運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1957-04-04 第26回国会 衆議院 国土総合開発特別委員会 第10号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十二年四月四日(木曜日)     午前十一時二十五分開議  出席委員    委員長 五十嵐吉藏君    理事 川村善八郎君 理事 志賀健次郎君    理事 薄田 美朝君 理事 竹谷源太郎君    理事 渡辺 惣蔵君       愛知 揆一君    伊藤 郷一君       田中 正巳君    本名  武君       松澤 雄藏君    三浦 一雄君       北山 愛郎君    小平  忠君       中島  巖君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 池田 勇人君         通商産業大臣  水田三喜男君         運 輸 大 臣 宮澤 胤勇君         建 設 大 臣 南條 徳男君         国 務 大 臣 石井光次郎君         国 務 大 臣 宇田 耕一君  出席政府委員         北海道開発政務         次官      中山 榮一君         北海道開発庁次         長       田上 辰雄君         経済企画政務次         官       井村 徳二君         総理府事務官         (経済企画庁開         発部長)    植田 俊雄君         工業技術院長  黒川 眞武君         運 輸 技 官         (港湾局長)  天埜 良吉君     ————————————— 四月四日  委員笹山茂太郎君辞任につき、その補欠として  本名武君が議長の指名で委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  北海道開発公庫法の一部を改正する法律案(内  閣提出第六五号)     —————————————
  2. 五十嵐吉藏

    五十嵐委員長 これより会議を開きます。  北海道開発公庫法の一部を改正する法律案を議題とし、質疑を継続いたします。竹谷源太郎君。
  3. 竹谷源太郎

    竹谷委員 私は北海道東北開発に関しまして、大蔵大臣に二点だけお尋ねをいたしたいと思います。  その第一は、今回北海道開発公庫法を改正をいたしまして、東北に対する財政投融資をやるということで、北海道東北開発公庫と名称を改め、東北に対する開発上の金融機関たる性格を持たすことに相なるそういう法案提案になっておりますが、本委員会における質疑応答過程におきまして、企画庁長官北海道開発庁長官並びにその事務当局は、理想としては北海道東北分離して別々に開発公庫を設ける方がよろしい、暫定的に一緒にするかのごとき答弁がたびたびなされておる。この開発公庫につきましては、財政を担当する大蔵大臣として、重要な共管になっておるという点からも、しかも財政の元締めであります大蔵大臣のこれに対する御所見を承わっておきたい。大蔵大臣もまた、これを理想としては別々の方がいいので、追って分離をするというふうにお考えになっておられるかどうか、これをお尋ねしたいと思います。
  4. 池田勇人

    池田国務大臣 昨年北海道開発公庫ができまして、まだその緒についたという程度でございます。しかるところ、また今年度より東北開発のための機関が必要であるという強い要望がございましたので、東北の方にもそういう方面仕事をし得る機関を設けようと思ったのでございますが、何分にも北海道東北は、地理的にも、また実情から見ましても、似ているところもございます。また今現実の問題として、別々に二つ作るのもいかがかと考えまして、当分のうち、両方を北海道東北開発公庫でおやり願った方が、事務的にも実際的にもいいんじゃないかと考えまして、一緒にいたしたのでございます。これは理想とか何とかいう問題でなしに、現実の問題として、業務が非常に拡大せられ、必要性が現われたときには、これを分けるのも一つ考え方と思いますが、まだ東北の方にいたしましても、四、五十億程度のものでございますし、北海道の方もようやく緒についた程度でございますので、一緒でやった方が、事務の簡捷その他から見てもいいという結論に達しまして、一緒にいたしたのであります。将来の問題としましては、繰り返すようでございますが、仕事の分量その他によって考えることにいたしたいと思います。
  5. 竹谷源太郎

    竹谷委員 昨年は北海道開発公庫は八十億の資金を持っておった。本年度は百六十九億、こういう数字であります。そこで今大蔵大臣の御答弁によりますと、資本量業務量もふえたならば、将来分離するということも考えられる場合がある、こういう御答弁でありますが、しからば、一ヵ年にどの程度財政投融資北海道東北開発公庫がやるようになったならば、分離をする必要があるのか、それとも、ここ当分予測し得る範囲では、分離する必要はないとお認めかどうか、重ねてこれをお尋ねしたい。
  6. 池田勇人

    池田国務大臣 先ほど申しましたごとく、事業の拡張、複雑さ、いろいろな点から考えるべきであって、今直ちにいつからということは、なかなか申し上げかねると思います。
  7. 竹谷源太郎

    竹谷委員 この開発公庫は、北海道東北開発公庫債券を多額に発行する、そういう建前になっておる。そうしたものを、今度はまた分離するというようなことになると、いろいろの問題が起きるであろうということが第一点。もう一つは、これはどれだけに資金がふえるかわかりませんけれども、何千億という膨大な資金を運営している政府関係金融機関もあるわけであります。しかるに、そう多くない、せいぜい何百億かの程度が当分の状況であろうと思うのでありまするが、これを分けるというようなことになると、二重に事務費もかかる。従って、今のところ九分融資をするということになっておりますが、これは当然三分なり五分なりの安い金利でなければ、あまり採算的に恵まれないであろうこれから開発しようという地方における企業の利潤は多く見込まれません。従って、できるだけ安くなければならない。九分は実は高過ぎる。これを安くする意味からも、これを分離するというようなことは、金利を高からしめ、また国の財政負担を多からしめることになるので、いろいろ考慮を要する問題が多いと思う。大蔵大臣はこの点どうお考えであるか、重ねてお尋ねしておきたい。
  8. 池田勇人

    池田国務大臣 万が一分ける場合におきましても、御指摘の、債券を発行しておるから分離が困難ということにはならぬと思います。それから金利九分の点につきましては、金利は安いに越したことはありませんが、今北海道開発公庫の出しておりまする状況を見ますると、必ずしも金利が安くなければ、立っていけないというふうな事業ばかりとも聞き及んでおりません。普通の銀行が出すような相手方に出しているやに聞いております。従いまして、金利の点は、融資対象を見まして考えなければならぬと思うのでありますが、現状では九分程度でもやっていけるのではないかと思います。それから、一緒にいたしました理由も、今のような事務簡素化経費の節減等々を考えた結果でございまして、分離する方がいいか悪いか、あるいはいい場合においても、いつするかということは、もっぱら将来の事業状況によってきめるべき問題だと思います。
  9. 竹谷源太郎

    竹谷委員 今大蔵大臣から、九分でもやれるような事業が多いというお話があった。昨年度北海道開発公庫金融をいたしましたものを見ますと、これはまだ詳しく質問をしておりませんので、その明細は私まだわかっておりませんが、ここに資料として提供されておるのを見ましても、一億円以上の資本金を持つところの会社が二十二、それから一億円未満三千万円までの会社に対して二十一、三千万円以下一千万円以上に対して二十九、これらの会社融投資をしたか、あるいはする予定である。しかも金額は一億円以上のような大きい会社のものが多い。そうなりますると、北海道東北開発のための金融と言いながら、結局巨大なる資本家、それは主として本社が東京にあり、工場全国各地に持っており、北海道にも持ち、あるいは新たに設置しょうというようなものでございまして、これは自分の力でもやる能力がある大きな資本を持つところの法人である。そうなりますと、それは高くてもやれるかもしれない。大部分、半分あるいはそれ以上は、自己調達をし、一部をこの開発公庫から借りる、こういうことでありましょうが、しかしながら、中どころの大きくない、また自己資金も持たない、そして北海道東北開発効果には非常に貢献するところが大きく、しかし採算はなかなか困難である、しかも、やらなければならぬ、こういう事業こそ、北海道東北開発のために大いに国家財政資金等を投入しなければならぬ。そういうものには金利が高い、こういうことになる。かつて計画造船をやりました船会社に対しましては、三分五厘なり五分なりの安い金利でこれを助成した。これと同じような助成をしなければならぬ。なかなか採算の困難な事業こそ、今後東北北海道奨励をしていかなければならぬ。こういう観点からいって、九分は高くない、それでも大いに産業奨励ができるという考え方では、とうてい北海道東北ほんとう意味開発はなされない。これは一部資本家のために金融をつけてやる便法というようなことになると思う。この点はあとで北海道開発公庫の昨年のやり方等について、もっとお尋ねをしなければならぬ点でございまするが、これは大蔵大臣として、将来北海道東北開発という問題に関して財政融投資をする場合に、十分考えを改めてもらわなければならぬ。われわれ北海道東北開発のために、財政融投資を大いに熱望するものではありまするが、中央の大資本家北海道東北産業的に進出をしょう、あるいは既存の工場を拡張しょうというのに対して、国家財政資金を無理をして投入するというようなことは必要ないと思う。むしろ中小の、とても国家の援助なくしては採算の困難な、そして開発効果の大きい産業を助長する方向に進むべきであると思う。こういう意味合いにおいて、昨年度における北海道開発公庫やり方には非常な不満を持っておる。このようなことをまた東北において繰り返すのでは、せっかくこの公庫を作りましても、真に一般の人々にその恩恵の及ぶような開発産業というものが発達をしない。そういうことを最もおそれるものでございまして、こういう点、大蔵大臣は関西の出身であり、恵まれない北海道東北事情を知らないかもしれないが、しかし、これは十分の認識の上に立って、国家財政資金投融資考えてもらいたいと思うのでありまするけどれも、御所見を承わりたい。
  10. 池田勇人

    池田国務大臣 これは北海道開発公庫設立趣旨から申しまして、私は必ずしも中小企業にばかり出すべきものと考えるのは、いかがかと思います。要は北海道開発に資することが主でございます。だから、原始産業部門におきましても、いろいろな点で北海道開発のためになるものであれば、資本金その他によって区別すべきものではないと思うのです。あくまで北海道開発になればいい、こう私は考えておるのであります。しからば、同じような事業資本金が多い少いとか、あるいはどういうふうにするかという問題は、やはり個々の場合に、公庫において十分法律趣旨に沿ってやっていっていただきたいと思います。なお、私も大体北海道のことを知っておりまするが、とにかくこの事業が、設立趣旨に沿いまして、ますます拡充されることをわれわれは希望いたしておるのであります。
  11. 竹谷源太郎

    竹谷委員 もう一点は、これは前の国会で、東北北海道開発関係の深い各界の人々参考人としてこの委員会に呼んで意見を聴取したのでありまするが、そのときに岩手県の知事から、地方財政に関しまして意見の開陳があった。その意見の中に、北上特定地域開発計画事業費の問題で、その事業のために投資をする割合が、国は六三%・県は三三・二%・市町村は三・八%であったにかかわらず、開発による財政的はね返り効果は、国が八二・一%、県が二一・六%、市町村が六・三%となっておる、こういう事情であるから、未開発地域における開発は、財政的にも国に非常に利益である、こういう点を非常に強調しておるのでございます。今回、政府提案東北開発促進法の中で、地方財政再建整備の団体の特に重要な、企画庁並びに自治庁長官が定めた特殊なものについては、二〇%だけ補助率を上げることになったのは、こういう東北地方要望の一部分をいれたことになるのでございますが、これはごく一部だけであって、その他、北上特定地域総合開発計画とか、いろんな問題をたくさん取り扱っておるのでございますから、この点は大蔵当局として、今後東北開発のために特に留意してもらいたい。経済企画庁東北開発に関していろいろ調査した報告をいたしておりまするが、その中で、東北地方に対しても、北海道に準ずるような国の特殊な財政的措置が必要であるということを強く述べております。  もう一つ東北七県に対しまして、従来公共事業費がどれだけ出されておったかというと、これは年によってまちまちでありますが、昭和二十七年から二十九年までの三年間の平均をとってみますと、総額の一二・一%にすぎない。ところが面積において約二一%、人口において一四%を持っておる。しかも、開発のための先駆とならなければならない公共事業費が、このように非常に低額であるということが、従来東北開発のおくれた原因になっておるわけである。これについて本年度は多少の増額を見ており、その他の措置も講ずるわけでありますが、こういう点、たくさん出さないと、従来おくれておったのを取り戻せない。進んで一そう公共事業の施設をしなければ、なかなか東北開発は進まないのであります。今回政府提案の三法によりまして、いろいろなことをやるように見えますけれども、その事態は、東北開発審議会を作り、財政再建整備をやり、地方自治体の中の特殊な事業に対する補助率を二〇%上げる、それから開発公庫でもって四十五億の融投資をする。これは主として鉱工業になってしまうわけである。それから東北興業株式会社が、二十五億ばかりで、今までの仕事を増大するなり、新たな仕事をしよう、こういう案であります。東北開発の基本的な土台となるものは公共事業であるが、明治初年以来何十年にわたって、よそよりも非常に少い公共事業費しか投ぜられておらない結果、産業立地条件整備が非常におくれておる。だから、これを今までの倍にも三倍にもしなければ、せっかく財政融投資をし、あるいは東北興業にたくさん金を出して鉱工業の発展をはかりましても、採算がとれないから、かつて東北興業株式会社のたくさんな事業がみなつぶれたと同じようなことになってしまう。そして大して東北開発効果をもたらさないという結果になる。こういう点に関しまして、東北開発を今後推進するに当りまして、大蔵大臣として今後なお一そうの財政的配慮をしなければならぬと思うが、御所見はいかがであるか、承わっておきたい。
  12. 池田勇人

    池田国務大臣 三十二年度におきましては、お話通り、いまだかつてない東北への予算の計上をいたしたのであります。また東北開発公庫といい、東北興業といい、あるいはまた東北開発促進法といい、いろいろな手を一度に打つことにいたしたのであります。従来の公共事業につきましても、昨年度二十億を五十六億と、三倍近い公共事業費を見込む等、画期的な措置を講じたのであります。私はこれによりまして、立ちおくれた東北がだんだん立ち直ってくることを期待いたしております。ただ問題は、予算でこういうふうなことをやりましても、実際の問題として、ほかにネックがあって、たとえば電力の不足等東北の今後の振興の隘路になっておることも知っておるのでありまして、予算的措置を講ずると同時に、民間会社におきましても、産業復興のための一段の努力を期待しておる次第でございます。北上川の問題につきましては私まだ聞いておりません。企画庁の方からお答えになると思いますが、いずれにいたしましても、東北開発促進法によりまして、府県市町村に対しまする補助金も、他の府県より特別にふやすようにいたしておりますから、今後は相当見るべきものがあると考えております。
  13. 五十嵐吉藏

  14. 愛知揆一

    愛知委員 ただいまもお話がありましたように、今回東北開発関係について、政府として相当思い切った施策を各方面にわたってやられることになりましたのは、まことに喜びにたえないわけでありますが、それに関連して大蔵大臣にお伺いしたいのは、次のようなことであります。ただいまもお話がありました通りに、政府施策も非常に大切であるが、同時に、関係の者の自発的、画期的な努力がこれに伴わなければならぬということは、まことにごもっともでありますが、それについても、私はこの際、資金貯蓄といいますか、民間からの吸収ということ、それから一千億の減税ということが的確に行われるというようなことが、この民間協力ということと相関連して、非常に必要なことだと思うのであります。たとえば貯蓄奨励という問題について、収入の一割を貯蓄いたしましょうというようなスローガンが全国画一的に行われておる。これはもう一歩進んで、各地の特殊的な事情によくマッチするような貯蓄奨励の方策が講ぜられることが望ましいと、かねがね私は考えておったのでありますが、たまたま今回国策として東北開発が脚光を浴びてくるようになったわけでありますから、この東北開発問題について、東北人たちほんとうに腹から認識を新たにして、これにわれわれも絶対的に協力をするという気がまえを、こういう面からも巻き起したいものだと思うのであります。そういう点について、ただ単に抽象的に収入の一割——国民所得地域によって非常に違うわけでありますから、率直に言って、東北民に対して収入の一割を貯蓄いたしましょうということは、なかなか実行も期し得ないし、また不適当な面もあると思うのでありますが、かりにその率が少くても、その中に筋金の入った考え方と、それに基いた啓蒙があることによって、初めて効果を上げ得るのではないかと思いますけれども、その面について一つぜひ政府においても考えていただきたいということが一つであります。  それからいま一つは、いよいよ四月の一日から千億減税が施行されることになったわけでございます。これについては、たとえば公務員その他の月給取りについては、目に見えて今月の俸給日から、なるほどこれだけ減税があった、ということが的確に認識をしてもらえることになるわけでありますが、同時に、東北の従来までの特殊な貧困の状態からいってよく耳にすることは、たとえば東北農民層あるいは中小商工業の階層において、減税にはなったそうだが、自分たち所得査定等については十分の配意が行われておらぬ、実額の税額がかえって減税前より高くなったということは、従来の減税が行われたときにも折々耳にすることであり、また実際そういううらみがあったように思うのであります。こういう点、そういう声が起らずに、国民的な支持が基礎になって、徴税が円滑に行えるようにということについては、特に十分配慮を願いたいと思うのであります。実は東北開発促進法案をわれわれが考えましたときにも、この法案の上に東北実情に応じたような税についての考慮を払ってもらいたいということで、原案の作成の過程においては、ずいぶん熱心な議論があったわけであります。これは税の体系その他の大局から考えて、その項目は落すことにいたしたわけでありますが、そういう経過もあったことでありますだけに、特にこの点については十分な御配慮を願いたい。その貯蓄の問題及び税について、の大蔵大臣のお考えをまず承わりたいと思います。
  15. 池田勇人

