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1957-03-26 第26回国会 衆議院 科学技術振興対策特別委員会 第19号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十二年三月二十六日(火曜日)     午前十時四十一分開議  出席委員    委員長 菅野和太郎君    理事 赤澤 正道君 理事 有田 喜一君    理事 齋藤 憲三君 理事 岡  良一君    理事 志村 茂治君       須磨彌吉郎君    保科善四郎君       山口 好一君    岡本 隆一君       田中 武夫君    滝井 義高君       松前 重義君  出席国務大臣         国 務 大 臣 宇田 耕一君  出席政府委員         科学技術政務次         官       秋田 大助君         総理府事務官         (科学技術庁長         官官房長)   原田  久君         総理府事務官         (科学技術庁原         子力局長)   佐々木義武君  委員外出席者         科学技術庁次長 篠原  登君         参  考  人         (日本技術士会         会長工学博士) 井上匡四郎君         参  考  人         (PSコンクリ         ート株式会社社         長)      平山復二郎君     ————————————— 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  技術士法案内閣提出第一〇八号)  科学技術振興対策に関する件(原子力行政一  般)     —————————————
  2. 菅野和太郎

    菅野委員長 これより会議を開きます。  技術士法案を議題として、審査を進めます。  本日は、参考人より意見を聴取することといたします。御出席参考人は、日本技術士会会長井上匡四郎君、PSコンクリート株式会社社長長平山復二郎君の二名であります。  この際、参考人各位一言ごあいさつを申し上げます。本日は御多用中のところ、当委員会法律案審査のためわざわざ御出席を賜わり、まことにありがとう存じます。厚く御礼を申し上げます。技術士法案は、政府より、わが国における科学技術向上国民経済発展とに費するため、技術士資格を定め、その業務の適正をはかる必要があるとして提出されたのであります。当委員会といたしましては、本案審査に当り、日ごろからこの問題に対して研究し、造詣の深い参考人各位の御意見を承わり、もって審査参考に資したい所存であります。何とぞ忌憚のない御意見をお聞かせ願えれば幸いに存じます。なお、参考人の御陳述は、一人十五分程度に願い、あと委員諸君質疑によりお答えを願いますので、さよう御了承を願います。  それでは、井上国四郎
  3. 井上匡四郎

    井上参考人 政府から提出せられました技術士法案提出理由説明、これを読みますと、技術士必要性について十分丁寧にこまかく説明してありまして、私はこの上つけ加えることはほとんどないように感ずるくらいであります。私は技術士会会長であり、かつ技術士会目的の主要なるものの一として技術士法制化ということに長く努力してきた関係がございますので、簡単に私の考えを申し上げ、御質問お答えをいたしたいと考えます。  こういう制度は、特に日本に存在しなければならぬものであることを考えるのでありますが、なぜこういうものが今まで成立しておらなかったかということを考えますと、これは、一般社会国民の中に、技術尊重思想というものが非常に欠けておった。やはりこれは封建制度思想の残骸であったと考えるのであります。また技術者も、今までは技術というものは経営者がただ道具に使うものであるということで、その独立性自分自身も確かに認めるだけの勇気もなく今日まで経過してきたのであります。私、考えますのに、国の財政、少くとも現在の日本における財政の根本というものは、日本輸出増加にある。輸出増加ということは、やはり技術によっていい製品を安く作るということです。これは非常に大きな日本財政の上の根源をなすものであり、国家としては十分尊重しなければならぬものであると考えるのであります。しからばこの技術向上のためになぜ技術士というようなものが必要であるかということを考えますと、技術というものは、非常に広範なものであります。また、科学進歩に伴って、技術の幅も非常に広くなって参ります。ただいまお話のある原子力というようなものは、最近の新しい科学から出てきた技術に嘱するものであって、現在の技術界の状況というものは、工業上の第二革命が起らんとしつつあるような、こんとんたる状態にあるのであります。しかして、技術範囲というものは、大学の工学部の分数を見ましても、土木、機械、電気、建築、化学、鉱山、冶金というような相当の数にわたっておる。わかりいい話が、電気一つとってみましても、最近の無線の発進でありますとか、その他ラジオ、一方においては大動力の開発というようなことで、非常に広い範囲に属します。その他土木においてももちろん申すまでもなく、いずれの範囲においても、一つ一つ技術部門が非常に広い範囲である。一人の人間がすべてを見、たんのうであるということは、とうてい期待することのできないものであります。それで、大学の卒業生が実業につきまして、そしてその狭い範囲技術を修得し、それについてある経験を得たとしましても、その人間がせっかく円熟した場合に、停年とかそういうことのために会社を出るとかいうようなことになりますと、その技術を再び利用する機会はないのであります。また社会制度がそういうふうでありますから、その人間在職中もうかうかと暮らしてしまいまして、いわゆる技術士となるような十分の資格自分で備えるということも努めずに、一生を過してしまうというようなことであります。私、鉱山関係でありますから、鉱山の例をとってちょっとお話しますと、むずかしい縦坑を掘るというような問題が起りますと、従来の例からいきますと、会社会社のたんのうなる技術者に一通り外国を見させる。その人間は何も経験はないから、外国の例を見てきまして、まあこういうような方法がよかろうというようなことから、それによってその仕事を開始いたします。少し大きな仕事になりますと、三、四年、四、五年はかかって、ようようその仕事の終る時分になると、その人間は初めてその経験を得るのでありますが、一朝その人間会社を出てしまいますと、また会社に残っておりましても、そういう仕事というものは再びその会社では行う機会は少いのであります。とうとうその人間はせっかく覚えた特殊の技能を利用する機会がなくして終ってしまう。またほかの会社がやります場合には、ほかの会社が新しい人間外国にやって調べさしておる。またその人間も同じようにして終ってしまう。これはいずれの点から考えても非常にむだになる仕事である。もしそこに技術士というような制度法制化されておりますならば、その人間在職中勉強して、その仕事についてのデータを保存するでありましょう。そのデータというものは、技術士としてこれを利用する人があれば非常に経済であり、またその上の調査を必要とすれば、その人間の持っておる知識のその上を調査すればいいのである。すべての技術についてそういうごく狭い部分のエキスパートというものがそれによってでき、またそれによって技術向上していくのであります。また、技術士独立性を持っていなかったという一つの大きな原因は、財閥にあったと私は考えるのであります。財閥というものは、すべての範囲に功罪相伴っておるようでありますが、技術についても、自分の方の会社技術会社外のものに相談するというよなことは好まないのであります。いずれも会社のうちでもってそれを十分消化していこうと無理にも努めておったということは、また大てい大きな仕事財閥経営もとに属しておったというようなことは、技術士というものの概念が発達し得なかった原因と考えるのであります。現在はそういう機関がなくなったものでありますから、いい技術というものかできるようになれば、民間はこれを利用する機会が非常に多いと考えます。しかし、また一方考えますと、現在においては、技術者の方にもそういう用意がまだ十分にないのであります。それが非常に困難な点である。しかし、ないからといって、この技術士法というものが成立しませんと、これはちょうど鶏と卵のような関係で、いつまでも技術士というものが発達しないと思います。この技術士法案というものは、現在のところははなはだ不備なものと考えまして、ただ称号だけの特権を得るということで、仕事の上の特権というものが何もきまっておらないような点は、この技術士法の弱点であると考えるのであります。現在の技術者状態でそこまで法律をもって特権を付与する、こういう事業技術者設計により、技術者の監督を受けなくちゃならぬというような特権を与えることは、これは少しまだ行き過ぎておるということに私らも考えまして、行く行くはこの法案というものが将来そこまで拡張されて、初めて技術士というものの完全な社会的の位置が確立され、技術の真の向上発展に資する時代がくると考えるのであります。  簡単にそれくらいの御説明をいたしまして、あとは御質問お答えしたいと思います。
  4. 菅野和太郎

