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1957-02-15 第26回国会 衆議院 商工委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十二年二月十五日(金曜日)    午前十時二十九分開議  出席委員    委員長代理 理事 小平 久雄君    理事 小笠 公韶君 理事 鹿野 彦吉君    理事 笹本 一雄君 理事 西村 直己君    理事 加藤 清二君 理事 松平 忠久君       阿左美廣治君    内田 常雄君       大倉 三郎君    川野 芳郎君       菅  太郎君    佐々木秀世君       齋藤 憲三君    鈴木周次郎君       田中 龍夫君    森山 欽司君       片島  港君    佐々木良作君       田中 武夫君    田中 利勝君       多賀谷真稔君    中崎  敏君       永井勝次郎君    帆足  計君       水谷長三郎君    八木  昇君  出席国務大臣         通商産業大臣  水田三喜男君  出席政府委員         公正取引委員会         委員長     横田 正俊君         総理府事務官         (公正取引委員         会事務局長)  小川清四郎君         経済企画政務次         官       井村 徳二君         総理府事務官         (経済企画庁長         官官房長)   酒井 俊彦君         総理府事務官         (経済企画庁調         整部長)    小出 榮一君         総理府事務官         (経済企画庁計         画部長)    大來佐武郎君         総理府事務官         (経済企画庁調         査部長)    淺野 義光君         通商産業政務次         官       長谷川四郎君         通商産業事務官         (大臣官房長) 松尾 金藏君         通商産業事務         官         (通商局長)  松尾泰一郎君         通商産業事務         官         (企業局長)  徳永 久次君         通商産業事務官         (重工業局長) 鈴木 義雄君         通商産業事務         官         (繊維局長)  小室 恒夫君         通商産業事務         官         (鉱山局長)  森  誓夫君         通商産業事務         官         (石炭局長)  讃岐 喜八君         通商産業事務官         (公益事業局         長)      岩武 照彦君         中小企業庁長官 川上 為治君  委員外出席者         専  門  員 越田 清七君     ————————————— 二月十三日  委員岡本隆一君及び田中武夫辞任につき、そ  の補欠として多賀谷真稔君及び河野密君が議長  の指名委員に選任された。 同月十四日  委員仲川房次郎君、片島港君、河野密君及び多  賀谷真稔辞任につき、その補欠として岡崎英  城君、森三樹二君、井手以誠君及び島上善五郎君  が議長指名委員に選任された。 同日  委員井手以誠君辞任につき、その補欠として田  中武夫君が議長指名委員に選任された。 同月二十五日  委員島上善五郎君、成田知巳君及び森三樹二君  辞任につき、その補欠として多賀谷真稔君.永  井勝次郎君及び片島港君が議長指名委員に  選任された、     ————————————— 二月十四日  地方自治法第百五十六条第六項の規定に基き、  工業品検査所出張所設置に関し承認を求め  るの件(内閣提出承認第二号) 同月十三日  石油資源開発株式会社への国家投資に関する請  願(水谷長三郎紹介)(第七八三号)  繊維産業設備制限反対に関する請願菅太郎  君紹介)(第七八四号)  中小企業団体法制定に関する請願外一件(遠藤  三郎紹介)(第七八五号)  同(木村俊夫紹介)(第七八六号)  同(青木正紹介)(第八三三号)  同(櫻内義雄紹介)(第八三四号)  同(中垣國男紹介)(第八三五号)  同(長井源紹介)(第八三六号)  同(亘四郎紹介)(第八三七号)  中信地区総合開発促進に関する請願原茂君紹  介)(第七八七号)  佐渡海峡海底送電実現促進に関する請願(北れ  い吉君紹介)(第八四一号) の審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  地方自治法第百五十六条第六項の規定に基き、  工業品検査所出張所設置に関し承認を求め  るの件(内閣提出承認第二号)  通商産業基本施策に関する件私的独占禁止  及び公正取引に関する件     —————————————
  2. 小平久雄

    小平(久)委員長代理 これより会議を開きます。  本日は福田委員長が所用のため出席できませんので、委員長指名によって私が委員長の職務を行うことをいたします。  まず昨十四日本委員会に付託せられました地方自治法第百五十六条第六項の規定に基き、工業品検査所出張所設置に関し承認を求めるの件を議題とし、その審査に入ります。  まずその趣旨の説明を求めます。長谷川通商産業政務次官
  3. 長谷川四郎

    長谷川政府委員 工業品検査所高松出張所設置に関する提案理由を御説明申し上げます。  本件は、地方自治法第百五十六条第六項の規定に基きまして、工業品検査所出張所設置について、国会の御承認をお願いするものであります。  工業品検査所は、輸出品取締法に基く輸出品検査等を行なっておるのでありますが、現在本所を東京に、支所を大阪、名古屋及び福岡に、出張所横浜外六カ所に設置しております。  今回出張所高松市に設置しようといたしますのは、先般第二十四国会において御承認願いました四国通商産業局高松市移転に伴い、受け入れ態勢も整いましたので、現在四国一円を管轄区域として丸亀市に設置されておりますところの出張所をそのまま高松市に移転して、輸出品取締法に基く輸出検査を能率的に実施しようといたすものであります。  なお、この設置につきましては、丸亀出張所に勤務しております三名の職員の移動を予定いたし、現行予算範囲内で、輸出検査業務の円滑な運営をはかることとしております。  高松出張所設置理由は、以上の通りでありますが、よろしく御審議の上、御承認あらんことをお願いいたします。
  4. 小平久雄

    小平(久)委員長代理 本件に対する質疑は後日に行うことといたします。     —————————————
  5. 小平久雄

    小平(久)委員長代理 この際松尾官房長より発言を求められておりますから、これを許します。松尾官房長
  6. 松尾金藏

    松尾(金)政府委員 先般の当委員会におきまして、通産大臣から昭和三十二年度における通商産業省重点施策について説明をいたしたのでありますが、その際に私の方の事務の手違いで、一カ所数字の間違いがございましたので、訂正をさせていただきたいと思います。それは中小企業対策の中におきまして、中小企業相談所補助といたしまして、五千二百万円と申し上げましたのは、六千二百万円の誤まりでございましたので、訂正させていただきたいと思います。     —————————————
  7. 小平久雄

    小平(久)委員長代理 前回の委員会におきましては、通商産業大臣経済企画庁長官並びに公正取引委員会委員長より、産業経済施策の大綱並びに独禁法の運用状況等について説明を聴取したのであります。これよりこれに対する質疑を行うことにいたします。質疑の通告がありますから順次これを許します。中崎敏君。
  8. 中崎敏

    中崎委員 私は通商産業大臣の過般の通商産業省所管に関する件に対しまして、重要な諸点についていささか質問を試みてみたいと思うのであります。よく神武景気なんてことをいわれておるのでありますが、これは世界経済影響を強く受けておるということが一つと、また日本国内においても二カ年間にわたる農作物の豊況等に大きな原因がありまして、そこに総合的な関連性を持って輸出の振興などとも関連をして、相当景気の状態がここ一、二年来続いておるということは否定できない事実だというように考えております。ところが最近の実情考えてみますと、その反面においてインフレ懸念せしむるような要素相当分野にわたって存在するように考えられまして、この点について私たちは深く将来を憂えておるものでありますが、それに対する見通しといたしまして、まず第一に最近一年間の傾向を見ますと、相当生産財の面において価格騰貴傾向があるのであります。大体過去一カ年間の実情を見ましても、七%程度生産財における借上りを考えられるのであります。それに加うるに、鉄、電力あるいは輸送などの基幹産業の面における相当の隘路等も考えられる。さらにまた鉄道運賃引き上げが予定されておる上に、消費米価値上げ等考えられる。ガソリン税引き上げども実現するというふうな事態どもある。さらにまた電力などの値上げも行われるのではないかというふうな懸念等もありまして、かたがた消費財における、たとえば繊維製品のごとき、最近はやや落ちついておるようでありますが、ある部面においては相当値上り等もあるというような事態もありまして、概して生産財中心とすることが原因となって、さらに全般的なインフレを来たすような傾向があるのではないかということを懸念しておるのであります。この点に対して一体通産大臣産業行政の面においてどういうような対策を講じてインフレ懸念に対する適正なる対策を打ち立てようとしておられるのか、またその見通しについてどういうふうな考えをお持ちになっておるのかお尋ねしたいのであります。
  9. 水田三喜男

    水田国務大臣 日本経済が急激に拡大した。予想以上の拡大を過去一、二年の間に見たということから、生産財そのほかについて不均衝な場面が出てきたために、それを中心として、この調子でいったら、インフレーションを起しはせぬかという危惧を持たれることは当然だと思いますが、これに対処する方法といたしましては、やはり第一に今まで大蔵大臣予算委員会説明しておりましたように、国家財政からインフレを起すような要因を作らないという考慮が必要で、この点で今度の予算でそういう考慮を払ってあるということと、金融面におきましてはいたずらな信用の造出をやるというようなことをやったら、これはその面からインフレを推進させるということになりますので、まずこれを押せるという必要から、今度も金融制度についても工夫をこらしておる。大体国民の貯蓄の範囲でいろいろな投資需要をまかなうようにするという二つの方法によってインフレをある程度防げる。根本的に防ぐ方法をそういう処置でとる。それから産業行政の面から見ますると、経済が均衡的に拡大するなら心配はありませんが、均衡拡大を防げる障害、隘路というようなものが出て、これの解決を間違いますと、その面からインフレを起す危険性があるということを私どもは非常に懸念しまして、とりあえずの処置として、財政投融資の面におきましても、電力、鉄鋼、輸送というようなものについて特段の考慮を払う。それから今年度不足と思われるものをどういう形で調達していくかというような一連対策を立てる。それによって若干物価値上り、そういう基礎物資値上りということは予想しておりますが、全体の国の物価にそれがどのくらい響くかという見通しを立てますと、そう大きい響き方はしない。従って隘路打開を完全にやるならインフレーションを起さないで済む、こういう考えからその対策をするということが一つと、それからもう一つは、そうやってもなおかつ産業拡大速度物資の供給が追いつかないというような面が出るなら、今日本は今までの貿易によって蓄積した外貨を持っておるのですから、これの有効な活用を考えるよりほかはない。必要原材料の輸入をとめるというようなことがあったら、これは日本物価高を起すことは必至でございますので、私どもは必要な原材料必要量だけ入れる、こういう態度をとることによって、国内物価値上りが防げるだろう、こういうような考慮を総合的に全体的にやることによって、今のところはそうおそれるインフレーションを起さないで済むだろう、こういう見通しでざざいます。
  10. 中崎敏

    中崎委員 財政投融資の面におけるインフレ懸念の問題については予算委員会などにおいて相当突っ込んだ論議がかわされておると思いますので、これは私たちもいろいろ懸念があるのですが、一応これはこのままで済ませますが、民間金融を通ずる問題としての産業投資、ことに生産財に関する設備投資などを中心とする面においてこの問題が懸念されておるのであります。今年の一月に山際日銀総裁も言うておりますように、これ以上そうした積極的な産業面における過大な金融というものは相当に危険である。従いましてきびしい態度をもって金融に対する一つの警告といいますか、日銀としての一つの方針を含めた一般に対する警告的な発言をしておるのであります。政府電力中心とする財政投融資の問題はしばらくおくとして、民間のこうした面における金融について一体どういうふうに通産大臣考えておられるかということ、一つには最近における株式の市況を見ますと、相当インフレを予想するというか、あるいはインフレをあおるような状況にまできておるような面もあるのではないかと思うのでありますが、一体これらの株式市場に対するところの対策については、これは大蔵省の一応の所管ではあると思うのでありますが、一国の産業を頃かる通産大臣としてこれをおろそかに考えるべきものでもないと思うのであります。一体こういうふうな問題に対しては、どういう考えを持っておられるかをお尋ねしたいのであります。
  11. 水田三喜男

