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1957-02-27 第26回国会 衆議院 社会労働委員会 第12号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十二年二月二十七日(水曜日)     午前十一時十五分開議  出席委員    委員長 藤本 捨助君    理事 大坪 保雄君 理事 亀山 孝一君    理事 中川 俊思君 理事 野澤 清人君    理事 八木 一男君       植村 武一君    大石 武一君       草野一郎平君    田中 正巳君       高瀬  傳君    中村三之丞君       中山 マサ君    八田 貞義君       古川 丈吉君    亘  四郎君       岡  良一君    岡本 隆一君       栗原 俊夫君    五島 虎雄君       滝井 義高君    中原 健次君  出席国務大臣         厚 生 大 臣 神田  博君  出席政府委員         厚生事務官         (保険局長)  高田 正巳君  委員外出席者         厚生事務官         (保険局健康保         険課長)    小沢 辰男君         専  門  員 川井 章知者     ――――――――――――― 二月二十六日  委員石橋政嗣君辞任につき、その補欠として吉  川兼光君が議長の指名で委員に選任された。     ――――――――――――― 二月二十五日  母子福祉資金貸付等に関する法律の一部を改  正する法律案内閣提出第五一号) 同二十六日  児童福祉法の一部を改正する法律案内閣提出第五八号) 同月二十三日  衛生検査技師身分法制定に関する請願荒舩清十郎紹介)(第一二二一号)  同(川島正次郎紹介)(第一二二二号)  同(椎熊三郎紹介)(第一二二三号)  同(中川俊思君紹介)(第一二二四号)  同(松永東紹介)(第一二二五号)  同(臼井莊一君紹介)(第一三〇七号)  同(荒舩清十郎紹介)(第一三〇八号)  同(大村清一紹介)(第一三〇九号)  同(越智茂紹介)(第一三一〇号)  同(草野一郎平紹介)(第一三一一号)  国立病院等准看護婦進学コース設置に関する請願外一件(岡本隆一紹介)(第一二二六号)  同(河野正紹介)(第一二二七号)  同(滝井義高紹介)(第一二二八号)  同外一件(岡良一紹介)(第一三一二号)  同外二件(佐竹晴記紹介)(第一三一三号)  同(堂森芳夫紹介)(第一三一四号)  同(中井徳次郎紹介)(第一三一五号)  同(中島巖紹介)(第一三一六号)  同(長谷川保紹介)(第一三一七号)  同(松平忠久紹介)(第一三一八号)  同外三件(三宅正一紹介)(第一三一九号)  国立病院等における看護婦産休のための定員確保に関する請願亀山孝一紹介)(第一二二九号)  同(河野正紹介)(第一二三〇号)  同外二件(中川俊思君紹介)(第一二三一号)  同(小川半次紹介)(第一三〇一号)  同外一件(櫻井奎夫君紹介)(第一三〇二号)  同外三件(松平忠久紹介)(第一三〇三号)  同(三宅正一紹介)(第一三〇四号)  同(八木一男紹介)(第一三〇五号)  同外五件(横錢重吉紹介)(第一三〇六号)  国立療養所等賄費増額に関する請願田中武夫紹介)(第一二三二号)  保育所予算確保等に関する請願早稻田柳右エ門紹介)(第一二三三号)  環境衛生関係営業運営適正化に関する法律制定請願有馬英治紹介)(第一二三四号)  同(石村英雄紹介)(第一二三五号)  同(荻野豊平紹介)(第一二三六号)  同(下平正一紹介)(第一二三七号)  同(高村坂彦君紹介)(第一二三八号)  同(辻原弘市君紹介)(第一二三九号)  同(門司亮紹介)(第一二四〇号)  同(早稻田柳右エ門紹介)(第一二四一号)  同(亀山孝一紹介)(第一三二六号)  同(山口丈太郎紹介)(第一三二七号)  同(千葉三郎紹介)(第一三二八号)  同(橋本龍伍紹介)(第一三二九号)  同外一件(淵上房太郎紹介)(第一三三〇号)  同(森下國雄紹介)(第一三三一号)  同(山口好一紹介)(第一三三二号)  事故死動員学徒に対する国家補償に関する請願坂田道太紹介)(第一二八七号)  戦没学徒弔慰に関する請願(小笠原三九郎君紹介)(第一二八八号)  健康保険法改悪反対等に関する請願西村彰一紹介)(第一二八九号)  健康保険法等の一部を改正する法律案反対に関する請願大平正芳紹介)(第一二九〇号)  同(石坂繁紹介)(第一二九一号)  同(川野芳滿君外五名紹介)(第一二九二号)  同(楠美省吾紹介)(第一二九三号)  同(草野一郎平君外二名和介)(第一二九四号)  同(中村英男紹介)(第一二九五号)  同(中村三之丞紹介)(第一二九六号)  同外一件(内藤友明紹介)(第一二九七号)  同(八木一男紹介)(第一二九八号)  同(吉田重延紹介)(第一二九九号)  同(三宅正一紹介)(第一三〇〇号)  健康保険法の一部改正反対に関する請願辻原弘市君紹介)(第一三二〇号)  戦傷病再発医療費全額国庫負担に関する請願有馬英治紹介)(第一三二一号)  戦傷病者戦没者遺族等援護法の一部改正に関する請願世耕弘一紹介)(第一三二二号) 同月二十六日  健康保険法等の一部を改正する法律案反対に関する請願植木庚子郎君紹介)(第一三六五号)  同(田子一民紹介)(第一三六六号)  同(中村寅太紹介)(第一三六七号)  同(淡谷悠藏紹介)(第一四二三号)  同(有馬英治紹介)(第一四二四号)  同(簡牛凡夫君紹介)(第一四二五号)  同(川村継義紹介)(第一四二六号)  同(西村彰一紹介)(第一四二七号)  同(淵上房太郎紹介)(第一四二八号)  同(松前重義紹介)(第一四二九号)  同(村上勇紹介)(第一四三〇号)  同(山手滿男紹介)(第一四三一号)  国立病院等付添制限緩和に関する請願川上貫一紹介)(第一三六八号)  同(山花秀雄紹介)(第一四七五号)  健康保険法の一部改正反対及び医療給付費二割国庫負担等に関する請願川上貫一紹介)(第一三六九号)  同(山花秀雄紹介)(第一四七六号)  同(原彪紹介)(第一四七七号)  国立療養所等賄費増額に関する請願久保田豊紹介)(第一三七〇号)  同外一件(福田赳夫紹介)(第一三八六号)  同(岡崎英城紹介)(第一四四〇号)  同(加藤鐐五郎紹介)(第一四四一号)  同(中曽根康弘紹介)(第一四四二号)  同(三宅正一紹介)(第一四四三号)  同(山花秀雄紹介)(第一四四四号)  健康保険法の一部改正反対等に関する請願久保田豊紹介)(第一三七一号)  同(中村時雄紹介)(第一四七一号)  国立病院等における看護婦産休のための定員確保に関する請願外二件(床次徳二紹介)(第一三七二号)  同外一件(加藤鐐五郎紹介)(第一四四七号)  国立病院等准看護婦進学コース設置に関する請願外四件(床次徳二紹介)(第一三七三号)  環境衛生関係営業運営適正化に関する法律制定請願床次徳二紹介)(第一三七四号)  同(町村金五君紹介)(第一三七五号)  同(赤松勇紹介)(第一四一七号)  同(山下榮二紹介)(第一四一八号)  同(松平忠久紹介)(第一四一九号)  同(石田博英紹介)(第一四二〇号)  同(安藤覺紹介)(第一四二一号)  同(鈴木周次郎紹介)(第一四二二号)  社会福祉事業費増額に関する請願床次徳二紹介)(第一三七六号)  生活保護法等の一部改正に関する請願川上貫一紹介)(第一三七七号)  同(稻村隆一紹介)(第一四三五号)  同(岡崎英城紹介)(第一四三六号)  同外一件(塚原俊郎紹介)(第一四三七号)  社会保障費増額に関する請願福田赳夫紹介)(第一三七八号)  同(中曽根康弘紹介)(第一四五三号)  国立療養所等における看護婦定員増加に関する請願福田赳夫紹介)(第一三七九号)  同(中曽根康弘紹介)(第一四五四号)  同外一件(山花秀雄紹介)(第一四五五号)  帰還患者生活保障に関する請願福田赳夫紹介)(第一三八〇号)  同(中曽根康弘紹介)(第一四五六号)  国立療養所等における医師定員増加及び待遇改善に関する請願福田赳夫紹介)(第一三八一号)  同(中曽根康弘紹介)(第一四六四号)  結核回復者に対する職及び住宅確保に関する請願外一件(福田赳夫紹介)(第一三八二号)  同(中曽根康弘紹介)(第一四五七号)  同(山花秀雄紹介)(第一四五八号)  結核療養所等医師及び従業員待遇改善に関する請願福田赳夫紹介)(第一三八三号)  生活保護法最低生活基準額引上げ請願外一件(福田赳夫紹介)(第一三八四号)  同(中曽根康弘紹介)(第一四五〇号)  同(柳田秀一紹介)(第一四五一号)  結核予防予算増額及び治療費全額国庫負担に関する請願外一件(福田赳夫紹介)(第一三八五号)  同(山花秀雄紹介)(第一四五九号)  同(中曽根康弘紹介)(第一四六〇号)  結核回復者に対する後保護立法化等に関する請願外一件(福田赳夫紹介)(第一三八七号)  同(山花秀雄紹介)(第一四四九号)  同(中曽根康弘紹介)(第一四六一号)  健康保険赤字全額国庫負担に関する請願外一件(福田赳夫紹介)(第一三八八号)  国立療養所における作業療法拡充等に関する請願福田赳夫紹介)(第一三八九号)  同(中曽根康弘紹介)(第一四六二号)  同外一件(山花秀雄紹介)(第一四六三号)  衛生検査技師身分法制定に関する請願山下春江紹介)(第一三九〇号)  同(川崎末五郎君紹介)(第一四四五号)  同(中村三之丞紹介)(第一四四六号)  戦傷病者戦没者遺族等援護法の一部改正に関する請願赤松勇紹介)(第一四三二号)  戦傷病再発医療費全額国庫負担に関する請願松平忠久紹介)(第一四三三号)  同(赤松勇紹介)(第一四三四号)  生活保護予算増額に関する請願岡崎英城紹介)(第一四三八号)  生活保護基準引上げ等に関する請願岡崎英城紹介)(第一四三九号)  生活保護法による生活基準額増額に関する請願河野密紹介)(第一四四八号)  健康保険法の一部改正反対に関する請願外一件(岡崎英城紹介)(第一四六五号)  同(河野密紹介)(第一四六六号)  同(中曽根康弘紹介)(第一四六七号)  同(原彪紹介)(第一四六八号)  同外二件(山花秀雄紹介)(第一四六九号)  同(柳田秀一紹介)(第一四七〇号)  結核回復者職業保障に関する請願外一件(山花秀雄紹介)(第一四七二号)  完全給食及び完全看護制度等に関する請願山花秀雄紹介)(第一四七三号)  生活保護法改正に関する請願外四件(山花秀雄紹介)(第一四七四号)  結核療養者生活扶助引上げに関する請願原彪紹介)(第一四七八号)  完全看護に関する請願原彪紹介)(第一四七九号) の審査を本委員会に付託された。 同月二十二日  保健所国庫負担増額に関する陳情書(第二二七号)  原爆障害者援護に関する法律制定陳情書(第二二八号)  国民健康保険療養給付費三割国庫負担に関する陳情書外一件(第二三五号)  同外四件(第二七〇号)  同外八件(第三〇二号)  生活保護法改正等に関する陳情書(第二六四号)  健康保険法の一部改正に関する陳情書(第二六五号)  国民健康保険法改正等に関する陳情書外二件(第二六六号)  健康保険法の一部改正反対等に関する陳情書(第二六七号)  国民健康保険事業強化に関する陳情書(第二六八号)  同(第三〇八号)  社会保障制度確立に関する陳情書(第二六九号)  保健所費補助率引上げに関する陳情書(第二七一号)  原爆障害者に対する援護措置に関する陳情書(第二七二号)  原水爆被災者援護に関する法律制定陳情書外二件(第二七三号)  国民健康保険義務制に関する法律制定陳情書(第二七四号)  抑留船員の引揚手当支給等に関する陳情書(第二九七号)  健康保険法の一部改正反対に関する陳情書外三十二件(第三〇一号)  国立病院における保険診療費一割引きに関する陳情書(第三〇三号)  国立救護施設設置に関する陳情書(第三〇四号)  伝染病予防費補助金年度内交付に関する陳情書(第三〇五号)  結核予防費全額国庫負担等に関する陳情書(第三〇六号)  結核保護施設運営費国庫補助に関する陳情書(第三〇七号)  上下水道事業促進等に関する陳情書(第三〇九号)  児童福祉施設職員に対する各種手当国庫負担増額に関する陳情書(第三一〇号)  生活保護費全額国電負担等に関する陳情書(第三一一号)  保護世帯子女定時制高校進学に関する陳情書(第三一二号)  清掃施設に対する国庫補助等に関する陳情書(第三一三号)  病院整備国庫補助金増額等に関する陳情書(第三一四号) 同月二十五日  中国人殉難者遺骨の送還に関する陳情書(第三五八号)  保育所運営費増額に関する陳情書(第三七五号)  日雇労務者賃金引上げに関する陳情書外一件(第三七六号)  生活保護法による保護基準引上げに関する陳情書(第三七七号)  国民健康保険事業に対する国庫補助増額に関する陳情書(第三七八号)  健康保険法の一部改正反対等に関する陳情書(第三七九号)  国民健康保険療養給付費三割国庫負担に関する陳情書外十二件(第三八〇号)  最低賃金法制定等に関する陳情書(第三八一号)  失業対策確立に関する陳情書(第三八二号)  失業対策事業費全額国庫負担等に関する陳情書(第三八三号)  世帯更生貸付資金増額等に関する陳情書(第三八四号)  社会福祉関係予算確保に関する陳情書外一件(第三八五号)  母子福祉法案成立促進に関する陳情書(第三八六号)  原水爆被災者援護に関する法律制定陳情書(第三八七号)  結核患者回復期療養所建設に関する陳情書(第三八八号) を本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  健康保険法等の一部を改正する法律案内閣提出、第二十五回国会閣法第四号)  船員保険法の一部を改正する法律案内閣提出、第二十五回国会閣法第五号)  厚生年金保険法の一部を改正する法律案内閣提出、第二十五回国会閣法第六号)  健康保険法等の一部を改正する法律案滝井義高君外十一名提出、第二十五回国会衆法第一号)     ―――――――――――――
  2. 藤本捨助