    菅野委員長 次に、平山復二郎君。
  5. 平山復二郎

    平山参考人 井上さんからるるお話がありましたから、多少私の申し上げることが重複的になるかと存じますが、お許しを願いたいと思います。  今日、技術振興ということが、敗戦後の日本の国情から叫ばれておるのでございますが、この点からこの技術士法案は非常に重要な関係があると思うのでございまして、ぜひこの法案はこの国会において成立させていただきたいと思うのでございます。この法案の提出されました理由は、今、井上さんからもお話がありましたように、提案理由説明にも詳しくございますので、私から申し上げることも少いのでありますが、私も多年技術者として技術生活を送りました関係から、少しく蛇足をつけ加えさせていただきたいと思います。  技術振興と申しますことは、もちろん技術進歩発展でございますが、この原動力、推進力となりますものは、申すまでもなく、技術者でございます。この技術者社会的にどう利用するとか、あるいは活動させるとか、あるいは待遇するとかいうような技術制一度が、技術進歩発展の上に大きな関係を持っておることは、これまた申すまでもない次第でございまして、技術制度がいいか悪いかということによりまして、技術推進もされますし、また停滞もしてしまうのだと思っております。こういう技術制度にはいろいろございますが、欧米先進国に比べまして、日本で最もおくれております点は何かと申しますと、この技術士法案が目ざしております技術制度発達がおくれておるという点なんでございます。技術士制度が、どういうものだということは今さら申し上げる必要もありませんが、一言にして申しますと、だれもが報酬を払って自由に利用できます技術サービスのできる専門職業技術者社会的に作りたい、こういうことなんでございます。これは医者の場合と全くその趣旨は同じなんでありまして、お医者の場合に個人や病院がございますように、技術者の場合にも個人や法人があり得るわけであります。ただ、お医者の場合には利用者依頼者個人なのでございますが、技術士の場合には多くは企業体利用者依頼者となるのだと思うのでございます。日本にも技術者はたくさんおりますが、ほんとうに技術サービス専門職業として社会的に活動しておる技術者というものは、非常に少いのでございます。さっき井上さんからお話がございましたが、技術者仲同では技術制度を作りたい、また作らなければいけないじゃないかという意見は、ずいぶん古く戦前からもあったのでございますが、建築方面を除きましては、ほとんど見るべき発達がなくして経過してきたのでございます。敗戦後、アメリカの占領下に、日本の各方面に旧制度のいろいろな改革また新制度の発足がございましたように、技術方面にも、日本でおくれております技術制度を樹立した方がいいじゃないかという勧告がございまして、経済安定本部が肝いりになりまして、現在井上さんが会長をやっております技術士会が生まれまして、それを中心に多数の技術者の協力によりまして、今日ようやく技術士法案を、今国会に御審議を願うところまでこぎつけたわけであります。戦前なぜ日本技術士制度ができなかったかという理由につきましては、今、井上さんからお話もございましたが、私は井上さんのお話になった理由につけ加えまして、こういうことが技術士制一度の非常に発達しなかった原因ではないかと思うのでありますが、日本技術輸入国でありまして、輸出国ではなかったのでございます。それからまた、国際競争場裏で、消費財の商売では、ずいぶん活躍いたしましたが、技術によります生産財輸出でもって活躍したことは非常に少いのでございます。こういう関係からいたしまして、どうも日本では、欧米技術技術者を向く評価いたしますが、日本技術技術者を一段低く見ているような傾向があったのが、今日技術士制度発達しなかったおもな理由ではないかと思っておるのでございます。こういうことを改めます上にも、ぜひ技術士制度日本発達させなければならないということを思うのでございます。  次に、この技術士法案が幸いに成立いたしまして、今後日本にも技術士制度発達しましたら、どういう成果が上るかというような点を、これまでこの制度発達していないための不都合とあわせ考えまして、少し申し上げてみたいと思います。  第一に、技術者立場から最も意義があると思いますのは、この技術士制度発達いたしますと、社会的に生涯を技術進歩発展にささげる一流専門技術者が生まれる基盤ができるということでございます。そして、それが日本技術進歩発展に寄与する意義はきわめて大きいと思うのでございます。さっき井上さんからもお話がございましたが、従来も事業官庁なり会社なりに、多年重要な技術を担当いたしまして、豊富な技術的な知識経験を積みまして、一流技術者として育った人は幾らでもあるのでございますが、その属しております事業官庁なり会社なりを退いてしまいますと、せっかくの技術を生かして広く社会のために役立たせながら、生涯を技術に奉仕するという道がないのでございます。せいぜい顧問格の閑職くらいに甘んじまして、社会的に宝の持ちぐされに終るほかないのでございます。こんなわけで、日本では医者や弁護士などのように、一流技術者としての社会的地位というものがないのでございまして、技術者成功者といいますと、一流技術者になることではないのでありまして、次官とか長官とか社長とか重役とかになることなのでございます。技術を捨ててしまうと言いましてはいささか語弊があるかと存じますが、技術振興観点から申しまして、これは邪道でありまして、まことに遺憾な点でありますことは申すまでもないと思います。私の同窓の技術者を顧みましても、この感を深くするのでございます。  それから第二に、技術士制度発達いたしまして、有能な、信頼できる技術者技術士業務を始めるとしますならば、そういう資格技術者は、決して各方面に事欠いておりません。そうなりますと、技術もととするいろいろな調査計画実施します場合に、そのための技術スタッフをわざわざ持たなくても、すぐ適当な技術者に依頼いたしまして、責任をもってそういう仕事を、やってもらえるのであります。これは単に手取り早く便利だというようなことだけでなく、みずからスタッフを持ってやりますよりは、技術的にも経済的にも、はるかに有利な結果が得られるのであります。ところが、これまでは技術士制度発達しておりませんための、責任を持った十分な技術的、経済的の裏づけのない調査計画実施もとになりまして、大きなむだや失敗をしている例が決して少くないのでございます。私は、技術士制度発達と相待ちまして、日本でも技術的な事業に対します政府の補助や銀行の融資などに対しましては、作文や顔だけでなく、ぜひとも信頼できる技術者によります技術的、経済的な夏づけ、保証を必要条件とすべきであると思うのでございます。継続的に同じ技術的な計画設計実施をする官庁会社などで技術スタッフを持っておりますところでは、技術士を頼む必要はないなどということがよくいわれますが、最善の計画設計実施をやろうという観点からいたしますと、これは間違いではないかと思うのでございます。今、井上さんからもお話がございましたが、技術進歩しまして、専門的に分化するに連れまして、十分な計画設計実施をしますにしましても、名称専門技術の総合を必要とするのでございます。この場合、果してスタッフとしてこれらの各種の専門技術者を十分持っておるかどうか、これははなはだ疑問なのであります。またそのスタッフか、果して一流であるかどうかということも問題なのでございます。特に技術者の新陳代謝や更迭が激しい官庁などにおきまして、この点そうではないかと思うのでございます。そうなりますと、やはりいくらスタッフがありますところでも、技術士の力をかりるべきでありまして、技術士の必要があるのだと思います。それがかりでなく、こういう常時スタッフを持っておるところでも、準備なく、急に技術的な仕事の拡大、膨張をすることがあるのでありますから、スタッフの不足を来たす場合もあると思うのでございます。元来こういうスタッフは、新規な計画実施に対する基本となる条件データ調査資料収集に主力を注ぐべきでありまして、これに基きます実際の計画設計実施は、最も適任優秀な専門技術者の力をかりて、ベストなものを期待すべきであると思うのでございます。  それから第三に、技術士制度発達しまして、これの利用が普及しますと、計画設計実施についての責任関係が明確になります。はかりでなく、技術業務の合理的な改善に資するところがきわめて大きいのであります。日本技術業務には、欧米先進品に比べまして、とかく責任関係のあいまいなものが多いのであります。またその内容にも不合理な点が多く見られるのでありますが、これには技術士制度発達のなかったことが大きく原因しているように思われるのでございます。もちろん性格は違います。が、スポーツの振興でも、専業とするプロができますと発達しますのと同じように、やはり技術にも技術サービス専門とする職業が生まれますことが、技術振興の上に大いに役立つのだと思っております。  それから第四番目に、戦後しきりに叫ばれております海外技術進出の問題でございますが、海外技術進出には、技術士制度発達が不可欠な要件なのでございます。これにつきましては、いろいろ申し上げたいこともありますが、あまり長くなりますので、簡単に実情お話しして説明いたします。海外諸国から、名称土木工事につきまして、日本建設業者国際工事入札に参加しないかという勧めが参るのでございますが、実際には、見積りすることすら非常に困難な場合が多いのでありまして、またよし見積もって入札しましても、落札することはほとんどないのであります。そして、いたずらにそのための費用をかけて、むだ仕事に終ってしまうのであります。もちろん、こうなる理由にはいろいろ複雑な理由がございまして、単純ではありませんが、要は日本技術士の手によって調査計画設計した工事でなければ、日本建設業者に落札するプロバビリティはまずないといっていいのであります。外国技術士がやりましたものでは、幾ら入札しても、落札の見込みはないのでざいます。ところが、日本自体技術士制度発達がおくれておりますばかりでなく、欧米先進国のように海外技術士が進出しておりませんからして日本海外技術進出には一重に根本的なハンディキャップがあるのでございます。これを、どうしても克服いたしません限り、欧米先進国に対抗いたしまして、日本技術進出をはかることはまず望めないのであります。もちろん問題はこればかりではございませんが、これが重大な欠陥であることは間違いないのでございます。  以上をもちまして私の意見を終りたいと存じます。が、言葉足らず、その他でご理解を妨げた点も多いと存じますが、どうか技術士制度重要性をお認め願いまして、この法案をぜひとも成立さしていただきたいのでございます。   この法案内容につきましては、先ほど井上さんからもお話がございました。希望的な立場から申しますと、いろいろお願いしたいことがあるのでありますが、まだ幼稚園程度日本技術士発進実情から多くを望むことは無理がと思うのでありまして、今後この法律が生まれまして、実施されました上に、技術士制度発達実情とにらみ合せまして、さらにこの法案をよりいいものに改正させていただくことをお順いしたいと思います。  これをもちまして私の意見を終ります。
  6. 菅野和太郎

