は一、二の例外はあるといたしましても、原則的になお経済諸表に対するそれの利用の仕方に対しまして、石橋内閣は従来の鳩山内閣等々と同じような考え方をもってこの対症療法的な療法を政策の根幹とされておるかどうか。これが第二点であります。  次に第三点の、原則的には対症療法的な今の第二の方針をおとりになるといたしましても、先ほど申し上げましたところの、たとえば輸送、エネルギー、鉄鋼というような三大ネックを構成する産業につきましては、私は、対症療法を原則とする医術におきましても、日ごろからだを強健にするために体育その他の健康法が奨励されると同じ意味で、継続的かつ計画的な対策が必要であることを認めなければならないと思いますけれども大臣のお考え方はいかがか。五カ年計画あるいはそれに対する経済政策の基調を対症療法的なものだというふうに言われましても、先ほど言いました三大ネックを構成する産業に対しましては、継続的かつ計画的な対策が立つのでなければ、先ほど言いましたようにいつでもネックの繰り返しになるのでありますから、これはそれらとは違った方法が継続的あるいは計画的にとられなければならないというふうに考えますが、お考えはいかがですか。特に経済計画大綱の中で隘路打開方法として取り上げている電源開発であるとか、輸送施設の増強であるとか、高炉、転炉の増設等、あげられているもの全部を見ましても、その一つ一つの設備建設についてみな数年を要するようなものでありますることを十分御承知の上で今のお答えを願いたいと思います。まず三点を伺いまして、あと個条書きに続けます。
  18. 水田三喜男

    水田国務大臣 私ども経済政策根本的には自由主義経済政策であることは間違いありません。これを基調として経済拡大をはかるということですが、そのはかり方が従来対症療法的なことも多かったとは思いますが、しかし現在ではそうではございませんで、御承知通り道路にしても、治山治水にしても、電力の問題にしましても、経済全体の計画問題にしましても、もう国会でも承認された五カ年計画、十カ年計画というものが幾つあるかと申しますと、非常にたくさんの数になりまして、やはり一応そういう計画を立て、その目標を立てて、その目標に近づくために政府予算計画的に盛るという仕事もありますし、今度民間の事業にしますれば、この目標を達するまで民間の創意にまかせる、自主的にその目標までいくような裏からの助成策をとるというようなことで、現在やっている政府のいろいろな施策はほとんど無計画のものは何一つないほどに計画化している段階だと私は思っています。ですから内閣が変ったからといってすぐに変更するものじゃなくて、前内閣経済計画を踏襲してそれを遂行するというのが次の内閣の仕事であるというふうに、内閣自体のいろいろな計画ももう事前にきめられている、そうしてそれをいかによく速成するかに骨折ればよろしいのだというふうになっておる一面が今の政治では非常に多いと思いますので、私どもも従ってそういう基礎計画に基いて年次別にその計画を達するようにやるよりほか仕方がないと思っておりますが、ただその計画が今までうまくいったためしがございませんので、予想がことごとく狂う、当然このエネルギー対策や何かが毎年あるはずで、なぜ今になって騒ぐかといえば、計画あって計画通りにやったつもりですが、実際は今度のこの産業拡大というのは、これは産業界から見ても政府から見てもそうですが、実際は予想外で、予想外の伸び方が現実化したためにその隘路がことしでなくて来年は大ていこうなる、再来年はこうなるという予想がみな狂って、経済の伸び方がひどかったためにこの隘路が特にきつくここに出てきたというので、むしろ少しあわてて今いろいろな打開策を立てているという状況なんですが、これはどうも仕方がないことでして、経済がそう現実的に起ってくるのですから、政府もそれに対応する措置をとるよりほか仕方がありませんから、過去に立てたこの五カ年計画をことし訂正します。もう最終年度の数字に来てしまっているような状態ですから、来年度、再来年度はこういうふうにするという、今計画の修正、立て直しをやる時期にきていると思いますので、これは政府部内で十分検討の上今までの計画を全部ここで再検討の上で修正、やり直しをやるというつもりでおりますから、これはそのように御承知願いたいと思います。
  19. 佐々木良作

    佐々木(良)委員 当ったためしのないような計画であるから、従来これは計画の名に値しないものである、単なる見通し景気、観測的なものであるという言い方が、ずっと十年間続いて政府からせられておった答弁なんであります。名前は計画という名前になっておるけれども、そういう計画経済的な見方をするんじゃないんだと、あくまでもこれはそうなるだろうという商売の一つの目標みたようなものである、こういう説明で責任を回避されておったのであります。今水田大臣のお話を聞きますと、今度ほんとう計画的にやるんだというお話でありますが、そうすると五カ年計画というものの性格が、従来のそういう単なる見通し的なものから、計画経済の指標になるような計画性を持ったほんとう意味での五カ年計画であるというふうに性格変更が行われたと了解してよろしゅうございますか。
  20. 水田三喜男

    水田国務大臣 計画はやはり目標でありますから、この目標達成のために相当自由に、自由主義経済の原則でその目標を達成させようとして、今まではそういう方向で来ましたが、ほんとうにこの計画を達成するためには、ほうっておいてはできない部面が最近は非常に多くなってきている。従ってそれについては政府がいろいろな規制なり助成なりをしてそこへ持っていくというような、そういういろいろな行政措置とか、法的な措置というものがある程度加わらなければいかぬという方向へ少しずつ来ていることは事実だと思います。
  21. 佐々木良作

    佐々木(良)委員 経企次官がおられるようなのでお伺いいたしますが、五カ年計画の性格変更がほんとうに閣議その他で行われたのでしょうか。
  22. 井村徳二

    ○井村政府委員 新しい計画に対しては、企画庁は四月から立て直しをしなければならないという考えの上に立って検討いたしております。足らざるところは担当事務官から御説明いたさせますが、私の見通しからいきますれば、やはり立て直しをしましても、経済に関する限り自由経済の建前において立てていく以上は、将来においても今のような御質問はあるだろうと思います。しかし先ほどから隘路だというて非常に御心配でありますけれども、隘路の内容はうれしい隘路だ。二、三年前の隘路とは違う非常にうれしい隘路であるから御心配は要らないのじゃないか。四月から私らの方で真剣に立てますが、今のような御心配前提にするならば、おそらく立てることができないとあっさりあなた方に御返事しなければならぬというような心配を持っております。要するに国といたしましては、しっかりした計画を持たなければならない、基準を持たなければならない、さように考えております。足らざるところは事務当局からまた御説明いたします。
  23. 佐々木良作