    藤本委員長 これより会議を開きます。内閣提出の、健康保険法等の一部を改正する法律案船員保険法の一部を改正する法律案厚生年金保険法の一部を改正する法律案、及び滝井義高君外十一名提出健康保険法等の一部を改正する法律案の四案を一括して議題とし、審査を進めます。質疑を続行いたします。岡本隆一君。
  3. 岡本隆一

    岡本委員 最初に、日本医療制度をどういうふうにやっていくかということについて大臣のお考えを承わっておきたいと思います。もう少し具体的に話しますと、公的医療機関民間医療機関、従来はこの二本立でもってやっていくというふうなお考えで、川崎厚生大臣のときもあるいは小林厚生大臣のときも進んでおられたのでありますが、今後あなたは日本医療機関を引き続き二本立の上に立ってやっていこう、運営していこうというふうなお考えでありますか、あるいは前と方針をかえていこうというふうなお考えであるか、それから承わっていきたいと思います。
  4. 神田博

    神田国務大臣 お答えいたします。今までの通り本立でやって参りたいと思っております。
  5. 岡本隆一

    岡本委員 二木立でやっていくということになりますと、やはり公的医療機関と並んで民間医療機関経営が成り立つような方策、施策というものをとっていただかなければならない。しかも公的医療機関には政府からの補助がたくさん出ております。またその公的医療機関が大きくなっていきますときに、拡張されていくときに、その設備が大きくなればそれだけ資産の増もできるわけです。ところがその資産の増に対しては何ら税はかからないのです。ところが民間医療機関はそういうふうな補助もない、しかも税はかかってくる。もう少しわかりやすく申しますと、かりに法人制度のものを例にとってみましても、法人税がかかる。百万円の資産増加をいたしますとそのうち五十万円は税に納めるのです。その残りの五十万円を設備拡充または改良に使うわけです。例を一つレントゲンにとりましても、百万円剰余金ができますと五十万円税金を納めて五十万円でレントゲンを買うのです。ということは五十万円のレントゲンを買うのには百万円の金が要るということなのです。公的医療機関は、そのうちの従業員なりその運営に当っている人が努力をして余剰金を五十万円作ればそれはすぐそのまま使える。ところが民間医療機関においてはその半分よりその金が生きてこない。そういうことになりますと、公的医療機関民間医療機関は、設備をよくしていく上において太刀打ちできないのです。そういう民間医療機関が先天的に持っているところの弱点、こういうものと公的、医療機関、しかもその上にいろいろな補助が行われるその間の調整をどういうふうにしてやっていただけるか。民間医療機関経営を成り立たせるための施薬をどういうふうにこれから立てていくか、その辺のところを承わりたいと思います。
  6. 神田博

    神田国務大臣 ただいま岡本さんのお尋ねでございますが、国民医療が公的なものと私企業で参ります場合と、設備充実等に対して差がついていくじゃないか、税を負担するものと負担しないものとの差がある、一体これをどういうふうに考えているかというような意味のお尋ねと承わったのでありますが、おっしゃることはもうその通りの不実と私も承知しております。そこで昔から医は仁なりで、医業につきましては、今の税制ではありませんが、営業税があった時分には営業税は一取らないというような、政府保護政策をとってきたことは御承知の通りであります。今日その営業税はないのでありますが、私はやっぱり医業民間企業としての育成というものは、今は中小企業金融公庫、この方からの資金を貸すような制度になっておるようでございますが、何か特別な方法を講じないと今おっしゃったような差がついてくるのではないか。私も新任早々でございますので、詳細のことはまだ結論的には考えがまとまっておりませんが、どうしても日本医療制度というものを二本立にした場合に、またいろいろ海外との交流がしげくなって参っておりますから、いろいろやっぱり病菌も交流するだろうと思うのです。それから近代民学の進歩ですな、こういう諸般の情勢から考えて、民間企業施設が十分成り立つようなことをもっと特価的に考える必要があるのじゃないか、施策をとる必要があるのではないか、このことについては私は十分検討してみたいと思っております。ただしかし——こういうことがお答えになるかどうか、これは一つ考え方の問題だと思っておりますが、表面に現われた税を納める者、税を納めない者という点からいえば今おっしゃったような差がつきますが、やっぱり民間企業としておやりになっておる立場から考えますと、企業努力といいましょうか、時間的に医療自分努力でございますから、それは過剰労働だといえば別でありますけれども、何かそういう特徴と申しましょうか、長所があるのじゃないかと思っております。そういうことを十分生かしまして、税法上の問題とか——今のところは税法上の恩典といいましょうか、あるいは単価からきた特別措置だということかもしれませんが、そういった両方の理屈がついたようなつかないようなことをやっておるようでありますが、税制だけでなく、資金面等においてもそういった近代施設を整備していくというような場合において、企業採算に合うような措置をとっていくということが、今日も将来も特に必要なのじゃないかと私は考えております。一般企業等におきましては官業と民業がそう対立したものはないが、特に医業の場合ははっきりと線が打ち出されていることはおっしゃる通りでございますから、十分検討してみたいと思っております。こういう考えでございます。
  7. 岡本隆一

