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1957-03-15 第26回国会 衆議院 建設委員会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十二年三月十五日(金曜日)     午前十時二十九分開議  出席委員    委員長 薩摩 雄次君    理事 内海 安吉君 理事 大島 秀一君    理事 荻野 豊平君 理事 瀬戸山三男君    理事 二階堂 進君 理事 前田榮之助君    理事 三鍋 義三君       逢澤  寛君    荒舩清十郎君       大高  康君    大橋 武夫君       生田 宏一君    高木 松吉君       徳安 實藏君    中島 茂喜君       星島 二郎君    松澤 雄藏君       山口 好一君    足鹿  覺君       井谷 正吉君    田中幾三郎君       中崎  敏君    中島  巖君       山下 榮二君  出席国務大臣         建 設 大 臣 南條 徳男君  出席政府委員         建 設 技 官         (河川局長)  山本 三郎君  委員外出席者         農林事務官         (水産庁漁政部         長)      新沢  寧君         建設事務官         (河川局次長) 美馬 郁夫君         参  考  人         (島根水産部         長)      児玉 真一君         参  考  人         (中国電力株式         会社社長)   島田 兵蔵君         参  考  人         (中国電力株式         会社取締役)  小坂 四郎君         参  考  人        (中国電力株式会         社管財課副長) 可部 重応君         参  考  人         (江川漁業協同         組合理事)   中村 義男君         参  考  人         (江川漁業協同         組合理事)   徳田 良助君         専  門  員 山口 乾治君     ――――――――――――― 三月十五日  委員渡海元三郎君、中村寅太君、安平鹿一君及  び渡辺惣蔵君辞任につき、その補欠として星島  二郎君、大橋武夫君、中崎敏君及び中村英男君  が議長の指名委員に選任された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  ダム建設等水利権許可による利益調整及び  損失補償の問題に関する件     ―――――――――――――
  2. 薩摩雄次

    薩摩委員長 これより会議を開きます。  ダム建設等水利権許可による利益調整及び損失補償の問題に関連して島根江川水系における発電所建設による漁業者損失補償問題につきまして調査を進めます。  議事に入る前に一言参考人方々に申し上げます。参考人方々におかれましては、御忙多中遠路わざわざ当委員会のため御出席をいただき、まことにありがとうございました。委員一同を代表いたしまして、厚くお礼を申し上げます。どうか御遠慮のない御意見開陳をお願いいたします。  なおここで念のため申し上げておきますが、衆議院規則の定めるところによりまして、参考人方々が発言なさろうとする場合は、必ず委員長許可を得ることになっております。また、委員参考人質疑することができまするが、参考人委員に対し質疑をすることができないことになっておりますから、この点御了承をお願いしておきます。  それでは、まずこの問題につきまして参考人方々はどのように考え、どのような御意見であるか、順次お伺いいたしたいと存じます。  なお、時間の関係上、一人約十分ぐらいにお願いいたしたいと存じます。質疑は、御意見開陳通告順にお許しすることといたします。  念のため申し上げておきますが、公報でお知らせいたしておきましたように、本日参考人としてお願いいたしておりますのは、島根水産部長児玉真一君、中国電力株式会社社長島田兵蔵君、中国電力株式会社取締役小坂四郎君、中国電力株式会社管財課副長可部応君 江川漁業協同組合理事中村義男君、江川漁業協同組合理事徳田良助君にお願いいたしております。  順序といたしまして、初めに島根水産部長児玉真一君にお願いいたします。児玉君。
  3. 児玉真一

    児玉参考人 私島根県の水産商工部長児玉でございます。お許しを得まして、本問題の概況並びに県が考えておりますことにつきまして、簡単に御説明を申し上げたいと思います。  本発電所昭和二十六年の十一月二日に水利使用許可がなされたわけでございまして、工事完成いたしましたのが昭和二十八年の十一月でございます。補償の問題につきましては、二十九年の五月十一日に正式に会社組合との間で契約が締結されたわけでございます。この話し合いがっきますまでの経過といたしましては、双方でいろいろお話し合いがなされ、県が立会いたしましていろいろあっせんを努めたわけでございます。最終的には両者意見が完全に一致いたしませんので、県の方におまかせを願いまして、県が裁定案を示したわけであります。そういたしまして、双方が県の裁定案同意をされまして、補償契約が正式に成立をしたということであります。  次に、問題になりましたのは補償後のことでございますが、補償契約内容を簡単に申し上げますと――契約書を朗読した方がかえって早いと思いますので、契約書を朗読いたしたいと思います。   江川水系明塚水力発電所設置に伴う漁業権に及ぼす影響措置に関し江川漁業協同組合(以下甲という)と中国電力株式会社(以下乙という)との間に次の通り契約を締結する。  第一条 甲は乙の本発電所設置同意し将来の運営について協力するものとし、乙は甲の事業に対して誠意を以って協力するものとする。  第二条 乙は本発電所設置による魚族の遡上阻害並びに湛水区域の形式による損害に対し、その補償として毎年補殖資金参百弐万五千四百円を甲に支払うものとする。  第三条 乙は本発電所設置に伴う漁業権の侵害その他甲が永久に失う一切の利益の代償として一時金弐千九百八拾七万弐千五百四拾円を甲に支払うものとする。  第四条 将来物価変動により補殖費に著しい変動を来した場合は、甲乙協議のうえ第二条の金額を改訂するものとする。  第五条 第二条の補殖費は、昭和二十九年から甲の請求によって毎年一月末日までに支払うものとし、第三条の一時金は本契約締結の日から十五日以内に甲に支払うものとする。  第六条 甲及び乙は将来合併その他によりその事業を他に承継する場合には、この契約に定める一切の権利義務を承継せしめるものとする。   以上契約締結の証として本書三通を作成し、甲乙及び島根水産商工部が各一通あて保有する。   昭和二十九年五月十一日    甲 島根県邑智郡川本町大字      川本六一二番地      江川漁業協同組合      代表者理事 酒井 真逸    乙 広島市小町三三番地      中国電力株式会社      取締役社長 島田 兵蔵    立会人 島根県     水産商工部長 児玉 真一こういうふうな契約が成立いたしたわけでございます。  その後の経過といたしましては、この補償金組合内部におきましての配分の問題につきまして、組合内部におきましていろいろ議論がありまして、現在に至るまでまだこの補償金配分は最終的に決定していないわけでございます。ただ補償金のうちに含まれております一部の金額をもちまして、約八百万円でございますが、江川上流部養魚池を作りまして、稚魚を養成いたしまして江川放流をいたしておりますが、これだけが実施されている状況でございます。つきまして、現在問題になっておりますことは、補償契約が締結されましてから三年ばかり経過しておるわけでございますが、その間にアユ魚道を通って下降するかしないかということが、一つの大きな問題になったわけでございます。私どもあっせん者といたしましては、アユ魚道通りまして上流に上った場合には、またその魚道を通って下流に下るものなりというふうな考え方を当時持っておったわけでございますが、漁民側主張するところによりますと、上ったアユが下降しないというふうなことを、数年間の経験によりまして主張いたしまして、これは当時の補償に含まれていない問題であるから、一つ追加補償をお願いしたいという要求を県の方に持ち出してきたわけでございます。その問題が一つと、それからもう一つの問題は、ダム発電が行われるわけでございますが、発電の量によりましてダム下流水位変動があるという問題が、関係漁民の間からもう一つ提起されてきたわけでございます。これは予想外水位変動があるので、操業上非常に影響がある、この問題も契約当時には考慮されなかった問題であるので、この問題についても追加補償をお願いしたいということが、下流部から出て参ったわけでございます。  もう一つの問題といたしましては、御承知のようにダムから放水口までの間は渇水地区になるわけでございまして、水が非常に減るわけでございます。従いましてこの地区に在住いたしております漁民の間から、問題が提起されたわけでございます。それは当時この渇水地区状況といたしまして、漁民予想しておりました被害よりも現実被害は非常に大きい、これは一つ現実被害に合わした補償をしてもらいたいということで、追加補償要求が出て参ったのでございます。  これらの問題を中心にいたしまして、県といたしましてはいろいろ調査を進めて参ったわけでございますが、いろいろむずかしい問題でございますので、具体的な結論に到達いたしますまでにはいろいろ研究すべき点が残っておりますが、一応この問題は抽象的に取り上げねばならない問題であるというふうに私ども考えまして、会社の方に追加補償のお願いを申し出たわけでございます。  そうこういたしておりますうちに、上流部の方でごく最近から問題が出て参ったわけでございます。と申しますのは、魚道通りまして上るアユは、補償算定の場合に、大体従来遡上しておったアユの約半分が魚道を通って上るだろうという予想のもとに補償契約が締結されておったわけでございますが、上流部漁民の言によりますと、上流部ではダム築造後非常に漁獲が減少した、これはダム魚道を通って遡上するアユが半分は上らないように思うというふうな意味主張がございまして、この問題についても検討してもらいたい、極端に申しますならば追加補償してもらいたいという意味要求が出て参ったわけでございます。従いまして上流渇水地区下流から、今申しましたような意味追加補償要求が出て参ったわけでございますので、県といたしましても漁民追加補償の要望につきましていろいろ検討いたしまして、一応県の考え方会社の方に申し込みまして、善処方をお願いして今日に及んでおるという状況でございます。  大体現在までの経過でございますが、結局私ども考え方といたしましては、漁業補償の問題は、問題の性質上具体的に何がなんぼということはなかなか算定のむずかしい問題でございますので、当事者の間におきまして善意と良識とをもちまして話し合いをつけていただくということが最良の方法であり、またそれしか方法がないじゃないかというふうに実は考えまして、そういうふうに双方に働きかけ、県はあっせんの労をとって今日に至っておるわけでございますが、何分相当時間が経過いたしますので、なるべく早く本問題を解決したいという意味におきまして、会社側に対しましてもそれぞれお願しをしておったわけでございますが、現在の段階におきましては会社漁業協同組合と県と、三者から三名ずつの調査員を出しまして、現在問題になり争いになっております事柄につきまして調査を進め――広い意味調査でございますが、あるいは話し合いを進めて、双方主張の食い違いを調整しながら解決へ持っていきたいという考えで、調査委員会を設けまして数回開いて現在に及んでおる段階でございます。はなはだ簡単でございますが、一応経過だけを御説明申し上げました。
  4. 薩摩雄次

  5. 島田兵蔵

    島田参考人 私、ただいま御指名を受けました島田でございます。本日、この補償問題につきまして、当委員会におきまして経過を御報告させていただきます機会をいただきましたことを厚くお礼申し上げます。これから私の御報告を申し上げます。  江川水系発電所は、ただいまお話のありましたように昭和二十六年の十一月に着工いたしまして、約二年間の工期を了して完成いたしたのであります。本地点の開発に当りましては、漁業補償問題はきわめて重要な問題でありましたため、着工以来鋭意解決に努力いたしました結果、昭和三十年の五月、広島江川組合を最後に、関係組合とも円満妥結を見たのであります。現在問題となっております島根江川組合は最も影響の大きい組合でありまして、工事着手前後より補償の問題につきまして交渉を重ねておりましたが、二十八年十一月十八日、島根県の御裁定案が提示されるに及びまして、双方これに同意いたしまして覚書を交換いたしたのでございます。  その覚書を読んでみますと、明塚水力発電所設置に伴う漁業に及ぼす影響措置に関し、江川漁業協同組合組合長理事松原順吉中国電力株式会社常務取締役森脇小林両者において、昭和二十八年十一月十八日別紙裁定同意した。おって正式協定については両者の間において本裁定案に基きすみやかに協定するものとする。  これによりまして、この協定案同意の証として本書三通を作成し、江川漁業協同組合中国電力株式会社島根県、各一通ずつ保有する。昭和二十八年十一月十八日、江川漁業協同組合組合長理事松原順吉中国電力株式会社常務取締役森脇小祐、立会人島恨県水産商工部長大久保清和。  そしてこの別紙補償内容がございます。   明塚水力発電所設置に伴う補償計画、その一、永年補償種目アユ放流費数量七十万六千尾、単価三円四十銭、金額二百四十万四百円、種目ウナギ放流費数量百貫、単価千円、金額十万円、種目減水監視費数量七ヵ月・二名、単価一万円、金額十四万円、種品アユ迷入防止費数量三カ所、単価五千円、金額一万五千円、種目コイ子養成池経営資金額三十七万円、計三百二万五千四百円、永年補償については、物価変動により著しくこの金額影響を来たす場合は、両者協議の上改訂するものとする。   明塚水力発電所設置に伴う補償計画その二、一時補償樋口減水監視員詰所数量二棟、単価三万円、金額六万円、種目減水監視用自転車数量二台、単価二万円、金額四万円 コイ子養成池造地質七百八十万六千円、コイ子養成池調弁費三十万円、漁業権補償費二千百六十六万六千五百四十円、計二千九百八十七万二千五百四十円。  その後約半カ年間のうちに、おのおの内部手続を完了。二十九年五月十一日正式契約を締結いたしたものでありまして、その契約書並び付帯覚書は次の通りであります。  契約書は省略さしていただきまして、覚書の方を申し上げます。    覚書   昭和二十九年五月十一日江川漁業協同組合(以下甲という。)と中国電力株式会社(以下乙という。)との間に締結した契約書に関連し、次のとおり覚書を交換する。  第一条 甲は契約書第二条の金額をもって魚族の遡上阻害に対する補殖湛水区域に適応する魚種転換等のため、毎年次の事業を実施するものとする。   小鮎放流事業七十万六千尾鰻その他放流事業   減水区域監視事業   尻無川、早水川、沢谷川鮎迷入防止事業   鯉仔養成事業  第二条 甲は契約書第三条の金額をもって、明塚発電所設置に基因する諸種の影響に対して、将来の魚獲を維持するため、堅実な事業を継続し得るよう増殖事業を最優先的に行うものとする。  第三条 甲が前二条に掲げる事業を実施するにあたっては、島根県知事指導監督を受けるものとする。  第四条 乙は魚道取水口魚止施設放水口迷入防止施設の維持、管理の義務を負うものとし、これに要する経費は乙の負担とする。  第五条 乙は前条の事業を実施するにあたっては、島根県知事および甲の意見を尊重するものとする。  第六条 乙は堰堤放水量最低毎秒一立方米とし、魚族の遡上、降下時における発電余剰水魚族の遡上、降下に効果的に放水するものとする。  第七条 本契約ならびに覚書魚道の遡上率を五〇%程度に予想して締結したものであって、これと著しく相違する場合は甲、乙協議のうえ遡上を有効ならしめる措置または、これに代る方途を講ずるものとする。   以上同意の証として本書三通を作成し、甲・乙および島根水産商工部が各一通あて保有する。  これについて甲が漁業協同組合の酒井真逸さん、乙が私島田兵蔵立会人児玉直一さん、これで大体契約書及び覚書を終ります。この契約に基きまして、一時金の二千九百八十七万二千五百四十円は、契約締結と同時に支払いを完了いたしました。毎年補償の三百二万五千四百円は、その後期限通り毎年支払っておるのであります。一時補償金の使途につきましては、会社面接関係をしないという建前であります。しかし前に申し上げました通り付帯覚書の第一条において、この補償金は優先的に増殖事業費に引き当てることになっておるのでありますが、組合におかれましては、そのうち約一千万円を事業費に引き当て、残額約二千万円は組合員個人に分配されることになったということを聞いておるのであります。そこでこの分配問題が長期間紛争いたしまして、県の係官関係町村長地元有力者等の強力なあっせん調停にもかかわりませず、利害の相反しまする各地区では各様の動きがございまして、いまだ解決に至っていないというのが現状であります。この分配問題の論議におきまして、契約当時会社交渉に当った組合役員の方の説明が、各地区利害に左右されると申しますか、不十分な点があったというのがほんとうかどうかそれははっきりいたしませんが、そういうふうな関係から、別途に会社補償要求するという空気になりまして、三十年の六月下流部組合員から要求が提示され、これに対抗する意味だと申されまして、引き続いて中流部からも要求が出、三十一年の八月には上流部からも要求があったわけであります。会社といたしましては、問題の発生いたしました当初からこの問題はすでに解決をいたしておる問題でありますが、組合において取り上げられ、責任ある機関等から交渉を求められるならば、何どきでもこれに応ずる用意があるということをあらゆる機会に表明して参ったのでありますが、何分組合内部事情理事者間の意見主張も多岐に分れまして、県及び会社側から再三再四要請したのでありますが、組合としての統一した意思表示が受けられないので、困惑いたしたのであります。しかしながら、昨年五月以来県御当局のいろいろの御尽力によりまして協議を進めて参った結果、係官の熱心なごあっせんもありまして、昨年十二月に各地区代表を交えました組合側正式交渉を開始する運びになったのであります。三十一年の十二月二十六日第一回の交渉におきまして、次のような本問題解決のための基本方針について意見が一致したのであります。一、二十九年五月に締結した契約を尊重すること。二、組合が本問題の交渉に当るごと。三、合同機関による調査を進めること。四、漁業電気事業調整をはかることを本旨とすること。五、契約当時予想した事態と現在の状況が著しく相違するものについては適正な措置を講ずること。上記方針によりまして三十二年の一月二十三日に第二回の話し合いを持ち交渉を進めました。合同調査委員会を急速に設けまして、二月の末を目途に調査を完了いたすことになったのでありますが、組合側調査委員の選出が遅延する等の事情がありまして、三月の六日及び七日にようやく第一回の調査委員会の開催を見たのであります。この調査委員会議事は県の御指導によりまして円滑に進んでおりますので、早急解決を期待いたしておる次第であります。  本問題につきましては、島根県御当局を初め、各方面にいろいろ御迷惑をかけておるのでありまして、早急かつ円満に解決するよう、会社といたしましては懸命に努力をいたす所存でありますが、御承知のごとく公益事業建前から、多数の方々の御理解を得られるような解決でなければならないと思うのであります。この点必要な調査等につきましては、この上とも組合及び県御当局の絶大な御協力を得られるよう念願いたしておる次第であります。  以上お手元に差し上げました書類を読んだ次第でございます。
  6. 薩摩雄次

