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1956-11-28 第25回国会 衆議院 社会労働委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十一年十一月二十八日(水曜日)     午前十一時十八分開議  出席委員    委員長代理 理事 中川 俊思君    理事 大坪 保雄君 理事 藤本 捨助君    理事 岡  良一君 理事 滝井 義高君       植村 武一君    大橋 武夫君       小川 半次君    越智  茂君       加藤鐐五郎君    草野一郎平君       小林  郁君    田子 一民君       田中 正巳君    八田 貞義君       亘  四郎君    井堀 繁雄君       長谷川 保君    八木 一男君       横錢 重吉君    吉川 兼光君       中原 健次君  出席政府委員         厚生政務次官  山下 春江君         厚 生 技 官         (公衆衛生局         長)      山口 正義君  委員外出席者         厚生事務官         (医務局長)  小沢  竜君         労働事務官         (労政局労働組         合課長)    山崎 五郎君         参  考  人         (株式会社千葉         新聞社代表取締         役)      須田 守正君         参  考  人         (千葉新聞従業         員組合委員長) 平野 久夫君         参  考  人         (千葉労働組         合連合協議会議         長)      山村  実君         専  門  員 川井 章知君     ――――――――――――― 十一月二十六日  委員加藤精三君、松岡松平君、松澤雄藏君及び  山本勝市君辞任につき、その補欠として松村謙  三君、濱野清吉君、中島茂喜君及び高橋等君が  議長指名委員に選任された。 同月二十七日  委員楯兼次郎君辞任につき、その補欠として岡  良一君が議長指名委員に選任された。 同月二十八日  委員岡本隆一君、佐々木良作君、多賀谷真稔  君、八木昇君及び渡辺惣蔵辞任につき、その  補欠として横錢重吉君、阿部五郎君、山口シヅ  エ君、長谷川保君及び三宅正一君が議長の指  名で委員に選任された。 同日  理事赤松勇理事辞任につき、その補欠として  岡良一君が理事に当選した。     ――――――――――――― 十一月二十六日  性病予防法等の一部を改正する法律案(第二十  四回国会閣法第一一六号、参議院継続審査)  身体障害者福祉法等の一部を改正する法律案(  第二十四回国会閣法第一一五号、参議院継続審  査)  寄生虫病予防法の一部を改正する法律案(第二  十四回国会衆法第三二号第四九号、参議院継続  審査) の審査を本委員会に付託された。 同月二十七日  保健所新設に関する陳情書  (第二五二号)  私立保育所並びに私立母子寮措置費基準額引  上げに関する陳情書  (第二五三号)  国立公園部の昇格に関する陳情書  (第二五五号)  南島町の国立公園伊勢志摩に編入の陳情書  (第二五六号)  国立公園施設整備に対する国庫補助制度復活の  陳情書  (第二五七号)  伊勢志摩国立公園施設整備に関する陳情書  (第二五八号)  現地復員軍人軍属遺族援護に関する陳情書  (第二八二号)  水道公団法制定促進に関する陳情書  (第二九九号)  環境衛生関係営業の運営の適正化に関する法律  制定陳情書  (第三〇〇  号)  未帰還者留守家族処遇改善等に関する陳情書  (第三〇二号)  電気事業及び石炭鉱業における争議行為の方法  の規制に関する法律存続反対陳情書  (第三〇八号)  世帯更生資金増額等に関する陳情書  (第三四四  号)  戦没者遺族処遇に関する陳情書  (第三四五号) を本委員会参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  理事互選  身体障害者福祉法等の一部を改正する法律案(  第二十四回国会閣法第一一五号、参議院継続審  査)  性病予防法等の一部を改正する法律案(第二十  四回国会閣法第一一六号、参議院継続審査)  寄生虫病予防法の一部を改正する法律案(第二  十四回国会衆法第三二第四九、参議院継続審  査)  健康保険法等の一部を改正する法律案滝井義  高君外十一名提出、衆法第一号)  医師等の免許及び試験の特例に関する法律の一  部を改正する法律案藤本捨助君外三十三名提  出、衆法第二号)  労使関係株式会社千葉新聞社争議問題)に  関する件     ―――――――――――――
  2. 中川俊思

    中川委員長代理 これより会議を開きます。  都合により委員長が不在でございますので、私が委員長の職務を行います。  まず理事互選についてお諮りいたします。理事赤松勇君より理事辞任申し出がありましたがこれを許可し、その補欠選任に関しましては委員長より指名するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 中川俊思

    中川委員長代理 御異議なしと認めます。よって赤松勇君よりの理事辞任申し出はこれを許可することとし、その補欠には岡良一君を指名いたします。     —————————————
  4. 中川俊思

    中川委員長代理 参議院において継続審議いたしました身体障害者福祉法等の一部を改正する法律案性病予防法等の一部を改正する法律案及び寄生虫病予防法の一部を改正する法律案の三案を一括して議題とし審査を進めます。     —————————————
  5. 中川俊思

    中川委員長代理 右三案についての趣旨の説明は、お手元に配付いたしてございます資料によって御了承願います。  次に質疑に入るのでありますが、発言通告もありませんし、討論の通告もございませんので、直ちに採決するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 中川俊思

    中川委員長代理 御異議なしと認め、これより直ちに採決いたします。三法案原案の通り可決するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  7. 中川俊思

    中川委員長代理 御異議なしと認めます。よって三法案は、いずれも原案の通り可決すべきものと決しました。  なおただいま議決いたしました三法案についての委員会報告書作成等に関しましては、すべて委員長に御一任願いたいと存じますが御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕     —————————————
  8. 中川俊思

    中川委員長代理 御異議なしと認めそのように決します。
  9. 中川俊思

    中川委員長代理 次に株式会社千葉新聞社争議問題について調査を進めます。  この際お諮りしたします。本問題調査のため、参考人より意見を聴取すべきであるとの御要望がありますので、参考人として千葉新聞社従業員組合長委員長平野久夫君、千葉労働組合連合協議会議長山村実君及び株式会社千葉新聞社代表取締役須田守正君をそれぞれ選定し、意見を聴取するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  10. 中川俊思

    中川委員長代理 御異議なしと認め、そのように決します。  ただいま決定いたしました参考人方々が見えておられますので、一言ごあいさつを申し上げます。本日はお忙しいところを御出席下さいましてありがとうございます。最初参考人方々より意見をお述べ願い、その後委員諸君からの質疑にもお答え願いたいと存じます。ただ時間の都合意見をお述べ願う時間はお一人大体十分程度にお願いいたします。  なお念のために申し上げますが、参考人方々発言なさいます際は、委員長の許可を得なければなりませんし、発言内容につきましては意見を聞こうとする問題の範囲を越えてはならないことになっておりますから、御承知おき下さい。なお委員参考人方々質疑をすることができますか、参考人委員質疑をすることはできません。以上お含みおき願います。  次に参考人皆様発言の際、劈頭に職業または所属団体名並びに御氏名をお述べ願いたいと存じます。  それでは須田守正参考人にお願いいたします。
  11. 須田守正

    須田参考人 私は千葉新聞労務担当重役でございます須田守正でございます。今回の争議になった直接の、それからまた会社状態などをこまかに申し上げて、御参考にしていただきたいと思います。  千葉新聞昭和二十年に千葉県の数名の名士によって創設されまして今で十一年になります。そのうちには千葉銀行の古荘四郎彦さん、中村庸一郎さんだの、あるいはヤマサ醤油社長だとか、荒木僧正とかいうような人たちによって発起されたのでございまして初め十八万円の資本金で出発いたしましたが、現在では増資いたしまして、その当時の十八万を残したまま千五百十八万の会社でございます。統制がはずれまして昭和二十六、七年ごろまでは内容も良好であったのでございますが、昭和二十九年ごろからだんだん悪くなりました。私の新聞社は年に三回くらいストライキをやる新聞でございまして、その影響が非常に辛らつに会社経営内容に響いて参りまして、三十年から赤字が、今までは三百万近い黒字が出ておったのでございますが、三十年、三十一年と年に六、七百万円くらいの赤字を生ずるに至りました。そこでことしに入りまして、昭和三十年三月末の決算は表面赤字が六百九十万円、実際の潜在赤字を加えますと実に二千三百万以上の赤字になるわけでございます。内容は御質問があれば申し上げます。  そこでこの状態では新聞がジリ貧になる。どうしても経理状態からつぶれてしまう。何とかしなければいけないというのが、会社融資をいたしておりました千葉銀行、大株主その他洋紙の入手先等々からいろいろ心配をされておりますし、経営者といたしましてもどうしても放任できない重大な問題でございますから、ことしの六月夏季手当の問題で一日ストをやったのでございますが、それが終えたあと直ちに会社経理内容を再検討するということで、熱心な研究やら討議やらを続けて参ったわけでございます。そこでこの四月以来九月までの実際の毎月の赤字が七十七万円平均になります。従いまして今期に入りましても四月から九月までの表面に出ました赤字が三百数十万円になっております。この状態でもう半年かそこらずって参りますと、経営不能に陥るというので、どうしても企業整備を行わなければいけない。それから従業員各位にも考え方を全然変えてもらって、従来のように組合の上にあぐらをかいて会社をいじめておったのでは会社が参ってしまう。だからどうしても一つ真剣な協力をしてもらいたいというのが私の——私は総務局長でございますので、人事経理を担当いたしておりますので、私の最も大きな念願であったわけでございます。もちろん重役会といたしましてもこの状態を心配いたしまして、どうしたら組合協力を求めて会社再建できるかということは、これは口で申し上げる問題でなくて、ほんとうに腹の底からそう思った問題でございます。そこでこの九月に入りまして、その前に七月以降実際の経理内容を全部公開してしまえということにいたしまして、部長会議というものを新たに設けまして、毎月の収支につきましては実績をそのまま全部公開しました。これは組合にも当然わかっておることでございまして、ここにおられる平野委員長も十分に御承知のはずでございます。むしろ私などよりこまかに会社経理内容を知っておるはずです。そこでその実績に基いて、これではだめだから何とか会社を立て直さなければいけないということで、再建案というものを考えるに至ったのでございます。ところが時たまたま十月に入りまして、新聞用紙先から、一千万円近い未払い金があるのでございますが、これでは紙を送れなくなるから、現金買いにしてもらいたいというような要求が猛烈に出て参りまして、担保は全部千葉銀行に入っておりますから、担保を提供する能力はない、現金で払う能力はもちろんない。だからこの際は一つ株主協力を求めて千葉銀行から特別融資をしてもらって、それで紙屋の方を切り抜けて、再建案によってほんとう会社の姿を直そう、こういう態度でおったのでございます。  たまたま千葉銀行に五百万円の融資を申し込んだのでございますが、これは言葉も入っていましょうけれども、お前のところの経理内容では、金をくれというのなら話はわかるけれども、貸せという話にはお前のところのバランスじゃだめだということを古荘頭取から申し渡されたわけでございます。千葉新聞は年三回くらい年中行事でストライキを行なっていますので、会社の信用は全くゼロになっております。でございますから、経理内容が悪化すると同様に、組合状態も大へんに心配すべき状態でございましたから、私どもほんとうに裸になって組合と話し合って、そうして会社を持たしていこうということに全力をあげなければならない状態に相なったのでございます。そこで私は簡単に申し上げますが、大体七十万円以上の赤字が毎月出ておりまして、それだけでも年に八百万円ぐらいの赤字になるのでございますが、そういう状態では年に二回の手当ももちろん払えない。今まで一期三百万近い期末もしくは夏季手当を払っておったのでございますが、これも会社経営陣としては当然考えなければならない問題でありますので、これを含めますと、月に百三十万から百四十万くらい経理内容良化しなければ赤字は消えないし、それからまた手当も払えない。だからこの会社の特質からいって、株主利益処分による配当など要求しない、全く千葉県の県紙を守っていけばいいんだという態度株主でございますから、利益処分による金は一切要らない、ほんとう会社経営内容さえよくなれば、高能率高賃金けっこうだ、みんな従業員にやってもよい、そういう態度で話を進めておるのでございますから、普通の一般株式会社とはよっぽど性格を異にしているわけでございます。従って百三十万円なり百四十万円なりの経営内容良化ができるならばこの会社はやっていける、私はこういう確信で組合と熱心に話し合いをいたしたわけでございます。団体交渉もけっこう、労使協議会もけっこう、どんな形式によってもひざを交えて話し合おう、こういう態度ストライキが発生するまで過去六、七回、表は五、六回になりましょうか、あるいはまた個人的な会談はずいぶん熱心に行いまして十回近い会見をいたしております。ところがこういうことでストライキになったわけであります。会社再建しなければならぬということはよくわかる、だから組合もこれに協力をする、こう言ってくれましたので、ほんとう協力をしてもらえると私は思いまして、赤裸で組合にぶつかったのでございます。従って会社が一案を設けて、この案ならいけるというかけ引きの案などは一切設けずに、ほんとう実績をそのまま出して、これで節約できるものが幾ら、もし増収をはかり得るとすればその増収をはかり得るものはどれくらい、どうしてもだめなものは人員整理に持っていく。そして組合長も個人的には発言しておりますように、うち組合は六〇%くらいしか働いておらぬ、こう言っておるのでありますが、そういう状態でなくて、もっと能率をあげてもらって、そして従業員にも協力をしてもらって、なるべく整理人員最少限度にとめよう、こういう考え方討議を、交渉を、協議を進めておったわけでございます。しかしながら組合としては、収入数字をなるべく膨大に見積って、支出は実施不可能な程度まで削って、その差額の百三十万さえ作ればばかの一つ覚えのように整理は要らない、こういう行き方でいきたかったようであります。そういう考え方では会社再建ができませんので、ほんとうに実現可能な収入を見込み、そして実現可能な緊縮支出案を立ててその差額ほんとうに生み出して、それでなおかつ足らないものはやむを得ない、人員整理にいこう、それが四十名になるか三十名になるか、希望するところは少いほどけっこうであるけども、とにかく今の数字的な結果からいくと四、五十名近い整理が予想されるから、これは熱心な話し合いによって一つ人員をなるべく減少しよう、こういう態度で話しておったのでございますから、労働協約を無視して首を切ったのなどというのはとんでもない間違いであって、まず会社としては、人員整理の必要を認め、それからその必要を認めてくれるならばその人員を何名にするかということを熱心に話し合って、それから人間の問題にいこう、こういう態度を持っておったのは当然でございます。皆さんに申し上げて宣伝をされておるところによりますと、いきなり会社がぽかっとやぶから棒に首を切ったように宣伝していますけれども、とんでもない間違いであって、整理の必要は組合長も十分に認めておったところでございます。ところが公式な会見では、今まで熱心に支出を削減し、そして収入点安定点を見込もう、こう言っておったのでございますが、組合員に対してはそういう経営協議会のまじめな内容をちっとも発表いたしません。依然としてうち組合は金でつらなければだめな組合だから、金でつっていこうというようなことを漏らされておるようでございますが、そういう態度でおったのでは再建案を何ぼ考えてもそれは絵にかいたもちである。だからして、自分会社を持っていけるところに良心的に一つこの案に協力をしてもらいたいと、私としてはほんとうに熱心に話したつもりでございます。ところがそれが、うち組合はちょうど昭和二十二年ごろのあのゼネスト時分組合のような、きわめて初期の組合でございまして、けんかすることは非常に上手でございますけれども会社の実態をつかんで自分らがほんとうにこの会社で食っていくためにどうしたらいいんだというまじめなことを考えてくれない組合であります。だからこういうことになったのでございまして、年に三回ずつも平気でストライキをやっていく。このことは皆様承知のように普通の一般会社と違って、三日も紙をとめますと紙はどんどん減ってしまいます。だから取り返しのつかない企業性格を持っているのであるからして、ストなんぞ簡単にやれる会社ではないはずです。ですが、私ども新聞がとめられることが痛いものだから、今の労働協約というのは実は大へん労働協約でございまして、これも四分間で輪転機をとめるんだ、こういう状態判こを押させられた、無条件降伏をした労働協約でございます。そういう協約の上にあぐらをかいて、そうして会社経営者をいじめて参ったのが今の組合でございます。しかしそう申し上げてもいけませんので、私としてはこの組合ほんとうに取り組んで、ほんとうにまじめな話をやってわかってもらって、会社立場も十分くんでもらい、組合立場も十分了承して、ほんとうに五分でいこう、こういうのが私の根本的態度でございました。でございますから、この会社経理的な要求である、百三十万の経営内容良化することは、単に支出をやたらに削って差額を作るだけではだめだし、それから収入点もいいかげんな——組合では、千二百万は収入はあると突っぱっておるのでございますが、それは開き直ったのでありまして、今まで四月から九月までの経営収入と申しますか、たとえば千葉新聞参議院選挙がございますと県から公報を委託される、これが三百万も四百万もあるのですが、そういう随時収入は除いてしまって、そういう選挙などは三年に一ぺん、五年に一ぺんしかない問題でありますから、そういうものは当てにしないで、ほんとう新聞収入と出版の収入と広告の収入、そういうものによってまじめに案を立てれば、この実績を見ると千百五万円のものでございます。だからこの千百五万円をどこまで伸ばし得るかということは、組合会社も火の玉になって努力をしようというところに増収案を立てる基礎があったわけでございます。ところが千二百万円という数字は今まで……。     〔「少し時間が長くありませんか。」と呼ぶ者あり〕
  12. 中川俊思

