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1956-03-05 第24回国会 参議院 本会議 第17号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十一年三月五日(月曜日)    午後三時二十四分開議   —————————————  議事日程 第十七号   昭和三十一年三月五日    午前十時開議  第一 健康保険法等の一部を改正す   る法律案及び厚生年金保険法の一   部を改正する法律案趣旨説明)  第二 在外公館の名称及び位置を定   める法律等の一部を改正する法律   案(内閣提出衆議院送付)           (委員長報告)  第三 鉄道抵当法の一部を改正する   法律案内閣提出)           (委員長報告)  第四 高圧ガス取締法の一部を改正   する法律案内閣提出)           (委員長報告)  第五 総理府設置法の一部を改正す   る法律案内閣提出衆議院送   付)      (委員長報告)   —————————————
  2. 河井彌八

    議長河井彌八君) 諸般の報告は、朗読を省略いたします。    ————————
  3. 河井彌八

    議長河井彌八君) これより本日の会議を開きます。  この際、お諮りいたします。鳩山内閣総理大臣戒告決議案吉田法晴君外六十五名発議)  本案は、発議者から委員会審査省略要求書が提出されております。発議者要求通り委員会審査を省略し、直ちに本案審議に入ることに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 河井彌八

    議長河井彌八君) 御異議ないと認めます。よって本案議題といたします。  まず発議者趣旨説明を求めます。吉田法晴君。   —————————————   〔吉田法晴登壇拍手
  5. 吉田法晴

    吉田法晴君 私は提案者を代表して、鳩山内閣総理大臣に対する戒告決議案趣旨説明をいたします。(拍手)  まず決議案文を朗読いたします。    主文   本院は、内閣総理大臣鳩山一郎君を戒告する。    理由   内閣総理大臣鳩山一郎君は、去る二月二十九日、本院予算委員会において憲法第九条の精神をじゅうりんし、且つ本院の自衛隊海外出動禁止決議に違反する極めて不謹慎な発言を行い、内外に重大な不安と衝動を与えた。   しかして鳩山総理大臣が、さき憲法反対であるとの失言をし、取り消し釈明を行った記憶新らたなこの際、再びかかる事態をひき起した責任は特に重い。   よって本院は院議をもって、内閣総理大臣鳩山一郎君に対し戒告すべきものと認める。   以上。  鳩山総理大臣は、わが党戸叶武君の質問に答えて、どうしても外国飛行基地を粉砕しなければ、そこに飛んで行かなければ、日本防衛ができないというような場合には、その基地侵略してもいい、攻撃してもいいと答弁をいたしました。わが党の委員が、この発言を重視して取り上げますと、さすがの鳩山首相も、侵略という表現の重大性に気がついたのか、侵略という言葉だけは取り消しました。しかしその時重ねてまた、基地攻撃しても差しつかえないと繰り返したのでありますから、内容を変えたわけではございません。われわれが総理大臣鳩山一郎君のこの失言を重視し、その取り消しを求め、ここに戒告決議を提出するゆえんのものは、第一に、鳩山総理は、さきに本院本会議において、佐多忠隆君の質問に答えて、陸軍も海軍も飛行機も持てぬ憲法には反対だという憲法無視発言をし、今また外国基地侵略してもいい、攻撃してもいいと重大なる失言をいたしましたが、かくも重大な失言が繰り返されると、鳩山総理精神鑑定を要求しなければなりません。(拍手)重なる重大失言をもって証明せられた鳩山総理心身耗弱は、今日の日本首相としてその任務にたえないということを示しております。(拍手)  第二の理由は、今回の鳩山総理発言は、昭和二十九年の自衛隊海外出動をなさざることに関する本院決議に違反するからであります。(拍手)今回の鳩山発言は、日本領土領空を離れ、外国領土の上、領空まで飛んで行ってその基地攻撃し得るというのでありますから、まさに本院の海外出動禁止決議に違反すること明白であります。(拍手)  理由の第三は、鳩山発言日本国憲法第九条をじゅうりんし、憲法が明らかに放棄した交戦権を復活し、防衛自衛を名として戦闘行為戦争をなさんとするものであるからであります。鳩山発言は、不正急迫侵略に対する防衛自衛のためには、飛行機誘導弾その他の兵力をもって、外国基地まで飛んで行ってたたくことができる、攻撃することができるというのであります。こういう事態は、交戦であり、応戦ではありませんか。自衛防衛のためには飛行機誘導弾その他の兵力外国基地をも攻撃し得ると考えるその次の考えは、最もいい防衛先制攻撃であるということであります。いかなる戦争も、みずから侵略戦争なりと称して始められた戦争はありません。この鳩山発言と、最近のSEATO演習日本から飛行機が参加したという話とを考えあわせますと、自衛防衛のためと称して、日本からの飛行機誘導弾等外国基地攻撃しに出かける姿がほうふつとして参るのであります。われわれは、かかる憲法第九条に違反し、あえて、戦闘戦争をなさんとする鳩山発言を許すことは断じてできません。(拍手)  第四の理由は、鳩山失言が国際的に悪影響を与えたと考えるからであります。日本の再軍備が、日本をして再び太平洋戦争の愚を繰り返させるのではないかと心配をいたしておりますアジア国民にとって、たとえ失言であっても、鳩山総理侵略という言葉は、大きな不安と衝撃を与えたでありましょう。なるほど侵略という言葉は取り消されましたが、条件はついておりますが、外国基地攻撃し得るということは残っております。不安は残っております。外国に与える不安と危惧は、これを完全に取り去られねばなりません。これが第四の理由であります。  戒告、最後の理由は、鳩山発言は、来たるべき原子戦争の火ぶたを日本から切り、日本日本国民を全減せしむる重大な危険を持つからであります。(拍手)次の戦争の様相は、原子兵器で武装した長距離爆撃機や、数千マイルの射程距離を持つ原子誘導弾軍事基地を飛び出し、数十分、数時間の後には、その基地が敵からの原子攻撃を一手に吸収する役目を果すことをもって始まると言われます。制限戦争制限戦争で終らないこと、戦術原子兵器使用が、戦略原子兵器使用にすぐ継続するということが次第に明らかになって参っております。基地をもって埋まる日本全土を廃墟と化し、日本民族の滅亡のあと、脊椎を折られた両陣営が、人類の死滅まで、長期陰惨な死闘を続けさせるような、そういう危険な鳩山発言は、断じて許すことができません。(拍手)  以上の深刻な諸理由と影響を考え、わが党は一切の国際的な問題は、平和的な話し合いをもって解決すべきであり、自衛のためといえども武力をもってすべきではないという平和憲法精神を明らかにし、自衛権行使を名として、飛行機誘導弾、その他いかなる方法をもってするも、他国に出動することは絶対に許されない旨の取り消し釈明鳩山首相に求めましたが、政府及び与党は一顧も与えず、これを拒絶して参りました。そこで、われわれはここに平和憲法の大精神日本民族の平和の決意を内外に宣明するため、ここに内閣総理大臣鳩山一郎君を戒告する本決議案を提出する次第であります。(拍手)  何とぞ満場の諸君の御賛成によって、本決議案が可決せられんことを切望し、趣旨説明といたす次第であります。(拍手
  6. 河井彌八

