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1957-04-27 第26回国会 衆議院 社会労働委員会 第47号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十二年四月二十七日(土曜日)     午前十時三十八分開議  出席委員    委員長代理理事 亀山 孝一君    理事 大坪 保雄君 理事 中川 俊思君    理事 野澤 清人君 理事 八木 一男君       逢澤  寛君    植村 武一君       小川 半次君    越智  茂君       小島 徹三君    鈴木 善幸君       田中 正巳君    高瀬  傳君       中島 茂喜君    八田 貞義君       林   博君    原  捨思君       古川 丈吉君    亘  四郎君       井堀 繁雄君    栗原 俊夫君       五島 虎雄君    滝井 義高君       中原 健次君  出席国務大臣         労 働 大 臣 松浦周太郎君  出席政府委員         労働政務次官  伊能 芳雄君         労働事務官         (大臣官房総務         課長)     村上 茂利君         労働事務官         (大臣官房会計         課長)     松永 正男君         労働事務官         (労働基準局         長)      百田 正弘君         労働事務官         (職業安定局         長)      江下  孝君  委員外出席者         労働事務官         (労働基準局         労災補償部長) 三治 重信君         専  門  員 川井 章知君     ――――――――――――― 四月二十七日  委員加藤常太郎君、河本敏夫君、草野一郎平君、  中村三之丞君、仲川房次郎君、松村謙三君及び  多賀谷真稔辞任につき、その補欠として中島  茂喜君、田中正巳君、原捨思君林博君、逢澤  寛君、鈴木善幸君及び西村彰一君が議長指名  で委員指名された。 同日  委員逢澤寛君、鈴木善幸君、中島茂喜君、林博  君及び、原捨思君辞任につき、その補欠として  仲川房次郎君、松村謙三君、加藤常太郎君、中  村三之丞君及び草野一郎平君が議長指名で委  員に選任された。     ――――――――――――― 四月二十六日  旅館業法の一部を改正する法律案内閣提出第  一三五号)(参議院送付) の審査を本委員会に付託された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  労働福祉事業団法案内閣提出第一一四号)     ―――――――――――――
  2. 亀山孝一

    亀山委員長代理 これより会議を開きます。  都合により委員長が不在でありますので、私が委員長の職を勤めます。  労働福祉事業団法案を議題とし審査を進めます。質疑を続行いたします。滝井義高君。
  3. 滝井義高

    滝井委員 前回までの私の質疑は、労災協会所管である労災保険病院財団法人でございますが、従ってその税法上のいろいろの問題点を聞きました。その次には医療保障四カ年計画との関係をお聞きしたんです。次には労働者災害補償保険法の二十三条の保険施設というものと、この労働福祉事業団に書かれておる保険施設との関係、それからこの労働福祉事業団法の十九条の関係等いろいろ御質問をいたしましたが、それらの一条と十九条の関係、並びに労働者災害保険法の二十三条との関係は、必ずしも私の満足するような御答弁はいただけなかったような感じがいたしました。次に第四条労働福祉事業団資本金関係についていろいろお尋ねをいたしたわけでございます。そこで四条資本金関係についてもう少しお聞きをしてみたいと思うのでございます。この事業団資本金は、四条において、地方公共団体出炎をした額と政府出資した額との合計額になっておるわけでございますが、その場合に、附則十条に「地方公共団体は、当分の閥、自治庁長官承認を受けて、事業団出資することができる。」こういうことになっておるわけでございます。一体なぜ本法においては、地方公共団体の出費をした額と政府出資した額の合計額と書いておきながら、どういうわけで当分の間というような字句を入れたのか、これをまず御説明願いたいと思います。
  4. 村上茂利

    村上(茂)政府委員 労災保険保険施設及び失業保険福祉施設は、法の建前といたしましては、政府がその施設を行う、こういう建前になっておるわけでございますが、その建前を貫きます場合には、事業団に対する出資政府のみが行うという考え方が強く出てくるかと存じます。しかしながら現在の保険施政の運用を見ますときに、病院あるいは総合補導所土地建物等につきまして、地方公共団体寄付を受けておる例も若干あるのでありまして、今後そういった寄付という点につきましては、地方財政等との関係もありまして、これを出資の形で行う方が地方公共団体の御協力も無理なくできるのではなかろうか、こういう趣旨からいたしまして、いわば一つの例外的な措置ではございますが、現状と適当に調和するような措置といたしまして、「当分の間、自治庁長官承認を受けて、事業団出資することができる。」こういう規定を設けた次第でございます。
  5. 滝井義高

    滝井委員 私がわからないのはどうして当分の間としたのかということなんです。こういう事業を今後やられようとするからには、当分の問である必要はないので、ずっと出してもらったらよさそうなものなのに、なぜ特に附則に持ってきて、当分の間出資することができるとしたのか、しかも本文の方の四条には明白に地方公共団体出資した額ということをうたっておるのですね。
  6. 村上茂利

    村上(茂)政府委員 当分の間といたしました理由は、先ほどお答え申し上げました通りでありますが、この事業団出資の問題は、実は地方財政再建の問題とからんでおるのでございますが、滝井先生御承知のように、地方財政再建促進特別措置法自体が当分の間の措置法であるという建前をとっておりまして、いわば地方財政再建自体が、恒久的なものというよりも、当分の間という建前で扱われておるようでございます。この事業団法案々作るに当りましても、事業団出資の問題がもっぱらこういう地方財政再建の問題にからみ合いますので、こういった出資措置考えたのでございますが、その見通しとしましては、私どもとしては当分の間と、こういうような考え方で足りるのでありまして、恒久的に地方出資を認めるという考え方をとる必要がないのではないか、こういうふうに思うわけでございます。
  7. 滝井義高

    滝井委員 実は土地建物というものは、特に土地に至っては、ほとんど恒久的なものなんですね。総合職業補導所の建っている土地労災病院が建っている土地というものは、これはほとんど恒久的に事業団出資することになるわけです。そうしますと当分の間と、こういうことではおかしいと思う。それからあなたの方で今地方財政再建促進特別措置法関係をお出しになりましたが、なるほどこれは臨時的なものだと思います。それにしてもこれは一年、二年の臨時的なものじゃないのです。長きはやはり十年、十五年とかかる再建なんです。再建債といっても、短かいものでも五年から七年なんです。長いと十年以上かかる。だからこれは相当長期なものであることは確実なんです。そうしますと、地方財政再建の問題があるので当分の間とおっしゃいますが、それならばあなた方はこの法律を作るときに、地方都道府県知事と御相談して作ったかどうかということなんです。その二点を伺いたい。
  8. 村上茂利

    村上(茂)政府委員 この法案を作ります前に、特に関係がございますのは総合補導所関係でございますが、関係府県責任者に対しましては、こういう構想を示し、その意見を聴取いたしております。なお御質問の中に土地などの出資は、出資したら永久的なものではないかというお言葉がございましたが、それはまさにその通りかと存じます。ただ出資を認める期間と申しますか、土地建物出資されましたならば恒久的に使われるわけでありますけれども、出資行為というものは永久にわたって行われるという趣旨ではないのでありまして、その点は当分の間と、こういう建前をとっているわけでございます。
  9. 滝井義高

    滝井委員 この法律に特に当分の間ということを入れた理由再建法との関係だと、こういうことをおっしゃいます。そうしますと再建法出資ということを何か認めているのですか。再建法は、こういう出資寄付金というものは禁止しているのが建前なんです。前に出た再建法というものは、寄付負担金地方公共団体は国に対してやってはいかぬと、こういうことなんです。そうしますと、広く解釈すれば、出資というものも入るかどうか疑問ですが一応入ると考えて、やってはいかぬというものを、今度はあとでできる法律で、当分の間相談したらやることができるんだ、こういう除外例を作ることは――これは今まで職業補導行政が非常に行政支障を来たす隘路になっているというなら別です。ところが大して隘路にもなっていない、行政支障も来たしていないというものを、再建法建前からいえばそういうものはやってはいかぬと禁じておるものを、何でわざわざ当分の間、この法律の中で自治法の原則まで侵して認めなければならぬかということです。自治法というのは、再建法のことを私は言っておるわけです。
  10. 江下孝

    江下政府委員 今先生のおっしゃった地方財政再建促進特別措置法は、法文としては出資について明確な制限は設けてないと私は考えておりますが、それで今度の事業団法附則十条で自治庁長官承認を要する、こういう面でその点を縛っておるというように私ども承知しております。
  11. 滝井義高

