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1956-03-12 第24回国会 参議院 本会議 第20号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十一年三月十二日(月曜日)    午前十一時十一分開議     ━━━━━━━━━━━━━  議事日程 第二十号   昭和三十一年三月十二日    午前十時開議  第一 地方教育行政組織及び運営   に関する法律案及び地方教育行政   の組織及び運営に関する法律の施   行に伴う関係法律整理に関する   法律案趣旨説明)  第二 特殊土じよう地帯災害防除及   び振興臨時措置法の一部を改正す   る法律案衆議院提出)           (委員長報告)  第三 漁港法の一部を改正する法律   案(内閣提出) (委員長報告)     ━━━━━━━━━━━━━
  2. 河井彌八

    議長河井彌八君) 諸般の報告は、朗読を省略いたします。      ——————————
  3. 河井彌八

    議長河井彌八君) これより本日の会議を開きます。  去る四日、中田吉雄君が議員を退職されましたため、海岸砂地地帯農業振興対策審議会委員に欠員を生じました。  つきましては、この際、日程に追加して、その選挙を行いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 河井彌八

    議長河井彌八君) 御異議ないと認めます。
  5. 藤田進

    藤田進君 ただいまの選挙は、その手続きを省略いたしまして、議長において指名せられんことの動議を提出いたします。
  6. 寺本廣作

    寺本広作君 私は、ただいまの藤田君の動議に賛成をいたします。
  7. 河井彌八

    議長河井彌八君) 藤田君の動議に御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  8. 河井彌八

    議長河井彌八君) 御異議ないと認めます。よって議長は、海岸砂地地帯農業振興対策審議会委員千葉信君を指名いたします。      ——————————
  9. 河井彌八

    議長河井彌八君) 日程第一、地方教育行政組織及び運営に関する法律案及び地方教育行政組織及び運営に関する法律施行に伴う関係法律整理に関する法律案趣旨説明)  両案について、国会法第五十六条の二の規定により、提出者からその趣旨説明を求めます。清瀬文部大臣。   〔国務大臣清瀬一郎登壇拍手
  10. 清瀬一郎

    国務大臣清瀬一郎君) 今回、政府から提出いたしました地方教育行政組織及び運営に関する法律案について、提案趣旨を御説明申し上げます。  この法案は、現在の教育委員会制度改正いたしますとともに、地方公共団体における教育行政組織運営諸種改善を加えようとするものでございます。  御承知のごとく、地方公共団体における教育事務は、その一部を除きまして教育委員会担当いたしておるのであります。この教育委員会は、まず昭和二十三年の秋に都道府県五大市及び若干の市町村設置されまして、昭和二十五年の秋に若干の市に設置せられた後に、昭和二十七年の秋に至って全国すべての市町村におかれたのでございます。いわゆる六・三制の実施、教科内容改善社会教育振興等に漸次その成果をあけて参ったものでございます。  しかしながら教育委員会制度は、占領下早急の間に、ほかの諸施策とともに採用実施せられた制度でもあり、またさらに検討を加えなければならない問題を多数包蔵していたものと存ずるのであります。昭和二十七年全市町村教育委員会設置された後も、教育委員会制度に対する改正意見が、公けの機関やその他の機関または団体からいろいろと述べられて参った次第でございます。政府は、かねてよりこれら諸種見解を慎重に検討いたし、教育委員会実情をいろいろと研究いたして参ったのでございまするが、この際、現行制度を再検討すべきものであると考えて、現行制度のうち、とるべき点はむろんとり、改むべき点は改め、また加えるべき事項は附加いたしまして、新たな立法を行うこととして、この法案を作成いたしました。  この法律案を提出いたしまするについて、特に考慮を払いました重点は、次の二点でございます。  第一に、地方公共団体における教育行政一般行政との調和を進めるとともに、教育政治的中立教育行政の安定を確保することを目的といたしました。わが国教育は、地方公共団体努力に負うところがきわめて大であります。即ち国立及び私立の学校を除いて小中学校義務教育はもとより、高等学校、幼稚園、さらには大学に至るまで、市町村都道府県の手によって維持経営せられているのでありまするし、また青少年教育婦人教育を初め、各般の社会教育もそれら地方公共団体の手によって推進されているのでございます。従ってわが国教育振興をはかりまするためには、これらの地方団体における教育行政運営が中正かつ円滑に行われることが必要でございます。知事市町村長は、申すまでもなく、民主的な公選による機関でありまするが、本来独任制機関でありますから、教育のごとく中立を要求せられる事務については、別に合議制機関をもって事務担当せしむる必要があるのであります。しかしてすでに述べましたごとくに、教育振興のためには、わけても義務教育普及をはかりまするため教育に関する事務相当な部分を市町村担当しているのでありまして、学校その他の教育施設整備だけでなく、学校運営を管理助成し、教職員指導に努め、社会教育振興をはかる上には、この市町村に期待するところ大きいものがあります。その上町村合併の進展の結果、市町村行政能力は強化されようとしているのでありますから、この法律案は、都道府県のみならず、すべての市町村合議体執行機関として教育委員会を存置することにいたしました。  なお、従来の運営の実際にかんがみ、その組織及び権限に必要な改正を加えたのでございます。即ち、委員選任方法は、直接公選制度を改めまして、地方公共団体の長が議会の同意を得て任命すること等の措置を講ずるとともに、教育委員会知事市町村との間の権限調整を加えることといたしたのであります。すなわち、いわゆる予算案条例案の二本建制度廃止しまするとともに、教育財産取得及び処分権限教育事務にかかる契約の締結の権限、収入または支出の命令の権限知事市町村長に移すことといたしまして、両者の関係調整し、地方公共団体における教育行政の円滑な運営とその振興をはかりたい所存でございます。  第二には、この法案重点といたします点は、国、都道府県市町村一体としての教育行政制度を樹立しようということでございます。わが国教育は、前にも述べました通り都道府県市町村個々地方団体努力に負うておるのでありまするが、それは決して個々独自のものではなく、全体として国の教育を構成すべきものでありまするから、まずもって、国の教育としての必要な水準を保持するものであることの必要であることは言うまでもありません。さらにまた、各都道府県ごとに、府県内の教育運営調整をはかられなければならないことも、またもちろんでございます。この点を十分考慮しまして、現行教育委員会法が、個々地方団体ごと教育事務処理を強調いたしておるにとどまるに対しまして、今回の法律案では次のごとく是正しておるのでございます。  すなわち、小中学校教職員等人事権都道府県教育委員会が行使することとしたのであります。これは一つには、これらの教職員の適正な配置人事の交流を促進するということを考慮したものでございます。さらに、給与負担団体任命権者の属する団体とを一致させることとしたのであります。御承知通り教育委員会市町村設置されてから、都道府県内の教育職員適正配置に支障が生じたことは、広く各方面から指摘されておるところでございます。このことは、市町村設置する学校でありましても、個々市町村ごと人事を管理することが無理であるということの証拠でございまするし、また現在、都道府県小中学校教職員給与を負担しておりますることも、市町村担当する義務教育等振興をはかる上に、都道府県の協力が必要であることを物語っておるものでございます。今回小中学校等教職員任命権都道府県委員会担当させようとしますことは、これらの学校運営を円滑に行う趣旨にほかなりません。しかしながら、都道府県教育委員会が単独でこの任命権を行使いたすということは事実上困難でございますので、市町村教育委員会の内申を待って行うということにいたしまするとともに、市町村立学校における教育は、当該市町村事業であること、これらの教職員当該市町村に属する職員であるとすることからいたしまして、市町村教育委員会は、これらの教職員の服務の監督を行い、その職務の遂行の適正を期すべきものといたしたのでございます。  このほか、文部大臣及び教育委員会相互の間の関係を次のように考えておるのでございます。  現行制度のもとにおきましては、文部大臣都道府県委員会は、都道府県または市町村に対しては、技術的な指導、助言または勧告の範囲を越えることはできないこととされております。このような現状を改めるために、文部大臣都道府県委員会の積極的な指導的地位を明らかにいたしますとともに、文部大臣は、教育委員会地方公共団体の長の事務処理に関して、法令違反等の事由がある場合には、必要な是正措置を要求して、教育行政の適正な運営を確保いたしたい所存でございます。  また教育長任命につきまして、文部大臣なり、都道府県教育委員会承認を要することといたしたゆえんのものは、教育委員会における教育長地位に照らして、これによって教育行政の国、都道府県市町村、これが一体として運営を期したいと考えたからでございます。  以上がこの法案の基本的な考え方となっておるのでございまするが、なお最後に、五大市における特例と、この法律施行期日について簡単に付言いたします。  五大市に対しましては、法律教職員人事権を大幅に法定委任いたしましたが、これは五大市の規模と能力にかんがみて、実情に即させようとする意図にほかなりません。また、現行教育制度からの移行をなめらかならしめるために、本法の施行期日を本年の十月一日といたしました。  何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御賛成下さるようお願いいたします。  次に、地方教育行政組織及び運営に関する法律施行に伴う関係法律整理に関する法律案提案理由、またその趣旨説明いたしたいと存じます。  同法案によって教育委員会委員選任方法は、公選制によらず任命制に改められ、市町村立学校教職員任命権は、都道府県教育委員会に属せいめられることとなり、さらにまた、教育長選任方法に変更が加えられるほか、教育財産取得及び処分地方公共団体の長が行うものとすること、文部大臣及び教育委員会相互関係を明らかにして、指導機能を強化するとともに、文部大臣教育に関する責任を明確にすること等の措置がとられたことは、ただいま申し上げた通りでありますので、これに関連いたしまして多数の関係法律との調整をはかる必要が生ずるのでございます。ここにそれら所要の規定を取りまとめまして、この法律案を提出したのでございます。  以上、簡単でございますが、この関係法律整理に関する法律案提案理由説明したのでございます。  何とぞ地方教育行政組織及び運営に関する法律案とあわせて、慎重御審議の上、すみやかに御賛同賜わらんことをお願い申し上げます。(拍手
  11. 河井彌八

