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1957-03-27 第26回国会 衆議院 科学技術振興対策特別委員会 第20号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十二年三月二十七日(水曜日)     午前十時二十八分開議  出席委員    委員長 菅野和太郎君    理事 赤澤 正道君 理事 有田 喜一君    理事 齋藤 憲三君 理事 前田 正男君    理事 岡  良一君 理事 志村 茂治君       小坂善太郎君    小平 久雄君       須磨彌吉郎君    保科善四郎君       山口 好一君    石野 久男君       佐々木良作君    田中 武夫君  出席国務大臣         国 務 大 臣 宇田 耕一君  出席政府委員         人事院事務官         (事務総局任用         局長)     松村 清之君         人事院事務官         (事務総局給与         局長)     瀧本 忠男君         科学技術政務次         官       秋田 大助君         総理府事務官         (科学技術庁長         官官房長)   原田  久君         総理府事務官         (科学技術庁企         画調整局長)  鈴江 康平君         総理府事務官         (科学技術庁原         子力局長)   佐々木義武君  委員外出席者         総理府事務官         (内閣総理大臣         官房公務員制度         調査室参事官) 尾崎 朝夷君         原子力委員会委         員       石川 一郎君         科学技術庁次長 篠原  登君         人事院事務官         (事務総局給与         局給与第二課         長)      船後 正道君         参  考  人         (全商工労働組         合技術庁連絡協         議会議長)   稲垣 良穂君         参  考  人         (通商産業省工         業技術院電気試         験所企画課長) 池田三穂司君         参  考  人         (特許庁審判         長)      田中 博次君         参  考  人         (各省直轄研究         所長連絡協議会         世話人)    小林 正芳君         参  考  人         (全国官公庁技         術懇談会理事         長)      亘理 信一君     ————————————— 本日の会議に付した案件  連合審査会開会に関する件  科学技術振興対策に関する件(研究技術職員の  給与に関する問題並びに原子力行政一般)     —————————————
  2. 菅野和太郎

    菅野委員長 これより会議を開きます。  本日の議事に入るに先立ちまして、この際、お諮りいたします。すなわち、ただいま審査中の技術士法案に関し、商工委員会より連合審査会開会いたしたい旨の申し入れがありますので、商工委員会連合審査会開会いたしたいと思いますが、これに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 菅野和太郎

    菅野委員長 御異議なければ、さように取り計らいます。なお、開会日時等につきましては、商工委員長協議の結果、明二十八日午前十時より開会することといたしましたので、御了承願います。
  4. 菅野和太郎

    菅野委員長 科学技術振興対策に関し、本日は、研究技術職員給与に関する問題について、参考人より意見を聴取することといたします。本日出席参考人は、全国官公庁技術懇談会理事長亘理信一君、各省直轄研究所長連絡協議会世話人小林正芳君、工業技術院電気試験所企画課長池田三穂司君、特許庁審判長田中博次君、全商工労働組合技術庁連絡協議会議長稲垣良穂君、以上五名の方々であります。  この際、参考人各位一言ごあいさつを申し上げます。本日は、御多用中のところ、本委員会調査のためわざわざ御出席を賜わり、まことにありがとう存じます。御承知のように、ただいま本院におきましては、公務員給与改訂案につきまして審査中でありますが、科学技術振興を目的とする本委員会といたしましても、科学技術研究に携わる各試験研究機関職員給与について深く関心を払って調査を進めて参ったのであります。つきましては、本日ここに参考人各位の御意見を承わる機会を持ちました次第であります。何とぞ参考人各位におかれましては、それぞれの立場から、この問題について忌憚のない御意見の開陳を願えば幸いに存ずる次第であります。なお、御意見の陳述は一人約十分程度に願いまして、あと委員諸君の質疑によりお答えを願いたいと思います。  それでは、稲垣参考人
  5. 稲垣良穂

    稲垣参考人 通産省工業技術院機械試験所技術相談所主任研究員をしております稲垣であります。ただいま全商工労働組合技術庁連絡協議会議長をしておりますが、議長立場としてきょう申し上げていいのか、あるいは個人的な立場で申し上げていいのかはっきりいたしませんでしたが、私のところ連絡がありましたのは昨晩の十時でございまして、いずれにしても組合としての立場から意見を申し上げるには協議するひまもございませんので、本日は、今までの組合員方々の御意見、あるいは昨年私ども組合研究者討論会というのを開きましたのですが、そのときの御意向等参考にいたしまして、私の意見を述べさせていただきたいと思います。  今度の給与法政府案に関しましては、問題が二つあると思います。その一つは、金額の問題でございます。それから他の一つは、給与制度の問題があると思います。  金額に関しましては、一般官公労で言っております二千円ベースアップというような要望もございますが、私ども研究職といたしましても、やはり薄給に悩んでおります関係上、できるだけ高額にやっていただきたいことは、これは然当なことでございまして、今さらここで言う必要もございません。特に研究職としてこの際聞いていただきたいことがございます。それは、研究職がほかの教職員あるいは一般行政職に比べて非常に待遇が悪いということでございます。この待遇が悪いと申しますのは、あるいはこれはアンバランスというふうな問題かもしれませんが、たとえば、大学を卒業しまして同じように官庁に入りまして、これが二年ないし三年たちますと、行政職になっていた人あるいは教職員になった人よりも、今の級職で申しますと、大がい一級職ぐらいは下になっておるのでございます。それから会社に行っている方は、もちろんこれは公務員ベースと違いまして相当よくなっておりますから、結局研究所に入りました研究職の方がいつも何かはかの人より給与が悪い、こういう感じを受ける次第でございます。これは、同じ給与制度のもとでもってこういうふうな関係になってくるのでございますから、あるいはアンバランスというふうに一言ってもいいのかもしれません。その原因は、教職員給与制度一般公務員給与制度よりもちょっと有利にできているということ、これが教職員と違うところであります。それから行政職と違うところは、行政職の方は新陳代謝が非常に多うございまして、ポストがあけば、下から順々に上の級職に上っていける、こういう有利な立場にございますけれども、われわれ試験研究機関におきましては、そのような人事交流も、あるいは新陳代謝もあまりございませんで、いつもポストがふさがっております関係上、現給与頭打ちとか、そういうふうな問題にひっかかりまして、常におくれるような形になっております。こういうことが原因で、一般より低くなっているんじゃないかと思います。それで、現在の給与法の問題ではあるいは関係がないかもしれませんけれども、この際、私どもとしてはぜひ御考慮願いたいと思います。  それから次に給与制度の問題でございますが、一番問題になりますのは、職階制を非常に強化したというような現在の制度でございます。これは一般官公労の場合でも反対しておりますけれども、われわれ研究職に関しては、この職階制の問題は特に非常に工合の悪いところがたくさんあると思います。それは研究職職階制ということは、昨年の公務員制度調査会答申案にも、研究職には職階制はしかないというふうな意見がございましたのですが、それはどういう意見からきているか、どういう根拠からきたのか、私はよく存じておりませんが、私どもがこれについて痛感したことをちょっとお話いたしたいと存じます。それは、この研究職に対して、一言にして申しますれば、職階制は有害無益であってそうして非合理的であるということでございます。この有害の点でございますが、これは昭和二十四、五年ごろから人事院職階制をとる方針をはっきりさせまして、その結果、この職階制にマッチするように研究所の方ではいろいろな体制を作り出してきました。たとえば課長にならなければ八級になれないとか、部長にならなければ十級になれないとかいうふうなことを打ち出してきましたものですから、各研究所ではこぞって課や部をどんどん作って参りました。それで、作るのはまだいいのでございますが、大した関係もないような、たとえば化学分析とか、材料試験というようなものを、ある二、三人の研究職にくっつけまして、それで一つの課を作り、それで課長を作り上げる、そういうふうな細工というのですか、そういうことを盛んにやるようになって参りました。これはわれわれ研究者にとっては非常に迷惑な話でございまして、研究の意欲を非常にそがれることでございます。それから、その程度ならまだいいのですが、なお極端なものを申し上げますと、全然関係もないものを名目だけくっつけまして、それで課を作るというふうなことをやるようになりました。これはおそらく職階制というふうなことから原因して、各研究所ではそういうことをやり出してきたものと思います。研究所ではそういう課も必要がないと私は思っておるのでございますが、現在どんどん作っておりますのは、そういうふうな職階制をしくということがあったためにどんどん作っているのではないかと私は推定します。それで私のところの試験所の例をちょっと申しますが、戦前、私のところの試験所では、部課制というものはございませんでした。機械試験所でございますが、前に海軍の日高鉱先生所長をしておらたのですが。その日高先生研究所のシステムついてよくこういうことを言っておられました。研究所では部課制をしくのは非常に害がある。それは各人が出世することを考えるようになると、その本来の研究に精が出なくなるというようなことで、これはむしろ害があるということをよく言っておられまして、部課等はしいておりませんでした。そのかわりに科というのがございます。これは学問別の科でございますが、その科の一番長老というような方がその科の主任官、こういうふうに申しておりました。その体制の方がよほど私どもにとっては研究しやすかったと思います。そういう関係で、今度一般公務員と同じような職階制をとられることは、研究職の場合に特に私は非常に悪いのではないかと想像しております。元来、研究職というのは一般職と非常に違っております。違っておる点を申しますれば、一般職はいわゆる忠実なる公僕ということが一番大事でございますが、研究職は何といいましても研究成果ということが一番大事なことだと思います。成果ということを一番期待されるわけですが、そういうことで一番違っておるのじゃないかと思います。一般と同じような体系を持っていくということに必ずしも持っていく必要はないのではないかと私は思います。  それから職階制根本考え方は、職務に対して給与を与えるということのようでございますが、研究者職務は、その研究者地位によるのではなくて、研究者能力にもっぱら依存しておりますから、結局職務給与をはめるということは、これは各個人、その人間に格づけするというようなことになりまして、人間に格づけするということは、職階制根本の精神からはずれているはずでございます。従って、研究職に格づけするということは、これはもうどうしても職階制からははずれるんじゃないかと思います。そういうような理由で職階制にはわれわれは非常に反対しておりまして、できるだけ職階制はとらないようにしていただきたいと思います。  最後に結論を申しますと、現給与体系のことでございますが、職階制をなるべくはずすような、そういう制度を作っていただきたいということでございます。必ずしも今の政府案給与表を変えなくとも、その運用によってもこれはできるはずだと思います。たとえば、平の研究員でも、二等級なり三等級までも格づけするというふうなことができれば、これはただいま申したように職階制は否定されたような形になるのではないかと思いまして、今のままでも、運用いかんによってはできるんじゃないかと思います。  突然呼ばれまして話がちょっとまとまっておりませんが、大体その程度でございます。
  6. 菅野和太郎

  7. 池田三穂司

    池田参考人 私は通産省工業技術院電気試験所企画課長兼第二標準器課長をしております池田でございます。  最初、給与法に対する意見を申し上げます前に、今日まで当委員会から科学技術研究に対しまして非常な御指導と御鞭撻をいただきまして、深く感謝し、かつ敬意を表しておる次第でございます。  今日、給与法に対しまして三つの点について意見を述べさしていただきたいと思います。  その一つは、研究職というものを今度新しく給与法において独立をさせるという形になっておりますが、これがいかなる理念に基いてそうなったか、そういうふうになっているかということについて私見を述べたいと思います。結局、研究職が従来の行政職等と比べて、任用なり給与上の実際が相違をしておりまして、運営において違った運営を必要とするという程度のことで、研究職を独立させているのではないと考えるのでありまして、かねがねわれわれが研究者の処遇を改善をして、安んじて研究をし得るような体系を作っていただきたいということをお願いしておるわけでございます。こういうものを考慮していただいて、研究職というものを独立させていただくようになったというふうに解釈をいたしたいわけでございます。そういう見地から、この俸給表その他について検討をいたすことにしたいと思うのでございますが、研究というものが、現在のわが国では官といい民といい、大体どこでも低い地位に見られるという状態は、現在でもなお否定できないのであります。そういった面から言いますと、日本の独得の科学技術というものを達成をし作り上げるには、なお相当問題があるといわざるを得ないと思うのであります。このような国立研究所に対して、研究職というものを考える場合の基礎的な理念というものを、われわれは、私たちみずからの考えで確立をいたしまして、それに基いて、二番目として、現在の給与法における俸給表等に対して考えてみたいと思います。先ほども参考人からお話がありましたが、職階制という考え方相当に今度の給与法には入っておるのであります。けれども、これについては後ほど触れたいと思います。  さらに給与法でいささか不明瞭になっておりますが、現実に現在の給与体系をどういうふうに新しい給与体系に当てはめるかという、いわゆる格づけという問題が明らかにされなければならないのでありまして、これについて現在われわれが伺っておるところでは、教育職とか行政職とか、そういったものと比較して検討むする場合に、なお若干改善を希望いたしたいというのであります。われわれの方で、たとえば現在の俸給表を見ますと、研究の二等級教育職の二等級行政職の二等級、そういう同じようなところを比べてみますと、研究の方は二等級の十二までありまして、最高六万円ということになっております。しかるに教育職の方は二等級の二十号までありまして、六万四千八百円というふうになっております。行政職はやはり二等級は十一号までですか、ありまして、やはり六万四千八百円というふうになっておりまして、そういう意味からいっても差がある。四千八百円の差がある。それからさらに教育職と比べました場合に、六万円という金額のところでは、教育職大学院を置かないところと対等になっておるわけであります。そういった意味で、大学院を持たない大学と対等な状態研究所を扱われるというような点になお問題があるというふうに思っております。  なお、この俸給表は、現状をもとにいたしまして作られているようでございまして、最初申し上げました研究職を独立せしめた理念という点においては、そういう意味では問題がありまして、わずか六・二%のアップを考えるということで切り離したといわざるを得ないのであります。昇給率が抑制されておりますので、二、三年たった状態では、現行の体系よりもむしろ下回る、あるいは五、六年たつと相当の部分が下回ってしまいまして、カーブが非常にサチュレートしているような形になっておるというところに問題があります。次に、さらに研究のための補助的な人々についても考慮を希望いたしたいのでございまして、たとえば技能労務の人は三万一千三百円でもう終ってしまうとか、こういう補助的なものにおいても、研究特殊性のために、ガラス工、その他技術的に相当優秀な人を必要とする、というところで頭打ちによる希望をなくするということも可及的に改善をいたしていただきたいと思うものでございます。なお、現在の不均衡については、何ら是正の措置がありませんので、これについても、できれば考えてもらいたいということであります。なお、われわれが伺っておりますところでは、特別研究員制度というものをとろうというようなことなどは、われわれとしてはまことに望ましいことであると思っております。それから、研究所長トップが七万二千円となりまして、教育職とか行政職と同じところまで並べていただいたということにおいては、そういう点でありがたく思っておる次第であります。要するに、現在の俸給表に対しましても、研究職を独立させたという趣旨を、研究者の期待するような線に沿いまして、さらに改善していただきたいと思うわけであります。  次に、三番目といたしまして、現在の国立研究所職員の実情を述べまして、今度の給与法との対比をいたしてみたいと思います。まず、大学教育職国立研究所研究職を比べてみたいと思います。大学教育職は何をやるかといいますと、まず、何をおいても教育でございます。教育あと研究、ちょっと言い過ぎかもしれませんが、教育職としましては、まず教育が第一でありまして、次いで研究。ところがわれわれ研究者におきましては、すべてが研究でございまして、教育ではないわけであります。従って、研究能力なり研究成果なりにおきましては、言い過ぎかもしれませんが、当然研究所の方が大きい、私たちはそういう信念を持っておる次第でございます。そういう意味からいいましても、教育職なり行政職と比べまして、研究職にもう少し考慮を払っていただきたいという点があると思うのでございます。  それから国立研究所の性質でございますが、非常にじみな仕事が多いのであります。どこでもやらない、国でなければやれないような、非常にじみな地下茎的な研究が多いのでございまして、そういうものが今後さらに伸びるためには、やはり研究職というような扱いにおいて改善をしていただきたいと思うのであります。たとえば地下茎的な問題としましては、われわれの方で持っておるスタンダード、こういう仕事などは、ほんとうにじみな仕事でございます。  次に、職階制とからみますけれども研究がますます専門化いたしまして、さらに高度化して参りましたときに、その研究管理のシステムはいかにすべきかということは非常に問題があるのでございまして、単に一律に部長課長というような行き方でいいかということにも、なお研究すべき点があるように思います。  次に、研究者というものはまず何が大事かといいますと、研究雰囲気でございます。研究を安んじてやれるような雰囲気を作ることが大事なのでございまして、結局死ぬまで研究を続けるというような雰囲気を持たなければ、りっぱな研究が出てこないということになると思われるのであります。そういう死ぬまでやれるような研究雰囲気を作り上げていただきたい。それにはこの給与法等において十分考慮を払っていっていただく。たとえで特別研究員のような制度とか、あるいは俸給表改善とか、そういった点で考えていく必要があると思います。たとえば大学研究所との人事交流というような問題も必要になるわけでありますけれども、もしこのようなことが困難になるというような給与体系では困ると思います。さらに人材を確保してほしい。これは、従来電気試験所の例で申しますと、昭和十一年ごろまでは、大学専門学校を出るトップ・クラスの人が電気試験所に推薦されておったのであります。ところが、だんだんと公務員試験とか、その他いろいろな問題が出て参りまして、優秀な人材が、ことに国立研究所に集まらなくなってきているということにおいて、今後跡を継いでいく人々をいかに養成するかという問題で非常に悩んでおります。  最後に申し述べたいのは、現在原子力研究とかあるいは超高電圧の研究とかいうような問題で、いろいろな危険な業務がふえてきておりますが、完全な施設の予算はいただけませんので、現実には相当アンバランス状態があるわけであります。これに対して研究者はどうかといいますと、これはもう一時間も早く、争って成果を上げたいという気持があるために、相当無理をしてやということがありますので、とかく設備が整わないうちに、何とかデータを出したいということで無理をすることになりますので、その点をわれわれは相当弊一戒をする必要があると思います。  以上、私の給与法に対して感じております意見を述べさしていただいた次第でございます。
  8. 菅野和太郎