    中川委員長代理 簡単に願います。
  13. 須田守正

    須田参考人 それでは大へん長くなりまして恐縮でございますが、結論は組合側会社のまじめな経理内容協力をしないで、そして差額を作ったら整理がとまる、整理そのもの反対だということから戦術的に数字のずれを作ろうという努力と、私の方のほんとう数字をかみ合せていこうという態度の衝突である、こう考えていただいて過言ではないと存じます。あとは皆様の御質問によってお答えできるだけお答えしたいと思います。御無礼申し上げました。
  14. 中川俊思

    中川委員長代理 次に、平野久夫君にお願いします。
  15. 平野久夫

    平野参考人 私、千葉新聞従業員組合委員長平野でございます。私どもは十一月二日から争議に入り、いまだに解決をしない、非常に大きな争議に発展しておるのですが、この争議経過、これに至った経緯、原因、そういったものをごく簡単に筋を追ってお話を申し上げて、非常に時間のないことと存じますので話し漏れることもあると思いますが、それにつきましては後ほど質問をしていただけば私どもの方から詳細御説明をいたしたいと思います。  まず千葉新聞社というものは、ただいま社側から説明がございましたように、昭和二十年十八万円という資本金をもって建てられたものです。これが首切りをしなければならないものになった経過というものは、二十八年、二十九年までは非常に経営内容がよかった、全国地方紙の中でも指折りの経営内容を持っておったわけです。特に二十八、九年の二カ年間に千五百万円という帳簿外定期預金を作ったというようなことを見ても、その経営内容がいかによかかった、いかにもうかったかということはわかるわけです。しかもその当年の賃金ベース全国平均賃金ベースを下回ること半ば、六、七千円という賃金ベースをとっておった。過勤料においても二百四十分の一よりもさらに低いという過勤料計算基準が設けられており、活字を拾ったり、新聞の紙面を組んだりするようなところでは、一人一時間当り十何円というような過勤料をもらって、しかも一月に百二十時間、百三十時間というような過勤をやって仕事をし生活をしてきたわけです。こういう工合にもうかってきた千葉新聞が急に悪くなったというのは、組合ストライキをやったからだと会社側では言っておるのですが、これはそうではない。社の経営者、幹部がどうやってもうけてきたかということを考えてみますと、まず小林社長がこれは今も社長をやっておりますが、非常にワンマン的な性格を持っておる社長で、自分の言うことを聞かない者は切るということを露骨に発言する人です。私が二十九年当初委員長に選任されましたときには重役会に呼ばれまして、お前、委員長をやると損だぞ、給料も上らぬし、ボーナスも少くなる、やめた方がいい、首になりたくなかったら委員長なんかやめろ、こういうような話を重役会でされた、そういう会社であった。社員会社側に反抗をするということについては、各職場々々に直系の子分をもぐり込ませておいて、これによって監視をして、そういった動きを絶えず強い弾圧をもって押えてきた、封殺をしてきたというのが過去十年間の動きだったのです。社員生活は非常に苦しく、労働金庫からの借り入れも激増の一途をたどり、しかも返せない。そのほかの個人的な借金、社からの前借り、そういうことで非常に苦しい生活をしてきたわけです。これか昨年六月に爆発をして初めてのストライキに入った。そのときには、今まで千葉新聞は非常に健全経営なのだから、経営経費から期末手当は出さない、そのほかあちらこちらから寄せ集めてきた金でボーナスを出すんだ、こういうことを放言いたしまして、八十万、九十万程度の金しか出しておらなかった。従って、私などの例をあげても、期末ごとに三千円、四千円という期末手当しかもらっておりませんでした。  こういった実情でしたので非常に生活も苦しく、社員は何とか一月分くらいはもらおうじゃないか、しかも社の経営内容は非常にいい、毎年黒字を見、その上に何だか帳簿に載っていない金が定期預金として千五百万円も積んであるそうだ、こういうことで初めての期末手当十割の要求をしたのです。そのときに、要求書を持ってくるとはけしからぬ、新聞記者として常識がない、こういうようなことを小林社長が申しまして、組合との団交を拒否しました。前後十回にわたって私ども頭を下げて団交をお願いをし、話をしたのですけれども、全然わからぬ。そういうことで初めてのストライキに入って、ようやく地労委のあっせんによって解決をしたわけですが、その解決は、七月に六割、十月になってからあとの四割の金が出るというような非常に筋の通らないもので組合が折れたような形の解決をしたわけです。しかしながらストライキをやられた会社側は、組合がこれからどんどん強くなった場合には、今までの低賃金による搾取はできなくなる。しかも小林社長以下経営者の方としては、新聞をよけい売ることよりも、もっと新聞の名前を利用してもうけることに重点を置いて考えていたというように見てとれるわけです。これは千葉県内においても各界で強い批判があります。その具体的な例としては、われわれ第一線の記者が書いてくる記事を、社長側近の報道部長なりもしくは社長直接なりという形で封殺をして紙面に載せないということさえも行われたわけです。こういったことで、まじめにいい新聞を作っていこうじゃないかという新聞社の社内の気概と働く意欲がどんどん減殺されていき、しかも賃金の面ではどんどん押えつけられてちっとも上らない。規定上は定期昇給は毎年一回はあることになっているけれども、七年も八年もの間一回も行われたことはない。こういったようなことで、社員の不満は非常に高まってこれが第一回の争議ストライキとなって爆発したのであります。そのときに私どもは、今後は平和的に話し合いをして正しい労使の関係を作ろうじゃないかということを小林社長そのほか経営者と確約をしたわけであります。ところが、その直後すでに、組合幹部及び先頭に立って戦った組合の先鋭分子に対する左遷解雇案というものをひそかに作って、これを編集局長に通達をして、首を切ったらどうかというような話をしているわけであります。これを聞いた組合側が、何とかしなければ再び大きなけんかになるのじゃないかということで、急遽労働協約を作ってはっきりした話し合いの場を持つことにしよう、それまでは頭を下げていっそ穏やかな話をしなければならぬというわけで交渉に行くと、横を向いてしまって、団体交渉はしない、大体お前らが対等に口をきくのはけしからぬというような態度を示し、そういうことを言うわけです。そういったことではいけないから労働協約を作ろうじゃないかということで、給与規程とか、退職金規程とか、金のかかることはおそらくけんかになって通るまいから、仕方がないから、とりあえず、労働基準法違反という形になっている過勤料の点だけを協約に盛り込んで、給与規程と退職金規程とをあとに譲るという形で、話し合いの基本になる協約の本文だけを通そうじゃないか、こういうことで組合員協約を八月二十三日に出したのです。当時の労務担当重役に加瀬という重役がいたのですが、それから毎日毎日この人と話し合いを続けましたが、ついに十二月まで話し合いがつかずにいたわけです。それで、ほとんどの点で話し合いが終り、これはいいだろうということになって、一応問題点だけを残す形になると、また重役会にかかって振り出しに戻る、こういうような形で二回、三回と繰り返して、その間に、当初組合幹部の首切り左遷を命令したときに従わなかったところの、当時の編集局長の高杉という人がおったのですが、この編集局長とそれから労務担当重役であった加瀬氏、これの不当解任を十月の初めにやって、しかも組合を弾圧しぶつつぶすための第二組合の結成を、九月の末から十月にかけて、強力な組合内部に対する切りくずし、利益供与というような形で行い、二十数名をもって第二組合を結成し、組合のぶっつぶしをはかった。こういう形で昨年暮れからの大争議が行われたのであります。  この争議の中で組合は、新聞をとめたらおそらくつぶれるだろうということで、新聞をとめないで争議をするという形で、非常にむずかしい戦いでありましたけれども、防衛闘争という形で、新聞自分たちの手で出しながら一月半にわたって戦いを続けて、その間労協の話し合いも続けましたけれども、一向らちがあかない、全然話し合いにならないということで、やむを得ず十二月四日に全面ストを兼ねて団体交渉要求して、団体交渉で、地労委あっせん、第三者あっせんという形も含めてようやく話し合いをつけて調印をしたというのが実情なんです。しかもその間一日も新聞はとまっておりません。こういった形で昨年の大争議を終って、今度こそほんとう話し合いができるだろうと思って私どもも期待をしておったし、会社側が非常に希望しておることに対しては、組合側も、千葉新聞の今までの悪弊は何とかこの辺ではっきりと正常なルートに返さなければならないし、また経営のやり方にしても、もっとしっかりした明るいものにしなければならないじゃないか、また支出の点においても相当浪費があるのではないかということで、当時の業務局長その他と折衝して、節約運動をやったらどうかというようなことも労使協議会で話をしたのです。しかし会社は、二回戦いをやって事実上負けた形になったので、このままで組合を生かしておったらおそらく将来大へんなことになるかもしれないと思ったのでしょう。組合を何とかぶっつぶそうということを露骨に考えて、切りくずしをかけ、もしくは組合の先鋭分子、組合の幹部というものを職制にあげて首を切るというようなことも考えてきたのであります。人事通告をめぐって二月、三月組合会社側とが労使協議会で激しく戦いを続けた。六月の争議も、そういった情勢の中から生まれてきました。このときには会社側は新しい、戦闘職員と私どもはかりに呼んでおるのですが、次々に新しい人を入れてきて、これらの人たち交渉の前面に立てた。そういったことで、今までの経緯、それから話し合いの雰囲気もしくはやり方というものは、全然考えられずに、ただ新しい人たちが戦闘的に出てきて組合と話をする、そのために衝突が起るということが絶えず繰り返されまして、六月の争議を再び繰り返し、遂に今度の争議に突入する原因となったわけです。  今度の争議については先ほど社側から説明がありましたが、非常に社の経営が苦しくなって紙代も払えなくなった、だから首切りもやらなければならないということを、会社側は、組合側が十月十日期末手当要求を出し、二十日に第一次回答をもらう予定になっていた、その回答予定日に出してきた。組合としては、会社側がとにかく再建をしたいというのであれば、全面的にその面では協力をする、しかしこれに名をかりて、組合員従業員生活要件、労働条件、こういったものを切り下げてくる、もしくはしわ寄せをするということは困る、とにかく全力をあげて仕事をしていくという面で、できる限りの協力をしよう。また経営検討の面についても協力しようということで、十月の二十二日から四日間、相当時間をかけて連続労使協議会を開いて検討したわけです。その結果、労使協議会を終るごとに逐一社側の職制会議にかけられて、できるかできないかという検討をされて、また労使協議会に返されるという形をとって削減を行なったわけです。過去半年間の実績を見ますと、四月から九月までの欠損は、三百八十二万八千五百二十九円、これを一月当りに直すと五十四万八千円ということになる。会社側はこれを六十万と踏んで、六十万の欠損を埋めるということと、それからおそらく紙代を払ったり、運転資金を借りたり、もしくは期末手当を払ったりするのに借り入れが必要だ、その金利増を十万見込む、また雑損失を十万見込む、また期末手当も今後は経営経費に入れていきたい、だから五十万円をその予算としてとりたい、従って百三十万円を浮かせたいという話であったわけです。私どもは、百三十万円を何とか節減できないか、増収できないかということを真剣に考えた。組合執行部としても、一週間、二週間、徹宵検討を続けて、各部門ごとに支出収入、そういったものを調べていきました。その結果まだ今までに相当むだがあったということがはっきりわかった。組合はもちろん経営の担当者ではありませんから、こまかい数字そのほかは与えられておりません。現にいまだに組合員個々の給与額すら組合には知らされておらない。そういったことで、社側から与えられた資料をもとにして検討して節減をするということで、各職場にも組織を通じてこれを流して、節減をするんだ、協力をしようじゃないか、その上に要求をするものは要求をして、もらうものはもらう、やることはやるということで、はっきり筋を立てようじゃないかということで検討していったんですが、その結果百二十何万円という節減ができたわけです。これはやり方を説明をしませんとちょっとわからないのですが、社側から出された資料、九月の収支実績、収支報告書を基礎として、それに予算額が書いてあり、わきに実績が書いてある。実績は予算よりも支出が超過をしておる。収入はちょっと落ちておるという形であったわけです。検討するに当って、収入はどれだけ見込めるかという話を会社側にしたときには、その九月の予算額千二百十二万かですが、これは絶対に確保しなければならない数字である、これを基礎にして支出がこの線にとんとんになればよろしい、もうける必要はないんだ、こういう話だった。組合としても、現実にここ二年間そういった赤字になってきたからには、これを一時上げかじにしていくことが急務なんだ、とにかくこれ以上落ちていくということじゃなくて上げていこうじゃないか、早急にとんとんにもうかるという形に持っていかなければ、われわれの方にも給料値上げそのほかができないということで、予算から削減をするという方法をとって、予算から七十万円ばかりを削減をしたわけです。従って、その九月の予算の中には十万円の赤字が見込まれていたので、六十余万円の黒字になった。その黒字から、さらに新しく支出の中に入る期末手当の五十万、利子増の十万、雑損失の十万という、七十万円を差引するということにすると、四万五千円から五万円ぐらいまだ足らないという形になった。それについては、組合協議しないうちに役職手当というものを設けて、五万円ばかりの役職手当を九月に出してしまったということがあったので、これは一時自粛するという形で収支とんとんになる、これでいいじゃないか、ただ、あと問題は、今までは絵にかいたもちなんだから、これを実際にやっていって自分のものにしなければならぬ、そのために組合も相当苦しいだろうけれども、絶対な協力を全部の組合員にさせてこれを実現させるからという話をしたのですが、会社側は、首を切りたいということが非常に露骨に出てきまして、とにかく四十人首を切らなければならないという話を終始続けた。組合としては、今人員整理をすることは非常にむずかしい。なぜかといえば、今まで非常な低賃金でこき使われてきて、借金をたくさんしょい込んで生活ができない状態にある社員を、ここで、会社の経営が苦しくなってきたからお前たちは出ていけという形をとることはおかしいじゃないか、しかも実際に収支とんとんにやっていけるという目安も一応出ているんだから、これをまずやってみるべきだ、その結果できなかったときにはまた考えたらいいじゃないか、組合としてはできると思う。とにかく組合としては、組合員が絶対に協力してやるんだからとにかくやろうじゃないか、こういう話を再度したわけですが、会社側は、収入が落ちる、支出はいいけれども収入はどんどん落ちてくるだろうといったことを言って、最初の千二百何万の収入というものを落してきた。お手元にお配りをしました新聞労連の機関紙の中にも上半期の収入というものが書いてありますが、これは四月から九月までの平均収入は千三百四万円になっておるわけです。組合がとんとんにできるという話をしたけれども会社側はできないという。しかもそのときに言われた言葉は、経営者としては不確定 の収入を見込むわけにいかない、経営者の良心が許さぬ、お前たちの言うことは意見として伺っておく、こういった話で、全然話し合いにならずにいったわけです。そうして首切りを四十名のワクでのめ、こういう話をしてきました。ところが、私ども会社組合との間で結んだ労働協約の第十一条には、従業員を解雇するときには組合の同意を得なければならないということになっておるわけであります。この同意をするためには、もっとはっきりしなければならない。組合が同意できるというだけの形が必要だ、今首切りの理由がないんだから、これはまだ早い、まずやってみるということを考えるべきだ、また同意するにしても、名前がわからないで同意するわけにいかぬじゃないか、こういう話をしたのですが、ワクでのめのめという一本やりで、遂に三十一日に首切り通告をここに発送した。人数はちょっと減って三十七人だ、お前たちはこれでのむべきだ、こういう話になった。組合はそれはまずいというので大げんかになって、結局社の経営にマイナスになる、やめた方がいいということを言ったんですけれども、非常に社側の決意は固い。もちろん決意が固いというわけはあとからわかったんですが、二十九日にその話し合いをまだ平和的にしておる段階に、すでに第二会社の設立をしておる。株主総会を招集して第二会社を設立して、組合ストライキをやってきた場合にはやってやろうということで準備を整えておる。しかも組合ストライキに追い込むために組合事務所の移転をしろということを強硬に申し入れ、しかも組合が闘争態勢にそろそろ入っていくのだけれども、そんなことを今言ってまたけんかを誘発する必要はないじゃないか、とにかく移転をさせるにしてもあとにしたらどうだという話をしたのに対して、実力をもっても動かすということで暴力団を使っての襲撃をやったわけです。こういった形で組合ストライキに追い込み、組合が攻撃をかけられた場合には、平和条項は会社の方が先に破ったことになるから、自動的に防衛のための全面ストに入るという警告を発しておったのに対して、暴力団を使って会社側の方から先制攻撃をかけ、しかも組合が自動的に全面ストに入ったあとで、あらかじめ用意してあったかのごとく、ロック・アウトの通告書を一時間と経たないうちに出してくる……。
  16. 中川俊思

