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1957-02-08 第26回国会 衆議院 社会労働委員会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十二年二月八日(金曜日)    午前十時四十八分開議  出席委員    委員長 藤本 捨助君    理事 大坪 保雄君 理事 野澤 清人君    理事 滝井 義高君       植村 武一君    越智  茂君       大橋 武夫君    加藤鐐五郎君       亀山 孝一君    草野一郎平君       田子 一民君    田中 正巳君       高瀬  傳君    中村三之丞君       中山 マサ君    八田 貞義君       古川 丈吉君    山下 春江君       亘  四郎君    岡本 隆一君       五島 虎雄君    堂森 芳夫君       西村 彰一君    八木 一男君       山花 秀雄君    吉川 兼光君       中原 健次君  出席国務大臣         厚 生 大 臣 神田  博君         労 働 大 臣 松浦周太郎君  出席政府委員         厚生政務次官  中垣 國男君         厚生事務官         (大臣官房会計         課長)     堀岡 吉次君         労働政務次官  伊能 芳雄君         労働事務官         (大臣官房会計         課長)     松永 正男君         労働事務官         (労政局長)  中西  實君  委員外の出席者         専  門  員 川井 章知君     ――――――――――――― 一月三十一日  委員池田勇人君、佐々木秀世君、高橋等君及び  長谷川保君辞任につき、その補欠として山下春  江君、菅野和太郎君、倉石忠雄君及び石山權作  君が議長の指名で委員に選任された。 二月二日  委員阿部五郎君、井堀繁雄君、石山權作君及び  三宅正一君辞任につき、五島虎雄君、西村彰一  君、山崎始男君及び山花秀雄君が議長の指名で  委員に選任された。 同月四日  委員菅野和太郎君辞任につき、その補欠として  高瀬博君が議長の指名で委員に選任された。 同月七日  委員中島茂喜君辞任につき、その補欠として竹  山祐太郎君が議長の指名で委員に選任された。 一月三十一日  委員長佐々木秀世君辞任につき、その補欠とし  て藤本捨助君が議院において、委員長に選任さ  れた。     ――――――――――――― 昭和三十一年十二月二十日  日雇労働者健康保険法の一部を改正する法律案  (八木一男君外十二名提出、第二十四回国会衆  法第四号)  美容師法案長谷川保君外一名提出、第二十四  回国会衆法第五三号)  労働者福祉施設資金の運用に関する法律案(岡  良一君外十三名提出、第二十四回国会衆法第五  八号)  環境衛生関係営業の運営の適正化に関する法律  案(藤本捨助君外二十五名提出、第二十四回国  会衆法第六〇号)  衛生検査技師法案福田昌子君外一名提出、第  二十四回国会衆法第六六号)  母子年金法案長谷川保君外十六名提出、第二  十四回国会衆法第七〇号)  健康保険法等の一部を改正する法律案(滝井義  高君外十一名提出、第二十五回国会衆法第一  号)  健康保険法等の一部を改正する法律案(内閣提  出、第二十五回国会閣法第四号)  船員保険法の一部を改正する法律案内閣提出、  第二十五回国会閣法第五号)  厚生年金保険法の一部を改正する法律案(内閣  提出、第二十五回国会閣法第六号) 昭和三十二年二月一日  売春防止法制定に伴う業者転廃業に関する請願  (池田清志君紹介)(第一一号)  環境衛生関係営業の運営の適正化に関する法律  制定の請願外一件(池田清志君紹介)(第一八  号)  同(赤城宗徳君紹介)(第一九号)  保健所運営費国庫補助率引上げに関する請願(  池田清志君紹介)(第二〇号)  助産婦教育過程低下防止に関する請願(池田  清志君紹介)(第二一号)  同(山下榮二君紹介)(第九六号)  原爆被災者援護に関する法律制定請願外一件  (濱野清吾君紹介)(第二二号)  薬事法改正に関する請願(堀川恭平君紹介)(  第二三号)  同(鈴本直人君紹介)(第二四号)  同(原健三郎君紹介)(第二五号)  同(薩摩雄次君紹介)(第二六号)  同(前田正男君紹介)(第二七号)  同(植村武一君紹介)(第二八号)  同(小西寅松君紹介)(第二九号)  同(八木一男君紹介)(第三〇号)  同(中島茂喜君紹介)(第三一号)  同(野田卯一君紹介)(第三二号)  同(山崎巖君紹介)(第三三号)  同(伊藤郷一君紹介)(第三四号)  同(中垣國男君紹介)(第三五号)  同(大平正芳君紹介)(第三六号)  同(小笠原八十美君外一名紹介)(第三七号)  同(小平久雄君紹介)(第三八号)  同(瀬戸山三男君紹介)(第三九号)  同(山中貞則君紹介)(第四〇号)  同(田中角榮君紹介)(第四一号)  同(橋本龍伍君紹介)(第四二号)  同外五件(仲川房次郎君紹介)(第四三号)  衛生検査技師身分法制定に関する請願(八田  貞義君紹介)(第九三号)  同(簡牛凡夫君紹介)(第九四号)  国立病院等准看護婦進学コース設置に関す  る請願(今松治郎君紹介)(第九五号)  生活保護法最低生活基準額引上げの請願(岡  崎英城君紹介)(第九七号)  健康保険法の一部改正反対に関する請願(三宅  正一君紹介)(第九八号)  健康保険赤字全額国庫負担に関する請願(岡  崎英城君紹介)(第九九号)  国立病院等における看護婦の産休のための定員  確保に関する請願(今松治郎君紹介)(第一〇  〇号) 同月四日  生活保護法による医療扶助に関する請願(岡崎  英城君紹介)(第一〇一号)  原水爆被災者援護に関する法律制定の請願(帆  足計君紹介)(第一〇二号)  電気事業及び石炭鉱業における争議行為の方法  の規制に関する法律反対の請願(松本七郎君紹  介)(第一〇三号)  環境衛生関係営業の運営の適正化に関する法律  制定の請願(簡牛凡夫君紹介)(第一〇四号)  同(上林山榮吉君紹介)(第一〇五号)  同(河野密君紹介)(第一〇六号)  同(簡牛凡夫君紹介)(第一九一号)  同外二件(神近市子君紹介)(第一九二号)  同(床次徳二君紹介)(第一九三号)  戦傷病者援護単独法制定に関する請願(白浜  仁吉君紹介)(第一七六号)  戦傷病者戦没者遺族等援護法の一部改正に関す  る請願(白浜仁吉君紹介)(第一七七号)  同(橋本龍伍君紹介)(第一七八号)  戦傷病再発医療費全額国庫負担に関する請願(  千葉三郎君紹介)(第一七九号)  同(白浜仁吉君紹介)(第一八〇号)  同(田中伊三次君紹介)(第一八一号)  同(橋本龍伍君紹介)(第一八二号)  同(濱野清吾君紹介)(第一八三号)  同(菅太郎君紹介)(第一八四号)  保育所予算確保等に関する請願(八木一郎君紹  介)(第一八五号)  助産婦教育過程低下防止に関する請願(床次  徳二君紹介)(第一八六号)  失業対策事業就労者寒冷地補給金制度に関す  る請願(田中彰治君紹介)(第一八七号)  失業対策事業就労者賃金引上げに関する請願  (田中彰治君紹介)(第一八八号)  日雇労働者賃金引上げ及び就労増加等に関す  る請願(田中伊三次君紹介)(第一八九号)  簡易水道施設費国庫補助増額等に関する請願(  神近市子君紹介)(第一九〇号) 同月五日  健康保険法の一部改正等に関する請願(上林山  榮吉君紹介)(第二四二号)  清掃法施行令第六条の改正に関する請願(徳田  與吉郎君紹介)(第二四三号)  下水道事業国庫補助に関する請願(徳田與吉  郎君紹介)(第二四四号)  日雇労働者寒冷地補給金制定に関する請願(  鈴木善幸君紹介)(第二四五号)  日雇労働者待遇改善に関する請願(鈴木善幸  君紹介)(第二四六号)  国民健康保険療養給付費三割国庫負担に関す  る請願(志賀健次郎君紹介)(第二四七号)  保育所予算確保等に関する請願(江崎真澄君紹  介)(第二四八号)  同(石山權作君紹介)(第二五二号)  同(加賀田進君紹介)(第二五三号)  同(加藤清二君紹介)(第二五四号)  同(川村継義君紹介)(第二五五号)  同(五島虎雄君紹介)(第二五六号)  同(坂本泰良君紹介)(第二五七号)  同(佐藤觀次郎君紹介)(第二五八号)  同(辻原弘市君紹介)(第二五九号)  同(三鍋義三君紹介)(第二六〇号)  同(横山利秋君紹介)(第二六一号)  民間保育所予算措置に関する請願(加藤鐐五  郎君紹介)(第二四九号)  同(森本靖君紹介)(第二五〇号)  老人福祉法制定に関する請願(田子一民君紹  介)(第二五一号)  環境衛生関係営業の運営の適正化に関する法律  制定の請願(今井耕君紹介)(第二六二号)  同(大高康君紹介)(第二六三号)  国立病院等准看護婦進学コース設置に関す  る請願(八田貞義君紹介)(第二六四号)  戦傷病者援護単独法制定に関する請願(加藤  鐐五郎君紹介)(第二六五号)  同(亀山孝一君紹介)(第二六六号)  同(田村元君紹介)(第二六七号)  同(保科善四郎君紹介)(第二六八号)  同(粟山博君紹介)(第二六九号)  戦傷病者戦没者遺族等援護法の一部改正に関す  る請願(木村俊夫君紹介)(第二七〇号)  同(田村元君紹介)(第二七一号)  同(保科善四郎君紹介)(第二七二号)  同(粟山博君紹介)(第二七三号)  戦傷病再発医療費全額国庫負担に関する請願(  江崎真澄君紹介)(第二七四号)  同(亀山孝一君紹介)(第二七五号)  同(木村俊夫君紹介)(第二七六号)  同(田村元君紹介)(第二七七号)  同(楢橋渡君紹介)(第二七八号)  同(久野忠治君紹介)(第二七九号)  同(保科善四郎君紹介)(第二八〇号)  同(保利茂君紹介)(第二八一号)  同(眞崎勝次君紹介)(第二八二号)  同(粟山博君紹介)(第二八三号) 同月七日  生命研究所設置に関する請願(眞崎勝次君紹  介)(第三五六号)  特殊漁船乗組員戦没者遺族援護に関する請願  (片島港君紹介)(第三五七号)  保健所における医師等の基準定員増員に関する  請願(亀山孝一君紹介)(第三五八号)  日南保健所管内保健衛生事業推進に関する請  願(伊東岩男君紹介)(第三五九号)  日南保健所B級昇格の請願(伊東岩男君紹介)  (第三六〇号)  水道金融公庫設置及び水道施設費国庫補助増額  に関する請願外十六件(山口丈太郎君紹介)(  第三六一号)  石鎚国定公園施設整備に関する請願(森本靖  君紹介)(第三六二号)  生活保護世帯に対する特別措置の請願(田中伊  三次君紹介)(第三六三号)  健康保険法の一部改正反対等に関する請願(平  野三郎君紹介)(第三六四号)  生活保護法等の一部改正に関する請願(石野久  男君紹介)(第三六五号)  保育所予算確保等に関する請願(小原三九郎君  紹介)(第三六六号)  日雇労働者賃金引上げ及び就労増加等に関す  る請願(柳田秀一君紹介)(第三六七号)  健康保険法の一部改正等に関する請願(島村一  郎君紹介)(第三六八号)  環境衛生関係営業の運営の適正化に関する法律  制定の請願(石坂繁君紹介)(第三六九号)  同(小川半次君紹介)(第三七〇号)  同(大倉三郎君紹介)(第三七一号)  同外一件(亀山孝一君紹介)(第三七二号)  同(河野密君紹介)(第三七三号)  同(菅野和太郎君紹介)(第三七四号)  同(正力松太郎君紹介)(第三七五号)  同(中馬辰猪君紹介)(第三七六号)  同(渡海元三郎君紹介)(第三七七号)  同外一件(内藤友明君紹介)(第三七八号)  同(中垣國男君紹介)(第三七九号)  同(橋本龍伍君紹介)(第三八〇号)  同(長谷川四郎君紹介)(第三八一号)  同(原捨思君紹介)(第三八二号)  同(久野忠治君紹介)(第三八三号)  同(古井喜實君紹介)(第三八四号)  同(古川丈吉君紹介)(第三八五号)  同(松田竹千代君紹介)(第三八六号)  同(森本靖君紹介)(第三八七号)  同(山口丈太郎君紹介)(第三八八号)  戦傷病者援護単独法制定に関する請願(木村  俊夫君紹介)(第三八九号)  同(田子一民君紹介)(第三九〇号)  同(福井順一君紹介)(第三九一号)  戦傷病者戦没者遺族等援護法の一部改正に関す  る請願(五島虎雄君紹介)(第三九二号)  同(田子一民君紹介)(第三九三号)  同(福井順一君紹介)(第三九四号)  戦傷病再発医療費全額国庫負担に関する請願(  石田宥全君紹介)(第三九五号)  同(加賀田進君紹介)(第三九六号)  同(川村継義君紹介)(第三九七号)  同(木崎茂男君紹介)(第三九八号)  同(五島虎雄君紹介)(第三九九号)  同(河野金昇君紹介)(第四〇〇号) の審査を本委員会に付託された。 同月二日  外地抑留帰還者国家補償に関する陳情書  (第一六号)  地方衛生研究所設置に関する法律制定陳情書  (第三九号)  社会保障制度確立に関する陳情書  (第四〇号)  結核予防法に基く医療費全額国庫負担に関す  る陳情書(第四一  号)  精神衛生費国庫補助率引上げに関する陳情書  (第四二号)  技能者共同養成費全額国庫負担に関する陳情書  (第四三号)  保健所新設に関する陳情書  (第四四号)  私立保育所並びに私立母子寮措置費基準額引  上げに関する陳情書  (第四五号)  失対労務者に対する冬季加給金国費負担に関  する陳情書(第四  六号)  環境衛生関係営業の運営の適正化に関する法律  制定の陳情書  (第四七号)  国立療養所久留米病院総合病院昇格に関する  陳情書(第四九  号)  水道事業に対する金融機関設置に関する陳情書  (第五一号)  水道金融公庫設置に関する陳情書  (第五二号)  環境衛生関係営業の運営の適正化に関する法律  制定の陳情書  (第  九六号) を本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  国政調査承認要求に関する件  厚生行政に関する件  労働行政に関する件     ―――――――――――――
  2. 藤本捨助

