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1956-11-21 第25回国会 衆議院 日ソ共同宣言等特別委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十一年十一月二十一日(水曜日)    午前十一時十分開議  出席委員    委員長 植原悦二郎君    理事 小笠 公韶君 理事 吉川 久衛君    理事 須磨彌吉郎君 理事 田中伊三次君    理事 床次 徳二君 理事 穗積 七郎君    理事 松本 七郎君       伊東 隆治君    石坂  繁君       臼井 莊一君    北澤 直吉君       笹本 一雄君    重政 誠之君       助川 良平君    鈴木 善幸君       高岡 大輔君    中曽根康弘君       福田 篤泰君    松田 鐵藏君       山本 利壽君    大西 正道君       田中織之進君    戸叶 里子君       中崎  敏君    中村 時雄君       永井勝次郎君    福田 昌子君       細迫 兼光君    和田 博雄君       岡田 春夫君  出席国務大臣         内閣総理大臣  鳩山 一郎君         法 務 大 臣 牧野 良三君         外 務 大 臣 重光  葵君         文 部 大 臣 清瀬 一郎君         農 林 大 臣 河野 一郎君         通商産業大臣  石橋 湛山君         国 務 大 臣 大麻 唯男君  出席政府委員         内閣官房長官 松本 瀧藏君         法制局長官   林  修三君         外務参事官   法眼 晋作君         外務審議官   森  治樹君         外務事務官         (条約局長)  下田 武三君         水産庁長官   岡井 正男君         通商産業事務官         (通商局長)  松尾泰一郎君  委員外出席者         全 権 委 員 松本 俊一君         外務事務官         (経済局次長) 佐藤 健輔君     ————————————— 十一月二十一日  委員田中武夫君辞任につき、その補欠として永  井勝次郎君が議長の指名で委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  日本国ソヴィエト社会主義共和国連邦との共  同宣言批准について承認を求めるの件(条約  第一号)  貿易発展及び最恵国待遇の相互許与に関する  日本国ソヴィニト社会主義共和国連邦との間  の議定書批准について承認を求めるの件(条  約第二号)  北西太平洋の公海における漁業に関する日本国  とソヴィニト社会主義共和国連邦との間の条約  の締結について承認を求めるの件(条約第三  号)  海上において遭難した人の救助のための協力に  関する日本国ソヴィエト社会主義共和国連邦  との間の協定締結について承認を求めるの件  (条約第四号)     —————————————
  2. 植原悦二郎

    ○植原委員長 これより会議を開きます。  日本国ソヴィエト社会主義共和国連邦との共同宣言批准について承認を求めるの件外三件を一括して議題といたします。  それより質疑を許します。北澤直吉君。
  3. 北澤直吉

    北澤委員 昨日、河野農林大臣に対しまして、ことしの春農林大臣モスクワに行かれまして漁業交渉をいたした際の、農林大臣ブルガーニン首相との会談内容についてお尋ねをしたわけであります。外務大臣はその席におられませんでしたが、きょうは外務大臣にその点について簡単にお尋ねをしたいと思います。  外務大臣が、モスクワ交渉から帰られまして、自由民主党の政務調査会外交調査会合同会議と思いますが、その際におきまして、ある委員質問に答えまして、河野ブルガーニン会談内容に言及されまして、河野さんは領土問題に対するソ連主張に対して了承を与えておるように自分は聞いておる、そういうふうなお答えをされたのであります。外務大臣は、ロンドンにおきましてシェピーロフ・ソ連外務大臣との会見の際、河野ブルガーニン会談内容について外務大臣はこれを確かめたわけでありますが、一つこの際、これは非常に重大な問題でありますので、外務大臣からシェピーロフ外務大臣との会見内容についてお伺いをしたいと思います。
  4. 重光葵

    重光国務大臣 御質問の点はどういうふうな意味かよくわかりませんが、私はその当時の事情をそのまま申し上げます。私は、自民党代議士会でありましたか、総務会でありましたか、その他の機会でありましたか、御報告をいたしたことは、その点については今北澤君の言ったようなことは私は申しませんでした。私ははっきりこう申しております。私が報告をしたことは、モスクワにおいて私が交渉をした正式の交渉は四、五回した、その第一回にも第二回にもその他の機会においても、ソ連側は、シェピーロフ外務大臣の口からソ連側の領土問題に対する主張をはっきりとしかも強硬に主張をしたのであります、その主張日本側には十分わかっておるはずだ、日本側議員団の行ったときにもそれを説明しておる、漁業交渉のときに河野農林大臣もよく説明しておるからわかっておるはずだ、こう申したのであります。これはわかっておるはずです。これはなるほどわかっておるかもしれないけれども交渉の場合にこれを黙認するわけには参りません。そこで私はこれに弁駁をいたしました。ソ連の言うことはよくわかっておるけれども、しかし、それは、日本が何もこれを承認したわけでも何でもないのだ、日本は別の考え方を持っておる、それであるから、日本日本立場主張をこれから述べるのだ、しかし、その主張を述べる前にはっきりしておかなければならぬことは、日本政府ソ連主張を承諾していないのみならず、河野農林大臣自身もその主張承認しておったことはないのである、それは、河野農林大臣自分に対するその帰朝のと遂に報告したことによって、自分ははっきりそれを知っておるのである、それでソ連側主張承認したことは少しもないのである、こういうことを私は弁駁して、それから日本主張はさてどういうものであるかということを申し述べたのであります。これがその内容であります。シェピーロフロンドン云々ということもございますが、それは、シェピーロフと私とここにおる松本全権の三人と、通訳と、いろいろ話をいたしました。どういう話がそのときにあったかということは、記録は十分ございます。詳細にございます。詳細にございますが、その問題についてはソ連主張はこれこれであるということをまた繰り返したわけであります。こちらはこちらの立場を繰り返したわけであります。そういうことであります。これを私は自民党の会合でそのまま説明しました。すなわち、ソ連側では、もう日本側はわかっておるのじゃないか、こういうことはいかにも日本側承認したように言いますからそれはそうじゃないのだと私は弁駁しておる。以上の点で御了承を願います。
  5. 北澤直吉

    北澤委員 重光外務大臣が、シェピーロフに対しまして、日本政府態度としてそういうことは承認しておらぬということをお述べになったことは、これは私ども報告を聞いておりますが、ただ問題は、日本政府代表として行かれた農林大臣が、しかも日本鳩山内閣実力者として見られておる河野農林大臣がどう言ったかということは、非常に重大な意味を持つのであります。ただいま、外務大臣の話によりますと、ソ連側は、シェピーロフが依然として向う主張を継続しておる、こういう話なのでありますが、河野ブルガーニン会談内容につきましては、その実体は一体どうであるか。もちろん、日本政府は、それは承知しておらぬ、こう言うのでありましょうが、河野農林大臣個人としてはブルガーニンとの間にどういう話をしたのか、了承したのかしないか、この点をぜひはっきりしておいてもらいたいと思います。
  6. 重光葵

    重光国務大臣 今申した通りで、ほかには私として説明する材料もございません。河野農林大臣漁業交渉に行かれた。その結果の報告には、自分漁業交渉に行ったんだ、ブルガーニンに話したときに、ブルガーニンもいろいろなことは言っておったけれども漁業問題の交渉をしたのであるから、政治問題について議論する資格自分にはないのだ、だから漁業問題は早く暫定協定をきめてやろうと言って、イシコフ漁業大臣交渉をすることに向うの指図があって、そして交渉したのだ、国交回復の問題については自分交渉する資格がないのである、こう言ったというので、全く筋の通った話であり、その報告を受けて、その材料をもって、河野農林大臣がそんなソ連側の言う主張承認しておることは少しもないんだということを、力強く反駁したのでございます。これが実情でございます。
  7. 北澤直吉

    北澤委員 この問題はこれ以上追及いたしません。私どもの持っておりますはっきりした証拠によりますと、河野ブルガーニン会談におきましては、やはりソ連側主張するように、河野さんが了承を与えたというはつきりした証拠を持っておりますが、今日はこれ以上追及いたしません。  次の問題に移りますが、国際連合加入の問題でございます。(「資料があったら出せ出せ」「君、それが急所だよ」「河野大臣が来たからやれよ」と呼び、その他発言する者あり)時間もないようでありますから、これ以上追及しません。(「与党である者がそんな疑惑を持ってどうするのだ」と呼び、その他発言する者あり)君らの忠告はいらないよ。  次に、国連加盟の問題に移ります。きのう、大体本年は国連加盟が実現するだろう、こういう御答弁がありました。私どもも一応これを信頼するわけでございますが、政府説明によりますと、日本国連加盟をすれば、日本国際的地位は高まる、日本発言権は強化する、こういうふうに政府は見ておるわけでありますが、日本国連加盟しましても、国連加盟国としての義務を十分に果さなければ、私は日本発言力というものは強くならないと思います。われわれ個人の場合におきましても、権利だけを主張して義務を果さぬということでありますれば、相手にされません。従って、日本発言力を強化する、こういうためには、どうしても日本国連加盟国としての義務を十分に果すことがその前提ではないかと、私は思うのであります。そうしますると、もし、将来、国際連合におきまして、今回の中近東問題のように国際警察軍を作る、こういうふうな場合におきまして、日本はこれに参加する覚悟がなければ、日本発言権というものは強くならないと私は思うのでありますが、そのためには、どうしても日本憲法改正を必要とすると思います。そういうわけでございますが、憲法改正は当分の間望めないと私ども考えております。そういろわけで、国連加盟国として十分の責務を果し得ないとしまするならば・国連加盟しましても、日本発言権は、もちろん多少は強化されましょうが、十分には強化されない、私はこういう考えを持つのでありますが、外務大臣はこれに対してどうお考えでございますか。
  8. 重光葵

    重光国務大臣 お説の通りに、国連加盟の上は、国連憲章に基く義務を十分に履行するということが必要であろうと思います。またそうした方が発言力を強化することになると思います。今警察軍のことでございましたが、ちょっとそれを聞き忘れましたが、これは軍備の問題とは全然関係はない。日本日本としての自衛軍に関する考え方を進めていけばいいので、国連がまだ警察軍を持っておるというなにはございません。今中東の問題で国連軍を組織しておるのでございます。国連日本が万一今日加入しておったと仮定しても、それにすぐ参加する必要は少しもない。それによって発言権が弱るということはないのでございますから、その点は少しも差しつかえないと思います。
  9. 北澤直吉

    北澤委員 日本国連加盟につきましては、何も日本が再軍備をする必要はない。これは全然わかるのでありますが、ほんとうに日本国連加盟国として十分の発言権を持つというためには、ほかの加盟国が大体やるようなことはやらないと、私は日本発言権はそう強化されぬと思います。大臣は、国連加盟後の日本発言権の問題と、それから日本自衛軍の問題とは関係がないとおっしゃいますが、私ども考えでは、ほかの国連加盟国がやるようなことをやはり日本もやらなければ、国連加盟しましても、日本発言権はそう強くはならない、こういうふうな見解を持っておるのでありますが、この問題はこれにとどめます。  次に、この国連加盟の問題でございますが、社会党の諸君の主張によると、日本は、国連加盟しますれば、これによって日本安全保障は十分である、自衛軍も要らないし、日米安全保障条約も要らない、要するに、国連加盟すれば、国連によって日本安全保障は期待できる、こういうふうな主張をしておるわけでありますが、今回のエジプトの問題、あるいはハンガリー等の例を見ますならば、国連加盟するだけでは日本安全保障を確保することができないと思うのであります。そういうわけでありまして、国連加盟しましても、やはり、日本としては、日本自衛力を漸増しますとともに、日米安保条約のような地域的安全保障条約というものに参加することがどうしても必要である、こう思うのでありますが、この機会外務大臣のこれに対する考えを伺っておきたいと思います。
  10. 重光葵

    重光国務大臣 国連義務を果すという必要のあることは、これは私もその抽象論はお説の通りだと思います。しかし、先ほど申し上げたように、日本自衛軍国連加盟の問題というのを、今私どもは直結しておるとは考えておりません。これは全然別な問題であると考えております。自衛軍は国の自衛見地からいくのであります。国連加入の問題も、むろん大きく言えば政策的にこれは自衛になるのでありまして、これは直接にこれを連結して今考えることはむしろ適当でない、こう考えております。
  11. 北澤直吉

    北澤委員 今回の日ソ共同宣言におきましては、国連憲章尊重、それから相互に国内事項には干渉しない、こういう規定があるわけでありますが、今度のポーランドなりハンガリーに対するソ連態度を見ておりますと、私どもは必ずしもこれを全面的に信頼するわけには参りません。ソ連は、都合のよいときには条約を守りますが、自分都合の悪いときには条約をほご同様に考えますことは、日ソ中立条約を破って対日戦に参加したあの例を見てもわかるのであります。ソ連の掲げておりまする平和五原則とかあるいは平和共存の政策というものは、私は、看板に偽わりがあるのではないか、こう考えるのであります。これについては、現に、今回のハンガリー問題について、ユーゴスラビアのチトー大統領あるいはインドのネール首相もこれを非難しておるわけであります。そういうわけでありますので、私は今回の共同宣言にありまする国連憲章尊重、内政の不干渉という規定につきまして、これをこの通りに実現するためには、一体政府はどういうお考えを持っておられるか、この点を伺っておきたいと思います。
  12. 重光葵