    水田国務大臣 今の電力の問題ですが、電力資金は、御承知のように大体ことし所要資金を二千八百億円前後に見ておりまして、これは電源開発資金、九電力資金、それから地方公共団体開発資金と、工事資金がどうしてもそのくらい必要だという計算になりますので、この調達につきましては、政府財政投融資と、それから民間資金をどういうふうにそこに集中させるかという方法については大蔵省方面とも相談しておりますが、社債の発行を円滑にさせるというために、まず政府余裕資金市中銀行の持っている金融債政府が買って、そこに余裕を与えてやるとかいうような、民間電力のそういう資金に対して協力できるような余裕を与える方法については、政府資金を使って百パーセントの協力をしようというような一連方法を今考えております。それによって大体その程度電力に必要な資金調達はできるのじゃないか。ただ借りるだけじゃなくて、電力会社については相当の増資をこれからさせる、やはり自己資本調達というものをさせなければなりませんので、そういう点につきまして電力会社の経理をあまり悪化させるというようなこともこれは差しつかえる原因になりますので、そういう点についても配慮して、自己資本調達、それから負債を円滑にやれるという態勢だけは十分政府としてとりたいと考えています。
  12. 中崎敏

    中崎委員 株式市場に対する問題あるいは電力の問題だけじゃなしに、全般の今後におけるところの産業投資、言いかえますと、一時の景気にあおられて民間が自由な奔放な形においてあまりに設備競争をやって、そうしてどんどんと将来過剰と思われるようなところまで設備がいくということになれば、やがてはまたそこに大きな経済界混乱を来たす。今まで政府施策を見ておりますと、全く行き当りばったりで、どろぼうを見てなわをなうということが非常に多くて、これがために民間なりあるいは国の経済全般に与えた影響ははかり知るべからざるものがあり、それが連続的に行われておったのが実情であるのであります。今回たまたま世界景気などの影響を受け、そうして戦後における経済の平和的な立ち直りというものがようやくここに——ようやくというか、一応世界先進国においてはどんどん進めてきておって実を結んでおるのでありますが、やはりここに一応の限界がもうきたのではないかというふうな状況にある。ところが日本におけるところの経済は、相当戦争による疲弊などの影響を受けて非常に立ちおくれておった、それがようやくここ一二年の間に何らかある水準にまできつつあるということだけは言えるのであります。これは大きな重化学工業を初めとして、特殊の重機械工業などの面において現われておりますが、そのほかの面においても、国の経済実情を、さらに行き過ぎたような、そういう産業面における設備投融資というものが行われるならば、やがてはまた無用な摩擦、競争が起る。ここに大きなるところの経済界混乱を来たし、やがてはまた失業問題も起り、大衆生活を大きく圧迫する、そういうことが懸念される時期が来るだろうということも考えられる。こういうふうな前途の見通しの上に立って、この際政府はどういうふうな考え方をこの面においてするのかということを含めての、民間産業投融資の新しい今後の伸展について、どういう対策を持っておるかということをお尋ねしたいのであります。
  13. 水田三喜男

    水田国務大臣 去年、おととしの設備投資内容を見ますと、私ども心配したようなことはなくて、ちょうど戦後十年以上たって、日本機械が陳腐化しておるし、非常に非近代的なものになっているために、あれだけの投資需要がどこに満たされたかと申しますと、やはり内容設備近代化にほとんど向けられておる。そうして新規産業という方面にいっておるので、去年、おととしの投資過剰投資になっておるという傾向は大体なかったと思います。これによって今後の日本国際競争力が増したということは事実であります。これは非常にいいことだったと考えております。この投資需要が今後はどうなるかということですが、やはり依然として続く、しかしだんだんにこれは先にいって鈍化するのが方向だろうと思います。今通産省で何百かの企業の今年の投資についていろいろ調べた結果を見ますと、ことしの投資はやはり基礎産業部門隘路産業部門に大体集中しておって、そのほかの新しい設備については、やはりまだ依然としてこれが過剰投資になるとか、過剰生産施設になると思われるものが今のところはほとんどない、きわめて堅実な設備投資意欲だということが、大体この調査によってわかっておりますので、その点では私どもは今あまり心配しなくていい、こういうふうに考えております。
  14. 中崎敏

    中崎委員 この問題に関連しまして、中小企業に関するあり方をいろいろ検討したいのでありますが、これはいずれ順を追ってお尋ねすることにいたしまして、最近におけるところの日本産業構造から見たときに、相当日本経済機構そのものが集中化しつつあるということは、これは争うことのできない事実であろうと思うのであります。一面において産業近代化ということを行なって、そして世界経済にさおさして、それに立ちおくれないように進んでいくという上においては、一応必然の一つの道として進むべきものであるということは、これはまた認めなければならぬのでありますが、一面において日本のような人口の多い、そして資源の少いような国においては、国の経済がピラミッド的に大きなところだけに集中されて、それがほとんど独占に近いような事業形態を持っている。その事業の性格は、本来的に独占的な性質を持っておるもの、あるいは資本組織等を通じて、そうしてまた同業者のカルテル的な運営を通して、独占的な形態に至っておるものが非常に多くなってきておる。先年経済力集中排除法が廃止されたときにおいて、私たち日本経済の将来について、いずれそうしたような一つの道をたどらなければならぬと考えながら、その半面において非常な不均衝日本経済機構というものが生まれてきて、そうして独占的な形態を持ったところの事業によって、多数の中小企業圧迫を受ける、そうしてまた多数の大衆というものが生活上の脅威を受けるであろうということを心配したのでありますが、その心配がやっぱりまざまざ当っておって、現在におけるところの経済機構を見るというと、非常に大資本の横暴といいますか、一つの大きなる網によって、抜くべからざるところのそういう体制ができ上っておるということは、これは否定すべからざる事実であると思う。現に財閥というふうなものが、昔の財閥そのままで返っておるものもあるし、あるいはそうでないが、新しい財閥としての形において、そして著しく大きなる経済的な力、あるいは社会的な一つの大きな圧力となって君臨しておるという、こういう事実も否定することはできないと思うのであります。そこで一体こうした傾向についてどういうふうに通産大臣はこれを是正していこうとするのか。このままでいっていいのかどうか。さらにこれがますます激化する方向にあるのだが、一体それでいいのかどうかというふうなことについて一つ意見を聞きたいのであります。
  15. 水田三喜男

    水田国務大臣 そういう傾向が悪い影響を与えるという面を押えるのが公取委員会のやはり仕事であって、独占禁止法、これを有効に活用するのがいいと思うのです。しかしあの独占禁止法によって押えられているために、今、日本産業が困っておるのは、対外競争力というものが出てこない、そうして日本経済を順調に発展できないという、そういう障害にぶつかっている面も非常に多うございますので、そういう結局は国民経済全体のためになるのだという範囲において、独占禁止法適用除外を求めるというふうに、個々の問題でそういう問題が起ったときに実情に即した訂正をする。しかし原則的にはあの独占禁止法というようなものによって、今あなたの御指摘のような弊害は押えるという、この法の運用を適切にやっていくよりほかには仕方ないだろうと思います。そうしてこれによって中小企業が特に圧迫をされるという面につきましては、独占禁止法の改善とか、そういうような問題と関連しまして、中小企業自身組織を持たせて、そうして力をつけるという処置も必要だと思いますので、そういう点についての配慮を今しておるというところでございます。
  16. 中崎敏

    中崎委員 独占禁止法が厳として法律としてはある。そしてまた制定の当時においてはやはりそれをその姿において公正妥当に運用していくということが、当時立法の精神であったのでありますが、その後の運用形態、並びに現下の実情考えてみましたときにおいて、ややもすればこの公正取引委員会が軽視される、あるいは無視される、実際においてその機能を発揮し得ないというのが、これが実情ではないかというふうに考えております。政府考え方もまたややそういう方向にあるのではないか。ただやむを得ずして、そして世論の強い反撃もあるものだから、なかなかこれが簡単には廃止はできないまでも、実際あるままの形において、運用の上において、またいろいろな圧力を加えるというか、そうした面においてその機能を麻痺させよう、こういうふうな意識的、あるいは無意識的な大きな力が動いておるということも、これは否定できないというふうに考えておるのであります。現に先ほど申し上げましたように、本来の性質独占的な性質を持っておるというふうな、たとえば電力であるとか、あるいは特殊の交通機関であるとか、あるいはガスとかいうふうな、こういう独占的な性質を持ったものはもちろんでありますが、そうでないところの、一般に自由に公正に行われるべきところの、そういう生産分野において、あるいはその配給分野において、やみのカルテル組織というようなものが重要産業事業においてはほとんどあるのではないかと思うのでありますが、これは実際において独占禁止法精神にも反する。ことにはなはだしいのは、大きな資本的系列の中において、各種縦横のありとあらゆる分野においてこの資金と人との配置がある。ことにはなはだしいのは、銀行産業界に乗り出して、そうして貸付がちょっと行き過ぎたというようなわけで、その貸金を保護するというか、大衆の預金を保護するという美名に隠れて、そうして事業まで乗っ取っているという例が山ほどある。こういうような事例が、しかも公正取引委員会においてしばしば摘発といいますか指摘を受けているのにかかわらず、これはほとんど改められていない。こういうような法律を公然と無視するというような、こういう姿が現実に行われていることについて、私たちが一面において必配している資本主義並びにこれの上に立ってこれを強く、押し進めていくところの現在の自民党政府のそのあり方について、私たちはもう一度全般的な、国民大衆とともに行くんだ、国の政治経済全体をもう少し適正に調整していくんだというような、こういう考え方をもって行ってもらいたいと思うのであります。実際においてこの運営がそうできないというところに、先ほどあなたは公正取引委員会の必要性を大いに強調しておられるが、それなのに実情はこれを無視されて、一体何のための公正取引委員会であるかということを国民の多くが心配しているという実情も、またこれを忘れてはならないと思うのでありますが、これに対して一体通産大臣は今後どう対処していかれようとするのか、お聞きしたいのであります。
  17. 水田三喜男

    水田国務大臣 私たちの根本方針は、今言ったように、法の精神にのっとってこれを有効に運営していくということでございますが、今経済が非常に伸びてきて、複雑になり、対外的な問題が出てくるというと、この法律が国民経済全体の上に非常に障害になっている部面もあるし、またこれが非常に有効な方面に働いているところもございますので、この調整は間違いのないようにやろう、そのつど、この国会におきましても適用の除外を求めた法律を幾つか出して、国会からも今まで認められてきましたが、まだまだそういうことをやって、この調整を適当にやることが必要だという部面が、最近たくさんございますので、そういう点につきましては、この委員会の御審議を願って、とにかく公正にこれを運営していくように心がけようと思います。
  18. 中崎敏