    滝井委員 地方財政再建促進特別措置法の二十四条の二項をごらんになると、ここにもやっぱり「当分の間」ということが書いてあります。法制局に尋ねてみたら、おそらく当分の間というのはここらあたりのまねをして書いたのだろうという話らしいのです。私わからなかったからお聞きしたのですが、そうしたらそこに「国に対し、寄付金法律又は政令の規定に基かない負担金その他これに類するものを支出してはならない。」と、これよりもっと前に出た法律に明白に好いておる。これはもちろん特別の法律で作るからやってもいいんだ、こういうことになると、あとから出た法律は、みんなこの法律だけは別だ、別だということになると、再建法のこの精神というものは、この前井堀君が言ったのと同じなんです。いわゆる特殊の法律を作って特殊法一般法というものが骨抜きされてしまうのです。そうしますと、何ということはない、地方自治体再建というものが、病院行政を一番くずしておるものは、だれだといったら政府だ、再建法除外例を作ってくずすのは政府であり労働省だということになってしまう。だからこういう点は何か特に失業保険の中の福祉施設というものを事業団に持ってこなければ非常に大きな行政上の支障を来たしておるということが具体的にあるならば、これは特殊の除外例としてやむを得ないと思うのです。ところが現実に大して支障もないものを、しかも都道府県知事が円滑に運営しておるものを、一元的にやっておるものを、二元化し、しかもその自治体の苦しい財政の中から、土地という固定資産まで出させるということは、明らかにこれは地方財政再建促進特別措置法の違反です。こういう点から考えて、しかもこの中にはもちろん出資ということは書いておりません。寄付金や何かと違って永久になくなってしまうものではありません。依然として地方公共団体財産であることは間違いないけれども、自分の自由にならない財産になることは確実です。従ってそれだけ地方自治体からしてみれば、自由裁量のきく財産がなくなるということは、やっぱり地方財政の上から見れば幾分マイナスの面が出てくることは確実なんです。そうだとするならば、私はこういう当分の間というような除外例をここに持ってくることは問題だ。しかも知事会から出てきている文書を見ると、何の相談も受けてない。全国知事会は、労働省がこの法律を作るのに何の相談も受けておりません、という文書をわれわれはもらっておる。うそだと思うなら、ここに持ってきておる。あなた方は相談したとおっしゃるけれども、相談を受けたとは書いていません。そういう点なかなか地方自治体との関係考えても、これはやっぱり非常に問題のある法案だと私は思うのです。そういう点どうお考えになっておるか。
  12. 村上茂利

    村上(茂)政府委員 前段地方財政再建促進特別措置法との関係でございますが、再建特別措置法建前から申しますと、赤字団体のみが、寄付金負担金、その他これに類するものを支出しようとする場合は自治庁長官承認を得なければならない、こういう建前になっておりまして、赤字団体でない団体は、こういう制限は受けないのであります。ところが事業団法は、そういった赤字団体でない、地方財政再建促進特別措置法の制約を受けない団体についても、自治庁長官承認を受けるように厳格にこれをしたわけであります。再建措置法の特例ではなくして、むしろ再建措置法基準線に乗りつつ、赤字団体以外の富裕団体についても自治庁長官承認を受ける、こういう措置をとりまして、地方財政に影響を及ぼさないように考慮を払っておる次第でございまして、この点一つ御了承をいただきたいと思います。  それから後段知事会相談しなかったではないかという点でございますが、特に総合職業補導所は全府県に設けられておりませんので、関係府県連絡をいたしまして意見を聞けば足るというふうに私ども考えておりまして、それぞれ所管部長に対しましては前々からこの点をお知らせし、意見を承わった、こういう措置は、もちろん先ほど申しましたようにとっておるわけでございます。知事会という団体あてに諮問するとか、あるいは意見を聞くということはいたしておりません。しかしただいま申しましたように関係府県とは十分連絡をとって意見を聞いておる次第でございます。
  13. 滝井義高

    滝井委員 なるほど地方財政再建促進特別措置法というものは赤字団体を中心にしております。しかし二十二条に準用団体というようなものもある。これは必ずしもまっかな赤字のところじゃなくて桃色の赤字のところだってやはりこれにかかってくるのです。今黒字の団体だって、今のような財政の状態から見ると、いつどういう工合になって赤字団体にならない一も限らないというのが、今の非常に不安な自主的な一般財源を持たない地方財政の姿なんです。そういうところへこういうものを除外例の中からするということは、私はやはり問題がある。いわゆる千丈の堤もアリの一穴からくずれていくように、こういう除外例のものを、今度さらにまた除外をしたものを作っていくということになれば、これは大へんなことだと思う。個々職業補導所をやっておる県には相談したと言うけれども、何といっても全国知事会という、一つ団体を組織して政府意見を具申したり陳情したりしておるわけですが、その知事会から出てきた文書を見ると、「労働福祉事業団法案立案及び設立の意図については、何等事前協議もなく、契約締結当事着たる甲の」甲というのは政府ですが、「甲の一方的な考えに基いているものであって、地方行政現状を無視したものである。」こう知事会公式文言に書いてある。そうしますとなるほど個々のものには相談されたかもしれませんが、明白にこういうことを書いておることは事実なんです。あなたの方は個々のものに相談をされておると言うが、知事会の意向ということは――その設立をしておる団体も加わっての知事会ですから、一応個々には相談しておるけれども、個々相談された方は、必ずしもあなた方に喜んでは賛成をしなかったということです。泣く子と地頭には勝てぬから、やむを得ずうんと言っておくかということぐらいのこととしか考えられないのです。そういうような感じがするのです。地方財政再建促進特別措置法との関係はそういうことにして、時間がないので少し進まぬといかぬのですが、次に問題にしたい点は、どうも私にわからないことがあるのです。この提案理由を見ますと労災病院は二十四カ所になっておる。現在労災病院完成して運営しているものは十七カ所じゃないかと思うのです。それから傷痍者訓練所は二カ所と出ておるが、現在何カ所のるのか私にはよくわかりません。総合職業補導所は現在二十三カ所です。これが三十二年度予算でできるものを加えると三十カ所。それから簡易宿泊所は十二カ所と書いてあるが、三十二年度の予算でできるものを加えると十六ケ所になるわけです。そうしますと労災病院は現在あるものが十七カ所しかないのに、ここにわざわざ今からでさるものも加えて二十四カ所と書いておきながら、総合職業補導所簡易宿泊所の方はもうすでにでき上っておるものしか書いていない。同じ出し方が保険施設の出し方と福祉施設の出し方か違う。この提案理由説明の仕方が統一がとれていない。労災病院はできるものまで含めて提案理由の中に説明している。しかし失業保険関係福祉施設の方はでき上ったもので、できるものは入れていない。これは一体どういうことなのかということです。
  14. 村上茂利

    村上(茂)政府委員 御指摘の点でありますが、提案理由説明で申し上げました数字は、現在その数は未完成のものも含めて云々ということで個所数を上げておるのでありますが、それは言葉をかえて申しますと、すでに着工はしておるが未完成のものも含めている、こういうことでありまして、昭和二十二年度で着工されますものは含めてはおらないのでございます。この法案を提出いたしました時期におきます病院個所数、それから総合職業補導所個所数、これはいずれも着工しているものも含めての数字でございまして、この数字に間違いはないのでございます。
  15. 滝井義高

    滝井委員 未完成のものも含めて、現在完成しているものは十七カ所、これは間違いない。そうしますとそのほかに七カ所が加わったということは、七カ所は未完成のものが加わってきておるわけなんです。ところが総合職業補導所簡易宿泊所というのは、現在三十一年度予算ででき上っておるものはおそらく二十三カ所と十二カ所かもしれません。しかし三十二年度予算を刈ると総合職業補導所は三十カ所になっている。簡易宿泊所は十六カ所になっている。あなた方が私たちに説明した予算書昭和三十二年度歳入歳出予算概要労働省所管労働者災害保険特別会計失業保険特別会計の十一ページをごらんになると、総合職業補導所の三十二年度設置個所三十カ所、うち新設七カ所、こうなると三十一年度は二十三カ所、こういうことになってくる。そうしますと、この法案が通って実施せられるとあなた方が予定をしておる七月は明らかにこれはまだ未完成なものなんです。そうしますとこれは三十カ所と書いて提案理由説明しなければ実施の総額は違ってきます。だからこの前御説明をいただいた未完成のものも含めて出資総額は六十四億七千二百万円になっている。現実完成をしておるものは四十四億七千九百万円になっているのでしょう。そうしますと当然六十四億七千二百万円の巾にて三十二年度分の総合職業補導所なり、簡易宿泊所分が入ってこうなっておるだろうと思うのです。それは入っていないのですか。
  16. 村上茂利

