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1957-03-28 第26回国会 衆議院 科学技術振興対策特別委員会商工委員会連合審査会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十二年三月二十八日(木曜日)     午前十時二十九分開議  出席委員  科学技術振興対策特別委員会    委員長代理 有田 喜一君    理事 齋藤 憲三君 理事 志村 茂治君       小笠 公韶君    小坂善太郎君       小平 久雄君    須磨彌吉郎君       保科善四郎君    山口 好一君       石野 久男君    岡本 隆一君       佐々木良作君    田中 武夫君       滝井 義高君    原   茂君  商工委員会    理事 小笠 公韶君 理事 小平 久雄君    理事 笹本 一雄君 理事 松平 忠久君       内田 常雄君    大倉 三郎君       菅  太郎君    齋藤 憲三君       佐々木秀世君    椎名悦三郎君       篠田 弘作君    島村 一郎君       鈴木周次郎君    横井 太郎君       佐々木良作君    田中 武夫君       多賀谷真稔君    中崎  敏君       永井勝次郎君    帆足  計君  出席国務大臣         国 務 大 臣 宇田 耕一君  出席政府委員         科学技術政務次         官       秋田 大助君         総理府事務官         (科学技術庁長         官官房長)   原田  久君         工業技術院長  黒川 眞武君  委員外出席者         科学技術庁次長 篠原  登君         総理府事務官         (科学技術庁長         官官房総務課         長)      水間 光次君         通商産業事務官         (中小企業庁指         導部長)    川瀬 健治君     ————————————— 本日の会議に付した案件  技術士法案内閣提出第一〇八号)     —————————————   〔有田科学技術振興対策委員長代理委員長席に着く〕
  2. 有田喜一

    有田委員長代理 これより科学技術振興対策特別委員会商工委員会連合審査会を開会いたします。  先例によりまして、案件を主管する委員会委員長であります菅野和太郎君が本連合審査会委員父職務を行うべきところでありますが、本日、都合により菅野委員長が出席できませんので、私がその指名により委員長職務を行います。何とぞ御了承をお願いいたします。  技術士法案議願とし、まず政府より提案理由説明を求めます。秋田政務次官
  3. 秋田大助

    秋田政府委員 それでは、技術士法案提案理由を御説明申し上げます。  科学技術振興を強力に推進するためには、わが国独自の技術創造発展をはかる必要のあることは、あらためて申すまでもないところと存じます。従来欧米先進技術の導入にきゅうきゅうとして参りました状態は、決して本来あるべき姿ではないのであります。しかしながら、またこれと同時に、わが国においてすでに相当水準に達した各般技術を、あまねく産業分野に浸透せしめ、活用せしめることも、重要な課題でなければならないと考えるものであります。御存じの通りわが国におきましては、進歩した技術は、ややもすれば一部企業に独占される傾向がありまして、その他大多数の企業は、資金その他の制約を受けて、進歩した高度の技術を十分に取り入れることもできず、一般的には、技術後進性が著しい状況にあります。このような現状わが国産業上の重大問題であるとともに、わが国輸出、ひいては国民生活水準向上に密接につながる緊要な問題であることは、言うまでもないことであります。このような企業においてこそ、諸般合理化が強力に推進せらるべきものと考えます。  一がいに合理化と申しましても、大は最新技術を擁する新工場建設から、小は生産工税中の一部機械の改良に至るまで、各種各様のものがありましょう。わが国一般企業においては、このうち、それほどの資金を必要としない中規模以下の合理化についても、なお取り残されて旧態依然たる部面が少くないということであります。なぜそうたなのか、この点については、種々理由が考えられるのでありましょうが、ここでは次の重要な二点、すなわち各企業はみずからの技術士問題点所在について、ややもすると視野が狭いためにこれを看過しがちであること。また、問題点所在認識しても、これを最適の方法によって解決する能力を持った技術経験の十分な技術者を各専門ごとに配置整備しておくことは、一般企業としてはまず困難であることを指摘する必要があります。企業における技術上の問題点を的確に把握し、最善の方法によってこれを解決するという技術能力は、実地について各種各様経験を重ね重ねして初めて真に身につくものであります。  これを換言いたしますと、技術産業に適用しようとする場合に当面する最大の問題は、しょせん人の問題であり、十分な技術経験を持つ人を得るやいなやにかかっていると考えるのであります。このような有能技術者多数が、今かりにそれぞれの専門別に、各企業技術相談に応じてその該博な経験を広く企業の実際に生かすとすると、わが国一般企業における合理化は一段と促進され、わが国産業における技術水準向上に目ざましい成果をあげることが期待せられるでありましょう。  技術士とは、このような社会的な機能を営む経験豊富な高度の技術者をいうものでありまして、わが国の現段階におきましては、技術士の活発な活動期待するところきわめて大なるゆえんも、以上述べましたところからおおよそ御賢察願えると思うのであります。  欧米先進諸国におきましては、技術士のことをコンサルティング・エンジニアなどと呼んでおりますが、数十年も前にこの職業制度が確立せられ、その団体は、多数の会員を擁して技術の各分野において輝かしい業績をあげており、その技術能力業績に対する社会的な信頼は実に絶大なものがあるのであります。米国について見ましても、一九〇七年、ワイオミング州において初めてこれに類似の制度が設けられ、以来急速な発展を遂げて、今や連邦各州において法律制定を見るに至り、全国で登録されたもの実に二十万を算する盛観であります。  翻ってわが国現状を見まするに、最近ようやく技術士という独立した職業分野が一応明確な地歩を築くに至っておりますが、なお諸先進諸国状況に比べますと、著しい立ちおくれの実情にあるのであります。現在社団法人日本技術士会というものがありまして、広く専門技術者を糾合し、今日約四百五十人がその会員となっております。  先に述べましたように、わが国産業の全般にわたって合理化要請きわめて切なるものがあります。その合理化をはかる上において、一企業技術能力を越える問題もまたきわめて多きを数える状況にあります。この合理化の問題のほかにも、工場の新増設、電源の開発、橋梁、港湾の建設など、一企業体の固有の技術スタッフをもって解決することの困難な問題は少しとしないのであります。その上、わが国としては、現在東南アジアや南米の諸国に対するプラント輸出あるいは技術進出を積極的に推進すべき段階にありますが、このような部面は、まさに技術士に対して格好のヒノキ舞台を提供するものにほかならないのであります。しかも他方におきましては、わが国では幸いにしてこれら諸般の問題に対してそれぞれ専門的な見地からするところの適切な解決を与え得る経験十分な有能技術士たるべき人を多数擁しているのであります。このような基本条件のもとにあるにもかかわらず、わが国では、遺憾ながら、ただ一つ技術士制度の健全な発達を支持し、促進するところの最大の要素たる技術士に対する社会的認識という点において、きわめて不満足な状態にあるのであります。たとえて申しますと、多くの産業に共通する工場内の粉塵の処理、あるいは金属メッキに関する第一流の技術士がいるとしても、企業の側ではまさにそこに技術問題を包蔵しているにもかかわらず、それらの人の存在を知らないとか、かりに知っていても、あえてその門をたたくことをしない場合がはなはだ多いのではないかと思うのであります。このことはひっきょうわが国において技術士制度というものがまだ十分に根を張っていないことに主たる原因があると考えられるのでございまして、まず第一に、技術士というものに対して社会的な関心を高め、一般認識を深めるような措置をとる必要を痛切に感じさせられるのであります。もとより問題は、これにとどまるものではないと考えます。たとえば、いま一つ技術士から法外の報酬を要求せられはすまいか、あるいは技術士工場秘密を探知せられはすまいかといった企業の側としてはしごく当然な懸念がそこに伏在することも十分あり得ることだと思うのであります。従って、第二として、このような事態に対しましても、また企業が安んじて技術士相談を持ちかけられるような適当な措置が望ましいのであります。  先に述べました第一の社会的認識を深めるための措置としては、技術士になろうとする希望者のうちから、まさに技術士たるにふさわしい有能の士に技術士となる道を開き、これにのみその名称使用を認めるよう立法措置を講ずることにしたのであります。このことはまた同時に、技術士が国情の全然異なる東南アジアなどに進出する上において、大きな効果をもたらすものと存ずるのであります。  第二として述べた企業側における不安を解消するための措置としては、技術士となった以上、技術士としての信用を失墜したり、業務上知り得た企業秘密を他に漏洩することなきよう法律権威のもとに禁止する規定を設けることにしたのであります。  本法案は、この二つの考え方を眼目とするものでありまして、その根本には、第一に、技術制度発達を自然の成り行きにまかせるには、科学技術及び国民経済上の要請はあまりにも大なるものがあるという認識があり、第二に、このような立法措置を講ずることによって、目下成長段階にあるわが国技術士制度の健全な発達を著しく促進することができるという確信があります。この二点につきましては、今まで述べて参りましたところで大体御了解願えるのではないかと考えている次第であります。  なお、本法案と同じ技術士法案名称で第十九国会に議員提案せられたことがございます。その場合には、所管とか法文の上で若干問題がありましたが、法文上の点につきましては、慎重な検討を加えて相当な修正を行い、面目を一新した形で今般ここに、科学技術庁所管法律案として、政府より提案せられたものであります。  以上が技術士法案提案理由であります。  以下、法案の内容につきまして、重点的に御説明申し上げます。  第一に、法律によって権威を与えられる技術士としては、企業等に対する技術指導に従事する以上は、高等の技術能力を持った者でなければならないのでありますが、この点については、大学卒業程度の基礎的な学力を持ち、しかも専門的な問題について実際に設計などの実務を行なった期間が通算して七年をこえる者でなければ本試験を受けることはできないとして、その受験資格を制限するとともに、さらに本試験によって、それぞれ専門技術部門ごとに高度の実務能力を判定することとしているのであります。なお、基礎的な学力を判定するために、予備試験を行うことにしておりますが、大学、旧専門学校等卒業者には、この試験を免除することにいたしております。  第二に、いやしくも技術士たるものは、最初からその社会的な信用が疑われるような人であってはならず、また技術士として当然に課せられるべき諸般義務は、これをして厳に順守せしめなければならないのでありますが、この点に関しましては、まず法律違反に問われて、禁錮の刑に処せられたり、特定の行政処分を受けた者は、欠格条項該当者として技術士となることを拒否することにしております。  次に、技術士義務につきましては、信用失墜行為秘密漏洩行為などを行なってはならないという義務規定を置き、技術士登録の取り消し、あるいは刑罰をもってその義務違反を追求する建前をとっているのであります。  第三に、高度の技術能力を持ち、かつ社会的に信用して差しつかえのない技術士としての適格性十分な人であるかどうかの判定は、以上述べて参りましたような方法で行うのでありますが、本法は、このような適格者のみを技術士として登録し、これに技術士名称を用いることを認める反面、技術士でない者には、その名称使用を厳に禁止しているのであります。この措置成長発展の緒についたばかりの技術士制度に対する世の関心認識を一段と高めようとするところにねらいを置いておりますことは、あらためて申し上げるまでもないところであります。なお、本法案では、登録を受けた者でなければ、技術士という名称使用を認めないという名称独占考え方をとっておりますが、これとともに、業務独占考え方、すなわち登録を受けた技術士でなければ、技術士警務を行うことができないという考え方をとるべきかどうかに関しましては、諸般実情にかんがみ、現段階ではこれをとらないことにいたしております。  第四に、本法案におきましては、今後運用上の問題がきわめて重要であると考えられますので、技術士審議会及び技術士試験委員をおいて、運用に万遺憾なきを期している次第であります。  以上、技術士法案の要旨について御説明申し上げました。何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御質問あらんことをお願いいたします。
  4. 有田喜一