    議長河井彌八君) ただいまの趣旨説明に対し、質疑の通告がございます。順次発言を許します。笹森順造君。   〔笹森順造登壇拍手
  12. 笹森順造

    笹森順造君 私は自由民主党を代表し、ただいま議題となっております地方教育行政組織及び運営に関する法律案並びにその施行に伴う関係法律整理に関する法律案につき、総理大臣並びに文部大臣自治庁長官に対し、基本的なる諸点につき質疑をいたしたいと思います。  この二法律案は、表題では教育行政組織運営に関するものとして示されておりますが、その内容においては、教育基本理念に触れるものではないか、この点を検討する必要があると思います。  そこで私は、まず政府が本法案を提出して教育行政制度改革を行わんとするについては、わが国教育の基本的な理念と本法案との関係をいかなる認識においてなされたものであるかをお尋ねしたいのであります。現在わが国教育基本理念規定している教育基本法は、御承知通りに終戦直後の昭和二十年十月、連合国の「日本教育制度の管理に関する覚書」をもととして作られたものでありますが、当時連合国は、わが国の諸制度の変革を企てた際に、それらの諸制度の基礎になっている日本国民の思想や感情にまで立ち入って変革しなければならないとし、教育の場においては、その民主化をはかるとともに、軍国主義的及び極端なる国家主義的観念普及を禁止することを意図し、教育基本法立法を勧告したという点を政府当局は現在いかに考えておられるのでございましょうか。民主主義教育と申し、排他的超国家主義排除教育と申しましても、それはいかなる歴史の段階においても国民一つ国家構成員であるとのりっぱな自覚を失わしむるがごとき教育となってはならないと思いますが、この点、総理並びに文相はいかにお考になりましょうか。  教育基本法国会審議されました当時、当時の貴族院の一議員は、人間には個人としての資格国家社会組織一員としての資格二つがある。この案には、ことに個人の完成ということに重きが置かれ、国家社会一員としての心がけに触れるところが少いという見解を述べておられますが、この議論は、確かに基本法の一面をついているものと考えられるのであります。かくて教育民主化が叫ばれた当初においては、教育行政の面においても、国家教育に対して責任を負うが、教育に対する監督権を持たないという事態を生じたのであります。また、教育基本法第十条には、「教育は、不当な支配に服することなく、国民全体に対し直接に責任を負って行われるべきものである。教育行政は、この自覚のもとに、教育目的遂行する必要な諸条件整備確立目標として行われなければならない。」と定められております。これによって国は教育内容に介入すべきではなく、教育の外にあって教育を守り育てるための諸条件を整えることに目標を置くべきであるという解釈が行われておるのであります。かくして国家教育行政から監督の手を放し、教育内容にも介入しないことになった際に、教育者が総じて自主的な自覚を持っていたならば好ましい成果を上げておったのでありましょう。しかるに戦後混乱のもとに、いまだ自覚を取り戻すに至らぬ間に、正しい監督をも得なかったがために、かえって一部の不当な支配に陥り、国家社会全体に対する責任をとらないことが、あたかも民主主義であるかのごとき誤解を持つ者さえ続出したのであります。このあやまちを政府当局はいかにして是正せんとするか。  本来教育民主化とは、その結果として、民主化された国家構成員が、民主化された国家一員たる自覚を持ち、その民主国家を守り育てることであって、かかる精神が養われるために、民主的に構成された国が教育の包容を吟味し、監督権限を持つことが、むしろ健全な教育民主化促進の上に必要なことではありませんか。この点に関し教育基本法は完璧であり、改むべき節が全くないか、これに対し、政府当局見解を表明せられたいのであります。  政府当局は、教育基本法をあくまで現在のまま動かすべからざるものとする前提に立って、本法案による教育委員会制度改革を行わんとするのであるか、それとも教育基本法等教育関係法律すら、早晩改正を要するものと考えておられるのか、すなわち占領政治の所産として、わが国実情に即しない面を是正するものの一つたることを予定して、その一階梯として考えておられるのか。もし前者、すなわち今回の改正教育基本法を不動の鉄則としてその上に立てられたものであるとすれば、政府は、本法案はこの教育基本法精神にもとらないとの理由を明らかにせられたいのであります。もしまた後者、すなわち今回の改正は、将来の広範な教育改革の一階梯として立案されたものであるとするならば、その教育改革の全体の構想はどういうものであるか。端的に言えば、教育基本法改正する御意思があるかどうか。改正するとすればどういう方向に改めようとせられるものであるか。これらの点について総理大臣並びに文部大臣の御所見を承わりたいと存じます。これが質問の第一点であります。  第二にお伺いいたしたいことは、教育委員会公選制廃止の問題についてであります。まずお聞きしたいのは、教育委員会の改廃をめぐって、これまで相当に激しい議論が行われ、これを全廃せよという意見も各方面から相当に強く叫ばれていたのでありますが、今回の改正案は、教育委員会を存置することになっております。ところで地方公共団体の長のほかに、なぜ合議制教育委員会を存置することを必要とするのか、この点について十分なる御説明をさらに文部大臣にお求めしたいと思います。  さて問題は、教育委員公選制廃止であります。公選制は、教育委員会制度の眼目であり、公選制廃止すれば、教育委員会はもぬけのからに過ぎないものとなり、教育民主化はそこなわれ、いわゆる不当な支配がまた復活するのではないかとして公選制廃止に対する反対論が行われております。昭和二十七年、地教委設置の問題が国会審議に付せられました当時、私は公選制をとる地教委設置による多くの難点に対し懸念しておったのであります。地方公共団体の長とは別個に教育委員公選によりこれと並立することは、教育民主化に不可欠の要件であるかどうか。地方公共団体の長は公選により住民意思を代表するものである限り、その長が教育行政の衝に当ることは、民主主義をそこなうという議論は成り立たないと思うが、政府当局見解をさらに明確に承わりたいと思うのであります。  教育民主化をはかるためには、教育委員公選されなければならないというならば、現在地方公共団体が行なっている各種の他の行政部門担当に当る者も公選されなければならないという議論も出てくるでありましょう。