    村上(茂)政府委員 前段個所数後段予算金額の問題でございますが、前段個所数の問題につきましては、この事業団法案を提出いたしましたのは、たしか三月二十二日でございまして、昭和三十二年度予算が通過していない時期でございますので、提案理由説明としましては、現在その数は云々とその数を申し上げておりますが、それには三十二年度予算予定しておる数は含めておらないのでございます。そこで滝井先生指摘の三十二年度予算における個所数と、提案理由説明個所数と違って参るわけでございますが、そういった時期的ズレがのるということを御了承いただきたいと存じます。それから保険施設に投資いたしました額の総額といたしまして、六十四億という数字をお述べになりましだが、それに対しまして、完成した施設の全級といたしまして四十四億七千万円、こういう数字を仰せられたのでありますが、その両方金額の差は未完成のものか、新年度の予算の差額かというような御指摘がございましたが、これはそうではございませんで、三十一年度末までの投下した資金の額と、それから完成されました施設の額との差でありまして、昭和三十二年度の予算分は含めておらないのでございます。
  17. 滝井義高

    滝井委員 昭和三十二年度分は含めていないということになりますと、労災関係病院等の新営費十二億二千百十六万三千円というのがある、そうすると、この区分の三十二年度の労災特別会計病院等の新営費十二億二千百十六万三千円、これは予算予定額、そうするとその要求の概要は、業務上の災害、疾病をこうむった労働者の療養を目的とする病院等を新営するため必要な経費である。拡充整備二十カ所、(註) 労災病院数は、二十四カ所である。こうなっている、そうしますと、これは三十二年度分が入らなければ労災病院は二十四カ所にならぬはずです。
  18. 松永正男

    松永政府委員 これは予算書説明も舌足らずの点があるのでございますが、労災病院が二十四カ所でございますが、これは三十一年度の末における労災病院として予算上計上せられておる病院であります。ところが実際は予算の使用上総額との関係がございますので、この二十四の労災病院のうちで、たとえば病棟が五百ベッド予定をしておりますうち、まだ二百ベットしかできていないという病院もございます。それから計画が後に行われましたものにおきましては、二十四病院のうちには入っておりますが、実際には本館だけができたという病院もございます。病院によりまして、それぞれ完成の度合いが違って参るわけでございます。三十一年度末までに労災病院建設として正式に予算に上りましたものが二十四カ所でございます。従ってその中には未完成のものが入るということになります。三十二年度の予算においては、この二十四の病院について全く新しく増設するというものはございませんで、二十四のうちの未完成のものをだんだん完成していくという予算が計上されてございます。その数が二十カ所であるということになります。総合職業補導所につきましては、三十一年度末におきまして二十三カ所が正式に予算に計上されておるものでございますが、そのうちには完成したものと建設途上のものと労災病院と同じようにございます。ですから設置個所としては二十三カ所でございますが、そのうちにやはり未完成のものを含んでいるということになります。三十二年度にいきましてさらに七カ所増設をする、この七カ所につきましては全くの新設でございまして、三十一年度末までに全然手をつけていない、三十二年度で初めて手をつけるというものでございます。従いまして、提案理由説明にあります個所数は三十一年度末において予算上正式に計上されました総合補導所病院等の数でありまして、両方とも同じ基準で見ておるはずでございます。
  19. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、この事業団政府出資分というものは昭和三十一年三月三十一日までの予算の範囲内で決定しておるものを出資額とする、こういうことなんですね。
  20. 松永正男

    松永政府委員 昭和三十一年度末におきまして決定しておりますもののうち――これはやや技術的になるのでございますが、建物一つ一つにつきまして現在建設省建設をいたしております。そうしますと、Aという労災病院の中の第一号病棟完成をいたしますと、それを建設省から労働省に引き継ぎをいたしまして、国有財産として登録をするわけでございます。従って未完成のものは労働省所管予算で建築をいたしましても、いまだ労働省国有財産として登録されないというものがあるわけでございます。ここで先ほど六十四億というお示しになりました数字に該当するものは、労働省所管建設予算建設をいたしましたもののうち三十一年三月末までに完成をしまして――これは病院としての完成ではなくして、個々建物としての完成ですが、完成をしまして、労働省に明確に労働省所管財産として登録せられておるもの、それを内訳としてあげたわけでございます。
  21. 滝井義高

    滝井委員 どうも問題がはなはだ複雑になってきたのですが、そうしますと、技術的に個々建物で三月三十一日までに完成をして国有財産となってそれが明白に労働省所管に移されたものが出資財産となる、こういうことなんです。従って時点のとり方によってはこれは非常に動いてくるわけなんですね。この法律が七月なら七月一日から動き出すということになれば、三月三十一日と六月三十日とはそこで相当違ってくるわけですね。従ってわれわれは出資額が幾らかということをなかなか明白にしにくいわけなんです。どうもこの予算書を見てもわからぬ。従って大ざっぱでよろしいから、私は昨日もちょっと最後に要求をしておいたのですが、政府出資する額の内訳をやはり出してもらいたいと思うのです。できれば地方公共団体の分も出してもらいたいと思うのです。どうもきょう法案を通すことになっちゃって、はなはだ困ったことなんですが、そういう全体のことがわからないとどうも私たちはこの事業団については多くの疑問が出てくる。こういう疑問を残して法案をうやむやのうちに通してこういう事業団を成立せしめると、そこからまた汚職が出るということにもなりかねない。これは大事な財産です。物事がAからBに移ったり、BからCに移るという過渡的なごたごたがあるときには大事な財産がいつの間か一引き、二引きでなくなっていくということもありますので、ここあたりは非常に重要なところだと私は思います。従って政府一つそういう資料を出してもらいたいと思います。  それからいま一つお尋ねをしたい点は、そういう財産に関連をして十九条をごらんになっていただくと、この前資本金との関連においてだいぶ論議したところなんでずが、十九条の一項の一号は、労働省災害補償保険法第二十三条第一項の保険施設のうち、療養施設、職業再教育施設その他政令で定める施設の設置及び運営を行うこと、こういうことになって、この意味は二十三条関係のほとんど全部を大体網羅する形で書かれてきておるわけです。その他政令で定める施設の設置及び運営ということになって、少くとも療養施設と職業再教育施設は全部入るという意味にこの文章はとれるわけなんです。ところがその次の二号をごらんいただくと、失業保険法第二十七条の二第一項の施設のうち、政令で定める職業訓練施設、宿泊施設、こうなっておるわけです。従って「政令で定める。」ということで、政令というのが上にある。上にあるということは、職業訓練施設の中でも自由に政府がその中で、たとえば十の職業訓練所があるならば、その中の五つだけを政府事業団にやって、あとの五つは県にまかせることができる、こういう意味の書き方で、これは初めから選択権を持っておる書き方で網羅的ではない。一号の方は網羅的です。二号の方になぜこういうように網羅的に書かなかったかということです。総合職業補導所はすべて政府はこの中に入れるというお考えなんです。提案理由説明を見ると、未完成のものをも含めて、昭和三十二年度のものは別として、三十一年度までのものは一応全部入れていく、こういう形になる。ところが、この書き方は「政令で定める職業訓練施設、宿泊施設」と、こうなっておるのですから、訓練施設でも宿泊施設でも全部入れなくてよろしい。建物がよくできて、敷地の話がうまくいったら、あと建物の無いところは地方自治体にまかせよう、こういう言い方をしておるわけです。これは労災保険失業保険関係福祉施設保険施設とを一括して事業団にやるんだ、こういう建前でおるのに、十九条を見ると、一号と二号とはこれは明らかに違う立て方になっておる、これはどういう理由ですか。
  22. 村上茂利

    村上(茂)政府委員 御指摘の第十九条の第一項第一号の書き方と第二号の書き方と違うじゃないか、こういう点でございますが、労災保険法第二十三条の保険施設に関する規定保険施設の種類を例示しております。第一号から第五号まで例示しておるのでございますが、失業保険法第二十七条の二の福祉施設に関する規定は、福祉施設の種類を例示していないのであります。こういうように、それぞれ基本になる本法の規定の仕方が異なっておりますので、それに応じましてこの第十九条の規定の仕方をそういうふうに書いておるのでございます。
  23. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、これであなた方は職業訓練施設の中で総合職業補導所は全部事業団に移ると読めるというわけなんですか。私はこれではそうは読めないと思うのです。
  24. 村上茂利

