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1956-11-22 第25回国会 衆議院 日ソ共同宣言等特別委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十一年十一月二十二日(木曜日)   午前十時十九分開議  出席委員    委員長 植原悦二郎君    理事 小笠 公韶君 理事 吉川 久衛君    理事 須磨彌吉郎君 理事 田中伊三次君    理事 床次 徳二君 理事 穗積 七郎君    理事 松本 七郎君       阿左美廣治君    臼井 莊一君       内田 常雄君    大橋 武夫君       北澤 直吉君    小坂善太郎君       笹本 一雄君    重政 誠之君       助川 良平君    高岡 大輔君       中曽根康弘君    保科善四郎君       山本 利嘉君    大西 正道君       田中織之進君    戸叶 里子君       中崎  敏君    永井勝次郎君       福田 昌子君    細迫 兼光君       岡田 春夫君  出席国務大臣         内閣総理大臣  鳩山 一郎君         外 務 大 臣 重光  葵君         厚 生 大 臣 小林 英三君         農 林 大 臣 河野 一郎君         通商産業大臣  石橋 湛山君         国 務 大 臣 大麻 唯男君  出席政府委員         法制局長官   林  修三君         法務事務官         (入国管理局         長)      内田 藤雄君         公安調査庁長官 藤井五一郎君         外務参事官   法眼 晋作君         外務事務官         (条約局長)  下田 武三君         厚生事務官         (引揚援護局         長)      田邊 繁雄君         水産庁長官   岡井 正男君         通商産業事務官         (通商局長)  松尾泰一郎君  委員外出席者         全 権 委 員 松本 俊一君     ————————————— 十一月二十二日  委員大橋忠一君、福田篤泰君、松田鐵藏君及び  渡邊良夫君辞任につき、その補欠として保科善  四郎君、大橋武夫君、阿左美廣治君及び小坂善  太郎君が議長の指名で委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  日本国ソヴィエト社会主義共和国連邦との共  同宣言批准について承認を求めるの件(条約  第一号)  貿易の発展及び最恵国待遇の相互百計与に関す  る日本国ソヴィエト社会主義共和国連邦との  間の議定書批准について承認を求めるの件(  条約第二号)  北西太平洋の公海における漁業に関する日本国  とソヴィエト社会主義共和円連邦との間の条約  の締結について承認を求めるの件(条約第三  号)  海上において遭難した人の救助のための協力に  関する日本国ソヴィエト社会主義共和国連邦  との間の協定締結について承認を求めるの件  (条約第四号)     —————————————
  2. 植原悦二郎

    植原委員長 これより会議を開きます。  日本国ソヴィエト社会主義共和国連邦との共同宣言批准について承認を求めるの件外三件を一括議題といたします。  これより質疑を許します。細迫兼光君。
  3. 細迫兼光

    細迫委員 昨日この日ソ国交回復なるものが日本独立の道へ通ずるという御認識のあることを承わりまして、非常にうれしく思っておるのでございますが、この日本独立の問題は、究極するところ、やはり日米安保条約の撤廃というところにいかなくては、完成したとは申されません。一部憲法の改正をもって独立云々のことにひっかけて申す論がありますが、とんでもないことだと思います、しかし、この安保条約について何ら行動を起す意思のないことは、すでに御答弁でございますから、そこまでのことは申しません。ほんの戸口でドアをたたく程度のことでございますが、あの安保条約は、御承知のように、アメリカ軍隊日本に駐留することを日本希望するという前提に立っております。これは、かつての日韓合併において、それが韓国希望であるといううたい文句、あるいは、日満共同防衛協定におきまして、それが満州国希望であったといううたい文句があったのと同様でございまして、これは真実意思とは違っております。真実意思はそこにありません。そんなうたい文句をいうてみても、だれも信ずる者はありません。これは、私に言わしめれば、日米安保条約は、一種の脅迫による意思表示でありまして、取り消し得べき問題であり、ないしは無効であるという法理論展開せられると思いますが、何よりかより真実に反することであります。このアメリカ駐留軍日本におることを日本要求するということはうそであって、日本国民アメリカ駐留軍を喜ばないものであるという宣言を、これは一方的にできることでありまするから、こういう宣言を明らかになさるくらいの勇気が持たれないものだろうかということを、お尋ねいたしたいのでございます。これは、実は、社会党政権が確立いたしますならば、他のもろもろのことと同時に、早くこのアメリカ駐留軍日本国民希望するとことにあらずということを中外に宣明いたしまして、そうしたら、日本国民の双手をあげての拍手かっさい、白熱的な歓迎を受ける、沸き立つ、その間に、われわれは、ゆうゆうとして絶対切な国会の多数を制して、革新政権の安定を期するというのが、われわれのプログラムでございます。このことは一つ宣言にすぎませんけれど、今申し上げましたような霊験あらたかなものでございまして、これを鳩山総理ただで差し上げるのはいささか惜しいのでございますが、日ソ国交回復問題をここまでこぎつけられました功労に免じまして、これを受け取って実行なさる御意思があるならば、あえてこれにただで差し上げることを惜しむものではないのでありますが、受け取っていただけるかどうか、御答弁をお願いいたしたいと思います。
  4. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 細迫君に御答弁いたします。ただいまの状況におきまして、安保条約を改訂する意思はございません。せっかくのあなたの発言でありますけれども、私の方でちょうだいする意思が今ありません。
  5. 細迫兼光

    細迫委員 昨日は、領土問題の展開が、鳩山内閣あるいは御構想の中にある後継内閣の手によりましても不可能であるということを、私は申し上げました。これは自由民主党内閣の持つ一つの必然の限界でございます。それから、なお、ただいま申し上げました、アメリカ軍日本に駐留することは、品日本国民希望ではないということの宣言をも受け取ることができないとの御答弁、これも、一つの、鳩山内閣並びにこれに続く自由民主党内閣の内蔵しまする、これは宿命的な限界でございます。昨日も申し上げました通りに、領土問題のこれ以上の展開というものは、国際的に日本平和主義を貫くものであり、かつはまたアメリカ駐留軍に帰ってもらいたい、帰ってもらりことに進んでいく方針を持っておるものであるという、こういう信用が持たれる政権日本に確立せられるまでは、ちょっと不可能でございます。また、総理におかれましては、この日ソ国交回復が、東の窓のみならず、西の窓をも開くものであるとおっしゃいましたが、なるほどそうに違いありませんけれども、西の窓はまだ半開きでございます。中国との関係韓国、北朝鮮との関係などを見ますると、西の窓は半開きでございます。しかも、中国に対する対策を従来いろいろにお聞きいたしますれば、これをにわかに進展せしめ得る可能性を私どもはそこに見出し得ないのでございます。しかりとすれば、領土問題におけるこれ以上の進展が不可能である、すなわち日ソ平和条約の終結的な妥結もいつのことかわからない、またいわんや安保条約行政協定の改廃というような問題も受け取り得られない、中国に対する問題も打開の見込みがない、こうしますれば、もうここで鳩山内閣並びにこれに続く保守党内閣の政策でやり得ることは壁にぶつかっております。打開能力がないのでございます。しかしながら、これは、日本といたしまして、日本国民といたしまして、どうしても打開しなければならない問題でございます。これは、よろしく、国のためを思い、民族の将来をお考えになりまするならば、打開し得る能力のあるものに政権を譲り渡すということが、これはまじめに国家の将来を思うものの結論でなくてはならないと思うのでございます。ここにおきまして、構想せられております政権たらい回しというようなことはおやめになりまして、みずからの内閣のみならず、構想せられまする保守党後継内閣、これは日本のためにならないということでもって、あと政権社会党に受け取ってもらうという、そういう形に出られることが、私は一番望ましいことだと思うのでございます。今社会党政権を渡す恩恵はないという御答弁が本会議でもございましたが、しかしながら、以上申し上げますことは決して不合理なことではないと思いますので、一言説明を加えまして、重ねて御答弁をお願いいたしたいと思います。
  6. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 私が隠退しました後にどういう政権の移動があるかということについては、私は全く——何といいますか、別に具体的に考えておることはないのであります。自然に流れて行くままに流そうと思っております。私の引退後にどういう内閣ができるかということは、一に私の引退形式によることだと思います。もしも鳩山内閣が不信任の形式で倒れるならば、むろん、解散になるか、反対党に渡すか、この二者の一つを選ぶよりほかないと思っております。そうならない場合においては、つまり鳩山内閣の延長の形式で私が引退できるならば、国会の選挙によりまして、指名できるものと——そのままに対して何らの作為を私は考えておりません。
  7. 細迫兼光

    細迫委員 なるべく早く切り上げたいと思いますから、他の方面に移ります。わが党は、かねて、御承知のように、災害対策などによりまする補正予算を出されることを要求いたしております。これに関連することでございますが、その予備的にお尋ねしたいのであります。これは事務当局からの御返答でいいのでありますが、やがて予定せられております大使館、領事館などの開設につきましては、どのくらいの要用を一体必要とするものでございますか、御存じでありますれば、御回答願います。
  8. 法眼晋作

    法眼政府委員 お答えいたします。事務的の数字の金額は目下計算中でございますが、経過年度におきましては、そう大きいスタッフを出す考えはございません。一応出しておきまして、新年度を待ちまして充実していくという形式をとりたいと思います。
  9. 細迫兼光

    細迫委員 この年度内に要する費用は大したものではないと思いますが、これは災害対策などのために予備費を支出するということはちょっと性格上違いまして、これをも合せまして、やはり補正予算ということは考えられなくちゃならぬと思うのでございますが、外務省といたしましては、そういう要求をなさる御意思はないかどうか。外務大臣にお考えを伺いたいと思います。
  10. 重光葵

    重光国務大臣 外務省としては、特に補正予算を組んで要求をするということでない方法で、この問題を解決しよう。さしあたりこれは緊急の問題でございますから、その年度内で支出していく、こう考えております。
  11. 細迫兼光

    細迫委員 費目の性格上、財政法規に照らしまして、問題があると思います。これは、災害対策などのためにとられております予備費の流用はいかがかと思うのでございますが、この点はこれ以上申し上げません。  それから、もう一つ参考のために承わっておきたいのでありますが、賠償放棄でございます。こちらから要求するとすれば、一体どのくらいなものが計上し得られるものでございましょうか。ばく然と大ざっぱに、どっちも、放棄すればそれが手っとり早くあっさりしてよろしいということで、あの結論に達しられたものでございますか。具体的に一体どれほどの賠償をこの結果日本放棄するという金額までも御計算の上に、その認識を持っての御放棄でございましょうか。一応参考のために承わっておきたいと思います。
  12. 重光葵

    重光国務大臣 賠償の問題をこまかく双方から言い立てるということになりますと、これはほとんど際限のない問題になります。そこで、これは、交渉を始める前提として、気持はそういうことはもう言わないということで始めた交渉なのでございます。またそうするよりほかに目的を達することは困難と思いました。そこで、こまかい数字的のことは一切やらないで今日まで過ごしておりますから、これを申し上げにくいのでございまして、ただ気持は、双方そういうことは一切帳消しにして一つ国交回復をしようじゃないかという気持で出発したことを、御了承願いたいと思います。
  13. 細迫兼光

    細迫委員 これで私の質問を終りますが、鳩山総理には遠からず御引退と漏れ承わっておりますが、先申し上げましたように、日ソ国交回復の問題もまだ道半ばでございます。百里のものならば五十里行っていればいい方でございます。のみならず、西の窓をあけるということにおきましては、中国問題も進展なさる可能性もなし、あるいは朝鮮の問題などもはなはだ望み薄でございます。これをほんとうに西の窓を全部開いて、そして東の窓からも西の窓からもさわやかな気持よい風が入ってくる。自由潤達に安いものを世界のどこからでも買ってくるし、高い値段をつけてくれるところには、どこにでも売っていくという商売の原則に基くことが自由にやれるように、しかも、東の窓から吹き込む風は煙硝くさい、あまり好ましくもないお客さんが床柱を背にしてすわり込んでおるという議、これをなく悪くてはならぬのでございますが、そういう大事業が非常にまだ残っております。御引退の後におきましても、願わくは、これらの問題の進展のために、あなたの事業画龍点睛といってもよろしいのでございますが、睛を点ずるまで、一つたゆまざる御激励、御支援の態度を持続していただきたいと思う次第でございまして、一言要望を述べまして質問を終ります。(拍手
  14. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 どうもありがとうございました。努力いたしたいと思います。
  15. 植原悦二郎

  16. 床次徳二

    床次委員 私はまず総理にお伺いいたしたいのですが、これは、内閣の首班という立場において、あらゆる行政機構を総括しておられますので、特にお尋ねしたいわけであります。今回の日ソ交渉におかれましても、大臣は体験されたと思うのでありますが 重大なる国策遂行のためには、内外にわたって十分な情報を集収し、さらに国民に対しましても広報宣伝活動を徹底的に行うということが、この国策遂行に寄与するゆえんであると考えておるのであります。しかしながら、今日の日本政府におかれましては、かかる意味におきましては、十分な機構を整備しておらないというような感じがするのであります。今回の交渉の途中の様子を見ておりましても、この点に対して苦心をされたことと推測しておりますので、総理の御所見を伺いたいと思います。特に、今回は共産圏のことき従来になかったところの対象を加え、今後ともいろいろと折衝が多くなるのでありまして、この点に対しましては、やはり十分なる努力をいたしまして、情報の集収をし、そして、反面において、わが国におきましても、積極的に海外または国内に対して宣伝をいたしまして、そして政府の真意というものを国民に徹底せしめる必要があると思うのであります。なお、今後はいろいろ政治的な謀略等も少くないのでありまして、この点に関しまして、政府の一段の努力が必要と思っております。元来、広報宣伝活動というものは、今日はあらゆる民間団体におきましても非常に熾烈に行なっておるのでありまして、政府が、かかる情報宣伝を行うことが、いかにも民主主義に反するかのごとき意向をもって、きわめて遠慮せしめられておるということがありますことは、まことに遺憾なんでありまして、今後は、大いに、日本政府におかれましても、この広報宣伝を活発にされまして、いわゆる国家行政を完全に遂行するために、行政担当の責任をりっぱに果すという意味におきまして、この広報宣伝活動というものを重視してもらいたいと思うのでありまするが、右に関する総理大臣の御所見を伺いたいと思うのであります。
  17. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 日本は、諸外国に比しまして、そういうような諜報宣伝機関が微弱であると私も考えておりまするので、今後は、外事警察といいますか、そういうものを強化して——これは決して民主主義に反するものではなく、材料を収集するのを目的にしまして、そういうような制度を強化したいと思っております。
  18. 床次徳二

    床次委員 諜報宣伝活動というふうにお答えになりましたが、広い意味広報情報の収集を、国民に対するパブリック・リレーションズという意味におきまして、大いに努力をお願いしたいということを重ねてつけ加えたいと思います。  第二にお尋ねいたしたいのは、今回の日ソ交渉のいろいろの御苦心あとはわかるのでありまするが、最後になって、やはり国民として懸念にたえないのは領土の問題なのであります。領土に関しましては、すでに今日までるる御説明を承わり、御苦心によりまして成立いたしましたところの共同宣言も拝見いたしておるのでありまするが、国民立場から申しますると、今後領土に対していかなる心がまえをもって対処するかという点であります。国民といたしましては、色丹歯舞、さらに択捉国後もできるならば復帰を望んでおるのでありまするが、この共同宣言成立以後におきまして、いかに国民立場からものを考え、これに対して努力をするかという点をお尋ねいたしたいのであります。他日正式の平和条約締結せられ、領土の問題全部について解決がついたときに、色丹歯舞に関しましては引き渡しを実施されることになっておるのでありまするが、平和条約締結領土問題の解決ということに対しまして、果して円満に解決する見通しがあるかどうかという点であります。現在の状態におきましては、ソ連の主張というものはきわめて強いので、択捉国後並び国境線を譲りましたならば、色丹歯舞引き渡しが受けられるというふうに解せられておるのであります。総理は、国際関係の現実を冷静に見詰めながら、祖国と国民の将来を深くおもんばかり、意を決し妥結の道を選んだと言っておられるのでありまするが、近き将来におきまして、国際緊張緩和するか、また日ソ国交が一そう緊密化すること等によりまして、国際情勢変化が起り、色丹歯舞の二島のほか、択捉国後返還を期待し得ることのできるような機会があるというふうに総理考えておられるのだろうと思うのでありますが、この点をお尋ねいたしたいのであります。われわれ国民といたしましては、できるならば、何とかしてこの四つの島の返還を望んでおるのが国民の偽わらざる気持なのでありまして、われわれ国民が今後これらの島々の返還に関していかなる努力をすべきか。私どもは、必要がありますれば、国民協力一致いたしましてこの実現に邁進いたしたいと思っておるのでありまするが、この国民の心持に対して、総堀はいかようにお考えになるかをお尋ねしたいのであります。この問題に対しましては、反面、すでにお尋ねもありましたごとく、ソ連の方におきまして、国後択捉というものをわが国に対するえさといたしまして、わが国の政治の撹乱に利用するということも考えなければならない。もしもかかることがありましたならば、ソ連の誠意というものは私ども考えることができないのであります。今日、民間におきまして、あるいは社会党政権ができたならば初めて島は帰ってくるのだというようなことを言い、あるいは小笠原、沖繩等返還と関連させなければだめだというような話も出ておるのでありまして、かかることは、国民といたしましては、きわめて警戒しなければならないことなのであります。今日、交渉妥結に至るまでの御苦心に対しましては、十分の敬意を表するものでありまするが、最後に残された問題といたしまして、この領土が完全にわが国に帰ってきますように努力いたしたいのでありまして、われわれは、この四つの島の返還に対しまして、平和条約締結までの間いかなる努力をするか、挙国一致その願望の達成のために国民運動展開いたしたいという強い熱意を持っておるのでありまするが、これに対する御所見を伺いたいと思うのであります。
  19. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 択捉国後帰属は、平和条約のときに留保されておることは御承知通りであります。それから歯舞色丹は、平和条約締結のときに、日本帰属ソ連は認めるということも確定しておるわけであります。その平和条約締結の時期、そして択捉国後の果の帰属がきまるような状況の到来というものは、どうしても国際情勢変化に伴う以外には、ソ連意思の変更はないものと私は思っております。国際情勢が、つまり米ソの間の国際緊張緩和ができたときには、これは可能性があると私は思っておるのであります。今日、世界の全人類は、国際緊張緩和をしまして、そうして世界平和ということの大道が開けてくれば、ソ連択捉、同夜に固執するということはなくなるだろうと思っております。米ソの間でお互いにしのぎを削って軍拡に狂奔するというような情勢は、両国ともにそのばかばかしさを自覚するに至る時期は必ず来るだろうと私は思っておるのであります。ソ連におきましても、まず第一に、米国に対して軍縮の動議を出して、軍縮から始めて、世界の平和に持っていきたいというようなことをブルガーニンが私に言っていました。とにかく、何かの方法によって、米国ソ連お互い世界の平和を持ち来たすことに努力をするだろうと思うのです。そういう時代には、托捉国後帰属解決も非常に容易になるものと私は思っております。
  20. 床次徳二

    床次委員 国際情勢緩和に対しまして、われわれは大きな期待をいたすわけでありまするが、この国際情勢緩和するに当りまして、われわれ国民もやはり相当の寄与ができるのじゃないか 国民努力によりましても 国際情勢緩和に役立つということになりまするならば、きわめて積極的な明るい見通しを私どもも持ち得るのであります。この点に関して総理の御所見を伺いたいと思うのであります。
  21. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 その通りに思います。
  22. 床次徳二

    床次委員 次は、外務大臣にお伺いいたしたいと思う。今回の日ソ漁業条約交渉に当りまして、これはわが国と各方面——韓国あるいはその他の地域におきまして、現在残されておるところの国際的な漁業紛争があるのでありまするが、この紛争解決一つの先例になるものと思っておるのであります。この意味におきまして非常に重大な意味を持っておると、私ども考えるのでありまするが、特に、今日採用せられましたところの方式は、やはり他の問題、たとえば李承晩ライン等解決に当りましても、適用し得る原則じゃないかと思うのであります。この点に関する御所見を伺いたいと思うのであります。  なお、韓国との李承晩ラインの問題に関しましては、すでにお話がありましたが、現在未帰還者が八百七名で、百二十三隻に上っておるのでありまして、特に、西日本におきましては、日ソ交渉に劣らぬ程度の重大な関心を持っておるのでありまして、かかる多数の未帰還者があるということに対しましては、人道上よりするもとうてい今日は見のがし得ないくらいにこれは考えられておるのでありまして、ぜひ政府に対して御善処を願いたいと思うのであります。すでに、政府におきましては、大村抑留所の問題と関連いたしまして、韓国とは折衝を開始せられる手はずになっておったのでありますが、そのやさきにおきまして、今回の日ソ交渉なのであります。いろいろうわさに聞くところによりますと、韓国共産圏に対しましては著しい反感を持っておるのでありまして、わが国共産圏との接近を好まぬ様子も見えておるのであります。この際におきまして日韓交渉が悪い影響を受けましたために、今日までの未帰還者の帰国がおくれる、事件の解決がおくれるということになりましては、まことに残念に思うのであります。従って、かかる誤解を来たさしめない、そのために多数の者に不幸を見せないという意味におきまして、特に日韓交渉に当りましては新しい手配が必要なのではないか、この際、従来の方針を便々として待っておるということなくして、積極的に日韓交渉に対しまして特別な手配をされることがよいのではないかと思うのでありまするが、これに関する御所見を伺いたいと思うのであります。すなわち、私の問わんとするところは、李承晩ラインの問題、さらに今後の各国との漁業問題の解決に当って、今回の日ソ条約考え方を適用いたしまして解決に当る御意思があるかどうかということであります。
  23. 重光葵

    重光国務大臣 今回の日ソ漁業協定は公海における漁業に関する問題でございまして、公海に対する魚族の保護等に関しては、その他の国との間にもそういう種類の協定がございます。この日ソの漁業協定がそういう公海に関する漁業問題の規制に対しまして一つ参考資料となることは、もとよりその通りでございます。しかし、将来協定を要する国々との間の関係によって、これは同じものができるわけではございません。李承晩ラインは御承知通り大きな政治的の意味を持っておるのでありまして、それがすなわち漁業に関する問題であるというわけには参りません。そこで、政治問題として口恥両国の関係を規制する場合に、十分にこの問題についても話し合いをしなければならぬ問題だと考えております。  さて、日韓関係の全局面でございます。これは、実に急を要する問題であるにもかかわらず、思う通りに進んでいないことをほんとうに私は残念に思っております。特に、御承知通りに、日韓関係全体を調整する上においても、まず抑留者——日本方面では漁民でございますが、この双方の抑留者を釈放して帰していく、こういうことから着手したいということは、だいぶ前から御報告に及んでおる通りでございます。やはりその方針は進めておるの、であります。それからまた、日ソ交渉がその間に起ってきたことも事実一でございますが、しかし、日ソ交渉があるから、こっちの方を手をゆるめたということじゃ少しもございません。その間に、ずっとその問題を進めてやってきたのでございます。これにはやはり日本側の方にもいろいろ事情がございまして、その調整にも時間をとりました。けれども、また韓国側の方にもいろいろ事情があると見えて、なかなか思う通りにそちらの方も進んでおらぬような状況でございます。それにもかかわらず、これは、一日も早く解決しなければ、ほんとうに相済まぬ気がいたしておるのでございます。  それからまた、日ソ交渉によって韓国側の方に非常に悪い印象を与えたと申しますが、もしそういうことがあるならば、これは非常に遺憾なことでございます。日ソ交渉は、御承知通りに、全体の国際関係、特に東ア方面国際関係の緊張を緩和するために少しでも役に立つであろう、こういう大きな見地からこれをやっておるわけであります。それは、間接には韓国を中心とする国際関係もそれで緩和することをわれわれはねらっているわけでありますから、決して韓国のためにこれが不利益なものであるということは考えられぬ。そういうことは全く夢想だもしておったわけではないのであります。事実、私どもは、この方面の緊張関係緩和するということになれば、だれもが利益する、韓国も利益はある、こういうことすら考えておるわけであります。それが万一共産党はきらいだからということを一点ばりで誤解があるとすれば、まことにこれは残念なことで、この誤解は解かなければなりません。また、そういうことを聞くたびに、十分に説明しているわけでございます。今後も、そういう誤解のないように、さらに努力して、韓国との関係は、全面的に、一日もすみやかに解決の端緒を得るようにいたしたいと考えておる次第でございます。
  24. 床次徳二

    床次委員 次に、外務大臣に重ねて今後のわが国の外交方針につきまして伺いたいのであるまするが、過般北澤氏からも東南アジアの外交についてのお話があったのでありますけれども、しかし、西洋におきましては、日ソ国交回復の次に来たるべきものは日中国交回復であるという者もあるのであります。私どもは、現下の日本の外交の努力目標は、東南アジア諸国との提携に努力することの方が、日中貿易の先に出てくるのじゃないか、日中国交回復よりも、むしろこの方が大事なんじゃないかという感じがいたすのでありますが、日本の外交のあり方に対しまして、国民にはっきりとした認識を与えることはきわめて必要なことであると、私は考えておるのであります。われわれはアジア善隣外交に進むべきであるのでありますが、中国との国交回復につきましては、すでにもうお話がありましたが、国民政府との関係もあるのでありまして、わが国が自立的外交を唱えましても、あるいは中共の国連加盟、あるいは両中国の平和的妥結というような機会を待たなければ、なかなか困難だと考えておるのであります。従って、その間におきましては、経済的関係におきまして互いに努力することは当然だと思うのであります。しかしながら、他面、日中貿易、日ソ貿易を、相並んで経済的に提携して進めていくことはいいことなんでありますが、この方も、日本と中ソと経済古義を異にいたしますために、無制限な拡大ということも期待できないのであります。従って、国民に対しましては、日ソ、日中貿易の過大評価を戒めるということをいたしながら、また半面自主性をもって、経済的謀略に対しましても十分警戒を必要とするのであります。東南アジアに対しましては、わが国賠償という問題をかかえておるのであります。インドネシアあるいは南ヴェトナム初めこれらの国々とわれわれは一そう経済提携を深めるということは、わが国の産業の基礎をつちかう上におきましても、また将来のアジアの平和発展ということから申しましても、重大な意義があると思っておるのであります。しかも、わが国は、同じアジア、アフリカの民族の一員であるばかりでなく、独立の完成あるいは領土の問題に関しましても、やはり同じ共感の立場に立っておるのであります。今回の日ソ国交回復、国連加盟ということも、AA諸国に対して一そう有利な条件を与えておるのでありまして、この際われわれが東南アジア外交に対しまして一そうの努力を傾けなければならないということは、当然の帰結だと思うのでありますが、これに対して、先ほども申しましたが、日中国交回復ということを第一に考えまして、非常にこれに重点を置くがごとき考え方に対しましては、私どもはいささか疑念を持っておるのでありますが、外務大臣の御所見を伺いたいと存じます。
  25. 重光葵

