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1956-12-04 第25回国会 衆議院 商工委員会中小企業に関する小委員会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    本小委員昭和三十一年十一月二十二日(木曜 日)委員長指名で次の通り選任された。       阿左美廣治君    内田 常雄君       島村 一郎君    首藤 新八君       中村庸一郎君    野田 武夫君       南  好雄君    森山 欽司君       加藤 清二君    田中 利勝君       中崎  敏君    松平 忠久君 同日  中崎敏君が委員長指名で小委員長に選任され  た。     —————————————    会 議 昭和三十一年十二月四日(火曜日)    午後二時三十四分開議  出席小委員    小委員長 中崎  敏君       阿左美廣治君    野田 武夫君       南  好雄君    森山 欽司君       田中 利勝君    松平 忠久君  出席政府委員         厚生事務官         (公衆衛生局環         境衛生部長)  楠本 正康君  小委員外出席者         議     員 小笠 公韶君         議     員 笹本 一雄君         議     員 多賀谷真稔君         議     員 田中 武夫君         文部事務官         (初等中等教育         局中等教育課         長)      杉江  清君         通商産業事務官         (重工業局鋳鍛         造品課長)   吉開 勝義君         通商産業事務官         (中小企業庁指         導部長)    川瀬 健治君         通商産業事務官         (工業技術院調         整部長)    出雲井正雄君         労働事務官         (労働基準局福         利課長)    石島 康男君         参  考  人         (労働科学研究         所長、技能者養         成協会会長)  桐原 葆見君         参  考  人         (日本経営者団         体連盟技術教育         委員長労働省         技能教育審議会         委員日立製作         所株式会社常務         取締役)    児玉 寛一君         参  考  人         (日本光学工業         株式会社常務取         締役)     乗富 丈夫君         参  考  人         (日本鉄鋼連盟         労働局福祉課         長)      井上八十彦君         参  考  人         (日本鋼管株式         会社労務部)  斎藤 平六君         専  門  員 越田 清七君     ————————————— 十二月四日  内田常雄君同月一日委員辞任につき、委員長の  指名で小委員に補欠選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  技能者養成に関する件     —————————————
  2. 中崎敏

    中崎委員長 これより会議を開きます。  本日は、まず技能者養成に関する問題について御出席参考人各位より御意見を承わることにいたします。ただいま出席されております参考人方々は、労働科学研究所長技能者養成協会会長桐原葆見君日経連技術教育委員長労働省技能教育審議会委員日立製作所株式会社常務取締役児玉寛一君、日本光学工業株式会社常務取締役富丈夫君でありますが、なお本日出席される予定でありました日本鋼管株式会社労務部次長折井日向君及び日本鉄鋼連盟労働局長水津利輔君が所用のため出席できず、その代理として日本鋼管株式会社労務部斎藤平六君及び日本鉄鋼連盟労働局福祉課長井上八十彦君より意見を述べたいとのことでありましたので、小委員長において神田商工委員長の了解を得て、両君より参考人として御意見を承わることにいたしました。右御了承願います。  参考人各位に一言ごあいさつ申し上げます。本日は御多用中にかかわらず、本小委員会に御出席下さいまして、あつくお礼を申し上げます。申すまでもなく、近来原子力産業電子工業等産業高度発展に備えて、わが国の技術及び技能教育制度の再検討などが要請されて参りました。個々の企業においてもそれぞれ技能者養成について鋭意検討を進められておるようでありますが、中小企業におきましてもこの問題はきわめて重要な問題でありますので、本日は本問題に御造詣の深い方々の御意見を承わり、もって調査の参考に資したいと存じておる次第であります。  それでは桐原参考人よりお願いいたします。
  3. 桐原葆見

    桐原参考人 参考人桐原でございます。中小企業者技能者養成はただいま委員長お話のように非常に重要なことだと思いますが、特に最近オートメーションまでいかないまでも、自動機械化が進みますと、単純な繰り返し作業というのは大企業の方でやってしまうという格好になりますので、結局中小企業の方では精密な高度の技術を要する腕前を持っていないと立場がないというようなこともございますし、また御承知のように中小企業業種をしょっちゅう変えなくては立ち行きませんために、オール・ラウンドと申しますか、ごく多方面の技量を持たなくては、将来失業の危険もあるというような状態でございます。  それからもう一つは、大企業下請関係になっております系列の業種を見ますと、その技術水準がそろいませんために、でこぼこが非常にあるために、大企業の職場の中では非常に手休めだの機械稼働率が下るとかいう支障方々で来たしておるわけでございます。というようなわけで、非常に中小企業の方の技術養成こそ最も大事だと考えるのでございますが、今お話がございましたように、必ずしも日本現状はうまく行っていないというような状態でございまして、今何十万かの毎年中小企業へ入ります少年の中で、系統的な養成教育を受けつつあるものがどれくらいありますかということは、およそ見当をつけますと数パーセントにすぎないというような状態でございます。これについては定時制工業高等学校というものも数は少いけれども、とにかく政府としてはあるのでございますし、各種学校がございますし、その他社会教育でもいろいろな施策が行われているわけでございますけれども、遺憾ながら特にこの中小企業従業者はそれを利用する時間的な余裕がないのと、それから経済的のゆとりが全然ないと言っていいくらいであります。  それからもう一つ、現在のそういったような養成教育で、われわれ遺憾と存じまするのは、せっかくの定時制教育、あるいは各種学校教育、あるいは社会教育が、必ずしも現場における技術習得体験教育の系統の中で生かすということを強力にやらないで、その現場職業体験とは無関係な学習をやっておるというような状態があるようでございまして、これは非常なむだだと思うのでございます。たとえば定時制高等学校は都会に相当ございまして、そこへ志望のある連中が出かけて行っておりますが、そこは大体普通課程学校でございまして、現場労働技術体験教育的に生かされてないというところに非常にむだがあるように思います。そこで一番われわれが支障ではないかと考えておりまするのは、先ほどお話がございましたように、技能者養成規程による養成は一応労働省管轄になっておりますし、それから各学校文部省管轄でございますし、また通産省におかれましても企業二課といったようなところで人間の問題についてのいろいろな行政が行われておるのでございますし、また科学技術庁におかれましても、これは技術行政立場から御関心があるやに存ずるのでございまするが、一応技能者養成については労働省管轄ということになっておりますような関係から、そういうところへ手が出せないといったようなこと、それから事中小企業に関しますると、中小企業庁というところで一応いろいろなことをやらなくちゃならないということに相なっておるようにも承わっておりますので、こうなりますとこの問題があらゆるそういう方面関係があるだけに、どこでも三すくみの形になっておるのじゃないだろうかというふうに、われわれ門外から見ると、そんな感じを持つのでございます。今日、外国では、これからの技術の革新に対しまして準備いたしておりまするところの技能者養成あるいは技術教育の政策が非常に強力に展開されつつある現在、日本がこういう状態に置かれておるということは、大へんなことになると思うのであります。こういう意味で、一つ何とか先ほどの委員長お話のように、統一のある強力な施策を打ち出していただきたい。特に中小企業におきまして現在非常に困っておりますのは、たとえば技術学修の中で理論的な方面をどこでどういうふうにやるかというような問題であります。これには共同養成施設などが考えられるわけでございますが、これも中小企業自体の手で運営していくということはなかなか困難ではないだろうかと思っております。そこで、産業界経験を生かして、それにそれを裏づける学理の、学科の教習を何とか十分につける。そういう学理に裏づけられました、しかも労働体験教育の中で生かしていった、そういうことによる一つ人間養成というものが特に中小企業においては——企業ではこれは企業の責任においてずいぶんやれる点がございまするし、現在も行われておりますが、中小企業は非常に行き悩んでおる状態でございます。  それからもう一つつけ加えたいことは、中小企業の中でたとえば大工さんであるとか、左官であるとか、それから洋服の製造であるとか、こういうばらばらにちらばっております業種、これに対して一体どういうような方法で教育すればいいか。共同体でもっていろいろ推進する手をぜひ考えなくちゃならないわけでございますが、何分にも資本力がございませんのが現状でございます。こういうことからやがてはまた技術というものの社会的の認識ばらばらになって参りますことが、非常に必要な同職の横の連合のクラフト・ユニオン、そういうものの発達を阻んでおるような現状でありまして、これは労働者地位を向上させるという観点から見ましても、このままではいつまでたってもそういう同業関係の結束はできないようなことになる。これは社会的の認識が乏しい。社会的の認識が乏しいということは、社会的に認識されるだけの教育を受ける機会がないということになるのじゃないかと思うのであります。何とかこれはぜひとも国で、あるいは公けの組織でもって、先ほど申します現場経験と、それからそれを裏づける学理教育ができまして、完全に今の工業高等学校卒業というような程度の教育ができますようにしなければいけないと考えておる次第でございます。  私の私見だけを申し上げたわけであります。
  4. 中崎敏

