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平山参考人 井上さんからるる
お話がありましたから、多少私の申し上げることが重複的になるかと存じますが、お許しを願いたいと思います。
今日、
技術の
振興ということが、
敗戦後の
日本の国情から叫ばれておるのでございますが、この点からこの
技術士法案は非常に重要な
関係があると思うのでございまして、ぜひこの
法案はこの
国会において成立させていただきたいと思うのでございます。この
法案の提出されました
理由は、今、
井上さんからも
お話がありましたように、
提案理由説明にも詳しくございますので、私から申し上げることも少いのでありますが、私も多年
技術者として
技術生活を送りました
関係から、少しく蛇足をつけ加えさせていただきたいと思います。
技術の
振興と申しますことは、もちろん
技術の
進歩、
発展でございますが、この原動力、
推進力となりますものは、申すまでもなく、
技術者でございます。この
技術者を
社会的にどう
利用するとか、あるいは活動させるとか、あるいは待遇するとかいうような
技術制一度が、
技術の
進歩、
発展の上に大きな
関係を持っておることは、これまた申すまでもない次第でございまして、
技術制度がいいか悪いかということによりまして、
技術は
推進もされますし、また停滞もしてしまうのだと思っております。こういう
技術制度にはいろいろございますが、
欧米の
先進国に比べまして、
日本で最もおくれております点は何かと申しますと、この
技術士法案が目ざしております
技術制度の
発達がおくれておるという点なんでございます。
技術士の
制度が、どういうものだということは今さら申し上げる必要もありませんが、
一言にして申しますと、だれもが報酬を払って自由に
利用できます
技術サービスのできる
専門の
職業技術者を
社会的に作りたい、こういうことなんでございます。これは
医者の場合と全くその趣旨は同じなんでありまして、お
医者の場合に
個人や病院がございますように、
技術者の場合にも
個人や法人があり得るわけであります。ただ、お
医者の場合には
利用者や
依頼者が
個人なのでございますが、
技術士の場合には多くは
企業体が
利用者、
依頼者となるのだと思うのでございます。
日本にも
技術者はたくさんおりますが、ほんとうに
技術サービスを
専門の
職業として
社会的に活動しておる
技術者というものは、非常に少いのでございます。さっき
井上さんから
お話がございましたが、
技術者の
仲同では
技術制度を作りたい、また作らなければいけないじゃないかという
意見は、ずいぶん古く
戦前からもあったのでございますが、
建築方面を除きましては、ほとんど見るべき
発達がなくして経過してきたのでございます。
敗戦後、アメリカの
占領下に、
日本の各
方面に旧
制度のいろいろな改革また新
制度の発足がございましたように、
技術方面にも、
日本でおくれております
技術制度を樹立した方がいいじゃないかという勧告がございまして、
経済安定本部が肝いりになりまして、現在
井上さんが
会長をやっております
技術士会が生まれまして、それを中心に多数の
技術者の協力によりまして、今日ようやく
技術士法案を、今
国会に御審議を願うところまでこぎつけたわけであります。
戦前なぜ
日本に
技術士の
制度ができなかったかという
理由につきましては、今、
井上さんから
お話もございましたが、私は
井上さんの
お話になった
理由につけ加えまして、こういうことが
技術士制一度の非常に
発達しなかった
原因ではないかと思うのでありますが、
日本は
技術の
輸入国でありまして、
輸出国ではなかったのでございます。それからまた、
国際の
競争場裏で、
消費財の商売では、ずいぶん活躍いたしましたが、
技術によります
生産財の
輸出でもって活躍したことは非常に少いのでございます。こういう
関係からいたしまして、どうも
日本では、
欧米の
技術や
技術者を向く評価いたしますが、
日本の
技術、
技術者を一段低く見ているような傾向があったのが、今日
技術士制度の
発達しなかったおもな
理由ではないかと思っておるのでございます。こういうことを改めます上にも、ぜひ
技術士の
制度を
日本に
発達させなければならないということを思うのでございます。
次に、この
技術士法案が幸いに成立いたしまして、今後
日本にも
技術士制度が
発達しましたら、どういう成果が上るかというような点を、これまでこの
制度が
発達していないための不都合とあわせ考えまして、少し申し上げてみたいと思います。
第一に、
技術者の
立場から最も
意義があると思いますのは、この
技術士制度が
発達いたしますと、
社会的に生涯を
技術の
進歩発展にささげる
一流の
専門技術者が生まれる基盤ができるということでございます。そして、それが
日本の
技術の
進歩発展に寄与する
意義はきわめて大きいと思うのでございます。さっき
井上さんからも
お話がございましたが、従来も
事業官庁なり
会社なりに、多年重要な
技術を担当いたしまして、豊富な
技術的な
知識と
経験を積みまして、
一流の
技術者として育った人は幾らでもあるのでございますが、その属しております
事業官庁なり
会社なりを退いてしまいますと、せっかくの
技術を生かして広く
社会のために役立たせながら、生涯を
技術に奉仕するという道がないのでございます。せいぜい
顧問格の閑職くらいに甘んじまして、
社会的に宝の持ちぐされに終るほかないのでございます。こんなわけで、
日本では
医者や弁護士などのように、
一流技術者としての
社会的地位というものがないのでございまして、
技術者の
成功者といいますと、
一流の
技術者になることではないのでありまして、次官とか長官とか社長とか重役とかになることなのでございます。
技術を捨ててしまうと言いましてはいささか語弊があるかと存じますが、
技術の
振興の
観点から申しまして、これは邪道でありまして、まことに遺憾な点でありますことは申すまでもないと思います。私の同窓の
