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1956-03-14 第24回国会 参議院 予算委員会 第15号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十一年三月十四日(水曜日)    午前十時二十九分開会     ―――――――――――――  出席者は左の通り。    委員長     西郷吉之助君    理事           池田宇右衞門君            堀  末治君            三浦 義男君            秋山 長造君            吉田 法晴君            中山 福藏君    委員            石坂 豊一君            井上 清一君            川村 松助君            木内 四郎君            佐野  廣君            田中 啓一君            西岡 ハル君            平林 太一君            藤野 繁雄君            堀木 鎌三君            吉田 萬次君            亀田 得治君            菊川 孝夫君            竹中 勝男君            戸叶  武君            永岡 光治君            羽生 三七君            山本 經勝君            館  哲二君            八木 幸吉君   国務大臣    法 務 大 臣 牧野 良三君    外 務 大 臣 重光  葵君    大 蔵 大 臣 一萬田尚登君    厚 生 大 臣 小林 英三君    通商産業大臣  石橋 湛山君    運 輸 大 臣 吉野 信次君    郵 政 大 臣 村上  勇君    労 働  大臣 倉石 忠雄君    国 務 大 臣 高碕達之助君   政府委員    内閣官房長官  根本龍太郎君    人事院総裁   淺井  清君    人事院事務総局    給与局長    瀧本 忠男君    調達庁次長   丸山  佶君    経済企画庁審議    官       金子 美雄君    経済企画庁調整    部長      小山 雄二君    経済企画庁計画    部長      大来佐武郎君    外務事務官    (公使)    木村四郎七君    外務省欧米局長 千葉  皓君    外務省経済局長 湯川 盛夫君    外務省条約局長 下田 武三君    大蔵省主計局長 森永貞一郎君    通商産業大臣官    房長      岩武 照彦君    運輸省鉄道監督    局長      權田 良彦君   事務局側    常任委員会専門    員       正木 千冬君   説明員    日本専売公社総    裁       入間野武雄君    日本国有鉄道副    総裁      小倉 俊夫君    日本電信電話公    社総裁     梶井  剛君    日本電信電話公    社副総裁    靱   勉君     ―――――――――――――   本日の会議に付した案件 ○昭和三十一年度一般会計予算内閣  提出衆議院送付) ○昭和三十一年度特別会計予算内閣  提出衆議院送付) ○昭和三十一年度政府関係機関予算  (内閣提出衆議院送付)     ―――――――――――――
  2. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) ただいまより予算委員会を開会いたします。  前日に引き続きまして、一般質疑を続行いたします。  御報告いたします。委員秋山俊一郎君が辞任されまして、堀木鎌三君が委員に入られました。
  3. 堀木鎌三

    堀木鎌三君 私は時間の関係上、いろいろ御質問したいこともありますが、ごく限局いたしまして、関係大臣に御質問いたしたいと思います。  まず、外務大臣及び経済企画庁長官にお聞きしたいと思いますが、外務大臣は最近経済外交の推進ということを外交の大きな方針一つとして取り上げられております。また経済企画庁長官経済自立五カ年計画を見ますと、貿易拡大ということを強調しておられるわけです。しかし一体政府政策を見ますと、むろんみなそれらは必要なことであるが、どこに重点をおいて、どういう具体的な方策で推進されるかという点が非常にぼやけて参っておるし、また内閣全体の機構運用等から見ますと、どうも欠けておるところがあるのじゃなかろうか、こういう観点からお聞きするわけであります。  で、まず第一に主として問題を企業進出資本投資の形というものについて問題の重点をしぼりたい。むろん最近輸出入関係が好転して参りましたのは、確かに海外の景気の上昇ということが大きな原因であるということも言えますが、それと同時に、国民が過去三カ年間のこのデフレ的政策によくたえて、そうして企業合理化を推進し、あるいは輸出振興に努力した跡も見のがせないと思うのであります。また政府がこれらに呼応いたしまして、輸出に対しては租税を初めとして各種の政策というものをおとりになった。それからプラント輸出に対しても、輸出入銀行整備充実に努めてこられたという跡も私どもは見のがすわけにはいかないと思いますが、一番今世界情勢から見て、私どもが盲点とも言うべきものであるというのは、この企業進出資本投資の形でなかろうか。すなわち考えられますことは、各国ともいわゆる後進国は、農業国の領域から近代工業化した国家になろうとして非常にあせっておる。それに各政治家も非常な政策重点をおいているし、国民もまたそれを政治家に期待しておるというのが、全体の趨勢ではなかろうか。しかもここ二、三年の間にその情勢は非常に顕著になってきておる。ところが一方資本不足に悩み、あるいは技術面からの悩み、その他のものが非常に不足しておる。かたがたそれらを自分の国でまかなおうとすれば、インフレ的な傾向になるというふうな悩みを持っておる。ここに各国が非常に目をつけて、そうして相手国の希望するような状態において企業進出をはかって、将来のマーケットを確保しよう、こういうふうな情勢ではなかろうか。それで日本が昨年からの貿易の順調に安心しているときではないではなかろうか。かたがた二年ぐらい前ですと、日本経済日本自身経済の再建に非常に何と申しますか、悩んでおるときであるということが言い得ますが、もうすでに貿易は毎月順調な傾向をたどっておる。そうして保有外貨はふえてきておるし、幾分余力が生じてきておる。ただ貿易の伸張に安易な気分でおると、将来のマーケットを失うのじゃないか、こういうような考えを持っているのでありますが、こういう点につきまして外交上の観点から外務大臣の御答弁をちょうだいしたい。高碕長官からは経済企画庁観点からお考えを伺いたいし、また大蔵大臣大蔵大臣観点から、とにかくこれらについてのお考えを伺いたいということをまずもって御質問いたします。
  4. 重光葵

    国務大臣重光葵君) 私に対する御質問は、外交上の見地から見た経済発展経済外交をどういうふうに考えておるかという大綱について御質問がございました。経済外交と申しましても、すべて対外的の問題に全面的に関係を持っておることは推察にかたからぬところであります。すなわち平和外交と称してわが国の平和的の外交方針を対外的に徹底せしめるということは経済外交の実は根本でございます。  これを例にとって申し上げれば、東南アジア方面経済外交ということをしきりに申されております。しかし、もし東南アジア方面において過去のいろいろな歴史上の経緯から記憶をたどられて、日本はいまだに東南アジアについて政治的と申しますか、いろいろ野心を持っておるというような考えを持たれては、済経外交はできません。経済自立はむろんできません。そこでその点においては、日本においてはっきりした外交方針、すなわち平和的にすべて国際間の問題を処理するのである、侵略等の意向はごうまつも持っていないということを、言葉だけでなくて、日本人を信用するようになってこそ、経済外交が進むのでございます。またそれがためには、国交を回復しなければなりません。その国交を回復するために、賠償も片づけなければなりませんので、非常に苦心をしておることは御推察にかたからぬことでございます。さようなわけで基盤をこしらえていかなければなりません。基盤をこしらえてのちに経済外交というわけにも参りません。すなわちすべて時期的にはやれることからどんどん進んでやらなければなりませんので、これをすべてのそういう政策は小口から進めていかなければなりません。そこで一見非常に順序不同のように見えたり、いろいろなにもございましょう。不満足な点もたくさんございます。しかし大体の筋道としては、そういうような考え方で、でき得ることからどんどん進めていく、これよりほか問題はございません。進める方法各国別に進めること、賠償問題をどんどん片づけていく、各国との間にさらにそれをたぐっていって経済的貿易進出その他の実際的の措置を講じなければなりませんので、そういうふうにやっておるわけでございます。また各国別にやるだけではいけません。経済問題は世界的の国際的の事項が非常に多うございます。ガットの問題であるとか、国際連合の諸問題というものもむろんございます。こういう問題に対して国際的に日本の地位を了解せしめ、また伸展せしめるという方向に向って進まなければならぬことは当然でございます。各国別、さらに国際的にどんどん進めていくというような考え方をもって進んでおるのであります。  以上のような点は大まかな点で、いかにもばく然としておるようではございますが、しかし日本の行く道としては、そういうことをはっきりと頭に置いて、すべて具体的の場合に処置を進めていかなければ効果的でないのであります。外交上の一般的の考え方はそういう考え方をもって着々進んでおるつもりでございます。御了解をいただきたいと存じます。
  5. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 大体御質疑の趣旨は、私も同じような考えでございますが、具体的にどういうふうになっているかということ、これはいろいろな観点から御説明ができると思います。一つには御意見のように、この日本貿易が伸張いたしまして、国際収支もよほどの改善をみまして、本年の二月の十日に保有外貨は十三億五千万ドルになりました。このうちから八億ドル以上は大体使える外貨になりますが、私はこの外貨を、今後のむろん見通しも十分考慮に入れまして、なるべく輸入をふやす、また輸入のふやし方にはいろいろありますが、これは通産省と今後とくと御相談を申し上げる。輸入をふやすという意味はどういうことであるかと言えば、要するに東南アジア諸国に対する資本投資ということも考えてみなければならぬ、そうしますと、これがためにはどうしても原料の輸入をふやさないと物価騰貴もございますし、思うような生産増大もできない。東南アジア諸国資本投資、たとえば機械なら機械、そういうものを輸出する場合において、この原料なるものの輸入増大をはかっていく、かような方針を今後とっていきたい。なお、国内的としては、プラント輸出については今回輸出入銀行についてはその貸し出し能力をふやしております。昨年は四百八億、ことしは五百四十八億、約百四十億円ふやしているわけでありまして、これも十分活用をしていき、遺憾なきようにいたしたい。さらに今日きまっている分、たとえばタイに対して経済協力関係において九十六億円というものがあります。ビルマについても賠償と関連しまして日本ビルマとの経済協力で五千万ドル、年間にして五百万ドルというものの使い道もできる、さらに近くフィリピンとの間に賠償が成立いたしますれば、この国との間にも巨額な経済協力関係ができるわけであります。従いまして着々私は東南アジア諸国に対する日本のこの基本の輸出ということは緒につきつつあると思っているのであります。そうしましてそれらのことを永続的に可能ならしめるためには、どうしてもその根源として日本輸出が伸びていくということが必要でありますから、一そう良質のものを安く生産し、生産費が安くして、こういうふうな経済政策を、あるいは海外政策を今後とも堅持していかなければならぬということであります。なお、間接的でありますが、さらに日本東南アジア市場とを結ぶ関係におきましては、やはり国際的な機関の活動ということも私は必要と思っているのでありまして、私の直接関係する限りにおきまして、たとえば国際通貨基金関係において、特に世界銀行東南アジアに対する融資の比率を増加するように極力要請をいたしているのでありまして、幸い最近では徐々ながらこれがふえております。大体今世界銀行貸し出しのうちの東南アジア向けは十二%、十一%程度のが十二%、一%程度ふえているのであります。こういうことでは足らぬからということを今日極力申しているのでありまして、私は今後世界銀行等東南アジア、つまり国際情勢に対応する意味においても、東南アジア投入資金量をふやしていくべきだ、かような要請をいたしております。さらに近くは世界金融会社ができました。日本もこれに参加いたしたのでございますが、この運用もできるだけ東南アジアに向けたい。さらに今考えているところは、でき得べくんば、私はやはり今日の国際情勢とともに共産圏等経済的な進出に対応する上からも、アジアにおいて、アジアの未開発国で一番困っているのが資金の欠乏でありますから、これを補完する意味において、アジア専門といえば、これは語弊がありますが、アジア開発ため一つ開発会社、あるいは金融会社というものを考慮していきたい、かように考えておるわけであります。
  6. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) 長期経済計画におきましては、経済自立をするために一そう振興せなければならぬということはもちろんでございますが、輸出ということになりますというと、既製品輸出するということはもちろんでありますが、今日の態勢から申しますと、アメリカヨーロッパ付近には、これは既製品輸出はいいと思いますが、未開発地域、特に中南米とか東南アジア等におきましては、これはその国が、先ほどお話のごとく逐次従前の消費物資は自給する、こういう方針で進んでおるわけでありまして、かつ、この国々は順次農業国から工業国に変らんとしております。これに対してはできるだけプラント輸出をもって発展していきたい、こういう方針で進んでおるわけでありますが、プラント輸出をいたしますにつきましては、ヨーロッパ各国はもちろん、アメリカにおきましても、ある程度長期に低金利金融をするというふうなことをしきりにやり出して来ておるわけであります。場合によるとこれはある程度の投資をするというふうな考え方各国が進んでおるわけでありますが、わが国といたしましてもこれに対抗するため相当プラント輸出ためには長期に低金利でこれを金融をするということを考え、同時に場合によればある程度の投資をするというふうに考えなければならぬ、こういうふうに存じておりますが、これがため政府といたしましては、輸出入銀行資金をふやし、できるだけ輸出入銀行資金に対しては低金利長期にするということに努力いたすと同時に、海外投資につきましては投資保険制度を創設いたしまして、できるだけ進出する人たちの危険を保険制度によって分担していきたい、こういう考えで進んでおるわけであります。経済五カ年計画におきましても、海外投資というものを相当重要視して、これを計画の中に織り込んでいきたい、こう考えておるわけでありますけれども、御承知のように今日先ほど外務大臣がお答えいたしました通りに、東南アジア諸国におきましては、日本経済進出ということについては相当警戒の眼をもって見ているときに、日本だけでこの計画を立てるということは注意しなければならぬ。この点につきましては中南米の方には、これはそういう心配はないわけでありますから、これは相当思い切った相当大胆なるこれら各企業者進出につきましては、これは奨励しておるようなわけであります。東南アジアにつきましては、幸いにビルマ賠償、引き続いてフィリピン賠償等ができ上りますというと、そうすると、これは一面から言うと賠償の契約として日本経済協力ということがうたわれておるのでありますが、こういうふうなものにつきましては、相当計画的に政府としても計画を立てて、そうして経済五カ年計画に織り込んでいく、こういうふうな方針で進んでいこう、こういうふうに存じておるわけであります。
  7. 堀木鎌三

    堀木鎌三君 やや経済企画庁長官のお答えが私の質問にフォーカスがあって来たようであります。むろん外務大臣がおっしゃるように、平和外交というものを基調として、そうして各国の、ことに東南アジア諸国日本に対する疑惑というものを払拭していくということが基本的なものであるということは私考えられます。それからもう一つ東南アジア地域については賠償問題が先決になって参るということもよくわかるのでありますが、それと同時に、さっき外務大臣が言われましたように、結局具体的にできるところからできる方法を、相手方の希望するような状態において推進していくということ以外に私は今後の日本経済あり方日本の国力の充実あり方はないというふうに考えられるのでありますが、外務大臣にもう一点具体的にお聞きいたします。  で、そういうふうな観点から私が考えるのに、在外公館のそういう経済外交を、具体的に両国の事情をにらみ合せてそしてやっていく、インテリジェンスと申しますか、まず各国とも競争して入っているのですから、その情報が一番私は欠けているのじゃないかと思う。むろん外務省役人が怠けているわけではない。しかしその素養なりあるいは自分の本務なりというものから考えると、そういう経済外交を推進するのには、もっと民間のそういう立派な人が――実は日本失業者は非常に、何と申しますか、各種多様の失業者がおります。ずいぶん練達の士であり、経験のある人も遊んでおる。そういう経済方面に明るい人をもっともっと――私に卒直に言わせれば、一方ではただ働きができるような人、ワンダラー・マンでけっこうだ、一方では非常に高給なものを出してもいいだろう、そういう人をなにも今さら外務省役人にする必要もないのですが、そういう人を活用する方法でもってまずまっ先に――日本の状況を見ると、私は情報の収集がこの企業進出という観点からは欠けておる。経済調査的なものあるいは具体的にもうすでに話し合いができたものを進めるというものは、ここにまかしてもいいのだが、それ以前の、実際企業進出をどうしたら相手方が喜んでやるかというふうな点について、もっと外交上の特別な処置をこの際なさらないと、日本だけが考えておって、世界テンポがおそいならいいのでありますが、世界テンポが早くて日本テンポがおそいというのが現状ですから、特別な処置をなさる必要がないのかということをまず一つお聞きいたします。  それから非常に時間を節約する意味で申し上げるのでありますが、どうも大蔵大臣のおっしゃることは、予算にみな大体出ている、またやろうとされることも私もわかります。しかしこれは経済企画庁長官にも申し上げますが、経済企画庁長官の方で、今でも五カ年計画計画として織込みたいのだが、まだできていない。事実まだできてないのです。観念的なものはある。しかし経済企画庁通産省大蔵省をひっくくって国策として具体的に計画にのせていくようなものはない。現に外貨使用方法についても、大蔵大臣のおっしゃることは輸入をふやす、あるいは自動承認制を緩和する、その方向だ、私はその方向は決して今おやりになることがいいと申し上げることをちゅうちょするものではありません。むろんそれをおやりにならなければならない。そして物価上昇を抑えていく、原材料を安いときに買う。現にバトラーがイギリスの経済を立て直した一つは、外国から原材料をいかに安く買うかということに全力をあげた。その一つ方法としては、私は輸入をふやすため自動承認制拡大するとか、いろいろな方策をとられるのは当然だと思うのでありますが、実は企業進出についてどうしようか、経済企画庁長官輸出保険制度を今度やる。だからこれでいいだろう、あるいはプラント輸出を例にあげた。私は輸出入銀行でも今取り扱えない、現に日本企業――日本をふり返ってみますと、日本では今後輸出をあなた方が拡大しようとすれば、いよいよもって近代化しなければならない。能率化しなければならない。単位コストは下げていかなければならない。それで、貿易振興だけで失業者が吸収でき、遊休設備は稼働するようになるというふうな甘い考え方では、世界の――日本だけが相手国ならいいのですが、各国企業進出を競争しているときには、そういう方向経済をもっていかなければ――実は通産大臣がおいでになりましたが、私は通産大臣拡大均衡もできない。だから失業者はそんなに吸収できるわけはありません。また遊休設備が稼働するなんていう時代はおかしな時代で、もっと近代化能率化した工場ができ設備ができていくはずなんです。そういうことを考えると、幸いに貿易がよくなってきた際に、また日本国民がほんとうにやれば、貿易も事実三、四億ドルわれわれの予想に反して実績が上ってきているじゃありませんか。そういう点からみますと、そういう点についてこの際政策を集中されるべきだ。輸出保険制度についても、特別な非常な危険な状態だけを予想した保険であります。そういう企業進出観点からみた保険ではないと私は思う。だからそういう点もお考えになるお気持がないか。外務大臣は特別な外交機構一つの問題でありますが、大蔵大臣経済企画庁長官は、そういうことをことしこそおやりになるときであって、一年おくれの感が世界経済からみればあるのじゃないか。あえてそういうことすら感ずるということを申し上げて御答弁をお願いします。
  8. 重光葵