そうしたならば、社会保障土木建設農林水産商工等各種事業振興行政住民意思を尊重し、民主的に運営するために、それぞれ別個の公選委員を必要とするという主張も成り立つでありましょう。しかしそれらの他の行政は、住民がみずから選んだ者を信頼して民主的に行われている限り、教育だけが公選委員をぜひ必要とするという理由はすでに失われ、むしろ地方公共団体行政の任に当る者の公選だけに求めることは、健全な民主主義育成のために適当ではないか。これに対する政府当局所見を伺います。  教育委員公選制委員会の現制度は、地方自治行政を二分化し、無用摩擦を随所に散見しておるのが事実であります。かつまた、人口の数の少い町村では、町村長町村議会議員以外に、公選によっては適当な教育委員を得がたいという実際上の難点も見受けられます。本法案では教育委員公選制廃止することとなっていますが、本法案の新しい方式で、果して政府がお考えの通り地方行政二元性が完全に解消せられるものでありましょうか。その点について文部大臣の御答弁を求めます。  また本法案により、地方公共団体の長が、今後教育行政の任に当ることによって、いわゆる不当な支配が行われないし、また教育民主主義がそこなわれないというならば、その論拠と確信のほどを伺いたいのであります。  第三に、教育長の問題について伺います。本法案準備の過程において、教育長廃止すべしという意見も出たようでありますが、結局存置することになっております。そこで教育長は、教育委員会指揮監督のもとに教育委員会権限に属するすべての事務をつかさどる教育行政専門家としてその人を得ることは、教育委員会業務遂行上きわめて重要なことでありますから、その任命について若干の質疑をいたしたいと思います。本法案によりますと、市町村教育長は、当該市町村教育委員の中から任命することになっておりますので、私はその理由をただしたいと思います。元来教育委員は、教育専門家でなくとも、りっぱな識見を持つ人により教育行政運営をはかっていくことを主眼とし、それをこの制度の特色としておりました。しかるに現在は教育委員に多数の教育経験者が選ばれておりますが、その方々の多くは教壇の経験があっても、教育行政担当者であった方は案外少いようであります。教育に関する識見を持った人たちで構成される教育委員会と、そのもとにあって教育行政の実務にたんのうなる教育長と、この二つが組み合わされるところに妙味があると思うのであります。ところが今度は、教育委員のうちから、教育行政を専門的に取り扱う市町村教育長任命されるということになっております。これによって果して適当な教育長が得られるでありましょうか。また教育委員会指揮監督のもとに委員会事務をつかさどる教育長は、依然として指揮監督者たる委員であるというところに行政上の秩序の紛淆を来たし、また委員会運営上委員相互間に無用摩擦を生ずる危険はないか。この点を承わりたいのであります。政府は、教育委員会性格変化を予想し、それが教育委員会のあり方を改善する道であるとして、この兼任の措置をとったのでありましょうか。もしそうだとするならば、都道府県教育長についてもまた同じ制度をしくべきであるにかかわらず、都道府県教育長についてはそのことが見られないのはどういう理由によるものでありましょうか。この点について文部大臣の御所見を承わりたいと思います。  さらに、教育長任命は、従来はそれぞれの教育委員会が自己の判断において行うことになっておりました。今回の改正においては、市町村教育長については都道府県教育委員会承認都道府県教育長については文部大臣承認を要することになっておりますが、これはどういう理由によるものでありましょうか。この点は相当議論の多いところでありますので、この改正によって教育行政振興をはかり、特に教職員人事の問題が円滑に運営されるというのであるならば、これらの諸点を納得のいくまで説明されたいと思います。  最後に、教育委員会関係予算について、文部大臣自治庁長官とにお伺いいたします。教育委員会制度改正が問題となりましたときから、この制度改革は、経費の節約に資するところがあるのだと言われておったのであります。本法案によりますと、地方公共団体の長と教育委員会との予算編成執行に関する権限が、文字の上ではなるほど整理して書かれておりますが、しかし実際の運営上は、かなり摩擦を生ずる余地があるのではなかろうか、こういう危惧を抱くものであります。これが地方公共団体の内部の局課でありますと、予算編成執行も完全に一本化されておりますから、摩擦などの生ずる余地はありませんが、教育委員会は従来予算に関する独自の権限を持ってきたものであり、二本建が廃止されたとは申しましても、完全に地方公共団体の長のもとに一本化されるわけではなく、教育委員会相当権限を持ち、ことに予算執行に関する権限を持っているのでありますから、予算執行上に摩擦を生じ、円滑を欠くことになりはしないかということをおそれるのであります。そういう摩擦を防ぐために、どういう運営をなすことが好ましいと考えておられるのであるか。この点に関する立案者の配慮のほどを承わりたいのであります。  地方財政赤字は非常に大きな問題でありますが、従来からその赤字の原因の一つ教育費があげられているのであります。教育委員会制度が改められることによって、教育費合理化が行われ、地方財政に寄与するであろうという期待も持たれております。さればこそ、また逆に今回の改正は、教育費を圧迫するものであるという反対論も出ているのであります。今回の改正は、教育費にどういう影響を及ぼすものでありましょうか。教育費の圧迫になるという心配はないでありましょうか。それとも今回の改正地方財政の上にも、教育行政運営の上にも、むしろ合理的で能率的な好影響を与えるというのであるならば、その点を明確に伺いたいと思います。  なお、一般会計においては、本年度の予算書では本法案関係分は、経過的措置を必要とするため平年度の状態は不明であります。本法案による教育委員会制度改革によって経費が節約されるというならば、それは、平年度一般会計でどれほどの節約になるか。その点を明らかにされたいと思います。これ、もとよりわが国教育行政の機能を十分を発揮し、本法案本来の目的遂行するに足る周到なる配慮の上になさるべきことは言を待たざるところであります。  以上の諸点について、総理並びに関係大臣の明快なる御答弁を求めるものであります。(拍手)   〔国務大臣鳩山一郎君登壇拍手
  13. 鳩山一郎