    中崎委員 必要に応じて法律を制定して、その法律の適正な運営によって施策をやられようということは、当然のことでありまして、これを私たちはかれこれ言おうとしているのではありません。ただそうしたような法律もないのにかかわらず、本来が独禁法の精神を生かしてそのまま運用するのであるにかかわらず、これが軽視、無視されて運用されているというところに問題があるのでありまして、これに対して一体どういうふうに運用を改めていかれようとするのであるか。たとえば今申し上げましたように、ことに金融機関が自分の貸金の先について、一時はどんどん不用意に貸し付けておいて、そうして何だか経済界の変動とか、あるいはその社会的な、たとえばある事業会社がつぶれた、その巻き添えを食って事業が悲況に陥った場合に、銀行がその事業へ重役まで送り込んで実際の主導権を取って、そうして金融の首をしめて実権を握って、ますますその事業を苦しい状態に追い込むという例が多い。元来は金融機関に携わっておる者は、事業の経営そのものには非常に消極的なんです。実際の事業というものは、ほんとうに闊達自在に動いていってこそ初めて商機に投じて事業というものの運営が行われる。ただ残念なことには金融が不如意なんで行き詰まる。その金融の力さえ得られれば、その経験と過去の伝統とを生かして、経営者がうまくやっていくということが、大ていの場合にあり得ることなんです。それを事業経営にはしろうとであるところの銀行が、大衆の預金保護という美名に隠れて事業会社に乗り出していって、実権を握って手も足も出ぬように締めて、ただ金の勘定だけしておる。こういう実情が非常に多いわけです。こういうあり方は、たとえば過般のあの近江絹糸の場合においても、明らかに行き過ぎであると、公取委員会でははっきりとした断定を下されておる。依然として問題は片づいていない。これは一つの例であるけれども、そんな例は山ほどある。現在のほとんどの金融機関が中央、地方を通じてあらゆるそうした事業界に手を出して、自分のところの古い人間を送り込んで、そして金融市場の大きな産業制覇という形に行っておるという厳然たる事実がある。こういうあり方に対して通産大臣はどう考えておるか、これを一つお聞きしたいのであります。
  19. 水田三喜男

    水田国務大臣 今言われましたような、たとえばもぐりでやっておるとか、やみのシンジケートを作っておるとかいう問題は、結局そういうものを作らなければならぬ何か理由があると思うのです。実情においてもしそういう理由が、ほんとうの国民経済にとって悪いものだというのでしたら、こういうものはみなやめさせてしまう。それで、これがほんとうの必要によってできているもので、この傾向日本経済のために伸ばしてやらなければならぬというようなものは、さっき申しましたように個々の問題として取り上げて、正式にこれを立法的に認めてやるという措置をとるし、そうでない方向へ行っておるものは是正しやめさせるという処置をはっきりとりたいと思います。  今の銀行の問題は、これはもうお説の通りで、私どもも反対で、金融というのは産業にサービスする機関としてあるべきものだと思います。最近金融産業を押える傾向が非常に強くなったことは遺憾でございまして、これは二年くらい前から銀行界には政府、当時の与党も相当強く警告を出してあったことでございますが、その傾向がまだあまりに顕著で目に見えるようだということでしたら、政府として何らかの処置考えたいと思います。
  20. 中崎敏

    中崎委員 たとえばもぐりのシンジケートのごとき協定によって、生産の自主的な制限だとか、価格のつり上げとか、あるいは得意先の分野におけるある意味における独占だとかいうふうな、いわば不公正な取引が行われておることは厳然たる事実であります。これは必要があってやっておるのだ——必要がないとはだれも言えない。しかしそれはその事業をやっておるいわゆる事業者が、個人的な立場において自分の利益をより多く得ようという動機に胚胎しておることも明らかな事実である。そういうことは困るからというので独禁法がある。であるから、元来からいえばそういうものがあってはならない。あったら徹底的に取締りをして、そうでないようにすることが、政府としての当然の責任なんだ。順法精神国民に要求しながら、そういうものが厳然として大きな政治的な背景と経済的力の上に立って現実にあるものを、黙認するとか、場合によれば裏へ回ってこれを奨励するとかいうふうなことはあってはならぬと思う。順法精神国民に要請するからには、みずからまずこれを励行するだけの熱意と努力を持つべきだということは当りまえのことです。それが白昼公然と行われていないところに問題がある。  そこでお尋ねしたいのですが、現在日本経済機構の中において、こうしたもぐり的なシンジケートあるいはそれに準ずるような動きというものが山ほどあるのだが、一体どういう分野においてどういうふうな実態であるかということを通産省において調査したことがあるのかどうか、その資料があるのかどうか、これを一つ明らかにしてもらいたいと思う。
  21. 水田三喜男

    水田国務大臣 企業局長から答弁させます。
  22. 徳永久次

    ○徳永政府委員 産業界におきまして、独禁法の違反的な事例、しかもそれの確定的なものがあるかないかということでありますが、今お話しのように、そういうことがあるだろうというような話を聞かないわけではないのであります。しかしそれが具体的にどの程度あるのかないのか、これはまた極端に申しますと調べてわかることではありません。ことにその問題の取締りの責任は公取の分野でございますし、私どもはそういう形としてではなしに、産業の問題としまして、今の独禁法が日本経済の公正な成長発展のためにあのままでいいのだろうか、悪いのだろうかというような問題は若干の論議はいたしておりますけれども、今お尋ねのような、具体的に現在の法律の違反としての形でどういうことが行われているかというようなことにつきましては、十分の調査もいたしておりませんし、資料も持ち合せていない次第でございます。
  23. 中崎敏

    中崎委員 それは通産省としてはきわめて怠慢なことだというふうに考えております。せっかく通産省には大きな機構もあるのだから、日本経済がどう動いているのかという基本的なものをつかまえていくことぐらいは当然なすべきことだと思うので、一つすみやかにその態勢を整えてやってもらいたいと思うのですが、この際私はこれに関連して公取委員長の出席を要求して、こうした問題についていろいろお尋ねしてみたいと思います。それでこれは一応保留しておいて次に進みたいと思うのであります。  いずれにしても、各産業分野において、そうしたような実情どもあるし、最近日本の工業の近代化とかあるいは設備の高度化などというふうな考え方の上に立って相当ピラミッド型に進んでいる。これに対して国の税制あるいは金融あるいは補助金、そのほかあらゆる施策を通じて特別の保護が加えられることによってこれらの事業がおそろしい勢いをもって利益を占めている。あるいは資本蓄積だなんという名前において必要以上の蓄積がされている。こうしたような実情によってますます金が集まるから、それで関連産業あるいは関連産業でないものまで手を出して、次から次へ独占的な大きな財閥的な形態が生まれているということも事実なんです。こういうふうなことに対して再検討を加えて、そうしてこの際そうした事業に対しては、たとえば配当の制限をする、言いかえれば、独禁法に触れてまでカルテル、トラストに準ずるようなことをやって、独占的に大衆から収奪をして利益を得ている事業がたくさんあるが、そういう部類のものに対して一つの配当制限なり、あるいは行き過ぎたところの政府施策をこの際再検討するというふうな考え方をお持ちになっているのかどうなのか、今後そういうことを考えるのかどうなのか、これを一つお聞きしたい。
  24. 水田三喜男

    水田国務大臣 そういう過当利益を独占させるというようなことはまだ今までのところではいたさせておりません。最近新規産業ということで政府が育成に骨を折った一、二の産業で、相当大きい利益が出てきているというもので、こういう部門に対して税制で優遇していた処置というものは今度はやめる、そういうふうな税制面の措置も講じておりますので、その点では現にいろいろ是正しておると考えております。
  25. 中崎敏

    中崎委員 たとえば税制の面においてそういう問題は当然一応検討さるべきものだと思うのでありますが、場合によればやはり国家として助成してやらなければ非常に危険である、この事業がうまくいくかどうかなかなかわからない。最近においては外国の技術の導入なども相当ひんぱんに行われておりますから、一応見通しの立つ場合はいいけれども、そうではない近代産業もたくさんある。そうした方面にある期間における保護助成政策を行うということは当然なことと思いますが、それが行き過ぎて莫大な利益がどんどん蓄積されつつある。そして保護助成を受けましたものも、独占的な形において、従前日本にたくさんあるような事業でも、だんだん資本のクモの手を伸ばし、少数独占的な話し合いの形によって、ある少数の業者、法人だけがこの利益をたくさんむさぼっておるという例がたくさんある。全体としてのそうした行き過ぎに対して全般的な再検討、調整を加えるような考え方をされる必要があると私たち考えておるのであるが一体、これをどういうふうにしようとされておるかということをお尋ねしたいわけです。
  26. 水田三喜男

    水田国務大臣 そういうところの是正というものを考えて今度の制税改革をやっておるということはございますが、将来そういう問題に対してどういう構想をもってやるかというような問題については、まだ今私自身は考えておりません。
  27. 中崎敏

    中崎委員 たとえば法律の認める範囲における独占的な利益の程度を越えた利益を、税制によってどういうふうに措置するか。もぐりのカルテル的な形態においてどんどん利益をむさぼって、はなはだしいのは三割、四割、五割の高率配当をやっておる。なおかつ資本の蓄積などというふうな特別の税制の保護を受けて、内部的にはどんどん蓄積されておる。かつて法人税の中においても超過所得というふうな形態があったのだが、ことに今後の日本経済の情勢というものがだんだんピラミッド型になって、形は独占的になり、大きな何百億、何千億という投下資金という形に移行していくのは明らかだ。そういう大衆収奪の上にむさぼった利益を国民に還元させるという措置を講ずべきだと考えておるのだが、そういうことについて総合的に検討し、そうした行き過ぎた状態については何らか適正な処置を講じていきたいというふうなお考えがあるかどうかということをお尋ねしたいのであります。
  28. 水田三喜男

    水田国務大臣 今配当が高いということを言われましたが、これはなかなかむずかしい問題で、一定の産業を発達させるためには自己資本相当充実させていかなければならぬということで戦後の資本構成がだいぶ変ってきまして、自己資本と借入金の比率が最近では全く逆になっているということは、相当企業が増額をやって、資本額をふくらませておるということですから、配当が高いといっても、その株式の取得価格から見ますと、各株主個人から見たら非常な低率配当を受けておるというような問題もございまして、利益を独占しておるというのですが、独占しているというのは結局株主がとるということになるのでしょうが、株主自身は非常に高い株を買ってありますし、配当自身は非常に低いものを受けているということで、ただそういう方面から高率配当をしているからこれは大衆の利益と相反したというようなことを一がいに結論するわけにはいきませんので、非常にこれはむずかしい問題です。すぐに一、二の会社が高率配当をしているからこれについてどうこうという対策はなかなかむずかしいと存じます。
  29. 中崎敏