    国務大臣重光葵君) 私に対する御質問は、主として機構の問題でございました。経済外交を推進する、これは非常な多方面にわたる大きな事業であることは、一般的には先ほど申し上げたことで御了解を得たと思いますが、どうしても日本経済発展貿易の増進ということに対しては、経済外交と申しますか、これに対してまず外交方面ではその大きな水みちを開くと申しますか、道を開いていって、そうして障害を排除し、またどんどん進み得るような道をつけてゆくということが外交の主たる任務だと思います。そこで、いくら経済進出と申しましても、経済外交の名のもとに、国内で生産力をどうするとかこうするとかいうことまで手が及ぶものではございません。しかしながら、外国からの情報を十分にそういう方面に供給するということは、これまた経済外交水みちをつける大きな仕事でございますから、私は経済情報について、常に足らざるところをおそれて、やるべきだと思います。その点は全然御同感でございます。しかるに日本経済外交機構、在外的な機関というものは決して十分ではございません。他国に比較してみて非常に規模が小さうございます。これはただちに予算のことにも関係をします。日本の今日の財政上で、必要なことであるから、すべてできるという財政状態ではございません。そこで経済外交機関は非常に貧弱ではありますが、でき得る限りの努力をするというやり方でもってやっておるわけでございます。しかしこれでもまだいろいろ御批判はありましょう。ありましょうが、しかし全力を尽してこれはやらなければならぬ、またやるようにいたしたいと考えます。しかしてこれを補う意味において民間の有識者の力を借りるということはまことに私はこれも御同感でございます。そこで外務省の有する経費の運用はできます限りそういうことについても努力いたしたいと思うのでございます。何か非常にいい御考案なりまたお気づきの点があるならば、これは私どもとしては歓迎をいたしますから、お申し出を願いたいと思います。さような気がまえで経済外交を遺漏なく進めていきたいということを申し上げて私の御答弁を終ります。
  9. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 先ほどから申し上げましたように、貿易増大ならしめる。資本の投下もふやす、これはまあ結局いろいろな問題がありますが、まあ私どもとしてはこの貿易、特に貿易等に関する限りにおいては自由経済をとっております。すべてが国の庇護によって進出をはかるというわけにもこれは国際的に見てもいけないのであります。その辺の調整も十分考えつつやっていきたい、かように考えておるわけです。従いまして、先ほども申し上げましたように、今日の外貨保有状況から見、かつ今後の情勢も勘案いたしまして、今後輸入もふやし、従ってまあ輸出増大をする。同時にそういうものもある程度については、海外開発ためにも、言いかえれば投資的な点にも役立ち得る、かようにも考えておる。それから先ほども申し上げましたが、日本輸出入銀行の能力もふやし、プラント輸出も円滑にしていく、こういうふうにも考えておる。幸いにして東南アジア等については賠償に十分手を……、なるべく早く賠償関係も片づける。それから個々の企業等の資本投下については保険制度も拡充いたしまして、これを助けていく。あらゆる今日の日本の国力で可能な限度におきまして、できるだけお説の趣旨の実現に努めておるような次第でございます。
  10. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) この海外投資につきましては、現在大企業者の方が自分の利潤で、自分の調査の結果によって、逐次中南米及び東南アジア等進出いたしまして、これがプラント輸出を伴い、同時に原料確保というような点を非常に重要視して各自がやっておるわけであります。私どもは今東南アジア及び中南米等において急速にやらなければならぬと思っておりますことは、むしろ中小企業者進出をやってみたいと考えておるわけなんです。これは私の一個の考えで、はなはだまとまった意見ではありませんが、大企業者海外投資する場合は比較的これは容易にいけると思うのですが、中小工業者の海外進出ということになれば、これはそれだけの力もない、また調査する機関も持っていない、こういうことでありますから、こういう点につきましては、今後はよほど政府といたしましても中小工業者が団体組織をもってするという場合には、投資保険等につきましても、できるだけ便宜を計らっていくような方針で進めなければならぬかと、こう存じておる次第であります。これは私の個人の希望でございます。そういうふうに進みたいと考えておるわけであります。
  11. 堀木鎌三

    堀木鎌三君 それじゃ通産大臣に、今大蔵大臣なり経審長官との質疑応答を通じて、所管の通産大臣としてお考えになる点でもう少し具体的にお聞きしたいと思います。  高碕大臣も言われておるのでありますが、非常に私ども方向は正しいと思うのですが、世界経済テンポから見ますと、どうも少しおくれておるのじゃないか、その点が一番心配なんです。今度今国会に出ております輸出保険法の一部を改正する法律案に海外投資保険というものが出ています。しかし十四条の二でもって、どうもその私の質問を……どうも輸出入の振興の特別措置とそれからもう一つは、輸出入銀行を通ずるプラント輸出というものだけで、もう大臣が満足して答弁なさるような傾向があるのですが、どうもその二つだけでは、従来日本がそれでやってきたが、それでやってきたのでは、この二、三年たつと日本経済貿易が縮小するのではなかろうか。つまりみな自分の国を工業化していく。よその国は企業進出を試みて将来のマーケットを確保する。むろん原材料も確保するような方法もあるでしょうが、将来のその国の購買力の増加というものを見込んで、もうすでに企業進出をどんどん始めておる。ところがこれはあまりこまかいことにわたりますが、事実日本の実績は、今までのこの企業進出海外投資の実績というものを見ますと、三十八件、千五百万ドル、実は一年平均五百万ドル。私がクビチェック大統領の就任式に参りましたが、その翌日、同じ特派大使として参っておりますニクソンは、ブラジルの鉄鋼業のために三千五百万ドルを出しました。それを見ると、ニクソンがおみやげを持ってきた三千五百万ドルにも及ばない。それでもって企業進出は今後考えるのだとおっしゃっても板についてこないです、事実。高碕さんも経済審議庁長官であられる以上は、国策をしぼって、そうして各省をしぼっていかなければならない。具体的にしなければいけない。それができていないとすれば、私はよその国よりも二、三年おそいと、こう思うのでありますが、通産大臣に特に申し上げたいのは、お聞きしたいのは、この海外投資保険で一体全部まかなえると思っておられるかどうか。先ほど外務大臣が言われた企業進出の前提の、まず各国企業進出をしようとしてやっておる状態から見ると、日本はそのインテリジェンス、そういう情報の収集でもおくれておる。その情報収集というものをもっと具体的に企業進出というものにしぼっていく。だから海外投資保険を見ますと、今度五〇%、しかも十四条の二で非常に限定された。これはもう不可抗力であり、外国政府のほとんど革命だとか、戦争だとか、内乱だとかといって損害を受けたものに限定されておる。これで一体出てくるか、民間の人が考えて。むろん私は高碕さんのおっしゃるように、大きな企業ですらなかなか出にくい。それから中小企業を出すには特段の処置をしなければならぬというふうに考えます。ことに日本経済でもってややもうかっていると、だれも危険をしのんで実は海外投資しなくたって、内地でもうかる。日本でもうかっている間は日本でもうけているが、経済が行き詰ってくると出血輸出、出血輸出だといってやってきたのが過去の実例です。そういうことを考えると経済というものは一、二年の間の遠きおもんぱかる、あまり遠くなくてもいい、一、二年の間の遠きをおもんばかれば日本経済を確保していくことができる、現に私ども吉田内閣時代にあわてて原材料を買おうとしたら、もう世界はみんな買っちゃって高くなってしまった、よそは安い原材料を大量に買っていた、そのため日本経済再建が非常に困難だったということを考えるのでありますが、そういう点からいって、私は輸出保険についてももっと条件を緩和せられるべきであり、元本の回収についても考慮すべきじゃなかろうか、まあ事実事業によって違うのですが、五割でもいいところもありましょう、しかし七、八割まで保険がかからなければ実際にやられない事業もありましょう、いろいろな卒業もあります。そういう点について私は考えるべき時期だと思いますが、通産大臣拡大均衡を言われたって、こういう交易の経済拡大均衡をされなければ私はできていかないのだと思う。遊休設備はいつまでも遊休設備で、失業者はいつまでも失業者であると、こういうふうに考えますが、いかがでございますか。
  12. 石橋湛山

    国務大臣(石橋湛山君) お説はごもっともでありまして、確かにどうもまだ十分でないということを認めざるを得ない。ただ今保険の方も今度は出始じめでありますから、あの程度でということでありまして、あれで十分とはむろん考えておりません。もっとやらなければいけないということは痛感いたしております。
  13. 堀木鎌三

    堀木鎌三君 外務大臣に一点だけ残っておりますので簡単にお聞きしますが、同時に大蔵大臣、経審長官にも考えていただきたいのですが、日本の移民というものに対してもう少し金を惜しまないでやったらどうか、私が今度参りましたブラジルには、三十七万の日本人二世がおります。これが日本だったら人口が増加して都市ができているわけです。労力を実は向うへ出すという感じで、それへ金を貸すということは私は考え方が違うのじゃないか。そういう人口がふえていけば生活保護費も要る、教育費も医療費もふえてくる、そういうふうな大きな総合的な観点から、移民政策について振興方策を特に考えていただきたい。そのほか今後カンボジアその他にもそういう問題が起っているそうでありますが、最初でございますから、最初のところほど気をつけて移民の選定については将来相手国に非常に喜んでもらうような、受け入れられるような、実績を上げ得る素質を持った人たち、及び訓練をした人たち、そういう人を選定をぜひして、今後移住のできるような方策をとるようにしていただきたい。どうも日本人の感じは何だか労力だけ出すような気がするのですが、国家政策からみるとずいぶん生活保護費が要る、将来の生活保護費や教育費や医療費がふえるということから考えると、よほど思いきって考えていいのではないか。外務大臣はむろん同感されると思いますが、どうもお隣りの大蔵大臣がどう考えられるか。お隣りの大蔵大臣がよほどそういう方に考え方をお向け願うことが必要でなかろうかと思いますから、もしも外務大臣から、おれは同感だから答弁しないとおっしゃれば、大蔵大臣から御答願います。
  14. 重光葵

    国務大臣重光葵君) 私からもお答えいたしますが、この問題は日本の将来のことを考えてみて国策の一つの基礎的なことと考えます。そこで移民の問題については実はごく近年において非常に実際問題となって非常に発展してきたのでございますが、これはよほど大きく考えていろいろ施策を講じなければならない問題と、こう考えます。これは私だけでなく、政府もそう考えておるのであります。まあこれを理想的にやるにはお話の通りずいぶんこれは金を食うことでございます。従いまして、予算の問題であってもなかなかこれは容易に実行できがたい点もあることは、日本財政状態から御推察通りであります。しかしながら政府といたしましてはこれは根本的の問題でありますから、大きく一つ考慮をめぐらして、できる範囲内においてまた最大の努力をしたい、こういうふうに考えて参っておると申し上げます。
  15. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 移民につきましては大蔵大臣としてもできるだけ財政的にも御協力申し上げているつもりであります。ただしかし、これは金をふやしただけでは移民がなかなか具体化しないいろいろな条件もあるようでありまして、今後外務省と十分協力いたしまして、移民が円滑にかつ伸びますように努力いたしたいと思います。
  16. 堀木鎌三

    堀木鎌三君 最後に申し上げたいのですが、実は経審長官も通産大臣外務大臣大蔵大臣も、大体の傾向は同じでも、どうも御答弁のうちに少しずつ径庭がある。そういう点を考えますと、特に私が四大臣にお願いいたしたいのは、どうも日本のこういう経済の将来海外経済との結びつき、そういうものについての具体的な、積極的な一つの国策を立て、それを推進するという態勢が私は非常に少いのではないか。経済閣僚が寄られて今後いろいろそういった点をお考え願うのであろうと思いますが、どうも貿易関係というものは各省みんなにまたがっている、しかも将来の企業進出についての問題に問題をしぼって、ここで立てなければならぬときに、各省ばらばらではどうにもしようがないというふうに考えますので、しかも五カ年計画はお示しになっても、その間に日本経済として一番必要な今申し上げた分が残っているわけです。これはむろん向うの条件にかかっているから、やりにくいということをおっしゃるでしょう。それはごもっともです。しかし日本自身でこうしようという案がなくて、いつまでも外国の向うの情勢によって変ってくるのだとおっしゃっておっても、日本が何もしないことの言いわけにはなるまいと思う。両方の事情を突き合せて日本経済拡大均衡に持っていく、そこに初めて中小企業の問題も失業の問題も解決していく。それでなければ今後二、三年たったらおそらく日本貿易がますます縮小するのだというふうにすら考えられるときに、この際ぜひ関係閣僚の間で、それらのことについて具体的方策をお作りになり、そうしてそれを推進する方策をお考えになる、また民間の方にもその態勢を作ってもらう、そうしてそれを刺激する政策をはっきりお立てになるということを、ぜひお願いしたいと思います。これだけ申し上げて私の質問は時間が参りましたから終ります。
  17. 竹中勝男

    ○竹中勝男君 小林厚生大臣にお尋ねいたします。三十一年度予算経済自立五カ年計画の初年度予算であるとしますならば、この長期計画財政計画にらみ合せて社会保障計画が一応立てられておると私は考えるのでありますが、社会保障関係予算にそれがどのように表わされておりますか、その点をまずお尋ねしたいと思います。
  18. 小林英三

    国務大臣(小林英三君) 社会保障関係予算といたしましては、御承知のようにことしは約九百三億円ほど計上しておるのでありまして、いろいろの事情の変化はございましたけれども、昨年度よりも六十億円程度の増加をいたしておるのでありまして、私はこの社会保障の長期計画といたしましては、何と申しましても医療保障というものにウェートを特にかける必要があると思います。この問題といたしましては、やはり現在三千万人も社会保険の未適用者がおられるわけでありますから、これらの問題につきましても社会保障の、われわれが考えております最終年度でありまする昭和三十五年を目途といたしまして、全体の国民が社会保険の適用の中に入るように努力をいたしたい。その間におきまして現在の健康保険でありますとか、あるいは国保の問題でありますとか、あるいはその他五人以下の事業場の問題はどうするかというような問題もございまするし、また共済組合等の問題もございまするし、現在の国保等に非常な財政的に見ると影響を与えておりまする結核の対策の問題というようなものもあわせて検討中でございまして、その他あるいは児童福祉の問題、あるいは老令者の問題、いろいろの各方面にわたりまして総合的に年次計画を立って進んで行くべきものだと考えております。
  19. 竹中勝男

    ○竹中勝男君 ただいまの医療保障の面から国民保険の線を三十五年度には完成されるというお答えでありますが、国民健康保険予算は本年度は、三十一年度は八十八億二千万円、前年度に比しまして十五億六千万円も増加されております。これは多分三十一年度に新しく四百六十万人の増加を見合せた数字と私は考えております。ところが今大臣が言われました通りに医療保険に漏れておるところのものが約三千万人あります。その中に一千万人が賃金労働者です、零細な企業の。それからその家族約一千万人であります。こういう割合で国保を拡大をして行くと少くとも私の計算では七年間かかります。むろん年度によってこの予算が増加するという考えを持っておられると思いますけれども、ただいままでの計画では少くとも最小限度七年間はかかります。  そこで国民保険をやられようとするのであ、れば大臣にお尋ねしたいんですが、この三千万人中の一千万の賃金労働者及びその家族は大体五人未満の従業員しか持っていないところの零細企業に働く人であります。そうして同時にこういう人たち-の健康保険こそ最も急を必要としておるのであります。日雇い労働者には曲りなりにも一応健康探険があります。ところがこの零細企業の最も低い賃金で働いているところの労働者に健康保険がないということは、昨常に片手落ちであると思います。そこでお尋ねいたしますが、こういう零細企業、五人未満の零細企業で働いているところの労働者に対して、特別健康制度というものを五カ年計画の中に作る考えはありませんか。これは健康保険を研究しておる君たちの一致した意見であります。こういう人たち保険料負担能力がきわめて低いのでありますから、従ってまた健康保険の対象になっていないわけでありますが、その保険料の半額を国康負担にするような労えはありませんか。約五十億の費用でできるわけであります。その点について、大臣どういうふうに考えておられますか。
  20. 小林英三

    国務大臣(小林英三君) お尋ねの五人以下の専業場の従業員の問題について、特別健康保険を作る意思があるかないかというようなお尋ねでありますが、私はこういう問題もやはりすべてをあわせて慎重に検討をいたすべきものでありまして、私は先ほどお答えしました中にも――やはり五人未満の問題をどうするかという問題は十分に検討すべきだと考えております。
  21. 竹中勝男

    ○竹中勝男君 慎重に研究されることは大へん当然のことでございますが、実際医療保障委員会及び調査費として今度組まれているのが、やはりわずかに九百万円でありますが、これで国民保険計画が、私は慎重に研究されるとはとうてい思えません。これは現在の内閣が本気でやるのならば医療保障委員会及び調査費としてこんなわずかな九百万円というようなことで、この大きな自民党が重要政策として掲げておる社会保障計画が進行すると私は絶対に考えておりません。これに関連して今般の政府が出しておられます健康保険改正法案の標準報酬の最低最高を引き上げておられますが、最低三千円を四千円に引き上げております。これで一番苦しい階級であります三千円以下の者でも、四千円の標準で保険料を払わなければならないのであります。しかもこれは十万八十人おります。こういう五千円未満、少くとも五千円未満の最低賃金の人たちに対しても、保険料は半額程度国庫負担すべきであるというのが、やはりこの健康保険を研究しておる君たち、たとえば七人委員会もそういう意見を持っております。その点についてはどうですか、今度の健康保険改正……。
  22. 小林英三

    国務大臣(小林英三君) 今のお尋ねの三千円を四十円に上げているのでありますが、この五千円内外、最も零細な標準報酬のワクの中に入る人たちに対して、国庫負担をするとか、特別扱いとかいうような問題につきましては、これはこういうような階層の方々というものは非常に動きがあると思うのです。まあ移り変りが激しいということも言えますし、それから一方これらの人々のみに補助した場合におきまして――大体四千円くらいの階層の人が、私どもの推定によりますというと、二%というように見ております――これらの人のみに補助した場合におきまして、その線をこえております人々との間において、不均衡ができやしないかということも、私は考えなくちゃならぬと思います。一千円ふやしましたためには、六十五円の半分でありますから、一カ月に三十二円五十銭、一年にいたしますというと、約三百九十円標準報酬が保険料がふえるわけであります。しかし一方におきましては、御承知のように、この医療給付費というものは、平均いたしますというと、どなたが調べても一万円、約年に一万円、昨年一割上昇をみておりますから、一万円ぐらい支給することになっております。何らかその観点からいろいろ御議論も起ると思いますけれども、私は今日われわれが考えている程度の一部負担というものは、私は当然出していただくことがよろしい。もしこれも払えないというような場合におきましては、私は生活保護法等において救済する手がある、こういうふうに考えております。
  23. 竹中勝男

    ○竹中勝男君 今度、今衆議院で審議中の健康保険改正案の性格というものは、どうも私は、これは世間一般もそう見ていると思いますが、赤字対策に尽きている。何ら積極的な改正案ではないと思っておりますが、医師会も、あるいは労働者も労働組合も全部あげて、主婦も家庭婦人もあげてこの改正案に反対いたしております。二十日前後には、医師会はさらにもう一度保険医総辞退を決議するとまで言っております。この三十億の国庫補助というものは、どういう社会保障的な意味があるのですか、どういう支出の理論的な根拠があるのですか、厚生省は最初医療給付費の一割、すなわち四十六億円を大蔵省に要求しております。大蔵省は赤字対策としての十億円を出し、さらに二十億円、最後に前年度分の償還金の十億円を返還を返還を繰り延べる、そういうような考えのもとに、三十億円を決定したやに聞いております。この三十億円は、従ってこれは赤字対策に出発しているのであります。そうして赤字対策におそらくこれは終始しているのだと思います。三十億が赤字対策でないとするならば、どういう根拠で三十億というものが決定されたのでありますか。そうしてあとの半額というものを、大体その健保の改正及び大部分を一部負担、患者の一部負担という形で、被保険者にかけてきているのであります。最も困っているところの被保険者、病気でその上に困るところの被保険者にかけているのであります。国保には二割政府が負担しておりますし、日雇い健康保険には一割負担しているのであります。だからなぜ健康保険に一割……三十億ということに限らずして、一割をもし健康保険に支出されるならば、これはこんな無理な一部負担制をとらなくてもいいのであります。そうして理論的にもこれを通ると私ども考えております。何ら矛盾でないのです。その点について厚生大臣はなぜだんだんこう渡っていかれるのですか。四十六億、一割の給付費をなぜ大蔵省に要求して……それに対してこういう譲歩をされたのですか。理論的な根拠はどこにあるのですか、三十億円というものをのまれた。
  24. 小林英三