    池田国務大臣 いつの時代でもそうでございまするが、特に日本経済のこの上ともの拡大強化をはかりますためには、何をおいても貯蓄増強が必要でございます。幸いに日本国民はこ一の貯蓄に対しましては非常に熱心でございまして、昭和三十一年度におきましても、九千四百億円の貯蓄目標が、産業拡大等によりまして、一兆二千二、三百億円まで予想外増強を見ております。今年におきましても、一兆四千億の貯蓄目標を立てて、ぜひとも目標達成、突破をやっていきたいと考えております。大体今までの貯蓄奨励についてのいろいろな標語はありますが、一番世界で貯蓄奨励についてうまい手をやっている国は、イギリスと聞いているのであります。ただいま日本銀行大蔵省と共同いたしまして、イギリス貯蓄奨励のいろいろな方法を検討いたしまして、大々的に貯蓄増強に向っていきたいと思っております。これもやはり全国画一的な方法よりも、愛知さんのおっしゃるように、地方別に、また都会といなかとに分ける、いろいろな方法があると思いますが、今、鋭意日本銀行大蔵省で検討を続けていっている次第でございます。  次に税の問題でございますが、公務員等につきましては、さしむきこの四月の俸給から影響いたしますが、一番影響するのは年末調整においてであります。毎月の月収でももちろん減税効果が現われますが、十二月の年末調整でそれがフルに現われてくると思います。ただ問題の源泉徴収をいたしません農業あるいは中小企業方面におきましては、ただいま減税の声がありましても、今まで納めてもらうのは旧税法で、減税のない税率によるのであります。せっかく政府が去年の暮れから千億減税といっても、何ら影響がないじゃないか、という気持があると思います。それは税法で、昭和三十一年度の税金は、三十二年の一—三月の間までに取ってしまう、こういうことになりますので、影響は直ちには出ませんが、三十二年度につきましては、相当の減税納税者にわかると思うのであります。ただ問題は、税法上の減税はあっても、所得増加等によりまして、それがふえる場合もある。これはやはり例外的にそういう場合もありますが、それは減税したよりも、所得の基本がふえるので、やむを得ぬことと考えております。しかし三十一年度の六百二、三十億円に対しまして、三十二年度は五百七、八十億円を見起しているのでございまして、全体といたしましては減るのでございます。万が一、所得がふえたために、減税をしても、減税をしない前よりも多い場合も、例外的に出てくることもあろうかと思いますが、われわれといたしましては、できるだけそういうふうなものにはよく説明をいたしまして、誤解のないようにいたしたいと思います。  また地方別所得税についての問題があるのであります。これは日本のように細長く、寒いところから暖かいところというふうな国におきましては、所得税率を変えた方がいいのじゃないかという議論が前からあるのでございます。これは施行上なかなか困難でございまして、北海道あるいは東北には、石炭手当等公務員俸給取りには出しておりますが、農業あるいは中小企業には出しておらない、これは何とかしろという議論も一応聞けるのでございます。こういう場合におきましては、九州の方は暖かいから高くする、しかし九州は暖かいから高くするといっても、九州にも非常に寒いところもあるような状態でございまして、所得の税の率をどうこうするということは、なかなか困難だと思います。従いまして、必要経費その他の見方によりまして、所得額につきまして徴税の手心を加えることが必要であろうかと思います。また昔問題になりました土地の賃貸価格の問題につきましても、また家屋の賃貸価格の問題につきましても、課税標準決定のときに相当考慮していくよりほかには、今のところなかなかむずかしい点があるのでございますが、いずれにいたしましても、財政金融方面においては、特にその地方事情十分考慮に入れまして、適正な行政をやっていきたいというつもりで進んでおるのであります。
  16. 愛知揆一

    愛知委員 その次に具体的な問題で一、二伺いたいのであります。北海道開発公庫については、その業務とするところは、従来の法律の第十九条で規定されているわけでありますが、たとえば融資対象になる事業は、抽象的に五つの項目に規定されておるだけであって、その業務運営の細部については、業務方法書によって規定されておるわけであります。従って業務方法書の内容というものが、実際上は非常に重要な意味を持つのであります。そこで、これも先ほどの質疑応答にもちょっとあったのでありますが、私は大蔵大臣のお考えは、こういう特殊な公庫については、やはりその土地の事情に応じて運営されることが大切であるという御趣旨であると考えるのでありまして、たとえば事業対象になる資本金等についても、必ずしも資本金が幾ら以上でなければならぬとか、あるいは資本金は相当小さくとも、これはこの公庫の目的とするところからいって、適当と認めるものはその融資対象に取り上げていいのである、こういうふうに私は理解したいと思うのでありますが、その点はいかがでございましょうか。
  17. 池田勇人

    池田国務大臣 その点は、根本観念あるいは言葉の上では、その通りと申し上げたいのでございまするが、実際問題となりますると、第十九条辺規定してありまするものに沿うか沿わぬか、非常に疑問の起る場合があると思うのであります。もちろん、これは特別の趣旨によりまして設立した、その土地の開発のための公庫でございまするから、その土地の事情に十分マッチするようにしなければいけません。しかし、あくまで趣旨産業開発ということが主だと思います。従いまして、いろいろ掲げたあとで、「前各号に掲げるもののほか、産業の振興開発のため特に必要な事業で主務大臣の指定するもの」。こういうふうになっておりますので、土地の事情に沿ったやり方ということと、設立趣旨ということを兼ね合せて考慮しなければならぬ問題だと思います。
  18. 愛知揆一

    愛知委員 そこで一例をあげますと、観光事業でありますが、これは申すまでもなく、国内的にも、国際的にも、わが国の観光事業というものが重要な産業として認められてきたように思うのであります。そこで、ごたぶんに漏れず、東北北海道については、観光事業対象として適当であるところは非常に多いのでございますが、従来これに対する施策というものが非常に乏しかった。東北だけで申しましても、すでに国立公園になっておるのは磐梯朝日国立公園、陸中海岸の国立公園、それから十和田と八幡平が合わさって、これも国立公園ということになっておるわけであります。さらに松島、金華山、蔵王山を結ぶ土地が国立公園の対象として調査中であるわけであります。これらのように、観光地帯として、すでに国立公園として取り上げられておるところが相当多い、そのほかにも適地が相当あると思うのでありますが、運輸省の調査で見ますると、過去八年間において、東北地方の観光関係事業資金の融通を受けたものがわずか一億九千万円で、従って年平均では二千四百万円、これをさらに東北七県あるいは六県に分けてみると、一年に三、四百万円というような見当になっておるので、まことに微々たるものであり、また他地方に比べても、その較差というものが非常に大きいわけなのであります。そこで、私どもはこの公庫法の改正に際して、できるならば観光事業ということを法律業務の上に明文化してもらいたいものだということで、いろいろと検討したのでありますが、先ほど申しましたように、必ずしも法律に明文がなくとも、業務方法書なり、あるいは事務取扱い要領に明文化するというようなことについて、一つ特段のお考えを願いたいと思うのでありますけれども、この点についての御所見を伺いたいと思います。
  19. 池田勇人

    池田国務大臣 観光事業と申しましても、道路も入りましょうし、旅館も入りましょう、いろいろの点があると思うのでございますが、東北の、観光一という言葉は書いてはございませんが、やはり土木、交通事業をふやしておりますのも、その一助にと考えておる次第でございます。この開発公庫が、旅館その他の設備の拡充に金を出すことがどうかという問題になりますると、ただいまのところでは直ちに賛成ができないと思うのであります。しかし、これはやはり道路のでき工合が、あるいはそのところの観光の事業その他産業のあれになるという認定が個々の場合につきますれば、これはやはり十九条の業務規定の第五号によりまして、協議に応じてもよろしゅうございますが、頭から今の法制のもとで、観光事業にも出すのだ、旅館の建設にも出すのだということになりますと、この点は今のところはなかなかむずかしいのではないか、私はこういうような気持を持っております。
  20. 愛知揆一

    愛知委員 くどいようでありますが、道路についても公共事業関係においては、今回の予算でも相当の増額をしているわけでありますけれども、たとえば道路公団の事業として取り上げられておる有料道路等については、ほとんど東北には取り上げられるものがないわけなのであります。それからいま一つ、旅館その他というようなお話もございましたが、私の申し上げる観光事業の中には、たとえば観光バスの事業であるとか、あるいは観光のためのロープ・ウエー、リフト事業、それから観光の遊覧船の事業というような、いろいろな施設が含まれるわけであって、これは必ずしも公共事業対象となるものではないわけでありますので、大体の御趣旨はわかりますけれども、こういう点について、公庫業務方法書の作成、あるいは今後の運営について特に御配慮を願いたいと思うのであります。  なお、これと同様の問題でありますが、製塩関係事業であります。ことに機械製塩に対する融資の問題は、従来は農林漁業金融公庫が、機械製塩について、法人の事業等についても特に融資対象になるということになっておったようではありますけれども、考えようによっては、この北海道東北開発公庫対象として考えられることも適当ではなかろうかと思うのであります。大体この機械製塩事業というものについては、どうも基本的に、政府があくまで助成、支援をするのであるか、あるいはもうその必要がないのであるかというような根本の考え方についても、若干の方針の動揺があるやに思われるのでありまして、そういうことがこの金融の問題についても影響をしているかと私は考えるのでありますが、この点についてはいかようにお考えでございましょうか。これはあるいは事務当局からでもけっこうであります。
  21. 池田勇人

    池田国務大臣 観光道路とそれから道路公団の問題でございまするが、私は、道路公団が二十年の償却という基本的な観念でやって参りますると、東北の方にはなかなかつきにくいのじゃないか、こういう気がいたしておるのであります。今、自分で検討はいたしておりまするが、やはり同じ有料道路でも、二十年の償却を、十年以内で償却のできるところもある、あるいは四十年くらいかかってもなかなか困難なところもあります。こういう問題につきまして、私は今までの考え方に再検討を加えて、全国にできるだけ有料道路をつけることが必要ではないか、こういう気持を持ちまして、非常にもうかり、早く償却できるところも、なかなか償却できないところも、ある程度プールするような考え方でいくべきではないか、こういう気持を持って、今、自分で検討いたしておるのでございます。従いまして、私は東北方面にも有料道路をつけたいというので、今のところは申し上げられませんが、検討を加え、産業道路というふうな気持でおるのであります。  次に、製塩事業に対しましての融資問題でございまするが、愛知さん御承知の通り、従来日本の塩につきましては、食料塩は国内自給でいこう、工業塩は輸入によろう、こういう方向できておったのでございます。大体食料塩は百十万トン程度が必要なのでございます。従来は、年によって違いまするが、五、六十万、六、七十万トンの状況でございましたが、最近製塩方法が流下式になり、あるいは共同煎熬の方法等、技術の進歩、資金の投下によりまして、食料塩はほとんど国内で自給ができるような状況に相なったのでございます。在来の塩田の改良によりまして、食料塩が自給できるというふうな状態になったところに、今度電気製塩等が出て参りまして、今百十万トンをこえるような生産能力ができる。しかし原価で申しますると、流下式をやりましても、なかなか一万円以下にはなりにくい。在来は一万三千円でございました。そこで専売公社といたしましても、機械製塩をこれから伸ばしていくかどうかという問題については、相当の悩みがあるようでございます。御承知の通り、外国から塩を輸入しますれば、ほとんど船賃がその七、八割を占めるという状況でございます。しかも七千円あるいは五千円程度で内地へ着く、こういう状態でございますので、今の製塩事業をこれから拡充していきます場合に、安い外国の塩をやめて、国内で高いものを作るということにつきましては、そこが専売公社の赤字になって参りますので、非常にむずかしい問題に差しかかっておると思うのであります。従って、今は金融の面、事業という面よりも、外国製塩と国内製塩の関係、そうして消費者価格の問題とからみ合いまして、非常にむずかしい状態に相なっておるのであります。公社の方で十分見通しをつけまして、消費者価格の問題、製造原価の問題は、これから再検討していかなければならぬ問題だと思っております。
  22. 愛知揆一

    愛知委員 もう少し突っ込んでお伺いしたいのでありますが、時間もございませんので、以上をもって私の質疑を終りますけれども、最後にお願いをいたしておきたいのであります。  先ほども申しましたように、この公庫の今後の運営については、取扱い要領といったようなものの作成が非常に大切であると思うのであります。詳しく申し上げませんけれども、たとえば東北の特殊性とでも申しまするか、特殊の立場から言いますと、亜炭とか地熱の利用とか、それから海水の利用工業とか、あるいはまた合金鉄、ビニールとかいったようなものが、今後の一つ大きな特色となって、東北工業の中心課題になるのではないかと私は思いますので、これらの点は、必ずしも従来の北海道開発公庫北海道だけを対象にした場合とは、多少要素が変ると思いますから、十分関係筋の意向を徴せられて、取扱い要領等においては、特に東北の特殊性ということが取り上げられますように御配慮願いたいことを、最後にお願いをいたしまして、私の質疑を終ります。
  23. 五十嵐吉藏

    五十嵐委員長 北山愛郎君。
  24. 北山愛郎

    ○北山委員 かいつまんで二、三点大蔵大臣にお伺いします。  第一点は、大蔵大臣としての国土総合開発に対する基本的なお考えを聞きたい。御承知のように、国土開発昭和二十五年に法律ができ、北海道開発法もできて以来、いろいろな計画がなされておりますが、その計画がさっぱり進捗しておらぬのです。十九の特定地域事業費一兆九千億、それ以外に十八地区の調査地域が一兆二千億ですか、合せればそれだけでも三兆一千億くらいになる。計画は進んでおりますけどれも、事業の進捗がさっぱり見られぬ。これはいろいろな原因があると思うのですが、私どもの見るところでは、やはり財政金融を預かっておる大蔵省においては、総合開発に対する理解が足りないんじゃないか、こういうふうに思われるのです。今年度東北に対する公共事業費につきましても、相当大幅にふやしたと大臣はお話になりましたが、これも大蔵省自体が進んでふやしたんじゃなくて、やはり関係の実施官庁であるとか、あるいは与党の方の圧力であるとか、そういうことによって、あとで公共事業費予算をもぎ取られたという方が実際に近いんじゃないか。毎年このようなことをやっておるのです。だから、私は、どうも今までの総合開発というものにブレーキをかけておるのは大蔵省ではないか、またこの数年間、総合開発法ができてから大蔵大臣の地位に長くおられる池田さんがその——ではないか、というような感じを持つんです。そこで基本的な考え方ですね。後進地域北海道なり東北なり、そういうような開発について一体大蔵大臣はどういうふうにお考えになっておるか。公共事業費というものが好ましくないというならば、何か別の方法についてお考えがあろうと思うのです。だから、率直なところ、ここで御所見を承わっておきたい。
  25. 池田勇人

    池田国務大臣 国土が狭隘で、人口が非常に多い日本でございまするから、国土を開発することは、ぜひ考えなければならぬのでございます。しかし、ものには程度と順序があるのでございます。私が金を出さぬ——だとおっしゃいますが、私は何ぼそういうことを言われても、何でもございません。国がよくなればいいのでございます。やはり私は、国土開発が必要であるという念には燃えておりまして、できるだけのことはいたしておるのでございます。しかし、国土開発が必要であるというので、日本経済をこわしちゃいけません。日本経済を徐々に——徐々にと申しますか、急速にと申しますか、とにかく確実な道で、早急にやっていくというのが主眼でございます。大蔵省はもぎ取られたとおっしゃいますが、もぎ取られてけっこうでございます。私は、もぎ取られるくらいなのがいいので、ほどほどの予算ができるのは、そういうことでできると思うのでございます。決しておろそかにはしておりません。じみちに、しかも力強くやっていこうというのが、私の考え方でございます。
  26. 北山愛郎

    ○北山委員 先ほど——だと言った言葉は、私ちょっと口がすべったと思いますので、この際取り消しておきます。しかし、ただいまのお答えでは、私の方はどうも納得をしないのです。やはり大蔵省は、毎年々々予算査定については、公共事業費を、ともすれば減らそうというような努力をなされておるようです。やむを得ずもぎ取られる。もぎ取られる方がけっこうだと大臣は言われましたが、何かそこには公共事業費が好ましくない、何とかこれは減らしたいというようなお考えがあって、そうなさるんじゃないかと思うのです。私も公共事業費の今のあり方については、いろいろ問題点はあろうかと思うのです。ですから、公共事業費は今のような格好でなくて、どういう格好で総合開発を進めるのが適当であるとお考えになっておるか、もう少し積極的なお考えを聞きたい。  それからもう一つは、少くとも国土総合開発法というものがあって、それによってそれぞれまじめな計画が進められておるという以上は、やはり大蔵省としても、その計画の遂行のためには、十分な協力といいますか、その方針に沿うてやらなければならぬと思うのです。ところが、今のような膨大な、特定地域、調査地域を合せただけでも三兆円以上の事業費というものを、一体どういうふうにこなしていくのであるか。それ以外の北海道開発とか、あるいは各省が作っておる道路の計画、あるいは橋梁の計画、治山治水の計画等を合せれば、何兆円というような膨大な計画ばかりがごろごろ存在して、それが財政金融の上にはちっとも乗っておらない、そういう点についてはどのように考え、どういうふうに処理されようとするのか。そういう計画というものを一つ整理をし、実行できるようなものにしてもらいたいというなら、それでもよし、その辺のところがもやもやしておるということは、私はやはり、どうも大蔵省がこの総合開発については積極的な熱意がないのだというふうに考えざるを得ないので、もう少し突っ込んだ御意見を承わりたい。
  27. 池田勇人

    池田国務大臣 公共事業費を決してきらっておるのではございません。私は本年度予算につきましても、多年問題でありました多目的ダムの特別会計、特定土地改良の特別会計を作ります等、いろいろ公共事業の合理的な拡充につきまして、考慮を払っておる次第でございます。公共事業費につきましての改正は、近年にないような改正であり、進歩であると私は考えております。たくさんの多額に上るこの総合開発をどうしてやっていくかということでありますが、どうしてやっていくかという問題は、先ほど来申し上げておりますように、日本経済を拡大し、それがやれるような経済の力を持たすということでございます。それで、今三兆円とか、あるいは二兆円の問題はなかなかむずかしい、それでは一体、これをしぼるということも、またむずかしゅうございますから、片一方では経済を拡大して、そういう国土総合開発が十分にできるようにやっていくべきだと考え、またそれが経済をよくすることでございます。過去六、七年前のことを考えますと、私はこのテンポでいくならば、御心配の公共事業、ことに総合開発の分も、着々と進んでいくと考えております。
  28. 北山愛郎

