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1956-03-07 第24回国会 参議院 本会議 第18号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十一年三月七日(水曜日)    午前十一時三十分開議     ━━━━━━━━━━━━━  議事日程 第十八号   昭和三十一年三月七日    午前十時開議  第一 国防会議構成等に関する法   律案趣旨説明)  第二 公共企業体等労働関係法の一   部を改正する法律案趣旨説明)  第三 航空業務に関する日本国とフ   ランスとの間の協定批准につい   て承認を求めるの件(衆議院送   付)(委員長報告)  第四 航空業務に関する日本国とイ   ンドとの間の協定締結について   承認を求めるの件(衆議院送付)   (委員長報告)  第五 航空業務に関する日本国とオ   ーストラリア連邦との間の協定の   締結について承認を求めるの件(   衆議院送付)(委員長報告)  第六 国際民間航空条約改正に関   する議定書(第四十五条に関する   もの)の批准について承認を求め   るの件(衆議院送付)(委員長報   告)  第七 国際民間航空条約改正に関   する議定書(第四十八条等に関す   るもの)の批准について承認を求   めるの件(衆議院送付)(委員長   報告)  第八 道路整備特別措置法案内閣   提出衆議院送付)(委員長報   告)  第九 日本道路公団法案内閣提出、   衆議院送付)(委員長報告)     ━━━━━━━━━━━━━
  2. 河井彌八

    議長河井彌八君) 諸般の報告は、朗読を省略いたします。     ─────────────
  3. 河井彌八

    議長河井彌八君) これより本日の会議を開きます。  この際、日程に追加して、国会法第三十九条但書の規定による議決に関する件を議題とすることに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 河井彌八

    議長河井彌八君) 御異議ないと認めます。  内閣総理大臣から、選挙制度調査会委員衆議院議員島上善五郎君を任命することについて本院の議決を求めて参りました。同君が同委員につくことに賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立
  5. 河井彌八

    議長河井彌八君) 総員起立と認めます。よって本件は、全会一致をもって同君選挙制度調査会委員につくことができると議決されました。      ——————————
  6. 曾禰益

    曾祢益君 私はこの際、マーシャル群島における水爆実験に関する緊急質問動議提出いたします。
  7. 宮田重文

    宮田重文君 私は、ただいまの曽祢釜君の動議賛成いたします。
  8. 河井彌八

    議長河井彌八君) 曽祢君の動議に御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  9. 河井彌八

    議長河井彌八君) 御異議ないと認めます。よってこれより発言を許します。曽祢釜君。   〔曾祢益登壇拍手
  10. 曾禰益

    曾祢益君 私は日本社会党を代表いたしまして、マーシャル群島における水爆実験に関する問題について、内閣総理大臣並びに外務大臣に対して質問をいたしたいと存じます。  去る二月九日、本院において、原水爆実験禁止に関する決議が満場一致をもって可決され、鳩山首相が特に発言を求められまして、この種実験が中止されるよう今後さらに努力する旨を誓約されたあの瞬間の感激は、きょうもなおわれわれすべての共通のなまなましい記憶として残っております。またおそらく総理もお忘れではないと信じます。しかるに、三月一日に至り、アメリカ政府原子力委員会は、核兵器実験を四月二十日以降長期にわたって南太平洋エニウエトク実験場中心とする広範な海域において行う旨を発表いたしました。  そもそもわれわれが原水爆実験禁止決議を採択したゆえんのものは、四巨頭会談原水爆戦争の不可能を認め合いつつも、四国外相会談において具体的な緊張緩和への期待が実現をみないで、両陣営が再び原水爆実験競争に乗り出すに至ったので、この際わが国論一致によって、この危険きわまりない傾向に反対して、原水爆兵器禁止と、さしあたりその実験阻止を強く世界に訴えることが緊要と認めたからにほかならないのでございます。それにもかかわらず、この切なる願望が一顧だにも与えられず、今回アメリカ政府決定がなされ、ことにビキニ水爆被害二周年の三月一日に発表を見るに至ったのは、われわれはただ厳粛に、最も深い遺憾の意を表するだけでは足りない、済まないところの何とも表現のできない焦燥、もとかしさを感ずるものであります。原水爆禁止に関するわが党の見解につきましては、すでに再三にわたって表明されておりますので、多言を要しないと存じます。ただ特に強調したい点は、われわれの原水爆兵器の有効な国際管理の確立のもとにおける禁止も、それまでに至る間のとりあえずの実験禁止も、ともに両陣営に対してひとしく強く要望するものでありまして、われわれはソ連の無警告の実験に対しても、アメリカの今回の実験や、伝えられるイギリスの実験計画に対しましても、すべてわけ隔てなくこれに反対するものであることであります。何となれば、これらの実験は、わが国国民に与える直接の悪影響については、その形態や程度において相違がありましても、原水爆の谷間に位した日本を脅かすものである点において、また大気や海水の汚染によって人類を危うくする点におきましては全く同様であるからであります。それのみならず、両陣営ぶ依然として原水爆の優位に立って、大戦に至らずして相手方を圧倒しようという力の立場を固執することによって、ますます国際緊張を激化している責任においては何ら変りがないからであります。以上のような立場に立ちまして、以下の点について、総理並びに外務大臣、特に総理の御所信を伺いたいと存じます。  第一に、総理は二月九日本院決議にこたえ、原水爆実験中止についての努力誓約されたのでございまするが、この誓約実現について、今日までいかなる措置をとられたか、この際明確にお示しを願いたいのであります。われわれは、この首相誓約が厳粛なものであるとともに、その実現が必ずしも容易でないことを知っております。しかし困難なればこそ、確固たる決意と最大の英知とをもってこの実現に邁進しなければならないことは言うまでもないところと存じます。ことに敗北主義的な、あるいは単なる事務的なやり方で、本院の決議各国に伝達するというようなやり方で事足れるものでは断じてございません。この意味から国民の批判に耐え得るような、通り一ぺんでない明確な御答弁を特に希望いたします。  次に日米間の交渉について伺いたいのであります。外務省は先般、今回のアメリカ発表の約一週間前に内報を得たと言っております。してみれば、三月一日の発表前に日米間に交渉があったと推定いたします。それならば、政府はこのような内報に対しましていかなる措置をとられたか、そうしてそれにもかかわらずついに今回の発表を見るに至って、総理は果していかなる心境であられるか、この際明らかにしていただきたいのであります。  さらに、われわれがはなはだ不可解に存ずるところは、外務省発表によれば、日本政府アメリカに対する申し入れば、単に実験を行う場合の措置に関する要望にとどまっておりまして、実験阻止そのものに対する要望を含んでおらないように見えるのであります。いな、むしろ実験を肯定し、もしくは少くとも実験はやむを得ないという前提に立ったものといっても決して過言でないと存じます。かくのごときは、申し上げるまでもなく、実験禁止に関する本院の院議並びに総理発言に全く沿わないものであることは申し上げるまでもないと存ずるのであります。そこで、この点に関する総理所信並びに今後の対米交渉基本的態度についてお尋ねいたします。  次に、原水爆実験する諸国の中で、アメリカのみが、自分の国の領土、領空ばかりでなく、信託統治区域中心とし、かつその付近の公海で行うという点において、並びにその公海南太平洋という日本の生存上欠くべからざるところの漁場の一つであるという点において、特殊の問題を提起していることは、皆様御承知通りであります。そこで次の点を伺います。まず法律上の問題といたしまして、国際連合信託統治区域において、施政権者原水爆実験を行う権限を認められているかいないか、日本政府見解をはっきり伺いたいのであります。皆さんも御承知のように、この問題についてインド政府においては、信託統治区域におけるこの施政権者原水爆実験権限はない、国際法の違反である、かような見解を出しておりまして、また近く国際司法裁判所に提訴すると言われておるのであります。これは日本政府ではございません。外国の政府であります。私は日本政府見解をはっきり伺いたいのであります。  さらに、公海におきまして原水爆実験を行うことは、果して国際法各国権利であるか、かりに権利と言えないにしても、その自由が認められておるのであるか、この点をはっきり伺いたいのであります。御承知のように、公海における海軍実弾演習実弾射撃、こういうふうなことは、従来公海自由の原則のもとにも各国権利または自由として、一定の条件のもとに容認されておったと私は考えます。しかし原爆、さらに水爆実験となりますると、その放射能、その危険の性質と程度、その損害持続性、従って危険区域の広さ、立入禁止期間の長さ等から見まして、かつての海軍実弾演習とは、全く観念や次元を異にするものであることは、言を待たないと信ずるのであります。従いまして、このような実験公海自由の原則等によって律することは、全く不当と言わなければなりません。(拍手)万一自由を認めるといたしましても、その反面、重い責任を解除することには断じてならないのであります。従いまして、公海における原水爆実験に関する政府基本的態度を明らかにされたいとともに、原水爆実験に対して政府としては、次に申し上げるような直接間接補償、すなわち、まず公海立入禁止に伴い、得べかりし漁獲損失並びに漁船の迂回に伴う損失補償、第二に、区域外漁獲物放射能によって汚染しまたは汚染のおそれがあることからしての値下りした場合の損失補償、直接降下物等からの被害の起った場合の賠償、これらの直接間接の一切の損害について、明確な日本権利を留保し、かつ要求を貫徹すべきものと考えまするが、政府の御見解はいかがでありましょう。  私がこの問題を提起するのは、断じて実験阻止ができないだろうという敗北主義からではなくて、一つには、この際水爆実験禁止に関する法律的原則を確立する必要がある。二つには、第一次鳩山内閣当時、吉田内閣から受持継ぎましたビキニ水爆補償問題について、政府抜本的解決を避け、慰謝料の受け取りで当面を糊塗して今日に至ったからであります。第三には、外務省発表によりましても、今回のアメリカ内報には損害補償に関する回答がなされておらないからであります。  最後に、私は鳩山総理に伺いたいのであります。総理は一月二十六日記者会見において、ダレス国務長官の来訪の際に特に話し合いの材料がない、持たないということを言明されております。私はこの言明それ自身が、総理のステーツマンシップを疑わしめるものであると存じまするが、それはしばらくおき、情勢の変化もありましたから、この際あらためてお伺いしたいのは、総理ダレス氏との会見におきまして、今回の原水爆実験を中止するよう申し入れられる御意向があるかどうか、並びにせっかくアメリカ濃縮ウラン提供によって発足しようとしておりまする日本原子力研究所の最適地として折紙をつけられました武山施設を、アメリカ軍から解放することの要請を行うお考えばないか。伝えられるところによりますると、解放は半分してもいいけれども、そのかわりの施設をよこせというやに伝えられております。かくのごときは、断じてわれわれは承服できないのであります、この点に関する明確なる総理の御答弁を要求いたしまして、私は再質問権利を留保して、私の質問を一応終りたいと存じます。(拍手)   〔国務大臣鳩山一郎登壇拍手
  11. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 曽祢君の御質問に対してお答えいたします。  第一は、原水爆実験禁止に関する決議は、直ちにわが外交機関を通じまして関係各国政府申し入れを行い、その趣旨を十分に徹底するよう努めました。今後とも、なおこれに努力するつもりでございます。  次の御質問に対してお答えをいたします。わが国から実験禁止要望申し入れたにかかわらず、いずれの関係政府からもいまだ実験中止に関する意向の明確な表明がなされていないことは、深く遺憾とするところであります。政府は両院の実験禁止決議の線に沿いまして、実験中止に向うよう、この上とも努力する所存であります。同時に、実験の場合の危険予防並びに損害補償につきましては、十分の措置を講ずるよう、あわせて要求しておる次第でございます。  第三の御質問に対してお答えをいたします。この問題は、一昨年わが国漁船第五福龍丸被害を受けた際のビキニ環礁における水爆実験に関連いたしまして、同年夏開催された第十四回国連信託統治理事会相当激しく論議されたものでありまするが、その際は、信託統治地域内においては施政権者水爆実験を行う権限を有するかいなかは、信託統治協定のいずれの条項にも規定されておりません。またいずれの条項も、これを禁止していないという見解が表明せられました。同理事会においては、信託統治地域内においては原水爆実験を中止するよう要請する決議案も否決されていますので、国連としては十分な予防措置を講ずれば、この実験禁止していないと考えられるのであります。  第四の御質問に対しましてお答えいたします。お説の通り実験の結果が相当長期にわたりまして広範囲な公海の部分に影響を及ぼす事項については、果してこれが伝統的に言われてきた国際法上の海洋使用の自由の、いわゆる使用に含まれるかいなかが問題となり得ることは事実であります。しかし原水爆実験は全く新しい事柄でありますので、国際法の現段階におきましては、これが公海使用の自由の原則に反するものであるとの解釈が確立しているわけではないのであります。また政府としては、実験から生ずる損失は、これを十分補償するよう米国政府申し入れてあります。  次の御質問お答えをいたします。グレス氏が参りましたときにどういう話をするつもりかという御質問でございます。ダレス長官とは機会があれば、日米間共通の一般的問題につきまして話し合いたいと思っておりまするが、どのような話をするかということは、ただいまお話しするわけには参りません。(「武山の問題はどうした」と呼ぶ者あり)ただいまの問題などについては、話し合いたいと思っております。(拍手)   〔国務大臣重光葵登壇拍手
  12. 重光葵