    議長河井彌八君) 本案に対し、討論通告がございます。順次発言を許します。寺本広作君。(拍手)   〔寺本広作登壇拍手
  7. 寺本廣作

    寺本広作君 ただいま社会党から提出されました戒告決議案に対し、私は自由民主党を代表して、断固反対するものであります。(拍手)  社会党決議案に対し、われわれが反対するのに三つ理由があります。  第一に予算委員会におきまする鳩山総理のその部分の発言は、単なる言いそこないにすぎないのであります。質問者が使った侵略という言葉をそのまま借りて答弁するつもりのところを言いそこなったために起った錯誤にすぎないのである。第二次大戦中、終始戦争反対態度を堅持してこられた鳩山総理の過去の経歴から申しても、侵略戦争を是認するというがごとき非常識なことが、鳩山総理の本心であるはずは断じてないのであります。(拍手)しかも鳩山総理は、その場で明瞭にその言葉取り消しておられる。単なる言いそこないに過ぎない、しかも明瞭に取り消された言葉をとらえて問題化することは、理不尽きわまることであって、決して議会の品位を高めるゆえんではございません。  第二に、誤まりとして取り消され、その後訂正された事柄内容が、社会党言い分によれば、海外派兵禁止院議に違反するというのであるが、われわれはそうは思わない。サイパン島の基地から来襲する敵機が、連日雨あられのごとく爆弾や焼夷弾をわれわれの頭上に投下したとき、その基地をたたく力のないことを切歯扼腕した経験を持つわれわれは、一昨年の決議において、同様な場合、腕をこまねいて亡びいく同胞を座視せねばならぬという、そういうむざんな決議をした覚えは毛頭ないのであります。かじに百歩を譲って院議違反疑いがあるとしますならば、まずその疑いについてただすべきことをただし、相手言い分も聞くのが順序であろうと思います。われわれは過去四日間にわたって、このことを、こうした順序を踏むべきことを社会党に提唱しましたが、社会党は遂にこれを受けつけなかったのでございます。相手言い分を聞かず、一方的にかような決議案を本会議に提出してくる社会党問答無用式のやり方は、すこぶる非民主的だと思うのであります。(「何が非民主的だ」と呼ぶ者あり、拍手)  第三に、委員会で起った事柄を、その委員会が処理せぬうちに本会議に持ち込むことは、本院の先例、慣行に違反する。(「ノーノー」と呼ぶ者あり)社会党は、予算委員会での交渉が決裂したというが、予算委員長は、この決議案事務局に提出された後も、予算委員会事態を収拾すべく努力を続けられた。委員会で適当に結論を出すか、結論が出ぬ場合には中間報告をするか、そういう成規手続を踏まずして、委員会の問題を本会議で取り上げることは、常任委員会と本会議との関係を紛淆するものである。われわれは社会党の強引きわまる作戦により、本院における一切の審議が渋滞することを防ぐため、やむを得ず本決議案の本会議上程に同意したが、これが異例の措置であることをここに明らかにしておきたい。  以上三つ理由により明瞭である通り、本決議案は実質的にも、手続的にも、きわめて不当な決議案である。われわれはこのような実質的に意味のない事柄を、このような常軌を逸した方法により、本会議で取り扱わねばならぬことを、社会党のためだけではなく、本院の名誉のためにも惜しむものである。以上。(「成規手続を踏んでやったことを、常軌を逸したとは何事だ」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し、拍手
  8. 河井彌八

    議長河井彌八君) 本議場における議員発言のうち、不穏当な点がありまするならば、議長速記録を調べまして、そうしてこれを適当に措置いたします。このことを申し上げます。ただし、諸君は強い激情のあまりに、何といいますか、常軌を逸したようなことをなさらないことを要求いたします。(拍手)   —————————————
  9. 河井彌八

    議長河井彌八君) 戸叶武君。   〔戸叶武登壇拍手
  10. 戸叶武

    戸叶武君 私は日本社会党を代表し、鳩山首相戒告決議案賛成討論を行います。(拍手)  私たちは、鳩山首相の最近の憲法無視言動は、戒告よりもむしろ問責に値するものと考えております。(拍手)それにもかかわらず、わが党が一歩譲歩して戒告決議案を上程したのは、心身ともに不健康な状態の鳩山首相が、すでにおのずから、みずからの責任において自分の進退を熟慮せねばならぬ段階に到達したとの認定の上に立ったからであります。(拍手)  けさの新聞の社説は、鳩山首相病状は、もはやだれの目にも、首相の劇職にとどまっているのは無理であると映じていると断じております。世間の世論も大体この方向を示しております。私たちは、鳩山首相病状悪化に対しては衷心から御同情申し上げます。しかしながら、総理大臣としての鳩山首相のたび重なる失言と軽率なる言動を、病人なるがゆえにの理由をもってこれを見逃すことはできません。国会は、国の基本方針に関する内外の誤解を解くために、この際鳩山首相戒告を与えねばならぬ立場に置かれております。  事の起りは、去る二十九日、本院の予算委員会の席上における私の質問に対する鳩山首相答弁から発しております。事の重大さに驚き、私たちは直ちに鳩山首相の口から出た、海外基地を粉砕してもよい、侵略攻撃してもよいというような乱暴な発言を難詰いたしました。鳩山首相もさすがに自分でもびっくりして、侵略の二字だけは取り消ししました。しかし、取り消しに立たれた際にも依然として、基地をたたかなければならない場合はその基地攻撃しても差しつかえないと、再度繰り返しております。私はかかる自衛権拡大解釈による交戦権に基く武力行使は、現行憲法否定であると信じます。(拍手)  御承知の通り戦争放棄日本国憲法基本原則であります。鳩山首相は、憲法第九条の国際紛争解決手段としての武力行使放棄陸海空軍その他の戦力は保持しない、国の交戦権は認めないとの条項を何と解釈するつもりでありますか。鳩山首相は、最近における自分たち憲法否定言動を合理化するために、積極的な態度憲法改正を企てております。しかしながら、政府意図のいかんにかかわらず、現行憲法は、いまだ厳然として存しておるのであります。(拍手)しかも憲法の前文には、政府のかかる暴挙を阻止する目的をもって、政府行為によって再び戦争の惨禍が起ることのないように、主権在民憲法を制定したことをうたっているのであります。(拍手)従って国会は国の最高機関として、国の基本法たる憲法擁護の重任をになわされております。それゆえに国会は、政府当局憲法違反言動を断じて看過するわけには参りません。今こそ私たちは、鳩山首相答弁内容を究明する必要があるのであります。  ところが鳩山首相答弁なるものは、まことに奇々怪々であります。鳩山首相の私たちに対する答弁なるものは、実は二種類あるのであります。一つは、参議院予算委員会における私の質問に対する答弁、もう一つは、同二十九日、衆議院内閣委員会船田防衛庁長官が代読した鳩山首相釈明文であります。私たち衆参両院で行なった総理大臣に対する質問なるものは、去る二十七日に衆議院内閣委員会で問題となって取り上げられた船田答弁の、自衛のためなら飛行機敵基地を爆撃できるとの答弁内容と、第二十二国会で行なった鳩山首相の 飛行機で飛び出して敵の基地を粉砕させるようなことはできないとの答弁との食い違いの追及であったのであります。これに対しまして鳩山首相は、その内容の是非は別として、比較的まじめに答弁しております。これに反し、船田長官が朗読した釈明文は、あれは一体何でありますか。政府議員質問に対する答弁に名をかりて、巧みに政府防衛に関する軍事的意図を述べているのであります。これこそまさしく防衛庁当局等が、戦略戦術の転換の必要から、政府誘導弾受け入れのための謀略的なすりかえ答弁を行なったと見なければなりません。この謀略の実体は、その翌日の三月一日の衆議院内閣委員会でさらに明確化されました。それは根本官房長官が朗読した鳩山首相失言に関する釈明文であります。鳩山首相釈明文の冒頭において、私に答えた「侵略」という言葉取り消しております。私たちは、今日においては「侵略」の二字の単なる取り消しを問題にしておるのではありません。問題はもっと深いところにあるのであります。鳩山首相は、私の質問に対する答弁の行き過ぎを何ら改めていないのであります。それが証拠に、鳩山首相言葉を改めて、すなわちわが国に対して急迫不正の侵略が行われ、その侵略手段として、わが国に対して誘導弾等による攻撃が行われた場合、座して自滅を待つべしというのが憲法趣旨であるということは私は考えられないと思うのでありますと述べ、次に、誘導弾等による基地攻撃を強調しております。これを見ればわかる通り鳩山首相はあの釈明文において、私に対する答弁すりかえておるのであります。あなたは船田長官と同様のずるさをもって、国会審議機を無視し、もっぱら誘導弾による基地爆撃の必要を強調しておるのであります。私は侵略された場合を想定したり、また誘導弾について何ら質問もいたしておりません。政府国会議員質問に対して、馬をシカと答えるがごときばかにしたすりかえ答弁をするとは何事でありますか。  最近のニュース映画を見ると、先般タイを中心に行われたSEATOの大演習に、日本軍事基地から米空軍近代兵器をひっさげて参加している実写が上映されているということであります。鳩山首相はこれを見て興奮せられ、急迫事態に対処されようとされておるのか、それともカラチで開催されるSEATO会議の帰途、ダレス国務長官日本に立ち寄られるので、それに備えんとしているのか。いずれにしても一国の総理大臣たる者が、あたかも戦争の渦中に巻き込まれたような錯覚を起し、自衛に名をかりて外国基地攻撃し、粉砕する必要ありとの刺激的な言葉を口走られるに至っては、心身ともに衰弱した病人であるから、ごめんなさいでは済みませんぞ。鳩山首相憲法精神をじゅうりんした言動は、第一に、戦争放棄憲法基本原則にそむくものであり、事実上の海外派兵交戦権を認むるに至っては、自衛権の範囲の逸脱であり、超軍国主義への道戻りであります。  第二に、私たち首相言動が、日本軍国主義の復活におびえるアジア近接諸国及び豪州等に甚大な悪影響を及ぼすことを憂慮するものであります。  第三に、本院は院議をもって海外出動禁止決議を持っております。政府がこの院議を無視する態度に出たことは、参議院に対する明らかな挑戦であります。いやしくも自衛の問題は、国家の重大な問題であります。私たちは断じて政府独断的解釈を許しません。事ここに立ち至っては、鳩山さんもみずからの判断において善処せられるでありましょうが、私たちは、ここに本院の責任において鳩山首相戒告を行わんとするものであります。同僚の各位、参議院の良識をもって御賛成を賜わらんことを訴える次第でございます。(拍手
  11. 河井彌八