    佐々木(良)委員 私の聞いたことには答えられなくて、勝手なことを答えられておるようでありますが、私は不満であります。私の聞いているのは、五カ年計画の立て方が、従来は単なる見通しだ、そういう性格のものだといって、石橋内閣以前の鳩山内閣でもずっと説明されておった。それを今度ははっきりと計画性を持つそういうものに性格変更がされたかというのであります。これは聞く方が無理かもしれませんが、変更されていないのでありまして、明らかに従来と同じ格好の五カ年計画が立てられておる。今度は私ははっきりと水田さんにお伺いしますが、水田さんはよく御承知のはずでしょう、去年の四、五月ごろに去年の五カ年計画が立てられて、今あなたが打開しようとする隘路産業を含めての——一番御承知の電気にしておきましょう、その電気の計画が、五カ年計画の中で長期計画とは言うけれどもほんとうは目標だけだということで、昨年の今ごろ立てられて、それが秋ごろになると大変更を加えられておる。しかもその変更は事実上七割増しの変更が加えられておる。発電所一つ作るのに二年か三年かかるのです。一体作る方はどうして作ればいいのか。これは計画というのか、見通しというのか。これははっきり申し上げますけれども考え方の混同なんですよ。御承知のように鉱工業生産指数というのは大がい見通しみたいな格好で、まあまあこれくらいだといういいかげんなところでそろばんをはじく。そしてその鉱工業生産指数に合うように今度は電気をはじき直しておる。一般の鉱工業生産指数の方はふえたり減ったりする。当るも八卦、当らぬも八卦だと言ってしまえばそれまでの話だ。ところが現実に隘路産業の中心になっているようなエネルギー、電気の場合は、形の上でこそ商法上の株式会社が、あるいはそれを特殊会社が建設することになっていますが、現実には電源開発促進法によって、政府の責任において開発の規模も時期も決定する格好になっておるわけでありますよ。つまりもとの方はぼうっとほったらかして、当るも八卦当らぬも八卦で計画を立てておいて、それに合せてそろばんをきちんとはじいてキロワット・アワーを押えて、そうして今度はこれだけの計画を立てたから、お前さんの方ではこれだけの発電計画を立てて発電所を作れといって、一年間に七割も、八割も、倍にするような計画を押しつけられる。発電所を作ろうと思っても二年か三年はかかる。従ってそういうことで隘路産業の打開をしようたってできるかということなんです。もしほんとう水田さんが今度の計画の中で隘路産業を打開される方針をとられるならば、五カ年計画という今までの計画を変えて、しょうがないから一般の五カ年計画は五カ年計画でいいけれども、その中の隘路産業として今重点的に取り上げられておるようなエネルギー、鉄鋼あるいは輸送というようなものにつきましては、そういう当るも八卦当らぬも八卦、当らなかった場合にはうれしい変更であるというようなつまらぬことを言わぬで、ほんとう政府が責任を持って遂行できるような穴をあけなければ穴があきやせぬ。先ほども言いましたように、隘路というが、これは今始まったものでなくて、戦前も同じようにこの三つが隘路だった。戦時中も同じように隘路だった。戦後も同じように、経済拡大しようと思えばこれが隘路になっている。それでほんとう水田さんは本気になってこの隘路を打開しようとする気持がないというように私は考えざるを得ないのですが、どうですか。
  24. 水田三喜男

    水田国務大臣 今申しましたように計画は立てたのですが、見通しが狂ったということでして、鉱工業生産指数は、一応この次にはこのくらい伸びるだろう、その次にはこれくらい行くだろうという基礎を持って計画を立てたのですが、だれも去年一年下鉄の使用量が四割一挙にふえようとは思いませんでしたし、電力の使用量がここまでいくとは実際に予想していなかった。こういうためにあわてて計画の立て直しをやって、五カ年間に八百四十万キロ電力を起す、これの年次割の大体の計画を持っておったのですが、それじゃ間に合わなくなったというので直す。ことし一年で七十五億キロワット・アワーふやさなければ電力は詰まるのだという数字は、去年、おととしは全然出ていなかった数字でございますので、これは計画見通しが間違ったとなればそれを直して、この計画達成のためのあらゆる手段をここでとる以外にはありませんので、先ほど申しましたように、政府行政措置によってやらなければならぬ点はこれを強化する。場合によったら、法的措置も必要だという部面があったらこれもやるというぐらいの決心でやらなければ、この見込み違いの急速な拡大に対応できないのではないかと考えております。   〔「正直でよろしい」と呼ぶ者あり〕
  25. 佐々木良作

    佐々木(良)委員 正直でよさそうでありますが、それならばもう一つお伺いいたしますけれども、それは別といたしまして、ただ私は、あくまでも五カ年計画の中に占める隘路産業の計画性に対しては、ほんとうにもう一ぺん再検討された方がいいと思います、されなければならぬと思いますので、御善処をお願いいたします。そうして今のように力一ぱい変えて一生懸命に三十二年度を充足するという方針を立てられても、もう時はおそいのでありまして、ことしこれから発電所を作ろうとかかっても来年か再来年でなければできないのです。現実には水田さんが力一ぱい隘路産業打開という方針を立て、経企でもそれができておるのにもかかわりませず、あなたの部下から聞いてごらんなさい、はっきりと三十二年度には電気ならば大体三十億キロワット・アワーの穴があくというそろばんが出ています。力一ぱい隘路を打開しようとしてあなたがしりをひっぱたいたって、私の言うことを聞かぬものですから、今ごろになって気がついたりするものだから、今力一ぱいやっても三十二年度は大体三十億キロワット・アワーくらいの電力は足りないのだということになっておる。そうして石橋内閣経済方針は、隘路が打開をされて、そして隘路の打開された効果がことしに出て、従って隘路が打開されながらちゃんと生産予定通りに上昇するのだという予定になっておる。そのギャップに対しまして矛盾をお感じになりませんか。
  26. 水田三喜男

    水田国務大臣 隘路産業について、鉄鋼はまたあとから出るかもしれませんが、何とか需給の逼迫をそうひどいものにしなくて済むかもしれない。それから石炭に対してもむずかしい問題はありますが、これは総合的なこの計画でいくよりほかはありませんので、重油で置きかえられる場所は置きかえるというような問題、こういうものについての見通しも一応今のところは立っておりますが、御承知のように電力については、先ほどのお話のようにわれわれの計画が少しゆるかった点は確かにありますので、来年この点を私どもは一番心配しておるところでございます。しかし地域別に所要電力の開発をするということはこれはむずかしい問題になりますので、どうしても足らないところへは一方の地域で可能な限り発電をやって、不足のところへ電力を融通するという方針で、何とかこれをしのいでいこうという計画を今立って、とにかくそう心配のある事態までは持っていかない措置はとりたいと思っております。
  27. 佐々木良作

