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国務大臣(
河野一郎君) 機会をお与えいただきましたので、私も懇談的に
一つ申し上げてみたいと思います。先般も、お前の言うのは一体その場その場でわけがわからぬというおしかりを受けますので、あまり長く答えることが適当でありませんので、それが連絡しないような場合があると思いますから、少し申し上げたいと思います。
私は
食糧政策、今の
食管制度を
考えますときに、現行の
制度がよろしいとは
考えておりません。これを何らかの方法に改善していかなければいかぬ、改善する場合には、その
方向が必要であります。その
方向は今申しますように二
通りある。極端に申せば
専売の
方向と
自由販売の
方向だ、もっとも
専売にいく前提でとどまる場合もございましょう。しかし、その
二つだと思うのであります。その場合には
専売の
方向はとるべきではない、
自由販売の
方向をとるべきだと私は
考えているわけであります。その
自由販売の
方向にいくには、どういう
条件が要るか、どうすれば
自由販売ができるか、これにはいろいろ
条件がございますが、それは順次申し上げていきます。
第一に、
政府手持ちを多くしているのは、これは
一つの
準備だろう、その
通りであります。決して
準備でないとは申しません。ないとは申しませんが、ただ単に
手持ち米がふえさへすればよろしいとは
考えておりません。しかしこの
手持ち米も、
準備ができやしないのに、無理に
手持ち米をふやす必要があるとも
考えておりません。と申しますのは、すべての
準備は、一時にでき上る方がよろしい、そうしてならしていく方がよろしい、むだな金を使って
準備をする必要はないし、
手持ち米をふやして、むだな金利、倉敷をかけて
準備をする必要はないのでありますが、さればといって、
一定量の物を持っておりませんならば、第一に
自由販売をいたしますには、あくまでも
国民諸君の
食糧に対する
安定感が必要だと思うのであります。
信頼感が必要だと思うのであります。というのは、戦争以来十数年間
食糧は足りないものだ、足りないものだということが頭の中にこびりついております。
一般の主婦の
諸君は必ずお米といえば足りない、食う物は足りないということがありますから、どなたかが、これは
食糧が足りなくなるぞという声がどこかで少し出て参りますと、すぐに買い、だめということになりますから、そういうことのないようにするためには、
政府が
国民諸君に
安心感を与えることが必要である。おてんとさんと米のめしはついて回っているのだと昔からよく言いますが、そういうふうにしさえすれば、米の買いだめをすることはなくなるだろう。そういう点から言いましても、どうしても、ある
程度政府が
早場米を奨励して米を早くとり入れて、そうして早植えをするというような
現状はいけない。端境期にある
程度の
一定量の
持ち越しがあって、米はいつでも心配はないのだという
国民に
安心感を与えるのが第一だ、第一
条件だと思うのであります。
もっとも、これはついででありますから申し上げますが、こんなにたくさんあって
配給をふやさないじゃないか
——これは
希望配給として売り出すつもりであります。今もっと供出を増加するように
努力いたしておりますから、もっとふえれば
一定の
標準の
持ち越し量以上のものは
希望配給として送り出せるつもりであります。
希望配給ならば
消費者価格は上るじゃないかと仰せになるかもしれませんが、これは私の
考えでは、
消費者価格は、
一般の
配給量は動かしません。ただしそのほかに
やみ米をたべていらっしゃるはずでありますから、
やみ米を抑えるためには
希望配給を増していって、そうして
やみ米をなくするようにする、そうして
希望配給にいたしまして、この
希望配給と、
一般の
外米と、粉食の
価格差の均り合いをとっていきたいということが私の
考えであります。今までは
外米もしくはパン、うどん、これらの
食糧がやみ
価格と見合って消費が起っておったと思うのであります。ですから、ことしのようにやみ
価格が下ってきましたらば、パンとうどんの消費が急に減ってきました。
相当やみの方にパンとうどんの消費が変ってきました。従って昨年末以来
やみ米の消費状態が、米の消費がふえて、パン、うどんの消費が減ってきていることは事実だと思います。こういう状態はよろしくないのでございますから、なるべく
やみ米を下げて、
希望配給価格も下げる。これを下げるのと並行して
外米もしくはパン、うどんの値段を下げていく。そうしてこれを並行して下げて持って参りまして、
一定の今の
配給価格の
程度まで
希望配給値段が下げられるというようなことになれば、一番理想であります。少くとも一升百十円前後のところまでは下げていきたい。そうして
生産費も下げて参りまして、そうして
農家は百十円前後でもって
消費者の手に渡っても
農業生産費を割らないというところに
生産費の引き下げを行う。そうして
米価の
一般の普通売買の
自由販売価格が下っていく。そうしてこの値段を中心にしまして、
外米、
外麦、すなわち粉食の
価格差を
一定の
価格差に保って、そうして内地米が少ければ
外米が安いから
外米をたべます。もしくは粉食にいたしますというようなことに、戦前の
自由販売時代と同様に、米、麦もしくは内地米、
外米の
価格差を
一定の、つまりあらゆる
条件から
考えました
価格差、この
価格差ならばいずれを選択するかは
消費者のそのときの
事情によって選択されるというように妥当な
価格差まで引き下げる必要がある、これが第二であります。
第三といたしましては販売の方面でございます。現在の協同組合を整備拡充いたして、そうして
農家が平均売りをするようにしなければならない。
農家が一時に売り出しますならば、そこで米の値段が下る。下ってお米屋さんが投機の対象にされるというようなことは非常に悪いことでございますから、現在の
農業協同組合にはそれだけの力がありません。ありませんから、農民
諸君に協同組合に対する
信頼感を増しまして、そうして協同組合を通じて米の平均売りをするというように、協同組合の整備強化をいたしまして、この整備強化に対して農民
諸君が信頼をもって、そうして米の販売は協同組合を通じて売ることが原則であるということにして、
政府は協同組合の
諸君と話し合い、この相談相手になり、資金をこれに融通いたしまして、そうして米は月別平均売りを協同組合がするようにして参りたい。そこまで参れば、
農家の
諸君とすれば協同組合を通じて月別平均売りをやって、そうして米の値をみずからの手においてくずさぬということになれば、そこにおいて年産者
価格も安定して参るということになると思うのであります。
これらの問題が一切自信を
農林大臣として持てるということになったときには、私は統制を撤廃してよろしいときじゃないかというふうに
考えておるのでありまして、そういう
方向にいくために、たとえば
農業小豆の上におきましては、
生産費の切り下げに、米麦の
生産費の切り下げに全力をあげて、そうして今の石一万一千円、これはつまり
消費者の値段でございます。その間に中間口銭その他がありますから、大体これを七、八百円からまず千円ぐらいにみることが妥当であります。そういたしますと、石二万円という
程度で
——今よりも多少幾らか下りますが、まず石一万円を中心にして、
農家の売り渡し値段が。それで
農業生産が確保できるというまでに
生産費の切り下げ、負担の
軽減というようなものは
努力をいたしまして、そうして
生産方面に支障のないように、
消費者の側におきましてはそれまで下げて、そうして
外米、
外麦等との見合いを安定せしめる、それをしかも
消費者が安心して、
食糧に対しては不安な
考えを持たずに、買いだめをするというようなことのないようにすべての面において妥当な
処置を講ぜられるというようになったときにいけるのじゃないか。たとえば蛇足でございますが、凶作のときに、内地は凶作であっても、内地米にほぼ匹敵できるいわゆる準内地米等も十分これを輸入して、そうして
一般の
国民は心配はないということの訓練をし、これらのすべての信頼を得た上でやっていきたいと、こう
考えておるわけであります。