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1957-02-20 第26回国会 衆議院 社会労働委員会 第9号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十二年二月二十日(水曜日)    午前十時四十分開議  出席委員    委員長 藤本 捨助君    理事 大坪 保雄君 理事 大橋 武夫君    理事 亀山 孝一君 理事 野澤 清人君    理事 八木 一男君       植村 武一君    小川 半次君       越智  茂君    大石 武一君       加藤鐐五郎君    草野一郎平君       田子 一民君    田中 正巳君       高瀬  傳君    中村三之丞君       中山 マサ君    八田 貞義君       古川 丈吉君    亘  四郎君       岡  良一君    岡本 隆一君       栗原 俊夫君    五島 虎雄君       滝井 義高君    山口シヅエ君  出席国務大臣         厚 生 大 臣 神田  博君         国 務 大 臣 宇田 耕一君  出席政府委員         厚 生 技 官         (公衆衛生局         長)      山口 正義君         厚生事務官         (医務局長)  小澤  龍君         厚生事務官         (社会局長)  安田  巌君         厚生事務官         (児童局長)  高田 浩運君  委員外出席者         総理府技官         (科学技術庁原         子力局アイソト         ープ課長)   鈴木 嘉一君         厚生事務官         (大臣官房国立         公園部長)   川嶋 三郎君         厚 生 技 官         (公衆衛生局環         境衛生部長)  楠本 正康君         専  門  員 川井 章知君     ————————————— 二月二十日  委員栗原俊夫君辞任につき、その補欠として鈴  木義男君が議長の指名で委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  環境衛生関係営業運営適正化に関する法律  案(藤本捨助君外二十四名提出、第二十四回国  会衆法第六〇号)  社会保障制度医療公衆衛生婦人児童福  祉及び人口問題に関する件     —————————————
  2. 藤本捨助

    藤本委員長 これより会議を開きます。  藤本捨幼君外二十四名提出環境衛生関係営業運営適正化に関する法律案議題とし、審査を進めます。  まず提案者より趣旨説明を聴取いたします。亀山孝一君。
  3. 亀山孝一

    亀山委員 ただいま議題となりました環境衛生関係営業運営適正化に関する法律案について、その提案理由を御説明申し上げます。  環境衛生関係営業は、環境衛生保持増進のためにはもちろん、国民日常生活にとっても身近かな関係にある重要な営業であります。すでに古くから順守すべき衛生基準を定めて指導、取締りの対象となっておりますのもこうした理由からであると考えます。ところがこれら営業はいずれも特殊なものを除いてほとんどすべてが中小企業の範疇にも属すべき性格のもので、その経済的基盤はまことに脆弱であり、しかもこれら営業者は膨大な数に及んでおるのであります。  こうした数多くの営業が、それぞれ互いに正しい競争をしてサービス向上に努めますことは、国民生活のために、もとより望ましいことではありますが、何分にも経済的基盤が弱く、しかもその数が著しく多い営業であるだけに、ややもすると過度競争に陥り、その結果は必ずしも衛生施設改善サービス向上等望ましい方向にのみ発展するとは限らず場合によるとかえって不合理、不健全な事態を譲成する傾向がないとは言えません。現に最近はたとえばごく一部の業者がダンピングにもひとしい極端な低料金をもって営業し、故意に業界を混乱させつつあるものも現われまして、まじめな業者がはなはだしい迷惑をこうむっておるだけでなくひいては衛生基準保持も困難となって、衛生上、社会上いろいろな問題を惹起しております。また旅館等における深夜営業公衆浴場における特殊浴場映画興行における著しい長時間興行等社会的に見てもまことに憂慮すべき事実が横行しておりますのも結局はこれら過度競争の結果にほかなりません。  こうした数々の問題は、行政上の指導監督によって改むべきではありましょうが、従来の実績から見ても、手不足の関係等もあって行政力のみによって万全の効果を期することはきわめて困難であると考えられまするから、業界自主的組織を通じ、職業自由の原則を貫きつつ、主として民主的、自粛的方法により、これら過度競争を防止し、この種営業を安定に導く措置を講ずることによって正しい競争を育成し、サービス環境衛生向上を図ろうとするのがこの法律矢趣旨でございます。  次に、法律案の主たる内容について御説明を申し上げますと、  まず第一に、この法律対象業種としては現にそれぞれの法律によって守るべき衛生基準の定められている食品衛生関係営業の一部、理容業美容業映画興行業旅館業公衆浴場業及びクリーニング業の七種といたしました。  第二に加入及び脱退は、誉業者自由意志による方針もとに各業種ごとにそれぞれ各都道府県単位に、総営業者の三分の二以上をもって社団的特殊法人たる組合を組織できることとし、またこれらの単位組合は、それぞれ三分の二以上をもってその全国連合会を組織できることといたしました。  第三は、組合営業施設の配置の基準の設定とその励行の指導衛生施設改善向上経営健全化等指導、資金のあっせん各種共済事業等を行い得るほか、特に過度競争を防止するため適正化規程を定めて料金または販売価格制限営業方法制限とを行い得ることとし、この場合連合会は、適正化規程基準を示す適正化基準を設定することといたしました。  第四は、これら適正化規程適正化基準を定める場合には、それぞれ都道府県知事厚生大臣認可を必要とし、認可に当っては厚生大臣公正取引委員会と協議しなければならないことであります。なお、必要がある場合は、一応認可した適正化規程または適正化基準であっても、その変更を命じ得ることといたしました。  第五は、適正化規程の適用を受けないいわゆるアウトサイダーも含めてすべての営業者のために、営業の健全な経営が阻害される等一定事態が発生した場合に限り都道府県知事はこれらのものに対して、厚生大臣認可を得て料金常業方法等制限を定め、これに従うよう命令し得ることであります。  第六に、組合適正化規程に違反した組合員に対し、過怠金を課しまたは除名することができることとし、他方組合員はその五分の一以上の連署をもって役員解任を請求できること、つまりリコールの制度を設けました。第七は、組合または連合会運営が法令の規定に違反すると認められる場合等は、都道府県知事または厚生大臣はそれぞれ役員解任の勧告、解散命令を出し得る等必要な監督規定を設けたことであります。  第八は、適正化規程認可する等の重要事項調査審議するため各都道府県及び厚生省にそれぞれ利用者代表学識経験者業者代表等よりなる環境衛生適正化真偽会を設けることといたしました。  第九は、料金営業方法制限に従うべき命令に違反した者その他の違反者に対し罰金または過料の罰則を設けたことであります。  以上がこの法律案趣旨並びに内容の概略でございます。何とぞ慎重に御審議の上すみやかに御可決あらんことをお願いいたします。
  4. 藤本捨助

    藤本委員長 以上で説明を終りました。本案についての質疑その他は後日に譲ることといたします。     —————————————
  5. 藤本捨助

    藤本委員長 次に、社会保障制度医療公衆衛生婦人児童福祉及び人口問題に関する件について調査を進めます。発言の通告があります。順次これを許します。岡良一君。
  6. 岡良一

    岡委員 私は環境衛生上当面特に人口密度、あるいは人口集中の最近激しい都市における頭痛の種になっております屎尿問題について、政府の御所見を承わりたいと存ずるのであります。  戦後、私も何回か海外に出張いたした経験がありますが、東南アジア地方に比べて、ヨーロッパの各部市屎尿等処理に関する施設が格段にすぐれているということを現実に目にいたしておるのであります。そういうことから日本都市における屎尿問題の処理あるいは便所の設備などというものを見ますると、まことに遺憾の思いにたえません。私をして言わしねれば、その国の文化その都市文化はその国の宿の下排水の処理にあるのではないかとさえ言いたいくらいに思うのでありまして、わが国は都市計画の重要な基盤といたしまして、屎尿処理の問題についてのもっと合理的な科学的な施設が緊急に必至だろうと思うのであります。  そこでまずお尋ねをいたしたいのでありまするが、一体全国の各都市を通じて屎尿あるいは塵芥等処理行き詰まり現状は具体的にどういう事実になっておるか、あるいはまた今後どという状態にまでそれが悪化をするのであろうか、これらの点について環境衛生部長の御見解を承わりたいと存じます。
  7. 楠本正康

    楠本説明員 お答えを申し上げます。ただいま御指摘のように屎尿並びに塵芥、なかんずく屎尿問題につきましては各都市とも最近とみに行き詰まりが目立って参っております。  そこでお尋ね現状でございますが、現代を把握いたしますことはきわめて困難でございます。つまり不法投棄法律で禁じておる関係もございまして、一応は都市では何らか処理をしておる建前になっておる関係で、現実把握いたすことはきわめて困難でございます。しかしながら私どもここ数回にわたりまして全国的な調査を進めておるのでございますが、その結果を数字で申し上げますと、現在屎尿につきましては約四百九十市が、毎日約十二万石の屎尿を収集いたしております。そのうち実際に農村還元等を行い得るものが約半分、さらに下水等のマンホールに投入したりあるいは消化槽に投入するというような処理を講じておりますものが約二万石、残り約三万五千石余りに、いわゆる不衛生処分の名のもと河川投棄、埋没あるいは海洋投棄等方法が講じられておるわけでございます。  そこで問題になりますのはこの農村還元量激減でございますが、昭和二十八年におきましては大体八〇%が農村に還元されておりました。それが年年約一七%ないし二〇%ずつ減少をいたしまして、現在は、先ほど申し上げましたように約半分が農村還元されているにすぎないのでございますしそれから一方都市収集量というものは年年増加をいたしておりまして、これまた昭和二十七年におきましては約七万石、市の数でわずか九十市でございましたが、それが現在は、先ほど申し上げましたように十二万石、四百九十都市増加をいたしておる次第でございす。従ってこの傾向で進みますと、今後五年後にはおそらく大部分農村還元不可能となって、何らかの処理をしなければならない現状でございます。従いまして私どもといたしましては、かような現実から考えましても、今後この問題を根本的に解決しなければならないというふうに考えておる次第でございます。
  8. 岡良一

    岡委員 今御説明がありましたように、特に屎尿につきましては、一方では農村の需要がきわめて急ピッチに減退をし、一方では人口膨張等のために屎尿が日に日に多くなってくる。この排出の増とそして消化の減というものが相待って、全く日本の、大都市もとよりでありますが、中小都市においてはその問題で収拾のつかないような事情が予測されるわけであります。これに対して政府としてはどういう対策を用意しておられるのであるか。まずさしあたり焦眉の急であろうと思いますのは、われわれも世帯を預かる人から切実なるこの問題についての早急解決の声を聞いているわけでありますが、さしあたってどういう対策をもってこの問題を処理されようとするのか、かつまたこれはわれわれ生存をする限り不可欠な生理的現象でありますが、これを長期にわたってはどういう方針をもって処理すべきものであると思われるのか、この点についての御見解を承わりたいと思います。
  9. 楠本正康

    楠本説明員 都市屎尿につきましては、下水道を完備いたしまして水洗便所化することが最も理想の形でもあり、望ましい姿だと存じます。現在下水道が設けられております地域はきわめてわずかでございます。のみならず水洗便所化し得る地域は、人口にいたしましてもわずか三百万人足らずでございます。従って早急に水洗便所化のための下水道を普及することは経費の点から見てもきわめて困難でございます。ところがただいま御指摘のように実際に屎尿の逼迫は毎日の問題でございまして、遷延を許すことはできません。そこで私どもは大体次に申し上げますような方法で逐次早急にこれを整備していきたいという考え方でございます。  まず第一に下水道でございますが、下水道につきましては、現在配管はある程度進入でいるところがございますが、その配管の末端の終末処理場が整備できておりませんために、せっかくある配管屎尿処理に役立たないという状況でございます。従ってこれらある程度配管の進んでおります地域には早急に終末処理場を設けまして、これに配管を結んで、少くとも現在設けられている配管地域だけはこれを水洗便所化していきたいというのが緊急対策の第一でございます。これによって約六百万人程度水洗便所化が可能でありまして、これらを実施いたしますために、本年は特に初めての予算といたしまして、終末処理場に要する経費を約三億七千万円補助金として計上した次第でございます。そして終末処理場ができますれば、あとは配管が伸びるに従って伸びた部分だけ水洗便所化していけるという、きわめて応急約に役立つことになると思います。  第二は、何と申しましても、下水道配管のできている地域はきわめて少いわけでございます。大部分都市はあるいは町村はさような施設がございませんので、そのようなところにおきましては、とりあえず屎尿消化槽、つまりくみ取り屎尿を投入いたしまして消化処理して衛生的な解決をはかろうとするところの消化槽を設けまして、これにくみ取り屎尿を投入していく、こうすれば不衛生処分をせずに余剰屎尿消化槽に投入ができるわけで、この消化槽は将来下水道が完備いたしまして、終末処理場を設けます場合には、そのまま終末処理場の一部として活用されるわけでございますから、下水道長期計画と決して矛盾するものではございませんし、むだになるものでもございませんので、この消化槽を早急に進めたい所存でございます。この消化槽につきましては、来年度は特に補助金で三億二千万円を計上いたしまして、早急にこの事業計画的に実施していきたいというのが第二の点であります。  第三は、最近は御承知のようにごみ処理にも都市は困っております。現在毎日都市で集めておりますごみの量は約三百五十万貫に達しております。そのうち焼却処理されるものはわずか三〇%程度でございまして、大部分が埋め立てあるいは堆積というような不衛生処分をいたしております。そこでこれらのごみ屎尿とをまぜ合せまして、一定機械操作によりまして、早急に短時日にこれを堆肥化する施設をかねて検討いたしておりました。ようやく成案を得ましたので、来年度からはこの屎尿塵芥混合堆肥化施設各部市に普及することによって、屎尿問題と同時にこの塵芥問題を解決し、あわせて得られました堆肥農村草地開拓地等に逐次 元をいたしまして、いわば屎尿塵芥資源化学的な処理をいたしたい考えでございます。この点を来年度から実行に移すべく目下計画を進めておる次第でございます。  第四は、すでに御案内のように現在郊外の集団アパート区域あるいは外人の集団住宅等地域におきましては、個々家庭屎尿浄化槽を作るということを避けまして、共同的に大きな浄化施設を作っております。これらの技術的な点を考慮してみますと、大きくなればなるほど衛生的に安全な処理ができるのみならず、経費の点からいいましても、個々家庭浄化処理施設を作りますよりも、共同で作る方がはるかに経済的でありますので、来年度からは地域実情に応じ、たとえますれば観光地であるとかあるいは集団住宅地帯であるとかあるいは新興のアパート地帯とかいうようなところには、かような共同浄化槽施設を普及いたしまして、これによって屎尿処理をはかりたい、かような考え方で目下進んでおるわけでございます。しかしいずれにいたしましてもその根幹下水道を将来の大目的といたしておりまして、そのさしあたりの応急的な対策といたしまして下水道終末処理場、それから将来下水道終末処理場にそのまま転換できる屎尿消化槽根幹として今後進んで参りたいと考えております。
  10. 岡良一

    岡委員 ただいまお述べになりました御所信、また私どもいただいております資料を通じてみましても、下水道については配管施設あるいは終末処理場施設を整備する、また共同屎尿消化槽施設、当面三カ年計画ということでうたわれておりますこれらの対策を完成いたしますとしても、屎尿処理し得るものは二十万石に満たないわけであります。それからその人口も三百六十万人程度でありまして、まだまだ今後さらに長期にわたってこの屎尿増加、しかもその農村還元も逐年激減をしているというような事態から考えてみると、全く九牛の一毛にもひとしいことではないかと思われるのであります。一体この程度のことで、現下大きな衛生の問題というよりも社会問題となり、ひいてはまた生活の問題にも実はなっておるのでありますが、このような問題の対策としてはまことに不行届きなことではなかろうかと思いますので、この点についての御所信を承わりたいと思います。
  11. 楠本正康

    楠本説明員 私どもは来年度の予算編成の折に、先ほど申し上げました現状に照らし合せまして今後五年後の量を概算いたしまして、五カ年計画として対策考えたわけであります。そのときは、五カ年間で人口にいたしまして約二千七百万人、先ほどの四施設を整備するための総事業費として約五百二十億円を予定いたしたわけでございます。ところが先ほども冒頭に申し上げましたように、屎尿現状把握が必ずしも十分でなく、従って五年後の推移につきましても必ずしも十分財務当局等を納得させることができずに、この点は再びあらためて全国的な調査をし、現状を正確に把握した上で長期計画を立てるということに話が追いつめられまして、その結果とりあえず来年度におきましては、先ほど申し上げましたような経費となったわけでございす。七月はまた予算編成期になりますので、それまでに十分各都市実情並びに今後の推移検討いたし、それに基きましてあらためて長期計画を打ち出したい。来年度はこの長期計画に入る踏み台と申しましょうか、その第一歩を踏み出すということでございます。御指摘のように現在約三万五千石余り不衛生処分されているが、私どもは、実際にはもっとその量は現在でも多いのではないかというふうに推察をいたしてあります。かれこれ考えましてぜひもっと現状把握をいたしまして、必ず来年度の予算編成に当りましては、ただいま御指摘のような点を十分に考慮いたしまして抜本的な長期計画を進めたいと考えております。
  12. 岡良一

    岡委員 この屎尿不衛生処分と一口に言われますが、実際問題として大阪湾あるいは東京湾等においては、この不衛生処分によって処分された、いわゆる海洋投棄河川投棄等屎尿衛生の問題から社会問題にまでなっていることは御存じの通りであります。こういうものはすべからく禁止する必要があるのではないかと衛生的な立場から私どもは思いますが、こういう点についての御所見はいかがでしょうか。
  13. 楠本正康

    楠本説明員 この点もまことに御指摘通りでございまして、東京湾大阪湾等海洋投棄は、お話のようにすでに社会問題化いたしております。従って私どもは、とりあえず大阪湾東京湾等海洋投棄は早急にこれを禁止する必要ありという考え方から実は進んだわけでございますが、予算関係等がございまして、三カ年計画でこれらの海洋投棄しておるものを陸上処理に移すということに決定をいたしましたので、三カ年はまことに残念でございますが、現在の大阪湾東京湾海洋投棄を続けていかなければならぬ次第でございます。ただこの場合もその捨て方等を十分注意いたしまして、被害を最小限にとどめるべく目下努力をいたしておる次第でございます。なお目下海洋投棄むいたしておりますのは、瀬戸内海、それから伊勢湾、仙台湾等にぼつぼつ問題が起きております。従ってこれら内海におきます海洋投棄は、これまた機会を見て禁止をするという腹がまえでおります。それにいたしましても、これを陸上処理に移さなければなりませんので、これらの施設の整備とにらみ合せまして、すみやかに瀬戸内海年海洋投棄禁止をいたしたいと考えております。
  14. 岡良一

