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1956-12-04 第25回国会 衆議院 国土総合開発特別委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十一年十二月四日(火曜日)     午前十時二十六分開議  出席委員    委員長 廣川 弘禪君    理事 川村善八郎君 理事 薄田 美朝君    理事 松浦周太郎君 理事 松田 鐵藏君    理事 竹谷源太郎君       伊藤 郷一君    瀬戸山三男君       本名  武君    亘  四郎君       三宅 正一君    門司  亮君       森 三樹二君  委員外出席者         参  考  人         (秋田県知事) 小畑勇二郎君         参  考  人         (新潟県知事) 北村 一男君         参  考  人         (山形県知事) 安孫子藤吉君         参  考  人         (日本銀行仙台         支店長)    鍵山  覚君         参  考  人         (農林中央金庫         審査部長)   富田 武一君         参  考  人         (中小企業金融         公庫理事)   江崎 千準君         参  考  人         (岩手殖産銀行         頭取)     雫石 隆孝君     ————————————— 十二月四日  委員町村金五君辞任につき、その補欠として亘  四郎君が議長の指名で委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  東北開発に関する件について参考人より意見聴  取     —————————————
  2. 廣川弘禪

    廣川委員長 これより会議を開きます。  本日は、東北開発に関する件について、参考人各位より御意見を伺うことにいたします。御出席方々は、秋田県知事小畑勇二郎君、新潟県知事北村一男君、山形県知事安孫子藤吉君、日本銀行仙台支店長鍵山覚君、農林中央金庫審査部長富田武一君、中小企業金融公庫理事江崎千準君、岩手殖産銀行頭取雫石隆孝君、以上七名であります。  この際、一言申し上げます。参考人方々には、御多用中のところ本委員会に御出席下さいまして、厚くお礼を申し上げます。本委員会では、ただいま東北開発に関する問題について調査中でありますが、この際皆様方の忌憚のない御意見を承わり、調査参考にいたしたいと考えている次第であります。  なお、御意見開陳の時間はおおむね十五分程度とし、東北開発に関して、参考人各自の関係について、概括的かつ重点的に御説明下さるようお願いいたします。なお御意見発表の後、委員側から種々質疑もあろうかと思いますので、お含みの上、お願いいたします。順序は北村君、鍵山君、小畑君、安孫子君、富田君、江崎君、雫石君の順でお願いします。議事の進行上、一応皆様の御意見開陳が全部終ってから、委員側質疑に入ることとしますが、新潟県知事北村参考人日銀仙台支店長鍵山参考人は、所用のため時間を急ぎますので、両参考人のみは説明が終ってから直ちに質疑に入ります。  それでは北村参考人よりお願いいたします。
  3. 北村一男

    北村参考人 東北開発につきましては、さきに自民党特別委員会をお設け下され、社会党も引き続いてこの問題を取り上げて、党に特別委員会をお設け下さいまして今、予算措置に非常な御関心を持って御推進願っておるのでありまするが、本日は本委員会にお招きにあずかりまして、われわれの意見をお聞き下さることは、まことにありがたいと存じております。  東北開発の問題につきまして、その必要性とか規模だとかいうことにつきましては、後刻ここにおいでになっておる秋田山形県知事からお述べいただくといたしまして、概括いたして申し上げますると、東北の千二百万の住民は、今度国会における両政党が御関心を払って、せっかく立案もしくは実現に御努力下さっておることに対しまして、全幅の期待を寄せておる次第でございます。従いまして、こういうことを申し上げることは、はなはだ恐縮千万なことでございますが、もしもこの計画が一向具現しない、あるいはおざなりの御措置をとっていただくにとどまるということになりますと、私ら東北人は非常に失望いたしまするのみならず、これは再々各委員会にお伺いして申し上げているのでございますけれども、政党に対する不信感を起すのじゃないかということを、非常におそれておる次第でございます。どうぞ本委員会におかれましても、委員長は、東北の各県は知りませんが、親しく新潟県も御視察下さって、新潟県の状況も概括御承知になっておいでになるのでありまするから、本委員会一つ主軸となられまして、開発実現でさまするようにお願い申し上げておきたいと存じます。そこで、決して各県で予算ぶんどりというようなことは考えておりません。と申しますのは、東北開発として一番先に取り上げなければならぬのは、秋田八郎潟の干拓であるというくらいに、この東北全体を各県の知事とも考えておりますから、予算ぶんどりなんということは一向考えておりません。しかし自分の預かっておる県内の情勢を一通り申し述べて、御了解を得ておきたいと思います。新潟県で最優先的に取り上げてお考え願いたいのは、旧信濃川という、新潟に注ぎまする信濃川河状整理、川のまん中を深く掘りまして、洪水を防ぎ、それから土地造成、これはおそらくは二千町歩近い土地信濃川の両岸にできるのではないか。それから地下水を低下せしめまして、新潟県の土地改良に最もガンとなっておりまする排水の便をはかりたい。いま一つは、信濃川は、もと新潟から長岡までは、いわゆる蒸気船というた時代の汽船が通っていたのでございまするから、就航の便をはかりまして、かなり上流まで工場の敷地にして、そこに品物を運んでいきたい、こういうような考えをもちまして、信濃川河状整理をやってもらいたい。今やりつつありますけれども、予算はごくわずかしかついておりませんので、まあ百年河清を待つこいったような状態でございます。これをやりますれば、土地造成その他によって、経済的にも非常に引き合うのでありますから、ぜひやっていただきたい。それに関連いたしまして、新潟信濃川が入りますとき、大きなカーブを描いて港の方に流れていくのでありまするが、そのカーブのところを、まっすぐに切っていきますると、千八百メートルで日本海に達するのであります。そうすると、水はけが非常によくなりまする上に、港に砂が流れ込むために、一年一億ぐらいの浚渫費をかけておりますのですが、それを防いで、新潟港を整備できる、そうして、良港にして日本海玄関口にすることができる。日本海玄関口になる港には立候補者が多くて、ここに秋田知事もいられるけれども、秋田がいい港だと言うておられるそうですが、ほんとうですか。それから山形知事は、酒田の港を充てたいと言うけれども、酒田よりも、秋田よりも、対ソ貿易には新潟が一番ようございますから、これは新潟にしてもらいたい。そのかわりあなたの、八郎潟を一生懸命やっているんだから、やつぱり公平に、冷静に判断して、一番金をかけて効果のあるところを上げてもらわなければならぬと思う。そこで、今これを差しはさんで地元新潟市で——ちょっと前の知事が間違っているんです。港湾、河川の管理権知事にあるのに、新潟市に相談して議決してもらったから、新潟市は議決した手前、どうも直ちに私の言うところに賛成はできないなんて言っていますけれども、だんだんもう大勢は変っておりまして、いわゆる関屋分水——関屋という地点で、ここにいられる亘先生のところに大河津分水というものを往年いたしましたが、もう一本分水したい。こういうことには、もう新潟県の大勢が変って、これに賛成しておりますから、ぜひ信濃川河状整理の一環として、関屋分水を取り上げていただきたい。これが新潟県の要望いたしまする第一点であります。  そのほか土地改良、これは委員長よく新潟県も御承知のことでありまして、五百万石の米を生産いたします新潟県は、今六百万石に目標を上げております。それは土地改良を含んで六百万石にできる、こういう確信のもとに、農村が努力をいたしております。こういうてさいのことは書いてありますので、一々御説明申し上げません。  その次に、新潟から山形通りまして、秋田青森——今、群馬県との国境の三国隧道が抜けまして東京との最短距離の道が通じようとしておりまするが、積寒道路法ができましたことによりまして、この雪を抜けまして冬季交通を確保するといたしますれば——今、新潟山形連絡道路といたしまして、自衛隊がすでに今年爆破演習と称して、海岸に道を通してくれておりますが、来年もう一年すれば、道ができると思います。そういたしますると、海岸でございますから、雪が少うございまして山形秋田青森にまで至る道も、冬季交通の確保ができると思うのであります。これは、ここに御列席の山形秋田県知事においても御賛成になっておりますから、ぜひこれはやらしていただきたい。まだ申し上げればたくさんございますけれども、道路港湾土地改良、こういう点について、立案して御提出申し上げておりまするのに対しまして、特段の御配慮をお願い申したい。  それから、これもあと山形秋田県知事からお願いして下さると思うのですが、せっかく国の予算を分けてもろうても、今地方財政が貧困でありまして、地方財政のいわゆる県の負担分について、格段の御配慮をわずらわしたいと思うのであります。  なお米の問題も、特にわれわれ三県知事は一生懸命で、県外移出米に対して特別の奨励金をちょうだいしたい、こういうことも、私よりも両県知事がこれに対して非常に造詣が深うございますから、あとでお述べいただくとしまして、ともかくもこの問題は、両政党で超党派的におやり下さるのでございますが、本委員会におかれても、これは社会党も、もちろん自民党おいでになるのでありますから、両党の推進力となって、東北開発格段の御配意を賜わりたいと存じます。  以上、申し述べまして、私の意見を終ります。
  4. 廣川弘禪

    廣川委員長 ありがとうございました。  次は鍵山参考人にお願いいたします。
  5. 鍵山覚

    鍵山参考人 私、日本銀行仙台支店長でございます。ただいまより東北六県の融資状態を御報告申し上げたいと思います。  東北人口は、御承知のごとく全国の約一割でございますが、これに対して国民所得が八%であります。言いかえれば、人口に比べて所得が少いのでございます。これに対しまして預金数字は五%でございまして、国民所得の八%に比べて、一段とまた低いのであります。その中で、銀行預金全国の四%であります。言いかえれば、これまた一般預金数字の中で、特に銀行預金が少いのであります。これは、申すまでもなく、資本蓄積東北において少いということでございますけれども、他面、産業構成の一次、二次、三次の割合が、全国と比べまして、一次産業が多いというところからきておることは、皆さん御承知通りでございます。東北銀行預金は約千五百億円ございます。このうち、その八割に当ります千二百億円は貸し出されております。しかしながら、これは東北に店のある銀行貸し出し数字でございまして、このほかに、東北に所在しておりまする会社に対しまして、東京その他において融資されている額がございます。これはよくわからないのでございますが、まず二百億円くらいであろうかと推定いたしております。このほかに、たとえば富士鉄釜石工場、こういうようなものに対する融資もございますので、おそらくこれが百億ないし二百億かと考えますと、この銀行預金融資の総計は、千五百億ないし千六百億円になるかと思います。このほかに、開発銀行あるいはその他の公庫貸付がございます。それからまた資金運用部貸付、こういうものがございます。こういう種類のものが約千億円かと存ずる次第でございまして、ただいまの銀行融資と合計いたしますると、まず二千五、六百億円の融資があると考えてよいのではないか。これに対しまして預金の方は、先ほど申し上げましたような千五百億、これに郵便貯金の約五百億を加えまして、約二千億かと思います。従って二千億の預金に対して、二千五百億円の融資があるというふうに考えておるわけであります。このほかに相互銀行信用金庫の金もございますが、これは、集めたものをそのまま還元されて融資されておるものもありますから、バランスから言えば、申し上げる必要もないかと思います。  それから、考えを変えまして、一年間に新しい資金中央からどのくらい持ってきておるかということを考えてみますると、一年間の東北における貸し出しの増加は約二百億円でございます。これに対して先ほど申し上げました中央からの銀行貸し出しが、全部集めてまず百億、そうしますと、合計して三百億になりますが、このほかに、一般会計におきまして払い超が四百億円ございます。大体において、歳出八百億円に対して、歳入四百億円でございますから、約四百億円の払い超でございます。これを合計いたしますと、七百億円という数字になります。これが中央から持ち込んでおる数字考えていいと思います。  銀行融資種類は、くだくだしくなりますから、申し上げませんが、特に農林水産、それから電力地方財政の比重が高うございまして、これらの合計が約三割になります。全国比率は一割二分でございますから、まず倍額の比率考えてよいかと思います。  東北は、全体で地方銀行が十一行ございまして、ただいま申し上げました通り資本蓄積割合に少い。そこへもってきまして。金利もやや高うございます。これは交通も不便であり、現送の費用もかかり、いろいろな理由に基くわけであります。さようなわけで、中央より安い金利資金を持ってくることが大切なことであろうと思います。  ただし、私、考えてみまするに、最も経済的な隘路は、電力交通であろうかと思うわけであります。こういう方面投資が必要であろうと考えるのでありますが、そこに受入れ態勢の問題があるように思います。たとえて申しますると、電力会社につきましては、今まで約五百億円の融資がございます。これが三十一年度までは、約百六、七十億円の工事量でございましたが、五カ年計画によりますと、これが来年から倍増いたします。この倍増に伴いまして、資金の調達が多くなって参るのでありますが、そのとき問題になりますのは、ボリュームというよりも、質の問題であろうかと思います。質と申しますのは、金利の問題でございまして、普通の市中の融資でございますと、まず二銭四厘五毛、二銭六厘の貸し出しもございます。しかるに、開発銀行の金でございますと、六分五厘でございます。そういうあんばいで、質の問題もあるかと思います。  なお最後に、中小金融についてちょっと申し上げます。地方銀行は、預金者関係、また地元産業関係から、中小金融関係が非常に深うございます。最近は業者の信用も安定して参り、かつ景気の波が中小企業に浸透して参りましたので、一応金融はインフレになっておりますが、まだまだ資金の需要は旺盛で、今後も金利の引き下げは必要かと考えております。御参考までに、宮城県だけの数字でございますが、商店の数は約二万三千軒ございます。これに工場が四千軒で、都合二万七千軒になります。これに対して融資の件数は、銀行は一万六千件、その他六万七千件、都合八万三千件の貸付になっております。  次に、地方財政のこともちょっと申し上げておきます。先般来再建整備にからみまして、地方銀行からいろいろ融資いたしておるわけでありますが、金利の点で、知事さんにはいろいろ御不満な点もあったかと思います。また銀行の方でも、コストの面とか、いろいろなことがあったと思いますが、ずいぶんと地方銀行地方財政に対する関心は、高まってきておるように存ずる次第でございます。  これをもって私の報告を終えます。
  6. 廣川弘禪