    重光国務大臣 今仰せの御意見は、私ども大体においてその通り考えております。今後は、一そう東南アジア方面における、特に経済関係を頭に置いて施策を進めていくべきである、これは全くそう考えて、その方針で進めていこうと考えております。
  26. 穗積七郎

    穗積委員 議事進行について。この間から理事会で与野党とも一致したのは、二十七日の本会議に問に合うようにやろうと言っておるのです。今床次さんが七人目ですが、あと通告のあるだけでも全部で二十四名あります。この調子でいくと、物理的に非常に困難になってくる。そこで、私どもは、与党の方の熱心な御審議、質問に対して、これを抑制するつもりは全然ありませんが、今度の共同宣言、今申しましたような特殊な制限を受けておると、委員長もたびたび言われたと思うのです。そういうことで、与党の方の質問もわれわれつつしんで拝聴いたしておりますが、その多くが党内の政策審議会または代議士会でやって差しつかえないと思う点が多いのだ。われわれ総理にお目にかかろうと思ってもかかれないし、事情を伺おうと思っても一ぺんも伺えないというわけで、与党の方といささか事情が違うのですから、でき得ればわれわれも重複しない質問をしたいと思っておりますから、与党の方も、できるだけ、今のような御意見にわたることは、党内の政策審議会で調整してもらいたい。この協定批准承認に必要なる審議にしぼって、悔いをあとに残してはいけませんから、盲点があるならそこだけ聞くという審議に、委員長において特別の議事進行をしていただかないと、申し合せばしましたが、実行は困難ですよ。ですから御注意申し上げたい。同時に与党の諸君にも協力を求めたいと思います。、それから、重光外務大臣も、再々いう通りに、結論だけ言ってもらえばいいのに、特に与党の人に党内で話してもらえばいいものを、あまりごたごた説明するのはやめてもらわないと、二十七日までに通りませんよ。ちょっと御注意申し上げておきます。
  27. 植原悦二郎

    植原委員長 穗積君の委員長に対する議事進行の御発言はまことにごもっともだと思います。委員長はしばしば政府及び委員諸君にお願いしていることであります。ただいま例をとって申しまするならば、床次君の東南アジアに対する御質問も要点だけ御発言になれば質問の意議を達すると思います。また、ときによっては政府委員の方もあまりに御親切で長過ぎる場合もありますから、どうか両者とも穗積君の議事進行の意味を御理解下さいまして、二十七日には必ず上程できるように、委員議君及び政府に対して委員長から強くお願いいたします。  床次徳次君。
  28. 床次徳二

    床次委員 次は、治安に関して伺いたいと思うのでありますが、法務大臣がおられぬようでありますが、政府委員からかわってお願いしたいと思います。  内政の不干渉に関しましては、明らかに共同宣言において規定せられているのでありますが、今後国内におきましては治安対策考える必要があると考えております。西独におきまして共産党の非合法化等を行いましたのも、われわれは十分に考えなければならないのでありますが、2に関して簡単にお尋したいのであります。外交官並びに領事におきましては、でき得る限り人数を制限することを外務省としては考えていただきたいのであります。第二の問題といたしまして、治安に関する情報の収集、国民に対する思想啓蒙宣伝と申しまするか、これに対しましては十分遺憾なきを期してもらわなければならないと思うのであります。従来、共産圏につきましては、割合にこれらに対する、特に治安に関する情報の収集ということが不十分でありましたので、この点は整備を期してもらいたいと思う。なお、外事警察、公安調査庁、入国管理局、これらのものはそれぞれ国内の治安関係機構としてあるわけでありまするが、この際、日ソ国交回復をしたということによりまして、便乗的に予算を拡大することなく、その内容におきまして十分に充実をいたしまして、人的、機能的、また質的向上をはかってもらいたいと思うのでありますが、これに対する御所見を伺いたいと思うのであります。特に国内におけるところのこれらの諸機関の十分な連絡提携が必要である、でき得るならば、これらの機構を整備いたしまして、一元化というところまで能率を上げることを考えるべきだと思うのでありますが、2に関する政府所見を伺いたいのであります。
  29. 大麻唯男

    ○大麻国務大臣 申し上げます。治安機構の一元化とか、それに関しての御意見であったように伺いました。できれば一元化けっこうでございますけれども、実際問題といたしましては、今にわかに無理をして一元化することは、かえって活動を弱化するようなおそれがあると思います。それでありますから、ただいま仰せのように、現在の機構でできるだけ密接な連絡をとりまして、そうして遺憾なきを期することが、最も現下の情勢として適切だと思っております。ですから、日ソ国交が調整されたからといって、にわかにあわてて取締り厳重にするとかなんとかいうことは考えておりません。外事警察の充実というお話でございますが、外事警察の警官の増員とか、あるいは警察活動の充実とか、あるいはこれに類する警察官の教養、訓練を一そう徹底的にやることなどを考えている次第でございます。
  30. 床次徳二

    床次委員 治安対策に対しましては、国交あるいは経済関係と別個の問題でありまして、国交回復をいたしましても、必要な治安対策を行うことに対しましては何ら遠慮は要らないのでありまして、十分に治安対策を講じ、しこうして国交の親善化をはかり、貿易の伸張をはかることこそ、日ソ両国のためになると思うのであります。この点は十分必要なる治安対策を進められたい、遠慮は要らないということを特に強調いたしたいと思います。  次に、法務関係にお尋ねしたいと思うのでありまするが、現在、わが国といたしましては、国家の秘密保護に関する規定がきわめて薄弱でありまして、単に日米相互防衛援助協定に伴うところの秘密保護法があるばかりであります。しかしながら、独立国といたしまして国家機密を保護するということは、当然必要なことであると思うのであります。かかる意味において、防諜法のごときものも考慮すべき時期にきていると思うのであります。この点に関しまして政府はいかに考えられておるか。これに対して必要な調査を進められることをわれわれは考えておるのでありまするが、御準備について承わりたいのであります。
  31. 大麻唯男

    ○大麻国務大臣 法務大臣がちょと出ておりませんので、少し筋違いでございますけれども、私からお答え申し上げます。そういうことにつきましては十分研究をいたしております。
  32. 床次徳二

    床次委員 次に、やはり治安に関連してお尋ねいたしたいと思うのでありますが、今日のわが国の治安の問題におきましてきわめて重大だと考えられまするものは、公務員の非国家的行為を防止するということなのであります。元来、公務員はすべての全体の奉仕者であり、一部の奉仕者であってはならないということが、憲法でも明らかにされておるのであります。公務員法も同様の趣旨において考えられておるのでありますが、実際におきましては、公務員にして往々一部の階級の利益のために奉仕をしておるという人もなきにしもあらずと考えられておるのであります。かかることは、将来の国家治安の立場より見まして、きわめて重大なことであると思うのであります。少くとも、特定の公務員に対しましては、かかる国家に対し奉仕者として不適格者を防遏する、かかる者が増加しないということを特に顧慮する必要があると思うのでありますが、かかることに対しまして政府はいかなる研究調査を遂げられておるか、御所見をお伺いいたしたいと思うのであります
  33. 大麻唯男

    ○大麻国務大臣 仰せの通り、公務員中にそういう者がおりますことは望ましいことではございません。しかしながら、これは慎重に研究していかなければならぬのでございますから、それぞれ手を分けまして、緊密な連絡をとって研究を進めておるところでございます。
  34. 床次徳二

    床次委員 ただいまの問題に関しまして、十分な政府の研究を要望いたし、対処を要望いたします。  さらに、治安の問題に関連いたしまして、近ごろ十分注目すべき事件といたしまして砂川の事件があるのであります。流血の惨事を見ましたことはまことに遺憾でありますが、私どもが遺憾といたしたいことは、多数の不特定の者が集合いたしまして、しかも第三者という立場におきまして集合いたしまして、政治的見地から誤まった事実のもとに宣伝あるいは扇動を行い、多数の威力を示しまして公務執行を妨害する、あるいは騒擾罪にも似たような行為をするということであります。かかる事実に対しましては、われわれは、国家の治安を維持する立場から見ますると、きわめて寒心にたえないのでありまして、無抵抗の抵抗を標捜しながら衆力をもって秩序を破壊するというようなことは、まことに遺憾な点でありますが、今後はかかる事例の発生が頻発するおそれもなきにしもあらずと思うのでありまして、これが防遏に対しまして、私は警察といたしまして相当の責任があると思っておるのであります。かかる多数の威力行使行為に対しましては、やはり犯罪防止、治安維持という立場に立ちまして、警察が予防的な見地から発動するということはきわめて必要であると思うのであります。この点に関しまして、警察当局におかれましては、今後時期を誤まらぬがごとく十分に警察本来の使命に従事せらるべきだと思うのでありますが、これに対する大臣の御所見を伺いたいと思います。
  35. 大麻唯男

    ○大麻国務大臣 砂川問題に関連してのお話でございますが、あの問題には警察といたしましては直接関係を持たないのでございます。しかしながら、その行動がもし不法にわたる、法規に反するという場合には、何ら仮借なく取締りをやるつもりでおります。せんだって事件がありまして、今後、そういう方向につきましては、警察はむやみな干渉は決していたしませんけれども、不法な行為がありましたときには、何ら仮借なくやるつもりでありますから、どうぞ……。
  36. 植原悦二郎

    植原委員長 床次君、通商局長が参りました。
  37. 床次徳二

    床次委員 通商局長が見えたようですから、通産大臣に対する質問をいたしたいと思います。日ソ貿易の拡大、同時に日中貿易の拡大も大いに期待せられておるのでありますが、これらの共産圏との貿易に関しましては、先方のいわゆる貿易の窓口が一つになって、国家管理貿易のごとき形を呈しておるのであります。従って、これに対しましては、わが輸出輸入貿易の態勢においても、これにふさわしいごとく、単一統制化されたところの窓口が必要であるのではないか、かかる方法によりますことが、最も貿易の効果を上げる結果を偉大ならしめると同時に、貿易を通じて行われるところの国内産業に対する平和攻勢とでもいいますか、これを防止することができると思うのでありまして、かかる貿易の形式に関し政府はいかなるお考えを持っておられるか、私どもは、これらのものが統制組合といたしまして十分な機能を発揮し、あるいは、さらに必要がありますならば、徹底的な一元化に進むこともいいと思うのでありますが、これに対して御所見を伺いたいのであります。  なお、いわゆる国家管理貿易の例といたしましては、似たような現象が賠償実施に対しましてもやはり行われておるのであります。最低価格をもちまして入札をし、最高価格をもって買うというような、きわめて不利な現象が生じつつあるのではないかということが懸念されるのであります。今後賠償を実施します場合におきましても、やはりこれに対応するところのわが国の業者の態勢をもっともっと整えておく必要があるのではないかと思います。共産圏とは形は違いますが、やはり似たようなところがありますので、この貿易の問題に関しまして質問いたしたいのであります。  なお貿易の拡大に伴いまして、特に共産圏との問題におきましては、その決済を確実にするということが必要なんでありまして、十分な輸出入の均衡が得られずして貿易が行われます場合におきましては、決済に不安が生じてくるのであります。過般三角貿易をするというような話も出たのでありますが、確実にこの拡大せられたところの貿易に対しまして決済が行われるということはきわめて重要なことでありまして、今後の日ソの通商開始に当りましても、十分な政府対策を必要とするのであります。これに対する政府の御所見を伺いたいと思います。
  38. 松尾泰一郎

    ○松尾政府委員 お答え申し上げます。  第一点の共産圏貿易に対しまして、わが方も輸出入の窓口を整備したらどうかというお尋ねかと思いましたが、これはお説の通りかとも思うのでありまして、御存じのように、中共に対しましては、昨年十一月に日中輸出入組合ができまして、組合といたしましては着々その目的達成に努力をいたしておるのでありますが、何分多数の輸出入の業務を調整するということは、言うはやすいのでありますが、現実問題としてなかなか困難な面もあるのであります。いろいろ困難な事例も実は最近この貿易の伸展とともに出て参っておるのでありますが、ただいま、われわれといたしましては、輸出入組合とも十分に相談をいたしまして、何とかもう少し効果的な調整の方法がなきやを実は研究をしておる段階であります。また、これをあまり窓口を一本化する、いわば強力な調整をするということになりますと、輸出入業者の意欲を減退させるというようなことにも実は相なりまするので、その辺のところをどういたしたらいいか、実は目下研究をしている状況でございますが、趣旨といたしてましては、できるだけ窓口の調整をいたす必要を感じておるわけであります。  次に、日ソ貿易につきましても、現段階はまだ取引量が大したことではございません。昨日も大臣からお答え申し上げましたように、輸出入合せましてせいぜい五百万ドル程度であります。従いまして、関係する業者の数もまだ非常に少いわけであります。現在のところといたしましては、直ちに輸出入組合を設立するほどの必要もないのではないかというふうに考えておりまするが、今後、日ソ貿易の進展につれまして、業界とも十分相談をいたしまして、研究をして参りたいと思っております。  なお、次に、賠償を支払う相手国との関係におきましても同様のことが言えるかと思うのでありますが、これはまた相手の国情、また賠償のやり方がそれぞれ違っておりまして、一がいに対共産圏への輸出入調整というような工合にはいかぬというふうに考えておりますが、それらにつきましてても、実情に沿いまして、あまり業者の不当な競争のないように善処して参らなければならぬと考えております。  最後のお尋ねの決済方式の問題でありますが、御存じのように、現在までのところは、取引形態といたしましてはバーター方式、決済としては現金、従いまして、いわば現金バーター決済方式とでも言うような方式をとっておるわけであります。大体今のところはそれで中共貿易も進展しておりますし、日ソの貿易におきましても、現状から見ますとそれで差しつかえはなかろうかと思っておりますが、今後変った、いろいろ清算勘定方式等の議論もあるいは問題になってくるのではないかと思うのでありますが、この方式につきましても、最近の世界の貿易の趨勢から見ますと、いろいろ利害の点もありまして、一がいにその方式がいいとも言いかねる点もありますので、それも、日ソ貿易の進展に応じまして、また先方の意向もございましょうから、それらも十分聞いた上で今後研究して参りたい、そういうふうに考えます。
  39. 床次徳二

    床次委員 終りました。
  40. 植原悦二郎

    植原委員長 中崎敏君。
  41. 中崎敏

    ○中崎委員 病躯をひっさげてはるばるモスクワに使いして、冷たい待遇を受けながら、帰途アメリカに立ち寄って、隷属国家としての報告とその了解を得て故国に帰り、一応の任務を果されましたことについては、慰労の言葉を呈するのにやぶさかでないのであります。日ソ交渉妥結というものは、わが社会党が終始一貫熱心に主張してきたところでありまして、むしろ、われわれの側から言えば、今回の妥結がおそかったということを遺憾に思うくらいであります。すなわち、鳩山総理の優柔不断であったということ、政治力の欠除しておったということ、並びに内閣において、また自民党の内部において、アメリカ追従の考え方を持った論者の力が相当に強くて、その牽制を受けて、じんぜん今日に至ったとも言うべきと思うのであります。そうしたことについては、私たち非常に遺憾に思っているのであります。以下そうしたような考え方の上に立って、総理以下に質問をしたいと思うのであります。  まず第一に、私たちは、日ソ交渉に関する問題をきわめて重要視いたしまして、これがすみやかに国論を統一して、しかも政府の所信を国会を通じて国民に明らかにすべきものであるという考え方の上に立ちまして、憲法第五十三条によるところの国会召集の成規の手続をしたのでございましたが、遺憾ながら政府はこれを拒否して参りました。ときあたかも、参議院の選挙も終りまして、参議院の構成の上からいうても、すみやかに国会が開会されることが必要であるというふうな考え方をもって、参議院側からもまた強い要請があったのでございますが、これとても顧みないままに、最近ようやくこの臨時国会が召集されたというふうなことにつきましては、きわめて遺憾に考えているような次第であります。  そこで、その後の経過を見ますと、全権を選び方の点につきましても、佐藤尚武氏を初めとする幾多の全権決定までの間において不手ぎわを来たしたというようなことについても、日ソ交渉の上において、国の内外に非常に好ましくないような印象を与えているというようなことも、また見のがすことができないと考えておるのであります。  そこでいやしくも重大なこの外交交渉をやられるに当っては、まず国論の統一をされる必要があったと思うのでありますが、それがついに国論の統一を見ないままに、ソ連に行かれて交渉もされ、今日に至っておるということは、非常に遺憾であると同時に、元来この鳩山内閣は、日ソ交渉をもって内閣の一枚看板といいますか、大きな一つの方針として進んできておられたのでありますが、その外交交渉なり、方針を実行する上において、一番重要な立場にあるところの重光外務大臣との間に、終始、意見の重要な点についての食い違いがあったということは、国民がひとしく認めておるところでありまして、内閣の権威と信用を著しく失墜せしたものだと考えなけたばならぬと思うのであります。それが組閣の点において、閣僚指名の点において一つのそごがあったと同時に、その後二年近い長い間にわたる監督の点においても、また遺憾であったということが言えると思うのであります。  こうした考え方の上に立ちまして、まず外務大臣質問してみたいと思うのでございますが、そうしたようなことについて、いわば総理日ソ交渉を進める上において相当違った考えを持たれた。ことにアメリカにあまり気がねするといいますか、アメリカに追従し過ぎて、ややもすればブレーキ役を勤めて、最近といいますか、最後におけるモスクワの腹をきめられるまでの経過から見て、そういうふうな強い印象を国民は受けた。そうしたようなことが、外相として十分鳩山内閣の施策を行う上において、責任を果されたとお考えになっておるかどうか。そうして、ことにモスクワに全権として行かれた最後の、あの領土に関するソ連要求をのみ込まざるを得なくなったという、その決意をされた点が、内閣によって拒否された。そうしたような重大な点について、意見が異なっておるということについて、一体どういうように考えておられるか。そうしてその後におけるところの重光外務大臣の個人的な感情を交えたところの声明発表、行動等が、内外においていろいろ批判を受けておる。これと同時に、日本国民としても憂慮にたえないというふうな、実に目に余るような事態がしばしばあったというふうに考えておるのでございますが、こういうふうな点に対して、どういうようにお考えになっておるか。そのような三つの点について、まず重光外務大臣の所信をお聞きしたいのであります。
  42. 重光葵

    重光国務大臣 日ソ交渉目的は、日ソの関係を正常化したい、こういうことでありまして、これはもう鳩山内閣初めから、政府としても、また外務大臣としても、常にその方針を内外に宣明して参ってきておるのであります。それで、そのいきさつについていろいろ議論のあったことは事実でございます。非常に議論はございました。また議論があることは、私は少しも差しつかえない、いいことであると思います。そうして内外にわたって、私は結局これは収拾しなければならぬ、すべき責務を持っておるとかたく信じてきたのであります。そうして、それらの幾多のいきさつはありましたけれども、今日これが収拾できたと、こういうことでございます。さように考えて、私は鳩山内閣の当初からの方針がここに結集したことを喜んでおるものでございます。以上でございます。
  43. 中崎敏

    ○中崎委員 あまりこの問題について深く追究をするのは、時間的な関係もあって避けたいと思うのでありますが、結局において、そうした鳩山内閣考え方が実現するに近、ついたということによって、今までとられたところのすべての言葉が——好ましくないと思われるような行き過ぎの言動までが、帳消しになるとは考えていないのでありまして、そうした点について一体どういうふうにお考えになっておるかということを、さらにつけ加えてお尋ねしておきたいのであります。
  44. 重光葵

    重光国務大臣 私は、今申し述べた大体の筋を逸したことはないと思っております。
  45. 中崎敏

    ○中崎委員 次に、鳩山総理に対してお尋ねしたいのであります。そうしたような日ソの国交調整についての一枚看板を掲げて進められたのでございますが、そうした閣内におけるところの不統一、あるいはアメリカ側等に対してあまりに気がねし過ぎるような、いわば向米一辺倒の諸政策が、この日ソ交渉等の進展を著しく遅延せしめておるということ、従いまして、かつて、もうにっちもさっちもいかなくなったというふうな状況下にあったときに当って、たまたま北洋漁業に関するところのソ連の強硬政策といいますか、こうしたようなものが、まずこの漁業日本としての漁業関係者の奮起、決起となり、さらにはまた、相次ぐところの船舶の拿捕等によってこれらの家族等を中心とする国論が大きなるところの展開となり、さらに社会党を中心とするところの、日ソ国交のすみやかなる復交を叫ぶ大きなる世論の力等も影響をしたのでありまして、しかも、日ソ貿易をもすみやかに伸展すべきであるという財界の世論等も手伝って、いわば鳩山内閣においては、追い詰められて、やむを得ずして交渉に入ったのだというふうにも考えられるのでございます。一面において、やり方が強引であったかどうかは別として、ソ連の強い圧力がしからしめたというふうなことも考えられるのではないかと思うのであります。そうしますと、結局において、もうのっぴきならぬ羽目に追い詰められて、いやいやながら、やむを得ずしてそういう結果になった。これは幸か不幸か知りませんけれども、そういうふうな結果になったということについては、せっかく一年八カ月ほど前に鳩山内閣が公約したところのそれを、もう少し意を決して、そして今日程度の成果を期待してやるならば、できておったはずのものが、できなかったということになることは、国家的損失でもあるのでありますが、こうした意味におけるところの内閣の責任も、私たちから言えば、軽くないと考えておるのでございます。そうした意味において、鳩山総理は、責任の問題と、ことに内閣不統一、あるいは外務大臣として必ずしも総理の方針と一致していないような人をかかえながらやっていて、それがために、国の内外にいろいろな信用の失墜等を来たしておるし、国務の渋滞を来たしておることも事実でありますが、そうしたようなことに対して、一体どういうふうな責任を考えておるかをお聞きしたいのであります。
  46. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 日ソ交渉の問題について、外務大臣と私との間に意見の相違があったということは、たびたび御指摘になりましたけれども、根本にお円きまして意見の相違はなかったのであります。やはり国交は正常化しなくてはいけないということを二人とも考えておった。ただ、その方法について全部一致しておるとは言えませんけれども、大目的については一致をしております、また、この条約の成立する上において、アメリカの圧迫もありませんし、ソビエトの圧迫もありません。私は善なりと思うことを信じて、努力ただけであります。
  47. 中崎敏

    ○中崎委員 いろいろ国民やわれわれの受けておる印象とは違いがあるのでありますが、この点については、そう深入りをしないで進んで参りたいと思うのでございます。  次に、平和条約締結の時期についてであります。今までいろいろ質疑が繰り返されておるのでありますが、どうも十分に国民の中に、はっきりした腹入りがしていないと考えておるのでありまして、この点について簡単に尋ねてみたいと思うのであります。総理は、国際間の緊張の緩和を待って、事態の好転することを期待しておる、こういうことであります。ところで、国際間の緊張緩和は、傾向的には考えられないではないのでありますが、実際においては、戦争するかせぬかは別として、これら両陣営の対立関係というものは、そう簡単には解決つかないのではないかということは、容易に想像ができるわけであります。しかもまた総理は、日本に再軍備ができない間は、日米安保条約は必要であるし、同時に米軍への基地提供などについても、これは当然のことと考えるというふうに言われておるのでございますが、それは結局において、憲法が改正し得るかどうかというふうな問題とも、また関連を持つものだとも考えるのでございます。ところが現在の政治情勢下において、憲法の改正はなかなかできるものではない。しかも今後ますますこの国民考え方というものが、進歩的になっていくような傾向等も考えてみたときにおいて、こうした問題はますます困難性を加えるというふうに考えておるのでございます。そうしますと、国際緊張の問題と関連があると同時に、この再軍備の問題とも関連して、日本の基地の問題は、なかなか簡単に解決もつかない、総理考え方をもってすれば、解決つかないのではないかというふうに考える。そうすると、いつまでも米軍が日本に駐留する、そういう事態がある限りにおいて、たとい国際間の緊張を緩和しても、ソ連との間の関係においては、簡単に平和条約締結するというふうな事態にまでいかぬのじゃないか、こういうふうにも考えられるのでありますが、この点どうお考えになりますか。
  48. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 平和条約は今でも作ろうと思えば作れるのです。ただ択捉国後日本の領有とするのには、適当なる時期を選んだ方がいいという考えで、これを継続審議に移してきたのであります。国際情勢変化というのは、米ソ関係がよくなる、日本を間にして米ソ関係がよくなる。つまり両国において平和状態ができ上る。そういう時期において、国後択捉日本の領有とする可能性が出てくるという考え方で、平和条約を延ばしておるという形であります。
  49. 中崎敏

    ○中崎委員 国民の大きな関心を持っておる問題は、択捉国後日本固有の領土として、当然日本に返るべきものであるということを期待しておる。総理もこれを日本に返し得るような時期を待つ。平和条約締結を延ばした理由も、一にそこにあるというふうにわれわれは了解しておるのでありますが、それであるならば、米軍が日本に基地を持っておる限りにおいては、なかなかこれが簡単にいかないのではないかというふうにわれわれは考えておるので、そうした択捉国後という領土の問題が、平和条約締結しなかった一つの大きな原因であるならば、平和条約というものはなかなか簡単に締結し得ないのではないか。これを放棄するという考え方ならば、いつでも締結できるのであります。これを放棄するという考え方を持たない限りにおいて、半永久的にその時期はこないのではないかというふうに考えますが、この点はいかがですか。
  50. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 私は、お互いに軍備の拡張を競争する時代というものはばかばかしいということを、互いにみずから悟る時期がくるものと考えております。
  51. 中崎敏

    ○中崎委員 現在においても、すでにばかばかしいということは考えながら、たとえば日本のごときは、これが軍備というかいわぬかは別として、相当強いところの、戦争に耐え得るような、そういう軍事力がどんどん醸成されつつある。そうすれば、今度は日本側においても、そうしたような軍事力といいますか、兵力というか知りませんけれども、そういうものを逆にお減らしになるという考え方ならば、それはわかる。将来もそういうふうにおやりになるのかということをお聞きしなければ、この問題の解決がつかぬと思うのでありますが、その点いかがですか。
  52. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 軍備の拡張というものは、政治の目的になるはずはありません。政治の目的は平和を達成する、平和の世界を作り上げるというところに、大きな目的を持たなくてはならないと思っております。
  53. 中崎敏

