○綱島委員 もっと詳しく言えば、この契約の適用
範囲というものは、先ほど申し上げたような危険負担の問題がございますから、そこでこの契約を悪意によって履行せざるときにのみ起り得るのだ。この
内容は損害賠償の予見契約です。本質はそうなんだ。名前はあなた方が消費貸借に似たようなものを書こうと何と書こうと、この
内容は損害賠償の予見契約です。そこでその適用
範囲は、任意に履行せざるときにのみ起る予見契約にすぎない。この契約はそれ以外のところには適用はできません。もっと詳しく言えばたくさんあるけれ
ども、本筋のことを言えば
法律家はわかるはずなんだ。これはどこにもここにも書いておいて、どんな場合でもその
法律を適用してしまおうなんという
考えをされては困るのですよ。それは他の規定と抵触せざる、民法の大原則と抵触せざる
範囲においてのみ履行され得るのです。危険負担がすでに移っておるものを、危険負担いたしますというようなことを契約したって、そんなことは何の
法律で有効ですか。それは公序良俗に反しようが反しまいが、それこそ全く民法が規定しておる、意思表示のみによって物権の設定、移転は決定されるという大原則を犯して、契約はしておるけれ
ども物権の移転はせぬのだというようなそういう契約が有効だったら、契約はないことになる。その売買契約はなかったことになるのですよ。わかりますか。売買契約をした以上は、その意思表示によって物権の設定、移転は決定するという大法則が決定的に支配してくるのですよ。それがために
法律はあるのだから。そこでこの契約が公序良俗に反しないとすれば、残ったところは、任意に供出をせざる場合にのみ適用することだけなんだ。
不可抗力でも何でも、
売り渡し者の責任は、完全にこれを引き渡す管理義務がある。それは、
不可抗力の場合は、その義務は免除されるという規定がちゃんとあるのだ。そういうものをみんな、いやこの場合はそういうことも要らぬ、
売り渡しても所有権の移転はせぬのだとあなたのようなことを言えば、登記し終った
売り渡し書を持っておっても、この家は売らなかったのだというような契約を別にしておけば、それが有効だというのと同一行為ですよ。あなた方の言うようになれば、
法律なんというものは要らぬじゃないか、いわゆる公序良俗に反するというようなことだけを言っておるなら、何も
法律というものは要らないのだ。そうじゃない。こういう決定的な大法則というものを犯せば、法治国の根本が疑われるのだから、そういうところまで
法律というものは自由ではないのです。先ほど言うたように、女房でもあればめかけでもあるというような契約を夫婦間に結んだって、そんなものは効力がないのだ。