    ○北山委員 しかし私は、国の財政計画の責任者としては、もう少し突っ込んでこの公共事業費などは考えてもらいたいのです。少くとも大蔵省は、補助金問題についてその企画があるはずなんです。しかし、今の公共事業費等の補助金の制度というものがいかにロスがあるかということは、定評があるのです。単にそれを途中でつまみ食いするというだけではなしに、たとえばダムを作っても、それを二年なり三年なり非常に早く作れば、それだけ資金効率が上るわけです。それをだらだらと何年もかかっている、あるいはまた、今のように縦割りのような配分を各省にして、そうして国と県と市町村がそれぞれ一部ずつ費用を負担するような形では、これは不要不急の事業が行われるというロスも出てくる。陳情費のロスも出てくる。今度の東北開発三法の立法運動についても、やはり相当な金が使われておる。これもロスなのです。そういうような補助金政策、公共事業費の中にある補助金の欠陥、ロス。経済効率ということをやかましく言うならば、このロスというものをなくすためにはどうしたらいいか、そうでないと、総合開発は進まないのです。公共事業費予算の、国の補助金の半分ぐらいはどこかに飛んでしまうのだという批判がある。そういうものをなくすというような積極的な考え方大蔵省になければならぬ。ただ予算をつけましたというだけでは、足らぬと思うのです。だから、補助金政策について、特に公共事業関係補助金の政策をどうしたらいいかということについての大蔵大臣のお考えを聞きたい。
  29. 池田勇人

    池田国務大臣 今ダムの話が出ましたが、特定多目的ダムなんかの特別会計を設けたのは、そういうあなたのお話による点を少しでも是正しようとしてやっておるのでございます。それから補助金の整理につきましても、いろいろ大蔵省はもぎ取られるくらいまでやっておりまするが、こういうことも、やはり補助金を、むだに使わないようにというあれなのでございます。そういうことがあるから、陳情が多くて非常に金がかかる。この陳情はまた民主主義のネセサリー・イーブルでございまして、われわれ陳情によってどうこういうことはないのでございますが、今まで多年のあれで、よくないとは思っておりますけどれも、なかなかやめ切れぬようでございます。せっかく国会があるのでございますから、国会で一つ十分に審議なさって、あまり陳情があるということは、政府当局としても迷惑に考えておるので、今後そういうことのないように力をあわせていきたいと思っております。
  30. 北山愛郎

    ○北山委員 剛腹をもって有名な大蔵大臣も、相当民主主義に、よく言えば民主的になられたようですが、しかし、この問題はやはり直していかなければ、せっかくの費用を有効に使うかどうかという重大な問題でございますから、私は、単にちょびっと多目的ダムの特別会計を作るとか、そんなことでは、解決にはならぬと思うのです。  時間がありませんから、先に進みますが、特に従来の総合開発のもう一つの問題点は、国の基本的な政策というものが、中央の重要産業といいますか、基幹産業の育成ということに重点が置かれ、総合開発、農林業、土地利用というようなことは、どうしても第二次的になっておる。それが今度の公共事業費についても言われるのじゃないかと思うのです。道路や港湾や電力というものに重点が置かれますから、東北地方に対する公共事業費の配分についても、いわゆる電源開発を伴うダムの予算がふえる、それから道路の予算がふえる、しかし、それ以外の農林関係予算はふえないのです。公共事業費全体から見れば、相当ふえているようでありますが、その重点がやはり電力と道路に置かれておる。おそらく道路についても幹線道路だろうと思うのです。そういう国の別な基本政策の影響が、東北開発の今回の公共事業費の配分にも現われておるわけなのです。そういたしますと、今の多目的ダムにしても、この前岸総理にもお伺いしましたが、どうしても電源開発だけが進んでしまう、そうして、それに伴ってやらなければならぬ農業水利事業であるとか、そういう事業はずっとあにとおくれてしまう、事業がびっこになってしまう、跛行してしまう。そういうふうに農林業の近代化ということが、今度の東北開発三法についても、やはり軽視されているのじゃないかという印象を受けるのですが、この点についてのお考えとし、同時にこれに関連をして、もう今の農村では、アメリカから前にもらったというか、受けた余剰農産物の問題に相当深刻な影響を感じておる。そこで、第三次余剰農産物の協定を拒否したことは私は賢明だと思うのですが、次いで第四次が出てくると思うのです。その際において、第四次余剰農産物の受け入れをするのかしないのか、大蔵大臣のお考えを聞きたい。もう一点は農業開発についての外資の導入、いわゆる機械買い入れ等について外資導入を一部やっておりますが、これが適当かどうか。この前、去年ですか、高碕企画庁長官にお伺いしたときには、まあ国内の資金あるいは技術で間に合うから、外資を導入しないでもいいと思う、というような御答弁があったのですが、大蔵大臣はどのようにお考えになっておるか、この三つの点についてお答えを願いたい。
  31. 池田勇人

    池田国務大臣 食糧増産についてはあまり金が出ていないというお話でございまするが、食糧増産につきましては、相当予算を増額いたしております。しこうして、これは各産業部門にできるだけ財政的の援助と申しまするか、協力をしたいのでございまするが、今、日本の一番困っておるのは、やはり道路とか、あるいは港湾、産業面におきましては、電源開発、鉄鋼の問題でございます。東北なんかでも、先ほど触れましたが、もし東北におきまして、もっと電力に余裕があれば、もっと早く東北開発ができると思います。私は、今予算は相当出ましたが、電力が不足のために、東北は非常にお困りだと考えておる。だから、東北人の一番の要求は、電力を早急にふやすことである。これが東北振興のもとだと考えておる。こういう意味から、電力に出すことは、ひいて東北の振興になると私は確信を持っておる次第でございます。われわれは、産業の基盤の拡大強化ということは、農村にも、中小企業にも、全部に行き渡るもとになると考えて、やっておるのでございます。決して農村をゆるがせにいたしてはおりません。  それから余剰農産物の問題でございまするが、これはやはり国内の食糧事情資金関係等から考えなければならない。また、特に今はバーター制の貿易が相当ありますので、この貿易関係等から考慮して今回はやめたのでございますが、将来はそういう点をやはり頭に入れてきめるべき問題だと思います。  また、農業開発につきましての外資の導入も、これは国内の資金あるいは機械農業開発必要性等から、そのときに考慮すればいい問題で、今、左とか右とか、きめるべき問題ではないと思います。
  32. 北山愛郎

    ○北山委員 今の答弁は大へんもの足らないと私は思うのです。問題は、将来の問題じゃなくて、現在の問題である。農業開発を国内の資金でやるか、外国の資金でやるかということは、やはり外国から機械を導入したり、技術を導入してやらなければできないのかどうか、日本の力でやれるものならやる方がいいのじゃないかという、一つの方針の問題になりますから、その場その場において考えたらいいというような御答弁は、若干もの足らないのです。ですが、時間もありませんから、この程度にしておきます。  電力の開発、これが必要なことは当然であります。けれども、電源開発を従来でも相当やっている。しかし、その結果、原価よりも安い電力が大工場の方へ使われる。その大工場の生産が上る。その効果は、住民のために多少は及ぶでしょう。しかし、その及び方が非常に足りない。ここに私は非常に問題があると思うのです。ですから、電力さえふえれば、東北の住民は幸福になるのだ。電気はどんどん使えるのだ。そう簡単にはいかない。金がなければ電気は使えませんから……。ところが、開発すればするほど、電気料金は高くなるという矛盾がある。大企業は安い電気を使いますから、開発すればするほど、それはもうかるでしょう。もうかるでしょうが、それが直ちに東北住民の福祉になると、単純には言い切れない。そこに私は問題があろうと思うのです。現在の日本経済にしても、非常な好景気だといっておるが、これはほんの一部なんです。その一部の好景気が全般に波及するか、しないか、ここに問題があるわけなんです。ですから、東北に電力を起し、あるいは大きな工場を作っても、それが単に、中央の大企業東北という場所において工場を起したいというだけにとどまるものであるならば、これは大して住民の福祉にはならぬと思うのです。ですから、そういう点を十分お考えになって、特に農林業なんかおくれているのですから、おくれた農林業を近代化させるということも、従来の日本政府が怠っておった盲点なのです。これを一つ直していくという点に大蔵大臣としては十分お考えを願って、この施策を進めていただくように希望しまして、私の質問を終ります。
  33. 五十嵐吉藏

    五十嵐委員長 三浦一男君。
  34. 三浦一雄

    ○三浦委員 私は時間もございませんので、二点お伺いしたいと思います。  第一は、北海道東北開発公庫に関する問題であります。先ほど竹谷君からもお尋ねがありましたが、とりまとめられた趣旨はわれわれよく了承いたしております。しかし、ここまで至りましたその一つの政治的背景といいますか、政治的環境の理解なしには、今後の問題は考えられぬのであります。すなわち、東北開発特別委員会の方では、独自の公庫を作り、そして東北にふさわしい公庫の運用をしていただきたいというのが念願であったわけであります。しかるところ、先ほど大蔵大臣の御説明になりました通り業務簡素化資金の軽減、経費の節減というふうな観点より、予算策定に際しまして、北海道東北開発公庫を統一して行うということに提唱されたのであります。ところが当時——本日も御列席でありまするが、北海道関係の方々は、これに対して非常な疑問を持っておる。すなわち、北海道に関する開発の熱意がこれでは没却されるじゃないか、方針がいわば散漫になってしまう、そしてその成果を上げ得ないという懸念を持っておる、これは北海道四百数十万の道民の非常に懸念するところである、北海道四百万の強いなにがあるというので、なかなか御同意が得られなかったのであります。しかるところ、東北関係の方でもいろいろ御懇談を申し上げまして、最後には特別委員長等の御配慮によって、二月二十五日にとうとう申し合せをしていただいたのであります。このうち、立法によっておおむね解決されたのでございますが、最後に残された、関係の者の念願といたしましては、当時の申し合せでは、はっきりしたのでございまするけれども、三十三年度を目途として、東北開発公庫分離するように政府でもって確固たる措置をとっていただきたい、こういう申し合せを実はしておるのでございます。先ほど来の大蔵大臣の御説明は、ある程度までは了承するにやぶさかではございませんけれども、やはりかくのごとき重要な開発計画を進めるに当りまして、政府の方針なり、あるいは決意なりが動く、もしくは影響されるということでは、多くの者の信頼と支持は得られないわけであります。しこうして、後にお尋ねする問題にも牽連しますが、今後といえども、資金の増大と業務の拡大は、北海道といわず、東北といわず、熱望するところでございます。でございますから、これらの政治的な環境のもとに結論を得られたのでありますけれども、これらもやはりお考えを下さらずには、政治は円滑に進まぬと思うのでございます。私は今後の公庫資金の拡大、それから業務等につきましても、活発な展開をしていただくということを前提といたしまして、今後のお見通し、願わくは、後年度においてははっきりしたものにして、そうして両地区の開発に十全を期するというお考えをこの際はっきりとお示しを願いたいと思うのでございますが、大蔵大臣の御意見はいかがでございましょうか。
  35. 池田勇人

    池田国務大臣 先ほど申し上げましたように、北海道は昨年その緒についた程度でございます。資金の点につきましても、八十億を予定いたしておりましたところ、昨年中には六十数億円という状況で、年度内には使われるという予定でございます。まだ発足いたしまして、軌道に乗りかけた程度であるのであります。それを考え方によっては、分けるということも考えられるのであります。しかし、そこにはいろいろな問題がございまして、その育成の状況を見まして、考慮いたしたいと思っておるのであります。資金の問題につきましては、これまたやはりその必要性は十分あるのでございます。今までの開発銀行から出してもいいんじゃないか、あるいは東北開発会社ができるんだからいいじゃないか、こういうこともあります。そうしていろいろな形からやっていくのが早くできる、こういう関係からいって、資金につきましても、実情を見ながら、また開発という根本趣旨に沿うべく、努力していきたいと思っております。
  36. 三浦一雄

    ○三浦委員 両地区の関係の者の念願を簡素な形で申し上げたのでございますが、この両地区は、申すまでもございませんが、国会議員ですら五十人程度あることであり、これが、その関発について象徴的に意見を代表し、そうしてまた強く要望せられておる点でございますから、今後、ただいまの御方針によって十全の方法を講じまして、そうして北海道開発といい、東北開発といい、確固不抜、不退転の態勢のもとに一つ成功せられんことを要望して、次に移ります。  過日岸総理大臣に対しまする総括質疑におきまして、私は東北開発の歴史的な実情から見まして、一、二お尋ねしたのでございます。すなわち、明治初年以来、北海道並びに東北につきましては、累次の計画が推進されて参りました。北海道のことはさておくといたしまして、東北開発にいたしましても、これはかなり詳しく申し上げて、同僚からはあまりくだくだしい質疑だという非難さえ受けたのでありますが、この歴史的な実情を無視しては、これは理解できないのであります。  幸いにも、今度画期的に東北開発の計画が進められるのでございまして、特に開発促進法の法文の中にも、今後の政府がこれに対してなさなければならぬあり方についても明確に規定までされて、過般経済企画庁長官がその要旨を説明せられるに当りましても、東北開発に関しては、将来政府におきましても必要な資金の確保をはかり、かつ財政の許す範囲内において、その実施を促進することに努めなければならぬということを宣明されたのであります。これによって過般来の政府の態度もわかり、同時にまた、今後この開発の促進につきまして、あらなければならない態度もよくわかったのでございますが、中途にして挫折するようじゃ、これは何にもならぬのでありまして、過去におきましてしばしばいろいろな計画を立てられたにもかかわらず、中途半端なものになっておる、いわゆる有終の美をなさなかったのであります。つきましては、今後総理におかれましても、決意を持って遂行に十全をなすということでございますから、特に財政当局としても、池田大蔵大臣の本案遂行に関する一つ御決意を、この際承わっておきたいと思うのであります。
  37. 池田勇人

    池田国務大臣 せっかく東北開発につきましての特別立法ができ、また従来の東北興業株式会社を改組する等、いろいろ手を尽すことになったのでございますから、今後この趣旨を体しまして、十分努力いたしたいと思います。
  38. 五十嵐吉藏

    五十嵐委員長 渡辺惣蔵君。
  39. 渡辺惣蔵

    ○渡辺(惣)委員 ただいまの大蔵大臣に対する質疑の中で、きわめて重大な問題が出て参っておると思います。それは、北海道開発公庫法は昨年の二十四国会を通過して、七月一日から業務を開始して、まだ一年に満たないわけであります。非常に未完成な問題がたくさん残っております。非常に不完全な業務状態にあります。そういう、まだ開設以来一年を経過しないうちに、直ちに法を改正し、東北と一体にした公庫を作るということそれ自体、きわめて実は重大な問題が残されておるわけであります。満一年間の業務を経験せずに、その特徴と欠点というものが、具体的に開発の上にどのようにプラスされておるかどうか明らかになっておらない中において、東北を含める法改正を行うということで、政府もそれぞれ決意をされて、この法案を出すに至った、こう私ども了承しておるわけであります。もとより、こういう機関のあり方については、それぞれの面からいろいろ意見があったわけでありますけれども、今の自民党の三浦さんの発言によりますと、与党と政府との間においては、本年度北海道開発公庫法の一部を改正して、統合してスタートするが、明年は分離する、こういう約束があったかのごとくであります。そういう分離を前提とした理解の上におきまして、政府はこの法案を出されたのかどうか、この点について大臣の所見をお伺いいたしたいと思います。
  40. 池田勇人

    池田国務大臣 私は、先ほどからの私の答弁で御了解いただけると思いますが、来年度これを分離するとかなんとかいうことは聞いておりません。従いまして、情勢を見ながら、最もいい方法をとりたい、こう申し上げておるのであります。
  41. 渡辺惣蔵

    ○渡辺(惣)委員 そういう政治的答弁では困るわけであります。私どもこの法案を審議いたしますのに、実は大臣に特に御答弁を願いたいのですが、これは率直に言いまして、私どもこの委員会で今晩この法案の最終討論を終えるようにして、明日の本会議には上程できるように協力をしようという実は話し合いまでもいたしまして、そして議事を進めて参ったわけであります。しかし、大臣が何か答弁を濁して、明年とは言わないが、近くやるかもしれぬのだ——近くはというのは、明年もその範疇に入りますし、明後年もその範疇に入るわけでありますが、そういう腰のふらついた形でこの法案を出されていらっしゃるのか、また、当初からそういうことがないという、北海道開発庁長官、所管大臣等からも説明がなされておりますので、その点をもう一段明確にしていただきたいと思います。
  42. 池田勇人

    池田国務大臣 先ほど竹谷さんの御質問に対しまして私が答弁いたしましたように、あの通りでございまして、こういうものは、当初のスタートでございますので、やはりその実績を見ながら、そしてその必要性の度合いを見ながら、いろいろそのときによって検討しなければならぬ問題がたくさんあると思うのでございます。私はこういう点から考えまして、北海道東北開発公庫の問題につきましては、今後十分育成し、その発展を待っておるのでございます。その状況によりまして、今問題になっておる、分ける、分けないということをきめるべきである、今からいっこれをどうこうするということは、政府としては答弁の限りではございません。
  43. 渡辺惣蔵

    ○渡辺(惣)委員 そうしますと、三浦発言というものは何ら根拠のない発言である、こういうことになりますか。
  44. 池田勇人

    池田国務大臣 三浦さんの発言に対しては、何も私は責任を持ちません。
  45. 小平忠

    ○小平(忠)委員 関連して。それは大蔵大臣政府与党である自由民主党の、特に三浦さんは前予算委員長であり、党の大幹部であります。特にこの問題は、今大蔵大臣に質問されました内容で明確のように、過日の党の東北北海道関係委員会において、三十三年度を目途にしてこれを分離するということを申し合せをしておる。そのことは当時政府も大体了承しておる。そういうことは、大蔵大臣は三浦発言について責任を持たぬとおっしゃいましても、現在は政党政治、政党内閣なのです。与党である自由民主党の首脳部がそういうふうに決定をしているなら、やはりこれは政党政治、政党内閣である現在の政府というものは、その与党の意思を十分に尊重しなければならぬ。それを大蔵大臣、責任を持たぬとおっしゃって、そんなことでこれは通りますか。これが第一点。第二点は、かりに現在は法案を出しているのですから、政府の立場から言いますと、分離するなんということは言明できないでしょう。しかし、あなたの今の答弁の中で、情勢を見ては、情勢によっては——昨日私が石井北海道開発庁長官代理にお伺いいたしました際にも、今後事業分量が増大して、必要があれば分離することもあると、きわめて含みのある発言なのです。従って、かりに自民党の申し合せのように、来年度から分離するとするならば、本年札幌にある本店を東京に移して、また来年はそれをやめて、今度は仙台と札幌に別々に持つということは、公庫運営上その機構のいじり、あるいはその庁舎の問題から、非常にむだな経費をそこに使うことになる。これはきわめて重大な問題です。大蔵大臣その点どうなんですか。
  46. 池田勇人