    議長河井彌八君) これにて計論の通告者発言は、全部終了いたしました。討論は終局したものと認めます。  これより本案の採決をいたします。本案の表決は記名投票をもって行います。本案賛成諸君白色票を、反対諸君青色票を、御登壇の土御役票を願います。氏名点呼を行います。議場閉鎖を命じます。   〔議場閉鎖〕   〔参事氏名点呼〕   〔投票執行
  12. 河井彌八

    議長河井彌八君) 投票漏れはございませんか、……投票漏れないと認めます。  これより開票いたします。投票参事に計算させます。議場開鎖を命じます。   議場開鎖   〔参事投票を計算〕
  13. 河井彌八

    議長河井彌八君) 投票の結果を報告いたします。   投票総数 百四十一票   白色票   四十一票   青色票     百票  よって本案は否決せられました、(拍手)      ——————————   〔参照〕  賛成者白色票氏名      四十一名       高田なほ子君    山口 重彦君       岡  三郎君    河合 義一君       三輪 貞治君    田中  一君       竹中 勝男君    内村 清次君       山下 義信君    木下 源吾君       村尾 重雄君    佐多 忠隆君       市川 房枝君    堀  眞琴君       木村禧八郎君    鈴木  一君       成瀬 幡治君    若木 勝藏君       千田  正君    亀田 得治君       菊川 孝夫君    吉田 法晴君       大和 与一君    加瀬  完君       藤田  進君    湯山  勇君       千葉  信君    近藤 信一君       田畑 金光君    永岡 光治君       阿具根 登君    天田 勝正君       秋山 長造君    羽生 三七君       曾禰  益君    森下 政一君       岡田 宗司君    小酒井義男君       戸叶  武君    松本治一郎君       三木 治朗君     —————————————  反対者青色票氏名      百名       片柳 眞吉君    梶原 茂嘉君       柏木 庫治君    石黒 忠篤君       山川 良一君    赤木 正雄君       森田 義衞君    森 八三一君       宮城タマヨ君    八木 秀次君       三浦 辰雄君    廣瀬 久忠君       早川 愼一君    野田 俊作君       中山 福藏君    豊田 雅孝君       竹下 豐次君    高瀬荘太郎君       島村 軍次君    佐藤 尚武君       河野 謙三君    後藤 文夫君       岸  良一君    北 勝太郎君       武藤 常介君    白波瀬米吉君       松原 一彦君    井上 清一君       伊能 芳雄君    小沢久太郎君       佐藤清一郎君    酒井 利雄君       有馬 英二君    滝井治三郎君       関根 久藏君    吉田 萬次君       白川 一雄君    田中 啓一君       榊原  亨君    高橋進太郎君       上原 正吉君    大矢半次郎君       藤野 繁雄君    西川甚五郎君       宮田 重文君    三浦 義男君       石原幹市郎君    寺尾  豊君       中山 壽彦君    鶴見 祐輔君       青木 一男君    野村吉三郎君       苫米地義三君    大野木秀次郎君       斎藤  昇君    佐野  廣君       石井  桂君    雨森 常夫君       西川弥平治君    白井  勇君       横山 フク君    高橋  衛君       深川タマヱ君    長島 銀藏君       寺本 廣作君    青山 正一君       紅露 みつ君    石川 榮一君       剱木 亨弘君    高野 一夫君       横川 信夫君    野本 品吉君       平井 太郎君    川村 松助君       堀末  治君    西郷吉之助君       堀木 鎌三君    郡  祐一君       遠藤 柳作君    松野 鶴平君       吉野 信次君    笹森 順造君       黒川 武雄君    小林 英三君       木村篤太郎君    石坂 豊一君       三木與吉郎君    新谷寅三郎君       小西 英雄君    島津 忠彦君       重政 庸徳君    安井  謙君       入交 太藏君    小柳 牧衞君       川口爲之助君    木内 四郎君       深水 六郎君    井上 知治君       重宗 雄三君    草葉 隆圓君    ————————
  14. 河井彌八

    議長河井彌八君) この際、日程に追加して、公正取引委員会委員の任命に関する件を議題とすることに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  15. 河井彌八

    議長河井彌八君) 御異議ないと認めます。  内閣総理大臣から、私的独占禁止及び公正取引の確保に関する法律第二十九条第二項の規定により、中村清君を公正取引委員会委員に任命することについて本院の同意を得たい旨の申し出がございました。  本件に同意することに賛成諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  16. 河井彌八

    議長河井彌八君) 総員起立と認めます。よって本件は、全会一致をもって同意することに決しました。    ————————
  17. 河井彌八

    議長河井彌八君) 日程第一、健康保険法等の一部を改正する法律案及び厚生年金保険法の一部を改正する法律案趣旨説明)  両案について、国会法第五十六条の二の規定により、提出者からその趣旨説明を求めます。小林厚生大臣。   〔国務大臣小林英三君登壇拍手
  18. 小林英三