    国務大臣重光葵君) ただいまの御質問についてお答え申し上げます。  国際法の問題についての御質疑がございました。大体において今総理大臣から御説明で、御納得のことじゃないかと考えます。  第一の問題が、公海の自由の見地から原水爆実験をやると、それは行き過ぎじゃないか。この点については、国際法といたしまして、この新たなる原水爆実験禁止公海における実験禁止するという国際法が成立しておるということを言うわけにはいかぬ状態でございます。さような禁止をするように将来国際法解釈をしなければならぬという、ある意味立法論は成り立つのでございます。その立法論に基いて各国見解主張をするということは、これはでき得ることだと考えます。  また信託統治の問題についても、先ほどの総理の御説明通りでございます。信託統治理事会において今日まで行われた議論は、原水爆禁止実験をしてはならぬということは言ってない。そこで原水爆禁止をすることを間接に認めておるような議論で終始されておるので、これもまた将来の問題にかかっておると思います。従いまして、この委任統治地域において、さような原水爆実験禁止した方がいいという意見については、各国ともこれは出し得ることでございます。さような方向に向って進むことは、これは考慮しなければなりません。従いまして、日本政府の今日までの態度はどうであったかと申しますれば、これはたびたび御説明を申し上げたと思いますが、原水爆使用はもちろんのこと、原水爆実験をもしない方がいいと、こういう主張であるのでございまして、それを各国に対してはむろんのこと、及び国際会議においてそういうことを機会あるごとに主張して参ってきているのでございます。しかしながら、今日さような主張国際法的に取り上げられて決定をみておらぬということは、これは、はなはだ遺憾なことでございますけれども、それは認めざるを得ません。従いまして、今後、ただいま総理の申された通りに、わが方としてはあらゆる機会をつかまえて、このわが方の主張実現努力をしなければならぬと、そう心得て事を処置している次第でございます。  それにつきましても国会の御決議は、これは非常な有力な外交推進力でありますから、それを利用して、特に国際連合において、さような方向議論を持っていくように努力をいたしているのであります。それは相当私は有効に世界世論を動かしつつあるような自信を持っております。さような、このいわば国際法を改訂するための努力、それをしつつ、同時に、政府としては国民の利益を擁護しなければなりません。従いまして、その国際法議論が確定するまでに行われる原水爆実験に対してはあらゆる予防措置を要求し、(「やめてもらえばいい」と呼ぶ者あり)かつまた、その実験によって出てきた損害に対してはその補償を要求するということは当然のことであると、考えられる方向に遺漏なき措置をとっている次第でございます。今後もその方針で、あくまで進んでいく方針でございますことを申し上げて私の答弁を終ります。(拍手
  13. 曾禰益

    曾祢益君 再質問
  14. 河井彌八

    議長河井彌八君) 御登壇を請います。曽祢君。   〔曾祢益登壇拍手
  15. 曾禰益

    曾祢益君 ただいま総理外務大臣からのお答えがあったのですが、総理は、まるで事務当局が作った案文を読み上げるだけで、全く気魄に欠けているような御答弁で、はなはだ遺憾でございますが、はっきり伺いたい点は、この信託統治区域における実験についても、予防措置を講じたならば禁止しておらないのが国際連合決定であるというふうに伺いました。私はそれを伺っているのではない。日本総理大臣としては、どういう見解でこの問題に対処するお考えであるか、明確にお答え願いたい。国際連合決定を伺っているのではございません。  それから公海の問題につきましても、公海における実験の自由は必ずしも禁止しておらないようだという、これも国際法議論としてお答えになったのですが、私は総理の明確な方針を伺っているのであって、法律論総理に伺ったわけではないのでありますから、もう一ぺん明確なるお答えを願いたいのであります。  外務大臣につきましては、ただいまのお答えでは、武山の問題に対するお答えがございません。これに対するお答えをいただきたい。  それから第二には、これまた国際法議論だけをしておられまして、立法論ならばこういう主張ができるということを認められておる。われわれは国際法的な裏づけのない議論をしろというのではございません。しかし、立法論として議論する、主張する余地があるならば、政府は何ゆえにそういうような立法論の上に立った日本見解主張されないのか、政府政治的方針を伺っておるのでございまするから、あらためてお答え願いたい。  第三点は、……
  16. 河井彌八

    議長河井彌八君) 曽祢君、時間がございません。
  17. 曾禰益

    曾祢益君(続) アメリカとの交渉内容についてのお答えが全然ございません。内報があるまでのアメリカといかなる交渉をされたか、内報があってから今日までいかなる交渉をされたか、今後いかなる交渉をされるかについて、明確な御答えを願いたいと存ずるのであります。(拍手
  18. 河井彌八

    議長河井彌八君) 内閣総理大臣。自席において発言を許可いたします。
  19. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) ただいま議長から許可を得ましたから、この席から答弁さしていただきます。  ビキニ島において原水爆実験禁止せられるようにということを熱望しておりますことは、決して人後には落ちません。   〔国務大臣重光葵登壇拍手
  20. 重光葵

    国務大臣重光葵君) お答えします。  先ほど私が申し上げたのは、政府法律論だけを申し上げたわけではございません。私は国際法上からいって、そういうものの禁止は、はっきりしておるわけではない、それは、それまでは法律論であります。しかしながらそうであるからといって、各国とも主張はし得るということを申し上げた。その主張は何であるか、日本政府主張は何であるかというと、日本政府主張は、原水爆使用禁止はむろんのこと、この実験をもしないようにした方がいいという主張を持っておる、こういうことを申し上げた。それに向ってあらゆる努力をいたしておるわけであります。その努力をしておる一々の内容は、何月何日だれにどう話したということは、今それは申し上げるわけには参りません。しかしながら、これは外交上の一々の交渉内容を申し上げられませんが、しかしながら最善を尽して、これは外交機関を通じ、かつまた、私自身としても話し合いをし、また、国会決議等については丁重な形式でもって、その関係各国はむろんのこと、国際連合において、あらゆる努力をしておる。その結果は、相当に私は世論を動かしておると、こう申し上げておる。司法裁判所に提起するインドメノン大使考え方も、いろいろ話をしてみるというと、相当日本側意向も考慮しておるのじゃないかと思われる。さようなわけで、あらゆる機会努力をするということは、政府の当然の義務であります。さようにしてゆくつもりでございます。(拍手)   〔「答弁漏れ」「武山問題はどうした」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し〕
  21. 河井彌八

    議長河井彌八君) 重光外務大臣。   〔国務大臣重光葵登壇拍手
  22. 重光葵

    国務大臣重光葵君) 武山の問題につきましては、実は最初の御質問は、私に対する御質問でないように考えましたから、差し控えました。武山の問題は、今一つ事項として米国側交渉をいたしております。けれども相当この問題についても困難はあるようでございます。      ——————————
  23. 千田正

    千田正君 私はこの際、エニウェトクにおける核兵器実験日本に及ぼす影響について緊急質問動議提出いたします。
  24. 宮田重文

    宮田重文君 私は、ただいまの千田君の動議賛成いたします。
  25. 河井彌八

    議長河井彌八君) 千田君の動議に御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  26. 河井彌八

    議長河井彌八君) 御異議ないと認めます。よってこれより発言を許します。千田正君。   〔千田正登壇拍手
  27. 千田正

    千田正君 私はこの際、エニゥェトクにおける核兵器実験日本に及ぼす影響について緊急質問をいたしたいと思うのであります。外交問題その他につきましては、ただいま同僚の曽祢議員から大要をお尋ねしてありますので、私は変った立場から、特に影響する面についてお伺いしたいと思うのであります。  回顧すれば、十年前の日本の運命は、原子爆弾によって決定されたと言っても過言ではないのであります。広島、長崎三十万の同胞の犠牲は、日本人として永遠に忘れることのできない痛恨事であるとともに、日本人をして、とこしえに戦争を放棄すべきであるという決心をさせて、世界平和への念願のために、憲法をもってわれわれはこれを示現したのであります。(「そうだ」と呼ぶ者あり)  しかるに、平和によみがえった日本は、去る昭和二十九年三月一日、ビキニ海域において米国原爆実験によって、わが第五福龍丸乗組員を初め、幾多の損害をきたして、われわれをして再び恐怖のどん底に陥れたことは記憶に新たなるところであります。しこうして原子兵器使用禁止及び原水爆実験禁止は、平和を求むる世界各国民の願いであり、惨禍をこうむった日本九千万同胞の悲しい訴えでもあるのであります。昭和二十九年四月五日、また本年三月九日の二回にわたりまして、本院におきましては、この原水爆禁止及び中止要請の決議案を通過して、政府にその処置を要望したことは総理大臣初め各位の御承知通りであります。  しかるに、このたび、再びマーシャル群島周辺のエニウェトク並びにビキニ海域で、同様の実験が行われることを米国から通告してきたことは、われら日本国民は、広島、長崎、ビキニ、さらにこのたびマーシャル群島周辺と、三たび恐怖のどん底にわれわれは陥れられたのであります。何がゆえに日本民族だけが、かくのごとく原子兵器の犠牲にならなければならないか、この点を私は総理大臣に特に伺っておきたいのであります。(拍手)  第一に、鳩山内閣の企図しておる憲法改正は、被占領蜀当時におけるところのアメリカ側の強制による憲法であるから、独立国家の日本は、自主独立の立場から改正しなければならないというのが、現鳩山内閣国民に対する声明であります。しかるに、この一方的な強制的なアメリカの通告を、果してしからばあなた方が常に言うところのアメリカ側の強制的な法律改正であるとかあるいは制定であると言うなら、まず第一に日本の悲願であるところの、この原子兵器実験あるいは使用禁止するのは、当然鳩山内閣として敢然としてこれを行わなければならないと思うのでありまするが、鳩山総理大臣の御所見を承わりたいのであります。  さらにこのたびの米国側の通告は、マーシャル群島実験周辺約四十二万一千二百五十マイル、海里になおしますと約三十七万五千平方海里であります。四月二十日以降八月末まで危険水域とするというのでありますが、一昨年の実験より二万五千平方マイル少い、それはこの実験が、爆弾が小さいからである、こういうことをアメリカ側が言うておりまするが、爆弾が小さいからと言うて、被害が小さいということは断定できないと思います。しかも数年を経て、今日はこの威力は相当発達しておると思うのでありまするがゆえに、この損害はないと保証はできないのでありますが、日本側はいかに考えておりますか、政府のお考えを承わりたいのであります。  一昨年三月一日のビキニ海域被害は、ただ一発で、しかも約二十六億に上るところの損害を受けたのであります。しかるにこのたびば四月の二十日から約四カ月と、こういうことであるというと、相当の私は被害があるものと思うのでありますが、二十六億のこの前の損害の請求に対して、わずかに七億二千万円の見舞金しか取れなかりた。これに対して果して先ほども曽祢委員からも質問がありましたが、直接的な被害がかりにないといたしましても、間接的ないろいろな漁獲の壊滅であるとか、あるいは漁場の転換であるとか、あるいは資材、資金の損失等に対してのこうした問題をはらんでおるのでありまするが、これに対してはどういうふうに考えられるか、国内処置をどういうふうに考えられるか。ことに、これは担当大臣であるところの農林大臣並びに外交折衝に当るところの外務大臣にお伺いしたいのであります。  さらにこの損害とみなされるところの、補償とみなされるところの見舞金に対して、かつて政府は、このビキニの見舞金に対して課税しようとすることさえも考えられた。これはまことに私としては遺憾なことでありまして、歌舞伎でいいますならば、山崎街道において娘の犠牲によって得たところの金をばっさりと取り上げた定九郎と同じような考え方である。こういうことは、日本国民の犠牲によってあがなわれたところの見舞金に対して課税しようという考えは、当然これは改正してもらわなければならない、法律的な改正をなさるる一体考えがあるだろうか、大蔵大臣にお伺いしておきたいのであります。  さらにこれは外務大臣にお伺いしたいのでありますが、今や公海とかあるいは地上の問題が論議の中心になっておりまするが、今後は空中の限界というものが、外交上重大な問題になると思うのであります。一九一七年空中におけるところの条約は各国において結ばれたのでありますが、さらに一九四四年新たにいわゆる民間航空の国際条約が結ばれたのであります。しかしながら、現今行われるところの空中におけるこうした原爆実験であるとか、その他の問題が、気流の関係であるとか、あるいはいろいろな関係によって空中に行われた仕事によってこうむるところの損害相当大きくなってくるのでありまするが、この公空、いわゆる公けの空というものの限界はどういうふうに考えられておられるか、領海いわゆる領水及びその一国の領土の上にあるところの領空は、一応国際公法上においては定められております。しかしながら公空と領空との区別と、これに及ぼす主権の限界はどの辺にあるか、この点を外務大臣に伺っておきたいのであります。  さらに、時間もありませんから簡単に外務大臣並びに農林大臣にお伺いしたいのは、今度の通告をかりに受諾した場合において、その現場に監視船あるいは調査船を出動させるということを考えておられるかどうか、この点を交渉の中に将来入れるかどうかを伺っておきたいのであります。  なお最後に、外務大臣及び厚生大臣にお伺いしたいのは、昨年八月ジュネーブにおいて開かれた国連主催の原子力平和利用国際会議におきまして、この原子爆弾によって被害を受けた患者の医学上の実相を発表しようとしたところが、これが拒否になった。広島、長崎被害の医学的な研究の真相を自由に発表することが許されなかった。これはどういうわけか、この点を一言私は承わっておきたいのであります。遺伝学の世界的権威でノーベル賞の受賞者であるところのアメリカのミュラー博士の研究結果は、われわれを戦慄させずにおかないところの問題がたくさんあるのであります。すなわち広島、長崎の放射線を受けた人たちは、末代まで伝わる突然変異の要素をその生殖細胞に持っているというのであります。外国の学者の研究を待つまでもなく、一昨年の六月、助産婦の協会の大会で、長崎の代表が報告しておられる嬰児に関する報告は、世界にセンセーションを巻き起しておりまするが、それによると、二十五年から二十八年までに長崎に生れた嬰児のうち三万百五十人について調査してみたところ、四百七十一人は死産児、百八十一人は流産、生きて生れたうち三千六百三十一人が異常体質、あるいは脳髄がない子供が産まれた。こういう報告を受けますと、この原子爆弾は、あるいはこの実験は、日本民族の消長に関するところの重大な問題でありますので、厚生大臣からこれの予防及び治療等の処置に対して伺いたいのであります。  残念なことに時間がありませんが、鳩山総理大臣に特にお願いしたいのは、われわれ日本人の住むこの土地は、人生の墓場でもなければ人類の屠殺場でもありません。われわれは真に日本の自由、また独立の立場から、真剣にこの問題を考えて、敢然としてアメリカに対して抗議する意思があるかどうかということをお尋ねいたしまして、私は降壇いたします。   〔国務大臣鳩山一郎登壇拍手
  28. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 千田君から危険防止について御質問がございましたから、その点について私からお答えをいたします。  アメリカに対して当方の要望申し入れましたところ、今般、右に対する回答が参りました。この回答には、危険区域の範囲並びにその時期については、今回の新聞発表と同様のことが示されております。またあらゆる危険防止処置がとらるべきことが約束されております。  右、お答えをいたします。(拍手)   〔国務大臣重光葵登壇拍手
  29. 重光葵