    藤本委員長 これより会議を開きまきます。  この際、一言つつしんでごあいさつ申し上げます今回はからず重要法案の山積いたしておりまする本委員会委員長指名されまして、今後重責をになうことになりましたが、生来まことに乏しいものでございますので、特に皆様の絶大なる御支援と御鞭撻を賜わりまして、大過なくこの重責の完遂に邁進いたしたいと存じております。何とぞ今後よろしくお願い申し上げます。(拍手)     —————————————
  3. 藤本捨助

    藤本委員長 なおこの際、すでに御承知とは存じますが、一応ご報告申し上げまして 特に皆様の御協力をお願いいたしたいことがございます。去る五日の常任委員長会議におきまして、次のような申し合せを行なったのでございます。     申合せ   国会審議委員会が中心であるので、その正常化については、まず、委員会審議の能率を高めるために、各委員長は、左記事項は特に励行すること。  一、ニュース、カメラの撮影は、原則として開会の前後にこれを許可すること。  二、傍聴人の整理を図って、その議事が妨害されることのないようにすること。  三、理事会は、これを非公開とすること。  以上でございます。よろしく御協力をお願いいたします。     —————————————
  4. 藤本捨助

    藤本委員長 次に、国政調査承認要求に関しましてお諮り申し上げます。今国会における委員会の活動町を円滑ならしめるため、国政調査承認華求をいたしたいと存じます。調査する事項といたしましては、一、社会保障制度医療公衆衛生婦人児童福祉及び人口問題に関する事項。一、労使関係労働基準及び失業対策に関する事項。以上の二項目といたし、これらの実情を調査し、対策を樹立することを目的といたしまして小委員会設置関係各方面よりの説明聴取及びこれらの要求等方法により国政調査承認要求をいたすことといたし、文書の作成等に関しましては委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 藤本捨助

    藤本委員長 御異議なしと認め、さように決します。     —————————————
  6. 藤本捨助

    藤本委員長 この際、厚生大臣が出席されましたので、昭和三十二年度の予算をめくる厚生行政一般について説明を聴取いたすことにいたします。神田厚生大臣
  7. 神田博

    神田国務大臣 私、石橋内閣成立に当りましてはからずも厚生大臣の重職を担当することに相なりました。まことに浅学非才、経験に乏しい者でございまして、大過なきを期すことを願っておる次第でございますが、皆様方の御鞭撻によりまして十分職責を果したい、かように考えております。今後よろしくお願いいたします。本日は、昭和三十二年度厚生省所管会計及び特別会計予算案についての御説明を申し上げたいと存じます。  昭和三十二年度厚生省所管一般会計予算要求額は一千百十四億六千二百十二万二千円でありまして、これを昭和三十一年度の予算九百三億一千七百万円に比較いたしますと、百十一億四千五百十二万二千円の増加となっております。次に右予算のらち、特に重要な事項について、その概要を御説明申し上げます。まず第一は、医療保障制度確立に必要な経費であります。一、現在国民のうち約三千万人が疾病保険対象となっていない状況にかんがみ、昭和三十五年度を目標として国民保険の実現をはかることとし、三十二年度におきましては、特に大都を含む市部に重点を置きまして、国民健康保険普及に力を注ぎ、新たに通年五百万人の被保険者増加をはかり、前年度の三千万人と合せて被保険者数を三千五百万人に推算いたしました。これに伴い国民健康保険の助成に要する経費は、療養給付費の二割に相当する金額八十六億七千九百万円、事務費補助金二十九億七千五百万円、直営診療所建設費補助金三億円、被保険者画期的増加をはかるために新たに計上しました普及促進費補助金二千三百余万円、及びその他の経費を合せて合計百二十一億八千五百余万円となり、前年度に比較して、三十三億六千五百余万円の大幅な増加と相なっております。なお、事務費の一人当り単価につきましては、実績等を勘案し、前年度の単価六十八円六十銭を八十五円に引き上げて積算いたしております。二、次に健康保険につきましては、最近その財政に若干好転のきざしがうかがわれるとは申しますものの、いまだ落観の域には達せず、目下継続審議をお願いいたしております、関係法律成立と相まって、前年度と同じく一般会計より三十億円を給付費財源として繰り入れを受け、保険財政再建整備をはかることといたしております。  船員保険疾病部門につきましても、健康保険と同じく、一億円を一般会計より繰り入れることといたしております。  また、日雇い健康保険につきましては、昨年八月給付内容改善充実をはかった結果給付費増高はきわめて著しく、多額の赤字が予想されますので、三十二年度においては、国庫負担率を従来の一割から一割五分に引ま上げ、前年度より四億三千二百余万円増加した六億五千五百余万円を計上いたしました。  三、次に医療保障制度確立には不可欠の条件であります医療機関整備拡充に必要な経費であります。  まず国立病院施設整備改善のため、十二億七千四百余万円を国立病院特別会計に繰り入れ、六カ年年計画をもって実施したしてまいりました第一次基幹病院整備を三十二年度において完了し、新たに第二次基幹病院整備に一部着工いたしますとともに、その他の老朽不良施設改善をはかることといたしております。  次に公的医療機関整備でありますが、前年度に引き続き、都道府県単位医療サービス基幹となるべき病院整備を行うほか、僻遠の地で経済的に民間診療所の開設を期待できない無医地区国立病院六カ所、公的病院二十カ所の出張診療所を開設せしめ、新たにその運営費赤字に対しても補助を行うこととし、右に必要な経費四千五百万円を計上いたしております。  次に精神病床は、現在入院治療を必要とする患者に比して病床が過小な実情にありますので、引き続いて三千三百床を整備拡充するため、二億三千四百余万円を、また、伝染病院隔離病床一千床の整備に必要な経費九千六百余万円をそれぞれ計上いたしております。  四、次は、原爆被害者医療等に要する経費であります。  原子爆弾による被害者については、その置かれている健康上の特別の状態にかんがみ、また人道上の見地からも、国が健康診断医療等を行うことにより、その健康の保持、向上をはかるべきものと考えられますので、健康診断を行うための費用として七千余万円、医療費として一億円余、その他の経費を加えて一億七千三百余万円を計上し、昨年度に比較して一億四千七百余万円の増加となっております。  第二は結核対策の強化に必要な経費であります。  結核は年々その死亡数が著しく減少しているにもかかわらず、今日なお多数の結核患者が存在し、国民生活に重大な脅威を与えておる実情にありますが、一方治療薬品治療方法のめざましい発達進歩により、早期に発見し適切なる治療を行えば短期間に治癒可能の疾病となって参りましたので、三十二年度におきましては、全額公費負担健康診断予防接種を徹底的に行うこととし、そのために要する経費六億八千百余万円を計上いたすとともに、医療費についても結核治療指針改正に伴う三剤併用の採用、並びに手術の際における輸血、麻酔等公費負担対象としてその範囲を拡大する等の措置を講じ、十六億四千余万円を計上いたしております。  結核病床整備はかなりの進歩を見ているのでありますが、地域的にはなお偏在不足しておる地方もありますので一千床の増床を予定し、五千二百余万円を計上いたしております。  右のほか国立結核療養所百八十一カ所の経営のための経費百十六億三千余万円を加え、百四十九億八千余万円と相なり、前年度に比較いたしまして十四億二千九百余万円の増加と相なっておるのであります。  次に保健所については、新設五カ所の整備X線機械等の購入、職員の給与改善等に要する経費のほか、新たに医師充足対策の一環として修学資金貸与制度を設くる等の措置を講じ前年度より二億六百余万円を増加し二十一億七千四百余万円を計上いたしております。  第三は環境衛生対策推進に要する経費であります。  最近における屎尿農村需要の激減と、都市人口膨張等に起因して余剰屎尿処理が全国的に困難性を加え、国民生活環境が次第に汚染され、このまま放置し得ない状態となって参りましたので、まず人口の最も密集しております東京湾、大阪湾周辺都市については三ケ年計画をもって、屎尿海洋投棄を禁止して、陸上処理を行うこととし、そのために要する清掃施設下水終末処理施設整備費として三億四千五百万円を、また一般都市清掃施設下水終末処理施設整備費として三億四千万円、合計六億八千五百万円を計上いたしております。  次に明るく健康な生活環境を作るため蚊とハエのいない実践運動を前年度に引き続き強力に推進いたしたい所存でありますが、このため蚊とハエの駆除に好成績を上げた市町村に対してその効果を持続せしめるため、みぞの改善整備簡易ごみ焼却炉等恒久施設整備補助として三千三百余万円を計上しております。  次に水道施設整備については、農山漁村に対し、簡易水道普及をはかって伝染病発生予防生活改善に資するため、前年度より一億六千万円を増加し十億円を計上いたしております。  以上環境衛生対策に必要な経費合計は十七億二千百余万円に上り、前年度の八億九千二百余万円に比し八億二千九百余万円増加となっております。  第四は生活保護に必要な経費であります。  最近におけるわが国経済の著しい伸長発展の結果、国民の消費水準も大幅な上昇を来たして参りましたので、去る昭和二十九年一月改訂されたままとなっておりました保護基準を六・五%引き上げ、扶助内容の向上をはかることといたしました。これに要する経費は十一億五千万円で、これを東京都の標準五人世帯の額で申し上げますと、現行の生活扶助月額八千一百三十三円が八千八百五十円となり、六百十九円の増加となっております。  また母子世帯に対しては、母子年金を含む本格的な国民年金制度創設までの暫定措置として、現在実施いたしております生活保護の母子加算月額五百円を千円に引き上げ支給することといたし、これに要する経費四億五千万円を計上しております。しかしながら経済の好転の結果逐年著しい増加を来たしていました扶助人員が、漸次減少の傾向にありますので、生活保護費総額では三百六十二億九千四百余万円となり、昨年度に比し二億二千七百余万円の増となっておるのであります。  第五は児童保護に必要な経費であります。  まず措置費につきましては、施設の増加に伴う収容児童の増加を見込みますとともに、収容児童に対して新たに一日五円の間食費と被服費を若干引き上げることとしたほか、これら施設に勤務する職員の給与の改善を行うこととし、六十一億八千五百余万円を計上いたしております。  次に身体障害児の福祉をはかるため実施して参りました育成医療につきましては、その実施成果に照らして、さらに一層これを助成促進することとし、従前の実施人員の約二倍を見込み、補装具の支給等に要する経費と合せて身体障害児の援護のため一億三千四百余円を計上いたしております。  次に児童福祉の施設につきましても昨年度に引き続き整備拡充する予定でありまして、これに要する経費四億円を計上するほか、今年新たに繁忙期における農漁村の乳幼児のため、季節保育所一万ケ所を設置することといたしております。  さらにまた児童福祉行政関係者の長年の念願でありました重度の精神薄弱児を収容する国立の施設を新設いたすことといたしましたほか、新たに児童福祉行政の機構の強化のため、各都道府県に全額国費の指導職員百八名を設置することといたしたのであります。  以上児童の保護福祉に要する経費は総計七十億四千八百余万円で、昨年度に比して六億一千六百余万円の増加となっております。  第六は母子及び低所得階層等対策に必要な経費であります。  母子及び老齢者の福祉の根本的な解決策として国民年金制度の確立は焦眉の緊要事でありますが、昭和三十二年度においては、とりあえず臨時に厚生省に学識経験者からなる五人の委員を置いて、その具体的方策の調査企画を願うことといたしておるのでありまして、その設置並びに資料調査等のために必要な経費として一千余万円を計上いたしております。  母子対策といたしましては、暫定策としてさきに申し上げました生活保護の母子加算を増額して支給いたすこととしたほか、従来行なって参りました母子福祉資金の貸付額に対する補助率を、地方財政の現状にかんがみ、二分の一から三分の二に引き上げる等の処置を講じて、前年より一億四千万円を増加して五億九千万円を計上しております。  次にいわゆるボーダー・ラインの低所得階層に対しては、その自立更生を促進するため、世帯更生資金の貸付金として、昨年度より二億円を増加し三億円、新たに医療費の負担に悩む人々のために医療費貸付金制度を創設し、これに要する経費として二億円、合計五億円を計上いたしました。  これらの制度に対しては、母子福祉資金と同様、地方財政の現況にかんがみ、補助率を三分の二に引き上げる等の処置を講じ、本貸付制度が有効適切に効果を発揮できるよう配意いたしたのであります。  第七は婦人保護その他社会福祉の増進に必要な経費であります。  売春防止法の施行に伴い、これら転落婦人の保護更生対策を強化するため、本年度に引き続き婦人相談所を未設置の三十八県に新設いたすとともに、新たにその更生のための保護施設三十九カ所の設置、婦人相談員、相談所職員の増員等合計三億七百余万円を計上いたしているのであります。次に身体障害者の保護更生のため更生医療の実施と、補装具の支給に必要な経費として三億七千五百余万円を、庶民階層の金融機関として重要な意義を持つ公益質屋の整備のため二千五百余万円を、民間の社会福祉施設の整備充実を促進助成するため社会福祉事業振興会に対し、ざらに追加出資を行うため一億円等を計上いたしております。  さらにまた身体障害者福祉法でその設置を義務づけられておりながら今日まで実現を見なかった国立ろうあ者更生施設を新設して、これらの人々の再訓練、社会復帰のために貢献することといたしております。  第八は引揚者等戦争犠牲者の援護に必要な経費であります。  昨年秋締結された日ソ間の国交回復により、終戦以来の懸案であったソ連地区よりの引き揚げも一応完了したとはいいながら、いまだソ連中共地区等には生死不明の未帰還者六万一千余人が存在いたしておりますので、今後ともこれら未帰還者の調査究明に一段の努力をいたすとともに、三十二年度には引き揚げ予定者を約二千五百人と推算し、これに要する経費七千三百余万円を計上しております。  次に戦傷病者戦没者遺族等援護法に基く遺族年金及び障害年金の支給に必要な経費として、五十七億七千百余万円が計上され、前年度に比し二十一億七千七百余万円の増加となっておりますが、この大半は従来恩給局より移しかえたものを当初から厚生省予算に計上したために増加したものであります。  また未帰還者留守家族援護法に基く留守家族手当、障害一時金及び療養費の支給等のため十三億八千四百余万円が計上され、前年度に比し若干減少しておりますのは、引き揚げ、調査究明等の進捗による対象人員の減少によるものであります。また、海外戦没者のらち遺族に引き渡すことができない遺骨を納めるため新たに無名戦没者の墓を建立することとし、これに要する経費を五千万円計上いたしております。  最後に受胎調節運動につきましては、前年に引き続き推進いたしますとともに、その地方第一線指導機関たる実地指導員に対する手当を五百円から一千円に引き上げ、これに要する経費一千百余万円を計上するのほか、国立公園、国定公園の施設の整備のため直接国が行う施設整備費五千万円、新たに二分の一の施設整備補助金五千万円を計上し、その他保健衛生費、社会福祉等の各費目についてもそれぞれ所要の経費を計上いたしております。  以上、昭和三十二年度厚生省所管の一般会計予算についてその概要を御説明申し上げたのでありますが、次に昭和三十二年度厚生省所管の特別会計予算の大要について御説明申し上げます。  まず第一は厚生保険特別会計についてでもります。さきに申し述べましたように、一般会計より健康保険給付費財源繰り入れ、三十億円、日雇い健康保険給付費財源として一割五分の国庫負担額六億五千五百余万円を見込みまして、健康勘定におきましては歳入、歳出とも六百七十二億七千七百九十一万一千円、日雇い健康勘定におきましては歳入、歳出とも四十六億五百三十八万八千円、年金勘定におきましては歳入五百三十一億四千四百五十七万三千円、歳出百十一億五千七百三十五万二千円、業務勘定におきましては、歳入歳出とも三十七億九千八百八十万円をそれぞれ計上いたしております。  第二は船員保険特別会計についてでありますが、さきに申し述べましたように、大体健康保険と同様の措置をとることといたしておるのでありまして、これに要する経費といたしまして歳入五十七億六百六十三万五千円、歳出四十五億一千五百六十二万一千円を計上いたしております。  第三は国立病院特別会計についてであります。  さきに述べましたように、国立病院の施設改善のため所要財源を一般会計より繰り入れするのほか、三億円の国庫債務負担行為を計上いたしております。また新たにアレルギー疾患、リューマチ等の治療センターをそれぞれ若干個所整備する予定であります。右に要する経費として歳入、歳出とも八十七億二千六日三十六万六千円を計上いたしておるのであります。  最後にあへん特別会計についてであります。本年度のアヘン買い入れ予定量は輸入三十七トン国内産三トンでありまして、一方製薬原料としての売り渡しは四十トンを予定いたしております。右に要する経費として歳入、歳出とも二億二百九十六万二千円を計上いたしています。  以上昭和三十二年度の厚生省所管一般会計及び各特別会計の予算につきまして、概略御説明申し上げたのでありますが何とぞ本予算案の成立につきましては格別の御力添えをお願い申し上げる次第であります。
  8. 藤本捨助