  9. 田中博次

    田中参考人 私は特許庁審判長田中博次でありますが、本日研究技術職員給与に関する問題についてお呼び出しを受けました。私はこれから主として特許庁技術官の主体をなします審判官及び審査官給与の問題について申し上げたいと思います。  それで、私どものところの審判官及び審査官は、一般公務員とはその職務が非常に違って、特殊性がございます。この点につきましては、昭和三十年九月に公務員制度調査会に対しまして、その特殊性をよく考慮していただきたいということをお願いしたのでございます。ところが、同年十一月の調査会答申の中では、このことは考慮されたとは思いますが、明らかに表明はされておりませんでした。それから、今回の給与制度改正案の中でも、私ども審判官及び審査官につきましては、特別の措置が講ぜられていないのでありまして、この点は私どもはなはだ遺憾に存ずる次第でございます。それで、この給与問題に入ります前提として、わが国特許制度の概要と、その特許などを審理いたします審判官並びに審査官職務につきまして、簡単に御説明いたしたいと思います。  わが国特許制度は、明治十八年の専売特許条例の制定以来七十年余りを経過しておりまして、産業政策の上に大きな力をなしているのでございます。それから、工業所有権の国際的の関係につきましては、万国工業所有権保育同盟条約というのがございまして、現在世界の四十五カ国が加入しております。わが国ももちろんこれに加入しているのでございますが、現在特許庁におきましては、年間約数千件の審判事件と、年間約十万件の特許出願並びに実用新案出願がございます。そしてこれを処理するのは審判官が約三十名と、審査官補助官を含めまして約二百九十名でございます。それでこれらの職員がいたします仕事は、一般官庁におけるような局長部長あるいは課長といったような組織と違いまして、むしろこれは裁判官の職務に非常に類似していると思っております。私どもはまあ技術の裁判官であるということもできるのじゃないかと思います。  それでは次にどういう点でこれら審判官並びに審査官職務特殊性を持っているかということを簡単に御説明いたします。審査官特許及び実用新案出願につきまして、これが法律に規定してある新規な発明であるかどうかということを判断いたしまして、特許登録あるいは拒絶の査定をいたします。この査定というのは、審査官に与えられました独立の権限でありまして、直属の上司であります部長あるいは課長あるいは長官といえども、この査定に対しては干渉し得ないのであります。この査定がありますと、金を納めればあと特許権は十五年という長い間の独占権を生じます。実用新案については、その期間は十年でございます。審判官審判事件を審理いたしまして、裁判所におきます判決に相当する審決あるいは決定ということをいたします。その審判にはいろいろな種類がございますが、そのおもなるものは、無効審判、これは特許権を無効にするものでございます。それから権利範囲確認審判、これは、あるものが特許権あるいは実用新案に抵触するかどうかという審判、それから拒絶査定不服の抗告審判、これは特許実用新案出願した者が一度拒絶されましたときに、それが不服であるという申し出を審理する審判でございます。それで審判におきましては、審理の公平を期するために、三人あるいは五人という合議体をもってこの審決をいたします。この審決をすることも審判官に与えられました独立の権限でありまして、審決については直属の上司といえども干渉することができないようになっております。なお審判官異議申し立ての決定あるいは口頭審理。それから証人尋問といったようなものを行いますが、これらはすべて民事訴訟法の規定を準用しておるのでございます。なお、その他審判官及び審査官につきましては、除斥及び忌避の規定がございます。これも民事訴訟法におきまする裁判官の除斥並びに忌避の規定に準じてあるものでございます。  次に、審判官並びに審査官科学技術に対してどういうことをしなければならぬか。これは申すまでもなく、特許並びに実用新案出願というのは、それぞれの産業部門におきます最先端を行く技術でございますから、それを判断いたしますについては、いろいろ技術的な、深くかつ広い知識経験を必要とするのでございます。原子力あるいはオートメーション、電子計算機、あるいは有機合成化学といったような部面で、現在世界の各国からこういう出願が来ておるのでございますから、これを審理するわれわれの職員が、これらの現状を常に把握して、的確なる判断を下せるように、態勢を整えておかなければならないのであります。  先ほどもちょっと申し上げましたように、私ども職務は、一般官庁におけるように、局長部長課長というような制度には非常に工合が悪いのでございまして、これはその局長部長課長というようなもののいわゆる統括者と申しますか、統括者の職務を下級の職員が分掌して行うというものと全然違うのでございます。この点でやはり職階制をしくということは、はなはだ妥当でないというふうに考えます。  なお、審査官は、新しい大学の卒業生を採用しましてから、数年間の研修むいたしました上で任用いたしますし、審判官につきましては、さらに審査官の経験十年くらい以上を経た者について選考によって任用いたしております。  次に、今回の給与制度改正案についての意見を申し上げます。このたびの俸給制度改正の表を見ますし、この中には特許庁審判官とかあるいは審査官というものがどこに入るかは明示してございませんので、私としては行政職俸給表(一)という表によるのだろうと思いますが、この表はいわゆる管理職務を重要視しております。表でございまして、職階制をその基礎とするものと考えます。しかし、私ども職務は、さきにも申し上げましたように、多くの人の仕事を集めてこれを管理する。そうして一つ仕事をなし上げるというようなものと違いますので、むしろ各個人の専門的な技術知識あるいは法律上の知識というものによって事件を処理していくのでございますから、管理的な能力というようなものよりも、むしろ長い間の経験というようなものが十分に尊重されなければならないのだと思います。この点におきまして、管理職を特に重要視するようなこの俸給表では、審判官及び審査官といたしましては、安んじて長くその職にとどまるということはできないように考えます。それで、私の考えておりますところでは、一審判官あるいは一審査官でも、局長あるいは長官と同等あるいはそれ以上の俸給を受けるまで、途中で昇給期間が延びるということのないように、すなわち通し号俸で頭打ちのない俸給表というのが最も望ましいのでございます。まあこれは理想案かもしれませんが、かりに一歩を譲りまして、現在出ております。案の表をもし適用するということになりましたら、その運用において今申し上げましたような趣旨を十分取り入れていただけるような特別の運用措置を講じていただきたいのでございます。  それでは、私がなぜこういうことを申しますかということのために、特許行政の現状をちょっとお話しいたします。実は、特許行政は現在事務が非常に停滞しております。昭和三十一年の特許及び実用新案出願件数は九万七千百七十件でございます。これに対して出願を処理した件数は七万五十件でございます。それで差し引き二万七千百二十件は未処理件数の増加となっております。これを昭和三十年末までの未処理件数十三万三千三百七件に加えますと、本年一月一日におきましては十六万四百二十七件という膨大な出願特許庁の金庫の中に眠っておるわけでございます。それで、この数字を三十一年度の処理件数に比べますと約二倍以上であります。これは言葉をかえて申しますると、特許あるいは実用新案出願いたしますとしても、二年以上たたないと果してこれを特許するのかしないのかわからないというような状態でございます。これではせっかく苦心して発明された方も、その発明意欲がすっかりそがれてしまいますし、また事業をされる方といたしましても、出願されたものの、権利が早くきまらないということは大きな不安であると思います。なお、特許制度は技術を公開するということが一つの大きなねらいでございますが、この点においてもこのようなたくさんの出願特許庁の中でたらざらしになっておるということは、日本の産業全体から見ても、はかり知れない損失であると思います。  それでは、これをどうしたらいいのかと申しますと、これはいろいろ原因があると思いますが、最大の原因は、特許庁審判官並びに審査官の数が少いことと、その質がやや低いということだと思います。それで、特許庁ではこの数年間毎年審査あるいは審判の職員を増加しておりますので、数の点ではおいおい整ってくると存じます。しかしまた一方、中堅の技術者で、毎年特許庁をやめて民間の方に出ていくという人も、また数が少くないのであります。このような状態では、新しい人を幾ら採用しましても、結局その審判あるいは審査の実質上の内容というものは、いつまでたっても充実されないと思います。なぜそうなのかと申しますと、やはり原因の最も大きなものは、審判官並びに審査官待遇がよくない、こういうことに帰着すると思います。私は、かつてこの二、三年前に特許庁審査官を採用するというので、ある大学に行きまして、先生に卒業生がほしいということを申し出たのでありますが、その先生のお話によりますと、近ごろは、私のところの卒業生ではもう官庁を志望する者はないというようなお話で、なおよく伺ってみますと、公務員試験を受けておる者はほとんどないというような状態でございました。このようなことでは、だんだん官庁技術官の質というようなものも低下するのではないかと思いますので、ちょっと申し上げました。  以上申し上げましたように、特許庁審判官並びに審査官は、その仕事の困難性と責任の重大だという点から考えまして、これに妥当な待遇が与えられますよう、さらに御検討いただきたいということを申し上げまして、私の意見を終ります。
  10. 菅野和太郎

  11. 小林正芳

    小林参考人 私は、農林省家畜衛生試験場の場長をやっております小林でございます。意見を述べさせていただきます前に、各省の直轄研究所長連絡協議会というものはどういうものであるかということを一応御紹介いたしたいと思います。これは、東京近在にございます各省に直接属しております研究所が四十六ばかりございますが、これらの所長が、各横の研究連絡をとる、あるいは親睦をはかる、あるいは各研究所に共通な問題があった場合には、この問題についてしかるべく活動する、こういう趣旨のもとにできたもみでございまして戦後五、六年くらい前から年々引き続き行われておるもので、各省から各一名の世話人を出しまして、いろいろの問題を研究しておるわけでございます。その世話人の一人として私もこれに当って参ったわけでございます。各省の直轄の研究所ま、申し上げるまでもなく、それぞれ研行政官庁の行政目的に従いまして、一定の幅を持った研究項目について研究しておるわけでございますが、現在の実情におきまして、非常に不満足な施設及び費用におきまして、毎日研究者はししとして、その与えられた業務につきまして、それぞれ真撃なる態度をもちまして研究に従事して、一日も早くその目的を達し、国民に奉仕したいというふうに覚悟しておるわけでございます。研究所を預かる者といたしまして、こうした人たちが安心して研究をなし、また一日も早くその成果を上げまして、国民に奉仕するという意味合いにおきましては、どうしても研究所運営していく者といたしまして、常にこれらの人が快く、気持よく研究ができるという状態に置いてやりたいというのが第一の念願でございます。そうしてまた、これらの研究者というものは、長い間それこそいつ成果が上るともわからないような問題にも取っついておるのでございまして、世間の名誉とかいうものには比較的うとく、またそういうものにとらわれずに仕事をしているわけでございます。またこれらを預かる者といたしまして、特に共通的な問題といたしましては、りっぱな研究者をぜひ自分の研究所に持っていたい。またこれらの研究者の将来中堅となるべき考を教育し、あるいは確保していきたいというのが第一の念願でございます。個人の能力はもちろんでございますが、今日の研究に一おきましては、個人の知識を集め総合的にやらなければならない問題が非常に多いのでありますので、全体的のレベルを上げて研究成果を上げようというのがそれぞれ研究所を預かる者の念願でございます。こうした見地からそれぞれ研究所所長連中が考えております問題といたしまして、今度の給与法に基きます給与状態を懸念いたしますと、これは昔からでございますが、一般に中央官庁行政職というものに比べまして、研究所にある職員というものは常に俸給なり待遇というものが下回っておるということは事実であります。今度の給与法改善に基きますものにつきましても、当初は非常に下回って格づけされておるというような状態でございましたので、私たちは、これを少くとも行政職なり教育職の最高までいけるようなあれにしていただきたいということにつきまして動いたわけでございますが、これは各方面の御援助をいただきまして、希望に近いものにしていただきましたことは、それぞれの所長ひとしく感謝しておる次第でございますが、またそれ以外に、所長としては一応の問題が解決せられておるにいたしましても、自分の場所を運営するという点において非常にたくさんの困難な問題が残っておるわけでございます。たとえば、給与表にしましても、第一番の問題といたしまして考えたいのは、医療職という問題と研究所にあります医師の方々待遇というものは非常に違っておる。私立ちは、その医職にある方の俸給が低いために、医職の関係研究者が確保できないということは非常に大きな問題でございます。少くとも医職にある方は医療職と同等以上の待遇を与えられたいということを希望しておるのでございます。そのためには、研究者の共通の待遇は、医療職の現在の俸給よりも医職の研究者が上っても差しつかえないというような態度を各研究所所長はとっております。こうしたことは一部にアンバランスが出ることによって、研究者が獲得できないという他の研究所の悩みを私たちも共同に解いていきたいということから出ている問題でございます。また大学研究所の生命というものが、大学と非常に近い性格をある程度持っておるということも事実でございまして、大学との人事交流ということがしばしば起るわけでございますが、この格づけの問題といたしましても、研究所からそれぞれ大学の教授あるいは助教授、講師というものに出ていく者、あるいは臨時に一講座を受け持って講師にいくというような方々もたくさんあるわけでございますけれども、少くとも、もちろん研究所には大きい研究所、小さい研究所はございますけれども相当研究所でありますれば、部長職におる者が助教授の程度の者、もちろん助教授の方にも対等の方、それ以上の方もたくさんあると思いますが、平均して申し上げますと、そういうような格づけの形に運用されるというような点は非常に大きな問題だと思います。こうした給与法に対しましての意見は、共通的に各所長方々考え方によりまして、それぞれの立場の違う点ももちろんございますけれども、今私が申し上げておりますのは、ただ大体の共通点として申し上げるのでございます。このいわゆる運用という点で、もしこれがしかるべく運用されない場合には、非常に研究職というものが教育職なり行政職に比して悪い立場に置かれるということが懸念されるわけで、運用の方法ということでできるということは、場合によってはいいし、場合によっては悪いことが起るので、この点を共通的に心配しているわけでございます。職階制に基くいわゆる格づけという点の不満をなくす意味におきまして、人事院あるいは公務員制度調査室におかれましては、特別研究員制度というものを置いて、職階にかかわらず、その研究者能力によってしかるべき処遇を与えるという制度は非常にけっこうな制度と思いますが、これもまた運用の方法によりまして、非常に制限されることが起るんじゃないかというような懸念が共通に出て参るのでございます。その他研究所運営していくという意味合いからいきますと、この補助をするもの、またこの補助者の下の技能をつかさどる者におきましても、三十年、四十年というように勤務をする者がございます。また特殊な、他の人にまねられない業務を自然長い間に獲得しまして、むしろ学校を卒業したぱかりの者、あるいは数年たった者よりも優秀な特技を持っておる者がございますので、こういう方々の処遇も考えられるように、できるだけしてあるように見られますけれども、実際にこれを運用する場合におきまして、そうした職員の不満のないような形のものをとられるような処置が私は必要だというふうに考えております。  以上のことは、非常に簡単でございますが、大体所長連中が集まりましてこうした問題を討議した際に出ました問題として申し上げた次第でございます。  要は、国の大事な研究を行う行政機関の研究所研究者を確保するということが私たちは第一の目的でありまして、それらの確保された研究者が安心して、長い間、死ぬまでたゆまず一つ研究に従事していけるという状態に置いていただけることが最上の念願といたすところでございます。今後職階制研究所にとって——特別研究員というような制度もございますから、これは全部がとっておるわけではないでございましょうけれども研究所というものがいわゆる行政機関の一つの機関であるとすれば、ある程度行政事務をやらなければならない立場なのでありますので、将来もし職階制というものの立場から動いたとすれば、どうしてもそういうことを避けられないと思いますし、特別研究員という制度で、もっと幅の広い制度で逃げられるならばよろしいのでございますけれども特別研究員という制度が幅の狭いもので行われるとするならば、職階制ということを考えない研究所制度というものを考えなきゃならない。それは研究能力に応じて研究者を処遇するというものを一応立てまして、それ以外に研究所を管理するなり行政上の業務を行うために必要な処遇というものを二つ重ねて行なったらば、私は研究所としてしかるべき運営が満足にいくんじゃないか、こういうふうに考えております。  以上、簡単でありますが申し上げました。
  12. 菅野和太郎

