○
上村会計検査院説明員 日本国有鉄道に関しまして
検査報告に掲記してございますのは、
昭和二十九年度では
不当事項と
不正事項を合せまして十三件ございます。これにつきましては一応
説明いたしておりますので、三十年度の方について
説明いたしたいと思います。
三十年度に掲記しました事項は三十三件でございまして、
工事に関しますものが十五件、物件に関しますものが十六件、役務に関しますものが一件、
不正行為一件となっております。
まず
工事について申し上げますと、
工事の
経理が適正を欠いたもの二一四二号生二四三号の二件でございます。
最初の方は、
岐阜工事事務所で、
直営工事におきまして、
人夫賃として支払われました金を、実際には
人夫賃以外のものにも
使用されておる等でございます。
次の二一四三号は、
静岡鉄道監理局の
請負工事についてでございますが、
電車線路支線改修工事が
設計通り竣工したということで
経理されておりますが、実際は
施行個所と異なっておる
個所に施行したり、あるいは前年度
施行済みの
個所となっておる
個所を施行したというような
事態になっておりまして、
工事の
実態の把握は困難なものでございます。従いまして
直営工事におきましては、実際と合致する
工事経理をすることが必要でありますとともに、
請負工事におきましても
工事個所の検討、現場の確認を十分にする必要があると考えるのであります。
次は、
予定価格の
積算が過大であったため、
工事費が高価となっておるものが八件ございます。
まず
最初は二一四四号の
大阪工事事務所の
赤穂線の
工事でございますが、この
工事の
らち隧道掘さく工事費の
予定価格の
積算が妥当でなかったというものでございます。掘
さく工事は岩の性質が非常に
工事に影響するものでございますが、すべて岩を硬岩として
積算されておりますけれども、当時の
状況等から考えまして全部硬岩とする必要はなかったというふうに考えられます。なお、掘さくに要します
電力量が、全期間を通じて機械が大体フルに動くというふうに、
一般では考えられない上らに多く
積算せられておるような
関係で、概算いたしまして七億二千万円の
工事のらち四千九百万円が荷価になっておると考えられる下愚であります。
次は、一二四五号の
札幌工事事務所の
札幌用品庫改築その八
工事でございますが、これは
請負に付します場合に、
材料であります鋼材の
価格につきまして
市場調査等が十分でなかったため、
工事費におきまして約四二十万円が高価となっておるのであります。
次は二一四六号でありますが、神田駅
高架橋新設その他その十七第三鍛冶町
橋新設その他
工事外二
工事におきまして、
材料であります
コンクリートくいの
価格の検討が十分でなかったものであります。
コンクリートくいは当時
業者の
価格表が出ておるのでありますが、大口の取引の場合にはその
価格より値引きされ、しかも運賃は
業者持ちで取引されておるのが
実態でありますのに、これらの事情を十分
調査せられないで、
価格表を
基礎として
契約せられたため、約七百九十万円が高価になっておる
事態であります。
次は二一四七号でありますが、これは名古屋―枇杷島間の
のり改良工事におきまして、これに
使用します
コンクリートブロックの
予定価格の
積算におきまして、砂、
砂利等の
市場価格の
調査が十分でなかった等のために約三百九十万円が高価となっておるものであります。
次に二一四八号は、
東京電気工事事務所で
特別高圧ケーブル新設その他
工事を請け負わせたのでありますが、
工事の
実態の
調査が十分でなかったため実情に即さない
予定価格を
積算せられましたため、約四百二十万円が
工事費におきまして高価になっておるものであります。
次の二一四九号は、上野―田端間その二十八田端駅
構内土工その他その二
工事でありますが、その
工事のうち
捨土費の問題であります。当初
契約におきまして、
捨土費を
立米当り三百七十五円として
積算されて
契約されたものでありますが、途中におきまして
工事設計変更の必要がありましたため、未
施行部分を解除して、さらに同一
業者と
契約されたものでありますが、その場合には
捨土費を七百五十七円というふうに上げておられるわけであります。捨土につきましては大体当時
立米当り二百六十円程度であると考えられますし、事情の変更も特にありませんので、少くとも当初の三百七十五円で