    中崎委員長 次に児玉参考人にお願いいたします。
  5. 児玉寛一

    児玉参考人 技能者養成関係しまして私は、中小企業ということでありますから、話を中小企業に限って申し上げたいと思います。  ものの対策には根本対策と特効薬の、今困っている問題をどうするか、この二つがあると思います。根本問題では私は何としても中学校、小学校における理数教育日本全体でもう少し拡充しなければならぬ。もう少しどころでなく、うんと拡充しなければいかぬ。ということは、たとえば野球の好きな先生がおると大体その学校は毎年野球が強い、音楽のいい先生がおると音楽の好きな生徒がたくさんできる、理数系のいい先生がおられるところでは理数の好きな人間が多くできるわけなのであります。技能者養成と申しましても、特に工業に関する限りはやはり数学、理科というものの頭が根本的になるわけなので、日本教育が最も考えなければいかぬことは理数系だろう。昔は大将になるための軍人の教育をやったわけですが、今度はそういうものがなくなったのだから、どうしても理数系教育を拡充していただきたい。そのためには理数先生養成機関がない、できていない。ほんとうの生活に即した理数系教育をする人の養成をぜひやらなければ、根本問題は事解決しないと私は考えます。  それから現在中小企業ではいろいろな点で非常にお困りになって、金がないということで金の面でお困りになっていますけれども、今の状態が進みますと相当に仕事があるわけでありますから、今のように資金々々ということでなくして、もう一年、二年たちますと、中小企業では有能な技能工がないということに非常な難点がくるであろう。現在すでにきておりますけれども、今後ますますそれがひどくなるであろう。と申しますことは、現在の技能者養成法によりますと、期限が三年になっておるわけです。ところが三年後を考えて、中小企業の五人、十人使っているところが養成するということは非常に困難であります。それで私はこの問題についてはどうしても現在の技能者養成所というものが、これは全部企業側がやっており、わずかに共同養成というものがありますが、何としても国立技能者養成所を作らなければならぬ、少くも各県に一つぐらいは国立技能者養成所が必要であろう。それには各県に補導所があるわけです、農業をやっていた人を六カ月とかあるいは短かいのは三カ月くらい工業教育をして、そうして就職させるというような、補導所にはそういう教育の設備が相当あるのですから、これらを労働省技能者養成の方と連携せられて、もう少し補導所を拡充して、そこを県立なり国立なりの技能者養成所にできるだけ早く模様がえをすべきであろう。と申しますことは、三年間の現在のままでいいかというと、これは来年から始めても三年たたなければ卒業生が出ない、いわゆるこうやくばかりの急場には間に合いません。そこで私が考えますことは、現在の技能者養成規程というものは徒弟制度の弊害を除くための多分に監督行政的なものになっております。しかしもうその時代はほとんど過ぎて、中にはそういう必要のあるものもあるかもしれませんが、ほとんどそういう必要はなくなりつつあるのでありまして、問題は積極的に日本技能者養成する時代にすでに突入しているのだから、技能者養成規程単行法にいたしまして、それで全部三年でなくて、一カ年くらいの短期養成というものを考えるべきではないか。たとえばわれわれのような大企業では機械工業が仕上工に変ったり、いろいろ中で職種転換があるわけでありますが、鋳物ばかりやっておる中小企業では必ずしも仕上げや旋盤なんていうことは知らぬでもよろしい。もう単能な職種だけしかその会社にないのですから、こういうものに対しては私は一年間で大体やっていけるのではないかと思う。もう一つは現在の技能者養成規程によりますと、一年生にはたくさんいろいろな科目があって、いわゆる座学といいますか、教室で学ぶ時間が非常に多いけれども、二年生になりますとうんと減るわけです、大体一週間に半日ないし半日ずつ二回で座学はいいわけで、あとは実習すればいい。だから二年生を中小企業が受け入れられるようにすれば、中小企業負担は非常に軽くなるし、一年間国立技能者養成所というようなもので、これは名前は何でもいいのですけれども、こうしたところで工業教育をした者を中小企業が受け入れるならば、あとの二年間を共同養成なら共同養成で一週間に半日ずつ二回とか一回行くことでやっていけるので、中小企業の一負担は著しく軽減できるということで、私はぜひ一年の卒業ということがまずければ、一年修了ということにすべきであろうと思いますが、どちらにいたしましても、私は県立または国立技能者養成所がぜひ必要だと思う。先年私はドイツに行ってみましたが、ドイツのハンブルグなんかでは実にりっぱな州立の技能者養成所がございます。こういうものをぜひ持っていただきたいということを考えるわけであります。  それから時間がありませんからもう一つ、さっき桐原さんがお触れになりましたが、技能者養成制度といいますか、養成工の中に、現在資格をとるために定時制高等学校に行っている人がずいぶんあります。日本という国は何としても資格のほしい国民が多いから、できるだけ勉強して資格をとることを希望するのはいいのでありますが、地方なんかには特に定時制職業科がないわけです。全部普通課程高等学校しかないから、定時制に行くためには普通課程に行って資格をとるより仕方がない。これではせっかく技能のことをやりたい人が、資格をとるために毎日々々退勤後学校に行くわけで、多くは夜間でありますから、非常なオーバー労働になる、しかもそれらの人は十分に卒業できないと同時に身体をこわす、青少年の体育の問題においても、現在の定時制ではどうしても工合が悪い。将来の青少年の体格の問題ということで、非常に憂うべき現象だと思います。そこで、せっかく通信教育ということがあるわけです。これは文部省関係労働省関係だからなかなかうまくいかぬと私は思うのですけれども、同じ日本労働省であり、日本文部省だから、もう少しうまく連携をおとりになって、技能者養成工業のことは十分教育できているのですから、それらの人は通信教育で足らない部分をとる、もっと足らない人は定時制にも行ける——だから、たとえば定時制学校へある科目だけ一週間に二日なら二日、三日なら三日とりにいき、あと技能者養成所教育でやっていく、もう一つは、いなかには定時制の専門の工業高等学校というものはないのですから、それらの人には通信教育でやっていただきたい。調べてみますと、現在普通課程通信教育というものは割合に行き渡っておるわけですけれども、たとえば機械だとか仕上げだとか、そういう工業に関する通信教育がないのであります。これは私は早急に日本の国として、機械科とか、仕上げとか、工業一般とかいうような工業関係高等学校通信教育をぜひ作っていただきたい。その通信教育技能者養成と両方で、試験はしていただいてけっこうなんだから、試験によって高等学校卒業資格がとり得る、勉強して高等学校卒業資格をとりたいという人はそういう方向に進み得る、特殊の道をぜひ開いていただきたいと思います。  もう一つ共同養成の問題でありますが、中小企業では共同養成によらなければ自分だけで技能者養成所を持つことはできませんから、共同養成に対しては政府は十分これの保護助成に力をいたしていただきたい。  時間がありませんから、私の意見はこれで終ります。
  6. 中崎敏

    中崎委員長 次に乗富参考人にお願いいたします。
  7. 乗富丈夫

    ○乗富参考人 乗富でございます。  今問題になっております技能者養成は現在どうなっているかと申しますと、労働基準法に基きまして、技能者養成規程というのがございます、それによって技能者が一部養成されておるのであります。従っていろいろ今までのお話がございましたが、技能者養成がなされておらないのではないのであります。しかしその仕方にいろいろ問題があるわけでございます。それはあらゆる工業あるいは企業におきまして、技術技能がなければ成り立っていかぬというのは当然でありまして、何も法律によらなくても、各会社事業主技能者養成をしておるわけであります。しかしそれではいわゆる国としての計画には乗っていかないというところに、大きな問題が一つあるわけであります。それから現在の技能者養成規程なるものが、先ほどからお話に出ておりますが、その出発におきまして昔の徒弟制度封建主義を排除するということが第一の目的で、第二が年少労働者保護する、こういう二つ目的をある一つの形でなし遂げるために技能者養成というのを持ち込んであるわけであります。従ってその問題の焦点が、技能者養成するというのは今の労働者保護なり徒弟制度を排除するための方便である。ところがこの教育訓練というものが方便であってよろしいかという基本問題がここにございまして、それが一つここで大きく取り上げられなければならない問題だと思うのであります。従って現在の技能者養成は、監督行政のもとにありまして、要するに徒弟制度が排除され、青少年労働保護されれば、技能はよくならねでもかまわぬ、極端に申しますとそういう趣旨になっている。それで一面から技能者養成制度があるのに、なぜ拡充、発展されないか、なぜ効果が上らないかと幾ら言われても、目的が違うだけにそっぽの議論になってしまいます。従ってここで考え方を変えなければならない。技能者養成ということは教育訓練一つの体系であって、そのものずばりに取り上げて技能者養成発展、推進されるような、法的にあるいはその他の措置を講じなければならぬということが当面の問題でございます。その問題が基本的に解決されるならば、ほとんどの問題が一ぺんに解決できるのであります。すなわちこれを監督行政から助長行政方向に転ずる、あるいは今の規程から一つ技能者養成法というのを作って、十分の予算措置をしてかかるということになれば、問題はおのずから別な方向に行くわけであります。外国がやっておりますと同じような方向になるのであります。そこに問題の第一点があるのであります。  それから現在のやり方ですと、国もそういう点から力が入っておりません。またそれを行なっておりますのが大体事業家でございますが、その方も今の法律制度のもとではやりにくい。また受ける方の、技能者養成をされている本人も、資格の問題その他の問題で、援助もなし資格もとれないというので非常に不満であります。従って現行技能者養成はあらゆる点に不満足なものがあります。これはどうしてもその後の——今すでにそういう形で行き詰まっておるのでありますから、これは新しい展開をしなければならない当然のことであります。  それからかりにそういう行き詰まりをどう展開するかということから問題を取り上げてみますと、いろいろ問題がございますが、まず第一にこれは年少者、十八才未満の者に対する職業訓練であり、社会訓練すなわちヴォケーショナル・トレーニングであり、ソーシャル・トレーニングであると考えなければいけないのでありまして、そういう点から今の労働省とか文部省とかいうような一つの省でどうするこうするという問題でなくて、青少年をどう取り扱うかという大きな問題と関連してくるわけであります。特に十八才未満の中学を出たばかりの者が一番教育をすべきときであり、また技能養成からいっても適当な年令でございまして、そういうものに対して、でき得れば国として一定義務を、これは事業主にかけるかあるいは本人にかけるかどうするか、とにかく一定義務制でも行なって、全員を教育するということが当面必要ではなかろうかと考えます。それが現行は何ら義務制がなくて自由にまかせられておるがためにこれが行われないという面がございますので、義務制の問題を申し上げたのであります。しかしながらこれにははっきり労働契約の中に教育訓練ということを内容とする契約ができるかできないかという法的な問題がございますが、これは研究問題でございます。  それからもう一つは、現在の技能者養成では中級技能者養成するというだけであって、中堅幹部を養うということでありまして、非常に範囲が狭い。そのために、いわゆる初級の単能工を必要としておるところもあり、あるいはもっと指導的な地位技能者をほしいと考えておるところもあるわけでございまして、その範囲を一種類にきめないで、初級中級、上級の養成ができるようにこれを考えればいいと思います。  その次は、何といっても技能者養成をやりますのには、指導員がいなければ成り立たないのであります。指導員を十分に養うというために何か研修の制度を国が作ってやるということが必要でございます。  それから今度養成工になる者に対して社会的な評価を与えてやらなければいけないのでありまして、そのために国家の検定をするとか、あるいは技能証明制度をするということも必要であろうかと思います。また同時に、この技能者養成を行う事業場、共同の施設であろうが、あるいは単独の企業であろうが、この技能養成をしようとする施設に対して、あるいは事業主に対していろいろな面で助成をしてやらなければいけない。この教育訓練というものは、した翌日から効果が発生するものじゃなくて、少くともその課程を修了して何年か後に初めてそれがものをいう、戻ってくるものでありますから、その間の長い投資という面に助成をしてやらなければならないのじゃないかと考えます。特にこれは中小企業の場合、先ほどから問題が出ておりますように、特にこれは考えてやらなければいけない。間接でなく、直接これを助成し、あるいは直接訓練の手伝いをしてやらなければいけないのではないかと考えるのであります。特に中小企業に触れますれば、今までいろいろな中小企業対策が金融の面その他でやられてきておりますが、何といってもその中小企業の中身をよくする、すなわち中小企業それ自身を強くする方策というものはあまり考えておらないのでありますが、中小企業といえどもやはりこれは技術を中心——むしろ大会社、大企業以上に技術というものがものをいっているのでありまして、機械が悪くても腕でいくというのが中小企業でございます。そういう点から考えて、りっぱな技能者を与えることがそれ自身で救済になる、あるいは中小企業発展を基礎づけるということになると考えて、これ以上の大きな助成はないのじゃないかと考えられるのであります。  それからこういう技能者養成を最も効果を上げるためにはいろいろな方策が必要でございますが、国立の総合研究機関を設けるということが、これはいわゆる技能者養成センターというようなものを設けて推進していくことが非常に適切ではないかと考えるのであります。  それからそういう方向でものを考えた場合に、それでは現在の制度、いわゆる教育訓練という立場から考えた問題といたしましては、やはり労働省文部省という両者の競合したりあるいは協力しなければならない面が非常に多いのであります。特に最近問題になっております定時制高等学校がいろいろな財政その他の問題、そのほか通信教育におきましても行き詰まっておるわけであります。この問題の解決と技能者養成と、いずれも行き詰まっておるものを一つにして解決がつかないかどうか、これがやはり一つの問題でございまして、端的に申しますと、これからの定時制高等学校技能者養成と一緒になって職業教育をする、すなわち産業教育をする一つの機関というふうな考え方がここで集約されて、一つの考えに浮ぶのであります。そういうことによって労働省とかあるいは文部省とかいう担当の省と離れまして、一つの新しい構想が生まれ、同時にそれを考えると、新しい立法も容易にできるんじゃなかろうか、こう考えます。その関連性につきましては、いろいろこまごましたことがございますが、要は技能者養成定時制高校と非常によく似たことをやっている。定時制高等学校に行っております青年は、ほとんど事業に勤めて、働きながら夜学に通っているというのが現状であります。またその同じことをやっているのが、働きながら学んでいるのが、やはり企業の中の技能者養成でありまして、その両者を一致させる可能性は非常にあるのでありまして、それを一致させることによって、すべての定時制高校の問題、通信教育の問題、技能者養成の問題が片づくならば、大きく手を打たるべきではないかと考えるのであります。  ただここで問題の結論的に私が申し上げたいことは、技能者養成ということは、単に労働保護とか、そういうものではなくて、日本産業に絶対に必要な技能を作り上げるということでありまして、国が考えなければ、とうてい考えられないことであるということ、従って思い切った措置を講じていただきたい、これが私のこの問題に対する見解でございます。
  8. 中崎敏