    廣川委員長 以上、北村参考人並び鍵山参考人説明を終りました。御両所とも所用のため早退されるそうでありますので、御両氏に対してここに質疑を行いたいと思います。質疑がありますか。
  7. 川村善八郎

    川村(善)委員 ただいま日本銀行仙台支店長から、質の問題、要は金利が問題なんだ。そこでこの問題は、ひとり東北ばかりでなく、各地方というか、全国的といっていいほど、話題になっておるのであります。ほんとう開発するというためには、やはり政府資金で、しかも金利が安く、長期でなければならぬということになるのですが、一体金利という点で、どのくらいの金利であれば、東北開発のためになる。いわゆる金利が安いほどいいのでございますけれども、なかなかそうも安くするわけには参らないと思いますが、最高どのくらいの金利であったらよろしいと思いますか、これだけを御質問いたします。
  8. 鍵山覚

    鍵山参考人 非常にむずかしい問題でありまして、ただいま銀行預金コストは一銭九厘ないし二銭でございます。従って、これよりも安い金利というのは、これより低いことでございますが、問題は、受け入れ態勢の方にもあるかと存ずる次第でございます。ただいま例をとって申し上げました電力会社のごときは、おそらく返金していくということにつきまして、料金の値上げの問題がここにございます。それから償却不足をいかにしてカバーするかという問題、こういう問題もからんでのことでございまして、料金を引き上げ、かつ低金利でいきますれば、相当の工事もやっていける、かようなふうにも考えられるわけでございます。従って、電力におきましては、ただいま開発銀行融資データ六分五厘でございます。これが電力につきましては、まず望ましい金利と、かように考えたわけでございます。しかしながら、今、川村さんのお話になりますことは、これは非常にむずかしい問題で、御専門の漁業の方の関係でございますと、漁業金融の方もここにおられますが、それぞれ原資の、もとになる金の預金金利というものがございます。それに経営いたしておりますコストを入れないわけには参りませんので、一概には申し上げかねるわけでございます。
  9. 川村善八郎

    川村(善)委員 いろいろケースがございますから、一様にはできないことは、はっきりいたしておりますけれども、東北開発するという大きな構想のもとにやる場合におきましては、もちろん長期でなければならぬことはわかりますけれども、一体どのくらいの金利が妥当か、こういうふうなことを聞いておるわけであります。六分五厘でいいか、七厘でいいか、安い方がいいけれども、大体妥当な金利の線はどこら辺かということをお聞きしておるわけであります。
  10. 北村一男

    北村参考人 川村先生お尋ねでございますが、私ども開発してもらいたい県の立場から申しますと、今一番困っていますのは、東北七県はみんな赤字でございます。農業県でございまして、宿命的で……。御承知のように、農村からは農業事業税というものはもらえないで、農村にうんと金がかかるというようなことでございますので、ただいま全国知事会議といたしましては、仙台支店長が仰せになりましたように、六分五厘で現在の利子をきめてもらっておりますけれども、これは払いかねるということで、三分二厘五毛、すなわち半分にしてもらいたいということを政府に要請いたしているわけでございます。東北開発と申しましても、開発によって利益を受ける人は、もちろん民間でございます。県の立場は、仁徳天皇と同じで、民のかまどはにぎわっておるが、県は貧乏しておる、こういうことなのでございますから、やはり今、全国知事会議から要請をいたしております三分二厘五毛以下の金利にしてもらいたい、あとは、よろしく政府から補給をしてもらいたい、こういうようなことが、一応考えられている線でありますが、欲を言えば、まだ安くしてもらいたい、こういうような考えを持っておりまして、最高三分二厘五毛、こういうふうに考えておることを御了承いただきたいと思います。
  11. 竹谷源太郎

    竹谷委員 鍵山参考人にお伺いをいたしますが、ただいま述べられましたところによりますると、郵便貯金を加えて、東北における預金は二千億くらい、それに対して開発銀行や、運用部資金や、公庫等貸し出しも加えると、二千五、六百億になっておる、預金が少くて、貸し出し東北七県においては多いという実情だそうでございます。なお、かてて加えて、投資の形による資本蓄積も、東北は非常に少いと思うのであります。こうした金融状況におきまして、東北産業開発なり、あるいは振興なりというものは、金融が困難なために、障害を受けておる、発展が阻害されておるということであるのかどうか。もしそうだとすれば、金融方面に手を打つことによって、東北産業を相当伸展さすことができるのかどうか、御見解を承わりたい。すなわち東北発展隘路は、主として金融にあるのか、あるいは金融はそのうちの一条件にすぎない、他のもろもろの発展を阻害するような条件があるがゆえに、東北はなかなか振興しないのであるかどうかという点、非常に抽象的な、ばく然とした御質問で恐縮でありますが、私の問わんとする要領はおわかりと思うのです。
  12. 鍵山覚

    鍵山参考人 ただいまの御意見、まことにごもっともでありまして、まことに的をついたお話で、私も敬服する次第であります。金融ネックがありや、その他にネックがありやという御質問でございますが、これまた抽象的にお答えするほかないようで、まことに申しわけないのでございますけれども、これは、ものによりけりであろうと思うのであります。先ほどちょっと電力会社の例をお引きいたしましたが、そのほか、たとえば、大きなものといたしましては、富士鉄釜石工場あるいはまた小野田セメントの大船渡工場東北パルプの石巻、秋田工場というものがございまして、こういうようなものは、近来の金融情勢でありますと、黙っても金がついてくるような状況でございます。しかしながら、他面何かあります場合にも、たとえば明年度におきましては、電力が十三億キロワット・アワー足りません。こういう問題も、わかっておる限りにおいてはございまして、かようなものとからんでの問題が、随所にころがっておると、われわれは感じておる次第でございます。それで受け入れ態勢と、それから今の電力あるいは交通関係がうまくいきますれば、金融はおそらくうまくいく場合が多かろうと思います。また足りない場合には、われわれも努力することにやぶさかではございません。はなはだ抽象的で、申しわけないのでございますが、お答えといたします。
  13. 竹谷源太郎

    竹谷委員 今、参考人は、電力交通投資が必要である、電力は今十三億キロワット・アワー足りないというお話でございますが、これらの電力開発をして、また鉄道なり道路なり港湾なり、こうした交通を便利にして、僻遠であって、経済の中心から遠い東北地方も、便利に土地の利用ができるということにするなれば、開発ができる、従って交通に対する投資が必要である、これらの条件が具備せられれば、相当投資も行われ、お金を吸収することも可能ではないか、こういう御意見でございますね。
  14. 鍵山覚

    鍵山参考人 さようでございます。
  15. 竹谷源太郎

    竹谷委員 北村さんにお伺いをいたします。これはお話にならなかったのでありますが、信濃川の大河津分水の結果、土砂新潟港のところから外へ流れ出て、あそこへ漂砂というのですか、堆積して、新潟市の海岸べりのところに砂の岡を築いている。あれが、最近信濃川土砂が流れ出さないので、削られてきて、新潟市がだんだん決壊して、なくなってきているというので、大騒ぎのようでありますが、これらと港湾、それから河状整理の問題はどういう関連にありますか、ちょっとお伺いします。
  16. 北村一男

    北村参考人 お答え申し上げます。学者がいろいろ調査をされて、模型実験などをやっておりますが、模型実験というのは、御承知のように八十分の一の模型にしていますけれども、砂の大きさは八十分の一にならないで、ただ規模だけを八十分の一にいたしておりますから、気休めには役立つかもしれませんけれども、みんなあれを信用はしておりません。しかし今お尋ねの、今ここにおられる亘代議士の方に大河津分水をしたために、あそこに砂浜が毎年ついていくのであります。今二百町歩くらいの砂浜ができました。それだけ砂の補給が新潟港の方に足らなくなるわけでございます。足らなくなりますけれども、年々八十万トンの砂が新潟港の中に積っていきまして、約八千万から一億の浚渫費がかかるのであります。それを防波堤の根ぎわを切って、港の中に信濃川の川じりをこしらえたら、砂が流れていって、決壊しているところにつくのじゃないかというのが、運輸省の港湾局の見解でございますが、果してつくか、つかぬかということを、よく突きとめてみますと、学問上つくはずである、こういうような結論で、必ずつくということは断定されておらぬのでございます。でありますから、今新潟市の世論といたしましては、港は港として、一番いい港を作ってもらいたい。一石二鳥というけれども、一石ゼロ鳥になっちゃ困るから、海岸決壊は決壊で、別に対策を立ててもらいたい、こういうことでございまして、砂の補給が足らぬから、確かに一部は決壊の原因を作っていくのかもしれませんけれども、だれしも、きめ手として、これはこうすればよいという案がないのであります。別々にやるならば、これはどっちもうまくいくか知らぬが、今政府考えていられるような、せっかくできた防波堤の根ぎわを切って、西北の季節風をまともに受け入れて、冬、港が使えないようにするというようなことは避けなければならぬ、こういう世論が圧倒的でありまして、政府考えておられる、河口分流と申しておりますが、港の中に川をこしらえるということは、絶対反対だというのが、港湾関係業者のすべての世論でございます。  その理由としましては、新潟県には学者が考え、技術家が考えて作った港のうち、使えない港が四つある。亘代議士のお住まいの寺泊という港も、学者が考えて作った港だけれども、砂に埋まってしまって、使えないような状態になっている。だから学者、技術家といえども、まるで信用するということはできない、むしろ、経験のある船長などの言うことが、傾聴すべきものでないか、こういうことで、政府の立てた案というのは、どうも評判が悪うございます。でありますから、私が政府の苦境を救うために、関屋分水をした方がよかろう、こういう案を出しているのでありまして、これを強行されると、港湾当局の命取りになります。今政府の案などを実行されますと、だれも実際家は賛成しないで、そんなことをやってもらっては困るという陳情が、もう山積いたしているようなわけでありまして、海岸決壊は海岸決壊で、結論をつけていかなければならぬ、港は港として、最上の港になるようにしなければならぬ、こういう意味から申しますると、この新潟県の分に書いてございまする関屋分水が最善最良の案である。こういうことになっておるわけでございます。
  17. 廣川弘禪

    廣川委員長 両参考人に対する御質疑はございませんか。——なければ、北村参考人鍵山参考人まことにありがとうございました。  次には、小畑参考人にお願いいたします。
  18. 小畑勇二郎