    中崎委員 世界経済とともに日本経済の動向がピラミッド型に少数の独占的な形態において利益が集められていくという事実は否定できぬと思います。言いかえますと、あなた方が設備近代化とか産業の合理化なんて言われるその裏には、必ずこうした設備が国家的な資金導入により、あるいは銀行などの特殊の関係を持った系列財閥的な形態の上に立ったところの特別便宜を得たもの、あるいはまたそうした税制による資本蓄積とか、減税とか、免税とか、特別の補助金とか、生産制限の場合でも、これに国家が力を加えて国家的の力によってやり、利益を得ていくという場合が非常に多いのであります。そういう事業体をこういう状態に置いたことは大部分は国家の力であり、一面においてそうでない場合においても独占的なもぐりのカルテル的な行為をやって大きくなっていったような場合、あるいはまた国の法律によってカルテルを公然と認めたような場合、そうした独占的な形態を持った場合に、この利益は莫大に出てくる。だから国家的な必要に応じてあるところまで大きくした事業が、必要以上の利益をみずからさらに内部に蓄積し、それを株主と称する少数の人間に、全般の犠牲の上に立ったところの必要以上高いところの配当をもってやらせるというようなやり方はあらためて検討すべきではないか。私の言うのは、そうした犠牲の上に立っているところの一番大きいものは中小企業だというのです。特別の権益を持った大きい事業が繁栄すれば、必ずそれと競争的な立場にある弱小の中小企業はみなやられてしまう。幾ら団体法とか、組織法とか形の上ではいってみても、ほんとうに独占的な大きな力を持った事業にはどうしても対抗できない。設備の点において、技術の点において、その市場確保の政治力の点において、ありとあらゆる面において、何十人と東になっても太刀打ちできなくて圧倒されてしまう。そうして独占的な価格つり上げ等によって大衆がみな被害者になる。そういう大きな犠牲の上に立っているから、しかもそれは直接間接国家的な保護の背景の上に立っているから、必要以上の利益については適正にこれをあんばいして還元するというような処置が当然講ぜられなければならないのではないか。ある程度まで国家がこれに助成してやってここで一本立ちした、一本立ちできたのだからそれ以上はお前が一つ努力すべきではないか、こういうことを国家が言うのは当然のことでありますが、一体これに対してどう考えておりますか。
  30. 水田三喜男

    水田国務大臣 企業独占してその独占利潤を龍断するというようなことは、日本の現状では御承知のように独占禁止法によっても許されておりません。ですからそういう事実はあまりないと思います。もしありとすれば、これは公益に関係する事業でございますが、こういうものは相当国家資金の援助も与えておりますし、公益に関係する事業独占的なものには、その独占利益を与えないように、料金とかあるいは収入については国が相当の規制をやっており、国の力でそういうものは押えておる。また海運のようなものは国が今まで相当助成してきましたが、一定の利益以上出るなら、今まで国が貸し付けたものはみな返せとか、そういう一つの制限を加えておるというふうに、国家の資金によって培養したものについては、それぞれ相当厳重な規制をやっておりますし、民間におけるいろいろな企業で、そう極端な独占化を許しておるという実際は私はないと思っていますが、もしございましたら、いろいろな事例をもって御質問下さればお答えしたいと思います。
  31. 中崎敏

    中崎委員 これは通商産業省としては、自由主義的な考え方相当あるために、たとえば先ほど申し上げますように、もぐりのカルテル的な組織というものが数限りなくある。それをまだ調査もしていないというような状態なんだから、いかに自由主義的な考え方の支配を受けておるかということは、これでもわかる。一体国の経済がどういうふうに動いておるんだろうかがわからないというんだから、私たちは驚くほかない。これで経済計画の、五カ年計画のなんて言うておられるから私はわからない。そういうふうな大きな産業構造組織の上に立って国の経済が動いているんだ、九千万の大衆が引きずり回されているんだという、こういう実態がわからないというのだから、これは自由放任であると言うほかはないのであります。こういう実態を私は言うておる。これに対してもう少しメスを加えて、ここまではいいけれどもここは行き過ぎだ、ここは一つ勧告をするなり、こういう組織を法制化するなり、もう少し全体として運用を適正化するんだというあり方でなければ、幾らあなた方が五カ年計画だといっても、絵にかいた餅で、何にもならない。そういうことを私は言っているのです。だからその意味においてもう一ぺん研究してもらって——たとえば完全雇用だなんて社会党に近いことを言っておられる、社会保障をさらに拡充していくなどと言っておられる。言葉だけは何べんそう言っても、骨の髄から変ってこなければ何にもならない。ただいかにして国民から投票をかき集めようかというような考え方でなしにほんとうに国民とともに国の政治を少しでもよくしていくんだという考え方の上に立って、重要な国の産業経済考慮していかれる上においては、もう一歩進んで、あまりにも不当な行き過ぎの利潤というものは、何らかの方法で検討すべきではないか。国家の特別な利益、たとえば何億、何十億、はなはだしいのは何百億という低利資金というものが回っておる。これによって一カ年間何億、何十億という利益をそれだけでも取られておる。そういうふうな事業はたくさんある。ところがそれがどんどんほしいままに値段をつり上げていったり、あるいはカルテル的な独占企業の形において、もうかるのは当然だ。国民という赤ん坊の手をひねって、自分たちの思うような値段をつけて、思うように数量の調節をやっていくんだから、どんなにだってもうかる。一体そういうふうなものについてどういうような措置を講ずるかということを、実はもう少しよく考えてもらいたい。こういうことを申し上げているのでありまして、これ以上また突っ込んでも仕方がないので、これは今後においてさらにいろいろ検討してもらえばいいと思う。  次に、そうしたような一つ産業経済の構造の中に、一面においては綱紀粛正といいますか、綱紀の問題と関連してそうしたような取引というものが裏から裏へと行われていって、これがやっぱり一つの大きなピラミッド型の経済形態をなしていくということ、これはまた争うべからざる事実だと思う。そこで私は特に通産大臣に要請しておきたいのでありますが、ややもすればこの経済機構を持っておられるところの大臣なりあるいは、そういうふうな面においては、そうした者の誘惑に陥りやすいから、一つそうした面においてほんとうに身をもって政治というものを粛正していく。ことに財界と官界においても相当腐敗がある。たとえば通商局のごとき、相当問題を持っているところのものが、年がら年じゅう警視庁のお世話になっている。こうしたようなことについても、もう少し身をもってこの政治を粛正して、ほんとうに国民の信頼と期待にこたえるというふうな腹がまえをもって、一つ政治の——社会党でなくてもいいのだから、一つ政治を革新するという上において、大きな役割を果してもらいたいということを、私は特に通産大臣に要望しておきたいのであります。  それから次に、完全雇用の問題に関連しているのでありますけれども、将来の完全雇用の線に沿うて、一つ産業のあり方というものを進めていくというふうに言っておられるのでありますが、具体的にはどういうふうな方法によって、この完全雇用というものを実現していかれようとするのか。現にこの中にもあるし、ことに今度の予算編成の大綱の中にも、そういう線に沿うてあらゆる施策が集中して、社会保章とそうしてこの完全雇用の線に持っていって、一切の政治の方向が向けられるのだというふうな大眼目の考え方でありますからして、失業者、将来生まれてくるところの労働力というものを、どういう方向に具体的に吸収しようとするのか、そしてこの問題を解決しようとするのかを、一つお尋ねしたいのであります。
  32. 水田三喜男

    水田国務大臣 政府で今立てている経済計画をこの通りに実施すれば、今後の日本の労働人口、毎年ふえていく人口を、大体十年くらいで吸収できる案になるのだといような、一応の計算に基いた一つの計画でございますが、私どもとしましてはこの計画をなるたけ達成する。そうすれば一次産業、二次産業、サービス業、そういう点に毎年何%ずつかの雇用量の増大というものを達成して、そして一応私どものねらっている完全雇用、そして正常な率の失業者、これは当然存在しますが、一応今後の労働人口を吸収できるという計画に基いた産業政策を実施していく、それ以外に方法はないと思います。それでは、どの企業にどういうふうに人口を吸収するかというようなこまかい問題は、また当局から説明させます。
  33. 中崎敏

    中崎委員 あまりこの問題について専門的でないようですから、一応この程度にしたいと思います。ただ一つお聞きしたいのは、たとえば今後十カ年を目標としていかれる。なるほど人間はだんだんふえていく傾向にあるのでありまして、これは当然計画人口の中に一応織り込まれていると思うのですが、それをどうするかという問題だと思いをす。しかし世界経済の動向の一環としての日本経済でありますから、日本だけが孤立しての日本経済はあり得ない。従いましてこの十カ年間の上に立って——世界経済はある程度まではぐっと上ってきたが、ここでだいぶ足がとまった。これが今度またこういうふうに上っていくのか、あるいは下っていくのか、あるときには下っていくとか、また上っていくとかいろいろ動きはあると思いますが、そうしたところのある年間における世界経済不況というふうなものがやってきた場合において、日本経済もまたその影響ども受けるし、あるいはまた日本独自の行き過ぎなどによる経済の不況、あるいは恐慌というふうなことがないとも限らない。これは十カ年の間には当然予想されるべきことであるがそういうものに対処する完全雇用などの問題は一体どうなのか。そのときにたくさんの失業者が出てきて、またそれが大問題になるようなことも一応考えられるんだが、そういうことについては一体どのようにお考えになっているかを承わりたい。
  34. 水田三喜男

    水田国務大臣 世界経済が非常に変調を来たして、世界的な不景気がきた、日本産業も規模を縮小しなければどうにもならぬという事態がきた場合には、今の計画は当然全部狂うということになりますが、今程度日本経済拡大の仕方で、今後どれくらいの規模まで順調に伸びるか、それはむろん国際的な関係でも、平和が続き、各国の経済規模が順調に伸びることを前提としている計画でございます。第三次大戦などがあれば別ですが、そうでなくて、今のような傾向世界がとっていくのなら、私はそう大きい心配はないと思います。  それからもう一つ、戦前日本の貿易が世界貿易の中で占めておった比率と、現在の比率とを比べてみても、今の倍くらい伸びても戦前の比率と同じ程度である。しかし、今後国際連合に入って各国との外交を協調してやれるなら、まだまだ日本経済の伸びる余地は十分ある。ですから、普通の場合ならそれでやっていけるが、今おっしゃったような大問題があれば当然計画は狂ってくるので、これはどうにも仕方がないと思います。
  35. 中崎敏

    中崎委員 この問題であまり議論しようとも思わないのですが、戦前日本が貿易にたよっておった程度と現在とは相当開きがあると言われておるのですが、これはやはりその背景も違うのではないか。いわゆる大日本帝国としてアジアに君臨しておって、そして大きな軍事的背景の上に立ち、しかも朝鮮、台湾、満州まで勢力分野のもとに置いて、中国を眼下に見下しながら貿易をやっておった時代と今日とは非常に建っておるということを考えなければならぬ。もう一つ、この間あなたが説明された中にもあったが、来年度の貿易というものは、必ずしもそう大きな期待はできない。それは、一つには日本の商品に締め出しを食わすというか、制限を加えるという傾向が、米国を初めとする各国において漸次拡大しつつある。そしてまた日本の貿易品の軽工業にばかりたよっておる傾向は、急激に重工業方面に変えられるのかどうか。プラント輸出ども大体限界にきているのではないか。たとえば東南アジア方面に、プラント輸出などを含めて逆に資金日本から持っていって事業化するというような部面の発展はあるとしても、全般的に見て、何年かの間にあなたの言われるように倍にもなる、こういうことまで予想できる実情であるかどうか、こういうことが問題だと思うのでありまして、この点についてもさらにいろいろ説明を受けたいのでありますが、時間の関係もあるので一応私の意見だけ申し述べておくことにいたします。  次にお尋ねしたいのであります。近年好景気の刺激を受けて労働人口がある程度職につく方向に進でおることは事実であります。現在大学、高等学校を出た技術方面の人たちの就職は非常に順調で、こうした技術者で遊んでいる人はないというくらいはけ口がよいのでありますが、反面において、法文科系統の大学あるいは高等学校などの卒業者の就職率は依然として悪い。これは労働行政あるいは文部行政とも関連するのですが、われわれが言いたいのは、通産行政の面から見て今後いわゆる技術者のあり方を一体どうするかということであります。日本ではややもすれば従前技術軽視の傾向があった。ところが、世界的な産業近代化影響を受けて、技術者がクローズアップされてきたことは事実である。けれども、そうした技術者は一朝一夕に養成できるものではない。まず高等学校、さらに小学校の段階から理科系統の方面に重点を置いて、大学の程度においては一そう重要視しなければならぬ。ところが今は、お医者さんなどを含めて技術系統は四分、法文系が六分というくらいでありますが、今後の世界経済産業の動向から考えてみて、あるいは日本の現在置かれている実情から見て、逆に技術者をどんどん養成する必要がある。しかもこれは単なる技能者、熟練工だけでなしに、大学、専門学校程度、こういう類の技術の面にほんとうに身を入れていくべきものだと考えているのでありますが、将来の技術者養成について一体どうお考えになっているか、あるいは当面の措置としてどういうふうにお考えになっているかということをお尋ねしたいのであります。
  36. 水田三喜男