  7. 中村義男

    中村参考人 私江川組合中村でございます。  ただいま島根県の御当局中電社長さんのお話にありましたような情勢でありますから、大体全貌がおわかりになったことと思うのでございますが、これはあの契約にもありましたように、発電所完成前に将来を予想して締結した契約であります。それでこれでまず差しつかえないだろうという意味において契約したのでありますが、契約の条項にも、著しく遡上の率が悪いとかその他のことで変化のある場合には考慮せよというふうに言ってもらっておるように思いますし、そう信じておったのでありますが、発電所完成後になりまして、上流中流下流とも予期しない災害が出てきた。つまり被害があるのである。たとえて言いますと、下流方面では水位増減等によって漁に携わる道がない。しかも漁具がいたむとかいうようなあらゆるむずかしい問題が発生してきておるのでありますので、その間各地区から自分の業態を訴え出られまして、それで中電の方へ再度の交渉をしてもらいたい、そうしたつもりではなかったのだがというような意味の話でありますので、それぞれその地帯別にみな違うわけであります。ただいま中電社長さんも言われたように、漁協一つで話をまとめてくれば相談に応ずると言われますが、上流下流あるいは渇水区ともみなそれぞれ業態が違うのであります。ちょうどこの組会に三千百五十人も組合員がおるのでありまして、区域に至りましても単に海洋漁業のようではありません。それぞれ小さい川を長い間にまたがっておる関係上、漁法その他の漁獲の高がそれぞれみな違うのであります。違う関係上みな大別して、ダムより上流側湛水区、渇水区、下流と、それから最下流もありますけれども、これは下流に準じたような地帯として、三つに大別して考えられる状況になっておりますが、それぞれその完成後における変化についての申し出があるのであります。それを会社の方で、その地帯ごと被害の状態をしんしゃくしてもらって、そうして御相談をいただきさえすれば話が円満にいくのではないかと思うのでありますが、これを業態の違う地点を一緒にまとめて話の相手にしようと言われても、私の方でもいわば調整をとることが実際困難な事態にありますので、私どものお願いすることは、会社にもそれぞれの地帯をしんしゃくしてもらって、全般を通じてこれならばよろしいと言われることならば、漁協経営者としての理事も、それに甘んじてそれでよろしゅうございます。つまり漁民が納得するような補償の再決定をしていただけばけつこうなことと思いますので、こうして中央にまで御迷惑をかけるようなことになりましたことは、まことに相済まないわけでありますが、以上のような点が江川漁協としての考え方であります。
  8. 薩摩雄次

    薩摩委員長 これより質疑通告がありますので、質疑を行うことにいたしますが、中国電力株式会社社長島田さんに対する質疑の中でいろいろ詳細にわたって御答弁を願う場合には、小坂四郎中国電力株式会社取締役可部応中国電力株式会社管財課副長が答弁されることを御了承願います。また江川漁業協同組合理事中村義男さんに対する質問の中で必要がありますときは、同じ江川漁業協同組合理事徳田良助さんが質疑に応ぜられるということについても御了承をお願いしておきます。  それでは通告順によりましてこれより質疑をお許しいたします。委員大橋武夫君。
  9. 大橋武夫

    大橋(武)委員 最初に当りまして、ただいまお三万から発言がございましたが、特に参考人として独立して出頭しておられます徳田漁協理事からも、やはり十分程度状況についての御説明を得たいと存じますから、お許しを願いたいと思います。
  10. 薩摩雄次

    薩摩委員長 それでは、先ほど二人の漁業協同組合理事の方に、どなたかお一人でよろしゅうございますかとお尋ねいたしましたところが、中村義男さんが代表して説明をするということでありましたけれども、ただいま大橋委員からの御要求がございましたので、徳田良助君に御説明をお願いいたします。徳田参考人
  11. 徳田良助

    徳田参考人 下流地区の選出理事として理事をやっております徳田であります。  昭和二十六年、七年、八年と会社交渉しました結果、交渉妥結ができまして以来の大体の全貌は、先ほどお三方からお話があったことでありますので、大体おわかりのことと存じますが、この問題が起きます以前に、下流地区被害というものは、二十七年の九月に工事を進められた関係上、川をある程度せかれたわけでありますが、そのときに水面約一メートルの高さで松のくいを打ち込まれまして、仮堰堤ができたのでございます。その仮堰堤におきまして、その年の二十七年の下降アユがぴしやっととまってしまって、しかも大群をなすアユが川の色が変るほど堰堤し流を遊動しておるというような事情でありまして、理事者一同視察に行きまして、川を三分の一急速にあけてもらって下降をできるようにしたのでありますけれども、何分にもさらに新しく川を掘り上げて作った川でありますので、とうとうその年も下降ができなかった。二十八年は堰堤が相当仕上っておりましたので、これまた全然下降しない、交渉中にこういう状態がありましたので、理事者としましては当然この堰堤が完成したあかつきには相当な被害があるという考え方におきまして、一応県の方や会社側に向けまして、こういう被害か見込まれるがそれについての御検討を願いたいということを申し入れたのでありますけれども、県の方の御回答としましては、遡上した魚が堰堤のために下降しないというような例は全国にないのだ、だから絶対下る、心配は要らぬということでありました。会社におかれましても、いまだそういう話は聞いておらぬから、おそらく下ると思う。特に昭和二十七年は工事のために夜昼大なる音響を出し、いわゆるハッパ作業それから夜昼作業を継続しておりました関係上、照明等による妨害があって下らないのだと思うが、完成したらおそらく下るだろうという話がありまして、二十八年はこれまた全然下降しないのでありましたが、ことしは典型的に雨が降らないから水が出ない、水が濁ったら下るに違いないのだということでありまして、とうとうそうする間に二十八年の十一月に仮契約ができるというようなことになりまして、二十九年の五月に本契約ができたのでありますが、その間下流地区としましてはその被害というものに甘んじておったわけでございますが、たまたま二十八年の十月に試験放水がありまして、試験発電がありましたが、その際の被害というものはまた莫大な被害があったのでありますが、いろいろその被害につきましても、会社側下流被害が何とか食いとめられるような方法をとっていただけないだろうかということを申し込んだのでございますが、会社側としましては、中央の指令によってピーク時に発電するのであるによってこれはやむを得ないというようなことでありまして、いわゆる秋落ちアユはぴしゃっととまってしまう、夏川のいわゆる水が濁りましても、過去におきましてはアユの移動というものを利用してとってきたのでありますが、そういうことも堰堤ができましてからぴしゃっととまり、おまけに毎日のピーク時の発電というものを繰り返されますので、いわゆる水星が、あの発電所の使用水量といいますのが、ピーク時の最大使用量が百トン以上、百二十トンくらいになっていると思うのでありますが、江川の大体の平素の水量といいますのは渇水時期におきましては六十五トンあるいは七十トンというような水量でありますが、その水量で安心して漁業を営んでおりますと、その水量の倍の水が一ぺんに出てくるというような状態でありまして、網を入れておりましても、あるいは川中で投網を打っておっても、立ちがけで友がけというものをやっておりましても、人命にまで危険を及ぼすというような問題が起きてきたのであります。そこで下流組合員の專業者、これで生計を営んでおりますところの三百数十名――大体全員一千名余りおりますけれども、三百数十名の、これのみで生計を営んでいる組合員から非常にやかましく話が出まして、二十九年の十月二十日に会社の方へ、県会議員さんお二人同道しまして陳情しましたのが初めてでありまして、次来三十年の春、松江支店の方へまたお願いに行き、六月には本社の方へ組合員が大挙押しかける等のことがありまして、会社の方へ陳情、お願い、あるいは会談というふうなことで今日までやってきたのであります。当初会社の方としましては、一応一旦契約をなされたものであって、その契約には全川にわたる補償がなされているのであって、聞くわけにいかないというような話でございましたけれども、県のごあっせん等によりまして、あるいは水産庁の黒田技官殿に現場調査というようなことをしていただいて、被害は甚大なりというようなあれをしていただきましてから、会社の方でもそういうような状態ならば組合として話が出るはずだ、組合の他の理事の中には下流の問題は取り上げてくれるなという意見を吐く者もおるくらいだから、君たちの言うことは信じられないというような話も間にはありましたけれども、私たち下流漁民の窮状は、すでに首をくくった者が出てくる、あるいは家屋敷を売り払って逃げなくちゃならぬというような者もある、あるいは野菜畑をわずか持っているほんとうの零細漁民に至りましてはその野菜畑まで売り払い、首が回らぬような借金をして今日まできているわけでございます。会社の方とされましては、一応上流中流下流、この各地区の堰堤ができました関係上、各地区の堰堤を境にしまして利害関係というものか非常に相反しておる、その利害関係が相反しておるのに、地区交渉は絶対にいけない、組合一本で補償交渉に当るならば一応話に乗ってやろうということがありましたけれども組合一本になってやれるような状態であるかないかということは、先ほども中村理事からお話があったように、たとえば遡上しないという上流意見であるとするならば下流にはアユが残るから、残る下流は豊漁になる、ところがアユは上っている、今度下降しないというわれわれの要求を出しますと、上流におきましては成育したアユが堰堤でたまって、それがために上流では豊漁になるはずだというような、いわゆる利害関係が相反しております弱点を突かれまして、どうしても一本でこいとおっしゃる。ところがわれわれとしましてはそんなことを言うておるひまはない。組合員はすでにますます困窮の度を深めていきつつある現状でありますので、何としてでもこの補償解決を早くやっていただきたいということで、建設省の方にも陳情に参りますし、水産庁の方にも陳情に参りますし、県の方にもずいぶん御無理を申し上げて今日まできたのでございますが、なかなか事の促進を見ることができませんので、こういうような催しを開いていただけるようになつたのだと思う次第でございます。また他の、会社側あるいは県の力の今までとっていただいたこと、それから建設省の方で御心配いただいたと等につきましては、またあとからお話ができると思いますので、一応この程度で終ります。
  12. 三鍋義三

    ○三鍋委員 議事進行について、ただいま徳田さんから補足説明をしていただいたのでありますが、やはり公平を期する意味において会社側小坂さんですか、もしあったらでいいのですが十分程度で補足説明をしていただいたらどうでしょう。
  13. 大橋武夫

    大橋(武)委員 今私、質疑をお許しいただいておりまして、質疑の第一問として補足説明をしていただいておりますので、私の質疑を継続させていただきたいと思います。
  14. 薩摩雄次

    薩摩委員長 三鍋さん、それで御了承願えますか。
  15. 三鍋義三

    ○三鍋委員 いいです。
  16. 大橋武夫

    大橋(武)委員 ただいま下流問題についての説明を承わったのでありますが、そこで質疑を進めたいと存じます。  私がこの問題について最も不可解に考えております点は、この水利使用許可の最も根本的な問題であるところの漁業権に対する補償の当事者間の契約というものが成立いたしたのか、ただいまの御説明によりますと二十九年の五月十一日ということになっております。しかるに会社側説明によりますと、すでに工事は二十六年の十一月に着工いたしており、二十八年の十一月には工事完成して発電所の操業を開始しておるということになっておるのであります。そこで私はまず建設省にお伺いいたしたいのですか、こうした問題について、補償問題の完全なる解決を見るに至らないうちに工事に着手するというのは、今日水利使用許可の常道でありますか、いかがなものでございますか。
  17. 山本三郎

    ○山本政府委員 水利使用許可の前に、全部そういう補償問題が解決するということは前提としておりません。ただ、工事をやりまして、たとえば発電することに相なりましたときに被害か起きないようにしようというのが建前になっております。
  18. 大橋武夫

    大橋(武)委員 しかしながら、この問題のごときはすでに堰堤の築造自体によって、当然避けかたい被害が生じておるわけであります。それを被害が生じないようにしようといっても、これは無理な話なんです。こういう問題について、協議が整わざる間にどんどん堰堤の工事だけを進めるというのが建設省のやり方でございますか。
  19. 山本三郎

    ○山本政府委員 工事をやるために被害が起るという問題につきまして、は、そういうことがないように努めるように指導しております。
  20. 大橋武夫

    大橋(武)委員 現に先ほど徳田理事説明によりますと、すでに二十七年の仮締め切りの当時から下降アユに対する被害の問題が発生しておったという事実がある。それにもかかわらず、工事の停止を命ずるでもなく、そのままだらだらと工事完成させて既成事実を作り上げておるということは、これは明らかに事務当局の責任であると思いますが、いかがでしょうか。
  21. 山本三郎

    ○山本政府委員 そういう事態があったということを私どもつまびらかにいたしておりませんか、そういう問題がありとすれば、それによりまして起った被害については補償しなければならぬものだ、こういうように考えております。
  22. 大橋武夫

    大橋(武)委員 そこで、こういう協議が整わざる問題について工事が進められ被害が起った、これは明らかに工事実施を許可したところの行政庁の責任であることは間違いないと思います。それで、行政庁がその責任においてこういった損害が生ずるであろうところの工事の実施を認めた以上は、当然その損害については行政庁の責任においてあくまで被害者を救済する、そのために会社側に対しては、建設省がどこまでも責任をとってあくまでも会社補償を行わせるごとによって被害者を救済するということは、私は当然なことじやないかと思うのですが、この点はいかがでございますか。
  23. 山本三郎

    ○山本政府委員 ただいまの建前といたしましては補償問題につきましては、許可を受けたものは被害関係者と協議いたしまして、その上でやれということになっておりまして、建設省といたしましてはそういう条件を付してやっておるのか実情でございます。
  24. 大橋武夫

    大橋(武)委員 そうしますと建設省のお考えでは、この江川の浜原堰堤に伴う補償問題が二十七年以来今日まで五カ年にわたって未解決であった、一方会社はすでに発電を続けておる、そうして発電によるところの会社利益を上げつつある、片一方被害者はその間何ら救済の手を伸ばされておらぬので、先ほど徳田君の言うように苦しまぎれに首をくくって死ぬ人かできたりあるいは夜逃げをした人かできたりしておる、こういうような場合に一体建設省としてはどういう措置をされるべきものなんですか。
  25. 山本三郎

    ○山本政府委員 この問題につきましては漁業組合会社の間におきまして先ほどもお話がありましたように、一応契約書ができ上ってやっておりましたので、私どもといたしましてはその点で、これは前のことでございますが解決しておったというふうに解釈しておったのでございます。その後今御説明がございましたように、その当時考えになかったような問題か起きてきたというようなことまでございましたので、私どもといたしましては県を通じましてこの問題の早期解決をするようにということで、 いろいろ県に指道いたしまして解決の促進に努力しているわけでございます。ただ時間かかかりましたというおしかりを受けるという心配はあるのでございますが、ただいまの状況におきましては県及び会社側並びに漁業組合の代表者か出まして具体的な折衝をしておる最中てございまして、早期解決を私どもといたしましては極力望んでおる次第でございます。
  26. 大橋武夫

    大橋(武)委員 私はこの問題は非常に重大な、憲法上の問題であると考えておりますので特に建設大臣に申し上げておきたいと思うのです。御承知通り漁業権というものは先祖伝来の財産権でございまして、これは関係漁民にとりましては土地所有権以上の重大な生活の基礎となっておる権利だ、従って憲法におきましてはこうした私法上の権利については補償がなければ取り上げられないという原則がちゃんと立っておる。しかるに現実にこの浜原堰堤の上下流におきましては、何らの補償なくして、あるいは不十分なる補償のみによって毎日その財産上の権利が侵害されつつある、この問題は私は明らかに憲法違反の事実がここに存在しておる、こう認めざるを得ない。従って私は、少くともこうした事態を生ずるに至ったことについて一半の責任を負うておられる建設当局としては、急速にこの事態解決するために、その持っておられるすべての権限を行使されるべきものであると思いますが、いかがでございましょうか。
  27. 南條徳男

