○木下
友敬君 今御提案になっています提案者にまず
質問をいたしますが、国民健康保険では二〇%、日雇
労働者の保険では一〇%、これは国庫から負担するということになっておる。今回御提出になりましたのには一〇%の国庫負担という、そういう法律案を出しておられます。ことに三十一年度にはこれを三十億と読みかえるというようなことになっておりますが、厚生省はかつて推定したところによりますと、三十一年度には六十七億の
赤字が出るんだということで大へんあわてていたのでございますが、そうしますと、この三十億を計上しましてもあとまだ足らない分が相当あるわけであります。これについてはどういうような措置をすることをお
考えになって、こういう提案をされたかということをまあお聞きしたいのでございます。
その次に、私はこの六十七億については、多少の考察がいると思うのですが、政府があの予算を編成しました当時の基礎資料になりましたのは、医療給付の状況を昭和二十九年の三月から十月までの八カ月、昭和三十年の三月から十月までの八カ月、この二つを比較して算定したのでございますが、すでにそのときとはだいぶときが
経過して参りまして、現在では昭和三十年度の実績が全部明るみに出て参りました。三十年度一カ年のこの両者の間の比較が出て参りましたから、いつも政府がやるような方法で、予算の編成をやるあのルールに従って計算してみると、この六十七億というのがずいぶん動いてくるように思われるのでございます。政府は予算を組みましたときに、三十年度の受診率を、たとえば、入院にとりますと、〇・二一一四五、増加割合を一・一二六、三十一年度の見込みによって〇・二三八〇九というように計算しておるのでございます。これは一例でございますが、それを三十年度の実績によりますと、それぞれ〇・二〇七二四、一・一一五二、また〇・二三一一一という工合になりまして、ずいぶん動いてくるわけでございます。こういう計算からしていきますと、被保険者一人当りの医療給付費は八千二百四十五円と出ておるのを、これを年間実績に計算しますと、七千九百八十九円になりまして、一人当り医療費は二百五十一五円余り少くなって済むということになるわけでございます。従って被保険者を、政府の予算
通りのあの数字、五百三十二万人としますと、政府の予算、あの基礎になりました四百三十七億八千一百万円というのがずいぶん動いて参ります。四百二十四億二千二百万円となるわけでございまして、その差は大体十三億万千八百万円となります。こうやって逆算して参りますと、初め六十七億と言っていたのが
赤字がおそらく五十四億ぐらいにとどまるのではないかというような計算ができるわけであります。厚年省はこの、今私が申しました数字に対しまして、どういうふうな御
意見でございますか。また、その赤手が私が申しました数字とは違いましても、六十七億がどういうふうに動いていくということを三十年度の実績によって踏んでおられるかということをお尋ねしたいのでございます。
また政府は、三十五年度までには国民皆保険にするということを言っておられます。そうしますと、国民医療はほとんど全部が保険医療ということになってきますが、そういう場合でも骨格はどうしても今実際にやっておる政府管掌の健康保険、これが骨格になってくる、こういうように私どもは
考えるのでございますが、こういうような骨格となる健康保険自体が、
赤字だ、
赤字だということで、毎年騒いでおるこの
状態で、こういう
赤字続きのものをその骨格としていいかどうかということは、これはおのずとわかってくると思うのであるわけであります。今こそ健康保険というものを抜本的に供水的な批判、検討をいたしまして、健全化していかないと、口には三十五年度には国民皆保険だと言っていても、出てきたものはなおさら悪いのだというようなことになりはしないかというようなことを私はおそれるのです。健康保険の生い立ちを今さら申すわけでもございませんが、昭和二年であったと思いますが、その当初は全く
労働者に対する慈善的な、恩恵的な
処置として止まれたもののように私は
考えております。また、事実そのようであったように思うのでございますが、そのために、総合的な計画がなかった。経済的の条件などもあまり検討されないままに恐い立たれたものでないかと思うのでございまして、財源などの見通しも常に毎年毎年狂ってきたというのか実情であったわけであります。ただ、国がわずかに事務費として補助をする、しかも医療担当者はそのために非常に苦しんだというのが実情であったわけでございます。ところが、その後、社会の
情勢はだんだん変って参りまして、次第に適用範囲が拡大してきた。その上、医学、医術というものは日進月歩進んで参ったのでございますから、その長所と短所とがひっくり返って、あるいは非常に複雑した形になってきた
状態になりまして、それが今日まで健康保険というようなものが毎年大きな問題を繰り返しておるという大きな原因であろうと思う。小さい
労働者に恩恵的な存在であった時分はまだまだこまかしがききましたけれども、今日すでにこの多数の、国民の八〇%の者が保険に関係するというような
状態になってきました以上は、もうごまかしはきかない。どうしてもほんとうのきちんとしたものを作らなければならぬということは、
当局においてもお
考えになっておることと思うのでございますが、それにもかかわらず、そのあやふやな
状態の中で、昭和十七年には被扶養者に半額給付が実施され、また、その後給付期間が延長されたり、その範囲を広げるということがしばしばございまして、その不均衡はついには医療が国民医療の八〇%を占むるというような、こういう大きな健康保険になりました暁に、どうにもしようがないという実情を呈しているように私は思うのでございます。昭和二十九年からのずっと実情を見ますと、急に二十九年、三十年とだんだん政府管掌の分が
経営が困難になってきておるのでございますが、これは私をして言わしめるならば、これは全く当然のことである。保険でありますから一応保険の掛金でまかなっていくということが理論的には成立いたすのでございますが、社会
情勢と日進月歩の医学、これを保険に導入せねばならないというこの社会の要請は、またこれは当然のことでございまして、いやしくも、人命に関するこの問題である限り、経済的に弱いのだ、保険は掛金が少いから金が足らないから、最高の医療なんかとっても及びもつかぬことだというようなことは、これは慎しむべきことでございまして、従って、だからといって、この進んだ医学をどんどん導入していけば
赤字になるのがむしろ当然のことであると思うのでございます。ことに被扶養者というのは、保険料の負担の責任がないのでありますから、どうしても金が足らなくなっていくというのは初めからわかっているわけであります。そこで、保険料の引き上げということが問題にされるわけでございますが、現在ではもう千分の六十五という一番高いところまでいっておって、しかもそれで、どうしても金が足らない、こういう
状態にくれば、どこからか援助してやらなければならないということは、これは当然のことだろうと思うのです。申すまでもなく、保険は、もう保険でありながら保険の領域を一歩進んで、社会保障にまで近づいていかなければならない現在の
状態でございますので、国が相当の額の国費をこれに投じて、そうして進んできた医学を取り入れるということについては、
当局においてもやぶさかではないと思うわけでございますが、そのためにこそ、事実国民保険については二割、日雇いの
労働者の健康保険では一割を支出しておられるのでございますが、今日まで健康保険に関する限り、この治療費に対する国庫負担というものがなかったわけでございます。政府は将来の健康保険に対する国庫負担についてはどのような
考えを持っておられるかということを一応お尋ねしておきたいと思います。まだ、お伺いしたいことがたくさんございますが、また、逐次進めていきたいと思いますから、以上御答弁をお願いいたします。