    小畑参考人 私は秋田県知事小畑でございます。  まず最初に、秋田県の実情を簡単に申し上げまして、それから、特にお願い申し上げたいことを申し述べさせていただきたいと思います。  秋田県は、御承知通り米におきましては、全国におきましても三番目か二番目の米産県であります。木材におきましても、三大美林の一つを持っております。石油は、全国の油の八割近いものを秋田県から生産をいたしております。銅の生産も日本第一であります。このように、地上、地下資源が非常に豊富でありまするが、県民の所得は、全国民の所得の六五%という非常に低い状態でございます。なぜ、このように資源があって、貧困であるかということにつきましては、いろいろ原因がございましょうが、三つの大きなことが数えられると思います。第一番目は、典型的な単作地帯でございまして、農民の所得は、米から米でありまして、米以外にほとんど見るべき収入がないということであります。第二点は、冬季間の余剰労力の吐け口がないということでございます。第三点は、河川が原始河川でありまして、例年大小となく各地に水害が起っておるという現象でございます。かてて加えまして、私の方は非常に不名誉でございますが、全国有数の火災県でありまして、大火に見舞われておるということ、これも大きな原因でございます。  これらにつきまして、結局これを改善して参りますることが、県の振興であり、また東北全体の振興になると思いますので、お願い申し上げたい個々のことはたくさんございまするが、第一番目には、単作地帯の解消のために、経済的な、家畜を導入した有畜営農形態の確立をいたしたい、このためには、徹底的な土地改良と、草地の改良をして参りたい考えでございます。第二の余剰労力の吐け口につきましては、幸いに秋田港も着々整備して参っておりますので、秋田港を中心といたしまする臨海工業地帯を創設をいたしたい。それに伴うところの鉄道、道路、工業用水、電力等を整備いたして参りたい。第三番目につきましては、河川の改修を一日も早くいたしまして、災害の復旧と除去をいたしたい。かようなことでございます。  また、特にお願いをいたしたい県内の大きなことが三つございまするが、一つは、阿仁田沢の総合開発ということでございまして、これは昭和二十八年に特定地域の指定を受けまして、二十八年から三十八年までの期間をもって着々進めております。着手いたしまして四年間でありまするが、金におきましては五〇%という進捗率を示しておりまするから、非常な進度でございまして、この点は感謝を申し上げております。しかしながら、その総合開発の中身を申し上げますと、五〇%の進捗率を示しておりますというのは、鎧畑というダムがございまして、ダム工事が九二%、発電工事が九六%という工合になっておりますので、このために、これが五〇%という金高を示しておるのであります。ところが、道路におきましては三一%、河川におきましては九%、またこの根幹をなす鉄道につきましては、ゼロであります。この総合開発の地区は、大体がこの地区に、鷹角線という鉄道を一本敷くという前提のもと計画されたものでありまするが、その前提をなす鉄道がなくて、付帯の施設でありますものができておりまするので、林道等ができましても、全然効果を発揮しておりません。幸い三十一年度におきましては、国鉄におきまして、この鷹角線を十一線の調査線に載せていただきましたが、一つ三十二年度は、ぜひとも建設線にしていただきまして、着工していただきたい、かように考えております。先般来いろいろ陳情いたしておりまするが、国鉄の意向はあくまでも採算主義でありまして、国鉄の建設線の選定に当っては、総合開発とか、後進地域の引き上げといったような意向が加わっておらないように見受けられますることは、非常に残念でありますので、どうか国鉄の建設線のお取り上げ等につきましても、後進地域のレベル・アップといったような見地から、ぜひとも御推進いただきまして、こうした総合開発が片ちんばにならないようにお願いをいたしたいと思います。開発全体としては、総合開発でありまするから、すべての開発が足並みがそろって進むようでなければいけませんが、ある開発が九六%、あるいは九八%になりましても、その根幹になります道路、鉄道ができませんと、開発の効果はなさない、こういう現状であります。これを第一点にお願い申し上げたいと存じます。  第二点は、御承知八郎潟の干拓でありまして、これはごらんをいただいておる方もございますが、二万二千町歩の湖面を干拓いたしまして、一万四千町歩のたんぼを作るというのであります。一万四千町歩と言いますと、ちょうど沖縄で失われました耕地を日本で取り返せるということでありまして、ここからは、ちょうど米換算にいたしまして約五十万石、金に換算いたしまして五十億円のものが、大体五カ年でできる見込みであります。できますると、一戸当りに二町四反をやって、五千戸の新植ができるのであります。日本の移民は、一年間千二百戸と申されておりますが、約五年分の入植が、ここで一挙に解決できるのであります。また一日八千人の労務者を使うと申しておりますから、就労対策にも非常に効果がございまするし、また、現在日本の油の七割五分を出しております八橋油田に劣らない油田がここにあると申されておりますので、ぜひとも三十二年度には着工していただきたいということを、東北開発の大きな問題として、お取り上げをいただきたいと思います。これは深さが四メートルしかない、ごく浅いさらのような湖でありまして、埋め立てが全然不必要でございます。従いまして、土地買収もなければ、つぶれ地もございません。開拓の経費は十万円足らずでありますから、従来の開拓の約三分の一であります。付近の田地は大体反当二十五万円くらいで売買になっておりますが、これが十万円足らずで、できることでございます。幸いこれは大正十三年来、三十年間営々として調査をして参ったのでございまして、現在は九十六人の専門家が農林省に別室を設けて調査をいたしておりまして、オランダと技術契約もし、オランダの調査もすっかり済みました。日本の農業土木としては、これだけ準備の整った、これだけ支障のないものはないと申されている次第でありまして、沿岸の漁民もことごとく賛成をし、補償の問題も順調に進んでおります。これは川村先生もごらんいただきましたので、どうか一つ、この際三十二年度からぜひとも着工いたしたい。せっかく漁民がもうまとまったのでありまして、もう漁具の補修も、漁船の手入れも何もしておりません。これを延ばすことによって、またいろいろな混雑が起きますので、これは一つ東北開発以前の大きな問題として、ぜひともお取り上げを願いたいと思います。  それから第三点は、各県同じような事情だと思いますが、特に秋田県は電力が非常に不足でありまして、全国の伸びは一年間一〇%となっておりますけれども、秋田県は二%でございます。現在工業電力として、需用が六万五千キロでございますが、昭和三十六年には十八万キロの需用の見込みでございます。私の方も水力電源地帯でありますが、夏分は安い電力をほかへ売って、冬場の渇水期には、高い電力をほかから買っている。従いまして、各工場ではコンスタントな生産計画が立てられないで、非常に困っているわけでありますから、ぜひとも秋田に補給電力としての火力の発電所を設けていただきたい。  以上三点を、特に大きなこととして、お願い申し上げたいと存じます。  また東北全体の共通の問題といたしましては、ほかの知事からも申し上げたと思いますが、この際一つ、来たるべき国会におきましては、東北開発の意味と目的と方法を明示いたしました、東北開発促進法をぜひとも御決定をいただきまして、いかなる内閣ができましても、その基本が変らないように、一つぜひとも東北開発促進法というものを御設定をいただきたいと存じます。また、先ほど仙台の日銀支店長が申されましたように、東北金融面につきましては、中小鉱山、あるいは中小企業等の金融が非常に手薄でありますので、ぜひとも東北開発公庫というものを設けていただきたいと思います。  それから最後に、財政の問題でありますが、東北各県はいずれも農業県でありまして、青森県を除きましては、全部再建団体でございます。これは結局現在の府県の税の体系が、事業税、自動車税、遊興税等、商工業者の税を中心とするものでございまして、府県でやっております事業が、農業を中心とする総合行政でありますけれども、農民の負担というものは、おそらく一町五反歩までの農家におきましては、平等割百円だけだろうと思います。私の方には十一万三千の農民がございますが、所得税を納めておる者は二割、二万七千しかございません。その八割の人というものは、県税は百円の平等割だけでございます。しからば農民の負担が軽いかというと、農民の負担は、全体としては決して軽くないのでありますから、今自治庁がお考えになっておりますような農業事業税につきましては、われわれといたしましては賛成はできません。従いまして、根本的には中央地方を通ずる税の体系を整備いたしまして、県がやっておりまする農業を中心とする総合行政にふさわしい税体系を整備していただきたいことはもちろんでありますが、当面の問題といたしまして、東北七県の知事が決議をいたし、全国知事会で決定をされました具体的な要望といたしましては、これは東北だけではございませんが、米産県が県外に出す移出米に対しまして、石百円、一升一円でございますが、石百円の農業奨励金を米の食管会計から出しまして、これを、現在資金で行き悩みになっております農業改良基金にぜひ入れていただくような案を出しております。これにつきましては、農林省でももう取り上げるべき問題であるとして、いろいろ御研究になっております。これはもちろん根本的な問題ではありませんが、さしあたり当面の東北の米産県に対する措置といたしましては、ぜひとも一つお取り上げいただきますようお願い申し上げたいと存じます。  以上、申し上げまして、私の陳述を終ります。
  19. 廣川弘禪

    廣川委員長 ありがとうございました。  次は安孫子参考人にお願いいたします。
  20. 安孫子藤吉

    安孫子参考人 東北開発の問題につきまして、この間の国会で院議をもって御決定されました点、私ども関係者といたしまして、深く感謝をいたしておるところでございます。東北はある程度の水準に達しておりますけれども、今後これを伸ばそうといたします。ならば、やはりここで新しい政策に基いて、これを推進していただかなければ、なかなか伸びにくい事情にございます。先ほど来お話がございましたように、地方財政の面から申しましても、また現在の企業のやり方という問題からいたしましても、また東北の立地的な整備の現況からいたしましても、今後急速に東北産業振興をはかろうとするならば、どうしてもここで一本強い線を打ち出していただきまして、そうして推進をしていただかなければならぬということは、東北関係者はひとしく考えておったところでございますが、幸いにいたしまして先般の院議でもって、東北開発の問題について強くこれを措置しようということが御決定になった点、関係者といたしまして、非常に感謝をいたしておるところでございます。もちろん、全国的に申しますれば、東北的な様相を持っております地帯は、ほかにも絶無だとは申し上げかねると思います。しかしながら、東北七県のごとく、まとまった全地域にわたりまして、後進的な性格を持ち、そうして、これに対しましてある程度の施策を講じますならば、急速に各方面産業が伸びるという膨大な地帯は、そうほかには見当らぬと私どもは確信をいたしておるのでございまして、この点につきまして、今後の御支援のほどをお願いいたしたいと存じておるのでございます。  山形県の状況を申し上げてみますと、山形県は、概括的に申しますならば、秋田県の八郎潟のごとき、そうした大きな開発地帯となるようなものは割に少いのでございます。秋田と同様に、山形県も農業を持って立っておる県でございます。この農業の面につきましても、今後土地改良の面におきまして、あるいは土壌に関するいろいろな施策を講じますならば、まだまだ伸び得る余地はあると考えております。なお奥羽山脈系あるいは朝日、月山系、この山岳地帯につきまして道路が開さくされ、施策をいたして参りますならば、相当豊富な牧草地帯もございますので、ここに米作一本やりで行なっておりました山形県の農業の形態というものが、この方面の施策によりまして全く様相を変えることができると私どもは考えておるのでございます。私どもといたしましては、県の土地というものが完全に利用され、しかも、それが最高度に利用されるという点に主眼を置きましていろいろ今後施策をして参りたいと考えておるのでございますが、この点につきましては、ひとり県だけの努力ということでなくいたしまして、東北開発のこの機運に乗じまして、これをぜひお取り上げ願いまして、土地の高度利用、完全利用というような面につきまして、今後御支援をいただきたいと考えておるような次第でございます。  それから、鉱山関係から申しますと、未開発の鉱山は非常にございます。金、銀、銅、鉄、鉛、亜鉛等、その他非鉄金属等も非常に埋蔵されておることは確実になっておるのでございますが、何にいたしましても、道路網がほとんど整備をされておりません関係上、これが採掘の段階に入らない。また天然ガスその他につきましても、相当埋蔵量があることは、大体学者の方面の推定によって、はっきりいたしておるのでございますけれども、これを試掘する段階に入っておらぬのでございます。これは経費の関係でございます。そういう面から申しますと、鉱山開発、地下資源の開発の面からは、やはり道路網の整備をはかっていただかなければならぬかと考えておるのでございます。朝日山系は新潟県との境になるわけでございますが、この朝日山系というものは、日本全国において、おそらく残された数カ所のうちの一つの未開発山岳地帯だと考えております。この地帯における鉱山資源並びに木材というものが、この方面に対する道路の掘さくによりまして、脚光を浴びることと私どもは考えております。この朝日山系から月山山ろくにかけまして、またそれから最上を通って秋田に抜ける道路網の開さくによりまして、かような地下資源等、また林業関係等の開発が急速に進むものだと考えておりますので、この点につきましても、県といたしましては、ぜひこれが開発をはかって参りたいと考えておるものでございます。  電源開発の問題に相なりますと、やはり月山並びに朝日山系を流れる水の利用によりまして、最近においては相当電力開発も進んで参りましたが、なお、これから開発し得るだろうと思われる電力は、大体十数万キロワットと思うのでございます。かような点についても、日本全体の経済振興の上におきまして、山形県が今後努力をすることによりまして、寄与し得る立地的な条件を持っておるものだと考えておるものでございます。  また、先ほど新潟知事から新潟港お話がございましたが、山形県の酒田港は、由来良港といたされておるのでありますが、土砂の浚渫量等から申しましても、相当少いのでございます。ずいぶん長い間、これにも国といたしまして経費を投じてきておりますが、もう一押しというところで、一万トン岸壁が完成をするような段階になっておりますので、この点についても特に御考慮をお願いいたしたいと考えておる次第でございます。  地下資源の点について、一つ申しおくれたのでございますが、亜炭の問題が、山形県としては特に大きな問題としてあるのでございます。亜炭は、御承知のごとく岐阜県が全国一ということに相なっておるのでございますが、山形県は、その次に位する亜炭の生産量を上げておるのでございます。この亜炭は、現在は燃料並みに使われておりますが、これが化学工業の一つの原料といたしまして考える場合には、やはり非常におもしろい結果が出るであろうということで、県といたしましても、各方面の学者、研究機関等にこの研究を委嘱いたしておるのでございますけれども、ぽつぽつその結果も出てきております。この亜炭の今後の利用というものは、やはり近代の化学工業の面から、十分取り上げて参るべき問題だろうと存じますので、この亜炭の研究の推進、研究所の設立、その結果が出ました場合のこれが利用というようなことにつきましても、東北開発一つの問題といたしまして、十分考慮をお願いいたすべき問題だろうと考えておる次第でございます。  山形県の河川は、最上川が一本県内を縦貫いたしておりまして、これに各支川が入っておるのでございますが、この最上川の上流部につきましては、若干の手入れをいたしております。下流部につきましても、ある程度の手入れをいたしておるのでございますが、最上川の中流部だけは、いまだに放置されておる状態でございます。従って、この中流部に対する河川対策、並びに中流に関係いたしまして、最上特定地域という地帯がございますが、この方面の河川は、ほとんど全部原始河川でございます。そのために、最上川自体に対する非常に悪い影響もあるのでございまして、最上川の中流部の河川改修と、それから最上川地帯におきます原始河川の早急なる手入れというようなことにつきましても、ぜひ御考慮をお願いしなければならぬ問題だと存じておるのでございます。  かような問題のほかに、なお山形市を中心といたします村山平野でございまするが、この方面の水の問題が、今後相当行き詰まって参るだろうと考えます。これはやはり最上川から直接村山盆地に対して引水をいたしまして、そして、この水の問題を解決するということに相なりますならば、農作物の利用の面のみならず、現在畑地でありまするところが、大規模に水田に展開し得る面もございましょうし、また工業上の立地条件の整備という面からも、どうしても考えなければならぬ問題だと存じておるのでございましてこの辺が、やはり東北開発に関連して取り上げらるべき問題だと考えておるのでございます。  結局、山形県といたしましては、各般の資源その他が相当存在しておることは明瞭でございますけれども、これがまた表面化し、企業化するような段階にまでなかなかいかない。その根本的な原因といたしましては、そうした地帯に対する道路網がほとんど掘さくされておらないという点、この問題をぜひ解決してもらわなければならぬということ、並びに電源の資源といたしましては、相当豊富なものがありまするけれども、これに対して、いまだ十分なる措置が講じられておりません点、これの解決、また酒田港の整備を急速にやっていただく、さような問題が、山形県としては伏在しておるのでございまして、かような実情を十分御認識いただきまして、御支援のほどをお願いいたしとうございます。  お手元に差し上げております資料、「東北開発促進に関する要望書、山形県」というものにつきまして、各項目別に若干の内容を盛って印刷してございまするので、どうぞお読みいただきまして、御理解をいただきたいと存ずるのでございます。東北全般の問題につきましては、ただいま秋田知事並びに新潟知事からもお話がございましたので、私からは省略をさせていただきたいと存じます。
  21. 廣川弘禪