契約するのが至当であったと思われ、それによりますれば約三百十万円が節約できたというものでございます。二一五〇号は神田―上野間その二十六高架橋駆
体新設その他
工事外・二十三件の
工事でありまして、この
工事に
使用しますなま
コンクリートにつきまして、
工事費を
積算するに当りまして諸
経費といたしまして、一五%から二〇%を見込んでありますが、なま
コンクリートの取引の
実態等から見まして、諸
経費は七%ぐらいが適当であると考えられまして、これによって
積算いたしますれば約七百四十万円が節約できたものであります。なおなま
コンクリートにつきましては
業者持ちとしないで、
国鉄の
支給扱いにする
方法がとられればなお一そう有利であると考えられるのであります。
二一五一号は
大宮変電区油入
遮断器修繕工事外二件の
工事でありますが、その
工事の内容であります套管の
価格を、一
業者の見積りを
基礎として
予定価格を
積算せられましたために、他の
業者その他について
調査せられればなお相当有利に
契約予定価格を
積算し
契約ができたと思われるものでありまして、これによりますれば約百六十万円は高価であると考えられるのであります。
次は
工事の施行に当り
契約処置が適切でなかったため不
経済となっておるものが二件あります。まず
最初は二一五二号の
軌条用タイプレート改造工事でありますが、これを
請負に出されました
相手方はみずから
改造工事を行う施設がなく、全部下請に出しておられる
状況でございますが、これを直接
下請業者と
契約する配意をとられたならば、約百三十万円が節約し得たものと考えるのであります。
次は二一五三号の
電動車五十八両の
更新修繕工事の
請負についてでありますが、この
工事について
主要部品を
業者持ちとして
工事費を
積算しておられるようでありますが、この
主要部品については
部内工場において行われる同種の
修繕工事あるいは車両の
新製工事につきましては、
資材局で一括調達して支給、あるいは
国鉄内の工場で使う扱いがとられておるのでありますから、これにつきましても資材を
購入して
支給扱いとせられましたならば、約千百万円が節約し得たものと考えるのであります。
次は
電車線路支持物の
基礎工事が
設計と相違しておるものでありまして、一二五四号でございます。これは
大阪電気工事事務所における米原駅
構内電車線路支持物新設その
二王車外十八件の
工事でありますが、この
工事の
基礎コンクリートその他が
設計と異なる形ででき上っておるものでありまして、約四百九十万円が
設計に比べまして
出来高不足となっておるのであります。
次は
工事用交付残材の
回収不足になっておるものでありまして、二一五五、二二五六号の二件であります。
岐阜工事事務所と
東京工事事務所において、
工事用に
業者に交付された古軌条の
残材回収が不足となっておる
事態でありまして、このような
事態が発生いたしましたのは、
契約上残材を回収することになっておりますのに、
材料交付の際
残量発生見込み数量をあらかじめ算定しなかったり、あるいは仕事が完成した際
請負人が
返納数量を持ってきた場合にそのまま受け入れておられるためであるのであります。
次は物件でありますが、
予定価格の
積算が過大となったため
購入価格が高価となっておるものでございます。
まず
最初は二二五七号であります。これは貨車六百両を
購入せられておるのでありますが、
支給材料及び
請負人持ち
鉄鋼部品を除いた鋼材の
所要材料につきまして、大体
製品歩どまりが六八%ということで
予定価格を
積算されておるのでありますが、
部内工場におきます
歩どまりはそれより相当上回っておるのでありまして、
歩どまりについてなお考慮が払われましたならば、二千万円程度が
積算を少くすることができたという
事態であります。
二一五八号は
車両用パッドの
購入でありますが、これに
使用します牛毛の
価格が
積算上過大であったり、あるいは
加工費が過大であったため約五百五十万円が高価になっておるものであります。
次は二一五九号でありますが、
寝台用毛布カバーを
購入されておるのでありますが、
毛布の寸法からいたしますと、布地は四十二インチ幅で十分でありますのに、五十四インチ幅として布地を
積算されましたため、約五百六十万円が不
経済になっておるのであります。
二一六〇号は腕木の
購入でありますが、腕木の
購入に当りまして
原木価格を同価に見積ったりあるいは
歩どまりを多く見積られたため、約三百十万円が高価になっておるものであります。
二一六一号は
