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1956-12-04 第25回国会 衆議院 社会労働委員会 第9号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十一年十二月四日(火曜日)     午前十一時二十一分開議  出席委員    委員長 佐々木秀世君    理事 大坪 保雄君 理事 中川 俊思君    理事 野澤 清人君 理事 藤本 捨助君    理事 滝井 義高君       植村 武一君    越智  茂君       加藤鐐五郎君    亀山 孝一君       小林  郁君    田子 一民君       田中 正巳君    八田 貞義君       古川 丈吉君    亘  四郎君       赤松  勇君    井堀 繁雄君       岡本 隆一君    栗原 俊夫君       多賀谷真稔君    堂森 芳夫君       長谷川 保君    山口シヅエ君       八木 一男君    吉川 兼光君       中原 健次君  出席政府委員         厚 生 技 官         (公衆衛生局環         境衛生部長)  楠本 正康君         厚生事務官         (医務局長)  小澤  龍君         厚生事務官         (保険局長)  高田 正巳君  委員外出席者         大蔵事務官         (主税局次長) 村上  一君         労働事務官         (職業安定局         長)      江下  孝君         労働事務官         (職業安定局失         業対策部長)  澁谷 直藏君         専  門  員 川井 章知君     ————————————— 十二月三日  委員中川俊思君辞任につき、その補欠として渡  邊良夫君が議長指名委員選任された。 同日  委員渡邊良夫辞任につき、その補欠として中  川俊思君議長指名委員選任された。 同月四日  委員阿部五郎辞任につき、その補欠として多  賀谷真稔君が議長指名委員選任された。 同日  委員賀谷真稔辞任につき、その補欠として  阿部五郎君が議長指名委員選任された。 同日  理事中川俊思君委員辞任につき、その補欠とし  て同君が理事に当選した。     ————————————— 十二月一日  国又は地方公共団体失業対策事業のため雇用  した職員に対する期末手当に関する法律案(井  堀繁雄君外十二名提出衆法第六号) 十一月三十日  零細企業者等国民健康保険適用請願(森三  樹二君紹介)(第三二七号)  生活保護法最低生活基準額引上げ請願(横  山利秋紹介)(第三二八号)  同外一件(山花秀雄紹介)(第三九四号)  国立病院等賄費増額請願外一件(岡本隆一  君紹介)(第三二九号)  同外三件(山花秀雄紹介)(第三九五号)  健康保険赤字全額国庫負担に関する請願(岡  本隆一紹介)(第三三〇号)  結核回復者職業保障に関する請願岡本隆一  君紹介)(第三三一号)  同(帆足計紹介)(第三三二号)  同(山花秀雄紹介)(第三九六号)  アフター・ケア法制定に関する請願岡本隆一  君紹介)(第三三三号)  同(帆足計紹介)(第三三四号)  同外一件(山花秀雄紹介)(第三九七号)  戦没動員学徒及び徴用工処遇改善に関する請  願(中曽根康弘紹介)(第三三五号)  環境衛生関係営業運営適正化に関する法律  制定請願外一件(田中利勝紹介)(第三三  六号)  同外一件(保科善四郎紹介)(第三三七号)  同(山本猛夫紹介)(第三三八号)  同(江崎真澄紹介)(第三三九号)  同(森島守人紹介)(第三八三号)  同(世耕弘一紹介)(第三八四号)  同(田中利勝紹介)(第三八五号)  同(平田ヒデ紹介)(第三八六号)  生活保護法による医療扶助に関する請願外一件  (岡本隆一紹介)(第三四〇号)  同外一件(帆足計紹介)(第三四一号)  同外二件(山花秀雄紹介)(第三八九号)  生活保護法等の一部改正に関する請願外一件(  帆足計紹介)(第三四二号)  同外四件(岡本隆一紹介)(第三四三号)  同(山花秀雄紹介)(第三四四号)  同(山花秀雄紹介)(第三九〇号)  健康保険法の一部改正反対に関する請願外五件  (岡本隆一紹介)(第三四五号)  同外二件(帆足計紹介)(第三四六号)  同(山花秀雄紹介)(第三四七号)  同外一件(山花秀雄紹介)(第三九一号)  同(中原健次紹介)(第三九二号)  健康保険法の一部改正反対等に関する請願(岡  本隆一紹介)(第三四八号)  健康保険法等の一部改正反対に関する請願(帆  足計紹介)(第三四九号)  同(島上善五郎紹介)(第三九三号)  電気事業及び石炭鉱業における争議行為方法  の規制に関する法律存続反対請願井手誠  君外一名紹介)(第三五〇号)  無名戦没者墓建設に関する請願橋本龍伍君  紹介)(第三七八号)  特殊漁船乗組員戦没者遺族援護に関する請願  (世耕弘一紹介)(第三七九号)  国民健康保険法改正に関する請願田中武夫  君紹介)(第三八〇号)  国立療養所患者慰安費に関する請願山花秀雄  君紹介)(第三八一号)  国立療養所給食費増額請願花村四郎君紹  介)(第三八二号)  国立病院等における看護婦産休のための定員  確保に関する請願長谷川保紹介)(第三八  七号)  国立病院等准看護婦進学コース設置に関す  る請願長谷川保紹介)(第三八八号) 十二月三日  助産婦教育過程低下防止に関する請願井手  以誠君紹介)(第四一五号)  環境衛生関係営業運営適正化に関する法律  制定請願五島虎雄紹介)(第四一六号)  同(山本猛夫紹介)(第四四七号)  同(大坪保雄紹介)(第四六八号)  医師国家試験予備試験受験資格の特例に関す  る法律延長請願中村三之丞紹介)(第四  四一号)  札幌市の社会保険診療報酬地域区分を甲地に指  定の請願芳賀貢紹介)(第四四五号)  同(薄田美朝君紹介)(第四四六号)  国立病院等准看護婦進学コース設置に関す  る請願古井喜實紹介)(第四六九号)  国立病院等における看護婦産休のための定員  確保に関する請願古井喜實紹介)(第四七  〇号)  薬事法の一部改正に関する請願野澤清人君紹  介)(第四七一号)  宮古港を検疫港に指定の請願鈴木善幸君紹  介)(第四七二号) の審査を本委員会に付託された。     —————————————本日の会議に付した案件  理事の互選  小委員及び小委員長選任  環境衛生関係営業運営適正化に関する法律  案(藤本捨助君外二十五名提出、第二十四回国  会衆法第六〇号)  失業対策に関する件  健康保険に関する件     —————————————
  2. 佐々木秀世

    佐々木委員長 これより会議を開きます。  理事補欠選任の件についてお諮りいたします。昨三日理事中川俊思君委員辞任せられたのに伴い、理事に欠員を生じておりますのでその補欠選任を行わなければなりませんが、補欠選任につきましては委員長より指名するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 佐々木秀世

    佐々木委員長 御異議なしと認め再び委員選任された中川俊思君理事指名いたします。     —————————————
  4. 佐々木秀世

    佐々木委員長 この際小委員会設置の件についてお諮りいたします。本委員会に付託されております請願審査を託するため小委員五名よりなる請願審査小委員会設置することとし、小委員及び小委員長選任に関しましては委員長より指名するに御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 佐々木秀世

    佐々木委員長 御異議なしと認め    中山 マサ君  野澤 清人君    八田 貞義君  長谷川 保君    山口シヅエ君  以上五名を小委員に、野澤清人君を小委員長指名いたします。     —————————————
  6. 佐々木秀世

    佐々木委員長 環境衛生関係営業運営適正化に関する法律案議題といたします。本案は継続審査案件であり、二十四国会において種々の説明を聴取いたしてありますので、直ちに質疑に入ります。発言の通告があります。順次これを許します。八田貞義君。
  7. 八田貞義

    八田委員 ただいま議題となっているところの環境衛生関係営業運営適正化に関する法律案についてでありますが、この法律案につきまして今まで厚生省からいろいろと出されておる環境衛生関係法律、これは私考えますのに、ほとんど監督行政としての色彩を強くした法律が多いのでありますが、このたびの環境衛生関係営業運営適正化に関する法律案というものは、保護行政を非常に加味された法案と了解いたしておるものであります。ただ問題は、この法案施行される場合に、厚生行政を担当されておる厚生当局においてどういうようなお考えがあるか、この法案に対しての御見解あるいはこれを事務的に施行する場合にどのような利点考えられるか、あるいは一方においてそれと反対の現象が考えられるか、そういうことにつきまして厚生省の方からお話しを願いたいと思うのであります。
  8. 楠本正康

    楠本政府委員 お答え申し上げます。ただいまお話のございました環境衛生関係営業運営適正化に関する法律案につきましては、政府立場におきましても十分に検討をいたしまして、その結果を関係各省とも協議の結果、現在の数多い環境衛生関係営業適正化し、公衆衛生並びに社会上の各般の問題を解決していくのには適切なる措置であるという見解に一致をいたしております。従いましてかような見解につきましては、提案されるに先だちまして、政府立場におきまして閣議で決定をいたした次第でございます。  なお利点につきましては、私ども事務的な考え方といたしましては、現在各種の環境衛生関係には、いろいろ取締り上問題もございます。一方最近は、たとえば映画の長時間興行であるとか、あるいは太陽族映画の上映、あるいは特殊浴場の問題、あるいは旅館におきます社会上いかがわしいと思われるような営業方法というようなものが問題になっておりますが、これらのものはもとより行政当局の力によって監督上取り締るべきものではありますが、なかなか監督だけでは取締りを期することは困難でありますので、組合の自主的な自粛的な力を強化することによって、お互いに自粛していくという方向に進むことができると思います。かような点は一例ではありますが、大きな利点だと考えております。  なお環境衛生関係におきましては、過度の競争の結果、これらの営業がいろいろ正当な競争というものを逸脱いたしまして、かえって保健衛生上あるいは社会上いろいろな問題を起しやすいのでございまして、従ってこれらの観点からいたしましても、この法律は適切なものと考えておる次第でございます。  次に反対の点、心配される点でございますが、これらの点につきましては、たとえば組合を作りますために一つのボス的な力が組合を支配しはしないかというようなこともございます。あるいは組合の団結が強くなりますためにかえって利用者の利益を不当に圧迫しはしないかという問題も考えられます。従いましてこれらの点につきましては、それぞれ拝見いたしましたところによりますと、法律案におきまして手当がしてあると思われますので、これらの点もおそらく心配のない結果になるのではなかろうか、かように考えておる次第でございます。
  9. 八田貞義

    八田委員 この中で組合事業をやる場合、たとえば第八条に記載されてありますが、その五に「食品等規格又は基準に関する検査」を組合事業として取り上げられておりますけれども食品等規格と申しますが、わが日本で現在食品等規格を法的にはっきりしているものがあるかどうか、また「基準に関する検査」となっておりますけれども、私の知るところでは食品等規格あるいは基準に関する検査というものははっきりしたものはそう数あるものではないと考えるのでありますが、この五の「食品等規格又は基準に関する検査」として、一体どういうような食品がこの組合事業として取り上げられているか。今後食品等規格というものはどんどんふやしていかなければならぬと思うのでありますが、その点につきましてお知らせ願いたい。
  10. 楠本正康

    楠本政府委員 現在食品衛生法におきまして、いろいろな食品につきまして規格または基準を定めております。もちろんただいま御指摘のように、今後はさらにかようなものを研究し、ふやしまして、すべての食品につきまして、規格基準を定めることが理想的でありますことは申すまでもございません。今後私どもといたしましては、食品衛生法によりましてできるだけすみやかに問題の多い食品規格基準を定めて参りたい、かように考えております。ただこの場合、一々私ども抜き取り検査をいたしまして、そういう基準に合っているかどうか調べておりますが、これまた職員の数等の制限もありまして必ずしも全部の食品について漏れなく抜き取り検査をすることも困難な実情もございますので、これらの点は業界の自粛的、自主的な活動として権限行使としてではなく、規格基準等お互い検査施設でも設けて調べていく、そうしてその結果を行政当局に報告してもらうというようなことは、一そう食品の質の向上をはかる方法になるのではなかろうか、かように考えておる次第でございます。
  11. 八田貞義

    八田委員 それからもう一点質問申し上げたいのですが、公衆浴場薬湯関係なんであります。公衆浴場法の第四条ただし書きによると、療養のために利用される公衆浴場設置ということがあるのでありますが、その経営管理に関しましては、福島県では公衆浴場法施行条例第三条第六号をもって療養のために利用される公衆浴場規定があるわけでありますが、ただ問題は、伝染病にかかっている者とか、あるいは他の入浴者入浴の支障となるような精神病にかかっておる人々、こういった人は限定して薬湯に入れるということなんでありますけれども、こういった疾病を公衆浴場経営主が判定できるかどうかという問題であります。こういう問題とともにもう一つ、こういった薬湯の出現が一般公衆浴場に対して非常な圧迫を加えるということで、わが福島県では、今問題になっておるわけでありますが、薬湯に対するところの規定というのが、各県ばらばらに設けられておるようでございます。そこでこういったものにつきまして、厚生省として一体どういうような処置をされるお考えか、ちょっとその点をお知らせ願いたい。
  12. 楠本正康

    楠本政府委員 公衆浴場に薬を入れまして薬湯として営業を行いますことは特にただいま御指摘のような規制を設けまして、違法とは考えておりませんが、ただしそのためにかえって浴槽の湯の清浄化が妨げられるとか、あるいはまたただいま御指摘のございましたように、場合によるとかえって病者等の健康に影響を及ぼすことも心配されますので、われわれといたしましては従来まで薬湯は必ずしも好ましいものではないという方向で進んで参っております。従ってできたならば薬湯というようなものはこれを営業させたくないという考え方で進んでおるわけであります。しかしながら何分にも薬湯というようなものをいたしますと非常に客の入りがよくなるというようなことから、えてしてかようなものが増加しつつある傾向でありましてこれと申しますのも一つには非常に競争が激しい結果にもよるわけでございます。従ってかような問題は今後やはり適正化法施行になりましたならば組合の自粛、自主によってかような問題を解決することが適当ではないかと考えておる次第であります。
  13. 八田貞義

    八田委員 それから一つお伺いしたいのは、美容師ですが、最近コールドパーマ液によって手の皮膚が赤くただれたり、あるいは指のつめがそり返ったり抜けたりするような職業中毒が起ってきておる。これらに対してはチオグリコール酸ナトリウムあるいはアンモニウム、こういったものを使っているわけですが、薬務局長あたり見解によりますと、体質的な問題があるのでこれはいかんともいたし方がない。ところが今度薬液のつけ方について一つ規制を加えた省令出したというような話を伺ったのですが、こういったチオグリコール酸ナトリウムに関して一つ規制を加えられた省令をお出しになったかどうか。私はむしろチオグリコール酸ナトリウムの場合には、こういった弊害はあまりないと思いますけれども、ときどきチオグリコール酸アンモニウムを使った場合には非常に多い。アンモニウムを使った場合には毛が抜けたり指のつめがそり返ったりすることが出てくるのであります。この点について厚生省としましてコールドパーマ液に対して、公衆衛生の面から薬務局長のいうような省令をお出しになったことについて御協議されたかどうか、その点を伺いたい。
  14. 楠本正康

    楠本政府委員 コールドパーマ液につきましてはかねていろいろの問題を起しておったことは事実でございます。そこで私どもはこれをどうしようかという問題にぶつかったわけであります。そのとき厚生省といたしましては、これはやはり薬品化粧品取締りの対象とすることが適当であるという結論に達しまして、薬務局でそれぞれこの規制をいたしたわけであります。従いましてその場合十分私どもとも協議をいたしまして、厚生省としてさような方針を立った次第であります。
  15. 八田貞義

    八田委員 クリーニング業におきまして最近揮発油にかわって登場したしみ抜きのチャンピオン、トリクレンというものがあるのですが、これはドライ・クリーニングに使うのでありますが、これについての職業性中毒が非常に最近注目されてきたということであります。これに対して調査された成績がございますか。
  16. 楠本正康

    楠本政府委員 トリクレンを使用いたしております業者はまだそれほど多くございません。しかし私どももそのような薬品中毒を起すおそれがあるということは当然考えられます。今までまだ確かな中毒というものは従業員のうち見ておりませんが、この点につきましては目下クリーニング組合に連絡をいたしまして、どの程度、どういう要領で使われておるものか、あるいはその結果どういう影響があったかということを調べさせておりまして不日組合から何分の報告があろうかと存じます。いずれありましたらお答えをさせていただきたいと思います。
  17. 八田貞義

    八田委員 最近旅館等におきましてテレビ設置がふえて参ったのですが、これを観覧しておる部屋を見ますると、電灯を消してテレビを見ているようでございます。これは私非常に問題があると思うのでありますが、電灯には五十サイクル、関西では六十サイクルでありますが、こういった交流電気が流れておるわけであります。肉眼では気がつきませんけれども一秒間に五十回くらいの明滅があるわけでございます。ですからむしろ電灯を消さないで、電灯をつけてテレビを見るということが、この一秒間に五十回の明滅というものを相殺しまして画面のちらつきをある程度消し合って目が疲れない、こういうふうにわれわれは衛生面からは考えられるのでありますが、こういった点につきまして、旅館等で現在電気を消してやられておる方法は、公衆衛生の面から、目を保護するという面から考えまして非常に問題がある。むしろ電灯をつけながらテレビを観覧するような指導をお願いいたしたいのであります。  それからもう一つ螢光灯が非常にふえて参りましたが、螢光灯には御承知のように紫外線があります。紫外線皮膚には非常に有効的に働くのでありますが、目には害があります。こういったことで、旅館で使われているテレビとかあるいは螢光灯につきまして、今後ともそういった面についての御指導をお願いいたしたいと思うのであります。
  18. 佐々木秀世

  19. 吉川兼光

    吉川(兼)委員 ただいま議題になっておりまする法案につきましては、社会党からは別な委員から別な機会に御質問をするはずでございますが、私はちょうど環境衛生部長がお見えになっておりまするから、環境衛生に関する他の事項につきまして、一、二点質問を申し上げておきたいと思います。  それは大都市から排出されまするところの屎尿の問題であります。ふんとか尿とかの問題でございまするが、これが実は厚生省におきましてもただいま頭痛の種になっておるのではないかと思います。かりにこれを東京湾大阪湾の二つだけを例に取り上げてみましても、東京湾の前方には、海底投棄されました屎尿が堆積いたしまして、伊豆大島の四分の三くらいな大きさの山ができておるはずであります。これは厚生省から出ました資料に出てたります。また大阪湾におきましても、大阪市の前面に淡路島の半分くらいの大きさのくその島が海底三メートルぐらいの厚さでできておるはずでございます。これは広島湾におきましてもそうであるし、方々にある問題でございますが、東京湾の入口に伊豆大島と匹敵するような屎尿の山ができて、何の文化国家ぞやとわが輩はいわざるを得ない。この問題は実はあの付近の特に漁業等に関する産業に悪影響を来たすところが大きいのでありますが、後ほど時間があればその点についても私は触れながら質問を申し上げたいのですが、厚生省当局におきましては、この大都市から排流されますところの屎尿の問題についてどういうような対策を現在行なっておるか。また三十二年度の予算をただいま大蔵省その他に折衝中じゃないかと思うのですが、どういうふうな折衝をしたのであるか。またどういう結論に到達をしつつあるか等につきまして、できるだけ短かい時間で詳しく御説明を願いたいと思います。
  20. 楠本正康

    楠本政府委員 ただいま御指摘都市屎尿問題につきましては、まことに仰せの通り厚生省としては頭痛の種でございます。と申しますのは、従来、比較的最近まで都市屎尿農村の重要な有機肥料源として価値のあった存在でございました。ところが戦後特にここ二、三年、だんだん農村がこれを使わなくなってきております。この原因は化学肥料の増産あるいは有畜農業の普及によります堆肥資源の自給、あるいは農村の気風全体が、苦労して都市屎尿を使わなくてもいいというようなことで、最近極端に農村では屎尿需要が減少をいたしております。逆に都市の人口の増加に伴いまして、急激に排泄量が増しておるというところに根本的な問題がございます。そこでただいま御指摘東京湾大阪湾の沿岸各都市等におきましては、やむを得ず海洋投棄と称しまして、海に捨てておるわけでございます。ただこれもどちらかと申しますと比較的小さな船、沖へ行けないような船でとりあえず海上投棄をしておるというような現状のために、しばしば湾内投棄が行われます。のみならず大阪湾等に至りましては、全くすべてが湾内投棄でございます。東京湾におきましては一日約一万二千石程度大阪湾におきましては一日約八千石程度湾内投棄をされております。  そこで一番問題を起しますのは漁業上の損失及び公衆衛生上の被害でありまして、海の汚染が著しく、海水浴等が危険になるというような状況でございます。従って私どもといたしましてはここ二、三年来この問題の解決に意を用いて参りましたが、国家財政観点等もありまして、直ちにこれをどうすることもできない現状でございました。しかし最近とみにこの問題が逼迫を告げて参りましたので、厚生省といたしましても意を決しまして三十二年度より根本対策を立てることといたした次第であります。対策の概要をごく簡単に申し上げますと、本来都市屎尿は、下水道によって水洗便所として処理することが最も理想ではございますが、しかしながら何分にも全都市の一部に下水道を普及いたしますためにさえも五千億程度の経費が必要でございます。とても現在の下水道に依存して屎尿問題を解決するということは不可能な現状と判断をいたします。しかしながらすでに下水道がある程度できている都市もかなりございます。しかし下水道ができておるにもかかわらず、最後の水、つまり終末処理場の設備がございませんために水洗便所化のできない場所が多いのでございます。従ってとりあえず現在配管の終っておる地域はすべて水洗便所化するために、まず第一に終末処理場を整備するということでございます。第二は現在農村におきましては堆肥はきわめて必要な資源でございます。ところが都市におきまするごみ、これは膨大なもので、一日全国の都市で約四百万貫程度排泄されておりますが、このごみと屎尿とを混和いたしまして、機械力によって急速に堆肥化いたしまして、農村に使いやすい形で還元する。こうすれば農村の堆肥源が確保できますと同時に、都市屎尿問題あるいは塵芥問題等が解決いたしますので、来年度からは対策の二といたしまして、かようなごみ並びに屎尿を堆肥化して衛生的に処理すると同時に、農村堆肥資源確保していきたいという方針でございます。  第三は、現在下水道はとてもたくさんもございませんし、全部堆肥にするわけにもいきませんので、さしあたり屎尿を消化処理と申しておりますが、これは発酵させまして分解させまして、水分と固形分とに分けて、水分はきれいな水でございますからそのまま海、川へ流す。固形分はこれを農村に分ける。まことにきれいな形になりますので農村にそのまま使いやすい形として有機肥料源として還元していく。つまり消化処理施設を設けまして進んでいきたいというようなことを目下考えておる次第でございまして、来年度はこれらによりまして、少くとも大阪湾東京湾等におきましてはすみやかに海洋の投棄を禁止するという方向でこれを陸上処理にする、そのための予算を目下大蔵省に要求しておる次第でございます。
  21. 吉川兼光