    ○南條国務大臣 ただいまの漁業権の重大な帰属の問題につきましては、お説の通りだと思います。この江川会社側漁業権者側との補償問題についての協定については、すでに御承知通り被害者側と会社側との間に協定が結ばれ、それが建設当局の方にも伝わっておったので、円満にいっておるものと解釈しておったわけでございます。そこで被害者側との協定が、ここに損害の補償ができておらないから、これは憲法上の問題じゃないかというお説については、もしそうであるとするならばさように思いますが、法の解釈と申しますか今までの解釈としては、被害者側の代表と見るべき漁業組合の代表と会社側が協定を結んでおったのでありますから、これは漁業組合の代表というのは被害者側を代表しての当事者とみなして協定できたものという解釈のもとに、その問題は起らないという考えでおるようなわけであります。いろいろその後調べてみますと、この漁業組合の代表者と漁業組合員との間にいろいろ話し合いあるいは損害の程度、具体的調停のつかない問題があるために、この問題が紛糾したという事情のようでありまして、表面第三者の立場におきましてこれを見たときには、いかにも漁業権者と代表とそして中国電力側との協定ができたような印象を与えておったものでありますから、じんぜんかようなことになったと思うのであります。
  28. 大橋武夫

    大橋(武)委員 ただいまの大臣の御答弁によりますと、今までの行政手続の進行の経過においては一応問題はない、こう認めて進んできたのであります。しかしながら現在になってみると問題があるということが明らかになっておる。従ってこの問題については建設当局としても十分に解決に尽力をする、こういう御答弁を承わったように思いますが、それでよろしゅうございますか。
  29. 南條徳男

    ○南條国務大臣 その後聞きますと、県側及び当事者側の間において、この問題の円満なる処理をするために調査委員会等もできておりまして、しばしば折衝しておるように聞いております。そこで建設省側としてもこれをあっせんいたしまして、できるだけ円満に進捗するように進めておるような次第でありますので、今後ともさような形において当事者間に円満に進めるよう、あっせんいたしたいと思うのであります。
  30. 大橋武夫

    大橋(武)委員 そこで、幸いにして大臣のお見込みの通り、円満にこの調停ができればけっこうでありますが、もしできなかった場合においてはどういうふうな処置をおとりになるおつもりでございますか。
  31. 南條徳男

    ○南條国務大臣 この調停ができなかった場合においては、法的にどういう処置をとるかということは、今後十分研究いたしてみたいと思っておるのでありまして、直ちにこれが水利権の取り消しの対象になるか、あるいはそこまでいかないでもっと別な形においてあっせんする段階に進むべきものであるかというような事柄は、追ってこの調停の進み方いかんによって考えてみたいと思います。
  32. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山委員 関連して。今の大橋委員の御質疑で私ちょっと疑念がありますから、建設省の、建設大臣でもどなたでもよろしゅうございますが、見解を聞いておきたいと思います。この河川法であるとか、それに関連の法律の建前と申しますか、今お話がありましたように漁業権の問題は、漁業に従事しておられる立場からすると、これは死活の問題でありまして、憲法問題まで触れるという重大な問題であります。そこで河川法その他の関係から見ると、今それがもし解決しなければ一体どういう処置をとるかということは研究するというお話でありますが、河川法の各条章は、いろいろ書いてありますが、これは流水によって被害が起るというような積極的な被害と申しますか、たとえば堤防を破壊するあるいはその他の水害を生ずる、そういうおそれのあることを一応想定して、そういうことのないような方法でやるように指導監督あるいは許認可をする、こういう建前に大体なっておるようでございます。堰堤その他の工作において積極的な災害が起る、これを主たる目標にして河川法その他の法律ができておるようであります。建設省はそういうところに今日まで注目して諸般の行政をやっておられる、こういうように考えられるのです。  そこで、今問題になった漁業の問題は、言いかえると、何といいますか消極的な災害、こういうふうになるのですが、これも河川法その他の中に入るかどうか、この見解を明らかにしてもらいたい。たとえば河川法の二十条を常にわれわれは問題にしておるわけであります。これに公安を害するとかいろいろありますけれども、広い意味に解すると、漁業権を侵害するということは公安を害するということになる。そうすると、どうしてもこの解決がつかなければ、その公安を維持するためにあるいはその堰堤の撤去を命ずる、あるいは改造を命ずる、こういうふうな措置をとられるかどうか、こういうところにかかってくるのですが、それについての建設省の見解をただしたいのと、こういう問題は、河川に関する工作物であるときには、どこでも同じ状態ではありませんけれども、こういう漁業権に非常に影響がある場合には当然でありますので、そういうときに漁業権に関する主たる所管と申しますか、農林省のあたりとはどういうふうなあらかじめの協議をされるか、この漁業権なんかについての関係影響、そういうものについてどういうやり方を今日までしておられるか。この二点について一つお答えを願いたい。
  33. 山本三郎

    ○山本政府委員 河川法におきましては、こういう水利の使用に関しまして許可し、またそれらの水利使用を取り消したりあるいは効力を停止したりする規定がございます。これは現在までのいろいろの実例等をも考えまして、あるいは私どもの考えておりますところでは、たとえば発電とかあるいは灌漑用水とか、主として水を使うという点の調整を河川法においては考えておるわけでございます。従いましてただ漁業というような問題につきましても、こういうふうな処分をいたしますときは、補償等の問題につきましては当事者間で十分協議してやれというふうなことで、そういうことの条件を付してやっております。従いまして建前といたしましては、お互いの水利の調整という点に主眼を置いておる次第でございます。
  34. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山委員 それは、そういう問題が起るときにお互いに協議をして円満に解決してやるということは常識であります。法律の制度の上で、漁業権についてたとえば堰堤を作る許可をする、水利の使用について許可をする、そういうときに漁業権についても頭に置いてやっておられるかどうかということです。また河川法の規定はそこにそういうことを含んでおるかどうか。そういうことでなければ、先ほど大橋委員からお話になりましたように、建設大臣がどういう処置をするかということはちょっと出てこないと思いますから、その点についての考え方はどうですか。
  35. 山本三郎

    ○山本政府委員 こういう処分をいたしますときには、漁業のことももちろん考えまして処分しておるわけであります。
  36. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山委員 もちろん考えて処分しなければならぬのですけれども、たとえば第二十条の末項の「公益ノ為必要アルトキ」これが一番広い概念ですが、この漁業権を侵害しておるということは、現在事実のように認められるのですけれども、それは公益のための必要あるときこれは撤去改造を命ずる、こういう概念に入るかどうか。
  37. 山本三郎

    ○山本政府委員 公益という問題は、そういう問題も私は含むというふうに解釈しております。
  38. 逢澤寛

    ○逢澤委員 私はあとから質問がありますけれども、今のことに関連したことを一つお尋ねいたします。河川局長はこの補償要求に対して、これを肯定するやの意見があるらしいのです。従ってそれを島根当局調査方を命じて相談をした、こういうお話が今あったと思いますけれども、私はこの問題の調査をすることは当然であると思いますが、今承わりますと、組合側会社側においては、先ほど徳田参考人の陳述にもあったように、すでに二十六年、二十七年において、この工事をやる際にこういうような事実のあるということは想定して、その想定の上にこの契約というものが成り立っておるのであります。(「そうでない」と呼呼ぶ者あり)いやそういうふうに陳述しておる。そうするとこういうような状況がある、こういうような処置をやればこういう開きがあるということを想定の上で会計側と組合側とで契約ができておるということを確認の上で、あなたはああいうような説明をなすっておるのか。こういう契約というものは、すでに申し上げたように、組合会社においてそういう既定事実があった後にこの契約ができておる。従って委員会ではそういうようなものを想定した上にこの契約というものができておる、こういうようなことをお考えの上でさっきの答弁をいたしたのですか、この点をお尋ねしておきます。
  39. 山本三郎

    ○山本政府委員 私の申し上げましたことがあるいは足らなかったのかもしれませんが、当時考えられるものにつきましては、契約を結んでやっておったので、私どもといたしましてはそれが有効であると今も考えております。ただその後に当時考えなかった問題があるという話であるから、それを考えてやってくれというようなことを県に話した、こういうことでございます。
  40. 大橋武夫

    大橋(武)委員 先ほど建設大臣から協定がなかなかできなかった場合の処置は考える、こう仰せられております。その場合には被害を除く方法として、建造物の撤去、これも一方法でありますが、あるいはまた建設省の方で独立して損害を御調査の上、会社に対して損害補償の追加をお命じになるというような方法をも含めて御考慮になるのでございますか。
  41. 山本三郎

    ○山本政府委員 この問題は非常に重要な問題でございまして、私どもにおきましても、また政府部内におきましても、確定した結論が出ておらない状況でございます。この補償問題につきましてただいま協議を進めておるわけでございますが、それが進まないというような場合にどうするかという問題でございます。その場合におきまして、河川管理者、たとえば知事あるいは建設大臣がどういうふうな措置をとるかということでございますが、ただいまの解釈といたしましては、許可受け者に対しまして、いつまでにこういう問題は協議し、補償すべきであるというようなことは言える、こういうふうに思っております。  また水利権の取り消しであるとか変更等の問題につきましては、先ほどもお話がありましたように公益上から判断しなければならぬ問題でございまして、これをどうするかという点につきましては、もう少しよく研究しないと、今ただちに御返事はできないのであります。
  42. 大橋武夫

    大橋(武)委員 そうすると、補償を命ずるということもできないわけですか。
  43. 山本三郎

    ○山本政府委員 その点は先ほども申し上げましたようにもう少し研究を要する問題でございますが、金額等を示してそれを命ずるというような点につきましては疑問があるのでございます。大橋(武)委員 金額等を示す点には疑問がある。金額等を示さずして補償を命じて、それだけで補償が完全に行われるのでしょうか。補償を命ずるということになれば、最終的には金額をも命ずるということになれば、最終的には金額をも命ずるということでなければ、具体的な結果は得られないと思うのであります。またそこまでいかなければ、その工作物が漁業権利者に与えておる損害を完全に払拭することはできないと思う。要するに建設省は行政処分によって起ったそういう憲法違反の事実についてはあくまで責任を持って最終的に解決するというだけの責任をとっていただかなければ、憲法政治のもとにおいて安心して皆さんにおまかせするというわけにはいかない。ですからこの点についての基本的な考え方がはっきりすれば、あとは方法の問題であって、その場合々々において金額を示すことが必要であれば示すこともありましょうし、示さずしてかえってよい結果が得られるというお見込みならば示さずということもできるでしょう。とにかく補償を命ずることによって公益上の被害を除去して、そういう憲法上の違法状態を除却する責任が建設大臣にあり、またその責任を十分に果すお考えであるかどうか、このことが問題でございまして、このことを大臣にお伺いいたしたいと思うの  であります。
  44. 南條徳男

    ○南條国務大臣 先ほど来申し上げましたように、この江川補償問題につきましては、建設省としては当事者間で一応話し合いがついたという立場において、今の大橋委員のように漁業権者の憲法上の問題云々ということはすでに当事者間において了解済みでおるという解釈のもとに、私どもは考えを持ってきたのであります。しかるところ、その後その協定の内容以上に損害が大きいというようなことで、再三再四会社側との折衝があり、そこで水利権の管理者である知事側と、調停者ができまして、いろいろその間の損害の折衝をしておったのが現状であるようでありますので、この調停はいまだ継続中でありますから、こういう財産上の損害の問題につきましては、できるだけ当事者間の折衝によってその金額等がまとまることが望ましいことでありまして、もし政府が金額まできめて、こうせよ、ああせよというような裁定をしようということでありますれば、これは一応裁判所等において公益上実際にどの程度の損害があったか、その内容がどうであるとかいうことを十分これは検討しなければ、直ちに政府として金額まで決定してこうしろああしろという命令にはならないと思うのであります。できるだけ当事者間で現在やっておりますこの調停を進めてもらって、円満に話し合いができるのを待ちました後において、その経過を見ました上で十分研究して、今の御質問に対する態度をきめたい、こう考えております。
  45. 大橋武夫

    大橋(武)委員 私は今すぐに金額を示してやれということをお尋ねしているのじゃございません。建設省の考え方として、一応当事者の話し合いで線を出せるようにする、これは私もそれでけっこうだと思う。そのことをどうこう言うのではありませんが、しかしこうした問題は最終的に必ず当事者の話し合いがつくとばかりは限らない。ことに一方は莫大な資本を擁した会社でありまするし、片方は零細漁民でございまするから、これをいつまでたってもよろしい、話がつくまではほうっておくのだということになれば、結局強い者の言う通りにならざるを得ない。これは憲法の考えておるところでないことは申すまでもない。そこで私はある程度まで進めた上で話し合いがつかなかった場合においては、もともとこれは建設大臣の認可によって起った漁業者の損失なのでありますから、それに対して建設大臣があくまで責任をもって、その損失の補償のつくような措置を講ずるということは、これは法理からいって当然のことだろうと思う。もしそういう方法が法理上は正しいけれども、しかし河川法その他の法令上欠けておるというのならば、それはそういうふうにお答え願いたい。しかし河川法のみならず、河川使用につきましては、使用の許可命令書というものがあります。これらの命令書の中においても、相当河川管理者の権限というものが保留されておることは御承知通りである。これらの河川管理者の法令並びに命令書によって保留されておるあらゆる権限を完全に使いましたならば、私はこの問題の解決というものについては、建設大臣は相当大きな役割を果し得るものであると確信をいたしておるのであります。従って建設省としては、そういう問題についてどこまでも法令並びに許可命令書によって、河川管理者に与えられておる権限というものを、百パーセント活用して解決に努力する考えがあるものかどうか、この点を伺っておるわけなのでございます。
  46. 山本三郎

    ○山本政府委員 ただいままで申し上げました通り協議を極力成立させましてやるのが本来の建前でございますが、今後におきましても、法令の許す限りにおまして、許可命令書も含めまして、私どももその解決に努力したい、こういうふうに考えております。
  47. 大橋武夫

    大橋(武)委員 次に会社側にお伺いしたいと思うのでありますが、先ほど三鍋委員からもお話しがございましたが、小坂参考人からも補足的な説明があれば承わりたい。
  48. 小坂四郎

    小坂参考人 私からあらためて事務的なことを申し上げなくても、社長が申しましたことで意を尽しておると思いますが、先ほど徳田理事さんの方からお話しがございました中に、われわれが確認しておらないような事柄もあるやに聞きましたのであります。がしかし、これはこまかい問題でありまして、この席で取り上げてどうこうという問題でもありませず、解決にその事納がプラスになるかどうかということは、大いに疑問なんであります。何はともあれ二十九年の五月十一に契約を締結いたしまして、その後いろいろな経緯はございましたが、現段階におきましては、組合会社あるいはごあっせんを願っております県御当局におきまして、三者合議の上で調査機関を設けまして、早急にお互いに善意をもって解決しようじゃないかということに相なっておるのでありますから、解決は必ず近いのじゃないか、かように思っておる次第でございます。
  49. 大橋武夫

    大橋(武)委員 そこで島田参考人に伺いたいのでございますが、二十九年の五月の補償契約は、先ほど御説明を承わりました通りであります。問題はこの補償契約の解釈でございますが、今問題になっております下流地区あるいは渇水地区上流地区等の新たなる損害要求と申しますか、この問題について会社としては、それは全部認められないということはむろんあろうと思います。しかし契約書でカバーしていなかった損害というものが、現在ちょっと問題になっておるのだという点はお認めになって、今お話し合いをお進めになっておるのですか、それともそうでないのでございますか、その点をまずお伺いしたいと思います。
  50. 島田兵蔵

    島田参考人 契約書にもありますように、遡上するアユの量が大体五〇%程度というふうに最初考えて計算して出たのでありますが、もちろんそれに対する非常な相違がありますればこれは一つ措置をする。ほかの方法でもできる方法があれば、そのような処置をとるということが、あの契約にうたっておるのでありますから、今大橋さんからお話しのように、最初こうなるだろうというふうな仮定を置きまして、アユがこのくらい上るだろうというようなことからした計算でありますから、そこに非常に相違があればそれを訂正するということは、私どもとしても一つも異存はないのであります。
  51. 大橋武夫

    大橋(武)委員 五〇%アユ魚道を上っていくという計算であるからして、無道を上るアユが五〇%以下である場合は、ある程度補正をしなければならぬ、こういうお考えのようでありますが、現実の問題としては、五〇%以下でありそうだと思っていらっしゃるのですか。
  52. 島田兵蔵

    島田参考人 それは私まだ詳細のデータを見ておりませんので、よけい上っておるのが事実か、あるいは実際に三五%しか上らないということも申し上げかねますから……。
  53. 可部重応

    可部参考人 堰堤の上流部に四組合が関連しておりまして、四組合とも五〇%程度の遡上率予想して契約を締結しております。ほかの三組合からは大体五〇%上るであろうということを現在出されております。大体の数字は、会社予想いたしました百五十万程度ということは、組合双方組合上流部代表でありますが、確認しておられるようでありまして、われわれの方からは堰堤への遡上率について、現在五〇%は会社としては上っておると考えておりますが、この点ははっきりしないものですから、三者が調査の上で結論を出そう、こういうことになつております。
  54. 大橋武夫

    大橋(武)委員 次に中流部におきましては、大体従前に比べて五〇%程度の漁獲だろうというような前提のもとに、補償契約が行われたかと聞いておりますが、果して事実であるかどうか。また現在の漁業状況について、会社側としては、五〇%より下回っておるという場合もあるかもしれぬというようなお考えを持っておられるかどうか、この点を伺いたい。
  55. 可部重応

