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1957-04-12 第26回国会 衆議院 科学技術振興対策特別委員会 第27号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十二年四月十二日(金曜日)     午前十時二十五分開議  出席委員    委員長 菅野和太郎君    理事 有田 喜一君 理事 齋藤 憲三君    理事 中曽根康弘君 理事 岡  良一君    理事 志村 茂治君       小平 久雄君    須磨彌吉郎君       南  好雄君    山口 好一君       岡本 隆一君    田中 武夫君       滝井 義高君  出席政府委員         科学技術政務次         官       秋田 大助君         総理府事務官         (科学技術庁長         官官房長)   原田  久君         総理府事務官         (科学技術庁原         子力局長)   佐々木義武君  委員外出席者         科学技術庁次長 篠原  登君         総理府技官         (科学技術庁原         子力局アイソト         ープ課長)   鈴木 嘉一君         労働基準監督官 伊集院兼和君         参  考  人         (東京慈恵会医         科大学教授)  樋口 助弘君         参  考  人         (慶応大学医学         部助教授)   山下 久雄君         参  考  人         (株式会社科学         研究所研究員) 山崎 文男君     ————————————— 本日の会議に付した案件  放射性同位元素等による放射線障害防止に関  する法律案内閣提出第一二八号)
  2. 菅野和太郎

    菅野委員長 これより会議を開きます。  放射性同位元素等による放射線障害防止に関する法律案を議題といたします。  本日は、参考人より意見を聴取することといたします。本日出席参考人は、東京慈恵会医科大学教授樋口助弘君、慶応大学医学部助教授山下久雄君、株式会社科学研究所研究員山崎文男君、以上三名の方々であります。  この際、参考人各位に一言ごあいさつを申し上げます。本日は、御多用中のところ、本委員会法律案審査のためわざわざ御出席を賜わり、まことにありがとうございます。本法律案は、原子力基本法の精神にのっとり、放射性同位元素使用、販売その他の取扱い並びに放射性同位元素装備機器及び放射線発生装置使用規制することにより、これらによる放射線障害防止し、もって公共の安全を確保せんとして政府より提出されたのであります。本委員会といたしましては、本法律案審査に当り、放射線あるいは放射線障害等について研究し、造詣の深い参考人各位の御意見を承わり、もって審査参考にいたしたい所存であります。何とぞ、それぞれのお立場より、忌憚のない御意見をお聞かせ願えれば幸いに存じます。  なお、参考人の御陳述は一人十五分程度にとどめまして、あと委員諸君質疑によりお述べ願いたいと思いますので、さよう御了承願います。  それでは、樋口助弘君。
  3. 樋口助弘

    樋口参考人 放射性同位元素、そういうものから放射線が出て参ります。それを人体が受けますと障害を受ける。その障害には、医学的見地から見ますと、局所的に障害を受ける場合、全身的に障害を受ける場合、それがまた急性に障害を受ける場合、また慢性に障害を受ける場合があります。それで、国際放射線学会では、一週間に〇・三レントゲン、こういうふうに言っているのです。ところが、これは欧米人がきめたのでありまして、環境、生活、食品、栄養、それから人種の差異、そういうことによって、日本においてはそれよりももっと感受性が強くて、それ以下のものであるかもしれないというようなところで、今、研究されているのですが、しかし今のところこれという確かな証拠がないので、やはり〇・三レントゲンということになっております。それで、この法案もそういう点を基礎としてできたものと考えられまして、大体私たちは異見がないのでありますが、二十五ページの「取扱い制限」、要するに十八才未満の者あるいは精神病者は取り扱ってはならぬという中の3のところに「前二項の規定は、保健婦助産婦看護婦法により免許を受けた准看護婦その他総理府令で定める者については、適用しない。」こういうことがありますが、この准看護婦ということはちょっとおかしいのじゃないかと思います。それは、准看護婦というのはあるいは十八才未満でもなれるのじゃないでしょうか。そうすると、十八才未満の者はとにかくはずすということになっておるのに、ここに准看護婦は取り扱ってもいいということは、何だか理論が通らないように思うのです。そのほかは、私はまあこのくらいのところで押えておけばけっこうじゃないかと思います。
  4. 菅野和太郎

    菅野委員長 それでは次に山下久雄君。
  5. 山下久雄

    山下参考人 私も医者でありますので、大体の意見樋口教授と同様であります。こまかい許容量その他のことは、おそらく政令において定められることであり、今、樋口教授お話しになりましたように、現在の基準というものがありまして、将来その基準が変った場合には、政令において変えるというふうになっておればいいのではないかと思っております。そういうような恕限度とか最大許容量というようなものに基いて、こういう基準をきめるという根本原則に対しては、大体において賛成であるわけであります。こういう法律の面については私は専門外でありますので、よくわからないのでありますけれども、とにかくこういう法律によりまして放射線障害を起さないように、放射性物質その他のものを安心して取り扱うことができるようになるということは当然なことでありまして、こういう法律は当然できるべきものと思うわけであります。ただ問題と思いますのは、われわれ医者立場が主になるものですから、その点だけ考えますと、特別かもしれませんけれども、エックス線というものは従来医療法によって厚生省が取り締っておったわけであります。昨年その改正をしたというような状況でありまして、その際、多少広い意味放射性物質、特にわれわれ医学上に使われておりましたラジウムそのほかというものをその中に含めたわけであります。しかし、これはやはり医療法施行規則でありましても、ずいぶん抽象的でありまして、またその基準が非常にルーズであったという点はあると思いますが、こういう法律ができますと、それがこちらの方に含まれるようになるだろうと思います。ただレントゲンというのは今非常に普及されておりまして、日本に非常にたくさんの数があります。これを取り締るには、目下のところ、おそらく厚生省が保健所などを使って取り締る以外に方法がない。それならばある意味では本質的に違うエックス線を切り離して、この放射性物質科学技術庁でやるというふうなことも、現状としては当然な行き方かと思うのでありますけれども、根本原則を考えますといろいろな疑義があるので、現在のように、放射性物質を取り扱うところが限られたところでありますと、それでいいのでありましょうけれども、将来これがもっともっと普及して、エックス線のように使われるようになったときを考えますと、これを分けておくということが、将来問題になるのではないかということも考えられます。ただし放射線という意味ではエックス線放射性物質も同じものであるのでありますから、そういうものの取締り原則というものを科学技術庁でお立てになることは、非常にけっこうだと思うのでありますが、取り締る行政機関はあるいは厚生省なり、あるいは通産省なりというところでなさる方が本則であるというふうに考えます。しかしながら現状においてはできない。たとえば通産省においては、そのような法律がないということでありますから、現状においてはこのような法律でやるほかはないので、将来においてはそういうふうなことも考えられる、というのは、われわれ病院の立場で考えてみる場合に、二つの方から取り締られるということは非常に大へんなことであります。しかし、その大へんということを考えるのがむしろ間違いで、科学技術庁法律厚生省法律通産省法律も、みんな一つの線できめられるもので、こういう科学技術庁法律ができましたら、厚生省医療法というものもそれに順応したものであるというようにすべきであると考えます。
  6. 菅野和太郎

    菅野委員長 次に、山崎文男君。
  7. 山崎文男

    山崎参考人 ただいまお二人からお話になりましたように、この法律そのものは、今日これだけ広く放射性物質が使われ、また放射線発生装置が各地に施設されるようになりましたので、法律が必要になったことと考えられます。これを拝見いたしますと、放射線障害防止するということは、結局放射線のどのくらいまでに当るかということで、先ほど樋口先生からおっしゃった許容量というのがきめられる、そうすると自分の働いている場所がどのくらいの放射線量率を示しているかということを正しく測定できなければ、なかなか運用できない。私ここで見まして、日本では大部分のものは来年から行なっても間に合うと思いますが、一部の装置はそういう測定はまだ不十分であると思います。それからことに最近だんだんとエネルギーの大きい放射線を発生する装置ができてきております。これについてはまだおそらく国際放射線学会においても、どこまでが放射線許容量かということもきまっていないことであります。そういうことは、やはりこういう法律ができましたからには、そういう新しい、線に対する測定あるいはその許容量というものを、はっきりさせていかないといけないのではないか。そういうところに実際できたけれどもどこまで使っていいか、どの辺までが危険であるかということがあいまいになることが、そろそろ日本のこういう放射線発生装置でも起ってくるのではないかという感じがいたします。  それから、先ほど山下さんからお話がありましたように、これを見ますと、医師と薬剤師の方は今度の法律では国家試験を受けなくても自由に使えるということになっておりますが、片一方の医療法の方で十分にこれに相当するようなきびしい制限がもしもなければ、やはりそちらもこれに並行して危険のないようにしないと、今日日本で使われております放射性同位元素の七〇%ぐらいは医師が使っておりますから、その点が片手落ちになりはしないかという心配を持っています。そのほか特にここが工合が悪いというようなところはございません。
  8. 菅野和太郎