    吉川(兼)委員 ただいま環境衛生部長はまるで総理大臣みたいな、農村の肥料政策に至るまで論及したようでありますが、私はそういうあまり他を顧みた議論をあなたから聞こうとは思っていない。もっとあなたのところの現実の話をしてもらいたかった。肥料を農村に還元するとかなんとかいうことはあなたから聞かなくても当然考える。ただ私のお聞きしたいのは、現在あなたのところで、この被害状況を果して詳しく知っておるかどうかということ、短かい時間に私は注文をつけたのでかいつまんだかもしれませんが、あなたの言っていることは、どうもあなたの所管外の、いささか他を顧みているところがあり過ぎて、私ははなはだ不満です。実はこれは大阪湾東京湾だけの問題ではありません。広島湾を初め各地にこの問題は大小の違いはあるけれども起っておるのであります。かりにこれを一番大きな、被害地域が広いというふうにとれまする東京湾についてこれを見ましても、たとえば今あなたのおっしゃっております海洋投棄を、来年から禁止したいなどという、そういうような希望的な御意見のようでございますが、これは実際問題として、東京だけで一日に一万二千石、一年に約四百万石出ておるのですが、そういうようなものをすべからく陸上処理に切りかえられるなんていうことは、これは無責任もはなはだしいあなたのお言葉だと思う。これは海上処置もやむを得ないかもしれぬ。決してそれは最善の策ではありませんけれども海上投棄もやむを得ないかもしれませんが、現在の清掃法なりあるいは政令なりできめておりまする投棄の状況が、私は非常にけしからぬと思うのであります。ここに海上保安庁の調べました海流の調書等もただいま届いたようでありまするが、これで見ましても、結局政令できめてありまする投棄場所では、ほとんどことごとくと言っていいくらい海流にそれが乗せられて千葉県の沿岸に打ち上げられるようにできておるのであります。こんなことだったら最初から千葉県の海岸に持って行って捨てたらいいのです。それと結論は同じことです。金をかけて、そうして法律を作って、もっともらしい政令まで出して、そうして捨てておりまするものがことごとく——海流は自然のあれで動くのです。きわめて正直に千葉県の海岸に余すところなくこれを運んでくれる。そうしてその影響は、あの沿岸のノリでありまするとか、あるいは貝類でありまするとか、あるいは海水浴場でありまするとか、それからまだあなた方はちょっと御想像の及ばぬことですが、それは遠洋漁業の、えさ、特にカツオのえさになりまするところのイワシは生かしておかなければならぬ。これを館山湾のところで生かしておりまするが、このえさイワシはバケツ一ぱい千円もします。それが全部今死んでおるのです。あの沿岸のノリの生産は、金額にいたしますると、枚数にして何億枚とできるのでありますから大へんなものでございまするが、このノリでありまするとか、あるいは貝類なんかの生産で非常に困るのは赤潮ですが、今度は黄金潮といいますか、黄色の潮が現われましてそうしてあの辺の漁業は全部だめになりまして、それは暗たんたるものです。これはあなた方はおそらく関係方面の報告で聞いているはずだと思うのですが、どの程度それが政府の中で、いわゆる大臣などのところにわかっておるかということなのです。これは一厚生省では処理できないような大問題だと思います。いわんや環境衛生部あたりでそっとあたためておいて、これを何とか解決しようなんて、いくらあなたがここで大言壮語されても不可能なことではないかと思う。これはすべからく大臣から政府の問題として持ち出して、そうして東京湾の入口に、それは一つの山が伊豆大島の四分の三くらいですが、これは東京だけです。そのほかに横浜とか川崎とか横須賀等から出ておるものが点々とあります。全部合せると伊豆大島の二倍くらいあるでしょう。二倍くらいの大きな屎尿の山を海底とはいいながら積んでおいて、そうしてほかの問題で文化国家がどうだとか、環境衛生がどうだとか、この法律でもそうですが、環境衛生組合がどうだとか言っておりますことは、むしろ私は枝葉末節の方を重んじ過ぎて大事なことを忘れておるといわざるを得ないのでございます。そこでこれは実は東京湾だけの問題ではありません。繰り返して申しまするが、北九州にしても、それから大都市の前面において海上に起っておりまするこれは大問題でございまするから、現在のような安易な考え海上投棄をやって、そうして漁業その他に及ぼしておりまするところの悪影響が防げるかどうかということなのです。私はすべからくこの政令その他を改めまして、そうして少くとも現在の場所よりは一万メートルくらい沖合いに持っていって、黒潮の本流くらいにその屎尿をのせて、それこそ大津のかなたに持っていくというような処置でもしない限りは、あの辺で置いたのでは重いものは沈澱してくその山を築き、軽いものは千葉県に持ってくる、こういうような海中における分析作用くらいしか期待ができないのでありますから、私はぜひこの点について現実の考えをあなたから聞いておきたい。なおお帰りになりましたら、大臣、次官、局長その他にも十分にこの委員会の論議をお伝え願って、これを内閣の問題にする。今あなたの言う乾燥肥料ということになりますれば、これは厚生省の問題じゃないのですから、農林省の方にも話し合う必要がありましょう。そして四百億か五百億の予算で五カ年計画とかいっているそうですが、私はもっと取ってもいいんじゃないかと思う。それはこの委員会あたりで大いに予算獲得の応援でもしてもらうことにしまして、あまり事を簡単に、こんなところで来年からどうしますというようなことを言ってもらっちゃ、この問題で被害を受けている連中は迷惑しますから、もっと重大な問題として取り扱い、しかもあなた方の責任でどの程度のことはやります、たとえば海上投棄の現在が非常に不十分なものであるならば十分なものに、距離であるとか、船の改造であるとか、そういうことをやるのだという答弁をここでしておいてもらいたい。
  22. 楠本正康

    楠本政府委員 御指摘の点、まことにごもっともでございます。現在なるほど海洋投棄の場所が、たとえば東京湾にしてみますと、東京湾の湾外に捨てればいいことになっている。これが果して適当なものであるかどうかという点につきましては、多分に疑義がございます。私どもはこれを適当なものとは考えておりません。そこでこの夏、海上保安庁の協力を得まして徹底的な試験をいたしましたところが、海洋投棄をするならば大島南端と野島岬沖九千メートルの線の外にしなければいけない、こういうことでございます。そこでこうして政令を定めてしまえば問題は解決するかと思われるのでございますが、現在の船はその辺でごらんになっているように、とても遠くへ行ける船ではございません。そこでこれを大島南端まで持ち出しますために、鋼鉄船の相当なものを作らなければならないという悩みがございます。なるほど船を作ってもけっこうでございますけれども、船を作るよりは、経費の点からいきますと、陸上処理の方が施設としては格安であるということが言えます。経常費はもちろんのことであります。そこでやはり都市本来の姿としては海洋投棄に依存するより、どうせ金をかけるならば陸上処理を徹底的にやって、都市百年の大計を立てることがむしろ上策ではなかろうかという考え方で私ども海洋投棄に依存することをやめようと思っているわけでございます。これはもっぱら経費の点からでございます。  なおもう一つ海洋投棄をいたしますと、やはり規定通り捨ててくれませんで、天候でも悪いとときどき湾内で放すというような不心得者も出てくるような予想もされますので、この際陸上処理に移す。それなら直ちに陸上処理ができるかということでございますが、これは現在の船がどこまで行けるかということを検討いたしまして、その行ける範囲において投棄海面を遠くへ持っていく。と同時に湾内投棄が行えないように監視船でも設けまして、湾内の不法投棄を取り締っていきたいと考えております。どうも海洋投棄を継続することは、施設費の点からいっても、あるいは経常費の点からいっても、むしろこの際陸上処理に移すべきものではないかと考えております。
  23. 吉川兼光

    吉川(兼)委員 どうもあなたは少し感覚がずれていると言わざるを得ない。なるほど海上投棄の区域を九千メートルから一万メートルに広げる以上は、相当の経費がかかるということはだれでもわかっていることです。経費がかかるから容易ならぬことであるし、またそれは最終的な理想的なものでないから陸上処理をやりたいというか、陸上処理をやりながらでもいわゆる現在の海洋投棄を継続しなければ一日一万二千石も出ますやつの処理はできないのですよ。そうすると現在日々千葉県の沿岸だけではありませんよ。おそらく全国、まだ詳しい調べは来ておりませんが、ほかの所でも同様だろうと思う。そういう所でそういう被害がありますことはかまわぬというんですか。あなたの話は裏返して考えるとそういうふうにとれる。なるほど今やっておりますくそ船というものは、東京都の場合も公営のものは二そうしかない。あとの二十隻近いものは民間のものであって、これは非常に規模の小さいもので、岸壁等も非常に低いから、一万メートルも先まで航行するような船にかえるにはあるいは鉄鋼船もいいでしょう。それから岸壁等の改造にも相当の金を要するでしょう。要するから現在のままでいいということは私は成り立たないと思う。よろしゅうございますか。鋼鉄船を作る必要があるということでありますが、これは議論がありましょうが、これこそ一つ防衛庁あたりとも相談して、巡視船か何かを一時くそ船に取りかえてでも、いわゆる陸上処理の設備ができるまではあなた方が真に誠意をもって、しかも政府全体の問題として、政府部内において世論を喚起して、これを閣議にまで持ち出すという熱意が厚生当局のあなた方のところにあれば、おのずから私は解決の方法があるのじゃないかと思うのです。それをあくまでもこれは環境衛生部だけの問題だからというように考えて、いわゆる衛生技術者などの専門的な考え方からそれは陸上処理がいいんだ、海上のことはどうこうだということは、いろいろ理想的な案はありましょう、しかしながら恒久対策としてそういう処置に出ることは当然なことであって、われわれだれも反対する者はない。ただ私が申し上げたいことは、現在そのために非常な被害が千葉県だけでも大へんなものが生じているのであるが、これに対するたとえば賠償、もし十分な賠償ができるなら賠償でもいいんですよ。しかしそういうことはにわかにはできないでしょう。従って政府としてこれをどういうふうに防ぐかということについては、どうしても海洋投棄を継続する期間中の応急対策としてでも、その投棄の場所をはるかに沖合いに延長する以外にはない。それに船が要るのであれば船は要りもしないことに使っている船が相当あるはずだから、そういうものでも一つ流用して、そうしてこの問題と真正面から、応急的にも真正面から取り組む用意があるやいなや。これはあなたの答弁事項としてはちと大きいことかもしれませんが、しかしあなたは当面の以府部内における責任者だから、あなにがその腹になって厚生省内の議論をよとめ、閣議に持ち出して——十分これは閣議に持ち出す価値のある問題だと思うのです。一番早い話が東京湾ありいは大阪湾におけるところの今の屎尿の山の問題、これは一番俚耳に入り易いと思うから、あなた方の方で資料を流してもらう。ところが一番知っているあなた自身がそういう屎尿問題では神経が麻痺している、大して重大に考えておりません。しょっちゅう机の上で昭和二十九年以来いろいろ議論しているから簡単に考えておりましょうが、問題はしかく簡単なものでないと私は確信しておりますから、今日以後においてはそういうふうなずれた——私はあえてずれた感覚と言いたいのですが、そういう感覚でこの問題に対しておったのでは、問題の処理は不可能だということをつけ加えまして、私は特別な答弁は要りませんけれども一つ大臣を通じて十分に閣議に反映するように精励してもらいたいと思う。
  24. 八田貞義

    八田委員 今の屎尿の問題について関連してお聞きしたいのですが、海洋投棄の問題が出ておるのですけれども、アメリカなどは屎尿処理として海洋投棄をやっておるわけですが、最近農業の肥料として天然燐というものが非常に大きく取り上げられておるわけです。ですからむしろ今日の屎尿処理の大きな眼目は海洋投棄ではなくて陸上処理の方に進んできておるわけです。単に海洋投棄をやってみても、戦争中に海洋投棄ということをやっておったのですが、だんだん重油がなくなって海湾投棄になっております、海湾投棄からだんだん後退して海岸投棄になり、それからさらに後退して河川投棄となったということで、この屎尿問題は戦前、戦時を通じてまた今日も大きな問題になっているのですが、天然燐という問題から考えてみると、屎尿の処理というものは今後陸上処理の方に転換していかなければならぬと私は思うのです。そこで今日一体どのような陸上処理としての対策考えておられるか、厚生省でお考えになっておる陸上処理の対策方法についてちょっとおっしゃっていただきたいと思います。
  25. 楠本正康

    楠本政府委員 第一は、先ほどもお答えを申し上げましたが、下水道の発達によります水洗便所化ということが最も理想であると存じます。しかし日本の現状としてこれだけに依存することはとうてい許されませんので、他の方法も併用しなければならぬと考えております。他の方法といたしましては、第一に屎尿を消化処理して水分と置型分とに分ける方法でございます。この施設は将来下水道が発達いたしましたときには、そのまま終末処理場の一部として転用されるものでございます。つまりトラックで投入している屎尿を下水管によって運ぶというだけの差でございます。さような施設を設けていきたい。もう一つは、先ほども申し上げましたように最近各国で農村有機肥料源確保すると同時に、都市屎尿塵芥等の処理をはかる目的で、この堆肥化の研究が進められております。私どももここ数年来この都市屎尿、塵芥の堆肥化研究を進めておりまして、おおむね見通しを得ましたので、来年からこれを実用化していきたい、かように考えております。第三は、現在各家庭が屎尿浄化槽というものを個人的に作っております。これらは技術的に見まして、あるいは経費の点から見ましても、必ずしも合理的な方法とは思えませんので、今後は地域の実情に応じましては共同で浄化槽を作っていく、いわゆる外国のセプティク・タンクの考え方で進んでいきたい、かような考えを持っております。
  26. 佐々木秀世

    佐々木委員長 午前中はこの程度にとどめ、午後二時まで休憩いたします。     午後零時十四分休憩      ————◇—————     午後二時五十三分開議
  27. 野澤清人

    野澤委員長代理 休憩前に引き続き会議を再開いたします。  都合により委員長が不在でありますので、私が委員長の職務を行います。失業対策に関する件について調査を進めます。発言の通告がありますのでこれを許します。中原健次君。
  28. 中原健次

    中原委員 いろいろ伺いたいことがあるわけですが、まず一番最初に私が聞きたいと思うことは、先ほども実は雑談の中で与党の各位からも話が出ておりましたが、今日の段階で、わが日本の国の行政の施策というものは、労働、厚生、こういう問題にかなり重点を置かないといけない。従って、この二つの問題は従来しばしば軽卒に扱われてきた傾きがあるけれども、そのことは間違いであり、逆である、こういう意見が出ておったわけであります。私も同感でありますが、従って、そうであるためには現在の国民生活の実態といいますか、そういう偽わらざるほんとうの姿が十二分に政府なりまた国会なりに理解されておらなければならぬ、私はそう思うのであります。いやすでに十分理解されておるではあろうと思いますが、理解されておるとすると、今日の施策の実情はまことにけしからぬ、私はこういうことになってしまうと思うのです。実はそれほどとは思わなかったというのであるならば、今日のような施策の状態も、またそういう不注意から大きな手落ちをしておったという自己批判で多少は寛恕されるかもしれぬと思いますけれども、私そこに非常に重大な問題があるのじゃないか、こう思うわけであります。それでまずものの考え方が前提になるわけです。そういう前提の上から考えますと、それなら今日わが日本の国民の実態、特に生活の姿というものはどうなんであるか、こういうことについて十分考えてみる必要があると思います。幸い私がこれから申し上げようとすることがむだであれば非常にけっこうでありますが、同時に翻って思いますと、もしそれがむだであるといたしますならば、今日の施策はこれでいいのかどうか。いや、全くでたらめであるし、油断もはなはだしいし、許しがたい、こういうことに実はなると思う。局長はそれぞれ御専門の立場ですから、私が心配するほどのことはないほどに御理解であろうと思いますけれども、実はこういうことがわれわれの耳に入ってくるわけなのです。まず一つ私がほんとうの姿を、人のことにかかわりますから、かなり抽象的に言います。名前も申し上げませんし、地方も申しません。ただ抽象的にここに抜き出して申し上げますが、こういうことがあるわけです。年末も直って参りましたが、街頭にはいろいろ生活に悩む人々の声が流れております。特に数日来からいわゆる失業労働者の諸君がしきりと東京に陳情に見えておるようであります。そういう中で、われわれは全国的に失業者の生活というものが確かに油断を許さぬような状態になっておるのではないか、こういうことを感じさせられるわけであります。もちろん具体的に各種の要求が出ておることは言うまでもありませんが、そこで失業労働者の生活の実態というものはどうか、こう思うときに、今私が申し上げようとすることがまず浮んでくるわけです。私はあるところから実はこれをつかんできました。それはどういうことかといいますと、ここに年が三十七、八と伺いましたが、婦人がおるそうです。その婦人の家庭には二人の子供がおり、もちろん夫はなくなっておる。からだは無理をしいて稼いでおるために結核にやられているそうです。ところがその人が作業に入りますると、ややともすると居眠りをするそうです。これはけしからぬというので、監督の諸君がやかましく言う。組合側は組合側で、困ったことだというのでいろいろせんさくしたそうです。ところがどうしても居眠りが続く。いろいろ調べて究明してみますと、彼女も言いたくはなかったようでありましたが、とうとう言い出した。実は夜通し働きました。昨夜も大体日が暮れたころからその稼ぎ場所に出張して、服装はこの服でなくて、一応は色のついたきれいな服を着て稼ぎに出て徹夜で働いた。夜が明けてからバスに乗りましてその職場まで戻ってくるそのなりに職安の事務所へかけつける、やっと仕事をもらって働こうとするけれども、とうていからだが耐えられない、こういう姿だそうであります。具体的にはやはり、俗の言葉を使いますと、パンパンをやっておる。俗にパンパンなどと申しますと、まことに気まぐれのような、のんきのような言葉でよくその事柄を扱おうといたしますけれども、私はこの問題に関してどう考えてもそうは言えない。一体おのれのからだを犠牲にして、高い誇りを捨てて、ただ二人の子供を養うためにやむを得ざる手段としてパンパンの業に身をゆだねなければならぬ、しかもそれだけではやっていけない、だから翌日は職安に職を求めていく、けれども人間の能力には限度がありますから居眠りがつく、居眠りがつくから職安で働くわけにいかぬともし規定いたしますならば、その人はかつえなければならない。仕方がないからめちゃくちゃで子供を養うという、生きるということだけのためにまっしぐらに生活を進んでおる、こういうことが言えると思うのです。これらがもっともっと内容を調べると実に驚くべき事柄がたくさんあるようでありまして、私どもは少くとも人間としての感情を持っておればもう聞くにたえられません、扱うことはとうていできないと思います。しかしそういう実態があるということをセンチメンタルにただ嘆くだけでは済まない。一体これはどうしたらいいか、こういう問題が起ってくるのです。ところがその職安で働いておるいわゆる失業労働者の諸君が、先年もこれは経験があるのですが、年末手当をちょうだいしたいというのでわれわれはここで論議をした、やっとそのときに何日分であったか忘れましたが、三日分であったかのような気がします。やっともらった。ところがそのもらった金は生活保護を受けておる人に関する場合は差引になるという。それは困るじゃないか、余った収入ならばいいけれども、やっとこさでそれだけのものを獲得して、その金をやっとのことで得たと思えば、すぐに生活扶助の方で引き下げを食うということになると、手元は同じことになります。何をしたかさっぱりわからぬ。これではいかぬというので、当時これは労働委員会の扱いでありましたが、労働委員会の同僚の各位も、委員長政府も実は心配しました。いろいろあっせんをして厚生大臣などとも話したりしまして、かなり努力はいたしましたものの、とうとう実を結ばぬままでそれが流れておるわけです。そのことを今ここであわせて思い出すわけなんです。もし万一そういうような境涯の人たちが、やっとのことでわずかばかりのきわめて零細な年末手当をいただいたといたしましても、その他の特別の収入を得たといたしましても、それは天引きされてしまう、こういう結果が想像されるわけなんです。そうなってくると、これは一体どうなんだという、まことに言いようのない状況に直面せざるを得ない。  それからもう一つあるのです。ついでですから申し上げますが、もう一つこういうことを聞いている。これは男です。やはり四十ばかりの男子、男なら働き盛りです。その四十ばかりの男子が七人の家族、その中に親が二人おるそうです。その家族を背負って一生懸命働いておる、どうにもこうにもやっていけない。ところが間の悪いことにはお父さんが病気して倒れちゃった。おやじは倒れるしどうにもならぬというので、必死になってかまえておる。ところがここに不幸の中にも一つの喜びがあって兄弟がどこかで働いておったらしい。それが千円かしら送ってきた。その送ってきたということがわかった。そうすると、お前のところは千円送ってきたから千円引きましょう、こうなった。そうなりますと、これも似たような扱い。それではその千円というものはまことに大金なんですが、失業労働者の立場から言えばまことに大きな金ですが、その千円の金の大きな期待もどこへやら、もうすっぱりなくなっちゃった。むしろ送ってもらわぬ方がいい、かえってその息子が使っている方が家族の者からいえば得だということになる、ここでは得とか損とか、そういう言葉でなくして、そういう姿の中で生活を追い回していかなければならぬという実態が、今日わが日本の国の津々浦々にあるということなんです。そこで私は、そういうような姿が津々浦々にあるということがわかる以上は、果して今日のような失業対策あるいはその他の社会保障対策をもってよしとすることができるか、よしとは思わないまでも、まあこれくらいならばがまんをしていかなければならないと言い切ることができるか。どうも言えぬような気がする。それはちょっと言えないと思う。もう少し積極的にこれの実態に対して誠のある対策を講ずることを努力せぬことには、もうわれわれは何ともものの言いようがない。こう私は思うのです。局長にもそういうことについては十二分の御判断があると思いますけれども、出ている面は、はなはだ残念ながらお粗末千万なんです。従って私はこういうような実態に対して、その施策の一番元の立案をしなければならぬ局長の立場ではどう思っておいでになるか。きょう私があえて大臣を呼ばなかったのは、大臣は実はそのあとでよろしい。一応これは局長が元です。局長はどう思っているか、場合によったら、これだけのことをしてもらわぬことには私は仕事はできませんといって、辞表をたたきつけてでも主張すべきところの事項だと思うのです。ただ自分がいい地位を安全に確保し、そうしてさらに高めていくことができればそれで足るということとは違うと思うのです。私はいやしくもこの地上に人として生まれて参りました以上は、人間の子として、しかもそういう局所に担当させられている者として、これをどう見たらいいか、こういうことについての両局長の御判断をこの際承わっておきたい。
  29. 江下孝