    廣川委員長 ありがとうございました。  次は富田参考人にお願いいたします。
  22. 富田武一

    富田参考人 私、農林中央金庫富田でございます。私どもは、御承知のように組合の系統の金融を扱っておりまして、これは農業協同組合の系統、森林組合の系統、水産業協同組合の系統ということになっておるわけです。そのほかに、金融として大きくウエートを占めておりますのは、御承知のような農林漁業金融公庫の受託業務というのがございます。こういうものを勘案いたしまして今、東北に対する組合金融のウエートといいますか、その位置を簡単に御説明申し上げます。先ほど新潟県の知事さんがお見えになっておりましたけれども、私、手元にいわゆる東北六県だけの簡単な資料しか持っておりませんので、新潟県は省略して、あとの六県について簡単に申し上げます。  まず預金の面から申し上げますと、農林中央金庫の今年の十一月二十日現在の預かり金の総額は、約千三百五十億あるわけです。この中で、青森から福島までの東北六県のお預かりの合計は約百五十億です。これは御承知のように、町村の農業協同組合が農家その他から受け入れた預金が、県の信用農業協同組合連合会というところにきまして、そのうちのまた半分とか七割とかいうものが、農林中央金庫に上ってくる仕組みでございまして、この場合、農林中央金庫東北六県の十月末の預金は百五十億ですが、東北六県の県の信連の預金は百七十六億くらいございます。これを去年の十月と比較いたしますと、去年は中央金庫が百八十三億で、県の信連は二百七億の預金があったわけで、今年の方が二、三十億減少いたしております。これは今年の米の供出が少しおくれておるという関係だと思っております。  それから、貸し出し関係を申し上げますと、中央金庫の貸し出しの総額が、十一月二十日現在で千五百九十五億、約千六百億あるわけです。この中で、東北六県に対する貸し出しは八十二億ぐらいになっております。これは系統三段階の金融でございまして、私どもの方は、直接単協の方へすぐ貸すということよりも、むしろ、まず県内の金融は、県の信用農業協同組合連合会の方で扱って、その足らぬ金繰りのしりを見ていくのが本則でございますので、この場合、中央金庫が八十二億の貸し出し残高になっておりますが、県の信連の場合は百十七億ございます。こういう関係でありまして、総体的には、千六百億のうちの八十二億なんというのは、非常にウエートとして少いのですが、所属団体、いわゆる系統機関に対する貸し出しの総額は、五百数十億くらいしかございません。あとは、今は米の代金の受納期で、預金はどんどんふえて参る、政府の前渡金とか、そういう関係で、一時的に私どもの手元に金がだぶついている、と言うと語弊がございますが、だぶついておる。従って、これは政府の御認可を得て、約千六百億のうちの千百億くらいを、農林中央金庫法第十五条の余裕金運用という規定によって、短期に運用してございます。これはいつでも系統の所要に応じ得る金でございます。従って、こういう外部に放出することは、特別な貯金の払い戻しのための一時的な準備だとか、そのほかを除くならば、こうたくさん中央金庫に余裕金の格好で上ってくることは、必ずしも適切なことではないと私どもは思っておるのでしてどうしても町村の組合は、できるだけ町村の農家のお方々に、一方で預金を預かる半面、適切な貸し出しをやっていただかなければならぬし、また県の連合会は、自分の県内の資金需要に積極的に応じてもらわなければならないのですが、遺憾ながら戦後のインフレを経た関係で、とにかく、どんどん金は上の方へ吸い上げてしまうということが、インフレを防ぐ方法の一つとして考えられた、その惰性だろうと思いますけれども、一般に町村の農家に対する貸し出し、あるいは町村組合に対する貸し出しが少し停頓していると思うのです。従って、昨年来、非常な豊作でございまして、ことしは東北の一部に冷害のところがございますし、また北海道も大災害をこうむりまして非常にお気の毒なわけでございますが、そのほかの一般的なところは、非常な豊作のようでございまして、資金が余ってきている。従って、農業協同組合系統、森林組合系統の金融を扱っておりますわれわれの関係からいたしますと、資金面は非常に膨大なものを持っておるわけです。従って、昨年来積極的にこれが貸し出し機能の促進によりまして、農家なり漁業者あるいは山の開発その他について、積極的にやってもらいたいということで、これはどんどんその運動を進めておるわけなんです。しかしながら、今のところ、まだそう著しい実績は上っておりません。  このほかに、農林漁業金融公庫関係は、全国的に言えば、約六百五十億の取扱い残高がございまして、東北六県だけにこれを限るならば、おそらく七、八十億くらいな長期資金が出ておると思う。この農林漁業金融公庫貸し出しの方は、御承知通り、普通の金融機関ではとうてい扱えないという、農業、林業、水産業の基幹的なところへ金を放出していく。従って、これは非常に長期的なものであり、また金利も非常に安い。また国の方では、相当財政資金をこれに注入なさっておる。  こういう関係で、農林漁業金融公庫資金と、組合系統のいわゆる農業協同組合系統が集めた資金と、両々相待って、東北そのほか全国の農林、水産業の協同組合関係資金が出ておるわけなんです。こういうことであるならば、今のところ東北に対して金の出方が少いかどうかということになってきますと、これは必ずしも少いとは私どもは思われないのです。このほかに、御承知のように農業手形というようなものもございましてこういうもので営農資金の主要な部分をまかなっておるわけですから、一般の普通の貸し出しの方は、金利関係もございましょう、あるいは年限の関係もございましょうが、比較的振わないという格好にかなっておるのであります。  こういう状況の場合に、東北の農家の方々あるいは漁業者、山の関係者の方々の要望にこたえるためには、これは県段階なり、町村段階の各農協系統の経営の強化といいますか、受け入れ態勢をはっきりするとかいう、その農協系統の整備ということが、非常に重大な問題になってくると考えるのです。その方の整備がどんどんいきまして——今、全国的に言えば、いわゆる不振組合というものが、農業協同組合系統だけでも、二、三千もあるというような格好でありまして、そういう不振組合が中間におりますと、農家がせっかく金を借りよう、あるいは預けようと思っていても、安心して利用できないというようなことでございまして、これは農協の全国中央会の方面におきましても、また私どもにおいても、単位農協の整備ということに目下力を入れておるわけです。そういう整備がどんどんできていきまして、おそらくいま少し活発に組合の事業が動くようになれば、必然的に、それに伴う資金がどんどん出ていき得るのだと私は考えております。  金利の点におきましても、これは農林政策としての要請もございますが、基本的に、われわれは原始産業を扱っておる関係上、できるだけ安い金を放出してあげなければならぬ。これは固有の任務があると考えます。従って、私どもの関係金利で一番安くいっているのは、今の農業手形です。それは私どもの手元から出るのは、日歩二銭一厘で出るわけであります。二銭一厘で県の連合会へいき、県の連合会からは二銭二厘で単協にいき、単協は日歩二銭五厘以内で貸せるということになっておりまして、それがさしあたりの標準になっておりますが、それにできるだけ近づけるように、目下努力しているわけであります。  そのほかに、未墾地の開発関係でお聞き取り願いたいのは、戦後たくさんの引揚者その他を収容するために、政府におかれましては、未墾地の開拓ということで、開拓農業協同組合というのがたくさんできているわけです。これの関係で、全国的に見て一番お困りになっているのは、北海道と、それから東北六県だと思うのです。開拓農家というのは、全国で約十五万戸ぐらいございまして、これに対してどのくらい金が出ているかといいますと、政府資金で約百二十億出ている。それから農林中央金庫から約五十億出ているわけです。五十億という金は、さっきも申し上げましたが、約千六百億の貸し出しの中で、予備金運用になっているのが約千百億、あと五百億そこそこのものが系統機関に出ている。その場合に五十億開拓組合に出ているということは、これは非常に大量に開拓に出ていることになるわけです。ところが、御承知のように開拓者は非常に立地条件の悪いところに入っております。東北も、私はあの岩手県、宮城県などの山間部を歩いてみましたが、非常に立地条件の悪いところとか、あるいは多年放置してあった土地ですから、火山灰であるとか何かで、農作物には非常に不適当な土地であるけれども、これはやむを得ず入っている。しかし約十年近くの努力の結果、今のところはそう脱落する者もなく、何とか石にかじりついてでもやっていこうという諸君が、今奮然としてがんばっているわけです。こういう人々の借入金は、政府資金中央金庫から出ている金だけで約百七十億ある。これを全国的に一戸当りに見ますと、約二十万円近いものになるのです。全部が全部借りているわけじゃございませんから、借りていると予想せられる者で割りますと、一戸当り約二十万円くらい借りている。しかも東北の開拓地なんかを見ますと、農業の総収入がせいぜい二十万とか三十万とか、その辺の見当なんです。そういうものから生活費を引き、借金を払い、農機具を手に入れるということになってきますと、これは容易じゃないわけです。しかも今、制度金融として開拓者に対して出ているのは、これは年限がきわめて短かいのでして、あるいは別のところで御審議願う機会がおありになるかもわかりませんけれども、とにかく三年とか五年くらいなことです。しかも奥羽山ろくとか、そのほか東北を縦貫する山のふもとの付近では、どこもここも、しょっちゅう冷害とか、そのほかをこうむっているわけでして、こういう人々に対して、かりに利子補給だとか、あるいは損失補償とかいう制度はございますけれども、しかし、もう少しこれは長期の金をお考え願わないと、貸すといっても、三年とか五年とかいう期間に縛られれば、計算上これはとうてい払えないという実情になっていると思います。  そういうことがございまして、一般東北の農家の関係では、さきにちょっと申し上げたように、これは農林漁業金融公庫の方から、基本的な土地改良だとか、あるいは林道開発だとか、あるいは漁船の建造だとか、そのほかたくさんの施設資金が出ておりますし、その上に、制度としては農業手形だとか、あるいは災害があれば、またそのほかの災害に対する特別の措置が講ぜられておりますし、営農資金は営農資金で、県の連合会なり、連合会が足らなければ、私どもの方で放出することになっておりますから、さしあたりそう著しい御不便をかけておるとは思わないのです。しかし一そう貸し出しを強化いたしまして、東北の不利益な立地条件ではございますが、早く建て直っていただくように、私どもとしては、貸し出しの面では東北が非常にウエートを占めておりますがゆえに、心配になったりしておりますけれども、いろいろ農林省あたりと御相談申し上げておるようなわけでございます。  大体大ざっぱなところ、こういうことでございまして、さっぱり御参考にはならぬと思いますが、ひとまずこれで終りといたします。
  23. 廣川弘禪

