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1957-02-12 第26回国会 衆議院 外務委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十二年二月十二日(火曜日)     午前十時四十四分開議  出席委員    委員長 野田 武夫君    理事 須磨彌吉郎君 理事 森下 國雄君    理事 山本 利壽君 理事 穗積 七郎君    理事 松本 七郎君       愛知 揆一君    伊東 隆治君       菊池 義郎君    並木 芳雄君       前尾繁三郎君    町村 金五君       松田竹千代君    松本 俊一君       田中織之進君    田中 稔男君       西尾 末廣君    森島 守人君       八百板 正君  出席国務大臣         外 務 大 臣 岸  信介君  出席政府委員         外務政務次官  井上 清一君         外務事務官         (大臣官房長) 木村四郎七君         外務事務官         (アジア局長) 中川  融君         外務事務官         (欧米局長)  千葉  皓君         外務事務官         (経済局長)  湯川 盛夫君         外務事務官         (条約局長心         得)      高橋 通敏君         外務事務官         (国際協力局         長)      川崎 一郎君         外務事務官         (移住局長心         得)      石井  喬君  委員外出席者         専  門  員 佐藤 敏人君     ――――――――――――― 二月七日  ソ連抑留船員早期釈放等に関する請願(村松  久義君紹介)(第三四六号) の審査を本委員会に付託された。 二月十一日  沖縄基地問題に関する陳情書外二件  (第一二九号)  同外一件(  第一七八号)  中共貿易促進に関する陳情書  (第一四七号)  鳥島爆撃演習区域撤廃に関する陳情書  (第一六六号)  ヴェトナム賠償問題早期妥結に関する陳情書  (第一七七号)  原水爆実験禁止等に関する陳情書  (第一七九号) を本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  国際情勢等に関する件     ―――――――――――――
  2. 野田武夫

    野田委員長 これより会議を開きます。  まず外務大臣岸信介君より発言を求められておりますので、この際これを許します。岸外務大臣
  3. 岸信介

    岸国務大臣 石橋内閣外務大臣に就任をいたしまして、本日、第一回の外務委員会が開かれることになったのであります。御承知のように、昨年わが国は、日ソ国交正常化が行われ、また国民待望国際連合への加盟が実現をいたしまして、日本外交としてはきわめて重大な一転機にきておると思います。この際、私が、外交について経験も持たないのでございますけれども、きわめて重大な地位につきましたので、私としては全力をあげてこれに当りたい考えでおります。  外務委員会委員各位におかれましては、私のこの気持を十分に御了解いただきまして、あらゆる面から御協力並びに御指導のほどを外務大臣として委員各位にお願いを申し上げます。  初回の会議に当りまして一言あいさつを申し上げます。(拍手
  4. 野田武夫

    野田委員長 この際穗積七郎君から発言を求められております。これを許します。穗積君。
  5. 穗積七郎

    穗積委員 ただいま岸外務大臣から、衆議院外務委員会最初出席に当りまして御丁重なごあいさつをいただいて感謝いたします。私は野党委員を代表いたしまして、洋外務大臣を迎えるに当りまして一言あいさつを申し上げたいと思います。  岸外務大臣は、今国会冒頭外交方針演説の中で、内政外交の一体化を特に主張されました。このことに関してはわれわれ全く同感です。従来わが国のいわゆる霞ヶ関外交というものは、国内政治、特に経済事情についていささかこれをおろそかにいたしまして、テクニシャンとしての外交に走り過ぎておった点については、あなたも御指摘の通り内政外交一体でなければならぬということを強く感じておるものでございますから、その御主張については賛成でございます。同時にあなたは、いわゆる外交テクニックについてはしろうとでございますが、われわれが岸外務大臣を特にこの際歓迎する点は、あなたが日本経済について、国際的な規模において、特に政治家の中でヴェテランであるという点をわれわれは高く評価したい。  それから第二には、日本終戦後の外交悲劇というものは、いたずらにアメリカ権力並びに経済力をのみ知っておって、戦争の結果ほうはいとして起きて参りましたアジア民族主義、いわゆるAA精神について正確な認識を持っていないこと、日本アジアに住まい、アジアとの関係においてのみ将来自立と平和を保ち得る立場にありながら、アジア政治経済にわたる民族主義的な独立精神と動きというものを看過してきたことが、日本外交終戦後の悲劇であるとわれわれは考えます。そういう点についても私は岸外務大臣の良識と民族主義に対する一つの感覚を尊重したいと思い、かつ期待いたしております。従来実はわれわれ、特に社会党といたしまして平和と独立主張して参った者から見ますと、歴代外務大臣がややともすればアメリカ権力に引きずられ、あるいはこれに従属し、そうしてAA精神を見落したために、日本をしてややともすればアジアの孤児たらしめ、あるいは世界の孤児たらしめ、さらにアメリカの一方的な武力外交政策に従属して平和を守るのにいささか危惧を生ずるような方向がとられてきた。これに対してあなたはどうぞ演説で示されましたように、一つ内政外交一体として理解し、アジア独立、ひいては日本経済自立と平和のために一つ力を尽していただきたい。実は従来われわれはそのことを主張して参りましたが、歴代外務大臣あるいは外務当局がそのことをごく軽くごらんになったために、吉田外交政策岡崎外務大臣並びに前任者であった電光さんも、ついに最後時代に取り残されて政治舞台を去らなければならぬ、こういうような悲劇にあった。保守党の中で実は終戦緒方竹虎氏が、鳩山内閣がとられた東西両陣営のかけ橋となる独立外交を促進すべき立場におりながら、それをなくし、あの人はついに実は政治的には間違った進路をとって悲しい運命の中に命を失われていったのでありますが、あなたについても、実は最近の石橋内閣中共貿易拡大政策アジアへの復帰という政策について、いささか逆の政策をとるのではないかということを危惧する向きが非常に多いわけであって、われわれも同様な危惧を持つわけですが、あなたの本質なりあなたの意の存するところは、そういうところではなかろうとわれわれは善意に解釈して、あなたを歓迎するわけですから、その点を一つぜひ心に深く秘められて、そうして時代に逆行することなしに、または石橋内閣二元外交悲劇に追い込むことなしに、大臣の御健闘をわずらわしたいと思うのでございます。  最後一言申し上げておきたいのは、この外務委員会は、他の委員会の中で最も民主的に行われておるものと  お互いに自負してやって参りました。外交問題ですから野党与党のセクト的な精神を捨てて、理の通らぬことはこれを阻止し、理の存するところには野党といえどもあげてこれに協力するという態度をとって参り、また外務大臣は、常に、少くとも委員会定例日には必ず出席されまして、委員諸君とともに一般国際情勢並びに外交政策について胸襟を開いて質問を受け、かつ所信を明らかにする態度をとって、そうしてこの委員会が、国際的に重要な意味を持つその役割を果すことに努力する慣習を作って参りましたから、一言このことも申し添えまして、新外務大臣の御健闘を期待いたしまして歓迎言葉とする次第でございます。(拍手
  6. 野田武夫