    ○江下説明員 中原先生の今のお話、私も非常に同感する面が多いのであります。お話は結局貧困という問題に尽きると思います。日本の低所得の労働者が多過ぎるということではないかと考えております。結局、政府として現在やっております雇用面からの対策でございますが、これにつきましては、御承知の通り経済五カ年計画を策定いたしまして、将来において可及的に失業者の数を減らしていくという経済規模の拡大という面を一つ取り上げているわけでございます。なおそういたしましても失業する、あるいま働けない、こういう者につきましては、政府失業対策事業によりまして、できるだけの救済をやっております。ただ先生のお話の中に出て参りましたように、三十程度の御婦人で子供二人かかえておられるというような方に対して、それじゃ雇用対策だけでこれが完全に処理できるかと申しますと、これはなかなか実際問題としては、技能も何もない人では困難だと思います。御承知の通り女の人が今勤めましても、相場が大体せいぜい一万円どまりでございます。従いましてこれは雇用という面からいかに私ども対策を講じましても、現在のワクの中ではなかなか生活安定を期することは困難であります。そこで私どもといたしましては、絶えず機会あるごとに厚生省あるいは政府の方に社会保障制度の充実という面をあわせて講じてもらいたい。そういたしませんと、単に失業救済という面だけから行きますと、どうしても賃金的にはある程度制約を受けざるを得ない、こういう実は考え方でございます。生活保護の問題等につきましても、今の点は私どもも承知いたしまして、実は昨年から厚生省にも折衝いたしまして、ことしの夏にやっと千五百円だけは失対労務者に限り差し引かないようにしよう。こういうところまでは認めていただいたわけでございますか、しかし先生も御承知の通り、これは生活保護法全体の問題でございまして、失対労務者に限らず、他の低賃金労働者も収入があれば生活保護からは差し引く、こういう生活保護法の建前から実はきておるものでございますから、私どもの主張も、まあ十分とまではいれられなかったのでございますか、しかしこれらの点についてはさらに今後も私どもは失対労務者のために努力したいと考えております。いろいり先生のお話のございました点は、なお私ども十分考えまして、将来努力したいと思います。
  30. 中原健次

    中原委員 そこで直接問題になりますのは、ただいま対策としては雇用面が第一番、五カ年計画の構想もあることであるし、いやむしろ実行に移そうとしているから、それで雇用量をふやして何とかしていく。しかもそれだけじゃなくて、社会保障政策の充実をしていく。その他いろいろ努力を払うつもりである。こういうお言葉でありました。まことにけっこうなことと思います。ところが局長さん、一つおかしいことがあると思うんです。最近、ことにこれは工場の問題ですが、いわゆるオートメーション化促進の問題です。このことはまことに残念なことでありますが、雇用量を減すことになるんです。生産量はふえるかもしれませんが、雇用は減るわけです。そうすると生産は上に向う。雇用は下に向う。こういう矛盾が出てくるわけです。しかも生産性向上運動というまことにもっともな、りっぱな名前で包まれた運動であり、政府もいろいろな形で金を出しております。そうすると、その運動が推進していく過程において雇用量増大をはかるということはその面では確かに逆になってくる。しかもそれは今後相当大きい部分を占めると思うんです。こういう点とその問題とのからみつきですね、これはどうお考えになるんでしょうか。一応御見解を承わりたい。
  31. 江下孝

    ○江下説明員 お話の生産性向上、オートメーション化に基きます雇用量への影響、これは確かにお話の通り大きいと思います。私どももこの点について心配いたしておりまして、政府としましても、一時的に発生する失業者というものに対してはできるだけ対策を講じて行なっていく。こういうことで実は生産性向上運動が発足しておるわけでございます。ただそれじゃ、いつまでも生産性向上運動をやれば人は減る一方かと申しますと、その点についてはいろいろ議論がございますが、私どもとしましても、必ずしも生産性向上をやれば直ちに雇用が減り、あとは減りっぱなしでふえないというふうには考えていないわけでございます。またそういたしますれば、それにかわって生産性が上るということによりましてたとえば技術者等につきまして相当な需要が出て参ります。あるいはまたそういう生産性向上のためのいろいろなオートメーションの機械を製造する面というような面でも、需要増加が出て参るということからいたしまして、経済規模が拡大して参りますれば、必ずしも雇用量がずっと減りっぱなしというふうには私ども考えていないわけでございます。
  32. 中原健次

    中原委員 生産性向上の問題と失業問題との関連についてはもう少しゆっくり時間がほしいのです、これはお互いもっと論議してよいと思います。従ってそれに深入りするつもりはありませんが、今すぐ出てくる問題は、そうなりますと、そういった矛盾を調和する一つ対策は労働時間の短縮、こういうところにくるわけです。何としても労働時間がずっと縮まってこなければ困ってしまうのです。もう一つは今まで十を使っておったものが二になり、残りの八です。これをどうするか、これは社会保障ということで安閑としてはおられないと思います。社会保障も必要でありますが、さらに積極的にそれが活動する分野を作らなければならぬ、そういうことが当然出てくる。これはきわめて簡単な次の問題です。そういう諸問題に対して今のような心がまえや対策では実はどうにもならない、何と言われてもなりません。われわれはわかっております。どうにもならぬのはわかりながら、それにいかなければならぬ。しかも政府はかねや太鼓で生産性向上をにぎやかに言っております。毎日われわれのところにも生産性向上に関するいろいろなニュースが入っております。しかも政府筋直接ではないけれども、傍系筋からどんどん送られてきます。私どもは幸いに混乱をしません、幾ら締めつけられても混乱はしませんけれども、ひょっとすると混乱する方が出てくるおそれがある。しかも国の金をそれにつぎ込みながらやらしておるというところに問題がある。一体それなら余剰能力はどういうふうにするのかということが出てきますから、そこですぐにこの当該委員会等で問題になるのは労働時間の短縮、これの立法化、法制化です。何時間以上使ってはならぬということは、やはりその間の、何というか、距離を埋める。埋まってしまいはしませんけれども、一部分は埋める方策。ところが労働時間が少くなって賃金は低いということになっても困るから、やはり最低賃金、これ以下で使ってはならぬ、もし金を払う能力のない経営者が実質上、経理上あるなら、政府がその金を補ってもそれだけ補償しますというくらいの心がまえが出てきませんといけない。従っていわゆる最低賃金法です。しばしばわれわれが言っておるあれです。そういう事柄はもう着々具体的に政府部内では研究調査が進められておらなければならぬと思います。やれストライキ規制法がどうのこうのと、そんな弾圧立法ばかり一生懸命で勉強するのではなしに、もっと積極的に労働階級を人間たらしめる、人たるに値する生活を保障するための研究をしていただかなければならぬのじゃないか。もうできておるとは思いますが、そこでそういう問題についてはいかがでしょう。ちょっと問題はむずかしくなりますが、これは一応事務当局の見解でけっこうですから、拝聴したいと思います。
  33. 江下孝

    ○江下説明員 雇用面から考えますと私は先生の御意見に同感であります。そこで実はお説の通り最近は経済規模が拡大したといわれながら、その拡大の内容を見ますと非常な臨時的なものがいろいろあります。それから非常な長時間労働によるものが多い、こういう状況であります。これに対して過般失業対策審議会でも、これらの長時間労働については事業主に適当な勧告をすべきではないかという意見も実は出ております。ただ問題は先生も御承知だと思いますが、最低賃金の場合には支払い能力の問題がございますし、それから労働時間の短縮にいたしましても、結局それによって生産コストが上らない、そういうことが一つの大きなポイントになります。これらの点は結局日本の産業の構造なり規模自体と直接非常な関連がございましてなかなか私ここで簡単に結論を申し上げるような問題じゃないと思いますが、お話のような点については、私どもは雇用面から十分検討はしていきたいと考えております。
  34. 中原健次

    中原委員 希望はよくわかりました。しかし現実には実はこれは作業をしておらぬ、こういうふうに想像いたします。違うかもしれません、違えばけっこうですが、どうもそう思える。そこであまりに政治的になりますから、大臣の御出席の場合にこれを追究するが、局長さんにはあまり無理は言えぬ。そこで局長さんにすぐできる問題に入りたいと思います。  話が大きくなり過ぎましてちょっとどうかと自分で気づかっておりますが、ただ最後に言いたいことはこういうことなんです。これは妙なことを申しますけれども、私が非常に尊敬する言葉に、生命はげに尊し、愛情はさらに価高しという言葉があるのです。これは実に美しくて、しかもりっぱだと思いますし、だれもが希求してやまない言葉だと思うのです。ところがこの二つの命と愛情——これは老若を問いません、この命と愛情にほんとうに生き生きとした生気を与えるためには、やはり世の中がよくならなければどうにもならぬと思うのです。従って人間の宝とも思うべきこの言葉が、実は今一部には生かされていましょうけれども、国民には生かされておらないのではないかという不安を感じます。でありますから、こういう国民の生活を守るために仕事をしなければならぬ立場に立たれる方々とせられては、もちろんそういうことについて真剣に考えておいでになると思いますけれども、さらに掘り下げて、一つでもいいから答えが出るように、そういう国民の希求してやまざる言葉に近づくように仕事を運営していただきたい。そういうことはなさっておいでになると思いながらも、やはりそれを希望しなければならぬような気がするのです。実は私は非常に不十分に感ずるわけです。これはみんなやってもらいたい。これをやらぬことには大へんです。  そこでそういうような意味も含めまして、いろいろな問題がありますけれども、それは別にいたしましてさしずめ今直面しておる問題は失業労働者の問題だと思います。失業労働者がみずから好まないのに、だれも求めてはいないのに業を失った、仕方がないから職安の窓口に行ってはなはだ希望のない仕事に追い立てられておる。もちろんその仕事の作業ぶり等々について、私どもいろいろ妙なことを聞きますけれども、しかしそのことを言う前に、その失業労働者には希望があるのかどうか、人として心を躍動させながら働けるような喜びがあるのかどうか、こういうことについての判断なしにその作業ぶりの批判をしても仕方がないと思うのです。あの作業ぶりは何だ、あんなことでは金を出せぬとかなんとかいうことをよく聞きます。これは賃金問題給与問題のときに必ず出るのです。それで私は申し上げるのですが、そういうことを言う前に、なぜもっときびきびとして働くだけの希望を与えないのか、希望のないところに躍動はありません、私はそう思うのです。従って、そういうような意味も含めまして、やがて同僚諸君の方からいろいろ具体的な提案が出ると伺っておりますので、私は非常に楽しんで期待いたしておりますが、今までの経験から考えましてそうであるならば、先ほども申し上げましたように、たとえば迫っておる年末の手当、その年末手当を使って、お正月にはせめてもみんなが囲んで喜びを分つことができるように保障してあげますというだけの努力を政府はなされますかどうか。年末手当の問題は、何でもいいからこれだけやっておけという意味のものとは違うのです。当然これは差し上げなければならぬ。そうしなければ、その家族に、一番低い程度の喜びであるけれども、それを保障づけることはできぬということはお互いにわかっておるのですから、そのことを何としても実現させるためにやる、こういう決意が要ると私は思うのです。  もう一つは、さっき申し上げましたように、せっかく与えられても、生活保護を受けておる方の場合はその金が差引になるということです。実はこれは政府考えればいいのです。厚生省と相談をして、ここは幸い厚生省と労働省の一緒の委員会ですから、委員会の各位に御心配願って何か特例を設けてもらいたいのです。これは委員長にもお願いしておきたいのです。そうしてこれだけは生かしてやっていただきたい。せっかくつかんだわずかの金をぽっと引かれたら、トビに油あげをさらわれたとよく言いますけれども、それよりももっとひどいと思う。何にもならない。そこで関係者の諸君が、生きるための条件を与えるためにそういう御心配を願いたいと思うのです。これはきょう初めてではないのです。今から四、五年前に、職安の失業労働者の諸君に年末の手当を給与したいとか、いや、する必要はないというので論議されましたときの問題なんです。そのときにわれわれは一生懸命になってそのことの具体化に努力したのですけれども、そのときには間の悪いことには、厚生委員会と労働委員会とが別だったのです。それで非常にやりにくくて、時間は迫るし、とうとう実を結ばないままになっていることが過去にあるわけです。しかしきょうはもう条件も違いますし、いろいろな経験を積み重ねて参っておりますから、これが具現のための積極的な努力というものは可能だと思うのです。そこで、本委員会にもこれをお願いいたしますが、委員会の方でもやると同時に、労働省の方でも、積極的に足を運ばせて厚生省と打ち合せをして、ほんとうに今度は実が実るようにしてもらいたいと思うのですが、いかがですか。
  35. 江下孝

    ○江下説明員 生活保護との関係につきましては先ほど申し上げたのでありますが、失対労務者の特殊性ということも、厚生省に対しましては私ども再々主張をいたしております。生活保護との関連においてせっかくの年末の特別措置がむだにならぬようにということで実は御相談申し上げておりますが、先ほど申し上げましたように、生活保護法全体の一つの理念、つまり、収入がある者は差し引くのだという一つの大前提が生活保護の建前でございますので、この点について、失対労務者だけについてそういう措置をやるということは厚生省としてもなかなかうなずけないということでございます。しかし私どもとしては、先ほど申し上げましたように、特に千五百円だけは特別に——失対労務者は不潔な仕事に従事する場合が多いから作業服等がいたむだろうから、その分については特別に差引をしないということまでは実はこぎつけたわけでございまして、決して私どもは手をつかねておるわけじゃございません。この点につきましては、なお生活保護法全体の理念の問題とも関連いたしますので、われわれとしましては全体の立場からもこの問題をまた検討しなければなりませんし、そういう関係において今後とも厚生省に主張は十分いたしたいと考えます。
  36. 中原健次

    中原委員 ちょっとその前に……。今、千五百だけは生活給として手をつけさせないと言いましたね。これは非常に大事なことです。
  37. 江下孝

    ○江下説明員 生活給とは私は申しておりません。つまり、作業衣が非常によごれる場合が多い、いたむ場合が非常に多い、こういうのはコストだというので、特別にその分については差引をしない、その分だけは失費が多いだろう、こういう考え方であります。
  38. 中原健次

    中原委員 それでは、収入の上にプラスそういう被服費でございますね。そういうものは考えるということですね。千五百円と機械的に扱うのではなく、千五百円という単位にプラス・アルファーということなんですね。
  39. 江下孝

    ○江下説明員 一般の生活保護受給者につきましても一定の控除額があるわけでございますが、特に失対労務者については、作業の内容等から考えて、千五百円だけは余分に差し引かない、こういうことなんです。
  40. 中原健次

    中原委員 話をこじらさせると困ります。今話をこじらされたとは言わないけれども、結局こじらされたことになる。なぜかといえば、今私が申し上げた千五百円云々ということは、千五百円という単位をこえた部分の収入ですね。これは収入がふえるのですから、そうでしょう。ふえた収入は、生活扶助を与えている場合に扶助額から控除するということなんですね。その控除の中に今おっしゃったようなものが込められる、そうすると千五百円が千八百になるかもしれない、こういうことですね、そこがちょっとむずかしいことですね。
  41. 江下孝

    ○江下説明員 それは失対労務者は比較的作業衣がいたむような仕事をやる、そこでその分についての他のものに比べての特別な出費が一応千五百円程度であろう、こういうことに算定したわけであります。
  42. 中原健次

    中原委員 そういうものを含めた意味で千五百円というものが算出されたのであるということですが、そうすると、それは妙なことになりますね。千五百円というのは一日幾らか、これは考えてもらわなければならぬ。そうすると計算がむずかしくなってくるのです。われわれはすぐ現実の生活で考えますから、出てこぬですね。千五百円の算定基礎は何か、こういうことになるのです。一体何だ、何をやっているんだろうか、こういうことになるわけですし、そういうひどい標準が出ておるわけですから、今のお言葉がありがたく聞けぬわけです。しかもそれがそういう意味の被服費をも考慮して千五百円だというと、ますますもってあっと思う。これは実際科学的な知識がだいぶ進んでおりますから、もう少し本気で生きるに値する方策、標準を考え出さなければならぬ、私はそう思います。これは非常に大事な点です。労働省の、しかもあなたがそんなことを承認されておいでになるとすると、これは大へんなことです。あなたはそうじゃない、私はそう思っておるけれども、いろいろないきさつでこれが通らぬのだというならわかるんです。それはあなたの力がそこまではいかぬかもしれない。けれどもあなたもそれを肯定した立場でものを言われるということになると、それはもういよいよ大前提になってしまう。  それからもう一つついでに聞いておきます。先ほど大前提として収入を引く、こうことでしたね、それはよろしい、わかります。しかしその収入とは、生活とのにらみ合せについてどういう判断をするかということですが、これは一体どうなんですか、伺っておきます。
  43. 江下孝

    ○江下説明員 生活保護法の解釈の問題になると思いますので、私から御説明申し上げることは差し控えたいと思いますが、先ほどの千五百円というのは、勤労控除その他一般の労務者から差し引きますものは別にあるのであります。そのほかに特に失対労務者については千五百円だけは差し引く、こういうことでございますから、これで満足しておると申し上げたことはございません。
  44. 中原健次