    岡委員 もちろん大都市周辺の海域における不衛生処分についてこれを禁止するとなれば、陸上処理については、施設とそれに伴う予算についても、やはり国としても行き届いた保障を与えなければならないと存じまするが、これは急速に、特に大都市周辺における海洋投棄の結果起っておるいろいろの不祥なる事態に対しても善処を強く要求をいたしたいと思います。なおこれは大都市だけでなく、地方の中都市でも、街路が狭いとか下水溝がないとかいうようなことで、今さら新しい施設をするとすれば大へんな財源が要るというような場合には、やはり陸上における消化槽その他の施設による急速な解決が必要であり、各市があげてこれを強く要求しておるのでありまして、大都市に偏重せず、これらの中都市の実態にかんがみても、しかるべく適切な対策を早急に財政的にもぜひ論じていただきたいと存じます。  なお先ほどのお話で、屎尿あるいは塵芥等処理については、いわばこれを資源化するという方途が考えられつつあるという御発言でありましたが、その具体的な事例があったらお示し願いたいと存じます。
  15. 楠本正康

    楠本説明員 屎尿塵芥等資源化につきましては、だれしもが考えもし、また夢を持つ点でございまして、いろいろな人によって実験を繰り返されております。しかし現在私ども行政上取り上げてしかるべきと思われるものは、先ほど申し上げましたような屎尿塵芥とを混合処理いたしまして堆肥化する施設でございます。これは持に農林省が協力をいたしまして、これによって土地改良あるいは草地改良等によって酪農の振興等をいたしたいということで、農林省目下相談をしつつ、この処理方法利用方法を進めておる次第でございます。これはおおむね結論を得ております。  次に屎尿の中に、これまた具体的な目安が得られましたので、目下厚生省委員会を設けまして検討をいたしておりますが、屎尿消化処理の過程におきまして、ビタミンB12が精製せられることが明らかとなっております。ただこれをいかに工業化し実際化するかというところに問題が残っておりますので、これらの問題を解決すべく目下検討いたしておる次第でございます。私といたしましては、これはまだ結論を得ておりませんが、おおむね成功の結論ではなかろうかと考えておる次行弟でございます。このビタミンB12がとれますならば、これはもとはといえば原料はただですから、世界の市場において勝てるばかりでなく、またこのビタミンB12が医薬品以外に、いわゆる動物蛋白要素といたしまして、飼料としてきわめて高い意義を持っておりますので、屎尿資源化学的な処理としては最も合理的なことではなかろうかと思って、目下検討を重ねておるわけでございます。なおさらに屎尿から硫安をとることもいろいろ検討されております。これらの点は価格の点でどうなりますか、今後の問題だと存じますが、私どもも膨大な量の汚物を何とか生かして使いたいということで今後も十分な検討を進めていきたい、かように考えております。
  16. 岡良一

    岡委員 ビタミンB12がとれるということはまことに耳よりな話でございますが、厚生省の方で委員会を設けて、すでにその実績も相当なめどがついたということであれば、ぜひその具体化に乗り出していただきたいと存じます。なお塵芥等を込みに処理して堆肥をというお話でありましたが、具体的にそういう事例はあるのでございますか。
  17. 楠本正康

    楠本説明員 堆肥処理につきましては、これはまた委員会を設けまして、特にこれはWHOの技術並びに資金的援助も受けまして、私どもは神戸市にテスト・ブラントを設けまして、過去三年間検討して参りました。一方神奈川県にも別なタイプのテスト・ブラントを設けまして、これによって検討を進めて参っております。すでにこのテスト・プラントにおきましては製品もできまして、これをさらに農林当局とも相談をいたしまして、肥料的なあるいは土地改良的な試験も終っております。この点はすでに私といたしましては実際化する段階だと、かように考えておる次第でございます。
  18. 岡良一

    岡委員 私ども聞くところによれば、最近日本の田畑も化学肥料を投入し過ぎたために、化学肥料による地味の収奪が明らかに出てきておる。最近の地力は年々減退の一途をたどるものであって、これが秋落ち現象等における全国的な減産の大きな要因になっているということを政府当局でも申しております。これを補うとすれば、当然これは有機質肥料である堆肥ということになりますので、今お話塵芥等もろにこれを堆肥化するというようなことも、まことに時宜に適した工夫であろうと思います。いずれにいたしましても、そういうような形でわれわれの生理的な排泄物が結局資源化されるということになれば、これはまことにけっこうなことであります。この際委員長にも特にお願いをいたしたいのでありまするが、屎尿の問題、塵芥の問題等は、ともすればあまりにもじみな問題でありまするので、しばしば目をおおい、耳をおおい、鼻をつまもうとするきらいがあるのであります。しかし都市住民にとっては今日まことに切実な訴えになっておるわけであります。そういうわけで、当委員会におかれましても、適当なる機会に政府にこの問題に対して早期にしかもできるだけ科学的な解決のための意思表示をせられ、また措置をも十分お考えを願いたいということを心からお願いいたしまして、質問を終りたいと思います。
  19. 八田貞義

    ○八田委員 関連して。ただいまの岡委員の質問を拝聴いたしまして、私も屎尿問題の点については非常な関心を持つものでありますが、ただいまわが日本で海湾投棄、海洋投棄禁止を三年間の計画にしょってその実施をはかっていく考えであるという政府当局の御答弁があったのでありまするが、今の陸上処理方法について具体的な考えを伺ってみますると、主として安全化、肥料化の面に主眼点を置いて陸上処理施設完備を目標にしておられるようであります。屎尿処理の問題、安全化、肥料化、資源化、この三つに集約されてくると思います。ただ問題は、大都市においては、こういった陸上処理に移すことができるといたしましても、中小都市の場合、これらの安全化、肥料化、次源化という三つを全部満足するということは非常にむずかしい。そこで手っ取り早くまず中小都市に対して屎尿処理をどういうふうにして指道していくか。この問題が三年間の計画あるいは五カ年間に延ばされた計画を実施するにいたしましても、中小都市屎尿処理を一体どういうふうに指導していくかということは非常に大切な問題になってくると思うのであります。  そこで私一つお伺いいたしたいのでありまするが、中小都市の場合、屎尿分離方式ということが考えられないかどうか。小便と大便とを分離すれば、小便はそのままほうっておけば炭酸アンモニアになって、窒素肥料としてこれを十分使うことができる、しかもこれは安全でございます。安全でないのは大便でございます。大便と小便とを分離することによって、私は農村の肥料の問題においても、農業の安全肥料として非常によろしいのじゃないか。また中小都市においても特に問題になっておるのは学校の場合でございます。学校の場合にたくさんの屎尿がたまってあふれているという状態が非常に多いわけです。もしこの場合屎尿分離の方式を学校に指導していくならば、大便はそうたまるものではないから、小便だけを簡単に、安全な肥料として、これを農村に供給できるという面も考えられるわけでございます。ただいま岡委員に対する御答弁は主として大都市における屎尿処理についてであったようでございまするが、中小都市に対して今後屎尿処理についてどのような指導方式をお考えになっておるか、お伺いいたしたいのであります。
  20. 楠本正康

    楠本説明員 ただいま中小都市並びに農村地域に対する屎尿処理についてお話がございました。まことにおっしゃる通りでございまして、現在農村の小学校においてもすでに屎尿処理に困っておる現状でございます。ましてや小都市、町村等も困っておるわけでございます。先ほどの御説明でまことに言葉が足らず失礼いたしましたが、先ほど岡先生にお答え申し上げましたうち、下水道によってこれを実施しようとすれば、御指摘のそれらの地域においては困難かと存じます。  そこで目下屎尿消化処理につきましては将来下水道終末処理場を予定した大規模のものと、そのままきわめて簡易な、しかも維持管理の容易な方法による消化槽を数年来工夫をいたしております。これらは主としてかような町村あるいは学校等には利用されるものだと存じます。また一方先ほど岡先生にもお答えをいたしました、共同してやる個々の浄化槽を大型にいたしましたものも学校あるいは小都市等に対しては効果があるのではないかと思っております。また一方資源化も、堆肥施設につきましては、実は神戸においては大都市向きを実験いたしました。神奈川においては町村向きと申しますか、小規模なものを検討いたしておる次第でございます。これらのものでやはり小都市塵芥屎尿もある程度解決ができるのではないかと思っております。  なおお話のありました屎尿分離方式は、私も普及していい施設だと存じております。ただこれは都市とか町村というところでなく、個々の農家が肥料を自給している場合に、肥料を合理的に使うという意味で、個々の農家に指導してまことに衛生的なものだと思われます。ただこの場合には、屎尿を分離するために便所改善等も必要でございます。また生活習慣からいって若干不適な点もございますが、これらは従来の実績から申しますと、大体なれて参りますので、私どもは、できれば個個の農家がかような方式の便所を設けることはきわめて望ましいことだと思いまして、従来もさような方向で指導をいたしておる次第でございます。
  21. 八田貞義

    ○八田委員 もう一つお伺いしたいんですが、学校の場合は、屎尿分離の方式をとっていきませんと、学校の衛生というものがなかなか満足にいかないと考えております。だから小便は小便、大便は大便として、大便は学校内に堆肥を作って、それらについて実地指導をされる方面に持っていく。   〔委員長退席、亀山委員長代理着席〕 これは特に中小都市の場合には付近に農村をたくさん抱えておりますから、農村の子弟も非常に多く、今後学校教育の中に堆肥をいかにして作っていくのがよろしいかという案地指導、それから大便の処理をいかにして安全にするかという指導もできまして、これは今後非常に必要なことであろうと考えますので、ぜひとも今後屎尿の分離方式を農村あるいは中小都市に徹底するようにお願いいたしたいのであります。もちろん今お話のように、便所を改造をする、あるいはいろいろな生活習慣からそう簡単に屎尿分離はできないというようなお話もあったようでございますが、しかしこれは指導方法によっては十分に屎尿の分離がほぼ理想的に実施し得るものでございます。この屎尿分離の問題につきまして、小便は、男の場合には簡単にいきます。女の場合におきましても、そうたくさんの小便が大便の方に入るというものではございません。便器の改良あるいは習慣によって、大便の方に小便を出さぬでも済むようなことが十分にできるわけでございます。その場合に、大便をする場合には、右手に紙を持ったならば左手に灰を持ってする。この灰を大便の上にかけることによって大便の消化というものが非常に促進されて参ります。そういうような指導方法をもって今後の生活衛生的な面を強く押し立てていくということが今後の衛生教育の根幹であろう、こう考えておるので、どうか一つ中小都市向けの屎尿分離についていかがにあるべきかというような指導方面において、特段の御努力をお願いいたしたいのであります。  それからもう一つ、大都市の場合の家畜あるいは家畜以外のいろいろな動物の屎尿は、東京都の場合でよろしいですけれども、一体どれくらい見込まれて、それをどういうふうに処理されているか。
  22. 楠本正康

    楠本説明員 ただいま御指摘の動物の屎尿でございますが、実は畜舎の問題になるわけでございます。都市におきましても養豚事業等はかなり存在いたしておりまして、実はこれらがしばしば周囲からいろいろ苦情の出る原因となっており、私どもはかねてから苦慮いたしております。昨年へい獣処理場等に関する法律の一部改正をお願い申し上げましたのも、これらの苦情に対してでございます。そこで現在どのくらいたとえば東京都であるかは後ほど資料をもってお答えいたしたいと存じますが、これは相当な数に達しております。なお乳牛も若干おります。また一番多いのは豚それから馬、かようなものでございます。あるいはアヒル、鶏というようなもの。かような企業は大体がきわめて貧弱な企業でございまして、そのために養豚事業等に相当な施設をさせることがきわめて困難で、やむを得ず現在のところは貯留槽というようなものに一たん流しまして、若干期間経過させ、これをくみ取るというようなやり方をいたしておりまして、まことに非近代的なやり方でございます。これらのものにつきましては、なかなか困難でございますので、できれば逐次農村地域にかような業態を移転させていくということ以外に方法はないのじやないか、かように考えております。特に養豚事業等は、単に屎尿だけでなく、これは厨芥等をえきにする関係で、その点でもきわめて不衛生事態がございます。私どもといたしましては、やはりこれは逐次他に迷惑を及ぼさぬ地域に移転をいたしていきたい、かような考え方指導をいたしております。この点はなかなか思うにまかせず、小さな問題でございますけれども市民の迷惑が大きいだけに、現在私どもは頭を悩ましておるところでございます。
  23. 八田貞義

    ○八田委員 実は人畜共通の伝染病が相当に蔓延いたしておりますので、その面から考えまして大都市の動物の屎尿の扱いということは非常に大切な問題であります。特に食品の衛生という面から考えて参りますると、大都市屎尿処理ということは簡単に考えてはならぬ問題でございまして、屎尿処理という大きな問題からとかく盲点的に取り扱われやすい動物の屎尿について、今後とも保健所を通じて一段の衛生指導にお努め下さらんことをお願いいたします。   〔亀山委員長代理退席、八木(一男)委員長代理着席〕
  24. 八木一男

    ○八木(一男)委員長代理 亀山孝一君。
  25. 亀山孝一

    亀山委員 先ほど同僚岡委員並びに八田委員からこの屎尿処理、特に中小都市屎尿処分につきまして、まことに適切な御意見及び御質問がございまして、私も全く同感であります。昔から言いますように、出ざれば悩み出れば悩む、その出ざれば悩む方の水道の方の問題はある程度当局の努力で着々改善されておりますけれども、出れば悩む方の問題は、どっちかという閑却されてきておる。ことに観光を重要視しておるわが国としては、この屎尿処理という問題は、まことに喫緊の要務である。ところが岡委員のおっしやるように、とかくこの問題に触れると鼻をつまみたがる多くの風潮は、まことに私遺憾に思うのでございます。   〔八木(一男)委員長代理退席、委員長着席〕 これは今年度予算にややその証拠を認めましたけれども、もう一段努力をされて、先ほど伺えば三ヵ年とか五ヵ年計画はあるけれども、もっと思い切った計画をせられてはどうか。ことに観光等の問題から言えば、この点を重要視したいと思うのですが、その点についての御意見をもう一度拝聴したい。
  26. 楠本正康

    楠本説明員 お答え申し上げます。ただいま御指摘のように、これは当然抜本的な年次計画を立てまして、これによって計画的に実施をしていかなければならぬ問題だと存じます。行き当りばったりで、出とところ勝負で困っておる問題を解決してみても、大きな目で見ますれば、必ずその計画に将来矛盾が出て参りまして、一貫性を失うという結果になると存じます。十分に資料を整えまして、現状調査もいたしまして、さらに一段と技術力の進歩もはかりまして、抜本的な対策をすみやかに講じて、来年度の予算編成にこそこれを具体化すべく、ぜひ御援助を願いたいと存じます。
  27. 亀山孝一

    亀山委員 それで今この屎尿処分についてどうもあまり進捗しない原因の一つは、これだけいろいろ屎尿処分施設の予埠等で中小都市計画いたしましても、これにいかなる方式を採用するか及びこれにどういう工事をするかという、その方式と工事についてどうもうまくいかない。これがせっかく今盛り立ててきておる屎尿処分の空気をじゃましておる重大な原因だと私は思う。従って厚生当局でこういう方式、こういう業者が専門的であるというようなことをある程度きめておられるかどうか、その点を一つお伺いいたしたい。
  28. 楠本正康

    楠本説明員 まことに適切な御指摘でございまして、事実現在いろいろな屎尿処理の方式等が取り上げられております。それから一方、由来この屎尿処理施設は、その工事設計等にきわめて高度の技術を要します。にもかかわらずこれが単なる土建事業のように扱われまして、そのために実際の施設が動かないという実例もたくさんございます。そこで私どもは、かような事態が現在屎尿処理を体系づけられない一つの重大な、御指摘のように原因であることはかねて反省をいたしておったところでございます。私どもといたしましては、現在屎尿処理施設につきましてはこれに基準を定めまして、屎尿処理の各方式につきましてそれぞれ基準を定めております。一部すでにそれが施行されている面もございます。さらに先ほどお答えを申し上げました堆肥施設その他いろいろな新しい施設につきましても、すみやかにこれを基準化いたしたいと思っております。これが第一点であります。  第二点は、私どもが非常に苦慮いたしておりますのは、現在この工事はだれが請け負ってもいいことに相なっております。そこで競争入札というようなことになりますと、技術力のきわめて乏しい、何の研究もしていないような者が、えて落札をするような結果になって参ります。ところがこれをどうするかといいますことは、なかなか私どもも、一部業者に利益を与えるような結果になってもはなはだ不本意でございますので、この点をどうしようかと思っていろいろ苦慮いたしておりますが、私どもは今までの検討の結果では、業者の施工者並びに設計者の基準を定めまして、たとえばこれだけの技術力を持っておる者、こうした試験ができる者というようなふうに施工者、設計者の技術力を中心とした一つの基準を定めまして、その基準によって今後は名市町村等が工事の入札をはかっていくというふうにしたら、これは一番合理的ではなかろうかと考えまして目下その点を検討いたしておる次第でございます。
  29. 亀山孝一

    亀山委員 要は、結局屎尿処分につきましての一般の空気の盛り上りが必要であり、同時にこれに対処すべき厚生当局及び府県、市町村当局のこれに関する経費及び努力を大いに注ぐことであると思うのであります。つきましては先ほど岡委員委員長に要望されましたのですが、私も委員長にお願いして、これをこの国会中何らかの決議でもいたしまして、今どっちかといえば閑却視されつつある屎尿処分、しかし今にしてやらざれば将来非常な悔いを残すと思われるこの処分につきまして、特別な委員長の御配慮をお願い申し上げまして屎尿処分に関する質問はこれで終りたいと思います。  次に公衆衛生局長にお伺いしたいと思いますが、幸いに売春法もいよいよ実施されるようでありますが、現在の日本の花柳病の状況はどういうふうになっておりますか、一応その点をお伺いしたいと思います。
  30. 山口正義

