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1956-03-09 第24回国会 参議院 予算委員会 第11号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十一年三月九日(金曜日)    午前十一時三十七分開会     —————————————    委員の異動 本日委員青木一男君及び矢嶋三義君辞 任につき、その補欠として佐藤清一郎 君及び相馬助治君を議長において指名 した。     —————————————  出席者は左の通り。    委員長     西郷吉之助君    理事           池田宇右衞門君            堀  末治君            三浦 義男君            安井  謙君            秋山 長造君            曾祢  益君            吉田 法晴君            豊田 雅孝君            中山 福藏君    委員            石坂 豊一君            井上 清一君            伊能 芳雄君            川村 松助君            木内 四郎君            佐藤清一郎君            佐野  廣君            高橋進太郎君            田中 啓一君            西岡 ハル君            野村吉三郎君            平林 太一君            藤野 繁雄君            宮澤 喜一君            岡田 宗司君            亀田 得治君            菊川 孝夫君            佐多 忠隆君            相馬 助治君            竹中 勝男君            戸叶  武君            羽生 三七君            小林 政夫君            田村 文吉君            廣瀬 久忠君            木村禧八郎君            千田  正君            八木 幸吉君   国務大臣    内閣総理大臣  鳩山 一郎君    法 務 大 臣 牧野 良三君    外 務 大 臣 重光  葵君    大 蔵 大 臣 一萬田尚登君    文 部 大 臣 清瀬 一郎君    運 輸 大 臣 吉野 信次君    国 務 大 臣 大麻 唯男君    国 務 大 臣 太田 正孝君    国 務 大 臣 船田  中君   政府委員    内閣官房長官  根本龍太郎君    内閣官房長官 松本 瀧藏君    法制局長官   林  修三君    法制局次長   高辻 正巳君    防衛庁長官官房    長       門叶 宗雄君    防衛庁防衛局長 林  一夫君    外務事務官    (公使)    木村四郎七君    外務省アジア局    長       中川  融君    外務省条約局長 下田 武三君    大蔵省主計局長 森永貞一郎君    運輸省船舶局長 山下 正雄君   事務局側    常任委員会専門    員       正木 千冬君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○昭和三十一年度一般会計予算内閣  提出衆議院送付) ○昭和三十一年度特別会計予算内閣  提出衆議院送付) ○昭和三十一年度政府関係機関予算  (内閣提出衆議院送付)     —————————————
  2. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) それでは委員会を開会いたします。  最初に御報告いたします。委員の差しかえにつきまして、矢嶋三義君が辞任されまして相馬助治君が委員になられました。  なお御報告申し上げまするが、昨日の質問のうちの憲法問題に関連しての問題につきまして、けさの委員長及び理事打合会におきまして、スケジュール以外に別ワクをとりまして、この問題について一時間十分質疑をとりかわすことになりましたから、さよう御了承をお願いいたします。
  3. 亀田得治

    亀田得治君 昨日の鳩山総理憲法自衛隊との関係に関するこの委員会における私の質問に対する答弁、これは総理においてもすでに速記録によってその内容を詳細にごらんになったと、私、考えますが、その結果によりまして、まず最初総理がどのように昨日の答弁をお考えになったか。私どもから見ますると、全くこれは支離滅裂、しかも政府の本当の意図というものがそこにときどき顔を出しておる、そういうふうにとっておりますが、まず総理の昨日の答弁に対する全般的な一つ感じ、考え方、これをお聞かせ願いたいと思います。
  4. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 私も今朝、昨日の速記録をみました。速記録によりまして、私の意思はほぼ明瞭になっておると思いますけれども、今日の新聞が書いておりますように、私は自衛隊法憲法違反だというようなことを申したつもりはないのであります。(「言っているじゃないか」と呼ぶ者あり)最後に、自衛隊法憲法違反だと、憲法の条文に反するものと思った時代もあります。そういうような演説をしたことがあるけれども、その後、自衛隊法というものができて、国会を通過いたしましてからは、自衛隊法違憲だと思わない、こう思っておるのでありまして、そういう考え方を今日持っております。
  5. 亀田得治

    亀田得治君 そういう答弁では納得いきません。あなたは自分速記録の都合のいいところだけをとっておる。(「そうだ」「その通り」と呼ぶ者あり)私、一度読み上げてみましょう。私の問いに対しまして、「私は憲法成文には、自衛隊を持つということは、憲法成文には合致しないと思います。」はっきりここで言い切っておる。ちょうどそのとき、私がちょっと発言しようとするのと同じように、うしろから根本官房長官が何か耳打ちをされたようですが、そこでちょっと総理の顔色が変りまして、「この疑いがある。」と、こう言われた。(「現在だよ、現在だ」と呼ぶ者あり)これはあくまでも文章からいって現在です。私の問いも、もちろんこれは現在のことを聞いておる。少くともこのことは一番はっきりしておることでしょう。そこで私は、これは非常に重大なことを総理大臣が言われる、こう思いましたので、確かめるために、私は、「憲法成文自衛隊が合致しない、疑いがある。」そうですかという意味で私が聞いたわけですね。そうしたら、さらに重ねて念を押されるように、あなたは、「疑いがある。」と、こうおっしゃっておる。そうでしょう。そういうことを言われた覚えがありませんか。ほかの意見は聞きません。私が今申し上げました速記録、それは、うその速記録だとおっしゃるのかどうか。まずこの点から明らかにしてほしい。
  6. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 私はただいま申しました通り考え方を持っておるのであります。
  7. 亀田得治

    亀田得治君 私の質問に対して答えてもらいたい。私は今速記録に基いて、正確にあなたに昨日のことを申し上げた。そういう事実がなかったというのかどうか。どちらでもよろしい。私の質問に対して答えてほしい。長官うしろからあまり言わんでおいて下さい。(笑声)
  8. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 最後に私が申したことが私の真意であります。
  9. 亀田得治

    亀田得治君 そういうことを聞いておるのではありません。私どもは、でき上った文章、あなたの言葉全体というものを総合して、これを判断していかなければならないわけなんです。あなたの主観的な真意がどこにあるかどうか、これはもう少し最後に私は確かめましょう。その道行きとして、こういう発言があったかどうか、これを私は念のため確かめておる。どうですその点、質問に答えて下さい。そんなことを言った覚えがないというなら、ないと言って下さい。
  10. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 私は、よけいなことを言ったかもしれませんが、(「始終じゃないか」と呼ぶ者あり)しかし、ただいま申した通りであります。自衛隊法違憲だということは、かつて言ったことがないのです、私は。(「昨日言ったじゃないか」と呼ぶ者あり)
  11. 亀田得治

    亀田得治君 ただいまの総理答弁は、昨日、私が今申し上げたそういう問答はなかった、こういう意味なんでしょうかどうか。
  12. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 私はどういうことを昨日言いましたか、全部のことは記憶はありませんけれども、とにかく最後に書いてあることが私の真意であります。
  13. 亀田得治

    亀田得治君 どうもはっきりしませんが、そこに速記録があると思います。速記録をもう一度見て下さい。それがはっきりしなければ、あと質問が続行できません。四枚目です。見て下さい。(「官房長官読んで聞かせろ」と呼ぶ者あり)
  14. 秋山長造

    秋山長造君 議事進行について……。ただいまの亀田得治君と鳩山総理質疑応答を聞いておりますと、鳩山総理は、亀田君の質問に対して、全然答えておられません。亀田君は昨日の鳩山総理の、「私は憲法成文には、自衛隊を持つということは憲法成文には合致しないと思います。この疑いがある。」そこで亀田君がもう一度念を押したところが、依然として、「疑いがある」ということをきっぱり言い切っておられる。その点について亀田君は繰り返し質問をしている。ところが総理大臣は、その質問点には全然答えないで、質問も何もしていない、まるで別なことを答弁しておられる。こういうずるいすりかえ答弁では、われわれは満足できない。どうか委員長から総理大臣に対して、亀田君の質問点をはずさないように、明確に答弁されるように注意をしていただきたいと思います。
  15. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) 今の秋山君の議事進行ですが、総理自体もお聞きになっておりますから、一つ亀田君の質疑応答でやっていただきたいと思います。
  16. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 私は自衛隊を持つということが憲法成文に反するというように思った時代があるということは、たびたび申した通りであります。その後、自衛隊法国会を通った後に、私は自分の説を変更いたしました、こう申しておるのであります。
  17. 吉田法晴

    吉田法晴君 議事進行……。ただいまの発言では、自衛隊憲法違反だと疑ったときもある、こういう御答弁でしたが、先ほどの御答弁では、いまだかつてそういうことを言ったことがない、こういう御答弁でございます。速記録を調べて、どれが本心なのか、今の質問を聞いておりましても、先ほどの答弁と今の答弁とは違う。きのうの質疑応答についても、疑いがあるというようなことは言ったことがないという答弁であります。まるきり、どれがほんとうなのやら、わけがわからない。
  18. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 私のたびたび申します通りに、憲法違反だと在野時代に言ったことがあるということは否定しないんです。(「今、したじゃないか」と呼ぶ者あり)言葉が足りないから誤解をしたのでありまして、そういうようなことを否定する意思は毛頭ないのです。たびたび申しました通りに、自衛隊法国会を通過した後に憲法解釈を変えたということは、衆議院の本会議においても明瞭に私は申しておるのであります。   〔戸叶武発言の許可を求む〕
  19. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) 戸叶君、あまり関連質問をなさらないで、質疑者がやっておりますから、質疑者にやらしたらどうですか。   〔戸叶武君、「重要な点ですから」と述ぶ〕
  20. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) それじゃ一点だけ。
  21. 戸叶武

    戸叶武君 これは憲法の問題で、きわめて重要です。憲法は国家の基本法です。一国の総理大臣が、この憲法改正が行われていないのにもかかわらず、前には自衛隊の問題を憲法違反だという自分解釈を持っており、自衛隊法国会を通過したならば、今度は憲法に対する考え方を変えた。憲法改正をやらずして憲法に対する解釈を、一国の総理大臣が、前にはそれが憲法違反だと言い、あとにおいては、それは憲法違反でないというような解釈をすることが自由であるならば、憲法解釈というものは、くずれると思うんです。それに対する総理大臣答弁をお願いします。
  22. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 私は総理大臣になりました後において、自衛隊をつかまえて憲法違反だと言ったことはございません。
  23. 亀田得治

    亀田得治君 私の質問にすなおに答えてほしいのです。昨日、「私は憲法成文には、自衛隊を持つということは、憲法成文には合致しないと思います。この疑いがある。」はっきりこうおっしゃったでしょう。これは現在の意味にしかとれないでしょう。これを問うておるのです。私どもはこれを問題にしているわけでしょう。これを問題にしておるから、予算委員長も特に一時間十分という時間を与えてくれておる。そうでしょう。これが何もないのであれば、こんなことは要らないわけです。こういう質疑も要らないわけですよ。これは一体過去の意味にとれますか、だれが考えたって。はっきり言って下さい。どの新聞だって、これをだれが一体過去の意味にとりますか。過去のあなたの考えと今の考えが変えられておるということは、こんなことはたびたびの説明でよくわかっておりますよ。そんなことを聞いているのじゃないのです。はっきり言って下さい。
  24. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) たびたび申しますけれども、実際私の気持は、今日ここで申した通りであります。過去にそういうことを考えたことがあるけれども在野時代に言ったことはあるけれども総理大臣になってから自衛隊憲法違反だと言ったことはないのであります。(「きのう言ったよ」と呼ぶ者あり)
  25. 亀田得治

    亀田得治君 それでは、先ほど私が読みましたこの速記録言葉、これを現在の意味にとるのは間違いであると、こういう意味ですか。そういう意味にとれますか。そこをはっきりして下さい。
  26. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 私の気持は今まで申した通りでありまして、それに違ったように御解釈になるのは、私の言葉の足りないためと思います。
  27. 亀田得治

    亀田得治君 どこの言葉が足りないのです。これは日本語としては完全なものでしょう。(「完全なものだ、簡単明瞭だよ」と呼ぶ者あり)
  28. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) たびたび申します通りに、私は、元在野時代に、軍隊を持つということは憲法に違反するものと思ったことがあるものですから、それを主張したことはあるのです。これは否定しないのです。(亀田得治君「それはわかっていますよ、そういうことは」と述ぶ)その後、私は、自分考えを変えましたということを申しているのであります。
  29. 亀田得治

    亀田得治君 それでは、こういうふうに聞きましょう。私が今問題にしておる速記録の個所、これが世間に発表されております。国民がこれを読めば、総理大臣自衛隊憲法に違反するかどうかについて疑いを持っておる、こういうふうにとるということだけは間違いないでしょう。あなたの考えは別として、外部の受ける印象はどうです。官房長官、あまり要らぬことを言うなよ。だめだ。あなたのほんとう気持を言って下さい。
  30. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) ただいままで私が申したことによって御理解を願います。
  31. 亀田得治

    亀田得治君 ともかく総理大臣は、きょうは一つことしか言わないと、こういう立場で出ているようですが、そんなことじゃ質疑にならぬじゃないですか。私は一歩譲って今聞いているのですよ。あなたがどうしても答えられぬから、私は一歩譲って、それじゃ新聞がああいうふうに総理大臣答弁を書けば、国民総理大臣考え方に対して疑惑を持つでしょうということを言っている。持たぬと言えますか。そのことを聞いている。そんなことがわからぬのですか。
  32. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 今日はそういう誤解の起きないように釈明をしておるわけであります。
  33. 亀田得治

    亀田得治君 今日のことを聞いておるのではありません。昨日ああいうふうに明確に言われた。それを国民が聞いておるわけですね。聞いた瞬間には国民疑惑を持ったでしょうということを言っておる。
  34. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 国民疑惑を持つことがあるかもしれませんから、今日説明をしておるのであります。
  35. 亀田得治

    亀田得治君 国民疑惑を持つかもしれません、そこまではお考えになりますね。それではさらに聞きますが、私は、一国の政治家が国の重要な問題について国民にそういう疑惑を起さすようなことをした場合、そういう問題を投げかけた人のとるべき態度ですね、これはどういうふうにお考えでしょう。
  36. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 国民誤解をしておれば、それを解くことに努力いたします。
  37. 亀田得治

    亀田得治君 疑惑があれば解くことに努力する、(「人ごとじゃない」と呼ぶ者あり)それで終りですか。それで政治家としての責任終りですか。何かちょっとした、数字が間違ったとか、技術的な問題について勘違いしたとか、そういうものじゃありません。国の基本法についての問題ですね。疑惑を解くことに努力します、そうではない。あなたの責任はどうなるんですかということを聞いておる。言葉に対して責任を持ちませんか。
  38. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 言葉に対しては責任を持ちますが、誤解を解きたいと思ったために今日の釈明をしたのです。
  39. 亀田得治

    亀田得治君 言葉に対して責任を持たれるのであれば、誤解を解くということはこれは当然なんです。そんなことは跡始末の問題。政治家自身責任というものはそれで済まぬでしょう。昨日も、例の日ソ交渉が決裂した場合、その場合にあなたは責任をとると、こう言われた、それについて中山委員から重ねて質問をされますと、その辺があいまいになりましたが、私はこれは大事なところだと思うのですね。民主政治における政治家の言論は自由であると同時にまた大事です。これは旧憲法時代においてだって、総理大臣が、まあ、その当時であれば、たとえば天皇制の問題とか、そういうことに関連する問題について何かちょっと誤まったことを言ってごらんなさい。責任をとったでしょう。これは私は、そういう形の責任のとり方はおかしいと思うが、言葉そのものに対して政治家責任を重んずるということは、これは重大なことじゃないですか。国民疑惑を持つかもしれぬというふうにあなたがお考えになった以上は、この新聞に発表されておる問題についてどういうふうに具体的にあなた責任をとろうとされますか、もう少しそれをはっきりしてほしい。
  40. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 自分発言に対して責任をとるということは当然なことと考えております。
  41. 亀田得治

    亀田得治君 だから、そこで具体的に、あなたは今責任をとるということは当然なことと、こう言っておる。国民に対して大きな動揺を与えておる。具体的にどういうふうに責任をとるのが政治家として正しいのか、その信念を聞いておるのですよ。昨日は、外交問題については、まあ対外的な関係もあるからというような意味で、お答えしない方がいいでしょうというようなことのようでありましたが、これは国内の問題ですから、はっきりして下さい。
  42. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 国民に対して私の意思の間違わないように伝えることに努力をすることも、責任をとる一つだと思います。
  43. 亀田得治

    亀田得治君 具体的にはどういう形になってこれは現われるのです。
  44. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) ただいま私の意見を率直に申し述べていることも、国民に対しての責任を尽す一端だと考えております。
  45. 亀田得治

    亀田得治君 それは一端でしょう、単なる。しかしそういうことは責任をとる中に入りませんよ。誤解をしておるからそれを解くと、これはあなた自身にとって必要な事柄なんです。そんなことは何も責任じゃないじゃないですか。たとえば個人が人に対して損害を与えたと、損害の賠償をすると、これは当然のことでしょう。そのほかに、単に損害だけじゃなしに、公けの問題になってくれば別な問題が残るわけでしょう、それを聞いておる。総理大臣は、憲法の規定によれば、国会に対して責任を負う、こうなっておる。どういうふうに……。もっとはっきりおっしゃってほしい。
  46. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 私が繰り返して申しますことは、やはり自分責任だと思って繰り返して言っておるわけです。
  47. 亀田得治

    亀田得治君 これは全く無責任答弁です。国民がそういうことでは承知しませんよ。これが一回ではないでしょう。一月末の佐多議員に対する失言、先だって戸叶議員質問に対する失言、これで三回目じゃないですか、わずか二月足らずの間に。私ども一回だけでこういう強いことを言っているのではありません。三回もこういう問題が重なって、ただ誤解を解くというようなことだけであなたの責任が全うできますかね。まあもう少しこれはほかの問題を聞いてからさらに追及します。  それから次に、在野時代における自衛隊違憲論を、政権についてから合憲論に変えた、その根拠といたしまして、自衛隊法国会を通った、こういうことを言っておられます。これはたびたび、ほかの委員会でもおっしゃったし、昨日もおっしゃっておる。私はこういう考えは、はなはだ憲法を尊重しない考え方、こういうふうに思うのですが、どうでしょう。
  48. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 私はそうは考えません。
  49. 亀田得治

    亀田得治君 その理由はどういうことですか。
  50. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 国民代表者の集まっておる国会におきまして、わが国は自衛権を持って、正当防衛に足る兵力を持ってもいいということを多数でもってきめた以上は、その解釈に従うのが立憲的であると考えております。
  51. 亀田得治

    亀田得治君 あなたは在野時代には自衛隊違憲説、これは、はっきりしております。さっきからも繰り返して言っておる。それは憲法に違反すると、こう言っておる。で、その考え方を変えるには、これは憲法が変ってこなければだめでしょう。その点どうです。
  52. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) これは憲法解釈の問題です。
  53. 亀田得治

    亀田得治君 あなたはもう明確に自衛隊違憲説を言っておるのですよ。そうして吉田総理のそういう態度について攻撃をしている。もしそういう立場の人であれば、憲法改正するには、私から言うまでもなく、国会議員の三分の二、国民投票、これがあって初めて憲法の構造が変ってくるわけでしょう。ところが、そういう複雑な手続を踏まない一つ法律、これは過半数でいいわけでしょう。それによって肝心の大もとの方の見方を変えていく。それじゃこういう法律が三つ、四つ、五つ、六つと、こうたくさん揃ってきたら、この憲法は、形だけは残っているけれども、実際上は内容が変ってしまうじゃないでしょうか、そういうあなたのような考えをとれば。そういう意味で私は、その考え方憲法を破壊する考え方である、憲法を少くとも尊重しない、破壊とまではいかぬけれども、少くとも尊重しない、そういう考え方だと言っておる。これも普通の一介の、ただあまり政治関係のない人が、もとはこう言っておったけれども、二、三年してこう変ったとか、こういうことなら別ですが、いやしくも一党の総裁になろうかというような人が、そういう、重大な変更をするということは、単なる法律の、一つ法律成立なんかでは決定できませんよ、すなおに考えて。法律によって憲法を変えるという結果になるじゃないですか。
  54. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 法律をもって憲法改正することはできません。憲法解釈は、国民の多数によって憲法解釈して私は一向差しつかえないと思います。
  55. 亀田得治

    亀田得治君 憲法解釈というものは、国民の多数によって変えられるものではありませんよ。あなたはそういう考えですか。それをはっきりして下さい。
  56. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 憲法改正について憲法に制限がしてあること、これは私も存じております。ただ、その憲法成文をいかに解釈してくるか、憲法九条が自衛権までも否定しておるかどうか、その解釈の問題は国民がして一向差しつかえないと思うのであります。
  57. 亀田得治

    亀田得治君 憲法解釈は、憲法成立のときに明確になっておる。これはその当時、憲法制定議会において吉田総理が、たとえば憲法第九条等については、これはもう明確に解釈を出しておるわけなんです。憲法を作った人たちはそういう考えであったことは間違いがないわけです。この点はどうでしょう。憲法制定当時、第九条については、吉田総理はこういうことを言っておる——自衛権の発動としての戦争も、また交戦権も放棄したのであります。従来、近年の戦争は多く自衛権の名において戦われたのであります。満州事変しかり、大東亜戦争またしかりてあります。——こう言って、はっきり憲法制定当時の考え方というものは、ここで明確になっておる。この事実はどうでしょう、その当時のこと。
  58. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 吉田君がそういうように憲法解釈したのは、それはそうだろうと思います。けれども、その解釈の仕方に対して反対解釈が許されないということはないと思います。
  59. 亀田得治

    亀田得治君 法律は原則として、立法者の意思というものが非常に尊重されなければなりません。しかし立法当時において、非常に賛成反対相半ばした、疑義を残しながら決定されたということなら、あるいは問題があるかもしれません。しかし、この吉田総理考え方につきましては、その当時は、若干問題はありましても、そんな問題になるほど、大きな疑義というものはなかったんですよ。あなたが憲法改正ということを言う以上は、その出発点のことぐらいはお調べになっておると思うのですが、どうでしょう。
  60. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 私は国家の自衛権、国家の正当防衛権というものに必要がある場合に、その必要を満たすように憲法解釈するということは、当然のわれわれの義務であると考えます。
  61. 亀田得治

    亀田得治君 また私の質問をすりかえてしまう。憲法制定当時にはどうだったかということを聞いておる。あとのことはそれを基礎にしてさらに私、聞きますよ。憲法制定当時、吉田総理がはっきり議会で言っておる。この考え方というものは、一般に国民から受け入れられていなかったかどうか、それを聞いておるのです。どうでしょう。
  62. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 吉田君も憲法を作るときにそういうことは申したとは思いますが、吉田自身も、日本の国がつぶれてもかまわない、自衛権を放棄して(「そんなことを聞いていない」と呼ぶ者あり)この条文を作ったとは思いません。
  63. 亀田得治

    亀田得治君 全く総理答弁は私の質問をはずすことばかりされますから、非常に困るのですよ。そういうことは、(笑声)そういうことになると、すでに二十分経過したという通知があったのですが、それは私、理事の方で考えてもらいたいと思う。(「委員長注意」と呼ぶ者あり)議事の進行上どうも困るのです、こういうことでは。
  64. 秋山長造

    秋山長造君 議事進行について。先ほどもお願いしたのですが、依然として亀田君の質問点に対して的のはずれた答弁ばかり繰り返しておる。これは私は善意とは考えられない。こんなことを繰り返しておったのでは、せっかく一時間という貴重なる時間をいただいても何も意味がない。この議事は一歩も前進しません。委員長はどうか聞かれた通りの状態でございますから、質問者の質問点に対して明確にお答えになるように、総理大臣に厳に御注意をお願いしたい。重ねてお願いいたします。
  65. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) 秋山君のお話ですが、総理大臣もお聞き及びの通りでありますからして、質疑応答で慎重に一つ、さらに質疑応答をされたいと思います。
  66. 吉田法晴

