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1957-05-18 第26回国会 衆議院 社会労働委員会 第54号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十二年五月十八日(土曜日)     午前十時二十八分開議  出席委員    委員長 藤本 捨助君    理事 植村 武一君 理事 大坪 保雄君    理事 中川 俊思君 理事 野澤 清人君    理事 八田 貞義君 理事 八木 一男君    理事 吉川 兼光君       越智  茂君    大橋 武夫君       加藤鐐五郎君    亀山 孝一君       小島 徹三君    小林  郁君       田中 正巳君    高瀬  傳君       中村三之丞君    中山 マサ君       古川 丈吉君    亘  四郎君       有馬 輝武君    岡本 隆一君       滝井 義高君    西村 彰一君  出席政府委員         厚生政務次官  中垣 國男君         厚生事務官         (大臣官房国立         公園部長)   川嶋 三郎君         厚 生 技 官         (公衆衛生局         長)      山口 正義君  委員外出席者         厚生事務官         (大臣官房国立         公園部管理課         長)      甲賀 春一君         厚 生 技 官         (公衆衛生局環         境衛生部食品衛         生課長)    小谷新太郎君         厚生事務官         (薬務局薬事課         長)      菅野 周光君         専  門  員 川井 章知君     ————————————— 五月十七日  委員加藤常太郎辞任につき、その補欠として  安藤覺議長指名委員に選任された。 同月十八日  委員安藤覺君、有馬輝武君、井堀繁雄君及び受  田新吉辞任につき、その補欠として加藤常太  郎君、山田長司君、山崎始男君及び岡良一君が  議長指名委員に選任された。 同日  委員山田長司辞任につき、その補欠として堂  森芳夫君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 五月十八日  地区衛生組織育成に関する法律案加藤鐐五  郎君外二十五名提出衆法第四八号) の審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  食品衛生法の一部を改正する法律案(第二十四  回国会閣法第一二三号、参議院継続審査)  自然公園法案内閣提出第一四一号)(参議院  送付)  地区衛生組織育成に関する法律案加藤鐐五  郎君外二十五名提出衆法第四八号)     —————————————
  2. 植村武一

    植村委員長代理 これより会議を開きます。  都合により委員長が不在でありますので、私が委員長の職を勤めます。  保健所拡充強化に関する件について発言を求められておりますので、これを許します。古川丈吉君。
  3. 古川丈吉

    古川委員 ただいま議題になりました保健所拡充強化に関する件につきまして動議提出いたします。    保健所拡充強化に関する件   公衆衛生重要化に伴い、保健所業務が益々増加するに拘らず、その人的及び物的設備は誠に不完全で、その機能を十分発揮することができない。政府は速かに保健所に勤務する全職員国庫負担対象とするとともに保健所に関するすべての経費に対する国庫負担率を二分の一に引上げるべきである。併せて保健所勤務職員待遇改善を図るべきである。   右決議する。  案文は以上のごとくでありますが、提案の趣旨を御説明申し上げます。  御承知のように、文化生活には公衆衛生が非常に重要でありまして、従って保健所仕事が非常にふえてきたわけであります。今回政府において結核撲滅対策を強化し、また国民保険を推進し、家族計画等も強力に推進する、また一方においては、水道法を制定し、旅館業法を改正し、環境衛生関係営業運営適正化に関する法律案もすでに本院を通過しておるような状態で、ますます保健所仕事は任務が重くまた内容が増加するのでありまするが、その人的、物的の設備はまことに不十分であります。先般本委員会においても議論されましたように、保健所職員充足数は七割程度であるという状態であります。しかも保健所経費に対して、その運営費設備整備費施設改築費等については三分の一の国庫補助であり、ただ創設費について二分の一の国庫補助という状態でありまして、現在の地方財政困窮状態から見まして、この政府補助がありましても、これにつり合うところの地方予算が捻出できないので、予算化することが困難である、こういうように保健所充実ということは予算の面においてもなかなかむずかしい状態であります。国庫補助対象がただいま申し上げましたような状態になっておりますが、保健所に勤務しておりましても、食品衛生監視員であるとか、環境衛生監視員等というのは一般交付税の中に入れられておりますので、実際問題としては専任職員を置かれない、こういうような状態で、ますます保健所機能は発揮することができないという実情でありますので、ただいま案文で読み上げましたように、保健所に対する国庫負担は、保健所に要する経費の二分の一に全部引き上げると同町に、保健所職員に対する国庫負担も、全職員に対してこれを補助する、こういう具合にしなければとうてい保健所の目的は達せられないと思うのであります。本国会におきまして、先般、保健所勤務を希望する医学生歯科医学生に対して学資の一部貸与の制度が認められましたが、これのみでは足りないのでありまして、保健所の全職員に対しても、今回政府においても給与規定改訂されるこの際、ぜひとも保健所職員待遇を改善してやっていただきたい、こういう考えであります。  以上が動議趣旨と説明でございますが、以上を本委員会決議いたしまして政府関係に送付すべきことをここに動議として提出いたしたいと存ずるのであります。
  4. 植村武一

    植村委員長代理 ただいまの古川君の発言は、保健所拡充強化に関する件について決議するとの動議であります。  次に、本動議について発言を求められておりますので、これを許します。滝井義高君。
  5. 滝井義高

    滝井委員 ただいま古川委員から保健所拡充強化に関する件について動議が出ましたが、日本社会党といたしましてただいまの動議に全面的に賛成するものでございます。  昭和二十二年の九月に、GHQの覚書等によってパブリック・ヘルス・センターすなわち現在の保健所として発足をしてからすでに十年の歴史が経過をいたしました。当初この保健所発足をした当時においては、非常に大衆にアッピールをしたいわばはなばなしい官庁として登場して参ったのでございますが、時をけみするとともに、昭和二十六年ないし七年ごろに至っては次第にその予算等も横ばいの状態になり、保健所存在そのものが軽視せられる状態になって参りました。  一方厚生省行政考えてみますと、末端行政を受け持っておるものは、社会保険関係としては社会保険出張所があり、福祉関係としては福祉事務所あるいは児童相談所等があります。公衆衛生関係としては保健所があります。いわば私は厚生行政末端は、大きく分けてみれば社会保険出張所福祉事務所保健所との、この三本の足によって推進をせられるものだと考えます。社会保険出張所というものは、これは健康保険問題あるいは医療保障の問題、国民保険の論議というものがはなばなしくなるとともに、非常に強化される状態が出て参りました。福祉事務所もまた日本におけるボーダー・ライン層増加生活保護対象者増加のために、これも拡充強化されて参りました。三本の足の一つである保健所のみが現在取り残されておるという状態でございます。簡単にその実施体制状態を見ると、その実施体制がきわめて脆弱であるという点は、今古川委員からるるお述べになられたように、きわめて貧弱な状態を最近続けております。従ってこれをある程度整備し、人的にも物的にも強化することは特に必要です。最近における行政管理庁の報告を見ましても、全国保健所保健婦看護婦医師等充足率は、平均六一%という貧弱な状態でございます。しかも保健所の中で、全国九カ所の保健所に至っては専任医師もいないあるいは百二十四カ所の保健所は一人の医師しかいないという状態です。これはまさに地方財政の赤字というものが一切保健所に集中的にしわ寄せをされておる姿を示しておるものであろうと思います。またこれを東京都のように財政費かな状態のところをとってみても、東京人口八百万ありますが、十万人に一カ所の保健所が必要だというのが大体の基準でございますから、八百万で約八十カ所くらいのものがなくてはならぬにもかかわらず、現在五十一カ所程度しかございません。たとえば浜松市のような人口三十九万の日本中程度の代表的な都市においてさえも、わずかに一カ所しか保健所がないという状態です。今後ますますこういう保健所の必要な段階のときに、富裕県である東京やあるいは浜松のようなところにおいても、そういう状態であるということは、これは看過することのできない重大事だと思います。なお東京における食品衛生関係状態を見ましても、一人が受け持つ件数は三千件程度だといわれておるのでございますが、現在わずかに百六十人しかおりません。三千件を一人が受け持つとしても、そういう基準から考えると、三百三十五人必要とするのですが、百六十人、すなわち半分程度しかいないというみじめな状態でございます。特にこういう状態の中で、重要な結核予防対策を取り上げていこうということは、とうてい不可能です。こういうところにも日本結核対策の不振を来たす大きな原因があるといわなければならぬと思います。こういうように一、二の点を見て参りましても、実施体制というものがきわめて脆弱であって、第一線公衆衛生を保持する機関としての機能を欠いておるという断定ができるのでございます。  第二の、特にこの動議賛成しなければならぬ点は、非常に保健所予算細分化され、その配分が不合理であるという点でございます。二十六年ないし七年以来保健所予算というものは伸び悩みでございます。たとえば二十九年度の保健所の費用は十九億余り、三十年度は十七億余り、三十一年度は十九億余り、三十二年度は二十一億。三十二年度は三十一年度に比べて二億程度増加をいたしておりますが、これは物価の騰貴、人件費増加等が主たるものであって、実質の保健所運営というものが飛躍的に増加をするという姿で、そういう方向に向って予算増加をされたものでないという、こういう点がございます。しかもその十九億ないし二十一億程度予算がどういう形で保健所に行くかということをしさいに検討してみますと、まず厚生省各局課からそれぞれの系統を追って県や市の各部課に参ります。そして各県の部課に参ったその予算がさらに今度は細分化されて保健所に参るわけです。従って業務別保健所に参ります予算というものは、一切が縦割りにされております。はなはだしい状態は、予算科目が非常に多くなった、その予算科目の中の金額を見てみますと、一千円以下という金額がある。その千円の予算金額が一度に保健所に与えられるのではなくて、その千円の金がまた細分化されて保健所に与えられる、こういう状態です。これでは事務がきわめて複雑となり、精算事務も複雑化して、ここに行政監察機関や会計検査院からその会計の不合理指摘せられるという、こういう醜態も出てくるのでございます。このように予算細分化配分の不合理というものは、保健所予算運営についても、今後われわれはやはり考えなければならぬ点があろうと思います。  さらに第三に、この決議賛成をして、急速に保健所整備をやってもらわなければならぬ点は、非常に業務が過剰になっておるという点でございます。保健所業務関係のある法令をここに一つ一つ読み上げる煩を避けますが、五十八関係法令があるようでございます。五十八の関係法令をきわめて系統的に、きわめて円滑に運営をしていくためには、わずか六一%の人的整備状態では、とうていやっていくことができません。従ってこういう多くの法律運営をしておるばかりでなくして、いわば公衆衛生局関係仕事ばかりでなくて、各局にまたがる仕事をやっておる。そういう一切のしわがこの保健所に任せられておる、こういう状態でございます。従ってこういう点から考えて、急速に人的、物的機構整備して、そして第一線公衆衛生機関としての機能を発揮せしめることが何よりも緊急の要務だろうと思います。病気が発生をして、それに莫大な予算をつぎ込む前に、予防面に多くの予算をつぎ込んで発病を予防する力がより賢明な政治であり、有効に国民の税金を使う方向だと思います。そういう方向においてぜひこれは古川委員動議賛成をして、政府がこれの実現に誠意をもって当ることを要望して賛成の討論といたします。
  6. 八田貞義

    八田委員 保健所拡充強化に関する件の動議に関しまして、二、三当局に質問をいたしたいと思います。まず第一点は、最近地方では衛生部縮小統合が行われておりまして、すでに十七県から十八県では民生所管部と合併している状態でございます。これにつきまして関係者の明では衛生行政後退現象として問題を重視しておりますが、これに対しては厚生当局、特に公衆衛生局長のお考えを端的にお述べ願いたいと思います。
  7. 山口正義

    山口(正)政府委員 御指摘のように、最近地方財政関係もございまして、現在地方自治法において百万以上の人口を有する県においては、標準として衛生部を設置するという一応の基準ができておるにもかかわりませず、ただいま御指摘のように、十七、八県、最近ではまた二、三ふえましたので、現在二十県ばかりになっておりますが、衛生部民生部、あるいはなはだしい場合には労働部と一緒にして機構の改革をしているというところがあるのでございます。これはただいま御指摘のように衛生行政を伸ばしていくという立場からは、いろいろな面が考えなければなりませんけれども機構確立ということは、これは欠くことのできない事柄だと思うのでございます。ことに衛生行政というものが技術行政として特殊な面をたくさん包含しております関係から、そこを主宰いたします職員等関係もありまして、どうしても独立をして運営していかなければならぬと思うのでございます。にもかかわりませず、地方自治関係から地方財政困窮ということを理由にして、ただいま申し上げましたような、あるいは御指摘のありましたような事態が起っておりますことは、私どもとして非常に遺憾に存じているわけでございます。私どもはこれは単に、ただいま公衆衛生局長というお言葉でございましたけれども公衆衛生局関係でなしに、厚生省全体として地方行政機構の中における衛生部確立ということにつきましては、これは地方自治の面もございますけれども大臣、次官を初めとして、全省こぞって機会あるごとに地方の知事あるいはそれのほかの方々にその点を主張しておるわけでございます。自治庁ともその線に沿っていろいろ折衝いたしておるわけでございまして、事情が許せばできるだけ早い機会に衛生部独立を実現してもらいたい、そういうふうに考えているわけでございます。
  8. 八田貞義

