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1956-05-16 第24回国会 参議院 本会議 第49号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十一年五月十六日(水曜日)    午前十時五十八分開議     —————————————  議事日程 第四十九号   昭和三十一年五月十六日    午前十時開議  第一 会期延長の件  第二 国会法第三十九条但書規定   による議決に関する件(在外財産   問題審議会委員)  第三 国会法第三十九条但書規定   による議決に関する件(肥料審議   会委員)  第四 国際金融公社への加盟につい   て承認を求めるの件(衆議院送   付)      (委員長報告)  第五 へい獣処理場等に関する法律   の一部を改正する法律案内閣提   出)      (委員長報告)  第六 採血及び供血あつせん業取締   法案内閣提出)(委員長報告)  第七 閉鎖機関令の一部を改正する   法律案内閣提出衆議院送付)           (委員長報告)  第八 旧日本占領地域に本店を有す   る会社の本邦内にある財産の整理   に関する政令の一部を改正する法   律案内閣提出衆議院送付)           (委員長報告)  第九 罹災都市借地借家臨時処理法   の一部を改正する法律案衆議院   提出)     (委員長報告)  第一〇 憲法調査会法案衆議院提   出)      (委員長報告)  第一一 百貨店法案 (内閣提出、   衆議院送付)  (委員長報告)  第一二 下請代金支払遅延等防止法   案(内閣提出衆議院送付)           (委員長報告)  第一三 農地開発機械公団法の一部   を改正する法律案内閣提出、衆   議院送付)   (委員長報告)  第一四 岡山吉井川下流改修工事   施行に関する請願           (委員長報告)  第一五 直轄河川大淀川改修事業   中、上流部工事の五箇年計画実   施に関する請願 (委員長報告)  第一六 徳島県吉野川改修工事促進   に関する請願  (委員長報告)  第一七 栃木県小貝、五行両河川改   修工事施行に関する請願           (委員長報告)  第一八 兵庫県菅川改修工事施行に   関する請願   (委員長報告)  第一九 新潟県中魚沼郡地内信濃川   改修工事費増額に関する請願           (委員長報告)  第二〇 北海道天の川改修工事施行   等に関する請願 (委員長報告)  第二一 北海道頓別川治水工事に関   する請願    (委員長報告)  第二二 北海道池田町の治山治水工   事促進等に関する請願           (委員長報告)  第二三 北海道準用河川見日川外二   河川護岸工事施行に関する請願           (委員長報告)  第二四 北海道落部、野田追両河川   改修工事施行に関する請願           (委員長報告)  第二五 埼玉県児玉町山岳地帯の治   水行政に関する請願           (委員長報告)  第二六 岡山吉井川下流八日市地   先堤防補強工事促進に関する請願           (委員長報告)  第二七 北海道知津狩川改修工事施   行に関する請願 (委員長報告)  第二八 広島県準用河川有地改修   工事施行に関する請願           (委員長報告)  第二九 北海道千歳治水工事施行   に関する請願  (委員長報告)  第三〇 茨城県境町一の谷沼干拓地   を利根川川床引下げ土砂捨場に指   定するの請願 (委員長報告)  第三一 昭和二十八年水害復旧対策   に関する請願  (委員長報告)  第三二 青森県鶴田町大巻地内岩木   川堤防決壊対策に関する請願           (委員長報告)  第三三 北海道石崎川の一部防災工   事施行に関する請願           (委員長報告)  第三四 北海道知内小谷石海岸災   害復旧工事施行等に関する請願           (委員長報告)  第三五 災害復旧工事費国庫負担金   交付促進に関する請願           (委員長報告)  第三六 愛知渥美半島太平洋岸護   岸に関する請願 (委員長報告)  第三七 京都宇治川天ケ瀬崩壊地   早期復旧に関する請願           (委員長報告)  第三八 岡山県内河川砂防工事施   行に関する請願 (委員長報告)  第三九 兵庫県有馬川支流滝川砂防   工事施行に関する請願           (委員長報告)  第四〇 北海道歴舟川外河川砂防   工事施行に関する請願           (委員長報告)  第四一 東海地震等による地盤変動   対策事業促進請願(二件)           (委員長報告)  第四二 北海道遠別川総合開発に関   する請願    (委員長報告)  第四三 北海道天塩川上流総合開発   に関する請願  (委員長報告)  第四四 北海道総合開発促進に関   する請願    (委員長報告)  第四五 岩手湯田ダム予定地変更   に関する請願  (委員長報告)  第四六 京都宇治天ケ瀬ダム建設   に伴う補償の請願           (委員長報告)  第四七 街路改良工事費国庫補助等   に関する請願  (委員長報告)  第四八 宮崎認定道路大川原西岳   村馬渡線財部産業道路指定地区   工事促進等に関する請願           (委員長報告)  第四九 県道柏崎高浜堀之内線道路   改良工事継続に関する請願           (委員長報告)  第五〇 兵庫県香住町訓谷、竹野村   浜須井間道路工事促進に関する請   願       (委員長報告)  第五一 府県道宇都宮茂木線道路改   良工事施行に関する請願           (委員長報告)  第五二 二級国道一八〇号線改良工   事促進に関する請願(二件)           (委員長報告)  第五三 一級国道九号線中鳥取県内   道路改良工事促進に関する請願           (委員長報告)  第五四 地方費道厚沢部上磯線改良   工事施行等に関する請願           (委員長報告)  第五五 北海道浜頓別町内町村道改   良工事施行に関する請願           (委員長報告)  第五六 北海道道八雲熊石線改良工   事施行に関する請願           (委員長報告)  第五七 国道二十九号線改良工事促   進に関する請願 (委員長報告)  第五八 兵庫地方重要道路県道竜   野佐用線中一部改良工事施行   に関する請願  (委員長報告)  第五九 国道九号線中兵庫県熊次村   大野峠、村岡町間改良工事施行に   関する請願   (委員長報告)  第六〇 二級国道札幌留萠線の一部  改良工事施行に関する請願           (委員長報告)  第六一 一級国道二十号線改良工事   施行に関する請願(二件)           (委員長報告)  第六二 一級国道八号線中一部改良   工事施行に関する請願           (委員長報告)  第六三 利根川昭和橋架替に関する   請願      (委員長報告)  第六四 二級国道松前江差線中天の   川橋の長大永久橋架替等に関する   請願      (委員長報告)  第六五 山形県赤川の両田川橋を永   久橋に架替するの請願           (委員長報告)  第六六 二級国道大町糸魚川線中大   正橋架替に関する請願           (委員長報告)  第六七 北海道利別川利別橋永久   橋架替に関する請願           (委員長報告)  第六八 北海道熊石冷水橋外二橋   の永久橋架替に関する請願           (委員長報告)  第六九 北海道頓別川浜頓別橋外三   橋の永久橋架替に関する請願           (委員長報告)  第七〇 宮崎県都農、高岡両町間の   和田橋永久橋に架替するの請願           (委員長報告)  第七一 山形県道比子観音寺線中   昭和橋架替に関する請願           (委員長報告)  第七二 鹿児島市道路舗装工事施行   に関する請願  (委員長報告)  第七三 国道一号線舗装工事促進に   関する請願   (委員長報告)  第七四 宮城県仙台市、岩手県一の   関市間国道舗装工事施行促進に関   する請願    (委員長報告)  第七五 一級国道旭川稚内線中士別   市内市街地舗装工事施行等に関す   る請願     (委員長報告)  第七六 一級国道三十六号線の一部   等舗装工事促進に関する請願           (委員長報告)  第七七 一級国道十二号線完全舗装   に関する請願  (委員長報告)  第七八 北海道福島白神道路開さ   く等に関する請願           (委員長報告)  第七九 埼玉県秩父市、長野県川上   村間道路開さくに関する請願           (委員長報告)  第八〇 北海道落部厚沢部両村間   道路開さく工事促進に関する請願           (委員長報告)  第八一 国道四号線中一部切替等に   関する請願   (委員長報告)  第八二 北海道遠別原野二十四号、   二十六号間道路切替等に関する請   願       (委員長報告)  第八三 昭和三十一年度道路予算等   に関する請願  (委員長報告)  第八四 低家賃庶民住宅建設に関す   る請願     (委員長報告)  第八五 住宅対策に関する請願           (委員長報告)  第八六 公営住宅認承用地費増額   等に関する請願 (委員長報告)  第八七 建設業法施行令の一部改正   に関する請願(三件)           (委員長報告)     —————————————
  2. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 諸般の報告は、朗読を省略いたします。      ——————————
  3. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) これより本日の会議を開きます。  日程第一、会期延長の件  議長は、衆議院議長と協議の結果、国会会期を六月三日まで十七日間延長することに協定いたしました。  会期を十七日間延長することについて、討論通告がございます。発言を許します。戸叶武君。   〔戸叶武登壇拍手
  4. 戸叶武

    戸叶武君 私は日本社会党を代表し、ただいまの会期延長の提案に反対いたします。  反対の理由は、山積している重要法案たる憲法調査会法案国防会議法案教育関係法案行政機構改革関係法案健保法改正関係法案及び日比賠償協定選挙制度改正法案等の諸法案を、会期を若干延長した程度では、審議を十分に尽すことは不可能であると思うからであります。  会期延長の目的は、これによって議案慎重審議の上成立させることにあると思います。それには、かかる不徹底な会期延長では不可で、あらためて国会を召集すべきであります。それに、参議院としては参議院議員の現在置かれている立場について配慮されてしかるべきだと思います。参議院の半数の議員諸君は、六月三日までの任期であります。国会議員である以上は、暁国会もやむを得ないでありましょうが、任期一ぱいのぎりぎりまで酷使されることは残酷ではないでしょうか。選挙には現役優先の特権は確保されてありません。従って思いやりのない政府の冷酷な仕打によって、現議員全員国会に釘づけされ、国政に協力したこれらの出席率のよい人たちが、もしも落選のうき目を見た場合に、政府はいかなる責任をとろうとしておるのか。(拍手)  いずれにしても、私たち会期延長賛成しかねるのであります。特に私たちが心配する点は、これによって参議院には、今後因った事態が発生するのではないかと憂慮されるからであります。この際、私たち政府及び与党にその反省を求めるものであります。政府与党重要法案の成立を急がれるのは当然でありまするが、国会の生命は審議権にあるのでございます。それゆえ与野党とも国会審議権はあくまでも尊重せねばなりません。今日の民主政治の発達は、責任政治確立の主柱として立法府の権限が増大し、国会は国の最高機関となっております。それゆえに私たちは、国会審議権行使責任を自覚せねばなりません。しかるに明治憲法下に育ったところの官僚政治家、軍部の制圧に屈した旧式政治家は、全体主義的な考え方から国会政府の意のままに動かそうとする間違った動きをする傾きがあるのであります。私たちは、国会審議権を侵すような質疑や討論封殺等に対しては断固戦いを宣するものであります。今こそ私たちは、参議院議員としての共通の立場から考えなければならないと思います。  今回の会期延長は、参議院責任でなく、衆議院責任だと言われておりますが、衆議院責任というよりは、むしろ議事の渋滞を招かしめた政府及び与党責任であると私は思うのであります。それは衆議院における国会運営並びに議案審議の過程において如実に示されております。その無理の最大なるものが自民党党利党略から出た小選挙区制のゲリマンダーであります。これが国会に嵐を呼び、世論の総攻撃を受けたのであります。衆議院においては益谷議長及び副議長が協力して、与野党攻防戦乱闘寸前の嵐の中に立って、良識ある両党の話し合いの場を持たせ、激突を避けることに成功いたしました。これこそ国会のよき先例として参議院においても学びとるべきであります。いな、むしろ今後参議院衆議院以上に良識を示さなければなりません。しかしながら、残念ながら参議院の現状は、最高役員たる議長、副議長は、自民党が一党で独占している行き過ぎをあえてしております。衆議院のしわ寄せが参議院に持ち運ばれたとき、すでに台風の目は参議院に移されている今日、私たちはかかる悪条件のもとに、もみくちゃにされて、参議院の権威を傷つけることを欲しないのであります。私どもは国会審議権を軽視し、国会政府に従属せしむるような危険性のある、不徹底きわまる会期延長に対して反対するものであります。  各位におかれましても、参議院のあり方と健全な機能の発揮のため、私たちと同様の見解のもとに、国会の新たなる召集を求めて、ともにこの会期延長反対せられんことを要望するものでございます。(拍手
  5. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) これにて討論通告者発言は終了いたしました。討論は終局したものと認めます。  これより採決をいたします。議長が協定いたしました通り、会期を十七日間延長することに賛成諸君起立を求めます。   〔賛成者起立
  6. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 過半数と認めます。よって会期は、六月三日まで十七日間延長することに決しました。      ——————————
  7. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) この際、お諮りいたします。  外務委員長山川良一君から、常任委員長を辞任いたしたい旨の申し出がございました。これを許可することに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  8. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 御異議ないと認めます。よって許可することに決しました。      ——————————
  9. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) つきましては、この際、日程に追加して、常任委員長選挙を行いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  10. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 御異議ないと認めます。
  11. 森田義衞

    森田義衞君 私は、ただいまの選挙はその手続を省略いたしまして、議長において指名せられんことの動議提出いたします。
  12. 寺本廣作

    寺本広作君 私は、ただいまの森田君の動議賛成をいたします。
  13. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 森田君の動議に御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  14. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 御異議ないと認めます。よって議長は、外務委員長梶原茂嘉君を指名いたします。(拍手)      ——————————
  15. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 日程第二、国会法第三十九条但書規定による議決に関する件(在外財産問題審議会委員)を議題といたします。  内閣総理大臣から、在外財産問題審議会委員に、衆議院議員愛知揆一君受田新吉君、大平正芳君、藤枝泉介君、古屋貞雄君、本院議員遠藤柳作君、小西英雄君、田畑金光君、竹下豐次君を任命することについて本院の議決を求めて参りました。  以上の九名の諸君が同委員に就くことに賛成諸君起立を求めます。   〔賛成者起立
  16. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 総員起立と認めます。よって本件は、全会一致をもって九名の諸君在外財産問題審議会委員に就くことができると議決されました。      ——————————
  17. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 日程第三、国会法第三十九条但書規定による議決に関する件(肥料審議会委員)を議題といたします。  内閣総理大臣から、肥料審議会委員に、衆議院議員井出一太郎君、稲富稜人君芳賀貢君、平野三郎君、本院議員河野謙三君を任命することについて本院の議決を求めて参りました。  以上の五名の諸君が同委員に就くことに賛成諸君起立を求めます。   〔賛成者起立
  18. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 総員起立と認めます。よって本件は、全会一致をもって三名の諸君肥料審議会委員に就くことができると議決されました。      ——————————
  19. 安部キミ子

    安部キミ子君 私はこの際、基地問題並びに秋吉台米軍演習地使用に関する緊急質問動議提出いたします。
  20. 森田義衞

    森田義衞君 私は、ただいまの安部キミ子君の動議賛成いたします。
  21. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 安部君の動議に御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  22. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 御異議ないと認めます。よってこれより発言を許します。安部キミ子君。   〔安部キミ子登壇拍手
  23. 安部キミ子