    池田国務大臣 私は大蔵大臣として、本委員会で申し上げた通りでございまして、これ以上つけ加えることはございません。
  47. 三浦一雄

    ○三浦委員 先ほど私は、質問の前提として、お話し合いしたということだけを申したので、たまたま私の発言が云々と言っておりますけれども、その辺はよくおわかりを願いたいと思うのです。
  48. 渡辺惣蔵

    ○渡辺(惣)委員 この問題は、どうも禅問答のような話で、所在が実にあいまいもことして、明らかでありませんので、この法案を上げるか上げないかという進行の過程におきまして、もう一ぺん委員の懇談会なりでその点を一つ明確にして、政府の新たなはっきりした態度を後ほど求めることにいたしまして、次の問題の、質問に移りたいと思います。  そこで、池田さんに御質問いたしたいのでありますが、ここで北海道開発公庫のこの一年間の経営の仕方、運営の方法というものは、とってもって、それは東北開発公庫を含めた今度のものの中におきましても、同様の形が持ち込まれていくのではないかと考えられるわけであります。従いまして、昨年七月一日業務開始以来、今日までの北渡道開発公庫の運営の仕方というものは、きわめて重大な問題だと信じます。そこで簡単に申しますれば、北海道開発公庫は、政府出資が十億円、政府資金が三十億円、債券発行四十億円、合せて八十億円ということでスタートいたしておりますが、三十一年度の終りまで、大体概算四十五億四千万円という金の出資もしくは貸付が行われておる。そこで残りの債券発行三十四億六千万円、三十五億ほどの金は、四月、五月のうちに大体予定貸付を行う準備ができて、なされる。あるいは私の調査後に、さらにそれが事務的に処理されておるかもしれませんが、こういう現況にあるわけです。  そこで、この現況を基礎にいたしまして、一体どういうところに金が振りまかれたのかということが、抽象論でなしに、具体的な形において、きわめて問題だと思うわけです。こういたしますと、大体大口なところは、今度できます芝浦精糖に六億円という金額が出されることになっている。北日本石油に十億円、それから日本石油に十億円、それから日本セメント上磯工場に九億五千万円、合せますとこの分だけで三十五億五千万円という金額になるわけです。私実際ふしぎに思いますのは、芝浦精糖の六億円というのも、非常に問題があるようです。何か見返り資金か何かの金がこないやつを振りかえて、開発公庫の金を暫定的に振り込んでいくという話でありますが、そういう操作用に公庫の金を一体使用してよろしいのかどうか。所管大臣の意見をお伺いしたい。  もう一つは、日石のような、すでに日本の財界における経済的地位が完全に確立しており、しかも数十年にわたってやって、開発事業ではないのです。それは自身が完成した企業としてやっておる。ただ手を広げるという意味において、開発に該当するかもしれませんが、十分の経済的地位を確保しておりまするこういう天下の大会社に、十億の出資をする。上磯セメントというのは、御存じのように、明治二十年代にスタートした、北海道の上磯に作られた工場で、もとの浅野セメントであります。こういう膨大な日本における財閥としての基盤を持ち続けてきたような大資本に、九億五千万円もの金を投じておる。その金額が実に三十五億五千万円も食ってしまっておる。残りの金額が北海道の地元——地元と言えるものと思われますものは、北海道ソーダ、これは北海道庁その他が協力いたしまして、道も出資をいたしておりまして、数年前にスタートいたしたものでありますが、これに対しまして融資が五千八百万。それからP・Sコンクリート、これは昨年の九月にスタートいたしたのでありますが、出資三千万円、融資五千五百万円。それから栗林造船、これも有名な財閥であります。この栗林造船には海運業と称しまして三億八千万円という融資を行なっておる。それから今度二月下旬にスタートいたしました機械貸与会社に出資三千万円。大体合せますと、これが五億五千三百万円という金額になって参る。そういたしますと、ほぼこれで三十一年度内に貸付を予定しておった、貸し付けたその数字の中にこれが出てきます。四十五億四千万円にほぼ見合った金額になる。  今ここで東北及び北海道開発につきまして、ほんとう開発に必要であって、出資をするにも単独では困難だ、地元だけの出資では困難だ。また融資も、業務を開始しておらないために、設備その他の関係、あるいは融資関係上、一般市中銀行が貸してくれるのにはちと荷が重い。そこで利子は少々高いが、公庫から金を借りようということで、北海道開発関係のある業務に金を出すということでスタートいたしましたこの金融機関が、ほとんど既存の大会社、しかもそれが開発に直接関係のないこういう大企業、しかも道外に本社を持ち、財界の上にも大きな基盤を持っておるものに対して融資をしておる。これが公庫の発足の本来の使命に該当する融資の仕方であるかどうか。ここの業務方法書では、一千万円以上のものに融資をするということになっておりますが、一千万円以上なんというのは虫めがねみたいなもので、どこにも出てきません。われわれは一千万円でも高い。今も東北の議員諸公とお話をし合っておったわけで、一千万円以上では困るから、原則という言葉があるのだから、原則は原則として、原則以外の特例もあるのだ、だから特例として、一千万円以下のものであっても融資をすることになるのかということを、実は明確にしてもらいたいと思っておるのでありますが、それ以上に、大体もう一億円以下のものには金なんか貸しておりません。単位がみなこういう三千万、五千万というのすらも、ごく少数です。品数がきわめて少い。これは公庫自身の経営者から見ますと、その資金操作の上において非常に安易な経営です。九分の利子をどんどんはねるのですから、これは確かになるべく大口に、そうして一番安全なところへこれを融資いたしておきますれば、資金運営の面におきましては、一番安全率が高い。安易な道を選んでいるのです。安定する道を選んでいるのではないのです。常に安易な道を選んでやっている。公庫の八十億円にあぐらをかいて、金利で、左うちわで食っているという計算になる。一体こういうやり方で、真剣に考えて一こういう金を大蔵大臣が一生懸命やって当初八十億も出してくれたのに、そういう開発に直接結びつかない——間接に、ごく広義に解釈すれば、どんなものでも開発に結びつきますよ。しかし、今われわれがこういう北海道開発に真剣に取り組んでおるのは、こういう広義な意味における開発ではないのであって、足元に火のつくような問題を解決するために、どうしても必要とするものに資金融資しようという目的であるのに、こういう融資の仕方が、果して開発公庫を設置する目的に沿うものかどうか、この点につきまして、大臣の御所見をお伺いしたいと思います。
  49. 池田勇人

    池田国務大臣 私は直接北海道開発公庫を監督する立場ではございませんが、やはり財政資金が使われるのでございますから、大蔵大臣としては、他の各省大臣よりも関心を持っております。お話のような点も実は耳にしたことはあります。しかし、これが北海道開発に沿うか沿わぬかという問題は、なかなかむずかしい問題でございます。従いまして、開業早々でございますから、業務その他が十分にいっていないということも私は想像いたします。しからば、芝浦精糖にテンサイ糖工場を作るために出したということが、北海道開発になるか、ならぬかという問題もありますが、私は北海道開発一つの手段ではないかと思うのです。それから石油精製工場を置くことが、北海道関係がないかと申しますと、もしこれが内地から小さいタンカーで石油を送っていったならば、原価が相当高くつくのではないか、そうすると、北海道は漁民をもって立っているところでございますから、ここに石油精製工場を設けて、内地と比べてそう高くない、あるいは安いような石油を供給することが、北海道開発になると言えるのでございます。それから私が耳にしたのは、上磯の日本セメントの工場でございます。私は日本セメントの上磯の工場を知っております。そこでこれを考えて、これは内地でも借りられるじゃないかということになりますが、これがどうしても北海道開発にならぬというわけではない。私はそういう事柄を——これは小さい企業に出さなければいかぬのだということはないので、石油工場を設けたり、テンサイ工場を設けたりすれば、それが北海道開発になる、こういう解釈でいっております。だから、小さいものをしりぞけるというのではなしに、早々でございますから、とにかく早く北海道の全体のためになるようなことをやる。一千万円以下というのは中小企業金融公庫の役割でございまするから、こういう開発公庫は、おおむね一千万円以上にやることが至当だ、これがだんだん広がっていきますと、やはり大きいところにも、小さいところにも、ほどほどにいけるようになることを期待しておるのでございまして、今こういう大きい会社に出したから、設立趣旨に反すると、直ちに結論を出すことは、よくないのではないかと考えております。
  50. 渡辺惣蔵

    ○渡辺(惣)委員 私も今の大臣のおっしゃる通り、そのことが開発に裨益をしないなどとは思っておらないわけです。もちろんそれぞれ有効な役割を演ずると思うのです。しかし別個に資金のルートを持ち、財閥的基盤の上に立ち、関連銀行等も、たとえば安田系なら安田系の関連銀行とも何十年来の関連を持っているというような形のものが、同じ開発の方式を進めたとしても、他に金融の道がないのかどうかという疑問は当然起ってくるわけです。  それから、この公庫は三年据え置きで七年もしくは十年間に年賦払いをすることになりますから、何億円という金を特定の事業投資いたしますと、何年間だけこの金は部分に戻ってきましても、全体に戻ってきませんから、最初にスタートしたものはいいのですけれども、次にスタートしたものはそういう融資がされずにいくと思う。そうすると、数カ所の大口にほうり込まれてしまいますと、実際上三千万、五千万という金額があれば十分やっていけるというものが次に出てきましても、そういうものに対する融資の道がふさがれるという危険が出て参りますので、こういうような必要な——いずれも必要なものであったとしても、やはり融資の配分方法等については十二分に考慮すべきではないか、こういうことを考えるのですが、その点につきましてはいかがでございますか。
  51. 池田勇人

    池田国務大臣 御説ごもっともでございまして、やはり各方面にまんべんなく、北海道開発に役に立つようにもっていくべきだと思います。何と申しましても予算できめる、本年度はこうだということになりますと、手が十分伸びていないときには、大きいところへいくのは当初はやむを得ない。しかし考え方としては、あなたのおっしゃるように大きいところへ出すが、小さいところにも出す、こういうことがいいやり方だと思います。従って、七月から始めたのでございますから、私が大蔵大臣になりました一月ごろ、まだ残っておるのだが、どうしましょうか。こういう事情で残っております。それはやむを得ない。しかしそれが残ったからといって、来年度は減らすようなことはしない、こういう話をした。私もあなたのような考え方で、下の方へも努めて出すようにしなければいかぬということは言っております。だから、これは長い目で見て、そうして三年も五年もたって、小さい方へは一つもいかぬということだったら、これは十分事情を聞かなければいけません。当初あまり無理をしますと、今度は貸し倒れということも考えられますので、あれこれを考えまして、今後の問題としてわれわれは注意していきたいと思っております。
  52. 渡辺惣蔵

    ○渡辺(惣)委員 大へん大臣理解のある御意見でありますが、国会のここの答弁だけでなしに、ほんとうに正しい公庫が成長しますように、格段の指導と育成をしていただきたいと思います。  そこでこの機会に、さらにもう一点質問を申し上げたいのであります。それは池田大蔵大臣の手によりまして今度在外資産に対する補償の線が出まして、五百億という膨大な金が引揚者等に渡りますことは同慶にたえないと思います。北海道でも、樺太の引揚者を初めとして、引揚者が約三十万人以上もおりますので、非常に喜んでおるわけであります。そこで、これは北海道開発とも関連が出て参りますので、一つ所見をお伺いしたいのでありますが、実は終戦当時樺太における金融機関は、当時ほとんど特銀でありました北海道拓殖銀行が中心でありました。そのほかに農業関係等は農林中金等が中心になっておったわけです。そこで終戦当時樺太における拓銀の預金総額はおよそ二億四、五千万円だったと、こういわれておるわけです。ところが道内に貸付をいたしましたものは約一億円近くある。そこで残りの分が、預金の超過額の一億四、五千万円というものが、終戦当時拓銀の金庫の中にあった、こういわれておるわけです。ところが、この金は一億四、五千万円ですから、今の金で計算いたしますと、三百倍に計算いたしましても、七百億円以上の膨大な金額に該当するわけです。一方・預金の分につきましては、講和発効後におきましては、戦後三回にわたって分割払いをいたしまして、大体三十年に支払いを終えた、こう聞いておりますが、私がここで大蔵大臣に質問いたしますのは、一般預金でなくて、終戦当時、樺太の市町村及び信用組合、農業会等の公共団体、地方団体が拓銀に預金をしておったものが、あのソ連の進駐によって、ついに金をおろすひまもなく、船に乗ったり、はしけに乗ったりして北海道へ渡ってきました人々の金、公共団体、町村の金が眠り預金として、当時大体七千万もしくは八千万円あったのです。これは公金でありますが、この公金は一体どういうように処分されたのか、非常に問題が出て参っております。  ここで突然大臣に質問いたしますので、問題の概要だけをごくかいつまんで申し上げなければ、大臣からお答えを願えないと思いますが、この問題は、樺太に全国樺太連盟という団体がある。その団体の会長は、終戦当時ソ連が宣戦布告して、いよいよ進駐するということを聞いて、島民全部ほうぽらかして飛行機で脱走した当時の樺太長官大津敏男という人です。あの引き揚げのときには樺太にいなかった、全島民をほっぽらかして逃げてきた大津敏男が、この全樺太連盟会長といたしまして、たしか当時の樺太庁の東京事務所であった営造物を、今日におきましても利用いたしまして、樺太全国連盟の事務所に陣取って、今でも会長としてここで仕事をしておると思うのです。当時の樺太庁東京事務所というのは、公けの管理にあった公有財産であると理解いたしますが、これが彼が今日におきましても依然として占領しておる。ここには元樺太長官の大津敏男と、元樺太庁内務部長柳川久雄が副会長として陣取っておる。旧樺太官僚が、ここで樺太を食いものにしておるという怪事件が出て参っております。この事件はさらに発展をいたしまして、最近いろいろな問題が出ておるわけでありますが、七千万もしくは八千万円の市町村の預金——個人の預金ではない、市町村の公有財産であるところの眠り預金が拓銀に凍結されておるということを知って、一昨年春以来約二年がかりで拓銀を——私は恐喝した、おどかしたとは申しませんが、拓銀にそれぞれ折衝を開始いたしまして、当初七、八千万という金額であったものが、だんだん話し合いのうちにしぼんできまして、ついにこの三月には大体六百万もしくは七百万ということで妥結をしておる。拓銀が六百万州出すということで、樺太出身の学生寮を作る資金に寄付するとかいう名目で、この元樺太庁長官大津敏男及び元樺太庁内務部長柳川久雄が立ち合って、拓銀と交渉して一時金を拓銀から取って、事件を落着するということが出てきております。これは三月三日札幌におきまして、樺太引揚者団体の会議に柳川久雄君が出席いたしまして、この旨を報告いたしまして、この事件はこれで打ち切りだ、こう言っているわけであります。私は大臣に奇をてらってこの問題を申し上げているのではない。一体終戦当時の樺太における市町村の預金、あるいは信用組合の預金、農業会の預金等の公金の措置が、たまたま一銀行の金庫にあったからといって、その公けの金は全部そういう特定の銀行の所有になるものであるかどうか、なってよろしいものであるかどうか。それからそういう個人の所有に属しない公金というものを、性格の明らかでない団体の代表が、団体の総意と僣称してこれと交渉して、銀行から金を引っ張り出して、寄付金の名目で特定のものがこれを管理する等の、そういう公金の管理及び処分が正しいのかどうか、銀行にそういう権限があるのかどうかという問題であります。このことは、さらに発展をいたしまして、札幌にあります北海信用金庫という金庫が、この七千万円の眠り預金を口実にいたしまして莫大な金を拓銀から融資を受けて、ついにこの北海信用というものは最近つぶれてしまいました。こういう公金の眠り預金を足場にいたしまして、利権にひとしい行動をとっておりますが、大蔵大臣といたしまして、これに対し監督上の御所見を伺いたい。さらにこの問題は、時間がございませんから、大臣の御答弁によりましては、あらためて質問書の形において大臣に文書で質問を申し上げたいと思いますが、一応ここでこの問題を提起して、大臣の御答弁をわずらわして、終りたいと思います。
  53. 池田勇人

    池田国務大臣 敗戦当時の樺太の状況等は十分つまびらかにしておりませんし、その後この問題について耳にいたしておりませんので、大蔵省といたしましては、銀行局が監督しておる立場でございますから、調査いたしまして、御返事することにいたします。
  54. 五十嵐吉藏

    五十嵐委員長 これにて休憩いたします。午後は二時から再開いたします。     午後一時十七分休憩      ————◇—————     午後二時三十八分開議
  55. 五十嵐吉藏