    水田国務大臣 私個人の考えは、昔から官立大学には文科を置かず、文科系統の大学教育というものは全部私学に譲る、そうして、どうせ技術家を養成するには相当金がかかるために、国立大学は全部その方へ持っていくというくらいに考えて、長い間党におるときは主張してきました。それから現在の各府県にある国立大学が今のままでよいか、むしろ実務教育を主にして、あすこは社会に出て技術的にもすぐ役に立つものを養成する学校に転化してはどうか、そういう意味で、昔の専門学校が今日本中小企業にとっては最も必要になっている時期だ、長い間これを主張してきましたが、いよいよ国会の問題になりますと、社会党までが、何でもよいから大学という名前がつかなければいかぬ、短期大学をみんな大学へ昇格する、この運動を与野党ともするということで、技術者養所の専門学校制度へ戻すという方法もなかなかなさそうです。将来学制改革はどうしても根本的に考えなければいかぬ問題だと思っております。なかなか自分たち思う通りになりませんので、さしあたり各大学とも理科系統の方の学生の定員をふやすということをできるだけやるということで、この二、三年来相当文科と理科との比重を変えてきましたが、今後毎年なしくずし的にそういう方向に置きかえるという努力をして、将来の技術教育を充実しようと思っています。
  37. 中崎敏

    中崎委員 この問題はほんとうに真剣にわれわれが国の将来を考えてみたときのあり方がそうなるのだと思うのでありますが、たとえば中国あるいはソ連などの例を見ましても、法文系統のものはもうほとんど学校の中でかげをひそめておるというくらいに重要視されていない。ほとんど技術系統の大学あるいは教室、学級というような類で占められておるというような状態である。一年に何十万のそうしたような高度の教育を受けておるところの技能者が送り出されるというところから考えてみても、ことに技術をもって立たなければならぬ日本において、その必要をしみじみと感じておるので、これは通産大臣がせっかくその衝に当られるような立場になったのだから、文部大臣などともよく話し合いをして、ことしの予算はもうこれ以上どうにもできないとしても、さらに来年度の計画は一体どうするのか。そうして、与えられた予算の上に立って一体どういうふうなことを当面の問題としてやるのかということをもう少し身を入れて取り上げてもらうということを要望しておきたいと思うのです。  それから技能者養成でありますが、これは大きな工業会社などにおいては、一ぺんに何十人、何百人というふうな中学校卒業生あるいは高等学校卒業生というふうなものをとっておられるので、そういうものの職場教育を現実の職場に即してやっておられるのでありますが、中小企業の場合においてはどうにもしようがない。近来は中小企業者も技術が先に立たないと、取り残されて、どうしても立っていけない。そこで何とかして技術を一つつかんで、そうして世の中に立ちおくれないように一緒にいこうと思っても、惜しいことには資本の力、組織の力、そして技術者などというものがなかなか手に入らない。それでたとえば大学などを見ても、一流の工業会社なんかにみな技術者が引っこ抜かれていって、大学の卒業生などは、ほんとうに特別の縁故でもあって、おじさんがどうだとか、おやじさんがどうだとかいう人間だけに、中小企業の工場の方へ頼んできてもらうというふうな実情にあるのであります。そこでこいう中小企業者の工業水準を高める上において、それを単独でできないというような場合においては、中小企業全体として、たとえばある業種別に見て、一体その技能者をどう養成するのか、そして高級の技術術者をどう確保するかということを、中小企業対策一つとして、国の産業経済の機構のあり方として、一つ多く取り上げてもらいたいということを要望しておきたいのであります。  次にお尋ねしたいのでありますが、この技術に関する問題の中に、通産省の面においても、技術の奨励助長のために、鉱工業の研究助成金なり工業化の助成金というものを出しておられる。ところが研究助成金というふうな、三十万、四十万、五十万とかいう少額の場合には、中小企業者にもかれこれ恩典があって、出しておられるのでありますが、さて工業化というふうな何千万という補助金をお出しになる場合においては、大体ほとんど大企業にお出しになっておる。一体こういうふうなあり方がいいのかどうか。なるほど大工業がやっておる研究のテーマそのもの、あるいはその実現の可能性というものは大工業に多くある、またそれが適当であるということは言えるかもしらぬけれども、そういうふうな大工業に一千万や二千万の金をくれてやっても、何にもならぬ。助成金をやらぬでも、ちゃんと研究しておる。何のためにそういう助成金を出して——しかもそれが金を出してもらわなければやれないとか、あるいは経済的な力がないとか、あるいは研究をしないとか、そういうのじゃない。ちゃんと自分たちで、将来の自立のために、自分の工業を発展させるために、当然その道を選んでちゃんと研究しておる。それはもうほとんど板についたようなものに何千万の金をどんどん出すようになる。こういうふうなあり方が正しいのかどうか。むしろ中小企業者にほとんど全部を傾けて出してやる。そうしてほんとうに中小企業近代化の上に立ってこういうものを生かしていくのだというような方向にやるべきである。いわゆる鉱工業助成金というものは、中小企業の助成の一環として、ひいてそれが国の経済全体の産業機構のあり方としてそうあるべきだというふうに私は考えておるのでありますが、この点について一体大臣はどういうお考えか、お尋ねしたい。
  38. 水田三喜男

    水田国務大臣 これは今までやっておった問題の経過もございますので、局長からお答えいたします。
  39. 松尾金藏

    松尾(金)政府委員 御指摘の点については、現在工業技術院でこのような助成金を取り扱っておるのでありますが、もちろんこれは大企業中心に助成金を出すというような方針でやっておるわけでもございません。その試験研究の題目を厳密に選定をいたしましてやっておるのであります。たまたまその結果が大企業相当優秀な研究題目がありますと、そこに助成金がいくわけであります。もちろん大企業であれば、自分の資力でやり得るような場合には、そういう助成金を必ずしも出す必要はないことは当然でありますが、御承知のように大企業の資力をもってしても大きな試験研究の題目になりますと相当大きな危険負担があるわけであります。それらの危険負担を補う意味でも、やはり助成金をその題目いかんによっては出してやらなければいかぬ場合もございますし、また工業化試験につきましては相当程度中小企業にもいっておるわけでありまして、たとえば硫黄の製練というようなものは、かなり中小の企業にも助成がいっております。これはそれぞれの研究題目を中心に選ぶのでありまして、大企業中小企業ということを初めから区別して扱うものでは毛頭ないのであります。
  40. 小平久雄

    小平(久)委員長代理 中崎君にちょっと申し上げますが、公取の委員長が見えておりますから、公取委員長に対する先ほどの質問をしていただきたいと思います。
  41. 中崎敏

    中崎委員 それではこの問題を結末をつけて、公取委員長だけに質問して、それできょう実は党の選挙対策委員会があるものですから、きょうはそれで終って、そうしてこの次の日に保留しますが、あとまた時間をいただきたいと思います。実はそういう段取りで御了承願いたいのであります。  そこで先ほど私が申し上げておきました通りに、大体通産省の方で、ことしはどういうテーマに対して工業化助成金を出すかということはそのときの状況に応じて決定される。その決定されるのにはだれも異議を言わないわけです。ところが研究助成金というふうな、二十万、三十万、四十万、五十万、八十万という、こういう程度のものは、中小企業者に出してやれば、これは非常に研究の刺激にもなるし、実際役に立つ。ところがこういうふうなものを大工業にお出しになったって何にも役に立たない。それでまた今度はその選び方が、たとえば石油化学とかこういうふうなものは中小企業では何といったってやれませんよ。大工業が当然やるもの、大工業が何百億の金をかけてやるものに、一千万円出したって二千万円の補助を出したって何にもならない。またそれだけの何百億の資力を持っておるそういうものにむだな金を出さないで、ことしは五億のものを出されるのでありますが、それだけのものを中小企業の方へやったら、ほんとうに中小企業というものは全体としてどのくらい刺激になり、また実際その事業が発展するかわからない。そういう意味において、基準をきめるについてもむしろ選定の対象というものは、大工業は一応重要視しないで、中小企業に大体重点を置くのだ、少くともこのワクの範囲内においては中小企業者にやるのだ、こういうことも一応考えてもらいたい。つまり中小企業対策の一環としてやってもらいたい。そういうふうな考え方でないと、いつまでも大きい力のあるものはあらゆる面で政府の助成を受けて、そして中小企業者、弱いものはうだつが上らないという結果になる。たとえば現に今日までお出しになっておる工業化助成金のほとんど大部分というものは、大企業に行っているのじゃないかと思う。またことしもそういうことになるのじゃないかと私は先のことまで思うのでありますが、そういうふうなあり方について、ある程度考え方の調整をやる必要があるのではないかということを今質問をしておるのであります。その点をちょっとお尋ねをしておきたい。
  42. 松尾金藏

    松尾(金)政府委員 ただいまお話の点は、実際に助成金の基準をきめます際に初めから大企業中小企業を別ワクにして扱ったらどうかというお話のように伺うのでありますが、現実の問題として、初めから大企業に幾ら中小企業に幾らというような扱いは非常に扱いにくいのじゃないかと思います。むしろ研究題目そのものを中心によく精査をいたしまして、現実に中小企業の資力にわずかばかりの助成金を出しても効果、実益があまりないというような場合には、もちろん助成金を従来も出しておりませんし、今後もその方針で参ると思います。たとい大企業でありましても、先ほど申しましたように大きな試験研究の題目について、それが成功するかいなかによって非常な危険負担があるというような場合に、やはり助成金が必要な場合があります。またそういう場合でなければ、企業がみずからの資力でやる場合もありましょうし、さらに試験研究が進んで工業化の段階になりますときに、融資のあっせんという程度で済む場合がかなり多いわけでございます。そういう場合にはもちろん助成金でなくして、融資あっせん程度でその研究題目を伸ばし、また工業化の方に助成指導をやっていくというふうに扱っております。今後もただいま御指摘のございました点は十分留意して参りますが、助成金の出し方はやはり研究題目を中心に扱っていくことがまず第一になって、それにその企業の資力その他もあわせて考えるというようなことでやって参りたいと思います。
  43. 中崎敏