    安部キミ子君 私は日本社会党を代表いたしまして、ただいま問題になっております基地における土地強制収用秋吉台米軍演習地使用について質問いたします。  人類の英知はようやくにして平和の具体的な方途を発見し始めました。昨年確立されたバンドン会議の十原則、ジュネーヴ精神、アジア、アラブ諸国の国連における活動、ソ同盟の第二十回共産党大会自己批判、最近ではブルガーニン、フルシチョフの英国訪問等に見られるように、世界の動向は平和へ平和へと具体的な進展を見せつつあります。しかし日本は、この歴史の歯車に逆らい、アメリカヘの従属性をますます深め、原爆攻撃軍事基地化への一途をたどってきました。昨年、政府立川横田小牧木更津新潟の五飛行場基地拡張について、地元民の意思を無視し、警官を動員して、暴力による強制測量をしたのであります。この無謀な政府態度不法行為は、いまで中学生である砂川馬場タカ子さんに次の印象を与えています。「あの日」、「あの日私は学校から帰って、くちゃくちゃになった垣根、ふみにじられた庭の草花を見て、くやしさで胸が一ぱいになった。思い出すだけでもぞっとする。あの日乱闘服を乗せた装甲車が、土煙をあげて、何台も何台も砂川へ来た。警官モンペ姿のおばさんをけった、労組のおじさんをなぐった、わたしの姉を踏み倒した。姉の手や足や背中に、まっさおなあざが今も残っている。あのおそろしい、警官をにくむように、こんなことをするのはだれなの。こんなおそろしい命令を出すのはだれなの。」、このように、立川飛行場拡張反対し、父祖伝来土地を死守して戦っている人たちは、老若男女を問わず、一人々々が深い悲しみに沈み、押えがたい憤りに燃えています。この悲しみと憤りは、砂川という土地や、そこの住民だけを切り離して考えられるものではありません。祖国全土アメリカ軍事基地化したこと、しかもそれが何と言われましょうとも、原水爆戦前線基地となり、そのため敵の報復攻撃の口実を与えるおそれのある基地とならざるを得ないものであることを思いますとき、日本人として「特に基地住民たらざるとも、反対しないでいられましょうか。  このように子供の心に不安と不信を抱かしているように、九月、十一月に多数の警官を動員して行なった強制測量によって生じたけが人及び踏みにじられた農作物に対して、鳩山内閣は遺憾の意を表明するなどの措置をされたですか、どうですか。また、総理は、国民世論に耳を傾け、話し合いをすることによって事態の解決をするということをしばしば述べられておりますが、砂川人々が、たびたび総理に面会を求め、率直に実情を訴えようとされているのに対し、面談を避けておられるのはどういうことなのでありますか。米国総理でなく、日本総理である鳩山総理は、日本国民のために、地元人々と会って、十分話を聞かるべきだと思うのでありますが、総理大臣の御所見をお伺いいたします。  次に、倉石労働大臣は、地元方々の強い要請にもかかわらず、(「いないぞ」と呼ぶ者あり)どうしたんですか、労働大臣労働大臣がおられませんから、聞かれないと、返事ができないと思います。(「誠意がない」「休憩」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し)
  24. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 暫時休憩いたします。    午前十一時二十一分休憩      ——————————    午前十一時四十九分開議
  25. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 休憩前に引き続き、これより会議を開きます。  安部キミ子君の発言を継続いたします。安部キミ子君。   〔安部キミ子登壇拍手
  26. 安部キミ子

    安部キミ子君 私は、質問の途中に、調達庁長官がお見えにならなくて休憩したことを遺憾に思う次第でございます。今後はこういうふうな不体裁なことがないように、各大臣も御注意いただきたいと思います。(拍手)  次に、調達庁長官は、地方方々の強い要請にもかかわらず、都知事にまかせ切りで、責任を回避して、現地における十分な会談もなされず、矢崎調達局次長に案内されて現地極秘裏に通過されたようでありますが、もし大臣誠意があるならば、何ゆえ事前通告し、話をほんとうになされないのでありますか。また三月二十八日、地元のいわゆる条件派のうち二名に、協力謝礼金の支払いが行われておりますが、担当大臣話し合いが進められております段階に、このような切りくずしがなされることは、きわめて遺憾でありますし、このようなつかみ銭的な協力謝礼金国庫から支出されることは、会計検査院法にも違反すると考えるのでありますが、御所見を承わりたいと思います。  政府は昨年以来、三月二日に一度地方の方と話し合いをなされたのみで、その間五ヵ月を空白にしておられ、その間においても、たびたびの地元要請にもかかわらず、これを放置し、最近、たった二週間の期限付回答を求めたり、応じない場合には直ちに強制収用を行う態度をきめられたようでありますが、どうして五飛行場全部についてそのように強制収用を豪語されるのでありますか。アメリカから、この六月末の米会計年度中に無理にも収用せよと命ぜられたからでありましょう。土地を愛し、生活と自由を守るために多くの人々反対をし、心に杭は打たれないと叫び、政府が実力で土地を収用するなら、われわれも最後まで戦うのだと言わしめていることを、総理大臣並びに労働大臣はどう考えておられますか。  また文部大臣は、このような基地の中で生活している児童、生徒に対していかなる措置をされているのか。先ほども述べましたように、肉親が殴打され、農地が荒らされたことに、激しい憤りをもって訴えております子供たちは数多いのでありますが、このようなことに対してどんな御所見を持たれていますか、お伺いいたします。  フィンランド、ノールウエー、スエーデンは、すでに基地設置を拒否し、アイスランド、セイロン等は、拒否要求をしており、西独は防衛分担金を提供することを拒否しているのであります。鳩山内閣は、米国の鼻息ばかりうかがうことを直ちにやめられて、国民の声に率直に耳を傾け、妙義のときのように、立川新潟横田木更津小牧等飛行場拡張を再検討される用意があるかどうかを、重ねてお尋ねいたします。  次に、山口県秋吉台米軍演習地使用についてお尋ねいたします。  秋吉台はいわゆる大田演習場と呼ばれた所で、元来地元の町村有地及び民有地であります。終戦までは、第五師団との賃貸契約によって陸軍の演習場に使用し、地元町村では、一年を通じ約一ヵ月足らずの使用を許していただけであります。従って、その他の日時は、自由安全に通行、採草、耕作、造林、伐木、採石等を行なって、地元民の生活は実に平和な日々であったのであります。ところが、米軍進駐後は軍用施設とみなされて強制接収され、米軍の指揮のもとに、地上部隊の演習場として借り上げ契約を強制せられ、今日に至ったもので、このたび突如として、またまた使用目的を一方的に変更して、米軍の岩国海上航空隊の爆撃及び機上射撃訓練場とする旨通達があったのであります。かかる通達は、従来の慣例と、さきの借り上げ契約の条件を無視したもので、いかに考えても、地元民として、また日本人として容認できないことであります。  そもそも、秋吉台はわが国で他にたぐいない、ただ一つの典型的なカルスト及び鐘乳洞で、このため全地域が国定公園に指定され保護されてきたので、あります。また学術的にも価値高く、ことに温帯多雨地方のカルストとして世界的に有名であります。地形学上から見たカルストの景観は、裸出カルストと被覆カルストがあって、このたびの被弾危険地帯は、そのいずれをも兼ねて観察できる重要地区が指定されたのであります。地層や岩石に埋存せられている化石も、石炭や石油の資源開発の上に重要なる資料で、多くの学者や研究者がこぞって、断じて爆撃地と化すなと叫んでいるのも、ゆえあってのことであります。また、古生学の上からは、かつて理学博士鳥山九大教授が秋吉台上の船ガクボ北方において異状の有孔虫化石を発見し、ウィスコンシン大学の権威トンプソン教授との共同研究によって、新種アキヨシエラを世界の学界に発表し、学術上に多大の貢献をしたのであります。今やこの船ガクボ北方のきわめて珍奇な化石地帯が、爆撃演習の被弾地域となって、地表の現状はまさに廃墟の一歩寸前にあるばかりでなく、伝えられるところによりますと、跳弾のおそれがあれば、土砂をもって埋め、地ならししようかというがごとき当局の説明を聞くに至っては、その暴挙、まさに奏の始皇の火坑の暴虐にもひとしく、おそるべき学術への冒涜であるといわなければなりません。米国側も、例によって地元の実情を無視しで押しつけてきたのでありましょうが、それにしても、実弾なり模凝弾を持ち込むということは重大事であります。あえて米国本国の学者並びに識者にこれらの事実を訴えて、撤回を求めてしかるべきだと考えますが、総理大臣の御所見を求めます。  さらに、秋吉台は国際的観光地としても有名でありますが、これは単にばく然とした観光的対象の地ではありません。全学生、学徒並びに科学を愛する人たちに対する自然科学の一大野外教室でありまして、現在これを地上部隊の実弾射撃の演習場として許しているそのことが、慨嘆にたえないことであります。この際、これを中止し、解除して、政府責任をもって保護すべきだと考えますが、総理大臣並びに文部、厚生、労働各大臣と文化財保護委員長の御所見をお尋ねいたします。今日、文化財保護委員長は御病気で御出席がないようでありますから、後日御答弁を願います。  次に、労働大臣にお尋ねいたします。調達庁の磯調査官が、先日、山口県の使用反対陳情団に対して、事前に関係各省との了解済みとの答弁は、うそであったと弁明をされたそうですが、あなたの部下が、無責任発言をして地元民を怒らしております。大臣はどのような報告を受けておられますか。また、文部、厚生両大臣は、演習地使用について了承されたのかどうか、御答弁を願います。  基地問題といい、米軍の演習地使用といい、日本人全部の運命にかかっているこれほどの重大事が、平和を願う国民の多数の意思を無視して、時の政権担当者によって行われたサンフランシスコ条約の締結のときに実は予定されていたのであり、今日の大きな苦悩の種は、すでにあのときまかれたものでありますが、鳩山総理は、かかる不幸な事態を一日も早く除去するために、安全保障条約改訂のため米国と交渉される御意思があるかどうか、重ねてお尋ねいたしまして、私の質問を終ります。(拍手)   〔国務大臣鳩山一郎君登壇拍手
  27. 鳩山一郎

    ○国務大臣(鳩山一郎君) 安部さんの御質問にお答えをいたします。  基地砂川人たちに、私がなぜ会わなかったかというのが、私に対する順序としては第一番目でありました。砂川基地人々とは、ちょっと会ったのでありますけれども、直接面談の機会を十分に得なかったことは、まことに遺憾に存じております。担当大臣からは十分に聞いて承知はしております。  それから周辺問題につきましては、常に検討を加えておりますが、私としては、日本の防衛のために最善の努力を尽したいと考えると同時に、周辺の人々住民の権利の保護についても、十分に注意をして参りたいと考えます。  それから安保条約や行政協定の改正のためには、その前提として十分に自衛力を備えなければならないと存じております。これらの改正は、わが国の自衛態勢の整備と相待ちまして、並行してやって行きたいと考えております。それから秋吉台についても御質問がありましたが、秋吉台が文化財であることは十分承知しております。従って現在の陸上演習場に対する使用条件を定めたときに、天然記念物及び重要観光区域は、すでに除外して、今日の演習の要領は、従来のものとはさらに狭くなっております。  右、御答弁をいたします。(「ほんとうかい」と呼ぶ者あり)ほんとうです。(拍手)   〔国務大臣倉石忠雄君登壇拍手
  28. 倉石忠雄

    ○国務大臣(倉石忠雄君) お答えいたします前に、一言おわびを申し上げますが、けさ党務のために外出をいたしておりまして、十一時に登院いたすつもりでおりましたが、開会直後に、会期延長で記名投票があるということで、五分間くらいはおくれて来ても、ちょうど間に合うだろうといったような見込みをつけて、そのつもりで参りました。ところが雨天のために、予定より時間がおくれまして、議長を初め皆様方に非常な御迷惑をおかけいたしましたことを、この際つつしんでおわびを申し上げます。  御質問のことでございますが、立川飛行場に対する協力謝金でございます。これは御承知のように、三十一年度予算にございます防衛支出金のうちから支出をいたしまして、飛行場を完成するために必要なる経費として支払いをいたしておるのでございまして、私どもとしては妥当なる支出であると考えております。  なお、立川の問題につきまして御指摘がございましたが、実は、昨年私が就任いたしましてから、立川の問題について、従来よりも東京都知事さんも中に入っていただく方がいいということで、東京都の知事も非常に熱心に土地の方と折衝していただきまして、私もいわゆる反対派の方々数名の方にお目にかかりました。そのときには、どうしても政府はこれをやらなければならないかということについて、重点的にお尋ねになりましたから、政府といたしましては、日米安全保障条約に基く行政協定上の義務を履行するということが一つ、もう一つは、私どもの自衛力不足を補うために、こちらから希望して安全保障条約を締結いたしたのでありますから、そういう意味において日本の防衛上ぜひ必要である。御承知のように、プロペラ飛行機が変りましてジェットを使うような今日になりましたので、九千フィートどうしてもなければならないというので、現在のところはわざわざ搭載量を減らして動かしているような始末でありますから、やがて日本の自衛隊がこれを使用する場合においても、現在の飛行場では間に合わないわけであります。そういう意味で、ぜひこれは拡張しなければならないのであるということをるる申し上げましたところが、よく事情はわかったが、今さら反対の旗を巻くというわけにもいかないが、一ぺん何とか話をさらにしようではないかということで、私が直接現地に一日参りまして、つぶさに実情を調べて参りました。同日、またお隣りの横田飛行場に参りまして、よく研究をいたして参りましたが、どうも知事さんが中に入ってやっていただきました事柄も、うまく参りませんので、やむを得ず今度のような措置をとらなければならなくなりました。このことは、今まで尽すべき手段を十分尽しましたが、いたし方ないことであると存じておる次第でございます。  御指摘にございました五飛行場のうち、収用委員会の問題になっておりますのは、これからなろうとしておるのは立川だけでございまして、あとの四飛行場は、それぞれ地元方々と私とが直接にお話を進めまして、だんだんと円満解決の方向に向っておるわけでございます。決して御心配下さいましたように、アメリカの強要ということではございませんで、多少御意見の違う方もあるかもしれませんが、私どもは日本の防衛上、これは緊急やむを得ざるものであるという考えのもとにいたしておるわけでありまして、計画通りどこまでも進めるかというお話につきましては、所期の計画通りに、一日も早く目的を貫徹するために、努力を続けるつもりでございます。  秋吉台につきましてもお話がございましたが、秋吉台の問題につきましては、従来戦争前からこれは演習地でありましたが、終戦後これが接収をされまして、大体五百三十万坪ほどの演習地をそのままやっておりますが、ただいま御心配下さいました鐘乳洞であるとか、地獄谷であるとかいうふうな天然記念物その他重要なる文化財については、演習地から除外いたしております。  そこで、従来の演習と今回の演習との違いますところは、艦載機が参りまして、高度三千メートルぐらいから急降下をしてきまして、そうして三百メートルぐらいに低空になってきましたときに、目標に向って爆弾を落すという演習でありますが、当初誤まり伝えられたのは実弾のようでございますが、現在は、目方で言えば約三百匁ないし五、六百匁程度の砂を詰めました模擬爆弾を、その砂を積んだところへ落して、それが成功したかどうかということを見よう、こういうのでございます。今までと変りましたのは、艦載機を使うということでございまして、地方方々といろいろお話をいたしました結果、従来のような演習ならば差しつかえはないが、この急降下爆撃というようなことをやらないでもらいたいという御熱心な御要望でございます。しかしながら、このことにつきましては、私どもとしてはきわめて重大であると存じまして、米軍側ともいろいろ折衝をいたしておる次第でございますが、なお、今日は先方からは、危険はないのであるし、また安部さんもよく御存じのように、砂袋で土砂を積んだ上に投下して、その間実地を見るという演習だけでございますから、そのことをよく地元方々に御了解を願って、ぜひとも演習をさしてもらいたい、こういうことでありますが、そのことについて、各省との連絡が不十分ではなかったかというお話しでございましたが、このことは御承知のように、昭和二十八年に、すでに今申しました重要な地点は除外いたしてあるのでありますし、また、演習地となっておるところを国定公園に指定をされたような関係もございますので、若干その間に事務上のそごはあったかもしれませんが、現在では特に重要と存じまして、外務省、農林省、大蔵省、厚生省、防衛庁等と私の方の調達庁とが緊密な連絡をとって、いろいろな角度から検討をいたしておる次第でございますが、結論的には、どうか一つ、そういう事情でございますから、地元方々にも御了解を願って、目的が達せられるようにということで苦慮いたしておる最中でございます。(拍手)   〔国務大臣清瀬一郎君登壇拍手
  29. 清瀬一郎