    菅野委員長 以上をもちまして、参考人意見陳述は終りました。  質疑の通告がありますので、これを許します。齋藤憲三君。
  7. 齋藤憲三

    齋藤委員 私はただいま参考人のお述べ下さいました技術士法制定に関する賛成の御意見に私も賛成を表するのであります。仰せの通り日本技術界は、国際水準に比較いたしますと、その技術の、面においては、まだはなはだ低いといわれておるのでありまして、コンサルティング・エンジニアの法制化によりまして、日本技術士法というものに出定められた有能な技術士があらゆる技術の指導をやっていくということは、日本生産態勢を近代化するのに非常に私は有効だと思って、この法案には賛成なのでございます。ただ一、二点簡単御意見を拝聴しておきたいと思いますことは、この技術士法の一番中核をなしますものは、技術士の、試験制度だろうと私は考えておるのであります。果してこういうような試験制度参考人の御両人は満足を表しておられますか、どうでありますか。それを一点伺っておきたいと思うのであります。すなわち、予備試験と本試験とに分ける。それから第六条は予備試験の免除を規定しておる。それから第七条は本試験に関する規定をいたしておるのでございますが、その「総理府令で定める技術部門」というのがございますが、これは一体どのくらいに分けたらいいのですか。技術をこまかく分けて参りますと何十と分けていかなければならぬ。そういうものの分け方に対して、何か御意見がございましたならば、一つそれを承わっておきたいと思います。それからその第一項には、「予備試験に合格した者又は前条の規定により予備試験を免除された者で、科学技術に関する専門的応用能力を必要とする事項について計画、研究、設計、分析、試験、評価その他政令で定める事項業務に従事した期同が通算して七年をこえるものに限り受けることができる。」こういうのがこの法案の私は眼目だと考えておるのでございますが、こういう点に対して何か参考人の御高見がございましたならば、この際一つ伺っておきたいと思います。
  8. 井上匡四郎

    井上参考人 この予備試験は、相当技術上の高等教育を受けた者はこれを免除するということは、これは差しつかえないと思います。本試験の段に至りますと、ただいま御指摘のように、これは非常にむずかしい問題になります。これはまだ詳細に、どういう方法がいいかということも政府の方でもきまっておらぬと考えますが、広範な試験をすることについては、受験者経験相当尊重しなければならぬし、それと技術士になる目的は非常に狭い範囲でありますから、そういう人間に、全般的の問題ならばいいのでありますが、自分専門に属さない範囲外部分の非常にごまかい質問をいたしましても、その人間はできないだろう。それで受ける人ごとに特殊の問題を考えなければならぬというような非常にむずかしいことになると考えますが、その点は将来の問題として残っておるわけでございます。
  9. 平山復二郎

    平山参考人 今お話がございました通り、この経験が、七年が満足かどうかという点は、非常に問題だと思います。技術知識ではございませんので、経験によります実際の体験が非常に重要なことでございまして、技術に実際当りますと、科学では科学のメスの入っていない部分を取り扱うことが非常に多いのでございます。それは一に経験によって解決するほかない場合か多うございますので、予備試験もむろん必要でございますが、これはむしろ大学や何かまで出られない方で一つ技術士を志そうという方などには非常に便利なものではないかと思うので、やはり必要でございますが、何を申しましても経験ということが非常に重要だと思っております。  それからもう一つは、技術部門の区別の問題でございますが、これも非常にむずかしい問題でございまして、ちょうど私の子供の時分の日本のお医者さんが内科と外科くらいな区別でございまして、今のように耳鼻咽喉だとか非常なこまかい区別の看板によりましてお医者が開業するということは、やはり発進に伴って生まれて参ったのであります。発進しますのには、どうしても専門的な分化が必要なのでございますが、今のこの技術士がまだ発進していない現状におきまして、また技術士発進は注文主との信頼関係が非常に深いものでございますが、技術士制度発達して参りまして、また注文主もこれに対しまして利用するのが便利だということが認識されますと、一般的にお医者がおれは外科だからと言っても患者が信用しませんように、やはりおれは土木のコンサルタントだと言いましても、注文主の方が進んで参りますと、それでは信用しなくなると思うのでございます。そうなるに伴いまして、技術部門技術士として表示する点も自然にこまかく専門的になってくるのではないか。専門的になって参りますと同時に、また総合的な技術も生まれて参りましょうから、そうすれば、総合的な技術専門としてふるい分けされてもいいと思うのでございます。ただ、現在の名称表示の場合の技術部門の区別は、どっちかというと、現状においてはあまりこまかくやっていただきますと、技術士発達にも非常に困るのではないかという気がいたすのでございます。試験の方はもちろん専門に応じましてやってもいいのでございますが、私はそういうふうに考えておるのであります。
  10. 井上匡四郎

    井上参考人 試験は、学校の試験のようにもちろん暗記試験ではないだろう、すべて技術者に必要なポケット・ブックというものがございますが、ポケット・ブックとか、自分が今まで持っておるデータとかいうものは何でも持ってきていいというような、学校の試験とはよほど性質の違う、暗記試験ではない試験が行われるだろうと考えております。
  11. 齋藤憲三