    五十嵐委員長 休憩前に引き続いて会議を開きます。  質疑を続行いたします。竹谷源太郎君。
  56. 竹谷源太郎

    竹谷委員 私は通産大臣に対して二つお尋ねいたします。最初は日本の工業の配置、それと経済の計画や、あるいは国土総合開発の関連についてお尋ねをしたいのであります。  今わが国におきましては、京浜、名古屋、阪神、北九州、それに加えて瀬戸内、和歌山、これらが大工業地帯でございまして、ことに四大工業地帯はわが国の工業総生産高の約六〇%を占めておる、こういう現況でございます。しかもなお、こういう状態にある上に、新たにこの地帯に工場が新設あるいは拡張を見ていく、こういう現状でございますので、まずこの地帯にはいろいろな弊害が起きておるだろうと思う。あるいは煙毒なり、工場の流す水の問題あるいは空気が汚染をしたり、騒音が多い、不衛生な状態を発生しておるというような物理的、化学的、衛生的のいろいろな障害が発生しておると思うのでありますが、これらに対しまして、通産省としては今どんな処置をとっておられ、また将来についてどんなふうにお考えになっておるか、まずそれをお聞きしたい。
  57. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 鉱工業事業実施に伴いまして、いろいろな鉱害が発生しておりますので、これをどうするか、どういう対策をするかという問題は、ただいま経済企画庁を中心に、関係各省が集まってその対策を検討中でございます。そこで問題になりますのは、公衆衛生とか、あるいは農水産というだけの害の防止というだけで、画一的な立法的な措置というようなものをとることは、実際問題として、鉱工業について不当な補償を与えるという問題もございますので、そういう各者の利害を調節して、矛盾のない形で鉱害防止をやりたい、できたら立法措置をとる必要があるだろうということで、立法問題に検討が入っておりますが、ここでむずかしいことは、水質汚濁の問題を中心として、水質の基準をどうきめるかというようなことは非常にむずかしい技術的な問題でございますので、その問題の検討をやると同時に、各地実情がどうなっているかという実情調査を、今あわせてやっておる。それで、この基準の問題が何らか結論がついたら、法的な防止というようなこともやれるんじゃないかという見通しで、今その基準の検討ということを役所間でやっている段階でございます。ただし、それができるまで放置しておくというわけには参りませんので、今通産省がやっていますのは、工業技術院を中心にして、防止設備をどうするか、その処理方法についての研究を各研究所でやらせておりますし、それから同様のものについて、民間の研究についても、補助金を出してこの防止処理の研究をやっておるということと、それから水の害をなくさせるというためには、なかなか中小企業では金がかかって、こういう廃水の処理の設備というものはできませんから、問題になっている地方は、事実上これを地方公共団体が共同の廃水処理施設というものをやっていますので、これに対して政府補助金を出して、極力地方の公共団体にやってもらって、そういう特殊地域、ことに中小企業の密集している地域の水の害の問題を処理してもらうということで、応急的にはそういう形でやっておりますが、根本的な対策というものについては、さっき話しましたような立法するための準備というものが、相当技術的に必要でございますから、現在企画庁を中心にこの検討に入っておる、こういうことでございます。
  58. 竹谷源太郎

    竹谷委員 工業地帯の鉱害問題につきましては、今通産大臣の述べられたごとく、なかなか問題が広範で、解決が困難で、いろいろ応急の処置、また恒久的な対策としては、政府関係行政機関相互の連絡をとって、対策を講じ、必要によっては立法措置も講じたいという状況であって、なかなか通産省としてもむずかしい問題で、お困りになっておるのだろうと思うのだが、なおその上に、住宅難がむろんこの地帯には起きておるし、交通が困難の状態になっておる。不衛生ないろいろな問題が起きておる。いろんな社会悪もそこに発生してくる。鉱害のほかに、社会悪というものも発生をし、いろいろ問題を起しておるのでございます。これに反しまして、一方では東北あるいは北海道その他未開発の地帯は、土地も広い、またそういう問題が起きても大して問題にならない。そして天然の資源もあり、人口は、そういうところはあまり稠密ではありませんが、農家の次三男なりその他、職を求めても得られないたくさんの顕在潜在の失業者が多くなってきております。なおその地帯は所得が少い。こういうわけで、人口が一方においては過度の集中を見て困難をしておる、所得も非常に多い。他方は失業者が食にも困る、また所得も少く、貧乏な生活をしなければならぬ、天然の環境はよろしい、こういうような状態になっておる。これは日本として非常に困難な問題でございます。こういう問題の処理は、今おっしゃられるように、ひとり通産省の問題ではなくて、経済企画庁あたりが各省と連絡をとって、全体的な、総合的な解決をはかろう、こういうのは当然のことであり、またそうしなければならないと思う。従って、これは政府全体の問題でありまするが、鉱工業担当の大臣とされまして、こういう日本の現状を打開し、そしていろいろな社会悪、あるいは鉱害というようなものを排除し、そしてまた、未利用、未開発地方の利用なり、またそういう方面の住民の福祉の増進なり、そして今あまりに過度に集中するために、いろいろと工業自体も困っておるような面の解決というような点、あらゆる観点から、これは国民全体の経済という立場から、総合的に研究をしなければならぬ問題ではありまするけどれも、ことに工業担当の省とされましては、急速に何とか考えなきゃならぬ、こうお考えじゃないかと思う。  そこで、これは日本経済の計画なり、あるいは国土総合開発の計画と並んで研究しなければならぬと思うのでありまするが、これら過度に工業が集中して、脳溢血症状を起そうとしておるこの状態を打開するために、今まで過度に集中して、しかもなお今後新設増設やむごとを知らない大工業地帯の工場の拡張なり、新設というものには、原則としてこれを禁止をして、そして反対に未開発地方に対しましては、産業立地条件整備に力を注ぎ、そしてそういうところへ工業を持っていきます場合には、あらゆる公けの援助をやりまして、そして工業の適正な配置をする。そういう意味で工業配置法というような、名称はともあれ、そういう趣旨の立法措置も講じなければ、先ほど申し上げた鉱害なり、あるいは社会悪なり、そして日本全体の経済の基盤からの健全なる伸展は見られない、こう思うのでありますが、通産大臣にこれに対する御所見を伺っておきたい。また、そういう研究がなされているかどうかということについてもお尋ねをいたしたい。
  59. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 私どもの考えも全く同感でございまして、鉱害問題とも関係しておるのでございますが、もう既存のいわゆる工業地帯というものは、いわばもう飽和状態で、土地の問題を見ましても、水の問題を見ましても、これ以上既存の工業地帯を拡大するという方法はもうやめたいと思っています。そして各地立地条件に応じた工業地帯を作って、そこに必要な工場配置をやって、人口と工場配置の均衡をとらせるような政策に移行していきたいと思っております。  そういう意味で、ただいま各省間でもう話し合いに入り、調整に入っている問題は、まず第一が千葉の京葉工業地帯です。印旛沼の水を工業用水として利用する。そして東京湾の埋め立てによって、あすこに近代的な工場を建設させる、工場地帯を計画しようというので、これは今もう各省間の相談に入って、実現を見つつある問題でございます。  次は茨城県でございますが、久慈港を中心にして、あすこに工場立地条件の整った地点がある。しかも、今度原子力の問題が向うに移るとしますと、これに伴って鉱石の処理の問題が起りますし、それと関連する諸産業が当然興らなければなりませんが、そういう場合には、あすこを一つの原子力センターというような形にして、あの立地条件を利用して、そこに工場地帯を設定していくという問題、これもすでに関係官庁でいろいろ検討に入っておる問題でございます。  それから、今度国会で東北開発の立法までされるということになりましたので、通産省としましては——これは今までの各省の相談を見ますと、農業開発から道路から、あらゆる問題が一ぱい出てきて、しかも六県ございますから、六県別々に、たとえばある工場をどの県に作ると言ったら、自分の方へも作れというふうに、立地条件という問題よりも、工業の発展を各県均等にやれというような方向の議会が、非常に多く現在出ておるようでございますが、通産省の考えとしましては——その他の問題は、各省の総合計画ですから、各省の計画も取り入れますが、東北開発は、やはり地下資源の開発が最も重要であって、現在申請の件数を見ましても、去年三千件あったのが、すでにことしは七千件になっている。今まで未処理の件数が一万何千件もあるというぐらいに、東北の地下資源開発の機運というのは非常に今興っておりますので、これを急速に政府が助成して、この開発を促進させる。従って、こういう条件に応じて、それに関連する仕事東北地方に興させるということをすれば——ただいま岡山にある材料を東北に運んで処理しているような工場がございますが、こういうことをやったら、今後の輸送力の問題から見ても、何を見ても、差しつかえる問題ばかりでございますので、鉱業を中心とした、それに関連する産業の振興というようなものは、できるだけ東北地方へ配置して、あすこの立地条件を生かしたい、私どもはこういうふうに考えております。ただ、それには、一番問題なのが電力でございまして、東北地方の電力が安かったために、電力を動力とするのではなくて、原料にするというような工場を相当東北へ配置してあるのでございますが、これが最近非常に多くなると同時に、電力所要量が非常に多くなって、これに東北の電力開発が伴っていないために、料金問題とか、いろんな問題を起す状態になっておりますので、総合計画におきましては、鉱業の開発とあわせて、電力開発東北に急ぐ処置を、通産省の政策としては至急とりたいと考えております。  工業配置法の関係は、今のところ、法律によって工場の配置をやるかどうかというところまでは、まだ考えておりません。
  60. 竹谷源太郎

    竹谷委員 企画庁長官が見えましたので、関連してお尋ねいたします。  今通産大臣から、四大工業地帯に過度に集中した工業には非常な弊害があり、行き詰まりになったということについて御答弁があったのでございます。ついては私は、国民経済の計画や、あるいは国土総合開発とあわせて、工業配置法というようなものを考えて、工業の適正な配置をする必要が生じてきたのではないかというお尋ねをしたのでございますが、通産省においては、まだ立法というような面までは至っていないということでございます。鉱害問題あるいは工場の過度集中というようなものの解消、そういう問題については、企画庁を中心として今研究中という御答弁が通産大臣からあったのでございますが、企画庁としましてはこの問題をどうお考えになっておるか、御意見を承わりたいと思います。
  61. 宇田耕一

    ○宇田国務大臣 国土総合開発法に基いて、総合開発計画を立てるということになっておりますが、それは資源の分布状況に応じて、人口問題も当然配慮しながら計画を策定するはずでございます。ただいま北海道開発に関する法律による開発、及び全国十九地区についての地区別の開発をいたしております。地区別開発のねらいとするところは資源の開発でありますが、それはただいまの人口問題の解決ということが重点でありまして、竹谷委員が申されるような都会集中傾向を、いかにして資源開発とともに現地にとどめていくかということ、がこれのねらいというわけであります。従って、新しい五カ年計画を策定いたします、また北海道その他の開発に関する年次計画を相次いで立てるごとになっておりますが、いずれも、ただいま申されたような点が当然重点となりますし、またそうしなければならない、そういう作業を当然加味して運ばしたい、こう考えております。
  62. 竹谷源太郎

    竹谷委員 第三次長期経済計画といいますか、それを経済審議会において審議を始めるということでございますが、ぜひこの問題は、国土総合開発なり工業の適正なる配置というものと関連して、りっぱな案を作って、日本経済の伸展に寄与するように、企画庁長官は特に一つ御勉強をお願いします。  なおもう一つ、通産大臣にお願いいたしたいのでありますが、通産大臣にお尋ねする前に、工業技術院長が見えておりますので、一つお尋ねしたいのは、日本は大農業国でございまして、ことに農地も解放せられ、農民はできるだけたくさんのいい肥料を使って食糧の増産にいそしんでおる。ところで三大肥料の一つであるカリ肥料の原料というものは、ほとんど全部輸入に仰いでおる。たしか五〇%歩どまりの塩化カリを百三、四十万トン毎年輸入をいたしておる現状であり、たくさんの外貨を払っておる次第でございます。ところで、カリ分を含んだ石英粗面岩というものは、日本の至るところに賦存をしておる。特に東北にそれが多い。福島県の会津地方などには、含有量の多い、カリを含んだ石英粗面岩が無尽蔵といっていいほど、たくさんあるということであり、これに対して工業技術院は長年この工業化について研究をしてきたはずでございますが、これが今日東北開発ということが取り上げられたこのときに、この地下資源を、そして工業を興して、十分この肥料を自給する態勢へ少しでも持っていけるかどうか。この石英粗面岩からカリ肥料をとるその採算問題などはどのようなことであるか、工業技術院長からお聞きしたいのであります。
  63. 黒川眞武

    ○黒川政府委員 ただいまのカリ肥料の問題についてお答えいたします。お話のように、カリ肥料は燐酸、窒素とともに非常に重要な肥料でありますにもかかわらず、これは輸入に待っております。しかし日本のカリ資源といたしまして、ここにあげられました石英粗面岩というものが伊豆あるいは福島、山形、秋田地方にございます。ただし、そのカリの含有量は大体一〇%程度のものでございまして、これを原料といたしまして、今までの未利用資源の活用という意味から、工業技術院卑下の東京工業試験所で昭和二十九年から研究いたしまして、その結果、昨今これが技術的にほぼ完成いたしまして、枸溶性のカリ肥料の製造をすることができました。御承知のように、枸溶性のカリ肥料は、植物が根から枸櫞酸を出しまして、そのときに初めて溶解して根に吸収される肥料であります。従って、そのものは水には溶けません。従って、雨その他によってこれが流れて逃げるということもほとんどなく、きわめて効率的に肥料として作用するものでございます。この肥料につきまして、三十一年度におきまして農林省肥料検査所、その他各農業試験場、専売公社のタバコ試験場、山梨大学等にお願いいたしまして、一部肥効試験をしていただきまして、従来の輸入カリ肥料と比べていただきました。その結果、特に高価な燐酸カリを作用しておるところに顕著な結果を示しまして、三十二年度におきましては、さらに予算を三百万円を注入いたしまして、やや大きい中間試験設備を設けまして、それによって製造しました肥料を各方面の試験場に依頼いたしまして、そうしてさらに大規模な肥効試験をしていただきたいというふうに思っております。これが成功いたしますれば、日本のカリ肥料の一部はこれをもって補うことができると思うのでございます。ただ、ここに一つ企業化する場合に問題点がございまして、技術的にはただいまのようにできるということが確かめられてあるのでございますが、その製造の際に、大体今の枸溶性カリ肥料の二・八倍に相当する珪酸石灰というものができるのでございます。この珪酸石灰は肥料として役に立つのでございますが、最近この需要は年々増加して参りまして、各方面に使用されております。たとえば昭和二十九年度におきましては二万六千トン、昭和三十年度におきましては十二万六千トン、昭和三十一年度におきましては二十五万トンと、だんだん増加して参ったのであります。この工業を興しますには、どうしても五万トンのカリ肥料を作る工場が必要なのでございまして、それ以下では採算が合わないということでございます。そういたしますと、それに伴って二・八倍に相当する、かれこれ十四万トンの珪酸石灰の肥料も出てくるわけであります。この程度の規模でございますと、建設費が五億円、運転資金が約三億円要ると思われます。そういうような設備でありまして、大体カリ肥料のトン当りの原価が一万五千円から二万円程度になります。ところが現在輸入いたしております燐酸カリないしは塩化カリというようなものをメリットから計算いたしますと、このカリ肥料は二八%のカリを含んでおりますが、従来の燐酸カリはかれこれ五〇%、塩化カリは六〇%のカリを含んでおりますので、大体半分しかカリ分を含んでおりません。従って、メリットから計算いたしますと、どうしてもこの値段を一万円から一万三千円くらいにいたし、それから副産物であります珪酸石灰を大体トン当り二千円前後にいたさないと、採算が立たないというふうに考えられるのであります。こういう点は、技術の点のもう少しの改良、ないしは経営に関係しました整備資金の借用あるいはその他のことによって今後研究いたすことができれば、全く不可能ではないというふうに考えております。はなはだ簡単でございますが、以上お答え申し上げます。
  64. 竹谷源太郎

    竹谷委員 そうしますと、八万円の資金を投じて、カリ肥料はトン当り一万ないし一万二千円ですか、それから珪酸石灰はトン二千円以上に売れる、こういうことになれば企業的にも成り立つ。今これを肥料会社にやらしては採算がとれないのでございましょうか、その点も伺っておきたい。
  65. 黒川眞武

    ○黒川政府委員 ただいま申し上げましたように、この一万円内外の価格にいたしますには、ただいまのような整備資金を借りる、あるいは三、四年無配でとかいうようなことがございますので、普通のコマーシャル・ベースでやっております。肥料会社におきましては、やりたいとは思っても、経済的に見ますと、すれすれだというところで、一部ちゅちょしているというのが現状でございます。
  66. 竹谷源太郎

    竹谷委員 私も、これは五、六年はなかなか採算がとれぬ、七、八年くらい過ぎたら採算がとれるようになるじゃないかと思うので、これは大肥料会社等が国策的にこれを引き受けてやるものがあればよろしいが、なかなか引き受け手がないように聞いております。ところが、今工業技術院長答弁されたように、原料は無尽蔵に賦存している、そして現在日本はカリ肥料を全部輸入しておる、こういう現状でありまするが、通産大臣として、これを企業化させるためにどのような御努力を今までなされたか、またこれはそういうような必要のない試験研究であるのかどうか、お尋ねしたいのであります。
  67. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 私自身はまだカリ肥料の問題で努力したことはございませんが、通産省の政策全般としましては、日本の必要資源——ただいまいろいろ問題がございますが、あるいは合成ゴムの問題のように、将来もう輸入量では国内でまかなっていけない、天然ゴムではまかなっていけないということがはっきりしているような工業は、採算をもう考えている余地はないので、これの国産化をやらなければならないということで、こういう問題を中心とした特別立法まで今準備するというようなことをやっております。そのほかの産業におきましても、新規産業でなかなか企業採算がすぐとれないものについては、今度の税制の特別措置を残したもので、いろいろな免税をやるということになっていますが、大体こういう産業には免税で政府が助成策をとるというようなことも考えて、一連の新規産業についてはそういう対策を今とっております。私どもとしては、外貨がこれによって節約になるというのでしたら、国内の円で済む仕事なら、あらゆる策をとって、減税もやるし、特に低利の資金考えるというようなことで、今まで輸入に依存しているようなものは、全部国内産業に置きかえるということで、全面的な助成措置をとりたいと思っています。
  68. 竹谷源太郎

    竹谷委員 通産省のお考えはわかりました。そこで企画庁長官お尋ねしたい。今お話を承わりますと、福島、山形秋田等に多量に枸溶性カリ肥料の原料である石英粗面岩が賦存しておる、こういうことでございます。東北地方は石炭を除いては日本で一番豊富に地下資源を持っておるのでありまして、このような資源もある。これは採算的には今のところ簡単に営利会社がすぐ飛びつくというわけには参らないから、こういう事業こそ、東北開発として取り上げなければならぬのではないか。東北開発公庫なりあるいは東北興業が改組せられるであろう東北開発会社、そういうようなところで、これを取り上げて企業化する。その会社がやる場合に、これに対して東北開発の見地から助成をして、大々的に工業化、企業化して、肥料の自給をはかる、こういうようにすることが一挙両得であると思う。企画庁長官とされまして、枸溶性カリ肥料の企業化、この問題についてどのようにお考えか、御所見を承わりたいと思います。
  69. 宇田耕一