    野田委員長 国際情勢等に関する件について政府当局質疑を行うことにいたします。  これより質疑を許します。山本利壽君。
  7. 山本利壽

    山本(利)委員 ただいま野党穗積君から岸外務大臣に対して歓迎言葉が述べられたのでございますが、与党のわれわれといたしましても、今回岸外務大臣を得ましたことに対しては非常な喜びと期待を持っておる次第でございます。  とかく従来の外交専門家という方たちによって行われた外交というものが慎重に過ぎ、場合によっては責任をおそれたという感じが非常に強いのであります。責任を担当して立った人でありながら、その責任を問われるということをおそれるということは、国政を担当する資格がないと私は思う。一官僚であるならばそういうこともやむを得ないと私は思う。一々上司の命令を聞かなければ物事が言えないという場合もあり得るけれども、一国の外交の衝に当って全責任を負おうという立場にある大臣としては、十分にその責任をとるという態度が望ましいと思ったのでありますが、これまでの外務大臣はすべてそのことがなかったために、日本外交秘密外交といわれるようになったと私は思うのでございます。終戦時代は変ってきて、世界各国でそれぞれの国の外交を展開しておる人は、ほとんど外交テクニックにおいてはしろうとといわれるような人、しかし政治家としては非常な大物たちによって、世界舞台は動かされておると私は考えるのであります。こういう際に当って岸外相は二月四日の本会議外交演説においても、私は国民国民とをつなぐ国民外交を行うことをもって私の抱負としておると述べられたのでありますし、また世界の諸問題に関し、積極的かつ建設的な意見の表明を行うことを期するものであると言われたのであります。このことに対しては与野党を問わず本委員会の者は全面的に共鳴し、これに対して協力すべきものであると私ども考えておる次第でございます。  今までは、先ほど穗積君から日本外交アメリカに対する従属外交であったと言われましたけれども、これは国連加盟に至るまではいたし方のなかった次第もあるのでございますが、今日はすでに国連加盟したのでございまして、八十カ国の中へ入っての大きな舞台外交問題を議することができるのでございますから、もしも共産主義国家というものに対してわが国政策が一致しない場合においては、ソ連圏内の国は九ヵ国でございますから、七十一カ国を味方にしてこれに当るという強みがあるし、また場合によっては、米英中心とした西欧諸国に対してわれわれが強く政策を言わんとする場合には、その集団は二十四カ国といわれておりますからして、五十六カ国を味方としてこれに当ることができるのでございます。AA諸国だけを味方にしても二十六カ国があるし、ラテン・アメリカをわが方につけても二十カ国ある、こういう強い力を利用する立場に立って外交をこれから展開していこうとされるのでありますから、岸外相としても、まことにこれはやりがいのある舞台であり、今までよりも思い切ってわが国のために、あるいは世界平和のために御活動願えるのではないかと私は考えるのでございます。ことに国連加盟いたしましたからには、われわれはこの国連を通じて世界の平和に貢献するということを一つ考えなければならぬ。それに対してはすでに岸外相原水爆実験禁止ということを大きく打ち出して、この国連舞台を通じて世界平和へ貢献の第一歩をすでに踏み出しておられる。ところがきょう私はまず質問の第一として伺いたいのは、今度は国連を利用してと申しますか、言葉が悪いかも存じませんが、まず国連の力をかりてわが国外交を展開さしていきたいと思われる第一の問題は何であるか。ただ国際連合に入った、その中に名前を連ねて国旗を掲げたということだけを富んでおるのでは意味をなさないのであって、まずわが国はこれから国際連合の力を使って、まず第一に解決しなければならぬと思われる問題はどういう事柄であるかということをお聞きいたしたいと考えるのであります。
  8. 岸信介

    岸国務大臣 国際連合日本加盟しまして、これから国際連合中心日本外交を進めていくことを考えみまするというと、私はいろいろな問題がここに起ってくると思うのです。大きくいえば、言うまでもなく国連憲章精神をわれわれは順奉して、そうして世界の平和と繁栄に資するためには東西両勢力の対立、これらの緊張を緩和する役目もやはり相勤めなければならぬ。またAAグループ西欧諸国との間の、いわゆる長い植民地から独立したところの民族独立精神でもって立ち上っておるAAグループ考え方と、西欧諸国考え方との間の矛盾なり、対立というものも、われわれが国際連合の一員として、国際正義見地から解決をしなければならない日本にかけられておる私は使命であると思うのです。しかし私は日本立場から考えてみるというと、私は一番日本外交の今日必要なことは、何といっても経済外交の問題である。すなわち日本民族経済的に世界の各方面におきまして、国際舞台において、日本民族の持っておる経済能力を発揮して、そうして世界各国における民生の向上なり、あるいは独立を裏づけるところの経済的な開発というものに協力するということが、日本外交の非常に大きな問題である。その根底には日本の人口問題というものも横たわっておる。こういう問題を国際正義見地から、世界の平和と繁栄の上から具体的に――従来は個別的にわれわれが主張しておっただけでありますけれども、これを国際連合舞台において今後取り上げていって、そして実現するということが、日本外交としては最も緊切な問題であろう。こういうふうに思っておるわけであります。
  9. 山本利壽

    山本(利)委員 ただいまいろいろ伺いましたのでありますが、この委員会は本会議予算委員会の場合と違いまして、具体的な問題についてさらに一そう掘り下げて研究していく必要があると考えるのでございます。経済外交を推進していく上について、今ちょうどアメリカアイゼンハワー大統領顧問団海外援助のために視察団を作って、日本にも回ってこられた。そしてこれに対して岸外相も会われたのでございますが、この会見の結果得られたところ、アメリカ対外援助日本がこれから行わんとしておるところの経済外交というものとの一致する点、及びその重点はおよそどの方向へ向って進めるべきものであると外相考えられるか、その点を承わりたいのであります。
  10. 岸信介

    岸国務大臣 私は昨日フェアレス・コミティの団長以下の人々と一時間余にわたりまして会談をしたのであります。御承知通り、これらの使節団使命は、世界各国に対するアメリカ援助、これの実際上の効果がどうなっているか、これを改善するなり、あるいは将来一そう効果的、能率的ならしめるにはどうしたらいいかということを、十八カ国の各国について調査し、日本最後に来たわけであります。  私がこれらの使節団と話をしました特に重要な点は、第一に、東南アジア諸国に対するアメリカ援助というものを、日本賠償協定による賠償の実施なり、またその他日本経済協力というものと、いかに結び合わして考えるかということを具体的に一つ考えてみようじゃないか、従来のアメリカのやっておるいろいろな援助が、必ずしも自分らの知っておる限りにおいては効果的でない。アメリカ使節団のあなた方はどう考えられるかという点もただしてみたのでありますが、使節団の連中もその点については、今までいろいろやってきておる援助方法なりやり方なりをそのまま続けることは、必ずしも策の得たものでないという気持がするということを是認しておりました。  そこで私は、日本アメリカ援助と、そして現地事情に即して現地人々の力と、この三つを具体的に結び合わす方法考えることがこの際非常に必要である。具体的の形についてはあるいは国々によって相当考えなければならぬが、方向としてはその点を考えることが非常に重要である。それからもう一つは、中共貿易に対する日本考え方、これはアメリカにおいては従来共産国に対するいわゆる戦略物資自由国からは出さないという考え方で、これは要するに共産国における戦力を強化させないという考えのもとに行われておるのであるが、ソ連に対する関係中共に対する関係が実際は扱いが一様になっておらない。そこに非常な差別がある。また日本としては地理的に考えても、あるいは経済的に考えても、中共に対する関係はきわめて密接であって、アメリカから考えておるようなわけにはいかない点が十分あるのだ。これに対する将来のアメリカ考え方についてもぜひ一つ考え直して、日本中共貿易考えておるということに対する誤解とかあるいは一つの邪推とかいうものを捨てて、日本立場というものを、日本経済力の強化の上から一つよほど認識を改めてもらいたいという点等について話をしたのでありますが、これらのコミティの考え方は、要するに日本に対して従来軍事援助及び経済援助技術援助をやっておって、それが相当日本においては効果を上げておると思う。東南アジア諸国、比較的まだ工業力の弱いところでは、その効果を十分に上げておらないから、これに対して日本経済力日本工業力日本技術経営力というものをやはり結び合わすことが、最も自分たち東南アジア方面に対する援助効果的ならしめる方法として、ぜひこれを具体的に実現する方法考えなければならぬということを、大体においてこれらの委員会人々は了解したようであります。これは従来から私の考えておったことでありますが、今後われわれの経済外交を推進する一つの具体的の方法として、アメリカ援助なりアメリカ資本力なりアメリカ経済力と、日本技術経営力と結び合せて、そうして現地事情に即して現地の力と三つ合わせていくことが、最も有効な方法である、こういうふうに考えております。
  11. 山本利壽

    山本(利)委員 それでは時間の関係がございますので、問題を局限して参りますが、経済外交を説き、アジア善隣外交を説かれた外相が、先般の外交演説の後半におきまして、アジア地域の中でも最も近い隣邦である韓国との国交がいまだに正常化していないことは遺憾であるが、特に八百名に上る同胞が引き続き韓国に抑留されておる事態は、人道上の問題として他の諸懸案と切り離して早急に解決されるべきであると考え、昨年来これが釈放に努力しておる、政府としてはこの問題が解決すれば引き続き他の諸懸案の討議に入る用意があるが、その際は公正かつ現実的に問題の解決をはかりたいと言っておられるのであります。また二月六日の本会議で、自民党の太田正孝氏の質問に答えても、まず第一に韓国に抑留されておる漁夫釈放に努力し、これが解決されたならば他の問題に当ろうという考えであると、同じ意味の答弁があったのでございますが、今までの外務大臣もすべてこの方針でやっておられたのであります。この問題をまず片づけてということであって、それが片づかなかったわけであります。韓国側の言うのは、この外務委員会において政府当局との質疑応答、あるいはわれわれが金公使を訪問して直接聞いたところによると、それはいろいろな他の問題、たとえたならば、久保田発言の取り消しであるとか、在外資産の放棄であるとか、李承晩ライン承認であるとか、あるいは大村収容所における朝鮮人釈放であるとか、それらの問題を一括して、その中に日本人漁夫釈放ということも考えるのであって、個々に日本人漁夫の問題だけを切り離してはわれわれは考えられないというのが、韓国側態度であったと思う。そうすると、今回の岸外相発言でみると、韓国側はこの態度を改めてきたのであるか。われわれは改めることを非常に希望しておるのでございますけれども、改めてきておるのであるかどうか、その点を承わりたいと思います。
  12. 岸信介