    中崎委員 どうも納得がいかないのであります。たとえば石油化学というものについて研究題目をおきめになるときに、一体石油化学そのものは中小企業のどこに補助金を受けるところの現実があるのか。大企業が六社か七社か知らないが、初めからそういうものにいくのはきまり切っておる。初めからそういうテーマをお選びになるところに問題があるのじゃないか。言いかえますと、あなたは企業の危険があると言う。もちろん企業に免除がないとは言えないけれども、たといこれは成功してもなお危険がある。一つ経済界の波がある世界経済の中において、その事業の経営の上にあらゆる危険がある。しかしそういうふうなことを一々考えるというよりも、むしろ問題の重点はその危険に耐え得るかどうなのかということだと思う。たとえば一カ年間何十億の利益を持っておるところの三菱みたような大会社に、一千万や二千万の金を出して何になる、こういうことが言いたい。そういうふうな危険に耐え得るところの力について、考課状などをお調べになって、そうして助成金をおきめになったのかどうなのか。その会社の実態とその市場における立場というものを全般的にお考えになって、そうして方々の立場から、国の産業行政全般の上においてどういうふうにするかというお考えの上に立って助成金を出されておるのかどうか。あるいは近視眼的に技術の虫めがねの中でものを通して見ておるのか。そういうものの中から、高い国民の血税を一体そう簡単に出していいのかどうか、こういう考え方を私は聞いておるわけです。その点をもう一度大臣から一つ御答弁願いたいと思います。
  44. 水田三喜男

    水田国務大臣 これは非常なむずかしい問題です。一国には科学水準というものがあるので、中小企業の現状から見たら、もう研究された一定の水準にまで技術が達していないものが多いのですから、こういうものの技術指導については、指導所、相談所をもってどんどん中小企業の合理化に役立たせるようにやっていく、この政策は現在でもやっていますし、また中小企業が特に自分の実態に即したいろいろな研究をする、その研究に対する、いわば発明に対する助成ということでしたら、それはそれでやっていきますが、問題はやはり一国の科学水準に関する問題で、その一つの問題が解決されるなら、これは日本企業全体の水準が上っていくし、中小企業の技術革新にもそれがなっていくんだというような、やはり科学としては、今の段階でどういう研究題目を選んで研究させることが日本産業技術の水準を上げることになるかというテーマを選んで、それに国が研究費を助成していくというのでなかったら、産業の技術水準を上げることはできません。試験能力もないいろいろのところに、ただお前の方は研究するなら金をやるぞということで、二十万、三十万の金をずっとばらまくような金の出し方をやったら、産業技術を上げることはできない。今までの日本の欠陥はむしろそこにあった。各大学にみんな同じような研究をする費用を何億ずつかばらまいても、日本の技術水準は上らない。結局ほんとうに電子の問題、原子の問題という大きいテーマに金を集中することによって、科学水準というものは上るのですから、そういう中小企業に小さい金をまいてやるやり方がいいか、そうでなくて、現在その問題が解決したら、日本産業全体に役立つという研究テーマを与えて、それに金を出すというやり方の方が、私は国が奨励金を出すときにおいて、本格的な出し方だろうと考えております。
  45. 中崎敏

    中崎委員 どうも大臣も、まだ大臣になった早々で、こうしたような問題については、十分おわかりにならぬ点がたくさんあるのではないか。私は中小企業のできるもの、できぬもののだれにでも金をばらまいてやれ、そんなばかなことは言いません。私の言うのは、たとえば今までの工業化助成金、これは金額の小さいものでありますが、これは研究をやっていて、ほんのちょっとの助成がほしいという口数が非常に多いのです。そうしてそういうふうな場合には、逆に自分はこういうことをやってみたいと思う、あるいは実際にある程度やっておる、しかし少し金が足りないからちょっとめんどうを見て下さいと頼みにくる。そういうものは力も何もないものだ。だから出すからには一応調査される。この工場はどういう仕事をやって、どこまでの技術をどうやって、どこまできたから、これを出そうか出すまいか、これはめくらめつぽうに金をばらまくのではない。ですからやるような場合に、何百億円という大きな資本を持つところに二十万や三十万やったって、それは何にもならないのじゃないかと思うのです。中小企業で、これをやれば確かに社会に役立つというふうな場合があっても、実際には大きいところにいってしまう。それでようやく今度は工業化助成金と銘打っても、中小企業には出ておらない。それは一カ年に何個所出すか知らぬが、その八.九割は大体において大きな企業にいっておるわけであります。それが国の産業の全体から見て必要だということはわかります。けれども、大きいところでやる場合には、何百億かの金を用意して、それだけの態勢を整えて進めておるわけです。だからそういうものにはやらぬでも、一人でやる。ちゃんと計画を立てて、特許のほしいときには買う、ある面においては自分の独自のものが研究の中から生まれてくる。実際においてはそういうふうな程度のものです。だからそういうふうなものにことさら金をやらぬでも、大きいところは自分の力でやる、ほうっておいてもやる。大きい場合においては金をもらったから特にやったということはまずないと思います。だからそういうふうなものよりも、水準が低いけれども、これはおもしろい、いい研究だ、中小企業で力が弱いが、ここに出して政府の力を加えてやれば、たとえば銀行政府から助成金をもらうのならば君のところは信用は足りないけれども、それだけの事業なら裏づけがあるのだから金を貸そうじゃないかという人間も出てきて、そこにはその事業と一緒になってやる力ができると思う。そういう場合が非常に多いわです。だからそういうようなものに相当考えをいたして、助成金を出したらどうかと私は言っておるのです。だから大臣ももう少し実情をよくくんでいただいて、それで一体今後、もう少し今までのあり方を再検討する必要があるのではないか、こういう私の意見の中から参考になればとってもらいたい、こういうことなのです。  それでは次に公取委員長にお尋ねしたい。先ほどからだいぶ通産大臣ともいろいろ意見の交換をしておるのでありますが、経済力集中排除法が廃止になって以来というものは、相当露骨に財閥中心一つの新しい日本産業機構が厳然と作り上げられている。そうしたものがピラミッド型の上に立った一つの機構となりつつあって、それがこの反面において実に国民大衆の上に大きなるところの圧力となり、それで一つ独占に近いような、不公正な基礎の上に立ったところの利潤が追求されておるという弊害もある。またそうでなくても、トラスト、カルテルというふうな形において、財閥形態をなさぬでも一つの大きな新興財閥的なものがだんだん一つの力となり、あるいは大きなるところの業者が何軒か寄って、やみの、もぐりのカルテルみたような、またこれに準ずるような形態を作っていって、相当実害も大きい。においてそうしたことが社会の経済の中の一つの要請であるとしても、一面において、また大きなるところの弊害がある。その程度を調整するがためにここに独禁法があり、公取委員会があるのだけれども実情はややもすれば公取委員会というものが軽視され、ある場合には無視されて、せっかくの国全体の意思がゆがめられておるところの現実である。であるから何とかこれを正しい姿に返して、ほんとうに国家的見地に立ってそういう独占的な形態が必要やむを得ないというような場合においては、堂々と法律の改正等によってやっていくべきであるという考え方については、通産大臣も同意見なのであります。さて、もぐりみたようなああしたカルテル的な存在というものは、一体どういうふうな業種がそうなっているのか、どこにどういうふうな問題があるかということを十分まだ検討していないということ、それは公取の所管であるからしてということなのでありますから、公取委員長にお尋ねしたいのでありますが、そういうふうなことについて一体公取委員長はどういうふうな感想を持っておられるか。言いかえれば、行政に関するところの、裁判官じゃないけれども、そうしたような監査的な立場を持っている公取委員会においては、政府だけの考え方に、あまりかばうというか、追従するということでなしに、独自の見解を披瀝してもらいたい。同時に、カルテルというふうなものが一体現在どの程度、どういうふうな業種にあるのか、その弊害が実に余るようなものについては警告をしておると思うのですが、一体それはどういうふうなものであるかということをかいつまんで御説明を願いたいと思っております。
  46. 横田正俊

    ○横田政府委員 公正取引委員会の役割につきましては、ただいまお示しの通りまことに同感でございます。独禁法ができましてから現在までの間に、日本実情にこれを合せまするために相当法律の改正も行われて参りましたが、しかし独占禁止法のいわゆる独占を規制するという最後の線は、現行法の上に、はっきり残っておりますことは御承知の通りでございます。われわれもこの線に従いまして、できる限りのことをいたしておるわけであります。ただやはり、何と申しましてもこの制度は戦後に新しく入りましたものだけに、戦前におきまする日本の業界のいろいろな長年のしきたりと申しますか、考え方というふうなものが残っておりますので、自然にいろいろな業界におきまして、一面から見まするとあまり好ましくないと思われるような事態が出て参ります。これはある程度やむを得ないことでもございましょうが、しかしわれわれといたしましては、それらの事態に対しましてはできる限りの取締りの手を打っているつもりでございます。なおさらに独禁法をゆるめるというような動きもだんだん出ておりますが、これらに対しまして公正取引委員会といたしましては、非常に厳格な態度を必要以上にゆるめないようにいろいろやっておるのでございます。  そこで現在どういうようなおもしろくないカルテルがあるかというお話でございますが、これは公取の事務の能力もございまして、どれだけのものが現実あって、そのうちのどれだけを公取が発見して処理をしておるかということになりますると、自信のあることを申し上げることはできないのでございますが、昨日御報告申しました中にございますように、最近におきましては、大体において化学工業部門にいろいろ独禁法の違反というふうなものが出てきておるのでございます。繰り返すようになりますが、メタノール、ホルマリン、塩化ビニールあるいはソーダ灰というようなものにつきまして、価格の制限、価格協定等の事案がございまして、これらにつきましてはそれぞれ正式の手続をとっておるわけであります。しかしこれらの新しい業界につきましては、やはりその個々の業界にいろいろな事情があるようでございまして、われわれといたしましては、ただいたずらに独禁法を適用するということでなく、各業界の実情相当調査したつもりでございます。なおこのほか、事務局の方で現在いろいろやっておるものがあると思いますが、まだ正式に委員会の方へかかってきておるものは、現在のところございません。いずれにいたしましても、こういういわゆる地下で行われまするいろいろな話し合いというようなものを発見いたしますことは、非常に困難なことでございます。はなはだ弁解がましくなりますが、公正取引委員会としては現在の事務能力のほとんどあらゆる力を使いまして取り締つておるのでございますが、なかなか思うように参りませんことは、はなはだ残念に存じておる次第でございます。
  47. 中崎敏