    岡本委員 非常に抽象的でわかりにくいのでございますけれども、もちろんこれから大いに御研究願わなければならない一つのテーマとして、お考え置きを願ったらいいと思うのでございます。しかしながらとにかく、かりに金融の道を講じて低利でもって設備改善企業設備近代化というものをやらせるとしても、結局実質上、今私が御説明申し上げたように民間医療機関の場合にあっては税というものを考慮していく場合に、やはりその設備改善に要した資金の倍額を絶えず必要としているというふうなことは、これは日進月歩の医学に追いついていく、どんどん設備をよくしていくという点から非常に大きな痛手なのです。従ってたとえば今の内科の医者は、心電図を持たなければ実際心臓の診断はできない。緒方さんでしたか心筋極寒でなくなりました、というふうな場合、やはり心電図を持たなければ診断がつかないのです。ところが十五万、二十万するのです。ところで十五万、二十万の心電図を買えば資産の増になって、結局いつかは税でもって払っていけば三十万につくわけです。ところが公的医療機関であれば十五万なら十五万、二十万なら二十万出せばそれっきりなんです。そこに大きな開きがある。にもかかわらず公的医療機関には、まだいろいろな形の補助が国から出ている。だからそういう点について、もっと民間医療機関設備改善をやれるような施策というものを考えていただかなければならぬと思う。これは研究課題として一つ大臣にこういう重要な、また深刻な悩みが民間医療機関の中にあるということを頭の中に入れておいていただきたいと思う。  そこでお伺いいたしたいのでありますけれども、その公的医療機関が現在、たとえば国立病院にしてもあるいは国立療養所にいたしましても、みんな大きな赤字を出している。その赤字の原因は単価にあるわけなんであります。ほとんどが生活保護法あるいは健康保険法の収入でもって独立採算制を憎んでいるわけでありますから、従ってみんな赤字を持っておる。だからその赤字をみんな国の一般会計からの繰り入れでまかなっているわけですね。そうすると公的医療機関ですら赤字経営をやらなければならないような健保単価、そういうふうなもので民間医療機関設備近代化というものは、これは非常に困難であります。不可能に近いのであります。その中をなおかつ多少でも時勢に追いついていくための努力というものは、これはもう骨身を削るような労働強化によって行われているわけであります。従ってこの単価改正の問題というものは、これは民間医療機関の非常に切実な要求であり、同時にまた公的医療機関の中からもそういう声は強いと私は思うのです。たとえば日赤なら日赤を例にとりますと、日赤の経済が苦しければ結局その従業員待遇というものは改善されない。だから日赤従業員は、みんなやはり自分たち待遇改善のために——公務員のベースよりもはるかに低いべースで働いている。それを少くも公務員にまで追いつけて引き上げてもらうために、どうしても単価というものを上げてもらわなければならぬ、こういうふうな形で今、日本医療従業員というものは、単価引上げということを切実な問題として取り上げておる。そこでこの間大橋さんの質問に対して単価を引き上げていきたい、こういうふうな声はことし中に一つやっていくために調査を進めていく、こういうふうな御説明でございまして、私ども大いに厚生大臣の御理解と熱意とに期待をしているわけでございますけれども、それにはやはり、どうしても問題になってくるのはその財源がどこから出てくるのかということですね。それが一番気になるのです。それに対してこの前あまりはっきりした御意見が出なかったようでありますが、その財源をどこに求めようとされるのか、その辺のところをもう一度御意見を伺いたいと思います。
  8. 神田博

    神田国務大臣 今のお尋ねの点は非常に大事なことでございまして、私どもも苦慮しておるわけでございます。単価の、安い問題については、今例を述べられましたようにこれはもう民間だけの問題ではなく、国立もそうだし、それから公立もやっぱりこれではやっていけないという切実な声を、私も大会の名のもとに決議されたのを了承しております。だから単価の改訂をせよという声は、開業医であろうと、あるいは市立であろうと、県立であろうと、国立であろうと、これはすべての声だと思うのであります。私も就任後日は浅いのでございますが、この改訂の必要ということについては、深刻に考えておりまして、これはどうしても改訂しなければならない。そこで改訂をした場合に、その予算の裏づけをどうするかということでございますが、これはごもっとものお尋ねです。ただこれは今の段階におきまして、それならば一体いつまでに改訂をどの程度でやるかという見通しがつかないものですから、その裏づけとなる予算措置がちょっと出てこないのです。それじゃ予算措置をしてから改訂をやったらいいかという議論がぐるぐる回るわけなんでございますが、私は案がないのに予算措置をするわけに参りませんから成案を急いで、その方を固めてから、そして今のお尋ねのいつからどの程度やるかということを財政当局とも十分相談いたしたい、実はこういう腹がまえなんでございます。もちろんこれがすっきりした線に出た場合は、例の控除措置をやっておりますが、ああいった問題がからんでくると思います。そうなりますと、税法上の措置という立法上の問題にもからまって参りますし、いろいろこの問題を解決する途上において措置を講じなければならない点が相当あるのじゃないかと思っております。そこで今は予算措置というものはあと回しではなはだ恐縮でありますが、とにかく単価改訂の地固めをすっきりしたものを出したい。そのすっきりしたものに基いて第二段で考えたい、こういう考えをもちまして至急調査をしようということで進めておる次第でございます。これは一つできるだけ早く成案を得て、そしてその実施も、裏づけを考慮しまして私としては早くいたしたいという考えでございます。
  9. 岡本隆一

    岡本委員 非常に大胆率直に、単価は引き上げなければならぬという御意見に対しましては敬意を表します。ただ私どもの案じますのは、それじゃ一体どこからそれだけの財源が出るだろうかということが心配の種であります。一点上げると財源的にどれだけ金が必要かということは計算しておられると思うのですが、局長からお答え願えましたらけっこうでございます。私先日資料要求をしまして、それに対する回答をいただきましたので、それに基いて計算しましたが、局長の方でも計算しておられると思うのでこの席で承わりたいと思います。
  10. 高田正巳

    ○高田(正)政府委員 単価をかりに今の甲地、乙地のままにして機械的に一円ずつ上げてみますと——これは大見当の計算でございますが、百三、四十億円社会医療の部面で響きます。ただしその百三、四十億円の中で国庫が負担すべきことに現在すでになっておるもの、あるいは組合等が負担すべきもの、あるいは国保が負担すべきもの、そういうふうなものも含まれております。それで先ほど大臣がお答えになりましたように、私どもいろいろさような医療機関のといいますか医師のといいますか、待遇改善という広い観点からいろいろ案を練っているわけでございますが、単価につきましては、この前にもちょっと申し上げましたように、甲地、乙地の区別が妥当であるかどうかというような問題もありますし、また何円五十銭とかいうようなことで単価として果して妥当であるかどうか、むしろ十円とかなんとかいうような丸い数字にして全国一本にすべきではないかというふうな御意見等があります。従ってそれからの問題をも全部含めて単価でものを考えるか、あるいは他の方法でものを考えるか、それらの点につきましても、総合的に何らかの案を立案いたすべく大臣から御下命を受けているような次第でございます。
  11. 岡本隆一

    岡本委員 昭和三十年の支払い点数を当局から出していただきましたのでそれで計算していきますと、私の計算では、財政負担が百二十四億になるのですが、そのうち健康保険会計では幾らになりますか。
  12. 高田正巳

    ○高田(正)政府委員 私どもの計算によりますと、今先生のおあげになりましたのは三十年の計算でありますが、私ども三十二年度の医療費の見積もりとかなんとかで計算してみますと四十一億ばかり政府管掌の健康保険で響きます。これはずいぶん大まかな見通しでございます。
  13. 岡本隆一

    岡本委員 私は三十年度で計算しまして四十二億というのはちょっと多いように思うのですが、それでは三十年度と三十二年度と二年間の開きがございますが、それに対して支払い点数の伸びを何割くらいに計算されたのですか。
  14. 高田正巳

    ○高田(正)政府委員 三十二年度の予算の私どもが基礎としてとっております計数は、三十一年度の見込みから一人当りにして約七%程度医療費が伸びるという見込みを立てております。それで先生の先ほど御指摘になりましたのは三十年度の実績の支払い点数であろうかと思います。それで三十年度からさらに三十一年度は伸びております。今私が申し上げましたのは三十一年度の見込みの七%増ということでございまして、しかもそれを総額にいたしますと——それは一人当りでございますが、被保険者の数が非常にふえておりますので、総額にいたしますとさらにそのパーセンテージはふえて参るわけであります。それで私どもの一応の計算では三十二年度の今の政府管掌の医療費の見積もりというものを基礎にいたしまして、それで一円上げた場合の計算をいたしますと、政府の負担分が四十一億ほどになり、さらに家族の一部負担率がございますから、それらのものを合せますると約五十億程度になる、こういう計算をいたしておるのでございます。
  15. 岡本隆一