    重光国務大臣 さような国連憲章に関する事態が起った場合には、十分に国連内において検討もし、また世界世論が起ってくると思います。これによっておのずから批判がきまって、そうしてこれが世界政局を大きく左右すると考えております。日本側としても、将来国連加入ができますならば・あくまで国連憲章の趣旨によって世界世論を起すことに努力したい、こう考えております。
  13. 北澤直吉

    北澤委員 次の問題に移りまして、今回の共同宣言におきましては、抑留日本人の帰還の問題につきまして、「有罪判決を受けたすべての日本人云々と書いてあるのであります。私ども考えによりますと、ソ連との関係におきましては、日本人には戦犯はあり得ない、こう考えております。と申しますのは、日本ソ連に対しては一ペんも宣戦をしたことはありません。ソ連が、一方的に、日ソ中立条約に違反して、日本との戦争に参加したわけであります。しかも、戦争と申しましても、ほとんど戦闘行為のない戦争で終ったわけであります。従って、私どもは、ソ連との関係におきましては、日本人戦犯というものはあり得ないと思うのでありますが、この共同宣言に書いてありまする「有罪判決を受けたすべての日本人」というのは、これは日本人戦犯ということを認めたわけでありますか、この点を承わっておきたいと思います。
  14. 重光葵

    重光国務大臣 戦犯ということを日本が認めたことはないのであります。しかしながら、ソ連において戦犯として判決をしたということも、これは事実でございます。そうでありますから、ソ連において判決を受けた人間を少しでも早く助け出そう、こういう見地に立って交渉をしたことは、御存じの通りであります。そういう意味でそれを書いたわけであります。今戦犯があるとかないとかいう一般論をしたわけではございません。
  15. 北澤直吉

    北澤委員 時間もそうありませんから、先に移ります。  今度の共同宣言におきましては、この共同宣言解釈につきまして双方の間に紛議が起った場合に、これを解決する方法は書いてないのであります。普通、平和条約の場合におきましては、条約解釈について争いがあった場合には、これを解決する条項があります。御承知のように・桑港平和条約におきましては、条約解釈について紛議があった場合には、最終的には国際司法裁判所に訴えてこれをやる、こう書いてある。それから、ソ連が入っておりまするイタリア平和条約の例を見ますと、このソ連の入ったイタリア平和条約解釈ないしはその実施について紛争があった場合には、まず最初は両当事国外交交渉による、これがまとまらなかった場合には、両当事国代表第三国代表とを加えた委員会でそれを解決する、公平な第三者を中に入れてこの紛議の解決をする、こういうふうな規定があるわけであります。今回の共同宣言条項についての解釈につきまして紛争があった場合には、これをどう処理するかという規定は、この共同宣言にはありません。きのうから問題になっております、たとえば、共同宣言にありまする平和条約交渉というのは領土問題を含むのだと日本の方では解釈しており、ソ連の方ではそうでない、こういう紛議があった場合には、もしこういう紛議を解決する条項がありますれば、それによって解決する道があるのでありまするが、そういう紛争を解決する条項は、今回の日ソ共同宣言にはないのであります。これはどういうわけで入らなかったのでありますか、この点を伺っておきたい。
  16. 重光葵

    重光国務大臣 解釈について紛議が起った場合においては、普通の外交問題となるわけであります。これは、言うまでもなく、もちろんであります。もっとも、平和条約という正式の条約ともなれば、そこまでやはり規定しておく必要があるので、平和条約案にはそういうこともございました。しかし、これは共同宣言でございますから、共同宣言内容は、当然双方とも誠意を持って行うということで宣言共同にするわけでありますから、その紛議の点まで入れるのは適当でない、こう考えたのであります。しかし、紛議を生ずることを今予見していないとも言って差しつかえないと思います。
  17. 北澤直吉

    北澤委員 共同宣言に対する質問はこれをもって終りまして、次に、貿易発展及び最恵国待遇の問題についてお尋ねしたいと思います。  この議定書によりますと、関税とかそういうものに対する最恵国待遇というものが規定されております。その例外として「いずれかの締約国の重大な安全上の利益保護を目的とするいかなる種類の禁止又は制限を行う当該締約国権利制限しないものとする。」これは、大体、ココム制限等を想定しまして、これを最恵国待遇例外規定として置いたと思うのでありますが、普通の日本の入っておりまする通商条約によりますと、最恵国待遇例外事項として相当たくさん書いてある。ところが、今度のこれにつきましては、この例外事項は「安全上の利益保護」というだけでありまして、ほかには例外規定はないのであります。そこで、私どもは、これは少し心配過ぎるかもしれませんですが、今、日本とアメリカとの間には、日米行政協定あるいはMSA協定あるいは余剰農産物協定等によりまして、こういうものに関連する物品の輸出入について関税を減免する、こういうふうな規定があるわけであります。そうしますと、こういうものにもこの最恵国待遇というものが適用があるかどうか、こういう心配を待っております。  それから、もう一つ考えてみたいことは、ソ連と中共あるいは東ヨーロッパ衛星諸国との間には、いろいろこういう関税上の特恵と申しますか、そういうふうな特別の規定があると思うのでありますが、ここにはそういうものについて例外規定がないとしまするならば、日本はそれにも均霑し得るのかどうか、こういう問題もあると思うのでありますが、そういう点について外務大臣はどういうお考えを持っておりますか、伺いたいと思います。
  18. 重光葵

    重光国務大臣 御承知通りに、最恵国待遇というものの解釈は、何でもかんでもほかの国にやればその通りにやる、こういうわけではない。いろいろ条件もありまして、そう窮屈なものではないのであって、ここに掲げてあるようなことは当然のこととも認められるのでありますが、これは、お説の通りに、ココム関係とかなんとか、いろいろな関係がございまして、そういうことは最恵国待遇といって一々問題にならぬのだというような全般の意味でございます。しかし、今御質問の点には、余剰農産物とかいろいろな協定のことまでも言われましたから、これらは詳しく条約局長から御説明申し上げます。
  19. 下田武三

    下田政府委員 御指摘議定書規定でございますが、これは一般通商航海条約規定されましたような最恵国待遇のような問題では実はないでありまして、主として手続規則適用に関する問題だけを取り上げたのでございます。従いまして、パーターの際問題になります量的制限とか、あるいは外国為替上の理由によります制限、そういうものはすべてこの問題からはずされておるわけでございます。通関手続規則その他そういう手続面だけの待遇規定したわけでございます。なお、先ほどのお話のございました余剰農産物等関係におきましては、これは、日ソ間だけに限りませず、MSA余剰農産物の援助を受けておる国はたくさんあるのでございますが、これは、一般の国家間の取引ではなくて、特殊な条件のもとに作成せれました特殊の協定でございますから、この特殊の協定規定したことが、第三国から最恵国待遇の問題として均霑を申し出られるということはまずないという、国際間の通念になっておりますので、その点の御懸念もないと存じておる次第でございます。
  20. 北澤直吉

    北澤委員 今の条約局長の話によりますと、最恵国待遇というのは、規則手続に関する最恵国待遇だ、こう言われますが、この議定書にはすべての関税及び課懲金に関する最恵国待遇と書いてある。従って、そういう手続ばかりでなく、関税等についても最恵国待遇規定されておると思うのですが、その点はどうですか。
  21. 佐藤健輔

    佐藤説明員 今御指摘がありましたように、条約局長の御説明は多少不明な点がございましたので、御訂正を申し上げますが、産品の輸入輸出に関する規則でございますので、御指摘のように実質的な部面も含まれております。
  22. 北澤直吉

    北澤委員 要するに、問題は関税及び課徴金関税についても最恵国待遇を受けられるのですか。
  23. 佐藤健輔

    佐藤説明員 さようであります。課懲金についても最恵国待遇を受けることができます。
  24. 北澤直吉

    北澤委員 最恵国待遇の問題は以上でとどめますが、今度の貿易発展最恵国待遇に関する議定書に関連しまして、今度の日ソ条約におきましては、ソ連の方から日ソ貿易を大いに伸展したい、こういうわけで、五年間に十億ルーブルの貿易をしよう、こういう提案があったというふうに報道されておるわけであります。そこで、私どもは、もちろんこういう提案がそのまま実行されればけっこうだと思うのでありますが、結局、日本ソ連貿易をするためには、日本からは幾らでも売れるかもしれないけれども、しからば・ソ連支払い手段はどうか。結局バーターによると思うのでありますが、支払い手段の問題で、なかなかこういう大きな貿易計画というものは実現できないのじゃないかと、こう思うのです。現に、昨年イギリスの実業家がソ連に参りまして、三年間に四億ポンドの発注をしようという提案をしたのでありますが、実際の去年中の取引の契約はその何分の一かである。結局問題はソ連の方でこれを支払う支払い手段がない。金で支払うわけにはいきませんし、またソ連考えておったような農産物で支払うというわけにいかないということで、こういう大きな貿易提案をしたのでありますが、実際の取引の契約はその何分の一かにすぎない、こういう実績があるのであります。きのうも、通産大臣のお話によりますと、日ソ貿易の現在の実績はそう多くない、こういうふうなお話であるのでありますが、そういうふうなソ連支払い手段と申しますか、そういうものを考えまして、この五年間に十億ルーブルの日ソ貿易というものは一体実現の可能性があるのかどうか、この点を通産大臣お尋ねしたいと思います。
  25. 石橋湛山

    ○石橋国務大臣 往復十億ルーブルの貿易の実現の可能性があるかどうか。これは将来のことですから、実際のことはわかりません。現状においてはなかなかむずかしいということだけは申し上げられると思います。状況が変ればまた別ですが、果して実現しないとも言えないけれども、今までの状況ではむずかしい、こう申し上げておきます。
  26. 北澤直吉

    北澤委員 この際、参考のために、昨年の日ソ間の輸出入の実績を一つお話し願いたい。
  27. 石橋湛山

    ○石橋国務大臣 五十五年の実績は、日本からの輸出が二百七万四千ドル、それから輸入が三百五万三千ドル、こういうふうになっております。
  28. 北澤直吉

    北澤委員 将来の見通しでありますから困難でありましょうが、昨年の実績を考えますと、十億ルーブルの日ソ貿易というものは、これは大へんな数十倍、数百倍になるようなことでありますが、これは、従来の日ソ間の関係戦争前のほんとうに日本ソ連が友好にあったときにおきましても、日ソ貿易というものはそう多くなかったのであります。今後の発展に期待する以外に方法がありませんけれども、今回の十億ルーブルという案は、これはあまりにも大き過ぎはせぬかというふうに私は考えておるわけであります。  これによって大体共同宣言、それから議定書等に対する質問を終るわけでありますが、あと二、三点お尋ねしまして、私の質問を終ります。  いよいよ日ソの国交が回復されますと、今後にいろいろな問題が起ってくるわけであります。まず第一に問題になるのが、日本の国内の治安対策の問題でございますが、これは時間がありません。同僚からこの問題につきましては詳しくお尋ねがあると思いますので、この点は私は省きます。  次に考えなければならぬことは、この日ソ国交回復に関連をして、日本とアメリカとの関係をどう調整するかという問題だろうと思うのであります。御承知のように、ソ連の究極の目標は、世界の赤化をするという政策にあります。従って、日本に対する政策も、その世界政策の一環としてこれは考えなければならぬと思うのであります。この見地から考えまするならば、ソ連日ソ国交回復を非常に熱望しておった。その理由は、私は、この日ソ国交回復を通じて、今後ますます日本とアメリカを離反をさして、そうして、でき得べくんば日本を中立主義の立場に持っていこう、こういうふうな考えではないかと思うのであります。今回の交渉の際に、ブルガーニン首相等が、日本におきまするアメリカの駐留軍の撤退を希望したり、あるいはアメリカの植民主義政策に対しまして日本はどうして反対しないか、こういうふうなことを言われておるのでありまするが、これは、明らかに、私は、ソ連日ソ国交回復を通じて日本を米国から離そう、こういうことを考えておるものと思うのであります。そういうふうなことから考えますると、今後の日米関係、現に、日米安全保障条約によって共同防衛の立場にある日本と米国との関係を、そこに何かみぞを作ろうというふうな考えではないかと思うのであります。そういうことを考えまする場合におきまして、私は、従来あるいは従来以上の日米協力関係というものを維持するためには、この際日米関係について思い切った手を打たなければ、これは不可能であるというふうに考えておるわけでありますが、政府は今後の日米関係の調整についてどういう考えを持っておりますか、外務大臣から伺いたいと思います。
  29. 重光葵

    重光国務大臣 他国のやり方、政策については、私は解釈の仕方がいろいろあると思います。今日の国際情勢に照らして、今までの日米関係、これは条約にもはっきりきまっておるのでありますから、この関係は非常に重要なものだと考えております。これは、あくまで、誤解のないように、そしてまた十分強化し得るようにしていくことが、日本の国としては必要であると考えておる次第でございます。
  30. 北澤直吉