    可部参考人 三千万円の内容につきましては、お互いに解釈を自由にしよう、そうしてお互いの考え方は対外的な発表はすまい、こういうことを県、組合会社と確認したような契約を一本の金額で協定したものでございます。その後いろいろ紛糾いたしまして、県の力から、五〇%程度と予想して調停案を出したのだというふうなことを組合に発表したから御了承願いたいということを、会社は書面で通知を受けておりますが、会社の方では全然別な考え方をしております。それで三月七日の第三回の交渉の席上におきまして、会社の考えておりますところ、これを発表いたしまして、これに対して皆さんがどう考えられるか。このときに発表いたしました数字は、堰堤下流減水区間の被害率は八〇%程度を会社予想しておったということを発表いたしました。これに対しまして中流部組合の代表のお方は、これに対する意見は本日差し控える、もう少し考えてもらいたい点はあるが、というふうな会見記録になっております。
  56. 大橋武夫

    大橋(武)委員 それから最後に、一番大きな問題になっておりますのは下流部の問題でございますが、下流部については、魚道で遡上したアユは下降期になれば自然に下降するであろうということが、従来魚道の常識になっておったようでありますが、三十九年の契約の際においてもそういう考えでなされたものであるかどうか。そうして現実会社としては下降アユの著しい減少ということについて、どういうお考えを持っておられるか、この点を承わりたいと思います。
  57. 可部重応

    可部参考人 御質問は二点ございますが、下降阻害の問題につきましては、契約当初さんざん論議いたされました。そして契約締結のずっと以前に、一度この問題は専門家の意見を徴しようじゃないかといこともお話ししたことがございますが、契約当時はそういうものをひっくるめて、三千万円というふうに会社の方は了解しておりました。最近の交渉でも県のごあっせんをいただいているわけでございますが、その程度が、一匹も下らないということを会社も想像しておったのか、こういうふうに言われますから、そうではないということを申しております。程度は、著しくどうなったかということを調査員調査してみようということになっております。  それから第二点の水位変動につきましては、会社の方としましは、二十八年の十月から試運転を開始したわけでございますが、その当時現状を見て契約をされたわけでございます。なおそれから半年後の二十九年の五月十一日の契約当時には、すでに正常な運転をしておったわけでございます。だから会社の方としましては、ある程度の水位変動は許容していただいている、こういうように考えておったわけでありますが、その後徳田理事等からお話があったものですから、水位変動の程度、これが漁業権に及ぼす影響ということを至急調査さしてもらいたい、こう言っていたわけでございます。その結果、最近調査員によって調査しようということになりました。
  58. 大橋武夫

    大橋(武)委員 工事完成して操業いたしましたのは二十八年の十一月と承わりました。大体これをアユ漁業からいいますと、漁期の大体終ったか、あるいはほとんど終ろうとしておる。従って少くとも今損害が大きく問題になっておる地域においては、ほとんどもう終っておるという時期でございますから、その当時の経験から、もう契約当時にはわかっていたはずじゃないかということを主張されましても、これはそこにいろいろ疑問がありはしないか、この点は交渉に当っても会社としては御一考をいただくべき点であると考えます。  そうすると、ただいままでのお話を承わりますと、会社としては、二十九年の補償契約をもつて全部の損害をカバーしてあるという主張を維持するつもりはない、その後現実に出てきておる損害が、この補償当時に予想されたものを越えておる場合においては、その部分に対しては妥当な補償はむろんする考えである、こういうふうなお気持と考えますが、いかがでございますか。
  59. 小坂四郎

    小坂参考人 ただいまの御質問の点でございますが、二十九年五月に締結いたしました契約は、御承知のようにお互い善意の上に立って正式に締結されておるわけでございまして、現在においても有効でございます。しかし、しばしば県で組合の方と御交渉申し上げたときには、あの当時お互いに予想し得なかった著しく変化した状態が起きているならば、これについてお話し合いをいたします、そうしてわれわれが補償すべきものがありますれば補償をさせていただきまし上う、またごしんぼう願いたいということを中されておるわけでございます。
  60. 大橋武夫

    大橋(武)委員 そうすると、ほんとうにある損害については追加補償しょうというお考えですね。
  61. 小坂四郎

    小坂参考人 そういう事実がありますれば補償いたしたい、かように考えております。
  62. 大橋武夫

    大橋(武)委員 そこで、そういう損害に対しまして、会社としてはできるだけ完全なる補償をしたいというつもりで交渉をなさっておられるのですか。それともやはりできるだけ安くおさめたいという考えで交渉なさっておられるのですか。これは社長から伺いたいのです。
  63. 島田兵蔵

    島田参考人 私、経営者として補償が多くなることは望みません。われわれ電気事業の性質から言ってもそうであります。もちろん先ほど私が陳述いたしました中にもありますように、だれが考えてもこれは常識的に妥当であるという線で妥結をいたしたい、こう考えております。
  64. 大橋武夫

    大橋(武)委員 だれが考えても常識的に妥当だというのは、その損害としてこれは妥当な損害と認められる、こういう意味でございますか。
  65. 島田兵蔵

    島田参考人 今調査委員会ができて調査をしておりますが、そこである程度の結論が出たといたします。そうすると、それに対する補償会社がするのは当然だろうと思うのです。しかし計算の基礎もないのに非常に大きな要求がありましても、私の方としてはそういうものではできない、こういう意味でございます。
  66. 大橋武夫

    大橋(武)委員 そういたしますと社長お話は、真実基礎があるところの調査に基く数字であるならば、いかに大きな金額になろうとも、それに対しては会社が完全に補償するつもりである、しかしながら、何ら基礎なくして、単に要求があったからその口ふさぎに無責任によかろうというような態度はとりたくない、こういう当然のお答えと承わりますが、いかがですか。
  67. 島田兵蔵

    島田参考人 計算の基礎があれば幾らでも補償するというふうなお話でありましたが、計算の基礎と一品に申しましても、その計算というものには、たとえば漁業の問題なんかは、特に抽象的な、また想像的なものがその中に入っておりますし、そういうことは、よほどそういうふうな方面の権威者、あるいは水産業に多年携わった人、そういう方面について知識を持っておる人の御意見を尊重してやっていただきたい、こういうふうに考えるわけです。
  68. 大橋武夫

    大橋(武)委員 そうすると、会社とされましては、だれが見ても妥当だと認められる基礎に立った数字でなければ困るが、そうして出てきたところの金額に対しては、いかに大きな金額であろうとも完全補償をする、こういうつもりであることだけは間違いないのでございましょう。
  69. 島田兵蔵

    島田参考人 完全補償という意味はどういう意味ですかわかりませんけれども、私どもとしては堰堤のためにこうむつた被害――アユの問題の例でありますが、そういう問題について調査された結果が妥当である。こう認めますれば、それに対して――金額の大小というものは私は別問題だと思いますが、補償する、こういうふうに申し上げます。
  70. 大橋武夫

    大橋(武)委員 完全補償ということは損害額に対して完全に補償する、百パーセント補償するということであります。そこで今後交渉をお進めになりますると、問題は結局損害額をどう見るかという点が当事者間の問題になるのだろうと思う。それが妥当であるか妥当でないか、あるいはだれが見ても妥当であるか、今問題となったようなごとになると思うのでございますが、その場合において、この損害額の見積りについては適当なる仲裁人あるいは監督官庁の指示に従って損害額の見積りを決定するというお考えはおありになりますかいかがですか。
  71. 小坂四郎

    小坂参考人 今御質問の点につきましては、もうすでに県の方々に入っていただきまして、県の水産部の皆様方はその道の権威者でありますから、おそらく三者会談が不調に終るというようなことはわれわれは毛頭考えておりませんから早急に解決するものだ、かように考えております。
  72. 大橋武夫

    大橋(武)委員 それでは県の水産部長にお伺いしたいのでありますが、この堰堤築造に伴う損害というものは、一応堰堤がなかったならばアユはこれだけとれたろう、それが堰堤ができたためにこれだけしかとれなくなった、その差額が損害と思われますが、それはそれでよろしゅうございますか。
  73. 児玉真一

    児玉参考人 ただいまの御質問でございますが、堰堤築造前にこれだけとれた、堰堤築造後はこれだけとれた、その差額が被害と思うがどうかというふうな御質問のようでございますが、抽象的に言えばそういうふうにも考えられると思います。
  74. 大橋武夫

    大橋(武)委員 むろんそれは年によって違いますが、観念的には堰堤がなければこれだけとれるだろう、しかし堰堤ができたためにこれだけしかとれなかった、その差額が損害である、こういう御認定を得たわけであります。むろんそれによって経費が節約されるとかそういうものはいろいろ差引されましょう。従って詳細な金額を決定するにおいてはなおいろいろ補正かしなければならぬと思いますが、基礎的にはそういう考え方でおやりになるものと思うのでございます。  そこで水産部長にお伺いしたいのですが、今日はもはや堰堤というものがりっぱにでき上っておる。そこで今日になって堰堤築造がなかったならばこれだけとれるだろうという魚の量の程度を推定するということは、なかなか材料もないしむずかしいのじゃないかと思うのですが、何かうまい方法がございますか。
  75. 児玉真一

    児玉参考人 現在魚がどれだけとれておるかという推定でございますか。
  76. 大橋武夫

    大橋(武)委員 現在の魚でなくて、現在はもう堰堤ができてしまっているからして、堰堤ができない場合の魚のとれ工合を今日どうやって計算することができるか、それについてどういうお考えをお持ちであろうかということを伺いたいのです。
  77. 児玉真一

    児玉参考人 その問題につきましては非常にむずかしい問題でございまして、私どもも頭を悩ましておる問題でございますが、結局私どもがそれを調査する方法として考えておりますことは、過去の統計数字それから専門家の意見等を参酌いたしまして推定する方法しかないと思っています。
  78. 大橋武夫

    大橋(武)委員 そこで、専門家の意見は別といたしまして、直ちに数字で補足できるところの過去の統計が問題になるのですが、過去の統計と申しましてもおそらく漁業組合で水揚げした統計じゃないかと思うのです。これにつきましては御承知通り戦時中また戦後いろいろ税金の関係とかあるいは統制の関係とかで統計の表面に現われなかったところの漁獲量が相当あるのじゃないかと思われます。この部分は過去の漁獲の実績から取り除くのでありますか、それとも過去の統計にそれだけつけ加えて過去の漁獲高というものを御決定になるのでありますか。
  79. 児玉真一

    児玉参考人 これは全国的な例をお話したいと思いますが、私どもが聞いております範囲では、農林統計その他を基礎にいたしまして、それにある補正数字を加えたものが普通使われておる数字のように思っておりますが、島根県の場合はたまたまこの補償問題が起ります前に、ある一つの必要がありまして調査をした事実があるわけでございます。その調査は事件の起る前の調査でございますので、私どもといたしましてはある程度信憑性があるものだと思っておりますが、その調査にさらにいろいろな角度から補正を加えたものを私ども江川の従前の漁獲量決定に使いたいというふうに考えております。
  80. 大橋武夫

    大橋(武)委員 それで従前の漁獲量の決定として県の方の用意しておられる漁獲量というものは当事者は承知をいたしておりますか、会社側なりあるいは漁民は。
  81. 児玉真一

    児玉参考人 今の点でございますが、一応昭和二十九年に補償契約が結ばれました際に当事者が了承いたしました数字があるわけでございます。
  82. 大橋武夫

    大橋(武)委員 そこで私はもう一つ伺いたいのだが、島根県でやはり同じダムによるところのアユの問題で同じ中国電力が補償を出しております神戸川の問題でございますが、神戸川においては五千万円の補償を出しておる。そこで川の規模並びに従来の漁獲高等の比率から見ますると、少くとも神戸川が五千万円ならば江川は二億や三億はとれるだろうというのが一般の感じのように思うのですが、それについては水産部長はどういうふうにお考えになっておられますか。
  83. 児玉真一

    児玉参考人 その問題については私はある見方を持っておりますが、ちょうど私の立場が現在両者の間を調停をいたす立場におりますので、現在の段階におきまして私の見解を申し述べるのは実は差し控えたいと思っております。
  84. 薩摩雄次

    薩摩委員長 それでは午後二時より再開いたすこととし、暫時休憩いたします。    午後零時二十一分休憩      ――――◇―――――    午後二時十八分開議
  85. 薩摩雄次

    薩摩委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続けます。大橋委員
  86. 大橋武夫

    大橋(武)委員 先ほどちょうど県当局の御返事を伺っている最中に休憩になりましたが、その際に県当局の方では大体戦後の問題についてもある程度の統計がある。そしてそれは全国的なある補正計数を用いて補正すれば、大体正常な状態における漁獲は推定できるものである、こういう御説明でございましたが、その補正計数というものはどういう数字でございますか。
  87. 児玉真一

    児玉参考人 補正計数と申しますのは、私はそういう言葉を使ったわけでございますが、別に全国的に計数があるというのではなくて、その事案々々によりまして農林統計に三割プラスするとかいろいろした事例があるわけでございます。
  88. 大橋武夫

    大橋(武)委員 その何割プラスするかということについてなかなか当事者間で話し合いのつかない場合も想定できるのですか。
  89. 児玉真一

    児玉参考人 当事者間で話のつかない場合が想定されるわけでございますが、現実の問題としまして、その江川補償問題につきましては調査委員会におきましてこの問題が一応議題に出まして、ちょうど三月の五、六の二日間にわたりましてやったわけでございます。六日にその問題が出ましていろいろ中電漁協の方で議論がされたわけでございますが、最終的に県の方から案を出しまして、一応それによって進もうということになったわけでございますが、それを申し上げますと、「記、補償契約の基礎となった漁獲高による。ただし、これを改訂するに足る確実な立証資料が提出された場合には再検討をする」ということで、調査委員会においては大体三者の意見が一致したわけであります。
  90. 大橋武夫

    大橋(武)委員 そうすると、今の段階では、損害の推定については一応前の契約の基礎になったものを土台とするが、有力な新しい材料があれば、それによって改定するという方針だけはきまっておるのですね。
  91. 児玉真一

    児玉参考人 そうです。
  92. 大橋武夫

    大橋(武)委員 その方針に基いて、早急に三者の話し合いで損害額の見積りが決定できそうな情勢でございますか。
  93. 児玉真一

    児玉参考人 私の考えといたしましては、話し合いによってある程度いけるんじゃないかというふうにも考えておりますし、全般の問題といたしまして、ある程度話し合いがあったときに、県の方に御一任願えれば、非常に早く本問題が解決できるのではないかというような考えを実は持っております。
  94. 大橋武夫

    大橋(武)委員 そこで、県の方で用意しておられる数字というものは、昨年建設省にお出しになりました数字とは相当な違いがございますか。
  95. 児玉真一

    児玉参考人 建設省の方から本問題を至急に解決するようにというような御注意もいただきましたし、私どもとしましては、建設省並びに水産庁の御意見もいろいろ参酌いたしまして、また県内の資料をもとにいたしまして、一応の調停試案というものを作ったわけでございます。その調停試案を作りますに当りまして、建設省といろいろお話し合いをいたしたわけでございますが、大体お話し合いをいたした線で、現在腹案を持っておるわけでございます。
  96. 大橋武夫

    大橋(武)委員 それは年々の漁獲についての損害高の見積りを今お話し合いになったと思うのですが、その年々の損害高の見積りというものに対しまして、県当局のお考えは、年々に損害高に相当する賠償金を出すような運びにするか、それともそれを原資に還元しまして、一括してこの際に支払うという方式にしますか。それらについて、当事者の間で話し合いがございましたか。なければ、県当局のお考えを承わりたいと思います。
  97. 児玉真一

    児玉参考人 補償の形式の問題でございますが、会社側の御意向といたしましては、なるべく被害を少めるような施設でできれば補償をしたい、こういうようなお考えのように承わっております。また漁協の方でも、考え方といたしましてはそれに異論はないのでございますが、実際問題といたしまして、私どもが考えましたところでは、施設による補償というものは、いろいろ議論がございまして、なかなかむずかしいように実は考えておりますので、一部施設によって、一部は金銭補償によってというふうなことになる可能性が多いじゃないかというふうに考えております。もっと突き進んで申しますと、施設による補償は非常にむずかしいじゃないかというふうに考えております。
  98. 大橋武夫

    大橋(武)委員 私の伺いたいのは、そうではなくて、年々の損害高を計算して年々支払うようなやり方をするのか、それとも年々の損害高を原資に換算して、そうして一括して支払うというようなことでこの総額を決定されるのか、どちらかということです。
  99. 児玉真一

    児玉参考人 今の問題につきましては、年々の損害を年々補償するという考え方じゃなくて、原資に換算いたしまして一括補償する方法が適当じゃないかというふうに考えております。ただし、年々放流等によって補償する方法は、これは当然継続して行うわけであります。
  100. 大橋武夫

    大橋(武)委員 そうしますと、問題になりますのは、これを原資に換算してその原資をこの際支払われるという場合において、すでに五年近くの間年々被害が発生してきておりますが、これを普通の原資に換算した場合においては、将来の被害に対する損失補償方法としてはそれでいいわけですが、それと並行して、この際やはり過去の損失については、別途にその実額をカバーするという方法が並行して行われなければならぬと思いますが、いかがでございましょうか。
  101. 児玉真一

