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1957-02-13 第26回国会 衆議院 外務委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十二年二月十三日(水曜日)     午前十一時三十三分開義  出席委員    委員長 野田 武夫君    理事 須磨彌吉郎君 理事 森下 國雄君    理事 山本 利壽君 理事 穗積 七郎君    理事 松本 七郎君       愛知 揆一君    伊東 隆治君       植原悦二郎君    菊池 義郎君       前尾繁三郎君    町村 金五君       松田竹千代君    松本 俊一君       大西 正道君    田中織之進君       田中 稔男君    戸叶 里子君       福田 昌子君    森島 守人君  出席国務大臣         法 務 大 臣 中村 梅吉君         外 務 大 臣 岸  信介君  出席政府委員         外務政務次官  井上 清一君         外務参事官   服部 五郎君         外務事務官         (アジア局長) 中川  融君         外務事務官         (欧米局長)  千葉  皓君         外務事務官         (条約局長)  高橋 通敏君         外務事務官         (国際協力局         長)      河崎 一郎君         外務事務官         (移住局長心         得)      石井  喬君  委員外出席者         専  門  員 佐藤 敏人君     ————————————— 本日の会議に付した案件  国際情勢等に関する件     —————————————
  2. 野田武夫

    野田委員長 これより会議を開きます。  昨日に引き続き国際情勢等に関する件について政府当局に質疑を行うことにいたします。森島守人君。
  3. 森島守人

    森島委員 昨日の委員会でわが党の松本委員から全般的な御質問がございましたが、私は今日、二、三の具体的な問題について具体的にお尋ねしたいと思います。  大体中日貿易を中心とした質問をしたいと思いますが、質問に入るに先たちまして、一点だけ日韓問題の経緯についてお尋ねしたいと思います。昨日岸外務大臣は、大村収容所における抑留者とわが方の抑留漁夫との相互釈放のことについて、大体話し合いがついたと述べておられます。同時に、一点だけ双方の間で了解のつかぬ点があるとおっしゃいましたが、この点を一つ明確にしていただきたいと思います。
  4. 岸信介

    岸国務大臣 森島さんも御承知のように、今日まで韓国との交渉は非常にうまいところまで話が進んでおっても、さらにごくわずかなことで実はまたあと戻りするというような関係がございまして、私がいま一点と申し上げて、特にその内容を申し上げなかったのも、もしもそれが明瞭にされると、そのことがひつかかっているのだということにしますと、従来の韓国側の例で、せっかくここまできている話がこのもののためにまた少しあと戻りしても残念だ、こう思いまして内容を申し上げなかったのであります。その後両一方でも話を進め、交渉を進めておりまして、本国との間にも、その点について韓国公使と往復をしておりますが、まだ結論が出ませんので、実は内容を具体的に申し上げることのできないことを御了承を願いたいと思います。
  5. 森島守人

    森島委員 ただいまのお話ですと、外交上の交渉支障を来たすおそれもあるというお話でございまして、私はこれ以上追及はいたしません。ただ韓国公報処長——名前は忘れましたか、李承晩ラインを認めろ、認めなければ日韓会談は再開聞できないのだというふうな新聞報道朝鮮側から伝わっておりますが、これではあるのですか、ないのですか、この点だけはっきりしていただきたい。
  6. 岸信介

    岸国務大臣 その点ではないのでありまして、その問題とは全然違いますから、このことを御了承願います。
  7. 森島守人

    森島委員 事態ははっきりいたしましたので、これ以上質問いたしません。次に私が伺いたいのは、岸さんは一月二十九日に新聞記者会見をせられまして、その中で中共民間通商部は必ずしも来てもらわなくてもよい、そのような措置をとらなくても、中共貿易はもっとふやせる。また中共側通商代表部日本入国する際指紋をとられることを拒んでいるが、これもあえて日本法律を曲げる必要はないのだという趣旨談話をしておられるのであります。ところがわが党の鈴木委員長代表質問の中においてこの点に触れられたのであります。これに対して岸さんは、記者会見で述べたことと自分真意とは違っておる、日中貿易では通商代表は公的な立場では認められないのだというきわめてあっさりとした答弁をしておられますが、私は、新聞報道とどの点で食い違っておるか、この点を一つ明確にしていただきたいと思うのであります。
  8. 岸信介

    岸国務大臣 日中貿易促進の問題に関しましては、私も従来から日中貿易を増進しなければいかぬという論者でありまして、そのために支障になっておる問題を解決していかなければいかぬという考えは、ずっと一貫して持っておるわけであります。ところが第四次の今度の民間でやる通商協定に際して、いわゆる通商代表部を置くという問題が、今までなかった一つの問題として取り上げられておる。これの扱いについての議論が、要するに私どもは公的の関係で今中共との間にたとい通商の問題についても関係を持つといい、またもしくは公的のレベルでいろいろのことを考えるということは、まだたその段階でないという態度を堅持しておりますので、従って通商代表部というものも、いわゆる民間レベルにおける通商問題を扱う一つのところであるという考え方をせざるを得ない。そこで通商代表部というものを公的な形で認めるということであれば、いろいろの法律的の特権やその他取扱いというものも特別な取扱いが出てくるけれども、そういう特別の取扱い自分はするわけにいかないということを実は申したのが私の一真意でありまして、従って今日指紋をとるとらないの問題につきましても、従来日本指紋に関する規定から申しますと、日本に来る人は全部とることになっておりまして、取扱いとして、公務員または公務員に準ずる者だけを特別に指紋をとらないという扱いになっておるわけであります。われわれは、これを公務員とか当然公けに公務員に準ずる者であるということをはっきりするならば、これはやはり公的の関係において認めたということになるので、ここにこの法律を変えるとか、法律にそうなっておるのを法律を曲げてまで自分たちはそれをするというわけにいかない。どういう便宜の方法なり、どういうふうに法律と矛盾しない扱いでこれが処理できるかということが、実はわれわれ考えなければならない問題であるけれども、表面的に法律解釈を曲げてこうしたのだというこの場合扱いをするわけにはいかぬというのが、私が従来考えておることであり、そのことを新聞記者にも言ったのですけれども、あの当時出ておる新聞扱いも、言葉がきわめてデリケートななんでありますから、私の言った語気であるとかそのときの態度であるとかなんとかから、ある種の感じを得たものであろうと思うのです。従ってあのときの各新聞に出ましたこと、あなたもごらんになっただろうと思いますが、必ずしも同一の論調や語調でこれは伝えられなかったのでありまして、私自身考えは、今申しましたように貿易促進についてはあくまでも考えていきたい。そのために通商代表部というものが便宜であるということで置かれるということであるなら、これも別にわれわれはそれに反対する何らの理由を持たない。しかしそれはあくまでも私的の関係においてこれを認めていくというふうにせざるを得ない。そうするとやっかいな指紋の問題が出てくるから、その点については今関係者の間においてもいろいろと研究をされており、便法についても考えていかなければならぬだろうけれども、やはり表面的に法律解釈を曲げてどうするというわけにはいかないというのが私の考えであります。
  9. 森島守人

    森島委員 ところで日本中国とは国家の構成を異にしておりますから、中国では大体国営貿易で、向うから通商代表かやってくれば、日本では民間通商代表部だという解釈をとるにしても、向う公務員もしくはこれに準ずる人が来ることは当然だと思う。この点については外務当局として十分ゆとりのある取扱いをされることを私は望んでおきます。岸さんの新聞記者に対する大体のお考え、これについては閣議において御決定になっておることなのですか、どうですか、この点も一つ伺いたい。
  10. 岸信介

    岸国務大臣 閣議で特にこの問題を取り上げて閣議決定をしたことはございませんが、私が外務大臣を引き受けるに至りました最初におきましても、石橋総理と私との間にはこの問題について十分話をいたしておりますし、その後も、石橋総理が床につかれる前にも、この国会に臨むに際して、あるいは日中貿易について石橋総理考え岸外相考えとの間に何か食い違いがあるのじゃないかというふうな、今までの新聞記事等からの推測があって、もしも万一この点について食い違いがあってはならないということで、私は数回話をしたことはございます。しかし閣議で特に決定したごともございませんし、また具体的な今の指紋問題等につきましては、まだ事務的に研究中でありまして、閣議に出す段階でもない、こう思っております。
  11. 森島守人

    森島委員 私は鳩山内閣時代から、外交が二元的になったり、三元的になったりすることは厳に慎しまなければならない、こう思っておるのです。私は石橋内閣外交に二元的な徴候があるとかないとかいうことを判断するまでの段階に今なっておりません。しかし少くとも窓口が一本になっていないのではないか。と申しますのは、指紋の問題についても、宇田長官宇田長官なりで新聞記者に勝手に意見を発表しております。法務大臣も一度か二度か御発表になっていることかあるようであります。私はここに新聞記事を持っているのですが、この三者の新聞に発表されたところを比較しますと、相当な相違があるように思います。私はこの点で閣議意思統一をされたかどうかという点をただいま御質問申し上げたのです。法務大臣がここにおいでですが、法務大臣は六日に院内で、中共通商代表入国に当っては、公用旅券でない場合、入管令に基き指紋採取はやらなければならない、こうおっしゃっております。私は中共から来る人はおそらく公用旅券を持ってくると思いますので、それなら問題がないのだ、こういうふうに解釈しますが、法務大臣はいかように御解釈になっておるのですか、岸さんのお話との間にも食い違いがないのか、そういう点を一つはっきりさせていただきたい。
  12. 中村梅吉

