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前田証人 福岡県の
預金でございますが、御
承知のように
貸付の
分掌外のことでございます。それでございますから、私としては
預金をするとかどうということは全然聞いておらなかったのです。ただ十一月の半ば過ぎと思いましたが、
役席に
根橋常務に呼ばれまして、私が参りまして、そのときに
根橋常務から、
福岡県から一億円
預金を入れたんだ、大体そういう意味の
言葉でございます。それについて七百万円をあっせんした人に出さなければならないので、七百万円すぐ
伝票で
現金を出してくれ、こう言われたのでございます。ところが私としては
営業部でございますし、
営業の担当は
渡部常務でございますから、また
所管外の
預金のことでございますので、どうしていいかわからないので、一体どのようにして出すのか、一体どうなっている金ですか、それを聞きました。そうしましたら、もう
福岡から金が入っているんだから、今五階に――五階は
会議室だったのでございますが、五階に組合の人が来ている。その人に七百万渡さなければならぬものだから、
社長や何かと相談しているから出してくれ、こういうことでした。今申し上げたように、私としてはどんなふうにしていいか見当がつきませんので、一体どんなふうにして出すのか、こう言いましたら、
渡部さんと相談してくれ、そうして狭いところでございますから、一歩下りまして、それは
根橋常務と
渡部常務と相談していただかないと、私の方から今急に伺ったばかりで何にもわからないので、しかも
貸付のことでないので、
渡部常務に伺って
伝票を切る、それよりも御相談して下さい、こういうふうに言いました。そうしたら
根橋さんが
渡部さんのところに立っていきまして、どうしようといろいろ話しておりました。
渡部さんもはっきりしたことは言わなかったのです。そのうちに
根橋さんが
向井さんの
名前で仮払い――とにかく七百万円
伝票を切ってくれと言われました。そこで
向井さんの
名前で仮の
伝票を起しまして、
根橋さんのところへ、これでいいですかと持って行って置いてきてしまうつもりだったんです。ところが、
伝票を持ってきて判を押して、すぐこれを出してくれ、僕は五階に行っているから、と言って行かれてしまった。それで
渡部さんのところへ持って行きまして、
渡部さんに、この問題は何も聞いていないのですが、今の
お話のようですが、これでいいですか、私としては、
渡部さんがはっきりしたことを
根橋さんにも言っていないからわからないので、聞きました。そうしたら、うん、仕方がないのだ、と言って判を押しました。
社長も当然聞いているわけです、
社長のところへ持って行きまして、これは今のような話ですが、七百万円出すのですかと伺ったら、うんと言って
サインをされた。
社長は判ではなく
サインをされた。それを私、持って
出納に行く途中、ちょうど一階に
預金課がございます。
預金の
係長の
竹内というのに、
課長がおりませんから、
預金課がよく知っていると思います
竹内に、
福岡の金入ったか、と言ったら、ええ、三回とかに分けて入った、幾ら入ったか、一億入った、七百万出せというから出せよ、そんなこと全然知りません。何か金が要るというが、聞いてないか、知らない、向うも入ったというだけで知らぬらしいのです。私
出納課に行きまして、
出納課長にそれを渡しまして、七百万円を届けてもらうように言って自分の席に戻りました。戻るときに
竹内預金係長に金を上へ持って行くのだけれども、そのとき
預金のことだから
一緒に行けよ、と言っておきました。七百万円が来ましたので
竹内預金係長を呼びまして、それをふろしきに包んで、
貸付の隣の
役席を通って、
社長と
渡部常務がおられましたが
根橋さんがおられない。上に行っている、それじゃ五階に持って行きますと言ってその金を
竹内と二人で持って五階へ上りました。そこには
根橋さんと
あと三人ほどおられましたが、私は会ったことのない方ばかりです。その中に一人
向井さんがおられたように思うのです。それははっきりした
記憶じゃないのです、三人のうち一人
向井さんだったように思う。それで
根橋さんに、じゃ七百万円持って参りました、いいですか、と言ったら、うんと言いましてあけました。百万の
束七つになっていました。じゃ七百万
根橋さんにお渡ししますからと言って
根橋さんにお渡ししました。そしてちょっと立っておりますと、もういいよと言いますから、それじゃというのでおりて来ました。私としては
理由がはっきりわかりませんし、そして上に
社長や
渡部常務が全部行っておられますといいのですが、
根橋常務一人ですと、疑うというのではないのですけれども、どうだかはっきりわからないものですから、
竹内を連れて行きまして、こういうふうにして確かに渡したということを確認してもらったのであります。そして戻ってきて、
根橋常務に金を渡してきましたと、
社長と
渡部常務に、まん中にいるものですから、そこでちょっと話をして席に戻った。それ以外のことは私は知らないのでございます。