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東谷会計検査院長 昭和三十
年度決算検査報告についてその
概要を御
説明申し上げます。
昭和三十
年度歳入歳出決算は、三十一年十月三十一日
内閣から送付を受け、その
検査を了しまして、
昭和三十
年度決算検査報告とともに昨年の十二月七日
内閣に回付いたしました。
昭和三十
年度の
一般会計及び各
特別会計の
決算額は、先ほど
大蔵政務次官から御
説明のありました
通りでございまして、
一般会計及び各
特別会計の
決算額を総計いたしますと、
歳入三兆六十二億余万円、
歳出二兆七千四百四十七億余万円となりますが、各
会計間の
重複額及び前
年度剰余金受け入れなどを控除して、
歳入歳出の純
計額を概算いたしますと、
歳入二兆二千二百五十五億円、
歳出二兆千六百五十九億円となりまして、前
年度に比べますと、
歳入において二千百七億円、
歳出において千六百十二億円の
増加となっております。
なお、
国税収納金整理資金の
受け払い額は、
収納済み額八千百六十二億余万円、
支払い命令済み額と
歳入組み入れ額の
合計八千百六十三億余万円でございます。
政府関係機関の
昭和三十
年度決算額の総計は、
収入八千七百七十九億余万円、
支出七千四百七十八億余万円でありまして、前
年度に比べますと、
収入において三百三十二億余万円、
支出において三百五十七億余万円の
増加となっております。
ただいま申し上げました国の
会計及び
政府関係機関の
会計の
決算額のうち、
会計検査院においてまだ
検査が済んでいないものは総計百十七億六千六百余万円でありまして、そのおもなものは、総理府の
防衛庁施設費で七十億三千七百余万円、
日本国有鉄道の修繕費で十二億二千七百余万円、農林省の開拓事業費で九億六千五百余万円などでございます。
会計検査の結果、
経理上不当と認めた事項及び是正させた事項として、
検査報告に掲記しました件数は
合計二千百八十五件に上っております。
三十
年度の
不当事項及び是正させた事項の件数は、二十九
年度に比べますと、保険事業の
運営が適切を欠いたものなどで
増加している反面、補助金、租税などで
減少を示しておりますため、結局二十九
年度の二千二百四十六件よりやや
減少しておるのでございます。
今、この二千百八十五件について不当
経理の態様別の
金額を概計いたしますと、不正行為による被害
金額が一億九千七百万円、法令または
予算に違反して
経理したものが六千四百万円、検収不良などのため過渡しとなっているものが五千三百万円、保険金の支払いが適切を欠いたものまたは保険料の徴収不足を是正させたものが二十三億六千百万円、補助金で交付額が適正を欠いているため返納または減額を要するものなどが七億二千六百万円、災害復旧事業に対する今期
検査の結果、主務省において査定額を減額し、ひいて補助金の減額を要するものが五億千八百万円、租税
収入などで徴収
決定が漏れていたり、その
決定額が正当額をこえていたものが五億三百万円、
工事請負代金、物件購入代金などが高価に過ぎたり、または物件売り渡し代金などが低価に過ぎたと認めたものの
差額分が四億千万円、不適格品または不急
不用の物件の購入など、
経費が効率的に使用されていないで、いわゆる死金を使ったと認めたものが十五億六千万円、その他が二億千七百万円、総額六十六億千三百万円に上っておりまして二十九
年度の七十三億四千四百万円に比べますと、七億三千百万円の
減少となっております。しかしながら、このように不当な
経理の多いことは、はなはだ遺憾にたえないところでございます。
会計検査院といたしましては、不当
経理の発生する根源をふさぐことに
努力を傾けている次第であります。
検査の結果の概況は、租税、
予算経理、
工事、物件、役務、保険、補助金、不正行為の各項目に分けて
検査報告に記述してありますが、これらのうち、
会計経理を適正に
執行するについて、特に留意を要する事態として、
予算の
効率的使用について、また保険及び補助金に関してその
概要を
説明いたします。
まず
予算の
効率的使用について
説明いたします。
経費が効率的に使用されないため不経済な結果となったと認められる事例は、
工事の
施行や物件の調達などにつきまして
防衛庁、
日本国有鉄道を初め多数見受けられますが、このような事例が毎年繰り返されることはまことに遺憾にたえないのであります。
工事についてみますと、現地の状況を十分調査しないで計画、
設計したため、
工事の効果が十分上っていなかったり、事業効果の少いものに多額の