    藤本委員長 厚生大臣に対する質疑は後日に譲ることといたします。御了承をお願いいたします。  この際中垣政務次官より発言を求められております。これを許します。中垣政務次官。
  9. 中垣國男

    中垣政府委員 つつしんで一言ごあいさつを申し上げます。このたび私は厚生省政務次官といたしまして重責をにないました中垣國男でございます。文字通りしろうとでございまして、厚生行政の重要性にかんがみますときに、まことに責任の重大を考えます。しかしながら皆様の御協力、御指導を得まして、職責を果して参りたいと存じます。何とぞよろしくお願い申し上げます。(拍手)
  10. 藤本捨助

    藤本委員長 次に昭和一三十二年度厚生省関係予算についてさらに当局より説明を聴取することにいたします。堀岡政府委員
  11. 堀岡吉次

    ○堀岡政府委員 お手元にお配りしました横の印刷物について御説明申し上げます。  二枚目の(目2)の一番下に厚生省所管合計とございまして、三十二年度要求額は一千十四億六千二百十二万二千円、前年度比較、差引増百十一億四千五百十二万二千円ということでございます。  それでは項目によりまして一ページの1から御説明申し上げます。まず一番に小見出しの人口対策でございます。ここでは、先ほど大臣から御説明ございましたように、各経費は、受胎調節実地指導の手当月額五百円を千円に引き上げるため千百五万二千円を計上いたしたのでございます。(2)の生活困窮者受胎調節普及費は前年同様であります。器具は、生活保護法適用者には無償で、ボーダーライン者には低額で給するということでございます。三番目の優生保護相談所質は、前年度に比して七百七十九万円の増になっております。これは保護相談所の指導用の器具の整備並びに講習会を厚く行うための経費を計上いたしたために、前年度より増額いたしたのであります。その他の経費におきまして昨年度より三百三十九万円の増を見ました。これは主として人口問題研究所において研究費を増額いたしたためであります。  次は2の国民年金制度準備費、これは一千七十万二千円を新規に計上いたしました。これも先ほど大臣から御説明申し上げましたように、国民年金制度実施のための調査のために、現在医療補償の関係で学識経験の方五人にお願いしているのと同様に、委員の方を五人お願いして研究調査を願う。なおこれに必要な調査費として(2)、(3)の年金等受給者実態調査、全国未亡人母子世帯等の生活実績調査を行うための調査費をそれぞれ所要額計上いたしたのであります。  次に3の保健所経費でございます。一番の運営費の人件費でございますが、これは充足率は七一・五%と前年度同様に押えております。これはベース・アップの費用を中へ入れたのでございます。それからその他は保健所の中の庁費関係の費用であります。(2)の整備費でありますが、ここ数年保健所の新設はいたしておりません。ところが最近札幌等四、五十万の人口の膨脹した相当大きなところではどうしても保健所を新役しなければならぬという動きがありまして、それに必要な個所数五カ所を見込みまして、その新設費を計上いたしたのであります。それから設備整備費は、保健所内部におけるもろもろの研究器具、機械等の整備費を前年度より増額いたしたのであります。それから(4)の医師充足対策費でありますが、この前年度比較九百六十四万五千円の増加は、その備考欄のところにまる新としまして、貸費学生貸付金九百四十五万円、これが主たる中身でございますが、これは保健所の医者の充足が非常におくれておりますことは御案内の通りでございます。それで大学の医学部に在学中の学生に月四千五百円、それからインターンの学生には月六千円を貸し付けまして、将来保健所に勤務することを条件にして貸し付ける。保健所に長らく勤務いたしますならば免除するという条件で、これはいずれさような条件でありますので、法律国会提出して御審議を願うことにしております。人数は、一応今の予定は大学の学部の学生は二百五十人、インターンの学生五十人という計画でおります。初年度のことでありますので、大学の学部の在学生については六カ月分、インターンの学生については九カ月分計上いたしております。  次は4の結核対策費でございます。結核対策費の(1)の健康診断及び予防接種費、これは先ほど大臣から御説明申し上げましたように、在来これにつきましては二十円とか十五円とか、少額でありますが金を徴収しておりましたので、この実施率がきわめて低く押えられておりまして、特に三十歳以上の一般住民につきましては非常に困難であった。それではいけないというので、今回、国と地方との補助率は変えませんけれども、全額公費負担としてただでやることにいたしたいという考えで、所要経費を計上いたしたのであります。実施率は施設、たとえば工場とかあるいは学校とかいうふうなところ等によっていろいろ違いますが、主たるものにつきましては五〇%の実施率を考えております。次は(2)の医療費でございますが、医療費につきましても国と地方の負担率は変えておりませんが、中身におきまして改訂いたしましたことを申し上げます。その裏の四ページの冒頭にございますが、まず第一番は、結核治療費につきまして先般学会より答申がございまして、パス、ストマイ、ヒドラジッドの三剤を併用する、それに伴いまして若干期間を延長すること、及び新しい薬剤を使用するというふうなことの答申がありましたので、それを採用するというのが(イ)でございます。それから(ロ)といたしまして、在来公費負担治療の範囲に含まっておりませんでした手術中の輸血並びに麻酔の費用を公費負担の範囲に加えまして、それに所要の経費を計上いたしたのでございます。(3)の消毒及び物件廃棄費、これは前年同様でございます。(4)の患家指導費でございますが、結核患者の発生しております家が最も結核の伝染源であることは在来言い古されておることでありますが、そこで在宅結核患者の家族についての事後措置く検査といたしまして、さらに精密に検査することを新たに加えましたので、それの主たる内容として八百五十九万五千円の増に相なっておるのであります。それから(5)の居宅隔離室は、ここ数年行われました一・二坪の小さい小屋を建てまして、外気療養並びに家族との接触を断つというのを行なつって参りましたが、だんだん普及いたしましたので、三十二年度においてはこの予算を計上いたすことにいたしたのであります。それから(6)の病床整備でございますが、ほぼ所要の数に達しておりますが、いまだ地域的な偏在がかなり見られますので、三十二年度におきましては公立三百床、法人立七百床、一千床を増床してその地域的偏差を是正したいということで、五千二百七十五万円を計上いたしたのであります。なお下の一般整備は、百数十カ所の国立療養所の整備費でございます。前年度より約一割以上の六千七百六十四万八千円を増額して、六億五千余万円を計上いたしたのであります。それから療養所の運営費でございますが、これは一切がっさいの運営費が含まっておりますが、この中身には、職員のベース・アップ並びに先ほど公費負担のところで申し上げましたような新しい治療費指針を採用いたしますので、それに伴う特薬の購入費が相当ふえます。それらの経費が、主として増額経費の中身でございます。国立百八十一カ所、入院六万五千五百床、外来一万二千八百三十人という予算定床並びに予算患者数は、前年同様でございます。それから八番の結核後保護費、これは整備費につきましては、前年同様二カ所百人ほどを引き続き行います。運営費、これは年間伸びでございます。在来の施設はだんだんふえておりますので、これに伴うところの年間のものでございます。その他としまして、百十一万四千円の減額になっております。これは結核の実態調査を三十一年度におきまして百二十二万円ばかりの金額で行いましたのを、前年度限りの経費として三十二年度には計上いたしませんでしたので、逆に四十一万四千円の減と相なっておる次第であります。その他は前年同様であります。  次は五番目のらい対策についてでございます。(1)療養所運営費でございますが、国立十一カ所の運営費でございます。これは結核等の運営費におきますと同様に、職員のベース・アップに伴う金額と、その他寝具の整備あるいは不自由患者の慰安金を百円の単価から二百円に増すことにきめましたので、九千五百一万九千円の増加と相なっておる次第であります。それから六ページへいきまして、私立三カ所の分については前年度同様であります。療養所の整備費におきまして、前年比三千三百三十五万一千円の減と相なっております。これは看護婦養成所でありますとか、あるいは特別にらい療養所における職員の宿舎等の整備をずっとここ数年やっておりましたのが、終了いたしました、それらによるものの減、並びに予防法に基きますところの学校の整備、高等学校でありますが、それらのものを三十一年度まで続けておりましたのが完成いたしましたので、差引三千三百三十五万一千円の減と相なっておる次第であります。(3)のらい患者の生活援護委託費でございます。これは備考欄をちょっとごらん願いたいのでありますが、保護世帯一千三十四と世帯数を予定いたしております。これは三十一年度の九百三十四世帯より百世帯を増額して予定いたしております。なお単価につきましては生活保護基準単価に準じました。これは医療扶助は行いませんが、その他の単価につきましては生活保護の単価に準じましたので、単価増並びに世帯数の増加ということで、対前年比千百四十八万四千円の増額計上をお願いすることにいたした次第でございます。(4)のその他におきまして三百七十七万五千円の増と相なっておりますのは、藤楓協会に委託しておりますところの更生指導費でございますが、それの中身における若干の単価増でございます。  次は6伝染病予防費でございます。まず(1)の法定伝染病予防費におきまして三千七百万円の減となっております。これはいわば地方に対する精算補助金でございますので、精算の結果減額する。なお伝染病は幸い最近その発生が減少いたしておりますので、かような減少経費を計上いたしたような次第でございます。次の(2)の伝染病院隔離病舎整備費でございますが、前年度の千三百床を千床にいたしまして、九千六百二十三万円を計上いたしたのであります。(3)防疫業務委託職員費の増額は、これは地方庁に配置いたしておりますところの防疫職員のベース・アップでございます。次は(4)の地方病予防施設整備補助金、これは例の日本住血吸虫のための山梨県あるいは岡山県等におけるみぞの建設でございますが、建設間数を前年度の三万間から本年度の六万間に倍にいたしましたので、その金額が倍額の四千五十余万円ということになったのであります。(5)の地方病予防補助金に若干の減がありますのは、内部における若干の単価減であります。それから、臨時予防接種補助金三百万円は前年度同様でございます。  七番目の精神衛生対策費でございますが、まず病床の整備でございます。ヘッドの増床といたしましては、前年度と同様三千三百床を予定いたしております。百四十四万五千円の増は若干の単価増しでございます。なお三十一年度の病床数は一三千三百床でございましたが、その中にはヒロポン関係のもの千何百床かを予定いたしておりまして、これはもうヒロポンの関係は、そのためのベッドの増床は三十二年度においてはいたさないといたしまして、三十三年度においては増床はすべて一般精神患者の増床に充てるという予定で予算を計上しておるのでございます。それから次の一般整備は国立の分でございまして、これも看宿、看護婦宿舎等の完了を見ましたので、それらに伴う減少でございます。次は(2)の国立療養所の運営費、これはベッド数は変りませんが、ベース・アップその他でございます。次の八ぺージの(3)措置入院補助金であります。措置入院補助金におきまして、対前年度比で一億二千万円、かなり大幅に増額計上をお願いしておりますのは、措置入院対象ベッド数を八千二百三十三から本年九千百九十七床にお願いいたしましたことが一点と、それからその備考欄の下にあります実費徴収率が前年度二五%を一五%に減少いたしました。そのために増額いたしたのであります。つまり実費徴収率は患者からの徴収を二五%予定しておりましたのを、なかなか金が取れませんので一五%に落したといことと、対象ベッド数をふやしたということで措置入院の補助金を増額計上いたしたような次第でございます。  (4)は精神衛生相談所の費用五十四万八千円の増はベース・アツプでございます。  (5)は前年度限りの経費、調査費でございまして、三十一年度において行なったもので前年度限りの経費として今年度はゼロということにいたしております。  次は8の性病予防でございます。性病予防は(1)(2)(3)の強制健康診断補助金、性病病院診療所補助金、委託入院治療補助金いずれも前年度と同様であります。  (4)の思想普及補助五十二万円の減となっておりますが、これは後ほど売春対策の方で申し上げますが、その方に組みかえましたので、この点に対しては五十二万六千円の減と相なっておるような次第でございます。  次が9の原爆対策でございます。原爆対策につきましては、在来は研究治療費として二千五百万円の金額を計上しておりました。いずれこれは法律案国会提出して御審議をお願いいたすことにしておりますが、長崎、広島両県におられる方々並びにそこから他府県へすでに散っておる方もありますので、それらの方々についての精密検査をやることと、治療を行うということ、それからケロイドの治療研究、そのほか三課題の研究を行うというふうなことがこの中身になっております。内訳を一応御説明申し上げておきますと、順序は逆でございますが、(2)の健康診断から申し上げますと、健康診断費は大体対象数の年二回三〇%程度は一般の検査を受けられるであろう、それから精密検査はそのうち約二五%がさらに精密検査を受けられるであろう。もちろん一般検査と精密検査では単価がはるかに違いますが、それから逆算いたしましてさらに精密検査を受けられた方のうち一八%程度は具体的に治療を受けられるものではなかろうかということで積算をいたしたのであります。なお治療につきましては一応単価で申し上げておきますと、内科につきましては平均でございますが三十一年度は二万五千円と踏んでおりましたのを三十二年度は四万円、外科につきましては二万円を二万五千円、眼科については前年度同様一万五千円というように計上いたしております。かなり本格的に行いますので、実施の結果どうなりますか、予想通りのこういう数字でおさまるかどうか、この辺は実際に実施をいたしてみてからのことと思いますが、在来治療研究で行いました数字をある程度基礎に使いましてかような積算をいたしたのであります。  10は環境衛生対策でございますが、まず簡易水道につきましては一億六千万円の増で十億円を計上いたしました。この十億円の内訳でございますが、一般につきましては九億五千九百万円、離島の関係は離島振興法に基きまして補助率を一般の四分の一より若干引き上げまして十分の三・五、それに対しましては二千五百万円、観光地関係は四分の一補助で一千六百万円、一応こういう割り振りにいたしたい、かような考えで計上している次第でございます。  次は東京湾、大阪湾の屎尿海洋投棄禁止対策でございますが、東京湾、大阪湾の屎尿等につきましては、ここでくどくど御説明申し上げる用はないと思いますが、そこで三年計画海洋投棄を禁止いたしたいということで清掃施設補助金を一億二千万円、下水終末処理施設二億二千万円というのを新規に計上いたしたのであります。なお、もう一つここで御説明申し上げておきますことは、東京湾、大阪湾の関係については集中的に三カ年間で行うということもありますので、補助率を一般のものよりも若干引き下げたのであります。清掃施設につきましては、一般の場合の四分の一を五分の一に、下水終末処理については、一般の場合は三分の一でありますのを四分の一にいたしたという点が特に御説明を要すべき点かと存じます。  次は十ページの(3)の一般清掃施設整備でございます。この補助率は四分の一でございまして、前年度五千万円、それを大幅に二億円計上いたしました。一億五千万円の増でございます。なお、このうち観光地については約九百万円一応予定いたしております。  次は(4)の下水の終末処理施設整備でございますが、下水については、在来三十一年度等においては特別失対の費用として労働省の所管に計上して、それを厚生省に移しかえをして実施いたしておったのでありますが、いずれこれは法案をもって国会に御審議を願う予定でおりますが、下水道の管を敷くことは建設省の所管とし、終末の処理については、衛生問題であるので厚生省の所管とする。上水道は厚生省の専管とする。こういうことで長い間問題がありましたものを所管を変更する予定にいたしておりますので、今回ここに計上いたしましたのは、その厚生省の所管とすべき下水の終末処理施設整備として一億四千万円を新たに計上いたしたいのであります。なお、カッコとして千万円計上いたしておりますのは、北海道開発庁に北海道分として、計上しておりますので、いずれ厚生省に移しかえをして厚生省において実施するという予定でおります。  次は(5)の蚊とハエの駆除運動費でございますが、これは補助金であります。いずれも二分の一の補助率で、蚊とハエの駆除についていい成績をあげたところの効果を持続せしめるために、そういう地区について物的な施設を施す。みぞの改善であるとか、簡易ごみ焼却炉であるとかあるいは屎尿貯溜槽であるとか、それらを作ることによって、せっかく相寄って努力された効果を持続せしめ、物的基礎を作りたいということで三千三百万円の経費々計上いたしたのであります。  その他として前年度に比較して百二十三万円の増と相なっております。これは内訳にあります通り、こまかい内訳になりますが、あっちこっち少しずつ増額したことのほかに、新(5)として、環境衛生調査研究費として新しく三十六万九千円を増額して、環境衛生関係の調査研究をやりたいということで、百二十二万五千円の増額計上をお願いしておる次第でございます。  11の医療機関整備費でございますが、医療機関整備費は前年度に比較して四千八百万円の増、十三億円を計上いたしました。その下にカッコとして三億円を計上しておりますのは、国立病院関係の債務負担行為をお願いしておるのであります。まず(1)の国立病院整備一般会計より繰入れは、内訳について申し上げますと、基幹病院整備四億九千万円、この中には、先ほど大臣も御説明申し上げましたように、第二次基幹病院として予定いたしておる東京第一病院、東一の整備を三十二年度に芽を出す、かように存じております。その他の基幹病院については三十二年度をもって完了するという予定で所要経費を計上いたしたのであります。  それから(2)の公的医療機関でございますが、前年度と同様四千五百万円を計上いたしました。一般公立病院整備は若干減額いたしましたが、それによって僻地の方に重点を置きたいということで、診療所を前年度に引き続いて三十二年度においては二十六カ所建設する。なお多年問題でありました僻地の運営費の問題につきましては、七百七十万円の運営費補助金を計上いたしております。これは二分の一補助でございます。これは三十一年度に建設予定の三十二カ所並びに三十二年度建設予定の二十六カ所のうちの二十カ所分を計上いたしております。らち六カ所分は、国立病院特別会計において試験的にやってみたいという考えでおります。その関係上、その運営費の所要経費は、国立病院特別会計に計上いたしたのであります。補助率は施設につきましては二分の一、運営費につきましても二分の一ということでお願いをいたす予定であります。(3)は先ほど申し上げました債務負担行為であります。  それから12の保健婦等の養成所建設補助金は、前年度の二分の一、九百万円を計上いたしました。  13の科学試験研究費の(1)の科学試験研究補助金は前年同様でございますが、(2)薬業合理化補助金につきましては、大蔵省の一般原則査定方針と申しますか、ざっくばらんに申しますと、そういうことで二割減となりまして、百十八万三千円を減額いたしたのであります。  14の輸出振興対策でございますが、このカッコは通産省所管に計上してあるという意味でございまして、前年度に比しまして、百一万八千円の増であります。