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八木一男君 私は、
日本社会党を代表いたしまして、去る十一月八日
社会保障制度審議会より
内閣に対して行われました
医療保障制度に関する
勧告に対しまして
〔
議長退席、副
議長着席〕
政府の所信をただすため、
内閣総理大臣、厚生
大臣、大蔵
大臣に対し
緊急質問を行わんとするものであります。(
拍手)
まず、具体的質問に入る前に、
勧告の行われた経過並びにその
内容について触れておきたいと存じます。
この
勧告は同
審議会の非常な熱意のもとに慎重に作られたものであります。すなわち、昨年七月以来本年十一月まで
会議を重ねること四十八回、小委員会を加えると実に九十回の多きを数えたのでありまして、あらゆる調査資料のもと、すべての関係団体の意見を聴取しつつ行われました。その
審議もきわめて熱心活発、しばしば深夜にまで及んだのでありました。その
内容は実に数万言に及んでいるのであります。ここに全部にわたり申し述べる時間はございませんが、作成の基本的
態度と、そのおもな骨子について申し述べておきたいと存ずる次第でございます。
まず基本的
態度といたしましては、財政その他を勘案いたしましても、ごく短かい期間内において
実現することができることを
勧告するということが決定され、それに従ってこの
勧告が作成されたものでありますことを明らかにいたしておく次第でございます。
次に、おもなる骨子は、御
承知のごとく、
国民皆保険の実施と画期的な結核
対策の樹立であります。
審議の過程においては、保険医制度のごとく激烈なる論争の行われた部分もあったのでありまするが、その主要なる二点については全員最初から賛成であり、ただ、その制度の
内容の充実の程度と、その原因である国庫負担の大小と、強制化のスピードについて論争があったのみであります。
まず
国民皆保険につきましては、三千万人も夫適用者がある現状にかんがみ、急速に実施すべしとして、具体的には第二種健康保険の創設と
国民健康保険の強制化が主張いたされております。第二種健康保険の構想は、被用者五人未満の事業所の
労働者並びに希望あらば事業主をも含めて適用させようとするものであり、保険料を低廉なものとし、少くとも三割の国庫負担をもって、現在の健康保険、すなわち、第一種健康保険よりいささか劣った給付
内容を持つものを即時創設、任意加入となし、おそくとも三年後に強制化すべしということであります。それとともに、第一種健康保険にも国庫負担をなし、第一種、第二種とも家族給付は七割以上に高めるべしと主張いたしておるのであります。
国民健康保険につきましては、国庫負担を即時少くとも三割に増額し、現在の平均五割の給付率を七割以上に引き上げ、給付
内容を改善して
国民が喜んで加入する方途を講じ、三年ないし五年の後に強制化をはかるべしというのであります。また、医療扶助制度は並存すべきことを示しているのでございます。
次に結核
対策でありまするが、これについては
勧告において特に重視をいたしているのでありまして結核が
国民病として個人の
責任と経済の限界を越えた問題であるとし、国の直接かつ全面的な
責任をもって思い切った施策を行うのでなければこの
解決ができないものであることを断言いたしておるのでございます。(
拍手)すなわち、この際思い切って膨大なる国費を投入し、結核を撲滅することが必要であり、このことによって、
国民の苦悩をなくするとともに、将来の負担を著しく減少することができるとしているのであります。また、そのため、具体的には、予防の措置を万全なものにし、その費用は全部国費でまかなうこと、医療については、
国民全部に対し対症療法及び給食を除いた全医療費を公費で負担すること、ただし、被用者保険については、その二割を保険者において負担することといたしているのであります。その他、制度の
改正、機構の一元化、設備の充実等を主張いたしており、これが完成のため三年ないし五年の年次計画を樹立すべきこと、それまでにおいても前述の公費負担は
実現し、その公費負担分を保険と
生活保護に流入すべしといたしておるのでございます。このことは非常に重大なことでございまして公費負担分の保険会計への流入によって、その会計が楽になり、給付
内容引き上げが完成される要因になるわけでございます。この意味において、
国民皆保険と結核
対策とは密接かつ不可分であることを
勧告は述べているのでございます。
以上の
国民皆保険と結核
対策のため必要な国庫負担は、事務局の試算によりますれば、本年度に比し三十二年度において約三百億円増、三十六年度において四百八十億円増が見込まれておるのでありまして、後者は