    村上(茂)政府委員 これは政令の規定の仕方いかんによりまして全部移そうと思えば政令にそれを定めればよろしい、かりにもしその宿泊施設等の中で問題があるというようなものがございますれば、残そうと思えば政令の定め方によっては残せる。これは滝非先生指摘のように、政令の仕方いかんによってそういう措置がなし得ると思います。
  25. 滝井義高

    滝井委員 政府の意向としては職業訓練施設と宿泊施設のすべてを移すという方針なんでしょう。それならば初めからやはりそういう工合にわかりやすくした方がいいんじゃないですか。
  26. 村上茂利

    村上(茂)政府委員 先ほど申し上げましたように、失業保険法の二十七条の二の規定には職業訓練施設とか宿泊施設とかいう固有名詞は実は載せていないのであります。広く福祉施設という概念でカバーしておるのでございますので、そういったものをピック・アップして二つ例示したわけでございますが、そういったものを個別的に全部種類を予定し、かつその具体的内容も明確にするということが法律技術的に問題がございますので、政令で定める職業訓練施設、こういうように、政令でその種類内容を定める、こういうように規定したわけでありまして、そういった立法技術上の点からこういう書き方にいたしておるわけであります。
  27. 滝井義高

    滝井委員 どうもそこらあたりが少し納得がいきかねるのですが、二号を見ると「職業訓練施設、宿泊施設その他の施設」と、その他の施設というものをまた書いておるわけです。実際に失業保険関係福祉施設を見ると、総合職業補導所と簡易宿泊とそれから総合福利施設、この三つだけしかないのです。そうすると総合職業補導研と簡易宿泊所を全部入れるという建前政府がとっておるなら、あとその他の施設として残るものは総合祖一施設だけです。これは全国で七カ所しかない。去年一カ所作っておって、うち新設が今年六カ所ですから全部で七カ所です。しかも三十二度分がこれに入らないとするならば三十一年度が一カ所、そうすると何も政令で選択的にやるような書き方あしなくても、政令で定めるというのをどけて二十七条の二の第一項の施設のうちとれこれその他、こういって網羅的にしてもいいはずなのです。十九条の一項の一号というものはほとんど全部保険施設が入ることに、この前総務課長さんから御説明いただいた。そうすると二号も全部入っても悪くないはずです。ところが二号だけは特に選択的にしておるのが私はわからないということなのです。
  28. 村上茂利

    村上(茂)政府委員 失業保険法の二十七条の二第一項では具体的な福祉施設の種類を明示しておりませんで、失業保険法施行規則三十七条の二の規定でございますが、「職業補導の施設、宿舎の施設その他これらの者の福祉の増進を図るための施設をいう。」というように、福祉施設の種類、内容を施行規則の段階で明らかにしておるわけでありますが、その施行規則の中におきましても「その他これらの者の福祉の増進を図るための施設」ということで、その他の施設というのが一つあるわけでございます。これは将来福祉施設の発展拡充に伴いまして、現在設けております職業訓練施設なり、宿泊施設以外の施設が出る場合もあり得ることでございますので、そういう新たに設けられるような施設もこの事業団に加えることができるように第十九条第一項第二号の規定では、その他の施設という言葉を入れておるのでございます。なお現在福祉施設の中でその他の施設が六カ所ばかりあるじゃないかという御指摘がございましたが、これは共同作業施設として身体障害者補導所に付設してある施設がございますが、これは身体障害者職業補導所と一体的に運営されるのが適当でございまして、これを無理やり切り離して事業団に持ってくるということはいかがかと存じますので、これは従来通り身体障害者職業補導所の付帯施設として運営して参りたい、かように考えておる次第でございます。
  29. 滝井義高

    滝井委員 十九条一項の一号と二号の書き方について福祉施設を一応こういう形で取り上げていこうとするならば、あとに残るものだけをちょっぴりどこかに残しておいておもなるところだけを取り上げてしまっていくということであるならば、もはや失業保険福祉施設は、全部事業団が責任を持ってやる形の方がはっきりしてくるのです。それを一部の職業安定局にあるいは都道府県にちょっぴり残す、そうして中身のいいあんこだけを事業団がとってしまうということでは、なかなか行政はうまくいかない。やるならこの失業保険法二十九条の二の施設は一応全部事業団に持っていく方がいい。そういう形の方がすっきりしてくるという感じがするのですが、大して大きな問題ではないので次に移ります。  次にこの事業団建物土地、すなわち土地等を評価する評価委員ができるのですが、この評価委員というのは一体どういう人がなるのですか。それからまた地方公共団体土地については、知事にも十分に相談をいたしておるとは言えないという状態です。個々の知事には一応協議したとおっしゃるが、知事会としてはそうではないと言っております。地方公共団体の知事さんも評価委員になって評価することになるでしょうが、評価委員地方公共団体からも入るのですか。どういう方がなりますか。
  30. 村上茂利

    村上(茂)政府委員 評価委員は、労働大蔵両省の関係職員、それから出資されました地方公共団体の代表者、事業団の代表者、学識経験者等から労働大臣が選任する予定であります。地方公共団体の代表者もこの中に入れる、かように考えております。
  31. 滝井義高

    滝井委員 評価委員その他評価に関する事項は政令で定めることになっております。地方公共団体その他も入るそうでありますから、ぜひ一つそういうことで運営をしなければならぬと思います。ここはきのう事業団理事の問題で井堀君から言われておりましたので、きょうはなかなか周到な御答弁で敬服をいたしております。  そこで次には井堀君が落しておいたその役員関係を少しく尋ねたいのです。理事長は一名で労働大臣が任命する、俸給は十三万円程度だ、理事は四名で理事長が任命をして労働大臣が認可する、監事は二名で労働大臣が任命する、理事、監事の給料は大体十万円くらいだ、こういうことを聞かせてもらいました。評価委員のことはいろいろと政令で定めておるのですが、理事長なり、理事・監事になってはいけない者の規定は、一応欠格条項として十二条関係に出ております。これらの者の具体的な基準と申しますか、そういうものを法律的に明示することができないならば、政令である程度明白にしておく必要があるのではないかという感じがするのです。ここでお尋ねしたいのは、この方々は任期四年の役員でございますが、今までの労災協会の運営の仕方はどういう工合になっておったか、これをまず御説明願いたい。
  32. 三治重信

    ○三治説明員 労災協会の運営は、毎年病院収入の見込みと支出の見込みを運営について立てまして、その不足分を経営委託費として出しております。経営部面だけを労災協会でやらせているわけであります。従って新営費、機械器具購入費は政府みずからがやっていたわけでございます。
  33. 滝井義高

    滝井委員 経理面の運営ではなく人的な労災協会の運営はどうやっておるか。人的な構成です。
  34. 三治重信

    ○三治説明員 労災協会は会長一名、副会長二名、常務理事若干名、内部は総務部、施設部、業務部というふうに分れております。
  35. 滝井義高

    滝井委員 会長、副会長及び常務理事はどういう方法で選任をしておったのですか。
  36. 三治重信

    ○三治説明員 これは財団法人でございますので、別に政府が任命するとかなんとかということでなくて、一番初めに会長として清水玄さんがおなりになって、その後も引き続いております。それから理事その他の方でも労働省財団法人としての監督権はございますが、そういう人事についての直接な、今度の事業団みたいな任命権、罷免権というようなものはありませんので、実質上は労働省と若干の話し合いはあったこともありますけれども、こちらの方が任命するとかなんとかということはない。やはり民法の規定による寄付行為によって仕事が行われているというようなのが現状であります。
  37. 滝井義高

    滝井委員 常務理事は会長が任命するのですか。どういう形になって、大体現在どういう方々が常務理事若干名の中に入っておられるか。
  38. 三治重信

    ○三治説明員 会長が清水玄さん、副会長が新居五郎さん、副会長兼常務理事三川克巳さん、理事労働者側代表として今井田さん、兼田さん、使用者側代表小林さん、久米さん、勝山さん、公益代表が川村さん、監事が桜井さん、松田さん・近藤さんというふうになっております。
  39. 滝井義高