    ○中崎委員 戦争を予定しない軍備の拡張というものは、どうにもわれわれは解釈つかないのでありますが、この問題はこの程度にいたしまして、次に通商関係のことについて質問をしてみたいのでありますが、まず日ソ通商の話し合いの前に、アメリカに対するところの通商関係について、通産大臣外務大臣にお聞きしたいのであります。綿製品の対米輸出に関する問題、これはかねがね国会においてもしばしば問題となったのでございます。これが昨年九月に、日本政府とアメリカ側との間に、綿製品の対米輸出の問題は一応話し合いがついておるということが報ぜられておったのにもかかわらす、最近においてアメリカはその申し合せを一方的に無視して、そうして日本政府との間に紛議が生じておるということを聞いておるのでありますが、一体現在どういうふうな事態になっておるのか、この問題について、この国会を通じて一つ解明を願いたいと思うのであります。
  54. 石橋湛山

    ○石橋国務大臣 中崎君にお答えします。対米綿型品の輸出につきましては、昨年九月一応話し合いをいたしました。けれども、そのときから、全体の輸出綿布の総額はどれほど出すかという問題と、それから一つ一つの品目別にワクを作るという話もあったのであります。決して話が済んだやつを、一方的にアメリカがこわしてきたというわけではない、前の話の引き続きなのであります。ところが、その引き続きの一つ一つのワクについて、非常にシビアな、こちらの想像以外のワクを作っていきたいという——もっとも一、二の品物についてでありますが、そういう話し合いが向うからありましたので、これはとても日本としては承認ができませんから、そこで現在外務省としては、先方に、とてもそういう希望には応ずることができないという、厳重な交渉をしておる次第であります。まだその結果はわかりません。もう少し様子を見なければわかりませんが、ともかく、われわれとしては、できるだけアメリカと協調して、向うの事業者をも刺激しない方法で、日本の輸出を逐次増進するという方針をとるつもりで、この九月以来やっておりますが、しかし、あまりにひどいワクをはめられるということは、とても耐えられませんから、それに対しては厳重に向うの要求を拒絶するつもりでおります。
  55. 中崎敏

    ○中崎委員 そうしてこっちがいわば最後的に表示したところの内容について、アメリカが受け入れぬ場合には、これを拒絶する、交渉決裂やむを得ないというふうな態度で臨んでおられるということも想像されておるのでありますが、そういうふうな場合には、一体どういう結果になるかというと、アメリカ側においては、関税委員会の関税引き上げの勧告に従って、そうした商品に対する関税の引き上げが実施される。それと同時に、来年一月のアメリカの議会において、日本綿製品の輸入制限の問題が取り上げられる、こういうことになると考えられます。こうした問題は、たとえば、すでにアメリカが洲法において単独立法を作って、そうして日貨の排斥といいますか、日本商品の制限をやって、ある意味における排斥をやっておる。これは日米通商航海条約に違反するということがすでに言われておりながら、実際においてこれが行われておる。これが廃止されてない。こういうふうなことに対しましては、われわれは国民とともにきわめて遺憾であると考えておるのでございますが、このような日本最後の申し入れに応じられない場合においては、交渉決裂もやむを得ないという腹をもって、交渉決裂した、そうすると、今度は今見たような結果になるのでありますが、一体日本政府としては、そういう事態に立ち至っても、手をつかねてこれを傍観しておるのかどうなのか、どういうような対策が一体あるのは、それを一つこの際外務大臣並びに通産大臣から責任のある言明を聞きたいと思うのであります。
  56. 重光葵

    重光国務大臣 これが通商条約違反ということになってきますと、これは国交の問題にも影響を持つ問題であります。さようなことにならぬように双方話し合いを何とかしたい、こういうことで今進んでおるわけであります。
  57. 中崎敏

    ○中崎委員 今、外務大臣の話によると、通商条約違反にならぬように話を進めておるというのでありますが、現実には違反になることがやられておるのです。一体これを排除するのに、今まで話し合いはされたでしょうけれども、現実にはそれをやられておる。これに対するいわば報復手段と申しますか、どうか知りませんが、対策がなくてはならぬ。たとえば、現に向うでは関税委員会にかけて、それで日本品の排斥、制限のために、関税の引き上げのことまで具体的に決定しておる。日本においても、アメリカから輸入するあのたくさんの、たとえば石油のごとき、ほとんど英米の独占的な資本の影響を受けて、われわれ国民は、莫大な国際的独占価格の利益を占められて、それで国民はあえいでおる。こうしたような問題等も含めて、何らか政府の側においてこれに対する対策を、今日までにすでに考えておられなければならぬ。しかし、現実にこうした問題がまたまた起っておるならば、これに対して一体どういうふうな対策考えるのか、この席上を通じてはっきり聞かしてもらいたいと思うのであります。
  58. 石橋湛山

    ○石橋国務大臣 中崎君のお説もごもっともですが、あまりこの際興奮して、そう決裂するときめてかかることは、私はよろしくないと思う。どこまでも粘って、アメリカにも理屈はわかるのですから、決して通商航海条約に違反したり——条約もさることながら、なるべく貿易を自由にするということが、世界の平和を保つ逆なんです。第一次、第二次世界戦争の原因を考えても、そうなんでありますから、これはアメリカにもむろん了解さるべきことだと思います。従って日本としても、できるだけ話し合いをして、お互いに納得するところできめたいということで、今努力しておるわけであります。また決裂を予想して、どうしたらどうということを考えるのには、まだ時期が早い、こう思っております。
  59. 中崎敏

    ○中崎委員 先ほどの通産大臣のお話とちょっと変っておるようです。どうしても向うが聞き入れなければ、決裂やむを得ない、ということを考えておるということも言われたようであります。何だかあとのお話は違うようであります。いずれにしても、その場限りの言いのがれの答弁ではなしに、ほんとうにこうした問題が次から次に起っておるのでありますから、今日までアメリカが日本の商品に対して、ただ単に綿製品だけではありません、相当広範にわたって次から次へと力をもって押しつけておる。こういう事実を、われわれは次から次へと涙をのんで泣き寝入りになっておるということを、見のがすことはできないのであるから、この際、直ちに——綿製品のこうした相当の金額、数量のものを、一方的に相当大幅に制限されるということは、とでもそれは日本国民国家として耐えられないところであるから、この際において一つ腹をきめて、これは総理大臣にも特にお願いしたいのでありますが、一つ内閣全体として、もう少ししっかりしたところの腹をきめて、こういう一方的な、貿易自由化の方向に、反対にさおさすような、自国の利益のためには、あらゆる国に対してその横車を押してまでもやらなければならぬという、こういうやり方を一つ是正すべく、またそれに対するところの適当の対策考えられることを要望しておきたいと思うのであります。  次に、ソ連に対する貿易でございます。日ソ交渉の、交渉の過程において、日ソ間の貿易年額十億ルーブルも可能であるというようなことが、先方の最高責任者からも言明されておるというのでありますが、これを、一体政府はその後どういうふうに受け入れて、どういうふうにこれに対するところの考え方を進めておるのか。具体的には、向うはそれまではやれるという一つ考え方を持っておる。こっちはそれを受け流しにしてしまっておるのか、あるいは具体的にこの点はこうなるんだ、こうすれば、およそこうなるんだというふうな、一つの何らかの具体的な調査立案などについても検討を進めておるのかどうか。この点について、私はその当面の交渉に当った河野全権、それと、また帰られて、たとえば通産大臣なり外務大臣なり、あるいは経済企画庁の長官などにもこういう点をお話しになって、そうして具体的に調査立案を進められておるのかどうか。この点をお聞きしたいのであります。
  60. 石橋湛山

    ○石橋国務大臣 この席でも一、二回お答えしたと思いますが、日本としては、むろんどこの国とも大いに貿易することが望ましいのでありますから、せっかく日ソの国交が正常化した上は、できるだけソ連との貿易を伸ばしたい、かうな考えを持っております。ただ十億ルーブルということは、どこからどういう計算で出たか存じませんが、今までの日ソの貿易の状況から見ますと、なかなか十億ルーブルまでこの数年の間に伸ばすことは、容易ではなかろうと思うのです。結局、今通貨の交換性というものが世界的にできておりますと、貿易はよほど楽なんでありますが、通貨の交換性がありませんから、従って日ソ間の貿易というものは、大体バーターみたような格好になる。だから、日本から向うへ輸出するものと、向うから輸入するものとが、大体見合わないと、貿易が伸びませんから、その点に非常に困難がある。しかし政府としては、むろんこれが伸びることは大いに希望するのでありますから、できるだけの努力をし、またソ連とも話し合って、そういう方向へ推し進めたいと思います。
  61. 中崎敏

    ○中崎委員 私は石橋通産大臣に対しては、個人としては敬意を表しておるのです。こうした問題については、最近党内事情等もあって、なかなか手が回らないのではないかというふうに考えておるのであります。  さて、私の考えとしては、歴史的に見て、ソ連との通商関係があまり大したことじゃなかったというふうに言われておるのでありますけれども日本ソ連との間の関係というものは、十数年間経済関係も断絶されておったというようなことは、御承知通りであります。しかも、このソ連国家の経済力並びに国家の経済機構の状態も非常に整備されて変ってきておるということも、見のがしてはならぬのではないか。そうしてまたソ連が、建設資材等、相当多くのものを期待しておる。ことに、こたとえばシベリアについては、その建設については日本に相当期待しておる。こういうふうなことも言われておるということも聞いておるのであります。そういうふうなものを含めて、もう少し新しい感覚を持って熱心に検討してみられたら、今通産大臣の言われたよりも、もう少し積極的な、具体的なものが出てくるのではないかと思うのであります。たとえば中共貿易のごとき、ソ連に対するココムよりも、なお厳重なチャイナ・ココムの制限を受けておる。にもかかわらず、ここ両三年来におけるところの貿易額というものは、相当数に伸展してきておる。しかも中共との間には国交関係が正常化していない。ところがソ連の場合においては、もうすでにここ何日かの間に国会批准も終って、そうしてりっぱに今度国交関係も調整されて、貿易も自由に——ココムなどの制限はあるでありましょうけれども、なし得るような一歩進んだ態勢に置かれておる。そのときに、一体どうするかということを検討すべきであって、それが今政府としての当面の大きな使命ではないか。すなわち、ソ連に対するところの貿易というものをさらに伸展していきたいというのが、日本国民の世論である、経済界の一般の要望である。であるから、それにこたえて、国家の繁栄を期待すべく、日ソ貿易をさらに計画的に幅を広げて、思い切って伸展さすところの努力を一体されるのかどうか。あるいはアメリカに気がねして、今のような、こうした日本を圧迫をするようなものが、次から次に行われておる。それを牽制するといえば、おかしいけれども、それを補う意味においても、日ソ貿易というものにさらに飛躍した考え方を持つべきもにだというふうに考えておるのでありますが、この点について、いや東南アジア貿易も大事だ、そんなことを言われるが、だれもそれは軽いとは考えていない。だけれども、この際においては、日ソ貿易をさらに思い切って伸展させるというような、そういう考え方を内閣全体として持たれるのか、あるいは通産大臣として持たれるのかということをお聞きしたいのであります。
  62. 石橋湛山

    ○石橋国務大臣 先ほども申し上げましたように、もちろん政府としては、日ソ貿易の伸展を大いに希望します。ただ申し上げるのは、今までの状況を見ましても、政治的の障害は比較的ソ連は少い、中共とは違います。中崎君のお説の通りでありますが、経済的に今までの状況では、ソ連から日本へ入ってくるものがきわめて乏しいのです。石油とか、そのほかのものが若干ありますが、運賃その他の関係から高いというようなことで、日本から売るものよりは、むしろ買うものの乏しいことで、困難であろうと思う。ですから、シベリアあたりの開発等も行なって、あそこから大いに日本の必要とするいろいろの原料、資材でも入るようになりますと、貿易が大いに伸びると思います。これはいつでも、そういう事に応じて日本はできるだけの輸出もする、また輸入も、安くて日本の必要のものなら、幾らでも買います。そういう用意はしております。
  63. 植原悦二郎

    植原委員長 中崎敏君にちょっと……。先刻の穗積七郎君の議事進行のことの御記憶を喚起いたします。
  64. 中崎敏

    ○中崎委員 その点についてでありますが、たとえば先ほど申し上げました石油のごとき、ほとんど一カ年間に日本は一千万キロリットルに近いところの膨大な石油を輸入しておる。これはほとんど英米のいわゆる石油資本によって、日本へ国際的、独占的な形において持ち込まれておる。ところがその石油は、北樺太にも相当の石油があるし、あるいはソ連の黒海、あの沿岸においても相当な石油がある。でありますから、この石油を相当大幅に買うというふうな用意が、政府の側においてあるならば、これは可能ではないか。現に日本の国内においては、業者側においても、そうしたような態勢さえ整えば、大いに買い込むのだというような意見もあるように聞いております。たとえば木材のごときは日本においては相当足りない、足りないと大騒ぎしておる。最近の化学繊維等におけるパルプの需要も相当量に達しておる。沿海州を中心とするところのパルプ資源というものは膨大なものであるが、こういうものの買い入れをする。同時に、これを輸入することによって、相当大幅の輸入というものができる、あるいは石炭についてもそうだし、マンガンについても、鉄鉱石についても、相当そうしたところの粗原材料については、洋々たる資源をソ連が持っておることは事実なんです。その点について、値段が高いとか言われるのでありますが、これは国家的に統制をされておる国々においては、真にこれだけのものを輸出するのだという場合においては、一方的にその国内において価格の調整は十分できるものだと考えております。従いまして、もう少し政府の側において、そうした広い角度からほんとうにやるのだというふうな腹がまえを持っておられるならば、打開の道は幾らでもある。一方において、向うの要望するところのものは、たとえで大型の商船であるとか、漁船であるとか、あるいは起重機、船舶修理、車両、動力工業その他の設備、一部の日用品、たとえば人絹、絹その他であるというようなものも、すでにこの国会委員会において報告されておる。こうしたようなもののなかで、ココムの制限は一体どういうふうに受けておるのか。しかも、そのココムの制限にどこまでもついていかなければならぬのか。ある程度政府が特免とかいうふうな方法によってやるのか。あるいはときによれば、腹をきめて、ある程度はその線を踏み越えてでもやるというふうな、そういう腹がまえがあるかどうか。こうしたような問題と関連してやっていくことによって、問題は大きく打開できるのではないかというふうに考えておる。こうしたような考え方の上に立って、一体どういうふうに政府はこれを処理しようとしておるのか、確固たる考え方をお聞きしたいのであります。
  65. 石橋湛山

    ○石橋国務大臣 ソ連に対しましては、御承知のようにココムというものが中共とは非常に違いまして、日本から輸出するもので、 ココムの制限によって輸出ができないということはほとんどないと言っていい。中共貿易か、せめてソ連に対するくらいにゆるめられるならば、もう日本で輸出したいものはすべて出るといわれているくりいでありますから、この点には何も心配はないと思います。ただ今まで政府にいたしましても、ソ連から輸入するものをはばんでいたという事実は一つもありません。入るものは幾らでも入れます。石油のごときは、今樺太のお話がありましたが、こっちの方にはほとんどないらしいのです。実際にはバクーです。そうすると運賃の問題、木材その他の——大体今まで私の交渉した限りにおいては、運賃のようであります。高いのです。だから、その値段が合理的になって、日本へ入ってきてやれるものなら、これは今までも、こばんだこともありませんし、いわんや今後しいてソ連からの輸入をこばむというような考えは、毛頭持っておりませんから、先方が売ってくれるものなら、幾らでも買います。
  66. 中崎敏

    ○中崎委員 こうした石油などについては、もともと北樺太の石油は五万トン程度のものだと記憶しております。数量としてはきわめてわずかでありまして、その点はどういうふうになっているか知りませんが、主として黒海、地中海を通って運ばれるところの石油に関係を持つものだと思うのでありますけれども、これはやはり英米の石油だって、ほとんどそうしたところを通ってきておる。であるから、その運賃がどうだというよりも、むしろほんとうにそういうものを買い入れるところの態勢が、これからはできるというふうに考えるのであります。ことに石油のごときは、もう相当の金額に達するものであるのだから、これは当然政府の側においても検討すべきものだというふうに私は考えておるのであります。そうしてまたこれと関連して、ことにソ連国家的な統制の上に立って知るところの組織の国でありますから、勢い今度は、日本民間の貿易のみに将来まかすということでなしに、もう少し、一歩政府は介入して、高い角度から、一体バーター形式としては、どういうふうなものをどういうふうにやるのか、そうしてまた、決済は一体どういうふうにやるのか。たとえば、先ほども松尾局長からお話があったのでありますが、あるいはオープン・アカウント形式までいっていいのか、あるいはそうなると、今度は焦げつくおそれがあるのかないのか、高いものを買わされるおそれがあるのかないのか、国家国家が支払いを保証すれば、この問題は解決するのかしないのか、そうしたような問題を全般的に一つ検討してみて、ほんとうに民間だけにまかさないで、国内においても、たとえば窓口を一つにする、輸出入組合をこの場合においても適正に作っていく、あるいはさらに強力なるところの国家的の機関というようなものを、これに対応して進めていって、窓口にするのだ、あるいはまた、領事館などの開設等により、あるいは人の往復を自由にして、商売だけはどんどん積極的にやらせるのだとかいうふうな、総合的な国家の施策がなければ、貿易は期待できない。であるから、向うが年間往復通じて十億ルーブルを今後五カ年間に伸展し得るものだというふうに考えておるのは、理由のないことじゃないと思う。であるから、そうした意味において政府の方で一歩進んだ考え——ことに、たとえば支払いに対しては一体どういうふうな態度をもって今後臨もうとするのか。それで、今度は通商関係において商社もできなければならぬでしょうし、またこっちの人も向うへ行く、向うの人も自由にどんどん行ったり来たりして、そして商取引の活発な動きをしなければ、なかなか相互の間の理解もできなければ、商取引も活発に行われぬと思うのだが、こういうふうなことについては、一体政府はどういうふうに処理するのか、お聞きしたいのであります。
  67. 石橋湛山

    ○石橋国務大臣 貿易は相手のあることでありますから、一人相撲はとれないのであります。そこで、いずれ、そのうち、そういう問題についてこまかく通商協定交渉が始まると思いますから、その場合に先方の希望も聞き、こちらの必要も申しまして、できるだけ貿易が拡大されるような方針で交渉したい、かように考えております。
  68. 中崎敏

    ○中崎委員 次に引き揚げに関する問題なのでございます。先ほど質問がありましたが、まず賠償の請求権をお互い放棄しておることについてであります。これは、お互い金額が幾らになるという程度までは話し合いがいかなかった、これはわかる。わかるのですが、これは個人の財産も含めてでありましょうから、日本国民にとっては、幾ら放棄されたのかは、きわめて重大な問題であります。であるから、政府の側においては、放棄せしめられた個人財産が一体どの程度であったかということを、この際明らかにしてもらいたいと思うのであります。
  69. 小林英三

    ○小林国務大臣 引揚者の在外財産の問題につきましては、御承知のように在外財産問題の審議会が今十分検討いたしておる最中でございます。政府といたしましては、そういう問題につきましては、その答申を待ちまして、十分に慎重に検討いたしたいと思っております。
  70. 中崎敏

    ○中崎委員 おそらくこの在外財産の審議会に関する問題は、ソ連の領域だけでなしに、相当広範な領域におけるところの在外資産についての処置をどうするかというふうな問題にも関連しておると思うのでありまして、その使命は主としてそこにあるかと思うのであります。私のお尋ねしますのは、日ソ関係が一応交渉妥結するところまでいった、それについて、一体個人の財産がその領域においてどの程度放棄をされたかということを、向うとの折衝関係でなしに、国内におけるそうした犠牲者に対する関係において、こまかい数字はいいのだけれども、たとえば樺太あるいはシベリアにおいて、どの程度のものであるか、およそその概数でもいいから、お知らせ願いたいというのがその要点であります。
  71. 小林英三

    ○小林国務大臣 この問題につきましては、大蔵省とも後日十分協議をいたしまして、適当な時期に答弁いたしたいと思います。
  72. 中崎敏

    ○中崎委員 この問題は、われわれがこの共同宣言並びに議定書を審議する上において必要な資料でありますから、われわれがこれを議了する予定の、二十七日の午前中、までにお出し願えるかどうかを、一つ委員長の方からお確かめ願いたいと思います。
  73. 植原悦二郎

    植原委員長 中崎敏君の御要求は、政府において御考慮願います。
  74. 中崎敏

    ○中崎委員 ただ一方的に、斬り捨てごめんで、それで終ったのでは困るのであります。政府の方で、いつまでに大体どういう範囲ならば資料が出せるか、あるいは現在どういう程度ならば答弁できるというふうなことについて、確かめておいてもらいませんと、結局、二十七日になっても出てこない、そうして何だかわからぬ結果になると困りますから、その点を確かめておいていただきたいと思うのです。
  75. 小林英三

    ○小林国務大臣 ただいまの御希望でありますが、これは私が今ここで二十七日までとか、二十八日までとかいう御答弁は申し上げられないと思います。十分大蔵省とも相談をいたしまして、その上で適当な機会に御答弁申し上げたいと思います。
  76. 中崎敏

    ○中崎委員 そうすると、在外資産に関する問題は、終戦以来もう十数年たっている。しかも、これは国会において問題として取り上げられ、ことに昨年のごときは、衆参両院において在外資産に対するすみやかな法的並びに財政的、予算的措置を講じろという決議が満場一致で通過している。そうし出た上に立って、審議会を作って審査されてから、もう二年も三年もたつ、これは新しい審議会はまだ年限は浅いと思うのでありますけれども……・。それにもかかわらず、国別の在外資産さえも調査されてないとは考えられない。であるから、ラフでいいのでありますから、それは大体何名、何世帯で、金額はおよそどのくらいのものであるというくらいのことは、この際において答弁できぬはずがない。もし、それがやられてないとすれば、政府が怠慢なのである。であるから、この際はっきりと、この程度われわれは努力してやっておるのだということを一つ言明してもらいたいと思う。
  77. 小林英三

    ○小林国務大臣 せっかくのお尋ねでありますが、この問題は大蔵省で調査をいたしておる問題でございますから、大蔵省の方と十分協議いたしまして、後刻お答えいたしたいと思います。
  78. 中崎敏

    ○中崎委員 これは議事進行と関係があるのでありますが、私はこの審議の上において必要と考えますので、すみやかに大蔵大臣一つここへ出てきてもらって、責任のある御答弁要求したい。それまで留保しておきまして、さらに進行したいと思います。  次に、こうした協定政府の方においても急がれた一つの理由は、ソ連において抑留されておるところの多数の、向うでいう戦犯でありますが、それらの人たち並びにマリク名簿にないところの多数の人たちの引き揚げをすみやかに、ことに年内に完了して、そうして人道的な考え方からいうても、やはりわれわれの同胞的な考え方の上に立って——寒い冬を、お互いに、この日本の国においてしのがせたいという考え方の上に立っているということ、これは総理の言われたところでありますが、そうした意味において、この案は二十七日には一応衆誌院を通過するということに予定をされておるのです。われわれもこうして日夜審議を急いでおる。そうした考え方を持って特に急いでおるということも、御了承の通りだと思うのです。従って、今のような予定の上に立って、このソ連に抑留されておるところの同胞が、年内に一体帰国されるような態勢ができておるのかどうなのか、政府見通しは一体どうなのかをお聞きしたいのであります。
  79. 重光葵

    重光国務大臣 お説のような趣旨をもって非常にこの問題を促進しておるわけでございます。ソ連の方でも、その点はよく了解して異存がございません。今常に連絡をして打ち合せをしております。さような状況であります。
  80. 植原悦二郎

    植原委員長 その点はかなり繰り返した問題ですから、なるべく繰り返しを避けるようにお願いをいたします。
  81. 中崎敏

    ○中崎委員 委員長の注意がありましたけれども、この点は、本朝社会党においても国会対策委員会において、特に事態がきわめて緊急であるという考え方をもって取り上げられて、私は党を代表してその点を確かめるというところの使命を持っておりますので、委員長の注意もありますが、私はその使命を果すべく、もう少しこの問題を続けることを一つ御容赦願いたいと思うのであります。  そこで、まずそうしたマリク名簿にあるところの人員の引揚げ予定者が、ナホトカその他にすみやかに集結されておるのか、そういう態勢にあるということを希望するのでありますが、一体それはどうであるのか。もし万が一——この年内に通常の手続、たとえば国会承認をもってこの条約批准されて——そうした手続の関係で、日本がまず先に批准して、そうしてソ連がその後において批准して、しかも東京で交換するというふうな形になると、間に合わぬというようなおそれもあるのじゃないかと考えるので、特にそう言うておるのでありますが、その際において、おんとうに間に合うのか合わぬのか、あるいはもし間に合わぬという懸念があれば、何らかその間において適宜便宜的な措置が講じられる余地があるのか、また、そういう努力政府の方でしておるのかどうかということを、留守家族にかわって、われわれは政府の側からこの際一つはっきりしていただきたいと思うのです。
  82. 重光葵

    重光国務大臣 政府としても、その点は留守家族に十分はっきりいたしたいと思います。年を越さぬで済むように、最善の努力をいたしております。それは批准交換ができる前にも、十分一つ準備はしたいということで、ソ連側とたびたび打ち合せをしておる次第でございます。
  83. 穗積七郎

    穗積委員 ちょっと質問者の了解を得たので、関連して一問だけ総理にお尋ねしますが、伺いますと、一昨日かの閣議で——日本批准の手続が済んでから向うへ通告をして、そして向うから批准書の手続を受けて持ってくるということになると、批准交換が中旬以後になる。そうして効力を発してから引き揚げの準備をするということになると、正月に家庭へ帰すことが、遠くの方はちょっとむずかしくなる。それからまた国連問題も、来月上旬から総会が開かれる。従って、これも年内に加盟をして正月を迎えたいというのが、われわれ国民の共通な念願だと思うのです。従って、本委員会の壁頭の理事会におきまして、私どもからも提案をいたしまして、政府から国会の審議の様子によって、適宜向うの政府に、早く批准が完了するように、そしてまた国連加盟、引き揚げが年内に実現するように、要請をしてもらいたい。国会におきましては、今まで大体委員長初め与党、野党の理事で予解を得ておりますことは、二十七日は衆議院の本会議を通過いたしましたといたしますならば、それだけの日本側の努力が形の上で出るわけですから、それで委員長並びに理事程度がまず代表部へも正式に会見を申し入れて、ソビエト政府側に、今申しましたような早く促進することを正式に要請しようという申し合せをしたわけです。そうすると、一昨日の閣議で出たことで、まことに時宜に適したことだと思うのだが、鳩山総理の名前でブルガーニンあてに手紙を出して、そうして日本側はかくかくの状態になっておる、だから遅滞なく、たとえば四日なり五日なりに参議院も通って、翌日批准手続が完了するとすれば、その翌日くらいには東京で批准書の交換ができるようにしてもらいたい、ということの意思表示をされることは、私はまことに適切だと思うのです。それからなお、河野さんあるいはあなたもお話しされたようだが、引き揚げは効力発生後遅滞なくということだけれども、それは正面であって、それを一日も早からしめるために、見通しがついたならば、事前にナホトカヘ、特に遠くの方の人は集めてもらいたい。これも具体的な内容をもって、われわれはあなたの書簡の中に盛られることを要請する。従って、あなたがブルガーニンに手紙を出そうということは、新聞報道の通りであるか、どうか、その意思を伺いたい。それから次に第二点に伺いたいのは、そうであるとするならば、その内容は一体どういうものをお考えになつておられるか。第三には、それはいつお出しになるつもりであるか、その三点について、この際今の問題と関連いたしまして、緊急性を持っておりますから、お尋ねするわけです。的確にお答えをいただきます。
  84. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 出す時期は、参議院を通過する予想ができるようになりましたらば、直ちに手紙を出すつもりであります。その内容は、ただいまあなたのおっしゃる通りに、いつごろからこちらの批准ができるようであるかり、それまでにナホトカに集結してもりいたいということが、むろん内容となります。
  85. 穗積七郎