    山口(正)政府委員 性病の蔓延状況の実情についてのお尋ねでございますが、私ども行政当局といたしましては、性病の発生状況と申しますか、蔓延状況を把握いたします一つの手段といたしまして、性病予病法第六条によりまして届出制度ひとつておりますので、医師が性病を診断いたしました場合には届け出ることになつております。その数字を、全国のものを集計いたしまして一応性病の蔓延状況を把握する資料としているわけでございますが、実際問題といたしますと、疾病の性質上、ことに最近のようにいろいろな進歩した治療薬が出て参りますと、これは薬事法の関係もございますが、それがしろうと療法に使われるというようなことも現実問題としてあるように思われますので、実際の数をつかむということは、なかなかむずかしいのではないかというふうに考えられるのでございますが、一応性病予防法に基きまして届け出られました性病患者の数から申しますと、昭和三十年度の届出患者が十六万七千六百五十二、内訳は梅毒が二万八千六百七十一、淋病が十三万四千二百七十五、軟性下疳が四千六百三十六、第四性病といわれます鼠蹊淋巴肉芽腫が七十というような状況になっておりまして、これをこの性病の届出制度が行われましてからの状況を見ますと逐年届出の患者が減ってきているのでございます。たとえば昭和二十四年におきましては届出の総数が三十八万六千九百九十——四十万近くあったのでございますが、二十五年にはそれが三十一万に減り、二十六年は二十七万、二十七年が二十二万、二十八年が十九万、二十九年が十八万、三十年が先ほど申し上げました十六万七千というようなことで、減少してきているのでございます。特に梅毒の減少状況が非常に著明でございまして、淋病も減少いたしてはおりますけれども、たとえば昭和二十四年は十七万八千、それが三十年に十三万四千になったということでございます。梅毒の方は二十四年には十八万五千あったのが、三十年には二万八千、非常な減り方でございます。実際に一般の開業医の方々の御意見を伺ってみましても、近ごろは患者として来る人の中に梅毒患者が非常に少い。特に顕症梅毒が非常に少くなったということをいわれておるのでございます。ただいま申し上げましたのは一応私どもの方で集めております数字の状況でございますが、現実の問題としては、先ほど申し上げましたように疾病の性質から考えまして、実数を把握することはなかなかむずかしいではないかと考えております。
  31. 亀山孝一

    亀山委員 今伺いまして、花柳病患者が減っているということはまことに喜ばしいことであります。けれども戦前のように、徴兵検査というようなものによってはっきりつかまえた数字と違いますから、今の届出だけでは、おっしゃるように十分とはいかぬと思いますし、また開業医の方々のお話を伺って、ほんとうに減っておるということはまことに喜ばしいことだと思う。けれども局長も御存じのように、かつて学童疎開によりまして温泉地帯で相当な花柳病患者を出しておる。最近はお話のように、薬物治療の進歩によってしろうと療法ができるから減っておるということだけれども、決して私は油断はできないと思うのです。その点を一つこの上とも——公娼が廃止になればいよいよもって考えなければならぬ問題だと思う。ことに公娼廃止にからんでは、私から申し上げることはないけれども、かって群馬県が全国に率先して公娼を廃止して、しかも花柳病患者は全国で十位の中にあったような状況であった。ですから今度売春法の結果、私どもは花柳病の蔓延ということに対しては非常に懸念をしているのです。そこでこの上とも大いに、今喜ばしい花柳病患者の減少を見ているのに拍車をかけてやるべき花柳病予防の宣伝啓発について、何ゆえに厚生省は三十二年度の予算にこれを削除されたか、この点は一つ公衆衛生局長からはっきり伺いたいと思います。
  32. 山口正義

    山口(正)政府委員 まことに痛い御質問でございますが、御承知のように申し上げるまでもないことでございますが、性病予防の根幹といたしまして、思想普及、性病に感染しないような態度をとるということが根本でございまして、それには性病の実態というものをよく一般の人々に知らせて、そうして性病にかからないような方法を講じさせる。万一かかりました場合には、早期に治療するということが根本でございまして、その際に治療費に対して経済的に困っているという人に対しましては、減免治療なり無料治療をやっていくというのが性病予防の建前だと思うのでございます。そういう意味であらゆる性病予防行政の根本となるべき思想普及費につきまして、ただいま亀山先生から御指摘のように、せっかく過去数年間努力してやっと計上されました三十一年度の——額はわずかでございますが、性病の予防に関する思想普及費補助金五十万円余りが三十二年度の予算案においては削除されているのでございまして、この点はまことに御指摘通り遺憾なことでございます。ただ性病対策を今後売春防止法の実施に伴いまして強力に実施していかなければならないというときに、こういう措置がとられたということはまことに遺憾なことでございますが、一応これは地方に対する零細補助金の整理というよりな格好で整理をされて——先般お手元に差し上げました資料の中にその項目は載っておりませんでしたけれども、本省費としてごくわずかの思想普及費が計上されているのでございまして、それと同時に性病対策、これは思想普及費が削られた理由にはなりませんけれども、接触者調査に特に重点を置いてやっていくという意味で、従来保健所の職員にのみにやらせておりました接触者調査の仕事を、性病病院、性病診療所の職員たちにもやらせるという意味で、六百万円ばかり別に接触者調査費を計上したということで、性病予防の予算的措置を講じたということでございます。何はともあれ思想普及費が補助金から本省費に切りかえられた、しかも額が減少しているということは、性病予防行政を押し進めていかなければならない時期の措置としては、私ども予算案の作り方としては非常に遺憾な点であると思うのでございまして、この点は将来ぜひとも改めていかなければならないというように考えております。
  33. 亀山孝一

    亀山委員 公衆衛生局長のお気持はよくわかります。結核を非常に重点視するのはけっこうですけれども、同時にこれと関連しておるいろいろな厚生行政についても特に御注意願いたいと思います。花柳病については、ともすれば普通の病気と同じように見る傾向があると思うのです。そこはるる申し上げるまでもなく、十分御留意願って、何とぞ本年度もできるだけの方途を講ぜられ、また来年度は十分これについて御留意を願いたいという希望を申し上げておきます。  次に、国立公園部長がお見えになっておりますので、国立公園の問題について若干御質問を申し上げます。  国立公園につきましては厚生省所管でありますけれども、えてしてこれが観光の面のみ取り上げられて参りまして、国民保健上国立公園というものがいかなる意義を有するかということが閑却されそうなのですが、この国立公園が国民保健上にどういう役割を演じておるか、この点をまず公園部長からお伺いしたい。
  34. 川嶋三郎

    ○川嶋説明員 ただいま亀山委員から国立公園などの公園が国民保健上どういう役割を演じておるかという御質問でございますが、この国立公園は、大自然の環境をできるだけ保全しまして、国民に心身の休業のために利用してもらう、こういう施設でございます。そういう観点から国立公園行政というのは昔から衛生局にあったわけでございます。明治時代から衛生局の所管として管理して参ったわけであります。最近だんだん国民生活が安定して参りました関係から、非常にそういう大自然に入って心身の休養を求める者が多いのでございます。この数がどのくらいかということは、実は日本の国立公園の管理の現状ではつかめないわけでございますが、私ども長年の行政の実績から数字をつかんだところによりますと、最近は年間四千万人が利用しております。さようなわけで非常に国民保健の上で重要な役割を占めておると思っておるのでございます。
  35. 亀山孝一

    亀山委員 おっしゃるように、私も国立公園は観光の問題もさることながら国民の保健上重要だと思うのです。しかるにどうもこれが従来いつも予算面でいじめられておる、ことに国立公園の施設整備をやるのにわずかな予算しかないのだが、これは一体国立公園当事者の努力が足りないのじゃないかと思いますが、どんなものですか、率直にお伺いいたします。
  36. 川嶋三郎

    ○川嶋説明員 国立公園部長その他当局の努力が足りないじゃないかという御質問に対しては、お答えいたす言葉がないわけでございますが、私どもといたしましては、最近非常に利用が多くなってきておる、そうしてその利用の仕方が、若い健康の者がハイキング、登山等による利用と、バス等の大型の車による集団的な利用と二つのやり方がありますが、前者のハイキング、登山のやり方によります者も非常な数でございまして、一例を申しますと、中部山岳の上面地あたりでも高山植物のハエマツなどが切られましてどんどんそれがたきぎになったりする、こういうわけで非常に大自然が破壊ざれるほど利用される。バスによりましても道路が整備されなければ危険があるし、駐車場も必要だということになります。そういうことで現在の盛り上るような利用に対しまして、自然を保護していくにはどうしても施設を整備しなければならないという絶体絶命の羽目に陥っているわけでございます。施設整備というのは結局公園に近づき得る道路、駐車場とかあるいは環境衛生便所であるとかあるいは遭難などに対する対策として避難小屋とかいろいろ施設は必要なんでございますが、それが整備されないでおりましたのが、最近私ども微力ではございますが、できるだけ努めまして、だんだんとこの予算増加しつつあるわけでございます。明年度におきましてはこれも合せまして一億円の予算の計上方をお願いいたしまして、ただいま国会の御審議をお願いしておるわけでございます。もちろんこれでは私ども足りないと思うわけでございますが、今後もできるだけさような予算の計上をお願いできるように、努力をいたしたいと思っております。
  37. 亀山孝一

    亀山委員 国立公園の整備という問題は、今るるお話しになりましたが、結局どちらかといいますと国の方の努力が足りない、その結果一昨年から国立公園の施設に関する補助費を削られておるわけです。ところが当時の大蔵省の説明では、補助費は削ったが、国の方でやる、国の直接にやる費用だけれども、その土地がよし国有地でなくても民有地であっても、これに対して施設をやってもよろしいというような話だったので、一時国庫補助というものを強く要求しなかった。ところがどうもそうでないらしいというようなうわさも聞くのですが、事実補助費がなければ困った実情をこの際はっきりとお伺いし、同時に、今お話のような国立公園のいろいろな施設をやるについては国の費用も必要でありますけれども、国からの補助費も必要であるという点をはっきりとお伺いしたい。
  38. 川嶋三郎

    ○川嶋説明員 本年度、前年度、この二カ年、従来ありました施設整備の補助費の分が削られまして全額国費で施設を整備するようにということでやって参ったのでございますが、それではなぜできないかというお尋ねでございます。それは実は国立公園の中に施設整備士の土地の関係が二つの区域に分れております。それは一つは、国立公園の利用の中心として厚生省の直轄管理しております土地の部分と、その他の部分とございます。それらを全額国費で整備しようとしますと、厚生省の直轄につきましては問題はございませんが、その他の場所につきましては少くとも承諾を得たり、あるいは地上権を設定したりしなければなりません。さらにどうしてもということになれば、買収しなければならぬ。ところがそういう買収費になりますと、非常に額が大きくなりますし、同時に買収費が計上されないということで、事実上その他の場所に対する直工事費による施設整備ができないということになります。そこで二カ年の経験にかんがみまして明年度からは補助金による施設整備もお願いしているわけでございますが、補助金による分がなぜいいかということは、国立公園は区域も非常に広うございますし、その中でいろいろな土地関係があったり、ことにそれを施設した場合に管理することが非常に大へんでございます。地方公共団体の施設を整備し、それを補助するという形ができますれば、その管理が非常にうまくいく。同時に道路にいたしましても、便所にいたしましても、駐車場にいたしましても、地方の本来の狭い意味の公園利用以外の地方生活ともかなり関係がありますので、両々待って補助金制度の方がうまくいくということでお願いしているわけでございます。
  39. 亀山孝一

    亀山委員 国立公園の問題は、あまり長くなりますからその度度にして、最近国立公園に準じていわゆる国定公園というものを大都市の周辺に作って、大いに市民の保健上に役立てようという御計画があるように伺うのですが、その点に対して簡単に御所見だけをお伺いしたい。
  40. 川嶋三郎

    ○川嶋説明員 ただいまの御質問は、ただいま国立公園の審議会の方に諮問しております大都市近郊の国定公園のことかと思います。大都市と申しますのは、東京、横浜あるいは名古屋、大阪、京都、神戸、それから北九州、こういう場所の周辺の比較的自然が保存されているところを国定公園にしようということでありますが、その目的はこういう大都会における生活、あるいは労務者が非常に心身の疲れを覚えるということから、手近に日帰りで休養ができる場所を指定していこうということであります。これは従来の国立公園よりは利用率のやや勝ったものでありますが、今の国民の要望はそういうものも確かに必要だ、こういう見地から、こういうことについて大臣のお気持も固まりましたので、国立公園審議会に諮問していろいろ審議願っておる次第であります。
  41. 亀山孝一

    亀山委員 最後に国立公園の問題でもう一つお伺いしたいのですが、新しく国立公園を指定するような御意思があるかどうかということと、現に指定されておる国立公園の区域をさらに拡張される御意思があるかどうか、この点一つお伺いいたしたい。
  42. 川嶋三郎

    ○川嶋説明員 現在国立公園といたしまして大よそ二十の指定をいたしておりますが、これは数年前に全国の国立公園になり得そうな候補地について非常な検討をいたしまして指定したわけでございまして、それ以上に新しく指定するかどうかの問題につきましては、まず私どもは非常に消極的でございます。ただ一つ南アルプスは、実は昔から調査ができないために論議に上っておらない。従ってこれだけは別格であるということになっております。この問題は調査ができましたときに俎上に上るわけでございますが、そのほかのところにつきましては慎重な態度で参りたい、かようなことに考えております。なお御質問ございました区域の変更等につきましては、これは場所によりましては余分なところがあるかもしれませんし、あるいは拡張する方がいいところがやはりだんだん調べてみますと実際にございますので、そういう点は順次調査の確定次第いたして参りたいと思います。
  43. 亀山孝一

    亀山委員 これで質問を終りますが、医務局長にちょっとお伺いしたい。この前の国会のときでありましたか、らい療養所の慰安金の問題と、それかららい療養所の今いろいろ腐朽しておる建物及び畳等の問題でちょっと御質問申し上げました。この前慰安費の問題は同僚議員の質問の際にお伺いいたしましたが、らい療養所の修繕費というか、そういうものは今度三十二年度でどういうようになっておるか、これだけをお伺いいたしたい。
  44. 小澤龍

    ○小澤政府委員 お答え申し上げます。修繕費は前年通りでございます。前年通りでございますが、御指摘のような施設のあることを十分に知っております。従いましてこれに対して特に重点的に検討をいたしまして、御指摘のようなところを来年度は一掃いたしたい、かように考えております。
  45. 藤本捨助

    藤本委員長 八田貞義君。
  46. 八田貞義

    ○八田委員 放射線の障害防止法案というものが今国会に出るように聞いておるのでありますが、こういった放射線障害防止法案というものが出て参るようになったのは、放射能障害についての一般の関心が高まった結果、だんだんこういう法律や規則が整備される機運が熟したために、こういった法案が出てきたと考えるのですが、この法律が通れば現実にエキス線従事者の悩みは解消するかという問題です。
  47. 小澤龍

    ○小澤政府委員 御承知のように事務局におきましては二、三年前からレントゲンその他の放射能物質の人体に及ぼす影響を考えましていろいろ学界にも御相談申し上げましてある基準を作ったのでございます。そうしてそれによりまして現在実施中であり、これによりまして相当被害を少くしておる、こう考えておる次第であります。  最近、これとは別に、放射能物質全体の取扱いにつきまして科学技術庁の方でもって立法措置をしたいということにつきまして、私どもにも連絡がございます。科学技術庁といたされましては日進月歩の放射能に関する学問に即応した新しい基準を今後研究して制定したい、こういう趣旨でございます。医療法で取り扱っておるものと先方の取り扱うものとはどういう工合に調整するかというのは今後の問題でございますが、おそらくは今後できるものはそれだけ時間が経過しておりますので学問も進んでおることと存じますので、なお一そう完全なものができるのではなかろうか、かように予想しております。
  48. 八田貞義

    ○八田委員 時間がないから簡単に進めて参りますが、そこで、エキス線技師や医師も職掌柄放射能にさらされておるわけでございますが、厚生省では昨年の当初と思いますが、医療法の施行規則のうち放射線の防護に関する規定を全面的に改正した、その中で特にエキス線の撮影室の遮蔽規定をお変えになったようでございます。その撮影室の遮蔽規定をおきめになったのですが、どのようなことから考えてそういうふうな遮蔽規定を厳重にしなければならぬか。またその遮蔽規定を厳重にすることによってどのような利点がエキス線技師あるいは医療担当者あるいはまた一般の患者にあるか、そういった面についてお知らせ願いたい。
  49. 小澤龍

    ○小澤政府委員 数年来レントゲン障害に関する世間の関心が高まって参りました。これに関連いたしまして、先ほど申し上げましたように約二年ほど前から学界の意向を徴しまして、レントゲンの発生装置の種類によりましてボルテージあるいはミリアンペアあるいは照射する方向及び壁までの距離、こういうものを勘案いたしまして、レントゲンを操作する人も、またレントゲン室の周辺におる人々にも、あるいは患者にもできるだけ大きな被害を与えない方向におきまして学界の意見を徴しまして、それによってあの基準表を作ったのでございます。
  50. 八田貞義

    ○八田委員 その基準表を簡単にお示し願いたい。
  51. 小澤龍

    ○小澤政府委員 資料として別に差し上げてもいいかと思いますが、たとえば管電圧四十キロボルト、管電流を距離の二乗で除した価が百分の一であった場合におきましては利用できる、レントゲンの発生する方向の防護物の壁の鉛当量は〇・四三ミリメートル以上でなければならないというような式で、それぞれにつきまして基準をきめてございます。
  52. 八田貞義

    ○八田委員 こまかい点は時間がありませんから省略させていただきますが、そうしますと、一般的にわかりやすくするために、エキス線の発生装置を持っておる医療担当者は今の医療規定の施行規則の改訂でもって、全部そういった散乱線を遮蔽するために鉛を張りつけなければならぬかという問題ですが……。
  53. 小澤龍

    ○小澤政府委員 それは鉛でなくともそれと同じ効果があれば、たとえば壁の厚さを厚くする、しっくいの厚さを厚くする等の措置を講じてもこれだけの効果が出ればよろしいというふうに指導してございます。
  54. 八田貞義

    ○八田委員 そうすると、エキス線を持っておれば、除外例はお設けになっておらぬわけですね。
  55. 小澤龍

    ○小澤政府委員 これはレントゲンすべてに通ずる規則でございます。しかしながら、これを厳格に適用いたしますのは、レントゲンを室内に固定いたしまして常時使うレントゲンを主にして取り扱ってございます。従いまして、携帯用のレントゲンにつきましては、これに準ずる扱いを考え、また指導しております。
  56. 八田貞義

    ○八田委員 そうしますと、一回の撮影をする場合に散乱線は一体どれくらい発生するか、これは、私は前の局長にも除外例と散乱線の問題についてお聞きしたのでありますが、そのときはっきりとした数字が示されなかった。そこで私は、常識的に、一回の撮影に散乱線は一体どれくらい漏れるとお考えになって表改正をやったか、こういうふうにお尋ねしたのでありますが、小澤局長は一回の撮影にどれくらい散乱線が漏れるとお考えですか。
  57. 小澤龍