    滝井委員 労災協会は少くとも労働者と使用者と公益とが入っておることは今の御説明で明白になってきたわけです。そういう形で運営をしておった労災協会病院が、今度一挙に天下りの労働大臣が任命をする理事長、理事長の任命する理事、こういう形で運営をせられるということになれば、これは百八十度の性格の転換になるわけです。こういう点が昨日井堀君から、これは憲法違反の前ぶれだということを言われる理由もそういうところから私は出てくると思う。従って、理事長なり理事の任命の様式というものを法文か政令で明確に定めておく必要があると思う。少くとも評価委員と同じような民主的な選び方にしない以上は、これは問題が私は出てくると思う。昨日も井堀さんから言っておったように、普通の健康保険とは幾分違うところがある。これは普通の健康保険と同じだという割り切り方をするならば労災保険の治療というものは自由診療の範疇に属するものとはしない。ところが依然として自由診療の範疇に属せしめてやっておるということは、公傷というものが一般の私傷とは違うという概念がどこかにある。これは昨日井堀さんも言っておったように、同じ個所のやけどならやけどでも私傷のやけどであろうと公傷のやけどであろうと、治療法は科学の前には一つだ。しかし、治療法が一つであっても、公傷のやけどというものは自由診療で、医者が自由自在にいわゆる点数とか単価のワクを離れてやれる姿をとっておる、というのはそれは何かそこに公傷というものが私傷とは違うのだという幾分やはり精神的にも恩典に浴させてやろうじゃないかという概念が、言わず語らずのうちにわれわれ皆を支配している形が出てきていると思うのです。そうすると、今までそういうものは労働者意見もある程度経営の中に――労働者代表なり事業主代表なり、事業主は全部保険料をメリット制で納めておるわけなんですから、従って、そういう点を円滑に反映する姿というものは、私はこの事業団にも出ていかなければならぬと思う。この事業団にそういう性格を出すためには、法律の中において、この事業団を運営していく中枢的な地位にある理事長なり理事のその人事、人選のときにそれが出ておらなければ、あとで出そうとしたってなかなかこれは出ません。そういう点で、私はこの法案はこういうところにもどうも大きな欠陥があるという感じがするのです。これは森林開発公団やその他農地関係の公団とは違うことは明らかなんですから、こういう点ではまあ異議ありといわなければならぬと思うのです。そういう点で、昨日も井堀さんがいろいろ追及をしておりましたが、あなた方の方で言を左右にしてそこらあたりは明白にならなかった学識経験豊かで人格高潔な人とか何とかいろいろ言っておったけれども、そういう抽象論じゃなくて、あなたの方で、運営の面で、具体的に使用者側なり労働者側なりの代表をずばり理事に入れていくだけの雅量を持っておるという答弁ができるかどうか。これはあなたの方で今答弁がおできにならぬということになれば、あとで大臣に来てもらって尋ねなければならぬと思うのですが、日本の政治はまあ一応政党政治になっておりますけれども、まずあなた方が頭脳ですわ。まずあなた方の意向が大臣を動かす一つの原動力になる。あなた方はどういう工合に考えておりますか。
  40. 村上茂利

    村上(茂)政府委員 労災保険によるところの保険給付が労働者の福祉に沿う線において慎重かつ適切に行われなければならない、こういう点については私ども全く同感でございますが、しかしその点は治療とかそういう療養の面において労災保険趣旨に沿うような適切な療養を行えば足るのではないか、私どもはかように思うのでございます。事業団というそういう団体理事長なり理事の選任の仕方につきましては、いろいろお考えはあるかと存じますが、一応法律的な前例を見ましても、昨年国会で制定されました労働保険審査会とか、ああいう準司法的な機能を営む審査会の委員につきましては、資格条件を明示する、そうして国会の御承認まで得る、こういうような手厚い手続をとっておるのでございますが、しからざるものにつきましては、立法上の前例といたしましては欠格条件は書いておりますけれども、積極的な資格条件は規定した例はないのでございまして、そういう例に従っておるのでございます。ただ具体的にどういう人物を選任するかということは、確かに団体の運営上非常に重要な関係があると存じますが、考え方といたしましては昨日も大臣が御答弁申し上げましたように、学識経験を有し、公益的な立場で広い角度から物事を判断できるような方が適任ではないかと存じておるのでありまして、ことに労働者代表、あるいは使用者代表という特定の立場に立たなければならない、こういうように私どもは考えておらないのでありまして、公益的な立場から広く問題を考え、適切に事業運営をなし得る方が、理事長及び理事として適任ではなかろうか、かように考えておる次第でございます。
  41. 滝井義高

    滝井委員 そういう点は、大臣が来てからもう少しお尋ねをしたいと思います。  次にこの十九条の二項に、「事業団は、前項各号に掲げる業務の遂行に支障のない範囲内で、委託を受けて、同項第一号又は第二号に掲げる施設を利用して、労働者の福祉の増進を図るため必要な業務を行うことができる。」と書いてありますね。この一号、二号に掲げる業務の遂行に支障を来たさない範囲で行える他の仕事はどういうことが考えられるのですか。
  42. 村上茂利

    村上(茂)政府委員 具体的な例を一、二申し上げますと、たとえば技能者養成指導員というのがございますが、これは民間の企業体が集まりまして、技能者養成共同施設を作っておりますが、その指導員の諸司訓練をするというような施設が十分でないのでございまして、そういったものにつきましては委託を受けて総合職業訓練施設でそういった指導訓練をするとか、あるいは一般の職業補導所の指導員の訓練をするとか、こういうような事例が考えられるのであります。
  43. 滝井義高

    滝井委員 昨日お願いをしておった業務方法書の内容、そういうようなものはきょうはできておりますか。
  44. 村上茂利

    村上(茂)政府委員 業務方法書の内容として記載すべき事項は省令で定めることになっておりまして、具体的にまだ確定はいたしておりません。ただ概括的に申しますならば、労災病院の設置基準とか設備の基準とか、あるいは総合補導所の科目の選定基準とか、あるいは宿泊施設の利用条件等につきまして、事業団の内部規定の根幹となるような事柄を労働省令で定めたい、  かように考えております。
  45. 滝井義高

    滝井委員 この事業団法の二十二条ですかに、いろいろと予算事業計画、資金計画を作らなければならぬことになっておるわけですね。しかも国は交付金を予算の範囲内で事業団にやることになるわけです。具体的に昭和三十二年度のこの失業保険と、それから労災保険のこの特別会計の中から、どういう経費が一体事業団に具体的に移っていくことになるかということなのです。昭和三十二年度については、設置の経費というものはこれはいかないということが、付則の八条だったかに書いてある。従って施設の運営と今年は読みかえるのだから、施設の運営の経費だけがいくことになる。当然三十億、四十億という莫大な施設を運営をしていくわけでありますから、それとのかね合いが要ると思う。そうしますと、この特別会計の中にもそれぞれ相当の予備費も計上されております。従って予備費等の中からも具体的に相当事業団の中には移っていかなければならないと思う。しかも現実に三千四、五百人の人がそこで働くという施設ですから、今の労働省よりかむしろ大きくなるのではないか、労働省は今本省だけで三千五百人いないでしょう。そうしますと、これは相当なものがいくが、一体この特別会計の予算の中のどれとどれとどれとが、どの程度のものが、この事業団にいくこと  になるのですか。
  46. 松永正男

    松永政府委員 昭和三十二年度におきまして、労災保険特別会計及び失業保険特別会計におきまして、保険施設の運営費として計上されております分が事業団にいくわけでございます。先ほど御指摘のように施設建設につきましては三十二年度は国がこれを行うということになりますので、この経費は直接国がこれを管理し仕事をして参るわけでございます。運営費関係につきましては労災保険特別会計におきまして、病院傷痍者訓練所等の経営の経費といたしまして、二億一千五百三十五万四千円が計上されてございます。それから失業保険特別会計におきまして総合職業補導所の運営の経費といたしまして一億三百六十万円が計上いたしてございます。
  47. 滝井義高