    国務大臣(鳩山一郎君) 笹森君から、多年の経験に基いていろいろの御質問がありましたが、私は教育基本法について改正を予想しているかどうかという点がおもなる点であったと思いますので、その点についてだけ答弁をいたしまして、他は文部大臣から答弁をしてもらいます。  教育基本法には、教育理念教育の基本となるべき道徳の基準が示されておりまするが、これだけでは不十分であるという批判もありますので、これらの点は、ただいま御審議中の臨時教育制度審議会で十分検討していただきたいと考えております。  他の御質疑に対しましては、関係当局から答弁をいたします。(拍手)   〔国務大臣清瀬一郎登壇拍手
  14. 清瀬一郎

    国務大臣清瀬一郎君) 笹森さんのお問いの第二の、教育委員会委員公選をやめた理由のことでございます。教育は別に法律がなくても、むろん中立性を保つべきものでございます。国の政治においては二大政党主義をわれわれ希望いたしておりまするけれども、教育は、一方に偏せず、永続的に運行さるべきものと思っております。そこで町村の有権者と教育委員会の有権者と、同じ有権者で二つ選挙をすることがいいか、あるいはまた町村議員も民主的に選挙されておりまするし、町村長も民主的に直接選挙で今日は選挙されております。どちらがいいかは議論があるところでございまするが、われわれの考えは、やはりこれは町村長町村議員の同意を得て任命すればそれで民事主義はそこなわれるものじゃない。教育委員会を直接選挙でしまするというと、場合によれば一党派が教育委員全部を占めることがなきにしもあらずでありますから、そこで今回は教育委員は、一定数以上、五人の場合は三人以上は同党派に属せしめないといったような制限を置いて、バランスをとりつつ教育委員会を構成する方が中立を保つのに適当であろうとわれわれは考えたのでございます。(「五人のうち三名じゃ、だめじゃないか」と呼ぶ者あり、拍手)同じ党派は二名です。いけないのが三名以上というのです。三名を含んで三名以上はいけないということなんです。  それから県教育委員会教育長を置く場合のことについて御質問がありました。これも県の方では、教育長の存続については議論はないように思いまするが、町村の場合、小さい行政単位の町村の場合に、行政委員会たる教育委員会が、もう一つ教育長を持つことがいいか悪いかについては、議論は世間にもあると思います。私ども所属の党派内にも議論はございました。そこで最後の結論は、行政を簡素にするという意味において、町村ではいっそ、教育長のような毎日日勤の人はいるだろうが、五人、また小さい村では三人、その教育委員の中から、だれかを一つ選任をする、これが簡素でよかろうという結論に達しなのでございます。教育長適任の者は、もともと教育委員任命のことでありまするから、任命の際に適当な者が選ばれておれば、その人を得ることにはかたくないと存じます。  なお最後に、このことについて、府県の教育長文部大臣承認町村教育長は府県委員会承認といって、連絡をつけております。これは、そもそも日本のような国の教育は、やはり有機的に一体としてやらなければならない。それを府県で切り、県あるいは町村で切って、まるで中央と連絡がないようなものじゃ、いい教育ができないだろうと思って、教育連絡一体の考えより、これを機構の中に入れたのでございます。  それから最後に、予算のことについてはあるいは自治庁長官が補充して下さると思いますが、今までの二本建予算は争いのもとでございましたから、これは廃します。廃しまするけれども、教育は、ほかの行政とは違った特質を持っておりまするから、教育予算、また教育に関する条例については、教育委員会意見を聞いて御提案下さるようにいたしておるのでございます。これがために、一般経費が教育費を圧迫するといったようなことはなかろうと存じます。  以上をもってお答えといたします。(拍手)   〔国務大臣太田正孝君登壇拍手
  15. 太田正孝