    ○小澤政府委員 まことに恐縮でございますが、まだその点検討してございません。いずれあらためてお返事申し上げたいと存じます。
  58. 八田貞義

    ○八田委員 それで、レントゲンの学界におきましては、ヘッドから散乱線は〇・一五ミリレントゲンだけ漏れる、こういうことが定説になっているのです。そうしますと、一体何枚撮影すれば国際恕限度に達するかということです。
  59. 小澤龍

    ○小澤政府委員 一週間に十八時間照射して百五十ミリレントゲン以下になるような規定でもって学界においてこの基準考えていただいたのでございます。
  60. 八田貞義

    ○八田委員 学界の答申ははなはだしろうとにははっきりわからないのです。また実際に医療担当者にとっても今の答申のようなものではなかなか理解しにくいし、また厚生省当局としてもなかなか指導ができないのです。実際いうならば、レントゲンの牧乱線がヘッドから漏れるのは〇・一五ミリレントゲン。そうすると、恕限度に達するためには、〇・三レントゲンですから、二千枚を撮影しなければならぬことになってくる。一体一週間に二千枚の撮影をするような診療所があるかという問題なんです。私はないと思う。一カ月たってそんな二千枚も撮影をするような診療所はない。大きな病院であるならばいざ知らず、一般の診療所において二千枚の撮影をするような診療担当者があるか、この問題です。ですから私は除外例を設けることは当然じゃないか、学界の答申を、ただ数字的あるいは公式的な答申を、そのまま勝手に解釈されてそれを実施されますと、医療担当者はみな困ってしまう。その点どうです。
  61. 小澤龍

    ○小澤政府委員 今のお話でありますと、一カ月二千枚やられる診療所はないといわれます、なるほど一ヵ月二千枚と申しますと一日平均七十枚程度になりますので、お説のごとく、普通の診療所ではこれはめったにあることではない。特に結核の集団検診等をやりまして、特定の人たちを集めて集団的に直接撮影をするといったような場合はこれはあり得ると思いますけれども常時はあり得ないことは御指摘通りだと存じます。
  62. 八田貞義

    ○八田委員 私その点前にも曽田医務局長に念を押しまして、一般診療所に対しては除外例を設けるべきだということを話してあったのです。ところがやっぱり前医務局長からも小沢局長にその連絡がなかったと思うのです。この点非常に私遺憾に感ずるのです。実際に二千枚をとるような一般診療所はどこを探してみても日本にはないですよ。そこへもってきて放射能障害というものに対して厳重にやらなければならぬ、厳重にやらなければならぬということでやっていきますと、とんでもない間違いが起ってくるわけなんですから、この点十分にお考え願いたいのです。  もう一つお伺いしたいのは、これからだんだん間接撮影が盛んになってくるわけです。今度も結核の診断をやろうということで五千万人を予定いたしておるわけですが、その場合に間接撮影が非常に多くなってくる。間接撮影の場合に一体どのような防護規定をお考えになっているか。私は間接撮影をやる場合に、一日どれぐらいを限度として今日の保健所のエキス線技術員を配置しているかという問題まで入っていきたいのです。実際五千万人と申しましてもなかなかそう簡単にできないのです。しかもこの間接撮影というのはむしろ今の直接撮影よりもこわいのです。その点について医務局長はどういうふうにお考えになっておるか。
  63. 小澤龍

    ○小澤政府委員 本問題につきましては御指摘通りに、従事員に及ぼす健康上の影響は重大だと存じます。そこで公衆衛生局と医務局が目下協議中でございまして、一応薬事法等によりまして、防護の基準通りのレントゲン装置が使われておるはずでありますが、一人の扱う数量とかその他の事項につきまして基準地方に示す、こういう予定になっております。
  64. 八田貞義

    ○八田委員 間接撮影の場合、放射線医学会のエキス線懇談会では大体一日五百件くらいを標準として考えておるわけなんです。ところが実際に間接撮影をやる場合には、大がい出張先でやるから学校とかあるいはお寺を借りてやっておる。ですから私は患者に対する放射能障害とともに、エキス線を取り扱う技師並びに医療担当者の防護も十分にお考え願いたいと思うのです。この点いろいろとお話しいたしたいのですが、時間もございませんので、この点十分頭に入れておやり願いたいと思います。
  65. 小澤龍

    ○小澤政府委員 御指摘の点全部重々ごもっともに存じます。実は開業医の使用回数がそれほど多いものではないから病院と取扱いを区分したらどうだろうかという御意見のようでございます。それから間接撮影をたくさんやる場合の従事者の健康についてもう少し考えたらどうか、この二点だと思いますが、これは今後十分検討いたしまして善処いたしたいと存じます。
  66. 藤本捨助

    藤本委員長 午前中はこの程度にとどめ、午後二時半まで休憩いたします    午後零時二十五分休憩    午後二時四十八分開議
  67. 藤本捨助

    藤本委員長 休憩前に引き続き会議を再開いたします。  午前中の質疑を続行いたします。山口委員
  68. 山口シヅエ

    山口(シ)委員 私は婦人問題といたしまして五点ほど当局にお伺いしたいと思うのでございますけれども、まず最初に母子福祉貸付資金についてお伺いいたしたいと思います。この母子福祉貸付の問題は、第二十四国会におきまして、各議員の要望によって二分の一補助を、地方財政が非常に困窮なためにこの法律の精神にもとるから国庫補助の分を引き上げてほしいということでございまして、それで附帯決議といたしまして二十四国会で全会一致で可決をされまして、さっそくに今回の予算に三分の二の補助率となって計上されておるものでございます。まことに一歩前進でけっこうなことと喜んでおるのでございますが、この厚生省予算要求の表を拝見いたしますと、確かに三分の二に引き上げてございますから、数字の上におきましては昨年度より一億四千万円増額ということに相なっております。しかし地方自治団体の三分の一と国庫の三分の二、すなわち貸付資金の総額から計算いたしますと、決してこれは増額されているものではない、相変らず昨年度の七万八千人というものを対象にしての数字である。同時にこれをちょっとこまかく申し上げれば、むしろ減額されているというように私は感じるのでございます。いかがなものでございましょうか。
  69. 高田浩運

    ○高田(浩)政府委員 お答え申し上げます。ただいまお話がありましたように従来予算額が四億五千万円で、国と都道府県とが半々ずつ持つ。すなわち両方合わせまして、予算面から言いますと九億円というものが新たなる貸付財源としてでき上るのが、三十二年度の予算におきましては予算金額が五億九千万円になり、かたがた国の負担率が三分の二になったので、結局両方合わせまして九億にちょっと欠ける格好になるのであって、従って帳面づらからすれば総体としてはふえたことにならないということはお話通りでございます。ただ実際問題を申し上げますと、すでに御承知のように昭和三十年度の状況からいたしましても、予算の金額は四億五千万円、実際に消化されましたのは約三億円、すなわち府県の金と合わしまして約六億円というものが実際の貸付財源になったわけでございますし、また三十一年度、これは年度半ばでございまして、はっきりしたことは申し上げかねますけれども、三十年度区よりもさらにその消化の状況は悪い状況と見込んでおるわけでございます。従って総額としてはおそらく貸付財源六億をはるかに割るという結果になるだろうと見通さざるや得ない状況でございます。その辺からいたしますと、結局国の負担率を引き上げることによりまして、帳面づらは別としまして、実際の貸付財源としてはふえる結果になるというふうな見通しをつけていいのじゃないだろうか、かように考えております。
  70. 山口シヅエ

    山口(シ)委員 私はこう考えるのでございます。あなたのおっしやる四億の予算を取っても事実は三億しか使っていないということは、前年度の結果をおっしゃっていらっしやるわけですね。そういう結果が出たということは、地方財政の方が窮乏状態にあったからそういう結果が出たので、またそういう状態にあればこそ監査が厳重だったのじゃないか。ところが婦人は非常に誠実な性格を持った人が多いですから、よく返済の状況などを私お伺いしておりますが、非常に成績がいいようでございます。そこで借りたい方、いわゆる希望者が多いといたしましても、地方の財源の関係並びに監査の関係その他いろいろ資金の関係で貸し出しが減ってきているんだということを私は考えるわけでございます。その点あなた様はどういうふうにお考えになっていらっしゃいますか。
  71. 高田浩運

    ○高田(浩)政府委員 ただいまお話のように母子福祉資金の貸付の償還の状況は、一般的に見ますと非常にいい成績のように私たちもにらんでおります。従って返済の状況が悪いから貸し渋るということは一応常識的に言えばないと考えなければならぬ問題だと思います。そのほか貸付を受ける方の母子家庭の方からすれば、この金が自立更生に役立っておりますし、従って希望も非常に多いし、そちらの方の面には貸し渋るという理由は私はそうないのじゃないかと考えております。従って県の方でこの方面に充当する金が少いというのは、やはり地方財政の状況に基くことが大部分である、そういうふうに考うべきじゃないかと思うのでございます。従ってこれを解決する道といたしましては、従来のように半々ということではなくして、国の負担率を県よりは、引き上げるということによって一面においては県の財政状況の実情に合った形にし、一面においては貸付財源となる資金総量をふやしていく、そういうふうなことをやるのが一番適切であるという意味をもって、国の負担率を三分の二に引き上げるように予算に決定したわけでございます。
  72. 中山マサ

    ○中山(マ)委員 関連して。今までは県の経済状態が苦しいので、それで国の方の温情が地方に流れることができなかったという結論でございますが、そういたしますとお伺いいたしたいことは、十分に国の温情を消化することができなかった県もございましょうが、全国的にどの県がその予算をとっておりますか。
  73. 高田浩運

    ○高田(浩)政府委員 御推測のように県としては財政上の状況がいいところもあるし、悪いところもあるし、実際の母子福祉資金の消化の率が果してそれとパラレルになっているかどうかということになりますと、必ずしもそうなっていない。従って一般的には地方財政の逼迫が原因ということも考えなければならぬと思います。同時にやはり県の首脳部の人たちの考え方というものも影響があることはいなめないことだと思います。
  74. 中山マサ

    ○中山(マ)委員 そういうことでいいと厚生省はお考えになるでしょうか。せっかく国がこれだけの温情を示しておりますのが、局部的にはいわゆる誘い水が行っても、それが拒否されている形になるということになりますね。県の考え方とおっしやいまするが、そういうことを伺いますと私もちょっと言いたくなる。これは厚生省にまことに申しかねるのでございますが、結局厚生省の啓蒙運動が足りない。日本人でありながら、ある県に住んでいる者はこういう貸し出しができる、ある県に住んでいる者は、その県の考え方が——いわゆる婦人の苦しみということを十分に考えないということになりますと、これはその県のあり方だから仕方がない、多分御返事としては、いや、これは地方自治体のやることでございますからどうにもならないとおっしゃるだろうと思います。私の方から先回りして答弁のようなことを申し上げておきますが、それではどうもならぬと思うのであります。なぜならば、私がちょっと聞き込んでおります県は——よく富裕県だとか、富裕県の反対は貧乏県ということでございますね、しかし別に貧乏な県でもない観光事業も盛んにやっております県であるし、名前だけは私は県の名誉のためにここで隠しておきますけれども、しかしそういう県がこういう婦人問題を考えますときに、私どもは早く自分の職業というものを考えて、自分の職業を身につけて、どういう立場になっても自分が生きていかれる建前にしてきた者も婦人の中にはおります。しかし過去の時代には、親というものが認識不足のために、女は結婚したらいいものだというような考えで教育された女の人が百五十万、百八十万あるということが今日の戦後の政治の悩みだと思う。いわゆるこれから売春問題に発展していくのでございますから非常な悩みでございますのに、それを認識しないという県が今日日本にあるということは実に遺憾なことであって、これは驚くべきことであると思うのでありますが、地方の苦しい場合には、いろいろ何と申しますか、予算獲得に地方から上ってきておりますのに、そういうことを今日まで知らないでいろんなお金を地方に流すことに努力しておった自分が、実はきょうはじだんだ踏みたいほど私はつらいと考えておるので、これは非常に困ったことだと思う。厚生省はそういうことに対して責任はおとりにならないでもいいと考えていらっしやるのですか。
  75. 高田浩運

    ○高田(浩)政府委員 母子福祉資金の貸付の県の予算の計上につきましては、私どもも、従来少い県につきましては話し合いをし、努力をして参っておったわけでございますし、今後ともこの努力は続けて参らなければならぬというふうに考えておるわけでございます。従来この国の予算に相当の剰余を生じたということは、これは私どもの努力の足りない点もあるいはあろうかと思いますし、それからなお母子福祉の問題は決して中央官庁だけの問題ではございませんので、一般的な啓蒙の問題もあろうと思いますし、ともどもに協力してこの母子福祉の実質的な改善のためにこの母子福祉資金を有効に活用されるように今後とも努力をいたしたいと考えておる次第であります。
  76. 中山マサ

    ○中山(マ)委員 そういう県を私は一つしか聞いておりませんけれども、協力をしない県が何県ほどございますか。
  77. 高田浩運

    ○高田(浩)政府委員 これは県によりまして、計上の金額の多い少いというものが非常に実はまちまちなんです。それで一がいにどこの県は協力する、どこの県は協力しない、そういうふうに数字づらだけでは、これはなかなか言いかねると思いますけれども、少くとも県の財政力と必ずしもマッチしていないということは言えると思います。
  78. 中山マサ

    ○中山(マ)委員 そういう非協力的な県は何県ぐらいですか。
  79. 高田浩運

    ○高田(浩)政府委員 多い少いということはこれは県によりまして非常に違うわけでございますし、全然計上していないところは一県でございます。
  80. 山口シヅエ

    山口(シ)委員 ただいまの中山先生の御意見は非常に大切な御意見だと思います。私もその点少々申し上げたいと存じましたが、代弁をしていただきましてありがとうございました。せっかく補助金の率を引き上げたといたしましても、確かに当局の啓蒙次第でこの法律の精神が全うされる、あるいはされないという事態が起きてくると思うのであります。そしてまた三分の二に引き上げたということに対しましては、地方の財政の貧困さから貸付の率が大へん低下しているという問題は解決するといたしましても、対象と相なります母子家族というものは七万八千人程度のものではございません。でございますから、もっと積極的な政策が行われなければ、この母子福祉の法律というものは完全に生きてこないじゃないか、こう私は考えるものでございます。でございますから、地方財政に対する政府側の恩情といたしましては、三分の二の率の引き上げで非常に喜ばしいことと申し上げるよりほかないのでございますが、実際母子福祉の法律を完全に生かして通常していくということを考えますと、より以上に対象のワクが拡大されていくような予算がとられていかなければならないのじゃないか、こう考えるものでございます。しかしあなたのお話も大体理解いたしましたので、母子福祉貸付の問題に対しましては、このくらいにさせていただきます。  次にお伺いいたしたいと思います問題は、婦人保護の問題なのでございますけれども、特に婦人の保護費の問題でお伺いいたしたいと存じます。この四月からいよいよ売春防止法は実施されることに相なっておりますが、昨年の秋、西ドイツのフランクフルトで開かれました国際廃娼会議に招かれました法務省当局の方のお話で、日本の売春防止法は世界一りっぱな法律である。だがあれをどうして運営するのだろうかということが招待の最大の理由だったということを、私は何かで読んだのでございますが、この通りなかなか困るむずかしい問題だと私も考えております。そしてこの関心は、一年や二年の短期間ではとうてい解決しない問題である。いわゆる売春婦が一年や二年の期間で一掃されるものであるということは絶対にないと私も考えております。しかしながらこれらの売春婦の人たちが一日も早く更生してもらうためには、やはり積極的な政策が行われることが必要だということを私は痛感しております。  そこでまず私がお伺いいたしたいことは、政府は売春防止法が施行されると同時に、どうしてもこの関連予算としては十二億円からの予算が必要であるということを言っておられたようでございますが、これがどうなりましたか。また業者の転業状況、接待婦の更生状況、こういうものがどういうようなことに相なっておりますか、まずこの二つから聞かしていただきたいと思います。
  81. 安田巌

    ○安田(巌)政府委員 婦人保護の問題についてお答え申し上げますが、なるほど二年くらい前に十六億ばかりの金が要るだろうということを申したことがあるのでありますが、御承知のように、どの程度そういった婦人がこちらの保護施設にかかってくるだろうかということは、なかなかむずかしいことでございますのと、それから当時婦人相談所なりあるいは婦人保護施設に対する補助率等につきましても、府県が苦しむであろうから三分の二にしたいというふうな予算を組んでおりましたのでございますが、そういったようなことがだんだんといろいろな事情で圧縮されまして、実は御案内のように、昭和三十二年度の婦人保護費の予算といたしましては、総計三千七百九十九万三千円に圧縮されたわけでございます。  それから転業の状況でございますが、業者の転業の方は、私ども今承知いたしておりませんけれども婦人の方はぼつぼつといったような経費が出ておるのでございますが、実は確たる数字をまだ私ども手元に持っておらないわであります。六大都市、八大都市等におきまして婦人相談所を開きました、そういったところで扱いました保護のケース等から見まして、徐々にそういった方向に向いておるということだけはわかりますけれども、そう著しく減ったというような数字は、実はまだ出ておらないわけでございます。
  82. 山口シヅエ

    山口(シ)委員 そういたしますと、今回おとりになった予算も、そういう数字的な根拠がなければ、この数字が出てこないのじゃないでしょうか。大体売春婦は全国に五十万人という推定ですけれども、その何割が更生したいという考え方を持っているかとか、あるいは現在赤線に働いている接待婦の中で、いろいろな事情でどうしてもこの世界にいなくちゃならない、しかし当人は足を洗いたいというような事情の人も、調査すればあるいは数字として出てくるのじゃないか。私はそういうものと見合せて予算というものが計上されていくものではないか、こう考えるのでございますが、そういう調査資料がないというお話でこういう数字が出てくると、いわゆる根拠のない数字ということは、国の予算としてとても理解できないのでございますが……。
  83. 安田巌