  13. 亘理信一

    亘理参考人 私は全国官公庁技術懇談会理事長の亘理信一でございます。全国官公庁技術懇談会は、昨年の八月発足いたしまして、国、地方庁、公社、公団の技術系職員よりなります四十一の官公庁技術職員懇談会を会員といたしました連合会でございます。私はこの全国官公庁技術懇談会を代表いたしまして、給与制度改正に関する意見を申し述べたいと存じますが、この機会を与えられましたことを厚く感謝する次第でございます。  私たちは、すでに数次にわたりまして、公務員制度全般の改革問題に対しまして技術職員立場から意見を主張し、民主的、合理的な人事制度の確立に大きな期待を寄せて参りました。しかるに、今日その一環として行われようといたしております給与制度の改正の内容を拝見いたしますと、技術職員待遇是正の点がほとんど考慮されておらないばかりではありませんで、かえってますます一部の特権事務官の特進に有利なように、しかも多くの技術職員を冷遇する結果を招来するようにできておる点を拝見いたしまして、きわめて遺憾であります。あえて不満の意を表せざるを得ない次第であります。  以下、問題につきましてあらためてわれわれの立場を主張申し上げ、必ずこの線に沿って法案が改正されますようにお願い申し上げる次第でございます。  戦前の旧公務員制度のもとにおきましては、いわゆる高文試験制度というもののもとに、わが国の官界におきまして、法科万能特権官僚制度が続いておりました。これは明治中葉にその制度の発足を見ましてより以降、時代とともに変化し、進歩いたしましたところの産業構造、経済機構のもとにおきまして当然消え去るべきものでございましたが、これが戦前は依然として温存されておりました。戦後この制度が全く廃止され、民主的運営の企図されました現行制度のもとにおきまして、公務員法の趣旨から申しましても、また形式の上から申しましても、戦前のような差別的身分的取扱いは一切許されないことになっているはずでございますが、その現実運営は、法科系統及び特定学歴優先という傾向が顕著に現われている次第でございます。お手元に配付申し上げました給与制度改正に関する全技懇要望書の添付資料をごらんになりますと、さらにこの点は実際の現実として立証されると思うのでございます。かく述べます本意は、官界におきましての人事に関する限り、制度の趣旨とその運営の実とは必ずしも一致しないことが一般でありまして、常に曲げられがちであるということを御理解願いたいからでございます。科学技術の振興が今日ほど強く要請されておる時代はかつてなかったことでございますが、今日において官吏たるならば官大の法科へ、技術者たるならば民間の大会社へという一般の傾向は、旧態依然たるものがございます。かくては科学技術の振興はさらに困難を加えまして、先進諸外国との国際市場におきます激烈なる競争において、わが国の優位な態勢はとうてい保持できないと存ずる次第でございます。  前置きは、このくらいにいたしまして、以下四点につきまして、給与制度改正に関する意見を申し上げたいと存ずる次第であります。  第一点は、給与の不均衡の是正の問題でございます。全技懇の意見といたしまして、専門技術的職務の評価を重要視し、技術職員の優遇をはかること、以下これの説明でございます。過去長年にわたりまして累積して参りましたところの事務官、技術官の対立問題、これは、その原因は、旧官吏制度時代より引き続いておりましたところの技術軽視という思想、すなわち技術は事務の補助である、補助的機能を果すものであるという考えに求むることができると存じます。言うまでもなく、技術は行政の基盤でございまして、それぞれの有する知識、経験、判断、方法が調査、立案、審査、決定、執行等の具体的な行為となりまして、近代国家の要請する専門技術行政を達成するものでございます。従って、専門技術職員につきまして、その深い専門的な知識と累積されました経験とを十分に評価し、妥当な給与を与え得るように考慮されねばならないと存じます。この点につきましては昭和三十年十万十五日、公務員制度調査会から政府に答申されましたところの答申内容に、「尚、従来技術系統の職員給与が、一般事務系統の職員給与に比較して、不均衡のうらみがあるので、俸給表に当っては、十分に均衡を保つように考慮すること」とうたわれてございます。われわれも再三声を大にいたしまして主張して参りましたところでございます。しかるに、今日の改正案におきましては、この点が何ら考慮されておりません。そのまま実施されますと、行政職につきましては多くの技術職員が昇給側線——これは昇給期間が一年以上十五カ月以上になりまして、昇給曲線が鈍ってくる線を昇給側線と申しますと、その昇給側線上に分布されることになり、現行制度以上に冷遇される結果に相なります。従って、これを是正するためには、技術職員につきましては単に課長課長補佐、係長などという管理的役職名による画一的な格づけを行うことなくして、深い専門技術的知識と長い経験を十分勘案して、職務の実態に即しました上位一等級に格づけできるような措置が必要であると存じます。われわれは多年にわたりまして専門家による専門行政の確立ということを強く主張して参っておりますどうかこの線に沿いまして、第一点の御配慮をお願い申し上げたいと存ずる次第でございます。  第二点は、昇給及び昇給期間の問題でございます。意見は、それぞれの等級の各号俸にわたりまして昇給期間を一律とすること。改正案によりますと昇給期間は最低が十二カ月でございまて、上位号俸になると十五カ月から二十四カ月となっております。現行制度では職務の級のいかんを問いませず、昇給額が五百円以下は六カ月であります。七百円以上千四百円までは九カ月、千五百円以上は十二カ月となっておりますので、この両者を比較いたしますと、数年後におけるところの給与は現行のままの方が上回る結果と相なります。特に技術職員につきましてこのケースに当てはまる場合が多いのでございます。生活給の要素を加味する必要のある今日——これは公務員制度調査会答申案給与制度の第一項のところにこの点がうたわれてございますが、この生活給の要素を加味する必要のある今日におきまして、改正より数年後に現行より下回るような結果を来たすことは、絶対に避けなければならないと存ずる次第でございます。  第三点は、頭打ち是正の問題でございます。意見といたしまして、各等級の最高号俸を少くとも三号程度延長すること。頭打ちの問題は現行給与制度の中の最大の欠点と見なされておりまして、この是正は今次改正案作成に当りましても十分考慮されたはずでございますが、結果は現行を単に水増ししたにすぎないと存じます。昇給期間を延長することによりまして、一つ等級に約十八年間も在級することができることになり、しかも管理的職務につかなければ上位の等級に昇格できないとすれば、役職に恵まれないところの技術職員にとりましては、現行よりもさらに悪質な終身頭打ちという状態も起り得ることと相なると存じます。この点少くとも三号程度の延長は絶対に必要なことと存じます。  最後に、第四点といたしまして、行政職俸給表、これが一号、二号と二本建になっております。これに対しまして、意見といたしまして、本省職員と管区機関並びに出先機関の職員俸給表を同一のものとすること。改正案のごとくに中央と地方の二本建ということにいたしました場合、まず第一に中央と地方の人事交流が非常に困難に相なりまして、有能な職員の適正配置という点を阻害いたします。第二点は、多数の事業現場の職員に対しまして頭打ちの機会を多くして、昇給速度を鈍らせ、その結果、実質給与の低下を招き、勤労意欲の向上を阻害することと相なります。第三点といたしまして、給与事務が煩雑になり、事務の簡素化、能率化に逆行する等の多くの弊害を生じます。以上の点からいたしまして、二本建というこの俸給表の点は絶対に避けるべきであると存じ上げます。  以上の四点の給与制度改正につきまして意見を申し述べた次第でございますが、どうか深く御高配を賜わりまして、われわれの主張するところを御採択下さいますようにお願いする次第でございます。
  14. 菅野和太郎

    菅野委員長 以上をもちまして、参考人各位意見陳述は終りました。  通告に従いまして、質疑を許します。前田正男君。
  15. 前田正男

    ○前田(正)委員 ただいま参考人から非常に有益なお話を聞きまして、われわれが日ごろ心配しております問題について各参考人から共通の御意見が出たように思うのであります。その第一の問題は、要するに、われわれは今後日本の技術を中心とした進歩というものを非常に期待しなければならぬのでありまして、その点において、技術研究関係の有能な国家公務員の方たちが技術研究職の方面に、あるいはまた特許庁仕事の面に働いていただかなければならぬと思うのであります。実は私たちの聞いておりますところによりますと、参考人のお話にもありましたけれども、最近の学校の卒業生で、科学技術関係の諸君は、もう官吏になるのはいやだというようなことで、第一、公務員試験も受けないし、官吏の方にも行かない。私も技術出身でありますが、われわれの母校の先生なんかも、こんな調子じゃとても官吏にいい人は行かないだろうし、ほとんど行かないじゃないかというようなことを話しておりました。そういうようなことで、果して今後科学技術を中心にして進めなければならぬわが国研究技術養成というものが確保できるかどうかということに、非常に疑問を持っております。従いまして、特に最近は一般的に民間の技術関係職員待遇というものは、その他の職員に比べて給与がいいのでありますけれども、われわれが聞いておる範囲内におきましても、また今の参考人のお話の中におきましても、一般的に官庁における技術者の職員は、同じ大学を出た技術関係以外の職員に比べて進級もおそいし、月給も非常に少いというのが実情のように聞いております。これにつきまして、きょうは公務員制度調査会の方がお見えになっておると思いますが、現在の一般官庁の技術研究関係職員が、その他に比べまして実際に進級と一か昇給がおそいというようにわれわれは聞いおりますけれども、それを確認されるかどうか一つその調査された結果をまず第一にお聞きしたいと思います。
  16. 尾崎朝夷

    ○尾崎説明員 お答えいたしたいと思いますが、現在の任用給与制度は各省で実施しておりまして、人事院がその調整に当ることになっておるわけでございますが、その場合に、事務官と技術官とを特にそのために差別するということはとっていないはずであります。しかしながら、官職といいますか、局長課長につくということにつきましては、従来の実態から申しまして、事務官に比べて技術官はその数は確かに少いということはあろうかと考えております。
  17. 前田正男

    ○前田(正)委員 数の点はありますけれども、数の点ではなしに、一般的に昇任していくとか月給がよけいになるとかいう点は、大体一般の事務官に比べて、技官の諸君、研究職の諸君が、同じ学校、同じ年度の卒業生に比べて数年の開きがあるという事実が私はあると思いますけれども、そういうことを公務員制度調査会では調べられなかったのかどうか、その点をお聞きしたいと思います。それは事実だと思います。局長課長になる職の数がどうということではないのです。実際に局長になるのもおくれるし、また月給が昇給しているのもおくれていると思いますけれども、そういうことを公務員制度調査室では調べられなかったかどうか、その点をお聞きしたいと思います。
  18. 尾崎朝夷

    ○尾崎説明員 現在の給与制度は、今申し上げましたように、やはり局長とか課長とか、そういう仕事に対しましての給与を支給する建前になっております。そういう職務給という建前は、戦後の給与体系根本理念でございます。従いまして、それぞれの仕事に対しまして給与を支給するということでございますので、同じ年次によって同じような給与を支給するという建前は取っておらないわけでございます。
  19. 前田正男

    ○前田(正)委員 建前の話ではなくて、現実は技術研究職の人は、事務官に比べて一般的におくれておるかどうかという事実を皆さんは調査されたかどうかということをお聞かせ願いたいと思います。
  20. 尾崎朝夷

    ○尾崎説明員 今申し上げましたように、仕事に対して給与を支給するという場合に、そういう官職につく度合いとしましては、先ほど申し上げましたように、従来の実態から申しますれば、やはり技術官の方がどちらかというと比較的少いということは事実かと思いますが、従って、同一年次で比較いたしますれば、おっしゃるようなことはあろうかというふうに思います。
  21. 前田正男

    ○前田(正)委員 少いのではないのです。事実おくれておるかどうかということを、公務員制度調査室であるから、現在の官吏の人たちがどういうふうな実情になっておるかということを具体的に調べられるのが本職だろうと思うのですけれども、そういうことは調べておられるかどうかということをお聞きしたいと思うのです。
  22. 尾崎朝夷

    ○尾崎説明員 建前の問題とそれから実態の問題とあるわけでござまいすが、実態の問題としましては、確かにおっしゃるようなことはあると承知しております。
  23. 前田正男

    ○前田(正)委員 人事院給与局の課長さんがおいでになっておるようですが、人事院においてもそういうことの実態は調べておられるのですか、お聞かせ願いたいと思います。
  24. 船後正道

    ○船後説明員 ただいま尾崎参事官から制度の問題と実態の問題がございました。私からもう一度繰り返して、制度の点につきまして申し上げたいと思います。  制度の問題といたしましては、任用給与を問わず、事務官と技官とで差別をつけるというようなことは一切ございません。採用試験の場合も同一条件でございますし、初任給につきましても、大学卒はいずれも八千七百円でございます。また昇給のやり方、昇格のやり方、一切事務官、技官は差をつけておりません。またいわゆる技官ポストあるいは事務官ポストというようなポストがございますが、そのポストに対する現行給与制度上の評価の問題、つまりある課長を十三級にするとかいった問題につきましても、全く同様に扱っております。  次に実態の問題でございますが、私どもの方におきまして特にこの目的のために統計的に調査したというような資料はございません。従いまして、私の意見ということになろうかと存じますが、実態につきましては、事務官でありましても、あるいは卒業年次に比較して昇進が何らかの事情で非常におくれているという人もございますし、技官につきましても、中にはいわゆる高文出の事務官と同じように昇進しておられる方もございます。これらはいずれもそのポスト新陳代謝、つまり俗語で申しますと早く上の人がやめるかやめないかというような点もあるようでございます。また、その省庁の明治以来の伝統もございまして、それぞれ独自の昇進政策をおとりになっておるというような事情もあると思います。一般的に申しますと、先ほどの尾崎参事官の発言のように、同一卒業年次でただ平面的に比較するということになりますと、一般的に技官の方が事務官よりはおくれておる、かような傾向はあろうと存じます。
  25. 前田正男

    ○前田(正)委員 私は一般的な平均した場合を一つ参考にしてお話を進めたいと思うのでございますけれども人事院は最近公務員の技術関係職員の乗用試験脅しておられると思うのであります。先ほど私が一番先に申し上げましたわれわれ民間で聞いておるところ、あるいはまた学校関係で聞いておるところでは、官庁の方へ試験を受けたいという希望者がなかなか少いようでありますけれども人事院が現在試験をしておられるのに、大体希望の採用の人員だけ優秀な人が来るかどうか、現在どの程度の採用試験の実績になっておるか、それをちょっとお聞かせを願いたいと思います。
  26. 船後正道

    ○船後説明員 私、給与局の二課長でありまして、試験の問題につきましては全然所掌外でございますので、ここでは正確な数字を申し上げるわけには参らぬと思います。もし御要求がございましたら、追ってそれを申し上げたいと思います。
  27. 田中武夫

    田中(武)委員 関連して。今、所管外だからということですが、その関係の方はおられないのですか。私のお伺いしたいのは入る試験のときに、事務官と技官に対して何パーセントぐらいの競争率で人が来るのか、そのうち、入った中で今度は事務官と技官とでいわゆる法文系と技術系で、かりに十人入ったとして、同じ十人のうち何人ぐらいが課長になり、部長になり、局長になるのか、そういう統計はございませんか。
  28. 前田正男

    ○前田(正)委員 それでは、この人事院の問題の今の採用の状態については、一つ専門の関係の方を呼んでいただきまして、その問題について私はお聞きしたいと思いますけれども、われわれが一般的に常識的に聞いているのは、先ほど申しました通り、非常に官吏の方の技術関係の優秀な人を集めるということには今困っておると思うのであります。そこで、この公務員制度調査会が今度これを立案するに当りまして、そういういろいろな実情もあって、研究職というものを分けて、ある程度一つのものを考えられようとしたのでありましようけれども、この研究職というものは、先ほどから参考人の御意見もありました通り、実際優遇されるどころか、懇談会の亘理理事長の話によりますと、さらに開きが大きくなっていくとか、あるいは昇給の率からいきますと、将来は現行より下回っていくとかいうふうな、大体現存の政府が提案した研究職の案も、そういう実態というものを無視したやり方であるのじゃないかと思うのです。  一般的に適用する俸給表でありますから、一般的な実態に応じたような俸給表を作るのが妥当と思います。その点は、公務員制度調査会としてはどういうお考えでああいうものを設けたか、その点について御説明を願いたいと思います。
  29. 尾崎朝夷

    ○尾崎説明員 今回の給与法改正案につきましては、人事院の勧告に基きまして作成したものでございます。その内容は、人事院の勧告におきまして、現在職務の段階といたしまして十五級の制度をとっておりますけれども、実際問題といたしまして、これを運用するに当りまして、たとえば課長なり局長、あるいは係長という職務段階に応じまして運用をいたしております。その場合に、たとえば係長は何級と何級と何級というふうにして、幾つかの級をまとめて運用をいたしておるのでございます。今回はそういう現在の十五級の区分が運用上非常にこまか過ぎる、これをもっと簡素化すべきであるということ、それから現在の十五級の俸給表は幅が非常に短こうございまして、これを運用して参りますうちに、じきに頭打ちになる傾向がある、これを是正するために現在ございます、たとえば行政官庁で申しますれば、局長課長課長補佐、係長、上級係員、初級係員という職務段階に応じまして新しい俸給表等級制度を作りまして、俸給表の幅につきましては、現在の頭打ち、ワク外の点を是正するということで作成しておるのでございます。そういう意味で現行を基礎にいたしまして俸給制度を作ったという点につきましては、俸給制度として現行より不利だということはないと確信しております。  なお研究職員の俸給制度につきましては、現在は一般行政官庁職員と同じ一般俸給表を適用されておりますが、実際問題といたしまして、やはり運用上におきまして、研究所長研究所部長、室長ないし一般研究員というふうにして、それぞれの段階に応じましてそれぞれの何級かにわたった運用がなされているわけでございます。従いまして、今回はそういう現在の運用されている段階、つまり現在の実態の段階に即しまして研究職俸給表を作成しているわけでございます。これは研究職員の職務特殊性に従いまして、同じ大学卒業で入りましても、行政職の場合には段階がだんだん上っていくということになりますが、研究職の場合には、研究職員として、行政職の場合に比べましての昇給の幅が、その職務に適応するようにかなり延伸してあるという実情でございます。従いまして、今回の俸給制度の改正は、現在のそれぞれの研究職あるいは行政職職務の段階に応じまして作ってございますので、俸給表自身としては現在より悪くなるということはないと思っております。
  30. 田中武夫

    田中(武)委員 私の質問に対しては、どうなるのか。
  31. 菅野和太郎

    菅野委員長 田中委員の質問について、今関係の人を呼んでおります。
  32. 前田正男

    ○前田(正)委員 その人が来たら私も少し質問したいのですけれども、来られるまで今の問題の質問を続けたいと思います。どうも今の答弁ではよくわかりかねるのです。それでは人事院の方から提案されて、その要望に基いて作られたそうですから、人事院運用されるのでしょうから、さっき申しました研究職の実態というものを認識されて、その運用に当ってはそういうふうに現在の技術職の人が、一般的に低いところに格づけされておるというような問題を、せっかく今回新しく研究職という表を作る以上は、改善する考えでそういうものを作られたのではないかと私は思うのですけれども、そういう運用を考えられるということにいたしましても、今、参考人からお話がありましたように、実際はこの表に従っていくと、現行よりも悪くなってくるというようなことでは、人事院がこれを運用されるのに、運用の仕方がないと思うのですが、人事院はどういうようにお考えになっておられますか、それを承わりたいと思うのです。
  33. 船後正道