    中崎委員 今、公取委員長の言明によりまして非常に遺憾に思いますのは、機構が十分でなくて、手不足であるというようにも感じられる説明をされております。これについては、予算などの獲得の面においても一体どういうふうな努力をされて、そういった手不足を今後どういうふうな形において一体解決するような方向にあるのかということもお聞きしたいのでありますが、いずれにしてもそうしたことは今に始まったことではなく、近年の一つ傾向ではないかと思うのでありますが、もう少しそうした面において国家の法を忠実に守る、身をもって守るという考え方の上に立って政府の蒙を開いて、そうしてそうした面に一段の努力を傾けらるべきではないかということを痛切に感ずるのであります。一面において政治力といいますか、それぞれ所管の大臣をいただいて、そうして閣議などに出て一体どういうふうな発言をされるか知りませんが、そうした面において機構上一つの欠陥があり得るとしましても、一面においてやはり与えられたその機構と機能の中において、もう少し勇気をふるって、国民とともに法を守り、大衆の利益を守っていくというようなそういう熱意に一歩前進をしてもらいたい。それと同時に、私みたいなしろうとでも、どういうふうな業種が地下組織となって、価格のつり上げや生産の制限などを協定してやっておるかということは大体においてわかっておるのだが、今言われるのは、最近の化学製品の中のホルマリン、メタノール、塩化ビニールというような、ごく少数の例をお出しになっている。ところが実際には重要な産業はもちろん、国民の日常生活に直接の関係のあるところのそういう生活必需品の中にも、独占的な少数の大きな資本家がやっておるようなものの中には、相当独占カルテル的な傾向が強く盛られておる。ことに建設資材などについても、これが国の経済の促進と新しい産業設置の上において重要な役割を果すものであるが、そういうようなものの上にも大きなカルテルなどが行われているということは周知の事実なんです。そうして、次から次へと数え上げてみれば切りがないのであるが、そういうようなものをそのままにしておいては公取委員会の職責は果せないというふうに考えておるわけなんです。  そこで、今度は通産大臣にちょっとお聞きしたいのでありますが、たとえば今一、二の例になったホルマリン、メタノール、こういうようなものは一つの工業の原料なんです。その工業の原料品がこうした独占的な一つのカルテルの形において、出荷制限とか、生産制限とか、価格の協定なんということをやられると、勢い次にくる二次製品に大きな影響がある、そういうようなことになるのだが、一体これに対して通産大臣はどういうふうに対処されるかをお尋ねしたいのです。
  48. 水田三喜男

    水田国務大臣 さっき事務当局から申しましたように、われわれの方はその実態をまだ押えておりませんので、これはよく調査して善処します。
  49. 中崎敏

    中崎委員 それではきょうはこれだけにしてきます。
  50. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 議事進行について。実は今度の総理大臣の演説の内容に、議会運営の正常化ということがございますが、これを当委員会に当てはめてみますと重大な問題があると思うです。と申しますのは、政府提案の法案を見ましても、すでにここだけで二十一、それから経済企画庁で三つ、いずれ劣らぬ重要法案のようでございます。これを私どもは無事通過させようと協力態勢を整えているわけでございますが、私の党もまたその政府の欠陥を補い、経済の自主独立をはかるために相当の法案を用意しておりまするし、質問はまだ山ほどあるわけでございます。ところで、この委員会がいつも停滞状態に陥った場合を考えてみますると、それは決して社会党の乱闘が原因ではございません。第一の原因は、大臣の出席が悪いということでございます。きょうは大へん御熱心でまことにありがいのでございますが、その次は、まことにおおそれながら与党議員が常に定足数を欠くということでございます。われわれの二倍の定員を持っておりながら、出席の人員は常に半分以下であります。
  51. 小平久雄

    小平(久)委員長代理 加藤君、議事進行について直接に話をして下さい。
  52. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 それでもなおかつ円満にいっておるというのは、野党の同情的な協力態勢によるものである、こういうことでございますので、一つ委員長におかれても、あるいは大臣も常にこの点を御留意願いたい。この際成績のよいのはどこかといえば、政府側と委員部と速記とそれから調査室と野党、このくらいのところなんです。そこで、私ども国会運営の正常化については大賛成でございますので、一つ大臣以下奮発して御出席方をお願いする、こういうわけでございます。
  53. 水田三喜男

    水田国務大臣 承知しました。
  54. 小平久雄

  55. 阿左美廣治

    ○阿左美委員 三十二年度におきまして通産省の重点施策につきましては大臣より懇切な御説明がありましたので、私はそれに対しまして総括的質問を試みたいと思います。  まず輸出振興対策でございますが、冒頭大臣におかれまして申されました輸出振興要諦は、輸出品の対外の競争力の強化と安定したところの市場の維持の拡大をはかっていただくということが最も必要なのでございます。海外の市況の変動に左右されないところの強固な輸出力を培養するということが最も必要なのでございます。それでその直接的対策といたしましては、六項目にわたって詳しく御説明がありましたが、そのうち(三)の項目に申されました海外市場の開拓維持をはかるために、日本商品の海外紹介宣伝の強化、海外見本市への積極的参加、貿易あっせん所の充実、重機械技術相談、事業の育成、中小企業輸出振興の助成等、貿易に対する振興予算総額を見ますると、三十二年度におきましては一億二千万円を増加され、総計十二億円を計上されてまことに万全を期しておると言われましたが、中小企業輸出振興の助成はわずかに六千五百万円でありまして、逆に昨年度の予算の七千二百万円に比しまして七百万円の減少であります。御承知の通りわが国の輸出品中小企業の手によって作られましたものがきわめて多いのでございます。輸出商品は中小企業の中で零細企業あるいは家内工業的な生産のものが多いのでございます。中小企業輸出振興費の六千五百万円の内訳を見ますると、意匠展示講習会費とか、在外研究員旅費とか、外人デザイナーの招へい費とか、あるいは海外競争見本蒐集費補助とか、試作奨励費補助とか、十二種類の項目にわたりましてあげられております。これらの重要なる中小企業輸出振興費がわずかに六千五百万円の少額であり、しかも昨年度よりも減少しておるのはいかなる理由によるものでありますか。この点について御質問を申し上げる次第でございます。
  56. 水田三喜男

    水田国務大臣 その昨年より減った理由通商局長から御説明いたします。
  57. 松尾泰一郎

    松尾(泰)政府委員 実は中小企業関係の輸出振興費は、今御指摘のように前年に比べまして三十二年度約六、七百万円減っているのは事実でございますが、貿易振興費は、一応分け方としまして、先ほど御指摘がありましたように六、七項目に分けておるのでありますが、それぞれ相互に密接に関連をいたしておりまして、中小企業関係の輸出振興費の中に入っておりません。たとえば一般的な国際見本市にいたしましてもあるいは貿易あっせん事業にいたしましても、それは率直に申しまして大部分が中小企業を対象にした見本市であり、あるいは調査であり、あっせん事業であるわけであります。従いましてわれわれ事務当局といたしまして、大蔵省予算を折衝いたしましたときには、総額としての貿易振興費をできるだけ増額することに重点を置いて実は努力をいたしたわけでありまして、御指摘のように中小企業としてここに計上しております金額は、若干形式的には減少いたしておりますが、今も申しますように、貿易振興費そのものが結果的には大部分は中小企業に帰着するわけでございまして、その意味におきましてわれわれはこれで十分とは言えませんが、決して中小企業の振興費が若干減ったからといって、特に中小企業について重点を置いてないというわけではございません。どっちかというと、全体としてふえただけやはり中小企業を十分考えたというふうに考えているわけであります。
  58. 阿左美廣治

    ○阿左美委員 第二の点といたしまして、貿易振興予算総額十二億円のうち、海外市場調査費一億四百万円、国際見本市参加等の助成費が二億八百万円と計上されておりますが、これらの助成金はすべて海外市場調査会、すなわちジェトロの助成になると思います。ジェトロはこのほかに昨年のバナナ、パイナップルカン詰輸入の利潤の差益金等を加えますと、相当豊富なる予算のもとに事業を行っているはずでありますが、一体このジェトロの事業がどの程度輸出振興に役立っているのか、われわれにはピンとこないのでございます。もちろん見本市の参加とか海外市場調査とかは直接的には右から左へと効果を期待するものではございませんが、輸出品を直接生産している企業者、なかんずく中小企業者におきましてはまことに迂遠に思われるのであります。一体ジェトロの事業及びその海外における活動の状況はいかなる状態になっておりますか、この機会に御説明願いたいと思います。
  59. 松尾泰一郎

    松尾(泰)政府委員 ただいま御指摘がございましたように、貿易振興費のかなりの部分がジェトロヘの補助金となって出まして、ジェトロがその資金によりまして——もちろんこの補助金だけではございませんが、地方自治団体あるいは民間業界からもかなりの寄付金を受けまして事業をいたしておるのでありますが、この事業の詳細を申し述べますのは若干時間もかかりますので、簡単に御説明申し上げるならば、まず第一が調査事業でございます。これは現在世界各地に長期の駐在員といたしまして二十カ所ばかり、市南アジア初め、北中南米あるいはヨーロッパにわたりますが、二十カ所に長期の駐在員を派遣し、またその他十五カ所で現地におりまする人間を委託調査員といたしまして活用しておるのであります。まずそれらの調査員をして適時適切な調査をせしめ、それを日本におきまして関係の業界に十分連絡をいたしておるのでありまして、今御指摘のありました中小企業方面は、あるいは府県の商工部あるいは貿易課を通して十分この資料を御利用願っておると思います。またそれぞれの団体にもこの調査の資料を利用願っておるような次第であります。その他調査といたしまして必要がありますときには、調査団を編成いたしまして、中近東あるいはアフリカ、中南米に派遣して参っておるのであります。ジェトロの調査事業としてはそれが大きいのでありますが、その次の大きな事業といたしましては、貿易のあっせん事業であります。これは現在アメリカに二カ所、カナダに一カ所、エジプトと、この四カ所に貿易あっぜん所を設置いたしまして、日本商品の展示会あるいは引き合いのあっせんもしておりますし、また市場調査もしておるのであります。これは設立当初におきましては若干この効果につきまして御批判も伺ったのでありますが、最近は非常によくやっておるということであります。内地の業界のみならず海外を旅行された方々から、いずれもおほめの言葉をいただいておるような実情でございます。この三十二年度におきましても大体今申し上げましたような四カ所の貿易あっせん所の業務を若干強化していけることになっておるのであります。その他の事業として大きいのは、国際見本市への参加でございます。これも毎年五、六カ所海外の主要都市で催されるいわゆる国際見本市、展示会に参加するのみならず、日本でみずから日本品の見本市を開催するというようなことを従来継続してやっておるのでありますが、本年も若干規模を拡大してやる予定になっております。その他広報宣伝事業といたしまして、これは特にアメリカ、カナダを中心としての広報宣伝事業でありますが、先ほど申しました貿易あっせん事業と一体になりまして、それぞれ催しもののときにはできるだけその効果を上げるように新聞記者との会見をいたしたり、あるいはまた新聞雑誌に日本の事情を書いてもらう、あるいは記事に日本一般産業事情のみならず、具体的な商品の記事を織り込んでもらうというふうな——一般の言葉で申しますとPRと申しておりますが、そういうPR運動をアメリカ、カナダにつきましては強力に展開して参っておりまして、今申しましたような事業が現在のジェトロのおもな事業でありますが、これが具体的にどの程度輸出増加に役立ったかということは、数字的にはなかなか算出することは困難でございますが、最近対米カ向け輸出が非常に伸びていること、また中南米方面におきましても、アジア、アフリカ、近東方面にいたしましても輸出が非常に伸びておるのであります。もちろんこれはジェトロを通します貿易振興のいろいろな施設の効果だけということは言えないのでございますが、われわれは輸出振興に対してかなりの効果を上げておるというふうに信じておりますし、また経済業界からも、非常に、俗な言葉で申しますればかわいがってもらっておりますし、よくやっておるということを言っておられますので、ますますこれらの事業は継続し、拡大させるべきだ。それがひいて輸出振興に役立つのではないかと考えております。三十二年度の十二億円のうちで、やはり七割程度はジェトロを通ずるものになるのでありますが、昨年よりも若干増加になるわけでございます。この面はますます増加し拡充させていきたいというふうに考えております。
  60. 阿左美廣治