    国務大臣重光葵君) お答え申し上げます。  国際会議において原爆被害者の医療の問題について、日米学者の間に、専門家の間に、若干の意見の相違があったということは事実のようでございますが、しかし米国側がわが方の研究発表等に制限を加えたり、阻止したりしたということはございませんことを申し上げます。  それからその次の問題について、今回の米国が行おうとするこの実験に対して、その周辺等について適当に監視船を送る意思があるかどうかと、私はさようなことも考えるべき問題だと思っております。これは、交渉の題目になって少しも差しつかえはございませんから、そのつもりでございます。  その次の問題について、領空の問題を提起されました。これは国際法上非常にむずかしい問題だと考えます。考えますが、今日われわれのこの常識として思っておるところは、領土の上の空中は領空であると、こう概括的に考えて差しつかえないと思っております。しかし将来この空中の何キロ以上の空中が、領空が、自由な各国使用に供せられるべきものであるかどうかという議論が今起りつつあります。そうでありますから、これは将来の決定に待つよりほかに方法はございません。  それからこの実際問題として、今回の原水爆実験の問題に対する方針については、総理のお考え通りでございます。私は、万が一損害が起ると、アメリカ側はあらゆる予防措置を講ずるということを約束をいたしておりますが、それにもかかわらず、わが方の損害のある場合においては、これは十分にその補償を要請をいたしたいと、こう考えておる次第でございます。(拍手)   〔政府委員大石武一君登壇拍手
  30. 大石武一

    政府委員(大石武一君) 農林大臣にかわりましてお答えいたします。  今回の米国の核実験に伴って生ずるわが国の漁業生産減退その他の損害につきましては、実験内容、あるいは規模等が詳細にわかっておりませんので、実験の前にこれを予測することは非常に困難であると存じております。しかしながら今回の実験につきましては、米国側から幸いに時間的に相当の余裕を持って通報がございましたので、海上保安庁とも緊密な連絡をとりながら、その内容を地方庁を通じまして関係の各漁業者及び漁船へ、また別途に漁業用の海岸局を通じまして、沖合いの各漁船にそれぞれ連絡した次第であります。  なお実験影響に関する基礎調査のために、現地に調査船を派遣するということはごもっともな御意見でございますが、これは関係官庁とも十分に連絡いたしまして検討いたしたいと考えております。(拍手)   〔国務大臣一萬田尚登君登壇、拍   手〕
  31. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 原水爆実験被害に対します見舞金の課税についてでありますが、これは慰謝料に類するものでありますれば、現行法のもとでも課税の問題はありません。この問題の取扱いは、従いましておおむね課税をしないようにいたすことになっておりまして、その旨国税庁長官から税務署にも解釈並びに取扱いについて通知を出しております。従いまして、新しい法律を作る必要はないと思っております。しょせん、これは原水爆実験被害というようなものが、今後何回も繰り返してあるというようなことを実は考えたくないのであります。(拍手)   〔国務大臣小林英三君登壇拍手
  32. 小林英三

    国務大臣(小林英三君) ビキニ患者の学術的方面につきましては、入院以来おおむね月に一回ないし二回開催されてきたのでありますが、ビキニに関しまする原爆協議会の医学部会での結論を、そのつど新聞記者団に伝達いたしまして、なお外国に向いましては、外務省に対しまして同様に毎回その処理を依頼して参っておるのでございます。なお学術専門的な方面では、三十年の一月の医学雑誌の「医療」におきまして、ビキニ特集号を発刊いたしまして、内外に公開をいたし、なおその後各専門部会におきましては、三十年度内に開催せられました国際医学会、原子力利用国際会議及び国際血液病の学会に原爆協議会医学部会長の都築博士並びに東大の主治医の美甘博士が出席発表するほか、これらの関係の医師が関係部会につきまして、それぞれ三十年度日本医学会の各専門部会に発表をいたしておるのでございます。  なお原爆協議会の医学部会といたしましては、さらに全般の記録を取りまとめまして編集中でございまして、近く印刷公刊ができる予定でございます。  広島、長崎におきまする原爆被爆者につきましては、厚生省に設置してございまする原爆被害対策に対する調査研究連絡協議会の広島長崎部会におきまして、治療及び遺伝等、今後の問題につきまして検討いたしておるのでございます。  それから今回の四月二十日以後に行われるということになっておりまする実験の問題につきましては、実験の日取り及び元素等の内容が具体的に明らかになりました場合におきましては、まず南方の水域におきまして、農林省と緊密なる連絡をはかりまして、魚類その他の汚染状況を十分に調査いたしまして、その結果に基きまして、かりにも国内に、国内生活の上に影響がある心配がある場合におきましては、すみやかに適切の処置を講ずるつもりでございます。(拍手)      ——————————
  33. 河井彌八

    議長河井彌八君) 日程第一、国防会議構成等に関する法律案趣旨説明)  本案について国会法第五十六条のこの規定により、提出者からその趣旨説明を求めます。船田国務大臣。   〔国務大臣船田中君登壇拍手
  34. 船田中

    国務大臣(船田中君) 今回提出いたしました国防会議構成等に関する法律案につきまして、その提案の理由及び内容の概要を御説明いたします。  御承知通り、さきに第十九回国会において成立を見ました防衛庁設置法は、その第三章におきまして国防会議のことを規定いたしておるのであります。すなわち内閣国防会議を置くこととし、国防の基本方針、防衛計画の大綱、防衛計画に関連する産業等の調整計画の大綱、防衛出動の可否等につきまして、内閣総理大臣国防会議に諮問すべきものとし、また国防会議は国防に関する重要事項について、必要に応じ、内閣総理大臣に対し意見を述べることができるものといたしております。しかして国防会議の構成その他必要な事項は、別に法律で定める旨を規定いたしておるのであります。政府は、以上のような国防会議の任務にかんがみ、これが構成等につきまして慎重に検討して参ったのでありますが、ここに成案を得ましたので、今回本法律案提出いたした次第であります。  次に、本法律案の主要なる点を申し上げます。  国防会議議長及び議員をもって組織するものとし、議長内閣総理大臣をもって充てることとし、議員は内閣法第九条の規定により指定された国務大臣外務大臣、大蔵大臣、防衛庁長官及び経済企画庁長官をもって充てることといたしております。なお、議長は必要があると認めるときは、議員以外の関係国務大臣、統合幕僚会議議長その他の関係者を会議に出席させ、意見を述べさせることができることといたしております。  以上のほか、議長及び議員の職務上の秘密保持につきまして規定いたしました。なお、国防会議の事務につきましては、総理府に国防会議事務局を置き、これに処理させることといたしております。  以上が本法律案の提案の理由及びその内容の概要であります。何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御可決あらんことをお願いいたします。(拍手
  35. 河井彌八