    ○船後説明員 先ほど参考人の御陳述の中で、新制度になりますと、現行よりも悪くなる、かような御発言があったかと思います。私ども実施の立場からこの俸給表運営いたしました場合、現行よりも悪くなることはない、かように考えております。と申しますのは、まず第一に職階制あるいは職務給というものに対する考え方が、ちょっと私どもと違うのではないか。先ほどから職階制あるいは職務給というのは、組織上の部長とか課長とか係長とか、そういう名前がつかなければ上に上れないのが職階制なんだ、こういうふうに受け取れますようなお考え方があったと思います。職務給はどこまでもその職員が現に担当いたしております職務の複雑、困難あるいは責任の度というものを勘案いたしまして、そのような職務ならば、これは行政職俸給表の二等級だとか三等級あるいは研究職の二等級、三等級、かように格づけしていくわけでありますので、何も部長という名前がなければいけないのだというようなことは決して申してないのでございます。ことに行政職俸給表を適用されますグループでございますと、大体組織上の名称というのが、その御本人の職務の内容を一番よく表現しておると思うのでございます。やはり局長部長課長というような段階に従って職務の系列があると思うのです。ところが、研究職の場合でございますと、まず第一に部長と申しましても、A研究所部長とB研究所部長では、部長というものの考え方が違う。たとえば先ほども科長もあれば課長もあるというようなことでございますが、同じ課長でありましても、研究所によってもどうも職務の内容が違うという面もございます。またそういった役付名がなくても、研究内容がきわめて豊富である、かような方もいらっしゃいます。やはり研究職とかあるいは医療職とか、かような職務、その職員職務がやはり職員の豊富な経験、能力というものによるというような関係につきましては、そういった観点からの職務評価、従って等級格づけということになろうかと思うのであります。この点は現行法におきましても全く同様でございまして、現在も職務の級こそ十五に分れておりますが、個々の職員をどの級に格づけるかということにつきましては、いずれもそういった職務給の観点で運営しておるわけでございます。従いまして、現行よりも不利になる格づけが新しい制度であり得るということは、われわれ考えておりません。  次に、新しい俸給制度になりますと、昇給期間が十二カ月から十五カ月になる、あるいは十八カ月になるというような観点で不利になるのではないか、こういうような点もあるわけでございます。この点につきましては、先ほど尾崎参事官から建前の説明がございましたが、現在におきましても、たとえ話でございますが、たとえば行政の六等級と申しますのは標準的な本省の係員、つまり大学を出まして、すぐに官庁に採用されるという係員が、行政職の六等級に格づけられるわけでございます。この係員につきましては、現在は職務の級が七級までが原則であります。ごく一部の例外の者が八級まで行けるのであって、七級から八級へ昇格します際も、大ていの者は頭打ち、ワク外というものを経過いたしまして、非常に不利な昇給曲線のもとに八級まで昇格しておる、かような実情になっております。それが今回の制度では、その標準給のもう一つ上の例外給でありますところの八級の最高号俸まですっと通し号俸的に昇給する、そういう昇給曲線と同じように作っておるわけでございます。この点から考えましても、この改正法が現行よりも不利になるというようなことはまずあるまい、かように考えております。
  34. 前田正男

    ○前田(正)委員 特にこの研究職というものを新しく設けられた以上は、先ほど来一般的な官庁における研究者、技術者の方の実態というものが低いということを是正するだけではなしに、民間との均衡から見ましても、優秀な人をこの際採用して、希望をもって研究をきせていくということからいきましても、当然この運用に当っては、従来の一般的な弊を是正して、技術者、研究者は優遇をするというような考え方で新しい制度ができたと思うのです。そういうふうな運用人事院としてはせられるのかどうか。これはもっとも人事院の総裁に来てもらって御返事を願わなければならぬことかもわかりませんが、しかし、まず一応課長さんのお考えを聞いておいて、また次の機会にでも一つ総裁に来てもらって、根本的な考え方一つ私の方も聞く必要があると思っておりますが、どういう考えか、それを一つ承わっておきたいと思います。
  35. 船後正道

    ○船後説明員 優遇するかしないかは最高の方針でございまして、一課長から申し述べる問題ではございませんが、ただし、私ども制度運営する当の責任者といたしまして、事務官も技官も研究員も、全く職務給という観点を中心にして運営していくのであって、そういった出身学部が何であるか、そういったことには一切関係がない、かように考えております。現状におきましても、私冒頭に申し上げましたように、事務官、技官というものの間には、何ら人事院措置といたしまして制度的に差別はつけておりません。その点は、今度の改正法につきましても、等級別定数の付与の仕方、あるいは昇給昇格の運営の仕方、こういった運営の基準につきましては何ら差別はいたさない予定であります。
  36. 前田正男

    ○前田(正)委員 その点は私も一つ責任者ともう一ぺんお話をしたいと思います。それでは私が先ほどから言っているような結果になって、官庁の中におきましても、差別をつけないでやっていくのだというようなお話でありますけれども、実態で、現状の通りやっていくというのでは、ポスト関係その他から差がついてしまうことになるのじゃないか。ただし、私どもは現状だけではいかぬ、どっちかというと、一般的に優秀な人材を採用しにくい現状になっていると思う。さっきから担当の方がお見えになりませんからわかりませんけれども、われわれの聞いている範囲では、採用もしにくいし、今おられる人も、さっきの参考人の御説明のように、民間の方がいいから、やめて民間の方に行く人も多いと思いますけれども、これらもいずれ詳細お話を願って、その結果によって私たちももう一ぺん根本的なそういうようなことをやらなければならぬ。官庁には優秀な技術研究者がおらぬということになって、わが国の技術研究者の養成はできないということになる。官庁がそういう養成をやるというなら別問題でありますけれども、そういうことでは実際に人がいなくて、幾ら法律があっても、組織があっても、その趣旨の運用ができないわけであります。それは一般的に、根本的に、もう一ぺん人事院の総裁からお聞かせ願いたいと思いますが、実態をもう少し調べてからやりたいと思います。  それでは、その問題は次の機会にいたしまして、人事院がこのような給与の勧告が公務員制度に出されるときに、かねてから研究職のほかに技術職とか審判関係の方とか、そういった方たちは別の俸給表を作成して出してもらいたい、こういう要望があり、また人事院では技術職というものを設けようなんということを話をされたようにわれわれ聞いておりますけれども、なぜそれが今度研究職だけになって、技術職とか、審判とか、そういった特別の俸給表を作らなかったか、その担当の方からお聞かせ願いたいと思います。
  37. 船後正道

    ○船後説明員 技術職員行政職俸給表の適用範囲に含めましたのは、先ほど尾崎参事官からも申し上げましたが、今回の俸給表の作成原理が、職務の段階の区分の実態に即するように等級区分を構成する、かような考えで各俸給表を分けております。従いまして、技官といえども事務官といえども、その職務の段階区分が類似しておるというような実態でございます。従いまして、俸給表としましては同じ行政職俸給表に入れる、かような考えで作られたものであります。
  38. 前田正男

    ○前田(正)委員 これらの問題は、どうもやはり人事院の最高方針のようでありますから、いずれ人事院の責任者に機会を得て質問さしていただきたい。私はこまかい問題はこの辺で省略しまして、ほかに質問の方もありますから、次会に譲りたいと思います。
  39. 菅野和太郎

    菅野委員長 田中委員は、松村任用局長が間もなく見えるそうでありますから、それまでお待ち願えますか。——石野君。
  40. 石野久男

    ○石野委員 ただいまの技官と事務官との待遇の問題については、特別な差はつけてないというお話であります。なるべくそうあってほしいと思いますが、今ここに資料として提出されております厚生省の技官事務官待避比較表という表は、これはおそらく間違いない表だろうと思うのですが、この衣で見ますると、各年次ごとにやはり技官と事務官との差がだいぶついているようであります。これは信憑性があるのかどうですか。一応そういう問題について御説明願いたいと思います。
  41. 亘理信一

    亘理参考人 これは実は全数をプロットしたのではございませんで、技官の中の最右翼でございます。つまりお医者さんの技官、普通の旧制大学で四年の、つまり三年の旧制大学よりも一年長く就学してこられたお医者さん、厚生省技官の中の最右翼、一番給与のいい方をプロットしたわけでございます。これに対しまして薬剤師それから獣医師歯科医師、そういう方々は、三年ないし五、六年おそいわけでございます。
  42. 石野久男

    ○石野委員 これによりますと、たとえば昭和十一年の課長クラスを一応見てみますると、技官の課長とそれから事務官との間に、同じ課長でも片方は十三級の一号俸、片方は十五級の二号俸ということですか、十四級の二号俸ですか、ずいぶん開きがあるようでございますね。これはただ一ところだけでなしに、各年次ごとに、その開きが少くとも一級ぐらいはずっと差がついているように見えます。こういう理由は、これはたとえば厚生省というところは事務官の非常に多いところで技官が少いところであるから、こういうことになっている。別に、技官が非常に主となっている官庁ではこうではないのだというような理屈でもあるのですかどうですか、人事院の方の御意見一つ承わりたいと思います。
  43. 船後正道

    ○船後説明員 ただいまの事務官の課長が十四級だというようなお話だったのでございましょうか。そういたしますと、おそらくこれは私の推定でございますが、この十四級になっております事務官は、あるいは部長局長ではなかろうかと存じております。先ほどもしましたように、事務官と技官とで単純な卒業年次別、あるいは経験年数別の給与の高さが異なるという問題は、給与法の問題というよりもむしろポストの制約ということに伴う任用上の制約ではなかろうか、かようにわれわれ考えております。で、給与上では技官だからすぐ上げてはいけないのだとか、事務官だから早く上げろとかいうようなことは一切触れていないのであります。
  44. 石野久男

    ○石野委員 今、部局長かもしれないというのですが、しかし、この表は決して部局長になっていない。これはやはり課長です。この凡例の方を見ますと、黒い三角は課長です。たとえば十一年のところをごらんになって下さい。そうしますと、十一年出のいわゆる事務課長というのは、だいぶん上の方に出てしますね。それから各年次ごともみなそうでしょう。それは部局長というような形で役職が上だというならば別ですが、同じ課長でこういう開きが給与上に出ておるというようなことは、あなたの言葉とはだいぶ違うのですが、どういうわけですか。
  45. 船後正道

    ○船後説明員 現在課長で十四級という級別定数はございませんし、各省を通じまして十四級の課長というものは存在いたしておりません。
  46. 石野久男

    ○石野委員 これはやはり三角がついていますよ。十四級の二号俸になっています。だからこの表が間違っておれば、私の言うことは全然違っていますが、この表には完全に十四級の二号になっています。
  47. 亘理信一

    亘理参考人 ただいま問題になっております十四級の二の課長というマークは、実は備考のリマークが非常に不完全でございますが、この方だけが局の次長なんでございます。それ以下は全部十三級で、課長さんでございます。
  48. 石野久男

    ○石野委員 その方だけはというのは、ここある十一年の……。
  49. 亘理信一

    亘理参考人 大学十一年出の十四の二の方は二名ございます。これは次長の方ですが、それよりもずっと級の下の十三級のところは全部課長さんでございます。
  50. 石野久男

    ○石野委員 かりにその十一年のところは次長さんだといたしましても、今度は十三年以降になりまして課長のところをずっと比較しましても、その間やはり黒の三角です。それから白の三角との間にはずいぶん開きがありますね。これは給与上の待遇比較、そういうことになっていますね。号俸等級数が出ておりますが、給与上の待遇比較表ということですね。人事院のお話と違うのですが、これはなぜこういう差が出ておるのですか。
  51. 船後正道

    ○船後説明員 推定でございますが、おそらく事務官の方の課長が早く課長になりまして、従って早く十二級になった。そうして早く十三級になった。かようなことであろうと思います。
  52. 石野久男

    ○石野委員 それならば承わりますが、昭和二十三年のところをごらんになって下さい。昭和二十三年のところを見ますと、いわゆる平事務官というのと平技官というのがある。ここでも少くとも片方は九級の、最高が四号になっています。それ平技官の方は十級の二号になっております。ここに四人か五人おりますね。こういう差はどういうふうに説明するのですか。
  53. 船後正道

    ○船後説明員 どうも説明が足りないようでございますが、給与上の問題といたしましては、先ほどから繰り返し申しておりますように、事務官と技官とでは、たとえば昇格の際に技官だったら五年かかる、事務官だったら三年で上げてやる、かようなことはいたしておらぬわけでございます。これは結局各省庁の任用政策あるいは昇給政策、かような結果としてこのような表が重大ならば現われておるのであろう、かように考えております。
  54. 石野久男

    ○石野委員 そうすると問題は、いわゆる給与政策とか昇給政策という問題にかかってくるわけですが、これは各省とも自由勝手にそうさせるという意味でありますか。それが一つ。  それからもう一つ、たとえば厚生省というところは、非常に事務官が主になるところである。けれども、ほかの技官が非常に主になるところでは、今度は技官が上になっておるところが別にあるのですか。
  55. 船後正道

    ○船後説明員 現在公務員給与は、一つ職務の級におきましては、昇給という操作によりまして一定の昇給期間が経過しますと上の号俸に昇給します。しかるに、上の職務の級に昇格するのは、これは級別定数というものがございまして、その級別定数に欠員があって、かつ所轄庁の長が昇格させようという決意をいたしましたときに、これは昇格する、こういうようなことになっております。人事院、といたしましては、その昇格する際の級別定数を作るということと、それからある職員を昇格させます場合に、適格でありやなしやという最低限の資格を作るという点だけが、規制しておる点でございます。それから先の、だれを具体的に上の職務の級に昇格きせるかという問題は、いずれも任命権者の判断によって行う仕事でございます。
  56. 前田正男

    ○前田(正)委員 ちょっと関連して。私も総裁が来てから、もう一ぺんお伺いしようと思っておるのですが、任用上のいろいろな制約があって、実際問題として技術職とか研究職の人が一般的に低いということは、先ほどもお話の通りでありますが、そういうようなことを収めるのが、今度の公務員制度のやり方じゃないかと思うのです。そういう頭で新しく研究職給与法というものを作ったのじゃないかと思うのですが、そういうふうな任用上の制約というものが改まらないとか、そういったことで技術者と研究者の人たち待遇が、一般公務員並みにならないということですか。これは今のお話を聞いておると、任用上のことだから、今度の制度を作っても、それは改まらないということと同じことだと思います。今のお話の通りでいけば、今度の制度によりましても、任用上の制約があって、改まらないというわけですね。それならそれで、われわれも責任者を呼んで、もう一ぺん改めるようにやり直してもらわなければならぬと思います。今のお話の通りならば、そういうことになると思いますが、どうですか。今度は改まらないわけですか。
  57. 船後正道

    ○船後説明員 その点につきましては、現行制度では、たとえば係長あるいは課長補佐という段階で、一段ごとに職務の段がございまして、なかなか上れないわけでございます。それが今度ではおよそ係長という職務につきますと、ずっと同じように昇給ということのみによって運営されるわけでございます。新制度になりますと、こういった現象はよほど改善される、かように考えております。また各省庁におきましても、最近の実情では、事務官、技官の給与差は詰めるべきである、かような考え方のもとにおきまして、給与事務を運営しておる、かように考えております。
  58. 前田正男

    ○前田(正)委員 それはおかしいじゃないですか。さっきから、ポストが足りないから、その差ができるのじゃないかという御答弁だった。そのポストというものは、今度の公務員制度関係なり、任用の問題である。今の御答弁で、係長になれば、あるいはそういうようなポストにつけば、それは今までよりもよくなるだろうというお話ですが、ポストは今度の制度によって変るわけじゃない。ポストとか、そういうポジションというものは任用上変らないということなら、結局今度の制度改善しても、技術職というものは、一般職よりも低いという一般の現状は改まらないということになるだろうと思います。
  59. 船後正道

    ○船後説明員 説明が足りないのでございますが、実は現在係長と申しましても、七級と八級と九級と十級、かように階段が四つほどあります。その階段のたびに昇格という操作が行われるわけであります。その間に、やはり任命権者の判断あるいは級別定数の状況、種々の条件によって、おのずから遅速が生じてくるわけでございます。今回の制度によります。と、およそ係長になりますと、みんな同じように昇給する。かようなことになりますので、そういった面の遅速というものは改善されるのじゃないか、かように考えます。
  60. 前田正男

    ○前田(正)委員 それだから、今お話のように、係長になればということで任命権者が係長に任命すればという条件がついておるわけでしょう。その任命権者が係長にするとか、そういうポストにつければということなら、現在は技術職というものは現状のように差がついておるという、さっきからの御答弁で、同じことじゃないですか。一つも進歩した話じゃない。それならば、この際そういうふうな任命権者が技術職のポストをふやすというようなことが、公務員制度の今度の改正とともに行われるかというと、そうではない。そうでないならば、やはりこの際技術職の人たちがよくなるような基準というものを作ってやらなければ、よくならないと思うのです。任命権者が任命すればというお話ですが、それならば同じことじゃないかと思う。現状からどこが改まるのか、一つも改まらないじゃないか。だから任命権者がポストを作るような制度にこの際どういうふうにして改めるのか。そういう研究職、技術職というような人は、一般的に、そういうポストにつかないでやる仕事の方が多い。従って、任命権者がそういう人を任命する機会が少いのだから、それならば、研究職とか技術職とかいうものは、特別の給与表を作ってやって、そういうふうなポストにつ一かなくても優遇するような給与法を作ってやるというのが当りまえである。現在同じ官庁の中においても、技術職、研究職が低いということ、特にそれが民間と比べて、こういう時代になって人を採用しにくいというような現状から見て、それを改めることを考えなければいけないのじゃないか。これは同じことで、今までと変っておりません。今までの技術者と差はありません。ただ任命権者のやり方できますというならば、同じものを何べん出しても、一つも現在の悪い点が改まらぬのじゃないか。どっちか悪い点を改めなければならぬ。これは人事院の責任者が考えたかもしれませんけれども、それでは改まらぬと思います。
  61. 瀧本忠男