この百一万八千円の増は、全部香港に先般新設いたしました輸出斡旋所の活動費を増額するという意味で、増額計上いたしております。  15の国立病院特別会計繰り入れの分でございますが、前年度より二億一千九百七十四万七千円を増額いたしております。整備費財源繰り入れにつきましては、先ほど申し上げた通りでございます。一般財源は、運営費の足らずまえということで、御了承を願いたいと思います。  16番の生活保護費でございますが、まず(1)生活保護補助金、これは先ほど大臣が御説明申し上げましたように、基準改訂によって六・五%基準を上げますということと、それから母子加算の五百円を一千円にするということ、これの二つによって、——なお人員の減少傾向がずっと続いておりますが、三十二年度においては約一%の増を見込まれますほかに、基準改訂あるいは母子加算等の改訂によりまして二十万程度の人が新しく扶助対象になるであろうという推算のもとに、差し引き合計二億三千五百七十五万四千円を増額いたしたのであります。なお母子加算につきましては、一応現在の予算の予定では十カ月分を計上する。従いまして六月からこれは実施できるものというふうな予定でおります。それから次が(2)の社会福祉施設整備補助金、これは前年度と同様でございます。それから(3)の生活保護指導監査委託費は、委託職員五百八人のベース・アップでございます。  それから17の低所得階層対策として、前年度に比し四億円増の五億円を計上いたしております。まず(1)は世帯更生資金貸付金でありますが、これはまず補助率を在来の二分の一を三分の二に引き上げたことが一つであります。なお今回世帯更生資金貸付金につきましては、技能修得中の生活費あるいは医療を受けている間の生活費でありますが、それらについて若干の生活資金を貸し付けたいということを、新しく項目として付け加える予定でおります。それから(2)は医療費の貸付金でありますが、これはボーダー・ライン層の人で、病気になってその医療費に困るという場合に、六カ月間五万円を最高限度としまして医療費を貸し付けるわけであります。これは世帯更生資金と同様に、利率は年三分、もちろん返還を行うまでは相当の猶予期間を置きますが、それまでの据え置き期間は無利子ということであります。これは執行はいずれも府県の社協に行わしめたいという予定で現在おります。  それから18番は社会福祉振興会出資金でありますが、これは前年度同様一億円でございます。  それから19は、身体障害者保護、これの(1)は一般身体障害者でありますが、そのうちの更生医療につきましては、これは相当高度な外科手術でございますので、実績等にかんがみまして、単価を一万五千八百二十余円から二万五千七百五十三円に引き上げたのであります。それから補装具につきまして、対象人員を二万三千六百八人と抑えております。前年度の二万二千八百七人から二万三千六百八人に対象人員を引き上げましたことによりまして、それぞれ合計千百三十五万円の増額計上をいたしております。次が(2)の戦傷病者の分でありますが、戦傷病者の更生医療は、これは言うまでもなく、過ぐる戦争によって傷害を受けた方々の更生医療でありますので、毎年対象人員は減って参ります。従いましてこの更生医療は対象人員の減でございます。補装具につきましては、これは一ぺんつけたからといって要らぬというわけのものでございませんので、対象人員は昨年は五千六百六十六人で今年は五千九百四十九人ですから、約三百人程度の増を予定して計上いたしたのであります。それから(3)の更生援護施設事業費補助金でございますが、これは毎年こういう施設を作っておりますので、それらによる収容人員の増でございます。それから(4)の更生相談所事務費補助金、(5)の施設整備補助金、いずれも前年同様でございます。その他厚生福祉、手帳交付補助等も前年同様でございます。  次が20番の婦人保護でございますが、婦人の保護はいずれも前年度からのいわば一種の継続事業というふうなものでございますが、(1)の婦人相談所の設置、これは今まで八大都市に作っておりましたのを各県に作るというようなことでふやす。それから相談所の施設の増に伴いまして所要の職員が増加する。それから婦人相談員は、初めからありました人員の年間の伸びでございます。それから(4)の保護施設設置、これは新しく収容する施設でございますが、それを三十九カ所作る。それから(5)の婦人相談所の一時収容保護費、これは新しく作りますので、それに伴う人数の伸びであります。それから既設の分の収容費の若干の単価増を見込んでおります。それから連絡協議会の費用は、これも年間の伸びでございます。それから婦人相談事業費補助金、これも年間の伸びでございます。それから(9)の接触調査費補助、これは先ほど性病予防の方で申し上げました五十二万何がしの減額を、今回こちらの方に約十倍の五百九十八万八千円を計上いたしまして、売春防止法が完全実施になりました場合に、性病予防につきましてその根源をつくことが困難でありますので、性病診療所の職員をして、相当積極的に接触調査をやらしめるための所要の旅費、調査費等であります。  それから21番の消費生活協同組合の貸付金は、二百万円の減となっておりますが、重点を職域より地域に移行する。職域等については在来の実績を見ますと、それぞれ会社等よりも相当の資金の融資を受けておりますので、二百万円の減額で、一千万円を計上いたしたのであります。  次は22の社会福祉施設、(1)の公益質屋でございますが、公益質屋はその要望が熾烈でありますので、在来の三十一年度十八カ所を、本年度は四十五カ所に新設するということで、九百十万円の増額を要求いたしておるのであります。それから(2)の地方改善施設でございますが、これは隣保館だけが去年より一カ所ふえるわけであります。協同浴場五カ所、いずれも前年度同様であります。  次は23の児童保護でございます。まず措置補助金でございますが、措置補助金は備考欄にございますように、施設職員の給与改訂——ベース・アップでございますが、その金と、それから今度は収容児童の待遇改善の金で、まず第一番には間食費、これに一日五円を計上いたしましたことと、それから被服費におきまして、児童被服単価を一日二円八十銭ふやす、それらによって所要経費五億円を増額計上いたしたのであります。それから児童相談所費の補助金でありますが、これはA、B、C、Dというクラスがあるのでありますが、このクラスのD級を減らして、A級を相当数ふやす。A級の七カ所を十二カ所にして、中身を充実する、それの所要経費を積算いたしましたので、前年度より四百八十八が五千円の増額をお願いするということでございます。それから一時保護所費の補助金、これは施設数の増による伸びでございます。  次が(4)の法施行事務費補助金、これは施設の監査旅費を増額したことでございます。  (5)の保母養成勝運営費補助、これも施設の数のみでございます。  6は長い間切られておりました季節保育所設置補助、一万カ所、九千円にして三千万円程度本年度新規計上いたしたのでございます。  7の妊産婦乳幼児保健所指導費補助は前年通りでございます。  8の身体障害児援護費補助、これはそれぞれ備考欄に記載しておきましたが、対象人員を五千百二十二人から九千九百九十四人にするということが根幹であります。それから補装具につきましては、五千百六十五人を六千四百八十八人というふうに、相当要望がございますので人数を増加いたしまして、その積算一億三千余万を計上いたしたのでございます。  それから9の児童福祉施設整備補助は従来通りの四億円を計上いたしました。  10の児童保護指導職員設置は新しく全額国費をもちまして——各府県に二人あるいは三人となりましょうが、幹部職員を国の費用でもって置きたい。九カ月分を計上いたしておりますが、これは近時地方庁等における行政機構の整理、縮小等に伴いまして、一番弱い母子を対象にする課の方はずたずた切られていきますので、幹部職員につきましてははっきり全額国の費用でもって置きたいということで、かような予算を新規に計上いたしたのであります。  次が24の母子福祉対策でございますが、これは多年の要望でありました貸付率につきまして、二分の一から三分の二に引き上げたのであります。その関係で一億四千万円の増加、五億九千万円の予算を計上してお願いすることにいたした次第であります。  それから25は社会保健国庫負担金であります。国庫負担金は合計七億円の増加になっておりますが、まず第一番の健康保険給付質財源繰り入れ、これが三十億、これは下の二番の健康保健再建資金繰り入れと入れかわった次第であります。名前が変ったというだけで、これは今回法律国会で継続審議でお願いしているそれと同断の趣旨であります。  三番目は日雇い健康保健給付金財源繰り入れ、これは国庫負担率の一割を一割五分に上げましたので、四億三千二百二十八万円増ということになっております。日雇い健康保険は過ぐる納付の待遇改善から非常に大きな赤字になっております。従いましてこれに対処するために国庫負担を増額いたしたのであります。その関係がただいま申し上げましたような数字でございます。  それから四番の厚生年金保険給付費財源繰り入れ、これは在来の発生率に伴いますので、国庫負担率は全然変っておりません。  それから(5)の船員保険給付費財源繰り入れ、このすぐ下にございます疾病給付責財源繰り入れ、これは三十一年度と同様でございます。それから失業保険関係並びに年金保険関係は発生率に伴いまして若干減少いたしております。  その他の項目で二億三千百六十三万円の増となっております。いずれも業務取扱費の繰り入れの増額でございまして、主として人件費のベース・アップと日雇いの関係の印紙売捌手数料の増でございます。  それから二十ページの26の健康保険組合等補助、これは被保険者の増等を見込みまして、単価は前年度と同様でございすます。  それから27の国民健康保険助成費でございます。これは冒頭大臣から御説明申し上げましたように、国民保険をいたしまして、三十二年度におきましては五百万人の被保険者数の増を見込むということで、これを基礎にして諸般の積算をいたしたのであります。  まず事務費でございますが、事務費につきましては、内訳を人件費と物件費に区別いたしまして、そこに計上いたしました。要するに三十一年度の六十八円六十銭を八十五円に引き上げたのであります。なおこれにつきましては三十二年度において厚生並びに労働両省が共同調査をして、相当の実態をつかみたいという予定でおります。それから保健婦の設置費につきましては、二百二万円の減となっておりますが、これは実績に徴しまして、対象人員数を三百人減少したのであります。ベース・アップはもちろん中に含んであります。  (2)の療養給付費補助金でありますが、これは三千五百万人に対して最近における受診率、一人当りの点数、一点当りの単価、それらをかけまして、それぞれ前年度のものと比較して備考欄に掲げてありますので、ごらんを願いたいと思いますが、そういうもので積算したものの二割ということで八十六億七千九百万円を計上したのであります。  それから三番目の直営診療所建設補助金は相当被保険者数もふえましたので、前年度より一億円増額いたしまして三億円にいたしました。  四番の委託職員の設置費は、これは年間の伸びであります。人数の増はございません。  二十二ページの(5)の普及促進費補助金はかなり大幅な普及促進をいたしますので、そのための県並びに当該市町村の調査費とかあるいは旅費とか宣伝費、それらをそれぞれ補助の対象として、二分の一を国庫から交付するということで、都道府県分四百六十六万五千円、市町村分千八百九十五万八千円を計上したのであります。  次は28の引揚者等の援護費でございますが、これは引き揚げ見込み人員は一応二千五百十一人、こう計上いたしましたが、これについては初めからはっきり申し上げますが、何ら材料はありません。一応計算はいたしましたが、一応二千五百人程度ということで、こういうものを計上したということです。それから前年度に引き続きまして北海道集団収容施設の補修を行いたいということで、六百六十四万円を計上したのであります。  29は留守家族等の援護費でございます。これを減額いたしますのは、引き揚げが相当進捗いたしますのと、調査究明が進みますので、これに伴いまして留守家族の数が減るということで、若干の減少ということでございます。  それから二番目の地方公共団体委託費三十六万円の増は旅費の増であります。  それから30の戦傷病者戦没者遺族等援護費でございますが、これは大臣の御説明で申し上げた通り、在来恩給費の所管から厚生省に所管の移しかえをいたしましたものを、今回は年間所要費の五十七億円を初めから計上するということであります。なお従来はどの程度であったかと申しますと三十年度において十三億六千万円、二十九年度八十億、二十八年度七十五億とかなり大幅な数字を恩給費からこちらの方に移しかえをして出しておったのであります。なお別途ここで御説明申し上げておきたいと思いますが、三十一年度におきましては現在赤字二十八億円が見込まれております。その関係は補正予算をもって三十一年度においてお願いをするという予定でおります。補正予算で思い出して恐縮ですが、国民健康保険助成費につきましても赤字があります。これも三十一年度の補正でお願いする、かような考えでおる次第であります。  それから次が31の国立戦没者の墓苑五千万円、前々から問題になっておったのでありますが、これを建設するという予定で所要経費を計上いたしました。なおこれに伴いますところの道路等の費用、あるいは千鳥ケ淵に予定してありますが、あの辺の宮内庁の職員の官舎の移転費とか、それらのものは宮内庁の方に計上するとか、あるいは建設省の方に計上するというふうにして計上してありますので、総体の金額では約九千万円程度になるということを御承知おき願いたいと思います。厚生省所管といたしましては、墓の建設とそこの付近の庭——苑地といいますか、それらの費用として五千万円。その他の道路とか何とかいうふうな費用は、別途建設省へお願いするということで全体で約九千万円というふうに御承知おき願いたいと思います。  それから32の事項の国立公園等の整備費でございますが、まず国立公園の施設費は五千万円、それから国立公園に対する補助金は、在来切られておりましたのを二分の一として四千万円計上いたしました。なお国民公園につきましては、その他はあまり変りませんのですが、新宿御苑の温室が非常にいたんでおりまして、これを作り直したい。二年の計画をもちまして作り変えをするということで、初年度の二千九百六十五万二千円を計上したのであります。その他は京都並びに皇居前、新宿御苑の一般整備費でございます。  次の(3)国定公園は、これも新しく国定公園施設整備費につきまして二分の一の補助金、一千万円を計上いたしたのであります。  それから次の二十四ページの33国立施設新設、これは今回施設新段するものをまとめましてここへ計上したのでありますが、第一番の口腔衛生部設置、これは国立予防衛生研究所に口腔衛生部を新設したいというので所要経費を計上いたしております。在来歯科の関係につきましては、予防関係を、予研というものがありながら何ら適切に厚生省でやっていなかったので、新しく予防衛生研究所においてそれを研究せしめるというので所要の建物並びに運営費を計上いたしたのであります。(2)国立ろうあ者更生指導所、これは在来からのやかましい問題でありますので、新設をして百人収容することにいたしました。それから(3)国立精神薄弱児収容施設、これも百人の予定でおります。いずれも運営費その他三カ月の予定外、この三つを新しく作るということで、この予算をお願いいたしておる次第であります。  その他の雑件では出入りがありまして、三千九百八十四万八千円の減でありますが、冒頭申し上げましたごとく、差引厚生省所管としましては百十一億四千五百十二万二千円の増であります。ただ前年度の予算額はただいま御説明申し上げましたように、補正予算をお願いすることにいたしておりますので、九百二億がそのあかつきには若干変って参ります。国民健康保険赤字補てんが十億程度、それから遺族年金が二十八億円程度補正予算をお願いしますので、そのあかつきにはこの九百三億円という数字は変るものと御承知おき願いたいと思います。  以上が一般会計の御説明でございますが、次が特別会計の御説明でございます。特別会計ではまず第一番に二十五ページの健康勘定でございますが、保険料収入におきましては、内訳として被保険者数は五百三十一万人から五百九十四万五千人と六十三万ばかりの人員増を予定いたしております。最近相当の被保険者数の増がございますので、それらの実績から見てこの程度の増加があるものということで、積算の基礎にいたしております。それから標準報酬の改訂は前年の一万二千百五十二円を標準報酬月額平均一万二千六百五十九円、一人当り保険料は、保険料率は変りありませんが、標準報酬が変りましたので九千八百八十四円一銭九厘ということでございます。なお等級改訂等は現在継続審議の法案でお願いしておる通りでございます。それから一般会計より受け入れ三十億円、その他借入金、雑収入等を加えまして、歳入合計六百七十二億七千七百九十一万一千円ということでございます。  歳出については特段申し上げることはないと思いますが、療養納付金が若干ふえるということと、現金給付も若干ふえるということで、これが大体おもな中身であります。  それから裏の二十八ページ日雇勘定におきましても、人数を前年度は六十万七千人でありますが、七十四万六千人に押えるということ、それから一人当りの被保険者の年額の保険料は若干変る。一級、二級保険料は前年度同様でございます。それからあとは給付費の増を見込んでそれのはね返りの一般会計の受け入れが、冒頭申し上げましたごとく一〇%を一五%にするということで積算をいたしたのであります。  それから三十一ページ、年金勘定でございますが、年金勘定も健康保険同様被保険番数の伸び、標準報酬の若干の伸びを見て、その他は変っておりません。  一般会計より受け入れにおきましても、国庫負担率は前年度同様であります。  次は三十三ページの年金勘定の歳出、これも特段御説明申し上げることはありません。  それから三十四ページの業務勘定は、これの運営に要するるところの取扱い事務費でございます。1、2、3、4は受けけ入れでございまして、5以下が運営費であります。  それから三十七ページの船員保険特別会計、これも現在継続審議をお願いいたしておりますものと両様な調子で、保険料率等が変更になります。これも健康保険同様でございますので、説明を省略さしていただきたいと思います。  それから次は四十ページ、国立病院特別会計でございますが、国立病院特別会計では、料金収入の増が一件当り点数の若干の増を見ましたので七十億円を、その他は、一般会計より受け入れば一般会計のところで申し上げましたので御了承おき願いたいと思います。  四十一ページのところで特に御説明申し上げておきますことは、13の高血圧治療センターに必要な経費、その治療センターを備考欄にございますように三カ所新設します。ガンの治療センターの三カ所、特殊小児疾患治療センター二カ所、心臓病治療センター二カ所ということで、それぞれ在来もあったものでありますが、これらを新没して大方の要望にこたえたいということのほかに、17のリウマチ治療センタ一一カ所、アレルギー治療センター一カ所、特殊疾患についての国立病院の特殊性を発揮していくためにかようなセンターを新設いたしまして、大方の要望にこたえたいということで予算を計上いたした次第であります。その他は特段御説明申し上げることはありません。  それから四十二ページの23、国立病院僻地診療所に必要な経費、これが運営費三カ月分を一応予定いたしておるのであります。  それから四十三ページ、あへん特別会計は、国内産三トン、輸入三十七トン、合計四十トンを買い入れてそれを払い下げる、通り抜け勘定であります。  以上、あらまし非常に大ざっぱな御説明を申し上げまして恐縮でございますが、三十二年度の厚生省所管予算のおもな事項について申し上げました。
  12. 藤本捨助