    中崎委員長 次に日本鉄鋼連盟の井上参考人にお願いいたします。
  9. 井上八十彦

    ○井上参考人 私は、今までのお話は一般的なお話でございましたが、鉄鋼業の立場としてこの技能者養成制度がどうありたいか、また現状はどうであるかということについて、簡単に申し上げたいと思います。  なおこの委員会中小企業関係委員会であると申しますが、鉄鋼業の技能者養成制度は、御承知の通り鉄鋼業は非常にたくさんの職種技能工を使っておりまして、その中で鉄を作る直接の業種に入る職種は、製銑工、製鋼工、圧延伸張工、操炉工、築炉工、こういったものが鉄鋼本来の職種でございます。これは戦後技能者養成規程ができまして、ある程度たってあとから、こういう職種をやってもよろしいという告示が出たのでございます。これは日本の国でも計画的にこういう職種養成するということは戦後が初めてでありまして、戦前には全然ございませんでした。あとで申し上げますが、現在工業高等学校でも、このような職種に対する基礎知識を与える工業高等学校というものは、ほとんど一カ所くらいしかないのであります。ただいま申し上げましたように、戦後新しくできた制度でございますので、目下同業の各社の協力を得まして、こういうような実際の技能工を作るにはどういうふうな教育を施したらいいか、どういう技能を持たしたらいいかということを研究しておるわけでございます。なお鉄鋼業のこういう業種を現在養成しなければならぬという必要性は、戦争前と戦争後では、いわゆる製鉄の設備機械が非常に変って参りました。これは日本だけでなく、各国そうであります。戦前には、おそらくあまり知識などは要らない、体力と熱に耐えるだけの人間ならばいける、御承知の通りの作業でありますので、非常に粗雑な作業としていったわけでございます。ところが戦後は、平たく申しますと、オートメーション化の一環とも言えるのでございますが、非常に高速度にスピードを持った精密な機械を使うようになりましたので、戦前のような人間では、新しい形式の機械はとうてい使えないというような事情になって参りました。そういうことでございますから、現在では大企業中心にこういう方面の研究を連盟を中心として行なってきておりますが、中小企業でももちろんこの施設を置かなければならぬということで、熱心なところは非常な犠牲を払って養成施設を置いておりますが、これは同業の中でいろいろ指導を行いまして助け合ってやっているような状態でございまして、それは大企業でもまだ完全には行なっておりません。と申しますのは、まだまだ企業の中でも、こういった人間の面の教育といろのは、設備とか機械の更新というような方面の資金その他の力の入れ方に追いつかないような状態でありまして、どうしてもおくれがちになるというためにこういう状態でございます。お手元に配付してございますのは、昭和二十六年から新しい制度がしかれまして、極力広げたのでありますが、現状ではその程度の養成施設しかまだできておりません。なお戦後に、これは乗富さんからお話がありましたように、現在基準法では、十八才未満年少者は危険有害作業に従事させてはならぬ。しかし義務教育を終えた中学卒業生は十五才でございます。これは教習のためにある限度の実習しかできません。その三年間に技能を身につけようということでございますから、これは非常な困難があるわけです。しかもこれは余談になりますが、昔から鉄鋼の職工として一人前になるには、見習をとにかく十五年くらいやらなければ一人前の人間はできない。しかもそれが新しい設備なんかになりますと、これは経験だけでありますから、理解力がない、仕事がまだできない。これを急に焼き直すわけにいきませんので、目下非常に急いでこういうものの教習方法というものを鉄鋼業者の共同で勉強しているわけであります。そのうちでようやくでき上りましたのが、お手元の青い表です。これは製鋼工だけの技能基準、そういうものがようやくでき上った。これは学校の方では理論的な教科書というものはずいぶんできておりますが、製造のために現場で必要な教え方、実習の方法、先ほど桐原さんからのお話のあった通りでございます。これは現場経験を生かした教育の手段というものが現在できておりません。大企業でもできておりませんのですから、中小企業ではもちろん、これは他の大企業でできたものを教わるという程度しかできないわけです。これでもまだ十分なものではございません。そういったことで、大企業の集まりである私の方のこういう研究会でも非常に苦労してこういうところまでやってきているわけです。こういう面の仕事は、これは業界の中でももちろん力を入れなければなりませんが、これは学校でもなし、一種の公共的な事業として今やっているわけです。御承知の通り、大企業でも中小企業でも同じように、各企業は自分の計算のもとに、これは営利事業でありませんので、限度がございます。どこかやはり国家で取り上げて、所管の官庁の中で総合的な計画指導が行われないと、われわれのような一部のもので研究しておったのでは、これは先行きえらいことになるんじゃないかということでございます。それでこういった問題は日本だけでなくて、鉄鋼関係ではILOの中に鉄鋼委員会という業種別の委員会があります。ソ連その他の先進国も後進国も入っております。これに一九五二年に日本が復活したのでありますが、その際に鉄鋼代表も参りましたが、そのときに、今の鉄鋼業種訓練の方法というものを国際的に研究しようじゃないかということになりまして、各国の技能基準というものがILOに集まり、それを交換するようなことになっております。ただその後労働省の方から御連絡はございませんが、今度おそらく一九五七年にこの委員会の第六回の委員会があります。その際には情報交換が行われると思います。やはり戦前にはどこの国でも現場の見習いで仕上げておった。それが、戦後欧州ではいろいろな機械設備が全部こわれ、更新された国が多いので、この機械を動かすについてどうしても組織的な訓練が必要だということで、各国で注目してきたわけでございます。私どもあまり外国のことはよく調べておりませんが、フランスではこういうことをやっておるそうでございます。つまり鉄鋼業は国の基幹産業でございまして、どうしても国で統制をとらなければならぬということで、大企業あたりは自分で養成所を作っていますから、これには一定の売上税の免除をする。そのかわり養成所を持ってないところは一定の売り上げに対する税金をとって、これを目的税として共同養成所の資金にするというような施策もやっているそうでございます。そういうことで、最近鉄鋼業でもある程度の発展を遂げたのでございます。  こういう養成所を出た人が、先ほど来もお話が出ましたように、各個の会社養成所を出たのでございますから、そこの会社だけしか通用しない。一般的に社会的に見て、学校の免状がほしい、そういうこともございますが、さらに現在ではいろいろの建前から各省の監督のもとに技能に関する免許が必要になっております。これは例をあげますと、機関士の免状とかあるいは起重機運転手あるいはアセチレン溶接工の免許、こういうものを、すでにこういうところで十分な技能の修得が行われているにかかわらず、一定の形式の試験を受けなければならぬ、そのために非常に会社としてはロスがあるわけであります。こういうものは、どこかで統一して、すでにその水準に達した者は試験を免除するというような政策もとっていただきたい。  それからもう一つは、最近いろいろな点で若い者は社会に立って非常に誘惑されてよくないというようなこともございますが、こういった課程を出てきた者は、相当その仕事について最初から現場に立って勉強してきたものでございますから、一つこういうものを激励するような国家の制度があっていいのじゃないかということでございます。国家の制度を待っておられないので鉄鋼連盟ではことしの三月各鉄鋼会社の施設を修了する者の中から最優秀者を推薦してもらいまして、会長の表彰状と記念品を贈る、こういうことをわずかの経費、わずかの手数でございますが、やって結果を見ますと、非常に職場に入ってからよくなっておるというようなこともございますので、こういった面は、国でも早く取り上げていただいて、一般的に各産業にも及ぼしていただきたい。  ただいま大ざっぱに申し上げましたが、こういうことは鉄鋼業の中で中小企業の方ではほとんどほご的になっております。ほごというのは、今それがやりたいけれども、できないということになっている。大企業でもすみの一角でやっておるというような状態でございまして、これはやはり私の企業の自由にまかしておったのでは時間的に間に合わないのではないか。国でやはりある程度の援助をしていただいて推進し、かつ計画的に御指導をいただかなければ、なかなか労多くして効果が少いというようなことになるのではないかという心配がございます。  なお具体的に養成所を出た人間がどういうふうに現場で役に立っておるか、学校教育を受けた者との相違といいますか、実際現場で役立つには養成した者の方がいいという実例については、日本鋼管の方の、実際おやりになっておる方がいらっしゃいますので、その方から御説明していただけばよろしいかと思います。  以上、荒筋だけを申し上げて終ります。
  10. 中崎敏