    穗積委員 もう一点だけ、大事なことですから、委員長お許しをいただきたい。簡潔にいたしますから……。出す時期はいつですか、参議院が……。
  86. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 参議院が通過する見通しがつき次第……。
  87. 穗積七郎

    穗積委員 それは、実はもしお手紙を一回しか出さぬというならば、われわれも国民代表として向うへ申し入れる時期は、衆議院の採決が済んでから、これだけの賛成の票数があって、もう通ったのだ、しかも参議院の方へその翌日回しますならば、おそらく理事会を開いて審議日程ができて、四日なり五日なりに上げようということの大体の与野党の間における話し合いができると思うのだ。それが一番適切だと思うが、もし一回でなくて、二回でもお出しになるつもりであるならば、この際総理としては今の状態をそのまま報告されて、そうしてこういう事態で努力しておって、大体のめどはここにある、追ってまた国会の審議の状況は逐次報告するから、遅滞なく一つやってもらいたいということであるならば、参議院の審議完了の日が、与野党の間で話し合いがつく以前、すなわち今日あるいは明日等々においても、必ずしも不適当ではなかろうかとも考えられるわけです。ですから、その内容並びに要請する意思については私は了としますし、けっこうなことだと思うんだが、最初にお出しになる時期については、もう少し早くてもいいんじゃないかとも思われる節があります。一回だけなら、それは衆議院が通ってからということが適切かもしらぬが、追いかけて、また熱意を示すためにお出しになるつもりなら、この際でもいいんじゃないかと思うが、それは検討されませんですか、どうですか。外務省はどうですか。
  88. 重光葵

    重光国務大臣 お話は、それはその通りであります。その通りにやっておるのであります。というのは、これはできるだけ早くやらなければいかぬので、批准交換がいつごろできるということは、今お話の通りに合、両院の審議の状況を見なければなりますまい。しかしながら、こういう抑留者を帰してもらうということは、今日はソ厘政府との連絡は完全についておるのであります。モスクワにもこちらの代表部がおりますし、こちらにもソ連の機関があります。そこで、これと密接な連絡をとってそれをやっておるのであります。そこで、衆議院は大体どういうふうな日程でやっておる、衆議院は将来こういう日程でやり得ると思うというようなことで、これまで与野党の方と御相談したその結果をもって、向うに十分督促しておるのです。向うもいろいろなことについて打ち合せをしてきております。拘禁されておる人間はどうするとかというようなことまでも、十分誠意を持って言ってきておりますから、この何を進めていきたいと思います。そこで必要があれば、また最も有効な時期がきたとするならば、直接総理大臣の名前をもって向うに申し入れるということも必要でございましょう。(穗積委員「書簡を発送される時期については、まだきまっていないのですか」と呼ぶ)そういう一々どうしたら最も有効であるかということは、行政上の処置として最善を尽しますから、一つおまかせを願いたいと思います。
  89. 中崎敏

    ○中崎委員 だいぶ委員長も時間を急いでおられるようだから、最後に一点だけ質問しておきます。河野農林大臣にお尋ねします。漁業に関する問題でございまして、特にたび重なる李承晩ラインによるところの漁夫並びに漁船の抑留、拿捕等によって、国内においても非常な迷惑、犠牲を受けておるのでありますが、これはやっぱりソ連についても同じことが言えると思うのです。ところで、この協定批准された後においては、その懸念は一体どういうふうになるか。依然として今まで通りに遠慮会釈なく持っていかれるのか、あるいはきわめて限られた範囲においてそういう場合があり得るのか、あり得るとすれば、一体どういうふうな場合であるか、その点について伺っておきたい。
  90. 河野一郎

    ○河野国務大臣 御承知通り漁業条約によりましては、現行犯を拿捕いたした場合におきましては、遅滞なくその所属国に通達をいたしまして、そして両国打ち合せの上、適当な地点において引き渡しをする。そしてその所属国において裁判をするということになっておりますから、この発効後におきましては、従来のような関係は起ってこないというふうに考えております。  なお、ついでに申し上げておきますが、これまでの漁業関係で、十月末までに拿捕せられております船は、漁船が大体百一隻、漁民数が百五十人程度になっております。これにつきましても、特にフルシチョフ氏に申し出をいたしまして、これらのものも、条約発効後遅滞なく引き渡しをするように便宜をはかってもらいたいという申し出をして、大体先方の了解を得ております。
  91. 中崎敏

    ○中崎委員 もう一つ、これに直接関連があるわけじゃありませんが、ついでに農林大臣にお聞きしたいのであります。ソ連の方では、漁船などを日本から買い入れるということを期待しているように伝えられている。今後国交が調整、回復されて、先方から漁船の引き合いがあるような場合においては、どういうふうなお考えをもって臨まれる考え方であるか、お聞きしたい。
  92. 河野一郎

    ○河野国務大臣 漁船、漁網、漁具等について、私が参りました際に、先方から希望、話し合いがございました。これはわが方の許す限り、できるだけ協力してしかるべきものじゃないかと考えております。
  93. 中崎敏

    ○中崎委員 それでは、先ほどの大蔵大臣に対する在外資産に関する質問を保留して、これでもって終りたいと思います。
  94. 植原悦二郎

  95. 小坂善太郎

    ○小坂委員 私はようやく質問の機会を与えられたのでありますが、時間が非常に制限されておりまして、三十分ということであります。しかし、すでに各委員からいろいろ質問があった後でありますから、ごく集約いたしまして、現在国民が心配をいたしております点を、だれにでもわかりやすい形で御質問を申し上げますから、どうか私のこの国会の質疑応答を通して、国民のできるだけ多くの人が、たとえばおばあさんや子供に至るまで、日ソ共同宣言の問題点はどういうところにあるのかということを理解してもらいたい、またこのことが私の国民代表としての義務である、こういう観点から御質問申し上げますから、それぞれお答えをいただきたいと思います。  由来、日本人は非常にあきらめがよい国民でありまして、できたことはしようがないじゃないかという気持があるのであります。ことに終戦以後の目まぐるしい情勢の変転というものは、一そうこうした日本人の諦観の気持をかき立てていると思うのでありますが、この日ソ交渉についても、やはりそういう点があろうかと思うのです。もうできたことはしようがないじゃないか、あれはあれでいいじゃないかという声は、実に多いと私は認めざるを得ない。ことに老首相が病躯を押されてモスクワまで行かれたその御労苦に対しては、私も個人としてはまことに敬意を払っている。しかし、その個人として敬意を払っているということと、日ソ交渉の問題点を剔決するということを混同してはいけない。私もそういう首相に対する敬意は失いませんけれども、この問題だけは一つ明瞭にしておいていただきたいというふうに考えまして、一方において御苦労様でございましたという気持を持ちつつ、しかし国民の代表として伺いたいことは十分伺いたい。こういう気持でありますので、三十分という時間ははなはだ少いので遺憾でありますが、要約して申し上げますから、どうか要約してお答えをいただきたいと思います。  まず、総理大臣の御演説の中に、世界に正常な、そうして合理的な雰囲気と精神が立ち返ることを祈願するということを言っておられるのでありますが、私は、この共同宣言の中には、決して相互において満足すべき合理性がない、はなはだ非合理な、しかも正常ならざるものであって、こういう共同宣言日本国民の全部が全部満足してしまうということでは、今後日本民族が世界に対して大きな顔向けをしてやっていくことはできないのじゃないか。しいていえば、この共同宣言は事情やむを得ざるものであるということで賛成している人も賛成しているのだと思いますが、総理大臣のこの考え方に対してのお答えをいただきたいと思います。
  96. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 現在の地位としては、最善の道が尽されたものと考えております。
  97. 小坂善太郎

    ○小坂委員 最善とおっしゃるのでありますが、鳩山総理の側近がチフヴィンスキー氏と打ち合せて、そしてあなたが提案されました例の五条件、この五条件というものは、一体条件だろうかというふうに私は考えておるのであります。条件というものは、まず第一に戦争状態の終結宣言、第二に大使の交換、第三に漁業条約の発効、第四に国連加盟の支持、第五に抑留同胞の帰還ということでありますが、このうち、一体条件という名がつくものはどれをお考えでございましょうか。
  98. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 私はすべてのものを一括して、日本ソ連と国交を正常化することについて可能性があり、日本のためになると考えるのはこれらの点だと思って、これを申し込んだわけであります。
  99. 小坂善太郎

    ○小坂委員 まずその国連の加盟でありますが、何か国連に加盟させてもらうということが、非常にソビエトのフェバーであるというような認識をかき立てるように努力しておられるようであります。国連に加盟するということは確かに望ましいことであり、非常によいことであることは間違いありません。しかし世間では、国交がソ連との間に回復していない、そのゆえに国連に入ることが妨げられておったのだ、今度鳩山さんの努力で国連に加盟することができるようになったというふうに理解している人が相当多いのです。しかしながら、ソ連日本の国連加盟を国交が回復していないという理由で拒否をしておったということが、一体正常なものであるとお考えでございますか。
  100. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 私は、ソ連交渉をするという最初の動機は、世界の緊張を緩和するということを大目的考えまして、そうして米ソ関係緩和せられ、世界の平和ができ上っていくことが、日本としては非常に熱望すべきことだと考えたのであります。そういう目的は今度達成できた、また、達成できたというよりも、達成する端緒を開き得たと考えております。
  101. 小坂善太郎

    ○小坂委員 その国連加盟に反対するソ連の態度というものがいいか悪いかということにはお触れにならないで、要するに、緊張緩和の方向に持っていこうということで御答弁になったわけでありますが、これはソ連のいうことを聞いてやったということと了解しておきましょう。そこでソ連のいうことを聞いてやったことが正しかったかどうかということですが、第一回の国連総会で、ポルトガルなどの国連加盟に対してソ連が反対しました。それに対して、英仏は反対した。国連憲章の第四条というものは包括的な定めであって、これに新たに追加することはできない。すなわち外交関係が回復していないという理由をもって、国連加盟を拒否することはできないのだということを強く主張いたしまして、そのことは国連間における通念になっておるというふうに私は了解をいたしておるのであります。スペインなどは現在ソ連と国交は回復していないと了解しておりますが、スペインは、昨年国連加盟を了しておのであります。ソ連がこうした横車を押して、日本と国交回復をしていないということを理由として、国連においての日本加盟拒否ということが主張できないということは、だんだんソ連としても了解してきたのではなかろうかと思う。現にそれあればこそ、昨年は、ソ連日本の国連加盟に反対をしなかった。しかし、その反対をしないということをそのままに出さないで、外モンゴールと抱き合せの格好で、日本の国連加盟というものを持ち出したのであります。その結果、日本の国連加盟は実現しなかったのでありますが、その間に外蒙古との抱き合せの情報をもう少し早くキャッチできたならば、あるいはこれに対する対処策があったかもしれぬ。しかし、何かの総理のおっしゃるようなソ連との緊張緩和というようなことだけに目を向けておって、そうした四囲の情勢に目を配ることを怠っておった。何か国連加盟がうまくいかないで、今度はソ連のお情によって国連に入れてもらえる、これが大へんにいいことであったという印象を日本国民に与えたとするならば、総理はそのことについては、ここではっきり、ソ連のいうことは間違っておったので、国連加盟というものは当然に日本が入るべくして入ったのであって、これは決してソ連が出した条件をのんだからではない、五条件の一つにしておる国連加盟というものは条件として考えられるような状態でなかったということをおっしゃる必要がありはしないか、これは今後の国民の心がまえに関連して必要なことであると思うのでありますが、総理の御意見を伺いたいと思うのであります。
  102. 重光葵

    重光国務大臣 私も交渉した者として、気持は今述べられた通り気持交渉したのです。国連加盟というものは、終始日ソ交渉とは全然切り離してやったんだということで、国連加盟の方針を進めて参ったのでございます。ところが、これは不幸にして、今言われたような故障がここに起ってきたわけです。その故障は、ソ連の態度にあったわけであります。しかしてまた、国連加入が日本にとっていかに大きな意味を持つかということは御了承を得ておると思いますが、それを達成するためには、この故障を除かなければなりません。その故障を除くことができたということについて、非常に大きな意味がある、私はこう思っておるのでございます。そこで、ソ連のおかげで入ったというようにいう必要は少しもないと考えておるのであります。
  103. 小坂善太郎

    ○小坂委員 やや了解いたしますが、とにかく故障が起きたことは、ソ連の横車による故障であった。そこで、その故障が取り除かれたのは日本が折れたからだ、こういうことであろうと思う。さようでよろしいのでございましょう。違えばまた御答弁願います。
  104. 重光葵

    重光国務大臣 日本が折れたということでないと思いますが、まあさようなことでございます。
  105. 小坂善太郎

    ○小坂委員 まあそういうことだということであります。時間が二時間ぐらいいただければ、これを十分に質疑を申し上げることができると思うのでありますが、残念ながら三十分の制限で——後ほどは委員長の寛大なる御処置をいただけるかと考えております。  次は、抑留者の問題でございます。戦犯という名をつけられて、不当抑留されておる同胞帰還の問題でございますが、これはソ連と国交を回復しなかったから、抑留同胞が——今度の話によりますと千五十三名でありますが、この同胞が帰れないんだ、そこで、これまた日ソ国交回復の条件として考えていただいて、帰していただいたんだということに思っておる同胞が、非常に多いのです。日本国民の相当多数が、そう了解しておる。私はこれは誤まっておるということを、やはり政府に言っていただきたい。そういう点から申し上げるのであります。中共に対しまして、日本は国交を回復いたしておりままん。しかし、中共はいち早く戦犯を帰しておりまして、現在四十四名を残して他は全部帰還させております。しかも、その四十四名に対しても、できるだけ早い機会に帰しましょうということを言っておるのであります。こういう措置を一方に中共がとっておるので、ソ連も、こういう同胞を一方的に十一年もソ連の地に置いておくということは、世界の世論から見て、もう抗し得る限界じゃなかろうかと私は思っておるのであります。しかも、中国をわが方との間には、これはまさに戦火を交えたので、戦犯というものは、解釈のしようによってはあると思うのです。しかし、ソ連は違う。ソ連は、御承知のように、一方的に中立条約を廃棄したのみならず、非常な背信行為をあえてしている。日本は中立条約があるからといって、戦争の中介を頼んだのがソ連なんです。日本の状態を全部知りながら、八月八日には、ソ満国境の兵備を全部終るということを、駐ソ大使のハリマンにも通告しておる事実がある。この背信行為をしたというソ連なんです。そのソ連が、日本同胞に対して戦犯という名をつけるのが一体おかしいのですが、かりに力関係でやむを得ないということにいたしましても、そうした人質政策をとっておったのはソ連なんで、これを何か条件にされたということは、私は日本国民としてやはり不当なことをしいられたということだけは、明らかにしておきたいと思うのです。同胞が早く帰ってこられるということは、私どもも心からうれしいことです。ことに留守家族の身になってみるならば、一日も早くお迎えして、あたたかい環境を作ってあげたい。そのため、日本同胞にもう一冬、寒い冬を越させたくないということで終始されたヒューマニストである鳩山総理のお考えにも、私は深く敬意を表する。それはよくわかる。よくわかるのですが、何か日ソ交渉ということをあなたが言い出されてから、ぴったりと同胞引き揚げがとまってしまった。その前には、ソ連は相当帰しておった。中には、日本の工作員というような名で帰した人もありますけれども、とにかく相当帰しておった。ところが、それをやめてしまった。そして、ソ連がとってきた人質政策というものにまんまと乗ってしまって、五条件の一つに同胞の引き揚げということを認めたような形でやられたということと、あなたの冒頭の御演説にあった世界に正常な合理的な雰囲気と精神が立ち返ることを期待する、こう言っておられることと、どういう関係にあるかということだけは、一つ伺っておきたいと思います。
  106. 重光葵

    重光国務大臣 私からお答えします。この五条件と申しますのは、抑留者を帰してもらいたい、また抑留者があるということはあり得べからざるものであるというような議論、これはその通り日本としては従来議論をしておったのであります。私は、交渉の過程におきまして、十分にその点を述べたのでございます。しかしながら、ソ連はまたソ連としての議論をもって、日本の議論をそのままのみ込まなかったのでございます。そこで問題が残って、今度あらためて総理が行かれるということになれば、そういうようなことは、十分確かめておいて交渉を始めなければならぬということは、これは技術上からいってみても、当然のことだと思います。そこで、交渉がまとまるというときには、抑留者は帰すというところにどうしても持っていかなければならぬのです。それで、それを一つの項目として、向うとの交渉の伏線にいたしたわけであります。いわゆる五項目だけではございません。これまで交渉中議論をしましたその他の多くの項目についても、十分に今度は取りまとめるという前提のもとに参ったことは、御承知通りであります。そういうようなわけで、この故障、人質政策というようなことすらわれわれは交渉中ロンドンでもモスクワでも申して、十分向うの反省を促したのでございます。しかしながら、やはりこれは交渉がまとまった上で帰すということになっておりますから、そのことに努力をして、故障を除く方向に進んだわけでございます。その点については、おそらくいろいろな御批評はございましよう。ございましょうが、まずわれわれといたしましては、最善の努力をしたということを申し上げるわけであります。
  107. 小坂善太郎

    ○小坂委員 どうも時間があまりないようで、緒論に入ったらもう時間で、困っておりますが、私はその平和ということは、単に戦争状態がないということじゃないと思うのです。やはり正義の主張というものが通るのが平和である、しかも法と秩序が行き渡っていることが平和な状態だと思う。そこで私は、こういう理不尽なことを聞いて、これはやむを得ざるものであるというふうに了解されるのは、私が最初に申し上げたのはその意味であるが、そういうことで満足しているべきでは決してない。今後もっといい状態を作り出すことは、これはお互い努力でありましょう。ソ連においても努力してもらわなければならぬし、われわれ日本においても努力しなければならぬ。しかし、お互い努力によって、もっといい、ほんとうの平和な状態を築き出そうじゃないかということの前提は、今までソ連のやったことをいいと認めた結果からは出てこないから、特にこの点は念を押しておくわけです。  そこで、こうした条件ならざる五条件を基底といたしましてなされたこの共同宣言は、一種の修正アデナウアー方式とも言うべきものであると私は思うのです。そこで、大使交換と抑留者の引き揚げということを条件としてなされました西独のアデナウアー方式が、その後西独において非常な困難に逢着した。そうして、両国の大使が引き揚げまして、また最近において何かアデナウアーが言い出して、大使の交換を復活するようなことになっておるようであります。この点について、どういう原因でかくも紛糾したかということを、私は資料を持っておりませんので、御説明を願いたいと思う。ただ、これは時間の関係で、お答えを願っておると長くなりますから、あとで何かの機会によく御説明を願いたいと思いますので、この機会には問題を提起するにとどめておきたいと思います。  もう一点、これは簡単でよろしゅうございますが、大使の交換と領事関係において、やはり双務関係を持つことになっておりますが、当方のソ連内における領事館の設置の構想はどうなっておりますか。この共同宣言の第二項にある問題でございます。これは事務的ですから、事務官からでけっこうです。
  108. 重光葵

    重光国務大臣 私からお答えいたしましよう。その点は、大体双務的ということになっております。しかし、それじゃきちっと向うから二十人、こっちから二十人といって、何もかもそういうふうに具体的にいくこともいかがかと考えます。大体常識で双務的に進めていって、この点は将来円満にいくように期待したい、こういうふうに考えております。
  109. 小坂善太郎

    ○小坂委員 私はなお領事館について伺いたいんですが、日本で幾つ領事館を置き、先方に幾つ置くかということは……。
  110. 重光葵

    重光国務大臣 それはむろんまだきまっておらぬので、これは批准ができればすぐ交渉してきめます。きめますが、今検討しておるところでは、戦前に置いておったそのままでいいかということは、これは少し考えものだというふうに思ってやっております。あるいは全部でなく、少くして、必要なところに置くというふうな考え方がいいのではないかということで、事務的に考えております。
  111. 小坂善太郎

    ○小坂委員 そこで、条件ならざる五条件を基底としておることは、これはいかにも私どもとしては不合理なものと思われるのでありますが、最大のものといたしておられまする領土問題について、非常にこれはあいまいであるという点をこれから質問したいと思いまするが、論者には、よく国連加盟ということが最大の命題で、国連に加盟したら、そこで堂々と世界に向ってわが領土の問題を主張すればいいじゃないか、今日では何もできないと言う人があるのであります。そういう議論は割合に俗耳に入りやすいのでありますが、これには前提があると私は思う。今日の段階において、日本がもし領土放棄しておったならば、将来国連に入って何を言ってみても、日本自身が放棄した領土を、他国が火中のクリを拾ってくれるはずはない。そこで私は、共同宣言に現われておりまする第九項の、平和条約締結に関する交渉を継続するということに双方が同意する、この意味の中に、国後択捉について、当方の領土権というものを十分主張しているものかどうか、この点をお伺いしたいと思うのです。総理大臣の演説には、国後択捉という字は一言も出てきておりませんが、この国後択捉わが国有の領土ということの主張は、今日においても、全然変えておらないということでございましょうか。これは総理から……。
  112. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 平和条約締結の際には、国後択捉についても話し合いをすることは当然であります。これは先方においても了承をしております。
  113. 小坂善太郎

    ○小坂委員 昨日の委員会で、社会党の大西君の質問に対しまして、外務大臣は、国後択捉ソ連領有を認めても、サンフランシスコ条約の違反にならないということを答えておるわけです。これは新聞にそういうふうに出ておるのであります。すなわち、サンフランシスコ条約放棄した領土帰属を決定するのだから、サンフランシスコ条約調印国に関係はあるが、違反にはならない、ただ了解をとりつける必要がある、こういうことを言っておられます。これは非常に重大な発言だと思いますが、その通りでありますが。
  114. 重光葵

    重光国務大臣 大体その通りです。
  115. 小坂善太郎

    ○小坂委員 その通りであるとすれば、これは私は非常に重要だと思うのであります。これは、七月三十一日にあなたがモスクワにおいて出されたステートメントに反するのであります。あのステートメントの中で、あなたは、南千島は、いまだかって、ソ連はもちろん、いかなる国の領土であったこともない、第二に、一八五五年、下田で結ばれれた日露通商友好条約は、国後択捉日本領土であることは、ソ連によって確認されているのだ、第三に、一八七五年、樺太・千島交換条約によっても、千島というのは、ウルップから北シュムシュに至る十八の島嶼であって、国後択捉は入っていない、第四点として、サンフランシスコ条約において、吉田全権は、両島は千島に含まれないということを述べて、列国の全権において、これに対して異議を申し述べた者はなかった、この四点を強調されて、日本放棄した千島の中に、国後択捉は入っていないということをあなたは言っておられる。ところが、この質問に答えられたあなたの答弁によると、入っていることになるではありませんか。
  116. 重光葵

    重光国務大臣 今言われた通りです。その通りです。
  117. 小坂善太郎

    ○小坂委員 どっちの通りですか。私の伺っておるのは、あなたは、国後択捉は千島の中に入っていない、こういうことを言っておられるでしょう。ところが、大西君の質問に対しては、サンフランシスコ条約放棄したのに、国後択捉ソ連領と認めても、桑港条約の違反にならない、二十六条二項の違反にならないということを言っておられる。国後択捉放棄している中に含まれていないのですよ。ところが、国後択捉放棄したのだから、違反にならないということをきのう答えた。これはどういういことかというのです。
  118. 重光葵

    重光国務大臣 ちょっと御質問の点がおかしいように思います。今の何では、国後択捉ソ連に譲歩するとかなんとかいうようなことは考えておらぬわけです。おらぬわけですが、領土問題について日本ソ連との間に条約取りきめをしても、それはサンフランシスコ条約には抵触しない、こう私は申し上げたのです。その通りであります。
  119. 小坂善太郎

    ○小坂委員 私の言っているのは、二十六条の二項というのは、そういうふうに解釈できるのです。そう言われる限拠は、結局三年という期限が二項にかかるという、そういう解釈で言っておられるのではないですか。
  120. 重光葵

    重光国務大臣 私は、そういう問題について、日ソの間に妥結ができぬというふうに二十六条は解釈すべきものではないと考えます。
  121. 小坂善太郎

    ○小坂委員 それでは、あなたの言われている国後択捉ソ連領有を認めても、サンフランシスコ条約に違反しないというのは、国後択捉ソ連領有を認めるのではないという前提に立っておられるのですか。実際そういうことを考えておられるのですか。
  122. 重光葵

    重光国務大臣 私がそういうことを言ったかどうかは——新聞ですか、それは私は言った覚えはありません。ソ連領土として認めるということは、何も言ったことがございません。しかしながら、それを認めたかどうかという法律上の議論は、そういうふうになります。
  123. 小坂善太郎

    ○小坂委員 時間の関係で、それは次に行きます。  歯舞色丹について、日ソ両国は、これは今までの考えを捨てていないのであります。日本は、歯舞色丹はわが領土だという。ソ連は自分の方だという。この状態が結局共同宣言の第九項の二号で、日本の要望にこたえて、日本の利益を考慮して引き渡す、こういうことになっておるわけです。日本の方からいえば、歯舞色丹返還してもらいたい、こういう希望なんです。が、ソ連は引き渡す、こういうことを言っておるわけです。そうすると、歯舞色丹の現在の地位というものは、一体どういうことになっているか、現在の主権はどういうことになっているか。
  124. 重光葵