    児玉参考人 これは補償方法の問題でございますが、過去の補償と将来の補償を別に取り扱うか、あるいは一括して取り扱うかということにつきましては、いろいろ補償方法があろうと思うのでありますが、考え方といたしましては、分割して考えるのが普通じやないかというふうに考えております。
  102. 大橋武夫

    大橋(武)委員 そうすると、これは今後の話し合いの様子によるけれども、しかし、常識的にいえば、過去の損害を、ここで一応四年分なり五年分なりの損害は、それの今日までの実額を計算して出して、あとそれにつけ加えて将来のものは年々の損害額を基礎としてそれを原資に換算したものをこの際支払われる、こういうことになるように今の水産部長のお答えを承わったわけでありますが、その方法につきましては、会社側並びに組合側においても同じお考えでございますか。
  103. 小坂四郎

    小坂参考人 今水産部長からお話がございましたが、これは話し合いの結果によりまして、実害補償を過去のものをお払いする場合もありましょうし、またお払いせぬ場合もありましょうし、そのときの状態あるいはお話し合いの結果によっていろいろのことが言えるのではないか、かように思うのでございます。それで、われわれといたしましては、損害を与えておるものをそのままほおかぶりしていこうという考えは毛頭持っておりません。
  104. 大橋武夫

    大橋(武)委員 どうもおかしいですね。そうすると、話し合いによっては過去の損害も払わずに済まそうということですか。
  105. 小坂四郎

    小坂参考人 と申しますことは、施設によってカバーする場合もございますし、それから施設ができない場合、今も水産部長のおっしゃったように、半分のものを施設によってやり、あとの半分を補償によってやるという場合も起き得ると思うのでございます。
  106. 大橋武夫

    大橋(武)委員 それはきまった補償をどういうふうに実行するかという方法であって、今私が伺っておりますのは、損害賠償の総額というものをどうやってきめるか、それについては一応過去の損害と将来の損害とを合算したものを損害の総額と認めるべきではないか、こういうことを申し上げたので、それについては水産部長も同感だ、こう仰せられたわけです。従って会社としても、先ほど社長の仰せられたように、損害についてはどこまでも会社で責任を負うのだという御方針でありますから、会社としては当然過去の損害も将来の損害をも含めて総額は計算する、ただしその金額をどういう方法で実際払うかという場合においては、これは過去のものについてはこれだけ、それから一時金としてこれだけ、あるいは将来の施設としてこれだけ、こういうことになるべきものだと思うのですが、その点は御同意でございましょう。
  107. 可部重応

    可部参考人 お答えいたします。大橋先生のおっしゃった普通の場合ならそれでいいと思うのでございますが、この場合は二十九年の五月十一日に三千万円完済しているわけでございます。従いまして、一千万円はすでに直ちに使われ、約二千万円は現在組合で留保しておるわけでございます。それとの関連がございまして、原則の通りにはいかないのではないか、たとえば二千万円の補償額相当額が、これはもう三年も前に完済しているわけでございます。この問題をどう扱うかということではなお組合協議したい、また県の御意向も聞いて話を取りまとめていきたい、かように考えております。
  108. 前田榮之助

    ○前田(榮)委員 委員長議事進行についてお尋ねしますが、こういう補償問題は水利権の問題ばかりでなしに、土地取り上げ等の問題で、ことに軍事基地等でずいぶんもめておることは委員長の御承知通りであろうと思うのです。そしてこの委員会がこういう一つの事件を裁判するような、つまり過去のいかにあったかということを聞いて――このことは行政処置なのであって、立法府の処置ではない、従ってわれわれ立法府のものとしては、県の処置なりあるいは建設省の処置をかく善処するべく勧告する場合もあると思うのです。しかしわれわれがその中へ容喙するがごとき行動、それに深入りするということは私はどうかと思う。ことに建設委員会は、御承知通り委員長はたびたびわれわれに、現在付議されておる法案について議事進行について大へん督促されておる。もしこういうようなことに深入りする余裕があるならば、われわれは将来建設委員会で審議する態度をわれわとしてもっと考えなければならぬと思う。われわれはこの問題を早く解決をつけろ、あるいはまたその中に過去にどういうようなことがあったか、こういうようなことを聞いて、政府に強い処置を要求するか、あるいはただおざなりの処置にまかせるか、こういうことの判断の資料をとればよろしいと私は思っておる。そこの処置までわれわれ議員がせなければならぬ、そこまで徹頭徹尾委員長は審議をやるつもりなのか、そういうことを明確にしてもらわなければ、全然われわれ建設委員会に縛りつけられておるようなことでは大へん困るわけなのです。委員長議事進行についてどうするのかということを明確にしてもらいたい。
  109. 薩摩雄次

    薩摩委員長 前田委員にお答えいたします。この江川の問題は二月の上旬に大橋武夫氏から正式に要求がありまして、理事会を開いた結果先週の金曜日が都合がよかろうということで理事方々すべての御承認を受けまして、その手配をしたことは、委員各位の御承知通りでございます。ところが先週の金曜日は島根県の県会が開会中であったがために、東京に来ることができないから、一週間延期してもらいたいということできようになったのですが、これはもう初めからの予定でありましたので、たくさんの法案を控えてきょう開いたという点については手続を踏んでやったことでありますので御了承をお願いしたいと思います。それから質問のやり方及びこの問題の扱い方につきましては、われわれが予期しておらないような内容に詳細に入ってきましたので、これは前田委員のおっしゃいました通りの御趣旨に沿うて、大橋委員に先ほど御注意を申し上げお願いをいたしましたが、ただいまおっしゃいましたような御趣旨のもとにやっていきたい、こう思っております。
  110. 逢澤寛

    ○逢澤委員 関連して……。島根県の河川局長参考人にお尋ねいたしたいのでありますか、こちらであなた方の参考意見を聞いておりますと、職権によって未定の事実に対して仮想をして、その仮想をもとにいろいろ答弁ができておる、そうしてその答弁というものは今後の非常な資料になってくる、確定しない仮想のものをとらえて、あなた方責任のある立場の人が将来にそうした禍根をつくるような答弁をされておりまするが、これに対してあなた方は仮想でないとお思いになりますか、どうでしょう。確定の事実ならいろいろなことがあると思いますけれども、今進行中のことはいろいろのことを想定してのお話であります。それに対してそれが結末つけたらこうなるとかああなるとか、具体的の返答をするということはいかぬと思います。いかがでしょう。お尋ねしておきます。これは河川局長参考人の両方に同様にお尋ねをしておきたい。
  111. 山本三郎

    ○山本政府委員 その点につきましては先ほど大臣が御答弁申し上げました通りでございまして、大方針は大臣の答弁の通りでございます。ただこうなったらこうするというような議論もあったと思いますが、それはいずれも仮定の上に立ったものでございますので、そういうことが行われるとかいうようなことではございません。御了承願います。
  112. 児玉真一

    児玉参考人 私もこの問題につきましては調停の立場におりますので、発言につきましてはいろいろ立場を考えて慎重な発言をしておるのでございまして、御心配になるような御懸念はないと思います。
  113. 薩摩雄次

    薩摩委員長 大橋委員に御注意申し上げますが、ただいま建設委員からの発言、お聞きの通りでございますので、建設委員会の本義にのっとって質疑を続けられるようにお願いをいたします。
  114. 大橋武夫

    大橋(武)委員 私はこの種の補償問題においてとかく補償が当事者の協議にまかされます結果、ややともすれば非常に弱者に不利益なる結果を得ておる実例が多々あることを承知いたしておるのであります。現に本件のごとき問題はすでに昭和二十九年において一たん解決を見ておるにもかかわらず、今日この通り問題になっておるのはなぜかというと、やはり当時において、会社漁業者との力の強弱の差が、こうした一方的な不利益な協定をなし遂げた、その禍根が今日にきておると思う。こうした類似の事件は、全国にある。漁民の一方的な泣き寝入りに終っている事件が、非常に多いと思うのであります。これは事きわめて重大であり、ことに憲法で保障いたしております財産権が、行政権の結果侵害されておる。しかも被害者が泣き寝入りに終っているということは、社会党の諸君も、今日憲法を十分に尊重せられておりますので、必ずやこうした問題に対して正しい利益を守ることは、これは社会党の立場からいっても当然御賛成になるべきことだと確信をいたしておるのであります。そこでこの問題については、起った損害については完全なる補償が憲法上要請されておるという前提に立ちまして、損害については完全な補償をすべきではないかということを、今朝来関係当局並びに会社側に対して私はただして参ったのでありますが、そのお答えは、完全に補償すべきものである、こういうような満足すべき回答をただいま得つつあります。そこで完全なる補償ということになりますと、損害の認定が正しく行われなければなりませんから、この損害の認定について問題となるべき点について、やや詳細に質問をいたして参ったつもりでございます。特に私はこの質問に当りまして、一部の委員諸君の言われますがごとくに、一方的に検事が被告人を尋問するがごときやり方でいたしたつもりはございません。私はただ仰せられるお言葉のほんとうの意味が、どういう意味であるかということを正しく理解するために補足的質問を行なったことはありますが、しかし私がある結論を持って、それを参考人に一方的に押しつけるというような考えを持って、この質問をいたしておるのではないということをお断わりいたします。  そこで、先ほど来質問をいたしておりますのは、この完全なる補償をいたすためには、将来の損失並びに過去の損害、その全体のものを基礎として総額を決定し、その総額をいかに支払うかということについては、ただいまのように話し合いでやられるということ、これはよろしいと思います。それからもう一つ、これは参考人の今日の御発言の中で問題になっておったのでございますが、いわゆる一本化の問題でございまして、会社側が、組合要求というものが一本にならなければ困ると言われるお気持もよくわかります。しかしながら上流中流下流の各被害者が、いずれもそれぞれ十分なる補償を与えられなければならぬものであるということも、会社側としては十分に御理解になっておられると思うのでございまして、この一本化ができなければ補償交渉に応じないというような態度は、もはやおとりにならぬのではないかと思いますが、この点はいかがでございますか。
  115. 前田榮之助

    ○前田(榮)委員 大橋委員から、社会党は弱者に味方をせられるはずなのにかかわらず――言葉はその通りでごさいませなんだが、何だか私の言ったことが、弱者に味方でもしないようなことを言う。そういうことは不都合千万な話である。われわれは始終建設委員をやっておる。その委員会の発言を、大橋委員が今朝来から長時間にわたってほとんど独占したようなことは、今まで建設委員会においてはなかった事実じゃないかと思う。大橋委員一人だけが理解すればよろしいというのなら、それはそれでよろしいが、ほかの者にも発言の時間を――議会の発言というものは、これが三日も四日も連続して続けられるという問題であるなら、それは別であります。それで私は委員長に言ったのであります。おそらく建設委員会は多くの法案を控えておって、そういう継続はできぬじゃないか。そうしてあとには質問者が控えておるのに、私はもう午前中で事は済んだ、次の人にかわっておられると思っておったが、いまだにかわっておられずに、われわれが午前中に聞いたとそう大して変らぬことを――ほんとうに弱者に味方するならば、委員会が弱者に味方する決議をもって行政府にかくかくあるべしということを言えばよろしいのであって、何も多く聞いたから弱者の味方であるとか、いかにも親切そうな口ぶりで言うから弱者の味方であるということじゃないと思う。ほんとうはやはり委員会委員の諸君の総意の落ちつくところによって、そうしてこの問題を正当なる判断のもとに弱者を――十分な補償ができておらないものは十分の補償をすべきであるとか何とかという結論が大事なんで、そういうように議事を進めてもらわなければ、従来ずっと建設委員会にがんばっておるわれわれとして、われわれにほとんど発言の時間も与えられぬようなところまで一人が独占するという議事の進め方であるならば、われわれは将来建設委員会の進め方について決意がある。何もわれわれはこの問題を、会社はどうせよというのじゃない。われわれこそがほんとうに漁業者の味方となって、漁業者補償を多くとるべしということをできるだけ言いたいのがわれわれの立場であることは、よく御理解願えると思う。とてもこんなに独占されたんじゃ、ほかの者は手をこまねいて待っておるので、大へん迷惑するということを御理解願いたい。
  116. 薩摩雄次

    薩摩委員長 大橋委員の発言につきましては、あとで速記録を見まして、不当な個所があったら削除いたしますし、善処いたします。  それから、ただいまの前田理事の御発言中の、大橋委員がたくさん時間をとっておるということにつきましては、先ほど私大橋委員にも早く総括的な質問にして結論を出していただくようにお願いしておりますので、御了承願いたいと思います。それからあとにまだ質疑者があるということもお伝えしてございますので順を追うてやっていきたいと思います。
  117. 大橋武夫

    大橋(武)委員 前田委員の御注意は、私もよく了承いたしております。問題は非常に長く時間をとり過ぎたことだと思いますが、実は私はなるべくこの問題をすみやかに解決いたしたい、それにはどういう点にまだ問題が残っておるかということを調べたかったわけであります。大体今朝来の質疑によりまして明らかになりましたことは、会社におかれても、また監督官庁におかれても、今日できておるところの漁業補償契約というものについては、これは当時としては大体これであらゆる問題をカバーできるという確信を持っておったということ、これはおそらく漁業関係者におかれましても、同様に考えてやられたものと思うのであります。しかるにそれが今日においては、どうもあれではまだ何か欠けておる点があるのではないかという感じを、建設省におかれても、島根県におかれても、また会社におかれても、漁民諸君におかれても、考えておられるということ。従って、この欠けておる部分についてすみやかに補償の追加の取りきめをしなければならぬ。それについてはできるだけ当事者間の話し合いによることを原則とし、もし当事者間の話し合い解決が得られぬ段階に相なったならば、建設省としては、そのすべての権限を行使して、すみやかに解決せしむるよう行政上一切の手段を講ずること、これが今朝来の質疑を通じて明らかになったわけであります。そこで、私は建設当局、県当局、また会社当局に対して最後にお伺いしたい点は、大体いつごろまでにこの問題を妥結しようというお考えであるか、そして、その時期までに現在の方法によって話し合いの結論が得られない場合においては、建設当局においては、いかなる行政上の措置を御研究になるお考えであるか、この点を明らかにいたしたいと存するのであります。
  118. 小坂四郎

    小坂参考人 ただいまお話の時期の問題でございますが、われわれといたしましては、早急に片をつけたいという考えで、再三再四このことは申し上げ、また過去におきまして、交渉もいろいろの県のあっせんのもとにいたしましたが、その節にも、われわれは早急に円満に片をつけたい、この趣旨はよく申し上げておるわけでございます。現在もこの考え方は捨てておりません。また当然そうあるべきだろうと思うのであります。それで過去の交渉経過から考えまして、大体二月一ぱいに調査を終って、三月の上旬には話をつけようではないか、というような取りきめと申しますか、話し合いが一応でき上っておるのでございます。ところが、いろんな組合における内部事情、あるいは県当局におけるいろいろな御事情、私の方の事情もあると思うのでありますが、いろんな関係上多少遅延いたしておりますが、三月の二十一日には、先般取りきめましたような岡山県と広島県の同じケースの漁業組合、あるいは県当局に行って調査してみよう、参考の資料にしよう、こういうことも取りきめておりますし、そういう点から考えまして、先ほど水産部長さんがおっしゃいましたが、四月の終りごろまでには円満解決に至るのではないか、また円満解決すべく努力するつもりでおります。
  119. 薩摩雄次

    薩摩委員長 県当局として……。
  120. 児玉真一

    児玉参考人 私の考えといたしましては、大体順調にいきますれば、ただいま小坂さんからお話がありましたように四月一ぱいで何とか話をまとめたいというつもりで、現在あっせんをいたしておるわけでございます。
  121. 山本三郎

    ○山本政府委員 私どもといたしましても、ただいま当事者間からお話がありましたように、この解決の早期にされることを望んでおるわけでございまして、そのあとの問題は、仮定の問題でございますが、先ほど大臣が御説明申し上げたように、私どもといたしましても、そういう解決を促進するように、今の三者の会議が円満に進んでおりますから、それができなかったときにはどうするというようなことはちょっと今申し上げるのも何だと思いますから、そのときになりまして、あらゆる方法もまた考えてみたい、こういう考えであります。
  122. 大橋武夫

    大橋(武)委員 実は本問題につきましては、最初建設委員会にお取り上げを願いましたのは一昨年の暮れであったのでございまして、当時においても、建設当局におかれましては、三月か半年のうちには必ずめどをつける、こういうお話でございました。その後昨年の夏に重ねてこの問題を当委員会でお取り計らいをいただいた際にも、二、三ヵ月のうちに必ず結論を得たい、こういうことであったのであります。そこで私は、建設当局の二、三カ月というのは一体いつになるのか、今までの経験からいうとはっきりしない。ことに関係被害者は非常に生活にも困窮いたしておりますので、だんだん話し合いにおいても不利益な状態に追い込まれつつあるような事情でございます。そこで今日は建設当局のみならず、県当局会社当局、この三者におかれまして、一応四月中には必ず結論に到達するように努力をするという御決意をお述べいただいたものと了承をいたしまして、ぜひ関係者におかれましては、四月中に結論を必ず得られるようにお願いをいたしたいと思うのでございます。しこうして、もし四月中に不幸にして結論が得られないような場合かありましたならば、今度はこちらからお願いするまでもなく、建設当局において、この問題の結末がこういう状態である、現在こういう状態で未解決である、将来の問題についてはこういうふうに解決するんだということを積極的に当委員会に御報告下さるように私はお願いしたいと思うのでございますが、いかがでございますか。
  123. 山本三郎