    中村国務大臣 私ども外国人登録法に基きまして所要の指紋をとっておるのであります。今のお話は、日本政府公務を帯びて入国するものとして公務員として入国を認めた場合には、国際慣例に基いて外交官並びにそういう公務員に対しては指紋をとっておりませんが、その他の人たちに対してはいかなる国の人に対しても指紋をとっておりますので、従って中共の場合においても、中共から通商代表部人たちが来るようなことになって、来た場合に、日本政府公務員としての入国承認した場合以外は、指紋をとらなければならないのである、こういう趣旨のことを、新聞記者会見のときに質問を受けましたので私答えたのでございます。それが多分その記事になっておると思います。  それからただいま政府部内で意見統一ではないかという御指摘がありました。宇田国務大臣便宜の処置について先例があるようだという新聞記事が出ました。私も非常に重視してこの新聞を読みました。さっそく宇田国務大臣に、正式の閣議ではありませんでしたが、閣議の議題の終りましたあとか何かで確かめましたら、それはチフヴィンスキー氏が日本入国するときに、チフヴィンスキー氏本人とそれを補佐する二、三の人に対して、日本政府公務を帯びての入国として承認した先例がある、そういうことから君の方でそれを取り上げたのではないか、ああいう談話新聞記者会見のときに話をしたのではないか、こういうことを聞きましたら、そうだ、こういうわけであります。それだとよほどケースが違うので、チフヴィンスキー氏の場合には、日本国政府がもうちょうど日ソ国交回復交渉が半ば以上進んで、領土問題はむずかしい懸案になっておりましたが、領土問題が片づくと片づかないとにかかわらず、国交回復可能性が多分にあったころでありましたので、日本政府としては、この二、三の人たちに対して公務を帯びての入国日本政府自身承認しておるので、それだから指紋をとらなかったのであります。別段除外例をしたわけではないから、そういう誤解が世間に起きてはいけないからお互いに注意しようという話し合いをいたしました。この点も別段意見の不一致は全然ございませんから、どうぞ一つ御了承願います。
  13. 森島守人

    森島委員 宇田さんの分まで御答弁願って恐縮ですが、宇田さんは二、三の新聞に発表しておられるところによりますと、大体今お話のようなお考えだったのだろうと思いますが、それを首脳部、あるいは通商代表部だけはとらぬ——これは果して家族運転手を含んだものかいなかという点については、家族運転手は含まぬのだとこうはっきり言っておられました。宇田さんの新聞記者会見から申しまして、当然政府はとらぬでよろしいのだという立場をとっておるものと思われるが、この点は私は岸さんのお話といい、あなたのお話といい、すっかり違っておる。私はその前例を宇田さんにお聞きしたいと思う。今宇田さんは来ておられませんから答えは得られませんけれども、私は今法務大臣からお話がありましたようにチフヴィンスキーの例があれば、これに準じて指紋をとらぬことにしても差しつかえないのではないか、こう思います。単にチフヴィンスキーの場合だけではございません。日本は今なお国交を回復していないにもかかわらず、在外事務所と申しますか、これを認めた例があるのであります。インドネシアにしましても、フィリピンにしましても、あるいはビルマにしまして、も、日本に先方の機関を設けることを公然事実上認めてきているのです。これと中共の例とは、私は何ら差異がないと思います。そこに政府取扱いを異にされる積極的に理由がおありでしたら、外務大臣から伺いたいと思います。
  14. 岸信介

    岸国務大臣 御指摘のように、今フィリピンビルマとの間には国交は回復しておりますが、国交回復前に事務所を置いたことがあります。インドネシアは今お話通りそういうものを置いております。ただ事情中共の場合とやや——ややといいますか、本質的に違うと私は思うのですが、これらの国はいずれも国交の回復することを——まだ国交は回復していないけれども、国として賠償問題やその他の問題をやっておりますし、この点はまだ国交を回復しようという段階にいっておらない中共の場合とは、国際上の扱いも違ってくるのは当然であります。形から言うと、どっちもまだ国交は回復していないじゃないかという形式論森島さん言われる通りですけれども、一方はとにかく国交を回復するための、するという一つの目標のもとにいろいろなことが行われておる国であり、中共はまだその段階にいっておらぬというところで、そういう扱いがやはり問題になってくる、こう思うのです。
  15. 森島守人

    森島委員 それは中共国交回復についての熱意がないという証左でしかないと思う。私は形式論は別としましても、これはフィリピンの場合でも国交回復ができるかどうか、賠償問題が片づかなければわかりはしない。しかしそれにもかかわらず、通商代表部なりあるいは領事なりを置いているのです。私は中共の場合にも、これは当然お考えになって、そこに中共貿易を盛んにしようという政府の御方針である以上は、これはなるべく便利な取り計らいをして、実際的によく処理ができるようにするのが、私は政府責任たと思います。この間において何ら区別をしないというのが普通ではないかと思います。韓国の場合におきましても同様です。それからまたソ連の代表部の例を見ましても、事実上国交回復ができないうちにも、ちゃんと事実上、法律上じゃございませんが、同様な取扱いを黙認してきておる、私はこの点について政府の一段の御努力を願わなければならぬ、こう思いますが、なお一応御見解を承わりたいと思います。
  16. 岸信介

    岸国務大臣 実は私ども考え森島さんやあるいは社会党の考えとの間に、相当な開きがあるのじゃないかと思います。中共に対してもこれを一日も早く承認して、それとの間に国交を回復しろという立場をとるならば、そういう熱意を示す意味においてこれと同じに行く、こういうことになるのですが、私ども今の国際情勢その他から見て、まだ中共との間に正式国交を回復するという段階でないという見地をとっておりますので、熱意がないといわれればまったく熱意がないわけで、今しようと考えていないのですから……。これは立場の違いなのであります。しかし貿易を増進していくという意味からいって、通商代表部というものがここまでくれば、ぜひ必要である。これは民間の諸君もそう思っておるのです。そうすればそれができるように何か便宜なことを考えろという意味であるとすれば私はやはりそれを考えて、実際の貿易支障なく、また増進できるように、便宜なように持っていかなければならない、こう考えております。
  17. 森島守人

    森島委員 先ほど外務大臣政府間のレベルでは通商貿易問題等も話し合う必要はないのだ、こうおっしゃいましたが、私が、実例から申しますと、たとえばエジプトと中共とが、最近は国交が回復いたしましたが、国交回復前におきましても、通商貿易の問題だけは別個の問題、国家承認の問題とは切り離す、そうして貿易協定政府が結んだ実例がございます。これは私たちが一昨年旅行をしましたときに周恩来もこの実例を示しております。私は国家承認の問題と切り離して貿易協定だけを政府間のレベルで結んでも差しつかえないと思いますが、この点は何ゆえに岸さんは政府間のレベルではいかぬのであるという御見解をおとりになっておるか、これは中共に対しての事実上の承認を一歩進めるという御見解でありましたならば、私は法律上の問題と事実上の問題と截然区別しまして、政府間のレベル承認問題とは触れないで、貿易協定を結んでもちっとも差しつかえない、こういう見解をとっておるのでございますが、この点に対しても外務大臣の御見解を伺いたと思います。
  18. 岸信介

    岸国務大臣 法律的な解釈からいえば、今森島さんの言われるような見解はもちろん成り立つと私は思います。ただ中共との関係については私ども保守党立場におるところのものとあなた方の考えとの一番大きな違いは、結局テンポの問題があるだろうと思います。方向として将来とも長きにわたって中共というものとの商の関係を全然断ち切ろうというなら、一体貿易の問題を促進するとかあるいは文化的な意味におけるいろいろの行き来をするとかいうこと自体が実はおかしいのです。しかしわれわれがとっておる外交上の根本考え方からいって、それは現実を見ながらあるいは国際情勢とにらみ合せながら、われわれは中共に対する諸種の方策を考えていきたい、こういう点から申しますと、法律的には差しつかえないことでありましょうが、民間レベルでやっておるということと、あるいは貿易の問題だけを切り離して政府間の話し合いにするというのとでは、実際政治的には意味が違うと思うのです。そこまでいく政治的な立場を私どもが今とっておらないということで、今の点は御了承願いたいと思います。
  19. 森島守人

    森島委員 時間がありませんので、もっと掘り下げて質問したいのですが、この程度でやめまして、私は最後に旅券の問題を一つ伺います。岸さんはきのう、旅券を出すことについては、これを阻止する意向はないのだ、なるべく文化的にも、あるいは貿易等についても、これ促進する上において旅券は出したいのだと言われた。しかしこれに全く反しているのが自民党決定である。自民党総務会決定したところによりますと、御承知だと思いますが、中共行き旅券については、内閣の申し合せということで憲法違反のような取扱い決定している。これを撤回する御意思があるかないか、この際はっきり承わりたい。
  20. 岸信介

    岸国務大臣 自由民主党できめておる、これは私も当時幹事長でございますから、きめた当時の昨年の事情もよく知っております。またその趣旨も、要するに現在の中共との問において、いろいろ公務その他公職についている者が、中共側招聘によって、中共側で一切の旅費その他の支給を受けて行くという実例が非常に多くなっておったことも御承知通りであります。そういうことを無制限に認めることについては、いろいろな点から批判があり、従ってそういう場合においては相当な反省を求め、またそれを取りやめてもらおうということが、その趣旨根本になっておったのであります。また私はなるべく自由にしたいということは申し上げておりますが、これは私の根本考えであります。しかし同時にいろいろな治安上の点や、あるいは今申したような、独立国として日本が立っておる立場から、そういう公職にある人が、多数、外国の一切向う側で負担した招聘の形において、もちろん特殊の事情があり、特殊の意味のあるときはいいですが、それがかほとんど常設的な形で行くという状態は望ましくないという立場から、あの当時決定をしたのであります。もちろん自民党でそういう結論をしましたけれども、また内閣の方の取扱いとは必ずしも具体的には、一致している、何でもかんでも自民党考え通りを実現されておるというわけでもございません。ただ趣旨はそういうところにあったのでありまして、その趣旨自体は現在においてすぐこれを撤回し、これをやめるという必要はないのじゃないか、私はこう考えております。
  21. 森島守人

    森島委員 あと一問だけで質問を打ち切りますが、岸さんはよく実情を御承知だと思う。事実上旅券発給権限を持っておる官庁は、今岸さんが主宰しておられる外務省だ。しかしこれまでの実例を見ますと、一々私は名前をあげることは控えますが、岸幹事長のもとで副幹事長をやっておった某々二人の人の許可がなければ、外務省としては中共行きの旅券を一切出さぬというのが実情であります。自民党自身が、政府の行政に関与している、容喙しているというきらいが非常に多い。これは岸さんがお調べになればすぐわかります。こういうふうに今の制限をそのまま置いておくとしましても、岸外務大臣として容認せられるのかどうか。重光さんにいかに私がこの点をつきましても、一切関与されなかった様子ですが、岸外務大臣としては、外務大臣当然の権限で、外務省の裁量によってこれをやるだけのお考えがあるか、この点もあわせて伺っておきたいと思います。
  22. 岸信介