    岸国務大臣 韓国との関係におきましては、すでに今までの経緯につきましては御承知通りでありますが、私が就任しました当時、すなわち前鳩山内閣の末期に、特に年内に釜山における抑留漁夫釈放を目途として韓国側交渉がされておる。私の引き継ぎにおきましては、相当、それが有望であるというような話であったのであります。しかし実際に当ってみますと、なかなかそう簡単ではなかったのであります。しかし今山本君の指摘されるように、韓国側の従来の主張に対しましては、私はそれはとうていできることじゃない。韓国日本との関係は、いわば私の考えでは兄弟げんかみたいなものである。どうしてもこれをこういう状況に置くことは、両国民の不幸であり、解決しなければならぬが、兄弟げんかというものは、他人の場合よりもある場合には感情が非常に高ぶり、いろいろな事態でかえって解決困難な事情もあるのだが、特に韓国との間において抑留されておる漁民が釈放されないということになると、日本人としては、この問題は韓国との関係感情的に考えて、幾多の日韓の間に存在している困難な問題を冷静に論議して公正に解決するなんて、とてもできない。まずこの問題を切り離して解決しなければならぬ。それについては韓国側から従来主張しておる大村収容所人たち釈放する。これについては国内におけるいろいろな法制上の困難もあるけれども、これをほとんど韓国側の要望しておるように、無条件に釈放すること、お互いに人を釈放し合うということを人道的立場からまず解決して、そして将来の問題に入ろうじゃないかということを懇々話をしまして、大体その原則については金公使も認め、また朝鮮側におきましても、大体その考え方承認をされておるのであります。従来の考え方とは、その点において朝鮮側も一歩譲った形になっております。そのかわりに、もしもそれか解決されるならば、従来の行きがかりや何かにとらわれずに、いろいろな問題については公正かつ現実的に処理しようじゃないか。今お話がありました久保田発言を必ずしも取り消すということは私は明言はいたしておりませんけれども、しかし従来のわれわれの主張にこだわらないで、公正に、かつ現実的にものを考えていこう。財産権の問題もございますが、こういう問題については、従来のわれわれの主張を一歩も曲げないということでは話にならない。しかしわれわれはそれを捨てるということは明言はできないけれども、この前提の問題である釈放問題が解決できるならば、あとの問題は今までの交渉のいきさつにとらわれずに、両国民の百年の友好が結ばれるように、現実的に公正に考えようじゃないかということを、私は申し出まして、大体、その点についての話は今日了解かいっておるように思います。ただまだ解決しないのは――原則においては今申したように切り離して釜山漁夫釈放大村収容所韓国人釈放ということはからまして、これだけやる。それに対してまだ一点だけ向う側の主張とわれわれの主張と一致しない点がございまして、これの話し合いを今進めている。これは私ども考えを曲げるわけにいかない問題でございますので、今交渉をいたしておりますが、これが解決すれば、今の釈放問題はできる、そうなれば、われわれは日韓会談を再開して、私の申し上げているように、今までの主張に拘泥することなく、公正かつ現実的に諸種の問題の交渉に入りたい、こう思っておりまして、大体韓国側もその根本の原則は今日品は承認しているようであります。
  13. 山本利壽

    山本(利)委員 外相の努力によりまして漸次好転しつつあるということを聞いて喜ぶものでございますが、外相招待外交ということをまた唱えておられる。オーストラリアの首相がおいでになることはほとんど確定したということでありますし、かつ中南米における元首または首相招待ということも行われておるようでありますが、今の…題とからんで、私は最も招待すべき人の一人は李承晩であると考えるのでありますが、これにはいろいろな今まで日本に対する感情行きがかりもありましょう。いろいろありましょうからこそ、私はそういう人を招待して、外相初め日本朝野のものが胸襟を開いてこれを歓迎し、あるいは懇談したならば、日韓問題の解決にも非常に役に立つと思うのでございますけれども外相はどう考えられるでありましょうか。
  14. 岸信介

    岸国務大臣 私は今申し上げたように、漁夫釈放問題が解決するならば、次に日韓の全面的の交渉に入る考えでありますが、全面的の日韓会談を打開してみましても、これは非常に困難な問題がたくさんあるので、会談をしたらすぐとんとん行くとはなかなか考えられない。その道程において、あるいは日本から韓国へ使節を出すという問題も起ってきましょうし、あるいは必要に応じて、今言われるように李承晩招待してなにするということもあるかとも思いますが、まず私としては何といっても漁夫釈放問題をこの際ぜひとも解決して、その上に日韓の間のいろいろな問題を全面的に考えたい。そのときには一つ考えてみたいと思います。
  15. 山本利壽

    山本(利)委員 それでは次に移りますが、いろいろな日韓関係の問題について、解決一つとしては、冒頭に申し述べました国連の力を利用するということ、これはわが国国連加盟しておりますけれども韓国加盟していないと思うのでありますが、それにしても、日本世界の世論に訴えるという意味で、国連に対して呼びかけてみる。すでに国連の方でも、私は韓国の統合問題その他についてはいろいろの委員会その他で論議がかわされているように思うのでありますが、ただ今まではアメリカに依存して、アメリカのあっせんによって日韓関係を妥結しようとした面もありますけれどもアメリカ日本及び韓国に対しては、今までの立場上どちらにもよい顔がしたいのは当然であると思うから、いっそ国連の力をかりてこの方面に働きかけるという御意思はありませんかどうか、伺いたいと思います。
  16. 岸信介

    岸国務大臣 日韓関係の将来の問題としましては、あるいは国連の力をかりなければならない事態が起ることがあるかとも思いますが、現在のところでは先ほど申し上げましたような段階でありますので、とりあえず日本の力で、両国の間の話し合いである程度まで解決していきたい、こう考えております。将来の問題としては一つ考えてみたいと思っております。
  17. 山本利壽

    山本(利)委員 それからさらに、アジアの他の国々に対する善隣外交について述べておられますが、最近非常に不幸なニュースが幾つか入っているのであります。それは小西英雄氏を団長とするフィリピンヘの親善使節団の問題、またその他の新聞によりますと、インド方面のニューデリーあたりにたずねて行くところの日本の商社の人人、あるいは国会の人々その他の行動が、非常にかの地の人々のひんしゅくを買うようなことが多いという、この海外に出る者に対する旅券の問題でありますが、昨年あたりは門戸を開放してどんどん日本人も出し、そして海外から入って来る人々に対しても受け入れようという声が、この委員会では多かったのでありますけれども、せっかく進もうとするところのこの外交を妨げるということも多々あるのでありますから、今後旅券を出される場合においては、相当慎重に責任を持って考えられる必要があると思うのでありますが、これに対して外相はどうお考えになっておられますか。
  18. 岸信介

    岸国務大臣 なるべく海外に出かけることも、また海外から日本をたずねることも、自由な方向に持っていくことが、私はやはり理想であろうと思うのです。従ってなるべく旅券の発給等の方法によってそういうことを抑えることは、私は実はしたくない考えでおります。しかし最近御指摘のような問題が起りまして、そしてかえってわれわれが目的としているところにたがい、またはそれを妨げるようなおそれもありますので、旅券の発給につきましては、今指摘されたように、ある程度の調査もし、また特にそれに関していろいろな疑惑があるような場合においては、その疑惑をないようにしていきたい、こう思っておりますが、今申したように、こういう点については、広く言えば国民一般ですが、財界人、商社の連中、政治家はもちろんのことでありますが、そういう人々にやはり東アにおけるところの日本立場とこれらの間の友好善隣関係を進めていくということを十分に理解してもらって、そういうことの必要を外務省としても十分徹底して、みんなにそういう事態が起らないように啓発といいますか、国民考え方自体を変えていって、そういう事態が起らぬようにしていくことが必要ではないか。ただ旅券の上だけでなにしますと、また逆な問題も起ろうかと思います。従いましてこういうことに対しては十分に一つ国民に徹底できるように、心がまえを国民自身が変えていくように、あらゆる面で努力していきたい、こう思っております。
  19. 山本利壽