    議長河井彌八君) ただいまの趣旨説明に対し、質疑の通告がございます。発言を許します。田畑金光君。    〔田畑金光君登壇拍手
  36. 田畑金光

    ○田畑金光君 私は日本社会党を代表し、ただいま議題となりました国防会議構成等に関する法律案に関し、鳩山総理ほか関係閣僚に対し、以下数点にわたり質問せんとするものであります。  本法律案は、すでに第二十二国会の折、第二次鳩山内閣の手によって提案され、政府、与党の異常な努力にかかわらず、ついに参議院において審議未了に陥ったいわくつきの悪法であります。また本法律案は、すでに提案されておりまする憲法調査会法案と一体をなすものであり、保守内閣の反民主革命途上における典型的反動立法であります。  わが国は独立を回復して以来四年になりまするが、今日、政治的にも経済的にも軍事的にも大きな制約のもとに置かれております。わが国の年度予算は、毎年防衛分担金削減交渉のゆえに国会提出がおくれております。しかも防衛費予算は治外法権的地位を占めております。財政編成の自主権なくして、どこに国の独立がありましょうか。しかも国防会議の設置は、昨年春、防衛分担金削減の代償としてアメリカ側に約束したのがそもそもの動機であり、昨年夏、重光外相渡米の最大の切り札が本法律案の成立であったのであります。それゆえにこそ、当時の民主党内閣は、例の砂糖法案を犠牲にしてまで、これが成立に狂奔いたしたのであります。防衛分担金を削って社会保障制度の強化へ、これが現内閣の公約でありましたが、一方は完全に抹殺され、防衛関係費のみは年々膨張をたどっております。本年度予算編成に当り、防衛庁費は当初大蔵省査定では八百九十億であったが、九百六十四億にふえ、一千億を突破するに至ったのであります。こういう背景の中から生まれてきたのが本法律案であるのであります。  昨年五月、重光外相とアリソン・アメリカ大使との間に、原子兵器は持ち込まない、こういう話し合いがなされたと公表いたしましたが、その直後にオネストジョンは持ち込まれ、原爆積載のB57長距離爆撃機が持ち込まれておるのであります。海外派兵はいたしません、こういう神妙な答弁をしていたものが、時期が来ますると、自衛のためには敵基地の侵略も可能がある、こういうように変っているのであります。次に来たるべきものはSEATOへの参加であり、NEATO結成への一翼をになうことは既定の路線であると思われるのであります。  そこで、私は鳩山総理大臣にお尋ねいたしますが、国防会議わが国国防上の必要から設置しようとするものであるか。ただいまの説明にもありましたが、防衛庁設置法に基いて作るのだとお答えになりましょうが、その実は、日米共同防衛の名に隠れ、アメリカの極東侵略に奉仕する機関に終ると思うが、総理所信を伺います。昨年の夏、重光外相渡米の際の日米共同声明の中にも示唆されておりまするが、自衛隊の強化、すなわち憲法改正、再軍備の路線を行くわが国は、やがてSEATOへの参加を迫られ、あるいはNEATO結成の一翼をになうに至ると思うのでありまするが、政府のこれに対する所信を伺っておきたいと思うのであります。  次に、私は憲法との関係についてお尋ねいたしたい。現内閣は、すでに憲法調査会法案を提出し、内閣に憲法調査会を置いて憲法改正原案の作成に積極的に乗り出しております。保守派の人々の意図する憲法改正内容がどういうものであるかは、すでに明らかであります。試みに、鳩山総理もかつて声援を送られた旧自由党の憲法改正案要綱によりますると、現行憲法第二章の戦争放棄の条章は、国の安全と防衛に関する一章に書き改め、国力に応じた最小限の軍隊を設置し得ること、また軍の最高指揮権は、内閣を代表する内閣総理大臣に置き、国防会議、軍の編成維持、軍事に関する最小限の規定を設けることとして、軍の統帥権、国防会議等は明確に憲法の条章にうたうべきことを明らかにいたしております。このように保守派の考え方をもっていたしましても、本法律案というものは、現行憲法の建前上許されない憲法違反の法律案であると考えまするが、総理見解を承わっておきたい。  さらに、憲法と関連して明らかにしておきたいことは、御承知通り、かつての国内治安、間接侵略に対処することを唯一の目的とした警察予備隊、保安隊は、今日直接侵略に対処することを第一義目的とする自衛隊に発展し、昭和三十一年度には陸海空三軍の兵力は二十一万五千余に上るのであります。現内閣が防衛六カ年計画を立て、防衛分担金の交渉に、またはMSA援助兵器受領の基礎条件として参っておることは国民周知の事実であります。  そこで、総理にお尋ねいたしまするが、われわれは今日の自衛隊即憲法違反であると考えまするが、自衛戦力を肯定する現政府は、現行憲法のもとにあっても、防衛六カ年計画は憲法との矛盾、衝突なしに推進できるものであると考えておられるかということであります。  さらに船田防衛庁長官にお尋ねいたしますることは、防衛六カ年計画の全容、すなわち年次計画、最終年次における目標等、その具体的内容を明示していただきたい。なお昨日の新聞報道によりますると、駐留米軍は年内に一万名撤退し、あと二、三年のうちには米陸上部隊は撤退を完了するといわれておりまするが、防衛六カ年計画と駐留米軍撤退との関係はどういうようになるのであるか明らかにしていただきたい。  次に私は防衛六カ年計画と経済自立五カ年計画につき、一萬田大蔵大臣、高碕経済企画庁長官にお尋ねいたします。  現内閣の前身である第二次鳩山内閣は、社会党の掲げるような社会保障政策を掲げて国民を惑わして参りましたが、今も同様であります。あれほど喧伝された四十二万戸住宅建設の実情はどうでありましょうか。政府の直接間接の財政措置によるものは十七万五千戸に過ぎず、しかも公団住宅は十二月末入札済みが三六%、公庫住宅七三%、公営住宅八五%が着工されておるに過ぎません。経済五カ年計画の目標は、経済自立と完全雇用の達成をはかることであると申しておりまするが、第一年度である三十一年度における鉱工業部門における雇用人員は二・六%の増加であり、二十五万名でありまして、就業人口の増八十八万でありまするから、大半はすでに飽和状態にある商業、サービス部門、原始産業等への吸収を予定するという頼りない雇用政策であります。生活保護費を見ましても、三十一年度は要保護人員は前年度に比し五%増でありまするが、本年度はわずか二・五%の増を見込んでおるに過ぎないのであります。今日厚生省調査による生活保護を要するボーダー・ラインの階層一千百七十万世帯といわれておるとき、保護率の減少というものは、軍事予算のしわ寄せが国民生活、社会保障への重圧となってきた証拠であります。現内閣は社会保障関係費が昨年に比し百二十二億増の千百三十四億に増額したることをもって得意といたしておりまするが、人口増加に伴う当然の経費増であって、実体はむしろ後退したものといわなければなりません。今日イギリスにおいてすら新保守主義のもとにおける福祉国家の達成と軍備強化という二つの政策は併立し得ず、英国の当面する経済困難の原因を作っておるといわれております。しかるに経済基盤の浅いわが国において、軍事費支出は年々膨張し、防衛六カ年計画の最終年次である昭和三十五年度には、自衛隊の維持費だけでも二千百五十億に上り、その年の国民所得の三%を占めるのであります。  そこで一萬田大蔵大臣にお尋ねすることは、社会保障と再軍備は併立し得るものとお考えであるかどうか。わが国の置かれた国民経済、国家財政の現況にあっては、いずれに重点をとるかが唯一の道であると考えまするが、蔵相の見解を承わりたいのであります。  高碕長官にお尋ねしたいことは、経済自立五カ年計画と防衛六カ年計画との関係はいかんということであります。ことに長官は、防衛費は国民所得の二・二%を妥当とすると、かねがね主張されておるが、今後におきましてもこれが限界を厳守するだけの勇気がおありになるかどうかという点であります。  次にお尋ねしたいことは、国防会議に民間人を加えることの是非であります。第二十二国会の際、政府原案には民間人を加えることになっておりましたが、当時の自由党は、内閣責任制の建前と機密漏洩の危険性等から、これが削除を主張し、政府与党は成立をあせるのあまり、これに同調したのであります。ときに鳩山総理は民間人を入れることが望ましいということ、しかし成立を急ぐゆえに自由党の修正には応ずるが、民間人としばしば意見を交換してこれが欠陥を防ぎたい、こう申されたのであります。今次国会に提案されるまでのいきさつを見ましても、幾変転の後、前国会の修正案とほぼ同一の内容のものに落ちついたのであります。この際考えなければならないことは、現行法律制度のもとにありましては、総理大臣権限はあまりに強大であるということであります。総理大臣国務大臣の任免権を持ち、防衛庁長官もまた国務大臣として、あるいは行政長官として総理大臣の任免権と指揮監督権のもとに置かれております。また内閣総理大臣は、自衛隊の最高指揮監督権を持っております。民主主義は権力の分立、均衡を前提といたします。行政権は国会の監視のもとにあるとはいえ、議院内閣制のもとにありましては、与党の総裁である総理は、実質的には議会に対しても強大な影響力を持つのであります。そこに第二の東条が生まれる危険なしといたしません。また鳩山総理のように、明鏡止水、行雲流水型の人物であって、側近に惑わされやすく、失言取り消しを繰り返すような人物にも強大な権力を与えることは危険至極なのであります。首相の専断を押え、政党政治に伴う党略優先で国防が運用されることを阻止するためにも、旧軍人や制服職員にあらざる民間人を入れることは、今日の段階にあっては必要と思われるのでありまするが、総理並びに船田防衛庁長官の見解を承わりたいと思うのであります。  さらに防衛庁長官にお尋ねしたいことは、防衛庁特に防衛計画や自衛隊の作戦用兵計画を立てまする機関である統合幕僚会議国防会議との関係はどういうことになるかという点であります。国防会議事務局の構成は、説明によりますると、事務局長以下わずか十数名に過ぎないのでありまするが、このような規模で独自の案を作り、計画を立てることができるでありましょうか。結局は防衛庁、統合幕僚会議の計画が、そのまま国防会議の案となりますると、統帥権に関しまする防衛庁あるいは防衛庁長官の権限というものが非常に強大になって参りまするが、この点に関しまして、どうそれをチェックするか、この点に関し防衛庁長官の見解を承わっておきたいと思うのであります。  最後に、私は本法律案が今日の国際情勢に対しどういう影響を与えるかという点に関し、重光外務大臣所信を承わりたいと思います。昨一年間の国際政局の動向は、バンドン会議を通じ、さらにはジュネーヴ会議を経まして、緊張緩和話し合いによる国際紛争の解決に大きな歩みを踏み出した時代といえるでありましょう。なるほどジュネーヴ四カ国外相会議の失敗は、再び両陣営の冷戦を再開した事実は否定し得ませんが、それゆえにジュネーヴ精神が消滅したと見ることは、歴史の流れを知らぬものと申さなければなりません。昨年十二月の国際連合における一括加盟の問題は、今日の国際政局が、もはや大国の意思のみによって動かされるものではなく、中小国家群の台頭とその影響力を無視し得ないということをはっきり示すものと申さなければなりません。日本国連加盟に失敗いたしましたゆえんも、根本的には、これら中小国家群の支持を得ることができなかったところに大きな原因があるのであります。わが国は、昨年六月以降、日ソ国交調整に乗り出して参りましたが、今日では、もはや政府方針によっては打開の道がない壁にぶつかってきたのであります。中共との国交回復も時間の問題であります。また、西南アジア諸国とは、多くこれから賠償問題を解決し、国交調整、貿易の回復をはからねばならぬ段階にきております。賠償も解決せず、再軍備に狂奔する日本の姿は、アジアの諸国の目にどのように映るでありましょうか。軍備に使う金があるなら、まず賠償に回してもらいたい、これこそ偽わらない気持であると私は考えます。鳩山総理の特使として、先般西南アジアを旅行されました三木武夫氏は、帰朝談話の中で、次のようなビルマの指導者の言葉を報告しております。すなわち、アメリカ、ソ連のいずれか一方と結ぶからこそ、他方がそれを排除にやってくる、ビルマのようにどちらとも結ばなければ、冷たい戦争被害者になることはあり得ないと、まことにこれは味わうべき言葉であると考えるのであります。このような国際政局、アジアの諸情勢を考えますときに、国防会議のこの法律案のような、再軍備政策の強力な一環をになう、こういう法律案を今どき出すということは、国家のために、あるいは国民のために、むしろ私は有害無益なものであると考えまするが、この点に関し重光外相の所信を承わりたいと思うのであります。  以上数点にわたり、私は鳩山総理以下関係閣僚の明確な答弁を求めて、質問を終ることにいたします。(拍手)   〔国務大臣鳩山一郎登壇拍手
  37. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 田畑君の御質問に対してお答えをいたします。  第一の御質問は、国防会議内閣総理大臣の諮問に答えて、国防に関する重要事項について慎重に審議をいたしまして、わが国の国防施策について万全を期しようとするものでありまして、アメリカに設置を約束したというようなことは全然ございません。これはアメリカの要請によって作るものかという御質問がありましたから、答えたのでございます。  次に、憲法違反の典型的なものだというような御意見で、御質問がございました。この法律案は、さきに国会において慎重審議の上可決せられました防衛庁設置法第四十三条の規定に基きまして、国防会議構成等に関する事項を規定せんとするものでありまして、(「四十三条じゃない、四十二条だ」と呼ぶ者あり)従って、何ら憲法に違反するものとは考えません。  次に、現行憲法違反ではないかというような御質問だったと思いますが、自衛権は独立国である以上、国が当然に保有する権利であります。自衛のため必要最小限度の防衛力を持つということは、憲法は否定しておりません。従って、こういう程度の防衛力の整備をはかるため、わが国の国力、国情に合った防衛六カ年計画を作成いたしまして、これが推進をはかることは何ら憲法に反するものとは考えません。  最後に、私に対して民間人を議員に入れることについて御質問があったと思いますが、これは前議会の審議を尊重いたしまして、前議会で可決になりました民間人を入れないという方をとったのであります。内閣は、議会に対して直接の責任をとるものであります。直接責任をとる内閣の議員で構成する方が、私は正しいと思います。(「いつ可決になった」と呼ぶ者あり)  衆議院で可決になりましたという言葉を落したのであります。   〔国務大臣重光葵登壇
  38. 重光葵

    国務大臣重光葵君) お答え申し上げます。  私に対する質問に一々お答えしたいと思いますが、まず、米国との間に原子爆弾の持ち込みの話をしたようであるが、オネストジョンやB57の持ち込みについて話があったかと、そういう話の点でございます。オネストジョンやB57は相当進んだ兵器であることは言うまでもありませんけれども、これは原子兵器ではございませんで、普通の兵器であるという定義であります。さようでありますから、この問題は起らなかったのでございます。  それから次に、日米共同声明、私の関係いたしました共同声明について、一、二の御質問がございました。その第一の御質問は、国防会議は、そのために、つまり米国の要請によって国防会議法律案を出すんじゃないか、こういう御質問がありましたが、これに対しては、総理大臣お答え通りでございます。さようなことはございません。何もそういうことはございません。この法案は、防衛庁設置法に基いて提出したものであることは、提案の理由で申し上げた通りでございます。  それからその次に、日米共同声明の趣旨についで御質問がございました。かようなことになっていけば、たとえば、日本がSEATOへの参加をみるような形勢になりはしないか、もしくはNEATOでございますか、その結成に参加するような形勢になりはしないか、こういうお話があったようでございます。この日米共同声明はそういうことには少しも関係のないことをはっきり申し上げておきます。そういう話はございませんでした。もとより、日米共同声明は、東亜方面の平和を企図しておるものでございまして、この平和を進めていく、こういうことについては、日本としてはあらゆる努力をし、関心を持って措置していかなければならぬ問題だと思います。  そこで、国際情勢一般についてのお話がございました。国際情勢は今日、ゼネバ会議以後において、両陣営のあつれきというものが武力以外の方向において非常に複雑になってきた。しかし、それだからといって、ゼネバ精神というものを無視してはいかないし、またそいつは滅びてはいかないんじゃないか、こういうお話でございます。大体論として、私も御同感に感じます。今日両陣営の間のあつれきが非常に複雑になっておるということは、これはもう私からこの場で詳しく申し上げる必要のないことと思います。特にアジア方面において、非常に重大な国際情勢になっておることは事実でございます。しかしながら日本といたしましても、どうしましても東亜に国を立てて平和的に発展をいたしていくためには、あくまでも調和的の精神をもって進んでいかなければならぬ、これは当然やるべきことでございます。しかし、そこで御説の通りに、いろいろの施策をしなければならぬ、東南アジア方面における経済問題も考えなければならぬ、また賠償問題の解決もしなければならぬというようなことの筋においては、私も御同感でございます。しかしながら、これも日本のりっぱな民主国としての国力を築き上げて、そうしてりっぱな国として、独立国として、そして国際間の平和に努力し得る基礎ができるのでありますから、国防会議ができたから、そういうことはすべて逆行するじゃないかと、こういうもしお話であるとするならば、少しく私は行き過ぎじゃないかと思う。国防会議なんど設けて、十分に日本の独立態勢をこしらえて、りっぱな国として進んでいくことによって、初めて東亜の平和にも貢献し得ることだと、こう私は考えております。(拍手)   〔国務大臣船田中君登壇
  39. 船田中