    ○宇田国務大臣 その点につきましては、通産省で十分配慮があると存じまするが、私の関係しております科学技術庁関係で申しますると、何といいましても、地質調査をもう少し徹底的に行なって、どの地点が一番合理的な開発に好ましい地点であるかということの正確な調査を期したい、これが一点であります。そうして東北開発関係といたしましては、これはもう非常に重要な問題でありまして、当然これは開発計画の中に織り込んでいくべきものじゃないかと思っております。ただ、これを開発公庫からどういうふうに助成金融をするのか。また開発会社でただいまやっております業務のほかに、新しく立地条件等の業務内容が加わって参りましたが、開発会社についてどういうふうな運営をはかるかということにつきましては、あらためて協議を願いたいと思っております。なお審議会も今度できるはずでございますから、そういう問題点につきましては、第一番に積極的に審議を願いたい、こういうふうに思っております。
  70. 竹谷源太郎

    竹谷委員 まだ東北開発の地下資源の一つとして数えられていないのが、この石英粗面岩でございますが、ただいま通産大臣なり工業技術院長から聞かされたように、どうしてもやった方がほんとう東北のためになり、また国家の国際収支、肥料の自給という点からも非常にいいと思われるのでありますけれども、このほかにも東北開発の地下資源としてあげられたものは重大なものばかりで、いつかお話したと思いますが、山形、秋田等にたくさんあります黒鉱という鉱石もある。これの分析もできるようになってきている。こういう新しい点も取り入れまして、そうして午前中に大般大臣との質問応答にありましたが、巨大資本で、ほったらかしておいても工場の増設が簡単にできる日本セメントの上磯に五億や十億の金を出すよりも、こういうものに金を出して、新たな産業であり、国家のためになり、そして国家の力で初めて企業化できるようなものこそ、やらなければならぬと思う。こういう点について関係各省の今後十分な研究、努力要望するものであります。通産大臣に対する質問はこの程度にしておきます。
  71. 渡辺惣蔵

    ○渡辺(惣)委員 昨日の委員会答弁を保留されました宇田企画庁長官答弁を求めます。
  72. 宇田耕一

    ○宇田国務大臣 昨日渡邊委員から質問がありました問題は、北海道開発に関する計画について、昨年の八月十三日に、経済企画庁の内部においてそれをどういうふうに考えるかという——開発計画の内容について批判をすると申されたと思いますけどれも、そういう文書を出しておるのだが、それに対してどう思うかという御質問だと思います。その点につきまして、昨年八月のことは私は実はよく存じませんでしたから、部内の者に聞いてみましたところが、係官のところで係員二名が原案を示されたので、調査いたしたそうであります。そのときに覚書としてそれを書きとめまして、そしてガリ版にしたということを聞いておりますが、その一部分を北海道関係事務関係の者に渡したということがあるそうです。それじゃその文書を、経済企画庁の部長とか次長とか、あるいは大臣とか政務次官とか、そういうところに協議したかと申してみますと、全然そういう性質のものではなくて、北海道開発庁は一定の基本法に基いて計画案を策定いたしておるから、役所として正面から文書を交付するということを差し控える方がよかろうというので、記録に残る前にそれを没にした、そういう報告を受けております。
  73. 渡辺惣蔵

    ○渡辺(惣)委員 没にされたという答弁は、ちょっと怪しいと思うのでありますが、しかし宇田さん就任以前の問題でありますし、別に意地悪く申し上げているわけではありませんから、それ以上このことについて申し上げる気はございません。ただ、八月十三日に経済企画庁名を付して出された印刷物を、なぜ私が問題にしたかと申しますと、率直に申しますと、これは経済企画庁を攻撃するために申し上げたのではないのであって、あべこべに、なかなかりっぱなことを言っているのです。非常に正しい見解を発表いたしておりますので、従って、これは昨年の八月二十五日、北海道開発審議会が開発庁長官に答申をいたします以前に出されておる文書であるので、その経済企画庁から出されたプリントの意見なるものが、あと二週間も余裕があるのですから、開発審議会の答申案の中に識り込まれるようになっておったかどうかということを、実は知りたかったわけであります。  そこで、その内容についてここで論争したいとは思っておりませんが、問題は、経済企画庁が全国総合開発計画の策定を進められておる。一方、北海道開発第二次五カ年計画の要綱が決定しておる。こういう過程の中におきまして、一体全国総合開発計画北海道開発第二次計画との策定に当って、経済企画庁開発部なり計画部なりと、北海道開発庁のこれを策定されておる人人が、事前に打ち合せの会議を開いて緊密にやっておられるかどうか。もしくは、経済企画庁はこの第二次五カ年計画の策定に対して、どの程度協力をなさっておるのか、それとも全然協力はしないで、全く別々の形において策定が進められておるのかどうか、この点につきまして一つお伺いをいたしたいと思います。
  74. 宇田耕一

    ○宇田国務大臣 その点につきましては連絡はいたしております。連絡はいたしておりますが、そのいたしております具体的な内容については、政府委員から申し上げさせようと思いますけれども、それでよろしゅうございますか……。
  75. 植田俊雄

    ○植田政府委員 御承知の通り、全国総合開発計画はおくれておりまして、ただいまのところ、北海道開発計画を検討します尺度といたしましては、経済計画があるばかりでございます。そこで経済計画との関連におきまして、北海道開発庁は、北海道開発計画を作るに当りまして、経済計画の所管の計画部の方と十分連絡してやっておることを承知しております。なお今後開発部を中心にいたしまして、経済企画庁は全国総合開発計画を、経済計画と並行して審議いたすことになておりますが、その際におきましては、北海道開発庁の方にも参加願いまして、共同いたしまして全国総合開発計画を作りたいと考えております。
  76. 渡辺惣蔵

    ○渡辺(惣)委員 大臣に質問いたしますが、経済自立五カ年計画の改訂並びに全国総合開発計画の立案が完全に結了いたして、閣議の決定をいたす時期はいつであるか、大体の見通しをここで明確にしていただきたいと思います。
  77. 宇田耕一

    ○宇田国務大臣 昭和三十三年度から昭和三十七年度に至る五カ年計画案は、ただいま数字の整理に入っております。従って、それの仕上りは大体九月というふうに思っておりますが、それができ上りまして、その数字が北海道開発の数字に間に合うかどうかということを心配いたしまして、ただいま一つテストの案を作ってあります。それは七%モデル案というのを作ってありますが、その七%モデル案を提示して、私の方の計画部長、政府委員から向うに連絡をいたしてあるはずであります。正確な国の五カ年計画、昭和三十三年度から三十七年度に及ぶものは、経済企画庁といたしましては、ことしの九月に仕上るはずであります。それに間に合わない部門、たとえば運輸省の運賃値上げ等に必要なための基本数字というものは、七%モデルという作業ができておりまして、それをそれぞれの官庁に見せまして、それに伴うところの欠陥等につきましては、それぞれの所管の部長その他から関係のそれぞれの各役所に連絡をいたしておりますから、北海道開発に関する計画につきましてもそういう措置をとっている、こういうふうに思っております。
  78. 渡辺惣蔵

    ○渡辺(惣)委員 全国開発計画の進行がいつ閣議決定になるかという時期を明白にしていただきたいと、なぜ申すかと申しますと、昨日の政府委員答弁を見ましても、北海道開発庁は、経済企画庁の全国開発計画案ができていないので、そちらが進まないと言い、双方がもたれ合って、責任の逃げ場をそこに求めているという、こういう形が出て参るということを私どもは杞憂するわけであります。そこで、きのうも申し上げましたが、ついに第一次五カ年計画は日の目を見ずに、閣議決定を得ずに、ずるずるべったりと五カ年を経過してしまいましたので、ここでもし北海道開発庁側が申しますように、全国開発計画が樹立されなければ、北海道開発第二次五カ年計画も最終決定を見て閣議に出せないということになりますと、あなたの方の仕事の進行度合いが著しくはね返って、北海道開発の方針の確定をおくらしめる度合いが一そう激しくなるわけであります。従いまして、その点を明確にしていただきたいと思うのであります。同時に北海道開発庁長官にもお伺いをいたしたいのでありますが、ただいまの宇田長官からのこういう御説明でありますが、北海道開発第二次五カ年計画の閣議決定を見る時期は、今の宇田さんの条件と同じ時期でなければならないのですか、それ以前に行われ得る見通しですか、この点をお伺いいたしたいと思います。
  79. 石井光次郎

    ○石井国務大臣 私の方の開発第二次の計画は、きのうも申し上げました通り、今渡辺さんの言われた通りの心持で、経済企画庁経済五カ年計画というものが改訂され、それに合せてちゃんと数字がそろった方がいいと私は思っております。そういたしますと、いつごろまでかかるだろうかということを長官に聞きますと、まず九月と思ってくれぬかということでありますので、それまでにどうしても早く私の方が出した方がいいかどうかという問題になりますと、三十二年度予算はもう大体その第二次五カ年計画の大綱を含んでこしらえたのでありますし、一、ニヵ月を争ってやる必要もないじゃないか、全体と合せた方がよく、また、できたものがすぐひっくり返るというようなことがあってもいかぬじゃないか、それで、なるべく経済企画庁に急いでいただいて、それに合せて閣議決定をした方がいいじゃないか、こういうふうに私は今思っているのです。
  80. 渡辺惣蔵

    ○渡辺(惣)委員 そういたしますと、だんだん筋が明らかになって参りましたが、全国開発計画が策定を完了して、閣議に提出する時期が明らかになったことと、それから石井長官は主管大臣でございまするから、もちろんでありますし、きょうは幸い閣僚の四分の一の御出席を願っておりますので、そこで共同責任を負っていただきたいのでありますけれども、第一次五カ年計画の場合のごとく、ずるずるべったりと基本方針を国策として策定することなしに、第二次計画の第二年度までずるずる入っていって、またいろいろな問題を起しますようなことのないように、一つ必ず北海道開発計画としては、国策として閣議決定を同時にするということを、御確認を願いたいわけであります。
  81. 石井光次郎

    ○石井国務大臣 御趣旨のような心持で私どもおりますから、その通りやりたいと思っております。
  82. 渡辺惣蔵

    ○渡辺(惣)委員 実は南條建設大臣と宮澤運輸大臣においでを願っておりますが、南條大臣が時間を急がれておりますので、南條大臣及び宮澤さんに質問を申し上げたいと思います。実はこれはかつて一度質問をいたした問題でありますけれども、問題の焦点がきわめて重要でありますので、あらためて再確認をいたしたいと存じまして、宮澤さんにもおいでを願ったわけであります。問題は一点であります。北海道開発計画において、非常に重要な課題を投げかけております苫小牧港の問題であります。これは実を申しますと、この計画について私が申し上げますよりも、各般の方面から非常に手きびしい批判が実は出て参っておりますので、それをこの間は、批判を具体的に取り上げずに、ただ南條大臣と質疑応答をいたしたのでありますが、この際国会を通じまして、これらの問題につきまして明らかに解明をしておき、その対策について、同時に政府といたしましても統一された方針を樹立されてもらった方がむしろ正しいのではないか、こう考えますので、もう一ぺん正確にこの問題を申し上げたいと思うわけであります。それは御存じのこの苫小牧港の問題につきましては、産業計画会議がこれを取り上げ、さらに公共事業調査特別委員会が取り上げ、北海道開発庁がこれに対する駁論を出しておる。こういうにぎやかな課題になっておるわけでありますが、ここでは時間の節約上、要点のみを抜いて簡単に申し上げます。  産業計画会議が言っておりますのは、   なお、ふたたび商業港の問題にかえってとくに一言すべきものに「苫小牧の工業港造成計画」がある。この計画は、現在の函館、小樽、室蘭等の港がいずれも適当なヒンターランド(背後地)をもたないため新らしく背後に工業地を持つ港を造ろうという雄大な構想に基いて考えられたものであるがここに三つの問題がある。   第一は、適当なヒンターランドと密着した商業港は、はたして北海道経済性を発揮させる上に不可欠の要請であるかどうか。いいかえれば、どこまでの費用をかけても、そのような港の築造の合理性を主張できるのか。   第二に、苫小牧は果してその目的からみた最適地かどうか。   第三に、現在の苫小牧計画は技術的にみて適当か、またその実施の方法を是認されるかである。   右のうち第一、第二は、のちに詳論すべき大問題であるが、とりあえず第三点について一言しておかねばならない。   この計画は、外港そのものを造る部分と、工業都市のための内港を造る部分とに分れているが、前者に要する資金は一二億円と算定され、後者のそれは一六〇億円と計算されている。(苫小牧工業地帯造成のための用水計画、電力計画、交通計画を合せると九二八億円となる)ところが現在の年間投融量は約一億円であって、外港部分だけをとってみても、あと十八カ年を必要とすることになる。かりに工業都市そのものの建設は別として、工業都市のための内港部分の建設だけを考えるとしても現在の進行速度では百数十年を要することになる。これではまったく無意味投資が、国費をもって行われているといわざるを得ないのであって、看過することを許されない。これが産業計画会議所見であります。もう一つ、別の資料。行政管理庁の諮問機関であります公共事業特別調査委員の答申が、この問題にまた具体的に触れておるのであります。   苫小牧工業港の計画は、苫小牧市東部に臨海工業地帯を造るもので、掘込式の工業港を新設上、一万噸級の船舶数隻の碇泊を可能ならしめようとするものである。海岸線と平行した内湾をつくり、その主航路の有効幅員二〇〇米とし、内湾の周囲に約四〇〇万坪の工業地を造成せんとするものである。   とりあえず、三十一年度より五箇年計画をもって外湾の築設及び正面掘さくを行い、その工事費は一九億円であるが、将来掘込式内湾を完成するときには、更に約一六〇億円を必要とする見込である。   本港は、石炭産出地の至近距離にあって、石炭化学工業その他近代工業を誘致し、北海道の発展を図るとともに、わが国過剰人口の処置対策に資し、兼ねて漁港の役をも果さしめんとするものである。   しかしながら、わずか六〇粁の地点に天然の良港たる室蘭港を有するのに、太平洋に全面をばく露し、天然の庇へい物の全くない、当地に築港することは、判断に苦しむところである。この地方は漂砂の現象が著しく、水深九米以下の地域はその影響を受けるので、内湾側が常に埋没するおそれがある。   また、工事に当っては予想外の事態、又は災害等によって事業費が相当増額される危険もある。築港が完成しても、台風時には船舶の避難には困難を来すことが考えられ、また、将来の工業港としては、三万噸以上の船舶の出入を考慮すべきであろう。   工場誘致の問題については、工業にはそれぞれの立地条件の必要があり、港がありさえすれば工業が興るという安易な構想は危険であって、更に十分なる調査研究の必要が認められる。  というのがこの委員会の答申であります。  もう一点、済みませんが、能率上読ましていただきたい。今度はこの両意見に対します北海道開発庁の意見書であります。田上次長を助けるために、かわってこれを読むことにいたします。    苫小牧工業港の技術的問題と立地条件の調査研究について   苫小牧工業港築設に対して「漂砂による内湾の埋没」「災害に対する危険」「三万トン以上の船舶の入港を考慮すべきこと」等技術的な点についての指摘であるが、   これについては十分検討し考究の上計画しているものであり、その結果、比較的多額の事業費となっているが、工業港築設による効果が大きいから、決して過大な投資でなく、最近における内地の臨海工業地帯の造成費に比較して遥かに割安である。また「工業誘致については工業にはそれぞれの立地条件の必要があり、港がありさえすれば工業が興るという安易な構想は危険である」との指摘であるが、   この点については相当調査を実施して来たところであって、工業地帯としての一般的な立地条件即ち用地、用水、電力、陸上交通、資源その他については極めて恵まれており、港湾施設のないことが隘道となっているのであるから、これの整備を図るならば石炭利用工業を始めとする諸種の適地工業は大いに誘致できるものと考えている。というのが開発庁の見解であります。  以上、それぞれ非常に立場の異なった機関で発表しております三つの意見が、それぞれ食い違っておるものがあるのであります。にもかかわりませず、現地におきましては、この港の工事がすでに昭和二十五年から始まっております。最初は苫小牧市が独立で三百四十八万二千円を投じ、累年継続いたしまして、三十一年度まで苫小牧市が単独で市費として投じておりまする金額は九千四百五十九万二千円という金額であります。これは一つの市であります。ところが国費の方は二十六年から始まりまして、三十二年の一億一千万円を加えますと三億七千七百二万九千円、合計いたしますと、今日に至りますまでに、この七年間に四億七千百六十二万一千円という経費がここに投入されておるわけであります。そこで、すでに五億円近いこういう国費及び市費が投ぜられまして建設が進められておりますのに、今この段階におきまして、以上指摘いたしましたような三つの大きな問題がそれぞれ出ておるのであります。この問題は、ただいま地方でも、こういう政府関係の文書、産業計画会議の文書等によりまして、現地ではどういうことになるのか、将来ともこの計画が継続されるのかどうか。今年は幸い地元南條建設大臣の努力で一億一千万円ついたが、南條大臣がいつまでも建設大臣におるわけでもございませんから、そういたしますと、非常に現地の諸君の不安も多いわけであります。  そこで、私はどれがよいという意見を申し述べておるのではないのでありまして、こういう関係の、それぞれ社会的、政治的影響を持つところの文書が、しかも非常に内容を含んだ文書が、何か意図的に論じられておるのか——でなければ、公正な立場で論じておるとすれば、もっとわれわれも真剣にこの問題を取り上げて、誤まりない方策を樹立しなければならない、こう考えるのであります。そこで、この問題につきましては、すでにこういう状態で進行の過程にありますので、国といたしまして、もう一度、ほんとうにこれを推進するためには——今のような継続事業にもなっていない、毎年その年その年の風の吹き回しで予算がついて、その先はどうなるかわからぬという不安定な条件で、しかもこういう大がかりな仕事が進められるということは、きわめて重大なのであります。すでに仕事は七年間も継続しておるのでありますから、これをやるとすれば、どうするのか。もっと国自身の責任においてこの真実を調査研究し、これに対するところの基本的な方策の樹立をすることこそが急務である、こう考えるわけでございます。そういう意味におきまして、建設大臣からはもちろん所見を承わっておりまするが、あらためて建設大臣にお伺いいたしますとともに、同時に港湾を所管いたしまする宮澤運輸大臣といたしましても、港湾行政の一環といたしまして、この苫小牧港の建設につきましては、今後継続事業としてはっきりと政府の責任においてやられる用意があるのかないのか。いつまでもこういう論議を抱きながら、ずるずるべったりすっきりしないでいくのか、それともこの際、こういうような各般の問題が出ておりまする時期に、その誤解を一掃して明確なる線を出すのかどうか、この点につきまして、関係両大臣の明確なる答弁を期待するわけであります。
  83. 南條徳男