    山本(利)委員 差し迫った問題が一つございますから、その点について要望なり御意見を承わっておきたいと思うのでありますが、日ソ漁業交渉がこの十四日から開かれることになったと今日の新聞は報道いたしております。昨年私は歯舞村の方に向ってこの委員会から視察に参ったのでございますが、まことに歯舞、色丹諸島は北海道の本島から見ると指呼の間にあって、これは従属しておる島であることはよくわかるのでありまして、先般の日ソ交渉においても、行く行くはこれらの島を日本に返すということで了解ができたようでございますが、今一番あの地方の漁民の困っておる問題は、その歯舞、色丹島の周辺における漁業ということであります。つまり近海漁業ということでございますが、今度の日ソ漁業交渉におきましては、とかく遠洋漁業のこと、遠く離れた地方の漁業のことがおもに論議せられるのじゃないか。それではこの沿岸にいる漁民たちは非常に困る。この点においてこの近海漁業のものを援助してもらうように、この点の了解が得られなければわれわれの死活の問題になるから、この点について一つ十分な努力をしてもらうように、できることならば日ソ交渉委員の中にその専門家も入れてもらうようにというような陳情を強く受けたのでありまして、私はその地方の人たちの状況からいって、まことにもっともなことだと思いましたので、この漁業交渉が始まるときに当りまして、外務大臣においてもその点に十分留意されまして御努力いただきますようお願いいたします。時間がございませんから私の質問はこれで終りますけれども、今の点について御答弁いただきたいと思います。
  20. 岸信介

    岸国務大臣 日ソ漁業委員会の主題目は、御承知通り両国におけるサケ・マスの本年度の捕獲高に関するものをきめることが一番大きい問題でありまして、これに関連してのいろいろな問題がございますけれども、今お話のような点は、実は日ソ漁業委員会の直接の題目には今なっておらないのであります。しかし日本としてはきわめて重要な問題であり、またこれに関連しておる北海道の人々にとりましては非常に重大な問題でありますから、たとい漁業委員会の問題にならないとしても、日本ソ連との間にこうした正常な国交が回復され、大使館が設置されてくるわけでありますから、十分現地住民の希望を実現するように努力いたして参りたい、こう思っております。
  21. 山本利壽

    山本(利)委員 終ります。
  22. 野田武夫

  23. 松本七郎

    松本(七)委員 先ほど同僚の穗積委員から、社会党を代表して歓迎言葉が述べられたのでありますが、その中にもありますように、内政と一致した外交を今後強力に推し進めようとされる新しい岸外務大臣は、新内閣の外交方針として、今後具体的にどういう方針をとってこれを実行されていくかということについては、大きな期待を持つと同時に、一方今までの本会議あるいは予算委員会での外務大臣の御答弁等を通じてみますと、多少不安な点もあるのでございます。実行力が増せば増すほど、一方では期待が打てると同時に、他方では不安な点も増すわけでございますから、この機会に問題はたくさんございますので、今後回を重ねるたびに外相考え方なり実際に行われる政策をここで検討させていただくことになるわけであります。  まず最初に、もう少し詳しくお伺いをいたしたいのは、本会議外交演説の中で、一般的な国際情勢の展望として外務大臣が述べられておりますのは、やはり基本的には雪解けであって緊張緩和の方向をたどるだろう、しかしそこにはやはり冷戦逆戻り、緊張激化の危険性もないことはない、従って十分注意をしなければならぬ、これが外務大臣の情勢判断のようでございます。そこでいろいろな方面に危険な要素というものはおそらく外務大臣考えておられるだろうと思いますが、私が今日一つお伺いしたいのは、台湾をめぐるところの情勢については、外務大臣はどのような見通しを持っておられるか、これをまずお伺いしたいのであります。
  24. 岸信介

    岸国務大臣 実は台湾をめぐる情勢は、われわれの最も重大視しなければならない緊切の問題でありますと同時に、情勢を正確に判断していくことは、私は非常に困難な、複雑な状況があると思うのです。すでに御承知のように、一方アメリカは極力中華民国政府を支持し、国連におきましてもこれが理事国になっております。しかももはや今日の状況から見て、現地から大陸反攻をするとかなんとかいうことは、これは考え得られない情勢であると思う。しかし同時に中国本土、いわゆる毛沢東政府主張であるように、すべてこれを中国本土の領有下に置くということも、今までの国際情勢から言うと、簡単にそう考えることもできない情勢にあると私は思います。  そこで今後の日本外交としては、国際連合中心としていくという考え方を堅持いたします私の考えから言えば、どうしても国際連合におけるところの情勢を基礎にこれらの問題の判断をしていかなければならない、こう思うのでありまして、私は何と言っても日本は昭和二十七年に中華民国政府との間に正式の平和条約を結び、これを正統な政府として認めてきておるという、この国際的な日本立場というものは堅持しながら、実際問題としては、中共という中国大陸の現実を頭に置いた今後の日本の進んでいく道を考えなければならない。二つの中国という考え方に必ず割り切って考えるということが、今の情勢で直ちにできるかどうかも、まだ私はよほど考えてみなければならないと思います。しかし全然これの存在を認めず、もしくはそれが当然中国大陸の主権下に置かれるというような考え方のもとにそのことを判断していくということはできないと思います。いずれにいたしましても、国連関係中心日本としては考えていきたい。私は必ずしもアメリカ考え方に追随するということではございませんけれども世界の現状から言えば、やはり国連立場というものを重視して考えていくというのが、日本としては考えていかなければならぬ態度ではないか、こう思っております。
  25. 松本七郎

    松本(七)委員 国連で問題にすることは当然でありますが、これはまた別な問題としてあとで御質問いたすつもりでありますけれども、肝心な中華人民共和国政府国連から締め出されておりまして、台湾の問題は、一番の接点は、台湾と中国本土、中華人民共和国との関係でありますから、今すぐ国連舞台としてと言われても、現実の問題とはなり得ないわけであります。そこで私どもの聞きたいのは、特に本年はアメリカのアイゼンハワー・ドクトリンを契機として、NATOの理事会ですでに西ドイツに原子兵器を充実して、これを中心にしていくということが承認されておる。それから中東においてもアイゼンハワー・ドクトリンによって、しかもこれは国連の決議がある前に原子兵器によってやられる建前になっておる。そして極東の方ではどうかというと、御承知のようにすでに台湾、南鮮、南ヴェトナム、それに沖縄、日本を含めた線ということが、一つの原子戦略の系列の中に入っておるわけです。ですから台湾には御承知のようにすでにマタドールという中距離誘導弾も備わっておりますが、そういうことになりますと、台湾の周辺で何か事が起って、これが第三次大戦に必ず発展するという情勢ではなしにむしろ代理戦争と申しますか、局地的な原子兵器によるところの紛争が起る可能性があるわけであります。ですからこの台湾の情勢を判断する場合に、果して武力衝突の可能性が全然ないと見られるのか、ここに多少でも危険があるとすれば、万一マタドールなどを台湾政府が使うとすれば、これは当然中共も報復します。こうなれば現在の情勢からいって、アメリカの空軍もこれに介入する危険が出てくるわけです。その情勢の判断をやりとりしても仕方ありませんが、私どもはそういう危険性を考えますと、ぜひここで日本立場からはっきり確認しておいていただきたいのは、台湾に紛争が起き、そうして米軍が巻き込まれた場合に、日本におるところの米国の空軍なり海軍がこれに出動するということは可能なのかどうか、これを外務大臣はどう理解されておるか、この際はっきりしておいていただきたいのであります。
  26. 岸信介

    岸国務大臣 台湾の関係について、私は実は近き将来において武力行使のような事態が起るとは判断しておらないのであります。また日本としては、台湾海峡において現実にそういうふうな戦闘が行われるということは、あらゆる点から見てこれを阻止しなければならない立場にあることは当然であります。松本君は相当にその点について御心配になっておるようでありますけれども、私自身は台湾を中心としての武力行使という事態が近く起るとは、いろいろな点から判断しましてそういうことはあり得ない、こういうふうに判断いたしております。
  27. 松本七郎

    松本(七)委員 それの可能性の判断は別として、肝心な点をはっきりしていただきたい。日本に駐留しておる米空軍なり海軍は台湾紛争には出動できないのか、これはもちろん国際連合で決議でもあれば別です。しかしそういう特別の決議がない限りは、日米間の安全保障条約の建前では、日本に駐留しておる軍隊は、他の日本以外の紛争に介入することはできないという解釈をここで確認なさるかどうか、その点です。
  28. 岸信介

    岸国務大臣 安保条約には御承知のように駐留軍の使用の目的として極東における国際の平和と安全の維持に寄与し云々と出ております。従って安保条約の一条は、駐留軍の使用の範囲を日本国内だけに限っておるわけではなしに、極東の安全保持ということに関連しておりますから、今おあげになっておるような事態が極東の安全保持のために必要だとなれば、これを動かすということになると思います。
  29. 松本七郎