    国務大臣(小林英三君) 今竹中さんの御質問にあります三十億円というものをことし国庫補助をしておるが、理論的にどういう根拠があるかという御職間でありますが、私はこの前も社労委員会で申し上げたと思っておりますが、就任早々、健康保険というものが何がゆえに今日までこういう赤字が累増してきたかということを、根本的に調べてみたのでありますが、とりあえず、御承知のように、二十九年度は四十億円の赤字を出しておる、そのほかにも、予備金までも引き出して使っている。本年度、三十年度は六十億円の赤字を出しておる。しかしこの従来の百億円の赤字につきましては、御承知のように、暫定的に措置いたしまして、借金をし、また一方におきましては料率を引き上げまして、一時解決をしたわけであります。つぶさに調べてみますと、三十一年度も六十数億円の赤字が出る、ほうっておけばその縦年も赤字が出るというような工合でありまして、何とかこれを、抜本的という言葉がよろしいかどうか知りませんが、とにかくこのような状態で、お医者さんの費用も払えないというようにやっていくということはよろしくない。どうしてもこれは推り下げて、根本的に健保というものを軌道に乗せるべき必要があるというように考えたのであります。  そこで今竹中さんもおっしゃったように、医療費の一割ということを大臣は言われたではないかという考え方でありますが、私もこの問題につきましては、国からも相当な補助をし、また健康保険そのものが今日、数年前の健康保険とは違いまして、非常に内容が進歩向上しておりますので、また今後といえどもその事態におきまする十分な、また一番最高度の医療をやっていくべきものだと思いまするしいたしまするから、医療費も今後ある程度慶の年数だけは私はさらに向上していく。しかもこの傾向日本ばかりでございませんで、各国とも世界的に、技術の進歩等によりましてそういう傾向であるのでありまして、健康保険そのものの状態、内容というものが非常にレベル・アップしておる今日でありまして、これを全額国庫負担にするとか、あるいは従来のように赤字を借金によっていつまでも埋めていくことがよろしいとか、あるいは今日私ども考えておりますような、国庫も補助しまた被保険者も一部負担をして、これをりっぱな健康保険の軌道に乗せていくのがよろしいかという、三通り考え方があると思います。すなわち従来毎年毎年出て参ります赤字を、借金によって今までのように暫定的に処置していくという道はとりたくない。しからば国庫の補助問題であります。この国庫の補助という問題につきましても、いろいろな考え方がある。ところで、私は少くとも最低限度被保険者の一部負担に見合うだけの国庫補助はしてもらわなくちゃならぬという観点に立ちまして、本年は大蔵大臣の非常な御理解によりまして、とりあえず健康保険財政の収支に見合わせまして、三十億円というものをとりあえず本年は補助いたしたわけであります。しかしこれとても暫定的のものではいけない、被保険者が一部負担をする以上は、やはりそれに見合うだけの国庫負担を法制化する必要があるというので、党も参加いたしますし、大蔵大臣も非常な御理解で、社会保障の確立の見地から補助をするんだという観点に立ちまして、これが法制化されたわけであります。私は高度の医療制度を保持しつつ、しかも健康保険の健全なる発達をいたしますために、今日の一部国庫が補助しまた被保険者が負担をして、また標準報酬の引き上げもいたしまして、しかもこれが主軸にはなっておりますが、健康保険のあらゆる点につきまして検討をいたしまして、そして改正をいたし、りっぱな健康保険の軌道に乗せていきたいというわけでありまして、三十億円というものは、私が今申し上げましたように、とりあえず本年は保険財政の収支に見合うだけのもをの出していく、また被保険者の負担に見合う程度のものを出していきたい。今後の問題につきましては、十分にこの問題も検討さるべきものと思っております。
  25. 竹中勝男

    ○竹中勝男君 結局、今のお話を聞いておりますと、赤字対策ということにほかならないのであります。しかも健康保険が赤字を出したということは、初めから計算の間違いが見込み間違いが、あるから赤字が出ておるわけなんで、しかも赤字の計算の仕方も、厚生省と大蔵省とは違っております。大蔵省の方が正しいと私は見ております。こういう計画性がなかったということに今日の健保の危機が来ておるのが明らかであります。そしてこの赤字の原因が、言うまでもなく、これは今日の結核対策の――結核は早期に発見され、早期に治療さえされれば、これはなおる病気なんです。従って、結核対策に国庫が費用を思い切って出しておるならば、出すならば、五年、十年後には著しく国費の節約になるのです。こういう計画性もないのです。現在。しかも結核予防費の国庫負担は、地方費が四分の一、本人が四分の二、半額負担でありますからして、地方財政が逼迫しておりますのと、個人所得が非常に過小なために、せっかくの予防費が使われずに残るのです。ことに地方財政では結核予防費は優先的に組まなければならないにもかかわらず、今年度の愛知県のような、健康保険の中から結核予防費を削っております。国家管掌の分においては、千葉県のごときは、予防費の予算を昨年よりも千人分減しております。これはいずれも地方財政が窮屈であるからであります。私どもはどうしても国庫負担は四分の一から四分の二に、そして地方費を四分の一に、そして本人が四分の一程度で結核の治療ができるように切りかえ、そして義務制にしなければ、これはとうていやっていけない、結核予防費のほんとうの社会的な機能は果されないと考えておりますが、この点厚生大臣に一点お伺いしたいのです。  それからちょっとついでに、これに関連いたしますので……。同じようなことが地方財政の逼迫のために――母子福祉法によるところの母子貸付金というものがありますが、これは昨年度、三十年度は五億円ほどありましたが、これもやはり地方財政の点で、これをなるたけ貸さないようにしておるのです、地方の負担が大きくなるために、そして昨年のごときは、五億円のうち一億円も余ってしまっておるのです。五分の一貸し出されずにしまっておるのです。また結核療養所の病床が一割も――今日百三十万人の人が開放性の結核で、家族に結核をうつしながら家にいて、病院にはいれないでいながら、国立療養所は一割も病床があいておるのです。これはせっかくの国家財政支出の結核予防に対する費用が、本人の負担、地方財政の負担のために、使われないでおるということは、実にこれは日本の社会保障制度の重大な問題だと私は考えておりますが、その点について大臣に……。
  26. 小林英三

    国務大臣(小林英三君) 今のお尋ねの中にありました結核病床があいているところがあると。これは今竹中さんの御指摘になりましたような問題を含んでおると思います。必ずしもこれは、結核病床があいておるという問題は、そういう原因ばかりじゃなしに、やはりこの療養所の地域的の地区の問題、非常にへんぴな所にあるとか、あるいは山奥にあるとかいうような問題、それから設備が老朽しておって非常に設備の悪い病院というような問題もありまして、やはり入院される方も、同じ入るならば便利な所で、しかも設備の非常によろしい進歩した所に入りたいというような問題からしまして、病院自体の、療養所自体の問題から来ているのだと思う。それからもう一つは、竹中さんが今御指摘になりましたように、長期の病気でございますから、非常に金がかかる、入院したくても入院できないというような問題もありまして、あわせてこれが、今日二十三万床ぐらいできておるわけでありますがあいておるところもありますけれども、非常に足らない地方もあるのであります。こういう問題につきましても、足らない地方に主力を注いで、位置の問題等も十分将来考慮すべき問題だと思います。  また負担の問題でありますが、これも私どもといたしましては、なお患者が二分の一負担になっている、残りの二分の一は国庫と都道府県とがさらに二分の一ということになっておりますが、これも私ども方針としては、竹中さんのおっしゃるような意味も含めまして、本年は患者の負担を少くして、しかも残りの多い負担の中から、さらに国庫の負担を多くして都道府県の負担を少くしていく、できるだけ今お説のような問題を解決いたしたいと思っておったのでありますが、いろいろ国家財政関係からいたしまして、それにいたし得なかったのであります。将来こういう問題につきましても十分検討いたしたいと、努力をいたしたいと思っております。  それから母子福祉の問題もありまして、御承知のように、三十年度は四億五千万円のうち一億円ちょっと残ったのでありますが、これもやはり地方でそういうものを支出して、地方のその方面の会計に入れてくれたものと見合って、国庫で出しておるのです。これも今お説の通り、地方の財政におきましてそういうことはいたし得なかったのであります。ぜひこの問題も、地方庁にも欠くべからざる問題であって、ぜひこの問題に対しては推進方等を勧奨をしておるのであります。なお今後私は、今母子福祉の団体等も非常に要望しておりますように、半々でなしに、国庫の負担率を多くするという問題につきまして、十分将来努力すべきものと考えております。
  27. 竹中勝男

    ○竹中勝男君 とにかく国庫が負担の分を増大しない限りは、日本の社会保障制度は何ら前進しないのです。しかも五億円の五分の一まで余っておるというのです。こんな行政は私はないと思うのですが、親子心中が行われておるような世の中です。生活費に困っておるのです。しかも借りる金があるのです。その金が余っておる。それが貸し出せないというような行政が、どの世界に、どこの国に、社会保障をうたっている国にあるのかということを、私はほんとうに残念に思う次第であります。  そこで、この点につきまして大蔵大臣にお伺いしたいのですが、大蔵大臣は非常な財政の権威者でありますし、日本の社会保障制度を前進させていく上の財政計画考えておられると思いますが、厚生省が要求しておるところの予算を相当削ってしまわれたのであります。ことにこの結核対策の公費負担を中心とする今の厚生大臣の要求されたのは、すっかり大蔵省で削られてしまいまして、医療費のごときは十五億円から十四億円に減額されておるのであります。政府は、自民党政務調査会や厚生省が公費負担率を二分の一から三分の二に引き上げることを大蔵省に要求したのでありますが、それに対して大蔵省はこれをむしろ減じておる。これはわずか三十億円で済むのです。二分の一から三分の二に引き上げるためには、三十億円なんです。これはジェット機の十台分であります。また大蔵大臣はなぜこういうように、社会の重要な政策であるところの社会保障費を削減して、そうして実際に役に立たないような、母子貸付金にしても、結核対策費にしてもあき病床があるというような状態に置かれるのであるかという点を、お伺いしたい。  あらためて聞きますが、厚生大臣はこの社会保障に関する確信があるのですか。なぜこんなに弱腰なんですか。ほんとうに現在の政府国民に公約したところの社会保障を推進するとするならば、もっと厚生大臣は強腰になって、また小林さんはそれができる人だと私どもは信じて喜んでおったのですが、なぜこんな弱腰で、社会保障を事実上後退さすようなことをして、平気でおられるのでありますか、その点をお伺いしたい。
  28. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) お答えします。大蔵大臣としましても、社会保障の充実強化に決して冷淡とかいうことではないのでありまして、私どもはできるだけこれが拡充をはかりたいと念願いたしておるわけでありますが、ただ財政の現状がなかなかこれを許しませんので、漸を追うてこれが拡充をはかっていきたいというのが考え方であるのであります。その一つの現われとしては、先ほどから例がいろいろお話がありましたが、たとえば今回健康保険について三十億を国庫補助することにいたしたのでありますが、これもやはり単なる赤字対策というわけではないのでありまして、今後この社会保障の確立を促進していこうという意味をもって、他の保険その他小林さんからお話がありました三十年度に医療保険の恩典に浴せない人等を勘案いたしまして、今回ああいうふうな制度をもったわけであります。
  29. 小林英三

    国務大臣(小林英三君) この社会保障それ自体の後退だというお尋ね、これはいろいろ御議論があると思いますけれども、実は厚生省の内部の省内の仕事にいたしましても、いろいろ仕事があるのでありまして、あるものは、たとえば結核病床等は三十三年には二十六万床というものを目途としてやっておるわけでありますが、最近非常に各地にも結核病床ができるというようなわけで、今すでに二十三万床にも達しておる、これは前年度のように一万床も作らなくてもよろしいから、ことしはとりあえずいろいろな財政的の関係から、この仕事よりもこの仕事を推進しよう、まあ病床の進捗状況等もにらみ合せいたしまして、この仕事よりも、厚生省としての仕事という意味におきまして、まず二十六万床を目途といたしておりましても、最近民間でも非常に方々でできるようになりましたから、ことしは前年度よりも減らしても、その分だけほかの方へ持っていこうという意見がありまして、ほかの方へというのは厚生省のほかの施設の方へ持っていこうということでありまして、そういうようないろいろなにらみ合せもあってやったのでありますからして、内部の仕事の変化というものは多少あるかもしれませんが、とにかく昨年度よりも六十億円近くの金が増大いたしております。私は社会保障全体としまして後退ではないと考えておるのであります。  なお今の竹中さんのおっしゃいましたなぜがんばらないかというお話がありましたが、これは私どもといたしましては、こういう仕事をこういう状況のもとにすべきであるという考え方を持って進むのが当然でございましょう。これはやはり国家財政全般をにらみ合せまして、やはりこの社会保障それ自体というものを国家財政をにらみ合せて漸進的に進めるべきものである、こういうふうに考えております。なお今後十分に努力したいと思います。
  30. 竹中勝男

    ○竹中勝男君 この社会保障質の節約、あるいは減額の最も端的の現われとして強行された一つがいわゆる新看護体制というものであります。厚生省は、今まで四千三百人のつき添い婦がおりましたのを、完全看護実施という美名のもとにこれを約半分の二千二百七十九名に減らしたのであります。これでは患者も看護人も、国立療養所の結核患者は非常な危険を感じまして、また看護人も危険を感じまして、昨年の衆参両院の社会労働委員会では付帯決議をしております。無理なこういう切りかえを強行しないように、設備その他の点でできたところからやるようにという付帯決議をしたのであります。ところがこれが漸次強行されております。そうして不完全な日本の国立療養所、結核療養所の実情と相待ちまして、この切りかえの実施のために実に悲惨な悲劇が出ております。一、二私の手元に最近送られてきた報告書がございます。これは千葉県の佐倉の国立療養所では、二月十七日午後八時五十分に患者が喀血をしました。安静度二度を要するところの喀血する患者でありますが、この人が喀血しましてもつき添い婦も看護婦もいない。それで他の患者が洗面器を持っていってそしてその喀血の患者にあてがった。そうしてその五分たってようやく看護婦が来、それから医師が来ましたけれども、すでにその人は窒息して死んでしまっておるのであります。それから千葉県の下志津の病院でも同様の例が三月二日午後九時五十分に起っております。このいずれも看護力が足りない。半分につき添い婦を減らしてそして常勤のつき添い婦という制度に切りかえた。これは明らかにやはり国費の節約が、社会保障に対する国費の節約がこういう悲劇を、最も悲惨な、貧乏な、そして結核に苦しんでおるところの患者や家族の上に投げかけておるところの痛ましい事実であります。  私は、厚生大臣が有力な政党人である、そうしてこの政党人は政党が、自民党が国民に公約したことを実施するために厚生大臣に就任されたと私は考えております。ところが逆に小林厚生大臣のもとにおいては、厚生省が多額の費用を使って研究に研究をし、自信満々として出されたところの新医療費体系のごときも、いつのまにかこれはこれを引っこめるような醜態をきわめております。どこに確信があるのですか、どこに責任感があるのですか。そういう社会保障政策が行われるところに国民は絶対に現在の政府を信頼することができないと私は考えておりますが、厚生大臣のお答えを願います。
  31. 小林英三

    国務大臣(小林英三君) 今の竹中さんのおっしゃいましたこの看護体制の問題につきまして、今お話しがありましたような問題につきましては、まだ私承知いたしておりません。その問題についても十分に調査をいたしたいと思っております。  ただ看護体制の整備につきましては、これは従来のつき添い婦というものでなく、病院長の直接の令下に属する雑仕婦と申しまするか、用員を置いてそしてやっていきたいという形からやったのでありまして、この問題は今竹中さんの御指摘になりましたように、私が社会労働委員長をいたしておりましたときに衆参両院でも、つき添い婦の問題につきましての決議がされたのでございます。これも私も十分に大臣就任以来この問題を国会の決議に沿うように進めるように指示をして参っておるのであります。今日までにすでにつき添い婦と、それから雑仕婦といいますか、それの配置につきましては相当国会の御決議に沿うように配慮をして参ったのでございまして、たとえば昨年中に九十六カ所につきまして整備をいたしておるのでありますが、そのうちで配置人員が千七十五人の配置をいたしておりまして、その九十六カ所に対しまして付添い婦の数が千三十五人おるのであります。昭和三十年十二月末現在におきまして、そのつき添い婦のうちで採用いたしました者が二百五十三名採用いたしております。さらに採用を予定いたして今日採用しておるのが百六十名、合計四百十三名を採用いたしております。それからなお派出婦協会から参っておりました者で帰属いたしまして他の方面に活動をいたしております者が二百五十一人、それから厚生省、労働省のあっせんによりまして他に転業いたした者が九十六人、それからあっせんいたしまして福祉施設に勤めておられます者が十四人、それから自己の意思によりまして他に就職されました者が三十六人、それから入院を要する者が三名、それから厚生省といたしましてもつき添い婦のうちで病弱の者で採用しなかった者、それから老齢のために採用しなかった者が百四十二名おるのでございます。その他が三百五十名おるのでございます。本年につきましてもやはりそういうふうな方針に基きましてやっているのでありまして、今日の各療養所におきまする看護体制というものは、私が今日まで報告を受けておる範囲内におきましてはきわめて順調にいっているというような報告を受けているのでありますが、今竹中さんの御指摘になりましたような問題につきまして、十分に一つ至急検討をいたして措置をいたして参りたいと思います。
  32. 竹中勝男

    ○竹中勝男君 時間の関係で簡単にもう二点だけ厚生大臣大蔵大臣御一緒に、それから外務大臣に伺いたい。一つはこの厚生年金保険及び船員保険の積立金が相当の巨額に上りまして、この利息がこの五カ年間に二千億円ほど使えるようになっております。ところがこの使い方につきまして、私どもはこれは現下では被保険者及びその家族の福祉施設を建設するに必要な経費に対する貸付けになっておりますが、この運営ですね、この利息を福祉施設に対する運営に使用する、運営に対するもっと民主的な審議会を作りたいと考えております。勤務者厚生資金審議会というような名称のものを作って事業主、及び被保険者及び学識経験者というような中立の者も入れてそうして最も適切に、労働者が積み立てた金の利子でありますからして、これを労働者に還元するに最も適切な方法を民生的にやりたいと考えておりますが、そういう審議会を作るというほかに、民主的なその運営をやるということについて、大蔵大臣及び厚生大臣はどういうようにお考えですか。
  33. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) ただいまこれは資金運用資金の分になっておりまして、この運用委員会にかけて、私はこういう資金がやはり全体で総合的な運営を考えるべきだという考えを持っております。これについてただいまのところ、特別に審議会を作るということは考えておりませんが、しかしなお検討はいたしております。いずれにいたしましても、この金を今お話しのような使途になるべくこう埋めていくということについては異論がありませんので、漸次そういう方針をとっておるわけであります。
  34. 小林英三

    国務大臣(小林英三君) 厚生年金の資金につきましては、現在資金運用部に相当の金額に上っておることは事実でございます。私はこれらの問題につきましては、厚生年金自体には国庫補助も一割五分ないし二割あるのでありますけれども、いずれにいたしましても事業者並びに被保険者の醵出した金の累積でございますから、今竹中さんの御指摘になりましたような、これにわいてくる利息の問題をどうするかという問題、利息自体でなくても、私はこれらの問題につきましては、できるだけこの事業者、被保険者の福利施設の問題、こういう方にだんだんと便宜を与えるということはけっこうだろうと思う。現に厚生省におきましても、毎年、昨年よりも十億円増、五十五億円貸付の対象にいたしております。こういうふうにだんだんと増額をいたしまして、被保険者の福祉施設になるように運用すべきものだと考えております。
  35. 竹中勝男

    ○竹中勝男君 最後に一言外務大臣に……。この前外務大臣こちらにおいでにならなかったときに質問したことに関連することですが、日本と中国との関係が今日のような状態にあるとき、民間の団体、民間人たちがこの国交調整をする上に交流していくということについては、私どもはぜひそれをやらなくちゃならないと思っております。文化交流にしても、学者の往来にしても、あるいは芸術家の往来にしても、そういう意味において、われわれは両国の了解というものを将来のアジアの平和のために作ることが必要であるという観点のもとに立っておるわけでありますが、そのうちで一つ全く人道的な立場から、東条内閣の閣議決定によって中国から大量に日本に連れて来ました捕虜及び労務者が約四万人ありますが、それが日本で八千人ほど死んでおります。これは外務省の調査の中にもあります。われわれはその約半数の遺骨を民間団体で向うに送還しておるのでありますが、私は当然これは国がなすべき仕事であると思いますが、現在の段階において国がなすことができないならば、国の責任において、国の援助において――こういう民間団体がなすことを外務大臣はどういうようにお考えですか。それで外務大臣はその民間団体に対して、国が当然やるべきことをかわってこういう純粋に人道的な立場からこの仕事をするということ、まあ向うにもやはり日本の四万人の人がまだ消息がわからないのがあり、相当向うで死んでおるのがある。周恩来総理は私が先日参りましたときに、こういう人たちの調査もして、そうして日本に送り返すようにできるだけしたいからということでした。遺骨を送還して、持ってきてもらうということについては、実にもう非常に大きな感謝の意を表されております。こういうことは、文化交流と同時にこういう点においては、全く純粋に人道的な立場から日本人が中国人に対して示すべき一つの仕事だと、やるべき一つの仕事だと私ども考えておりますが、最後に外務大臣の御意向を承わっておきたいと思います。
  36. 重光葵