    吉田法晴君 議事進行について。それは質疑をやっているけれども質問にまともに答弁されぬから時間が経過するのです。委員長から総理に警告されたいということを申し上げておる。委員長はあのやり取りでどう考えておられるか、わかりませんけれども、もしもそう考えられるならば注意をしてもらいたい。
  67. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) おっしゃることもよくわかっておりますが、実際に質疑応答で慎重にやっていただく以外ないと思いますので、私が申し上げておりますので、なお法律の専門的なことには法制局長官もおりますから一つ、(「よくわかっておる」「委員長より注意を与えてもらいたい」「注意をして下さい」と呼ぶ者あり)質疑応答意見の相違はいろいろありましょうから、やはり質問者で、政府に対する質疑一つ慎重にお願いしたいと思います。(「了承」と呼ぶ者あり、吉田法晴君「これは委員長の職をむなしうするものだ」と述ぶ)亀田一つお願いいたします。
  68. 亀田得治

    亀田得治君 総理大臣一つ、もう少しそこは、きょう出てくるときは一応ワクを作ってきたろうと思うのですが、もう少しそれはワクを解いてざっくばらんに答えてもらわないと困る。(「あまり言うと失言する」「法制局長官答弁しろ」と呼ぶ者あり)私はまあ、今お聞きしました制憲当時における憲法第九条の吉田総理の言明、それがほとんどすベての人から支持されていた。これはもう総理は逃げられますが、明確だと思うのです。そこで、これはまあ各国のどこの憲法の歴史を見てもわかるのですが、憲法解釈というものについて、若干の変遷、柔軟性というものは認められておることは、私はそこまで否定はしない。しかし、そこにはおのずから限度があるわけです。制憲当時において吉田総理が言っているような考え方で出発したものが、またあなたはそれを基礎にして、在野時代には自衛隊違憲説というものを唱えていた、そういうものが解釈によって合憲になっていく、こういう大きな憲法解釈の幅というものは持たすことはできません、私は。だから、そこであなたに聞きたいのは、憲法解釈に幅がある、その幅というものは、あなたはどのように考えておられるか、一般的に、標準的に言って下さい。
  69. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 憲法解釈の幅と言われてもちょっと答えにくいのですけれども、とにかくこの憲法を作りますときにも、吉田君も、日本の自衛権を守るということについては、もう異存はなかったものと思うのであります。
  70. 亀田得治

    亀田得治君 憲法解釈をあなたがお変えになったのが正当かどうかということを判断する基準は、憲法解釈の幅はこの程度なんだ、あるいはもっと広いのだ、あるいはもっと狭いのだ、そこの根本的な考え方がはっきりしておらなければ、御都合主義になってしまうでしょう。それで私は、あなたの憲法解釈に対する幅——幅の基本的な考え方というものを聞いておる。吉田さん当時のことはもうたな上げだ。どうです。
  71. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 憲法解釈の仕方については法制局長官から答えてもらいます。(「総理大臣答弁」と呼ぶ者あり)
  72. 亀田得治

    亀田得治君 法制局長官なんていうものは、この問題については出てくる問題じゃない。これは総理大臣自身がちゃんと一つの信念を持っておって、そのワク内において法制局長官というものはこまかいことの説明をしたらいい。もとがはっきりしておらないのに、のこのこそんなもの出て来んでもいいですよ。あなたの率直な一つの基準というものを示して下さい。それは総理責任ですよ。
  73. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 憲法解釈の幅はどのくらいかとおっしゃいますから、そういうようなことに対しての答弁法制局長官が適任だと思うのです。
  74. 亀田得治

    亀田得治君 これは法制局長官の問題じゃないというのだ。あなたの確信を聞いておる。確信がないのですか、その点についての。ないはずがないでしょう。重要な問題ですから。
  75. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) 亀田君、総理の希望で法制局長官と言われる場合には、お聞き取り願いたいと思います。
  76. 亀田得治

    亀田得治君 私は、法律上のこまかいことを聞いておるのじゃありませんよ。憲法解釈を変えてきた、こうおっしゃるから、その幅についての基本的な考え方がおありになるはずなんだ。ないというのならばよろしい。あるかないかから、まず聞きましょう。そういう点についての考え方をあなたが持っているのか、持っていないのか。
  77. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) 亀田君、質問が専門的な場合はですね……。
  78. 亀田得治

    亀田得治君 専門的じゃない、これは。(「基本的な問題だ」と呼ぶ者あり)
  79. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) 法制局長官からもお聞きになった方がはっきりするのじゃないでしょうか。
  80. 吉田法晴

    吉田法晴君 議事進行委員長は先ほど来その総理官房長官のあれを聞いて、あたかも与党の委員長のような態度をとられますが、与党の委員長じゃございませんよ。
  81. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) それはよく承知しております。
  82. 吉田法晴

    吉田法晴君 参議院の予算委員会委員長なら、一つ公正な運営を願いたい。
  83. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) いや、よくわかっております。
  84. 吉田法晴

    吉田法晴君 発言者を押えないで、公正なお取り計らいを願いたいと思います。
  85. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) よくわかっております。ただできるだけ円満に、順調にやりたいと思って努力しております。(「総理答弁」と呼ぶ者あり)
  86. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 法律解釈の幅というものですから、それは法制局長官の方が、あなた方に明瞭な答弁ができると考えます。(「憲法ですよ」と呼ぶ者あり)憲法解釈の幅ですね。私は憲法解釈の幅ということは、やはり自衛権ということは常に優先に考えなくちゃならないと思います。
  87. 亀田得治

    亀田得治君 私が聞きましたのは、一般的な幅を聞いておる。憲法一般的について。
  88. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) そういうような幅については法制局長官から聞いてもらいます。
  89. 亀田得治

    亀田得治君 わからんのですか、長官出て来んでもいいですよ。わからんものならばわからんでもよろしいが、私の質問に答えてほしいというのだ。
  90. 西郷吉之助

    委員員(西郷吉之助君) 亀田君、一つお聞き下さい。
  91. 亀田得治

    亀田得治君 そういうじゃま者が、ほかから入ってきたら、こっちは妨害されますよ。
  92. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) 亀田君に申し上げますが……。
  93. 亀田得治

    亀田得治君 総理大臣がわからんというのならば、それでよろしいのだ、どっちかはっきりして下さい。わからんことはないですよ。
  94. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) 亀田君に御注意申し上げますが……。
  95. 亀田得治

    亀田得治君 総理大臣がわからんと言うなら、それでもよろしいのであるけれども、どっちかはっきりして下さい。わからんことはないですよ。何を言っておるか。
  96. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) 亀田君に御注意申し上げますが、法制局長官の方にも答弁をさせろということですから、一応お聞きになったらどうでしょうか。
  97. 亀田得治

    亀田得治君 必要ないですよ。総理の見解が大事な問題です。
  98. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) どうですか、一度お聞き取りになったら。
  99. 亀田得治

    亀田得治君 いや、だから総理大臣がわからんというなら、わからんとはっきり言って下さい。
  100. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) 答弁総理自身のお考えですから、こちらから何とも言えませんが、どうですか、吉田さん、一応お聞きになったらどうですか。
  101. 吉田法晴

    吉田法晴君 今、委員長総理大臣と言われると、鳩山総理発言しておられる。先ほど、とにかくあなたは法制局長官……官房長官意見を取り上げられて、総理でなくて林法制局長官と言われるけれども鳩山総理は現に自分発言をしておられる。だから亀田君と総理との質疑応答を進められたらよろしい。しいて法制局長官を立てられようとしなくても議事は進行しますよ。
  102. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) それはよくわかっていますが、総理考えで法制局の長官からも専門的に説明させていただきたいと言いますから……。質問を続行して下さい。
  103. 亀田得治

    亀田得治君 私は総理が、結局そういう質問についてはわからんと、こういうふうにおっしゃるのなら、それでもよろしいのです。そうすれば、その立場に立って、またあと二、三の質疑をしたいと思っておる。法制局長官はいつでも聞けますよ。どうなんですか。
  104. 池田宇右衞門

    池田宇右衞門君 議事進行。今進行中、総理は、この問題については法制局長官から答弁させますと、亀田委員は要らない要らないと言いますが、一応聞いて、亀田委員の言うのとそれが違うなら、総理に重ねて、それは自分たちの解釈と違うというのが今までの議事の進行方法だろうと思います。それを質問者は、お前はいけないとこう言えば、やはり進行しないと思いますから、そこは委員長が公平なるさばきをしていただいて、そうして委員長の公平ぶりをやって、質問者も答弁者もよく慎重に審議を運ばれんことをお願いいたします。(「何を言っているかわからんぞ」と呼ぶ者あり)
  105. 亀田得治

    亀田得治君 総理答弁して下さい。こっちは時間がないのですからね。(「総理答弁」「総理答弁しようとしたら池田さんのちゃちゃが入ったのだから、総理大臣があらためて答弁して下さい」「ちゃちゃじゃないよ」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し)
  106. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) とにかく憲法解釈の幅といいますのは、憲法を制定した当時の事情だとか、憲法の条項だとか、その他全体の精神だとか、その当時の事情とか、いろいろなことから解釈するのが、憲法解釈の幅というのでしょうが……(「その通り」と呼ぶ者あり)私にはそれがよくわからない。ですから法制局長官から聞いていただきたい。こういうのです。お聞きになったらどうですか。
  107. 亀田得治

    亀田得治君 それでいいじゃないか。そういうふうに答弁してもらったらいい。憲法成立の当時のいろいろな事情やそういうことをよく考えて、そうして解釈すべきものだ、こう言われるのでしょう。それを初めからそうおっしゃったらいい。
  108. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) それが一般的の解釈は……、法律解釈というのはそうだと、こう申すのです。
  109. 亀田得治

    亀田得治君 憲法について聞いておるのだ。そこでだ、そういう憲法成立の当時の事情ということなら、これはその当時における最高責任者である吉田総理……(「個人じゃないぞ」と呼ぶ者あり)この人の公けの発言というものは一番重きをなすのじゃないか、それ以外に何らかの要素がありますか。一番重要な要素というのは一体総理は何とお考えになりますか、要素がたくさんあるでしょうが。
  110. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 先刻申した通りに、憲法の条項やその精神や制定の事情、当時の事情等をしんしゃくして解釈すべきものだと思う。これは常識だと思います。
  111. 亀田得治

    亀田得治君 それでは私から具体的に聞きますが、吉田総理憲法制定議会における発言、見解というもの、これはさほど重要なもんじゃないと、こういう御見解ですか。
  112. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 憲法解釈するのには一つの参考にすべきものと思います。
  113. 亀田得治

    亀田得治君 一つの参考と言われますが、私どもは最も重要なものだと考えておる。その重さのかげんはどうなんですか。全体を十としたら、その幾つぐらいに考えるか。大事なことですよ、これはごまかしはきかんよ。
  114. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) それについてはちょっと御返事がしにくうございます。
  115. 亀田得治

    亀田得治君 一国の総理大臣のこの正式の憲法制定議会における発言、それを了承して、ほとんど大部分の者が多数決できめておる。この制憲議会における発言ですね、その重みがわからないというようなことでは、おかしいではないですか。私は一番重要なものだと思いますよ。総理はどうですか、一番重要とは考えませんか。ほかの要素はあってもいいですよ。少くともこれは一番重要なる要素だと考えるが、どうですか。
  116. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 必ずしもそういうわけにも参りますまい。
  117. 亀田得治

    亀田得治君 その理由はどういうことです。
  118. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 法の解釈についてはいろいろな事情がございますから、いろいろな要素を総合して解釈をするのが適当だと思いますので、どれが一番大事かということを私に申せということを言われることは少々無理ですよ。(「その通り」と呼ぶ者あり)
  119. 亀田得治

    亀田得治君 憲法制定当時の諸般の事情、そういうことによって解釈すべきだ、こうおっしゃる。一応それは認めましょう。それならば、なぜあなたは在野時代において違憲説をとったのです。
  120. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 私は自衛隊ができる前に、憲法をそういうふうに解釈すべきものと、いろいろな事情を考えて申しておったのであります。(「何の事情だ」「どういう理由だ」と呼ぶ者あり)
  121. 亀田得治

    亀田得治君 あなたが在野時代には、結局憲法制定出時の心情だけしか頭に入っておらないでしょうが、それに基いて自衛隊違憲ということを考えたのでしょう、どうです……。それでは私の問いをもう少し明確にしましよう。現在でも、今お聞きしても、憲法解釈については、成立当初の諸般の事情……、諸般の事情の中で、吉田総理発言はどの程度に考えるかということは、これは意見の食い違いがありますが、とにかく諸般の事情と、こう言っておるのでしょう。それならば、在野時代と現在と変るはずがないじゃないですか。憲法制定当時の諸般の事情というものは、十年たったって二十年たったって一緒でしょう。これはどうなんです。
  122. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 私は憲法改正当時の諸般の事情は、憲法解釈する上において大きな要素になるということについては、あなたと全く同感であります。けれども憲法解釈というものは、それのみでやるわけではない。いろいろな心情でもって憲法解釈していかなくてはならない。
  123. 亀田得治

    亀田得治君 これはまた他の方からも追及してもらいますが、……だから、私は憲法解釈の基準というものを聞いておる。その当時のいろいろな事情というから、それは五年たっても六年もたっても一緒じゃないですか。従って五年目に一つ解釈を持てば、六年目になって変るわけがない。もし六年目に変るということなら、あとの事情が何かつけ加わったことを意味するでしょう。どうなんです、そこは……。もしそういうあとの事情もつけ加えるならば、最初に言われたことはおかしいじゃないですか。憲法解釈というものは、一体そういうぐらぐらした不見識なことでやられちゃ国民が迷惑します。  最後に、少し聞きますが、総理の健康状態ですね、これは私どもそういうことを申し上げるのは、はなはだ言いづらいことなんですが、先ほど申し上げたように、三回もこういうことで問題を起しておるわけです。先だって衆議院で直接そういうことに関連する決議案まで提出される、こういうことだった。参議院の本会議で、先だって田畑さんの質問でしたか、それに対してお答えになったときには、最近自分の健康は減退しておるとは思いませんという言い方でしたが、何か大丈夫だ、こういうお答えでない、はなはだこう自信のないお答えのように私は記憶しております。いろいろなことを考えますと、どうも私は、この重大な日本の政局を担当していく、国会並びに国民の負託にこたえていく、そういう立場から考えると、ほんとうにこれは健康上無理なんじゃないか、そういうふうに、これはほんとうに感ずるのですが、その点は総理自身どういうふうにお考えになっておるでしょうか。
  124. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 私は、自分の健康は、ただいまの政務を担当する健康を持っておるものと思っております。
  125. 亀田得治

    亀田得治君 これほど国民の重大な関心を集めておる問題ですから、単にそれだけを言われただけでは、あれは与党、野党の関係だから言っているだけだろう、それくらいにしか私は国民は受け取らぬと思う。先だって衆議院の議院運営委員会において、その点が質問をされて、そうして官房長官から大丈夫だというような保証をされたやに私ども聞いておるのですが、これはどういう保証を一体官房長官がされたのでしょうか。これは一つ官房長官からお答え願いたい。
  126. 根本龍太郎

    政府委員根本龍太郎君) お答え申し上げます。先般衆議院の議運におきまして、総理の健康状況をお聞きになりました。これに対しまして、私は、第一次、第二次鳩山内閣当時に比べまして、総理の健康が著しく減退したとは思っておりません、こう申し上げた。それからなお、政務を担当するのに耐え得るかというような意味の御質問でございましたが、第一次、第二次鳩山内閣当時のような状況で参っておりますれば、差しつかえないものとわれわれは考えております。その根拠は、ということが出ました。これにつきましては、私は医者でありませんから、医学的な判断はできませんが、総理におつきになっておるところのお医者さんの方においても、もうどうもこれは健康上政務につくことはいけないというようなことは言っておりませんし、大半にしておりますれば、現状のままにおいて差しつかえない、こういうふうに聞いておりまするので、それを私は信頼しておる。それからもう一つは、現在内閣におきまして政務をとっておるのでございまするが、これは生身のからだでございまするから、かぜをひいたり、あるいは、おなかをこわしたりすることもございましょう。私程度の健康でないことは、御不自由なからだでありまするから、それほど健康ではない。しかし、第一次、第二次鳩山内閣当時からやっておりました程度の状況で仕事をする場合においては、私が見て差しつかえないと認めております。こう申したのであります。
  127. 亀田得治

    亀田得治君 それで衆議院の方は終ったようですが、ただいまの御説明の中でも、著しく減退したとは思わない、こうおっしゃった。はなはだ含みがある言葉ですが、ある程度減退した、こういうふうにとっていいでしょうか。
  128. 根本龍太郎

    政府委員根本龍太郎君) 先ほども申しましたように、人間の健康は一定ではございません。従いまして、あるいは、おなかをこわしたり、あるいは、かぜをひいたりしたときには、それは減退しております。(「今はどうだ」と呼ぶ者あり)現在の状況はこれはみなさん見られる通りであります。私は医者でありませんから。この点については私は減退しているとは思っておりません。(「少々はどうだ」と呼ぶ者あり)少々というのは、あなた方の見られるところでありまして、私の見るところではそうは思いません。
  129. 亀田得治

    亀田得治君 そうすると、先ほど著しく減退しているとは思わないといった意味は、ある程度減退しているという意味は含まっておらぬ、そういう言葉使いですか。……驚くべきものだ。
  130. 根本龍太郎

    政府委員根本龍太郎君) これは質問者が、著しく減退しておって政務に耐えない——こういって問われた。そうは思わないという意味でございます。
  131. 亀田得治

    亀田得治君 総理大臣気持はどうなんです。
  132. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 先刻言った通りであります。
  133. 亀田得治

    亀田得治君 私は、これほど健康ということが問題になり、重要な人の健康が問題になった場合、たとえばこの頃よくアメリカの大統領のことが書かれております。これはその大統領を支持する、支持しないにかかわらず、これは非常に関心のあることですね。大統領の方では、それをちゃんと医学的にわかるように外部に発表しているわけです。そういう手続をどうしてとられないのか。あなたは先ほど自分はそういう問題はしろうとだとおっしゃったが、だから、しろうとのあなたから聞いても、そんなことは少しも安心できないわけです。これほど問題になっているのに、専門の医者のそういう発表ということを、どうして官房長官ついておってお考えにならないのか。あるいは、きのうもこういうことがあったから、こんどは一つやってみようというふうにお考えになっているかどうか、どうでしょう。健康を発表して下さい、専門的に。
  134. 根本龍太郎

    政府委員根本龍太郎君) 野党の諸君も非常に御健康に関心をもたれて、大事にされるということは、まことにけっこうなことです。私に対して衆議院の議運で私の見解を聞かれたから、私の見解を申し述べただけです。なおそのときに、私の見解がそういうふうになった根拠について聞かれたから、それは医者の方にも、私、聞きましたところ、現状において健康上非常に危険であるから総理の職務に耐えないというようなことは言っておりませんから、それを信じている、こう申し上げただけです。
  135. 亀田得治

    亀田得治君 これは一つ総理並びに官房長官にこの点要望しておきますが、もう近い将来において——近いといっても一月二月先じゃない。あすあさってにでも、たえず総理についておられる医師の方の、結論だけじゃなしに、こういうからだに故障があるのだが、この故障というのはこの程度のものだ——内訳ですね。(笑声)それを明確にして発表願いたい。私はそれが義務だと思う。一回や二回でそんなことを言うのは失礼かもしれませんが、これは与党の中でも、ここへ出てくるとヤジる人もいるけれども、内輪の話になると、困ったものだ、こう言っている人がたくさんいるのです。私はやはりそういう情勢ですから、ほんとうにそういう点を専門的に明確にしてほしいと思う。  それから、官房長官は昨日の速記録をお読みになりましたか。
  136. 根本龍太郎

    政府委員根本龍太郎君) 昨日の質疑に関する速記は読みました。先ほど読みました。
  137. 亀田得治

    亀田得治君 このプリントの一番最後までごらんになりましたか。
  138. 根本龍太郎

    政府委員根本龍太郎君) 一応目を通した程度でございまして、実は本日閣議の方のお世話をしておりまして、引き続いてまた関係閣僚との協議がございましたために、念を入れては見ておりません。一応目を通した程度には見ております。
  139. 亀田得治

    亀田得治君 まあ一応目を通していただければ、大体お気づきになったと思うのです。このプリントの最後のところですね。私一ぺん読んでみますが、「私は自衛隊憲法違反だと、憲法の条文に違っていると思った時代はあります。そういう演説をいたしましたけれども、その後、自衛隊法というものができて国会を通過いたしまして、国会を通過した自衛隊法によって曲げられたり、自衛隊違憲だとは思わない。そういうように憲法を皆さんが解釈するようになった。こう思っているだけです」、これはどういう意味ですか、官房長官、理解できましたか。
  140. 根本龍太郎

    政府委員根本龍太郎君) 最後の方の、その「曲げられたり」というところはちょっと理解できないのですが、(「ちょっとも何もないでしょう。わけがわからない」と呼ぶ者あり)総理が、この文章の中からくみ取れることは、在野当時において自衛隊違憲であると思ったことがあるということを申し述べられまして、それからまた質疑の段階におきましては、そういう持っておった自分の説も変えた、その変えたのは、自衛隊が設置されまして、そうしてこれが通過した時から自分がその説を変えたということを申し上げておるのが主体であると、そのように私は理解した次第であります。
  141. 亀田得治

    亀田得治君 あなたはそういう前提概念を持っているから、そういうふうに読むわけですが、全然知らない人が見て、この文章意味を理解できると、官房長官考えですか。
  142. 根本龍太郎

    政府委員根本龍太郎君) 総理自衛隊に関する御解釈は、すでに一年前から国会におきましても十分に皆さんの御質問に答えているわけでありまして、今、唐突にそういう説をなしているのでありませんから、この文章を見られましても、一般の人々は理解されるであろうと私は解釈します。
  143. 亀田得治

    亀田得治君 それは官房長官、妙なことを言いますね。ともかく頭としっぽが合っていなかったり、「曲げられたり」とかね、私は一国の総理大臣がこうちょっと体裁をなさないような御答弁をされる。これは私は、総理大臣自身は頭は非常にいい方ですからね、その方がこういうことをおっしゃるということは、これは私はこれから見たって、よほどこの健康、お疲れがひどくなっていると、こういうふうに私どもはこれを見てびっくりしておるくらいなんです。あなたはそういうふうにこれをお感じにならんですかね。
  144. 根本龍太郎

    政府委員根本龍太郎君) 昨日は私もずっとついておりましたが、「曲げられたり」とかいうような言葉総理は発していないようです。ただ速記にはそうなっておりますけれども、私はその「曲げられたり」というようなことは総理も言っていないし、私も聞かない。(「おかしいと思った、ぼくは」と呼ぶ者あり)その点は、私は聞いておったけれども、そういうふうに、私、聞かなかったのであります。それから総理が、言葉文章になった場合において不明瞭なことを言っているということは私も認めます。これもしかし、皆様も御承知のように、続けて数時間にわたってやっておる場合において、相当の健康体でもときどき言い違いをしたり、あるいはまた相当の頭のいい人でも、文章に書けばりっぱに書くけれども、しゃべるとどうもそれが文章にならない人も、これはありがちであります。(「しゃべるときも文章もどっちもこれはだめじゃないか」と呼ぶ者あり)従いまして、この速記録を見まして、不明瞭な点があることは、これは私も認めます。
  145. 吉田法晴

    吉田法晴君 ただいま官房長官は、これもわかりませんが、官房長官が言語障害にかかっておられるとは思いませんから、言わんとせられたところを、私どもも判断をして間違いはなかろうと思う。「曲げられたり」等々のことは言っておられぬように聞いておる、こういう工合にお話しです。きのうの鳩山首相の発言と、それから速記録が合っておるかどうか、こういう問題で、われわれは速記録が事実を速記をしておると、こう考えて論議をしておるのであります。その速記自身が、事実その通り発言通り書いておらぬ、こういう御主張をされる。(「大へんなことだ」と呼ぶ者あり)これは質疑を続けてもあまり意味がない。そこでその点は、休憩をして理事会で一つ御協議を願いたいと思います。
  146. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) 今の吉田さんのお話ですが、そういうことに、一つお願いしたいと思います。
  147. 根本龍太郎

    政府委員根本龍太郎君) 私は議事録が間違っておるとは言っていない。私が当時聞いておったときにはそういう言葉がなかったような気がする、こう言っておるのです。その点を明確にしておきます。従って私も実は、あの速記がそういうふうに出ておるとすれば、これはどうも私も「曲げられたり」ということは文章上ちょっとわかりかねる、それを言ったのでございますから、その点は明確にしておきます。
  148. 吉田法晴