    齋藤委員 御高見を拝聴いたしましたので十分でございますが、ただ私の考えておりますのは、今日の技術というものは非常に高度化されると同時に、こまかく専門的に分類されてきておるのであります。それで、現在はどうか知りませんが、今後この高度化された技術界におきましては、七年間の体験ということになると、非常にこまかい、専門的な経験を持つということに私はなりはせんかと思うのです。そうなりますと、その専門分野というものが非常にこまかくなっていきやせぬか、そういうところでまず総理府令で定める技術の部品というものは、大体最初にどういうことを決定していくのが妥当なのか、これは類別していきますと際限がない、大別していきますと、あまりラフになる、七年間の体験が生かされる動向というものは、今日のように高度化された技術界においては、非常に専門的に入っていかなければ飯が食えないという時代になっていく。こう思います。そういう点を、妥当性のある部門をきめて試験を行うことがこの法律実施する一番の眼目になりはせぬか、こう考えてお伺いいたしたのでございます。これに対しましては、今日でなくてもよろしゅうございますから、どうか一つ当局に対して適当な御意見をお与え下さるようにお願いいたしまして、私の質問を終ります。
  12. 志村茂治

    ○志村委員 今の齋藤君の質問に続きまして私お尋ねしたいのですが、もちろん工業方面では非常に高度化されると同時に、細分化されるという状態になっております。これを一つの国家試験という形でやっていくというふうにしますと、たとえば弁護士においても医者においても、民事であるとか刑事であるとか、あるいは産科であるとか眼科であるとかいうような特殊な試験はいたしておらないのです。医学一般、法律一般というやり力でやっておって、その人たちがその技術に応じて細分化し、そして自分専門でやっていくという格好になっておるのです。こういうような医学あるいは農学、法律というようなものに比べてみて、工業においては非常に高度化され、細分化されるという違いがあるわけです。そこで、どういうふうに修正、調整していったらばうまい技術士法の運用ができるかということが心配になるわけですが、それについて御意見を伺いたいと思うのであります。一般的な問題として資格をとるのか、あるいはごく専門的な資格をとるというのか、その点お聞きしたい。
  13. 井上匡四郎

    井上参考人 非常な専門的なことを試験することになるだろうと思います。医者の方は知りませんが、技術の方で一般的な試験というのは、ちょっと意味のないことのように考えられます。たとえば、電気の技術者で電気一般のことを試験せられても、あまり価値がないのではないか、その人の経歴によって、今まで電気のうちのどういう仕事を主としてやっておったか、どういう経験を持っておったかということを十分参酌して、その範囲内での試験をする。もちろん電気に関する基礎的の問題もあると思いますが、その主要な問題は、いわゆるコンサルティング・エンジニアとして、その人が商売に、どういうことをするのかということが一番大きな問題になりはしないか、それで試験は非常にめんどうなことになるだろうと思います。この点は、政府もよほど御研究にならなければならないむずかしい問題だろうと思います。
  14. 平山復二郎

    平山参考人 医師の場合はよく存じませんが、おそらく一般の広いライセンスの問題でございますと、今言ったように、そういうことになるかもしれませんが、これは技術士という名称を使って専門技術職業をやろうという立場の問題でございますから、やはりどうしても専門的なものになると思います。これは特定な話なんですが、たとえばレンズをみがく非常な専門家があるそうです。日本に一人とか言っておりますが、一体こういう人はだれが試験するのかという話が出たのです。一方そういう日本に一人しかいないという専門家のできることは、世界的な一流のものができることなんでありまして、日本の宝と同じだと思うのですが、そういう非常にこまかくいくのと、またある程度総合的な方面に進む専門もございますし、そういう点がなかなかむずかしい点なんでございます。今後実際の試験の問題をきめます上に考えなければならない点ではないかと思うのであります。
  15. 志村茂治

    ○志村委員 もう一つ平山さんにお尋ねしたいのですが、あなたはコンサルタントの仕事をやっていらっしゃるのですが、ごく常識的な質問ですけれども、今までコンサルタントがどれだけの成果を上げておられるかということを一つ……。
  16. 平山復二郎

    平山参考人 これはどうもむずかしい御質問でございますが、私は初めアメリカのコンサルタントと共同で始めたのであります。そうしましたら、ドルと円の関係がなかなかうまくいきませんで、私の方はなるべく円、アメリカはなるべくドルというわけで意見が合いませんで、結局分れたのであります。向うのコンサルタントのやり方を見ますと、従来われわれの頭で考えておりました技術サービスのやり方と非常に違うのであります。非常に綿密なやり方をやるのでございます。たとえば一つ設計をきめますのにも、現在日本で多くやっておりますように、簡単に設計をきめてしまうのではないのでありまして、可能と思われるあらゆる業種を比較いたしまして、非常に結論的に出していくわけなんです。ところが、日本の現状では、設計業務というものは施工の業務でございます。会計法規などに非常にやかましく出ておるのですが、設計業務に対しては、全く日本では野放しなんでございます。法規類も何もありません。ところが、外国では設計業務が非常に確立されております。設計をやります場合にどういう内容でやるかというようなことも、一般に常識的にきまっておるわけです。そういう点にのっとりまして頼まれました設計業務をやりますと、非常に喜ばれるのでありまして、一ぺん技術サービスをやりましたところでは大体これを認めてくれます。技術士制度日本にもできますと、先ほども申し上げましたように、実施する前のいろいろな点におきまして非常にむだが省けるのではないか。いろいろございますが、そういう点にも私は非常な大きな期待を持っておるわけなんでございます。いいかげんな技術サービスをやりますれば注文主は信頼してくれませんし、従いまして、技術士仕事というものが、そう言っては悪いかもしれませんが、官庁などにおきまして、あるいは会社などにおきまして、そこの企業者の使用人として設計をやりますのと、やります覚悟が全然違うのでございます。さっきちょっとお話申し上げましたように、スポーツでもプロができますと非常に発達いたしますのと同じように、やはり技術のサービスにつきましても、それを専門とする技術士のような職業ができますと、非常に発達するのではないか。新しい技術をもってサービスいたしませんければ、注文主から、だんだん信用を失ってしまいます。お医者が古い旧式なやり方でやっておったら、患者から信用されないのと同じように、やはり技術も勉強して、いつも新しい技術をもってサービスをいたしませんと、だんだん信用を失う。従って、非常に勉強しなければなりませんので、そういう点からも、技術士制度ができますことは、日本技術進歩の上に非常に役立つのだと思っております。
  17. 井上匡四郎

    井上参考人 コンサルティング・エンジニアの制度の一番発達しておるのは、やはりアメリカだろう思います。アメリカでは、政府企業もやはりコンサルティング・エンジニアに相談しております。それから多分ごく初めのことだろうと思いますが、スターリン時代のロシヤの五カ年計画にも、アメリカのコンサルタント・ファームが行って参加しております。このごろはちょっとアメリカはそういうことは許さないだろうと思いますが、アメリカのいいエンジニアというものは、コンサルティング・エンジニアだ。会社のいいエンジニアというものは、会社におる間に十分特殊のことに自分経験を積んで、そうしてコンサルティング・エンジニアとしてあとは独立してやる。またどの会社もそういう人間を使って新しいことを計画する。そうして非常な独立性を持っていまして、また非常によく利用されている。ドイツなどはそこまでいっておらないようです。しかし、どこの国にも相当有力な何がありまして、御承知でございましょうが、今回四年越しになりますが、日本の石炭鉱業が世界銀行から金を借りようというので多くの会社が申し出たのですが、世界銀行の方で、一ぺん日本鉱山の完全な調査をしよう。これは技術のみならず、経営、販売、さらには労働問題、課税問題というようなものまで含んだ、向うで言うゼネラル・サーベイをしよう。その費用の四分の一は世界銀行で持とうという話が起りまして、それはいろいろ紆余曲折を経たのでありますが、この二十日に多分ワシントンで調印されたと思います。その見積りは、アメリカ、イギリス、西ドイツ、フランス、ベルギーから、そのゼネラル・サーベイに対する見織りをとりまして、フランスにきまったのであります。そういう大きなものを、これはそういう人間がそこに始終おるのではないと思いますけれども、そういう会社経済学者であるとかいうものをアソシエイトするというような形でもってみんな連絡をつけておる。今度十三人か、そういう専門家が六月ころ多分来るのだろうと思います。そういうふうに最高政策にコンサルティング・エンジニアというものが関与するというくらいまで発達しておる。日本が将来どの程度まで発達しますか、まあ、いいエンジニアはコンサルティング・エンジニアだということまでいけば、大へん技術向上のために資することが多いと考えております。
  18. 菅野和太郎