    ○国務大臣(小林英三君) ただいま議題となりました健康保険法等の一部を改正する法律案並びに厚生年金保険法の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨及びこれらの法律案の概要につきまして御説明をいたします。  まず、健康保険法等の一部を改正する法律案でありまするが、健康保険制度は、昭和二年実施以来、今日まで約三十年間、労働者の疾病、負傷時におきまする生活の保障を行う制度といたしまして親しまれて参ったのでございまするが、今やわが国の社会保障制度の一大支柱をなす制度といたしまして、その給付内容も逐年充実を重ね、特に近年におきましては、日々に進歩する近代医学の成果をそのつど取り入れまして、必要とされる適正なる医療を実施して今日に及んでおるのでございまするが、その結果、医療費は逐年増高いたし、特に賃金水準の低い中小企業を対象とした政府管掌健康保険におきましては、昭和二十八年末に至りまして、給付費がついに保険料収入を上回るに至り、保険経済はきわめて困難なる事態に立ち至ったのであります。この情勢に対処いたしまして、政府昭和二十九年秋以来、被保険者の報酬の実態把握、不正請求、不正受給の排除、保険料収納率の向上等の各種の行政措置を講じ、財政の健全化をはかる一方、昭和三十年度予算の編成に際しましては、前年度四十億円、当年度六十億円の収入不足見込みに対しまして、七十億円の政府資金融資をはかり、今後七年間、毎年十億円あて一般会計の負担において返済するものとしたほか、保険料率を千分の五引き上げまして二十五億円の増収を行い、収支の均衡をはかって参ったのでありまするが、引き続く医療費の増高の結果は、昭和三十一年度におきましては、再び六十六億円余の収入不足を生ずる見込みとなったのであります。近代医学の進歩と国民の衛生思想の普及に伴いまして、医療費が年々増加いたしますることはやむを得ざることではありまするが、一方保険財政におきましては、問題とするところは、この医療費をいかにしてまかなうかということになって参るわけであります。健康保険の仕組みの中におきまして、この医療費の増高をまかなうに足る保険料収入が確保できるならば問題は簡単でありまするが、今日の情勢といたしましては、すでに昨年におきまして、健康保険料率は現行法で認められている最高限度まで引き上げられておるのでありまして、これを再びさらに引き上げるということは、現実にはほとんど不可能と考えられるのであります。それがゆえに健康保険事業の恒久的かつ健全な発展を期するためには、この際、本制度の根本的改革が必要とされるのであります。  このような見地から、政府は社会保険審議会並びに社会保障制度審議会の答申を慎重に検討するとともに、医療保障に関する与党の方針にのっとって、今回の改正案を立案いたしたのでありますが、まず第一に、社会保障制度の確立を促進する意味において、政府管掌健康保険事業の発達をはかるため、国庫より財政援助を行うことを法律上明文化し、昭和三十一年度におきましては三十億円を一般会計より受け入れることといたしたのであります。  第二に、将来にわたって健康保険の健全なる発達をはかるため、療養の給付を受ける者に対する一部負担金の範囲を広げ、これによりまして昭和三十一年度におきまして、約二十三億五千万円の給付費の節減をはかったのでございます。さらに、標準報酬等級区分の改訂、行政諸対策の強化等を行うことといたし、これらの諸措置によりまして、収支の均衡をはかることといたしたのであります。  なお一方におきまして、保険機構の整備をはかるため、保険医、保険薬剤師制度を改め、わが国の医療の実態に応じた機関指定方式を採用することといたし、また、社会保険診療報酬支払基金における診療報酬請求書の審査につきまして、その公平正確を期するため審査機構を整備いたすこととしたのであります。  以上申し述べましたように、これら諸改革は、単に健康保険の財政対策というような狭い意味のものではなく、社会保障制度、特に全国民を対象とする医療保障制度の完全実施を前提としつつ、その一環として実施するものでありまして、わが国の医療保障制度が、今後急速に健全に発達して参る上において、一転期を画すべきものと考えております。  この法律案は、右の趣旨に基き提案いたしたのでありますが、なおそのほか、改正を機会に、従来から問題のありました点について、制度の不備を是正し、その他制度の合理化をはかるために、若干の改正をもあわせて行わんといたしております。  次に、改正案の内容を要約いたしますと、第一に、国庫は予算の範囲内において、政府管掌健康保険事業の執行に要する費用の一部を補助するもりとすること。  第二に、標準報酬等級区分を最低四千円から最高五万二千円の二十四等級とすること。  第三に、療養の給付を受ける者の負担すべき一部負担金の範囲を拡張すること。  第四に、保険医療制度について、個人指定方式の長所を取り入れた機関指定方式を採用すること。  第五に、継続給付受給資格期間を一年に延長すること。  第六に、不正受給者に対して損失を補てんさせる措置を講ずること。  第七に、被扶養者の範囲を明確化すること。  第八に、厚生大臣、または都道府県知事の検査に関する規定を整備すること。  第九に、社会保険診療報酬支払基金における診療報酬請求書の審査機構を整備すること等であります。  次に、厚生年金保険法の一部を改正する法律案でありますが、この法律案は、厚生年金保険の標準報酬の最低を引き上げ、現行の厚生年金保険法の施行前に、被保険者の資格を喪失した女子に対する脱退手当金の支給条件を緩和いたしますとともに、規定の整備を行いますことを内容としているものでありますが、この法律案に規定しておりまする改正点の第一は、健康保険法の改正に伴いまして、標準報酬の最低を現行の月額三千円から健康保険のそれと合わせるよう月額四千円に引き上げることでございます。厚生年金保険と健康保険とは、現業、事務をともにいたしております関係上、事務の簡素化をはかる意味で、この改正が必要とされるのでございます。  その第二は、現行の厚生年金保険法の施行前に被保険者の資格を喪失した女子の一部に対しましても、脱退手当金を支給しようとするものであります。同様の事情にある男子に対しましては、現行の厚生年金保険法により支給できるようになっておりますので、これと均衡をとります必要上、女子に対する脱退手当金支給の根拠規定を設けようとするものであります。  その第三は、規定の整備を行うことでございます。現行の厚生年金保険法は、その施行より一年になりまするが、この間の経過を検討いたしまするに、多少規定の明確を欠く面がございまするので、これを明らかにいたし、解釈上の問題が起ることを避けまするため、所要の規定の整備を行うものでございます。  以上が、これらの法律案を提出する理由並びに法律案の要旨でございます。(拍手
  19. 河井彌八

