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1957-07-31 第26回国会 衆議院 外務委員会 第26号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十二年七月三十一日(水曜日)    午前十時二十一分開議  出席委員    委員長 野田 武夫君    理事 菊池 義郎君 理事 須磨彌吉郎君    理事 高岡 大輔君 理事 森下 國雄君    理事 山本 利壽君 理事 松本 七郎君       井出一太郎君    伊東 隆治君       池田正之輔君    植原悦二郎君       加藤 精三君    北澤 直吉君       園田  直君    並木 芳雄君       松本 俊一君    山下 春江君       大西 正道君    勝間田清一君       田中織之進君    田中 稔男君       戸叶 里子君    西尾 末廣君       福田 昌子君    森島 守人君  出席国務大臣         内閣総理大臣  岸  信介君         法 務 大 臣 唐澤 俊樹君         外 務 大 臣 藤山愛一郎君  委員外出席者         法制局長官   林  修三君         法務事務官         (入国管理官) 伊關佑二郎君         外務政務次官  松本 瀧藏君         外務事務官         (アジア局長) 板垣  修君         外務事務官         (アメリカ局         長)      千葉  皓君         外務事務官         (欧亜局長)  金山 政英君         外務事務官         (経済局長)  牛場 信彦君         外務事務官         (条約局長)  高橋 通敏君         外務事務官         (国際協力局         長)      宮崎  章君         外務事務官         (情報文化局         長)      近藤 晋一君         専  門  員 佐藤 敏人君     ――――――――――――― 五月十七日  委員前尾繁三郎辞任につき、その補欠として  淺香忠雄君が議長指名委員に選任された。 同月十八日  委員淺香忠雄君及び岡田春夫辞任につき、そ  の補欠として前尾繁三郎君及び八百板正君が議  長の指名委員に選任された。 七月十一日  委員人西正道辞任につき、その補欠として横  路節雄君が議長指名委員に選任された。 同日  委員横路節雄辞任につき、その補欠として大  西正道君が議長指名委員に選任された。 同月二十三日  委員愛知揆一君前尾繁三郎君及び松本瀧蔵君  辞任につき、その補欠として北澤直吉君、井出  一太郎君及び水川三喜男君が議長指名委員  に選任された。 同月三十一日  委員松田竹千代君、水田三喜男君及び八百板正  君辞任につき、その補欠として山下春江君、加  藤精三君及び勝間田清一君が議長指名委員  に選任された。 同日  委員加藤精三君及び山下春江辞任につき、そ  の補欠として水田三喜男君及び松田竹千代君が  議長指名委員に選任された。     ――――――――――――― 七月十二日  次の委員会開会要求書が提出された。    委員会開会要求書  国際情勢中国見本市日中貿易第四次協定、  渡航制限東南アジア問題、対米関係問題  其の他について、説明を聴取し、質疑をする必  要があるので直ちに委員会を開会致ざれたく、  衆議院規則第六十七条第二項の規定により方記  連名にて要求します。   昭和三十二年七月十二日    外務委員長野田武夫殿            外務委員 穂積 七郎                 松本 七郎                 大西 正道                 田中織之進                 田中 稔男                 戸叶 里子                 西尾 末廣                 福田 昌子                 森島 守人                 八百板 正     ――――――――――――― 五月十八日  一、国際情勢に関する件  二、国交回復に関する作  三、国際経済に関する件  四、賠償に関する件 の閉会中審査を本委員会に付託され た。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  国際情勢等に関する件     ―――――――――――――
  2. 野田武夫

    野田委員長 これより会議を開きます。  本日は国際情勢等に関し、特に最近の外交関係問題について、岸内閣総理大臣及び藤山外務大臣に対し質疑を行うことといたします。なお時間が限られておりますので、与野党の持ち時間をおのおの一時間と定めておりますので、さよう御了承を願います。  この際、藤山外務大臣及び松本外務政務次官より発言を求められております。順次これを許します。藤山外務大臣
  3. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 今回はからずも外務大臣に就任することになりました。私といたしましては、経験少い仕事でありますが、全力をあげて仕事をいたして参りたいと考えております。どうぞ皆さんよろしくお願いいたします。特に私の前の経歴から申しまして、議会の規則、議事の運営等につきましては全く存じておりませんので、従ってそれらに習熟いたしますまでは相当なあれがあるかと存じますが、その点は一つお許しを願いたいと存じます。(拍手
  4. 野田武夫

  5. 松本瀧藏

    松本説明員 今回政務次官に就任いたしました。委員会の各位の御鞭撻と御協力によりまして、大過なく任務が果せますように、よろしくお願い申し上げます。(拍手
  6. 野田武夫

    野田委員長 これより質疑を許します。松本七郎君。
  7. 松本七郎

    松本(七)委員 先般の総理東南アジア諸国及びアメリカ合衆国訪問につきましては、総理大臣がみずから身を挺して事に当るというその意気と努力には、私ども衷心から敬意を表したいと思うのでございます。ことに酷熱の最中に東南アジア諸国を回られて、アジア友邦の元首と親しく意見を交換されたその労苦に対しまして、あらためてここに感謝をいたしたいと思います。しかしながら、その会談内容なり、あるいは訪問されました成果につきましては、私どもとしてどうしてもふに落ちない点、あるいは日本国にとって相当な不利益あるいは危険をもたらすのではないかと憂慮されるような点もあるのでございます。従いましてこれらの疑問を今日十分ただしてみたいと思うのでございます。時間も非常に制約されておりますから、要点だけかいつまんで御質問したいと思いますから、簡潔にしかも丁寧な御答弁をお願いいたします。  日本国民といたしまして、これまで非常に強く要望いたしておりましたのは、岸総理自身も渡米前に言明されておりましたように、安全保障条約あるいは行政協定改訂問題であっただろうと思うのです。ところが新聞紙上その他を通じての岸さんの談話、あるいは各国を回られたときの簡単な共同コミュニケ程度では、まだその成果がどういうものであったかということがはっきりわからない程度でございますので、私どもはその会談内容を少しお伺いしたいと思うのですが、承わるところによりますと、これらの問題については、アイク、ダレスとの会談の一番最後の日にやっと持ち出された、しかも核兵器禁止要求は全然出さなかった、また沖縄問題についても全然要求を出されなかったということが報道されているのでありますが、その間の経過をお知らせ願いたいと思います。
  8. 野田武夫

    野田委員長 暑い折でございますから、政府の方も上着をおとり願って御答弁願いたいと思います。
  9. 岸信介

    岸国務大臣 アメリカにおきまして、アイゼンハワー大統領及びダレス国務長官等会談をいたしました内外についての御質問でございますが、私は最初アイゼンハワー大統領と約一時間余にわたりまして第一回の会談をいたした。その際にかねて私からアメリカ側に示してある問題に関しまして私から意見を述べたのであります。今お話しになりました日米安全保障に関する問題は、最後の日になって初めて話題に出されたというよらな御質問でありますけれども、それは事実に反しておりまして、誠実に私がアイゼンハワー大統領との会談の際におきまして、その問題につきましてもはっきり日本側考え方を述べたのでございます。なお核兵器についての話し合いが全然なかったではないかという御質問でございますが、この点に関しましても、原水爆実験禁止問題は、日本が強く一貫してこの実験をやっておる国に反省を求めるとともに、世界の世論を喚起し、人道的立揚からこれを禁止しなければならぬという一貫した強い主張を私もずっと国会を通じていたしておりますし、また東南アジアあるいはアメリカ訪問に際しましても、その見解を一貫して述べたのでございます。しこうしてこの問題に関しましては、アメリカといたしましても、日本側主張に対しては十分理解できる、しかし現在の世界の大勢から見て、これの実験禁止するだけでは実は十分目的を達しない、すなわち実験禁止するけれども、これを製造して貯蔵するということになっておると、いざという場合に非常に危険がある、そのためやはり製造禁止を含めて実験禁止問題を実現することが実際的に考えて望ましい、すでにアメリカにおいてもそういう考えでロンドンの軍縮委員会にこれを提案いたしておるということが述べられたのであります。なお日本に対してのこの兵力配備やその他これの使用等に関して、一方的にでき得るということに条約上の文句においてはなっておりますけれども、この問題に関して、両国政府間において合同委員会を作って、日本内地における配備等問題も含めて、安保条約上から生起するところの種々の問題を協議し、話し合いによって解決していくというための委員会を設けるということになっておりまして、従来国民のうちに心配されておった核兵器日本が知らないうちに持ち込まれはしないかという危険は、将来においてなくなっておるという状態になっておるのであります。今御質問がございましたが、日米会談における御質問の諸点に関する実際の話し合い状況は、今私からお答えを申し上げた通りでございます。
  10. 松本七郎

    松本(七)委員 今のお話では、アメリカ実験禁止だけではだめなんであって、やはり製造使用禁止までいかなければならぬ。一方で実験問題ではそういうことを言いながら、今度はしからば使用禁止製造禁止、つまり全面的な核兵器禁止までやるかということになると、現在国際会議ではしばしばそういう問題が出ておるにもかかわらず、アメリカはまだ全面的な禁止は拒否しておるのが事実でございます。ですから、この実験禁止問題で、実験禁止をやるためには全面禁止が伴わなければだめだというのは、これは一つの逃げ口上としかわれわれは受け取っておならいのです。  それからもう一つ日米委員会お話も出ましたけれども、これにしてもダレス長官は、この委員会においては安全保障条約改訂問題等は取り扱わない、こういう言明をいたしております。そこでまず第一の原子兵器問題は、アメリカ外交政策の基本問題に触れる問題でございますから、それはこれから引き続いて御質問をいたしますけれども最初に、日米安委員会安全保障条約行政協定改訂問題を取り上げられる御意向かどうか、この点を伺っておきたい。
  11. 岸信介

    岸国務大臣 安保条約につきましては、かねて私が申し上げたように、安保条約が締結された当時と今日においては非常に事情が変っておる、従って、日本国民感情としてはこれが改訂を要望しておるという意見を私は率直に述べたのでありますが、アメリカ側としては、今日これが制定当時と変ったこともよくわかっておる、また安保条約が恒久的なものでないという点は自分たちも了承する、しかし直ちに改訂するということについては、アメリカ内部における関係も非常にあっていろいろ研究を要する点がある。しかし、現実に安保条約から生起する各種の問題について、これを両国において率直に話し合って、その運営面において両国が満足するような解決を得る点も少くないと思う。従って、両国政府間にハイレベル委員会を作って、ここで話し合って、これらの運営の面において解決できるものはそれを解決していこうじゃないか、しかしその委員会においてさらにどうしても改訂をしなければいかぬという議論が出て、それが委員会において一致した議論であれば、これを両国政府に提案して、そうして改訂問題を進めるということも適当じゃないか。ダレス長官のあの新聞記者会見において述べたことが、さらに一部報道されておりますが、ダレス長官新聞記者会見において述べたことの全部を通読しまするというと、決して一切この改訂問題にこの委員会は触れてならぬということを言ているわけではないのであります。しかし、委員会自身改訂問題を直ちに決定するという意味ではなしに、運営の面を取り扱って、そして両国が満足するような解決をすることがこの委員会の第一の目的である、そして改訂を要するというふうな意見が出れば、これを両国政府に提案して、両国政府においてこれを取り扱っていく、委員会がこれを改訂するとかいうことをきめるわけではない、こういうことを言っているわけでありまして、改訂問題のことを論議してならぬとか、それを取り上げることはならぬとかいう性質のものではないと思います。
  12. 松本七郎

    松本(七)委員 今の御答弁ですと、この日米委員会なるものが、一番日本国民の切実に要望しておるこれらの問題を直接に取り扱って、そこで解決するのではなしに、もし問題として取り上げるべきだという結論が出たらそれをまた両国政府に戻して、そこで検討するということになるわけでございますから、結局大きな問題解決は無期限に遷延されるというおそれが多分にあると思うのです。そういうような一番緊急を要する諸問題について、委員会を設けることによってその解決を延ばそうという意図が私は明らかに出てきておると見ましたので、今の点を御質問したわけであります。  先ほど申された核兵器持ち込み問題でも、総理は、これは委員会で話しをするんだ、だから無断で持ち込まれることはないから大丈夫だというようなことを言われておるのですが、ここに実は非常に大きな問題があると思います。第一、今のアメリカ対外政策の基本を正しく把握することが今日ほど緊急を要する大事なときはないと私どもは思うのですが、その対外政策のうちの注目すべき要素が最近出てきていると思います。それはいわゆる第二のラドフォード戦略といわれているものでございまして、つまり、誘導兵器中心とする戦略、これは一九五七年の会計年度で実施される予定になっているわけですが、この原子兵器中心にした陸海空軍の編成がえをやりまして、これに伴って対外的にはこの原子部隊世界各国の主要な場所に配置するということが、ラドフォードの新しい戦略としてはっきり打ち出されている。その目標は、御承知のように日本沖縄、それからヨーロッパ各国、特に西独、それからアリューシャン、スペイン、それから地中海、それに韓国、台湾は御承知のような準備体制ができているわけでございます。そういうふうなときに見のがせないのは、核兵器アメリカがプールして、そうしてこれをいざ戦争という場合には各国に供与するという方式をとることによって、こういう方式を通して各国軍隊を従属させようという点が私どもにははっきり読みとれるのでございます。こういった点を考えてみますと、日本におります米軍は、陸軍は撤退するという予定になっているようでございますけれども、撤退して日本軍がこれにかわったからといって、あなたのいわゆる自主性を取り戻したことにはならないと思うしこういう新しいアメリカ戦略体制に従属する限りは、幾ら日本が独自の陸軍を持ってアメリカ軍にかわってみたところで、これは自主性を取り戻したとは言えないと私は思うのですいそこで、安全保障条約改訂問題、あるいは行政協定改訂問題でいつでも問題になりますのは、基地の貸与日本の場合は無制限であるとか、あるいは期限がないとか、そういった不平等性を平等に、改めなければならぬということももちろん大事な点でございますけれども、これからの大事な点は、今申しましたような米国戦略に従属して、日本自衛隊核兵器使用に耐えるよろな軍隊に編成しようというこの米国要求を、どのようにして日本は阻止するかということが、一番大切な安保条約行政協定問題の核心になると私ども考えておるのでございます。そういう点からいたしますと、あなたは、向うに参られましてからの会談内容新聞記者との談話等で、持ち込むことについては話し合っておらないということを言っておられるのですが、なぜ積極的に、こういったアメリカ原子兵器持ち込みを絶対に拒否するのだという意思表示、それから日本自身核兵器は絶対に保有しないのだ、いかなる形でも保有しないのだという意思表示をなさらなかったか、この前、植村甲午郎氏から伝えられたアメリカ構想によりますと、新鋭兵器日本は購入する、円貨で購入することができるというような構想が出ているようでございますけれども、これも当然原子兵器は今日まっているということでございます。そういった購入だろうが貸与だろうが、いかなる形式でも日本核兵器を保有しないのだという意思表示を、なぜ積極的に日米会談においてなされなかったかということをお伺いいたしたい。
  13. 岸信介

    岸国務大臣 共同声明にもはっきり書いてあるように、日本内地におけるアメリカ軍配備及び使用に関しては、この合同委員会において取り扱っていくということが明瞭にされておりますように、従来のこの安保条約条約面に現われておる字句解釈だけから言うと、無制限であり全然日本側意思をいれずして一方的にすべてのことがやられるようなことになっておるわけであります。しかし新たに条約改訂するということについてはアメリカ側におきましても、今日アメリカ内部の国内的な関係からいって、これをすぐ実現することはむずかしい状況にあると思います。しかし日本国民考えを十分に尊重し、日本国民協力を得るにあらざれば、ほんとう日本安全保障というものはできない承のである。この点は自分たちとしても十分に理解し、了解できることであるから、従ってハイレベルのこの委員会においてそれらの問題を十分に話し合って、そうしてこの配備等問題も決定するということが、今度の会談の結果共同声明にも明らかにされておるのであります。従いましてこの核兵器その他装備問題につきましても、要するに日本内地における原子力部隊の配置というようなことが一部で心配されておるように、全然日本が知らないうちにこれがやられるというような危険は一切なくなったものであるということが明らかになったわけであります。しこうして今お話核兵器について日本がこれを絶対に持たぬ、あるいは日本に持ち込むことは絶対にさせないということをなぜ話し合いをしたかったかというお話でありますが、この問題については日本日本自衛隊をいかなる形において装備するか、どういう理論においてこれを持つかというようなことは、一切日本が独自の立場で考えるべきであり、また考えていかなければならぬ問題であると思います。そうして今回のアメリカとの会談におきましても、その点はきわめて明瞭になりまして、アメリカ側としても、一切の日本防衛問題日本自身問題である、日本自身がこれを決定するという考えに対しては、われわれは全面的にそうでなければならぬものであるとかねて思っておるけれども、特にその点ははっきりさせて、従って日本に対してアメリカ側からいろいろなことを――装備やあるいは兵力量等について、防衛問題についてわれわれの方から要求するとかあるいはどうしろということは一切言わない、日本の責任において日本考えられる、そうして安保条約に基いて両国が共同して安全保障体制の十分な効果を上げていくということにしようという話し合いになっておりまして、今御心配になるようなこともまた御質問のあるようなことも、私の方からそういう機会に話すことは適当でない、日本日本独自で考えてよろしい、こう考えておるわけであります。
  14. 松本七郎

    松本(七)委員 独自の考えで対処すると言われるのですが、しからば独自な態度として絶対に核兵器日本としては保有されない御決意ですか。
  15. 岸信介

    岸国務大臣 すでにその問題につきましては、私が過般の国会においても明らかにいたしております通り、私は現在のところ日本自衛隊核兵器装備する意思は持っておらないということを明瞭に申し上げるわけであります。
  16. 松本七郎