    北澤委員 どうも、大臣の御答弁がはなはだ抽象的で、私どものような頭の悪い者にはよくわからぬのでありますが、せんだってアリソン大使が帰国をするというので、私も会って話をしたのでありますが、いよいよアメリカの方でも大統領選挙が終って新しいアドミニストレーションができるわけであります。こういう機会に、今後日米の関係をどういうふうにしたならば、日本とアメリカというものが、自主的な立場を維持しながら、同じ方向に向っていけるか、こういう問題について、日本とアメリカとの首脳者の間で率直な意見を交換した方がいいだろうというふうな話をアリソンはしておりました。それで、今度向うへ帰っていろいろ話をして正月に帰ってくるという話でございましたが、私は、現在の日米関係を見ますと、お互いの間に相当の誤解がある。日本側にも誤解がありますが、アメリカ側にも誤解がある。また、日本側の注文もありますれば、アメリカ側の注文もあると思うのであります。そういう点を率直に両方の首脳者の間で話し合って、そうして、ほんとうの理解の上に立っての日米協力関係というものを進めていかなければならないと思うのであります。大臣のおっしゃるように、ただ条約にそうきまっておるからそうするのだということでなくして、もっとほんとうに真剣に自主的に考えて、どうすれば日米関係を維持していけるかということについて、もう一ぺん大臣考えを伺いたいと思います。
  31. 重光葵

    重光国務大臣 私もお説に全然御賛成申し上げます。その通りに、そういうふうなやり方でもって進めていきたいと考えております。
  32. 北澤直吉

    北澤委員 どうもはなはだばく然たる御答弁で満足しかねますが、もう一点伺って私の質問を終ります。  次の点は、今後の日本の東南アジアに対する対策の問題でございます。昨年来鳩山内閣日ソ交渉を非常に熱心にやって参られました結果、ともすると、東南アジアに対する対策というものについては、われわれ国民の期待するようには進んでおらなかったと私は思うのであります。たとえて申しますと、インドネシアの賠償問題にしましても、あるいはまたカンボジアに対する経済協力の問題にしましても、あるいは南ヴェトナムに対する賠償問題にしましても、なかなか解決に至ってないように思うのであります。こういう状態におきまして、最近の東南アジアの状況を見ますと、中近東、東ヨーロッパのああいう情勢の結果、新しい情勢が東南アジアに展開しつつあるというふうに私どもは見ております。アメリカ方面の調査を見ますと、今後東南アジア方面におきまする共産勢力の活動が相当活発になるのじゃないか、こういうふうな心配をしているようであります。現に、そういうことと関連があるかどうか知りませんが、アメリカの太平洋艦隊がハワイに集結をしておるというふうな報道もあるわけであります。また、新聞報道によりますと、中共の周恩来首相は、今度大規模の東南アジア訪問を考えまして、現に北ヴェトナムに行っておるわけでありまして、昨年のブルガーニン、フルシチョフのアジア諸国歴訪よりもっと大規模の東南アジア旅行に出かけておるわけであります。こういう情勢を見ますと、今度の中近東なり東ヨーロッパの情勢の結果としまして、東南アジア方面におきます新しい事態の展開というものも考えなくてはならないかと実は思うのであります。こういう情勢にかんがみまして、私どもとしましては、わが日本は・既定方針でありまする自由諸国なかんずく東南アジアの自由諸国との提携を一そう強化する、こういうふうな見地から、日ソ国交回復を機としまして、さらに一段と東南アジア政策に熱意を入れて当る必要があると思うのでありますが、こういう点について外務大臣はどういうお考えでありますか、伺いたいと思います。
  33. 重光葵

    重光国務大臣 東南アジア問題についても、あなたのお考えと同様に私も考えております。日ソ交渉の間におきましても、われわれ外務当局としては、東南アジアの問題を決してゆるがせにしてきたわけじゃございません。この方面に対するいろいろな外交交渉、たとえば賠償の問題等々について進めていこうという努力はいたして参ったのであります。賠償問題も決してこれを等閑に付したわけではございません。それからまた、一般の情勢として、今お説の通り発展も見られるのでございます。従いまして、今後は一そうこういう方面にも力を入れて、政治的とはいわず、経済的にいろいろ施策をする必要炉あると考えておる次第でございます。
  34. 北澤直吉

    北澤委員 外務大臣も東南アジア問題につきましては今後一その力を入れていかれるというお話であります。外務大臣のお気持はわかるのでありますが、どうも東南アジアの人たちがそうは受け取っておらぬようであります。せんだっても、ビルマから前のバーモ内閣の副総理大臣であったタキン・バ・セイン氏がやってきまして——まだ日本におると思いますが、日本に来てみますと、日本は東南アジアに対する熱意がどうも少いように思われるのだというわけで、どうしても日本は今後とももう正そう東南アジアの問題に熱意を持ってもらいたい、こういうことを言っておりまして、この間タキン・バ・セイン氏が鳩山総理にお会いしたと遂にも、バ・セイン氏から鳩山総理にお話がありました。鳩山総理は、いや、それは違うのだ、日本の表現の仕方がまずいからそういうふうに誤解をするかもしらぬが、日本は絶対にそういうことはない、東南アジア問題については非常に熱意を持っておるのだ、そういうふうに総理はお答えになったのでありますが、現地の人たちはそういうふうな印象を受けているわけであります。どうぞ、外務大臣の仰せのように、東南アジアの事態が非常に重大でありますし、日本と特殊の関係にある地帯でありますので、今後、この東南アジアに対する施策については、一つ十分の熱意を持ってこれに当られんことを希望しまして、私の質問を終ります。
  35. 植原悦二郎

    ○植原委員長 次は大西君の質問の順序になりますが、大西君は、総理大臣外務大臣農林大臣、通産大臣に御質問ですね。それで、総理大臣は今ちょっとお出かけになっておるときですから……。(「そこにおるじゃないか」と呼ぶ者あり)ここにおいでですから、十二時になりますが、私の考えは、総理大臣に対する質問をお済ましになって切りをつけたい、こういう考えですが、そういうことはどうかという御相談です。
  36. 大西正道

    ○大西委員 私は一時間くらいです。
  37. 植原悦二郎

    ○植原委員長 それでは、大西正道君。
  38. 大西正道

    ○大西委員 きのうはわが党の松本七郎君が全般にわたって詳しく質問いたしましたので、私は、残された問題、なお明らかにしておかなければならぬ問題について、二・三お伺いをしたいと思います。  まず初めに、首相にお伺いいたします。わが党がかねてから主張いたして、また努力し、あなた方に協力をいたしておりました日ソ国交の回復の問題は、調印を終えて今や批准の直前になっておるのでありまして、このことは私は国民とともに御同慶にたえぬことだと思っております。それに対しまして、鳩山さんの御努力も私は多といたすのであります。まあ与党の内部にも不満があるようでありまするけれども、国民の大多数は、若干の不満はあっても、まあまあ、こういうところであろうと思うのであります。ほっとした気持であろうと私は思うのであります。けれども、このくらいの内容なれば、もっと早く、もっと手際よくこういう結果を見ることができたのではないかという気持もあるわけであります。早い話が、交渉を始めましてから一年数カ月もたっておりまするし、場所もモスクワからロンドン、またモスクワ、それからわが全権も松本さんから重光さん、最後には老首相がわざわざ出かけられるという、そういうふうな大へんな騒ぎ方であるし、これにからんで、与党内部の対立の問題が表面化いたしまして、まあ醜を天下にさらしたというようなことは、これは過評でありましょう。過酷な評であろうと思いますけれども、とにかく、もっと手際よく、早くこういう結果を招来することができたのではないか、こういうことを国民も思っております。私もそういう感じを持つわけであります。今日、批准を前にいたしまして、鳩山首相といたしましては、この一年有半の過去を顧みて、私が申し上げました点につきまして、どういうお考えを持っておられるか、どういう感懐を持っておられるかということを、まず一つこれはお聞きしたいと思う。率直に一つ、肩のこらない程度で気持を聞かしていただきたい。
  39. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 ソ連がどういう態度に出るか、日本の国論がどういうところでまとまるかということが、お互いに先の見通しができますれば、もとよりこういったような日ソ交渉は数ヵ月前にはできたでありましょう。そして、同時に、今日できたソ連との共同宣言あるいは附属書が非常に満足すべきものとも思っておりませんけれども、やむを得ざる、現地においては最善の道だと考えております。われわれがとにかく日ソ交渉を暫定方式でやりたいと考えましても、平和条約方式でやった方がいいという論は当然あるべきはずなんです。領土問題についてソ連はどうしても聞かないということが先にわかって、みなが承知しておれば、もう少し早くできたでしょうが、そういうように、早くみなががまんをするとかあるいはソ連の事情を知るということは至難なことです。やむを得ないと思います。
  40. 大西正道

    ○大西委員 特に、領土問題につきましては、これはもっと何とかならなかったか、こういう気持が強いと思うのであります。私は松本全権にお伺いいたしたいのでありますが、この結論とするところは、歯舞、色丹は返すが、それは今じゃない、平和条約締結のときだということになっておるのであります。これは、鳩山さんがわざわざ乗り込まれるときには、国民はこれがすぐ返ってくるのではないかという期待を持っておった。私は、一年有半の経過を顧みて、もっと領土の問題に対しては有利な条件で妥結するチャンスがあったのではないかと思うのであります。たとえば、昨年の秋でありまするが、われわれソビエト訪問国会議員団が三十数名参りまして、クレムリンでブルガーニン、フルシチョフと話をいたしましたときに、ちょうどそのときはアデナウアーが来ておりまして、アデナウアー方式で一週間足らずでばたばたと片づけて帰ったときでありますけれども、そのときに、初めてソ連は歯舞、色丹を日本に返してもいいということを言明いたしました。そのときは、これは平和条約方式であってもよろしい、また、それ以外の、いわゆるアデナウアー方式のようなものでもよろしい、こういうふうな意見が出たと私は思っておる。平和条約方式でなければこの歯舞、色丹を返すことはならぬというふうな積極的な制限をしなかったように私は記憶いたしておるし、大体それで間違いないと思っておるのでありまするが、もしそうだといたしますと、そのときに、今のような歯舞、色丹が後に返るというようなことでなしに、もっと有利な条件で妥結するチャンスがそこにあったと私は思うのであります。これは過去のことでありますけれども、一応この点について松本全権の当時の情勢の握り方を一つ聞かしていただきたいと思うのです。
  41. 松本俊一

    松本全権委員 ただいまのような御質問を私に対してなさる方が相当多数あるのでありますが、しかし、私は、根本において、昨年の八月、九月、歯舞、色丹を返すと申しましたときの先方の言い方は、要するに平和条約について他の条項がすべて満足をせられるならばということを必ずつけておったのであります。その後南千島の問題が出ましたために、私自身といたしましても、この歯舞、色丹だけで平和条約をやるという方向に向って話を詰める機会はなかったのであります。その話を詰める機会を持ったのは、重光外務大臣が全権として、私もお供いたしまして一緒に行きましたときが初めてなのであります。従って、先方が、歯舞、色丹を譲るということとともに、国境線を確定しなければならぬという意図を初めから持っておったのか、重光大臣が行かれたときに持ったのか、これはもうその当時やってみなければわからないことでありまして、今日、昨年の方がいい条件でまとまりたといったようなことは、これはあるいはそういう観測もできるかもしれませんけれども、そのときにはそこまで話を詰めていなかったのであります。予測の範囲を出ないのであります。やはり、当時話を詰めてみたら、結局、歯舞、色丹は譲るけれども、国境線は根室海峡、野付海峡で引くんだということになっておったのかもしれない。その点は、こちらが有利であったかどうかというようなことは、これば軽々に私としても判断できないことであります。さよう御了承願います。
  42. 大西正道

    ○大西委員 きのう、松本君の質問に対しまして、重光外務大臣がお答えになっておることでありまするが、モスクワで歯舞、色丹の返還を承認して、そして野付、根室海峡で境界線を引く、いわゆる平和条約方式で最後の決意をしたというとき、そういうときに、この国後、択捉を含む千島、南樺太のソ連領有は認めたとしても、サンフランシスコ条約に抵触しないと思う、こういうふうな答弁がなされたのでありますが、これは今後の日ソ交渉の上に非常に重要な意味を持ちまするので、よもや言い間違いではなかろうと思いまするけれども、もう一回改めて私は確認を求めます。
  43. 重光葵

    重光国務大臣 私は抵触するものではないと思うのです。昨日御答弁申し上げた通りであります。ただ、そのと遂に申し上げた通り・サンフランシスコ条約にはむろん関係を持つのだ、こういうことはそのときに申し上げております。
  44. 大西正道

    ○大西委員 きのうと答弁が多少違うようであります。その関係を持つということは、もちろん関係はありましょうが、それを具体的に報道する場合に、そのサンフランシスコ条約との関係をもう少し明らかにしてもらいたいと思う。
  45. 重光葵

    重光国務大臣 昨日詳しく申し上げた通りであります。サンフランシスコ条約によって領土の問題が取り扱われております。そうでありますから、この調印国は関係を持っておる利害関係者であると、こう申し上げたのであります。
  46. 大西正道

    ○大西委員 それでは、今後日ソ間でこの領土の最終的な取りきめをやるという場合には、アメリカに対して、サフランシスコ条約関係の国々に対しては、何ら遠慮なく、そういう国々から、とやかく言われる筋合いのものではないと、基本線はこういうふうに考えてよろしいですか。
  47. 重光葵

    重光国務大臣 私は、日ソ関係日ソ両国で交渉して差しつかえない、こう考えております。しかしながら、ほかの利害関係を持っておる国に対しては、十分これについて了解をせしめなければならぬと思っております。
  48. 大西正道