    中川委員長代理 平野君にちょっと申し上げますが、質疑のときに御答弁になることもできますから、申し合せの十分を過ぎて二十分になりますので結論を急いで下さい。
  17. 平野久夫

    平野参考人 暴力団を使って組合員の切り崩し、脅迫といったことをやって、徹底的に組合をつぶしてしまおうということが今度のねらいであるわけです。整理基準を見ても、会社の社会的信用保持の上に適当でないというようなことで首を切られておる。ところが社会的信用保持の上に適当でないような行為をしたという者はその中に入っておらぬわけです。そういったことで今度の会社側の行為が、組合をつぶそうというためにあらかじめ仕組まれた陰謀で組合を追い込んできたということがはっきりわかるのであります。組合は不拡大という方針をとって当初臨んだのですが、第二会社を作り暴力団を使ってだんだんこういう形になってしまった、しかも今では解散ということさえ言っておるわけです。公器である新聞の使命を忘れて、組合をつぶすためにここまでの戦いをいどむという経営者考え方、これは単に千葉新聞だけの問題じゃないということで、県下の労働界また総評といったものの全組織をあげて今戦いをやっております。私どもも、新聞を出したいということは全部の組合員の気持なんです。一日も早く事態を解決して新聞を出したい、しかしながらこういった形での組合弾圧というものには徹底的に戦いを続けてはねのけなければならないし、筋を通さなければならないと思います。また今後解決したあとの再建方策というものについても、今組合の執行委員会そのほかで慎重に検討して、何とかできるだろうというような確信を持つに至っておるわけです。よろしく御審議をお願いしたいと思います。
  18. 中川俊思

    中川委員長代理 次に山村実君にお願いいたします。
  19. 山村実

    山村参考人 私、千葉県の労働組合連合協議会の議長をやっておる山村であります。許されました時間の中におきまして、私の立場から見ましたところの今回の千葉新聞争議について申し上げたいと思います。  私は出身が私鉄でありまして、十一月の九日に千葉新聞争議には初めて参画いたしました。それというのは中国に参っておりまして、すでに皆さんの御承知のように十一月九日に会社が暴力団を使って組合の正当なピケを破ろうとしたあの行為の最初に、私としてはぶつかったわけです。すでに警察に十一名の人間が検挙されまして、それぞれ司直の手によって取り調べを受けておりますが、この人々は当日は酒を飲んでおり、また入れ墨をしているなど完全に町の愚連隊と思える者がわれわれのピケに殺到してきたのでして、このような千葉新聞争議状態を、諸先生の御考慮の中に入れていただきたとい思うわけでございます。私ども県の労働団体から見ました場合に、この千葉新聞労使関係というのは、もちろん階級的な差がございますから立場は違っておりますが、各企業体の労使間には何か労使間の道義感がお互いにあるのですが、千葉新聞の場合におきましては他に見られるようなその道義感が全くない、こういうように私は見ております。そのことはなぜかといいますと、経営者自身の考えが地方紙によくあるがごとく、地方の政治あるいは経済、こういったボスたちと何としても結びつきが非常に多い、そうして従業員が正しい健全な新聞を発行しなくてはいかぬじゃないかという気持で今言った各政治経済のボスに結びつた経営者の感覚と全く日常の運営が合致しないところに労使間の道義感が他の企業に見られるようなものがない、このように私はこの千葉新聞の実態を観察いたしておるわけでございます。先ほど須田重役さんから、労働協約云々ということを言っておられますが、あの労働協約内容を見ましても、決して他の企業の労働協約と比較いたしとてつもない労働協約ではないわけです。むしろ労使が健全に企業を守っていくというユニオン・ショップの形を労働協約でうたっておることであって、これは決して驚くことではなくて、むしろ社の発展のための労使協力という面があの労働協約の生かし方によって十分なし遂げられるものと考えております。しかも今回争議が起きまして社側の言っておることは、労働協約というものは平常のものであって緊急事態には通用しない、こういう解釈をしております。これはきわめてナンセンスな解釈でございますが、そこらにやはり千葉新聞経営者の頭の社会的なズレというものを私どもは痛感しておるわけでございます。そういうことが千葉新聞の労使の戦いということを表現しておりますが、早くおさまらなくてはいけない、妥結の道というものはなかなか生まれてこない、こういったところに今日までの長い争議状態になっておるわけでございます。労働運動の全般からいいまして、特に国会でお考え願いたいことは、最近の中小企業のあり方については労使がおのおの非常に苦しい企業の運営あるいは健全発達のために協力をいたしておるわけですが、ともいたしますと組合協力を得ずして、経営者がとる手段は第二会社をこしらえて既存の組合をつぶすという手段です。これが最近非常に各所に見られてきておるわけですが、この千葉新聞争議につきましても経理上から来る人員整理というものも、若干会社の言い分を私ども了とするようなことも言葉としては聞かれるのですが、他に大きな要素は組合をなくすという本質があるように私ども判断しております。そういったことが第二会社を作って——実際は第二会社そのものが実行力を持っておるかいなかというと、だれが見ましても実行力はありません。これは私ども労働団体が認めるのではなく、県の有識者全部が認めております。それにもかかわらず第二会社を作ってそこに新組合を作る、既存の組合を切りくずしていく、こういう手段をやっておる、このことについては国全体の労働運動の健全な発達のために特に御考慮願いたいと思うわけでございます。  次に警官隊のピケ問題ですが、ピケの正当性は完全に労働組合の争議手段といたしまして認められておるにもかかわらず、事態に応じて警官が出動してピケを解くということ、これは千葉新聞の場合におきましても警官隊がピケの排除に参りましたが、幸い労働組合の良識に基いて警官とのいざこざはなく、警官隊の介入以前にピケを解除いたしましたが、結果的に見ますと警官隊によってピケが解除されて、その後に経営者自分の作業をやるという、いわば警官隊によってスト破りが結果的には行われたようなことになるわけです。このこと自身、労働組合の持つ正当な権利であるピケのあり方についても国会では十分御論議あるいは御研究あるいはまた労働運動のあり方についての御高配を賜わりたいと思っているわけでございます。時間がございませんので、以上申し述べましたことにつきましていろいろ御質問いただきまして、私ども労働運動の健全なあり方については最も熱意を持っている一人でございますから、よろしくお願いしたいと思います。
  20. 中川俊思

    中川委員長代理 以上で意見の開陳は終りました。  発言通告がありますので順次これを許します。吉川兼光君。
  21. 吉川兼光

    ○吉川(兼)委員 今回の千葉新聞争議は、ただいま参考人のお三人からかいつまんだお話を伺っただけでも、これはまことに容易ならぬ問題であると私どもは思います。このような重大問題を本委員会で取り上げるのに、本日は私を入れて四人の質問者がいるのでございますがしかも時間に制限があるのでこれは時間的にも一回切りで十分な調査を進めることは困難であると思います。しかしこのわずかの時間を私ばかりがとってもいけませんので、私は時間を非常に少くしてなるべく端折って御質問をいたします。ただこの際参考人方々に申し上げておきたいのは、この問題に対する本委員会調査は、私の独断で確かなことは申し上げられませんが、本日一回だけの調査で終るものではない、本委員会の機関の決定を経た上で今後引き続いて大いに調査を進むべきものであると私は考えております。従ってただいまからわれわれがお伺いすることだけでこの問題に対する本委員会調査が終るものとおぼしめしいただかない方がいいんじゃないかということを申し上げておきたいのであります。  さて大体私どもが入手いたしている資料や朝日、毎日、読売、東京新聞、産経といったような大新聞の日々報道する記事を通じて争議の様相についてある程度の智識を持っているつもりでありますが、ただいまお話を伺うに及んでこれはわれわれの想像以上のもので実に恐るべき時代錯誤が会社側にあると見なければなりません。戦後国民および政府の努力で、民主主義の発展が見られ、労使間においてもようやくよき慣行が生まれようといたしておりますのにいまだこのようなむちゃくちゃな争議破りが行われているということは全く新情勢に逆行するものであり、はなはだ遺憾に思います。  そこで須田さんに伺いますが、いまお話の中にもあったことですけれども、このたびの争議の原因である三十七人の馘首問題ですが、それ前に十月二十二日から四日か、五日を費して労使の間で協議会が持たれて、会社再建についてそれぞれ詳しい検討が行われたようでございますが、しかもそれはただいま平野さんのお話を伺っておりますと、何回となく検討を重ねた結果、わずかに月額四万か五万の不足分を生ずるところまで数字をこぎつけたというのでございますが、そういうふうに労働者の協力を得ておりながら、どうして会社は一方的に首切りというような最後の手段を持ち出さなければならなかったか、先刻からのあなたのお話ではこのことが明らかにならないようですが、会社は誠意をもって臨めばわずか四万円くらいのものを解決するのは、それほど困難とは思われませんが、どうして重ねて協議会を持たなかったのですか、それとも他にやむない事情があったのかどうかお答え願いたい。
  22. 須田守正

    須田参考人 お答え申し上げます。吉川先生は平野委員長の百二十何方をうのみにしておられるようでございますが、それは非常な間違いでございます。平野委員長のおっしゃっておられる千二百二十一万円というのは、四月から九月までの収入平均数字でなくて、会社が経営的な状態でこれだけを努力目標に上げたいという数字が千二百二十一万円です。でありますから、会社部長会議を開いて実績を検討する素材として予算を設けました。その予算額が千二百二十一万円で、実際に入ったものはそれ以下なんです。それから支出はその千二百二十一万円より多かったのです。だからその千二百二十一万円というのは、会社がこれだけはとりたいのだ、とる方法があるかということを検討するために設けた予算額です。これをもたったと言っているのは非常な暴論であって、そこで百二十何万節約できたなんというのはとんでもない間違いでございます。  簡単でございますがお答え申し上げます。
  23. 吉川兼光

    ○吉川(兼)委員 私ども参考人をお呼びして話を伺っている以上は、その御発言を信用してそれに基いて質問するほかはないのでございます。たまたまお気に入らないような質問をしたからと申しまして、誤解などという言葉を簡単にお使いにならないように希望いたします。  今予算の話がございましたが、これは会社でも、国家と同様に予算を立ててやるのはあたりまえでありましょう。そしてその予算の数字が、一応検討の対象になるのはこれもあたりまえじゃないでしょうか。あなたのお話を聞いていると、予算は立てたけれども、それは予算であってその実現性に対しては必ずしも予算を立てた会社自身がそんなに固く考えていないのだ、こういうふうに聞えますが、もしそうであるとすれば、これは驚くべきことであります。予算を立てる以上予算の数字は尊重されなければならぬと思います。しかも今その問題であなたと論議している時間がないので、お伺いしたいのは、これも平野さんのお話の中にもありまた資料によっても証明されているようですが、会社と労組との間で交渉が持たれておる最中の十月二十九日に、会社側では秘密のうちに大株主の某氏所有の千葉農産化学という澱粉会社株主総会を開いて、千葉新聞社というものに切りかえ、次いで十一月の六日でしたか、私は日取りははっきりいたしておりませんが、とにかく一週間そこそこの間に、旧新聞社との間に設備とか、活字とか、社屋その他の貸借並びに新聞発行、販売等の委託契約を行い、その元澱粉会社から千葉新聞を発行いたしておりますが、この合法性いかんは、この委員会の課題ではないのでその点には触れませんが、こういうようなことを会社側でやっておいて、今お話のありましたような、従業員経営者側とが一体となって、新聞社再建、発展を期するということができるものかどうか、全体いかなるお考えからこういうことが出てくるものか私どもは判断に苦しみます。どうも初めから周到な闘争の用意をひそかに整えておいて労組側に一あわ吹かせようとの計画的な態度会社が臨んでおるように思います。果してそうだとすれば、民主主義時代の経営者としてこれは妥当なものとお考えになっておるかどうか、なるべく簡単で明瞭にお答えいただきたい。
  24. 須田守正

    須田参考人 二つのことで申し上げたいと思います。簡単に申し上げたいのですが、前提がありますので、……。今の千葉新聞は、収入としてはもうリミットなのだ、七月以降私どもはそう考えてきました。新聞をよけい出しても実績が経済発行の部数をこえてくるということでございますし、出版印刷にいたしましても、県内から集めるのはあの限度以上にはならない。それから広告にいたしましてもそうだ。それなら経営内容良化するのにどうしたらいいかということを実は考えておったのであります。これは争議に直接関係ございませんけれども考えておったのであります。そこで東京の小松川に別に出版局を進出させて、東京の広告も集め、東京の出版もやらせ——これは新聞の事業ではございません、併託事業ですが、その出版局を新しい会社にするか、もしくは千葉新聞の出資のままでいくか、それは後ほどの問題であるけれども、東京に出版局を移そうという、計画があったわけです。このためにたまたま千葉農産化学という会社をこれに充当するという用意も、そのときにはきまってなかったのですけれども考え方としてあったわけです。それがたまたま二十九日の総会で取り上げられたわけでございまして、それが直接の原因であります。  それからほんとう内容というのは、千葉新聞争議に入って新聞を発行できないでいては新聞が溶けてしまう。吉川先生御承知のように、もう十日も新聞を出さないでいたら四万の発行部数が半分以下になってしまう。それでは、せっかく努力をして話し合いをして、従業員諸君とかりに円満な妥結をいたしましても、百九十二名の従業員が、三十七名どころか、実際は妥結をした瞬間に七十名もあればよくなってしまう。それでは結局従業員を吐き出してしまう危険を増大するだけだから、どんな方法でも新聞だけは出そうというのが千葉県全部の世論でございました。おそらく国会議員諸先生も新聞を出すことにはもちろん御賛成だったと思います。私どもとしてはほんとうに誠意のあるところは、新聞を出さないでいたら新聞社が参るだけでなくて、従業員諸君も溶けてしまうんだから、何とかして新聞を出しておこうという努力千葉新聞新社に新聞の発行を頼んだ理由でございます。
  25. 吉川兼光

    ○吉川(兼)委員 失礼ながら、私の質問の要点をよく把握していただきたいと思います。新聞の発行がいかに必要であるかということは、企業体である千葉新聞社として重大に考えておることはあたりまえのことで、このことはおそらく従業員諸君も同じであろうと思います。これは今平野さんの御説明の中にもあったように、昨年の争議の際には、争議をやりながら数十日の間一度も休まずに新聞の発行に従事してきたということから考えましても明らかなことで、新聞を発行することが従業員も加えた千葉新聞社の最高命題であることは言うまでもないことでしょう。これは今さらあなたから特にお伺いする必要もないことだろうと思います。ただそれが今申し上げますような、いわゆる不当解雇と申しますか、解雇の理由にならないようなことで首切り事件を引き起し、労組側がやむを得ず受け身のストライキをやらされるような事態に立ち至るやいなや、待っていたとばかりにあらかじめ用意しておった——お話によればそれはほかのことで用意しておったのかしれませんか、ともかく用意しておったことたけは事実です。その用意された新聞新社で一方的に新聞の発行を継続しようとするのは、何としても会社側に無理があるようにしか私には思われないのです。千葉新聞の発行が千葉県民全体のためにといわれますが、そのことはこの場合しばらく別といたしまして、一方的に新聞の発行を強行なさろうとする会社側態度が、かえって発行を行き詰まらせる結果となってきたと思います。私どもはただいまの皆さんのお話を伺い、公平に見て残念ながらこういうふうに感ぜざるを得ません。新聞発行の問題はこれ以上論じても結局は見解の違いになると思います。  そこで私があなたに申し上げておきたいのは、会社側といたしましては、今日の労働問題、根本的にいえば憲法に保障されておる労働者の働く権利であるとか、ストライキ権すなわち団体行動権であるとか、こういうようなものがあなた方のように頭から無視されてもよろしいほど果して弱いものなのでしょうか、ということです。組合はやみくもに押しつぶしても、すまされるくらいに簡単にお考えになっているとは思われませんが、今日そのような行き方をしている会社が他にあるとでも思っていられるのでしょうか。ここに会社がお出しになった整理基準というものがあります。これを見ましてもずいぶん問題になる点があるように思います。先ほどあなたは労組がストライキを一年に三回もやって新聞社の社会的信用をすっかりなくしたと言われましたが、あなたのお立場としてはそういうふうに言われるのかもしれませんが、今回の経過に徴してみて、むしろストライキ会社側で誘発しているようにもとれるのです。社会的信用などというものは労組だけでつなげるものとは思われず、多分に経営に当る会社側の責任に帰する点があるのは世間の通例でしょう。ともかく山村さんのいわれた労使間の道義感の欠除、これが本問題のキー・ポイントになるのではないでしょうか。このたびの争議に対する会社態度はかけらほどの誠意もなく、われわれには想像もつかない経過をたどってきておるようであります。たとえば先刻山村議長さんからのお話にありましたような暴力行為にいたしましても、常識的には考えられないものではありますまいか。中央の大新聞に連日のように報道されているのですが、ここでその一つ参考までに読んでみましょう。「千葉新聞社の労働争議に介入した暴力団の主謀者として行方を追及されていた千葉市新町無職中野政之(二七)は二十六日千葉署に留置された。今後の取調べの中心はこれによって一味の背後にひそむ〃雇われ暴力団〃の存在にメスが向けられる模様。中野は同日午前九時任意出頭で取調べをうけたのち夕刻暴力行為等処罰に関する法律違反の容疑で逮捕令状を執行されたもので、争議に介入し組合員側のピケ破りを企て組合員二十余人に重軽傷を負わせた。暴力団の被逮捕者はこれで十三人を数えている。千葉署の調べたところでは千葉新聞会社側組合のピケを排除するため既に逮捕された小泉千葉会会長に「新聞発行を手伝ってもらいたい。」と申入れた。そこで小泉は中村和夫既逮捕にこれを伝え、去る九日午後に中村が中野に応援を求めた。千葉市新地街の顔役といわれる中野は子分を使い千葉、船橋、松戸各市内から愚連隊、パチンコ店員など百十八人をかり集め市内栄町瑞穂クラブなどに集結させ同夜会社の指示で五十余人が工場の三か所を破つて乱入、二回にわたり組合員に暴行したもの。またこの直後中野は中村から一人日当五百円を百十八人分もらったと自供している。僅か三時間足らずに周辺から百十八人という者が集り結局日当五百円の〃雇われ暴力団〃と化した事実に対し、千葉署は県警本部捜査二課と協力まだまだ取締りの網をのがれて根強く残る潜在組織があるものとして中野の取調べと並行して徹底捜査の方針を打ち出している。」この新聞の報道通りの事実があったものかどうかを、須田さんからお伺いしたいと思います。
  26. 須田守正