    松本(七)委員 そうなると大へんなことになるのです。それは石橋内閣は閣議でもって、この前から問題になっておる原子機動部隊――支援部隊といわれておるのですが、実はこれは専門家に言わせると支援部隊ではない、督戦部隊だ。ちょうど昔、植民地を支配するために巡洋艦と陸戦隊が中心になったように、これからはいわゆる原子部隊というものが各従属国その他の国に配置されて、これが代理戦争をやるための督戦の役割をするだろう、こういうふうな時代に移り変っておるというふうなことが言われておるわけです。ですから、これは幾ら閣議でこれを拒否するとか言われても、この第七艦隊に――もう地中海に配置されておる第六艦隊にはすっかり準備はできておるといわれておる。そしてアメリカ方針では、御承知のように、第七艦隊がすでにそれと同じような装備を持ったものとして準備されることになっておるわけです。日本に原子部隊を置くか置かぬか、これは閣議で拒否されるという方針を幾らきめられても、日本に相談なしにそういう準備をすることもあり得るわけなのです。それから、第七艦隊がそういう準備をすっかりして、そしていざ紛争になった場合には、かりに私ども主張するように日本にいる駐留軍は出動できないという建前をとっても、日本のあらゆる海軍基地を使うでしょう。そうなった場合には、ブルガーニンが声明をいたしましたように、日本が原子基地になればこれに攻撃を加えるということもあり得るということになってくるわけですが、一体あのブルガーニンの声明を外務大臣はどのように解釈されるか。単なるおどしと解釈されるのかどうか。
  30. 岸信介

    岸国務大臣 タス通信によるところの、いわゆるもしも日本にそういうふうな原子力の部隊ができるならば、われわれはやはりこれと同種のものでもって攻撃するということをタス通信が述べておりますが、これが単純などうかつであるかどうかは、実はこれまたはなはだむずかしい問題でありますけれども、従来のソ連のなにから見るというと、一種のどうかつと見ることの方が私は適当だと思います。もしもそうでなくて、日本に対してそういう準備がすでにされておるとするならば、これこそまた非常に重大な事態でありまして、私はむしろどうかつだとは思いますけれども、いずれにしても日本が原子力部隊の一つの基地になったり、あるいはそういう形になることにつきましては、せんだって来しばしば私が答弁しておるように、石橋内閣としては、単に私一個じゃなしに、閣議でもきめておりますように――これはアメリカから相談があるかないかわからぬというお話がありますけれども、重光・アリソンの話合しいというものは今日までも十分守られておりますし、アメリカ自身もそれは守るということの意思が、せんだっての国務省や国防省のワシントンにおける発表においてもはっきりしております。私は、相談されずにそういうことがされるということは絶対にないと思っております。従って、そういう相談があればわれわれとしてははっきりお断わりする。それから第七艦隊がそういうようにすでに装備されているというふうなことにつきまして、昨日も共産党の川上君から質問があったのでありますが、事情を調べてみますると、あの新聞記事とあの当時司令官が言ったこととの間には、相当な食い違いがあるということが事実でありますし、また現在第七艦隊がそういうものでもって装備されておるという状況ではないという事情でございます。しかし将来の問題から言えば、松本君が御心配されておるように、今後の大きな戦争というものが、そういう原子兵器でもって装備され、お互いが戦争するという事態考えなければならぬのじゃないかということは、私どももそう思っております。しかし問題は、日本の基地なり日本の領土内においてそういうものが装備され、なにするということにつきましては、われわれは自主的な立場から、あくまでも日本国民の総意を尊重して、そうしてそういう事態にしないように持っていくのが、私は政府もしくはわれわれの責務である、こう思っております。
  31. 松本七郎

    松本(七)委員 それじゃ知らない間に駐留軍に原子兵器が持ち込まれた場合はどうなのですか。
  32. 岸信介

    岸国務大臣 そういうことは今も申しますように私はないと思いますけれども、もしもそういう事態が現在あれば、これは約束が違っておるということでもって十分抗議して改めさせなければならないのです。
  33. 松本七郎

    松本(七)委員 そういう事態になってから、これは約束が違うなんていってみたって始まらないのです。ですから、そういう事態にならないような客観情勢を、いかにして日本政府が今後独立国として自主外交をもって作っていくかということが、最も大切な問題になってくるだろうと思うのです。ただ幾ら閣議できめ、相談があるだろう、約束だから、そういう話し合いになっておるのだからそれを守ってくれるだろう、そういう甘い考えでやったら、これは大へんなことになる。私はこれは言いにくいことですけれども、岸さんは過去においては日本の帝国主義の先導の役を勤められた一人だった。しかしその償いを果してこれからなされるかどうか。その償いをほんとうにされようという決心で立ち上る立場にあり、またその償いをし得る力を持つその立場に今日おられるわけです。そのかわり一歩誤まれば、これはまた過去の誤まりの二の舞、罪の上塗りをしなければならぬような、重大な岐路に今日本は立たされておると私は思うのでございまして、こういう意味から、特に岸外務大臣に期待もいたしますのは、そういった単なる閣議決定や、あるいはアメリカとの話し合いなどと、そういうものに大きな期待を持って、肝心な点に大きな抜かりのないように一つしていただきたいというのが私どもの念願であり期待であるわけです。  そこで少しそういう政策についての具体的な問題を伺いたいのは、何といっても緊張の度合いについての判断は、人によっていろいろ違いましょうけれども外務大臣方針に述べられておられるように、やはりそういう危険のあることは認められる。特に中東なりあるいは台湾にはそういう危険が現にあるのでございますから、どうやってこれを緩和していくかということは、日本のこれから取り組まなければならぬ大事な問題になろうと思います。そういう意味では私ども一つの期待を持てるのは、やはり何といっても第二回のアジア・アフリカ会議、そういうものでやはりそういった緊張緩和の空気を盛り上げていくということが大事だろうと思うのですが、日本みずから一つ積極的にこのAA会議の開催を提唱される意思がないのかどうか、この点をお伺いしたい。
  34. 岸信介

    岸国務大臣 第一回のバンドン会議におきまして、これは相当なアジア・アフリカ・グループの間における考え方の統一なり、あるいは将来進んでいくべき道というものの礎石が置かれたと思います。当時第二回のことも大体集まった人々の間には考えられておったのでありますけれども、その後いろいろな事情のために、いまだ第二回の開催に至っておりません。お話のように、むしろ日本が、国連にも加盟したのだし、将来のことを考えるなら、日本自身が提唱したらどうだというお話につきましては、十分私も一つ考えてみたいと思います。今のところやるということを私は決意しておるわけじゃございませんけれども、十分一つ考えてみたい、こう思っております。
  35. 松本七郎

    松本(七)委員 それからもう一つは、中国との関係なのですが、先ほど国連解決されると言われた場合にも私はちょっと申し上げたように、この中華人民共和国政府国連における代表権の問題は、しょっちゅう議題に供そうという動議が出ておるのですね。ソ連から出されたりあるいはインドから出されたりしておる。ところがそのたびにアメリカはいまだその時期にあらずということで、これを議題に供すること自体を延ばしているわけです。この際私は、日本国連加盟したのですから、率先してこの中国の国連における代表権の問題を議題に供することを提案されるべきだと思うのですが、この点いかがですか。
  36. 岸信介

    岸国務大臣 中央の国連加盟の問題につきましては、今お話のように従来共産主義の国あるいは中立的立場の国からそういうなにがされておりますけれども、しかしもう少し自由主義諸国の間の世論といいますか、考え方を私ははっきりつかむ必要があると思う。アメリカがどう考えておろうとも、アメリカの意向だけに従う必要はもちろんございませんが、われわれは自由主義の立場をとっておる自由主義国の世論とか考えというものは相当に尊重していかなければならないし、また現実に国連内におけるところのヴォートの数から申しましても、これらの自由主義国の世論というものをある程度つかんでいくことが必要であります。しかし中共自身があれだけの力を持ち、あれだけの現実を作り上げておるのでありますから、いつまでも私は今のままにしておくということはできないと思います。しかしそれを主張し、それを実現するのには、今申し上げたような国際的世論というものを把握することが必要である、こういうふうに思っております。
  37. 松本七郎