    議長河井彌八君) ただいまの趣旨説明に対し、質疑の通告がございます。順次発言を許します。寺本広作君。   〔寺本広作登壇拍手
  20. 寺本廣作

    寺本広作君 私は自由民主党を代表して、ただいま議題となっております健康保険法等の一部を改正する法律案等について二、三の質問をいたしたいと思います。  私どもは与党議員として、政府提出の法律案については、ともに責任を分たねばならぬ立場に立っているものでございます。しかしながら、社会保障制度の確立に関する問題は、先ほどここで議題となりましたああいう決議案とは性質が違いまして、保守革新の両陣営を通じ、共通の広場における問題として取り上げてよい問題であり、またその取り扱い方いかんによっては、直ちに院外の大衆運動を誘発しやすい微妙な問題でもあると思いますので、審議の当初において、十分原案者にその意を尽させ、問題点を整理しておくことが、わが国におきまする社会保障計画の展開を円滑にするためにも、また院外における無用の混乱や摩擦を防止するためにも必要なことではないかと思うのでございます。その意味で、私どもがあえて与党質問を行うことについて、皆様の御了解をいただきたいと思うのでございます。  まず初めに、現在起っている医療問題をめぐる種々の混乱を厚生大臣はどういうふうに観察し、どういうふうに対策をとろうとしておられるのであるかについてお伺いしたいのであります。現在行われております保険医の総辞退宣言や、一日休診など、医療問題をめぐる種々の混乱は、目睫の間に迫っております医薬分業問題、その実施のために必要だとされる新医療費体系の問題、さらには昨年度から引き続き懸案となっております政府管掌健康保険の赤字対策など、あまりにも多くの問題が時を同じうして一時に殺到したことに起因するのではないかと思われるのであります。これがため、新医療費体系が、政府管掌健康保険の赤字対策の一つではないかと受け取られたり、またその新医療費体系が、実施期日を目前に控えながら、いまなお不確定であるために、医薬分業そのものの実施期日が、さらに延期されるのではないかという疑心暗鬼を生じたり、これらの事情が相いからみあって混乱を惹起しつつあることは、いなみがたい事実であると思うのであります。厚生大臣は、この際、医薬分業は全会派一致で成立した立法の経緯にかんがみ、予定の通り実施の方針であること、新医療費体系は医薬分業の実施のためにのみ必要であり、従って政府管掌健康保険の赤字対策とは全く無関係なものであること、こういうことを疑問の余地がないまでに明らかにされ、当面の混乱した事態を解きほぐさるべき義務があると思うのでございますが、その御用意があるかどうか、まずこれをお伺いしたいと思うのでございます。  こうして医薬分業の問題、新医療費体系の問題が、政府管掌健康保険の赤字対策とは、本来無関係のものであることが明らかになりますれば、私どもは政府管掌健康保険の赤字対策を、そのもの自体としてすっきりした姿において取り上げることができるわけであります。しかしながら、ここに提出されておりまする健康保険法等の一部を改正する法律案に盛られた内容を拝見し、また、ただいま厚生大臣が行われました提案理由説明を拝聴いたしますれば、これらの内容は、必ずしも一時的な政府管掌健康保険の赤字対策というわけのものではなく、恒久的な医療保障制度の一環として確立されようとしているもののごとくでございます。本法案中に含まれております標準報酬月額の引き上げ、被扶養者の範囲の制限、継続給付の受給資格の引き締め、保険医療機関の指定、保険医の登録、監査等に関する諸規定は、いずれもそらした恒久的な制度化をねらった規定であると思われるのでありますが、それはしばらくおくとしても、この法律案中、国庫が予算の範囲内において政府管掌健康保険事業の執行に要する費用の一部を補助するという規定も、また恒久的な制度としてこれを取り入れられたものであるかどうか。すでに提出されております昭和三十一年度予算の参照書によれば、一般会計から厚生保険特別会計の健康保険勘定へ繰り入れられる三十億円は、保険財政の再建をはかるための補給金であると説明されておりますが、この法律案によれば、必ずしもそうではなく、これを恒久的なものとして制度化しようとされているもののごとくであります。政府は予算提出当時は、暫定措置として出されたものを、この法律案提出の際には、どうして恒久的な補助金として制度化されたものでありますか。そこには政府としていろいろ考究されたしかるべき事由があることと思いますが、大蔵大臣並びに厚生大臣から、その経緯を明らかにしていただきたいと思うのでございます。政府管掌健康保険に対する国庫の補助金が、単なる財政再建のための赤字補助金ではなく、恒久的に制度化された一般会計からの補助金であるといたしますならば、そこには医療費の患者一部負担の増額問題ともからんで、わが国における医療保障計画の今後における進め方の問題ともからんで、たださるべき幾つかの本質的な問題があると思うのでございます。  お伺いしたいことのまず第一点は、この法律に基き、一般会計から政府管掌健康保険の医療費に対して補助される三十億円は、医療保障全般にわたり、国が支出する他の予算との関係において、均衡を失わないものであるかどうかということであります。厚生大臣御承知の通りわが国九千万人の同胞を医療保障の見地から大別いたしますならば、多少の例外はあるとしても、おおよそ四つの階層に分類することができると思うのでございます。その一つは、大規模の事業に従事し、みずから健康保険組合を組織している人々で、本人、家族合せて、およそ九百四十万人、月額一万七千円をこえる平均標準報酬を受けている人々であります。その二は、五人以上の従業者を使っている中規模の事業に従事し、政府管掌の健康保険に参加している人々で、本人、家族合せて、おおよそ一千二百万人、月額一万一千余円の平均標準報酬を受けている人々であります。その三は、五人未満の従業者を使用している小規模の事業に従事し、あるいは自家労力により、農業、工業、商業等、各種の事業を営み、国民健康保険に加入している人々で、その数おおよそ三千万人でございます。この階層に属する人たちが、最低賃金制が施行されれば、その適用の対象となるべき低額所得者を含むものであることは申すまでもないところでございます。その四は、かかる国民健康保険の恩典にも浴しない残余の三千数百万人の人々、疾病にかかった場合には、全額自費で、全額自分の金で医者にかかるか、または全然医者にかからないか、あるいは生活保護法による公的な医療扶助に頼るかのほかに方法のない人々でございます。われわれ九千万の同胞を、医療保障の見地から分類すれば、およそ以上の四階層に分つことができるのでありますが、明年度予算の一般会計から、これら四階層に属する人々のために、医療保障費として国が支出する予算を概観いたしますれば、第一階層の組合管掌健康保険には国庫負担がございません。第二階層の政府管掌健康保険に対しては、ただいまここに提案されておりますこの法律により三十億円、第三階層の国民健康保険には六十四億円、第四階層の、これは生活保護法による医療扶助でございますが、その医療扶助に対しては、およそ百八十億円の国費が支出されることになっておるのでございます。  組合管掌健康保険が、一般に財政状態が良好であり、被保険者の負担も政府管掌より軽く、その上付加給付まで行なっている事例が少くない現状において、第一階層に属する恵まれた九百四十万人の人々に対し、国庫が一般会計より事務費として四億五千万円を支出するにとどめ、医療費自体に対しては何らの補助も行なっていないことについては、この際論ぜらるべき問題はあるまいと思います。問題は、第二、第三、第四の階層に属する残余七千数百万の人々に対する、国としての医療保障の進め方にあると思うのでございます。今、問題をきわめてわかりやすくするため、明年度予算において国庫が医療保障費として一般会計から第二、第三の各階層に対して支出する金額を、その階層に属する人々の頭数で割って一人当りに直してみますと、第二階層千二百万人に対する三十億円は、一人当り二百五十円となり、第三階層三千万人に対する六十四億円は、一人当り二百十円にしかならぬのでございます。ただいま上程されておりますこの健康保険法等の一部を改正する法律案によって、第三階層に属する人々が、第二階層に属する人々に比較し、国庫より冷遇される結果となることは明らかであります。その第三階層に属する人々は、前に申し述べました通り、第二階層に属する人々よりもはなはだしい低額所得者を含むものであるだけでなく、従来から保険料の納入、医療費の本人負担、医療給付の内容等において、第二階層に属する人々とは比較にならぬ不遇な立場に立ってきた人々であるのでございます。すなわち第一、第二階層に属する人々が保険料の半額を負担すれば足りるのに対し、第三階層に属する人々は保険料の全額を自分で負担しなければならぬ。現実に医者にかかる場合、第一、第二階層の人々は、家族を除き、本人は軽微な一部負担をすれば足りるが、第三階層の人々は、ほとんどすべての場合に半額負担を余儀なくされる。保険から受ける医療給付の内容においても、第三階層の人々は、入院や歯科補綴の除外を初め、第一、第二階層の人々に属する健康保険に比べ、はるかに劣るのでございます。従来第一、第二階層の人々の属する健康保険の医療費に対しては国庫の補助がなぐ、ただ第三階層の人々の属する国民健康保険の医療保障費に対してのみ国庫負担が行われてきたのは、かかる理由に基くものであると私どもは理解し、これを是認してきたわけでございます。  この第三階層の医療保障費に対する国庫負担が不十分であるため、国民健康保険が多くの問題をはらんだまま伸び悩み、その普及率は今日なお組織対象の五〇%に足らず、多数の国民が医療保障における第四階層として放置されているのが現在の実情であることは、おおいがたい事実であると思われるのであります。第四階層に対して国が支出する百八十億の予算は、生活保護法に基く医療扶助の予算でございまして、金額においてこそ相当巨額に上っているものの、それはすでに生活能力を喪失している人々に対する公的扶助として支給されるものにほかならず、医療保障としては最も望ましからざる形態の支出であると申さなければならぬのでございます。その望ましからざる形態の医療扶助が年々増加し、今や生活保護に要する国費の半ばを占める百八十億円に達しておりますことは、問題の多い第三階層に対する医療保障の施策が未解決のままに放置され、そこに画期的な進展が見出されないために生ずる必然的な結果にほかならぬと思われるのであります。  かように医療保障における第三階層に対する問題、すなわち国民健康保険をめぐる諸問題は、第二階層に対する国の施策との均衡の見地からいっても、第四階層に対する国費支出の健全化の観点から見ても、実にわが国の全医療保障体系の中心課題をなすものであると思われるのであります。