    佐々木(良)委員 時間がなさそうでありますが、水田さん、これは心配がないような措置に持っていこうといったって、どこから融通するとか何とかいったって、全部ひっくるめてやっても三十億ぐらい足らぬだろうというのです。従いましてこれは規制するよりほかにしょうがない。規制しなくてもいいというならば、そのときには生産が伸びていないのでありまして、そういう状態になった場合には、最初から前提になっておるところの経済計画自身がくずれておるのだから——むしろそれもうれしい縮小になるかもしれませんけれども、ともかくもそういう行政措置を幾ら動員されましても、二、三十億キロワット・アワーが足りない事態にきておる。そしてこの隘路が打開されることを前提として、経済上昇が続き二千億の自然増収が入ることを予定されておる二枚看板経済政策に私は非常に大きな不安を打つ。同時に水田さんは池田さんと一緒になって、二枚看板大丈夫だと私は言い切れないのじゃないかと思う。第一三十億をあなたはどうするのですか。私はそこに非常に大きな不満というよりも不安を感じておるわけであります。  これに触れてもう一つだけ、今言いましたように、隘路産業の打開というのは、この電気の例を一つ見ましても、場当り的な対症療法的なものであってはできないということは十分水田さんもおわかりになっおるところでありまして、おそらくことしからそうやろうということになるだろうと思います。そうでありまするならば、今度は量でなくて価格の問題につきましても大体似たことが言えるのでありまして、従来今あげましたような隘路産業として言われておるようなものは、すでに需要と供給の関係を原則として値段が決定されるというようなものではなくなっておりまして、大体それがために原価主義みたいな格好がとられておることは御承知通りであります。理屈を言いますと、私はこの原価主義というものにも少し異議がありまして、だんだんこれは産業の発展とともに社会的任務がふえてきまして、社会政策的な意味を帯びてくるとは思いますが、そういう根本論は別といたしましても、現在でもこれらの産業の価格というものは、需要供給の原則によってきまる、自由主義経済の原則によって価格が決定されるということではない方針がとられておるわけでありますが、最近隘路産業がいわゆる険路現象をだんだんと強めるに従いまして、一部にそれらの値上げ論が出ておることは御承知通りでありまして、私どもは運賃の値上げという問題を聞いておりまするし、電力料金の値上げという問題も、揮発油税の引き上げという問題も聞いておるわけであります。私はここにもまた一つの場当り的な政策の矛盾がはっきりとあるのではなかろうかというふうに思うわけであります。もし今、ここにこういう隘路が出てきたから、従ってこの値段を上げて設備を増強してよくしようというようなものであるならば、それはすでに基礎産業でもなければ、私どもが先ほどから指摘しておるような繰り返される隘路産業ではないはずであります。しかし現実日本経済の中に占めているこれらのものは、見てごらんなさい、ほんとうに独占の上に眠りながら、むしろ必需性という脅迫的な武器を使用して、そして国民生活の隘路打開というようなにしきの御旗を掲げて今これを値上げしよう、こういう格好で持ってこられておるのでありまして、私は経済政策というよりは、むしろ社会政策的な非常に大きな矛盾であるというふうに考えるわけであります。もし険路産業の隘路打開一つ方法として、それらを増強するためというような意味でこれらの値上げ問題をからめられるならば、それはあくまでも根本的なこれらの産業の立て直しを意味するものでありますから、他の根本的なこれらの産業の立て直しと同時に並行的に爼上に上る議題であろうと思うのでありますが、これの値上げだけが今俎上に上ろう上ろうとしておる傾向に対しましての御所見を承わりたいと存じます。
  28. 水田三喜男

    水田国務大臣 値上げの方向がお説のように出ておりますからこそ、今度はいかにして値上げしなくて済むかといういろいろな施策がここで必要になってきているということになりますので、私どもは石油の製品の問題にしましても、需給の問題は、今政府の打っている手は大体順調に行っていますので、需給から来る値上げというものは防げます。しかしそのほかから来る値上げというものはなかなか防げない問題もございますので、それに対する処置というものを今臨機にとっている。石油製品についても、少くともことしの三月までは値を上げない。三月以後についてもそういう問題については政府と相談しなければやれぬというような措置をとっていますし、石炭についても、今同様の値を上げない措置についてはいろいろ手を尽しているということで、これは必要やむを得ない場合に値上げは仕方がないと思っています。それによって隘路が打開されるということに役立つというのでしたら、これは今おっしゃられたような方向で一部の値上げは認めます。しかしそれに関連しない値上げというものは極力押える。押えるための措置はあらゆる措置をとるという方針で今やっております。電気の問題でございますが、これは御承知のように去年も年末に非常な渇水があっても、それまでの豊水というものに恵まれて、一般の電力会社は経理状態は非常によくなっている。しかしあまり豊水に恵まれなかったりあるいは電源開発が進むにつれて資本費の増高のためにコストが上っておる、それから他の地区から電力を融通するという以上は、融通電力の値段は当然高いのですから、コスト高になっていく。この圧迫をこうむって経理状態が極度に悪くなっているのが東北とか北陸というところでございますが、これは今のままでやっていけるかどうかというのは、私ども今検討はしておりますが、まだ正式の値上げの要望というものが出てきているわけではございませんので、こういう問題に対しては全般の電力料金をいかに値上げしないで済ませるか、やむを得ない場合にも最低限度にとどめるというような措置は、今私ども真剣に研究しているところでございます。
  29. 佐々木良作

    佐々木(良)委員 ほんとう経企長官に対する質問かと思いますが……。
  30. 福田篤泰

    福田委員長 経企長官は午後出席いたします。
  31. 佐々木良作

    佐々木(良)委員 それなら一つだけ通産大臣に聞きます。先ほど電力の問題が出たから通産大臣にそれだけ聞いてとどめておきます。先ほど一生懸命やったところで三十二年度には大体三十億キロワット・アワーくらいの不足が出るのだということを言いましたが、それは今あげられておる計画を、政府が言うておる通りのことを全部やってもなおかつそれだけの穴があきそうだということですね。それは政府が言うておることが全部やられるかどうかということについてもはっきりと今問題が出てきておる。その一つは建設の資金の問題であり、一つは火力用の燃料の問題であります。資金の問題についてはくどくど言いませんけれども、大体今の予想で言いますると、現実に三十二年度にやれと言われる計画を遂行するために、三百五十億程度の資金がどうにも足りないという事態がはっきりと水田さんのところにきていると思う。これに対して方策は何かあるかどうか。もう一つは、火力用の燃料の問題について、三十二年は何とかなるかもしれないけれども、今の傾向からいうと、重油と外炭が非常に大きなウエートを占めつつあるが、特に重油問題は、私は従来の日本エネルギー政策の中でとられた位置とは違う位置がだんだんと与えられつつあるような気がするわけでありますが、この重油の問題について、たとえば従来はボイラー規制法等の問題もあるし、非常にこれがぜいたく品のごとき状態で、べらぼうな関税の問題もありますし、その他いろいろな外貨割当の問題等もあるわけでございますが、重油政策については、エネルギー政策、電力用燃料という問題とからむと同時に、全体のエネルギー政策から見ても従来とは違った方式を打ち出されるつもりがあるかどうか、この二点についてお答えを願いたいと思います。
  32. 水田三喜男

    水田国務大臣 今の最初の御質問ですが、政府は今考えている対策を全部とる。これはそのつもりでおります。ただそれによって不足を予想されるといたしましても、二、三%の問題でございますので、これは電力計画の大体もとになっている計算も、業界の所要量、要求、希望見通しというようなものをみな見ての計算ですが、あるいは若干のゆとりがあるかもしれませんし、ゆとりがなければ二、三%の不足にどう対処するかという策はまた別個にもございますので、とにかく政府は電力を起す計画だけは政府の考えておるものを全部やってこの事態に対処するということにいたしたいと思います。今の計画を全部やらせるという資金の問題になりますと、これは二千八百億円前後の資金になりますが、電源開発については大体資金の心配はことしはないと思います。問題は九電力の開発資金になりますが、開発銀行の中のワクが二百五十億円になっています。これはもう少しふやさなければならぬということはわかっておりますので、これについては、あの計画を作るときに、私と大蔵大臣との間に話し合いができておりまして、あれだけ大きい開発銀行の資金を使っておるのですから、回収について少し手かげんすることによってすぐに何十億という金は出て参りますし、それからことしの預金部資金のいろいろな見方についてもゆとりがあるいはあるかもしれません。そういうような問題も考えまして、あの予算で一応出発するが、電力の開発資金は詰まらせない。従って、開発のワクは先へいってそういう状態を見てこれをさらにふやすということは必ずやるという約束のもとに、当初計画として二百五十億円を見ておりましたが、これは私は情勢によってこのワクをふやすということをやりますので、その点は心配ないと思います。それからあと電力債をどう消化するかという問題は、市中は資金が非常に詰まっておりますが、これに対しては財政資金で市中の金融債を買い上げてやるというようなことで市中銀行にゆとりを持たせる。持たせる分は電力債の消化に向けるとかいうような金融政策については、政府財政資金ともからんで、ともかくこの消化に万全を期そう、こういう話し合いになっておりますし、この二千八百億円の電力資金はことし必ず調達できるだろうと考えておりますので、三百五十億円も足りなくなるだろうとは今のところ考えておりません。  重油問題は、従来日本の国内の石炭業を安定させるために重油の規制という方針を今までとっておりましたが、こういう事態になりましたので、今までのような意味の重油政策ではなくして、お説のように重油政策についてはここで方針を変えるという意思を持っております。しかし、そうかといって、先ほど申しましたように見通しがとかく狂いがちでありまして、この委員会できめた石炭の合理化のあれも、一、二年前ですが、もうあの法律が要るか要らぬかというくらいに、この委員会自身もおそらく見通しが間違っておったのではないか。(「われわれは反対したのだ」と呼ぶ者あり)そうすればこれは与党の見通しが間違ったことになるのかもしれませんが、そういう問題もございますので、やはり業界を安定させる意味から、あの法律もとっておく。同時に消費規正の法律というものもやはり置いて、将来のいろいろな問題に対処するために政策を若干変えてもこういう基本法は置いて、そうして合理的に運営していくという方法をとりたいと思います。
  33. 福田篤泰