    重光国務大臣 それは、交渉前の双方の主張に返るわけです。主張が一致しないままになるわけです。これは国際関係の常道です。
  125. 小坂善太郎

    ○小坂委員 それはその通りであります。そこで、平和条約ができたとき渡すということ。歯舞色丹の地位というものは、今言われたように、双方の主張が合致しないままに、こうなっているわけです。そこで、国後択捉の地位というもの、これもやはり同様のものだと考えますが、どうですか。
  126. 重光葵

    重光国務大臣 それは、むろんその通りでございます。それは双方とも主張が合致しないままになっているわけであります。
  127. 小坂善太郎

    ○小坂委員 そうすると、双方の主張が合致しないまま、物別れの状度になっている。これは、歯舞色丹のみならず、国後択捉もそうである、かように考えてよろしゅうございますか。——よろしゅうございますね。そこで、共同宣言の中の表現というものが非常に大事になってくると思う。この共同宣言の第九項の表現で見ますと、「両国間に正常な外交関係が回復された後、平和条約締結に関する交渉を継続することに同意する。」ただこれだけです。そこで、わが方は国後択捉を従前から持っておったのですから、現有者の主張の方が形からいえば有利であるわけです。この主張の仕方がまずいと、はなはだ不利になる。そこで、この書き方で、共同宣言のこの文章をもって、一体、国後択捉返還を将来主張できるとあなたがお考えになる根拠を伺いたい。
  128. 重光葵

    重光国務大臣 今日まで意見が合致しなかったのでありますから、将来、領土問題を交渉する場合には、双方とも従来の意見を持ち出すことは差しつかえないことであると考えます。
  129. 小坂善太郎

    ○小坂委員 この国後択捉領土返還日本国が明確に求めることなしに現状を認める、共同宣言承認するということになると、あなたの答弁があるのでありますが、外部に対しての、ことに国際間における拘束力というものが、全然ないのですね。私は非常に不利だと思うので、この批准の際に、一つ留保条項をつけるということを提案いたしたい。留保条項というのは、御承知のように、大体三つに分れると思うのでありますが、まず第一は、ある条項の適用を排除するということ、第二は、ある適用地域をきめる、ある適用地域を制限するという問題、第三は、条項の解釈の問題、私はこの第九項の条項の解釈についての留係をする、すなわち国後択捉に関する領土の問題について、それのみならず、もっと広範にしてもいいのですから、領土問題について、平和条約締結について交渉を継続するというふうな留保をつけて出すということを提案したいと思うのでありますが、それに対するあなたのお考え、これは総理からも伺いたいと思います。
  130. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 私から言わなければならぬのなら言います。私は、領土問題については、択捉国後についても、平和条約の際に当然主張すべきことは了解されておりますから、あらためて付加する必要はないと考えております。
  131. 重光葵

    重光国務大臣 私も同様に考えておるのであります。昨日北澤君の御意見に対しても、同じように答えておきました。今のような点は、私は御懸念のあるのも決して無理とは思いません。用心に用心をして、すべてをやることはいいでございましょう。しかしながら、どうせ平和条約締結する場合においては、これは歯舞色丹だけではなくして、全体の領土問題について必ず規定がなければなりません。規定がなければなりません以上は、これに対する交渉がなければならぬ、こう考えます。さようなわけでありますから、要するにどういう主張をするかというこちらの心がまえは必要であります。あくまで正当な主張をやるという心がまえでいくことは、少しも差しつかえないと思います。さようなわけで、そのときに処理することができる問題でありますから——そのときにこちらの思う通りになるかならぬかは、これは別問題であります。十分に処理することができる問題でありますから、今、国交を正常化するという場合に、この問題について、私は蛇足とは申しませんけれども、そういうことをいれるということは、私はそこまでする必要はないように考えます。また、これから一つ国交の正常化をやろうというのでありますから、なるべくすらりとすべてやりたい、またその方が国家としても——従来そういうことを日本はやった例はございませんから、それで一つすらりとやっていただいた方が、将来の施策の上において工合がよくはないか、こう考えますので、さように私はお答え申し上げます。
  132. 植原悦二郎

    植原委員長 小坂君に申し上げます。あなたの与えられた時間は超過しております。それのみならず、昨日あなたは御出席にならないのですけれどもただいまの問題は、北澤君のときに十分審議されておる問題であります。重複する問題は、なさらないように願います。それから、外務大臣も、もう重ねて御答弁なさらぬで、総理大臣の言う通りである、昨日北澤君に答えた通りだとおっしゃれば、それで私は足りると思います。時間制約の意味において、政府委員両方とも、どうか御注意願います。
  133. 小坂善太郎

    ○小坂委員 大いに協力して、簡潔にしているつもりであります。もうしばらくで終りますから、委員長どうぞしばらくごしんぼう願います。  そこでお気持はよくわかるのでありますが、従来やった例がないとおっしゃいますが、従来こういう問題に際会した例もまたないのでありまして、今までの交渉経過とか、これはたとえば松本・グロムイコ交換公文というものが出るわけではありましょうけれども、これはその後にできた共同宣言でもあります。こうやって私が御質問しているのは、委員長は重複とおっしゃいますけれども、これは将来の問題に非常に大きな影響を持つ。国会の論議において、こういう政府答弁が記録にとどめられるということは、非常に大きな問題であります。と同時に、あるいは附帯決議をつけるというような考え方もあるようでありますが、こういう問題は、みな対内的な拘束力しかない。国内の解釈の問題ですから、どうしても対外的な拘束力を持つためには、批准書にこうした希望留保条項を付して置く。相手がこれをとればいいのですから、あなたの今までの交渉経過から見て、明らかだとおっしゃる言葉の裏には、交渉経過から見るならば明らかなことを日本が言ってきたら、すらっと通りそうなものだと思うのでありますが、そうでない事情がありますか。
  134. 重光葵

    重光国務大臣 そうでない事情はございません。今申し上げた通りであります。これは、私は、将来のために一つすらりとやっていただきたいということを、衷心からお願いをする次第あります。
  135. 小坂善太郎

    ○小坂委員 将来のために、私はすらりとつけて出してみたらという気持を強く持っておりますが、これは時間の制約もありますから、これ以上申しません。  委員長、もう少しどうですか。
  136. 植原悦二郎

    植原委員長 重複しないのなら、お許しいたします。
  137. 小坂善太郎

    ○小坂委員 そこで私は、なぜこう国後択捉に執着するかというと、固有の領土を失わない、カイロ宣言でも固有の領土を奪わないといっている。戦勝国、当時の連合国であるソ連が、この正義を世界に行おうというわれわれの目的に協力してくれるという立場なら、われわれのこのくらいの主張は、当然聞いてもいいのではないかと思うので言っているわけであります。もう一つは、軍事基地として非常な重要性があるということであります。この二つの島については、なお後ほど同僚から詳しくお話があると思いますから、私はあまり詳しく言うことを避けますが、この基地というものがあることが、やはり日米安全保障条約というものに関連をどうしても持たざるを得なくなってくる。琉球の問題あるいは砂川の問題というようなものも、われわれはやはりわれわれ自身の力によって解決したいと思っても、この基地がある限り、いつまでも永遠に続く問題になる。日本の平和の問題が、常にこれによって脅かされる。日本の思想上の相剋というものが、常にこれによって絶えないということになるから、、私はこれを非常に重要に考えておるわけであります。政府はそういうつもりで大いに今までもやったとおっしゃいますが、今後、この点については、十分御配意を願いたいと思うのであります。  なお、一言、最後に申し加えておきたいと思いますけれども、この日ソ交渉を契機にして、世界の窓をあけるといいますか、総理の表現を用いれば、東西の窓を開いてどうとかいうのでありますが、東の窓を開くということは、よほど慎重に開いたあとの結果を考えませんと、あまり冷たい風が来て、西の窓がしまってしまうのでは、何にもならぬのであります。ことに、チェコスロバキアのベネシュ大統領が、ロンドンで、ソ連との間に二十ヵ年の友好条約を結んだ、その結果、帰ってくると、国民の間に非常な親ソ的な気分ができて、選挙をやってみると、共産党が三分の一の議席を占めた。それが社会党の左派を切りくずして、例の民主人民戦線の革命をやった。そして、ベネシュはついに自殺をするのやむなきに至り、ヤン・マサリックは殺されてしまうという状態が、現にチェコで十年も昔でない昔にあるのであります。すぐ最近にあるのであります。そして、そういう国がどうなっているかといえば、ハンガリーやポーランドで現在見ているような状態になるのであります。ですから、鳩山さんも、友愛精神はけっこうでありますけれども、そういう影響をもたらす危険があるということだけは十分に腹に置いて、国会答弁その他においても、何でもかんでもこの案が早く通ればいいということでなく、あなたの信念を吐露して、この案を通じて、日本国民気持をかき立たせるように、常に御留意を願いたいと思います。  では、私の質問はこれで終ります。
  138. 植原悦二郎

    植原委員長 この際午後二時より再開することといたし、暫時休憩いたします。    午後一時十八分休憩      ————◇—————    午後二時十七分開議
  139. 植原悦二郎

    植原委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を継続いたします。戸叶里子君。
  140. 戸叶里子

    戸叶委員 鳩山総理大臣が長い間考えていられた日ソの国交回復ということが実現されようとしておりますが、、総理御自身がお認めになっておられるように、これが長い間あれやこれやと交渉されながら、結論的には七十点程度のものであったとおっしゃるにいた申しましても、一応国交回復のめどがついたということは、まことに敬意を表する次第でございます。総理のいらっしゃる前に、実は重光外務大臣外務大臣として交渉に行かれたわけでございますが、そのときに必ず何らかの結論を持って帰ろうというような御努力を表明してお立ちになったと思うのですが、ついに結論を見ずに呼び返された形になってしまったと思うのでございます。そこで、ソ連までいらっしゃるということはなかなか容易ならぬことでございますけれども、ついに決意をなさって、重光さんにかわって御自身が行こうとなされましたのには、何か大きな理由があったのではないかと私は思うのでございますが、それは一体どういうところにあったのかを承わりたいと思います。
  141. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 ソ連との交渉は、ただいままでの質問応答によって明らかになりました通りに、平和条約方式と暫定方式といいますか、二色のやり方があるわけであります。重光君が行かれるときにもそれは気づいていたのでありますが、重光君は平和条約方式で行かれたのでありますが、その方式で領土問題をきめてかかることは至難だという障害にぶつかったのであります。そこで、暫定方式で行く方がいい。これは前から私が考えておりました方式であります。それで行った方がいいと考えて、行ったわけであります。
  142. 戸叶里子

    戸叶委員 重光外務大臣に伺いたいと思いますが、重光外務大臣は、それでは、そのときに一暫定方式でもいいかどうかということをお問い合せになったかどうかを伺いたいと思います。
  143. 重光葵

    重光国務大臣 私は、政府の訓令、またそれは与党の決定でもございましたが、その訓令によって、平和方式による平和条約締結しよう、そのために交渉を進めたわけでございます。従って暫定方式のことは何も申してやりませんでした。
  144. 戸叶里子

    戸叶委員 重光さんの望まれたところの平和条約の内容といいますか、ことに領土問題についての内容はどういうふうでございましたでしょうか。
  145. 重光葵

    重光国務大臣 それは、全体的に申しますれば、戦前のわが領土は回復したいということでございました。
  146. 戸叶里子

    戸叶委員 そこで問題になってくると思うのですが、今度のソ連との平和条約を結ぶに当りまして一番大きな問題は、難点は、幾たびか繰り返されているように、領土条項だったと思うのです。そこで、その領土条項にぶつかってなかなか平和条約が結ばれなかったのでございますが、その平和条約が結ばれなかった二つの難点というのは、そのもとをただせば、ヤルタ軍事秘密協定であり、もう一つは、吉田内閣の時代において、サンフランシスコ条約で千島、樺太の領土放棄をしてきたということが、非常に今度の日ソとの平和条約を結ぶに当って御苦労をなされた点ではないかと思いますが、このほかにもまだ領土問題での難関があったかどうかを承わりたいと思います。
  147. 重光葵

    重光国務大臣 最も苦労いたしました点は、先方ソ連側の主張と日本側の主張が合わなかった点でございます。それをできるだけ合せるように苦労いたしたわけであります。
  148. 戸叶里子

    戸叶委員 その主張の合わなかった理由は、サンフランシスコ条約日本領土権を放棄してきたというところにあるのではないかと伺いたいのですが、いかがですか。
  149. 重光葵

    重光国務大臣 その点はあまり関係がないように思っております。
  150. 戸叶里子

    戸叶委員 それでは、今度領土条項がなかなかまとまらなかったという一番大きな原因は、どこにあるわけでしょうか。
  151. 重光葵

    重光国務大臣 ソ連の主張が非常に強硬であったからでございます、
  152. 戸叶里子

    戸叶委員 ソ連がなぜそういう強い主張を持ったと思い、何を根拠にしてそういう主張を持ったとお思いになりますか。
  153. 重光葵

    重光国務大臣 それは、ソ連の主張は非常にございました。ソ連代表は一時間以上もそれを述べました。それを一々ここで私が申し述べる時間がございませんから、お入り用ならば、その主張は、書面にしてでも、あるいは公けでなくしてお目にかけてもよろしゅうございます。
  154. 戸叶里子

    戸叶委員 そうすれば、それでは領土条項で非常に問題になったのに、サンフランシスコ条約日本が千島、樺太の領土権を放棄したということは大してこの妨げにならなかったと、こうおっしゃるわけでございましょうか。
  155. 重光葵

    重光国務大臣 ソ連との間には、サンフランシスコ条約は何にも日本との間を規制するわけに参りません。それでありますから、ソ連との間に話合いをするために、しなければならぬわけでございますから、それをやったわけでございます。サンフランシスコ条約は、それらの関係はございません。
  156. 戸叶里子

    戸叶委員 重光外務大臣のおっしゃるのは、少し詭弁であり、私の質問からそれようとしていらっしゃるように思うのでございます。しかし、だれが今日見ましても、この領土問題がなぜこんなにもめたかということは、やはり一つはヤルタ協定であり、一つは吉田前総理がサンフランシスコ条約においてあの領土放棄をしてきたというところにあると思うのでございますが、重光さんはそうでないとおっしゃる。そしてほかにいろいろな理由があったとおっしゃるので、その理由をあとから書類にしてお出しになるとのことでございますから、なるべく早くその書類を出していただくことを要求したいと思います。
  157. 重光葵

    重光国務大臣 私の申すことは詭弁ではございません。御質問に対してそのまま答えているのであります。それから、ソ連側の主張がどうであるかということは、私はこの席で書面を出すとは申しません。特別に書面で出すことは、御要求があったとは思いません。必要があるなら、私は一時間でもここで述べます。しかし、それは省きたいということで、また御入り用があるならで、そのときのソ連の主張をお目にかけてもいい、こう言っているわけであります。この議事を延ばそうとは考えておりません。
  158. 戸叶里子

    戸叶委員 私はそういうふうに少し怒りを含んでお答えになると、ちょっと困るのですけれども、そうじゃなくして、ソ連が何を根拠にしてそれを言われたかということを伺いたいのですが、長いことそれについているいろ議論したから、それについてもしほしければ書面で知らせるということでございますから、ぜひそれは書面で出していただきたいということをお願いしている次第でございますから、どうぞそれは出していただきたいと思います。  そこで、次にお伺いいたしたいのは、きのうの同僚の委員の発言を私聞いておりまして、二つの点に実は疑問を抱いたわけでございます。その一つは、まず、与党の議員の方が質問された中に、日ソの国交回復がなされますと、日米関係が今後うまくいかないのではないかというような懸念を持っておられます。しかし鳩山総理も、重光外務大臣も、今回は、たとい短時日ではあっても、アメリカを回って帰って来られたのであって、その間にお感じになられたと思いますが、私も実はこの夏欧米を回りまして感じたことは、アメリカは日本ソ連と国交を回復するのに別に異論を持つのではなくて、むしろ大して不自然であるとは思っていないのです。それは米ソの間の心の中ではどういうような考え方を持っておりましても、一応アメリカはソ連と外交関係を持っておりますから、日本が正常な外交関係を結んでも大して気にしないと思うのです。ただ、アメリカが神経質になるのは、中共と日本関係が親密になることであり、そして中共が国連に加盟するということに対して反対を持っておるように私どもは、感じたのでございますが、それに対しまして、どういうふうにお考えになったかということが一点と、もう一つは、中共をアメリカにむしろ承認させるということに対しての努力が、私はこれからなされるべきであるということを感じたわけです。ところが、先ほどの御答弁を伺っておりますと、東南アジアの外交は優先して、むしろ、中共との外交とか国交回復というようなものに対しては、あと回しでもいいというような御答弁があったように拝聴いたしましたが、これはやはり両方とも隣国として並行してやるべきではないか、そしてまた、それをやるべくアメリカに説得する必要があるのではないかと思いますが、この点に対するお考えをお伺いいたします。
  159. 重光葵

    重光国務大臣 日ソ交渉について米国側に何にも誤解はないと私は思っております。また誤解のないように努力して参ったのでございます。  中共の問題については、これはたびたび御答弁をした通りでございます。米国を説得して、日本の思うところを十分米国に理解させるということは、これはやらなければならぬと思っておる次第でございます。
  160. 戸叶里子

    戸叶委員 鳩山総理大臣はいかがでございますか。
  161. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 戸叶さんのおっしゃる通り、アメリカは異存はないのです。日ソの交渉について、それはその通り、あなたのお察しの通りであります。中共に対してアメリカを説得させよ、これはその必要があろうと思いますけれどもただいまでは至難なことでありまして、アメリカは非常に承認しないような事態に置かれていると思います。これはしばらく時の経過を待たなければ、中共との国交の正常化はできないと考えております。
  162. 戸叶里子

    戸叶委員 それでは、重光外務大臣に伺いますが、けさほどの御答弁にありましたように、東南アジアの外交を優先して、中共との国交回復の方はずっとあと回しでいい、こういうふうに今なおお考えになるかどうか。私どもは並行してなすべきだと思いますが、この点はいかがでございますか。
  163. 重光葵

    重光国務大臣 中共との外交関係を回復するということについては、これはもうたびたび御答弁申し上げた通りでありますから、再び繰り返しません。それから、東南アジアにおける外交的な施策を進めていくべきである、こういうことはもうその通りでございます。そうやろうと考えております。
  164. 戸叶里子

    戸叶委員 外務大臣がお急ぎのようですから伺いたいと思いますが、次に、領土問題につきまして、きのうも、外務大臣は、ソ連との領土問題の交渉中に、アメリカの沖繩の問題に対しては何らソ連は触れなかったようにおっしゃいましたが、これは事実でしょうか。もう一度確かめたいと思います。
  165. 重光葵

    重光国務大臣 私の記憶するところでは、これは何も触れておりません。わが方としては、ソ連ソ連、アメリカはアメリカ、別々に交渉をいたしておるのでございます。
  166. 戸叶里子

    戸叶委員 日本外務大臣として、まあそういうふうにお答えになるのは当りまえかもしれませんけれども、事実に反するのではないかと私は思うのです。今その事実にどうして反するかということの例をあげてみますと、アメリカの南カ大学の国際法の学者であるポリドイダスという人が言ったことは、重光外務大臣が、領土問題の交渉に当って、ソ連側から、アメリカが沖縄を返せば千島を返すが、その方はどうなっているかということを逆襲されて、そこでダレスさんとの会談になったということが、フランスのル・モンド紙に書いてあった、こういうことを私は聞いたのですが、これはどうでございましょうか。
  167. 重光葵

    重光国務大臣 お話のフランスのル・モンド紙のことは私は存じません。それから、今述べられたことは全然根拠のないことでございます。
  168. 戸叶里子

    戸叶委員 それでは、もう一つ伺いたいのですが、重光さんがロンドンでダレスさんにお会いになった直後、九月の初めだと思いますが、ニューヨーク・タイムズで、ダレスさんが、沖繩については今の状態ではなかなかアメリカは放すことができないということを、記者会見で質疑応答の形ではっきり言われておるのです。これは何か重光さんとダレスさんとの会談に私は関係があるように思うのですが、これも御否定になるのですか。
  169. 重光葵

    重光国務大臣 それは私は全部は否定しません。日本の主張は、日本の固有の領土は返してもらいたいという主張を私は続けておったのであります。それについては、あとから米国側から書面で来た通りに、米国側もこれはもっともな主張だということに相なっておるのであります。それを大いに声援してくれたことは事実であります。そこで、言葉はよく記憶をいたしておりませんけれども、ダレスでありましたか、あるいは国務省筋でありましたか、日本の主張は正しい、そういうことで、もうソ連は十分これを聞くべきでないかという意味でもって、そういう日本固有の領土放棄するようなことでは、沖繩の問題にも影響する、こういうような、俗にいうハッパをかけたことは事実でございます。しかし、それはアメリカがそれで沖繩をどうするということを何も言ったわけではありません。
  170. 戸叶里子

    戸叶委員  結局、重光さんがダレスさんに会って、少し沖繩の問題に触れたということが大体わかったわけなんですけれども、今ちょっとお述べになりましたように、確かにアリソン大使から外務省に届けられた、日ソ交渉に対する米国側の見解を述べた覚書というものが新聞に載っていたことを、私は記憶しております。それを読んでおりますと、その内容は、大体この日本ソ連との戦争状態は終了せしむべきであるということや、それからヤルタ協定に対する否定的な言葉、あるいはサンフランシスコ平和条約日本放棄した領土帰属は決定していないというようなことや、あるいはもう一つ日本は同条約放棄した領土を他国に引き渡す権利はないとか、あるいは択捉国後日本領土として認められるべきであるというふうに、非常に一方的な解釈をここに出しておるわけですけれども、この発表に対して、重光さんがソ連でお話しして来たことなどをも考え合せまして、このアメリカの態度が少し独善的であったというふうなことをお考えになって、その点を指摘すべきではなかったかと思いますが、この点はどうなされたでございましょうか。
  171. 重光葵

    重光国務大臣 かような米国側の意見は、大体その前から表示しておったことでありまして、私は、独善的なことでは少しもない、米国としてはりっぱな意見だと、こう思っております。
  172. 戸叶里子

    戸叶委員 それでは、それをりっぱな意見としてお認めになるとして、きのう国後択捉の領有ということは桑港条約には触れない、そしてまた、さらに大西委員が追求いたしまして、桑港条約の二十六条にそれが触れないかということを言われましたときに、重光さんは、いや触れない、さらにそれに対する質疑を繰り返していくうちに、もしも桑港条約関係国が理解をしてくれないならば、どこまでも理解をさせる、こういうふうなことをおっしゃいましたけれども、しかし、今申し上げましたようなことをアメリカが発表しているとすると、決して二十六条は問題じゃないというふうに軽く扱うわけにはいかないのじゃないか。必ずそこに問題が起きはしないかと思いますが、この点はいかがでございますか。
  173. 重光葵

    重光国務大臣 昨日私が申し上げたのは、日ソの関係について、日本ソ連交渉するのは何も差しつかえはない、サンフランシスコ条約に抵触はいたしておらぬ、こう申し上げたのであります。その通り考えております。そしてまた、それは二十六条の問題にも何も抵触しているわけじゃない、こう申し上げたわけであります。
  174. 戸叶里子

    戸叶委員 それでは、時間を省いて簡単に質問しますけれども、今のような、アメリカからのこういう覚書を読んでおりながら、なお二十六条には抵触しないでうまくやっていけるというふうな自信をお持ちになるその根拠はどこにあるのでしょうか。
  175. 重光葵

    重光国務大臣 根拠は、条約に抵触していないとこういうことを申し上げた、それだけであります。
  176. 戸叶里子

    戸叶委員 それでは、違う角度から伺いますが、これは鳩山総理重光さんに伺いたいと思います。国後択捉の問題がたびたび出ておりまして、国後択捉は、国際情勢緩和、すなわち米ソの対立がなくなったときには返されるだろうというようなことをおっしゃいました。そうなってきますと、日本も、ソ連との国交回復ということで、一の緊張緩和に役立っていると思うのですが、さらにまたほかに何か国際緊張緩和するためになすべきことがあるのではないかと思いますが、この点はどうお考えになりますか。
  177. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 どういう方法があるかということは今ちょっと考えておりませんが、とにかく日ソ国交の正常化は国際間の緊張を緩和する上にまず第一の問題だと考えております。それに引き続いて、そういうような事件が起るたびごとに、国際緊張緩和に努むべきものだと思っておるわけであります。要するに、だんだんによく考えてみれば、軍備の拡張をやるのはばかばかしいということがお互いにわかってくるだろう。これは、今でも、ブルガーニン自身が、軍備の競争はばかばかしいから軍縮会議でも開きたいというようなことを言ってわります。そういうような機会にも国際緊張緩和の機会は来るものと思います。
  178. 戸叶里子

    戸叶委員 それでは、綿の返還を望まないで、緊張の緩和日本が協力できるということが言えるかどうかを伺いたいと思います。
  179. 重光葵

    重光国務大臣 沖繩の返還は実現するように努力しておるわけであります。
  180. 戸叶里子

    戸叶委員 外務大臣は何か大へんお急ぎのようですから、質問あとに留保いたします。どうぞ……。総理大臣今の御答弁をお願いいたしたいと思います。
  181. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 外務大臣の御答弁と同様です。
  182. 戸叶里子

    戸叶委員 それでは、もう一度はっきりさせたいと思うのでありますが、国際情勢の緊張の緩和のために、日本としてはやはりどうしても沖繩の返還を望んでいかなければいけない、こういうふうに了承していいわけですね。
  183. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 その通りであります。
  184. 戸叶里子

    戸叶委員 次に、引き揚げの問題を少し伺いたいと思いますが、政府としても、抑留されている方々のことをお考えになって、そして一日も早く帰してあげるべき責任があるというので非常に努力をされており、そうして、河野農相などに言わしめますと、早くナホトカに集結をしておいてほしい、こういうことを頼んだということでございますが、さらにその後何が集結をしてほしいということに対しての意思表示をしたことがおありになるかどうか、これを伺いたいと思います。
  185. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 その点につきましては、だれか質問に答えました通りに、近いうちに、ブルガーニンに手紙を出しまして、懇請をするつもりでおります。
  186. 植原悦二郎

    植原委員長 今の点はかなり明瞭になっております。あなたはおいでになっておりませんでしたけれども……
  187. 戸叶里子

    戸叶委員 私はブルガーニンに手紙をお出しになるということは知っております。ただ、その前に、たしかこの問題を、厚生省からか何か知りませんけれども批准前に集結させておいてほしいということ、河野農相の言われたことをなお確かめるために幾たびか手紙を出しておるということを聞きましたので、そういう事実があるかどうかを承わっているのです。
  188. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 外務省の方でそういうことをやっておるわけです。
  189. 法眼晋作