    滝井委員 労災関係で二億一千五百三十五万円、それから失業保険関係で一億三百六十万円、はしたがありますが、はしたは削ってその程度いくそうでございます。そうすると予備費等を見ていきますと、労災保険の方の予備費は三十四億五千五百三十二万円ある、それから失業保険の方は百二十九億ばかりの予備費がある。当然これは今までそういうものをひっくるめてやっておったわけです。予備費というものは予見しがたい予算の不足に充てるための経費が予備費なのですから、そうすると代行機関として三千人をこえる人ですよ。そうしてやがて六十億になんなんとする財産を運営をする機関に一文の予備費もやらぬというのはけしからぬと思うのです。運営をするのだから運営の費用だけをやればあとはお前らは適当にやっておけ、こういうことになるとこれは私は今から予見しておきますが必らず独立採算制をとらざるを得ないことになる。そうしますと、どういうことが起るかというと、今まで一点単価十五円でやっておった自由診療というものを赤十字病院と同じに必ず二十円に上げなければやっていけぬことになる。それは労災というものは非常に高度の治療を必要とする一面、濃厚治療を必要とするのですよ。そうしますと、濃厚治療をやれば労災には莫大な金がかかってくる。そうするとその穴というものをどこから埋めていくかというと、必ず健康保険か一般患者で埋めていかざるを得ないことになる。従ってこういうところにこの労災病院が日本赤十字と同じような運命をたどる可能性が出てくる。現実に国立病院がそういう状態になってきておる。国立病院がそういう状態になってきて、やはり入院に格差をつけなければならぬという形になってきておるのです。しかも入院料は国立病院は一般の私的医療機関よりか一割ないし二割を引いてやっておるけれども、主食、副食を合せて百三十円程度の飯を食わせなければならぬのに九十四円十銭そこそこしか食わせない。三十円だけ搾取しているという形が現実に出てきているのです。こういう徴候が国立山病院にもすでに出てきている。これは独立採算制で、非常にシビヤーな予算しかやらない、予備費もこういうものにはやらないということになって、あなた方が出し惜しみをしていると、それはあにはからんやかよわい労災患者なり一般の健康保険の患者に転嫁される。労災の患者にどういう点で転嫁されるかというと必ず飯代が削られてくる。飯代が削られれば治療が長引く。長引けばそれははね返って労災の経費というものがだんだん水増しされなければならぬという形になってくるのです。だから三億一千八百万円程度両方で出すというが、それでは私は少いと思う。労働省よりかもつと大きな機構になる事業団というものの経費が、運営の経費だけをやってあとはやらぬというのでは、これは私は納得がいかぬと思うのです。そしてしかもその金の使い方は、業務の方法書を作ってそれにのっとって予算を出さして非常に厳重な、大蔵省があなた方の予算を査定するような状態でおそらくあなた方はきっちり見ていくでしょうよ。何ということはない、屋上屋だ。一番ばかを見るのはそこに働いておる医者だ、こういうようなことになってしまうんです。それはどうしてかというと、労災の患者からはもっといいことをやってくれと言われる。あなた方からは予算を倹約をしてくれと言われて、やせ衰えるのはそこで働いている療養担当者だということになる。療養担当者はこれは何とかしなきゃならぬというので濃厚診療をやっておれば、今度は厚生省が知事指定の健康保険法四十三条の一号の病院だということでずばり監査をやって、今度は保険医を取り上げられるということになると、何ということはない、やせ細るのは療養担当者だけということになる。こういう点でこの予算というものをどういう工合に分けて与えるのか。もっと具体的なものを私は出してもらいたい。これはこの法案がきょう通ってもいずれ私たちは別な角度から問題にしたいと思うので、今こまかいことを言っても時間がありませんからその点を私は留保いたします。従ってそういう点を一つ具体的に出していただきたいと思うのです。このわれわれが審議をして通した予算だけを見ても事業団の全貌なんてものはさっぱりわかってこないのです。しかもその法律を読んでも事業団が具体的にどれだけの金を使って、どういう工合に運営をせられるかということもわからぬ。わからぬでこの法案を通すということはけしからぬことなんですけれども、しかし一応きょう通すという約束になっておるので誠実信義の原則に反するわけにいかぬので、泣きの涙で採決をしなきゃならぬという形に追い込まれているのですが、ほんとうはこれはわれわれはどうも納得のいかないところなのです。そこでそれは出していただくということにして、いずれこれは大臣が来たら予算の点ももう少し大臣に念を押したいと思います。  次には職業補導関係ですが、職業補導の仕事を今までは知事にやってもらっておった。ところが今度は事業団がやる、こういうことになるわけなんです。そうしますと総合的な職業補導、特に技術指導を中心にして職業補導が行われるということになりまするならば、これは当然その地域社会の民情に合ったあるいは経済情勢に合った職業補導が行われなければならぬことは当然なのです。今まではその地域によって知事が十分地域の情勢を知って総合的な職業補導をやり、同時に公共職業安定所と両々相待ち、車の両輪の形で運営をしておった。今度は事業団が上からきてやる形になるわけなのです。そうしますとこの二十条の業務方法書等を作ったり、あるいは二十二条の、いろいろと予算事業計画や資金計画を作って、当該事業年度の開始前に労働大臣の認可をそれぞれ受けることになるわけなのですが、こういう場合に、その地域の情勢を一番よく知っており、しかも公共職業補導所という職業補導の一面を担当をしておる知事の意見を何にも聞かずに、事業団だけが勝手に、その地域社会できわめて必要な中堅的な技能者、中堅的な職業人を養成をするというときに聞かなくてもいいかどうかということなのです。私は日本の職業行政というものがほんとうに地域社会の大地に根をおろそうとするならば、やはりそれくらいの雅量というものを持っておっていいと思う。ところがこの法律を読んでみると、さいぜんも申しましたようにまず民主的なのは評価委員だけ、あとは全部天下りだ。予算も方法書もみな天下りの形だ。これでほんとうの地についた福祉行政が行われるかということですよ。福祉行政というものは少くとも地域の経済と民情と風俗とを十分に知る、やさしい言葉でいえば甘いも辛いもかみ分けて、そうして行うところの行政が私は福祉行政だと思う。だからこそ厚生省には指導員とか民生委員というものを置き、しかも地域社会にどんどん入っていける児童福祉司とかあるいは社会福祉主事というものを置いている。私は職業補導教育もそうだと思う。職業補導教育を受ける者は何も高等の教育を受けた人が行って受けるものではないと思う。せいぜい高等学校か中学以下の子弟がおもに受けるところだと思う。そうだとするならば私はやはり地方長官の意見を聞く条項を第二十条・二十二条には――出資をせしめているのですから、金を出資せしめておって、出資せしめた人の意見も聞かない。しかもその人が全然関係のない者ならばとにかく、同じような職業補導行政というものをやっている知事の意見も聞かない。金は出させるが意見は聞かない。同じような仕事をやらしている。しかも今まで持っておったものは取り上げられてしまうということでは、地方自治体の長は踏んだりけったりされたと同じことです。これでは知事会がまっこうから反対するのは無理ない。こういう点は与党みずからが修正しなければいかぬのです。こういう少くとも大衆生活に密着をしておる行政病院行政とか失業保険行政というものはやはり下情が上通する姿を作らなければいかぬ。上意下達だけではだめです。そういう点あなた方は二十条と二十二条でうまく職業補導行政がいけると思いますか。
  48. 江下孝

    江下政府委員 ごもっともな御意見だと思います。そこで実はこの法律にはこの点について明確な条文を置いておりませんけれども、御趣旨の点はせいぜい政令におきまして必ず私は運営ができるように努力いたしたいと思います。
  49. 滝井義高

    滝井委員 政令に譲るということでございますが、実は政令というものは行政の手に握られたときのことであって、ほんとうにそういう気持があれば、トラブルを未然に防ぐ意味においてやはり法律で書く方が私はよかったと思うのです。これは今江下局長さんは私の意見に同感であるという意を表明してくれました。この法律がもし通って実施の段階になるならば、十分知事の意見というものは聞かなければ私はうまくいかぬと思う。  質問が少しあとさきになりましたが、一体総合職業訓練所というものを知事が運営ができない。知事が運営をしておったならば非常に支障があったという実例でもあるのですか。知事が運営をしておったのでは工合が悪い、事業団でなければならぬという何か積極的な理由があれば、一つあわせて教えていただきたいと思う。
  50. 江下孝

    江下政府委員 総合職業補導所は失業保険施設でございますし、先般来るる申し上げておりますように、国の責任において実施すべきものである、これが私は建前であると思います。それからもう一つは、これも前に私申し上げましたように、失業保険法の保険施設につきましては、一般の府県知事でやっております職業補導よりは、網羅的な、高度な職業訓練というものを目標にして考えておるわけでございます。現在やっております総合職業補導所の補導につきましては、これは先生のおっしゃる通り、一般の補導と同種のものでございますけれども、しかしながら今後は、被保険者――工場、事業場に現在働いておる人を対象にいたしまして、職業訓練を活発に実施していかねばならないということもございます。なお、ほかの例を申し上げますと、先ほど村上君から申し上げましたように、職業訓練関係全般の職員の資質の向上のための研修等も、この総合職業補導所において行いたしということがございます。さらに、その地方における技術に関します相談、援助、広報というような面も、広くこの総合訓練施設において実施せしめたいという気持を持っております。技能者の養成の問題にいたしましても、従来事業場の中でやっておりましたものを、この職業訓練施設において十分協力援助していくということも考えておるのでございます。以上のような点からいたしましても、私どもといたしましては、今後全国的な組織を持つ事業団において運営せしめることが適当であるということから、かような措置に出た次第でございます。
  51. 滝井義高