    藤本委員長 この際資料の御要求ございましたら、文書にいたされまして私の手元までお願いいたします。   午後二時まで休憩いたします。    午後零時八分休憩      ————◇—————   午後二時二十四分開議
  13. 藤本捨助

    藤本委員長 休憩前に引き続き会議を再開いたします。  この際労働大臣が出席されましたので、昭和三十二年度の予算をめぐる労働行政一般について大臣より説明を聴取いたしたいと存じます。松浦労働大臣。
  14. 松浦周太郎

    ○松浦国務大臣 ごあいさつを申し上げます。  昨年末石橋内閣成立に際しまして労働大臣の任命を受けましたから、今後専心労働行政に打ち込んでいきたいと思うのでございますが、もとより浅学非才、不敏な者でございますから、皆様の一そうの御支援と御協力をお願い申し上げたいと存ずる次第でございます。一言ごあいさつを申し上げます。  ただいま議題になりました問題に対しまして、この機会に、昭和三十二年度予算を中心に、労働行政一般につきまして、私の所信を申し上げたいと存ずる次第でございます。  御承知のようにわが国経済の現状は、まことに好調な推移をたどっておりますが、政府はこの機会に多年の懸案である完全雇用の達成を経済政策の目標に掲げ、各般の積極政策を推進しようとしておるのでありますが、労働行政の分野におきましてもおのずからわが国経済の発展段階に即応した諸施策を推進すべきものと思うのであります。私はこの際雇用対策、中小企業対策労使関係等に問題を集約して御説明を申し上げたいと存ずる次第でございます。  第一は雇用対策推進ということでありますが、御承知のごとく、最近のわが国経済はきわめて活発な発展を続け、三十一年度においては鉱工業生産は二一彩、国民所得は一二%も上昇しており、失業情勢も漸次改善されましたが、基本的雇用問題の改善は前途なお容易ならぬものがあるのであります。  すなわちここ一、二年、完全失業の数は漸減し、企業整備による離職者、失業保険の受給者等も急速に減ってきておりますが、なお多数の不完全就業者が存在しておるのみならず、今後十年間にわたり毎年百万人に達する労働力人口増加が見込まれ、学校卒業者の就職問題もまた依然として困難なものがあるのであります。  私は完全雇用の達成というからには増加する労働力に就業の機会を確保することはもちろん、多数の不完全就業者を解消することを究極のねらいとしなければならないと存ずるのであります。  政府はこのような見地から、昭和三十二年度予算の編成に当り、道路、港湾等公共事業費の大幅増額をはかり、また電源開発、住宅建設等に一段と積極的な財政投融資を行い、国民経済の拡大をはかるとともに、直接間接の雇用の機会の増加に努めたのであります。しかしながら私どもも完全雇用の達成が一朝一夕で実現するものとは考えておりません。いなむしろ人口の過剰なわが国においては、これは相当長期にわたる基本政策の問題であると考えておりますので、政府は新たに内閣に雇用審議会を設置し、各界の有識者の参加を願い、本格的な雇用政策を樹立するため、今国会に雇用審議設置法案を提出いたす所存であります。  次に現に失業している人々に対する失業対策といたしましては、まず比較的労働能力の高い失業者の吸収をはかるため、特別失業対策事業費として前年度と同額の三十五億円を計上し、一万八千人の吸収を計画いたしたほか、前年度を五億円上回る七十四億円の予算をもって臨時就労対策事業を実施し、これに二万人を吸収することといたしております。また一般失業対策事業につきましては、一日五十二億六千万円の予算をもって一日平均十八万七千人の失業者を吸収するとともに、労力費の単価を七%引き上げて失業者の生活の安定をはかったほか、失業者が多数発生しかつ財政事情の苦しい地方公共団体に対しましては前年度に引き続き高率の国庫補助を行い事業遂行に万全を期した次第であります。  また政府は、日雇い労働者の生活を改善するために日雇い失業保険の給付額を引き上げることにし、今国会に失業保険法の一部を改正する法律案提出いたす考えであります。  以上のごとく失業対策事業につきましては、吸収人員は前年度に比し若干減少しましたが、その内容は一そう充実いたしました。のみならずすでに述べましたごとく、経済の発展による民間需要の拡大及び公共事業、財政投融資事業等による大幅な雇用吸収の増加等あわせ考えますと、来年度における失業対策は遺憾なきを期し得るものと考えるのであります。  次に私は、一般的な経済の活況のかげに主として中小企業の労働者諸君が比較的恵まれない状態にあることにつきまして重大な関心を持っておるのであります。  中小企業は御承知のごとく、その雇用の不安定、労働条件の低位等から判断いたしましても、多くの不完全就業者をかかえているものと思われるので、中小企業の労働問題の解決がなければ、完全雇用の理想への接近はできないと思いまして、労働省といたしましても、一般的な中小企業振興方策と並行して適切なる労働対策を進めて参りたいと考えておるのであります。  中小企業労働問題においては、とかく労働基準法が問題となりますが中小企業に対する同法の運用に当りましては、単なる取締り摘発主義に堕することなく、実情に即した指導監督を徹底いたし、労働者保護の本旨の実現を達成いたしたいと考えております。  また低賃金問題につきましては、すでに最低賃金制が世上広く論議せられておりますが、わが国中小企業問題の複雑困難な現状にかんがみまして、これが実現には十分慎重なる配慮が必要であると考えておるのでございます。  労働省ではさきに主として輸出産業を中心とする中小企業におきまして、業種別、地域別に業者間の自主的協定により最低賃金の実施をはかることが、最も現実的な方法であると存じ、労働問題懇談会にも諮って参ったのでありますが、同懇談会において近く適当な結論を得ることができると信じておりますので、さらに具体的な措置を研究しこれが実効をはかって参る所存でございます。  このほか中小企業の近代化を促進いたしますために、技能労働者の養成をはかるとともに、中小企業労働相談所の拡充、労務管理の改善指導等を進め、さらに中小企業に働く年少労働者の福祉対策として、本年度より労働青少年ホームの建設にも着手いたしたいと考えております。これがために技能者共同養成施設に対し、九百万円の予算を計上したほか労働青少年ホーム建設補助金として一千万円を計上いたしました。また現在失業保険等の対象外となっております五人未満の事業所に対し、社会保障の充実を期する必要があることを痛感いたしておりますので、失業保険のこの面における拡張適用について、具体的な検討に着手いたす方針で、その準備に必要な予算措置を講じた次第であります。  なおこれら中小企業問題の処理に当り最も困難を感じますことは、何分にも実情の把握がきわめて困難であることでありまして、中小企業の雇用及び賃金等について詳細な統計資料がまずもって基礎とならなければならないのであります。この意味におきまして従来三十人以上の規模の工場事業場にとどまっておりました毎月勤労統計の調査対象を、三十人より五人以上にまで拡大し、また五人未満のものにつきましても臨時調査を行うことといたした次第であります。これがため、毎月勤労統計調査費として従前の経費のほかに、新たに一千六百万円を追加した次第であります。  以上のごとく産業の各分野にわたり本格的に完全雇用の実現をはかっていきます以上、これが目標達成のためには国民経済のさらに顕著な拡大発展が前提とされることは当然であります。労働の面におきましても労使協力による生産性の飛躍的向上をはからなければならないと思うのであります。私は就任以来労使関係のあり方といたしまして、資本と経営と労働の三位一体の協同を提唱しておるのでありますが、これは労使の深い相互信頼とその責任の認識の上に立って初めて可能であると思うのであります。  戦後十年困難な復興の過程におきまして、労働運動は幾多の曲折を経験して参りましたが、経済の新たなる発展段階に到達いたしました現在は、労使双方ともその本来のあり方につき、謙虚に反省を加え、今後の進路を見出すべき時期ではあるまいかと考えるものでありまして、先般、労働省が従来の基本的考え方の上に立って、労働教育の指針として労使関係及び労働組合運動のあり方について体系的見解を明らかにしたゆえんもまたここにあるのであります。  このような新たな労使協力の基調に立って労働政策の面におきましても、新時代の要請に応じ技術の革新に対応した本格的な職業訓練行政の展開をはかり、また生産性本部の活動と相待って全産業にわたる労働生産性の向上に努めなければならないと考えておるところであります。  最後に婦人行政の重点として、内職公共職業補導所、家事サービス公共職業補導所等の一そうの整備充実をはかり、売春防止法の施行を控え、更生を望む婦人のための相談、職業補導等の強化をはかって参る所存であります。  さてこのような労働諸施策を実施いたします場合、私の最も痛感いたしますことは社会経済政策等との連係を密にし、総合的効果をはかる必要があるということでありまして、労働行政では特にそのような総合機能を重視すべきであると考えまして労働省に官房長を新設することとし、今国会に労働省設置法り一部を改正する法律案提出いたす所存であります。  以上私は労働行政について考えますところを申し上げたのでありますが、今後とも各方面の御意見に十分耳を傾け政策の推進に当って参る覚悟でございますので、何とぞ委員諸君におかれましては、一そう御指導と御協力を賜わらんことを切にお願い申し上げまして、私の方針を述べた次第でございます。
  15. 藤本捨助

    藤本委員長 労働大臣に対する質疑は後日に譲ることにいたします。御了承願います。     —————————————
  16. 藤本捨助

    藤本委員長 次に伊能労働政務次官から発言を求められておりますので、これを許可いたします。伊能労働政務次官
  17. 伊能芳雄

    ○伊能政府委員 過般労働政務次官を拝命いたしました参議院議員の伊能でございます。まことにふなれまた不敏でございますが、十分誠意を持ってこの面に努力いたしたいと考えますので、何とぞ格別な御指導、御鞭撻をお願いいたす次第でございます。(拍手)     —————————————
  18. 藤本捨助