    瀧本政府委員 途中から参りましたので、お話に十分答え得ますかどうですか。われわれが現にやっておりますことは、先ほど船後課長から申し上げましたように、人事院としては一応の基準を作っておるわけでございます。従いまして、この給与だけですべての問題を解決するということは、事実上困難でございます。われわれが今回やろうとしておることは、やはり任用制度上で給与と同様の考慮が行われるということを前提にいたしませんと、給与制度だけ変えただけで、従来各省がやっておることと同様のことをやるといたしますれば、大して効果がないじゃないかという御指摘になろうかと思うのであります。それはそういうことになるかもしれません。従いまして、これはやはり任用制度上この考慮をしていただくということがどうしても必要になろうかと、このように考えておるのであります。われわれといたしまして、この技官と事務官の問題でございますが、行政官庁におきます技官というのは、現在は申し上げるまでもなく、行政が非常に進歩しておりまして、科学技術行政というようなものが非常に浸透しておる。そのために技官と事務官というものは、区別する必要がないのじゃないか、区別するということが、むしろ場合によっては事務官優位というようなことにもなりかねない。従って、行政官庁におります技官というものは、事務官と別扱いにしない。同じ基準でものを考えていく。ただ任用に当って、それを差別待遇のないようにしていただく、こういうことにすればいいのではなかろうか、このように考えまして、実は一昨年、御承知のように公務員制度調査会という公務員制度全般にわたります制度調査ということを内閣側でやられます会があったのでございますが、その答申には、やはり技官を優遇するために、事務官と分離したらどうかというような議論も出たのであります。その点われわれいろいろ考えた結果、事務官と技官とを分離して扱うということは、かえって不利ではなかろうか、このように考えまして、事務官と技官とは区別しない基準で物事を考えていく方がいいのではないか、このように考えております。  研究官について申しますならば、この研究官というものは、わが国科学技術行政を推進させますためにも、非常に優遇していいというように個人的には考えておるのであります。ところが、今回人事院が勧告し、それを受けまして政府側が提案になっておられます俸給表の改正におきましては、部分的に、たとえば一等級を増設するということによりまして、研究職の最高を、現在の行政官庁におきます事務次官と同程度のところまで持っていくということが加えられたのであります。この点は非常に考慮が払われておると思うのでありますが、そのほかの点につきましては、やはり研究官を現状よりもさらに優遇するという線はまだ出ていないように思うのであります。人事院が、なぜそれができなかったかと申しますと、これは今回の改正そのものが各職群間の給与の水準というものをどの程度に置いたらいいかというところまで話が持っていけなかったのであります。ただ同じ種類の職務をやっておりますものの中におきましては、その待遇にあまり均衡が破れないように、その点だけが主眼でございまして、人事院研究職を優遇するということを念頭に置かなかったわけではないのでありまして、今回はそこまで手が届かなかったというのが現状でございます。  それからなお、行政官庁におきます技官の問題でございますが、これは最近漸次技術行政が浸透いたしまして、行政の中に食い込んでおりますので、技官が昇進する機会が多いと思うのでありますけれども、従前はやはり技術ポストというものを非常に制限するというようなことが一般にあったようでございます。従いまして、そういうところにおいては、技官が同一ポジションに長くおられますと、あとの者がやはり下の級におらなければならないというようなことがございまして、平均的に事務官と技官との在職年数の差というものが、やはり待遇の問題に現われているということがあるのではなかろうか、従来はそういう傾向があったのではなかろうかと思うのであります。ところが最近は、行政職におきましても、いわゆる天下り禁止でありますとか、いろいろな問題が起っておりまして、漸次その年数が延びております。従いまして、技官の方がずっとポジションが進む度合いと、それから行政職の在職年数が延びるという両方の作用によりまして、両者は現在次第に歩み寄りつつある、このように考えております。われわれの給与上の措置だけによりまして、この問題を全部解決することは困難かと思いますが、その方向に向って現在努力しつつある、このような現状でございます。
  62. 石野久男

    ○石野委員 従来技官は、その技術ポストの制限があるために、行政官の事務官の方よりは非常におくれを持っておった。今度の給与改正では、研究官については若干の考慮は払ったけれども、まだ職群の中まで手を加えることができなかったというのが、今の御説明でございます。そこで私はお尋ねいたしますが、従来そういうふうに技官の中にはポスト制限があって、非常におくれておったという問題を早急に取り戻す方法を、今度の改正法案の中ではどの程度に織り込んであるのか、どういうふうなお考えを皆さんは持っておられますか、その点を一つはっきり伺いたい。
  63. 瀧本忠男

    瀧本政府委員 その点につきましては、先ほど船後課長から御説明したかと思いますが、現在は職務の級が十五段階ございます。同じ職務をやっておりましても、たとえば六級の人もありますし、あるいは七級、八級というようにあるわけでございます。現在はこの七級から八級に進みます場合に、やはりどこで八級に進めるかという問題があるわけでございます。これは任命権者がやっておられますが、その場合に、たとえばある省庁において、かりに事務官であれば六級のある号俸から上げるのを、技官の場合にはポストが詰まっておるというような全般的な考慮のために、全体の技官内における人事のバランスを考えるために、たとえば二号なり三号なりおくらしたところで上げるというようなことが従来はあったかもしれません。ところが、今回のわれわれの案によりますと、たとえば係長なら係長というところで一本にいたしておりますので、その中間段階における各省のそういう操作をやられる余地はなくなったわけでございます。従いまして、この一つの段階に達しますれば、その段階の中だけは同様のスピードで進んでいく、こういうことになるわけでありまして、その点に関しまする限りは、従来よりもよほど進歩になっておる、このように考えております。
  64. 石野久男

    ○石野委員 将来はそういう形が出てくるという着想が出ておるといたしましても、従来そのような差が出ておった問題の改正ということは、今回の給与改正法の中では全然考えていないということでございますか。
  65. 瀧本忠男

    瀧本政府委員 その点は、給与というものが、たとえば教育公務員の三本立ての法案でございますとか、ああいうふうな画期的な法案が提出されまして、そして教育職は全部一号俸給与を上げるとかなんとかいうようなことが出ますと、これは予算の措置も伴いまするし、できるわけでございます。ところが現在今おっしゃったような措置人事院限りでやろうといたしましても、これは言いわけがましくてはなはだ恐縮なのでありますが、これは予算の問題を伴いまして、なかなか実現が困難である。こういうことになるのでございまして、技官の優遇につきましては、法律措置というようなことをやっていただくのが一番近道ではなかろうか。われわれやりたい、やりたいとは思っておりましても、限界がございまして、従来までできなかった点がございますし、また人事院がやろうと思って従来やってきたのでありますが、その進歩は遅々としておったということは、否定できないと思います。
  66. 石野久男

    ○石野委員 ただいまの御説明によると、結局予算的措置を伴うので、やりたいけれどもやれないというのが実情のようです。この問題は一応あと人事院の総裁とかその他関係者に来ていただいて、委員会としてもう一ぺん各自が聞きただし、そういう方向を明確にして、違った方向に出していくようにしなければいけないと思いますので、私は今の局長からの答弁はこれだけでおきまして、あとあらためて関係者を呼んでいただきたい。委員長にお願いしておきます。
  67. 菅野和太郎

    菅野委員長 田中委員。
  68. 田中武夫

    田中(武)委員 松村任用局長にお伺いしたい。先ほど来参考人の御意見を聞いておりまして、たしか田中参考人ではなかったかと思うのですが、そのほかの参考人も言われたと思いますけれども、現状のような状態であるならば、技術関係の学校を出た優秀な人が公務員にはならない、こういうような意見が出ておったわけです。そこで、お伺いするのですが、人事院任用試験をやっておられますが、事務系統と技術系統の人の応募の率はどういうふりになっておりますか。及びその人たちの素質——いいのが来るとか、学校の成績のあまり芳ばしくない者ぼかりが参るとか、こういったような傾向についてはどのようになっておるか。事務系統と技術系統に分けて御説明願いたい。
  69. 松村清之

    ○松村政府委員 ただいまの御質問にお答えしたいと思いますが、ちょっと資料を持っておりませんので、正確なことは申し上げられませんけれども、私の記帳では、本年度の試験を例にとりますと、六級職の試験、これは二十四種類の試験がございます。それで今事務系統、技術系統とおっしゃいましたが、事務系統としては、その二十四のうち、行政、法律、経済の三つを事務系統と考えていいのじゃないかと思うのであります。あとの二十一は技術系統で、これは土木、建築、農学、畜産というようにたくさんございます。それでこの全受験者は二万五千人ございます。このうちただいま申しました行政、法律、経済の三科目の応募者は大体七、八千人くらいではないかと記憶いたしております。二万五千人のうち七、八千人程度が行政、法律、経済への受験者として事務系統、こういうふうに考えます。ただ行政という試験でございますが、この試験は別に事務系統に限っておりませんで、問題も技術系統の人もできるようにという配慮から作成されておりますから、行政の受験者のうち二、三割は技術系統の者も受験しておりますので、私の今申し上げました数字は、行政、法律、経済全部をひっくるめて七、八千人と申しましたわけでございます。受験者の状況はそういうふうになっております。  それからもう一つ、ざっくばらんに申しまして、この間の受験者の素質はどうかという御質問でございますが、これは年によって、民間の景気、不景気の状況によっても非常に違っていると思います。御承知のように、この三十一年度、昨年の夏から秋にかけて試験を行なったのでございますが、この年は非常に民間が好況でございまして、大ざっぱな言い方で申しますと、技術系統の中でもある部分、たとえば、今申しましたように二十一種類ございますが、土木とか建築のように、主として土木などは、官庁の採用者数が非常に多いし、将来の問題等も考えて、先ほどから話をしているポスト等もあるという関係で、土木、建築その他若干の部門では、民間と比べて、それ以上に優秀な人が受験されて公務員になっておられるように思います。たとえば造船とか機械、電気という部門になりますと、民間の好景気の影響を受けまして、少くとも本年度におきましては、民間へ優秀な人が流れていったように見受けられます。以上でございます。
  70. 田中武夫

    田中(武)委員 ただいまの御答弁によりますと、ざっくばらんに分けて事務系統と技術系統、この応募者において、そう目立って技術系統が少いというようなことはない、こういうことですね。それから任用試験を受けた中でも、これは大体二道をかけておると思うのです。会社も受けてみる、そして人事院の試験も受ける。ところが会社の方がうまく入れば、一方は入らない、こういうことになると思うのですが、そういう傾向はどうですか、ことに技術系統について。
  71. 松村清之

    ○松村政府委員 第一の問題の受験者の状況は、大体お話のように、これは卒業者の数と受験者数とかみ合せて考えなければなりませんが、大体においてそう事務系統と技術系統の間に差異はないとお考えになって差しつかえないんじやなかろうかと思います。先ほど申しましたように、ことしにおいては技術系統の、たとえば造船等の特殊の部門においては、すでに受験の当初から民間の方へ就職がきまって、もう公務員試験を受けない。こういう部門も例外的にございましたが、大ざっぱに見て差異はないと考えていいんじゃないかと思います。  それから受験して合格した後において、二道をかけて、民間へ行くか、官庁の方へ行くかという問題でございますが、これは技術系統だけでなく、事務系統にも、やはり二道をかけまして、銀行、会社等の民間の一流のところと官庁とをかけまして、民間の方へ流れていく数字を大ざっぱに申し上げますと、たとえば事務系統と限ってもようございますが、大体公務員試験合格者の半数は民間の方へ行っております。そういうことで若干はやはり事務系統の方が官庁の方へ行く。特に自分の希望しておる官庁に採用されれば、その方へ行くということは申せましょうけれども、事務、技術に限らず、同じように、民間へ官庁の就職が移っていく状況は、大体似たり寄ったりじゃなかろうか、そういうふうに考えております。
  72. 田中武夫

    田中(武)委員 私途中で参りましたので、あるいは間違っているかもわかりませんが、たしか田中参考人じゃなかったかと思うのですが、こういうような状況であるならば、優秀な人は特許庁の方へ来ないだろう。また官庁の方へも行かないだろう。こういうようなことを、どこかの大学の人がおっしゃっておるということをおっしゃっておりましたが、今、松村任用局長のお話では、事務あるいは技術いずれも、あまり変った状況ではないという答弁なんですが、参考人の言われたのは、何か特別なところをとらえて言われたのですか。一般的な問題としておっしゃったのでしょうか。
  73. 田中博次

    田中参考人 先ほど申しましたのは、私が東京のある大学に行って先生に聞いた結果を申し上げたので、一般的ということはちょっと無理かと思います。二、三の大学で聞いた話であります。それから優秀な人が来ないだろうというのは、これは主として特許庁について私は考えておることでございまして、ほかの官庁技術官についても、私の考えを適用していいかどうかについては、ちょっと私調べておりません。
  74. 田中武夫

    田中(武)委員 松村局長にお伺いしますが、今田中参考人のおっしゃったのは、お聞きの通りであります。そこで、人の問題においてはあまり大差なかろう、こういうことですが、二、三の大学、おそらく技術についての優秀な学校じゃなかろうかと思いますが、日本における技術系統の優秀な二、三の学校といいますか、そういうところからの公務員任用試験の受験の状況は、いかがでしょうか。
  75. 松村清之

    ○松村政府委員 本日は資料を持ってきておりませんので、また本年度の統計はまだできておりませんので、的確なことは申し上げられませんが、先ほど田中さんでございますか申されたように、本年度に関しましては、確かに、特許庁の採用が定員が増加になりましたので、三月に特別に試験を行いまして、新たに採用するような手続をとったほどでございます。特許庁は機械等を主としておりますので、そういう部門は確かに本年度は民間の方へ優秀な者が流たことは、否定できないのじゃなかろうかと思います。
  76. 田中武夫

    田中(武)委員 優秀なのが流れたのは否定できないのじゃなかろうか、これは神武以来といわれるような一部造船とか何とかの業種においては好景気がさせたのであって、これは一般的の問題ではないと思うんです。あまりいいのか集まらない。先ほどから議論になっておるのですが、それは公務員においては、いわゆる事務系統と技術系統と比べた場合、将来においても事務系統の方が優遇されて、簡単に考えても今までの公務員は、いわゆる公務員制度ができて以来、いわゆる法文系が重要視されて、技術系統が優遇されていなかった。そのために日本の技術振興がおくれておるのだと見られておるわけです。これは昔の軍隊の例ですが、そういう例を今持ち出すのはおかしいと思いますけれども、本官は大将、元帥になる道がある。ところが技官とか技術系統あるいはお医者さん系統は、たしか中将でしたね。技術総監とか軍医総監とかいうのがただ一人、そうして中将になるのが一人、あとは少将が一人か二人くらいで、大体大佐どまり。これが昔の軍隊の制度でした。それと同じような考え方が、今なお公務員制度の中にあるんじゃないか。そのために優秀な技術者の方が得られない。従って、いわゆる法律万能であって、技術が軽視されて、こういうことになったのじゃなかろうか、こういうことが今問題になっている。同時に、今度の給与法の改正に関連して、技術者をもっと優遇すべきじゃないか、こういうことですが、実際の状況として、任用の状況からいって、事務系統と技術系統とが、先ほど来、課長からの答弁によりましても、制度の上においては差別はない。なるほど制度の上においては差別はないと思います。現在労働基準法からいっても差別すべきではないので、差別はないと思う。しかし、実際の面において、先ほど来、参考資料として出ておる厚生省の一つの例をとっても、相当開きがあるんじゃないか、こういうように言ってるんですが、実際の問題としていかがでしょうか。たとえば、ここに同じような大学を卒業した者が十人ずつ公務員になったとします。それが将来課長になり、あるいは部長局長になる割合は、事務系統では十人中何名が部長課長になり、技術系統では何名が部長課長になるか、そういう詳細なデータはないと思いますが、比率は大体どういうふうになっておりますか。
  77. 松村清之

    ○松村政府委員 お話のように、詳細な資料がございませんので、的確にお答えできないのでございますけれども、戦前と申しますか、現在の公務員制度ができます以前の制度のもとにおきましては、確かに事務官、技術官の昇進ということに関してアンバランスがあったかと思います。任命権者の一存で人事をおやりになりますので、これは任命権者の良識に待つよりほかにいたし方ないのでございますが、こういった傾向は、今日の公務員制度ができましてからは、次第に是正されつつあるように見受けるのでございます。人事院が二十四種類の試験を行うようになりましたのは、昭和二十四年度の採用者からでございますので、まだ十年に満たない月日ございまして、それらの人々が現在ついているポストはせいぜい係長程度で、それに関して比較することはできませんけれども、事務系統を優位に扱うという傾向は次第に改まってくるように見受けるのでございます。今日では事務官と技官に現実の問題として若干のアンバランスはございましょうし、また事務官同士の間でも非常にアンバランスができておる状況でございます。それらをひっくるめまして、全く同じように昇進していくかどうか、これは将来の事務官系統、技術官系統に適するポストの問題にも関連いたしますので、的確な予想はできませんけれども、こういった事務、技術のアンバランスの傾向は、徐徐にではありますけれども、少くとも改まってくるように私は見ておるのでございます。
  78. 田中武夫

    田中(武)委員 人事院ができてから、そういうアンバランスがないようにだんだんと是正せられてきた、しかし従来においてはそういうことは確かにあったということは、大体言外にお持ちのようでございます。ところが、そういうことは制度の上からくる問題なのか、考え方の上からくる問題であったのか、あるいは技術系統にはポストが少ないのでそういうことになったのか、あるいは学閥がせしめたわざであるか、これは一体どういうことですか。
  79. 松村清之

    ○松村政府委員 これも私一個人の見るところでございますが、私は、やはり課長とか局長とか、こういうポストの多少の問題によっておったのだろうと見ております。戦前は確かに事務官優位というような考え方もありましたけれども、今日においてはそういう観念は薄らいでおりますし、また学閥といったものも、それは大きな組織の中でございますから、一部にはあるのかないのかわかりませんが、こういうものは全般的に見て考えられない問題だろうと私は考えております。
  80. 田中武夫