    国務大臣重光葵君) 私は純粋な文化交流の問題、それからまた純粋に人道上の見地に立ったものというものは、これは思想問題などと、また政策、政治問題とは離れてもう最善を尽していい問題であり、そうしなければならぬ問題だと思います。そこで今お話しの遺骨の送還の問題について、今民間団体がやっておられるというのですが、私はこれは非常にいいことだと考えます。政府としては、政府の権限内においてもしくは外務省の権限内においてどれだけの御援助ができるかということは、またこれは実際的に考究しなければなりません。しかしながら主義として私は十分に一つ協力をして、そしてさような人道的なことについてはこれはお互いっこでございます。ほんとうにこれは先方に対してもそういうことを要求しておる状況でございますから、なおさらのことでございます。できるだけのことはやりたいと、こう考えております。
  37. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) それでは一時二十分まで休憩いたします。    午後零時十七分休憩      ―――――・―――――    午後一時五十六分開会
  38. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) ただいまより予算委員会を開会いたします。  午前に引き続いて一般質問を継続いたします。
  39. 永岡光治

    ○永岡光治君 私はただいま三公社の職員、それから五現業の職員及び国家公務員、地方公務員等、それぞれの使用者当局あるいは政府、これらの間に紛争になっております賃金引き上げの問題についてではございますが、この紛争については、すでに政府におきましても、あるいはまた経営者側におきましても、あるいはまた政府の与党である自民党におきましても、二・一ゼネスト以上の大ゼネストになるのだということで、事前に大宣伝をいたしまして、権力の介入の疑いすらある言動がなされておりまして、国民もこの紛争はどう解決するかということについて、重大な関心を持っておったのでありますが、この紛争の解決のために三公社、五現業については調停委員会の議にこれを付されておりまして、去る二月二十九日に国鉄に対する調停案が示され、さらにまたその後順次電々公社、専売公社あるいは郵政職員と、こういう組合及び使用者当局に対して調停案が示されておりますが、組合の方は、非常にこの内容については不満であるけれども、事態の円満なる収拾をはかるためには、あえてそのことをやむを得ない、しかも調停案に示されているように忍びがたきを忍んでこれを一つ受諾してほしいということすら示されておりますが、そういうこともありまして、不明確な点を明確にすることを団体交渉の中で明らかにしたい、こういうことを条件にいたしまして、いち早く組合側は受諾いたしたのでありまするけれども、すでに今日は三月の十四日であります。調停案が国鉄に示されてから二週間を経過しておるにもかかわらず、依然として公社当局はこれに対する態度を明確にいたしておりませんし、政府当局においても、この点については明確な態度が決定されておりませんことは、きわめて私は不満に思うのであります。今後このまま放置するということになりますれば、依然として紛争は続くでございましょうし、その責任は一にかかって政府及び公社当局が負わなければならぬ、こういうことになると思うのでありますが、今日まで態度決定していないということについては、一体どういう経過から態度決定していないのか、三公社のそれぞれ責任者から御答弁をいただきたいと思うのであります。
  40. 小倉俊夫

    説明員(小倉俊夫君) お答え申し上げます。ただいま調停委員会に対して国鉄の回答がおくれているというお言葉でございまして、実際その通りでございまして、私どもはなはだ遺憾に存ずる次第ではございまするが、国鉄といたしましては、公共企業体であります以上、やはり収支という財政経済の立場から検討いたさなければならないのでございまして、国鉄は御承知のように必ずしも余裕があるわけではございませんので、なるべく収支の状態を明らかにいたしてお答えいたしたいとかように存じて、ただいままで参ったわけでございます。しかし、もう本年度もあと半月ということになりますので、ここで一応締め切りまして、収支の計算も明らかにして、できるだけ早く御回答申し上げるよう、ただいませっかく計数の整理中でございます。  それからもう一つは、ただいまもお話がございましたように、今回の問題は単に国鉄のみならず、三公社五現業にわたります広範な調停でございまして、労働条件、給与と申しますのはいろいろな振り合い等も勘案いたしていかなければなりませんので、そういう工合でもございまして、ただいままで回答が出ませんでしたことは、まことに遺憾に存ずる次第でございまするが、今後できるだけ急速に検討をつけまして、調停の方に御回答申し上げたいと思っている次第でございます。以上お答えいたします。
  41. 入間野武雄

    説明員(入間野武雄君) お答えいたします。調停案に対しまして回答のおくれていますことは、まことに遺憾に存じております。専売公社といたしましては特殊の事情がございまして、先般補正予算において納付益金を五十億円近く減額していただきまして、それが納付に非常に苦慮しておるところであります。その補正予算における売り上げ総額は年額二千六十億となっておりますが、実際どうやってみましても二千五十億程度の売り上げしか出ない。十億不足分に対する納付益金は経費の節約によってこれをまかなわなければならない実情にあるのでございますので、私といたしましては、補正予算できめられました納付益金はあくまでこれを確保しなければならぬ、経費の節約をはかっても、これを確保しなければならぬ、従って先月下旬も地方局長を招集しまして、本年度予算中、配賦予算中もし余し得るものがあったら大いに余して、益金の確保をしてくれというようなわけで、経費節約に努力いたしておりますが、まだ計数も固まっておりませんために回答のおくれておりますような次第でありまして、この点御了承願いたいと思います。
  42. 梶井剛

    説明員(梶井剛君) お答えいたします。調停案につきましては私どもは誠意をもって検討いたしておるのでありまするが、大へん調停委員会への回答がおくれておりまして、その点は私は申しわけないと存じております。しかし調停案を拝見いたしますところ、これを実行に移すためにはいろいろな措置が必要なんでありまして、簡単に処理がいたしかねておるのであります。これは予算関係等もありまして、ただいま国鉄並びに専売からお答えがありました通りに、年度内の見通しも十分に立てまして、そうしてこれが実行できるかどうかという確信を得ませんことには、単なる回答だけではその責めを果すことができないのじゃないのだろうかということを苦慮いたしておるわけであります。従って私どもはこの回答をしなくちゃならぬということは重々承知いたしておりますので、極力努力いたしまして、できるだけ早い機会に回答いたしたいと考えております。
  43. 永岡光治

    ○永岡光治君 計数の整理中だというのが大体共通した理由のようでありますが、この紛争というのは、昨今始まった問題じゃないのでありまして、御承知の通りすでに昨年の秋からの問題でありまして、しかも調停に付されてから今日まで長い経過期間を要しているのでありますから、私は今日まで、誠意ある公社当局の態度であるとするならば、当然予算の検討はしてしかるべきだと考えておりまするけれども、依然として今日まで遷延されているということは、国民の立場におきましても、代表といたしまして、きわめて不満であります。従って早急にこれは態度を決定してもらわなければならないのでありますが、ただいま国鉄副総裁答弁の中で、他とのつり合いもあるからという趣旨にとれる答弁があったわけでありますが、これは単に国鉄のみならず、他の公社やあるいは五現業とのそういう関係もあって、まだできていないという、こういう御答弁がありましたが、そういうことで遷延しているとするならば、きわめて私はゆゆしき問題であると思うのであります。この点は国鉄当局はどういうように考えているのでありますか。他との権衡を見てから出さなければならないということになるのでしょうか。国鉄の独自の立場では出せないという解釈をしているのでありますか。
  44. 小倉俊夫

    説明員(小倉俊夫君) お答え申し上げます。私の言葉が足りませんので、はなはだ失礼いたしましたが、やはり給与と申しますることは、もちろん公共企業体のいろいろな特殊性にかんがみまして、これは異なる条件でありましてもいたし方ないのでございまするが、そこにはやはり多少の考慮を加えていかなければならぬ、飛び離れました状態をとりますと、そのときにやはりそこに他との均衡上多少の問題が起るのではないかというふうな点を申し上げた次第でございます。
  45. 永岡光治

    ○永岡光治君 これは私はどうしても追及しておかなければならない問題でありますが、いずれにいたしましても、今の御答弁から明確になっていることは、やはり他とのつり合いをみるということの、こういう基本方針であるということに間違いないと思うのでありますが、もう一度念のために確かめておきますが、そういう考え方でよろしうございましょうか。
  46. 小倉俊夫

    説明員(小倉俊夫君) お答えいたします。多少つり合いということを考慮にいれざるを得ないと考えております。
  47. 永岡光治

    ○永岡光治君 その範囲はどの程度考えておりますか、他とのつり合いというその程度は、どの程度考えておられるのですか。
  48. 小倉俊夫

    説明員(小倉俊夫君) それは必ずしも数字上明確ではございませんですが……。
  49. 永岡光治

    ○永岡光治君 対象となるつり合いは。
  50. 小倉俊夫

    説明員(小倉俊夫君) つり合いと申しますると、給与一般につきまして、それは先ほども申し上げましたように、企業体のいろいろな労務の種類その他によっても異なる、あるいは企業の成績によっても異なると存じまするが、ただ無条件に給与をきめがたい点があると、こういうことを申し上げたわけでございます。たとえて申し上げますれば、一般の労組の方におきましても他との振り合いということは始終いっておるわけでございまして、こういう点につきましては、それはその点につきまして多少の考慮を加えまして、ただ自分企業体だけを考えるわけにはいかない点も多少残っておる、こういうふうに考える次第でございます。
  51. 永岡光治

    ○永岡光治君 そういたしますと、他との振り合い上考えるということになりますと、私は公共企業体等労働関係法の精神をどう解釈しているかと思うのですが、予算上、資金上あっても、なお他との権衡も見なければならぬということに発展していくと思うのでありますが、そういうようにあなたはお考えになっておりますかどうか、この点を確かめたいと思います。
  52. 小倉俊夫

    説明員(小倉俊夫君) お答えいたします。私の言葉が足りませんでしたが、(「よく足りておる」と呼ぶ者あり)先ほど申しましたように計数整理ということでおくれましたのですが、なお多少その点につきまして私どもあまり他と違った処置はとりにくいのではないかと、こう考えた次第でございまするが、しかし先ほども申しましたように計算整理の点を考えまして、できるだけすみやかに回答いたしたいとこう思っております。
  53. 永岡光治

    ○永岡光治君 この点は依然として明確でありませんので、公企労法の精神は、やはり他とのつり合いを考えなければならぬ精神であるのかどうか、労働大臣の見解を承わりたいと思います。
  54. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) この点はこの法律を立法いたしますときにも非常に重点的に論議されたところでありますが、この公共企業体は御承知のように株式会社、たとえば日本国有鉄道株式会社となっておりましても、その全株が国家の所有であります。そういうところが同じ公共性があっても私設鉄道などと違うと、こういうことであるのがその公労法の当時の論議でもありました。そこで政府といたしましても、一般国民の立場から見まして、やはり仲裁裁定なり調停案をお出しになる場合には、その公共企業体の経理内容だけで給与なぞをおきめになるということになれば、たとえば専売公社のようなものは御承知のように当然利益が上ることがわかっておるのであります。しかもあの企業内だけで年々一般会計に千三百億ほどの繰り入れをすることがわかっているのですが、その繰り入れをする前に賃金をたとえば非常に上げたということになれば、その賃金を上げた分は繰り入れの額から減ってくるのは当然のことであります。このような公共性を持った事業についての賃金その他のことについては、やはり普通の民間企業とは違った立場において公共性をもって判断すべきである。公労法を決定いたしますときにも立法の趣旨はそういう趣旨でありました。
  55. 永岡光治

    ○永岡光治君 公共性を考えてということはわかりますが、まだ大臣答弁では私は明確にならぬと思う。他とのつり合いというのはそれじゃ大臣は一応認めるということですか。簡単でけっこうですから、イエスかノーかでけっこうですから、他との権衡を考えてこれも受諾すべきであると考えているのかどうか。
  56. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) この道については専門家の永岡さんでありますから、よくおわかりのことでありましょうが、今、非常に春季闘争のまっただ中でありますから、調停が騒がれておりますけれども、これは一般労働政策の立場から私どもとしては意見があります。しかし、そういうことを今言っているときではありませんが、調停だけが非常に取り上げられて騒がれているのは今回ほど激しいことはございません。従来仲裁裁定が出たのは二十件ほどありますが、その前に調停の限りで妥結をみているということは御承知の通り非常に少いのでありまして、そこでこの調停に当事者双方の一方が不満であるという場合には、当然これは二審裁判として必要である仲裁に持ち込まれることであって、いわゆる春季闘争早期解決という点に重点を置いて考える場合には調停が問題になるのでありますが、私どもはそういうことで、この三公社、まあ五現業は別といたしまして、企業体である三公社のその企業経理の内容に、先ほど三公社の代表の御説明を承わっておりますと、なお計数整理の余地が残つている――当然なことであります。全株を国家が持っている企業体をあずかっている責任者でありますから、その計数整理を十分にやるということは当然でありまして、これをおやりになった結果、やはり今度の調停についての、五カ条ほどございますけれどもそれについての解釈は別問題として、やはり三公社がそれぞれ年末の手当であるとか給与であるとかいうものを決定する場合に、ただ単に当該経理内容だけでほかを考えずにこれを決定するということは、私はおもしろくないことだと思います。従って先ほど国鉄副総裁が言われました他の振り合いというのはどういう意味か存じませんが、たとえば第二項目のところに、一時金として五千円以上出せということを言っております。かりにこの調停というものが問題になるといたしましたならば、五千円以上というのは、百万円も五千円以上である、一万円も五千円以上であります。そこで五千円以上というものが専売公社あるいは電々公社のようなものと国鉄との間にやはりその振り合いというものを経営者が考えるのは、これは当然だろうと思うのです。従って私はその限りにおいては、やはり公共性を持つ事業が他との振り合いは、一体ほかの公社においてはこの点はどういう考えでやるだろうかということを研究いたすのは当然だと思います。
  57. 永岡光治

    ○永岡光治君 大体労働大臣としての考え方はわかりました。これはやはり振り合いを、調整をとって考えるのが適当だという解釈を持っている、こういうことに一応理解をいたします。この問題の是非については、時間の関係もありますので、いずれこれはその所管の社会労働委員会等で追及いたしたいと考えております。  そこで三公社当局に一つお尋ねをいたしますが、ただいまの答弁からいたしますれば、早急にこの問題について回答したい、目下計数整理中だということを誠意をもってまた考えている、こういう御答弁でございますが、としまするならば、労働大臣答弁の中でも若干そのようにうかがわれましたが、これは調停案の問題だけで、調停の段階で解決しようという考えであるのかどうか、仲裁に持ち込む腹を持っているかどうか、その点をはっきりお答え願いたいと思います。三公社当局に……
  58. 小倉俊夫

    説明員(小倉俊夫君) お答えいたします。ただいま申し上げましたように極力計数整理を急ぎまして、調停委員会にお答えいたしたいと、それだけを考えておる次第であります。
  59. 入間野武雄

    説明員(入間野武雄君) お答えいたします。ただいま国鉄当局者から申しましたように、ただいま計数を整理しておりますが、この計数が固まらんと、ここで受諾ができるか、あるいは仲裁に持ち込むかということの結論が出ないと思います。せっかく計数を整理して結論を出したい、こう考えております。
  60. 梶井剛

    説明員(梶井剛君) お答えいたします。ただいま国鉄なり専売の総裁がお答えになりました通り、私どもはこの計数整理をいたしまして、その結果、調停委員会にお答えいたしますときにも、示された項目が幾つかあります。そのうちのどれが受諾できるのか、どれが受諾できないのかということをはっきりいたしませんと御回答ができないという状態でありますので、現在のところ、調停委員会に御回答する際に、さらにこれを仲裁に持っていくか、いかないかというところまでまだきておらない。どうか御了承を願います。
  61. 永岡光治

    ○永岡光治君 計数整理中とはいえども、もうすでに三月はあと幾ばくも残っておりません。調停案には、一時金の問題について年度内にこれを実施しろということになっております。従って私は大よその見通しをつける段階にきておるものと考えておるのでありますが、そういう見通しはあるのかないのか、どうなのか。もしつかないとするならば、ここ十日ぐらい先のものになるのか、それともここ二、三日中できまるのか、その辺の見通しはあってしかるべきだと思う。あまりにも、誠意のある公社当局の先ほどからの答弁からすれば、誠意をもってこの点について検討するという態度からするならば、私はきわめて不満な態度だと思うのです。その点はどういうように考えておりますか。見通しは仲裁に持ち込まざるを得ないという段階にきているのか、調停で何とかいけるのではないか、何とかこれを解決できる段階であるという考え方できているのか、いずれであるか、その方向だけは明確になると思うのです。
  62. 小倉俊夫

    説明員(小倉俊夫君) お答えいたします。ただいま申し上げましたように、計数整理中でございまするが……。
  63. 永岡光治

    ○永岡光治君 方向だけでけっこうです。
  64. 小倉俊夫

    説明員(小倉俊夫君) できるだけ早く調停委員会に御回答申し上げて善処いたしたい、こう考えておる次第であります。
  65. 入間野武雄

    説明員(入間野武雄君) 計数整理が終らなければ、いずれの御返事もできかねると思いますが、いずれその上でできるだけ早く計数を整理して、いずれかの態度を決定いたしたい、こう考えております。
  66. 永岡光治

    ○永岡光治君 計数の見通しはいつになりますか。
  67. 入間野武雄

    説明員(入間野武雄君) まだ当分、年度内には……。
  68. 永岡光治

    ○永岡光治君 当分というのは何日ぐらいですか、目途として何かありそうなものだと思いますが。
  69. 入間野武雄

    説明員(入間野武雄君) まだ地方から集まってきておりませんので、何とも申し上げかねます。
  70. 永岡光治

    ○永岡光治君 あなたの方で、いつごろを目途にしてそれをまとめようという意思はありませんか。
  71. 入間野武雄

    説明員(入間野武雄君) 二十日過ぎになろうかと考えます。まだはっきりしたことは何とも申し上げられませんが、しかしながら、できるだけ早く計数をまとめて申し上げたいと思います。
  72. 永岡光治

    ○永岡光治君 方向は全然まだ見当がつかないということですか。
  73. 入間野武雄

    説明員(入間野武雄君) 全然まだ見当はつきかねております。
  74. 梶井剛

    説明員(梶井剛君) お答えします。私どもの方もできるだけ早く御回答申し上げることは、先ほど来申し上げておるわけであります。また調停案を提示されておりますわけでかすら、私どもは誠意をもってこれを回答しようというわけでありますから、考え方としましては、調停案というものを尊重しようという考えはあります。しかし実際にこの内容を十分に検討いたしませんと、先ほど申し上げましたように、どの項目についてできるのか、できないのか、ということははっきりわかりませんので、できない分に対しては、遺憾ながらそのことをよく申し上げなくちゃならぬというわけであります。またいつごろまでにという御質問に対しましては、これは私どもは極力担当者を鞭撻してやっておりますのですが、遺憾ながらまだ見当がつきませんので、できるだけ早く結論を出したい、こういう考えであります。
  75. 永岡光治