    ○山本政府委員 先ほど来申し上げましたように、当事者間の話し合いは、四月中には解決したいという努力の目標を示されております。従いまして、私はそういうふうにまとまるということを確信しておりますが、そのときに至りまして、また事態に応じまして、建設省としても考えをどういうふうにしようかというような点は、またそのときに申し上げたいと思います。
  124. 薩摩雄次

    薩摩委員長 次は逢澤委員
  125. 逢澤寛

    ○逢澤委員 私の質問はごく簡単ですが、ただいま中村参考人にお尋ねいたしたいことが一点あります。それは本件のお述べになりました参考意見の信憑力についてであります。それは、先ほど陳述されました徳田参考人の陳述は、組合の代表的の意見と了解してよろしいのでありましょうかどうかということにつきまして、中村参考人にお尋ねをいたします。
  126. 中村義男

    中村参考人 この問題は、先ほど私当初に申しましたように、地帯が広い関係上、上流方面漁民の考えておる主張と、下流方面漁民の考えておる主張とが食い違いを生じておるわけであります。それは、下流から見れば上流へ上ったように思う。それから上流漁民は、もう上って来ないんだと言う。そこに食い違いを生じておりますから、さっき県当局の方からもお話しになりましたように、これの実態を把握する調査員を設けようということになって、今着々話がありつつありますので、その食い違いは、あるいは会社側としては非常に有利な食い違いではないかと考えられる。従って、漁民は痛いところをつかれては、主張が違うから解決方法を知らない。でありますから、上流には上流話し合いをしてみてもらって、上流漁民が、なるほどそれなればということになれば、私どもは異存は申しません。なお徳田理事の言われたように、下流に大なる影響があるということも会社の方でお認めになり、そうして地方の漁民も納得がいく、俗に言う個々別々の交渉をしていただいて、そうしてこれがだれもが満足いったということになれば、組合理事会によってこれを了承しようということにすれば、円満な妥結になるのではないかと思うのであります。  以上のことをちょっと申し上げておきます。
  127. 逢澤寛

    ○逢澤委員 私がお尋ね申し上げたのは、お述べになったようなこともその一部でありますが、徳田参考人のお述べになりましたその事柄に対する信憑力についてお尋ね申し上げておるのであります。従ってあなたのお立場から考えた場合には、組合代表の言葉であるとか、あるいは個人の立場であるとかいうようなことをお尋ね申し上げたのであります。
  128. 中村義男

    中村参考人 お答えいたします。これはおそらく徳田氏の区域としての下流組合員の切実な叫びを受けてお述べになったのだろう、組合全体としての意思ではないだろうと私は考えております。
  129. 逢澤寛

    ○逢澤委員 それでは徳田参考人にお尋ねいたしたいのでありますが、今度は逆に中村参考人の陳述は組合代表としての陳述であるようにお考えになりますか、また個人の意見であるようにお考えになりますか。
  130. 徳田良助

    徳田参考人 組合代表としての答弁であると考えられるのでありますが、やはり一部地区的な観念が多少含まれておるに相違ないと思います。
  131. 逢澤寛

    ○逢澤委員 次には、中村参考人可部参考人にお尋ね申し上げたいのでありますが、補償条件の覚書の第二条、契約書の第三条の事業をどの程度実施しておられましょうか。具体的に申し上げますと、三千数百万円の補償ができておるが、この補償には条件がつけてある。覚書には条件がある。増殖事業を最優先的に遂行する、こういう条件といいますか、約束がなされておるように思いますが、この約束をどのくらい実行されておりますか。先ほどお述べになった点の中にも、補償金のある部分は全組合員に分配をされるような話もあったように聞き及んでおるのでありますが、そういうような事実がありますか。
  132. 中村義男

    中村参考人 ただいまの契約による、つまり第二条といいますと、コイの養成事業、それから今のアユ放流事業――これは契約かできますと同時に、年々琵琶湖から七十万六千尾というアユを約束によって今放流しつつあるのでありますが、一昨年のごときは七十万六千というのをはるかにこえて、八十五万も放流しております。それからコイ子の養成事業につきましては、さっそく四反五畝ばかりの養魚場を作って、しかもこれはわれわれ組合員ではその仕事がうまくできかねる場合もあるかもしらぬというので、県へお願いしまして、その補償金の幾らかを県に納めて、県営として満二カ年契約と同時に、今やってもらっておりますが、一昨年が十四万、昨年が十二万というふうに、失われたものに対する魚種転換としてコイ子を放流しておるような情勢でありまして、この分に対しては実行しておるのであります。
  133. 逢澤寛

    ○逢澤委員 後段の点も一つお答えいただきたいと思います。
  134. 中村義男

    中村参考人 これはいろいろな観点から考えまして、江川の河川に対しては、先ほどからも話がありましたように、工事中、発電所開始前においても、魚族の確保に障害があり、従ってそれが翌年の遡上アユ関係する、そうなってくれば、全区域にわたって全漁民利益影響してくるのだということから、わずか一人二千円ずつ、五百万円の金を今組合員配分したというのがありますが、これはやはり遡上魚族の減少に基く、こういうような意味でやったのであります。
  135. 可部重応

    可部参考人 御質問にお答えします。三千万円の使途については、会社との契約では、会社は介在しないことになっております。ただこの覚書第二条を作りましたときの経緯を申し上げますと、二十六年度に県が公表されております前郷川の専漁者は五十四名というふうな統計が表われておりまして、専漁者等、生活をこれに依存する者にはできるだけ完全な補償金を与えよう、しかしながらあとは増殖事業に主として使おうじゃないかというふうな相談でこの第二条を記載されたものであります。その後の使途につきましては会社は一応介在しておりません。
  136. 逢澤寛

    ○逢澤委員 児玉参考人にお尋ねいたしたいのでありますが、本件の漁業補償の一時金の三千幾百万円で、年次計画による、三百何ぼの補償契約ができておる。先ほど参考人から述べられましたが、本件の発生以前に調査した資料がある、その調査した資料は本件の補償契約をやり、また河川の使用に対する契約をやった以前であるかどうか。すなわちその調査したものを資料として本補償問題の金額が出たのであるかどうか、こういうことについてお尋ねしたい。
  137. 児玉真一

    児玉参考人 お答えいたします。調査は、この補償問題の起る前に別の事案の参考にすべく調査したものであります。それから今度の補償交渉におきまして使いました数字は、そういうふうな経過でできた数字でございますので、比較的客観性のあるものといたしまして、それを基礎にいたしまして、いろいろ関係者にお話をいたしまして、大体了承を得た数字でございます。
  138. 逢澤寛

    ○逢澤委員 本件発生以前に調査したという年月日がわかりましたら、お知らせいただきたいと思いますが、今わかりますか、わかりませんか。
  139. 児玉真一

    児玉参考人 お答えいたします。二十六年の春調査を終っております。
  140. 逢澤寛

    ○逢澤委員 委員長にお尋ね申し上げたいことがあるのであります。先ほど前田委員からもお話しがありましたが、参考人の今朝十時半から今までのいろいろの意見を聞いてみますと、今話し合い中である、しかも三月六日、七日といえば十日ほど前のことである。この話し中の案件に対して、先ほど委員長は、本建設委員会理事会等の承認を経てこれを本委員会に付託することにした、こういうお話しがありましたが、こうした話し合い中の問題を本委員会に取り上げることは、むしろ紛糾をますます紛糾させるものであるのではないかと思います。会社側意見も誠実にこれを遂行しょうといっておる。それから参考への意見も、これはいたずらに引き延ばされたものであるという発言は一つもない。しかるに本委員会に取り上げるというような慣例を作ることは、先ほど前田委員お話しになった通り、将来こうした問題をこの建設委員会の議題として上程するという先例を開くことになるので、私は委員長の責任がきわめて重大だと思う。これに対する委員長の所信を一つ伺っておきたい。
  141. 薩摩雄次

    薩摩委員長 お答えいたします。この問題は昭和三十一年十二月二十三日の建設委員会と、昭和三十一年五月の建設委員会で二回委員会に付託されて論議をされた問題であります。その後この問題がいまなお円満に解決がついておらぬということを承わりましたので、理事諸公にお諮りしてこの委員会を開くことになったのであります。話し合い中であるということと、四月一ぱいに円満に解決をつけたいということは、この委員会において質疑応答された結果、委員長ははっきりこれを承わりましたのですから、その点御了承願います。
  142. 逢澤寛

    ○逢澤委員 終ります。
  143. 薩摩雄次

    薩摩委員長 それでは委員中崎敏君。
  144. 中崎敏

    中崎委員 電力などは公益的性質を持ち、同時に独占的な性格を持つがゆえに、しかもそれが大資本の経営の形態であるがゆえに、国家から特別の権利と利益とを電力業者に付与されておるのであります。ところがややもすれば国家のこうした恩典になれて、その運営が行き過ぎになって、ときには権利の乱用となり、ときにはその経済力をいろいろ利用して、そうして消費大衆を大きな圧力のもとに圧迫を加えておるという現象は非常に遺憾でありますので、私といたしましては、商工委員会においてもしばしば政府に対して、さらにこうしたところの法律の改正などを加えてその運用の面あるいは監督の面においてもこれを適正にやるべきものであるという主張をして、今日に至っておるのでありますが、たまたままた中国電力の問題についても、多数の沿岸漁民の生活に関する大きな問題が、相当長い間にわたって未解決のまま相当大きな政治問題化しておるということは、争えない事実であると思うのであります。そこでまずこうした電力に関係のある人たちはそうしたところの考え方を持って多数の漁民の生活に関する問題を真剣に誠意を持って当らるべきものだというふうに考えておるのでありますが、これを私は今後問題解決一つの心がまえとして申し述べておきたいと思うのであります。  さて、この問題点をいろいろ長時間にわたって論議検討された結果、大体ここに明らかになっておりますので、それらの問題をこれから突っ込んであまり掘り下げていこうというふうには考えないのでありますが、いずれにしても一日も早くこの問題が双方円満のうちに妥結されて、そうして今後再びこうした問題の起らないことを期待してやまないのであります。そうした考え方の上に立ってみましたときに、まず河川法を初めとするところのあるいは直接河川の利用などに関係のない、たとえば島根県においてもいよいよパルプ工場ができて、パルプの廃液を流して、そして沿岸漁民の生活に大きなる脅威を来たしておる。そして多数の魚族の上に非常な悪影響を来たしておるというような事実なども、現に新しい問題として起っておるのでありますが、これはかって何回も起り、また新しく工場の誘致などとも関連して起ってきておるのでありますが、こうした問題は一応別の角度から、言いかえれば河川法に関係のある場合と、それから単なる何らこれに関係のない海上に関係するような問題と切り離すことができると思うのでありますが、いずれにしてもこうしたところの魚族保護の問題と多数の漁民の生活の確保の上において、さらに法規をはっきりして、そうしたところの限界を、言いかえればその企業が持つべき責任とさらに損害補償等を含めたところのそういう問題と、さらに国家の監督権が一体どういうふうに発動すべきかというようなことを含めて、根本的にこの問題をまず割り切るべきものであるというふうに考えておるのでありますが、これについて水産庁から漁政部長が来ております、それから河川局長かおりますので、両方の方から一つ簡単でいいですから考え方を明らかにしてもらいたいと思うのです。
  145. 山本三郎

    ○山本政府委員 ただいまのお説はまことにごもっともな仰せでございます。ただそれらの問題をいろいろ処理する上におきましては、単に河川法だけの問題ではございません。用地の問題等に関しましては土地収用法の問題、それからその他の川の濁りというような問題、汚濁の問題等いろいろ問題がございまして、それは単に河川法だけの改正ということだけではないと思いますが、私どもの所管いたしまする河川法の問題につきましても、今お述べになりましたような問題点その他の問題につきましても改正を要するような点もございますので、従来におきましてもいろいろと研究はしておりましたが、今後におきましてもそういう研究を通じまして、できるだけ早くそういうところに間に合うような法律にしたいというふうに考えております。
  146. 新沢寧

    ○新沢説明員 工業化が進むにつれましていろいろ水産資源を脅かす問題が瀕発して参っておりますことは、確かにお説の通りであります。私どもといたしましても、ここに何らかの形で解決をしていかなければならぬというふうに常々考えておるわけでございます。ただその解決につきましては、ただいま建設省の方からもお答えがありましたように、水産庁だけあるいは建設省だけでも解決し得ない問題がたくさんあると思いますので、関係の各省、建設省、通産省あるいは科学技術庁等々関係方面の者が寄りまして、問題の基本的解決についての研究を進めて参りたいということで、ただいま種々研究並びに準備を進めている段階であります。
  147. 中崎敏

    中崎委員 まず一般的な問題はその程度にいたしまして、閣議等において、ことに経済閣僚懇談会等において、これは相当大きなるところの長い間の政治問題でもありますので、すみやかにこれについて対策を協議すべく、関係各局部長においてもその所管の大臣に十分進言されて、そういう方向に進められることを要望しておきたいと思うのであります。  さて今度はそういった法律が裏づけとなり、現在までの段階においてこうした補償問題等に対する一つの基準といいますか、大体要項書きというようなものを行政措置として一応検討しておかれて、大体この問題はこういうふうな範囲においてこうすべきだというふうな考え方があっていいんじゃないか。これはたまたま起った問題ではない。ありとあらゆる場合にこういう問題は起ってきておるのでありまして、今日電源開発があらゆる地区において大規模に行われる場合においては、一そうこの問題が大きく浮び上ってくるということをあわせて考えてみたときに、こういう場合はこういうふうにしてこういう基準で補償措置を講ずべきであるという、そういう基準を何か考えられるのか、あるいは考えておられるのかどうかをお尋ねしたいのであります。
  148. 山本三郎

    ○山本政府委員 電源開発に伴いまする補償の問題につきましては、電源開発補償基準というものが先年閣議で決定されまして、それによりまして行われております。それで全部間に合うというわけにはいきませんが、一応そういう基準がありまして、それに基いて行われておる次第であります。
  149. 中崎敏

    中崎委員 江川漁業補償に関する問題は、今までお聞きの通りに、二十九年の契約締結以来もたもたして今日に至っておる。相当長期にわたることでありますが、その閣議決定によるところの基準に照らしてみて、一体この問題をどういうふうにお考えになっておるかをお尋ねしたいのであります。
  150. 山本三郎

    ○山本政府委員 ただいまの問題は内容的な問題でございまして、具体的にどうかということは私からちょっとお答えいたしにくいのであります。もしなんでしたら私の方で調べてもよろしゅうございますが、あるいは県の方へお聞きいただいたらわかるのじやないかと思います。
  151. 中崎敏

    中崎委員 島根県の水産部長は、その問題について閣議決定の基準とどういうふうに対処して取っ組んできたかということについて、何か過去の実績等があれば一つお尋ねしたいのであります。
  152. 児玉真一

    児玉参考人 補償基準があることはよく存じておりますし、研究もいたしております。従来の補償解決の実例を見ますと、必ずしも補償基準通り解決していない場合が非常に多いわけであります。私どもといたしましては基本的な考え方としまして、補償基準を参考にいたして参っておるような状況でございます。
  153. 中崎敏

    中崎委員 次に水産部長にお尋ねしたいのでありまするが、午前中徳田参考人からの意見によりますと、こうした補償問題については水産庁にもしばしば実情を申し入れて、そうしてこれが善処方を懇請しておるということがあったのでありますが、もしそうであるとするならば、水産庁はまた実地調査に行かれて、被害が甚大であるという結論が出たというふうなこともいわれておるように記憶しておるのでありますが、その結果が一体どういうふうになっているのか。さらに漁民魚族確保の上において一体この問題をどういうふうに考えておるのかをお尋ねしたいのであります。
  154. 新沢寧

    ○新沢説明員 お話にございました通り、かねがね本問題の解決につきまして、再三現地の方からお話を承わっております。また水産庁からも担当官を派遣いたしまして調査をいたしたこともございます。その結果の報告といたしましては、契約を締結いたしました当時と、ダム完成いたしました後においては、非常に様相が変ってきておるということで、従って補償金金額についても再交渉の余地が生じてきたという報告を受けておりますし、そういうことは電力会社の方にも申し上げておると思います。ただ問題の遷延いたしておりますのは、先ほど建設省からお話がございましたように、補償金額の算定の方式は、閣議決定になりました要綱によりましてきまっておるわけでございますが、その基礎となります漁獲高につきましていろいろ見解の相違がございまして、解決をおくらしておるわけでございます。この問題につきましては、島根県水産当局にいろいろごあっせんを願って、両者納得する漁獲高認定に到達すればそこで問題は解決するわけでございますので、それらについて過去におけるあらゆる資料に基いてのごあっせんを願っておるわけであります。
  155. 中崎敏