    菅野委員長 田中君。
  19. 田中武夫

    ○田中(武)委員 参考人にお伺いする前に、政府にちょっとお伺いしたいのです。この技術士法によって、試験に合格をして、登録をする。こういうことでいきますと、大体従来の弁護士とかあるいは計理士、こういうのと同じように、そういう計理士会、あるいは弁護士会があるように、技術士会というのがあって、この試験に合格すれば別に従業者として看板を掲げて、どこかからの技術指導なり設計等の依頼を受けて仕事をしていく、こういうことになっていくのじゃないかと思うのです。そうすると、先ほど齋藤委員から御質問がありましたように、ただ一本の試験でいくのか、それとも機械とか電気とか、こういうように分けて試験をして、たとえば従来の高等試験に行政科、司法科があったように、機械技術士試験とか、あるいは電気技術士試験だとか、こういうように分けて試験するのかどうか。そうしますと、技術士の上に機械技術士とか、あるいは電気技術士とかいうような専門名称をつけるのか、つけなければ、ただ単に技術士といってもいろいろの分野があるので、何の専門かよくわからない。こういうことになると思うのです。それから、この法律によると、建築士法等に定められておるものは除く、こういうことになっておる。そうすると、今あるのかどうか知りませんか、従来あったと思うのですが、電気技術者試験には一級とか二級とかがあって、何ボルト以上の発電所の責任者は一級以上を持っていなくちゃいけないということがあったと思うのです。それから電気通信技術者試験、これも一級、二級、三級とあるように聞いておりますが、こういうようなものとの関係はどういうようなことになりますか。
  20. 原田久

    ○原田政府委員 ただいまたくさんな要点の御質問がありましたので、順次お答えいたしますが、第一点といたしまして、技術士会というふうなものを将来作っていくかどうか、こういうお話だったかと思います。現に日本技術士会という社団法人の会で、井上参考人会長をやっておられる会がございます。この会の将来はどうなるかということでございますが、この法律が施行されましてから一定期間が経過しますと、技術士名称を用いることができないということになっておりますので、その時期が参りますると、現在の日本技術士会というものは、そこで一応編成がえしなければ工合が悪い事態に到達すると思います。その時期にたりましてから、新しい公認の技術士の方の懇親団体として、新しい技術士会というものが発足することが予想される。そういう予想を持っております。  それから、第二点といたしまして、技術士資格を得るための本試験内容について十分まだ御説明しておりませんので、あわせて御説明いたしますが、技術士の本試験は十三部門ほどの予想を持っております。が、技術部門に分けて本試験をする予定にしております。案として持っております内容を御披露しますと、機械部門、船舶部門、航空機部門、電気部門、化学部門、金属部門、建設部門、農業部門、水産部門、林業部門、鉱業部門、管理部門、公衆衛生部門というふうな十三部門に分れます。その十三の部門のうちにさらに専門分野を設けまして、たとえば機械につきましては機械工作、原動機、工作機械及び精密機械、鉄道車両、自動車、紡績機械、産業機械、暖冷房冷凍機械というふうな工合に専門分野を分けます。そして、試験方法としましては、さらにその専門分野の中に幾つか専門事項について選択的に受けられるような問題を出す。口頭試験とそれから筆記試験とに分けてやる予定でありますが、そんな予定で試験をすることを考えております。これはまだ予定でございますので、内容は政令その他がきまりました段階できめていく予定でございます。そういうわけで、大きく分けますと十三の技術部門に分れて試験が受けられるということになっております。  そこで今度は、その試験を受けられた方が、名称をどういうとかうに使用するかという問題でございますが、単に技術士という名称を使うのでなくて、法律の二十六条にございますが、名称表示の場合の義務というのがございまして、「技術士は、その業務に関して技術士名称を表示するときは、その登録を受けた技術部門の全部又は一部を明示してするものとし、登録を受けていない技術部門を表示してはならない。」となっておりますので、かりに機械の部門を受けた方は機械技術士、電気の部門を受けた方は電気技術士、その二つを受けられた方は機械技術士及び電気技術士の二つ並記してもいいのですが、そのうち一部を略してもいい。とにかく通られた技術部門を表示して使われるということになっております。  それから別の面でございますが、三十七条に「技術士でない者は、技術士又はこれに類似する名称を使用してはならない」とありますので、技術士でない方が、かりに電気技術士とか機械技術士という名称を使いますと、この法律違反ということになることになっております。  それから第四点だと思いますが、他の法律にあります、欠格条項のところに——先刻お話がありましたたとえば電気主任技術者、これは一種、二種、三種とあります。それから電気通信——正確な名前は存じませんが、電気通信の技術士、一級、二級、三級とございます。こういうような資格を持っておられる方と、技術士との関係でございますが、電気主任技術者は、電圧によりまして、ある電圧以上の発電所、変電所をコントロールするには、第一種主任技術者がいなければならぬというふうになっております。そういうふうに業務の独占と申しまして、その人でなければできないという業務が電気主任技術者というものにきまっております。しかし、技術士法の方では、業務の独占は入っておりません。すなわち、技術士でなければこれこれのことはできないということはございません。それでは技術士でなければこういうことができないかと申しますと、技術士技術士名称を用いて技術上のいろいろの相談を受ける場合に技術士でない者がそういう技術士名称を使ってそういう業務をしてはいけないということになりますので、名称独占と言っております。が、名称を使用する場合にそれは禁ぜられる、こういうことになっておりますので、おのずと技術士法業務とそういう業務独占をうたっております電気主任技術者と通信関係技術者というものとは、その業務範囲が変ってくる、こういうことに相なるかと思います。
  21. 田中武夫

    ○田中(武)委員 ただいまの御答弁によりますと、現在ある日本技術士会、こういうのを、現在もあるから、これが登録を受けてできれば、若干改組する必要もあるだろう、こういうように言われておるのですが、たとえば、弁護士の場合でも、弁護士会というのは法律か何かできまっておって、相当強い自主性を持っておると思います。いろいろ会員とか役員の選出とか、そしてその弁護士会の資格において相当な建議とか発言権もあるように思うのです。そこで、こういう法律が通って、そういった性格の日本技術士会ができる場合、どういうようにしたらいいかと思うのですが、これは井上参考人一つお伺いしたいのです。現在の日本技術士会と今度こういう制度ができてなる日本技術士会はどのように変えたらいいか。現在のままでいいようにお思いですか、いかかですか。私は弁護士会等を考えて、こういう制度になるならば、また強い法律等も作る必要があるのじゃないかとも考えるのですが、どういうようにお考えになるか、お伺いしたい。  もう一つ続けて伺います。なおこれは齋藤委員質問とも重複いたしますが、この前もはっきりしていなかったが、今では十三の項目に分けてやる、こういうことです。これは両参考人にお伺いしますが、その分野として十三くらいの、今言われたようなもので適当であるのかどうか、伺います。
  22. 井上匡四郎