    有田委員長代理 以上をもって提案理由説明は終りました。  通告順に従いまして、質疑を許します。中崎敏君。
  5. 中崎敏

    中崎委員 本法案提案は、私たちの目からするとすでに時期がおくれておるのではないかと思われるくらい必要性というものを痛切に認識するものでありますが、さて問題は、果してこうしてこの法案が通過して、これが実施された後においてのこの制度の実際的な効果発展というふうなものについて、どういうふうな見通しを持っておられるか、まず結論から先にお尋ねしておきたいのであります。
  6. 秋田大助

    秋田政府委員 ただいま提案理由にも申し述べました通りわが国産業企業におきまして、合理化を促進させなければならない面がたくさんございますが、そういう点に、この制度が設けられますれば、非常に貢献するところが多い、ひいてわが国産業発展技術向上に資するという観点を持っております。
  7. 中崎敏

    中崎委員 現在社団法人日本技術士会というものがあるのでありますが、これは一体どの程度仕事をこうした法案の趣旨に沿って今までやってきておるのか、その実際上の実情一つお聞きすると同時に、今後この法案ができた後において、この技術士会というものがどういう役割を果すことになるのか、そうしてまた試験制度などの結果を経て技術士になった人が、個々にあるいは集団的にどういうふうな形において機能を果していくかについて、その見通し一つお尋ねしたいのであります。
  8. 原田久

    原田政府委員 お答え申し上げます。日本技術士会の実際の動きについて簡単に御説明申し上げますが、日本技術士会というものができましたのは昭和二十六年でございまして、社団法人として発足をいたしました。現在会員約四百五十名ほどになっておりますが、この技術士会ができますよりもはるか前から技術士活動相当する活動というものが古くから行われておりまして、ずっと古くは大正年間から、最近に至りましては終戦後、諸外国技術士運動に刺激されまして、わが国でもそういう問題について関係者の間から必要が叫ばれ、ただいま申しましたように昭和三十六年に社団法人日本技術士会というものが結成されまして、約四百五十名ほどの技術士の方が技術士会を形成しておるのであります。技術士会会員とされましては、内海清温先生その他建設界機械工業界その他各般産業界におきまして、それぞれ技術士として相当活動をしておられます方、それからなお技術士会の会長には井上匡四郎先生がなっておられまして、現在に至っておる次第でございます。今後この技術士制度がしかれました場合、日本技術士会というものはどういうふうになっていくかということでございますが、技術士制度が施行されますと、技術士名称使用して仕事をしていく者は、この技術士試験を通った者でなければできないということになっておりますので、現在技術士会会員がそのまま技術士会という名称を使って仕事を継続していけるかどうかという問題につきましては、やはり試験制度を通った方によってそういう技術士会というものが形成されなければならないということが予想されますので、技術士会がそのまま継続されるとは考えておりません。しかし、技術士会公認技術士になられた方が、そうした懇親的な団体を組織し、また普及啓蒙活動をされるということは望ましいことで、ございますので、今後は、現在あります日本技術士会の御意向もそんたくしながら、そういった組織があらためて作られていく方向に参るのではないか、そういうふうに予想しております。
  9. 中崎敏

    中崎委員 今後の運用の面については、相当困難性が伴うということも考えられると思います。まず第一に、こうした技術士ができるのでありますが、これについてやはり経済的な立場から自分で生きていく、またその団体ができるとすれば、そういう自発的な団体というものがやっていけるだけの経済的基盤がなければうまくないのではないか、そのためにはやはりこれを利用するところのものが相当になくてはならぬし、将来の発展性がなければまた意義がないのでありますが、当分の間はそうした面において相当の困難が伴うのではないか、これに対して政府として何らか助長育成するような考え方があるのかどうなのか。ことにこうした制度というものが一日も早く健全な発達をして、これが国民経済、ことに私たち期待するのは大企業よりもむしろ中小企業に、また今日まで比較的重要視されなかった科学方面に大きな期待を持つべきも一のではないかと思うのであります。ことに有機合成化学などは、欧米などでは日進月歩の非常な勢いで発達し、実際の国民経済の大きな役割を果しておるのでありますが、日本においてはまだこの点において相当おくれておる。そういう意味において、外国の情報をキャッチすると同時に、その設計並びに実施等についても、なかなか中小企業まで手が回らない。それでこういうふうな制度発達して、そこへ行けばとにかく十分な知識も与えられ、設計もされ、指導も受けるというふうなことによって、中小企業というものが各分野において発展をすることが必要であり、これが最も高度の技術を要するところの有機合成、その他の化学工業において、その必要度が一そう増すのだというふうに考えられておるのでありまして、むしろこうした面において大きな期待をわれわれはかけておるのであります。そうしたようなものを含めて、一体この制度の今後の活用について、どういうふうに助長政策を考えておられるのかをお尋ねしたいのであります。
  10. 秋田大助

    秋田政府委員 将来この法案通りまして、実施して参りました過程におきまして、あるいは何らかの助長政策をとらなければならないというような事態に立ち至るかもしれませんが、今のところでは、そういう事態に立ち至るとは考えておりません。従って、特別に何か助長施策を講じなければならないというふうに考えてない次第でございます。
  11. 中崎敏

    中崎委員 この試験を受けて技術士になった人は、自分で開業すると思うのでありますが、それが一つ団体を作って、あるいは個人として、いろいろな形でやると思うのであります。それは自然のなりに放任してやっていくというふうな考え方でやるわけなんですか。
  12. 秋田大助

    秋田政府委員 自然のままに全然放任しておくというふうにお答えしますと、いろいろ語弊もあろうと思います。技術士が取るべき報酬点等につきましても、やはり実際面において適当なる行政指導を講じていかなければならないと考えております。その他秘密漏洩等問題等を考えてみましても、やはり同様なことが言えると思います。従いまして、一般にこの技術士制度なるものの健全なる発達のためには、当然科学技術庁主務官庁としての適切なる行政指導がその裏面に予想せられるものとお考え願いたいのでございます。
  13. 中崎敏

    中崎委員 たとえば、今の秘密漏洩とか、あるいは料金の適正化というよなもの、あまり高い値段を取ったのでは、これはもちろん相談にどんどん行くというわけにもいかぬでしょうから、そうした面におけるところの適正な指導などが行われるのは、これは申すまでもないのであります。私たちが言うのは、逆にそういう類のものは、当分の間、一応開業してもなかなかその収入等の点においても必要なものが確保できないんじゃないか、またみんなも知らないという点もあるのでしょうし、また制度そのものがまだ当分の間というものは必ずしも万全な手配ができるものとも考えられないのであります。それぞれの技術士側においても、自分がすでにそうした態勢を整えるのには相当経過期間が必要であるのではないか、そうしたときにおいて、何らか国家的にある程度保護助長政策が行われない場合においては、その発展もおくれるし、下手すれば何だか有名無実——有害無益とは言いませんが、大した効果期待できないのではないかというふうにも考えられるのであります。たとえば、建設省関係などにおいても、土木建築の場合においても、大体官庁を中心にこうした大きな事業が行われるのでありますが、そうしたものがやはり建設省関係などにおいて今まで作られたところの機構がある。そういういろいろな機構が、正規の機関として、設計等についても、実際に依然としてその有力な立場をもってそれを利用するという惰性が今後続けられる限りにおいては、この建築土木方面におけるところのこうした技術士の利用の面も非常に狭いのじゃないか。だからして、むしろ門戸を開いて、逆に今度は技術士にもそうした問題を十分に相談し、機会を与えるような、そういう措置を講ずるような用意があるのかどうなのか。これはただ土木建築に限らないので、あらゆる面においてそうしたような問題があるのでありますが、一体こうしたような問題をどういうふうに今後取り扱っていかれようとするのかをお伺いしたいのであります。
  14. 秋田大助

    秋田政府委員 先ほども申し上げましたが、政府としては、この点、特別の助長政策を今とろうとは考えておりませんが、ただいまお尋ねのありましたような点、その他含めまして、政府の行なっております広報活動等を通じまして、この技術士制度存在を広く産業界に知っていただくようにいたしまして、こういう面を通じまして、適当な、施策ほどのものではございませんが、広報活動を通じて、そういう点を補っていきたい、こう考えております。
  15. 中崎敏

    中崎委員 私は単なる広報活動だけでは、従前から主要な国家業務等に関係して、そのつながりを持っておる問題は、どうしても容易にこれは打開できないと思うのです。そうすると、やはり技術士存在理由というものもほとんど大して期待できないのじゃないかということも考えられる。もう少し強力に、こうしたような法律ができた暁においては、内閣においても十分な検討をされて、これは各省にもまたがっておる事項が非常に多いのでありますから、どの省においては大体どういう角度からこういうものの制度を健全に一つすみやかに発達させる。それが国民経済発展の上に大きな役割を果すということは、これはもうはっきりした事実なんでありますから、そうした意味において、ただ広報活動の面においても考慮を払うということでなしに、あらゆる施策の根本的な問題の考え方というところへさかのぼって、そうしてこの処理に当るのだというふうなこともできるものかどうかをお尋ねしたいのであります。
  16. 秋田大助

    秋田政府委員 ただいまのお話はごもっともだと感じております。広報活動を一例に申し上げたのでございますが、実際の行政指導面その他におきまして、また関係官庁とも連絡を密にいたしまして、ことに中小企業等においてこの制度が適切に利用され、効果をあげますように、十分所管関係機関とも密接な連絡をとりまして、行政指導上におきまして、ただいまお話のような点について遺憾のないようにしたいと思っております。なお現在の任意団体社団法人日本技術士会会員の方々も、現在は相当活動をされておられるようでございますが、それでは足らない。またそういう任意的なものでは足りないので、こういう法制化を企図したわけでございます。今後の、実際本制度採用の発展過程におきまして、どうしても多少の行政指導というような面では事足らぬというようなことが感ぜられますれば、お説等もよく考えまして、適切な助長政策もとり得ると考えております。
  17. 中崎敏

    中崎委員 これは、官庁の今後における指導面の問題にもなるかと思うのでありますが、今、社団法人日本技術士会という類のものが今度は改組されるか、あるいはこれはこのままの別の存在になるかは別として、新しい技術士を中心として結成される新しい公益法人的なものができて、そういう類のものが、やはり今の広報とかあるいは官庁に対する要望等の面について、強力な発言権を持って官民一体となって、この制度運用されるということが望ましいと考えるのであります。この面については、一体どういうふうな指導方針をもって臨まれようとするかをお尋ねしたいのであります。
  18. 秋田大助