    福田委員長 午後一時より再開することといたしまして、午前はこれにて休憩いたします。    午後零時二十分休憩      ————◇—————    午後一時三十分開議
  34. 福田篤泰

    福田委員長 これより休憩前に引続き会議を開きます。  午前に引き続き質疑を続行いたします。鹿野彦吉君。
  35. 鹿野彦吉

    ○鹿野委員 私は経済企画庁長官にお尋ねしたいと思います。今回石橋内閣の一枚看板として掲げております完全顧用という問題についてでありますが、先般来宇田長官は、社会党あるいは与党の質問者に対しまして、貿易の振興あるいは経済拡大によって十年間で完全顧用が達成できる、このような御答弁をなさっておりますが、私はこのことについていささか違った考えを持っておるものでございます。それは貿易の振興をはかるということについては、その基本になりますものは、いい品物を安く作るという努力がどんどん継続されていかなければなりませんが、よい品物を安く作るということのためには、企業の合理化なり機械化、このごろ非常に推進されておりますオートメーション化というようなことが促進されなければならない。ところがこうしたことをやるについて一番の隘路は何であるかということになれば、結局そういうことをやれば失業者が続出する。失業者が続出するために、思いきって合理化なり機械化ができない。たとえば日本で大きな労働組合である総評が、日本生産性向上運動に対して反対の立場をとっておりますが、私は自民党の所属議員だけれども、この問題に対して幾分同情的な考えを持っております。なぜならば失業することが明らかなる事実に対して賛成をするはずはないわけでございます。ですから生産性向上運動すなわちオートメーション化あるいは機械化、合理化をやるためには、その前提として雇用を創造していかなければならないのじゃないか。漫然と経済拡大によって完全雇用が達成されるというようなことは、非常にこれは不用意であり、不十分ではあるまいか。どうしても新しく積極的に雇用を創造して初めて合理化、機械化が行われ、生産性向上運動の目的が達せられる。国民全部が手をつないで、日本再建のために向っていくような道をたどる、そこにすなわち貿易の増進も——もちろん貿易は値段が安く、いい品物を作るということだけによるものではない、いろいろの外交関係もございます。しかしいずれにしてもそうした方向によって貿易の増進により、それがまたはね返って雇用の増大を促進する、こういうようなことになるわけでございますから、新しく雇用を創造するということに対して積極的なる計画を持たなければ、私は完全雇用は実施できないのではないか、このように考えるがどうですか。
  36. 宇田耕一

    宇田国務大臣 お説の通りでございます。それでこの経済拡大していくためには、国内需要に対しても十分注意を払っておるんですが、特に最近二カ年間の統計を見ると、国民の需要が質的に変化を起しておると思われる点があります。それは消費性向を見ても、従来の傾向から特に違った点は、家庭において新しい、たとえば電気製品というような家庭内部におけるいろいろ生活必需品のみを見ても、そういうふうな質的な需要の内容が変りつつある、こういうふうに思われる点がたくさんあります。それから国際経済の中におきましては、東南アジア、特に中共を含めて、極東地区においては特に民族意識の高揚と相待って自分自身経済の自立をはかりたい、こういうために従来の単純な消費物資でなく、再生産のための基本のプラント輸出希望する、あるいは原材料も、第二次製品よりも第一次製品の方に希望が多く集中しつつある。そういうふうな傾向でありますから、この点に合わすような企業対策あるいは生産構造を考えなければならぬ、こう考えております。
  37. 鹿野彦吉

    ○鹿野委員 私がお尋ねした点について少しく御答弁が違って不満足ですが、東南アジアその他の国に日本のそうした貿易を増進させる方向を求めるべきであるということについては私は同感ですが、そうしたことをするためには、ここに新しく雇用の創造というものを計画し、具体化していかなければならないのじゃなかろうか。漫然と貿易の増進、経済拡大によって完全雇用が達成できるということは非常に危険ではあるまいか。このことを私はお尋ねしておるわけでございますが、このことについていかがでしょう。
  38. 宇田耕一

    宇田国務大臣 漫然と考えておるわけではありません。ただ経済企画庁としてはこまかく細分すればいろいろのものがありますが、とりあえず本年度経済企画庁のあるいは科学技術庁の予算の内容を見ましても、何に政府は関心を多く払うべきであるか、どういう点にわれわれは助長行政計画すべきであるかということは、数字でもって出してあります。しかしその場合に、民間の経済機構の実力あるいは組織等から勘案して、政府の支出する助成金あるいは助政政策というものは必ずしも単一ではない。その助けていく度合いというものは、その年その年によって必ずしも一定はいたさないのです。たとえば予算面を通じて、政府が深く関与をする面についてはいろいろの考慮を払ってあります。この考慮を払った面は雇用量の増大ということをはずしておりません。われわれの五カ年計画の基本線は完全雇用のための経済の伸びを従来五%に見ておったのを、今回は七ないし八%前後で押えていくのが実情に合うと見ております。従って雇用量はそれによって増大し得るような環境を作るという基本線を持っております。
  39. 鹿野彦吉