    ○国務大臣(清瀬一郎君) ただいま安部さんより私に対しお問いの一つは、基地の問題と児童生徒の教育に関することについて、いかが考えておるかということでございました。基地の問題と学校教育とについては二つの問題があるのであります。  その一つは、風紀のことであります。これはまことに大切なことでありまするが、現在は基地に存在する学校の熱意、また教育委員会の委員諸君の熱意で、日ごろの訓育指導等で害を少くいたしておりまするが、地元の自由なる意思によって、いわゆる文化地区の設定を勧奨いたしております。昭和二十八年の八月に次官通牒といたしまして、駐留軍施設区域周辺における風紀対策、こういうものを各都道府県の教育委員会に対し発しました。そこで各地方の教育委員会及び市町村と密接な連絡をとって、風紀対策に遺憾なきように願いたいという趣意でございます。ざらにまた、日米合同委員会にも諮りまして、現地駐留軍と地元日本側との間に、風紀に関する地方連絡協議会を設けて、駐留軍と日本側相互に社会関係改善に関する問題の処理に当らせております。この協議会で対策が立たないとか、立っても実行の困難なことは、日米合同委員会に託して問題の解決をいたしているのでございます。なお、これについては在日の米軍、それから公安委員、保健所長、婦人少年所長、PTA、婦人団体等の協力を願っている次第でございます。  第二の問題は騒音でございます。音でございます。基地における飛行機等の騒音によりまして、学校教育に著しき影響を一受けつつあるので、ございます。これに対しては、昭和二十八年の法律で、日本国に駐留するアメリカ合衆国軍隊の行為による特別損失の補償に関する法律と、こういうものの御制定を願っておりまするが、学校教育法に規定しておりまする学校教育の授業の騒音による被害を受ける場合には、補償対策として取り扱われることになっております。文部省といたしましては、騒音対策協議会というものを作りまして、騒音が教育にいかなる支障をきたすか、これを防止する方途いかんということであります。また、その程度を測定して補償の対象とすべく研究いたしております。その結果、今日大体こういたしております。八十ホーン以上の騒音の場合、それから一授業時間に十回以上の頻度のものについては、補償の対象として防音工事を施し、防音工事でもきかぬ場合には移転をする、こういう方法を講じております。すでに実施済みのものは三十六校ございます。そのうちに移転したのが二枚あります。現在問題となっているものは約三十校であります。三十一年度においては、引き続いて防音工事等を行うよう、関係官庁とも目下折衝中であります。  なお、たのたび内閣には基地問題閣僚協議会が設けられましたから、この問題について、私はこの協議会に御相談申し上げ、さらに善処の道を講じたいと、かように思っているのであります。  秋吉台のことについては、総理及び労働大臣よりすでに御答弁がありましたが、この場所には、特別天然記念物に指定され、また天然記念物に指定され、保護される所がございまするので、文部省所管の重要文化財の保護として、これらの天然記念物が障害されないように最善の力を尽そうと思っております。(拍手)   〔国務大臣小林英三君登壇拍手
  30. 小林英三

    ○国務大臣(小林英三君) 安部さんの御質問になりました秋吉台の問題につきましては、安部さんが御指摘になりましたように、山口市から約二十キロ西北にございまする国定公園でございまして、日本最大のカルスト地形でありまして、しかも世界第三位の鐘乳洞の優秀な、地学的にも興味の深い地帯でございまして、今回米空軍の演習となりました問題につきましては、倉石労働大臣から、るる申し上げたところでございまするが、私どもといたしましては、国定公園となりましてから、観光客が近来著しく増加いたしており申す現状からかんがみまして、公園利用上、万一危険のことがございましてはならないのでございます。国定公園としての価値を十分に尊重いたしまして、その保護利用上に支障のないように、関係機関に十分要望いたしまして、調整をはかって参りたいと存じております。(拍手
  31. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 文化財保護委員会委員長は、他日出席の際答弁される趣きであります。      ——————————
  32. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 日程第四、国際金融公社への加盟について承認を求めるの件(衆議院送付)を議題といたします。  まず、委員長の報告を求めます。外務委員会理事小滝彬君。   〔小滝彬君登壇拍手
  33. 小滝彬

    ○小滝彬君 ただいま議題となりました国際金融公社への加盟について承認を求めるの件について、外務委員会における審議の経過の大要と結果を御報告申し上げます。  政府の説明によりますと、国際金融公社設立の趣旨と目的並びにわが国が加盟した場合の関係はおよそ次の通りであります。低開発地域の経済開発のため融資を行う国際機関としては、従来とも世界銀行があったのでありますが、世界銀行はその性格上、融資の対象、その条件等に制約があるので、世界銀行の活動を補足するため、別個の国際金融機関の設立が考えられてきたのであります。こうした観点から、昭和二十六年に米国が提案し、これを国際連合が取り上げ、世界銀行が立案に当り、昭和三十年四月に同銀行により採択された国際金融公社協定案が、公社の原加盟国となる資格のあるわが国を含む世界銀行の加盟国五十六ヵ国に送付され、これが受諾を求めておるのでありまして、この協定は、少くとも三十九国により公社の株式引受額の総額が七千五百万ドル以上に達したときに効力が発生するのであります。この国際金融公社は、世界銀行と姉妹関係に立つ国際的な融資会社でありまして、その目的とするところは、加盟国、特に低開発地域の生産的民間企業に対し、民間投資家と協調して融資を行い、その企業を助成しようとするものであります。わが国は株式二千七百六十九株、二百七十六万九千ドル、すなわち約十億円を引き受けることになっておりまして、本公社設立の暁には、わが国は国際的投資活動に参加する他面、わが民間資本、生産品及び技術の海外進出も助長されることになり、またわが国自身の生産的民間企業に対する公社からの融資をも期待することができる利益があるとの説明でありました。  委員会の質疑におきましては、「国際融資機関としてすでに世界銀行があって、これ一本で目的が果されぬものか。この公社の資本構成を見ると、米国が中心であり、また融資には条件がついている、これでは、アジア諸国は果してかかる融資を好むと考えるか。この公社発足の経緯から見れば、公社融資の対象は主として中南米であると観測されるが、この公社の構想は、アジアの低開発地域に有効に適用し得るか、また日本の企業への融資も考えられるか。もし加盟国において、本公社の営業について訴訟が生じた場合は、裁判管轄権は当該国にあるのかどうか。」こうした質問があり、その他、国連、米国等の低開発地域に対する経済援助方式並びにわが国の役割等について、種々質問と意見の開陳があったのでありまするが、詳細は会議録に譲ります。  委員会は、五月十五日質疑を了し、討論を経て採決を行いましたところ、本件は多数をもって承認すべきものと議決いたした次第であります。  以上、御報告いたします。(拍手
  34. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 別に御発言もなければ、これより本件の採決をいたします。  本件を問題に供します。委員長報告の通り本件を承認することに賛成諸君起立を求めます。    〔賛成者起立
  35. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 過半数と認めます。よって本件は承認することに決しました。      ——————————
  36. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 日程第五、へい獣処理場等に関する法律の一部を改正する法律案  日程第六、採血及び供血あっせん業取締法案(いずれも内閣提出)  以上、両案を一括して議題とすることに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  37. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 御異議ないと認めます。  まず、委員長の報告を求めます。社会労働委員長重盛壽治君。     —————————————   〔重盛壽治君登壇拍手
  38. 重盛壽治

    ○重盛壽治君 ただいま議題となりましたへい獣処理場等に関する法律の一部を改正する法律案並びに採血及び供血あっせん業取締法案について、社会労働委員会における審議の経過並びにその結果について御報告申し上げます。  まず、へい獣処理場等に関する法律の一部を改正する法律案について申し上げます。  最近、市街地または住宅地域等における養豚場及び養鶏場等のいわゆる畜舎が、蚊やハエの発生の根源地となり、あるいは飲料水を汚染し、または悪臭を放つ等、環境衛生上きわめて好ましからざる状態を現出していることが、しばしば指摘されるのでありますが、今回これらのいわゆる畜舎についての指導取締りを適正化するとともに、へい獣処理場等の施設の構造設備について、具体的な基準を設けることによりまして、これらの施設の適正なる運営を期し、もって環境衛生の改善向上をはからんとするものであります。  次に、改正のおもな点を申し上げます。  第一点は、清掃法で規定いたしております特別清掃地域のうちから、都道府県知事が指定する一定の区域におきまして、一定数以上の牛、馬、豚、綿羊、ヤギ、犬、鶏、アヒルを飼養する施設を設けた者に対しまして、届出義務を課することとしたことであります、第二点は、へい獣処理場及びいわゆる畜舎の構造設備の基準を政令で明確に規定することといたしたことであります。  本案につきましては、環境衛生の見地から、飼養畜舎の基準、違反罰則の強化等に関する諸問題について、政府当局に熱心なる質疑を行い、討論を省略し、採決の結果、全会一致をもって原案の通り可決すべきものと決定いたしました。  次に、採血及び供血あっせん業取締法案について申し上げます。  人の血液から製造される医薬品である保存血液、人血漿その他の血液製剤の品質等につきましては、薬事法の規定によって指導取締りが行われ、患者に対して輸血を行う場合の保健衛生上の危害防止につきましては、これを行う医師、歯科医師の責任において行うよう、医師法、歯科医師法に基いて指導がなされているのであります。また、輸血のための血液を提供する者については、これを病院等に対してあっせんする業者がありまして、これに対しては取締り法規がなく、全く放任された状態にあります。今回、人の血液の利用の適正、血液製剤の製造等に伴う採血に当っての危害防止及び供血のあっせん業等における被採血者の保護を目的として本法案提出された次第であります。  次に、この法案の大要について申し上げます。  第一に、採血及び人の血液を原料とする物の製造を制限し、医療、学術研究または血液製剤等の原料とする目的以外の採血を禁止するとともに、血液を原料としての物の製造は、原則として血液製剤等に限ることとしたのでございます。第二に、血液製剤等の原料とする目的で採血する業者については、その業務所ごとに厚生大臣の許可を受けることとし、さらに、必要に応じて採血量、血液の買入価格等について指示することができることとしたのであります。第三に、輸血の用に供する血液の提供者をあっせんするいわゆる供血あっせん業者については、都道府県知事の許可を受けさせることとし、あっせん手数料の制限、業務上守るべき義務等を規定して、弊害の防止をはかることとしたのであります。第四に、血液製剤の原料として、または輸血のために人体から相当多量の血液を採取する者については、事前の健康診断及び貧血者等から採血してはならない旨の義務を課することによって、被採血者の健康の保護をはかることといたしたのであります。  本案につきましては、保健衛生上の見地から、供血者の保護、輸血の検査、保存血の規制等に関する諸問題について、政府当局に熱心なる質疑を行い、討論を省略し、採決の結果、全会一致をもって原案の通り可決すべきものと決定いたしました。  以上、御報告を申し上げます。(拍手
  39. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 別に御発言もなければ、これより両案の採決をいたします。  両案全部を問題に供します。両案に賛成諸君起立を求めます。   〔賛成者起立
  40. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 総員起立と認めます。よって両案は、全会一致をもって可決せられました。      ——————————
  41. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 日程第七、閉鎖機関令の一部を改正する法律案  日程第八、旧日本占領地域に本店を有する会社の本邦内にある財産の整理に関する政令の一部を改正する法律案(いずれも内閣提出衆議院送付)  以上、両案を一括して議題とすることに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  42. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 御異議ないと認めます。  まず、委員長の報告を求めます。大蔵委員長岡崎真一君。     —————————————   〔岡崎真一君登壇拍手
  43. 岡崎真一

    ○岡崎真一君 ただいま議題となりました二法律案につきまして、大蔵委員会における審査の経過並びに結果を御報告申し上げます。  まず、閉鎖機関令の一部を改正する法律案について申し上げます。  本案の内容は、第一に、閉鎖機関の在外店舗にかかる債務のうち、外地従業員に対する退職金等の債務及び本邦を履行地とする社債その他の債務について、現在残存している国内資産の限度内で支払いし得ることといたそうとするものであります。第二に、閉鎖機関である朝鮮銀行及び台湾銀行の残存財産の処理に関して規定いたそうとするものであります。すなわち、これら両行は、特殊清算の目的である債務を弁済し、在外債務が在外資産を超過する場合には、その超過額を引当留保した後の残存資産のうちから、朝鮮銀行法及び台湾銀行法に規定されている納付金制度に準じて算出した金額を国に納付させることとし、その後、新会社の設立等、残余財産の処分をなし得ることといたそうとするものであります。  本案審議の詳細は会議録によって御承知を願いとう存じます。  質疑を終了、討論に入り、藤野委員より、「政府は、本法の実施に当り、預金者その他の関係者の特殊事情を考慮して、適宜の措置を講ずること。右決議する。」との付帯決議案を付して賛成意見が述べられ、続いて前田委員より、「朝鮮銀行が残存資産をもって不動産銀行を設立するというが、その場合既存の金融機関と競合するおそれなしとしない。また、不動産が諸法規で十分な担保力を有し得ない現状と、中小企業者は不動産をあまり持っていないという実情を勘案して、不動産銀行の設立に当っでは慎重に考慮、善処せらるべきである」旨の要望を付して賛成意見が述べられ、続いて岡委員より、「朝鮮銀行、台湾銀行が発券業務を営んでいたということによって、清算中の現在においても、なお多額な納付金を取ることには疑義がある。また、今回の措置によって朝鮮銀行の株主が三十四倍の還元を受けるのに対し、預金者は非常に冷遇されておるので、もっと預金者についても保護を講ずべきである。さらに、将来韓国よりの返還請求があった場合、政府がその支払いに当らなければならないことは、国民の税金によって支払うということを意味するから、政府への納付金を納めた後の残余財産をもって不動産銀行などを設立することは反対である」旨の反対意見が述べられました。  討論を終り、採決の結果、多数をもって衆議院送付案通り可決すべきものと決定いたしました。また、藤野委員提出の付帯決議案を採決いたしましたところ、多数をもって可決いたしました。  次に、旧日本占領地域に本店を有する会社の本邦内にある財産の整理に関する政令の一部を改正する法律案について申し上げます。  本案の内容は、第一に、在外公社はその在外店舗にかかる債務のうち、外地従業員に対する退職金等の債務及び本邦を履行地とする債務につきましては、本邦内に住所を有する個人及び法人その他の在外会社並びに閉鎖機関に対し、現在残存している国内資産の限度内で支払いを行い得るようにいたそうとするものであります。第二は、特殊清算人は、特に必要がある場合には、大蔵大臣の承認を得て、在外財産の管理、処分等をなし得ることといたそうとするものであります。第三は、在外会社は、その在外店舗にかかる負債の総額が資産の総額をこえる場合、その超過額を負債として処理しているのを改めて、超過額に相当する本邦内にある資産を留保した後でなければ残余財産の処分をなし得ないこととし、当該引当財産の管理について所要の規定をいたそうとするものであります。また、在外資産負債が不明な場合には、国内負債を弁済後、国内資産に残余があるときは日本銀行に預託することになっておるのを改め、さきの引当財産の管理に準じて管理せしめようとするものであります。第四は、在外会社の整理財産に属する負債弁済及び残余財産の分配について、供託による履行のほかに、信託によっても債務を免れることができることといたそうとするものであります。  本案審議の詳細は会議録によって御承知を願いたいと存じます。  質疑を終り、討論に入り、岡委員より、「国外の債務を自分勝手に定めて処理しようというのであって、将来、中国、韓国の請求があった場合、政府が支払わなければならないので、慎重な態度が望ましい」旨の反対意見が述べられ、採決の結果、多数をもって衆議院送付案通り可決すべきものと決定をいたしました。  右、御報告いたします。(拍手
  44. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 別に御発言もなければ、これより両案の採決をいたします。  両案全部を問題に供します。両案に賛成諸君起立を求めます。   〔賛成者起立
  45. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 過半数と認めます。よって両案は可決せられました。      ——————————
  46. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 日程第九、罹災都市借地借家臨時処理法の一部を改正する法律案衆議院提出)を議題といたします。  まず、委員長の報告を求めます。法務委員長高田なほ子君。   〔高田なほ子君登壇拍手〕     —————————————
  47. 高田なほ子