    廣川委員長 次は江崎参考人にお願いいたします。
  24. 江崎千準

    江崎参考人 私、中小企業金融公庫江崎でございます。東北六県の中小企業者に対しまする私どもの公庫貸し出し状況につきまして御説明申し上げ、御参考に供したいと思います。  話の順序といたしまして、最初に、簡単に私ども公庫貸し出しの方法につきまして御説明申し上げまして、次に東北六県に対する貸し出しの現況、最後に最近におきまする注意すべき二、三の点につきまして、つけ加えて御説明をいたしたいと思います。  私ども中小企業金融公庫は、御承知かと思いまするが、昭和二十八年の八月に発足いたしまして、今日まで三年と四ヵ月しかたたないわけでございます。東北地方に対しましては、大体地方銀行相互銀行信用金庫を加えまして、四十一の金融機関に私どもの方の代理業務をお願いいたしております。全国の代理店の数は四百八十八でございますので、約八・四%に当ります。これらの金融機関の東北六県にお持ちになっております総店舗、及び都市銀行等の東北六県にお持ちになっておりまする店舗を合計いたしますると、三百六十二になります。この三百六十二の店舗をもちまして、代理業務の貸付を実行いたしております。なお今年の六月末に、仙台に私の方の支店を開設いたしまして、いろいろの事務の連絡業務をはかりまするとともに、直接貸しの制度につきましても、さらに一そう活発な御活用をいただきたいという趣旨で、仙台支店を設けた次第でございます。お手元に配付いたしました今年の十月末現在の貸し出し状況につきまして、以下簡単に御説明をつけ加えたいと思います。  東北六県におきまする公庫の総貸し出しの残高は約二千八百件でございまして、金額におきましては三十九億七千万円というのが、ことしの十月末現在におきまする残高になっております。これを全国に対しまする貸し出し比率をとってみますると、件数におきましては約八%、金額におきましては約七%に達しないというような状況でございます。なお六県のうちでは、大体融資の金額の順位は、秋田山形、宮城、岩手、青森、福島という順序になっております。貸し出しの残高の内訳につきましては、この表にございますように、大部分がまだ代理貸しでございまして、直接貸しはごくわずかにとどまっておる状況でございます。なお直接貸しの状況につきましては、後刻また最近の状況をつけ加えまして、御説明をいたしたいと存じます。  残高といたしましては、さようなことになっておるのでございまするが、公庫といたしましては、二十八年の九月に業務を開始いたしまして、本年の十月末までに東北地方に対しましては、金額といたしまして五十四億一千五百万円の貸し出しを実行いたしまして、件数におきましては二千七百八十三件という数字になっております。当初の貸し出しの金額を合計いたしますると、さようなことでございまして、全国貸し出しとの比率を見ますると、貸し出しの金額におきましては六・二%、件数におきましては七・二%というような数字になっております。  御承知通り公庫資金長期資金でございまするが、いかなる業種に対しまして貸し出しをいたしておるかという状況が、お手元の資料の左の方のページにございます。製造業が千三百四十四件、金額は二十億五千万円で、これが第一位にきます。次に物品販売業が四百五件、金額にいたしまして四億八千万円、次に医業が二百三十九件の三億七千七百万円、運送業が百三十件の一億九千九百万円、旅館業が七十二件の一億五千七百万円、建設業が五十四件の八千万円、鉱業が三十件の七千二百万円、倉庫業が三十四件の六千三百円、公衆浴場業が五十一件の五千万円という状況になっております。製造業の中では、食料品製造業が最も扱いが多うございまして、次に木材及び木製品製造業、繊維品製造業、機械製造業、ガラス及び土石製品、機械その他の修理業、電気機械器具製造業、精密機械器具製造業という順序で、貸し出しが行われておる状況でございます。  最近におきまする公庫資金の御利用の状況考えてみますると、製造業の方から見ますると、輸出に関連のありまするカン詰等の工業でございますとか、あるいは冷凍設備等に対しまする貸し出しが目立っております。なお木材及び木製品製造業は、地方産業といたしまして、かなりの需要があるように思います。なお繊維品につきましては、米沢及び川俣地区等の、輸出関係の設備の合理化資金がかなり活発な需要を示しておるように思います。  次に、表の最後にある金融機関別の貸出残高状況でございまして、取扱いの代理店の種別によりまして、商工組合中央金庫、都市銀行地方銀行長期信用銀行相互銀行信用金庫、ごらんの通りの件数、金額ということになっております。  次に、私どもの公庫といたしまして考えております、窓口等に現われました最近の状況につきまして御説明申し上げます。最初に、ことしの六月の末に仙台支店を設けました結果、私どもの宣伝の行き届きましたことも若干あろうかと思いますが、公庫の御利用もふえておりまして六月当初におきましては、全国に比べまして約六・二%程度の貸し出しになっておりましたけれども、最近の一ヵ月の数字を見ますと、七・四%から七・五%というふうに、逐次公庫資金の御利用もふえているのでございます。なお私どもといたしましては、各県の御当局及び商工会議所等の商工業者の団体の御協力も得まして、各地区に懇談会等も開催いたしまして、いろいろ公庫資金の利用の方法につきまして御相談申し上げ、連絡会を開いておるような状況でございます。  次に、直接貸しは、公庫といたしましても昨年の秋から始めたばかりでございまして、残念ながら、いまだ十分の成績を上げていないのでございますが、東北地区におきましては、最近特に中小鉱山からの、直接貸しの御要望を相当いただいております。申し上げるまでもなく中小鉱山は、一般の市中の金融機関といたされましては融資しにくい企業でございますので、当公庫の窓口に対しまして、いろいろな御相談をいただいておるような状況でございまして、各地区の非鉄金属、石灰石その他のものにつきましての御相談が、かなり目立っておるのでございます。これに対しましては、私どもといたしましても、鉱山の調査は、いろいろ学識経験のあるお方に御調査をお願いしなければならないような点もございまして、さような方々調査を委嘱する等の方法によりまして、できるだけ御要望に沿いたいと考えておる次第でございます。  なお、今年ございました災害に対しましては、能代、会津、山形の上ノ山等の水害に対しましては、原状復興の資金といたしまして、災害融資をいたしております。  次に、東北地区特有の現象といたしまして一口百万円以下の、いわゆる小口貸付と申しておりますが、これの御利用が最近かなりふえておりまして、主といたしまして物品販売業の設備資金長期運転資金に御利用いただいておる状況でございます。そのために、東北地区全体に対します一件当りの貸付の平均金額は、百六十万円程度ということになっております。これは、全国の平均が一件当り約二百万円でございますので、全国平均と比べまして、小口の貸付につきましてのかなりの御需要があるという状況でございます。最近におきます状況は、東北地区全体といたしまして農村におきます米の作柄のよかったこと等によりますところの景気の好調、及び中小企業者の設備合理化等の意欲の旺盛等の事情を反映いたしまして、当公庫に対します資金の需要もかなり活発でございまして、各代理店及び私どもの窓口に対しまして、いろいろ旺盛な御需要をいただいておるというような状況でございます。  簡単でございますが、以上で終ります。
  25. 廣川弘禪

    廣川委員長 ありがとうございました。  次は雫石参考人にお願いいたします。
  26. 雫石隆孝

    雫石参考人 私、岩手県の殖産銀行の者でございます。岩手県の開発につきましては、過般岩手県知事から申し上げたのでございますが、私は東北の一民間人として、この際二、三の平素考えておる点を申し上げまして、懇願を申し上げる次第でございます。  昭和二十八年の二月に、国土総合開発法に基きまして、十年計画をもって東北地方も国の力で次々に産業開発されて、その結果、地方民の生活、文化の向上なり、また同時に、国家社会に対する東北の貢献も可能になるということで、東北の千二百万の人たちは、非常に大きな期待を持ちまして、一日々々その成果の上ることを待っておるのであります。岩手県等は、たとい、わずかであろうともということで、総合開発のための特別の貯蓄を年々やっておりまして、一年間に約五億くらいの総合開発貯蓄というものが別個に積み立てられておる。また小学校、中学校、高等学校におきましては、総合開発に即応する教育は今後どうあるべきかという問題を取り上げまして、教育の面におきましても、この国の施策に対するいろいろな順応の態勢をとって参っておったのであります。ところが十カ年計画も、四カ年経過をいたしまして、その進捗状況を見ますると、まことに遅々として進まない。金額から見ますと、その実績は全体計画の大体二〇%そこそこである。東北地方の人たちの落胆はまことにひどいのであります。またこれを経済的に考えましても、たとえば、私どもが民間で事業をやります場合に、十億の工場を建てる。ここに何か十億の仕事をする。それが一挙にできない場合には、年次計画を立てて、三年なり四年なりでやる場合もありましょうが、もし十億かける場合、最初の年度に二億かけた。そうすると、二億につきまして、民間の金利からいいますと、年間一割の金利といたしますれば、二千万の金利がかかる。ですから、一たび事業に着手いたしますれば、一日も早く完成を見て、その施設の稼働をはからなければならぬのが、民間のいわゆるコマーシャル・ベースに乗って仕事をやっている者の考え方なのであります。小さな例を申し上げましても、たとえば四、五千万の映画館を建てるにしても、土地を買って、いよいよ建築にかかれば、一日も早くこれを完成して、一日も早く営業しなければ、これはコマーシャル・ベースに乗らぬのであります。ところが、財政上のお仕事を拝見しておりますと、十年計画、これがだんだん長くなって、今申し上げました通り、十五年かかるか、二十年かかるかわからぬ。その当初から投資された金の金利を見ますと、その金はもういたずらにただ寝ておるのであります。まことに国家の不経済これよりはなはだしきはない、こう思うのであります。着手されたならば、少くとも計画通りの年次の進捗状況をもって、ぜひこれを進めていただきたい。これは東北におるわれわれの考えばかりではなくて、国家経済から見ましても、しかあるべきものであるというふうに、私どもはこれをながめておるのであります。ぜひこの機会に申し上げたいことは、二十八年に作られました国土総合開発計画を、計画通りに実施するように国会の各位の格段のお骨折りをお願い申し上げたい。  さらに、それを強力に遂行いたしまするためには、いろいろな態勢が必要でございましょうが、まず行政機構を強力なものを作って推進していかなければ、今までのような各省々々の縦割り政策によるような方法では、やはり今までと同じようなコースをたどるのではないか。たまたま最近政府におかれましても、あるいは自民党社会党政党におかれましても、東北に関する非常な関心が深まって参ったということは、われわれ大いに幸いとするところなのでありますが、この機会に、ぜひ強力な行政機構を作っていただきたい。開発公庫あるいは開発金融公庫等の施設を、これはもう今までしばしば御検討のことであろうと思いまするが、検討の域を脱して、実行の域に入っていただきたい、こういうことをお願い申し上げたいと思います。  先ほどから各県の知事さんその他中央金融機関の方々から、東北産業の実情をいろいろお話し願って、拝聴しておったのでありまするが、たとえば今日の日本経済の三大隘路電力が不足である、輸送力が不足である、鉄鋼が間に合わないという、三大隘路ということをよく言われるのでありますけれども、そのうちの一つの、たとえば輸送力の不足ということになると、それじゃ鉄道の輸送力が足りなければ、船でやろうか。なかなか簡単に船は作られない。船の運賃は高い。それで今度、何年計画東北本線を電化しようという計画が次々に出てくる。ところが、なるほど輸送力不足の場合には、輸送力を増強するということも、第一義的には、これはぜひ対策として必要でございましょうが、同時に、今日のこの狭い日本の国内で、輸送力が非常にむだというか、不合理に使われておるという点が多々あるのであります。たとえば岩手県にいたしましても、山林県といわれておる。面積は四国四県にひとしい。杉もあります。アカマツもありますし、ブナなんかたくさんある。ところが、そのブナがパルプの原料として石巻に送られる。その他富士山ろくに送られている。しかし岩手県内で使う電柱の杉の柱は、紀州方面あるいは山梨方面から、この輸送力の逼迫しておるときに、はるか遠くから輸送されてくる。それじゃ地元の岩手県には杉の木はないかというと、何ぼでもある。あるけれども、その杉の木のはえている山の中までの林道がないのであります。道路がない。ですから、今日鉄道の輸送力が不足だというなら、鉄道の増強もよろしいが、同時に、そういう輸送経済、輸送の合理化と申しましょうか、そういう点も考えていく。そういう面の問題が東北には多々あるのであります。去年の夏からでございましょうか、東京の皆さんがお飲みになる市乳、なま牛乳、あれは岩手県から、今一日に約三十石くらいずつ牛乳タンクのトラックで送られておる。そういう意味では、岩手県はもう東京の郊外であります。そういうふうに、今はある面では、交通機関の発達によって非常に距離間隔が狭くなっておりますが、他面、ちょっと横っちょに入ると、今申し上げたような交通隘路が累積しておる、こういう状況でございます。  それで、私、常がね政治とは一体何だろうということを疑問に思うのです。私のようなしろうとが、そういうことを皆さんの前で申し上げることは、はなはだなんですが、まあしろうとの考えなんですから、御批判を伺いたいと思うのですけれども、少くとも経済行政から見ますと、政治というものは調整ではあるまいか、リアレンジをすることである。これは資本主義経済界におきましては、産業経済というものは、その経営者たちが、いろいろそろばんをはじいて計画を立ててやっておるのでありますが、そういう企業家たちの気のつかない、あるいはやれない、しかも国家の大計から見て、だれかが必ずやらなければならぬ仕事があるのであります。それをやるのが政治ではあるまいか。今日置き忘れられた、しかも利用さるべくして資金関係から、あるいは政治力なり、あるいは日本人全体の認識の欠除から、置き忘れられておったところの東北の経済開発について、そこに格別の力を注ぐということは、これは企業家にたよっても、なかなかできないのであります。これをなし遂げるのが政治ではあるまいか、こういうふうに常がね考えておるのであります。承りますれば、東京都という都市は年に三十万とか四十万とか、人口がおそろしくふえておるそうであります。どこからそんなに入ってくるのか、自然増加ではなくて、流入増が非常に多いというのでありまするが、聞きますと、やはり東北が一番多い。これを放置しておったならば、日本の国土計画といいますか、人口政策といいますか、これはどこへいくか全くわからぬ。それをチェックし、それをリアレンジするのが政治ではあるまいか。そういうためにも、東北開発ということは、国家的に大きな意味を持つものである。われわれ東北におる者は、必ずしも貧弱な、貧困なる東北の、いわゆる貧民救済のための東北開発を望んでおるだけではありませんで、国に寄与するという大きな気持を持ってこれをお願いしておるのでありますので、ぜひこの国土総合開発を既定通りお進め下さるようにお願い申し上げる次第であります。
  27. 廣川弘禪