    田中(武)委員 過去にはそういうことがあったが、技術系統と事務系統とがそういう差別待遇を受けないようにだんだん是正せられてきた、こうおっしゃるのであります。ところで、今度新たに出されておる給与法の改正についても、今、参考人の御意見人事院側の御答弁とは、若干食い違っているわけです。今度の俸給表ができれば、人事院側はそういうことが是正せられるのだと言っておるし、参考人の御意見は、これじゃなお困る、こういうことになっていると思うのです。そこで人事院としては、この給与の改正を考えられた場合に、現在の制度の上ではないけれども、過去においてそういうアンバラスがあったということをお認めの上で、技術系統についてもよくしたいというおつもりで作られたのであるか、これはどうなんですか。
  81. 瀧本忠男

    瀧本政府委員 先ほど私から申し上げましたように、昨年の人事院勧告におきましては、同様の職務をやっておりまする範囲内の均衡をはかるということが主眼になりまして、たとえば研究職教育職関係でありますとか、一般行政職と税務職の関係でありますとか、そういうものの水準の高さと申しますか、そういうところを是正するというところまでやることができなかったのでございます。従いまして、そういう問題は将来に残しているのでありますが、先ほど申し上げましたように、これは若干ではございますけれども、従来の運営よりもよほどスムーズな運営ができるように、職種のこまかい区分をやめまして、係長なら係長とかいろいろ段階がございましょうが、その段階の範囲内において、なおかつ各省が悪意に事務官と技官とを差別待遇をするようなことはなくした、このように考えたつもりであります。しかし、それだけでは十分ではございませんし、問題が残っておりますので、今後も努力いたしたいと思っております。
  82. 田中武夫

    田中(武)委員 現在出されている給与の改正に関しては、公務員があげて反対をしているということは御承知と思います。これはいわゆる職階級制度の強化だとか、あるいはまた高文制度の復活だというふうに俗に言われているのですが、聞くところによると、各省の中にはM官僚といって、これは高文出を指しているらしいのですが、特権階級がいまだに存在している。ところがその特権階級をなお保護しようとしているのが現在の給与改正のねらいであるといったようにも伝えられるのですが、あなたの今の答弁だと、そういった差別待遇が是正せられるようなつもりで作ったのだとおっしゃっているのです。それが一般意見と食い違っているのですが、一般考え方が間違っているのか、それともあなた方の考え方が間違っているのですか。
  83. 瀧本忠男

    瀧本政府委員 ただいまの問題でございますが、人事院の勧告にいたしましても、またそれを多少手入れをいたしまして、現在提案になっておりまする政府側の法律案にいたしましても、根本のねらいという点は同じになっていると思うのであります。この点につきまして、いろいろ世間でうわさされておりますけれども、それはわれわれの説明が十分に足りていないという点が多々あるのではなかろうかと思っております。現在この問題は、当院の内閣委員会において、ことに本日から小委員会がそのために設けられまして、十分審議を尽されておりますので、その席上では十分御説明を申し上げているのであります。われわれは、世間で言われているほど悪くなっていない、それは改正法でございますので、部分的に多少の問題があるかもしれません、これは十全とは申されませんが、大局的に見ますると、悪くなっていない、このように考えているのでございます。高文官僚だけを擁護したのではなかろうかということでありますが、私事にわたって恐縮でありますが、私は高文官僚ではないのでございます。技術出身でございます。それで技術系につきましては、十分尊重したいという決心を絶えず持っております。私が中心になりまして事務的に作った案でございますので、高文官僚の擁護ということは全然考えおりません。しかし、問題は先ほどから出ておりますように、すべて給与制度だけで片づく問題ではないのでございまして、むしろ任用制度を各省がどういうふうにやっていくかということが問題でございまして、給与はむしろそのあとづけをしていくというだけでございます。従いまして、給与制度でそういうふうな職務制度と申しまするか、国が非常に多くの職員を雇用いたしております際には、やはりそういう現在の段階につきまして事を考えるのが当然ではなかろうか、現に給与法におきましても、給与というものは、職務と責任においてこれをなすのだということが明記してあるのであります。従いまして、われわれはその法律に従ってやったまででございまして、これはやはり運用の際に任用上の問題と関連いたしまして、あやまちない運営がされることをわれわれは希望しておる次第でございます。
  84. 田中武夫

    田中(武)委員 おっしゃるようであればはなはだけっこうであるのだが、そんなけっこうなものならば、公務員の諸君がストをかけてまで争うというようなことはなかろうと思うのです。今度の春闘がこれはちょっと問題がそれるかもわかりませんが、いろいろと問題を含んでおりました。やはり給与改正の問題も一つの問題であったと思うのです。今あなたのおっしゃるところによると、これは説明が足らんのだから誤解があるのじやなかろうかとおっしゃっておるのですが、これはやがて内閣委員会給与委員会ではっきりと論議せられると思いますが、何とおっしゃっても、従来われわれが常識的に考えておるところによると、やはり高文万能であり、法文万能であった。そうして技術系統はどこかすみの方に置かれておるのじゃなかろうか、これが一般的の考えであり、感じであります。従って、参考人の各位からもそういったような意見が述べられておったのであります。  そこで、参考人の各位にお伺いするのですが、今の滝本給与局長がああいうようにけっこうなことをおっしゃっておったのですが、一体皆さん方どういうようにお考えになりますか。
  85. 亘理信一

    亘理参考人 私は先にも機会を与えられまして申し上げましたように、人事院で最善の努力をしておられるとおっしゃいますけれども、額面通りには決して受け取れないと思います。
  86. 前田正男

    ○前田(正)委員 任用局長が来られたので、先ほどの私の質問のうち残っておる問題をお聞きいたします。先ほどからの御答弁を聞いておると、本年度の技術関係研究関係職員の採用は、実際間に合ったのですね。
  87. 松村清之

    ○松村政府委員 六級職試験は毎年一回やることにしておりまして、昨年は八月から秋にかけまして試験を行なったのでございます。実は本年度は先ほど申し上げました通り、特許庁に関しまして定員が非常に増加いたしたのでございます。そのため昨年の試験の結果による合格者だけでは間に合わなかったことは、これは、一方において定員増加がありました関係上、しようがなかった次第であります。そのため、この三月に特許庁を主といたしました応用化学、機械、電気通信の二十四種類のうちの三種類に追加試験ともいうべき試験を実施して、やっと間に合った、こういう状況になっております。
  88. 前田正男

    ○前田(正)委員 主として特許庁ですが、特許庁以外の場合でも間に合わなかったものがあったようですが、ことし採用になった人の試験の成績程度というものは、昨年採用になった人たちとどうですか。
  89. 松村清之

    ○松村政府委員 まず最初のお話の間に合う、間に合わぬの問題は、特許庁の問題を抜きにいたしますれば、間に会ったと申して差しつかえない。主として特許庁の増員のために試験を行なったという意味の主としてでございます。それから素質の問題は先ほど申しましたように、私は昨年と本年とを比較して申し上げますと、本年度の合格者の質は、先ほど申しましたところの二十四種類の試験部門のうちの特定の一、二の部門につきましては、質が前年よりも少し下っておるような気がいたしております。
  90. 前田正男

    ○前田(正)委員 それから、これは事務的な話を先に考えてもらいたいのですが、人事院の方では、技術職、研究職の諸君で、中堅層でやめていく方の統計というものはとっておられますか、その点はどうですか。要するに、やめていく方と新しく入ってくる人とのバランスがとれておるかどうかということです。民間は景気がいいからやめていくという人がだいぶ出ておるように聞いておるのですが、その間の事情はどういうふうにしておられるか。
  91. 松村清之

    ○松村政府委員 これも事務、技術に区分しないでの公務員任用、離職の統計は毎年とっておりますけれども、技術の関係はどうなっておりますかは的確には調べておらないのでございます。この点は私の勘でございますけれども、やめていく人が多い、というふうには感じておらないのであります。
  92. 前田正男

    ○前田(正)委員 それは、そういうふうに思っておられるかもしれません。実際問題としては、政府の技術者の養成機関で、いい人が抜けていくということは、だいぶあっちこっちに出てくると思います。そこで私の聞きたいのは、三十一年度は好景気だからこういうふうになった、神武以来の景気だからこうなったとおっしやいますけれども、技術者不足というものは、これからよけい続いてゆくのじゃないかと思うのです。世界の実情は、理科系の人と理科系でない人の大学の卒業生の比率は、アメリカは五割以上だが、ソビエト圏はもっと多いのです。日本は逆になっておる。ところが、日本も世界の情勢に応じて、やはり科学技術関係仕事というものはどんどんふえていっておるのです。従って、この状況というものはだんだん私は詰まってくるのじゃないかと思う。アメリカにおいても一番心配している問題です。だから、人事院の一番大事な公務員の問題を全般的に担当しておられる方の認識というものを、この際公務員制度を作るときに将来のことも考えて、根本的に改めておかなければ、必要な人も間に合わないのじゃないか。去年は二、三くらいしかなかったということですが、前年に比べどんどん成績の程度を下げていかなければ人が集まってこない。そういうふうな現状になってくるのじゃないか、私はそういう点を非常に心配しておるのです。任用局長はこの公務員制度をこの際改正するときに、将来の見通しはどう考えておられるか。だんだんと程度を下げるということでは困るから、この際、任用立場から、技術職、研究職待遇というものを根本的に改めてもらいたい、そういうふうなお考えを持っておられないか。その点をお聞かせ願いたい。
  93. 松村清之

    ○松村政府委員 ただいまのお話でございますが、長年月を見ますれば、確かに仰せのような傾向が出てくるかと思いますけれども、実は現在の段階におきましては、技術系統の受験者と合格者との関係を考えますと、受験者が十数倍おるわけであります。それで、ここ当分の間は、官庁の需要に対して、技術者の不足を来たすという問題は起きないのではないかというふうに見ております。
  94. 前田正男

    ○前田(正)委員 そうじゃなしに、私の言ったのは、本年度は採用者の人の成績が下っておるという御答弁があったように思うのですが、そういうふうに成績を下げて採用していかなければならぬということは、これからふえていくのではないかと思うのです。その点局長はどう考えておられるか。私はだんだんと質を下げて採用していかなければならぬというようなことになってくるのでは、行政の中心になっていかれる形の公務員というものがそういうことでは困るのではないかと思うのです。それでも国家行政というものは成り立つ、こういうのなら別問題ですけれども、どういうお考えか、一つ承わっておきたいと思います。
  95. 松村清之

    ○松村政府委員 本年度のような特殊の状況のもとにおきまして、一、二の部門につきましてはそういう懸念も起きるかと思いますが、普通の民間の景気が普通の状態でありまするならば、当分の間はそういうおそれはないじゃなかろうかと見ております。それとともに、やはり大学の技術系統に学んでおる人についても官庁へ就職する、そういった人事院の試験に関する公報と申しますか、そういうことも今後十分やる必要があるのじゃなかろうか。それをやれば現状でもっても当分はやっていけるのじゃなかろうか、こういうふうに判断しております。
  96. 前田正男

    ○前田(正)委員 現状ということは、ことしのような特殊の例ということを今話されたけれども、ことしのような特殊な例というものは、それじゃ、もうこれからは続かないというふうに考えておられるか。その情勢判断が全然局長と私とは違うのです。ことしのようなそういう情勢というものは今後続いていくのではないか。さらに技術者の数というものが足りなくなってきて不足していくのではないかと思うのです。だから、今のお話でいくと、それはことしは特別の神武景気で民間がよかったのでそういう例が出ているが、来年はそんなことは心配ないのだ、こういうふうなお考えのようですけれども、そこの根本的なところを一つよく御認識を願いたいと思うのです。その点が全然私と局長意見が異なっておるようですけれども、その点をもう少し御研究を願いたい。これは意見が違うのですから、あえて御答弁を求めませんけれども、もう少しよく一般の技術者の現在の教育状況と今後の世界の情勢、世界が何に中心を置いてやっているとか、そういうところをよく御認識願ってやっていただかないと、それは人は来るでしょうけれども、成績の悪い人を程度をどんどん下げていかなければならぬということになると思います。
  97. 菅野和太郎

    菅野委員長 岡委員。
  98. 岡良一

    ○岡委員 せっかく今度は政府も科学技術の振興のために技術庁を設けたり、国会でもこの委員会を設けて真剣に取っ組んでおるわけです。そこで、政府の研究機関にも、できるだけ優秀な研究者が集まっていただきたいし、また来られた方は安んじて研究にいそしんでもらいたい。そうなれば、ひっきょうやはり研究者に対する処遇の問題が一番の条件と相なるわけであります。きょうは五名の参考人の御意見を聞かしていただき、なおまた人事院の方からもそれぞれその立場からする御意見を聞かしていただきましたが、なおわれわれとしては幾多釈然としないものが残されておるわけであります。現に給与局長の御意見に対しては、亘理参考人は納得がいきかねるというような格好で、全く立場が異なっておる。いずれにいたしましても、給与局長自身も、研究職については手の行き届かない面が多々あるというふうにおっしゃっておられるし、給与課長の御意見によれば、やはり係長以後は通し号俸で最高は事務次官級までは昇給の道があるといわれましても、職務の区分に基く給与の区分というものも、やはり事実上これまでの任用の慣行からいえば、これまでやはり研究職職員の処遇について不当な制約を与えておった任用制度と不可分な問題が残されておると思うのであります。こういうような点を明らかにして、委員会の責任としても、十分今後の科学技術振興の前提になる研究職職員の処遇のためにはできるだけの努力を払うべきであると思いますので、私は石野委員の提案に加えて、できたら明日午後にでも委員長のお計らいで、特に研究職を多く抱えている省庁の人事任用の担当者の方にもまた人事院の総裁にも御出席を願って、これらの問題に対してさらに本委員会としても検討を加え、なおまた内閣参員会では給与に関する小委員会もすでに発足しておりますので、事は急を要しますから、これまた委員長のお計らいによってこれらの十分審議を重ねた上での当委員会としての結論をすみやかに給与委員会に、内閣委員長を通じて委員長より申し入れをしていただいて、何とか今度の給与法の改正、ひいては公務員制度の改正につきましても、われわれの意のあるところを当該委員会にお伝えいただくようにお取りなしを願いたい、このように考えております。
  99. 菅野和太郎

    菅野委員長 ただいまの岡委員の発言につきましては、後刻理事会を開会し、協議いたしたいと思います。
  100. 志村茂治

    ○志村委員 任用局長にお尋ねしたいのですが、先ほどのお話で、公務員試験を受けた人は二万五、六千人いる、その中で事務関係の人が七、八千人あったということは、公務員の現在の数からいっても、また理科系の学校の数あるいはその卒業生の数からいっても、われわれどうもその比率が理解できない。これは事務系統の受験者と理科系統の受験者との間が何か違った事情のもとにあるのではないか。たとえば、土木建築とかあるいは農学とかいうように、主として官庁以外には就職の余地がないというものもあるのじゃないかと思いますが、これなどはごく少数であろうと思う。どうも技術関係の方が計算からいって一万七千人くらいある、それから事務系統が八千人くらいだということは、われわれちょっと納得しかねると思います。その点何か両方の間に内容において異なる点があるのではないかということをわれわれ想像されるのですが、その点の御説明を伺いたいと同時に、たとえば学校の程度等がその両者の間に違っているのじゃないかということも想像されますから、それについて、資料があったら御提出を願いたいと思っております。
  101. 松村清之

    ○松村政府委員 ちょっと今の御質問の趣旨が、どういう趣旨なのかよく了解できないのでございます。事務系統が八千ぐらいで、二万五千ですから、あと二万六、七千が技術系統、それでその間をどういうふうにお考えなのでしょうか、ちょっと理解が……。
  102. 志村茂治

    ○志村委員 それは、学校の数、従って、その卒業生の数、これは、事務系統でいえばいわゆる法律経済方面の卒業生の数、これは技術関係の学校の卒業生あるいは学校の数からいっても、われわれ逆なように考えられるのです。公務員の数からいっても、やはり事務系統の方が多いでしょう。それでありながら、この試験を受ける人が逆な数になっているということが理解できない。何か内容的に違っているのじゃないかと考えられる。こういうことです。
  103. 松村清之

    ○松村政府委員 それでは、きょうは先ほど申しましたようにここに資料を持ってきておりませんので、追って資料に基いて、いずれまた資料を出すなり何なりいたしまして、その間の事情を明らかにしたいと思います。
  104. 志村茂治

    ○志村委員 もう一言給与局長にお尋ねしたいのですが、給与制度というものは、結局任用制度あとについていくもので、任用されなければ、給与をやりたくてもやれないのだというようなことになりますと、特にわれわれが問題にしている研究員なんかは、もう今の給与制度においては、言いかえれば給与制度それ自体の限界にきている、これ以上できないのだということになったならば、別立てにするということをわれわれは考えなければならぬと思う。先ほどのお言葉の中で、別立てにすることも考えたが、そういう場合には、かえって技術系統の人に不利になるのではないかというようなお話もあったようですが、そういう点はどういう点なんでしょう。
  105. 瀧本忠男

    瀧本政府委員 私が申し上げましたのは、研究職、技術職、それから事務職の三つに分けて申し上げたのであります。今回は研究職俸給表を作っておるのであります。この研究職につきましては、われわれの考え方といたしましては、今後漸を追って研究職俸給表の問題をどういうふうに考えていくかということは研究したい、これは余地を残しておるわけでございます。それで行政官庁におります技術職を事務職と分けて考えることがいいかどうか、これは実際問題といたしまして、俸給表の水準を、事務職よりも技術職が高いものを作るというようなことは、実際問題としてできがたいことであります。同じ水準のものを作るなら、これを分ける必要がない。むしろ分けないで——最近の傾向としましては、これは漸を追ってではございますけれどもわが国の行政におきましても、科学技術がずっと浸潤して参りつつあるということは事実でございます。従いまして、今後各省の任用等に当って、もしあるとするならば、これを区別待遇してもらいたくない。そして、われわれの基準としましては、あくまで両者を同一にしておく、この方が行政官庁の中においては適当なのではなかろうか、こう考えたわけであります。研究職だけはこれを別扱いにする方がよろしい、このようなことで別扱いにいたした次第であります。
  106. 菅野和太郎