    国務大臣(太田正孝君) 笹森議員の御質問に対してお答えいたします。  御質問は、総じて本法律案改正地方財政との関係でございました。その第一は、この法律改正することによって、教育費に不当の圧迫を来たすことがないか、こういうのでございます。申し上げるまでもなく、原案送付権の制度であるとか、二重予算制度は廃されまするが、本法案は、予算作成につきまして、教育委員会意見を聞いた上でやるということになっております。従って十分話し合いをした上で予算編成することになりまするから、御心配のような不当圧迫はないと信じます。  第二は、この法律改正教育費、経費の節約があるかという御質問でございました。こまかい、あるいは委員が七人が二人になる、これは県会議員でございますが、そういう費用の小さい問題もございます。また事務費につきましての節約もございますが、一番大きな問題、主として選挙費用が減るということでございます。交付団体、不交付団体の区別はございますが、総じて、総計いたしまして十五億二千万円減ずることになります。  第三に、予算の二本建が廃されたが、なお予算編成摩擦のおそれがあるのではないかというお言葉でございました。原案送付権が廃される、二重予算制度が廃されますが、教育関係予算案の作成につきましては、先ほども申しました通り教育委員会意見を聞くということになって、他の地方にある行政委員関係と変らないことになります。また委員選任の方法の改正もございまするので、従ってそういう摩擦はないと申し上げるのでございます。(拍手
  16. 河井彌八