    松本(七)委員 自由諸国の意向ということをしきりに言われますけれども日本は今一番中国と、貿易の面から見ても、それから今言う緊張緩和の面から見ても、あらゆる面から日本が率先してやらなければならぬ立場にあるのです。それが日本の国にとっても利益なんですよ。各国があるいは国際法学者あたりが中共の代表権などは全然岡垣にならぬと言っているならともかく、御承知のように国連におけるケルゼンの説にしても、あるいはオッペンハイムその他の国際法学者にしても、ほとんど全部が当然中国は代表権を持つべきだと言っているのですから、ただアメリカがひとりああいうふうなことを言ってこれを阻止しているような形なのです。経済的な面からいいましても、石橋内閣が発足する当初において中共との貿易の拡大も打ち出されておられる。ところが現実にはなかなかそう進展しないように私どもは今受け取っておるのですが、これらもやはり私はアメリカの最近のいろいろな主張、特にニクソンの主張しておる日本を南方の華僑と結びつけるべきだ、これはニクソンイズムと言われておる。さっき外務大臣は、この東南アジア等の経済問題をフェアレスと話されたときにも言われたあの考え方が、すでにニクソンイズムなんです。ニクソンは日本中共とをなるべく接近させたくない、中共日本を切断するためにも、日本と南方におるところの華僑とを結びつけることによって、東南アジア経済的な進出の道を作っていこう、こうやって日本国民のほんとうの利益は、中共の方ともっと密接に結ぶところにあるにかかわらず、国民の目を東南アジアに向けてこれが肩がわりされ得るのだ、これで十分われわれの将来の生活の向上はできるのだというふうな印象を与えることは、私はこの際非常に危険だと思うのですが、外務大臣考えておられることはたまたまニクソンの言っておることと一致するように思うのです。こういうふうな状態を考えますと、私は中国との関係は、やはり国連日本が率先して代表権の問題を議題にするように唱え、そしてアジア・アフリカ会議は賛成する人が多いのですから、この中共承認にもっと日本が積極的に進むべきだと思うのでございます。ところが外務大臣は、中共承認は当分やらないと言っておられるのですが、どういう条件が整ったらこれ以上進まれるおつもりでいられるのですか、この点を伺っておきたい。
  38. 岸信介

    岸国務大臣 私は外交演説でも申しました通り、必ずしもイデオロギーにとらわれて考えるのではありませんので、やはり現実に即して解決していくという考えを持ちたいと思います。従ってチェコやポーランドとの国交回復につきましても、できるだけ早くこれを実現するように努力しておるのでありますが、現在の中共に対する関係は先ほど来お話があります中華民国との関係もございますし、国連における世界の自由・主義国間の世論ということもございますが、しかし私どもは一面からいって国が隣であり、歴史的に見ましても、経済的に見ましても深い関係のある中国との間の貿易関係を促進するについては今日までも努力して参っておりますが、さらに一段とこれを強化する必要があるし、いろいろな文化的な意味におけるところの彼我両国間の行き来というものも、だんだんしげくなってきておることも御承知通りであります。私はやはりそういう現実の問題は現実の問題として、ともにまた国連におけるところの国際的な世論なり情勢というものを考え、また極東における、つまり中共の問題につきましてはやはり関連してヴェトナムの問題やあるいは朝鮮の問題もからまってきておると思います。これらの情勢を十分に判断しつつ、現実に即して一歩一歩解決できるものは解決していくということを、日本外交の根本の方針として努むべきである。それを一足飛びに直ちに理論的にこれを承認されなくてもわれわれが進んでやれとかいうことを考えることは、私は現実問題としては適当でない、こういうふうに思っております。
  39. 松本七郎

    松本(七)委員 大体時間が参りましたからまだたくさんございますが、この程度にしておきたいと思います。またいずれ機会を見てゆっくりもう少し意見をただしたいと思います。  最後に、国連の代表権の問題にしろ、あるいは台湾の緊張緩和にしろ、結局日本が台湾と中国との間に立つ立場になるだろうと私は思います。それにしてもこれを承認しておかないで中に立って努力しようとしても、これははなはだやりにくいと思う。やはりこの面からも承認問題が浮び上らざるを得ない。こういう情勢から総合的に判断して、この際外務大臣あたりは率先して一応中国へ行かれて、あそこの実情も見られ、また向うの首脳部の考え方なりを直接話し合われて十分把握されることが、今後の日本の進路を正しくさせるには一番必要だと私は思うのですが、そのいう御意向はございませんでしょうか。
  40. 岸信介

    岸国務大臣 私は、外交演説におきましても述べましたように、なるべくわれわれが友好親善を深めたい国々の指導者を招待すると同時に、私自身もそういう国々を歴訪したいと考えております。しかし今中共に対して私が行く意思があるかどうかという御質問に対しましては、私はなおそれよりも先に回らなければならない幾多のなにを持っておりますから、その方を先にして、そうして中国の問題については現在のところは、私が訪問する考えは持っておりません。
  41. 野田武夫

    野田委員長 菊池義郎君。
  42. 菊池義郎

    ○菊池委員 現在の第三次日中貿易協定が五月三日で期限が切れまして、それで日中貿易促進の三つばかりの団体が今までの第三次協定改訂について四月中に中共交渉する方針をきめておるのでございます。ところが中共との取引ではココムに参加しておる十五カ国のうちでもって、日本が一番割の悪い立場に置かれておるのでございますが、ココムは、御承知のように冷戦の最も激しい時代に生まれたものでありまして、今日これが緩和をはかることは至って自然であり、しかも当然であると考えるのでございます。時間がありませんので意見は申しませんが、結論を申しますと、中共のみに対する特別の制限を撤廃して、それを他の共産圏諸国並みにするということが絶対必要であると私は考えるのであります。日本がこれを主張することは、日本の自主外交と自由世界に対するところの協調の責任とを調和する当然の態度であると思いますが、これについて大臣の御意見を伺いたいと思うのであります。米国は自分の国に対する日本の商品の輸入を制限したりなどして妨害しておる。日本の生きる道は中共との貿易が一番大事なことであると思うので、あります。
  43. 岸信介

    岸国務大臣 御指摘のように中国に対する制限と、ソ連その他のいわゆるヨーロッパにおける共産国に対する制限との間に相当な開きのありますことにつきましては、それが適当でないという考えのもとに従来も交渉してきておるのであります。実は先年重光外務大臣とともに私がワシントンに行ったときもその問題が問題になりまして、われわれも主張をしたのでありますが、その後個別的に解決していこうという方針がとられまして、一部は制限が緩和を見ております。しかしさらに特認の制度がございまして、これによって相当な範囲までできておる。しかし、根本を申しますれば、今御指摘のごとくいわゆる中共に対する制限が非常に過酷であるという事態を緩和しなければいかぬという考えは私全然同感でありまして、日本立場から私どもはそれを今後においても実現するように努力したい、努力していかなければならぬ、こう思っております。
  44. 菊池義郎

    ○菊池委員 大臣経済外交にはわれわれ満腔の賛意を表する次第でありますが、何しろ日本は貧乏なので、東南アジアに対しても経済的に協力することもこれはちょっと困難であると思うのであります。たとえばセイロンに対する各国援助を見ても、日本援助はわずかに二十万ドルでありますが、ほかの国は五千万ドルも吐き出しておるというような工合で、競争はとうてい太刀打ちができない、それで日本といたしましては科学技術の援助、特に私が最近痛感しておりますることは、医師、薬剤師、あるいは歯医者、そういったようなものを大量に未開の後進地域に送出して、そうして彼らを喜ばしてやる、これは非常に必要であると思うのであります。大東亜戦争中にも南方諸国はみんな日本の領土になったつもりで、日本全国を通じて医科大学あるいは薬科大学、歯科大学が乱立されまして、その大学を出る卒業生が全国にはんらんして食うに困るというわけで、最近も医師の大会が盛んに開かれているというような状態であります。これはどうしても南方圏あるいは南米あたりに供給することは非常にいい構想であって、日本医師会が非常にこれをわれわれに言っておるのであります。こういうことについて、外務大臣のお考えはどうでありましょうか。今まで賠償の一部として医師を派遣するということもありましたが、ほんのとるに足らない数でありまして、それではとうていだめだと思うのであります。
  45. 岸信介

    岸国務大臣 御指摘のごとく、日本が資本的にいろいろな経済協力をするという点においては、なかなかまだ日本の国力がそれを許しませんので、技術の面においてできるだけの協力をするという態勢を整えておるわけであります。特に御指摘のような医者やあるいは薬等に関する問題は、日本の技術のみならず、その土地におけるところの民族の衛生状態なりに非常に貢献するところでありまして、私は非常に望ましいことと思います。もちろん国々の事情もございますので、十分に日本医師会や薬剤師会その他の人々とも連絡をして、国々の事情に応じてこれらの人が出ていかれるようなことを今後考えていきたい、こう思っております。
  46. 菊池義郎