    岸国務大臣 私は外務大臣になりました際に、国内の政治外交とを一致せしめるという大きなことを申しております。さらに行政的な面においても、やはり外務大臣が全責任でやるべきことは当然でございます。従いまして旅券発給の問題につきましては、これは外務大臣の職権のことでありますから、外務大臣独自の考えで、もちろん今申しましたような政党内閣でありますから、党の意向とか方針とかいうものについては大体尊重しますけれども、具体的の問題については私が全責任を持って処断いたします。
  23. 野田武夫

  24. 穗積七郎

    穗積委員 岸外務大臣にはいろいろお尋ねしたいと思いますが、時間がありませんから、最初石橋内閣の一枚看板である中国との貿易拡大について、私はきょうはあなたに総理代理として、同時に外相としてお答えをいただきたいと思います。  ここで申し上げるまでもありませんが、今まで自民党のささえる内閣は、民間同士協定を結び、それを促進することに対して、これを黙認し、あるいはできれば援助したいという気分を、ある大臣においては持っておられました。ところが今度はそういうことではなくて、石橋内閣政治的責任においてこれを積極的に拡大するという政策を、公約として打ち出されたのであります。それは前の場合とは政治的責任においては非常な違いがあると見なければなりません。その自覚に立って——今までの事情については私も協定責任団体の一つであります議連の常任理事をいたしておりますから多少心得ておりますし、あなたも経済通ですから事情を心得ておられるので、時間がないから説明を省略いたしますが、今までとは違って、石橋内閣がみずからの政策として貿易拡大を公約されたそのことに対して、その後一体石橋内閣は具体的にどういう政策をおとりになろうとしているのか、どういう方法でこれを拡大しようとされておるのか、説明はよろしゅうございますから、結論だけ、これこれの方法をもって拡大するつもりだという、その具体的な方法を、一つこの際的確にお示しをいただきたい。なお大臣に申し上げておきますが、政府側の御答弁が、問題の焦点をそらすためか存じませんが、いたずらにわかり切っておる説明が多過ぎますから、結論だけにしていただかぬと、質問時間が大臣側の答弁も入れて何十分ということになっておりますので、私の発言権をあなたが妨害されることになるのです。結論だけ一つ明確にしておいていただきたいと思います。
  25. 岸信介

    岸国務大臣 一つは、アメリカその他の自由主義国に向って、いわゆるココムの禁輸の制限緩和を実現するように努力するということが、一つの大きな面だと思います。もう一つは、民間レベルでやられるところの通商貿易協定に対して、これは表面的に政府みずからが立ってやるということはできませんけれども、できるだけの便宜を与え、これの成立なりその運用なりについてできるだけ協力するという考えでおります。
  26. 穗積七郎

    穗積委員 そこで順を追ってお尋ねいたします。ココムについての方針について、私どもの社会党政権であるならばこれこれをしたいということを思いますが、それを申しましても、先ほど覆ったように見解が違う、立場が違うということで拒否されますから、むしろ私は、今の与党が立っておる政治的な論理に従って、その範囲内で申し上げたいのだが、ココムは元来どこに一体主体があって、いつ日本が国会の承認を得て入ったのやら、ココムというものは秘密なんです。しかしながら実際の日本貿易拡大については非常な力を持っている。ある国との通商航海条約以上の効力を持っておるわけです。ところがささたる文化協定または通商航海条約等々においても、これは協定を結び、あるいはその国際協定に参加する場合は、国会の承認を得ておるわけです。ココムはこれをしていない。そしてまたココムでやっておることは、外部に対して秘密になっております。これは私ははなはだ遺憾なことでございますから、そこで日本側からココムをオープンにする、秘密を解く、オープン・ドアにして、これこれが禁止され、これこれの国はこれこれのものを出しておるということを、参加しておる政府だけでなくて、世界の国民の前に明確になるような政策をこの際とるべきだと思う。そのことは、特にココムのヘゲモニーを握っておりますアメリカに対してまず交渉をする必要があると思うが、ココムを公開するという、オープンにするということは、この際私はココムの問題を緩和するのに一つの有効な方法だと思うのですが、この程度のことは今の与党でもできると思う。そういうお考えはないかどうか、具体的にお尋ねをいたします。
  27. 岸信介

    岸国務大臣 今ココムの制限に関することを一切公表しろ、オープンにしろということを私は提議する考えは持っておりませんが、これは従来から御承知通りずっと秘密になっておりまして、一種の協議体で話をきめるという格好に進んできておりまして、今日の情勢からいって、日本がそういうことを提議しても直ちにこれが採用されるというまだ情勢はちょっと考えられない、こう思います。
  28. 穗積七郎

    穗積委員 あなたが一ぺん米国大使に話をしてそれで解決するとはわれわれは思っていない。一切外交というものは積み重ねであり、国際世論を動員しなければならない。そういう努力をされるつもりはないかどうか、検討してみたらどうですか。
  29. 岸信介

    岸国務大臣 ココムの各品目なり、それから具体的に緩和するということに従来全力をあげておるのでありますが、今穗積君の言われている点も考究してみます。
  30. 穗積七郎

    穗積委員 それでは私の提案を将来考究してみようということで前言を取り消したわけだが、そこでお尋ねいたしますが、ココム緩和に努力をされて中共貿易を拡大したいという方針を持っておるのだとおっしゃるなら、今まで方針としてすでに決定されておるあなたの腹の中にあるココム緩和の具体的方策はどういうことですか、それ以下のことについてお尋ねいたします。
  31. 岸信介

    岸国務大臣 ココムの制限は、御承知通り中国に対する制限とそれからソ連やその他に対する制限との間に相当な開きがあります。これは不合理であるということで、従来もこれを同じレベルに置こうという交渉をしてきておるのでありますが、なかなかそれが実現しない。むしろ個々に日本のこのものを、ぜひ禁輸からはずしてくれというふうな具体的の問題について、具体的に話し合おうじゃないかというのが、実はアメリカ側の意向でありまして、従って日本の産業なり、それから中共において特に要望があり、また日本から見てこれはいわゆるあのココムの制限の根本である戦略物資でない、こういう理由をつけて両国産業なり、経済が必要とする、貿易を必要とする品物については、個々にこれこれの緩和をさせる。また具体的にそれを品目からはずすことができなくとも、特認の制度等の活用によって、事実上貿易のできるように持っていくというのが、私の考えであります。
  32. 穗積七郎

    穗積委員 それではお尋ねいたしまが、先般新聞の報ずるところによりますと、アメリカからココムを緩和し、または特免を拡大するというような考えではなくて、今日の情勢としてはさらにこれを強化したいと思うがどうかという質問を兼ねたような、やわらかい意味でのココム緩和に対する反対の意思表示があったように報じております。この事実はありますかどうか。
  33. 岸信介

    岸国務大臣 非公式な意向として伝えられて、ココムに参加しておる国々の意向を打診しておるという、日本に対してもそういう意味のことがありました。
  34. 穗積七郎

    穗積委員 それに対して政府はどういう態度をおとりになったか、おとりになるつもりであるか、将来のことをも含めて御答弁いただきたいと思います。
  35. 岸信介

    岸国務大臣 まだ正式なものではありませんし、私らも正式にこれに対して意向はなにしておりませんが、日本としては従来ココムの緩和に向って努力をしておるから、こういうことが提案されても、なかなかわれわれはその方向はとれないというような意向は非公式には伝えてあります。しかし公式な問題としては、このココムに参加しておる、アメリカだけじゃなしに、他の、ことにヨーロッパの諸国の意向もどういうところにあるかをわれわれは十分見きわめをつけて、そしてわれわれとしては、あくまでもアメリカのそういう提案とは反対に、ココムの緩和についての従来の態度を堅持していきたい。それについては、他の自由諸国もわれわれと同じような方向に協力できるように持っていきたい、こういうつもりでございます。
  36. 穗積七郎

    穗積委員 これは申すまでもありませんが、日本国民が中国貿易を拡大したいということは、これは歴史的であり、かつ自然発生的な要求なのです。主義主張、政治立場を超越した要求だと思う。そこに日本の主張の国際品強みがあるわけです。そういうわけですから、西ヨーロッパ諸国の顔色を見たり方針を見ていないで、そういうことが非公式あるいは公式にあった場合には、即座にきまった腹としてこちら側から非公式または公式に率先してこれに対する反対の意思表示をすべきだと思う。それについては御同感でございましょうが、念のために伺っておきます。
  37. 岸信介

    岸国務大臣 あくまでも非公式な話でありますので、非公式には今言った意向向うに伝えてあります。ただ私は、あくまでもそういう提案に対しては反対し、同町にわれわれの考えて心るココムの緩和の方のなには実現したい、こう考えておるわけであります。従って西欧諸国の意向を何もうかがうわけじゃありませんけれども、これらをやはり日本の味方にして、これを実現するということか必要であるから、これらの意向も十分に検討しておる。こういうのが私の考えであります。
  38. 穗積七郎

    穗積委員 ココムについて最後にお尋ねいたしますが、政府が今申しましたように、政府だけの、またはその中のある大臣だけの要望だということでなくて、国民生活にからんだ、自然発生的な全国民的な要望であるということが国際的に知られること、理解されることが最も必要だと思う。そういう意味でも、総理大臣代理であり、かつ外相であるあなたは、日本においてココムの不当なる禁止を緩和してもらいたい、または撤廃してもらいたいというような国民運動がほうはいとして起きようとしておりますが、これはあなたとしてはむしろ歓迎すべきものと御理解になっておられると思うが、この国民運動についても念のためにあなたの感想を伺っておきたいと思います。
  39. 岸信介

    岸国務大臣 そういう国民運動が起り、日本の世論が強くなることは、私がアメリカその他の自由主義国に働きかける上から言っても強力になるわけですから、非常にけっこうだというように思います。
  40. 穗積七郎