    廣川委員長 ありがとうございました。  これにて参考人意見開陳を終ります。  次に質疑に入ります。川村委員より発言を求められております。川村君。
  28. 川村善八郎

    川村(善)委員 私はまず秋田県知事にお伺いいたしますが、私も八郎潟干拓の問題は関心を持って調査いたしましたし、やるべきだという決意を持っておるのであります。これは予算に支配されることはもちろんでありまするけれども、県みずからも解決をつけなければならない問題が多々あるのでございます。そのうち、二つほどお伺いしますが、知事は、先ほど漁業の補償の問題も着々進んでおる、それからさらに漁具の手入れ等もやめておるということを申されました。もちろん八郎潟の干拓によって一万五千町歩の水田ができますので、これについては、三千人の漁業による二百四十万貫の生産とは比べものにならないことは、私も承知しておるのでございますけれども、しかし、それによって漁民は失業することに相なります。そこで失業の救済をするためには、補償という問題も取り上げて考えておるのでありましょうけれども、国で漁業調整上必要としていわゆる整理をするという場合は、資源保護法によって補償を出し得る制度になっております。しかし、これは漁業調整上でなくて、いわゆる農業開発のため、八郎潟の干拓のために失業をさせる、あるいは調整をするのであったら、それに国の補償は望まれないだろうと思います。そこで県として、二百四十万貫の生産をしておる三千の漁民に対して、どのような方法と、どの程度の金額をもって補償するというのか。もう一つは、いわゆる転換をさせなければならぬのであるから、転換の方法をどういうふうにやろうというお考えか。この二点をお伺いいたします。
  29. 小畑勇二郎

    小畑参考人 八郎潟の問題は、現地をごらんいただきましたし、ぜひとも御推進方を願いたいと思いまするが、第一点の漁業の補償の問題につきましては、これは農林省とも話し合いをいたしまして漁業権が抹消いたしましてから、埋め立ての認可をするわけであります。今の段階では、基本的に漁民は干拓に賛成でありまするから、これについての意見は一致をいたしております。ただ、それによって——今の建前は、国の直営で施行するという建前になっておりまして国の直轄事業に伴って生業を失うものでありまするから、これは農林省といたしましても、何らかの形で補償しなければならぬ、こういうようなお考えになっておるようであります。そこで今の段階におきましては、毎戸の漁獲高の調査をいたしております。これは最初、非常に膨大な数字が出ておりましたが、毎戸について調べました結果、われわれが当初考えたより堅実な低い数字が出ておりまして、大体折れ合いそうでございます。大体百五十万から二百万という線が出ております。決してこの生産数量は無理がないと思っております。これは現在の規則では、農地委員会が補償額を決定する。漁業の補償を農地委員会が決定するのはおかしいのでありますが、今の建前からいうと、農地委員会が補償額を決定するという建前のようであります。いろいろ法的に疑問もございましょうが、とにかく毎戸ごとに出まして、生産数量が百五十万ないし二百万というふうにだんだん固まって参りましたので、その金額におきましては、そう摩擦相剋はないと思います。ただ川村さんがおっしゃいましたように、漁業権は一旦抹消して、また付与した格好になっておりますから、漁業権の補償というよりも、あれによって生計を失うのが二千七百戸ございますので、その二千七百戸に対して、一つの生活保障をするという格好になるだろうと思います。しかし、これはお話通り国だけにたよるわけに参りませんけれども、ただ、ほかのダム等の工事と違いまして、あれをやりましても、逆に毎日八千人の雇用力が必要なんでありますかから、今まで北海道その他に出かせぎしておった者が大体四千人はございますが、これを全部投入してもまだ足りませんので、さしあたりは、そういう労働に従事さしておきまして、そして増反新植といったようなことで、解決して参りたいというつもりであります。今の漁民の考えでは、最初は膨大な漁業補償をもらいたいという意向でありましたが、だんだんと不安定な漁業よりも、安定した農業に転換をいたしたい、漁田よりも農田がほしいというので、増反新値という方面に続々申し込みがございますので、一時的には、そういう稼働力によって救済をし、将来は、そういったものによって安定をさせたい。もともとあそこは半農半漁という状態でございますから、とりわけ不可能でないと思っております。
  30. 川村善八郎

    川村(善)委員 ただいま農林省の方では何らかの形で補償するというのでありますが、これはもじれば、できないこともございません。資源保護法施行当時は、やはり漁業権の抹消あるいは漁業の整理をしなければならぬという場合には、補償いたすべきだということでありましたから、これは国の施策をやる場合には、もじれば、その法律の適用はできないものでもないと思いますけれども、今承わりますと、百五十万と言われましたが、これは一戸当りですか、全体の補償でございますか。
  31. 小畑勇二郎

    小畑参考人 これは総体の生産数量を低く見積った場合には、年間百五十万貫、多く見積った場合には、二百万貫を少し上回る程度でありまして、最初考えたような、数百万貫といったようなものにはならぬようであります。その生産数量につきましては、大体把握をいたしました。その生値費をどの程度に見るか、それによって純所得がどのくらいあるか、といったようなことを毎戸ごとにやっておりまして、この補償につきましてはいろいろ議論があると思いますが、まず妥当な数字が出ると思います。
  32. 川村善八郎

    川村(善)委員 そうしますと、若干を補償をして、さらにその失業する漁民を干拓事業に使う、そしてそれが完成してしまうと、そのできた水田を分け合って農民に与える。結局八郎潟干拓において失業する漁民というものは、生活には決して困らないというだけの用意ができた、かように解釈してよろしゅうございますね。  次にお伺いいたしますことは、農林中金の富田さんに伺うのでありますが、先ほど伺いますと、大体千八百億ほどの預金があって、五百億ほどの貸し出しをしておる。その貸し出しについても、非常に不合理であるということはみずからも認めておられます。千百億程度のものは他の系統機関外の融資をしておるというようなお話でございますが、これが非常に農林水産委員会等でも問題になっております。富田さんの言をかりて申し上げると、協同組合等は内容が非常に悪い、言いかえるならば、貸し出しの対象にならないというように、きめつけているようでございます。そして最後には、漁業協同組合も再建整備をしなければならぬと言われた。そのことはわれわれも考えておるところでございますけれども、千八百億の預金というのは、いわゆる原動力で、農民の預金があなた方の中金に集まっておるのじゃないかという判断が私はできるのでございます。そこで、農民から吸収しました預金の形がどうであろうとも、その対象団体である農業協同組合に貸し出すことができないということは、それは内容において検討しますと、いろいろなケースがございましょうけれども、どうも私は合点がいかない。各地方からの要望を聞きますと、農業協同組合は、どうも現地の方のあなた方の支店とか、支所でございましょうけれども、考え方が違うのです。吸収することに専念をして、貸し出しをして、そうして再生産の振興をはかるというようなことを何ら考えていない。いわゆる金融機関としての考えだけで、立ち上ろうとしておる協同組合でも、それに対して金融をしないのだという声が非常に大きいのでございます。あなたは審査部長でございますから、十分審査もしておられるでありましょうけれども、私は現地の農業協同組合なり、あるいは漁業協同組合なりをよく調査をしております。もちろんあなた方の言う通りの点もございます。しかし、過渡期においてはやむを得ない事情もあるのです。あの統制時代に、だれが一体責任を負うたかというと、農業協同組合であり、漁業協同組合が責任を負って、いわゆる生産もし、集荷もし、出荷もしたのです。そのしわ寄せが、ほとんどその協同組合にいったために、農民や漁民そのものには、個々に立ち上っている人もありますけれども、全部の農民あるいは漁民の必死の金も使い果してしまって、国家の統制に服したがために、そういう不幸を見たという組合が多いのでございます。従って、あなたの言われるように、ベースには乗らないといった組合もあるでありましょうけれども、もちろんわれわれは再建整備をしようと思って、今再建整備法の促進をやっております。昨日社会党とわが自民党との話し合いできまりましたから、おそらく今国会には通るでありましょうけれども、今の現況をもってこれを処していくということになれば、これは大きな間違いができます。協同組合をつぶしてしまうということでは、必ず農民なり漁民が不幸になるということは、火を見るよりも明らかであります。従って、再建整備法が制定されます段階にありますから、再生産に向ってどうやって立ち上りをさせなければならぬか、立ち上りをするというところには、ある程度までベースに乗らぬという危惧の念がありましても、やはり他の産業に貸すよりは、当然農民から吸い上げた預金であるから、農民団体あるいは漁民に直接貸すという方針でなければならないと考えるが、今後そういう方針でいくかどうかということについて、お伺いしたいと思います。
  33. 富田武一