    国務大臣(船田中君) 防衛六カ年計画のことについてお話がございましたが、これは防衛庁の試案として現在持っておるのでございまして、これは予算委員会あるいは内閣委員会等においても御説明申し上げたのでございますが、昭和三十五年度におきまして、陸上十八万名の自衛官を作る、それから海上におきまして艦艇十二万四千トン、飛行機百八十機、また航空自衛隊におきまして練習機を加えて約千三百機、というものを最終の目標にいたしておるのでございますが、しかしこれは防衛庁の試案でございまして、国防会議が設置せられましたならば、これに諮問をいたしまして、政府案をなるべくすみやかに確立するように努めて参りたいと考えます。従いまして、年次計画等についても、今日のところお示しするまでには至っておりません。  この計画が実現をいたしたときに、米軍との撤退の関係はどうなるか、こういうことでございますが、この計画が実現いたしますれば、米軍撤退の基礎はできると存じます。しかし米軍の撤退は国際情勢にもよることでありまして、これは日米間の合意によってできることと存じます。必ずしも右計画が実現したから、それと見合って米軍が撤退するということは申し上げかねます。  それから次に、統幕議長の関係についてお話がございましたが、統合幕僚会議議長は、防衛庁長官の補佐でありまして、内閣総理大臣の直接の補佐ではないのであります。また統合幕僚会議議長は、会議議長たる総理大臣議長が必要に応じ会議に出席させ、その専門的、技術的意見を述べさせるものでございます。表決権は持っておらないのでありますので、これが国防会議を左右するというようなことは考えられないのでございます。  なお、国防会議に民間人を入れることがよくはないかというような御趣旨の御質問がございましたが、この問題につきましては、総理大臣が御答弁になったことによって御了承を願いたいと存じます。(拍手)   〔国務大臣一萬田問登君登壇
  40. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 私に対しまする御質問は、防衛体制と社会保障との関係であったと思います。  政府はいわゆる再軍備を意図しておるものではありません。自主防衛体制を整備いたしたいと考えておるのであります。しかもその防衛体制は、国力に応じてやろう、こういうことであるのでありますから、防衛体制と社会保障というものは、私は当然両立すべきであり、また両立いたしておると考えておるのであります。大蔵大臣といたしましては、今後防衛費というものは、必要限度にとどめまして、なるべくこの社会保障というものを増強していきたい、かように考えております。(拍手)   〔国務大臣高碕達之助君登壇
  41. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) お答え申し上げます。  防衛規模は、わが国の経済力と権衡を保つべきということは原則でありますから、経済五カ年計画の中の防衛長期計画というものは、当然経済力の増減に応じてこれは増減さるべきものだと存じますから、経済五カ年計画と防衛計画とは一致すると、こう存じております。  なお、しからば経済力は何だ、何によって測定するかという問題でありまするが、これは今日のところ、国民所得を基準に置かなければならぬ、こういうことになりますのですが、戦前における防衛力というものは、国民所得に対しまして、昭和八、九年頃におきましては大体七・一%になっておりますが、戦後の状態から見まして、現状におきましては、おおむね国民所得の二・二%というものは妥当と信じております。(拍手
  42. 河井彌八

    議長河井彌八君) これにて質疑の通告者の発言は終了いたしました。質疑は終了したものと認めます。  これにて、午後二時まで休憩いたします。    午後一時八分休憩      ——————————    午後二時十二分開議
  43. 重宗雄三

    ○副議長(重宗雄三君) 休憩前に引き続き、これより会議を開きます。  日程第二、公共企業体等労働関係法の一部を改正する法律案趣旨説明)  本案について、国会法第五十六条の二の規定により、提出者からその趣旨説明を求めます。倉石労働大臣。   〔国務大臣倉石忠雄君登壇拍手
  44. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) ただいま議題となりました公共企業体等労働関係法の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由を御説明申し上げます。  公共企業体等労働関係法は、公共企業体等の職員の労働関係を規律するために昭和二十三年に制定されました法律でありますが、周知のごとく占領下早急の間に立法されたものであり、その内容は、いわゆる翻訳立法の最たるものでありまして、その後若干の改正はありましたが、なおわが国の実情に適しない点が多く、また、技術的な不備欠陥が随所に見られまして、このため公共企業体等の労働関係に無用の摩擦、紛争を招いているきらいすらありまして、従来とも本法改正要望する声が少くなかったのであります。  政府におきましても、右のごとき事態に対処いたしますため、各方面の意見をも参酌して、本法改正の要否等につき、慎重検討を進めて参ったのでありますが、特に問題の重要性にかんがみ、本年一月十四日、労使公益の各側を代表する臨時の委員を委嘱いたし、本法改正の要否等に対する意見を求めましたところ、右委員の構成する臨時公労法審議会は、発足以来約一カ月間に会議を重ねること九回、慎重審議をいたしました結果、去る二月八日本法の改正に関し、かなり具体的な意見を答申するに至ったのであります。政府におきましては、自来この答申を慎重検討いたして参ったのでありますが、労使公益各側を代表する委員によって構成されました審議会の民主的な審議の結果は、できる限り尊重すべきであることは申すまでもないところであり、労使公益各側の意見の一致をみました点はほとんどこれを入れまして、その意見に沿って改正法案を立案することにいたしたのであります。  そもそも公共企業体等労働関係法に関連する問題の根本的解決には、一面において三公社五現業のあり方そのものの検討が必要であり、他面労働法体系全般との関連において考えられなければならない点のあることは、もちろんであります。政府としては、これらの問題については常時真剣な検討を重ねているのでありますが、しかし、今日これらの基本的問題を直ちに解決するわけには参らぬことは申すまでもありません。さればといって、また今日公労法の不備をそのまま放置することも適当でありませんので、従って、今回の改正案は、現行公労法の基本的建前は一応これを維持することとし、その前提で現行法上わが国の実情に適しない諸点を改め、関係当事者間における無用な紛争の原因をできる限り除去し、健全な労使慣行の確立を促進するとともに、委員会の機構を整備し、その簡素能率化をはかろうといたすものであります。以下本法案の大綱について御説明を申し上げます。  今回の改正案の主要点の第一は、団体交渉の手続を改めた点であります。現行公労法におきましては、団体交渉は、労働組合が行うのではなく、米国からの直輸入制度である単位制度を採用して、団体交渉は、この単位を代表する交渉委員によって行うこととされておりますが、これはいわゆる直訳的制度の最たるものであるとともに、きわめて複雑かつ難解で、とうていわが国の実情に適せず、現在はほとんど有名無実化しつつあるのみでなく、またかえって関係者間の紛議の種となる場合さえあるきらいがありまするので、改正案におきましては、この単位制度を廃止し、わが国の労使関係における一般的慣行に従い、労働組合が団体交渉の当事者となり、その指名する交渉委員が団体交渉を行うことといたしております。なお、これにあわせて、従来本法の適用外でありました公社の臨時的職員につきましても、純粋の日雇労働者以外の者は、これを本法上の職員の中に含めることにいたし、もって労働関係の統一的処理をはかることにいたしておるのであります。  次に、改正案の第二点は、仲裁制度を整備し、仲裁裁定に関する問題の処理を合理的かつ円滑ならしめる措置を講じている点であります。現行法におきましては、公共企業体等と職員との間の紛争は、最終的には仲裁裁定によって定まることとなっておりますが、当該裁定が公共企業体等の予算上資金上不可能な資金の支出を内容とするものである場合は、国会承認を待って初めてその効力を発生することとなっております。この建前は、現行法制上当然のことではありますが、この制度の運用面におきまして、従来種々紛議のありましたことは、周知の通りであります。改正案はこの点につきまして、後述のごとく仲裁に関する機構、手続を合理的なものに整備するとともに、政府として仲裁裁定をできる限り尊重する精神を明らかにし、あわせて給与準則、給与総額の制度にも若干の改正を行い、もって仲裁裁定を真に公正妥当にして権威あるものたらしめることにより、裁定実施に関する紛議をできるだけ避け、円滑合理的な労働問題処理の慣行を確立せんとするものであります。  改正案の第三点は、委員会の機構を整備し、その簡素能率化をはかった点であります。現行法におきましては、公共企業体等の労働関係を取り扱う委員会としましては、公共企業体等仲裁委員会及び中央、地方の公共企業体等調停委員会の合計十一の委員会が並立しておりますが、今回の改正案におきましては、これらの各委員会を統合して、一つの公共企業体等労働委員会を設けることとし、この委員会の下に各種の機関を統合して、簡素にしてしかも能率的な機構を整え、公共企業体等の労働関係の実情に即して、機動的に強力な活動をなす態勢を整えるように措置いたしておるのであります。この公共企業体等労働委員会は、公益委員五人及び労使委員各三人ずつ計十一人の委員をもって組織されることとなっておりますが、特に公益委員の任命につきましては、その任務の重要性及び特殊性にかんがみ、労使委員の意見をも聞いた上で、両議院の同意を得て内閣総理大臣が任命することといたし、もって公益委員の人選を真に公正かつ権威あるものたらしめんといたしておるのであります。  以上の三点が、今回の改正案の主要点でありますが、その他の点につきましても、答申に盛られた意見をできる限り尊重いたしまして、所要の事務的、技術的改正をいたし、公共企業体等の職員の労働関係の処理の円滑化をはかっておるのであります。  以上、本法案の提案理由を御説明申し上げたのでございますが、本法案が成立、施行されますならば、公共企業体等における健全にして合理的な労働慣行の確立と、公共企業体等の正常な運営の確保に資するところ少くないものと確信いたしている次第であります。何とぞ御審議の上、すみやかに可決せられんことをお願い申し上げます。(拍手
  45. 重宗雄三