    中崎委員長 次に日本鋼管斎藤参考人にお願いいたします。
  11. 斎藤平六

    斎藤参考人 斎藤でございます。私の申し上げることは、前の方たちがほとんどお話をされましたので、これから申し上げますことは、蛇足になるきらいがありますが、一応申し上げます。  御存じの通り、昔から人を養うのは百年の大計ということを言っておりますが、この人を養ううちで特に義務教育だけで実社会に出る人たちに対して世間はどれだけあたたかい目で見ておるか、またこの人たちを正しくすくすくと育てていくためにどういう手を打っておるかということを考えてみますと、この面での政策は非常に貧困だと思います。高等学校における関係になりますと、一応組織も立ち、系統立った教育も受けておりますが、こういったところに技能者養成自体の発展し切れない一つの要因があるのじゃないか、こういうふうに思われます。  もう一つの点は、今鉄鋼連盟の井上さんからもお話がありましたが、何分技術を仕込むのでございますから、理屈だけではなくて、実際とのかね合いにおいて教育をするわけです。スポーツの例をとってみましても、練習だけでは腕をみがくことはできません。結局練習もやり、かつ試合もやる。実習もやり、かつ生産活動もするというところに生きた技術が生まれてくるわけでございます。この点につきまして、先ほど来皆さんからお話がありましたが、高等学校における教育が、ややもすれば形式に走ってしまい、実際に役立つという面が少いというようなこともございましたが、こういう例は、生産現場を持っております私どもの立場においてこれをはっきり認めるわけでございます。しからば義務教育を終えました若い連中に、いわゆる技術を仕込みますとどういうような結果が出るか、これは御存じの通り体も精神もやわらかい時分ですから、このうちに一応仕込みますと、相当効果が上ってきます。一昨年私のところでセミ・オートメーションという程度の工場が一応稼働されました。これは鋼材を圧延しまして薄板にいたし、これをまたさらにパイプに加工する工場でございます。大体費用は四十億ばかり投資して作った工場でございます。この自動装置を操縦する関係で三年仕込みました者をこれに充当いたしましたが、よその会社その他の実績から見ますと、旧制の高等学校あるいは大学を出た人たちも相当長い間練習しないと実際マスターできないというような実情にあるにかかわらず、わずか十日足らずの練習で完全にものにするという実例もございました。これは結局理論を教え、また理論に結びついた関係のものをむだなく仕込んでおくということから、こういった結果が生まれてくる、こういうふうに思われます。先ほどお話で、一応中小企業についてというような制約も受けておりますので、私も一応大企業という立場から云々というようなこともちょっとどうかと思いますが、たまたま神奈川県の技能者養成関係に従事しておりまして、実際中小企業の方にも接する機会も多々ありましたので、そういったようなところから見聞しました事例を二、三申し上げたいと思います。  中小企業でもやはり労働者は数よりも質だ、どうしても若いうちにしっかり仕込まなければならないのだという必要性は多分に認識されている向きも多いのですけれども、遺憾ながら資金の面、そのほかのことにつきまして非常に十分でございません。政府から技能者養成関係において若干の補助をもらうといったようなことはございますけれども、これは教習施設なりあるいは講師を招聘するというような面までの費用はとうていございませんので、あちらを借りこちらを借り、いわゆる教習そのものを毎日場所を変えてやっている。学校へ行って夜あいた教室を借りようとしても、たまたま規則、法律というような関係から断わられるということで、大都会の横浜ですらそういった事例が非常にたくさんあるわけです。こういうようなことや何かを考えていきますと、中小企業の方たちにはもっとこういう教育が強力に行われるような施設を、特に産業政策という面においてお考えになっていただいて、そうしてそれぞれの対策を立てていくようにしたらば、非常に今後のわが国産業を立てまする上においても大事なことになってくる、こういうふうに考えております。しからば今後どうすればこういった問題が一応解決されるかという点につきまして私見の一端を申し上げたいと思います。  先ほどお話にもありました通り、現在教育学校教育という形でやっておりますものは文部省、それからそれ以外のいわゆる技能者養成という形のものは労働省でやっておるわけでございますが、両者の関係をもっと調整して、むだのないような行き方をとることが考えられていいんじゃないか。それからもう一つは、今までの産業政策の面では、設備、技術を導入するということに重点を置かれておって、人間を作るということ、これにどうも積極的な手が打たれてなかった。いわゆる熟練工を確保するということも産業政策の上からもちろん非常に大事なことなんですが、これについてはもっと積極的な策を立てる必要があるのではないかというように一応考えますので、この点につきましてはむしろ通産省関係においても鋭意研究されて、一つりっぱな対策を立てられることが望ましい、こう思っております。簡単ですがこれで終ります。
  12. 中崎敏

    中崎委員長 これで一通り参考人より御意見を承わったわけでございますが、この際参考人並びに政府当局に対して質疑があればこれを許します。  お諮りいたします。小委員外であります商工委員田中武夫君より発言を求められておりますが、これを許すに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  13. 中崎敏

    中崎委員長 御異議なしと認めます。  田中武夫君。
  14. 田中武夫

    田中武夫君 最初に斎藤参考人技能者養成の実情について若干お伺いしたいのです。  技能養成工は新中を卒業した中からおとりになると思うのですが、新中を卒業してお宅の会社へ入社する中に、技能養成工として入る者と、そうでなく直ちに現場へいく者と二つあるのでしょうか、いかがでしょう。
  15. 斎藤平六

    斎藤参考人 今の御質問の点についてお答えいたします。私のところでは作業員は原則として十八才未満の者は雇用しておりません。それで技能者養成のコースをとるいわゆる養成工に限って新制中学を出ました者を採用いたしております。それでこれらにつきまして三年間理論と実際を教えているわけです。
  16. 田中武夫

    田中武夫君 それは今のお答えの通りでしょうが、ほかに新中を出て一緒に入って、一方は技能養成工、一方は直接現場へいくというような採用をやっているところがあるか、御存じでしょうか。
  17. 斎藤平六

    斎藤参考人 それは中小企業の場合においては、先ほど申し上げたいろいろ資金面等の事情もございまして、結局系統立った教育をして、そうしてりっぱな作業員にしようという一応考えは持っているようですが、今言ったような事情からできないわけです。いきなり働かせるというような形をとっているところも中小企業に割合に多いと思います。
  18. 田中武夫

    田中武夫君 私のお伺いしておるのは、中小企業の中にもあるかと思いますが、その会社なり工場に養成所があって、一緒に同じように学校卒業した中で、一方は試験の結果成績がいい、あるいは本人の希望等によって、たとえば五十人なら五十人採用したうちの二十何人は養成工あとの二十何人かは直接現場に、こういうようなことをやっておるところがあるかということを聞いておるのです。
  19. 斎藤平六

    斎藤参考人 神奈川県の例を申し上げますが、そういった形で雇用しておるところもございます。
  20. 田中武夫

    田中武夫君 そういう場合に賃金とか待遇、いわゆる技能者養成所に在学中というか、在所中の者と、それから昔は技能養成工として技能者養成所卒業したときに日給幾らかをぽんと上げるような制度もあったと思います。そういうようなこと、あるいは出てきた人が、さっきもちょっと触れられたと思いますが、実際現場でどのくらい役に立つか、将来技能養成工会社内における地位といいますか、本人のその後の努力等もあるでしょうが、大体どの程度までいけるようになっておるのか。というのは技能養成工が将来希望が持てるような、その会社内における存在であるかということです。
  21. 斎藤平六

    斎藤参考人 私のところの実情から申し上げますと、三年の養成コースを通しました者は、卒業と同時に現在の高等学校卒業生よりも待遇の面ではよくしております。それから将来の身分上の扱いのことですが、これは大体養成工修了者は工場の基幹工員、いわばフォーマン的な立場の者にするために養成しておるわけです。その方の面はもちろん本人の能力にも関係すると思いますが、成績いかんによってはそちらの方に登用することにしております。  それからもう一つ、中には職種によって、たとえば物理実験とか化学分析というような職種に従っておりますものは、これは一つのエンジニアのアシスタントのような仕事に従事させるというようなこともやりますので、これはおいおいエンジニアになるということも約束される、そういう例もすでにございます。
  22. 田中武夫

    田中武夫君 そうすると技能者養成所に入った人は、相当将来に希望を持って勉強し、練習していく、こういうことなんですね。これは愚問かもしれませんが、ある種の会社によりますと、養成工から上ってきたものをいわゆる自分のうちの家の子郎党といいますか、ほんとうの自分の会社の直系の従業員だということで、たとえば労働組合に入ることをきらったり、あるいは労働組合員であっても、何か争議でも起るとそういった線を通じて組合を切りくずす、そういうことが過去にあったので、これはお宅にあるかどうかお聞きするのは失礼かもしれませんが、一般的傾向として、養成工をそのような存在にしようという傾向はお考えでしょうか。
  23. 斎藤平六

    斎藤参考人 お答えします。今の御質問は非常にむずかしい点に触れるわけですが、私の方では別に教習の期間中といえども非組合員という扱いをしておりません。いわゆる中学を出ましてすぐその年の春に入所しますと、同時に組合員として活動させているわけです。それで特に今も御心配になるような面の、いわゆる労働関係の事情、これは今の時間ですと、約二百時間くらいはとって教えるようにしているくらいです。従って、それは会社立場で話す、あるいは組合の立場で話す、あるいは基準法なり、組合法なりという法律を扱っております公務員の立場で話してもらう、あるいは社会的に有名な学者なり評論家というものを呼んで話をするという工合の一つ教育をやっているわけですから、今おっしゃったように一辺倒とか、そういうふうな形には持っていっていないつもりでございます。
  24. 田中武夫

    田中武夫君 しかしある会社では、現在の養成工じゃないのですが、過去に養成工として育った人、これは自分の会社の型に仕立ててしまって、それを通じて組合を切りくずすという事例が今までにあったんです。今後そういうことを頭に置いて教育をしない、そういうことならばけっこうでございます。
  25. 斎藤平六

    斎藤参考人 これは労務管理の問題になるのですけれども、そういうようなセンスでやりましても長続きしない。従って労働者にも十分それの知識を与え、正しい判断力も与えていく、思考力も同時につけるというような考え方で、今おそらく新しい労務者の労務管理の方たちはお考えになっているわけですから、何もかも全部取り上げる、押えつけて言うことを聞かせるという意味合いのことはすでに昔のことじゃないか、私はそう思っています。
  26. 田中武夫

    田中武夫君 次に桐原参考人にお伺いしたいのですが、先ほどもちょっと触れられたかと思いますが、労働基準法の六十九条ですかによって、徒弟制度が廃止になった。そうすると、大工とか左官とかいったような、手職人ですか、ああいう職人の養成ですね。実際私もよく知らないのですが、どういうふうにしてこのごろでは養成しているのでしょうか。
  27. 桐原葆見