    藤本委員長 次に、昭和三十二年度労働省関係予算について、さらに説明を聴取いたしたいと存じます。松永政府委員
  19. 松永正男

    ○松永政府委員 お手元に差し上げてございます横書きの予算の概要を刷ったものがございます。これにつきまして三十二年度予算の概要の御説明を申し上げます。  資料は二つございますが、まず最初に一般会計の分につきまして御説明を申し上げます。この資料の一ページをごらんを願いますと、昭和三十二年度の歳出予算の総表がございます。左側が三十二年度の予算額、まん中が三十一年度の予算額でございます。三十二年度の予算案の額は、総計におきまして三百三十五億四千九百三十一万三千円でございます。三十一年度の予算額は三百三十八億五千九百八十七万一千円でございます。これを比較いたしますと、三十二年度の予算案におきましては、三十一年度予算額に比べまして約三億一千万の減に相なっております。この減になりました理由は、この総表の一番上に掲げてございます失業対策に必要な経費、これが昨年度に比べまして八億七千五百万円の減となっておるのが大きな理由でございます。従いまして、予算の中身におきましては、失業対策を別にいたしますと、差引約五億七千万円の増になっておるのでございます。このうちの主たるものは、人件費の増でございます。三十二年度におきまして給与改訂を行う予定でございますので、その分の人件費の増加約四億六千万円ほどございまして、その他の事務費が約一億円の増ということに相なるわけでございます。  次に二ページに参りまして、失業対策に必要な経費につきまして御説明を申し上げます。失業対策に必要な経費の内容は、三つございまして、この二ページの一番上に書いてございます失業対策事業費が一つでございます。それから第二は次の三ページの一番下の欄に書いてございますが、失業保険費の負担金、これが第二でございます。それから第三は、五ページにございますが、政府職員等失業者退職手当でございます。この三つの費目を合せまして失業対策に必要な経費としておるわけでございますが、まずその第一の失業対策事業費につきまして申し上げます。  失業対策事業費は、三十二年度の予算案の領は百八十七億六千三百万円でございます。昨年度は、右の方に書いてございますが、百九十一億八千万円でございますので、約四億円ほどの減になっております。失業対策事業費は、労働省に計上されました分が今申し上げました百八十七億六千三百万円でございますが、そのほかに臨時就労対策事業費というのがございまして、建設省所管に計上をされてございます。これは三ページの(3)といたしまして、臨時就労対策事業費七十四億が計上してございます。これは建設省所管でございますので、建設省の予算に計上されております。これは昨年六十九億に対しまして本年七十四億と五億円の増加になっております。そこで労働省計上の分と建設省計上の分と両方を合せますと、二ページの一番上にカッコ書きで書いてございますように、二百六十一億六千三百万円と相なるわけでございます。これを前年度の予算と対比いたしますと、前年は二百六十億八千万円でございますので、約八千万円増と相なるわけでございます。従って建設、労働両省所管の分を合せますと、金頭におきましては昨年より八千万円ほどの増加になっておるということに相なるわけでございます。  失業対策事業の中身について申し上げますと、資料の二ページの要求の概要という欄に吸収人員が掲げてございます。一般失業対策事業におきまして十八万七千人、特別失業対策事業におきまして一万八千人、臨時就労対策事業におきまして二万人、合計二十二万五千人ということに相なるわけでございます。三十一年度におきましては、この右に書いてございますように二十四万八千人の吸収をいたすことになっておるわけでございます。従いまして、三十一年度に比べまして、予算総額は増加いたしましたけれども、吸収人員の予定といたしましては若干下回っておるという予算になっておるわけでございます。この点につきまして、三十一年度の二十四万に対しまして、三十二年度二十二万五千人で足りるであろうかという問題につきましては、先ほど大臣からの御説明にもございましたように、企業全般の一般的な好況が今後もなお引き続くという見通しがありますと同時に、他面労働の統計の面におきましても完全失業者数が減少しつつある、また失業対策事業の実績におきましても、民間雇用の増大の結果、実際の就労人員は三十一年度におきましても二十二万台を推移いたしておるというような実績に考え、かつまた来年度における公共事業や財政投融資事業の大幅な拡大というものを考え合せました場合に二十二万五千人の失業対策のワクで十分やっていけるというふうに考えておる次第でございます。  なお失業対策賃事業の内容の充実の面につきましては二ページの下の方に書いてございますが、特に労力費の単価の値上げをいたします。事務費につきましても若干の値上げをいたしたのでございますが、労力費につきましては二ページにございますように三十一年度におきまして二百八十二円の単価でございましたものを三十二年度におきましては三百二円に引き上げをいたしたのでございます。この賃金につきましては二十八年以来単価の引き上げを行なっていなかったのでございますが、民間における賃金の上昇がございましたので、これと見合いました結果、実額において二十円、率において七%の上昇を計上いたしまして失対労働者の生活の安定をはかるという趣旨でございます。従いまして、失業対策事業におきましては労力費等の値上げによりまして内容の充実をはかったのでございますが、吸収人員におきましては昨年よりやや下回った予定を計上いたしておるということになるわけでございます。それから就労日数につきましては昨年度同様に二十一日を予定いたしております。  そのほかに市町村の財政負担等を考えまして、基本的な補助率であります労力費、事務費の三分の二につきましてそれぞれ五分の四の高率補助を適用する制度を三十一年度から実施いたしておりますが、三十二年度におきましても吸収人員の約一割に相当するものにつきまして三十一年度と同様高率補助の適用をいたすという予定でございます。三ページに掲げてございます特別失業対策事業費につきましては三十一年と同額の三十五億円を計上してございます。なおこの単価につきましても、一般失対と同様に労力費において七%の上昇を認めておりますので、人数だけはわずかでございますが減っております。臨時就労対策事業費といたしましては、人数は三十一年と同数でございますが、内容を充実いたしました結果、六十九億円が七十四億円と五億円の増と相なっております。  次に失業対策費のうちの第二の項目の失業保険費の負担金でございます。三ページの一番下に書いてございますが、これは御承知のように失業保険法に基きまして保険給付に要する費用の三分の一と事業費の一部を国庫で負担をすることに相なっておりますが、そのそれぞれの負担額の合計でございます。これが本年度におきまして八十一億九千九百万円となっておりまして、昨年の八十七億に比べますと約五億の減になっているわけであります。これは次の四ページに内訳が書いてございますが、一般民間企業の好況によりまして解雇等が減少いたしました結果、失業保険保険金の額も大幅に減少をいたしておりますので、三十二年度におきましては三十一年度の二百三十五億に対しまして二百二十五億七千五百万円でやっていけるという見通しを立てたわけでございます。月平均の初回受給者数は三十一年と三十二年と同数の五万六千人、それから月平均の支給実人員におきましては、三十一年度が三十三万六千人を計上いたしておりますが、三十二年度におきましては三十万五千人と下回った数字を掲げております。これは三十一年度における実績等におきまして大体この程度の実績が出ておりますので、これで三十二年度も推移するであろうという見通しでございます。一人当りの支給月額につきましては、五千八百三十九円を約四%引き上げまして、六千百六十八円を見込んでございます。それで、保険金の総額が二百二十五億七千五百万円と相なりまして、これの三分の一の七十五億二千五百万円を見込んでおるのであります。  次に、失業保険のうちの日雇い失業保険につきましては、先ほど大臣の御説明にもございましたように、保険金の日額の改正計画いたしてございます。日雇い保険金日額につきましては、制度制定以来改正をいたしておりませんので、この際に賃金の上昇に応じまして保険金日額を増額いたしたいという計画でございます。現行は、一級、二級と分れておりまして、百四十円と九十円の保険金の日額になってございます。百六十円以上の賃金をもらっておる者は百四十円、未満の者は九十円ということになっておりますが、賃金の実情に合いませんので、これを改定いたしまして、現行の上にさらに二百円という段階を設けるという改正であります。と同時に、現行の二級の九十円は被保険者の一%未満の適用しかありません、非常に適用対象が少数でございますので、この九十円の段階を解消いたしたいということでございます。それに対応いたしまして保険料の方も二百円の保険金に対しましては保険料を十円とする。百四十円は現在の通り六円でございます。  このように改正をいたしたいということで法律案を準備いたしておりまして、後日御審議を願うことになると思うのでございますが、その結果、日雇いにつきましては保険金総額が十四億千九百万円、三十一年度の十二億八千六百万円よりも約一億三千万円の増額になるわけでございます。従って、国庫の負担もそれの三分の一相当額の増額に相なりまして、四億七千三百万円ということに相なるわけでございます。これらを合せまして失業保険費の負担金が八十一億と相なるわけでございます。  それから、五ページに掲げてございます(2)の事業費の負担金は、事業費総額二十七億八千四百万円でございますが、これに対しまして運用収入、雑収入等の収入がございますので、それを差し引きました残りの不足分を国庫で負担をするということで二億円を計上してございます。それも昨年度四億四千万円に比べまして下回った数字が計上されてございます。  以上が失業保険費の負担金の内訳でございます。  それから失業対策費の第三の政府職員等失業者退職手当でございますが、これは民間の失意保険に見合います国家公務員についての暫定的な退職手当法がございますので、これに当る退職手当に必要な経費でございます。これは国家公務員、三公社の職員等につきまして支給をいたすわけでございますが、賃金の上昇、対象人員の実績によりまして推算いたしました結果、幾らか増加を見込みまして四億三千万円という数字を計上してございます。  以上で第一の失業対策に必要な経費の御説明を終りまして、第六ページに掲げてございます労使関係安定促進に必要な経費について御説明を申し上げます。  労使関係の安定の経費は、昨年度よりやや増額になっております。これは主として地方の都道府県に事務を委託いたしまして、労働関係の実態を的確に把握をするための経費が増額されたのでございます。三十一年度におきましては千四百二十五万円でございますが、三十二年度において千七百五十万円というふうに増額をいたしたのでございます。その結果労働情報蒐集費におきまして三千百十七万円、昨年より若干増額がされてございます。  労働教育費につきましては大体昨年と同額、やや減少しておりますが、一千七百四十二万八千円を計上してございます。これは「週刊労働」を発行したり、リーフレット、パンフレット等の資料を作成したり、映画を製作したり、労働教育の資料の製作費でございます。それと労働大学の講座を開設する経費でございます。労働大学につきましては、三十一年度予算は二カ所でございましたが、三十二年度においては東京に一カ所開設をするという予定でございます。  それから中小企業労使関係指導費というのが三番目にございますが、これは中小企業の労働問題相談所というものを、全国主要の地の労政事務所に併設をいたしておりまして、年々利用率が高まっておるのでございますが、この百カ所の中小企業労働問題相談所の運営費でございます。都道府県に委託をいたします委託費でございまして、昨年と同額の三百三万円を計上してございます。  その他労政局関係経費といたしまして、七ページの上に労政懇談会、労働金庫の監査指導、在日米軍直用労務者の紛争処理及び労働関係法施行に要する経費等々を含めまして、三千百五十九万円計上してございます。  それから労働委員会につきましては、中央労働委員会と公共企業体等労働委員会と二つございまして、大体昨年と同額、やや増額されてございますが、一億二千五百二十万五千円を計上してございます。労政局関係におきまして合計、昨年の一億九千五百三十五万六千円に対しまして、二億八百四十二万三千円、約一千三百万円の増加と相なっております。  次は、八ページの労働保護行政に必要な経費でございます。これは労働基準関係経費でございます。  まず最初に、最低賃金制度実施促進費というのが掲げてございます。この費目の内容につきましては、先ほどの大臣の御説明にございましたように、最低賃金問題に対しまして、労働省といたしましては地域的、産業別に業者間の自主的な協定等によりまして、実質的な最低賃金制度を円滑に実施するようなことが適当であるという考え方によりまして、その準備を進めているわけでございますが、予算といたしましては、中央賃金審議会を開催する経費と、それから協定促進のための委員会説明会等を開催する経費、それから実態調査をいたします経費、この三種類で三百十三万三千円、額はわずかでございますが、最低賃金制度の実施促進費として新たに計上いたしたものでございます。  それから、次の技能者養成促進費、これは昨年と同額の九百万円を計上してございます。  次に九ページに参りまして、けい肺等特別保護費がございます。これは昨年の九千二百万円に対しまして、三十二年度は一億四千二百五十三万四千円を計上してございます。これはけい肺及び外傷性せき髄障害に関する特別保護法が三十年の九月から施行に相なりまして、この法律の規定によりまして、けい肺につきましては、療養、休業、転換三種類の給付をいたしております。脊髄障害につきましても療養、休業の給付をいたしております。いずれも給付は二年間でございますので、三十年九月から始まりまして、大体三十二年度において平年度になって参りますので、給付の対象人員が増加をいたしました結果、これに要する経費増加したわけでございます。その給付費と、それからけい肺法に基きます健康診断経費でございますが、けい肺法においては各事業主が粉塵職場に働く労働者の健康診断をやることになっておりますが、経過規定といたしまして、その最初の健康診断は政府が直接これを行うということになっておりますので、その経費でございます。そのほか給付の事務費が若干ございます。  けい肺給付の内訳につきましては、九ページの下の方に支給対象の人員、一人平均の支給額等が掲げてございます。けい肺患者が七百八十八人、脊髄が二百九十八人、配置転換給付が百二十人という予定で積算をいたしてございます。  それから次の十ページに参りまして、健康診断費の内訳が掲げてございます。健康診断につきましては、昭和三十年の九月から実施をいたしまして、昭和三十年中に約七万人、それから三十一年に約二十万人健康診断を実施いたしまして、三十二年度において残りの五万九千五百五人をいたしますというと、粉塵職場に働く労働者の全部について健康診断を完了するという予定でございます。これに必要な経費を計上いたしております。