    八田委員 次いで、時間がありませんから簡単に進めて参りますが、給与法の改訂によりまして地方公務員給与改訂も行われて参ります。その際に保健所所長行政職として行遇するか、あるいは医療職として待遇するか、こういう問題がございます。また保健所所員としての医師、これを医療職としてやっていくか。この点につきまして、もちろんこれは地方自治の問題ですから、いろいろと及ぼす影響も考えなければならぬですが、厚生当局としては保健所所長身分待遇についてどのような考えを持っているか、またどのようにするのが衛生行政として正しい姿であるとお考えになるか、その点を伺いたい。
  9. 山口正義

    山口(正)政府委員 御指摘の点は、国家公務員給与体系がきまりますれば、それに準じて地方でやはり地方公務員給与体系が形づくられると思うのでございます。その際に、果して国家公務員と同じような職種の分け方をいたしますかどうかについては、必ずしもそうでもないというようなことも聞いているわけでございます。その際に、かりに国家公務員と同じような体系に分けられました場合に、保健所職員医療職にするのがいいか行政職にするのがいいか、特に保健所医師についてどう考えるかという御意見でございますが、これにつきましては、先般の衛生部長会議におきましても、医療職に、ぜひしてほしいというような希望も相当強く出ております。私どもただいまここで行政職にするのがいいか医療職にするのがいいかという点をはっきりまだ断定をいたしかねる状態でございますが、地方公務員給与体系の分け方を見て、地方の声も聞きながら、最も妥当な線を主張して、自治庁大蔵省と折衝したいと思っております。なお、待遇の問題につきましては、先般公衆衛生就学資金貸与法案を御審議願いました際には政務次官からお答え申し上げましたように、保健所職員がどの程度まで進み得るか。たとえば国家公務員で申しますれば、一等級、二等級、三等級というような区別がございますが、衛生行政に携わります、あるいは公的の医療機関などに勤務いたします者が進み得ますものとバランスをとって、できるだけ高い地位に進み得るように今後しなければならないと思っておりまして、これは体系がはっきりきまります前からすでに自治庁大蔵省と折衝いたしているわけでございます。その点は本日の御決議にもございましたように、保健所勤務職員待遇改善をはかるということについては、十分御趣旨を尊重して折衝して参りたいと存じます。
  10. 八田貞義

    八田委員 それから保健所は現在衛生関係許認可事務指導取締り、それに国にいくと両面の業務を担当しているわけであります。これら業務関係法律、条例などは数多くありまして、これらについてはそれぞれ罰則がつけられておりまするが、これらのほとんどが軽量な罰則になっておりますために、悪質な違反者を告発してもなかなか起訴されない、ここにいろいろな問題を含んでいると思うのであります。公衆衛生関係法律が施行されましても、違反者を告発しても起訴されないような、いわば違反者をほったらかしておるような状態では、保健所職員情熱が阻害されて参ります。しかもまた公衆衛生充実発展の大きなガンともなると考えられております。そこで、このような法律は、先ほど滝井委員も触れておりましたが、保健所関係一般法律は五十八くらいあるのですね。これらの法律につきまして違反件数あるいは告発件数中央機関である厚生省で集計しておられるかどうか、この点をお伺いいたしたいと思うのです。
  11. 山口正義

    山口(正)政府委員 ただいま御指摘罰則を伴います法律について告発件数あるいは違反件数厚生省で集計しているかどうかというお尋ねでございますが、これは保健所事務所管しておりますところで一括して集計しているということでなしに、それぞれの業務、たとえば食品衛生なら食品衛生所管主管課におきまして食品衛生関係違反事件が一年にどれくらいあったか、それに対してどういうふうな措置がとられたかということを集計いたしておりまして、地方から報告をとっております。保健所関係を全部まとめて幾らになるかというようなことは、それをまとめまして御報告できると思います。
  12. 八田貞義

    八田委員 全国的なデータが大体作成されておる、ただ個々の保健所までについてはまだ十分な集計が終っておらない、こういうお答えでございましたが、それらを通じまして、食品衛生とか環境衛生関係法律の悪質な違反件数というものは減ってきておるわけであります。ところが狂犬病予防法とか、へい獣処理場法伝染病予防法性病予防法など、主として個人対象とした法律違反というものは非常に多いのですが、いずれも罰則が比較的低いのです。ですから、そのほとんどが告発されていない状態でございます。これは局長狂犬病予防法に沿って告発した件数というものば東京管内幾らで、それが一体どのような状態になっておるかということは御存じのところと思います。この点については触れませんが、全国的に見て参りますと、個人対象とした法律違反というものは罰則が非常に低いんです。今度営業関係法律としまして、旅館業法は今までの五千円以下の罰金が三万円以下の罰金に直って参りました。またあるいは宿泊者宿帳の記入を偽わった場合の拘留、科料、これはそのままでございますが、宿帳に不正があった場合千円の罰金が五千円、こういうように改正されて参りました。これを興行場法とか、公衆浴場法理容師美容師法クリーニング業法、あるいはと畜場法、へい獣処理場法等法律、それから優生保護法営養改善法伝染病予防法予防接種法性病予防法狂犬病予防法、こういうものについてずっと調べてみますと、そのいずれも罰則というものは非常に低いんです。もちろん営業関係法律違反者の場合には、改善命令を出すとか、あるいは営業禁止停止命令を出すとか、あるいは閉鎖命令など、こういった法律によって大体のことは取り締ることはできますが、それでも徹底していない場合が非常に多い。特に個人対象とした法律違反というものはほとんどその大部分が告発されていない。こういうことでは、保健所職員情熱というものはさめて参ります。これらについては全国的なデータをおまとめになればこれをいかにすべきかということは十分におわかりになると思うのですから、この点について相当御検討されまして、改むべきものは早く改められることが必要であろうと思う。  それからもう一つは、地方庁やあるいは保健所ではこういう不平を訴えておる。法的解釈について伺い再生省に出しましても回答をもらったことはない。かえって法制局へ出した方が、時間はかかるが、必ず回答してくれる。それに法律自体が年々不備になってくるので、この点厚生省で十分研究して、そうして改正すべき点はどんどん改正して、その点を保健所職員情熱をさまさないような取扱いをしてくれ、こういうことを言っておるわけです。というのは、簡単に言いますと、保健所あたりのいろいろな法的解釈について伺いを出した場合に、厚生省の方ではなかなか返答してくれない、こういうことが多いというのでありますから、この点について十分に注意されまして、かりそめにもこういうような不満があると、公衆衛生行政指導第一線機関情熱をさますことになりますから、この点について十分な御注意をお願いしたい。
  13. 山口正義

    山口(正)政府委員 第一点の罰則の問題でございます。これは法律最後の手段として罰則がございますが、最初から罰則を振りかざすという行き方をしない方が保健所運営としては当を得ておるということは当然だと思うのであります。できるだけ指導して参りまして、どうしてもいかない場合に罰則ということになるわけでありますが、営業関係営業停止、許可の取消しということが一番痛いのでございますが、個人対象といたします場合は必ずしもそういうことはないというので、法の行政効果を上げていくという点から、やはり罰則というものは最終的には必要だと思うのでございます。罰則の軽重につきましていろいろアンバランスがあり、また軽過ぎるという御指摘もあります。この点は法務省の刑事局と国全体の問題としていろいろ相談しながら改めるべきものは改めていきたいと考えております。ただ私心配いたしますのは、せっかく告発しようと思っても、罰則が軽いからというので保健所職員情熱を失わせるという御指摘がございましたが、私どもとしましては、なるべくそういうことで情熱を燃やさせないように、ほかの面でやるということでできるだけ指導でいきたい。しかし最後の締めくくりの罰則の点は、御指摘の点を十分注意してやっていきたいというふうに考えております。  それから法的解釈回答をちっともよこさないというお話でありますが、これは少し八田先生に対して申し上げた保健所の方で思い過ぎておるのではないかというふうに考えますのは、保健所からいろいろな疑義が起りますれば、地方衛生部回答すべきものは衛生部回答し、さらに厚生省の意見を聞くべきものは厚生省の意見を聞いてもらう、それに対して厚生省回答するということになっておりまして、これはいろいろな問題について始終地方から問い合せがございます。それに対してそれぞれの主管課から所管法律の適用について回答を出しているのであります。私一々それを決裁しておりますから、現実に非常にしばしば出しておることは事実でございます。ただ質問に対して回答の数がまだ十分でないという点はあるいは地方においてはあろうかと思うのでありますが、御指摘の点は今後とも十分注意してやって参りたいと思います。
  14. 八田貞義

    八田委員 行政管理庁で昨年一月から三月まで実施した保健所を中心とした公衆衛生行政はどうなっておりますか。もちろん行政監察の成績の報告書を見ますと、理論的であって、保健所の実情があまり把握されていないという欠点はございますが、しかし全般的な問題はよくつかんでおります。保健所関係補助金交付が適正でたい、人員不足は目に余るものがあるというような勧告については、厚生当局におきましては関係課長会議を開いてこの勧告に対する回答をされるようでありますが、それらの関係については時間がありませんからあとで伺うことにいたします。もちろん保健所行政はサービス行政でありますから、罰則をもっと強化して取り締っていくということは考えなければなりませんが、幾ら告発してみても違反者が処分されないということになりてくると、勢い憎まれては損だからほったらかしておいた方がいいんだという気分になって参ります。そこに保健所行政がマンネリズムになってくるということが起ってくるのですから、十分にいろいろな違反件数とか告発件数とかいうものを全国的に集計されまして、法律と照らし合せていろいろな点において改正さるべきである。保健所関係法律は相当古いものがたくさんあります。伝染病予防法一つ取り上げてみても古典的なもので、この際において十分に検討して改正すべき時期にきておりますから、この点を申し上げまして特段の努力をされるようお願いいたします。
  15. 植村武一

    植村委員長代理 ほかに御発言がありませんので採決いたします。古川君の動議賛成の諸君の起立を求めます。     〔総員起立〕
  16. 植村武一

    植村委員長代理 起立総員。よって保健所拡充強化に関する件について古川君の動議の通り決議することに決しました。(拍手)     —————————————
  17. 植村武一

    植村委員長代理 次に地区衛生組織育成に関する法律案を議題とし、審査に入ります。趣旨の説明を聴取いたします。加藤鐐五郎君。     —————————————
  18. 加藤鐐五郎

    ○加藤(鐐)委員 ただいま議題となりました地区衛生組織育成に関する法律案について、その提案の理由を御説明申し上げます。  環境衛生の向上は、明朗快適な日常出活の源泉であり、国民生活の改善向上の基盤であります。しかるにわが国におきましては、従来種種の事情から環境衛生の分野が立ちおくれ、健康明朗な国民生活を実現するため、大きな支障となっているのがその現状であります。一方、公衆衛生の向上及び増進をはかるためには、行政施策と相待って、地域社会の住民が正しい理解に基いて、自主的に公衆衛生活動を推進することが不可欠の要件でありますが、わが国におきましては、きわめて一部の地域を除いては、このような見地からの地域社会の自主的な組織活動が活発でなく公衆衛生の向上増進のため大きな弱点となっているのであります。  従って、最近着々その成果を上げております蚊とハエのいない生活実践運動のごときもこれをさらに全国的に普及させ、より一そうの効果を具現するためには、従来の経験から国としても技術的並びに財政的な援助を与えることが必要と考えられます。  地域社会の規模における住民の自主的な組織活動をその自主性を阻害することのない配慮のもとに、国としても積極的に育成助長することは、今後のわが国の公衆衛生の健全な発展と明朗な地域社会の実現のために、ぜひとも必要と考えられるのでありまして、これが本法律案提出いたしました津由でございます。  次に本法律案のおもな内容について申し上げますれば、まず第一に、この法律対象となる地区衛生組織は、市町村の住民の全部または一部が共同して蚊、ハエ、ネズミ等の駆除その他地方における公衆衛生の向上及び増産に資するための、業を行う目的で自主的に組織する団体とし、地区衛生組織を組織したときは、その代表者は厚生省令の定めるところにより、規約を市町村長に届出ることとし、二以上の地区衛生組織ば、連合会を組織して会員の指導及び連絡に資することができることといたしているのであります。  第二に、市町村長は、当該吏員に地区衛生組織の行う事業活動を指導させることができることとし、また市町村は、地区衛生組織に対し、蚊、ハエ、ネズミ等の駆除川の薬品もしくは器具を配布し、またはその事業に要する費用の一部を補助することができることといたしております。  第三に、国は市町村に対し、予算の範間内において、政令の定めるところにより、市町村がこれら薬品もしくは器具の配布または補助に要する費用の一部を補助することができることといたしているのであります。  以上が本法律案趣旨並びに内容の概略でございますが、何とぞ慎重に御審議の上すみやかに御可決あらんことをお願いいたします。
  19. 植村武一