    ○安田(巌)政府委員 売春婦の数でございますが、これは昨年か一昨年に労働省の方で何か五十万とかいうような数字をおっしゃいましたが、しかしこれも確たる根拠があったわけではないみたいでございまして、私どもの方で昭和二十七年に調べたのでもやはり十七、八万という数字でした。それでもう少し正確に調べようじゃないかというので、三十年の四月に労働省で調べました数字が十五万七百二十名となっております。それからこれは昨年、私ども公衆衛生局の方で主として保健所を通じて調べた数字でございますが、これによりますと、十四万八千六百六十二名という数字が出ておるのでございます。そこで大体十五万前後というのが、一つの数字だろうという見方なんでございますけれども、このうち割に街娼というのが把握困難なことは御承知の通りでございます。赤線関係が大体五万二千という数字が出ております。それから青線その他の散娼が、約六万八千という数字が出ておるわけでございます。その残りが街娼に該当するんじゃないかという数字でございます。これは保健所を通じて調べた数字でございます。  そこで、一体今度の予算は、そういうふうな数字の根拠がなくてやって、権威がある予算じゃないじゃないかということは、全くおっしゃる通りだと思うのでございますけれども、今申しましたようなわけで、そういった売春婦の数がどれだけあるかということが実はわからないのでございます。それから猶余期間がまだ一年ありますということは、これが数字の上にどういうふうに影響してくるかということもわからないのであります。それから施設等を作りましても、これに対しては別に強制力があるわけじゃございませんから、一体どの程度が自発的に来るか、あるいはこちらから勧めたならばそういう所に入るかということはわからないといった、そういう不確定な要系もだいぶございますので、今度の予算といたしましては、婦人相談所は各府県にとにかく一つずつ作るんだという予算になっております。それから婦人保護施設も、従来十七カ所の婦人保護施設がございましたが、それを入れまして各府県に必ず一つは置きたい。それから各府県なり重要都市には婦人相談員を置くというような予算になっております。明年度一年やってみまして、あるいは途中におきましても、だんだん取締りの規定が発効していきまして、三十三年の三月三十一日に近づきますとどういう状況になるかということも、様子が変って参りますので、そういう状況とにらみ合せまして十分処置をとりたい、こういうふうに考えております。
  84. 山口シヅエ

    山口(シ)委員 そういたしますと、当局のおっしゃっております売春婦の数は、大ざっぱに二十五万人でございますね。街娼を合せると……。
  85. 安田巌

    ○安田(巌)政府委員 いいえ、今申しましたのは十五万の数字の中にこれが入っておるというわけであります。ですから、この十五万の数字の中で、赤線というのが一番はっきりつかめたわけでございます。その次が、青線その他というのが割につかみ方も街娼よりは容易だった、それが今申し上げましたような六万八千という数字が出たわけでございます。
  86. 八田貞義

    ○八田委員 関連して。今売春婦の実態調査が、厚生省と労働省とで、はっきりつかめなくて、数字の食い違いがあるということでございます。そこで厚生省として売春婦というものをどのような概念においてとらえてやっておられるか、これを一つお知らせ願いたい。売春行為をする人を売春婦と言うのでしょうけれども、どのような概念において厚生省は調べられ、労働省は調べておられるか、それをお知らせ願いたいと思います。
  87. 安田巌

    ○安田(巌)政府委員 売春婦の定義は、これは今度の売春防止法にありますように、不特定多数の人を相手としまして、対価を得て売淫をするということでございますね。今度の調べ方というのは、これは昔と違いまして非常にむずかしいわけでございます。私どもの調べというのが十四万八千何がしでございますし、労働省が十五万七百でございますから、大体当らずといえども遠からずというところの数字じゃないかと思います。調べ方といたしましては、赤線は割にはっきりしておるわけでありますから、これは保健所で調べればわかる。青線その他につきましては、いろいろな資料から調べるよりございませんから、これも割に不確実でありますけれども、なおしかし街娼から見れば六万八千という数字がつかめまして、そのほかの数字は大てい推定でございますが、そういうことも入れましてこれだけの数字だということでございます。
  88. 八田貞義

    ○八田委員 それで不特定の者を相手とした場合、これを売春行為あるいは売春婦というのですけれども、不特定の相手というのは、前に私質問したんですが、めかけとオンリーは特定の相手だというのです。そうすると、めかけとかオンリーとか申しましても、年俸幾らというのはきめていない。大がい月幾らでもってやっておるわけです。そうすると売春行為というのは、月賦販売の場合には売春行為にならないのだということになってしまう。しかも不特定の相手は一体だれがきめるか、これは警察官がきめるらしい。そうでごさいましょう。不特定の相手であるかどうかということは警察官がきめるというんですが、どのポイントをつかまえて不特定と断定するかということになりますと、これは非常にむずかしいのです。特に街娼の問題になりますと、これは非常につかまえにくいと思います。その数字はほとんど警官からきている数字ですね。ですから、ここの点ははっきりしていかないと、売春婦のいわゆる衛生保護という問題が、いつでも数字が基本になくてぶらぶらしていくことになってくるのです。こういう点で、労働省と厚生省との間に調査の数字の大きな差があると思うのです。ただ単に不特定なんという簡単な言葉でもって律せられましても、一体だれがきめるか、警察官だ。警察官というのは、一体男女関係を全部調べたかというと、調べることはできません。ポイントはどこだというと、金銭の収受であります。初めから終りまでずっと見ていなければならぬということになる。ですからこれは非常にむずかしい問題なんです。厚生省としてもやはり警察官だけに不特定の相手をまかすということではなくて、保健所を中心とした調査をずっとやっていかなければならぬ、この点についてどうですか。
  89. 安田巌

    ○安田(巌)政府委員 大へんむずかしい御質問でございまして、御回答にならぬかもしれませんけれども、私どものやりますのは保護、更生の方でございますから、不特定だろうと特定だろうと、女の人がほんとうの世の中の生き方をするということについて助けを求めてくれば、そういうことでごあっせんすればいいのであります。この人が不特定であろうか特定であろうかということを調べてやってみたところで大して実益がないので、大ざっぱなものがつかめれば大きな対策は立つんじゃないか。それから今の八田先生の御質問は、法務省の方に御質問願いたいと思いますが、これは今お話のように、始めから終りまで見ていなければわからぬじゃないか、こういう御意見があるために、売春行為自体は実は処罰しない。しかしそれが外部に現われて影響が出てくるというところを押えていこう、そうして実態を押えるというのが今度の法律で、勧誘でありますとか周旋でありますとか、あるいは前貸しとか、売春させる契約であるとか場所の提供とか、売春をさせることを業とする者、こういった者をだんだん押えていく、こういう考え方でありますから、これはいろいろ取締り当局といたしましても御苦心があろうと思いますけれども、そう非常識な結果にはならないじゃないか、こう思っております。
  90. 八田貞義

    ○八田委員 実態調査はだれがやっておりますか。
  91. 安田巌

    ○安田(巌)政府委員 これは保健所の方でやらせました。保健所の方へ届出があったりいろいろございますから、そういうものを利用いたしましてやったわけであります。たとえば赤線としてはっきりいたしたものもあります。それから温泉街等におきましては、これは普通の旅館であっても、中におる女がどうだということは判断がつくものでありますから、そういうものは青線その他の業者になるわけであります。街娼というのは、私はっきりわからないのですが、前からあります基地その他に何人くらいあるか、割にはっきりとした資料もありますので、まあとにかく十四万幾らのところだ、こういうところであります。
  92. 中山マサ

    ○中山(マ)委員 国立公園部長がおいでになっておりますので、ちょっと問題が転換いたしますけれども、今の安田局長のお話で正業に転向きせるというお話が出たのでございますが、この問題につきまして、これは聞き込み情報でございますけれども、長崎県の佐世保にある国立公園の一部——これは私の生まれた県でございますから、私が特別の興味を持って見ておるわけでございますが、あそこにある六十軒のいわゆる赤線区域が集団転業しよう、それで国立公園の一部に今流行のトルコぶろ、いわゆるふろ屋を建てて、そうして転業をするんだということをちょっと私聞いのでございます。そうして私は予感と申しますか、第六感と申しますか、このごろのトルコぶろがまるで雨後のタケノコのように、東京都を始めといたしまして大阪でも非常にはやりかけております。私はこれは赤線地帯にかわるものではなかろうかというおそれを持っておりました。ところが毎日グラフでありますか、それをこの間ちょっとのぞいておりましたところが、私の予感を裏づけするかのごとく非常に詳細に出ております。いわゆる個室でもつて指名をするのだそうですね、まるで女給さんか何かを指名するように——委員会でございますので私何を言っても恥かしいとも何とも思いませんが、いわゆる胸のバンドをいたしましてショート・パンツをはいて——私が初めて東京に来ておふろに参りましたら、三助さんが入ってきて洗おうとしてびっくりした経験がありますが、その男子が女子にかわりまして、しかも妙齢の女子であるようでございますね。そういう人にかわりましてトルコぶろというものが個室で——私はここでは女性としてちょっと発言いたしかねますけれども、必要とあれば毎日グラフをごらん下さいますれば、それが実におもしろい表現をもって、いかに私のおそれを裏づけているかということはおわかりいただくと思います。これはちょうど私が国会に上ってくる汽車の中で見たのでありますから、あの時分に出た毎日グラフでございます。  そこでこういうことを考えますと、いやしくも国立公園の一部にそういう集団のふろ屋に許可をなさるということは、私としてはどうも納得のいかない問題でございますが、ほんとうにこういう要請が長崎県からきたものかどうか。そうしてしかもそれには転向の予算厚生省に要請しているという話も私は聞いたのでありますが、こういうことが事実であるかどうか。いろいろなデマが飛びますから、あるいはデマかもしれぬと思いますけれども、私はこれをはっきりするために国立公園部のお考え方をちょっとお聞かせいただきたいと思います。今申し上げましたことに御回答いただきたいと思います。
  93. 川嶋三郎

    ○川嶋説明員 御一質問にお答えいたします。私から申し上げるまでもなく国立公園は自然を保全いたしまして国民の保健に寄与する、こういう施設であります。従って自然と相反するものは排除していかなければならぬ、これが方針であります。今お話のことは私も実は仄聞しております。調べてみますと公衆浴場という計画が事務当局に出ておるようであります。地元の計画といたしまして公衆浴場を作りたい、なお将来それと関連して宿泊施設を作りたいという計画が出ておるのであります。これは前段に申し上げたような方針にのっとりまして、国立公国の中で認められる施設というのは、国立公園計画で大きなものは統制しておるわけであります。国立公園計画に載ります宿泊施設その他の公共施設であれば認めるという形になっております。もちろん今お話のような運営の問題は、自然と相反しますからそれは絶対排除していきたい、こういう考えであります。
  94. 中山マサ

    ○中山(マ)委員 環境衛生局長さんがおいでになっておりますので伺います。おふろの問題、今の公衆浴場としては拒否することができないというようなお話を伺ったわけでありますけれども、いわゆるトルコぶろというものはそういう個室がある。これはちょうど二つの部屋で、もむところは同じところだというのと、いろいろ段階があるようでございますね。個室でしかもかぎをかけて——行ってきた人の話を直接聞いたのでありますから、間違いがないと私は確信をいたしますが、個室だというようなことになりますとどうも心配な点が出てくるわけでございますが、いわゆるそういうトルコぶろは、みな公衆浴物という建前で許可をいたしているのでございましょうか、それをちょっと伺っておきたいと思います。
  95. 楠本正康

    楠本説明員 現在トルコぶろその他いわゆる特殊浴場につきましてはまことに御指摘通りでありまして、遺憾なことでありますが、長崎県の問題も聞き及んでおります。そこで現在これをどうして許可しているか、こういうことでございますが、現在公衆浴場法の建前からいたしますと、やはり定義といたしましては、これが公衆浴場として扱わざるを得ない場合になって参ります。従って、これを場合によりますと、公衆浴場として許可せざるを得ないことに相なります。現にさようなものが出ておるわけであります。ところがこれに対しましては元来公衆浴場につきましては距離制限並びに料金の統制がございます。これをどうしようかという問題でございますが、これらは大体府県条例においておおむね除外例として省かれておるわけでございます。そこでこれは法律の不備ではないかという考え方が出て参るのであります。私どももかねて公衆浴場法を改正するなり、別個の取締り法規を作りまして、これに対処しなければならぬと考えてきておったわけでございます。しかし何分にもこの種の営業というものは取り締りましてもなかなか思うように効果の上らぬ性質のものでございます。そこでたまたま本日午前に御提案のございました環境衛生関係営業運営適正化に関する法律というものの内容を私ども昨年五月拝見いたしました。その中に営業方法の規制を自主的に行い得るようになっている。しかも正しい営業方法をやろうとして組合がきめた場合に、それに従わないときにはこれに強権を用いられる仕組みになっている。私はこれを拝見いたしまして、これこそ自主的にしかも最も効果的に、かようないかがわしい営業を正常に戻すことのできるものと考えまして、実はそれに依存と申しましょうか、大きな期待を持つているわけであります。従ってさようなものとの関連もございますので、一応私どもはその御提案法律に依存をいたすことにいたしまして、現在公衆浴場法の改正は一応見送りの形になっております。なおいずれにいたしましても、かようなふしだらな事実が今後も続くようでございますれば、これは断固収締りを徹底いたしたい、かように考えておる次第でございます。
  96. 山口シヅエ

    山口(シ)委員 それでは私は質問をもとに戻させていただきまして、推定五十万人という売春婦の数が、当局の調査によりますと、大体十五万人という数字が出たということでございますが、これはなかなか実態が把握しにくいものでございますから、十五万人という数字以上にこの売春婦が全国的におるということは考えられることでございます。そして十五万人と推定いたしたといたしましても、今回計上されていますところの婦人保護の予算は三億八百万円そこそこのものでございます。厚生省は最低限度六億はなければ、この法律の精神は生きてこないと言っていたようでございますが、このような予算が削減されて参りまして、特にこの予算の内訓にございます、今回新たに計上されました売春の問題には最も大切な保護施設設置費の問題でございますが、特にこれを取り上げて御質問を申し上げたいと存じます。この保護施設設置費といたしまして、今回初めて九千八百万円近くのものが計上されております。この九千八百万円の保護施設設置費がどのように使われていくものでございましょうか、御説明願いたいと思います。
  97. 安田巌

    ○安田(巌)政府委員 婦人保護施設の設置に要する経費九千八百九十万八千円の使い道でございますが、これは婦人保護施設、B型とC型と二つに分けまして、B型というのは五十人収容、これを五カ所、C型というのは三十人収容で、これを三十四カ所、これに対する二分の一補助、これが保護施設の設置の予算でございます。
  98. 山口シヅエ

    山口(シ)委員 そういたしますと、従来すでにございます施設は十七カ所でございましたか、それにこの施設を加えまして、大体でけっこうですけれども、どのくらいの人員が収容されるのでございましょうか。
  99. 安田巌

    ○安田(巌)政府委員 常時千九百三十五名というのが定員になります。
  100. 山口シヅエ

    山口(シ)委員 ちょっと質問が飛躍するのでございますけれども、従来の十七カ所の施設でございますが、これが果して定員だけ入っているものでございましょうか。それとも現在どういう状態にございますでしょうか。
  101. 安田巌

    ○安田(巌)政府委員 定員はたしか九百名ぐらいでございますが、七百名か七百二、三十名ぐらいというところではないかと考えております。
  102. 山口シヅエ

    山口(シ)委員 入寮の希望者が少いのでございましょうか。それともどういう事情で定員だけ入っていないのでございましょうか。
  103. 安田巌

    ○安田(巌)政府委員 やはり一方におきましては赤線地帯というものがございますし、そちらへ幾らでも逃げていくというふうなこともできるわけでございますし、それから出たり入ったりも相当ございますので、若干そこに数字が減るというのもやむを得ないのではないかと思っております。だんだん中に収容しております者の色分けをいたしてみましても、最初十七カ所できましたときは、少し話が長くなりますけれども、御承知のように占領軍の方で例の狩り込みをやりまして、病院等に無理に入れたんでございます。病気のないものを病院へ持っていくわけにいかない、どこへ持っていくか、あるいはまた病院から出るときに持っていくところがないじゃないかということで作ったわけでございます。当時狩り込みをやっておりましたときには満員でございまして、同時に中に入っておりますものも今まで売春を業としておった女が多かった。その後そういう狩り込みがなくなりまして中へ入りますのはそういう人ではなくて、むしろ転落防止、転落寸前にあった者、家出娘等を預かるところがないのでそういうところに入れる。いろいろ違った人が入ってきたわけでございます。しかしこれも広い意味におきましては婦人の保護でございますので、入れておったわけでございます。これが防止法ができましてから、最近の傾向といたしましては、やはりそういった売春の経歴者が、入っております申でもだんだんふえる傾向にございますので、だんだん有効に使っていけるのではないか、こういうふうに思っております。
  104. 山口シヅエ

    山口(シ)委員 その施設はどういうものでございましょうか。現在職業補導所としてそれだけの役割を果しておりますでしょうか。
  105. 安田巌

    ○安田(巌)政府委員 これはおひまがございましたならば一度ご案内申し上げたいと思います。東京都にもございますし、神奈川にもございますので、ざひ一度御視察願いたいと思っておりますが、いろいろあります施設が東京あたりですと、四つも五つもありますからだんだん色分けが出て参りまして、たとえば立川あたりにあります施設になりますと、もう出るに出られないような、もうほんとうに心身ともに使いものにならなくなったというような格好の人がだんだん沈澱してくる傾向がある、それからもっと違ったところになりますと、いつまでも外に出られるような非常に元気のいい連中、しかも年齢も比較的若いというような連中が入って参ります。そういう人たちはそこからまた仕事に出て参ります。さらにもう一つもうほんとうに外に出ていくためのアパート、婦人ホームのような役割もしている。でありますから、婦人保護施設といたしまして本気にやるということになりますと、やはり種類別というものが実は必要になってきやせぬかという気がいたすのであります。そこでそういったいろいろ施設によって性格がだんだん達っておりますが、おしなべて申しますと、そこに入りましてまずやはり生活訓練をするわけです。朝早く起きて、そうして夜早く寝て、生活訓練をして規則正しい生活をさせて、そうして授産というのはおいおいやっていくという格好で、ミシンの内職でございますとか、あるいは横浜あたりでありますとスカーフのふちとり、ああいうものをやるとか、あるいは造花をやるとかいうことで、おいおいに習っていく。そうして必ずしもそれですぐ生活するというわけにいかない場合もありますけれども、そういった訓練をやっていて、大体一年以内には出ていけるようにという方針でやっております。その間にまた引取手が出てさましたり、あるいは国に帰すような者もありますし、結婚をしていく者もありますし、それから外部に職業安定所なりあるいは知人や職員等のせわで就職をする者もございます。大体そういう状況でございます。
  106. 山口シヅエ