    須田参考人 お答えいたします。会社としてはその新聞の報道に何も関係はございません。
  27. 吉川兼光

    ○吉川(兼)委員 会社には関係がないのかもしれません。しかし千葉新聞社ストライキが起き、それが如何に続行していても、それは、会社争議団以外には直接的にはそれほど大きな利害関係はありません。何も利害関係のないものがこういう暴力行動に出ようとは考えられないことですが、まああなたにこれ以上この問題をお聞きすることはむりかも知れないのでやめましょう。  そこで私はもう一つお伺いしておきたいのですが、これも先刻あなたのお話にも、また平野さんのお話の中にもございましたが、千葉新聞社の労使間における労働協約というものがここに来ております。この十一条にこういう取りきめがある。「会社組合員を解雇する時は組合の同意を要する。ただし左の場合は同意を要しない。」左の場合というのは「本人の希望するとき」、「停年に達したとき」、「休職期間満了となり、延長または復職されないとき」こういう三項目がございますが、今回の解雇はこの三項目のいずれにも該当しないと思うのです。しかも組合の同意を得ていないばかりか、得ようとしての努力はあまりなされた様子が見えないようですが、この点につきましては、労働協約違反であるとお認めになりますか。
  28. 須田守正

    須田参考人 お答え申し上げます。私どもは十一条の労働協約がありますことをもちろん承知いたしておりますし、労働協約は守るべきものだと考えております。従いまして、十月の二十二日以来月末まで一生懸命で組合の同意を求めるべくお話をいたしたのでございまして、労働協約をじゅうりんしたように宣伝されるのははなはだ遺憾だと思います。特にさっき平野委員長から人名を先に示せというお話がございましたが、これはございました。ございましたが、そのときには整理そのものの必要が認められ、その上で何人が適当かということにも組合の同意を求め、何人が適当だと認めた場合に初めてどういう人をということで載っけられていくのであって、いきなりワクの同意がきまっていないのに人の名前を先に出すことは、いたずらなる動揺を与えるだけで、組合さんにも大へん、それは御損ではないか、組合員会社従業員であるのであるからして、無用な混乱を起さないようにしよう。こういう気持でございました。
  29. 吉川兼光

    ○吉川(兼)委員 まだあとに質問者がございますから、私はいいかげんにいたしますが、そこで山村議長さん一つだけお伺いしたいのです。それは十一月九日の暴力団の介入の状況でございます。あなたはどちらかといえば、まあ第三者的なお立場で暴行事件をごらんになれたでしょうが、あの日の暴力事件について御存じのところでよろしい、お聞かせ願いたいと思います。
  30. 山村実

    山村参考人 組合の方から先生方に手渡しておりますものにも出ておりますが、二回ほど九日の日にはあったわけです。私は最初のは知りませんでしたが、さっき言いましたように、十一時何分ころの最も激しい暴力団の突入のときに、ちょうど私は居合わせまして、そのときは私も今年五月まで地労委を過去五年間経験しておりまして、また千葉新聞争議は、昨年、今年にいたしましても、地労委の非常なごやっかいがありました。そういうことから、とりあえず地労委の諸君に会いまして実情を聞かなければいかぬと思いまして、千葉新聞社の社屋の方へ参ったのですが、そのときに暴力団と思われる者が——あとで暴力団とはっきりしたのですが、当時はまだ何だかよくわかりませんでしたが、勢いづけて五、六十人の者が、ピケを守っている組合事務所のところに突入してきたわけです。私はそこでピケの一員として守ったんですが、それはある一ヵ所のことであって、あとは現地を御調査願えばわかると思いますが、ガラス張りの社屋の外から自転車をぶつけてガラスをこわす。また中にありました硝酸か何かのかめを振り上げて、ピケを張っている組合員に投げつけようとする暴力団もいる。あたかも一つのとりでを四方八方から酒の勢いで、ときの声をあげて暴力団の諸君があらゆる手段を講じて、しかも自分たちの建物じゃありませんから、きわめて無責任にすべてそこらにあるものを全部持ち上げてそれを投げる、もしくはピケを張っている女性たちの髪の毛をひっぱって、ピケから引きずり出そうとする、こういう行為があったわけでございます。これはどなたにお聞きになりましても、また警察当局も私服でそのとき入っておりましたから、警察の私服自身が二、三人袋たたきにあっているわけです。これらから言いましても、そのときの状況というものはかなりすさまじいものであったように私は観察いたしております。以上であります。
  31. 吉川兼光

    ○吉川(兼)委員 そこで私は平野さんに一つ二つお伺いしますが先刻、あなたのお話の中にありました個々の給与額についても、何ら知るところがないというのは、それは組合としてという意味ですか、個々の個人が知らないというのですか、どちらですか。
  32. 平野久夫

    平野参考人 それは決定の方法については、個々にも全然わからないわけであります。ただ個々の給与額は各本人は知っております。組合としては再三会社側に給与額を出すように要請をしたけれども、給与額は業務上の極秘だということで、全然知らせてもらえないのです。従って組合会社側との給与ベースも計算の基準が違って額に開きがあるというのが現状であるわけであります。
  33. 吉川兼光

    ○吉川(兼)委員 あなたの先刻のお話を伺っておりまして痛感するのは、従業員側は非常に新聞の発行に対して情熱をお持ちのようで、何とかして出したいという努力は昨年の争議のときと同様考えていられるようで、その点は十分了解できるのですが、ところで現在は新聞がずっと出ていないようでありますが、それに対して組合側として何か対策を考えているのでしょうか。ともかく長い間争議が続いている際ですから、どんなに熱心に考えられてもすでに組合新聞の発行に当ることはむずかしいことに違いありませんが、それの上、現在は千葉新聞新社までできており、法律関係等がいろいろと入り組んでいるようでありますから、なかなか容易でないことと思いますけれども、労働者が自らの職場と生死をともにするといったような観点から、本来のお仕事である新聞発行についての情熱というか、心がまえというか、つまり従業員の皆さまは新聞がいつ出されるかもしれないという現在の姿についてどういうふうな感じをもって接しておるか、これを伺っておきたいと思います。
  34. 平野久夫

    平野参考人 これはただいまのところ、今まで過去三回の争議において全面ストを毎回やりながらも、新聞をとめずにきております。とまったのはこの六月に一日だけということなのであります。今度の場合は事実上新聞を出しながら争議をするとか、新聞組合が出して話し合いをするというようなことは望まれない状態になっております。それに対しては私どもすっきりした形の県紙にして、県民の前に顔を出すまで県民読者各位にはがまんしていただく、ただ私どもの戦いはそういうよい新聞を出すために最後まで戦うのだということを理解を願って、今度出たときには願いますということで、全県下に宣伝カーも使い、ポスターを張ったりして読者への呼びかけということをやっております。
  35. 吉川兼光

    ○吉川(兼)委員 それでは今の質問について須田さんにも同じことを伺っておきたい。新社を作って何回か新聞をお出しになったところは、いかにも新聞を出すことに非常な御熱意があるようにもとれますけれども、見方によっては、これはストライキ破りのために新聞発行を強行したものであるともとれなくはありません。こうした見方には会社側としては御不満でありましょうが、時間の関係で詳しく質問の要旨をここ述べておれませんので、一つだけ例をあげますと、たとえば今月の十三日でしたかスト破りの目的で、新聞は東京ですでに印刷はしておりながら、いかにも千葉新聞輪転機を使って印刷するかのごとき、いわば擬装の印刷のため工場への乗り込みを策して、ピケ破りに押しかけた事実があるようでありますね。かれこれ思い合せます場合、新聞発行についての会社側の真の考えを伺っておきたいと思います。
  36. 須田守正

    須田参考人 新聞が休んでおりますことは従業員組合が心配する以上に私どもは心配しております。
  37. 中川俊思

  38. 草野一郎平

    ○草野委員 私は千葉新聞の問題は、ただ一般新聞で報道されておる程度の知識しか持っていないわけであり、きょうこの委員会に出て、今いただいた資料をただ見出しのようなものを走り読みに読んだ程度の知識しかありません。従ってこの問題は今、吉川委員からもお話があったように、これきりではなく、今後何らかの調査も進められると思いますから、そうした場合の私としての一応の考え方の前提になるべきものの二、三についてごく簡単にお尋ねしておきたいと思います。一体、従業員はどれだけございますか。これは須田さんにお伺いいたします。
  39. 須田守正

    須田参考人 百九十二名の従業員、これは組合員、非組合員ともでございます。
  40. 草野一郎平

    ○草野委員 百九十二名、これは支局、通信部も加えてだと思います。そこで発行部数のごとき問題をわれわれが見てみますと、四万、四万と書いてあって、きわめて抽象的なのであります。四万の発行部数で百九十二人、約二百人の従業員を養うということは新聞社の経営からして必ずしも私は健全だとは思われません。これは少くとも従業員一人当り三百部以上の部数くらい持たなければ健全な経営はやっていけません。五万から六万くらい出さなければなりません。しかしそれにいたしましても、年に三回くらいストをやるというのであります。これはストを好きな方、きらいな方、いろいろありますが、好きでやっておるのではないと思いますが、そのストをやるたびに——ストにもいろいろあります。休刊したストは何回くらいありますか。
  41. 須田守正

    須田参考人 二回です。
  42. 草野一郎平

    ○草野委員 二回ですか。そうすると、ストで、たとえば休刊すれば、発行部数ががた落ちすることは当然であります。同時に、広告は減ってくる、信用が低下する、社の信用というものはがた落ちしてきます。しかしそのストと休刊の段階を経るごとに新聞の発行部数が減ってきておりますかどうですか。
  43. 須田守正

    須田参考人 正確には覚えておりませんが、減っておるはずであります。一番高いときには五万を越えておりましたから、一万ぐらいは現在減っております。
  44. 草野一郎平

    ○草野委員 それではさらに伺います。  今休刊中だということでありますが、そこでいろいろ各方面からの努力が継続され、労使双方が互いにもう少し虚心たんかいな話し合いができ上って、千葉新聞を再興したいという熱意が成熟してきて再発行できるという段階に到達したときに、果して有代部数というものがどれだけ発行し得る自信がありますか。
  45. 須田守正

    須田参考人 私新聞の専門家でありませんけれども、大体今すぐストライキがおさまって再建ができたにしても、有代紙数一万五千くらいにとどまるというところが今の専門的な見方のようであります。
  46. 草野一郎平

    ○草野委員 そうだとすると、これは私は大へんなことになってきておると思うのであります。五万の発行部数を持っておったものがストライキをやり、休刊をやることによって四万の部数に減ってしまう。さらに休刊に追い込まれたために、いまかりに再発行を計画して、それがいかなる発行状態にせよ、委託印刷にせよ、自社印刷にせよ、いかなる印刷にせよ再発行したところで有代紙が一万五千である。これを維持するためには以前五万発行しておったものなら、宣伝部数も加えて七万から八万の部数をばらまかなければならぬかもしれぬ。ばらまいておいて、しかも月末になって一万五千しか有代紙数が確保できない。この有代紙一万五千を確保するということになると、百九十二人で、四万の新聞の発行ができないものが、同じ人数をもって一万五千の新聞発行でやっていけるはずはないのであります。そういうことを勘定にいれて、今再建話し合いを進めておられるのかどうか。そうでないと、話はがたがたにくずれますよ。どうでしょう。
  47. 須田守正

    須田参考人 千葉の地労委のあっせんによって、私ども再び団体交渉の形で労使双方とも熱心に話しておるのでございますが、そのときの組合側の主張は十月末の状態に戻って、三十七名の首切りを撤回して会社再建を話し合おう、こう言ってくれます。ところが私ども経営者としては、この十一日現在の状態に立って千葉新聞の再興をした場合に、それは私どもにももちろん責任がありますから、責任を回避いたしませんけれども、現実に実現可能なものはどうなんだ、その基礎の上に立って——そのときは二万五千くらいいけると思っておったのでございますが、二万五千で話し合いをしましょう、それを前提にしてくれるのであるならば、どんな話にも応じましょう、それは再建になるんだからということであったのであります。ところが先ほど申し上げましたように、それと全然背馳いたしておるのでございまして、組合の話はきわめて現実と遊離をいたしておるということで御質問に対するお答えになると思います。
  48. 草野一郎平

    ○草野委員 組合平野さんや協議会の村山議長がおられる前で、何も予備知識のない私がこういうことを多少とも質問し得られるのは、実は私も新聞をやっておったからなのです。そして私自身が新聞をつぶしたからなのです。ほんとうにつぶしちゃった、だからつぶれるわけを知っております。また再興することのむずかしいわけも知っております。そういう意味において質問するのです。  県紙というものは、ほんとうを言えば公器なんです。だから県紙を再興するためには、単に経営者ばかりでなく、従業員ばかりでなく、県民全体が一致結束してこれを盛り立てていかなければならぬ。盛り立てていくについては、経営者とか働いている者の立場も必要でありますけれども、それだけでは話ができていきません。そこで私は、千葉新聞千葉県の代表の県紙であるという意味において、よそながら心配申し上げておるわけでありますが、そうだとするとこれは大へんなことになってきているのであります。従って、新聞は一刻も早く発行することが先決だと私は思う。出さなければいけない。その意味において経営者方々が第二会社を作られたとか、新社を作られたとかいうことを新聞で見ました。千葉新聞新社というのが東京かどこかで印刷したとかなんとか書いているのをちらっと見まして、やっているんだなと思いました。それはどこかよその印刷会社に委託されようと、あるいは大きな新聞社に印刷を頼もうと、千葉と東京はきわめて近い距離にあるのですから、しかも千葉のごとき東京という大都市の周辺にある新聞社の経営がむずかしいことは当然なのであります。これは一番むずかしい、何よりもどんな仕事よりもむずかしいのであります。  そこで新聞に携わっておられる方々は、新聞の責任を感じて一日も休んではならない。休んだとしたならば一日も早く再刊をしなければならない。とにかく経済的な問題よりも何よりも面目という問題があるし、県民に対して済まぬという問題がある。あるいは株主に対しても、あるいは広告主に対しても、あるいは購読者に対しても、それ以外の県民に対しても責任があるから、万難を排して新しい新聞を発行しようとせられることは当然であろうと思う。ところが、それがスト破りであるとかなんとかいうふうに解釈さることがあるということをまずもって除去してかかる必要があります。そういうことに努力されたということは、私は決して悪いことだとは思わない。それは当然のことです。そうしなければ新聞というものは維持できないのです。こんなものはものの半年も休んでごらんなさい、これは何の足しにもなりません。発行権というものは、年じゅう発行しておるから、それが一つの発行部数を確保して、その発行部数が広告に影響し、しこうしてそれが新聞社の権利ともなって現われてくるのであります。だからこれは大へんなことだと私は思っています。しかし考えてみますと、二十九年までは黒字を出しておったが、三十年から赤字になったという、その赤字になった端的な原因は一体何でありますか。
  49. 須田守正