    吉田法晴君 官房長官は今でも、なかったと思う、こうおっしゃられる。私どもはあったと思って論議を進めておる。質疑を進めておる。なかったということになれば、あったかなかったかを明らかにして、それから質疑に入らなければ、質疑は進められません。
  149. 根本龍太郎

    政府委員根本龍太郎君) 国会の論議は、私はやはり政治の本質をただすということであります。従いまして言葉のあげ足とりを私はやるべきではないと思います。(「冗談言うな」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し)従いまして、この問題について私は……静かにして下さい。静かに聞いて下さい。それで私は、その当時そういう言葉がなかったような気がするというような意味のことを言ったのでございます。私は速記録にそれがあることは間違いだとは言っておりません。従って、これは速記録がその通りであれば、それでけっこうです。私はそれを否定していないのであります。(「議事を混乱させては困る」と呼ぶ者あり)議事を混乱させてはおりません。私がこの速記を見てどう思うかという私の感想を聞かれたから、私の感想を率直に言ったまでであります。その通り解釈していただきたい。
  150. 吉田法晴

    吉田法晴君 それでは、自分はなかったように思うと言われましたが、しかし速記がそうであれば云々というのは、客観的に昨日鳩山首相が速記録にあるような発言をされたと思われるのか思われないのか。発言をされたと思うけれども、あるいはそれが速記録に載っておるけれども自分は聞き取れなかったと、こういうことであれば別問題です。聞き取れなかったと言われるのか、あるいは昨日そういう発言はなかったと思うと言われるのか、事実についてと速記録についてと、重ねて発言してもらいたい。
  151. 根本龍太郎

    政府委員根本龍太郎君) 私はそういうふうに聞かなかったという意味のことを申しております。従ってこれは、私は事実があるかないかということを私が判定はいたしておりません。速記録に明確にあることは速記録にあることが正しい。ただし私は感想を聞かれたときに、どうもああいう言葉がなかったような気がする、従ってその文章はちょっと解釈しにくい、こういうような意味のことを、私の感想を聞かれたから、申し上げたわけであります。   〔相馬助治発言の許可を求む〕
  152. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) 相馬さん、どうですか。もう大体おわかりになったと思うのですが。
  153. 相馬助治

    相馬助治君 ただいま亀田君は、速記録によって官房長官質問をして、問題がいささか紛糾しておるようですが、御本人の首相がいらっしゃるのですから、亀田君から……、速記のこの通りであるということを当然内閣総理大臣がお答えされるべきであると思うが、内閣総理大臣が昨日のことをもう忘れてしまって、ここで証言できないというならば、速記を、記録部長を呼び出して厳粛に調べて、そうしてその速記によるべきであると思うので、御本人を前に置いて官房長官とやり取りしていることは、これ以上はいささか私は無意味だと思いますので、亀田君において御本人に確かめられたい。御本人の証言が得られないならば、記録を確かめられるように、一つ吉田君の申し入れの通りに議事を進めてもらいたい。
  154. 亀田得治

    亀田得治君 相馬君の御注意によりまして一つ総理大臣に聞きますが、「曲げられたり」、こういう言葉をお使いになった御記憶がありますか、どうですか。
  155. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 私は率直に申しまして、けさここへ参りまして、この速記を拝見したのであります。「曲げられたり」と私が言ったという記憶はありません。どうしてこんなことを言ったのだろうなと言ったくらいです。
  156. 亀田得治

    亀田得治君 そこが問題だ。たとえば、はなはだ失礼な言い分なんですが、この総理大臣を私は病人扱いしませんが、少し精神的に変だという人は、自分がちょっと違っているとは思っておりません。だから失礼かもしれませんが、全然記憶がない、非常に自分が間違ったことを言えば、これはしまったと、普通のことは思いながら言ってしまう場合がある、全然これは記憶しておられない、こういうことになりますと、これは私は、はなはだ今健康問題のことをお尋ねしておるのですが、よほどお疲れになっていると、こういうふうに、私、感ずるのです。この程度にしておきましょう。  最後に結論的に……。
  157. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) 亀田君、時間が切れました。
  158. 亀田得治

    亀田得治君 時間がきましたから終りますが、最後に希望を一つ、希望といいますか、非常に質疑が手間取ったために言うべきことがはなはだ言っていない。若干つけ加えておきますが、ともかく総理大臣の昨日来のああいう言動というものは、これは一つには国民に対して、この憲法法律、こういうものに対する非常な疑いを持たしますよ。よほどこれは考えてもらわなければいかぬ。順法精神、こういうことがよく言われる。順法の中で一番大事なものは憲法でしょう。それについていやしくも疑惑を持たす、こういうことは大へんなことなのです。今度のたとえば官公労のストライキの経過等を見ても、官公労の諸君が従来からやってきたこと、それを官公労の特殊な法律関係で普通のやり方ができない。やむを得ず法規を最大限に活用してそうして何かやろうとされる。そうすると、それに対して政府は、それは違法だ、こう出ているのですね。しかしこれは裁判所できまったことでもなければ、また今の官公労の諸君からいろいろなストライキ権とかそういうものを取り上げた経過等からして、あの程度のことはいたし方ないのだ、こういう考え方も相当ある、専門家の間にもある。そういう問題に対してすら政府はけしからん、こういうふうな出方をしておる。その政府がみずから憲法に違反する疑い、そういうことに予算を使っておるわけですね。これはどれだけ否定されても、そういう気持を与えたことは事実ですよ。私はそういう意味から言って、たとえばあなたが昨日来から考えておるような程度の法に対する認識であれば、官公労に対するああいう警告、こういうものは僣越至極ですよ。これはもっと憲法を厳守して、しっかりと憲法を守っていく政府であれば、私どもは受けましょう。若干問題のあるようなことをやろうとする場合には受けましょう。しかし、みずから一方で憲法をじゅうりんするようなことをやっておって、それからたとえば自衛権解釈の問題にしても、私どもは抽象的なことを聞いているのではない。昨日でも現実に起きた大東亜戦争、それに対する見解を聞いている。歴史家の判断に待つとか、そういうふうにごまかしておられますが、そういう問題に対してすら、はっきりと法的な解釈ができないような、そういう政府が、官公労に対するああいう考えを出すようなことは、もってのほかで、一方的だ。
  159. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) 亀田君、だいぶ時間がたちました。
  160. 亀田得治

    亀田得治君 ああいうものを出す以上は、あなた自身がもっと憲法を順守して、もしそれに耐えられないのであれば、これはおやめなさい。これだけ申し上げまして私の質疑終ります。
  161. 吉田法晴

    吉田法晴君 議事進行。先ほど相馬君から発言がございまして、それに従って亀田君は質疑を続けたのですが、依然として明らかになりません。そこで速記録について、その速記録の信憑性という点が疑われて、そこで質疑を続けていく前提となる、昨旦言われたか言われないかという点については、休憩してこの点を明らかにせられんことの動議を提出いたします。
  162. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) 吉田君に申し上げますが、先ほど記憶がないという御答弁もありましたので、その問題はその程度で、別ワクでやっておるのですから、これで継続していきたいと思いますが、御了承願いたいと思います。
  163. 吉田法晴

    吉田法晴君 時間も一時だし、鳩山総理を食事もしないでこのまま質疑を続けて参りますのもどうかと思いますだけに、休憩して、今の質問の前提になっている昨日の発言があったかなかったかという点を、これは私は明らかにしていただきたいと思います。明らかにしなければ、発言がなかったというなら、これは質問にならない。発言の存否だけは明らかにしていただきたい。それから再開をして委員会を続行していただきたい。
  164. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) 吉田君に申し上げますが、先ほどの御答弁で、速記録は別段間違いないということを言っておられますから、それはその問題でいいと思いますので、ただ時間の問題は、一時でございますから、ここで休憩することは差しつかえないと思いますが、今の吉田さんの御発言は、別段速記録が間違っているという御発言はなく、速記録は正確なものであるという認定のもと質疑を続行したいと思います。
  165. 吉田法晴

    吉田法晴君 それじゃ総理なりあるいは官房長官から、速記録は正しいと委員長がそう言われるが、さっきそういう答弁官房長官から受けません。それから鳩山総理もそういうことを言ったように思わぬ、こういう御発言でありましたが、委員長が訂正されるなら私どもは了承いたしますが、その点は総理及び官房長官からはっきり御答弁願います。
  166. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) 官房長官に伺います。ただいま私が申し上げました速記録は正確なものとして質疑を継続していくということに御異議がないと思いますが、御所見を伺います。
  167. 根本龍太郎

    政府委員根本龍太郎君) お答えいたします。先ほど申し上げたように、私は速記録が間違っているとは言っておりません。私がそういうふうに聞かなかったというふうに思っているということを述べただけであります。
  168. 曾禰益

    ○曾祢益君 速記録が間違っていないということを認めますか、認めないか。
  169. 根本龍太郎

    政府委員根本龍太郎君) 速記録は間違いないと思います。
  170. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) それでは時間も経過いたしますので、二時まで休憩いたします。二時に再開いたします。    午後零時五十九分休憩      —————・—————    午後二時十一分開会
  171. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) ただいまより予算委員会を開会いたします。  御報告いたします。青木一男君が辞任されまして佐藤清一郎君が委員になられました。  午前に引続いて続行いたします。
  172. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 まず、総理に伺いたいんですが、亀田君の質問に対しまして総理は、自衛隊は戦力である、そういうふうに考えられておるように答弁しておりますが、総理は、自衛隊は戦力であるとお考えかどうか。
  173. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 戦力というのは、私はただ戦う力というような意味に解して申しました。
  174. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 戦力については吉田内閣当時非常に問題があって、自衛のためでも戦力は持ってはならない、憲法違反である、こう論議があったことは御承知の通りだと思うんです。戦力とは近代戦を戦う能力、こういうふうにもう定説になっておるわけです。戦う力というのは、そういう意味で近代戦を戦う力、そういうふうに御解釈かどうか。
  175. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 吉田君が議会において、近代兵器を使わないということは、そういう意味において戦力ということを使っておったということは承知しております。ただそういう問題に触れるのはちょっと問題だと思いましたから、ただ戦う力という意味で私は申したのであります。
  176. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 戦う力というのは具体的にどういうことですか。
  177. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 自衛の範囲内において戦う力という意味で申しました。
  178. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 今の自衛隊が自衛の範囲を逸脱している疑いがあるのではないかというので、憲法改正したいというのではありませんか。
  179. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 私はそういう問題は疑問があると思ったものですから、戦う力というように申して、吉田君の言うのと正面衝突しないように考えて申したのであります。自衛力はどのくらいであるかは、自衛の範囲内においての最小限度という意味考えております。
  180. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 時間がありませんので的確に御答弁願いたいのですが、この亀田君の質問に対して、総理は、今の自衛隊は軍隊だ、兵力だ、戦力だというようなことが一般の国民の常識になっておるようだ、そうして自分もそのように思う。そこで、それですから、やはりそういう疑いのある憲法九条は改正をして、自衛隊の人自身がわれわれは国家を守る軍隊だというような自信を持つ方がいいと思いまして、やはり憲法改正をしたいという考えを持っておる、こういう御答弁です。ですから、今の自衛隊が軍隊だ、兵力だ、戦力だ、これはどうも自衛の限界を超えているような疑いがあるから憲法改正するのでしょう。そうでなければ、なぜ憲法九条を改正する必要があるのでございますか。
  181. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 憲法九条の改正はただいままで申した通りであります。
  182. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 ただいままで申しておりません。
  183. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 明確にしたいという意味であります。
  184. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 明確にしたいということは具体的にどういうことですか。疑いがあるからということなんでしょう。疑いのないようにしたいということじゃありませんか。
  185. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 自衛のための組織、自衛のための運営、それらのことが明確になった方がいいと考えました。
  186. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 どうもよく御答弁意味がわからないのですが、一番最初亀田君が質問されたときの御答弁に対して、はっきりとこれまでの憲法解釈の変ってきた経過を総理は言われました。そうして最後に、国民一般がもう自衛隊は軍隊だ、兵力だ、戦力だと、こうはっきり言うようになったので、自分もそう思う。それだからですね、これは現在の憲法に触れるのではないかという疑いが出てきたので憲法改正をける、この速記録をよくごらんになって御答弁願いたいんです。そこを質問しているわけですよ。御答弁が食い違っているんです。
  187. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 私が木村君の今言われたようなことを言ったのはいつですか。そういうようなことを明確に言った覚えがありません。いつ言いましたか。
  188. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 速記録にあるんです。
  189. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 昨日ですか。(「昨日のことを忘れちゃだめだ」と呼ぶ者あり)
  190. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 そうです。それを今問題にしているわけなんです。
  191. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 私、今言ったのは、自衛隊憲法には違反をしていないという観念を持っていますものですから、今あなたのおっしゃった憲法に違反するおそれがあるから改正したいと言ったといったようなことをおっしゃったものですから、そういうことをいつ言ったか知らぬと言ったわわけです。
  192. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 そういうふうにここで答弁されているんです。それじゃ自自衛隊憲法に違反しないというなら、なせ九条を改正をされるのか。
  193. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 明確にしたいためです。
  194. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 今明確に憲法に違背したいといっておられるのに、なぜ改正されるのか。
  195. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 表面からは、憲法解釈の上からはこの自衛隊を置くことはできると思うんです。これには疑いはないと思うけれども、表面から明確にする方がいいと思いまして憲法改正はしたい。
  196. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 裏面においては疑いがあるんですか。
  197. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 自衛のためには兵力を持てるということにした方が、明瞭にした方が日本のためになるということであります。
  198. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それでは伺いますが、これも亀田君の質問に対して答弁されていますが、法律を変えれば、また、ある法律が通れば憲法解釈はどうにでもなるわけですか。
  199. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) いや、そういうわけではありませんが、憲法の九条の前提条件として、自衛のためには日本は自衛力を持って自分の国を守れるということは、憲法に書いてあってもなくても、独立国家としてできる権能を持っておると思うのです、私は。
  200. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それはまた重大な御発言じゃないですか。憲法に書いてあってもなくても、そういうものを持てるということは。じゃ何のために憲法があるのですか。
  201. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 憲法九条の解釈として、自衛のためには自衛力を持ってもいいというのは九条は禁止している、わけではないと思います。
  202. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 そんなことはもうわかりきっていることであって、自衛を否定しているのではないけれども、自衛の方法について否定しているわけです。そこが今問題になっているわけですよ。戦力を持っていいのか悪いのか、そこが。自衛隊法がもう通ったならば、そういうものは、憲法はもうそういう再軍備をしていいのだ、そういうようにはっきりと解釈できるようになるような御説明だったから質問しているわけです。そんなら憲法九十八条というのは全く意味がなくなると思うのですよ。違憲法律というものはなくなるわけでしょう。法律が通れば、皆それは憲法はその法律通り解釈できる、こういうことになるのじゃないのですか。
  203. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 私は憲法違反法律考えていて申しているわけではありません。憲法に違反する行為を法律によってできるようにするということの意味で言っているわけではないのです。憲法解釈を、日本は独立国となった以上は自衛のために兵力を持ち得るというように解釈をしておるわけです。
  204. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それは私はおかしいと思うのです。最初憲法違反だと思ったが、自衛隊法というものが通ったので、それは憲法違反でないように考えるようになったという、はっきり答弁をしているのですよ。自衛隊法というものが通ったので、そこで憲法解釈も違反でないという解釈になってきたという御答弁なんです。ですから法律をもって憲法をこれは拘束するわけです。これは全く逆じゃないかと思うのですが、考え方が。ですから、憲法を尊重する意思があるのかどうかです、問題は。憲法を尊重するならばそういう御答弁は言えない、できるわけがないと思うのですが、その点どうですか。
  205. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 憲法を尊重することは私も人後に落ちないつもりであります。ただ九条にああいう規定をしてありますけれども、自衛のためには日本は自衛隊を禁止しているわけじゃない、憲法九条は。そういうように解釈をしておるのでありまして、自衛隊を持つことが憲法違反である、自衛隊法ができたからその違反行為が是正せられたのだ、正当化されたのだというのは、少し間違いだと思います。
  206. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 私は時間がありませんから……。総理はこれまでもたびたびの失言をしていますが、本心を語っていないと思うのです。これは日本の運命に関する重大な問題でありますが、本来はそういう失言が起ってくる根本の原因は、実際は今の自衛隊がもうはっきりと憲法違反のいろいろな装備をしまして、そうしていわゆる自衛型から攻撃型に移っていまして、B57が入ってくる、オネスト・ジョンが入ってくる、F86ですね、攻撃型の装備になっているわけです。攻撃型の装備というのは、もう必然的にこれは海外派兵が伴う、攻撃型の装備ですから、敵の基地を攻撃する、侵略するという言葉がそこで出てくるわけであって、そういう失言の根本は、今の自衛隊が攻撃型にどんどん現実が移っておるところから私はくるのだと思うのです。そのために、一応表面からいえば、自衛隊憲法違反でないといっているので、自衛隊を増強するために憲法改正する必要はないでしょう。ないのに、さらに改正したいというのは、どうしても今の日本の再軍備が攻撃型の再軍備になってきていまして、海外派兵をしなければならないような再軍備になっておるから、そうして海外派兵は今の憲法で禁止されておるから、憲法改正しなければならぬ、そこに真意があるのではないですか。
  207. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) そういう考えは持っておりません。
  208. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) 木村君、時間がきました。
  209. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 考えは持っていなくても、現実はそういうところになってきておると思うのです。それでは伺います。船田長官おりますが、誘導弾というのはどういう作用をするのですか。今度はスイスのエリコン社から、三億六千二百万円ですか、誘導弾を買われる。一発のたまが一千万円といわれますが、あの誘導弾はどういう作用をするのですか、あの機能を伺いたい。
  210. 船田中

    国務大臣(船田中君) そういうような研究を今までもやっておりますが、今後実物について三十一年度において十分研究して参りたいというために予算を要求いたしておるわけであります。しかし誘導弾にもいろいろございます。少くともわれわれの考えておりまするのは、攻撃を受けた場合に、いわゆる侵略を受けた場合にこれを反撃する、そうして国土を守るということのために誘導弾を研究いたしておるわけでありまして、今後もそういう意味において研究を続けて参りたいと考えておる次第であります。
  211. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 誘導弾には原爆をつけることができるんでしょう。
  212. 船田中

    国務大臣(船田中君) 自衛隊で研究しようという誘導弾は原爆を積むような誘導弾ではございません。侵略を受けた場合におきましてこれを防衛する、すなわちわが国土を守る、独立と平和を守るために必要な助郷兵器として誘導弾を考えており、またその趣旨において研究をしておるわけであります。
  213. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) 木村君、時間がきていますが。
  214. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 エリコン社から輸入する、買い入れる誘導弾ですか、そういうものは原子兵器をつけられないで、そうしてどれだけの効果があるのですか。最近もう常識として、誘導弾はいわゆる原子兵器を、あるいは水爆、あるいは原爆というものを、その大きさはどうかわかりませんが、用いるので効果があるのですよ。それを用いない誘導弾って一体どれだけの効果があるのですか。敵の基地を爆撃するといって、どれだけの効果があるのか、そんな誘導弾というのは私は意味がないじゃないかと思うのです。そういうことは研究されておるのではないですか。
  215. 船田中

    国務大臣(船田中君) 原子兵器については研究は全くいたしておりません。また今後におきましても原子兵器を研究するという考え方は持っておらないのであります。エリコン社から買おうかという誘導弾につきましては、原子兵器とは全く関係がございません。
  216. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) 木村さん、時間が非常に超過しましたから。
  217. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それじゃこれ一つでやめます。それでは最後に伺いますが、総理大臣亀田氏の質問に対して最初にこういうことを言っていましたが、自衛隊の人自身がわれわれは国を守る軍隊だというような自信を持つ方がいいと思って憲法九条を改正したい、こういっております。このことはどういうことなんですか、具体的に自衛隊の人自身が国を守る軍隊だというように自信を持つ方がいい、そのために憲法改正したいのだ、これは言いかえれば徴兵制度を今後行うについて、やはり自衛隊の人が自信を持ってこれは憲法違反でないという考えにならなければ、これは強制徴兵はしけない、そういうところからきているんじゃないですか。従って今度の憲法改正の問題は、総理自身答弁からいえば、自衛隊憲法違反ではないと言っているのですから、憲法九条を改正する必要がごうも認められないのに、憲法九条を改正する、すると言っているのですが、その裏にはどうしたって海外派兵と徴兵制度、こういうものをやるには、今の憲法改正しなければどうしてもできないので憲法改正をする、これが真意ではないですか。そうして今の日本の軍隊はもう着々とそういう方向に現実が進んでいってしまっている、攻撃兵器にどんどんこれが移行していっている、もう今の憲法ではこれをまかなえない、それでちょうど底から袋が破れるように吹き出て、総理がたびたび失言する。現実が憲法違反をどんどん犯しているものですから、それを合理化しようと思って総理がそういう失言をたびたびされる、ここに真意があるのではないですか。
  218. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 私は攻撃戦争というようなことを考えません。なお従って、徴兵制度ということも、昨日も申しました通りに絶対に今は考えていない。
  219. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 時間が参りましたからこれで終ります。
  220. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) 八木幸吉君。
  221. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 従来政府の御答弁では、自衛権自衛権の行使とを混同しておられる、こう私は考えます。自衛権は国家固有の権利でありますから、これは憲法以前のものである。憲法第九条の第一項ももちろん自衛権を否定しておりませんし、自衛権の行使も否定しておりません。問題は憲法第九条第二項が、自衛権は否定しておらぬけれども自衛権の行使を否定いたしております。ここに問題があるわけであります。吉田内閣総理大臣は第六国会におきまして、武力に上らざる自衛権という言葉を使っておられる。何だといえば外交その他であると、こう言っておられます。これを言葉をかえて申しますならば、武力によらざる自衛権といえば、まず警察、それから民衆の力、これらが武力によらざる事実としての自衛権であります。総理自衛権自衛権の行使を混同されて申されるのは、自衛権は認められておるから自衛権の行使もいいのだ、そこで自衛隊も合憲である、こうおっしゃるけれども自衛隊というものは事実としての警察あるいは民衆の力などの自衛権行使ではなくて、制度としての自衛権の行使でありますから、明らかにこれは憲法違反であります。前に法制局長官がこの問題についての釈明をされたときは、自衛のための必要相当限度の戦う力、こういう言葉を申されました。吉田内閣ではもっとこの問題をはっきりして、近代戦を有効的確に遂行し得る力が戦力である、これが憲法第九条第二項の違反に該当するのだと、こう言っておられるわけであります。そこで私は総理に伺いたいのは、この自衛のための必要相当限度の戦う力というのは一体どの程度のことをいうのか、この点を率直に伺ってみたいと思います。
  222. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) そういうことを、その事情に沿わないで、抽象的に答弁するということはちょっとむずかしいと思います。
  223. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 それでは私、具体的に申します。自衛権の行使が法律で許されるならば、侵略する敵を先制防御する意味でその敵の基地をたたくということは、私はこれは自衛権の行使の範囲に入ると思う。しかし自衛権の行使そのものを私は憲法第九条節二項で否定する立場に立っておりますから、そういうことは許されない。今も質疑応答がありましたが、誘導弾を自衛隊が持つというようなことは、相当程度の自衛権の行使と私は認めない。第九条第二項に反するものである、違憲である、こう私は考えるのですが、敵の基地をたたく誘導弾、これは一体憲法に許された自衛権の制度としての行使であると思うか、違憲であると思うか、違憲でないと思うか、この点の御答弁を求めます。
  224. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) ただいまおっしゃった中で先制攻撃、まだ向うが攻めてこないのにこちらから攻撃するということは、現在の憲法上できないと私は考えます。
  225. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 先制攻撃でなくて、侵略することが予想される敵の基地を先制的に防御の意味でたたく、たたくという言葉は非常にあいまいですが、この間も政府が使っておりますので、たたくということは、これは合憲であるかどうか、私は今の九条第二項でこれは違憲である、こう思いますが、どうですか。
  226. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 向うがたたいてくる前に、こちらがたたかれるだろうということを予想して、そしてこれに対して正当防衛に出るということは、これは私は禁止されておるものと考えます。
  227. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 武力によらざる自衛権、これはどんなものであるか。もう一つ自衛権の行使の限界はどこにあるか、自衛隊が飛行機や軍艦や誘導弾を持つことは、これは自衛権の行使として差しつかえない範囲のものとお思いになりますか。
  228. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 私は、国家の自衛権というものは人間同士の間の正当防衛と同じでありまして、その方法をとる以外に自分を防御する方法がないというとき、それ以外に何らの方法がない、それによらざれば自分を防衛できないというような場合にのみ防衛権があり、自衛権があるものと解釈しております。
  229. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 自衛権行使の問題について、もう少し行使に力を入れて御答弁をいただきたい。
  230. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 行使といえば、つまり先方から攻撃して参りまして、そしてこの方法以外にその攻撃をとめるという方法がないという場合に、その方法をとることができるというのが自衛の方法だと考えます。
  231. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 自衛権行使の制度として組織を持つところの自衛隊を持つということは許されるかどうか、この問題を伺っておる。自衛権を離れて、行使の問題に中心を置いて、制度として、組織としての自衛隊を持つ、これは違憲であるかどうか。
  232. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 自衛隊の目的がきまっておりますれば、組織を持つこともやはり適当だと考えます。
  233. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 観点を変えてお伺いいたします。憲法第九十九条の問題でありますが、憲法第九十九条には御承知の通り憲法尊重の規正があります。九十八条には違憲の国家行為は無効であるという規定かあります。さらに八十一条には法律違憲性を最高裁判所が審査する規定があります。そこで私が伺いたいのは、総理は、自衛隊法国会を通ったから、従来はさようなものは持ってはいけないと思っておったけれども、説を変えて、国会を通ったから、私はその自衛隊法に基いて自衛隊を持つことは別に差しつかえないのだ、これは憲法解釈が拡大されたのだ、国民代表者がこれを認めたのだ、こういったようなお考えでありますけれども、そういたしますと、国会をいろんな法律が通ったら、どんな法律が通ってもこれは一向差しつかえないのだ、国会を通れば何でもそれは差しつかえないのだということであれば、憲法第九十六条はもちろんでありますが、憲法全体が空文に帰してしまうおそれがあるわけであります。でありますから、私はやはり八十一条は、佐々木博士が申されたように、憲法尊重の第九十九条、違憲無効の九十八条等を引用いたしまして、八十一条でも違憲訴訟は受理し得るものと、こういう解釈を私はとりたいものと思うのですが、政府はいかようにお考えになりますか。今の最高裁判所の判決例では、具体的訴訟、つまり法律関係における争いでなければ受理できない、こういうことになっておりますが、この判例だけでこの違憲の問題を取り扱いますと、今申しました法律によって憲法を空文に帰する、こういう結果になりますから、やはり八十一条によって違憲訴訟は最高裁判所でこれを受理し得ると、こう解釈するのが妥当だと思うのでありますが、いかがでありますか。
  234. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 私は最高裁判所には、現在におきましては、一つの形式として生れたことによって、そもそも法律憲法違反になるかならないかということを審査することはできまするけれども、抽象的にこの法律がいいかどうかということを、抽象的の裁判は現在の最高裁判所ではできないように考えております。
  235. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 そういたしますと、法律憲法を空文に帰するという常識に合わないこの事態を救う道を、現内閣としてはどこに求めるのでありますか。
  236. 清瀬一郎