    ○副議長(重宗雄三君) ただいまの趣旨説明に対し、質疑の通告がございます。順次発言を許します。安井謙君。   〔安井謙君登壇拍手
  46. 安井謙

    ○安井謙君 私はただいま上程されました公共企業体等労働関係法の一部を改正する法律案に関し、内閣総理大臣、大蔵大臣、労働大臣等に対し、若干の質疑をいたしたいと存じます。  鳩山総理は、かねてから施政方針として、過去の占領政策下に制定された法律なり制度中、日本の現状に適当でないものについては、逐次この改正を企てられておるようでございまして、本改正法案もその意図の一部であろうと推察する次第であります。  本改正案に関連して、最初にお尋ねいたしたいことは、日本の労使関係の現状に対し、いわゆる労働関係の法規が、全体としてこのままでいいと考えられておるかどうかの点であります。私は、今次、提出された改正案は、それ自体といたしましては、かなり時宜を得た措置であり、公共企業体職員の給与上の紛糾に対し、合理的な解決のために一歩前進したものと考え、この限りにおいては、当局の進歩的な努力に対し敬意を表する次第であります。この点については、おそらく社会党の諸君も同様であろうと存じます。御承知通りに、公共企業体の職員は、その職務の性質上から、自己の要求を貫徹する手段としてストライキ権を与えられておりません。給与その他の要求手段としては、単に団体交渉権限のみであります。これが当局に認められない場合、その判定者は、仲裁裁定委員会ということに相なっております。実際において、しかし、この裁定案を実施するかどうかの財政的措置につきましては、絶えず紛糾が続けられてきましたことは、まことに遺憾であり、適切な措置がとられることを期待していたのであります。しかしながら、翻ってわが国の労使問題を全体的にながめて参りますと、この種の紛糾は決して公労法のみに限られておるのではないのであります。極端な表現をいたしますれば、労働関係法規全体が、今日矛盾に満ちておるといっても過言ではないのであります。今日、労使関係を規律する中心は、労働基準法、労働組合法、あるいは労調法といったような、いわゆる三法であります。例を基準法によってみましても、この法律は、まことにめんどうな手続法でありまして、この規定が企業の種別を無視し、経営規模の大小にかかわりなく、一様に適用されておるという点等、今日、日本の生産性向上に対し大きなブレーキになっておると考えられます。また労調法その他にいたしましても、国民生活に最も影響の大きい民間公益企業体のストライキに際して、果して万全の策がとられておるかどうかといえば、はなはだ疑問であります。かかる現状に対し、政府はどういう基本的な考えをもっておられるか、お伺いをいたしたいのであります。  第二にお伺いいたしたいのは、総評を中心にした、いわゆる春季労働攻勢の渦の中に巻き込まれておる官公労組、あるいは非現業職員組合のあり方についてであります。御承知通り、総評三百万人といわれておる組合員中、その二分の二を占めておるのは、公務員またはこれに準ずべき身分の人たちであります。申すまでもなく、これらの人たちは、その身分上当然の帰結として、ストライキ権はもちろん、団体交渉権さえ持っていないものが多いのであります。にもかかわらず、今次総評の春季攻勢の姿を見て参りますと、これらの官公労組の人たちは、民間労働組合といわゆるタイアップして、互いに緊密な連携のもとに、共通の要求として、ベース・アップ闘争を続けております。その行動の中には、国民全体に奉仕すべき義務を持った公務員またはこれに準ずべき身分の人たちとして、まことに遺憾千万であるとの印象を強く受けるのであります。すなわち世間では、官公労組が民間労組との統一闘争によって全般に大きな渦巻を起し、その圧力で不当なる賃上げ要求を通そうとしているのだという見方をしている向きもあるのであります。もしそうだとすれば、総評自体、官公労組に利用され、また逆に官公労組は、民間労組運動の影響に支配されておる結果になるとも考えられ、憲法の精神に照してもまことに遺憾と思うわけでありますが、政府はこの現状をこのまま放置してよいと考えられますかどうか。  第三にお尋ねいたしたいのは、公労法十七条違反の件であります。公労法の第十七条は、公共企業体の職員及びその組合が、同盟罷業、怠業、その他業務上の正常な運営を阻害する一切の行為を禁じております。政府は、春季闘争を迎えるに当って、さきに国家公務員及び公共企業体職員の争議行為に関する諸法規の公式な解釈発表して、休暇闘争と称する職務放棄、順法闘争と称するみずからの勝手な判断による就労拒否、定時退庁による超過勤務の拒否、勤務時間中の職場大会、ピケ、デモ、すわり込み等が違法の行為である旨を明らかにしております。これらの行為が、明瞭な争議行為であり、法の禁ずるところであることは申すまでもありません。ところが、実情はどうでありましょうか、これらの行為が、あるいは公然、あるいは隠然と現に行われておるのであります。勤務時間中に、しばしば職場大会が催されており、国鉄などは、いわゆる改札ストが行われ、乗客に非常な迷惑をかけておるのが実情であります。先般も官公労組がまじり、調停委員会に向ってデモを行い、委員会の調停案作成に圧力をかけたということを耳にしております。公正な調停案を作成すべき調停委員会に対して、外部からこうした圧力を加えるということは、調停委員会の中立性をそこなうものであって、はなはだしく不当な行為であります。これらの違法行為に対して、政府は断固たる態度をもって臨むべきものだと考えますが、労働大臣の所見を伺いたいのであります。  第四点といたしまして、今回の官公労組の要求たる、いわゆる二千円のベース・アップについてであります。私は今日、官全職員の賃金が必ずしも十分なものとは考えておりません。しかしながら国家財政の実情から割り出されておる公務員等の給与は、国民所得の基盤に立った民間勤労者の平均収入に比べて、決して劣っておるものとは考えないのであります。なるほど二年間給与ベースは据え置きでありますが、しかし定期昇給は一方において行われております。一般物価が横ばいの状態にあみ今日、高層建築の組合会館を持ち、福祉、共済の制度はもちろん、退職金、恩給等の保証までされておるこれらの諸君の給与水準は、日本の現状から見て、不当に低いものとは私は考えないのであります。しかるに、国鉄労組の要求に対して、調停委員会が、五千円の一時金支給という案を出しており、組合はこれを受諾するという態度を明らかにしたようであります。また電通、逓信等もこれに準じるやに新聞は報じております。大蔵大臣は、予算上資金上、これを受け入れる余裕があるとみておられるかどうか、国鉄の赤字が問題にされ、運賃値上げが云々されておる今日、国民の側からは、はなはだ納得しがたいものを感じるのであります。  次に公労法改正案そのものについて、若干の技術的な問題について伺います。  本法改正の主要点の一つは、先ほど労働大臣も申された通り、予算総則上の給与総額に対する制限を撤廃することであり、増額の際における決定権を最終的には大蔵大臣にゆだねることであります。これは見方によっては、公共企業体の予算執行上の権限を大幅に大蔵大臣に委任する結果になります。逆に申しますと、仲裁裁定が下された場合、その採否の責任はあげて大蔵大臣にかかってくるということになります。大蔵大臣はこれに対してどういう態度をもって御許可になるつもりであるか、また実際問題としては、財政上の給与総額に対する移流用の限度等について、あらかじめ法的に一定のワクを設けておくといったようなことが運営上好ましいようにも考えられますが、いかがでしょうか。  第二にお尋ねしたいことは、公共企業体等労働委員会の公益代表委員の任命についてであります。改正案によりますと、公益代表委員は、労働大臣が労使の意見を聞いて選定した候補者について、国会の同意を得て総理大臣が任命することになっております。現行法からみれば、相当合理化されておると思いますが、一面これに対して、政府は、一方的に片寄った任命を行うのではないかという危惧を抱くものがないでもありません。公益代表委員の任命について国会の同意を求めるには、努めて公正な立場から人選を行うべきであると考えます。選定の基準をどこに置くつもりであるか、労働大臣の所見を承わりたいと思います。  第三に、公労法第四条三項についてであります。公共企業体等の職員でなければ、その公共企業体の職員の組合の組合員またはその役員になることができないというのがこの規定でございます。しかしこの規定は当然であるといたしましても、この規定によって直ちにその団体交渉の代表委員になることを排除はいたしておりません。すなわち組合員でないものがその組合の団体交渉委員にはなれるという制度が黙認されております。公共企業体の職員でもなく、また組合員でもない人物が、団体交渉の際にのみその団体の代表権を持つということは常識上不合理であり、好ましくないように考えられるのでありますが、今次改正案にこれを取り上げなかった理由についてお伺いしたいのであります。  細部は、委員会に譲ることにし、以上をもって私の質問を終ります。(拍手)   〔国務大臣鳩山一郎登壇拍手
  47. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 安井君の御質問に対してお答えをいたします。  第一の質問は、労働三法の改正問題は、公労法改正とは別個の問題として慎重に検討したいと考えております。そのことをお答えいたします。  第二の点は、今回の春季闘争についてでございました。今回の春季闘争において、公務員等の不法行為があれば、厳重に取り締るかという御質問でございました。厳重に取り締りますことは、すでにしばしば申し上げた通りであることをここにお答えいたします。   〔国務大臣倉石忠雄君登壇
  48. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) お答えいたします。  労働関係法のことにつきましては、総理大臣から申し上げました通りでございまして、慎重に検討いたしております。  いわゆる春季闘争について、官公労が中核をなしておることについて、はなはだおもしろくないではないかという御趣意でございますが、御承知のように総評三百万人のうち三分の二、すなわち二百万ほどがいわゆる官公労であります。こういう人々が中核体となって、スケジュール闘争というようなことをおやりになることは、まことに私どもとしては遺憾千万であります。従ってこの方々に違法な行為などがないようには、十分政府もしばしば警告をいたしましたことは、総理大臣より申し上げました通りでございます。  なお官公労のうちの公労協が休暇戦術であるとか、いろいろ脱法的な争議類似行為をやろうと計画を持たれるということが、しばしば伝えられておりますが、そういうことに対しても政府は、法の建前を尊重して厳重に処置をする考えであります。  なお官公労争議行為と調停委員会の関係でございますが、このことは御説のように公共企業体等労働関係法によって労働行為を拘束を受けております人々は、争議権がないことは当然なのでありますが、そのことの結果、生ずる結果につきましては、ただいま申し上げましたように違法な行為がないように、政府はしばしば警告もいたし、なお今後も態度を一定いたしまして、従来の方針通りに処置いたして参るつもりでございます。  公務員の給与ベースのことにつきましては、大蔵大臣にお尋ねのようでございますから、私は省略いたします。  仲裁裁定の尊重のことについでお尋ねがございました。仲裁裁定は、御承知のように公共企業体等労働関係法の中軸をなすものでありまして、御承知のように現行法三十五条によれば、当事者双方を拘束するということになっておりますから、仲裁裁定は尊重せらるべきが当然であります。ただ十六条二項にはね返って参りまして、予算上資金上支出不可能な場合は、最終的に国会において議決を得る、そのことは、現行法と改正案と同様であります。ただ、ただいまお尋ねのうちに、仲裁裁定を尊重することはけっこうであるが、裁定実施のために大蔵大臣が一存で移流用できるようにすることはどうか、この点について一応のワクをはめておくべきではなかろうかという御趣意のようでありましたが、予算の項目について、大蔵大臣の承認によって移流用が許されておりますことは、一般会計においても、御存じのように同様でございます。その場合特に、大蔵大臣の判断にワクをはめるようなことは通常行われておりません。給与総額に関する大蔵大臣の承認につきましても、大蔵大臣が、当該公共企業体等の事業の運営、財政事情、その他諸般の事情を考慮いたしまして判断いたすものでありまして、特にこの場合に限って、大蔵大臣の裁量にワクをはめておくというようなことは、公労法の上からは必要はないと私どもは存じております。  それから委員会を統合いたしまして委員国会の同意によって任命することにつきましてのお尋ねがございました。御承知のように、仲裁裁定は当事者双方を拘束するきわめて最終判決的な性格を持つものでございまして、この裁定の結果、国家経済に大きな影響を持ってくるような重大なものでございますから、私どもは今度の法改正に当りましても、この仲裁委員会の構成について慎重な検討をいたしました。そこで政府は、国会の御承認を得て、そうして総理大臣の任命をみる、こういうふうにいたしまして、皆様方にも十分その人物その他識見などについて御判断を願って、そうして御承認を得た上で内閣総理大臣が任命するというふうにいたしまして、   〔副議長退席、議長着席〕 この仲裁委員会の構成について、さらに権威を持っていただくようにしていくことが、かえって仲裁裁定に意義あらしめるものではないか、こういうことから、仲裁裁定委員の人選について、ただいま申し上げましたような措置をとることにいたしたわけでございます。  最後に、この四条三項のことでございますが、ただいまは御承知のように、公共企業体の労働組合は、法によりますというと、現在はその職員でなければその組合員にはなれないということになっているわけでありますが、現実は皆様も御承知のように、いろいろこの点についてまちまちでございます。そこでこの職員でなければ組合の役員または組合員にはなれない旨を定めた四条三項の規定につきましては、御承知のように、審議会の答申におきましても、三者構成で審議を願いましたが、公益委員は、交渉委員を職員に限定するということを前提として、本条を削除することを主張されました。ところが、使用者側の審議会委員は、これに反対されました。労働者側委員は、交渉委員を職員に限定する前提から、猛反対をされた。それで労使の意見がこの点では対立いたしましたので、それでやむを得ず、一応現行法通りといたしたものでございます。(拍手)   〔国務大臣一萬田尚登君登壇、   拍手
  49. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) お答え申します。  公務員の給与ベースでありますが、これは賃金等の統計によりますれば、民間のそれに比しまして必ずしも低いようにも思われません。国鉄職員に対する一時金五千円支給の調停案につきましては、ただいま国鉄当局において、企業の経理その他客観的な情勢を総合判断して、検討中と思うのでありまするが、私としては、これらの結果を待ちまして慎重に判断を下したいと、かように考えております。  それからこの仲裁裁定実施に関することでありますが、従来この仲裁裁定実施のためには、必ず補正予算の措置をとりまして、給与総額の変更を行う必要があったのでありますが、今後はものによりましては、必ずしも補正予算の措置をとらずに、移流用措置によりまして、実施ができるようにして、問題の解決を容易にいたしたい、かように考えておるのであります。  この移流用のことについては、所管大臣の判断、それからこれに対しまする大蔵大臣の承認、不承認が、裁定の採否に関係することが大きくなりまするが、この場合は、どういう裁定でもすべてこの移流用の承認を与えるというものではありませんで、企業の運営に及ぼす影響、財政経済全般の状況、その他の問題を総合判断いたしまして、移流用の可否及び移しかえをきめたい、そうして遺憾のないようにいたしたい、かように考えておるわけであります。  なお、この予算の移流用につきましては、従来三公社につきましては、予算総則において流用費目の制限が付せられております。また五現業につきましては、移流用は一般会計と同様の制限が付せられておるのでありまするが、今回のこの公労法の改正に伴う新しい事態が生じたのでありますから、これに即しまして適当に研究をいたしたい、かように考えているわけであります。(拍手)     —————————————
  50. 河井彌八