技術者を顧みましても、この感を深くするのでございます。
それから第二に、
技術士制度が
発達いたしまして、有能な、信頼できる
技術者が
技術士の
業務を始めるとしますならば、そういう
資格の
技術者は、決して各
方面に事欠いておりません。そうなりますと、
技術を
もととするいろいろな
調査、
計画を
実施します場合に、そのための
技術スタッフをわざわざ持たなくても、すぐ適当な
技術者に依頼いたしまして、
責任をもってそういう
仕事を、やってもらえるのであります。これは単に手取り早く便利だというようなことだけでなく、みずから
スタッフを持ってやりますよりは、
技術的にも
経済的にも、はるかに有利な結果が得られるのであります。ところが、これまでは
技術士制度が
発達しておりませんための、
責任を持った十分な
技術的、
経済的の裏づけのない
調査、
計画、
実施が
もとになりまして、大きなむだや失敗をしている例が決して少くないのでございます。私は、
技術士制度の
発達と相待ちまして、
日本でも
技術的な
事業に対します
政府の補助や銀行の融資などに対しましては、作文や顔だけでなく、ぜひとも信頼できる
技術者によります
技術的、
経済的な夏づけ、保証を
必要条件とすべきであると思うのでございます。継続的に同じ
技術的な
計画や
設計実施をする
官庁や
会社などで
技術スタッフを持っておりますところでは、
技術士を頼む必要はないなどということがよくいわれますが、最善の
計画、
設計、
実施をやろうという
観点からいたしますと、これは間違いではないかと思うのでございます。今、
井上さんからも
お話がございましたが、
技術が
進歩しまして、
専門的に分化するに連れまして、十分な
計画、
設計、
実施をしますにしましても、
名称の
専門技術の総合を必要とするのでございます。この場合、果して
スタッフとしてこれらの各種の
専門技術者を十分持っておるかどうか、これははなはだ疑問なのであります。またその
スタッフか、果して
一流であるかどうかということも問題なのでございます。特に
技術者の新陳代謝や更迭が激しい
官庁などにおきまして、この点そうではないかと思うのでございます。そうなりますと、やはりいくら
スタッフがありますところでも、
技術士の力をかりるべきでありまして、
技術士の必要があるのだと思います。それがかりでなく、こういう常時
スタッフを持っておるところでも、準備なく、急に
技術的な
仕事の拡大、膨張をすることがあるのでありますから、
スタッフの不足を来たす場合もあると思うのでございます。元来こういう
スタッフは、新規な
計画や
実施に対する基本となる
条件や
データの
調査、
資料収集に主力を注ぐべきでありまして、これに基きます実際の
計画や
設計や
実施は、最も適任優秀な
専門技術者の力をかりて、ベストなものを期待すべきであると思うのでございます。
それから第三に、
技術士制度が
発達しまして、これの
利用が普及しますと、
計画や
設計や
実施についての
責任関係が明確になります。はかりでなく、
技術業務の合理的な改善に資するところがきわめて大きいのであります。
日本の
技術業務には、
欧米の
先進品に比べまして、とかく
責任関係のあいまいなものが多いのであります。またその
内容にも不合理な点が多く見られるのでありますが、これには
技術士制度の
発達のなかったことが大きく
原因しているように思われるのでございます。もちろん性格は違います。が、スポーツの
振興でも、専業とするプロができますと
発達しますのと同じように、やはり
技術にも
技術サービスを
専門とする
職業が生まれますことが、
技術の
振興の上に大いに役立つのだと思っております。
それから第四番目に、戦後しきりに叫ばれております
海外の
技術進出の問題でございますが、
海外の
技術進出には、
技術士制度の
発達が不可欠な要件なのでございます。これにつきましては、いろいろ申し上げたいこともありますが、あまり長くなりますので、簡単に
実情を
お話しして
説明いたします。
海外諸国から、
名称の
土木工事につきまして、
日本の
建設業者に
国際工事入札に参加しないかという勧めが参るのでございますが、実際には、見積りすることすら非常に困難な場合が多いのでありまして、またよし見積もって入札しましても、落札することはほとんどないのであります。そして、いたずらにそのための費用をかけて、
むだ仕事に終ってしまうのであります。もちろん、こうなる
理由にはいろいろ複雑な
理由がございまして、単純ではありませんが、要は
日本の
技術士の手によって
調査、
計画、
設計した
工事でなければ、
日本の
建設業者に落札するプロバビリティはまずないといっていいのであります。
外国の
技術士がやりましたものでは、幾ら入札しても、落札の見込みはないのでざいます。ところが、
日本自体に
技術士制度の
発達がおくれておりますばかりでなく、
欧米先進国のように
海外に
技術士が進出しておりませんからして
日本の
海外技術進出には一重に根本的なハンディキャップがあるのでございます。これを、どうしても克服いたしません限り、
欧米の
先進国に対抗いたしまして、
日本の
技術進出をはかることはまず望めないのであります。もちろん問題はこればかりではございませんが、これが重大な欠陥であることは間違いないのでございます。
以上をもちまして私の
意見を終りたいと存じます。が、
言葉足らず、その他でご理解を妨げた点も多いと存じますが、どうか
技術士制度の
重要性をお認め願いまして、この
法案をぜひとも成立さしていただきたいのでございます。
この
法案の
内容につきましては、先ほど
井上さんからも
お話がございました。希望的な
立場から申しますと、いろいろお願いしたいことがあるのでありますが、まだ
幼稚園程度の
日本の
技術士発進の
実情から多くを望むことは無理がと思うのでありまして、今後この
法律が生まれまして、
実施されました上に、
技術士制度の
発達の
実情とにらみ合せまして、さらにこの
法案をよりいいものに改正させていただくことをお順いしたいと思います。
これをもちまして私の
意見を終ります。