    秋田政府委員 ただいまありますところの社団法人日本技術士会は、三十三年の八月に、この法案の何条でありましたか、その規定の関係上、名前を変えていただくことになります。従って、改組されるものと存ぜられますが、これを弁護士制度における日本弁護士会というような公益法人的な団体に改組せしめるかどうかというような点につきましては、今政府としてはその意思は持っておりません。しかし、この制度の将来の実施過程における実績上、そういうものが必要であるということが多少は考えられますので、もしその方が便利である、またその方がこの技術士制度の健全な発達日本国民経済に寄与する観点から必要だということが客観的に認識されるような事態になりますれば、あるいは弁護士界におけるように、日本技術士会なるものを認めるということになろうかとも思いますが、ただいまのところは、そういうものを公益法人的に改組せしめたいという考えは、政府としては持っておりません。
  19. 中崎敏

    中崎委員 この提案理由にもありまする通りに、「わが国におきましては、進歩した技術は、ややもすれば一部企業に独占される傾向がありまして、」云々ということがあるのであります。これは一応実情がこうであると私たちも認めておるものでありますが、さてそれでは一体どういうわけでこういうふうになるかと申しますと、ことに近代における飛躍的な進んだ技術というものは、まず第一に高度の技術者を多数抱えたところの機構でなければなかなか簡単にそれに対応するだけの力が備わっていかない。一面においてまた資本、資金等においても、それだけの大きな組織でなければ、近代的な産業としてこれが実現できないというふうな問題等が大きな原因だろうと思うのでありますが、その大きな一部企業においてさえも、近年においては外国からきわめて安易に技術を導入して、これをまねをしてやっておるというのが実情だと思うのであります。それほどこの科学技術というものは非常な進歩をしておるので、その大きな資本組織の力をもってさえもなおかつその進歩に追っつかない。それで、一面において、それだけ莫大な研究費などをかけるよりも、外国から技術を買ってくればそれが一番いいんだ、そういうような安易な考え方等も手伝って、そういうことになっておるのが日本実情であるというふうに考えるのであります。この点はさらに今後においてもやはり続くのではないか。現在百億をオーダーとするところの石油化学を初めといたしまして、あるいはまた合成ゴムの工業も工業化されることにもなるのでありましょうが、そういう類の化学工業を初めとして、あるいは鉄工業においても、何百億何千億の金が使われておるのでありますが、それであってもすぐれたものは外国技術を買ってくる。それが一番手取り早いのたという感じでやられておる。そうすると、いつまでたっても国の工業の技術の独立というものはあり得ないということをわれわれは心配するのでありますが、そうしたような実情下において、中小企業というものはとてもそれだけの技術者をもちろん養う力もないし、将来またそういう瀬のものを、かりに技術者を養って研究したとしても、なかなか資金等の点においても実現し得ないというような悩みがあるのであります。そこで、何といっても私たちは大工業によるところの技術というものを国産化する上においても、やはりコンサルティング・エンジニアの必要が痛感されるのであります。中小企業の場合においては、ことにそれが痛切に感じられるのであります。たとえば、現在のこの有機合成化学の場合においても、これは大工業ではやっていかないような中程度の事業である、こういう仕事をやればおもしろいのだなといっても、一向情報も得られない。それに、それをこなすだけの技術者は持っていない。それで、設備や何かは一体どうすればいいのかといったようなこともなかなかわからない。それをコンサルタントの技術士という類のものがあって、そこに相談に行けは、これはこうなんです、それは外国のこの会社においてこういうことをやっておるのだから、これと相談すればいいのです、あるいは設備はこうすればいいのですよというふうな、適正な指導がやられるということになれば、中小企業の場合においても比較的手をつけられるというふうな機会が与えられるというふうなことも考えられるのであります。そういう意味で、国内において、将来技術士は、私は化学工業においても非常に大きなる意味を持つものであり、ことに中小企業の対策としてもこれが必要だというふうに考えます。そこで、かりにそうしたような技術士制度発達して、国内においても手軽にそういう相談ができるとしても、さて今度は資金などの点についてなかなか問題がある。そこで、一体政府としてはこういうふうなものについてどういう裏づけをして有終の美をなそうとするのか、そしてまた技術士相談をして一応の設計ができても、設備ができても、さてこれを運用していくところの技術者がなかなか確保できないという問題もある。そういうふうな問題を一体どういうふうにして解決していこうとするのか、これらの問題が表裏一体化して実現して初めて最後の目的が達せられるものと思うのであります。一体こうしたことについてどういうふうな科学技術庁としての用意があるか、今後の対策は一体どうするのかということをお尋ねしたいのであります。
  20. 秋田大助

    秋田政府委員 中崎委員のお説ごもっともでございまして、中小企業振興、ことに資金の供給につきましては、ただにこの法案だけではもちろんいけませんし、またこれが直接資金の供給に関係する法案でもございませんので、広範な中小企業対策の諸施策を待ちまして、その点に当るべきであることはもちろんでございますが、この法案と、ただいまお尋ねの中小企業の面、ことに資金の供給非との関連につきましては、こういうふうなことが考えられるのでございます。もちろん中小企業合理化等のため、また技術の更新のためにこういう制度ができまして、またそれが広く世間に知られまして、また技術士の取りまする報酬等も中小企業者にとってそう負担でないというような実情になって参りますれば、活用をされましょうし、同時にまたこういう技術士等の指導によってでき上ったプランを企業化していくとなりますれば、一部先進国等においては、融資の際にこの技術士の署名が必要であるというような制度もあると聞いております。日本では今直ちにそこまでは至らないでございましょうが、たんたんとこの制度発達をし、技術士に対する世間の信用も高まって参りまするならば、この技術士の目を通し、企画をしたその企画書によって中小企業者が商売を、仕事を始める。従って、金融機関もこれに金を貸そうというふうになることが望ましいと考えております。そういうふうに自然に発達することを望み、かつその方向に伺って行政指導をしていきたい、こう考えております。
  21. 中崎敏

    中崎委員 今直ちに法律技術士が裏づけした、また署名したところのものに金を貸すような、融資をするような、あるいはそのほかの便宜を与えるようなことを書くべきかどうかということは、これは問題があると思うのであります。少くとも政府の直接関係しておるところの金融機関、たとえば中小企業金融公庫とか、あるいは開発銀行とかの場合において、この技術士指導しそして責任を持つところのものについては一つの考慮をはらって、そうしてたた個人といいますか、そういうような裏づけのないものよりも、多少といいますか、ある意味においても尊重するというふうな考え方を持つ方がいいのではないかと思うのであります。そこまでもまだ考えておられないと思うのでありますが、そこらの点はどうですか。今後の気持を一つお尋ねしておきたいと思います。
  22. 秋田大助

    秋田政府委員 政府及びこれを提案した者といたしましては、今、中崎委員がおっしゃったような気持を十分持って、これが施行に当るつもりでございます。少くとも一企業者だけの企画によるものよりは、相当信用のある令名の高い技術士が関与したものであるとなりますれば、それが直ちに融資の積極的な条件ということには立ち至らなくても、十分尊重をされる。そして融資にも便利であろうことは、常識上十分想像にかたくないのであります。従って、こういう技術士制度というものがあることが、陰に陽に、中小企業に対する必要なる資金の供給に非常な便があろうと考える次第でございます。
  23. 中崎敏

    中崎委員 先般この委員会を通過しました科学技術情報センターでありますが、一面において、科学技術に必要な資料、情報をそこで収集し、これを適正提供するという必要があると同時に、一面またこれとの関連性において、収集された情報等をうまく活用して、それから今度は技術士がこれを設計し、指導するというふうなものが有機的な関連性を持っていくことが一番いいのではないか。そうした点において、一体どういうふうにあの科学技術情報センターとのつながり、結びつきを、この技術士との関係において今後指導していったらいいと考えておられるのか、そういうことはまだ考えていないというところですか、その点を伺いたい。
  24. 秋田大助

    秋田政府委員 科学技術情報センターとこの技術士存在というものは、まさに今、中崎委員のおっしゃいました通り、有機的な関連を持ちまして、日本産業企業、特に中小企業技術振興等に密接な関係を持って、表裏一体と申しますか、有機的な関係において、これらの技術の更新、及び企業発展、ひいては日本の経済の後進性打破に貢献すべきものである、こう考えております。
  25. 小笠公韶

    小笠委員 ちょっと関連して伺いたい。今の中崎委員の質問に対する政府次官の答弁はそれでいいのですか。情報センターと技術士法案が有機的関係をもって、表裏一体をなす、結果的に見た場合に、科学技術のレベル・アップには役立つが、具体的に表裏一体をなすということはどこから言われるのか。技術士法については後ほど私はいろいろお教えを願いたいと思うのでありますが、これは一つの資格規定であります。資格規定で、実体法ではないことは申し上げるまでもないのでありますが、その点はどういうふうな点で表裏一体をなし、有機的関係を持っておるのか、御説明を願いたいのであります。
  26. 秋田大助

    秋田政府委員 厳密な意味においてはあるいはどうかと思われますけれども、センターの機能が能率的に有機的に活躍いたしますならば、各企業間のみならず、この技術士等における科学技術に関する情報が確実にかつ敏速に入手されるのでございますから、その点においては大いに関係があろうと存じております。
  27. 中崎敏

    中崎委員 私、不敏にして、外国における技術士と情報の収集等についての関係がよくわからないのでありますが、外国においては、ここらの結びつきが一体どういうふうに運用されておるのか。たとえば、大企業等があって、これは年に日本の金で何十億というようなものを研究費なんかにかけておるということを聞いておるのでありますから、勢いそれらのものには情報の収集あるいはこの技術士などに匹敵するようなものをたくさん使われておると思うのでありますがそうでない一般的にその関連性が、結びつきがどういうふうに、どの範囲において運用されておるのかをお尋ねしたいのであります。
  28. 秋田大助

    秋田政府委員 詳しいことは事務当局から答弁をしてもらうつもりでございますが、常識的に申しますれば、今日科学技術の進歩は、御承知の通り、日進月歩の早さで進歩いたしておるわけでございますから、今日の最新の技術を身につけた技術士といえども、いつまたおくれないとも限らないわけでございます。こういう点を考慮いたしましたときに、一方において科学技術情報センターなるものがあって、これが活躍をいたして、その効果を上げますならば、技術士自分の知識を常に新しくするにも非常に役立つものではなかろうかと考えております。なお欧米等における実際上の両機関の結びつき等につきましては、もし御希望がございますれば事務当局からお答えをさせたいと思います。
  29. 原田久