    穗積委員 その運動に対して政府として協力される用意がありますか。
  41. 岸信介

    岸国務大臣 協力という具体的な問題になりますと、どういう具体的な方法か知りませんが、やはり国民運動はあくまでも国民運動であって、世論はあくまでも世論で、政府が協力するとか、政府が作るというような形にまでいくことはまずいと思います。これはこの問題だけじゃなしにです。従って、日本の産業なり、日本の国民が強くそのことを要望しているのだという声が盛り上ってくることは、非常にけっこうなことでありますけれども、われわれが何か力を添えたり、あるいは政府が何か作っているんだというような方向には行きたくないと思っております。
  42. 穗積七郎

    穗積委員 私の協力というのはそういうことじゃありません。大体わかりました。  次に進んで、民間協定が結ばれた内容の実行については、政府はこれにできるだけ協力したいというのか、新内閣のつまり貿易拡大に対する具体的な方針であったわけです。そこで、御承知通り第三次協定はすでに昨年の五月四日で切れておるわけです。それが、おもに日本側の事情によっているのでありまして、もしここに第四次協定を結ぶとすれば、現在の状況では第三次協定以上のものが結びにくいという事情もありまして、そこで一年間延期いたしまして今年の五月三日まで延期になっておるわけです。その期限もまさに切れようとしておりますから、われわれは三月末から第四次協定に対する交渉を始めたいと思って、すでに準備を進めておるわけです。そこで政府にお尋ねしますが、その場合には第四次協定が大体今年の貿易の基准しなるわけですが、その場合においても第三次協定内容にほぼ準じて、協力の範囲をきめていただけばよかろうと思う。そこで私は、第三次協定決定されました問題を中心にして政府の協力の用意を伺うわけです。先ほど森島委員から御指摘になりました代表部に対する指紋の問題も、その一つでございます。決済協定の問題もその一つでございます。さらに、代表部に対する警察権不可侵の問題もその一つでございます。ここらが今大きなネックになっておるわけです。私は、時間がありませんからこまかい説明はいたしません。それからまた、こまかい法律を設けてまでやらぬということですけれども、そういうこまかいテクニックは、私は特に関係相である外務大臣法務大臣に一々お尋ねいたしません。どういう方法でやるつもりかということまで立ち入ってお尋ねいたしませんが、そこで結論としてお尋ねしたいのは、これは外務大臣法務大臣に一括してお尋ねいたしますから、逐次お答えをいただきたい。  代表部設置の問題は、第三次協定でもすでにお互いに義務づけられておる。それから第四次協定の場合においても、当然これが中心の議題になります。そのときに指紋の問題がその一つになることは明瞭です。そのときに現在の法律を変える、これが一つだが、それは今間に合わぬとするならば、現在の法律の中で便宜的な行政措置というものがいろいろあり得るわけです。これは私、説明いたしません、お互いにわかっておることですから。そこで、第三次協定から第四次協定に入る場合に、この指紋の問題については、われわれとしては、行政措置のテクニックは別として、政府が、事実入れるようにすることが、しかも代表部については指紋をとらないで入れるようにする見通しがあるということを、われわれが腹の中に置いて交渉に当ってよろしゅうございますかどうですか、結論だけ伺っておきたい。
  43. 中村梅吉

    中村国務大臣 これは実は先ほど森島さんの御質問で話が出ました、宇田国務大臣が何か便宜の処置があるように思うというだけのことを新聞記者会見の席上で、意見の交換の形で出たのだと思うのですが、それが新聞記事に出ましただけでも非常な反響を呼びまして、もう御承知と思いますが、ジャパン・タイムスには欧米関係人たちが、自分たち日本法律をできるだけ守ろうとしておるのだ、それに対しては協力しておるのだ、にもかかわらずそういうような特例を一国に開くならば、自分らも全部指紋はとらないようにしてもらうことを要求しなければならぬというような趣旨の論説が出て、非常な波紋を来たしたような次第でございます。(穗積委員「それでびっくりしたのですか。」と呼ぶ)それでどうということはありませんが、従来もわれわれとして特例を設けた先例が全然ございません。公務員として公務を帯びて入国をした者以外には特例に全然設けておりませんので、やはり中共との通商関係につきましても、われわれは日中貿易の振興をいたしますことについては望んでおるところでございますが、やはり通商通商として、どうか一つそういう事情にありますから、私ども外国人登録法というものはあくまで日本法律として厳守して、各国人に守ってもらう、こういう建前をとっていきたいと思いますので、どうかその点は一つお含みをいただきたいと思います。
  44. 穗積七郎

    穗積委員 法務大臣に念のためお尋ねいたしますが、私はあなたも専門家だから言わなかったのだが、先ほど御説明の指紋をとることから除外する中には、公務員並びにそれに準ずる者ということになっております。その準ずる者というのはどう解釈するかという場合においては、たとえば外務省が見て、これは政府の正式代表ではない、正式代表として受けるわけにはいかないという建前であっても、まあ業務の内容公務に準ずるものだという、内容的な判断をする場合には、これが法律違反にはならぬわけですね。それは御承知でございましょう。今のあなたの御答弁だと、大体そういうような行政措置がとられるならば法務省としては差しつかえない、こういうふうに理解いたしますが、それで間違いはないか、念のために伺っておきます。
  45. 中村梅吉

    中村国務大臣 これは御承知通り、別段外国人登録法公務員に準ずる者という定めは実はございません。そこで、国際慣例に従いまして、外交官の人及びその他公務員としての入国日本政府承認した者については指紋をとらない、こういう取扱いを一貫してやってきておりますので、どの国の人だからどうという、その差別は今までも全然いたしておりませんから、この精神だけはやはり法務省側としては貫いていきたい、かように考えております。
  46. 穗積七郎

    穗積委員 そういたしますと、向うの今までの事情からいって、貿易拡大について政府は、民間協定の実行に協力すると言っておられるが、この点については協力のしょうがないという意味ですか。何らかまだ考究される余地がありますかどうですか、岸国務大臣からこの際伺っておきたい。
  47. 岸信介

    岸国務大臣 今法務大臣法律的な見解を明らかにしているように、真正面から法律解釈云々というとなかなかこれはむずかしい問題だと思います。しかし今関係者におきましてもまた民商のこれに関係されておって貿易協定に当られる人々も、この問題を何か融通のきく方法で解決をして、スムーズに持っていかなければならぬということでもって苦心されておるのであります。われわれもその点苦心しておりますので、法律解釈だけでここで議論していくと、ますます問題がかたくなると思いますから、一つもう少し研究におまかせを願いたいと思います。
  48. 穗積七郎

    穗積委員 それでは今の総理代理のお言葉は、事実上その促進をするように協力したいという御趣旨にわれわれは承わりました。その具体的な内容並びに方法については、三月末から交渉に入りましたときに逐次また御連絡して伺うことにいたしまして、これはこの程度にいたしておきます。  最後にちょっとお尋ねしたいのは、実は第三次協定の場合にも、お互いにその協定内容の実行について義務を持つわけですが、相手は政府であるがこっちは民間なのです。しかもその協定内容には政府でなければ保証のできないものがある。今申しましたのはその一つです。従って実は、直接政府協定でなくても、その民間協定に対してある程度政府がこれを了解するという、あえていえば間接保証のような形式、この前は協定交渉最後の段階に参りましたときに、協定内容を鳩山総理に見せて、鳩山総理がこれに対して理解と協力を与えるという文書を、形式は私信でございますがお出しになったわけです。それで間接保証といえば保証、そういうような内容が整ってきたわけです。今度の場合にもそういうことが内閣が変っておりますから一応問題になろうと思うが、それらもあわせて考究していただくように、私は今ここでイエス、ノーの答えをいただこうとは思いませんが、そういう問題もあるということをよく理解されて、できるだけ先ほどの民間協定に協力するというお言葉の中に含んでこれも研究していただきたいと思いますが、一つ将来の研究にまかして努力することだけは差しつかえございませんでしょうね。
  49. 岸信介

    岸国務大臣 昨日来しばしば申し上げておるように、私ども中共を今承認し、これと国交を正常化するという段階ではないと思っております。それからこれは緩和の方向に進んでおりますけれども、ココムの取りきめ等の内容に今反対するようなことはちょっとわれわれの政府として困りますが、それ以外の点において、できるだけこれのスムーズな成立と、またそれの実行には私どもは協力する考えでおります。
  50. 穗積七郎

    穗積委員 次に進んで国交問題でお尋ねいたしますが、最初に高橋条約局長政府の所見を伺っておきたい。国連において、中共政権が加盟承認された。その場合に、その提案に日本の国連代表が賛成をしたという場合、それからもう一つは、全般的な国交回復、たとえば平和条約等々の締結ではなくて、一例を申しますと、貿易協定であるとか、あるいは文化協定等々、一応頭の中にあるわけですが、そういうものを政府間で結んだ場合に、現在の政府の条約解釈においては、それを政権承認または国交正常化を認めたものと切り離してお考えになっておられるかどうか、この二つのケースについての解釈を伺っておきたいと思います。
  51. 高橋通敏

    ○高橋(通)政府委員 第一に、文化協定やいろいろの協定の問題でございますけれども、これはやはり個々の協定についていろいろ検討してみなければわからないのじゃないか。と申しますのは、たとえば協定で批准条項があるものとか、あるいは批准条項がなくて署名で効力を発生するものとか、それから、条約の当事者としまして、政府の場合もございますし、関係官庁の場合もございますので、個々の協定自体について検討して、それによって承認になるとかならないとかは決定になりますし、また反対に承認すべきでない、そういうふうな見地から協定の態様も変ってくるのではないかというふうに考えております。  それから国連の場合につきましては、研究させていただかないと明確なお答えはちょっとできかれます。たとえばある承認案件が出まして、それに賛成投票をする場合は——加盟国としては賛成投票または反対しますけれども、それが成立した場合に、それが国連の意思として承認になるというようなことも考えられますし、その点は研究させていただきたいと思います。
  52. 穗積七郎

    穗積委員 もう一ぺん明確にさせておいていただきます。第一の御答弁はその通りだと思う。そこで政府解釈は、政府協定を結べば、すべてが、いかなる形式内容によってでも相千国の政権を承認したことになり、国交回復を予約したものになるというふうに解釈はしないということでいいわけですね。
  53. 高橋通敏