    ○永岡光治君 これはただいま見通しもあまりはっきりしない、そういうことでは大へん不熱心きわまる態度だと思うのです。もうすでに私が冒頭申し上げましたように、これは非常に大きな問題でありますし、長い間の紛争の問題でありますので、当然これは見当つけてしかるべきだと思うのです。私はおそらくできておると考えておる。見通しはついておるにもかかわらず、もちろんこれは何円あるいは何万円というところまでは、あるいは出ないかもしれませんけれども、私の少くとも政府職員としての経験からするならば、当然これは今日は、はっきり方向ぐらいは言明できる段階にきていると断言してもはばからないと思う。しかし今のような答弁では、きわめて不満でありますが、そういうことになりますと、これは今後あるいはまた組合は、依然として政府や公社当局で態度をきめないということになれば、それは人情の常として、さらに紛争を激化してでも政府の態度を早急にきめるとか、公社当局の態度を早急にきめるという態度に出ざるを得ないと思います。理の当然です。それに対してあなた方は抗弁の余地がないと思う。私はこの点についてきわめて不満に思っておるのでありますが、あなた方はこの問題について主管省の大臣あたりと御相談申し上げたことがあるんですか、ないんでんか、その点を明確にしてほしいと思います。
  76. 小倉俊夫

    説明員(小倉俊夫君) お答えいたします。ただいませっかく計数の整理中でございましてそれがきまりません以上は、御相談申し上げる時期に至っておらない次第でございます。
  77. 永岡光治

    ○永岡光治君 相談したのかしないのか、明確にして下さい。
  78. 小倉俊夫

    説明員(小倉俊夫君) まだしてございません。
  79. 入間野武雄

    説明員(入間野武雄君) ただいま国鉄から申し上げたと同様でありまして、計数整理がついて、果して出し得るかどうかということを見きわめないうちは、よく相談もできないと思います。従いまして、私も大蔵大臣にこの問題について正式に何も申し入れておりません。いずれ計数の整理のつき次第よく相談いたしたい、こう考えております。
  80. 梶井剛

    説明員(梶井剛君) 私どもは調停案を示されましたときに、直ちに監督の省にあられます郵政省へは連絡いたしました。しかし、これに対する回答というものは、自分たちの意見そのものがきまらないうちに相談のいたしようがないのであります。先ほど来申しましたように、私どもの意見を一応十分検討してきめまして、しかる後に郵政大臣に御相談を申し上げたい、こう考えておる次第であります。
  81. 永岡光治

    ○永岡光治君 この調停案が出ましたときに、郵政大臣に報告をされたということでありますが、郵政大臣はこれをどのようにお考えになりますか、何か指示を与えたでしょうか。
  82. 村上勇

    国務大臣(村上勇君) お答えいたします。調停案が出されました際に、電電公社の方から調停案の内容についての報告は受けましたが、その後変った何の報告もありません。また私の方からこれに対して何らの指示もいたしたことはありません。
  83. 永岡光治

    ○永岡光治君 重大なる段階にきている調停案でありますので、私は主管省からは何らかの意思表示があってしかるべきだと考えているのでありますが、そういうことを全然なさらない、こういうことは私はきわめてどうかと思いますが、できるだけこれを尊重して一ついれるようにしろとか、何とか誠意ある態度があってしかるべきであると思いますが、そういうことはなかったんでしょうか。
  84. 村上勇

    国務大臣(村上勇君) 調停案を尊重することは当然であります。しかしながら、計数と申しますか、予算等もはっきりいたしておりません。公社から何も報告がありませんので、私としては、ただ単に調停案を尊重するようにということについては私自身も考えております。
  85. 永岡光治

    ○永岡光治君 郵政大臣にお伺いいたしますが、同様の趣旨で、郵政職員及び郵政省当局に対しましても同様、三月十日に調停案が示されておりますが、これは郵政当局としてはどういうお考えでありますか。これを受諾をするという方向で努力をしておるかどうか。その点を明確にしていただきたいと思います。
  86. 村上勇

    国務大臣(村上勇君) 調停案については、これはあくまでも尊重をいたしておりますが、目下慎重検討中であります。
  87. 永岡光治

    ○永岡光治君 慎重に検討中ということでございますが、問題点はどこか、おそらく慎重に検討されておるようでは問題点がしぼられておると思うのですが、どこに問題点があるのでしょうか。
  88. 村上勇

    国務大臣(村上勇君) 問題点につきましては、ただいまここでどの点が問題であるというようにはっきりお答え申し上げることはちょっと困難であります。あらゆる角度から検討いたしまして、これに対する回答を急ぎたいと思っております。しかしながら非常に慎重を要する点がありますので、目下検討いたしております次第であります。
  89. 永岡光治

    ○永岡光治君 これも先ほどの労働大臣及び公社当局からの答弁をもってしますと、やはり他とのつり合いを考えなければならぬというようなことでありましたが、当然そういう見地に立って郵政大臣も考慮を払っておるのでしょうかどうでしょうか。そういう意味でおくれているのでしょうか。
  90. 村上勇

    国務大臣(村上勇君) 他のつり合いを考えるところもありますし、また他のつり合いを全然考える必要のない点もあります。
  91. 永岡光治

    ○永岡光治君 他のつり合いを考える点は、どこでございましょうか。
  92. 村上勇

    国務大臣(村上勇君) 他のつり合いを考えるという点については、ただいまのところお答えできない次第であります。
  93. 永岡光治

    ○永岡光治君 それはちょっと私はおかしいと思うのです。郵政大臣として他とのつり合いを考えるところもあるし、考えないところもあるという答弁の以上は、個所は明確でなければならぬと思うのです。それがいまだにきまらぬで、そういうことは答弁できないと私は思う。当然私はつり合いを考えておる、この点はつり合いを考える、こういうことがあるだろうと思うのですが、その点はどうでしょうか。
  94. 村上勇

    国務大臣(村上勇君) 大へんむずかしいところがあります。私どもの方に示されておりまする調停案は、他といささか違った解釈のできる点がありますので、そういう点については全く慎重を要すると思います。
  95. 永岡光治

    ○永岡光治君 大体郵政大臣答弁によりますと、私はつり合いをとるということは、大体慎重に考えておるということは、私の想像をもってするならば、他の三公社と比較しますと、第二項である一時金の問題ではないかという想像であります。これについての理由書によれば、これはその金額は電電公社並みに支給されることが適当と思われるが、財政的に各種の制約を受けておる郵政事業の経理状況にかんがみ、差し当り年度内としては財政上可能な限度でやりなさいということをうたっておりますが、差しあたり年度内はやれ、残りは当然あとで考えなければならぬという、これは当然の精神だと思うのですが、その点はどうでしょうか。
  96. 村上勇

    国務大臣(村上勇君) そういう点も相当慎重を要すると思っております。
  97. 永岡光治

    ○永岡光治君 そこでこれは私は大蔵大臣もお見えになりませんですけれども、当然これを受諾するということになれば、補正を行わなければ実施できないと考えておりますが、郵政大臣に関する限りでもけっこうでありますが、あるいは公社当局も当然でありますが、補正を組まなければ受諾ができないものと考えておりますか、どうでしょうか。
  98. 村上勇

    国務大臣(村上勇君) 補正を行うかあるいはその企業内の経理の操作によってこれがまかない得るかという点については、この点を慎重に検討いたしておる次第であります。
  99. 永岡光治

    ○永岡光治君 まだそうすると予算の範囲内でやれると、こういう考えもある。この調停案を受諾することにいたしましても、補正を組まないでやっていけると、そういう自信があるのでしょうか、どうでしょうか。
  100. 村上勇

    国務大臣(村上勇君) その点を今研究いたしておるのであります。これはただいまのところ、はっきり私から御回答申し上げるわけにはいきません。
  101. 永岡光治

    ○永岡光治君 公社当局どうでしょうか。年度内にすでに提案されて、あと幾日もないわけですが……。
  102. 小倉俊夫

    説明員(小倉俊夫君) お答えいたします。私の方は原資その他の点を考えまして、もし回答案ができますれば監督官庁にお諮りすることになるだろうと思いますが、私の方では各諸方面の、関係方面にお諮りをいたしたいと考えております。
  103. 入間野武雄

    説明員(入間野武雄君) お答えいたします。年度末五千円の問題につきましては、先ほど申し上げましたように計数整理いたしておりまして、納付金を完納した上に残余があれば、あるいは出られるかと思いますが、その点がまだはっきりいたしませんので、何と申し上げかねます。補正予算は組む意思はありません。それからその次の、あとの問題につきましては、現予算でやることはあるいは困難ではないかと思いますが、とくと研究いたしてみたいと思います。
  104. 梶井剛

    説明員(梶井剛君) お答えいたします。私の方も補正予算を組んでやろうという考えでは今おりません。できるだけ現在与えられている予算の範囲内で、監督官庁の認可を受けて、できるだけやりたいという考えております。
  105. 永岡光治

    ○永岡光治君 それでは私は端的にこれを質問いたしますが、三十一年度の予算に計上されております職員の給与総額のうちに、たとえば期末手当の〇・二五を増額することがうたわれておりますが、受諾するとすれば、この中に当然それを予定しておる金額になるのでしょうか。それは考えていずに従来通りの、公務員と〇・二五の差があるつもりでこの予算を組んでおるのでしょうか、どっちなのでしょうか。その点を明確にしてほしいと思います。  これは昭和三十一年度政府関係機関予算、この中の百四ページ、昭和三十一年度日本電信電話公社役職員給与総額算定表、この中に期末手当として三十八億四千二百万円ですか、こういうものが計上されておるのは、これは二・二五カ月分で組んでおるのですか。二カ月分で組んでおるのですか。
  106. 梶井剛

    説明員(梶井剛君) お答えします。三十一年度の予算としましては一応二カ月分で組んでございます。しかしこれは年度末になりまして、私どもはもし給与総額の中に余裕がありましたならば、郵政大臣の認可を受けて、また政府方針がそのことを許されるならば、公務員と同じようにしたいという気持は持っておりますけれども、こういうことは、事が政府から認可を受けなくちゃならぬ問題で、あらかじめ予算にそういうことを組むことは一応はできません。従って政府方針通り二カ月分が予算に計上してあるというわけであります。
  107. 永岡光治

    ○永岡光治君 あとの総裁はあとでいいですが、私の質問はそういう、のむかのまないかではない。もし受諾をするということになれば、この予算を補正しなければ実施できないでしょうということを言っている。これで実施できるのですか。実施できるということは、あなたはこの中に二・二五カ月分を組んでおるという証明になるわけですが、もう今日あるを期して二・二五カ月分を予算に組んでおるのですか、それとも二カ月分しか組んでないのですか。当然補正しなければだめなんです。どっちなんですかということを聞いている。
  108. 梶井剛

    説明員(梶井剛君) これはまだ将来の問題でありますので……。
  109. 永岡光治

    ○永岡光治君 将来じゃない。この内容は二カ月分を組んでいるんでしょう。
  110. 梶井剛

    説明員(梶井剛君) 三十一年の十二月になりましてからの問題であります。あるいは六月とか十二月……。
  111. 永岡光治

    ○永岡光治君 受諾するという――したならばという条件があるのでしょう。
  112. 梶井剛

    説明員(梶井剛君) それはまだ受諾するかしないかきまっていない。
  113. 永岡光治

    ○永岡光治君 受諾したならば組みかえなければならぬのでしょう、と言っているのです。
  114. 梶井剛

    説明員(梶井剛君) そのときにはわれわれは自分の給与総額ですね、そのものについて十分検討をいたしまして、もし給与総額の範囲内でそれが実行できるならば、そういうふうな考えのもとに認可を受けてやる。もしそれがどうしてもいかぬということになれば、さらに補正予算を組む、この二つしかないのです。
  115. 永岡光治

    ○永岡光治君 それは、私は総裁答弁はきわめて何を言っているのかよくわからないのです。私の質問は、これは二カ月分を組んでいるんでしょう。今答弁したでしょう。これは副総裁でもけっこうです、わからなければ。これはもし調停案を受諾するということになると補正を組まなければ、どこから財源を持ってくるのですか。今、総裁は何か財源を持ってこられるような話をしておりますが、どこから持ってくるのですか、明確にして下さい。
  116. 靱勉

    説明員(靱勉君) 予算には明らかに二カ月しか組んでおりません。従いまして受諾するとすれば、ということになりますが、調停案の主文におきましては、予算的措置を講じて、というような文句がありますので、そのまま受け取れば予算的措置を講じなければならぬものです。在来、公社につきましては、予算総則におきまして業績賞与の支給ができる、こういう形になっておりますので、それらと勘案いたしまして、受諾するかしないかまだ決定しておりませんが、した場合においてどう処置をとるかというようなことも検討いたしておる次第であります。
  117. 永岡光治

    ○永岡光治君 大蔵大臣どうでしょう。受諾をするということになるとこれは補正を組まなきゃならぬと思うのですが。
  118. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 御質問は前の調停に関連した補正予算を組むという問題ですか。
  119. 永岡光治

    ○永岡光治君 調停を受諾するということになれば、補正を組まなければ実行ができないでしょうということです。
  120. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 私は受諾するかしないか、これは私は何も申しませんが、補正予算を組む考えは持っておりません。
  121. 永岡光治

    ○永岡光治君 おかしいですね。私はあなたの意思を聞いているんじゃないんです。受諾するということになれば、補正を組まなければ実行ができない予算でしょうということを言っているのです。補正を組まないでも実行できる予算ですか。そういういいかげんな予算だとすれば、これはきわめて不まじめな予算だと言わなければならないんですね。
  122. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 期末手当は二カ月分でありまして、それ以上は出せません。
  123. 永岡光治

    ○永岡光治君 いや、だから二カ月しか出せないから、二・二五カ月分を出すということになると、補正を組まなきゃ出せないという予算案じゃないかということです。大蔵大臣がわからなければ主計局長でもけっこうです。
  124. 森永貞一郎

    政府委員森永貞一郎君) 三公社、五現業につきましては、業績賞与という制度が別にありますことを考慮いたしまして、期末手当といたしましては二カ月分しか組んでいないわけでございます。従いましてそれを二カ月分以上出すという場合には補正が要るわけでございますが、これはしかし靱副総裁からも御答弁がございましたように、期末手当の額そのものが業績賞与の性質と寄接不可分の関連があるのでありまして、両者を関連せしめて考慮する必要があると存じます。
  125. 永岡光治

    ○永岡光治君 この問題はいずれ、今の意向からすれば大体受諾をしそそうな考えのように承わっておりますから、私はそのことを期待いたしまして次の質問に移りたいと思うのです。  これは一つ労働大臣にお伺いいたしますが、改正の公企労法の三十五条ですか、三十五条は従来の規定に比べまして、はっきりとこれは最終的に裁定は労使双方を縛る、しかもこれは政府においてこれを実施できるように努力しなければならぬ、極力でしたか何ですか、そういう文句がありましたが、従来と変ったこういう規定を設けたということは、やはり移用、流用をできるだけ行うという精神で改正になっているのかどうなのか。その点で、労働大臣政府当局の当面の責任者でありますが、どのように考えてこの規定を改正したのですか。
  126. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) 政府考え方は、公労法の仲裁裁定という制度は尊重すべきものであるという建前で、従来は仲裁裁定が下りました場合にも予算総則に縛られて、国会の承認を求めなければできないことが多うございましたので、今度の三十五条の改正案の中に、政府は努めてこの仲裁裁定が実施できるように努めなければならない。そこで主務大臣予算の流用などについてできる限りの努力をして仲裁裁定を実施するようにせよ、こういう精神でございます。
  127. 永岡光治

    ○永岡光治君 わかりました。それで移用、流用は行なっても、とにもかくにもこれが実施できるように政府は努力すべきであるという精神であることはわかりました。  第二点として伺いたいのでありますが、そういう規定をかりに――私たちは不満でありますが、これは通過をいたして成立をいたしたといたしましても、実はこの仲裁を出すところの委員ですね、これは従来仲裁委員会は三名で構成されておる。今度の改正案によりますと、公益五名、労三、使三、五、三、三というわけで、しかも五名の公益委員は労働大臣がこれを推薦するわけですね。それに対して内閣総理大臣が――国会の承認は必要でありますけれども、一応指名することになっております。そうなりますと、公益委員に非常に左右される。その任命いかんによっては、時の政府がきめるのですから、困った調停案を出されては、あるいは裁定を出されては困る、こういうような考えがあるとするならば、政府に都合のいいような委員を任命するおそれがきわめて濃厚であると思うのです。これは従来は労使双方がきめておったが、ほとんどそのまま内閣総理大臣の指名を受けておったわけです。それを改正されると、きわめて穏当を欠く。時の政府に非常に有利なような調停案しか出せないというおそれがあるのですが、そうなるのと、仲裁制度を設けました本来の趣旨に私はもとるもがのあるのではないかとおそれているわけですが、これはどういう方法政府は食いとめるのですか、その見解を承わりたいと思います。
  128. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) 現行公労法は、御承知のように直訳立法の最たるものでございまして、ことに永岡さんも御承知のように、単位制度であるとか、それからまたただいまの仲裁委員の選任方法など、全くこれは何と申しますか、アメリカ式の考え方で、日本人にはああいうややこしいやり方はわからない。ことに私は今度は仲裁裁定というものを法律上尊重すべきものであるという建前をとる以上は、この仲裁委員にお願いをする方々はりっぱな人物を選んでやりたい、ことにこれは準司法的な決定権を持っておる重要な委員でございますから、そこで従来のようなやり方でなくして、労働大臣が推薦をして皆様方すなわち国家最高の機関である国会の承認を得たる後に内閣総理大臣がこれを任命する、こういうわけで、この仲裁委員に権限を持たせて権威あらしめる方がかえっていいのではないか、こういう考えでやったわけであります。
  129. 永岡光治

    ○永岡光治君 私はそういうことを聞いているのではなくて、私の趣旨とするところは、どうして政府の一方的な任命、これは国会が承認をするからと言いますけれども政府はやはり絶対多数の与党を占めておるから政府ができておると、こう解釈しなければならぬと思いますが、そうなりますと、与党の立場に立つ政府の指名でありますから、これを承認せざるを得ない、そういう一方的な任命に陥るおそれをどういう形でチェックするかということを私は労働大臣に承わっているのです。
  130. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) ただいまのお言葉を承わっておりますと、自由民主党以外は未来永劫政局を担当する責任のある立場に立たない(「そんなことはない」と呼ぶ者あり)というふうに聞えるのでありまして、あなたの社会党が政権をお取りになった場合も、やはり私どもと同じように、だれが見ても、この人々はりっぱな人々であるという者を人選しなければ、国会において御承認願うわけにはいかないのでありますし、社会が正しい批判をいたしますから、私どもとしてはこういう準司法的なりっぱな制度を運営される委員は、あなた方にも賛成をしていただくりっぱな人物を推薦して国会で御承認を願う、こういうわけであります。
  131. 永岡光治

    ○永岡光治君 これは社会党がやはり天下を取るでありましょう。しかし、社会党が天下を取りましても、与党である社会党はその政府に協力するだろう、またそうならなければならぬと思いますが、そういうことでやはり一般国民に疑いの目をもって見られてもしようがないので、私はそういう一方的な任命に陥らないチェックをする何らか方法が、たとえば推薦委員会というものを設けて、労使代表が集って構成するのも一つ方法でありますが、そういう推薦委員会を持って、それを何人かの候補者をあげて、その中から総理大臣が指名するという方法ならば、これはだれが見ても、まさに公正であります。何としても現在の方法ではその公正を期し得ないおそれがありますので、そのチェックの方法についてどうかという質問をいたしますと、大臣は依然としてチェックの方法については考えていない。ただ信頼してくれ、信頼してくれということに尽きるのでありますけれども、このチェックする方法は具体的にあるのかないのか、この点だけでけっこうでございます。
  132. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) 私どもはその人選については先ほど申し上げましたように、皆さん方の御協力を得て賛成をしていただくようなりっぱな人物を出すつもりでございますから、どうかそういう点については御安心を願いたいと思います。
  133. 永岡光治