    議長河井彌八君) 永岡光治君。   〔永岡光治君登壇拍手
  51. 永岡光治

    ○永岡光治君 私は日本社会党を代表いたしまして、ただいま提案されました公共企業体等労働関係法の一部を改正する法律案について、その基本的な点について政府所信をたださんとするものであります。  その第一点は、公共企業体等労働関係法の本法制定の趣旨と、本法律を尊重するということについての政府態度についてであります。  すなわち本法のねらいは、三公社五現業の労働者、使用者側の間における紛争を調停制度によって、これを円満に解決しようとするところにあると私は考えるものであります。しかりとするならば、三公社五現業の労使間の賃上げ紛争に対しまして、現在起きておりますこの紛争に対しまして提示されました中央調停委員会の調停案を、公社当局がこれを受諾をいたしまして、さらにこの調停案の中に示されておりまする不明確な点を話し合いの上で解決をするよう、政府は積極的に協力すべきではないかと、かように考えておるものであります。  先般、三公社労使間に起きておりますこの賃上げの紛争の解決のために、中央調停委員会は慎重審議の結果、次のような結論が出されております。すなわち、現給与は不当であるのですみやかに是正をすること、暫定措置として本年度内、三十年度内に一人当り五千円以上を支給すること、期末手当を〇・二五カ月分増額支給すること、定期昇給及び給与体系是正のため予算措置を講ずること、等を含めました給与改訂を適当とするという、こういう調停案が示されておるのであります。本調停案に対しましては、労働組合側は事態の円満なる解決のためには、まことに不満であるけれども、しかしこれを不明確な点を明確にするということを条件にいたしまして、受諾をいたしました。まことに私は、建設的な態度だと考えておるのでありまするが、しかるに政府と公社当局においては、今日に至りましても、なおかつその態度を明確にいたしておりません。いたずらに紛争の解決を遷延せしめているということは、まことに私は遺憾にたえないと存ずるものであります。官公労組の今次賃上げの闘争というものについては、開始以来すでに一カ月をこえております。政府、自民党の一方的弾圧と威嚇による挑戦的態度によって、次第に重大なる様相を呈してきておりますことは、すでに皆さん御承知通りであります。このような事態の解決には、どういたしましても政府と公社当局とが本調停案を受諾し、組合側と誠意をもって話し合う以外に方法はないと考えるものであります。ところが組合で行なっておりまする職場大会等には、自民党の代議士諸君が監視の立場でこの大会に出席をいたしまして、これに威圧を加えております。それのみか、組合員の数よりは多い警官を動員しております。たとえば田端における国鉄の職場大会等の例を見ますると、組合員六百名の職場大会を開いておる、ここに警官六百名、公安官三百名、調査員百名という、まさに組合員を非常に上回る膨大な警察権力を動員いたしまして、挑発的態度に出ておることは、これまた新聞紙上を通じて皆さん御案内の通りでありまするが、このようにして混乱に陥れて、従来許されておりました労働慣行に対しましても、これを不当なりといたしまして、ある代議士のごときは、警官をその現場に連れて行って写真をとらして、このような現場であるからというようなことで国鉄当局に処断を迫り、断固たる処断をせよ、もし処断をしなければ、その管理者に対して、自民党の名においてその責任を追及するという、こういう不当きわまりないところの干渉がなされておるのでありまして、こういうことからいたしまして、労働紛争というものは円満なる解決の方向に進むどころか、ますます拡大の方向に今日追い込まれておるのであります。従って私たちの考えからいたしまするならば、調停を長引かしておるその責任というものは、これは政府側あるいは自民党側がとっておる態度にあるのでありまして、むしろ問題を円満に解決しようという、そういうことに努力しておるよりは、争議をますます拡大して、社会を不安混乱に陥れようという態度にのみ努力をしておるとしか考えられないのが今日の状態であるわけであります。(拍手)このようにして、このような状態でありまするから、もし調停案を拒否して事態の解決をいたずらに遷延せしめるということでありまするならば、それによって発生する一切の責任は、あげてこれは政府が負わなければならぬのは当然であります。この態度は、何も社会党のみがここで皆さんに申し上げ、政府に対して質問を申し上げるだけではないのでありまして、大新聞でありまする毎日新聞の社説におきましても、政府は、公社に対してこの調停案を受諾させよという論説を掲げております。その中の一節を読み上げまするならば、「政府が調停案を拒否して仲裁委に持込もうとして、公社当局に圧力を加えているといわれるのも、こんなところからだ」とし、明らかに毎日新聞は、政府当局は公社側に圧力をかけて、この調停案をのませないようにしておるという動きがあるということを認めておるのであります。「五現業についても同じ方向の調停案が出るならば、予算面でやりくりがつかぬとして、この調停をきらっていると察せられる。しかしこの悩みは、調停委も味わっているところである。だが調停委から仲裁委への道を選んだところで、政府の負担が軽くなるとの見通しはない。それどころか、組合側が調停案を受諾し、当局が拒否したとなれば、政府立場はきわめて不利になる」こういうようにはっきり社説に掲げておるところを見ても明らかのように、私はこの調停案を今日に至るまでも政府が受諾をいたさないで、公社側が受諾するように政府は協力しないで遷延さしておることが、この争議を遷延させ、しかも労働組合に、争議をいよいよ拡大していくという責任を負わせるものであると考えるものでありまして、この点に政府の強い反省を要望いたしたいものであります。  そこでわが党は、この政府に対しまして法律を尊重する立場から、公社が本調停案を受諾いたしまして、不明確な点をさらに明確にするための誠意ある話し合いによって、事態の円満なる解決をはかるべきことを積極的に協力すべきであるということを要求するものでありますが、これに対しまして鳩山総理大臣の所見はいかがなる考えを持っておりまするか、明確にお答えをいただきたいと思うのであります。予算上、資金上、これができるとかできないとかいうことは、明らかに私が冒頭指摘いたしましたように、本公企労法の精神に反するのでありまして、政府は、今日までどういう態度をとってきましたか。労働組合が法に照して違法な行為を行うならば断固たる処断をするという、みずからが法を侵してもそれについては知らぬ顔をするのみか、この争議をますます大きくしようとしている。こういう態度は、私たちは絶対に見のがずことはできないのでありますから、この点について誠意ある鳩山総理の所見を承わりたいと思うのであります。  次に、先ほど倉石労働大臣から提案理由の説明の中にもありましたように、その言をかりるならば、この公労法は、占領行政下の特別な異例措置として制定されたものである、こういうことを言われているのであります。昭和二十三年七月のこれはマッカーサー書簡に基いた、いうところの政令第二百一号の落し子といたしまして、不手ぎわと実に無理に満ちた法律であることは、倉石労働大臣みずからが十分お知りのところであると思うのであります。従いまして本来この法律は、今日の状態からいたしますならば、当然これは廃止されてしかるべきと私は思うのでありますけれども、この点について鳩山総理はどう考えておりまするか、その所見を第二点としてお伺いを申し上げます。  廃止しないまでも今日の日本の情勢からいたしまするならば、国家行動の基準が憲法にあるのでありますからして、合憲的な立場に立って修正さるべきだと主張しなければならぬと思うのであります。しかるに今回の政府改正案は、なお多くの違憲的欠陥を残しております。不合理と不備の点を放置しておることは、まことに私は遺憾にたえないのであります。  そこで以上その具体的な欠点を指摘いたしまして、改正案に対する質問を行わんとするものでありますが、以下の質問に対しましては、倉石労働大臣の御答弁を求めるものであります。  第一点は、臨時公共企業体等労働関係法改正審議会が各界の代表を集めまして持たれたのでありますが、その答申案に対して、公益委員側がこれをまとめたのであります。そうしてその審議会の答申案というものを作ったのでありますが。その答申案の全部をこれを受け入れていない。というよりは最も重大なる点において、この答申案をこの改正案には取り入れていないというところに、私は最も大きな不満を持つものでありまして、この点について、たとえば先ほども問題になりましたけれども、仲裁裁定が出されて、それを尊重するとは言いながら、予算上、資金上、これは政府は、政府立場からするならば、予算上、資金上、これが実行不可能ということであれば、この裁定を拒否してもよろしいという今日の態度は、それはいけない、いけないからこの答申案の中には、当然予算の移流用によって、それは実行いたしなさい、こういう答申を出しておるにもかかわらず、それについての取り上げをいたしておりませんし、あるいはまた、先ほども倉石労働大臣からの答弁の中にありましたけれども、国鉄の職員でない者でも役員になり得るということをこの答申案はなしておるのでありまするけれども、それについても採用していない。何がゆえにこの公共企業体等労働関係法改正の審議会の答申案を受け入れなかったのか。その点が私は非常に不満でなりませんし、きわめて遺憾でありまするので、この点についての所見を承わりたいのであります。  次に本法が、従来持っておる当事者の、特に労働組合側の自主決定に加えられてきましたところの制限を、そのまま看過している点であります。その一つは、オープン・ショプ制を強制しておるところの公企労法第四条であります。その王、公企体の職員でなければ組合員または役員となれないという締め付けを行なっておるというこの規定は、公企体の労働運動を歓迎しないという態度の端的な現われである、こう言わなければなりません。ほんとうに政府が近代労働組合主義を理解するならば、当然にユニオン・ショップ制ないしクローズド・ショップ制が認められてしかるべきではないかと考えておりまするけれども、これらの点について、どのように考えておりますか、その点を伺います。しかも第七条ではさらに組合専従者の定数につきましても介入をいたしておる点であります。この点についても労働大臣の所見を承わりたいと思うのであります。  次にはタフト・ハートレー法第九条にならった交渉単位制度と交渉委員会制度であります。この交渉委員会制度につきましては、アメリカの鉄道労働の慣行によるものでありますけれども、今回の改正案では、単位制度だけは廃止はしておりまするが、交渉委員会制度をなお存置いたしまして、先ほども答弁の中にありましたけれども、職員以外の交渉委員を排除することによって、第四条との関連で団体交渉権の基本的あり方と労働組合の団結権を不当に弾圧し、その弱体化をねらっておるものと考えられるけれども、この点についてはどのような考えを持っているか、これを伺いたいのであります。本来、団体交渉の実際とその理論というものは、近代の労働法が明らかに示しておるように、労働組合の自主的決定によるものでありまして、このことを特に私は強調しなければならぬと考えておるものであります。  さらに予算上質金上不可能なる支出を内容とする協定または裁定に関する第十六条及び第三十五条の問題でございます。これは本法最大の問題の一つでありまするが、政府もこの点を重視いたしまして、予算総則の制度を改善いたしまして、裁定の実施に誠意をもって努力することでなくてはならぬと思うのであります。一体、政府の所定の行為がなされるまで、事前の協定とかあるいは裁定の実施をこばみ得るという見解に立って、従来通り政府は拘束を受けないという、こういう態度を改めるというならば、給与総額をこえる場合であっても、あとで国会に追加予算案の提出をして承認を受けるというのか、その点を明確にしてもらいたいと思うのであります。すなわち第三十五条には、「委員会の裁定に対しては、当事者は、双方とも最終的決定としてこれに服従しなければならず、また、政府は、当該裁定が実施されるように、できる限り努力しなければならない。」、このできる限り努力しなければならないというこの実際の運営の問題であります。もちろん私は、ここにそのあとに、「ただし、公共企業体等の予算上又は資金上、不可能な資金の支出を内容とする裁定については、第十六条の定めるところによる。」と、こういうことでありまするけれども、このことは条文から考えまして、この努力しなければならんというのは、単なるこれは努力程度であって、政府が今日までとって参りました態度をごうも変える考えがないのかどうか、この点をあらためて労働大臣の見解を承わりたいと思うのであります。  本来、国会の審議権とは予算案についての審議権でありまして、協定や裁定について、国会の審議はこれは無意味なことでありまして、その調停がいいとか悪いとかということをこの国会で審議する権限は実はないのであります。それゆえにこそ公企労法が制定されておるのでありまして、国会はただ出て参りましたその調停を実施する予算案の内容を見て、その予算案がいいか悪いかということを審議するにとどまるのでありまして、この調停案の内容について審議さるべきものではないと考えておりまするが、この点についての労働大臣の御所見を承わりたいと思うのであります。  さらに第十七条の争議の禁止でございますが、第十八条について次に最大の問題の一つは、ストライキ権の剥奪であるわけでありますが、従来も政府は、社会性、公共性、公益性あるいは公共の福祉を理由といたしまして、労働者の生存権的基本権を奪っててん然といたしておるのでありまするが、一体、一般の電気、ガス供給事業や私鉄事業と、国鉄、郵便と電信電話等の交通、通信事業と、どのような理論的相違を認めさせようとするのでありましょうか。企業主体が、公社であれ株式会社であれ、企業体の公私を問わず、近時特に公益性や公共の福祉は当然要求されているものでありまして、何も公企体にのみ特有なものではないと考えるのであります。政府があくまで公共の福祉論を持ち出すならば、憲法十三条に反する場合として、その基本権を内容的に制限する建前をとることが至当ではないかと考えますが、しかし公共の福祉を理由にして労働基本権としての争議権を剥奪できないことは、憲法第十一条、第九十七条に明らかにしておるように、それが永久の権利として保護されておるからであります。断じて全面的禁止は許されません。政府の明確なる答弁を求めるものであります。  最後に、労働委員の任免制度についてでありますが、紛争処理の公益委員は、法理論上両当事者の意思を基礎とすべきことは当然のことでありまして、その委員政府の手によって国会承認だけで選ばれるのは、政治的見地からの介入ではないか、あくまで労使委員の同意によって任命すべきであると考えるけれども、この点についての労働大臣の御所見を承わりたいと思うのであります。  以上をもりて私の質問を終ります。(拍手)   〔国務大臣鳩山一郎登壇拍手
  52. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 永岡君の御質問に答えます。  第一の御質問は、政府は何がゆえに調停案を受諾しないのか、すべからく調停案を尊重して受諾することが法に従うゆえんではないかというような御質問でございました。調停案を受諾するかどうかは、当事者において決定すべきものでありまして、調停の段階におきまして、政府がとやかく申し上げることは差し控えたいと存じます。  第二の御質問は、あらゆる争議が長引くのは、全くその責任政府にあるようなお話でありましたが、今次の争議に関しましては、政府は一貫しまして早期に解決したいという立場をとっておりまして、決して長引かせるような態度をとっているわけではございません。(拍手)   〔国務大臣倉石忠雄君登壇
  53. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) 法律の問題の前に、今次の争議のことにお融れになりましたが、政府、自民党の弾圧云々というお話でございましたが、自由民主党のことはさておきまして、政府は、今度の争議に対して弾圧をいたした覚えは毛頭ありません。すなわち、よい労働慣行ができるように私どもは望んでおるのでございまして、法律に禁じられておるような違法行為が行われることを取り締るのは、国民にかわって行政を行う政府責任であると確信いたしておるのであります。そういう意味で、よい労働慣行が作られて、労働運動に対して、多数国民が正しい理解と判断を持って、労働運動の健全なる発達を私どもは希望いたしておるのであります。(拍手)みずから法律を犯しておりながら組合の違法のみを責めるのは無理だというお話でございますが、公共企業体等労働関係法に基く仲裁裁定が、すぐそのまま履行されるとかされないとかということは違法行為ではございませんことは、永岡さんよく御存じの通りでございます。従来仲裁委員会によって裁定をされましたものが二十ありますが、そのうち金額が動かされたものは一件でありまして、そのまま裁定が実行されたものが八件であります。それから若干時期がおくれて国会が中に入って裁定通り実施いたしたものが十一件ございまして、御承知のように法の命ずるところは、最終的な議決国会で行うことになっておるのでありますから、政府がこれを尊重するとかしないとかと申しましても、最終的な決定までは、そういうことは論ぜられないのでありまして、従ってこのたびの調停案の問題も、お触れになりました調停案の個々の問題につきましては、政府は容喙する必要を認めておりません。個々の企業についての経営当事者の意見によってこれは決定せらるべきものでありまして、ことに三公社は、すでに調停案が出ましたが、五現業については、いまだ調停案の提示がございません。こういうときに、政府当局として私どもがとやかく発言いたすことは、かえって誤解を生ずるおそれがありますので、私どもといたしましては、それを静観いたしておるというのが今日の実情でありまして、私どもは、これについて圧力を加えたなどということは毛頭ありません。むしろ一部の労働組合の方々は、調停委員会においでになりまして、われわれが希望する通りの調停案を出せという要求をされました。むしろ圧力といえば、こういうものがかえって圧力であります。(拍手)  それから公共企業体等労働関係法を廃止する意思はないかというお尋ねでございますが、政府は廃止する意思は持っておりません。仲裁裁定の場合は、公労法の審議会の答申によれば、私の聞き違いかもしれませんが、永岡さんのお話に、審議会の答申によれば仲裁裁定のあった場合は予算的措置をするようにせよということになっておるが、そういうふうに本案に出ておらないのはどういうことかという御趣意のお尋ねであったかと存じますが、もしそういうことであるといたしましたならば、今回の審議会の答申は、そういうふうには申しておりません。従って政府が提案いたしましたものによれば、つまり今までと違いまして、仲裁裁定はどこまでも尊重する建前でありますから、そういう場合には、給与総額にかかわらず御承知のように大蔵大臣が移流用を認めるということによって、先ほど後のところで御指摘になりました三十五条の改正の中で、できる限り努力せよと特に挿入いたしましたのは、そういう意味であります。  それから四条、三項の従業員が組合員及び交渉委員になる、なれないのお話は、時間もかかりますから、安井さんの御質問お答えいたしたことで御了承をお願いいたします。  それから十六条二項のことでございますが、これは本法を廃止する意思がないということで一番重要な点は、やはり御承知のように現行法三十五条によれば、下りました仲裁裁定は、当事者双方を拘束すると、ただし十六条二項に規定する場合にはこの限りではないということで、十六条二項は予算上資金上、支出不可能の場合は、国会にこれを持ち出して議決するということでありまして、その場合は永岡さんの御指摘のように、国会としては仲裁裁定の内容について審議するということは必要といたしませんし、それを法律は要求いたしておりませんので、その裁定を予算上資金上、国家がそれを出すべきかどうかということを、われわれ国会議員は国会において議決をすると、こういうことでありまして、その点については現行法とこの改正原案とは変っておりません。すなわち予算に関することでございますから、最終的には国家最高の機関であるわれわれ国会において議決をして参らなければ、政府も動きがとれないと、こういうわけでございます。  ストライキ権の剥奪のことにつきましては、永岡さんもすでに御承知のように、たとえばアメリカなどは、私設鉄道ですら自分の労働組合の規約の中で、こういうような公益事業のストライキというものはほとんどできない程度に、自分の規約で縛っておられます。私どもは、この現行公労法を決定いたしましたときの考え方も、やはり公けに奉ずる者がその公けに向ってストをするなどということは、私は考えられないのではないかということで、立法当時私どもはこういうふうにいたしました。すなわち全株式は国家が持っているのであります。全部株を国家が持っている、この公けに奉仕する者が、公けに向って、国民大衆に向って、ストライキをするなどということはやめなければならない。そのかわりに、公共企業体等労働関係法というのでその身分を保障すると、こういう法の建前でございますから、どうぞさように御了承をお願いいたします。(拍手)  委員の任命制のことにつきましては、先ほど安井さんのお尋ねにお答えいたしました通りでございまして、これはやはり今までの委員の選任方法よりも、皆様方に私どもの方から御推薦申し上げて、そうして皆様方の御賛成を得て、内閣総理大臣がこれを任命するという権威を持たせる方法の方が、かえって仲裁に権威を持たせるのではないかと、こういうことでございますから、どうぞ御了承をお願いいたします(拍手
  54. 河井彌八