    原田政府委員 諸外国の情報センターと技術士との関連についても御質問のようでございますので、 その間の関連について、わかっておる点を申し上げたいと存じます。もっとも想像のところも入っておりますので……。(「想像じゃだめですよ。」「と思われるというところでもいいでしょ、)。」と呼ぶ者あり)と思われるといりところで申し上げます。十分調査しておりませんから……。技術士制度の諸外国の例は米国が一番よく発達しておりまして、技術士会員は約二十万名を数えております。アメリカの例でいきますと、これは業務独占になっておりまして、技術士でなければかくかくの設計計画をなしてはならないということになっております。従いまして、わが国の、名称独占によります技術士名称を用いて相談に応ずるという制度とは若干違いますので、その運用についても相違があろうかと思います。アメリカにおいても、情報センターに相当するものは何ヵ所かございます。これはあらゆる分野に関する総合的な情報センターと、専門的な情報センターとにわかれて幾つかございます。そういうところでは、どういうことをするかと申しますと、かくかくの技術を知りたいという要望がありますと、それにこたえて、主として文獻上の調査をいたします。その調査報告を要求者に提供することになっております。そこで、アメリカの技術士が情報センターにどういう働きかけをしているかという点になりますと、先刻私が想像の域と申しましたように、具体的にわかっておりませんが、おそらく依願者の方では、どの情報センターに持っていって自分の調べてもらいたいことを頼んだらいいかというところまではわかっていないと思います。ところが、技術士の方では、そういう情報センターについて、どこの情報センターが一番的確な情報を出すか、またその依頼をするにはどういうような依頼をしたら最も有効な答えが得られるかということは、やはり技術士が一番よくわかっおると思います。従って、依頼者が技術士の方にかくかくの点を調べてもらいたいという問題点を出すと、今度は技術士立場でそれをそしゃくして、適当な質問書に書いて情報センターに依頼する。そして、その依頼されたものを技術士が取って参りまして、それを依頼者にのみ込めるような形に直して、設計なり計画なりを作って提供する。そういう形が行われておるのではないかと想像しております。諸外国の例として、米国はそういうふうな業務独占の形で行われておりますが、イギリスその他の諸外国においては、わが国に類似しておりまして、名称独占というような形のものが多いようであります。アメリカが二十万の会員を擁するに至りましたのは、業務独占の形でございますので、それたけ大きく発達しておりますが、ヨーロッパ諸外国ではやはりわが国と同様、数百名程度団体が形成されておるのが多いようでございます。
  30. 有田喜一

    有田委員長代理 委員諸君に申し上げます。宇田国務大臣が出席されましたが、宇田大臣は、参議院の予算委員会の出席要求があるまでということでお見えになってありますので、右お含みの上、今から大臣に質疑を集中してお願いしたいと思います。
  31. 中崎敏

    中崎委員 いわゆる神武景気と言われておる最近の実情において、新聞でもごらんの通り、東京手形交換所においても、中小企業の手形の不渡りが著しくふえてきたということは、言いかえますと、全体の景気にも一つの動揺の風潮が来たのではないかということも考えられる。あるいは、最返中小企業者というものはあの神武景気の恩沢を受けることがいかにも少い。逆に、その面においては犠牲になっておるのじゃないかということも考えられる。各分野においてある税度のニュアンスの違いはあるとしても、大体そうしたようなことが要素になって、中小企業者がまたまた困難な状況に追い詰められておると考えるのでありますが、宇田長官はどういうふうにこれを見ておられるのか。そして経済五ヵ年計画も、政府の方では、たた絵に描いたもちではなしに、ある程度裏づけのある施策をもってこれを進めていくのだという考えであるようにも承知しておりますが、そうであるならば、経済五ヵ年計画と、こうした経済における中小企業者の困難の表面化の問題の関連性について、一体どういうふうにお考えになっているかを伺いたいのであります。
  32. 宇田耕一

    ○宇田国務大臣 御承知のように、非常な資金の揚超でありまして、年度末の金融が窮屈になっているということが最近あらゆる面で現われております。従って、貿易関係においても入超でありますから、貿易関係の手持ち資金も非常に窮屈になってきております。手形交換所の不渡りの悪化傾向を示していることは、御指摘のように最近の現象と思っております。従って、これに対する対策をどういうふうにするかということは、三十二年度の予算をなるべく早く上げていただいて、四月一日からこれを実行に移す。そういたしましたら、政府関係、公共事業関係その他の政府出資が、本年度の予算でも皆さんに御審議願った通りに、かなりに民間資本、特に中小企業に対するところの資金は潤沢に流れると考えておりますから、どうか中小企業のためにも予算を早く通すように御審議を進めていただきたい。これがわれわれの希望でございます。  それから、五ヵ年計画の中で、中小企業をどういうふうに取り上げて配嘱しなければならないかと申しますと、実はわが国産業構造の九九%までは中小企業でありまして、ただいま御指摘のように、中小企業にしわ寄せの多くなるという危険がありますから、そういうことのないように、単純にものを考えずに、予算全般の中においてあらゆる角度からこれにてこを入れるように考えているのでございます。金融の面、あるいは税金の面、またわれわれの直接関係しております科学技術の面では、科学技術研究組合を作ってこれの補強をはかるとか、一連の国全体の産業政策の中にこれをあらゆる角度から総合的に織り込んでいくという対策をとって、どこかに穴のあかないように、欠陥のないようにという配慮をいたしております。そして、五ヵ年計画を立てます場合に、ただいま中小企業に関する関係法案を通産省で論議いたしておりますし、それから皆さんもこれに対しては御意見を十分に出しておられることも承知いたしておりますが、ただ、ねらいといたします点は、中小企業に対して官僚統制の弊に陥らないように、そして、中小企業者自身の創意工夫によって、団結した組織の強化をはからなければならない、こういうふうに考えるのであります。従って、五ヵ年計画を立てます場合にも、強力な、官僚的な、上からの押しつけを基本線とする計画は立てるべきではない。なるべく国民自身の力によって、国民自身の自立的な組織体制一の中において力が伸びるように、政府ので予算あるいは施策の配慮をいたさなければならぬ、経済五ヵ年計画を立てます場合の基本線は、物動的な、押しつけ的な計画方式をとらずに、むしろ民間の自立的、組織的な行政を助長する方針をもって五ヵ年計画の策定に当りたい、こう思っております。それから、新しい五カ年計画は今年の九月に作業を終るはずでありますけれども、ただいま申し上げましたような予算の内部におきましては、国民に対して、行政面で上から押えつけていくことはやらない、あくまでも自主的な企業心を発揚させるような方法に五カ年計画は策定をいたしたいと考えております。
  33. 中崎敏

    中崎委員 私がお尋ねしたいのは、いわゆる神武景気といって、電力計画にしても、輸送計画にしても、鉄鋼計画にしても、相当大幅な拡大があるという見通しの上に立って五カ年計画も策定をせられるし、これについての対策も今すでに進めておられるのでありますが、最近における実情は、たとえば、日本においても、設備の過剰投資ということは、もう具体的な現実の問題としてどうも行き過ぎではないか、それで、民間産業界においても、そうしたところの反省というのか反動というのか知りませんが、もうそういう状況が見えている。金融界においても相当の行き詰りで、預金の要請などの問題も関係があって、金利の引き上げは日銀においてもすでに行なった。そうしてこの貸し出しの面においても相当規制が行われておる、いろいろの制限をしていこう、こういうこと等もあって、これは単なる財政の資金の流れ方の問題でもあるのでありますが、そういったような問題等もあって、相当に変調があるように思うのでありますが、それを一体どういうように見ておられるかをお尋ねしたい。
  34. 宇田耕一

    ○宇田国務大臣 設備の過剰投資という面が確かに、特に繊維関係等には現われて参っております。従って、金融の一般の情勢を見ておりましても、その方面に対するところの貸し出しは、それぞれの当該銀行はかなり引き締めておるということが最近よく出てきております。従って、そういう面におけるところの物価、それの関連しておりますところの商品は値下り傾向でありまして、特にこの一−二月におきましては、非常な物価の値下り傾向であります。経済月報を本日経済企画庁から出しますけれども、一−二月の傾向は、卸売物価は、そういう面の値下りが原因となりまして、昨年に比べましてむしろ下っております。またCPIも御承知のように下る傾向であります。そういうふうな非常な金融の窮屈になったことの反映もありまして、消費経済方面におけるところの消費水準の指数は、むしろ低下傾向が非常に顕著に現われて参っております。従って、われわれが経済全般を見ました場合に、この過剰の投資あるいはこれに対する放漫な金融ということは、自然にあり得ないだろう。むしろ反対の引き締め現象が強くなる傾向が顕著になってきている、こういうふうに思いますから、特に政府がこれに対してどうこう処置をとらなければならないということを考えるよりも、やはり早い予算通過を希望する、そういうところに政府は参って、むしろ緊急なそれぞれの対策は大蔵省ないし通産省でやっておりますけれども、根本の大きな流れは、その新しい政府財源が国民経済の中の調節弁になりますように、予算の通過を希望いたし、そうしてそれによってまず当面の混乱を避け得る、こういうふうに思っております。
  35. 有田喜一

    有田委員長代理 中崎君、ちょっと御注意申し上げますが、参議院の方から大臣の呼び出しがかかっておりますし、ほかにも、大臣に質疑の通告の人がありますので、この技術士法案に直接関係するものを簡潔に御質問願いたいのです。
  36. 中崎敏

    中崎委員 技術士法案に入る前提を質問しておるのです。さて、そうしたいわば日本の非常な好景気に酔うておる状況下において、中小企業というものが現在そういう状態にある。ところで、日本の経済の将来というものは、どうしても中小企業、ことに工業におけるところの中小工業のあり方をどういうようにしていくかということ、これはきわめて重要な問題だと思う。ことに経済企画庁の立場に立ってみたときに、この中小工業に対するあり方をどうする、あるいは単なるその系列産業の中にこれを持っていこうとするのか、あるいはある相当の独立したところの分野としての中小工業というものを育てていくのか、いずれにしてもこの中小工業というものにはあらゆる脆弱な面があるわけなんだけれども、日本においては、これの相当な隘路を打開して、これを重要視していかなければならぬということもまたはっきりした事実なんであります。そこで、それを解決するは何かといえば、工業においては何といっても技術だろうと思うのであります。その中小工業に対するところの技術の面において、ことに科学技術庁の側に立ってこの問題にどういう角度から取っ組んでおるか。従来、ややもすると大蔵省は、中小工業については非常に冷淡というのか関心が薄いというのか知らぬが、もっぱら大産業中心に——予算の出し方もそうなんだが、ものの考え方がそうであるということを私は痛切に感じておる。いわんや技術というような問題については、大蔵省はまるっきりだらしがない。技術というものは何にもわかっていない。従いまして、中小工業を中心とする技術指導なんということについて、また必要なところに金を出すことについても、非常に臆病だというのか、できるだけ押えつけていこう、こういう傾向にあると思うのであります。そこで、「中小企業技術指導現状」というのが中小企業庁から出ておるのでありますが、これは長官、すでにごらんになったと思いますけれども、このどの点を見ても、予算折衝のあらゆる面において、大蔵省側の認識不足というか、もうずっと流れておるところの一つの精神というか主義というか知りませんが、そういう考え方の上に立って、ほとんど施策というものが全滅しておるというような状態だといわなければならぬと思うのであります。こういうふうな状態においてこの技術士法案というものも出されておるのでありますが、中小企業を中心とするところの技術のあり方について、もう少し根本的な考え方を持って、そうして大蔵省に対しても大いに蒙を開いてやっていかなければ、日本の今後における工業、世界の水準の上に立って、さらに輸出振興していかなければならぬという日本の工業技術というものについて、われわれは心配を持っておるのであります。それについて一体どういうふうにお考えになっておるか、お尋ねしたいのであります。
  37. 宇田耕一