    ○大西委員 非常に詭弁のように思うのですが、了解をしない場合にはどうなりますか。具体的に申しますと、日ソ間できめてよろしい、しかし関係国には了解をさせなければならぬと言うが、その関係国が了解をしないという場合には、当然、あなたは、これまでの主張であるなれば、これは日ソ間で最終的な結論を出してしかるべし、こういうことになると思う。このことは、きのう条約局長も、外務当局の見解はどうかという質問に対して、はっきりその点を肯定しておると思う。(重光国務大臣「おかしいな」と呼ぶ)おかしくないです、少しも。
  49. 重光葵

    重光国務大臣 了解しない場合は了解させる交渉をあくまでやる。これが国際間の問題であります。
  50. 大西正道

    ○大西委員 あなたは、外務大臣としているいるそういう理屈をこねることじゃなしに、現実に外交問題を処理してこられておる。日ソ間で最終的な結論が是なりというふうに出た場合に、これに関係のある国に了解をさせるといっても、それが了解をしないと言った場合には、日ソ間で取りきめたことに対しては、これは御破算にしますか。そうじゃないでしょう。そういう具体的な取りきめに対して、ああも考える、こうも考えるじゃなしに、そういう場合にはどうかということを私は申し上げておる。
  51. 重光葵

    重光国務大臣 詭弁はあなたの方が詭弁、だと思います。外交交渉で、日ソ関係日ソ関係できめて、それがきまらぬ場合には、日ソ関係できめるようにまたやらなければならぬ。今回もそういう工合にやっておる。それについて、了解させるためには、利害関係のある国には十分了解を求める、外交交渉をする、こういうことが外交の常道であります。すべてそうやらなければならぬ。了解しないということになれば、その国との間の関係がそれだけ悪化するわけであります。しかしこの問題についてはそういうことはないと思います。
  52. 大西正道

    ○大西委員 しつこいようだけれども……。理屈はあなただと言われるけれども、これは現実にそういう問題が出てくるということが予想されるのであります。外務大臣はそういうことはないと言われるけれども、私は当然常識としてそういうことが現実にあり得ると思います。それじゃ、あなたは、この間ロンドンであなたが決意されたときに、ダレスさんがどういう申し入れをしたのでか。当然あり得ます。やはり、責任ある地位のあなたは、この問題に対してはっきりとした態度を私はこの際示してもらいたいと思う。
  53. 重光葵

    重光国務大臣 これ以上はっきりした態度はとれないのです。私はモスクワ交渉した、これに利害関係を持っておるアメリカ当局者に十分にこれを了解せしめる手段をとったことは当然のことだと考えております。何も不思議なことはありません。
  54. 大西正道

    ○大西委員 私はその答弁には納得いたしませんが、これはまた後ほど一つ他の人にこの点を明らかにしてもらいたいと思います。  そこで、あなたが今のように言われる根拠には、日ソ間で話をきめたらよろしい、関係国には了解を得ればよいんだ、こういうことでありまするが、それでは最も関係の深いアメリカの了解は果して得られておるのかどうか。すなわち、平和条約の二十六条でありまするけれども、この問題に対しましては、三年間の期間の問題をめぐって、わが国とアメリカとの間には意見の対立があるということばもう明らかなことです。これが合意点に達したということを私は聞きません。もしまだ見解炉分れているといたしますれば、外務大臣の今の態度の表明というものは、これは一人よがりになるのです。まず平和条約のあの二十六条の解釈について、日米間に合意が成立したかどうか、この点をお伺いいたします。
  55. 重光葵

    重光国務大臣 その点については意見は少しも不一致はございません。アメリカ側と日ソ交渉の問題については十分に連絡をし、アメリカ側で理解をしておる。日本態度には、理解のみでなくして、非常にもう賛成をしておるというような状況であります。
  56. 大西正道

    ○大西委員 私の聞いておるのは、二十六条の問題について合意が成立したかどうかということを聞いておるのであります。もし成立したといたしますなれば、どういう形式でそれが明らかにされておるかということも聞きたい。
  57. 重光葵

    重光国務大臣 サンフランシスコ条約二十六条についてのどういうことでございますか。どの点をアメリカと日本を意見の違いがあると言っておられるのでありますか。これはいまだその問題について意見の争いがあったということはないのであります。
  58. 大西正道

    ○大西委員 あなたは、ロンドンでダレスからあなたに申し入れがあって、そしてそれをあなたの方から頼んで撤回をしてもらったという事実をまさか忘れておるわけじゃないでしょう。しかもそれが合意に達したと言われるならば、どういう形で合意に達しておるのか、私はついぞそういうものを聞いたことがないのですがね。
  59. 重光葵

    重光国務大臣 それはどういうことですか。私の方から聞かなければならない。どういう根拠でそういうことがあるのですか。二十六条について米国側と意見の差をもって論争したことばございません。
  60. 大西正道

    ○大西委員 日本たとえば、ソ連でしょうね、具体的に申しますと。ソ連条約締結する場合に、サンフランシスコ条約に参加した国よりも有利な条件であった場合には、やっぱりそれに均霑されなければならぬ、もとの国々に均霑されなければならぬという問題をめぐって、そういう根拠によって、日本が、あなたの決意されたように、もし択捉、国後をソ連の領土と認めた場合には、これはサンフランシスコ条約加盟の国々はさらにそれに同等の請求をする、こういう問題なんです。従いまして、そういうことになると困るということで、問題が起きたじゃありませんか。
  61. 重光葵

    重光国務大臣 その問題ならば、こういうことでしょう。こういういきさつがありました。日本側で、固有の領土を日本側に返してもらいたい、こういう主張をやったことは、アメリカ側もこれに共鳴しておるのであります「それはアメリカ側がその後に発表された文書ではっきりいたしております。その説明をしたときに、固有の領土すら譲るようなことがあったならば、これはアメリカ側も考えなければならぬ、こういうことを言いました。それはどういうことで言ったかというと、米国の公式のなんじゃございません。啓発的にそういうことを言いました。そういうことを言ったものですから、その問題についてワシントンからいろいろ報道がありました。しかし、それは何も、アメリカ側がそれならばどうするというようなことを要求したことでも何でもございません。ただ、日本側主張を援助するためにそろいうことを新聞に漏らしたといいますか、そういうことがあったようであります。しかし、それは日米の間に何にも交渉になった問題ではございません。
  62. 大西正道

    ○大西委員 時間の関係で、これ以上ここで論争することは避けますけれども河野農林大臣にお伺いいたしまする、やはりこの種の問題について高岡君が質問をいたしております。速記録を見れば正確なことが言えますが、要点を申しますると、今後領土問題について日ソの間だけで具体的に取りきめようという考えかと、こういう趣旨のことを質問いたしております。これはやっぱり私が懸念しておるところと同じことなんです。それに対しましてあなたは、これは正確な表現を私はここでは用意するわけには参りませんが、やはりアメリカの意向というものを無視するわけにいかぬ、だから、今回はこの領土の最終的な取りきめをしなかったんだ、できなかったんだ、こういう趣旨のことを言われておるのであります。そういたしますと、今の、初めに重光外務大臣のおっしゃった日ソ間の問題は日ソ間で取りきめればいいんだ、他はよく聞いておけばいいんだというのと、若干相違すると思うのでありますが、いかがでしょう。
  63. 河野一郎

    河野国務大臣 私がお答えいたしましたのは、日ソの間には領土問題についていろいろ意見、主張の対立がございますので、それらのことをこの際解決するのはなかなか困難であります。しかも、かたがたサンフランシスコ条約との関係等も、私もしろうとなりにいろいろあるように聞いておりますし、今日の国際情勢におきまし七、また一部国内には、これの関係国の会議によってやるべきであるというような主張もございましたので、これらを総合しまして、この際国連の問題といい、抑留者の引き揚げといい、早急に片づけなければならぬ問題があるのである。従ってこの際は、この日ソ間の当面の問題を解決するために、それら他の諸国との関係をあと回しにして、片づけ得るものを片づけるということがいいんではないか、常にそういう考えを持っておりますので、そういう趣旨のことを申したのでございまして、その他は重光大臣のおっしゃったのが基本的な考え方であります。そういうように御了解いただきたいと思います。
  64. 大西正道

    ○大西委員 次にお伺いいたしたいのは、やはり領土の問題に関してでありますけれども、きのう北澤君からこの点について質問がございました。共同宣言の中には、平和条約に対して、続いて審議をするということがありますが、領土の問題についてははっきりしてない、この点については、松本全権から、それは鳩山ブルガーニン書簡、あるいは松本・グロムイコ書簡によってこの点は明らかである、こういうふうに言われたのでありますが、この二つの書簡の効力と申しますか、この二つの書簡に盛られた問題はいつまで一体効力があるのか。こういうことをちょ、とお伺いいたしたい。もっとわかりやすく申せば、いつまでその効力が持続するかの問題です。この共同宣言批准で、あれが御破算になるのか、あるいは後の平和条約締結のときまで生きるのか、こういうことです。
  65. 松本俊一

    松本全権委員 私に対する御質問ですか。——私は平和条約締結まで効力はもちろん持続すると思います。
  66. 大西正道

    ○大西委員 そこでもう一つの問題は、領土問題の継続審議ということについて心配する向きは、歯舞、色丹だけで、あとの択捉、国後、その他の領土については、もうこれがきまっておるのじゃないか、それについて継続審議するという根拠は何もないんじゃないか、こういう心配をいたすのであります。そこでこの共同宣言の九項に、日本国の要望にこたえ、かつ日本国利益を考慮して、ソビエト社会主義連邦は歯舞及び色丹を日本に引き渡すことに同意する、こういう表現炉してあるのです。そこで私が明らかにしておきたいのは、日本国の要望及び利益ということは、イコール歯舞、色丹の返還を意味するのではないか。もしそうだったとするならば、歯舞、色丹を平和条約のときに返すという、これでもってプラス・マイナス・イコール・ゼロになって、これ以上の、要求はできないというような解釈も私は成り立つと思うのであります。この点はどうでしょうか。もし要望、利益ということ炉歯舞、色丹の返還プラス・アルフアということであれば、問題はないわけです。しかしながら、何かのはっきりとした証拠がない以上、こういうことも私は一応検討しておく必要があるのではないかと思います。
  67. 河野一郎

    河野国務大臣 いろいろこちら側へ詰めて逆にお聞きになりますけれども、私はフルシチョフと話しました際には、それらの点について、いろいろな角度から、いろいろな問題を話し合っております。今の歯舞、色丹を日本側の要請にこたえというような字が入っておるじゃないかというのも、これは特にこちら側で、歯舞、色丹はこの際即時に、もしくはこれまでの交渉の経過でそこまできておるものを、あなたの方ですでに認めたものは認めたらいいじゃないか、というようなことで、これは認める。その他のものにつきましては、なお話し合いをだんだんいろいろな角度からいたしました。そしてこれを話し合っておれば、いつまでも結論になりませんし、どうせこの領土の帰属につきましては、この際すべての結論を出すのではございませんから、これは共同宣言に表現したこと、そのことで結論にいたしておるわけであります。従って、私が本会議その他でお答えいたしました通りに、将来日ソの間に交渉いたします際に、何らの制約を受けるようなことはいたしていないということだけは、明瞭に申し上げられます。従って、総理その他からお答えになっております通りに、適当な時期にこの問題について平和条約交渉をなさる場合には、当然国境線と申しますか、境界線をどこに引くかということが問題になると私は思うのであります。その際に、それが歯舞、色丹だけで国境線を引くということになるなら、それは問題がないわけでありまして、そういう問題を残して、大体その他の問題はきまっておるわけでありすから、それらを考え合せてみますれば、当然、適当な時期に、適当な機会交渉される際に制約を受けることは、結論としてありませんということを申し上げて、御了解を得たいと思う次第であります。
  68. 大西正道

    ○大西委員 なおこの際ついでに、これは法理論に属する問題と思いますが、お伺いいたしておきたい点は、平和回復現在において軍事占領されておるところの土地は、その占領されておる国に属する、こういうことが普通の常識になっておるわけでありますけれども、今回日ソ交渉の妥結を見たときに、歯舞・色丹、択捉、国後はもとより、従来わが国が要求しておったこれらの国々の帰属はどういう形になるのですか、これの見解を一つ聞きたいと思うのです。
  69. 重光葵

    重光国務大臣 今、国際法的にこういう議論があるというお話は昨日も出ました。これはまだきまった議論ではないと思います。そういう有力な議論があることは事実であります。しかし実際に外交交渉の問題から言えば、戦争中に占領しておったから、法律的に、条約的にこれをそのまま認めなければならぬということではなくて、これは平和条約によって初めて帰属がきまるのである。こういうことが普通の考え方であって、今回の日ソ交渉においても、ソ連以外は、全部アメリカもその他の国々も、みなそういうふうな考え方を持って交渉に当ってきたわけであります。そこでモスクワの領界の交渉においても、その点はソ連側にもはっきりさせておいたのでありますが、さて実際問題として、占領しておったものを返してもらうというのは、占領されていない領土を議論するのとは、そこに困難の程度が違うということは、私は言えると思う。それでありますから、実際にソ連の占領している、ソ連の領土に繰り入れられている——これは一方的でありますけれども、それについて日本主張を通すということは、非常に困難があることは認めざるを得ません。しかし、それは本質的のことではありませんから、主張はあくまで主張しなければならぬし、また主張することに何らの支障がないということを、繰り返し申し上げたわけであります。
  70. 大西正道