    須田参考人 端的な理由は二つあります。それは争議と、それから東京の大きな新聞社によって、千葉新聞の不売ということが行われたからであります。これは公正取引委員会に提訴をすることによって防げたのでございますけれども、この二つが大へん千葉新聞の販売信用を悪くし、卑俗な言葉で言えば販売店をおだててしまって未集をどんどん増大する、そのために拡張費や補助金を多額に出さなければいけないという原因を作ったのであります。ストライキを一ぺんして一日休んだとすると、そのときの紙代をお客様から引っぱってくるのではなくして、その紙代に何倍かする補助金を新聞店に与えなければなりませんから、そういう直接のものを含んで、それ以上の広告にも及びましょう、信用にも及びましょう。信用と申しますと、大へん抽象的でございますけれども、未集金がふえて未払金が減っていくということは金繰りを悪くするということでございますから、そういう影響は重大な影響があるということを申し上げておきます。
  50. 草野一郎平

    ○草野委員 このいろいろな参考文書を見、先ほどの吉川委員の御質問の言葉の中からいろいろ聞いてみますと、相当情勢が悪化してしまって、暴力団などが動いたというように報ぜられております。詳しい事情は今聞いたばかりでありますが、そういうことができ上るということは一つの結果なんであります。その結果に至るについては、だんだん感情的な開きができてきてしまっている。暴力団が入ったからどうだとか、いや自転車をぶつけたからどうだとか、いや活字のケースがひっくり返ったからどうだというようなことは結果であって、そういうことでなく、この話は、だんだん感情をもとへより戻してくるようなところに入ってこないとこの問題は解決しません。両方がいきり立ってしまって開き直ってしまうと道筋が大きくなるばかりです。従って、いかに地労委がこういうものをお出しになりましても、これを勢いけってしまう、それならこちらはこちらで対抗策をやるというわけで、葬式の卒塔婆みたいなものを持って歩くというようなばかなことをやるものですからおかしなことになってくる。そういうことが行われている反面にまた従業員組合の方も、何もせず手ぶらでおられたとは思わない。この宣伝文書を見ても、めかけをどうしたとかだいぶ余分なことが書いてあるようですが、この間も私がある病院の争議をやっているところへ行ってみますと、病院の中にべたべた張り紙がしてあった。院長が何をしているとか、ソファーの中にまで字を書いてしまって、一歩足を踏み入れると、私ども第三者が見てもいやだなあと思うようなことが行われていたが、そういうことまで行われているのではないかと想像します。そうなってしまうと、これはどちらもどちらです。ほんとうをいえば、この感情の激化というものをだんだんとたぐっていって、感情の開きというものを少くしてしまって、そこで話し合いをしなければならぬのであって、そうなってきたときに、この問題の解決に向っていく道筋というものはよほど追い込んでくるのでありますが、一つ両方ともそういう気持でこの問題を解決しようというお立場になってじきじきに考えていただきたい。  今たくさん文書をいただきましたが、これを見てみますと、従業員組合側の宣伝ばかりですが、須田さん、あなたの方は何も言うことはないのですか。言われっぱなしですか。
  51. 須田守正

    須田参考人 そういう宣伝は何もいたさぬのが建前でございますし、またいたさないでも十分県民には知っていただいておると思っております。
  52. 草野一郎平

    ○草野委員 そういうことではだめです。私たちは何も知りませんよ。これはこれから帰ってからよく読みますが、ちょっと読みますと一方的なことばかり聞くのですが、あなたはこれから帰って必要な文書をお書きになったらどうですか。書けるでしょう。そうしてお刷りになって、委員会なら委員会に全部お配りなさい。私たちはそれを両方突き合せて、その間にどこに正しい解決の道があるかということの助言をし得られるならば助言してみたいし、委員会としての調査を進められるならば調査を進めていきたいと思います。ここにたくさん資料をもらったが、片一方のものばかりです。私たちは宣伝しません、宣伝しなくてもわかってもらえますと言っても、われわれはわかりませんよ。心の中で自分たちは正しいと思っていると言っても私たちは知りません。今聞いてみますと、再発行しても一万五千しか再発行できないという前提のもとに進んでいけば、あとには四万発行できるというような考え方で進んでおられるからこの問題はだめなんです。そういうことではこれはできません。大体こういうものを真剣に考える立場のときには、両方から宣伝文書というものは同等の分量でもって、同等の立場に立って出てこなければいけない。労使は均等の立場に立たなければ話にならぬのですよ。こういうことはわかっていますか。
  53. 須田守正

    須田参考人 向うと同じような語調では宣伝できません。
  54. 草野一郎平

    ○草野委員 そういうことを言っているのではない。私たちは参考資料をもっとよこしなさいということを言っておるのです。
  55. 須田守正

    須田参考人 正確な資料を諸先生にお届けいたしますから、どうぞお願いを申し上げます。
  56. 草野一郎平

    ○草野委員 私もそう長い時間言っておりませんが、そこで平野さんにもう一つ申し上げておきたいと思うことは、これは数字の問題もいろいろ折衝しておられるが、もっと根本的な問題があると思います。そうなると、今三十七人首切りであるとか、不当解雇であるとかいうことよりも、もっと基本的な問題から押し込んでこなければならぬのですが、そういう場に、私の申し上げた感情の開きを戻しながら、数字の末端で争うようなことをせず、あるいは暴力団をどうしたとかあるいは卒塔婆を持ち込んだとか、あるいは自転車をぶっつけのがどうしたというような、そういう末端のけんかはやめて、今は再建することに話を戻してくるといいますか、立場をより戻してくることができるでしょうか、どうでしょうか。
  57. 平野久夫

    平野参考人 ただいま草野先生からの御質問ですが、末端のことで戦いをせず、道を広げずに縮めてこい、こういうことなんですが、これは私ども過去数年間絶えず言い、また必ず行なってきたことなんです。ただいま草野先生は末端のことだ、こう仰せられますが、暴力団を使って組合員になぐり込みをかける、二十何名負傷した、自転車をぶっつける、硝酸がめをたたきつける、さらには組合員の家族の家まで回っておどしつけるということは、決して末端なことどころではなくて組合に対する根本的な会社側考え方を示すものである。その考えがあったればこそ、三十七名、五人に一人という首切りを会社側が出してきたということになっておるわけであります。従って私どもはこういった根本的な会社側考え方が改まって基本的、平和的な話し合いをするところの最大の基盤である労働協約を必ず守るんだという立場に立って、——組合側の要求をけ飛ばして、先に解雇通告を出してしまうのだという形で出された三十七名の解雇通告は撤回しろ、会社再建することについては、組合側会社側とが一体となってやっていこうじゃないか、こういう態度を持っておるわけであります。ただいま一万五千しかないであろう、こういう話もございました。埼玉新聞という新聞がこの近所にございます。そこにおいては百五十名の社員をかかえておる……。
  58. 中川俊思

    中川委員長代理 平野君、質問以外のことは答えなくてもよろしい。
  59. 平野久夫

    平野参考人 そういうようなことで、決して経営が成り立たないということはないと思います。私どもはそれでできるというように考えておるし、間を詰めていくという基本的な考え方は過去何年来ずっと持ち続けておるし、現在も持っております。
  60. 吉川兼光

    ○吉川(兼)委員 先刻は他の委員の御質問に譲るつもりでわざとお聞きしなかったのですが、この際草野君の御認識を深めてもらう意味で一言、聞いておきたいと思いますのは、伝えられるところによりますと、新聞社の現在ある場所は千葉県庁のまん前で、最も目抜きのところでありますから、某大株主の腹ではこの際何とかして新聞をつぶしてしまいそのあとにデパートを建て金もうけをする計画であるとの話が飛んでいるのです。草野君は先刻来、まじめに新聞の発行問題だけを取り上げておるようですが、会社側にはこのような伏線が敷かれているとも伝えられており、果してそうであれば争議はいよいよ深刻となるでしょう。これは須田さん答えにくいかもしれませんが、そのように伝えられておることは事実ですから、そういう事実は絶対ないと御否定になりますのか、どうか。そしてあくまでも純粋な新聞の発行を考えてこの争議に臨んでおるのかどうかということをこの際明らかにしておきたい。
  61. 須田守正

    須田参考人 私がお答えしなければいけないでしょうか。
  62. 吉川兼光

    ○吉川(兼)委員 あなたは御存じないかどうかを聞いておるのです。
  63. 須田守正

    須田参考人 そんなことは全然聞いておりません。私が接触しておる限りにおいては、大株主は、どうしても県紙は必要だ、かりにバランス面上地方新聞に穴があいてもわれわれが補償してあの組織を持たせなければいけない、困ったものだと言っておりますから、どうぞ御了承を願います。
  64. 草野一郎平

    ○草野委員 私が今末端と言ったのは、だんだん末端へ発展してしまったという意味のことであって、末梢的なささいな問題だということを言っておるのではない。そういうようなことにこだわってしまうと物事は解決しないのだということを言っておるのです。これはしません。絶対にしません。暴力団がどうだとかなんとかいうようなことばかりにこだわってしまうと話の本筋からそれてしまいますから、そういう意味において私は末端だということを言った。そういうようなものの考え方が出てくることがいけないとおっしゃるが、こういうような争議というものは、あなたも御承知の通り一方的なものじゃないんですよ。そうでしょう。ストライキをやられるということは経営者側の出方が悪いからやっておるのだ、こうおっしゃる。そうだとすると、何かそこに紛争が起っておるということは、この間からもここでスト規制法のときに問題になっておりますが、一方的の問題じゃないのです。そうすると両方からほぐしていかなければならないことになる。その根本に入らず、暴力団を入れることがけしからぬとか、態度がなっておらぬというようなことを言っておるのでは話にならないということを言っておるのです。     〔中川委員長代理退席、滝井委員長代理着席〕 資料をいろいろもらうことによってだんだん考え方整理していきたいと思うのでありますが、争議をやったことが新聞発行が赤字になった原因にもなり、あるいは東京の大新聞がそれに対して圧迫を加えてきたこともいけない、しかしこれは大都市周辺の新聞としては各地にあります。たとえば大阪近在に行ってもあるし、名古屋にもあろうし、東京近在でも当然あります。だから大都市近在の県紙立場を考えると、やはり経営者従業員とが一体となってその経済関係をやらなければならないのでありますから、もっと話を戻していかなければいけないと思います。そういう意味において単なる一つ数字の問題の折衝でなくて、根本的な問題に入っていく必要があろうと思います。ただいまも申し上げましたように、ぜひ須田さんの方から資料をいただきたいということが一つなんですが、どうも私としてこの争議を考える場合に、なるほど従業員組合方々のところに外部からたくさん応援に行かれることもけっこうです。そのかわりに経営者の方にもとんでもないのが応援に行っておるかもしれない。そうするとその連中ばかりのけんかがはでになってしまって、あるいは従業員百九十何名の中の五十名くらいは小さくなってしまって、こんなばかなことをやっておってはかなわないと思っておるのじゃないかと思います。私も新聞一つつぶしてきておるのだから現実に知っております。だからそういうささいな感情的の動きとか、もうこんな争議はどうでもよい、私はやめてけっこうだと思っておる者をも、お前そんなことではだめだと言ってかり立ててやっておるのですから、この問題も、今言うと開き直られますが、暴力団を持ち込むことがいけないとか、そういう態度がいけないというようなことを言わずに、一つ基本的なところに、県紙を守り、同時に従業員生活権も守ろうというような立場から入れますか。
  65. 平野久夫

    平野参考人 どうも私の話したのもよく趣旨が通らなかったような気がするのですが、私がお答えしたのは、暴力団を使ったりそのほかのこと、これももちろんだし、一番話し合いの基礎になりました約束を守るということからも必要である。労働協約に基いて話し合いをするのだ、労働協約は守るのだという基本的な態度、労使対等の立場に立って労働協約は守っていくのだという態度会社に欠けているということが具体的に出てくる一番大きな問題だ、根本問題だ。従って、まずそういったところへ話を戻してきて、労働協約違反で解雇通告を出したものはこれを取り下げて話し合いをするということが望ましいのだ、そういう点では根本に話を返してやろうじゃないかということは組合が絶えず話をしておることなんで、地労委あっせんの形の上でも私の方では話しているわけです。ですからそういった線で元へ戻って話をもっと平和的にしていくということは当然できると思います。
  66. 草野一郎平

    ○草野委員 その程度でけっこうです。
  67. 滝井義高

    滝井委員長代理 井堀君。
  68. 井堀繁雄

    ○井堀委員 二、三参考人の方にお尋ねいたしたいと思います。私ども新聞社ストライキについては重大な関心を持っておるわけであります。申すまでもなく新聞は、新しい日本を作る上に重要な役割を持ちますことは何人も認めるところでありまして、ことに民主主義を推進するためには新聞社の持つ責任、威力というものはきわめて大きいと思う。こういうところで労働争議が起るということはよほどの理由があると想像されるのであります。しかしストライキが起きました以上は、そのストライキが一日も早く、しかも合理的な解決を望むのでありますが、そういう意味で参考人の方にそれぞれ御意見をお聞かせいただこうと思うのであります。大体資料をいただきまして一通り目を通しますとあらましわかるような気がいたしますが、今までの参考人のお話を伺いましても、ストライキの原因がきわめて明確になっておるようであります。それは私の聞き違いであれば御訂正を願いたいと思いますが、労使両方とも共通した主張は、昭和二十八年から九年ごろまでは黒字経営であったものが、急に赤字経営に落ちてきたのをどういうふうに解決するかということの問題があるようであります。これはいずれのローカル紙も同様の悩みを持っておるように私ども承知しておりますが、先ほどの質問でお答えになりましたところでは二つの原因をあげられておるようであります。一つは中央の大新聞の地方への進出と、激しい競争が起っているということ、これは共通したもののようであります。特に東京に近接しているところのローカル紙の困難なことは私ども想像ができるわけであります。だからこの問題については、経営者従業員も非常な苦心のあるところだと御同情申し上げるにやぶさかでないのであります。しかし第一にあげられました労働組合と会社側の調整が思うようにいかぬことをその原因に須田さんはあげたようであります。まことに私どもは残念なことだと思うのであります。そこでその点についてもう少し詳しく知りたいと思うので、ごく事務的なお尋ねを一、二試みたいと思うのであります。  第一に須田参考人にお尋ねをいたしたいと思いますが、あなたの方では、配付を受けた資料によりますと、昭和三十年の十二月の四日付でりっぱな労働協約をお作りになったのでありますが、この協約内容を私どもが拝見をいたしますと、この協約の精神を労使が十分理解されて忠実に守ろうということになれば、今回のストライキの発生するような余地がないのではないかというふうに思われるのです。そういう意味で、たとえば直接原因になりました、すなわち労使の意見の対立は、会社側は、経営の困難を首切りによって解決しようという大量の解雇の宣告をし、組合側はこれに反対しておるということが明らかになったようであります。そういうときには、これは労働者にとっては、言うまでもなく死活の問題であります。しかし会社側にとつては一番経費節約の適当な手段と考えておるかもしれぬ。しかしこういう問題の解決は労働協約の中では一番強く取り上げておるようであります。そういう点で会社側組合の間で話し合いができなかったということが争議の原因のようにうかがえますけれども、この点に対して須田さんと委員長平野さんの見解を率直に聞かしていただきたい。これは非常に大事なことだと思いますので、そういう首切りをしなければならなかったという原因もありましょうけれども、その原因は先ほどのお話である程度了解はできました、いい悪いは別として。その話し合いが円満にできないということはまことに遺憾なことでありますが、それをどうして解決するかということが、ストライキを起さないで、今日のような事態を発生しないで済むか済まぬかの境になるのではないかと思いますので、一つこの点については会社側の心持を率直に聞かしていただきたい。続いて組合側のこれに対する見解を率直に一つ聞かしていただきたい。
  69. 須田守正

    須田参考人 一口に申し上げますと、会社労働協約を守るから一生懸命話をいたすのでございまして、決して労働協約を頭から無視してかかろうという意図は毛頭ございませんでした。しかしながら、会社の十月末現在の赤字というものは、融資はとまる、紙は来ない、事実上労使がうまい話し合いにいったにしても、紙がとまるような状態になっていたわけでございまするから、企業整備をするということは緊急な課題であったわけであります。しかも千葉新聞が企業を整備してほんとうにやっていくんだという意思が、会社組合も渾然一体となったやつが外にも現われる必要がございました。それは銀行や紙屋に対しても、今度はほんとうに連中本腰を入れてやるわいという形を出さねばならぬという点もございますので、この点は平野委員長も十分わかっておられるはずです。従って私ども労働協約の精神にのっとって一生懸命に話をするからどうか同意権の乱用だけはやめてくれ、こういう態度でもって話したのでございますが、どうも労働協約を守らぬと言われると会社側だけが守らぬように言われそうなのでございますけれども協約そのものを正しく守れば、あの協約でも決して会社組合とがけんかしなくて済むと思います。何でも都合の悪いものはちょっとでも侵食を許さぬ、実情を無視しても同意権を乱用するという御態度では、とうてい労働協約を守ろうとしても守り得ないということを御了承願います。
  70. 井堀繁雄

    ○井堀委員 私のお尋ねが抽象的だったからお答えいただきにくかったと思いますので具体的に伺いますが、協約書の中の、これもちょっと引例されているようでありますが、十一条に首切りのことが書いてあります。このときは、会社組合話し合いで同意を得なければ首を切らない、こう約束しておりますね。これを組合側と忠実に実行なされたか。
  71. 須田守正