    ○鹿野委員 宇田大臣、今あなたが言われるようないわゆる貿易の増進、経済拡大によって完全雇用を作るんだということは、前鳩山内閣においても言われたことであり、昨年の当委員会におきましても、高碕長官石橋湛山通産大臣が列席の上、私はこの問題を御質問申し上げたわけですが、今回私が申し上げたいことは、石橋内閣は完全雇用という問題を特別に一枚看板に掲げたというところに問題があるのではないか。日本の現在の繁栄は、これは日本独自の努力によったものではなく、世界的な好況に幸いされて、午前に水田通産大臣も話しておられますごとく、予測しなかったところの好景気が、日本にきておるわけでございます。こうした好景気の波に乗って漫然と日本拡大を考え、完全雇用というようなことを考えておったならば、非常に危険ではあるまいか。日本は、もちろん宇田長官も御承知通り、労働人口といいますか、生産人口は年々非常な勢いでふえております。国土は非常に狭い。こうした状態において、国民が希望を持ちながら日本再建のために努力するところの基本は、完全雇用でなければならない。ところが、完全雇用は、アメリカの場合における、カナダの場合における、豪州の場合における、インドの場合におけるものと、全く違う。アメリカや、カナダや、豪州、ソビエト、中国その他のいわゆる恵まれたる国々は、今宇田長官の言われたように、貿易の増進、経済拡大をはかっていくということだけによって完全雇用を達成するという見通しがはっきり得られる。しかしながら、日本、ドイツ、イギリス、フランスその他の小さい国土に人口の多い国々は、全くその立場を異にする。ところが、ドイツ、イギリス、フランスその他の国々と日本立場を考えてみるときに、全く比較にならないほど違った条件一つあります。それは何かというと、ドイツ、イギリス、フランスその他の諸国には、無限に移民という道が開かれておる。いわゆる恵まれた豪州へ、恵まれたカナダヘ、アメリカヘ、その他の国々に対して、移民という道が無限に開かれておる。しかも悪い条件ではない。いい条件で、何とかして迎えようという必死の努力をもって移民の募集をされておるというような国国です。日本にはこうした道もふさがれておる。ですから、日本は、世界のどの国とも比較のできない、日本独自の立場に置かれておる。この独自の立場に置かれておるところの日本経済自立のためには、完全雇用というものがまず大切だ、このような考え方で、石橋内閣が完全雇用という看板を掲げたものと私は解釈いたしておるわけです。ですから、私はこの石橋内閣の掲げた完全雇用というものには、特別なるところの意味があるものと非常なる期待をいたしておったわけですけれども、先般来の御答弁、お考え方によりますと、従来と全く変らない、同じような立場をとられておるというところに、私は非常なる不満を持っておるものでございますが、この問題について宇田長官に再び御質問することはやめまして、具体的な私の考えを申し述べてあなたの御所見を承わりたいと思います。  かくのごとき立場にあるわれわれ日本にとって、何といっても一番大切なのは、雇用の創造を積極的にやることでなければならない。雇用の創造をやるといえば日本としてどういう方法があるだろうか。これは日本の識者が、少くともものを考える能力のある人々みんながこの問題に集中して考えてもよろしいと思うほど重大な問題でなければならぬと思うのであります。私どもの考えでは、これは先般高碕経済企画庁長官にも申し述べたのでございますが、日本の国土の約六八%というものは山間地帯でございます。この山間地帯をいかに活用するかというところに、日本経済再建、経済自立、完全雇用のことごとくが、この問題の解決いかんによって解決されるものと私は思います。この国土の六八%の山間地帯を積極的に利用する方法として、栽培林業を行う。ところがこの栽培林業を行うにつきましては、従来このような考えを持っておった人もあるようでございますが、採算の問題で行き詰まっておった。ところが御承知のごとく、このごろ非常な発達をいたして参りました木材化学によって、栽培したところの木材を利用いたしますときには、栽培林業がりっぱに成り立つ。すなわちポプラ、アカシヤ、ユーカリというようなものを、八年から十年くらいで伐採をしていくというような方法をとれば、栽培林業が成り立つ。そうすれば日本の国土の二万五千町歩に及ぶところの山林地帯をある程度分割いたしまして、そのうち一千町歩栽培林業をやるというようなことを仮定いたしてみますと、これは私は確信があるわけではございませんが、大体の想像ですが、二百万家族くらいの雇用を新しく創造することができるのではないか。しかしてこれを処理するところの木材化学による労働力としては、やはり何十万かの雇用を創造することができる。またこの木材化学から生まれるところのガソリン、フルフラール、アルコール、砂糖、あるいは酵母というようないろいろなものがあるわけですが、このうち酵母を非常に安い値段で酪農経営に供給いたしますときに、そこから生まれるところのバター、チーズ、牛乳、牛肉などというものは、たとえば豪州のそうした酪農製品に劣らない安い値段で国民の前に供給することも可能になるでしょう。そうすれば日本国民の食糧の改善というものがここに出て参りまして、年々何百万トンというものを輸入するというようなことを防ぐことができ、食糧の自給自足という目的も解決することができる。この際酪農に対して非常に多くの雇用の創造を見ることができるでしょう。またこの間この問題を推進いたしていく過程について、日本の山間地に道路をどんどんと作らなければならない。この道路を作るについての土木事業に対する新しい雇用という問題も生まれてくるでしょう。土木機械を作るについての機械産業における雇用という問題も生まれてくるでしょう。ということによって、新しくここに三百万くらいの雇用を作り上げることが十年間で可能になりましたならば、日本の民族が年々百万ずつふえまして一億になり——私は一億五百万が学者の調べではピータであると開いておりますが、まず一億から一億五百万ぐらいになりました場合にも、新しくそのくらいの雇用を作り上げるということになりますれば、それに関していろいろとまた潜在失業者に対してもいい影響がもたらされると思いますから……。かくしてこそ初めてこれによってすなわち官庁の行政整理、あるいはまた各会社の合理化、機械化——労働者諸君の、組合員諸君の積極的なる協力を得てこうした行政整理、あるいは機械化、合理化というものも行われる。勢い日本生産品は安くてりっぱなものがどんどんと生産されることになる。もっともっと現在よりも強力なる態勢において諸外国との貿易合戦にも戦い勝つととができる。しかも栽培林業から生まれるところの木材資源は、太陽のエネルギーだけをもとにして十年間で還元してくるところの資源であり、非常に資源不足といわれる日本世界で第六番目の木材資源を持っておるという立場からいきまして、特別なる特徴を持った、日本経済にとってふさわしい雇用の創造方法ではあるまいか、このような考え方を持ちまして、前国会におきまして高碕経済企画庁長官に御質問いたしましたところ、全く同感です、来年度から大いに考える、こういうようなお話でございました。ところがこうした方向へ持っていきますについて、すなわち木材の利用合理化という問題が大きな問題であるにかかわらす、現在木材利用合理化に対するところの推進本部に与える補助金が先般六百五十万円であったものが、今回三百万円に減らされたというような実情は、政府は果してこうしたことを知ってか知らないでか、何らの興味も持たないのか、雇用の創造ということが他に方法があるのかどうか、こういうことについて一応宇田長官の御所見を承わりたいと思います。
  40. 宇田耕一

    宇田国務大臣 木材資源の高度の利用という面につきましては、科学技術庁ではいろいろの試験研究のために通産省あるいは農林省等と打ち合せをして試験研究のための補助金その他を出して、いろいろの角度から研究をさしております。そして木材の資源利用合理化推進本部への補助金は本年度は六百五十万円から三百万円に減少いたしまた。それは理由といたしますところは、木材の利用合理化の啓蒙運動というものは大体政府がこの程度の補助をすることによってほかのものと勘案をしてみて非常な不都合はないであろう、こういうふうな見通しでああいうふうな査定をいたしておりました。しかし十二分のものとは決して考えておりません、それから雇用量の増大の面について、木材は一億以上、一億五千万石の間を年々必要とされておるのでしょうけれども、それの大部分を建築用材その他に使う、また燃料用の薪炭等に使うものは——天然ガスの数字が入っておりますけれども、私の手元では石炭に換算して六百九十万トンぐらいのものという数字も出ております。従って薪炭とかその他の方面に消耗されていく木材等は当然もう少し高度な化学的処理によって利用しなければいかぬものと考えております。それで日本の現在需要されておる木材の一億石以上のものの大部分の用途の先というものは、非常に原始的なものであって、これはもう当然新しい化学的処理に転換しなければならぬ。石炭も同じようなものと考えております。それが雇用量増大の重大な原因になるということは私も当然と思われます。ただ木材につきまして、われわれが非常に注意させられることは、治山治水の面から一定の年限の間はこれを山元に保有しておいて幼樹林の乱伐は避けなければならぬというような特殊事情もございます。従って出てくるころの伐出の量の荷役がなかなかできない。特に日本の植林政策は、杉、ヒノキが中心でありますから、そういう点においてわれわれは非常に悩みがあって、石数を増す思い切った手が打ちにくい。従ってそういう面から見てなるべく需要を質的に高度に転換するというあなたのおっしゃることは、雇用量の増大のために非常な大きな影響がある、こう考えております。
  41. 鹿野彦吉