    中原委員 その他にもあるというのが実はややこしいのですよ。そういう上手なことを考えぬようにしてもらいたい。その他にというようなことを言っても、私はもっとたくさんあるとは思いません。それは知っております。それはあなた方も言葉を完全にするために言われたんだろうと思いますし、われわれもそう解釈いたしますが、そういうことは無用です、要りません。その他とおっしゃいますが、その他とは何ですか。具体的に、数字的に説明してもらいたい、その他に何があるのです。そこで大前提については、立場上労働省で言えないかもしれませんけれども、しかし大体わかるわけです。そうすると大前提というからには、その大前提というものは非常に大きいのですから、生きるに値するということのやはりその中身というものがなければならぬ。収入でさえあれば何でもそれが前提の内容だというわけじゃないと思います。やはり前提を内容づけるためには、その収入がまず生きるに値するということが裏づけにならなければ前提としての価値がない。これは労働立法では御存じの通りに、まず生きるに値するということが非常にいわれておると思います。基本的人権の問題でもやはり生存権ということが非常に問題になると同じように、やはり生きるに値する、人たるに値する——この言葉は空語じゃないですよ。実は私もきのうこういうことを聞かされた。あなた方は国会に出てひょろひょろしておるけれども、憲法を忘れてはいませんかと言われた。全くその通りです。全く忘れておるようなものである。政府の当局もわれわれもひょっとしたら憲法を忘れております。よく考えてみると、憲法には健康で文化的な生活を営む権利を有すると書いてある。一体その権利はどうして主張するのですか。主張しようと思えば、どっこい待てやらさないぞと言う。一つでもやればいばってしまう。おとなしくしておったらどうしようもない。生活保護の問題でも、きょう私は生活保護法をひっくり返してみましたが、あっと驚きました。こんなことでどうするか、生活扶助の金額が何ぼあるか、まことにお粗末千万です。こんなことは恥かしくて言えない。そういうようなことを日本政府は国際的な舞台に出て言うたか、言わないか、おそらく言わないのじゃないか。世界を見ておらぬのじゃないか。井戸の中のカワズという言葉がありますが、まさにその通り井戸の中のカワズです。世界を一つも知らない。井戸の中でものを判断しておるから、何も知らないからいいように思っておりますけれども、一たび井戸から出たところが世界は大違いです。やはり人権が尊重され、人のよき生活を念願する友情が世の中にはあふれております。ところが日本ばかりはどうもそれが違うような気がする。第一に今申しましたように、憲法は置き忘れられておる形です。今度一部の人が憲法改正——私どもの言葉では憲法改悪と言っておりますが、憲法を改正しなければならないというような声を聞いたときにちょっと思いました。これで初めて憲法が問題になった、それではそこら辺から一つ憲法を強調しようというような、まことにお恥かしい限りです。これではわれわれはほんとうに腹を切るに値すると思います。ですからやはり失業問題を取り上げます場合、あるいは社会保障を取り上げます場合、その他万般の国の政策を取り上げます場合に、われわれはやはり考えを一応もとに戻して憲法の建前を考える必要があるのじゃないか。そうしてそこへ一歩でも近づかしめるための政策上の努力、これについては、厚生省はこれだけやりました、労働省はこれだけやりました、大蔵省はこれだけやりましたと言えるくらいなことはやっておかなければならぬ。けれども国会の関係で引き下ったということなら、その責任は国会が負います。これは負わなければならぬと私は思います。けれども、われわれはかくのごとく努力したと宣言できるようなものがあったかないかというと、ないのです。  そこで今われわれが直面しておりますたとえば年末手当の問題あるいは給与の問題、その他労働者の生活保障の問題等々につきましてもしわれわれがそれについてそのままぼんやりしておったのでは、お前たちは一体何をしにじゅうたんを踏んでおるのかと言われる。これは世間にはそういう言葉があるのです。お前たちは国会の中でいつもじゅうたんばかり踏んでおるからものがわからないのじゃないか、じゅうたんの上ではでこぼこの道路の上の苦労はわからないということを言われるのですが、まさにその通りです。ところがじゅうたんだけではない、自動車ですべるのですから国民の生活がわからないのです。やはりこの点は局長さん、課長さん、そこらが一番大事だと思います。そこらの人々が実際性のあるものを作り上げて、ちょっと言葉が悪いから大臣がおったら怒るかもしれないが、大臣に教えてやってもらいたい。大臣は実際知りはしません。それを一つ教えてやってもらいたい。これはこうしなければだめだ、どうにもならないといえば、大臣良識があるはずですから、良識があればそうだということになると思います。これは立場や何かの問題じゃないと思います。いやしくも人間なら、そうしみじみと思うと思います。そこで私はあえてお尋ねしようとしたわけであります。私は実を言いますと、質問することがあまりたくさんあり過ぎるほどいつもあるわけです。なぜかというと、いつも実は発言ができないのです。残念ながらできません。できませんから質問は百ほどあって一つしかしない。もし私に質問委員長が自由に許して下さるならば、私は一カ月でも一人でやりますよ。何ぼでもやります。ありがたいことには材料が何ぼでもあります。いやこれはありがたいことではない。あまりにも悲しいことです。しかもその悲しい材料が社会的に広げられておらない。これでは日本の国をもっとよくすることはできません。私はちょっと調子に乗るようでありますが、私も実は労働問題に四十年ぶち込んでおります。でありますからあまり言えない。言うたって何だか恥かしい気がする。むしろここらにいるそうそうたる青年諸君にやってもらいたい。実際そうです。ですから私は、四十年もやった男が今さらきゃあきゃあ言わぬでもいい、わかっておるじゃないかということになるのでありますけれども、きょうはせっかくお許しを得てちょっと申し上げておるわけです。そういう意味ですから一つ局長さんも本気で考えてもらいたい。何とか責任がのがれられればいいのじゃないのです。それではほんとうは責任はのがれていません。私はやはりそういう意味で直接今起っておるこれらの問題について、厚生省ともほんとうに話し合って、大前提かどうかしりませんけれども、その大前提の中には生活に値する収入ということが入っておると思います。従ってその大前提にもっと大きなのみを入れなければならぬ。のみを入れて中をえぐり返していただきたい、こういうふうに思うてやまぬわけでありまして、従ってそういう諸問題について、局長さんの今の御答弁では実は私得心しておりません。やはりあれではいけません。本気で一つ言葉と行いをやっていただきたいと思うのです、そうしないとこれはほんとうに大へんでございます。失業者が弱いからまあこんなものは押し込んでおけばよろしいというわけにはいきません。さきにも申しましたような状態が実はあるのです。あれはきわめて簡単なことを申し上げたのですが、掘り下げていきますと大へんだ。私は実はこう思うているのです。近いうちに日本の国民の生活の実態を文書にして、これも政府は金を出してもらいたいのですが、一つ出版して政府もみんなも知らなければならぬのです。これは反対も賛成もないのです。みんながこのことを知ってのんだ上でその対策を講じなければならぬ。こういう施策が今要求されているのじゃないか、そう思いますから、従って近いうちにそういうことでもやってみたい、こう思うのです。  それから立ったたついでですが、PWのことです。これはあなたでは無理かもしれませんが知っている範囲でよろしい、参考的に一つ政府の当局者として、大体これはいつ改定するのか、どういうふうにこれを考えておるかということだけでよろしい、深入った話は別にしますからちょっとこの点だけ一つ
  45. 江下孝

    ○江下説明員 主管は基準局長になりますが、おりませんから、私から改訂するしないという実はお話はできません。ただ失対労務者の賃金関係がございますので、ことしの九月にPWの調査をやりましたので、この結果によってどうするかということが決定されると思っております。
  46. 中原健次

    中原委員 それではそのことは深入りをやめまして、実はこういう政府が出された文書ですが、なかなか上手です。文章、数字をお作りになるのが上手です。これは感謝しております。しかし上手に書いたけれどもやはり問題がある、私はあなたの立場から考えてみても、労働力人口の総数が非常に絶対的にふえております。なぜこの労働力人口がふえたかということを一つ伺っておきたい。
  47. 江下孝

    ○江下説明員 これは御承知の通り、申し上げるまでもないと思いますが、生産年令人口が年々百四十万程度ふえるわけでございます。十四才以上の人口が。そういたしますと結局その中から働かなければならないという人がどうしても百万近くは出て参る、こういうことでございます。
  48. 中原健次

    中原委員 一応そういうことになると思います。そこでもう一つ私は掘り下げてみる必要があると思うことは、生産人口年令でございますが、その生産年令もふえたが、同時に働くことを希望する者がやはりふえた、こういうことですね。そうすると、少くとも働けるようになればもう働きましょうという気がまえにならざるを得なくなった条件、働ける年令に達するならば働かなければならぬと決意するに至った条件です。これはおわかり願えると思うのですが、これは何であるかということです。
  49. 江下孝

    ○江下説明員 ちょっと私質問のあれがわからなかったのですが、働かなければ食っていけないという人間がどのくらいか、こういうことでございますか。これは結局この表でわかりますように、やはり百万近くは働かなくちゃならぬということでふえているんだと思います。
  50. 中原健次

    中原委員 百万人以上のそういう人々がふえた。これはその人の主観のいかんを問わずそうだということなのですか。
  51. 江下孝

    ○江下説明員 この百万人ふえましたのは、とにかく何らかの意味で就業している人でございます。もちろんその就業しておる内容にはいろいろございますが、とにかく何らかの意味で就業しているということでございますから、結局働かなければならないということと同じことだと思いますが、そういうのが百万人ふえるということでございます。
  52. 中原健次

    中原委員 そこでただ働ける年令になったという客観的なことじゃなくて、働かねばならぬと決意するに至ったと私が申し上げたのはそれなのです。決意を持たなければならぬ条件、年令なりその他の諸条件そのものがふえたということでしょう。ただ人口がふえたから働く人がふえた、そういう単純な解釈じゃないと思うのです。もちろん人口がふえたから働く人もふえたと言えると思います。けれどもそれだけじゃなくて、働かなければならぬ年令と条件、これなのです。そのことが大事だと思います。働かなければならぬということを自覚せざるを得ない状況です。これはおわかり願えると思います。違いますか。質問がおかしいですか。働かなければならぬと自覚する条件です。生きるための収入を担当する、もうけを担当する、そのことの自覚です。それが私は内容になっておると思います。それがどんどんふえるのですね。それをも含めた意味での完全失業が割合に減らぬということなのでしょう。割合に減らない。いや下手をしたらふえるでしょう。この統計を見ても、実は三十一年度には百万からの完全失業の数字も出ておるわけですね。ですからやはりこれはふえる可能条件が非常にあるということです。実際は減りはしませんよ。ことにオートメーションじゃ何じゃというようなまことに景気のいいことを言い出したら、逆に失業者の数はふえはせぬかという憂いがあるわけです。ですから失業対策を講じられる場合に、これらの問題についての深い掘り下げの施策、判断、これが要るんじゃないかと思う。今までの機械的な繰り返しじゃないのです。新しい条件が次から次へ成熟しつつある。しかも悲しむべき条件です。国民生活から言えばさらに悲しむべき条件が成熟しつつある。悪い成熟です。はなはだ不幸な成熟。そういう新しい客観条件が違って来つつある。その条件をつかんだ上で失業対策、労働対策といいますか、あるいは社会保障、これは今言ってもしかたがないでしょうが、そういう対策が出てこなければならぬ。だからこれはますますもって力こぶを一そう固めてがんばらなければならぬということになると思います。ただ安易にというとおこられるかしれません。安易じゃないと思います。いそがしいと思いますが、しかし今までの繰り返しなどというような判断はやめるべきときじゃないかと思います。このことについてお聞きしたい。
  53. 江下孝

    ○江下説明員 先生のお話の大部分につきましては、私は大体その通りだと思います。日本の雇用問題は、確かに百万人ふえておりますけれども、先ほど申し上げましたようにふえた内容を見ますと、そう楽観すべきものじゃございません。従って今後におきまして雇用対策というものをもう少し脚光を浴びさせるようにもっていく必要がある。そのためには、大臣の御指示もありまして今実は雇用対策の基本につきまして検討いたしております。現在までのところは、各省各庁で必ずしも雇用問題という点からの施策は行われていない。従ってこういう点を政策としてももう少し重点的に取り上げまして、お話のように今後容易ならぬ雇用事情になると思いますので、これに対処する方策を考えていかねばならぬときがきておると思っております。ただ、具体的にそれじゃ何をするかということでございますが、これは今後私どもできるだけ早く結論出して参りたいと考えております。
  54. 中原健次

    中原委員 局長の人柄はよく知っております。だからあなたの言葉を疑う気持はない。ただ問題は、にもかかわらずそれ以上がんばることを容易ならしめない立場があると思うのです。それは役人の立場です。従って私がこう申し上げておることは、非常に御迷惑かと思うのです。しかし私の申し上げることが役人の立場からすれば迷惑だということになるとすれば、政府というものが国民の政府なのだろうか、それとも国民の一部の政府なのだろうか、こういうことに局長さんなるのですよ。これはほんとうにお考え願いたい。今日の段階はもう一部じゃいけないのです、ほんとうに国民の政府にならねばいかぬのです。そうであるためには少々思い切った政策をずばりと出す。そうするとみんなが政府もそう言い出したのだ、うっかりしてはおれぬぞ、こういう判断が出ると思うのです。これが良識——グッド・センスというものです。そうでしょう。良識でみんながよりよくしていく、この条件の中で本気で取っ組まなければ、政治は国民の怨恨を買う以外に何もないと私は思うのです。こんなこと言わぬでもいいのでしょうが、私はそうなると思うから言うのです。そうなってはいけません。私もいろいろ歩いてみますが、国民はなかなか賢明です。われわれごとき者の判断よりそれはもっと進んでおります。そこでやはり政府ももっと姿をかえてあるいは心がまえをかえて対策を着々と手落ちなく講じていく、そのために国会も忘れぬように国民のそういう良識をつかみながらおのれをどんどんみがき高めていくということになっていきませんと、毎年々々出てくる予算を初めとする諸法律その他のものが何とばかなことを書くものだ、ばかなものを作るものだ、時間を費してと実際こういうように言わざるを得なくなるのです。われわれの箱に入れてある文書は大へんなもので、まことにみごとな文書がたくさんあります。しかし中を見るとみごとじゃない。何だこんなもの風呂の中にくべて燃やしてしまえという気になる。けれども、そんなばかなものが問題なんです。仕方がないからわけのわからぬつまらない問題と取っ組まなければなりません。するとわれわれは前進しない、退歩です。私らは十年ほどいて大分ばかになりました。残念です。やはりわれわれは前進しなければならぬ。そうしなければ社会におくれます。人並みに頭が進みません。これは私のことだけじゃないのです。失礼な言い分で怒る方もあるかもしれませんが、国会議員の方もひょっとしたらそういうようになるのじゃないか。同時に政府の皆さん、政府といえばどうしても局課長を中心とした政府の皆さん、やはりこれは似たことになりはしませんか。政府や国会というものは国民から捨てられたものになってしまう。そんなところには何を頼むかということになる、そうなると日本国家の様相というものは変っていくことになると思う、なるかならないかは今のところはよくわかりませんけれども、一応そういうところに判断をさせられざるを得ない、ですからなるほど政府が苦心して出された政策は、百が百いいとは思わぬけれども、この点はありがたい、こういう感激を国民に与えるものを作っていただきたい、こう思うのです。予算も大体できておるのでしょうから、どうしても考えていただかなければならぬ、もう諸政策の出る前夜ですから、それと同時に後刻同僚から御説明があると思いますが、あすになるでしょうが、年末の手当の問題あるいは官公労の職員の給与の問題、しかもこれはひとりここだけじゃないのです。ここでそのことをきめてもらわぬことには困るのです。実をいいますと政府さえこうじゃないかといわれたのじゃどうにもなりません。ですからそういう意味でここでみごとな企画を作ってもらう。  それからもう一つはさっきから申しますようにせっかく得た手当や特別の収入が千五百円だとあなたがおっしゃったような前提でぽんと切られたのじゃ困るというのです。これはやはり前提に問題があると思う、だからそのいうところの大前提とかいうものも、ほんとうにみなが納得のできる大前提にしてもらいたいのです。それでは千五百円は間違いです。これはとんでもないことです。さっきから申しましたように千五百円だと一日が何ぼになる、ですから私は自分の頭を疑う気になる、ぜんざい一ぱい食べても五十円です。わかりますか。実際そうですよ。ですからぜんざいまで食べようとは失業者はいいません。そんなものです。その次の日に自分が活動する能力を養う、食糧その他の生活の諸条件、これを満たすにあらゆる努力を傾倒されても別に行き過ぎじゃないと私は思うのです。当りまえです。健康で文化的な生活を営むの権利を有すときめた日本国憲法のもとにおける日本国国民です。でありますからそれに対していろいろな問題がありますけれども、一応直面する問題といたしましてはやはりせめてもそれに近づくの努力、これは美しいですな、これは私は尊いと思う、よきことに近づく努力、これは美しいと思う、これをお願いしまして、もう今さらあなたの答弁を求めぬでもいいと思います。いずれまた新しい条件の中で政府の各位のそれぞれの担当者の前で、もう少し発言をお許ししていただきましてお尋ねいたします。きょうは一応これで終ります。
  55. 野澤清人

    野澤委員長代理 ちょっと速記をやめて。     〔速記中止〕
  56. 野澤清人

    野澤委員長代理 速記を始めて下さい。  健康保険に関する問題について調査を進めます。発言の通告がありますので、順次これを許します。滝井義高君。
  57. 滝井義高

    ○滝井委員 実は大蔵省と保険局が来てからやりたいと思いましたが、時間の都合がありますので、医務局長さんに健康保険に関連して国立病院の給食費について少しくお尋ねしてみたいと思います。多分健康保険においては、国立療養所は普通一般の療養所に比べて割引をしておると思うのですが、健康保険におけるその割合の実態というものはどうなっておるのか、これをまず御説明を願いたいと思います。
  58. 小澤龍

    ○小澤政府委員 健康保険に限らず、あらゆる取扱い患者につきまして、二割引をいたしております。
  59. 滝井義高

    ○滝井委員 そうしますと、その二割引というのは入院患者も含めて二割引なのか、おそらく入院患者は別途にさらに引いておるやに聞いておる。たとえば一般診療は普通の病院が百円ならば国立の療養所は八十円なんですね。ところが今度は入院をした場合には、さらに二割のほかに何か引いておるのじゃありませんか。
  60. 小澤龍

    ○小澤政府委員 入院患者については一律平等に二割引しておりますが、なお自費患者等におきまして家計の困難な患者に対しましては、若干減免規定を適用いたしまして、やはり割引をしております。
  61. 滝井義高

    ○滝井委員 その支払い困難な者というのは、現在療養所に入っておる患者というのはほとんど支払い困難な範疇に入る人が多いと思うのですが、どの程度の減免をやっておるのか、そのワクはいろいろあると思いますが、最高どのくらいの減免をやっておるのか。
  62. 小澤龍

    ○小澤政府委員 生活保護法適用の患者が約四〇%、それから社会保険の適用の患者が五五%程度おりますので、純粋の自費患者は五%前後でございます。
  63. 滝井義高

    ○滝井委員 どうもその答弁はちょっと違うのですが、支払い困難な者がどのくらいおるかということでなくて、支払い困難な者については若干割引をしておる、こういうことなのだから、その割引の最高は、まずスタンダードは二割割引をしている、さらに生活困難な者についてはプラス・アルファがついている、そのアルファの最高は幾らかということなんです。
  64. 小澤龍

    ○小澤政府委員 全体で約四・五%の減免になっております。ただ全額免除というのはきわめて例外的に存在いたしまして、それから数十%まで、本人の実力に応じまして各種の段階において減免しております。
  65. 滝井義高

    ○滝井委員 そうしますと、今の御説明では全体として結局二割引で、さらにその上にプラス二割五分引がつく、入院患者については最高四割五分引だ、こういうことですか。
  66. 小澤龍

    ○小澤政府委員 金額といたしまして収入すべき金額全体の約四・五%の減免額になっておるのでございます。
  67. 滝井義高

    ○滝井委員 そういう意味の問い方でなくて、現在一律に国立病院に入院した患者はみな引いておるのですから、従って私なら私がまず非常に生活が困難であるということになれば、初めから二割引かれることは当然だ、さらに生活困難であるがゆえに二割プラスなんぼかここに引かれるわけです、それは大体最高は幾らになるのかということです。
  68. 小澤龍

    ○小澤政府委員 きわめて例外的には全額を免除しております。何人がどれくらい減免されておるかという資料はただいま持ち合せておりませんので、お答えいたしかねます。
  69. 滝井義高

    ○滝井委員 最近医務局で指令を出したことがあるのじゃありませんか。たとえば国立病院以外の公的医療機関が行政管理庁の監査を受けて、そして一点単価十一円五十銭なり十二円五十銭であるべきものが三円とか六円とかいう非常に低費診療をやっておる、しかもその赤字をカバーするために、一般会計の金とかあるいはその企業がもうけた金を病院につぎ込んで赤字を補てんしておる、こういうことはいけないことであるということを行政管理庁が先般指摘をいたしました。それは厚生省もその指摘に関連をして通牒を各国立病院に流したやに聞いておる。たとえば私のところにそういう陳情も来ておる。そこで今までは全免もあるが、生活困難な者についてやはりそこにある程度線を引いておかなければならぬ、従って二割プラスの二割五分、四割五分程度が最高限度だというか、あるいは最高は四割までだ、だから二割プラス二割ですか、そこらあたりだというような、そういう通牒を出したことはありませんか。何かそこに減免の限界というものについてはある程度線を引かなければならぬというような、こういう通達を出したことはないですか。
  70. 小澤龍

    ○小澤政府委員 私が医務局長に就任して以降はさような通牒を出しておりません。就任以前にさような通達を出しているかどうかは取り調べて御返事申し上げたいと思います。
  71. 滝井義高

    ○滝井委員 そうしますと、とにかく特殊な、非常に少数な例として全免をする、しかし原則は二割であって、入院患者の生活困難な者については二割プラス・アルファの減免が行われておるということは、大体これは確認できたのです。そこで食費なのでございますが、健康保険では御存じのように、少くとも入院患者というものは多分三百三十七円五十銭くらいの入院の費用だと思います。その中で大体食費になる分は百三十円くらいが食費になっておるんだと思うのです。これは多分あなたの方から研究費なんかを出している労働科学研究所あたりの調査でも、人間が一月生きていくためには最低やはり四千円は必要だというような結果が出ておると思うのです。国立病院は一体食費を一日幾らでまかなっておるのか、これを一つ説明願いたい。
  72. 小澤龍

    ○小澤政府委員 国立療養所におきましては一日九十六円十銭、国立病院におきましては九十四円十銭の食費であります。
  73. 滝井義高

    ○滝井委員 そうしますと、健康保険の入院の経費というものは、多分給食の材料費として百三十円くらいになっておると思うのです。それを非常に割って支給したりなんかしておると、多分これはそれだけたくさん金を取り過ぎているというわけで、監査にひっかかるわけですね。だからこれは大蔵省と保険局に来てもらうことが必要になってくるのですが、そうすると、国立療養所健康保険の患者が入った場合に、すでに局長さんも御存じのように、昨年以来非常に問題になっておったのはつき添い婦のことです。日本の療養所になぜつき添い婦を必要とするかというと、日本の結核療養所の今までの長い習慣というものは、療養所の食わしてくれる主食と副食だけではどうも足らぬ。だからどこの療養所へ行ってみても、何か小さな台所みたいなものが至るところにできてそこでつき添い婦さんが補食をしてどうにか療養生活をやっておったというのがわれわれ療養所を見てみての現状だったと思うのです。ところが今年の四月以来それはまかりならぬといってぴしゃっと切った。われわれはそれを切るのは残酷だと言ったのですけれども厚生省はお切りになった。ところが今の御説明のように、療養所が九十六円十銭で国立病院が九十四円十銭だというと、これは明らかに健康保険より安いですね。そうするとこれは九十六円十銭とか九十四円十銭というような、健康保険より安いのにしたのは、結局国立療養所が二割とか二割プラス・アルファだけを入院患者については引いておるからそんなに安くするのですか。それとも何か生活保護法との関係があってこんなに安くされておるのか。どういう理由で一般の病院よりか低くされておるのですか。
  74. 小澤龍