内閣に置かれました社会保障制度審議会、厚生省に置かれました七人委員会等の学識経験者が、いずれも一致して国民健康保険の全面的な設置をもって政府管掌健康保険に対する国庫補助制度創設の前提であるとしているのは、かような理由に基くものにほかならぬのでございます。政府がこの前提たるべき医療保障の中心課題の解決をあと回しにし、今回政府管掌健康保険に対してのみ均衡を失した恒久的国庫補助の道を開かれたのは、いかなる理由に基くものでございましょうか。また学識経験者が現在提唱しておられますように、国民健康保険を全面的に強制設立するとしても、今日のごとく多くの問題をはらんだ国民健康保険を、そのままの姿で国民に強制することが、果して妥当であると政府は考えられるでございましょうか。一部には、政府管掌健康保険に対して二割、国民健康保険に対して三割の医療費国庫補助を行うべしとの主張も行われておりますが、その通り実行するとすれば、一人当りの国庫補助は、第二階層と第三階層との間において、ますますその較差を増大し、両階層間の不均衡をはさみ状に拡大していくことは必至であります。国民所得再配分の機能をも果すべきものといわれる社会保障制度の展開に当って、かような主張を取り入れる余地があると政府は考えられるのでございましょうか。  私どもは、今度の政府管掌健康保険に対する国庫補助制度の創設並びにこれをめぐる諸問題について、以上のような疑問を持つものでございます。この疑問に対する回答を中心に、将来における医療保障計画の進め方について、政府の抱かれる明確なる構想が明かにされない限り、今度の改正に当り、経費を分担するだけでその恩典に浴せざる六千余万の国民が、釈然たる心持で、この法律案を受け入れることは不可能であろうと思われるのでございます。厚生大臣並びに大蔵大臣から、この点に関する明確なる御所見を伺いたいと思うのであります。  次にお伺いしたいことは、医療費一部負担の増加についてでございます。先刻来申し上げます通り、今回の改正は、政府管掌健康保険に対し、一人当り国民健康保険に対する国庫補助を上回る国庫補助の道を開いたものであるにもかかわらず、一部負担の増加あるがゆえをもって、これを改悪なりとする非難の声が高くあげられつつあるのでございます。政府は、これを当初政令に譲り、社会保険審議会の議を経て決定するという含みを残しておかれるやに見えたのでございますが、その具体的内容をあえて本法に盛り込み、ここに提案してこられたわけでございますから、その内容については十分の確信をお持ちのことと存じます。内容の細部については、いずれ委員会で伺うこととし、ここではただ政府がこの一部負担の増加に対する当面の反対運動を、どういうふうに理解し、これに対していかなる対策をお持ちであるかについて伺うにとどめたいと思うのであります。  厚生大臣がこの法律案の作成に当り諮問せられました社会保険審議会は、一部負担に関する当時の政府案に対し、多数意見をもって賛意を表し、その実施に当っては、被保険者の負担が過重にならないように留意すべきこと、これを条件として要望しているのであります。この一部負担に関し、被保険者の負担が過重にならないようにという条件は、一九五二年第三十五回国際労働会議で採択されました社会保障の最低基準に関する条約の第十条で、医療保障の受給者に課する費用分担に関する規則は、過重な負担となることを避けるように立案されなければならないと規定しているのと、その趣旨を同じうするもののようでございます。一体過重な負担とはどの程度の負担をいうものであるかということになりますと、立場々々によって意見は分れると思うのでございます。しかしながら、この社会保障の最低基準に関する条約案が提出されましたとき、オーストリアの労働代表スタークを先頭に、世界六十余カ国の労働代表が、本人の費用負担を最大限三分の一に制限するようにという修正案を提出し、それがなお実行不可能な修正案として、国際労働会議の総会で否決せられた当時のことを私どもは思い起さざるを得ないのでございます。また第二次大戦の後、英国に徹底した社会保障制度をしいた労働党のアトリー内閣が、当時の労働大臣のベヴァンの職を賭しての反対にもかかわらず、入れ歯等について本人負担の制度を採用し、社会保障経済の健全化をはかったことも、まだ私どもの記憶に新たなところでございます。英国における一部負担の首唱者であった当時の大蔵大臣ゲーッケルが、広く英国労働界からの支持を受けつつ、現在労働党の党首となっていることも意義深いことであると考えます。フランス、スエーデン、ニュージーランド等、社会保障制度の先進諸国において、それぞれ五分の一、四分の一、三分の一の一部負担制をとっていることについては、あらためて申し上げるまでもないことと存じます。明年度における政府管掌健康保険の医療費総額は四百四十三億円であります。そのうち従前施行されてきた政令による初診料の一部負担六億五千万円を除けば、今度の法律改正により、新たに本人負担となるものは、厚生大臣御説明の通り、二十三億五千万円でございます。医療費総額から、従前の政令による一部負担を除いた四百三十六億五千万円に対する一部負担の新規増加分二十三億五千万円の比率は五・四%であります。従前の一部負担と新規増加分との合計三十億円の、総医療費四百四十三億円に対する比率をとってみても、六・八%に達しないのであります。すでにわが国の保険料率が世界的に見て高い料率となっていること、及び今般の改正に当り、別途、標準報酬の引き上げが行われている事実などを理由として、こめ程度の一部負担でも過重な負担であるとする議論も一応成り立ち得るものと思われますが、他面わが国の一人当り国民所得はきわめて低位であるにもかかわらず、健康保険においては世界の最高水準を行く医療給付が行われつつあり、一般国民間では千人に一人も手が出せないような医療内容すら健康保険では給付されつつあるという見解が七人委員会から表明されていることも、この際私どもの見のがしがたいところでございます。また今度の国庫補助によって、政府管掌健康保険よりも冷遇されることになった国民健康保険の関係者が、はるかに劣る医療給付についてすら、ほとんどすべての場合、そのつど五〇%の自己負担を余儀なくされつつあることも、この際比較の対象としては見落すわけに参らぬのでございます。もっとも政府管掌健康保険でも、現在家族は半額の自己負担をしているではないかという反駁があるかもしれませんが、昭和二十九年度の決算から拾ってみますと、医療費の家族給付は全医療費の五分の一に過ぎませんので、この健保、国保の一部負担比較論の大筋は変らぬはずであります。こうした今度の一部負担の増加問題を、国際的にも国内的にも広い視野に立って筋道を立てて検討してみるとき、私どもは政府がこの程度の一部負担を過重なものにあらずと信じ、その具体的内容をあえて本法の改正に盛り込んでこられた確信のほどを察するに決してやぶさかではないのでございます。しかしながら一方私どもは、現在国民の各階層を動員して展開されつつあります一部負担増額の反対運動が、必ずしもいわれなきものであるとは信じないのでございます。  私どもの見るところによれば、現在展開されつつある反対運動には、そのよってきたる当然の原因が二つあると思うのでございます。その一つは、今回の措置が政府管掌健康保険の赤字対策に端を発し、これに関連する部分の改正案のみが政府原案として独走し、医療保障計画の全般にわたる他の重要問題がことごとく伏せられておるために、世論形成の材料が著しくゆがめられた姿で提供されつつあるということでございます。一部負担の増加に対する目下の反対論が、健康保険の恩典に浴せざる六千余万の一般国民の利害はこれを度外視し、もっぱら組合管掌健康保険と政府管掌健康保険との比較論に終始しておる事実は、何よりも雄弁にこのことを物語っておると思うのでございます。ここでも私どもは、政府の持たれる医療保障計画の全貌を明確にされることの必要性を、さらに強調せざるを得ないのでございます。一部負担増加反対運動のよって起る他の一つの原因は、そうしてこれがおそらく最も有力な原因であると思われるのでありますが、それは政府とともに、医療保障の一方のにない手であるべき医師の協力が失われつつあるという点にあると思うのであります。冒頭において述べました通り、あまりに多くの問題が一時に殺到し、医療界が混乱に陥りつつある現在、政府は医薬分業及び新医療費体系等に関する諸問題について、それぞれの立場より解決を急ぎ、まず当面の混乱した事態を収拾さるべきでありますが、それとともに、この健康保険法等改正に当っても、医療保障の一方のにない手としての医師の立場を十分に尊重し、その協力的態勢を挽回されることが肝要であると思うのでございます。一部負担の徴収が可能であるか、不可能であるかというような議論になれば、しょせんは水かけ論になるのでありますが、診察、処置等のつど、医師に十円玉一個を請求させようというがごとき案は、元来専門的な職業として尊敬される医師に、未熟練労働者といえども、いざぎよしとしないようなことをしいるのではないかと私どもは懸念するものであります。一部負担分を通常の保険料徴収と同じ手続で徴収するか、その他医師の手をわずらわさずに徴収する方法が工夫されれば、かような問題は解決されるはずでございます。また今後十分論議を尽してみなければならぬところでありますが、伝えられるごとく、乱診乱療、不正請求の防止という観点から、保険医に対する指定、登録、監査等の措置を強化することが真に止むを得ないものといたしましても、行政機関が直接保険医を取締るがごときぎごちないやり方を避け、医師が自主的に組織する団体の仲介を認める等の方法により、摩擦を緩和して、実効を収めるだけの工夫があってしかるべきではないかと思われるのであります。これらの点につきましては、もし厚生大臣がそうした決意をされるならば、その手段については種々の方法がありましょうが、行政的措置をもって解決し得るところも多いと思うのであります。こうした諸問題に対する対策をも含め、厚生大臣が当面の健康保険法等改正反対運動をどういうふうに理解し、これに対し、どういうふうに対処される方針であるのか、それをお伺いしたいのであります。  以上をもって、私はわが国の医療保障制度の確立に関する本質的な問題から、当面の事態収拾方策に至るまで、この法律案審議に入るに当って必要な諸問題についての質問を試みました。質問者の企図するところは、初めに申し上げました通りでございますので、政府側におかれましては、問題点の所在がきっちり整理されるよう、明確な御答弁あらんことをお願いいたします。  以上をもって私の質問を終ります。(拍手)   〔国務大臣小林英三君登壇拍手
  21. 小林英三