    岡本委員 およそその見当にはなると思うのです。三十年度の実績について調べますと、点数にいたしまして、本人分が甲地、乙地合わせて二十五億七千六百万点、それからまた家族が十二倍八千五百万点になりますから、これを支払い点数に計算しますと三十二億一千八百万点になってきます。従って三十二億から被保険者がふえている、あるいは幾分受診率も高くなっているというふうなことを計算すると、四十億ぐらいは想像されます。そこで政府管掌の中に四十五億というものを一点単価一円引き上げについて見込まなければならない。それからまた金額は少うございますけれども、船員保険について一億一千万円見なければならぬ、日雇いについては三億五千万円見なければならぬ。そういうものを計算して参りますと相当な金額が予想されます。さらにいろいろな生活保護、それから結核予防法あるいは社会福祉のいろいろな関係のものを合せますと、なるほどおっしゃる通りそういうふうなものを計算していけばやはり百三、四十億というふうな目安が出て参ると思う。そうすると、健保の五十億、六十億の赤字でこれだけてんやわんやの大騒ぎをしなけばならないような今の国の方針なんです。また今の財政の事情なんです。その中でどうしてそういうふうな一点単価の引き上げというものが可能になるのだろうかということに私どもは非常な杞憂を持つ、だから結局はこの法律が通ったら単価引き上げの方はもうあとは知らぬ顔の半兵衛で、きれいに食い逃げというふうな心配を私たちはするわけなんです。だからこの前は食い逃げいたしませんとはっきり大臣はおっしゃいましたが、しかしながら単価の引き上げというものはなかなか大きな財政負担を伴うところの問題なんです。しかも一円引き上げじゃこれは引き上げにならないと思うのです。これは失礼な何ですけれども、厚生大臣単価の動きというもの、いつどういうふうになるかというふうな点についておよそ御承知でいらっしゃいますでしょうか。
  16. 神田博

    神田国務大臣 単価のできた由来、最近のきまったいきさつについてはよく聞いておりまして、いささか了承しておる考えでございます。そこで今御心配になられました単価の改訂というものは従来もむずかしかった、またその後においてもできない事情から考えてこれは非常にむずかしい。そこでこの法案が通ったら食い逃げするんじゃないかというお尋ねでございます。私もこの問題は非常に重大な、むずかしいものだということを承知いたしております。そこで石橋内閣の閣議の際にしばしばこの問題を取り上げまして閣僚会議に持ち出しております。それから党の首脳部会談においてもこの問題を出しております。そこで今度の健保の改訂の関係もそういう前提をもって実は御審議を願っておるわけでありまして、健保の方が通ればあとはもう知らぬが仏だというふうな気持は毛頭ございません。これは今もう放置できないような段階にきておる。これをどういうふうにしてやるか、どの程度のものが出るかということになりますと、これは今作業中でございますから、私からも係からも答弁は困難でございます。とにかく今までのきめ方にもいろいろ争いがあったようでございまするが、今度私は医療関係の立場からも、また一般国民の立場からも、また財政上の問題からもここで一つすっきりしたものの線を引いて、納得ずくで解決いたしたい、その際はぜひもっと大きな観点でやっていきたい、社会党さんもこの改訂はもう支持してやろうというくらいの話し合いの場も見つけてやっていきたい、実はこのくらいの決意で考えておるわけでございます。決して食い逃げだとか、あとはやらぬというふうなことは、政府でも党でも考えておりませんし、私もその了解は十分とっておる、こういう考えで今の健保の御審議を実は願っておるわけでありますからさよう御了解願いたいと思います。
  17. 岡本隆一

    岡本委員 そこで単価の引き上げの問題は、とにかく昭和二十四年には十円であった単価が今は十二円五十銭、二五%です。これに対しておそらく局長は、いやそうじゃない、往診料も上っておる、いろいろ手術料とかいうふうなもので上っておる、だから実質的にはもう少し上げてもいい、こうおっしゃるに違いないと思う。私もそれは認めます。そういうふうなものを計算に入れましても、単価の引き上げというものは、実質的には十五円程度、十円のものが五割実質的には引き上っておるのだ、こういうふうな見当が置けると思う。ところがそれに対して物価は二十四年と今日じゃ三倍、四倍になっておる。従っていろいろな使用材料、ガスにしても水道にしても、あるいは内科のお医者の往診に使う自動車の燃料にしましても、電話料にしましても、一切のものが上っておる。その上り分だけすらその五〇%の単価引き上げ率というものは実際上はカバーしていないのです。だから実際の面からしますと、今日の医療費の単価というものはもうベース・ダウンになっておる。これはこうしてはっきりお話を申し上げたら大臣もうなずいていただけると思う。そのように、ほかのものがどんどん上っているのに医療費だけがなぜそのようにベース・ダウンというような形にされているのか、なぜそういうことが起ってきたのかということについての問題解明がない限り、この単価問題というものは、その根源に深く入っていかなければ、なかなか解決しないと思う。この問題を大臣はどのようにお考えになっていらっしゃるか。
  18. 神田博

    神田国務大臣 二十四年当時の物価の関係、それから二十六年の改訂の際のいろいろ苦情と申しましょうか、無理に納得させたと申しましょうか、納得しないでおったのだと申しましょうか、そういったいきさつも実は承知いたしております。そこでこれは普通の作業でありますれば二十六年を基準としてやることがすなおなわけでございますが、今お尋ねになりましたような事情も私は承知しておりますので、二十四年から二十六年で改訂されたそのいきさつも考慮に入れて、単価改訂の際には十分案を練ってみたい、こういうふうに考えております。
  19. 八田貞義

    ○八田委員 関連して。先ほどの大臣の御答弁を伺っておりまして、単価値上げの問題と、健康保険との関連において誤解を招くような点があるのです。というのは、食い逃げという言葉が出ている。またあるいは大臣単価の値上げは当然やらなければならぬ、そういう観念のもとに法案の御審議をお願いしておるのであります、こう言っておられる。しかし単価の値上げと健康保険法案の改正とは切り離して考えるべきものである、単価を値上げしますからこの法案をのんでくれというような誤解を招いたのでは、これは非常に重大な問題になると思う。食い逃げという言葉はないはずだ、これは全然別個の問題として考えていただかなければならぬ。大臣の底意はほんとうはそこにあると思うのでありますが、今の御答弁を伺っておりますと、誤解を招きやすいので、この点はっきりと分けて大臣は御答弁をお願いし、さらに対策を立てていただきたいと思うのであります。
  20. 神田博

    神田国務大臣 今の八田委員の御意見は、もう私の考えその通りでございます。ただこの法案を審議しております際に関連してお尋ねがございましたものですから、それはやる考えだ、こういうことを申し上げておるのでございまして、それをやるから、これを通してくれという取引にもし使ったような、私の言葉が不用意でありますれば、それは私の真意じゃないのでございまして、この法案はこの法案で御審議願いたい。しかし単価の問題はどう考えておるか、こういうお尋ねでございましたので、それは先ほど来申し上げておるような考えである、こういう意味でございますから、さよう御了承願いたいと思います。
  21. 滝井義高

    滝井委員 関連して。ちょっと前に返りますが、一円引き上げることによって百三十億ないし百四十億社会医療に響くという御説明がありましたが、これは同時に税のはね返りがどのくらいになりますか。
  22. 高田正巳

    ○高田(正)政府委員 税のはね返りという御質問の御趣旨は、プライベートの医療機関において、そのために収入がふえるから、二八%に対する税金がどれだけふえるか、こういう御質問だと思います。実は私どもまださような点までを分析して、いたしておりません。今申し上げました数字も各管掌別のいろいろな資料に基いた一応の推計でございます。このうちで公立が受け取るものもそれから私立のものが受け取るものも分けて計算をいたさなければなりません。さような細部までの計算をいたしておりません。
  23. 岡本隆一

    岡本委員 ただいまの大臣の御答弁、非常に抽象的で、もう少しお互いに意見を交換してこの問題を明らかにしていきたいと思います。  委員長、十二時までというお約束でございましたが、その問題に人っていくと、ちょっと時間がかかって中途半端になりますので、ここらで一応打ち切って、一つ午後この問題についてあらためて質問いたしたいと思います。
  24. 藤本捨助

    藤本委員長 午前はこの程度にとどめ、本会議散会後まで休憩いたします。    午後、零時五十五分休憩      ————◇—————     午後四時十六分開議
  25. 藤本捨助

    藤本委員長 休憩前に引き続き会議を再開いたします。  午前中の質疑を続行いたします。岡本隆一君。
  26. 岡本隆一

    岡本委員 午前中の質疑を通じて、健康保険単価引き上げに要するところの費用というものは大よそめどがはっきりしたと思うのであります。それではそれだけの大きな金額を必要とするのに財源をどうして用意するかという問題になってくるわけであります。このように健康保険単価が長い間不当に抑えられてきた理由でありますが、単価引き上げが不可能であったのはどういう原因によるのであるかというふうな点について、一応大臣はどういうふうに考えていらっしゃるかということを承わりたいと思います。
  27. 高田正巳