    国務大臣(清瀬一郎君) 今のわが国の裁判法は、一審より順序を経て参れば、憲法違反の裁判は最高裁判所でいたしておるのです。現実に憲法に関する裁判例は多々あります。そこまでに行く手順について、やや複雑ではございますけれども、現在のわが国の裁判法は憲法に違反しておるものではありません。
  237. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 清瀬博士に私は伺いますが、そうすると、たとえば誘導弾を持っているような自衛隊というものは明らかに憲法違反だと思います。この憲法違反を、最高裁判所の審査を受けるための手続をお教え願います。
  238. 清瀬一郎

    国務大臣(清瀬一郎君) 自衛隊に関する法律問題がここに起るといたします。たとえば自衛隊の士官の俸給を払うか払わぬかという問題が起りまして、これは憲法違反なんだ、それゆえに俸給は払うべからずといったような抗弁でも生れて、一審、二審、三審に行けば、自衛隊のことも裁判にかかります。具体的の問題と結びついて、そうして第三審にいく、こういう組織になっておるのであります。
  239. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 今の清瀬博士の御答弁は、結局従来の司法権の解釈もとでの裁判、つまり司法問題としての係争問題を取り扱うというのでありまして、もっと大きな、つまり自衛隊法そのものが違憲であるかどうかという問題の解決にはならない。どうも従来の鳩山総理のお考えでは、国会が結局憲法解釈の最高の権威である、こういう論理に立たなければ、自衛隊法国会を通過したから、今まで違反であったと思っておったけれども、違反でなくなったのだということをジャスティファイする法律の根拠は私はないと思います。  そこで問題は、最高裁判所と国会とどっちが優位に立つのであるか。もし国会が優位に立つとすれば、それの法律の根拠が少くとも憲法になければならない。ところが憲法違憲を判定するところの法律的根拠というものは、ただ八十一条に法律違憲審査権が最高裁判所にあるという一条があるだけでありまして、そのほかに違憲審査に対する法律の何ら根拠というものが憲法にありません。  そこで話がもとに戻りまして、総理が、従来は、自分はどうも自衛隊、保安隊は違憲であったと思った、現に在野時代にはその演説も自分はしたこともあるのだ、しかしこのごろは、少くとも自衛隊法というものは国会で大多数を以って通って法律になった以上は、その法律に基いて自衛隊を持つということは憲法解釈の拡張であって、自分は必ずしも違憲だと思わない、疑いはあるにしても違憲だとは思わないというところを、もう少しく冷静に突き詰めて考えれば、国会意思というものが結局この法律憲法に違反しておるか違反しておらぬかということの最終決定をなし得るものだ、最終決定をなし得る権能を持ち得るものだ、ここまで進まなければ、鳩山総理の論理は筋道が立たない。ところが私は、その根拠というものが憲法にもどこにもない。そうすれば、逆に帰りまして、佐々木博士が言われる憲法八十一条によってやはり概括的に違憲審査権というものが最高裁判所にある、だからわれわれは、自衛隊法違憲であると思えば、最高裁判所にこれを提起すれば、最高裁判所がこれを取り上げて、そうしてこれは違憲であるとか、ないとかいうことを判定して、もしこれが違憲であると判定すれば、効力はどの程度に及ぶかということが次の問題になると思う。今、清瀬先生のおっしゃったことは、ただ給料を払うとか、払わぬとか、要するに司法上の、一つ法律上の係争事件、具体的な係争事件が起れば初めてそこで問題になる。しかし裁判所の判決例の範囲を出た御解釈ではなかった。そこを私は、もっと高い政治性に立って、法律憲法を空文に帰するような現在のやり方はいかぬから、国会違憲を判定するだけの法律的根拠はどこにあるか、明確にこの点一つ。私は法制局長官をあえて忌避しませんが、明確に率直に、ごまかしの答弁ではなく、その点一つ伺いたいと思います。総理でなくてもよろしゅうございます。
  240. 林修三

    政府委員(林修三君) 現在の憲法は、御承知のように三権分立の建前でできておるものと考えるわけでございます。従いまして憲法八十一条で、最高裁判所に違憲立法の審査権を与えてはおりますけれども、これはやはり司法権の範囲内において与えておるものと、かように考えるのが正しい考え方だと思います。最高裁判所もそういう考え方に立っているわけでございます。司法権の範囲において考えれば、やはり具体的な訴訟事件を通じて最高裁判所が、このある法律憲法に適合するかどうかということを判定すべき権能を持っている、そういうふうに考えるわけでございます。今仰せられましたように、ある法律が抽象的に憲法に適合するかどうかということを考えますことは、これは普通の司法権の範囲を逸脱する一つの権能だと思います。この権能を認めるについては、憲法の上にはっきりした明文が必要だというふうに考えます。これは西ドイツのごときああいう憲法裁判所を作ることは、これは普通の立法、司法の観念とまた別の観念に立っての考え方だと思うわけです。今の立法権の範囲でいけば、国会がもちろん憲法違反法律を御制定になるはずもございませんし、またそういうことがあれば、これは立法権の範囲において国民の批判を受け、国会の選挙を通じて批判せられるべきもので、これが司法権の分立という考えからくる考え方だと私は思うわけであります。今おっしゃいましたようなことは、西独の憲法裁判所のごとき明文の規定がない以上は、抽象的に、ある法律を直ちに憲法裁判所としての最高裁判所に持っていくことはできないものと考えるわけでございます。
  241. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) 八大君、非常に時間が倍超過しておりますから、その程度で……。
  242. 吉田法晴

    吉田法晴君 昨日来のごらんのような経緯の現在、総理から御発言が特にございますかどうか——昨日来のようなこういういきさつで、昨日の首相の発言に関連をして問題にいたしておりますが、首相から何か御発言がございますか。冒頭にお尋ねをいたします。
  243. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 特に別に発言することはありません。
  244. 吉田法晴

    吉田法晴君 私ども、これだけ問題になりました発言について、朝来、政府みずから発言を求められて発言をなさるかと思いましたが、そういう誠意と申しますか、問題の重要性についての自覚がないということであるならば、ただその何と申しますか、頭の程度について、ただただおそれ入る以外にございません。具体的に質問を始めていく以外にございません。  午前中の亀田君の質問に答えて、総理それから官房長官速記録をお認めになったようでございます。速記録をお認めになるならば、問題になっております憲法違反疑いがある、こういう点について発言をなすったことはお認めになりましょうね。
  245. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 私の言葉が足りなかったのかもしれませんけれども、再度申します通りに、自衛隊法憲法違反だという考え方はしておりません。
  246. 吉田法晴

    吉田法晴君 今また、亀田君の最初質問のようなことを繰り返さなければならぬことは大へん残念に思いますが、速記録をお認めになりましたならば、そういう発言があったということをお認めになりますかどうか、お認めになるかならないか、それだけをお尋ねをしておきます。
  247. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 私がどんな考えをしておるかということは、本日の私の答えによって御了解を願いたいと思います。
  248. 吉田法晴

    吉田法晴君 考えをお尋ねしておるのじゃない。そういう発言をなさったことをお認めになりますかどうか。速記録を認められたのですから——認められないというのですか。午前中認められたと思うのですが、認められたならば、発言をしたと言われますかどうか、発言をしなかったとおっしゃるか、そこをお尋ねします。
  249. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 速記録を否定する意思はもちろんありません。速記録に対して、表われておることが、私の本日申しましたことに違うような意味があるならば、それは言葉の足りないためと思います。
  250. 吉田法晴

    吉田法晴君 足りないか、あるいは誤解を生ずるか云々ということは、それはあとの問題です。速記録に書いてあるような発言をしたとおっしゃるか、しないとおっしゃるか、そこだけをお尋ねします。
  251. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 私はただいま申します通りに、速記録にあることは否定しません。
  252. 吉田法晴

    吉田法晴君 それでは、憲法に違反する疑いがあるという発言をした、こういう点はお認めになったのですか。
  253. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) それはその後の私の意思と違っていますので、自然に訂正はされているものと私は考えております。
  254. 吉田法晴

    吉田法晴君 あとで言い直したつもりかどうかは知りませんけれども、あのときに憲法違反疑いがある、こういうことを言った、こういうことはお認めになったわけでしょう。
  255. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 私は、かつて自衛隊法憲法違反であるということを野党時代には申しましたけれども、その後言ったことはないのです。
  256. 吉田法晴

    吉田法晴君 きのう言われたかどうかということを聞いておるのです。あとから言い直したつもりかどうかは知りません。つもりかどうかは知りませんけれども最初にはそういうことを言われた。速記録をお認めになったのだから、速記録通りのことを言われたことばある、こうお認めになったんじゃありませんか。
  257. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) その言葉は否定はしない、ただ言葉が足りなかったかもしれないということを申しておるのであります。
  258. 吉田法晴

    吉田法晴君 言葉は足りなかったかもしらぬけれども、否定はいたしません、言ったでしょう——こういう解釈をいたしておりますが、それに相違ございませんか、こういうわけです。
  259. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 今言った通りでございます。
  260. 吉田法晴

    吉田法晴君 まあ速記録を認め、そう言っただろうという点をお認めになりましたが、あくまで御否定になるならば、精神鑑定をしなければならぬと思いましたけれども、一応お認めになりましたから、先に進んで参りたいと思います。  それじゃ先ほど八木さんからも御質問がございましたが、この委員会戸叶氏の質問に答えて、急迫不正の侵害があった場合には、ほかの方法がなければ、その外国の基地を侵略することができる、あるいは攻撃することができる、こういう意味のことを一ぺん言われました。そのあとからそれを取り消そうという発言があったかもしれませんけれども、そういうことを一ぺん言ったという点についてはどうです。
  261. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 私はそのことについては、申し上げました通り、私の言葉が足りなかったので、あとでよく説明をしたつもりであります。
  262. 吉田法晴

    吉田法晴君 それでは、きのう自衛隊憲法違反疑いがあると言った。それはしかし言葉が足りないで云々、こういう御趣旨であることを一応了承をいたします。  それでは、在野時代には自衛隊憲法違反であると思った。しかしその後、説が変ったんだ、こういう御説明のようでありますが、いつ変ったのか、一つはっきり御答弁を願いたいと思います。
  263. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) たびたび申し上げましたが、私は自衛隊法国会を通過いたしましたときに、自衛権というものは、独立国家が本来持っておるのだという考え方が日本において採用せられたものと考えたのであります。
  264. 吉田法晴

    吉田法晴君 それじゃ午前中の質疑応答を聞いておりますと、在野時代には違憲説をとっておったが、現在では合憲説に変った、それは自衛隊法が通ったから、こういうことですが、在野時代違憲説であったが、朝に立ってから、総理大臣になってから自衛隊は合憲だ、こういうことなのでございましょうか。もう少し詳しく一つ説明を願います。
  265. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 自衛隊法通りましたのは、私が総理になる前であります。
  266. 吉田法晴

    吉田法晴君 それでは在野時代だということですか。
  267. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) その通りであります。
  268. 吉田法晴

    吉田法晴君 これは在野時代には自衛隊ではなかった。予備隊、保安隊です。予備隊、保安隊の程度においてもこれは違憲であろう、こういう意見を述べられた。そしてその後選挙に臨まれたわけでありますが、選挙において、この点について明確な合憲祝なら合憲説を述べて選挙に臨まれたわけではございません。あるいは憲法改正ということを選挙でお約束になって民主党が第一党になられたわけではない。そうすると、在野時代には違憲説を唱え、それから朝にあっては合憲説を唱える。その間に国民の批判なりあるいは支持を求めるということなしに変説をされたということになりますが、政党政治家として——これは政党政治家であるというお気持総理もあろうと思いますが、そういう勝手な変説が許されるとお思いになるかどうか。政党政治家として、責任のある政治家として鳩山総理の所見を承わりたい。
  269. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 私は最初からそういうようなことを言わない演説会はないのです。最初から思ったことはそのまま言っておりまして、去年の選挙の前にも確かにすべてのことを告白しました。自衛隊の状況、自衛隊というものも、今お話の違憲でないという話もいたしましたし、憲法改正もした方がいいというような話もいたしました。政治家としての責任は尽しておると思っております。
  270. 吉田法晴

    吉田法晴君 それでは、この民主党になってから国民に対しては、自衛隊も合憲である、あるいは憲法——合憲ではあるけれども憲法改正した方がよろしい、こういうことを選挙で言われた。そしてその信を問うたと、こう言われるのですか。
  271. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 私はそういう態度をとったつもりでおります。日本の防衛についてのことも演説はいたしました。
  272. 吉田法晴

    吉田法晴君 つもりだと言うんじゃない。これは国会においてさえ、きのうときょう、あるいは、きのうも初めの方とあとの方とでは答弁が違って参りました。私ども応接に実は困るのですが、政治家として鳩山首相が吉田総理を批判し、あるいは自由党政治を批判する、そういうときに違憲だと言われた、そして、その在野時代意見国民に選挙を通じたときに訴えられた、ところがそれが意見が変ったそのままの意見で選挙に臨まれたかどうか、そしてそれが今日も変っていないかどうか、こういう点をお尋ねしておるのでありますから、つもりであった云々では困ります。明らかにしていただきたい。
  273. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 今日と同じ意見でもって私は選挙に臨みました。
  274. 吉田法晴

    吉田法晴君 今日と同じ意見で選挙に臨んだと言われますが、在野時代吉田自由党内閣の施策を批判するときには、憲法違反だと、こう言われたんです。それが政治家としての野党時代のあれでしょう。今日変っておられることを言うんじゃありません。その意見の相違がいつ起って、そして国民に対して在野時代に批判されたその意見についての国民の批判というものをいつ求められたのか、こうお尋ねしておるわけです。
  275. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 自由党に私が復帰いたしましたのは一昨年でしたか、そのときに明らかにしたと思って  おります。
  276. 吉田法晴

    吉田法晴君 それでは自由党に帰ったときに意見が変ったと、こういうわけですか。
  277. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) つまり、今まで申しました通りに、私が意見を変えたのは、自衛隊法国会を通過したときでありますけれども、いつ発表したかとおっしゃいますから、発表したのは自由党に帰ったときだと思います。
  278. 吉田法晴

    吉田法晴君 それでは、昭和二十六年の二月の六日に帝国ホテルでダレス当時の国務、長官とお会いになったということですが、そのときにはどういう御意見でしたか。
  279. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) そのときには軍備の拡張については話はしなかったと思います。
  280. 吉田法晴

    吉田法晴君 それでは何のお話をなすったのですか。
  281. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) その当時には、日本の現状について、話をしたことは事実でありますけれども、どういうことをどう言ったか申し上げられません。
  282. 吉田法晴

    吉田法晴君 申し上げられませんというお話ですが、私どもが聞いておるところでは、当時の吉田首相がダレス氏に対して若干の抵抗を示されたので、ダレス氏がその当時追放中の鳩山さんを呼んだ。再軍備なり憲法改正について、憲法改正をすべきだ、そうして再軍備をすべきだという意見を積極的に鳩山氏が述べられた。そうして追放を早く解除してもらいたい、明らかにそうおっしゃったかどうか知りませんけれども、そういう意図でお話しになったということを聞いておる。そうすると、吉田首相を批判せんがためには、自由党の政治を批判せんがためには、あるいは憲法違反説も言う、しかしアメリカから要請があって吉田氏の抵抗があれば、憲法改正、再軍備もすべきだと言う、そういう変説常ならざる、政治家として定見のない人だと言わざるを得ませんが、もっとはっきりした一つ答弁を願いたいと思う。
  283. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) そのときには、日本の立ち上りについて、財政経済のことについてもだいぶ話をいたしました。そういうようなことについて堪能なる人に会いたいというダレスの希望でありますから、経済について精通をしておる人、日本の立ち直りについて識見のある人を考えまして、高碕達之助君、小林一三君、石橋湛山君、そういうような日本の再建について識見のある人に対して行ってくれということを私から頼みまして、皆と一緒に行って、皆さんがダレスと話をしたのであります。
  284. 吉田法晴

    吉田法晴君 お尋ねをしておるのは、そのときに、今問題になっております再軍備なり、あるいは自衛隊を持つということでもけっこうですすが、自衛力を持つ、あるいは憲法改正の問題について触れなかったかどうか、こうお尋ねをしておるわけです。
  285. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) それは、やはり人との話し合いは、相手方の同意がないと、すべての話はできないと思います。
  286. 吉田法晴

    吉田法晴君 それでは御発表になりませんならば、時と場合によっていつでも変説をされる、御否定になりませんから、そうであったろうと私ども信じます。  それから、昨日の発言、今日の発言を聞いておりますと、前の発言あと発言とが脈絡なしにひっくり返ったり、あるいは食い違った説明をされるわけでありますが、誤解を生むような発言をしたということはお認めになりますが、最初疑いがあるというとき、それから一番しまいの自衛隊法によって曲げられたりという発言がございますが、大へん失礼なお話でありますが、前の発言あと発言というものの間に脈絡がないのでしょうか。あるいは御健康によって、どういう工合にしゃべっておるかということが十分おわかりにならないのでしょうか。その点を一つはっきり承わりたい。
  287. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) けさほどの御質問で、曲げられたりという言葉を、おかしい言葉を言ったということを私は言いましたけれども、あまりに理解ができなかったものですから、先刻また読んでみました。読んでみましたら、あれは自衛隊法というもので憲法が曲げられたりなんかしないという意味を言ったのでありまして、別に全体の趣博をくつがえすだけの語言ではないと思います。
  288. 戸叶武

    戸叶武君 関連して……。今までの質問の人々への総理大臣の回答で、やはり一番問題点になっておるのは、自衛隊法が通れば憲法に対する解釈は変えてもいいという店に重点が置いてあるようでありますが、先ほどの法制局長官憲法に対する問題の答弁は非常に明快でありまして、とにかく国会におけるところの言動というものはきわめて重大なんであります。しかしながら、こと憲法改正に関する基本的な問題というものは、憲法改正国会において議決された場合以外においては、勝手なそういう解釈は許されないものだと思うのです。少くとも鳩山さんの人格は、在野であると内閣総理大臣であると、鳩山一郎の人格には私は変りはないと思う。政治家としてのそこが見識であると同時に、政治家の言動における責任の生ずるゆえんだと思う。それが、国会において自衛隊法が通ったとたんに、自分自衛隊に関する問題は、違憲であったという考えが変った。こういう突然変異を生ずるということは問題だと思いますが、それを少しもあなたは突然変異と思っていないか。そういうふうに法案さえ、疑問を持つものでも、国会を通過すれば、憲法違反と思われるようなものでも、それは憲法違反でなくなるという論理に展開できるものであるかどうか、その点を明快に御回答願いたいと思います。
  289. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 憲法に対する解釈の問題です。憲法に対して、私が第九条を、以前のように軍隊を持てないものというふうに考えたのも解釈一つのいき方なんです。それが自衛隊法が通って、日本を守るためには、正当防衛のためには軍隊が持てる、兵力が持てるというよう、な意味に、国会で通過いたしましたから、私の第九条に対する解釈を変えたというようなことは、これは少しも不都合なことではないと私は考えます。
  290. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) 戸叶さん、簡単にして下さい。
  291. 戸叶武

    戸叶武君 簡単にします。このイギリス憲法等においては、慣習法が非常に重要視されております。しかしながらこういうような憲法の基本的問題というものが、憲法違反疑いがあるような法案が国会を通過したというだけの理由でもって、その憲法に対する解釈というものを、政治家としての鳩山さんが変えていいものであるかどうか、その点を私は聞いておる。答弁が不明確です。
  292. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 一つの独立国が自分を守るためには兵力を持てるというのは、私は独立国として自衛力を持つことができるというのは、ちょうど正当防衛の規定と同じように、その国が固有に持っている権利なんであります。その固有に持っている権利を、第九条がその権利を否定しているかどうかというようなことは、これは解釈の問題でありまして、それを衆議院において、国会において、固有の権利、すなわち自衛の権利であるということを明白にして、そうして自衛隊法もできた以上は、固有の権利を持つということが優先する、こういうことが明瞭になったのでありますから、九条に対する解釈を私が変えても、一向不思議なことではないと自分では考えております。
  293. 戸叶武

    戸叶武君 最後です。これは重大な問題だと思うのです。憲法改正は容易にできないことを規定して、憲法第九条の改正ということはうたわれておるのです。国会におけるところの法案が通過するのは、憲法改正の通過とは私は様式も異なっておると思うのです。しかるに、憲法改正もしないで、国会におけるところの法案が通りさえすれば、憲法解釈に対して勝手な解釈ができるというような前例が開かれるならば、憲法改正というものの必要もなくなるのです。この憲法におけるところの第九条の否定にもなるのであります。私は、そういうふうに国家の基本法というものは、一つの法案が通過したから、それによって、その法案に対しては、憲法違反疑いがあっても、法案が通過したということによって、それが憲法違反でなくなるというような解釈の仕方に変えていく前例を作ってしまえば、憲法改正の要はなくなるのです。法案さえ多数決によって通過させれば、勝手に憲法改正することができるのです。そういう前例を国会に開くというようなことを総理大臣みずから企てておるとしたならば、それ自体が憲法違反の大問題です。総理大臣はそれに対して明快な、この問題はあとで問題がございますから、答弁を願います。
  294. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 私は、法律の通過によって憲法改正せられるというようなことは考えません。
  295. 吉田法晴