    植村委員長代理 以上で説明は終りました。
  20. 植村武一

    植村委員長代理 次に食品衛生法の一部を改正する法律案及び自然公園法案を一括して議題とし、審査を進めます。質疑の通告があります。これを許します。まず自然公言法案についての質疑に入ります。八田貞義君。
  21. 八田貞義

    八田委員 この自然公園法案の提案理由を拝見いたしますると、自然保護ということが大きく取り上げられておりますが、当然自然保護ということが大切な面であることは申すまでもないのであります。文明というのは技術を通じまして、人類の生活目的に役立つように生活環境を改善し、そうして自然環境を破壊して参ります。こうして世界各国の人文景観というものは拡張され、自然景観というものは年々縮小され、消滅していく傾向にございます。国土の開発ということが調和のとれた方法で行われるならばいいのでありますが、ある特殊な目的を追求するあまり、他の一切を犠牲にし、時として開発がかえって人類の福祉を阻害する場合も見られております。もし国土が単なる生産とか居住とか交通だけの目的に充当されるのでは、国民の生きがいのある文化生活は僻まれないことになって参ります。わかり切ったようなことではありまするが、現在われわれの国土は、そうした文化化活の場を無視して一方的に開発されているきらいがございます。文化生活といっても、都会的な享楽山の施設はかなり尊重されておりまするが、自然に親しむリクリエーション施設というものは、すこぶる閑却されております。ここに国土の自然景観を保存しようとするところの大きな意義があるわけであります。  ところでこの自然保護の対象といたしましては、一定の区域を画してする総合的な自然保護区域の設定ということが、一番重要であろうと考えられます。その中でも特に緊要なのは、国立公園内に設定される特別保護地区の問題でございまして、わが国においては土地所有関係や産業開発関係から、全区域にわたって、欧米の国立公園のように絶対自然保護区域の認定はできておりませんで、地域性を採用して自然保護の上に手かげんが加えられておるような状態にあるわけでございます。ところで特別保護地区というものは、広く設定するように好めていかなければならぬのでありますが、わが国の今日の国立公園における特別保護地区の設定はどのような状態になっておるか。この参考資料の中を拝見いたしましても、十分に私らにはっかめないのでありますが、一体この特別保護地区の設定という面について、現在どのような状態に置かれておるか、また将来どのようにしてこの地区の拡張をやっていかれるのか、御見解を伺いたい。
  22. 川嶋三郎

    ○川嶋政府委員 御指摘の通り、特別保護地区は、国立公園の中の特別地域の中でも、さらに自然を厳正に保護しようという目的を持った地区でございます。この地区の設定に当りましては、その設定によって、この法案にありますように、公用制限を強く受けますので、さような制限の目的を達成するような場所が、この設定の二つの眼目になっております。もちろん、非常に重要な景観を維持するための場所でなければなりませんので、そういう場所ば、その面においても制限されるのであります。現況は、さようなわけ合いできわめて狭い区域を選ばれております。  将来のお尋ねでございますが、国立公園につきましては、今後新しく設定するということが、現在の方針として考えられておりませんので、現状の特別保護地区を守っていくという形になると思うのであります。国定公国については、現在なお審議中のものもございますので、さような地区の設定の問題が出て参りますが、これは国立と比べましては、その地区の取り方が非常に少いだろう、こういうように考えております。
  23. 八田貞義

    八田委員 特別保護地区の問題で、国立公園なんかを見ますと、まだ未設定の国立公国が相当あるわけです。私は、哺乳動物などの自然状態というようなことから考えますと、動物群落の保護というものは、やはり特別保護地区の設定がなければ、これはどうしても徹底しないと思うのです。大体哺乳動物は、少くとも一万ヘクタールを必要とするのだということでございますから、現在の特別保護地区を守っていくんだというような消極的なお考えでなくて、将来国立公園には、特別保穫地区を、面積に対して一〇%くらいは設けるのだというような、強い御意思を発表されても、私は国立公園の自然保護という見地からして当然であろうと考えられるのです。この点につきまして、相当気を大きくされまして、この問題の解決に当られるようにお願いしたいと思うのであります。  それからもう一つは、わが国は気候とか地形、地質、生物などにつきまして、世界にも珍しいほどの変化に富んでおりまして、景観要素が多種多様であるばかりでなく、その密度が大きく、代表的な景観の数はすこぶる多いので、国土全体から見て、自然保護区域の配置につきましては、慎重な検討を要すると思うのであります。この点につきまして、全国にわたって自然保護区域の設定について調査する必要があろうと思う。このことについて現在厚生当局において計画をお持ちになっているかどうか、この点お話し願いたい。
  24. 川嶋三郎

    ○川嶋政府委員 先ほどの私からの御答弁は、少し不足があったように思いますが、国立公園の中で、先ほど特別保護地区を、現在ほとんど設定しているというお話をいたしましたが、その資料の中で、特別保護地区の予定地というのがございます。これは、実は内部的にはきまっておっても、形式的には決定していないものでありまして、そういうのが、ここに載っておるのでございます。私はそれも含めて比定のように申し上げてはなはだ失礼いたしました。  次の、動物等の保護という点からのご質問でございますが、公園によりまして、たとえば北海道の大雪山、あるいは中部山岳、磐梯山等には、かなりの面積の特別保護地区を設定しております。私どもはもとより、先はどの御意見のように、開発との調和において自然を保護していくわけでございますが、最近の日本一般生物——これは世界的にもそうでありますが、自然を利用する必要が多くなってきているわけでありますので、自然保護につきましては私どももっと勇敢に、積極的にいたして参りたいと思っているわけであります。  次に、自然保護に関する場所の調査についての御質問でございますが、私どもも国土全体にわたって価値のある自然についてはさような調査をして価値判断をして参りたい、できるだけの措置をとりたいと思います。
  25. 八田貞義

    八田委員 自然保護地域設定に関する調査委員会みたいなものをお作りになっておられるかどうか。ただデスク・ブランでなくて、実際に当って調査されておるかどうか、その点をお伺いしたい。
  26. 川嶋三郎

    ○川嶋政府委員 さような地区について、実際仕事をしていく上の調査等は、もちろん国立公園部の部員がいたすわけでありますが、さらに諮問機関として国立公園審議会というのがございまして、この審議会でも、かけられた案について審議いたします。さらに必要がある場合には、委員がみずから現場に出て調査して意見を立てる、こういうやり方をいたしております。
  27. 八田貞義

    八田委員 設定についてはどうぞ積極的にお進め下さるようにお願いいたします。ただ、自然保護地域における自然保護というのは、単に区域を設定しただけでは少しも効果が上らないのであります。近ごろ、登山、ハイキングなどの流行によって、これらの地域に出入する者が多くなって参りました。しかも、心なき自然の破壊を行う者が相当にふえております。これは、国民に自然保護思想が普及していないためかと思いますが、一面これを管理する人的並びに物的施設が整備されていないためでもございます。観光行政の重大問題の一つとして、当局の猛省を促したいのであります。アメリカの国立公園では、自然保護をスポーツに優先せしめることが一つの重要な政策とされておるわけでございます。わが国では、自然保護という見地から見まして、人的並びに物的管理機構が非常に不十分であるが、これをどのようにして改善されてくか、あるいは整備されていくか、お伺いいたします。
  28. 川嶋三郎

    ○川嶋政府委員 全く御指摘の通りであります。広い区域ではございますが、自然を保護するためにはやはり十分な人的機構を持って管理いたしたいのでございます。国立公園制度が始まりましてからちょうど二十五年ほどになります。戦争によって中断いたしましたが、戦後まただんだんと管理機構等もできて参っております。従ってまだ不完全でございまして、現在のところ国立公園一カ所に二人ないし三人くらいの管理員をもって管理している程度でございます。今後もっと整備して参りたい、こう思っております。
  29. 八田貞義

    八田委員 管理機構整備ということにつきまして、人的配備が非常に少いのでございますが、これらの予算確保につきましては、われわれも重大な関心を持っておりますから、どうか積極的に予算要求をしていただくようにお願いいたしたいのであります。  もう一つは、国立公園その他自然公園や各秘自然保護地区は、現地に博物館を設けるとか、あるいは自然研究路を設定するとか、ナチュラリスト・レーンジャーを配置しまして、旅行者を現地について指導したり、構話を試みるということは、自然保護の見地より非常に意義がございます。そのためには、現在の国立公園部の管理機構充実して、レーンジャー・システムを強化して、国立公園管理職員としてりっぱな資格のあるものを配置する必要があるわけであります。これらにつきましてどのような構想をもって進めておられるかお伺いいたします。
  30. 川嶋三郎

    ○川嶋政府委員 御指摘の通り、ただ自然の保護のみならず、公園の利用者の指導ということも管理の大きな仕事になっておるわけであります。従って、管理員の能力も高いものでなければならない、かように考えております。現状を申しますと、管理員になるものは別に法律的な資格は現在できておりませんが、大学の専門の学問をされたものを採用する、実際そういうものが採用されているのが実情でございます。そして毎年できるだけ増員するという建前で予算を要求しておりまして、実情は少しずつふえているという形でございますが、公園の利用が急速にふえている現状から考え、今後管理員の充実をはかり機構整備して参りたい、かように念願しておるわけであります。
  31. 八田貞義

    八田委員 自然保護の問題で、日本人は一般に植物については深い興味を持っておりますが、動物に関する興味が薄いように見えます。法律としての狩猟法は、海外では過去のものとして存在しておりまして、一様に鳥獣保護法に改正される機運にあるわけであります。わが国におきましても、一般的な傾向として鳥獣保護の思想が台頭してきてはおりますが、まだまだ動物の捕獲が盛んに行われておるわけであります。この点につきまして、狩猟法というものはもう過去のものである、むしろこれを改正して鳥獣保護法というような面に進んでいくべきであると考えますが、どうでしょうか。
  32. 川嶋三郎

    ○川嶋政府委員 その問題は私も同感でありまして、自然保護を強く支持しております人たちの間から、現在の狩猟法より鳥獣保護法に持っていきたい、こういう声が相当台頭してきております。特別保護地区においては、鳥獣の保護に関して、自然保護の立場から、狩猟法とは別にこの法案で規定いたして参るという条文になっております。
  33. 八田貞義

    八田委員 水道法のときも問題になったのですが、近ごろわが国におきましても、工場排水によって湖水が汚染されまして、魚が全然生存できないというところが相当ふえて参りました。こういった面につきましても今後十分に調査されまして、湖がいたずらに排水で汚染され、自然景観がなくなってしまうということは、どうか一つ強い御意思を持って禁止されるような方向に進んでいかれるように希望するのであります。私の願いといたしましては、産業の開発はもとより必要でございますが、せめて国土の一角に国土本来の姿をとどめる原始自然のままの自然保護区域を設定することが非常に必要であると思うのであります。ですから、産業、交通、居住などのために自然を破壊するおそれのある場合にば、これを最小限度にとどめるよう配慮されるということはまことに必要と感じますので、どうかこの方面につきまして特段の努力をされるよう希望いたしまして、私の質問を終ります。
  34. 植村武一