    中崎委員 ややもしますと水産庁がこうしたような被害の問題について、これはパルプ廃液の場合も同じでありますが、どうも漁民の保護等について非常に消極的であって、かえって事実をどんどん進行さして、たとえば工場建設だとか、あるいは建設までの話をどんどん未解決のままに放任して、紛議をかもしていて、そしてそれがためにますます問題の解決を困難にせしめるというふうな傾向もあるのではないかということを懸念しておるのでございます。一つそうした意味において、もう少し実情を把握して、大所高所から一つ問題点に十分注意されて、事態解決に努力されることをお願いしたいのであります。この問題にしても同じことが言えるのでありまして、ただ傍観するということでなしに、場合によれば自分が直接乗り出していって建設省などとも十分の話し合いをして、そして問題解決の促進をはかるというふうなことでないと、どうも先ほどから話を聞いていますと、四月の末ころには話がつきそうだという見通しを持ってやっているのだと言われても、簡単には今のままではやっていけぬのじやないかという懸念もしておりますので、その点を特に注意して、公正妥当な線において、ことに漁民の生活確保の上において格段の配慮が必要であるのではないか。ことにたとえば電力のごとき、あれだけの大きな資本を擁し、そうしてまた莫大な利益を上げておるという状態を考えてみたときに、何千万の漁民の生活に大きなるところの不安をかもす現実について――現実に生活に追われてそこで生きておられないという、こういう被害者もあるということがいわれておる。そういう者を考えてみたときに、もう一歩乗り出してこれらの弱い立場の人々の保護に専心される必要があるのではないかと考えておりますので、電力会社側においてもこの際蒙を開いて、一回限りで済む問題ですし、年々の補償を要するという問題もあるのでございますが、一時金は一回限りで問題が円満に解決できるのですから、一つ大いに奮発してもらうことを要望しておくような次第であります。  さて問題の困難なる一つの点は、実態調査がなかなか困難であり、それがまた実際においてあまり進んでいなかったということにあるようであります。この点については調査委員会を設けて、そうしてこれと取組んで妥当な結論を出すべく努力するということでありますから、この点についてはけっこうなことと思うのでありますが、ただ問題となりますのは、一つには組合の内部において、上流中流下流と大きく分けて、この三つの区間におけるところの利害の一致しない点にも一つの原因があるともいわれておるのでありますが、この点においてまずお尋ねしたいことは、実態の調査が十分に実情に即しておられる場合においては、利害関係を持つ者は、なるほどこれはこうなんだというふうな結論が出る限りにおいては、それ以上の紛糾も組合の内部においてはないのではないかというふうに考えるのでありますが、そういうとについて組合長はどういうふうな見通しを持っておられるかをお尋ねしたいのであります。
  156. 中村義男

    中村参考人 この問題につきましては、前回以来の調査委員会の際にも会社と県と漁民代表とが集まっていろいろ相談をしましたが、どの地区からの申し出も、無理のない申し出であるということも私どもは認識しておりますので、会社が言われるように、一本でなければ相談しないということにしてもらったのでは、永久にこの解決方法は見出し得られぬのじゃないかというのが、長い間の河川の状態でありますから、それぞれ異なっておるわけであります。それでどうか県も間に入っていただきまして、地帯々々でこの問題は解決をつけていただいて、一日も早くこういう問題から脱離さしていただきたいというのが私の念願であります。実態が違いますから、上流下流一本で大丈夫でありますということは、どうしても申し上げられぬのであります。
  157. 中崎敏

    中崎委員 組合は今まで県がタッチして一本でやっておられるのでありますが、今度は新しい問題も含んでおります。現在はおよそ三つのかたまりがあるようでありますか、今度はそういうものが一つになって会社との契約の対象になるのが都合がいいというふうにお考えになるのでありますか。それとも、形だけはそのままにしておくのだが、実際の話し合いは、三つのかたまりとして別々に――県ももちろんタッチするでしょうが、話を進めていくというのがいいと言われるのですか。
  158. 中村義男

    中村参考人 今のお話のように、三つでそれぞれ単独に解決ができさえすればけっこうです。しかし漁業権江川一本で考えておりますので、地区でわれわれの方でこうしますということを会社に言えば、相手方が一本の漁業権者であるから、組合一本でなければいかぬと言われるのでありますから、その際は三地区とも妥協ができ得れば、これによって役員会を開いて、県の立ち会いの上で一本で契約してもけっこうです。要するに地区ごとが得心していけばけっこうだと考えております。
  159. 中崎敏

    中崎委員 県水産部長にお尋ねしたいのでありますが、大体会社側の意向としては、一本でまとまってこいというような考え方のようであります。ところで、組合現実利害関係がいろいろあって、実態調査もこれからやるというのでありますから、多分完全なものでないと思われるのであります。そうしたことがあって容易にまとまりにくい実情があるのでありますが、いずれにしてもこの解決が困難なのは、一つには会社側が、三つでは困るので一本になってこいというふうな困難なことを実際に言っているからじやないかと思っております。県としては四月末に片づけるという見通しを持っておられるようでありますが、私の見たところでは組合の三つの主張が一本にまとまるのは今のところ大へん困難ではないかと思うが、どういう処置の方法によって四月末までにこの問題を妥結していくという見通しを持っておられるのか、お尋ねしたいのであります。
  160. 児玉真一

    児玉参考人 今までこの問題が予想外に延びましたのは、今おっしゃったようなことが非常に大きい原因になっておるわけであります。結局県の考え方としては、漁業協同組合が一本になって、整然として補償要求が出されたならば、非常に解決が早かったと思いますが、中村参考人からお話がありましたように、漁協の内部にいろいろ事情があって、そういう理想的な形に持ってくることが困難でございました。それで県としては、次善のいき方ではございますが、漁協が形の上では一本になって問題を取り扱いますけれども、具体的な事項については地区々々からそれぞれ意見を述べてもらいながら、最終的には漁協一本でまとめたい。非常にむずかしいいき方でございますが、そういう考え方で現在進んでおるわけであります。
  161. 中崎敏

    中崎委員 中電の方でも県の水産部長の言われたようなそういう扱いに同意しておられるのでありますか。
  162. 可部重応

    可部参考人 交渉の相手は組合を代表する機関である、この原則は今まで会社がずっと主張して参りました。その交渉の相手方である組合の代表機関として、これはどなたが出られてもけっこうでございますし、取り上げる問題は各地区にわかれてもよろしい、これは一貫して会社主張しておるのでありますが、組合の代表権も何もない方が二十名、三十名と押しかけられて、上流部の方は、下流部にはアユがとれるのだと御主張になるし、下流部の方は、最近のはやりでありますが、上流部は神武天皇以来アユが多いのだという御発言を、会社としては調整する能力を持たないと言っておるのであります。これは組合を代表される責任ある機関から申し出があれは、いつでもどなたでも交渉に応ずるのですが、どうしてもこの調整がつかないから一年間交渉が持てなかった。そうして昨年の十二月二十六日に県知事さんのあっせんを得まして、初めて正式な交渉が開かれたというふうな経過になっております。
  163. 中崎敏

    中崎委員 ただいまの問題はきわめて重要でありますが、組合側の方から二十人か三十人か知りませんが、ときによればそれぞれ自分の切迫した生活にもかかわる大きな問題でもありますから、切実なあまり何をもたもたしているのかということで行かれることは当然あると思うのでありますが、実際の話はそれだけでは解決がつかないということも言えると思うのです。そこで組合側、あるいは県側としても、今後の交渉はどこまでも正規の組合を代表しているところの委員を対象にして、これからの話を具体的に進めていくんだということになるかどうか。またこの調査委員が県側、会社側組合側と三名出ているというのでありますが、その調査委員がそうした交渉の権限を持っているのか、その関連性はどういうものであろうか、あわせてお尋ねしたい。
  164. 可部重応

    可部参考人 調査委員交渉の権限を持っておりません。これは直ちに切りかえて交渉委員会にすることは可能でございますが、一応調査委員会の任務は事実を調査しようではないかということであります。組合同意、県の同意があれば、会社側調査委員会を直ちに交渉委員会に切りかえるということは、三月七日の交渉でも実施いたしました。
  165. 中崎敏

    中崎委員 まだいろいろありますが、いずれにしても、組合の問題は組合内部で極力まとまる線で努力をされ、しかも強力にまとまった力で強い正しい主張をしていって、当然主張すべきものはする、また獲得するものはするんだという態勢でいかれた方が問題の解決の上においてもいいのではないか。ことに県側と会社側も問題によってはその地区々々の問題もその交渉の中にあわせて取り上げられても、それには同時にあわせて話をするというのでありますから、その点もお含みされた方が促進の上にもいいのじゃないかというふうにも考えられますので、老婆心でありますが、その点を申し上げておきたいと思うのであります。  それから今度はこの二十九年の十一月かに取りきめられたこの協定によりますと、二千九百数十万円の補償金というものは、生活保障が含まれていない。その分配については、ただし会社の方がタッチしないのだからというふうなこともあったのでありますが、大体ここに一つの大きな問題があるのではないかと思うのであります。言いかえますると、当時においては力の強弱等もあって、またそれだけ大きな生活の脅威にもならなかったというふうにも考えられるのでありまして、こうした不完全な取りきめがされたのではないかと考えるのでありますが、その後の実情において、相当収獲高が――当時予定されておった五〇%云々という問題もあるのでありますが、それ以上のやっぱり収獲高の減少もあって、生活の上に大きなる困難と脅威を感じておるということも会社側においても認められておるのじやないか。どの程度あるかということは別として、そういう現実はその当時よりも新しい事態として認められて、おそらくそう考えておられるのではないかというふうに思うのでありますが、生活保障を全然考えない。職を奪われて現実には困っておるのだというふうなことも当然あるのでありますし、生活保障の問題はたといあの当時の規定の中にはないにしても、新しいところの考慮の中には当然考えられるべきものだというふうに思うのでありますが、この点について会社側はどういうようにお考えになりますか、お聞きしたいのであります。
  166. 可部重応

    可部参考人 物権としての漁業権補償を完全に行う。それが会社側の希望といたしましては、できるだけ現在の組合員を救済するということも必要でございますが、非常に長い、未来永劫続く問題でございますので、漁族の増殖等にこれが支弁していただきたいということを強く希望しておったのであります。ただ現実におられる専業者の方々及び半専業の方、こういう方々に適当な救済手段といいまするか、生活保障といいまするか、こういうことが行われることが必要であろうと考えておったのでありますが、それは漁業権である物権の補償以外にそういうものが二つはないのじゃないか、かように考えて交渉して参ったわけであります。
  167. 中崎敏

    中崎委員 その当時の考えの中には、たとえば年額三百何ぼかの魚の放流とか、あるいはそのほかの施設とか、そういうものを含めて、それだけやれば、何だかこの大きな生活の脅威もなく、大体従前に類したような生き方があるのじゃないかというように考えられない限りにおいて、この生舌保障の問題は当然考えられないということは、これはもうあり得ないことだというように考えておるのでありますが、そのほかに現実には非常に魚が減っておるのだ、漁獲は少いのだ、非常にであるかどの程度であるかは存じませんが、いずれにせよ減っておるのだ、余分に生活の脅威を感じておるのだから、当時生活保障は考えられなかったとかりにしても、現在においては新しくこれは考慮すべき要素になっておるのじやないかと思うのでありますが、一体これをどういうふうにお考えになるか、今後解決する一つの基準としての問題でもありますので、一つこの考え方をお聞きしたいのであります。
  168. 可部重応

    可部参考人 お答えいたします。先ほど話しの出ました電源開発補償要綱によりますと、代替施設によってたとえばダム上流等に放流をして補い得るものはそういうふうにした方が正しい。それから減水区間等は魚を放流しようと思っても、水がないからだめなわけでありますが、ここは一時金で完済するのだということでその方式が示されております。会社の方はその方式に沿う補償を行なっていく。その金が個人に分配されるということは予想しておりますが、生活保障ということでそれより別途に考慮していないということでございます。
  169. 中崎敏

    中崎委員 電源開発法によるところのその補償にしても、生活県立というものは全然考慮していないものかどうか、そこのところは問題だ。この場合の契約には生活保障を考えてないことははっきりしておる。あなたは電源開発法を引っぱり出されましたが、その中には生活保障を考えているのかいないのか、それを一つお尋ねしたいのであります。
  170. 可部重応

    可部参考人 私には生活保障という意味がはつきりしないのでございますが……。
  171. 中崎敏

    中崎委員 漁業権に関する問題でなく、たとえば農家の畑を電源開発のために取っていく、そうすると同時に職も奪われてしまう、家もみんな取られてしまう。ただ家の代だけでなしに、その人がある期間生活ができるような、そういうものも含めて僕は出されるものだと思っておる。そういう意味において、この場合においても魚が取れなくなり、それによって生活のかてを持っておったものがもう生活ができなくなるということになれば、同じような意味において、その補償も生活保障という言葉を使うか使わぬか知らぬが、そういうものも当然考慮の中に払われて損害の金額は決定さるべきものだと考えるのでありますが、この点はどうですか。
  172. 可部重応

    可部参考人 お答えいたします。ただいま引例されましたような田んぼなら田んぼという価格が決定いたしまして、会社がそれを水没なら水没せしめる。こういうことを漁業権の場合考えてみますと、漁業権侵害について適正な補償が行われ、その補償金のこれは使途の問題ではなかろうか、かように考えておるわけでございます。
  173. 中崎敏

    中崎委員 どういうふうなものが要素に取り入れられて、その損害補償金としての金額は一体幾らになるか、それをまたどういうふうに分けていくかということは、これはまた別問題です。生活の根拠をこれがために取られるものについては、おれは知らぬのだといって手をつかねて見ておっていいものかどうかということ、それが法の精神であるかどうかということをお尋ねするのであります。
  174. 可部重応

    可部参考人 補償額を決定いたします段階によりまして、専業者か何人くらい、それをこの程度の補償をしたらどうかというふうな、いろいろと折衝はいたします。しかしながら補償する契約においては、これは漁業権補償であるということで、別途に個人の補償ということは書いておりません。
  175. 中崎敏

    中崎委員 この問題はどうも会社側においてはまだ十分に検討されていないのじゃないかと思いますので、当局として、そういう際に一体どういう法的根拠があるのか。もしないとすれば解釈の点においていわゆるどういうふうな取扱い措置をすればいいのか、一つ意見をお聞きしたいわけです。
  176. 山本三郎

    ○山本政府委員 基準要綱につきましては今その内容について詳しい資料がありませんが、これは土地収用法等に関連いたしまして計画局が所管いたしておりますが、今の点には多少議論はございますが、財産権に関して完全に保障されるならば、別に生活は保障しなくてもいいというような解釈というふうに聞いております。
  177. 中崎敏

    中崎委員 完全に補償されるならばということは、それは個々の場合をいっておるのだと思います。言いかえれば千人からの人間がそれだけの被害を受けて、千万や二千万で、しかもこれは施設が含まれての問題でしょうが、それで補償されたとは言えないと思うのです。これが完全に補償されなければ一体どういうことになるのか、その際にはあわせて生活権をも保障しなければならなくなると思いますが、そういう点どういうことになりますか。
  178. 美馬郁夫

    ○美馬説明員 ただいまの問題は、たとえば田畑であれば近傍類似の価格を参考にして、その価格を出して、これで一応その財産権は保障された、こういう方針をとっております。
  179. 中崎敏

    中崎委員 それでは生活の保障、たとえば形の上からいえば、いやお礼金だとか、いや移転料だとか、なんとかかんとかいうて出す。これは生活保障料を含めてのものだと思うのですが、言葉をどう使おうと、そうした関連の中に生活保障の意味をも含めた金額が織り込まれるのが通例であると考えるのですが、この点他の場合において、電源開発の場合、土地収用法の適用の場合などたくさんあるのですが、実際の運営はそうじゃない。たとえば砂川の農地の取り上げにしても基準の見舞金とかなんとかのほかに条件派の方には実際上どんどんいろいろな金がいっている。こういうような意味からいっても、立ちのきをやってもらいたいというような意味をも含めて、生活の保障を含んで行われておるように思うのでありますが、これはどうでございますか。
  180. 美馬郁夫

    ○美馬説明員 私も電源開発の補償要綱は直接の所管ではございませんから詳細には存じませんが、いろいろ私どもの方でやっておるのによりますと、たとえば田畑の場合はそういう程度でありますし、それから家屋の場合を例にとりますと、その家屋を適当な他の土地に移して、そこで再築するという価格を根拠として出しておりますから、そういう意味合いの金はあまり実際問題として見ておらぬのじやないかと考えております。
  181. 中島巖

    中島(巖)委員 関連質問。今河川局次長からちょっと聞き捨てならぬ発言がありましたので一応この点だけを確かめておきたいと思うのです。これはこの漁業関係の問題ではございませんが、発電所などでたとえば問題がこんがらかって、土地収用法なんかを適用するという場合において、ただいまの御意見はその付近の土地の値段に相当する賠償をする、こういうようなことをおっしゃられた。これはどうも重大な間違いだと思う。たとえば五反百姓で、それでもって生計を営んでおった。その者が二反なり三反なり取られると、あとの二反では生計が立たぬのだ。従って今のような御方針だと重大な問題が起きるはずです。たとえば五反でもって、あるいは一町でもって一家の生計ができておる。そこを五反取られる。それがためにそこにおることができぬことになる。従ってこういうような間接補償ということを十分考慮に入れぬと、今言ったような御方針でわれわれ委員がそれを認めたということになると、これは重大な問題であるから、一応念のためにお尋ねしておきたいと思います。
  182. 美馬郁夫