    松本(七)委員 そういうはっきりした意思がきまっておる、しかも閣議でもってすでに持ち込みは許さないというような決定をなされておる、国民もこれを要望しておる、そういうときになぜ、それほどはっきりした独自の態度がきまっておるにかかおらず、日米安全保障に関する委員会でこの問題はやはり話すのだという結論が出て参りますか。それほどはっきりしておるならば、日米の間で話をする余地はないわけです。だから日米委員会でそういう問題は除外して、このことは絶対に日本としては保有しないぞという意思表示を前提としてアメリカ当局にはっきりさせておかなければ、今日のようなアメリカの新しい戦略体制世界的に広がっておるときにはきわめて危険である、こういう観点から政府のはっきりした意思表示を要望しておるわけです。この点はいかがですか。
  17. 岸信介

    岸国務大臣 この問題についてはアメリカ日本に持ち込むということも申しておりませんし、また日本がそれで装備しなければいかぬということも言っておらないのでありまして、そういう意味において、この会談においては決して何らその問題には触れなかったわけであります。しかし私は今申し上げるように、はっきり今度の委員会においてこれが論議され、取り扱われるときは、あくまでもこういう問題日本意思によって決定されなければならない、それがされるということが確保されておる以上は、そういうことに関して取り越し苦労をする必要はない問題である、かように思っておりま
  18. 松本七郎

    松本(七)委員 これは全くの独善的な考え方であって、今の世界情勢から言えばそういう態度だから、これは東南アジア諸国からもいよいよ警戒されるのです。ほんとう日本政府核兵器は保持しないのだという決意があるならば、もっとはっきり意思表示をやるべきだ、そうして持ち込みを禁ずるような日米間の協定ぐらいでこのことをはっきり保証する、日本としては絶対に保有しない宣言を発する、そういう明確な態度を打ち出さなければ、私はアジア諸国の信頼を得ることは不可能であると思います。しかしこの問題ばかり追及しておる時間もありませんから先に進みますが、時間もないようですから少し問題をまとめて御質問をしますから、明確に御答弁を願います。  先ほどの核兵器実験問題ですが、これは総理大臣アジア諸国に行かれて、国々によって、核兵器実験禁止問題については表現が違っているのです。今度一体どれだけの決意を持って実際に具体的な手を打たれるかということに私どもは大きな関心を持っておるのですが、まず手近な問題で近く今度は第三回の原水爆禁止大会が東京で開かれるわけです。これにインドのネール首相の女婿であるガマジュア・ネール氏が参加するという話であります。そういう機会に、総理は四月十八日でしたか、参議院の外務委員会でも今度の世界大会には大いにこれを支援するというような話をされておるのですが、この大会において首相自身メッセージを送るとか、何か具体的な支持を与えるお考えがおありでしょうか。そういうことをされることは、ネールさんとのこの間の会談成果を非常に上げる結果になるのだろうと思いますが……。
  19. 岸信介

    岸国務大臣 私はこの原水爆実験禁止問題に関しては、終始一貫これが禁止に向ってあらゆる努力を今日までいたしております。将来もやっていくつもりであります。従ってその考えを同じくし、そのために有効であり適当であると考えられる場合におきましては、あらゆる機会に私のこの考えは終始一貫して述べ、またこれを推進することに努力いたすつもりでおります。
  20. 松本七郎

    松本(七)委員 それでは、インドのネール首相日本訪問することにお約束ができておるそうですが、その機会に、次期の国連総会あたりでインドやビルマと一緒になってこの実験禁止の決議でもアジア諸国を糾合して出すというようなお考えはございませんか。
  21. 岸信介

    岸国務大臣 国連における禁止問題について、これを国連を通じ、国連の力によって禁止の実現をはかるという考えにつきましては、私は従来とも日本が国連中心主義でやっていくということから考えてみて、またこの原水爆実験禁止の性質から申しまして適当である。すなわち世界の世論の興起によって、実験をしておる国々に反省をさせ、そうしてそれらの国々が共同して実験禁止するというところにいくことが非常に望ましい。しこうして国連において、どういう形においてわれわれは国連の力を用いて、そうしてこれを実現していくかということにつきましては、国連の加盟の各国の意向等も私は一分考えていく必要があると思う。かつてこの前の総会において、日本実験登録制度をノルウエー、カナダ等と一緒に提案をいたしたのでありますが、もはや今日の状況においてそういう形は適当でない。従ってそれらの問題に関しましては十分新しい情勢と、進んできておる情勢その他を考えて、最も有効な方法をとりたいと思いますが、今直ちにインドその他のアジア諸国と一緒にこういう禁止の共同提案をするかという御質問でありますが、それも一つの方法だと思いますけれども、十分諸種の事情を考えて、最も有効な方法をとることがいい、かように考えております。
  22. 松本七郎

    松本(七)委員 総理答弁を聞いておりますと、はっきりした明確な態度を打ち出さないで、それはけっこうだ、しかしこれは十分考慮する、あれも考慮するというような御答弁で、いつもいわゆるそつのない答弁の繰り返しなんです。こういう態度では、あなたは東南アジア諸国を回られておそらく身をもって感じられたと思う。それは報道によると、きわめて冷たい歓迎しか受けなかったということですが、首相自身はえらく歓迎されたつもりでおられるらしいのですが、現実はとんでもない間違いなんです。ネールさんが今度来日されるような機会に、もっとはっきりとアジア・アフリカの一員としての立場を明確に打ち出すのでなければ、私はあの東南アジア開発基金構想というようなものもふっ飛んでしまうと思います。第一東南アジア開発基金の構想というものは、何らの準備、具体的な案もお持ち合せなしに行かれたということでありますが、先ほど申しますように、アジア諸国アメリカの新しい戦略体制日本が着々と歩調を合せていこうとしている、こういう現実をはっきりつかんでおるのです。ですから日本がもう少しこれらに対する明確な態度をきめない限りは、アジア諸国ほんとうに欣然と日本と手を結ぼうというような動きは出てこないと私は思う。第一この前出された東南アジア開発基金構想は、アメリカ自身が資本を出そうとしてはおらない。以前からこれは同じことなんですけれども、今になっても資本を出そうとしてはおらない。アジア諸国その他でも、タイを除いてはほとんどこれを一笑に付するというようなことで、ほとんど相手にされていない。そういうときに、あなたは今度はアメリカから帰って来られて、何の意味があってことさらに反共声明をああいうふうに出されたのか。われわれも善隣外交を主張するのですから、どこの国ともけんかしないようにやるということは大賛成なんです。ところがせっかく日ソ旧交はできた。これからは中国との貿易をやろう、こういうことをあなたは口では言われておる。そのときにアメリカの新しい原子戦略体制というものが今着々できつつある。これに歩調を合せるような共同宣言、それから力の提携をはっきりと打ち出されて、しかもこの日本原子兵器保有その他については、明確な意思表示さえもすることができないでいる。こういう状態を見れば、アジア諸国は、岸内閣というのはちょうど反共の名によって軍自体制を築こうとした東条内閣の再現だ、こういうことを言っておる向きがあるくらいです。それですから、当然これはアジア諸国の不信を買う一方ではなかろうかと私に思います。そうしてずでに中国の周恩来首相も、岸総理の最近の動向についてはずいぶん激しい口調で不満を述べておるようでございますけれども、この大事な中国市場においては、イギリスあるいは西独は、チンコムの打破どころではないのです。ココムの制限も突破してまでどんどん商品を送り出しておるのが現実じゃございませんか。そういうときに、東南アジア開発基金の構想はもうつぶれてしまっておる。中国の貿易の方は全くおくれをとろうというような状態に追い込まれておる。一方では原子兵器体制にはっきりと対抗するような線も出せずにおって、片方ではそのために、中共はあなたの反共声明によっていよいよ日本に対する感情を悪化する。これは東南アジアに必ず影響してくると思う。ただでさえ東南アジア日本に対して警戒的な上に、これからは一そう日本に悪い感情を持ってくるのではなかろうかと私は憂うるのでございます。こうなれば結局あなたの言われる経済外交というものは行き詰まらざるを得ないと思う。従って私は、今一度打ち出されたところの経済開発構想というものを、今後どのように具体的に、ほんとうアジア諸国が受け入れるようなものに焼き直していかれるかどうかということについても、首相並びに経済通である新しい藤山外相の所信を、この際はっきりお伺いしておきたいのでございます。
  23. 岸信介

    岸国務大臣 外交の問題、国際的な日本の立場について、いろいろな見方もあり、見解もあるのであります。それでいろいろな立場から御心配になることも、私は大いにその憂国のお気持には敬意を表します。しかし東南アジア諸国にわれわれが参りまして、決して私は自面自賛の意味において私が歓迎されたとか、あるいはどうとか申し上げておるのではありませんが、日本国民に対し、これらの国々において非常な期待を持ち、そうして日本の将来の協力を求めておるという気持は、多少の考え方に差異はありますけれども、これはほとんどどの国を通じても一致しておると思う。しこうしてこれらの国々においてほんとうに国が独立を完成し、その民族主義がりっぱな成果を上げ得るようにするのには、やはり経済的基盤が強化されて、そして経済的繁栄がもたらされるような基礎を作らなければならない。これに日本協力しなければならない。しこうしてそれに欠けておるものは何かといいますと、言うまでもなく資本と技術の点であります。この点において、われわれは大いにわれわれの協力できる部面においては協力をしなければならない。しかもこれらの国が長い間他の西欧の植民地とされておって、この植民地から独立していく、そうして新たに民族的な考えにおいてその国の独立を完成しようという熱意から見まして、いわゆる西欧の植民地主義にかわる資本主義によるところのある一国の資本によっての侵略であるとか、あるいは植民地化がまた行われるのじゃないかという非常な懸念を持っていることも事実であります。しかもそれでは民族資本たけでもって経済的発展ができるかというと、できない。そうすればできるだけ中立的な性格の資金を作り上げるということが、これらの国々が最も受け入れやすい方法であって、これを作らなければならない。アメリカがただアメリカの援助として出すということに対しては、アメリカ一つの資本的な侵略が行われる、従来のイギリスやその他の西欧諸国の植民地にかわってそういうものが起りはしないかという懸念を、これらの民族が持っておるのであります。この東南アジア経済開発基金の構想は、そういう中立的な性質を持った資金をとにかく作り上げて、それによって開発する、またそれを利用していくということが一番望ましい形である。それが直ちに実現するとも私は考ておりません、よほどこれは十分にそのことを理解し、その方法について具体的に考究していく必要があると思います。しこうして私がこれを提議した東南アジア諸国におきましても、その後私が帰りましてから、いろいろと日本の外務省と連絡をとって考究もいたしております。アメリカにおきましても、この案をやはりアメリカだけの考えで援助するということは必ずしも受け入れられておらない、またそれが成功するゆえんでもない、むしろ中立的なものを一つ考える必要がある。いわゆる世界銀行というものもあるけれども、これは銀行という一つのワクの間で考えておるけれども、そういう銀行というワクを離れ、しかも世界銀行のような構想を持った資金ができることが望ましいということに対しましては、私は今直ちにこれを具現することはまだむずかしいと思いますけれども、将来必ずこれをやっていかなければならない問題であり、われわれか努力するならば、その考え方は必ず堂け入れられるという考えを私は持っておるわけであります。従いまして、これが実現するということは、今申すように東南アジア諸国が経済的基盤ができて、その上に初めて民族の独立ということが完成されるゆえんになるわけでありますから、技術の協力とともに、こういう中立的な資金の設定につきましても、日本はできるだけの協力努力をすべきものである、かように考えます。
  24. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 東南アジア開発基金の構想につきましては、私は岸総理と全く同じ考えを持っているわけであります。東南アジア各国の戦後独立した国がそれぞれ経済的発展をするのでなければ、世界の平和は所期できないと考えております。従いまして、何らかの形でその経済的建設を日本が加入して助け得るなら、それは日本として努力しなければならぬ問題だと存じております。ただこの問題は、御承知のように各国それぞれの立場もございます。また経済発展の段階による事情もございます。従って今にわかにコンクリートな案を岸総理が持っておいでにならなかったのも当然でありまして、ある程度構想を投げ出しまして、それによって各国のそれぞれの御意見を伺う、またアメリカ意見も聞くということによって、将来これを発展さしていくことが必要だと思うのであります。むろん東南アジアの経済の安定には、第一次産業であります製品の価格の安定ということも一面非常に大事であります。また他面技術的あるいは技術的経験による援助によりまして新たに工業を作っていくということも非常に重大でありまして、それらのものを含めて協力して参りますことが必要であると思うのでありますが、今申し上げましたように、各国それぞれの立場と感情、気持等を含めて、この問題を扱っていかなければならぬと思っております。特にヨーロッパ共同市場の問題が相当クローズ・アップされております今日、経済的には東南アジア各国が共同の立場に立ちまして問題考えていくということが必要であろうと思いますので、私といたしましては、それらのことを念頭に置きながら、今後東南アジア各国の首脳部と話し合いもし、またアメリカその他西欧の資金的バックをいかなる方法で得られるかということも考えながらこの問題を推進して参りたい、こう考えておる次第でございます。
  25. 野田武夫

    野田委員長 松本君にちょっと御注意いたします。あなたの時間が十数分経過いたしておりますから、次の田中委員質問の時間が少し欠けます。それをお含みの上お願いいたします。
  26. 松本七郎

    松本(七)委員 お二人の答弁を聞いておりますと、単なる構想であってずいぶん先の長い話である。一つ新しい外務大臣に現実の緊急の問題についてお伺いしておきたいのは、先ほどから問題にしておりました日本政府態度が中共を非常に刺激して、最近周恩来首相もああいう強硬な談話等を発表しておるわけです。向うにいる商社の代表でさえ長くとどまれないという状態も起ってきておる。藤山さんの新聞の談話等によると、中国の建設計画自体がスロー・ダウンしておるから、そうあせる必要はない、こういうことを言っておられるのですが、現に西ドイツやイギリスは、先ほど申したように、ココムの制限まで突破してどんどん出しておる。ですから、せめて日本もあの指紋問題を早く解決して、第四次協定くらいは結んで、代表部を設置するくらいのところまではいかなければ、幾らチンコムを解除したといって、品目だけ解除してみても、現実に商売する態勢にならなければ話にならない。これは現実問題に取り組まれた藤山新外相ならば、敏感に感ぜられると思うのですが、一つ御所信を伺いたい。
  27. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 中共との貿易をできるだけ活発にして参りますことは、当然私ども考えておることであります。だた今日置かれておりますような世界国際情勢のいろいろな変転からして、ある場合には中共が日本に対して誤解的に、あるいはその他の意味において、いろいろな態度をとってくることがあり得ると思うのであります。がしかし、私どもとしては、そのときどきの態度にかかわりませず、貿易の伸展問題についてはできるだけの努力をして参りたいと思っております。  なお、ココムの制限以上に各国がやっておるという事実はないように考えておりますので、その点は誤解ではないかと思います。
  28. 野田武夫

    野田委員長 須磨彌吉郎君。
  29. 須磨彌吉郎

    ○須磨委員 総理大臣にまず二、三お伺いをいたしたいのでございます。東南アジア並びにアメリカをお回りになりました結果としまして、私は何と申しても世界一般に、日本の外交というものはもはやサンフランシスコの体制というような旧時代から脱却をいたして、日本はいよいよ独立対等の時代に入ったということがはっきりと浮び上ってきたものと思われるのであります。従いましてこれに対しましては、ことに中共方面等からのいろいろな批判等もある様子ではございますが、実は今にして見れば、このわれわれがサンフランシスコ体制を脱却していくが、この自由民主主義国家群と事をともにするということは、元来わが政府のきまっている設定した政策であったのでございます。これに対して今さらいろいろな誤解がありましても、われわれは猛然として従来の政策の通り進んでいくべきものであることは申すまでもないのであります。従いましてこれにつきましてはいろいろ取り上げる必要はない様子ではございますが、中共というまた一つの実際的な存在というものはこれは消すべからざる大きな勢力であると思います。その勢力が、最近、二十五日であったと思いますが、日本の民間放送団体に対して周恩来首相が述べた言葉がもととなり、三十日、すなわち昨日の人民日報によりますと、社説において、い本がいかにも中共に敵意でも持ち出したものであるかのごとく言いふらしておるような論調が出ておる様子でありますが、これはわが国とまだ正当の関係のあるなしにはかかわらず、隣をいたしておりまする国の間柄の関係といたしましては、これはまことに誤解を生ずることでございますから、かような機会をもちまして、国会を通じまして、総理大臣からこれに関する所信と所懐をまず承わりたいと思うのでございます。
  30. 岸信介