    須田参考人 いたしました。
  72. 井堀繁雄

    ○井堀委員 どういう具合にいたしました。
  73. 須田守正

    須田参考人 終局の組合の同意はもらっておりません。組合は同意しないのでありますから。
  74. 井堀繁雄

    ○井堀委員 この条文でいきますと、同意を得られぬときは首を切らぬことになるのですが、その辺の解釈はどうですか。
  75. 須田守正

    須田参考人 その点はこの整理は非常に緊急を要するものだから、どうか人員のワクをきめてもらいたい、それから数をきめてもらいたい、そうしたら人についてももちろん相談をするからと言ったのですが、その数が出てこないものだから、こないままで人名にまで及ぶことは前後いたしますし、先ほど申し上げた混乱も起しますので、組合の事後修正、同意権は十分に尊重するから、一応一つ三十七名は承認してもらいたいというふうに話したのでございまして、頭から全然何も聞かないという態度ではなかったわけです。もちろん労働協約十一条にそう書いてありますことは十分承知しておりますし、それを守る誠意は十分にあったわけでございます。
  76. 井堀繁雄

    ○井堀委員 会社の方では、組合に同意を求めたけれども同意を得られなかった、それで一方的な意思で解雇を断行された、こうおっしゃるようですが、それはそういう事実が明らかにあったのですか。なお会社側としては、その理由として紙がとまった、大口の融資が思うようにいかなかったということを理由にしておるようでありますが、それだけの理由でありましょうか。今までのお話を伺ったりあるいは資料によりますと、労働組合の方がどういうわけで同意を与えなかったかはあとで平野君にお尋ねいたしたいと思いますが、この協約によりますと、同意を得られないときは会社側としては解雇を思いとどまるより仕方がないと、私どもはこの文章だけで判断するわけです。その点を強引に押し切られれば、それは反対の理由いかんにかかわらず、この協約からいえば争いになるわけです。すなわちストライキになってしまう。ストライキになれば、会社の利害関係だけでストライキというようなものを起してはならぬことは、先ほど来自民党の方も言われたように天下の公器としての役割があるわけであります。ですから、そういう意味でこういう協約をお結びになったと私は思うのです。そういう事情で、どうもそこがわれわれによくわからないものですから、第三者によく理解のできるように会社側の意思を私がかわってお尋ねしておるわけです。大事なところだと思いますので、一つ率直に聞かしていただきたい。あなたの先ほど来のお話を伺いますと、労働組合がとかく会社側に異を立てて、それを経営の困難の理由にされておるようであります。そういう点に対する御意見がありましたら、この機会に率直に聞かしていただきたいと思います。私どもはそのことを公正に判断するために、事実をできるだけ当事者から聞きたいと思っておりますので、よい機会だと思いますから率直にそういう点について御意見を述べていただきたいと思います。
  77. 須田守正

    須田参考人 協約の問題につきましては今申し上げた通りでございまして、それ以上付加することはございませんが、私の感じとしてはもちろんそれで十分であるとは申しませんが、経営者として誠意を尽して話をしてやっていく、終局の責任はこっちが持たねばならぬ、こう考えておったのでありまして、虫のせいやかんのせいで整理なんかできるものではないということを十分に承知しておりますから、ほんとに納得のいくように話してわかってもらうということを望んでおったわけであります。それ以外に何もございません。
  78. 井堀繁雄

    ○井堀委員 それでは組合側の方にお尋ねいたしますが、第十一条の規定に基いて会社側組合に同意を求められたが、組合は同意を与えなかった、こう言っておられますが、どういうわけでこの交渉が不調に終ったか、要点だけでけっこうですが、組合の方の御意見を伺いたいと思います。
  79. 平野久夫

    平野参考人 同意を求めたと言っておりますが、確かにワクをのめという要求はして参りました。それは十月の三十日に、四十名という線を出してこのワクをのめという話をしてきた。これに対して四十名——五人に一人という首切りをした場合にはまず新聞が出なくなるということを考えなければならぬ、しかも労使協議会では今収支とんとんでいけるという見通しが立っているじゃないか、これをやってみなければいかぬじゃないか、まず先にそれをみんなで全力を尽してやってみてそれからにするのが順序だ、とにかくまだ早いのだから、その点を先に話をして打開策を考えるのがいいじゃないか、組合でも協力をするんだから首切りは勝手にやらない方がいいだろう、こういう話をしておったのです。ところが翌日にはもう三十七名の首切り状を送ったと労使協議会で一方的に通告をした。もう話し合いの余地が全くないわけです。会社側はワクをのんでもらえないから名簿を出せないと言っておるのですが、そのときはすでに名簿を発送しておるわけです。組合の方では、まだそこまで話し合いがいっていないじゃないかということを言っておったのですが、事実はそういったことで同意を一方的に強要されたけれども組合としては同意をするすべがない、そこまで段階がいっていない、しかもまた組合として、首切りをしなければならない理由もないし、三十七名、四十名という大量解雇をした場合に、新聞が出なくなるということは専門的にはっきり検討されておる。そういった点で同意が与えられなかったというわけです。  さらにもうちょっと割って話しますと、二十四日いよいよ労使協会議で、先ほどから説明しております百二十何万という削減に成功したとき会社側はちょっと考え違いをしおって、予算額から切ったのを実績から切ったと感違いをしておる。ですから六十五万余円という黒字が予算上出ておったにもかかわらず、これは六十五万ばかり不足だ、こういうような考え方をしておった。組合に対して、あと六十何万足らぬ、これで行くと五、六十人首を切らなければならぬ、どうするのだという話があった、そのときに私の方からあと六十何万か出てきたらいいのか、首を切らないで済むのか、こういう話をしましたところが、いいのだ、あと六十何万出てくれば首を切らないでいける、とんとんならいいという話が須田重役から出てきた。それでは六十何万私どもの方から出しましょうということで説明しましてごらんのごとく収支とんとんでございます。従いまして首を切らないで済むと思いますから首切りはやらないで協力していきましょう、しかしながらこれは絵にかいたもちなんだから実際にやっていく場合には会社が誠意を尽す気持が必要だ、その点は組合側もやる気持がある、会社も今までの方法をさらに努力をしていただいて、これがうまく行くようにしてくれ、そういった話をしたわけです。ところがその翌日から収入が落ちた、また首を切らなければならぬと言ってきております。はっきり首切りを一方的にやろうということを考えておったということは、労使協議会交渉経過にも出ております。こういう点で首切りの必要はない、また同意することはできない、こういうことに結論をつけたわけでございます。
  80. 井堀繁雄

    ○井堀委員 今須田さんにもう一度お尋ねをしたい。組合の方の御主張がございました。これを会社側の方はその通りお認めになるか、会社側はこれに対してどういうお考えであったか、御意見があればお伺いをいたしたい。
  81. 須田守正

    須田参考人 平野君は絵にかいたもちだという言葉を使われましたが、まったくその通りでございます。そこで私が申し上げておるのは会社が示した予算額というものは、収入はいつもの普通の実績よりも高いところに目標を置いたのでありますし、支出の方の予算額は実績よりもずっと低いところに目標を置いて、それを基準として検討いたしたのですけれども会社は決して何か一案、二案と持っておってそれを平野君と折衝したのではなくて野放しで実績そのまま出して一応これを議案としてできるもの、出るものをほんとうに検討しようという態度ほんとうのまる裸で臨んだわけでございますから、一番しまいへ行ってこの予算の数字だというのはトリックもはなはだしい、そういう考え方では何をやったって絵にかいたもちになる、こういうふうに思っておりますから経理数字については全然同意できません。
  82. 井堀繁雄

    ○井堀委員 経緯が大体明らかになりましたが、そこで労働省当局にちょっとお尋ねしておきたい。今ストライキの原因はきわめて明確になりました。話し合い労働協約の十一条の一項に集約されるようです。この協約によって会社側は解雇の同意を組合に求め、組合側は、これを先ほどの説明でお断わりになった、こういう場合に労働協約の十一条に対する解釈の問題ですが、これは私はわかっておりますけれども、権威をつけるために、こういう協約書の十一条に対する解釈を労働省はどういういふうにおとりになるのですか、いい機会だからちょっと明らかにしていただきたい。
  83. 山崎五郎

    ○山崎説明員 この争議につきましては、労働省としては十一月一日以降の、具体的な争議行為に入ってからのことにつきましては、新聞の公共性等から見まして重要でありましたので、いろいろ事情を調査して参りました。本日両参考人からいろいろ意見が陳述されておりますが、なぜここに至ったかということにつきましては、実は争議発生前の状況についてはわれわれは資料を持っておらなかったわけであります。でありますので経理状況の説明あるいは交渉内容等につきましては、実は本日初めて聞くような状態でありまして、あまり詳しく承知いたしておりません。今井堀委員のお尋ねの、協約のことでございますが、これは具体的に実際にこれを調査いたしませんと、明確にはお答えできないのでありますが、しかし第一に申し上げられることは、もちろん労働協約は守るために作られておるのでありまして、労働協約が守られないということでありますならば、これは協約が全くその必要がなくなるのであります。そして人事の問題に関する同意約款の問題から出てくる協約違反の件でありますが、この点は一般的な考え方から申しますならば、もちろん同意を要するということになっておりますならば、これは当然同意を得なければならないと思うわけです。     〔滝井委員長代理退席、中川委員長代理着席〕 今この両当事者のお話を承わっておりますと、その間解雇の問題をめぐって両者の間に話し合いをした、しかし同意を得られなかった、これは同意権の乱用だ、こういうことを経営者側の方では申しておるのでありまして、全く相対立しておると思います。しかし先ほど申し上げましたように、同意を要するということになっておれば、当然これは同意を要しなければならないというのは一般的原則であります。ただこの同意権の問題でありますが、同意権を乱用しまして、組合側の主張が通らなかった場合も、これは判決で明らかであるし、またその逆の場合も多いのであります。この具体的な千葉新聞の問題につきましては、われわれ今まで県から受けておる報告によりますと、協約違反の疑いもないことはないのでありますが、報告はその間の交渉経過等があまり詳細でないのでありまして、明確にそういうことは言い得ないし、またただいま須田参考人の同意権の乱用の問題につきましても、これは具体的な誠意を持って交渉しましたが、またその緊急性もありましたが、十分了解し得ない点もありますし、その半面、公共性ということになりまして、直ちにストライキに入った場合においてはどうなるか、こういうようなことから考えても、いろいろその緊急性を上げておりますが、新聞が結果的にはとまるということを考えるならば、いましばらくこの問題については誠意ある交渉を継続すべきだったと思われる点もありますので、本件につきましては明確にこういうふうにと申し上げるには若干資料が足りないのであります。この問題につきましては、目下組合側より千葉地方裁判所に対し地位保全の仮処分申請を行なっておりますので、やがて裁判所から明確にされるであろう、こういうふうに期待しております。
  84. 井堀繁雄

    ○井堀委員 私は今の答弁を聞きまして非常に意外だと思うのであります。このストライキが発生してからかなり長い期間を経ておる。ただいま労働省がそういう答弁をすることはまことにもって不届きしごくだ。労働行政に対する怠慢を国民は非常に不満に思う。特にわれわれのような地位にある者はともに責任を感ずるわけであります。労働協約を結ばせるように、国の意思で労使間に勧めておるわけです。その一線に立っている労働省です。それは言うまでもなく労働協約によって産業平和を守っていきたい、労使関係の合理的な調整をこれによってはかろうということが、一応専門家、識者の間では一致した見解である。しかもそれは国策として大きく取り上げられておる。そのために労働省の任務というものはかなり大きく期待されておるわけであります。冒頭に申し上げたように、こういう日本の民主主義成長のために重大な役割を持つ公器にひとしいところで、しかも原因は明らかな十一条の解釈の問題を、いまさら私がお尋ねしなければならぬこと自体、残念だと思います。こういう点からいえば争議がこういうことで起ったということは——今お二人の話がすべてだとは私は思いませんが、しかしきわめて明確になっておる。両方の言い分はちっとも食い違いがありません。珍らしいことです。経営者側も組合側もいっておるように、その解雇の理由は経営の困難を訴えておるし、組合側もこれを否認しておりません。非常に黒字でよかったものが悪くなってきたことを認めておる。その問題はあくまで話し合いをするということがこの協約の精神である。それがストライキに発展するということは非常に遺憾なことであります。しかしそのことが起ったら、労働省という役所は、こういう協約がない無協約状態のところでも、もっと積極的に争議防止のあっせんなり、ないし発生したらなるべくすみやかに解決しなければならない。こういうことをやらぬものだからスト規制法が出てくるし、みそくそになる。大事なことを一つもやっていない。国会にまで御迷惑をかけるような事態になる。そうして聞けばまだ答弁も四の五の言わなければならぬ。こういうずさんなことではいけない。そこでもう一つ聞いておきたいことは、もちろん地労委も心配しておるようでありますが、何よりも労働省がまっ先になって、こういう原因の明らかなものを、解決をするために処置が行われておるか、その経過についてこの機会に明らかにしていただきたい。
  85. 山崎五郎

    ○山崎説明員 協約に関する井堀委員の御説は、私決して反対ではありません。われわれも労働協約は守らなければならないという建前をとっております。もちろんこの千葉新聞協約問題に関しては、われわれの得ておる報告によりますと、協約違反の疑いが非常に多いことも先ほど述べた通りでありますが、明確にそれを申し述べることが本件の解決になるとも実は考えておりません。先ほど私は、なぜこういうような争議が起ったかということは、原因は一口に申し上げますとわからないわけではありませんが、経理内容その他交渉が何回行われ、何時間行われたか等については実録等を見なければ、会社側あるいは組合側にそれを聴取してもわからないので、今さらこれを明確にすることもできませんし、裁判所の決定に待とう、こう申し上げたのでありますが、争議後に入ってから、先ほど述べたように厳重な監査をいたしまして、毎日この状況についてはわれわれも聴取しておりましたし、またその都度府県の労働部長あるいは労政課長に指示しまして、すみやかに労働委員会において解決されるように要請もいたしました。また県当局としても、本件につきましては労使双方もこれは御承知と思いますが、千葉県の知事が労働部長帯同の上で、この事情聴取に当って解決に努力されたこともございます。今前段の問題につきまして両参考人からいろいろと陳述を聞きましたが、私たちの最も心配しているのは、これからこの問題がいかに解決されるか、次第に悪いような条件に進みつつありますので、昨日も府県の部長を招致しましてこれが対策を講じておりますし、また若干、いろいろ解決の努力の全貌を明らかにすることは、かえってこういう問題の解決への道が遠くなる可能性もありますので、詳細は申し上げられないのでありますが、いろいろ各方面の意見を聞き、近江絹糸の争議を解決したときのように、いろいろ非常に広範囲な立場から、この問題を解決していきたいというふうに努力を重ねておる次第であります。
  86. 井堀繁雄

    ○井堀委員 組合課長に小言を言うのは少し酷かと思いますけれども、本来は労働大臣にきょう出てもらわなければならない。こういう責任のある問題を処理することができぬようなことでは、国政が担当できるものではない。ですけれども大臣は、きょうは参議院の方でどうしても出られぬということでありますから、課長から大臣によく復命してもらいたいと思う。国会としては労働省の責任において、この争議に関する限りはもっと積極的な措置をとるべきものではないかという意見であった。もしそれに対する意見があるなら次の委員会に出てきて堂々と述べなさい、出られなければもちろん私の主張に承服したものと認める、またそうであると私は思うのですが、その点をよく復命をしていただきたい。ということはただ単におしかりをするというのではなくして、こういった問題の解決は、やはりこういうきわめて明確な協約上の問題にかかっているので、こういうような問題でいつまでももめておってはいかぬと思いますから、早く事のよしあしのけじめをはっきりつけていただきたい。この機会に両者のおるところでそういうことを労働省に申し上げるのはあまり好ましいと思いませんから、私は遠慮申し上げて婉曲にお尋ねをしておるわけであります。私も多少協約については知識を持っておると思うのですが、つべこべ言う余地はないと思うのです。この協約の精神を守っていくことによってストライキの発生は防げたと、こう私は理解できる立場です。しかし起ったものを今さらどうこう言っても仕方がありませんが、問題はここにあるのですから、解決もやはりその原因に明確に合致できるような条件でいかなければいけない。私はあっせん案などを批評しようとは思いません。あっせん案も拝見をいたしました。また組合態度会社側態度も伺っております。ああいうことにもっと労働省は助言をするなり、あるいは調査の結果を提供して、そういう成案についてあやまちのないようにすべきではないか、こういう点に私ははなはだ不満を感ずる。抽象的に言っておるのではなくして、労働省の動きを私は現場に行って調べてきました。全く不届きしごくです。今からでもおそくはありません。問題解決はここにあるわけです。この点に私は留意さるべきだと思います。  これで私の質問は終るわけでありますが、参考人がお見えになっておりますから、せっかくの機会にもう一つのことだけ伺っておきたい。それは争議の解決の一日も早いことを希望してお尋ねしておるのですが、非常に困難な問題が一つあるようであります。それは経営が非常に困難だということであり、組合もこれは認めておるようであります。しかしその経営の困難を、会社側の方は直ちに労働者の首切りによって解決をはかろうとしたところに、率直にいって私はかなりあせりがあるように感じられる。それから労働組合の方も、その解雇問題に対して反対される立場は、私は全く理解ができるのですが、争議行為になる前にもっと方法がなかったものであるかというような、これは全くあとのぐちであるかもしれませんが、そういう感じを持つのは私一人ではないと思うのです。それには私はさかのぼって原因があるのじゃないかと思う。それは労使の間がうまくいかなかったということで、今まで参考人のお話の中でけんかになって、争いになりましたから、両方の欠点をつつき合うということは当然のことだと思うのでありますけれども、しかしそういうトラブルの表に現われたものに私はあまり興味の持っておりません。もっと本質的なものが聞きたいのです。それは、果してこの労働協約の精神を両者が忠実に履行されようとしたかどうかということについて、多少疑いを持つ。そのことは解決の上に必要だと私は感じますのでお尋ねをするのですが、先ほど来の御報告の中で、今まで経営がうまくいったのがいかなくなったのは、何かことさらに労働組合の会社側に対する妨害、障害があったということを会社が言っておるようであります。この点に対して何かこの機会に言いおくことがありますならば、具体的に率直に一つ言っておいていただくことが、この問題解決の上にも私は有効なことだと思うし、それから今後われわれが、また労働省は特に労働問題の平和的処理をやる上に大いに学ぶべきととではないかと思います。あなたが先ほど来言っておることで私にはわかるような気がいたしますが、記録に残しておくにはもっと具体的に明確に言っておいた方がいい。労働組合に対する会社のまあ感情ではなしに、あなたのお考えというよりも、会社のお考え方をこの際明らかにしてもらったらどうかと思います。
  87. 須田守正