    井上参考人 技術士会は、この法律が制定せられました場合には、適当の改組を必要と考えております。その期間は来年の八月三十一日までの期間がありますから、その間に適当な方法を考えたいと思います。  それから、その分野については大体そういうことでありますが、その中にまたもっとこまかい何がだんだん出てくると思います。それで試験を受ける受験者は、その項目について申し出てくるのだろうと思いますが、これもその分野によってよく考えてやらなければ、非常な残酷な試験になり得る憂いがありますから、先ほども申しましたような、その人の経験というものを相当考慮しなければならぬと考えて承ります。大体の分野はそのくらいのことで納まっていくんじゃないかと思います。
  23. 田中武夫

    ○田中(武)委員 平山参考人に、別に変った御意見はございませんか。
  24. 平山復二郎

    平山参考人 ございません。大体十三くらいのところで網羅されるのだと思うのでございます。機械と申しましても、これをこまかく分けて参りますと、非常にこまかくなって参ります。これは非常にこまかい技術士をやりたいという人もおりましょうし、だんだんにこの技術士発達に伴いまして変えていく必要があるのじゃないか。現状では今中しましたような十三くらいあれば大丈夫だと、こう考えております。
  25. 田中武夫

    ○田中(武)委員 今お伺いいたしておると、この試験方法も、結局かつての高等文官試験、現在の弁護士試験等と同じように、一定の資格のない者には予備試験をする、あるいは大学専門学校を出た者は予備試験を免除して本試験だけ行う。その本試験は筆記試験と口述試験とある。何だかあまりにも形式的のように思うのですが、ほかに技術士試験といったような特別な試験方法が何か考えられないでしょうか。何か高文の試験あるいは弁護士試験と同じような予備試験、そして一定の者は予備試験を免除する、本試験は口述試験と筆記試験だ、ちょっと形式的のように思うのですが、特殊な技術の問題ですから、何か別に試験方法はいいものがないでしょうか。参考人はどういうようにお考えになりましょうか。
  26. 井上匡四郎

    井上参考人 これはなかなかむずかしい問題でありますが、私は弁護士試験がどういうふうに行われておるか知りませんが、技術士試験というのは、先ほど申し上げましたように、暗記の試験ではなくて、その試験にはすべての必要な材料をそこに持ってきていいというようなことは、多少違うのじゃありますまいか。すべての材料は携帯してきていい、それによってできるような試験を私はやったらいいのじゃないかと思います。
  27. 田中武夫

    ○田中(武)委員 これは実地試験といいますか、そういうものはやらないのですか。
  28. 原田久

    ○原田政府委員 実地試験はやらない予定でございます。
  29. 田中武夫

    ○田中(武)委員 しかし、技術は理屈をしゃべるだけではないと思うのです。筆記試験と口述試験だけだったら、理屈を覚えておってしゃべることが上手だったら通るのですね。そうすると、理屈だけ知ってようしゃべる者だけが技術士になるというおそれがあると思いますが、参考人はどういうふうにお考えになりますか。
  30. 平山復二郎

    平山参考人 さっきございましたように、これは履歴を非常に重要視する必要があると思うのでございます。試験方法に対しましては、実地試験といいましてもなかなか問題がございますし、さっき井上さんのお話にもございましたように、何か技術サービス一つの問題をやらせるということはできるかもしれませんが、やはり経歴ということを非常に重要視することによりまして、今お話になりました点も、試験方法のいかんによって、形式的でなくやり得る方法があるんじゃないか、こう思っておるのです。外国あたりは、大体経歴によって、また社会も経歴によってその人のあれを考えますものですから、そういう点はいいのじゃないかという気がするのでございます。それからまた技術士の中にも一流から何流かできるわけでございまして、これの選択はやはり注文が技術士利用について理解をして参りますと、お医者の場合と同じように、報酬が安ければやぶ医者にかかる、報酬が高ければ一流のお医者にかかるという、注文主との間に自然にうまい関係ができてくるのじゃないか、こう思うのでございます。
  31. 田中武夫

    ○田中(武)委員 今の平山参考人の御意見で、私ちょっと疑問に思うのです。報酬が高ければいいとか、安ければ悪いとか、お医者さんの場合はそういうことがあると思うのですが、技術士ができたときに、その従業者として開業するわけでしょう。そうすると、弁護士とかあるいは計理士のような概念ではいかないかもしれませんが、大体こういうことについて一件は幾らとか、そういうことをきめるのじゃないですか。そうすると、今おっしゃったように、やぶ医者だとか有能な医者だとかいっているように、もちろん依頼者はいろいろなことを相談に行き指導を受けるのですから、その内容によって依頼者と被依頼者との間に幾らという相談もできると思うのですが、そういう点はどうなりますか。やはり弁護士になると一定の基準を置いて1件幾ら、あるいは訴訟の場合手付として訴訟金額の何割とか、勝訴の場合は幾ら、敗訴の場合は幾ら、こういうことになっておるのですが、そういう報酬等については、あなたはどういうふうにお考えになっておりますか。
  32. 平山復二郎

    平山参考人 今、報酬という点に、どうも誤解を招いたようでございますが、技術士業務というものにもいろいろ種類がございまして、単に大事な点についてアドヴァイスするのも、重要な技術士仕事なのでございます。もう一つは、実際の設計なら設計あるいは計画なら計画をやります場合は、この報酬のやり方についても、種類がございまして、たとえば、大体技術のサービスは実費式なのでございます。技術サービスをやって参りますと、みんなタイム・シートをとっておりますので、仕事に何時間かかり、どのくらいの階級の者がどのくらいやった、むずかしい仕事になりますればどうしてもいいエンジニアがやらなければなりませんし、そういうことで大体実費というものを土台にしてやりますやり方と、今申しましたように、仕事のコストの何%というやり方があるのでございまして、これは注文主との御相談になるのでございます。それから現在でも大体技術士会でもって、参加しておりますメンバーの間で報酬の標準というようなものも完全ではございませんがきめております。いずれこういう法律ができました上では、さらにそういうものが基準化されて参ると思うのでありますが、そういうことによってその点もうまくいくのじゃないかと思ってております。
  33. 田中武夫

    ○田中(武)委員 政府は、報酬の点はどうですか。
  34. 原田久

    ○原田政府委員 お答えいたします。現在の日本技術士会がいろいろな報酬の規定を作っております。こまかい日程については、一日旅費がかかればどれだけの旅費をもらう、あるいは相談料をもらうというようなこまかい規定もあるようであります。これは技術士会でお作りになっておられますが、今後技術士法通りましたならば、第三十六条に「業務に対する報酬」という項目がございまして、「技術士業務に対する報酬は、公正かつ妥当なものでなければならない。」という一項がございます。将来技術士がいろいろな報酬をきめていかれる場合に、あまり突拍子もないような報酬を要求される、あるいは均衡を欠いたような報酬を要求されるというようなことが起きますと、また信用上その他にもいろいろな影響があるかと思いますので、こういうことがないように、行政指導でその業務に対する報酬を規制していったらどうか、そういう考えを持っております。大体日本技術士会が今までやっておられる経験などがありますから、そういうものが将来の参考になっていくのじゃないかというふうに考えます。
  35. 田中武夫

    ○田中(武)委員 現在日本技術士会がきめられておるというのは、自主的にきめられておるわけですね。そうして今後もそういうように技術士会といったような会で自主的にきめていくのに対して、行政指導によって公正かつ妥当なものにきめられるようにしていきたい。こういうことですか。法律をもってこれをきめるというようなことは考えておられないのですか。さっきちょっと答弁が途中になりましたが、日本技術士会をまた法律等によってきめられるようなお考えが刈るのかどうか、これは先ほどの報酬をきめるようなことについても関連性があると思いますが、いかがでしょうか。
  36. 原田久