    議長河井彌八君) 荒木正三郎君。   〔荒木正三郎君登壇拍手
  17. 荒木正三郎

    ○荒木正三郎君 私は日本社会党を代表いたしまして、ただいま上程せられました地方教育行政に関する二法律案に対しまして質疑をいたさんとするものであります。  吉田内閣の当時、大運文部大臣は、教育中立性を確保するためと称して、教員の政治活動を全面的に制限する法律案国会に提出いたしたのであります。その際われわれは、中立性確保の美名に隠れて革新勢力の進出を押え、保守勢力の温存をはかり、憲法改悪を促進しようとする党利党略に基くものであるとして、強い反対をいたしたのでありますが、このたび、鳩山内閣によって提出せられました教育行政に関する法案は、教育二法にも劣らない悪法でございまして、教育から民主主義を奪い、教育政府の統制下に置こうとする野望から出たものであって、われわれの断じて許容できないところであります。(拍手)  第一に指摘しなければならないのは、教育委員公選制廃止して任命制に切りかえようとしている点であります。戦後の混乱の中にあって、教育復興のために、教育委員会が果して参りました役割は、高く評価されなければならないと私は考えております。特に、久しきにわたりまして教育界にはびこっておりました官僚主義と政党の介入を排除して来たことは、教育委員会公選制がもたらしました大きな収獲であったと信ずるものであります。官僚独善の弊が取り除かれるにつれて、教育界は非常に明朗になって参ったのでございます。今日どこの学校へ行っても、戦前のように、役人の前に直立不動の姿勢をとらなければならないような先生の姿を見ることはなくなりました。また、ごちそうをしてごきげんをとらなければならない校長さんも全くなくなったのであります。これは、教育界にとって非常にうれしいことであります。また政党の介入が、いかに教育界を毒したかはここに述べるまでもないことであります。(拍手)教員の人事が、政党人によって左右されたと申しても決して過言ではなかったのであります。それとともに、教育は上から与えられるものでなく、国民自身の努力によって築き上げて行かなければならないという自覚が力強く起って参りまして、今日PTAの活動はきわめて活発であります。戦前の教育後援会の役員は、ごく一部の人に限られていて、その人たちは寄付金を出すのが一番大きな任務でありましたが、今日では各階層の人々が参加して、みんなが協力して教育を守って行こうとする涙ぐましい努力が続けられているのであります。父兄が学校の先生と一緒になって、ときには教育委員とも一緒になって学校の施設の改善のために、あるいは教材教具の整備のために、知事市町村長に働きかけて、教育予算獲得のために立ち上っているのが今日の姿であります。教育国民のものになってきている何よりの証拠であると私は考えるのであります。(拍手)この父兄の立ち上りを最もおそれているのは政府であります。再軍備優先の予算を組んでいる政府には、教育に回す金がないからであります。国民が子供の教育のために立ち上ってきたのは、教員組合の活動と教育委員公選制がもたらした大きな成果であると信じます。しかるに政府は、公選制廃止して任命制に切りかえようとしていることは、再び教育界に官僚主義の復活をはかり、政党の介入を許すことになるのでありまして、反動文教政策と言わなければなりません。(拍手)そこで私は、総理大臣にお尋ねをいたしますが、その第一点は、公選された教育委員会が今日まで果してきた業績について、総理はどのような評価々しておられるか。総理見解を聞きたいと思うのであります。第二点は、任命制に切りかえることによって、官僚主義の復活、政党の介入について、何ら心配するところがないと考えておられるかどうか。第三点は、教育基本法第十条に、「教育は、不当な支配に服することなく、国民全体に対し直接に責任を負って行われるべきものである。」と規定されておりますこのことは、われわれが太平洋戦争という悲惨な体験を通して、学問の自由は守らなければならない、思想言論の自由は守らなければならないと、かたく決意するとともに、教育を政治権力の支配のもとに置いてはならないという大きな自覚を持つに至ったからであります。この教育基本法精神をそのまま受け継いで、教育委員会法第一条にも同趣旨のことが書かれているのであります。ところがこのたび政府提案いたしました法案には、どこにもこの趣旨規定されておらないのであります。教育委員任命制に切りかえることは、教育基本法第十条の趣旨に私は反すると思うのでありますが、首相の見解を伺いたいと思うのであります。  第二に指摘しなければならない点は、文部省の権限を拡大強化して中央集権化をはかっていることであります。この法案内容を見まして、まず気づくことは、都道府県教育長文部大臣承認を経なければならないと規定されております。さらに、教育委員会組織運営に関し、指導及び助言を与えると規定されております。次に最も驚くべきことは、校長、教員その他教育関係職員の研究集会、講習会その他研修に関し、指揮及び助言を与え、または主催することができるというふうな規定まで挿入をいたしておるのであります。かくては教育委員会は、文部省の出店にすぎないという哀れな存在になるのであります。自主的な独立した教育行政をやることは不可能であると思うのであります。過去のわが国教育行政組織が、文部省のもとに中央集権的、官僚的な教育行政組織を確立し、それが国家主義的な教学の樹立に努めてきたことは、われわれの苦い経験として想起するものであります。特に私は教員の行う研究集会に文部省が指揮監督するということは、思想統制を行わんとするものであって、許し得ないことであると思うのであります。(拍手)申すまでもなく学問の自由、思想の自由、集会の自由は憲法の保障するところであります。教職員の自発的に行う研究集会に、文部省が介入し、指揮し、監督するということは憲法違反の疑いがあると思うのでありまするが、首相の見解を明らかにせられたいのであります。なお、日本教職員組合は、教員の全国的な研究集会を今日までに五回にわたって開催して参りました。その成果は年々上りつつあります。本年二月に行われた松山における集会には、教員を初め教育委員会関係者、あるいは子供を持つ父兄の方々、一万人に近い人々が集まって、日常当面している教育上の諸問題について真剣な討議が行われたのであります。現場の教員が、父兄が子供の教育のために、いかに苦しんでいるかということは、おそらく文部大臣はおわかりにならないと思うのであります。こんな法案を作る前に、一度でもよろしいから、この研究集会に出席されることを私はお勧めをいたします。文部大臣は、この日教組主催の研究集会に対して、どのような認識を持っておられるか、所見を伺っておきたいと思うのであります。  第三に指摘しなければならない点は、これだけの教育行政上大きな変革を加えようとしているのに、政府は、なぜ各方面意見を聞こうとしなかったかという問題であります。文部大臣の諮問機関として中央教育審議会が設置されております。なぜこの中央教育審議会に諮問をして意見を聞こうとしなかったのであるか、その理由を明らかにせられたいのであります。中央教育審議会は、今日まで教育上の幾多の問題について、文部大臣の諮問にこたえて意見を述べてきているのであります。大連文部大臣の際におきましても、教育二法を提案する際に、一応中央教育審議会の答申を求めておるのであります。清瀬文相の態度は、中央教育審議会を無視するものといわなければなりません。第三次鳩山内閣が成立してからもすでに四カ月を経過しておるのであります。その間十分余裕があったはずであります。あるいは中教審に諮問すれば、教育委員公選制廃止というような答申が得られないという事情にあったので、中教審に諮問しなかったのであるかどうか、その間の事情を明らかにしてもらいたいのであります。  なおこの際、鳩山首相にも伺っておきたいと思いますが、政府は本国会に、臨時教育制度審議設置法案を提出しておられます。教育制度の改変という重大な問題は、慎重を期するためにも、また一党独善に陥らないためにも、広く意見を聞くことは当然なことであると思われます。政府はこのために臨教審の法案を出しておると思うのでありまするが、臨教審の成立を待って十分な検討を加えたのち、政府の態度を決定してもおそくないと思うのでありますが、この点、総理大臣見解を聞きたいと思います。特に先ほど笹森順造君からの質問に対しまして総理大臣は、教育基本法についても臨教審に諮問をして、そして改善を加えたい意向のような御発言がございました。日本教育の基本は、申すまでもなく教育基本法規定されておるのでございます。この教育の基本である教育基本法さえも改正するというような意思を持っておられるならば、ましてこの教育基本法から出ておる教育行政の問題を先に決定するということは、私は本末転倒であると思います。(拍手)われわれは、今日教育基本法改正に対しては、何ら改正する必要は認めておらないのでございますけれども、もし鳩山総理がそういう意向であるならば、まず教育基本法の問題を検討してしかる後、教育行政の問題に及ぶべきであると思うのでありますが、この点あわせてお答えを願いたいと思うのであります。あるいは教育委員の任期が本年の十月であるということから、間に合わないというお考えであるかもしれません。しかし教育委員の任期をさらに一年延ばすということも考えられるのであります。多数をもって押し切ればいいというのであるならば、何を好んで臨教審などを設けようとせられるのか、政府は党利党略に基いて教育を道具に使おうとしておるという非難を受けても答弁の余地はないと思うのであります。(拍手)  私は、以上三点にわたりまして質疑をいたしましたが、この際特に清瀬文部大臣に対しまして一、二の質問をいたしたいと存じます。  清瀬文部大臣は、民主党の政策審議会長をしておられた当時、民主党は地教委廃止という態度を決定しておられます。ところがみずから文部大臣になられるに至って、この態度を一擲して、そうしてみずから今度の法案を出しておられるわけであります。このように態度が豹変したのは、一体いかなる理由によるものであるか。この際明らかにせられたいと思うのであります。なお自民党の三大教育政策の中に、教育中立性厳守ということがあります。今日教育中立性が侵されているという事実があるのかどうか。またこの中立性厳守ということは、今後どういうふうに具体化しようと考えておられるのかどうか。この際所信を明らかにせられたいのであります。少くともわれわれの考えでは、吉田内閣当時に作られた教育中立性に関する二法案ほど教育に関する悪法はないと信じておるのであります。今こそ大英断をもって、この二法案廃止すべきであると思うのでありまするが、見解を伺いたいと思うのであります。  最後に、最近、新聞あるいはラジオ放送によりますると、教員組合から校長を除外するというような報道が伝えられております。これは組合の弱体化をはかるものでございまして、私どもの容認できないところでございますが、文部大臣はいかようにお考えになっておられるか、この点もお答えを願いたいと思うのであります。  要するに、このたび鳩山内閣によって提案せられました教育行政に関する二法案が、再び日本国家統制の戦前の昔に引き戻すものであり、民主的な教育行政を妨げるものであって、私ども鳩山内閣に重大な反省を求めなければならないと考えております。  以上を申し上げまして、私の質問を終りたいと存じます。(拍手)   〔国務大臣鳩山一郎君登壇拍手
  18. 鳩山一郎