    吉田法晴君 その問題はあとでお尋ねをしますが、三つ首相は答弁をされている。どれがほんとうなのか、明確に願いたいと思います。在野時代には、憲法違反であると思っておったけれども自衛隊法が通ったから合憲だと思うようになったと、こういう答弁と、それから自衛権というのは国の固有な権利だから、それは憲法以前からあるのだ、それを初めから思っておったように答弁された。この、初めは違憲だと思っておったけれどもあとから思ったというのと、初めからとにかく違憲ではないというのとは、これは違います。これはどっちなんですか。それからもう一つ、先ほど速記録最後のところに、国会を通過した自衛隊法によって憲法は曲げられたりはしないと、こうおっしゃった。そうするとそれは明らかに違います。前の二つとも——自衛隊法によっても、自衛隊法という法律が通っても、憲法は曲げられるものじゃない。そうすると、自衛隊法が通っても、憲法の……、最初考えておられた自衛隊憲法違反である、こういうような……、憲法は曲げられない、こういうことになって、全く今の説明と、先ほどの、こういう意味であれはしゃべったのだろうという点は違いますよ。その点いずれなのか、はっきりしてもらいたい。
  296. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 私は、自衛隊についての考え方と、第九条に対する考え方は、自衛隊法が通ったときに、私は自分の説を変えましたということを申しているのであります。
  297. 吉田法晴

    吉田法晴君 それでは先ほど言われた、国会を通過した自衛隊法によって曲げられたり云々というのは、先ほどは、国会を通過した自衛隊法によって憲法を曲げられるものではないという意味のことを言われたというのですが、それはどうなったのですか。それは間違いですか。わからぬうちに、何が何かわからぬうちに言われたのですか。先ほどここの発言説明になりましたあの発言は、どういう意味なんです。
  298. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 私は自分憲法に対する解釈を変えたというのでありまして、生きている憲法の、その法律を、憲法改正するという、憲法改正せられたというようなことを主張しているのではありません。つまり自衛隊法ができて、自衛隊法が第九条を変更したとか、自衛隊法が第九条を修正したとかいうような考え方をしているのじゃないのです。
  299. 亀田得治

    亀田得治君 はなはだこれはおかしいことですね。(「何言っているのかわからない。」と呼ぶ者あり)この自衛隊法によって曲げられたりというのは、(「曲げられたりしない」)と呼ぶ者あり)私はこの曲げられたと……、曲げるという言葉が変なんですが、解釈が訂正されると、こういう意味にお使いになったかと思ったら、むしろ逆で、曲げられたりはしない、こういう意味だといいますと、これは、はなはだ不可解な言葉づかいであります。といいますのは、自衛隊法ができたって、現実にこの文章で書かれた憲法、これが訂正されるとか、そんなことはあり得ないということは、こんなことは当然です、こんなことは。だから問題は、そんなことをあなたがおっしゃるはずがないでしょう、そんなことを。何も憲法改正案じゃないのですから、自衛隊法は……。そんなものによって成文憲法が影響を受けるということはあり得ないでしょう。そこで問題は、あなたがこういう言葉を使われたのは、むしろ自衛隊法ができたことによって自分が今まで考えていた憲法解釈を、曲げるという言葉が変ですが、少し変えたのだと、それが正しいあなたのそのときの気持じゃないですか。私はむしろそういうふうにまあ解釈できるかなあと思って、これはきのうから実は考えておるところなのですが、あなたはむしろ逆におっしゃるのですな。おかしいですな、その点、納得ゆきません。もう少しわかるように説明して下さい。
  300. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 私さっきここで指摘せられましてから、昼飯のときに一度読んでみたのです。それで、曲げられたりというのはおかしいと思いましたが、これはやはり自衛隊法ができて、憲法を修正したと、修正されたというようにとるべきものではないという意味に……、こう思ったのであります。
  301. 吉田法晴

    吉田法晴君 今の説明は、先ほどの説明と違う。先ほどは自衛隊法によっても憲法は曲げられたりはしないと、こう言われた。今亀田君が教えてあげると、曲げられたと、全くこれはどういう説明をされるのか、どういうことを言おうとされるのか、これは、はっきりせぬ、わからぬ。そこで一つ、これはなお速記録をよく調べて、時間も切れましたから、改めてこれはやはり検討しなければならぬ。何を言っておるのかわからぬ。  そこで、まあ最後にお尋ねいたしますが、一番みんなが今心配しておりますのは、憲法も、これは首相が午前中言われたように、成文憲法を中心にして、(「そんなことはコンニャク問答だ」と呼ぶ者あり)制定当時の解釈が、これが憲法の真精神であり、憲法の構成でしょう。運用もそれによって行われなければならぬのでしょうが、それが自衛隊法を作ることによって自衛隊が合憲的になる、こういうことになるならば、どんなことでも憲法は実質的に変えられるじゃないか、こういうことを一番心配しておるわけであります。そこで、これは首相も認めておられますけれども憲法は海外派兵は禁止しております。あるいは徴兵制は、日本国憲法第九条によっては実現、実施できません。ところがあなたの言われるように、自衛隊については、法律が通れば、過半数で法律が通れば、自衛隊が、違憲であったものが合憲になるということになるならば、海多派兵も過半数によってこれは合憲になってくるでしょう。あるいは攻撃的の、急迫不正の攻撃があれば、これに対して侵略をする、あるいは攻撃する。ところが私どもは、敵の基地の上に行って飛行機が爆弾を落すという御答弁の実質の内容考えると、それは憲法によって許されることではございません。しかし、それも国会が認めるならば、過半数で憲法解釈を、それも憲法で許されるのだ、こういうことになるならば、海外派兵は実際に行われるでしょう。院の決議がありますけれども、再びこの問題について、解釈について国会が、(「派兵は……」と呼ぶ者あり)黙っておれ、(「要らぬことを言うな」と呼ぶ者あり)半分の意思によって実際に海外派兵ができるような解釈を決定すれば海外派兵ができる、こういうことになるわけでしょう。あるいは徴兵制にしてもそうであります。防衛ではなくして応戦する、戦争する。あるいは原水爆戦争の中に突っ込むという事態が起って参ります。あるいはこれは過去の例でありますけれども総理もそれは希望しておられぬでございましょうけれども、あるいは、かつてのドイツの授権法のごとき、あるいは日本の総動員法のごとき、国家の法律を作れば、違憲であったものも違憲でなくなるというならば、憲法の原則は全部根本的にくつがえすことができます。総理は、そういう法律をもってするならば、国会が過半数をもってするならば、憲法九十八条に違反して憲法の実質的な改訂ができると、こうお考えになりますのかどうか、明らかに御答弁を願いたいと思います。
  302. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 先刻も申しましたが、法律をもって憲法改正することができるというような考え方は私はしておりません。さっき明瞭に言ったつもりであります。
  303. 吉田法晴

    吉田法晴君 時間がなくなりましたから、先ほどの、憲法違反と思ったがその後変ったと言われるのか、あるいは初めから自衛権というものがあるからということで自衛隊を合憲と言われるのか、あるいは自衛隊法によって憲法が曲げられたと言われるのか、あるいは曲げられないと言われるのか、その点はこれは委員会として後刻明らかにしていただきたいと思います。速記録を見た上で明らかにしなければならぬと考えます。  なお、法律をもってするならば憲法解釈も自由にできる、憲法違反のこともあえてできる、こういう危険は残っておりますので、あとでまた論議せられることをお願いし、あるいは私も論議いたしたいと思います。
  304. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) 以上で別ワクの質問終りましたから、予定の日程に入ります。平林太一君。
  305. 平林太一

    ○平林太一君 御職務上とは申しながら、老躯を押して激職に奉仕をせられつつある首相鳩山君の労苦、心労に対し、この機会において深厚なる友愛の意を表したいと思う。御自重、御自愛あられむことを切に願ってやみません。  緊急と認める数点に対してただしたい。第一は、日本と韓国との関係は悠久の昔からそうであったごとく、永遠の将来にわたって好むと好まざるとにかかわらず、隣国として生存を続けなければならない共通の運命を地理的に持っておる、になっておることは申すまでもありません。日韓関係問題に対する現状はいかように相なっておりますか。また、両国間の友好関係促進のため政府は現にどのような措置をお運びになっておられるか、第一に首相より御答弁を求めます。
  306. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 韓国との国交調整につきましては、平林君の言われるように、非常に重大な問題であります。わが方といたしましては、あくまでも外交手段によって、平和な話し合いによりまして局面を打開いたしまして、両国永遠の和親関係を樹立するために、今後とも努力を続ける所存であります。このためには必要ならば米国のあっせんをも望みたいと考えておりますが、私より詳しいことを外務大臣からお聞き取りあらんことを望みます。
  307. 平林太一

    ○平林太一君 ただいまの総理の御答弁を了承いたします。詳細な点について外務大臣重光君より御答弁を求めます。
  308. 重光葵

    国務大臣(重光葵君) 日韓関係を正常化していきたいということは、政府最初からの熱望でございます。そのために、昭和二十八年の夏以来とぎれております日韓の会談を開きたいという考えをもって、主として東京における韓国の代表部と話し合いをしまして、あらゆる準備をいたして参りました。しかるに、その後交渉の決裂以来、いろいろ韓国側にも誤解がございまして、なかなかその誤解を解くことも容易でないのみならず、韓国側においてもいろいろ漁業の問題等について強硬な手段をとってきたようなわけで、どうかして話し合いによって好転をさせようと思って努力いたしたのでございますが、いまだに全般的の交渉を再開するという運びには至らないのはまことに残念しごくでございます。  まず第一に、両方の国の空気をよくしなければなりません。そこでさしあたってわれわれの熱望いたしておりまする日本漁夫の送還の問題等から具体的に解決して、少しでも空気をよくしようということに努力をいたしておりますのでありますが、これもいろいろな手続問題等について故障がございまして、まだ思う通りに解決をいたしません。しかしながら、日韓関係は、今お話しの通りに、きわめて重大な問題でございますので、あくまで日本側としては誠意を披瀝して、そして平和的、すなわち話し合いによってその関係を正常化することに努力を今後も続けていきたいと考えておるのであります。もとよりこの問題については、最も重大なる利害関係を持っている第三国としては米国がございます。そういうわけでございますから、米国側にも十分に日本側の意のあるところを示して、そうして適当にこの問題についてあっせんをしてもらうように、尽力してもらうように常に連絡しているわけでございます。
  309. 平林太一

    ○平林太一君 ただいま外務大臣の御答弁中に、交渉再開に対して鋭意力をいたされておるという点については、これを了承いたすのでありますが、一昨年の交渉が決裂をいたしましたその原因として、韓国側があげておりますものは、第一に、いわゆる当時の久保田発言、第二は、日本は朝鮮の全財産の八割五分を要求しておるのである、だからかような過大なる要求には応じ得られない、こういうことが、この二つの理由が交渉前夜に声明をせられて、ついに今日に至っておるものと承知いたすのであります。  第一の久保田発言に対しましては、いわゆる日韓併合は、精神的にはしばらくおいて、物質的には日本が韓国に対して利益、恩恵を与えたのである、こういう発言である。私はきわめて率直な意味におきまして、それで差しつかえないと思います。受け入れる方も、それに対して何かひがみを持って考えさえしなければ、それでよろしい問題であると思います。  それから第二の問題に対しましては、朝鮮の全財産の八割五分に達する、こういう膨大なものを日本が要求しているということでありますが、そういうことは正式に御要求に相なる、そういうことを発表せられたのか、朝鮮側にそういうものが通ずるような措置をおとりになられたか、その点を第一に伺いたい。  それから第二には、それはそれとして、現在朝鮮、韓国における鉄道、港湾、学校、病院等の施設、あるいは多年にわたって不毛の地を美田沃野と化せしめた、こういうようなものの評価を外務省としてはどのようにこれを算定しておられるのか。また大蔵省からは本日は森永主計局長が出席せられておるが、当事者としてそういう用意ができているかどうか、その点を伺いたい。
  310. 重光葵

    国務大臣(重光葵君) 日韓交渉におきまして、その決裂の当時に、二十八年の夏でございますが、決裂の当時に、お話の通り、久保田発言なるものが非常にその原因をなしたということはその通りでございます。私は、今久保田発言内容についてお話がございましたが、それよりも何よりも、これはその時期を得なかった発言だと私は今日思っております。かようなことで交渉の前途を暗くするということは適当でなかったと、実は考えております。従いまして、将来日韓の関係がその発言を取り消すがために好転して、交渉がなめらかにいくようなことになるとするならば、私はこれは、かような発言は今日においては先方の希望に応じて取り消しても差しつかえはないように思います。  なお財産権の問題でございます。財産権は、日本が朝鮮において財産権を持っている、従来持っていたということは、これはまあ非常に大きなものであったことは事実でございます。その財産権につきましては、サンフランシスコ条約の規定によって律すべき条項もございます。その財産権の問題、まあ日韓両方の財産権の問題について、いろいろ話し合いをしなければならぬということは、これは当然のことだと思います。しかし、わが方が八割五分の韓国側の財産を要求したというようなことは、要求したことは全然ございませんことをここに申し上げます。  なお、これらの価格評価等につきましては、私、今手元に材料を持っておりません。外務省にありますれば、また御報告をいたすことにいたします。外務省になければ、その他の省にお願いすることにいたします。
  311. 森永貞一郎

    政府委員森永貞一郎君) 朝鮮所在の財産の調査でございますが、特に朝鮮所在ということではございませんが、終戦直後、たしか二十二、三年であったかと存じます、各地域別に在外財産の所在数量、価格等につきましての推計をいたしたことはございます。これは全く推計でございまして、直接本人等からの報告を基礎とするといったようなものではございません。間接の資料等を基礎にした推計的なものでございましたことを、特に申し上げておきます。
  312. 平林太一

    ○平林太一君 今の御答弁で、大体の見通しは私としてはつきましたのですが、要するに、自来、あるいはわが国の漁民の不当逮捕というような処置を先方がいたしておりまする以上、この交渉の再開を急速ならしめ、かつ両国ともに話し合いの上で妥結いたしまするの方途は、わが国といたしましては、交渉の焦点を財産問題にしぼり出して、先方と真剣に折衝をいたすということがきわめて大切だと思います。この点を申し上げて、これに対する御答弁は求めません。  次に申し上げたいと思いますことは、日比賠償問題であります。この問題に対しましては、当初外相は、大野会談において、四億ドルということは両国間において取りきめがむしろ成立いたしたといって申し上げても差しつかえない事態であった。また外相に対しては、マグサイサイ現大統領がこれに対して承認を与えておったということは、常識上判断のでき得ることであります。しかしそれよりもよりはるかに重大なことは、この日比賠償に対する性格の根本的再検討を、政府としてはお考えになる必要があられはしないか。この発生したゆえんは、講和条約第十四条によっていわゆる役務賠償ということに規定をされておる。それからまたこの賠償全体の問題に対しては、いやしくもわが国の経済を阻害しない範囲内において、その余剰をもってこれに応ずるということである。第三には、役務賠償に対する資材は、ことごとく当該相手国がこれを負担して、当方でこの役務の賠償をする、こういうことであります。サンフランシスコ条約におきましては、この条約をわが国は受諾いたしたのでありまして、今日フィリピンがわが方に要求をいたしておるというこの問題は、一方的にフィリピンが条約を無視してこの賠償を要求をいたしておるというこの事実は、私といたしましては、条約を履行尊重する意味において、この点は賠償問題に対する根本的な問題を政府としてはお考えにならなければならないと思う。首相鳩山君の見解をただしたいと思います。
  313. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 外務大臣がおりませんので、外務大臣が答弁する方が正確かと思いますが、おりませんから、私から簡単に答弁します。  大野・ガルシアの約束というものは、先方が承認をいたしません。それで、これは実行はできなかったのであります。それでありまするから、やむを得ず、第二段の交渉をしておるのでありますが、第二段の交渉についてフィリピンはできるだけの誠意を示しておりまして、基本的の原則については、大体両国間において成立しかけて参りました。不日日比の賠償の問題は解決できるように思っております。詳しいことは外務大臣から適当のときに詳細に答弁をしてもらうことにいたします。
  314. 平林太一

    ○平林太一君 外務省からは、今日はアジア局長等が出席していないことは、はなはだ怠慢ではないか。そういうことは外務大臣がいない場合に、当然これを補足すべき当事者が来ておらなければならない。委員長にお尋ねいたしますが、全然来ておりませんか。
  315. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) 今督促しておりますから、ちょっとお待ち下さい。
  316. 平林太一

    ○平林太一君 ただいま総理より御答弁があったのでありますが、大野・ガルシア会談は、いわゆる正式に、今お話しの通り、正式に成立したということは、当然両国間において正式な賠償問題に対する手続、取りきめというものがあったときに発効し、発生するものであると、私は承知しております。しかし条約の問題に対しましては、従来の慣例といたしまして、両国間の当事者が話し合いをいたして、その妥結したものがいわゆる正式にこれが成立をしておるということを、この際申し上げて、大野・ガルシア会談に対する首相と私との見解の相違を明らかにいたしておきます。  特にこの際、まことにこの賠償問題に対して感慨の深いと思いますことは、講和条約をわが国が受諾するその会議の席上において、当時フィリピンのロムロ外相はこれに対して留保するという、いわゆる条約に対してフィリピンはこの条約を留保する、日本と直接交渉をすると発言をしたときに、当時条約の共同提案者でありますところの英米両国、そのうちの英国のヤンガー代表がかようなことを述べております。何ものかが出てくるという希望のもとに賠償の支払いを日本に要求することは、容易であったかもしれないが、しかしそれはわれわれにとって短見者流の政策であり、必ずや将来においてわれわれと日本の間の憤激を作る基礎となるであろうと。わが方の代表全権は一言も発しなかった。これが今日の禍根をなしておる。見るに見かねて、英国代表はこれを述べておるという事実であります。それでありますから、日比賠償に対しましては、私は、正々堂々としてこの講和条約第十四条を順守してこれに当られることが、きわめて妥当であると思います。従いまして、賠償額に対しましては、おのずからその基準算定というものがここに生じて参ります。わが国民の粒々たる膏血の結晶、これがいわゆる賠償等によって、この苦難がいよいよ加わることを深く憂えまするがゆえに、この際あえて私はあらためて首相の御見解をただしたいと思います。
  317. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) この問題は、条件等につきましては外務大臣がよく知っておりますので、他の機会において外務大臣から詳細に答弁してもらいたいと思います。
  318. 平林太一

    ○平林太一君 ただいま首相から、他の機会において答弁を外務大臣からさせる、こういうようなお話でありまするが、私はかような問題はむしろ国の政治の全体の問題といたしまして、首相の心づかいが、この賠償負担に対する心づかいというものが国民の中に反映をいたしておらなければならないものと思います。具体的のことは今お話しの点で了承をいたしましたが、重ねてこの点に対しまして総理の御所懐をただしたいと思います。
  319. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 平林さんの言われたこと、まことにごもっともでございます。よく外務大臣に伝えまして、御趣旨が到達するように申し上げておきます。
  320. 平林太一

    ○平林太一君 はなはだ重要な問題に対しまして、私といたしましては非常に遺憾であるということを申し上げておきます。  その次にただしたいと思いますことは、ダレス米国国務長官、ロバートソン国務次官補が来たる十八日に来日せられるということを聞き及んでおりますが、これはその通りに承知いたしてよろしいかどうか、まず第一に伺いたいと思います。
  321. 根本龍太郎

    政府委員根本龍太郎君) アメリカのダレス長官とロバート損国務次官補が来るということは、連絡がございます。
  322. 平林太一

    ○平林太一君 それにつきましてお尋ねをいたしたいのでありまするが、日米両国の関係に対しましては、今さら申すまでもありません。この機会に両国の緊密なる国交を深めることはきわめて好機会と思いまするので、この点を申し上げておぎますが、それにつきまして具体的にはどういう問題が取り上げられるか。また私といたしましては、このような問題を取り上げて総理としては鋭意話し合いをせられたい、  こういうことを申し上げたいと思いますが、まず第一に申し上げたいと思いますことは、先のソ連共産党大会で示された新しい動きをどう見るか。これは総理おわかりでありますか。これが第一。  それから第二は、昨年暮以来のソ連のアジア地域に対する経済進出をどのように見るか。また解剖するか。第三は、米国のアジア地域に対する経済援助をどう進めるか。従って、日本に対するこのことに対する処置はどのように考えておるか。第四は、今年中に表面化してくるであろうと予想せられる中共の国連加入ないし承認を、どのように取り扱うか。  こういうこの四つの問題に対しましては、私のすこぶる関心を持っておる問題であります。この際総理はこの四つの問題に対しまして、どのような今日見解をお持ちになっておるか。またダレス長官を仰えるに当っての心の御用意として、どのような御用意をお持ちになっておりますか。総理より一応承わりまして、官房長官においてもこれを補足せられて、これに対する御答弁をわずらわしたいと思います。
  323. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) ダレスが参りましたときに、どういうような話し合いをするかということについては、慎重の態度をもって臨みたいと思っております。よく協議をいたしまして、選択をいたしたいと思っております。滞在の時間は非常に毎かいので、先方ではできるだけの時間をさくという話でありまするから、しばらくの間は談合はできると思いますけれども、わずか一日か二日の日本の滞在中にの話でありまするから、十分な話し合いはできないと思っておりまするけれども、日本でアメリカとの間に話し合いたいという問題はずいぶんたくさんありますので、これをよく整理いたしまして、短時間で話い合いができるように、最近に用意をしたいと思っております。  ただいまお話しになりました四つの事柄については、むろんダレスに話したいと思っております。
  324. 根本龍太郎

    政府委員根本龍太郎君) お答え申し上げます。ただいま総理の御答弁で尽きてるとは思いまするが、ダレス長官が今回来日されるのは、日本との会談が主目的ではなく、アジアにおけるアメリカの外交官会議のために出席せられて、その機会に日本の政府並びに政党の首脳部にも会うというような意向に伺っておるのでございます。従って、日本側との会見の時間は非常に短かいのでございます。従いまして、特定の事項について交渉するということではない。総括的に日米間の親善並びに関係の密接化をはかるというような意味において、総括的ないろいろのお話が出ると存ずるのであります。従いまして、その際における、今平林さんの御指摘になった点は、重要なるこれが話し合いの内容をなすことができると思いまして、総理が申されたように、短時間に両国間の広範な問題を論議するに当りましては、どの問題を選択してやるべきかということについて、目下関係方面といろいろ協議中でございます。
  325. 平林太一

    ○平林太一君 今根本君から、日本へ来ることが主たる目的ではない。しかし日本に一たびダレス、ロバートソン、この二人が来た以上は、何か日本に目的があって来るのであって、そういうような答弁を逃げられることは、非常に卑怯である。私も日本の問題についてこれは聞いているのでありますから、御注意を願いたい。しかも、ただいま具体的なお話を承わることができないので、はなはだこれは遺憾であります。私は一つの項目をあげて、これに対してはどういう用意があるのであるかということは、きわめてお話の通り重大でありますから、これをただしておるのであります。  国内問題といたしましては、中国貿易に対しまするところの制限緩和の問題、小笠原諸島の帰属問題、先ほどお話を申し上げました日韓関係の調整、それから米国の、最もこれはなまなましい事柄でありますが、米国の原水爆実験についての問題、こういうものに対しましては、今日ただいま、総理はお疲れになっておるようでありますから、この際私からはそれを御遠慮申し上げますが、官房長官根本君から、この問題について具体的な答弁を承わっておきたいと思います。
  326. 根本龍太郎

    政府委員根本龍太郎君) お答え申し上げます。ただいま御指摘に、なりました問題等も、外務大臣が、ダレスさんなどと会うときには議題になると思っております。しかし、現在その問題についてどういうふうに申し出るかについては、まだ協議いたしておりませんので、私、主管でありませんから、十分御説明できないのを遺憾とするのでありまするが、そうした問題等も外務大臣を中心として向うと話し合う議題内容について、ダレスさんが来るまでには協議する手はずにはいたしておる次第でございます。
  327. 平林太一