経費を投入していたり、既設のものの利用を考慮しないで新設
工事を
施行し、不経済な結果を来たしているものなどがあります。また物件についてみますと、具体的な使用計画や、実際の必要度または保有物件の活用を十分検討しないで調達したため、使用されないまま保管されている結果を来たしたり、納地の指定が適切でなかったため、不経済な結果を来たしているものなどがございます。また契約価格の基準となる
予定価格の作成に当りまして
工事や物件の実態把握や市場価格の調査が不十分なため積算が過大となり、ひいて契約価額が適正な額をこえていたり、または検収が形式に流れて適確に行われていないため、契約相手方が契約に定められた
通り債務を履行していないのに、そのまま見のがされている事例なども相当多数見受けられるのでございます。
次に保険について
説明いたします。国が
特別会計を設けて経営する各保険事業におきまして、保険金の支払いまたは保険料の徴収について遺憾な事例が、農林省、厚生省、労働省などの所管するものについて多数見受けられたのでございます。すなわち農業共済保険事業において、農業共済組合の共済掛金の徴収、組合員に対する共済金の支払い及び保険金の基礎となる被害の評価など事業の
運営に関して、はなはだしく適切を欠いているものが多数に上っており、また森林火災保険、健康保険、労働者災害補償保険、失業保険などの保険事業において、架空の被害や受給資格のないものなど保険料支払いの対象としてはならないものに対して保険金を支払ったり、または保険料算定の基礎となる標準報酬月額もしくは賃金総額の調査が十分でなかったなどのため、保険料の徴収不足となっているものなどがございます。
最後に補助金について
説明いたします。補助金のうち、公共事業
関係のものの
経理につきましては、その
経理が当を得ないものとして、
会計検査院において毎年多数の事例を
指摘してきたところでありますが、三十
年度の
検査の結果によりますと、災害を受けた事実がないのに災害復旧事業として補助を申請したり、二重に査定を受けたりして補助金の交付を受けたようなはなはだしく不当なものはほとんど見受けられず、相当改善の跡が認められたのであります。しかしながらなお事業主体において正当な自己負担をしていないため、ひいて
工事の
施行が不十分と認められるものが多数に上っている状況であり、また事業主体が補助の対象となる事業費を過大に積算して査定を受けたり、
設計通りの
工事を
施行しなかったり、または災害に便乗して改良
工事を
施行しているものなどの事例が依然として少くないのは遺憾な次第でございます。
また災害復旧事業の補助金につきましては、三十
年度も農林、建設、運輸各省所管の分について、
工事の完成前に早期
検査を行いましたところ、前
年度に比べ改善されてきてはいますが、採択された
工事のうちには、前年と同様に、
関係各省間などで二重に査定しているもの、災害に便乗して改良
工事を
施行しようとしているもの、現地の確認が不十分なため設
計額を過大に見込んでいるものなどについて多数
指摘し、
工事費を減額させることとなったのであります。
さらに公共事業
関係以外の補助金は、その種目が非常に多いのでありますが、これらの補助金のうちには、市町村などが補助金を補助の目的に沿わない方法で配分したり、補助の目的以外に使用したり、過大な申請に基いて交付された補助金がそのままとなっているなど不当な事例が多く見受けられます。また農業協同組合などが、農林漁業災害融
資金に対する利子補給金の交付を受ける金融機関から、低利に融資を受けながら、これを農林漁業者に貸し付けないで事業
資金などに使用していたり、災害に
関係のない旧債権の回収に充てているなどの事例も少くありません。
なお、災害復旧などの補助事業
検査の結果、
会計検査院が不当として
指摘し、二十八、二十九両
年度の
検査報告に掲記しましたものについて事業主体が行う是正処置の状況を
検査しましたところ、補助金の返還または
工事の手直しもしくは補強を履行していなかったものが少くなかった状況でありまして、この点についても十分な配意を必要とするものであります。
以上をもちまして
昭和三十
年度決算検査報告についての
概要の
説明を終りますが、
会計検査院といたしましては、
会計経理に関し、従来から、
関係各省に対し強くその改善を求めてきたところでございます。これに対し相当に改善の跡が見受けられるのでありまするが、なおただいま御
説明いたしましたように、
不当事項が多数に上っている状況でございまして、はなはだ遺憾にたえないのであります。主務省及び
関係者におきましては、今後さらに一そうの
努力が望まれるところでございます。