    ○原田政府委員 まず、技術士会というものを将来法律で作っていくかどうかという方からお答えいたしますが、御承知のように、弁護士法とかあるいは弁理士法というものには、それぞれ弁護士会法とかあるいは弁理士会法というようなものができております。この技術士法の中では、そういうものを法律で設けることを用意して、おりません。この技術士制度はわが国ではまだ発足後日が浅いわけでございますから、現段階でそういう法律をもって技術士会というものを規制していく段階にはならないと考えておりますので、現在のところ、そういう技術士会というものを法律で作っていく考えは持っておりません。それから、報酬につきまして、法律を作って規制していくというような考えは持っておりません。
  37. 田中武夫

    ○田中(武)委員 そうしますと、あくまで技術士試験に合格した技術者が自主的に作る日本技術士会とかなんとかいったような会によって、自主的に運営していく、こういうことですね。
  38. 原田久

    ○原田政府委員 さようでございます。
  39. 田中武夫

    ○田中(武)委員 大体よくわかりました。なお、これは御答弁はいただかなくてもいいと思うのですが、まだもう一つ割り切れないのは、先ほど来質問しております試験制度の問題です。それじゃお前何かいい方法があるかと言われても、私もないのですが、ただ本試験を筆記試験と口述試験だけにすると、文科系統の弁護士や、あるいはかつての高文試験のようたやり方でいいのかどうか、私は疑問だと思うのです。それなら、さっきも言ったように、ある程度理屈と文句をたれる者だけが技術士になれると思うのです。口下手でも技術のいい人がおると思うのです。いろいろ本人の素質等もありますが、将来技術畑に出ていくかあるいは文科畑に出ていくか、こういうようなときに、むしろ口下手だから技術にいくという者もおると私は思う。こういう形式的なやり方でやるならば、この画期的な法律がやはり形式的に流れやしないかと思うのですか、何かもっといい方法を考えていただきたいのです。
  40. 齋藤憲三

    齋藤委員 今ちょうだいいたしました技術部門の案ですが、これは十三ですね。原子力関係のアイソトープなんかはどこに入るのですか。
  41. 原田久

    ○原田政府委員 原子力関係は新しい産業でございますので、まだその技術指導をするような人が現在おらぬじゃないかと思っております。が、将来はそういうときが出てくるので、そのときを考慮いたしまして、十三以外に原子力関係部門を設けていきたい、こう思っております。こういう部門を作ることにつきましても、技術士審議会あるいは技術士試験委員というのもございますので、そこで十分練ってきめたいと思います。まだ今十三部門は素案でございますので、さよう御了承願いたいと思います。
  42. 齋藤憲三

    齋藤委員 この電気部門ですが、電子機器、自動制御、計測機器というようなものは、今後の技術指導という面からいくと、これは全部電子機器、工レクトロニクスの中に包含さるべきものじゃないのですか。
  43. 原田久

    ○原田政府委員 電子機器と自動制御とが一体的なものであるのじゃないか、こういう御質問だと思います。御承知かと思いますが、自動制御の中には電子を使わないリレー式もございますし、それからメカニカルなものも入っておりますので、一応従来の分類に従いまして、電子機器と自動制御とを分けたわけでございます。
  44. 齋藤憲三

    齋藤委員 分類が非常に厄介になってくるだろうと思うから、私は警告的にそういうことを申し上げておるのであって、今のお話のような、自動制御の中にレリー式もあるしエレクトロニクスの関係もあるということになりますと、なかなか分類というのは大へんな問題になりはせぬかと思って心配しておるのです。もう一つ、化学とやっておるが、その中には電気化学が入っている。現に大岡山あたりに行くと、工業には電気化学という一つのりっぱな部門があるのです。そういうものもこれにはオミットされておる。私が一番日本で心配しておりますことは、通産省では重化学工業という言葉を使っておる。この間、私不思議だから、特許庁に行って調べてみたところが、特許庁の重化学工業の定義というものは全然違う。ですから、こういう技術士法というような国家の法律をもって、登録制によってりっぱな技術士を決定しようとせられるときには、まず第一に用語の統一をはかっていただかないと、何が何だかわけがわからない。通産省のいう重化学工業というのはどういうのかというと、重工業と化学工業を一緒にしたやつだという。また特許庁へ行くと、別な定義を下しておる。英国あたりの本を見ると、ヘビー・ケミカルという別な定義が下されておる。一体どれを重化学工業というのか、世界的にわけがわからない。しかも、世界的にコンサルティング・エンジニアの登録制を用いていく。おれはこれをやっているんだといったって、アメリカあたりに行ったら全然分野の違う人間だとして取り扱われるのでは困るので、そういうことをよく注意してやっていただきたい。
  45. 菅野和太郎

    菅野委員長 他に御質疑はありませんか——なければ、参考人よりの意見聴取は終了いたしました。  参考人各位には、長時間にわたり、しかも貴重な御意見を賜わりまして、まことにありがとう存じます。当委員会法律案審査に御協力下さいましたことを、委員会を代表して、私より厚く御礼を申し上げます。     —————————————
  46. 菅野和太郎

    菅野委員長 次に、原子力行政につきまして質疑の通告がありますので、これを許します。岡良一君。
  47. 岡良一

    ○岡委員 宇田国務大臣はお約束があって、お急ぎとお聞きいたしますので、簡潔にお尋ねをいたします。大臣もまた率直に御答弁を願いたいと思います。  まず問題は、湯川秀樹博士が原子力委員会の委員を辞任せられることに相なりました。まことに惜しみても余りあることと思うのでありますが、その辞任の理由並びに経過を率直にご報告願いたい。
  48. 宇田耕一

    ○宇田国務大臣 湯川博士は、健康上、主治医の勧告によりまして、原子力委員及びその他の、自分専門研究以外のことはやめたい、こういう申し出がありまして、直接お会いできなかったので、それを確かめるために藤岡委員に京都へ出張してもらったのですが、直接お会いしなくて、そうして湯川さんの奥さん、それから主治医等から、同様の理由で、この際はどうしてもやめさしてもらいたいということでありまして、藤岡博士の従来のおつき合いした経過から見て、今回は断念せざるを得ないという報告でございました。
  49. 岡良一

    ○岡委員 ノーベル賞を受賞せられた国際的な専門の権威である湯川博士が原子力委員をおやめになったということは、原子力委員会の権威のために私はきわめて遺憾に思うのでありますが、大臣の御所信はいかがですか。
  50. 宇田耕一

    ○宇田国務大臣 全然同感でございます。
  51. 岡良一

    ○岡委員 ただいま理由としてお聞きいたしますと、私も専門のその方面の医師でありますが、問題は、原子力委員会の委員にとどまることによって精神的な過労を負うことになるという理由で、一方、学問に専念したい、研究に専念したいということは、これまた当然精神的な過労をしいることになるのであります。このような、いわば医学上専門的に見て、理由として相立たないような理由が二つ理由としてあげられて、湯川博士が辞任をされた。私はそのようなことで辞任をされたとは思いません。これらの理由はきわめて政治的なものとしか考えられない。そこでお伺いをいたしますが、原子力委員会は、原子力発電について、あるいはまた、原子力発電の動力協定について、何らかの意思の決定をなされましたかどうか、この点をお伺いいたします。
  52. 宇田耕一

    ○宇田国務大臣 原子力委員会は、原子力発電につきましては、石川ミッションの報告を一月十七日付で受け取っておりまして、それには、イギリスのコールダーホール・タイプのものが最も望ましいのであるが、しかし、それを購入するかせぬかの最後の決定は、なるべく近い機会に第二のミッションを送って、それによって決定するがよろしい、こういう勧告というか報告がありまして、それを委員会に諮りまして、湯川博士も同席の上で第二回目のミッションを出そうということにたっております。そのミッションの報告を待って、原子力発電の動力の問題に決定を与えようじゃないか、そういう経過であります。
  53. 岡良一