    法眼政府委員 この点につきましては、機会あるごとに私のところヘチフヴィンスキー氏を呼びまして、日本としてはこういう順序で批准は進んでいる、それでそれに応じてあなたの方でも一つ批准を促進してくれろということは、チフヴィンスキー氏が船舶その他のことで来るたびに申しておるのであります。
  190. 戸叶里子

    戸叶委員 それに対してどういうふうな返事を受けておりますか。
  191. 法眼晋作

    法眼政府委員 これに対しましては、チフヴィンスキー氏は、ソ連政府としてはおくらす何らの理由はありませんと、こう言っておるわけであります。
  192. 戸叶里子

    戸叶委員 ただいま鳩山総理もおっしゃいましたし、先ほども話が出たのですけれども批准書の交換と同時に抑留者が帰される、そこで、日本の方から、参議院の方の批准見通しがつけば早く帰してほしいということをおっしゃるというふうな話でございました。それは大体いつごろお出しになる御意思か、あるいはその内容はどういうふうな内容になさるかを承わりたいと思います。
  193. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 衆議院も二十七日には本会議が可決になるという見通しでございます。それですから、二十七日に通れば、参議院も二十八日ぐらいには首脳部の人々によっていつごろ通るかという見通しが得られると思います。それですから、二十八、九日にはプルガニーンに手紙は出せるわけであります。
  194. 戸叶里子

    戸叶委員 どういうふうな具体的な内容をお書きになりますか。
  195. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 それは、前から約束がありまして、そちら側が通れば自分の方は三日は要らないのだということを言っておりますから、そうかもしれません。三日は要らないでしょう。そうすれば帰れるということです。
  196. 戸叶里子

    戸叶委員 ドイツとソ連との間の共同宣言は、ソ連の最高会議でたしか批准を受けておると思うのです。日本の今度の共同宣言は最高会議での批准を必要とするのか、それとも、最高会議批准を必要とするとなかなか手間取るので、最高幹部会で了承を得ればよいというようなお話し合いがついておるのかどうか、この点を伺いたいと思います。
  197. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 私はその点は知りませんが、とにかく、ブルガーニンが私に話しましたことは、三日間はかからないということだけは事実であります。日本が早くきまれば、自分の方は三日間はかかるまい……。外務省で何かありますか。
  198. 法眼晋作

    法眼政府委員 これはソ連の国内法の手続でございまして、最高会議の幹部会が批准するわけであります。
  199. 戸叶里子

    戸叶委員 三日間はかからないということがはっきりいたしますと、そんなに心配はないかとも思いますけれども、しかし、天候のかげんで、あるいは、ナホトカに急に寒さが襲って、船が来れないというようなこともないとも限らないと思うのですが、そういうふうなことがあっても、どんなことがあっても、必ず年内に、運搬がうまくいかないときは飛行機を使ってでもよいから、必ずことし一ぱいにお帰しになるという、その御決意をお持ちになっていらっしゃるかどうか、これを伺いたいと思います。
  200. 小林英三

    ○小林国務大臣 この批准が済みましたら直ちに帰したいということは、たびたび他の閣僚から申し上げておる通りでありますが、ナホトカは、気候の関係上、十一月、十二月、いわゆる年内におきましては、従来の経験から凍らないのであります。従いまして、もう年内に帰るということにつきましては、輸送上の心配は全然ないと考えております。
  201. 戸叶里子

    戸叶委員 ちょっと前へ戻りますけれども批准の問題ですけれども日本の参議院の方が大体いついつに批准できるという見通しがついたときに、ソ連の方でそのころやはり批准をしておいてもらうと、三日間だけセーブできるように思いますが、こういうふうな話し合いというものはできないものでございましょうか。
  202. 法眼晋作

    法眼政府委員 これは先方に一話してもいいことだと思いますけれども、先方の都合がございますから、先方の国内法の手続その他を無視して、そう勝手なことは言えないのではなかろうか、こう思いますけれども、しかし話をすることはできると思います。
  203. 戸叶里子

    戸叶委員 一応話していただきたいと思います。  この批准書の交換でございますが、大体、批准書を交換するときには、おそらく戦いに負けたといわれている国でしないで、一応勝った方でするのだと思うのですけれども、今回は日本で大体批准書が交換されるということになっているようですが、その場合に、外務省でなされるのでしょうか、それともソ連の出先、狸穴でされるのでしょうか、その点も伺いたいと思います。
  204. 下田武三

    ○下田政府委員 仰せの通り、戦勝国側の首都で交換するのがむしろ通例でございますが、日本の場合は、フィリピン、インド、ビルマ等と個別的の平和条約を結びまして、いずれも署名された土地と反対側の国の首都で批准書交換をやる例になっております。ソ連の場合も、モスクワで署名されましたので、東京で交換されるということに向うが同意したわけでございます。それから交換をする具体的な場所でございますが、これは、いやしくも日本政府の所在地たる東京でやる以上は、当然日本政府外務省で交換すべきものと思っております。
  205. 戸叶里子

    戸叶委員 次に、衆議院の引揚委員会で幾たびも引き揚げ促進の決議がなされましたが、最近のものといたしまして、五月の十日、七月二十一日、十月五日、十月十日と、いろいろ決議をしているわけでございます。それはちょうどまだ鳩山総理も全権として向うに署名のために行っておられたときでございますが、その中で注意すべきことは、マリク名簿以外の人たち、つまり行方不明の人たちのためには、両国で合同調査委員会を作って、そうして具体的に今後の引き揚げの問題に対して取りきめをするように、今後の問題をその合同委員会でいろいろやるようにしてほしいというような決議を送っております。しかも、それをどうぞ交換公文にしてほしいということまでつけ添えて送っておりますけれども、この合同調査会というようなものをお作りになるところまでお話し合いをなさいましたかどうかを伺いたいと思います。
  206. 法眼晋作

    法眼政府委員 この問題につきましては、そこまで話はいたしておりません。これは今後国交が回復してから後の問題になると思います。
  207. 戸叶里子

    戸叶委員 あのときの委員会の決議では、ぜひ交換公文としてでもいいから、そういうものを作ってほしいということが要望されていたわけです。今後必ずそういうふうなものを設けて、そして行方不明の方々の調査をするというふうにお考えになるかどうか、鳩山総理に伺いたいと思います。
  208. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 抑留者の帰還問題についてブルガーニンと話をしましたときに、日本人でマリク名簿に載っていない人がいるということをソ連においても発見しているわけですから、そういう人たちも調査をして、全部返しますと、向うではそういうことを言っておりました。
  209. 戸叶里子

    戸叶委員 そのあとから出てくる問題では、当然遺骨、遺品などの問題も出てくると思いますが、こういうものに対しても、最後まで徹底的に遺族の人たちが満足されるようにおやりになる御意思がおありになるかどうか、伺います。
  210. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 その点については私は話し合をしませんでしたけれども、友好関係ができますれば、そういうことについても話し合いはできるものと確信をしております。
  211. 戸叶里子

    戸叶委員 今後の問題でございますが、今度引き揚げてこられる方のために、もし飛行機を使うというようなことがあれば、それは話し合いでできると思います。けれども、これから国交が回復いたしまして、日本ソ連との間の行き来というようなものが激しくなって参りますから、日本からソ連へ行くのに飛行機を利用しようとした場合に、ずっと遠回りをしなければならないというようなことが出てくると思います。日本ソ連との間が遠回りをしないで飛行機で行けるようにするためには、やはり両国間の航空協定というようなものが必要だと思いますが、このような航空協定というようなものに対してのお考えはどうでございましょうか。
  212. 法眼晋作

    法眼政府委員 これは、まだ今のところ何も申すべきじゃございませんので、将来考究することになり得る問題だと思います。
  213. 戸叶里子

    戸叶委員 将来——何ですか。
  214. 法眼晋作

    法眼政府委員 まだ現在その点については何も政府部内の方針はきまっているわけではございません。
  215. 戸叶里子

    戸叶委員 鳩山総理大臣はこのことをどうお思いになりますか。やはり、航空協定でも結んで、なるべく簡単に飛行機、ででも行けるようにしておいた方がいいとでもお思いでしょうか。どうでしょう。
  216. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 そのことについては私はまだ考えたことはありません。
  217. 戸叶里子

    戸叶委員 厚生大臣に伺いたいと思いますけれども、今まで引き揚げてこられた方々の中でも一番困られるのは、帰ってきてからの就職の問題でございます。そうして、今まで帰られた方でもまだなかなか解決しないで、非常に生活に苦しんでいらっしゃる方がございますが、つい最近ソ連から帰られた方々と懇談をいたしましたときにも、今後自分が一番心配なのは就職の問題であり、生活の問題であるということをおっしゃっておられました。今度非常にたくさん御苦労された方がお帰りになるわけでございますが、やはり帰ってこられてなかなか生活のきびしいものがあると思います。そこで、そういう方々に対して何らかの考慮を払ってあげなければいけないと私は思いますが、それに対してどういうお考えを持っていらっしゃるか、伺いたいと思います。
  218. 小林英三

    ○小林国務大臣 お尋ねのように、引き揚げられる方といたしまして一番の、関心事は、就職、就業の問題だろうと思いますので、政府といたしましては、労働省とも十分密接な連携を保ちまして、これらの方々が一日も早く就職、就業できるようにしたいと考えております。
  219. 戸叶里子

    戸叶委員 そういう方々のために特別に予算をお取りになるお考えはございませんか。
  220. 小林英三

    ○小林国務大臣 就職、就業ができませんで、また引き取り手もない。——これは、今度の場合は、中共の場合と違いまして、もう大体みな関係者、家族もおられますような方がほとんど大部分でございますけれども、しかし、一生懸命に政府といたしまして就職、就業のあっせんをいたしましても、まだできない、あるいは生活に困難される方があるというような場合におきましては、これはもう生活保護の問題でございますから、地方の福祉事務所等とも連携して十分の措置をとりたい、こう考えております。
  221. 戸叶里子

    戸叶委員 生活保護の適用をされるのは、これは困られた方は当然だと思うのですけれどもただ生活保護の予算にも限りがございます。そうなってくると、ほかへしわ寄せが寄ってくる、というと、なかなかそういう方が入れないような場合もありますし、またそういうことによって援護をするということでなくて、むしろ長い間苦労された方々に対しての何かあたたかい思いやりの気持で、そのために予算を少しでもよけいにとっておくというようなお考えはございませんですか。
  222. 小林英三

    ○小林国務大臣 御承知のように、生活保護という問題は、これは国民の最低生活を保障するためにできておる法律でございまするから、予算が切り詰められているからこれを出さないというわけには参らないのでございます。この点につきましては、予算が足りない場合には、年度末におきまして適当の措置をする、救済するものは救済する、めんどうを見てあげるものはめんどうを見てあげる、これが建前であろうと私は思います。
  223. 戸叶里子

    戸叶委員 今の問題は、法律上からいうとそうなんですけれども、現実の問題としては、そうでない場合が非常に多いわけなんです。そこで、私はそれに触れたわけなんですが、それでは、その方々のために、引き揚げてこられてほんとうに苦労されて困っていらっしゃるという方々のために、何らかの予算を少し特別に考えてあげるという意思は全然おありにならない、こういうわけでございますか。それから、その点について総理大臣に伺いたいと思いますが、今も質疑応答を繰り返した通りなんですが、どうか、そういう方のために、鳩山総理大臣も、大へん抑留者の方々のことを心配されて、早くお帰りになるようにというふうなお気持で今度わざわざ向うへいらしたのでございますから、特に少し予算をとれるように総理大臣として御努力を願いたいと思いますが、この点はいかがでございますか。
  224. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 善処いたします。
  225. 小林英三

    ○小林国務大臣 先ほど申し上げましたように、現在の予算におきましてやってみまして、十分に手配をいたしまして、足らない場合におきましては、年度末に大蔵省からもらうつもりでございます。
  226. 戸叶里子

    戸叶委員 大体何とか考えていただけるものと私は了承したいと思うのです。  最後に、もう一つ伺いたいのは、国交回復ができますと、先ほどからも問題になりましたように、貿易が行われてくると思うのですが、その場合に貿易の港は大体どういうところに指定なさるか、もうお話し合いがついているかどうか、この点を外務省の方に伺いたいと思います。
  227. 法眼晋作

    法眼政府委員 この点はまだ具体的な話をしておりません。
  228. 戸叶里子

    戸叶委員 そうすると、これは国交回復後にお話し合いになるわけですか。そしてもう一つ、その港になったところには領事館が置かれるということになるのでしょうか、こういうことについて……。  それからまた、どのくらいの港を予定されているか、もう国交回復も間近だと思うのですが、全然何も考えておらないのか、それとも大体の目星はつけているのか、その点を伺いたいと思います。
  229. 法眼晋作

    法眼政府委員 この点は、共同宣言によりまして、将来これが効力を発生いたしますと、日ソ間に通商条約の話が始まるということが記入してあるわけでございます。そういったときにこの問題が起ってくるものと思っております。  それから、領事館の数の問題でありますが、これは外務大臣から先ほど御答弁したところによってお知りを願いたいと思います。
  230. 植原悦二郎

  231. 保科善四郎

    ○保科委員 私は、この委員会の応答並びに本会議における鳩山総理大臣の御演説を拝聴いたしまして、大事な点で、どうも疑問が残るのであります。そこで、私は、これは重複になるかとも存じますけれども、きょうは、主としてわが国の国防上の観点から、領土問題に関連をいたしまして、鳩山総理大臣に若干の御質問をいたしたいと存ずるのであります。  申すまでもなく、だだいま議題となっております日ソ共同宣言案は、日本の長き将来にわたって、また世界の平和に対して重大なる意義を持っておることは、これは申すまでもございません。従って、何とかしてこの真相をほんとうに国民にも、あるいはわれわれ議員にもよくわかるようにしていただきまして、そして、ほんとうの国論を背景といたしまして、わが国に最も有利に結果するごとくこの問題を片づけていただきたい、こういうことを念願いたしておるものであります。こういう観点におきまして私は二、三御質問いたしますが、時間の関係上、私の所見を申し上げまして、それに対して、総理大臣あるいは関係の方々から、きわめて率直なる力強い御返答をお願いいたしたいと存ずるのであります。私の所見をもっていたしますれば、択捉国後は、わが国の国防上、またわが国独立を保障、する上において、これは決定的な必要性があると信じておるの、であります。従って、われわれは、総理大臣もそうであると確信をいたしますが、あらゆる努力を払って、これが確保を保障せなければならぬと考えるのであります。択捉国後の国防上の重要性につきましては、私がしばしば総務会等においても申し述べておりますが、この島の非常に重要なる点は、防衛上から見まして、不凍港を持っておるという点と、航空基地の適地があるという点であります。そこで、かりにこの島が敵意のある国の手中におさめられると、北海道の防衛というものは、ほとんどできなくなります。きわめて困難になります。のみならず、わが海上交通は、非常に危殆に瀕するのであります。これが最も重要なる点であります。そこで、去る二十日に、ここにおいでになります松本議員が総理に対して御質問をいたしております。その質問に対して総理は、ソ連択捉国後を返そうとしないのは、米ソ間の関係がまだ緊張しておるからであって、もし両国関係緩和してくれれば、ソ連はこれら諸島を返してくれるだろうという趣旨のことをお答えになっておられるのでありますが、この点について、私は総理大臣に二、三御質問いたしたをいと思うのであります。  その第一の点は、もし総理大臣が右のような観察をもちまして日ソの共同宣言の調印を行われ、また国会に対して承認要求されておるとしたならば、事実上、総理大臣は、択捉国後は返してもらう見込みがないということを覚悟しながらであったように解される節もあるのであります。日ソ共同宣言の調印当時及びその以前の日ソ交渉当時、米ソ間の関係また世界一般の国際関係は、いわゆる冷戦状態も比較的ゆるやかに、小康状態でございましたことは、御承知通りでございます。また実際その小康状態がなかったならば、いかに日本政府として日ソ国交回復を進めようといたしましても、多くの内外からの支障があったのではないかと私は考えております。しかるに、共同宣言の調印後、東西間の冷戦状態はそのような小康期から再び緊張期に入りました。悪くすれば、相当大規模な熱戦状態に発展していくんじゃないかというような状況さえも見えることは、過般重光外務大臣説明された通りであると私は考えております。そうして、この緊張は、その性質からいうと、これはきわめて本質的なものであると私は考えておるのであります。中東問題にいたしましても、東欧の問題にいたしましても、これは東西両陣営の死活の問題であります。非常なヴァイタルな利害関係を含んでわるということは、これは一方の陣営が他方の陣営に屈服を覚悟するということでなければ、解決しないような非常に重要な性格を含んでおる。しかも、そういうような状態が両方の陣営にそういうようなことをやろうとするような気配は少しも見えません。そこで、今後この緊迫状態が一体何年続くのかというようなことが、なかなかわからないと私は思うのであります。実際、悪くすれば、あるいは戦争になり、あるいは戦争によらなければ解決ができないようなものすらあるようにも私は想察をいたしております。そこで、たといまた幸いにして戦争が避けられたといたしましても、ソ連の平和微笑外交がにせものであったということ、つまりあの冷戦の小康期を作り出したこと、そのことの原動力に対して、今や世界は信用を置いていないのであります。そこで、再び冷戦の小康期を作り出すということに対して、私は相当の時間を要するのじゃないかと考えておるのであります。以上のような関係で、私は米ソ間の緊張は、当分解消の見込みがないのじゃないかというように判断をいたしておるのであります。ところが、総理大臣は、択捉国後は、米ソ間の関係緩和しなければ、返還の見込みがないというように言っておるのでありますが、そうすれば、このたび、国会に対しても、私は、率直に、両島の返還は当分なかなか困難であるという見込みの上で、宣言に対する承認要求したものと解釈しなければならぬような感じがいたすのでありますが、その点に関する総理大臣の見解を一つ承わりたいと思います。  また、総理は、一方、択捉国後返還交渉平和条約交渉において行うから、そのときに両島の返還努力するということも言っておられますが、その平和条約が成立をしなければ、歯舞色丹も返らないというようになっておるのでありますが、米ソ間の関係が、日ソ共同宣言の調印当時のようなものよりも、さらに緊張した状態が当分続き、また択捉国後返還が見込みがないとするならば、その返還を含む平和条約も成立の見込みがなくなって、従って、歯舞色丹も返らないのじゃないかというようなことにもなると考えるのであります。このように考えてみますと、政府国会及び国民に対する従来の説明には、どうも合点のいかない点があるのでありますが、この点一つ納得のいくように、ぜひ御説明を伺いたいと思います。特にここにおいでになります直接交渉に当られた松本全権からも、この点に関する御説明をお伺いいたしたいと思うのであります。
  232. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 択捉国後日本返還の時期は遠いというお説であります。その前提として、択捉国後は、日本の国の防衛上非常に必要だというお話がありました。私もそう思います。択捉国後は国防上も必要であり、また、ソ連米国との関係においての軍事上非常に必要なところです。これは、保科さんは一番よく知っていらっしゃるでしょうが、この前の戦争のときも、日本の海軍の根拠地に択捉がなったくらいであります。その択捉も非常な枢要な地位に軍事上あるということは、私も承知しております。それだから、ソ連はなかなか返すまいというように私は考えております。この返すという時期は、どうしてもアメリカとソ連との関係が、その緊張が緩和せられなければ、ソ連はどうしても手放さない、そういうような事態に置かれていると思っております。それならば、その時期まで待っていなくてはならないか。それとも択捉国後歯舞色丹との間に国境線を引いて、歯舞色丹だけを引き渡しを受けて、そうして妥結をしてしまうか、それの道を選ばなくちゃならないわけです。しかし、私は将来に希望を持って、この領土問題を後日の問題として、択捉国後についても再審議をするというような事態に習いておく方が、日本のために右利である。自由民主党におきましても、最初は、択捉国後は後日の問題一して、継続審議にするということで一度は党議がきまったのでありますから、そういうような方針できたのでありますが、その後、国後択捉は後日の問題でいい。けれども歯舞色丹だけは日本領土として、そうしてその択捉国後だけは後の問題にしようというようないわゆる新党議というものができ、それは私も承知しております。それですから、その通りにいたしたいと思いましたけれども、充方では、領土問題を分割して、歯舞色丹だけを解決して、択捉国後は後日の問題でいくということは、どうしても同意をしない。領土問題は両方とも後日の問題にしてくれ、そうでなければ同意が得られませんでした。それで、やむを得ずソ連に同意をしてきたわけでありまして、従って、択捉国後平和条約締結の際には問題となるということは、ソ連においてもよく承知をしております。われわれはもちろんそういうような時期のくることを努力しなくちゃいけないし、希望しなくてはいけないと考えております。
  233. 松本俊一

    松本全権委員 ただいま保科さんからお尋ねがありました件は、ただいま総理が申された通りであり、ますが、私は最初から最後まで本交渉に当っておりまして、最初から日本といたしましては、国後択捉のみならず、南樺太も千島全島もソ連帰属せしめられてはいないという主張を一貫してやりましたので、それで重光全権も河野全権も、もとより鳩山総理も今申されたように、その点ではあらゆる角度から先方の説得に努めたのでありますけれども、しかしながら、先方は、歯舞色丹のみは、平和条約締結された暁には返還するけれども国後択捉はどうしても返還できないという態度を堅持して譲りません。やむなく今回のような措置をとったわけであります。この点はまことに遺憾でありますけれども、今日の日本の国力と国際情勢から申しますると、一応ここで手を打ちまして、ほかのいろいろな懸案事項を解決するやむないことになりました。その点はよく御了解いただくように、私も交渉に従事しました者としまして、お願い申し上げたいと思っておる次第であります。
  234. 保科善四郎

    ○保科委員 ただいま総理並びにこの交渉に非常に御尽力をなされました松本全権からの、いわゆる南千島は、必ず平和条約交渉のときにこれは議題になるということを私は信じまして、第一の質問を終りたいと思います。  第二点は、同じく松本議員の質問に対しまして、択捉国後ソ連返還をしないのは、ヤルタ協定やポツダム宣言をたてにとっておるからだという意味のことを、重光外務大臣とそれから松本全権から答弁をされております。これは先ほど戸叶議員の質問もございましたが、もちろん総理大臣はこういうことは十分に御承知の上で、わざわざ御老躯をひっさげてモスクワにおいでになったと存じておりますが、これは、今後の交渉と関連をいたしまして、やはり非常に重大なことだと思いますので、私はこの点に関してもう少しお伺いをいたしたいと思うのであります。  私は、日本側の主張は、重光全権がシェピーロフ外相に非常にはっきり申されまして、それに尽きておると思うのであります。当時の日本政府の主張は、今後もやはり依然堅持されるのじゃないかということを信じておるのでありますが、その点に関して、総理大臣並びに特にこの交渉に当られました河野全権から御所信をお伺いしたいと思います。特に河野全権は、重光全権の交渉の結果に対して、閣議でこれを特に主張されたように私伺っておりますが、今もって依然その主張を堅持されておるかどうかということをお伺いいたしたいと思うのであります。私は、私自身の考えといたしましても、日本の主張は、当然これは堅持されているものだと考えております。しかし、ただいま松本全権から伺いましても、両方の主張は違っておりますから、なかなか大へんな問題であると私は思うのであります。そこで、この問題をどうしてもわれわれの百年の国家生存の上から申しましても、国民全体の非常なる努力をここの傾注して、この問題を解決しなくてはいかぬと考えておるのでありますから、どうぞ私の質問を通じまして、国民にもこれは容易ならざることであるけれども、しかしどうしてもやらなくてはいかぬという政府の強い御決意が表明されることを一つ特にお願いいたしたいのであります。私は、この領土問題に関しましては、これが今度の交渉の非常に重要な点でありとまして、皆さん各全権が非常なる努力をされたことに関して、感謝をいたしております。しかしながら、これは日本の生存に非常に重要なる関係がありますので、特に私は、安心の印象を国民に与えていただきたいということを、国民の一員として考えておるのであります。そこでいろいろここで御説明がありましたけれども、また先ほど小坂委員質問に対しても、総理並びに外務大臣からも御返答がありましたが、私は、むしろこの際、総理から進んで本件をソ連に再確認するような方法をとり、そして国民に安心感を与えられることが必要じゃないかとも考えておるのでありますが、もう一度、今の点に関して御所見を伺いたいと思います。
  235. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 ちょっと私、どの点が重点だったか聞き漏らしたのですが……。
  236. 保科善四郎

    ○保科委員 それが継続審議になっておるかどうかということを、国民にわかるように、はっきりさしてもらいたいということであります。
  237. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 これは先刻申しました通りに、交渉の経過におきまして、留保ということを条文の中に書かなくても、明瞭に継続審議になっているということを確信しておりますが、つけなかったのであります。
  238. 河野一郎

    ○河野国務大臣 領土問題につきましては、私も保科さんと同じ立場をとっておるわけでありまして、そういう意味においてるる折衝いたしました。しかし、遺憾ながら両者の意味が食い違いまして、結論は出ませんでした。従って、共同宣言にああいう表現はいたしましたが、今後平和条約交渉をされる場合には、当然再びその立場に立って交渉されてしかるべきものと私考えております。
  239. 保科善四郎