    ○高橋(通)政府委員 ちょっと補足させていただきますが、たとえば郵便官署同士の協定がございます。こういうのは特に承認ということもないと思っております。それ以外の問題としまして、たとえば承認にもいろいろな形態がありまして、正式な承認というような場合は、個々の協定について考慮し、その場合々々によって決定されるということであります。
  54. 穗積七郎

    穗積委員 ですから、つまりすべて協定の場合に政権を承認したことにならないという解釈でよろしゅうございますね。
  55. 高橋通敏

    ○高橋(通)政府委員 そうでございま
  56. 穗積七郎

    穗積委員 外務大臣は今の条約局長解釈について、責任をお持ちになりますね。
  57. 岸信介

    岸国務大臣 法律上の解釈としてはれでいいと思います。
  58. 穗積七郎

    穗積委員 それでは次会に——次会今度の定例日は金曜日ですが、次回開かれるまでに、国連の問題については研究されて明確な答弁をいただきたいということを委員長一つ留保をお願いしておきますから、了解しておいてもらいたい。  そこで外務大臣に所見を伺いたいのです。というのは、これは客観的に見てそうですが、中国大陸貿易については、今日本と西ヨーロッパ諸国との間でやや競争の立場に立っている。特にイギリスがそうなんです。イギリスの最近の動きを私はこういうふうに見るのだが、外務大臣はどう見ておられるか。政権がかわりましたが、新しい政権も御承知通りの、今までの実をとって名を捨てるというか、形式にとらわれないで内容をとるということ中華民国政府承認しないで、中華人民共和国を承認して貿易をどんどん進めて参りました。そこで私は新しい首相も、おそらくは国連の舞台を中心にして、中共の国連加盟承認問題もアメリカその他の国との商でこれを促進する可能性があると思う。これは、さきに同じくココムから制限を受けておる国でありながら必ずしも利害が一致していないという場合と同じだと思うのです。そういう場合に、政府としてはその送っておる国連代表がとういう態度をとるべきか、このことについては非常に重要に将来の貿易関係に影響すると思います。さらに御承知通り、昨年北京、上海におきまして日本が開きました見本市が異常なる成果をおさめてセンセーションを起したわけなのです。それに対抗して、この秋にイギリスが大々的に中国において見本市を開く計画をすでに決定いたしております。これらの動きを見ますと、日本の大陸貿易の問題については、主義、主張の問題を超越して、この際政府が踏み切らないと、直接交渉においても、または国連の舞台においても、口ににされておるような貿易拡大は非常に立ちおくれになってしまう。現在すでに立ちおくれですが……。そういうふうに微妙な動きがあることについて、外相は一体どういうふうにお考えになっておられるのか。もし最近のイギリス側からの情報等がありましたら、あるいは情報文化局長が責任かと思いますので、局長をもって説明させていただいてもよいが、外務省としては一体どういう情報をつかんでおるのか、この際伺っておきたいのです。
  59. 岸信介

    岸国務大臣 同じ自由主義国でありましても、中共に対する国際的な関係は必ずしも同一でないことは御承知通りであります。特にアメリカとイギリスと、は考え方に相当な開きがある、違っておるということが根本においてあるわけであります。しかしその根本的な問題は別として、貿易関係から見ますと、私どもは実は機会あるごとにそれをアメリカの人々にも話しておるのでありまして、フェアレス・コミティの人にもその話をしたのです。日本は割合に忠実に——ココムの、いやしくも国際的取りきめに対して協力する以上は、それを忠実に守る国柄であるのだが、しかし現実に中国に対する貿易関係を見ると、やはり西欧諸国のなにが相当に進出する傾向にある。そうなれば地理的にいっても歴史的にいってもまた経済的にいっても、日本としてはそれをただ座視するわけにはいかないのだ。従って日本中共貿易という問題は、われわれの非常に深い民族的な関係があるのだから、この点をアメリカも十分了解して、この問題に処してもらいたいということの注意を喚起しておるのでありますが、お話通り、イギリスからは非常、に積極的に中共貿易に対して出ておりますので、私どももその事実は十分に頭に置いて、日本の今後の中共貿易というものの増進については考えていかなければならぬ、こういうふうに思っております。
  60. 穗積七郎

    穗積委員 認識については大体一致して、あとは具体的に腹をきめてやるかやらぬかなのです。これは邪推かもしれませんが、必ずしも思い過ごしではないと思います。最近アメリカがココムの問題について日本にも特に強化を申し入れてきたりしている。これはイギリスがスエズ問題以来中共貿易に対して非常なハンディキャップを負うようになって、すなわちその期間に日本が必ずしも進出することを欲しない空気、これらの問題と、今度のココムの強化申し入れの動きとは関連があると私は見ているのです。全部ではありませんが、一部の関連がある、こういうふうに見ておるわけです。その間のことは明敏なるあなたのことだから、事態はわかっていると思うのだが、あとは腹だけですから、どうか一つ腹をきめていただかないと、明敏なるあなたの情勢判断も何の役にも立ちませんから、一つ昨日歓迎の辞で申し述べましたように、御決断を願いたいということを申し上げておきます。  そこで関連してちょっとお尋ねしたいのは、ネールがこの間国連会議で重光さんと会ったときに、日本を訪問する気持がある、用意があるということを伝えられたが、岸外務大臣は、ネールの日本訪問を歓迎される気持があるかどうか、この際伺っておきたいと思います。
  61. 岸信介

    岸国務大臣 もちろん大いに歓迎する考えでありますが、最近いろいろな情報等によりますと、むしろインドのネール首相は、自分が行く前に、一体日本からだれもたずねてこないじゃないか、日本から首相や外相が少くとも来るのが当りまえだ、昨年は自分の方から副大統領もたずねているのだ、自分が行くのについては、日本からまず来いというふうな気持を、これは非公式な話ですけれども、ある場合には表示しておるようでございますし、いずれにしても……(穗積委員外相が行かれたらどうですか。」と呼ぶ)私は演説に述べておる通り、国会が済んだらできるだけ早い機会に東南アジア諸国を歴訪したい……(穗積委員「インドを訪問しますか。」と呼ぶ)その際には訪問する考えであります。
  62. 穗積七郎

    穗積委員 なかなかいい考えで賛成であります。実はあと対ソ関係の問題と対米関係について逐次外務大臣のお考えを、しかも具体的なケースの中から伺いたいと思ったのですが、委員長から時間の催促がありますから、最後に一括いたしまして、対ソ関係について二点だけ伺って、一括してお答えをいただきたいと思います。  第一は、今度の共同宣言の中の重要な一つは、やはり貿易拡大に対する議定書なのです。これは戦前においては、日本とソビエトとの間においては、それほど、中国との場合ほど大きな貿易は期待できない実情にあったし、経験も少かったわけです。しかし今度はわれわれの得ておる確かだと思われる情報によりますと、いよいよウラルから西の方の開発計画が大体軌道に乗った、完成はいたしませんが、軌道に乗ってきている。そこで新しく着手すべきものはシベリア地区の開発計画なのです。これかすでに、願望ではなくて具体的な政策の日程に上ってきているわけです。そういう点を考えますと、この前私は本会議における共同宣言に対する質問の中で意見を求めたように、具体的な品目まであげて十億ルーブルが初年度からというようなことはむろん考えられませんが、数年の努力を要するならば、その貿易額も必ずしも私は夢ではないというふうな判断が持てるわけです。そうなりますと伺いたいのは、あなたが前々からおっしゃっておられる通り、ソビエトとの間においては国交が回復したのだから友好関係を結んでいきたいというお話でございますが、それの具体的な一つの現われとしては貿易拡大でなければならない、これは日本としても望むところである。そこでそのためには決済その他を見ましてあの議定書では不十分ですから、どうしても通商航海条約あるいはまた貿易協定、その名前は別としまして、貿易実務が決済問題その他を中心にしてもっとスムーズに行きますように、どうしても私は単独協定を結ぶ必要があると思う、今度の場合でも貿易代表部員を二十名というのに対して、日本外務省はひとまず五名を目標にしてお許しになっておられるようだけれども、いずれにしても貿易代表部が来ておるわけです、そうなればこちらも行くわけでしょう。そういう見通しに立って貿易協定、単独協定をこの際一歩前進して結ぶべきだと私は思う。それに対して賛成ならばそれでよろしいが、もしそうでない、消極的な御返答があればその理由を明確にしていただきたい。これが一点です。  第二点は、先ほど森島委員からもちょっと触れた渡航の問題です。外交は人の問題から始まる。貿易にしても何にいたしましてもそうです。そこで従来閣議できめられましたあの不当なる取りきめ、三つの内容からなる取りきめ、これはわれわれは実は憲法違反であり、旅券法違反であるとすら根本的に考えておるのだが、その解釈は別として、ソビエトとの間においてはこれは国交回復したのですよ。それで総理も外務大臣もソビエトとの問には友好関係を深めていきたい、貿易も拡大することには賛成しておられる。そのときに、未回復国であった中国、ソビエトに対してああいう取りきめをなされた取りきめが、ソビエトに対してもなおかつ今日生きておるのかどうか、そういう御解釈になっておられるのかどうか、われわれはそういうことはあり得ぬことだと思います。従って今までの取りきめは未回復国である中国に関するのみの問題であるとわれわれは考えるが、その点はどうでありますか。その二点だけ伺って、他の問題並びにアメリカに対する問題については次の機会にお尋ねいたしたいと思いますから、一ぺんで、再質問しないで済むように、納得のいくようにはっきりお答えをいただきたいと思います。
  63. 岸信介

    岸国務大臣 貿易協定といいますか、貿易が具体的に日ソの間にできるような取りきめを私はやりたいと思っております。これは大使を交換した後においてぜひやるべき最初一つの重要案件たと思っております。  それからソ連との国交が回復いたししたので、国交回復した国に対しては、旅券法の閣議決定のあれからはずしておりまして、ソ連はそういう扱いにはしておらないのであります。
  64. 穗積七郎

    穗積委員 了解いたしました。
  65. 野田武夫

    野田委員長 この際十分休憩いたします。     午後零時五十二分休憩      ————◇—————    午後一時十六分開議
  66. 野田武夫

    野田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を継続いたします。田中織之進君。
  67. 田中織之進