    ○岡委員 三月十四日に原子力委員会か開かれておるのでありますが、この十四日の原子力委員会は、湯川博士は御欠席のはずであります。この委員会原子力発電の問題、あるいは動力協定の問題について、委員会として何らかの意思決定がなされておりますかどうか。原子力発電あるいは動力協定の問題について、一つ当日の議事録について正確なお答えを願いたいと思います。
  54. 宇田耕一

    ○宇田国務大臣 原子力発電等についての問題点は、何カ条か議案に出されております。しかし、いずれも前提条件は石川ミッションの報告の趣旨に沿って、かつて決定した通りのものを取り運ぶべきである、こういうことに出席者は一致しております。そのときには湯川博士は欠席であります。私は途中から用があって退席をいたしましたから、私の退席後にどういうことがあったかということは存じませんけれども、原子力委員全員一致でもって決定をいたしておりますことは、石川報告に基く第二回目の調査団を送って、それの報告によって原子力発電についての最後決定を行うべきである、それは三月十四日でしたか、それも変りはありません。
  55. 岡良一

    ○岡委員 そうすると、三月十四日、あるいはまた一月十七日から三月十四日までに至る、原子力委員会においても、動力協定ということについては、これをすみやかに結ぶ方針に意思の決定を見たというふうな事実はありませんか。
  56. 宇田耕一

    ○宇田国務大臣 動力協定につきましては、御承知のように、石川委員が第一回目のミッションで各国を訪問された場合に、ドラフトを持って帰っておられます。従って、その、ドラフトを中心として、委員会でこのドラフトのどこに問題点があるか、どこにわれわれとして検討を要すべきものがあるかということは検討をいたしております。それについては、湯川博士も参加をされたことはあります。しかし、この動力協定を結ぶことについての最後の決定をどうするかということについては、今まで何も結論は持っておりません。
  57. 岡良一

    ○岡委員 動力協定を結ぶべきであるという結論に到達をせられないといたしましても、動力協定をすみやかに結ぶべきであるという方針に原子力委員会意見が一致を見たという事実はありませんか。
  58. 宇田耕一

    ○宇田国務大臣 日にちは忘れましたが、いずれあとから議事録を見ればわかりますが、動力協定を結ぶべきであるという、そういう話は二月にいたしました。
  59. 岡良一

    ○岡委員 それは佐々木局長の方ですぐわかるはずだと思うのですが、日時をすぐ調べてもらいたい。しかもその委員会には湯川博士は出席しましたか。
  60. 宇田耕一

    ○宇田国務大臣 出席したと思います。
  61. 岡良一

    ○岡委員 湯川博士は、動力協定をすみやかに結ぶべきであるという方針に委員会の意思が決定をしたときには、賛意を表しておられたのでありますか。
  62. 佐々木義武

    ○佐々木政府委員 そのときにお話がありましたのは、いろいろあったのですけれども、その動力協定の問題に関しましては、条文等を検討した上、英米双方に交渉に入るべきであるということで、いつ交渉に入るとか、あるいはどういう炉を買うために交渉するといったようなことには全然触れずに、条文等を検討した上で、条文等という意味は条文自体の内容もありましょうし、あるいは受け入れ態勢等その他諸問題がございますので、そういうことを検討の上でということで、そういう腹づもりでいこうということで、別に決定事項を内閣に報告しというような性質のものではございませんでした。湯川博士もお見えになっておりまして、原子力委員会でそのお話を皆さんで協議した結果、こういう考えでよかろうというふうになったわけであります。
  63. 岡良一

    ○岡委員 そうすれば、動力協定を結ぶ方向に一歩進まれたことは進まれたわけでありますけれども、それはいつなんでしょうか。
  64. 佐々木義武

    ○佐々木政府委員 たしか二月の九日ごろだと記憶いたします。
  65. 岡良一

    ○岡委員 御存じの通り、昨年の一月の初頭に、当時の正力原子力委員長が、動力協定を結ぶことに、原子力委員皆さんの意見一致を見たということが、あとで取り消しをしておられますが、あった。このときには、いち早く湯川博士は非常に御不満の意を漏らされて、原子力委員員についての自己の進退を決意されたような事実のあったことは、局長も御存じの通りであります。あるいは宇田委員長も御存じの通りであると思います。そこで、今度また湯川博士が辞任をされる。しかもその辞任の理由たるや、研究に専念したい、主治医の勧告によって、原子力委員の仕事は精神的に過労である——これは先ほど申しましたように理由として成り立たない理由なんです。そうなりますと、原子力委員会における動力協定へという一つの急がれる姿と、かねてから動力協定について非常に慎重な態度をとっておられた湯川博士の心境との間に、やはりいれないものがあったというように私は考えざるを得ないのです。このような事実について、原子力委員長はどういうふうにお考えでありますか。
  66. 宇田耕一

    ○宇田国務大臣 その点につきましては、私も特に慎重を必要といたして、藤岡博士に、特にその点を十分向うとお話し合いを願いたいということを申しました。そうしたら、湯川博士から私に電報が参りまして、配慮実に感謝にたえない、そうして藤岡博士からの報告によりますと、全然原子力委員会での話の問題とは違うのだ、もう健康が非常に悪いので、この際どうしてもやめさせてもらいたい、そうして研究を続けていく上については、十分自分に時間を与えることを配慮してもらいたい、こういうことでありまして、藤岡博士も、行くときには、もしかするとそういうことが原因ではないだろうかという、あなたと同じような心配を持たれて行かれたのです。そこで、藤岡博士が行って帰ってこられて、全くそうではない、どうしてもこの際はやめさせてもらうように、たって僕も頼む方に賛成をするのだというので、藤岡博士が行ったら逆にそういう向うの意見に同意して帰ってこられた。そうして、その病気の内容についてはよく存じませんけれども、都合によっては藤岡博士からお聞き願ったらどうかとも思います。
  67. 岡良一

    ○岡委員 とにかく私ども繰り返し申しますが、一方では研究に専念したい、一方では原子力委員を続けることか精神的な過労になるということは、研究の方がもっと過労になるくらいのもので、私どもはそういう理由は承認はできない。これはやはり日本原子力委員会の権威のためにも、その程度理由をもって辞任をされたという経過の御報告は、私は納得ができません。しかしながら、この問題については、藤岡博士等もわざわざ京都までお出向きのことでありますので、さらにその間の事情も十分にお聞き合せを願って、私どもの納得のいくところまで事実の真相を突きとめたいと存じます。いずれいろいろ質問を申し上げたいと存じておりましたが、大臣もお急ぎのようでありますから、私はこの程度で一応打ち切っておきますが、あとこの問題についての真相を明らかにするということについてのことは保留をいたしたいと思います。
  68. 菅野和太郎

    菅野委員長 この際、お諮りいたします。すなわち、研究技術職員の給与に関する問題について、全国官公庁技術懇談会理事長亘理信一君、各省直轄研究所長連絡協議会世話人小林正芳君、工業技術院電気試験所企画課長池田三穂司君、特許庁審判長田中博次君、全商工労働組合技術庁連絡協議会議長稲垣良穂君、以上五名の方々を参考人と決定し、その意見を聴取いたしたいと存じますが、これに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  69. 菅野和太郎

    菅野委員長 御異議なければ、さよう決定いたします。  なお、参考人よりの意見聴取は、明二十七日、午前十時より行いますから、さよう御了承願います。  本日はこれにて散会いたします。     午後零時二十一分散会