○山下
説明員
關谷先先のお話のように、実は
平水区域、沼海底域の決定につきましては、一応先ほど申しましたような基準を持っておるわけであります。しかし純然たる帆船を作っておった当時におきましては、航行
区域が広いということが非常に危険をかもすということは当然でございます。その後船の
設備のいろいろの改善によりまして、初めはただ船が港を出入りするときに、エンジンをつけて出入りを楽にしたというのがだんだん移り変って参りまして、帆はほとんど使わないで、機械を主にして運航するというような状況に移り変っております。従いましてお話のように、船もある程度早く危険を察知して航行し得る。また最近はラジオの天気予報等によって、気候の移り変りを急速に察知し得るというような機構にはなっておりますけれども、
現実に船の海難の状況を見ますと、やはり運航上による過失というものが
相当多いわけであります。
この原因につきましては、実は海難の防止上、または海上交通の安全上、いろいろ私ども研究もいたしておるわけでありますが、第一番の原因といたしましては、従来からのしきたりによりまして、この機付エンジンをつけております船を帆船扱いにすること自体が第一番におかしい。しかしこれにつきましては、今までいろいろなことがありましたが、最も究極の目的といたしましては、これらのエンジンを持っております帆船はやはり汽船として扱うべきではなかろうか。もちろん現在のいろいろの制度そのままではいけませんので、それに対しましてのいろいろの緩和規定とか、または税制上のいろいろの緩和規定とか、そういうものによりまして、しかも船員等に適当な海技の知識を得させまして、そうして船が安全に航行するような基礎をぜひとも一刻も早く作っていくようにするのが、この船自体も安全でもございます。また海上のことでございますから、他船がそれに行き会うというようなこともございまして、他船にも大きな影響があるわけでございますが、究極の目的といたしましては、先ほど申しましたようにあらゆる面から見まして、これらの船の合理化をはからなければならぬというように考えているわけでございます。
ところが御
承知のように、従来平水の帆船と申しておりますのは、総トン数二十トン未満のものでございますが、二十トン未満のものにつきましては、自由にどこへ行ってもいいという規定になっております。そしてその二十トン未満の船につきましては、今まで船鑑札または船籍票というものを交付いたしておりましたが、これらの制度が長年の間に非常に乱雑になってきておりまして、中には、他船の船鑑札を新しく作りました船に借りかえてつけるとか、または船をはかる地方の官吏が、はかり方を十分御存じないために小さく船をはかってしまわれるとか、そのほかいろいろの事実がございまして、実際は船が大きくて二十トン以上になっておりましても、いわゆる平水扱いになっているというような事実があるわけでございます。一昨年、前々国会におきまして、小型船の検認につきまして御決定を得まして、それに基きまして船の検認を今までずっとやってきておりますが、この結果を見ますると、地方庁の方では、こういう船鑑札を持っている船は、大体
全国で二万五千隻余りあるであろうというふうに帳面の上ではなっておりますが、
海運局の調べによりますと、それが一万五千二百隻程度である。このくらい大きな開きがございます。それで
現実に本年の末を目標にいたしまして検認を取り進めているわけでございますが、今までわかりました結果によりますと、九月末日までに大体百三十三隻を
全国で調べておりますが、そのうち一九%が二十トンから三十トンのものであります。それから三十トンから四十トンになりますものが三三%、四十トンから五十トンになりますものが二〇%、五十トンから七十トンになりますものが一七%、七十トンから百トンになりまするものが七%、百トン以上のものは四%ということですが、これらの船は今まではみな二十トン未満の船として扱われておったというような、まことに驚くような事実があったのでございます。しかし、こういうようにいたしまして船の検認をやりますと同時に、これらの船が今後航行上の安全を期す必要はもちろんございますが、ところが一度にあらゆることを強制して、船の
検査も受けろ、また
設備も十分整えろ、船員の資格も十分備えろというふうにいたしますと、これは非常に大きな影響を与えますので、私どもとしましては、この影響を極力低めると同時に、実際にやりやすいようにいたしまして、しかも海上の安全という
意味から、早急にと申しますか、過渡的な時間はもちろん必要でございますが、なるべく組織立った海上の安全をはかっていきたい、こういうふうに今考えているわけでございます。
御
承知のように、検認制度はことしの十二月末日をもって一応検認が全部終るというふうになっておりまして、
法律の上からいいますと、検認が終ればすぐに、二十トン以上の船は、
平水区域を航行するもの以外は、やはり船の
検査証書または船員の資格というようなものを法規に基いてとらねばいけませんが、しかし私どももいろいろ準備の手抜かり等もございまするので、この検認はやりますが、来年度の終りくらいまでこの
船舶職員の免状をとるのを猶予しようではないか、またその間に十分に
予算等をもちまして、乗組員の資格をとるような教育をいたしたい、こういうように思っております。また船の
検査につきましても、過渡的な措置を講じまして、船主に不必要な、または過重な負担にならないよう、最低限度の安全を守っていくというような線で、
検査の面をやっていきたいと寄り寄り協議をいたしておる次第であります。従いまして来年度の終りまでの期間につきましては、かりにトン数が二十トン以上になりましても、省令をもちまして従来通り船が航行できるというような措置を、それに並行して考えていきたいと思っております。そういうようないろいろの施策を講じておりまして、できるだけ船が無理のないよう安全に航行できますように、私どもは考えていきたいと思っております。