    ○田中(織)委員 国際情勢の全般的な問題については、委員会の審議の進行につれて別の機会に伺いたいと思うのでありますが、本日は岸外務大臣に特にわが国に現在駐留いたしております米軍の撤退の時期、その他に関連した問題と、それからわが国の外交政策の上で最もすみやかに、取り上げなければならない問題であります沖縄の返還問題に限定をして若干伺いたいと思うのであります。  三十二年度の予算案が策定せられるときに、当然この予算の中の重要な部分を占めております防衛費の問題に関連をいたしまして、政府部内におきましても防衛費の総額をどの線に押えるか、重要な問題になっていたと承知するのであります。そこで防衛費の総額をきめるに当りましては、安保条約に基いて共同防衛の立場から米軍が講和締結後引き続き日本に多数駐留をいたしておる関係から、いわゆる米駐留軍に対する防衛分担金の額を幾らに削減するかということも、一つの重要な問題であったと思うのであります。そういう関係から、予算が策定せられる以前には、必要があれば外務大臣が防衛分担金の交渉のために渡米することも、これは新聞紙の報道でありますから、どこまでが具体的に進んでおったかはわかりませんけれども、報道されておるような段階でございます。ところが防衛分担金の額に対する日米の交渉は、在日アリソン大使と外務大臣、大蔵大臣、防衛庁長官、これは石橋総理の兼任でありました関係から、主として増原次長がこれに当ったようでありますが、その現われたところを見ますと、予算面では前年度の約三百億を踏襲するということで、日本側の防衛費の総額につきましても、前年度よりわずか四億程度上回っただけで、予算外契約の分を含めますと若干数字が違ってくるかと思うのでありますが、そういうことでおさまったと見えまして、そうした予算案が現在国会の審議にかけられておるのであります。当初外務大臣がアメリカへ渡ってでも交渉しなければならないとまで予想されておった防衛分担金の削減問題が、実際には何らの削減を見ずに、前年度の予算の額を踏襲したままで、三十二年度の予算案が決定を見たということについては、どうも従来から防衛分掛金の削減問題が予算編成の大きな政治的な課題として相当の時間をかけておったにもかかわらず、明年度の予算編成に当っては、そういうことで何のことのないような形で前年度のそのままを踏襲したというような形が現れておるのでありますが、われわれの常識をもっていたしますならば、どうもその裏に何ものかがひそんでいるのではないか、こういう実は懸念を持つのであります。本会議あるいは予算委員会でたびたび質問せられた、いわゆる原子部隊の日本駐留の問題であります。この点については外務大臣は否定をせられておりますし、またそういうことになれば、政府の全力をあげて阻止するためにアメリカと折衝するということも答弁せられておるのでありますが、いわゆる誘導弾兵器を日本側から申し入れて受け入れるということがすでに事実になって現われてきておる。それ以外にも何らかの防衛分担金の削減交渉の過程において、裏の取引が行われたのではないかという疑念、これはただ単にわれわれが持っておるばかりではなくて、国民全体が持っている一つの疑問ではないかと私は思うのです。そこでまず防衛分担金の三十二年度における負担額の折衝の経過をこの際外務大臣より明らかにしていただきたいと思います。
  68. 岸信介

    岸国務大臣 いわゆる防御分担金の問題につきましては、実は今までこれの交渉がいろいろと厄介な交渉を経てきたことは、田中君御承知通りでありますが、前重光外相がアメリカをたずねられたとき私も一緒に参ったのでありますが、そのときにもこの防衛分担金の問題で、予算編成ごとにこの分担額をきめるということは非常に不適当であるということが議論になりまして、これはやはり一つの形式をはっきりして、そうして計算上の基礎をはっきりして、予算編成のつど交渉を必要としないようにし、そうして究極は防衛分担金がゼロになるように持っていくことのフォームを考えようということになりまして、自来研究しました結果、昨年のうちに、防衛分担金の額をきめるのは、要するに日本の防衛費のふえた額の半額を防衛分担金から減ずるという形式がはっきりときまったのであります。従って防衛費がきまりますと、昨年の防衛費よりも本年の防衛費が幾らふえたか、ことしは八億ふえたのであります。従ってその半分である四億を昨年の分担金から引いております。もう防衛分担金の額をきめることをアメリカと折衝する必要は昨年来、ことしが初めてでありますが、なくなったのであります。その防衛分担金をきめる基礎になる日本の防衛費を幾らにするかという問題が、われわれ政府としては当然考えなければならぬことであります。この額をきめるにつきましては、今御指摘のありましたように、日米共同防衛の見地から、日本の防衛力増強についてアメリカ側の期待なりあるいは希望があるわけであります。これは軍事顧問やその他のなにから十分意向が伝えられておるわけであります。われわれはそういうものを一面に考え、同時に日本の財政全般を考え日本の国政全般を考えて防衛費を幾らにするかということは、これは日本独自にきめるものであって、アメリカに相談いたして、アメリカと折衝してそれが少いとか多いとか言うべきものでない。分担金ならばあるいはそのつど交渉する必要があったのでありますけれども、この分担金はもう折衝しなくてもちゃんと算術的にきまるようなフォームを決定したわけであります。そこで私ども日本の防御費をきめることは、これは内閣において独自にきめるべきだ。そしてわれわれがきめた額をアメリカ側に話しまして、日本の三十二年度の防衛費これだけにする。しかしアメリカ側から見ますと、常に日本の防衛努力がそれでは十分でないじゃないかというような意見の開陳もありましたけれども、これは日本独自にきめることであって、日本の国力に応じてわれわれが漸増方針をとっている、その方針に基いて本年度はこれをもって適当であるということをきめたわけでありまして、この間において何らかの裏の話があっただろうとか、取引があっただろうということがもしも想像されているとすれば、それは全然事実に反しているのであります。いつもは非常にもめるにもかかわらず、本年が非常にすなおにすらっといったということは、分担金の額の減額についてはちゃんと算術的の基礎のフォームがはっきりしたということと、それから防衛費そのものをきめるのはあくまでも日本独自の立場からわれわれがきめるのだ、責任を持ってきめるという立場を堅持してやった結果として、ああいうふうに今までに見ないような、従ってやかましい折衝を必要としなかったゆえんであります。何かこの問題について外務大臣やらその他が渡米しなければならぬだろうというような想像記事が出ておったということでありますが、そういうことは初めから全然考えておりません。今私が申し上げたような筋でこの問題を決定したわけであります。
  69. 田中織之進

    ○田中(織)委員 昨年確かに日本の防衛費の増額分の半額だけ防衛分担金を減少していくという、一応の防衛費と防衛分担金の負担とのフォームがきまったということは私も承知をいたしておりますが、もちろんその取りきめ自体が私非常な問題を含んでおると思うのであります。そもそも行政協定に従って日本側が負担する、いわゆる防衛分担金の額というものは、本来の取りきめから申しますと、日本の防衛費の増加につれてそれを減少するというようなことは、行政協定ができた当初の防衛分担金に対する負担額決定に当って、実はそういうことは取りきめていないのでありまして、その後そういう形に変形して参ったというところにも私は大きな問題があると思うのであります。しかしその点はいずれ予算委員会等においても——私は一昨年の予算審議の総括質問の際にもその点を指摘したのでありますが、引き続きその点をおそらく予算委員会でわが党の同僚委員から指摘することになろうかと思いますから、その点を深く追及することを避けます。が、今外務大臣がお述べになったような方式でいきますならば、日本の防衛力、自衛隊が強化されない限り、米軍の撤退ということはあり得ない、こういう実は結論になってくるのであります。われわれは安保条約の廃棄を主張いたしておるのでありますが、現内閣といたしましても、岸さんがそれぞれの委員会等で述べておられるように、究極に安保条約をなくする事態に持っていきたいということは政府も認めておるのであります。それを日本の防衛力を強化するという一点だけにかけていくようなやり方では、真の日本の独立という立場で、外国軍隊の駐留を一日もすみやかになくすることはできないと思うのです。ですから日本の独立を達成するという観点から、米軍撤退交渉というものがそうしたわが方の防衛努力の強化とは別になされなければならないと思うのです。今外務大臣が言われたように、防衛分担金の方式が算術的にきまるようなフォームができているのだということでありますれば、私が大臣に伺いたいと思うアメリカ軍隊の撤退——これは向う側の必要から撤退する場合もあり得ると思うのです。ことに最近は、国際情勢の緊張が一たん緩和されたものが、再びスエズ問題あるいは東欧における問題等を通じて若干この緊張が加わったような感じを持てないではありませんが、この国際緊張が世界的に緩和せられるという情勢がありますならば、アメリカ側の事態から見ても、アメリカ駐留軍の兵力を少くするという努力が当然起り得ると思うのです。そういうようなことが全く考慮に入れられないような形で、防衛分担金の問題は、こちらの防衛費の増加分の半分ずつを減らしてもらって、究極にはゼロにするのだ、こういうような気の長いことではいけないと私は思うのです。またそういう意味から見て、国の独立のために外国軍隊の駐留を一日もすみやかにやめてもらうことについての外交的努力というものがそこには出てこないと思う。しかしごく最近はそういうことは出ないのでありますが、アメリカ自体の軍の作戦あるいはそういうような這般の考慮から見ても、従来もアメリカ軍は逐次日本駐留部隊の数を減らして参った実績があるのでありますが、今度の内閣になりましてから日本側の防衛努力の強化という一面と別な面における米軍の撤退を交渉した事案があるかどうか、この点お答え願いたいと思います。
  70. 岸信介

    岸国務大臣 そういう事実は今日までございません。また今御指摘になったように、民族が独立せる上、国家が独立している以上、外国の駐留軍がおるということは、その独立の矜恃を著しく傷つけるものであって、望ましい形ではないという考え方は私も同感でありますが、今日の状況で、日本の防衛力、自衛力だけでもってアメリカに直ちに撤退をしろということは、今の国際情勢からいって適当ではない、やはりわれわれの祖国をわれわれの手である程度まで防衛できるという段階まで早く作り上げて、アメリカ軍の撤退を実現せしめるということに進んで参りたい、こう思っております。
  71. 田中織之進