    岸国務大臣 最近新聞紙等において、今御指摘になりましたように、中共の周恩来首相が、日本は中共に対して非常に非友好的である、また私の内閣及び私の見解が非常に非友好的であるというようなことを非難するようなことが報せられております。私は今回東南アジア及びアメリカ訪問いたしまして、いろいろな国々において首脳部と会い、共同声明等を発しておりますが、これを一貫して、常に今御質問になりましたように、われわれの立場としては、日本が自由民主主義の国であって、そうしてこれを国内において完成する、これが日本の繁栄していく道であり、同時にそれが世界の大道として最も望ましい道であるという信念に立って、この自由民主主義の完成に努力をいたしておる。従ってそういう立場において自由を愛好し、同じ民主主義の完成、同じ理想を持っておる国々との間に緊密な提携と協力をして、そうして世界の平和を作り上げるということが、われわれの考えている不動の外交方針であって、このことはすでに幾たびかわれわれはあらゆる機会に声明をいたしておるのであります。この考えに一貫して諸国の首脳部と私は会談をいたしてきておるわけであります。一部の人が言っておるように、私自身がアメリカに行ってアメリカから強要されて非常な反共の線をはっきりしたのだというふうに憶測をする者もありますけれども、私は従来あらゆる機会において反共であり、また今申すような意味において自由を愛好する国々と協力をしていかなければいかぬということはしばしば言明をいたしておりまして、その間に何らの差異はないのであります。いわんや他の国から使嗾強要をされてこのような大きな国策を、日本の進んで行く道を作る、もしくはそれを変更するというようなことは、いやしくも国を代表している者としてすべきものでないことははっきり私としても考えておるわけであります。従ってこの点に関して私が何らか非友好的な考え方を急にとろうとしておるというふうな見解は、私は誤解にあらずんば他の意図があろと想像せざるを得ない。私はしかしそういう立場を堅持するけれども、この共産主義の国々との間においてもできるだけ国交を正常化して、これとの間に友好関係を作っていくということについては、ソ連初め幾多の共産主義国との間に国交を正常化している事実から見ても明らかである。ただ中共についてこれを政治的に承認するかどうかということについては、私は国内における一部の人々と見解を異にしておる、われわれの政党の基本方針である今日の段階において中共を承認し、これと外交関係を開くことは望ましくない、しかし経済関係においては貿易を増進するということについてはあらゆる努力をする、また文化の交流その他の点においても適当なる方法においてこれをやっていくということについては、従来もその方針でありますし、今後もその方針であって、何らその間に変るところはない、かように御了承願いたい。
  31. 須磨彌吉郎

    ○須磨委員 ただいまの御説明によりまして、私はわが日本の今までの態度と何ら異なるところはない、われわれは自由民主主義国家群と事をともにしていくだけであって、ことさらにわれわれと隣する国、たとえば中共のごとき国と事を荒立てるようなつもりは少しもないのだ、これは誤解に基くものだという明快なる御説明で、私は了解をいたしたのであります。  次いでこの東南アジア問題につきましては、これはただいま外務大臣からも御説明がありました通り、もちろん一朝一夕にして東南アジアの開発というものが、あの広い地域にわたってできるということは、だれも期待ができるものではないと思うのであります。その点についてはまず大体の仮想案をもって開発資金というようなものを作っていくような構想を持っておいでになったことは、私はまことに時宜を得たことであろうと思うのでありますが、一つ考えなければなりません、とは、この東南アジアの情勢というものは非常に違ってきている。前の東南アジアに出ておって実権を持っておったものに御承知のように華僑という存在があったのでありますが、その華僑はあの大きな中国を背景といたしまして、中国人として働いて参ったのであります。現在は中共という動かすべからざる存在と、また一方においては法的の存在である台湾の政府というものと、この二つが存在するために、華僑というものの性質が多分に変ってきたことはいろいろな報告並びに文書等によって私どもは常に教えられておるのであります。このことは非常にも要なことでありまして、しかも華僑は御承知のごとくタイ国において最もその多きを見るのでありますが、その国々において実権を握っておる、しかもその総数は千五百万に上っており、実に驚くべき勢いを持った一団体であるわけでございます。従いまして華僑は昔のようにただ中国だけを背景にしておるのではない、言いかえますならば中立的な立場をとって、そのときの時勢に合うような政策に協同していくという大きな存在をなしておる。言葉は悪いようでございますが、あるアメリカ人のごときは、ユダヤ人の大きな財閥的性格を持つに至ってきておるという批評をしておるのも、これはあるいは当っておるかもしらぬのであります。その批評はいかんといたしましても、私は今度お回りになった総理大臣の御感想の中に、この華僑に対しまする御関心がおありになったと思いますが、これから東南アジア問題を推進して参りますためには、どうしても、華僑対策――という言葉は悪いかもしれませんが、華僑の新しい変化に応ずるような日本の対策というものを、やはり考えていかなければならないということを私どもはしみじみと感じさせられるのでございますが、そういうことに対しての御感想をまず承わりたいのでございます。
  32. 岸信介

    岸国務大臣 質御問のように、東南アジア諸地域における華僑の経済的勢力というものは非常に大きい。経済的のみならずあるいは政治的の勢力も持っているところもございます。しこうして今おあげになりましたような東南アジア諸国における千数百万という華僑も、華僑全体としての一つの動きもあるように思われますが、同時に国々においてその華僑の持っておる地位、またその国において華僑に対しておる態度というものも必ずしも一様ではないと思います。しかも従来中国を背景として東南アジアの諸地域において活動しておった華僑が、中国の政治の変化によって中共と国民政府との対立ということから、ひいて両方の政権からのいろいろな工作もこれらの華僑に対して行われていることも事実であります。こういう非常に複雑な事実にありますので、最近華僑の問題については特に実情をよく把握し調査して、これらに対する方法を考えていかなければならぬ、こう考えまして、従来とも在外公館においてそれらの事情をいろいろ調査しておりましたが、さらにこの方面に特別に従来経験もありまた連絡もある特別の人を派して、これらの事情を十分に調査をいたしております。われわれは何といっても東南アジア諸国において特に経済的に非常に実力を持っておる華僑というものの存在を十分に認識して、われわれが将来東南アジア方面に経済的の協力をしていく上におきましても十分にこれは考慮に入れなければならぬ、しかしどういうふうに協力していくかという問題につきましては、今申しましたような各種の事情を十分に考慮して、その国において、そのときにおいて最も適応した方法をとらないと、かえって逆効果になるおそれもある。この問題はきわめて重大な問題であると同時に、きわめて複雑な問題でありますがゆえに、慎重にまず実体を把握して、これに対する対策を考えていくというのが適当である、かように考えております。
  33. 須磨彌吉郎

    ○須磨委員 いま一つ東南アジア問題につきましていろいろ経済上の問題をわれわれは期待を持っておるのであります。これに対してはただいま御両所からのお話にもありましたように、非常に時間を要することは申すまでもないことであります。またわれわれ日本だけの力ではいかないことは同様でありますが、ただ一つ日本だけでいく力の中に、総理大臣から御指摘があった技術という問題もございますが、いま一つ文化の交流という問題があると思うのであります。これが非常に等閑に付せられておりまするし、あるいはわれわれが気づかない間に、日本の中の役所のセクショナリズムと申しましょうか、外務省と文部省とのセクショナリズムというようなことによって、たとえば日本に留学をしたいという者の取扱いにおいても、二途に出で三途に出で、これが非常に向うの反感を買うということがあるわけでございますが、私はまず東南アジアに対するいろいろな両策の一番大きな根本的な問題は、文化的交流を容易ならしめ、これをもって基礎を作ることである。これはぞうさないようでございますが、昨年の予算の作成のときなども非常に問題になったのでありますが、ちょうど予算作成の当初でございますからこの機会を拝借いたしまして、総理大臣はこれに御同感であることは私どもは察するわけでありますが、それならばこの文化の交流の基礎を作るような予算の裏づけをすることに、政府一つこの際御決意を願いたいものであると思うものでございますから、この機会を拝借いたしまして御意見を承わりたいのであります。
  34. 岸信介

    岸国務大臣 文化交流の問題は御指摘のごとくきわめて重要である、特に文化交流の問題につきまして東南アジァ諸国については私は特別の深い関心を実は持っております。言うまでもなく、古いこのアジア文明としては共通したものがあり、また仏教国としての間においては、過去何千年間にわたる交流が現作まであったわけであります。そういう歴史的な関係があるのみならず、さらに将来の経済的提携やあるいはアジア人として理解と信頼の上に立っての協力というものを考えてみると、今おあげになりました一つの例のように学生の交換、教授の交換というようなものも必要でありましょう。あるいは青年の交流というような問題も必要であるし、また現代文化についての認識を深めるような交流も必要であろうと思います。私は外務大臣に就任いたしましてこれらの文化外交を推進する意味において、いろいろな方面の人々の意見も率直に聞きたいというので、懇談会を数回催して参っております。いずれも一面においては予算的な措置を伴い、一面においては日本の各外の人々が、その必要と、それに対する心からの同情といいますか、共感を持つ必要がある。一つの例としてかりに学生の問題考えてみましても、なるほど各省のセクショナリズムに災いされておる点もあります。これを統一しなければならぬことも言うを待ちませんが、施設のほかにさらにほんとう日本に留学するという人々を愛情を持ってほんとうの親しみを持ち、親切の気持を持って世話するという空気が社会的に一般的に出る必要があると思う。こういうようなことを結び合せて初めて文化交流ができると思います。予算の点につきましては、ぜひこれが現実を将来においても期したいと思います。  なお私から申し上げるまでもなく、新外務大臣は一面において経済人であるとともに、一面において当代における最もすぐれた文化人であるがゆえに、文化政策の面においてはさらに私よりも進んだ考えを持っておられるものと存じます。
  35. 須磨彌吉郎

    ○須磨委員 ちょっとお話が出ましたから一つ外務大臣にお伺いをいたしたいのでありますが、今まで問題になっておりました東南アジアと申しますか、一日に東南アジア問題といいますけれども、私どもの見ておるところの率直なる見解を申せば、これにはどうしても日本解決すべきものを早く解決する、その点で見ますると、たとえばインドネシア、あるいはインドシナとの関係では賠償問題がございますが、まずもってインドネシアとの賠償というものを解決することが、言葉は悪いのでありますが、東南アジア問題に手をつけまする一つの突破口ではないか、そういうような点から申しますと、ここ一年以上にわたって繰り返されておったのでありますが、そういうような事務的な外交を去って、一段と一つ政治的なやり方をもってこれを早く解決することが、この際非常に望まれることでなかろうかと思われるのでありますが、それに対して外務大臣からの率直なる御意見を拝聴いたしたいのであります。
  36. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 賠償問題解決というものは、これは当然東南アジア諸国との友好関係を持続する意味におきまして、われわれが最も早い機会に考慮して参らなければならぬと思うのであります。従いましてインドネシアとの賠償解決につきましては、私といたしまして過去の経緯がございますけれども、その上に立ちまして早急に解決の方法を講じていきたい。これには国内皆様方の十分な御意見も伺いつつ、一方インドネシア側の意向も聞いてそうして解決の手を打って参らなければならぬと思います。そういうことで就任以来鋭意努力をいたしております。
  37. 須磨彌吉郎

    ○須磨委員 外務大臣におかれましては、九月二十三日かにダレス国務長官ともお会いになるということを新聞で拝見いたしたのでございますが、私はその際に取り上げられる問題等についてお話をすることはまことにやぼでございますが、その共同声明があって以来の一つの大きな動きとして、私どもが痛感させられておりますることは、アメリカのいわゆるフェデラル・ガヴァメントと申しますか、中央政府では共同声明の中に、岸総理大臣に対して約束をした通り、通商貿易についてはきわめて公平なやり方をするということを誓っておることは、公知の事実でございますが、その後各州に盛り上っておる一つの空気というものは、これとは全く符節を合しない点が相当あるやに見受けられるのであります。ことに最近特に取り上げられておりまするダンピング防止法案と申しますか、そういうものについての公聴会が開かれておりまして、この間ミネソタ州の公聴会を私は偶然に聞いたのでありますが、それ等によりますると、非常に強い意見が出て、日本の品物におおむねこのダンピングに当るものであり、このダンピング法にかかるようなものが多い場合は、これは仮借なく処断すべきであるというような意見が、公聴会では述べられておる様子でございます。また日本から出ていく品物ばかりでなく、あるいは香港を経由し、その他の地方を経由して間接的な貿易のように見えて実際においてはアメリカに非常な強敵となって現われておるというような、言葉も随時出ておる様子でございますので、場合によっては来年の正月ごろまでに、各地方議会等でかような問題が持ち上らないとも限らないような形勢を私看取するのであります。これは私アメリカに在勤をいたした体験を持っておりまして知っておるのでありますが、それが出てからではおそいのでありまして、出る前に私は各州に対して、フェデラル・ガヴァメントも一つのガヴァメントでございますが、ほんとうに生きものとして働いておるのは各州の政府でございますから、各州の政府にもその要所々々に対して、今からお働きかけになることが、やはり外交上の鉄則であるよらな考えを持つのであります。特に経済界に非常な御体験の深い新外相は、むろん御如才ないことではございましょうが、一つ今からでもどんどんと手配をいたされることを私は非常に望ましく思うのでありますが、こういう点に関しての御感想等を承われれば幸いでございます。
  38. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 九月の十四日に立ちまして、国連総会に出席をいたすことにいたしておりますが、その機会アメリカにおきまして、ダレス長官初め政府の有力な方々とお目にかかる機会を得たいと思っております。岸総理とアイゼンハロー大統領との間の共同声明の線の中における今後の実施問題その他につきまして、いろいろ意見も交換することになろうかと思いますが、それよりも私といたしまして、さらに必要を感じておりますことは、ただいまお話のありましたような日本の輸出商品に対します制限問題でありまして、この点につきましてはアメリカの民主国家としての立場から考えましても、もっと広く民間に働きかけるべきではないか、また議会の方面にも相当われわれの立場を申し述べるべきではないかと思いますので、機会があれば議会方面もしくは民間有力者の方々と会談をして、日本がいかに対米貿易を重要視しているかということを申し上げたいと思っております。なおアメリカにそれらの理解を十分得ると同時に、日本の対米貿易につきましても、それぞれおのずから自省をしていく問題もあるわけでありまして、それらの問題について通産大臣等々と御相談をしながら、漸次そういう問題考えて参りたい、こう思っておるのでありまして、何としましてもこの問題がやはり相当重要な問題でありますので、私としては力を尽してこの問題解決に当りたい、こう考えておる次第であります。
  39. 須磨彌吉郎

    ○須磨委員 最後にいま一つ総理大臣にもあわせてお伺いをいたしたいのでありますが、最近起りました不愉快な問題一つは、ピョートル湾の制限の問題であると思うのでございます。これはすでに外務省におきましては強く抗議を提出せられ、こういちよう、な内海を自分で作るというようなことは、国際法違反である、そういうようなことについても詳しく鋭くつかれておりますることは私ども承知をいたしておるのでありますが、このことが今回起ってきたことについては、ひとり日本においてそういうことを申しておるのみならず、私の知っておるところでは、英国あたりでもこれは明らかなる国際法違反であるということを申しておって、あるいはローマでありますとかジュネーヴでありますとか、こういうところでこれから行われる海洋会議と申しますか、そういうようなところでもこれは提起されるであろうということを申しておるのでありますが、こういうことについて外務省でも御如才なくおやりになると思いますが、なぜこういうことがどんどん起ってくるかということについて、また一つ考えていく面があると思います。こういうことが起ったためにわが日本の伝統的に持っております日本漁民の権利が侵害されて参るのでありますが、どういたしましてもそのような不幸な事件が起ることを一つでも少くしたいと思うのでありますが、そういう点では何が必要かと申しますと、日ソ間にほんとうの正常の関係、言いかえれば平和条約を締結する関係というものを早く成立させなければならねと思うのであります。思いますると十月十九日に、すでに日本の日ソ共同宣言によってこのことは約束をされておるわけでありまして、当時総理大臣は幹事長として特にこのことは詳しく御承知のはずでありまして、詳しく申すまでもありませんが、継続審議する領土問題等も加えて、なるべくすみやかに平和条約締結の交渉に入るという約束ができて、すでにこれが直ちにすみやかにと申してから十ヵ月にもなんなんとしておるわけであります。その間にまだこれが締結されておりませんということは、私は国民感情としてもあまり思わしくないものがあるように思うのでありまして、同時にそれのみならず、具体的に申せばピョートル湾のごとき不祥なる問題がこれから続発するかもしれぬというようなことも考えまして、なるべくすみやかにこの問題を締結させていただきたい。実はこのことにつきましてはこの席上でありましたか、予算委員会において、私は総理大臣に対して二月二十四日だったと記憶いたしますが、御質問を申し上げまして、なるべくそういうようにするというお話もあったわけであります。それからでもすでに五ヶ月たっておるわけであります。そういう点から申しますと、これは重々お考えになっておることと思いますが、考えますと通商条約問題については、広瀬節男公使を団長とする一団を派遣せられ、近くまたこれを取り上げられる様子でございますが、そういうものもさることながら、この根本問題についても注意喚を起せられて、国民の感情の安心するような方向にお向けになることが非常に必要である。考えてみますと、たとえば賠償の問題につきましても、フィリピンとの賠償問題を締結するときにおきましては、予想もしなかった通商条約問題が今もってできておらない、こういうようなこととも思い合せますと、私は国民としての考え方からいきますと、やはり片づけるべきものはびしびしと片づけていくというようなことをおとり下さることを非常に望ましく思うものでございますから、この機会にこれをぜひとも御釈明をいただきたいと思うのであります。
  40. 岸信介