昭和三十六年度の一般会計規模増大推定額三千三百十三億円の約一四・五%に当るとされているのでございます。
以上が重要な骨子の
内容でありまして、現在の制度より見れば相当の前進を示すものであります。しかし、なお不完全、不十分な点が多いのでありまして、われわれ
社会党といたしましては、これらの点に対し大いなる不満を持ち、もっと筋の通った、
内容の充実したものを、さらに迅速に
実現すべしとの強力なる主張を持っているのでございます。(
拍手)すなわち、零細不在業の
労働者その他すべての
労働者には即時通常の健康保険を適用せしめるべきであり、給村率は、健康保険とすべての被用者保険の家族も、
国民健康保険も、ともに十割まで引き上げ、その給付の
内容は十二分のものにすべきであって、そのため各社会保険には十分なる国庫負担をなすべきであり、強制化は急速に行うべきであるという主張をいたしているのでありましてまた、結核医療費公費負担の対象に制限を加えたり、保険者負担など残さず、完全に全額を国費で負担すべきものと考えているのでありまして、この意味において、今次
勧告ははなはだ微温的なものであると断ぜざるを得ないのであります。(
拍手)
われわれは、
政府が
社会党のごとき
態度で医療保障の完成に努力すべきことを主張するものであり、
政府がわが党のごとき熱意、勇気を持ち得ない場合でも、少くともこの
勧告は即時実施しなければならないと考えるものでございます。しかるに、
勧告以来一カ月以上を経た今日、いまだにその完全実施の
態度表明のないことは、まさに
政府の
責任を忘れたものであり、言語道断といわざるを得ないのでございます。(
拍手)
総理を初め二閣僚には、
勧告文の結語に、今こそ
憲法の定める福祉国家に巨歩を進める時期であるとし、今後の
国民所得の純増加のうち相当の分は
社会保障の面に投ずべしと強調いたしておりますることを念頭に置いて、これからの質問にお答えを願いたいと存ずる次第でございます。
これから
内閣総理大臣に御質問をするわけでございまするが、
総理大臣のおられないのは一体どうしたことでございますか。――以下、
政府の各二閣僚におきまして
総理に対する質問を聞いておられまして、後ほどお答えを願いたいと存じます。
まず第一に、昨年二月総
選挙の際に明らかにされた
社会保障制度推進の
公約が全然果されていないばかりか、それに逆行することがなされていることについての重大な
政治的
責任を
鳩山内閣総理大臣にお伺いするわけでございます。(
拍手)失業
対策については、該当者が増加しているのに、それだけの国費が支出をされておりません。
生活保護はどしどし締めつけられて、
対策は逆行し、年金
政策はほったらかしになっておるわけでございます。健康保険料率の引き上げが行われたばかりでなく、さらに健康保険法の改悪が執拗に計画されております。これらの事実をじっと
総理大臣は考えてみられてあの
公約がから手形であったことを明らかにして
国民にわび、今からでもその
政策を即時
転換されるのが当然であると考えるものでありまするが、
総理大臣の考えを伺いたいのでございます。後刻その御答弁を願いたいと存じます。
次に、その反省の上に立って今後の努力を誓われるのなら、この
勧告案のような不十分なものでなく、
日本社会党の
社会保障政策に賛意を表されるのが至当だと信じまするが、
総理のお考えはいかがでございましょうか。
総理は、過般、同僚今澄君の質問に対しまして、日韓問題に関してわが党の鈴木委員長との会談を約し、よい方法があったら教えてほしいと言われました。われわれは
鳩山内閣の諸反動
政策とは鋭く対決する立場にあるのでございますが、この答弁を虚心たんかいにせられた
総理の心境に対しては賛辞を惜しまないつもりでございます。ところが、今日御出席にならないような
総理に対しましては、また別の意味で強烈な御批判をするわけでございますが、このような虚心たんかいの
態度をもって
社会党の心血を注いで作成いたしました
社会保障政策を受け入れて、相ともに推進に当られることを強く要望しつつ、御答弁を願いたいのでございます。(
拍手)
第三に、ただいまの問題がもし即座に完全に御承諾を願えない場合には、少くとも
社会保障制度審議会の
勧告を全面的に受け入れ、予算の裏づけをして、三十二年度から直ちに実施する旨、明確にお約束を願いたいのであります。本
勧告は、各方面の代表者、学識者によって最も熱心かつ慎重に
審議せられ、至急
実現可能のものとして満場一致で可決されたものでございます。最も権威あるこの
審議会が強い
態度で
勧告をしておることを
政府は即時実施されることは、当然のことでございます。しかも、委員の構成では、