    ○田中(織)委員 今日の日本の平和憲法の建前からいって、外務大臣のその考え方には大きな部面が欠けておると私は思うのであります。自衛隊を強化していく、防衛力を強化していくという面だけで日本の防衛が達成せられるものではないということは、これは外務大臣も認められるところだろうと思うのであります。そういう意味において、日本の国連加盟、いわゆる世界的な規模における戦争をなくするという平和への努力が、片一方において行われておるのであります。それと相待たなければ、真の日本の防衛、安全を全うし、日本の平和を確保することはできない、ただ防衛力の強化の一点だけではとうてい達成されるものではないと私は思うのです。そういう観点からいたしまして、この点はできれば憲法を、われわれの立場から言えば、改悪しょうという考え方を多分に持っておる保守党政権でありますから、その点は対立した考え方になろうかと思いますけれども、この点は軍事力の強化、防衛力の強化というだけによって、日本の安全と平和を守るという考え方ではなしに、それ以外の面においていかに国際緊張を緩和し、さらには日本の待望した国連加盟が実現した今日の段階においては、国連の機構を通じてその目的を達成するという方面への積極的な努力を、外務大臣としてやってもらいたいということを私は希望しておきます。  そこで、米軍の撤退と関連してくるわけでありますが、新たに青森県の三沢飛行場の高射砲座の用地など七件の新たなる米軍への軍事基地の提供を十一の次官会議決定をいたしました。これが近く閣議決定を見るということが読売新聞の十一日の夕刊に報道せられておるのであります。もちろんこの中には、今度の新たに米軍に提供する軍事基地としては、土地二万三千三百八十六坪、建物一万四千百坪となっておりまして、新たに提供する分がそれでありまして、同時に昨年来部分的に発表せられております奈良のキャンプ以下五十九件の返還が同時に決定を議せられたように報道をせられておるのであります。私は、先ほど外務大臣が認められたように、本年度においても防衛費の増加八億の半分にしても、米軍の駐留軍の規模というものがその限りにおいて若干減少されるものだと思うのであります。そういうところに新たに三沢飛行場など七件の軍事基地が提供されるというようなことは、これは私逆行するものだと思うのでありますが、一体この三沢飛行場など七件の新たに提供する軍事基地というものの内容はどういうようになっておるか、この際明らかにしていただきたいと思うのであります。大臣も御承知のように、先月末群馬県の相馬ケ原で起りましたたま拾いの農家の婦人に対する米兵の射殺事件——私も現地へ行って実情を調べて参りましたが、この問題は新たに米軍が日本に駐留するようになってからの問題ではございません。大正九年に旧陸軍の射撃場として収用されたものが、昭和二十六年になりまして新たに約一万六千坪であります、それを拡張いたしまして現在の相馬ケ原の演習場ということに相なっておるのでありますが、問題は、われわれとしても、たま拾いをしなければ生活ができない状慮にこの演習場付近の人たちが置かれておる実態というものを、よく見きわめなければならぬと思うのです。その原因はどこかといえば、やはりこの演習場のために数万坪の広大なる農地が接収せられているというところに出発をするのであります。そういう観点から見て、こういう不詳事件が再び起らないようにするためにも、やはり現在提供いたしておる軍事基地も、これを積極的に縮減し、すみやかに返還を求めるという努力がなされてこそ、初めてこうした不詳事件を根絶することができる根本的な解決策だと私思うのであります。それにもかかわらず、十一日の次官会議で二万三千坪ではありますけれども、七カ所にわたって新たなる軍事基地を米軍に提供することを政府決定するというようなことは、こういう問題が起きているやさきだけに私は納得できないのでありますが、この際三沢飛行場等七件の新たに提供する軍事基地の内容について、もし大臣がわからなければ、国際協力局長も見えておられるはずでありますから、お示しを願いたいと思います。
  72. 岸信介

    岸国務大臣 新規提供のこの施設の詳細は、実はわかっておりません。今日参っております政府委員にもわからないそうでありますから、次の機会までに十分調べて、そうした御報告することにしたいと思います。
  73. 田中織之進

    ○田中(織)委員 それではできるだけ早く、すでに次官会議決定したということでございますから、私は明細がすぐわかると思うのでありますが、今直ちにお示しを願えないということであれば、別の機会にそれをお示しを願って、さらにこの点についての質疑を続行することにいたします。  そこで時間の関係もありますので、第二の問題でお伺いしたいと先ほど申し上げました沖縄関係に移りますが、これは同じく十一日の読売新聞の朝刊でございますが、政府は近く三十一年度の第二次の補正予算を国会に提出すべく目下作業を進めておるようでございます。その中に講和発効前の沖縄における接収土地、施設に対する見舞金として十億円を新たに支出を予定いたしておるという報道が行われておるのであります。講和発効前の沖縄における接収土地並びに施設に対する補償の問題は、これは沖縄の現地の人たちの強い要求でありまして、外務委員会としても昨年、一昨年と引き続きこの問題を取り上げて参っておるのでありますが、われわれは、政府が今度第二次の補正で見舞金という名目で十億円を支出するということは、どうも理解ができないのであります。講和発効前の沖縄において接収されました土地あるいは施設に対する補償金は、わが党の計算によりますと、大体百七十一億円という膨大な金額に達するのであります。これは当然米軍側において負担すべきものだ、われわれはさように考えるのでございますが、この点外務大臣としてはいかにお考えになっておるか、この際伺っておきたいと思うのであります。
  74. 岸信介

    岸国務大臣 講和条約発効前の沖縄の土地収用の問題について、アメリカ側が補償の義務ありやいなやの点につきましては、法律解釈としてまだ政府部内において一致した意見を見ないところであります。これも法律的な解釈をはっきり政府としてきめる必要のある問題だと思いますが、これについての研究も行われておりますけれども、まだ一致した意見に達しておりません。しかし一面沖縄の現住民の生活の状態その他を見ますと、この法律解釈いかんの決定するを待つとか、あるいは決定の結果、アメリカ側にありとして相当な時日を要するとか、そういうような状況に放置しておくことは、いろいろなあの実情考えますと、われわれの忍びないところであります。やはり日本政府として、日本国民であり、日本が潜在主権を持っておる沖縄のこれらの住民の窮状を考えますと、われわれはこの際進んでできるだけ早く、とにかく一定額のものを見舞金としても、それは法律的の問題は将来に決定するとして、これを住民に交付することが適当である、こう考えて、それの金額はまだきまりませんが、いろいろ実情考えつつ、この問題を今度の国会において解決したい、こういう考え方政府は持っておるのであります。
  75. 田中織之進

    ○田中(織)委員 政府部内において、講和発効前の沖縄において米軍に接収された土地及び施設に対する補償を、米軍に負担させるべきかあるいは日本政府側が負担すべきであるかという点について、まだ意見の一致を見ていないという点は、私きわめて心外なのです。これはたとい講和発効前といえども、沖縄と同じ占領下に置かれておりました日本内地とは事情が違うのであります。事情が違うということは、現在講和発効後、もちろん講和条約の第三条によってアメリカが引き続き施政権を持つということは明文化されたものでありますけれども、それは、実際問題といたしまして、同じ占領中といえども内地と沖縄とは事情が違うことは明々白々な事実なのです。従ってやはり政府部内においても、大蔵当局は、当然これはアメリカ側の負担すべきものであるという見解をとっておるというふうにわれわれは聞いておるのでありますが、私はこの問題は早急に解決しなければならぬ問題でありますから、まず政府がこの問題についてもちろん意見統一する。統一するについては私はやはり大蔵当局も認めておるように、また国民のすべてがおそらく支持するであろうところの、これは占領中のことではあるといえども、内地と沖縄とは事情が違ったのだ。完全にアメリカの軍政下に、軍事占領下に置かれておったものと内地とは事情が違うのでありますから、まず政府はこの問題を、見舞金というあいまいな形ではありますけれども、とりあえず十億支出せられることについては私らも賛成であります。これは土地その他の施設を提供した五万世帯に一世帯約二万円で合計十億円を支出し、見舞金という形でとりあえず出そうということでありますが、むしろ全額は少きに失すると思うのでありますけれども、これはやはり請求すべきもの、支払うべきものはアメリカであるという点、政府方針を明確にいたしまして、私はアメリカと強く折衝した上でなければならないと思うのでありますが、この点政府部内の、この講和発効前の土地あるいは施設の提供者に対する損失の補償の負担の問題をすみやかに統一をして、この点についてアメリカ側と折衝する考えがあるかどうか、伺っておきたいと思います。
  76. 中川融

    ○中川(融)政府委員 ただいまの御質問の点につきまして、平和条約十九条の解釈に関することでございますが、どういうわけでこれについて政府部内の意見がまだ一致を見ないかということにつきまして、若干の補足的な御説明をさしていただきたいと思うのでございます。この十九条の解釈で、ただいま田中委員御指摘のように、アメリカに請求することが当然であるという解釈はすぐには出てこないと思うゆえんのものは、ここには日本国領域において講和発効前にいろいろのことから起きた請求権は日本は放棄するということが規定してあるのでありますが、従って沖縄が日本国領域に入るか入らないかという根本的の問題を包含しておるわけであります。単に条文の字句からの解釈のみで結論を出しますと、われわれは一貫してアメリカに対しまして沖縄は潜在主権がある、日本の領土であるということを主張してきたわけでありまして、その根本的主張が、もしもこういう主張をすることによって、解釈することによって影響を受けるというようなことがあってはゆゆしき大事でありますので、そういう点を十分勘案いたしまして、かつまた大蔵省側の言うことも考慮いたしまして決定しなければならない関係にあるために、その統一的な解釈決定がおくれておるという事情にあるわけであります。その点を御了承いただきたいと思います。
  77. 田中織之進