    菅野委員長 参考人各位には、御多用中のところ、長時間にわたり、しかも貴重な御意見をまことにありがとうございました。当委員会調査に資すること、きわめて大なるものがあったと考えます。委員会を代表して、私より厚く御礼を申し上げます。     —————————————
  107. 菅野和太郎

    菅野委員長 この際、齋藤委員の発言を許します。
  108. 齋藤憲三

    ○齋藤委員 私は、この問題には何も関係ないのでございますが、過去二回にわたって当局に質問想いたしましたウラン開発に関しまして、資料の提出を早急にお願いをいたしたいと思いまして、この貴重な時間を拝借して申し出るのであります。その第一は、鉱業法第三十五条前段にございます「鉱業出願地における鉱物の掘採が経済的に価値がないと認めるとき」という法律の条文によりまして、新法施行以来、試掘出願が不許可となった事例。これは過日森鉱山局長が、もう手元に整ったから早急に出すと言うて返事をしたんですが、半月たってもまだ出て参りませんので、これを至急出してもらいたい。第二番目は、昭和三十一年二月一日、ウラン鉱並びにトリウム鉱が法定鉱物として追加せられた際、他の金銀銅等の鉱物の出願に対して、ウラン鉱の鉱種名追加をすることは受け付けないというふうな方針で各通産局を指導しているというが、その通達を見せてくれと言ったら、見せると言って、半月たってもまだ出てこない。これを至急見せてもらいたい。第三は、昭和三十年二月二十五日の鉱山局長名の通達で、三〇鉱局、第一一七号、これを至急出してもらいたい。もう一つは、昭和三十一年四月二日付、鉱山局長名で、三一鉱局、第二五八号通達がある。もう一つは、昭和三十二年三月九日、鉱山局長名、三二鉱局、第七三号通達、これを一つ至急次の委員会までに出してもらいたい。  それから、次の委員会にもし私にこのウラン鉱の開発についての質問の時間をお与え下さいますならば、そのときには、原子力委員一名、原子力研究所一名、原子燃料公社一名、鉱山局長、地質調査所長、これだけの出席一つお取り計らい願いたい。
  109. 菅野和太郎

    菅野委員長 ただいまの齋藤委員の御要求につきましては、私の方からなお政府当局に注意いたします。  午前の会議はこの程度にとどめます。今後二時より開会し、原子力行政について調査を進めます。  休憩いたします。     午後一時二十五分休憩      ————◇—————     午後二時十四分開議
  110. 菅野和太郎

    菅野委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  原子力行政につきまして、質疑の通告がありますので、これを許可いたします。岡良一君。
  111. 岡良一

    ○岡委員 昨日、原子力委員会から湯川博士が身を引かれたことについて、国務大臣の御所信を承わりました。この問題については、若干の情報もあるようではありまするけれども、いたずらに第三者の心事をそんたくするということでは、当委員会といたしましてもふさわしからぬと思うので、私もこれ以上問題にはいたさないのでありますが、問題は今後の原子力委員会人事構成の点について、この機会に原子力委員長である宇田国務大臣の御所見を承わりたいと存じます。さしあたり、湯川さんがおやめになりまして、半数改選ということになれば、これまでのところでは、六月一日で藤岡さんと有沢さんが改選をされるということになっておるわけです。三年間の任期にある湯川さんがおやめになったのでありますが、この補充については、委員会としては、いつこれをなさるようなお考えでおられますか。
  112. 宇田耕一

    ○宇田国務大臣 湯川さんの後任の決定の問題と、それから藤岡、有沢両氏の任期の満了の時期とは少し隔たりがありますから、湯川さんの後任をどういうふうに考えるかということについて、原子力委員会では話し合いはいたしております。学界なり産業界等の責見も参酌して、原子力委員会で検討した上で、総理大臣に委員会の意思決定の結果を報告するようにいたしたい、こういうふうに考えておりまして、それぞれ手分けをして関係方面の考え方を打診をしておる、こういうふうな経過の途中であります。
  113. 岡良一

    ○岡委員 ところで、湯川さんも含めた五名の原子力委員会の委員構成は、申し上げるまでもなく、やはり学術会議の代表という資格であるかどうかは別問題といたしましても、学術会議の意向が原子力委員会に反映し得るような人事が進められたと私どもは思っておるわけであります。そこで、現在いわゆる原子力発電の問題が一番大きな問題として登場いたしておるわけでありますが、この問題をめぐって、学術会議方面における意向と原子力産業会議方面における意向との間には、かなりな食い違いもあるやに見られるのであります。そこで、原子力委員会が、委員長の常に言われるがごとくに、民主的な運営を期そうというお考えを貫かれるということになりますと、やはり湯川博士の後任も、この学術会議の意向という一のが原子力委員会に反映し得るような、そういう構想のもとに人事の選考が進めらるべきものである。私は原子力委員会の民主的な運営のためにはかくあるべしと信じておるのでありまするが、委員長の御所信はいかがでございますか。
  114. 宇田耕一

    ○宇田国務大臣 原子力委員会は、必ずしもそこまで突っ込んで考えておりません。現在藤岡氏もおられることですから、藤岡あるいは有沢、石川と、それぞれの委員の持っておられる経験なりその背後的な分野もありますから、そういうものとあわせて、新しい原子力委員会の活動にふさわしい人事はどういうふうにするかということは、従来の学術会議のみの意思を尊重する、そういうふうになるとは必ずしも断言できないと考えております。
  115. 岡良一

    ○岡委員 もちろん学術会議を代表するものを選ぶと私は申し上げているのではありません。ただ、原子力発電については、これは私から申し上げるまでもなく、学術会議と原子力産業会議方面との間、あるいは産業界との間には、かなりの意見の食い違いがあるわけです。そこで、原子力一委員会運営の民主化という立場からすれば、やはり専門的な学術会議の諸君の意向も原子力委員会に十分反映されねばなりません。しかも原子力委員会法を見ましても、やはり問題によっては採決をするということがはっきり出ておるわけであります。そういたしますれば、採決をしてまでものを決定しなければならないという場合が予想されておる、原子力委員会では、やはりこの際湯川博士の後任としては、何も純粋な原子物理学者を私は採用しろと申し上げているのではありませんが、少くとも学術会議の意向というものを十分に体して、原子力委員会にその一意向を反映し得るということは、私は不可欠な条件だと思っているのですが、この点いかがでしょう。
  116. 宇田耕一

    ○宇田国務大臣 学術会議の意思を尊重するということは、当然のことと考えております。ただ、それだけを特に取り上げるという考えはありません。
  117. 岡良一

    ○岡委員 学術会議の意向を尊重するという立場から、やはり湯川博士の後任については、その意向を原子力委員参会に十分述べ得るような条件というのが後任の委員の資格ではなかろうか、こう私はお尋ねしているのです。
  118. 宇田耕一

    ○宇田国務大臣 後任を決定する場合に、学術会議考え方を尊重するというのは当然でありますから、その点ではわれわれは十分配慮いたしたいと考えております。
  119. 岡良一

    ○岡委員 問題は、当面の問題として、すでに原子力発電、動力協定の問題があるわけです。これについては、産業界とまた学界との間に意見の食い違いもありますので、原子力委員会の公正な運営、民主的な運営という角度から、何も原子理論物理学者を、あるいは学術会議が推薦した者を、そのまま無条件にうのみにして下さいと申し上げているのではありません。ただ委員会としては、やはり後任の推薦に大きな責任を持っておられますので、学術会議の意向を十分反映し得るような人を選ぶというようにしていただきませんと、今後の原子力委員会に対する、部分的にしろあるいは普遍的にしろ、大きな運営上の疑惑がそのスタートにおいて持たれるということは、今後の日本の原子力行政の上からも思わしくないと思いますので、この点は強く私は要望いたしておきます。  そこで、次の問題でありますが、昨日の御答弁では、去る二月九日に原子力委員会が臨時の委員会を開かれまして、その席上においては、動力協定を結ぶべしとする方針を決定いたした、そして石川さんがアメリカから持って帰られたドラフトの検討などにも着手しようということに相なったという御答弁でありましたが、この点は間違いないのでありますか。
  120. 宇田耕一

    ○宇田国務大臣 その日に、私ちょうど国会の関係出席しておりませんので、その点は議事録あるいはそのとき出席なさった石川さんもおられますから、詳細は聞いていただいた方がいいと思います。
  121. 岡良一

    ○岡委員 けっこうです。
  122. 佐々木義武

    ○佐々木政府委員 きのう申し上げた通りでありまして、ただ内容はきのう御説明申し上げましたように、条文等を検討の上、英米双方に対し一般協定を結ぶ交渉に入るという取りきめであります。条文等を検討の上というその問題が非常に重要な問題でございまして、きのうも御説明申し上げましたように、条文の中身の検討もありますし、あるいは他の条約との比較検討の問題もありますし、あるい「等」でありますから、一般協定を結ぶ際のいろいろな諸条件といったようなものの検討も含めまして、そういうものを十分検討の上でということで、入る時期あるいはどういう内容ということは別に取りきめておりません。それから、きまったものについて、内閣に報告してやるというふうな性質のきめ方でなかったわけでありますので、皆さんの意見がそういう方向に一致したというふうに御理解願いたいと思います。
  123. 岡良一

    ○岡委員 そういう重大な決定であれば、そういう茶話会風な取扱いをなさらないで、やはり皆さんの御意見が一致したならば、当然総理大臣に報告をさるべきだと私は思うのです。原子力委員会というものの権威ある運営という立場から、これはただ茶飲み話で話を済ましたというような取扱いでは、事の重大さにかんがみても、私は非常に取扱い方が遺憾だと思います。それはそうといたしまして、新聞紙にはこういう記事が載っておるのです。「原子力委員会は、二月九日臨時委員会を開いて、日米原子力協定改訂交渉を協議した結果、既定方針を再確認したので、直ちにこの旨外務省に通告」云々ということで、その内容は具体的には、「この際一挙に動力を含む一般協定を結んだ方がよいとの意向をアメリカ側は強く打ち出してきた。日本側にも米の意向を反映して、一般協定を早く締結した方がよいとの有力な意見が原子力委員会の内部に起った。しかし結局原子力委員会としては、既定の方針通り、改訂の線で米側を押すべきだとの論も根強く唱えられて、各般の情報を分析した結果、米側は協定改訂を少しも否定していないとの結論に達したので、九日あらためてこの研究協定改訂の方針を再確認し、この線で早急に公式交渉に入ることをきめた。」、こういうように新聞に出ておるのです。当時の中央新聞どれにも出ておる。新聞にはこのように伝えられておる。ところがまた、きのうあるいはきょうの御答弁によれば、「前提としては、一応アメリカ側が提示したドラフトを検討した上という条件がつくとしても、動力協定を結ぶべきであるということに意見が一致した」という、一体これでは原子力委員会は何を決定しておられるのですか。全くうらはらの決定になっておるじゃありませんか。
  124. 佐々木義武

    ○佐々木政府委員 それでは私からもう少し詳しく当時のお話を申し上げます。この前お話し申し上げましたように、米国側から二月の初めに、研究協定の改訂に対しては、こういう点が国内手続上非常にひまがかかるようなことになりそうなので、それでも研究協定の改訂をそのまま進める意向がありゃいなやというふうに問い合せがあったものですから、それに対してわが方の態度をどうすべきかという点を、その委員会で討議したのであります。そこで第一点にきめましたのは、いろいろ検討した結果、第一点は、研究協定の改訂で交渉に入りたい、そのまま進めてもらいたいということを再確認いたしました。そうして米国側に申し入れたわけであります。ただ、外交上の問題でございますから、それだけで行くというわけには参りませんので、いろいろな場合を想定して、もし研究協定等がいろいろ時期的に、向うからわざわざ申し出があったほどでございますので、延びたり何かして、時間的に所期の目的が達しないような場合もかりに起き得ると想定した場合には、そういう際には、二段、三段としてどういうふうに考えたらよろしいかというふうな一種の手順というものを考えていったわけでございます。その際に、まず再確認をいたしまして、研究協定の改訂に入りたいという点を向うに申し入れまして、その間、先ほど申し上げましたように、一般協定に対しましては、条文の検討をしたりあるいはその他の条件を検討いたしまして、そして、そういう検討の済んだときを見計らいまして、そして研究協定の改訂と並びまして、そういう問題に入るというふうに手順をきめたわけでございます。
  125. 岡良一

    ○岡委員 研究協定の改訂と動力協定を随時進むべきであるということの方針を再確認したということと、そして、動力協定を結ぶべきであるという前提に立ってドラフトの検討に着手するに至ったという委員会の意思決定は、私は日本の原子力計画そのものに多くの決定的な影響を及ぼす問題だと思うのです。事のいきさつは今、佐々木局長からお話を承わりました。しかし、この問題は、単に事務的な問題ではないわけです。きわめてこれは政治的な問題なんですが、委員長としてはどうお考えになりますか、こういうふうなうらはらな決定を……。
  126. 宇田耕一

    ○宇田国務大臣 国会が十二月ないし一月に解散されるかもしれないという空気があった関係で、もしそういうことがありますと、非常にアメリカとの交渉が、特にウォーター・ボイラー型の稼働を前にして支障を来たす、動力炉の運転に支障を来たすおそれがある、もしそういうことがあっては、委員会としては非常に手違いを生ずるおそれがあるから、研究協定の改訂をまず話に乗せて、それに必要な燃料その他の応急対策をとっておこう、こういうのが昨年末から正月へかけての判断であったわけです。ところが二月に入って国会は解散はない、通常国会はこのまま推移するであろう、そして石橋さんの病状が思ったよりも長引くかもしれぬ、そういうふうな政治情勢になってきましたので、解散なしに通常国会が推移するならば、研究協定改訂のみならず、一般協定についても、アメリカ側との話し合いをある点まで突っ込んでやってみたらどうか、こういう意見がありました。たしか科学委員会でどなたか委員が発言されたように思うのですが、そういう線に沿って原子力委員会はアメリカ側の意向を問いただすべきではないか、こういうふうなお話もありましたので、二月九日の委員会に多分どういうふうな態度をきめるかということが協議にかけられたのではないか、こう思っております。そういうふうな経過をとっております。
  127. 岡良一

    ○岡委員 大臣の御答弁は私はちょっと理解に苦しむのです。一体石橋さんの御病気や国会の解散と、この問題はどういう関係があるのですか。
  128. 宇田耕一

    ○宇田国務大臣 解散がありました場合には、おそらくその解散をはさんで新しい国会の編成あるいは開会の時期等がどう行われてくるかということが非常に見通しが無くなる。それで、石川委員はドラフトを持ってこられたけれども、それを検討するということよりも、研究協定の改訂をもってこの問題を整理していく方が、ウォーター・ボイラー型の六月からの稼働を前にして、時間的に合理的である、こういう御意見があったわけです。従って、そういう政治情勢の最悪の場合を考えると、委員会としては研究協定改訂をまずアメリカと話し合うべきである、そういうふうに一月の中旬ごろには考えて、そうして外務省にも話をしておった、こういうわけです。ところが二月になって、国会の解散等が当然ない、こういう見通しが立ちましたから、それなら一般協定について、かねて石川さんがドラフトを持ってきておりますから、その辺を検討し、そして委員会全部の意見がまとまるならば、その線に沿ってアメリカ側とこの問題についても話し合いをすることができるかどうか、そういうことを委員会の議題に供した。そうして委員会はその話を研究協定とあわせて進めるのが好ましい、こういう結果になったと記憶しております。     〔委員長退席、有田委員長代理着席〕
  129. 岡良一

    ○岡委員 それは宇田さん非常なお考え違いなんです。というのは、六月から運転が開始される予定のウォーター・ボイラーについては、すでに去年十一月の細目協定できまっておるではありませんか。必要な燃料は六キログラムくるということもきまっておるではありませんか。だから、今度の新しい改訂の内容となる、さらに九〇%の濃縮ウランを三・五キログラムほしいとか、ニトンの重水がほしいとか、そういうような原子力基本計画にうたわれておる将来に必要なものを研究協定を改訂して確保したいというのが、この研究協定の改訂の方針を確認した原子力委員会の決定でなければならぬ。ですから、国会が解散になって、一カ月選挙にかかってあと新しく内閣ができても、六月にウォーター・ボイラーが回転するまでの間に、今さら再確認をしたり、あるいは解散があれば再確認をしないでどうするというような方針の変更はあり得ないと思います。
  130. 佐々木義武

    ○佐々木政府委員 事務的なことですから、私から答弁いたします。この研究協定の改訂の中には、この前申し上げましたように、四つの項目がありまして、その中の一つに免責条項を本文の中に入れてもらいたいということがあります。その免責条項を本文の中に入れてもらいたいという趣旨はどこにあるかと申しますと、その免責条項に附帯する細目協定は、国会の承認を経ないで、言いかえますと条約として扱わないで、行政協定として、売買契約として扱いたい、こういう趣旨を含んでおります。しからばその玩具の範囲に入るものは何かと申しますと、一番急ぎましたのはウオーター・ボイラーに使います。ウオーター・ボイラーそのものじゃありませんが、その上に装置を設けまして、それで下から出て参りました中性子を受けて天然ウランをそこに挿入いたしまして、そうして種種な実験をしたい。これは国産炉等に見合わすための試験でありますが、そういう二つの目的を兼ねてウオーター・ボイラーの設計ができておるわけであります。本体の濃縮ウランを入れて動かすのは、今お話がありましたように支障はないのでありますが、その上部構造で試験をしたいという天然ウランを一つほしい。ところがアメリカの方は重水等は普通の売買でよろしいが、天然ウランについてはいまだ他国に出した例がないので、これはどうしても細目協定を結んでもらわなければならない。その細目協定は昨年度からドラフトしたのでありますが、やはり免責条項も相当シヴィアな規定がございますので、そういう免責条項はドイツ等のその後の例から見ても全部本文の中に入っておりますから、本文の中に入れてもらいたいというような条項が一本入っておるわけであります。そこで今のウオーター・ボイラーに全然関係のない研究協定の改訂という意味ではないのでありまして、それに非常に関係の深い意味でも改訂したいということでございます。
  131. 岡良一