    山口(シ)委員 よくわかりました。私よくこういうことを考えるのですけれども、拝見きせていただきますと、より以上私も納得する点が出てくると思うのですが、やはり彼女らがつまずきます一番大きな原因となりますのは、今の日本では女が独立して社会生活を営んでいくというような経済的な基盤がなかなかないということが、やはり原因になっていると思います。それでこの点をカバーするために更生施設に入れる。そして職業補導をしてやる、こういう考え方もとに、どうしても今までのような旧態依然たる職業補導——私も幾つか見て覚えがあるのですが、封筒張りだとか紙ふうせん張り、造花作りだとか、ああいうようなものの域から補導の範囲が脱しませんと、今社会に出ていってもやはりなかなか生きていかれません。そこでその職業補導の点もできるだけ科学的な指導の仕方をいたしまして、彼女らが世の中に出ていきましたらさっそく経済的に独立していけるように、やはりそういうような親切さがありませんと、なかなかこういう方は自発的に立ち上っていかないと思います。これは私の希望でございますけれども、申し上げておきます。  それから皆様方の方がより以上にいろいろデーターをお持ちのことと思いますけれども、私も別に自分が赤線地区に入っていったり、青線に入っていったりして調査したものでは決してございませんが、いろいろ調査資料を集めてみまして非常に感じましたことでございますが、これは東京女子連、赤線の従業員組合でございます。この調査の結果出ました数字の上で非常に強く教えられることがありました。この調査によりますと、最近赤線をやめた売春婦八百二十七名について調査されておりますが、そのうちの五十名が結婚をして家庭生活を営むようになっております。それからお父さんお母さんのもとに帰られた方が二十名という数字が出ております。それからキャバレー、料亭などに転業していった者が百五十名、それから街娼化してしまった者が八十名、青線へ転落していった者が三百五十名、それから白線その他類似の商売に流れ込んでいってしまった者が百二十名、いまだにはっきりしていない者が五十七名、こういう数字を示しております。それでキャバレー、バー、料亭などに流れ込んでいった人たちは、もういわゆる正業についたものとこの組合では考えているようでございますが、私は必ずしもこの仕事は正業に転じていったものだとは考えないものでございます。そうしてこれを見ますると、約一割、大ざっぱに八百人のうち七十人が更生したと申せば更生したということになるでしょう。こういう数字を示しておりますから、こういう調査資料を見ても、厚生省としてもなかなかむずかしい問題であろうということを痛感するわけです。それからこれはやはり赤線地区での調査によって出た資料でございますが、これは調査人員が三千四百五十名、非常に多くを調査対象としております。それでこれで調べました結果、どういう事情でこういうような商売をしておるのか、いわゆる売春婦などをしておるのかという調査でございましたが、経済的な理由でこういう商売をしている人というのが七二%だったそうでございます。それで七二%のうちの内訳が、夫のある人並びにひもと申しますから、これはおそらくやむを得ずにあやつられて働いている人だと思います。これが三二%、それからだんな様以外、いわゆる夫以外にどうしても見なくちゃならない両親あるいは子供、こういうどうしても扶養しなければならないような事情の者が身の回りにいるという方が四〇%、こういう数字を示しておりましたそうでございます。これはあくまでも経済的な理由がその原因となっておりまして、これは政治の貧困であると申せばおそらく一口で言い切れるものだと思います。これはともかくといたしまして、私はこの三二%を占めます夫やあるいは内縁の夫も含まれるひもでございますが、これが大きな問題だと思うのでございます。この三二%のうちから風俗研究家の中村三郎氏が調査いたしましたところによりますと、いわゆる病身の夫を持ってどうしても自分がかせがなければならないという事情の以外の女性に対する調査でございましたが、内縁の夫、悪質なひも、こういうものにあやつられて働いてどうしてもそこから足を抜くことができないが、自身は何とかしてこのひものつながりを断ち切って更生したい、こういう希望を持っております者が七十二人のうちの二〇%を占めたということでございます。そういたしますと、自主的に更生したい、相談に乗ってやりさえすれば自分は更生したい、こう考えている者は売春婦の総数の二割、こう見なければならぬのではないか、これは私の勝手な計算でございますが、こういう考え方もとに今回の厚生省婦人保護対策というものが行われていかなければならないのではないか、こう考えるものでございます。そしてこの七二%以外の二八%の婦人調査いたしましたところが、浪費癖のひも、これにつながれていたという非常におもしろい数字も出ております。これは何とも救いがたい人たちでございまして、最もむずかしいケースだと思いますが、精神的訓練によって救っていかなければならぬ、こういうことを考えますときに、十五万人の二割すなわち三万人に対する対策といたしまして、今回とられました予算面から割り出しますと、わずか千九百三十五名の方を収容するのみでとどまっているということは、まことに非積極的な考え方ではないか、こう考えるのでございますが、局長の御意見を伺いたいと思います。
  107. 安田巌

    ○安田(巌)政府委員 大へん有益な資料をお示しの上での御教示をいただきましたことについて、非常に参考になりまして、ありがたく御礼申し上げたいと思うのであります。あとでまたその資料を一つ拝借さしていただきたいと思っております。  この数の点でございますが、先ほど申し上げましたように、千九百三十五名というのが十五万人の売春婦から比べれば少いじゃないかということでございますが、その通りだと思います。しかし先ほどからたびたび申し上げますように、十五万人のうちにはほんとうにつかまるかどうかもわからない人も、実は入っているわけでございます。そのうちでほんとうにこちらからの勧奨によってこういった施設へ入ってくるかどうか、あるいはそれを希望しない者もおるのではないかということ、これはやはり取締りの方との関連において数字を見なければならぬと思うのでありまして、先ほどからいろいろお話しになりましたような悪徳、犯罪という意味につながるような今の売春の状態というものが、猶予期間の間にどういうようになるかということも考えなければならない。猶予期間中はやはりそういう者が残っていて、そうして取締り規定が効力を生じたときからぱっとなくなるものか、あるいはそれまでに相当取締りを強化していって、同時にまた徐々にそれが減っていくか、これは実はわからない数字でございます。それで私どもの方といたしましては、千九百三十五名に対して各府県に婦人相談所を設けますが、その婦人相談所に実は一時保護のための施設を作るわけでございます。これに大体九百三十名ばかりの人がつくわけであります。これは私どもは大体二週間くらいを頭に置いて考えておりますが、そこに若干プールができると思います。それからこういったような調査をいたします場合に、私どもなかなか末端の組織がございませんからうまく参りませんけれども、実は今度設けます婦人相談所と同じような構想で、神奈川県に昭和二十九年から婦人相談所を作っておる。これは横浜駅の前にあるのでございますが、ここの昭和三十年度の実績を見ますと、全部で二千四百七十八人扱っておりますが、そのうちでいわゆる転落者という者が十九十四名、それから転落寸前にあるというのが千百名であります。そういたしますと、この相談所の保護更生の仕事というものは、実はこういったところに落ちてくる者も防止するということも相当考えなければならぬ。これは案外収容施設はなくても、一時収容所くらいの働きで目的を達することができるのではないかと思います。たとえば転落寸前にある者はどういう者かというと、性行不良の者であるとか、あるいは三十才前後まで居住、職業がないような者とか、あるいは人身売買未遂で保護された者とか、そういった者が入ってくるわけであります。  それから転落いたしました動機を見ますと、これは経済的な理由生活の困窮が唯一の理由のように世上言われるわけでございますが、そういうことでありますとなかなかこれは更生というか、抜け出すことが困難であります。ところが神奈川の例で申しますと、転落の動機として家出というのが相当多いのです。これが二七・四%で一番多い。それから誘惑というのが二四・七%、好奇心というのが一七%、生活困窮というのは一〇・八%、そのほか虚栄心であるとか強要、出かせぎ、そんな順であります。強要というのはいろいろ暴力によって犯されたとか、あるいは業者とか人身売買の強要によるとか、そういうことで中へ入って落ちますと、今度はいろいろからくりがあって出られないということになりますから、そういういろいろな関係で、取締りを受けるということになりますと、婦人相談所におきましていろいろの一事情を聴取し指導することによって、たとえば親元へ帰すことができるとか、いろいろとそこでさばけるようなケースも出てきはせぬか。確かにこれは決して多い数字とは申せませんけれども、だんだんやってみまして、いろいろな事情をにらみ合せながら、この法律が効果を発揮できますように努力をして参りたいと思っております。
  108. 山口シヅエ

    山口(シ)委員 確かにただいまのお話のように婦人相談所の役割は重大だと思います。そしてこの相談所の活動いかんによりまして、防止対策というものは非常に成果を上げていくものであろう、こう考えております。しかし、その売春婦として転落する寸前の女性というものに対する問題も非常に大切でございますけれども、同時に落ちてしまった人たちの更生の問題というものもより以上に大切であろうと私は考えますので、あくまでも私はこの予算は少いもの、またこの人数を対象としての施設では満足できないということを強調いたしておきます。その点を局長も認めていただきたいと思いますが、もう一言いかがでございましょうか。
  109. 安田巌

    ○安田(巌)政府委員 確かに少いと言われますと少いのでございますが、先ほどから申し上げますような法律の猶予期間の関係でありますとか、あるいはそれが強制力がないというようなこと、あるいは今後の猶予期間中の取締り状況等、いろいろにらみ合せまして、まあとにかくこれでやってみるということでございまして、また新しい事態にはそれに合うように善処したいと思います。
  110. 山口シヅエ

    山口(シ)委員 それでは、婦人保護の問題はそのくらいで打ち切らしていただきましよう。  次に、もう一つごく簡単にお伺いしたい問題がございます。それは医療費貸付のことでちょっとお伺いいたしたいのでございますけれども生活保護の対象者が現在ふえているか減っているかということ、それから生活保護対象厚生省はどのくらいの数に本年度は見ているが、また低所得階層の全国的な対象者はどのくらいの数字を示しているか、まずこれを伺いたいのです。
  111. 安田巌

    ○安田(巌)政府委員 生活保護の、明年度保護を受ける人の見積りでございますけれども、最近いろいろ景気がいいというようなことでだんだんと減ってきておりまして、たとえば生活扶助を受ける者の人員から申しますと、三十一年の十月は百五十三万人くらいになっております。これはずっと大体一%くらいずつが減っていくような計算になっておりますので、おそらくそのままの減少率を三月の末まで延ばして参りますと、百四十一、二万人になるのではないかということなのでございます。それを一応そういうふうにしませんで、一月末まではその率で減っていくということにいたしまして、それを明年の三月末の人員とする、これが約百四十九万人幾らでございます。それに〇・五%だけ年間を通じて人口増があるとしまして、百五十万人というものを対象にいたしております。もちろんもし昭和三十二年度に現在のような好況が続きまして、しかも明年度の予算の、低所得階層に対する施策でありますとか、あるいは国民健康保険の拡充でありますとか、あるいはまた日雇い健保の国庫負担率の増加ということをいろいろ考えますと、やはり下るのではないかと思います。それを下げないで百五十万でずっといくという数字を出しております。  それから低所得階層も、やはりそういうふうな最近の客観情勢を照らし合せて考えますと、おそらくは相当減っておると思うのでありますけれども、ただ数字から申しますと、これは厚生行政基本調査というので調べた数字でありますが、昭和三十年が九百七十万人というのが出ておるわけであります。
  112. 山口シヅエ

    山口(シ)委員 九百七十万人、約一千万人ですね。——私は神武景気というのはあまり低所得階層には影響していないという考え方を持っているものでございますけれども、と同時に減っていく状態にあるということをお認めになっております厚生省側で、今回新しい予算として計上されております医療費の貸付資金でございますね、これは減っているという見通しでこういう新しい予算をおとりになったということは、何か矛盾を私は感じるのでございますけれども、いかがなものでしょうか。
  113. 安田巌

    ○安田(巌)政府委員 低所得階層が減るにしても減らぬにしても現在低所得階層というのは相当おるのでありますが、それが一番困るのは医療費の支払いという問題だろうと思うのであります。そういう意味から低所得階層が崩壊者に転落することを防止する意味におきましても、医療費の貸付制度というものを考えております。私ども別に医療費の貸付制度が最善のものとは思っておらぬのでありまして、やはり国民医療の問題というのは何か統一的な医療保障の道を開くことによってそれを保障していきたいという考えであることは毛頭間違いないことでございますが、しかし最近国民皆保険というようなことを言われましても、やはり当分そういった恩恵に浴せない方々もありますものですから、ぜひこういうような低所得階層に対するいろいろな貸付制度をやりまして、その間の空白といいますか欠陥を補いたいとこういう趣旨でございます。
  114. 山口シヅエ

    山口(シ)委員 そういたしますと、低所得階層に対する医療費の問題をもう少し具体的にお伺いしたいのですけれども、どんな貸し付け方をするのでございましょうか。またどのくらいの人員を対象としているのでございますか。
  115. 安田巌

    ○安田(巌)政府委員 これは補助率が三分の二でございまして、府県の方であとの三分の一を持ちますから、予算に計上してあります数字が国庫補助額が二億円、それに府県が一億足しまして、三億円の資金として動くわけであります。県はそれを都道府県の福祉協議会に交付するということになっております。この考え方は従来御審議願いまして現に実施しておりますところの世帯更生資金の考え方と同じであります。福祉協議会はさらに末端の市町村の福祉協議会を活動させる、そして末端の福祉協議会の中心になりますのはやはり民生委員であるという考え方でございますから、民生委員が自分の受け持ちの区域内において生活保護にもかからない、同時にまた医療費に困っておるというような方々を見つけまして、そういう世帯のいろいろな更生なりあるいはその生活向上させることについていろいろ援護いたしておりますが、そういう世帯を見つけまして申請をさせる、金額は一口五万円を限度にいたしまして、大体六カ月以内に病気がなおる者を目標にいたしております。もちろん療養中は利子がございませんし、療養後も一定の期間は余裕期間を置きまして、無利子にいたしております。そのあとで年三分の利子をとるという形の貸付金でございます。人数は今の一千万人近、低所得階層でございますが、それはいろいろ保険にかかっておりますとか入院とか入院外とかいう数字でだんだんしぼって参りますと、大体七十万人くらいが病気にかかって費用が足りない人が出てきやしないかという計算でございますが、そのうちでとりあえず七が人くらいを対象にしたのがこの計上いたしました数字でございます。
  116. 山口シヅエ

    山口(シ)委員 それでこういうことも憂慮されますが、生活保護を受ける対象の割合からいきますと、生活保護費の予算というものは満足するほどの予算ではございませんので、その生活保護の対象となるような使途をこの貸付によってすりかえてしまうようなおそれがあるんじゃないか、これは私の考え方なのですけれども、いかがなものでございましょう。
  117. 安田巌

    ○安田(巌)政府委員 そういうことはもう絶対にいたさないつもりでございます。生活保護にかかっておる、たとえば生活扶助にかかっております世帯は病気になりましたら当然医療扶助にかかる、御心配のございます点は医療の単給と申しまして生活は何とかやっていくけれども医療費だけを生活扶助で補助していく世帯がこれに入るかと思います。しかしそういうつもりは毛頭ございませんし、またこれは六カ月以内のような病気でございますから、六カ月をこえるような病気についてはむしろこういう貸付をしない、ということはそういう病気に対する償還能力というものを考へますと、無理に貸し付けるということはいい結果を残さないと考えまして、わざわざ五万円を、しかも六カ月以内になおるという病気を考えております。  それから生活扶助でございますが、これは先ほど申しましたように、今のままでだんだん下っていきますと、来年の被扶助人員というものが百四十一万人でいいのでございます。それを百五十万人と見ております。私ども予算の数字というものには相当敏感で神経質でございますが、私はこのくらい組んでありますならばやっていけるといにふうに実は考えておるのでございます。
  118. 山口シヅエ

    山口(シ)委員 もう一つ伺わしていただきましょうか。今半年以内の病人ということを局長はおっしゃっておりましたが、そういたしますと半年でなおってまた何カ月か期間をあけて再発したといたします。そういう病人に対しては返済が三年間ですから、まだ返済が済まなくても再度貸してあげるということになりますか。
  119. 安田巌

    ○安田(巌)政府委員 貸付の対象になりますのはやはり償還ということを前提にいたしておりますから、ある程度生業を現在持っておりまして、病気になったというものが対象になると思います。そういう方々が病気をやりまして、六カ月以内で大体なおって参りました場合には、あとの六カ月だけは猶予期間をおきまして、その後だんだんかせいだ中から返していくという形にいたしたいと思います。ところが今までそれがもしございませんと、医療扶助にもかからない状態でやらなければならぬ、なけなしの金を出しておる人は今度はほんとうに医療費にかかってくるわけです、医療費にかかれば今度はなかなか再起更生ということはむずかしくなります。それがこの制度のねらいでございますが、今おっしゃいましたような場合にはこれはまたさらにそれを貸し付ける、多くの場合はそれが生活扶助、医療扶助に落ちてくると思います。
  120. 山口シヅエ

    山口(シ)委員 もう少々伺いたいことがございますが、私の質問はまた次の何かの機会にお願いいたしましょう。
  121. 藤本捨助

    藤本委員長 了承いたしました。岡良一君。
  122. 岡良一

    岡委員 私は今度英国がクリスマス島海域で強行されんとしておる水素爆弾の実験に関しまして、いささか政府所見をお伺いいたしたいと思うのであります。  この問題は特に原子力の平和利用をモットーとして、その研究開発に邁進をしなければならない当の所管大臣としての宇田国務大臣並びにこのことが国民の福祉にかかわるところきわめて重大であると思いますので、所管大臣としての神田厚生大臣から責任ある御答弁をお伺いをし、重ねてまたこの問題に対しては津外務大臣あるいはまた総理の代理としての岸信介氏から確たる所見をお伺いいたしたいと思ったのでありまするが、今は御出席の方も限られておりまするので、まず宇田国務大臣にお尋ねをいたしたいと存じます。今も申しましたように、英国のクリスマス島海域における水素爆弾は、わが方が二度もこれを中止すべきことを申し入れました。これについて政府部内においては、どのような観測を持っておられるのであるか。果して中止いたすべきであるというわが方の申し入れが実現をするという見通しを持っておられるのか、この点について御所信をお伺いいたしたいと思います。
  123. 宇田耕一

    ○宇田国務大臣 その件につきましては、先般岡委員からも別の機会に御希望がありましたので、そのことを外務大臣に私は連絡をいたしてあります。そして連絡いたしましたことは、中止についての考え方と、変更するつもりがあるかないかということでありましたが、外務省としては再度中止方を英国に対して申し入れ中であって、それの正式な返事を待っておる、こういう返事であります。
  124. 岡良一

    岡委員 英国側の態度といたしましては、すでにこの予算には一億ポンドが組まれており、所要の軍艦その他所要の艦艇も基地を出発いたして、クリスマス島に今や到着せんといたしておる。そういうような事情でありますので、英国側の新聞論調を見ても、今度だけはどうにもやりたいという希望のようであります。私どもとしては、これは絶対に中止すべきであるという建前には立っておりまするけれども、相手としては、とにかく強行しようという方針で進んでおるのであって、わが方の再度にわたる申入れについても、期待すべき返答が得られないのではないかという懸念を深く持っておるわけであります。そういたしますれば、わが方といたしましては、万一クリスマス島海域において水爆の実験が強行された場合に、いかなる対策を用意すべきであるかという点でありまするが、これについての御所見を承わりたいと思います。
  125. 宇田耕一