  35. 有馬輝武

    有馬(輝)委員 私は国立公園法に基きまして、自然公国法案の府議に当りまして、二、三の点についてお伺いいたしたいと存じます。この国立公園法の特別保護地区の指定について、厚生省はどういった観点から見詰められておるのか。非常に抽象的な質問をいたしますが、このような質問をいたしますのは次のような理由によるものであります。  卑近な例で申し上げますが、鹿児島の屋久島の国立公園指定の話が進められておりますが、ここ数年来農林省の林野庁とあなた方の方との話し合いが一向につかない。第一禁伐区域、第二禁伐区域、そういった点について、あなた方はできるだけ国立公園の体裁を整えるためにこの禁伐区域を広くしようという考え方に立っておられる。もちろん国立公園の体裁を整えるために、せっかく指定するものであるから、そういった観点に立たれるのは私たちとしても立場上理解できるわけであります。しかし、あの島の実態を御承知の皆さん方も十分おわかりだろうと思いますが、島全体が、耕作反別もない、漁業に依存する道もない、ほとんど生計の大半を国有林野事業に依存しておる状況の中で、今申し上げましたような、国立公園はかくあるべきであるという観点からのみ事を処理するのでは、問題は解決しないのであります。役所仕事の回収も忌むべき欠陥セクショナリズムは、こういった面に現われておって、ほんとうの一意味での有機的な関連を持って施策を推し進める態度が欠けておるがために、このような簡単な問題について数年かかるという事態を引き起しておるのではないかとさえ疑わざるを得ないのであります。この点につきまして特別地区の設定についてどのような考え方を持っておられるのか、そして今の屋久島の問題について、なぜ現在まで遷延させられたのか、その理由を簡単でけっこうでございますから、お伺いいたしたいと思うのであります。
  36. 川嶋三郎

    ○川嶋政府委員 まず特別地域あるいは特別保護地区の設定の態度であります。これは当該公園の風致を維持するためあるいは景観を維持するために、特に必要なるときに設定するということで、この設定に当りましては、いろいろな事情を考慮し、たとえば商業関係とかあるいは産業との関係等も十分考慮いたして設定するわけでありますが、その基礎にはさらに科学的にあるいは風景、規模、体裁等考えて慎重なる態度によって設定いたしていく方針であるわけであります。  次に屋久島についてのお尋ねでありますが、屋久島は御承知のように屋久島杉という、これは杉に関しては世界に比類のない巨大木の植生しておるところであります。この尾久杉の保存を主として目標にいたしまして、屋久の国立公園の区域をきめようとしたわけであります。この屋久杉をはずしては、星久の公園が成り立たないという判断のもとに、指定の手続は進められておるわけでございますが、この公園の指定に当りましては関係の役所に協議する、建前上当然そういうことになっておりまして、現在農林省と協議中でございます。これは協議がととのわなければ指定ができないわけでございます。従ってさような意味で、現在まだ細目の場所について協議がととのわないのでおくれておるわけでございますが、これは最近相当に協議をいたしまして、大体近く妥結するのではなかろうかという予想をいたしておるのでございます。
  37. 有馬輝武

    有馬(輝)委員 近く妥結するのではないかというお話でございますので、積極的に進めていただきたいと思います。しかし、今少い官庁予算の中から旅費を使って出かけていって、帰ってこられたのはいつなんですか。しかもただ一カ月や二カ月前の問題でなく、少くともここ数年来懸案になっておる問題に対して、今あなたが御答弁になったような屋久杉が主になっておるし、それを風致の観点からするならば取り入れて、そして私が冒頭に申し上げましたように、やはり厚生省としての一定の考え方があることもわかる。しかしそれにもおのずから限界があるというふうに私は考えるのであります。国有林野事業を阻害するような国立公園の指定というのは無意味なのであります。そこにはおのずから協議する余地というものが出てくるし、限界というものが出てくるはずであります。それを何回も調査しながら今までほうっておいて、近く協議が成立する見込であります、こういうことでは、私はスムーズな行政運営というものが行われておるというふうには理解できないのであります。私も役所におりまして、農林省におって、今あなたがおっしゃった国有林野の問題についても、あなた方より知識は少いけれども、少しはわかっておるつもりでおります。書類を積んでおくだけが役所の能ではないはずであります。いま少し積極的に事を進め、しかも自分のセクションの中からだけ物を見るのじゃなくて、大島的に判断して迅速に結論を出す、こういった努力をしていただきたいと思うのであります。私は皆さん方の立場に立ち、また国有林野事業の立場に立って、地元の人たちからは、むしろ敵愾心を持って見られるような意味での発言も地元に行っていたしております。地元の諸君は、国立公園の指定になったならば観光家はどんどん抑しかけて、金がたんまり落ちるであろうというような幻想さえ抱いております。何であんな遠いところに、船で八時間もかかる、ちょっとしけると船は出ない、そういったところに観光客が行くものですか。それでもやはり地元の諸君は素朴に、この国立公園の指定について大きな希望を抱いておるのであります。それと同時に、国分たちが国有林事業の推進によって生活がささえられておることについて、ただ国立公園の指定ということだけで目先がまっ暗になっておって、禁伐区域がどうなるかというような問題については五里霧中である。そこを皆さんの方がよく理解させ、納得させ、しかも仕事を迅速に進めさせる努力をしなければならない立場にあるはずであります。そういった点について、もとより現在まで林野庁と十分の打ち合せを続けてこられた点についてはわかりますけれども、あまりにも常識はずれな時間をかけ、その仕事を渋滞させておる責めについては、私はこの際はっきりさせておきたいと思う。近くということでありますけれども、いつごろ結論を出されるのか、その点をはっきりさせていただきたいと存じます。
  38. 川嶋三郎

    ○川嶋政府委員 問題は屋久島の林業の開発という仕事が林野庁の仕事として進んでおりまして、そこに国立公園の指定という問題が起きたわけであります。両者の計画、特別地域及び特別保護地区と森林施業案の接触ということが協議の内容であったかと思います。それで申し上げましたように相当何回も、また御指摘のように長くかかりまして、私どもの方もそういう事情を考慮いたしまして、当初きめた保護のための地域ばその後折衝により、現在は若干変えて協議を進めておるわけでございます。いつ妥結するかという問題は、私はしばしば近く妥結するのだということを実は農林省からも聞いておるので申し上げておるわけでございますが、これは折衝でございますので、その程度でごかんべん願いたいと思います。
  39. 有馬輝武

    有馬(輝)委員 私は林野庁長官にも業務部長にも、ちょいちょい会ってお話を伺っております。私であなたのところに押しかけるのは、何か責任を追及するみたいで悪いから、よく話を進めて下さいということで現在まで見守っておったわけです。ところが一向に話がつかない。国有林野事業の立場からすれば、最大の限界というものは一応あるわけなんです。そういった点については、やはり厚生省の方だって理解がいかないはずはないのでありまして、そういった点で、私は先ほどから大きな戸を出しましてあなたの責任を追及するように申しましたが、大きな声は地声でありまして、またむずかしく言うのは平生のくせでありまして、ちっとも責任を追及するつもりはございませんから、一つその点よろしくお願いをいたしたいと存じます。私の質問はこれで終ります。
  40. 植村武一

  41. 滝井義高

    滝井委員 きょうは十分間の約束をしておりますので、簡単にお尋ねします。  まず第一に、この国定公園の公園計画を行う場合に、一部厚生大臣、一部都道府県知事がやることになっているのですが、こういう関係は一体どうなるのか。国立公園は厚生大臣がやることになるのですが、国定公園になった場合に、その公園計画を一部厚生大臣、一部知事がやる場合のそういう関係はどうなるのか、これを御説明願いたいと思います。
  42. 川嶋三郎

    ○川嶋政府委員 その点はかなり条文にも詳しく書いておるわけでございますが、厚生大臣がきめるものは保護、すなわち自然の保護のための規制に関するもの、もう一つは利用の施設に関するもので集団施設地区に関するもの、それから政令で定める施設、たとえば幹線道路に関するようなもの、こういうものを厚生大臣関係都道府県の申し出によってきめる、その他のものとしますと単独施設のようなもの、たとえば展望台のようなもの、あるいは避難小屋のようなもの、こういうものにつきましては都道府県知市がきめる、こういう建前をとっております。
  43. 滝井義高

    滝井委員 次にはそれと同じようなことですが、十五条をごらんいただくと、ここにも一部を執行することができるものが、十五条の二項と三項と二通り書いてあるわけです。まず二項の方に、「都道府県以外の公共団体は、都道府県知事の承認を受けて、国定公園に関する公園事業の一部を執行することができる。」こうなっておる。それからその次の三項は、「国及び公共団体以外の者は、」、あとはみな同じなのですね。そうするとただ二項と三項と、国が入るか入らぬかの違いであとはみな同じなのですが、どうしてこういう書き方をしなければならぬのか。
  44. 川嶋三郎

    ○川嶋政府委員 御説明申し上げます。国定公園に関する公園事業の執行者は、第一項にありますように都道府県が決行する、これが建前でございます。都道府県以外の公共団体と申しますのは市町村あるいは森林組合その他がございますが、こういう公共団体は知事の承認というものを受けて、当該公園事業の一部を執行する。次に国及び公共団体以外の者と申しますと、会社の私企業などがあります。交通会社その他、こういう会社がやる場合は、国の行政機構の建前からやるわけでございますが、知事の認可を受けて公園事業の一部を執行する、こういうふうに分けておるわけでございます。
  45. 滝井義高

    滝井委員 わかりました。  次に、自然公園審議会の委員、これは三十七人という端数のある数が出ておるのですが、何かこれは前からずっと、国立公園等のときにこういうしきたりでもあって、こういう多い数できめておるのですか。
  46. 川嶋三郎

    ○川嶋政府委員 三十七人というのは、現行の国立公園法の審議会の委員の数をとっておるわけでございます。数の多いのは、相当広い区域をいろいろな角度から審議して、指定あるいは保護の区域をきめなければなりませんので、いろいろな学問の専門家を入れておりますから多くなっているわけでございますが、そういう学識経験者のほかに、関係各省の代表者も約三分の一入っております。
  47. 滝井義高

    滝井委員 委員の任命を見ますと、審議会の委員及び臨時委員関係行政機関職員及び学識経験のある者のうちから厚生大臣が任命することになっております。関係行政機関が三分の一入るとすれば、残りの人たちは学識経験者になるのですが、これはどういうことを基準にしてお出しになるのでしょうか。おそらくそのこまかいことは政令で書くことになるのだろうと思いますが、どういう基準でこういう委員をお出しになるのですか。
  48. 川嶋三郎

    ○川嶋政府委員 これは端的に申しますと、植物学の専門家あるいは動物学の専門家、あるいは地理、地質、造園であるとか、土木、建築方面の専門家、こういう学識経験者になっております。
  49. 滝井義高

    滝井委員 わかりました。各界各層から均分に出る、こういうことのようでございます。大体わかりました。  次に、今度できます自然公園法のほかに、都市計画法に基いて地方公共団体が噴水を作ったり、緑地地帯を作ったりする都市公園法、そういう法律があるわけです。それからこの予算書を見ると、新宿御苑等の国民公園というのがある。この自然公園法と国民公園なり都市公園の関係は一体どういうことになるのかということなんです。
  50. 川嶋三郎

    ○川嶋政府委員 都市公園法というのは、これは都市計画で造成された公園、緑地であるとか、あるいは都市計画上の公園、緑地を管理する法案でございます。自然公園法というのは、自然の風景地をそのままの形で公園化して、国民の利用に供するというものでございます。従ってこの両者は公園体系から全く別な体系に属するということで法案が区別されているわけでございます。なお国民公園の方は、現在皇居外苑と新宿御苑と京都の御所外苑、この三つがこれに該当するわけでございます。これはいずれも都市の中の人工的な公園でございますので、範疇といたしましては都市公園に入るわけでございます。ただこれは歴史的なあるいは由緒を特に考慮されて、現在厚生省令で管理されているものでございます。
  51. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、国民公園の京都御所と新宿御苑と皇居外苑、この三つは都市公園法で管理されるのですか。そうじゃないわけでしょう。
  52. 川嶋三郎

    ○川嶋政府委員 都市公園法というのは、これは地方の県または市町村等の公共団体が設置する公国だけを管理する法案でございます。国民公園は国が直接管理している、従って都市公園法の適用はもちろん受けないわけでございます。
  53. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、国民公園は国が直接管理するということになると、国立公園も厚生大臣が管理しているわけです。そうすると国立公園と国民公園とは管理主体からいえば変らないわけですね。そうしますと、国立公園の方は国立公園法という明確な法律が裏づけとなって、今後いろいろの施設費や補助金等が出ていくわけです。そうしますと、国民公園というのは何か立法上の裏づけがなくて、ただ行政的な事務として厚生大臣が管理していくわけですが、何か法律上の裏づけがあるわけですか。
  54. 川嶋三郎

    ○川嶋政府委員 これは現在厚生省令で管理をしておるわけでございますが、その基礎としましては、一般的には国有財産法による管理でございます。この法によって管理するわけでございます。
  55. 滝井義高

    滝井委員 私は今回自然公園法と銘打ってお出しになったのですから、従ってやはり公園という名前がついているわけなんですね。なるほど京都の御所や皇居外苑というものは自然的な要素もありますけれども、人工的な要素も相当ある、従ってこれは自然公園の範疇には入らないかもしれないけれども、やはり自然公園法の中に一括して入れて運営をした方が国有財産という形よりも自然じゃないかという感じがするのですが、今度の法律の改正で、同じ国立公園等の整備費という予算の項目の中に入れておるものが、今度は国有財産法で規制されていくというのもちょっとおかしい感じがするのですが、何か自然公園の中に入れて悪いような難山でもあったのですか。
  56. 川嶋三郎