    国務大臣(鳩山一郎君) 荒木君の御質疑にお答えいたします。  第一に、教育委員会が今日まで果してきた業績についてどのように考えるかという御質疑がありました。教育委員会は、戦後の教育行政運営において、いわゆる六・三制の実施、教科内容改善社会教育振興等について成果をおさめてきたものと考えております。  第二に任命制にすることによって官僚主義の復活、教育に政党の介入が起ってくると思うが、どういうような見解を持っておるかということでした。私は官僚主義の復活あるいは政党の介入というものは、このたびの直接選挙による地方公共団体の長が同じく公選による議会の同意を得て任命するので、官僚主義の復活や政党の介入は起るものではないと思っております。  第三に、任命制に切りかえることは教育基本法の第十条の趣旨に違反すると思うがどうかという御質疑がございました。教育基本法第十条には、教育が不当な支配に服することなく行われるべきことが規定してありますけれども、公選による地方公共団体の長が、住民の代表である議会の同意を得て、教育委員任命するのでありまするから、民主的措置の障害にはならないと私は思うのであります。  最後に、臨時教育制度審議会の成立後、これに諮問をして、政府の態度を決定すべきではないかというような御質疑がございました。しかし、お説のごとく今国会に臨時教育制度審議会の設置法律案提案いたしておりますが、わが国地方教育行政の中心たる教育委員会選挙は、本年の十月に全国的に行われるのでありまして、この制度改善については、それ以前に措置することが必要であると思ったのであります。   〔国務大臣清瀬一郎登壇拍手
  19. 清瀬一郎

    国務大臣清瀬一郎君) 教育長任命のこと、すなわち地方教育委員会教育長は、府県の委員会承認を得たり、また府県教育長については文部大臣承認を得たり、またこの研究指導等についても適当な助言を与えるといりたようなことにいたしましたのは、日本教育を有機的に一体として運行しようという考えでございます。それがために、不当な圧迫とか監督とかする考えはございません。  日教組の会合も、文部大臣は出て来たらいいじゃないかというような意味のことでございましたが、御案内がございますれば、私も出ていくことにやぶさかではございません。  この中教審に対する諮問を今回いたさなかったのは、この法案作成を非常に急いだがたりに、個々委員の方の御意見は聞きましたが、委員会を開いて成文の答申を得ることはいたしませんでした。ただしかし、かつて政府が設けました政令諮問委員会の答申はございます。  それから民主党のときのことをお尋ねになりましたが、あれはこういうわけなんです。この問題は非常に重要なりといたしまして、これと教科書の問題とは、民主党が非常に注目したことでございます。だんだん研究いたしまして、ちょうど昨年の十一月十二日に至って、文教特別委員会で一案を得ました。けれども、十五日にはすでに両党が合併して今の党派になったので、この文教委員会の決定は、もとの民主党の総務会または代議士会の議を経るに至りませんでした。あれは未定稿でございます。その後未定稿も参酌いたしまして、党内において非常に研究した結果、ただいまの案を最良と考えたのでございます。私は豹変いたしたのではございません。(「中立性はどうした」と呼ぶ者あり)  教育中立性の問題でありまするが、幸いにして自来、大きな中立性違反の問題は起りませんでした。大へんけっこうなことだと思います。その原因のうちには、かの二法案が幾分働いておることじゃないかと考えておりまするから、この二法案廃止する考えはございません。  それからして最後に、今の校長を教員組合からはずすかどうかということでございます。これは大へん適切な御質問でございまして、ほかの行政においても、管理機構の者は組合からはずしております。(「管理者じゃないよ、人事権がない」と呼ぶ者あり)もし、校長をはずしたならばいい結果が生ずるという自信がつきましたら、賛成しようと思っておりまするが、いまだその結論には到達いたしておりません。(拍手
  20. 荒木正三郎

    ○荒木正三郎君 答弁漏れがあったのですが。
  21. 河井彌八

    議長河井彌八君) 登壇を求めます。発言を許します。   〔荒木正三郎君登壇
  22. 荒木正三郎

    ○荒木正三郎君 私が先ほど総理大臣にお尋ねいたしました中に、教員が自発的に行う研究集会、これに文部省が指導をする、助言をするということがうたわれておるのであります。これは集会の自由、学問の自由をうたっておる憲法に違反するんじゃないか、こういう質問をいたしておったのでございますが、総理大臣からは御答弁がございませんでした。  それからもう一つは、教育委員会が果して参りました業績について、どのような評価をしでおられるかという私の質問に対しまして、六・三制の実施、教育施設整備等において成果をあげてきたと認めると、こういう御答弁でございました。従来の教育委員会が、日本教育の復興に成果をあげてきたということをお認めになるならば、この際、この教育委員会制度を根本的に変革するような、そういう改正を行う必要がないと私は思うのであります。この点、私には理解できないのであります。従って、この点をもう一度御答弁をいただきたい、かように考えておるのであります。  それから、この教員の研究集会について、私は文部大臣はどういう認識をもっておるかということをお尋ねしたわけなんです。私は今度の法案を見まして、この研究集会というものを対象にして、この内容が考えられているということは歴然としております。その研究集会に文部省はいろいろな干渉を加えよう、そういう考えがあるということは明白であります。従ってどういう認識を持っておるのか、そういう点についてお尋ねしたいのですが、御答弁がなかった。御説明を願いたいと存じます。(拍手)  総理大臣は、自席からどうぞ。
  23. 河井彌八

    議長河井彌八君) それは、議長が取り計らいます。  総理大臣は、自席において答弁せられてもよろしいのであります。
  24. 鳩山一郎

    国務大臣(鳩山一郎君) 皆さんのお許しを得まして、この席から御答弁をさせていただきます。  この法律案は、教育関係職員の研究集会の自由を阻害するものとは考えておりません。かつてそういうようなことがありたということは、私は聞いておりません。(「これからあったらどうしますか」と呼ぶ者あり)研究集会の自由を特別の理由なくして阻害するはずはないと思います。(「あったらどうしますか」と呼ぶ者あり)ないように企てます。  教育委員会制度の過去の業績とは別に改正すべき点があると思います。それだから、今回改正案を出したわけであります。(「理由がわからない」と呼ぶ者あり)   〔国務大臣清瀬一郎登壇拍手
  25. 清瀬一郎

    国務大臣清瀬一郎君) 荒木さんの御承知のように、ただいまの学校教育法では、教科書は文部大臣が検定しております。教科には、やはり文部大臣が学習指導要領を出しております。それゆえに教職員の皆さんが御研究なさるときには、適当な御指導、御助言を申し上げる方がいいと思います。知らぬ顔をしておるべきものじゃないと思います。(拍手
  26. 河井彌八

    議長河井彌八君) これにて質疑の通告者の発言は、全部終了いたしました。質疑は終了したものと認めます。      ——————————
  27. 河井彌八

    議長河井彌八君) 日程第二、特殊土じよう地帯災害防除及び振興臨時措置法の一部を改正する法律案衆議院提出)を議題といたします。  まず、委員長の報告を求めます。建設委員長赤木正雄君。    〔赤木正雄君登壇拍手
  28. 赤木正雄