    ○高田(正)政府委員 非常にむずかしい御質問でございますが、岡本先生も御存じのように、単価の問題につきましては、二十六年当時きまりましたいきさつからいたしまして、これをさらにもう少し深く掘り下げて検討をする、単に単価問題に限らず、医療報酬というものについてもう少し掘り下げて検討をするということで、ご存知の特別な機関が設けられたのでございます。ここでいろいろな御議論をしていただいておるわけでありますが、問題がむずかしくて、その結論がなかなか出てこない、こういうことも一つの事情であったろうと思います。またそのうちに、税制の方では御存じの二八%を対象に考えるというふうな特別措置法律的にも講じられていくというふうな——単価がきまりました後にそういうふうな一つの要素も出て参りました。あれこれいろいろな要素がかみ合っておると思いますけれども、さようなことから今日まで私ども事務的に申しますと、現行の単価が安いか高いかということについても、数字的なデータはまだどなたも出しておいでにならないというようなことでございます。しかしながらいつぞやもお話を申し上げましたように私どもはただいま御審議をいただいておりまする審議機関の結論が出ませんでも、それと並行して私ども事務当局としましてはこの問題をも含めていろいろな諸般の問題を一つ検討を開始いたしたい、かような所存でおるわけであります。
  28. 岡本隆一

    岡本委員 そういうふうな御意見はこないだも大橋さんとの討論のときにすでに承わっておるのであります。その大橋さんとの討論のときに、しかしながらそういう機関の結論というものは、あんなところでなんぼ審議したって出ないんだ、ああいうふうな無力な機関、言いかえると厚生省の御用機関のような格好になっておる委員会では結論が出ないんだ、こういうふうなことを大橋さんも言うておられた。今局長は数字的にだれも結論は出していないとおっしゃいますけれども、大臣はこの間から連日、単価はこれは低いことは認めるということを明言しておられるのです。従って大臣がそういうふうに言われるということは、現実にもうそれがはっきりしたものだ、厚生省自体にもわかっているのだ、わかっているけれども局長の立場として言われないのだ、こういうことだと私は思うのです。しかし物事はやはり真実を隠してはいけないと思うのです。また真実を直視することをわれわれが忘れては正しい政治というものは行われないと思うのです。だから何事もやはり大胆率直に言っていただかなければならぬと思うのです。私はきょうこういうふうな問題を出して論議するというのも、決していたずらに健康保険の審議を延ばそう、そんな意味じゃないのです。そんなでなしにほんとうに正しい医療行政というものをやらなければならない、そして公的医療機関民間医療機関すべてを通じて、その医療に携わる者が心から満足して、そして政府の方針に喜んで従う強い協力体制でもって、日本健康保険を高きものにしていく、医療保障を完全なものにしていく、そういうふうな態度が築き上げられるように、そういう方向へ政府か持っていかなければならぬと思うのです。だから真実というものに目をおおうて、そしておれは知らぬのだというふうなことでは、そんなことではだれもほんとうに心から協力しないと思うのです。なるほど低い、低いのはわかっておる、しかし財政的な事情がやむを得ないんだからできない、できないがしかしこういうふうにしてやっていく方針だという、方針というものをはっきりされたなら、そしてどういうふうな形でもってどういう方向でもっていつごろになれば可能になるというふうなめどをはっきり出していただきますなら、あるいは本年度内に単価がかりに上らないとしても、医療機関の方でもやはり政府に協力を惜しまないと思うんです。そういう点においてもっとフェアな論議というものが行われなければ、真実をおおい隠した上での論議というふうなものでは私は困ると思うのです。  そこで大臣に私はもう一度、これは決して大臣を追及するとかそんな意味じゃないのです、しかし一応厚生行政を担当しておられる大臣に、健康保険の一番大きな問題は、今日ではなるほど法改正の問題もあります、しかしながら単価問題が非常に大きな問題であるということはもう先ほどからも御明言の通りなんです。従ってそのように単価が不当に抑えつけられた原因というものはどこにあるかというふうなことを、大臣は、大まかな御意見でけっこうでございます。また多少ぴしっと明快な御見解でなくてもけっこうだと思いますが、しかしおぼろげながらもどういうふうに認識しておるかというような点についてやはり多少考えていただいていることを少しお漏らし願えたらけっこうだと思うのです。
  29. 神田博

    神田国務大臣 お答えをいたします。単価が妥当でないということについてはもう議論の余地はないのじゃないかと思います。ということは二十六年の単価のきめ方が間違っておると私は思う。間違っておると言い切ることができるかどうか、もっといい言葉があるのじゃないかと思いますが、なぜそういうことを率直に申し上げるかといえば、一つ率直に答えろということでございますから腹を割って私の見解を申し上げるわけでございます。二十六年に単価改訂をされてすぐそのあとで税法上の措置をしなければならなかったというところに二十六年の単価決定の間違いがあると思う。税法上の措置をしろというようなことは夢にも考えないで単価をきめたのだと思う。しかるに税法上の特別措置をとらなければならなかったということはいかにこの決定にあやまりがあったかということを政府も認め、国会も認めたと思うのです。そこで私は二十六年の単価は間違っているのじゃないかということを申し上げておるわけなのです。私企業としてお国者さんはいろいろの経営単位があるわけなのです。一人でやっておる場合もあれば、病院でたくさんかかえてやっておる場合もあると思います。それから甲地、乙地でおやりになっておることも申し上げるまでもないことであります。私はそういう千差万別の中にもお医者さんの企業としての経営単位というものがあると思うのです。その経営単位を考えないでただ一律に七二%税法上引くのだというのは、単価を適正に是正したその主義をとったのだというふうに私は言えないのじゃないかと思うのです。大きな意味では言えます。けれどもそういうことの税法上の措置で適正に単価が訂正されたということは言えないのじゃないか。そこで私は単価を二十六年にかえたときは非常に矛盾があったのじゃないかと思う。二十四年の問題は別といたしましても、二十六年に問題があったのだ、それを税法上の措置でやった、税法上の措置はいわば措置の、一時の抑えだと思うのです。必ずやそこに適正な単価の改訂を予想してやったのじゃないかと私は思っております。これは私はその当時関係しておらないのでございますが、私は厚生大臣に就任日浅いがそういうふうな見方をしておる。それはまたいろいろな資料を提供していただいて検討の要がある。そこで単価の改訂というものは、これはすべての行為だ、一点にとらわれないで計算してみたらどうか。それはその後薬がいろいろな近代産業によって、工場の合理化によって下っておるという面ももちろんありましょう。しかしそれはそれとして計算なさればいいことなのですから、ここで思い切って一つ下げようじゃないか、今までのやり方がいいのか今までのやり方の延長として計算をした方がいいのか、あるいはまたこの機会に新しい観点に立ってやるべきなのか、そういうふうに一つとらわれないで幾つかの案を検討しよう、そこで妥当のものがあればそれをとって単価改訂の方向へ持っていきたい。そこで私は先ほどからお答え申し上げておるのでございますが、金を用意してやるのも一つの方法だと思います。しかし今度のは、どうもそういうのじゃちょっと見当がつかないのじゃないかと思うのです。計算してから金を用意するといえば、これはどっちが先か、両方並行すれば一番いいのですが、どうも今のところ、どういうのが出るのかわからないのですから、予算措置をしておいてやるというわけにはいかないのじゃないかと思います。さればといって全然あてにしないのにそういうことを考えてもむだじゃないかという御心配でございますが、政治は生きものでございまするから、長年にわたるものがゆがめられた決定をしておるということであればこれを正しいあり方にするということが私は政治じゃないかと思うのです。そこで閣内におきましても私の担当の行政を御相談する際に、この矛盾を率直に閣僚に訴えて、これは一つ成案を急いでいる、成案を得たらそのときに適当な措置をやってもらわなければならぬ、協力してもらいたいという話を進めておる、与党の方にもそういう話を進めておる、この点については私は社会党の方々にも一つ——ざっくばらんに私は申し上げるのでございますが御協力願いたい、そういう意味で私は今進めていますということをお答え申し上げておるわけでございます。
  30. 岡本隆一