    桐原参考人 お答えいたします。一つの型は、技能者養成規程によりまして、その親方が一応指導員資格を得るのです。指導員資格を得れば技能者養成工として採用できるのです。そして指導員ですから資格はあるのですから、それで実習を指導しているわけです。もちろんそれには関連学科を学習しなければならない規定がございます。その関連学科は、大体共同学習所ですか、そういうような機関を作ってやっておりますが、それに非常な困難な点がございます。たとえば都会でございますれば、共同学習所にかなり通学もできますが、たとえば信州のいなかとかいうことになりますと、非常な距離になる。非常にこの点は困っております。こういうところで一つ、たとえば現在方々にあります高等学校を開放してもらって、そしてそこで学習ができるような工夫が何とかしていただければ非常に助かるわけでございます。ところが地方の教育委員会というものはとかく、一体企業内の訓練というものは企業者の利益になるんじゃないか、それを公けの学校で提供するというのには疑義があるとかなんとかいうところで、多少は問題があるようでありますが、何とかしなければいけない。しかし、現実にはかなり昔の徒弟というようなものが、日々の生活の上にはやはり見られるのではないかという懸念がございます。また左官のごときは、御承知のように今日の左官は非常に技術が変りました。それから取り扱う材料にいたしましても大へんな違いですが、これの教育機関がないのでございます。一体これをこのままにしておいてどうなるかという点は非常に気になるのですが、そういう現状です。
  28. 田中武夫

    田中武夫君 実際の問題として、大工さんなり左官さんのいわゆる一人親方といいますか、棟梁、ここへ昔のような型で弟子入りをして、そうして仕事をさしてもらって、やがて何年かたって一人前になって独立する、こういう型は今でも残っているんじゃないですか。それから、私の方——私は兵庫県でありますが、兵庫県などでも職業補導所がありまして、六カ月ぐらいで木工の補導なんかやっておりますが、ああいう所を六カ月ぐらいで出てすぐ大工とか、そういうようなものにはなれないと思うのです。あれは大体大きな企業の木工として入るのを養成しておるのではないか。そういう左官、大工の点は、まだまだそういう徒弟制度が何らかの格好で残っておると思うのですが、いかがでしょう。
  29. 桐原葆見

    桐原参考人 実体は、先ほど申し上げますように残っておるかと思うのです。しかし、これも私どもの考えといたしましては、徒弟そのものが非常に進歩して参っておりますから、その面からむしろ何か新しい形のものにならなければやっていけない、このままでは弟子が来ないような状態になりゃしないかと思うのです。  それからもう一つ関連して申し上げたいのは、たとえば特産工業などで、広島のやすりとかあるいはお国の方のレースとか、こういうものに対しましても、何か特殊な、組織的な養成を考えませんと、あんなところにも、懸念いたします徒弟の形が残つておるような現状だと思うのです。ですから、もう少し公けの方から、一方で設備なんかの援助の手を差し伸べてやりながら、一方でそういう弊害を取り除くようにする、それで新しい型に持っていくということが必要ではないかと思います。これについてはさしあたり、その普及をしておる状態から、また技術の指導ができる、あるいは学科の指導もできるという教育者の分布の問題から申しますと、やはり文部省系統の学校、ことに高等学校定時制をもっと形を変えましてそういうことへ持っていくということが一つの手ではないかと思うのでございます。中小企業の二、三の人々の気持では、われわれといえども従来の通りにしておく意思はちっともないんだ、もしそういう学校があれば、たとえば一週間に一日あるいは毎日午後四時から六時ぐらいまでの間というような学校があれば、そこへやります、われわれとても、ただむやみに昔の通りにやろうとは決して思っておりませんというようなことを考えておる人が多いようです。
  30. 田中武夫

    田中武夫君 次に労働基準局関係の方に伺います。さっき桐原参考人からもいろいろ伺いましたが、私まだ大工とか左官とかいったようなところで昔の徒弟制度を何らか変更したような、そうして六十九条に違反といえばきついが、抵触するような実情があるのじゃないかと思うのですが、基準局の御見解はいかがでしょう。  それから続けて文部省の方にお聞きしますが、現在中学校や小学校では図工科ということになって、図画と工作が一つ科目になっている。従って図画か工作か、どちらか教えたらいい、こういう関係から大体八割あるいは九割までが、手っとり早い図画だけを教えておる。そのために工作の方がおろそかになっておるということも聞いております。こういう木工関係あるいは大工、あるいはもっと進んで木工のデザイン、こういうようなことに子供の時分から関心と技術を身につけさせるためには、工作科というものももっと重点を置かなければならぬと思うのですが、現在の図工科が学校によってどちらでもいいというような行き方につきましては、どのように考えておられますか。その実情並びに今後の方針を伺いたいと思います。
  31. 石島康男

    ○石島説明員 先ほど御質問のありました労働基準法第六十九条の徒弟の弊害排除につきましては、技能者養成制度は、現在においてはいろいろ問題はありましょうが、特に終戦後の技能者養成においては、徒弟弊害排除の必要ある職種が先行したといういきさつもあり、特に大工とか左官とか、洋服工、洋裁工、こういうものに重点が置かれまして実は技能者養成が発達してきたわけであります。特に技能者養成上におきましても、洋服工が全体の二〇%、大工が一四%、それから洋裁工、建具工、板金工、家具工、こういうものが四、五%というように、全職種百二十四職種の中でこういうものの占める比率が非常に多くて、徒弟弊害がこういう方面で出ないようにということで、技能者養成を特に共同養成という形で持っていっているのが実情であります。  それから先ほど桐原先生もおっしゃいましたように、現在の状況ではむしろこういう大工さんとか左官さんの方では、人を入れようとする場合に、新卒の非常に新しい労働者を入れるということが、現在では非常に困難な状況であります。それは募集難という状況で、結局新しい人たち、そういう青少年の人たちが、そういうような労働条件の悪いところには行きたがらない、そういう特にきたない作業であるという点から、行きたがらないということもありまして、むしろお話のようなそういう弊害は、非常にまれにはあるかもしれませんが、それほど心配することはないのではないかと思います。
  32. 杉江清

    ○杉江説明員 図画工作という教科は中学校にございますが、これはこの教科の中で図画と工作と両方を融合してやるという建前をとっておりますが、この中では図画と工作両方ともにやるという建前をとっております。しかし実際におきましては、御指摘のような点がございます。工作専門の先生が不足しておるというようなことから、大部分の時間を図画に当ててしまうという事情があります。この点は何とか改善いたしたいと考えております。ただいま小学校、中学校全体の教育課程を改善するために、審議会を設けて検討しておりますが、このことが問題になっております。この解決方法としては、これを分けることも一案でございましょうが、または一つの教科にいたしまして、その中でこの工作を充実してやるようなことも一案だと考えております。  なお、申し添えますが、技術養成という見地から特に考えていいと思われる教科に、職業家庭科というのがございます。これもやはり技術者になるための基本的なものを養うのに相当役立っておると考えております。
  33. 田中武夫

    田中武夫君 私は別に図画を軽視するわけではありませんが、図画工作ということになっておって、どちらを教えてもいいということになっている。なるほど担当の先生が工作の方が不足しておるとか、あるいはその先生の得意にもよると思うのですが、私が聞いておることは、絵の具、クレヨン、こういうような会社が宣伝がうまいということで、そういうものをどんどん使おせるように持っていくために、ますます工作の方が押しやられておる、そしてほとんどが図画ばかり教えておる、こういうことも聞いておるのですが、そんなことはどうですか。
  34. 杉江清

    ○杉江説明員 私どもはそういうことまでは考えておりません。そういうことも一面ないとは言えないでしょうけれども、そういうことのために図画の方に多くの時間がさかれておるというふうには考えておりません。それよりも問題は、先ほど申し上げましたように、工作の先生が不足しておるということであります。これは工員の養成の問題にも関連するのでありますが、この点がその一斑をなす大きな原因だと考えております。それともう一つは、設備の不足という問題であります。その二つが大きな問題だと思います。
  35. 田中武夫

    田中武夫君 工作もそんなに軽視しないように、こういうことだけ申し上げまして、次に入りたいと思います。  先ほど児玉参考人の御意見によりましても、もうここ数年もすれば中小企業には有能な技能者はなくなるのじゃないか、いやもうすでにそういう事態もある。また乗富参考人の御意見によりますと、有能な技術者を中小企業に回してやることそれ自体が中小企業の救済にもなるのだ、こういうようなお話であります。大企業では自分の力で養成工を作り、自分の工場作業に必要な技術を教え込むということはできると思うのですが、中小企業では御承知の通りであります。従って、先ほどから各参考人の御意見にもありましたが、共同養成とかいろいろな問題も出ておるようですが、中小企業庁としてこの問題についてどのようにお考えになっておりますか、伺いたいと思います。
  36. 川瀬健治

    ○川瀬説明員 ただいまの御質問でありますが、私どももこのままで放置いたします場合には、中小企業関係への有能な技術者の導入は年々困難になるのではないかと考えております。工員の関係につきましては、先ほどお話もございましたように、技能者養成施設の活用という面も微々たるものではありますが、現に行われておるわけであります。しかしながら、一方幹部になるような技術——これは大学出身者になるかと思いますが、私どもが聞いております範囲では、現在技術者全般が不足しておりまして、大企業等でも大学出の工学関係等の技術者は引っぱりだこというような関係でございますので、中小企業関係では条件も悪いし——かりに条件をよくして来てもらおうと思いましても、なかなか来てもらえないというような現状でございます。本日は工員の中堅的な技術養成ということが中心に論議されたようでございますが、そういう点から考えまして、私どもは、実は幹部になるようなもう少し上のレベルの技術者の問題も将来は非常に考えなければならない問題ではないか、かように考えておる次第であります。
  37. 田中武夫