    ○菊池委員 それからインドネシアの賠償でありますが、両国の貿易じりは含めるのですか、どうなのですか。
  47. 岸信介

    岸国務大臣 インドネシアの賠償問題は非常に長い沿革を持っておりますが、まだ解決のところまでもちろん行っておりません。従って貿易じりとして今残っておりますのが約一億七千万ドルくらい残っておると思います。そのうちたしか六千万ドルについては協定ができておるのでありまして、あとの一億一千万ドル、一億ドル前後のものが焦げつきとなっておるわけであります。これをどうするかという、賠償に含めるか含めないかというような問題につきましては、もう少し賠償問題が進んできまして、具体化する場合には考えなければならぬことだと思いますが、今当然含めるとか含めないとかいうような結論を出すには早いと思います。
  48. 菊池義郎

    ○菊池委員 それからセイロンであるとかカンボジアであるとかその他の独立した国々が、非常に日本の武力に感謝し、賠償など要らぬと言っておる所が相当あるのであります。戦争中に事実上の独立をかれらに与えて、百年、二百年、三百年の民族解放の悲願を達成せしめておる、この大きな恩恵を全然そろばんの中に入れないで交渉をやっておる。実に間の抜けた話であると思うのであります。これらの南方諸国の賠償交渉には、こういうことを考慮に入れてどしどしと向うに言い聞かしてやるべきだろうと思うのでありますが、これをどうお考えでありますか。
  49. 岸信介

    岸国務大臣 カンボジア及びラオス両国が賠償権を放棄しまして、これに対しては私は感謝の意を表しておるのでありますが、その他の国々で今特に日本に対して賠償問題が解決せずに向うから要求されておるところのものは、ヴェトナムとインドネシアです。しかしこれらの国におきましては相当多額の賠償を現在まで要求しておりまして、われわれの方の考え方との間に相当な開きがあるわけであります。国国におきましてこれらの賠償を要求しておる国というのは、要するに戦争中に日本の軍隊のためにこれだけの損害をこうむったということでありますので、今菊池君の言われるように非常に感謝しておるような国では実は放棄しておってくれて大へんけっこうなのですけれども賠償を請求しておる国はなかなかそうでない。われわれはそれほどの損害を与えておらぬと思うのだけれども、向うの方はこれだけだといって大きなものを要求しておるというような状況であります。従って過去の行いに対しましてはやはりわれわれは謙虚な形で、損害を加えたならばその損害を賠償する。しかも将来の問題についてはその国の繁栄経済の基礎が確立することにわれわれは協力するのだ。彼らの悲願であるところの歴史的の独立というものが経済的の裏づけのない現状からいうと、どうしても日本がこの賠償を通じてその国の将来の発展なり基礎の確立になる、また独立というものが経済的に裏づけできるようにわれわれが協力してやるのだという気持で実は賠償交渉に当っておるわけであります。もちろん賠償というものは国民の負担に帰するわけですから、これを現地の言うままに払うこともできませんが、同時に、しかし今言ったような気持をわれわれが持って賠償問題の解決に当ることが、結局両国の幸福になるのだ、こういうふうに私は思っております。
  50. 菊池義郎

    ○菊池委員 それから英国の水爆実験に対する日本の申し入れを彼らは無視して、日本に対してさかねじを食らわせたようなことを言っております。自由国家にのみそういったような申し入れをするということは、共産国を利することになるというこを言っておるのであります。日本といたしましては、ソ連原水爆実験に対しましても抗議すべきであると思うのでありますが、なぜこれをやらないのであるか、お考えを承わりたいと思います。
  51. 岸信介

    岸国務大臣 実はソ連が行なっておる原水爆については、われわれに何の予告も与えられておりませんし、いつやるかという通告も受けておりません。アメリカ及びイギリスの太平洋地域でやる原水爆実験については、あらかじめわれわれの方に通告もありますし、これに対してわれわれは抗議を申し込み、やめろということを強く要望しておるわけでありまして、これは不幸にしてまだイギリス政府はこれに承諾を与えませんけれども、しかし私どもがこういう抗議をしたことは、国際的にやはり相当な反響を呼んでおります。またイギリス国内におきましても、日本の抗議というものが、一部の世論にはこれを支持する世論ができております。あらゆる機会にそういうことをしなければならぬ。そこで私どもが沢田代表をして、われわれはこういう実験禁止をするということが、すでに国会の決議にもなっておりますし、国民の総意だけれどもそういったからといって黙ってやるものが実際あれば、少くとも現実においてまず登録制をやれ、これが禁止への第一歩だという主張をしたわけでありまして、もちろん共産国といえども実験がやられるということがあらかじめわかれば、われわれはちゃんと抗議をする考えでございます。
  52. 菊池義郎

    ○菊池委員 ソ連実験することがわかろうがわからなかろうが、今後原水爆実験禁止すべきであるという申し入れをするのは当然だと私は思うのであります。それから英国に対しても何に対しても、日本の対岸になる南太平洋を避けて、西太平洋でもってやってもらいたい、そのくらいの注文は今から出してもよかろうと思うのですが、いかがですか。
  53. 岸信介

    岸国務大臣 どこでやっても実ははなはだいけないことなんで、必ずしも日本立場だけで、日本が損害をこうむるからどうだということではなくて、むしろ人類のためにやっていかぬ、という主張を、われわれは従来持っておるわけであります。イギリスのクリスマス諸島においてやる実験に対しましては、なお日本の意思を強くイギリス側に申し入れるつもりでおります、
  54. 菊池義郎

    ○菊池委員 それから国連加盟の安保条約――国連と安保条約とは何の関係もないようなものでありますけれども、台湾、フィリピン、韓国アメリカとは、今日相互援助条約ができておる。日本は片務的である。六百余の軍事基地まで与えておるのに、こういった片務的の安全保障条約はおもしろくないと思う。北大西洋条約や全米相互援助条約に加盟しておる数十カ国も、その軍隊といい何といい、ほとんどとるに足らないような貧弱な国でありましても、なおかつ米国と相互援助条約を結んでおる。でありますから、今日の日本の軍事力をもってして――軍事力といっては語弊があるかもしれませんが、自衛力をもってして、米国と相互援助条約を結ぶことは何らおかしいことでもない、これは当然のことであろうと思うのでありますが、これを改訂することを申し入れるようなお考えはございませんか、どうでしょうか。
  55. 岸信介

    岸国務大臣 現在の安保条約あるいは行政協定を永久に続けていく意思は私はもちろん持っておりませんし、いろいろな点からこれを検討し、将来われわれの適当と思う形に変え、また究極においてはこういうものをなくしていくというところに目標を置いて進んでいかなければならぬと思います。ただ片務的であるから双務的な双務協約、にしろというような考え方自体につきましては、いろいろと内容を検討してみないと、これはなかなか、私簡単に言えないのじゃないかと思う。先年アメリカに行ったときにもそういうことが問題になりましたが、やはり今の日本の憲法においては海外派兵ということはできないのじゃないか、それがお互いがほんとうに双務的な立場で、君の方が危険になったらわれわれの方から出してやる、そのかわりにはおれの方が危険になったら出していいというような意味において双務的なものにするということは憲法の関係もあって、なかなか私はそういう簡単な問題じゃないと思います。しかしいずれにしても、いろいろな行政協定や安保条約を結んだ当時と現在の状況は、国際的にも国内的にも変っておりますから、私は適当な機会にこれをわれわれの希望するように改訂していくという方向にあらゆる環境を作っていくということがこの際必要であろう、こう思っております。
  56. 菊池義郎

    ○菊池委員 憲法の九条問題については、佐々木博士あたりはわれわれの意見と全く同じようなことを言っておりますが、今の憲法でも自衛隊を軍隊に切りかえることは、できる私はかように考えておるのであります。それでどうしても米国との相互援助条約を結ぶことができなければ、韓国なんかにいつまでたってもなめられる。李承晩なんというのは、あくまでも力の侵略で、彼は米国でもって一生一代にかかって国際法を研究して、米国の法学博士の学位を持っておるのでありますが、彼が言っておることを聞いても、自分は今まで国際法を研究したけれども、国際法というのはないものであるということがわかったと言っているくらいでありまして、国際法を無視しておるくらいに、ほんとうの力の侵略者であります。でありますから、日本に対する米国の当然の事あるときの援助があるということを条約の上でうたわなければ、とうてい韓国との問題を解決することは困難であり、将来も非常にむずかしいと私は考えております、こういう点についてどりお考えでしょうか。
  57. 岸信介

    岸国務大臣 韓国との問題につきましては、先ほど山本君の質問にも答えたのでありますが、非常にむずかしい問題がございます。李承晩の従来の考えも、われわれとして承服できないものが多々あるのでありますが、いずれにしましても、とにかく現在の問題としては、まず抑留者の釈放問題を考え、その他の会談において、現実に即してものを解決していく。しかしそれがとうていわれわれ両国の間にできないというような事態であるならば、あるいは国際連合に訴えてこれを解決するという手もございますし、この点において特にアメリカにたよってどうしようとしましても、これはなかなかアメリカアメリカ立場がございまして、従来の経過に見ましても、私はその点の解決についてアメリカの力によるということはあまり期待してもできないことではないか。ですからやはり筋道を通した方向でできるだけのことをやって、その上は国連を利用するというようなことを考えていきたい、こう思っております。
  58. 菊池義郎