    ○永岡光治君 安心するわけには参りませんし、そのおそれはやはり依然として残るという証明の言葉しかとれないわけであります。この問題はいずれまた社会労働委員会等で御質問申し上げることにいたします。  次に、この政治活動の制限とりわけ五現業の職員に対して依然としてまだ政治活動の制限が撤廃されておりません。この点について私は副総理が特においでになるようでありますから御見解を承わりたいのです。地方公務員の場合は地方公務員の中で現業に従事している者については、これは政治活動の自由を許されているわけです。それからそういう建前からするならば、国家公務員の中で公企体労働関係法、これを公企労法といわれておりますが、この法律を適用される同じ国家公務員であっても、現業に従事する者は地方公務員とのつり合いからいたしましても、当然これは政治活動の自由を許されるべきものと私は考えておる。さらに突き進めて申し上げますならば、三公社についてもすでに政治活動の自由は許されております。同じ郵政事業の場合を例にとりますと、電報配達もやっておりますし、電話事業も行なっておりますが、それは郵政職員という看板であるために政治活動は許されておりません。しかし大きな電話局、大きな電報局についてはこれは政治活動が許されておる、こういう不合理があるのでありますが、これに対して一体どう考えておいでになるか。私はこれは撤廃することがつり合いのとれる……先ほど公社当局の話を聞きますと、調停案についてもやはりつり合いをとらなければならぬという、こういう考えのようでありますが、そういう考えに立つとするならば、当然これは政治活動の自由は許されてしかるべきだと考えておりますが、いかように考えておりますか、その点をお尋ねいたします。
  134. 重光葵

    国務大臣重光葵君) この点については、一般的に私の意見がどうであるかというお話しでございました。私はかような問題はまず第一に、現在の法規に照して十分それを実行するということが基礎であると思います。しかしこれを概括的に申し上げまするならば、政治活動のごときは、今だんだん国民の知識の水準も高くなってきておるわけですから、これは全般的にできるだけ自由にすることがいいとは考えますけれども、しかし今日の、現在の法規の存する間は、十分にそれを実現することが前提であるように考えておるわけでございます。はなはだ平凡なお答えでありますけれども……。
  135. 永岡光治

    ○永岡光治君 現在の法規があるために、郵政職員のごときは政治活動の自由を許されない、だからこれは不合理ではないか、またつり合いがとれないではないか、だからこれは改正するのが正しいのではないかと、こういうことを私は申し上げているのです。その私の考えが間違っておるのかどうか、それについて副総理のお考えを承わりたい。
  136. 重光葵

    国務大臣重光葵君) その点は、政府としてお前は副総理であるからどういう考えであるかというお尋ねであると思いました。さような点は、実際問題、それを行なった実際に徴して、担当閣僚と十分協議をしてやると申し上げること以上に申し上げるのは、少し行き過ぎだと思います。私はさように慎重にして、私個人としては、できるだけそういう問題は自由にしたいという考えをもってこの協議に加わって進みたいと、こう考えます。
  137. 永岡光治

    ○永岡光治君 労働大臣の見解はいかがでしょう。
  138. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) 国家公務員が法律で政治的中立を命ぜられておることは当然でありますが、さらにただいま御指摘のような人々もやはり公けに奉仕するという建前でございますので、こういう人々も政治的中立性を守るべきである。五現業も御承知のように国家機関の仕事に従事する人々でありますから、これもやはり政治的中立を守るようにするのが当然だと、こういうふうに解釈しております。
  139. 永岡光治

    ○永岡光治君 看板が国家機関であるからということで区別をすると、こういう意思でしょうか、この事業の内容について検討して、これはやはり政治的中立を守らなければならぬと、こういう考えなのでしょうか、どうでしょうか。
  140. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) 御承知のようにたとえば公労法ができますときに、公共企業体に従事いたしておる者を特別な法律で規制するようになりましたのは、すなわち公けに奉仕する義務を持っておる者が、公けに対して争議行為などをやることはおよそ考えられないことであるというのが、公共企業体労働関係法のスタートであります。すなわちそういう意味で、国家機関であるところに奉仕する者は、公けに奉仕する者である国家公務員の立場と同じように政治的中立性を保持すべきであると、こういうことであります。
  141. 永岡光治

    ○永岡光治君 公けに奉仕する者であるからということであるならば、やはり仕事の内容ということになるわけですが、それでは一つ具体的にお尋ねいたしますが、郵便局の保険募集員と第一生命相互保険会社の募集貝とはどれだけ違うのですか。
  142. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) 御承知のように、従って私どもは、当初は三公社だけが公労法の適用を受けておりましたが、二、三年前にこれを拡大いたしまして、今御指摘のような業務に従事する者、すなわち現業関係の五現業についても団体交渉をすることができるようにということで、労働関係で特別なる保護を始めた次第でございます。しかしそういう人々もやはり国家の機関に働いておると、こういう建前で、政治的中立性を保持するのが妥当であると、こういうことであります。
  143. 永岡光治

    ○永岡光治君 地方公務員といえども同様な趣旨だと思うのですが、地方公務員の中では現業の職員は許されておりますが、その点の矛盾はどういうふうにまた解明されますか。
  144. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) 御承知のように、その点についてもやはり法律的な措置をとるべきであるという意見も国会にありましたのでありますが、まだその段階に至っておりませんので、現在は国家機関に従事いたしておる者の中立性を保持するということになっておるわけであります。
  145. 永岡光治

    ○永岡光治君 それではさらに引き続きお伺いいたしますが、そうすると、最近うわさによりますれば、特定郵便局長は特別職にして、政治活動の自由を許すということが計画されておるやに承わっておりますが、その点についてあなたは反対という立場に立つわけですか。郵政大臣及び労働大臣の所見を承わりたいと思います。
  146. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) ただいまのようなお話は、まだ郵政当局から承わっておりません。
  147. 永岡光治

    ○永岡光治君 いやそういう問題についてどう考えておるかということです。うわさがある、ないにかかわらず……。
  148. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) そういうことを郵政当局でお考えになる場合には、私どもの方にも御相談ございましょうから、慎重に検討いたしたいと思います。
  149. 村上勇

    国務大臣(村上勇君) ただいまの御質問は、うわさがあるかもしれませんが、正式にまだ私は何も聞いておりません。
  150. 永岡光治

    ○永岡光治君 私はそのうわさうわさでないということでなしに、今、例を取り上げたわけです。労働大臣答弁をもってするなら、公けに奉仕する国家公務員というものは、これは当然その政治活動の中立を守らなきゃならぬということで、これは自由を許されてはならぬという見解に立つということをはっきり言っている。だとすれば、特定郵便局長に政治活動の自由を与えるというあなたの見解と反するじゃありませんかということを聞いておる。反するじゃないですか。
  151. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) 今申し上げたように、郵政大臣も、そのことについて別に考え方をきめておいでにならないのですから……。
  152. 永岡光治

    ○永岡光治君 あなたはどうお考えになりますか。
  153. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) そういう具体的の問題が起きましたときには、十分に検討いたします。
  154. 永岡光治

    ○永岡光治君 今、問題が起きているのです。自民党の内部において起きているのです。すでに法制局に命じて、その動きのあることを私は承知しているのです。その段階に立ってあなたに御質問しているわけです。だからそういうことはかりにこれはあなたが言ううわさにしても、そういうことがここに、いいのか、悪いのかという断定を下す場合に、あなたはどっちをとるかという質問を私はしているわけです。それについてうわさじゃどうもだめだ、相談してきめると言うのじゃ答弁にならないじゃありませんか。
  155. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) 公務員法で特別職が特別な取扱いを受けておることはあなたも御存じの通りでありまして、従って特別職になった場合にはどうなるかということでありますから、そういうことについては具体的に問題が起るまで、私はここで仮定のことにお答えいたすことは軽率であると存じます。
  156. 永岡光治

    ○永岡光治君 私の質問の要旨をどうもすり違えてそらそうという答弁でありますが、明確にしてもらいたいのです。特別職について政治活動の自由を許すということがいいか悪いかという、いいか悪いか、そのことだけでいいのです。悪いなら悪い、いいならいい。これだけでいいのです。
  157. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) ただいまお話しのものは、いわゆる昔の三等郵便局、特定郵便局の局長のことだろうと思います。そういうことはやはり私どもとしては、そういうことが議題に上る場合には、慎重に検討をして態度を決定しなければなりませんで、今、あなたのような専門の方の前で、私のようなものが……。
  158. 永岡光治

    ○永岡光治君 いや、そんなことはない。
  159. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) うかつにそういうことを断定して申し上げるべきではありません。
  160. 永岡光治

    ○永岡光治君 私は専門家でも何でもない。これは常識論でも、これは副総理でも当然答弁のできる問題なんです。今しばしば繰り返している私の論議からすれば、公けに奉仕する国家公務員であるから、これは政治的中立を守らなきゃならぬということをあなたは言明しているわけです。私は郵政職員でも、これは三公社あるいは全部これは政治活動を許すべき段階じゃないかということを主張しているわけです。にもかかわらず、あなたはそれはいけないのだということを非常に強力に主張しているから、だとすれば、自民党が今、計画しつつあるところの特定郵便局長の特別職という問題については、これはあなたの立場からするならば、反対だと言わなきゃならぬのです。それを言えないのですか。あなたは……。これはおかしいじゃないですか。具体的な問題が出ているので、私は追及している。あなたはこの問題をどう考えるかというのです。
  161. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) 今のような問題が自由民主党内に起きているということは、他党の人であるあなたが存じておられて、党内の人間である私が存じないという、おかしな話しでありますが、私は一向存じておりません。
  162. 永岡光治

    ○永岡光治君 存じているいないじゃない。それをどう考えるかということなんです。いいか悪いかでいいのです。
  163. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) さっきから申し上げておるように、専門家のあなたのような方の前で私がしろうと論をするということは、ことに今、仮定の問題でありますから、そういうことが具体的に論じられるようになれば、われわれの考えを表明しなければならない、こういうことであります。
  164. 永岡光治

    ○永岡光治君 私はきわめて不満であります。仮定の問題じゃないんです。今政調会でも問題になり、その問題について一応法制局等に、これは出るか出ないかは別です。しかしそういう計画があることは事実なんです。私は今それについて、全職員の政治活動の自由を許せということを主張しているわけです。これはおそらく法制局にも命じて、案ができれば国会に提案されると思うのですが、それは賛成なんですか、反対なんですか。どっちですか。賛成か反対か言えるでしょう。それをしも言えないというのはちょっとおかしいと思います。
  165. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) これは特に大事な問題ですから、仮定の場合でそういうことをおっしゃらないで、私どもは今日あなたからそういうお話を承わりましたから、初めてわかったことでありますので、慎重に検討いたしたいと思います。
  166. 永岡光治

    ○永岡光治君 副総理はどうお考えですか、今の私の質問について……。
  167. 重光葵

    国務大臣重光葵君) 私の考えも、今の労働大臣のお考えと同じことの考えでございます。これが政府側の考えと御承知を願いたいのでございます。むろんこの問題は慎重に考えなければなりません。
  168. 永岡光治

    ○永岡光治君 まだそうすると見解は、一般公務員でも、政治活動の自由を許してもいいと、こういうように解釈してもいいでしょうか。それはいけないんですか、いいんですか。郵政職員に政治活動を許していいかどうか。もう一回それを言明して下さい。はっきり……。
  169. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) この問題は私がお答えすることが妥当であるかどうかということについても……。
  170. 永岡光治

    ○永岡光治君 公企労法ですから……。
  171. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) ……疑問がございますが、これは先ほど申し上げましたように、国家機関に就業いたしている人々に対しては、政治的中立を保持してもらうことが妥当であると、こういうふうに考えます。
  172. 永岡光治

    ○永岡光治君 これはいいです。  それでは人事院総裁にお尋ねいたしますが、政府及び公社当局の答弁を承わりますと、やはりつり合いをとらなければいかんということをしきりに言っている。そこでこれは多年の問題でありまするけれども、国家公務員が民間に比べて低いという問題は、すでに人事院からも昨年の国会に対する報告書に、明らかにうたわれております。ただ経済状況その他との関係で、一応勧告を留保すると、こういう内容でございました。その後民間における賃金は、御承知の通り昨年の秋から今年の春にかけまして、みな相当に賃金が引き上っております。あるいはまた、先ほど示されましたように、調停案もあるいは出ている。こういう段階で、私は当然国家公務員、地方公務員について、その保護機関であるところの人事院総裁は、この際何らかの意思表示をすべきが妥当と考えておりまするけれども、この私の考えについて、人事院総裁としてはどのようにお考えになっておりますか。所見を承わりたいと思うのであります。
  173. 淺井清

    政府委員(淺井清君) お答え申し上げます。意思表示せよということが、もしもいわゆる従来のベース・アップの勧告をせよという意味でございましたならば、ただいまのところ人事院はその用意がないとお答えいたすより仕方がございません。ただ、このたびの三公社五現業の調停案が出たことにつきましては、これによって一般職の公務員がひとりその不利益を受けないようにしたい、かような考えは持っております。
  174. 永岡光治

    ○永岡光治君 一般職である国家公務員が不利益をこうむらないように考えているということでありますが、そういうことになりますと、その意思表示はいつごろなされるわけでありますか。
  175. 淺井清

    政府委員(淺井清君) お答え申し上げます。調停案そのものの内容につきましては、私どもといたしましては、なお疑問の点もございますし、団交にまかされている点もございますし、まだはっきりとそれがつかめないのでございます。そうして一般職公務員の方がそれにおいて不利益を受けるかどうかということも、これはなお考えて見なくちゃならぬ点だと思いますので、そこの時期につきましては、はっきりと申し上げられません。
  176. 永岡光治

    ○永岡光治君 調停案の主文を見ますと、これは全部に共通する問題でありますが、これは明確に第一項目には、国鉄の場合を私は例にとって申し上げますと、「国鉄職員の給与はその業務の実態より見て、その労働の質と量に対応して必ずしも適当なものとは認め難いので、公社の経理状況の改善を待って、すみやかに是正の措置を講ずること。」あるいはまた郵政に出されております調停案を見ますと、「郵政事業はその性質上、専ら職員の労働活動に依存するものであり、その給与は、労働の質及び量から見て、必ずしも適当なものとは認め難いので、適当な時期にこれが改善の措置を講ずること。」ということを明らかにせられております。給与の改善をやれということ……。これはベース・アップですよ、何といっても給与の改善は。これをあなたが否定するということは、おかしいではありませんか。当然これは国家公務員についてこの通りのことをやらなければならぬと思うのですが、その点はどうなんですか。いろいろ見解はありましても、現実の字句の問題です。
  177. 淺井清

    政府委員(淺井清君) お答えをいたします。  昨年の人事院の給与に関する報告におきましても、国家公務員の給与の低いことは認めております。しかし公務員法によりますれば、国家公務員の給与は民間給与、生計費、その他の要素をすべて総合判断してこれをきめるとありますので、人事院といたしましてはその他の要素をとくと勘考いたしまして、報告にとどめ、勧告を留保いたしておる次第でございます。その後の推移につきましては常時研究いたしておりまするが、まだその結論は出ておりません。
  178. 永岡光治

    ○永岡光治君 結論は出ていないということだったら、あなたは何もベース・アップの勧告をする必要はないと考えるなんということは、私は早計だと思うのです。それは昨年明らかに九・二%ですか低い。その後、民間の賃金は上っているのです。労働大臣も本会議の私の質問に対しまして、一般公務員は定期昇給を入れているから大丈夫だと、こう言っている。定期昇給は幾らやったって俸給は変りはしないのですから、高等学校を出た人の初任給はそのままの初任給です。大学を出た人は六級の初任給はやはりそのままである。定期昇給はベース・アップになっていないのですよ。ただやめる人が少いから、その人についての――これはまあ政府の全般の労働政策あるいは雇用政策にも関連して参ります大きな政治問題でありますけれども、それを解決されないから、依然としてやはり何年か先になれば、あるいは二年たてば、定期昇給するのは当りまえです。その財源がないからといっても、定期昇給をするのは当りまえであります。それをもってベース・アップしたというような考え方は、これはとんでもない考え方だと思う。だから、この点についても人事院総裁から明確にしておかなければならぬと思うのでありますが、私は、あなたがベース・アップしないということを今ここで言明することは、早計である。それが一つと、定期昇給について財源を確保するということは、これはベース・アップになるのかならぬのか、この二点だけを明確にしていただきたい。
  179. 淺井清

    政府委員(淺井清君) お答え申し上げます。さいぜん申しましたのは、現在のところベース・アップの勧告をする用意がないということを申し上げたのでございます。  それからベース・アップということの意味でございますが、これが給与総額が上るという意味でございまするならば、定期昇給によって給与総額は上るものと考えます。
  180. 永岡光治

    ○永岡光治君 俸給表は変るのですか、変らぬのですか。その点だけを言明していただきたい。
  181. 淺井清

    政府委員(淺井清君) 従来人事院がベース・アップと申しておりまするものは、俸給表の改正によるものをベース・アップと申しております。
  182. 永岡光治

    ○永岡光治君 わかりました。労働大臣よく承わっていただきたいと思う。総裁の言明によると、ベース・アップでないのだ。定期昇給の財源の確保をしましたと、しきりに、国家公務員について四・三%の財源を確保したからベース・アップになっているのだ、こう言っておりますけれども、これは決してそうじゃないのです。何回も申し上げますけれども、高等学校を卒業した人も、大学を卒業した人も、初任給は依然として二年前の俸給とちっとも変ってないのですから、これは国家公務員についてのベース・アップになっておりませんから、ぜひこの際、政府当局におきましても、あるいは人事院総裁におきましても、一般公務員及び地方公務員についても、この三公社、五現業に対する調停案と同様、善処を一つ要望いたしたいと思うのですが、その点の決意のほどを、あらためてもう一度、総裁の方にお尋ねいたしたいと思うのです。
  183. 淺井清

    政府委員(淺井清君) さいぜんこれを申し上げました通り、人事院といたしましては、今回の調停の結果がどうなるか、まだわからぬと思うのでありまするが、もしもその調停の結果によりまして一般職公務員が不利益な影響を受ける……。一般職公務員は、御承知のごとく、団交権を持っていないのでございまするから、団交権を持っておる公務員が給与の改善を受け、団交権を持つていない公務員がひとりその不利益がしわ寄せされるということは、これは人事院として忍びがたいところでございますから、もしも不均衡が生じました場合におきましては、一般職公務員につきましてもそれと均衡のとれる措置、特に一時金の問題等につきましても、適切なる措置を政府に向ってお願いする次第であります。
  184. 永岡光治

    ○永岡光治君 大体わかりました。以上のようでありますので、ぜひ政府当局におきまして、とりわけ、今日は総理はお見えになっておりませんが、副総理もお見えになっておりまするし、大蔵大臣もおいでになっております。労働大臣もおいでになっておりまするし、三公社の当局もおいでになっておる。さらに人事院総裁もおいでになっておりますので、この問題は早急に政府はこれを受諾いたしまして、実施をして、紛争が長引くことを国民が非常におそれておりますので、その責任を政府はかぶることなく、早急にこの事態の解決のために思い切った善処をいたしますことを特に要望いたしまして、私の質問を終ります。
  185. 山本經勝