    岸国務大臣 日ソ間において平和条約が締結され、ほんとう意味において国交が正常化されることが望ましいことであるということでありますが、しかし御承知通り、この問題は数回の会談において、非常に困難なる領土問題を含んでおりますがゆえに、実は平和条約の締結に至らずして共同宣言の形でいったわけであります。しこうして、この領土問題解決するということは、これはわれわれ日本国民の全部の一致した意見であって、特に国後、択捉、歯舞、色丹の問題につきましては、日本は固有領土としてこれが返還を求めてきた。ところがこれに対しては、従来の交渉の経緯に見ますと、ソ連の方は国後、択捉については非常に強く、もうその問題解決した問題であって、日本に返す意思はないということを明瞭にいたしております。私はこの問題については、実は日本国民の要望であり、国民の動かすべからざる一つの信念になっている固有領土というものを日本に取り返すという考えは、どうしても実現したければならぬ問題であると思います。ところが今までの経過から見ますと、そういうことがなかなかソ連の方において理解されておらない。そこでソ連との間に、共同宣言により国交が一応正常化されて大使を交換し、それからいろいろな他の懸案の問題一つ一つ解決していって、その重要な問題解決するに必要な友好関係一つの積み重ねをしていくというのが従来私の考えてきたやり方であります。しかし、それをいつまでもほっておくという意思は毛頭ないのでありまして、今お話のごとく、これはできるだけ早い機会にわれわれの希望するような形において解決するというふうに持っていかなければならぬと思います。そういう意味におきまして、日ソの関係の諸種の問題を取り扱って、その時期を見ておるといろのが現在の日本の外交の姿であると思います。  通商問題に対しましても、これもいろいろな調査もいたしましたし、またその話し合いを開始するような段階になっておりまして、こういう問題解決され、すでに日本国民の一致した要望、択捉、国後に対する日本の動かすベからざる強い要望というものが、ソ連の方に正当に理解されるというふうに今後とも堺力して、そうして平和条約が一日も早く実現し、解決して、お話通り完全な両国間の正常な関係が実現するよう今後とも努力するつもりであります。
  41. 須磨彌吉郎

    ○須磨委員 時間が参りましたから終ります。
  42. 野田武夫

    野田委員長 田中君に発言を許可する前にちょっと御注意申し上げますが、松本委員が発言された時間の関係上、大体十五分くらいが田中委員の持ち時間になっておりますから、あらかじめその点を御了承願います。田中稔男君。
  43. 田中稔男

    田中(稔)委員 私も簡潔に質問いたしますから、答弁一つ簡潔にお願いいたします。  まず第一に、きょうは外務委員会が開かれましたが、この日米会談内容は非常に重要でもありますし、それから九州では未曾有の大水害も起っておりますから、社会党がかねて要求しております臨時国会を早急に開く必要があると思いますが、政府にその意思があるかどうか、簡単に御答弁願いたいと思います。
  44. 岸信介

    岸国務大臣 臨時国会の開会につきましては、社会党から正式の要求が出ておりますから、政府としてはこれに対して適当な時期に開かなければならないとして準備をいたしております。ただ私が訪米をしたそれの報告の意味において、もしくは九州の水害の対策として開く必要があるかどうかという点につきましては、政府は現在のところそのために開く必要は認めておらないというのが現状でございます。
  45. 田中稔男

    田中(稔)委員 岸総則はたびたび太平洋の東西にかけ橋をかけるのだということを言われたのであります。幸い鳩山内閣の時代にソ連の方にもとにかく岸が一つできた。そういうわけで太平洋の、両岸に橋をかけるという、これが両岸外交であるならば、これは私は非常に歓迎すべき外交だと考えたのであります。どうも岸総理の訪米の結果は、そういう期待が完全に裏切られたのであります。一般に東西のかけ橋と申しますと、いわゆる自由主義陣営といわゆる共産主義陣営との間に橋をかけることであります。ところが岸総理の理解によれば、何かアメリカを初めとする自由主義陣営と共産陣営を除いた、共産陣営に加盟しないアジアの諸国との間に橋をかける、こういう考えのようでありますが、そういう中国、ソ連を除いたアジアには御承知のごとくSEATOグループがあり、中立グループがあるわけであります。そうすると、一体そのSEATOグループと中立グループとのどちらに橋をかけようとするか、ますますわからなくなるのであります。その東西のかけ橋という意味をここで一つ説明を願いたい。
  46. 岸信介

    岸国務大臣 東西のかけ橋という言葉は、言葉自体としては私は非常にあいまいな点があると思います。私の念願しておるところは、世界が二つに分れて東西の両陣営が対立して、その間に非常な戦争の危険というものがかもし出されておる、こういう世界の情勢を緩和していく、そうして世界がおのおのお互いの立場というものは尊重し合って、そうして平和に戦争の危険をなくしていくというのが、私は理想であると思う。われわれが国際連合の一員となって、国際連合のあの崇高なる憲章の粘神を体してこれを実現するという上から申しますと、おのおのその国における政治形態であるとかあるいは経済上の事情であるとか、いろいろな点は尊重し合って、そうして世界協力して平和を作り上げていくということでなければならぬと思う。そういう意味において、私は従来日本の外交というものはそういう国際緊張の緩和あ方向にあらゆる努力をしていくということを申しておるわけでありまして、それを具体的にあるいはかけ橋なりというふうな説をした人もありましょうし、あるいは今はおほめにあずかったのですが、非難の意味において両岸外交ということを非難した向きもあるのであります。私の考えは終始一貫、先ほど来申し上げておるように、日本の国の姿、国の理想というものに根拠を置いて、そうして世界に繁栄と進歩を基礎に置いた平和が来るように努力していくという思想で一貫しておるわけであります。
  47. 田中稔男

    田中(稔)委員 どうも答弁があいまいでわかりませんが、蒋介石とお会いになった際の談話内容が朝日新聞に載っております。この中に「大陸の自由回復には日本は同感である。」また「従ってこの意味では大陸を回復するとすれば、私としては非常にけっこうである。」こういうふうな言葉があるのであります。(「けっこうじゃないか」と呼ぶ者あり)けっこうというのは菊池君だけであって、われわれにはけっこうではない。吉川内閣が向米一辺倒、ところが今度鳩山内閣になりまして、ソ連との国交も開いたのであります。石橋内閣では国交を開くとは言わなかったが、とにかく中国との貿易を盛んにすると言われた。行く行くは中華人民共和国との国交の正常化をやろうというような意向がほの見えたのであります。そういうふうにして日本がバランスのとれた平和的共存の外交の路線をずっと歩み始めたとたんに、岸総理アメリカ訪問となって、吉田内閣当時の向米一辺倒に逆戻りしたというのが一般の見るところであります。社会党の見るところでもあります。ところで具体的に今の蒋介石との談話内容問題になるのでありますが、鳩山総理にしてもだれにしましても、従来とにかく事実問題として六億の人口をかかえる中華人民共和国の存在は無視できない、国際情勢の推移に応じて、一つこれとの国交について何とかしなければならぬということが今までいわれておった。ところが今の談話の断片の示すところは、これは全く方向を異にしておりまして、蒋介石が大陸反攻に成功することを期待しまたは激励しておるような内容、こういうことになれば、私どもは二つの中国はだめだ、一つの中国といいますが、岸さんは逆な意味一つの中国、つまり蒋介石による中国の再統一というような意味における一つの中国を構想されておるようであります。これは後ほどにまた周恩来の反評その他に関連して追及したいと思いますが、中国に対する基本的な考え方をお尋ねしたいと思います。
  48. 岸信介

    岸国務大臣 私は先ほど来申し上げておるように、日本の国の建国の理想、われわれの進むべき道は自由民主主義の完成にある、こういう立場を堅持しておるものであります。その意味において私は反共でございます。共産主義には反対でございます。しかし共産主義によって国を立てておる国の内政にまで干渉して、これを自由民主主義の国にしようという考え方は、私自身は持っておりません。しかし日本を今申した意味において自由民主主義の国として、われわれがその理想を実現するように努力し完成していくという立場から申しますと、私が反対しております共産主義の国々によって日本の内政なりわれわれの政治の理想が乱されるような工作に対しては、われわれは常にこれを警戒し、これを阻止するように努力せねばならないのが私の考え方であります。しこうして中国と日本との関係は、歴史的に申しましても文化の上から申しましてもあるいは地理的に申しましても非常に近しい関係にあり、日本国民が全体として中国人というものに対して非常な強い親近感を持っておることは、その考え方が共産主義であろうがあるいは共産主義に反対する考えであろうがその他の考えを持っておられようが、とにかく中国人というものに日本人が非常な親愛感を持っておるというのは、伝統的に日本人のほとんど大部分がそういう感じを持っておると思います。従ってその意味において、中国というものから共産主義のいろいろな工作がされるということは、日本の先ほど申したような立場を堅持しておる者から申すと、非常に危険が大きいということは、私はそういうふうに考えております。他の国々からそういう工作が行われるよりも、中国人によって行われることは、日本に対して、日本国民が非常に親近感を持っておるがゆえに、そういう意味における非常な危険があるというのが、私の根本の考えであります。しかし今の中国大陸における中共のいわゆる人民共和国の政体なりその政治組織に対して、私自身が何ら干渉する意思もなければ、それをどうしようというような考え方を持っておらないことは、これはきわめて明瞭なことであります。ただ蒋介石氏自身が、これは蒋介石氏の政治的立場であろうと思いますが、常にこの自分たち考えをもって中国の大陸をいわゆる自由に解放する、蒋介石氏の言をもってすれば、中国人くらい歴史的に自由を愛する民族はないのだ、従って今の共産主義におけるところの少数の統制のもとに置かれておるということに対しては、たくさんの中国大衆というものは反感を持っておる。必ず自由を求めるという時期が歴史的にいっても来るのだということを、蒋介石民は非常に強く述べております。私はそれに対して、一応蒋介石氏と会ったとき、蒋介石に御意を表したところの言葉を言ったことも事実でありますけれども、私自身が中国政府に対して何らかの干渉もしくは意図をもって働きかけるという意思ではないことは、言うを待たないのであります。ただ根本の考え方は、先ほども申したような考えを私持っておるということを初めに申しております。
  49. 田中稔男

    田中(稔)委員 イギリスの首相マクミランも、私は岸総理と同じくらい反共だろうと思う。しかしイギリスは中国を承認しております。岸さんの今の論理をもってするならば、現在の中華人民共和国が共産主義の体制、今日では共産主義ではない、社会主義の体制ですが、しかも社会主義を目ざしてやっておる過渡期の体制ですが、しかし究極に共産主義を目ざしている。この思想の伝播をおそれるということであるならば、蒋介石が大陸に反攻して、そして中華人民共和国の体制が完全に変ってしまう、そういうときを待たなければ、中国を永久に承認しないということになると思いますが、それでよろしいでしょうか。
  50. 岸信介

    岸国務大臣 この点はしばしば私は国会を通じて私の所見を述べておるのですが、中共政府の承認の問題につきましては、一つは過去においてわれわれは不幸にして、蒋介石の政府中心としておる中国と戦争し、そしてこれとの間に終戦をいたしまして、いわゆる蒋介石の徳をもって恨みに報いる、恨みに報いるに徳をもってするという意味において、中国との間に平和条約ができ、そしてこれとの間に友好関係が作られたわけであります。その後いろいろな変遷を経てきておりますけれども、そういう経過のもとに、われわれは今日まで国民政府との間に正常なる国交関係を結んできておる。これが一つのわれわれの作った事実であります。それに対する批判のいかんは別として、これは国際的の一つの事実であります。またわれわれは国際連合に加盟して、国際連合の忠実なる一員として、国際連合の決議なり、あるいは国連憲章の精神に従ってわれわれ国際的の方針を進めていくということも、一つのわれわれの基本的な事実であります。しこうして、不幸にして今日においては、この国連におきましても、いまだ代表権を認めておりませんし、かつて朝鮮事変のときに決議いたしました、中国を侵略国と規定するというようなことすら、取り消した状況にまでなっておりません。こういう事情のもとに、中国の大陸における今の中華人民共和国の政府を承認するということは、日本の立場としては適当でないというのが私の考えでございます。
  51. 田中稔男

    田中(稔)委員 あと二、三分しかないというのですが、実は廣瀬正雄君を団長とする引揚使節団が中国に行こうとした。そうしたら、向うから断わって参りました。そのほかにもちろん岸首相の最近の言動、はなはだこれを遺憾とする、こういう理由がついております。さらにまた北京に駐在しております日本の有力な商社の代表が、近く全部帰らなければならない。滞在しておっても商談も何もないから無意味である、そういうことで向うから滞在期間の延長も断わられておる。チンコムがやっと緩和して、いよいよこれから中国の貿易が始まるんだというので、財界はもちろん、国民一般も非常に期待しておるときに、こういうことになった。岸総理のこの反中国的な言動の影響するところは、かくのごとく大きいのであります。こういうことにつきまして、あなたはどういう責任を感じておられるか、ごく簡単に御答弁願いたいと思います。
  52. 岸信介

    岸国務大臣 いろいろ周恩来首相の言として新聞等に出ておることは、これは断片的に見まして、ずいぶん私の言動についての誤解もあり、また私が言明しておらないようなことを取り上げておる面もあるようでありまして、これらの誤解であるとか、あるいは曲解等につきましては、私は必ずそれは正しい考え方に理解がいくものだと期待をいたしておりまして、そういうことはあまり気にはいたしておりませんが、しかし中国大陸との間の貿易関係を増進することにつきましては、これは終始一貫してこれを推し進めるという考えでございます。しかして、いろいろな経済事情もありましょうし、その国の経済計画等の遂行の速度等もございまして、いろいろな変化をするものとは思いますけれども、私は誠意をもってこれらの間に、両国の間に貿易関係を推進していくという従来の考え方は、これを十分に推し進めていくという考えでございます。
  53. 野田武夫

    野田委員長 田中君、もう時間ですから……。
  54. 田中稔男

    田中(稔)委員 もう二問――一問だけ……。
  55. 野田武夫

    野田委員長 それじゃもう一問にしましよう。
  56. 田中稔男

    田中(稔)委員 もう一問は、項目を分けて簡単に質問します。  いよいよ今度原水爆禁止世界大会が開かれる。外国人の入国のヴィザの問題が難航しておることは、御承知通りであります。これは外務大臣の所管事項ですが、一つあなたに聞きたいのだが、ソ連、東独、チェコ、ポーランド、たくさんあります。これは一々申し上げませんが、この世界大会の意義は非常に重大であります。今日日本の名前は何で外国に知れわたっておるかというと、広島と長崎とビキニと三回にわたって原水爆の被害を受けた国民の名において、日本は知られておる。だから日本世界に先がけてこういう大会を催すことは、重大な意義がある。このことも大いに援助するために、こういうことも一つ協力願いたい。  その次に、今まで鳩山総理がそうでありましたが、メッセージをこの大会にいつもお出しになるという慣例になっておりますが、今まではあるいは広島であり、あるいは長崎でありましたので地理的な関係もありましたが、今度は東京でやるのです。一つ総理、原水爆禁止問題には非常に御熱心でありますが、あなた自身出て、一つそのそつのないお話をやって大いに世界に訴えてもらいたい。  その次に核実験禁止につきまして日本がかつて国連に提案をした登録制、あれは世界の物笑いになりました。松下特使がロンドンに行って実験禁止を訴えておると、ちょうどざるから水が漏れるように、岸総理が、いや国連の方では登録制の提案だというので、実験そのものをまるで合理化するような提案をしました。非常に矛盾したことをやって世界の物笑いになったが、新聞の報道するところによりますと、政府はこの次の国連の会合で核実験禁止について何らかの新しい提案をする用意がある、こういうことが伝えられておる。その内容は新聞には書いてございませんが、一体どういう内容なのか、これを御答弁願いたい。いろいろありますが、これくらいにしまして簡単に……。
  57. 野田武夫

    野田委員長 政府当局に申し上げますが、時間の関係で、きわめて簡単明瞭にお答え願います。
  58. 岸信介

    岸国務大臣 原水爆禁止の平和大会に出席するヴィザの問題につきましては、外務省におきまして十分御趣旨を聞いて善処いたします。  それから大会にメッセージを出す問題につきましては、いろいろな何がございますが、私自身としての考えを率直に申し上げるならば、この問題はあくまでも私はあらゆる機会世界の世論を喚起したいという一念でございますから、これも適当に善処いたします。  最後に核実験禁止問題について日本が新たに提案するという問題につきましては、先ほどもちょっと触れましたが、世界の情勢も一年前と非常に変っております。また日本としては登録制を提案しましたけれども、究極の目的禁止にあるわけでありますから、最も有効なる方法によって、世界の多数の国々が賛成するような適当な提案をいたします。今考究をいたしておりますから、ここで内容の点は……。
  59. 田中稔男

    田中(稔)委員 大事な点は核実験禁止をそれだけ切り離して提案なさるのか、それとも何かアメリカが言うておるように製造禁止と抱き合せて提案なさるのか、その辺を一つ……。
  60. 岸信介

    岸国務大臣 まだ内容的にどういう何をするということは研究中でありまして、まだ申し上げる段階にないと思いますが、今申し上げたような事情を十分に頭に入れて適当な提案をいたします。
  61. 野田武夫