    ○高田なほ子君 ただいま上程されました罹災都市借地借家臨時処理法の一部を改正する法律案につきまして、法務委員会における審議の経過並びに結果について御報告申し上げます。  御承知のように、この罹災都市借地借家臨時処理法は、戦災にかかった都市の急速な復興をはかるために、あるいは罹災建物の旧借り主に優先的に借地権を取得させ、あるいは逆に、罹災地の借地権で今後存続させる意思がないと認められるものを消滅させる道を開く等、当該都市について借地借家に関する臨時措置規定したものでありますが、その後の改正によりまして、戦災の場合だけでなく、別に法律で指定した火災、震災、風水害その他の災害の場合にも本法の規定を適用いたすことになり、宮崎県延岡市の風水害を初め、先般発生しました新潟市や能代市等の火災に至るまで、それぞれ法律を制定し、本法の規定を適用せしめること十九回に及んでいるのでございます。  これは、本法においては、火災、風水害等の災害が発生いたしますと、その都度その地区及び災害を、法律をもって一々指定する建前になっているからでありますが、災害地においては、復興事業の遂行に当り、必ず借地借家の権利関係が問題となり、しかもこの権利関係の処理は、特に急速を要するのが実情でありまして、かつて災害の発生が国会閉会中であったため、時間的な手おくれから、この権利関係がいたずらに紛糾して、復興促進に支障をきたした事例も過去において少しとしないのでございます。  そこでこの改正案では、かような経験と、最近とみに本法の適用を考慮すべき火災等の災害が頻発する状況にかんがみ、事態即応の必要上、本法を適用するための地区及び災害の指定は、法律をもって行わず、政令に委任するよう、その第二十五条の二及び第二十七条の規定を改めんとするものでございます。すなわち、提案者によれば、この地区及び災害の指定は、現実に災害の調査に当る政府が、すみやかに政令をもって定めることが、借地借家の権利関係の迅速、適切な調整をはかる本法の趣旨にも、より合致するものであるというのであります。  以上が本改正案の概要でございます。  当委員会におきましては、本改正案に関連しまして、提案者側及び政府当局に対し、災害防止の問題に関して、小林、羽仁、赤松、高田の各委員より適切な質疑が行われたのでございますが、その詳細は会議録に譲りたいと存じます。  そして質疑を終え、討論に入りましたところ、小林委員から、「この改正案の通り本法の適用を政令にゆだねるということは、立法措置としてむしろおくれ過ぎたくらい当然のことであるが、今後行政府としては、本法の適用か国民財産権を律することの大なることにかんがみ、かりにもその適用に際して適切、公平を欠くことのないよう要望して賛成する」旨の発言がなされたのであります。かくて討論を終結し、採決に入りましたところ、本改正案は、多数をもって原案通り可決すべきものと決定いたした次第でございます。  なお、かねて本委員会では、本法を適用すべき災害のうち、特に大火災の頻発する最近の実情にかんがみ、政府はその原因の探究とその災害防止施設に十分に誠意を示し、抜本的施策を講ずべきであることを考えておりましたので、本法の改正に際し、この趣旨を明らかにするため、小林委員から次の決議案を付する動議提出いたしましたところ、満場異議なく原案通り委員会の決議とすることに決定いたしました。  次にこれを朗読いたします。    頻発する大火災の原因究明とそ    の対策樹立に関する決議   最近、罹災都市借地借家臨時処理  法の適用を要する大火災の頻発する  状況にかんがみ、都市計画の発展と  相待って、その原因の捜査究明に科  学的施設を十分操作することによっ  て、同一または類似の原因による  災害のたび重なる発生を防止し、ま  た、その被害を最小限度にくいとめ  ることができると思われるが、政府  は、災害防止のためのこの施設の完  備に、他の抜本的諸施策の実施とあ  わせて努力すべきである。  右決議する。  以上、あわせて御報告申し上げます。(拍手
  48. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 別に御発言もなければ、これより本案の採決をいたします。  本案全部を問題に供します。本案に賛成諸君起立を求めます。   〔賛成者起立
  49. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 総員起立と認めます。よって本案は、全会一致をもって可決せられました。
  50. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 日程第十、憲法調査会法案衆議院提出)を議題といたします。  まず、委員長の報告を求めます。内閣委員長青木一男君。     —————————————   〔青木一男君登壇拍手
  51. 青木一男

    ○青木一男君 ただいま議題となりました憲法調査会法案につきまして、内閣委員会における審議の経過並びに結果を御報告申し上げます。  本法律案は、衆議院議員岸信介君外六十名より提出せられたものでありまして、二月二十日、当院の本会議に上程され、提案者より趣旨説明があり、次いで質疑応答がなされ、同日当委員会に予備審査のため付託されたものであります。  まず、本法律案の提案者が本法律案の提案の理由として述べるところを申し上げますと、現行憲法が民主主義と平和主義並びに基本的人権の尊重にその基本的原則を貫く点においては、何人もこれを不可とするものはないと信ずるが、現行憲法が、昭和二十一年占領の初期において、連合国最高司令官の要請に基き、きわめて短期間に立案制定せられたものであり、真に国民の自由意思によるものにあらざることは否定しがたき事実であり、さらに過去約九ヵ年におけるこれが実施の経験にかんがみ、わが国情に照らし種々検討を要すべき点の存する、こともこれを認めなければならない。ここにおいて、この際、新たなる国民立場に立って現行日本国憲法に全面的検討を加えることは、わが国独立の完成のためにも、はたまた再建日本の将来の繁栄と国民福祉の向上のためにも、きわめて緊要なことであり、そのためには、すみやかに有力なる憲法の調査審議機関を設けることが必要であると考え、ここに本法律案提出した次第であるというのであります。  次に、本法律案の概要を申し上げますと、本法律案は、日本国憲法に検討を加え、関係諸問題を調査審議するための機関として憲法調査会を設けんとするものでありますが、その構成につきましては、憲法問題の重大性にかんがみまして、広く衆知を集め、公正なる世論を反映せしむるため、国会議員三十名及び学識経験のある者二十名、合計五十名以内の委員をもって組織することとなっており、またこの調査会には、会長一名、副会長二名を置くことになっておりますが、いずれも委員の互選によることとなっております。右のほか調査会には、専門委員及び幹事を置くとともに、事務局を設けることとし、事務局長以下の職員をして事務を処理せしめることといたしております。なお、この調査会は、これを内閣に置くこととなっておりますが、その運営につきましては、特別の諮問を待つことなく、あくまで自主的な立場において調査審議せんとする建前とのことでありまして、その結果は、内閣及び内閣を通じて国会報告することといたしております。  内閣委員会は前後九回にわたり委員会を開き、提案者衆議院議員山崎巖君及び鳩山内閣総理大臣・吉野国務大臣その他政府委員の出席を求めまして、本法律案審議に当りましたが、なお、この間、参考人岸倉松、大西邦敏、田上穣治及び鈴木義男の四君より、それぞれ意見を聴取いたしました。これらの審議において、提案者及び政府との質疑応答により明らかになりました諸点を申し上げますと、その第一点は、憲法調査会設置の理由いかんという点でありまして、この点につきましては、第一に、「現行憲法が、占領初期において連合国最高司令官の強力な示唆によって制定されたものであって、国民の盛り上る自由意思によったものでないこと、第二に、過去九ヵ年の実施の経験より見て、現行憲法がわが国の国情に沿わない点があること、以上二点を理由として、わが国が完全な主権を回復した今日において、現行憲法を全般にわたって再検討する必要がある」旨、提案者より答弁せられました。なお、この点につきまして政府所見がただされましたところ、吉野国務大臣より、「右の二つの理由のうち、政府としては第一の理由に重きを置き、現行憲法が完全な主権が回復していないときに制定された点に問題があると考えるので、特にこの点より現行憲法を再検討する必要がある」旨、答弁がありました。なおまた、この点に関連して、憲法調査会を設置せんとするのは、憲法改正を前提としてであるか、あるいは憲法改正の要否をまず調査し、もし改正の要ありとした場合に各問題点について検討するのであるかという点につきまして、質疑が行われましたが、「自由民主党並びに政府においては、現行憲法の改正の必要のあることを認めておる点は双方意見が一致しておるが、しかし今回内閣に設置せんとする憲法調査会は、憲法改正の要ありやいなや、また改正の要ありとすれば、いかなる点を改正すべきかを、独自の立場において検討するものであって、憲法改正については全然白紙の状態で調査審議に当るのである」旨、提案者並びに政府より答弁がなされました。  その第二点は、憲法調査会を国会に置かずして、内層に設置せんとする理由いかんという点でありまして、この点に関しましては、「民間人の自由な意見を十分反映せしめるためには、内閣に設置するのが適当であり、またこれが従来の慣例である」旨、提案者より答弁がなされました。なお、この点に関連して、憲法改正の原案の提案権についてただされましたのに対し、「国会側と内閣側との双方に憲法改正の原案の提案権がある」旨、政府より所見が明らかにせられました。  その第三点は、憲法調査会の委員の構成の点でありまして、「国会議員よりの委員の選任は、従来の慣例に従って、各政党会派の勢力分野に大体比例するのが公正である」旨、なお、憲法問題についての国論の分裂を極力避けるため、憲法改正反対する立場人々の参加をも求めて、世論を十分に反映せしめて、慎重に審議を尽すようにしたき旨、提案者より答弁がなされました。  その第四点は、憲法改正の限界の点でありまして、この点につきましては、提案者並びに政府より、「民主主義、平和主義、基本的人権の尊重という、現行憲法の二大原則はこれを堅持し、むしろこの精神を伸ばして行きたい」旨の言明がなされました。なお、この点に関連して、鳩山総理は憲法第九条を改正したき旨を言明しているが、この規定改正は現行憲法の基本を変更するものではないかという点がただされましたが、この点につきまして、「憲法第九条の規定改正することによって、わが国が自衛のため必要な最小限度の実力を持ち得ることを明らかにし、将来疑義の余地なからしめんとするものであって、この第九条の改正は決して現行憲法の平和主義の原則を変更するものではない」旨、提案者より所信が明らかにされました、  その第五点は、憲法調査会において調査審議された改正の結論を実施に移す時期いかんとの点でありまして、この点に関する質疑に対しましては、「憲法の問題は最も重大問題であるから、その審議に相当の年月を要することはもちろん、改正の結論が出たとしても、これを実施に移す時期については、客観情勢を十分に考慮し、慎重に検討を加えた上、その時期を定めたい」旨、提案者より答弁があり、なおこのほか、憲法制定当初の経緯、自由民主党の憲法調査会において検討中である憲法改正の問題点、憲法第九条の規定の解釈、憲法改正に関する世論等の諸問題につきましても、質疑応答が重ねられましたが、その詳細は、委員会議録に譲りたいと存じます。  去る十日の内閣委員会におきまして、自由民主党の井上委員より質疑打ち切りの動議提出せられ、右の動議につき採決の結果、多数をもって可決せられ、次いで討論に入り、さらに同委員より、討論終局の動議提出せられ、この動議につき採決の結果、多数をもって可決せられましたので、直ちに本法律案につき採決いたしましたところ、多数をもって原案通り可決すべきものと議決せられました。  なお、昨日の委員会におきまして、本法律案に関連して、島村委員より、「憲法調査会の使命と任務との極めて重要なるに鑑み、政府は、この調査会の設置に当り、委員の人選につき慎重を期すると共に、調査会が現行憲法の諸問題を調査審議するに当っては、その結果が、わが国の将来を左右する重大なる関係にある点に思いをいたし、一党一派の利害に偏するがごときことなきよう、あくまでも公平、慎重の態度をもって臨まれたい。右決議する。」との付帯決議案提出されましたところ、日本社会党を代表して千葉委員より、「本調査会が内閣に設置される点、また、その設置についての法的根拠がない点、内閣には憲法改正原案の提案権がない点、本調査会の委員の構成によっては、憲法改正の必要ありとする政府与党の意見が持ち込まれることは必至であって、公正な審議による結論が期待できない点、憲法改正により、民主主義、平和主義、基本的人権の尊重の三原則が変更されるおそれがある点、憲法改正が、平和条約、日米安全保障条約及び日米行政協定等の諸条約によって要請されておる点等を理由として、憲法調査会法案及び島村委員提出の付帯決議案反対である」旨、次いで自由民主党を代表して宮田委員より、政府に対して、「本調査会の発足に当っては、本付帯決議案の意を十分くんで、公正なる審議により世論の期待にこたえるよう、要望を付して本付帯決議案賛成する」旨、次いで堀委員より、「現行憲法は、国民の意思を反映して制定されたにもかかわらず、提案の理由は、このような制定の経緯を無視したものであって、根拠が薄弱である点、憲法改正に関する世論の状況及び現在わが国が実質的には完全な独立をしていない現状より見て、現在はいまだ憲法改正の時期にあらざる点、憲法改正の意図が憲法改正の限界をこえるおそれがある点、本調査会は内閣に設けらるべきものでなく、国会に設けらるべきものである点、本調査会の委員の構成では、政府与党の意見に賛成委員が圧倒的に多くなり、公正な審議が期待できない点を理由として、本法案並びに島村委員提出の付帯決議案反対である」旨、それぞれ発言がありました。  右の発言が終り、直ちに島村委員提出の付帯決議案につき採決いたしましたところ、賛成者多数をもって本付帯決議案は、本委員会の決議とすることに決定いたしました。  以上、御報告申し上げます。(拍手
  52. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 本案に対し討論通告がございます。順次発言を許します。松浦清一君。   〔松浦清一君登壇拍手
  53. 松浦清一