与党の両院議員や、各官庁の次官、次長が圧倒的の数を占めておるわけでございます。
政府、自民党といたされましては、大船に乗った気持で、安心してこの
勧告を完全に実施なされる
内容でございます。
社会保障間度推進を唱えておるはずの
政府あるいは自民党は即座にこれをやらなければならないのでございましてその意味で
内閣総理大臣の明確なる御答弁を願いたいのでございます。
第四に、去る四日御
提出になった健康保険
改正案をぜひ即時御撤回を願いたいと思います。
勧告に基いて
医療保障制度について真剣に根本的に考えなければならないときに、このような逆行した法案を出されることは、
国民が納得するものでは断じてございません。(
拍手)貧しい患者や家族、良心的な医療
担当者の気持をすなおに受け入れられまして、即時撤回をなさるべきだと信ずるものでございます。
総理の
最後を飾るために、即時撤回をしますという明確なる御答弁を後刻願いたいと存じます。
次に、厚生
大臣に伺います。
第一に、厚生省は最近
国民皆保険、結核
対策を唱えておられるようでございまするが、この問題に対して最も権威のある
勧告が出てきたのでございます。小林厚生
大臣、まじめに聞きなさい。これを上回った計画を樹立されることはもちろんけつこうでありまするが、少くともこの
勧告の
内容の実施は厚生
大臣の大きな
責任でございます。これが即時完全実施の明確なるお約束をいただきたいと存じます。もし御答弁があいまいである場合には、
社会保障とか
国民皆保険とか結核
対策の推進という宣伝をしておられますが、その宣伝が完全なごまかしであることをみずから暴露したことになることを、前もって御注意申し上げておきます。
第二に、先ほど申し述べました二つの骨子のほか、
勧告の中には多くの積極的主張がなされております。たとえば、予防給付の実施、
失業者の医療保障、第二種健康保険適用者中の希望者の第一種への受け入れ、効果的にして制限されない医療の実施、新しい診療方法の取り入れ、結核教育の推進、無医村
対策の強化等々でございます。これらはもちろんそのまま受け入れて実施に当られるべきであろうと信じまするが、厚生
大臣のお考えを承わりたいと存じます。
次に、
政府提出の健康保険法の一部
改正案についてでございますが、この法案の
内容は、一部負担であるとか、扶養家族の制限であるとか、標準報酬額の引き上げであるとか、継続給付の要件の延長であるとか、あるいは官僚的な指定、監査の強化であるとか、言うに言われない数限りない改悪点を含んでいるのでございます。(
拍手)どんな場合でも厚生省が
提出してはならない法律でございます。しかるにかかわらず、特に
勧告が出て
社会保障の構想をまとめなければならないこの時期において、また、今年度の赤字予想がこの前よりも十九億五千万円も減少しているときに、このような案を
提出されることは、
国民の名において断じて許すことができないところでございます。(
拍手)即時撤回をなし、当面、三十一年度予算に決定している健康保険財政への三十億の国庫支出のみ具体化するよう、
日本社会党の
改正案に賛成せらるべきであると信じまするが、御所見はいかがでございましょうか。大蔵
大臣に気がねをなさらずに、勇敢、率直に御答弁を願いたいのでございます。
さらに、この
提出に関連して、厚生
大臣が、
社会保障制度審議会設置法並びに健康保険法の規定を無視して、
社会保障制度、社会保険の両
審議会に正式なる諮問をせられなかったことは重大なる問題でございます。厚生
大臣は、この
責任をみずからとるべきであります。われわれは、この意味においても、本案の撤回を強く
要求するものでございます。
最後に、大蔵
大臣に簡単に御質問を申し上げます。
まず、この権威ある
勧告を
実現するために、
昭和三十二年度において具体的に予算を組まれるおつもりかどうか、金額を示して、明確に御答弁をいただきたいと存じます。
次に、健康保険の問題でございます。今回の
政府案
提出は、三十一年度予算に計上されている三十億を大蔵省が一部負担等のせん
ぶり付でないと
承知しないということが原因であるといわれております。実に頑迷であり専横であるといわなければなりません。
医療保障制度のことは厚生省にまかせておいて、大蔵省はきまった金をさっさと出すべきでございます。この意味において、大蔵
大臣の
社会保障に対する理解ある御答弁をお伺いいたしたいのでございます。
以上で私の質問を終るわけでございまするが、
総理を初め両閣僚とも、貧困と病気に苦しみ抜いている多くの
国民の立場を頭に浮べられた上で、誠意ある、そして勇敢かつ明確なる御答弁をなさいますことを強く
要求をいたしまして、私の質問を終ることにいたします。(
拍手)
〔国務
大臣一萬田尚登君
登壇〕