    野田委員長 菊池義郎君。
  62. 菊池義郎

    ○菊池委員 先ほど外務大臣から就任のごあいさつがございましたが、大臣が百五十に余るところの会社、その他の団体等の社長、重役その他の役職を放棄して、外務相を担当されました御勇断に対しまして敬意を表する次第であります。  さらにまた総理には東南アジアアメリカ訪問せられて多くの成果を上げられ、その上に最近の暴風雨を冒して、最も危険きわまるところの自衛隊の飛行機に乗って、あの暴風雨の中に突っ込んだということは、これまた非常な勇断でございまして、総理の英雄的行動に対しまして最高の敬意を表する次第でございます。われわれは非常に心配いたしまして、あの危険な飛行機でありますからして、落ちるのが六分、落ちないのが四分くらいに推定いたしまして、葬儀の場所は本願寺か青山斎場かくらいに思い込んでおったやさきにお帰りになって、このくらいめでたいことはございません。祝意を表しまして質問に入る次第でございます。  今回ダレス長官が軍縮小委員会におきまして、空中査察地上区域としてアラスカ、アリューシャン、カナダ北部、それからグリーンランド、ノルウェーなど、及びソ連の北極圏、極東シベリア、カムチャッカなどとともに南北千島を入れております。北千島は日本領ではないといたしまして、南千島は明らかにこれは日本領であるということを――アメリカはかつて五月アメリカの飛行機がソ連によって撃墜されましたそのときにおいて、南千島は日本の領土である、その上空において飛んでおったところの米国の飛行機を落すということはけしからぬというて抗議をいたしております。すなわちアメリカ政府が正式に南千島を日本領土なりとしてバック・アップしておるのであります。そうしながら今日こういうことを言っておる。まるで前後矛盾をしておるようなのでありますが、この際日本政府といたしましては、米国に対しましてすべからくその見解を求むべきであると思うのでありますが、政府としてはこのダレスの言葉に対してどういう態度をとられますか、これは総理大臣でも外務大臣でもよろしいが、お答え願いたいと思います。
  63. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 領土権の問題については、アメリカ態度ははっきりしていると思います。今回の問題はそれに関連ないことだと思います。
  64. 菊池義郎

    ○菊池委員 いや、どうもピントがはずれているようでありますが、アメリカが、前の言明と今回のダレスの言葉とはまるで食い違っている。今回は南千島を日本の領土でないような印象を与えている。これは日本の外務省といたしましては大いに抗議して向うの見解を求むべきであると思うのでありますが、岸総理からお伺いしたい。
  65. 岸信介

    岸国務大臣 南千島が日本の固有領土で、われわれが一貫してこれを日本の固有領土して返せという主張を強くしていることは御承知通りであります。またサンフランシスコ条約にこれが入っているか入っていないかという解釈につきましても、日本は入っていないという解釈で一貫してきているわけでありますが、その地域にソ連が相当な施設をしているということも、これは事実として情報が伝えているところであります。従ってもしも空中査察ということの効果を十分に上げるということであるならば、そうしてほんとう安全保障の効果を上げるということであれば、南千島がどこに属しておろうが、現実にソ連がそこに施設をしているということを前提としてこれを査察の区域の中に入れたものであって、その本来の領土がどこに属しているかというダレスの従来の解釈と私は別に矛盾するものではない、かように考えております。
  66. 菊池義郎

    ○菊池委員 ピョートル大帝湾の問題でありますが、政府が抗議せられましたのはいいといたしまして、国連はこうした問題を国際条約の締結によって解決しようとして来年三月そのための国際会議を招集するのであります。国連はこの会議に備えまして、昨年国際法委員会条約の基礎となる海洋法案を作成しているのでございますが、この法案の法文化に関しまして日本としても積極的に協力すべきであると思うのでありますが、政府は今日この国連の海洋法案に対してどういう態度をとっておられますか、お伺いいたします。
  67. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 各方面公海の自由の問題につきましては問題がありますので、日本としても非常に関心を持っております。従って国連においてそういう問題解決をすることが一番適切だと考えまして、外務省といたしましてもこれに対応していろいろエキスパートの意見も聞きながらこの対策を考究いたしたい。できるだけ善処して参りたいと思います。
  68. 菊池義郎

    ○菊池委員 最近エジプトから日本に対しましてアスワン・ダムの建設に技術その他の援助を求めているのでありますが、中曽根君がこの折衝に当ったということであります。これは総理の意を体して中曽根君が折衝に当ったのでありますかどうでありますか、その辺の事情をお聞かせ願いたい。
  69. 岸信介

    岸国務大臣 中曽根君がナセル大統領と会談をいたした際に、アスワン・ダムの建設についての協力問題が両者の間に話があったということであります。別に私からその用件を中曽根君に特に命じてこの交渉に当ったわけではないのでありまして、中曽根君が中曽根君の意見としてナセル大統領の意見を聞き、また日本としてそれに対する協力ができるであろうということを申した、かように承知しております。
  70. 菊池義郎

    ○菊池委員 これは大へんけっこうな話であると思うのでありますが、それでは政府はこれを電発に引き受けさせるというおつもりがありましょうか、どうでしょうか。
  71. 岸信介

    岸国務大臣 もしもその話がもう少し具体的に進むようでありますならば、十分現地も調査してみなければならぬと思いますし、電発本来の仕事ではもちろんないわけでありますから、やるとするならば日本の技術力を動員してやらなければならないと思います。その際に電発も技術力の提供をするというようなことはあるかもしれませんが、電発自身の仕事でこれに命ずるというようなことは考えておりません。
  72. 菊池義郎

    ○菊池委員 植村経団連の副会長が総理を訪れまして、米国の国務省の首脳部の示唆であるとして、兵器の製造に当って米国日本の円を積み立てて、日本で新兵器の製造に当る、日本て使うばかりでなく、これを東南アジアにも送り出すといったような方式構想を進言したということでありますが、これに対して日本政府としてはどういうお考えを持っておられましょうか。
  73. 岸信介

    岸国務大臣 アメリカにおいては、従来外国に対して武器援助をいたしておったのを、援助の形をだんだんやめて、そしてこれを売るという形式に変えていきたい、無償で供与するということでなしに、有償で売り渡すという方向に変えていきたいという意図を持っておるように思います。また日本日本独自の立場から、防衛を強化する、防衛問題を取り扱っていくということから考えますと、いつまでも外国に武器の供与を受けて防衛をしていくということは正常な形ではない。やはり防衛産業を国内に興していかなければならない。しかもアメリカの方は、日本の外貨資金の関係考えて、日本に売り渡すところのものをドルでなしに円でやって、そして日本が確立しようとしておる防衛産業の資金に充てるというようなことも一つ考えじゃないかということが、植村君が向うに行っているときに国防省の首脳部との間に話があったそうであります。しかしまだ具体的にその構想がどういうふうに実施されるかというようなことについては研究を要する問題でありまして、外務省、大蔵省あるいは防衛庁等関係庁において、今その案についてもう少し内容を具体化すことについて研究をいたしております。さらにアメリカ考えももう少し具体的に聞く必要があるように思っております。
  74. 菊池義郎

    ○菊池委員 総理がすぐ御退席になるようでありますから、総理にお伺いしますが、日米両国委員会を設けましても、私は安全保障条約改訂なんということはとうていできないと考えております。それはアメリカにヴァンデンバーグ決議なるものがありまして、対等の軍事同盟を結ぶにはどうしても相互援助、相互防衛をなし得る資格のある国でなければならぬということがはっきりしておりますので、委員会でもってこれが決議されても結局アメリカ国会にかかれば否決されるのは当然だ。それで結局軍の運営その他についての協議ぐらいが関の山ではないかと悲観しておるような次第なんでございますが、今までの欠陥を補うことは相当困難であると思うのです。委員会を開く以上は相当にこちらにも何かの期待することがあってやるのでありましょうが、どういうことをおもに期待しておられるのでありましょうか、その点を差しつかえない限りお伺いしたいと思うのであります。
  75. 岸信介

    岸国務大臣 両国政府の間に、日本における兵力の配置並びに使用を含めて、安保条約から生起される諸問題を取り扱うために委員会を作ることになっておりまして、この委員会の第一段の仕事は、安全保障条約におけるところのいろいろなアメリカ側の行動等について、この委員会において日本側とそれを話し合う、そして日本側の意向を委員会を通じて十分に反映さして、両国において了承するような運営の仕方をするというのが第一段のこの委員会目的であり使命である。私は従来、安全保障条約が成立した当時の事情からやむを得なかったことであろうと思いますけれども、一方的にアメリカの行動によってすべての条約上のことがきめられるということになって、日本意思をちっとも反映することができないことになっておりますが、今後はこの委員会においてそれがやられる。それからもう一つは、旧連に加盟しておらなかったために、国連との関係がちっともなっておりませんが、この委員会において国連との関係についても適当に連絡その他国連の関係を調整するというこの二つが一番大きな使命であり、さらにこの論議の結果としては、あるいは安保条約改訂について意見両国政府が出すというようなこともあり得る、こういうふうに考えております。
  76. 野田武夫

    野田委員長 午後一時三十分より再開することとし、これにて暫時休憩いたします。    午後零時十六分休憩      ――――◇―――――    午後一時三十六分開議
  77. 野田武夫

    野田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を継続いたします。菊池義郎君。
  78. 菊池義郎

    ○菊池委員 外務大臣は九月渡米せられるのでありますが、渡米の際において小笠原問題やあるいは戦犯の問題も話し合うということでございます。それから、総理日本国民に約束しておりながら、向うに行かれて忙しくて話し合うことのできなかった南千島の領土権について、さらに米国の再確認を求める交渉をしていただきたいと思うのでございますが、いかがでございましょうか。
  79. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 アメリカに参りましたならば、できるだけワシントンの米国政府の方々と話し合いをいたしたいと思っておりますが、日米間におきます懸案の事項は非常にたくさんございますので、今それをどういうふうに取り上げていくかという問題は、その時期等によって考えて参らなければならぬと思います。従って、御指摘のような問題につきましてもそれぞれ考慮をしつつ話し合いをいたしていきたい、こういうふうに考えております。どれを主として話し合うかということについては、まだ考えておりません。
  80. 菊池義郎

    ○菊池委員 小笠原は私の昔の選挙区でありまして私の選挙区は世界第一の長い選挙区で、温帯から熱帯に延びて、小笠原、硫黄島、鳥島、沖ノ鳥島まて延びておりました。今は小笠原以南が向うにとられたのでございますが、小笠原には全然防備がないのです。何の防備もなく、いつ返しても差しつかえないようになっておるのですが、ただ向うが心配しておるのは、引揚者が向うに帰って生活に困るのじゃないか、それだけ心配しておるらしいのであります。その後外務省の方へ届きました情報はいかがでございましょうか、政務次官でもどなたでもけっこうでありますが、小笠原は帰還する見込みがありましょうか、どうでしょうか。
  81. 松本瀧藏

    松本説明員 お答えいたします。この問題につきましてはいろいろとワシントンで関心を持って討議されたことは御承知通りであります。帰りまして、この問題について、いろいろな角度から促進するように目下努力いたしております。
  82. 菊池義郎

    ○菊池委員 何か具体的な情報は参っておりませんか。半分返すとか三分の一返すとかいったような……。
  83. 松本瀧藏

    松本説明員 具体的な結論に到達するまでにはまだいっておりませんが、大体ほぐれる、やや自信を持っております。
  84. 菊池義郎

    ○菊池委員 それから戦犯の釈放問題でございますが、旧連合国は、米国を除いた他の国はもう全部日本の戦犯を釈放しているのです。アメリカだけでございますが、アメリカのいわゆる三人委員会意見が別々に分れておりますので、日本の要請に結論を出すことができないような状態になっておりますが、巣鴨におる六十名の日本戦犯のうち四十七名は、もうすでに刑期の三分の一以上を経過していつでも仮出所ができるような資格が与えられておるのでありますが、この点について外務省ではどういう折衝をしておられますか。また大臣は、渡米の際にこの問題についても若干話合いをされたと思います。将来の問題としては、われわれも努力いたしますし、また明るい見通しがあり得ると信じております。
  85. 菊池義郎

    ○菊池委員 東南アジアの開発構想について、総理と大臣と全く意見が同じであるということでありますが、世間ではこれが失敗に終ったと言っておりますけれども、われわれは失敗には終らぬと考えております。それには決して論拠がないわけじゃない。アメリカでも、かつてのフェアレス報告、ジョンストン報告、あるいはダレス構想などと、いろいろ過去において幾たびとなく米議会に提案、論議されておりまするし、アイゼンハワーも過半の特別教書におきまして後進国援助構想を提案いたしておるのであります。でありますから、日本が根強く折衝を続ければ、米国も決してこれを不問に付することはなかろうと思うのです。ところでわれわれの直観は、どうも米国日本を中へ入れないで、彼らみずから直接に東南アジアを援助しようという考えがあるのではないかと思うのでありますが、大臣の考えはどうでございましょうか。
  86. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 アメリカとしても東南アジアの経済的確立というものについては相当関心を持っておられると思います。ただアメリカが今日までやっておりましたことが、必ずしも東南アジアに完全な効果を上げているとは私ども信じないのでありまして、そういう意味におきましてアメリカに対して忠言をする立場に日本もあり得るのではないかということを考えております。
  87. 菊池義郎

    ○菊池委員 われわれのしろうと考えでは、どうも東南アジアはみんな国々によって事情が違いますし、また国民感情も違っておりますので、これは共同基金によらないで、直接個々の国々と結びついた方が便利で一番早道じゃないかと考えるのでありますが、大臣の構想はどうでありますか。
  88. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 ただいま菊池議員からお話のありましたように、アメリカにもエリック・ジョンストンの構想その他いろいろな東南アジアを一体として進めた構想があるわけでありまして、必ずしも、一国、二国同だけの問題としてこれを扱わない方が適当だという意見もあるわけであります。従いましてそれらの問題につきましては、今後なお日米間において十分話し合うことによって問題の進展をはかり得るのだ、こう考えております。
  89. 菊池義郎

    ○菊池委員 それから中共貿易について、制限の緩和されたものだけいつも発表しておりますが、輸出を禁じておる品物をなぜ発表しないか。それが輸出業者にとりましては一番便利だろうと思うのです。どういうわけで発表しないのでありますか。この点一つお伺いしたいと思います。
  90. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 輸出禁止品目につきましては、現在それぞれパリにおいて協議が進んでおります。従ってその中で解除され、あるいは数量統制に移っているものもあるわけであります。禁輸品のあれを発表しないという必要はないのでありまして、発表しても差しつかえないと思うのでありますが、それらの点についてはこまかい点は事務当局から御説明いたさせます。
  91. 菊池義郎

    ○菊池委員 時間がありませんので、事務当局のお話を聞くひまはありません。  それからインドネシアの賠償でございますが、前内閣と違って今度の内閣は膨大な賠償をふっかけてきております。これは日本と前の内閣との交渉は白紙に返したという意味でありましょうか。外務省はそう受け取っておるのですか。
  92. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 ジュアンダ総理から岸総理に対して親書が来たのでありますが、その中に表示してあるのは前内閣の交渉と必ずしもその点に沿っておらぬところもあります。しかし前内閣の交渉そのものもまだ具体的に最終的段階にきておったわけではないのでありまして、従って今度の向うの意思表示、また前内閣時代の問題とを考慮して今後その基礎の上に立って交渉を進めていくという考え方でございます。
  93. 菊池義郎

    ○菊池委員 そうしますと、前内閣当時の交渉額を堅持するというお考えでございますか。
  94. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 前内閣当時の交渉を基礎にして、新たに向うの提案等も考えながら交渉の一歩を進めていく、こういうことであります。
  95. 菊池義郎

    ○菊池委員 戒厳令下に成立したジュアンダ管理内閣でありますから、どれだけの命脈があるか、どれだけの安定性があるかということを考えなければならぬと思うのであります。どうかそのことを考えて交渉に当っていただきたいと思います。フィリピンは最初から反日的であったから、非常な損害を日本から受けました。ところがインドネシアは非常に親日的であって、日本の宣伝もうまかった。君らは日本人の先祖だ。耳飾り、首飾り、みな日本人と同じだ。われわれの先祖と君らの先祖と同じだと軍が宣伝したので、非常に喜んだ。また日本軍の力によってハッタもスカルノもインドネシアを独立させたいという熱意に燃えておったのでありますから、最初から協力的で、何らの損害も日本軍からこうむっていない。そういう点を考慮に入れていただきたいと思うのであります。
  96. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 賠償の問題は、戦争中日本がかけました迷惑に対して、日本国民としても日本政府としても心からその賠償の責任を感じて考えるべき問題でありまして、それぞれの国における戦前の反日であるとか親日であるとかいう態度にかかわりませんで問題を取り扱っていきたい考えております。
  97. 菊池義郎

    ○菊池委員 ほとんど損害がなかったという点をどう考えるか。
  98. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 そういう点につきましては、いろいろ見方の相違もあろうかと思います。しかしインドネシア側で損害が相当あったという見方をしているのでありまして、それらの点についてはわれわれも十分親切に考えていかなければならぬのではないかと考えております。
  99. 菊池義郎

    ○菊池委員 白状いたしますれば、私は当事海軍の嘱託で向うを回っておりまして、よく現地の事情を知っておりますので、フィリピンとはまるで違っている。フィリピンと同じような賠償を払ったらばそれこそ大へんなことで、また賠償を留保しておりますビルマもきかないでしょう。それは大へんな額になってしまうので、この点も十二分に考慮していただきたいと思うのであります。  それから日米委員会が開かれる。この委員会では共同声明に記載された以上に具体的な協議をするのでありましょうかどうでしょうか。またそのメンバーはきまっておりますかどうか。
  100. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 内容につきましては、先ほど岸総理からお話がありましたように、安保条約の実施の問題に関しまして両者がいろいろ話し合っていくことが必要であります。またその結論として将来安保条約問題をどうするかということも想定されると思うのです。なおメンバーその他につきましては、昨日マッカーサー大使と私と話し合いをいたしておりまして、まだ進行の過程でありますので、ここで申し上げるわけには参りません。近日中にそれらの線が出てくるだろうと思います。
  101. 菊池義郎