    ○山本經勝君 私は主として労働行政関係を中心にして、二、三御質問を申し上げたい。  まず、政府が三十一年度の労働行政の基本方針として打ち出しております経済五カ年計画に伴う雇用の増大という問題でございます。この点につきましては、経済企画庁の方から御解明をいただきたい。過ぐる社会労働常任委員会におきまして、労働大臣から一応非常に簡単に御説明がありましたが、実は雇用の増大ということは、当面する日本の労働事情から申しますと、非常に重要な根本問題である。ところが、これに対しましての労働大臣の御説明は、きわめて抽象的で、内容をわれわれが十分検討するに必要な資料さえも実は提供されておりません。そういう状況でありますので、本委員会でもって、これを企画なさった経済企画庁長官の方からの御説明をいただきたいわけでございます。  そこで、まず一応の構想として出されておりますこの経済五カ年計画の第一部「計画の内容」を申しますというと、「計画方向、」それから「国民総生産および総支出」、それから「部門別の計画」、こういうような形で、第二部は「計画を達成のために必要な施策」と、こういうことになっておるようであります。ところが、問題は、この施策の中で、雇用の増大をするということになりまするならば、たとえば民間企業振興、あるいは新しい産業の創設、こういうようなこともあげられております。また中小企業振興による雇用量の増大、あるいは各種公益事業、あるいはまた失業対策事業、こういったものを継続的にやっていくのだ、こういうようなことも言われております。また社会保障制度の拡充によって、なお救済されない労働意欲のある労働者に対して職場を与える、あるいは生活の保障を与える、こういうようなことが言われておるのでありますが、この内容が全く、私どもには抽象的でわからない。  しかも、節一点として長官にお伺いしたいのは、この計画は三十五年度までの五カ年計画になっておるのでありますが、この三十一年度から三十二年度、三年度、四年度、五年度と、この年度計画というものが当然この五カ年計画の基礎になっておる。この点をまず第一に御説明を願いたい。
  186. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) お答え申し上げます。長期経済計画におきまして、雇用問題というのは一番重要な問題として取り上げておるのであります。三十一年度におきましては、三十年度の実績から見ますと、従前私どもは労働力比率と申しますか、労働者の比率が非常に年々に変化しております。たとえば二十六年度は六五%、それが二十七年度は六六・七%というふうに変った。私どもは二十九年度の六七・八ということを墓準として、そうして五カ年計画を立てたのでありますから、三十年度がそれが六八・五と、こういうような工合に変化をしたのでございまして、〇・一%ふえるということは、四千万人の人間からいたしますと、ここに四万人ふえるということであります。非常に大きな変化を来たすわけであります。それで三十一年度はそういうわけでありますから、大体平年われわれは八十四万人の就業者をとる、こういう考えでやっておりましたところが、そういうふうな工合に比率が変ったものでありますから、三十一年度はこれを六八・四といたしまして、百九十万を吸収するということで立案したのであります。  そういうわけでございますから、それじゃどういう方面にこれを吸収するかという御質問でございますが、これは主として輸出産業を振興いたしまして、産業全体を拡大し、産業の基盤を強化いたしまして、生産を増強する。生産を増強することによって失業者の数を少くするという根本方針を立てたのでありますが、それにいたしましても、時期的には、生産設備を改善し合理化するためには、一部分にはこの労働力を吸収する力が減りますが、しかし、これによって生産されたものを輸出し販売いたします結果、第三次産業にそれを一時は吸収いたします。こういう方針をとっておるわけでありまして、新規の産業といたしましては、木材の合理化、あるいは石炭、石油の高度開発、高度利用というふうな方面の産業に逐次吸収していきたいと、こういう方針で進んでおるわけでございます。
  187. 山本經勝

    ○山本經勝君 今の御説明では全く、納得はおろか、理解をする基礎も得られぬと思う。問題は、まず第一に、具体的にお伺いしたいが、経済企画庁では、不完全就業者といわれるものが一体どういう数字であり、どういう実態であるかということを十分御考慮になっていると思う。ですから、その点まず御説明をいただきたいと思う。
  188. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) お答えを申し上げます。この不完全失業者というものにつきましては、これは非常に実態を把握することが困難でございまして、大体この失業者という数字は、これはいろいろな計画でわかりますが、不完全失業者というのは非常に困難でございまして、これは失業対策審議会等において、各自の所得から調べまして、当然これだけの所得のあるべきものが所得が少い、こういうことから見ますと、この数字は五百七十六万という数字になっておりますが……。
  189. 山本經勝

    ○山本經勝君 不完全失業者じゃなくて、不完全就業者という表現をなされておりますが。
  190. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) 不完全失業者のことでございましょう。
  191. 山本經勝

    ○山本經勝君 不完全就業者という名前で文書に載っております。労働大臣の御説明の際にも、不完全就業者であります。
  192. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) 不完全なる就業者は、不完全の、十分仕事がほしくても仕事がない、半分だけしか働けない、こういう人たち
  193. 山本經勝

    ○山本經勝君 失業者と解していいのですか。
  194. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) それが不完全の失業者、不完全就業者。その数字を今申し上げておるわけであります。労働省あたりで調べますというと、これは時間的な、八時間働くべき人が、仕事の都合で四時間しか働けないとか、そういう人を不完全失業者と申しますか、不完全就業者と申しますか、それは三百五万、こういうような数字が出ております。これはその見方によりまして大へんな違いがあるのでありますが、これは私は非常に重大な問題だと存じまして、どうしても完全なる数字を把握したいということに、ただいま経済企画庁としては努力をし、検討いたしておるようなわけでございます。
  195. 山本經勝

    ○山本經勝君 その次の問題としては、「計画の内容」というところで、経済規模の拡大と、所得増加による雇用の増大、及びこれを達成するため経済安定、の三つの柱ということが言われております。これを実現する方策としては、経済の質的改善と量的発展との調整、それから産業構造の変革、こういう表現で言われておるのですが、これもまた非常にわかりがたい。ですから、もう少し懇切に御説明をいただきたいと思います。
  196. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) 就業の機会をふやすということは、私どもは絶対的に、生産をふやしていくということが根本方針でなければならぬと思っております。その場合におきまして、生産をふやせば、これを売るということが大事でございます。それにはどうしても輸出産業の振興をしなければならぬ。国内の消費をまかなうだけでは、これは経済自立できない。輸出をするということに相なりまするというと、どうしても海外との競争の結果、生産の規模を変え、生産の組織を変え、生産を合理化していかなければならない。こういうわけでありますから、まず最初に生産をふやす。これを輸出するためには、生産原価を切り下げるということのために、産業の基盤を強化する。こういうふうな意味でございます。
  197. 山本經勝

    ○山本經勝君 どうもわかりかねますが、具体的に列挙されておるところから一つ質問を申し上げてみたいと思います。  新産業の創設――その前にこういうふうに表現されておりますが、雇用失業問題の緩和に総力を集中し、国家予算の上でも直接的な効果の少い諸政策に対する支出を最小限度に圧縮して新産業の創設、こういうことがあげられておる。あるいは中小企業の育成、それから公共事業、特別失業対策事業、一般失業対策事業、こういうふうにあげられておるのでありますが、その中で私ども重大な関心を持つのは、新産業の創設ということであります。しかも、その新産業につきましても、相当具体的に列挙されておる。たとえば新産業としては石炭・石油化学、プラスチック、合成繊維、ゲルマニウム、それからチタニウム、これらの種類の新しいいわゆる産業を創設するという意味のように受け取ったのでありますが、これの具体的な推進をする財政的な、あるいは投融資その他広範な措置が財政的に必要だと思う。それらの措置があるのかないのか具体的に一つ説明をいただきたい。
  198. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) お答え申し上げます。ただいま御指摘のごとく新産業といたしますれば、科学技術を振興いたしまして、できるだけ化学の方の利用によって木材を合理化する、あるいは石油、石炭の高度化利用、それらによってただいま御指摘のような新しい産業を起していきたい、こういう希望でございます。それがためには開発銀行の方におきまして、従前のあるいは造船あるいは製鉄という方に回しておりました資金は、できるだけ民間資金にこれを肩がわりしてもらうことにいたしまして、国家が直接関与いたします開発銀行の資金は、できるだけ新規産業の方に回していきたい、こういう方針をもって進みたいと思います。
  199. 山本經勝

    ○山本經勝君 今の新産業の創設ということ、これは非常にけっこうなことで、もしお話のように実現できて参りますなれば、それは非常に将来就労機会が増大するという意味において非常にいいことでありますが、私どもの知っている範囲では、たとえば電気事業に関しまして水力あるいは火力を問わず、これらの事業に投資等の関係を雇用の数に比例して見て参りますと、大体電気産業で平均三人程度の常用者しか要らない、あるいは硫安については十四人で、鉄鋼機械産業等の場合には大体十八人、それから石炭企業なんかの場合には四十三、四人というところ、それから繊維工業で大体六十人内外。こういう状態でありまして、最近の進歩しました化学産業の分野等におきましてはごく少数の人々しか要らない。これは一億円の投資を対象にして一応調べられた数字でありますが、こういう状態でありますと、一体どの程度の企業あるいは企業と申しますか新産業の創設が可能なのか。そしてまたその裏づけになる予算あるいは融資等の道についての見通しを私は伺いたい。その点を一つ説明いただきたい。
  200. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) お答えを申し上げます。ただいま御指摘の一億円に対する人間の数字を御指摘でございましたが、私ははっきりその数字はよく存じておりませんですが、大体それは工業そのもの、生産そのものに要する資金でありますわけでありますが、生産が増加すればそれを輸出するにいたしましても、それの取り扱いをいたしますにつきましてもいろいろ第二次的に、つまりわれわれが言う第三次という方面に吸収される人も相当多いわけでありまして、工業が大きくなりふえるということになれば、直接その仕事に従事する人以外に相当の人が吸収されるということに相なるわけでありまして、今一億円でそれでは幾らの人間が吸収できるかということについては、私ただいま材料を持っておりませんからお答えすることがでさません。
  201. 山本經勝

    ○山本經勝君 先ほど長官は、新産業の創設のために必要な融資を、特に従来ありました開発資金等の融資を、新しい産業の方に回すと言われておりますが、それらの引き当てになる開発資金というのはおよそどの程度ございますか。
  202. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) ただいま政府委員からその数字を申し上げます。
  203. 小山雄二

    政府委員(小山雄二君) ただいま長官から申しました開銀資金の新産業に対する融資の問題でございますが、財政資金を産業方面にどういうふうに流していくかという問題につきましては、予算がきまりました暁に関係各省が相談いたしまして方針をきめることになっておりますが、開銀の資金の中におきまして、従来は鉄鋼機械等、業種別に大体ワクがきめられたわけであります。
  204. 山本經勝

    ○山本經勝君 その業種別のワクを一つ
  205. 小山雄二

    政府委員(小山雄二君) きめられたわけでございますが、先ほど長官のおっしゃいましたように、新産業を育成するためのワクというようなものを設けまして、これにただいまのところでは少くとも三十億ないし四十億程度のものをこれに回していこうというような腹づもりでいろいろ研究いたしておる次第であります。
  206. 山本經勝

    ○山本經勝君 これは全く雲をつかむような話なんですが、予算がきまればただいまのお話では一応その新産業のワクを備える。こういう場合に一応ここで行政的な分野からどういうお考えを持っておられるか。およそどれくらい振り当てられるものなのか。そういうことがはっきりしないと、つまり新産業を創設するのだといかにも耳ざわりのいい話でございますけれども、実は中身は全く当てにならなぬと、こういう不安に陥ってくると思う。そこの点をもう一ぺん懇切にお話を願いたい。
  207. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) 大体われわれはこの化学工業ということを主体においておるわけなんでございまして、これは石油の高度化とか、あるいは石炭の高度化利用とか、木材の高度化利用ということにおいておりまして、これは関係の官庁、通産省等ともよく打ち合せまして現状に即し、当業者の意向等もそんたくし、そうして取りきめたいと思っているわけなんでございます。
  208. 山本經勝

    ○山本經勝君 そうしますと次の中小企業の育成という問題、最近の情勢を見ますと、いわゆる大資本が再度資本の集中の過程にあるということも言われますし、いわゆる中小企業を大資本が圧迫しているという実情も、これは否定できぬと思う。この政府の言われる中小企業の育成ということは非常に私ども賛成なんです。ところがこれにいたしましても、今の新産業の創設と応じように、何ら裏づけになる財源あるいは融資等についての見通しというものがさっぱりわかりません。これも同様な意味において御説明願いたい。
  209. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) この中小企業長期経済計画に非常に重大なる役割をなすと同時に、先ほど申しました不完全失業者でございますが、こういうふうなものの吸収というような点から考えまして、政府といたしましても非常に重大視しておるわけなんでございまして、これに対しては三十一年度予算におきましても、中小企業に対しては、まずもって金融を緩和する、これが非常に重大であると存じまして、中小工業に対する金融の措置を講じておるわけでございます。その内容等につきましては、政府委員から数字をもって説明いたしますが、金融だけでなく、一方におきましては、中小企業を指導していく、これはどうしても今日必要以上の数がふえてくるわけで、一人がいい仕事をすればすぐ人がまねする。そういうことのために同業者がふえるというようなことに相なるものでありますから、この同業者の間の組織を何とかして強化しようじゃないか、同時にその中小工業者自身は、自分たちだけで検討することができない、研究することができないというので、これについては技術的な指導をしよう。こういうふうな方針をもって進みたいと存じておりますが、政府委員からこの数字を説明いたしたいと思います。
  210. 小山雄二

    政府委員(小山雄二君) 中小企業金融の問題につきましては、財政資金が今年は非常に窮屈の中を相当中小企業重点をおいてやっておりまして、中小企業公庫では貸し得る金、運用する資金総額、来年度三十一年度三百億、三十年度に比べまして四十五億の増、国民金融公庫五百二十五億、三十年度に比べまして五十七億の増、商工中金、これは財政資金から出すものが二十億で十億の増、こういうことに相なっております。それ以外に予算におきまして、中小企業設備近代化等につきまして、相当額の金額が計上されております。
  211. 山本經勝

    ○山本經勝君 次にお伺いを申し上げたいのは、この施策の中にうたわれております、先ほどちょっと申し上げました新産業の創設、企業の育成、これに対する一応のあれは不十分でありますけれども理解したといたしまして、その他の公共事業、特別失対、あるいは一般失対、こういったものについては、労働委員会でまた詳細に大臣の御説明を求めることにいたしまして、社会保障制度の拡充というものが考えられる。ところが現在社会保障制度の中で、社会保険と言われるものは非常に大きな役割を果している。ところがこの社会保険の問題にいたしましても、ここでいわれる社会保障制度の拡充ということとは、実は逆のコースをたどっておるように見える。たとえて申しますと、生活保護法の問題にいたしましても、非常に従来より窮屈な状態に適用をされなければならない。当然の国民に対しても制限をするということが現に行われております。あるいはまたいろいろな保険関係、つまり国民医療の見地から見ましても、健康保険の問題、あるいは国民健康保険問題、あるいは船員保険、こういった保険関係にいたしましても、赤字を理由にしてむしろ非常に引き締めをやっておる。こういう状態ですが、このことはすなわち立てられております経済五カ年計画に伴う、いわゆる完全就業により国民の窮乏を救い、あるいは疾病から守るということになってこなければならぬと思うのですが、この点、はなはだしい矛盾が現われておる。この点もあわせて御説明願いたいと思います。
  212. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) お答え申し上げます。この社会保障に対する施設、そのほかの金額につきましては、これは年々非常に増加しておりまして、本年のごときは失業対策を入れますと、私はっきりした数字は今おぼえておりません、政府委員からお答えいたしますが、昨年よりも非常な大きな数字がふえておりまして、本年は千百三十億と私は記憶いたしております。そういうような工合に、大体の国民所得に比較いたしまして、本年度のごときは一・三%というふうな数字になっておるわけであります。昨年までは一・一というふうな数字で、年々これは社会保障費はふやしていく、こういうふうに進んでいきたいと存じております。
  213. 山本經勝

    ○山本經勝君 企画庁長官に伺いたいのは、現にいわゆる健康保険その他の問題、あるいはまた生活保護法の適用の問題にいたしましても、窮屈な状態に引き締めつつある。ところがこの方針でいきますと、拡充するというのです。拡充の方向とおよそ反対に引き締めて、しかも医療関係においては特にはなはだしい切り下げが現に行われ、しかも関係者の負担を増大する結果になっている。こういうことが現に行われつつある一方、拡充をするのだということの矛盾がわからないわけなんです。その点を。
  214. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) ただいまお答え申しましたごとく、社会保障全体といたしましては、これは失業対策等も含んでありますが、切りつめた予算の中から、年々増加いたしておりますが、その中にはあるいはいろいろな種類がありまするが、ある一部のものでは昨年よりも切りつめられるという結果に相なっておるものがあると思いますけれども、その点はできるだけ調節いたしまして、全体のつり合いがとれるようにこれを持って行った結果、このようになっておるのであります。
  215. 山本經勝

    ○山本經勝君 どうも理解しかねるのですが、こういうふうに書いてある。「失業問題に直接関連する部面への財政支出を最大限度に増額」すると書いてある。なるほどワクが予算でもって限られている。一兆三百四十九億というワクがあることは私どもも存じておりますが、しかしながら、ここでいういわゆるこの財政支出の最大限というのはまだまだ私は努力の余地があろうと思う。そこを私は伺っている。ところが現に行われていることは縮小する方向に向っている。そうじゃなくて、ここで言われる通りの拡充の方向にこれを打開する努力が一つも示されていない。こういう点が全く理解がいかないと申しているのでありまして、その点をさらに御解明願いたい。
  216. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) 一応数字をもって説明いたしますと、三十年度の予算におきましては社会保障費合計いたしまして千十二億、これが三十一年度は千百三十四億というふな工合にふえているわけでありまして、大体から申しますと、これは生活保護費と児童保護その他の社会施設費と、遺族及び留守家族の援護費とか社会保険費、失業対策費、結核対策費、これを合計いたしまして全体におきまして百二十二億ふえているわけなんであります。
  217. 山本經勝

    ○山本經勝君 時間がございませんからあとに一、二質問がありますので、最後に長官に御質問申し上げたいのは、この五カ年計画が最終年度の五カ年の結果だけが一応取り上げられるのでなくて、私が求めているのは三十一年度の年度計画は一応ある、内容は別問題としてあります。ところが三十二、三、四という三カ年間の具体的な年次計画というのがなくて、一足飛びに三十五年度の五カ年計画の最終年度における状態を示す。これは国会でもって審査をする上においても非常に不都合だと思う。何を基礎にして長期計画あるいは五カ年計画というのか。年次計画がない最終年度の計画、これは全く机上のプランにすぎぬというふうに言っても過言ではなかろうと思う。そこですみやかにこの年次計画を具体的に提示していただかなければ、十分ないわゆる責任のある審査が進められないと思う。この資料の提出方をお願いしておきます。
  218. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) お答え申し上げます。この昨年経済六カ年計画を立て、本年これは五カ年計画といたしておりますが、これはゲルハルト・コルムの式によりまして、五カ年後における日本の人口というものは推定するに当らず、これは間違いない数字ができまして、これに対して労働力が幾らある、これに対して完全雇用に近い、できるだけ失業者を少くするにはどうすればいいか、どれだけの生産をすればいいか、この数字はおのずから明らかになってくるわけでありますから、その数字を一応三十五年度の目標といたしまして、それに向って進んでいくということでありますが、年度別の計画をいろいろ立ててみたのでありますが、これはなかなか私はむずかしい、むずかしいだけでなくて、かえって迷わしめる、こう思ったのであります。それはなぜかと申しますと、昨年われわれが三十年度の計画を立てましたときに、輸出のごときは十六億五千万ドルでいけばいいじゃないか。いろいろな方面から検討いたしましてやったのでありますが、実際はそれは二十億五千万ドルというふうな工合に予定よりも二〇%上回る。また農産物のごときは予定よりも一三%上回っておる。いろいろな数字が変化いたしまして、この変化をするということは、これは一つは天候にもよったのでしょうが、まだわれわれの努力だけではいかんともできない海外の事情等によって変化することが非常に多い。そういう変化することをもって年々の計画を立ててこれをもってとられておったときには、これはかえって誤解をまねくだろう、一つのものさしだから間違いを来たすだろう。従いまして、できるだけ過去の実績また現在の状況に応じて、三十一年度は三十年度の終りに三十一年度の予算の基礎となるべきところの数字をきめようじゃないか、そうしていくことが正しいのじゃないかというようなことで、ただいまその方針でやっておるわけなのでありますが、しかしながらお説のごとく、できますればこれを年度別に分けていくというのにはどうやったらいいかということにつきましては、現在真剣に各方面の意見を聞きまして、それを検討いたしておるようなわけなのであります。ただいまのところ、現在の知識、現在の経験だけでは、年度別の計画を立てるということは、かえって誤解を生むというふうな結論を出しておるわけであります。
  219. 山本經勝