    滝井委員 どうもちょっと納得がいかぬところがあるのですが、時間がないですからそのくらいにして、次には職員の恩給関係です。第六章雑則の三十五条ですが、この関係を見てみると、それぞれ有無相通ずる形になっているんですね。恩給は通算してくれることになっておるのですが、これは県の職員が事業団に入る可能性が出てくるわけですね。総合職業訓練所、この人たちの恩給の関係はどうなるのです。これは通算してくれるのですか。
  52. 村上茂利

    村上(茂)政府委員 県条例で恩給関係の事項を規定していただきますと、通算できると思います。関係府県に対しましては、そういう点いろいろお願いしております。
  53. 滝井義高

    滝井委員 私はそういうところにも問題があると思うのです。県条例でそういうことを規定してくれればなるんだという、そこまであなた方がお考えになっておるならば、この法律を作るときに十分知事と相談をして、現在総合職業補導所に働いておる県の職員というものは、みんな事業団なら事業団に来てもらう、そうして恩給の通算も、全部法律で書いてやる、こういうような相談が事前に行われておらなければならぬと思うのです。ところが、自分たちの方の者は、うまく恩給関係の通算ができるように書いておるけれども、地方自治団体の職員については、これは何にも明示されていないんですね、こういう片手落ちになっている。もうそういう点から見ても、あなた方は、地方公共団体の長との間の意思の疎通が不十分なような感じがする。それでは、もし現在職業補導所に勤めておる自治体の職員が、私は事業団には参りません、こう言ったときは、一体、どうなるんです、首ですか。
  54. 江下孝

    江下政府委員 現在職業補導所に働いております職員の大部分は、府県からいただいておる職員でございます。そこで今お話しのように、行かない、事業団はいやだといいます場合には、私どもは府県と話し合いをしまして、その人の身の立つように府県の方で引き継いでいただくようにお願いをするつもりでございます。  それから、法律にこの点を書いてないのはけしからぬというお話がございましたが、この点につきましては、実は自治庁とは十分話し合いをしまして、国家公務員と地方公務員の間に不均衡を来たさないように、自治庁の方でも十分配慮するということで、実は話し合いをしておるわけでございます。純粋には、地方公務員の場合は条例でいくというのが建前ではないか、かように考えております。
  55. 滝井義高

    滝井委員 県の職員であって総合職業補導所に働いておる人が、この職場が事業団に移るならばいやだ、こう言った場合には、これは十分お願いをして県に採ってもらうんだと言うけれども、現実職業補導所に働いておる職員の身分というものは、実に風前のともしびです。県だって、自分の所管で今までやっておった仕事場が、国の代行機関となるところの事業団に取り上げられて、そうして向うに行くのはいやだという職員をまた自分の方にかかえ込まなければならぬといったら、今のように地方財政赤字で定員のうるさいときに、労働省みずからが労働問題を宙に浮かす形を作るじゃありませんか。事業団に入らない職員は地方自治体が何とかめんどう見なければならぬというような規定を、この法律の中に――知事とも十分話し合って、いろいろ協議をしておるならば、やはりそれを入れてやっておく、附則にでもちょっと入れてやっておけば、安心するのです。三十五条でこんなに長々と書いてくれておる温情があるのですから、そのくらいのことをやるのは当然なんです。そういうことがどうしてできなかったのか。
  56. 村上茂利

    村上(茂)政府委員 恩給関係の問題につきましては、地方公務員につきましては道路公団とか住宅公団の前例がございまして、地方公務員であって公団に勤務し、また地方公務員になるというような出入の場合の恩給通算につきましては、住宅公団、道路公団に前例があるのでございます。法的な措置としましては、特段とこの事業団法規定を設けなくても、地方自治法施行令百七十四条の五五の第一項第四号を改正いたしまして、道路公団とか住宅公団とか列挙してありますから、そこに労働福祉事業団一つ加えていただきますと、地方自治法関係で恩給通算の処置が講ぜられる、こういうことになるのでございまして、政令改正によって無理なく、スムーズに処置できる、こういうことで、事業団法に格別に恩給措置規定しなかったわけでございます。前例もあることでございますから、府県の御協力を得ましてスムーズにできるのではなかろうか、かように考えておる次第でございます。
  57. 滝井義高

    滝井委員 政令はあなた方の手のうちにあるものだから、自由自在に粘土細工のようにできるだろうと思いますけれども、やはりここで税法の問題を私はこの法案の審議の冒頭にやったのですが、実際に大蔵省で税を扱っている専門家が、いよいよ自分で政令を出しておきながら、一番非公益的なものを公益事業のトップに上げてきたりしておる醜態なんですからね。だから、そういう点は、地方自治体のものを取り上げるといっては語弊があるけれども、事業団の方に入れるのだから、そういうときはやはりそれだけの温情と申しますか、少しはめんどうくさくてもそれだけの手続をしておく方がいいだろうと私は思います。  あといろいろこまかいことがございますが、時間がもう十二時十分になりましたから私はもうこれでやめますが、大臣に最後にちょっと一、二問だけ念を押しておきたいので、来ていただきたいと思うのです。
  58. 亀山孝一

    亀山委員長代理 滝井委員に申し上げますが、大臣は今予算委員会で答弁中だそうでございますから、しばらくお待ち願います。
  59. 滝井義高

    滝井委員 労働福祉事業団法の採決に当って、最後に大臣に三点だけお尋ねをしておきたいのです。それは今まで労災病院を運営しておった労災協会というものは、その運営の主流をなす理事陣というものは三者構成であった。すなわち経営者の代表、公益代表、労働者代表、こういう三者が入ってやっておることは明白なんです。ところがその労災協会の今まで運営しておった労災病院というものを政府出資の形で事業団に移してしまうわけです。ところがその事業団の今後の運営の主体は、労働大臣の任命をする理事長が中心になり、理事長が今度は理事を任命して労働大臣の認可と申しますか、承認と申しますか、そういうものを受ける形になっておるわけです。そうしますと、私は理事の任命については、今までの労災協会が運営をしておったような精神を、労災保険の特殊性から考えて、ある程度受け継いでいくことが必要ではないか、こういう考え方が濃厚に出てくるわけです。そこで労働大臣としては、そういう労災協会の今まで運営をしておったような精神をこの事業団の人事面に具現をしていく考えがあるかないかということを、まず最後にお聞きしておきたい。
  60. 松浦周太郎

    ○松浦国務大臣 昨日も理事長、理事の選考に対しましてどういう考えかということに対してお問いがあったのでありますから答えたのでありますが、その条件といたしましては広く公益的立場に立つ人であって、知識経験を有し人格が高潔な人であって、しかも経営の才腕を十分持っておるというような内容の人を選考いたしたいと思っておるのでありますが、ただいまお問いになりました三者の代表の構成はどうかということでありますが、従来経営して来られました中にもやはり今申し上げましたような条件にかなっているものがあるとするならば、それはやはり選考の対象にいたしまして御期待に沿うようにいたしたいと思っております。
  61. 滝井義高

    滝井委員 期待に沿えるようにやっていただけるそうでございますから、ぜひそういう点を慎重に御考慮をいただきたいと思います。  第二点は、今年度のこの事業団の運営のための予算というものは、今年度は施設の運営だけしかやらないわけです。その運営の予算総額は約三億一千八百万円程度になるようでございます。大臣も御存じかと思いますが、少くとも政府がこの事業団に投資をする総額はやがて六十四億になんなんとする状態になります。そこで働く職員の数は三千五百人をこえるという状態です。そうしますとこれは労働省の本省よりか大きな機構になってくる。そこにわずかに運営の経費だけ三億一千八百万円程度をやって予備費その他がないということになれば、この運営というものはきわめて窮屈になってくる。運営が窮屈になることはどういうことを意味するかというと、そのしわがこれはそこで働く職員に及ぶか、あるいはそれらの保険施設やあるいは福祉施設に入ってくるところの労働者にしわが寄ってくることは明らかなのです。従ってこの予算について十分――これはこの労災保険なり失業保険の特別会計から事業団に金をやるのですから、そのやる場合に大臣としては慎重に考慮して、運営が窮屈になって、その結果が大衆に及ばないような措置、考慮というものを、大衆はもちろんですが職員にも及ばないような措置、考慮というものをしてもらえるかどうかということなのです。この点を一つお尋ねいたします。
  62. 松浦周太郎