    ○松浦清一君 私は、ただいま議題となりました憲法調査会法案に対し、日本社会党を代表して反対立場を明らかにいたしたいと存じます。  この法案反対する第一の理由は、本案提案の理由として、現行憲法が昭和二十一年、占領の初期において、連合国最高司令官の要請に基き、きわめて短期間に制定されたものであって、国民の自由意思によるものではないということ、さらにまた、現行憲法が実施されてから今日までの経験にかんがみ、わが国情に照らして検討を要すべき点があるとの二点をあげております。この提案理由の説明によって明らかなように、現行憲法を否定して、改正の要あることを認め、これを強行しようとするその目的を先決して提案された法案であるにかかわらず、提案の当初の質疑の過程においては、国民の反撃世論をおそれ、改正の要否を調べるための調査会であると強弁をいたしておりましたが、だんだん問い詰められて参りまして、最後の段階に入ってからは、政府からも、提案者からも、改正を目的とした調査会であるということが明瞭となったのであります。しかも本月十日の内閣委員会におきましては、提案者を代表して山崎巖君から、現在自民党の憲法調査会で策定した十一項目にわたる改正基本方針は、なお、さらに検討されて、調査会が設置されますると、この委員会に、委員として自民党から入れば、その中のだれかが、自民党改正案を持ち込むということを明らかにいたしたのであります。政府を代表しての吉野国務大臣も、これを肯定されたのであります。このことは、四月三十日の内閣委員会において鳩山総理の、「政府は案を作って国民に問う責任がある」、そういう暴論と相一致しているのであります。すなわち、憲法調査会を設置するということは、政府自民党も、憲法改正の方針をきめて、しかも改正案を作り、そうしてこれを押し通そうとされることがわかり切っておりますので、私どもは本案に賛成することができないのであります。  第二に、本案自体の内容についてであります。憲法第九十九条において、これを尊重し擁護することを義務づけられた国務大臣によって組織されております内閣に、憲法を改正することを目的とした調査会を設置することが適法かどうかということについては、多くの疑問があるのであります。さらに第九十六条では、憲法改正の発議権は国会であることが明記され、内閣に発議権のあることはどこにも認められてはおらぬのであります。鳩山総理の、政府改正案をもってこれを国民に問う責任があると言うがごときは、まことに許しがたき憲法のじゅうりんであります。現行憲法をじゅうりんして、あえて恥じない総理大臣を主管として調査会が設立されれば、どのような結果になるかはきわめて明瞭であるのであります。その内閣総理大臣に五十人の委員が任命されるのであります。ネコに食われるネズミが、そのネコから食われるために任命されるのと同じことであります。(拍手)二十人の学識経験者は、憲法改正論者たる政府御用学者の中から任命される危険があります。国会議員の三十人は、公平に各党議席比率に按分して任命するといたしましても、三対一の割合となり、五十人は四対一の比率において、調査会の結論は、その審議を待たずして、この法案成立の瞬間においてすでに明瞭となっているのであります。ただ衆知を集めて改正案を作ったという格好をしようという魂胆が見えすいているのであります。政府自民党諸君は、これが国民投票に付された際の、何のことはない、事前運動をやっているにすぎないのであります。だからわれわれは、賛成ができないのであります。(拍手)  第三の理由は、すでに着々として進められております改正案の内容についてであります。本年の四月二十七日に、自民党の憲法調査会から資料として発表された憲法改正案によりますと、その前文から始まって、天皇制の問題、戦争放棄に関する問題、家族制度の問題、国民の権利義務の問題等、現行憲法のほとんど重要部分の条章にわたって改正を加えようとしているのであります。そうしてその改正案は、発表されるごとに、だんだん反動的な傾向を濃化しつつあるのであります。  一部の閣僚諸君国会議員、憲法学者の諸君のグループが、調査会が設置されれば、これに提案しようという目的で研究を進められておられるそうでございますが、その諸君が、日本国憲法期成同盟案として本年二月二十六日に発表した草案によりますると、たとえば天皇制の問題について、そのときは、「天皇は、日本国民の総意に基いて、国民統合の象徴たる皇位を擁し、外国に対して日本国を代表する。主権は国民に存し、その権力は全国民に由来する。」、こういう程度であったのが、四月二十七日の自民党の案になりますと、現行憲法の「象徴」という表現は、いかにも翻訳的であって、意味も分明を欠いているので、これを「元首」に戻したいという天皇元首制の積極的な意見に飛躍をいたしておるのであります。この一点についてだけでも、もしこの法案が成立すれば、再び君が代を歌い、日の丸の下で最敬礼が号令され、不敬罪が復活するおそれのあることを国民はひとしく憂慮をいたしておるのであります。私ども国民が、さらにそれにもまして警戒をしておりまするのは、この元首たる天皇の名をかり、世に神の権力が横行して、日本民族の上にさらに大きな残虐が再来するであろうということをおそれておるのであります。政府にしても、自民党諸君にしても、それほど政治上の大きな権力を天皇に持たせようというような、そんなばかげたことは断じてないと信じます。信じたいのであります。しかしながら、問題は、現行憲法のもとに・おいて、天皇と内閣との間に、少しの不自由も、少しの不都合もなかったということであります。天皇と国民との関係においても、何の不自由もなかったのであります。天皇の地方行幸などに際して、老いの目に涙をためて天皇に会いたいと念願する老婆が、警官にせきとめられるというような、天皇と国民との間には、今まででさえ、むしろ権力の障害が強過ぎたくらいの感があるのであります。昔、天皇の権力を最大限に利用した東条にいたしましても、日本人である前に、まず東条という人間であったのであります。人間にその権力を利用される天皇にしてはならぬのであります。  私は第四番目の反対理由として、再軍備の問題を論じたい。鳩山内閣も、自民党諸君も御記憶であろうと思います。昭和二十年七月二十六日、ベルリン近郊のポツダムにおいて、英、米、中華の代表者が日本の降伏条件を起草して、これを日本に送ってよこした日であります。これをポツダム宣言と申します。私は日本の憲法改正論議がいよいよ真剣になり始めましてから、私は私なりに現行憲法の制定されるまでの事情について、できるだけ努力を払って調べて参りました。実はこのポツダム宣言を十年ぶりに、三度、四度読み返して、そのときのわが国が言語に絶する状態に置かれておったことを痛感させられたのであります。思い出させられたのであります。独立国は当然自衛力を持つべきであるということ、このことだけに限定をして考えてみますると、この理論に合理性がなくはございません。しかしながら、力のバランスだけで国を自衛しようということは、現実の日本の問題としては、きわめて困難であります。太平洋戦争の緒戦、当時の帝国海軍がハワイを奇襲いたしました際、日本のハワイ派遣の艦隊とアメリカのハワイ派遣の艦隊との対比は、わが方の奇襲による戦略上の勝利であって、実力差による勝利ではなかったことは、諸君も御承知の通りであります。戦争の勝敗は、その国の資源と生産力、兵器の科学性と兵の精神力と戦略巧拙の総合戦力差によって決定することは申し上げるまでもないのであります。日本アメリカの戦争は、日本にとって神風以外に勝算のあろうはずはなかったのであります。私ども日本人は、そのことを敗戦の日に痛切に考えさせられたはずであります。日本の再軍備論者は、どこのどの国が日本を侵略したとき、それを自衛しようと考えているのか、それは言明の限りではございませんが、もしも北方大陸方面を予想するなら、それはあの大戦の前に、日本海軍の好戦家の諸君が、アメリカを仮想敵国として八八艦隊の計画を立て、多額の国費を乱費して惨敗へのコースを直進をじたことと同じコースであります。他国を相手として考える戦力は、相対的な原理を判断する理性を失ってはならぬと思います。他国の侵略を想定して日本の自衛力を考える場合、日本の持つ資源、生産、経済の総合力が、昔の八八艦隊にならないことを十分考える必要があるのであります。私どもは、再びポツダム宣言のごとき悲惨な国民の血涙を見てはならぬのであります。これが第九条を改正して、再軍備を合法化しようとする憲法改正論に反対する理由の一つであります。  私は、六年の長きにわたって、内閣の主権を掌握した吉田さんに二つだけ感心したことがございます。その一つは、あのずうずうしい心臓であります。さらにもう一つは、昭和二十一年六月二十五日、第九十議会に憲法改正案が提案され、吉田総理の趣旨説明に対して、各党代表の質問の最後に、共産党の野坂参三君が質問に立っておる。野坂君は、「侵略戦争に対して自国を防衛する戦争は正義の戦争である、わが国もすべての戦争を放棄する必要はない、」、今の共産党から見れば、まことに不思議な質問をしております。これに対して吉田総理は、「近年の戦争は、多くは国家防衛権の名において行われたことは顕著な事実である、ゆえに正当防衛を認めることが、たまたま戦争を誘発するゆえんであると思う、ゆえに正当防衛、国家の防衛権による戦争を認めよというがごとき御意見は有害無益の御論議と私は考えます」と答えております。まことに当時の吉田さんは、りっぱな答えをしたと思います。これこそ、まことにもっともな御意見でありまして、不幸にして私はその情景を目撃をいたしておりませんが、あの吉田さんの態度から想像しますと、おそらく厳然として野坂君をしかり飛ばしたと思うのであります。ところがその吉田さんが、ちょうど四年目の昭和二十五年、七万五千の警察予備隊を創設してから、がぜんとして心境の変化を来たして、自衛合憲論を主張するようになり、警察予備隊はその名も保安隊と変り、自衛隊と変貌して、数もまた十一万となり、十三万となり、十六万となり、さすがに自衛合憲論も、国民反対世論の前に倒れて鳩山内閣となったのであります。  鳩山内閣選挙公約の中で、社会保障制度の拡充強化は、ついに一朝の夢と消えて、四十二万戸住宅建設はかけ声だけで消え去りましたが、公約以上に実行をしていただいたのは自衛隊五万の増強であったのであります。オネストジョンの持ち込みであり、F86ジェット戦闘機使用のための航空基地拡張であったのであります。吉田さんは、自衛合憲論で六年終始しましたが、今の鳩山総理は、あるときには自衛合憲論を主張され、またあるときには自衛違憲説となるなど、たびたびの豹変の結果、ついにたどりついたのが憲法改正の序論としての憲法調査会法を自民党諸君をして提出せしめたのであります。  私は、今ここで防衛六ヵ年計画の有無については、とかくの議論をしようとは思いません。しかし、今日までのように一年に二万二千平均で自衛隊を増強して行くといたしまするならば、これから十年すれば、日本の軍隊は四十三万の堂々たる軍隊となるのであります。私のこの反対討論は記録に残され、十年先きも残されて行くのであります。従って私は、憲法調査会法案反対討論をするに当って、いいかげんなことを言うわけには参らぬのであります。第九条が提案者が欲するがごとくに改正されまするならば、このことは必ずその方向をたどって、志願採用では間に合わなくなり、徴兵制度がとられ、また世の母たちを泣かせることになるのであります。水素爆弾の谷間で、日本の民族は滅亡するのであります。これが第九条改正反対の二つ目の理由であります。(拍手)その三には、最近の防衛庁の予算の乱費ぶりはまことに目にあまるものがございます。立川基地の米空軍が七万二千円のスクラップ価格で東京通産局に払い下げた中古パッカード・エンジンを、いろいろのブローカーの手を通って千二百五十万円で防衛庁が買い取っております。これはどんなしろうと考えで判断をいたしましても、くず箱の中から宝石を拾った話とは全然わけが違うのであります。昭和二十六年の二千五百万円の医療器具事件、二十七年の事務職員が数字を書き間違えたと称する七千三百八十八台の野戦用ベッド事件、二十八年の鉄かぶと事件、二十九年の軍服事件、憲法では認められておらない自衛隊という名の軍隊が、国民に対して遠慮しがちでやっていてさえ、現状御承知の通りであります。それがもし憲法で保障された軍隊ともなれば、心理的に、どのような自衛隊の諸君に変化が起るかを考えれば、まことにりつ然たらざるを得ないのであります。自民党諸君は、第九十議会における変心前の吉田さんの所信を想起すべきであります。  反対討論の第五点として、私どもは民主主義の擁護、平和主義の徹底、基本的人権をあくまでも尊重する立場を堅持するのであります。社会公共の福祉と調和をはかるのには、個人としての人権を相互に尊重し、認め合い、相互の信頼と愛情の上にこそ社会のよき結合体は維持せられ、進歩するのであります。家族制度の問題にいたしましても、家長の権限が法によって強化されるだけでは家庭の平和は断じて保たれないのであります。妻や次男、三男坊が、すべて法の上で平等の立場に置かれ、その安心と信頼と愛情の結合が家庭の平和を保つのであります。働く者の人権がはなはだしく法によって抑制せられ、不当な資本主義の搾取が再現して、天皇が神の座に着き、町に兵隊が横行しても、それでは国は栄えないのであります。国民に相ひとしき人権を保障し、生活に必要な経済条件を満たし、軍備よりも、荒廃した国土の再建をはかること五、政治を行う者に課せられた重大な任務だと思うのであります。憲法の改正は、この日本民族悲願の理想をじゅうりんするものであります。  私は、以上申し上げました理由をもちまして、憲法調査会法案反対をいたします。自民党諸君の深き御反省を願えるならば・まことに幸いであります。(拍手
  54. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 宮田重文君。   〔宮田重文君登壇拍手
  55. 宮田重文