    ○鹿野委員 長官と私とは全く違った世界で話し合っているように思いますが、一億五、六千万から七、八千万石の日本が使っておる木材をどうするかということを私は今ここで論議しておるのではございません。日本経済の自立のために、完全雇用を達成する方法として雇用を創造しなければならぬ、この雇用の創造の方法として今のような一つ考え方はいかがでしょう、こういうことを私は申し上げたつもりでございます。また治山治水の問題に関係がある、こういうことでございますが、当然その点はもちろんのことでございまして、裁培林業を計画的に伐採をいたしていくことになれば、治山治水の面も解決できることになると思うし、私が申し上げておるのは、今までの一億五千万石というようなものではなく、あるいは四億石、五億石というもうを裁培林業によって栽培をして、四十年、五十年、六十年によって伐採しなければならないような材種をやめて、八年あるいは十年、十二年というような短かい期間でこれを伐採することが、日本の国土を三倍、四倍に活用するものであるという考え方によって栽培林業というものを今申し上げたわけでございます。実はこの問題は非常に重大ですから次の機会までに宇田長官にもう一ぺん少し詳しくお調べ下さらんことをお願い申しまして、この次の機会にこの問題について十分なる御認識を得た長官に重ねて御質問を申し上げたいと思います。  なおこの際また別な面から簡単に一言お聞きいたしたいことは、宇田長官は原子力委員長にもなっておられるわけでございますが、私は日本の電力の開発という問題について、このような考えを持っておるのでございます。実は日本の水力発電は非常にコストが高くなってきておるから、もう火力に切りかえなければならないというようなことで、火力発電に各電力会社とも力を注いでおりますが、原子力の平和利用に関する問題から、原子力発電ということも大切だけれども、今のところ非常に大きく期待を持つことはできないのではないか。少くとも先般宇田長官の、五年間で三百万キロワットの発電をというような御計画を新聞で拝見いたしましたが、私の知る限りこれは不可能なことであって、アメリカの火力発電所の一番大きいデトロイト・エジソン・カンパニーのシスラー社長に、これをほんとうに実用化するにはどのくらいの時日を見込んでおるかということを二人で会談のときただしたのですが、十年から十二年の将来にこれを置いておる、こういうようなことを言っておりました。アメリカの火力発電の単価はどれほどか。今デトロイト・エジソン・カンパニーは三十万キロワットの発電機をもちまして回しておりますが、日本の金に換算いたしまして二円二十銭の単価になっておる。石炭の事情がもっといいところに持っていけば、それよりもはるかに安くなるということを言っておりますが、私はこの際一つ考えてみたいのは、日本が火力発電で幾らがんばっても、今東京電力あるいは東北電力その他が注文しております十七万五千キロ発電の施設をいたしましても、三円台になることが精一ぱいのことではあるまいかと私は考えます。こうなりましたところで、今度は少しく需用がふえて参りますと、午前中佐々木委員からの質問通り石炭が非常に不足する、こういうような、日本には全く隘路の続出でございます。私は日本の水力発電ということにあきらめをつけないで、もっともっと水力発電に力を注ぐべきである。その際に水力発電の道路費用の負担をとってしまうというようなことをいたしましたならば、水力発電の単価というものはもっともっと下るのではないか。どうしてとるか。すなわち先ほど私が言いましたように日本経済自立のために、完全雇用を具体化するために、日本の山間地帯を開発しなければならないという大きな目的があるわけですから、この道路の開発というものをこうした国土開発という負担においてやるということになれば、水力発電は単価がもっと下るから、そうすればまだまだたくさんの水力発電の可能量を持ったところのものがある、これを積極的に開発していく、それはすなわち日本の国土開発という大きな目的とも合致する、このように考えるわけですが、これに対して御所見を承わりたいと思います。
  42. 宇田耕一

    宇田国務大臣 私はただいまの御意見の中で、水力発電は山間部の開発等の関係で大いに日本で歓迎すべきものである、これはもう全然所見を同じくいたします。ただ水力発電は、日本の山間部の経済にとって非常に重要な影響があるのでありますけれども、水力発電の計算上の出力余力というものは、非常に前途に対して莫大なものを期待し得ない限界点に来つつある。従ってわれわれが十カ年間に完全雇用を達成したいという場合に、現在の未開発水力というものを全部開発いたしましても、それはわれわれの所要電力量に足りないという計算も持っておるから、どうしてもほかのエネルギーをもってこれを補充しなければならない、こういうところに追い詰められております。従って原子力発電を考えるのは当然の順序と思っております。ただアメリカの火力発電は二円二十銭のコストであるから、原子力発電にはすぐはいかないだろうというアメリカ側の意見でありますが、それは私は当然だろうと思う。あのくらいテキサスの方で油がふんだんにふき出して、そして輸送コストが全然オイルに関係がないというような国では、そのままの原油が火力発電のコストになるわけでありますが、日本のように石炭とか重油を全部船で運んでこなければならぬ場合には、日本の石炭及び重油は全部フレートのコストにかかってきておるわけであります。それであるからFOBコストでなくCIFコストになりますから、その点が電力コストの非常に大きな要素である、だから自分たちはCIFコストでどの燃料が一番望ましいかといえば、濃縮ウランの百パーセントのものであったならば非常に好ましいものであるという結論になるのは当然であります。それでフレートによるところのわれわれの電力コストをいかにして下げるかということが火力発電のねらいと考えております。水力発電は、われわれの計画の中においても発電能力の限界点に日本は近づきつつある。何年かの後のわれわれのエネルギー対策を考えましたときには——水力発電はお説のように大いに培養する必要があります、しかしどうしてもフレートによって食われる条件の少い燃料に、いかにわれわれは電気エネルギーの基本を立てていくかといいますと、飛行機でもって飛んでくればそれで二万四千キログラムという、二十四トンばかりの濃縮ウランが来れば、石炭に換算すれば七千万トンに当る。二十四トンを持ってくれば七千万トンに匹敵するというような、非常に分量の少いもので、それが飛行機で来ればいいということになりますと、フレート、要するに輸送にかかるところの条件は全然なくなる。七千万トンが二十四トンに変るというような三百三十万倍の、一トンが三百三十万トンというエネルギーと比較できるというような原子核の能力であれば、これはもう何とかしてこっちへ持ってきたい、日本のような特殊な国情の国はそうしたい、こういうことです。それで原子力とか原子核のエネルギーを使うということと、それから水力開発を思い切ってやりたいというのは必ずしも一連のことで考えなくて、おっしゃることには全部私は賛成でございます、賛成でございますけれども、ただ電力エネルギーの基本をどういうふうに見るかという点については、ただいま申し上げましたようなことであります。
  43. 鹿野彦吉