    ○川嶋政府委員 御質問の点は、根本的には一方は自然の場所を公園化したものであり、片一方は特定の場所の人造の公園であるということでありますが、その土地の所有関係を申しますと、自然公園の力はそのうちに国有地や公有地がございますが、私有地も必要な場所は含まれて管理されております。土地関係は種々でございます。一方国民公園の方は全部国有地でございます。そういう関係からこの法案の中へ入れることは非常に理論上おかしいし、また実際の管理の仕方も違うわけでございますから、分けているわけでございます。
  57. 滝井義高

    滝井委員 土地の所有権の問題だけではたとえば国定公園の中にも国有地もあればいろいろあるだろうと思うのです。それから国民公園の方は国有地ばかりだ、こういうことになれば、これは一緒にしても土地の所有関係だけからは大して矛盾は起こってこないと思うのです。で、予算の項目を別にしておればともかく、明らかに厚生省予算項目の中では、国立公園と国民公園と国定公園というものは一括されて、そして国立公国等の整備費の中に入っているわけなんです。こういう形になると、法律の形もやはり自然公園法の中で例外的な措置として一緒に入れて取り扱う力が、公園という概念をわれわれが今後見ていく上にも非常に便利ではないかと思うのです。昨日も法律のことで言ったのですが、どうも法律が複雑でしろうとにはわからないのです。あっちこっちから調べてこなければわからぬということでなくて、公園関係のものは、その公国の法律一つ引き出して見れば大体全部一括して系統的にわかるということの方が——今のように千以上の法律があったらこれは複雑怪奇でわからないのですよ。そういう意味で法律を単純化し、大衆のものにするために、私はやはり予算の項目がこういう具合に一緒にまとめられているならば、法律もまとめられた方がいいのじゃないかという感じがいたします。まあそういうことは急にはできないでしょうから御考慮をお願いしておきます。  これで終りますが、二十九条の原因者負担、これは具体的にはどういうことがあるのですか。受益者負担ということはわかるのですが、原因者負担ということをちょっと具体的に説明を願いたいと思います。
  58. 川嶋三郎

    ○川嶋政府委員 具体的な例ということでございますが、道路をあげてみたいと思います。道路が実は自然公園の中では公園計画上の重要な要素でございます。それが道路法の適用を受ける道路である場合には、そちらの道路法の力で整備をし、運用することになっております。そこでそういう両者の関係があるから、たとえば道路法の道路を整備すべきその場所の延長に、自然公園の方の道路を整備するという場合に、その一部を負担してもらう、負担させる、こういったような例をあげてみたいと思います。
  59. 滝井義高

    滝井委員 時間がきましたからこれでやめます。
  60. 植村武一

    植村委員長代理 中山マサ君。
  61. 中山マサ

    ○中山(マ)委員 この自然公園法の中の第一章の総則の目的というところの最後に「教化に資することを目的とする。」と書いてございます。この「教化」というのはどういうふうにお考えになってこれをお書きになったのか。
  62. 川嶋三郎

    ○川嶋政府委員 「教化」という言葉は、私どもこの法案を審議する際にインスピレーションという言葉でときどき言ったのでありますが、そういう言葉を感じに置きかえて考えていただきたいと思います。
  63. 中山マサ

    ○中山(マ)委員 インスピレーションと教化は私は全然違うと思います。インスピレーションというのは、霊界の、何と申しますか、一つの精神に受ける霊感という言葉でありまして、教化でしたらエデュケーション、エ・ジュコと申しますか、これはラテン語かグリーク語から始まっておりまして、工というのはフロムということであって、ジュコというのは導くということであって、導き出す、すなわち教化であって、エデュケーションとインスピレーションというのは全然ものが違います。インスピレーションというのは少し宗教的のにおいを持っているのでありまして、これはだいぶ違うと思います。そういう意味で、この「教化」ということをお書きになりましたならば、国民にどういうインスピレーションをお与えになるおつもりですか。
  64. 中垣國男

    ○中垣政府委員 中山先生にお答えいたします。この目的の個条の「教化」といいますのは、たとえば自然の非常によい景勝もしくはまた天然自然の植物、動物、そういうものにたとえば青少年等が触れますために、ほんとうの清純な、清新なものを感じとる、そういったようなことのために、人間が浄化されると申しますか、非常に美しいような気持になる、そういうことにこれがやはり大へん役立つだろう、こういうふうに考えまして、「教化」という文字が使われたと私は考えます。
  65. 中山マサ

    ○中山(マ)委員 それならば、公園部長さんいらっしゃいますが、インスピレーションという言葉はやめていただきたいと思うのであります。これはその自然との接触によって受ける、人間というものが大言然の中でいかに小さいものであるかという考え、それで大自然の影響を受けさせるという意味でしたら、私はいいと思います。  公衆衛生局長もいらっしゃいますから、お尋ねしておきたいと思うのでございますが、私はこの間栃木県に参りました。はるか向うに日光の山も見えておるところに参ったのでございますが、そこばりっぱなある意味では公園ともいわれるところであります。あれはゴールデン・ウイークの間でございましたが、人間はいわゆるインスピレーションあるいはエデュケーションを受けて帰ったかもしれませんが、しかしそのあとは実に見苦しい日本人の最も悪い部面をそこに展開したと思うのです。それは初めさっと見たときに、花が咲いておると思ったほど、あっちこっちに紙くずが散らしてありまして、実に自然の美を悪化して帰っておるのでございます。これは日本人の最も悪い面を私は表わしておるといつも思うのでございますが、自分の家は非常にきれいにします。日本人は清潔な民族という評判を外国では私は始終聞かされておったのでございます。なるほど自分という小さい範囲、自分の家あるいはそのまわりなら清潔にいたしますが、しかし公園だとか、あるいは汽車の中はもちろんでございますが、実にきたない。この間ある外国人と話をしておりましたときに、日本へ来て、どうしても納得いかないことは、汽車の中のきたなさだということを非常に力説されて、私はいい恥をかいたと思っておるのでございますが、私は教化というこの言葉をもっと違う意味にとりたいのであります。自分の小さい庭ならきれいにする民族ですから、国民全体が楽しむところの公害というものに対して、もっと違った意味で教化ということを使っていただいて、この法案が通りましたならば、ぜひ一つそういうような運動を起していただきたいということを私は考えるのであります。自分のものを天切にするように、国のものを大切にするというこの感覚、この考え方はいろんな方面に現われてこなければならぬと思うのでございます。国の税金ならまるでただ使いでもする。あるいは健康保険法にも私はある意味でこれは現われてきておると思う。だからこういう根本的な問題は、もっと厚生省が責任を持って、ほんとうに国民を教化していただきたいということを強くここに希望するものでございます。公衆衛生局長さん及び政務次官は、この法律を通して厚生省としていかなる広報活動をして、この教化の意味の徹底を期されようとお考えになっておるか。これは文部省関係かもしれませんが、この法律はここで通るのですから、ここで聞いておく必要があると思います。
  66. 山口正義

    山口(正)政府委員 自然公園法は私の所管ではございませんが、ただいま中山先生から公衆衛生局長考えを言えという御指名がございましたので、教化という文字の説明はほかの方にやっていただいた方がいいと思いますが……。  ただいま御指摘のような、つまり公共のものを愛するというようなことをこの法律を通じて植えつけたらどうかというお話でございますが、この法律と直接間接に関係がございますが、私ども所管いたしております公衆衛生活動という仕事も、やはり社会集団の組織活動を通じていろいろな仕事をやっていくのが公衆衛生活動でございますので、そういう意味から申しますと、やはりただいま中山先生御指摘のような考え方をもっていろいろな仕事をやっていかなければならない。それの一つの現われといたしましてはしばしば御指摘を受けました、きょうも先ほど加藤先生から提案理由の御説明がありましたような蚊とハエのいない環境を作るということも、やはりその一つの現われではないかというふうに考えるわけでございまして、私ども公衆衛生仕事所管いたしております立場からも、ただいま御指摘のような点は、その環境がどこでありましようともそういう考え仕事を進めていくというふうにいたしたいと思います。
  67. 中山マサ

    ○中山(マ)委員 今公衆衛生局長がおっしゃいましたようにそんな紙切れとかそんなものを散らすということに伴いまして、それは結局お弁当を包んでいったものをそこらに散らして帰るのでございますから、その食品の残りがそこにあって、それからは必然的にさっきの加藤先生の御提案の問題とも関連してくるし、環境衛生というものはやはり公衆衛生の一環でありますところから、そういう意味で、そういうふうなハエや蚊の出て参りますその原因をなくさなければならない。蚊とハエが出てきてからそれを殺し回っても私はおそいと思うのであります。その原因をまず除去していくことが根本の対策ではないかと思いますので、私の管轄ではございませんというような涼しいお考えをお持ちしなりませんで、これは一つの共同の仕事であろうかと思います。ことにこれから夏に向って参りますと大へんなことになって参ります。中共だけに蚊もハエもいないという宣伝を聞きますが、台湾に行って帰ってきた人の話を聞きますと、向うにもいないそうであります。だから向うの民族は不清潔な民族として私ども子供のときには教えられておりましたものが、今日ではそういう国の人たちの方が一歩先にいってしまったというような格好になっておりますから、まるでカメさんとウサギさんの競争のように、こっちが早く衛生思想を発達さしておると思っておるときに、カメ的であったという人が先にいってしまったということになっては困ったことになりますから、ぜひ一段とこの面に力を入れていただきたい。一つ先生のお考えになっておる広報活動の面を通じての政治的の活動をお願いいたしておきます。
  68. 中垣國男

    ○中垣政府委員 中山先生にお答えいたします。先ほど来いろいろ御指摘いただきましてまことに同感でございます。特に自分のうちや庭はりっぱにしますけれども、公共的な施設とかそういうものに対しては日本人というものはどうも倫理観念が低い、こういうお言葉に対しては全く同感でございます。  そこで、先ほど少し言い足りなかったと思いますので、今あらためてはっきりしておかなければならぬと思いますが、この法律の目的の教化といいますのは、たとえば各種鉱脈の露出とかあるいは地質学上参考となる断層等があるとか、そういうものは非常に貴重な教材でもあります。また天然の非常に美しい風景に触れるということも、動物や植物が棲息しておる、それもやはり一つの教材としての教化に役立つと思います。  それから先生が御指摘下さいましたようにこれらのものをきれいに保護する、美しい公園を国民が愛するといったような観念は私どもの広報活動を通じてこれをもう少し高めていきたい。そうして学校の旅行者あるいはまた公園等の施設を利用される利用者にいたしましても、御指摘のようなそういう心がけを高揚するように努力して参りたいと思います。     —————————————
  69. 植村武一

    植村委員長代理 次に食品衛生法の一部を改正する法律案について質疑に入ります。滝井義高君。     〔植村委員長代理退席、八田委員長代理着席〕
  70. 滝井義高

    滝井委員 食品衛生法の一部を改正する法律案について一、二点だけお尋ねします。こまかい内容上の問題はいずれ機会をあらためてお尋ねするとして、まず第一にここ一、二年の中毒患者の状態を見てみますと、非常に食品関係の中毒患者が多いようでございます。これは食品衛生法で規定をされた以外のあめとか菓子とか魚肉の加工、飲み物等が非常にちまたにたくさん出回って重要な大衆生活の健康を阻害する、こういうことが原因のようでございます。先年森永のミルク事件以来食品衛生に対する関心が非常に高まって参りまして、この法律を見ましても改正の第二点として食品衛生管理者を設けることになっておるようでございます。問題はこの食品衛生管理者と厚生省の出先機関である保健所にあります食品衛生監視員との関係は、何か有機的な連絡でもとってやっておるのかどうか、これを一つ実態を簡単に御説明を願いたいと思います。
  71. 山口正義

    山口(正)政府委員 御指摘の点は、今回のこの法改正によりまして食品衛生管理者というものを規定いたしまして、法的にそういうものを特殊な業種のものに設置せしめようということでございますので、現在までのところ食品衛生管理者とはっきり銘打ってのものを設置しておりませんので、その間に有機的にどうこうというような過去の実績というものはないのでございます。しかしながら本法を可決していただきましてこれが施行されるということになりますならば、その間に当然食品衛生管理者は自主的に営業者自体がこういうものを設置して食品衛生上の管理をいろいろやっていく、それを外から法的な立場、行政庁立場から食品衛生監視員が監視していくわけでございます。そこはただいま御指摘のございましたように有機的に十分連絡させて運用の実を上げていきたいというふうに考えております。
  72. 滝井義高