    ○宇田国務大臣 中小企業は、何といいましても、国の経済の中で、大企業に比べて、九九%もそれ自身が一つの国の力でありますから、これをどういうふうに育成していくかということは、おそらく全分野にわたって考慮されなければならぬほどの複雑な、そうして単純に一省だけで決定することができない内容を持っておる。それで通産省と連絡をして、われわれの責任分野といたしましては、計画をそういう意味で配慮して立てていく。また技術関係におきましては、特に中小企業の大企業と違う点は、専門技術士自分たちで雇い得ない環境にある。従いまして、組織を作って、組織の中に技術員を持つということもあるでしょうけれども、それよりも進んで、ただいま法案に出ております技術士制度を確立をして、しかも国の保証のある、信用できる技術自分企業の中に簡単に取り入れることのできる制度というものは、これは早くやるべきである。アメリカはもちろんでありますけれども、その他の国におきまして、これをうまく活用することによって、中小企業以下の零細なものが、所要な技術をいつでも自分企業の中に導入することができるという、これはもう中小企業対策として必要なことだと思います。また中小企業に対しましては、技術的な情報をすみやかに渡すということが必要でありますから、そういう意味ではただいま情報センターを御審議願っておりまして、それが決定いたしましたなれば、われわれといたしましては、国の全部の中小企業に対して、世界的な最新情報を早く分配をする、こういうことも考えなければならぬと思っております。私の所管外のことはまたそれぞれの大臣から申し上げることと思いますけれども、所管内のことですと、概要そういうふうなことを考えております。  なお、御審議の途中でお気づきの点がありましたならば、御指摘下されば、われわれとしてはできるだけの配慮をしていきたいと思います。
  38. 中崎敏

    中崎委員 いろいろ質問はあるのでありますが、時間の関係がありますから差し控えますけれども、この技術士法案の趣旨には、むしろおそいくらいだということで、私としては賛成なんであります。しかし、これの運用について、私は非常に心配しておるわけであります。今みたいにまだ日本の経済の底が浅いところに加えて、ことに中小企業者は、せっかく技術士が名案を出してくれて、そういう設計をしてくれ、その実施の方法を教えてくれても、結局において、やはり近代的な設備の裏づけがなければならぬ。ところが、中小企業は非常に力がないから、そう思うようにいかない。そうすると、せっかくそういうものができて、いい制度が逆用されるということになれば、その裏づけとして、資金等の面についてその技術士の意見などを取り入れて、それに左右された裏づけのあるようなものには、国家的な金融機関として、中小企業金融公庫とか、あるいは国民金融公庫では小さ過ぎると思いますけれども、あるいは開発銀行とかいうふうな面、あるいは産投特別会計などの画からいっても、とにかく必要な範囲においての配慮が払われるというような方法も講じられなければ、絵に描いたもちになる心配があるんじゃないかと思うのであります。この点について、大臣としては一体どういうようにお考えになっておるか、承わりたいと思います。
  39. 宇田耕一

    ○宇田国務大臣 その点につきましては、特に金融機関が当該企業の査定に当るという場合には、当然技術士によるところの技術的な注意あるいは意見が尊重されることになろうと思います。従って、国といたしましては、そういうふうな技術士法に基いて、当然資格を持っておる者が企画、立案をするものについては、将来ともに中小企業の育成の立場から、それの保証によるところの金融等は特別に考えるような方法を講ずるときがくるだろうと思います。ただ、そういう具体的な処置につきましては、なおまたあらためて検討をして申し上げる機会があるかと思います。
  40. 小笠公韶

    小笠委員 私は、企画庁長官としてではなしに、国務大臣としてのあなたに伺いたいのであります。実は、名称独占職務独占の二つがあって、本法は名称独占であることは御承知の通りであります。そうしますと、今後こういう種類の、たとえば経営士、診断士、写真士等々の名称独占法案が出たときに、国の方針としてこれを認めていくつもりであるかどうか、この要望は各方面にあるのですが、国策として、内閣の統一した方針として、職務独占の場合はいろいろ議論があると思いしますが、名称独占のときには類似のものは広く認めていくという御方針であるかどうか、まずこれだけを伺っておきたい。
  41. 宇田耕一

    ○宇田国務大臣 その点につきましては、なかなか意見の分れるところでありまして、これは国全部の方針としてどうするかということについての話を今まとめておるわけではありません。私個人といたしましては、その問題に応じて、重要度を勘案して、ケース・バイ・ケースで決定するのが好ましいんじゃないか、国の基本方針としていつでも名称独占は歓迎すべきである、こういうふうに取りきめることはできないと思います。
  42. 田中武夫

    田中(武)委員 この際大臣に一音だけお伺いいたしたいと思います。先日、科学技術特別委員会で、参考人から意見を聞いたことに関連して、政府委員に質問したのですが、どうも私は納得がいかないので、大臣に一言だけお伺いいたします。と申しますのは、この法案の骨子は、試験制度によって名称を与えるという点にあるわけです。ところが、これと同じような従来の試験制度の中に、たとえば弁護士、計理士弁理士といったようなものがあります。それと同じように、これもいわゆる予備試験、それから、こうこういう学歴を持った人は本試験を免除する、そうして本試験を口述試験と筆記試験に分けてやる。この行き方は、かっての弁護士試験と同じ行き方であります。しかし、技術というものは特別なものがなくちゃならぬと思うのであります。この試験制度によって合格する技術士は、結局は理屈を知っておってよくしゃべる、これだけが技術士になり得ると思うのです。技術というものは、そんなものじゃないと思います。筆記試験と口述試験、こういうことなら、先ほど言ったように、よくしゃべって、理屈だけ知っておれば合格できるわけであります。たとえば、自分は文科系続でなく、理科系統を選ぶのだという人の中には、いろいろとその人の得失もあると思いますが、中にはおれは口下手だから、よくしゃべらぬから、理科系統に行ってこつこつ勉強するんだという人もあるかもしれない。そういう人が口述試験ということになると、ちょっと言いたいと思っても、口下手のために受からないのじゃないか、こういうことを考えます。そうすると、大臣はよくしゃべる技術士だけを作ろうと考えておるのかどうか。この点については、七年という経歴があるということでやるのですが、そうすると、七年という経歴が果して妥当であるかどうか、こういう点にも関連してくるわけです。ただ、これだけの試験でそういう技術士というものを作っていいのか。技術ならほかにたとえば実地とか何かの方法があると思うのですが、いかがでしょうか。
  43. 宇田耕一

    ○宇田国務大臣 七年というなかなか長い期間をこの中に含ますというふうな特に慎重を期したのは、技術士に対する国民の期待が大きいということから、七年というかなり長期な彼の履歴を要求しておることと思います。ただいまお話しになった問題点は、要するに試験方法でありますが、試験をする場合に、特に技術に関する試験は何も演説が目的ではないのですから、お説の通りでなければならないと思います。そうでなかったならば、非常に大きな誤まったものである。技術士法の精神はそれに合致しないものと私は思います。技術士というものは無言であっても、極端に言えば、たとえばおしであったところで、技術というものは非常に優秀な者はあり得ると思うのです。従って、表現方法というものは、彼の技術の優劣をきめる最終のものではない、あくまでもその人の持っておる技術それ自身が光を持つものである、それがこの法の基本精神であると思います。(「じゃないのですよ」と呼ぶ者あり)それでなかったら、そういうふうであらねばならぬ方法法案を十分御審議いただいたらけっこうだと思います。
  44. 有田喜一

    有田委員長代理 大臣は参議院の予算委員会の方から呼び出しがありますから、どうぞ御退席下さい。
  45. 田中武夫

    田中(武)委員 この間も言ったのですが、これは画期的な法律です。日本で初めての制度です。ところが、これを見ておると、昔の明治何年かからある弁護士試験と同じ制度しか考えていない。予備試験、本試験、本試験は口述試験と筆記試験だ、こういうことでよいのですか。それでは何かよい案があるかといわれても、私は技術専門家でないから、こうしたらよいということはよくわからぬのですが、どうもこれでは画期的な法律でなくて、形式的な法律にしかならないと思う。もっと研究してもらいたいと思います。
  46. 秋田大助

    秋田政府委員 田中委員から御心配の向きは、法文を読みますと、法文の表面からは十分看取されます。またそういうふうなものになってはいけないので、実際の試験の質問、ことに本試験の質問の出し方等に問題があろうと思います。また単にその受け答えだけでなく、全くこの試験に当る人は、その人の持っておる、今、大臣もお答えになりました口先の巧拙ではなくて、知識経験そのものを十分評定されるだろうと思います。そこで、ただ技術的な質問ばかりでなく、その人が七年以上の経験をしている過程において実際にどういうことをされたかというようなことも、当然その本試験の中で聞かれるだろうと思います。そういうことを通じてその人の人柄、その人の実際の経験等の内容を知ることができる。また質問も、ただ暗記しておれば、あるいは記憶しておればいい、それを出すだけで足りるというようなものでなしに、経験がなければ答えられないような質問の仕方ということは、十分工夫ができるんだろうと思います。私はその点について技術的な知識はもちろんでございませんが、ここに事務当局が想定をした問題みたいなものがございます。たとえば、こういうふうな聞き方をしたならば、単に口頭弁論の技術だけで合格するという結果になるものではないという考えのもとに問題を想定しているのでありますが、それには、小型自動車のボデイを二色塗りするに必要なる施設と所要経費について述べてもらいたいとか、あるいは直径二メートル、長さ四メートルの製紙用鋳鉄製ドライヤーに、硬質クロムメッキを施す場合における適切なるメッキ槽、電源その他の所要設備及び作業方法の概要を述べてもらいたい、それに対する意見を述べてもらいたいというような質問の出し方に対しまして、単なる口頭の、口先のわざでない、その人の経験、その人の知識そのものを知ることができると考えておるのであります。単に条文だけを見ますと、予備試験と本試験、まことに官吏の行政科の試験とか弁護士試験と体裁、形式は似ておりますが、本試験にやる試験は、そういうふうな筆記試験じゃなしに、また口述といっても主として暗記によるものでなく、経験がなければ答えられないようなものを出すことによって、田中先生の心配されている点は相当程度除かれる、ほとんど除かれていく、こういうふうに考えております。
  47. 田中武夫

    田中(武)委員 今、設問で、こういうふうにすれば、口述試験においても、その人の持つ技術に関する考え方が十分出てくるんじゃないかということは、これは考え方にもよると思うのです。われわれも口述試験を受けた経験がありますが、たとえば、法律系統においてもやはり同じような応用問題を聞くのですけれども、しかし文科系統の理屈だけをこねる経済や法律などと技術とはどこか違うと思うのです。そこで、そういう試験では、この筆記と口述しかほかにないというなら、口述の問題についてどういうような聞き方をするかということは十分研究してもらいたいと思う。アメリカあたりでは、この技術士についてはやはりこういっただけの試験制度をやっておるのですか。それとも何かほかの方法をやっておりますか。それからもう一つこういう制度ができまして、まずさしあたってどれくらいの人が受験せられるという見通しを持っておられるか。今の日本技術士会には四百何名かの会員がおられるということでありますが、そういうところから割り出して出てくると思うのです。それから、たとえば法科あるいは経済を出た者の一つの目標は、昔ではいわゆる高文だった。今日においても、法科においては弁護士試験だと思うのです。医師になるには医師の国家試験を受ける、こういうことになるのですが、理科系統ではこれを受けることが一つの大きな登竜門というか、一つの目標になると思うのです。そうするならば、現在の理科系統の学校の課程といいますか、こういうものとにらみ合わす必要もあろうと思うし、また一面複雑多岐にわたっている各工場部門との関係もあると思うのです。ここに大体十三の技術部門の考えられておる例があがっておるのですが、電気の点を見ると、十六から二十一までこれだけのものがあがっておるのです。たとえば、電気という科目で受ければ、電気通信あるいは電子機械器具、こういうことの全部に相談を受けられる資格ができる、こういうことになる。これでは、電気といっても広いものであって、ことに電波関係なら、いわゆる有線と無線とでは相当違ったものがあろうと思うのです。これも一つにひっくるめて電気といっていいでしょうか。有線と無線というようなものは、電波関係の中におきましては、相当違うと思うのです。そういうものも一つのいわゆる電気という部門の中へ入れてしまっていいものでしょうか。あるいはまた最後の公衆衛生のところを見たときに、それじゃお医者さんとの関係はどういうことにするのかというようにいろいろ疑問が出てくると思うのです、この部門の分け方についても、もう少し詳細に考え方を聞かせていただきたいと思います。
  48. 原田久