炭酸紙の
購入でありますが、これは
業者の販売の
状況その他の
資材部の
購入状況を考慮して
購入されたならば、約八十八万円が節約できたものであります。
次は
購入処置が適切でなかったため不
経済となっておるものでありまして、二一六二号は
まくら木の
購入についてであります。三十年度中
並まくら木一種、二種、三種、合計四百十三万余本を二十一億余万円で
購入されておるのでありますが、
まくら木の
購入につきましては二十九年度
横布報告に驚いて
購入の
方法等につきまして改善を促したところでありますが、その後
検査院におきまして
実態を
調査しました結果、
納入業者のうちには
契約だけをいたしまして同
業者に代納させたり、
契約全量を下請させ
中間手数料を得ている者などが少くなく、おもな納地もまた
防腐工場及び
用品庫等としておられるのでありますが、その他検収に伴い発生する三十万本ばかりの
排却品に対する運賃、諸
経費も要することとなっておるような
状況であります。従いまして、
まくら木の
購入につきましては、努めて
生産業者と直接
契約し、納地を
生産地主要発駅といたしますれば、
経費の節減が相当できるのではないかというふうに考えるのであります。
次は、二一六三号であります。これは
水石けんの一種であります
タマゴ園シャンプーを
銘柄指定と同様な
方法で
購入しておられるのでありますが、他の
地方資材部と同じように
粉せっけんを
購入せられましたならば、
価格の点におきましても約二百四十万円が節約できたものと考えるのであります。
次は、二二八四号の
亜鉛メッキ鋼より線の
購入でありますが、この
購入せられました現品につきまして私の方で
品質調査をいたしましたところ、実際入っておりますのは
通常鉄線と称しておられるものでありまして、その
価格も相当安いものでありまして、現物から見ますれば、四百五十五万余円の
購入価格に対しまして七十万円ぐらいが現物は安いものとなっておるのであります。このような結果になりましたのは、規格のきめ方が必ずしも適切でなかったために、かような
事態になったものであります。
次は、二一六五号であります。
毛布を千四百余枚
購入されておりますが、その単価は千三百五十八円から千三百七十三円となっております。しかし、現品を
調査しますと、製品に
使用された
紡毛糸はほとんど反毛だけで、相当品質が劣っておりまして、大体一枚当り千五十円程度のものでありまして現物から見ますと、総額において四十万円ぐらい安いものとなっております。これは
購入せられる場合に、品物に影響のあります
紡毛糸の質について指定をしないで、
風合模様見本通りというようなあいまいなきめ方がしてあるために、かような
事態になったと思うのであります、
次は二一六六号の冷蔵庫の製作に当り、
交付材料が過大であったために不
経済となったものであります。
冷蔵車の製作に当りまして、
交付材料として
ステンレス鋼板を支給しておられるのでありますが、鋼板の
板取り、溶接につきましては、特に指示されておられないのでありますから、その
板取りにつきましては有利な
方法で
板取りをする
計算で
交付材料を決定されるのが適当であると思うのでありますが、私の方でその
板取りを
計算いたしました結果、
ステンレス鋼は相当少くて済むという結果になったわけであります。それによりますと、約五百四十万円の
材料が節約できる
計算になっております。
次は、利用可能な
手小荷物切符を略冊処理したものでありまして、これが利用については、
国鉄当局においても相当考えられたものでありますが、相当残っておったものをほとんど全部廃冊されたため、不
経済になったものであります。
次は、
構内営業料及び
土地建物使用料の決定の問題でありますが、
東京外四
鉄道監理局で、三十年度の
土地建物の
使用料及び
構内営業料として、五億八千余万円を調定しておられますが、うち四百三十一件、一億四千五百余万円については、
決定処置が適切でなかったため、約二千八百万円余りが低額となっております。この
使用料につきましては、二十九年度
料金の改訂をいたしまして、その実施に当り、従来の
料金に比べ一定額を越えるものにつきましては、三十一年度に
適正料金になるように漸増することといたしまして、二十九年度
料金を定めましたが、三十年度になりましてさらに前年度に比べ大幅の値上げとなるもの、負担の容易でないもの、
局所長がやむを得ないと認めましたものにつきましては、一定の条件のもとに二十九年度の