    ○平林太一君 この問題はこれ以上申し上げましても、益なきことでありますので、一応私はとめておきます。  第四は、その次にただしたいと思いますことは、内政問題としての綱紀紊乱、粛正のことであります。官紀弛緩してとどまるところを知らない。このことはまさに政治の基本、根底をゆり動かす大いなる問題であります。首相はこれに対し、いかようの御覚悟をもって平生政務に当られておられるか、また対処せられておりまするか、承わりたいと思います。
  328. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 先だって決算委員会におきまして申し上げました通りに、綱紀の粛正と申しますか、官紀の紊乱というか、これはどうしても急速に粛正をしなければならない問題でありまして、その方法につきましては、いろいろと決算委員会で申し述べたつもりでありますが、とにかく行政機構の改革をするに当っても、ここに重点を置きまして十分検討をした次第でございます。どうにかしてああいうような、不祥な事件がだんだんだんだんと激増してこないようにする工夫を考えなければならないと思うのでありまして、これについては主管大臣から詳細に、ある機会において申し上げたいと思います。
  329. 平林太一

    ○平林太一君 ただいま総理から、これに対する粛正に対しては、鋭意力を尽すというお話を承わりましたので、私もそのように承知をいたすのでありまするから、この点は十分にそれぞれの措置をおとりになられて、このことの達成に力を尽されたいということを要望いたしておきます。これに関連をいたしまして、防衛庁長官船田君にお尋ねをいたしますが、先般防衛庁内において、会計検査院から批難事項、不正事項、不当事項として、こともあろうに防衛庁の中からこれら犯罪者を出したということは、これはいずれの官庁においても同様なことであるが、ゆゆしい問題であると感じております。以来船田君はこの自衛隊に対して、平生どういう軍紀——昔で申しますれば軍紀、軍律、今日は隊というから隊律と申しましょうか、そういうものに対してどういう御処置をおとりになっておられるか。この点をこの際あらためて伺っておきたいと思います。
  330. 船田中

    国務大臣(船田中君) ただいま平林委員から御指摘になりましたように、防衛庁及び自衛隊並びにその所属機関等におきまして、会計の経理の上におきまして、不当年頃として会計検査院から幾多の事項について指摘をされたということは、まことに遺憾に存じまして、就任以来私はこの実情を十分調査をいたしまして、先般三十数名の者に対して処罰をいたした次第でございます。免職、戒告あるいは警告、注意というようなことで、将来を十分戒飭するようにいたした次第でございます。今後機構の上においても、また紀律の上におきましても、再びかような間違いのないように、今後十分努めて参りたいと考えておる次第でございます。
  331. 平林太一

    ○平林太一君 ただいま船田君の答弁中に、私から要求いたしておりまする、平生におけるいわゆる自衛隊の教育方針、教育上どういうものを根本義として自衛隊の自粛、紊乱しないような処置をしておるか、教育方針、こういうものをあらためて伺いたい。
  332. 船田中

    国務大臣(船田中君) 自衛隊員に対しましては、自衛隊法に命ぜられてありますように、自衛隊がわが国の平和と独立を守り、また直接の侵略もしくは間接の侵略に対しましてわが国を防衛する、その自衛隊法に命ぜられておりまする任務を十分自覚いたしまして、平素徳操を磨き、一般市民としてもりっぱな市民になり、なお、かつ防衛の重責をになって間違いのないりっぱな隊員として育成されるように教育をいたしておる次第でありまして、ただ各隊におきまして、その自衛隊法に命ぜられております任務を、それぞれの隊に適合するように十分注意をいたしまして、隊員の自覚を促し、また隊紀の維持訓練に努めておる次第であります。一昨年七月一日に自衛隊法が施行されまして、わが国の防衛の重責をになったということを自覚いたしまして、最近隊員の士気もだんだんあがって参っておりますが、今後におきましても、この愛国、愛民族の精神によりまして、十分隊員の教育に遺憾なきを期したいと存じておる次第であります。
  333. 平林太一

    ○平林太一君 今の船田君の御答弁は、私が要請をいたしておりまする内容とは、一応そういうことも承知いたしますが、それよりもはるかなことを私の方では憂慮してお尋ねしておるのであります。いわゆる武装を持った一つの最大至高の力を持っておる。今日わが国における全体の力の比率というものから見まして、武装を持った最大最上の力を持っておるのが自衛隊である。外に対してのことは、国の予算をこのように莫大に使っておるのでありますから、これは当然のことであります。しかし、かつてわが国の軍部はなやかなりしころを回顧いたしてみるにつけても、当時想像だもいたすことのできない五・一五事件ができた、あるいは二・二六事件ができた。経理が不当のために三十数名の処罰者を出だしたということは、経理の単なる問題ではない。そのようなことをいたしておるのであるから、自衛隊の内部においては、そろそろかつてのわが国の軍部と同様なる、いわゆる驕慢不遜あるいは越権なる行為が自衛隊内部に行われておるということを暴露したものである。従ってこれを放置いたしておきますれば、やがて国の内乱、反乱、騒擾、暴動、暗殺の温床、元凶が自衛隊であるという結果にならないということを何人といえども保証することができないということを、私は今までの過去のわが国の策の、歴史に徴して深く憂えるものであります。この際単に三十何人というような形式的な当該者の責任のみにとどめることなくして、往年の粛軍で、わが日本陸海軍がかつて当時の先覚君が粛軍をいたしたが、いずれも力のためにその志を達することかできなかった。そのために軍隊及び国民、ともに滅亡の墳墓に至ったというのが大東亜戦争の終結である。この際自衛隊に対する粛隊、いわゆる自衛隊内部のこの根本的な改革に対して防衛庁長官たる船田君は、三十六人をもって責任の所在を明らかにするということにとどまらずして、断固として今日の自衛隊における陸将、海将あるいは空将、これにまで処罰の範囲を広げる御意思ありやいなや、伺いたい。
  334. 船田中

    国務大臣(船田中君) 隊紀を粛清するということについては、ただいま御指摘の、ようにまことにごもっともだと存じますが、先ほど御説明申し上げましたように、今回会計検査院から指摘せられました事件についての処置といたしましては、きわめて厳正にいたしたつもりでございまして、これ以上に今御指摘のように陸将、海将、空将等にまで及ぼすということは考えておりません。もちろん下剋上になったり、あるいは陸海空の間に相剋摩擦を生ずるというようなことのないようにして参り、かつ政治優先ということはどこまでもこれを厳守いたして参りまして、国策に沿うりっぱな自衛隊として育成していくようにいたしたいと考えて、またその覚悟をもって進めておる次第でございます。
  335. 平林太一

    ○平林太一君 船田君の御答弁は防衛庁長官として、単に長官として長官たらんための御答弁である。栄誉礼のらっぱに陶酔いたしておりまするというと、容易ならざる事態がこれはできるということを今日私は予言してはばかりません。船田君においては、ここに総理もおられるが、総理戦争中にどういう行動をとられたかということは天下人々周知の事実であります。しかしそのことがどういう結果になったかということを今日十分に考えられて、ことに憲法改正の問題が今日非常に台頭いたしておりまするこの際、この問題はいわゆる——もちろんこれは憲法改正をどうするかということは、具体的には非常にこれはむずかしい問題であり、また歳月を、一カ月、二カ月をもって解決せられる問題ではない。しかし憲法改正の問題が今日世論になっておりまするにつけましても、その主たる目的はいわゆるこの自衛隊が変って再軍備をするのだ、それが世論の常識であります。再軍備をすれば徴兵制度が勢いしかれるであろうというところに非常な疑心暗鬼と憂慮が払われておる。そういうこの際に、その前提とも見なして差しつかえない自衛隊がすでに今日のような状態であっては、これが憲法改正に対しても、もし改正を是とする場合におきますることを考慮すれば、重大なる障害、暗礁になるということを私は防衛庁長官船田君は重大なるあなたの責任としてお考えになっておかなければ、悔を千載に残す結果になるということを深く申し上げておきます。のみならずただいまは責任の所在に対して三十何名をもって事足りる、こういうようなお話でありまするが、それは私といたしましては納得することができない。船田君は防衛庁長官としてその顕栄の職を一日一日を続ければよいということではない。君の職が今日ただいま倒れるといえども、それが国家百年の大計のためにはあえて辞せたいということが大臣の大臣たる重責ではないか、これに対して船田君の正直なる信念をこの際あらためて伺う。
  336. 船田中

    国務大臣(船田中君) ただいま平林委員からの御忠告に対しましては、十分これをけんけん服膺いたします。しかしながら自衛隊員が今御指摘のように相剋摩擦を生じ、非常な将来の禍根を残すような言動をしておるという御指摘がございましたが、さようなことはございません。これは自衛隊の名誉にかけて私はここにはっきり申し上げます。隊紀の粛正につきましては、十分今後におきましても注意をいたし、また私も責任をもってこれを実現いたし、政治優先の建前はどこまでも厳守して参りたいと存じます。悔いを千載に残すというようなことのないように最善の努力を尽くして参るつもりであります。
  337. 平林太一

    ○平林太一君 ただいまやや良心的な御答弁と思わるるものがあったので、これを了承いたしておきます。しかし事柄は単にこの議場にたいて質疑応答をしたということによって済まされる問題ではないということを、重ねて船田君はけんけん服膺せられんことを強く要求いたしまして、私の質疑終ります。
  338. 中山福藏

    中山福藏君 私はただいまの平林氏の質問最後の段ですが、これについては私もふだんから非常に気にしておる一人であります。ソ連の革命、あるいはドイツの革命、いずれもこれは軍隊に対する教育の方針を誤まった結果がそこに具現して来たのではないかと実は見ておるわけです。従って憲法改正というような問題につきましては、ことに周到綿密に深い考慮を払わねばならぬ、私は今日まで憲法改正期成同盟会に入っておりませんゆえんはここにあるのです。実は日本人の国民性を相当考慮に入れて、この憲法改正に乗り出さねばならぬと思い、この会の趣旨が私の意に添うかどうか、かような意味から加盟すべきかどうかと迷っておる。それは御承知の通り英国におきましては、若い者が保守党を支持し、年寄りが革新、いわゆる社会党を支持しておる。これは全然日本の現状と逆である。これはやはり国民性からくる結果だと見ている。このごろあらゆる平和憲法擁護大演説会とか、あるいは自主憲法改正期成同盟会などに傍聴に参りますと、どんなことを言っているかと聞いておると、相手方のあげ足ばかりとって聴衆の感情に訴えて相手の悪口ばっかり言っておる。国民を納得させるような筋道は少しも立っていない。いたずらに相手方を罵倒し、きわめて扇動的な言辞を弄するにこれ終始している。これが結局与野党の間に公共の広場というものができない理由ではないかと考える。自己の所属する政党本位的な偏狭な頑迷さを捨て、国家をどうしたら与野党話し合いの上一つになって回復していくか——と申しますと少し語弊がありますが、育てていくかということを考えなければ、真に政治家として職責を尽したとはいえぬのじゃないかと思料するのであります。こういうふうな観点から私は首相にお尋ねする。首相が憲法改正調査会を設置するということでありますが、内閣憲法調査会を設置することそれ自体が、やはり内閣に便利な答申をはめ込んでくることになるのじむ、ないか。その改正案の中に挿入するということに結果がなるのじゃないか。だからこれはむしろ当然国会憲法調査会というものは置かれなきゃ、ならぬ性質のものじゃないかと思う。こういう点からまず首相のお考えを承わっておきたいと、存じます。
  339. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 憲法調査会にはむろん国会から委員になっていただく方がありますけれども、それに外部から学識経験のある者も加えた方が案を作るのに便利だと思いまして、とにかく憲法改正というものはむろん国会が権限を持っておることでありますから、国会の三分の二以上を得なければ憲法改正はできないのでありますから、その、案は調査会において遺漏のないものを作らなきゃならない。それには学識経験のある者の力を借りた方がいいと思います。学識経験のある者を半数近く入れる場合においては、内閣委員会を置いているのが前例なものでありますから、内閣に置いたわけであります。
  340. 中山福藏

    中山福藏君 今日憲法改正については世論が二分されて、ずいぶん騒がしい問題になっております。私は青年時代におもしろい体験を持っておるのですが、実は二十五、六のときに南洋ボルネオに行って山の中を跋渉しておりましたときに、ヘビとリスがにらみ合いになって木の上にとまっておった。これを見てどういうわけでこれが動かないかと思って近くに行って見ますと、両方ともにらみ合ったままミイラになって死んでおった。これは日本の世論が二つに分れ、その結果日本国民が二つに分れてにらみ合っておると、やがては体裁のいいミイラができ上ることを暗示するのじゃないか。国家としてのミイラが生まれ出るのではないかと考えられる。私はこの憲法の調査会でももう少し……、政府内閣憲法調査会の審議会を置くというようなことをやめて、国会に置かれて、小選挙区制の問題とともにもう少し検討されて、冷静に相当の時をおいて国民の判断を待つというふうになさらないと、日本人の国民性というものはほんとうに……奴隷根生が七、八百年続いているのですから、扇動者に利口な人間がいたら、国民がそれに乗っていくのじゃ、ないか、故に十二分に判断するための時期を与えなければ、なかなか国民をして右すべきか左すべきかという判定をさせることはむずかしいのではないかと見ている。ことに憲法調査会というものが設置されますと、すぐ軍備というものをやるのだ、海外派兵をやるのだ、大資本家を擁護するのだ、お前の夫もおれの子供も死ななきゃならぬ、そういうべらぼうな憲法改正に賛成できるか、こういうふうに婦女子も若い青年も言っておるのです。私はなぜもう少し政府は徹底的に改正の目標や趣旨というものを掲げて、これを周知せしむる方策をおとりにならないかと言いたい。そうでなければ、日本の憲法改正というものはなかなか軌道に乗らない。だからもしどうしても憲法改正が必要であるとのおぼしめしがあるならば、一そう憲法全般にわたって、単に政府のいう憲法上の三大原則、すなわち基本的人権の尊重だとか、あるいは主権在民の原則だとか、あるいは家族制度を維持していくとか、戦争を放棄するとか、しぼられた部分以外の、全面的な範囲にわたって憲法改正する必要を力説すべきである。どの点が日本の国家並びに国民性にぴったりこないのだ、ことに人間の価値の自覚の上に立った、フランスの人権宣言の思想に基いたただいまの日本の憲法、これは世界一般共通の普遍的な理想に基いていると思うのですが、これに反し、明治憲法は、これは古事記や日本書紀やあるいは昔の伝説、換言すれば昔のおとぎ話を肯定し、その上に立った日本の憲法であった。だからホワイという問に対する正確な答えが出てこない。いわゆる古代の伝説を神聖化して、これに触れたならば刑法上の罪人になるという建前にありましたから、何らそこに歴史的な研究もなければ、あるいは哲学的な人間としての価値を認めるという人間らしい行動というものはなかった。この二大主潮の流れの上に立った明治憲法と現在のこの憲法との区別がここに現われておるのであります。でありますから、憲法改正をするにしても、昭和十二年以来というものは歴史を習っていない。今の二十五、六の青年までは習っていない。明治憲法のような復古調を帯びた憲法を作る方がいいかどうかということは、青年というものは全部迷っている。私は日本のすべての古代の伝説というものを一種の哲学として見ております。これを現実的に明治憲法上の証拠があるかと質問されたら答えはなかなかできない。日本の明治憲法は、これをその根源を哲学的に思索してみる場合に、そこに初めて真の価値と神聖さが現われてくる。これらの問題について日本中の青年、学生に対して、文部大臣もここにおられますが、何らこれらの問題に対する分析とかあるいは指示とか、そういう点についてちっとも触れていらっしゃらない。単的に言って、憲法改正するかどうかという大きな場面に私どもは直面しておるのです。もう少しなぜ政府は徹底した態度をおとりになり、国民全般がなるほどとうなずいた納得のゆく憲法改正の手段をおとりにならないか。この点まことに遺憾に存じます。どうか首相並びに文部大臣、ことに文相は、自主憲法改正調査会の副会長か何かしていらっしゃいますね、そういうことから首相に並んで御答弁を一お願いしたい。
  341. 清瀬一郎

    国務大臣(清瀬一郎君) 今、中山さんのお問のうちでは、憲法並びにこれよりも高くても低くはない問題、すなわち日本の青少年の訓育の問題につきお触れになったと思います。非常に残念なことにわが国が戦争に負けまして、教育の根本も実は向うから授かったのでやっておるのです。日本の歴史を教えてはならぬとか、地理を教えてはならぬ、これを成文化して教育の指導要領、教科書の検定要領というものがございまして、これによってわが国古来の美風ですか、どこの国でも発展するのでありまするから、古来伝わったことにも改善すべきことば多々ございまするけれども、わが国伝統の美風はこれを教えることができないのです。中山さんの御郷里に近いと思いまするが、大阪の某学校では、卒業式で免状をもらって門を出るとすぐ帰ってきて、先生を袋だたきにした。実にはや、われわれとしては了解のできないような事件が起っております。これらは一番もとは教育を改革しなければならぬと思いまして、それにはやはり根本をやる必要があるというので、今回は臨時教育制度審議会というものをお作り願いまして、憲法改正の審議会と相並んで国の根本を研究していただく、かように考えております。今の国会に置くかどうかということです。私どもも以前憲法改正調査会は、憲法だから国会内に置いたらよかろうと考え時代もございましたのです。しかしいろいろやってみるというと、今総理大臣の仰せられた通り憲法のことは、単に現在の政治とか現在の法律の問題じゃない、古く歴史を考えなければならぬ。あるいは民族の特質を考えなければならぬ。国会内であるいは外交あるいは労働問題、これに繁忙である代議士だけではいけないので、やはり歴史、哲学、産業、これらの国内の知識を集めなければならぬ。そういたしまするというと、今の国会の知識では、昔と違って、公聴会というものを開くということまでは進んで参りました。昔は外の者を一つも入れなかった。しかしさらに進んで当選しない、代議士でないそれらの大家をここへ集めてきて、院内で代議士と代議士でない者との混同の会を開くといったような実例をここで開くというとどうなるだろうか。一つをやればだんだんそれがふえる。ゆえに院外の大家を集めて合同でやるということがいいと考え時代から、これはやはり外に貴く必要がある。外に置けば独立でもいいのでありますが、今の法制としては規則上は内閣内ということでありますが、内閣には置きますけれども、決して干渉はいたしません。干渉するようであっては値打ちはありませんから。すなわち国会外に置きますけれども、行政権で議事を一点一画といえども影響するようなことはいたしません。法制上は内閣でありますが、独立に審議していただくつもりであります。
  342. 中山福藏

    中山福藏君 総理は何か御答弁がその点についてございませんか。
  343. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 私はあなたと同じように憲法改正ということを非常に重大に考えております。これは急いではいけない、ゆっくりやらなくてはいけないと思います。それで委員会内閣においている間に日本中の意見がだんだん融合してきまして、帰一してくるようなのを待って憲法改正をやりたい、決して急ぐ必要は少しもないのであります。ゆっくりやりたいと思っております。
  344. 中山福藏

    中山福藏君 これは国民全体が納得するところに持っていっていただきたいのです。あまりお急ぎになると、ただいま平林氏も言われましたように、復古調を帯びてきて、ぐうたらな政治家が出て参りますととんでもないことになると思うのです。それでまあそういうふうな心配を持っておりまするから、十分御検討をわずらわしたいのです。私は社会党の申されることにも賛成しないし、また政府のおっしゃることにも批判的な立場をとっております。冷静に中正な立場から判断してみたいとふだんから考えております。そこでただいま清瀬文相の仰せられましたことは、それは大臣になるまでに心がまえをしておかなければいかんと思うのです。今の政治家は理想だけを大臣席でお述べになる、ところがこれからというときにはすべてもう辞職してやめてしまわれる、それが連続するわけですね。だから日本のすべての制度の改革というものは非常に遅々として進まないというのは、そこに私は原因があるのじゃないかと思う。自分が大臣になったらこうするというちゃんとでき上った策を持って、やはり閣僚として御発議になって、そしてすべての施策を行なっていただかなければ、国家の進運というものは停滞して進まぬと私は見ている。どうかそういうことの御反省をお願いします。  それから第二にお尋ねしたいのは、だいぶん自衛権問題でにぎわったわけですが、この自衛権というものは、国際法上十九世紀の末期から今日まで相当に議論のあるところでありますが、今ここで議論されておるのは、日本内地の憲法上の自衛権の問題だと思うのです。国際法上の自衛権というのは、これはだいぶん意義が違うのです。法上の自衛権というものと、ただいま御議論なさっております憲法第九条の自衛権と差別があるでしょうか。これは法制局長官をしておられました船田さんが非常によく御存じだと思いますが、林さんからでもけっこうです。これは首相に聞くとまたごちゃごちゃしていかぬですから、(笑声)どちらでもけっこうです。法律家として御意見を承わりたいと思います。
  345. 林修三

    政府委員(林修三君) お答えいたします。ただいま仰せられました通りに、国際法上いろいろ自衛権という問題は今まで過去において議論されておりますことは、これは御承知の通りでございます。これについては各国おのおのいろいろのことを言っておることは御承知の通りであります。ただ日本の今の憲法解釈としてわれわれが考えております自衛の範囲ということは、先般来総理大臣がお答えした範囲、これに限定せらるべきものと、かように考えております。
  346. 中山福藏

    中山福藏君 そうすると、今、林さんのおっしゃったことは、国際法上の従来の慣行になっておる自衛権というものと、日本の憲法上の自衛権というものとは違うと、こう承わっていいですか。
  347. 林修三

    政府委員(林修三君) 私の承知いたしておりますところでは、国際法的の自衛権というものも必ずしも一つの観念があるようでもないと思うのであります。国によって、時代によっていろいろなことを唱えておる、さようなものと思うわけであります。ただいま私ども憲法解釈として言っておりますことは、これは大体個人の正当防衛権と同じような観念に基くものが今の憲法で認められておる、かように考えておるわけでございます。
  348. 中山福藏

    中山福藏君 それは統一しておおきにならないと、とんでもないことがしばしば起ってくるんじゃないかと思うのです。外国人がいわゆる国際法上の自衛権を日本に行使したというときに、日本では自衛権解釈を国際法の自衛権と違わしてきて、おれの方じゃこう解釈するんだというので、そこでまた紛争が起る危険があるように思われるのですが、国際法並みの自衛権をお認めになる方が政府としてはいいんじゃないでしょうか、どうでしょうか。林さん、あなたは国際法上の自衛権の定義を御存じですね、それをはっきり言ってもらわぬと、いいかげんのでたらめを言ってもらっては因るのです。
  349. 林修三

    政府委員(林修三君) 御承知の通りに、国際法的に今までの過去の戦争とかあるいは国際紛争とか、あるいは国際関係において、それぞれの国が自衛権ということの名においていろいろのことを言っておりますことは御承知の通りでございます。しかし必ずしもこれはいかなる内容のものかということについて確たる内容があるということには言えない。国によって、時代によって違っておると思います。従いまして、日本の憲法としての解釈は、これは憲法の精神、憲法の趣旨から解釈すべきものと、かように考えております。
  350. 中山福藏

    中山福藏君 その点に疑問を持つんですがね。やはりこれは私は世界共通のものでなくちゃ、いわゆる海外からの侵略に対して自衛権というものを行使するかどうかということは非常な問題になるのですから、一応その点は内地と外国と解釈が違うのだというようなことを言われないで、やはり自衛権解釈というものは国際法の解釈と変らないことをはっきりすべきだ。国際法における自衛権とはいかなるものか、今その定説を御参考のため申し上げてみますが、一国が他国に対して国際法上の義務を尽さず、その利益を不法に侵害したり、あるいは怠慢によって他国民の生命、自由、財産を危難に陥れたときに、被害国がみずからの保全をはかり、国民を保護するため必要な手段をとる権利とされておる、こうなっておる。そこでそれには五つの条項があるわけです。第一には、国家またはその国民に対して急迫した侵害があること、危害を排除するに他にかわるべき手段がないこと、第三には、危害はこちらから挑発したものではないこと、危害を排除するに必要な限度をこえないこと、危害が相手方の不法行為または怠慢に基くものであるということなんです。ところが国際法上には実におもしろいことになっているのですよ。この行使の手段をとるためには、外国の領土に攻め入ってもよいということになっておる。そういう点は御研究になっておりますか。
  351. 林修三