    岡本委員 今の問題は、この間の大橋さんの質問のときに大体方向が出ておったと思うのですが、大橋さんの質問のときに財政収入に見合わないところの支出を作っていく、そのことが単価を抑えられた理由である、そして標準報酬はどんどん上ります。標準報酬が上りますから従って健保の財政収入は大きくふくれていくわけです。財政にゆとりができたらそれは全部医療内容の改善にどんどん行ったわけです。そしてその間標準報酬が上っていくということは物価が上っていくことです。物価が上って財政も膨張しておるのにそのすべてが医療内容の改善に用いられて、そして単価というものをあえて顧みなかったというところに原因があるということは、この前にすでに指摘されている。しかしながらもう一歩突っ込んだところが大橋さんになかったわけです。そこでその医療内容の改善の中で非常に大きなパーセンテージを占めておったのは抗生物質なのです。もちろん手術とかいろいろなものの遊歩もありますが、しかしながら総体的にはやはり抗生物質が一番大きな内容を持っておった。その抗生物質を使う治療法の中で何としても結核が大きな比率を占めておった。どうも今までの委員会でいろいろ論議が繰り返されても、健保財政の中で結核の問題を出してくると、それはダブーのようにされて、そしてどうも厚生省は何とかそれをはぐらかしていこうというような気分に私には受け取れて仕方がないのです。しかしながらそれをよくほんとうに検討せずしては私は健康保険の問題の解決はないと思う。前会にもお尋ね申しましたが、そのときに局長は何も政府結核予防法に対する義務を負うておらぬ、義務づけられているのは地方の自治体が義務づけられておるので、厚生省は義務を負うておらない、義務支出ではない、こういうふうなことをこの前の委員会のときにおっしゃいましたが、それは法的な義務は都道府県の知事に渡されております。しかしながらそれを完全にやらせるだけの財政的な裏づけをするということはこれは当然政府としてしなければならないと思うのです。国が結核の撲滅というものを大きな方針として打ち出していった以上、それに伴って出てくるところの費用というものはこれは当然国が財政的な措置をしなければならないのです。その財政的な措置をしないから、勢い結核予防法というものが末端において冷飯を食わされておるといいますか、地方の方で十分な予算を組まれていない。だから全部財政的な裏づけのないところを健保財政の中へ転嫁してくる。今日私の病院でもその他の多くの病院でも、結核予防法の治療の中市をいたします。それはレントゲンの写真とそれから書類です。大臣ごらんになったことはないでしょうが、ずいぶん詳しい書類を添えて申請をいたします。そうしますと保健所でこれは結核予防法に従って治療すべき病気か、そうでないかという判定を下します。判定を下しまして結核予防法を適用して、その治療費の半額を国が負担しなければならない、ところがその負担しなければならない経費を、予算がないからというのでもって、不承認といいますか、承認しない。だから結核予防法によって治療しなければならない、明らかにパスやマイシン、あるいは特殊の化学治療をやらなければならない思考であるということを認められておりながら、予算がないからお金は出すことはできません。こういうことになってくる。全部健康保険生活保護法の経済でまかなわれる。だから国は結核予防法を作った。作ったけれどもしかしながらそれをほとんど捨て子のような形で健保財政に転嫁してしまっておる。そのことが非常に大きな健保への影響になっておるということは、これはもう七人委員会の結論が出ているのです。七人委員会でもはっきりそういうことを指摘しておる。それは報告を局長もよく御存じでございましょうし、あるいは大臣も一度あの報告を読んでいただかぬと困る。一度読んでみて下さい。はっきり書いてある。その問題に目をおうては健保の立て直しもできなければ、また単価の問題も解決つかないと思う。それでこれは政府委員からでけっこうですが健康保険の中で結核治療費の占める比率ですね、それをどのくらいと見ておられますか。
  31. 高田正巳

    ○高田(正)政府委員 大体総医療費の三割から三割五分程度くらいが結核の治療費である、こういうふうな見当をつけております。
  32. 岡本隆一

    岡本委員 厚生白書にそのように出ております。私も自分自身の資料を持っておりませんから、厚生白書を信ずるよりほか道がないと思います。そこで結核予防法が施行されましたのが昭和二十六年。それから七年、八年、九年、十年、こういうふうに数年間の保険料と給付費のバランスを私は見てみたのです。そうしますと二十六年には結核予防法ができまして、まだほとんど実施されておりませんね、だからその影響はございません。保険料と給付費とのバランスは二百十九億と百九十八億なのです。つまりプラス二十一億、二十六年には二十一億の黒なのです。二十七年は十三億の黒です。二十八年になって参りますと、六億の黒になっています。二十九年になって八億の赤字、三十年になって六十五億の赤になっております。従って結核予防法ができて、その費用の半分を国が負担するということがまず第一。その次にはどんどん検診をやります。検診をやって結核患者を見つけていきます。見つけた中心者はどんどん治療をするし、のみならず入院させます。そのために病床増設の経費を組んでおる。患者をどんどん見つけてくる。ここまでは結核予防法はなかなか忠実に、実によくできた法律です。ところが見つけてきて、掘り出してきたものを始末することはちっとも考えていないのです。そこに結核予防法の大きな欠陥がある。掘り出したものは何とか始末してもらわなければならない。ところが掘り出すことは一生懸命考える。ことしもそうでしょう。ことしも全額公費で検診をやる。そして国民全部検診をやるのだ——なるほどけっこうです。そして患者を掘り出してきます。掘り出した患者はどうするか。その現実の始末の仕方というものを考えてないところに、今日の結核予防法の欠陥があるのです。そして掘り出されたところの患者は——この厚生省編の結核の統計、これを一ぺん大臣見て下さい。図で書いてありますから実によくわかる。これの十五ページ、発見された患者が医療を受ける状況というグラフがあります。ところが発見された患者が医療を受けずというのがこれ、たけあるのです。過半数が医療を受けておらない。これは財政的な裏づけがないから医療を受けてないのです。しかも医療を受けておるのはどういう人が受けておるかといえば、全部保険ばかりです。その保険で受けておるというのは、これは健康保険の本人です。そして自分は金は出さない。政府も金を出しておらない。全部保険経済でまかなっているのです。結核予防法をこういう姿にしておいて、健康保険がどうして赤字にならずに済みますか。この問題が重要なのです。これに目をおおって健康保険赤字問題を幾ら論じたって、これは解決がつかないのです。今私が申しました数字にいたしましても、結核予防法ができ、その患者がどんどん検診されて出てくる、出てきてそれに対していろいろな治療の手が加えられていく、それに正比例して健保の赤字がずっと急カーブをもって上ってくる、こういう点を私は特に指摘しなければならないし、こういう点を十分認識していただかなければならないと思うのですが、大臣はこの状況をおわかりになっていただいたでしょうか。そこで局長の方は——大臣はこれは無理だと思うのですが、局長の方はこの現実をお認めになりますかどうですか。
  33. 高田正巳

    ○高田(正)政府委員 この健康保険の財政が、過去においてもそれは非常に苦しいことはございましたけれども、最近において非常に苦しくなったのは二十八年の後期からです。そしてそのピークが二十九年になっているということは、これは真実でございます。それから結核予防法の方は二十六年でございましたか、二十七年でございましたか、そのころから施行されたということも、これも真実でございます。それからもう一つ、今日の健康保険の財政の中で、結核の治療費が占めている比重が、先ほど申し上げましたように相当大きいということも真実でございます。ただ先生が仰せのように、結核予防法で患者を見つけたから保険の方が赤字になったんだというふうに、そこまで結びつくかどうかは、これはいろいろな要素がかみ合ってそういうことになっておると思いますので、直ちにそこまで決定的な結論づけをするにはよほど慎重を期さなければならない。一応そういう傾向がありはしないかということは当然考えられるところでありますが、それだけが原因になって、結核予防法ができてそれで思考を見つけたから、だから健康保険赤字が出たというふうにいきなり一足飛びにいくことは、これは必ずしもいろいろほかの要素も考えてみなければならぬだろう。たとえば健康保険の方では給付期間の延長でございますとか、あるいは入院料なり往診料なりの点数の引き上げでございますとか、要素がいろいろあるわけでございますね。だからそれらのものが一緒になって健康保険財政というものが苦しくなった、こういうふうに見なければならぬのじゃないだろうか、私はさように考えております。
  34. 岡本隆一

    岡本委員 私が今申し上げているのは、結核予防法によって、赤字のすべてがそれに原因するものだということを申し上げているのではないのです。しかし非常に大きなファクターである。これは認めていただかなければいかぬと思うのですが、どうでしょう。
  35. 高田正巳

    ○高田(正)政府委員 結核の治療費が健康保険医療費の中で相当大きなパーセンテージを占めておりますが、また御存じのように結核のベッドの増床なんかを、過去において政府は相当大幅にやってきております。そういうふうな場合に入院をするという場合には、どうしても入院料がまかなえる人、何かによってまかなってもらう人、そういうような人が非常に入院をいたしますので、従ってそれらのかみ合せから健康保険におきましても、それから生活保護法におきましても、この結核問題というものが非常に大きなウエートを持っておるということは、これは現実でございます。
  36. 岡本隆一

    岡本委員 この問題はもう少しなにしたいと思いますが、五時五分前に大臣が用があるという紙が米ましたので、そこで結核予防法によるところの施策の不足というものが、健保の赤字に対する大きなファクターになっておるということは認めると今局長はお答えになりましたが、それでは健保の問題を解決する一つの大きな方向もそこにあると思う。それなしに、その根本的な原因を直さないで、いわばわれわれ医者の方でいいますと、対症療法、こうやく張りばかりしておったのではだめで、やはりその病気の根源をとらえなければだめなんです。その病気の根源の一つ結核予防法に対するところの政府施策の不十分ということが大きなファクターになっているということは今明らかにされた。こういうことが明らかになったらそこの点を、どうして治療されますか。一つ大臣の名医ぶりを発揮していただきたいと思います。
  37. 高田正巳