    ○大西委員 次に共同宣言の第三項の(b)に、日本及びソ連はそれぞれ他方の国が云々というふうに、個別的または集団的な自衛の固有の権利を確認し合っているわけでありますけれども、これの意味するものは何でありますか。現実に、これに該当するものはどういうものであるか、外務大臣、一つお聞かせを願いたいと思います。
  71. 重光葵

    重光国務大臣 日本側としては、安保条約のごときものがそれであります。
  72. 大西正道

    ○大西委員 一方、共同宣言の前文には「両国間の外交関係の回復が極東における平和及び安全の利益に合致する」云々というふうに出ているのでありまして、私はこの交渉の経過から申しまして、初めはこういう日米間のいろいろな取りきめ関係というものも是正して、そうして日本の自主中立的な立場ということをソ連は要求しておったと思う。しかしながら、現実の問題として、そういうことは遠い将来の問題であるからというので、こういう条項が入って、話が進んでいったのであろうと思うのでありますが、私はやはりこの共同宣言の本旨は、この前文によく表明されていると思うのです。今の外務大臣のお答えでありますと、大臣は安保条約がこれに該当すると言われるのでありますが、おそらく政府立場としては、そうであろうと思います。しかしながら、日米安保条約はわが党がすでに主張いたしておりますごとく、一方的にわが国の主権を制限いたしておりまする不平等条約でありまして、私ども考えといたしましては、前文に盛られたところの大目的を達成していくために、いつまでもこのままで、これがこの(b)項に該当するものであるとして、安閑としているわけにはいかぬと思うのであります。このことは、もうすでに国民の世論となっておると思います。日米間の非常に不平等なる関係を是正するということは、刻下の急務であると考える。ましてや、こういう形で日ソ間の親善関係が回復されるというときには、近い将来においてはこの日米安保条約その他行政協定、これを大きく検討して、そうして日本の対米関係を調整していく。この共同宣言批准する際には、政府もわれわれも、国民の意思を十分納得し、このことを決意して、そうして日米安保条約を中心とするところの日米間の関係の検討ということに踏み出さなければならぬと思うのでありますが、この点につきまして総理大臣の見解を一つ聞かしていただきたい。
  73. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 お答えをいたします。自衛力を全然持っていない現在の日本といたしましては、安保条約を改廃するという希望は持っておりません。
  74. 大西正道

    ○大西委員 非常に鼻をくくったようなお答えでありますけれども自衛力を全然持っていないということにつきましても、これまた問題であります。果してあなたがそういうふうに思っておられるかどうかということも、私は問題であろうと思うし、そういうことについて今言っているのじゃないのであります。この共同宣言の趣旨から見て、日ソ間の国交は回復されて、今日日米間のこの不平等な関係というものを是正する段階にきているのではないか、こういうことを思うのであります。この要求は民族的な要求でしょう。すでにスエズの問題、ハンガリーの問題についても、重光外務大臣は、民族的な要求である、これを強く支持すると言っておられる。今、日本がアメリカに対して持っている関係というものは、もちろん完全な独立ではないでありましょう。この際、日米関係を検討していくということこそ、私は必要であろうと思う。この点についての見解を聞きたいというのです。
  75. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 私は、先刻の答弁は決して不十分な答弁と思っていないのです。実際そう思っているのです。それで十分な答弁だと思う。自衛力を全く持っていない、安保条約によって日本安全保障を得ているわけでありますから、ただいまの段階においてこれを改廃する意思は持っていないのであります。
  76. 大西正道

    ○大西委員 あなたは、日米安保条約を全然破棄してしまえというような、そういう場合を想定してのお答えのようですけれども、それでは、今の安保条約日本立場から見まして、あのままで完全無欠で、われわれの要求をそのまま満たしておるものでありましょうか。
  77. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 国際連合に入りましても、それらの力によって日本の独立を順次に回復していかなくてはならないということを私は承知しております。
  78. 大西正道

    ○大西委員 どうもピントはずれですが、日米安保条約の中には、不当なる主権の制限があり、不平等性があるのです。これは与党の中でもそういう意見が出ておるのです。そうでしょう。ですから、その点についてこの際それを是正する用意があるかどうか、そういうふうにすべきであるかないかということについて、外務大臣から御見解を聞きます。
  79. 重光葵

    重光国務大臣 この問題については、総理のお答えの通りでございます。それで十分お答えができたと思いますが、しかし、せっかくのお尋ねでございますから、事それ自身は大きな問題でありますので、私は一般的にどう考えておるかということを申し上げることがよかろうと思います。  私は、日本が将来進んでいって、安保条約もなくて済むような時期に進むことを非常に熱望いたしております。そういうときは必ずくると思います。アメリカ側も、そういう条約の必要のないことを認める時期がくると思います。それに向って、国内はむろんのことでありますが、国際関係においても、国際的緊張の緩和等に向って全力を尽していかなければならぬと考えております。これはたびたび繰り返して申し上げる通りであります。しかし、それならば、日ソ交渉ができたから、この機会にそれを今すぐ着手すべきだということについては、合総理のお答えの通りに、その時期ではないと私は考えます。さような大きな意味で、そういうことの必要のない時期が到来するように努力をしよう、すべきだという御趣旨と考えるのでありまして、私はその意味において、その点については御同様に思う次第であります。
  80. 大西正道

    ○大西委員 この問題についてはあまりここでつべこべ言っても仕方がないのでありますけれども、今、国際緊張があるというその原因は、これはもちろん中ソ軍事同盟もありましょうが、やはり日米安保条約というものもその一つの原因であろうと考えるのであります。そういう国際間の緊張が緩和するときがくるであろうというようなことを、何か拱手傍観して待っておる、第三者的な立場日本が置かれるものじゃないと考える。みずから進んで日本が、この国際緊張を緩和するところの具体的な行動をやっていくべきである。今回の日ソ交渉の問題も、これは鳩山総理大臣みずからおっしゃったでしょう。このことによって日ソ間の戦争状態が終結して、東洋の平和に一歩前進があったわけであります。だから、こういうときに、やはり日米安保条約についても、あまりな不平等性はこれを改める、と同時に、中ソ同盟条約についても、そういう観点から、向うに対してもこれの解消を主張していく、こういう努力をしないで、われ一われが見ておったら、どこからか国際緊張緩和の一つの妙手が現われてくるというような考え方ではなしに、この際に日米関係を一つ検討されてはどうかということなんです。これは国民の世論であろうと思う。最後にもう一回それだけ聞いておきます。
  81. 重光葵

    重光国務大臣 私はそういう御議論は立つと思います。実際問題として、国際情勢の緊張を緩和する方向に努力するというのは、何もこれは空想じゃないのであります。その方向に向って一生懸命にやらなければいかぬと思います。日ソ交渉もそれであるということを言われましたが、その通りであります。しかし、それならば、過去のそれに調和しない条約はみんなやめてしまえばいいというようなことで、互いにソ連ソ連立場から——あなたの今申されたのは、ソ連もそう言っておるわけでございます。日本日本立場からそれに固執しておったらば、なかなか国際緊張の緩和という日ソ交渉も進まないわけであります。それであるから、そういう問題は触れないで、まず国際緊張の緩和、日ソ関係の緩和をやって、だんだんそういう問題について着手する時期を希望するということは、これは当然のやり方であって、それが一番有効な方法である、こう考えます。先ほど中ソ条約についてもちょっと御言及がありましたが、日本から言えば、そういう問題も出さなければいかぬ。しかし、それでいきおると、なかなか日ソ交渉の大きな目的も実現ができないので、それでああいう条項を入れて先に進んでおる。これが私は前進だろうと考えておるのであります。
  82. 大西正道

    ○大西委員 まあそういうことは平行線のようです。しかし、やがて近い将来に、私どもの言っていることが国民の世論として、あなた方もそうせざるを得なくなるような状況がくるということを、私はここで明言をいたしておきます。  それから、やはり領土の問題でありますが、きのう松本君の質問に対して、重光外務大臣が、矢折れ刀尽きという表現はどうかと思いまするけれども、最後に妥結を決意して、日本政府に請訓をされた、このときの事情につきまして、努力が足りなかったのじゃないかというようないろいろな意見も出ておりましたが、外務大臣は、主張すべきは十分主張した、しかし相手の主張がかたくて、これ以上何ともならなかった、こういうふうな御趣旨を述べられて、了解を求めておられるのであります。一応わかるのでありますけれども重光外務大臣向うで述べられたところの内容を見ますると、やはり千島その他の領土に対する歴史的な立場から、あるいはまた法理論的な理論を展開されておって、それ以外には出ていなかったように私は思うのであります。この点は、死んだ子の年を数えるようでありますけれども、お伺いいたしておきまするが、最後の壁を突き破るために、最後の手段として、あらゆる面からの政治的折衝が十分なされたという感じで今いらっしゃいますかどうでしょうか。
  83. 重光葵

    重光国務大臣 私のモスクワにおける折衝は、いわば全部政治的の折衝でございました。そして私並びに私の同僚において考え得る手段をすべて尽しました。
  84. 大西正道

    ○大西委員 それは、外交の問題はすべて政治的折衝でありましょう。私はそういうことを言っているのではないのでありまして、たとえば、これはきのうも河野さんに対して質問がございまして、それに関連するのでありまするけれども、アメリカとの関係、すなわち沖縄、小笠原の返還の問題にからんで、あるいは日米安保条約や行政協定その他の議題に関して、択捉、国後の返還と関連して、そういう意味の折衝をなさったかどうか、こういう点について聞いておるのであります。
  85. 重光葵

    重光国務大臣 その御質問ならば、さらにはっきりします。アメリカとの関係が出たかという御質問であります。出ませんでした。またアリメカとの関係ソ連との関係は別のもので、関係ないとして交渉をいたしました。
  86. 大西正道

    ○大西委員 出ませんでしたというのは、向うからも言い出さなかった、こちらからも出さなかった、こういうことですか。
  87. 重光葵

    重光国務大臣 そうです。   〔「手段を尽していない」と呼ぶ者あり〕
  88. 大西正道

    ○大西委員 今応援がありましたけれども、手段を尽していないと私は思う。これは鳩山総理大臣がきのう、いつごろ平和条約締結されるであろうかという見通しについて、こういうことを言っておられる。ソ連が択捉、国後を離さないのは米国に対しての関係からで——多少表現は違うと思いますが、そういうことです。米ソ関係がよくなれば、ソ連もしいて固執はしないだろう、こういうふうに言っておられるのです。そういたしますると、択捉、国後の領土の返還ということをほんとうに要求するためには、やはり米国との関係、沖縄、小笠原の問題、それから安保条約の問題に触れるということは、これは当然やらなければならぬものだ。その触れ方はいろいろありましよう。これに対して少しも議題にならなかったとして、しかも最善を尽したと言われても、その最善は果して国民の納得する最善であるかどうかということには大いに疑問がある。
  89. 重光葵

    重光国務大臣 非常にこんがらかった議論になりましたが、むろんソ連の意向を大きく想像してみましても、ソ連とアメリカとの関係が緩和していけば、すべての問題が、つまり東アの国際情勢の緊張が緩和するということになるのでありますから、これは日ソ交渉に好影響を与えることは当然のことだと思います。しかし、現在国後、択捉の問題をどうするかという場合に、それは、ソ連側の方から安保条約を廃棄すればこれは返すんだというような意向があれば、これは問題になります。しかしながら、問題になりましても、日本の初めからの交渉の出発点はどこにあるかというと、これは本会議でもこの委員会でも説明いたしました通りに、そういうような問題には触れないで——双方ともそういう問題には触れないで、現在の双方の立っておる立場をそのままにして、そして日ソの間の国交を正常化するという段階に入ったのでございますから、そういう問題に触れないことは当然のことであります。
  90. 大西正道

    ○大西委員 この問題に対しては河野農林大臣にお伺いいたしますけれども、きのう領土問題の解決のために沖縄問題が引き合いに出されたことに対して、そういうことはなかったと否定をされているのです。しかしながら、河野さんの折衝に対しましてはいろいろと疑惑があるのも、これまた私はそうむげにこれを非難するわけにもいかぬと思う。たとえば、きのうの松本君の質問に対しましても、ブルガーニンとの話の問題は、これは約束によって何とも言えぬ、こういうことでお答えになっているのであります。きのうは一応質問者もそれで引き下っておるのでありますけれども、どうも私あれを聞いておりまして納得がいかぬのです。非常に不明朗だと思うのです。事、外交の問題でありましょうから、何もかもあけすけにはいかぬと思いますけれども、あのブルガーニンと会われるときに、河野さんがただ一人でお入りになった、こういうことですね。いつも言われることで、御不快なことだと思いますけれども、これは何かきめてきたんではないかと思うのです。もしこういうことで両国間に今後大きな疑惑でも起きたときに、大へんこれは困ることなんです。一体どういう量見で、あのときりっぱな通訳も行っておったのに、お一人で入られたか。これも一つ国民の疑惑とするところでありますから、お聞かせを願いたいと思います。
  91. 河野一郎