これはけい肺法に基きまして国庫負担が半額でございますので、この合計額の一億四千万円を労災保険特別会計に繰り入れまして、労災保険特別会計におきまして事業主から半額の負担金を徴収いたしまして、これの二倍の二億八千万円の規模で事業が行われるということになるわけでございます。それからけい肺対策審議会等の経費も若干計上してございます。  以上がけい肺法施行に伴う経費についての国庫負担の額でございます。  その次は4の労働保護行政費でございますが、これは労働基準局、都道府県労働基準局、労働基準監督署、この系統の日常業務の人件費、事務費等でございます。昨年十二億六千五百七十万四千円に対しまして、三十二年度は十三億八千四百四十二万二千円、一億二千万円ほどの増になっております。  それから5の労働衛生研究所でございますが、これは一昨年から新しく設置をせられました研究機関でございますが、昨年度は建設をいたしまして業務の一部を開始しました。三十二年度におきまして完成をして完全に操業をするという予定でございまして、研究所の人員二十人の増加をいたしております。すでに二十人の定員がございますので、合計四十人の定員によりまして研究をいたすわけでございますが、その人件費、研究費等が二千十七万七千円でございます。  それから次の十一ページの6の産業安全研究所でございますが、これは前からございます災害防止の研究施設でございますが、そのための調査費、研究費等を一千八百八十万四千円計上いたしております。  合計して其準局関係におきまして十三億八千九百十九万七千円に対しまして、三十二年度におきましては十五億七千八百七万円、約一億九千万円の増と相なっております。  次に第四の婦人及び年少労働者保護に必要な経費でございます。これは婦人少年局関係経費でございますが、第一は年少労働者福祉施設費一千万円でございます。これは先ほどの大臣の御説明にもございましたように、働く年少労働者の保護福祉のセンターとして設置いたしたいという施設でございます。これは東京に設置をいたす予定でございまして、三分の一の補助でございます。従いまして一千万円を国庫が負担し、東京都が二千万円の負担をいたしまして、合計三千万円の施設を作るという計画でございます。事業内容につきましては、年少労働者のいろいろな生活相談あるいは簡単な技能の訓練、あるいは中小企業の事業主の労務管理の講習あるいはレクリエーションの施設というものを内容にいたしますところの年少労働者の福祉施設でございます。  婦人の職業対策でございますが、これは内職職業補導所、家事サービス職業補導所等に必要とする経費でございます。内職職業補導所につきましては、三十一年度八カ所設置をいたしておりますが、引き続き三十二年度におきましても八カ所の補導所の運営を充実して参りたいという考えで八百八十八万三千円を計上してございます。家事サービス職業補導所につきましては、現在東京、大阪の二カ所にございます。三十二年度におきましてもこの二カ所を運営して参りたい。三十一年度におきましては、一カ所新設の建設費がございましたが、三十二年度においては、一まず新設は見合せまして、既設のものの運営を充実して参りたいということで建設費が入っておりませんので、その分が減額になっております。簡易家事サービス補導施設でございますが、これは主として女子労働者の供給地の農村に設置する補導施設でございまして、昨年と同様十カ所を設置して、その運営費を五十万五千円計上してございます。  売春対策費につきましては、十三ページの下の方に書いてございますように転落防止保護更生指導費、特別広報活動費、実態調査費、周旋行為等規正強化費等でございます。なお職業補導施設費につきましては、三十一年度二百四十万円が計上されてございましたが、三十二年度におきましては、一般補導所の経費の中にこれを繰りかえまして、補導所の経費が増額せられてございますので、三十二年度においてはこの売春対策費としては計上してございません。これが七百二十八万七千円でございます。  次に十四ページの4は婦人及び年少労働者の保護行政費、これは本省及び地方の婦人少年室の人件費と事務費でございます。六千九百十六万四千円に相なっております。  次は十五ページでございますが、第五の雇用対策に必要な経費、これは職業安定局関係経費でございます。職業安定法、緊急失対法等に基きまして、職業紹介失業対策事業の指導監督その他職業安定に関する業務を実施するための安定所の経費でございます。昨年度二十五億三千七百万円に対しまして、三十二年度は二十七億九千六百万円、これは二億五千八百万円ほどの増額でございます。それから職業補導費は、一般公共職業補導所と、次のページにございまする夜間職業補導施設、身体障害者職業補導所、この三つの職業補導所に要する経費でございます。昨年四億六千三百四十一万円に対しまして、本年四億九千四百六十一万一千円で、約三千万円の増額に相なっております。設置個所、年間補導人員等は、一般公共職業補導所におきましては、三十一年度に対して三十二年度がやや減じておりますが、これ失業保険保険施設といたしまして各地に総合補導所が新設されてございますので、それに合併されるものが減少しておるわけでございます。年間補導人員は三万六百九十五人でございまざす。夜間補導所は一般補導所に併設をいたしまして夜間補導を実施するのでございますが三十二年度におきましても五十一年度と同規模で実施をいたす予定で、二千三百六十四万六千円を計上してございます。身体障害者の職業補導所、これは国が全額負担で八府県に委託をいたしておる補導所でございますが、昨年と同様八カ所の経費を九千九百三十万七千円計上してございます。その他職業安定行政のための人件費、事務費等が三億四千六百二十八万一千円、合計いたしまして職業安定所、補導所関係は三十六億三千六百九十七万円でございまして、昨年に比べまして三億二千百万円の増と相なっております。  次は十七ページにございます労働統計調査に必要な経費でございます。その第一の毎月勤労統計調査費でございます。これは先ほども御説明がございましたように、従来の調査は対象企業が常雇規模三十人以上について実施をいたしておったのでございますが、わが国の中小企業における問題は、三十人未満の企業において特に問題があるわけでございまして、これらの対策を立てます上に信頼すべき統計が従来なかったわけでございます。今回の計画におきましては、三十人未満五人までの企業につきまして、従来の三十人以上と同様に毎月調査を実施いたすという計画が一つでございます。それともう一つは、五人未満のものにつきましても、たとえば失業保険の適用、拡大というような問題が将来の方向としてございますので、一人ないし四人のほんとうの小企業につきましても年一回は調査を実施いたしたいという計画を立てておりまして、これらに要する経費として三千三十六万五千円を計上してございます。このほかに、失業保険特別会計に四百十万円の経費を計上しております。これらによって、五人以上は毎月、五人未満は年一回の調査を施行するということになるわけでございます。次の十八ページの職種別等賃金実態調査費は、昨年と大体同様の額を計上してございまして、引き続いて同規模の賃金調査を実施いたす予定でございます。その他の労働統計といたしましては、給与制度、事業所の福利厚生、労働時間制限、給与構成、労働生産性、労働関係といった面につきまして、三十二年度におきましても昨年に引き続いて調査を実施するに必要な経費一億七千七百五十六万二千円を計上してございます。労働統計調査関係といたしましては合計二億一千六百四十三万九千円でございまして、昨年に比較して約千八百万円の増加となっております。  次に、第七の国際協力に必要な経費でございます。これは国際会議諸費として六千五百十九万五千円を計上してございまして、昨年に比較して千四百五十万ほどの減になっておりますが、これは国際労働機関の分担金が三十二年度においては減少になりましたので、その分の減でございます。国際労働関係事務処理費等は、昨年よりやや上回った額を計上してございます。  最後にその他の人件費、事務費等が三億四千六百三十四万二千円でございます。  以上で労働省所管一般会計の三十二年度予算案の概要についての御説明を終ります。  次に、二冊目の資料で、労働省所管の特別会計が、労働者災害補償保険特別会計と失業保険特別会計と二つございます。これの概要を引き続いて御説明申し上げます。  一ページに総括表が出てございます。労災保険の方は歳入歳出とも二百六十二億五千八百六十九万九千円でございまして、昨年の二百五十三億五千九百四十二万九千円に比較いたしますと、八億九千九百二十七万円の増額となっています。失業保険の特別会計は歳入歳出とも三百九十六億百十九万七千円でございまして、昨年の三百五十二億九千五百六十三万二千円に比較をいたしますと四十三億五百五十六万五千円の増と相なるわけでございます。その内容が二ページ以下に掲げてございます。まず、労災保険の特別会計につきましては、保険料収入は二百三十六億三千百七十二万九千円と推計をいたしてございます。これは三十一年度の実績をもとにいたしまして、大体毎年行いますのと同じ方法で推計をいたしたのでございます。内容といたしましては、労災保険保険料の収入とけい肺の負担金の収入と二つ含まれてございます。けい肺の負担金の収入は、けい肺法に基きまして、必要な経費の二分の一を事業主から徴収いたすことになっておりますので、それの見積りを掲げてございます。これが一億四千四百六十四万五千円でございます。保険料収入とこれを合せましたものが予算の項目としては保険料収入として二百三十六億三千万円に相なるわけでございます。それから前年度繰越資金受入でございますが、これは未経過保険料の受け入れと支払い備金の受け入れと二つございます。未経過保険料と申しますのは、土建等の有期の事業で三十一年度、三十二年度の両年度にまたがりまして事業を施行いたします際に、三十一年度において全事業の保険料を払い込む場合がございます。それの帰属の三十二年度に該当する分を受け入れる額でございます。支払い備金の受け入れの方は、三十一年度の収支の予測を立てまして、これによって三十二年度に繰り越して受け入れる予定の余裕金でございまして、これが十四億六千四百十万七千円ございます。これらを合せまして前年度繰越資金受け入れば二十二億三千四百六十四万五千円ということになるわけでございます。  歳出面は五ページからございます。主たるものは保険費でございますが、これは三十一年度までの実績を基礎にいたしまして三十二年度の保険金を推計いたしましたものが百九十億八千八百万円でございます。そのほか保険料精算返還金が二億二千八百八十万六千円、これを合せたものが保険費として百九十三億一千六百八十万六千円ということに相なっております。病院等の新営費でございますが、これは労災保険法二十三条の規定に基きます保険施設といたしまして、労災病院を各地に新設いたして経営しておるわけでございますが、三十二年度におきましては十二億二千百十六万三千円を計上しております。昨年度とほぼ同規模でございますが、現在二十四カ所の労災病院があるわけでございます。そのうちの未完成の病院を完成させる経費でございます。そのほかの保険施設といたしまして、ここに掲げてございますように外科後処置、診療、義肢等の支給、療養、職業再教育というような施設がございますので、これらの経費を大体前年と同規模の五億四千四万六千円計上してございます。七ページのけい肺等特別保護費は、先ほど申し上げました一般会計負担金の一億四千万円に見合らものでございまして、けい肺法に基く給付費及び健康診断費でございまして、二億八千六百五十二万四千円を計上してございます。業務取扱費は労災保険事業運営のための中央地方を通ずる人件費、事務費でございまして、十四億二千六百九万八千円、昨年よりやや上回った額を計上してございます。公務員宿舎の施設費、は前年と同規模で、予備費が三十四億五千五百三十二万円、歳出合計二百六十二億五千八百六十九万九千円と相なっているわけでございます。  それから失業保険特別会計、これは九ページにございますが、歳入の面につきましては、保険料収入が二百七十七億六千二百万円計上されてございます。これは三十一年度の予定の収納額に対しまして、その後の労働者数の増加、賃金の上昇を入れまして積算いたしまして二百七十七億六千二百万円と相なっております。  それから運用収入は二十億九千六百七十万円を計上いたしてございます。これは九ページの下の方に書いてございますように、資金運用部に預託をいたしまして、これによって生ずる利子収入でございます。内容は預託機関によりまして利率が違いますので、それらをそれぞれ積算をいたしまして、合計二十億九千六百七十万円ということに相なるわけでございます。  次の一般会計よりの受け入れ八十一億九千九百万円でございますが、これは先ほど一般会計のところで御説明を申し上げましたような国庫負担の額でございます。  それから郵政事業特別会計よりの受け入れは、日雇い失業保険保険印紙を郵政機関で売り上げますので、それの代金を労災特別会計に受け入れる額であります。これが十億五千五百六十万六千円でございます。  その他雑収入は延滞金、追徴金、その他使用料等でございますが、四億八千七百八十九万一千円。  合計いたしまして歳入が三百九十六億百十九万七千円となります。  歳出面は保険金でございますが、これは二百三十九億九千七百万円を予定をいたしてございます。昨年度の二百四十八億三千百万円に比較いたしますと減になってございますが、これは先ほど御説明申し上げましたような本年度の実績から推しまして、失業保険の受給が減少傾向にございますので、その傾向を取り入れまして、これだけの予定をいたしたわけでございます。  保険施設費につきましては、昨年度は六億円を計上いたしましたが、三十二年度におきましては九億七千万円の計上をいたしました。  ここにございますように、総合職業補導所、簡易宿泊施設、総合福利施設等の施設の建築費並びに運芳賀に充てる経費でございます。  総合職業補導所は、三十一年度に二十三カ所でございますが、三十二年度におきましては、さらに七カ所新設をいたしまして、全国で三十カ所の設置をいたしたい。補導人員も昨年の四千四百二十人に比べまして五千六百十五人と増加する予定でございます。これのための経営費と機械器具の経費、それから新築のための新営費、これらを合せまして八億七千四百七十六万二千円を計上しております。  簡易宿泊施設は、日雇い労働者のための施設でございますが、三十一年度におきまして十二カ所の設置個所を、三十二年度においてさらに四カ所増加をいたしまして十六カ所の設置を予定いたしております。収容人員において千六百七十八人。これの新営費、事務費合計五千五百二十九万二千円を計上してございます。  総合福利施設、これも主として日雇い労働者のための託児所、食堂等を一緒にいたしました総合的な福利施設でございますが、三十一年度一カ所に対して三十二年度において六カ所を増設して、七カ所にいたす計画になっております。  その他雇用促進のつどい等の経費七百四十万円ほどを合せまして、施設費九億七千万円を計上してございます。  それから失業保険の日常業務運営のための経費といたしまして、業務取扱い賀十七億二千百二十九万円を計上してございます。  公務員宿舎施設費は昨年と同規模、同額でございます。予備費は百二十九億。合計いたしまして、歳出合計三百九十六億百十九万七千円ということに相なっております。  以上、これで労働省所管の一般会計並びに特別会計の昭和三十二年度予算の概要についての説明を終ります。
  20. 藤本捨助