    田中武夫君 幹部になるような高度の技術者を養成することは当然でありますが、それよりももっと足元の、中堅といいますか、ほんとうに仕事をする部面における技能者というものが中小企業ではもう数年もすればなくなるのじゃないか、こういうことが言われておりますので、この点を十分御配慮願いたい、かように思います。  それから労働省関係の方にお伺いいたしたいのですが、先ほど来の参考人の御意見の中にも出ておりましたが、近来工場で働いておりながら定時制高等学校に通うという者も相当あります。しかしながらここ数年来の情勢を見ておりますと、定時制高等学校ができた当時よりか入学する者が減ってきておるような状態であります。従って定時制高等学校の存在自体が問題になるというような状態もあるかと聞いておりますが、これは企業者の方、会社の方で定時制高等学校へ行くことをきらっている傾向があるのです。ということは、四時なら四時、五時なら五時がくれば残業せずに帰る、こういうことやいろいろな問題がありまして、働きながら勉強したいということで入学はした、しかしながら二、三年もたっているうちに、職場の圧迫といいますか、会社からのいろいろな目に見えない圧迫あるいは有形無形の干渉によって、遂に四年間続けられずして中途退学する者が相当あるのですが、そういう経営者なり会社、工場の幹部の指導について、定時制高等学校へ通う者をきらう、あるいは押えるというような傾向に対しては、労働省はどういうような見解を持っておりますか。  なおまた厚生省にお伺いいたしますが、先ほど参考人の御意見にもありましたが、働いておって夜学へ通うということは相当意思も強くなければいけないし、からだも強くなければいけないと思いますが、そういう無理をするために青少年の健康上あまりおもしろくない状態が起りつつあるのじゃないかと考えますが、厚生省の立場からはこのような問題についてどのように考えておりますか。私の言わんとするところは、できれば定時制高等学校へ行く者には特別の時間的な融通を与えてやる、あるいは特別な待遇なり便宜を与えてやる、こういうような希望なり勧告なりを経営者等に労働省あるいは厚生省自体から出してもらうことができないかどうか、お伺いいたしたいと思います。
  38. 石島康男

    ○石島説明員 事業主方々の方でそこの従業員が定時制高等学校に行くのをきらうんじゃないか、これに対してどういう措置をとっているかということでありますが、確かに、大企業についてはそういったようなこともあまり聞いておりませんが、中小企業、零細企業などにおきましては、やはり労働時間内における労働が完全に行われるためにはあまり夜間に無理をして学校に行かれるということをきらうような傾向もあります。また採用するときでもそういったことを条件にして、できるだけ行かない人をとろうという傾向もあるようでございます。これについてはやはり若い青少年の人たちの将来の希望ということを考えて、現在ある学校の施設を利用してできるだけ自分の勉強をしたいという気持を押えるということは、青少年に対する教育という立場からは絶対いけないことでございます。特に現在その問題を中心に考えておりますのは婦人少年局でございますが、各県にある婦人少年室等を通じて、そういうことのないようにいろいろ事業主に働きかけているわけでございます。ただ問題は、何といっても昼間働いて夜定時制に行くということは、確かにおっしゃるように青少年の健康に非常に悪い影響があるだろうということは、事実いろいろな調査をやりましても、そういった点が出ているのでございます。やはり今後技能者養成定時制高校の課程をどういうふうに提携さしていくかということが今後の解決の一番中心問題でございます。これについては先般来文部省ともよく協議いたしておりまして、いろいろ検討を進めているわけでございます。たとえば一つの方法といたしまして、こういう例もございます。兵庫県で阪神内燃機という会社で、御承知かと思いますが、学科は定時制学校でやる、それから実技についてはその会社でやるということをやっている。技能者養成で若干教えたものをまた定時制で似たようなものをダブッて習うというところをできるだけ省略して、効率的に片方でやることによって定時制資格も与えられる、こういったような方向に将来進まなくちゃならぬと思われますので、そういった実験的なこともやっているわけです。それの結果によりましては、そういった両者の緊密な提携ということをできるだけはかっていくように文部省の方にも連絡したいと思っております。
  39. 楠本正康

    ○楠本政府委員 定時制学校につきましては、本来が学校の管理衛生は文部省の保健課におきまして指導いたしておりますが、ただ現場の手足を持つ厚生省といたしましては、絶えず文部省とも連絡をとりまして、学校衛生の一環として現場におきましていろいろ指導をいたしております。たとえて申しますれば、給食の問題であるとか、あるいは健康診断の問題であるとかいうような点につきまして文部省に協力いたしまして、できるだけ定時制の生徒が健康で学問がおさめられるようにしております。
  40. 田中武夫

    田中武夫君 重ねて労働省にお伺いいたしますが、先ほど申しましたように新中を出て就職したときには相当向学心に燃え、張り切って働きながら定時制高等学校に行くのだということで入るわけです。ところが一年あるいは二年のうちに、自分の意思にも弱いところがあるのかと思いますが、大体十八才を過ぎると残業さす、その残業を言われても私は学校がありますと言って帰る、こういうような点から相当職場において上司からの圧迫があって、遂に学校が進められない、こういう状態が多いと思う。これは工場の近くにある定時制高等学校の一年に入学してから卒業する者が何人あるかというものを見れば相当人数が減っているということからはっきりとうかがえると思う。従ってこのような問題については、ある種の労働組合では——実は私も労働組合出身ですが、会社労働協約ないしこれに基く協定を持ちまして、四時半までが普通の定時であるのに、学校に行つている者は四時で帰す、もちろん賃金についてどうするかは別問題として、事故扱いにしない、こういうような約束をして学校に通わすこともしたわけですが、できるならばこういうような措置を、法律的に縛るということはどうかと思うが、これを労働省あたりから提唱していただいて、経営者にこういうような点を勧告といいますか、そういう措置をとることを一つ慫慂していただきたい、こう思うのですが、いかがでしょう。
  41. 石島康男

    ○石島説明員 ただいまおっしゃいましたように、確かに中小企業に関してはそういったようなことで、本人の意思が弱いという点もありましょうし、あるいは今申しましたように昼と夜とを働きかつ学ぶということで健康上に害があるということから、たとえば一年に入ってから卒業するまでに半分に減るというようなのが実情のようでございます。これについては本人の向学心をできるだけ伸ばしてやるために、本人もやはり努力する必要がありましょうし、事業主もこれに理解を持って協力してやるということが必要でございます。先ほどおっしゃいましたように、従来この問題は、年少労働者の問題として、かなり大きな問題でございますので、機会あるごとにそういったような問題について努力しております。特に大きくということではございませんが、そういった方向で進んでいるわけでございます。
  42. 田中武夫

    田中武夫君 そういった点を強く要望しておきます。  それから先ほど来、参考人の御意見を伺っておりましても、現在の労働基準法の附則であるところの技能者養成令ですか、これを単独立法として、はっきりと技能者養成法とでもいうべきものを作ってもらうことが、将来の技能者養成について大きな基礎になるのではないか、こういう意見が強かったと思いますが、労働省はどういうふうに考えておりますか。
  43. 石島康男

    ○石島説明員 単独立法を作ることにつきましては、かねてからいろいろ要望もございましたが、最近特にこの問題が重要視されておる。ことにオートメーション、自動機械の普及ということになったので、こういう新しい技術に直接対応する技術者の養成増加ということが必要になって参りましたので、私どもの方といたしましてもこの必要性については詳細検討しておりまして、これについてはいろいろな法律上の問題点もございますし、学校との関係その他もございますので、現在各方面と連絡をとりながら検討いたしておるようなわけでございます。
  44. 田中武夫

    田中武夫君 独立の立法とするということを前提として検討しておられる、こういうことであるならばけっこうでございます。先ほど児玉参考人の御意見であったかと思うのですが、通信教育ということを強調せられまして、その中で普通学の通信教育はあるが、いわゆる専門といいますか、工業方面通信教育というのは欠けているように思う、こういうようなことを言われましたが、文部省はこういうことについてどのように考えておられるのか、将来の見通しはいかがでしょう。
  45. 杉江清

    ○杉江説明員 お答えいたします。通信教育は主として通信によって教育を行なっておるわけであります。しかし教育の効果を上げるためには、いわゆる通信だけでは不十分でありまして、やはり面接指導も行い、また必要なときには試験も行う、こういう単に通信だけでなく、ほかの方法もとって、その教育効果を確実にする方法をとっているわけであります。しかしその面接指導というようなことは、学校へ生徒を来さしてそこで指導するわけでありますが、これはそんなにたびたび実施するわけにいきません。きわめてその回数は制限されております。現在のところ通信教育の教授方法としてはそういう方法をとっておりますので、これによってほんとうに教育効果を上げ得る教科というものは、やはり一定の制限があるわけであります。どうしても実験、実習を伴う教科またはそれを主体とするような教科は、通信教育ではなかなか効果が上げにくい、こういう事情があるために、現在のところ通信教育によって実施し得る教科を制限しておるわけであります。しかしこれは何とかして実施科目をふやしたい、特に職業ないし技術に関する教科を通信教育で実施し得るようにしたいと考えて、今までも努力して参りました。そして次第にそういうふうな教科をも、いろいろ工夫をいたしまして、実施いたすようにして参っておるのであります。ただ現在のところまだその範囲は非常に狭い。そこで今後それを広げるようにただいまも研究しております。ただこれを広げますについては、どうしても指導の方法、実施の仕方について新たな方法、新たな工夫をこらさないとなかなか実施できない。その一つの方法としては、同一職場におります者が共同に学習する。そして現場の直接技術を指導されている方々に指導の一部をお願いする、そういうものも単位の中に組み入れていくというような方法が考えられると思いますが、これは教員の免許状とか、いろいろ考えなければなりませんので、まだ成案を得ておりませんが、何とかしてこういう方面科目を実施するように努力いたすつもりでおります。
  46. 田中武夫

    田中武夫君 たとえば文科系の通信教育でも、年に一度、一カ月か何かスクーリングを集めてやっておると思うのです。従って実験とか実習とかいう方面も、そういうふうな方法でやれると思うのですが、そういうことも考えて、専門的な通信教育についてもやっていただきたいと思うのであります。  そこで最後に希望を申し上げておきたいと思います。先ほど桐原参考人参考意見の中にもありましたように、この養成工の問題は労働省文部省あるいは通産省等々にまたがっておって、いずれが主としてやるのかということについては、はっきりしていないというような点で、三人三すくみというか、三省が三省ともお互いに他の出方を見ておる、こういったような状態にある、こういうような御意見もありましたので、そういった各省間のなわ張りというか、いろいろなそういう関係からこの問題が置き去りにならないように、緊密な連絡をとっていただいて、やはり労働省あたりで十分な措置を考えていただくようにお願いいたしまして、終ります。
  47. 中崎敏

  48. 松平忠久

    松平委員 ごく簡単にお伺いしたいと思います。参考人方々の御意見を伺っておりますと、今の制度が相当行き詰まりの状態にあるのではないか、これを打開しなければならぬということは皆さん方の御意見が一致しておると思います。  そこではなはだ愚問かとも思いますが、桐原さんにお伺いしたいのですけれども、技能ということと技術ということは、一体どういうふうに違うのであって、これは技能者養成というような言葉になっておるが、外国等ではやはりそういう区別があるのか。技能というものがだんだん発達していけば技術になるのか。その辺のところは、どういう用語で使っておられるのか。これははなはだ愚問のようでありますが、それからお伺いしたいと思います。
  49. 桐原葆見