    ○国務大臣(小林英三君) 寺本さんの御質疑に対しまして答弁をいたします。  まず最初の御質問でございまするが、医薬分業、新医療費体系は、健康保険の問題と関係があるかないかというような意味のことでございまするが、御承知のように、医薬分業は、従来の医療報酬の形でなしに、技術と品物とを分けてするという形態でございまして、すなわち医師や歯科医師は診療を受け持ち、薬剤師は調剤を受け持つという制度でございまして、従いましてまだ新医療費体系というものは、この医薬分業を円滑に実施するために、今申し上げましたように、物と技術とを分けた新しい医療報酬の組み立てでありまして、健康保険の財政対策は、保険制度の健全な運営のための対策でありまして、医薬制度や医療報酬の体系いかんにかかわらず行わるべきものでありまするから、私は当然別個のものであると考えております。すなわち新点数作成に当りましても、保険財政のために本来定めらるべき点数を加減したようなことは毛頭ないのでございます。  それから三十億円は、今回の改正政府の補助として一時的のものではない、その理由はどうだというような意味のように承わったのでありまするが、健康保険は御承知のようにその時代におきまする医学が要請する必要にして、しかも十分な医療給付をすることが建前でありまして、御承知のように現代医学の進歩というものは、疾病の治療の面に急速な発達を遂げて、新しい医学、薬品が次々に現われて参りまして、医療費の増大というものは単に日本ばかりではございません。世界的の趨勢になっておるのでございまして、二十八年におきましては健康保険といたしましても、これらの新薬の採用となり、また療養給付期間が二年から三年に延長し、二十八年には点数の不合理な点の改正をやって参り、また、今日被保険者も最近非常に累年増大をいたし、医療機関も年々増加いたしまして、保険医の指定の数等におきましても、最近では、一カ年約六千人近くの指定の増加をいたしておるのでありまして、一方御承知のように、政府管掌の健康保険というものは、現在二十三万事業場あるのでありまするが、これらの一事業場の平均の従業員は、大体二十一人程度の弱小の工場でございます。平均標準報酬というものも大体一万二千二百円程度にわれわれは見ておるのでありまして、従いまして一方におきましては医療給付費の増高というものは、非常な勢いで毎年々々増加いたしておりまするが、一方保険財政に対する保険料収入というものは、今私が申し上げましたような理由によりまして、多少の増加は見ておりまするけれども、その増加率というものは、医療費の増高率に比較しますると、問題にならないぐらいアンバランスになっておるのでございます。こういう一方、私はこの健康保険がかつての健康保険でなく、その内容が非常に向上進歩いたしつつありますことは、きわめて望ましい私は状態だと考えておるのでありますが、ただ問題は、先ほどの提案理由の中でも御説明申し上げましたように、二十九年度は四十億円の赤字を出し、しかもこのほかに予備金が、十数億の予備金も出して使ってしまった。そのほかに四十億円の赤字が出ておる。本年度におきましては六十億円の赤字を出しておるのでありまして、三十一年度におきましては六十六億円の赤字が予想されておるような状態であります。しかも健康保険といたしましては、私が先ほど御説明申し上げましたように、必要にして十分な高度の医療給付を保持して参りたい。従いまして社会保険制度の確立を促進する見地に立ちまして、政府管掌の健康保険事業の促進発達をはかるために、国もこれに対して補助をいたし、そうして一方被保険者の諸君にも一部を負担をしていただいて、この健康保険を健全な軌道に乗りつけて参りたいというために、今日の改正案を出したわけでありまして、その他の諸点につきましてもいろいろ改正をいたしておりまするが、根本はそのような意味合いでございまするから、御了承を願いたいと思います。  それから国民健康保険の拡大強化が医療保障の中心と考えるが、政府管掌に力を入れるのはどういうわけであるか、及び将来の医療保障確立の具体的構想というような点に触れられたようでございますが、政府管掌の健康保険の財政安定をはかるために、明年度は三十億円の補助をするのでありまするが、国保に対しまする補助に比べますれば、一人当りが若干上回っておりますることは事実でございまするが、しかしながら国保につきましては、御承知のように第二十二国会で給付費につきましては二割国庫補助が法定化されておりまするし、今後事業の充実発展に伴いまして給付費が拡大されれば、おのずから一人当りの補助額が増額されまするから、明年度のみの数字の上で不均衡であるかのように考えることは、私は当らないと存じます。  それから今後の医療保障の確立につきましては、現在疾病保険制度の適用ないものが、今寺本さんからもおっしゃいましたように、現在三千万人おるのであります。これらの三千万人の諸君は国に対する税金は納めておりましても、医療につきましては自費でやっておられるような状態でありまして、私どもはこれらの、一方国保の普及をはかりつつ、社会保障の五カ年計画の最終年度でございまする昭和三十五年度を目途といたしまして、全国民を対象とする医療保障制度を確立するための年次計画を立案いたしまして、これに向って邁進をしていきたいと存じておるのでございます。  それから、国際的にも国内的にも、この程度の一部負担はしいて過重とは考えないけれども、反対が起りつつあることに対して政府はどう考えるか。これは医療担当者等に対して全貌が明らかになっていないのではないかというような御所見でございます。一部負担制度を行うことにいたしましたことは、ただいま私が申し上げましたように、健保財政が危機でありまして、このままに放置いたしますると、崩壊の一途をたどるよりほかないのでありまして、従いましてそういうことになりまするというと、勤労者の生活にも非常に打撃を与えるおそれがありますので、財政の建て直しを一方においてはばかりながら、将来の健全な発達を期するための必要な措置として実施しておるのでありまして、このいろいろ新医療費体系の問題、あるいは健康保険の問題等につきまして、全国の医療担当者の諸君が寄り寄り御相談をされ、あるいは一つの大きな反対運動も起きておることもわれわれはよく承知をいたしておるのでありまするが、新医療費体系というもの、あるいはそれに伴いまする新点数表というものは、これは従来の形を変えましたいわゆる医療報酬に対する形でございまして、関係者の方々といたしましては、これは一つの大きな、一大転機になる問題でございまするから、いろいろ御心配願っておるのは当然と考えております。私どもはこの新医療費体系の問題につきましては慎重に考慮いたし、また各方面の意見も現に聞きつつあるのでありまして、私自身といたしましても、これらの関係者の代表者あるいは各県の代表者等につきましては、数百人の方片にも会って、つぶさに皆さんの御意見も承わっておる次第でございまして、この問題につきましては近く慎重に善処をいたしたいと考えておるのであります。  健康保険の一部負担等の問題につきましては、これは私は先ほどから申し上げておりまするように、今日この健康保険の赤字を克服するには、従来のように借金によって年々これを補うか、あるいは全額国庫負担によってやるか、あるいは私どもが考えておりまするように、健康保険が今日のこの程度に進歩向上しておるのでありまして、国も負担し、被保険者もすでに五十円、初診料相当額を二十四年には負担していただいておるのであります。二十四年当時の五十円と今日の私どもが考えております一部負担というものは、これは貨幣価値からいたしましても相当の額が違っておるのでありますが、しかし私は一部負担していただくことは、はなはだ気の毒には存じておりますけれども、今日のような健保が非常に向上進歩しておる時代におきまして、この累年、毎年々々の赤字を克服いたし、そうして国家からも補助をさし、被保険者からも一部を負担していくということが、ひいては私は被保険者諸君の幸福でもあるというようにさえ考えておるのでありまして、改正案の一部負担その他の諸点につきましては、われわれもできるだけ弊害のないようにいたしたいとも考えておるのでございます。  くれぐれも、寺本さんに対しましても申し述べたいと思いまするが、この赤字対策を克服するには三つ方法のうちで、現在私どもが考えておりますることが最も建保の将来のためによろしいと、こういうふうに考えておる次第でございます。(拍手)   〔国務大臣一萬田尚登君登壇拍手
  22. 一萬田尚登