    河野国務大臣 少しお尋ねになっておりますことがこんがらかっておるわけでありますが、私は前回漁業条約の取りきめに参りました際に、ブルガーニンと単独に会ったのであります。この会談内容は私は秘密にいたしておりません。これは漁業条約の取りきめに関係のないことでございます。その当時のブルガーニンと会った話はこうであるということは、帰ってきてからしばしば私はその通りお話をいたしておるわけであります。それがその後どういうことで間違ったか、領土問題について私がある程度の了解を与えたとか、与えぬとかいうことを言われる人があるのでありますけれども、これは絶対間違っておる。私はそういうことについて了解を与えた覚えもなければ、先方が言うたことはこれこれしかじかであるということを昨日も申し上げたのであります。これは先ほども、私がここにおくれました際に問題になったそうですが、これはその後も、たとえばチフヴィンスキー氏に私が東京で会いました際にも、議員団と会った際のこれがメモと申しますか、速記録と申しますか、というものを私に見せました。それから私とブルガーニン氏と会ったときの、これも覚えといいますか、控えと申しますか、というようなものも、私はチフヴィンスキー氏が持っておるのを見ました。見ましたけれども、これらはいずれもあとで控えに向うが書いたことであって、その中にどういうふうに記載してあるか、私がチフヴィンスキー氏に、僕がブルガーニン氏に会った際にはこれこれしかじかである、この点をソ連の方で間違えるようでは話にならないのだということを言いまして、その点を君がブルガーニン氏にもう一ぺん確認してもらうことが、重光さんの交渉が中絶して曲るのをもう一ぺん復活していくゆえんであるということを、私は最初にチフヴィンスキー氏に話しまして、自来その説を、ソ連のしかるべき人に会うたびに私は繰り返しておりますが、いまだ一度も、私がブルガーニン氏と会談いたしました私の記憶を申し述べた際に、それはそうではないのだ、という否定をソ連側から受けたことがありませんということを、私はしばしば申しております。これは今お話の通りに、一人で会って、それだから疑惑があるとかなんとかおっしゃいましたけれども、これは一点の疑惑もないのであります。私もお尋ねがあれば、これは全部申し上げます。ただし今回フルシチョフ氏と会いました際に話し合いましたことは、領土の問題についていろいろな角度から、いろいろな問題の話し合いをいたしました。これは、しかし、明確に共同宣言として結論が出ておりますから、この共同宣言によって御了解願いたい。ただし、いろいろの御議論に対しましては、将来を拘束するような約束その他一切はございませんということを申し上げております。」昨日の沖縄その他アメリカ関係のことについて松本さんからお尋ねのありましたことにつきましては、申し上げかねますと私はお答えしたのであって、ありませんとか、ありますとかいうお答えをした覚えはありません。さよう御了承願います。
  92. 植原悦二郎

    ○植原委員長 大西さん、あなた約一時間というお話でしたから何ですが、もう一時になりますから、ここで休憩して、そして午後また継続することにいたしましよう。
  93. 大西正道

    ○大西委員 あなたの方からの何で、文部大臣は昼からちょっと都合が悪いからということですから、簡単に五分ほど……。
  94. 植原悦二郎

    ○植原委員長 それでは文部大臣質問に限って、ごく簡単に願います。
  95. 大西正道

    ○大西委員 この共同宣言の中には文化交流のことが入っておりません。しかし両国間の親善を深めるためには、文化の交流ということは何としても大事な問題であります。初めから文化交流の問題については、この共同宣言並びに、この機会共同宣言以外の何かの方法ででもよろしいのですが、日ソ間で取りきめの問題が出なかったかどうかという点を、これは松本全権にちょっとお聞きします。
  96. 松本俊一

    松本全権委員 ただいまお尋ねの文化交流につきましては、先方は文化協定を、平和条約締結交渉したいということを申しておりましたが、その点につきましては、今回できました共同宣言のときには、全然問題になりませんでした。
  97. 大西正道

    ○大西委員 私の知るところでは、数日前にソ連とベルギーの間に文化協定が結ばれて、そして多数の学者、文化人の交流が実現されているように聞いておるのでありますが、今のお話は、後ほど一つ日ソ間にも文化協定を結ぶという、こういう了解であったようであります。そこで、私は清瀬文部大臣にお伺いいたしたいのでありますが、日ソ間の国交が回復いたしますと、ソ連との間の文化交流についてどういうように準備をされ、どういうお考えであられるか、これを一つ初めにお聞かせ願います。
  98. 清瀬一郎

    ○清瀬国務大臣 今回の共同宣言の第一項にも、両国は平和の関係にあり、また善隣友好の関係にあると、あるのであります。日ソの間に文化交流の協定ができましたら、むろんのことでございますけれども、この共同宣言が効果を生ずれば、両国は善意を持って文化の交流をいたすように相なると思います。今日でもあのユネスコというものがございまして、やはり間接には文化の交流はできてはおるのであります。
  99. 大西正道

    ○大西委員 ユネスコなんという、のは、私も実体を知っておりますけれども、大したものじゃないのであります。それにしても、この間学術会議ソ連の学者を入国させるというときに、文部省の方から、そういうことは遠慮するようにというような書簡を出したとかいうことを私は聞いておるのでありますが、こういうことは、日ソ交渉をまとめるもう直前でありますし、まことにこれは固陋な考えだと思うのでありますけれども、この宣言批准されますなれば、こういうことについての制限ということは、文部大臣としてはなさらないと約束ができますね。
  100. 清瀬一郎

    ○清瀬国務大臣 国交が回復すれば、学者、技術家などの来ることを拒むことはいたしません。また文部省が拒んだということは事実じゃございません。現に過日の国際遺伝学会にも呼んで、ソ連の学者四人まで来まして、私自身も親しく話をし、あちらの文化のことも聞いておるのであります。
  101. 大西正道

    ○大西委員 私が今申しました学術会議に対するあなたの方からの次官通牒ですか、その形式はよくわかりませんが——外務省でありますか、もし外務省でありますれば、文部大臣、この点は御存じでございますか。
  102. 清瀬一郎

    ○清瀬国務大臣 文部省からはソ連の学者の来ることを拒んだことは一度もございません。今申す通り現に受け入れております。(「外務省はどうした」と呼ぶ者あり)ほかの省が私どもに示さずしてやったことがあるかないか、これは知りません。私に対するお問いとしたらノーでございます。
  103. 大西正道

    ○大西委員 外務省にお伺いいたしますが、この通牒を出されたことは事実でございますね。
  104. 重光葵

    重光国務大臣 取り調べてお答えいたします。
  105. 大西正道

    ○大西委員 取り調べなくても、事実には間違いないと思います。文部大臣がこれを知らないとは、全く国内の文教行政の責任者として、これは大いに憤慨せざるを得ぬと思うのですが、あなたの言われる通りが真意なれば、大いに抗議を申し込まれて、そういうことは撤回させてもらわなければならぬ。この際、外務省の文化課ですか、それと文部省がそのように意思が不一致では、将来の日本の文化協定だ、くそだと言ったって、責任のなすり合いばかりで、将来が大いに心配、憂慮されると思うのです。文部大臣、その点について一つ責任ある答弁をお願いしたい。
  106. 清瀬一郎

    ○清瀬国務大臣 席が隔たっておりまして、外務大臣のお答えをよく聞き取れませんでしたが、私に対するお問いとしては、私はソ連の学者の入国を禁じたこともなく、現に入国してもらっております一それにどこからも抗議はきておりません。
  107. 大西正道

    ○大西委員 もう一つ文部大臣にお伺いしたいのですが、これは治安対策もそうでありますけれども日ソの国交が回復すると、赤の宣伝にたくさん日本へ入ってくる、こういうことを言われておるのでありますが、教育者、特に日教組に対しまして、従来から、教育の中立性は看板だけであって、実際は思想の自由が非常に弾圧されるような教育行政が行われて貼るのであります。こういう機会に、日ソ間の人事の交流ということに便乗して、再び教育行政の面において、自由なる教育活動、中正なるべき教育に対して弾圧、干渉を加えるということについて、私は非常な疑念を持つわけであります。一応この点について文部大臣はどういうお考えであるかということを聞きたい。赤の侵入をおそれるというために、いろいろな取締り法規を準備いたしましても、私はそういうことは間違いだと思います。共産主義が間違っておるというなれば、イデオロギーに対しては、やはりイデオロギーをもって対決をしていく。そして、清瀬文部大臣なら清瀬文部大臣考えておられることが、共産主義の理論よりもりっぱであるということを証明して、思想の対決によってこれを克服するということが私は大事だと思う。そういう意味からいって、共産主義の宣伝大いによろしい。来るなら来い。そして交流をやって、清瀬さんの考えなら考えというものを、さらに貫いていくというような考えでなければならぬと思うのであります。私は、この際赤の宣伝というようなことに対して、行き過ぎた取締りへ弾圧をやらないという文部大臣の確約と、そうしてイデオロギーに対してどういうふうな見解を持っておられるかという基本的な考えを、一応お伺いをいたしておきたいと思うのです。
  108. 清瀬一郎

    ○清瀬国務大臣 私は、また私の前任者も、思想に関し教員諸君に弾圧を加えたことはないと思います。ただしかし、ここは聞き分けていただきたいのです。共産党もわが国においては合法政党です。それからまた、労働組合に左派運動をする人もございます。教員も日本国民としては政治上の自由がありまするから、教員諸君が共産党にお入りになることを禁じることはできないのです。それからまた、左翼労働運動に身をささげられることも禁ずることはできないのです。それはしかし、人として、個人としての政治上の自由です。それを教壇に持ち込まれて、教壇で左派理論を宣伝されることはよくないと思います。人間はおとなになって、自分自身のことを自分の責任で判断するようになったならば、それは左翼運動をされるのも自由、また右翼運動をされるのも自由。けれども、学校へ上った白紙の子供に向って、初めから一定のイデオロギーを計画的につぎ込むということは、わが国の教育法規も禁じております。教育は白紙でなければなりません。もしこういう理論があるということであるなら、ほかの理論もあるということをあわせて知らさなければ——唯物論が、またレーニン主義が、正しい理論だということを子供に思わせるような教育をされるのであったら、これは考えなければなりません。私はこういうふうに思っておるのです。すなわち教員は、教室における教えと、教室外における政治運動とは、これは別にして下さい、そういうことでございます。
  109. 大西正道

    ○大西委員 これで終りますが、これはまた文教委員会の再現をここでしょうとは思いません。やはりあなたのおっしやることも理屈であります。それをむげに否定はいたしません。しか正し左派理論はいかぬけれども、右派理論はいい、社会主義はいかぬけれども、資本主義の宣伝はいい、こういうことでは困るのであります。あなたは、自分自民党の番頭であるから、自民党の文教政策をその通りにやるというようなことを言われておるのでありますが、自民党のよって立つところの基本理念は、資本主義に根ざしておる。ですから、それを言うことは大いによろしい、教育の中立性だと言われるのであっては、これはまことに理屈に合わぬのでありますから、こういう点も、日ソ間の国交が回復されたら直ちにそれに便乗して、あれも赤の部類だ、これも赤の部類だといって、今以上に教育界に統制を加えて、自由の雰囲気をなくすることのないようにということを、私はあなたに訴えるだけであります。
  110. 植原悦二郎

    ○植原委員長 これにて暫時休憩いたします。午後は二時から再開いたします。時間を厳守することを政府委員諸君も御了承願います。    午後一時十六分休憩      ————◇—————    午後二時八分開議
  111. 植原悦二郎

    ○植原委員長 休憩前に引き続き、会議を開きます。  質疑を継続いたします。伊東隆治君。
  112. 伊東隆治

    ○伊東(隆)委員 私はこの機会に、二・三の点に関しまして、ごく簡単に、総理初め関係大臣質問いたしたいと存ずるのでございます。  鳩山首相が、病躯をひっさげられてモスクワにおいでになって、この画期的な条約をお作りになったことにつきましては、国民ひとしく賞賛いたしておるところでございまして、私はまず最初に、鳩山首相に対しまして、深甚なる敬意を表したいと思うのであります。と同時に、昨年の六月一日、松本・マリク会談ロンドンにおいて行われて以来、全く一年有半のこの努力こそが今度の協定の基礎をなしたものでありまして、松本・マリク会談、またそれに次いで河野・イシコフ協定、また重光シェピーロフ会談、これらの大きないしずえがあって今日の実を結んだのだと思いますので、まず劈頭において、これらの会談関係された諸全権に対しても、深甚なる敬意を表するものであります。  そこで、私が質問いたしたい第一点は、やはり国民の最大関心事でありまするところの領土の問題でございます。色丹、歯舞の問題でありますが、初めソ連側は、この歯舞、色丹はこれを日本側に譲渡するという言葉、ロシヤ語で私はっきり存じまませんが、そういう言葉であったのに、今度の協定では、引き渡すということになっておる。ということは、この二つの群島に関しまするソ連側の認識が、だんだんの交渉によって変ってきたのであるかどうか。この点に関しまして、特に松本全権の御答弁をお願いいたしたいと思います。
  113. 松本俊一