    富田参考人 川村先生にお答え申し上げます。ただいま私どもの預金が千八百億とおっしゃったのは千三百億の間違いでございますから、御訂正願いたいと思います。それで、若干私の申し上げたことがあるいは足らないで、誤解をお受けになったのかもわかりませんが、千三百億の預金というのは、おっしゃった通り大部分は農業協同組合系統の預金でございます。従って、私どもはこう経済が安定してきた現在の状況においては、できるだけこれをもとの方へ還元していく、そうして農業の生産力を上げるということが重点であるのでございます。だから、千百億からの余裕金が外部に出ておるということが不合理であることは、私自身が認めるのです。それで農協の中、あるいは漁業協同組合でもよろしゅうございますが、その中には、相当整備強化していただかなければならぬ向きもたくさんございます。しかしながら現実の問題としては、農協の関係では、少くとも私どもは、その農協が悪いから、農家の営農資金に事を欠かすというようなことは、絶対してはいけない。その後のあれもしたい、これもしたいという、いろいろな御計画もございましょうけれども、まず農家で申し上げますならば、その営農資金の確保ということは、どうしてもせんければいけない。そこで目下のところでは、これは御承知のような農業手形というようなものもございまして、これは相手の農協が悪かろうが、どうであろうが、受け入れ態勢が何であろうが、かんであろうが、とにかく一定の人が一定の条件さえ備えて手続をおとりになれば、いつでも金が出るという仕組みになっておるわけです。しかも、ここで御了解を願っておかなければいけないのは、農業手形というのは、戦後荒廃した、また農家の生産資金が非常に足りぬときに案出せられた特殊の方法でございまして、これは制度としては、日本銀行までつないでいるわけです。しかしながら、昨年あたりからは、おかげさまで系統機関の金が潤沢でございますので、農業手形といって、それは制度としてはございますけれども、その金は一文も日本銀行のお世話にはなっておらない。全部県の連合会が御自分でまかないなさる、それで足らぬ向きは、私どもの方へ割引の格好で上ってきているのがございましてこれでもって日本銀行には目下お世話になっておらぬ。従って、一部日本銀行方面なんかからのお世話では、自分のところへたよらないで、お前らはそんなに金を持っているのだから、自分でやれというわけです。しかし、これにつきましては、さっきも申し上げましたように、農業手形というのは二銭一厘で私どもの方から金が出ましてそれから県の連合会で二銭二厘で単協へ貸す、単協は二銭五厘で農家へ貸すという制度になっておりますから、これは脱線しているのかもしれませんけれども、とにかく制度としてはそうなっており、比較的に厳重に守られているつもりです。だから、お前の方は金があるから、こういうものは要らぬじゃないかと言われてみても、これは目下農林政策上の非常な御要請がございますし、この制度で末端の農家に行く金利は二銭五厘ということです。しかし、これを野放しして、なくしてしまえば、当局の御心配なさるのは、末端の方の農協なんかが、二銭五厘なんかではとても貸せない、自分は大体二銭七、八厘とか三銭とかで貸しておりますから、この分だけが高くなる心配があるじゃないか。あるいはまたさっき御心配願ったように、農協なり何なりが悪いから、せっかく営農資金を借りようと思っても、借りられぬじゃないかというようなのが出て困るじゃないか。また金利が上る場合には、これは国の米価政策にも影響してくるのではないかと私どもは考えますが、そういうことがあったら困るじゃないかというようなことで、いろいろ御心配願っているのです。それはしかし、資金量の関係その他からいきますならば、若干の準備期間は要りますけれども、今の農業手形の二銭一厘、二銭二厘、二銭五厘という線で出し得るかどうかということを、東北の各関係者とよく御相談しているわけです。これは多分やれるであろうという見込みなんです。けれども、万一猶予期間なしに、来年一月から農業手形を廃止するということになった場合は、末端の金利が上る、上るばかりでなしに、今までなら自動的に、手続さえ経れば借りられた金が、借りられぬようなことになっては、営農に支障が起って困るじゃないかというようなことが、いろいろございます。そういうことは絶対にないのです。私も二十数年ここでお世話になっているわけですけれども、昔から北海道の稚内の方の地区からずっとかけて、農家の最も必要とする肥料資金なんかを、お前の組合は悪いからいやだとかいうことで、そう御迷惑をかけた覚えは全然ないわけで、その点は一つある程度御安心願ってさしつかえないじゃないかと思っております。それは不幸にして、組合によりましては、農業協同組合、漁業協同組合なんかで、特殊なこういう施設をする、しかるに、あなた方のところは、もう少し出資金もおふやしになったらどうでしょうかとか、あるいは、こういう焦げつきの金がたくさんあるが、これはこういうふうにして回収なさる方針をお立てなさいとか何とか、御注文はいろいろ申し上げますけれども、全然放置して顧みないなんということはないと、私どもは考えておるのです。  きょうも、これは農林委員会の方で若干御疑問にお考えになっておるところがあるのですが、北海道の開拓地なんかについて、私ども出先の諸君がちょっと何か口をすべらしたことを、非常におしかりをこうむるのだということで、私に、もしここで時間の都合がついたら、向うへも出ろというお話なんですけど、そうひどく御不便をかける——少くとも営農資金とか、作業資金なんかに非常に御不便をかけると私は考えておらぬ。現実に、さっきもちょっと触れたように、開拓地のあの状況にいたしましても、私どもは農業手形——さっき二銭一厘と申し上げたけれども、開拓地に対してだって、特別に二銭一厘で、二銭二厘、二銭五厘以内という処置をこの間講じたわけです。そんなことで、非常に困難なさっておる状況下においても、政府資金が百二十億出ているときに、私どもは五十億、農家の数にして約十五万戸ですが、それに対してだって、それだけの御協力を申し上げておる。その点は私はある程度、自慢じゃおかしいけれども、とにかく相当の努力は申し上げておるつもりなんでして、いろいろ個々の事例につきましては、お気づき、御叱正をいただく点は多いかと思いますけれども、しかし、私どもは、たくさんの金を吸い上げてきて、遊んで、どうだろうかとか何とか、ぬくぬくしてながめておる状況では決してございません。だから、最近は農家、山林の関係の諸君をときどき方々から集めまして何か適切な融資の対象はないかということで、むしろ探しているような格好になっておる。  ことに、この前私ども所長会議があったときなんかに、秋田からは八郎潟お話がさっきございましたが、八郎潟の問題なんかが出てきて、これは相当金が要るということですから、とにかく私どもの方でどの程度のことを御後援申し上げられるか知りませんけれども、これは非常に重要な対象であるから、徹底的に県庁と御相談して、そのほかできるだけのことをこれに対しても御協力申し上げよう、こういうことでございまして、腹の内は、決して相手が悪いからほっとくのだとか何とかいうことはございません。協力して、いかにしてまともな軌道に乗せようかということで、目下努力をしておるのでございまして、その点は一つ、現実の事態はお前の言うようになっておらぬ、とおっしゃるかもわかりませんけれども、努力は一生懸命いたしておるのでございまして、御趣旨の通り運んでおるつもりでございますから、御了承願いたいと思います。
  34. 川村善八郎

    川村(善)委員 富田君は非常に御理解を持っておりまして、その通りいきますと、われわれもあえて問題をかもし出そうとは考えません。しかしながら、現実におきましては、あなたのおっしゃる通りでありません。きょうは東北振興の問題で参考人を呼んでおるのですから、時間の関係がありますので、これで質問いたしませんけれども、あなたの方は、言いかえるならば本店の方は、しかも富田さんは、御理解を持っておられると思いますけれども、末端はさようには参っておりません。この例をあげますと、一日あげたって尽きません。特に北海道は、いろいろな面で、私、連合会長もやりましたし、いろいろやって参りましたが、なかなかさようには参りません。あなたの方の支店の罪だとは申しませんけれども、漁連あり、農協あり、あるいは連合会がございまして、いろいろ団体がございますから、その団体の責任もあるかと思いますが、時間がありませんから、いずれ機会を見まして、この問題につきましては理事長初め富田さんは御理解を持っておられますけれども、御理解ある富田さんと、今度の新理事長を呼んで、十分私は話し合いたいと思いますから、この程度にいたします。  それから開拓農に貸した金の平均が二十万程度になっておる。あなたはこれで満足していないということを言っております。もともとあの荒廃したところ、立地条件の悪いところに、開拓農民を入れたのでございますから、この二十万か三十万の金を貸して、直ちに借金も済ませる、生活も安定できるなどという考えが、そもそも間違っておるのです。いわゆる開拓農民であるならば、三年くらいの生活もできるような命を、くれるというわけにはいかない——くれれば、けっこうでございますけれども、ある一定期間は無利息で、償還期間も据置何年間といったようなことで、乳牛を入れるとか、あるいは開拓に必要な農機具を入れるというようなことを、やってやらなければならなかった。開拓農に対して政府がやらなかったことも悪いが、二十万円の金が平均いっておるから、まあ大丈夫だろうという考えも、あなた方が間違っております。もちろん生産のない開拓農民に対して、二十万というものは大きいかもしれませんが、とにかくこれ以上の、少くも私は百万円以上の金融をしてやって、十年なら十年というものは、そのうちにはっきり生活ができるように、計画が遂行できるように、めんどうを見てやらなければ、開拓農民などというものは、たとい十万でも償還できないことははっきりしております。これは政府の施策に待たなければならぬ。あなた方金融機関を責めるわけではありませんが、とにかくあなた方からお借りした金も完全に返済できるところまで、国もめんどう見てやり、しかも、その国がめんどう見てやる反面、あなた方はやはり金融でめんどう見てやるという方向にいかれるようにお願いを申し上げまして終ります。これは質問じゃありませんから、御答弁は要りません。  それから江崎さんに伺いますが、製造業の数のことが金融問題の資料にありますが、そのうち、造船業などは中小企業に乗らないものですか。それに対して中小企業金融公庫の金が出ていないのですか。
  35. 江崎千準

    江崎参考人 ただいまの御質問でございますが、造船業につきましては、私どもの建前といたしましては、中小企業の造船業に対しましては融資をいたす建前になっております。ただ東北六県にさような事例がありましたかどうか、ちょっとただいま資料がございませんので、お答えいたしかねますけれども、もしも、さような御希望なりがございました節は、私どもといたしましては、取り上げることができるという建前になっております。
  36. 川村善八郎

    川村(善)委員 他にも質問者がございますから、これで質問を打ち切りますが、造船業というものは、今日漁業に関連して非常に大きな役割を果しております。一日々々発展しておる漁業に伴って、造船も、建造とか、あるいは技術等が進んでいかなければならぬことは当然でございます。そこで、あるかないか、まだおわかりにならないということでございますが、旅館とか、あるいは医業などに金融をするということも必要ではございますけれども、東北六県、新潟県は全部海に面しております。この問題も、もちろん陸上の開発が中心になりましょうけれども、捨てておける問題じゃないと思います。私、秋田県も新潟県も見ておりますが、どうもあの方面漁業が伸展しないということは、背後のそういう施設がないためだということも、私は見て参りました。自分の前浜の海で操業するというような、過去の弊にとらわれることなく、どんどん大洋に進出しなければならぬというときでございますので、私は特に漁業関心を持っておる者として、造船業の発達をさせなければ漁業の発達はないと思いますから、こうした金融機関がある以上は、造船業に対しても、やはり中小企業金融公庫の金を流してやるということを考えていただきたい。大体私造船業等について聞いてみますと、対象にならないような考えを持っておられるようでございます。ですから、やはりこういうことも、あなた方から、宣伝といえばおかしいけれども、造船業に対しても、東北六県の開発には漁業がどうしても必要だということもお考え願って、金融事業の方に一つお願いいたしまして、私の質問をこれで終る次第でございます。
  37. 竹谷源太郎

    竹谷委員 時間もありませんから、ごく簡単に質問します。要領だけ御答弁願いたいと思います。  山形県の山形市の西北の方の山脈でありますとか、あるいは出羽丘陵地帯というのがございます。あの辺に黒鉱という鉱石がたくさん埋蔵してあってこれをうまく分析ができれば——これは銅や非鉄金属、いろいろなものを含んでおりますが、そういう鉱石がある。分析ができて、これを精練することができれば非常な資源である。同様のものは秋田県の銅山等においても、いたずらに捨てられて、ボタになっておるというようなことを聞くのでありますが、こういう点その後どういうふうになっておりますか、もしおわかりでしたら、両県知事、もしくはどちらかの知事からお聞きしたい。
  38. 安孫子藤吉

    安孫子参考人 いろいろ県としましても、その辺調査をいたしておりますが、私、結論的にはまだお答えするような材料を持っておりません。秋田の方でもしございましたら……。
  39. 廣川弘禪

    廣川委員長 小畑参考人どうですか。
  40. 小畑勇二郎

    小畑参考人 いろいろその鉱物の処理は問題になっておりますが、まだそこへ手がついておりません。いろいろ鉱業界では何とかこれを処理したいという考えでおりますが、大体今のところは銅が非常に景気がいいものでありますから、そういうものに手がついておりませんけれども、やはりこれは一つの資源として活用していかなければならぬというので、今、鉱業界では鉱山大学と連絡をいたしまして、この開発について——開発というよりも処理について、いろいろ検討を進めております。
  41. 竹谷源太郎

    竹谷委員 東北大学の金属研究所という研究所があるそうでありますが、そこでは、この黒鉱の処理が大体できるというようなことを前に聞いたことがあるのですが、私もその専門家でないものですから、よくわかりませんけれども、あるいは鉱業的にまだ成り立たないのかもしれません。両県知事におかれては、東北としては、その他の県よりも相当豊富に埋蔵のある資源だそうでございまして、御研究をお願いいたしたいと思います。  それから、昔は秋田県は非常に牛の大生産地であったというふうに聞いておるのでありますが、あれは和牛や役牛であったかもしれません。今日、あの牛を生産することを非常に得意で好きであった秋田県の農民の、その後酪農あるいは牛の生産等に関連して、牛関係の畜産というものはどういうふうになっておるか。また県としては、これに対する指導方針をどのように今後されようとしておるか、ごく簡単でいいですから、お聞きしたい。
  42. 小畑勇二郎

    小畑参考人 これは、ようやくことしの八月に仙北、平鹿、雄勝、いわゆる県南、市が三つありますので三市三郡といっておりますが、三市三郡の集約酪農地帯の設計ができまして現在は乳牛が二千頭ございますが、五年目に五千頭、七年計画で八千頭の乳牛の育成の計画を立てまして、この製品の処理につきましても、経済連が引き受けてやってくれる話し合いがつきまして、ようやく発足をいたしたばかりであります。これにつきましては、先ほども申し上げましたように、何といたしましても草資源の改良が非常に大事でありまして、現在はほんとうに活用されておる草資源というものは二〇%しかない、あとはほとんど野草のままにしておかれておりますので、草資源の改良を中心といたしましてこの集約酪農の振興をはかって参りたいと考えております。しかし、これはやってみますと、非常に隘路がございまして並み大ていのことではないと存じておりますが、ぜひとも一つこれをやり遂げたい。なおまた竹谷さんのお話の和牛、これも秋田県の特産でございますので、県北地方には和牛の奨励をして参りたい、かように考えております。
  43. 竹谷源太郎