    滝井委員 過去において、たとえば添加物の製造工場や乳製品の製造工場とか営業所には法律上の銘打った食品衛生管理者というものはなかったにしても、今度新しく法律食品衛生管理者の資格を持ち得るものがあって食品衛生管理をやっておったはずだと思うのです。そういうものと食品衛生監視員との有機的な連絡が行われておったのかどうかということを実は質問したかったわけです。
  73. 山口正義

    山口(正)政府委員 御質問の点を私誤解をいたしまして恐縮でございますが、従来特に有機的と申しますか規定を設けてどうこうというようなことはいたしておりませんでした。しかしながら全品衛生監視員が現場に監視に参ります際には当然そういう方面の責任者、今度の食品衛生管理者になるような人と連絡をとり、またそれからいろいろ報告を聞いてやっておったわけでございます。特に法的にどうこうというようなことはございません。
  74. 滝井義高

    滝井委員 森永ミルク事件が起りましたが、ああいう大きな製造所あるいは工場というようなものはあやまちを犯せばすぐに改善ができると思うのです。問題は家内工業あるいは問題を起さなかった乳製品以外のところなんです。この法律実施された後のこういうものの管理あるいは衛生上の指導というものはどういう工合になるのですか。
  75. 山口正義

    山口(正)政府委員 今回の食品衛生管理者を置かせようといたします業種は乳製品その他特殊なところでございます。それでその指定になります特殊な業態につきましては、小さいところにおいても先ほど御注意がございましたように食品衛生監視員とそれから設置されます食品衛生管理者、それが特例によって小さい隣接いたしております場合には二、三工場全部やる場合もありますが、それと連絡をとってやらせなければならないと思います。それ以外の食品衛生管理者を置かないというようなところに対しましては、必要などうしてもそういうようものを置かなければならぬというようなことが起ってくる業種については新しく業種を追加していかなければならないと存じますが、それ以外のところにおいてはやはり食品衛生監視員が参りまして指導するという以外には現在のところないわけでございます。しかしこちらから監視に参りましたときだけでは食品衛生監視員の数とそれから施設の数から考えてなかなかむずかしいというふうにも考えられますので、そういう際にはやはり業態ごとに保健所等に集めていろいろな教育をする必要がある、そういうふうに考えるわけでございます。
  76. 滝井義高

    滝井委員 問題はやはり小規模の工場や食品関係の事業場ですね。あるいは乳製品以外の食品を作っているところの食品衛生管理者というものが、置ける姿があればいいんだがなかなかこれは置けないと思うのです。その具体的な証拠は食品衛生の監視員が現在多分千五百人ぐらいだったと記憶している。これはさいせんも古川さんの保健所の強化の決議もあったように、特に食品衛生監視員というものは不足している。こういうことから考えると、あなた方は食品衛生の監視員を森永事件以来強化しなければならぬということは痛切に感じておられるようでございますが、今年度の予算の措置でそういうものを具体的に大蔵省に要求でもしたのですか、それとも今度の予算で具体的にそういうものが現われる点があればお示しを願いたいと思います。
  77. 山口正義

    山口(正)政府委員 ただいま御質問の金品衛生監視員につきましては、三十二年度の予算におきまして、特に森永事件などにかんがみまして、全国的にその製品が影響を及ぼすというような製造工場につきましては、国が直接全額費用を出して監視できるような態勢にしたいということを考えまして、そういう予算を省議で決定して要求したのでございましたが、残念ながらそれが実現できなかったわけでございます。しかし今後もやはり全額国庫食品衛生監視員あるいはまた今回の法律改正で参議院でも御修正になりましたように、現在地方交付税に計上されておりまする食品衛生監視員に要します費用を補助金に引き上げるというようなことをして、さらに食品衛生監視員の数的な強化についても考えていきたい、そういうふうに考えております。
  78. 滝井義高

    滝井委員 三十二年度に全国的な影響のある業態について全額国の費用を出して監視するような方法をとりたいということであったが、全額削除をされてしまったということです。参議院の修正の第四点を見ると、食品衛生に関する費用の国庫負担に関する規定を削除しないこと、こういうことになっておるようでございます。古川さんもさいぜん申しておりましたが、食品衛生監視員の費用というようなものは交付税に入っておる。従って交付税で入ったお金は一般財源になってこれは食品衛生監視員なんかに回ってこない、こういうことになればせっかく食品衛生法の改正をやったけれども、実際は今までと変らないということになりそうなんです。こういう法律を作るからには当然画竜天晴を欠かないように来年度において十分予算上の処置も構じ得、かつ人的配置もできるだけの御自信があるのかどうか、これは一つ政務次官から御答弁を願いたい。
  79. 中垣國男

    ○中垣政府委員 滝井さんにお答えいたします。ただいまの御要望、御指摘の問題につきましては、衛生監視員に限らず保健所職員待遇改善等とも関係があるのでありまして、従来単独で補助対象でなかった、交付税の中に含まれておったもの等を三十二年度におきましてはぜひともこれを交付税から単独補助の方に切りかえますように自治庁大蔵省等にも交渉いたしまして、三十二年度から必ず実現いたすように努力をいたしたいと考えております。
  80. 滝井義高

    滝井委員 ぜひそうしていただきたいと思うのです。最近有害食品というものがちまたに非常にはんらんをしておる。暮しの手帳とかいうような大衆的な雑誌が有力なデパートその他の食品や売っておるお菓子類を調査した統計を見たことがあるのですが、それによると、非常に多くの商品がまずその表に書いております量だけの品物が入っていないというようなことも書いておるわけです。これは単に食品の質もありますが、同時に量の問題もあって、最近は有害な食品がはんらんするとともに量の少いものもはんらんしておるということを書いておったのを沈んだことを記憶しておる。こういうようなことはやはり食品の材料や製造工程あるいは販売方法にわたって国家的な監視の制度というものが整っていないということも一つの原因じゃないかと思うのです。同時にまたそれらの関係業者の衛生思想や良心的な問題に帰着すると私は思うのです。こういう点については公衆衛生当局も相当力を注がなければならぬと思うのです。先日無着色運動というのがあるのでどういうことかと思ったところが、何かソーセージに非常に色をつけて売っておるということなんです。それは色をつけても有害じゃないんだからというので色をつけておる。それから週刊朝日の前のやつをちょっと今読んでみたのですが、ビフテキの肉に硼砂をかけると、黒くなった古いビフテキの肉がぱっと新鮮な赤みを帯びた色になってくるそうです。そうしますと、そのビフテキの古くなった肉の表と裏に硼砂を加えると非常に新鮮な色になる。それに今度はゴマをかけて……(笑声)そして今はやりの包み紙、セロハンで包んでいるのです。これが非常によく売れるわけですね。硼砂をかけると、今度は焼いたときに肉が非常にやわらかくなって、大きくふくれるのだそうです。今ゴマをかけてごまかすということですが、そうではなくて、ゴマをかけると味がよくなる。こういうことで引っぱりだこで売れるということです。ところが保健所へいって調査してみると、食品衛生法で硼砂をかけるのは許されてない。こういうことを週刊朝日で書いているのですね。着色のことにはならぬけれども、焼いたあとは非常にいい色になるらしいので、無着色運動の一つになると思うのですが、お菓子その他を見ると、非常に濃厚な原色をもって着色するのが非常に多いのですね。森永事件のときには厚生省も非常に周章ろうばいしておいでになりましたが、最近またおっとり落ちつきが出ておるようです。すみやかに、こういう有毒食品がはんらんしないように、国家的な制度を確立していただくし、同時にまた伝染病がやってくる時期が参りましたので、食品衛生の監視員等も整備しなければならぬと思うのです。ことしの予算は、この前大蔵省の小熊君から聞いたところによると、七〇%くらいしか組んでいない。そうなると、全部にしても七割しか充足できないことになるのですね。こういう点はやはり問題だと思うのです。そこで、いつも私が申し上げますように、厚生行政の中で一番おくれておるのは、一番大事な山口公衆衛生局長の部門なんですね。これは山口公衆衛生局長の責任重大だと思うのです。さいぜん私が保健所決議で申しましたように、保険関係や社会局関係というものは相当伸びておる。ところが、あなたの方だけは、端的にその保健所が示しているように、きわめてしり細りになりつつある。これではやはりいけないと思うのです。そこで、今度の国会では、あなたの方の関係が非常に多うございました。これはやはり国民的な反省、あるいは国会の中にも、公衆衛生を強化しなければならぬという良識が芽ばえ始めたと思うのです。そういう意味で、二十六国会はあなたの公衆衛生局にとっては歴史的な国会でなくちゃならぬと思うのです。その歴史的な国会をほんとうに歴史的な国会たらしめるためには、あなたは非常に努力してもらわなければならぬ。私はきょうこれで終りますが、大みそかですから長くやりたくないけれども一つ政務次官とあなたに、この二十六国会をほんとうに歴史的なものたらしめるだけの政治力を、今度は私は負わしておきたいと思うのです。来たるべき臨時国会か通常国会には、その成果が三十三年度の予算にどういう工合になって表われるかを見守りたいと思う。まず一つその決意だけを聞かしていただいて、私の質問を終りたいと思います。
  81. 山口正義

    山口(正)政府委員 公衆衛生局長の責任重大であるというふうにおしかりを受けました。私そのことについてはあとで申し上げなければならないと思いますが、その前に、先ほど御指摘になりました、硼砂でいろいろ加工する、そして新鮮なものに見せるというようなことも行われているということでございますが、まことにそれは遺憾なことでございまして、現在のところ硼砂を使うということは食品衛生法上許されていないのでありますが、それが見のがされておったということは、そういう点を所管しております者としてまことに申しわけないと存じます。今回の法改正につきましても、従来は加工ということだけでございましたが、特に製造過程まで入っていろいろ添加物について規制を加えるということになりましたので、そういう点、この法が改正されましたら、私どもその線に沿って十分注意してやって参りたいと存じております。  そこで先ほど御注意いただきました公衆衛生行政全般の問題でございますが、特に第二十六国会におきましては公衆衛生局関係の幾多の法律を御審議いただきましたわけでございまして、これら、数に申しましても五指をこえる数でございますが、それらのものを実施して参るのにつきましても、従来だけの法律なりあるいは行政事務をやって参りますのにすら、保健所の現在の手薄な関係でいろいろ御指摘を受けているわけでございまして、さらにこの負わされました務めを果して、公衆衛生という仕事の責任を果して参りますためには、普通ではとうていまかない切れない、決意が必要だと思うのでございまして、私どもとしましては従来いろいろ努力して参りましたが、それが十分に実現されなかったのでございます。保健所整備なりあるいは食品衛生あるいは環境衛生その他のいろいろな監視員の問題が多々ございますが、それらの点の拡充ということにつきましては私全力をもって今後努力して参りたい。その決意をここではっきり申し上げさせていただきたいと存じます。
  82. 中垣國男

    ○中垣政府委員 滝井さんにお答え申し上げます。先ほど大へん重要な御意見をお聞かせ願いまして、第二十六国会が歴史的な国会になるように、中身について今後努力せよということでございましたが、ほんとうに私どももさように思います。特にこの公衆衛生関係の各法案を通じまして、審議の過程におきましていろいろ貴重な御意見また重要な御意見等をお述べをいただき、私どもも非常にそれによりまして、自党をし、また責任の重大を思います。今後、この委員会におきまして御審議いただきましたこれらの法案は、すべて御趣旨の通りに尊重し、これを実施いたしますとともに、今後の問題につきましては一そうの努力をすることをかたく誓います。
  83. 八田貞義

    八田委員長代理 野澤清人君。
  84. 野澤清人

    ○野澤委員 ごく簡単に三点ばかり。端的なお答えでけっこうです。第二条第二項の問題ですが、化学的合成品とは、化学的手段により元素又は化合物に分散反応必外の」とこう書いてあるのですが、分解反応を除いたというこの分解反応というのは、どういうことをさしていったのですか、御説明願いたいのです。
  85. 山口正義

    山口(正)政府委員 非常に専門的なお尋ねでございますが、化学反応のうちには、もう私から御説明申し上げるまでもないことでございますが、分解と合成と両方あると思うのでございまして、分解反応と合成反応はちょうど対立するのだと思うのでございますが、でき上った化合物が、化学反応によって分解してもっと簡単なものになってしまうことを、分解反応というように考えております。
  86. 野澤清人