    松本全権委員 ただいまの点は、伊東君の仰せの通りだと私考えております。
  114. 伊東隆治

    ○伊東(隆)委員 もしそうだといたしますと、やはり説明の工合によりましては、漸次ソ連側もその認識を改めてくる。いろいろの学説の話もありましたが、国後、択捉につきましても、何と申しましても、千島、樺太の交換条約のれっきとした国際条約もありますし、また長年にわたるわが方の領土としての実績と申しますか、事実があるのでございますので、戦時占領の帰属が戦後領土権の獲得になるなどという学説か議論かに対しましても、これはやはり認識の変更と申しますか、があり得るというふうに感じられます。この国後、択捉の二つの島の帰属問題について、これを継続審議にいたしたということは、単なる国内事情の一時の気休めのためにこれをしたのでは、究極において意味のないことであって、つまらない。であるからして、やはりこの二つの群島に対する認識変更のごとく・国後・択捉の二つの島に対する認識をやはり変えていく。それには、総理初め外務大臣国際情勢の好転ということでございますが、確かにそういうことも大きな役割を演じましょうが、今後の継続審議においてこれを変更せしめるということが、国民の要望にこたえていくわが方の態度だと思うのであります。それほどまでに発展し得る問題であるかどうか、なお松本全権の御意見を伺いたいと思います。
  115. 松本俊一

    松本全権委員 ただいまの点は、昨日来総理大臣並びに外務大臣がしばしば述べられました通り私は考えております。
  116. 伊東隆治

    ○伊東(隆)委員 と申しますことは、すなわち歯舞、色丹に関しては、これを譲渡するという立場からこれを引き渡すのだ、ハンド・オーバーするのだというような気持になったということは、何と申しましても、将来の領土問題、この国後・択捉の二つの島に対しまするソ連考えの変り方の最初のようにも考えるのでございます。これに対して、もとより楽観をするものではございませんが、こういう事実にかんがみまして、この継続審議を、単なる国内事情の関係から、一時のおさめのためにやる慰め文句にあらずして、実質的に継続審議を続けていって、どこまでも貫徹するように、この機会に私は要望をしておきたいと存ずる次第でございます。  なお、この機会に引き続き松本全権お尋ねしたいことは、今の歯舞・色丹に関するソ連側の認識変更ということは、あるいは潜在主権——沖縄に対してアメリカ側が認めておりまする潜在主権、そういうような考えソ連側の頭の中にありはしなかったか。全然そういうような考えソ連側にはないのかどうか。この点について重ねてお尋ねいたします。
  117. 松本俊一

    松本全権委員 ただいまお尋ねの潜在主権という観念につきましては、私が交渉に従事しあるいは交渉に立ち合いました限りにおきましては、ソ連側はそういう考えを持っていなかったようであります。さよう御了承願います。
  118. 伊東隆治

    ○伊東(隆)委員 なお、この機会にお伺いいたしたいことは、これらの、すなわちわが方がサンフランシスコ条約におきまして放棄いたしました領土、これらの領土と申しますのは、大体において、いやすべてこれはソ連との間に関係があるものであります。すなわち千島にしろ、今の歯舞、色丹にしろ、また樺太の南半にしましても同様でございますが、これらの地域におきまするわが方の財産について、この所属問題をお話しになりましたときに、財産権の問題、また一般在外資産の問題にもこれは関連いたしますし、その中では特に満州におきまする問題もまたあり、特にソ連との間に問題があり、そういうような問題にも密接な関係のありまする問題でありますので、財産権に関する話が話の途中になかったかどうかお伺いいたします。
  119. 松本俊一

    松本全権委員 今度の共同宣言にうたってありますように、賠償請求権をソ連側は放棄いたしました。日本側戦争に伴う請求権を放棄いたしたのでございますが、財産権直接の問題としては、別にこれは取り上げられたことはございませんでした。さよう御了承願います。
  120. 伊東隆治

    ○伊東(隆)委員 領土に関しまする問題は、この辺でよします。できる限り重複を避けることにいたしたいと思いますので先に進みたいと存じます。  次に、漁業協定の問題に関しまして、河野農相にお尋ねいたしたいと思います。これは少し今度の日ソ交渉と離れたことかも存じませんが、わが国の漁業政策と申しますか、水産上の利益の獲得の問題、これに関しますることでございます。このたびの漁業協定は、とにかく公海における行動の規制であるというので、ここに異論もあるわけでございます。しかしながら、科学的な調査とまた各国平等にこれを扱うということでございますならば、今後の世界の共存共栄の立場からいっても、この種の協定こそは、私、今後の諸国間の水産上のトラブルを解決するいいモデルであるくらいに、非常にいい条約であると思うのでございます。従って、今、日韓の間にありまする李ライン、かくのごとき理不尽なライン、このラインの問題に関しましても、やはりこの方式をもってすれば、両国間の関係も合理的に良識的に解決できる、かように存ずるのであります。これに関する河野農相の所見を伺いたいと存じます。
  121. 河野一郎

    河野国務大臣 漁業がだんだん進歩発達して参りまして、魚類を取り尽すというような傾向にありますことは、御承知通りであります。そういう意味からして、今お話の通りに、鮭鱒漁業については、今回の漁業条約もしくは日米加三国の漁業協定ということになっております。日韓の間におきましては、この方面は非常に優秀な漁場でございますけれども、もし可能でありますならば、関係国の間に、魚族保存保護という見地から、適当な協調的な態度でやるということにまとまれば、一番けっこうだと思います。あとは外務大臣の方から一つお答えがあると思いますが、私は、農林大臣立場として、望ましい姿であるというふうに考えております。
  122. 伊東隆治

    ○伊東(隆)委員 この点に関しまする外務大臣の所見をも伺いたいと存じます。
  123. 重光葵

    重光国務大臣 日韓漁業問題は、すなわち李ラインに関係する問題だと思います。これは日韓の関係を調整する本交渉で十分検討し、交渉しなければならぬ問題だと考えております。そこですぐこれだけを離してどうするということは、かえって今の事態に適応していない状況でございます。
  124. 伊東隆治

    ○伊東(隆)委員 重ねて河野農林大臣に伺いたいことは、この漁業条約を見てみますると、とにかく委員会に大きな負担をかけて権限を与えておるのでございます。ここに弾力性があって、非常にこの条約の妙味もまたここにあるのではございますが、従来の日ソ間の事実上の大きな交渉案件は、やはりこの漁業問題でございまして、この委員会が結局両国の交渉の場、話し合いの場になる。すなわち両国の交渉は、この委員会で常に激しく展開されることと思うのでございます。この委員会の権限はここに書いてある通りでございますが、やはりこの委員会の権限が少し重過ぎるのじゃないか、権限を与え過ぎているのじゃないかというような声も巷間聞えるのでございます。これに関しまする河野農相の御所見を伺いたい。
  125. 河野一郎

    河野国務大臣 ソ連との間に、漁業関係の折衝をいろいろ持ちましたことしの春の事情から考えまして、それまで全然連絡がありませんでしたわれわれといたしましては、ソ連漁業もしくはこれに関する調査研究は、実際現地に参りまして、さらに検討してみなければわかりませんけれども、一応先方から提示されました資料等によりますと、少くともわが方で従来やっておりましたものよりも、綿密な調査研究資料に基いておるということだけば、われわれ看取できたのでございます。従いまして、条約が発効いたしまして、具体的に漁業計画をきめる際には、それらのものを双方から持ち寄って、具体的な話をし合う。ただ漁業の方法等につきましては、わが方が相当進んでおりますけれども、基礎的な調査等においては、先方の方がむしろ進んだ綿密なものを持っておったのであります。そういうようなことから、われわれとしましては、まず委員会双方の資料に検討を十分加えて、具体的にものをきめていごうということにいたしたいのでございまして、これは一両年過ぎて参りますうちにもし必要があれば、改訂することもありましようし、何さま相手国が従来こういう態度であった、ああいう態度であったということを前提にいたしますと、すべてものの取りきめようがなかろうと私は思うのであります。従いまして、そういう場面なら場面にぶつかったときに、それをわが方としても考えることがよいのであって、初めから、ああであろう、こうであろうという前提に立って、両国間に折衝を持たないうちにきめるよりは、一応まず基本的なものをきめておいて、あとは委員会に譲って、そして委員会の話し合いを進めた上で、あらためて考えるということの方がよかろうという考えで、相当広範な権限を委員会に譲ったわけでございます。
  126. 伊東隆治

    ○伊東(隆)委員 次に、引揚者の問題について伺いたいのでございますが、厚生大臣都合によっておいで下さらないそうでございますので、大臣にかわって答弁していただく方がいなかった場合には、それまで待ってもいいのでございますが、やはりこれは松本全権にお伺いいたしたいと思うのであります。御承知通り、マリク名簿以外の残留者については、近く調査の上わが方に知らせる。そして、帰国希望者はこれを日本に帰すというのでありますが、西ドイツとソ連との間の約束にかんがみましても、希望者は帰すといっても、その希望者の希望することの事実をどういう方法できめるのか、これが明らかでないのであります。ごく悪く推察をいたしますれば、残っている者は帰ることを希望していなかったのだ、または、もっと進んで、死亡者がかりに非常に多数に達しておった場合に、その中の幾分は帰ることを希望しなかった者であるというふうにも、疑ってははなはだ済まないのであるが、そう邪推されてもしようがないのでございます。一体この希望者をどういうことできめるかということについて、わが方からお話はなかったかどうか、お伺いをいたしたいのであります。
  127. 松本俊一

    松本全権委員 今までの話し合いでは、そこまでこまかい話を実はいたしてないと思います。私自身はまだいたさなかったのでありますが、しかしながら、御意見まことにごもっともであります。今後具体化いたしました場合には、こちらが調査して、確かなる資料を持っておる者もたくさんあるのでありまして、それらにつきましては、あるいは本人が帰りたいと言ってきておる方もあると思いますが、それは必ず帰してもらうように、あるいは大使館を通じて、十分交渉しなければならないと思っております。
  128. 河野一郎

    河野国務大臣 ちょっと私からつけ加えて。今のお話は、私がフルシチョフ氏といたしました。特にフルシチョフ氏の方から、名簿外の者について日本側の要求に応ずるという話をいたしました。先方からそういう回答がありまして、しかし、その中でこちらの方に残っているという本人の希望のある者は、こちらに残してもいいじゃないかという向うの話でありました。しかも、これは自然のうちにそういう話がありましたので、これもそういうことを申しまして誤解をされるとはなはだいけませんが、どこまでも、今回の交渉におきましては、非常に双方理解協力の上に立ってそれらの問題はきめられたと私は思うのであります。でありますから、こういう場合はどうだろう、ああいう場合はどうだろうと、事態の起らぬうちにあまりこちらの方でそういう邪推をいたしますことが、かえって先方に悪影響を及ぼすおそれがあったら、マイナスになるのじゃないかと思うのでありまして、これは先方としましては、相当好意、善意を持って扱ってくれるものと私は期待しております。そういうことでございますから、たとえば引揚者の諸君にいたしましても、そのときに私は調印をした以上は、ナホトカ辺まですぐにみなやっておいてほしいということも重ねて先方に申したくらいでございまして、これも蛇足かもしれませんが、私がこの前ソビェッカヤ・ホテルに四月に参りましたときに、北海道の人だという人で、日本に帰りたいという人が現にたずねて見えられたことがございました。そのときにも私はどういう処置をしてよいかわかりませんししますから、懇談の後に別れたのでございますが、そういう人がおられるということは、間違いなくはっきりしております。しかも、帰りたいと言っておられる人のあることも事実でございます。しかし、それが今、名簿とわれわれの方で聞いておりますものとの違った数字がどういうことになるかということは、これは今後双方十分話し合って、そうして、今お話のようなめんどうなケースでなしに、もう少し理解あるケースで片がつくのじゃないか、こう思っておりますので、その点はさよう一つ御了解を願えれば、大へんけっこうだと思うわけであります。
  129. 伊東隆治

    ○伊東(隆)委員 お話で非常によくわかりました。引揚者の問題は、御承知通りの国民的感情に最も強く響く問題でございますだけに、今後の取扱いは、私は最も慎重を要するものであると存ずるのでございます。西ドイツとの間のいわゆるアデナウアー方式が非常に問題になった。アデナウアー方式なるものの弱点がつかれておるのは、やはりこの引揚者の問題から発端しておるというようなことは御承知通りでございますので、特にこの問題の扱い方は、厚生大臣等において慎重にしていただきたいと要望いたすものでございます。  ごく問題を省きまして、次に、国連加入の問題につきまして、総理の御答弁をいただきたいと存じます。このたびの国交回復によりまして、日本は画期的な外交が展開することに相なりまして、近く国連加入するの機会を得ましたことは、まことにこれば国民一人残らずここに喜びを持っているわけでございます。それでございますが、この前の本会議質問におきまして、いや単独無条件であったとか、いろいろのお尋ねがございました。私どもは、ソ連態度——最初から、松本・マリク会談以来のあのまじめな態度からいたしまして、ただいま申し上げた引揚者の問題などについて、やや邪推的なことをつけ加えるだけでも相済まないような気がするほどに、ソ連は非常にまじめだったと私は思う。それでございますから、ほかの自分の衛星国を抱き合わさして加入を不可能にするなどというような昨年のごとき事態は、この際絶対に発生しないと確信するものでありますが、やはりこの点に関して、二、三の疑いを持つものがある。この委員会におきまして、特に鳩山総理のこの問題に対しまする一つお見込みを承わりたいと存ずる次第でございます。
  130. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 ブルガーニンに会いましたときに、この前の国連加入のできなかった話をいたしまして、そのような事態がないようにしてもらいたいということは注文しました。ブルガ一ニンから、これに対して、ソ連日本国連加入の支持を必ずすると誠意のある答弁を得ましたから、私はこの答弁を誠意あるものとして信じております。
  131. 伊東隆治