    竹谷委員 山形県の東北開発促進に関する要望書という印刷物の中に、第十八に「甜菜の栽培について」ということがございまして、これを見ると、「三二年度より、これが試作を実施し、本事業の促進を図りたいので、格別の援助を要望する。」こうあるのであります。これを見ると、まだ試験試作等もなさっておらないようでありますが、秋田県の方はいかがでございましょうか。実はおととい日曜日に、私は——蔵王山ろくの一部になるのでありますが、宮城県の白石市から山形県の上ノ山に抜ける奥羽山脈のてっペん近い地帯に、七ヶ宿という宮城県側の村があります。これは相当の酪農でありますが、その村の半分け大麦が成育しない。この大麦が成育しないというのは品種が悪いので、もっと耐寒性品種を植えれば、できるだろうと私は思いますが、そう言っておる。これは県が悪いのではないかと思って研究してもらうことにしましたが、アズキその他も、ことしは非常な冷害で不作なのです。米は二、三分作、非常にかわいそうな状況でありますが、このようなところにテンサイ等は非常によろしいのではないか。実のなるものはだめなので、根の方は、こういう地帯でも、昔は相当大根あるいはバレイショ等はとれているわけなのです。これはやはり東北全体として、高冷地帯等には特に考慮せられるべき作物であるということを痛切に——ことしのように、平場では宮城県等は二百九十五万石もとれて、ことしは日本第二の米の生産量を示しているにかかわらず、同じ県内で、この高冷地帯は米がとれない。また例年でも、小麦はとれるが、大麦はとれないという地帯があるのであります。これはもし秋田県の方においてテンサイの試験研究をなさった御実績があれば、御答弁をお願いいたしたい、こう思うのであります。  なお、今の冷害の話のついでに、農林中央金庫の方にお伺いしたいと思うのですが、先ほど川村委員からもお話がありましたけれども、一戸当り開拓農民には二十万円平均貸し付けておる、こういうことであります。蔵王山ろく等の開拓農民は、ことしはアズキ百俵くらいとれるだろう、昨年はとれたので、そう予想して相当の収入を上げ得ると考えておったのが、ことしは全体で何俵かくらいしかとれない。それで、さしむきの生活費にも困るという現状であります。こういうのに対しては、このような一戸当り二十万もあなたの方では貸し付けているので、大いに関心があろうと思うのですが、一体これにどういう対策を立てておりますか。あなたに御質問するのはどうかと思うので、農林省に聞かなければならぬはずでありますが、今お話が出ましたので、もし御承知のことがあり、またお答えが願えれば幸いな次第であります。先にテンサイの方を一つ
  44. 小畑勇二郎

    小畑参考人 テンサイは非常に有望でありますし、ぜひともやらなければならぬというのでありますが、遺憾ながらほとんど試作もいたしておりません。そこで、これは新たなる問題として農事試験場に今研究をさせよう、こういう程度でありまして、遺憾ながら非常におくれております。しかしぜひとも手をつけて参りたい、かように思います。
  45. 富田武一

    富田参考人 一戸当り二十万と申しますのは、これは冒頭に申し上げました政府資金が約百二十億と、それから私どもの方から五十億とで、百七十億くらいございます。それで平均しますと、全国で一戸当り約二十万見当となろうということでございます。ところで、私もさっき申し上げましたように、開拓地の実情を歩き回って見てみますと、仰せの通りでございます。とにかく、できるつもりでおりましても、非常に立地条件の悪いところでございますから、普通一般の既存農家でさえ相当な災害を受ける場合なんかにおきましては、山手の災害地が非常にみじめな状況であることは、よくわかるのであります。そこで私どもは、先ほど川村先生からも御指摘がございましたが、わずか一戸当り二十万くらいで、引揚者その他に入ってもらって、開拓地を既存農家並みに引き上げようなんと言ってみたってこれはから念仏で、そんなことはできないと思っております。それの何倍かを、しかも非常な長期資金で入れない限り、それはできないと思っております。現実問題としましては、今の天災法その他による災害資金というものは、これは開拓地であろうが、既存農家であろうが、何であろうが、みな同じようなことになっておる。だから、かりに開拓地なんというところが災害復旧の努力をいたしましても、既存農家がやった場合には、すぐ相当の生産力を——もともとの生産力が、開拓地と既存農家では雲泥の開きがあるのですから、かりに開拓地が災害の応急施策を講じてみたからといって、既存農家よりはるかに低いのでして、そういう関係からいきますれば、開拓地に対する貸し出しは、単に農林金融機関でございます私どもの方だけでは、とても手に合わない状況でございます。また政府がお貸しになっておるとしても、比較的短期でございますから、これをどうしても十年とか、十五年とか長期にしていただきたい。既存農家の側からいきますと、自作農創設資金なんというものは、二十年もお貸しになるのです。しかも金利が非常に安いわけです。こういう状況でございますから、私はもう何度も何度も農林省の農地局の方へはお願いしておるわけでして、これはうんと長い金を出していただくような御処置を願いたい。その足らざるところを私どもが補うような格好にしていただかないと、これは、ただ幾ら開拓地でかりに生産してみても、全く借金を払うために生産しておるにすぎない格好になりまして、とうてい開拓地の住民の方々の生活水準を上げるのだとか、既存農家に近づけるのだとか、口でこそ勝手に言ってみましても、これはから念仏で、私は二、三日前にもある関係の席で申し上げたのですが、日本は農地がこれだけあるとか、山がこれだけあると言ってみたって未墾地を開発するには、非常な資金と労力が要るということを、まず頭に置いてかからなければ、だめなんだ、従ってこれは貸す方も借りる方も、気長にやっていただかないと、これらの人たちを立ち上らせるということは非常に困難なんだから、政府におかれましても、予算措置がおそらく伴いますから、非常に困難ではあるかもしれませんけれども、しかし、ああやって戦後食糧が不足のときに、一坪の農園でも耕すという努力をお勧めになり、最近、やっと昨年あたりから豊作になったものだから、だんだんその熱の入れ方が少し鈍くなっておるのじゃなかろうかということを、私どもは御心配申し上げて、とにかくこれは恒久策として、相当思い切った施策を政府においてもおとり願うように、また私どももできるだけ——もともと全国の農家なり漁業者を基盤にして立っておる私どもでございますから、その人々が生活の安定を得られるということが先決であり、また先ほどから申し上げるように、たくさんの金が私どものところに集まってきます。これが末端の農家、漁業者その他のところで、金が要らないからどこへでも運用してくれ、衣食足ってというわけにはいかないが、金は十分自分の方で都合がつくから要らない、これは要らない金だから、頂かっておいてくれという話なら、まことにけっこうな話でございますけれども、実情は全然そうではなくて、たくさんの資金が実際問題として要るわけでございますから、これは私どもとしても、ただ余裕金なんかかかえて喜んでおるわけではなくて、あらゆる手段を講じて、農山漁村に還元していくという努力を払わなければいかぬと考えております。だから、御指摘の山形の、資金をお借りになっておる農民諸君が、とれるつもりでおったけれども、ちっともとれなかったということになりますれば、これは私どもの方でも、それをある程度長期に直してあげるとか、あるいは政府におかれましても、災害対策の別の資金をお出しになるとかなんとか、山形県のワクをお作りになることに御尽力下さるよう、私の方からもお願い申し上げておきます。
  46. 門司亮

    ○門司委員 ごく簡単ですが、ちょうど知事さん二人おいでになっておりますから、ちょっとお聞きしたい。それは開発事業と地方財政との関係ですが、こういう事業がずっと行われてきまして今のところは、よくとも悪くとも、食いつぶしでやっておるわけです。それに県費も相当要ると思いますが、将来財政にどういう影響を及ぼしてくるかという計算がございますか、もしそういうものがございましたら、一つ聞かせていただきたいと思います。
  47. 小畑勇二郎

    小畑参考人 幸い御質問でありますので、お聞きとり願いたいと思いますが、まず両党で特別委員会を設け、非常に熱心にやっていただいたことは、感謝にたえないということを申し上げておきます。  そこで自民党では、現在の公共事業費にさらに昭和三十一年度には二百一億のものをやりたい、こういうことで、これは大蔵省に、各省の裏打ちを得て、要求がされておるようであります。これは大へんありがたいことですが、それで現在の補助率で参りますと、七県で約四十億の負担が要るわけであります。そこで、われわれといたしましては、これに対して二つのお願いをいたしておるわけであります。ということは、これは大へんありがたいことですが、一体その手当をどうしていただけるものか。一つは、この東北開発の補助率は大体北海道並みにしていただきたい。北海道並みにしていただきましても、二十億以上は必要だと思いますので、それの財源措置につきまして特にお考えをいただきたい。もう一つは、それをいただきましても、御承知通り現在の再建法では、前三カ年間の二十七−九の七五%ということで押えられておりますから、その再建法に対して特例を設けていただきまして、それはワク外としていただきたい。これはぜひとも御措置をいただきたい。この二つのお願いをいたしておるわけであります。  そこで、先生さっきちょっと御中座の場合に、一つの案として申し上げましたことは、私らは根本的には、この税体系を農業県にふさわしいものに直していただかなければならない、二十五年のシャウプ勧告によりまして市町村財政はよくなりましたけれども、府県の財政は、ほとんど事業税が主体になりましたものですから、農業県におきまして、農民の負担というものは税収入の一割程度であります。でありまするから、根本的には、われわれといたしましては、農業県にふさわしい、農業の総合行政をやるにふさわしいような税体系に、国、地方を通じて直していただきたいというのが根本問題であります。さっそく実現は、なかなか困難だと思いますので、これは両党に文書をもってお願いしておりまするが、さしあたりの臨時的な措置といたしましては、米の県外移出に対して、百円程度のものを農業奨励金として出していただきたい。しかし、それが食管から出すことになるとしますれば、食管から地方財政というものにつながりをつけることは非常に困難でありますので、農業改良基金——これは御承知のように今度新しく創設されましたが、その金をそのまま入れていただきたい。そうしますと、農業振興に出しておりました分が多少肩がわりもできますし、農業改良基金も非常に伸びますので、これは農林省としてもぜひともお考えを願いたい。また地方財政にしても、臨時的な措置でありますが、ぜひともお考えを願いたい。これは米の県外移出分だけやりますと、全国で大体十二、三億で済みますし、そのほとんど大部分が東北七県でございますが、それを食管も苦しかろうけれども一つ出していただいて、同じ農林省の特別会計である農業改良基金に還元をしていただきたい。こういうお願いを一つの具体案としてお願いしておるわけであります。
  48. 門司亮

    ○門司委員 最後に申し上げますが、実際地方財政はどうにもなりません。それであなたの方もお苦しみになっておるのでしょうが、東北開発事業をやって、どのくらいの年度で、県民の税負担というものが、どのくらい伸びていくというような見通しか何かございますか。
  49. 小畑勇二郎

    小畑参考人 これは一体財政にどれだけはね返りがあるか、県民に対してどれだけはね返りがあるかということでありますが、これはおそらく当分の間、財政にいたしましても、県民経済にいたしましても、生産の基礎的な条件を整備することでありますから、そう大したはね返りは期待できまいと私は思うのであります。たとえば八郎潟のようなものは、端的に、五十億の生産があるから、所得税何ぼというふうにはっきり計算できますが、ああいう効率の多い仕事というものは、そうあるものではありません。東北で今やろうとする仕事は、全く産業の基礎的な条件の整備でございますから、国家にいたしましても、地方団体にいたしましても、財政のはね返りを見ることは非常に無理であります。また、直ちに県民の所得が増加するといったようなことは、これはここ数年で考えてはならぬと思うのであります。われわれと  いたしましては、東北開発の根本の問題は、東北全体の県民の所得の増加もさることながら、東北の余剰能力、年々七万と称されておりますが、東北の県外へ出ております人々が、東北へ住みつくような施策をぜひともやっていただきたい、こう考えておるのが主眼でございまして、数年たちましたならば、県民所得の増加あるいは財政のはね返りも考えられましょう。今申し上げました通り、これは財政的に申しましても、経済的に見ましても、はなはだ採算の悪いもので、それを期待してはならぬのじゃないか。ただ東北全体の余剰能力、東北全体の過剰人口、そういうものを東北内に吸収するということにつきましては非常に効果があるのではないか、かように考えております。
  50. 廣川弘禪

    廣川委員長 ほかに御質問はありませんか。——なければ、これにて参考人よりの意見聴取を終ります。  参考人各位には、長時間にわたりまして非常に貴重な御意見を承わり、本件調査の上にきわめて参考になろうと考えます。この際厚くお礼を申し上げます。  次会は明五日午前十時より、本日に引き続いて参考人より意見を聴取いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後一時十四分散会