    菅野委員長 以上をもちまして、参考人意見陳述を終りました。質疑は通告に従いましてこれを許します。岡良一君。
  9. 岡良一

    岡委員 実は各先生方に御出席を願いましたのは、この法律案は、ごらんのようにいわば骨組だけを示してありまして、実際防止のきめ手となる許容量をどこに求めるのか、健康管理をいかにすべきか、あるいは放射性物質取扱いはどのような科学的な基準を置いてすべきかということが、全部総理府令あるいは政令にゆだねられておるわけであります。問題は、この法律を運用するに当って、今申し上げたような諸点がわれわれにとっては重要な問題になるわけでありますので、そういう点を、たとえば放射性物質取扱い基準をどこに置くべきかという点、それから健康特に労働基準法との関連については、樋口先生いろいろお調べのことも、先生の御発表の書物等も拝見いたしておりますが、そういう点をもう少し具体的にお聞きいたしたいと思うのです。同様な点で、この許容量が今のところきわめて不分明であるという山下先生お話、あるいは山崎先生お話になりましたが、ここでは許容量を科学的な水準あるいは技術的な基準に基いて決定するというふうに書いてありますが、これはしかしここ数年来刻々変化しておるようでありますので、日本においては安全率をどの程度に求めていった方がいいかというような具体的な点でございますね。さらに、今、御指摘になりましたエックス線がこれでは除かれておるわけですが、しかし、放射線障害防止ということになれば、当然エックス線原子力基本法のいわゆる放射線に属するわけでありますから、こういうものを包括した法律体系というものでなければならないのではないかというような点にも問題があるわけです。こういう点、具体的に今これを運用するに当って、どこにその取扱い基準を設けるか、健康の管理はいかにするか、その場合基準とすべき許容竜はどこに置くべきか、あるいはまた万一疾病が発生した場合にどういうふうな処置をするか、このことは後日中泉先生から承わることになっておりますが、そういうような問題について、いよいよこれを運用するに当って、政令とか総理府令として現われてくるものがあるわけです。これについて、専門的なお立場から、いかにすべきかという点をいま少しく具体的に承わりたいと思うわけであります。
  10. 樋口助弘

    樋口参考人 とにかくエックス線発生装置から出るエックス線、それから放射性同位元素から出てくるいろいろな放射線、それは発生機構から考えますと違うのでありますが、人体に及ぼす障害という点を考えると大体これは同じことでありますから、そういう点から、理論的にはやはりエックス線も中に入れて一本にすべきものでありますが、しかし、何位元素を取り扱っている件数というものは現在のところ三百件ぐらいらしいです。そうして、あの同位元素は、昭和二十五年に初めてアメリカから日本に与えられたのでありますが、そのときに配給形式というものがもうきまっておりまして、こういうふうな設備を持っているところでなければ配給しない。今でも、申請する場合に、どういうふうな設備があって、どういうふうな障害防止形式ができており、それから管理人——これはやはり健康管理ですが——だれであるというようなことを全部書いてある。それでありますから、これは割合管理が簡単なものだと思うのです。しかしエックス線になりますと、これはとにかく、昭和十二年に、今の医療法施行規則の第四章ですか、エックス線装置に関するものができましたが、その前には何も取締り規則はなかった。しかしほんとうに診療に使われていたのは、もう六十年も前にレントゲン先生が見つけて、間もなく実際問題として使われておった。だから障害は非常に大きくて、しかもあとでできた法律によって取り締ろうということはなかなかむずかしい。しかも件数から見ますと、一万八千件くらいあった。それだから、放射性同位元素一つにまとめて取り締るというのは、理論的にはいいのだけれども、実際問題としてむずかしいのじゃないかと思います。たとえば、厚生省なんかの今の医療法施行規則第四章というものができましたが、それが昭和十二年ですから、ちょうど二十年前ですが、かなりそちらの方を熱心にやられておるにもかかわらず、まだ取締りが不十分なんでありますから、結局一つにしていくということはむずかしいので、やはり二十年の経験を持っている厚生省エックス線の方の取締りというものはまかせて、これは暫定的でありましょうけれども、そうして徹底的に取締りをしてもらった方が、障害防護の方からいうといいのじゃないかと思います。  ただ、問題になるのは、工場用エックス線というものは相当に多いが、その取締り規則というものは何もない。私は、一昨年でありますか、労働省衛生試験研究費をもらいまして、放射線障害の班をこしらえて、造船所その他の放射能に関する障害を検査したことがありますが、とにかく今は、船をこしらえる場合には、溶接したところを全部エックス線写真をとる。あるいはエックス線でなかったら、コバルト六〇を使ってとる。エックス線を使う場合には、たとえば石川島なんかに百万ボルトからのエックス線が入っておりますが、これは防護はよくできている。しかし、コバルト六〇だとか、あるいは小さいエックス線で運びながら。ポータブルの格好にして写真をとる場合には、これは防止というものはなかなかむずかしいのです。従って、障害相当にあるのではないかと思います。  それからもう一つ実験用エックス線、これはたとえばいろいろ工業の方だとか、あるいは大学などにおいて実験用に使っているのは、おそらく野放しになっていると思います。ですから、やはりこれは労働省とかそういうところで早く立法されてそうして徹底的に取り締られることを切望しておるのであります。それから、どのくらいの単位のところに目標を置くかといえば、これは国際学会できめられた〇・三レントゲンとなりましょうが、これよりもっと低ければ非常にけっこうなんですけれども、国際学会でもそういうふうに認められておるものでありますから、その線でいくのが一番いいんじゃないかと思います。
  11. 田中武夫

    田中(武)委員 関連して。私も大体今の岡委員と同じような趣旨の御質問なんですが、先ほど岡委員もおっしゃっておりましたが、この法律の最初の原案といいますか、何か審議会からの答申のときには、エックス線放射線も含まれていた。ところが、そのときは名前同位元素ということでなかったと思うのですが、その後同位元素という名前に変りまして理論的にはエックス線放射線同位元素から出る放射線理論的には違う、こういうようなことから除かれたような説明を受けたわけです。しかし、先生方、ことに医学立場から、いわゆる同位元素、たとえば燐三二、コバルト六〇等から出る放射線レントゲンから出るエックス線と、受ける力の立場からいって災害の点において同じでしょうか、それとも違うところがあるのでしょうか。
  12. 樋口助弘

    樋口参考人 放射性同位元素でも、たとえばコバルト六〇だとか、セシウム一三七だとかいうものは主として、ガンマ線をわれわれは利用しております。ところがP三二だとかいうものになりますと、これはべータ線を使う。初めの方は、ガンマ線、今のはべータ線、そうするとガンマ線ベータ線というものはかなり性質が違うのです。ガンマ線は、エックス線と同じようにごく深部まで通して参ります。エックス線よりもまだエネルギーが強い。ところがベータ線になると、皮膚表面からちょっとくらいのところで、中の方に入っていかない。こういうことで同位元素の中でも、要するにアルファ、ベータガンマが出てくるのでありまして、それは物質によって違ってくる。エックス線は要するにガンマ線と大体比較されるのでありますが、むろんガンマ線の方が透過力が強くて、エネルギーが大きいに違いない。そうすると、大体エックス線ガンマ線ということになると、取締りの上からいえば、それはむろんガンマ線の方の透過力が強いですから、壁なんか厚くしなければなりませんが、防護の上からいって、それから障害の上からいうと、大体似たものです。中の方まで通していきます。ところがべータ線アルファ線は、皮膚表面で大体吸収されてしまって、中の方になかなか入っていきませんから、皮膚障害というものは、局所障害というものが割合に強い。しかし全身障害割合に少い。ただアルファ線体内照射といいますか、体内被曝といいますか、飲んだり吸ったりした場合、べータガンマに比べまして二十倍もRBE、生物学的効果比率が大きい。飲んだ場合には非常に問題になりますけれども、体外からの被曝では、エックス線ガンマ線と同じです。
  13. 田中武夫

    田中(武)委員 これはいわゆる放射線からの障害防止しよう、こういう目的法律なんです。そうしますと、今先生のおっしゃった受ける方の側から言うならば、人工的に出したエックス線放射線も、あるいは同位元素による放射線も、障害という点からいったら同じだと思います。そうするならば、同じような取締り、同じような規制をすればいいのじゃないか、こういうように考えるのですが、先ほど先生もおっしゃり、また政府委員も前に説明に申しておりましたが、エックス線については、従来から、医療法施行規則ですか、何かによって規制せられておる。従ってこれは省くのだということになろうと思うのです。ところが本法によりますと、これを測定し、そして記録し、これを記帳するというような義務があるわけなんです。ところが医療法施行規則によると、そういうよう、義務がないわけです。そこに取扱い上大きな違いが出てくると思うのですが、先ほど三百件とか、一方では一万八千件というような数字をあげ、取締りが煩瑣であるというようなことをおっしゃって、厚生省云々とおっしゃっておりましたが、そういう煩瑣とか予算ということは別といたしまして、純学理的に、ことにからだを守っていただく医学立場から見てどうなんでしょうか。件数が多いとか少いということは別にして考えたときには、同じ扱いにした方がいいと思うのですが、先生の御意見はいかがでしょう。
  14. 樋口助弘