    ○伊東(隆)委員 非常に鳩山総理の明瞭なる御答弁がございますことは、まことに欣幸とするものでございます。この国連加入国際的な重大な意義につきましては、私がここに決してるるする必要のないことでございまして、これによってようやくわれわれはお仲間に入れていただいたわけでございまして、今までは全く孤児であったものが、みんなのお仲間に入れていただいて、これから受ける利益はさしあたりこれくらいではないかなどということは、きわめて短見者の言うことでありまして、これをきっかけに、これからこそ日本がほんとうに多面的な外交で万邦と交わっていくという従来の日本の外交政策の基盤を実行することができる第一歩でございまして、わが国が始まって以来、かくのごとき国際的な大逆な事実はないと私は思うのでございます。これに関しまして、鳩山総理の今の御答弁があったことを、特にまた重ねて私は喜びとするものでございます。  これに関連いたしまして、外務大臣に伺いたいことは、大体いつごろ、どういうふうになるものであるか。この国会が来月の六日に終了いたします。それまでに批准することは、これは国民のほとんど大多数の人の要望するところでございますので、批准も早くできると思うのでございます。批准がありましてから国連加入を申し入れ、安保理事会にかかる、そうしますと、国連の総会はやはり十二月の二十日に終るといたしますと、この批准が十二月の一日にかりにありましたとして、二十日間でスムーズに、またはそれ以内の日数でいくような見通しをつけておられるかどうか、この点に関しまして、外務大臣のお見通しをお伺いいたしたいと思います。
  132. 重光葵

    重光国務大臣 国際連合におきましても、今回の総会でこれは実現をしたい、こういうふうに考えております。その見込みは立てております。それにつけても、少しでも余裕のあるように、一日も早く一つこれを御審議願いたい、こう考えております。
  133. 伊東隆治

    ○伊東(隆)委員 持ち時間が非常に少くなりましたので、もう一点だけお許し願いたいのは、先ほど文化協定に関しまして大西委員から質問がありましたのに対して、政府当局の答弁が非常にちぐはぐであって、よくわからなかった。しかし、私はこれは非常に重大な問題だと思いますので、ごく簡単に質問いたしたいと思います。日ソ国交はここに回復した、回復したけれどもソ連という国は、われわれと政治的立場を根本的に異にしておる国であるから、こういう国と親密になることば警戒ものだ、これがある面においていわれている言葉である。そういうことであるならば、何も日ソ国交などということをそう一生懸命になってやる必要はない。国交を開いた以上は、どこまでもこれと親密にしていくという態度、これこそ私、この機会にわが国が持つべき態度だと思うのであります。ソ連はいたずらに警戒されておる。特にまた、ソ連を警戒する向きからの言葉がわれわれの耳に強く響くのでありますけれども、今後われわれの心をもってソ連を判断する機会がここに与えられた以上は、われわれの独自の見解において、ソ連というものをここに見直していくべきであると思う。特に、ソ連は将来の大きな存在である。また国際連合の最も有力なメンバーの一つでございますので、このソ連に対して国交は開いたものの、やはり警戒的な気持をもってこれに接するに至っては、全く魂なきものであって、われわれは、この日ソ共同宣言の魂なきしかばねを抱いて喜んだりするようなことがあってはならぬと強く思う。そこで文化協定でございますが、これがいかなる理由で撤回されたかは存じません。あるいは、現在の段階においては、警戒する向きからの気持が多くて、これを撤回するに至ったかも存じませんけれども、必ず近い機会に、この両国の文化交流については、特に保守的なわれわれの立場においてこれを推進していくべきである、私はこの点を強く思うものでございます。この点に関しまして、鳩山総理また重光外務大臣の御答弁をいただきまして、私の質問を終りたいと存じます。
  134. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 ソ連とは友好関係に立つという観点から国交を回復したのでありますから、むろん文化の交流をする必要があることは当然でございます。現に、国交が正常化しないうちにも、ソ連のピアニスト、バイオリニスト等が日本に来て、非常に歓迎されているということは、諸君の目撃されておるところだろうと思います。そういうような文化交流は、まだ国交が正常化せられない前から、ソ連日本とにはあるのでありますから、国交が正常化すれば、さらに文化の交流はしげくなるものと私は楽観をしております。
  135. 重光葵

    重光国務大臣 ただいまの総理大臣の御意見の通り考えております。
  136. 植原悦二郎

    ○植原委員長 細迫兼光君。
  137. 細迫兼光

    細迫委員 私のお尋ねいたしたいことは、主として将来に関することでありますが、ただ一点、交渉の経過についてお尋ねいたしたいのでありまして、これは松本全権からお答えを願いたいと思います。最初外務大臣からお答えを願おうかと思っておりましたが、松本全権の方がはっきりお答えが願えそうですから、お願いをいたします。  事は、繰り返すようですが、領土問題であります。そして、過日本会議において穗積七郎君が触れ、また今日大西正道君が触れたことに関連するのでありますが、外務大臣は、かねてからわが方の主張すべきは主張しということを言うておられまして、交渉に当ってもそれを実行せられ、えんえんとしてるるわが方の希望並びに理由を述べられたようであります。これは主として歴史的な事実その他条約上の問題などでありまして、肝心なことに触れておられなかったような気がいたすのであります。それは、領土問題がかたい壁にぶつかったという一つには、先に指摘せられましたように、ソ連がヤルタ協定の線は一歩も退きたくないと考えておったことが一つあると思います。でありますが、何人も肯定しますように、ここに返還せられた領土が直ちにアメリカのための軍事基地になるようなそうした日本の情勢においては、寸土といえども日本に返還したくない、こう考えておることが、現在の情勢において、最も中心的な、基本的なソ連考え方であると私は思うのでございます。でありますから、これを打開しようと思えば、その一番根本的なソ連が心配しておるそのことについて触れなくちゃ、問題にならないと思うのです。どういうふうに触れるかといえば、すなわち歯舞、色丹、あるいは国後、択捉の返還を受けましても、アメリカの軍事基地に、あるいは小さなレーダー基地には使用させません。——このことは、行政協定、安保条約というような大きな問題には、触れる勇気が鳩山さんといえどもないことでございますが、しかし、アメリカの軍事基地に使用させるかどうかということは、これはわが国だけでできる話です。つまり、合同委員会におきましてノーと言えば、それで済む話です。これはわが方一手でできる話です。これを一つ打診をしなくちや、この交渉において最善を尽したものとは言えない。アメリカの軍事基地にさせませんからいかがでござるということの交渉をなさった事実があるかどうか、このことを一つお尋ねいたしたいと思います。
  138. 松本俊一

    松本全権委員 この点につきましては、交渉のきわめて機微な点にわたりますので、私はこの際答弁することを差し控えたいと思います。さように御了承願います。
  139. 細迫兼光

    細迫委員 これは実に困ったことで、まあ死児のよわいを数えるようなことでございますけれども、あくまでそのことが私の心残りでございます。尽すべきを尽したとはどうも申されないことが心残りでございまして、その点についてのソ連の反応を、ぜひともお漏らし願いたい。これは将来の非常に参考になることでございまして、見通しを立てる上に強力な根拠になると思いますから、合理的なお差しつかえがあるようにも思えませんので、お漏らし願いたいと思うのでございます。
  140. 松本俊一

    松本全権委員 私は、領土問題につきまして、あらゆる角度からあらゆる点について、約十ヵ月にわたって交渉いたしました。しかしながら、その交渉内容の機微なる点は、やはりこの際私は申し上げない方が、かえって将来のためにもいいと思いますので、私からは答弁することを差し控えたいと思いますから、あしからず御了承願います。
  141. 細迫兼光

    細迫委員 三時には一応切り上げるつもりでございますが、その点につきましてはどういう差しつかえがあるか、御説明願わなくては、どうも納得できないのであります。重ねて一つお願いいたしたいのですが、交渉はそこに触れたかどうか、われわれの現在まで理解するところでは、全然触れておられないと私ども考えるのでありますが、もし反する事実がございましたら、外務大臣あるいは総理大臣からでもお答え願いたい。
  142. 重光葵

    重光国務大臣 私からお答えいたします。この領土問題についての日本側態度は、領土の返還を受けてからこれを基地にしないということは、常に説明して曲るのでございます。これは軍事基地にはしない、なぜかというと、そればソ連に対して、基地ということになれば敵対的になるのでありますから、そういう考えは毛頭ないということで、進んで話をしてきました。しかし向うは、どういう条件でもって日本の領土権を認めようというような譲歩的の言明、考え方は、少しも出してくれませんでした。そこで、話はそれきりになってきておるのでございます。こちらの態度としては、常にそれを説明してきたわけでございます。御了承を願います。
  143. 細迫兼光

    細迫委員 それに対する好ましい反響がなかったとすれば、要するに、それはソ連側から見て、鳩山内閣がそれほどの信用を受けなかった、こう解釈する以外はないと思います。私どもは、この領土問題についての将来の展開は、国際的に平和主義をあくまで貫く、また日本における軍事基地を撤廃するということを基本的な態度として信用を受ける政権ができた暁でなくては、あり得ない、こう思っております。でありますが、まだまだ歯舞、色丹程度のことならば、そういう条件をつけますならば、即時返還ということくらいはできたのではないかと、まだ心残りがいたす次第でございますけれども、触れられたとすれば、若干の経過はそれで了解できます。  それから、鳩山総理にお尋ねを申し上げますが、総理におかれましては、かねての念願の日ソ国交回復がまさにできようとしておる際でございますから、さぞや御満悦のことだろうとお察しをいたしますが、大きな仕事をなさいまして、自分でも確かに七十点はもらえると自負しておられると思います。私どもも、この日ソ国交回復につきましては、相当な評価をいたしております。あるいは鳩山さん自身が評価しておられるより以上に評価しておるかもしれません。鳩山さんが七十点はとれると思っておられるところに、八十点くらいは、ときによったらば上げてもというような気持を持っております。それはこの日ソ国交回復の価値判断、評価の問題でございます。鳩山さんは、東の窓と同時に、今や西の窓をあけて、闊達な平和な世界国際場裏に日本が出ていくこと、そういうふうにこれを認識し、そのようなところで非常に意義あるものと考えておられるようでございます。しかし、私がもう少し点を上げてもよろしいと考えるのは、この日ソ国交回復は、われわれ民族の悲願でありまするところの日本の独立——あなたも始終独立の完成とか、真の独立とかいうことを口にしておられますから、今、日本の状態が真の独立あるいは完成せられた独立とは考えておられないとお察しいたすのでございますが、この民族悲願の独立ということに通ずるものである、その第一歩であるという意義、そういう価値を私どもはこの中に見るのでございます。それでこそ、私どもは最初からあなたの構想に支持応援、激励の態度をとってき、終局において、今度も批准承認に賛成しようと考えておるのでございます。これが独立に通ずるものであるというその御認識があるかないか、御答弁をお願いいたしたいと思います。
  144. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 今、細迫君が申された通りに、独立に通ずるものがあると考えております。
  145. 細迫兼光

    細迫委員 まことに、そこにおいてこそ初めて日ソ国交回復の価値をより高めるものでございます。ところが、これと相矛盾するところの事柄を鳩山内閣がなさるということは、まことにどうも矛盾でございまして、私どものとうてい納得し得ないところであります。今、しばしば重光外務大臣も申されますように、アジア・アフリカを初めといたしまして、民族独立の機運が世界を大きく動かしておるという著しい事実でございます。あるいはまた、スエズと匹敵するパナマ運河、このパナマにおきましても、ダレスが、パナマはアメリカの国内運河だなんということを言い始めまして、これに対する非常に激しい反発が起っております。そういうように各地方に民族独立の機運が巻き起っております。これは、日本においても決して例外ではあり得ない。その一つの現われとして、あの砂川問題なんかも見るべきだと思うのです。この民族独立の運動に対しまして、そういう意味を持った動きに対しまして、鳩山内閣が弾圧的な態度をとるということは、大きな矛盾でございます。これはあなたの大仕事であった日ソ国交の事業をより多く価値あらしめるために、そういう一つ一つの現われにも、これが独立に通ずる問題であるということを御認識なさいますならば、ぜひともそれに一貫した態度をとっていだたきたいと思うのでございます。日本の独立運動、これは当然にエジプトの独立運動が表面上イギリスに対する運動になり、インドの独立運動が必然にイギリスに対する運動になるというような事情から、日本の独立運動は当然アメリカに対する、あるいは感情を害するかもしれないような運動に相なると思うのでございます。これは決してアメリカとの国交問題と考えなくても、民族独立の運動に対する内閣の態度として好意を持つのみならず、これを支援するという態度こそ、御認識において一貫するならば、とらなければならぬ態度だと思うのでございます。これらの事柄についての御方針、御意見を承わりたいと存じます。
  146. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 昨日も申し上げました通りに、日ソ交渉は、世界の不安というか、そういうような事態をなくなすのが目的なのでありまして、世界を平和に持っていきさえすれば、日本軍備の拡張とかあるいは自衛の問題だとか、米ソの問題などというものは自然となくなるのでありますから、日ソ国交回復条件として、世界の不安の事態を一掃するように努力して参りたいと思っております。
  147. 植原悦二郎

    ○植原委員長 次会は明二十二日午前十時より開会いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後三時一分散会