    ○菊池委員 ソ連の外交官施行を制限する。これはほとんど児戯に類することで、ソ連にはいろいろ日本から抗議を申し込んだということでありますが、いろいろ事情があって機密を守らなければならぬ国ですから、英、米、フランス、西ドイツ等に対して制限しているのでありますが、英米フランス等にならって日本も制限しなければならぬと考える必要は毛頭ない。それよりもほかに考えなければならぬ大きなことがたくさんあるのです。そういうちっぽけなことはいいかげんにやめて、もっと明けっぱなしに――日本に何の秘密があるのです。彼らは探り放題に探り尽しているのです。何の秘密もありはしない。残る軍事問題も知れたものです。今からでもおそくないから、この申し入れば取り消した方がいいと思いますが、大臣はどうお考えになりますか。
  102. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 外交上の慣例といたしまして、ソ連のやった措置に対しこちらもそれに相当いたします措置をとったわけであります。その他の点は御意見として承わっておきます。
  103. 菊池義郎

    ○菊池委員 もう一点だけお伺いいたします。ソ連から招待された平和友好祭の出席者五十名を百五十名と三倍にしたのですが、これをふやすなんということは百害あって一利ないと思う。いいところばかり見せて悪いところは何も見せない。結局ソ連の賞伝にひっかかるだけのことなんです。今後はどういうことがあろうとも増してはならないと思うのですが、外務大臣の所信を伺いたい。
  104. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 ソ連の青年友好祭に対する招待でありますが、これは私、民間におりましたときに見ておりまして、何と申しましても五百人という数字は常識上多いのじゃないかと考えておったのであります。しかし、同時に私は、日本の青年諸君が世界各国を見て歩くことは決して悪いことじゃないと思うのでありまして、行っていい点も見つけあるいは悪い点も見つける、それはソ連に限らず英米その他東南アジアでもそうだと思うのです。ただ日本の経済事情、外貨の事情、その他いろいろの事情がありますから、やはり適当な数にしぼっていくことはやむを得ぬことだと思います。そういう意味において、青年諸君の若干の希望は入れていくのが適当でないかという考え方を私どもはいたしております。
  105. 野田武夫

  106. 大西正道

    大西委員 私は、実は岸総理大臣に聞きたいと思ったのですが、時間の関係外務大臣に聞くことになりましたので、問題を限定してお伺いいたします。  日米共同宣言を見てみますと、日本国民が非常に要望しておりました沖縄の返還の問題につきましては、岸総理はかなり強く国民の意向を訴えたようでありますけれども結論は何ら進展を見ませず、むしろ従来とっておりましたところの残存主権を確認して、もう少し悪く言えば永久的に米軍の占領を認めたような結果を招来しておると思います。これは日本国民すべての非常な痛恨事であると同時に、現地の沖縄住民の非常なる悲しみであろうと思うのです。本日この席にも沖縄諸島日本復帰期成同盟の方から切々とした陳情が参っておるのでありますが、新しい外務大臣はこの問題について誠心誠意復帰のための努力をされる必要があろうと私は思うのであります。その決意のほどと、もしその決意をお持ちであればどういう具体的な方策をもってこの運動に乗り出していきたいと考えておられるかを一つお伺いしたいのです。
  107. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 岸総理アメリカで話されました結果が、ただいま言われましたような永久に返さないようなむしろ結果になったではないかということに対しては、私は御意見と反対の考え方をいたしております。従いまして、今後外務大臣といたしましても、極力それらの線に沿いましてあらゆる方面からこの問題を取り上げていきたいと考えておりますが、何といたしましても日米関係は広範ないろいろな問題がありますので、それらの問題について十分全体的に考慮しながら問題を進展さしていきたい、こう考えております。
  108. 大西正道

    大西委員 それでは外務大臣のお考えですが、沖繩の復帰をはばむ条件、そうして米国沖縄日本に返還しない、その理由は何だと外務大臣考えられますか。
  109. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 私ども今日までアメリカがこの問題につきまして、極東の防衛その他について、戦争中以来、戦後の日本の立場を考えてきていることだと思います。しかしながら、日本も次第に経済的に立ち直ってきております。また政治的にも立ち直っていると思います。国際社会にも復帰することができた。そういうような現状認識の上に立って参りますと、私どもはそれが可能な点が将来にわたってあり得ると考えておるわけであります。
  110. 大西正道

    大西委員 どうも私の質問に対してのお答えではないですが、何がゆえに米国沖縄日本に返さないと主張しているのか、この点を明確にされて、その隘路打開のためにいろいろな方策を講じられる必要があると思う。この間の日米共同宣言によりますと、大統領は、脅威と緊張の状態が極東に存在する限り合衆国は現在の状態を維持する必要を認める、こういうように明確に言っておるのであります。これはお読みであろうと思うのであります。そういたしますと、私どもはそういうように考えないけれども米国の言い分に従いますれば、極東に緊張と脅威がなくならなければ沖縄は返さぬ、こういうことになっている。ところが、今日まで岸総理がとって参りました外交方針を見て参りますと、むしろ極東の緊張と脅威を緩和する方向に果して進んでいるかどうかということに対しては、私は大へんな疑問があろうと思います。国連に加盟したときに、前にもお話のありましたように、日本は東西のかけ橋になる、そしてその緊張緩和のために努力する、こういう方針を打ち立てているにもかかわらず、今回岸さんが台湾においてあるいはまた米国の議会において、またこの共同声明の前文におきまして非常に露骨なる反共の演説をやっておる。それはもう自分の従来から持っておった所信であるとまでこの委員会で表明されているのであります。こういうことになりますと、むしろ緊張の緩和どころではない、緊張を促進している要素を――岸さんの言うところの日本の外交方針はとっているということになる。こういうことでは日本政府みずから沖繩の復帰をはばんでいることになると私は思うのですが、この点につきましてあなたがほんとう沖縄の復帰ということを熱願され、しかもアメリカが極東における脅威と緊張がなくなったときに初めて返すということになれば、すべからく当初の日本が国連に加盟したときのあの外交方針の大道をもう一回確認してそうしてその後岸さんのやられた反共的な態度を清算することが、沖縄復帰のための一つの重要なる点であろうと思う。この点につきまして、外務大臣といたしましては、行きがかりにとらわれず、虚心たんかいにどういうふうにお考えになりますか、所信を聞きたいと思います。
  111. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 岸総理が、極東の緊張を非常に激化させる言動をとっているとは私は思わないのであります。日本としても極東における緊張を緩和するということについては、われわれは最善の努力をしていくことは、それは世界平和のために非常に重要な問題であると思います。ただ極東の緊張、戦争その他の脅威というようなものを取り除く方法その他については、いろいろな方法があろうと思います。あるいはいろいろな行き方があろうと思います。従いましてそれらの点について、必ずしもただいま御質問になった方と私どもが同意見だとは言えない点もあろうかと思いますけれども日本国民として極東の緊張を緩和していくということについては、みんな同じような方向でいっておるのだ、政府もむろんそうであります。
  112. 大西正道

    大西委員 岸総理の演説その他随所における所信の表明が、猛烈な反共の線で貫かれていることは、だれ一人疑うものはないと思うのです。そうしてそういう態度をとっておりながら、しかも中国との貿易をやろうとか、あるいは日ソ間の親善関係をこれ以上進めようなどということは、これは木によって魚を求めるようなものなのです。ですからあなたは、岸総理の今回の訪米に前後して表明されましたところの所信というものが、反共的な、非常に国際緊張を激発していくような要素を含んでいないとほんとうにお考えでしょうか。これは新聞その他の報ずる向うの米国のプレス・クラブにおけるところの演説、あるいはまたまぎれもないこの共同声明の前文をごらんになりましても、明らかにこの点は出ておるのであります。外務大臣といたしましては就任早々といいながら、やはり外務大臣一つの権限において、間違っていることは今後検討していくという態度がなければならぬと私は思うのです。もう一回、この岸総理の反共演説というものが、ほんとうに緊張の緩和のために役立つとあなたはお考えかどうかということを私は聞きしたいと思います。
  113. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 岸総理はたびたびいろいろな機会に、今お話のような意見を述べられておると思いますが、私の考えるところでは、岸総理は共産国家に対する国内問題として、内政干渉的な立場でものを言っておられるとは考えておりません。ただ共産主義という脅威に対して、それが日本の現在置かれている国情から見て、不適当であろうということは言われていると思います。そういう意味におきまして私はむろん岸内閣の閣僚でありますから岸総理の方針を体して参りますけれども、今後岸総理と相談をしながらやっていくことでありまして、それに対して意見を申すこともありましょうし、また総理意見を聞くこともありましょうし、そういう意味ではわれわれとしては最善の努力を尽してやっていくつもりであります。
  114. 大西正道

    大西委員 この岸総理の反共的な態度というものは、これは今後の日中間の問題、日ソ間の友好関係を進めていく上にも、私は非常に問題になると思うのです。すでに周恩来の日本に対するかなり強い、抗議めいた所信の表明がございましたが、それなどは明らかに今回の岸さんの訪米におけるところのあの反共演説というものが、こういうふうに影響している、私はこう思うのであります。この点につきましてはこれ以上申しませんけれども、とにかく国連中心主義という日本の外交の大方針が、岸さんの渡米によって反共的な方面に進められていった、こういうことにつきまして、私はまことに遺憾の意を表せざるを得ないのです。  次に、今回合意されましたところの日米委員会問題でありますけれども、ここにおいては安保条約行政協定改訂問題が主なる任務ではない。それは話し合いを進めていく上に、そういう問題が出てくれば一つお互いに討議をしてみたい、こういうことでありますが、一体この日米委員会というのは、単なるそういう話し合いの、あるいは諮問的な機関なのですか、それとももう少し権限のあるものなんですか、この点を明確にしていただきたい。何となれば、行政協定によるところの日米合同委員会と競合するところもあるし、屋上屋を重ねるということになるのではないかと私は考えますので、この点を一つ明確にしていただきたい。
  115. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 既設の日米合同委員会は、御承知のように主として事務的な問題を扱う機関でありまして、今回の日米委員会と称されるものは、もう少しハイレベル話し合いをいたしていきたい、こういうわけであります。従いまして、安全保障条約の実施に当って困難でありますそれらの点を相互に忌憚なく話し合いまして、そしてまた情勢に応じそれらの話し合いに応じて、終局的に安全保障条約改訂すべき点がきまって参りますれば、これは当然日米両国政府間の交渉になるわけでありまして、それらの点において忌憚ない話し合いをする機関と存じます。
  116. 大西正道

    大西委員 安保条約に対する不備な点、改正すべき点ということは、今さらこれから話し合いをして、その問題点を出すというのじゃなしに、すでにその問題点は明らかなんです。これはもうこの委員会におきましても再三論議されているのです。そこで私がお伺いしたいのは、日本側のこの日米委員会に対して安保条約を改正するというそのねらい、骨子というものはどこにあるか。これはこれから話し合いをしていくというような問題じゃなしに、もうすでに米国において安保条約改訂問題についていろいろと意見を交換したときに、当然具体的な問題として私は話し合いをされていると思うのです。こまかいことは別といたしまして、大きなところを一つお述べ願いたいと思います。
  117. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 日米安保条約というものは、御承知のようにああいう状況下にできた条約でありまして、これを将来にわたってどういうふうに運営していくか、また改正していくかという問題については、それ相当の議論もありましたことは私も承知いたしております。が同時に、この問題解決についてはアメリカ側も相当困難な立場もあるように見られます。また国内問題としても相当研究もしなければならぬところもあります。さしあたりわれわれとしては、安保条約の実施において、あの条約のままでももっと対等の立場でものが言え、処理できる事態も多々起りつつあるのじゃないかと思うのでありまして、そういう問題をまず話し合いながら、将来の問題点にわたっていくというのが私の考えであります。
  118. 大西正道

    大西委員 そういうふうな態度では、安保条約を改正すべしという国民の強い要望にはこたえられない。むしろあの機関は、そういう改正をいたずらに遷延する一つの逃避の機関である、こういうことになると私は思う。この機会は私は、今外務大臣の言葉の中にありました対等なものにするというこの考えでありますけれども、対等なものにするということは、今ある安保条約を将来改正するという場合に、これを双務的なものにするというような、そういう意味を含むものであるかどうか、そういう構想を持っているのかどうか、私どもはそれは非常に危険な問題である、日本の憲法の建前からいって、かつまたこの極東における緊張の緩和の建前から申しまして、非常にこれは問題であろうと思うのです。で、私どもはそういう意味の双務的な攻守条約的なものであっては、そういう意味の改正であっては、絶対にならぬと私ども考えるのであります。私どもは基本方針といたしましては、あくまでもこの条約の廃棄、解消という、こういう線に従ってその一線に近づくためのいろいろな面の話し合いをすべきだ、日本政府態度はしかあるべきだ、こういうふうに考えるのでありますが、今申しますところの対等という名のもとに相互平等的なものに持っていくという意思はないか、かつまたSEATOに参加するというような構想はないかということを、ここでお伺いいたしておきます。
  119. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 ただいま対等という言葉を申し上げましたのは、岸総理が渡米されまして今後対等の立場に立って、ものの協議をするということで、従来のあれから一歩進んで画期的な事態になったと私どもは信じております。従いまして、今のは安保条約とかそういう問題の改正を対等にするというのでなくして、対等の立場に立って今後の問題を話し合うという意味で、対等という言葉を使ったのであります。御了承願います。
  120. 大西正道

    大西委員 これでおしまいにしますが、日韓間の問題が非常に停滞しておりまして、岸さんは再三この解決の言明をいたしておるのですが、いまだにもってごたついております。そこで私は一つこの問題を促進していただきたいのですが、その際北鮮の地位に関してどのように考えているか、北鮮も韓国の領域に含まれたものだとして日韓間の話し合いをしておるのか。これは、今は考えていない、将来その問題については考えるという問題でなしに、現に進んでいる問題であります。この北鮮の地位をどのように規定して話し合いを進めているか、このことを最後にお伺いいたしまして、一つ日韓間の問題はすみやかに妥結に導くようにお願いをしておきたい、これだけであります。
  121. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 日韓間の交渉の問題につきましては、われわれもお説の通りできるだけ努力をして、一日も早く問題解決することを希望しておるのでありまして、今後ともなお一そうの努力をいたしたいと思っております。なお北鮮の問題につきましては、国連に加盟しております今日、国連の問題と並行して考えていきたいと思っております。
  122. 大西正道

    大西委員 誤解があるのです。韓国との交渉の際に北鮮というものを韓国の領域と認めての話し合いをしているのかということです。北鮮の問題をどうするかという問題を別個に私は聞いているのではない。韓国としては北鮮というものを含めたものが韓国の領域だとして話し合いをしてきているはずです。日本はそれにどう対処しているかという問題です。
  123. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 現在の段階において、そういう問題として扱っておらぬのであります。
  124. 大西正道

    大西委員 そういう問題としてはとはどうですか。
  125. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 要するに今の抑留漁民の問題解決することによりまして、そうして実際に日韓会談に入ろうという立場にいるわけですが、そういう問題を含めて韓国側も、ものを言っておりませんし、われわれもそういうことを考えておりません。
  126. 野田武夫

    野田委員長 戸叶里子君。――ちょっと御発言前に御注意いたしますが、質問者が戸叶委員のほかに四人おられますので、外務大臣の出席時間が大体一時間の予定でございまして、そのお含みで一つ御発言を願いたいと思います。
  127. 戸叶里子

    戸叶委員 藤山外務大臣は、岸内閣では非常に期待された方でございます。それはなぜかといいますと、外交が国連加盟後非常に重要な段階に来たときに、経済外交推進の民間人の外相として登場せられた方だからだと思います。さらに日本と将来非常に関係のあるところの東南アジア問題には非常に精通せられているという、こういう点でこの外相に期待をされていると思うのです。しかしこの外務大臣に私が大へん御同情申し上げることがございます。それはさきに岸総理大臣東南アジア訪問されまして、そうしてコロンボ・グルーブの諸国ではアジア外交を基調とする方針をとるということを言われながら、今度はアメリカへ行かれまして、中立主義を排撃して反共を強調されている。こういうような君子豹変ぶりでは、この事態の収拾というものはまことに困難だと思うのですが、こういうようなときに当りまして、どんな構想をもってお臨みになるか、藤山外交の方向をお示し願いたいと思います。
  128. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 私ども日本の外交方針としまして、世界の友好国とことごとく親善関係を打ち立てるということは、これは申すまでもないことであります。その点について努力していきたいと思います。特に日本の置かれた位置からいいまして、対米外交、対東南アジア方面の外交というものは、これまた重要であろうと思うのであります。自由主義陣営の中にありまして東南アジア外交を推進して参りますということは、私としては必ずしも矛盾していることだとは思わないのでありまして、国にはそれぞれの方針もあろうと思いますが、それらのものを十分にわれわれ了解しつつ外交を進めていくということを考えております。
  129. 戸叶里子