    桐原参考人 たまたま技能者養成という言葉ができましたので、今技能という言葉が使われておりますが、これはどちらかと申しますれば、私の考えといたしましては、技能というのは人間について、技術を持った人間あるいは能力というように考えまして、技術というのはその対象であるところの技術そのものですから、技術者といっても決して差しつかえないのではないかと思います。ただ技術者といいますと、ずっと高級の技術者から単能工までわたるわけでございます。そういうふうに区別して技術者といった方がむしろいいのではないかというようなことも感じておりますが、一応技能という法律の言葉ができましてああいうことになった、こういうことでありますから使っております。
  50. 松平忠久

    松平委員 そういうふうに伺いますと、総称して技術者と呼んだ方がいい、そういうお話であるわけです。特に区別して技能者というような呼び方にしてこの技能者養成所ができておりますと、何だか下のような、未熟な技術を持っておる者が技能者であって、それがだんだん上の方へいって技術者になるのだ、こういう印象を世間でも受けておりますし、私も受けておるわけです。そこでこの名称は、労働省はどうしておつけになったのか。またこれは技術者というふうに直すお考えがあるのかどうか、それから伺っておきたい。
  51. 石島康男

    ○石島説明員 どのような経過によってこの技能者という名前になったのか、私は存じておりませんが、戦前からこういった技能者というようなこと——技能者養成令なとがございましたが、そういったような前からのあれによってできたのだろうと思います。特に技術の下であるといったようなことではないと思います。
  52. 松平忠久

    松平委員 桐原さんに伺いますが、これは外国ではどういう言葉を使っておりますか。たとえば英語で技能者とか技術者とかいうことを……。
  53. 桐原葆見

    桐原参考人 大体分けて使っておるようでございます。たとえば日本でいっております技能者というのは、クラフツマンあるいはスキルド・ワーカー、それから技術助手と申しますか、テクニシアンあるいは近ごろはその上にまたエンジニアのことはむしろテクノロジスト——テクノロジーという言葉を今は盛んに使うようになってきております。ですから今労働省技能者と特にお選びになったのは、おそらくクラフツマンあるいはスキルド・ワーカー、これに当るものをそうおっしゃっておるのだろうと思います。ですから技術者との違いを特に取り立てて申しますれば、一方は腕前を持っておる技術者を意味しているのだろうと思いますが、その技術者の中には腕前のない技術者もあり得る、こういうことが言えるかもしれません。
  54. 松平忠久

    松平委員 大体わかったような気がしますが、今のお考えだとやはり技術者のうちに入るのだ、こういうように先ほどの御答弁で受け取れるわけですが、そういたしますと今政府の機構の中に科学技術庁というのができましたが、この科学技術庁というものの対象となるところの技術というものとこれとは全然無関係のものであるかどうか。しかしやはり相当の関係があるということになるのかどうか、その辺はどういうふうに桐原さんはお考えになっておりますか。
  55. 桐原葆見

    桐原参考人 私はこれからの工業技術関係をあらしめなくてはいけないと思っております。
  56. 松平忠久

    松平委員 私もそういうふうに思うわけです。そこで行き詰まりの打開でどういう新しい機構にこれを持っていくか、新しい法律を作っていくかということになるわけですが、その場合において、ただいま田中君の質疑応答にもありましたが、労働省文部省それから通産省の今の中小企業庁あたりも関係してくる。科学技術庁というものは大いに関係してくるように思うのです。どういうような仕組みのもとに新しくこれをもっと理想的なものにしていったらいいかということについてお伺いしたいのです。ついてはその前に欧米各国ではこういうような一つの機構というものをどういうふうに取り扱っておられるか。先ほど児玉さんでありましたか、どなたでありましたか、フランスの例なんかとられて助成政策をとっておられるような話がありましたが、ほかの国では日本参考とするに足るうまい仕組みを考えて実施をしておるかどうかということをお伺いしたいのです。これは桐原さんか児玉さんあるいは乗富さん、どなたでもけっこうです。
  57. 桐原葆見

    桐原参考人 ごくかいつまんで申し上げます。御承知のようにヨーロッパの各国では大体いわゆる技能者——スキルド・ワーカーというのは国家試験を経なくてはいけないことになっております。その試験を受ける者は、一定の定まった実習——現場経験、それに加えるに学科教育、この学科教育は公けの教育としてほとんどみな義務化しております。そしてこれがいわゆる定時制学校である。そうしてその所管は大体どこでも文部省の所管になっております。この労働条件に関しましては労働省が監督する、こういうわけです。それからもう一つイギリスの場合は、施設については関係各省が関係をしておるようで、たとえば農業の学校であれば農林省が関係し、工業には商工省、こういうふうになっておるようでございます。そうしてこれは義務化しておる。この義務労働契約の中で義務が生ずるようになっておるところもございまするし、それからその試験を受ける資格の中に、義務づけておるのもございまするし、いろいろな形の義務づけができております。それから先ほどお話がありましたように、その経費につきましては、たとえばフランスのごときは目的税にして、青少年を雇用しておりまする大小の各企業から、その賃金の、最近は〇・四%でありますか、それを養成税として取り立てて、それでもってやっておるわけであります。それともう一つこの定時制学校にはどこでも高等科がついております。その高等科はスキルド・ワーカーになったものが、さらにテクニシァンになるとかあるいはフォーマンの試験を受けるというものが勉強しております。これは夜学で、自分の自由な時間で自由にやる、こういうような制度になっております。二十一才以上の者で、さらに自分の技術を高めるために、現場のすでにスキルド・ワーカーになった人間が、夜学で自分でやってきてやるようになっております。ことしのイギリスの教育年報の報告を見て驚きましたのは、最近出ましたものを見ますと、百八十万人おります。これは二十一才から三十才くらいまで、これは実際に現場で働いておりますところの熟練工が、夜間の工業学校へきてより高度の勉強をしております。これがイギリスの産業——イギリスではそんなことを言いませんが、おそらく非常に有力な力となるだろうと思います。ともかく日本ではそういう学習をしたくても学ぶところがないのです。これが非常に残念なことだと思っております。
  58. 松平忠久

    松平委員 これは労働省にお伺いしたいのですが、そういう工合に養成する場合においてもお困りになっておるのは、実は指導する人がいないのだ、だから指導者を養成する、指導者を再訓練することが当然必要になってくるのですが、現在の制度のもとにおいて、そういうようなことをやっておりますか。
  59. 石島康男

    ○石島説明員 これにつきましては技能者養成の指導者すなわち指導員でございますが、指導員に対しては実は上級、中級初級の三つに分けまして研修をやっております。これについては、予算も若干取っておりますが、まず初級訓練は三日間でございまして、これは大体技能者養成制度そのもののあり方、教え方、こういったようなことについて、簡単な訓練をやるということでやっております。中級訓練も三日ないし四日で、これについてはもっと進んだやり方でやり、上級については、一週間ないし三週間で、これはそのほか関係者が集まって討議式に研究討議するというような形でやっておる。この程度の研修を今やっております。
  60. 松平忠久

    松平委員 三日や一週間の研修では、指導者を養成できないと思います。そこでこれはもっと本格的に考えなくちゃいけないことであろうと思うのですが、その点で井上さんにお伺いしたいのですが、今製鉄会社等におきましては、それらの指導員養成ということをやられておるかどうか。こういうことと、もう一つ指導員の人たちは自分の技能というか技術というようなものを完全に教えるということになっているか。つまり今の日本企業、大工場におきましても技能の非公開性というか、秘密性ということが非常にあるのであって、この封建性を打破しなければ、日本技術技能発展しないと思うのです。古くからおる者は、結局その技能を自分だけのものにして、人には公開しないということをほとんど建前のようにしておる。そういう人が教えるといったところで、教えないんだから、そこのところはどういうふうに解決しておられるか、これをお伺いしたい。
  61. 井上八十彦

    ○井上参考人 ただいま御指摘の指導員を業界あたりで養成する計画や制度があるかということでございますが、指導員を実際に養成する計画は全然ございません。ただしその中で、指導員の助けをやるような、職場の既成の幹部、職長とか組長とかいう者は、新しい生産過程並びに生産の理論について補習教育をしてくれという希望が本人から積極的にありまして、再教育をしております。これは現場で指導するについてのどうしても必要なものでございます。その上の、つまり学科とか技術理論、これを総合的に教育をするとか再教育をするとかいうことの施設は全然ありませんが、これは確かに必要と思います。  それからもう一つ技術の非公開性、これは私ちょっと発言に困るのでありますが、実際においてはこれが一般化しておりますので、現実には会社間の公開は非常に困難な傾向にございます。ただし教育の上で公開をしない、後進者に技術を教えないということは全然なくなりました。これは戦後入ったアメリカ式の教育方式などのおかげも非常にありまして、いわゆる現場でただたたき上げて養成しようというような風、これは全然なくなりました。ただし会社間の非公開性は相当出て参ります。ですから私先ほど申し上げたように、大企業の中でも、これは私の方でそれを極力公開するようにやっておりますけれども、これもなかなかむずかしい問題でございますし、中小企業には私どもなおさら極力流しているのです。これはどこか技術庁あたりである程度国家の政策として取り上げていただいて、総合的に人の力を合せる、業界なら業界の会社の力を合せるということが必要だろう、私どもの立場からはそう痛感いたします。
  62. 松平忠久

    松平委員 その点に関して労働省の見解を承わりたいのであるけれども、先ほど私が申しましたように、技能の封建性ということが、今までの日本のあり方では諸産業発展を阻害しておる一つの原因になっておる。そこでこれは技能者養成とは直接の関係はないけれども、それらの技能のある程度の秘密性を排除して、そうしてそれをだれにも知らせるような行き方を国家としてはしなければならぬと思うのです。またここには特許制度とかその他の法律で特に保護をしておる制度との調整ということがあるわけだけれども、それをどういうふうにお考えになっておるか、つまり技術の公開という問題についてどういうことをお考えになっておるか、この際ちょっとお伺いしたい。——今の回答はちょっときょう来ておられる人では無理だろうと思うが、どなたか政府の、科学技術庁の人が来ておられましたら、科学技術庁の方針を承わりたい。
  63. 出雲井正雄

