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戸叶委員 私は
日本社会党を代表いたしまして、ただいま
議題となりました千九百五十六年の
国際小麦協定の
受諾について
承認を求めるの件に
反対の意を表せんとするものでございます。
その第一の
理由は、
政府が
世界的な
食糧事情の
変化ということを認識しないで、相変らず過去の
考えで
協定を結ぼうとしているからでございます。すなわち、過去においてこの
協定に加入したときには、
食糧事情も思わしくなく一
政府のいうように、この
協定に加入して、
日本が二百万トン余りの
輸入を必要とするうち、その半分の百万トンを買付保証することにより、この百万トンの
小麦を
世界の
需給市場の
変化にかかわらず、安定した
価格をもって買い入れることができるようになるからと言っております。しかしこのことは過去の
食糧事情の上に立っての
議論でありまして、今日では
世界各国とも
小麦の
価格の
安定状態が続いておりますし、
わが国の例をとってみましても、この
協定によって保証されなくとも、自由に買えるという新しい
食糧事情になってきていることを少しも認識していないことが、相変らず惰性の
外交で、何ら前進的な
外交を示していないという点であります。すなわち、今日
世界の
市場が
買手市場で
売手市場でないということ。そうなって参りますと、無理やりに
ワクに当てはめて買わなくてもよいという点が少しもわかっておらないということが問題であろうと思います。
そこで、それを
考えて参りますと、今日どうしてもこの
協定に入らなければならないという大きな
理由は何ら見出されません。その
一つの現われといたしまして、たといその
理由の根拠は薄いにいたしましても、ともかく二十八年度の
協定のときには四十五カ国が署名していたのに今回は四十カ国、五カ国が減っていることを見ましても明らかであるのでありまして、もしもよいものであるならば、だんだんに
加盟国がふえていくはずではないかと思うのであります。
第二は、
英国におきまして今回国連の
小麦会議が開催されておりながら、相変らず
イギリスは入っておりません。この前の、つまり二十八年度におきましては、
イギリスは
最高価格が二ドル五セントになったのに対して、
最高価格を二ドルにしてほしいということを主張したのでございます。今回はその
主張通り二ドルに
最高価格が下げられたにもかかわらず、入っておりません。しかも二十八年度にこの
協定が審議されましたとき、私はなぜ
イギリスが入らないかという点を
質問いたしましたところが、
外務省におきましては、それに対して、
イギリスは毎年四百何十万トンも買っている、それが一
ブッシェルについて五セントも違うと何万ドルも違う、だからこれが入らない
理由の
一つであった、こう
答弁されております。そこで今回はどうであるかという
質問をいたしましたのに対して、
価格の問題は今回は全然出なかったというような
答弁をされております。これは全くおかしなことで、
イギリスは入りたくなかったために、前にこの二ドル五セントから二ドルを主張したその手前もあって、
値段の問題を出さずそっとしておいて入らなかったということがはっきりしているのであって、その入らない
意図は、
イギリスが自由に買った方がよいからであるということに今日
政府が気づかないということは、まことに残念ながら
外務省の方々の人のよさというか、あまりのんびりし過ぎているということを危惧せざるを得ないのであって、もっとよく
検イギリスの
意図が那辺にあったかを理解できるのではないかと私は思うのでございます。
第三点は、
最高と
最低の
ワク内で百万トン買うというが、それ以下に下った場合には安い方から買った方がよいではないか、百万トンを義務づけられていることは、
日本に対して不利ではないかという
質問に対しては、
最低価格より下ることはおそらくないと思うというような大へん甘い
考えでおられます。しかも一方におきましては、
最高価格二ドルはこれ以上上る心配はないということをはっきり言い切っているのであります。それなら何もこの
協定に入って安いものを買いそこなうような危険をあえて冒す必要はないではないかと私は
考えるのでございます。
第四は、
イギリスは
ソ連から
小麦を買っておりますが、
政府の説明によりますと、一九五三年に二千百トン、それを二十万ドルで買っております。これは一
ブッシェル二ドル五十一セントに当るのですが、一九五四年には五万九千四百トンを四百十万ドルで買い、これは一ドル四十セントになっております。一九五五年には七万九千五百トンを二百六十万ドルで買って、これが一
ブッシェル一ドル十八セントについております。これを見ましても、
イギリスはこの
協定に入らずとも相当安く多量に買っているということを証明しているのであります。こういうように、
イギリスが
ソ連から安く買っているではないかという
質問に対して、この統計はもしかしたら間違っているかもしれないというような非常に子供だましの
答弁をしておりますが、この点も私
ども、ふに落ちないところでございます。
日本はようやく
日ソ共同宣言が批准されまして、今後安い
小麦を買うことになるかもしれませんし、またこうした
イギリスの
値段の安いものを買っているという例を見ましても、
日本がこの
小麦協定に入らなくても安く買えるかもしれないというときに、この
協定に縛られるということは、
日本をまことに不利にするものではないかということを
考えるものであります。
第五は、
国内への
影響であります。
日本の真の
独立というものは、
経済独立が達成されなければなりませんが、そのためにはまず
食糧の自給のための
政策が打ち立てられていかなければならないと思います。ところがこの
協定に入ることは、この
政策に逆行するものであって、もっと
国内増産のために
政府が予算を十分注入することを
考えなければならないのにもかかわらず、むしろこの
協定に入って農民の
生産意欲を妨げるものであると私は
考えるものでございます。
以上おもな点だけを申し上げましたが、その他また
アメリカ側の
小麦等の
過剰生産の処理のために、
日本が利用されようとする傾向が非常に強いことを私
どもはおそれるものでございます。要するに
前回協定に入ったときには、
国際事情も今日と変っていたということを認識しないところに、大きな問題があるのでありまして、このような
外交方針が他にも示されることがないようにするためにも、もう一度
政府並びに与党の
皆様方の猛反省を促して、私の
反対の
討論にかえる次第であります。(
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