    原田政府委員 諸外国試験の仕方はいろいろございますが、アメリカではやはり第一次試験と第二次試験とに分けておるようでございます。第一次試験は、筆記試験で主として学術的素養について行われることになっております。それから第二次試験は、経験にたよらなければ完全な解答が得られないような技術的判断について行われると聞いております。その詳細なやり方については、わかっておりません。それから、これはアメリカはいわゆる業務独占考え方のところですから、特にきびしい試験が行われるのではないかと思っております。ヨーロッパにおいては、わが国とほとんど同じような資格試験になっておりまして、名称独占になっておりますので、その試験のやり方もおのずと違っております。やはり諸外国ともそれぞれ国によって違いますが、フランスだけは昨年暮れに法律を出してやるということになっておりまして、その内容は現在まだわかっておりません。その他の国々では、経験を保証するために、そういう経験があったという証明書を発行さして、それをもとにするという補助手段も講じております。それからさらにエンジニアという名称をつけることが基本的に制限を受けておりまして、そのエンジニアという名称をつけた人であって、ある学会の保証があるような人については、技術士にするというような、経歴をそういう裏づけによってとるという方法もとっておるようでございます。詳細はまだわかっておりませんけれども、諸外国はそんなふうになっております。それから次の試験方法でございますが、試験の科目につきましてただいまお話の、電気部門という名称技術部門のうちにも、発送配電、電気機械、電気通信、それから電子機器、自動制御、計測機器というふうに幾つかの専門分野が分れておる。その技術士は、この電気関係の技術士という名称をうたいながら、実はそのうちの電気通信関係の試験を通っている人が、そういう広い名称を用いることは看板と内容に偽わりがある、そういうようなことでいろいろ弊害を生じやしないかという御質問のように思いますが、これを需要者の立場から見ますと、この分類があまりにこまかくなりますと、適当な分類を見つけることが第一困難かと思います。技術士名称を冠する場合には、まず大きな分類の十三分類を予定しておりますが、電気関係の技術士だということがわかってくれば、その範囲の名簿など用意しておきまして、さらにその名簿の中には、各技術士の最も得意とする部門を表示してもらうような名簿を作っておきます。たとえば、医学関係の学位を持っておられる方で医学博士という方がありますが、その専門はおのずと小児科関係か内科関係かというようなことがわかるようなこまかい分類をして、そういう補助手段によりまして利用者にわかるようにしておきたいと思います。それから、実際問題としまして、依頼者から見ますると、その技術士から得られる回答によって、その技術士の価値というものがおのずとわかるわけでございます。技術士といたしましては、電気通信の専門技術士が発送配電の要求に対してかりに答えを提供して、設計計画その他の提供をいたしましても、それは利用されないししますので、技術士の良心から見まして、そういう部門を越えたようなところに職業を伸ばすということは、技術士の良心に訴えるならば起きないだろう、ただ、そういう場合に弊害が起きるのではないかという問題は、たとえば発送配電の部門の注文がきたときに、自分は電気通信の専門技術士であるにもかかわらず、私がやれますということで、かりに料金を取って技術サービスをするというようなことがおきますと、それは注文者に対して望ましい回答をしないことになりますから、それは信用失墜行為といいますか、そういうようなことが起きてきます。従いまして、そういう面で法では規制をしておりますから、実際問題としてはそういう弊害は起きる可能性がありましても、超さないようにしていく法律的な規制は考えておりますし、技術者の良心として、知らない分野について技術相談に応ずることは、実際できないことだと思います。そういう意味で実際問題としては弊害は起きないのではないか、そんなふうに考えております。
  49. 田中武夫

    田中(武)委員 推定ではどのくらいの者が受けにくるのですか。
  50. 原田久

    原田政府委員 そのことについてでございますが、現在日本技術士会会員は四百五十名おります。初年度は一千名ぐらいは受けにくるのではないか、こう思います。この制度が施行されましたことを関係各方面に普及しなければなりませんが、そういう普及の程度によって、またこれに対する期待程度によって受験者の数が違ってくると思いますが、一千名ぐらいそういう応募者があるんじゃないか、そんなふうに考えております。
  51. 小平久雄

    小平(久)委員 関連して。今の説明で何か技術部門の表示の仕方の点が問題になっているようですが、ここに示されている案でいくと、具体的にいって技術部門というのは機械とか船舶とか航空機とか分けている部門というか、そうでなくてナンバーが打ってあるのですね、一から五十八まで。これがいわゆる技術部門なんですか、どっちを技術部門と称しているのですか。
  52. 原田久

    原田政府委員 技術部門といたしましては、十三の大きな方でございます。それでやっております。
  53. 小平久雄

    小平(久)委員 その点は、党内のことを言うとおかしいが、党内でやったときと説明が違うのじゃないですか。あのときは非常にこまかく、五十幾つかに技術部門を分けるのだ、技術部門を通して登録を行うのだ、こういう説明だと思ったのですが、非常に違うのだ。誤解を招くことを防ぐことから具体的にやるのだ、こういうふうに党の特別委員会での説明であったといます。
  54. 原田久

    原田政府委員 私は党の特別委員会のときは、ただいま申しましたように十三部門が技術部門になる予定だというふうに申し上げたと存じておりますが、説明が足りませんものですから、そういう誤解を招いたかと思います。ただお断わりしておきたいのは、ここに掲げました十三の技術部門は、これはまだ確定した案ではございませんで、かりに想定すればこういうふうな技術部門に分けるのがいいのじゃないかというふうに考えておりまして、その技術部門につきましては、政令できめることになっておりますので、その段階までに十分検討して、こまかく分ける第二の分類でありまする五十分類ぐらいに詳しく分けた方がいいか、あるいは大きな分類に分けた方が利用面からいっていいかどうかということは、その段階検討したいと思います。
  55. 小平久雄

    小平(久)委員 そうなってくると、試験なども、本試験の方は技術部門をもとに受けるわけですね。そうすると、機械というばく然とした部門で試験を受けることになるのですが、機械なら機械のうちの工作機械の部門、これがいわゆるこの法律でいっておる技術部門じゃないですか。その段階では、機械というものは技術部門だという、機械というばく然としておるもので試験をやるのですか。これはおかしなことになるのじゃないですか。
  56. 秋田大助

    秋田政府委員 お答えいたします。こまかな方の分類で試験をいたす予定でございます。従いまして、技術士の登保の際の名称に、こまかな分類で表わす方が的確に出て、対照にも便利であろうと考えております。なお、どちらにするかは十分検討もし、考慮もしてみたいと思いますが、大体はこまかい分類にいきたいという気持でおるわけでございます。なお、この点は十分研究をいたしまして、また分類方法並びにその種類、数も確定のものでございませんが、そういう考えであるということを参考に申し上げたわけであります。
  57. 小平久雄

    小平(久)委員 どうも今この審議の大切な時期に際会して、官房長と政務次官の意見がまるっきり違うことを言っておられることは、はなはだ迷惑しごくなんです、私は、政務次官の今の答弁の方が、われわれがこの法案を党内で審議した際に聞いたことと合致しておりますから、私はそれを信用していますが、これは官房長もそれでいいのですか。それだけはっきりしておかないと困るのです。官房長と政務次官とが違った答弁をされたのじゃ、われわれは困るわけです。
  58. 原田久

    原田政府委員 政務次官と私と答弁が食い違って恐縮でありますけれども、もう一回補足して私が党の特別委員会で御説明した……。(「そんなことは要らないのだ、こまかくきめていくか、大きくきめていくか方針だけだ」と呼ぶ者あり)これは技術部門によりましては非常にこまかい専門技術士もできますし、総合的な要求にこたえるような技術士、すなわち管理部門関係のような技術士もあるかと思います。従いまして、現段階でこのどちらをとるべきかという問題につきましては、いましばらく御猶予をいただきたいと思います。この原案を出しましたときには、たとえば名称といたしましては技術士として機械技術士という名称を使いますが、そのうちの八つほどありますこまかい細分類につきましては、選択によりまして最も得意とする冷暖房、冷凍機を専門とする部門はそこで受けていただく、そういうふうにして分けていった方がいいのじゃないか、こういうふうに思うのです。と申しますのは、分類というものは、いろいろな立て方から細分類というものができますものですから、分類が網羅的にできない点もあるかと思います。そういう意味で五十ほどありますのは、選択的に選んで受けられる試験科目、それから名称として用いるのは機械技術士と電気技術士というふうに使っていく、そういうふうに考えております。
  59. 田中武夫

    田中(武)委員 どうもこの点まだ明確でないようですが、たとえば、法文にいうところの一種または数種の云々というのは、これはいわゆる機械技術士あるいは電気技術士と二つの名称をとり得るのか、あるいは電気のうちのたとえば配送電と電気機械ということを意味しておるのか。一種または数種ということが法文にあるのですが、それは大分類の方を意味しておるのか、小分類の方を意味しておるのか、この点がはっきりしない。
  60. 有田喜一

    有田委員長代理 速記をとめて下さい。    〔速記中止〕
  61. 有田喜一

    有田委員長代理 速記を始めて下さい。
  62. 秋田大助

    秋田政府委員 ただいま説明が二途に分れまして大へん御迷惑をかけ、申しわけなく存じます。今その点、内部で意見の調整をし、統一を見ましたのでお答えいたします。部門というのは、機械、船舶、航空機という大分けの方で考えておる、こういうふうにお含みを願います。
  63. 小笠公韶

    小笠委員 それでは、私は事務的なことを簡単に一言お伺いいたします。第一点は、先ほど来本法の効果として、日本中小企業のレベル・アップ、日本産業界のレベルというようなことを言っておられますが、特に中小企業問題に関連しまして重大なる問題は、第三十六条、「業務に対する報酬」のところで、「報酬は、公正かつ妥当なものでなければならない。」と書いてあります。公正かつ妥当とはいかなる意味を持っておるのか、まずこれから伺いたいと思います。
  64. 原田久