    政府委員(林修三君) 自衛権の観念としての抽象的な意義は、今仰せられたことが大体認められておることと存じます。この点は憲法解釈としての自衛権の範囲についても、大体同じような観念でいっておるはずでございます。ただその自衛権の行使としての幅と申しますか、こういうことが過去において、国によって、あるいは時代によって、その名前によっていろいろな行動がとられたとうことは、これは歴史的にはあると思います。自衛権の観念は今おっしゃったようなことだと、かように考えます。
  352. 中山福藏

    中山福藏君 これは国際法上の解釈をしているのですから、あまり関連質問をその点においてはせずに、遠慮していただきたいのです。そこでこういうことが書いてあるのですね。上の自衛権には大体こういうことを書いておる。自衛権の発動または緊急状態排除のための行動は、たとえ兵力を用い相手国の領土を占領し、人民に強制を加える結果になっても、国際法の観念として真正の戦争と認めない、こういうことになっておる。こういうことを政府では御研究になっておかずに、これは憲法解釈だなんて……、あなたが法制局長官をしておる間はいいのです。しかしこれは後には通用しませんよ、そういうことは。これは世界共通のものでなくちゃならぬ。あなたは区別があるということをお取り消しになったらどうですか。
  353. 林修三

    政府委員(林修三君) これは憲法解釈は、憲法という国内法の解釈でございまして、必ずしもこれを国際法上の自衛権の観念、あるいは自衛権の普通の考え方と合せなければならぬというものではないと思うわけでございます。日本の現在の憲法の趣旨から、現に認められる自衛権の範囲は今まで申し上げた通りの範囲だと、かように考えます。
  354. 中山福藏

    中山福藏君 くどいようでありますが、もう一度言っておきますが、これは外国から侵略したときに自衛行動をやる、こういう規定の精神があるとあなた方は憲法第九条を解しておられる。自衛権という言葉は出ていないのですよ、この憲法には。だから法律家として、法制局長官としてはいわゆるこの自衛権の観念というものは、やはり世界共通の自衛権というものに違いないのです。その点からやはりこの日本の憲法解釈して行かないと、日本の戦前の井戸の中から天をのぞいておったような古い考え方ではだめです。やはり広くすべての共通した考えをお持ちにならないと、ただいま鳩山首相をお苦しみになったような立場をとらなければならぬことになる。こういう点を御勘考になっていただきたいとお願いするわけです。どうですか、船田長官、あなたはどう考えておられますか。あなたもこれから防衛庁長官としてこういうことは心得ておおきにならぬといかぬだろうと思う。前の法制局長官としての御意見もこの場合あわせてお尋ねしておきたい。
  355. 船田中

    国務大臣(船田中君) 先ほど法制局長官答弁されたように私も考えております。
  356. 中山福藏

    中山福藏君 まあ仕方がございません、そういう工合でしたら……。それから大蔵大臣見えましたな。
  357. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) おります。
  358. 中山福藏

    中山福藏君 異なことをあなたにお尋ねするわけですが、予算先議権というものは憲法第六十条かできまっておりますね。これは昔から国民による直接選挙が参議院の場合に行われていない時代に、予算先議権というものを衆議院が持つようになったものですね。参議院議員が直接に選挙せらるる場合は、衆議院の予算先議権という考え方はあまりに古過ぎる。それで今度憲法調査会なんかができた場合には、予算先議権なんということは憲法から、抜けなければならぬと考える。面接に税金を納める人がやはり予算を審議する力、権利を持っておるわけですね。だから日本の新しい憲法においては、昔の貴族主義、僧侶主義の、そういうものが上院の議員であった場合と違って、日本はすべてが直接選挙になっておりますから、この歴史的な過去の事実を打ち破って今度の日本の新しい憲法がもしできるとするならば、この先議権という考え方はやめなければならない。これは改正するのが当然じゃないかと信ずる、これはごく簡単な問題ですから、別に通知もせずにお尋ねするのですが、お答え願いたいのです。
  359. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 予算先議権の問題ですが、お説もあるいは一つ考えと思うのですが、これはやはり両院のあり方の問題と関連してくると私は思うのでありまして、今日のような日本の衆議院、参議院のあり方としては、やはり衆議院の方に予算先議権を今後においても与えるのが適当であろう、かように考えております。
  360. 中山福藏

    中山福藏君 やはり日本としては日本独自の見解に立って、今日ではすべて独創力を発揮しなければ時代にふさわしくないと、こうみておる。そういう点、過去のプロシャ式の時代錯誤の規定はやめるのが当りまえです。そういう点も改正の考慮に入れてもらいた  それから大蔵大臣にもう一点お尋ねします。大体日本の会計年度というものは四月の一日から翌年の三月の三十一日ということになっておりますが、これは英国並びにドイツと一緒ですね、日本のこの会計年度は。ところがソ連とか、フランスとかいうものは暦年度をとっておる。それからアメリカ、イタリーというものは七月の一日から翌年の六月の三十日ということになっておりますがね。ところが日本には寒帯、温帯というような所があって、寒冷地帯の仕事というものは極寒のときにはできないんですね。ことに昨年のような、予算が七月にきまるというような事態が生じた場合は、これは寒冷地帯ではほとんど仕事ができない、公共事業なんかというものは。予算の組まれる月がいかに仕事の上に大きな影響があるかということは、これは考えていただかなきやならぬのです。それで財政法というもの、これは十一条か何条かですね、私はっきり覚えておりませんが、多分十一条じゃなかったかと思う。財政法というものは憲法改正とにらみ合せるという考えもあるのですけれども、単独でも改正できる、そういうおぼしめしはないか。あるいはこれに対して外国にもいろいろ歴史がある、日本にも歴史があるわけですから、調査会や何かをまず設けて、この点について検討をやってみるお気持はないのですか、お尋ねしておきます。
  361. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 御承知のように、今年の四月から翌年三月の会計年度は明治十九年からありますから、すでに約七十年実行されておりまして、この制度が国の諸制度、国民の生活あるいは国の経済の上に大きな関係を持っておりまして、これを変えるということは非常に影響が大きいと思います。従いまして、特にこの会計年度が非常な支障を国に与える、国民生活に与えるというのでないとすれば、そう軽々にこれを変えるわけには参らぬと思います。今日そういう特に大きな支障も考えておりませんので、従って調査会を設ける考えも今のところ持っておりません。ただお示しの、この積雪寒冷地の特に公共事業等ですが、これらの事業とこういう寒い所との関係におきましては、歴年と会計年度が一致することが望ましい点もあると思います。がしかし、むしろこれは事業の方を積雪寒冷に適合するように施行して行くというのが適当じゃないか、また昨年ですか、暫定予算というような場合においては、こういう寒い所につきましては、特に六カ月というようなものを見積って暫定予算も組んで、そういうふうな季節関係を十分考慮することによって不便を除くこともできるのじゃないか。ただ積雲寒冷地における公共事業との関係につきましては、どういうふうな不便あるいは実情にあるかを、ただいま財務局その他大蔵省の機関を通じまして調査いたさしておる次第であります。
  362. 中山福藏

    中山福藏君 今日までのあり方を検討してみるとおっしゃるのですが、これも清瀬文相に申し上げました通り政治当路者になられる前に、こういうことはちゃんと心がまえをお作りになっておかれないと仕事は遅々として進まないのじゃないか、重ねて蔵相に申し上げておきます、これから研究するのじゃなくて……。あなた北海道に行ってごらんになりましたか、大蔵大臣北海道に行ってごらんになったと思う。東北六県に旅行されるとすぐわかる、土地の下が一尺も一尺半も凍るそうですから、やはりその雪解けの期間も見て、公共事業というものはどう、いうふうに運んでおるかということも検討してみなければならぬ。北海道に行ったら一カ月か二カ月しか働けない、そういうことから、こういう公共事業の補助金の問題が起ってくると思う。だからこたつに入って悪いことを考えないような予算の組み方をしてもらいたいと、こういうことを考えますから、私はこういうことは大いに研究の価値があるのじゃないか、こう考えまして大蔵省の反省を促したい。  もう一点大蔵大臣に、尋ねますが、新予算で、源泉徴収を受ける勤労所得について勤労控除というものを従来の一五%から二〇%にお引き上げになった、これはわかるのですね、ところが所得税率というものを引き下げずにこれだけを控除されておる、勤労控除というものをやっておられる、これはどうもつり合いがとれぬように思うのですが、これはどうも私は考え方がおかしいのじゃないかと思う、不合理じゃないかと実は考えておるのですがね。こういうことはどんなものでしょう。
  363. 森永貞一郎

    政府委員森永貞一郎君) 主税局長がおりませんので、かわってお答え申し上げますが、所得税を軽減いたします場合にいろいろなファクターがあるわけでございまして、基礎控除の金額を大きくするのも一つの方法でございましょう。それから今回やりましたように勤労所得の控除の限度を引き上げるのも一つの方途だと思います。それからお示しになりましたように、税率を全般的に下げる、大きく申し上げますとこの三つの方法があるわけでございます。その三つの方法によりまして減税の恩恵を受ける範囲がこれは非常に違ってくるわけでございまして、まあ減税財源の対象と見合ってそのいずれを実行するか、あるいはいかに組合せてやるかということを考えなくちゃならぬわけでありますが、今回の減税に際しましては、勤労所得者の税負担が比較的重い、そういう事実にかんがみまして、勤労控除が頭打ちになっておりましたのを引き上げる。それによってまず一番税負担の重いと言われている勤労所得者の税負担を軽減しよう、そういう趣旨に出たわけでございまして、減税財源が大きければ、これだけにとどまらず、ほかにもいろいろと減税の方法があるわけでございますが、減税財源の規模から申しましても、この程度にとどめざるを得ないというのが実情でございます。
  364. 中山福藏

    中山福藏君 時間の関係上、大蔵大臣に対してはこれだけでとめておきますが、また一般質問のときにやりますからどうか一つ。  次には法務大臣に一つお尋ねいたします。あなたは閣僚懇談会で、労働法規の改正、それから当面の日教組の動向に対する政策樹立、それから官界の粛正に関する件、教育界の革新に関する件、言論思想の偏向是正に関する件、農村を共産党の浸透から擁護する件、外国人の国家破壊行為に関する件と啓蒙宣伝に関する件、国民を誤まる言動に関する件、反共勢力の組合に関する件というような、いろいろな問題を法務省から閣僚懇談会に持ち出しになって、いろいろ検討が加えられておるということでありますが、その対策というものができ上りましたかどうか、この際お伺いしたい。
  365. 牧野良三

    国務大臣(牧野良三君) お答えをいたします。そういうことは僣越ですから全然いたしません。考えておりません。そんなことを言ったこともございません。何かの間違いですよ、それは……。
  366. 中山福藏

    中山福藏君 これは間違いと言って一口にお片づけになるほど、そう軽いものじゃないと思うのです。私が今読み上げた事柄は大事なことなんです。これは社会の思想の動向というものを決定する大きな外面的の理由なんですね。原因になる問題なんです。だからそういうことを考えないじゃ、これは済まされぬのじゃないかと思います。考えていただきたい。
  367. 牧野良三

    国務大臣(牧野良三君) お答えを申します。それは花村法務大臣のもとで治安対策懇談会というものをお作りになって、その委員会でそういうものをお取り上げになった、そういうことがあります。が、それを私のところでやりますと、ちょっとほかの役所のことをやることになる。閣僚として、国務大臣としてやるときには別の観点からやるべきだ。だからそういうものは私のところではとりあえず取り上げないで、進めないで、一般的なものは党がやるのが当然だというので、自由民主党にそのことを私は申し上げました。私のところではやらないのみならず、閣僚懇談会でも問題なんかにいたしませんでした。そういうことを思い出しました。お答えいたします。
  368. 中山福藏

    中山福藏君 私は大体牧野さんが好きなんです。あなたがそういうふうにあっさり答えを言われるので……。だから一つそういう気持で十分御検討をわずらわしたい。これは大事なことです。これは花村さんがやろうが、だれがやろうが、ほとんど社会の動向を決定する前提をなしているものだ。この問題を十分掘り下げて検討にならないと、内閣はくずれるとすら私は考えております。どうか法相は進んで御研究願いたい。そこでお尋ねするのですが、この前の議会で小林厚相がどういうことを言われたかというと、第三国人に保護費というものを二十四億円出している、こう言われているのですね。この二十四億円のうちの相当のパーセンテージが共産党の活動資金に供給せられているということはあなた御存じの通りであります。この二十四億円のうち、どのくらい活動資金に回っておるのか、あなたが御答弁できなければ、あなたの下僚の方でも差しつかえない。その点を答弁させていただきたい。
  369. 牧野良三

    国務大臣(牧野良三君) 残念ながらその点は存じません。政府委員をいずれ呼び出しまして政府委員から答弁させます。
  370. 中山福藏

    中山福藏君 これはこういうことがあるのですよ。私は大阪ですから大阪のことを御参考に申し上げますが、大阪府の朝鮮の某団体事務局長の南元という者がおるのです。これは毎月四、五万円の収入がある。ところがこの人は毎月二万円の生活保護費を受けている。これは一例です。二万円の生活保護費を受けている。そうしてこれと同じケースのものが十二、三件詐欺ということで起訴されておるのがあるのです。これは大阪だけの問題です。そういうのが京都なんかには相当ある、私が公安調査庁に行って調べてみますとですね。然るに社会の一面ではビルの五階から身を投げで親子心中する人がたくさんある今日、こういう二十四億円もわれわれの税金からしみ出る金が共産党のシンパ資金につぎ込まれるようなことは私には承知ができぬ。国民に対して申しわけがない。こういうことを厳格にお取締りをお願いしたいのですが、これに対して何か対策をお立てになっておられるでしょうか、伺っておきます。
  371. 牧野良三

    国務大臣(牧野良三君) お答えを申します。実に重大な御質疑を受けました。私はその点に関して資料を持ちません。そんな重大なことがあっては容易なりません。私の所管の事務としては知らないでいるということも責任を感じます。さっそく取調べまして御答弁をすることにいたします。
  372. 中山福藏

    中山福藏君 御善処をお願いいたします。そこで更に法務大臣にお尋ねしますが、大阪でヒロポンの製造を会社組織でやっておった。これはやっぱり朝鮮人です。本件に関してどれだけ取調べを受けたかと申しますると、四百二十六名というのがこれに関係して取調べをうけた。そうして何万本というヒロポンをこしらえて売り出した。私はかつてノモンハンに行ったときに、蒙古に対して中国が梅毒政策をとったということを承わった。私はある意味において日本人をヒロポンで中毒させる何らかのそこに政策が、ある国の人々の中にひそんでおるのじゃないかと疑っておるのですが、これは全国的に広げたら相当なものだと思う。こういうことに対して法務省としては何か御検討になっておりますか。
  373. 牧野良三

    国務大臣(牧野良三君) お答え申します。ヒロポンの害毒というものは容易ならぬものであると同時に、ただいま第三国人の手によってなされていることには、必ずやその裏面に大きな政治的の意図があるのじゃないかということを憂慮いたしております。そのことはすでに私が法務の仕事をお引き受けする以前から心配いたしております。ただいま検察庁並びに、一方におきましては、その事実に対しては公安調査庁がひそかに別の方面から資料を入れようとして努めておりますから、何らかの資料を得てお答えする機会があろうと存じます。
  374. 中山福藏

    中山福藏君 そこで法務大臣にもう一つお尋ねしますが、このごろは非常に官庁の汚職がひんぴんとして起っておるのですね。たとえば大蔵省の印刷局の不正入札の問題、食糧庁の問題、東京の都営の競艇場の設置に関する収賄罪、それから法人税の査定に手心を加えた税務官吏の収賄、学校図書館法に関する出版業者の贈賄というように、只今申しました約十項目にわたるような不快な問題を解決せられることが時節柄肝要と思います。もとは上層部の官吏に人知れずこういう問題がよく起った。このごろは下級官吏が多いという原因はどういうところなんでしょう。なお、これに対する取締りの対策というものをお考えになっておるかどうか、お尋ねをしておきたいと私は考える。
  375. 牧野良三

    国務大臣(牧野良三君) お答えいたします。きわめて重要なる点を指摘せられまして、法務当局としてはさらに責任の大きなることを痛感し、ただいま各方面に大きな事件が出ておることをまことに申しわけなく思っております。これは戦後における国民風紀の頽廃が原因して、人を殺すのも金をごまかすのも綱紀を乱すのも当り前なことと思っておる。売春婦が白昼公然銀座街頭を闊歩しているなんという事実も同じことでありまして、これは日本の敗戦の結果においてかようなことになっているのでありますから、その根本を引き締めなければならないと思います。その点に深く心をいたしておりまする。その方面には法務行政を振粛していきたいと思いまするから、参議院の各位においても御協力を賜わりたいと存じます。
  376. 中山福藏

    中山福藏君 もう牧野さん、これだけですから、お帰り下すってけっこうです。
  377. 牧野良三

    国務大臣(牧野良三君) いや、ありがとうございました。
  378. 中山福藏

    中山福藏君 そこで今度は運輸大臣にお尋ねするわけですが、これはこの間ギリシャのほうから日本の造船というものに対して不信の意思表示をして来たことであります。そこで現在日本の手持ちの外国からの造船の注文というものがだいたい二百二十八万総トンですか、それが隻数にして百六十四隻内外ありますね。これについてその対外的な信用を確保するためには、運輸省としてはどういう処置をとっておられますか、まずそれからお伺いしたい。
  379. 吉野信次

    国務大臣(吉野信次君) お話の点、私も報告に接しております。結局いろいろこちら側にも多少の言い分があるでしょうが、何しろ向うがお客様でございますから、向うの非難というものについては百パーセントこれを排除することに努めなければならんと思います。ただ、御承知の通り、今の契約のやり方が、だいたいの契約をいたしまして、こまかいスペシフィケーションというものはあとでやることになっておりまして、そのスペシフィケーションというものをやるようなときにいろいろなもんちゃくがあったり何かするということも聞いておりますので、これからはやはりある程度技術的に可能なる限りこまかい契約をして後日にそういう紛争の種を来たさないようにしたらよかろう。こういうだいたいの方針で善処しておる次第でございます。
  380. 中山福藏

    中山福藏君 これがうまく行かないと高碕長官の言われます経済六カ年計画に影響してくる。あなたの心構え次第で経済六カ年計画すなわち昭和三十五年を目標とした貿易総額いわゆる二十六億六千万ドルというものに影響が現われてくると私は見ておる。今日、日本で最も多量の輸出をやっておるのは造船でしょう。この点をよほどあなたのほうで気をつけで監督しておいでになりませんとたいへんなことになってくる。そこで私は今の御答弁では、監督の方法をただうまくひとつ小さいところまで気をつけて指導してやろう、あるいは援助してやろうだけじゃいかん。これはやはり一つの、何と申しますか、監督機関というものを設けて、造船のような対外的のことは十分に買手本位という立場になって、売手本位じゃなくて買手本位という立場に立ってやらないと、何年かの後には日本に対して相当の大きな影響があると私は見ている。そういう点について何か監査の方法を特別に設置せられるというようなおぼしめしはございませんか。
  381. 吉野信次

    国務大臣(吉野信次君) ただいまのところ具体的にどうしようという考えはまだ持っておりませんが、お話の点はよく考慮しておきます。
  382. 中山福藏

    中山福藏君 もう一つ運輸大臣にお尋ねしておきます。日本の観光事業というものは実に私はまずいと思うのです。イタリア、フランス、あるいはカナダの状況、あるいはアメリカのボールダー・ダムのこの遊覧地に関する観光事業なんかを見ても、当局は大拡張をやった上にいろいろと、政府が力を入れて施設費等を出している。ところが日本の今度の三十一年度の予算なんかにはほとんど見るべきものがないのですね。これはどういうことをお考えになっておるか私にはわからぬ。それで二十九年度の観光客の情況をのぞいてみると、観光滞在客が六万三千人、一時上陸人が四万三千人、合せて十万六千人です。これらの客が日本に滞在して落した金が四千九百万ドルですね。日本の金にいたしまして百七十六億四千万円。そこで昨年度は三%ふえたというのですね。この外来客を今年もそのくらい見込んでおる。ところがそういうものを予算を削って何らこれに対する施策がないというのはこれはどういうわけですか。運輸省としてはどういうふうにお考えになってそういうことをなさるのですか。
  383. 吉野信次

    国務大臣(吉野信次君) お話の点はまことにごもっともだと思います。ただその観光事業は日本の現在においてはあまり早急にあせってはどうも工合が悪いのです。御承知になっている通り、来た人がまず困るのは道路が悪いので困ってしまう。それからホテルが悪い。これらを全部根本的にやりませんと、なかなかそのお客さんの足をとめることができませんので、それには非常な莫大の金を要するわけで、財政の現状からはとうていそういうことができないわけであります。しかしどうしてもお話の通り貿易、貿易というけれどもなかなか日本の貿易でなにするということは容易でございませんから私はやはり今一言ったような観光、日本のような独得の地位に置かれている所では、観光で金をかせぐのが私は一番早道だと思います。それで実はこの間も太平洋地域だけの連中を集めましていろいろ意見も聞きまして、中には日本のために急がないでこういう計画をしたら、五年なら五年なりの間にはこう来るだろうというような具体的な計画などを拝聴したわけであります。これから大いに一つ観光方面ということについて私はやはり施策を運輸省として進めていかなければならぬし、また進めるつもりでございます。
  384. 中山福藏

    中山福藏君 これは金がないから観光施設というものがおくれているのだとおっしゃることは、私はそういうことは聞えません。それはどういうわけかというと小泉八雲なんかの居宅を見てきましたが、われわれ人間の趣味なんというのはどういう家を好むということは、これは人間の優雅な人であるかどうかということで対象にする趣味というものも変ってくるのです。道路ができなければいかぬとか、ホテルができなければいかぬというような簡単な問題じゃないと思う。日本に、千年内外の歴史を持っておる。これに対するコケというものを観賞する高尚な人間が必ず世界にあると思う。だからそういう点もやはり考慮の中に入れておかないと、新しい文化施設だけで客を寄せるということではおもしろくないのじゃないか。ローマの廃墟を見て静かに眼を閉じて、そして心の中でいにしえをしのぶという人もたくさんある。鎌倉なんか旅行すると私なんかいつもそういう感じに打たれる。だからそういうことでこれはやはり観光施設をなさるには、そういうこともよく考えて金がなければないようにやる方法が私はあるのじゃないかと思う。私はそういう点について、単なるホテル代が高いとか道路が悪いとかいうことよりも、小泉八雲がなぜ日本というものを紹介する文責を書いたかというところにやはり思いをいたさなければ、運輸大臣としての御職務が勤まらぬのじゃないかと実は考えておりますが、どうかそういうことも十分御研究になってほしい。これはお願いしておきます。まああなたに対する質問はそれくらいでございますから、どうぞお帰り下さいまし。  そこで文部大臣にお尋ねいたします。それからもう一つ鳩山首相にお尋ねするのを思い落しておりましたからお尋ねしますが、よく聞いて下さい。日本憲法の前文というのがあります。これは実際よくできておる。これは人間の価値に根ざした憲法であるということを、ちゃんとうたってある。これを演繹したのが憲法の各条章であります。この各条章を帰納したものが前文である。明治憲法またしかりでありまして、告文というものを広げたものがいわゆる明治憲法の各条章であります。そこで今度憲法改正をするということになりますと、一番大事なものは前文だと私は見ておる。前文というものを変えるのか変えないのか、この点を一つ明らかにしておいていただきたい。
  385. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 憲法調査会において全面的に検討してもらうことになっております。前文だけを変えることもなく、中だけを変えることもないと思います。
  386. 中山福藏

    中山福藏君 どういうふうに変えるという御見当はまだ立っていないのですか。
  387. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 立っておりません。
  388. 中山福藏

    中山福藏君 それは大事な点です、各条竜以上に一番大事な点だと思っております、この前文はいわゆる憲法の頭脳でありますから、どうか衆知を集めて十分御研究をお願いしたい。  そこで、文部大臣は前に出て下さい。ひっ込んでおられると張り合いがない、やはり前に出ていただかなければならない。あなたはふだんから国民道義の確立、それから教育の改革なんということを始終言っておられますが、よく世間でいう教育委員会制度、教科書制度あるいは教育の中立性というものについて、これは関連してその点もお答え願いたいのですが、国民道徳の確立ということはどんな方策でまずおやりになるつもりですか、それをあらかじめお願いします。
  389. 清瀬一郎