    須田参考人 結局抽象的にお答えをするよりほかにしょうがないのですが、具体的といってもたくさんございます。もちろん私としては、労務担当重役としては、このむずかしい組合一つ何とか話し合いでいこうということで、えらい乗り気で話していったことは事実でございましてむしろほかの重役諸公よりも、一つ組合と取っ組もうという気持で今度の交渉をやって参りましたので、決して先生御指摘のような気持は持っておりません。
  88. 井堀繁雄

    ○井堀委員 私は非常にけっこうなことだと思います。労務担当の重役でありますからそうでなければならなぬということは言うまでもないのでありますが、しかし今まで伺っておりますと、あなたもさっき述べられたように、千葉新聞といえどもやはり音に聞えたローカル新聞であります、そこで何回かストライキを経験したとあなたはおっしゃる、それがこう争いになったから、すべてそれは組合に責任があるとあなたはおっしゃるけれども、そういう点で、労働組合を相手にして四つに組んで話をしていくに足る団体だというふうに今おっしゃった、会社もやはりその通りであったでしょうか、どうでしょうか。
  89. 須田守正

    須田参考人 私が労務担当の重役でありますから、従って私の申し上げたことは会社態度であるはずでございます。
  90. 井堀繁雄

    ○井堀委員 先ほど来いろいろ伺っておりましたのと今のあなたのおっしゃられることと違いがあるようでありますが、私は後者をとりたい。今あなたのおっしゃられた態度をとりたい。そのお気持で労働組合と折衝されるならば、きっと早い機会によい結果を得られる解決ができるだろう、私はそのことを念願しております。過去をあまりつっつきますと解決の上によい結果にはなりますまい。そういうふうに私はなるべく善意にあなた方の公述を受け取りたいと思っておるわけであります。  次に労働組合側にお尋ねをいたしたいのでありますが、会社側は、過去においては労働組合は信用ができない、労働組合がことごとく会社の経営方針に逆らってきた、こういうふうに述べられてきました。しかしそれはトラブルの現象であって、会社ほんとうの意思は労働組合と四つに組んで話し合いをしていきたいという態度には変りはない、こう言っておられますが、まあ過去については組合も言い前があると思うのです。過去についてもし申し分があればこの機会に言っていただきたい。それから続いて、われわれは解決を一日も早く希望して調査を進めております。そういう意味で、会社が虚心胆懐に今おっしゃられるように組合と四つに組んで話し合いをされよう、しかもただ単に話し合いでなくてここに労働協約がありますから、この協約の精神に基いてやるという前提があるわけです。こういうふうにやられますならば、組合としてはこれと四つに組んで解決に入られるという御意思があるか、組合員の間にどういう空気がみなぎっておるか。もちろん相当激しいトラブルが起っておりますから、なかなかそういう大勢の人の感情を整理するということは容易なことではないと思うが、それらの点についてよい機会ですから率直に聞かしていただきたい。
  91. 平野久夫

    平野参考人 組合として基本的な考え方は、どんな話でも相手が誠意をもって話をしてくるならば、誠意の出し惜しみをしないで話し合いをして解決をしたい。これが私ども組合結成以来現在まで持ち続けている基本的な態度であります。先ほどから二回新聞がとまって、そのために部数も大きく減ったのだとかいろいろ言われておりますけれども、実際に新聞がとまったのはことしの六月に一日限り、そのほかは全面ストは二日、三日続けたことはございますが、その都度組合がある程度の仮調印をするなり団交を持つという約束をするなり、そういった形さえとれるならば組合員を何とか執行部が押えるし、組合も非常に戦いが不利になる、危険になるという困難を昌して、新聞発行を一応やって話し合いをするという態度新聞を出してきた、そういった点では発行部数への影響はほとんどございませんでした。これは組合調査によっても、ことしの六月一日とまりましたけれども、事実上部数の減少はほとんど経営に影響するほどはございません。そういうことからいって会社側組合に一方的に責任を転嫁をしてしかも平和的に話し合うという態度を言葉の上では出しても、労働協約を守るという面で出さずにやってくるという場合には、おそらく話し合いの余地はないだろうし、また私どもが誠意を尽すという形もはっきりした具体的な事実として現われてくることは困難ではないかと思うのですが、ただ基本的な態度はあくまでも変っておりませんから、そういった事態が起り得るとすれば、組合はもちろん話し合いによって解決をしていくという基本線の通りに進みたいと思います。そういった点では組合がやり得るということはお約束できると思います。
  92. 井堀繁雄

    ○井堀委員 りっぱな態度を表明されましたので、過去のできごとについては資料で十分検討していけると思います。それから過去のことは隠すことのできないものでありますから、ここで何もあばき立てなくてもいいと思います。そこでせっかく御多用のところを御出席いただいておりますので、千葉労協の議長山村さんにお尋ねをいたしたいと思いますが、今お聞きのように労使双方の態度というものはきわめてはっきりしてきたと思うのであります。今お話のありましたことをそのまま受け取りますと、やはり労働協約の取りきめが守られないということになりますと、これは話し合いも何もありませんから、打ち合いになるのでありますが、やはり労働協約を守るということが今限られた一番狭いワクでありますけれども、一番はっきりしたワクだと思います。もしこういう協約が守られぬことになれば、これは組織労働者である限りにおいては、どんな困難があっても守らせるために圧力をかけ、あらゆる手段がとられるということは当然なことと思います。そこで友誼団体として近くにおいでになる団体としては、こういう労働協約が、今明確になっておりますから、これは労働省を通じてもう少し私は当局の活動を期待するつもりでおりますが、こういうものに対して、千労協としましては会社側に対してあるいは労働組合に対して、激励したりあるいは警告をしたりしたことがおありかと思いますが、われわれは今後この種の問題がどこにも発生しないように願っておるわけであります。そういう点で、組合員の皆さんが協約の十一条の精神に対して、どういうように友誼団体として、——おか目八目ということがありますが、争いの禍中にない労働組合として、冷静に見て、この十一条に対する解釈なりこれに対する今までの動きなりを一つ御明明願いたいと思います。
  93. 山村実

    山村参考人 今回の千葉新聞の原則的のものはいわゆる労働協約を両者が消化しなかったところに原因があるという率直な見方をいたしております。従ってせっかく労使双方が誠意を尽して結んだにかかわらず、その協約が守りれないということは、国全体から見ましても、県全体からいきましても、労使慣行の上に大きな問題だというそのことについては、県下の労働者は一致した解釈を求めていますし、これは私は労働組合だけではないと思っています。それはなぜかといいますと、千葉県の各経営者経営者協会の方々にお会いいたしましても、協約はとにかく守らなくては、あとは労使慣行にたよるものは何もなくなってしまう。このことだけは経営者といえどもそのときそのときに応ずる考え方としてそのものの解釈を変えていくことはいけない。企業の不安になる、こういうことをはっきりいっております。そういうことからいいましても、私ども自身また私ども県労連の団体といたしましても、何とかして協約を守るという今後の長い間の労働運動の一つの戦いという気持が盛り上っておるわけです。ここで社側に私ども求めていることは、何かあるトラブルが起きたときの所産としてこういう労働協約ができてしまったものであって、また違った事態にはまたほかの考えをすべきであるという考えをやはり改めていただかないと、そのときできた労働協約は無理じいされた労働協約であって、今はそれによっては適用すべきものではないし、また過酷であるということをあえて強調されるところに、労働協約に対する認識が違うのではないか、こういう点をやはり社側には、社側というよりもし考えておられる経営者があればやはり猛省を促さなければならぬと思います。また経営者者側におきましてもその協約があることはやはり企業の内容においてどうするかということの根本ですから、そのことにのっとって安心をするとともに、また企業の発展に努力をし、またその協約の筋をよく守り、企業の発展をどうするかということをよく考えてもらわなければならぬ、こういうことを労使双方に第三者の見る目として簡単にいえるんじゃないか、こう考えます。
  94. 井堀繁雄

    ○井堀委員 よき友誼団体をこの労働組合はお持ちになったと私ども敬意を表します。労働協約を守るということは、これは言うまでもなく労使だけでありません。これが守られぬようなことになりますと、労使のよき慣行どころではなく、混乱に陥ってしまう。そういう意味で、私は今回の調査に当りまして、問題の困難な事情はある程度わかりましたけれども、また解決必ずしも不可能ではないという感じを強ういたしました。ことに労働省については、今までの参考人の御意見の中で最も重要だと思いますが、この協約の精神で問題の原因も合理的に平和的に追及される、その機会が見失われたということの責任の所在なども労働省としてはもっと明らかに調査されて、われわれによき報告をされることを希望ししおきます。  それから、今労働組合側の、当該組合並びに友誼団体の方の協約に対するお考えが発表になりましたが、その中で、会社側はこの協約に対して反対をされるというようなことがありましたが、そんなことはありませんね。
  95. 須田守正

    須田参考人 今度新しく協約を結ばれる場合には、会社も経験に徴して改訂をいたしたいという意図を持っておりますが、今の協約は今の協約として尊重して参るつもりです。
  96. 井堀繁雄

    ○井堀委員 大へん有効な御意見を聞くことができまして、私どもが当初から心配しておりました問題の解決の焦点が一つ明らかになったような気がいたします。どうか、今までのトラブル、行きがかりはあると思いますけれども、当事者各位の解決のための最善の努力を希望いたしまして私の質問を終りたいと思います。
  97. 中川俊思

  98. 横錢重吉

    横錢委員 大へん時間がおそくなりましたので、重複を避けまして簡単に御質問を申し上げておきます。なおその前に、きょう大へんおそくなったのにもかかわらず、長時間御質疑に応じていて下さる参考人方々に対して敬意を表しておきたいと存じます。今までに明らかにされましたほかの二、三について質問したいと思うのですが、まず会社側須田参考人に御質問いたします。  この争議の発生しました理由については、ストライキ人員過剰にその原因がある、こういうふうに言われておったのでありますが、どうもそのほかにほんとうの理由があるのではないか。ストライキ人員過剰で会社赤字が出てきたのだ、こういうふうにはどうも考えられないのであって、真実は何か隠されている、こういう気がいたすのです。その点について、組合側と話し合ったときに、人員整理のほかに、何か経営の合理化について具体的に数字になるようなものについて話し合われた点はございますか。
  99. 須田守正

    須田参考人 今の横錢先生の御質問に対してお答えすることは、先ほど来みんな両先生にお答えずみでございまして、先ほどお答え申し上げた通りでございます。
  100. 横錢重吉

    横錢委員 今の須田参考人意見は非常におかしいと思うのです。私の聞いたことについては、今まで私ずっと聞いておったが、お答えになっておらぬ。私の聞いておるのは、人員整理のほかに他の合理化案を組合側に示したかどうか。これをやるならば会社の企業再建は可能である、そういうような点が人員整理である。その他にどこをどうするという問題について、人員整理のほかに何かお話をされたかどうか、こういうふうに聞いておる。質問の要点を違えずにお答え願いたい。
  101. 須田守正

    須田参考人 同じことだと思うのです。経営内容良化するために経費の節減もやり、収入の増加もし、しようがない分は人員整理に持っていこう、こういうことはくどくお答え申し上げた通りでございまして、それ以上付加する何ものもございません。
  102. 横錢重吉

    横錢委員 それならば御質問しますが、会社側の方では人員過剰だというふうに言われておるが、この数カ月の間に新しい人員を相当数雇い入れております。これはこの前から、争議発生以後についても相当数の人員を、私の知っている限りでも雇い入れておる。人員が過剰だといって首切りをされておるのに、実際には相当臨時雇いというような、あるいは局長付というようないろいろな名前をつけられて人員を雇っておる。人員過剰ということにもかかわらず人員を雇い入れておったという事実は相反するのではないかと思うのです。この点についてはいかがですか。
  103. 須田守正

    須田参考人 やめた人の補充が行われた程度以下でございまして、新しく実質人員のふえたことはございません。
  104. 横錢重吉

    横錢委員 それならばさらにお尋ねしますが、この問題はストライキが理由だといわれるが、実際にストライキの原因は会社側の方にあったのではないか。それが何かというならば、ストライキの発生した原因は、先ほどから聞いておりますが、非常なる低賃金である。現在の社会の常識で一万一千円程度賃金ベースというものは、お話にならぬところの賃金ベースだ。従ってこういうような低賃金ベースが常にストライキの原因になるということは、これは社会的現象だ。従ってここに問題が一つあるのではないか、こういうふうに考えられると思う。それからまた千葉新聞の中が、伝えられる限りにおいては、社長系の独裁がある。それが他の系統との間に年中派閥争いをする。派閥争いが起って、それに組合が巻き込まれていく。ストライキの発生しておる原因というものは、絶えざる役員間の指導権の争い、これに組合の低賃金とがからみ合って問題が起ってきたのではないかと見るのですが、この点いかがですか。
  105. 須田守正

    須田参考人 会社組合員の賃金は高くするように努力いたす精神でございまして、低賃金でよろしいのだとは考えておりません。それから内紛云々のことがございますが、これは私ちょっと抽象的で申し上げられませんが、よく事情を知らぬ点もございますので、かえって横錢先生の方が地元によくおいでになって御承知のように思います。
  106. 横錢重吉

    横錢委員 千葉新聞赤字の原因というのは、私どもが他からの批評、批判、こういうふうな点で承わる限りにおいては、原因はストライキ人員過剰にあるのではない、その原因は三つある、一つは、絶えざるところの役員間の指導権争い、第二には、営業方針の誤まり、第三には金利がこれを食っておる、この指導権争いと営業方針の誤まりと金利のかさんでいること、この三つの点に千葉新聞赤字がある、こういうふうに批判をするものがあるわけです。私どももあるいはそうであるかな、こういうふうに考えるのであるが、今第一の指導権争いの点については触れられたくないようでありますからこの程度にいたしますが、たとえば営業方針の問題にしましても、現在まで四万一千部程度しか刷っておらなかったということは、二百二十万の県民の中でこれは非常に少い。しかも争った後においては、今の御発言では、一万五千部程度しか発行することができないであろう、こういうような非常に敗北主義的な、消極的な考え方自体が営業方針となって現われて伸びないのではないか。伸びる余地は十分にある。これは千葉県の中には千葉新聞の有力なる競争紙というものは現在ない。大新聞というものはあるけれども、ローカル紙としては断然群を抜いたところの存在が千葉新聞である。これと競争するだけの新聞は現実にはないんだ。従って出そうと思ったならば四万部程度のものではなくて、五万、六万、これは十万部発行は易々たる問題である、こういうふうに一般的な人人の見方があると思うのです。それが実際になされていないというところに問題があるのではないか、こういうふうに考えるわけです。  それからさらに承わりたいのは、金利について、これが食っておるのではないかという点です。これは現在の千葉新聞の設備が非常にたくさんの金を借りてやっておる。このために年間の金利というものは相当な額に上っておる。この金利は人件費どころの騒ぎではない。これは三十七名の解雇を行なったとしましても、年間の支払経費は四百万か五百万程度である。この程度しか三十七名の首切りでは浮かすことはできない。しかも首切りを行うならば、退職金その他でもってその倍以上の金額が本年内に支払われなければならぬ。従ってここのところにはほんとうの企業合理化という考え方を受け取るわけにはいかない、こういうふうに思うのです。そのために金利はどの程度かという点も重要な課題になると思うのですが、この点経営上の秘密でお答えできなければやむを得ないが、もし差しつかえないならば概算でも一つお答えいただきたいと思います。
  107. 須田守正