    ○出雲井説明員 私からお答え申し上げますが、科学技術庁でございませんで、通産省の工業技術院の調整部長でございます。ただいまの各社間の技術の公開の問題にそのままお答えできるかどうか疑問と思いますが、私どものお預りしておる十一の試験所のうちに例をとって申し上げますと、機械試験所がございますが、ここで、数年前から学識経験者あるいは業界の方から御指摘を受けてぼつぼつは準備しておりましたが、今度本格的に、生産加工技術と一括して申されております切削とか研磨とか鍛造とか、要するに材料にある形態を与えていく技術でありますが一この生産加工技術の適用があるものは、主として機械工業関係が多いと思いますが、生産加工技術二つに分けまして、一つは生産加工技術そのものの本来の高度なやり方を考えていく問題と、もう一つは、ただいま問題になっておる点と関係があると思いますが、通例の、従来でございますと、年期を入れた、年令と職場の勘で覚え込んでいる一つの熟練と申されました技術を、新しい科学的な方法で、加工材料にかかる角度からかかるバイトを与えて、最も精度の高い、あるいは要求されておる部品なり製品なりに仕上げていく、そういった技術につきまして、これを研究しつつ、JIS化と申しますか、規格化いたしまして、私ども技術試験所といたしましては一応完了し、それをさらに通産省の中小企業庁なりあるいは重工業局なり担当のところを通じて、講習会とか各種の方式を通じてこれを普及していったらいかがか、そういうふうにして、各人の持っておる技術を死蔵することなく、これを規格化し一般化していこう、こういう企画は持っております。簡単でございますが……。
  64. 中崎敏

    中崎委員長 この際多賀谷真稔君より小委員外の発言を求められておりますが、これを許可するに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  65. 中崎敏

    中崎委員長 御異議なしと認め、さよう決します。多賀谷真稔君。
  66. 多賀谷真稔

    ○多賀谷真稔君 参考人の公述を十分聞いていないので、あるいは若干重複する点があるかと思いますが、日本経営者連盟から出されておる資料の中に、単独立法、要するに積極的な助長政策としての単独立法——今の技能者養成規程というのは、どちらかといえば取締り法規的な関係であるから、積極的な助長政策としての単独立法を要望されておるようですが、現在の技能者養成ではどうにも行き詰まっていけないという点、積極的でなくて、消極的にもどうもそういう点は監督がきびしくていけない、こういう点、あるいは実情に沿わない、こういう点がありましたら、ごく簡単でいいですから一、二点お示し願いたいと思います。
  67. 乗富丈夫

    ○乗富参考人 先ほど私がその問題を申し上げたわけでありますが、非常に簡単に申しますと、今の技能者養成は、労働保護と徒弟の排除というのが目的でありまして、その目的が達せられるならば、別に技能が上ろうが上るまいが行政的にはよろしいわけであります。従って今のような体制にはちょっと目的が違うものですから合致しないということ、それからもう一つは、今の技能養成ということは、オートメーションとか原子力問題とかを含めまして世界の問題になっておりまして、かりにソ連が九十万、五カ年計画で技能者養成するとか、あるいはアメリカが百二十万人の養成をするとか、いろいろ各国で養成計画を立てまして、大きな数字の技能者養成して次の時代に対応しようとしております。日本はそういう意味で消極的、しかもそっぽの形で問題を取り上げられていたのでは、大きな問題は解決しない。それが唯一最大の理由だと思います。
  68. 多賀谷真稔

    ○多賀谷真稔君 純然たる技術者を養成する学校教育は別としまして、先ほどから技術者か技能者かという問題がございましたが、工場等で技能者として普通考えられるのは現在の新制高等学校で受ける工業程度の科目だろうと考えます。こういう科目について、たとえばある技能者養成の課程を終えれば一般的な定時制高校の卒業資格も与えるし、それから技能者としての技術も修得する、こういう点がマッチをするような仕組みに現在なっておるのでしょうかどうでしょうか。
  69. 児玉寛一

    児玉参考人 それはなっていないのです。私はその点を申し上げたわけなんですけれども、さっき通信教育の話が出たときに文部省から御回答があったのですけれども、技能者養成学校でやっておるものは、実習に対しては普通の工業高等学校よりはずっと高度のものを、旋盤とか仕上げとか、あるいは鋳物ではやっているわけなんですね。そういうものは工業学校以上にやっているのだ、足らないのは教養学科だとかいろいろありますから、そういうものを私は通信教育でプラスしていく。通信教育で百パーセントみなやるということはできない。さっきスクーリングの話が出ましたけれども、スターリングというようなことは、実習に対してはやっていただかなくてもけっこうなんです。もうそれはできているのですから、そういうものでない、足らないものだけをスクーリングならスクーリングで補充していくことによって資格が与えられるという形、こういう方法にどうしてもやっていただきたい。ところが技能者養成労働省関係だし、学校の方は文部省関係でなかなかそれがうまくいかぬわけです。これは文部省には文部省のお考えがあるのですから、むずかしいかとも思いますけれども、ともかく技能者養成でやって、また定時制で同じことを習いに行かないでもいいようにしていただきたい。技能者養成を出た者が百パーセント工業高等学校資格を得させるということに対して私は消極的な意見を持っているわけです。必ずしもそうする必要はないのではないか。その中で希望する者がとればいいのであって、足らないものを補充してとる。百パーセント初めから全部試験を受けなければいかぬということはまずいから、その間の連係をうまくとっていただきたい。定時制にしても全科目を行かないで、自分の足らないものだけを一週間に何回か定時制学校に行く、技能者養成でやった者に対しては、試験なら試験でパスさせていただくという制度にしていただきたいという意見であります。
  70. 多賀谷真稔

    ○多賀谷真稔君 実は私は海軍工廠が戦争中に、あるいは戦争前でもやっておったシステムから知っておるのですが、父兄なども海軍工廠の養成工に行くことが普通の工業学校に行くより誇りに考えて、本人たちもそういうようなつもりでいる。それは高等小学校を出て三年間養成工に行くシステムであった。ところがその三年間に英語もやる、数学もやるから、専検も高検も比較的そのグループはとっている。ですからさらに専門学校に行く。このことは現在の経営者として果して望ましいかどうかということは一応別にしても、かなり技能を持って工場に入っていく、こういうことは私は非常に重大ではないかと思う。それからさらに三年間の課程を終えると——あれは技弟養成といっておったと思うのですが、当時の高等専門学校程度のシステムの課程を終える、こういう制度がある。それを卒業すれば技弟になるのだ、ですから普通の高等工業よりも、その方がむしろ出世をするというような状態にあったと記憶しているのです。ですから基準法ができ、その他技能者養成規程ができ、また敗戦によって日本の経営者の要するに経済力が非常になくなったという点もあるでしょうけれども、きょうは日本鋼管も鉄鋼連盟からも見えておりますが、八幡とか富士とか日本鋼管という、こういう大きな会社は独自ではやられているでしょうけれども、もう少し私は、今お話があった教養学科というか、一般学科を十分修得して、そうしてそれを養成課程を終えると同時にそういう資格を与えるという問題は別といたしましても、何らかそれに資格を得る便宜を与えるというシステムが、これは文部省としても十分考えられてしかるべきじゃなかろうか、何らか連係をもう少しとって、むしろ親が無理して高等学校なんかへやらなくても、こういう工場へ入れていけば自然に技師になっていくんだという誇りを持つシステムが必要ではないか、かように考えるのですが、この点労働科学研究所の所長もおられますが、たとえば今イギリスの百八十万というお話もありましたが、何らかこういう点について参考になる話はなかったでしょうか。それから先ほどフランスの例が出たそうですが、そういう場合に、政府がかなり補助金を出す。少くとも教養学科を修得する意味においては、これは学校令による学校に出すだけの補助金でなくても、私立学校に出すくらいの補助金は出してしかるべきだ、こういうようにも思うのですけれども、こういう例は外国にはないでしょうか。
  71. 桐原葆見

    桐原参考人 直接それに該当するものはありませんが、御承知のようにイギリスを初めといたしまして、スイス、フランス、どこにも奨学制度が非常に進んでおりまして、これが国の制度があり、教会側からもあり、企業者の奨学金もあり、いろいろな奨学金がありまして、そこで企業内で特に勉強してまた工業大学なら工業大学へ入ったとなれば、学資の心配はどこでもほとんど要らないようなことになっているようでございます。直接に比較すればそういうものじゃないかと思っております。
  72. 多賀谷真稔

    ○多賀谷真稔君 文部省にお尋ねしますが、技能者養成という面については、個々の企業が必要最小限度ならやむを得ないけれども、一般の技術者を作るには個々の企業がやるのはむしろ好ましくない。それは文部省管轄学校によってやるべきだ、そういう場合に学資が足りなければ奨学資金制度もあるじゃないか、だからそういう方を出てきて工場とかあるいは鉱山に勤めるべきだ、こうお考えですかどうですか。文部省の方針としては、いや各企業内でやることはかえって困る。むしろそれは何というか、委託制という制度は昔あったのですが、技術者が非常に足らなければ工場あたりで奨学金を出してやってもらうし、学校に入れてもらう方が好ましい、こういう態度で原則としては行かれているのですか、そういう点をお聞かせ願いたい。そうしなければ要らぬことに、技能者養成の方に力を入れて教育そのものについてちょっと背反するような行き方をしても困ると思いますので、文部省にもお聞きかせ願いたいと思います。
  73. 杉江清

    ○杉江説明員 技術養成ないし技能者養成という見地から、私はそのことは学校教育だけがそれを担当すべきだとは考えません。やはりあらゆる職場において、またあらゆる施設においてこのことは担当していかなければならない。ただ学校におきましては、一つの組織化された教育計画に基いて、しかもある特定の企業の、特定の技術に習熟させるということだけにとどまらずに、より広い視野と、それからより発展性のある技術の修得、そういうことをねらった教育をしておるわけでございます。ただ技能者養成施設におかれても、必ずしもそういった狭い、特定の技術のみに片寄らずに、その基礎となる教養をも修得させるようにされているところもあると思います。そういうふうになりますと、その両者は実質においても非常に似たものになる、こういうことは確かに言えると思います。そういうふうな実質を持ちます以上、この学校教育技能者養成、その他にもあると思いますけれども、そういうふうな二つ関係をもっと密にしていくということが今後の大きな課題だと考えております。今までのところ、いろいろ法的にもむずかしい問題もあって、その関係を密にするという、ことも実現されずにおりますけれども、今後その点を十分研究して、少くとも二重の負担を生徒にかけるようなことのないように今後研究して参りたいと考えております。
  74. 多賀谷真稔

    ○多賀谷真稔君 この問題はきわめて大きな問題でありますから、これは委員長におかれても、単に小委員会の問題にとどまらずに、一つ委員会で大いに参考人を呼び、また学識経験者を呼んで、日本経済の今後の原動力の問題ですから、そういうように取り計らっていただきたい、かようにお願いいたしまして質問をやめます。
  75. 中崎敏

    中崎委員長 ただいま多賀谷君の発言の通りに小委員長において取り計らいたいと思います。  本日はこの程度にとどめます。  参考人各位には、御多用中のところ本委員会に御出席下さいまして、長時間にわたりいろいろ貴重な御意見を承わることのできましたことを厚く御礼申し上げます。  本日はこれにて散会いたします。    午後四時五十四分散会