    ○高田(正)政府委員 大臣のお答えになる前に、もし誤解があるといけませんので、ちょっと先ほどの説明を敷衍さしていただきますが、なるほど岡本先生仰せのように、結核予防法で結核の治療費を全部見るのだという建前になれば、これは健保も生活保護法もそっちから出るものは大いに少くなる。これは当然そうなることはわかり切っております。ところが先ほどの地方の義務づけがないために健保の方にしわ寄せをされておるという金額からいきますと、これは参考の数字でございますが、昭和二十七年度には結核予防法の関係で、三億六千万円程度保険が自分で払わないで予防法が負担をしておってくれた。こういう数字が出ております。それが先生ご指摘のような事情から、なるべく健康保険生活保護法でやれるものはそちらで、やってもらって、そういう恩典に浴さない人を予防法でかかえていこうという地方の事情で、だんだん金額が減ってきておりまして、三十年度におきましては、一億九千万という数字が出ておる。ここで見ますと、二、三億の問題なんでございますね。一億九千万円ですから、二億も二十七年当時とは数字が違う。従いまして、先生御指摘のような事情で、建保財政に直接はね返っている部分は、見方によってはこの程度のわずかな金額であるという見方もでるわけです。しかし先生の仰せの分は結核予防法が結核治療費を何でもかでもまかなうのだというふうな建前でやったら、現在健保なり生活保護法なりでまかなっておる結核治療費というものは全部落ちていくわけですから、これなら非常な影響のあることは、これは当然です。ところが予防法でさようなことを全部やろうとすれば、これは数百億の金額を要するということも、これは先年御存じの通りだと思います。その辺のところは若干誤解があるといけませんので数字についてお答えを申し上げておきます。
  38. 岡本隆一

    岡本委員 局長ちょっと勘違いしておられるのです。私が申していますのも、結核予防法が全額負担せよといっているのじゃないのです。結核予防法は胸郭手術一あるいは指定の医療、それの半額を持つ。その半額をほとんど持っていないのです。そこで今局長も二十七年には、一二・六億持っておった、それが一・九億に減った。だから一・九億結核指定医療の負担を予防法はしたけれども、しかしながらそれ以外は全部健保にしわ寄せしている。だからそれは膨大なものなんです。それを私は言うのです。それは私の方で事実請求書を見ましたらほとんどは健保に全部まるかかえです。そして健保にあの青い紙のつく——青か赤か忘れましたが、別につくのです。もう何ぼもありません。だからその分が非常に少くて、そして健保にまるかかえの分が多い。そのまるかかえの分は健保にそれだけ結核予防法によるところの指定医療分がしわ寄せしているわけです。その金額が非常に大きなものだということがまず第一。  その次にはやはりベッドを増設すればするだけ、これは病毒伝播のおそれあるものという理由をもって、どんどんやはりベッドへ収容しなければいけません。ベッドへ収容するには、それは結核予防法の建前からすれば非常にけっこうです。もちろんそうしなければならぬ。それに伴う入院料は全部健保がまるかかえです。今度は手術に伴うところの入院料をめんどうを見ることになりましたね。しかしながら今までは手術に伴う入院料といえども、一切、とにかく入院料というものは全部健康保険にしわ寄せしておった。従って結核予防法は、当然法の精神から行きましたなら、結核の治療については国ができるだけ費用を持とう、できれば入院料を半分持つのがほんとうだ。結核を摘発して入院させるのだから、精神からいえば半分持つのがほんとうだ。それを摘発してきたわ、あとはめんどうを見ないわ、こういうことになるから、だからそれは捨て子扱いされていると、私はいつも言うのです。その捨て子扱いされているために、出てきているところの費用というものが非常に莫大なものであるということを私は申し上げているのです。滝井君が関連質問があるそうですから、一緒に御答弁願います。
  39. 滝井義高

    滝井委員 今まで大臣で、単価が妥当でないと御答弁いただいたのは、大臣が初めてです。今までは単価問題については、妥当でないと明言できる局長なり大臣はいなかったのです。小林さんのごときは、適正であるとは思わないが不適当でない、こうやったのです。そうしてこの委員会ががたがたになったことがある。私は大臣に辞職を迫ったことがあるのです。大臣が初めてなんです。ところが単価を検討するということは、これはもう二十六年から閣議でやはり言っている。二十六年の十二月七日の閣議で単価を検討するということを決定している。それから二十八年二月十三日にやはり税の問題に関連して、すみやかに臨時医療保険審議会というもの、これを中心にしてやれということをやはりやった。それから三十一年四月四日に一萬田大蔵大臣はやはりすみやかに検討いたしますと言った。これは大橋君と私の質問に関連して言った。そうして二月十九日ときょうの二十七日にあなたがまたおっしゃったわけです。今度あなたは妥当でないという結論のもとにやることになった。そうしますと、大体どこでやるかということです。今までは関係各省でやれということなんです。関係各省というと、厚生省と大蔵省と、この二つが一番関係のあるところです。そのほかに関係のあるところができてくるかもしれません、共済組合やなんかありますから。単価はそれに関連するのです。大臣は大体具体的にどこに検討をやれという命令をしているか。これをまず示してもらわなければならぬ。妥当でないという結論がはっきりしておれば、これはあとの結論は、幾らそれを上げるか、財政をどうするかという技術上の問題になる。方針がもうきまったのです。今まではこの方針がきまらなかった。従って具体的に大臣はどこでそれをやれということを御命令になっているか、これだけまず御答弁いただいておけば、あとそれに関連して局長にお尋ねすることにいたします。
  40. 神田博

    神田国務大臣 厚生省の省議を開きまして、私が先ほど来答弁している趣旨を述べまして、省議として了解がついておる。そこで直接の担当者である保険局長に至急案を立てろという命令を出しております。もう一つどこにめどを置くかという詳細なことになりますと、妥当でないという抽象論でございまして、どこが適正かということになるわけでございまして、これは私もなかなかつかみかねますし、そこが調査をするということになろうと思います。調査はすみやかに結了いたしまして、そしてこれは独善だと言われる方法でないような検討を加えたい、こういう考えでおります。
  41. 滝井義高

    滝井委員 大臣から、局長のところでやっているという御言明をいただきました。これはもう私は五年ごしの単価の質問です。一ぺんは館林君が、折に触れて検討いたしております、こういう答弁をして、折に触れてとは何ごとだと言ったことがあります。そのときも臨時医療保険審議会でやっておるということを再々にわたって御答弁いただいている。そこで単価問題もようやく省議でやるということを決定したのですから、われわれは過去の資料をもらっておかなければならない。臨時医療保険審議会で今までやった全資料を当委員会に出してもらいたい。これは今後の健康保険の審議に重大な関係があるのです。百円の一部負担にしても、これに関係してきますから、私たちは健康保険の審議に関連して、当然この臨時医療保険審議会の経過について質問をし、場合によっては財政と関係しますから、小委員会を作ってもらわなければならぬかもしれません。これは一つ速急に出してもらいたいと思う。これが出なければ、われわれは法案を上げられません。一番大事なところです。今後健康保険は皆保険をやるというスローガンを掲げておるからには、単価問題と将来の健康保険の関係を考えずして、日本の皆保険は絶対できない。しかもこれは健康保険ばかりでなくして、国民健康保険にも及ぶのです。そうすると、健康保険に続いて、あなた方が五百万入れようとするところのこの国民健康保険というものがどういう姿をとらなければならないか、これをわれわれは地方行政委員会に行って、地方財政との関係を今国会においては論議しなければならない。従ってあなた方が決心をされているというからには、過去における臨時医療保険審議会において論議された全経過をここにすみやかに委員長を通じて出してもらうことを要求いたします。これは妥当でないという結論が出たからには、すみやかにこれをやらなければ、日本の皆保険はできませんから、この点は一つ厚生省がそういうものを出せるか出せないかということを、ここで御答弁いただくとともに出せればすみやかに出していただきたい。
  42. 高田正巳

    ○高田(正)政府委員 単価の問題につきまして、単価とこの法律改正が切っても切れない関係があるという仰せにつきましては、私は必ずしもさようとは考えておりません。しかし臨時医療保険審議会の審議の経過等につきましては、これはずいぶん古くからやっておりますので、相当ひまがかかると思いますけれども、できるだけ早急にその審議の経過等についての御報告はいたしたいと思います。  それから、大臣から私ども事務当局が研究を命ぜられておりますことは、これは私この委員会でも申し上げましたが、単価を今の十二円五十銭、十一円五十銭をどのくらい上げるとかなんとかいうことではなくして、単価の問題も含めて、あるいは点数の問題あるいは税制の問題、そういうふうなものも関連づけて、総括的に検討をいたせというふうな御命令を受けているようなわけなんであります。従いまして、私どもはその線で、もちろん臨時医療保険審議会の御審議を無視するつもりはございませんが、これらと並行いたしまして私ども今後この法案の問題が済みましたならばそれに本格的に取っ組みたいという考え方をいたしておるわけでございます。
  43. 滝井義高