    ○小澤政府委員 御指摘の通りに、国立療養所における食費はその他の一般の病院に比べて確かに低いと存じます。ただ私どもは全体の入院料におきまして看護に要する経費、それから食事に要する経費、それぞれを総合してある程度の完全に近いサービスをしなければならぬのが義務でございます。国立療養所におきましては二十九年度の決算におきまして、患者一人当りの支出額が平均で三百九十一円六銭になっております。従いまして全体としてのサービスにおいては他の病院よりはなはだしく劣ってはいないであろうと考えておるのでございます。しかしながら御指摘のごとくに、結核においては特に栄養が重要でございまするがゆえに、患者の栄養を少しでもよくするということについては努力しなければならないと考えましてわれわれ事務当局といたしましても機会あるごとに患者のまかない費用を増額いたしたいと熱望しておるのでございます。しかしながら現下の財政事情にかんがみましてなかなかにわれわれの希望は達成できない。しかしただいま御指摘の通りに、療養所につき添い婦等がおるという最大の理由は、これは患者のまかないのためでありあるいは洗たくのためでございます。そこでこのつき添い婦を廃するに当りまして患者の最も欲求するところのまかないにつきましては、たとい予算が少くとも、実行の上に十分な効果を上げたいと考えましていろいろ対策を講じて今日に至っておる次第でございます。たとえばいかに患者まかない費が多くともそれが完全に摂取されなければ十分な栄養となすことはできないのでございまして、この完全摂取ということを目ざしまして、炊事場におけるところの機械化あるいは効率的な運営ということを考えてやっております。たとえば患者に対する食事にいたしましても二種類あるいは三種類の献立をあらかじめ作りましてそうして患者の望むところを与える、またまかないの材料を購入するに当りましても、よき商人を選びまして良質なものを安く買うということに努力して参ってきておるのでございます。その結果といたしまして従前二割程度の残飯量が今日では一割程度に減少しておるわけでありまして、最も成績のいいところではわずかに五%程度に相なってきております。
  75. 滝井義高

    ○滝井委員 まあ局長さんの御答弁で非常に医務当局が療養所の食事の改善あるいは運営について御努力をせられておるということはよくわかるのです。よくわかるが、御存じの通り、一般の私的な療養所というものは税金を払っておるのです。税金を払っておるところのものが、とにかく百三十円のものを食わしてくれているわけです。ところが税金を払っていない国立療養所、そのかわりおそらく二割安くしているでしょうが、そこが九十六円十銭だとすれば、主食はまあ同じだとこう見ても、副食だけで一方は六十六円ぐらいになるし普通の病院は百円ぐらいだ、そこに約四十円程度の差があるということなんです。これは入った患者にしてみれば、同じ制度のもとでそんなに差があるということになると、これは大へんなことなんです。そこにどうしてそんなに差ができなければならないかという理由がちょっとわれわれにわかりかねる。一方の私的機関というものは税金を払っている、一方はなるほど二割を引いているというならその点においては帳消しです。そうすると、一方は病院の運営費とかあるいは建設費その他みんなわれわれの税金で払っている、片一方は個人が過去に蓄積したものとかあるいは借入金等でやっている、こういうものを比較していきますと、どうもそこに副食費が約四十円も違うということは納得ができない。何かそれだけを減らさなければならぬという明白な理論的根拠があれば、健康保険で入院した患者、生活保護法で入院した患者にしても納得ができる。私は生活保護法で入院した患者については、こういうことも聞いたことがあります。たとえば生活保護法の人が家におるならば、五人家族八千円ちょっとこえる額でよろしいということなんです。ところがその患者が入院したら健康保険と同じようにまかなう、そうすると健康保険では一人三百三十七円五十銭ですから、一人だけで五人分以上のものを食ってしまうじゃないか。だからこれはけしからぬということを大蔵省が言って、生活保護法にメスを加えようとしておるというようなことを聞いたわけなんです。それはちょっと表面的な理論からいえば、なるほど結核患者を入院させずに家に置いて、そうしてわずかの栄養費ぐらいを与えた方が国家財政からいったら得でしょうし、医務当局あるいは公衆衛生当局の立場からいえば、これは大へんなことなんです。そういうものの考え方が、人間の生命というよりか国家財政を上においたような大蔵省の考え方というものが、結局こういうことになって現われておるじゃないかという感じがしてしょうがない。これは保険局と大蔵当局にどうしても来てもらわなければならぬのです。私はどうせ来るまでやります。こういう点まず医務局の立場一つはっきり確立して、私的医療機関と公的な医療機関である療養所というものは同じでなければならない。そうしなければ、われわれの医務行政、あるいは結核行政というものはやっていけませんというあなた方の立場が確立しておらなければ、幾ら保険局や大蔵省を呼んでもこの問題はだめなんです。だから医務局長さんがまず新任早々の第一のヒットとしてこれを打ち出してもらわなければならない。その点あなたの御言明をいただきたいと思うのです。
  76. 小澤龍

    ○小澤政府委員 御指摘のごとく多々ますます弁ずでございまして、結核対策の万全を期するためには少しでも患者に対する医療並びにサービスについて欠くるところがないように努めたいと考えております。従いましてわれわれ事務当局といたしましては、まかない材料費についても心から増額を望んでおるのでございますが、なかなか困難なので、その対策といたしまして、先ほどるる申し上げました通り調理その他の改善によりましてかなり栄養の実効果の引上げに努力して参りつつある。しかしながらなお日本全体の平均ではかなり上ってきておりますけれども、十分効果を上げていないような療養所もございますので、細別に指導して次第にその程度を引き上げていきたいと考えておる次第でございます。
  77. 亀山孝一

    ○亀山委員 関連して。関連質問とまでいきませんけれども、二つばかり質問いたします。実はらい療養所の問題です。らい療養所は政府の御努力でいろいろ整備されておることはまことにけっこうなことでございますが、新しく整備される方に重点を置かれておるためにでき上っておる療養所の補修というか、その方の修繕に対しては手が回らないというか、予算がない。現に長島愛生園のごときは畳がえをせざること十年に近きものが相当ある。大部分が五年以上そのままになっておる。畳だけを例にとってもそうですが、その他の建物を見ましても、一生をあそこに送られるらい患者のことを考えますと、いま少しらい療養所の補修費というものを当局としてはお考えになるべきじゃないかというふうに思うのでありまして三十二年度の予算の要求の際もいろいろ御配慮になったと思いますが、この際一つその点どういうようなお考えか御質問いたします。
  78. 小澤龍

    ○小澤政府委員 御指摘の通りでございますが、私どもにおきましては、やはりらい療養所には重点的に力を入れて参っておるのでございます。しかし何せ施設が多くてかつ古いのでありまして、施設の改修等に思うにまかせない点も多々ございますが、今後一そう努力いたしまして御希望に沿うようにやって参りたいと考えておる次第でございます。
  79. 亀山孝一

    ○亀山委員 区務局長は今のようにあっさり答弁されましたが、実情はほんとうにひどいのです。今畳だけを例にとりましたけれども、壁といい、といといい、また柱といい、行ってみますとほんとうにひどい。医務局長はむろん御存じと思いますけれども、今お話のように、新しく施設を作るということに対しては非常に御配慮になっておるけれども、改修という問題に対しては予算もほんのわずかだと聞いておるのです。これは新しいものを作るだけでなく、今申し上げたようなあのらい患者の方々のおられる療養所ですから、どうか格別の御配慮を願いたい。  それから次にもう一つお伺いしたいのは、不自由者に対する慰安金の問題です。かつては、私が申し上げるまでもなく、あそこに一種の共済会のごときものがありまして、不自由者に対して若干の小づかい、慰安金が出ていた。現在聞きますと、予算面はともかくとして、月に手取り百五十円の小づかいで、あの重症に苦しむ不自由のらい患者の小づかいとして一体やっていけるかどうか。これはほんとうに実情を聞いて私ども涙がこぼれるのであります。今滝井委員からいろいろ結核療養所のお話が出ましたけれども、このらい療養所の慰安金については、今申し上げたように、不自由者、ことにあのらい患者の不自由者なんですから、慰安金に対しては格別のお考えを願わなければいかぬと思うのですが、当局はどういうようにお考えですか。
  80. 小澤龍

    ○小澤政府委員 らい患者の慰安金につきましては、作業の可能な患者には作業の謝礼金としてある程度報酬が出ておりますけれども、作業不能の患者については少な過ぎるように考えております。従いまして私どももこの点特に力を入れまして財政当局と折衝いたしまして、何とか患者の希望もかなえてやりたい、かように考えておる次第でございます。
  81. 亀山孝一

    ○亀山委員 これは医務局長、型通りの答弁ではいけませんよ。これは御案内のように作業し得る者はいろいろと働いて、ある程度収入をもらうけれども、それは限られた予算の範囲内でもらうのですから、予算が多くない。その範囲内でもらった収入を不自由者に分けるのですから、結局その方の働き者がいましても、それは自分でみな使うわけではない。不自由者にみな分けておる。だから今申し上げたように、月百五十円の慰安金をもらう不自由者に対してどのくらい働き得るらい患者が奉仕しておるかわからない。これが健康者であればともかくも、らい患者の人に、同病者であって不自由者に働いて小づかいをやるということはほんとうに気の毒です。これはただ単に努力するというのではなしに、われわれおそらくみんな一致してお願いしたいのだが、何とか慰安金については今の百五十円のようなわずかなことで能事足れりという、努力するということではなしに、今度は何とか一つ実現をお願いしたい。これはさっき滝井委員がおっしゃったようにあなたのヒットとして実現をお願いしたい。超党派で応援してもいいからぜひお願いしたい。
  82. 小澤龍

    ○小澤政府委員 この点かねがね私どもも同感でございます。また患者からも猛烈な要望が出ております。さしあたりわれわれは三百五十円程度にこれを増額していただきたい、かような考えをもちまして折衝中でございますので御了解願いたいと思います。
  83. 亀山孝一

    ○亀山委員 重ねて言いますけれども折衝中だけれども、ほんとうに力を入れてやって下さい。長谷川委員も滝井委員もわれわれもほんとうに応援しますから、何とか先ほど申し上げた二つの点は、ほんとうにお気の毒ならい患者のために、ことに医務当局は——保険局長もおられるが、保険局長は直接関係がないかもしれないけれども、これは厚生当局全体の力で実現方をお願い申します。  これで質問を終ります。
  84. 滝井義高

    ○滝井委員 保険局長がおいでになったので、これは保険局長にお尋ねしますが、実は今国立病院のまかない費の問題を質問しておるのです。そこで保険局長さんに健康保険の入院をした場合の入院費の中における食費は大体幾らなければならぬという御指導をされておるのか、これを一つ説明願いたいのです。入院費用の中の食費は、一般の病院はどの程度でなくちゃならぬか。その食費をたとえば五十円くらいで切り上げてしまっていいかどうか。これはおそらく監査にひっかかってお目玉だろうと思うのです。あなたの方は健康保険の入院費の中における食費は幾らでなくちゃならぬという通達なり御見解をもって御指導されておるのか、その点を御説明願いたい。
  85. 高田正巳

    ○高田政府委員 入院費は結局私ども全部で二十七点でございましたか、完全看護、完全給食等がない場合にはたしかそういう点数であったと思います。これを一応総合的に二十七点ということでお払いをしておるわけでございます。それで中を分析しますれば、十三点と記憶いたしておりますが、十三点程度が食費という勘定で、その二十七点というものは一応基礎計算がしてあるというように私記憶しておりますが、ただいま手元に資料を持っておりませんので、正確にお答えを申し上げにくいことを御了承願いたいと思います。
  86. 滝井義高

    ○滝井委員 十三点程度が食費だ、こういうことで、これは私もそうだと思います。そうしますと、普通の私的な医療機関で十円かけても百二十円、十一円五十銭、十二円五十銭かければもっと多くなるのですが、百三一円以下で普通の病院でまかなっておった、そしてそのピンをはねておったとすれば、大体保険局はどういう処置を今までやってきているのですか。たとえば百円くらいでまかなってしまっておった、こういうようなときにはどういう処置をされておりますか。
  87. 高田正巳

    ○高田政府委員 十三点というものは単に材料費だけの意味ではございませんで、これは食事を供するにいろいろな費用がかかりますから、そういうものも含めての意味でございます。それで私どもの方としましては、そのときどきによりましていろいろ材料費等の高低もございますし、あるいは大量に購入をするというふうなことで、病院病院によっても材料費というようなものを押えますれば、購入値段に相違があるわけでございます。一応大体のカロリー等が満たされておれば、特別にその材料費が安くついているからといって保険の点数を差し引くとか、返納を命じるとか、さような取扱いはいたしておらないと記憶しております。
  88. 滝井義高

    ○滝井委員 そういたしますと、実質的に計算してみてカロリーが満たされておれば、食費は大体十三点程度にしているけれども、それが八点になっても七点になっても一向差しっかえない、こう理解して差しつかえないのですか。
  89. 高田正巳

    ○高田政府委員 食事の内容につきまして非常に詳しく監査をいたすというようなことはあまりやっておらないと私考えておるのでございますが、しかし今先生御指摘のようにだれが見ても非常にまずいものであって、費用も非常にかかっていないということになりますと、これは具体的なケースとしていわゆる社会通念上の判断を加えなければならぬかと思います。しかし特にその点にわれわれが重点を置きまして今監査をやったり何かしているということではございません。
  90. 滝井義高

    ○滝井委員 社会通念上まあ十三点というこの点数と勘案して適当なところならばよろしい、こういうことでございますが、そうしますと東京でも清瀬町の近所はたくさんの療養所がございます。そして清瀬町にあるたくさんの療養所をずっと調べてみますと、私的な、国立を除く療養所は、大がいあの一つの同じ町にあるということで、経済的な条件や何か社会通念としては非常に似ているのです。そこでそれらの病院は全部材料代を百二十五円から百三十円使っているのです。ところが国立療養所になるとそうじゃないですね。今も医務局長さんから御説明いただきましたが、九十六円十銭なんです。そうしますと、主食三十円をちょっとどけますと六十六円になってしまうのですよ。そうしますと、同じ町で社会通念で片一方が副食を百円とし、片一方が六十六円とすると、そこに約四十円違うのですよ。社会通念上四十円違うということになると、国立療養所は給食費で搾取していると言われても仕方がない。国立療養所はなるほど税金はかかりません。しかし税金がかからないかわりに二割引いているそうです。しかし一般の私的な機関というものは税金がかかっている。一方は九十六円十銭でやる、一方は百三十円とか百二十五円、こういうことになると、入った結核患者にとっては大へんなことです。しかも昨年あなたの方と医務局とは保険経済その他を勘案して補食を全部どけてしまった。そして今まで補食をやっておった患者さんはそれができなくなった。従って療養所だけの御飯で——私はきょう御飯を持ってきた、昼食をもらってきたのです。一つ見てもらったらいいと思ってここに持ってきております。全部補食はやれないのですから、これで患者は早くなおろうと努力しなければならない。そうしますと私的な医療機関よりか約四十円だけ国立病院で搾取が行われているということなんです。搾取が行われていなければ、何かそこに予算が削られてどこかへ回されているということです。それでしかも、今医務局長さんの御答弁では、患者一人当り三百九十一円六銭ということは他の病院と同じだということです。そうしますと、他の病院と総ワクは同じだけれども食費だけが少いとすれば、食費を他のものに回しているということになる。一体何に回しているかということです。税金も要らない、運営費も国が出す、修繕費も営繕費も国が全部出しておる国立療養所で、なけなしの患者の財布の中からまた補食をしなければならぬような貧弱なものを食わしておるというこの実態というものは、がまんができない、しかもあなた方はその患者から、今度は三十円取ろうとしている。今度出るであろう健康保険においては三十円予定している。こういうことでは三十円は取られない。三十円を取ったならば、今度その三十円を九十六円十銭プラス三十円として、百二十六円十銭で食わしてくれるかどうかということにも問題がある。これはいずれ出たら質問しますが、三十円取ろうとしている。他の病院よりか四十円も安い飯を食わせながら、その上にまた入院した患者さんから三十円取ろうとしている。こういう厚生行政は全くなっていないですよ。厚生行政なき貧乏国日本と言うけれども、全くその通りです。こういう行政は許されないですよ。こういうことは保険局としては、健康保険なり——生活保護は問題はあるとして、生活保護で入院した患者は社会局に尋ねなければならぬが、健康保険で入院した患者は、普通の病院と同じように、国立病院においても百三十円でやるべしという指令を出してもらわなければならぬと思うのですがね。それが出せないとするならば監査をしてもらって、一つ国立病院の医者あるいは経営者を全部首にしてもらわなければいかぬ。これはけしからぬ話だ。四十円を搾取しなければならぬという理論的根拠はどこにもないと思う。この点保険局としてはどういう工合に今後百三十円にしていくつもりなのか。もしあなたが百三十円でできないということになれば、これは私的医療機関との均衡を失して、大問題です。その点一つ明白に御答弁願いたい。
  91. 高田正巳

    ○高田政府委員 十三点というのは、先ほどお話を申し上げましたように、材料費だけではございません。これにはいろいろ人件費もあるいは燃料費、光熱水料、その他のものはみな含まっておるわけでございます。それでしかしその材料費の面で国立療養所と民間の療養所と、片一方が百二、三十円使っておるのに、片一方で九十六円程度しか使わない、おかしいではないかという仰せでございますが、私はこれを具体的にその療養所のことを招致いたしておりませんが、完全給食という取扱いをいたしておりますと三点の加算をいたしております。おそらく民間の療養所はその取扱いになっておることと私は想像いたしております。ただ国立療養所の方は、今日完全給食という建前で運営されておりますけれども、保険の方では三点の加算をいたしておりません。そういうこともあるいはあるのではないかと存じますけれども、私ども保険の立場といたしましては、国立療養所におきましてもできるだけいい飯を食わしてもらいたい、これは保険の立場でも先生の御趣旨のようなことを希望はいたしておる次第でございます。
  92. 滝井義高

    ○滝井委員 医務局長さんにお尋ねしますが、今の国立療養所は完全給食の三点ももらえぬような貧弱な施設ですか。
  93. 小澤龍

    ○小澤政府委員 国立療養所は結核対策の有力な一機関たる趣旨をもちまして現在おしなべて二割割引でいたしております建前上、完全給食、完全看護等について加算した点数はもらわない方針をとっておるのでございます。
  94. 滝井義高

    ○滝井委員 もらわない方針をとっているということは、あなた方政府が勝手にやっておることであって、入ってくる患者は権利として少くとも十三点相当額、しかも完全給食ならばプラス三点、十六点相当額のものを食わしてもらわなければならぬ。これは健康保険の患者は当然だ。それをあなたの方は一方的に、二割引にしているから請求しないというのは、あなたの方の勝手だ、患者は当然それを受ける権利がある。そうすると、今まであなた方は患者から搾取しておった。搾取しておったものは患者に返さなければならぬ。それは搾取しておりませんか。搾取しておったということになると思うのです。
  95. 小澤龍

    ○小澤政府委員 先ほど私から御説明申し上げました通りに、まかない費については安くとも、私どもの給食努力によりまして、患者に与えるところの栄養はかなり上って参ったように存じております。もちろんある二食について言う場合においては、これは不十分でありましても、朝昼晩三食を通じ、あるいは一週間を通じて見た場合においては、大体希望の線に近い給食をしておるのではないか。そこで本年二月におきまして国立療養所における平均の栄養はどの程度かと申しますと、熱量におきまして二千三百五十五カロリーで、基準に対しまして五カロリー少いのでございます。蛋白は平均して八十六・八グラムでありまして、基準に対しまして一・八グラムオーバーしております。脂肪は基準の五十グラムに比べましてやや落ちておりますが、これが三十九・二グラム、先ほど申し上げましたように、われわれはさらに給食に対する努力を継続いたしまして、この程度をさらにさらに引き上げて参る考えでおるのでございます。
  96. 滝井義高

    ○滝井委員 努力をしてもらうことはさいぜんから私は感謝をしておるのです。問題は健康保険の患者にとにかく百三十円のものを食わせなければならぬのを現実に九十六円十銭のものしか食わしていないということです。だから百三十円のものを食わせるようにしてもらえるかどうか。努力をしてもらっていることに対しては感謝しています。しかし現実に同じ清瀬町の普通の病院では百三十円のものを食わしておる。ここに明らかに社会通念からいって四十円の差があれば、清瀬町の他の私的医療機関のものと国立病院のものを持ってきて比べたら、国立病院の悪いことはきまっているのです。同じ地域で経済もみな同じな環境の中にある病院ですよ。ここに献立も全部もらってきておる、これは結核患者の昼食です。照り焼きとゴマあえとシソの実づけというのが一緒についている。見てもらったらよい。これではわれわれは補食をせざるを得ないと患者さんがみな陳情に来ておる。しかも、健康保険では赤字だというが、その分のお金を払っておるはずなんです。完全看護、完全給食ということでないとしても、国が二割引いておるというが、二割を国の政策で引いておる。しかし実質的な建前は、二割引いたものを二割落しておったら二割引いておることにならないじゃありませんか。二割引きますと羊頭を掲げて狗肉を売っているというのが国立病院の実態です。保険当局は二割引いておるし、完全看護、完全給食といってもちょっと工合が悪いのでというような格好で三点も加算していない。こういうことになれば、国立病院は一般の病院の標準にはなりませんよ。不良医療機関としてこれを指摘しなければならぬということになる。いわゆる監査、審査の対象になる。全国六万の病院をやる前に、国立病院の監査、審査一つやってもらわなければならぬ、こういうことになってしまう。この点は、大蔵当局もおいでいただいておりますが、来年度は医務局としては、他の医療機関と同じように、健康保険法の精神に沿うて百三十円の要求ができるかどうか。もう予算編成期が来ておりますから、間に合わぬといけませんので、これは当然要求しなければならない。それが要求できないというならば、国立病院はインチキをやっておる。われわれは会計検査院を呼んで今からやりますよ。できますか。局長さん、どうですか。
  97. 小澤龍