    須田参考人 経営上の秘密などはちっともございません。金利は大体五十五万円くらい毎月計上いたしております。主として千葉銀行に払う金利でございます。
  108. 横錢重吉

    横錢委員 大体この程度の金利かというふうに想像はしておるのでありますが、この金利が千葉新聞の場合には重要なポイントになっておるということが私は赤字の原因であろう、こういうふうに見ておるわけです。  それから争議の発生の理由について、先ほどから銀行の方が金を貸さない、そのために行き詰まったという旨の御発言があったと思うのですが、私どもが知る限りにおいては、銀行では金を貸さぬとは言っておらぬ、こういうふうな点を聞いておるのですが、この点はどっちの方が正しいのか、承わりたいと思います。
  109. 須田守正

    須田参考人 銀行が金を貸してくれるという話は初耳でございまして、ちょっと私経営者側としては聞いておりません。
  110. 横錢重吉

    横錢委員 問題はいろいろな点にあると思うのですが、千葉新聞は現在の規模をつぶしてしまうという考え方が今の役員の中にあるのではないか。そうしてあの千葉新聞社をデパートにする。これは千葉新聞社が県庁の前なんで非常に都合がいい。それであの中で編集だけ行なって、印刷は小松川の輪転機を動かす、こういう方法でやるならば大体人員は百人程度で済む、こういうふうな構想のもとに、そこに一応の今度の争議に対する前提があるのではないか、こういうような巷間の批判がまた相当出ておるのですが、この点について責任者であるあなたとしてはどういうふうに考えておりますか。
  111. 須田守正

    須田参考人 デパート云々などという話は全然ございません。将来もないことを明言いたします。
  112. 横錢重吉

    横錢委員 先ほどからの会社側参考人の方の御意見では、何とかしてこの新聞を発行していきたい、こういうふうな点の御答弁があったと思うのですが、会社の方では、千葉新聞社は来月の二日に解散をするかどうかという株主総会の招集をしておる、こういうふうに聞いておるのです。この事実があるかどうか。
  113. 須田守正

    須田参考人 事実はございます。ございますが、解散になるやら解散にならないやらはちょっと私のところではお答えできません。これは株主がきめる問題でございまして、私どもにはどうにもならぬ問題でございますから、自分たちの考え方をこの上に乗せるわけには参りませんので御了承願います。
  114. 横錢重吉

    横錢委員 それならば承わりますが、株主は大体何人ぐらいあって、その中の大半の株を持っておられる方は何人ぐらいか、一つお差しつかえない程度でお答え願いたい。
  115. 須田守正

    須田参考人 よくこまかに覚えておりませんが、五、六十名であったと思います。それから千葉新聞は御承知のように発足当時十八万、この出発をするときに古荘四郎彦さん、中村庸一郎さん、荒木僧正さん、それからヤマサの醤油の社長さんの浜口さんでございますか、そういう方たちが数人してお作りなったので、そういう人たちが今でも大株主であると思っておりますが、こまかい具体的な数字は存じません。
  116. 横錢重吉

    横錢委員 株主の顔振れについてお触れにならなかったわけで、今お話になったのは大方会社を作った当時の顔振れであろう、現在では相当変っておるのであります。しかもこの株の大半を握っておる者はそう数は多くない、こういうふうに承わっておるのです。     〔中川委員長代理退席、大橋委員長代理着席〕 だとしますならば、あとの人数は一応この会社の運営あるいは解散という基本的な問題については発言を持つほどの顔振れではない、こういうふうに思うのですが、この場合に、会社が解散するかどうかという決意をしたということは容易ならない問題だと思うのです。経営者が経営を否定する、会社を解散するということは容易ならない最後の段階であって、一たび口に出すとするならば解散というほんとうの腹をきめなければこれはできる問題ではなかった。それが解散をするかどうかというふうに、どっちにもとれるような議案の出し方をされて招集しておる。しかもそこにはきわめて少数の人数しかおらないのではないか、こういうふうな点を見るときに、この解散ということが株主総会によってきまるという問題ではなしに、その議案を出した人人数人によって解散をするかどうかということはすでに握られているところの問題だ、こういうふうに思うのです。これを今あなたが代表者であってよくわからないということは納得がいかないわけです。この点に関して単に労働組合の労働問題を解決つけるために、あるいはまたこれをおどかすためにこういうふうなことをやったというふうには私どもは考えておらないのでありますけれども、一体この解散に対する考え方というものがどの程度考えられておるのかお承わりいたしたいと思います。
  117. 須田守正

    須田参考人 解散をするのだということを私のところでは責任を持ったことは依然として申し上げられませんが、私どもとしてはあの大へんストライキになってしまって、株主に対して何とも申しわけないし、少くとも会社の現状を報告したり、将来の問題についての御意見を伺う機会を持たねばならないと考えておったのでございますが、解散ができるやらできませんやらは、あげて十二月二日の問題でございまして、私は今ここで先生に解散はどうであるということはちょっと御答弁しかねますから……。
  118. 横錢重吉

    横錢委員 もう一つ伺いますが、それでは会社の方としてはなるべく早く出発をして新聞を発行していきたい、こういうふうな気持には変りがない、こういう点どうでございましょうか。
  119. 須田守正

    須田参考人 でき得るならばそうしたいと考えております。
  120. 横錢重吉

    横錢委員 それでは最後に労働省の政府委員に承わりますが、一昨日の参議院における千葉新聞問題での質問で、中西局長がきわめて意外な答弁をしておることが新聞に出ておる。これは非常に意外な文句であって、私は新聞の書き誤まりではないかと考えておったのですが、先ほど井堀委員質問に対して答えておられるのを見ると、やはり軌を一にしておる。従ってこれは新聞の報道が誤まりではない、こういうふうに考えたわけなので、その観点から質問をするわけですが、こういうような労働協約の違反問題が出た場合に、労働省としてとっておる態度は、きわめて傍観的な第三者的な態度をとっておることは非常に意外だと思うのです。労働省は労働法の取締りにも当り、指導にも当り、あるいはまた育成にも当っておるはずなんです。その中では労使問題を円満に解決つけていくためには、何といっても労働協約を結ばせる、労働協約によって争議を絶やしていく、これが今日の社会における労働省の役割でもあるし、かつまた労使問題を解決つけるためには、この方法以外にはないと考えておるのです。従って労働協約で締結をされた事項というものは厳格に守らなければならない。違反をするものがあったならば、これに対するところの法的な解釈、指導、そういうものをどしどしと当局は出して当るべきだ。今度の問題の場合には、明確なる労働協約のじゅうりんがある。このことに対して中西局長の答えというものは、争議の場合には同意を得るといっても、事実上解雇というようなものについては同意を得られない場合が多いという答弁をしておる。あなたもそういうことを言っておる。これはもしこういうふうな解雇の問題について同意を得られない、だから切ってもいいのだ。切ったあとは裁判所でやればいいということであるならば、これは何のために労働協約をふだん結ぶのか、何のために金をかけて指導しているのかわからない。そういうような労働省の態度はこういうふうな争議の長期化あるいは困難、これをもたらすと思うのであります。この点に関する見解を一つ伺っておきたいと思います。
  121. 山崎五郎

    ○山崎説明員 先ほどお答えした通りでありますが、一昨日の参議院における中西労政局長のお答えは一般的なことを申し上げましたので、千葉新聞の場合につきましては具体的に承知しておらなかったということで明確にいたしませんでした。私先ほど井堀委員質問に対してお答えしたのでありますが、重ねての御質問でありますのでお答えします。  本件につきましては、争議発生すなわちストライキに入った以後にわれわれは報告を受けたのであります。いろいろ複雑な交渉等もあったことはその後に聞いたのであります。先ほど井堀委員から怠慢であるというおしかりを受けたのでありますけれども、言葉を返すわけではありませんけれども、各種の争議ストライキに入る以前に、その状態を全部つかむということは非常に困難であります。そうして労働争議に入った以後において法律を明確に解釈することによってのみ労働争議が解決されない場合も相当多いのでありまして、現に労働委員会等におきましてこの問題が取り上げられ、解決に努力されておるときには、詳細に慎重に調査したのでなければ、これは違反あるいはこれは違反しないということを申し上げられないのでありまして、千葉新聞の場合もどのように交渉が持たれ、どのような経過をたどったか、争議に入るまでの詳細な報告が実は得られなかったので明確にし得ない、こういうことを申し上げたのであります。しかし労働協約を守らなくてもよいというような考え方はもちろん持っておりません。労働協約は守らなければならない、守るために作られたものである、これによって労使関係の安定を得られなければならない、こういうふうに考えております。
  122. 横錢重吉

    横錢委員 労働協約を守るということと、あるいはまた労働協約をどう指導するかということと、この千葉新聞の場合とは切り離しても差しつかえない問題である。千葉新聞の問題で明確にこの協約上の問題を出すことが争議の解決に役立つと思わない、こういうふうな意味のことをあなたは先ほども言われておるのですが、この労働協約を破ったか破らないかという法理上の問題と、現実に起っている争議の解決という問題とは、この場合あなたの答弁としては、切り離していいのです。また中西局長も切り離しておる。われわれもまたそのつもりで聞いておる。ところが労働協約を侵犯した場合に、これは労使どっちが侵犯したとしても、これに対するところの明確な指導精神というものがあなたの方に立っていなければならないわけである。これなくして労働行政が立つか。労働協約の中心というものはいろいろあるけれども、その中の中心は何といっても解雇問題である。解雇に対してどういうふうな態度をとるか、これが労働協約の眼目である。この眼目が、またこういうふうになっておることに対して、それに対する明確なあなた方の答弁が出ない。これでは私は労働協約はほごにひとしいと思う。これならばどんな協定を結んでおっても、いざという場合には役にも立たぬ。これを管理しておるところの労働省自身がまたあいまいな見当を出して、そうしてよく事情を見なければわからぬだの、どうだのやっているうちに日が過ぎてしまい時がすべてを解決する、こういうようなことをやっておったのでは話にならぬ。従ってこの点は明確に当局の方として態度をきめていただきたい、こういうふうに要望して打ち切ります。
  123. 吉川兼光

    ○吉川(兼)委員 組合課長にお願いしておきますが、千葉新聞争議関係のあなたの方の調査したものを資料として委員会に出してもらいたいのです。お願いします。
  124. 大橋武夫

    ○大橋委員長代理 参考人方々には長時間御出席下さいましてありがとうございました。  当委員会は午後三時半まで休憩いたします。     午後二時二十九分休憩      ————◇—————     午後四時九分開議
  125. 藤本捨助

    藤本委員長代理 休憩前に引き続き、会議を再開いたします。  都合により委員長が不在でございますので私が委員長の職務を行います。  滝井義高君外十一名提出の健康保険法等の一部を改正する法律案を議題とし、審査に入ります。まず提出者より趣旨の説明を聴取いたします。滝井君。     —————————————
  126. 滝井義高

    滝井委員 このたび提出いたしました、健康保険法等の一部を改正する法律案について提案の理由を申し上げたいと存じます。  ご承知のごとく健康保険制度は、昭和二年実施以来今日に至るまで、三十年にわたって発展を続け、社会保障制度の中核として、国民の医療保障国民生活の安定に大きな役割を果してきているのであります。現在健康保険は、国家の基幹産業を中心に労働人口の大半に適用され、国が直接管理している政府管掌健康保険には、五百十二万、組合管掌のそれには三百五十万の労働者が加入し、扶養家族を加えて、実に二千五百万に達せんとしているのであります。しかも、その保険給付に要する費用は、すべて、事業主と被保険者の醵出する保険料によってまかなわれており、国は今日までのところ事業運営のための事業費のみを負担しているにすぎないのであります。しかしながら、社会保障制度の一環として、強制加入の建前のもとに、国がみずから管理に当っている制度である以上、国が社会保障に対する責任を分担する意味において、保険の本体である給付費について、国庫負担を行うことは当然であり、特に制度そのものが崩壊せんとしている今日においては、その危機を未然に防ぎとめ、医療保障の一そうの推進をはかるために格段の財政的配慮か必要であると考えられるのであります。健康保険等については、その給付費の二割以上を国庫負担すべしとの声は、関係各団体の年来の世論でありました。ところが、治療医学の進歩や利用度の向上とともに、医療給付費は、逐年急速に増大をいたしまして、そのため健保を初め各種の医療保険財政は深刻なる危機に見舞われるに至りました。たとえば政府管掌健康保険の医療給付費は昭和二十六年において百三十七億円余、これが昭和二十九年には三百五十億円余、昭和三十年度には約四百二億円、昭和三十一年度には四百四十二億円余と急ピッチで増大し、その結果昭和二十九年度には五十九億円余、昭和三十年度には約九十億円、昭和三十一年度には、六十六億円の赤字が見込まれるに至ったのであります。  健康保険制度は各種社会保険の中でも最も長い歴史と伝統を有し、実にわが国社会保障制度の根幹というべきであります。しかも現行健康保険の保険料率は世界的にもきわめて高率なものであり、従って保険料率を引き上げる余地も乏しく、さりとて旧態に逆行して患者の一部負担を強行することも適当ではないと信じます。すなわちこの際医療給付費については当然相当程度の国庫負担をすべき旨を明らかにする必要があろうと信じ、所要の改正を試みたのであります。  すなわち健康保険については原則として医療給付の百分の十を国庫負担とし、船員保険についても同様趣旨の改正で十分の一・五を負担いたしました。  百分の十といたしましたる趣旨は、政府管掌の健康保険が低所得階層を多く包含しており、すでに国民健康保険においては、医療給付の百分の二十を国費で負担している、さらに医療給付費の四割は結核医療費であるところより、その一部を負担することが妥当であるといたす次第であります。  なお昭和三十一年度についてはすでに予算が国会を通過していることでもあるし、これに対応した額を確保するための改正をいたしました。  以上の改正により医療保障の中核をなす政府管掌の健康保険及び船員保険については、不満ながら最小限度の運営は可能であると思われるのであります。  御承知のように十一月八日社会保障制度審議会は政府に対して、医療保障制度に関する勧告を行い、また川崎厚生大臣当時いわゆる七人委員会の報告が提出されている事情にかんがみ、これらの立案の精神をくみ取り、医療保障制度の根本的検討を行い、該制度の飛躍的拡充、すなわち国民皆保険実現への時間的余裕を確保するためにも本改正を必要といたした次第であります。  何とぞ慎重御審議の上、御可決あらんことを切望いたす次第であります。     —————————————
  127. 藤本捨助

    藤本委員長代理 次に、医師等の免許及び試験の特例に関する法律の一部を改正する法律案を議題とし、審査に入ります。  まず提出者より趣旨の説明を聴取することといたします。八田貞義君。     —————————————
  128. 八田貞義

    ○八田委員 ただいま議題となりました、医師等の免許及び試験の特例に関する法律の一部を改正する法律案の提案理由を御説明いたします。  終戦前に満州国、朝鮮、台湾、樺太等の地において、その地の制度によって、医師、歯科医師の免許を得て開業していた者に対しましては、従来より医師法、歯科医師法の附則などにより特例をもって内地で開業する免許が与えられ、または国家試験の予備試験を受験する資格が与えられておりました。  もとよりこれらの特例措置は、あくまで終戦後の特殊事情に基く暫定的措置として行われたものでありましたが、この期限が切れようとする昭和二十八年に至って中共地区よりの大量引き揚げが再開されるに至りましたので、これに伴う措置として同年八月新たにこの医師等の免許及び試験の特例に関する法律制定され、同年三月以降の引揚者に対しましては、同法によって従来のほぼ同様の特例を設けてきたのであります。  この特例のうち選考または特例試験による免許授与の措置は、昨年末をもって期限が切れ、国家試験の予備試験の受験資格を与える措置も本年末をもって期限が切れることになっております。  しかるに日ソ交渉の妥結に伴いまして、なお当分の間はソ連または中共地区よりの引き揚げが行われることが予想される状況にありますので、従来の措置との均衡をはかる必要が生じて参りました。  以上の理由により選考及び特例試験受験の期限を昭和三十四年末まで、予備試験受験の期限を昭和三十五年末まで延長しようとするものであります。なお、診療エックス線技師及び看護婦の業務を行なっていた引揚者に対しましても同様の理由により、それぞれエックス線技師の特例試験、准看護婦試験を受験し得る期限を昭和三十五年末まで延長しようとするものであります。  以上が本法改正の趣旨でありますが、何とぞ慎重御審議の上、すみやかに可決せられるようお願い申し上げます。
  129. 藤本捨助

    藤本委員長代理 本日はこれにて散会いたします。     午後四時十九分散会