    ○宇田国務大臣 その対策につきましては、原爆被害のあった場合の対策調査研究連絡協議会は、厚生省の所管で、実は厚生省関係省庁が集まって連絡協議をいたしております。それは厚生省の方から先ほどお話のように、所管大臣から申し上げることになろうと思います。それで科学技術庁ないし原子力委員会はどういう態度であるかと申しますと、それは日本全土の放射能によるところの影響を、科学技術的な見地から調査をいたしております。今回皆さんに御審議を願っております予算の中にも、三千万円余り、原子力の日本国土に対する影響調査、科学技術的な見地からの影響調査をいたしたいと思って、その予算もと関係各省庁に依頼をしてありまして、それの計画的な調査の進め方というのは、引き続いて行なっておるわけであります。従ってただいま御質問のありました、英国がクリスマス島において水爆実験を行なった場合の被害に対して、特別にどういうような計画でもって科学技術的な影響調査をするか、こういうことであります。その点は科学技術庁としては、あらためて今自分たちの独自の計画に合うような研究をいたしております。   〔委員長退席、八木(一男)委員長代理着席〕  それで実を申しますると、この六月からウオーター・ボイラーの実験炉が動きますから、それの影響が現われるものなのか、あるいは、ただいまのクリスマス島の水爆実験の影響が大気の中に現われるものなのか、これはたとえば東海村付近においては、非常な疑問が起る条件にもなります。従って新しく実験用の動力炉を稼働さす場合の放射能の影響が、学問的、技術的に混乱を起すということもあり得ると思いますから、そういう意味で自分たちの所管関係のことについては、技術的な特別な検討をいたしたい、こう考えております。それ以外の点につきましては、厚生省の方から申し上げた方が便宜かと存じます。
  126. 岡良一

    岡委員 御説のように、今度東海村にウオーター・ボイラー型の第一号炉が運転を開始するということになれば、多少放射能による影響というものが調査の結果出てこようと思います。しかしこれは専門的には割合に識別がつき得るものではないかと私ども考えておるのでありますが、それはそれといたしまして、今度の科学技術庁の予算に計上されておる三千万円というものは、英国がクリスマス島で水爆実験をやる、これに対する調査ということは予想しておらない。この水爆実験を予想しておらない前提の上に立てられた、いわば調査のための費用であります。ところがわが方の再度の申し入れにもかかわらず、あるいは水爆実験をやるかもしれません。しかも御承知のように日本といたしましては、一月二十五日に国際連合に対して、ノールウェー、カナダと三国共同の決議案を提出いたしておりまするが、この内容は、大国が水爆実験をやるときには、事前にこれを届け出なければならない。その際できるだけ多くの情報をも添えるべきである、かつまたこの実験の影響については、国際連合がその責任において観察を施行するものであるというのが、決議案の主たる内容であります。わが方としては水爆実験禁止のいわば一歩前進という目途を持つて、影響の調査ということを国際的な協力のもとにやるべきであるという強い意思表示をいたしておるという立場からも、いよいよわが方の申し入れにもかかわらず、水爆実験を強行するというようなことになれば、われわれはこの影響調査に対しては格段の考慮をもって大きく努力をすべき必要があろうと思います。この点についての大臣の御所信はいかがでしょうか。
  127. 宇田耕一

    ○宇田国務大臣 国際的な協力のもとに影響調査を行う、そういうことについては外務大臣に、もし水爆実験が行われると仮定された場合のことを考えて、そのときには国際的な協力によるところの影響調査ということをやるべきじゃないか、そういうことは先日外務大臣には申し入れてあります。外務省は外務省の出先に対して、もしそういうことがあった場合には、どういうふうにこれを考えるかということを照会中と思っております。
  128. 岡良一

    岡委員 国際的な影響調査の規模あるいは調査の実施の具体的な内容、かつまた三千万円の影響調査のための経費の使途でございます。これらの点について、もしおわかりの点があればお漏らしを願いたい。
  129. 宇田耕一

    ○宇田国務大臣 国際的なただいまのクリスマス島の水爆実験に伴う影響調査経費は、全然予算はとってありませんから、その点はあらためて別途の要請をしなければならぬ予算措置を必要とすると考えております。それから三千万円の内容説明員から申し上げた方がいいかと思いますから……。
  130. 鈴木嘉一

    ○鈴木説明員 三千万円の大体の内訳を申し上げますと、一つは大気の放射能を調べるということで気象庁関係に依頼するわけでございますが、六管区の地方の観測所も一緒になりまして、大気の放射能を調べていただく。特に高層気流の方に汚染が多い。それが五年ないし十五年の間に落ちてくるのではないかというような学者の説もございますので、飛行機等も一、二回飛ばせまして高層気流を調べたり、あるいはゾンデを上げて調べたり、そういう気象関係経費が入っております。  それから海洋の調査といたしましては、海上保安庁の水路部と水産研究所等が分担いたすのでございますが、そういう海洋関係調査経費。  それから内地の地表の問題でございますけれども、この方は土壌とか作物につきましては、農林省の各地域の試験場で調査していただいて、中央的な分析というようなことになりますと、中央の農業技術研究所へ持ってきて精査する。それから上水道あるいは食品関係につきましては、厚生省方面にお願いして、地方衛生研究所の中で地域的なことあるいは能力的なことを考慮して、五、六カ所に概査をお願いいたしまして、精査の方は予防衛生研究所とか、衛生試験所とか、中央でしていただく。  なお自然放射能の中には宇宙線の関係も入って参りますので、この方はたとえば科学研究所とか、あるいは適当な大学とか、そういうところに委託して、宇宙線の問題ももう少し詰めて研究していただく、こういうような内容になっております。
  131. 岡良一

    岡委員 大臣に重ねてお伺いいたします。そういたしますと、いよいよもって理不尽にも英国が水爆実験を強行するということになれば、この調査については、特別な予算の計上をもってこの調査に当るというお考えであるかどうかという点。さらにまた、国際的な協力と申しましても、結局はアジア太平洋地域の国々が重大な関心を寄せておるわけでありますし、また調査についても十分習熟もいたしておりません。してみれば、日本はビキニあるいはエニウエトク島における再度にわたる実験についての調査で、経験上いわば非常に習熟しておるわけでございますので、これらの国々とも相携えて協力をするという方針で、政府として責任をもってやるべきだと私は思うのでありますが、重ねて予算の問題と、アジア太平洋地域の諸国と相携えて調査することについては厳正を期するという御所信であるかどうか、この点をあらためてお伺いいたします。
  132. 宇田耕一

    ○宇田国務大臣 その点につきましては、予算措置あるいは国連ないしただいま申された関係国との連絡等の問題がございますが、一括して外務大臣と話してみましたら、できるだけのことをやらなければならぬということでありました。しかし何といっても、前提が中止の申し入れをしておるから、内輪で話やするということにして、基本はやっぱりその線に沿って対策は練っておこうじやないか、こういう話はいたしてあります。
  133. 岡良一

    岡委員 影響の調査については厚生省の所管であり、楠本部長が多年この方面に努力しておられるのでありますが、国際科学委員会には特にわが代表も御出席になり、その後ストロンチウム90についても追究をするということで、日本の学者グループを編成され、さらにその分析等の努力をやっておるわけであります。この方面にもさらに新しく予算を盛って厳正な調査をやるということにして、やはり大きく協力態勢を作るべきであると思う。これは影響の調査ということではありましょうが、当然厚生省関係においてやはり国際科学委員会との関連から積極的な協力態勢を持つべきであると思いますが、こういう点についてお考えになっておられるのかどうかという点です。
  134. 楠本正康

    楠本説明員 ただいま大臣からお答えがございましたように、今回の実験につきましては、ぜひこれを中止してもらいたいという考え方でございますので、私どもとしては、万が一どうしてもしゃにむにやるという場合にどうなるかということを一応は考えてみたわけでございます。日本内地あるいは内地沿岸さらに南方漁場等に及ぼしまする影響はいろいろ海潮流の関係、あるいは気象的な関係等から見まして、著しいビキニの実験等に比すれば、その度合いは違うかと存じますが、しかしただいま岡先生のお話のように、何分にもストロンチウムの問題というようなことがきわめて重大な問題でございますので、われわれといたしましては、さような意味からむしろこの実験に対して非常な関心を持っているわけでございます。従ってこれらの点につきましては十分調査をいたしたい。万が一どうしてもやるという場合には、私どもはあまり好ましくございませんが、ただいま申しましたような観点から調査をいたす必要があろうかと存じます。いずれこれは仮定の事実でございますから、そのうちまた何とか考えたいと思っております。
  135. 岡良一

    岡委員 仮定の事実でもありますが、三月の一日から始めるという警告をいたしているわけであります。きょうは二十日で、再度の中止申し入れば数日前にいたしました。しかし先般も三十日に中止の申し入れをしまして、十二日に、二週間日に拒否の回答がきているわけであります。このようなことで重ねてまた押し迫ってからどうしてもやるんだからということであわてるということではいけないと思うのですが、あくまで理不尽にも強行するということを考慮に入れて、やはり責任ある態勢というものは当然進めておくのが政府の責任であるという立場から私はお尋ねしているわけです。厚生大臣が今お見えになりましたが、私は今クリスマス島海域における英国の水爆実験について政府御所信をただしているのであります。私が申し上げたことは、クリスマス島海域における水爆実験は予測しておらなかった事態であります。ところがいよいよ強行をするということに相なりまするならば、日本としては先般、水爆の実験の届け出制とともに、国連による厳正な観察を実施すべきものであるという提案もいたしたような国際的な義理合い上、さらに予算を大きく計上して、その影響の調査について格段の努力をすべきものである、同時にこれは国際的な協力のもとに推進すべきものである。この二点について特に原子力平和利用を旗じるしとしてその研究開発に御努力をいただいております原子力委員会委員長としての宇田国務大臣から、われわれもきわめて満足なお答えを得ておりますが、このことは同時にまた国民の大きな関心を寄せておる問題であり、特に国民の福祉にかかわる問題でもありますので、政府部内においては厚生大臣としてもこの二つの基本的な線、さらに大幅に予算を増額し、関係諸国との協力のもとにこの調査を厳正に実施する御所信があるかどうか、この点を厚生大臣からもお伺いいたしたい。
  136. 神田博

    ○神田国務大臣 ただいま岡委員からイギリスのクリスマス島における水爆実験の問題につきお尋がございました。宇田国務大臣また政府委員から御答弁があったように承わっておりますが、ただいまイギリスが日本政府の中入れにもかかわらず実行をされるというようなことが起きたならば、国民の福祉に非常な影響がある問題と考えられるが、厚生大臣としてはどういう対策を練っておるか、こういうお尋ねのように伺ったのでございます。これは政府を一体といたしまして、岸外務大臣また宇田国務大臣とも十分打ち合せをいたしておりまして、これはまた東南アジア等の関係国への影響もあるわけでございますから、万一の場合に処して、必要といたしますれば予算措置によりまして国民生活の被害を最小限にすると申しましょうか、被害のないような処置をいたしたい。そのためには予算の必要なる場合は、一つ検討をいたしまして、何らかの措置を論じたい。できるだけ中止を希望しておったわけでございますが、どうしても向うが行うという場合の被害を最小限度に食いとめようということについては、政府部内において慎重に検討いたしております。
  137. 岡良一

    岡委員 私がお尋ねしておることは、水爆実験をいよいよやるという事態が起って参りました場合に、その影響の調査をする予算がただいまのところ計上されておりません。そこでこのような予測せざる事態がいよいよ起るという段階になったならば、政府としては当然相当の予算を計上して、その影響の調査を厳正に実施する御所信があるかどうか、このことです。
  138. 神田博

    ○神田国務大臣 ただいまも御答弁申し上げたのでございますが、予算検討しているということは、予備費をもって万全を期そう、こういう意味で申し上げている次第でございます。
  139. 岡良一

    岡委員 私ども日本としては前二回の経験もあることでございますが、厳正なる調査を実施する場合、必要経費として大体どの程度が必要と思われるか、これは楠本部長が特に現場でタッチしておられるのであるが、あなたの方で御構想があったらお漏らし願いたい。
  140. 楠本正康

    楠本説明員 率直に申し上げまして、目下万一の場合に備えまして関係官庁と相談をいたしておりますが、被害の内地あるいは南方海域等に及ぼす影響は、ビキニの実験の場合等に比べれば差があるだろうということは当然うなずけるわけで、問題は爆弾実験地近くの問題でございます。これらにつきましては農林省とも相談をいたしておりますが、日本の漁場としてはまだ比較的新しいのだそうでございます。従ってこれらの点につきまして、特に従来行いましたように船を派遣して現地の調査をやるというよりは、ただいま御指摘のストロンチウム蓄積の問題等がきわめて重大な問題でございますので、この際むしろ実験現地における調査よりは、日本の周囲あるいは南方諸地域を取り巻く地域についてその影響を徹底的に調べることの方が合理的ではなかろうかと考えておる次第でございます。しかしこれらは関係各省もあることでございますので、なお一そうよく相談いたしまして、結論を導きたいと考えております。
  141. 岡良一

    岡委員 それでは鈴木説明員にお尋ねいたします。ストロンチウム90の蓄積ということに大体重点を置いてこの際調査を施行したいという御意見があったわけでございますが、あなたの方でも大体重点をその方面に置いて施行していきたいというお考えでございますか。
  142. 鈴木嘉一

    ○鈴木説明員 先ほど申し上げました三千万円の予算によるものは、これはクリスマス島の実験があるなしにかかわらず原子力の平和利用を進めていきます際の基礎的な調査としてぜひやるという問題でございまして、この際はもちろん一般的な放射能全般の問題、それから特に核種といいますか、ストロンチウムそういうものの核種の決定というところまでずっとやって参りたいと思っております。今度のクリスマス島の実験がなされました際の調査方法は、それではどうすべきかということにつきましては、ただいま楠本部長の方から、特にストロンチウムに力を置きたいというお話で、今までの問題になっております核種としてはやはりストロンチウムが一番人体に対する被害も大きいし、それが一番問題でございますので、これに重点が置かれることは当然であろうと思っております。
  143. 岡良一

    岡委員 そういたしますと、英国が先般拒否の理由として幾つかの項目を並べております。その中に、このたびの水爆の実験は高空において行うものであるから、魚類等の汚染等については大して懸念する必要はなかろろう、こういうことを拒否の理由に置いております。しかし今日、原水爆の実験の恐怖というものは、単に直接海の中に泳いでいる魚に対する汚染というのではなく、むしろ高層の空気中に蓄積されてくる、あるいは成層圏に蓄積されてくるストロンチウム90にあるのであるという認識になりつつあるのではないかと思います。こういう立場から見れば、英国側が拒否の理由としてうたっているところのものは理由とするに足りないのではないかと私どもは思うわけであります。この点についての御見解はいかがでしょうか。
  144. 楠本正康

    楠本説明員 ただいま御指摘のように、私どもが心配いたします点は、現在は許容量をはるかに下回っておりますけれども、方々で実験がたびたび繰り返されることになりますと、将来大気あるいは宇宙を相当汚染させまして、それがやがて人体等にも影響がないまでもストロンチウムとして蓄積作用を持ってくるというようなことが問題でございます。従って今一発や、二発やったからどうということもございませんけれども、やはりこれらのものは計算的にはどのくらいのものをどうやったらどれだけのものが宇宙に広がってこうなるという推測がおのずからつくわけでございますので、さような意味からかような実験はなるべく行わない、こういうことになるかと存じます。ただこの場合、しからばストロンチウムが身体にごくわずかに蓄積したとしても、許容量が幾らかということが明らかになっておりません。従って何発ならば実験が許されるというような計算が出て参りませんけれども、これらの点につきましては、目下国連の科学委員会におきまして、各国の資料を持ち寄りまして、精密な検討を加えることになっておる次第でございます。
  145. 岡良一

    岡委員 一月の十六日に、全米科学アカデミーの放射能照射が遺伝に与える影響を調査する委員会委員長であるウィーヴァーという人が、米上院の軍縮分科委員会で、現在の原水爆実験により、現世代中に、さらに六千人の不具障害児童が生まれることになろう、と言っておるわけです。これは現在の原水爆実験によって、現在蓄積されておるところの放射能の影響による障害ということです。さらに都築博士の御意見といたしまして、科学委員会が先般発表した数字といたしまして、成層圏のストロンチウム放射能は一平方メーター、——平方メーターはどうかと思うのでございますが、一平方メーター当り十二マイクロ・キュリーのストロンチウム90で、このうち一九五六年までには、三マイクロ・キュリーが地球上に今後も降下を続け、しかも実験がさらに行われると、汚染度はますますひどくなる、こう言っておるわけであります。ということは、将来実験が続けられればられるほど、このような悪影響がますます増加するであろう。そこで昨年アメリカは、エニゥエトック環礁方面で六回やっておる。また八月二十日から一月十九日までに、無警告の水爆実験がソビエト側ですでに五回あったということがアメリカかから伝えられておる。またここで英国がやろうということであるから、汚染度がますます高まつてくるに違いないと言わなければなりません。そこで日本において現在どの程度に汚染度が高まっておるかという資料でありまするが、この汚染度がどの程度に高まっておるかという資料は、ちょっと持ち合せておりませんが、これは気象庁から科学技術庁なりあるいは厚生省なりへ御報告があると思うのだが、御存じありませんか。
  146. 楠本正康

    楠本説明員 すでにたびたび発表もされておりますように、私ども厚生省関係の機関におきましても、あるいはその他の機関におきましても、常時空中の汚染度というようなものは調べております。また雨等についても調べております。従ってそれらの汚染度につきましては、すでに御承知のごとく時期的に大きな差はございますけれども、また気象的にも非常に影響を受けますけれども、従来までは、厚生省が定めております許容量を上回ったという例はいまだございません。しかもこれらはきわめて一時的な現象でありますために、それが人体等に影響があろうとは毛頭考えられませんが、ただたびたびかような実験が今後末長く実施をされますれば、やがてそれがある一定の量となり、その結果が人体に影響を来たすという心配は当然考えられるわけでございます。また一方さような宇宙がよごされました結果は、知らず知らずの間に動物体内あるいは植物体内等にもかようなストロンチウムというものが、きわめてわずかであっても増加をしていく、これまた何年か先に積り積ってある一定の限界に達するというようなことも当然考えられます。従ってさような意味から申し上げておるわけであります。ただ現在の状況において、われわれは人体あるいはその他に影響があるというようなことは毛頭考えておらないわけであります。
  147. 中山マサ