    ○岡委員 しかし、それにしても、国会の解散ということで予想されるものは、国会の空白は一カ月ないし一カ月半です。その間に研究協定の改訂を前後して急がなければならないという理由はないと思います。今ドイツの例を引かれましたが、西ドイツのシュトラウス原子力相がワシントンに行って交渉して、そうして今改訂交渉の中でやっておるようは売却の場合とか、濃縮九〇%のウランの入手とか、それからプルトニウムの入手とかいうものは、一カ月以内で解決してしまっているではありませんか。ですから、原子力委員会の方で委員長が本腰を入れてやられれば、せっかく向うも協力のための協定として日本にウオーター・ボイラーを提供しておるわけでありますから、しかも事前に今、局長の言われたような問題については向う側の了解も得ておられるわけですから、これに不可欠な原料の提供については、向う側だってそう拒否するはずはないだろうという見通しを持っております。それはそうといたしまして、さらに原子力委員長に政治的な問題として伺っておきたいのでありますが、一方ではわが方で研究協定の改定をやるということを臨時委員会まで開いて再確認しておるのです。しかも同じ席上でドラフトを検討した結果、動力協定を結んでもよいのであるという意思決定を見ておる。今後の原子力行政というものにおいては、一に進んだ外国との交渉でわが国研究開発というものを促進していかなければならぬので、対外的な問題としては、この折衝ということは非常に重要なわけなんです。研究協定改訂一本だ、こう言っておるかと思うと、同じ委員会で動力協定もまた結ぶのだ、こういうような二元的な態度でもって、一体原子力委員会が将来対外的に確固たる信念を持って日本の研究開発をやれるのかどうか。一昨日すでにアメリカの方からもたらされたいわゆる草案の内容なるものは、石川さんの持ってこられたものと、動力炉という言葉がないくらいの違いで、その内容についても新聞がかなり詳しく伝えておる。私は当りまえだと思うんですよ。こちらの方で動力協定をやってもいいんだという意思決定を原子力委員会がやれば、幾ら秘密にされても、向うの方に情報が入るのはわかっておる。そういうふうに、研究協定をやろう、一方動力協定もよろしい、こういうことで一体日本の原子力開発に関する外交というものが全うできるのであるかどうか、委員長、どう思われますか。
  132. 宇田耕一

    ○宇田国務大臣 九日のときは、実は私、協議に参加しておらぬものですから、協議のときの取りきめの実際のごまかいことをよく知らないのです。知りませんが、ただ外務省の出先を通じての交渉をしておった事務当局としては、そういうふうな政治的な状況の判断から見て、そういうふうな研究協定の改訂をまず向うに打診をするということをやるのが適当と判断をして、そうして二月ごろまで推移しておったのだろうと思います。そのときの話のどういう取りかわしがあったかということについて、詳細な報告を聞いておりません。
  133. 佐々木義武

    ○佐々木政府委員 その点は、先ほどから説明申し上げましたように、研究協定の改訂を再確認いたしまして、ぜひ一つ研究協定の向う側の条文を検討して作成してもらいたいという申し入れをすることの再確認をいたしました。もしこの研究協定が、向うから、九月の初めに申し入れられたように、非常に長引くというようなことであれば、一定の時を見て、場合によっては細目協定だけで必要なものは入手できるようにしたい。三番目としては、その際においても、動力協定というものは今から準備を進めて、いろいろの再検討を加えないと、いざというときにはなかなか交渉に入るわけにいかぬだろうから、研究をしましょうということで、条文等の検討の上ということで、それから以後条文の検討も実際に始め、あるいはその他の事項に関しても委員会として、いろいろ関係方面から見ていただきたい、ヒアリングを進めていただきたい、あるいは資料の整備を命じたいということで、準備の研究を進めておるわけでございます。でございますから、何も交渉にすぐ入る、いつから入るということをきめるわけでも何でもないのでありまして、そういう事態も予想して研究をしようというのがほんとうの趣旨というふうに解しております。
  134. 岡良一

    ○岡委員 局長の苦心のほどはよくわかるのですが、しかし問題は、もうすでに一昨日の新聞を見れば、ちゃんとわかる。アメリカの方では、日本はとにかく動力協定を結ぶ意思があるという前提の上に立って、あの今度の研究協定の改訂のための日本側との交渉に対して向う側が示した対案というものは、これは石川さんが持って帰られた動力協定、あるいは機密条項のないフランスとアメリカの結んでおる動力協定の内容とほとんど変りないものを持ってきておる。それはあなた方が準備のためとは言いながら、原子力委員会の結局決定された意思として、動力協定を結ぶために石川さんの持って帰られたドラフトの検討をやろう、こういう態度をきめられたから、向うの方でもこれはもう内かぶとを見透かしてきたから、ああいうものを持ってきたのであります。これは私は外交的に非常に大きな失敗だと思うんですよ。原子力委員会は、研究協定一本であるといって外務省に運動しているのでしょう。なぜこれ一本で進めないのですか。一方は動力協定もやむを得ないという腰砕けを見せている。これでは向う側が強気を見せてくるのは当りまえじゃありませんか。相撲からいってもそうです。これは原子力委員会の今後の運営上非常に重大な問題だと思うのです。どう思われますか委員長、こういうへたな外交をやって……。
  135. 宇田耕一

    ○宇田国務大臣 研究協定と一般協定との切りかえをどういうふうに考えるかというそのときの実際の話のやりとりはどうなっているのか、実は私はその経過をよく承知いたしませんから、この点申し上げかねますけれども、いずれにいたしましても、アメリカ側との交渉をする場合に、その交渉の経過等は、必ずしも短時日で話がつくというふうには判断をしていなかったのだろうと思います。それで、万全を期する意味でいろいろの考え方が討論されておった、こう思います。そのときの実情は、実は私は九日のことはよくわからぬものですから……。
  136. 石川一郎

    ○石川説明員 そのときのことを思い出しますと、結局もし研究協定がスムーズにいかないような場合には、細目協定をやろう。しかし細目協定に入るにいたしましても、ただそれだけでは向うがうんと言うまいから、本協定の方の研究を始めました。これは発表しない約束で始めたんですが、どういうことか漏れちゃったので、非常に残念だと思うのです。私は非常に困ったことをやってくれたと思っております。実は、外務省の方においでを願いまして、そのときにどういうようにしたらいいかと御相談申し上げたら、研究協定こそ今急にほかの方に変更することはおもしろくない、おれの方も同じだということで話し合ったのですが、どういうわけかそれが漏れちゃったわけで、非常にどうも残念なことだと思っております。
  137. 岡良一

    ○岡委員 幾ら問答してもしようがないですが、とにかくやはりこれは原子力委員会の権威のために重大な問題だと思うのですよ。そういう意味で、ちょうど今度新しくまた原子力委員も改選することでもあり、湯川さんの辞職もあり、原子力委員会運営について相当慎重を期していただきたい。われわれは権威を守るためには協力したいと思うのです。そういう意味からこの間の経緯について私ども十分知悉したいと思いますので、漏れた以上はいたし方ありませんが、二月九日の原子力委員会の議事録を一つ出していただいて、十分精査して、そうして委員会運営そのものについて私どもさらに別途われわれの意見をまとめたいと思いますから、そのことを要求して私の質問を終えます。
  138. 有田喜一

    ○有田委員長代理 佐々木良作君。
  139. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 私は最初に宇田さんの心境を伺いたいと思います。今、岡委員との問答を聞いておりましても、原子力委員会でいろいろな話がされる段階も、それから肝心な問題の焦点も、どうも十分にそれん聞き消化するひまがなさそうに感じられます。今、宇田大臣は、経済企画庁の仕事もされれば、原子力委員会仕事もされる、それから科学技術庁の仕事もされる。特に経済問題は総会調整の非常に必要な問題であり、科学技術庁は科学技術の新しい職場を立てるところでありますから、これまた重大な仕事であり、そして原子力委員会は、今、日本の原子力政策を、本格的に樹立する非常に重大なる段階にきていると思います。私はそうでなくても、日本の大臣というのは雑用が多過ぎて、ほんとうの仕事はどうもできそうもないと思うのでありますが、率直に宇田大臣は、今、日本の原子力政策を樹立する段階において、責任を持って、原子力委員会で、それこそ百年の大計を立てられる自信がほんとうにおありになるかどうか、心境をお伺いしたい。
  140. 宇田耕一

    ○宇田国務大臣 原子力に対する国策の策定は、制度上、原子力委員会花中心としてそれを運営して、雄風定することになっております。従って、私は行政長官としての、あるいは原子力委員長としての責任はもちろん尽しますが、それの策定の責任は法律で明記してありますように、それぞれの分野があって、それぞれの責任の分担をしてやっております。従って、私の任期中は、私の責任は自分で果していきたいと考えております。
  141. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 どうも、事務的におれの分のやつは適当に何とかやってくれるからやれるだろうというようなことでなくて私は宇田長官のほんとうの心境を聞きたいのです。雑用が非常に多いだろうと思いますが、原子力委員会は、これはへたをすると、ほんとうにどうしようもないのです。これから私は質問しようと思いますけれども、十万キロも二十万キロもの原子力の動力炉を入れようというような段階になっておりますし、それにはいろんな問題があるし、また日本の一般国民は、これに対する技術的なあるいはそれに関連する不安を非常に持っておるわけです。それらを十分に討議しながら原子力政策を進めていかれるために、時間的余裕をもって、そういうものをリードされる自信がおありになるかどうかということを伺っておるのであります。私は、当然に事務的に与えられた問題を処理するだけでは済まないと思います。同時につけ加えますけれども、法律的には各委員がおのおの責任を持つことになっておりましょうとも、現実に日本の政界においては、これは長官、委員長がかわれば非常に内容も変ってくるような状態でありまするから、従って、推進力となるものはほとんど委員長であらざるを得ないような状態になっておる。従って、その辺の事情を十分御承知の上で、ほんとうに大丈夫ですか。私は国民の率直な気持は、ほんとうに大丈夫ですかと言いたくなるだろうと思います。けれども、どうですか。
  142. 宇田耕一

    ○宇田国務大臣 大丈夫です。
  143. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 どうも、大丈夫だということを本人が言うから間違いないとはいうようなものの、私は日本国民の大部分の者が、どうも大丈夫じゃないのじゃないかというような気がしておるのであります。御本人が大丈夫だと言われるならば、これは肯定して話を進めざるを得ないと思います。ただ私は、率直に話をいたしますけれども、原子力政策は今曲りかどに来ておるほんとに大事なときだと思います。また、科学技術の根をはっきりおろして、これから発展させようとするためには、科学技術庁自身が今非常に重大な段階に立って、仕事を発展させようとしておるときになっておると思います。同時に、企画庁長官としても、日本経済の総合的な計画を立てられ、見通しを立てられるということは、それこそ日本経済の曲りかどに来ておるまことに重大な段階であります。この三つを、一人でやるどころか、一人が一つずつ当っても私は不可能に近いような重要な問題ばかりを担当されておると思います。私はすっきりした感じから言いますと、人間の力には限度がありますから、なるべく早く適当に分担されて、ほんとうに専門的に扱われるように希望しておきたいと思います。早い話が、日本の経済の曲りかどに来ておるということを前提として、予算を中心として、石橋内閣から現在の岸内閣に受け継がれた経済政策の根本について、私は宇田さんに質問しようと思って、商工委員会、予算委員会等をたずねたがわからぬ。結局のところ、とうとうそれをただすひまがなかった。それから、原子力問題につきましても、私はだいぶ前から、この動力炉の問題が出て以来、何とかうまいときに質問をしようと思っておっても、委員会が忙しいとか何とかで、どうにもうまく会えないという状態になっておる。こういうどさくさまぎれにやっておるような格好で、ほんとうに腰を据えたところの経済政策が樹立でき得るか、原子力政策が樹立でき得るかというと、私はほとんど不可能に近いと思います。従いまして、御本人を前に置いてどうかと思いますけれども、大丈夫だと言われましても、私どもはそうですかと完全に言い得ない気持がありますことを一つ十分御賢察いただきまして、それこそ原子力政策のようなものはもう少しゆっくり処理できるような状態でほんとうに取り組んでいただきたいということを希望申し上げて、質問に入りたいと思います。  まず、まだ今年は昭和三十一年度の会計年度になっておりますけれども、三十一年度におきまする原子力の問題の取扱い方は、御承知のように三十一年度の原子力開発利用基本計画というものが昨年の五月ごろ立てられまして、これを中心にして、計画的に日程を組みながら、大体原子力に対する政策が進められてきたと私は思います。従いまして、この基本計画で私どもが承知しておる内容と、現在原子力委員会が中心となっていろいろな動力炉の輸入等を考えておられる状況等を照らし合せてみますと、相当な飛躍が感ぜられてしょうがないのであります。具体的にこの三十一年度の原子力開発利用計画が策定されて以降、いついかなる経過によりまして、これから相当飛躍的な発展がきれておるような動力炉の輸入という問題に到着されましたか、お伺いいたしたいと思います。     〔有田委員長代理退席、委員長着席〕
  144. 宇田耕一

    ○宇田国務大臣 動力炉の輸入につきましては、石川ミッションの報告が一月十七日に正式になされて、その中にコールダーホール・タイプを考慮に入れて、第二のミッションを送ることが必要である、そういう特別な注意事項かありましたので、その報告書の内容を尊重して、それに沿うように動力炉の輸入に関する具体的な計画をおわせて三十二年度には考慮すべきである、そういう考えになりまして、実は石川ミッションの報告に基いて第二のミッションを派遣すべきである、その時期あるいはそれの研究すべき内容等について、委員会で積極的に検討を始める、ところがそれに伴って当然石川ミッションが持って帰った一般協定等についてもあわせて検討する必要があるというので、委員会でそれぞれの専門的な立場から、あるいは外務省にあるいは原子力局にそれを渡して検討に入らすようになった、そういうふうな経過でございます。
  145. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 今年の原子力開発利用の基本計画によりますと、「動力用原子炉については本年度は基本的調査及びこれが具体化のための研究を行うものとする。」、たくさんある中で、このたった一行が触れられておるだけであります。今年度の仕事といたしまして、動力用原子炉の問題については、この一行が触れられておるだけであります。従いまして、三十二年度の基本計画を策定されるとするならば、三十一年度における基本計画から三十二年度における基本計画への渡りは、こういう理由があって、こうこうだから、こういうふうにならざるを得ないという経過を経て三十二年度の基本計画が立てられなければならないと思います。従いまして、今石川ミッションの経過、結果を聞いて、そして動力炉輸入を内定か何か知りませんが大体きめられたようであります。そのことがきめられるならば、当然に三十二年度の基本計画が定められ、あるいは三十二年度の基本計画の日程としてそれが載らなければならないと思いますし、その三十三年度の日程に動力炉の輸入がありまするならば、動力炉輸入に至るまでの具体的な日程がまた計画されなければならないと思いますけれども、それはいつごろ、どういう格好できめられることになりますか。
  146. 宇田耕一

    ○宇田国務大臣 その点につきましては、動力炉の輸入は決定ではありません。第二回目のミッションが出て、第二回目のミッションによって第一回目に未解決であった重要な数点がありますから、その重要な数点を第二回目のミッションによって解明されて、それに基いて原子力委員会最後の決定をする、そういうことになるはずであります。それで、石川ミッションの報告によると、コールダーホール・タイプが望ましいということは書いてありますけれども、それには数点もう一ぺん行って確かめなければ、決定はしてはいけないという条項が入っております。その石川ミッションの報告の通りに取り運びたいというのが原子力委員会の希望であって、その希望の中には、もう一ペン調査団を出しなさい、調査団の報告によって最後の決定をすべきである、こういうことになっておるのです。従って、われわれは買うことを決定して調査団を出すというわけではありません。特に地震等に対する問題点については、まだこの見通しはつかない。従って、これからなるべく早くミッションを出したい、こういう段階であります。原子力の発電用のリアクターを買うということがきまっておる、あるいはこれをきめなければならぬという場合のまだ以前の問題に今取り組んでおる、こういうことであります。
  147. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 予算委員会からも要求があったようでありますから、簡単にもう一点。どうもお話がはっきりしないのでありますが、そうすると、第二次の石川ミッションを出した結果によって、動力炉輸入を決定するということらしく感じられます。そうならば、第二回の石川ミッションが出られるに先立ちまして解決すべき問題は、大まかに整理されて、国内の問題点をはっきりさして、それが解決されることを前提に処理されますか。つまり、石川ミッションは、たとえば地震についてはこの程度のことをはっきりと確かめてくる、あるいは燃料についてはこの程度のことをはっきり確かめてくるという、その程度ということが国内の学者あるいは関係者から十分に練られて、その結果を確かめに行って、戻ってきて決定される、こういう段取りになりますか。
  148. 宇田耕一

    ○宇田国務大臣 そのこまかいことは、石川さんが向うを見てこられて、そうして……。
  149. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 私は、それならば、これで質問をやめますけれども、はっきり聞きます。一般に、動力炉の輸入は非常に近いのだ。そうしてあなたが就任されるとともに、三百万キロくらいは必要だという話をぶたれた。従って、どこを見ても原子力々々々で大騒ぎしておる。そうして、事実上は第二回目のミッションが行ってみなければ何もかもわからぬというような御答弁であるが、普通ならば、地震にどの程度に耐え得るか、行ってみなくたって、今ここでわれわれが十分安心できる程度かどうかということはわかるはずだ。行ってみたらすぐわかりますか。行ってみたらわかるなんて、冗談じゃないですよ。あなたそんな軽い考え方でおられるから話がこんがらかってくる。
  150. 宇田耕一

    ○宇田国務大臣 あなたと私と、全然論点が違う……。
  151. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 私は別の機会にはっきりと委員長と問答いたしますから、質問を終ります。
  152. 菅野和太郎

    菅野委員長 本日はこの程度にとどめます。  これにて散会いたします。     午後三時五分散会