    戸叶委員 今のお話を何っておりますと、あらゆる友好国との親善をはかっていきたい。そこでまた東南アジアの外交をも推進していく。これはまことにけっこうなことだと思うのです。ところが先ごろ岸さんがアメリカで発表されました共同声明の中を読んでおりましたときに、必ずしもそういうふうなことが強調されておらないで、むしろ非常に向米一辺倒的な考え方がそこに出ていたというところに非常に問題があるのであって、こういう点に対して新外相が岸外交というものをある程度是正されることを私どもは心から望むものでございます。その点が一つと、たとえて申し上げますならば、日本アメリカの人たちの最高の方々との会合におきまして、岸総理大臣が中共の貿易の拡大を言われたことはいいことですが、中共の貿易の拡大はするけれども中共は承認しない、こういうことを言われたということは私どもはどうしても納得ができない。やはり一つの失敗ではないかと思います。それはなぜかと申し上げますならば、ヨーロッパ諸国はもうすでに中共の承認の方向に向ってきておる。ビルマにしてもインドにしてもセイロンにしても、その首相が中共の承認ということに対して岸首相にはっきり言っているわけでございます。そこで国際政治にタッチするものであるならば、隣国の中共の承認ということは当然日本があっせんすべきではないか。ことに国連の加盟ということに対しては、国連というものが一方に偏しない世界の平和を確立するというような立場から考えても、やはり中共を国連に加盟させるということのために私は日本努力をすべきではないか。そうしないならば、日本の外交の見識というものや、あるいは活動舞台というものが非常に狭められていくのではないか。この一、二年の間の非常に大事なことではないか、こう考えるわけでございますが、岸さんは、きょうの御答弁を伺ってみましても、今のところは中共の承認をしない、つまり中共の国連加盟をも賛成しないということであろうと思いますが、その今のところというような時期的な問題もどのくらいのことを考えていられるか。こういうふうなことにつきましても外相の御意見を伺いたいと思います。
  130. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 御承知のように日本は国連に加盟して、国連中心に外交を展開していこうということは申すまでもないことであります。従いまして現在の段階におきまして、国連がまだ中共に対しての処置をいたしておるというような関係もありますし、国連内におけるその他の動き等を見て参りませんと、今日その時期がくるかこないか、またどう対処すべきかということを申し上げかねると思います。
  131. 戸叶里子

    戸叶委員 それではたとえば国連の中にいるアジアのグループというような人たち、あるいはまた先ごろ岸首相がインドを訪問されたときもそういう話がありましたが、今度またネール首相日本に来られたときに、中共の国連加盟についての話等がありましたときに、外務大臣はこれを支持されるでございましょうか、どうでしょうか。
  132. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 国連の中において今のような情勢を判断しつつわれわれは考えていく問題であります。同時にネール首相が来られましていろいろの御意見があるとすれば、それをわれわれとしては承わって、十分将来の問題として考えるということであろうかと思います。
  133. 戸叶里子

    戸叶委員 今の将来の問題ということと、それから岸首相の言われるいましばらくたってからというのは大体同じであろうと思いますが、それではもしも出されましたときにはどの程度の期間を置かれるおつもりでございますか。私がそう申し上げますのは、ヨーロッパの各国がもうすでにそういうふうに国連に中共を認めた方がいいというような情勢になってきていることは、外務大臣も御承知だと思います。そこで私はこの点をもう一度伺いたい。
  134. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 かりにそういう問題がありましても、私どもとしてはむろん日本の立場から御意見を承わって、自分自身の立場から問題をながめて、そしてそういう問題の取扱いをしていきたい、こういうふうに考えておりますので、時期等のことを申し上げるわけにも参りません。
  135. 戸叶里子

    戸叶委員 それではこれはそのくらいにいたしますが、先ごろの日米共同声明の中で、日米関係で共通の利益と信頼に確固たる基礎を置き、新しい時代に入りつつあるということを述べております。このことは今まで日本ができるだけ世界のあらゆる国との外交を進めていこうとしていたときにアメリカへ行かれて、非常に反共の精神で自由主義諸国との協力と団結というようなことを岸首相が言われた。そのことを新しい外交として意味するものであるか、それとも一体どういうふうに外交の新事態に入るということを意味するのであるか、外務大臣に伺いたいと思います。
  136. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 共同声明における対等の立場というのは、御承知のように占領下から引き続いて日本アメリカとの関係が必ずしも対等の立場でなかったように感じられる点もあり、また事実そういう点もあったと思います。今回の岸総理アイゼンハワー大統領との会談その他を通じて、全く日本が対等の立場で日米間に話し合いができる。またするということが確認されたわけでありまして、それが日本の外交における一つの段階を生んだ、こう御承知願いたいと思います。
  137. 戸叶里子

    戸叶委員 そこで私は時間がありませんから、もう一つ中共貿易のことで単刀直入に伺いたいと思いますが、先ごろ私ども外務委員の一人といたしまして関西へ出張いたしました。そのときに関西の貿易をやっていらっしゃる方々が集まってこられましていろいろな意見を述べられたわけです。その意見を集約いたしまして結論を申しあげますと、中共貿易に対して自分たちは非常に期待をかけている。そしてまた今後もその拡大をはかってほしいけれども、一体今の政府が中共貿易を支持すると言いながら、果して支持してくれるのだかどうだかということがさっぱりわからない。たとえば日中議員連盟というようなものができているけれども意見の対立等が見られるのであって、お互いに話し合い、歩み寄って、そして今直面している問題解決してもらいたい。それには先ごろの岸首相の台湾での発言等もあって、中共が日本に対して大へん硬化した態度には出ておりますけれども、今日直面している中共貿易促進の問題は指紋の問題だ、それからもう一つは、代表部の設置を認めるか認めないかというこの二つの問題にクローズ・アップされてきている。こういうことに対して今の政府がどういう考え方を持っているか、早く出してもらいたいというような意見を聞いてきたわけでございます。これに対しまして外務大臣がどういうふうにお考えになっておられるかをこの機会説明していただきたいと思います。
  138. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 中共貿易を拡大していくということにつきましては、岸総理も同様な考えを持っておられることは御承知だと思います。また民間、特に中小企業方面において中共貿易の拡大について非常に熱意があるということも、私、民間におりました時代から承知いたしております。従いまして、中共貿易の拡大、増進という問題につきましては、私といたしましても、できるだけの手を打つことを今後とも考えて参りたいと思っておりますが、ただ指紋問題とこれが混淆されますことは、これらの問題を取り扱う上においてまことに迷惑なんでありまして、そういう問題と別個の問題として考えていかなければならぬ、こう思っております。
  139. 戸叶里子

    戸叶委員 現実の問題といたしましては、やはり指紋問題なり、代表部の設置の問題がからんでいるわけです。これは切り離して考えられるならばそれはそれでいいといたしましても、現実問題としてはからんでいるわけであります。ですから今の政府がこれに対してどういう態度を示すかということをはっきり私はこの際打ち出すことが必要ではないかと思うので、もう一度重ねてお伺いしたいと思います。
  140. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 指紋問題は中共を対象にした問題ではないのでありまして、わが国に在住二ヵ月以上の外人に対しては一律に適用する法律の問題であります。従いまして、中共の方でもその問題については誤解のないように問題考えていただかなければいけないのではないか、こう考えております。
  141. 戸叶里子

    戸叶委員 そうしますと、今度のこの指紋問題は、やはり政府としては今までの慣習通りに行う、こういうふうに考えなければいけないのでしょうか。
  142. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 指紋問題は単に中共の問題でなく、他の諸外国の人の取扱いにも関連いたしておりますので、これを軽々に曲げますことは、諸外国の入国者に対しても影響がある問題でありまして、この問題はそういう観点から扱って参りたい、そう考えております。
  143. 戸叶里子

    戸叶委員 そうしますと、代表部設置の問題は今日お考えになっておらないのでしょうか、どうでしょうか。
  144. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 中共との貿易を増進することは、総理もそう言っておられますし、私もできるだけ努力してみたいと思っております。従いまして、その方法をどういう処置によりまして進めていくかは今後の問題として私も考えていきたい、こう思っております。
  145. 戸叶里子

    戸叶委員 この問題について、私はまだ外務大臣の御答弁で納得はいたしませんけれども、これ以上の質問はいたしませんが、この問題がある程度片づきませんと、今回の中国との第四次貿易協定というものの進展も非常に危ぶまれるのではないかということを私は懸念いたしますので、なるべく早くこの点を御考慮願いたいと思います。  時間がありませんので最後一つ伺いたいと思いますが、日本の引き揚げ問題等で非常に骨を折って下すった李徳全女史が、今回日本の民間団体が主催いたしまして与党の方々も皆さんお入りになってそして日本に迎えて、李徳全女史に今までの御苦労を感謝し、今後の引き揚げ問題解決をもお願いするというような計画がだんだん進められているわけです。順調に一応進められておりますものの、先ごろの発表されましたような岸総理の発言等が差しさわるようなことがあってもいけないと思いますので、やはりこの際李徳全女史に対しては日本の国としてもあたたかい気持で歓迎するというような積極的なお考えを持たれておるかどうかを一応私は承わりたいと思います。
  146. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 李徳全女史が日本におきます遺骨収集に対して感謝のために来られるという事柄自体に対しては、別段私どもとして異存はないわけであります。ただそれ以外の問題が付随する場合におきましては、私どもとしても考えなければならぬ場合もあると思いますけれども、そういう意味で感謝を受けられるだけのことで来られるならば歓迎をして差しつかえないと思います。
  147. 戸叶里子

    戸叶委員 引き揚げの問題等でも伺いたいと思いますが、次の機会に譲りたいと思います。
  148. 野田武夫

  149. 森島守人

    森島委員 今後いろいろ外務委員会等で機会があると思いますので、こまかい具体的な問題は一切省きまして、藤山さんが外交を進められる上において前提条件となるべきものについて率直にお伺いいたします。  けさほどもいろいろ具体的な問題がありましたが、政府と野党との意見の相違は、結局世界情勢に対する認識が一致しているかいないかという点に帰着している、こう思っております。岸さんもこの点については渡米される前に、議会において、今後の日米両国がとるべき政策を論ずるに当っては、現在の国際情勢と今後の動向についての認識を一にすることがぜひとも必要である、こう言っておられるのであります。おそらく岸さんの意向では共同声明に盛られた問題、これは世界情勢に関する認識を一にしたという前提に立っていることと私は思うのです。そ、こで藤山さんにお伺いしたいのは、岸さんと大統領とが意見が合致したというのは、共同声明の冒頭にあります全面戦争の危険は幾らか遠のいたが、国際共産主義は依然として大きしな脅威であるということについて意見が一致した、こう言っておる。ことにこの前段は、私非常に重要であると思う。全面戦争の危険は幾らか遠のいた、相当程度にあるものだというのが岸さんの意見だと思います。藤山さんはどうお考えになりますか。
  150. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 全面戦争の危険は幾らか遠のいたということを逆に皮肉に裏からお話があっても、私はそれは無理だと思うのでありまして、私は表通り全面戦争がだんだん遠のいているんだというふうに解釈してよろしいと思います。
  151. 森島守人

    森島委員 そこで私のお伺いしたいのは、岸さんは東南アジアから帰ってきて、地方長官会議を開かれたのです。その席上ではこれと全く逆な意見を発表しております。私ここに新聞の記事があるから読んでみますが、岸さんは中近東やポーランドやハンガリーの動きに言及した上で、「このような局地的な動きは今後も皆無とは言えないが、そのような局地的な動揺が第三次大戦にまで発展する可能性はほとんど絶無と言ってよいと思う。」ということをはっきり述べておられます。第三次戦争の発生は絶無であるということまで言っておられるのだが、これと共同声明の前段とは全く食い違っておる。民主政治家として国民に対する責任を非常に懈怠しておる、この点について藤山外相の御見解を伺いたいのです。
  152. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 今日の時勢におきまして第三次世界大戦を予想しますことは、原子戦争を予想することなんです。世界じゅうのすべての国民が原子戦争というものを希望もいたしておりませんし、否定いたしておるわけなんであります。そういう意味においてすべての国民が第三次戦争というものを絶無であることを望んでおるわけだと思うのであります。従ってその過程に進んでいくということをわれわれは予想しておるのでありまして、むろんそのときどきの若干のニュアンスはあろうかと思います。表現上のニュアンスはあろうかと思いすすが、世界の全人類が第三次世界戦争、特に原子力を伴った戦争を希望しておらず、またそういう形態に持ち込むことを避けておることは当然なことであると思います。
  153. 森島守人

    森島委員 私は世界の民衆の希望とか要望とかいう点から論じておるのじゃない。岸さんは現実の問題として可能性は絶無であると言っておる。しかるにアメリカへ行きますと、ダレスその他との話し合いの結果、全面戦争の危険は幾らか遠のいたと言っておる、多分にあるということなんです。その前提から小笠原や沖縄問題も出てくれば、安全保障条約問題等も出ておるのです。その結論のいかんは、私は、誤まった前提条件にあると思う。むしろ岸さんは日本の見ておる、地方長官会議で述べた戦争の危険は絶無なんだという点をアメリカに率直に言って、その反省を求めてこそ、日本ほんとうの外交が打ち立てられるものだ、こう私は思っておる。これ以上は、御議論もあると思いますが、意見は伺いませんが、この前提のもとにおいて諸般の問題を検討していただきたいということを要望して質問をやめます。
  154. 野田武夫

    野田委員長 次に質疑の通告があります稲田委員に申し上げますが、外務大臣との約束の時間が経過いたしております。しかし今外務大臣の御了解を得ましたから、大体五分間程度質疑をお願いいたします。
  155. 福田昌子

    福田(昌)委員 きょういろいろお伺いさしていただきたいと思ったのですが、時間がないそうでございますから、おもにお願いのような質問をさせていただきたいと思います。  私ども藤山外相の外交政策に非常な期待を持っておるのでございますが、ごとに東南アジアや中近東の情勢につきましては非常に御造詣が深いというこの点につきまして特に今日重要になっております東南アジアの外交、中近東の外交に対して藤山外務大臣としてどういうような政策をとろうとしておるのか、この点をごく大ざっぱに御説明をいただきたいと思います。
  156. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 経済外交を推進していくということは一般の世論でもあり、また私自身も日本の立場を考えましてそう考えておるわけなんであります。ただ経済外交という考え方は、何か日本の利益のためだけに経済外交を推進するのだという誤解があってはならぬのでありまして、私の経済外交に対する考え方は、要するに第二次世界大戦後に植民地から独立をいたしました各国の政治的独立を全うさせるための裏打ちとしての経済建設計画、各国の民生の安定ということが今企画されておるわけであります。それに対して日本が持っております技術、経験、また物資等につきましてできるだけそれらの国民の意図に応じた方法によって協力していく、そうしてそれぞれの国の経済建設を全うして、政治的独立が達成されるということを日本の経済外交の基幹として堅持して参りたいというふうに考えております。
  157. 福田昌子

    福田(昌)委員 岸総理大臣がアジアやアメリカ訪問の際に述べられました東南アジアの経済開発基金のこの構想につきましては、藤山外務大臣すでに岸総理の御出張前にこの御構想にあずかっておられたのかどうか、これが今日ただいまの経済外交のお考えに一致しておるものか、この点伺いたいと思います。
  158. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 東南アジアあるいはアメリカに持っていかれました開発基金の案そのものの直接の作成には、私は関与いたしておりませんことは当然であります。しかしああいう構想について私どもが、平素そういう考え方を持っていたということも、これはまた事実であります。ただこの問題につきましては相当広範囲な影響もありますし、それぞれの国のそれぞれの考え方も十分取り入れて参らなければならないのであります。しかし何らかの形でああいう構想自体が進んで参りますことが、東南アジア国民生活の向上また経済の安定、経済の建設というものに役立ち得るのだということは私確信いたしておるわけであります。
  159. 福田昌子

    福田(昌)委員 東南アジアの経済開発、これはもう大へんけっこうな、当然日本としてもまず考えなければならない外交政策だと思います。また岸さんがそういう角度から今度御披瀝になっている政策というものは、私は非常にいい御構想だと思うのでありますが、やはりそれを出します時期とそれからその運営内容問題があると思います。結局アメリカの新しい世界政策につながる日本の立場というものは、東南アジアの国から見れば一つの大きな疑惑をもって見られる点もありますから、こういう点の警戒というものとあわせまして、日本の自主的な外交政策というものをお含みの上で藤山外務大臣によって自主外交の強力な線を打ち出され、その上に立っての経済政策というものをお考えいただきたいと思うのであります。  次にお願い申し上げておきたいのは、九月の十四日ですか、藤山外務大臣には日本を立たれて国連の第十二回総会に御出席になるということで、まことにお忙しいことと思いますが、この国連の総会に御出席になるために持っていかれる議題というものは、おもにどういうものを持っていかれるのですか。
  160. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 九月十四日に立ちまして国連の総会に参りますことは御承知通りでありますが、今回日本が非常任理事国に立候補いたしております。従いまして当選をいたしますようにできるだけの努力をいたしますことが、私の今回の旅行の一番の目的であります。ただしアメリカへ参りますことでありますから、ワシントンにも参り、あるいはアメリカの官民の有力者とも話し合いをして参りたい、こう考えております。
  161. 福田昌子

    福田(昌)委員 この国連総会に御出席の代表委員がおきまりになったようですが、この委員に婦人を起用される御意忠はございませんか。
  162. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 国連の代表団の中に婦人を入れますことは望ましいことだと思っておるので、できるだけそういう道が開かれますように努力して参りたいと思います。
  163. 福田昌子