    樋口参考人 これは、理論的には私は一番初めに申し上げたように、全く障害という立場からいえば一木でいくべきだと思います。
  15. 田中武夫

    田中(武)委員 局長に申し上げた方がいいのか、次長さんにお伺いした方がいいのか、どちらかわかりませんが、大体今、参考人先生のおっしゃったように、いわゆる災害を受けるのを保護するという立場からすれば、人工的に出すエックス線といえども同じように規制するのがいいのじゃないか、こういうことなんです。ところが、先日私が御質問いたしましたが、まだ質問を保留いたしておるのですが、理論的にいろいろ違うからというお話もあり、一方また厚生省医療法施行規則等もあるからというようなこともありましたが、実際申しあげて、先ほど樋口先生も申されたし、われわれも聞いておりますが、一方では約三百件程度のものである。一方は二万八千件あるからめんどうである。ことに予算関係等で延びたのではないかと思いますが、その点はいかがでしょう。
  16. 佐々木義武

    佐々木政府委員 私この前に説明を申し上げました際には、基本法のいわゆる原子力とは何ぞやというこのものから帰納いたしまして、そうしてあの中に含まれておる放射線の定義には、一応理論士は省けるのじゃないかという御説明を申し上げたのでありますが、さてただいまの御質問のように、逆に受ける方の立場から考えたらどうかという点からいたしますと、先ほど来、樋口先生がおっしゃった通り、同じだと思います。そこで、理論上は基本法等から考えまして、省けるのじゃなかろうかといって省いたのでございますが、受ける方からいたしますと、同じ効果ということになりまして、結局は本法からその対象を除いても、受ける方の身を考えまして、そうしてかりに医療法でこの対策を施行するというのであれば、同じような基準で、そうして同じような強さ下規制を行なっていくのが当然ではなかろうかと思うのであります。従いまして、かりに本法に考えられますように、厚生省あるいは通産省がそれぞれ取締りをする際にも、当然今までの法律を変え、あるいはないものは作って、そうして本法に準ずるような考え方で取り締っていくというのが妥当ではなかろうかと思います。ただもう一つお話のありました件数が非常に多いということと、それから歴史が非常に古い。従って取締官その他も整備するというふうな事態も考慮いたしまして、基準はただいま申しましたようにできるだけ同じような基準で、そうして取締り方法その他も同じようなものを作っていただいて、ただ取り締るところはやはり厚生省のように歴史の古いところがこれを取り締るというふうないき方が、一番現実的に即したいき方じゃなかろうかというふうに考えた次第でございます。
  17. 田中武夫

    田中(武)委員 あなた方が科学技術庁においてお仕事をせられる場合、もちろん科学技術庁でございますので、科学的な研究、科学的な理論追求、それは当然だと思うのです。ところが、行政、政治は私は理論追求だけじゃないと思う。原子力とは何ぞや、放射線とは何ぞや、それだけで行政上していくものじゃない。しかもこの法律目的は、やはりそれによって受ける災害をいかに防止するとか、人体をいかに守るかという立場からの問題でありますので、理論的に原子力とは何ぞやという点から出てきた問題じゃないというようなことでなく、守る方の立場からこの法の目的に立って考えるべきじゃないかと私は思うのです。そこで、先ほどのお話を聞いておりますと、守る方の立場からいけば同じような基準のものが正しいと思う、こういうことなんですが、それは一方厚生省なり通産省において云々、こういうことなんです。そうするならば、あなたは、これはいわゆる技術庁の所管の法律なんですが、この法律によって一本にすることが正しいと思うのだが、しかし労働省あり通産省ありというようないわゆる役所のなわ張り、セクショナリズムから、その方へ手をつけられることを遠慮せられた、こういうことなんですか。
  18. 佐々木義武

    佐々木政府委員 この前にも御答弁申し上げましたように、基準等は審議機関がございますので、できるだけそういうところでエックス線等の障害防止と申しますか、あるいはいろいろな手段等も各省集まりまして、また専門家の方たちにもお集まり願って、きめたいと思います。ただ、それを実効あるように施行する場合に、ただ基準ができたからそれが実施できるというものではないのでありまして、それを効果的に実施させるためにはどうしたらよろしいかという問題が、やはり行政としては重要なのではなかろうかと私は考えております。従いまして、ただいまの段階では、これから進めると申しますか、今まであまり件数もなくて、これからも十分取り締りできる。また十分取り締らなければならない。放射線同位元素の系統のものはこれから大きくなる問題でありますから、今からしっかり進めていこう。それからエックス線の方に関しましては、過去二十年長い歴史を持って取り締っておる最中でありますので、その方は手足もそろっておるでありましょうし、予算もちゃんとついておるのでありますから、そういう点を考慮旧してむしろその方で実際の基準を効効果的に取り締るということでなかろうかという面も考え合せまして理論と実際とをあわせて今考えておる次第であります。
  19. 田中武夫

    田中(武)委員 お話しを伺っておると、何かやはり他の役所に遠慮せられた点があるのじゃなかろうか、こういうふうにも思うのです。この法律をお作りになるときに、関係省、すなわち厚生省通産省労働省等とは十分お打ち合せになったのでしょうか。
  20. 佐々木義武

    佐々木政府委員 大体三年くらい協議を続けております。
  21. 田中武夫

    田中(武)委員 そのときに、厚生省あたりの考え、としては、これに準じて、こういうようなお話だったのですが、できればこれに準じて医療施行規則を変えていく方がいいのじゃないか、こういうように言われたのですが、厚生省あたりの意向は、これがかりにそのまま通れば、これに準じてエックス線放射線をこれと同じような基準で取り締り、規制していくというように、この法律を変えていくというような気分は十分あるのですか。
  22. 佐々木義武

    佐々木政府委員 その通りでございます。
  23. 田中武夫

    田中(武)委員 これはむしろ労働省の方にあらためてお尋ねした方がいいかとも思うのですが、今、樋口先生参考意見に、よりますと、工業用のエックス線においてもやはり札当被害があるということを肯定せられております。そこで、現在の労働基準法のみで、果してそういうような工業用エックス線等について労働基準法の安全衛生規則だけで十分守っていけておるでしょうか。実は私先日ちょっと申し上げたように、私自体としてもかつてはエックス線管を作っておる工場におった者であって、この点については相当関心を持っておる者ですが、いかがでしょうか。
  24. 佐々木義武

    佐々木政府委員 労働省の担当官が見えておりますので、そちらの方からお話しを願います。
  25. 伊集院兼和

    ○伊集院説明員 お答え申し上げます。現在労働省関係で、工業用関係で申しますと、今、御指摘の製造関係、それから先ほど樋口先生がおっしゃいました非破壊検査関係、主たるものはこの二種かと存じます。ただいま精細なデータを持っおりませんが、私どもが一般的に把握しております限りでは、両者とも御指摘のように軽度な障害者が全然出ておらないと申し上げることはとうていできません。しかしながら、一般医療関係と申しますかそういったものに比べましては、現在労働基準法関係からの施設改善の問題のほかに、労働時間の規制の問題あるいは作業方法規制の問題等ありまして個々の事業場で現在監督指導いたしました結果によりますと、過去五年ばかり前には憂慮すべき障害、言葉をかえますれば、労働者の災害補償をもって補償をしなければならないような障害者も出ておりましたが、現在で石特段に療養しなければならない——言葉は悪かったのですが、休業をしなければならないという程度の者は、製造関係ではあまり出ておらないように見ております。概略の数字で恐縮でありますが、私どもの知ります限りの数字で言いますと、概略医療関係といいますか、それは一〇%程度障害者が出ているのに対して、二、三%の障害者が出ております、といったデー々を二、三年前の調査では把握いたしております。符に御指摘のレントゲン製造関係の問題は、管球検査の場合に特にレントゲン線を浴びることがあります。それに対しては極力先ほど申し上げたようなことで、現在特段に療養、休業を要する者というものは、幸いにして数が非常に少くなっております。私どもは現在のところさように了解しております。なお十分な調査一等は申し上げかねるのでありますが、必要がありましたら資料を整えて申し上げます。
  26. 田中武夫

    田中(武)委員 ただいまの御答弁は、あなたは中央におられて各監督署及び局からの報告に基いての判断だと思う。従って考え方が甘い。と申しますのは、レントゲン製造工場等によりまして出ておるところの病気、これが労災保険の適用を受けていないから、そうではない、こういうような判断をしておられるようであります。ところが、今日このレントゲン製造工場あるいは工業用レントゲンによって出ている障害というものは、今はっきりと職業病としての認定がないわけでしょう。従ってたまたま白血球が減ったとか、からだが弱って貧血を起したとか、こういう程度のものは全部健康保険でやっているわけなんです。従って、この災害によるいわゆる職業病として作業上の病気としての労災保険の方の関係の件数に出ていないから、ない、こういう判断は改めていただいて、実際の調査をもっとしていただかなければいけない。現在の労働基準法の安全衛生規則によりますと、ただ、何才以下の者にはこれを扱わせてはいけないとか、あるいは一般の人は年に一回定期検査をしておるのを、年に二回にしなければならない、こういうものは職場転換をしろという程度のものであります。しかしながら、これは相当まとまった労働組織のある、工場、会社におきましては、こういう安全衛生規則ぐらいだけでは満足せずに、別に交渉し、別に労働協約を作ってやっておるわけです。たとえば、私のところで、やっておる実例を申し上げますと、入社するときに、その人の白血球の数を調べておく。そうして三月ごとに統計をとって、一人々々のグラフを作っておる。急激に白血球が下ってきた場合に、その人を直ちに職場転換をするとか、あるいは就業時間を変更するとか、こういうような方法をとっておるわけです。これは今、職業病としてはっきりと認定ができていないので、今おっしゃったように、いわゆる労働災害補償の方の適用として上ってきていないから、あまりないというように考えておられるようです。そこで、医者立場におられる各参考人の方にお伺いするのですか、レントゲンから出てくる放射線によってそれを扱っている者は、白血球が減ってくることは事実なんです。それから私どものところも戦後やっておりますので、まだそれほどの統計は出ておりませんが、女子従業員等のからだに、生理的に何かの障害を与える、あるいは妊娠等の関係にも影響があるのじゃないか、こういうふうに思ってその職場から出ていった婦人の結婚後の状態等も調べたいと思っているのですが、まだそこまでは、会社をやめてしまうと十分に調べられないのでわからぬのです。そういうような点にも私は影響があるように思うのですが、先生方いかがでしょうか。
  27. 山下久雄