    ○菊池委員 国連加盟した以上は、もし事変が起りました場合に、国連から要求されたならば、日本の自衛隊を警察軍に加えて、海外に送るということは当然の義務であると私は考えておるのでありますが、そういう場合に拒否するおつもりでありますか、応諾するおつもりでありますか、いかがでございますか。
  59. 岸信介

    岸国務大臣 これは菊池さんも御承知通り国連加盟したから、直ちに法律上の義務として派兵しなければならないという事態はすぐに起ってこないのであります、もちろん国際的な治安維持もしくは戦争を防止する意味において、われわれも国連の一員として協力しなければなりませんけれども、その協力方法としては派兵ということが唯一の方法ではないのでありまして、いろいろな経済的な協力もありましょうし、その他いろいろな便宜を供して協力するということができるのであります。私は現在のところ日本にそういう要求がありましても、法律上の国連に加入した義務として当然やらなければならぬことは絶対にないと思いますし、またそれが義務でなくてもそれを応諾するかと言われれば、私は応諾する意思はございませんし、またそれは日本の憲法の解釈につきましても、少くとも私は疑義があってそういうことはすべきものじゃない、こういうふうに考えております。
  60. 菊池義郎

    ○菊池委員 過日防衛庁長官は議員の質問に答えて、日本独自の力でもって日本を守るようにしたいということを言っておりますが、今日の国防のあり方は、安全保障体制以外に私はないと考えておるのです。防衛庁長官の答弁を開いてみると、日米安全保障条約も何も不必要だといったふうに受け取れるのでありますが、外務大臣はこれに対してどういうお考えを持っていらっしゃいますか。
  61. 岸信介

    岸国務大臣 もちろん独立国である以上、自分の祖国を自分たちのカで守るということは一つの理想であり、われわれの念願であると思うのです。しかし国際の現実から見ますると、現在一国の力だけをもって一国を完全に守り得るような国は、まあ考えればアメリカソ連がそういうなにかもしれませんが、その他の国はどこもそういう力はないと思います。従って集団安全保障というようなことが当然考えられるのでありまして、やはり世界の平和を維持するためには、国際連合という機構を通じて、集団的に安全を保障することが建前になっておるのはそこからきておると思うのであります。私は今申しましたような考えで、防衛庁長官がどういう意味で言ったか知りませんが、ただ理想なりわれわれの国民的の念願からいくと、日本独立しているのだから、人の力をかりずに、自分たちの力で自分たちの祖国を完全に守るということは、これはみんなだれも考えている考えであろうと思います。それを率直に言ったのではないかと思います。現実の問題としては今言っているように、私は国際の情勢を判断してやって参りたいと思います。
  62. 菊池義郎

    ○菊池委員 日本の武力をもってしては、もう――中共一国を相手にしてももう中共としては日本を葬ることは鎧袖一触であろうと思います。どうしても米国の力をかりなければ日本を守ることができないというような考えを持っておりますが、これは意見の相違でありますから仕方がありません。  そこで、ソ連国交回復をしたからには、中ソ友好同盟条約、すなわち日本と米国を敵国とみなすような条文を取り除くべきことを、日本ソ連に対して当然に要求していいと思うのでありますが、そういうお考えがありますかどうか。
  63. 岸信介

    岸国務大臣 中ソ国盟条約ではっきり日本を仮想敵国と考えて、日本に対するいろいろなことをうたっているということ、国際的に当時の事情とだんだん変ってきておる今日においてそういうものが存するということが、日ソの国交上にもおもしろくないことは私も同感であります。しかし今の状況から、直ちにこれに抗議を申し込んだらよいかどうかという点につきましては、いろいろな事情考えて処置すべきものでありまして、精神としてはわれわれは望ましくない、こう考えております。
  64. 菊池義郎

    ○菊池委員 ソ連との平和条約の締結もまだ残っておるのでありますが、これを急がないと国際法上にも疑義を生じてくるおそれがありますし、また国後、択捉に彼らが着々軍事力を強化いたしますと、これを奪還することはなおさら困難になってくると思うのであります。国際情勢の変化々々ということを政府はよく答弁せられるのでありますが、国際情勢の変化なんというものは、日ソの交渉に関する限り、そう利益のあるような変化があろうとは思われないのであります。一日も早くやるべきであると思うのでありますが、お考えはどうでありますか。
  65. 岸信介

    岸国務大臣 せんだっても私申し述べましたように、ソ連との関係におきましては国交が正常化したのでありますから、われわれは両者の友好関係を深めるようなあらゆる措置をとっていかなければならぬ。これにはいろいろな懸案がありますが、やはり段階的に解決することが必要じゃないか。現在はとにかく大使が着任したばかりでありますし、われわれの方の大使も今月末には向うに着任するわけでありますから、大使館を作って、そうしてまだ抑留者の問題等において残っている問題もありますから、これらを解決し、あるいは漁業委員会も十四日から開かれることになっておりますので、これらにおいて両方の友好関係を固めて参りたい。しかしこの領土問題に関する考え方は、長い日ソ間の交渉において対立している一番むずかしい問題なのです。これをすぐやれといっても、もしそれができるものならば、あるいはモスクワであるいはロンドンで全権の間にできたであろうと思います。それがなかなか困難な問題でありますから、まず両国の国交正常化に伴う友好関係が相当できれば、われわれの主張なり考え方なりに対しましても、ソ連も十分に理解を持って考えてくれる余地ができましょう。そういうものを作らずにおいて直ちにこれに入りましても、なかなかこの問題はただ提案するだけで解決はできないと思います。しかしただ時間をむだに過して、それで既得権ができてしまって、まるで日本主張を捨てたように思われるようなことは絶対に避けなければなりませんから、私としては、まず段階的に日ソ国交正常化に基く処理をやって、そうして両国の友好関係というものをある程度固めていくことがこの際は最も必要だ、こういうふうに思っております。
  66. 菊池義郎

    ○菊池委員 もう時間が参りましたから一点だけお伺いいたします、  これは総理大臣代理にお伺いするのでありますが、ただいま紀元節の問題が起っております。それと関連いたしまして日本の国号についてでありますが、これは国会図書館長の金森先生にも御意見を伺ったのです。今までの「大日本帝国」というものが変って、「大」の字と「帝」の字が抜かれた。しかし「帝」の字はおかしいとしても、「大」の字だけは入れて、少くとも日本の国号を「大日本国」としたい、これが一般国民の念願であり希望であります。国の大小によって「大」だの「小」だのという字をつける息吹ではなくて、韓国のような小さい国でも、なおかつ大韓民国と言っている。日本も「大」の字をつけてちっとも差しつかえない憲法を改正しなくても、外交文書に書いてよい、教科書に入れてちっとも差しつかえないということを学者が言っております。これから外交文書に、「大」の字をつけて「大日本国」と署名してもらいたいと思うのですが、いかがでしょうか。
  67. 岸信介

    岸国務大臣 国号とかあるいは紀元節の問題とかいうことは、私はやはり国民世論できまるべき問題と思いますが、現在の「日本国」ということは、日本国憲法その他法律的にも関係あろうと思いますから、これは世論がそうなったからといって、すぐ勝手に変えるというわけにもいかぬという点があろうと思います。しかし、本来の考え方としては、こういう問題はほんとうに多数の国民がそれを要望し、国民の意見がそこに集結されるということが必要なので、ただ外交文書や何かで勝手にそういうことを書いたから、それで国号がどうなったというものじゃなかろうと思っております。
  68. 菊池義郎

    ○菊池委員 国民の愛国心の高揚のために、そういうことは相当必要なことであると考えております。いかにも小さくなったような、萎縮退嬰の気持国民に与えることは、国家の発展のためにも非常に不利益だと考えておりますから、その点はどうか一つ考慮していただきたい。     ―――――――――――――
  69. 野田武夫

    野田委員長 この際、参考人招致の件についてお諮りいたします。来る二十一日、日ソ漁業協定に関する件、特に沿岸漁業に関する問題について参考人を招致し、その意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議はありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  70. 野田武夫

    野田委員長 御異議がなければ、さように決定いたします。  なお参考人の人選につきましては、委員長及び理事に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  71. 野田武夫

    野田委員長 御異議がなければさように取り計らいます。  次会は、明十三日午前十時より開会いたし、質疑を継続いたします。  本日はこれにて散会いたします。     午後零時三十三分散会