    滝井委員 その資料は速急に出していただけることは確実でしょうね。
  44. 高田正巳

    ○高田(正)政府委員 私どもできるだけ早く御報告をいたすような手はずにいたしたいと思います。
  45. 滝井義高

    滝井委員 あなたは健康保険単価とが関係がないとおっしゃるけれども、あなた方の今度出した提案理由をお読みになったらわかる。「健康保険制度は、わが国の社会保障制度の一大支柱をなす制度として労働者の生活になくてはならぬ重要な意義を有しておりますが、近年その医療費は年を追うて増高し、特に中小企業を対象とした政府管掌健康保険においては、昭和二十八年末以来今日まで収支の不均衡を続け、保険経済はきわめて困難な事態に立ち至ったのでありますが、その後各種の行政上予算上の措置を講じて一応収支均衡を保ち得たのであります。」こう述べておる。一点単価で一円上げれば百三十億ないし百四十億の負担増が保険経済にくる。そうしますと、あなた方は、この健康保険改正案というものは国民皆保険ができる直前までか、できた後でなければ改正しないとおっしゃっておる。単価問題というものは、妥当でないということになればもうすぐやらなければならぬ問題でしょう。そうしますと、あなた方の単価問題に対する構想がきまらずして保険経済を論議することはできませんよ。はっきりしているじゃないですか。しかも社会保障の一大支柱としてその健全化をはかっていくのに、一円上げたら保険経済はどうなるかということなんです。それが問題になってくる。保険経済と健康保険を切り離して論議することは絶対にできないのです。なぜならば法律改正の中には百円という一部負担が出てきているということなんです。数字が出ているでしょう。この百円というものが保険経済にどういう影響を及ぼすか、百円をとれば、あるいは入院料の三十円をとれば、年回においては十二億からの基金からの支払いが減少するということになっている。一部負担の問題はこの健康保険法改正の少くとも一番支柱になるものです。そうすると十二億の問題と関連して今てんやわんやのものであるのに、岡本さんも言われたように、これは言うまでもなく単価を改訂するということになれば、上げるにしても下げるにしても重要な問題がこの健康保険に出てくることは明らかである。従って見通しなくして上げるとか、妥当でないからやりかえます、という言明をしたからには、保険経済の見通しが立たなければわれわれはこの法案を通すわけにいかない。これは明白なんです。だからあなた方は分離論を言ったって、これは医薬分業の分離論とは違う。この健康保険改正案というものは経済問題を出発点としてやったものだ。七人委員会も財政対策としてやったものです。それが後においていかにすりかえられようとも、根本は財政問題なんです。だから財政問題の見通しがつかなければ、この法案というものはだめなんです。もし一点単価をことしの終りから二円上げるとすれば、健康保険経済というものはがらり根本からくずれることは明らかです。従ってこれはいずれ資料が出てから論議をいたしますが、これは一点単価を上げることを論議することが健康保険と無関係だなんというのは認識不足であるといわなければならぬのです。これは明白なんです。あなた方の法案の提案理由から明白なんです。これは一大支柱にならぬことになってしまう。
  46. 高田正巳

    ○高田(正)政府委員 私は必然的にこの法案の御審議に、今の問題がきまらなければこの法案が審議されないというふうな意味で関係があるというふうな関係はないであろう、ということを申し上げただけであって、無関係だとは申しません。これは岡本先生が御指摘になりましたように結核予防法の問題が何かいじるということになれば、これは健康保険にも関係があるかもしれない。それからそのほかにいろいろな問題が健康保険には関係があるわけであります。そういう医療問題というものは、一つの有機的な関係を持っておることはこれは先生御指摘の通りでございます。また逆にかりに単価をいじくったということになれば、あえて健康保険だけでなくして、生活保護法にも結核予防法にもいろいろ関係があるわけであります。従ってそういうふうな関係があることは当然でございます。しかしながら私のお答えをいたしましたのは、若干言葉が足りなくて御了解をいただけませんようでございましたけれども、この問題がきまらなければ、この法律案が審議できない。たとえば御指摘になりました百円という問題が一体どういう具体的な関係があるのであろうか。私にはその品が、滝井先生の仰せになりましたようなふうに関係があるというふうには考えておらないのでございます。
  47. 滝井義高

    滝井委員 今まではどの大臣も、単価は妥当でないという言明をした大臣はいないのです。神田大胆が初めてなんです。しかも妥当でない、すぐに検討を始めて、結論的にはこれは実施いたしますということを言っているわけです。そうしますと、大臣の答弁によれば、この健康保険法改正というものはもう根本的な改正であって、医療の保障体系ができ上るまではこの法案は当りませんと言っている。あなた方自民党の政策においては、医療保障のでき上るときには今から四年後か五年後ですよ。四年か五年後まではもう健康保険は当らないのですよ。それは大臣はちゃんと言明した。これは私もここに書いてある。速記にもある。そうしますと、単価問題は不適当であるから改訂するといって、健康保険は四年、五年の後まで当らなければ、結局単価問題は四年も五年も先にいくことになる。この単価問題を変えるには健康保険法を変えなければできませんよ。これはあなた方考えてごらんなさい。局長の言うように、この問題を改訂せずに単価問題はやれますか。もし二円上げた場合に健康保険法改正せずにやれますかどうか。これは専門的に、私は逆に聞いてみたい。
  48. 高田正巳

    ○高田(正)政府委員 大臣は繰り返して御答弁なさっておりますが、単価問題については、単価を含めて医療機関待遇向上、そういうふうなことを総合的に単価をも集めて検討する、それではその財源はどこにあるのだというふうな御質問に対しましては、それはどういうふうに出るかわからぬから、そのときにはそのとき考える、こういうふうな御答弁をなすっておるわけであります。何も今日出しております予算の範囲内で物事を処理するとか、あるいはどうするというふうなことを仰せになっておるわけではないのであります。従いまして、単価を上げれば健康保険の財政に影響のあることは、これは先生御指摘の通りでございます。しかしそれはそれとして、別個に案ができた場合にものを考えるということは財政の問題だけでございます、そういうことを大臣は申しておるわけであります。今回の健康保険法改正というものは、単にその年度の収支を合わすとかなんとかという短期の財政のつじつまを合せるという問題だけではないわけであります。制度の全体の健全化、合理化をねらっておるわけでございますから、私は繰り返して滝井先生のお言葉を返すようでございますが、先生が仰せになるような意味の関係は、切り離してお考えいただいても十分御理解を願えるのではないか、こういうふうに考えておるわけであります。
  49. 滝井義高

    滝井委員 それじゃ具体的に言ってみましょうか。単価を二円上げたとします。そうしますと健康保険経済に百億の影響がありますよ。そのときに一番影響を受けるのは、標準報酬の引き上げか何かに手をつけなければならないでしょう。そうすればこれは法律の中でも一番大事な点に手をつけなければならないことになる。そうすると単価問題とこの法律は無関係だなんということは子供だましです。それはまだあなた方がその方針がきまらぬ前ならばいいです。しかしこの単価問題というものが妥当でないという結論が出たからには、何らかいじらなければならぬことは当然です。しかもそれは三年も四年も後にいじるというのならば、これは何もわれわれは問題にしません。しかし神田厚生大臣が二年も三年も続くわけではありません。もうどうせ改造があればすぐかもしれません。だからそれは妥当でないということを言ったからには、やはりこれは少くとも半年ぐらいのうちには結論を出さなければならぬということになると思う。そういうことで一年も二年も先ということならば、またこれはごまかしですよ。だから今の大臣の言明というものを私はすかさずとった、今までも何回も検討するという言明を私はこの委員会でいただきました。しかしそれは明白になっていない。そこで私の力はそういう立場をとりますから、与党の方なり政府の方はこれは別だとおっしゃってもけっこうですから、とにかく資料を出していただいて、そうしてもう一ぺんいずれ私は大臣に質問いたしますが、とにかく妥当でないということが明白になっておるのです。これはすみやかに検討することになっておる。しかし大臣は皆保険ができるまではこの法律はこのままいくんだという言明なんです。この問題と単価の改訂の問題は四年の後にやるというならば、大臣の言明というものはうそになる。四年も先年も先のわれわれが生きているかどうかわからぬようなときのことをここで論議したって始まらない。やはり少くとも現職の大臣が妥当でない、検討してすぐに実施いたしますと言うからには、やはり自分の在任中にできることを見通し確信を持って言っておるはずなんです。だからこれはあなた方もそういう点でもっと良心的にならなければいけない。きょうも一万三千人の医師と歯科医師が国技館に集まってやっているそうです。一万三千人もの医療担当者が集まって大会を開くなんということはめったにありません。そこでも単価問題が出ておるそうです。これはそう逃げ腰で片づけるわけにはいかぬ段階にきておる。そこでわれわれも御忠告を申し上げる、だからすみやかに資料さえ出してもらえれば私たちは私たちでそれを煮て食おうと焼いて食おうと料理をいたします。だがしかしこれは健康保険法単価問題が明白になってきたからには、無関係だとは言わせませんから、資料だけを出していただくことを要求いたします。
  50. 藤本捨助

  51. 岡本隆一

    岡本委員 先ほど私がお尋ねした結核予防法と健康保険財政との関係について、まだ十分に納得できる御答弁をいただいておりませんので、これはあさってに持ち越したいと思うのですが、それに関連して資料を一つお願いしたい。この結核予防法施行前に、占めている医療費の中に大体どのパーセンテージが結核医療費であったか、今局長が三三%とおっしゃったのは昭和二十八年の厚生白書に出ておる統計だと思います。従ってそれをずっとさかのぼってわかる範囲において過去のものを一つ出していただきたいということが一つ。もう一ついただきたいのは監査とかあるいは医療機関の指定の問題についても、官公立病院請求方式が一般の民間医療機関と違うようでありますが、東大がどういうふうな形でもって請求しておるか、その請求書を基金から取り寄せてあさって見せていただきたい、その一点を要求いたします。
  52. 滝井義高

    滝井委員 これは船員保険に関係いたしますが、ビキニの被災者の治療は船員保険でやっておるわけです。従って久保山さん以下全部の者の請求書を資料として当委員会に出していただきたい。東京第一病院などでやっておって、請求書が基金に出ておるはずです。私は船員保険でやることに反対をしたのですが、しかしあえて船員保険で、やっております。これを全部一応出してもらいたい。
  53. 藤本捨助

    藤本委員長 次会は明二十八日午前十時より開会することとし、本日はこれにて散会いたします。     午後五時二十一分散会