    ○中山(マ)委員 ちょっと関連して一点だけ。人体にそう大して影響はなかろうというお話しでございますが、いわゆる胎児に最悪の場合どういう影響を与えるでしょうか。ただ虚弱児というものが生まれるか、また奇型児が生れるか、どういうふうに御当局はこの問題についてお考えでございますか。ことし厚生大臣の御努力によりまして、やっとの思いでろうあの施設が国立でできた、あるいは精神薄弱児の予算通りましたのに、十五年間成層圏にそういうものがたまって雨が降ると逐次これが降りてくるといたしますと、私が聞きましたところによりましては、やはり空気の重圧によってさえも人間の生命というものは支配される。それで戦争中のことでございましたが、ルーズベルト大統領がなくなりまして、それは非常に気圧が重くたれ下って、そのためにルーズベルトは早く死んだということをあるアメリカの雑誌で私は読んだのでございます。そういうふうなものすら大病人に影響するということが、もうすでにこういうことがなかった時分に考えられておったのでございますが、こういうものが逐次ずっとたれ下って参りますれば、私は非常な心配を覚えるのであります。私も今、岡先生がお読みになったのを新聞で読んで、これは大へんなことになった、今後の若い人たちはこれをどうして防いで、健全な子供を生むようなことを考えたらいいのかということを心配したのでございますが、最も軽い程度でどれだけ胎児に影響があるか。最も悪い立場でどれぐらい胎児に影響があるか、まさか一つ目小僧も生まれないだろうと思いますけれども、どの程度までの影響を見込んでいらっしゃるか、参考のために聞かしていただきたい。
  148. 楠本正康

    楠本説明員 ただいま御指摘の点は遺伝上どういう影響を及ぼすかという御質問だと存じますが、遺伝上の影響につきましては、学者によってはいろいろな説を唱えております。しかし現実の問題といたしまして、いまだ遺伝的の障害を与え得たという実例は一切ございませんし、また実験的にもほとんど——実験的に遺伝的に影響を与えましたものは、ショウジョウバエで実験をいたしました成績があるだけでありまして、従って今どういうものがあるかといわれても、何ら今までそういうことがないのであります。なお私どもは現在許容量を一応きめておりますが、これは国際的にきめられました許容量の日本は十分の一をさらに安全率として見て取っております。国際的の十分の一でございますので、かような一つのものさしをあてはめて見ましても、人体その他に影響のある段階には至っておりませんししかしこう申しますとやっても差しつかえないかという誤解を生むかと存じますが、それは別な問題でございます。将来積り積って危険があっては困るということは考えられますが、積り積ってもかなりの将来、しかも長く原爆実験を続けたときに起る事象だと私どもは判断をいたしております。
  149. 岡良一

    岡委員 現在のストロンチウム90の大気中における濃度で人体に大した影響を与えないということは、それをもって水素爆弾の実験が行われてもいいという論拠にはちっともならないことは申すまでもない。そこで今おっしやいましたが、現在はなるほど遺伝的な影響を、これは探索しようにもしようがありません。ショウジョウバエのような原始的なものは別といたしましも、人間は幾世代にわたっての遺伝的影響というものはわかりっこないわけです。しかしわかったときにはすでに手おくれだという状態なんです。そういう意味から、やはり科学的な立場においては、そういう影響を防いでいこうという立場に立って私どもはものを申し上げておるわけです。これは気象庁の気象研究所の方の御発表になった御意見でありますが、大体現在のような形で、現在までの実験で大気中に蓄積をされておるところの放射能というものは、これが現在のテンポでいけば一九七〇年には人間の最大許容限度を越えるであろうと言っておられます。ところが同じく気象庁の方の御発表では、日本上空における大気の汚染は、三十年の夏でありますから一昨年の夏に比べて、現在というのはことしの二月でありますが、ことしの二月は約十倍にふえてきておると言っておるのです。こういう状態でどんどん濃度が強まっておる、蓄積が増加しておる、しかも英国がやればまた一方がやるというふうに、水爆実験の競合が行われようとしておるということになれば、やはり将来はきわめて懸念にたえない状態になるのではないか。そうすれば、われわれの世代で、われわれの英知が見出した原子力というものは、やはり人間の福祉のために役立たしめるということが後代の世代に対するわれわれの大きな義務だと思うのです。だから今影響があるかないかということから水爆実験というものを軽々しく見のがすわけにはいかないと思う。そういう意味でこの問題を取り上げておるわけなんです。そこで特に先ほど来楠本部長からのお話によれば、今度のクリスマス島はなるほどビキニに比べて三千マイル遠方にあります。また三月一日から八月一日ごろまでにおける気象配置も、割合に日本に直接の影響を振り向けてこないというような観測も行われておるようであります。ただしかし専門の気象庁の方の御意見などを見ますと、こういうことを言っておるのですが、こういう点について御存じでしょうか。日本の気象配置から成層圏にもしストロンチウム90を中心とする放射能が吹き上げられた場合に、上層では四十メートルくらいの西風が絶えず吹いておる。その西風が何週間かの間に地球を一回りして日本に一番雨となって降るのだ。雨となって降るときに、これらの蓄積された放射能を持って降る。空気を洗う作用を持った雨が放射能を持って日本に降りかかる。そういう意味においてきわめて気象条件が悪いのだと専門家が言っておる。でありますから、なおさらわれわれとしては大きな関心を払わなければいけないと思う。そういう点で、いろいろ楠本さんのお話を聞いておりましても、政府としてのこの問題に対する認識がどうも低調でもあり、そういうところから政府対策についても非常に納得がいきがたいんじゃないかと思う。それはそれといたしまして、この問題をさらにいろいろ聞きたいのでありますが、今日は岸さんもお見えにならないし、気象庁の関係の方も見えないので、あらためて当委員会といたしましても、公衆衛生国民福祉の立場から検討したいと思いますが、この機会にちょっと一言お伺いしておきたいのですが、ビキニであの屈強な第五福竜丸の漁師が、水爆実験の放射能の死の灰をかぶりまして、当時精子の数が四、五百であったと言われるが、今はどの程度に回復しておりますか。
  150. 楠本正康

    楠本説明員 福竜丸の被災者につきましては、ただいま御指摘通り、直後におきましては数百というような精子の数を示しておりました。その後逐次回復をいたしまして、昨年の末の検査でございますが、少いものでも七千、八千程度、大体一万以上に達しておりまして、きわめてその回復の状態は好調でございます。従って今後もこの状況で回復していけば、やがて正常に達するのではなかろうかと考えております。これは今後の研究に待つことといたしたいと存じます。   〔八木(一男)委員長代理退席、委員長着席〕
  151. 岡良一

    岡委員 今は一万程度の精子が、回復をいたしましても、私は多少専門的な諸君の意見を聞いてみると、やはり完全な生殖能力というのにはいま少しく不足しておるという意見を聞いておるわけです。そういうことでありますから、奇形児ができるとか、不具者ができるとか、遺伝的な悪影響よりも、もっと直接的に放射能の蓄積というものが次の世代の生殖に対して大きな影響力を持っておるということが出ておるわけです。こういう観点からも、やはりこの問題は、日本国民の問題だけじゃなく、全人類の問題としてもっと政府が積極的に取っ組んでいただかなければならぬと思う。これについてはいろいろ私どもとしても構想もありますが、いずれこれは別の機会にまたいろいろ政府の御所見もお伺をして、その上で十分話し合いをつけて結論を出したいと思います。とにもかくにも、この際国民の福祉に重大な責任を持つておられる厚生大臣並びに平和利用の旗じるしのもとに推進をせられようという宇田国務大臣の御出席を多とすると同時に、何と申しましてもお二人が政府の内部の中心になっていただいて、今度の水爆実験が万一理不尽にも行われるということになれば、調査に関する厳正周到な用意、組織的な御準備、同時にまた各国との協力態勢の整備、必要なる予算措置、これらについて格段の御努力をこの際お願いをいたしまして、私の質問を終ります。
  152. 八田貞義

    ○八田委員 関連して質問いたしたいと思います。宇田長官に伺いたいのですが、原水爆の実験反対につきましては、これは毎国会問題になっておるのですが、しかしそういった原水爆実験反対を高唱しながら、結局やられてきて参っておるのですが、一体今後宇田長官として、原水爆実験というものを全面的にやめてくれというような交渉で進められるか、あるいはそういう交渉が失敗した場合に、この条件ならば、まあわれわれの方のいろいろな防備態勢からのめるというようなお考えでおやりになるか、今日の軍事実験の発展歴史というものを考えてみれば、ただ単にやめろ、こういうことは日本の科学性というものを全部否定してかかって、ただ感情的にだけ走っているということになっているわけなんです。ですから宇田大臣として、この条件ならば自分らの国として防備態勢は十分に整っておるから、この程度のような実験でやられるならばのまなければならぬというような態勢をお作りになっておるかどうか。これはクリスマス島の実験におきましても、結局やはり連中はやると思うのです。やると思う場合に、ただ単にやめてくれというのではうまくありません。連中がどういうような実験の条件を備えてやるか、そういった問題についても深く交渉されておるかどうか、それをお伺いいたしたいのであります。
  153. 宇田耕一

    ○宇田国務大臣 私ども原子力委員会は、基本は平和利用の問題についての研究に限られておるのであって、わが国の防衛対策前どうする、あるいはそれに対する外交交渉をどういうふうに運ぶかということは、実は私の権限外のことですから申し上げかねる点でございます。ただ科学技術庁としては、新しい動力炉を求めなければならぬ。実験炉は六月から稼働を始めます。それがどういうふうに放射能の影響を与える原因になるかということについては、われわれとしては非常な責任がある問題となっております。それで平和利用が非常な被害の原因となるというおそれがあってはいけませんから、それがためには現在の水爆の実験によってどれくらい汚染されるものであるかということを、科学的に基本を解明しておきたい。それがために必要な措置をただいまとっておる、それが十分であるかどうかという点については、これはただいま岡さんから質問があったような点は、われわれも非常な反省をしながら、なお超党派的に話を進めておくべきものである、こういうふうに考えております。ただ実験を中止してもらいたいということは、米英のみならずソビエトに対してもわれわれがしょっちゅう言うておるわけでありますが、それが突如として行われる場合が多い。それとそれがどれくらいの爆発力があるのか、影響力があるのかということは全然われわれには秘密でわからない。それでこれを防ぐ対策が実はない。やむを得ず消極的に自分たちの技術的な総動員態勢でもって関係国と一緒に防ぐのみではないか、これは岡委員のおっしゃることが正しいと思って、それがためには臨時総理大臣代理を初め全部が一致してそういう線に沿ってやるだけやってみよう、こういうことでございます。
  154. 八田貞義

    ○八田委員 私はやはりこの水爆実験の実相というものを十分にある程度までつかんで、そうして間接障害に対する防備態勢というものをやっておく必要があると思うのです。というのは実験物理学の発展歴史というものを考えてみますと、半世紀前は小さな実験室で小さなテーブルで実験物理学というものはやられてきたんです。ところがサイクロトロンとかべパトロンというような実験にはイオンの加速室を作ってやらなければならない。そうすると二百メートルくらいのイオンの加速室を設けなければならぬ。すなわち野外実験というものが要求されてきた。ところが今日の時代になって原水爆が現われてきますと、地球的な規模において実験物理学というものをやらなければならぬような状態にまで発展してきたのです。決して実験物理学というものは、人類を破滅に導くというようなものではございません。人類の幸福のために、発展のために、実験物理学というものはずっと進んできたのです。そこでわれわれは、今後原水爆の実験をする場合に、やはり汚染区域範囲内というものを十分に頭に入れておかなければならぬと思うのです。そうしますと、ビキニ環礁で行われたあの爆発の場合に、汚染区域が大体どれくらいな濃度に起ったかということです。今後の水爆実験はビキニ環礁で行われたような、あんな原始的な——原始的といっては変ですけれども、まだまだ発達しないような、あのような状態では私は行われぬと思う。大体ビキニ環礁で行われたときの汚染区域を御参考までに申してみますと、爆心から二百から三百マイルの範囲では非常に強く汚染されておるのであります。ところが人体に障害を及ぼす程度の汚染区域と申しますと、大体七千平方マイルがビキニ環礁の場合の汚染区域となっておるのです。今後は私はそんなに広くはいかないものと思う。むしろこれは濃厚汚染の場合を予定しておったのですが、今度はずっと高いところで爆発するようになってくるわけです。ですから、こういつたビキニ環礁の汚染区域そのものが当てはまるとは私は考えておりません。ただ、しかしこの問題は先ほど岡委員が質問いたしておりましたように、日本は死の灰の谷間になっておる。これは気象関係から考えても、死の灰の谷間になっておるということが十分に言われるわけであります。ですから、今申し上げましたように、実験物理学の発展過程と、それから原水爆の実験とよく結びつけて交渉をしていかなければいかぬと私は思う。またその研究から初めてわれわれの防備態勢というものについても十分にやっていけると考えておるのであります。今日ストロンチウム90だけが問題にされましたけれども、セシウム一三七と結びつけて参りますと、われわれはここ十年、二十年の間において相当の危害があるという覚悟をしておらなければならぬ問題でございますので、これは重大な問題でございます。どうかその方面の研究を科学技術庁を中心として盛んにお願いいたしたいと思うのです。特に間接障害として遺伝の問題が取り上げられましたが、遺伝の問題というものは、まだ決してはっきりわかっていないのです。ただ放射能の障害が加えられると、突然変異の頻度が変ってくる。しかも突然変異というものは、あらゆる生物に一定の限度において頻度というものがあるのです。ただ放射線が加えられると頻度が高まってくるということがいわれておるわけであります。今のところでは一つ目の子供が生まれるというようなことは全然考えられない。そういったような問題で、あるいは国内にいろいろな議論が流れております、非常に恐怖心をあふるようなセンセーショナルの言辞を弄する学者もおります。しかし私はこれらの問題につきましても、政府方面において十分に啓蒙されていくべきだと思うです。しかもストロンチウム90はカルシウムと結びつき、半減期も長い。しからば人体の中のカルシウム分は幾らだというような簡単なことにつきましても、これが世上にちっとも知らされていない。そこで不安が大きく拡大されて、ただ単に原爆実験をやめろというようなことになってくるのです。私はやめるならやめるという意見を出すとともに、われわれがもしやられた場合に、どのような程度の防備態勢をもってわが日本国民を守るかというような研究こそ早く大成し、また研究も大体できておるのですから、態勢も一日も早くお作り下さらんことをお願いいたしまして、関連でございますから、これで終ります。
  155. 岡良一

    岡委員 ただいま宇田原子力委員会委員長の御発言として、とりあえず宇田委員長の御所管は原子力の平和利用にある。そこで今後日本において運転される原子炉の放射能の予防法が大きな仕事であるという御発言があったわけですが、しかしこれは私どもも繰り返し申し上げるように、水爆を禁止せよということと、日本における原子力の平和利用の発展というものは不可分の問題です。御存じの通り各国、ことに大国における原子力の研究開発は日進月歩の段階にある。ところがそれを軍事的に利用するために、肝心のところが全部秘密のベールに隠されておる。昨年も三万何千件のアメリカにおける原子力関係の情報というものが、わずか一万五千件だけが一般に公開されておるというふうな形で、原子力の平和利用をわが国で推進しようとすればするほど、これの軍事利用の禁止、従ってその前提となる実験の禁止ということは重大な関心事です。この点は宇田長官のみならず、今後の新しい第二次、第三次の産業革命の動力である原子力については、神田厚生大臣も、皆さんこぞってぜひこの問題と真剣に取り組んでもらいたいと思うのです。その点政府の態度は、どうもこの問題に対して低調過ぎると私は思うのです。たとえば一月の下旬に登録制というようなことをいって、大国の水爆実験を一応政府の方では認めて、しかしそれには情報を添えて届け出をして、国際連合は観察しよう。こんなことでは、あの大きな署名運動をもって原水爆の実験をやめろという国民の世論に、こたえてないと思う。認めているのですから……。やるならやってもいい。百歩を譲って、やるなら手前の国でやれ、公海でやるな、せめてこれだけくらい言うならまだしもきき目がありましょうが、まことに消極的というか、迎合的だと思うのです。私はこの際特に国務大臣としての御両所にお願いしたいのですが、なぜ英政府日本政府関係において水爆の中止を申し入れるか。私はその段階は過ぎたと思う。国際連合で堂々と、英国の水爆実験中止の決議案を日本政府提出すべきなんです。これを採決すれば、私は勝てると思うのです。現に軍縮小委員会には、もう原水爆禁止のソビエトの決議案なり、核兵器生産禁止のアメリカの決議案が出ている段階です。また日本など三国の共同提案が出ている段階で、その結論を六月中に出そうと国連がいっているときに、しゃにむに水爆の実験をやろうというのは理不尽きわまる。こういうことは再度英国政府に申し入れをしたところで、断わられるにきまっている。せっかく国連というヒノキ舞台へ加入した日本が堂々と——日本こそはこの地球上における唯一無二の被害国であり、当然の権利と崇高な義務を持っておる。こういう自覚でいくべきじゃないかというようなことも私は痛感しているのです。一つ両大臣は閣内で、ぜひわれわれの気持を十分くんで、この問題はまだまだ将来残されている緊急の問題でありますが、御健闘をお願いして私の質問を終ります。
  156. 八田貞義

    ○八田委員 もう一つ、こういう態勢を作るべきだということを申し上げたので、どのような態勢を作るのがいいのかということについて、御参考までに申し上げてみたいと思います。もしあらゆる国々が、違反に対する自動的な安全装置と、違反を即刻探知できる機構を持った上で核兵器実験を廃棄するというならば、これは平和の大義に沿う問題でございます。違反の起った時と場所を即刻探知するには、アイゼンハワーの提案した大空公開案を代表する査察計画というものを実施すべきだと私は思うのです。水爆実験をすべて禁止するような国際協定ができる方が、ある国の一方的な実験の禁止を要望するよりも、私は大切なことであると考えるのです。宇田長官は、国際外交に関しては岸外務大臣がやることで、自分の関知したことではないというような御答弁がありましたが、国際連合にわが日本の代表が入っておるのでございますから、どうか、このアイゼンハワーの大空公開案というものをぜひとも実施するように、世界の世論をリードし、一日も早くこういつた査察計画ができるように、今後とも御努力下さらんことをお願いして、私の質問を終ります。
  157. 藤本捨助

    藤本委員長 次会は明二十一日午前十時より開会することとして、本日はこれにて散会いたします。    午後五時十四分散会。