    ○鹿野委員 ちょっと宇田長官は私の質問をあるいは誤解されているのではないかと思いますが、日本は原子力発電で電力をまかなうという目的を持つことは、これはもう当然です。これは先ほどから言いましたように、資源に恵まれない日本としてはアメリカが考え、イギリスが考える以上に、やはり日本は考えなければいかぬでしょう。しかしながら日本として幾らがんばっても、ここ五年や十年で原子力で採算に合うような状態にほんとうに持っていくということは、しかも大量の発電をここに期待するということは、宇田長官も少し御調査なされた結果わかることと思いますが、私はこれは不可能だと思うのです。不可能だからこれをやらないというわけではない、大いにこれに対して力を注いでいかなければならぬことは当然です。だけれども実際の大局をつかまえますときに、これだけに依存するわけにはいかないのだから、日本の電力というものを水力に求めていく。ところが今宇田長官は、水力を今後十年間開発するについてもう一ぱいだ、こうおつしゃっておりますが、これはあなたの方の下の役人の人々が調べたものであって、道路費用を電力にかぶせておる場合に一ぱいなのではあるまいか、だから道路費用を電力の開発費から除いてあげたならば、もっともっと今計算ができている以上の水力発電を積極的にやることができるということになるのではないか、こういうことを私はお尋ねしているわけです。その場合にこの道路費用をどこで持つか、すなわち国土開発という点で負担をするならば水力発電というものをもっと開発できる面があるのではないか、これに対する御所見はどうでしょうか、こういうことを承わっておるわけです。
  44. 宇田耕一

    宇田国務大臣 道路によって電力源の数字が非常に変るというふうには考えておらぬのであります。
  45. 鹿野彦吉

    ○鹿野委員 要するに奥地に水力電気を開発するとき、道路の費用というものが水力電気開発の費用の大きな部門になっております。ですから道路費というものは水力発電の費用にかぶせないでいったならば、電力の開発費というものはもっと安くなる、こういうことです。そういうことはありませんか。
  46. 宇田耕一

    宇田国務大臣 私のところの持っている数学では、建設費コストの中で道路コストは二%ないし三%という計算になっております。
  47. 鹿野彦吉

    ○鹿野委員 二%、三%でも安くなるということは、非常に重大な問題ではないかと思いますが、いかがでしょうか。
  48. 宇田耕一

    宇田国務大臣 それは二%でも建設コストが安くなるということは当然好ましいことであります。しかし一千何百万キロ程度しか日本の開発余力がないということを、何パーセントそれによって水力発電の可能性を増量し得るかということになると、それは非常に大きな数字にはならない。道路で二%ないし三%がカバーされても、要するに発電量がたくさんふえるという条件とは思われませんということです。
  49. 鹿野彦吉

    ○鹿野委員 お説の通り発電量がふえることはありませんが、開発する個所が非常に多くなるのじゃないか、開発可能の条件が非常に上るのじゃないかというのでございますが、あなたはこうした点に興味を持たない、それは条件にはならないというお考えであるから、これはやむを得ません。なお時間の都合もあるし、次の質問者の都合もありますので、私は臨時にやりました、宇田長官にはぜひ先ほどの完全雇用の具体化に関する問題につきましては、一応御調査下さいまして、次の機会にあらためて一つ御所見を伺いたいと思います。
  50. 福田篤泰

  51. 鈴木周次郎

    鈴木(周)委員 第一にお尋ねしたいのは、通産省で肥料審議会の予算をとっておりますが、その審議をする場合において、現在における肥料価格が適正なるものであるかどうかということの判断はむろんすると思いますが、前農相は、硫安を土台としたものは相当安くでき得べき態勢に持っていった。すなわち政府資金も出し、その他の方法によって合理化されるのでありますが、今度の肥料年度においてはどの程度にきめるべき意思ありや。また通商産業大臣としてはこれに介入してやるのが相当であろうと思うが、今までの感じからすれば、大体介入してないように思う。特に農村の問題といたしましては、肥料の問題が非常に重大な問題でありまして、その結果生産費が高くなる、それがひいて賃金の値上げになる。それに対しまして社会党の諸君などは無関心のようであるが、この点に対してどういう見解をもって、今後の肥料界に臨むか、それを聞きたい。  いま一つは、どの程度までの合理化と、また安くし得る見通しがあるかをお聞きしたい。
  52. 水田三喜男

    水田国務大臣 いろいろ技術的な問題にわたるようですから、軽工業局長からお答えいたします。
  53. 鈴木周次郎

    鈴木(周)委員 技術的にわたるとすれば、どなたをして責任ある御答弁を願えるか、その点を明らかにしてもらいたいと思います。
  54. 齋藤正年

    齋藤政府委員 御存じのように肥料審議会というのは、肥料需給安定法に基いてできたものでございますが、その法律の目的は、要するに肥料工業を合理化いたしまして、肥料の値段を引き下げるということを目的としてできた法律でございまして、われわれもその法律の趣旨にのっとりまして、年々合理化を進めてきておる次第でございまして、われわれの目標は、コストを五十ドルに置く。国際価格が大体その辺にあるというふうに考えまして、五十ドルのところヘコストを持っていきたい、こういうことを目標にしてやっておる次第でございまして、これの発足以来年々引き下げをいたしまして、本三十一肥料年度におきましても、御存じのように二十二円強の引き下げをいたしました。来年度におきましても硫安の価格はコストを基準にして定める、ただし農産物の価格その他一般経済市場をしんしゃくしてコストを基準として定めるということになっておりますので、これはもう少し時間が経過して、審議会を開催する前に、あらためてそのときの事情に基いてコストを算定して、それに必要な経済上の考慮を加えて定めるということになっておりますので、現在来肥料年度の肥料価格について幾らにするかというようなことは、実はまだ計算いたしておりません。本年度の肥料の価格をきめました当時に比べまして、原料である石炭とかコークスの値段が若干上昇いたしております。また鉄道運賃がもし引き上げられますれば当然原材料の価格あるいは製品の価格にはね返っ参りますので、現在におきまして来年度の価格を捕捉することは困難でございますが、同時に合理化の方も着々進んでおりますので、現在の価格よりも非常に高くなるというようなことはないようにわれわれは期待いたしておりますし、そういうふうに持っていかなければならぬと考えております。
  55. 鈴木周次郎

    鈴木(周)委員 合理化の問題でも、労銀の問題及び機械設備の問題、発見発明あるいは科学技術の進歩というような問題に対してあまりに温存主義をとっておる。ある一方の肥料会社はコストも相当安いが、一方の方は高くなっておる。それを温存するような意味において値段を半ばにとっておるというような奇現象があるように私どもは考えておりますが、その点どういうようにお考えになっておりますか。
  56. 齋藤正年

    齋藤政府委員 御承知のように硫安の価格は全生産量の平均をとっておるのではございません。全生産量の中で最も安い原価の分から逐次加算いたしまして国内需要に充当されるまでの分、それをわれわれはバルク・ライン内の生産量と申しておりますが、要するに日本中の生産の中で最もコストの安い分から逐次加算いたしまして国内需要量に相当する分だけの平均、従って総平均よりもかなり低くなりますが、そのコストを基準にして内地の最高価格を定めております。従って今お話しのように、まだ合理化の十分行われていない工場もございますが、そういう工場の価格がそのままその工場を温存させるために公定価格の中に組み込まれるということは現在の制度上できないようになっておる次第でございます。
  57. 鈴木周次郎

    鈴木(周)委員 最近における科学技術の進歩によりまして、硫安が非常に安くできる計算が立っておるのでありますが、こういう場合において、もしもその特許をある一社が独占した場合に、他の業者がつぶれるというようなこともあり得ないことではないと思います。一つの例を見ますと、ガラス繊維におきましては、日本においては日東紡が始めた。ところが特許があとから出たために、先に仕事をやっておったが、外国の資本に力負けしてついに合同せざるを得ないというはめになった。その間には資本や何かの関係もありましょうが、それと同様な関係に立てばよいのでありますが、その一つの特許を得た人がその肥料工業をやったために他の肥料工業がつぶれるという場合においては、政府としては、それを温存する意味において、また今まで尽した功績において、今まである肥料会社に対しまして、適当なる処置をとり得るかどうか、とるべき手段を考えておるか、それをお聞きしたいと思います。
  58. 齋藤正年