    ○宮田重文君 私は、自由民主党を代表いたしまして、ただいま議題となっております憲法調査会法案に対し、賛成の意を表明せんとするものであります。  現行憲法は、民主主義・平和主義並びに基本的人権の尊重ということを基本的な原則としており、この点は現行憲法の長所として何人も高く評価しておるところであります。わが党もまた立党宣言や綱領の中で、同一の趣旨をうたっており、この原則は将来にわたって堅持して行くことを天下に表明しておるのであります。わが党はかねがね憲法改正の必要を叫んで参りましたが、しかしその改正は決してこの憲法の三大基本原則を放棄する意味でないことは、わが党の憲法調査会が機会あるごとに言明して参った通りであります。社会党の諸君は、憲法問題を論ずるに当って、わが党が、あたかもこの基本原則を放棄する意図を抱いているかのごとき宣伝を行なって参りましたが、これはわが党の真意をまげた、ためにする悪宣伝にすぎません。私は、わが党が民主主義、平和主義、基本的人権の尊重という、現行憲法の基本原則はあくまでも堅持して行くということを、この機会にあらためて明らかにしておきたいと思います。しかしながら、現行憲法は、その成立の由来からしても、わが国の国民感情にそぐわないものがあり、またその規定にも疑義を生ずるような、まぎらわしい表現、あるいはわが国の国情に合致しない面を含んでおることも、また否定し得ないところであります。憲法改正の必要は、実にここに胚胎するのであります。現行憲法は昭和二十一年、わが国の主権が連合国最高司令官の制限下に置かれていた時代に制定せられました。連合国最高司令官の占領管理は、ポツダム宣言履行のため、必然的に憲法改正問題を処理しなければならなかったのでありますが、敗戦直後のわが国は、民主化のための憲法改正に対する積極的な心がまえができていなかったことは当然であり、現行憲法の原案となりました憲法改正草案要綱が、司令部案を骨子として、わずかな修正を加えて成立した当時のごときも、国民は、その食生活に追われていた社会不安の時期でありまして、そのころは、「憲法より飯」という標語にも表現されておるように、食糧メーデーを契機といたしまして、労働攻勢のため幣原内閣も瓦解するというようなありさまで、憲法の制定について、国民は強い関心を持つまでに至っていなかったのであります。連合国最高司令部民政局の占領報告書である「日本の政治的再建」には、改正の原案が司令部によって国民の意思と関係なく作られ、その性質が明治憲法とは全く別個のものとして、法的断絶性があるにもかかわらず、他方におきましては、憲法がポツダム宣言の示すように、日本国民の自由な意思によって作られたとすることの矛盾を非常に苦慮した事実が記してあります。司令部は、その原案を強力な示唆と指導のもとに、きわめて短期間に立案し、日本政府に草案を手交するに当って、「日本政府がこの草案を無視する場合には、天皇の身体を保障することはできない」と言い、天皇を戦争犯罪人として提訴することを暗示して強圧を加えたとも伝えられております。これらは当時の様々な記録あるいは関係者の言葉によって、国民の全部がすでに承知しているところでありまして、現行憲法の条文に見られる翻訳語は、その成立の由来を如実に証明しておるものと申してもよろしいのであります。もとより現行憲法は、国会審議を経、多数をもって可決したものでありますから、私はその形式上の有効性を云々しようとは思いません。しかしながら、現行憲法が押しつけられた憲法であるという事実は、あくまでも事実でありまして、国民は、この憲法が国民の自主的な発意によって自由に決定されたものとは思っておらないのであります。私たちの自由な意思によって決定さるべきはずのものが、外からの押しつけによってでき上ったと、いうことは、国民感情に一つのしこりを残しておるのであります。西ドイツにおきましては、わが国と同様に、占領中に連合国から憲法制定を指示されましたが、これを拒否し、憲法のかわりに基本法という名称の法律を制定いたしました。そしてその末尾に、「この基本法は、ドイツ国民が自由な決定によって議決した憲法が効力を生ずる日に基本法は効力を失う」という一条を設けて、将来に備えたのであります。これはまことに賢明な処置でありまして、わが国の憲法にも同じ趣旨の規定がほしかったとおそまきながら考える次第であります。わが国が独立を回復した今日、われわれもまた国民の自主的な発意に基き、自由に決定された魂のこもった真の民主憲法を持ちたいものであります。ところが成立の由来はどうであれ、いいものはいいのだという議論をなすものがあります。憲法改正反対論者の所説は、結局こういう論拠に立っておると思うのであります。しかし前にも一言いたしました通り、現行憲法には、解釈上疑義を生ずるような表現、あるいはわが国の国情にぴったりしない規定がございます。一、二の例をあげますと、先ほど松浦君から触れられておったようでありますが、天皇について、現行憲法に用いられておる象徴という表現は、いかにも翻訳的でありまして、また、意味も明瞭を欠いております。独立国である以上は、君主国たると共和国たるとを問わず、だれが国の代表者であるかを明確に定めておるのでありますが、現行憲法の規定は、その点、はなはだ不明確であって、わが国には国を代表するものは存在せずとか、あるいは天皇と内閣総理大臣とがその地位を分っておるというような議論さえ見受けられるのであります。従って「象徴」というあいまいな表現は、国の代表者を示す明確な表現に改むべきであります。また、憲法第九条の第一項は、「国際紛争を解決する手段として」の戦争及び武力の行使等を禁ずるものであり、自衛のためにする戦争及び武力の行使を否定するものでないことは一般の通説であるのみならず、規定の文面上でも明らかでありますが、同条第二項の規定については、自衛のための武力の保持まで禁じておるところの解釈さえあって、議論が区々に分れて一おります。そこで、侵略戦争の放棄に関する第九条第一項の根本精神は堅持しつつ、独立国として当然の権利である最小限度の軍備は保持し得ることを明確に表現することが必要であろうと思われます。  これらはほんの一例に過ぎません。現行憲法中改正を要する諸点について、詳細に論ずることは、今はそのときでもありませんので深くは立ち入りませんが、憲法改正論は、ひとりわが党の主張であるばかりでなく、学界その他においても、またその議論が盛んであります。従って憲法に関する問題点の審議検討こそ、わが国民の目下の重大な課題であると申しましてもよろしいのであります。わが党は、保守合同以前から、憲法問題の研究を重ねて参りまして、問題点は一応明確にされておりますが、何分にも憲法は国家の基本法であり、国民生活の基調をなすものでありますから、その改正には、慎重の上にも慎重を期すべきものであります。憲法改正に当っては、まず憲法のいかなる点が問題であるかというところから始まって、改正するとすれば、どういう方向に改正するかということについて、国民各層の意見を十分に聞き、その意見を反映するような案を作成する必要があります。  本法案による憲法調査会は、憲法問題の重要性にかんがみ、現行憲法を縦横に検討し、関係の諸問題を十分調査審議するための機関でありまして、広く衆知を集め、公正な世論を反映せしめるため、国会議員と学識経験者とをもって組織されることになっておるのであります力憲法改正賛成する者も反対する者も、ひざ突き合せて、腹蔵のない意見を交換するための共通の広場を、ここに設けようとするものでありますから、憲法改正反対論者といえども、問題点の究明を使命とするこの調査会の設置に反対する理由はごうもないのであります。憲法改正反対論者も、進んでこの調査会に参加し、意見を戦わせますことこそ、最も民主的な態度であるのに、社会党の諸君が、この調査審議の機関、この共通の広場を設けることにすら反対することは、いかにも偏狭な態度でありまして、私のはなはだ遺憾とするところであります。社会党の諸君も、この法案の真意を正しく理解されて、調査会成立の暁には、積極的にこれに参加せられ、問題点の検討に当りましては、活発なる論議を尽されんことを希望してやみません。  以上、本法案賛成の意を表して、私の討論を終ります。(拍手
  56. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 堀眞琴君。   〔堀眞琴君登壇拍手
  57. 堀眞琴

    ○堀眞琴君 私は無所属クラブを代表いたしまして、ただいま議題になっておりまする憲法調査会法案並びにその付帯決議に対しまして、反対をいたすものであります。  まず第一の理由であります。それは現行憲法は、日本国民の民主的な意思を反映した憲法であり、憲法調査会法案を提案した提案者の、「国民の自由意思によるものではない、連合国最高司令官の要請に基いて作られた憲法である」と言う、その点に関しまして、私は反対をせざるを得ないのであります。  当時、われわれもマッカーサー総司令官によって、憲法草案に関する重大な示唆が行われたことは承知いたしております。しかしながら、マッカーサー総司令官の示唆がなぜ行われたかということになりまするというと、ただいまの宮田君の賛成討論の中にも、あまり触れておりません。日本政府においては、松本烝治氏を中心とする憲法問題調査会が作られました。日本の憲法改正草案に関する起草が行われたのであります。ところが、その最初の改正草案たるや、明治憲法とあまり離れたものではなかった。たとえば統治権を有する天皇の地位については、従来とほとんど変りがない。国務大臣の地位についても、ほとんど変りがない。わずかに政治の責任国会に対してとるという程度の改正草案であったのであります。もともと連合国の意向は、ポツダム宣言の精神に沿うて、日本を民主化するという点にあったことは言うまでもないのであります。従って日本が連合国によって管理されるや、数々の民主的な指令あるいは覚書等が日本政府に手交された。この線に沿うて数々の民主的な措置がとられたのであります。憲法改正の問題についても同様であります。憲法改正の問題が、向う側とこちら側との話し合いによって、正式のルートに乗ったのは二十年の秋であります。ところが、ポツダム宣言の精神に沿う日本の民主化的な制度の基本的な法律としての憲法草案が、明治憲法とあまり遠くない、むしろ反動的な、反民主的な草案であったがために、マッカーサー総司令官は、これに対して日本の民主化的な憲法草案の示唆を行なったということは、当然だと申さなければなりません。  しかも、これに基いて作られた日本の草案は、重大なる点において修正を行なっております。たとえば、一院制度を二院制度に直す、あるいは日本の国の土地並びに天然資源の国有化を規定した条項を削るとか、その他重要な修正を行なっております。さらにまた、日本の草案を審議決定した第九十帝国議会は、二十一年の四月、憲法を審議すべき帝国議会として改めて選挙された帝国議会であります。この帝国議会において百日余にわたって憲法草案が審議されているのであります。もちろんその過程において、数々の修正が帝国議会において行われたことは言うまでもありません。しかも当時、日本国民は飢餓と混乱の中に終始しておったということが宮田君の賛成討論の中にあります。確かに飢餓のために日本国民は、非常な生活の苦境にあったことは、私どもも十分知っております。しかし、日本の民主的な方向を憲法の改正の中に見出そうとして、各政党もその他の民主的な団体も、憲法に関する論議を高めておったことも事実であります。そして中には、かなり進んだ草案等も用意され、たとえば日本の天皇をなくなして、共和制にしようというような草案も二つ出ているような状態であり、当時の労働組合、農民組合あるいはその他の一般大衆の民主的な結合なり、あるいはその行動なりは、御承知の通りに、二十年から二十一年、二十二年と盛り上っておった状態であります。従って国民の自由なる意思が少しも反映されなかったということは言うことができないのであります。なお、この日本の憲法につきまして、帝国議会において審議されたその二年後に、極東委員会から、もし日本国民が、この憲法について、その修正を望むならば、これを修正すべきであるという極東委員会からの示唆がありました。当時政府においては、この憲法について、何ら国民に修正の意向のないということを確かめまして、極東委員会に対して回答をやっております。ただいま宮田君は、西ドイツの憲法においては、独立完成後、あらためて国民の意思による憲法ができた場合に、現在の憲法はこれを廃棄するという経過規定があったと、日本にもそれを設くべきであったという御議論であります。しかし極東委員会のこの示唆は、いわばそれに相当するものと申さなければなりません。従って現在の憲法が、民主的な国民の意思が反映しなかったかどうか、あるいは押しつけられた憲法であるというがごときは、私は極論すれば、認識せざるもはなはだしいと申しても差しつかえないと思うのであります。(拍手)  第二に、今日は憲法を改正するときではないということであります。もちろん私も、今日の憲法は、明治憲法と違いまして、不磨の大典でもなければ、これを改正する事由も持たないものでもありません。社会生活が進展し、情勢が変って参りまするならば、そして大多数の国民がこれを望むならば、憲法を改正して一向差しつかえがない。ところが今その時期であろうか。この数件年来、各新聞社は、御承知のように世論調査を行なっております。憲法改正問題に関しましても、従来ともたくさんの世論調査が発表されております。その結果によりまするというと、三分の一が憲法改正賛成、三分の一が憲法改正反対、残りの三分の一は、憲法問題については、その態度を留保したという形になっております。これが今日、大体において各新聞社等が行なっておりまするところの憲法問題に関する国民世論だと申しても差しつかえがないのであります、  憲法調査会法案の提案者は、憲法は占領時代に作られたものであり、今日は独立国になったのである。従ってその憲法を全面的に検討すると同時に、独立国民としての自由な意思に基く憲法を作らなければならないと主張しているのであります。しかし、果して日本は、完全な独立国になっているでありましょうか。なるほどサンフランシスコ条約が結ばれて、一面的には日本は形式上独立いたしました。しかし日本は、すべての交戦国との間にまだ平和条約を完備いたしておりません。のみならず、安保条約、行政協定等によりまして、日本の国土内に日本の主権の及ばない地域、日本の主権の及ばないところの特定の人々の存在を許しているのであります。どうしてこのような状態で日本を完全な独立国ということができるでありましょうか。(拍手)しかも憲法改正問題が改正論者によって論議されるようになったのは、これは不思議にもアメリカからの要請に基いているのであります。アメリカ要請に基いて作られた憲法だと言って非難する改正論者が、アメリカ要請に基いてこれを改正するとは、一体どういうことでありましょう。マッカーサー元帥が、朝鮮戦争が始まると間もなく警察予備隊を日本に作らしめた、それが保安隊となり、自衛隊となって今日に至っておる、この日本の再軍備の問題をめぐって、アメリカ側から日本に憲法の改正要請して参っておるのであります。私はこういう時期において、日本が憲法を改正すべきときではないということを申し上げなければなりません。  第三に、私は憲法改正には、おのずから限界があるということであります。日本の憲法は皆さんの御存じのように、国民主権、平和主義、基本的人権の尊重の原則の上に立っております。この三原則こそは、現在の憲法をして憲法たらしめているところのものであり、もしこれを一歩でも逆行せしめる、少しでも修正するというならば、これは現在の憲法の建前をそこなうことであり、言いかえるならば、それは憲法改正ではなくて、新しい憲法を持つことになるのだということであります。たとえば国民主権であります。宮田君も、天皇の象徴としての地位に論及されているのでありまするが、この象徴という言葉が、きわめて不明確である、あるいは翻訳口調である。世界の国の憲法においては、だれが国家の代表者であるかということが明確になっている、だから日本でも、象徴という言葉をやめて、日本の代表者あるいはまた元首という言葉に変えたらいいのではないか、こういう御議論であります。しかし、象徴という言葉は、日本ではなるほど最近現われてきた言葉であります。しかし、世界の憲法学界においては、象徴という言葉は常に使われております。のみならず、象徴という言葉は、英国の憲法の中にすでに現われております。一九三一年のウェストミンスター法は、イギリス国家を構成する諸民族の結合の象徴として国王を認めるという規定を行なっております。また、憲法解釈上から申しましても、十九世紀の末以来、パジョットらを初めとしての憲法の本の中には、象徴という言葉が明確に使われておる、クラウンの地位をそれによって説明しているのであります。日本でも象徴という言葉が、憲法制定当時、伊藤博文によって検討されたことがありますが、しかし、明治憲法の中には、その言葉はそのまま取り入れられはしませんでした。とにかく象徴という言葉は、日本においては、きわめて新しい言葉でありますが、憲法解釈上からも、また憲法の母国であるイギリスの憲法においても、明確に象徴という言葉が規定されているのであります。これをたとえば元首にする、あるいは国家を代表するものとしての地位を明確にするというがごときは、私はその他の、たとえば天皇が有する国事行為の権限を拡大するという事項と関連して、明治憲法に一歩近づけようとする魂胆であると申さなければなりません。国家の代表者がだれであるかが世界の憲法においては明確になっているという宮田君の御議論であります。私は不幸にして、世界の今日行われている憲法の中で、元首という言葉が使われている国の憲法を十以上知ることはできません。今日世界では、六十幾つの国が憲法を持っております。元首という言葉は十に満ちません。それから大統領、国王を規定して、外国に対してその国を代表するという規定を持ったものも十とはないと思います。ただ、その他の国々においては、大統領なり国王なりの地位はおのずから、たとえば統治権、行政所掌としての大統領の場合はもちろんでありまするが、そうでない大統領の場合についても、おのずから国を代表するものとは規定しなくとも、そしてまた政治上の権限は何ら持つものではなくとも、国を代表ずるものとしての地位は明確に想像されるようになっております。従って、日本の場合についても、やはり同様であり、これを元首とする、あるいは外国に対して日本を代表するものとするという、そういう修正は必要が全然ないと言わなければならぬ。しかも、そのような修正意見は、また国民主権に対する大きな侵害になるということを、私どもは見なければならぬと思うのであります。  時間がありませんので、その他の理由も申し上げなければならぬのでありますが、あとは急いで二つの理由を申し上げます。  第四番目の理由は、憲法調査会を内閣に設けることについての反対であります。憲法の最後の制定権者は国民であることは言うまでもありません。しかし、憲法修正に関する国会に対する発議権者はだれであるかは憲法に別段規定はありません。国会を通過した憲法修正案が、さらに国民に発議される場合の発議権者が国会であることは、第九十六条によって明瞭であります。政府では、第七十二条による、内閣総理大臣は内閣を代表して国会議案提出することができるというあの権限に基いて、政府においても憲法改正案を国会提出することができるという解釈をとっているようであります。しかし、これは憲法と一般の議案あるいは一般の法律案との価値の評価を間違っているのでありまして、憲法はきわめて根本的な法規であり、一般法規とこれを同一視することができないことは、国会におけるその審議手続に関して特別な定足数を規定することがらも、明瞭であると申さなければなりま  せん。従って、憲法改正国会への発議権は、国民の代表として、国家の最高機関としての国会にのみあるものとしなければならぬのであります。憲法改正を前提とする憲法調査会も、従ってまたこれを内閣に置くべきではなく、もし置くものとするならば、これを国会に置くべきではないか。従って、自民党の山崎君らによって提案されている憲法調査会法案が、調査会を内閣に設けるということは、きわめて非論理的であり、憲法違反であると申さなければならぬのであります。  最後に、委員の構成であります。憲法調査会は五十名の委員、三十名は国会議員、二十名は学識経験者ということになっております。付帯決議の中には、一党一派に偏しない公正なる人物をもってこれを構成するということが述べられているのでありますが、しかし三十名の国会議員は、これは当然現有勢力に比例してその委員が任命され、圧倒的に多数なのは自民党であるということにならざるを得ません。また学識経験者の任命等も、おそらく一党一派に偏しないという立場をとるとは言いながら、やはり政府の側、自民党側に有利な人物が選考されるであろうことも、これまた想像にかたくないのであります。
  58. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 堀君。簡単に願います。
  59. 堀眞琴