    ○田中(織)委員 持ち時間が経過いたしましたので、委員長から簡潔にという注意がありますので、簡潔に御質問申し上げたいと思うのであります。今のアジア局長の答弁は、私非常に重要な問題を含んでおると思うのであります。そこでこの問題については、やはり沖縄に、いわゆる潜在主権が日本にあるのだ、当然そうすると沖縄の関係におきましては、国会の議決にもその点を明確にしたように、俗に沖縄の返還という問題はいわゆる施政権の返還である、潜在主権がわが方にあるという見解から、国会の決議もそういうことになってきておると思うのでありますが、それでは新内閣岸外務大臣として、この沖縄の施政権の返還について、内閣成立後アメリカと交渉された事実があるか、今後これをどういうふうにしてこの施政権の返還を求められようとするか、この際伺っておきたいと思います。
  78. 岸信介

    岸国務大臣 沖縄の施政権の返還の問題につきましては、国会の議決もございまして、アメリカ側にその意思も通じてありますが、アメリカ側としては現在の極東における情勢から見ると、返還することはできないという意味の返事でございます。私はやはり国会の議決を尊重し、できるだけこの施政権返還が実現することに努力をしなければならぬと思いますが、現在までのところ、私が就任してからアメリカ側に交渉したなにはありません。近くアメリカ側からも大使も着任することでありますし、全体の日米関係の調整の問題も兼ねて、私外交演説においてもその考えを述べておるのでありまして、全面的にアメリカとの間にいろいろな話し合いをしなければならない何でありまして、従ってそういう問題についても適当な機会にわれわれの考え一つ申し述べたい、こう思っております。
  79. 田中織之進

    ○田中(織)委員 そういたしますと、従来の沖縄の施政権の返還交渉という点に交渉の焦点がしぼられてきたということになりますと、アメリカ側としては、平和条約第三条にある、いわゆる沖縄についての信託統治を国連へ求めるという点はすでに放棄したものだ、こういうふうに解釈しよろしいでしょうか。
  80. 岸信介

    岸国務大臣 それはアメリカが放棄したものだと考えるという根拠はないと思うのです。しかし今後のアメリカとの間の諸問題の調整の進行によりまして、どういうふうになっていくかは一つの問題であろうと思いますけれども、今アメリカが平和条約三条の権利と申しますか、そういう地位を放棄したと見るべき根拠はないと思います。
  81. 田中織之進

    ○田中(織)委員 そうすると、これはなかなか短時間ではこの問題の質疑を終るわけにはいかなくなるわけですが、本会議でも共産党の川上議員は、日本が国連に加盟した以上、国連憲章の七十八条の解釈からいたしますならば、「国際連合加盟国の間の関係は、主権平等の原則の尊重を基礎とするから、信託統治制度は、加盟国となった地域には適用しない。」と、この規定を引用いたしまして、従って平和条約第三条の、アメリカが信託統治を国連に求めるということはここの国連憲章から見てもできないのではないかという質問に対して、外務大臣は、七十八条の解釈は、川上君が理解したように必ずしもいわゆる日本国全体の領土ではなくて、その国の一部の領土であるという場合には、おのずから別問題だという解釈を本会議で述べられておるのでありますが、この点についても、やはり国連憲章の七十八条の解釈その通りだとすれば、それは日本の国全体の領土である、あるいはその領土の一部である沖縄については、この七十八条は適用されないのだ、そういう解釈は文理解釈から出てこないと私は思うのです。そういう点から見ても、当然やはり現在この国連に加盟を認められた日本立場から見ても、平和条約三条の信託統治云々の点は新たなる段階に私はきておるものだと思うのであります。  それからこの点は、外務大臣は就任早々であるから、まだ事務当局との間には、この純粋についての明確な検討があるいはなされていないかもしれませんけれども、問題は、従来外務事務当局の見解といたしましては、小笠原諸島の返還の関係から見まして、いわゆる信託統治に持っていく以前にアメリカから返還を受ける可能性が、すでに小笠原諸島の返還等の過程を通じて出てきておる。従ってこの問題については、信託統治でアメリカが持ち出す以前に解決する方が、日本側としてむしろ有利ではないか。この点についての議論は従来あまりやってきていないのでありますけれども、先ほど外務大臣が答弁されたように、施政権の返還を求めるというアメリカとの交渉で、それは極東における国際情勢勢から見て、今直ちにそういう返還には応ぜられないというとに進んできておるということになれば、もうそれは信託統治に持っていくというような考え方を抜きにしての問題に発展してきていると私は解すべきではないかと思うのでありますが、この点に対する外務大臣の御所見を重ねて伺っておきたいと思います。
  82. 岸信介

    岸国務大臣 私どもはこの沖縄、小笠原というものが信託統治になることは望まないのでありまして、そういう事態の発生前に施政権を返してもらって、完全なる日本の領土、領域にしたいというのが一貫している私どもの願いでありますただ今アメリカが直ちにもう三条の信託統治にする考えは捨てたのだ、こう見ることは少し早いのではないか。アメリカが捨てないからといって、アメリカの意向を迎えるような意思は毛頭ございませんし、あなたの言われるようにもしもそういうような意思があるとするならば、それをさせずに日本に返させるということに今後も努力したいと思います。
  83. 野田武夫

    野田委員長 田中君、ちょっと御注意いたしますが、だいぶ時間が経過いたしております。質疑は重要なようですが、もしこの問題で長ければ次の機会にゆっくりおやりになったらどうかと思いますが、いかがでございましょうか。
  84. 田中織之進

    ○田中(織)委員 この問題はまだだいぶ長くやりたいと思いますので、自余の問題は後日に譲りますが、沖縄問題について外務大臣に強い希望とお骨折りを願いたい問題が一つあるわけです。
  85. 野田武夫

    野田委員長 その点だけでよろしゅうございますね。御承知通り外務大臣もほかにお約束があるようですから。
  86. 田中織之進

    ○田中(織)委員 それは先ほどの講和前の土地の補償の問題もそうでございますが、いわめるプライス勧告による新たなる接収の問題、あるいは地代の一括払い等の問題が昨年来からまだ未解決のままにきております。そこへ持って参りまして、ちょうど本年に入ってからだと思いますが、那覇の市長選挙の問題で、アメリカの好んでいない人民党の瀬長君が市長に就任したということから、あるいは那覇市に対するいろいろな資金の凍結であるとかその他の、われわれの立場から言えば明らかなる民主主義に反する弾圧が加えられてきておるのであります。最近聞きますると、瀬長市長がその間の事情日本政府に訴え、また日本政府との間で意見を交換するために日本へ来ることを米軍に許可を求めておるようでありますが、その許可もなかなかおりない、こういうような状況にあるわけでありますが、これはいわゆる潜在主権を持っておるわが国として、政府立場から見ましても、国民の一人一人であるところの旧沖縄県民に対する考え方からいっても、これは私は政府責任を持ってこれらの沖縄における米国との間の摩擦なり、あるいは米軍が行いつつある非人道的な、あるいは非民主主義的な施策に対しては、これを撤回させるための努力を積極的にやっていただかなければならぬと思うのであります。その点についての外務大臣の、特に首相代理としての岸さんの御見解を伺いたいのであります。  同時に私のお願い申し上げたいのは、この間の事情を調査するために外務委員会からも、実は昨年の夏から沖縄への現地視察を幾たびか計画をいたしましていまだに実現しない状況になっておるのであります。たまたま現在の当間主席から与党の自民党の本委員会の高岡委員外三名の方に、本年になってから沖縄への視察において願いたいという招請状が参りました事情大臣承知通りだと思うのでありますが、そのやさきにレムニッツァー司令官から外務大臣の方へ、日本の国会あるいは政府の代表を自分の賓客として迎えたいという招請が参りまして、当間主席から招請を受けた与党の諸君も、実はそのレムニッツァー司令官からの招請の関係から、向うへ調査に参ることを中止いたしまして現在に至っております。そこでたびたび国会でも計画をいたしましても、社会党の議員が入ったのでは困るというようなことが非公式に出て——これは岸さんの幹事長時代のことでありますから御存じのことだと思うのでありますが、これもついに実現しなかった。最近向うからの招請で与党の諸君が行かれるということも、与党野党を問わず司令官が招こう、司令官に招かれても私は向うへ行くことが目的でありますから、行った方がいいと思うのでありますが、その後の経緯がどういうふうになっておるか。それからわれわれの考え方といたしましては、これはやはり日本の領土の中に起った日本の国民の問題であるという建前から見ますれば、国権の最高機関である国会がこの土地へ参りまして、いわゆる国会議員に与えられた国政調査権に基いて実情を調査することは、われわれの当然の権利の行使といえば言葉は適切でないかもしれませんが、むしろ国会議員の義務だと思う。その意味で国会側として現地へ参ることについて、特に米軍との間の交渉外務大臣に特別お骨折り願いたいと思うのでありますが、その点について外務大臣のお気持を伺っておきたいと思います。
  87. 岸信介

    岸国務大臣 沖縄の事情を調査するために国会から代表者を出すという問題に関しましては、今田中君の指摘されたようにいろいろな経緯を経てきております。現在の状態におきましては、レムニッツァー司令官から国会関係として五名の人を招待してきておるのであります。これは議運その他におきましていろいろその人達に当っておるのでありますが、五名では各党の各方面の人を出すにはどうも適当でないから、十名にしてもらいたいという希望があったのでありまして、これをアメリカの方へ申し入れたのであります。ところがアメリカの方から飛行機で連れていく関係上、飛行機の座席がそうはいかない、そのほかに政府それから民間、学者等も招聘しておるようです。そういう関係上この五人を十人にすることは座席の関係上できないといって最近返事がありましたので、今国会の方へそのことを申し入れて、できるだけ早く人選をして——これは与党だけでなしに自民党と社会党から適当な人を代表として出して、現地について十分にその事情を調査し、同時にわれわれの考えも現在の人に徹底するようにすることがこの際必要である、こう考えておるわけであります。
  88. 田中織之進

    ○田中(織)委員 引き続きその点について御努力願いたいと思いますが、ただ向うから招聘がなければ向うへは行けないというようなことではなくて、私は現在の少くとも潜在主権にしろ日本の領土であるという関係から見ますれば、日本の国会議員が向うへ行くということについては、特別の軍事上その他の支障のない限り、アメリカ側が認めるのがほんとうだろうと思う、そういう立場に立って一つ外務大臣の方で御折衝願いたいということを希望申し上げまして、私の質問を終ります。
  89. 野田武夫

    野田委員長 次会は公報をもってお知らせいたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後二時九分散会