    ○保科委員 私は、総理大臣が、日ソ国交の回復によりまして、日本は東西両陣営間のかけ橋になる、あるいは世界紛争、緊張の緩和に寄与するというように申されております。これはまことに私は同感でございます。私は、東西両陣営のほんとうの緊張は、むしろ日ソ国交の回復とかいうことはきわめて小さい部分であって、むしろほんとうの大事な点はヨーロッパ方面における対立が重要な点になっておるということは、これは世界の一致した見解であると私は見ておるのであります。そういう観点で、私は別な観点から、総理一つ、この問題に関連をいたしまして、御質問をいたしたいと思うのであります。  世界の平和を特に総理大臣は強調されておる。これはわれわれも全くその驥尾に付して今日まで努力して参っておる次第でありますが、これだけのことを特に主張される鳩山総理といたしましては、私はどうしても東西両陣営のヴァイタルな点を何とかあっせんするというような点について、若干具体的な、効果的な何らかの考えを持っておられるのじゃないか、また持っておられなければならぬはずじゃないかと私は思っております。日ソ国交の正常化が、幾らかでも、間接的ながら東西両陣営の緊張の緩和に役立つであろうくらいな、ただそれだけの安易な気持で、国内治安維持の体制の整備をあと回しにしたり、あるいは択捉国後に対する自信のある見通しがつかない。ただいま非常に力強いお言葉をちょうだいしまして感謝をいたしておりますが、いずれにしても、十分なる見通しがつかないのに、急いで日ソ交渉共同宣言案に対する承認国民に求めるという以上は、何らかそこにもっと大きい世界平和に寄与する一つの構想がなければならぬ、私はそう考えるのであります。特にこのことは、最近、東ヨーロッパを中心にいたしまして発展してきております東西両陣営の対立激化にもかんがみまして、国民がひとしく知らんとしておるところであると考えております。私はこれにつけて若干歴史的事実をここに申し上げまして、注意を喚起したいと思うのであります。  昭和十五年九月十六日のノモンハン事件というものがありましたことは、御承知通りであります。この事件の停戦協定のことでありますが、この停戦協定によって、日ソ間の状態をよくしようということを考えたのであります。ところが、実際は全くその逆になりました。つまり、ソ連日本との国際緊張緩和したことは、逆にヨーロッパ方面の緊張を増したことになってしまいました。ノモンハン協定に調印をいたしましたその翌日に、ソ連はポーランドに侵入いたしまして、その東半分を占領してしまったという事実が起ったのであります。このたびの日ソ共同宣言の調印の翌日に、ポーランドにあの事件が起って、フルシチョフ第一書記以下首脳部がワルソーに乗り込みまして、ポーランドの自由化政策に威嚇をもってブレーキをかけたのであります。これは偶然の暗合かもしれませんけれどもソ連のやり方には何かこういうようなにおいが今まであるのであります。これは厳然たる歴史の事実でありますので、私は特に皆さんの御注意をお願いしたいと思うのであります。こういうことを考えますと、日ソ国交の正常化というものは、かえってソ連の極東、東方に対する顧慮を減じまして、東ヨーロッパ方面に対する強化政策を助けるような結果にはならぬかということを、やはり考えてみる必要があります。こういう観点から、私は鳩山総理大臣は、この日ソ交渉ができ上ったこの機会において、もっと積極的な、この東西両陣営の緊張をほんとうに解くような、何らかの具体的構想をお持になっておられなければならぬと思うのであります。その点に関する総理大臣の御所見をお伺いいたしたいと思うのであります。
  240. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 世界平和のためにはヨーロッパが重点になる、さようかもしれません。日ソの国交の回復よりも、ヨーロッパの関係を重視した方が、世界の平和を持ち来たすゆえんになる、そういう議論は成り立つかもしれまん。けれども日本としては、ヨーロッパを世界の平和のためにどうしようとしても、その国力がないと思い、ます。それですから、ソ連との間の国交を正常化することも、世界の緊張の緩和の一助となると思ってやったのであります。それから、ただいま、この前のノモンハン事件のときと同様に、調印の翌日、ソ連がポーランドに侵入したということは、ちょうどそういうように符合したのでありましょうけれどもソ連としては、私どもに、ポーランドの事件が起きて、フルシチョフ、ミコヤン二人ともポーランドに行く必要があるので、調印を二日間延ばしてくれ、そうして調印をし、レセプションにも自分たちは出席したいから、延ばしてくれという話があったのでありますから、先方としては、ポーランドの侵入を、調印を機会として侵入したという事実は、私としては想像ができないのです。先方は明らかにそういうことを言いまして、ポーランドに二人が行ったのでありますから、日本との調印を機会としてポーランドにソ連軍が侵入したとは、私は考えません。これは偶然の符合だろうと思うのです。
  241. 保科善四郎

    ○保科委員 もう一つ最後に、総理大臣並びに河野全権にお伺いをしたいと思うのであります。やはり松木議員の総理に対する質問に対して総理が答えられ薫るのでありますが、それはアメリカの沖繩に対する関係と、ソビエトの千島列島に対する関係であります。あたかも、これを同一のレベルに置いて、この問題を議論されておるように見えるのでありますが、これは私は性質が非常に違うと思うのであります。こういうようなことを同一のレベルに置くような議論が行われるということは、私は将来の対自由諸国とのいろいろな交渉、あるいは対米交渉において、非常に悪い結果を及ぼすのではないか、あるいはこれが端になりまして、必要以上に反米思想を鼓吹したりする結果になるということはこれは、世界平和を念願としておられる鳩山総理の御希望と反するような結果になりはせぬか。この点に関して、はっきりとした御見解と、それから、フルシチョフ第一書記とお話をされたようにも存ずるのでありますが、河野全権はそれは答えられぬと言うておられるのでありますが、この点に関して、答えられぬ点はよろしゅうございますが、少くとも国民に対して、この関係一つはっきりこの委員会嵩じて、知らしておいていただきたいと思うのであります。
  242. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 ソ連に対して、択捉国後返還を求めるがために、アメリカが沖繩を日本に返すということを条件としたことはございません。そういうことは話さないのです。そういうような話の段階にまでいかない。アメリカが沖繩に軍備をしたということは、日本の防衛を援助するためにやったのでありまして、これは共同防衛の結果なのであります。日本としては、その当時において共同防衛が必要であったのであります。それですから、アメリカが沖繩に軍備をするということについて日本は承諾をしているのでありますから、これに対して文句の言える筋合いのものではないと思います。ただソ連としては、アメリカが日本を土台としてソ連に侵入してくる、ソ連とのいくさの場合には、日本を土台とするかもしれないという危惧の念のもとに、択捉国後を保有したいという気分を起したことは想像はできます。けれども、アメリカがソ連と戦うために沖縄を領有、つまり沖繩に施政権を持っているものとは私は信じません。そういうようなことは、アメリカは戦争を回避しています。ソ連と戦う意思はないのですから、そういうような、ソ連と戦う準備のために沖繩を領有しているということは、事実に反するのですから、これはだんだんと誤解が解けて、ソ連とアメリカとが戦争する理由は私はないと一思うのです。そういうような、ないのが、だんだんと時日の経過によって、この緊張の緩和というものが当然にでき得べきものだと考えているのであります。
  243. 河野一郎

    ○河野国務大臣 ただいまの問題につきましては、先日来お答え申し上げました通り、また私は、今お話がありました通り、この問題が論議されますことが、むしろ反米思想にいろいろな意味で影響があるというようなこと等の誤解の起ることをおそれます。そういう意味から私は、共同宣言案をお読みいただけばわかりますように、あれが結論でございまして、ソ連側が何と考えようと、何と言いましょうとも、われわれの方といたしましては、そういうことは毛頭考えておりません。
  244. 保科善四郎

    ○保科委員 私はこれをもって質問を終ります。
  245. 植原悦二郎

    植原委員長 穗積七郎君。——穗積君、総理は四時ごろお帰りになりたいということですから、そのおつもりで一つ……。
  246. 穗積七郎

    穗積委員 そのつもりでやりますが、ちょっといろいろ聞きたいことがあるのです。  鳩山総理初め全権の方、御苦労でございました。最初に総理にちょっとお尋ねしたいのは、最近のソビエトに対してどういう印象を持ってこられたか、この際聞いておきたいと思います。それから、もう一つは、交渉に当って——私も、実は行ってみて、予想と多少違いましたからなんですが、向うの人々が交渉に当った態度ですね。私は予想しておったよりは非常に明るい、フランクな態度に接してきましたが、直接今度こういうむずかしい問題について交渉に当った総理の印象はどうであったか、この際御披瀝を願っておきたいと思います。この二つについてお伺いいたします。
  247. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 穗積君の、ソ連人の性格はフランクだというお話でありますが、私もそういうように認識をしております。とにかく、表面においては、アメリカ出版の著書等によりますれば、反対派は監獄に行くとかシベリアに追放せられるとか、非常に暗っぽいというようなことが書いてある本が非常に多いのであります。私はそういう本をずいぶん読んでいるものですから、非常に暗いと思っていたのですけれども、表面ではそういうような事実はありません。わかりません。(穗積委員「建設の現状についてはどうですか、国力全体の」と呼ぶ)とにかく全体主義の国家というものは仕事が早いです。そういう印象を受けました。(穗積委員「経済建設の実情について聞いてるのです」と呼ぶ)つまり、全体主義国家というものは、この問題をやろうと思えば全力を尽し得よすから、建設などは非常に早いです。
  248. 穗積七郎

    穗積委員 大体私も自分の印象が世違ってないという感じを強くしたわけです。  そこで、交渉の内容についてお尋ねいたしますが、最初に交渉の経過に従ってお尋ねいたしますから、河野農林大臣に御答弁をお願いしたい。実は、一度外務委員会でお尋ねしたいと思いながら、外務委員会にも出ていただけなかったので、つい延び延びになりましたけれども、これは今後平和条約締結交渉のときに重大な材料になるから、念のために伺って、はっきりしておきたい。それは、あなたが漁業交渉で行かれたときに、歯舞色丹はお返ししましよう、それ以外は返せない、そして日本側はそれについては譲歩ができないという実情であるならば、歯舞色丹だけでいい、そしてその場合には国境線は不明確にして、歯舞色丹だけ返して、あとの問題は留保して残しておいたらいいじゃないか、こういう印象を持たれるような発言があったというふうに閣議で報告がなされたというふうに、新聞その他で報道がされたわけです。私どもの理解ではそういうことはあり得ないのであって、歯舞色丹であろうと、あるいは択捉国後までであろうと、それは別といたしまして、国境線を引かないで、そして残余の領土問題はペンディングのままで平和条約を結ぶということは、向う側はあり得ないというふうに私どもは理解いたしておりますが、世間で流布されましたような、つまり、平和条約を結ぶ場合に、国境線は不明確のままでも必ずしも差しつかえないのだというような発言をされたことはなかろうと思いますが、その点を念のために伺っておきたいと思います。
  249. 河野一郎

    ○河野国務大臣 お答えいたします。これは、先日も申しました通り、私はその問題については一切発言はしないのであります。ブルガーニン氏が一人で演説をされた。しゃべられた。ブルガーニン氏の話の内容は、たびたび申し上げておりまする通り、私が暫定取りきめをして今年度出漁するようにいたしたいということを持っていったわけでございますから、ブルガーニン氏は、漁業問題に対する暫定取りきめというようなことでなしに、今ロンドンで話し合った結果この段階まで来ておる、そして歯舞色丹についてはソ連側は譲歩しておる、国後択捉については両国の意見が一致しない状態であるから、一致しないものは一致しないなりに——そこで平和条約とか暫定取りきめとかいう言葉は、ブルガーニン氏の発言にはありませんでした。しかし、これを要するに、私に、そういうことで、あなたは権限がないならば、東京へ一ぺん帰って、そして一週間待てば東京からもう一ぺん出てこれるから、今の私のいうことを東京へ持って帰って、その段階で両国の間に国交を調整して、そして漁業条約が発効をするようになすったらどうだという話をブルガーニン氏がしたということでございます。それに対して、私は、イエスともノーとも、東京へ帰ろうとも帰るまいとも、その点は一切別にいたしまして、そういう権限を持っておりませんが、とにかく私は漁業に対する暫定取りきめを了解を願いたいのだという線で私の主張をいたしまして、私の主張に対して向うが了承した。これが私とブルガーニン氏の会談の経緯であることは、当時から詳細に私は報告もし、各方面にも申し上げておる。これに対して、ソ連側から、そういうことは違うということは一度も聞いたことはないというのがてんまつであります。
  250. 穗積七郎

    穗積委員 ただいまの御説明で、大体世間で心配をいたしたことが誤解であったことが明瞭になりましたので、了解いたします。  続いて松本全権に、いわゆる継続審議の内容について、個人により党派によって解釈が違いますと、後に両国の間につまらぬ解釈上のトラブルが起きまして、われわれの主張が正確に通らない場合がありますから、この際私の理解を申し上げて、それが間違っておるか、それでいいのか、そういうことでお答えをいただきたいと思います。  領土問題を単純にたな上げをして触れない、つまりノー・タッチのままで終戦宣言をすれば、そのときに、相手が領有いたしておりまする領土、すなわち現在でいえば歯舞色丹から以北になるわけですが、それらの相手国の領土権を黙認した結果になる。これは国際法上の慣例でもあるということがいわれておったのです。しかし、今度の場合は、そういう意味の単純たな上げではなくて、今後国交回復、大使交換の後に、その大使を通じて、または政府機関を通じて、両国間でよく話し合って最終的に決定しようというのが、今度の継続審議の内容であると思う。従って、その場合におきましては、始期は大使交換の翌日から両国のうちの一方が欲するならばいつでもできる、それから終期につきましては期限はございませんで、話がつくまで、いつまでやってもよろしい、こういう内容を持ったものであろうと思うのです。さらに、重要なことは、わが方では、政府択捉国後までこれを返せという主張をする、向うは歯舞色丹しか譲歩できない、こういうことを言っておるわけですが、その場合に、継続審議であるからといって、両方の主張を一応白紙に返して、白紙に返したままで、すなわち、現在でいえば、択捉国後帰属は不明確であるということをソビエト側が認めて、そういう継続審議の内容を持っておる、そういう性質のものでないと私は思うのです。そこまではお互いに白紙に返していない。すなわち、向う側はあくまで択捉国後はわが領土なりと主張する、こちらはこちらのものだと主張する、そのお互いの主張については譲歩し合わないことを黙認し合って、そうしてその話の食い違いをいずれにきめるかはあとできめよう、こういうことになっておるだけのことであって、帰属そのものについては不明確である、ペンディングであるということの内容を持ったものではない、こういうふうに理解すべきだと思いますが、それで差しつかえございませんでしょうね。
  251. 松本俊一

    松本全権委員 ただいま穗積右の言われましたこと、ちょっと私も正確には実はわかりかねますが、私の了解はこうでございます。領土問題につきましては、私自身でやりました交渉、それから重光大臣のとき、それからまた今度河野農林大臣鳩山総理大臣がやられた交渉全部を通じまして、日本側としましては、領土問題、すなわち今度の戦争の結果ソ連が占領しております日本領土帰属は、最終的に決定していないということを終始主張いたしております。ソ連側は、歯舞色丹の問題はしばらく別といたしまして、そのほかの点は全部ヤルタ協定その他の国際協定解決済みであるという見解をとっております。そこで双方の見解が合致していないのであります。国後択捉の問題はその中間的の問題とも申せます。もちろん、これは、だから双方の見解が一致していない点だ、そういう意味でこの問題は残されておるのであります。領土問題の現状はそういう状態である。従って、日本の固有の領土日本が主張しております国後択捉はもとより、その他の諸島並びに南樺太といえどもソ連側の帰属を認めた事実は全然ないのであります。これはすべて今後平和条約交渉のときに残されておる問題である、かように了解いたしておりますので、さよう御了承願います。
  252. 穗積七郎

    穗積委員 それから、始期終期については、先ほど申した通りでよろしゅうございますね。
  253. 松本俊一

    松本全権委員 始期終期とただいま申されたのは、つまり大使が交換されて、それから平和条約ができるまで、この交渉継続の事実は続くという意味でございますか。
  254. 穗積七郎

    穗積委員 つまり、法律上の言葉でいえば、領土を審議する期間は定めていないということです。
  255. 松本俊一

    松本全権委員 期間は、もし双方の見解がまとまらなければ、いつまでも続くことと思います。
  256. 穗積七郎

    穗積委員 今、松本全権は、択捉国後放棄したということはない、向うに譲ってはいない、あくまで主張し続けておることを向うも承知の上だ、こういうことを言われたのだが、私は実はそういう趣旨でお尋ねしたのではないのです。従って、向う側の主張も、合意に達してこれを取り消すというところまでは達していないわけですね。必ずしもソビエトのものであるかどうかは別として、帰属は不明確だ、帰属そのものがペンディングだという意味の継続審議の内容を持っていない、こういうことなのです。そうであるとするならば、向うが返そうと言っておる歯舞色丹も継続審議の中へ一括して入っておるならば、当初の文案の通りに、領土を含む継続審議というふうにしても何ら誤解は招きません。しかしながら、歯舞色丹については、これは平和条約発効を条件として日本に返すということがすでに明確になっておるわけです。その上で領土を含む継続審議云々ということになりますと、択捉国後かどこか知りませんが、帰属そのものがペンディングであるということに両者が合意に達したという誤解を招くので、これはどうしても向う側としてははずさなければならぬでしょう。そういうふうに私は解釈する。従って、今おっしゃったように、歯舞色丹は返すといこうとが解決しておって、後に継続審議ということになりますと、領土を含むか含まぬかということは、今申しましたようなことであるならば、領土を含むという言葉を入れないのが当然であって、そうして最初のあなたとグロムイコとの文書また鳩山総理が送ったその全文を削除するということは向うは言っていない、それをアクセプトしてやりましょうということを言っておるのだから、そういうことですでに明確で、こういうふうに、主張の内容を認めたわけではないが、主張することは認めるというか、継続して御自由におやりなさい、ただし私の方は譲りませんよ、こういう意味なのです。ですから、歯舞色丹帰属が明確になった後の継続審議の文章の中には領土問題を入れないのが当然であって、そういう内容であるなら、そういう内容を——今のあなたの理解と私の理解と一致するわけですが、その理解のもとに立って文章を書くならば、領土問題を含む継続審議というのは書かぬのが当りまえであって、古くならば、むしろ歯舞色丹帰属を討議することの自由を認めたのではなくて、帰属そのものがペンディングであると向うも認めた、こういうことに誤解をされますから、省くのが当然だ。そういう意味で継続審議の内容が文章に表われますときには、あの文盲並びに二つの書簡をもって十分である、何らの疑点を差しはさまないというふうに理解して差しつかえなかろうと私は思うが、お考えを伺っておきたいと思います。
  257. 松本俊一

    松本全権委員 私の了解するところは、結果においてはただいま穗積君が言われた通りであります。私が昨日でしたか一昨日でございましたかお答え申し上げましたように、領土問題を含む平和条約の継続審議という言葉と平和条約継続審議ということは全然同一だと思います。というのは、平和条約を継続して審議するというときには、必ず領土問題が含まれるということは自明の理でありまして、今後平和条約を審議する場合に、領土問題を除外して審議するということはあり得ないと私は考えております。これを何ゆえに削ったかということは、これは日本側が削ったのではないでありまして、向うがそういう案を出したのであります。私は、同じものだと思ってそれを日本側は受諾したものと考えます。さよう御了承願います。
  258. 穗積七郎

    穗積委員 すなわち、歯舞色丹の問題がああいう形で解決した以上は、領土問題を含むという言葉がなくても十分であり、それはいわば余分なものだ、なくても十分われわれの主張は通っておる、こう理解すべきだと私は言ったんです。そういう意味で、まああなはの御答弁もそういう意味だと思いますから、そういうふうに考えます。  そこで、総理にお尋ねいたしますが、今の私と松本全権との問答の内容については、あなたは全部確認されますね。
  259. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 その通りです。
  260. 穗積七郎

    穗積委員 そこで、お尋ねいたしますが、先ほど、あなたの党内の一部の方から、留保条件、附帯条件というような御意見が、この席上でもまたは非公式にも発表になっておるのでありますが、私は、今申しました通り政府というよりは、日本国民全体が領土問題について十分主張し得るのは、主張が通る通らぬは結果のことでありますけれども、通るのだという確信を持っておる。二つの交換文書、それから交渉の経過、並びにあの文章によって明確なる自信を持っておるならば、附帯条件、留保条件のようなものをつけることは、かえって十分確実であると思われる主張をあいまいなものにする、むしろ国際的に自信を弱くすることになる。だから、私はこれは蛇足じゃなくてマイナスになると思うのだ。そういう意味で、附帯条件または留保条件はつけるべきものではないと、私どもは理解いたします。総理はそれで御同感でございましょうね。
  261. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 歯舞色丹だけは留保条件をつけない方が確定しているという御意見は、私は同様に考えます。択捉国後を継続審議するということにつきましては、双方の間に了解をされております。決して疑う余地はないのです。
  262. 穗積七郎

    穗積委員 続いてお尋ねいたします。実は、率直に言いますと、与党の内部の一部の方にも、どうせ国後択捉の問題について触れられない、こちらの主張が通らないならば、この際歯舞色丹も一括してペンディングにしておいた方がいいのじゃないかという御意見も出たようですが、どうも私もそういった感じがするわけです。下世話の話で恐縮ですが、一万円貸金があった、そのうち二千円だけ返す、その金を受け取ることによって、あとの八千円の債権を、放棄するわけじゃありません。ありませんが、政治的に見ると、その金を受け取ることによって、あとの借銭を返す義務をやや軽くするというか、少くとも延ばす、そういう政治的な影響は今度解決しないで、一緒に預けておく、返すときは耳をそろえて返してもらいたい、こういうことにしておいた方が交渉の妙味としてはおもしろかったのじゃないかと思うが、総理はどういうふうにお考えになりますか。その間の経過や御心境についてちょっと説明しておいてもらいたい。
  263. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 最初ソ連交渉いたしますときには、領土問題は全部継続審議にしてもらいたいということを申し込んだわけであります。それでありますから、ソ連からの原案には、領土問題は全部継続審議にするということになっておったのであります。しかし、わが党としては、歯舞色丹だけはまずきめて、そうして択捉国後だけを継続審議にするようにしてもらいたいといういわゆる新党議ができましたので、その党議に従いまして、歯舞色丹ソ連交渉してきまった部分だけはああいうようにつけ加えたわけでございます。これは実際すべてのものを継続審議にする方がいいというように、わが党においてもそういうような意見があったようでありますけれども、そのときには、向うのソ連歯舞色丹を挿入することについて同意してしまったあとでありますから、せっかくこっちが同意さしておいて、またもとに返してくれということはちなつと言いにくい状態でありました。それでああいうようになりました。
  264. 穗積七郎

    穗積委員 わかりました。私の申したことは、ちょっと誤解があるといけませんから申し上げておきます。これは本会議でも申し上げたのでもう申し上げるまでもないと思って申し上げたわけですが、何とかいいますか、歯舞色丹は全部ノー・タッチでお帰りなさいということを私は言ったんじゃなくて、私どもの判断では、この間も申し上げましたように、平和条約発効を条件にしないで、これを一括審議の中から先議をすることを予約せしめる、または他の政治的条件、たとえば、われわれの考えられるところでは、米軍基地を置かないというような政治的条件その他もございましょう。そういうようなものを出して、そして、平和条約締結とは切り離して、これだけはいずれにしても返そう、あとの問題は話がついてから平和条約にしよう、こういうふうな先議または返還の予約話し合いができたのではないかということを、私どもとしては期待をしたわけです。多少の判断もしてみたわけですが、そういうことかできないで、平和条約発効ということになりますと、これは重光案と大して違いがない。これよりはよかったということにはならない、全く客観的に見るならば、日本国民としてはその方がよかったというんじゃなくて、自民党の党内事情で、こうすればおさまるか、重光条ではおさまらぬ、理由はそこにしかないと私は思うのです。そういうことになるならば、そういう交渉をされるならば、むしろ一打して預けておいた方が、妙味があったのではなかろうかということですから、その点は一つ誤解のないようにしておいていただきたい。それで、あなたの交渉で、私の申しました第一案または第二案を話されたかされないか。私どもの灰開いたしておるところでは、話をされなかったようだが、されないで、結局この中間案の中で一番悪い平和条約発効を条件にしておるということで、あるならば、それならばもうちょっと考えて、全部預けておいた方がおもしろかったのではなかろうか、こういうことを言ったのですから。その点は、今のあなたの御説明で、お気持も経過もよくわかりました。   〔鳩山国務大臣「誤解しておりませんよ」と呼ぶ〕
  265. 河野一郎

    ○河野国務大臣 私、蛇足を加えるようですが、ちょっと申さしていただきます。先日来、委員の方から、こういうふうな交渉の仕方をしたならば、アメリカ側で、もしくはソ連側で云々ということがたびたび出ますけれども、諸般のことは、フルシチョフと私と会談をいたしました際に、先方からもしくはこちらからいろいろ懇談いたしましたときに、私が先方の申しておりますものを考えてみますると、ここでお話し合いになっておるような程度の先方の主張ではないということだけ、はっきり私は申し上げられると思うのでございます。先方がこれらの問題に対して強く主張するところの根拠は、ここで話し合っておられるような感覚ではないのでございまして、そういうわけで、今お話し合いになっておりますような条件と申しますか、というようなことで話してみたところが、先方の了解を得るということはとうてい困難であるというような感覚に立って、結論に達したということを御承知おき願いたい。
  266. 穗積七郎

    穗積委員 ここでこういう交渉をされたならばという話がいろいろ出たようですが、そのここにおけるそのすべての発言について、私は、責任を持ちません。私はそういうことを言っているのではございませんので、一括しておっしゃっては困る。他の方の仮定については、私は同感の意を表して言っているのではありませんから、了解しておいてもらいたいと思うのです。私どもが言うことは、条約上の解釈と政治上の解釈と両方合せて考えなければ、たとえば、失礼な話でございますが、重光さんが、松本さんが、すでにロンドンでリピート・アンドリ・ビートしたものをまたリピートしてみて、それを最後の勧進帳で読み上げてみたところで、そういうことで問題が解決するはずはない。そういうことは、そこで松本さんがおやりになるなら、むしろロンドンでできた。私どもとしては、わざわざそういうものを副総理が行って読み上げたから、かえって硬化したのであって、松本さんがロンドンで話をされた方が、まだ弾力性があったという印象を持っている。そのことは、またあと松本さんに聞きたいと思うのですが、これは同じ外務省出身の先輩後輩であり、同じ政府の中でそういうことまでえぐって話を聞くのは、私は、エチケットに反するし、益のないことだから申し上げなかったが、私はただ空想で言うているのではない。それが証拠に、あなた方の今までの報告にもあったと思うが、条約はわかるといたしましょう。政治的に見るならば、さっき保科さんから話があったし、他の方からも話があったが、これは明らかに両陣営すなわちアメリカとソビエトが武力をもって対立している、力をもって対立している状態が、どちらの責任とは私は言いませんが、続いているという事実の前において、しかも、日本歯舞色丹択捉国後どころか、はるかに重要な意味を持っている沖縄、小笠原、経済的にあるいは人道上からするならば、はるかに、千島列島よりは強く返還要求しなければならない重要な意味を持つ沖繩にアメリカ基地がある。そういう状態のもと、しかも日本安保条約が効力を発しておって、そうして、本国並びにこれから帰属する日本領土に対しては、アメリカが要求すれば、米軍基地が置かれなければならない。その軍手基地の目的は、ソビエトを仮想敵国として、これを攻撃する目的だ。そういう状態の中で、これを返すということが非常に困難であることは、先ほど鳩山総理が率直におっしゃっておる。従って、逆をいえば、これらの条件をはずすなら返す可能性があると政治的に判断することに、どこに無理があるか。取り返したかったが取り返せなかったということは、アメリカとソビエトが、力をもって対立しておる。しかもアメリカが南に重要な基地を持っておる。こういう状態の中では、なかなか取り返すのが無理と考えられる。向うもはずせないだろうという判断を、総理みずからさっきしておられるのですよ。だから、われわれが言ったさっきの条件の中の二つ、すなわちアメリカから領土返還要求するということ。そういう条件で、そういうことをはずしていくわけですね。向うがどうしてもはずせないという腹を見通して、しかも伺いますと、フルシチョフが、あなた方がお着きになった二日目か三日目か知りませんが、そのときに沖縄を取り返してきなさい、それならば、北においてもっとおもしろい話をしようじゃないかという話があった。こんなことは聞かなくともわかっていますよ。そういう意味で、われわれも、実は昨年参りましたときの印象から、多少の空想で言っておるのではございません。そういう政治的な判断のもとに立って言っておるのですから、お前たちの言うことは、全部、勝手なことを言っておるのだ、東京における寝言だということですが、私どもは必ずしもそう考えていない。総理自身もそう言っておられる。ですから、続いて総理にお尋ねいたしますが、そこで、あなたの党派の決定は、再軍備をしようとしておられる。それで憲法を改正して、外地出兵の道も開こうとしておられるわけです。そうするならば、あなた方の党のどの程度の決意になっておるか知りませんが、米軍は帰ってもらう、日本領土内におけるアメリカ軍事基地は撤廃してもらうという方針を持っておられるのかおられないのか。また持っておられるとするならば、どの程度の強さの確信を持っておられるのか。あなたの閣僚である船田防衛庁長官は、就任早々、われわれは外務委員会にお招きいたしまして、それに対する御所信を伺いましたら、こうおつしゃいましたと。われわれが今再軍備を——再軍備というか、防衛力を強化しようとしておるのは、あれは何もアメリカの要求ではなくて、むしろ日本独立のためだ、というのは、アメリカにお世話にならなくてもやっていける、帰ってもらう、そのために、こういうあなた方の反対にかかわらず、国を愛するがゆえに、独立を愛するがゆえに、米軍に帰ってもらう目的のために、防衛力を強化するのだという、こういう説明をしておられます。果してそのように党議全体、閣議全体が決定しておられるのか、この際、念のために伺っておきます。
  267. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 この議会ではなく、前の議会におきましても、日本の防衛力を増大しまして、アメリカ軍の撤退をだんだんやってもらいたいということは、たびたび申しております。
  268. 穗積七郎