    原田政府委員 お答えいたします。この三十六条は、技術士が過大の報酬を要求するようなことがありますと、技術士制度の成長を阻害することになりますので、その報酬が公正妥当であるべきものであると規定したのが、ただいまの三十六条でございます。その中で、公正妥当とはどういうことかという御質問だと思いますが、公正とはどういうことかという意味をまずお答えいたします。公正とは、相手がたとえば中小企業であるとか大企業であるとかいったような違いによって、報酬上に差別を設けるというようなことがあっては公正を欠くという意味で、その相手によって対価のとり方を変えるというようなことはしない。妥当という意味はどういう意味かと申しますと、類似の職業でありますたとえば弁理士などが、いろいろな特許出願その他の代理行為をいたしますが、そういったような類似職業が要求いたします報酬と、技術士が同様な業務を行なったときにとります報酬とが、はなはだしく差異を生ずるようなことでは不つり合いになるかと思いますので、そういう意味で他との均衡を考えて、つり合いのとれた報酬をとるようにすべきであるという意味で、妥当をこういうふうに一応解釈しております。
  65. 小笠公韶

    小笠委員 これは非常にむずかしい問題でありますが、まず第一に、公正の意味はよさにその通り、均一的な考え方で、定価表的な考え方たと思います。この問題は、提案説明等から、高度の技術というものを中心に考えておる、しかも新しい技術というものを中心的に頭に置いておる場合は、当然に高からざるを得ないと思うのです。そういうふうな場合に、日本中小企業にこの値段のいかんによって、どの程度アッピールするかということは、実を申しますと非常に問題であると思う。少くとも従来のわれわれの常識的に理解するところによれば、コンサルタント・エンジニアというのは、中規模以上の企業日本ではどちらかといえば大企業に行われておる能率診断制度に見合う制度として、これが法文化されたものと見るのが常識的であります。これは、御承知の通り日本能率協会等のやっておるのは、相当高額をとっております。これらと見合った妥当性を言うならば、中小企業に煙出して、中小企業のレベル・アップに役立たせようというのはうそであります。私はうそと言わざるを得ない。日本中小企業の実態はそういうものではありません。そこらの考え方の基本に私は問題があると思うのでありまして、日本の中規模以上の企業に対しての技術指導という率直なる答弁をするならば私は受け入れますが、故意に中小企業のための技術士法案なるがごとくいうところに問題が隠されておる。少くとも中小企業の実態に対する無知を表明するものだといわざるを得ません。その点から考えまして、公正妥当という考え方につきましてはもし政府側の説明するごとくならば、標準報酬表というものを作る意思があるかどうか、まずそれを承わりたい。
  66. 原田久

    原田政府委員 お答え申し上げます。標準の報酬表というようなものを作る意思があるかどうかという御質問のようでございますが、実例としまして、日本技術士会では報酬規程というものを作っております。その中に、工事金額幾ら幾らに対しては、その技術相談程度に応じて、第一段階、第二段階、第三段階、第四段階というふうに分れておりまして、それぞれ工事金額に対して一%とか三%とか九%とか一一%というような比率で、だんだん技術指導程度が上るとこれを高くしていくというような標準を作っております。それから、そのほかに、旅費その他を要するものについては一日幾らというようなことも規定しております。それから、技術士会では、その技術士相談に応じていろいろな設計、計画をするのに実際要した時間数から算出して報酬を求めるというようなことも考えて、やって参ったように聞いております。こういうふうにして報酬を求める基準というものの大体の標準は、今後も作っていくのが妥当であろうかと思います。が元来この技術士の活用というものは、依頼者と受託する技術士との相互の契約において成立するわけでございますので、必ずしも標準に全部マッチするように行われるべきであるということもまた言えないかと思いますが、大体そういうような標準はきめていくべきではないか、その点は行政指導指導して参りたいというふうに考えております。
  67. 小笠公韶

    小笠委員 この技術士みたいなものは双務契約をする、双務契約を基本にするなら、そういう標準を作るのはおかしいと思う。逆に先ほど中崎委員から御質問があったように、そういう方向へ狩っていくなら、この制度施行後に技術士協会とかなんとかいう共同の動作をとるべきものを作らなければなかなかできぬのであります。それが先ほど来申し上げておるように、この制度を広く日本の中小の企業に活用するゆえんだと思う。先ほど技術士協会というようなものは考えていない、こういうようなお話がありましたが、この標準報酬との関連において、もう一度伺いたい。全然考えておらないかどうか。
  68. 秋田大助

    秋田政府委員 ただいまのところは考えておりませんが、先ほども申し上げましたように、この法律が、施行されまして、技術士制度なるものが、実施された暁はいろいろただいま御指摘のような必要が起るかもしれぬということは予想をいたしております。従って、中小企業に対する診断と申しますか、相談に応じて技術士活動する場合の報酬は、「公正」なる文字にとらわれて、全く均一でなければならぬという機械的なものでもなかろうと思います。著しくそこにえこひいき、相違があってはいかぬという趣旨であろうと思いまするから、中小企業のためにこういう高度の技術を身につけられた技術士活動していただく場合には、比較的安い報酬で、しかし妥当な報酬で行かれるということは、まさにやらなければならぬことであろうと思います。そういうふうに弾力性を持たしてこの条項を活用して、行政指導の面において一つ御趣旨の中小企業振興に役立たせるようにいたしたい。しかし、これは非常にむずかしいことでございまして、その方面に該博な知識と多年の経験を持たれておりまする小笠委員から、ただいまのような御診断がありました以上、われわれは傾聴いたしておりますが、一つなるべくそういう弊害をなくしたいと考えております。  なお、この制度ができますれば、中小企業診断員との関連性を持たせまして、こういう技術士たるところの資格を与えられた方々が、関係官庁機関との連絡によりまして、中小企業診断員になられるということになりますと、その問題のところが、報酬の隘路を解決いたす一助にもなろうと思われますので、そういう点も考慮いたしておる次第でございます。
  69. 小笠公韶

    小笠委員 これは非常につまらない問題でありますが、立法論として、第三十四条の不正行為の禁止の問題です。試験委員が厳正を保持して不正行為のないようにしなければならぬ。これについての違反には罰則をかけておるようでありますが、これは一種の公務に従事するものと考えて、いわゆるその処罰については公務員の例によるというふりにする必要があるのじゃないか。最上の試験、いろいろな入学試験その他を考えますと、そういう感じがするのであります。単純なる罰則は不適当である、不十分である、こういうふうにいわざるを得ないのじゃないかと思いますが、その点はどういう御見解ですか、承わっておきたい。
  70. 水間光次

    ○水間説明員 これは仰せの通りでございまして、試験委員は非常勤の委員になりますから、公務員法の適用を受けるわけでございます。従って、試験問題を漏洩したような場合には、当然公務員法の適用を受けることになります。しかし、不正の行為ということは、公務員法による漏洩の行為と区別いたしまして、特に不正の行為だけを特記いたしまして、この三十四条において規定するというふうにいたしたのであります。
  71. 小笠公韶

    小笠委員 二十八条についてお伺いしますが、二十八条は審議会のいわゆる任務として「技術士に関する重要事項」と書いてあるのですが、重要なる事項とはどういうことを考えておられるのでありますか。私は率直に申し上げますと、こういう制度には審議会を必要としないと実は考えるのであります。現在の建築士法におきましても審議会はないはずであります。これはいわゆる資格法規でありますので、特に技術士法案において審議会で審議すべきものというものは何があるのか、承わっておきたい。
  72. 水間光次

    ○水間説明員 審議会に付議いたします重要事項としましては、第二十八条に規定いたしますように、広く技術士登録の取り消し、その名称使用の停止の処分に関する事項、それから技術士に関する重要事項としましては、本法律規定に即して申し上げれば、予備試験及び本試験受験資格たる実務経験の審査基準に関すること、それから本法に基いて制定さるべき政令、総理府令に関することなど多数考えております。それからあえて審議会を設けましたもう一つ理由は、この技術士法というものが実は第十九国会において議員提案をなされましたときに非常に大きな問題になりましたのは、各省庁の権限の問題が非常に大きくなりまして、科学技術庁が設置された暁においてその調整ができまして、科学技術庁所管法律として提案いたしたわけでございますが、さりとてこの法律につきましては経済各省庁が非常な深い関連がございまして、その方面からのいろいろな要望もございますし、そういう意味合いをもちまして、この審議会の委員に関係各省庁の委員を入れまして、関係各省庁と十分緊密なる連絡を保持しながら、本制度の円滑な運営をやっていこうという趣旨が一つでございます。
  73. 小笠公韶

    小笠委員 私はしいてこの問題を強く申しませんが、各官庁の職員の連合体なら次官会議その他でやればいいので、こういう審議制度が少しはやり過ぎているのではないか。無用な審議会が非常にたくさんできかかっているということは、一つの傾向だと思う。そういうような意味において、これは資格試験だけなんだ。試験さえ厳正にやられれば、あとの取り消しの問題については行政官がおるのですから、なるべくこういうものはやらないような立法をやってもらった方が適当ではないか、改正していただきたいという希望じゃございませんが、意見として申し上げておきます。
  74. 中崎敏

    中崎委員 この秘密性の問題でありますが、業務上知り得た事項の秘密を漏らすことが処罰の対象となっておるのであります。これはきわめて重要な事項だと思う。ところが、実際の面においては、その工場から相談を受けて、そうして自分の持っておる知識、資料等を集めて一つのアドバイスをし、いろいろな案も作る。これが実施されるということになれば、その工場にとってはそういうことは漏らしてもらっちゃ困る、またその工場主、頼む側の意見も取り入れてこれは作り上げておるわけですから、工場建設、さらにその設備をしていって、製品を作るまでの過程を総括していうのですが、その工場にとってはこれは祕密かもしれぬ。しかし、これを漏らすと処罰されるということになると、技術士仕事というものも、十分に能力を発揮できないということになるわけです。そこらの関係は一体どういうふうなけじめで考えられておるのか、お尋ねしたい。
  75. 原田久

    原田政府委員 ただいまのは、祕密、漏洩を守ることがうまくいくかどうか、こういう御質問のようでございます。まことにおっしゃる通りで、技術士は各企業の中心に入っていきまして、いろいろ問題点をもらう。そうして、そのもらってきた問題をいかに解決するかということについて、自分経験を生かして答えを作るわけでございまして、そういうことを繰り返しておりますと、いろいろな工場内の機密が知識として入ってくる。それが他に自動的に流れていくおそれがないかという御心配でございます。これに似たような仕事をやっておりますのに、特許の弁理士というのがございます。発明した人が発明の出願をする場合、発明の実態について十分そしゃくするまで発明者からよく聞きます。そうしてこれを特許の出願書類に焼き直しまして出願をするということをやっております。その場合にも、やはり機密を知り得る機会をたくさん持つております。そういった現在あります弁理士などは、そういう機密を知っておりますが、それを漏らしますと、秘密を守る義務という条項がございまして、罰せられることになっておりますので、そういうことはできないことになっております。現実にはそういうことによる弊害があったためしはあまりないようでございますが、この技術士制度で果してそういう祕密を他に漏らすようなことは起きないだろうかという御心配でございます。この点は技術士信用失墜行為の禁止とか、祕密を守る義務及び秘密を守る義務に対する罰則の適用によりまして、法律上は取り締ることにしております。実質上どういう運営をするかということになりますと、おそらくその人が経験を他に流すというような技術士であれば、依頼者の方はこれは信用が置けない技術士である、自分の依頼したものをまたほかに盗用されるということの心配を関知するようになりますから、やはり技術士の方でもそういうことをすれば、たちまち自分の商売に将来及んで影響があるということを察知して、そういうことはされないようになっていくのじゃないか、こういうふうに期待をしております。けれども、果して守れるかどうかという点は、法律で規制していく段階でわれわれは取り締っていくより方法がない、そういうように考えております。非常にむずかしい問題でございます。
  76. 中崎敏