    山下参考人 今の御質問の御趣旨、ある程度わかるように思います。確かに放射線障害が起るということは、思わしくないことであります。そういうような放射線障害が起きないように取り締るということが、根本問題だろうと思います。すなわち、いろいろな障害が起ってから騒ぐのじゃなくて、われわれはどれくらいの被曝線量を受けるかということをはかって健康管理をすべきものであると思います。先ほど樋口教授が言われましたように、また山崎先生が言われましたように、ガンマ線あるいはエックス線は体外照射でありますが、アイソトープを取り扱う際には、体内照射という問題が起ってくるのでありますから、そういうようなことを全部ひっくるめまして、最大許容量を越さないような職場にしておいて、そこで働くということでなくてはならないと思うのであります。従って、そういう問題になりますと、これは医者が健康診断をして見つけるというのでは、むしろ手おくれで、それは障害が起ってからの問題でありますから、起きないうちに線量をよく測定して、安全な職場であるということを確かめることが必要であると思います。通産省の方には、そういう工場に対して今、取締り規則がないと思いますけれども、医療法施行規則においては、ある程度エックス線に対しての取締り規則があるわけです。医療法施行規則というのは、病院の規定であります。その職場が安全であるということを規定するものと私は記憶しておりますが、ただし、その職場における労働条件ということは、医療法には入っておらない。労働条件をきめるのは労働基準法である。現在も、ある程度労働基準法はあるはずでありますけれども、こういう法律が出た場合には、これに準じたような厳重な労働基準法にしなければならないと思うのであります。先ほども私ちょっと申し上げたのでありますが、根本原則としては非常にけっこうでありまして、絶対に放射線障害を起さないような厳重な法律を作っていただきたい。これは私も非常に賛成でありますけれども、実際にこれを実行に移す際には、そういう労働法の方としては、労働基準法において、この法律に順応して労働片準法ができてくるのでなくてはならないと思います。医療法施行規則も、先ほど佐々木局長も言われましたように、これに順応した医療法施行規則になっておらなくてはならぬ。また通産省にそういう法律がなければ、通産省で至急にそういう法律を作っていただかなければならぬだろうと私は思います。
  28. 田中武夫

    田中(武)委員 そこで労働省の監督官にお尋ねするのですが、ちょっと話はそれるかもわかりませんが、労働者災害補償によりますと、作業上の負傷または疾病、こういうことになるのですが、疾病という点からいきますと、いわゆる職業病ということになるわけです。レントゲンを使っておって、あるいはそれによる工業用の作業をしておって、いろいろな病気になり、放射線を受ける。しかし、今日ではこれがはっきりと職業病だという認定は出ていないでしょう。たとえば、整流真空管ですね。これは放射線とちょっとまた違うと思うのですが、整流真空管を排気しておるところに十年、十五年おれば、歯ぐぎがくわれて歯がなくなってしまう。ところが今日職業病としてはっきり認定を受けていない。こういうような場合、歯医者に行った場合には、やはり健康保険で見てもらっておる。そうすると、あなたの方では災害補償保険として出てこないから、それによる障害はあまりないと思いますと答えるわけです。今私が申し上げているエックス線放射線による障害の面において、そういう点が多いと思います。そこで監督官は、労働基準法施行に当って、いわゆる作業上の疾病、職業病とは、どういうように考えておられますか、お伺いいたします。
  29. 伊集院兼和

    ○伊集院説明員 ただいま御指摘の通り、職業病の認定の問題につきましては、非常に困難ものが常に伴っております。その点確かに私ども常に努力をいたしておるのでありますが、もとより御指摘のように、われわれがおくれていると申しますか、実際にそぐわないと申しますか、そういった点があることを常に反省をしておる次第であります。職業病というのは、一般的に、御指摘のように、法規で使っております表現でいえば、業務に基因すること明らかな疾病、こういっておるわけであります。ただ、そう申しましても、個々の例が作業に基因しておることが明らかであるかどうかというのは、急性的な疾病発生、あるいは障害の発生の場合には、原因と症状との間の因果関係を比較的明瞭に把握することができるのでありますけれども、御指摘のように、職業件疾病の一般のものは、その障害が起って参ります部位が、歯であっても、あるいはレントゲン線によるように、血液臓器その他の場合でありましても、これが徐々に起って参ります関係から、その原因と結果として現われて参ります身体、障害との関連性を明白に、その個々の一例一例ずつについてつかまえることが、困難な場合が少くないのであります。御指摘のように、私どもが労働衛生の面からこれを的確に把握して、その二例たりとも御懸念のような結果を起さないように、健康保険と申しますか、職業性疾患として扱われないで、私病としての扱い方が起らないようにという努力はいたしておるつもりでありますけれども、個々の一例々々を現在のところ完璧に拾えておるとは、残念ながら決して申し上げられない実情であることは、御指摘の通りであります。ただ、これについては、個々の労働者諸君が健康障害を起します場合に、第一にかかるであろうところの事業場内のお医者さんたち、あるいは一般の開業医の方々、あるいはその開業医の手を経てその他大病院の方々に、労働者諸君は診断を求めるのであります。一般医師に診断を求めました際に、その臨床家によって、その疾病の原因が業務に起因するものでないかどうかという点を十分追究されますような社会慣行と申しますか、医療の実態になっていただかないと、これがその完璧を期せられない。残念ながらそのようなところまでは現在いっておりません。従って、長くなって恐縮でありますが、例をけい肺に取りますと、けい肺の場合につきましては、けい肺法の施行に際しては、けい肺診査医というような制度を特に設けたのであります。その他の職業性疾患については、現在そういった制度化した措置をとつておりません関係から、御指摘のようなことになっておるんじゃないか。なおエックス線障害につきましては、やはり業務上の疾患かどうかということの区別ははなはだむずかしいというのは、御指摘の通りであります。ただしかし、それなりに、今日のところ、われわれとしては、エックス線の業務上障害として取り扱う範囲といたしましては、一応その取扱い基準は定めて、それによって措置をいたしております。この作成につきましては、諸先生方の御意見を拝聴さしていただいて作ったものであります。なお現状の進展に伴いまして、今後修正をはからなければならぬ、一そう的確なものにしなければならないということは、一般的には御指摘の通りだと思いますので、そのように努めたいと思っております。
  30. 田中武夫

    田中(武)委員 現場を管轄しておるところの労働基準監督署では、なかなか認定をおいそれとはやらないわけなんです。先ほどあなたがけい肺のことを言われたが、最初はけい肺と肺浸潤はよくわからないんですね。確かに珪石の粉塵を浴びるところで働いておる労働者がたまたま胸を悪くした、しかし本人も結核か何かわからない、写真をとってみてもはっきりしない、そういうような場合でも、ほとんど認定しないというのが今までの例だったわけです。もっとそういう面については、監督の立場からよく調査をしてもらいたいと思う。  そこで話はちょっとそれて恐縮ですが、参考人樋口先生あるいは山下先生に士伺いするのですが、ついでにちょっと御意見を聞かしていただきたいのです。今私が申し上げているように、職業病というもの、たとえば先ほど話題に出ておりました工業用のエックス線の放射を受けて病気になるというような場合に考えられると思うのですが、大体先生方のお医者さんの立場から、職業病とはどういうものを考えておられるか、どういう場合に職業病という認定をなさるか。
  31. 山下久雄

    山下参考人 放射線に関する職業病という御質問だと思うのでありますが、これは非常にむずかしいと思います。いわゆる放射線障害として起ってくるようないろいろな疾患、これはたくさんわかっておりますし、そういうものにも遭遇しておるわけでありますが、それが果してほかの、原因で起った病気とどうして区別されるべきかということになりますと、おそらく全然きめ手がないというのが現状であろうと思います。従ってほかの原因がないということを追究して、しかも一方においてそういう放射線を浴びたというチャンスがあったということを参考にしてきめる以外に、きめ手がないんじゃないか。ただし、その放射線を扱ったという事実があって、そこに一方においてそういうようないろいろの症状が起きてきた場合には、放射線障害と認める以外に、現状においては方法がない。病気になった場合にはそういうふうにしてきめることができますけれども、一番問題になりますのは、病気かあるいは要注意というくらいの状態というところに非常に問題がある。一例を申し上げますと、たとえば白血球が減るということは非常に敏感な症状であります。労働基準法でも問題にしておるのでありますけれども、その人の白血球の数なんというものは、何もしないでいても若干少い人がたくさんあるのでありまして、その職場に来る前から少かったのか、職場に来てから少くなったの一かということは、前に血液検査をしておらない限り、わからない。そういうような場合には、全くきめ手がないというようなことです。従って今後は、放射線を扱う職場に入る前に血液検査をして、その数値がどういうふうに変化したかということによって認定するほかに方法はないと思います。
  32. 田中武夫