    議長河井彌八君) これにて質疑の通告者の発言は、全部終了、いたしました。質疑は終了したものと認めます。      ——————————
  55. 河井彌八

    議長河井彌八君) 日程第三、航空業務に関する日本国とフランスとの間の協定批准について承認を求めるの件  日程第四、航空業務に関する日本国インドとの間の協定締結について承認を求めるの件  日程第五、航空業務に関する日本国とオーストラリア連邦との間の協定締結について承認を求めるの件  日程第六、国際民間航空条約改正に関する議定書(第四十五条に関するもの)の批准について承認を求めるの件  日程第七、国際民間航空条約改正に関する議定書(第四十八条等に関するもの)の批准について承認を求めるの件(いずれも衆議院送付)  以上、五件を一括して議題とすることに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  56. 河井彌八

    議長河井彌八君) 御異議ないと認めます。まず委員長報告を求めます。外務委員長山川良一君。    〔山川良一君登壇拍手
  57. 山川良一

    ○山川良一君 ただいま議題となりました航空業務協定三件並びに国際民間航空条約改正に関する議定書二件、計五件につきまして、外務委員会における審議の経過と結果を一括して御報告いたします。  まず、政府説明に基き、各件の趣旨を簡単に申し上げますと、日本インド、フランス、オーストラリア各国との二航空協定は、さきに国会承認いたしました日米、日英、日加等の航空協定と同一の目的と意義を有するものでありまして、その内容もそれらと大差なく、すなわち日本と相手国との間に、航空業務運営開始の手続及び条件を双務的基礎のもとに定めるとともに、附表において、両国の指定航空企業の運営する路線を定めたものであります。なお、わが国とこれら三国との航空業務関係の現状は、サンフランシスコ平和条約第十三条及び目印平和条約第二条により、これらの条約発効後四年間、すなわち本年四月二十七日まで、これら三国の航空企業がわが国に一方的に乗り入れの権利を有するのでありますが、本件協定締結されれば、わが国の航空企業も、従来の片務的状態を脱しまして、相手国に乗り入れができるようになるのであります。  次に、国際民間航空条約改正に関する議定書二件は、いずれも一九五四年に、国際民間航空機関、すなわちICAO、アイカオの、第八回総会で採択されたものでありまして、その目的とするところは、一は、アイカオの所在地を、総会の決定によって、一時的でなく他の場所に移すことができるようにすること。他の件は、アイカオ総会の開催回数を、現在の毎年一回から少くとも三年に一回に改正するものであります。  委員会の質疑におきましては、航空協定に掲げられている路線の内容日本航空の拡張計画等につき質問がございましたが、詳細は速記録で御了承を願います。  委員会は、三月六日に採決を行いましたところ、五件とも全会一致をもって承認すべきものと議決いたした次第であります。  以上、報告いたします。(拍手
  58. 河井彌八

    議長河井彌八君) 別に御発言もなければ、これより五件の採決をいたします。  五件全部を問題に供します。委員長報告通り五件を承認することに賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立
  59. 河井彌八

    議長河井彌八君) 総員起立と認めます。よつて五件は、全会一致をもって承認することに決しました。      ——————————
  60. 河井彌八

    議長河井彌八君) 日程第八、道路整備特別措置法案  日程第九、日本道路公団法案(いずれも内閣提出衆議院送付)  以上、両案を一括して議題とすることに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  61. 河井彌八

    議長河井彌八君) 御異議ないと認めます。まず委員長報告を求めます。建設委員長赤木正雄君。   〔赤木正雄君登壇拍手
  62. 赤木正雄

    ○赤木正雄君 ただいま議題となりました道路整備特別措置法案及び日本道路公団法案について、建設委員会における審議の経過並びに結果について御報告申し上げます。  本二法案は、二月十日、当委員会に予備付託されまして以来、参考人を招致するなど、慎重なる審議をいたしました。  まず、道路整備特別措置法案について申し上げますと、昭和二十七年、第十三回国会におきまして、道路整備事業促進の一環として、道路整備特別措置法及び特定道路整備事業特別会計法が制定され、国及び地方公共団体の行う有料道路整備のための資金貸付が行われ、今日までに十三カ所の有料道路が完成し、また現在十六カ所について工事中でありますが、現在及び将来の交通情勢に対応して、さらに道路の整備を促進するための民間資金の導入をはかり、有料の道路の建設を拡充するとともに、総合的、かつ効率的運営をはかるため、今回新たに日本道路公団を設立することになりましたので、これに伴う有料道路の新設、改築その他の管理に関し、特別の措置を定めるとともに、都道府県または市町村の行う有料道路についても所要の規定を整備する必要があるので、現行の特別措置法を廃止し、これにかわる新法を制定しようとするのが本法案の提案理由であります。  次に、そのおもなる内容について申し上げますと、第一は、公団は、建設大臣の許可を受けて、一定の要件に該当する一、二級国道、都道府県道または指定市の市道を新設し、または改築して料金を徴収し、工事完了後は料金徴収期間が満了するまで維持、修繕及び災害復旧を行うことができることになっております。第二に、当公団はその新設または改築した道路について、一定の要件のもとに、料金徴収期間の経過後においても、その道路の維持、修繕を行なって料金を徴収することができることになっております。第三に、公団は、有料道路の管理に必要な限度において、道路管理者にかわって一定の権限を行うことができることになっております。第四に、料金徴収の対象は主として自動車でありまして、料金の額は道路の通行者または利用者が受ける利益の限度内とし、その基準は政令で定めることとしております。  次に、政府に対するおもなる質疑について申し上げます。第一に、「本法案は道路交通政策の基本に触れるものがあるから、交通審議会の意見を聞くべきではないか」との質問に対しまして、「本法案に基く有料道路は、交通上大きな変革を来たすような事業を行うものではないが、交通審議会の意見を十分に聞きつつ実施を進めたい」との答弁がありました。  第二に、「本法案による有料道路の制度は、公道無料公開の原則に馳背するものではないか」という質問に対しましては、「公道の無料公開の原則にもとるものではない。すなわち年間三百四十億円程度の一般道路整備費に対し、当公団による有料道路に要するものは、その二割程度に達するだけであり、また償還の済み次第に無料公開するものであるからである」との答弁でありました。その他、本法案と現在継続審議中であります国土開発縦貫自動車道法案との関係について質疑が行われました。本法案による公団は、自動車道路の建設はできないことになっておりますが、「これを有料道路として施行することが適当であれば、公団においてもその事業を遂行することが可能であり、さらに一宮付近より神戸間の道路整備については計画している個所である」との答弁がありました。  かくて質疑を終り討論に入りましたところ、石井委員から自由民主党を代表して、「本案は道路の無料公開の原則を変更するものではなく、おくれた日本の道路の現状に対し、急務を要する道路整備を拡充強化する方策として賛成する。」また村上委員からは緑風会を代表して、「同様の趣旨から賛成する」との発言があり、田中委員からは日本社会党を代表して、「本案は有料道路を恒久化し、財源の民間依存を将来ますます強くするものであり、かつ道路の公共性に反するもので反対である」との発言がありました。  かくて討論を終了し、採決の結果、多数をもって原案通り可決すべきものと決定いたしました。  次に、日本道路公団法案について申し上げますと、第一に、公団の資本金は全額政府出資で、その額は公団設立の際、特定道路整備事業特別会計の有する資産の価額から負債の金額を控除したものが出資とみなされることになっております。  第二に、公団の行う業務としては、有料道路の新設、改築、維持、修繕その他の管理及び有料道路の災害復旧工事がおもなるものであり、あわせて有料自動車駐車場の建設、管理並びに国または地方公共団体の委託による道路の新設、改築等も行うことができることになっております。その他公団の役員、公団の予算、事業計画、資金計画、財務諸表、道路債券の発行、借入金等について規定いたしております。  なお、公団が昭和三十一年度に施行すべき事業に必要な資金は八十億円で、これは一般会計からの補助金二十億円、資金運用部からの借入金十億円、道路債券発行による借入金五十億円をもって充当する予定になっております。  次に、政府に対するおもなる質疑について申し上げますと、まず第一に、「公団の存続年限いかん」という点でありますが、これについては「道路整備事業が一般財源でまかなえるようになったときには廃止する」とのことでありました。次いで道路債券に関するものでありますが、本債券については、「その引受先は、主と」て一般の市中銀行としたい」との答弁でありました。なお、現在実施中の有料道路に従事する職員については、「一部公団に転出する者を除いて、配置転換等により不安を起すようなことはない」との答弁がありました。  かくて質疑を終了し、討論に入りましたところ、田中委員からは、各種の公団形式に賛同しがたいという趣旨から反対、また石井委員から、前述同様の立場から賛成発言がありました。  次いで採決の結果、多数をもって衆議院送付通り可決すべきものと決定いたしました。  以上、御報告申し上げます。(拍手
  63. 河井彌八

    議長河井彌八君) 別に御発言もなければ、これより両案の採決をいたします。両案全部を問題に供します。両案に賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立
  64. 河井彌八

    議長河井彌八君) 過半数と認めます。まって両案は可決せられました。  本日の議事日程は、これにて終了いたしました。次会の議事日程は、決定次第公報をもって御通知いたします。  本日は、これにて散会いたします。    午後三時三十七分散会      —————————— ○本日の会議に付した案件  一、国会法第三十九条但書の規定による議決に関する件  一、マーシャル群島における水爆実験に関する緊急質問  一、エニウェトクにおける核兵器実験日本に及ぼす影響に関する緊急質問  一、日程第一 国防会議構成等に関する法律案趣旨説明)  一、日程第二 公共企業体等労働関係法の一部を改正する法律案趣旨説明)  一、日程第三 航空業務に関する日本国とフランスとの間の協定批准について承認を求めるの件  一、日程第四 航空業務に関する日本国インドとの間の協定締結について承認を求めるの件  一、日程第五 航空業務に関する日本国とオーストラリア連邦との間の協定締結について承認を求めるの件  一、日程第六 国際民間航空条約改正に関する議定書(第四十五条に関するもの)の批准について承認を求めるの件  一、日程第七 国際民間航空条約改正に関する議定書(第四十八条等に関するもの)の批准について承認を求めるの件  一、日程第八 道路整備特別会計法案  一、日程第九 日本道路公団法案