    国務大臣(清瀬一郎君) 非常に広範な大きな問題でございますが、しからば道義というものは何ですか、道徳はこれからくる、人間以外の生物は大てい本能で動いておる、これは道義ではありません。人間は自分の国、自分自身の理想的な姿を頭に描いてそれに沿うように行動を規律していきます。これをまあ私は道義と申しておる。そこで日本の国、日本人がいかにあるべきかの姿を子供によく教えなければなりません。そうしてそれに沿うような日常の行いをさせるのでございます。ただいまの学校教育の基本ではそれが十分じゃございません。日本人たる自覚を喚起する徳目があげていないのでございます。教育基本法には八つの徳目を上げておりますが、よき日本人たれという徳目がないのでございます。どういう表現にすればいいか存じませんが、まず教育の基本、世間で誤まっておったとは非難されますけれども、お互いにかつて学校に行ったときはあったのです。教育勅語があったのです。そういうような自分の姿を子供に描かしてこれにいくのには勤勉が必要なら勤勉、あるいは他人の権利も尊重しなければならない、友情、日本で言えば温良恭倹、いろいろやることがありましょうから、これをひとり一定の時間だけじゃなくして地理を習う時分も、算数を習う時分も四六時中、仏法の言葉で言えば念々これを忘れずずっと教育のうちに織りなす、こういうふうなことがいいように私は思っておるのであります。ここには教育に経験のある方がたくさんおりますからお教えを請おうと思っております。
  390. 中山福藏

    中山福藏君 これは実際私の尋ねることが雲をつかむようなことかとも考えられるのですが、しかし一番大事なところでしょう。ごらんの通り中共の教育方針を見てみますと、規格人間の製造ということにすべての教育の目的が定められておりまして、自分意思を否定して指導者を信頼するということになっております。そうしてソ連も同じ態度をとっておるわけであります。こういたしますると、国家全体から見てどちらが国家に利益かという問題も起ってくるわけですけれども、やはり私個人の考えでは、人間の価値の上に自分が生活するということが一番幸福じゃないかと見ておりますからお尋ねするわけですが、あなたの今おっしゃったようなゆうちょうなことで、抽象的なことで一般の学生、青年に対して指導方針というものをお示しになることができるかどうか。これはほんとうにむずかしい問題ですけれども、一ぺんそれをお示しを願いたい。単に教育基本法の八項目といわれましても、これは憲法の精神を会得せしむるために教育を施行するのだということになっておるのです。ですから憲法というものとは不離の関係に立っておるわけですね。離れることのできない関係憲法とこの教育基本法は立っておるわけなんです。それで、憲法を離れてこの教育基本法改正することができるかどうかということは大きな問題なんですね。その教育基本法を離れ、また憲法を離れて、あなたの今おっしゃったような事柄を端的に表現する言葉一つお示しを願って、こういうところに目標を定めさせるのだというようなことを御明示を願いたいと、こういう気持でお尋ねしておるわけです。
  391. 清瀬一郎

    国務大臣(清瀬一郎君) 一口で言えば人格の完成でございます。昔の言葉で言えば徳器の成就でございます。これが教育の目的です。ただ初めのお問いのソ連、中共のごとく個人をほとんど否定して、何もかも国家、これは明治教育以上でございます。私の家にも中国に七、八年抑留された男がおりまして、向うのことを観察して言うのには、学問をするのも学問のためじゃない、国家の役に立つためだ。孝行などする必要はない、親が悪いときは殺さしてもよろしい、何もかも国家意識にのっとっておるのです。あれじゃ私は真の教育ではなくして個人の尊厳、個人の人格を成就する……、ゆうちょうとおっしゃいますが、教育は魔術のように一ぺんには参りません。七、八つの子供からずっと育て上げるのでありまするから多少は時間がかかります。しかしながら占領十年の間にこれだけ日本人の性質が変ったと見れば、また十年の間にはこれを取り戻す道はあろ
  392. 中山福藏

    中山福藏君 文相は法律家でありまして、今度文部大臣というものと取り組んでおられまするが、あなたはまだ法律ほど教育問題については徹底しておられないのじゃないかと、はなはだ失礼ですが考えておる。ただいまおっしゃった点では、これは時間がありませんから議論はしませんが、十分お考えを願いたい。徳器を成就しただけではいけませんよ。これからの人間になぜ教育というものを施すか、なぜ教育するかというと、頭をといしに当ててとぐのが教育です。といしに当ててとぐということは、物を批判する力を与えるということであります。頭がよく切れるようになりますから物をよく裁断することができるということになる。物を裁断して、すべてを割り切って考えるというその割り切った上に人間が立たなければ戸惑いする。だから今度の憲法改正でも何でもそこに原因があるのですね、二つに分れる原因が……。だから教育をする。教育の目的は何ぞや、自分を鋭利なナイフのような頭にとぎ澄まして物質に対する、対象物に対する判断をつけるというのが教育なんです。その教育を高度に進ましておいて、お前はそういうことをしちゃいかぬ、お前はこういうことをしちゃいかぬといってとめるというのは、これは教育というものを曲解しているわけなんです。だから教育というものは物を正確に判断せしめる力を与える、これでなくちゃ教育の価値はないのです。今全国の青年はそこにきているんですよ。だからどこの大学に行っても演説を聞かぬ先にやじり倒すというような学生もたくさんいる。これは頭がとれていない証拠であります、だからそういう学生がうようよしている。人の言うことを正確に判断するという学生はほとんどないんですね。そういうふうな惑乱の中に日本の青少年を今日ほうり込んでいる。それに対して徳器を成就するなんとおっしゃっても、なかなかこれはむずかしい問題なんです。物を正確に判断する力を与えたならば、その正確に判断する結果に対して、どういうふうにその結果を持っていかなければならぬかという点に文部大臣としては着目せられないと私はいかぬと思う。そういう点についてどういうふうにお考えになっておりますか。
  393. 清瀬一郎

    国務大臣(清瀬一郎君) 私は二つのシノニムでお答えしたのです。人格の完成と、古い言葉で言えば徳器の成就、人格の完成の中には、あなたのおっしゃる判断力も入っている、知と情と意、真と善と美とそれが人格のもとでございまして、判断力を養うことは非常に大切なことでございます。本日は時間もございませんが、またあとでお目にかかりまして十分にお説を拝聴したいと思います。大へん参考になりました。
  394. 中山福藏

    中山福藏君 委員長どうされますか、私はまだ残っているんですが、かまいませんか。
  395. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) おやりになって下さい。
  396. 中山福藏

    中山福藏君 その点が一番大事なんです。今日教育勅語を暗誦したままでお考えになっていると大へんなんです、この世の中は……。あれは明治憲法の全文を集約したものが教育勅語にまれ出ているもので一種の哲学になっている、両方哲学になっておりますが、よほど趣きが違っている。これは文部省においてもお考えにならぬと大へんなことになる。そういうことで今のあの混乱した学生の、何といいますか、思想的の動向を引きずっていこうということは、なかなかむずかしいと私は思う。これは冷静にあなたを尊敬しながら御忠告を申し上げたいと思います。  第二に私がお尋ねしたいのは、この教育委員会制度とか、教科書制度というようなものが、あなたがもとおられました民主党ですか、それでいろいろ第一、第二、第三というパンフレットなんかお出しになって、あなたはそのうちの相当重要な役目をお務めになったと思う。それでこの教科書制度とか、教育の中立性とかいうようなことにつきましては、どういうふうなお立場をおとりになるおつもりですか、お伺いしておきたい。
  397. 清瀬一郎

    国務大臣(清瀬一郎君) 教育においては、あなたの御指摘の通り、昔の教育勅語時代の詰め込み教育はしておらない、それは新教育の私は長所だと思います。戦後の教育はその点においてはよくなっております。自発創造をやらすのでありますから、そこで教科書は昔の経典のようなものじゃなく、教育の一つの材料でございますけれども、それでも、しかし教育じゃ非常に大切なことです。これを偶然——偶然でもありませんが、行政監察委員会等の審議で注意しますと、非常にあやまちが多い。先刻までおられた牧野君にたとえばポツダム宣言を受諾したのはイギリスとフランスとアメリカだ、フランスが入っておるのです。実際には入っておりません。伊藤公が殺された年が五年違っております。楠木正成は大和の吉野で討死したということが書いてあります。とんでもないということでびっくりしたのです。そこでずっとやりましたところが、社会科の教科書で一千三百六十もそんなあやまちがあります。もう一つは歴史がないものでありまするから、日本の国民国民たるの自覚を与える方法はほとんどないのです。そこで今回は教科書法の改正を企てまして、数日中に提案できると思います。ようやく案を得ました。やはり検定制度はそのままにおきまして、十分にこれを調べてみよう、こういうことです。予算の上では四十数人の検定官の月給もちょうだいすることにいたしました。このごろ私は出てくるものをなるたけ社会科のものだけ自分のうちへ持ち帰り読んでおります、まだ検定官がおりませんから。正しい教科書を作るというこの教育委員会のことは、今の委員会法の趣旨において私は反対ではないのです。しかし実際にやってみるというと、どうもうまくいかなかったことがある。というのは、行政が一般行政と学校行政と二つに離れてしまいまして、どこででもではありませんけれども、一般行政、すなわち町村長の方の行政と学校の方とがあつれきするようなことがございます。これはないようにしなければいけません。もう一つは私が文部大臣だから妙でありまするけれども、文部大臣がどうもないのです。私は監督するとか何とかいう固いことは考えておりませんけれども、その間に指導、助言、援助といったような縦の関係もつけましていい教育をしよう、こういう考えでございます。いずれこれらは案を具して数日か数週中にお目にかけますので、十分御批評下さいまして、足らないところはどうか補って下さるようにお願い申し上げます。
  398. 中山福藏

    中山福藏君 あと二点文部大臣にお尋ねいたします。学校給食法というのが施行されて約二年になります。ただいま約八百万という児童がその恩恵に浴しております。こういうふうな学校に給食するところの中の重要な部分を占めております給食ミルクの横流しが大へん問題に先般からなっております。この前の委員会であなたに対してこの処置を私はただしておきましたが、その処置はもうすでにつきましたか、こういう連中に対して。
  399. 清瀬一郎

    国務大臣(清瀬一郎君) あの現在起っておりまする事件については、中山さん御承知の通り司法手続中でありまするから、訴訟法の規定によって起訴されるまでは何とも調べ方がございません。なまじっかやれば司法権の侵害になりまするので、起訴されましたものについては、罪状によって、まだ確定判決じゃないけれども、退職を願うことにしております。しかしあなたのお尋ねはそうではなく、これは将来どうするかということであります。というのは不思議なことには、給食の横流しはするなという法律はあるが、そうしたら処罰するという文字がないのです、給食法の十一条。これは法の欠点と思っております。それから関税違反があるのです。ただでアメリカから入れたものを有償で売るということ、これは売ったものだけについては関税違反の制裁はありまするけれども、買った方の制裁はないのです。これも欠点でございます。これらの法律の欠点は速かに直そうと思って、関税法の方は今回ほかの改正の機会もございまするから、大蔵省の方と相談して不日提案することにいたしております。
  400. 中山福藏

    中山福藏君 どうか文部大臣は関係法規の改正、補足を至急にやっていただきたい。大へんなんですよ。
  401. 清瀬一郎

    国務大臣(清瀬一郎君) 承知しました。
  402. 中山福藏

    中山福藏君 なお文部大臣にお尋ねするのですが、給食に関し検査官というものを派遣してお調べになったことがありますか。衛生ということは厚生省の管轄になっておりますが、児童の健康に影響を及ぼすような給食については、当然閣僚の一員として御発言になって、衛生法を適用してお調べになる、あるいは検査をするということが、児童に対して親切じゃないかと、ふだんから考えておりますが、そういう措置はとっておられるのでしょうか。
  403. 清瀬一郎

    国務大臣(清瀬一郎君) 過日集団中毒事件がございまして、私も非常に心配してその事件については調査に行かしましたけれども、まだ日本全国の配給品について調査はよういたしておりません。もしも給食法についての改正をするならば、やはりこの衛生の方の考えもしなければなるまいということは庁内の者には言うているのでございます。
  404. 中山福藏

    中山福藏君 三十一年度の予算には五千万円という金が計上してある。こういう点から見ても注意をしてこの金の生きた使い方をしていただかなければならぬと思うのです。あなた、こういう事実を御存じでしょうか。近ごろの給食パンの中にマンジュシャゲの粉が入っているという事実がある、あるいは珪藻土が入っているのですね。そういうものを一つ二十円か三十円で売っている。これが普通のりっぱなパンでありますと、大ていそれは五十円か六十はするのですね。マンジュシャゲや珪藻土の入っているパンを食わしちゃいかぬ。珪藻土は昔の藻類の石化したものですから、これはあまりからだに害じゃないでしょうけれども、こういう事実はあるのですよ。そういう点についてお取調べになっておりますか、文部省は。
  405. 清瀬一郎

    国務大臣(清瀬一郎君) この前の委員会であなたが大阪において白土がパンの中に入っていたというお話がございましたので、さっそくそれを取調べるようには命じております。しかしながら今言う通り現在の法規で全国中にこれを手配するだけの指揮はまだ遺憾ながらよういたしておりません。
  406. 中山福藏

    中山福藏君 こういうことは大事なことですから、五千万円を意義あらしめるようにお願いいたします。新生活運動に五千万円取りっぱなしで何したかわからぬということでは因る。
  407. 清瀬一郎

    国務大臣(清瀬一郎君) 今のことは了承いたしました。
  408. 中山福藏

    中山福藏君 もう一つお尋ねいたしますが、青森県の西津軽郡の木造町の吹原中学校という所で、校長というのが野呂嘉夫という男ですが、一年生の大沢栄一というのが父兄百名の面前において人民裁判にかけられたという事実があるのですが、これは文相御存じでしょうか。
  409. 清瀬一郎

    国務大臣(清瀬一郎君) まだその件については報告を得ておりません。近時各地に学校の不祥事件がありまするから、全体的に注意はいたしておりまするけれども、あなたのおっしゃる青森の事件は私まだ承知いたしておりません。
  410. 中山福藏

    中山福藏君 これはあなたが先ほど仰せられた大阪の松原市で四人の教員を袋だたきにしたこういうこともありますし、宮城県の白石という所では教員が生徒をなぐったら、生徒がまた教員をなぐり返しておる。こういうことがひんぴんとして学生の間に起っておるわけであります。学生の中にそういう暴行を働く者が出ておるのですが、昨年度の警視庁の少年課の調べを見てみますというと、一年に七百六十九件こういう事件があります。学生の暴行事件というようなものが……。これはいろいろな他の犯罪もあるわけでありますが、ひっくるめてそういうことになっている。こういう一般に浸透したというか、こういうふうな犯罪傾向を帯びた行動に対する処置というものは文部省としてはこれは大きな警戒を要する問題だと思うのですが、関係各官庁と連絡をとられて、どういうふうな御処置をただいまおとりになりつつあるのでしょうか。その点を最後にお尋ねしておきます。
  411. 清瀬一郎

    国務大臣(清瀬一郎君) 今御指摘の事件のほかに数件注意をしておる件がございます。それらはどうするか、実に心配にたえぬことでございまするが、本年は教育、指導の方法を変えようと思いまして、予算においても六名の視学官相当の者の増員を願っております。現在と寄せて八名になります。日本の国を八つの区域に分ちまして、責任をもってそういうことを取調べ、調査し、適当な方法を指導する。今、昔のように文部省から直接監督というのはできないのですね、指導、助言、援助……。一方今回の教育法にも文部省からそれができるようなふうに規定を挿入してございます。それらの規定の活用とともに、今回ちょうだいいたしまする予算の増額と見合せまして、全国を今言ったような区に分ってそういうことが再発しないように十分調べていきたい。これもあまり厳粛にやるというと、また文部省が干渉するといったようなことになりまするので、そこのところに限度がございます。適当な限度によってこういう非人道的なこと、また教育目的に皆反すること、これはもうさしあたりやめなければならぬと思っております。
  412. 中山福藏

    中山福藏君 私は文部大臣に対する質問終りますが、最後に御参考に供しておきたいことがある、吹田市の第二小学校では女の教員が毒薬を買いましてね、そして生徒の給食に混入したということの疑いで四日間学校給食を停止しておる。給食の問題を私がくどくど申し上げるわけがわかるでしょう。教員も生徒もまことに油断のならぬ時期に今日なっておるんじゃないかと思う。だからこういう点に落度のないように御調査を願いたい。名前も言えとおっしゃればちゃんと名前もわかっておりますから申し上げますが、それは控えておきます。
  413. 清瀬一郎

    国務大臣(清瀬一郎君) 御注意大へんありがとうございます。名前等はまたあなたと直接の関係で承わりまして、よく注意いたします。
  414. 吉田法晴

    吉田法晴君 関連して。先ほど中山さんの質問の途中でしたから遠慮をしたのですが、終りそうですから一点だけお伺いさしていただきたいと思います。文部大臣は先ほど中山委員質問に答えて、憲法以上の原理と申しますか、道徳、その道徳の具体的な内容として、人格の完成、徳器の成就云々と言われましたが、憲法以上のものがあって、それによって教育方針というものを再検討する、こういう御趣旨であるのかどうかその点をお聞かせ願いたいと思います。なおその点について、これは総括質問ですから総理になさるべき質問が文部大臣になされたとまあ承知をするのです。総理大臣としても先ほどの憲法以上の道徳に従って教育方針を検討する、こういう鳩山内閣の方針でありますのか。もしそういうことであるならば、これは自衛隊の問題について憲法以上の論理あるいは原則によって自衛隊というものを考えるという先ほど来の問題になって参る。中山委員憲法の精神から憲法問題は考えるべきだ、あるいは教育方針についても検討されるべきだ、考えられるべきだという御質問でしたが、その点についてあと総理のご意見も承わりたい。
  415. 清瀬一郎

    国務大臣(清瀬一郎君) あのときに、道徳が大切なために、大かた憲法以上と言いかけておったのですが、憲法よりは低くはない、同等だという意味に言い直して私は言葉を続けたと思います。日本の憲法も非常に——われわれは改正を主張しておりますけれども、ある間はこれを守らなければならぬというのが法律の建前であります。けれども憲法のほかに道徳律もまた法律よりも——私はほんとう法律以上と思っておりますけれども、公けの席では同じくらい。(笑声)ほんとうです。道徳律というものはそれは非常に大切なものであります。そのことを言うたので、以上とは私言わなかったと思いますが、どうでしたか。
  416. 吉田法晴

    吉田法晴君 同等あるいはそれ以上……。
  417. 清瀬一郎

    国務大臣(清瀬一郎君) それ以上というのは——それより高からざるというので、同じように言いかえたのです。そのときの語勢は、以上と、ここまで出ておりましたけれども、そうは言うておりません。
  418. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 私は以上という言葉は文部大臣は使わないように思います。とにかく道徳と憲法とは範疇が違いますから、どちらが上、どちらが下ということはいえないと思います。
  419. 中山福藏

    中山福藏君 ちょっと外務大臣にお尋ねいたしますが、二月の十日にソ連閣僚会議で、北洋漁業に関しては日本がニシンやサケをとり過ぎた。だから卵を生む率が少くなった。一〇%から一五%減った。こう言うて漁業省並びに関係機関に命じて適当な措置をとれという指令を発したということを承わっておりますが、それについて外務省としてはどういうふうな対抗策をお考えになっているか。承わりますれば、日本の漁夫というものは十二海里から二十四海里の範囲内において漁業に従事しているということを承わっている。何にも国際法のいわゆる領海の問題に触れるものじゃないと私は考えている。そういう問題にまでも向うの方が勝手なことをやるということに対しては、外務省としても、かりに日ソ交渉中としましても、相当の御措置を講ぜられるのが当然じゃないか、かように考えておりますが、いかがなものでしょうか。
  420. 重光葵

    国務大臣(重光葵君) 北洋漁業につきまして、ソ連側で、日本の漁業者が公海で乱獲をしているがために、血族の繁殖に非常に障害になっているという趣旨のことを申しております。会議の席上でございましたか、特に専門家がプラウダあたりに詳細そのことを述べております。そのことはよく承知をいたしているわけでございます。それがどういう意味をもっているかわかりません。わかりませんが、日本側においては公海で魚類をとっているのであります。そうして公海といたしましても魚族の保護ということについては国際的にいろいろ会議やなんぞで話し合いをいたしております。また交渉をいたしております。そういうことによって、これは日本も十分誠意を披瀝して、そういう国際的の取りきめに応じよう、こう考えているわけでございますから、ソ連のそういう非難は漸次なくなることじゃないかと、こう考えます。もっともソ連と今直接の関係はございませんが、北洋漁業の問題は御承知の通りにロンドンで日ソ交渉の題目になっているわけでございます。そこで大綱はこれはロンドンの交渉でまとめなければなりません。しかしそれと同時に、漁業問題に対する細目については引き続き交渉をいたさなければなりませんから、その場合におきましては、直接ソ連との間に十分意見の交換、もしくは交渉の題目としてこれを取り扱うことができることになるわけですから、最善を尽したいと、こう考えております。
  421. 中山福藏

    中山福藏君 そこで今年の出漁をしようと考えておりまする母船十九隻、独行船五百隻ということになっておりますね。これは出漁できると思われますか。またそこに何らかの妨害がソ連側から起るというお見通しでございましょうか。これは昭和二十九年度の漁獲高も九千二百万尾というような漁獲を上げておるのですから、これは大事な問題だと思うのです。ですから、その点だけを一つお伺いしておきたいと思います。
  422. 重光葵

    国務大臣(重光葵君) その北洋漁業の問題、これは非常な大きな経済問題でございます。そうでありますから、公海の漁場については今まで通り障害のない見込みをもって進めていく方針でございます。そして乱獲等のそしりのないようなことにも注意を向けなければならぬと思っております。従来の通りにやるつもりでございます。
  423. 中山福藏

    中山福藏君 最後に外務大臣にお尋ねしておきたいのですが、近く、せんだってから国会で問題になっておりまするいわゆる水爆実験、エニウエトクですか、ビキニですか、そこでやろうとしておる。これを決議案を出しても、外交交渉をやっても、相手が聞き入れてくれなくて、これを実行するという場合には、将来の損害額の見積りとか、いろいろな関係もありまするので、オブザーバーとしてこれに日本の相当の人を参加させて見させてやるというようなことの処置をおとりになる気持はございませんか。これは必要なことだと思うのです。向うがどうしてもこれを聞かぬということになれば、これは武力をもって押えつける以外にはアメリカに対しては方法はないわけなんです。しかしそんなばかげたことはできませんので、円満に事を解決する意味におきましては、当然二、三名のオブザーバーをこれに参加させる、そうしてすべての問題というものを頭にたたき込んでおく必要があると思うのです。いかがなものでしょうか。
  424. 重光葵

    国務大臣(重光葵君) オブザーバーを出したらどうかというお話は、この委員会でございましたか、せんだって質問を受けたと思います。私はさようなことができるならば十分検討してみたいと、こう申し上げておきました。そのオブザーバーという意味は、私は日本が公海の、つまり危険区域外におっていろいろオブザーブする方法をとったらよかろうと、こういうような御質問ではなかったかと思って、日本だけでできることならば十分考慮しようと、こういうふうに申し上げたわけであります。ところが、これはアメリカの実験に直接に参加をしてオブザーブする、こういうようなことであったならば、私はこれはなかな、か……、持ち出すことが不可能とは決して申しません。けれども、これはなかなか目的を達しないように考えます、今の見込みでは。それは原子爆弾の実験ということは、これは非常な最高級の機密事項として各国とも取り扱っておりますから、これに参加するということは容易なことではないし、そういうことをよく専門的にも考究いたしまして、要求する場合においてはその適否を十分考えてやりたいと、こう考えますから、今はそれをお引き受けすることはできませんが、考究を十分いたしたいと、こう考えます。
  425. 中山福藏

    中山福藏君 では善処をお願いいたしまして、これで質問終ります。
  426. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) 本日はこれにて散会いたします。    午後五時五十四分散会