    藤本委員長 以上で説明は終りました。     —————————————
  21. 藤本捨助

    藤本委員長 次に団結権、団体交渉交その他の団体行動権についての労働次官通達について説明を聴取いたします。中西政府委員
  22. 中西實

    ○中西政府委員 それでは、去る一月十四日に次官通達で労働教育指針として地方の知事に通達されました団結権、団体交渉その他の団体行動権について、その内容についてごく概略御説明申し上げます。  この通達は、出しました目的についてまず申し上げますと、かねてから、私どもは労働教育部門を担当いたしておりますので、その指針となるものを一応作っておきたいというふうに考えておったのでありますが、ちょうど昨年が労組法施行十年に当りますので、昨年はいろいろと十年記念の諸行事をいたしました。その十年記念の一環といたしまして労働教育指針を作りたいということで、実は準備を進めておったのでございますが、なかなか内容的にも膨大なものでございますし、いろいろと研究にもひまがかかりまして、昨年の暮れあたりに大体の案はできたのでありますが、仕上げが本年に入りましてようやくまとまりましたので、過般通達になったということでございます。従って、これはいわゆる行政解釈ではございまませんで、労働教育指針——われわれの部内の指針でもあると同時に、できますれば、これは労使並びに一般社会の方々にも、この内容について御理解がいただきたいということでございます。私ども内部の必要からいいましても、御承知のように、私どもの機構は、中央、地方直轄行政ではございません。私どもの末端は、知事、その下に関係の部長がおりまして、その下に労政課長がある。さらに労政事務所というものがございます。ところが、われわれとしましては、人事権も持ちませず、また予算的なつながりもないということで、従来私ども年に一回あるいは二回、全国労政課長会議を開くのでありますが、ひどいときには集まるたびに顔ぶれが半分くらい変っておるのであります。私どもほとほと困りまして、常に知事さんにお願いして、なるべく長期に一つのポストに置いてくれということを言うのでありますが、非常に異動がはげしい。もちろん中には長くいてくれるのもございますけれども、きのう農林行政をしていたかと思うと、きょうは労政をやっておる、薬務行政をやっておったものが労働行政に来ておる、こういうことで、実は地方で具体的に起りました労働問題に対して的確な判断を下し得ないような状況であります。われわれは常に言っているのでありますが、われわれは、地方で中心になってもらわなければならない人々に対する労働教育がいつもまるでざるに水を入れるようにどんどんと変ってしまうというので、非常な不便を感じておったのでありますが、そういうためにもこういった労働教育指針というものがぜひほしいということで、実は今回これを通達ということにいたしまして、自今一応この教育指針というものに基いて、諸般の考え方、いろいろの問題に対する一応の態度をきめる基準にしてもらいたい、こういう趣旨で出たわけでございます。くれぐれも申しますように、行政解釈——この通りでなければ違法だとか、そういうような性質のものではございません。こういうことが望ましいのだという、いわゆるあり方といいますか——についての指針でございます。  そこでこの内容でございますが、これはもうごくわかり切った考え方の上に立っておるのでありまして、しかもその考え方たるや、全然新しい解釈でもございませんで、全く従来の行政解釈その他われわれが労働教育に対してきました根本的な考え方の上に立ちまして、一応従来断片的に出しておりました考え方を体系的なものとして出したというものでございます。考え方のごく概略を申し上げますと、まず憲法二十八条で団結する権利、団体交渉その他の団体行動権を働労者に保障するということになつておりますが、この憲法の条章並びに労働組合法その他の労働関係法がいろいろと労働組合運動なり労使関係について規定をいたしております。その目的とするところはどこにあるかということをまずはっきりさせて、その上に立っての解説になっておるわけであります。そして憲法二十八条のあの条章は一体どういう目的を持っているか。申すまでもなくあれは経済的に地位の弱い労働者がその権利を擁護する、生活権を擁護するという必要上から団結し、そして対等の立場で経営陣と話し合う、そうしてその団結の力によりまして満足する労働条件をかちとる、こういう趣旨のためにあるのだ。この憲法二十八条につきましては学者はいろいろの説をなしております。これは権利説だとかあるいは自由権説だとか、あるいはこれは一般の通説といわれておりますが、生存権的権利説、そういうふうにいわれておりますが、そういうむずかしい表現はともかくといたしまして、この二十八条というのは対経営者との関係における権利として規定しておるのであります。一部の学者におきましては、あの二十八条というものは労働者の生活諸条件の維持改善を目的としてああいう権利が認められておるのだというのであります。つまり労働者の生活上の諸条件、これの維持改善ということになりますと非常に広くなりまして、たとえば税金を負けてくれるとかあるいは社会保障をしっかりやれとかいうようないろいろなことまでが入ってくるわけでございますが、そうではなく、われわれの解釈また通説は、この憲法二十八条というものは、対使用者、すなわち雇用条件の維持改善をはかるというのがこの憲法二十八条に認めておる権利である。これは東大その他におきましても通説になっております。この通説に基きまして私どもはすべての立論をいたして参ったのであります。そこでさらにこの憲法二十八条、ざらにそれを受けた労組法その他の諸法律は、今申しますように、結局は労使関係すべてを集団的に解決していく。つまり集団的労使関係確立、集団的に労働条件をきめていく。これのためにかかる権利が保障されておるのだということ、ここからこの中にありまする労働組合あるいは団体交渉、労働協約、争議行為、一切のこういった一連のものは、この集団的に労働条件をきめるということのためにいろいろと法律で保障したり保護されたりしておるのだということであります。  若干敷衍して申しますと、労働組合というのは、雇用条件の維持改善ということを中心にいたしまして、勤労者の経済的地位の向上をはかるために労働者の集まるものが、これが労働組合だ。そこで労働組合は団結の形によって使用者にぶつかる。それによって初めて労使が対等になる。集団的労使関係を結ぶ当事者として労働組合があるのだ。そのためにこの労働組合の結成、加入ということについて労組法によってこれが侵害されないことを保障しており、経営人がそれを侵害するようなことをいたしますれば、不当労働行為として排除されるということになっております。  次に団体交渉というのは、その労働組合が経営陣と対等の立場で労働条件を中心問題としていろいろと話し合う、これが団体交渉である。そのために団体交渉をゆえなくして拒んだ経営者は不当労働行為をなしたものであるということで、その行為の排除を命ぜられることになっておる。  それから労働協約は、結局双方で話し合った結果労働条件についてこれを書面に作成して記名捺印あるいは署名することによって労働協約となるのですが、そのなった労働協約は、個々の労働契約に優先する権利が認められております。これは結局個々の労働者が契約すると、勢い経済的に地位の差異がございますので経営陣に圧倒される。従って集団的にきめたところの労働協約には、個々できめた契約に優先する効力を認めて、個々の労働者が経営者に圧倒されることを防ぐというのが法の趣旨でございます。労働協約というものは、そういうふうに労働契約に優先する効力を持たすことによって、労使間の集団的な決定を円滑にする。そこで、たとえば事務所を貸してくれというようなことの借り貸しの問題、これあたりは何も労働協約という必要はないのではないか。単なる建物あるいは部屋の賃貸借あるいは貸借関係というのでいいのであって、労働協約というのは、労働条件を中心とした労使間の約定ということでなければならないということであります。  それから争議行為というのは、労使間で団体交渉してうまく妥結すればけっこうでございますけれども、どうしても妥結しないという場合には、労働側はそれなら今のような労働条件では働けませんというので、集団的に労務提供拒否をするというのが争議行為である。すなわち争議行為というのは団体交渉行き詰まり打開のために認められておるのであって、その場合には労務提供を拒否する。それによって経営陣も損害をこうむるかわりに、労働組合側も相当な犠性を払う。その犠牲を彼此較量して、それでもやはりそんな条件では働けないというのが争議行為であり、従って争議行為というのは労働者が集団的に労務提供を拒否するというのが本体である。  以上申しましたごとく労働組合、団体交渉、労働協約、争議行為というのは、一連の集団的労使関係確立、集団的に労働条件を決定するということのためにこれが制度として認められたのだ。しかも意法上の制度として認められたものである。憲法二十八条団結権、団体交渉その他の団体行動権というのは、今申しましたような趣旨で、これが運用されることを期待しておるものである、ということをこの指針の中で申しておるのでございまして、今のような考え方の上に立って若干具体的にそれが敷衍されておる。これがこの指針の内容でございます。なお、詳細にはまた申し上げる機会もあるかと思いますが、一応概括的に申し上げれば以上のようなことでございます。
  23. 藤本捨助

    藤本委員長 説明はこれで終了いたしました。  次会は公報をもってお知らせいたすことといたしまして、本日はこれにて散会いたします。    午後三時五十八分散会