料金に据え置く
措置をとられたためかような
事態になっておるものでありまして、この据え置く
措置をとられたものの中には、
負担能力の十分あると認められる
相手方もあるような
状況でございます。なお、
鉄道会館に
使用させた
土地建物の
使用料の問題でありますが、これにつきましては、
使用料の
基礎となります駅の特殊の
収益力を含めた地価を六十万円と評定され、それから
土地の
使用承認時から
料金改訂時までの
値上り分の半分を
相手方に帰属させ、
評価額から差し引くというような
措置がとられておるのでありますが、六十万円の
評価も必ずしも適正とも考えられませんし、また
値上り部分を
相手方に帰属させるという
措置も、必ずしも全般的にとられている
措置ではないように思われるわけであります。なお、名店街の部分につきましては、
一般高架下と同じように割引がしてありますが、実際の
状況等から見て、必ずしも妥当とは考えられぬわけであります。それから現在六階で完成しておりますのを、将来十二階になるということで十二階を
基礎として
料金を決定されておりますが、これも必ずしも妥当とは考えられませんので、
鉄道会館に
使用させております
土地建物の
使用料は、その他の民衆駅の
使用料の基準となるものでありますから、十分の検討を望みたいのであります。
次は、
土地の
売り渡し価格が低廉と認められるものであります。一二六九号は、
広島鉄道監理局で、鉄道弘済会に払い下げられた
土地の問題でありますが、
借地権相当額として三割を控除して代金を決定されておりますが、他の
事例等から見て、必ずしも妥当な
措置とは考えられません。
次は、二一七〇号の
東京鉄道監理局で、
鉄鋼ビルディングに払い下げられた
土地の問題であります。この
土地は帯状の凹地であるということで相当減額されておるのでありますが、この
土地は
監理局の敷地と一体をなしておるものであります。また
買受人はその
土地を
購入して、
買受人の
土地と一体として利用するという目的でありますので、必ずしもかような減額をすることは適当ではないと考えられるのであります。凹地でありますので、その埋め立てに要する
経理を認めて、
一般の
評価によったといたしますれば、なお約四百六十万円は有利に売却し得たものと考えるのであります。
次は、二一七一号の
大阪鉄道監理局が
京阪神急行電鉄株式会社に払い下げられた
土地の問題でありますが、これも帯状の不
整形地ということで、
一般の地価よりも二〇%減額して売却されておるのであり談ずが、この
土地は
買受人が
買受人の
土地と一体として
劇場建設のために
購入しておるものでありまして、特に減額する必要はなかったと考えられるものであります。減額せずに売却いたしましたならば、なお三百七十万円は右利に売却し得たものと考えます。
次は二一七二号の
車両使用料が低廉と認められるものであります。各
鉄道監理局で、三十年度中貨車の
使用料として一億七百余万円を徴収しておられますが、二十九年度以降財産の再
調達見込み価額を
基礎として、所定の方式により
使用料を徴収する扱いが定められ、
建物等についてはこの
方法によっておられるのでありますが、貨車についても、これによれば約二千八百万円が多く徴収し得たものと考えるのでございます。
次は
電車清掃請負代金が高価と認められるものであります。
東京鉄道監理局で、
鉄道整備株式会社に、電車の
清掃作業代金として四千三百余万円を払っておられるのでありますが、この作業は独占的に
前記業者に
請負わせておられるのでありますから、前年度の実績を勘案して、
請負代金を決定されるのが妥当と考えられ、これによって
料金を決定されたといたしますれば、約三百六十万円は低額となる
計算になっております。
次は二一七四号の
不正行為でございます。さらに
個別事項につきましては、ただいま申し上げましたように
相当数が多くなっておりますが、
総括記述といたしまして、資産の再
評価の点について記載してございます。
洞爺士などのような沈船を、
一般の正常なものと同様に再
評価しておられるのでありますが、必ずしも適当な
措置とは考えられません。また
土地、
建物等の管理につきまして、
鉄道用地の無断
使用されているものが相当ございます。また
使用料等の調停が相当おくれてお乙のでありますから、これらに対する対策を要望しておるわけであります。
なおその他いろいろ記載してございますが、御質問によりましてお答えしたいと思います。