    ○小澤政府委員 先ほどからるる申し上げました通り、必ずしも金額だけではその効果を評価できないと存じます。私どもはかりに金額は少くても質的に向上をはかっておる。また入院料については、単に患者の食事のみならず、その他の看護サービス等もございますので、これを具体化いたしまして全般的な効果をあげるように努力していきたいと考えておるのであります。なお将来余裕ができまして、まかない材料費を値上げする時期に達したならば、積極的にこれを増額していくように努力したい、かように考えておる次第でございます。
  98. 滝井義高

    ○滝井委員 そういう理論が成り立つとすれば、それならば、私的医療機関は赤字であるから、健康保険の患者に注射薬を悪いのをやってもいいのですか。あなたの理論ならそうなりますよ。私的医療機関は健康保険において赤字である、だから十円の注射を打たなければならぬけれども一つ九円にしましょう、あるいは飯代は百三十円になっておるけれども、おれの方は赤字だから、つけものとみそ汁くらいにしてもらいましょう、それでいいのですか。私的医療機関はそういうことをやってもいいのですか。国立病院は経理がうまくいかぬ、赤字で財政上困っているから搾取してもいいということになれば、ほかの機関でもそうやっていいということになりますよ。
  99. 小澤龍

    ○小澤政府委員 私どもは、国立療養所は患者から搾取しておると考えておらないのでございます。国立療養所全体の年間支出に対しまして、歳入は大体七〇%程度でございますので、約三割程度は、むしろ国費でもって入院患者にサービスしておることになっておるのではないかと考えておるのでございます。
  100. 滝井義高

    ○滝井委員 国立病院全般の運営のことを言うと、今私が言ったようなことになる。健康保険から二割まけるというのは、勝手にまけてもらっているのですから、二割はまけてもらわないということを建前として考えればよい。そうして完全看護、完全給食になれば、あなた方は少くとも十六点以上のものを患者にあげなければならぬ。それを安くしたら安くした分だけ十六点プラス・アルファとしてつけ加えてやることが国立病院の建前なのです。ところが、おれの方はほかの方でいろいろサービスしておるから食費を下げることはあり得ない。二千三百五十五カロリーやっておるなら、さらに節約して浮いたら二千三百五十五カロリーにプラス何%かしてやるのが親心ですよ。ところが、おれの方は二千三百五十五カロリーやっておるからもうそれ以上やる必要はないといって、食費をだんだん削って、ほかの方に回すということは論理が合わないのです。これはそれ以上言いませんが、こういう実態であるということがはっきりしてきた。それで他の病院にこういうことが波及したら大問題ですよ。経理が悪いから私の方はカロリーだけやっておればよい——カロリーなんというものは、一々科学的に全国の私的医療機関を調べることは大へんです。もし、今のように一方的におれの病院はカロリーを二千三百五十五カロリーやっておるから十三点相当額でございます、だからこれは厚生省文句をいう必要はない、こう言われたら大へんですよ。従って保険局としては、国立病院の完全看護、完全給食の姿があるならば——国立病院にその姿がないということになれば、ほかの病院でもそれがないということが多くなってきますよ。あるのだったら十三点の要求をしてもらわなければならぬ。あなたの方で要求しないとすれば、あなたの方の職務怠慢ですよ。十三点のお金を払っておるのですから、払っておるものを九十六円十銭しか使っていないということは明らかに健康保険をごまかしておる。保険局の立場から言えばそういうことになるでしょう。医務局の立場から言えば搾取しておるということになる。ですから保険局としては九十六円十銭ではまかりならぬ、健康保険は完全看護、完全給食では十六点だから、少くともそれに近いまかないをしてくれという要求はできるでしょう。その点はどうですか。
  101. 高田正巳

    ○高田政府委員 私どうも滝井先生の仰せになることがわかったようでよく了解できないのですが、私の方では十三点の二割引で金を払っておるわけであります。それより以下のことをやっているなら、これはけしからぬと言えるわけだと思うのですが、その程度のことをやっておるのならば、私の方から不正な診療であるとか不適当な診療であるとかいうことは、それを言えという仰せでございますが、金を払う方の立場からはちょっとそれは言いにくいと思います。ただ、国立療養所に保険の患者を扱ってもらう際に、なるべくうまいものを食わして丁寧に扱ってもらいたいということは、私ども立場として大いに国立療養所の方にも要望いたしたいと思うのでございますが、たとえば今のように、これだけしか使ってないから、払う立場から、これだけ返せ、あるいは十六点にまでしろということは、ちょっとこれは言いにくいのではないかと思うのでございますが、いかがなものでございましょう。
  102. 滝井義高

    ○滝井委員 そうしますと、健康保険国立療養所では十三点が二・六点だけ低いということが建前ということになれば、これは二割引じゃないじゃないですか。結局十三点マイナス二・六点で健康保険は国立病院でやらしている、こういうことであって、二割引なんというのは掲げぬ方がいい。患者に、国立病院に入った者は二割引いておりますという旗を掲げておるけれども、実質上は十三点から二・六点引いたもので食わしておるというなら二割引じゃない。そうでしょう。だから国立病院の点数というものは全部一般の点数とは変えなければならぬ。食費にしてもそうなんです。二割引じゃない。それはおかしいのです 国立病院というものは二割を引いてくれて八割になっても、八割というものは一般病院の十割に相当するものをやってくれるとわれわれは今まで信頼してこそ、国立病院はわれわれになくてはならぬものだということを言ってきた。ところが国立病院は実際は二割引じゃない。それは八割のものしか食わしていない、八割しか治療をやってくれないということになれば、国立病院では一般の病院の八割が普通のものになってしまう。これはおかしい。そうすると、今医務局長が私に御説明下さいました三百九十六円十銭、これはほかの病院と全体として同じでございますということは、それ以外の他の経費がほかの病院よりかうんとかかっておる、理論的にいうとこういうことになる。そういうことなんですか、これは。
  103. 高田正巳

    ○高田政府委員 国立療養所に二割引の経費で保険診療をお願いしているということは、料金としては二割引いてもらっておるけれども、中で行われる治療なり処遇なりは一般の医療の水準を維持しておるということが建前でございます。ただ先生はその材料費をそれだけ使っているかどうかということで御論議になっておるようでございますが、先ほど来医務局長がお答えをしておりますように、かりに材料費の金額が下っておりましても、その処遇あるいは中身というものが栄養的に見て一般の水準に達しておれば、私はそういう処遇が行われておるということに相なるものかと存じます。
  104. 滝井義高

    ○滝井委員 それで、同じ清瀬なら清瀬の町の中で、社会通念的に考えまして非常によく似た環境の中に一般病院と国立病院がある。そこで同じように大量に仕入れてきて、九十六円十銭のものしか食わせない。一方は百三十円のものを食わしているということになれば、何ぼ抗弁したって、百三十円の方がいいことはきまっている。あと長谷川先生から何かあるそうですから私はこれ以上申しませんが、医務局で一つ清瀬なら清瀬の国立療養所と私的医療機関の献立と調理の実質を調べてきて下さい。そうしてあなたの方がほかのものより劣らない、まさっている、こういうことならわれわれ文句を言いません。しかしもしそれが落ちておるということになれば、これは搾取しておることなんです。国立病院は羊頭を掲げて狗肉を売っておるということになる。だからこれはいずれ次の機会に譲るが、この点については一つ急速に調べてもらって、そうして実態がそういう実態であるならば、医務局長さん、一つ百三十円のまかないをしてもらって、足りなければそれを大蔵省に要求してもらわなければならぬ。うしろで村上さんもよくお聞き願っておることですから実態はおわかりだと思う。そうしていただけますね。
  105. 小澤龍

    ○小澤政府委員 先ほども申しましたけれども、患者に対する治療並びにサービスというものは、単にまかない材料費のみをもって見ることは困難だと存じます。従いまして、全体として患者に対してサービスが悪いかどうかということになりますると、国立療養所におきましては全体として落ちないようにかなり努めておるつもりでございます。各病院におきましては、病院々々の特徴がありまして、食事に対して力を入れておるところ、看護に対して力を入れておるところ、その他いろいろのサービス面における特徴がございますので、その特徴に応じて、まかない材料その他について一つ一つを比較した場合に抗議が出るのではないかと考えております。
  106. 滝井義高

    ○滝井委員 局長さん、健康保険ではその理論は許されないのです。少くとも何は何点何は何点ときまっておるのですからね。各技術やら食費単位できまっておるのですから。食費は十三点ときまっておる。だから十三点食わしておかなければ健康保険法違反ですよ。これは明らかです。それをあなたの方は全体としてはよろしいのだということになりますれば、ほかの私的の医療機関も全体として経費をもらっておる通りにやっておったらいいか、こういうことになってしまう。それは健康保険では許されない。だから今の食費なら食費について手術料なら手術料について、国立病院はやはり他の模範とならなければならぬというのがわれわれの主張なんです。その点は私これ以上申しませんから、一つ食費について他の病院と十分比較して下さい。そしてあさってまでしか会期がありませんから、あした一時から委員会をやります。だれか療養所の者をやって一、二調べたらすぐわかると思う。あした午後もう一ぺんこの問題について御質問申し上げますが、これは健康保険関係がある、国立療養所は三十円とるのですから。四十円も搾取されておってその上に三十円とられたら大へんです。患者は七十円搾取されることになる。だからこれは今後の大問題になる。その点を一つぜひ急速にお調べになってきょうはこれ以上申しません、留保しておきますから、お願いしておきます。
  107. 長谷川保

    長谷川(保)委員 今の話に私も関連しておるわけです。今医務局長さんのお話でも、基準から足らないものを食わしておるということです。脂肪は三十九・二グラムという話、五十グラムということだから、約十一グラム足らないということになるわけです。カロリーもわずかながら足りない。蛋白が一・八グラムばかり多いということでありますけれども、一体こういうような不完全な食事をもって国立病院、療養所が入院患者を遇するということ、そういう方針を国はとっていいものであるか。国立病院の経営の根本の考え方としては、こういうような考え方で国立病院あるいは国立療養所は経営していいのかどうか。それでよろしいと考えてやっていらっしゃるのであるか。私、国立療養所はモデル・ケースでなければならぬという立場でやるべきだと思うのであります。今足りないようなお話でございましたが、厚生省がそういうような経営をしていいとお考えになっておるかどうか、まず根本の考え方を聞きたい。
  108. 小澤龍

    ○小澤政府委員 もちろんわれわれは現状において満足しているわけじゃございません。国立病院全体といたしましては約三割を一般会計からの繰り入れによって経営しているような状態でございまするので、まずわれわれは内部におけるわれわれの努力を経営の効率化ということに傾注いたしましてそれを高度化する、しかもさらに財政的余裕が見出されるならば必要な部分の相当額の予算を増額していきたい、かような考え方をしておるのでございます。
  109. 長谷川保

    長谷川(保)委員 経営を合理化するのは大いにやっていただきたい。これは大いに、やっていただくのはいいでしょう。ただ問題は、現実こういう基準の足りないものをもって国民を遇していくということが国立療養所経営の方針であるかどうか、またそれでよいと考えているのかどうか、それを伺いたいのです。この問題を追及して参りますと、今独立採算制とかあるいはさらに点数単価の問題とかいうものにみんなひっかかってくるわけです。それを一切厚生省は合理的に考えてやっているのでなければならないと思うが、不合理だというものをなお強行しているなら大へんなことであります。こういうようなことを今やっている。だから今後合理化するというのは幾らでも合理化してよりよくしてもらいたいのでありますけれども、今までやってきたこういう方針を国がやっている病院でやっていいという立場でやっていらっしゃるのか、いやこれではいけないのだという立場でやっていらっしゃるのか、今のお話を承わっておりますとこれから合理化してだんだんよくしていくのだというお話でありますから、多分いけないのだというお考えだろうと思いますけれども、今日までやっているということを思いますと、こういう立場を一応よしとしてやってきたのだろうと思います。国家が経営する病院がそれでよろしいのであるか、国家が経営する以上国民の権利というものも十分満たすという立場でやっていかなければならぬのでありますけれども、こういう方針でやってこられたことを一体何と考えていらっしゃるのか、どうも私ども国民から見ると無責任きわまるものであると考えるのであります。この点をもう一度伺いたい。これから改善することは大いに改善してもらいたい。しかし今日やっていることがいいか悪いか、その点を伺いたい。
  110. 小澤龍

    ○小澤政府委員 ただいま申し上げました通りに今日の現状をもってわれわれがよしとしているわけじゃございません。しかしながら第一にわれわれがなすべきことは、一般会計から相当多額の繰り入れを受けておる現状におきましては、まずもって自分の仕事の効率を高めるという一点に集約して努力すべきだと考えておるのでございます。
  111. 長谷川保

    長谷川(保)委員 端的に言えば今日予算がないのだというところでやっていらっしゃるということはわかりますよ。そのことはわかりますけれども、予算がないからといって、国立療養所が提供しますところの食事の問題を今問題にしているわけでありますけれども——その他の問題でも同様でありますけれども、そういう基準に足らないものを差し上げているということでいいかどうか、その方針がいいのか悪いのか、私は端的にそれだけ伺いたい。
  112. 小澤龍

    ○小澤政府委員 先ほど国立療養所で提供しております栄養の平均値を申し上げました。これは最近は月々相当早い速度でもって改善されております。近く基準価以上のものを現状においても提供し得る自信と見込みを持っております。
  113. 長谷川保

    長谷川(保)委員 だから私は前から独立採算制というのもずいぶん問題だ、ことにこういうものをやっていく基礎になっていくのに点数単価の問題がある、点数単価の問題が合理化されておらないからいけないのだということをわれわれ社会党としては強く当局に要望して参ったわけです。それで、大蔵省の方もお見えになっておりますからよく聞いていただきたいのですが、こういうように国立病院が基準に合わないものをやっている、しかも私どもが昨年やかましく申したのに、それをどうやら埋めておりますつき添い婦というものをとうとうとってしまっておる。こうなって参りますと何が起ってくるかといえば、結局家庭が金がある者はどうやらよろしい、あるいは患者が金がある余裕がある者はいい、それは何としてでも補食できましょうけれども、補食のできない階級の者がおりました場合にはみすみす基準に足らないもので、極端にいえば飢え死にさせられるという状況がそこに起ってきているわけです。そういうことになりますね。基準が足らないのだから少くとも回復はしないという状況だ、回復をする力が食料によって得られないという者がここに出てきているわけです。もっと突っ込んでいえば、人権がここで無視されているという事件が起ってきているわけです。それだから私は今単にここで厚生当局を責めるのではありません。大蔵省にもここで御反省を願わなければならぬし、こういう国立病院の経営自体というものについても、今のような三〇%足りないというようなことにつきましてもメスを入れて考えなければなりません。同時にまたそういう現状においてそのしわ寄せを大事な患者の食事が基準に足りないというところに持っていってしまう、これが民間の病院ならまだしもです、けれども国がやっている病院がこういうところに持っていってしまっている事実は、実にこれは人権問題です。それだから厚生省が言うようにもっと金を出してもらいたい、あるいは点数単価の問題を改訂してくれということを大蔵省は虚心たんかいに考えてもらいたいと思う。現実今日国立病院に入っておりまする何万かの患者はこういう扱いを受けている。金のある者、余裕のある者は補食ができましょうが、ここで補食する人間をとってしまったあるいは生活保護の方は生活保護の方でどんどん引き締めていってしまう、だから結局回復ができない姿がそこに残されてくる、これが国立病院ということになればゆゆしい問題です。私立の病院ならまだしも、国立病院でやっているのがこういうことだということはとんでもないことだ。それが厚生省の非常な御努力によって近く改善されるという見込みであるといっても、近く改善されるという見込みであるというようなことは許されませんよ。これは直ちに明日から改善なさい、こんなばかな話は私はないと思います。この点を早急に考え直してもらいたい。国がやっている病院がそんなべらぼうな話はありません、それで私立のものに対しましては実にきびしい監査をしている。私もこの間地方をずっと回って参りましたが、ある病院へ行ったら監査を受けて泣いておった、その病院かつかまったのは食事の問題で、一生懸命でやっているのだけれどもどうもできないという、小さい病院ですからね。これは点数単価の問題まで入っていかなければならぬので当然きょうの問題になりませんから、私は明日あるいは通常国会に譲りますけれども、これは相当大きな規模でなおこうなんですよ。これが小さな二十人というような病院でありますると、とうていこのようなものでやれないことは明らかなのです。その明らかなものを押しつけている、やむを得ずうちから米を持ってこなければならぬという、そういう点をつかまえてひどく監査して病院をしかり飛ばしている。病院ではほんとうに泣いておる、これはいけません。国立病院がともかくも一生懸命で合理化して、国が金を出して設備を作り一切のことをやってそれでなお三〇%足りない、そればかりでなくその中でなお患者の食事さえも基準に合わないものをくれている、こういうようなものを大蔵省が押しつけてはいけません。病気というものは一番人間の困る問題であります、根本の問題でありますから、大蔵省は考え直してこういう問題について厚生省にもっと予算をやってもらいたい。これは厚生省のあと押しをするようでありますけれども、ぜひ大蔵省は考えてもらいたい。  もう一つだけ伺っておきたいのですが、もうおそいから明日に譲りましょう。
  114. 滝井義高

    ○滝井委員 今の国立病院のまかない費の問題については、聞くところによりますとあす政府健康保険法を提案して説明するとかいうようなことでありますから、おそらく入院料三十円とからまってきます。四十円を徴収されているその上にまた三十円も取られては大へんですから、これは大問題になると思う。そこでこのことはあす以降といたしまして、きょうお尋ねいたしたいのは健康保険の支払い遅延の問題です。十一月十日当委員会で大臣にいろいろ支払い遅延の状態をお尋ねいたしましたところ、現在三十七府県にわたって、翌々月までに支払いを完了しなければならないものが、一週間から三週間程度支払い遅延があるという御説明があった。一体この支払い遅延の理由は何かということです。これを一つ説明願いたいと思います。
  115. 高田正巳

    ○高田政府委員 一口に申し上げれば金がないからということです。
  116. 滝井義高

    ○滝井委員 一口にいえば金がないからということでございます。一体なぜ金がないかということです。保険料はどんどん集まっているはずだし、病人の受診率は減っているはずだし、金のない理由はない。局長さんも御存じの通り健康保険の一カ月の必要な金は療養給付費、事務費全部ひっくるめても四十九億しか要りません。支払い遅延の声はすでに九月ごろから起っていた。そうしてだんだんそれが激しくなって十月、十一月となりますと今言ったように三週間おくれてきた。年度の半ばごろから赤字がそんなに出るはずはない。従ってもし遅延があるとすれば、これはあなた方の方の保険料徴収が怠慢であったということにもなりかねない。金がないと言うその金がどうしてないのか理由を御説明願いたい。
  117. 高田正巳

    ○高田政府委員 収入の方は御存じのようにずっと努力はいたしておりましたけれども、年末とか年度末にたくさん収入が入ってくるのでございます。支払いの方は月々大体きまった支払いをやっていくということになりまするので、従って資金繰りといたしましては七月分あたりから円滑を欠いてきたということに一口に申せばなるかと思います。
  118. 滝井義高

    ○滝井委員 昨年まで支払い遅延は起らなかったのです。昨年あたりよりも今年の方がもっと日本の経済は安定している。政府が立てた経済五カ年計画というのは、五カ年の後に到達する目標に二年で到達している。そういう状態の中で健康保険だけが支払い遅延になるという理由はどうしても出てこない。だからその具体的な理由をきょうはどうしても私は究明しておかなければならぬ。去年まで支払い遅延は起らなかったのですから、金がないというその理由をもっと明白にしてもらいたい。しかも去年の決算は四億二千万円の黒字であることがはっきりしている。従って今の支払いがどうしておくれているのか。金がないだけでは済まされぬ。金のない理由をもっと具体的に明白にしてもらわなければならぬ。
  119. 高田正巳

    ○高田政府委員 昨年は全然なくて本年が非常におくれているようなお話がございましたが、昨年もこの翌々月の末までに支払うべきものが若干おくれていることもあるのでございます。その意味におきましては、本年のおくれ方はそうひどく昨年と格段違いにおくれているというわけではございません。むしろ本年の状況よりさらに支払いがおくれたことも二十九年度以前におきましてはあったわけでございまして、特別に本年非常に急激に悪くなったという状況ではございません。  それから金のない事情をもう少し詳しく話せというお話でございますが、それは先ほども申し上げましたように、経済界はもちろん若干の好転をいたしておりますけれども、何と申しましても、納期内に入ってくるのは保険料のうちでもわずかでございまして、どうしても年末なり年度末にしわ寄せをされるということになって参りますので、従いましてそこで運転資金に困るという問題が起るわけでございます。本年の支払い遅延の問題も原因はそこにあるわけでございます。
  120. 滝井義高

    ○滝井委員 経済がよくなっている。そうして昨年よりも今年の支払いの遅延がはなはだしくなっていることは事実なんです。それはどうしてかと医療機関は昨年に比べて非常に支払い遅延の問題について騒いでいるのです。しかしそういうことは抜きにして、しからばちょっと局長にお尋ねしたいのは十月分の支払いが十二月の三十一日までに完了できる自信があるかということです。
  121. 高田正巳

    ○高田政府委員 ぜひともさようにいたしたい所存でございます。
  122. 滝井義高

    ○滝井委員 局長も私から言われるまでもなく、基金法の十三条には少くとも「各保険者から、毎月、その保険者が過去三箇月において最高額の費用を要した月の診療報酬のおおむね一箇月半分に相当する金額の委託を受けること。」とあって、おおむね一カ月半分に相当する金額の委託を基金は受けることになっているわけですが、一体この委託を一カ月半分政府はまじめにやっているのかどうか、政府管掌の健康保険はきちんきちんとやっているかどうか、これを一つ説明願いたい。
  123. 高田正巳