    福田(昌)委員 時間がございませんから問題を並べて御答弁をいただきたいと思います。九月二十三日にはダレス長官と御会談になるということが予定されておるようでございますが、このダレス長官との御会談におかれましては、どうか日本の幅の広い外交ということをお心がけいただきまして、岸総理がいろいろとはっきりおっしゃられましたことによってかえって外交の幅を狭められておられる今日の情勢にかんがみられて、慎重におやりになっていただきたいと思います。  それとあわせまして沖縄問題、この沖縄の施政権の返還の問題国民あげての要望であります。ことに沖縄八十万島民のこれほほんとうにあげての熱烈な要望であったわけでありますが、その要望が結果的には踏みにじられました。その踏みにじられました理由にはいろいろな点があろうかと思います。私どもは過去の失敗を今日取り上げて、岸訪米の失敗として今日取り上げたいとは思いませんが、しかし沖縄八十万の島民の日本施政権返還についての熱望ということを考えます場合、沖縄の今日の現状をこのままに許すということは私たち国民として許しがたい点だと思います。ごとに岸総理、大臣の御訪問の後に御承知のような琉球組織法というような法律目下アメリカの両院協議会において審議中であり、そうしてアメリカ沖縄に対する管理方法かこれによって縛られるということを聞いております。また最近新しく百七十一万町歩でしたかの接収問題が起っておりますが、これはああいうサンゴ礁地帯の沖縄の農民にとりましては美田のほとんどが取り上げられるということになります。生活権が奪われ、しかも全島軍事基地、しかもそこに原爆が持ち込まれるというようなことは、沖縄島民の生命というようなことから考えまして、人道上許しがたい点だと思います。従って国際法上あるいはまたアメリカの立場から申しますならばいろいろな言い分があるでございましょうけれども、人道的な点に立ちましてぜひこの点を訴えて、沖縄に対するアメリカの政策の変更、施政権の日本返還ということを強力に御主張していただきたいと思います。  次にあわせてお願い申し上げておきますが、今日日ソ国交調整の前進されております際、なおソ連側からは、ことに樺太南方洋上におきまして、いろいろなソ連の領海権の解釈の点によりまして、日本漁船の拿捕事件が頻発いたしております。これに対しまして北海道の零細漁民の生活権が奪われている。しかもその拿捕されました漁船のその後の対策というものに対しましては、まだ積極的な施策が考えられていないという点でございます。こういう点にかんがみまして、、ソ連近海における安全漁業の操業に対します政府の御構想を伺い、これに対する藤山外務大臣の御所信を伺わせていただきたいと思います。これで終ります。
  164. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 九月にアメリカに参りましてダレス長官と会います問題につきましては、先ほど以来いろいろ御意見もありますし、また日米間の懸案の問題もいろいろございます。しかし一度参りましただけではなかなかすべての問題を話し合うというわけにもいかぬのでありまして、私といたしましては、今後できるだけ機会を得て各国のそれぞれの政治、外交の担当者を訪ねて、そうして懇談をいたしながら問題解決いたしていきたい、こう考え、ております。従いましてただ一回もしくは二回九月に参りましてダレス長官と話す場合に、全部の問題を必ずしも討議できるとも考えておりません。しかしできるだけ国民的要望のあります問題、あるいは解決しやすい問題等について、意見の交換をいたしたいと考えております。  それからソ連の領海の問題でありますが、これはまことに遺憾な問題でありまして、特に御指摘のように、北海道方面におきます零細漁業者の立場を考えますと、すみやかにこれらの問題について解決をしなければならない。外務省としても、今日までいろいろな角度からソ連政府に対して時々申し入れをいたしておりますが、今後ともそういう点について強硬に申し入れをし、あるときは時期を続けていろいろな問題を提示していくことも考えております。ただ領海の問題というような問題は、国際法上の問題でもありますし、あるいは最終的には国連総会における海洋法の問題とも関連してくると思いますから、それらをあわせて考慮しながら、一面においては零細漁民の保護ということに十分な努力をして参りたい、こう考えております。
  165. 福田昌子

    福田(昌)委員 もう質問じゃないのですが、今のソ連の領海問題とか、領土問題ということに関連いたしますと、問題が複雑になろうかと思います。従いましてそういう問題とは切り離しまして、一応漁業の安全操業という意味合いにおいての早急な御交渉をお願い申しあげたいと思います。
  166. 野田武夫

    野田委員長 外務大臣御退席になってけっこうです。  次に田中委員より法務大臣に対し質疑の通告がありますのでこれを許します。なるべく簡単に願います。田中君。
  167. 田中稔男

    田中(稔)委員 外務大臣に対する質問者からもお話があったと思います。が、中国との貿易の発展、特に貿易協定の締結に重大な支障を来たしておるのは指紋問題であります。この指紋問題でありますが、現在行われております外国人登録法その他の国内法、こういうものを一部改正いたしまして、そして中国から参ります代表に指紋を免除する、こういうふうなことができれば一番いいと思うのですが、法務大臣としてそういうふうなことを御研究になったことがありますかどうか、ありましたら御答弁願いたい。
  168. 唐澤俊樹

    唐澤国務大臣 お答え申し上げます。指紋の問題がややもすれば日中の通商の支障になっておりますことはよく承知をいたしております。ただ現在の法規の建前から申しますと、国際慣例で認められております。一括して申しますれば、公用に従事しておるような人以外は、国籍のいかんを問わず滞在日数六十日をこえますれば、一律に指紋をとることになっております。現行法の建前といたしましては、それ以外の例外はできません。そこで日中貿易の重要性等にかんがみまして、それでは法律を改正してはどうか、こういうような意見もありまして、この点につきましてはまだ結論は出ておりませんけれども、今法務省といたしましては、調査をいたしておる次第でございます。
  169. 田中稔男

    田中(稔)委員 場合によっては法律の改正をやつもいいような、そういうふうな割に理解のある御答弁であります。私非常にそれはけっこうだと思います。今までは法務当局としては法律改正にはほとんど絶対的に反対だ、こういう態度でありました。従来の態度よりも一歩進んだ感じがするのであります。アメリカにおいても同様の問題が起っておりまして、冷たい戦争をやっておりましても、やはり米ソの人的な交流、こういう動きも最近相当盛んになってきておりますが、その場合にいつも指紋問題アメリカでも問題になっておる。これについても何とかしなければならぬ、それは法律改正でやるか、政治的な措置でするか、とにかく何とかしなければならぬという声が最近だいぶ高くなっておりますから、法務大臣はそういう世界的な動きを一つ十分に察知されまして、法律の改正をやりまして、指紋なんかが、むろん無条件ではございませんけれども、中国から参ります通商代表というようなものにつきましては、これを免除するというようなことにしていただきたい。なお外国人登録法の一部を改正する法律案というような一つの改正案も実はすでに用意したものがありますけれども、あまりこまかいことになります。から、御披露いたしませんけれども、どうか一つそのつもりで御研究願いたいと思います。そういうふうに理解してよろしゅうございますか。もう一ぺん念を押しておきます。
  170. 唐澤俊樹

    唐澤国務大臣 ただいま非常に進んだ考えを持っておるようなおほめの言葉をいただきましたが、実はそれほどではないのでございまして、従来からの問題は、少しでも例外を開きますと全体の指紋制度がくずれるために、法務省といたしましては、法の建前上どうしても困るという態度を堅持してきた次第でございます。しかし今日日中貿易の必要性がいわれておりますので、ただ従来のようにかたくなにこの問題は全然研究する必要もない、こういうようなことではいけないと思いまして、何とか工夫をして、指紋制度もくずさず、また日中貿易の方にも支障にならないようないい便法がないであろうかということを研究しているのでございまして、これをやるとかやらぬとか、今お話になっておりましたような結論を持っておるわけではございません。ただかたくなにこの問題は従来の制度だけだ、こういうことでなく、何かここに工夫はないだろうかということで、まあ研究してみよう、こういうことを申し上げた次第でございます。
  171. 田中稔男

    田中(稔)委員 どうもたよりにならぬ話で、しかしまだ一縷の望みはあるようでありますから、どうぞよろしくお願いします。これは法律改正をやらなければ、政治的な措置になるわけでありますが、外務省の方、いらっしゃいますか――それでは政治的な措置について、外務省側の意向を聞くことはやめます。  次に、これは伊關さんに関係があることですが、日本におります朝鮮人の諸君で、北鮮に帰りたい、こういう希望を持っておる人がずいぶんあると思います。大体日本におります朝鮮人の政治的動向というものは、圧倒的に北鮮――正確には朝鮮民主主義人民共和国を支持する人が多いわけです。ところがそういう人が日本ではもう暮しに困る、祖国では建設が自分を待っておるから帰りたいといって帰ろうとしましても、なかなか帰れない。ごく最近の事例は、モスクワの平和友好祭に出席する朝鮮人の学生の諸君が、モスクワに行ってそのままもう北鮮に帰ろうということになって、一時はそういうことができそうだったのですが、ついにだめになった。非常に困って私のところにも純真な学生諸君が窮状を訴えてきました。こういうことは、われわわれ日本の同じ国民であって、自分の身内の者ででもあれば大へんなことなんですね。かりに唐澤さんのお子さんがそういうふうな立場にあられれば、これはほんとうに大へんなことだと思います。自分の祖国、自分の選ぶ祖国に帰れない、そして自分は日本の学校を出て相当の知識や技術を持っておる。日本では就職の道がない、青春をこういう他国、しかも苦しい生活条件のもとで空費しなければならぬ。ほんとうにその学生の身になってみれば耐えがたいことだと思うのです。そういう場合いつも問題になるのは入国管理局、伊開さんのところですね、あなた方のところが首を縦に振らぬものだからいつもはばまれておるのですが、こういうことを一つもっと親心をもって措置していただきたいと思いますが、伊闘さん一つあなたのお考えを率直に披瀝してもらいたい。
  172. 伊關佑二郎

    ○伊關説明員 日本におります外国人がその生まれた本国に帰るということ自体につきましては、これは朝鮮人に限らずどこの国民でありましても、われわれはこれに何らの異存はないのでありまして、生まれ故郷に帰るということをとめる理由は毛頭ないのであります。ただ考えなければなりませんことは日韓の関係でありまして、韓国の方が日本におります朝鮮人が北鮮に帰ることを非常にいろいろな理由でいやがっておるわけであります。そこで日韓の関係というものを考慮しながらこの北鮮に帰る者は帰していくというので、全部思うように帰せぬというふうな限度がある、その二つのものを適当に見合せまして個々のケースによって判断をいたしている次第であります。
  173. 田中稔男

    田中(稔)委員 まああなたが入国管理局長として韓国との関係をいろいろお考えになるのは、やむを得ぬかもしれませんけれども、しかし現実に朝鮮は今南北に分れておる、そしてその人がその祖国に帰るということはほんとう世界の人権にかかわる問題であり、あまりそういういろいろな外交上のことなんかあなたはお考えにならなくて人道上正しいと思えば一つちゃんと筋を通して帰すというようなことに腹をきめてもらったらどうかと思う。あなたは幸いに法務大臣ではないのだし、局長くらいですから、あなたとしてはもう事務的に事を運ぶだけで、政治的に考慮を加えぬで、人道上当然帰すということでいいのじゃないか、上の方から圧力がかかれば別だが、あなたの局長としての信念のほどを一つ聞きたい。
  174. 伊關佑二郎

    ○伊關説明員 私個人としましては、人道上の観点に立ちますればただいまおっしゃった通りと思いますが、物事をきめます際には関係省と協議をいたします。もちろん外務省からも出席をいたしておりますので、個人の考え方だけで行くわけにも参りません、関係省との打ち合せの結果でものを運んでおるわけでございます。
  175. 田中稔男

    田中(稔)委員 どうもこれ以上追及しても大した答弁が出そうもないのでやめますが、最後唐澤法務大臣御就任早々でありますが、いい機会ですから一つぜひお尋ねしておきたいことがあるのです。それはこの前の中村法務大臣の任期も終りに近いころ、外務委員会において問題になった件であります。それは日ソ親善協会という団体、今は改称して日ソ協会と申しますが、それに百中友好協会、さらに平和委員会、こういう三つの団体の財政的な運営が何か共産圏からの政治資金、つまりよく言う赤化資金というものによってまかなわれているということが、アメリカのたしか大使館だったと思いますが、そういうところから出たのであります。そしてそれがジャパン・タイムズだったかに相当大きく載りました。三団体の方ではあわてまして、そういうことを言われては団体の発展に非常に支障を来たす、それで私どもも捨てておけないので、外務大臣なり法務大臣に当時お尋ねをしたのです。結論を申しますと、中村法務大臣は幸いに良識を持つ大臣でありましたので、いろいろ調査した結果、それは事実無根である、従ってこういう団体を対象にして破壊活動防止法の適用はしないというようなことを言明された。その言明は外務委員会の議事録にちゃんと載っております。三団体ははっきりした法務大臣の解明があったので非常に喜んで、それで話はおさまったのです。それだけならいいのでありますが、やはり近年の傾向としてあなたの所管しておられる公安調査庁においては、共産党はもちろんのことでありますが、社会党の県連その他の下部組織に対してもいろいろスパイ活動をやっております。これは歴然たる証拠がたくさんあるわけです。さらに平和のためにあるいは共産圏諸国との友好のためにいろいろやっておる団体にはみなそういうスパイ活動をやっているのですね。非常に迷惑している。日ソ協会のごときは今度鳩山元首相がこの会長になられたのです。そして役員には自由民主党の幹部の方がずっと入っておられる、協会の意向もいわゆる幅広くということであって、ともすれば左に片寄った人選を全然改めまして、ほんとうに各界各層を網羅した挙国的な人選にした。だからこれはアメリカとの問に日米協会がありますように、国交回復したソ連との間に日ソ協会を作ろう、これは当然のことです。そのほか日中友好協会は、まだ国交回復しておりませんが、民間の運動としてそういうことを志しておるし、平和委員会とても平和を念願して他意があるわけじゃない。こういう団体の活動を盛んにすることが、むしろ日本としては国際社会において日本ほんとうに平和的な民主的な国であるという証拠を示すことですから、逆にこういう団体の活動を狭めて、あれも赤だこれも赤だというのでやっていくということになると、これは国策の上からも非常に不利だ。そこで実はあなたでありますが、唐澤俊樹という名前は私はずいぶん昔から知っておる。特に唐津警保局長として私どもは非常に記憶が深いのです。唐澤さんという人は官僚としては確かに逸材だとその当時は非常に評判がよかった。しかし警保局長として評判が当時よかったということは、今日の民主日本において果してそれがそのまま歓迎すべきことであるかどうか、これは私から言わなくてもわかっていることだと思う。今度の閣僚の顔ぶれを見まして、いろいろありますが、唐澤法務大臣という人選は、ある意味で注目すべき人選だと思う。そういう際でもありますから、この前の中村法相のときに一応片づいた問題でありますけれども、法務大臣として今後こんな日ソ協会とか日中友好協会とか平和委員会、こういうものの活動を何か色めがねで見て弾圧するようなことは絶対しないというだけの御言明を、一つここでいただいておかぬと心配なのです。そういうわけで歯に衣を着せず率直に申し上げましたが、どうぞ一つあなたも率直に御答弁を願いたいと思います。
  176. 唐澤俊樹

    唐澤国務大臣 ただいまお話のありましたジャパン・タイムズの記事、並びにそこに書かれておった内答につきましては、今初めて承わるところでございまして、初耳でございますが、おそらく私も今おあげになった三つの団体が赤化資金でその経済をまかなわれておるというようなことは、これは毛頭なかろうと考えます。その点は前法務大臣の中村さんがお約束になったそうでございますが、私も全く前法相の考え方を継承して参りたいと考えるのでございます。  それから破防法の適用の問題でございますが、これは申し上げる必要もないことでございますが、一方、法の精神はどこまでも堅持していかなければなりませんと同時に、他方、その精神を逸脱して、皆さんに御迷惑をかけるようなことがあっては絶対にならぬ、これも中村前法相の考え方だろうと思うのでありまして、元来法務のことなどは、内閣がかわり、あるいは責任の大臣がかわりましても、そう方針の変るべき性質でない仕事と存じております。前法相のとってこられた方針を一応継承しまして、前法相と同じような考え方で進んでいきたいと存じております。
  177. 田中稔男

    田中(稔)委員 今の御答弁に一応私は満足いたします。そこで蛇足のようでありますが、この機会に私から一つ、特に御要望申し上げたいのでありますが、あなたも警保局長をしておられてよく御体験のことだと思いますが、戦前の日本の警察または検察の職にある人は、実は日本国民の中で最も法を守らない人種であったのであります。世の中には悪法もずいぶんあります。しかしながら、われわれ法治国民ですから悪法もまた法なりで、現在法律として施行されている以上は、それを守るという、これは一つの義務だと思うのです。だから悪法といえども場合によっては泣きながらこれに服するということもあると思う。ところが戦前の警察または検察の職にあった人は、自分が法を守るべき立場にありながら、実は法を無視して法の禁ずる拷問をあえてするとか、ずいぶんひどいことをやった。民主日本であり、あなたも民主主義政治家として更生されたと思うのでありますから、そういうことはないと思いますが、岸さんもそういうことをいっておってまた地金が出てきたわけであります。一つ民主日本において、あなたの率いられる警察または検察の職にある人が、法をじゅうりんして法外の措置をするようなことの絶対ないように特に御要望申し上げまして私の質問を終ります。
  178. 野田武夫

  179. 戸叶里子

    戸叶委員 法務大臣がお見えになっていらっしゃいますので、この機会にちょうどいいと思いますから伺いたいと思いますが、今日本にはMSA協定関係の秘密保養法が一つあるわけでございます。七月三十日の新聞によりますと、新しく何か秘密保護法を作ろうとするような動きがあるかのように新聞に報道されております。それはなぜかというと、防衛力の質的な増強というような意味から、誘導弾のような最新兵器を研究開発するために、アメリカとの間に新しく協定を結ばなければならない、そういうようなことやら諸般の情勢にからんで新しい秘密保護法を制定しなければならないかのようなことが出ておりましたが、こういうようなお考えをお持ちになっていらっしゃるかどうかを承わりたいと思います。
  180. 唐澤俊樹

    唐澤国務大臣 法務省といたしましては今日までそういう考えを持ったことはございません。ただただいまのお話は新しいお話のようでございますが、新聞に出ておったということでございますが、まだそのことについて何も相談も受けておりません。もし何ならば防衛庁の関係の方であるいはおわかりになるかもしれません。私の方はまだ何にも、相談にもあずかっておりません。
  181. 野田武夫

    野田委員長 本日はこれにて散会いたします。    午後三時十七分散会