    田中(武)委員 白血球なんというものは人によって若干違うわけですから、それは一がいに言えないので、今おっしゃるように、やはり入社に当って血液検査をして、そのAならAという人間の一つのカードを作って、入社時における白血球幾ら、こういうようにして定期的に検査していくというような方法をとっているわけです。そういたしますと、今、先生が職業病に関連して参考意見を述べていただきました点によると、まずこういうエックス線放射線による病気というようなものはどうも認定しにくい。そうすると、他の理由がないかを調べて、そうしてほかにそういった病気の起るような理由がない、それならこれだろうか、こういうことになろうと思う。そういたしますと、やはり常に使っているエックス管から出る放射線の量あるいはその時間、そういうことを測定し、記録しておく必要があると思う。そうしなければ、いざ、なったときに、他の病気と区別せられないということになると、やはり私病となってしまうおそれがある。そう考えてきたならば、工業用のエックス線放射線に関連いたしましても、この法案に定めるような、あるいはそれ以上のやはり測定とか、記録とか、記帳とかいうことが必要じゃないか、こういうふうに思うのです。そういたしましたならば、こういうものまでも私は適用すべきじゃないかと思うのですが、参考人先生の御意見はいかがでしょうか。
  33. 山下久雄

    山下参考人 私はもちろんその御意見に賛成であります。先ほど申し上げました通り、疾病としても、からだの変化としてもわかりにくいのでありますが、もちろん場所としての放射線量も必ず計測して、どのくらいの放射線量を浴びているかということは始終知っておらなければならぬ。おそらくこの法律が出ればそれは制定されることと思います。そのことは、ほかの放射線に関する法律に関しても、全部これに右へならえするであろうと思います。むろん思いがけないところで放射線に当るというようなことがありますので、健康診断ということも大事でありましょうが、より大事なのは、場所としての放射線量、それから個人の受ける放射線量、こういうものは、そういう危険のある場所においては当然チェックすべきだと思う。非常に放射線量の少い場合には、大体のことを知っておればわかるはずです。相当危険のあるところにおきましては、場所と個人の受ける放射線量を知ることが最も大事だと思います。
  34. 田中武夫

    田中(武)委員 どうもありがとうございました。  最後に一点だけ、今お聞きのような参考人先生方の御意見ですが、そういたしますと、工業用のエックス線放射線に対しても、こういうようなものが望ましい、こういうことが明らかだと思うのですが、佐々木局長はどういうお考えですか。
  35. 佐々木義武

    佐々木政府委員 私どもも、工業用のエックス線に関しましては、ぜひ一つ通産省で早くこれに準ずるような法律を作って、取り締っていただきたいということは申し入れております。通産省の方でも、この前、官房長の答弁がありましたように、着々準備中というふうに伺っております。
  36. 齋藤憲三

    ○齋藤委員 ちょっと関連質問で一点だけ参考人先生にお伺いしたいのでありますが、やはりエックス線放射性同位元素の関係であります。私はこの前も委員会で実は質問をしたのですが、的確な結論を得られませんでしたので、立法府といたしまして法律を作る建前から、参考意見一つ伺っておきたいと存じます。この放射性同位元素等に上る放射線障害防止に関する法律というものは、先生方の今までの御意見にもございました通り、純理論的からいくと、エックス線も包含するのが正しい、しかし実施面においてこれはエックス線を除く方が便宜的ではないかという御意見のようでございましたが、やかましい法体系の問題は別といたしまして、この放射性同位元素障害防止という法律を作りますときに、その体系は、全部エックス線を含むということになるわけですね。と申しますのは、先ほど樋口先生お話にもございました通り、エックス線と、ガンマ線はほとんど同じです。たとえて申しますならば、電磁波についても、その波長はエックス線は多少長い。長いというけれども、エックス線の範囲を調べてみますと、百オングストロームから〇・〇〇一と文献には出ております。それからガンマ線は一オングストロームから〇・〇〇五、ほとんど同じなんですね。ただ照射から出るエックス線と固体から出てくるガンマ線ということで区別されておるだけの話であって、これはほとんど浸透力も同じです。医療的には六万ボルト、七万ボルト、断層写真には十万ボルトを使う。しかし、工業用になると先ほどお話になったように百万ボルトも使う。浸透力もボルトの大きさによって違っていく。そうしますと、ガンマ線エックス線は同じように考えていかないと、放射線取締りというものはできないことになるのです。それですから、この法律を作りまして、法律の条項、総理府令及び政合口によって放射性同位元素というものを取り締っていくということになれば、結局その取締りの万全を期するということそれ自体は、エックス線取締りに万全を期するということになるのでありますから、これ一つあればほかの法律は要らぬということでなければ、法律としての体系がいたずらに重複を重ねるということになると思う。ですから、この放射性同位元素等による放射線障害防止法律というものを基本的にきめてそしてあとの医療体系における厚生省エックス線取締りは、放射線の基本取締法から分れていった厚生省政令とかそういうものでこまかく測り切って現場に即応して取り締っていく。通産省もそれをやる、文部省もそれをやる、そういう法体系でないと、いたずらに紛淆を重ねることになって、おもしろくないのじゃないか。通産省はこれに準拠した法律をこしらえる、文部省もまたこれに準拠した同じような法律をこしらえる、そういうことは非常に法体系としてむだであり、不必要だと思う。これ一本基本的なものをこしらえてこの中にエックス線を入れてしまえば、放射線障害防止法としてはそれで万全が期し得られる。あとは現場の小さな問題を政令にゆだねて割り切っていくのが、法律として正しいあり方であり、またそれが一番放射線取締りとしてすっきりした形であるのではないか、そういうふうに私は考えておるのでありますが、この一点だけ、御意見がございましたならばお伺いしたいと思います。
  37. 山崎文男

    山崎参考人 エックス線ガンマ線、これはなるほど出てくるもとが原子核から出るかあるいは原子核の外にある電子から出るか、これで区別するよりほかにない。そのエネルギーは、先ほどおっしゃいました通り、かえって今日では人工的に作ったエックス線の方が、天然の放射性物質から出るガンマ線よりもエネルギーの大きいものを作ることか楽にできるような時代であります。ですから、本質的に見まして、ことに障害に対しましては区別は全然つかない。ですから、おそらく第二条の「放射線とは」というところで、エックス線という言葉を全然抜かすことは、電磁波としてならともかく、エックス線は当然この中に入ったということにならなければ、そこだけ故意に抜かしたような法律になると思いますから、当然それも含まれたものと私は解釈いたします。
  38. 志村茂治

    ○志村委員 一つ言葉の説明を願いたいのですが、学者の言葉に恕限度という言葉と許容量という言葉がございますが、これはどういうふうに違うのですか。
  39. 樋口助弘

    樋口参考人 これは国際最大許容量とわれわれは言っております。厚生省では特に恕限度という言葉を使っておられるように私は考えておるのですが……。
  40. 志村茂治

    ○志村委員 この恕限度あるいは最大許容量というようなものは、どういうふうな基準できめられておるのか。実際の場合におきまして、仕事に従事する人々の意見から言うと、結局、危険のぎりぎりまで使われるのではないかということであります。しかし一つの限度を作りますときには、そういう境界線を設ける必要があると思いますが、お話に、よりますと、社会的な環境により、あるいは個人の体格により、それはずいぶん違いがあるだろう。そういう場合の恕限度あるいは最大許容量というものは、最も不利な条件のもとに置かれた場合の恕限度あるいは最大許容量であるのか、あるいはその平均値としての恕限度であるのか、その点をお聞きしたい。
  41. 樋口助弘

    樋口参考人 最大許容量の主義というものは、一生受けても現在の知識に照らして障害がない、こういうのが定義である。しかし放射能というものは、まあマイナスに働くものだから、ただし遺伝学の方から考えると、どのような少い放射線であっても、これには許容量というものがなく障害的に働く。だからなるべく受けない方がよいということになるわけであります。
  42. 志村茂治

    ○志村委員 人により環境により、科学的にも、恕限度許容量とは違うと思います。そこでお聞きしたいことは、一体どういうふうな環境のもとにおいて、どういうふうな個人としての条件のもとにおける人を標準としてきめられておるのかということです。
  43. 山下久雄