    ○高田政府委員 政府は国家の金ということでございますので、預託金というものはいたしておりません。それにかわる概算払いということをいたし得る立場にございますので、預託金の制度は政府管掌には設定をされておりません。
  124. 滝井義高

    ○滝井委員 それはこの法律でやらなくてもいいという規定がどこかにあるのですか。
  125. 高田正巳

    ○高田政府委員 基金法の第十三条はごらんの通り預託することを義務づける趣旨の規定ではございませんで、基金がそういうふうなことができるという趣旨の規定になろうかと思います。従いまして先ほども申し上げましたように政府の場合、預託金というようなことを行いますには、会計法上の問題もございますし、それらの観点をもあわせ考えまして、さらに別に概算払いという方法もあるわけでございますから、さような方法でこの趣旨を達成し得る可能性があるわけでございます。さようなわけ合いで政府管掌は預託金をいたしておりません。
  126. 滝井義高

    ○滝井委員 基金法の一条には、明らかに政府からも基金は委託を受けることができることになっているじゃありませんか。ただあなた方がそれをやっていないということだけで、基金法の一条からいえば、「政府若しくは」——こうなっているのですから、当然一カ月半分は受けることができるわけでしょう。
  127. 高田正巳

    ○高田政府委員 基金法の一条は、基金のいろいろな目的と申しますか、基金の仕事の総括的なことを書いた規定でございます。第十三条の方は、これは今の預託金のことをここに明確に書いてあるわけでございます。従ってこの規定から申せば、政府もやって悪いということはございません。ただ政府がやります場合は、先ほど申し上げましたように、政府が会計法等に縛られるわけでありますから、従ってそれらの関係もあって今日法律的にもむずかしいことであるし、さらに実際問題としましては概算払いという制度が政府の方の関係にはございまするので、それによって目的を達成し得る、こういうことで、今日預託金を政府管掌においてはいたしておらない、こういうわけ合いでございます。
  128. 滝井義高

    ○滝井委員 そうしますと、支払い遅延の一番大きな原因になっておるところは健康保険組合なのか、それとも政府管掌の健康保険の方なのか、どちらが大きな原因になっておるのですか。
  129. 高田正巳

    ○高田政府委員 それは過去におきましては別の例がございましたが、今日の支払い遅延の原因は政府管掌でございます。
  130. 滝井義高

    ○滝井委員 ここでもまたやはり政府が他のものには一カ月半分を出すようになかなか厳重にいうけれども、自分の方は概算払いができます、あるいは会計法上の理由がありますといってやらないのですね。これは日本の政府の実体なんですよ。他のものには百三十円の飯を食わせなければならぬとやかましく言いながらも、自分のところは九十六円でインチキをやっておるし、基金法というものを作って、支払いを迅速にいたしますといった政府が、他のものには一カ月半分はやらなければいかぬ、こういいながらも、おれの方は概算払いがあるのだ、政府は信用しておいてよろしい、こういいながら支払い遅延の張本人は政府だ、こういうことなんですね。これは日本の保守党の政府の実体といってはちょっと語弊があるが、政治の実体なんです。こういう点は一体支払いの遅延は、税金を取る場合には加算金を取りますよ。世の中にこういうような法律で他のものはやらなければならぬと拘束しながら、政府だけはよろしいというような法は許されぬと思うのですよ。しかも基金法の五章の監督は厚生大臣が監督するのですよ。今日は私は厚生大臣を要求しておったのですが、黄変米やら健康保険で決算委員会でつるし上げられて、気分が悪いといって帰ったそうですが、一体大臣は自分をどういう工合に監督するかということなんです。これは大臣にかわって保険局長監督することになっておるが、当然支払いが遅延したならば、大臣はその監督として処置をとらなければならぬ。一体どういう処置をおとりになりますか。これは今から大臣が大臣に対してどういう処置をおとりになりますか。
  131. 高田正巳

    ○高田政府委員 今日の場合におきましては、政府管掌が財政状態が悪いために、支払い遅延の原因になっておるわけでございますが、いつもこういうわけではございませんので、この政府管掌の財政状態がいい時分には、この概算払いというものが他の保険の方の資金をカバーいたしまして、支払いの促進ということになった時代もあるのであります。従いまして常にそういうわけではございません。ただ遺憾ながら今日はさようなことに相なっておるわけであります。  それから先ほどの預託金でございますが、これはあたかも政府だけが義務違反をやっているように仰せであったように私聞き取ったのでありますが、先ほど申し上げましたように、十三条の規定はこういうことができるということでございまして、預託金は、保険者の方が実際に縛られますのは、それぞれの保険者と基金が契約を結んで、それぞれ預託金をするということに相なっておるわけであります。従いましてある保険者がその契約を結んでおきながら預託金をいたさなかった場合には、そういういわゆる法律違反という問題が起るわけではございませんで、契約違反という問題が起るわけでございます。それで政府におきましては、先ほど申し上げましたような事情から預託金の契約をいたしておらない、かようなわけ合いに相なっておるわけであります。  なお最後に政府管掌が支払い遅延をいたしておる、その処置を厚生大臣はどう監督するかという仰せでございますが、これは結局かような事態が起っておりますのは、政府管掌の健康保険の財政状態が滝井先生御存じの通り非常に悪いためでありますから、その財政を一日も早く建て直して財政状態をよくしていくという方法であるかと存じます。
  132. 滝井義高

    ○滝井委員 この基金というものは基金法の十八条で起債はできません。起債はできませんが、金を借りることはできますか。
  133. 高田正巳

    ○高田政府委員 ただいまの基金は、金を借りることはできないのでございます。
  134. 滝井義高

    ○滝井委員 下請をやっておるものに対して政府の支払いが悪いというときに、何か政府の請負関係を結んだものへの支払いを促進する法律ができたことが、数年前にあるのです。当時その支払いを促進する法律の中に社会保険の診療報酬の支払いを入れるべきだという議論が起ったときに、私はちょっと聞いておるのですが、そのとき問題になって、何か社会保険についてはそうしまい。そのかわりに資金運用部か何かの資金を、基金に貸すことにするからというような話をちょっと聞いたことがあるのですが、そういう約束が過去においてあったのかどうか。
  135. 高田正巳

    ○高田政府委員 資金運用部資金を貸すことにするというふうな約束があったかないか、そういうような事情、さらにその当時の事情を私詳細には承知をいたしておらないのでございますが、いわゆる先生御指摘の支払い遅延防止法ができますときに、基金に対する政府管掌の支払いが、この法律に触れるかどうかということにつきまして、法の解釈をいたしまして、その解釈によりますれば、これはこの法律は適用されない、さような性格のものであるということに見解が一致いたしておる、さような経緯があったということは私聞いておるわけでございます。
  136. 滝井義高

    ○滝井委員 そのときに借入金をすることができるという話はなかったのですね。
  137. 高田正巳

    ○高田政府委員 私はそういうことをまだ耳にいたしておりません。あるいは当時の詳しいことを知っております者に事情を聞きただしてみたいと存じますが、おそらくそういうことはなかったのではないかという私の想像でございます。
  138. 滝井義高

    ○滝井委員 そうしますと十月の診療費を十二月末までに支払うということは努力をせられる、こういうわけでございます。努力はぜひしてもらわなければならぬが、同時に基金法の中の十八条であったか、基金の基本金を診療報酬の支払いに充てることができることになっておるわけです。それは一応「避けることができない事由」によってという条件がついておりますが、現在の情勢というものは年末等できわめて逼迫いたしております。当然これは支払い遅延防止のためにこれらの基本金等を使って支払いをやるだけの熱意がなくてはならねと思うのですが、その点について所見をただしておきたい。
  139. 高田正巳

    ○高田政府委員 基本金はたしか百万円であったと存じますが、この百万円を使いましても別にそう大した金額ではございませんので、大勢には影響はない程度のものでございます。私どもといたしましては他の方法によりまして年末の支払いを確保いたしたい、さような方向に全力をあげて努力をいたしたい、かように考えておる次第でございます。
  140. 滝井義高

    ○滝井委員 そうすると、十八条の規定は、診療報酬の支払いのために避くべからざる事由があったときには基本金を使ってもよろしいという条項になっておるが、その基本金はたった百万円だ。こういうことになると、この条項というものは、まるきり児戯に類する条項になってしまうのです。現在一カ月に四十九億という金が動く。その中で診療報酬の支払いに不足を生じたときに基本金を使うのだというその基本金が百万円なんというのは、これは基金法の建前からいっても、私はちょっとおかしいと思うのです。なぜもっと基本金をやらないのですか、またやるような施策を講じないのですか。
  141. 高田正巳

    ○高田政府委員 基金の基本金と申すのは、さような支払いの遅延、支払いの原資に充てるというふうな目的を持ったものではないと私は存じます。ただ十八条の規定の基本金というのは、原則として、どの財団法人等におきましても同様でございますが、とにかく一つの法人格といいますか、そういうふうなものを持っておるものが、最小限度持っていなければならない一つの財産というような意味でございまして、これは原則として使ってはならないという性格のものであるわけでございます。ただ十八条で、絶対に使ってはならないのではなく、かような場合には基本金をくずしてもよろしいという、何といいますか解除をいたしておるだけの意味の規定であろうかと存じます。従いまして基金の支払い資金に充てるというふうな意味を持った規定ではあるまい、さように考えるわけでございます。さような意味合いからいきまして、基金の支払いの円滑を期するために、もし基本金を増すということでありますれば、これは相当多額な基本金でなければ、滝井先生も御存じのように、一カ月に何十億という支払いをいたすわけでありますから、さような性格を持った基本金ということになりますると、これは非常に多額な基本金ということに相なるわけであります。なおまたさような多額な基本金を持つ必要があるかないか、他にいろいろな方法があれば、結局支払いの円滑化ということが目的でありますので、あえて基本金を百万円以上に増さなければならないというものでもあるまい、かように私ども考えておるわけでございます。
  142. 滝井義高

    ○滝井委員 十八条をよくお読みになると、わざわざ「診療報酬の支払に不足を生じたときの外、」と、こういうように診療報酬の支払いということだけを限定しているのです。そうしますと、限定をしておるということは、この基本金を診療報酬の支払い以外には使ってはならない。そうすると、当然基金というものは診療報酬の支払いの遅延が起るという場合を予測して作っている。従って監督官庁としては、たった百万円くらいしか基本金を作らせなかったということは明らかに職務怠慢ですよ。別に一五条の三にはちゃんと予備金というものがある。基金自身の収支については予備金でまかなう。基本金というものは不測の事態が起って、そうしてそこに支払いが遅延をした、こういうようなときには明らかにこの金を使うということになっている。だから特に診療報酬の支払い等に不足の生じた場合と目的をきちっと限定している。立法の趣旨はそうなんです。だからこれは局長さんの方で、百万円では今までの保険経済の状態から考えて、二十八年結核対策を強化して以来ずっと赤字が出てきているのですから、あなた方は当然そういう客観情勢から見て、一般会計から金をこの基金につぎ込むだけの努力が必要だったのです。それをやらずに百万円のままでのほほんといっては失礼だけれども、手をこまぬいてやってきたということでは責任重大です。こういう点はこれは明らかに十八条にそう書いてある。だから今までの実績から考えて、借入金その他相当にやらなければ、健康保険勘定というものはどうにもならぬという実態は明らかにそういう不測の事態が起ることはきまっているのだから、積んでおらなければならぬ。積んでおらないとすれば、これは職務怠慢ですよ。
  143. 高田正巳

    ○高田政府委員 十八条の規定で、基本金をくずすときには診療報酬の支払いの不足を生じたときだけであるというふうに規定してありますることは、御指摘の通りでございます。しかしこの規定の性格というものは、私先ほど申し上げましたように、くずす場合はこれ以外では使ってはならぬぞというところに意味があるわけでございまして、この際使ってもこの規定の違反にはならないわけでございます。この規定の違反にはなりませんけれども、使ってはならないというところに意味があるわけでございます。そこで基本金の性格でございますが、基本金の性格というものは、私先ほど申し上げましたように、診療報酬の支払いの円滑化のために設けられたものではあるまい。診療報酬の支払いの円滑化というものは、もしそういう必要がありますれば、先ほど先生御指摘のように、基金が借入金をいたすとかいうふうな措置も考えられましょうが、基金というものは今日さような性格のものではなくて、各保険者が財政を建て直しあるいは借入金をするとかなんとかで、保険者の方でそういう措置をやればよい、こういうことになっておりまするので、今日では基金にはそういう性格は付与してございませんけれども、少くともそういうふうな方途を講ずべきであって、この基本金というものがさような目的のために設置されたものとは、私ども考えないのでございます。
  144. 滝井義高

    ○滝井委員 そうしますと、基金はそういうことをやる必要はない、保険者でやればいい、こういうことなんですが、支払い遅延の一番大きな原因を作っておるものは政府管掌の健康保険である、政府なんです。一体政府はどんな措置をやるかということなんです。今度は問題は支払い遅延のために具体的にどんな措置をやるか、これを伺いたい。
  145. 高田正巳

    ○高田政府委員 ただいまの状況におきましては、先ほどお答えを申し、また滝井先生今御指摘の通り、政府管掌が支払い遅延の最大の原因に相なっております。従いましてこれをいかにして解決をするかということでございますが、これには私ども本日御提案申し上げたと存じまするが、健康保険法律改正をいたしまして、そうして健康保険財政というものを根本的に建て直しをいたしまして、それによってこの基金への政府からの金の支払いの円滑化を期したい、かように考えておるわけでございます。私どもが御審議をお願いいたそうといたしておりまする法律改正案の中には、御存じの国庫補助金等も、この際その法律が通過をいたしますれば、直ちに使い得るということに相なりまするので、さような政府管掌健康保険の根本的な財政を建て直すという措置によりまして事態を打開いたしたい、かように考えておるわけでございます。
  146. 滝井義高

    ○滝井委員 健康保険法出したそうですが、これはちょっと大蔵省の村上さんにお尋ねしたいのですが、村上さんの方で、一般会計から健康保険の特別会計に四月から今までに何か事務費のほかに出したことがありますか。
  147. 村上一

    ○村上説明員 事務費のほかには出したことはございません。
  148. 滝井義高

    ○滝井委員 厚生省は事務費のほかに何か要求したことはありますか。
  149. 高田正巳

    ○高田政府委員 要求したことはございません。
  150. 滝井義高

    ○滝井委員 なぜ要求しないのですか。法律で十億要求できるじゃありませんか。厚生年金保険特別会計法が二十二国会で通って十億要求できますよ。あなた方は三十億とれぬと思ったら大間違いですよ。堂々と十億とれるのですよ。
  151. 高田正巳

    ○高田政府委員 仰せの通り、政府がら繰り入れも仰ぎ得るわけでありまするが、これは繰り入れたらすぐ借金を返さなければならぬ通り抜けになる金でございます。
  152. 滝井義高

    ○滝井委員 いや通り抜けになる勘定ですが、十億はとることができるのですよ。十億とればとにかく四億二千万円黒字になる。政府に対する支払いは待たせればよい。政府は親方日の丸じゃないか、あわてて返す必要はありやせぬ。厚生年金保険特別会計法の附則十八条で明らかに十億はとり得る。今年はその十億というものはお休みになっている。あなた方が健康保険の三十億をとるときには十億は今年度は休んでいる。ところがあの法律が流れたために生きている。だから十億堂々と大蔵省からとれる。十億とれば健康保険法なんか、今たったこの会期あと二日のときに出したって問題になりません。だから十億とれば現在のものは何とかやっていける。あとのことは今からあとで尋ねます。これは村上さん、二十二国会できまった厚生年金特別会計法という法律です。これの附則の十八条の六で「一般会計ヨリ十億円ヲ限リ同勘定二繰入ルルコトヲ得」こうなっておるけれども、これは「得」ということではいかぬ、繰り入れなければならぬという論議があった。ところが、これは森永主計局長自身が出まして毎年必ず繰り入れますからどうぞ通して下さいということで、当時久下保険局長も立ち会いの上で毎年十億とれるということになった。だから当然ことしもこの法律は生きている、死んでない。二十四国会で政府出し健康保険法は流れましたから、十億堂々ととれる。だから十億は即日出していただけると思いますが、出せますか。
  153. 村上一

    ○村上説明員 今御指摘になりました点は、法律的な状態を申し上げますと御指摘の通りだと思います。ただ本年度の三十億という一般会計からの繰り入れを計上いたしましたときには、御承知のように過去の債務六十億のうち十億を返すという分とは全く別個の金として計上してあるわけでございますので、今御指摘のようなことをやるかやらないかという問題につきましては、まず予算に積算したときに目的に違反しないかという点が当然検討の内容になろうかと思います。  それからもう一つ、これも御承知かと存じますが、この十億は、かりに繰り入れますと、右から左へと返すという状態を予想しておる金であります。これは蛇足でございますが……。
  154. 滝井義高

    ○滝井委員 村上さんも御存じのように、今健康保険の会計は火の車です。政府療養担当者なり療養者の方には支払いを待ったと言いながら、政府だけが先におれの貸した十億だけはくれと言う、それほど日本の政府は無情じゃないと思うのです。そういうことは許されませんよ。もしそういうことが許されるとするならばそれは大へんですよ。支払う方はちょっと待てといって、一カ月も二カ月もどんどん先に延ばしている。ほんとうは診療費は治療が終ったらすぐそこで払うべきものなんだ。それを翌々月まで延ばしておって、さらにそれを一カ月先まで延ばさせようとしているのが現状です。ところが法律は生きておる。法律が生きている限りは繰り入れなければならぬ。右から左に払うにしても繰り入れなければならぬ。払わないと言ったって差し押えがない政府ですから、十億もらえば今の健康保険の年度末は支払えますよ。この十億というものは、厚生省は絶対にもらってもらわなければならぬ。法律は生きておる。くれることになっておる。もらわなければならぬ。あなた方がもらえぬというのなら、私はこれから先質問します。これは、きょうあなた方が法案を出す前の一番大事な点です。あなた方の出し法案が審議の価値がある法案かどうかということは、これできまってくる。これをあなた方は忘れておった。ここが盲点なんですよ。あなた方は、今まで三十億はとるとると言っておったけれども、これで十億とれる。ここが盲点ですよ。私から指摘されて、おそらくあなた方は大喜びだと思うのです。(笑声)十億堂々ととれるのです。
  155. 高田正巳

    ○高田政府委員 法律的にさようになっておりますことは、私ども忘れておったわけではございません。ただ本年度の予算に計上してあります三十億というのは、先ほど主計局次長から御答弁のありました通りの趣旨の三十億でございます。従いまして、法律がそうなっておりましても、これは「繰り入ルルコトヲ得」ということになっておるだけでございまして、繰り入れてくれという権利が法律上保障されいるわけでもなし、従って予算とのつじつまが合わないということが一つと、もう一つは、私ども立場といたしましては、十億かりに今金をもらいましても、先ほど先生がおっしゃいましたように、十月分までの診療費を十二月末までに払うということにはならぬと思うのでございます。十億では金が足りないと私は思うのでございます。  いま一つは、われわれといたしましては、結局本日提案に相なったわけでございますが、健康保険法あるいは厚生年金特別会計法の、それら関係法律改正ということをぜひとも国会に提案をいたして御審議を願いたい、そうしてただいま予算に計上してあります三十億というものは、その計上された趣旨に従ってこれを使用いたしたい、こういう心組みでおりましたので、今のような事情すべてを総合いたしまして、今日までその十億の繰り入ればいたしておらないわけでございます。
  156. 滝井義高

    ○滝井委員 保険局長さん、ごまかしてはいけない。私は全部知っておる。六十億借りた金は、全部国庫の余裕金を使っておるのです。資金運用部の金は使っていない。従ってこの予算書を見てごらんなさい、もう六十億は年度末に借りて、三千万円の利子をつけて一カ月で一ぺんに返しておる、そしてそれをまた借りておる。従ってそれと同じように年度末に十億が入ってくればいい。私は、予算委員会で森永君をこれで追及した。資金運用部の計画には六十億というものは乗せていない。国庫余裕金で歩いてきておる。従って私がこれを追及したときに、森永君は、それを言わぬでくれ、年度末には資金運用部の計画に乗せるから、必ず十億というものは出すということを言った。それから大蔵委員会でもわざわざわが党の横路君をして質問させて、主計局長なり大蔵省の言質をとっておる。毎年繰り入れますということの言質のもとに、私はこの法律を通すときには「得」ということで了承しておる。今のあなたのように、自分の田に水を引かなければならぬという段階で、それはすぐ返しますというのでは困ります。私は了承しません。予算書を見てごらんなさい。六十億三千万円というのは、国債整理基金特別会計への繰り入れとなって歳出にぴしゃっといっておる。ことしはそうなっている。ことし十億入るなら補正予算を出さなければならぬ。この国会に補正予算を出しますか。そのように補正予算をやりかえなければならぬ。ところがそうなっていない。歳出としては六十億三千万円として、利子だけ一カ月分計上してちゃんと載っている。だからそのごまかしは私にはきかないのです。これは盲点ですよ。あなた方は今まで気づいていない。これは六十億堂々と取ったら、三十億のかわりにここに十億堂々と入ってくるのですよ。一般会計の受入金として袋は一つなんです。この前私は、宮川さんと高辻法制局次長を呼んで、六月三日の夜に、健康保険が流れたときにこの心配をした。そしてそのときに、私はここに非常な疑問があったけれども、これはあとに残すべきだということで十億だけはあとに残して、当時この問題について議論をしたのです。明らかにこの十億というのは堂々と取れるのです。これは明らかにそうなっておる。会計の上でそうなっておる。だからあなた方が今取れぬなどと言うのはおかしいのです。取れるのです。そしてそれは健康保険の勘定の中に一般会計からの受け入れとして、三十億のかわりに十億入ってくるのです。これは当然ですよ。それが右から左にいくというのは大きなうそです。そういうことはありません。
  157. 高田正巳