    中崎委員 今、弁理士の例が出ましたが、多少感じが違うのじゃないかと思います。弁理士の場合は、先願主義でありますから、先に行っておけば、あと同じ内容の知識を他の者にやっても、これは書類として公表するまでは秘密ですけれども、しかしもう法律的な効果というものは、先に出している者が原則的にはそれ自体において法律的な利益を受けるのですから、あとでそれを漏らしたって、それはよくないことかもしれませんが、それほど大きな実害はないとも言えるのですが、この場合はそうでないと思う。終始いかなる時期においても、秘密を他に示されることが問題ですから、だいぶ感じが違うと思われる。それかといって、全然自分の知識を持ち、さらに工場のそういう実情等をも取り入れて、その知識をまた他へ全然活用しないというのも、この技術士の趣旨を失うものだと思う。よそのものを全然そういう場合に使ってはならぬということも、これまた問題だと思う。どの工場ではどういうことをやった、そういうことまで漏らして、そしてやるということになれば、僕は程度を越えるものだと思うのですが、そうでない範囲において、しかもほんとうに、これは特許前における、公表前における秘密みたいなような、そういう重大なものであるというような場合、その場合においては良識をもって技術士が他へはその点においては漏らさないというか、指導しないというふうな一つの道義的な分野も含めての問題だと思う。少くともどこの工場ではこういうことをやっておりますということを明らかにするということは、秘密漏洩になるようなおそれがあるのではないかと思うので、限界としてはその点あたりが問題点じゃないかと思うのですが、どういうようにお考えになっておりますか。
  77. 原田久

    原田政府委員 ただいまのお話の通りだと思います。結局いろいろな相談に応じておる間に、共通的な技術の概念として、技術士経験を経ていくわけであります。その概念をもとにして指導するということは、共通概念として指導する場合はいいのですが、会社の個々の問題を他の方に移すということをすれば、これは明らかに秘密漏洩ということになってくるかと思います。その間の限界の引き方は、御説の通り全くむずかしい点でございますが、そういうふうな運営をされることをわれわれは期待しておる次第でございます。
  78. 中崎敏

    中崎委員 最後に聞きたいのですが、建築士とか測量士とかいうものが現実にあるのでありますが、それと技術士とはどういう関係になるのですか。やはり建築士というある限られた範囲における技術士の資格に準ずるような、また類するような資格を持ったものだと思いますが、その競合の範囲、関連性というもはどういうことになるのかお尋ねしたい。
  79. 原田久

    原田政府委員 建築士、測量士などは業務独占と申しまして、これこれの家を建てるのには建築士の設計によらなければならないということになっております。ところが、技術士の方は、技術士でなければこれこれのことをしてはならないということはございません。ただ名称を用いて技術上の相談に応ずるということを、技術士でないものがやることを禁じておるだけでありまして、そういうわけで本質的には業務独占名称独占の差によって区分できるかと思います。そこで建築士の人でなければならない仕事技術士がやれるかどうかという問題でございますが、これはただいまのように業務独占でありますので、建築士でなければできないことを技術士がやるということはできないのであります。しかし、技術士の人が、建築の問題について相談に応ずるというような分野の範囲であれば、これは技術士でできるという限界があろうかと思います。
  80. 中崎敏

    中崎委員 そうすると、たとえば建築に関する相談をするような場合において、いわば私生子的な非公式な存在として意見を言うのか、公式な手続等については、また実施等については、建築士がやるんだというように解釈していいのでありますか。
  81. 原田久

    原田政府委員 その通りでございます。私生子というのはどうも誤弊があるかと思いますが、この法律の第二条に「(他の法律においてその業務を行うことが制限されている業務を除く。)」となっております。従いまして、建築士でなければできないことをやるということはできません。それ以外のことならばできる、こういう意味でございます。
  82. 小平久雄

    小平(久)委員 最初に伺いますが、建築士の場合、一級建築士、二級建築士と二種願かの段階を区別して、建物の種類等によって担当し得る範囲をきめておるようですが、この場合は一本にただ技術士、こういうことになっておると思うのです。そういうことは考えなさったことはありませんか。つまり技術程度によるわけ方はむずかしいかと思いますが、一級技術士とか二級技術士とか、先ほど来、中小企業との問題に関連して論じられましたが、中小、特に小企業においては、そう最高度の技術は要求してなかろう、むしろ最高以下の技術でもよかろう、従ってそういう段階をつけておくことによって、極端に言えば料金なども安いもの、よりポピュラーな、中小企業のほんとうに要求するところのものを割合安く供給を受けられる、こういう道もおのずから開けるんじゃないかと思いますが、この立案に当って、そういうことを考えなさいませんでしたか。
  83. 水間光次

    ○水間説明員 立案の途中、仰せのようなことを考えてみました。しかし、よく考えてみますと、技術は、ことに最近のようなレベルを考えてみますと、本質的に、相手が中小企業だからこれくらいの技術でよろしい、大企業だから非常に高級な技術を要するというような性質のものではないと思います。中小企業であれ大企業であれ、最高水準技術に対するには最高のレベルをもって対処しなければならない、そういうことにこそ中小企業のレベル・アップということが必要でございます。従って、そういう際に、一級技術士、二級技術士というような区分けをしてやることは、技術を推進する本質から言いますと、かえって技術のレベル・アップを阻害する面も多分にありますので、この際制度としては一本に割り切って、先刻来話がありましたように、運用面で、公正ということは、これ以上ぼることはいかぬが、安くするのは幾ら安くしてもけっこうでございまして、現に江東方面に非常に篤志家の技術者がいらっしゃいますが、そういうふうに熱心に中小企業技術指導していくという方があれば、そういう面の逆用によってやりまして、先刻来話がありましたような中小企業の金融というような面を、その技術の裏づけで——今の中小企業段階というものは、その日に追われて、資金の量をかせげばいいという段階でございますが、今となってはそうではない、せっかく国の金融機関というものを質的に向上するような金融の形と結びつけていかなければならぬと思いますので、やはり一級の技術士中小企業に対してサービスとしてはできるだけ穏当な、可能なサービスをしていく。そうしてせっかく国の金融機関と結びつけるときには、中小企業の体質改善ができるような金融と結びつけていくというのがわれわれの考えでございます。
  84. 小平久雄

    小平(久)委員 技術の本質から言ったら理屈はまさにその通りだと思うのですが、概して言えば高級の技術というものは、それを実際に実施するためには相当資金が要るし、また実際問題としては、したいのはしたいけれども、なかなか中小企業は手が届かないというのが実情だろうと思うのです。その点承わっておくだけにしますが、逆に、中小企業庁の方で、今回できる技術士なるものを中小企業振興という立場からどんなふうに活用するとか、したらいいと思っているとか、何かお考えがありますか。
  85. 川瀬健治

    ○川瀬説明員 私どもといたしましては、ただいま企業診断というような面におきまして、技術の診断等をやっておりまして、そのほかに民間の方のお力も借りまして、技術指導の講習会その他いろいろやっております。そういう面におきまして、やはり技術士制度が確立いたしまして、保証された、しっかりした高度の技術を身につけた技術士というようなものが出現して参りますれば、できるだけそういう方にわれわれの方の中小企業の診断あるいは指導面においても御援助願い、また純然たる民間のベースにおける診断技術指導という面にも活用して参りたいと考えております。
  86. 小平久雄

    小平(久)委員 それともう一点、先ほどの御説明からしても、技術というものは常に最高レベルのものを大企業といわず、中小企業といわず取り入れさせていきたいという仰せのようですが、これはとにかく一度資格を得れば、一生技術士という資格を持つわけですね。ところが、だれも言うように、科学技術というものは日進月歩だと言われておる。一たん資格をとった者が一生技術士でありますといって、それを看板としてやるということになって参りますと、必ずしも技術士の免許の資格を受けた者がアップ・レベルの技術を身に体しておるとは限らないと思うのです。それはそういう新知識、最高の技術を持たない技術士は名前だけであって、お客さんがない、こういうことで、要するに自然淘汰にまかせるのだと言えばそれまでですが、いかに技術士の資格を得た者の技術を、この日進月歩の技術のレベルに合わせていくかという問題が一つあると思うのです。それはそれぞれの人の努力いかんだと言えばそれまでですが、何かそういう点について考えておられますか。
  87. 水間光次

    ○水間説明員 その点はしごくもっともでありまして、たとえば三ヵ年くらいを限って登録の更新をやるということも試案として考えてみました。しかし、これは法制的にも非常にむずかしい点がございますし、かたがたこの種の制度についてそういう例があるかどうか調べてみたけれども、ほとんど見当りません。しかし、自動車の運転手などは、場合が違いますけれども、あれは三年で書きかえをいたします。書きかえのときに、条件に適合しなければ没になるということになっております。自動車の運転手ほどの簡単なものでもございませんが、とにかくそれは実際上の問題として、登録を更新しなくても、あるいは先刻来問題になりました技術士会というようなものがこの方面に必要になってくると思います。そういう墾親団体がございまして、そこで大いに技術士として技術士会のメンバーが切磋琢磨していくということは、ぜひ必要たと思います。その場合に、日進月歩の技術の中に飛び込んで自由職業として立とうとする人は、その技術におくれをとるということがあれば、実際上お客がついて来ない、商売があがったりになることは事実でございます。そういう点から、みずから励まされ、あるいは懇親団体が作られた場合に、お互いに切瑳琢磨するという行き方でいくことがベターではないかと思います。そういうことで登録の更新問題等は断念いたした次第であります。
  88. 小平久雄

    小平(久)委員 そういう点でちょっと考えられるのは、技術士からどういう相談を受けたかといったような報告をさせるとか、何かそういうことをさせたら、その技術士能力が役所の方でも大体のことはわかるということはわかるということにもなると思うのです。  最後にちょっと先ほどのこの表のことですが、これだけを問題にするわけではないのですけれども、この中に管理部門として、そのうち工業経営というのがあります。工業経営ということになると、これは単に工科とか理科とかの出身の者にだけ予備試験を免除するといったような特典を与えることはちょっとおかしいのではないかと思うのです。これは法科にしろ経済科にしろ商科にしろを出た者でも、工業全般となれば大いにやり得るのであって、ちょっとおかしくはないかと思います。これも試案だそうでありますから、この通りになるとは限らないかもしれませんが、その辺はいかがでしょう。
  89. 原田久

    原田政府委員 お答えします。先刻問題になりました技術部門の分類でございますが、先刻も申し上げましたように、まだ十分検討しておりませんし、この検討技術士審議会あたりでも検討していただく予定でございますので、御指摘の点は十分考慮いたしまして、検討を加えたいと思っております。  なお、参考に申し上げますと、まだこのほかにも溶接関係の問題だとか、地質調査の問題だとか、あるいは原子力関係の問題というような問題があるのでございますので、そういうものも十分勘案いたしまして、この表につきましては、さらに検討を加えたいと思います。
  90. 有田喜一

    有田委員長代理 他に御質疑はありませんか——なければ、本連合審査会はこれにて散会いたします。    午後零時五十一分散会