    山下参考人 これはいろいろな意見もありますし、はっきりしたことは申し上げられないと思いますが、これをきめるのしは、やはりいろいろな実験が根拠になっております。ほんとうの最大許容量というものは、おそらく動物実験に、よってきめられたものかもしれませんが、動物実験と人間と同じかどうかということは、もちろん問題であります。ところが、たとえば皮膚なら皮膚における変化というものは、人間でもある程度の変化を起こすことは見られるのでありまして、そういう人間における皮膚の反応と動物における皮膚の反応とを比較して、それから推論して動物におけるいろいろな実験の結集から、そういう最大許容量というものがきまっておると思います。一番初めは、皮膚における最大許容量というものは、一九二五年ごろにきまったわけでありますが、それからだんだん推論して、人間のからだ全体に放射線を浴びた場合の最大許容量というものがきまってきたわけであります。しかし、これは実は数年前には今の最大許容量と違っておったのでありますが、ここ数年間でだんだん小さくなって、今日の最大許容量というものができたのだと思います。これはやはり経験上、今までの最大許容量ではまだ危険であるということがだんだんわかって参りまして、決定したわけであります。これは先ほど樋口教授からお話しになりました通り、また御質問の通り、個人差とかあるいは人種による相違とか、栄養状態とかいろいろなことが関係してくると思いますが、大体の平均の世界的な水準というものがきめられておるわけであります。それからまた、これは成人の場合のものであります。未成年者の場合には、おそらく年令に応じて放射線の感受性が高まるというふうにいわれておるわけであります。これが子供の場合、赤ん坊の場合には、特別の基準を定めなければならぬということはわかっております。個人差とかいうこともむろんあるわけでありまして、普通一般の大部分の人がおそらく大丈夫だろうというぎりぎりの線、そこまで許されるという線であります。樋口教授の言われました通り、より少い方が安全であるということは言えると思います。
  44. 志村茂治

    ○志村委員 大体経験率からそういうことが出てくるのだというお話ですが、そうしますと、恵まれない条件のもとにある人は、これによって障害を受けるというふうに見ていいわけですか。
  45. 樋口助弘

    樋口参考人 それは今実際われわれは研究中なんです。蛋白質なんかの摂取量の多い少いというのも、おそらく関係しているのじゃないかとも私は思うのですが、これは大きな問題で、今、研究中であります。
  46. 志村茂治

    ○志村委員 もう一点お聞きいたしたいのですが、放射線の曝射の測定量について、どのくらいの精度があるのかどうか、それをお聞きしたい。
  47. 山崎文男

    山崎参考人 今度この法律で考えられます放射線につきまして、これは種類によって非常に精度は違って参ります。たとえば先ほどからお話のあったベータ線というようなものですと、かなり正確にはかれます。あるいは中性子とか——中性子が一番むずかしいのですが、そのほかに新しい放射線がいろいろ出てきますけれども、そういうものについてのはかり方というのは、外国におきましてもまだ精度がずっと低い。ことに放射線発生装置となりますと、こういうような放射線が非常にまざって同時に出てくるというときには、たとえばこの中の中性子による部分がどのくらいで、どのくらいがエックス線で、どのくらいがガンマ線でと、そういうのを全部分けて考えたければいかぬ場合も起つて参ります。これは測定は非常にむずかしくなって参ります。おそらく五〇%くらいのエラーが起ることもかなりあると思われます。
  48. 岡良一

    岡委員 いろいろお教えを囲いたいと思ったのですが、結局こうして今度放射線障害防止する法律を作ろうという意義は、いよいよこれらのものが平和利用の分野に進められていく。一方では、人為的な放射能の蓄積がわれわれを包囲しているという段階では、非常に重要な意義を持っているわけですけれども、それはそうといたしまして、ここで具体的にお尋ねいたしますが、今かりに私なら私がこの放射線の曝射を受ける仕事につきたい、こう希望した場合、私は健康断を受けるわけですが、その場合の健康診断の基準は、どういうことをしたらいいのでしょうか。
  49. 山下久雄

    山下参考人 からだの中で最も放射線に感受性の強いところというのは、造血臓器と生殖器であるということは、医学的にわかっておるわけです。その両方をよく検査するということであります。そうしますと、一番簡単に調べることのできるのは血液の検査ということになりますから、血液の精密検査ということがまず第一に必要なものと思います。それから生殖器の方も、これは検査する方法はありますけれども、なかなかむずかしかったりいろいろいたしまして、また血液の方で大体認識することができますので、普通にはそれは行われておらないと思います。しかし、調べようと思えば調べる方法もあるわけだと思います。それからもう一つ皮膚の検査でありますけれども、これは放射線を一番受けやすいところという三味で、皮膚の詳細なる検査をすることは重要なことだと思います。それからもう一つ、生殖器の問題、先ほども御説明があったと思うのでありますが、この方は、生殖器に強い障害を受けると子供が生まれなくなったり、少い障害を受けたときには奇型の子が生まれたりするようなことが起るわけでありましょうし、妊娠中に障害を受けた場合には割に奇型が多く生まれるでありましょうけれども、生殖器に障害を受けただけでは奇型は生まれないのでありまして、むしろ二代、三代後において現われるチャンスがあるというようなわけで、遺伝の問題は、少くとも医学的にはなかなか知ることができないわけであります。従って、今、御質問の健康診断において、たとえば精子の数が減るとか、あるいは月経不順になるというようなことはわかるかもしれないが、それ以上のことはなかなか認識することはできない。それ上りも、これは抽象的なことで恐縮ですが、血液の検査というのが、今日のところ一番重要な根拠であろうと思います。
  50. 岡良一

    岡委員 そこで結局、かりにきょう私が検査を受けた場合に、白血球が七千、赤血球が四百五十万あって、耳たぶから取った血液においては、放射線による異常というものは何ら認められない。そこで私はその放射線の作業場に入った。ところが、私がきょう以前に相当放射線の曝射を受けておったといたします。そうすれば、急に私の百血球は減るだろうし、赤血球も減ってくるわけでありますが、この鑑別は現在できませんですか。
  51. 山下久雄

    山下参考人 今のような御懸念はあまりないだろうと思います。と言いますのは、むしろ私たちは相当放射線に当っておりますし、今まではもっともっと甘い基準のもとにおいて仕事を続けておりましたから、私自身でもある程度放射線障害を受けた経験を持っておりますが、われわれの経験から推しますと、むしろ以前に放射線相当受けておったわれわれのからだは、少しぐらいの放射線を浴びてもあまり変化は受けないで、初めて、放射線を受けられたような方の方がよけい敏感に変化を受けるわけですから、今のような御懸念はないと思います。ただ将来において、血液の変化を受けない、たとえばガンになるとかいうような障害は、大いに気をつけなければならない問題だろうと思いますが、これは別な意味障害であります。
  52. 岡良一

    岡委員 国際放射線学会などの勧告の中にデータで示された三百ミリ・レンチェン・パー・ウィーク、同時に、満三十才の、あれはどれだけでしたか、三十レントゲンというのですか、放射線の総量と一週間における最大許容量というものは二つ示されているわけです。そうしてみれば、三十前の人がこういう作業場に入る前に受けておった放射線の総社というものは、ここに入社さすべきかいなかというときには、医学的な良心の立場からは否定することができない要素じゃないかと思うのです。できないなら、できないとしても差しつかえないと思うが、そうじゃないでしょうか。
  53. 山下久雄

    山下参考人 御説ごもっともで、ぜひ必要なことだと思います。今、最後に申し上げましたような発ガンとか白血症になるという意味におきましては、これは非常に関係するのでありまして、ぜび知っておくべきことだと思います。われわれ最近はなるべくはかるようにしておりますし、あるいは今後新しい医療法とか原子力法というものができますと、それによってチェックされましてそういうことがわかると思いますが、過去においてわれわれがどのくらい浴びたかということは、私自身もチェックされておらないわけです。記録したくてもできないというのが現状であります。今後はぜひチェックすべきだと思います。
  54. 岡良一

    岡委員 今後、原子力放射線のあらゆる産業分野における利用によって、あるいは大気なりあるいは飲料水が汚染されるということになれば、これはやはり国民の保健衛生上の大きな要素となると思います。国民が自身受けた放射線をみずから自覚するところまで持っていかすぐらいなことが、やはり一つの大きな必要なことになりやしないかと思うのです。それが現在は遺憾ながら確実に把握するということができないということは遺憾なことだと思います。  そこで、今度のこの法律案などで見ると、二十一条から二十五条にわたって、予防とか健康管理に触れて出ておるようですが、山崎さんが先ほどお触れになりましたけれども、放射線国際基準における最大許容量、先ほど来、樋口さんのおっしゃる〇・三レンチェン・パー・ウィーク、これなんかも、ごく最近の文献を見ますと、アメリカあたりでも実際原子力法によって管理されておる原子力工場でも、安全率を考えて、〇・〇三レンチェン・パー・ウィークという勧告をやっておる。これは文献がありますが、実際ニューヨーク。タイムスなんかに出ておるようです。やはりそういうところの科学者の専門的な研究の結果として、最大許容量というものはだんだん低いところにきておるようです。そうなると今、日本の場合、特に日本ではいろんな条件があるでしょうが、やはり〇・三レンチェン・パー・ウィークというところに、そういう直接規制を受ける現場は大体それが最大許容量ということで、予防のための施設なりまたは規定なりを求めていったらいいのでしょうか。その点、率直な御意見を伺いたいと思います。
  55. 山崎文男