    ○堀眞琴君(続) 結局、そうなりまするというと、憲法調査会において検討せられる内容というものが、どういうものであるか。憲法の改悪に向っての方向をとるであろうということは、明瞭であると申さなければなりません。  以上の理由によりまして、私はこの憲法調査会法案並びにその付帯決議に対して反対するものであります。(拍手)     —————————————
  60. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 廣瀬久忠君。   〔廣瀬久忠君登壇拍手
  61. 廣瀬久忠

    ○廣瀬久忠君 私は緑風会を代表いたしまして、憲法調査会法案並びに付帯決議に賛成の億を表するものであります。  現行日本国憲法は、その成立の過程におきまして、幾多われわれの納得し得ざる欠陥を持っておるのであります。私はその欠陥を検討して、結局自主的に憲法を改むべきであると信じまして、以下その理由を申し述べたいと思います。  まず、あげなければならないことは、マッカーサー司令部の草案作成自体の欠陥であります。マッカーサー司令部は、国の基本法たる憲法の基本的性格を軽視したことが悪いのであります。法は国民と自然に一体であるものでなければ、なめらかな施行ができません。これは法の哲理であります。一国の憲法も、国民の手で作られ、国民と自然に一体をなしておるならば、その憲法の運用は円滑なるを得ます。従って、国政の伸展に寄与するところは大であります。しかるに、占領当局は国際法の普遍的原則、すなわち占領軍は、被占領国の法律秩序にみだりに手を触れてはならぬという原則、その原則を無視して、わが国の無条件降伏を理由として、あえて憲法改正を示唆したのであります。これは国際法の原則を無視したのみならず、法自体の哲理を破ったものであります。ここにわが憲法は、法に必要なる自主性を持たざるに至り、憲法の使命を円滑に達成し得ざる状態に置かれたのであります。  その次にあげなければならぬことは、憲法草案の示唆自体が、民主主義の原則に違反するものであることであります。連合国は一再ならず、各国の政治形態は、民主主義の原則に従って、その国民により決定せらるべきことを声明してきたのであります。しかるに民主主義の主要提唱国であるところのアメリカの占領軍当局が、この従来の主張を裏切って憲法改正をわが国政府に命じ、日本国の政治形体を変更せしめたのであります。このことは、ポツダム宣言に違反するのみならず、しばしば連合国が主張してきた民主主義の原則をくつがえすものであります。これ、みずから大なる矛盾を冒したものであります。このために民主主義を理想とするところの日本国憲法自体が、民主主義の原則に反して生まれ出たということに相成ったのであります。これ、われわれが納得し得ざる当然の理由とするのであります。  次は、マッカーサー司令部のわずか十日間に足らざる性急なる憲法草案の作成であります。これは、わが基本法に対する軽視と言わなければなりません。その次は、この急ごしらえの草案を日本政府に押しつけたのみならず、議会の修正に一つ一つ承認を要することとして、その審議の自由に制限を加えて、国民の自由の意思によらない憲法といたしてしまったのであります。なお、米国の初期の占領政策に基いて旧敵国日本をこらしめる、すなわち日本膺懲の考えは、わが日本国憲法を弱体化するに至ったのであります。(「何が弱体だ」と呼ぶ者あり)  以上は日本国憲法の成立過程におけるところの欠陥であります。私はこの欠陥を検討して、自主的の日本国憲法を作り上げるべきだと思います。  なお、憲法制定後十年、実施の結果について見ますと、日本国憲法は理想として平和主義、民主主義を掲げております。これは当然のことであり、賛成であるのは言うまでもありません。がしかし、平和主義、民主主義の実現に対する日本国憲法の態度については、私は賛成の意を表することはできません。それは日本国憲法の態度をもってしては、平和主義も民主主義も結局において実現不可能であると私は判断するものであります。今やわれわれは、この重大問題を深く検討して、憲法の改正に向わなければならぬと思います。以下その理由を申し上げます。  この日本国憲法が、世界普遍の原則であるところの平和主義並びに国際協調主義をあげたのはけっこうであるが、しかし、この憲法の平和主義に対する態度は私は賛成はできない。それはこの憲法の態度は、空想的である、また宗教的であるばかりでなく、実に消極的であり、かつ他国依存主義であります。御承知の通り憲法前文に、「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した。」というに至っては、わが尊い生命と安全とを一に他国に対する信頼のみによって維持せんとするものであって、かくのごときことは、現在の国際情勢の判断としては甘過ぎる判断であります。実際問題としてとうてい許し得ざるものであります。(拍手)また、他国民をかくまで公正にして信義に厚いものとするということは、それはいわゆる信頼が厚過ぎるのじゃないか、いわゆる過信のそしりを免れないであろうと思います。いかにも現実離れのした夢を見るがごとき憲法の態度であります。憲法は、宗教の経典ではありません。憲法は、聖書ではない。憲法は、国の実際政治の基本法である。従ってかかる日本国憲法の態度をもってしては、平和主義を実現することは、現在及び近き将来の国際情勢においては不可能であると断ぜざるを得ません。かくのごとき他国依存の平和主義は、第九条の解釈において、国家の自衛権は認めるが、自衛力及びその行使は認めないという議論を生むに至りました。国家にして自衛権の行使を認められないというに至っては、自衛権なきにひとしく、自衛権なき国家は、独立国ではないということを言わざるを得ません。かくなりましては、憲法第九条は、戦争の放棄どころではない、それはわが国の独立を放棄することになります。(拍手)かくのごとき平和主義は、平和主義ではない。それは敗北主義である。かくのごとき国際協調主義は、協調主義ではない。それは隷属主義である。それであるから、私はわが憲法の平和主義に対する態度をもってしては、平和主義の実現を期待し得ないものであると断ずるものである。(「何を言うか」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し)
  62. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 静粛に願います。
  63. 廣瀬久忠

    ○廣瀬久忠君(続) 現行憲法が、民主主義を理想としておることはよろしい。しかし現行憲法の民主主義に対する態度には、その実現については、まことに遺憾の点が多いのであります。民主主義の内容であるところの国民の基本的人権の尊重について、現行憲法は基本的人権の列挙については、諸外国の憲法に類例を見ないほど整備されておる。しかしながら、人権の列挙については遺憾がないが、基本的人権の保護、充実については、大なる欠点をこの憲法は包蔵しておる。この欠点を補わんとするならば、国家の権利を認めなければならない。社会連帯、国民協同の理念に基く国家の基本的権利を認めなければならない。何となれば、各般の基本的人権に関し、国民にその満足なる実現を与えるためには、健全なる国家の存在がまず必要である。(拍手)しかして健全なる国家の有力なる施策が講ぜられなければならない。しかして国家がこの重要なる使命を果すためには、国家は、その独立と国家の平和、その秩序、その財力とを確保せねばならぬのであります。従って、国家は国民に対し、租税の負担はもちろん、法律秩序の維持、国家への忠誠、国家の防衛、これを求むる権利が国家にはなければならない。かくしてこそ国家は、健全なる存在となり、かつ有力なる施策を実行し得るのであります。ここで初めて国民の基本的人権の充実、保護が行われ得るのであります。もしそうでないならば、現行憲法のまま行くならば、人権は、いたずらに憲法に列挙されるだけで、ついに空文に終るかもしれません。民主主義の源であるところのアメリカの憲法を見ても、その憲法の前文は、まず「正義を樹立し」と書いてある。次に、「国内の秩序を保障し」と書いてある。それから「国防に備えて」と書いてある。これは何を意味するか、まずわれわれは、力強く国民協同の理念を憲法に現わして行かなければならないということを示しておる。そうして後に、一般の福祉を増進し、自由の祝福を考えるべきである。まずわれわれは、国家の権威を掲げ、次に個人の尊厳をあげて行くべきであります。この米国憲法の態度を、わが国の憲法の態度、すなわち個人の尊厳に偏して、国家の権威を軽んじたる日本国憲法に対比するときは、そこに雲泥の差異を認めざるを得ません。かかる日本国憲法の態度をもってしては、終局において基本的人権の充実は不可能になると私は判断します。右のほか、現行憲法の国会の運営、内閣の活動その他について、民主主義の実現につき、はなはだ遺憾の点が多いのであります。われわれは、日本国憲法成立の過程並びに実施の実情に徴して、独立回復の今日より、憲法に対し慎重なる検討を加え、わが国将来の方針を樹立するための調査をなすがごときは、当然過ぎるほど当然であります。しかし、本法案によって設けられるところの調査会については、委員会において決定せられたるところのあの付帯決議を尊重して、内閣は委員、調査会の構成並びに運用について、慎重の態度をもって臨むべきであります。  私は最後に、憲法の検討に関する私の考えを述べ、賛成の意を表明するのでありまするが、要するに、第二次大戦におけるわが国の敗戦については、われわれは深い反省をなすべきはもちろんであります。ことに憲法に検討を加えるに当っては、この反省こそ最大の要点であります。しかしながら、敗戦のゆえをもって、わが国の歴史と伝統とを全面的に否定し去るがごとき態度は、断じてとるべきではありません。かくのごとき態度は、わが民族の伝統と日本国家との特性と誇りとを、ことさらに、または故意に放棄せんとするものであります。(拍手)かつ、われわれの固有の生命を空しからしめんとするものにほかならないからであります。独立回復四年、われわれは、今こそわれわれの民族としての自信を取り戻すべきであります。私は、この自信を基盤として、日本の歴史と伝統に対する正しき認識を堅持し、この上に立って日本国憲法を改正し、わが国家生活の理想とその政治的原理とを、国民の自由意思に基いて決定されんことを望むものであります。しかして、かかる自主日本国憲法の中には、以下申し述べる五つの基本観念を織り込みたいと念ずるものであります。  その一は、平和主義であります。しかし、私は平和主義に対する態度は、現行憲法の態度とは異なるものであります。すなわち平和主義の理想のもとに、わが国の独立と安全とを確保する民主的なる自衛軍を持つ平和主義であります。その二は、国際協調主義であります。すなわち国際信義を尊重するとともに、国際平和機構に参加することをわが国の責務とすることを憲法上に明らかにすることであります。その三は、国民主権の原則を確立するとともに、わが国情に適したる態勢をととのえることであります。その四は、人権を尊重し、国民の幸福と繁栄とを確保する福祉主義と、その実現をはかることであります。その五は、基本的人権に対して国家の基本的権利を明らかにし、個人の尊厳とともに、国民協同の理念を基調として、わが国を愛する、愛の実現を期することであります。  以上、私の憲法の検討についての基本的態度を申し述べて賛成討論を終ります。(拍手
  64. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) これにて討論通告者発言は、全部終了いたしました。討論は、終局したものと認めます。  これより本案の採決をいたします。  本案全部を問題に供します。本案の表決は記名投票をもって行います。本案に賛成諸君は白色票を、反対諸君は、青色票を、御登壇の上、御投票を願います。  氏名点呼を行います。議場の閉鎖を、命じます。   〔議場閉鎖〕   〔参事氏名を点呼〕   〔投票執行〕
  65. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 投票漏れはございませんか。……投票漏れはないと認めます。  これより開票いたします。投票を参事に計算させます。議場の開鎖を命じます。   〔議場開鎖〕   〔参事投票を計算〕
  66. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 投票の結果を報告いたします。   投票総数 百七十一票   白色票    百六票   青色票   六十五票  よって本案は可決せられました。(拍手)      ——————————   〔参照〕  賛成者(白色票)氏名      百六名       加賀山之雄君    梶原 茂嘉君       井野 碩哉君    山川 良一君       赤木 正雄君    村上 義一君       三浦 辰雄君    廣瀬 久忠君       早川 愼一君    野田 俊作君       土田國太郎君    田村 文吉君       竹下 豐次君    高橋 道男君       高瀬荘太郎君    島村 軍次君       河野 謙三君    小林 武治君       後藤 文夫君    武藤 常介君       大谷 瑩潤君    白波瀬米吉君       松原 一彦君    西岡 ハル君       井上 清一君    伊能 芳雄君       小沢久太郎君    青柳 秀夫君       佐藤清一郎君    酒井 利雄君       仁田 竹一君    滝井治三郎君       関根 久藏君    吉田 萬次君       白川 一雄君    菊田 七平君       中川 幸平君    田中 啓一君       榊原  亨君    藤野 繁雄君       木島 虎藏君    西川甚五郎君       宮田 重文君    谷口弥三郎君       三浦 義男君    左藤 義詮君       石原幹市郎君    中川 以良君       中山 壽彦君    青木 一男君       野村吉三郎君    津島 壽一君       苫米地義三君    大野木秀次郎君       斎藤  昇君    佐野  廣君       宮澤 喜一君    大谷 贇雄君       石井  桂君    雨森 常夫君       西川弥平治君    白井  勇君       横山 フク君    高橋  衛君       松平 勇雄君    深川タマヱ君       長島 銀藏君    宮本 邦彦君       寺本 廣作君    小滝  彬君       青山 正一君    紅露 みつ君       山本 米治君    石村 幸作君       剱木 亨弘君    加藤 武徳君       高野 一夫君    横川 信夫君       松岡 平市君    野本 品吉君       平井 太郎君    川村 松助君       堀末  治君    西郷吉之助君       寺尾  豊君    吉野 信次君       笹森 順造君    黒川 武雄君       小林 英三君    木村篤太郎君       石坂 豊一君    三木與吉郎君       新谷寅三郎君    井村 徳二君       島津 忠彦君    岡崎 真一君       重政 庸徳君    安井  謙君       小柳 牧衞君    川口爲之助君       木内 四郎君    深水 六郎君       古池 信三君    岩沢 忠恭君       井上 知治君    草葉 隆圓君     —————————————  反対者(青色票)氏名      六十五名       高田なほ子君    久保  等君       清澤 俊英君    山口 重彦君       加藤シヅエ君    安部キミ子君       岡  三郎君    海野 三朗君       河合 義一君    三輪 貞治君       田中  一君    永井純一郎君       上條 愛一君    東   隆君       荒木正三郎君    三橋八次郎君       小笠原二三男君    平林  剛君       竹中 勝男君    内村 清次君       赤松 常子君    山下 義信君       山田 節男君    藤原 道子君       野溝  勝君    栗山 良夫君       村尾 重雄君    相馬 助治君       佐多 忠隆君    八木 幸吉君       須藤 五郎君    堀  眞琴君       木村禧八郎君    成瀬 幡治君       若木 勝藏君    森崎  隆君       江田 三郎君    亀田 得治君       小林 孝平君    矢嶋 三義君       菊川 孝夫君    小林 亦治君       小松 正雄君    重盛 壽治君       加瀬  完君    藤田  進君       湯山  勇君    千葉  信君       近藤 信一君    田畑 金光君       大倉 精一君    永岡 光治君       阿具根 登君    天田 勝正君       松浦 清一君    秋山 長造君       羽生 三七君    曾禰  益君       松澤 兼人君    森下 政一君       岡田 宗司君    小酒井義男君       戸叶  武君    松本治一郎君       三木 治朗君      ——————————
  67. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 日程第十一、百貨店法案  日程第十二、下請代金支払遅延等防止法案(いずれも内閣提出衆議院送付)  以上、両案を一括して議題とすることに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  68. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 御異議ないと認めます。  まず、委員長の報告を求めます。商工委員長三輪貞治君。     —————————————   〔三輪貞治君登壇拍手
  69. 三輪貞治