    ○高田政府委員 私ども別にごまかしを申し上げているわけじゃないのでございますが、法律的には今の十億の繰り入れをお願いすることはできるということを先ほどから申し上げておるわけであります。ただその十億の繰り入れをお願いすると申しましても、法律的には可能でありますが、予算に計上された三十億のうちから十億の繰り入れをするわけでございますから、その三十億というものは別個の目的を持った三十億でございます。従って、そこに予算と法律との食い違いがあるわけでございます。  それからもう一つは、先ほども申し上げましたように、十億では今日の難局は切り抜け得られないということでございます。
  158. 滝井義高

    ○滝井委員 いいですか、局長。予算と法律の食い違いとおっしゃるなら、よろしい、このあなた方の三十億は要りません。それでは法律に基いて大蔵省は十億をどうして繰り入れませんか。補正予算をどうして出さないのですか。毎年「繰入ルルコトヲ得」という法律は、それを一年間停止する法律が成立いたしませんでしたので、現行法として生きておりますから、毎年十億を繰り入れることは法律上はできるわけでございます。ただそれは義務ではございませんので、その分の予算を当該年度に幾ら計上するかということにかかるわけでございますが、その点は、今保険局長から説明申し上げましたように、本年度の予算では三十億計上してございますが、ただその中身は全然別個のものでございまして、それを目的を違えまして繰り入れるということは妥当でない、かようなことを申し上げているわけでございます。
  159. 滝井義高

    ○滝井委員 これだから役人がかわると困るというのです。それなら私はきょう森永主計局長を呼んできましょう。森永主計局長と私とは約束をしている。予算委員会でも大蔵委員会でもやっておる。横路君を連れてきましょうか。私はあしたでも大蔵委員会に行きます。今になって保険局長と口を合せてそういうことを言われるなら、私は久下さんも証人に呼んできます。毎年十億入れるという約束のもとに「得」という書き方をしたのです。速記をごらんになったらわかる。今になって保険局がそういう立場をとるのはけしからぬ。主計局もそうです。それは許されぬですよ。だからこの規定を書くときに、私は久下さんにわざわざ注意をしたのです。そうしたら、これは入れるということで大蔵省ときっちり約束ができたということでした。これはわざわざ大蔵委員会で言明さしておるのですよ。それを今あなた方は、今度十億というものは右から左に変えちゃったと言うけれども、右から左に変えれば、六十億三千万は七十億三千万にしておかなければならぬ。そういうことじゃないのですよ。ことしの予算は、ほんとうは、あの法律が流れたために予算の補正を行わなければならぬのですよ。しかしそれをやっていないが、政府はほんとうは臨時国会で予算の補正をやらなければならぬ。これは、いずれ予算委員会に予算の補正が出てやるならば、この点はおそらく盲点となって忘れるであろうからつこうと私は思っていたのだが、何のためにあなた方は待っているのか。今になって、あれは「得」というのだから義務ではないとか、あるいは右から左にいく金だと言うけれども、そうじゃない。右から左へいく金じゃありません。これは六十億ぴしゃっと三十一年度で歳出で返していることになっている。たからそういう点は、もう少し打ち合せて明確にしてもらわなければいかぬ息です。これ以上は私は言いませんが、これは明らかな盲点である。そうすると、とにかく保険者が基金に支払う措置をすればいいということで、そこで具体的に政府法律案を今度の国会に出したということですね。  そこで大蔵省にお尋ねいたしますが、法律というものは国会を通らなければその効力は発しないと私たちは考えているが、一体その通り大蔵省も了承しているのかどうか。
  160. 村上一

    ○村上説明員 さようでございます。
  161. 滝井義高

    ○滝井委員 そうしますと、提案しただけでは三十億の金は使えませんね。また、補助金を出せませんね。
  162. 村上一

    ○村上説明員 おっしゃる通りであります。
  163. 滝井義高

    ○滝井委員 大蔵省は今はっきり言明をいたしました。速記に残っています。そうしますと、大体十二月の支払いは間に合わない、財政の再建も間に合わない、これは一体どういうことになるのですか。法律出しても、今の段階では紙くずを出したのと同じです。保険局は一体どうされますか。
  164. 高田正巳

    ○高田政府委員 法律が成立いたしませんければ三十億が使えないということは、私どもはその通りに考えております。私ども法律が成立いたすことを期待いたしておるわけでございます。しかし、かりにさような事態になりました場合にも、私どもとしては、また何らかの方法によりまして支払いの確保に努力をいたしたい、かように考えているわけでございます。
  165. 滝井義高

    ○滝井委員 大蔵省にお尋ねしますが、厚生省法律出しただけで、大蔵省は、六十億の資金運用部からの借入金のほかに、今何かお金を貸す意思がありますか。厚生省は努力して法律出しているのでありますが、何ぼか厚生保険特別会計に一般会計から貸すか、資金運用部から貸すか知りませんが、とにかくほかに何か貸す意思がありますか。
  166. 村上一

    ○村上説明員 本日政府から提出いたしました法律案の成立を期待いたしております点は、厚生省と私どもは全く同様でございます。従いまして、その内容が実現されることができますれば、今先生の御指摘のような事態は実質的に相当解消すると考えております。
  167. 滝井義高

    ○滝井委員 法律が成立するかしないかといっても、御存じの通りもうあと二日しか会期がないのですよ。あんなにもめた大法案であり、重要法案なんですから、二日では常識的に絶対不可能です。きょうは四日ですから、あと五日と六日です。もう絶対成立しません。絶対と言っていいくらい成立しません。そうすると内閣もつぶれますよ。それで、新内閣、新政策、新予算でしょう。現段階では四月は暫定予算と言われている、そうしますと、この法律はいつ通るかわからないもので、この法律では支払い遅延なり健康保険の赤字の解消にはならない。だから今の十億が問題になってくるのです。あなた方は、まだ海のものとも山のものともわからない法律を今たよりにしているけれども、私は、現実にすでにここに現存をし、国会を通過した法律によって十億出せと言っているのに、「得」ということで十億は出せませんということはおかしいでしょう。だから私は、この段階になったらきょうはだめですから、あした大蔵大臣を呼んでやらなければならぬと思っています。海のものとも山のものともわからないような法律健康保険をわれわれはきょうこうやって審議しているのですが、会期はもうあと二日ですから絶対この法律は通りません。幾ら延長してもそう延長はできない。しかも自民党の大会は十四日ですから、十四日から先は絶対にだめだ。万々一延ばしたところで十四日、十四日としても衆参両院を健康保険が通るなんて考えたら大間違いです。絶対通りません。太鼓判を押したってよろしい。そうしますと、大蔵省なり厚生省健康保険に対する赤字対策を一体どうするかということなんです。そうすると今なし得る方法というのは十億を出す以外にないのです。その十億を出すことがきらいなら社会党の法案を通す以外にないということなんです。だからこの十億はどうしますか、これはここで一つ明確に御答弁願いたい。今のようなごまかしではだめです。筋が通らない。六十億は返しているのです。ことしの予算、歳出六十億五千万円というのは、予算面では返すことになっている。ちゃんと右から左に十億はいくものではない。だからこの点一つもう少し明確に、十億どうですか、これは……。大蔵省で出せませんか。出すことを「得」ということになっているから、要求されれば出さないというわけにはいかないでしょう。
  168. 村上一

    ○村上説明員 さっきお話のございました十億を必ず入れるという話があったといういきさつの点は、私当時おりませんので存じませんが、このでき上りました三十一年度の予算をごらんいただきますと、歳入の方で借入金の六十億が立ちまして、歳出の方で六十億三千万の国際整理基金特別会計への繰り入れが立っております。と申しますことは、十億の繰り入ればやるが返さないのだという趣旨ではございませんが、その分の繰り入れは三十一年度に関する限りはやらない。ただし別の意味で三十億の繰り入れを計上している、かように見るしかないと思います。でき上りました予算について考えますと、三十一年度は明らかに十億の借入金の返済のための繰り入れは、予算面では実行を予定してないということがはっきり出ているのではなかろうか、かように考えます。
  169. 滝井義高

    ○滝井委員 予算面ではその通りなんです。ところが予算面というものは健康保険法なり厚生保険特別会計法の一部改正の通ることを予定して組んでいる。ところが通っていないんです。ですからここの三十億のかわりに十億というものがこなければならぬということなんです。一般会計からの受け入れという袋は同じなんだ。一般会計から受け入れるということは、これは三つの方法があるということをこの前ここで高辻さんとやった。それは当時七十条のまず負担をするということで入ってきます。事務的に入ってきます。それから七十条三というものは三十億ときめていない。補助するという法律の書き方なんです。ですからその負担金のほかに補助金というものが一つ入ってくる。それからいま一つの入り方は、厚生保険特別会計そのものの十億が来年になるとまた入ってくる。これは一般会計の受け入れとして袋は同じなんです。従って今年も一般会計の受け入れとして十億が入ってきているんです。あの法律が流れた後の事態の変化からいえば当然ここに三十億が十億になる。そうして別にその不足分というものはどこか借りるかどうかしなければならぬことになる。それは二十億だけここに穴があくのです。ですから二十億円の穴は何らかの形で補正予算を作らなければならない。ところが大蔵省は作っていない。だから大きな穴があいている。法律上の根拠がない。私の今主張するのは明らかに法律上の根拠があるのですから、厚生省が要求さえすればここに少くとも三十億のかわりに十億が載ることは確実なんです。それが載れば少くとも総ワクの中へ十億入ってくるのだから——赤字というものは総ワクでいっておるのです。私が質問をしたときに赤字は五十五億と言っておったが、わずか二十日間で赤字が六億減っちゃった。予算委員会では四十七億二千万円となった、そういう工合に赤字がどんどん減っているから、ここに十億入れてもらうと四十七億が三十七億になる。これはやるとすればあなたの方は当然補正をしなければならぬ。法律がいつ通るかわからないから、わからぬものをこのままにしておくわけには参らぬ。来年の四月になって通るかもしれません。あるいは一月に通るかもしれません。どうもこの点はあなた方の思想統一もできていないようでありますが、だいぶ時間がたったようでありますからこれ以上言いたくもないのですが、この点どうも私は納得ができない。あなた方の出している健康保険というものは、海のものとも山のものともわからずにここに論議しておる。そうでなく、ここで十億取れば健康保険会計はずっと楽になってくる。これは局長さんお認めになるでしょう。
  170. 高田正巳

    ○高田政府委員 十億入ってきてそれが出なければ十億分だけ楽になることは自明の理でございます。ただ先ほど来私もお答え申し上げましたし、村上次長からもお答えを申し上げておりますように、特別会計法の附則の規定は、法律的にはそのままになっておるわけでございます。「繰入ルルコトヲ得」ということになっておるわけでございますが、一口に申せば予算措置ができていないということでございます。一般会計の三十億の繰り出しの方の予算は、先ほどから御説明を申し上げておるように、さような十億を含んだ金ではない。それから特別会計の方でも現在成立しております予算は、一般会計より受け入れの三十億と借入金と六十億、歳入の方はこうなっておるのです。歳出の方に国際整理基金特別会計繰り入れというのが六十億三千万円、先ほど御指摘の通りなっておる。もし一般会計の方の三十億のうちの十億を、いわゆる借金返しの従来の十億ということにいたしますと、特別会計の方の予算の補正もしなければならぬ。その際にどう補正されるかといいますと、一般会計より繰り入れが十億、借入金が五十億に歳入の方はなるわけです。そうして歳出の方の国際整理基金特別会計への繰り入れが六十億三千万円そのままになっておる。そういう格好に補正をするということになるわけです。と申しますことは、結局は一般会計繰り入れの十億と借金の五十億と合せて六十億の借金返しに見合うという予算の補正をしなければ、その十億の繰り入れを受けるという理屈は立ってこないわけなんでございます。さようなわけ合いに相なりますので、返す方の金を六十億も借りっぱなしで、もう返さなくてもいいんだ、そこで十億入ってくれば楽になることはわかっておりますけれども、その十億をもし受け入れるならば、さようなことで来年に持ち越す金というものは五十億しか見られない。すなわち歳入の借入金というものは五十億と予算を補正しなければならぬ。かようなことに相なるわけでございます。従って私どもといたしましては、さようなことをいたしますよりは、ただいまお願いをいたしておりますような、三十億は三十億として、当初の予算に計上された目的のように使うという措置を講じ得るような、法律案の御審議をお願い申し上げておるわけでございます。
  171. 滝井義高

    ○滝井委員 それは私もよくわかっておる。しかし六十億はもう借りておるのでしょう。
  172. 高田正巳

    ○高田政府委員 十億の繰り入れがございませんから、六十億は借りておるという勘定になるわけでございます。
  173. 滝井義高

    ○滝井委員 どこから借りておりますか。
  174. 高田正巳

    ○高田政府委員 国庫余裕金の繰りかえ使用をお願いしておるわけでございます。
  175. 滝井義高

    ○滝井委員 そうでしょう、国庫余裕金でしょう。国庫余裕金ならば利子は私が言うまでもなくつかないでしょう。それなら返す必要はないじゃないですか。十億もらってずっと年度末まで泳げるのです。年度末になって払えばいいのですから……。今問題になっておるのはこのどんどん燃えさかっておる火事をどうするかということです。予算の数字のやりくりじゃない。そこを私はついておる。国庫余裕金は利子がつかないし、すぐ返さなくていい、すぐ右から左に返す必要も何もない金です。だからそれを予算委員会でついた、ほんとうはこれは長期の借入金でなくてはならなかった。長期の借入金ならば資金運用計画の中に載らなければならぬ。ところが資金運用計画の中にはどこにも載っていない。だからそれを私がついたときに、そこをつかれては困るからということで、年度末になったら資金運用部に計上いたしますということで話ができておった。これは私は三回か四回ここでやってますよ。これは返さなくていい、余裕金だから年度末になって一カ月分の利子だけで、三千万円払えばいいようにしておる。もしあなた方が長期の資金を借りておるならば、これは少くとも五分払わなければならぬ。ところがそれが三千万円で済んでおる。というのは余裕金で借りておるから泳いでいっておる。だから今あなたの言われるように十億というものは右から左に払う金じゃない。年度末になってちゃんと調整をしたらいい。そのときになってから健康保険の問題をどうするかということを考えればいいのであって、今からどうするかわからない法案を基礎にして先のことを言うわけにいかない。もうこれは大蔵省は出しただけじゃだめだ。法律案が通らなければ金を貸すこともできないし、三十億も使えません。こういうことははっきりしてきた。そうすると、あと会期は二日だ。この二日の中でこの問題の最大のやりくりの方法というのは十億もらうということですよ。現に生きておる法律でもらうということですよ。それ以外にないと思います。これは局長さんどうですか。十億をあなたもらう気になりませんか。法律ができたときは三十億の中から二十億だけもらって十億はもらわなければいいじゃないですか。一方に支払い遅延が起っておってしかもただの金を六十億借りておる現実でしょう。それをお考え直しを願いたいと思いますが、いかがですか。
  176. 高田正巳

    ○高田政府委員 特別会計法の何条でございましたか、不足の繰り入れ十億をもらうことは、先ほども申し上げましたように、一口に申せば予算措置が講ぜられていないということであります。従いまして私どもといたしましては、さような予算措置を新たに講ずるということよりは、現在の予算措置をそのまま消化し得るような法律改正で参りたい、こういうことでございます。そうしてその法律が私どもは早期に成立いたすことを期待はいたしておりますけれども、もしそれがさような運びにならない場合には、またならない場合の対策を大蔵省とも御相談申し上げたい、かように考えておるわけでございます。
  177. 滝井義高

    ○滝井委員 そうしますと、多分あの項目ですか、そこらあたりの変更はできると思いますが、これはおそらく十億も財政補給金ですよ。三十億はやはり財政補給金なんですよ。そうしますと、これは流用できるのではないでしょうか。実は私予算の項目も調べてきていないので、明白なあれができませんが、今あなた方ちょっと専門的に調べてみて下さい。流用できるのではないのですか。財政法の規定でおそらくできるのではないかと今私ちょっと想像しているんですがね。
  178. 村上一

    ○村上説明員 今ここに予算書を持ってきておりませんが、三十億につきましては、計上目的に違反するかどうかという点だけだと思います。そこで先ほど来御説明申し上げましたように、借入金返済に充てるという趣旨でこれは計上されたものでないということは、歳入歳出六十億両建になっておる点ではっきりしておりますので、そういう預金部返済のための十億として計上されていない。しかも一般会計から特別会計に相当多額の十億という金を繰り入れるという問題についてはそれを見ていない。また別の問題について三十三億円のおわば赤字補てんを見ておるということは、予算を計上いたしまして、国会の御審議を仰ぎました当時からはっきりしておった点でございますので、それを今ここで御指摘のような事情が起りましたときに計上しました目的と全然別個の目的に繰り入れることが適当であろうかどうかという点で、私どもは適当でないと考えます。そこで今国会に、先国会で審議未了になりました法案と同趣旨の法案提出して御審議を仰ぎまして、それとともにこの三十億も本来の目的に従って使えるようにいたしたい、かように考えておる次第でございまして、その段階におきまして私ども立場では、さらにその法案がまた審議ができなかった場合にいかがするかという点については、その法案の成立を期待しておりますというふうにお答え申し上げるよりほかにないかと存じます。
  179. 滝井義高

    ○滝井委員 村上さん、別個の目的というが、目的は同じですよ。まず第一に健康保険勘定に繰り入れるということが同じですし、一般会計から特別会計に入れるということが同じだし、臨時財政補給金であるということが同じですから、目的は違わない。健康保険の赤字を補てんするために入れるという点は同じですよ。趣旨も目的もちっとも違いはしない。ただ実体法があるかどうかの違いです。ところが実体法は現在流れてしまっておるのだから同じです。
  180. 村上一

    ○村上説明員 形の上で一般会計から特別会計に繰り入れるという点は同じであります。ただ両者は明らかに趣旨が違いまして、その繰り入れることができるということを規定いたしました法文も、それぞれ別個の法文で規定しておるというのはそのためであろうかと存じます。
  181. 滝井義高

    ○滝井委員 村上さん、それはその法律ができるときのことをお考えになればわかると思います。初めは七十条の三というものはなかったのですよ。ところが大蔵省と自民党とそれから厚生省との間に一部負担を恒久化するためにああいうようにやってしまったんです。あとからつけたんですよ。初めは臨時補給金としてしか出ておらなかった。この補助金というものはあとからくっつけた条文ですよ。それであなたの方から出た予算の衆議院の説明書では、明らかに臨時財政補給金になっておる。これも年限を切った臨時財政補給金で目的は同じですよ。それをあとで恒久的のものにちょっと模様がえをしただけで、衆議院を通る段階では臨時補給金で通っておる。参議院に行ってから臨時を削ってしまったのであって目的は全く同じことだ。
  182. 高田正巳

    ○高田政府委員 私どもとしては、衆議院におきましても参議院におきましても、三十億の性格は赤字補てんの意味でなく、健康保険財政を健全に維持育成するために国が支出する金である、こういうふうに終始一貫御説明申し上げておるつもりであります。
  183. 滝井義高

    ○滝井委員 けれども予算委員会へ大蔵省から出しておるものには明らかに書いてある。「薬価対策等の措置を講ずるとともに、一般会計から財政再建のための臨時の補給金として三十億円をこの会計の健康勘定に繰り入れることとしている。」とちゃんと書いてある。だから一般会計から特別会計に繰り入れておるということも、臨時的のものであるということも、健康保険勘定に繰り入れることも、趣旨、目的はみな同じですよ。だからその点について、予算委員会で大蔵大臣に補助金というものは必ず毎年入れるかということを質問したら、そのときの財政状態によってどうなるかわからないというように答弁しておりますよ。健康保険の勘定がよくなったら、そのときには今あなた方が語るに落ちた。この厚生保険特別会計も他から繰り入れることを得る、財政状態によって繰り入れることもあるということだったんでしょう。ところが、それでは大へんだといって、これだけは言質をとっている。これは同じなんです。だからどちらも臨時的なものであるということは、文書の上から見ても、あるいは予算委員会説明書を見ても、大蔵大臣の答弁から見ても同じなんです。今あなた方はそういうことをおっしゃるが、私は全部初めから一貫してこの問題に取っ組んできているので、ごまかせませんよ。きょうはこれ以上言いません。もう少しあなた方もその十億については御検討願いたいと思うのです。これは明らかにここが一つの盲点なんです。しかもこの法律は生きている。あなた方が出そうという法律はまだ海のものとも山のものともわかりません。こっちは現存して、日本国の八千五百万の国民を支配する法律なんですよ。ところがあなたの方はまだ海のものとも山のものともわからない法律なんです。こっちの方が先ですよ。だからこれを主体にして現在ものを考えなければならぬ。それをあなた方はなきがもののようにして、自分たちが出した、まだ通りもしない法律を優先に考えるということは、立法府を無視する態度であって、法治国家の国民として、法治国家の官吏としてあるまじき態度です。こう極論してもさしつかえない。これ以上言いません。もう少しあなた方研究して——いずれあした法案を出されるというなら、正規に取り組みます。私は、あしたあなた方が出す法案が審議する価値のあるものかないものであるかということは、一にここにかかってくると思う。だからきょうどうしてもあなた方の意見をお聞きしておかなければならぬというのはここなんです。これ以上言いませんから、もう少し研究して、明確な答弁をよく打ち合せをしてやって下さい。お願いします。
  184. 野澤清人

    野澤委員長代理 本日はこれにて散会いたします。     午後六時三十二分散会