    山崎参考人 私たち向うを見て参りましたときも、実際国際勧告としては〇・三レントゲンであるけれども、そういう施設を設計するときには少くとも十分の一、できれば百分の一にしたい。ところが百分の一にするということは非常に困難が伴うので、実際は二十分の一から五十分の一というようなところで、三百ミリ・レントゲン・パー・ウィークというような、そんなに当てているところは、少くともヨーロッパ、アメリカなどの原子力関係のところでは、実際にはどこにもございません。おそらくその数十分の一ぐらい当っているのが現状であります。ただ、それを法律に書くとなったときにどこにするかということは、かなりむずかしい問題になるのじゃないか。一応アメリカでも法律といいますかリコメンデーションでは、三百ミリ・レントゲンになっておりますが、実際に行うときにはそのはるか下に設備をしております。これはおそらくあと政令とかそういうことできめるときに問題になると思うのですが、ただ三百ミリ・レントゲンというのは確かにさっきから問題になっておりますように、人間の個人差などで三百ミリ・レントゲンでもはっきりと白血球に異常を呈するとか、そういうような例も報告があるように聞いております。
  56. 岡良一

    岡委員 それから、かりにそれが入れば、大体労働省あたりの指示では、年四回の血液検査をするわけですが、あれは血液検査だけでいいのですか。
  57. 樋口助弘

    樋口参考人 まあできればからだ全体をやる、しかし手っとり早いところでは、一番変化の早い血液検査ですが、そのほか目の白内障などというものも、目はクリティカル・オルガンということになっておりますから、そういう点もよく検査した方がいいと思います。
  58. 岡良一

    岡委員 まあからだの排泄機能なども非常に重要な影響があるでしょうし、肝臓とかじん臓の機能などもあわせて相当精密に検査すべきものじゃないでしょうか。
  59. 樋口助弘

    樋口参考人 それは検査すれば大へんけっこうなことであります。しかし、全部の人の肝臓検査をやるということも相当手数のかかることでございます。まあ精密検査をすることは幾らなすってもいいのじゃないかと思います。先ほどの許容量と同じことで、許容量〇・三とされておるけれども、すべての勧告においてそれより少いことを望んでおるのですから、それと同じように検査することは、幾ら検査してもいいのじゃないかと思います。
  60. 岡良一

    岡委員 労働省あたりの指示では、大体血液検査を二日間続けてやる、それでもってまた値の上で疑問があるならばなおやるということですが、それだけでいいのですか。たとえば、放射性同位元素を取り扱う現場における従業員の健康管理の場合の検査は、その程度でいいのでしょうか。
  61. 樋口助弘

    樋口参考人 そのほかに、皮膚の検査というものもたしかあったと思います。
  62. 岡良一

    岡委員 皮膚だけでいいのですか。
  63. 樋口助弘

    樋口参考人 とにかく非常にたくさんの人ですから、まず第一番に変化のくるところを見て、ここにこなければまず大てい大丈夫だと考えておるのです。
  64. 岡良一

    岡委員 実はこういうことがあるのですよ。大正十二年ですか、例のエックス線取締り規則が出て、非常にちゃちなものができておるが、一九五〇年、五一年に日本放射線医学会が大学関係の従業者の血液を調べたところが、血液の異常が大体五四%、六九%と出ているのです。あるいは血色素、赤血球異常、白血球異常で要療養者、要注意者ということにすると、やはりかなりのパーセンテージが出ておる。特にレントゲン技師会が最近調べた二百三十の病院、六百九十人の従業者のレントゲン調査によりますと、やはり要療養者、要注意者というものは相当出ておるのです。こういうふうに、内務省令以来、厚生省昭和二十何年かに同位元素についての一種の取締り規則のようなものを出しておられる。医療法施行規則の中にも第四章を設けておる。にもかかわらず、現実にはこういう大学関係者、いわば診療機関の中にさえも出ておるのです。しかもレントゲン技術者という、特に技術的に自覚を持った人の中にさえ出てきているわけです。そういうことを見ると、相当放射性同位元素を持って歩いて、造船所でリベッティングの検査をやる人たちなんかは危険でしょうがないと思うのです。そういう場合にはよほど厳重にやらないと、こういうあやまちを私は繰り返すと思うのです。だから政令あるいはそういうものの中で相当きびしく、法律的な根拠に基いて、これらの健康診断をどういうふうにやるかというようなことは、単に血液や皮膚を調べるという程度のおざなりではなく、もっと徹底的にやる必要があるのじゃないかと思うのですが、その点はいかがですか。
  65. 樋口助弘

    樋口参考人 個人問題としましてポケット・チェンバーとかフィルム・バッジというものは必ずつけなければならぬ、それによってどのくらいその個人が受けておるかということは、これからどうしてもやらなければいけないのじゃないか。そのほかに、今の、ごく鋭敏である血液検査、あるいはトリウムとか、そういういろいろな同位元素を取り扱う場合に、皮膚に変化があるいはくるかもしれぬ、そういうふうに鋭敏なところ、あるいは直接触れるおそれあるところを見ることが必要だと思います。
  66. 岡良一

    岡委員 佐々木さんの方では、この現場の従業員は、やはりフィルム・バッジをつけるとか、あるいは線量計の精巧なものを持つというようなことを予防規約でうたっていくつもりですか。
  67. 佐々木義武

    佐々木政府委員 そういう考えでございます。
  68. 岡良一

    岡委員 それから不幸にして病気になった場合、労働省の方では、この法律に基いてこれだけの予防施設があり、またこれだけ当人が教育されておりながら、しかもやはり病気になることがあるのですから、そういう場合は、労働災害補償あるいは国家公務員災害一補償の対象として取り扱われるのでしょうね。
  69. 伊集院兼和

    ○伊集院説明員 御指摘の通り、労働一基準法に基きまする補償はいたす予定になっております。
  70. 岡良一

    岡委員 労働基準法でただそういう現場における予防その他に関する規定あるいは健康管理の規定を出しておくだけではなくて、これは御承知の通り、広島、長崎なんかの例を見ると、今になってぽっくり死んでおる人も出ておるわけですから、いわば新しい一つの職業病が出てきているわけですから、こういう職業病について、やはりもう少し的確に、いざというときにその網の目に漏れないように、ちゃんとその対象にして診療してやる、あるいはまたしかるべき人たちに補償するというように、労働基準法の施行規則なんかにおいてもっと具体的なものをうたう必要があるのじゃないですか。
  71. 伊集院兼和

    ○伊集院説明員 御指摘のように、放射線障害防止につきましての障害の認定につきましては、先ほど来のお話のように、非常に困難なものが確かにございます。また健康診断について御指摘のように、現在のところ早期診断のために全体の労働者に対して繰り返し検査をする項目としては、現在限られたものだけを特に指定いたしております。ただ、これは一つのふるいとして、全体にやってもらうということにいたしております。その点、樋口教授の御指摘もありましたように、これはふるいとしてやっていただくときには、作業者全体にやってもらう関係から、ある限られた検査項目に現実上限らざるを得ない。その点、先ほど御指摘のありましたように、血液、皮膚、目というふうな限界がある。ただ、それで異常を発見いたしましたものについては、なお詳細に業務上の疾病であるか、レントゲン障害であるかどうかということを調べてもらう、こういう立て方にいたしておるわけであります。技術的な諸問題、あるいはその他の問題から、現在のところではなおその程度かと思いまするが、今後医学的な研究が進められ、また私どもも各工場、事業場等におきまする保健上の諸態勢を十分整備いたすように指導いたしまして、それが向上いたしますることを期するために、必要なる諸種の具体的方法が出て参りますれば、それを取り入れまして、御指摘のような法規上の諸整備もはかる所存でおります。
  72. 岡良一

    岡委員 現に夜光塗料なんか扱っておるところで、相当な白血球の減少が出ている。再生不能白血症になっているということを私ども間接に聞いているわけですね。こういう者がかりに病気にかかったということで、健康保険証を持って医者のところに行くでしょう。そうすると、こういう病気に対する治療というものは、おおむねいわゆる濃厚診療の部類に属するのです。輸血は別でありましょうが、ビタミンを注射するとか、メチオニンを注射するということは、健康保険上一般的には濃厚診療の中に入る、あるいは過剰診療の中に入る。ところが何らペニシリンもマイセチンも使う必要はない。ただ白血球が減少しているから、いざ化膿性の疾患にそういうものが入ってきたときの予防措置として、そういうものを使う。そういうことは健康保険法では必要でない措置になるわけですね。ところが、労災病院として指定されたところにはなかなか容易に行けない事情がたくさんあるわけですね。そして、これはあなた方労働省としての立場から、こういう現場に働く労働者の健康を保護するという立場から、健康保険法における診療基準というものは、こういう疾病に対しては独自な大幅な改正をする必要があるのではないか。いずれこれは厚生省の方に来てもらって話を聞きたいと思うのですが、あなたの方からごらんになって、どうでしょう。かりにこういう放射線の曝射を受け得る現場で働いている人たちが、白血球の減少によって要注意という認定を受けた場合、これが労災指定病院に行かないで、一般健康保険医の被保険者としての治療を受けた場合、医師は非常に現在の健康保険法によって制限を受けるわけです。ビタミンの注射はまかりならぬ。何ら化膿性の症状がないものに対しては、ペニシリンも要らなければマイセチンも要らない、こういうふうになってくるわけです。ここに非常に大きな診療上のズレが起ってくる。結局はこの要注意を認定された労働者が、十分な治療を受けられないということ、こういう点はやはり独自なこういう新しい疾病が法律によって保護され予防されようという段階においては、やはり健康保険の診療基準というものも実際に即したような改正が必要であると私は思うが、これは労働省立場としてはどうですか。  それからもう一つ、労災保険の指定一病院でなくても、かりにこういう患者が来たときには、やはりどんどんできる限りの治療を与える、こういう白血症なら白血症に妥当と思われるできる限りの治療を与える取扱いをする。そういうような考慮について何か具体的なお考えがございますか。
  73. 伊集院兼和