    ○野澤委員 この場合の分解反応というのは、自然的な分解反応をさしたのですか、人工的な分解反応をさしたのですか。これは非常に重要な問題だと思うのです。厚生省で専門家がそろっておって、これだけの用語を使う以上は——特にこの添加物の規定から申し上げますと、いろいろ分解反応によってできるものが使用されると思うのです。たとえて言うと、重曹を加熱して分解させますと無水炭酸ソーダになります。硼酸を加熱して脱水しますと、これも分解反応で無水棚砂になりてくる。こういう場合のものが添加物として使えないということになってきますと、今後非常に困ります。これは事例はたくさんあります。私も商売ですからよく専門的にわかっておるのです。そういう分解反応をさしたのか、自然分解した分解反応をさしたのか、この点明らかにしておきたいのです。
  87. 山口正義

    山口(正)政府委員 御質問の第一点のは人工的にも、あるいは自然の形でも両方とも含むということでございますが、ただいま御指摘の化学的合成品にはその分解反応によって得ましたごく単純なものは除いてあるということでございます。従いまして指定をする場合にそういう簡単なものは除くということでございまして、使えないという意味では私ども考えていないのでございます。
  88. 野澤清人

    ○野澤委員 それから第二点は十一条で添加物が「基準に合う標示がなければ、これを販売し、販売の用に供するために陳列し、又は営業上使用してはならない。」こういう条文になっていまして、今後標示がなければ販売できないということになってきます。そうしますと添加物の公定書ができて、それによって標示された場合の販売品というものは相当の数に上ると思うのですが、大体厚生省で添加物として予定されているのは何秘類くらいございますか。
  89. 山口正義

    山口(正)政府委員 現在一応考えておりますのは四百種類くらいを考えております。
  90. 野澤清人

    ○野澤委員 おそらく四百種類では私は間に合わないのじゃないかという感じがします。それでそういう添加物の公定書を作る場合に、厚生省内だけでこの公定書をお作りになるのか、特別な審議会でも設けてやられるのか、その構成はどういう構想でございますか。
  91. 山口正義

    山口(正)政府委員 公定書を作ります場合には厚生省内の者だけでなしに、調査会を使って作成して参りたい、そういうふうに考えております。
  92. 野澤清人

    ○野澤委員 その調査会を作る場合には薬学とか医学とか農学とかいろいろ系統もありますが、大体どんな範囲でお作りになるお考えでございますか。
  93. 山口正義

    山口(正)政府委員 現在まだはっきりはきめておりませんけれども、ただいま野澤先生から御指摘がございましたように当然こういう添加物として公定書に登載されるというようなものに関係のあるような方々、たとえばただいま御指摘になりました薬学関係の方、医学の関係の方あるいは農学関係の方、そういうそれぞれの分野の専門家の方々に委員になっていただいて定めて参りたいと思います。
  94. 野澤清人

    ○野澤委員 これはおそらく省令なり政令なりで出るのだと思うのですが、従来の日本薬局方品というものは食用に供して差しつかえないという場合にはやはり特別な法律によって標示が必要になりますか。御見解を伺いたい。
  95. 山口正義

    山口(正)政府委員 御指摘の通りやはり本法によりまして標示が必要ということになるのでございます。
  96. 野澤清人

    ○野澤委員 そうしますと今後食品の加工に使うものは全部標示が必要だということになってきますと、その標示されました薬品の販売というものは一体どうなってくるのです。野放しですか、それとも従来の医薬品と同じような系統で販売されていくのですか。流通形態に対する構想はどう持っておられますか。
  97. 山口正義

    山口(正)政府委員 御指摘の点は一応食料品の原材料をいろいろ販売しております流通機構がございますが、それを通じるということも当然考えられます。また一般の薬局等において販売するということも差しつかえないというふうに考えます。
  98. 野澤清人

    ○野澤委員 私のお尋ねしているのはそういう意味じゃありませんで、日本薬局方品でさえも添加物の標示がなければ売れないということになってきますと、一体今までの医薬品というものの内容と価値というものとが国民から疑われてくると思うのです。そうすると公定吉を作る場合にこれとこれとこのものは日本薬局方品を使っても差しつかえないのだという別段の指示がありさえすれば少くとも局方品くらいは使っても差しつかえないのじゃないか。それにも張らなければならぬという理屈になってきますと、標示されたものは全部薬局経由で、あるいは薬店経由で売られなければならぬと思うのです。ところがこれは食用です。食用の添加物なんですから、これに対する見解を今ここで細部について説明しろといっても無理だと思いますが、これは慎重に取り扱っていただきたい。同時にこれは希望ですが、公定書を作るのに、たとえば四百種類作るとしても、とても一年や二年ではできないと私は思います。それからどうしてもこれに必要だというカタログを持ってきましたが、食用に添加物として使われるだろうという品目を拾いますと、少くとも千二、三百種は要ります。それを整備する間はどうするのか、そうしますと現在試薬の規格でもってJISの方できまっておるのが約千種類ございます。そういうのを公定書を作る際に審議の過程で転用していけば、もうJISでいけるのですから、この規格のものは使用して差しつかえないのだという公示もできると思うのです。拙速でなしに、何か正確にしてすみやかな処置をとるべきではないか、こういう感じがするのです。従って通産省の試薬規格の委員会は毎月開かれております。しかもこれは各大学の理学部、工学部の先生方が中心ですから、薬学では一人か二人しか入っておりません。こういう特殊な規格の審議委員等にも委嘱して、これはすみやかに公定書をお作りになることが必要ではないか。お作りになって品物を出しただけでなしに、今度は標示についての制限規定というものもきちんとつけるべきである。同時にまた一番問題となってくるのは零売する場合です。小分けをした場合に標示はだれがするか。これは局方品と同じようにたってきますから、たとえば塩酸なら塩酸を使う場合みな大ビンで買います。すると大ビンで買ったものを小分けして出す場合にその標示をだれがするかということも規制しておかなければならぬ。そうなってきますとおのずと薬品に対する販路というものも変ってこなければならぬ、こういうことになってきますので、時間がありませんから一応注意だけ喚起しておきますが、もし具体的な内容がきまりましたならば、一応御連結願って万全を期してやっていただきたい。そうしませんと、特殊な業態が無免許のまま医薬品を扱うという結果になってきまずから、この点十分御注意を願いたいと思います。     〔八田委員長代理退席植村委員長代理着席〕
  99. 山口正義

    山口(正)政府委員 ただいま御指摘の薬局方とその添加物の、公定書に記載されております添加物との関係の点、御注意の点は十分私ども注意して運用して参りたいと存じております。それからとりあえず四百種くらい考えております。しかしこれが必ず数がふえてくるということも当然考えられるわけであります。さしあたり二年くらいで一応作りたいと考えておりますが、一応作ってからまたいろいろつけ加えるというような段階へ進んで参りたいと存じますが、ただいま御注意の点は十分御趣旨を体してやって参りたいと思います。
  100. 植村武一

    植村委員長代理 八田貞義君。
  101. 八田貞義

    八田委員 時間もございませんからはしょって質問して参りますが、今野澤委員から質問がありました化学的合成品の問題なんです。今度第二条第二項に新たに「化学的合成品とは、」ということでその定義みたいな説明が加えられて参ったのですが、これは合成品と天然品を区別する必要があるというようなお考えからこういう条項をお作りになったかどうか、その点ちょっと質問をいたします。
  102. 山口正義

    山口(正)政府委員 御指摘のように一応天然のものと合成されましたものを区別するという意味でこういう規定を設けたわけでございまして、天然のものは大体資性がわかっておりますので、第七条でいろいろ規制を加えていきたいということでございます。合成されましたものだけを特別に区別して扱うという意味でこういう規定を設けたわけでございます。
  103. 八田貞義

    八田委員 実は化学的合成品の定義に関してはいろいろと疑問が出やすいのであります。そこでこの条文を今度の一部改正の中に加える前には、昭和二十五年の四月六日ですか、イ発二〇八号の局長通牒をもって食品衛生法の第六条にある化学合成品とはということで、次のように説明されておった。「化合物又は元素を原子数の多い物質又は構造の新たな物質の化学的手段(分解反応及び単純な造塩反応を除く人工手段をいい、生活現象に関連しておこるはっ酵熟成などの化学変化を含まない)により変化させた物質をいう。但し自然界において相当量存在し、一般の人の需要をみたし得る物質と同一の化学構造を有するものを除く」こうあるわけであります。これが今度簡単な表現に変って参ったのですが、先ほども野澤君が質問しておったように、これは相当誤解を招きやすいような表現があるわけです。特に川崎近太郎君の「食品衛生研究」に書いてありますが、彼はやはりこの問題について相当疑問を出しておるわけです。そこで彼はこういうことを言っておる。化学的合成品という定義は疑義を生じやすいから、化合物または化学的添加物として合成品と天然品とを区別する必要はないと思われる。天然物そのものを使用するのでなく、その中の有効成分を抽出して化合物またはその混合物として用いる場合、すべて現行の化学的合成品と同じ取扱いを受けるべきである、こういうふうなことを川崎近太郎君は書いておるわけです。私はこの表現の仕方の文句につきましていろいろ例をあげて——時間がないから川崎博士の意見を申し述べたのでありますが、この点の解釈につきましては相当疑義も出てくると思うのです。ですから食品衛生法の解説なんかを発行される場合、その点を十分留意されて、解説において誤まりないように御配慮願いたいと思うのです。  添加物の問題はいろいろあるわけです。特に今度は製造過程にまで入って添加物の解釈を広げていったわけでございます。こういった添加物の問題につきましてはアメリカ合衆国でも問題になっておりまして、一九五〇年にディラミー・コミティですか、こういった委員会が結成されまして今審議されておるようであります。わが国におきましても食品衛生法の第六条では化学的合成品である添加物及び添加物を含んだ食品の原則的な禁止規定があるわけです。ただ問題は、第六条に書いてありますように、人の健康をそこなうおそれのある場合を判断する場合に、いろいろ問題点を蔵しておるわけです。そこで厚生大臣が許可をする場合には、「人の健康を害う虞のない場合として」指定するわけでありますが、この場合に薬事法における公定書に収められていない医薬品と同じように、食品衛生調査会の審議を受けて、その建議に基いて指定が行われる。厚生大臣がすぐやるということでなくて、食品衛生調査会の建議に基いて許可される、こういった条項を明文化しておく必要があるのじゃないか。ちょうど薬事法の中の公定書に記載されてない薬品を許可する場合に、必ず薬事審議会を通すわけでありますが、これと同じようにこの食品衛生法の中に食品衛生調査会のことが第二十五条に書いてありますが、ただ問題は「食品衛生に関する重要事項」というふうに書いてあるが、今後添加物についてはいろいろと問題を起すような場合——これは起してはならぬのですから、必ず食品衛生調査会の建議に基いて指定すると、はっきり規定しておく必要があるのじゃないかと考えるのですがいかがですか。
  104. 山口正義

    山口(正)政府委員 法第六条に基きまして厚生大臣が指定いたします場合に、「人の健康を害う虞のない」として指定いたします場合に、これは御指摘のようにきわめて慎重にやっていかなければならないというふうに考えます。ただ学界において広く認められた研究成績あるいは厚生省におきます調査研究成績のデータ基準として従来もやってきたわけでございます。ただ従来でも非常に重要なものは調査会にかけていろいろ御意見を伺ってやってきたわけでございますが、御指摘の点、法律の中に明文化するかいなかは別といたしまして、第六条に基いて厚生大臣が指定いたします場合には、十分食品衛生調査会の御意見を伺って慎重にきめていくようにいたしたいと考えております。
  105. 八田貞義

    八田委員 化学的合成品を第六条で原則として禁止しておるのは、多かれ少かれ毒性を問題としているからであります。ところが今日まで許された添加剤、添加物について種類分けをしてみますと、いろいろと問題点があるわけです。時間がないから簡単にしますが、ただ製品規格のない添加物というのがある。またあるいは使用薬品及び使用量を制限せずに使用できる添加物もある。これはずっと危険な問題を将来に残しておるわけです。ですからこういった点については十分に検討していかなければならぬのですが、参議院でも高野委員からですかズルチンの問題が起った。このズルチンの問題は食品添加物として許された当時は、使用量及び使用薬品を制限しなくても、人の健康をそこなうおそれがある程度は使用できなかったというような事情にあったわけですね。ところが、許した当時は砂糖の不足を補うという意味だったのですが、今日ではもうズルチンというものは砂糖の代用品ではなく、非カロリー性の甘味剤としての用途が注目されるに至ったわけです。ですから、こういったズルチンの例をあげますほかに、いろいろと許可色素についても再検討を行わなければならぬ段階に行っているわけなんですね。特にアメリカのFDAにおきましては許可色素の再検討を行なって、数種類の色素を取り消しておるわけであります。ですから、わが日本におきましても、こういった添加物全般につきまして再検討を行なって、そして不適当なものは取り消すがあるいは食品使用上に制限を加えるべきだ、こう考えるのですが、いかがでしょう。
  106. 山口正義