    ○赤木正雄君 ただいま議題となりました特殊土じよう地帯災害防除及び振興臨時措置法の一部を改正する法律案につきまして、建設委員会における審議の経過並びに結果を御報告いたします。  まず、本法律案提案理由並びに要旨について申し上げます。  特殊土じよう地帯災害防除及び振興臨時措置法は、特殊土じよう地帯に対し、適切な災害防除及び農地改良事業を実施し、この地帯の保全と農業生産力の向上とをはかる目的をもちまして、昭和三十一年度を最終年度とする五カ年間の時限法として、去る昭和二十七年第十三回国会において成立したものでありまして、昭和三十年度までに内閣総理大臣の決定した事業計画の約三分の一が実施されたに過ぎない状況であります。今回さらに同法の効力を三十二年度より昭和三十六年度まで五カ年間延長し、所期の目的を達成しようとするものであります。  本法案は二月二十九日に当建設委員会に付託され、提案者及び政府に対する質疑のおもなるものを申し上げますと、地域指定がかえって一般公共事業の実施並びに計画に障害を来たす点がないか、また指定が一方に偏していないかということであります。これにつきましては、今後十分調整していきたいとの明確な答弁がありました。  また、指定地域における災害防除事業と災害復旧事業とはいかなる関連を持って行われているかということでありますが、これについては、原則として別個の事業ではあるが、災害復旧事業と本法の目的たる防災的意味とを加して実施しているということでありました。その他特殊土じょう地帯対策審議会の運営等について質疑が行われました。  かくて質疑を終って討論を省略し、直ちに採決に入りましたところ、全会一致、原案通り可決すべきものと決定いたしました。  以上、御報告を申し上げます。(拍手
  29. 河井彌八

    議長河井彌八君) 別に御発言もなければ、これより本案の採決をいたします。  本案全部を問題に供します。本案に賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  30. 河井彌八

    議長河井彌八君) 総員起立と認めます。よって本案は、全会一致をもって可決せられました。      ——————————
  31. 河井彌八

    議長河井彌八君) 日程第三、漁港法の一部を改正する法律案内閣提出)を議題といたします。  まず、委員長の報告を求めます。農林水産委員会理事戸叶武君。   〔戸叶武君登壇拍手
  32. 戸叶武

    ○戸叶武君 ただいま議題となりました漁港法の一部を改正する法律案について、農林水産委員会における審議の経過及び結果を報告いたします。  漁港法は、御承知通り水産業の基盤である漁港に関する基本法として、去る昭和二十五年に制定せられたのでありますが、それ以来、本法に基き漁港の指定されたもの二千六百五港に達し、漁港整備計画は、第十回及び第二十二回両国会承認を得、これに従って漁港修築事業の推進、漁港の維持管理の適正化をはかり、本法の運用によって着々と漁港整備の実をあげ、わが国水産業の発展に寄与しているのであります。しかしながら、本法施行後の経過にかんがみ、本法に規定する手続を簡素、かつ整備して、関係事務の円滑化を期するとともに、漁港整備の進捗に応じて本法の充実をはかり、また漁港の実情に即して現行制度に若干の改正を加え、今後における漁港行政運営を一そう円滑ならしめようとするのが本法律案提案せられた理由とされております。  しかしてこの法律案内容は、大要次のようであります。すなわちまず第一は、手続の簡素化に関する改正でありまして、そのおもな点は、漁港指定の内容の軽微な変更については漁港審議会の議を要しないこととすること、漁港修築計画の軽微な変更については、農林大臣の事前許可制度を事後届出制とすること、漁港管理者は、漁港管理計画と漁港管理規程とを定めることになっているのを、この両者を統合して、漁港管理規程だけとすること、第二種漁港においても第一種漁港と同様、その区域内の公有水面の埋め立ての免許について農林大臣の認可を要しないこととすること、さらにこれらとあわせて、従来明文を欠いておりました漁港整備計画変更の手続を、その制定の手続に準ずべきものと、明確にする等であります。  第二は、新たに規定を設けようとするものでありまして、その一は、昭和二十七年以降実施しております国の直轄漁港修築事業のうち、だんだん完成をみるものもありますので、これによって生じた土地または工作物に関する規定を設けることとし、これらは農林大臣において管理または処分を行い、そのうち漁港施設については、漁港管理者にその管理を委託し、これらの国有施設を漁港管理者がみずからの施設とあわせて一体的に維持管理することができることとし、その二は、漁港管理者に漁港台帳を調製せしめて、漁港管理の適正化に資することができるようにしたのであります。  第三は、現行制度改正に関するものでありまして、現行法では漁港管理者となることができるものは、地方公共団体または水産業協同組合となっておりますが、これを地方公共団体のみとすること、漁港管理会について、その利用範囲が全国的にわたって重要である第三種漁港については、従来通り義務設置とし、その他の漁港にあっては、任意設置しすること、漁港の機能施設に野積場をも加え、これを漁港管理の対象とすること等がその内容であります。なお、その他関係条文を整理いたしてあります。  委員会におきましては、まず政府当局から法案内容について逐条的に詳細な説明を聞き、続いて質疑に入りい漁港修築計画の軽微な変更は農林大臣、の許可を受ける必要をなくして、届出のみでよいことになっているが、この場合軽微な変更の内容について、その基準いかん、漁港管理者として指定するものの中から、水産業協同組合を除外することになっているが、その理由いかん、また管理上支障はないか、地方財政の現況において、地方公共団体が漁港を管理するに必要な費用について差しつかえはないか等の問題について、質疑応答を重ね、慎重審議が行われましたが、その内容の詳細は、委員会の会議録に譲ることにいたしたいと存じます。  かくして質疑を終り、討論に入りましたところ、別に発言もなく、採決の結果、全会一致をもって、原案通り可決すべきものと決定いたしました。  以上、御報告いたします。(拍手
  33. 河井彌八

    議長河井彌八君) 別に御発言もなければ、これより本案の採決をいたします。  本案全部を問題に供します。本案に賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  34. 河井彌八

    議長河井彌八君) 総員起立と認めます。よって本案は、全会一致をもって可決せられました。  本日の議事日程は、これにて終了いたしました。次会の議事日程は、決定次第公報をもって御通知いたします。  本日は、これにて散会いたします。    午後零時四十六分散会