    ○伊集院説明員 御指摘のように、現在放射線障害にかかりました者が、直ちに指定病院その他に参りまして、労働者災害補償の適用を受けるものであるということにならないで、いわゆる健康保険法に基きまする一般診療を受けるという事例も起って参るかとも思います。ただ、その診療過程診療の最初は労働者自身が健康障害に気がつきましても、その障害が自分みずから直ちに作業に基くものであるという認識が持てなかった場合、そういう場合にはそういうことが起って参るわけでございます。それが診療の過程におきましてそのことがわかりました場合には、直ちに最初からの分について労災保険の方に処置、取扱いを変更いたしまして、極力的確なる処置がとられるように、私どもとしては現在はかっておるつもりでおります。なお指定病院その他につきまして、極力これの整備等をはかりまして、ただいま申し上げたようなことが、現実には労働者諸君が指定病院にかかりやすい、指定医にかかりやすいというような態勢にするように極力努力いたしてきておるつもりでございます。なお、根本的には、労働者諸君が自分の健康障害を発見いたしましたときに、業務に起因するものであるという認識をできるだけ早く的確に持ってもらうということが一番必要なことかと思います。従いまして、それにつきましては労働者諸君に、放射線障害に関しまする知識を直接、間接に付与する手段を極力講じておるつもりでおります。今後とも一そうその点につきましては努力いたして参りたいと思っております。
  74. 岡良一

    岡委員 そういうことで、たとえば私どもも臨床医家の一人ですが、やはりこういう現場に働いておる人は、放射線手帳ですか、何か持ってくる、そうして爆心射されたら、その量なんというものはバッジか何かである程度わかるのだから、これを測定してそういうものを記入して、単に工場の管理者のデスクの上にその記録があるだけじゃなくて、こういうものを予防するといえば、当人の自覚が何よりだから、何かそういう扱いをするということは、この際まだきわめて不安定な許容量の問題のためにも、労働者を保護するという立場から適当ではないかと私ども思うのですが、こういう点は先生方いかがでしょう。
  75. 伊集院兼和

    ○伊集院説明員 御指摘のように、労働者諸君自身が放射線の曝射量を的確に知っておるということは、現在のところ残念ながら放射線作業従事労働者のすべてにいきわたっておるということを申し上げかねる状態にあることは、御指摘の通りであります。ただ、これにつきましては、フィルム・バッジの活用の普及ということが、現在のところ最もいい方法かと思います。極力それの普及活用によりまして、現場の労働者諸君に十分自身でわかりますような措置をはかりたいということを目下努力中でございます。
  76. 岡良一

    岡委員 諸先生方いかがでしょう。一従業員が放射線手帳でも持っておって、臨床医家へいくときには、やはりそれを提示してもらうというような扱いにしたらどうでしょう。
  77. 山下久雄

    山下参考人 非常にけっこうな御意見だと思います。当然やるべきことであろうと思います。
  78. 岡良一

    岡委員 それから、私ども非常に寡聞にして実態をよく知りませんが、現場なら現場における直接の放射線あるいは散乱線等の測定器具はよほど厳密なものでなければならぬと思います。これが第一前提をなすわけですから、そういう点でどういう基準のものを、そうしてどういうような名前のものがあるのか、そういう点、先生方、これならば信用ができるといったようなもの、またそういう基準のもの、こういう検定が必要だというような御意見が何かありませんでしょうか。
  79. 山崎文男

    山崎参考人 現在ガンマ線につきましてはいろいろな測定器がございますが、やはりそれは大体におきましてある特定のエネルギーを持った物質について行なっておりますから、もしもほかのいろいろな放射線を使うところでこれを使うには、適当な補正をしなければいけない。そういうようなやはり正しい知識を持った人によって使われれば、現在の機械でも相当の精度はあげられる。しかしこれをただそこにある目盛りだけによって記入すると、非常な大きな同違いを起すということは多々あると思います。アメリカなどでもそういういろいろな目盛りをくっつけてありますが、これはたとえばラジウムについて検定したということを、はっきり書いてあります。それを日本に持ってきて、たとえばヨードの放射線をはかるのにそのままの目盛りでいくというようなことをいたしますと、違った値が出て参ります。これを使うには、かなり現在では、それ相当の知識を持った人が使わないといけないものが多いんじゃないかと思います。それから、先ほど申し上げましたように、また繰り返しますが、中性子の測定となりますと、これはさらにむずかしいことになると思います。
  80. 岡良一

    岡委員 これは佐々木さん、何か器具、使い方、使い手というふうなものについて、やはり一定の基準を設けて取り締られるのですか。
  81. 佐々木義武

    佐々木政府委員 さようでございます。
  82. 岡良一

    岡委員 具体的にどういうような……。
  83. 佐々木義武

    佐々木政府委員 具体的な基準というのは、皆様がお集まりのときにきめたいと思いますが、政令等を定めるやはり基準がないといけませんので、こういうもの、こういうものということで、ある程度のことは考えております。しかし、それがそのまま採用できるかということは、まだやってみないとわからぬ問題だと思います。
  84. 岡良一

    岡委員 これは先生方はどうなんでしょうか。私どもも小さいレントゲンを持っているのですが、実際取締り規則によって鉛当量で設備すると、相当金がかかるのですよ。だから規則はうまい規則ができて、政令はりっぱな政令になっておっても、なかなかこの設備をいざというときに事業主その他がやらないんじゃないか。言っちゃ悪いのですけれども、実際問題としてそういう問題が起るのじゃなかろうかという懸念を持っておるのですが、皆さん方も放射線の発生器具等をお取扱いになっているのですが、そういうことをどういうふうにしたらいいのでしょうか。絶対そういうことがないように、これは罰則を設けてありますけれども、なかなか壁までめくって探すわけにいきませんから、これは問題だと思うのですよ。その点、佐々木さんの方でも御意見あったらお聞かせ願いたい。
  85. 佐々木義武

    佐々木政府委員 経過措置の問題を非常に私ども考慮いたしまして、そしてこの法律が即日実施ということになりますと、岡先生からお聞きになりましたような問題がたくさん出て参りますので、少くとも一年間は猶予期間を置くということにいたしまして、実態を見た上で、さらに問題がありますれば、そのことにつきましては施行を延期するということも考えざるを得ないかと思います。ただ放射性同位元素等による云々とございますので、エックス線を入れました際の一万八千件というものから見ますと、まだ初期の段階でもありますし、考慮の余地があるのじゃなかろうかというふうに考えられますので、これはあるいは強制した場合には、いろいろ経済的な問題も起きてこようと思いますが、そういう点も実際問題として解決したいというふうに考えております。
  86. 山下久雄

    山下参考人 ちょっと今のことに関連して一言申し上げます。実は医療法施行規則を昨年二月改正しましたときにも、たしか施設に対しては三年の猶予期間があったと思っております。従って、まだすべての病院においてそれが実施されているかどうかはわからないというような現状にありますので、現在まで多少の放射線障害を起しておる者があっても仕方がない現状であろうと思います。これはエックス線とアイソトープその他とにおいて非常に違うことは、放射性物質の場合には常時放射線を出す、レントゲンの場合にはある使用する時間だけしか放射線を出さないという点が非常に違う点でありますので、たしか医療法施行規則を作りましたときには、一日たとえば八時間労働という原則はあるとしましても、八時間ではなくて、治療の場合で六時間、診断の場合は三時間か四時間——ちょっと記憶しておりませんが、それくらいの時間しかエックス線を出さないものというふうにしてきめたわけでありまして、そういうために、その時間を超過することは非常に危険であるというのが現在の医療法施行規則の内容でございますが、この放射性物質になると常時出すということで、そういうところの基準は変えなくちゃならぬと思うわけであります。今、御質問がありました通り、あまり厳重でありますと実施できない。そういうことを考えて、あの場合にもそういう時間の制限ということをいったわけであります。確かに特に病院などで盛んに使います場合には、あまり厳重にして、今までやっておった診療にも差しつかえるということにならないようにしていただきたい。こういうことを申し上げておきます。
  87. 菅野和太郎

    菅野委員長 他に御質疑はありませんか。——なければ、三参考人よりの意見聴取は、この程度にとどめます。  参考人各位には、長時間、しかも貴重なる御意見を承わり、まことにありがとうございました。委員会を代表して、私より厚く御礼を申し上げる次第であります。  次会は来たる十六日、午前十時より開会し、先般決定いたしました中泉参考人より、本案に対する意見を聴取いたしたいと思います。  これにて散会いたします。     午後零時十七分散会