    ○三輪貞治君 ただいま議題となりました百貨店法案並びに下請代金支払遅延等防止法案の二法案につきまして、商工委員会における審議の経過及び結果を御報告申し上げます。  まず、百貨店法案について申し上げます。本法律案は、百貨店業の事業活動を調整することによって、中小商業の事業活動の機会を確保し、商業全般の正常な発達をはかろうとするものでありまして、その内容について御説明申し上げますと、第一点は、百貨店業の定義としましては、物品販売業であって、物品加工修理業を含むものでありますが、これを営むための店舗のうちに、同一の店舗で床面積の合計が、六大都市におきましては三千平方メートル以上、その他の都市におきましては、千五百平方メートル以上のもの  一つ以上を含むものを百貨店業としておるのであります。   〔議長退席、副議長着席、拍手〕  第二点は、百貨店業の開業、店舗の新増設に許可制をとっております。すなわち百貨店業者が、支店、出張所等の店舗を新設し、またはその床面積を増加しようとする場合には、通商産業大臣の許可を受けなければならないものとしております。  通商産業大臣は、許可、不許可の処分をしようとするときは、学識経験者をもって組織される百貨店審議会の意見を聞かなければならないものとし、さらにこの場合、百貨店審議会がその意見を定めようとするときは、所在地の商工会議所の意見を聞かなければならないものとしております。なお、これらの許可の申請があった場合に、許可の基準としては、その百貨店業の事業活動が中小商業の事業活動に影響を及ぼし、中小商業者の利益を著しく害するおそれがあると認めるときは、許可をしてはならないものとしております。  第三点は、営業時間等について制限を設けております。すなわち百貨店業者は、毎日、政令で定める閉店時刻以後及び毎月、政令で定める日数は、その店舗において顧客に対し営業をしてはならないものとしております。  第四点は、営業行為の行き過ぎについて必要な勧告ができるようにしております。通商産業大臣は、百貨店業者の出張販売、顧客の送迎、その他の営業に関する行為が中小商業の事業活動に影響を及ぼすおそれがある場合、特に必要があると認めるときは、その百貨店業者に対し、その行為をしないように勧告することができるものとし、勧告をしたときは、その内容を公表しなければならないものとしております。  その他、合併、許可の取り消し、百貨店審議会、報告の徴収、罰則等に関し所要の規定を設けております。また、経過措置として、本法施行の際、現に百貨店業を営んでいる者は許可を受けたものとみなすものとし、さらに、通商産業大臣は、本法施行の際、現に百貨店業の店舗とする目的で新増築、または改築工事を施行している建築物を使用して百貨店業を営もうとする者が許可の申請をなしたときは、中小商業の事業活動に及ぼす影響と工事の施行程度を考慮して、許可するかどうかを決定するものとしております。  以上が本法案の概要でありますが、衆議院において一部の修正が施されたのであります。その修正点を申し上げますと、第一点は、百貨店審議会は、その意見を定めるときは、商工会議所の意見を聞かなければならないとありましたのを、商工会議所だけに限定せず、利害関係者またはその団体及び参考人の意見を聞かなければならないとつけ加え、その範囲を拡げたこと、第二点は、罰則規定中、体刑を除き、罰金刑だけとしたことの二点であります。  本委員会における審議に際しましては、百貨店、小売商、消費者の代表者及び学識経験者等、関係者を参考人として出席を求め、その意見を徴し、さらに、目下新増築工事中の百貨店を視察する等、察議の慎重を期したのであります。  委員会の審議の過程におきましては、中小商業者に対する保護の面から言って、百貨店業の事業活動を調整することによって、果して全般の中小商業者の救済となるかどうか、また、それに関連して中小商業に振興対策、購買会及び消費組合の問題、あるいは目下新増築工事中の百貨店に対する処置、許可の具体的基準の問題、百貨店審議会の構成等が論議の中心となりましたが、その詳細は会議録によって御承知願いたいと存じます。  質疑を終了し、討論に入りましたところ、阿具根委員から、次の付帯決議を付して賛意が表明されました。その付帯決議を申し上げますと、   政府は、本法の実施に当り、衆議院  における付帯決議を尊重すると共  に、特に左の点について留意すること。  一、百貨店業者が顧客誘引のため、   みずから、もしくは他と提携して   ターミナル施設を設けないよう本   法の運用に万全を期すること。  二、購買会及び消費組合等が、所属   会員外に物品を販売する等、百貨   店類似行為をしないよう適切な措   置を講ずること。というのであります。  次いで、白川、河野両委員からも、「本法案及び付帯決議案について賛成する」旨の意見が述べられました。  討論を終り、採決いたしましたところ、本法律案は、全会一致をもって、衆議院送付案通り可決すべきものと決定いたしました。  なお、阿具根委員から提案されました付帯決議案も、これまた、全会一致をもって、原案通り、本委員会の決議とすることに決定いたした次第であります。  次に、下請代金支払遅延等防止法案について申し上げます。  本法律案は、下請代金の支払い遅延等を防止することによって、親事業者の下請事業者に対する取引を公正ならしめるとともに、下請事業者の利益を保護しようとするものでありまして、その内容を御説明申し上げますと、第一点は、親事業者が、下請事業者に対し、製造委託または修理委託をした場合の取引を対象とし、親事業者とは、資本金一千万円をこえる法人、下請事業者とは、個人または資本金等が一千万円以下の法人といたしております。第二点は、親事業者の順守事項を明らかにいたしたことであります。すなわち、下請事業者の給付の不当な受領拒否、下請代金の不当な支払い遅延、下請代金の不当な値引き、下請品の不当な返品等の四点をあげまして、これらの行為はしてはならないことといたしております。第三点は、公正取引委員会は、これら順守事項を守らない親事業者に対し、その行為をすみやかに改めるよう勧告を行い、親事業者がその勧告に従わなかったときは、これに対する措置として、その旨を公表することができることといたしております。第四点は、親事業者に、下請代金の額を記載した書面を下請事業者に交付する義務及び下請取引に関する帳簿書類の作成、保存の義務を課しております。第五点は、本法の施行に必要な限度において、公正取引委員会、中小企業庁長官及び主務大臣報告徴収及び立入検査の権限を定め、下請取引の特殊性にかんがみ、政府が所要の監督を行い得るようにいたしておる点であります。  以上が本法案の概要でありますが、本委員会におきましては、慎重に審議を行い、特に、本法運用上、公正取引委員会の調査能力並びに通産省当局との協力体制、親事業者の支払い能力に関する法的解釈とその運用方針、親事業者の破産等の場合における下請債権の保護等の問題が論議の中心となりましたが、その詳細は会議録によって御承知を願いたいと存じます。  質疑を終了し、討論に入りましたところ、西川委員から、本法案に賛意が表明されました。  次いで、採決いたしました結果、本法律案全会一致をもって、原案通り可決すべきものと決定いたした次第であります。  一  右、二法案について御報告を申し上げます。(拍手
  70. 寺尾豊

    ○副議長(寺尾豊君) 別に御発言もなければ、これより両案の採決をいたします。  両案全部を問題に供します。両案に賛成諸君起立を求めます。   〔賛成者起立
  71. 寺尾豊

    ○副議長(寺尾豊君) 総員起立と認めます。よって両案は、全会一致をもって、可決せられました。      ——————————
  72. 寺尾豊

    ○副議長(寺尾豊君) 日程第十三、農地開発機械公団法の一部を改正する法律案内閣提出衆議院送付)を議題といたします。  まず、委員長の報告を求めます。農林水産委員会理事戸叶武君。     —————————————    〔戸叶武登壇拍手
  73. 戸叶武

    戸叶武君 ただいま議題となりました農地開発機械公団法の一部を改正する法律案について、農林水産委員会における審査の経過及び結果を報告いたします。  農地開発機械公団は、国際復興開発銀行等から資金の融通を受けて、高能率の機械を買い入れ、これを使用して、機械力によって農地の造成及び改良事業を効率的に実施するため昨年十月発足し、目下その目的に向って業務が進められているのであります。ところが、政府はかねて酪農の発展をはかるため、従来外国産の優良な乳牛を輸入してきていたのでありますが、今回ジャージー種乳牛の導入を拡大する計画をもって、農地開発機械公団が国際復興開発銀行から、さしあたり八十八万二千ドル相当額の融資を受け、三ヵ年をもってジャージー種乳牛五千頭をオーストラリア等から輸入いたし、これを都道府県を通じて機械開墾地区、その他集約酪農地域に導入することを予定し、さらに公団がその保有する機械等を一そう効果的に運用するため、公団本来の業務に支障を生じない限り、これら機械等を道路工事等、公団本来の事業一以外の事業に使用することができることとし、公団の健全な運営に資することにしようと意図されているのでありまして、以上の趣旨に従って、現行法に必要な改正を加えようとするのが本法律案が提案された理由であり、かつその内容をなすものであります。  委員会におきましては、まず政府当局から、本法律案の提案理由及びその前提条件並びに法律案の内容等について説明を聞き、続いて質疑に入り、農林省当局との間に諸般の事項にわたって質疑応答が行われたのでありまして、その際、問題になりましたおもな事項を拾ってみますと、農地開発機械公団の運営並びにその事業の現況、今回本法律案によって計画せられた乳牛導入の意義、事業計画及び実施方法並びにこれらの当否、これら乳牛導入事業における業務上の責任の所在並びに政府の保証、導入資金の国際復興開発銀行からの借り入れ条件及び農家の償還条件並びにその当否、公団の保有する機械の利用の効率化等でありまして、これが内容の詳細は会議録に譲ることを御了承願いたいのであります。  かくして質疑を終り、討論に入りましたところ、別に発言もなく、続いて採決の結果、本法律案全会一致をもって原案通り可決すべきものと決定いたしました。  右、報告いたします。(拍手
  74. 寺尾豊

    ○副議長(寺尾豊君) 別に御発言もなければ、これより本案の採決をいたします。  本案全部を問題に供します。本案に賛成諸君起立を求めます。   〔賛成者起立
  75. 寺尾豊

    ○副議長(寺尾豊君) 過半数と認めます。よって本案は可決せられました。
  76. 寺尾豊

    ○副議長(寺尾豊君) 日程第十四より第八十八までの請願を一括して議題とすることに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  77. 寺尾豊

    ○副議長(寺尾豊君) 御異議ないと認めます。  まず、委員長の報告を求めます。建設委員長赤木正雄君。     —————————————   〔赤木正雄君登壇拍手
  78. 赤木正雄

    ○赤木正雄君 ただいま議題となりました請願七十九件につきまして、建設委員会における審議の結果を御報告申し上げます。  日程第十四から日程第三十までの十七件は、岡山県吉井川等の河川改修工事促進等に関するもの、日程第三十一から日程第三十七までの七件は、北海道、九州、青森県、京都府、愛知県における河川及び海岸の災害復旧促進に関するもの、日程第三十八から日程第四十までの三件は、兵庫県有馬川等の砂防工事促進に関するもの、日程第四十一、は東海地震による地盤変動対策事業促進に関するもの、日程第四十二から日程第四十四の二件は、北海道における総合開発促進に関するもの、日程第四十五及び日程第四十六は、ダム建設予定地変更及び補償に関するもの、日程第四十七から日程第六十二までの十八件は、国道二十九号線ほか十七の国道及び地方道の改良工事等に関するもの、日程第六十三から日程第七十一までの九件は、利根川昭和橋等の永久橋架けかえに関するもの、日程第七十二から日程第七十七までの六件は、国道一号線ほか五つの国道地方道の舗装工事促進に関するもの、日程第七十八から日程第八十の二件は、埼玉県秩父市、長野県川上村間ほか二件の道路開さくに関するもの、日程第八十一及び日程第八十二は、路線変更に関するもの、日程第八十三は、道路予算等に関するもの、日程第八十四から日程第八十六の二件は、住宅建設促進に関するもの、日程第八十七の三件は、建設業法施行令に関するものであります。  右のうち、日程第三十一の水害対策に関する件は、借入金の利子補給に関する部分を除くこと、日程第四十五の岩手県湯田ダム建設予定地変更の件は、建設予定地に関して審査の結果、和賀仙人鉱山との関係において、堰堤施設による漏水防止が完全に行われるや否や、まだ技術的調査が十分でないのであります。従ってこれが明らかになるよう、すみやかに調査を要する。日程第八十七の建設業法による業者登録の適用範囲は、一工事費五十万円以上が妥当と考えられることの意見を付して、以上、いずれも、国土の保全及び開発等のために、願意おおむね妥当なるものと認め、これを議院の会議に付し、内閣に送付することを要するものと決定した次第であります。  以上、御報告申し上げます。(拍手
  79. 寺尾豊

    ○副議長(寺尾豊君) 別に御発言もなければ、これより採決をいたします。  日程第三十一、第四十五及び第八十七の請願については、意見書案が付されております。  日程第十四より第八十七までの請願は、委員長報告の通り採択し、内閣に送付することに賛成諸君起立を求めます。   〔賛成者起立
  80. 寺尾豊

    ○副議長(寺尾豊君) 総員起立と認めます。よってこれらの請願は、全会一致をもって採択し、内閣に送付することに決定いたしました。  本日の議事日程は、これにて終了いたしました。次会の議事日程は、決定次第公報をもって御通知いたします。  本日は、これにて散会いたします。    午後二時五十九分散会      —————————— ○本日の会議に付した案件  一、日程第一 会期延長の件  一、常任委員長辞任の件  一、常任委員長選挙  一、日程第二 国会法第三十九条但   書の規定による議決に関する件   (在外財産問題審議会委員)  一、日程第三 国会法第三十九条但   書の規定による議決に関する件   (肥料審議会委員)  一、基地問題並びに秋吉台の米軍演   習地使用に関する緊急質問  一、日程第四 国際金融公社への加  、盟について承認を求めるの件  一、日程第五 へい獣処理場等に関   する法律の一部を改正する法律案  一、日程第六、採血及び供血あっせ   ん業取締法案  一、日程第七 閉鎖機関令の一部を   改正する法律案  一、日程第八 旧日本占領地域に本   店を有する会社の本邦内にある財   産の整理に関する政令の一部を改   正する法律案  一、日程第九 罹災都市借地借家臨   時処理法の一部を改正する法律案  一、日程第十 憲法調査会法案  一、日程第十一 百貨店法案  一、日程第十二 下請代金支払遅延   等防止法案  一、日程第十三 農地開発機械公団   法の一部を改正する法律案  一、日程第十四乃至第八十七の請願      ——————————