    ○松浦国務大臣 本年度の事業団に対する交付金は、ただいま御指摘になりましたように大体三億円を予定しております。また事業団自体の収入もありますから、本年度の事業団の運営に要する予算はおのおの歳入歳出が約十三億円ぐらいの予定をいたしております。事業の運営には支障はないと考えますが、御指摘の点もありますから、この運営に対しましては十分注意をいたしまして公益性の発揮できるように努力いたしたいと思います。
  63. 滝井義高

    滝井委員 次に最後でございますが、実はこの提案理由を見てみますと、労災病院等が二十四の多きに達した現在、民間の一団体にまかしておいたのでは事務能力、財政能力等の点から申しても責任体制に欠けるところがある。いわば労災協会でやらせることはもう限界点に達したのだ。そこで政府みずからがこれらの施設の設置及び運営に当る方式が適当じゃないかということが考えられたけれども、国が直営をすることは行政機構の拡大等のおそれもあり、またその能率性等から見て必ずしも最善の策とは考えられないので、代行機関である事業団を作るのだ、こういうのが提案の要旨になっております。ところが現在各省にある病院の状態を見てみますと、労災病院は今労働省は十七です。これは完成をしてしまうと二十四になりますが、日本国有鉄道を見ると病院の数が四十四あります。それから日本電信電話公社を見ると十九あります。それから文部省は三十九あります。厚生省は国立病院が七十六あります。それから国立療養所が百九十六あります。今私は労働省よりか多いところだけ言ってみたのですが、そのほかみなそれぞれ、郵政省のごときも十五くらいになっております。これはテスト・ケースだと言われました。こういう福祉事業団的な事業団を作ることはテスト・ケースだとおっしゃいましたが、そうなりますとこれは各省みな作ることになる可能性があるわけなのです。国務大臣としての松浦さんは今後各省がこういうものを作ることを御推進なさる意思なのか、それとも労働省だけでけっこうで、あとはもう作らない、国務大臣としてそういう方向で閣議で主張せられていくのか。こういう点を一つ最後に明白にしておいていただきたい。
  64. 松浦周太郎

    ○松浦国務大臣 予算編成のときに私どもこのことを主張いたしましたら、この間もここでお答えいたしたのでありますが、神田厚生大臣との間にいろいろ折衝してみたのでありますけれども、どうしても向うの方ではこれと一緒にするという意思がないものでありますから、一応今お話しになりましたようなテスト・ケースとして労働省関係のみを作ったのであります。この経営を今度やりまして、現在各省における、それぞれ経営しておられますものよりもこういう経営をした方がいいということになれば、いい方の例によって各省に作るということも私は当然だと思いますが、現在はとりあえず、テスト・ケースとしてこの福祉事業団を運営してみまして、その結果によるのだと思いますので、私は現在は労働省のみにしておきたいと思っております。
  65. 滝井義高

    滝井委員 内閣として別に各省の持っておる病院をそれぞれ事業団にしていくのだという方針もないようでございます。従って一つの思いつきとしてやってみるという程度のようでございますので、これ以上私はこの点については指摘いたしません。  以上で大体質問を終ります。
  66. 亀山孝一

    亀山委員長代理 他に御質疑はありませんか。――なければ本案についての質疑は終了したものと認めるに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  67. 亀山孝一

    亀山委員長代理 御異議なしと認め、質疑は終了いたしました。  これより討論に入ります。討論の通告がありますのでこれを許します。滝井義高君。
  68. 滝井義高

    滝井委員 ただいま議題となりました労働福祉事業団法に対し、日本社会党を代表して反対の討論をいたさんとするものでございます。  反対の第一の理由いたしますところのものは、今回この法律の第一条におきまして、この事業団の支柱をなしてくるものは労働者災害補償保険の保険施設失業保険福祉施設のこの二つが事業団の資本として投入せられることによって運営をせられることになるわけでございますが、この点に関して特に労災保険法の第一条の精神というものと事業団の設置の精神というものは、私は必ずしも政府当局が言われるように明白に一致するものではないという感じがするのでございます。すなわち労災保険法の精神をほんとうに政府がそのままやっていこうとするならば、政府みずからがこれらの施設を運営をすることの方がより合理的であり、労働者災害保険法立法の精神にもかなっておると考えられる。ところが、それを事業団のような代行機関にやらせるということについては、われわれ社会党としては、特に勤労階級の意思を国政に反映しなければならないわれわれ社会党としては、異議ありと言わなければなりません。これがまず反対の第一の点でございます。  次に反対の第二の点は、政府医療保障四カ年計画を立てて、今後における日本の病院の配置計画、あるいはそこにおいて行われる治療の内容の統一、すなわち給付の統一というようなものを当然やって参らなければなりません。しかるに、過去の労働省当局と厚生省当局の病院行政に対する意思の疎通の状態を見ると、必ずしも円滑なる意思の疎通が行われた実績というものはないようでございます。しかりとするならば、今後の国民皆保険を実施する上における病院行政の総合的な運営の上においても、ここに労働省だけに一城郭をなす事業団ができ、その事業団労災病院を運営していくという点について、われわれは病院行政の総合的な運営について幾分の阻害をする点が出るのではないかという懸念を持つのでございます。従って、医療保障の四カ年計画がある程度の見通しがつき、その一環としてこういうものができてくるというのであるならば、われわれは再考の余地があるのでございますが、まだ医療保障四カ年計画も海のものとも山のものともつかない、いわゆる暗中模索の状態の中にあるときに、こういうものが突如として労働省の中に一城郭を築く形でできることについては、賛成がいたしかねるのでございます。  次に第三の反対の理由は、職業補導行政の二元化という点でございます。現在都道府県の運営にかかる総合職業補導所というものが事業団に入る、そして国がこれを運営をする形になるということは、現実に公共職業補導所が依然として知事の所管下にある現段階においては、地域の特殊性というものを職業補導行政は当然考慮されなければならない。そういう場合に、そういう地方行政の段階にある公共職業補導行政事業団の行う職業補導との脈絡、連絡関係が必ずしも私は明白にこの法案の中からくみ取ることができません。従って、職業補導行政の二元化に陥る可能性があると申さなければならぬ。これがまず現在のこの事業団を作ることに反対する第三の理由でございます。  第四の反対の理由は、今大臣から最終的な御答弁として、理事長なり理事の選考は、十分民主的な考慮が払われるということを言われましたけれども、その精神がおありであるならば、この法案四条の、出資する土地建物その他の財産を評価する評価委員の選任の方法と同じような民主的な方法が、むしろ法案の上に理事長なり理事の選任の方法として盛らるべきであったのではないかと思う。そういう点が具体的に盛られていないということ、これは同時に人事面に、強く官僚統制と申しますか、そういうものが出る可能性があるという懸念が持たれるのでございます。こういう点が第四の反対理由を形成するものとなるのでございます。  それから第五の反対の理由は、予算面でございます。これも最終的な今の大臣の答弁で幾分の杞憂は解消をいたしましたけれども、なお依然として予算面の全貌がこの法案の審議の過程で具体的に資料として政府から示されなかった点に、われわれは一つの疑念を持つものでございます。それは、やがて六十四億の出資事業団に投入せられ、そして年間五億八千万円をこえる収入のあるこの事業団の運営が、わずかに三億余りの金しか政府から交付がせられないということになるならば、これは大へんなことだと思う。しかもそこに所属する職員の数は三千五百人をこえておる。こういう膨大な職員の運営が三億五千万円程度でやられるということについては、どうも私たちは、事業団の運営の将来は見えたりという感じがいたすのであります。  こういう五つの点から考えて、日本社会党としては、この法案は、労災保険法の精神なり、失業保険法の精神とほど遠いものになりやすい可能性があり、しかも政府が言うように、事業団ができることによって、能率が上り、しかも労働行政なり職業補導行政というものが順当に運営をせられるということは、法案のどの条文からもくみ取ることができないという結論に達せざるを得ないのでございます。  以上が日本社会党としてのこの法案に反対する理由でございます。  以上をもって討論を終ります。
  69. 亀山孝一

    亀山委員長代理 以上で討論は終局いたしました。  採決いたします。本案を原案の通り可決するに賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  70. 亀山孝一

    亀山委員長代理 起立多数。よって本案は原案の通り可決すべきものと決しました。  なお本案に関する委員会報告書の作成等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  71. 亀山孝一

    亀山委員長代理 御異議なしと認め、さように決します。  次会は、五月七日午前十時より開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後一時十八分散会      ――――◇―――――