    穗積委員 そうでありますならば、本国会を通じましても、すでに新たに起きた情勢を前にして、その基礎の上に、総理並びに外務大臣——外務大臣の判断はいささか違うかもしれませんが、総理は、少くとも中味なり東欧における問題は、国際連合なり世論の力、または第三者のあっせん等によって、この問題は、熱戦にならないで解決できると希望する可能性がある、こういうことを言っておられる。しかもこの不完全なる日ソ交渉を完全なるものにするためには、領土についてわれわれの主張を通してもらうこと、それを一日も早からしめるためには、どこに政治的な障害があるかといえば、今申しました日本並びに沖縄にアメリカ基地があるということなのです。それはあなたと私は意見が一致しておるわけであります。そういうことであるならば、一体いつ平和条約を結ぶか。すなわち平和条約を結ぶときは領土を返してもらうときですが、その時期を早からしめんとするならば、アメリカとソビエトにおける話し合いができて、その対立が弱まり、緩和され、しかも平和な情勢が来るならば返してくれるでしょうと言っておる。そんな弱いことではなくて、自主的にそういう条件を作るべきだと思うのです。米ソの対立、それを米ソの力によって、または国連の力によってそれが緩和されることを待つのではなく、日本の自立的なる努力によって、この緩和をはかるべきだ。その緩和をはかる具体的な方法というものは、米軍基地をこの際撤退してもらうということなのです。しかも、あなたの国際情勢の判断によれば、中国またはソビエトが、日本へ武力をもって攻めてくる可能性はないと見ておられる。私どももそう思う。そうであるならば、今の程度の防衛力で、十分国内における、たとえばそういうことはないと思いますけれども、内乱等があったとしても、十分たえ得る。しかも、日本は島国でございますから、今度のハンガリーまたはポーランドのように陸続きではございません。そういう特殊な軍事的地位も持っておるわけです。そういうことですから、当然客観情勢からいきましても、主観的に領土問題を解決して、そして真に平和条約を完全なものとして結びたいということのためにも、日本自身が米ソの間の緩和努力すべきである。その努力の具体的な目標というものは、私は米軍基地の撤退である、こう思うのです。従って、あなたがそういう基本的な考え方を持っておられるならば、もうすでにその時期が来ておるというふうに私は思うのです。いかがでございますか。
  269. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 私は、先刻も申しました通りに、日本の自衛力が増すに伴いまして、アメリカ庫の撤退を要求していきたいと申したのでありまして、今はまだその時期が来ていないと思います。日本の防衛力は、アメリカとの安保条約の効力なくしては、十分だということは言えないだろうと思います。
  270. 河野一郎

    ○河野国務大臣 先ほど私が申し上げましたことは、言葉を尽していなかったと思いますので、つけ加えさせていただきます。  ただいまもお話の通りに、わが国内から米軍が撤退する、もしくは沖縄、小笠原の基地から米軍が撤退する、それがソ連の今申される国後択捉に対する主張が緩和する理由にはなっていないということを私は看取いたしました、ということを、先ほど申し上げたのであります。従って、ソ連の主張する主張の根拠には、ここでいろいろお話し合いが出ておりますることと違ったものがあるように考えまして、そしてこれは総理がたびたび申されまするように、米ソ関係の緊張の緩和ということが非常に大きな要素になっておるように私は考えております、ということを申し上げるつもりであったのでございます。その点を御了承いただきたいと思います。
  271. 穗積七郎

    穗積委員 総理のその時期にあらずというお答えは、はなはだ遺憾である。あなた自身は、心中もうすでに時期だというふうにお考えになっておられるだろうと思うが、そのことについてはいささか認識が違うので、これ以上やりましても——やってもよろしゅうございますが、時間が制限されておりますから、他の時期に割愛いたしましょう。  次に、松本全権にお尋ねいたします。昨日あなたの党派の北澤委員が、実はブルガーニンと河野の会談、またはフルシチョフと河野の会談の中で、歯舞色丹以外の以北の島は、これは放棄してもいいのだと言った。それについてわれわれは幾たびか聞いた。河野さんはそんなことは絶対にないと言われた。そうしてまた政権がかわって、たとえば社会党政権ができても、諸君はさら地で、条文の文面に現われた以外のものに拘束を感じて交渉をされる必要はない、条文に現われたもの以外は何もない、こういうことを明言されました。にもかかわらず、北澤君が言われるのには、河野ブルガーニン会談で、河野が択捉国後放棄してもいいのだということを言ったということを、シェピーロフが重光外務大臣に話したのだ、それでわかったのだ、証言はここにあるのだ、しかもわれわれは確たる材料を握っていると言われた。私は、このことの政治的責任を追及するのではない。このことによってあなたがどういう責任をとられるか、そんなことは、私の知ったことではないのであって、問題は、政治家の中でそういうことがあるんだ、党代表、閣僚の有力者として、政府の全権として行かれたあなたが、そういう言質を向うに与えておる、それをわれわれが握っておるのだということをいいっぱなしで、この問答は終っておる。これは日本のためによくないことだと思うのです。あなたの責任だとか、北洋君の発言の方がどうとかいうのではありません。与党内の諸君で、しかもそうそうたる外交通の方が、そういうことを言われた。そうすると、日本とソビエトとの交渉においては、条文上での共同宣言と同様の効力ではないにしても、少くとも政治的なオブリゲーションを感じなければならない言質が、河野政府代表によってすでに与えられているのだという事実を黙認したまま、われわれがこの審議を終るならば、君たちもかつてそういうことを言っているではないかと言われたときに、これは手落ちになる、それによってわれわれは拘束されようとは思わぬが、手落ちになる。従って、この際は重光さんはそういうことはないと言われたが、第三のさらに有力なる証言として、松本全権に証言を求めるわけです。あなたは交渉の経過については、重光さん以上に終始よく知っている。しかもロンドンにおけるシェピーロフと重光との会談においては、あなたも立ち会っておられるはすです。そういうことを果してシェピーロフが重光さんに話されたのかどうか。すなわち、河野の言質があるのだ、または速記録があるのだというようなことを言われたのか。私どもとしては、実を言えば、北澤君に確たる証拠があるというならば、出してもらいたいと思うのですが、求めたが、お示しになりませんから、私どもはそんなものを了承するわけに参りません。だから、あなたに念のためにお開きしたい。これは党派的に言いにくいことがあるかもしれないが、将来に禍根を残すことであり、われわれとしても迷惑であるから、はっきりしてもらいたいと思うのです。
  272. 松本俊一

    松本全権委員 昨日重光外務大臣が言われましたように、問題の重光シェピーロフ会談の際には、私は立ち会っておりました。その際、ブルガーニン・河野会談の内容について北澤君が言われましたようなことは、陶きました覚えは私は全然ございません。
  273. 穗積七郎

    穗積委員 ありがとうございました。そこで外務大臣にお尋ねしようと思ったが、おられぬから、条約局長に念のために伺って、外務大国にはまだ重要な質問が残っておりますから、土曜日にさせていただきたいということを委員長にお願いしておきます。私はちゃんと初めから要求しておいたにもかかわらず、おられない。しかもさまつなことではなく、重要な点なのです。そこで、この点についてお尋ねしておきますが、河野さんが、自分はそんなことを言った覚えはない。またシェピーロフも、そんなことは言ったことがないということを、松本さんが証言をしておられる。ところが、河野さんとブルガーニン、またはフルシチョフとの会談の中で、おれはそんなことは言った覚えはないといっても、日本の政治家の、ときにはそういうこともあろうかと思うのですが、ノーとはっきり言わないで、相手のいうことを聞きっぱなして、いや、そんなことは、ということで言ったことが、そのことはおれは触れないのだと言ったことが、相手に対して黙認の印象を与えて、向うに誤解をさしておることがあるかもしれません。あるいは今まで発表になった、または問題にされたようなこと以外に、たとえば会談の中で、河野さんが相手にそういうことを了承するような印象を与えるような言葉があったと仮定いたしましても、河野さんはそのときには政府代表です。その政府代表である河野全権のその言葉が、どれだけ国際法上の効力を持つかという問題でございます。そういう誤解または失言、どちらでもけっこうですが、念のために私は手がたく聞いておくのだが、私どもは、そういうものは鳩山・ブルガーニン君簡または松本・グロムイコ書簡、これらのような効力を持つものではないというふうに信じますが、さようでよろしゅうございましょうね。条約局長所見を伺っておきたいし、それから土曜日には重光外務大臣からもちょっと念を押して明確にしおきたいと思う。
  274. 下田武三

    ○下田政府委員 河野・ブルガーニンの会談につきましては、御本人の河野農林大臣が明確に否定しておられるのであります。またロンドンにおいてシュピーロフから、その河野・ブルガーニン会談の内容なりとして話を聞かれました重光大臣及び松本全権が、これまた明確に否定しておられるのであります。でございますから、ソ側は、あるいは交渉のときにどういうことをいうかもしれません、記録があるとかなんとかいうかもしれません。しかし、そんな記録はアグリード・ミニッツでもなんでもないのであります。そういう交渉の過程において、どういう言い回しをいたしましても、国際法上何ら日本側が拘束を受けるものではないと思います。
  275. 穗積七郎

    穗積委員 同様でけっこうでございます。念のために、これは大事なことですから、法制局長も同様な解釈か、私の解釈で差しつかえないということだろうと思うが、聞いておきましょう。
  276. 林修三

    ○林政府委員 今、下田条約局長からお答えした通りだと思います。
  277. 穗積七郎

    穗積委員 続いて総理にお尋ねいたします。あなたの党は、交渉に当って北千島は最終的に放棄されました。これは択捉国後を返してくれるならば北千島は全部永久に無条件で放棄してよろしいという態度をとっておられますが、どういう理由でございましょうか。
  278. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 択捉国後日本に渡すならば、北千島を放棄してもいいという話は私知りませんが……。
  279. 穗積七郎

    穗積委員 知らぬことはないじゃありませんか。択捉国後までは返そう、今度の継続審議の場合も、歯舞色丹は即時返還して取ってこい、あと択捉国後は継続審議にしておけ、こういうことなんです。最初松本さんが行かれたときも、択捉国後は固有の領土だから返さなければならぬ、それが返らないならば、ヘンディングでもいいからはっきりしておけ。今度の継続審議の対象として要求されるのは択捉国後ですよ。文章には書いてありません。だから、われわれはこの継続審議の領土の議題の範囲については、北千舟も入るものと主張しております。今後も主張したいと思う。にもかかわらず、択捉国後はわが固有の領土だから返せということであって、(発言する者あり)——それならお尋ねいたしましょう。(「条文を読んでみたまえ」と呼ぶ者あり)ちょっと私語が出ておりますが、これは大事な点です。重光さんが行かれたときに、歯舞色丹だけでなくて、択捉国後も返して、そこを国境線として引いたならば、平和条約に賛成されたでしょう。それで党議は決定されておるではありませんか。ですから、北千島をどういうわけで離するかという、条約上正常の理由を明確にしてもらいたい。われわれは今度の領土の継続審議の場合には、北千島まで含むものとして今度主張したいと思っております。
  280. 松本俊一

    松本全権委員 ただいまの穗積君のお話は多分に誤解を含んでおる。(穗積委員「誤解ではありません」と呼ぶ)誤解といっても、私は交渉の初めから今までやっておりますが、北千島を放棄したことはございません。つまり少くも、先ほども私は繰り返し申しましたが、日本は終始千島全島並びに南樺太がソ連帰属することを否定し続けてきた。それから北千島を放棄したということは、重光大臣が提案をされたことはありますが、それは向うが問いていないのでありますから、全然これは放棄したということにはなっておりません。    〔発言する者多し〕
  281. 植原悦二郎

    植原委員長 静粛に願います。きわめて重要なるところですから……。
  282. 穗積七郎

    穗積委員 もとより北千島までを含む千島列島全島を返してもらいたい、こういう希望を持っておったということ、そんなことは当りまえなことで、そんなことを聞いているのじゃない。交渉に当ったときに——昨年十一月に両党が統一されて今の自民党が作られた、そのときの臨時政策として打ち出されたのが、択捉国後を返せ、こういうことなんです。それでは北千島は一体どういう条件でこれを打ち切られたかというのです。明確ではありませんか。知らないなんて、とぼけちゃいけません。それではその党議の決定はどういうことですか。党議の決定は択捉国後になっていますよ。どういうわけで北千島は放棄されたのか、区別しておられるのか。
  283. 松本俊一

    松本全権委員 それはもう一度、はっきり思い出しましたので、詳しくお話ししますが、重光大臣交渉のときに提案されたことは、北千島それ自身を放棄したのではありません北千島を日本がサンフランシスコ条約の中で放棄しておるということを確認してもよろしいということを提案した。それ以上のことは何もございませんので。だから、日本が南樺太も北千島もソ連に対して放棄したということは、提案したこともなければ、またそれを公けにしたこともございません。
  284. 穗積七郎

    穗積委員 そんな詭弁を弄してはいけませんよ。放棄ということと、その放棄したものがどこに帰属するということは別のことですよ。放棄には間違いありません。それを言っているんですよ。
  285. 松本俊一

    松本全権委員 サンフランシスコ条約日本放棄したことは事実であります。これはサンフランシスコ条約に明記してありますから……。しかし、ソ連に対して日本放棄もまだ実はしていないのであります。日本国後択捉の即時返還要求いたしまして、そのほかの領土は国際会議にかけたいということは提案いたしました。それからまた重光大臣は、北千島等についてはこれをサンフランシスコ条約放棄したことを確認するということは提下されましたけれども、それ以上のことは何もいたしておりません。
  286. 穗積七郎

    穗積委員 そこで外務大臣を必要とする。大事な点です。すなわち桑港条約第三条の解釈について、これは権利放棄なんだ。権利放棄の範囲については、彼とわれとの間に違いがある。私どもの解釈も、遺憾ながら国内において違います。歯舞色丹以北は全部放棄しておると私どもは認めておるし、そしてまた取り返すためには、そういう建前で交渉すべきだと思う。また西村条約局長が、当時政府を代表して国会において答弁されたことも明確でございます。それからイギリスもまた同様の解釈をとっていることも明確なのです。この間アメリカから参りました声明なるものも、これもまことに巧妙老獪なる表現であって、わけのわからぬ表現になっておる。これは確定していない。主張することを認めるだけのことであって、その択捉国後をサンフランシスコ条約当時に、これは放棄したの、ではない、除外したのだということは、どこにも明確に言ってないじゃありませんか。主張することも、黙認するというだけのような意味のあいまいなる答えであって、−桑港条約の解釈につきましては、実ははっきりしていないのです。そこで、そういうことであるならば、私は実は最初にこのことをただしておきたいと思ったのだが、重光外務大臣は党の決定は団際会議に移すという。それからさっきから政府は、全部ソビエトとの間においてはこれは単独交渉で差しつかえないのだ、こう言っておるじゃないか。矛盾もはなはだしいですよ。その解釈をどういうふうに統一されるおつもりですか 方金を御変更になっているのか、あるいはまたいつから変更されたのか、それとも、解釈が個人によって違うのか、その点を明確にしておいていただきたい。なぜ私がこういうことを言うかというと、総理よく聞いて下さい。あなたの内閣がずっとこれから続いて、そうして同じ内閣の手によってこの領土交渉ができて、平和条約が結ばれる見込みがあるならば、それはあなたの内閣総理のお考えだけをただしておけばいいわけですが、今度はかわるか、かわらぬかしらぬ、あるいは居すわるかもしれぬが、それにしても、あなたの内閣平和条約を結ぶという場合はないかもしれない、ない場合を想定しておかなければならない。そうすると、あなたが今日ここで答弁されたことは、われわれはもうあと幾日しか責任を持ってもらえない。平和条約に対する交渉、その他の交渉等について、あなたの答弁についてはだれが責任を持つのかということになれば、われわれは社会党内閣ができれば社会党がやるが、自民党の内閣ができるならば、党が責任を持たなければなららな。そういうことで、私は閣僚の一々のポストにおる人に意見を聞くのではなくて、公党としての解釈を聞いているのです。そういう意味で言うならば 次の総裁がきまらぬ以上は、あなたに聞いて、その総裁としてのパトンが渡るその次の総裁には、責任を持って政治的に受け継いでもらわなければ、われわれとしては審議できないことになるわけですから、そういう意味で聞いているのです。いいですか。問題の焦点はこういうことです。第一は、サンフランシスコ条約放棄した範囲、これは今まで議論し尽したことですから、別にいたしましよう。その放棄いたしましたものを国際会議にかけて取り返すというのが、あなたの方の党の決定だ、こう言っておる。にもかかわらず、重光外務大臣は、それの必要がないんだ、こう言って説明しておられる。こういうことでは党と外務大臣との意見が違う。それで、さっきから私が言えば——党の諸君は国際会議にかけて取り返すんだと言っておる。それでは、あと平和条約交渉に入ったときに、だれがやるにしてもこんなことでは交渉ができません。どちらの方針をとっておられるか、明確にしておいてもらいたい。
  287. 下田武三

    ○下田政府委員 穗積先生が非常に詳細な条約論を御展開なさいましたので私も法律的の見地から御説明申し上げたいと思います。その前に、ただいま穗積先生のおっしゃいました点で…。
  288. 穗積七郎

    穗積委員 待って下さい。あなたに対する質問はまだ残っているんです。今は党の責任の問題を聞いているんです。党議の決定を聞いているんです。条約局長からはあとで伺います。
  289. 須磨彌吉郎

    ○須磨委員 議事進行。これはただいまの穗積君の御質問に関連しておりまする党の問題でございます。この党議については、私がこれに参加をして作った責任者の一人といたしまして、御参考までにお答えをいたします。去年の十一月……。
  290. 穗積七郎

    穗積委員 ちょっと待って下さい。それは議事事進行じゃない。〔「議事進行じゃないよ、だめだ」と呼び、その他発言する者多く、離席する者あり〕
  291. 植原悦二郎

    植原委員長 静かにして下さい。岡田君、自席へお戻りを願います。委員長が処置をいたします。  須磨君の今の関連質問ということは、党議のお答えで、それは質問になっておりませんから、動議として発言するならば、関連して政府質問をするならばよろしい。あなたに穗積君は質問しておりません。それゆえにあなたがお答えになる必要はありません。
  292. 穗積七郎

    穗積委員 そうでないと……。それでは、ちょっと鳩山総理もお疲れでございますし、みな大きな声を出したものだから、あなたも目がさめたか、混乱したかしらぬが、何だからょっと先に聞きましょう。これは、実は最後にお尋ねしようと思ったのです。あなたは近くどういう形で引退されるかしりません、あるいは居すわられるかもしれない、そういうことは別として、かわられることを私は予想して伺うのです。その場合もあり得るということを予想して伺う。あなたもかわるかもしらぬ、引退するだろうということを前提として、この間から御答弁がありましたから、聞いておくが、さきに言われましたように、こういう確定的な、完全な条約でなくて、交渉あとに残っておる、糸を引いておる問題は、その途中で内閣がかわるときには、これはこれを審議しておるときのあなたの答弁なり方針が、必ずしもあとに継承されるとは限っておりません。そうするというと、これを審議いたしまして通すにしても、反対されるにいたしましても、その条件が変ってくるわけですね。そういう意味で、こういような特に重要なる、継続しておる案件につきましては、一貫しなければならない案件については、党の責任をわれわれは問わざるを得ない。そうなると、公党としての公約の方針を決定しておかなければならぬが、そのときあなたは、首相とともに総裁としてお答えになっておられるわけだ。そこで社会党政権ができれば別だが、そうでなくてあなたの与党の支持による後継内閣ができたと仮定いたしました場合、そのことを私は非民主的だと思うが、事実できた場合は、あなたのここで答弁なすった政策方針というものは、どういう形であなたはあと内閣にお引き継ぎになりますか。特にこの日ソ交渉に対する方針なり解釈について、私はその点を明らかにしておいていただきたい。と申しますことは、今までわれわれが国会におきましていろいろ質問をして、政府の代表として責任のある答弁を受けておいても、次の大臣にあくる日聞きますと、これは違うと言う。それからまた一週間、半月なりたってから聞きますと、大臣はそうお答えになったか知りませんが、私どもの解釈ではそれは違いますと、こういうことを言う。そうしてしかも、なおかつ、今までそういう経験があなた個人についても、幾たびかございました。そういうことでございますから、こういう重要なる国際的な意味を持った、しかも日本の将来にかかわる重要な継続的な協定条約でございます。そういうもののためには、あなたの方針、あなたの公約、こういうものが、次のあなたの与党の支持する内閣によってどう継承されるかということを、明確にしておいてもらわなければ困る。
  293. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 先刻の択捉国後日本に引き渡すならば、北千島は放棄してもいいということをわれわれが言った覚えはありません。重光外相も、党議とはずれた線において交渉をするはずはないと思っております。
  294. 穗積七郎

    穗積委員 総理は私の質問に答えて下さい。
  295. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 そうです。あなたはさっき私に、択捉国後日本に引き渡すならば、北千島は放棄、してもいいということを言ったとあなたがおっしゃった。そういう事実はないということを私は答弁している。
  296. 穗積七郎

    穗積委員 私の聞いているのは、そういうことじゃないのです。
  297. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 あなたがそういう質問をしたということは、ここに出席の人は皆聞いている。
  298. 植原悦二郎

    植原委員長 どうか穗積君、もう一度総理あとの引き継ぎの問題を質問なすったことを繰り返してもらいます。
  299. 穗積七郎

    穗積委員 質問を整理して——今まで、またはこれからあなたがこの日ソ共同宣言について御説明になり、明確にさるべき党並びに内閣の方針というものは、次に同じ自民党の支持する保守党政権ができたと仮定いたしました場合、その場合に、これを責任をもってお引き継ぎになって、少くともこの日ソ共同宣言なり、今後の平和条約締結に関する方針は、一貫したものとしてわれわれは受け取らなければならない。そういうことを前提として、私どもはこの条約を審議しておるわけですね。ですから、当然なことでございますけれども、あなたの総裁かつ首相としての方針というものは、あなたの党の次の総裁または首相に、一体責任を持ってお引き継ぎになるのか。この問題に関する限り……。
  300. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 それは引退形式によりますけれども、もし私が円満に引退ができて、延長内閣のような形においての後継内閣ができれば、もとより私の主翌したように次の内閣にやってくれるものと思っております。
  301. 穗積七郎

    穗積委員 そこで大臣にお尋ねいたしたいのは、重光外務大臣は、サンフランシスコ条約の線はくずさない。相手もそれを了承した。そこで交渉した。そのときにわが方において合意するならば、南千島また北千島をソビエトに譲っても、それは条約違反ではないと御答弁になっておられます。ところが、あなたの党の決定は、今明確にされておるところによると、北千島につきましては国際会議によって決定するという党議の決定になっておる。こういうことなんです。それじゃ違う。そうすると、党の決定に違反するはずはないと、外務大臣に対してそういう信頼を持っておられるならば、今まで外務大臣が御答弁になりました解釈は、全部誤まりであると解釈すべきですか、あるいは党議の決定を御変更になったのでありますか、ということを伺っておるのですから、その点を明確にしていただきたい。
  302. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 重光君の発言については、どうか土曜日に聞いて下さい。私は、重光君は党議の線をはずれて、ソ連交渉するはずがないと考えております。
  303. 植原悦二郎

    植原委員長 穗積君に御相談申し上げます。あなたの御質問は、委員長はきわめて重要なる御質問考えます。従って、外務大臣も列席された方がよろしいと思います。で、総理大臣は四時半にお帰りになりたいということは、前々申し上げた通りであります。本日はこの程度にしておきまして、外務大臣の出席を見てあなたの御質問を継続するようにお願いいたします。  次会は……。
  304. 穗積七郎

    穗積委員 委員長ちょっと待って……。それではちょっと資料について一つお願いいたします。外務省が先月の末に、次官名だと存じますが、あるいは次官名でないかもしれない。日本学術会議にあてて、共産圏との学者交流、学術交流については、これをなるべく抑制すべきであるという趣旨の直達を出されたようですが、その通達を資料としてここへ、土曜日の早朝までに出していただきたいことを要求いたします。
  305. 植原悦二郎

    植原委員長 外務省御了承下さい。  それでは、次会は明後二十四日午前十時より開会いたします。本日はこれにて散会いたします。   午後四時四十四分散会