    ○南條国務大臣 渡辺委員にお答えいたします。主として苫小牧港のことでお問いのようでありますけれども、この前の当委員会におきまして、私個人としての意見は簡略述べたのでありますけどれも、建設大臣といたしましては、建設省は直接この苫小牧港には関与しておらないのであります。港湾でありますから、予算は運輸省において検討し、その策定は開発庁が当っておるわけでありますので、この計画の策定の内容あるいは将来の計画等については、両大臣の方からお聞き取りを願うことの方が最もふさわしいと思います。
  84. 宮澤胤勇

    ○宮澤国務大臣 お答えいたします。この苫小牧の今日までの港湾工事の実施については、ただいま渡辺さんのお話通りであります。ただ今後予想されておるのは、一応三十六年までに約十九億の計画の残りを実施していきたい、こう考えておるのでありますが、これは主として北海道開発計画に基いて、私どもの方は自分の命ぜられたところをやっておるのであります。政府としても、国家資金としてただいまお話のように本年度三億五、六千万円、あとの残りの十五、六億円を三十六年までにかかってやりたい、こういう希望を持って、今その計画の実現に努力しておる次第であります。
  85. 渡辺惣蔵

    ○渡辺(惣)委員 その第一期計画をとりあえず完成するといたしましても、残りの分につきましては、継続事業としてはっきり予算措置をするお考えはありませんか。
  86. 宮澤胤勇

    ○宮澤国務大臣 今のところは継続事業としてはっきりきまっておりませんけれども、この計画に基いてやっていきたい、こう思っております。
  87. 渡辺惣蔵

    ○渡辺(惣)委員 この点に関しまして石井長官の所信をお伺いいたします。
  88. 石井光次郎

    ○石井国務大臣 これはいろいろな問題があるようでございますが、これらにつきましては、それぞれの機関によって調べまして、心配のような点はなく、予算さえついていけば、残りの第一期計画に要しまする十九億円というものが出れば、商業港あるいは漁港というものが何年か後にはこれに基いてりっぱにお役に立って、その次の工業港の計画にも進む前提になるだろう、こう思っておるのであります。私どもはいろいろな点を注意深く、そういう人たちの声も聞きながら、なお私どもが調べました点では大丈夫これを仕上げていけるものだ、という結論を得ておるのでありますが、さらにその進行については、一層注意をしながらやっていき、かつ予算をできるだけ多くいただくようにいたしまして、早く実用になるようにするということが私どもの仕事であります。
  89. 渡辺惣蔵

    ○渡辺(惣)委員 私、三大臣のうちのお二方に対する質問は、他に関連質問があるようでありますから、終ります。
  90. 竹谷源太郎

    竹谷委員 私は一言だけ建設、運輸及び企画庁の各大臣にお尋ねしたいのでありまするが、去る三月二十九日に国土開発縦貫自動車道建設法が成立をいたしました。そこで本年度は吹田—小牧間に、金額はわずかでありまするが、いよいよ道路公団において建設を始めることになったことは、まことに御同慶にたえない次第でありまするけどれども、実はこの東北開発に関しまして、前国会、前々国会等におきましても、各方面意見等も聞いたその結論から申しますならば、東北開発並びに発展の隘路は、輸送力の問題と電力だということに、大体意見が一致いたしておるのであります。電力につきましては、水力だけにはたよれないので、塩釜の三十五万キロワットの火力発電、あるいは八戸の十五万キロワットの火力発電、小名浜の七万の火力発電、これらが建設中であり、あるいはまさに建設が始められつつあるのでありまして、ここ数年のうちにこの電力の問題も相当解消を見ると思うのでありますが、問題は輸送力でございます。東北本線の電化等もその緒についたのでございまするが、今後はこの鉄道だけでは不十分でございまして、自動車等の発達に伴いまして自動車道を作る、これが未開発地方開発には一番手っとり早いので、ことに東北地方は、日本全体といたしまして、北海道を除けば、山の坂があまり急でない、緩傾斜の比較的高くない山脈地帯でありまするから、建設費も非常に安くいきまするし、従いまして、この東北のどまん中に縦貫自動車道を完成するということは、技術的にもそうめんどうではありません上に、財政的にも割合に格安に自動車が奥まで行くと言われている。そこへ今回国会におきまして東北開発に関する法案予算等が出てはきたのでございまするが、これはどうも枝葉末節の方策である。電力の払底の解消、それから輸送力の解決、こういう点につきまして、電力は前述の通りでありまするが、輸送力の問題につきまして解決がされなければ、枝葉末節の工場誘致その他の施策をやりましても、真の東北開発にはならない。すなわち輸送力の解決こそ、東北開発のための産業立地条件整備の第一でなければならぬ、このように私は考えるのでございます。むろんこれは国家として相当の財政力を投入しなければなりませんが、建設大臣並びに運輸大臣、それぞれ御共管の大臣でありますので、この東北自動車道をすみやかに開設をして、そうして東北ほんとうの基盤からの開発をなし遂げようというお考えはないかどうか、将来この問題についてどのようにお考えであるかお尋ねしたい。あわせて企画庁長官のこれに対する御所見も承わりたい次第であります。
  91. 南條徳男

    ○南條国務大臣 お答えいたします。東北開発がまず道路からだというお尋ねについては、全く同感であります。そこで政府におきましては、三十二年度にとりあえず建設省関係においては、一級国道につきましては東北地方の改良あるいは舗装につきましても、今年は大幅に事業量をふやしまして、施行することに相なっております。いずれごのことを具体的に皆さんの前に提示することがあると思いますが、おそらくはいまだかつてないほどの事業計画が北海道に盛られていることを、お喜び願えると思うのであります。そこでそれだけでは足りない、縦貫道路、高速自動車道路によって輸送路をもっと完成してもらわなければ足りないのだというお尋ねにつきましても、ごもっともであります。そこで、多年国会において継続審議中でございました国土開発縦貫自動車道建設法案も先般ようやく衆参両院を通過いたしまして、決定いたしたようなわけでありますので、そこで近くこの縦貫道法案の定めるところによる審議会を設けまして、その審議会によりまして予定の線を決定してもらい、これを法律によってこの予定の線をきめまして、実施は建設省がいたすのでありますが、運輸省と緊密なる連絡をとり、基本方針がきまっておりますので、これに基いてこの審議会できまった方向に向いまして、政府は施行したいと思っておるのであります。従いまして、ただいまのお尋ねの点につきましては、政府としては必ずこれを遂行するという計画なり自信があるということをお答えいたします。
  92. 宮澤胤勇

    ○宮澤国務大臣 ただいまの縦貫自動車道につきましては、竹谷さん非常な御推進下すった一事もありまして、これが今日ようやくその緒につきました。もとよりこれは北海道から九州に至る三千キロを完成することが目標でありまして、その第一着手として、中央道に着手したというわけでありますが、これはただいま建設省でやっております一級国道の整備というようなことと切り離して、別個に、日本の国土開発として特別な意味を持ったものとしてやっていきたいということは、本法案の当初からの考えであります。それが成立したわけでありますから、そのような気持で、私どもはこれに全幅の協力をしていきたい、かように考えておるのであります。まだしかし、世論は必ずしもあれを十分理解してついてきておらぬように思いますけれども、中央道が少しでも完成して、世間が日本で初めての自動車道というものを理解すれば、私は東北についても、また山陽から九州方面についても、非常な速度でこれが進むことと思いまして、それを期待するとともに、私どもの立場としてもこれは全力をあげて推進していきたい、こういうように考えております。
  93. 宇田耕一

    ○宇田国務大臣 ただいま両大臣から申された通りでありまして、経済計画の中に、そういう意味で新しい五カ年計画に当然これは盛り込まなければならないと考えております。また先日総理大臣に対して愛知さんから質問がありましたことは、非常に重要な内容であったように思われます。それは外国からの資本の導入等もあわせ考えて、これは規模の雄大な、そうして全体が早く仕上るような構想を持つべきではないかというふうな質問があって、それに対して総理大臣の答弁があったと記憶いたしております。そういうふうなそれぞれの関係省庁で話を進めておりますから、その線に沿いまして、新しい経済計画には当然これを織り込みたいと考えております。
  94. 川村善八郎

    ○川村(善)委員 私は、直接には運輸大臣の所管の問題でありますが、運輸大臣のお答えによっては、建設省の関係になり、また工事の方面では開発庁の関係にもなると思いますので、一点だけお伺いいたします。  東北並びに北海道開発には、電源の開発も重要であり、道路の開発も重要であり、あるいは鉄道の開発も重要だ。いずれも、この重要問題について各大臣に質問をされておるのであります。鉄道の必要なことについては、午前中も社会党の先生方から質問があったのでございますが、きょうの新聞を見ますると、運輸審議会でございますか、その機関が、新線を十線と一級線を十三線指定して、それを内閣に建議をしているということを聞いております。北海道開発線というものも相当ありますが約二線か三線それに入っておるようであります。ところが、北海道開発計画には、十一線入っておると私は承知をしておるのでございますが、その線のうちに、すでに路床もでき、かつては線路も鉄橋もかけ、しかも駅まで設置したという線もあるのでございます。これらは終戦後、全部線路をはずし、駅舎を他に移転してしまうというようなことで投げられておりまして、農地にもならなければ、道路にもならない。そうして地方民は、鉄道が敷設される予定線に入っており、しかも新設線の一線に入っておるから、もう近くできるであろうということで、首を長くして待っておりまするし、運動も継続されて、多大な経費も使っておるようなところがあるのでございます。ところが、ただいま申し上げましたように、その新設線の中にも入らなければ、いつやるという見通しもついておらないのでございますが、理由を聞きますと、その地方開発には資源が不足で鉄道の敷設の用をなさないとか、あるいは道路の並行線であるので、あまり鉄道としての価値がないとかいうようなことがいわれております。しかし、あなたの運輸大臣のときでないから、あるいははっきりおわかりになってないとは思いまするけれども、運輸省として、そこに建設をするということで路線も作っており、しかも線路も敷いたという明らかな事実もあり、そうしたようなものを今日投げておるのでございますから、そういう線は一体鉄道を敷設するのかどうか、何年ごろやるとかいうような明るい見通しがあるならば、住民も安心して待つでありましょう。いつ何どきどうなるか、ほんとうにやるのか、やらぬのか、こうしたような不安な状態にあって、いつまでも陳情を続けて、多大の経費をかけて、最後に投げられるいうことになれば、非常に地方民が落胆をいたしまするし、さらに損害もかかり開発もできないということになれば、その一つの問題が非常な支障になるのであります。例をあげては恐縮でございますが、こういう線でございます。北海道の函館から戸井に通ずる線、それから松前町から旧大島村の原口までの線は完全に路床ができております。こういうところを投げておるのでございますから、鉄道を敷設するならば敷設するというような方針をはっきりしてもらわなければならないし、もし敷設しないということであるならば、そこを自動車道路にすると、りっぱな道路になります。今松前地方は二級国道になっておりますし、函館から戸井の間はまだ環状道路ができませんので、地方道になっております。これらもやはり二級国道にしてくれということを、かつて南条建設大臣が函館にお見えになりましたとき、陳情があったの参でございます。政府としてはやはり案を立てた以上は、見通しをはっきりして、住民に期待を持たせるようにすることがほんとうであると私は考えるのでございます。ここに地区をあげて申し上げたのでございますが、あるいはお知りにならないかもしれません。しかし、そういうところであるならば、調査をして、鉄道を敷設する価値がないとしたならば、その路線をバス道路にするとか、自動車道路にして、一般が通れるようにすれば、非常に便宜も与えられ、地方民も安心するのでございますから、こういう点について見通しを一つお話願えれば、けっこうだと思います。
  95. 宮澤胤勇

    ○宮澤国務大臣 実はただいまの路線について、御質問のあったような具体的なことは私は存じておりませんが、お話趣旨を伺いますと、それをそのまま長いこと捨ててあって、どっちにもつかないということは御迷惑のことと思います。御質問の御趣旨によりまして、さっそく調べまして、それに対して今お話のようなどっちにするかというようなことをはっきりきめるように進めていきたいと思います。
  96. 川村善八郎

    ○川村(善)委員 次に建設大臣にお伺いをいたしますが、運輸省が鉄道を敷設するということならば問題はございません。道路にするといえば、結局建設省関係になるだろうと思いますし、工事になりますと、開発庁がおやりになるということになるのじゃなかろうかと考えております。その場合、あの地方、直接にいうと、戸井方面の道路は、今まで国の所有で、地方の所有ではないと思っております。そういうところに向って道路を建設することができるかどうか。もっとも予算措置が伴わなければ、できませんけどれも、これは建設大臣も陳情を受けて、御承知だと思います。あれは幾らも金はかかりません。従ってあの地方に道路を作ると、毎年海から受ける大きい被害もなくなるので、こういう点を緩和するために、道路の建設計画を直ちに立てられるかどうか。いわゆる北海道開発の計画にない路線であります。ですから、計画に入れなければならぬとは思いますけれども、その計画にない路線でも、運輸関係で鉄道を敷設することができないということで、建設省と運輸省と相談の結果やるという場合には、できるのか、できないのか、この点をお伺いいたします。
  97. 南條徳男

    ○南條国務大臣 建設省といたしましては、最近の道路網を整備するという国家的要請、国民の世論に従って、先ほど申し上げました通り画期的な国土開発縦貫道路をやる、あるいは今年度予算に計上してあります名古屋—神戸間の高速道路のごとき、かような高速道路というようなものは、初めて日本にできるわけであります。そこで今まで国鉄で考えていた予定線にいたしましても、道路網を総合的に勘案して、昔であれば鉄道によらなければどうしてもいかぬというものも、今日の時勢において、これを道路に変えることがふさわしい場合においては——諸外国の例を見ても、日本くらい鉄道に依存しておる国はないのであります。私はこれを道路に変えて、道路を整備することによって——ことに今回積寒地の除雪費というものに十億予算が組まれておるのであります。北海道の積雪寒冷地においては、冬でも除雪すれば自動車が使えるという時代においては、そのようなことも当然勘案して、国鉄の方で予算関係から新線建設がなかなか進まない場合においては、建設省がこれにかわる道路を作る、そして地方民の福利民福をはかるような方向にいくべきが国策であろうと考えておりますので、ただいま御指摘の戸井線のごときについては、運輸省と十分よく連絡協議いたしまして、地方民の要望等も聞いて、善処するようにしたいと考えております。
  98. 愛知揆一

    愛知委員 先ほど宇田国務大臣の御答弁にも触れられた点でありますが、一点だけ建設大臣にお確かめしておきたいことがあります。去る二十八日に、当委員会において岸総理大臣に総括的な質問をいたしました中の一つに、この中央縦貫道路の建設ということは、資源の開発、完全雇用その他いろいろな目的から、絶対にできるだけすみやかにこれを促進して実現をしたい、ついては一つ方法として、場合によっては外資の導入によってこれを促進することを考えたいと思うが、いかがであろうかというお尋ねをいたしましたところが、私の見解と同様のような御意見を総理から伺うことができまして、非常に愉快に存じたわけであります。さらに愉快に存じましたのは、たまたまこれに相次いで、一昨日でありましたか、朝日新聞等に、建設大臣も同様のことを熱心にお考えになっておるかのような記事を拝見いたしたわけで、これはわが意を得たりという感じがいたしたのでありますが、たまたま先ほど宇田さんもこれに触れられましたので、一つあらためて建設大臣の御所見を伺いたいと思います。
  99. 南條徳男

    ○南條国務大臣 お答えいたします。先ほど来の、日本の国土開発には道路網を整備して、日本産業経済の効率化をはからなければならぬということは、当然過ぎるほど当然であります。ただ従来の道路の整備方法におきましても、財源の問題につきまして、公共事業費だけ、国費だけで日本のこういう大きな画期的な道路を整備しますということは、なかなか言うことはやさしいが、実行が長年月かかるといううらみがあるわけでございます。そこで、この財源の問題について何とかして別途な方法考えるにあらざれば、国土縦貫道路のような非常に大規模なものは容易でないと考えますので、機会があれば、財源の点において方法考えたいと思っておりましたやさき——これは二、三年前でも、たまたまアメリカからワトキンスなどが参りまして、東海道線を経済効果の企画のもとに調査したことがあります。そこで、その当時も日本に外資を入れるための話があったのでありますが、当時は世界銀行その他の会社等が、日本経済力を考えていろいろ条件がむずかしかったのであります。しかるに今年に入りまして、日本経済力、産業経済効果に対する見通しが非常に変って参りまして、最近向うの相当有力な会社から引き合いがありまして、まことに有利な条件でもってこれらの縦貫道に対する融資をしてもよろしいというような話し合いがあるのであります。そこで、これにつきましては十分検討いたしまして、日本の国内の経済金融等の面からも差しつかえないという場合においては、何とかしてこの財源によって、国民の多数の要望する道路整備を急速にいたしたいという計画は持っておるのであります。詳細はまだ申し上げる段階ではございませんが、そういう方向に進んでおるということだけは申し上げておきます。
  100. 中島巖