    ○阿左美委員 次に、わが国の輸出品中小企業者の生産品がきわめて多いということは御承知の通りでございます。これらの輸出品を生産しておるところの中小企業者への助成がほとんど無にひとしいことはまことに奇異に感ぜられるのでございます。市場調査も見本市の開催もまことにけっこうではございますが、根本的に生産者に対して輸出品の生産意欲を高揚せしめる方策といたしましては何らの助成もないのでございます。輸出振興対策上きわめて遺憾に思われるのでございます。海外の見本の蒐集費補助は昨年度の五百万円に比し、本年は四百万円になっております。織物生産業者は、これらの海外見本を収集しようと思いましても何十万円とかいう金を支払わなければならないので、中小業者としてはとうていこれは不可能となるのでございます。中小企業輸出振興試作奨励費補助とか、技術研究費補助とかは予算に組まれておりますが、その額もきわめて少額でございまして、中小企業輸出生産に対しましては、これを分散してみますと九牛の一毛にすぎない。結局ないにひとしい結果となるのでございます。直接効果のあるこれらの中小企業輸出振興費を大幅に増額し、見本蒐集費補助とか試作奨励費補助を重点的に増額するお考えがあるか、お伺いいたしたいのでございます。
  61. 水田三喜男

    水田国務大臣 これは今後できるだけ増額したいと思っております。今度は、実際のお話しをしますと、大体各省の予算の割り振りにつきまして、私ども輸出振興費としてこれくらいの金額は確保したいというようなことの折衝から入りましたので、その割り振りで予算が十分でなかったということは率直に認めますので、今後はもう少し大幅に増額したいと考えております。
  62. 阿左美廣治

    ○阿左美委員 次に絹織物海外宣伝費補助でございますが、昨年同様六百二十万であります。わが国の特産物である絹織物の海外宣伝費としてはあまりにも少額である。これも増額する必要を痛感する次度でございます。絹織物を生産する中小企業者への助成の恩典は何ら付与されておりません。絹織物輸出を増進する必要はここにあえて申すまでもない次第でありますが、従来のごとき軽目羽二重より高級絹織物の生産を奨励いたしまして、イタリア及びフランスの製品に負けないところの高級織物をわが国で生産して海外に輸出を積極的に行うことは目下の急務と考えるのでございます。わが国のこの伝統あるところの絹織物の生産技術を活用いたし、設備近代化してこれに並行して生産業者に多少の助成策を講ずることにいたしますれば、決してイタリアやフランスの製品にひけをとらないところの製品ができるということは断言できると思うのでございます。絹織物の輸出振興対策に関しまして当局はもっと真剣に考慮すべきであると思いますが、これに対するお考えをお伺いいたしたいと思います。
  63. 小室恒夫

    ○小室政府委員 ただいま阿左美委員のお示しの通り、絹織物の輸出を振興することは非常に大事なことでございます。実はアメリカを中心として市場を開拓いたしますために、六百何十万という金を補助いたしまして展示会等をやる。これは相当の効果を上げております。実際問題といいたしまして、昨年は生糸は輸出数量が若干減ったが、大体それをカバーいたしまして、前年に比べて五割以上絹織物の輸出が増大しております。もちろんアメリカの景気がよかったこととかいろいろな事情がありますが、同時に海外に対する宣伝活動の効果が相当に上ったと思う。もちろんアメリカだけに限定しないでもっと絹織物の輸出振興について力を入れなければならぬ。その点についてまだ力が不足だということについては、私ども将来できるだけ努力したいと考えております。
  64. 阿左美廣治

    ○阿左美委員 次に輸出振興対策として、海外市場の開拓が必要であるということは従来私どもが申してきたのでありますが、わが国の輸出商社は無用の競争を行いまして、海外の市場において価格の安売り競争を激化して信用を失墜しているという現状でございます。このためにいたずらにその生産業者にしわ寄せをされて、工賃の引き下げを強要されるということが目下の状態でございまして、自然粗悪品を作って輸出をするというような結果を招来しているというのが現在の状態でございます。これを防止するためには、輸出検査の制度を強化することはもちろんでございますけれども、この必要性を痛感されるならば、根本的に悪徳業者の根絶をはかるということが最も必要ではないかと思われるのでございます。要はこれらの輸出両社と称するものの数があまりにも多過ぎるのではないか。繊維工業におきましては、昨年設備過剰であるとの見地から、繊維工業設備臨時措置法が制定されまして、紡績機械及び染色設備の登録制が実施されて、過剰設備の処理を行なっておることは御承知の通りでございますが、絹織物の織機及び綿スフ織機は、政府の補助でこれをスクラップといたしまして買い上げて廃棄することになっております。また中小企業安定法の二十九条二項命令で、すでに織機は登録制になっておりまして、新規増設は禁止されておりますゆえに、輸出商社の過剰に対しましては、何らかの規制をする必要があるのではないかと考えられますが、この過剰商社を抹殺することはできないと思いますが、商社に対しまして登録制を行うような意思がありますか、お伺いいたしたいのでございます。
  65. 水田三喜男

    水田国務大臣 商社の過当競争を防ぐために、私どもは今いろいろなことを考えておりますし、またそれに関連する法律の改正も今準備しておりますが、過日大阪で大手筋同社が会合しまして、自主的にお互いを規制するいろいろな問題、希望、それから今おっしゃられたような問題についてもいろいろな意見を求めましたが、何としてもここで弱小商社について何らか政府が指導しなければならぬ。そうしてお互いの過当競争を避けるような方向をとらなければならぬということでございましたので、それを中心に今後の商社の登録制というようなものを今われわれの中で検討中でございますが、今のところからこうするんだということは、まだ何ともはっきり言えない段階でございます。
  66. 阿左美廣治

    ○阿左美委員 次に、中小企業の問題について、先ほど中小企業組織化の点につきましては、中小企業振興審議会の答申の内容を尊重いたしまして、目下法案を整備中であるように聞いておりますが、いわゆる中小企業団体法とか中小企業組織法とかありますが、もともと中小企業は全国的にあまりにも数が多過ぎ、受け入れ態勢が強化されていないところに最も弱点があるのであります。従っていかなる中小企業対策を講じようといたしましても、ちょうどざるで水をくむようなものでございまして、効果がないのであります。この根本的な欠陥を改めますのにはこの受け入れ態勢を強化する以外にはないと考えますが、何といいましても組合組織の強化をはかりますことが最も先決問題ではないかと思います。今回の中小企業団体法は、われわれが長年の間主張してきましたことを法的に整備強化されることになるわけで、ぜひとも今国会におきましてこの法案の通過を期待してやまない次第でございます。今までの経験によりますと、中小企業協同組合でもまた調整組合でも、組合員が加入脱退自由である、これが一番の欠陥でございまして、組合運営のガンともなっていたわけでございます。幸いに調整組合では二十九条の二項命令によってアウトサイダー規制をすることができますが、協同組合ではそれができないうらみがあるのでございます。ゆえに都合のよいときにはこの組合に加入し、都合が悪いときには脱退するというような組合員がなかなか多いのでありまして、組合事業運営はもちろん、その団結ができないということが組合を弱体化の方向に持っていくことになりますので、今回の団体法では加入命令が出されるようになっていますので、ぜひこの項目を挿入してもらいたいと思うのでございます。  あわせてお願いを申し上げたいのは、われわれの過去の苦しい体験からいたしますると、中小企業安定法にある二十九条の命令はなかなか出してもらえないということが、業界の最も悩みとするところでございますので、業界の不況の際、またそのおそれがあるというときには、いつ何時でもこの二十九条命令を出し得るようにしていただきたいのでございます、病人が病気になったときに、直ちに注射をするとか適当な処置を講じますれば死を免れることになるのでございますが、その時機を失うことになりますれば、効果はないのとひとしいので、今回の団体法におきましても加入命令もしくは事業活動の規制の命令を直ちに出していただくということが最も必要でございまして、政府当局におきましても、この点を十分御考慮いただきまして、今回は必ずその事態に即してこの命令を出していただくということをぜひともお願いをいたしたいのでございますが、この点に対しまして一つお伺いをしたいのでございます。
  67. 水田三喜男

    水田国務大臣 大体今そういう方向で立法の準備中でございます。
  68. 阿左美廣治

    ○阿左美委員 次に、耐用年数のことでございますが、現在では非常に長いのでございます。これはぜひ縮小をしてもらいたい。絹織機におきましては鉄製は二十四年、半木製の力織機におきましても十七年というように実に長いのでございますが、設備近代化を要請される今日、特に輸出産業として重要な地位を占めておるところの絹織物織機の設備は、一日も早く近代化して、輸出市場の競争に戦っていかなければならぬというような現状であるにもかかわらず、こういうように耐用命数が長いということでは、現在業者として非常な苦境に立っておるのでありまして、日進月歩のオートメーション時代であります今日、設備がこのような老朽の設備でありますれば、これを一日も早く近代化することが最も必要でございますので、この設備の耐用年数をぜひとも短縮していただきたいということを切望するのでありますが、これに対するところの御意見を一つ伺いたい。
  69. 小室恒夫

    ○小室政府委員 繊維工業設備臨時措置法の審議の際にも、紡績設備あるいは織機の関係の設備合理化のために耐用年数を短縮するようにという強い御要望もありました。私どももちろんその線に沿って大蔵省に対して具体的な計数を示して相当大幅な短縮について折衝中でございますが、一方産業設備については繊維関係、その他の関係、それぞれ横のバランスもございまして、実情の調査も国税庁等でしてもらって、鋭意研究してもらっておるわけでございます。できるだけ早い機会に結論を出すように努力したいと思います。もっとも設備近代化については、中小企業の多絹、人絹織布部門等については、あるいは耐用年数の短縮あるいは償却期間を短縮するということよりも、もっと直接的に近代化によって設備を入れかえるということがさらに近道であるという点もありますので、そういう点についても予算が増額されておりますので、できるだけ力を入れていきたいと思うのであります。
  70. 阿左美廣治

    ○阿左美委員 次に設備近代化補助金でございますが、今年度は四億円になっております。これは大幅に増額すべきであると思うのでございますが、この制度は府県の予算措置を必要ともいたしますし、実際問題といたしましては府県の赤字財政ではなかなか思うようにいかないと思いますが、この際府県の負担の軽減のでき得る限りにおきまして、中小企業金融機関への依存のでき得るように御考慮を願いたいと思いますが、その点に対しまして御意見を承わりたいのでございます。
  71. 川上為治

    ○川上政府委員 設備近代化の助成金につきましては、三十一年度は三億四千万円でありましたものを、今お話がありましたように四億ということにいたしましが、三十二年度におきましては、回収金が約八千万円程度入って参りますので、大体五億近い金額でこの助成金は運用されるということになりますと、三十一年度の三億四千万円から五億近い数字になるかと思うのであります。私どもの方といたしましてはもっとよけいほしかったのですが、結局そういう数字になりましたけれども、なるべくこれを効率的に動かして設備近代化を進めていきたいと考えます。  また、あわせまして、中小企業金融公庫等につきましては相当大幅な資金量をふやしましたので、こちらの方から設備近代化を進めるように貢献させていきたいと考えております。
  72. 阿左美廣治

    ○阿左美委員 まだいろいろ御質問申し上げたいこともありますが、時間の都合もございますから、本日はこれにて私の質問は打ち切って、また後日に譲ることにいたします。
  73. 小平久雄

    小平(久)委員長代理 本日はこの程度にとどめます。残余の質疑は次会にこれを行うことといたします。次会は来たる十九日午前十時より開会いたすこととし、本日はこれにて散会いたします。   午後一時三分散会