    山口(正)政府委員 添加物に対する特別な注意を払わなければならないではないかという御意見、従来許しておったものでもこの際再検討しなければならないではないかという御意見、ごもっともだと存じます。いろいろ時代も変って参りますし、また学問の様子も変って参りますので、そういう点は十分考慮してやっていかなければならないと存じますが、今回の法律の改正の中にもございますように、添加物につきましては公定書を作成するというようなことも、それによって一つはっきりさしていきたいということだと思うのでございます。公定書ができますまでの暫定的な措置につきましても、ただいま御指摘のような点、ズルチンなども含めまして十分検討いたして参りたいと存じております。
  107. 八田貞義

    八田委員 それから、最近牛乳または各種乳製品の名称とまぎらわしいような、いかがわしい製品が非常にちまたにはんらんしているのですね。例をあげてみまするとヤクルトとか、あるいはヨーグルトン——ヨーグルトじゃない、ヨーグルトン、それからエルピー、あるいはアイスクリーンなんかも出ているのです。こういったものは、いわゆる乳製品でもないし、また医薬品でもない、乳飲料でもない。そしてどの法律にもひっかからないのですね。盲点を利用してこういったいかがわしいものがはんらんしているわけです。これらについて一体今後どうされていくつもりか。許可営業とされるつもりか、あるいははっきりと食品衛生法に照らしてこれを抑えてしまうか、一体どうされるお考えか、一つお聞きいたしたい。
  108. 山口正義

    山口(正)政府委員 ただいま御指摘の各種の乳酸菌飲料、そのもとになりますヨーグルトなどは発酵飲料として食品衛生の立場からいろいろ規制が加えられておりますが、それを希釈して販売いたしておりまする、ただいま御指摘になりましたヤクルトとかヨーグルトンというようなものは、現在何ら規制が加えられておりません。従りていろいろ問題になるようなものが市販に出ていることも承知いたしております。これは食品衛生上非常に重要視しなければならない問題であるというふうに私も考えておりますので、ただいま御指摘になりましたような問題につきましては、食品衛生法の第二十条の許可営業の中に今度は政令を改正して入れて、そして施設基準なりいろいろな規格を定めて規制して参りたい、そういうふうに考えております。
  109. 八田貞義

    八田委員 今度許可営業としてやっていくのだというようなお答えでございますが、私はこの内容そのものについて栄養品とも考えられないのです。こんなものを許可営業とされて、国民の保健の上にどれだけのプラスになるかという疑問を持つものであります。実際私もこういったヤクルトとか、ヨーグルトンとか、エルビーとかいうものについて乳酸菌の生菌数を計算いたしてみたことがあります。国会に出る前にこういったものの検査をやったところが乳酸菌などはほとんどいないのです。しかもこれは原液が製造元から地方に行って薄められていく、その薄められる液そのものが、単に井戸水なんかでやっているところがたくさんある。こういうことによって、また栄養学上からいっても内容としては全く疑問を持つようなものなんですが、これを許可営業とされるならば、そういった面についても十分に規格というものをお作りになっておやりになることが必要であると思うのです。もちろん許可営業としてお認めになるというお考えですから、十分その点の御配慮はあると思うのです。この点について、自分の経験、試験検査の成績から考えてみて、今のままではとてもいかがわしいものである、こういった言葉でもって表現しなければならないような内容しか持っていないということを申し述べて御参考に供したいと思うのです。  それからもう一つ、毎日新聞の三月十四日の都内版に「乳業界にテトラ旋風」という見出しでもって報道されておりますが、これを見ますと、「テトラ牛乳は、容器が完全に殺菌してあるので衛生的だし、日光をさえぎるのでビタミンを破壊しない、また価格が一円安いという消残者のプラスのほか、生産者にとっては費用のかさむ洗ビン器がいらないし、ビン割れもなく、そのうえ重さもビン詰めの半分(ビン詰め百二十匁、テトラ五十二匁)で輸送費も安いという利点がある。いまのところテトラパック社が特許権を持っているので一台に付き技術提携料三百万円、四半期ごとに使用料八万八千円、年間三十五万二千円を支払い、さらに出荷量について一個当たり一円八十七銭を納めなければならないが協同乳業では、紙容器の国産化をはかるため、新たに日本ラミネト工業会社を設立、七月から本格的な生産に乗出し、遅くも九月からは一円値下げを断行して”十二円テトラ牛乳”にするとハナ息は荒い。同社では容器旧産化ができれば家庭配給も始めたいといっており、秋ごろには十四円——十五円のビン詰め牛乳にかわって十三円のテトラ牛乳が都民のお台所へお目見得することになる。これについて農林省でも”テトラはすでにドイツ、イギリス、スエーデンなど欧州各国やアメリカ、シンガポール、ホンコンなど東洋各地で採用しており、間もなくテトラはビン詰めにとってかわるだろう”と明るい見通しをたてている」、こういう報道があるのですが、私はこのテトラパックというもの——これは次官も多分ごらんになっておられると思うのですが、四面体にした理由は、最大量を最小の容器によって入れていこうという考えからです。何も衛生的な考えから四面体にしたのではない。ただ経済的な理由から四面体にしたのですが、これがポリエチレンでもってコーティングしてあるのです。ところがこのフェスト・シールをするときに、切断面はコーティングされておりませんから、牛乳がその面に残ってくるのです。私はやはりあとで、牛乳が漏れるというようなことが起ってきはせぬかと思うのです。特に市乳の店頭販売というものは今まで乳の衛生の面から絶対に禁止されておった条項なんです。ところが今日テトラ牛乳というのが店頭販売を許されておる。配達料がないから一円安いのです。ところが販売されておる状態を見ますと、冷蔵庫の設備がないところで売られているようなところもある。中の状態がわかりませんから、腐敗変敗することは十分に考えられると思うのです。しかも新聞ではテトラという容器は完全に殺菌されているというのですが、これらの点についても私は疑問を持つのです。事実私はこれを自分の教室員に検査さしてみた、これは殺菌されておりません。そういうものが完全に殺菌されておることになっておる。こういう点についても問題があります。一体この市乳の店頭販売ということは、これは厚生行政あるいは乳の衛生の面から禁止しておった条項なんです。これをどうして許されたか、これを一つお知らせ願いたい。
  110. 山口正義

    山口(正)政府委員 牛乳、市乳の容器は現在省令によりまして着色していない透明なガラスびんでなければいかぬというのが根本原則になっております。しかしながら都道府県知事が許可した場合にはその例外が設けられるわけでございます。御指摘のテトラパックはその都道府県知事の特別な許可によって用いられているわけでございまして、私ども従来いろいろ調査いたしまして聞かされておりますところでは、ただいま八田先生から御自分でお調べになって十分殺菌されていないというふうな御指摘がございましたが、このテトラパックはやはりびんと同様に取り扱って差しつかえないのではないかというような考えを持って、地方でもそれを許可しておったわけでございますが、ただいま御指摘の点については今後十分注意して参りたいと存じております。そこで市乳の店頭販売の問題でございますが、これは店頭販売を禁止するというよりも、むしろ市乳の保存温度の問題に関係してくるのではないかというふうに考えるわけでございます。十度以下に低温殺菌なりあるいは高温殺菌なりどちらでも——普通低温殺菌が原則でございますが、殺菌いたしましたのを一時間以内に十度以下に保存するということでございます。それが行われないような日本の現状におきましてば、店頭販売ということはだめであるというのが私ども考えでございます。もしそれが外国のように冷蔵庫がどんどん普及しておりまして保存されるということになれば、これは牛乳の普及の上からあえてとめなくてもいいのじゃないかというふうに、これは御意見があるかもしれませんが、そういうふうに考えております。けれども日本の現状においてはただいまのような不完全な施設における店頭販売は一応とめていかなければならないというふうに考えております。
  111. 八田貞義

    八田委員 局長から割合に大胆な御答弁があったのですが、紙の容器でもいいのだということになれば、着色びんでも許してもいいということになるのですよ。そして冷蔵庫の備えさえあれば着色びんで店頭売りをやってもいい、こういうことになるのです。しかもまた今都道府県でもって許可したのだというような御答弁があったのですが、これはやはり厚生省最後の元締めをやっているわけですので、この点は非常に問題としなければならぬと思うのです。特に紙の容器を利用されたというのは、かつて進駐軍の特需用として、カールトンの容器を用いてブルー・シールのミルクを許したことがある。それから経過規定というのですか、そういうことでお許しになったかもしれません。これは私非常に問題があると思うのです。それまでは日本で合成樹脂などで作った容器を盛んに使わしてくれ、こういっておったのです。ところがそれを全然抑えておって、今度はスエーデンからきたテトラパックというものはいいんだからといってぱっと許すということは日本の国内の業者を圧迫しはせぬかと私は思う。特にこれは先ほど申し上げましたように使用料とか特許料とか技術提携料等も払っていかなければならない、こういうところが問題だと思うのです。今全日本の国内生産業者を圧迫しておいて、そうしてテトラパックというような容器を作って、紙代もみなあっちにいってしまうのです。安くした利潤は全部外国に吸い上げられるというようなことは、今日の日本の乳業を発展させる施策ではない。経済的に見てもそうなんだ。さらにまた衛生的に見てもこれはいかがわしい。こういったことについて、店頭売りも冷蔵庫の備えさえあればいいん、だということになってくると、今までせっかくきめておった無色の透明なびんということは、もうどうでもいいということになってくる。こういう点について、やはり私は十分にお考え願いたいと思うのです。テトラパックという問題については、あまりにも新聞あたりに大げさに書いておる。こういったことについても十分に食品衛生法の誇大な広告に入っておる。しかもまた無菌だというようなことを標榜して、そうして宣伝しておる。局長も御承知のように日本の牛乳というものは細菌率が多い。ですからこんなものに入れたらもう危険なことが起ってきますよ。外国でしたならば牛乳の中に細菌が少い、やられてもいいのです。しかし日本のように非常に原乳そのものがよごれておる、それを一般の殺菌法によってやられたものをこの中に入れて店頭売りを許すということは非常に冒険だと思う。私は牛乳衛生の問題をずっとやってきておったものですから、これを許されたということは非常に奇異の感に打たれた。私の学問的良心からこれを叫んでおる。どうか十分に今後の取締りについて遺憾のないように御配慮願いたいと思うのです。これについても新聞を見ると、あちこちで世界各国でこれをやっておるのだというのです。ところがこれは普及率と実績とは違うのです。シンガポールあたりで許しておると申しますが、シンガポールあたりでは市乳は許していない。いわゆるクリームなんかを入れておる。私はクリームならばテトラパックを考えてもいいと思う。しかし市乳をテトラパックで販売するということは非常な間違いです。しかもそれの利益が全部外国にいってしまうのだということは、私は非常に問題だと思う。この点局長は十分に実態を把握されて対策を立てられるように希望いたします。
  112. 植村武一

    植村委員長代理 ほかに両案についての質疑はございませんか。——ないようでございますから、両案についての質疑は終了したものと認めます。  次に両案を一括して討論に付すのでありますが、通告がありませんので、直ちに採決するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  113. 植村武一

    植村委員長代理 御異議なしと認めそのように決しました。  両案を一括して採決いたします。両案を原案の通り議決するに賛成の諸君の起立を求めます。     〔総員起立〕
  114. 植村武一

    植村委員長代理 起立総員。よって両案は原案の通り可決すべきものと決しました。  なおただいま議決いたしました二法律案に関する委員会報告書の作成等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  115. 植村武一

    植村委員長代理 御異議なしと認め、そのように決しました。     〔植村委員長代理退席、委員長着席〕
  116. 藤本捨助

    ○藤本委員長 この際一言つつしんでごあいさつを申し上げます。  本日をもちまして今国会も終るのでございますが、顧みますると、多くの重要議案を山積いたし、連日委員諸君の真摯なまた御熱意のある御協力を願いまして、おかげをもちまして大過なく会期を終えることになり、また重要な議案はすべて議了することを得るましたことは、私の特に喜びにたえないところであります。また委員諸君に対しましては衷心つつしんで御礼を申し上げる次第であります。  委員会を開きました回数も五十数回の多きにわたり、よく御多忙中にもかかわらず、委員会運営に万全を期し得ましたことに対しまして、重ねて敬意を表し、明日からは閉会になりますが、どうぞ皆様の御健康と、それから国家のために御尽瘁のほどを念願いたしまして、ごあいさつといたします。(拍手)暫時休憩いたします。     午後一時二十二分休憩      ————◇—————     〔休憩後は開会に至らなかった〕