    齋藤政府委員 今御質問になりましたように、革命的な製造方法が発明されまして、原価が飛躍的に下るというふうなものは現在のところございません。もちろん今原料、ガス源の転換、すなわちコークスあるいは石炭から天然ガスあるいは重油というふうなものに転換することによって、かなり原料価格は安くなりますけれども、いずれにいたしましても、それが画期的な価格の引き下げになる、しかも国内全体で二百万トン以上の需要がございますが、それを全部まかない得るようなものを短期間に作るということはとうてい不可能でございます。従ってそういう面から、たとえば急激な企業の休止あるいは廃止という問題が当面予想されるというようなことはわれわれとしては考えておらない次第でございます。われわれとしてはむしろ合理化の一つの過程として当然付随して現われて参ります能力の増大の分をフルに稼働させますために、その能力が増大して内需を超過いたします分は、全部輸出に振り向けるというつもりでありまして、来年度予算にも特に肥料の輸出振興に関する補助金を新しく設定いたしまして、主として東南ア地域に輸出をして、それによって全部の企業の成り立つようにやっていきたいという一のがわれわれの考え方でございまして、現在東南アジアにはなお潜在的には数百万トンの肥料の需要がありますから、当面は十分それでまかなっていけるとわれわれは確信しておる次第でございます。なお繰り返し申し上げますが、能率の悪い工場を温存しておくために、公定価格にその事情をしんしゃくするというようなことは制度上できないことになっておりますことをもう一度申し上げておきます。
  59. 鈴木周次郎

    鈴木(周)委員 先ほどからのお話を聞けば、一番安いコストでできたものを標準にしてやるということであります。ここで画期的な製造方法ができた場合において、それに右へならえをしてやられるということに解釈してよろしゅうございますか。
  60. 齋藤正年

    齋藤政府委員 もちろん現在のガス源の転換、すなわち石炭ないしコークスから天然ガスあるいは重油に転換いたしますことによりまして、かなりコストが引き下げられますので、その面は各会社ともその計画をやっておりますし、またわれわれとしては全面的にそれをパックして、開発銀行の資金のあっせんその他のことをやっておる次第でございまして、それによってコストが下りますれば、下ったものを基準にして国内最高価格というものが定められるわけでございます。
  61. 鈴木周次郎

    鈴木(周)委員 肥料問題はこの程度にしてまたあとでお伺いすることにいたします。  宇田長官一つお聞きします。北海道における総合開発計画にテンサイが非常に問題になっております。東北でも輸入を防遏して輸出を増進するということで、テンサイ糖の栽培を非常に奨励しなければならぬ立場になつおります。この場合において、企画庁といたしましては、四つか五つの会社に製造工場をまかせるというような方針が大体できたようで、皆さんの方でもそういう企画のもとにやるということです。この場合において、一反歩当り大体一万三千円が農家の手取りであると思いますが、これに対して消費税が一万三千円から一万五千円程度かかっている。一方砂糖消費税はブドウ糖にはかかっていない。従って暖地のカンショの栽培ににはかからないのに、一方北海道にだけそういう課税をする。すなわち大体において九州、中国方面のサツマイモにはかけていない。こういうようなことに対して企画庁としてはどういう考え方をしているか、お聞きしたいと思う。またかけないでこれを奨励して輸入を防遏するか、こういうことに対して計画したことがあるかをお聞きしたいと思います。
  62. 宇田耕一

    宇田国務大臣 この問題は主として農林省で企画立案をして対策を立てておりまして、私の方としてはその企画の詳細——ただいまご質問になった点については、ただいま手元に資料がありませんからあとでまたあらためてお答えしたいと思います。
  63. 鈴木周次郎

    鈴木(周)委員 さすれば、昭和三十一年度において、東北のテンサイ栽培に対して経済企画庁としては百万円の支出をしてあるはずですが、それに対しては相当の調査資料がなければならぬ。いかにすれば発展するか、いかにすれば農民がよくなるか、いかにすれば貿易じりに対してバランスがとれるかということを考えなければならぬと思う。これに対してどういう見解を持っているかお、聞きしたいと思います。
  64. 宇田耕一

    宇田国務大臣 その点につきましては、私はやはり東北ないし北海道地区の特殊な事情にかんがみまして、これが栽培の助成、助長行政を進めていくべきものと考えます。ただこれもその工業条件はどこが一番適当であるかということを考えて、そうして製糖工業はどういう企画で行うべきかということにつきましては、農林省及び通産省とよく話し合いをして、あらためて別の機会にお答えいたしたいと思います。
  65. 鈴木周次郎

    鈴木(周)委員 ただいまのお話を聞きますれば、企画庁としての原案を出す、あるいは進めるというような御意思がさっぱりないように承わったんですが、強力に日本の製糖工業を伸ばすということは、大衆の利益を擁護するという私たちの党の考えからいえばやらなければならぬと思うのですが、今のお話ではあまりにその御意思が薄弱なようですが、もう少しはっきりした御答弁をお願いしたいと思う。
  66. 宇田耕一

    宇田国務大臣 先ほど来申し上げましたように、私お所管が違いますから、農林大臣に答弁をしていただいた方が明快な御答弁がし得るかと思います。従って農林大臣が現在どういう考えを持っておるかということは別にお聞き願った方が所管大臣としてはっきりあなたの御希望に沿い得るかと考えます。経済企画庁としてはもちろん東北及び北海道の開発の中で特にテンサイ関係の事業というもの及びテンサイの栽培の助長行政というものは進めるべきものである、こういう方針には変りはありません。
  67. 鈴木周次郎

    鈴木(周)委員 先ほど通産大臣に対する質問で肥料の価格の問題に対して、通産大臣としてはまた上げるという強い意思がおありにならないようですが、肥料価格問題をきめるときに、農林大臣ばかりじゃなく、通産大臣が強く発言をしておやりになる。高くではなくて安くやる御意思があるかどうかを承わって私の質問を打ち切りたいと思います。
  68. 水田三喜男

    水田国務大臣 さっき局長が申しましたように、ことしの肥料のコストは相当上る傾向にございますので、これを検討しなければまだ本年度の肥料の値段はきめられませんが、通産省としてはこれをできるだけ安くするという方向に持っていくことはもちろんであります。国内で肥料生産のコストが上っても、肥料は御承知のように国内だけで消費するのじゃなくて、国外へどれだけ輸出できるか、輸出量が多ければ全体の込みで肥料のコストを下げることができるという面もございますので、私どもとしましては肥料の輸出が東南アジアを中心に伸びていく、このことがある程度可能になるということでございますれば、肥料のコストが若干上っても肥料の値を上げなくても済むという方向にもいきますので、そういう問題ともからんで極力肥料の値は上げないという方向に指導しようと思っております。
  69. 鈴木周次郎

    鈴木(周)委員 ただいま非常にいいお話を聞いたのですが、先ほどの局長のお話では、肥料の輸出の場合に、助成の方法も損した分に対してという意味を含んでいると解釈をしておりますが、その点を含んで内地の肥料は値上げしないというような御意思に承わってよろしゅうございましょうか。
  70. 水田三喜男

    水田国務大臣 なるたけそういう方向へ持っていきたいと努力いたします。
  71. 福田篤泰

    福田委員長 残余の質疑は次会に行うことといたします。  次会は明二十日午前十時より開会することとし、これにて散会いたします。    午後二時三十二分散会      ————◇—————