    ○山本經勝君 なおただいまの問題につきましては、労働委員会で詳細に質問もし検討をいたしたいと思う。  そこで、その次の問題として、今回連合国軍の撤退に伴いまして、広島県の呉市で起りました駐留軍要員つまりあの駐留軍労務者、これの八千七百名に上る大量の解雇が今年度内に行われることになって、すでに予告された者もあれば、年末まで一応残務処理その他によって働いておる者もある、こういう状況であるわけなんです。これは社会労働委員会におきましても、一応労働大臣に対して要請もいたしました。そこでその際に、これらのいわゆる整理され、解雇される人々、その中には日本政府が日米行政協定に基いて労務提供をしておる、つまり間接雇用の人々もおられる、それからまた約八千数百名に上るうちの四割近い人々が軍の直用夫である、こういうような格好になって、非常に取扱い上も困難をしているように聞いております。そこでこれらのいわゆる職場を失う人々、しかしながらなおかつある意味から申しますなれば、これは日本が雇用しておる、つまり日本が雇い主である、そうして行政協定に基いて国連軍に対する労務提供をしている、こういう状態にあるのがやはり大部分をなしている。そうしますと、勢いこれにつきまして、いろいろ労働大臣の御意見を伺いますと、これは準公務員としての取扱いをするものであるということをしばしば明言されておる。ところが既定の退職金は支払うけれども、それ以外のものは払えない、しかも当然起る失業問題に対しまして、配置転換あるいは転職、転業というような方法があるでしょうが、これらについてきわめて準備が足らぬといいますか、あるいは財政的な裏づけを持った具体的な救済措置が講じられておらない、こういうことを実は御質問申し上げたのです。その際に倉石労働大臣は、政府全体としてこれらの問題については責任を持たなければならぬ。そこで連絡協議会等を持っておるので、そういう機関に相談をした上で、特殊な事情のもとで解雇をされるこれらの労働者に対して、何らか具体的な救済措置を講じたい、こういうお話であります。ところが組合といたしましては一時金の要求あるいはいろいろな要求が現に出ております。そうした要求を私は訴えたわけでありますが、これに対して努力をするというお約束をいただいた。この点につきまして労働大臣の方からその後どうなっているかお伺いしたい。  それからあわせて大蔵大臣に、この種の労務者に対する救済といいますか、それに必要な資金の点、たとえば生業資金、更生資金、こういったような資金の面での御配慮が願えるのかどうか、あるいはでき得べくんば一時金でもって退職金に――つまり公務員が定員制等その他いろいろな事情によって整理をされる場合には、当然規定の退職金以外に希望退職等の条件によって解雇をする場合にでも、何らかのいわゆるプラス・アルファが従来支給されてきている。民間企業においても同様です。しかも準公務員として取り扱うのだといわれる限り、何らかの具体的な措置が講じられるのが当然だと思う。この点についてどういう措置を講ぜられているか。またその後の推移について労働大臣並びに大蔵大臣の御所見を承りたい。
  220. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) 呉市の国連軍労務者が今年七月から大体年度内に大量解雇になるということにつきましては、先方からも正式の通達がございまして、その通りであります。そこで、内閣においても御承知の特需等連絡対策協議会などで、こういうところで特に出てくる駐留軍及び特需関係の労務者の処置について、いろいろ配慮をいたし、手当を講じていることは御承知の通りでありますが、今お話のいわゆる一時金という問題につきましては、私どもの方の側としては、急速にこういう特殊な閣係で離職いたしますものを救済することは、いたしたいのでありますけれども、御承知のように私どもの方でそういうことをやる場合に、事前に軍との協定がございませんというと、日本政府プロパーの責任になることでございまして、なかなか現在の財政事情として困難なことでございますので、その点につきましてはなお私どもとしては検討はいたしておりますが、非常にむずかしいことであると存じます。従って、呉市の当局者も先般上京いたしまして、いろいろお話をいただきました。呉市は従来もすでにいわゆる失業者多発地帯でありますから、来年度の予算においていたしますところの失対事業は、御承知のように国庫負担は五分の四というところまで引き上げました。そういうことで、今までやっておりました上に、大体六千五百人余りのものが出るということでありますから、これはなみなみのことではとうてい吸収することは困難でございます。そこで私どもは御承知のように、特に今までそういう経験を持っているものは、駐留軍関係で他に移動する所もありますから、そういう所への配置転換であるとか、特に駐留軍関係に勤めておりましたそういう人々に対する職業の特別なあっせんを地方の公共職業安定所でいたさしております。従って一般の失業者よりは就労の率がいいようでございますが、なおそういうことについても力を注いでいるわけであります。ただ、今お話のような一時金という問題につきましては、なかなかこれはむずかしい事情にありまして、なお検討はいたしますが、今日具体的な結論を出す段階に参っておりません。
  221. 山本經勝

    ○山本經勝君 大蔵省等との関係閣僚間のお話し合いはいただいたのですか。
  222. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) それは先ほど申しました内閣にあります特需等対策連絡協議会でいろいろお話し合いはいたしております。
  223. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 駐留軍の引き揚げ等によりまして失業の多発をするという場合におきまして、大蔵省といたしましては、その土地にあります国有財産等をなるべくそういう失業者を吸収するような仕事をする場合に優先的に払い下げをするとかあるいは貸与する、こういう方針で今やっております。なおまた、そういう失業者がお仕事をなさる上においての生業資金等につきましては、特に国民金融公庫、中小企業金融公庫等をして特別に配慮を加えて資金を供給するように指令を出しております。
  224. 山本經勝

    ○山本經勝君 最後に外務大臣にお伺いを申し上げたいのですが、実は行政協定の第十二条の四項並びに五項に労務協定に関する問題で規定がございます、御承知の通り。ところが最近全国のこれら基地並びにキャンプ等に働いておる日本の労務者で、これは大部分は直用なんでありますが、この直用夫、あるいはまた間接雇用を含めまして、組合運動をやったとか、あるいは組合に加入したとか、あるいはその他いろいろ日常の組合活動、業務等を調査し、そうして不当に干渉された事実が幾多現われて参ったわけであります。このことをいろいろと各方面に調査をし、検討して参りますというと、労働組合法によって当然保護を受けるこれらの直用夫、あるいは間接雇用の日本人労務者、こういう者に対して非常に強い圧迫が加わっている。ところがこの問題を掘り下げて参りますというと、軍の言い分としては、軍が公務上やった行為については責任を持たない、こういう態度をとっております。そこでせんだって二月の二日でございます、福岡板付基地において二十二名のうち十八名の出勤停止と四名の即時解雇という事件が起りまして、これは法務委員会からも現地出張を願って調査をしていただいておる問題でありますが、とりあえず四名の即時解雇者については組合が身分保全の仮処分の申請を福岡地裁にいたしました。ところがそのとき福岡地裁の二月七日の口頭弁論の呼び出しに当って、軍側からこういう文書回答が来ております。第八戦闘爆撃機隊司令部といたしまして、一九五六年二月七日土星県知事並びにこれは福岡地裁の所長あてでございます。「本書状は下記署名の者に一九五六年二月七日出頭すること、不当解雇申立の苦情に対して書面をもって回答することを福岡地区裁判所が依頼してきた一九五六年二月三日附帯簡に対する回答であります。その手続又は調査は合衆国の将校又は機関によって公務遂行中に為された行為に関するものであります。(事件がどのようなものであれ)公式指令によって回答者が出頭することは許されておりませんし、又自分で回答することも書面で回答することも許されておりません」、こういうような意味の回答が参っております。それからまた現に労働委員会でもって不当労働行為として取り上げられた事件は全国に二十四件、現に審査中のものを含めまして、あるいは命令が発せられたものを含めまして、二十四件に上り、関係しております人員は六十八名でございます。ところが先ほど申し上げましたように、これは組合運動をやったとか、それから懲戒解雇あるいは保安解雇、ストをやったということの理由、それから文書を頒布したとの理由あるいは組合に加入したことの理由、こういうような内容によって申し上げますような幾多の不当労働行為が起っておる。そこで令状に対しても服しないし、ましてこれらの審問、審査についても先ほどの文書の通りでありまして、出頭もしない、こういうことになりますと、日本国の労働関係法で守られなければならぬ、また守ることになっております日本人労務者の救済が何らできないのであります。ところが行政協定には明らかに十二条の五項によって、日本人労務者あるいは日本に在住する外人であっても同じ取扱いを受ける。しかも国法の保護を受けるのだという規定がありながら、こういう状態に置かれておる。ところが、このことを掘り下げて軍当局に対しても質問をし、そうして調査をしてみますというと、実はこういうことが言われておる。昭和三十年五月十三日付で日米合同委員会合衆国代理、海軍少将、ロイ・ゲイノーという名できておる。これは政府に参ったものなんでありますが、「一、合衆国軍軍人軍属が、公務執行の間になされた行為に対する一切の審査又は判定の手続において日本側裁判所又は準司法的行政機関の発する同状に従う義務に関して、合衆国は次のような見解を持っていることを日本政府に御伝達願いたい。」それかa、ら合衆国軍人軍属は公務執行の間になされた行為については合衆国軍当局に対してのみ責任があること。b、したがって、かかる職員は公務執行の間になされた行為に対して日本側裁判所又は準司法的機関の行う審問審査の手続に出頭し又は口頭若しくは文書で回答することの要請に応ずる許可を与えられていないこと」、こういうことなんであります。それからさらに、「c、かかる令状が発せられるに至った審査又は判定の対象である行為が公務に関係があるかどうかの決定は合衆国当局においてなされるであろうこと」、こういうふうに表明をされております。  同じく三十年七月九日付で、政府の方の態度が表明されておりますが、これらの中で問題となって参りますのは、たとえば「昭和三十年五月十三日付、合同委員会への合衆国側覚書、主題――合衆国軍人軍属の公務に関して起された訴訟において発せられる令状に服する義務」、これは三十年の五月十九日の合同委員会に提出してあると言っておる。  それからまた労働問題に関するところを引用しますれば、「労働問題を規律する規定及び所得税及び社会保障のための納付金の源泉徴収及び納付の義務並びに別に相互に合意される場合を除く外、賃金及び諸手当に関する条件のような雇用及び労働の条件、労働者の保護のための条件並びに労働関係に関する労働者の権利は日本国の法令で定めるところによらなければならない」と、それぞれ規定してあることがあげられて、これらについて日本政府としてはこれを認めておるものではない、こういう態度が表明されております。この間の状況が私ども十分にわからないので、外務大臣の御説明をいただきたいと思います。
  225. 重光葵

    国務大臣重光葵君) 駐留軍の雇用します労務関係についてもいろいろ複雑な問題が起ります。今の米国の軍側の覚書、先方の覚書というので、軍人軍属は公務執行中の行為について日本国裁判所の出頭要請に対しては応じないというような趣旨が第一でございます。そういうことを申してこられたのでありますが、これについては、むろんそういうことについては合同委員会に提出して十分にこれは検討して処理をいたさなければなりません。そこで行政協定の第十七条には裁判権のことが書いてあります。そこでその十七条によってこの裁判権のことは実施をされなければなりません。そこで米国の軍人軍属が日本の裁判所に被告として出頭するようなことは、これは義務がないということにはなるが、しかし労務委員会に関しましてはこの方面には、労務の問題については行政協定の第十二条及び第十五条によりまして律せられるのでありますからこれはいろいろな条件その他については日本国の関係法令によるべきであるという考え方をもっておるのであります。そこで労務の問題については、そのことについていろいろその第十二条及び第十五条の規定によって律して、日本国の関係法令によって律せられるから、それによらなければならぬ、こういう意見をつけて先方に申し入れておるのであります。これらの、そのわが方の考え方に対しましては米側として十分それを検討すると、こういうことを申しておりますが、まだはっきりした返答には接していない状況でございます。わが方といたしましては複雑な問題は合同委員会において十分に先方と折衝するつもりでいたしたいと思っております。
  226. 山本經勝

    ○山本經勝君 ただいまのお話は米軍側が言っておるようなことと少しもかわらない。私が伺っておるのはすでに先ほどから申しました具体的内容について、たとえば行政機関である労働委員会のいわゆる判定、それから不当労働行為の命令、こうした救済命令等に対しても服しない、そうしますと十二条できめております守らなければならない労働三法が守られておらないのです。しかもその逃げ道としては公務上行なった行為に対して責任を持たない、こういうことなんです。しかしなるほど合同委員会に持ち込まれてはおりましょうが、一体合同委員会へ持っていって合意が得られるということはほとんど得らないということがいわれております。裁判所が呼び出しをしても出てこない、あるいは十七条の規定によりましても少くとも裁判に対する相互の協力が約束されている、ところがそれが守られない状態であるのですが、この点について外務大臣としてはどのように今後対処されるのか、その点を明らかにしていただきたい。
  227. 重光葵

    国務大臣重光葵君) その点は、私は結局はこの行政協定取りきめの解釈の問題にもなることだと思います。従いまして双方の約束の解釈になります。これは合同委員会で検討してその決定に双方とも服するよりほかにしょうがないように考えるのであります。それで合同委員会において慎重に検討しなければならぬ問題だと、こう考えております。
  228. 山本經勝

    ○山本經勝君 そのことはわかっているわけであります。ところが合同委員会においてどのようにこの問題が取り扱われ進行しているかということはわからない。そこで発言権がある外務大臣として明らかにしてもらいたいということと、いま一つは、いわゆる公務執行中の行為であるということで逃げられる場合がある。こちらからいかようにいたしましても手がないわけです。率直に申し上げまして問題の内容を詳細に申しませんけれども、そうなって参りますと、事実上日本人労務者が協定がありながら守られないという現実が認められる。そこでどのように対処されるかということを、たとえば保安解雇という規定について改正をするとか何らかの手を打っていただかなければ政府で言われております労働者の保護ということは不可能になる、このことで私はお伺い申し上げておる。
  229. 重光葵

    国務大臣重光葵君) 合同委員会の内部の一々の運用については、私十分承知をいたしておりませんが、その方針といたしましては、労働委員会においてわが方の主張は労務者の保護に十分意をいたして、条約の解釈をいたして主張を進めていく方針でやっております。そこでいろいろその点について事情の検討をいたさなければなりませんが、十分事情を検討してその保護に遺憾なきように労働委員会においてやるように私も指導していきたいと、こう考えております。
  230. 山本經勝

    ○山本經勝君 どうも要領を得ぬのですが、つまり軍の公務上の行為だといってやったことについて責任を回避するといいますか、逃げるのであれば、どうも手がつかない、こういうふうに解釈しているのですが、このことは重大な要素をもってくる。そうなると日本の労務者が国法によって保護されることができず、従ってアメリカ軍当局の思うように酷使され、その反感と不満とは全国の労働者に大きく波紋を投げかけている。そうしますと、行政協定に基く労務提供についても支障が起りはしないかと思う。兵庫キャンプの場合には、SG関係の労務者がストライキをやりました。労務提供を中止するという事態が起りはしないかと思う。少くともこのことは政府当局としてただ努力しておりますというようなことではなくて、もっと突っ込んだ積極的な解決策を講じる必要がある。たとえば昭和二十八年のあの日米基本労務契約にいたしましても、規定された契約を調印しておきながら施行日と実施期日あるいは付属了解事項の調印ができぬために三年にわたって引き延ばしている。こういうことは計画的にやっていると解しても不都合ではない。こういう状態が全体の労働者の間に伝わり、そうして対米軍との感情的ないわゆる、さらに拡大して言うなれば、少くとも米軍に対する国民的反感となって現われることもまた否定できぬと思う。そのことは私は外務大臣として否定されるところではなかろうと思う。そうしますなれば、少くともここで責任のある措置を講じてもらわなければならない。そのことをはっきりお約束願えるなれば時間もございませんから、私はこの程度にして質問を打ち切ります。
  231. 重光葵

    国務大臣重光葵君) 御趣旨のあるところはよくわかりました。そういう考え方をもって十分に措置して行きたいと考えておりますが、その公務上の行為であるから云々というお話が議論の根拠としてございました。これらは実は条約取りきめの解釈問題になります。結局そこでそういう問題について御参考のため条約局長から意見を述べさせていただきたいと思います。
  232. 下田武三

    政府委員(下田武三君) ただいま御提起になりました問題は、実は公務執行中の米軍軍人軍属の行為につきまして、行政協定中刑事裁判権の問題につきましては、非常にはっきり協定ができているのでございます。ただ労務関係におきまして、日本側の労働委員会等に証人として出る義務があるかどうかというかという点につきましては、実は明文の規定がないため日本日本側の主張をいたしております。つまりただいま御指摘になりました十二条及び十五条の規定を根拠といたしまして、すでに労働条件等が日本の法令によるものであるならば、それに関連して手続き問題についても日本の法令によるべきであるというのが日本側の主張でございます。ところが御承知のようにアメリカは伝統的に国家機関が公務の遂行に関連して起った問題について外国の司法権または行政府内の司法的な手続過程に出頭するということはいたさないという主張があるわけなんです。これは刑事裁判権の問題については、日本のみならずNATO条約諸国も同じような主張を強くいたしまして、アメリカも伝統的な主張を譲歩いたしているのでありますが、この労務委員会等の問題は実はまだ未解決になっております。しかし合同委員会におきまして、今後とも日本側の主張を重ねまして、解決いたしたいと思っております。ただこの理論的な問題の解決を別にいたしまして、条件自体は日本の法令によって解決されるということである。その間の問題が起った場合の軍人を出すか出さぬかということは理論の問題でございます。これはあるいは長い間論争を続けるかもしれませんが、いかなる条件で解雇手当を出すか、そういう条件自体は、これはあくまで日本の法令によって解決される。この点は私どもは間違いないと思っております。
  233. 吉田法晴

    吉田法晴君 ちょっと関連。今の点は十二条、十五条で、労働関係日本の労働関係法に従わなければならぬ。これもいいじゃないか。ただそれを実現する場各に、問題になつたときに刑事裁判権でなくて、今言われましたような民事裁判、これは仮処分等のような民事裁判、あるいは行政的な司法関係の判断、あるいは労働委員会の判断に服するかどうか、こういう点で公務執行だからというので逃げる。それを救済する方法は。で、解釈について合同委員会で意見が一致をすればよろしい。しかし解釈で争っておる。争っておられるが、まだ片づいておらぬ。実際に労働法規の違反、あるいは不当労働行為というものは次々に重ねられていく、それをどうするか。これがまあ質問の要旨であります。労働委員会で、と大臣は逃げられた。それからあなたも解釈問題については云々というのですが、解釈を争っておっても問題の具体的な解決は一つもできない。それならばどういう方法をおとりになるか、あるいは一つ一つの問題について合同委員会の労務部等で問題にするより私はなかろうと思うのですが、解釈あるいは制度として刑事の場合のように公務上はどうする、その他の場合はどうする、この点と、こういうものを民事事件について、あるいは行政的な司法関係について、わが方の主張を労働関係については日本の法律に従うという、その従う方法をおきめ願うと一緒にその解釈がきまるまでは個々の問題についても、あるいは各地の問題についても合同委員会の労務部等で取り上げて御論議になるように思うが、重ねて、その点何ら具体策を示されておりませんので、そういう点について御所見を伺いたいと思います。
  234. 下田武三

    政府委員(下田武三君) つまり問題が二つあると存ずるのであります。たとえば不当な条件で解雇されてはかなわない。これはあくまで適正な条件で解雇するなら解雇するということですみやかに実現するというのが一つの問題でございます。それからもう一つ先ほど申し上げました伝統的の主張を引っ込ませるかどうかと、これは時間のかかる問題でございます。でございますので労働委員会なり、あるいはさらに裁判の問題になりました場合に向うが証拠とか証人を出さない、自己の弁明をしないというなら一方的にきめてしまうこともできる、こちらの考えによって。要するに向うは自己の弁明をする機会を放棄するので、日本側は日本側の法令によって一方的にきめる、日本側の条件で、こういうことになって、それでどんどんすみやかに解決していいと思う。もう一つは非常に理論的の国際法上の問題でございますので相当、これは中央の合同委員会で日本側の主張を尽して向うの反省を促すというのには多少の手間がかかる。で、実際問題と理論的の問題の二つの問題があると思います。
  235. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) 本日はこれにて散会いたします。    午後四時二十四分散会