    ○美馬説明員 私の記憶に間違いがありましたらこれは私の答弁が間違っておると思いますが、私の記憶ではただいまのような場合には、原則としては近傍類似の土地を参考といたしまして値段をきめましてやる建前になっております。たとえばお話のような五反あった場合に、三反取られてそして二反ではとてもやっていけないという場合もありますが、こういう場合は残地補償というような建前で、全額を補償する制度になっておると私は記憶しております。
  183. 中崎敏

    中崎委員 あの問題はものの考え方、実際においては生活権を追われたものを、ただ漁業権という意味で、何等か実際には余分にその金が分配されるとも考えられない。そうすると片っ方は生活を追われる、片っ方は必ずしもそうでないというような場合もあって、分け方にも多少よると思うのですが、スズメの涙程度の千や二千円やってみたって、これで生活が保障されて一生の生活の安定にならぬのだから、そういうようなことも当然いわゆる社会通念といいますか、いわゆる正義の観念からなり、あるいは公平の観念から言うて、当然これには正当の補償がされるべきだと私たちは考えている。だからこれはいずれまた今後の折衝において検討してもらうことといたします。  さて今度は具体的な問題になるのでありますが、いろいろ県の方でも三者が協議されて、今日まであっせんの努力をされたのでありますが、たとえば具体的に金額は大よそこの程度ならば折り合うとか折り合わぬとか、あるいはこの程度ならば妥当であるとかないとかいうような、県としての一つの案をお持ちになったことがあるのかないのか、あるいはまた関係当局たとえば組合側、あるいは会社側から、それは少し高過ぎるとか、これなら何とかしようじゃないかというふうなある一つの意向が、その話の中に出たのかどうなのか、もう一点だけお尋ねして私の質問を終ります。
  184. 児玉真一

    児玉参考人 県の方でこれなら双方納得されそうであるという案があるかどうかという御質問でございましたが、私どもは腹案を持っておりますが、果して双方納得できるかどうかということは自信はございませんが、腹案は持っております。それから腹案に近いものを双方に示して意見を聞いたことがあるかないかというふうな御趣旨の御質問だったと思いますが、それはまだいたしておりません。ただ間接に打診をすると申しまするか話をしたことはございますが、正式に話したことはございません。
  185. 中崎敏

    中崎委員 金額の問題はなかなか微妙な問題であり、双方にとって重大な問題でもありますが、先ほど大橋委員からも発言があったのでありますが、たとえば神戸川の場合には五千万円の補償がされておる。そうして江川の場合においては関係漁民の数からいってもあるいはその川のスケールからいってもあるいは漁獲高からいっても問題にならぬというくらいな差異があるのでありますが、それについて二千九百何十万円、あるいは一カ年間三百何万という者もあるようでありますが、それは一体どういう関係か、三百何万が神戸川においてどういう関係があるか私よく存じませんが、いずれにしても五千万円という補償金額が現実に払われておる。でありますからいずれにしても今日こうした問題となって会社側においても、いろいろな問題点についてはある意味においてこれはやむを得ないということで納得しておられる。ただそれがどの程度であるか、その金額をどうするかというところに問題があるのではないかと思うのであります。それぞれ上流下流中流地区の要望等については、一応大局的にはやむを得ないのではないかという考え方の上に立って調査を進められると思いますが、そうした考え方の上に立ったときに、五千万円という補償金金額が、神戸川の場合において出ておるのだから、今後においてはそれよりさらにスケールの大きい、被害の大きい江川地区においてさらに金額は大きく飛躍するとまでは言いませんが、大きい金額補償として要求されるのも、一応われわれとしても納得がいくんじゃないかというふうに考えられておるのでありますが、この点について神戸川の前例と照らしてみて、三千万円の過去の江川補償と照らし合せてみて、今後において一体どうあるべきものであるかというおよその考え方会社側においてあると思うのでありますが、その点を島田社長からお答え願いたいと思います。
  186. 島田兵蔵

    島田参考人 中崎さんの御質問は神戸川の補償江川補償金額が神戸川の方が多いじゃないかというようなお話があったのでありますが、会社として考えておりますのは、神戸川の方は非常に堰堤以下が長いのであります。七十キロに近いのであります。江川の方は減水区間が八キロということになっております。従って私の方としてもお話します。ときにそういうふうな減水区間の長さとかいろいろな問題を考慮いたしました上できめた金額でございまして、ただ堰堤がありましても、減水区間が非常に短かいとか、必ずしも一様ではございませんので、そういうことの結果、現在では神戸川が多いという結果が出ておりますことは事実でございます。先ほど来のお話で私どもとしてもなるべく問題を早期に解決したいという努力は払うということを申し上げてありますし、また契約当時から特に変化の多かったものについては、お互いにまた協力しようという考え方も持っておるのであります。なお調査委員会も現に設置されて進行しておるのでありますから、私どもも最善の努力を払いまして、なるべく双方円満な解決をしたい、こういうふうに考えておるわけであります。
  187. 中崎敏

    中崎委員 それでは結論を申し上げたいと思います。今のような神戸川と江川とに区間の長い短かいというようなことがあると言われておるのでありますが、その放水の量、あるいはその長い、大きな江川上流下流において、その水道をどの程度魚が上ったり下ったりするかというような問題もあわせてあると思うのでありますが、いずれにしても総合的に一つ誠意を持ってこの問題と取っ組まれまして、なるほどこれは公正妥当な一つの結論であるというふうなことを――会社側も大いに腹を開いてこの問題と取っ組んで、一日も早くこうした不安を解消するということが、同時にあなた方としての使命ではないかと考えておりますので、ただまとまってこなければ話をしないということでなしに、今みたようなあのような線で強く押し進めていただきますことを要望いたしますと同時に、組合の方でももう少し大局的な角度に立って強力に、正しく主張すべきことは主張するという態勢を整えられて、そうして有終の美をなされるというか、最後的な目的を達して一日も早く下部漁民の安定と生活の確保に進んでいただきたいと同時に、いろいろな施設なども適切に今後さらに積極的に県なりあるいは会社当局の協力も得て、そうして生活の上に将来ともに明るい希望が持てるような方向に問題の解決を持っていっていただくことを要望いたしまして私の質問をこれで終ります。
  188. 前田榮之助

    ○前田(榮)委員 大へん時間もおそくなって参りましたので、最後に――この問題の解決の中心行政庁としては県庁だと思うのですが、本日部長がおいでになって、県を代表されておると思いますが、このことは、あなたの本日お述べになったことは同時に県知事が述べたと同様なものであると解釈してよろしいか、この点お聞かせ願いたい。
  189. 児玉真一

    児玉参考人 知事が述べたというふうに解釈いただいてけっこうでございます。
  190. 前田榮之助

    ○前田(榮)委員 それだといたしまするならば、今日までこの問題が衆議院の建設委員会まで持ち込まれなければならぬ状態になったことについて責任を感じられるか――。責任をどうせよというのではございません。あなた方の県民、ことに零細な漁業者がいまだに補償の金が手に入らぬ、こういうことはもってのほかのことだとわれわれは考えるのであるが、県知事としての責任はきわめて重大でなければならぬ。ただ漁業者がまとまらぬとか、あるいは会社が思うように出してくれぬとかいうようなことで、このことがおさまるべきものではないと思います。県知事としてはいわば自分の子にひとしい県民が生活が脅かされておる。大橋委員が言われたように、憲法違反だとまで言われる重大問題だが、それを県知事がこんなところに持ってきてお世話にならなければ事がおさまらぬなどということでは、私は県知事の資格なしと言って差しつかえないのではないかと思うのですが、そういうことについて重大な責任を持たなければならぬ。このことに対してしっかりした信念を持って、今後ほんとうに誠意を持ってやるとかなんとかいう言葉の上でなしに、四月ごろにはおさまるだろう、皆さんが言うようなことを言っておるが、どうなんですか。それをはっきりした信念を持って一つ約束をしてもらいたいというのがわれわれの腹なんですが、まさか約束もできぬでしょうが、約束をするというような心持でお答えになれますか。この点は一つはっきりしてもらいたいと思います。
  191. 児玉真一

    児玉参考人 ただいまの御質問にお答えしたいと思いますが、県といたしましてはなるべく早く公正妥当な話し合いがつきますことを念願いたしまして、不敏でございますが、努力をいたしておるわけでございますが、いろいろな事情で今日に至りまして御迷惑をおかけしました点につきましてはまことに申しわけないことだと存じております。私どもといたしましては、私どもの許されました範囲におきましてできる限りの努力をいたしまして一日も早く円満な解決がつきますように今後とも十分努力したいと思います。
  192. 前田榮之助

    ○前田(榮)委員 それでは委員長一つ今後の見通しについて一言御相談的なことを申し上げておきたいのですが、これは結局委員会で、あと――きょうでなくても理事会か委員諸君の意見によってまた県に対し、あるいは水産庁に対して、河川局に対して勧告にするなり、何かそういう処置を一つまとめていただくようにお願いいたしまして、本日はこの程度でおやめになったらどうかと思います。(「まだ質問がある」と呼ぶ者あり)
  193. 薩摩雄次

    薩摩委員長 承知いたしました。
  194. 中島巖

    中島(巖)委員 ごく簡単に中村徳田参考人にお伺いいたしますが、先ほどからの質疑応答の中から見まして、非常に困って窮乏しておる漁民の方がおる、こういうようなお話だった。しかるに前に三千万円近い金を会社から補償費として領収していて、約一千万円は設備に回した、あと二千万円は手元にあるようなお話でありましたが、手元にあるのかどうか。あるとすればどういうわけでそれほど困っておる漁民に配付せずに手元にあるか。この二点についてどちらの参考人の方でもよろしいからお答えを願いたい。
  195. 中村義男

    中村参考人 この問題は二通りに分れておりまして、一時補償、永久補償ですが、永久補償は先ほど申しましたように毎年のアユ放流、それから魚種転換のためのコイの養殖、こういうような方面に使っております。それから一時補償の分は、その当時は、一千万円は将来の魚族増殖のために引き当てて、これを有効に使おう、それからあとの二千万円はさしあたり困る漁民の方に回そうということになっておったのでありますが、一般から言いますと、これは前に工事中その他において魚族の遡上その他の被害があるからというので、一般漁民に二千円ずつ配付しました。これが五百万円、そうして渇水地区はさしあたり、漁場を喪失しておるのだからというような意味におきまして、別途に、これは人数は少うございますが、二百万円を配ってあとを配分するということについて、けさから申しますように、地区が違いますから、それぞれ自分の方に多く取ろうというような主張をして、県の方のごあっせんも願い、県会議員、それから地元の町村長立ち合いのもとに、回を重ねること十幾回になりましたが、結局それがいまだ解決に至らないために、今のこの金は銀行で寝ておるというような形になっておるのが実情でありますが、これも一日も早く配りたいということは念頭にはありますが、今申しましたように、次から次の被害程度の申し出がありますやらして、そのままになって今日に至っておるというようなことで、まことに理事者としては面目次度もない状態でありますので、この点を御了承いただきたいと思います。
  196. 徳田良助

    徳田参考人 ただいまの御質問のうち、困窮者をいかにして救済しないかという御質問に対しまして、ちょっとお話申し上げたいと思います。  県の御指導なり、組合の当時の考え方といたしまして、三千万円の金は、下流補償としては一文も見積られてなかった。当時の要求書の中に、下流の損害補償というものは一文も見積られてはなかったという観点におきまして、下流が――その当時の補償金は約一億五、六千万の金額でありましたが、それが、双方歩み寄って、これならということで、大体三千万で妥結されたのでありますけれども、その中には下流金額が見積られてなかった。従って下流には一応配分する金はない。しかし漁業権は結束した組合のものである。漁業権によって三千万円はもらったのであるによって、平等配分をせよというような多数決の意見になりまして、とうとう二千円の平等配分はやった。これは専業者はごく少数でありますので、専業者、特に被害の対象になった渇水地区等は全面的に反対したのでありますけれども、悲しいかな、遊漁者の大多数が権利を持ち、発言権を持っておりました関係上、そういうような多数決でもつて押えられて、二千円ずつの配分をやった。しかしながら、この補償金の筋合いと申しますものが下流に一文も包含されておらないというところで、その金をもって下流の貧民を救済することができません。従って昨年の十二月に会社と正式の会談をやりました席で、その困窮者の状態にまで話がいきまして、会社の方から、困窮者の面については急拠何とかしたいと思うが、組合の方で調査をされて出してもらいたい、それによって検討して何とか善処したいと思いますという誠意あるお言葉をいただいたのでありますけれども、何しろ十二月の二十六日の午後九時というようなことでありまして、聞くところによりますと、今社の重役会議も、本年の重役会議はきょうが最後であるというような話でありますし、しかも組合が、一応組合としての提出をしなくてはいけないというような話もありましたため、結論としまして、困窮者の調査条項というものは、警察権をもって調べていただいてもさしつかえのないほどの調査を厳密にしましたところ、一千万に上る被害というものが――被害といいますか、これは借財、あるいは衣類を売り、田を売り、畑を売り、家を売りといような事実が、調査しましたところ、発生しておるのでございますけれども、そういうような書類も、水産庁、建設省あるいは県の方に出しておる次第でございますけれども、さらにあらためて組合の方から出せといわれましても、とうてい年内の間に合いません。だというて、会社の方からいただいておる千三百万円の金に、下流は手をつけるわけにいきません。そんならどうして救済するか。すでに越年をすることができない、秋の運動会に子供のパンツの新しいのも買ってやれないというような困窮状態にあるものもありますので、何とかしてやりたいということで切にお話をしましたところが、とりあえず会社の方から出してもらうというても、今のところとうてい年内の間に合わないからという話でありましたので、現在十名の総代が財産を抵当に入れてこの運動を継続しているわけでありますが、総代としてこの運動を継続している現在、困窮者を見捨てて知らぬ顔をしているわけにいきませんので、一番難儀なものから一応何とかしてその金を立てかえて救済しておきたいと思いますが、どうでしょうかと申し上げましたところが、県の方から……。   〔「わかったわかった」と呼ぶ者あり〕
  197. 中島巖

    中島(巖)委員 そこで質問の第三点は、ただいま前田委員から、水産部長の方の身分についてお尋ねしたわけです。それから会社関係は、これはこの通りはっきりしておって、申し上げるまでもありません。  そこで中村徳田参考人にお伺いいたすことは、先程の質疑応答において私として非常に疑義があったのでありますが、江川漁業協同組合を代表して本日参考人台へ立たれたのであるか、あるいは個人として立たれたのであるか、どちらであるかということをはっきりお伺いしたいと思います。
  198. 中村義男

    中村参考人 私は漁協理事としてここに出ております。組合長病気のもめに来られませんので、私かわって参ったのであります。代表で…。
  199. 中島巖

    中島(巖)委員 そこで先ほどからの質疑応答をお聞きしておりますと、会社としては、法人の資格を持っている漁業協同組合の代表者でなければ話が困る。これは一応よくわかるのです。これはあなた方もおそらくおわかりと思う。しかしまた漁業協同組合の方では、そういう理屈はわかっているにしても、前にもらった金が、何の関係か知らぬが、とにかく内部事情でもっていまだに困っている者に分配ができぬ、こういう上な事情でおるわけです。そこで何とか正式の組合という形にして、三つに組合を具体的に分割して会社交渉するか、あるいは三カ所の話合いをしてそうして組合一本にまとめるか、今後こういう問題が当然目先に残るんじやないかと思う。これに対しては組合側ではどういうお考えですか。
  200. 中村義男

    中村参考人 この問題は、繰り返して申しますように、地区ごとの交渉会社としていただいて、そうして今のどの段階にも納得いくということになりますれば、組合一本の形で会社契約を締結して完了させたいというふうに考えております。
  201. 中島巖

    中島(巖)委員 そこで中村参考人にお尋ねいたしますが、三地区と申しましても組合内部のことでありますから、あなたの方でそれをそれぞれまとめて折衝するというわけにはいかないのですか。
  202. 中村義男

    中村参考人 まとめて折衝でき得たならば、もうそれに越したことはないけれども、まとまらないからそういうふうになっておりますので、会社へ特にお願いして、別々にでもやっていただいて、最後でき上ったら一本で契約いたします。
  203. 薩摩雄次

    薩摩委員長 ほかに御質疑はございませんか――。なければ本件に関する質疑はこの程度にとどめます。  委員長から一言お諮りいたしますが、先ほど前田委員からの御発言につきましては、他日機会を見まして御相談をいたしたいと存じますから御了承をお願いいたします。  参考人方々には長時間ありがとうございました。どうぞお引き取り下さい。  次会は公報をもってお知らせすることとし、本日はこれにて散会いたします。    午後四時二十二分散会