    ○中島(巖)委員 非常に時間もありませんし、それから本日この質問をするつもりではなかったのですが、いろいろ竹谷委員からの質問に関連いたしまして、国土開発縦貫自動車道建設法について宮澤運輸、南條建設、宇田経企長官などからもお話がありましたので、関連して一言質問いたしたいと思うのです。  この法律は、かつて建設委員会にかけるか、あるいは当国土総合開発特別委員会にかけるかというようなことで、だいぶ議運で問題になった法律でありまして、しかも四内閣五国会にわたって審議されまして、このほど成立した法律であります。国会では皆様方の非常に熱心な御努力とともに、南條、宮澤両大臣が就任されまして、非常にこれの成立について御努力願ったことは、両大臣に感謝をするわけであります。そこで現在建設委員会で問題になっている焦点は、高速自動車国道法案によりまして、内閣は建設の基本計画並びに予定線の決定を建設、運輸両大臣にするというような点が問題になっているわけなんです。そこで、いま一つここで私どもに新しい曙光が見えたことは、宮澤運輸大臣が、現在建設省の策定しつつある道路十カ年整備計画とは別に、これらの資金を貸し出して開発する。まさにその通りでありまして、この面から申しますと、今年度におきましても、馬場建設大臣当時に、道路に九百四十六億を請求して、そして公債、一般財源、ガソリン税の三本建にいくという構想を明らかにしたのでありますけれども、道路公債が認められず、わずかに一般財源からする四十四億しか出なかった、こういうような状態でありました。従って道路整備十カ年計画にこれを織り込みますれば、せっかく法案が成立いたしましても、これは死文にひとしいものである。そこで私がお伺いしたいことは、この法案におきますと、審議会は総理府に設置する、こういうふうに規定されておるのであります。ただいま資金計画のことをくどくど申し上げましたけれども、結局総理府に設置することによって資金計画に非常に都合がいいのではないか、と申しますのは、現在昭和二十七年に成立した法律で電源開発促進法がある。これは通産省所管であるべきものが、やはり審議会が総理府に設置されておりまして、そして電源を急速に開発せねばならぬという建前から、外資を導入いたしましたりして、四百五十億ないし五百億の現在電源の資金が投ぜられており、そしてそれがこの神武景気という産業景気の原動力になったのであります。これと同じような意味で、総理府に設置いたしまして、そしてこれらの建設費の獲得を外資その他によってまかなうべき性質のものである、こういうように考えておりましたところが、運輸大臣もほぼそれと同じような構想を述べられて、大へん私はわが意を得たりと思うのであります。そこで法案通りましたけれども、審議会の設置その他について現在政府はどの程度に進んでおるかということを、宇田長官が見えられませんけれども、政務次官なりあるいは南條、宮澤両大臣でもけっこうでありますが、お伺いいたしたいのであります。
  101. 南條徳男

    ○南條国務大臣 今の後半の方の審議会の経過についてちょっと申し上げます。先ほど申し上げました通り、この縦貫道法案が参議院も通過いたしましたので、当然内閣総理大臣を会長とする審議会の設置を急いでしなければならぬのであります。ただいま内閣と打ち合せまして、その委員の選考をいたしておる最中であります。近くこれが発表になると存じます。さような場合においては、さっそくこの審議会を招集してもらいまして、そしてこの基本的策定を進めて参りたいと考えております。
  102. 三浦一雄

    ○三浦委員 だんだん時間も迫って参っておりますが、私は各大臣が見えておりますから、この機会にちょっと伺っておきたいと思います。と申しますのは、北海道東北開発の基本的の条件として、産業立地条件整備せられておらぬということは、各位の強調せられる点であります。実際また現地に即して見ますれば、一番おくれておる点であります。そこで私は、昨年予算委員会方面からも北海道を視察し、同時にまた、昨年の六月以来、東北各地を現地に即して見て参ったのでございますが、私はむしろ産業開発の方が先に進み過ぎて、それを基礎づけるところの立地条件整備が格段とおくれておるということは、もう否定できないと思う。そこで、きょう特にお伺いしたいのは、先ほど来各位からも御発言がありました通り、それらの問題につきましては、建設大臣の有力な御発言もありましたし、それからその他の問題につきましても、運輸大臣等からお示しがあったのでございますが、これは今後本年の予算の実施過程において、その意気込みをよく拝見さしてもらいたいと思うのと、今後引き続き来年度以降の問題にもかかわることでございますけれども、この点を特にお考え願いたい。というのは、産業開発の方は特に進んでおる。たとえば、率直に電源開発の方にでも例をとるならば、東北電力は、三十万キロの電力を火力発電でやろうとなってきた。どんどん工事は進んでいる。ところが、これに供給する石炭を荷揚げするところの港湾の設備は全然できておらぬ。これが現実の姿であることは運輸大臣も御承知の通りであります。さらにまた、秋田港のごときを見ましても同様でありまして、聞きますところ、住友の石油化学等の計画等もある。ところが、これに即応して整備されなければならぬ港湾等のことはなっておらぬ。北海道実情におきましても、先ほどは苫小牧の築港の問題が論議されたのでございますが、建設大臣のおひざ元の室蘭港のごときは、行ってみますと、これは港湾の整備を最も強調しているところでありながら、依然として片づかないのであります。さようでございますから、開発の前提となる立地条件整備に必要な港湾関係については、特段の総合的な施策が必要だと思う。ところが、経済企画庁がいろいろな計画を進める上において総合調整をし、強力に推進すべきであるにかかわらず、これが無力であるからして、予算策定の過程においてもできない、今後しっかりやってもらわなければならぬのでございますが、さような実情である。従いまして、これは各大臣方から将来のかたい決心を伺いたいのでございますが、運輸大臣におかれましては、これらの実情にかんがみまして、港湾の整備等は特に東北開発上必須の要件であると思いますので、これに対する将来の施策のお考え方東北北海道に関する関係から考えまして、一つ御決心を承わりたいと思います。
  103. 宮澤胤勇

    ○宮澤国務大臣 港湾につきましては、御承知の通り非常におくれております。今年度においては、昨年度より、ようやく、わずかでありますが二十七億円を増していただきました。そして設備にかかりましたが、さてこの港湾の工事着手計画の実際を見ますと、とてもこんなふうじゃいけない、こう考えますので、一つ年度以降においては、さらに年度計画を立てまして、少し港湾の整備をはっきりやっていきたいと思っております。これには私ども運輸省ばかりでなく、各位の御協力もお願いしなければならないと思いますが、それについては一つ新しい計画を策定したいと今考えておる次第であります。
  104. 三浦一雄

    ○三浦委員 実は昨日高碕前長官が主催される重要産業委員会が開かれました。この場合は、当面の問題として鉄鋼生産云々という問題や、電力が日本産業発展の隘路になっているという点、そのうち、鉄鋼生産は、きのうも論議せられたのでございますが、鉄鋼生産の確立から申しましても、もはや少さな船舶でもって鉄鉱石なり石炭を運ぶということは事情が適せぬ。従って四万五千トンクラスの輸送船をもってなすべきであるということが強調せられたのでございまして、あわせて、これはタンカーの拡大化と並んで進むべきところの問題だと思います。さすれば、この問題は、ひとり東北北海道の港湾のみならず、日本的には重大なる問題であると思いますが、不幸にして東北北海道は、運輸大臣も仰せの通り、おくれておる。大陸を控えておりましたから、西南地方の方はまだよかったのでありますが、東北北海道はほとんど港湾らしいものはないという現況であります。でございますから、重要産業の将来の発展の過程からいっても、東北開発の将来の進み方のテンポに従って、この問題は特に重要でございますので、北海道にありましては第二次開発計画、それから東北については本年から発足するのでございますから、これらの事情をとくと運輸省におきましてもお考えの上に、大臣の勇気のある政策の展開を期待して、私は質問を終ります。
  105. 小平忠

    ○小平(忠)委員 時間がだいぶおそくなりましたが、建設大臣、運輸大臣が珍しくお見えになった関係上、与党の皆さんも矢つぎばやにいろいろ質問をされまして、実は私も早く質問をいたしたいと思いましたけれども、御遠慮申し上げて、しんがりになったのでございますが、若干時間をいただきまして、お伺いいたしたいと思います。  国土開発縦貫自動車道建設に伴いまする法案の成立と関連しまして、青函隧道の問題について運輸大臣と建設大臣にお伺いしたいと思います。一昨日、私は本委員会で、岸総理に青函隧道の今後の見通し等について伺ったのであります。岸総理はその席上で、実はまだ基本調査の結果も見ていないが、十分に検討して、何とか促進をしたいという御答弁をされました。そこでこの青函隧道は、単に北海道と青森を結ぶというようなローカル的な問題ではなくて、これは日本的な非常に重大な問題であります。従って主管大臣である宮澤運輸大臣から、これはすみやかに一つ岸総理にも、今までの基本調査の結果などは御報告願って、ぜひ促進願いたいものと、実はその際も思ったのであります。総理としましては、国会で非常に政務御多端のところでありますから、そこのところまで目が届かなかったことも理解できますが、この際運輸大臣に、この青函隧道の現在までの調査の結果と今後の見通し等々につきまして、一つ伺いたいと思います。
  106. 宮澤胤勇

    ○宮澤国務大臣 青函隧道につきましては、お話通り、函館—青森を結ぶなんという小さな問題ではなく、とにかくこの狭い日本の四つの島を交通網で全部一つに結ぶという考えから、重大な点はお話通りであります。そこで調査は大体できたのでございます。まだ総理に詳しく申し上げてありませんけれども、大体でき上りまして、ことに青函は地層その他から、非常に工事が楽じゃないか、思ったよりもやりいいんだというような報告もあり、これはもう大体において見通しはついております。これと並んで四国—中国を結ぶ橋梁も一緒にやって、四つの島を一つに結ぼうというような考えでおります。ただこれには、約六百余億円と今勘定しておりますが、その資金と工事の問題があります。国鉄五カ年計画の中には入っておりません。けれども、これは別個に約一千億円という資金の案を立てまして、何とかことしのうちに両方とも問題を仕上げてしまいたい。それで国鉄の事業としては、五カ年計画のほかに、資金事業も別個の計画として、これから問題を持ち上げていきたい。しかし大体私は今の日本の進んでいく経済の拡大その他将来の点から、これは早急にやらなければならぬかと思いますので、この点は四国をつなぐブリッジと、このトンネルとを合せまして、一つの計画でこの夏あたり何とか立ててしまいたい、こう考えておる次第であります。
  107. 小平忠

    ○小平(忠)委員 きわめて積極的な御答弁でございました。そういたしますと、三十三年度からは着工できると考えてよろしゅうございますか。
  108. 宮澤胤勇

    ○宮澤国務大臣 調査ができておりますので、資金と手配さえ済めば、私だけの考えでは、私はでき得ると思うのであります。またそのくらいのテンポでいかなければ、いけないのじゃないかということは、私だけで考えております。
  109. 小平忠

    ○小平(忠)委員 まことにけっこうな話であります。ぜひ馬力をかけてやっていただきたいと思います。そこでこの青函隧道なり、ただいま運輸大臣が中国—四国のいわゆるブリッジの問題を言われましたが、先般両院を通過しました国土開発縦貫自動車道路の問題でありますけれども、青函隧道の場合に、これは国鉄のみを対象とするのか。この際縦貫道路、高速道路の建設に伴って、現にアメリカではあのニューヨークのマンハッタンに海底隧道というものを通しておりますが、道路の問題は、これは確かに鉄道軌道と違いまして、相当な遠距離になりますと、排気ガス等の問題も起きますから、海底隧道になりますと、問題はあろうかと思うのですが、現に外国ではそういう例があるわけです。ですから、建設大臣としまして、今の縦貫道路の建設に、この青函海底隧道というものについて考えられたことがあるかないか、またそれは実現が可能であるかどうか、その問題について建設大臣、いかがでございますか。
  110. 南條徳男

    ○南條国務大臣 青函の海底トンネルについて、鉄道のほかに高速自動車道路も考えてはどうかというお考えでありますが、まだこの点は調査いたしておりません。しかし将来の夢としては、十分これは考えなければならぬ問題と考えております。
  111. 小平忠

    ○小平(忠)委員 それは建設大臣、夢だなんていう笑いごとではなく、具体的に研究されんことを切に期待するものであります。同時に建設大臣にもう一つお伺いいたしますが、今北海道の総合開発の一環としまして、一級国道の特に札樽が終りまして、札幌—岩見沢、岩見沢—旭川間と延ばしております。この一級国道の舗装工事と、今回国会を通過しました縦貫自動車道建設法の実施に伴う縦貫道、この関連は、一体直線コースのところは、現在の一級国道をそのまま利用することを考えるのか、あるいは全く別個に一直線の、いわゆる縦貫道路を建設するお考えなのか。御承知のように北海道は函館から稚内、さらに網走という線が考えられておるわけであります。その点はいかがでございましょうか。
  112. 南條徳男

    ○南條国務大臣 国土縦貫道路が北海道の場合にどこを通過するかというお尋ねのようでありますが、これは先ほど来申し上げます通り、今度新しくできます道路審議会によって、この路線の策定をするわけでございます。この審議会の結論に待ちまして建設省は実施したい、こう考えております。
  113. 小平忠

    ○小平(忠)委員 運輸大臣にお伺いいたします。実は北海道の交通運輸につきまして、いろいろ鉄道なり、道路なり、問題はありますが、さらに今後重要なる開発を促進しなければならない問題点として、民間航空の路線の拡張であります。これは御承知のような広大な地域でありますから——戦前は御承知のように、大体主要都市には、ほとんど旅客機程度のものの離着陸できる滑走路があったのであります。ところが戦後これが荒廃され、あるいはつぶされて、現在使用にたえないという実情であります。私は今度民間航空の重要性、さらに航空運輸の重要性というものから考えてみまして、ぜひローカル線、すなわちエア・ポート・ターミナル、これらの重要性というものは十分認識を持っていただかなければならないし、すでに運輸大臣の手元には、三十二年度の具体的な計画も大体御決定になっておるのじゃなかろうかと思うのであります。従いまして、今年度新規に計画されておりまする個所、あるいは今後五カ年間にどのような方針を持ってお進みになるか、この際お聞かせ願いたいと思うのであります。
  114. 宮澤胤勇

    ○宮澤国務大臣 ローカル空港の整備は、これはやはり時の声でございまして非常に急がれておりますが、北海道に関する限り、過去においても非常に重く見て実施されておるのであります。三十一年度には全国で五つ着手しておりますが、それにやはり北海道の稚内がある。三十二年度の五つのうちには函館と釧路の二つが入っている。三十三年度に今考えておりますところは、やはり五つでありますが、そのうち北海道の網走を考えております。かようなわけでありますが、しかしこれをもって足れりとせず、この問題もさらに航空並びに全国としては観光とを合せまして、明年度からはもっと積極的な施策を施したい、ただいまかように考えております。
  115. 小平忠

    ○小平(忠)委員 どうかローカル空港の整備については、やはり地域が広大なだけに、切実な現地の要望であります。これは単に北海道だけの問題ではないと思います。日本内地を結ぶ重要な役割を果すものと思うのでありまして、運輸大臣におかれましても十分な御考慮、今後促進方について御努力を願いたいと思うのであります。  最後に私は、石井大臣に昨日私が保留をいたしておきました北海道の寒地農業確立について、大臣の構想を承わりたいと思うのであります。実は昨年の未曽有の冷害凶作で相当な刺激があったのと、また政府当局もこれに対する恒久対策を講じなければならないわけで、相当な御配慮を願ったわけであります。このような問題以来の凶作であった、これを契機として、やはり私は確固たる恒久対策を樹立して、その方向に驀進されることが望ましいと思うわけであります。大臣は臨時代理というような立場で、十分な御検討ということは、まだ日も浅いのでありますから、いかがかと思いますけれども、これは昨年来非常に重要な懸案問題として、開発庁また開発庁長官としては非常に大きな問題でもありますし、明日でありますか、この問題で北海道開発審議会も招集されております。そういうときでありますから、私はこの国土開発委員会において、ぜひ大臣のこの寒地農業の確立に対しての構想について、お伺いをいたしておきたいと思うわけであります。
  116. 石井光次郎

    ○石井国務大臣 昨年の未曽有の冷害、その対策は一通り講じられたわけでありますが、これは北海道に昨年はひどく及んだ冷害でありまして、これは北海道だけでなく、日本各地に起り得る問題であります。その根本の対策として、農林省では寒地農業の対策室をわざわざ設けて、今根本策について考究をいたしておるようでございますが、これにまかせるだけでなくて、北海道といたしましては、北海道自身のいろいろな考えをまたまとめていかなければならないというので、今お話のありましたように、明日北海道開発審議会が行われると思います。農業問題にいたしましても、土地の改良等はどういうふうな仕組みで、やるべきか、あるいは水田をやっておる地帯があり、水田などはもう北海道に向かないなどという一般論もございますが、これは私は当らないと思うのであります。水田に向く地帯があるのでございますから、そこには水田をよりいい状態整備してやっていく。それから有畜農業とか、あるいはテンサイの栽培奨励とかいうような問題、これらについても輪作式でいろいろやっていくというような問題、さまざまな問題がこの寒冷対策として考えられておるのでございますが、これをどうやって具体化していくかというような問題等を、開発審議会によって御相談願いまして、これを土台として、北海道開発に力を入れていきたいと思っております。
  117. 小平忠

    ○小平(忠)委員 具体的な問題につきましては、いろいろただいま先輩諸公からも御忠告があるようでありまして、これは促進法審議の際に譲ることにいたしますが、大臣のただいまおっしゃったことはきわめて重要なことであろうと思います。ただ私は、単に部分的な補助あるいは助成の方策を講ずるとか、あるいは若干の予算の増額をはかる程度においては、北海道の寒地農業というものは確立されないと思う。これは根本的に北海道農業経営のあり方——単に北海道だけではありません、東北の高原冷涼地帯も同じでありますが、これについては、特に北欧三国、あるいはヨーロッパの先進地の、寒地農業としてやっております国々の実態を見ましても、根本的に農業の経営のあり方が違うのです。ですから、私はどうしてもこれは寒地農業確立に対するところの根本的な方策を立てて、やり直しをする基本法を作らなければならない、こう思うのであります。この点については、目下審議会においても検討中でありますが、もしそのような案がまとまりまして、審議会といたしましても、今度は諮問に答える答申ではなくて、検討するというような場合に、大臣はそれを受けて立って、寒地農業確立に対するところの立法に、あるいはその法案の通過並びにそれに対するところの促進について、積極的な御協力をなさる御決意があられるかどうか、それを承わりまして、私の質問を終りたいと思います。
  118. 石井光次郎

    ○石井国務大臣 私は今暫定的にこの仕事をやっている立場にありますけれども、この問題は一北海道、一東北というような問題でなく、国の大きな根本問題であると思います。これについてはできるだけの努力をして、それの確立をはかりたいと思います。
  119. 五十嵐吉藏

    五十嵐委員長 明日は午前十時三十分より開会いたします。本日はこれにて散会いたします。     午後四時四十五分散会