    ○国務大臣(一萬田尚登君) 御質問一つは、今回政府管掌の健康保険に三十億の国庫補助をしたその意義でありますが、なるほどこの予定経費要求書の事項別の説明には、財政再建をはかるための補給金と、かようになっておるのでありまするが、これは当初から臨時の措置という考えは持っていなかったのであります。政府といたしましては、政府管掌健康保険の財政が何分危機に瀕してもおります。従いまして、この再建をはかり、積極的にこの社会保障制度の確立を促進するという意味をもちまして、今回三十億国家の補助をする制度を作ったわけでありまして、さように御了承願いたいと思います。従いまして、今年限りのものではありません。  さらに、今回の財政措置によります政府管掌健康保険と他の健康保険との均衡関係についての御質疑でありますが、これは各保険それぞれの特殊性等も持っておりますし、法律上の仕組みも異なっております。従いまして、単に国庫補助の被保険者一人当り幾らという、こういうふうな単純な比較は、必ずしも適当とは申されぬと思うのでありますが、しかし政府といたしましては、今後財政の許す範囲におきまして、いずれの保険も健康保険につきまして充実をいたしたいと考えておる次第でございます。  なお、政府管掌健康保険二割、国民健康保険三割の国庫補助というような論議でありますが、これは私その議論をつまびらかにいたしておりませんが、これは先ほども申しますように、それぞれ保険には法律上の仕組みも違っておりますので、一人当りの補助がどうと、こういうふうに持っていくわけにもいかないのでありますが、しかし同時にこういう二割、三割という国庫補助につきましては、はなはだ残念でありますが、今日の財政事情では、なかなか困難な状況にありまして、実現はむずかしい、かようにただいまのところ申し上げざるを得ないのであります。御答弁といたします。(拍手)   —————————————
  23. 河井彌八

    議長河井彌八君) 山下義信君。   〔山下義信君登壇拍手
  24. 山下義信

    ○山下義信君 私は日本社会党を代表して、ただいま政府が説明をいたしました健康保険法等改正に対し質問するものでありますが、本案に対する反対の声は、今や全国にほうはいとしてみなぎっておりまして、特に十万の医師、歯科医師等は、保険医総辞退の決意を固く固め、被保険者たる全勤労者は言うに及ばず、国保地域住民に至るまで、これに相呼応する勢いでありまして、物情騒然たるものがあるのであります。   〔議長退席、副議長着席〕 従って私の質問に対しましても、政府は真剣に答弁せられたいのであります。  まず鳩山総理に伺いますが、近代政治の目標が、国民文化の向上と貧困の解放にあることは申すまでもないことであります。従って社会保障政策は、各国の主要政策でありまして、一九三七年初めてこの言葉を打ち出した米国は、現アイクに至って機構を拡大して社会保障省を設置し、養老年金の給付の増額等を断行したのであります。彼れ今日の盛名ある、まことにむべなるかなであります。一九四八年ビヴァリッジ案採択以来の英国が、数度の耐乏予算を組み、ポンドの防衛と戦いながらも、与党野党相協力し、この大制度を堅持しつつあるありさまは、われわれの感銘にたえないところでございます。  しかるに鳩山内閣は、何に戸惑い、何を倒錯されたのであるか、ごうごうたる世間の非難にも耳を傾けず、新時代の流れに逆行いたしまして、ここにその制度を改悪しようとするのであります。もちろんわれわれはこれを遺憾とし、これに反対するものでありますが、同時に日本人としていささか羞恥の念なきを得ないのでございます。おそらくこのことは、鳩山総理一代の失政となり、長く後世の物笑いになることと存じますが、総理はいかにお考えでございましょうか。日も早、西山に傾けば、総理を思う者一人もなしとは、まことにお気の毒の至りにたえません。  一体自民党は、合同以前から社会保障の拡充を叫び、われわれと朱紫弁じがたきほど健保の強化、範囲の拡大、国庫の負担等、相当なことを言ってこられたのでございます。ことに前国会におきましては、厚相、蔵相相づちを打ちながら、この席で二割負担は目の前にぶら下っているようなことを言われたのであります。総理自身また施政方針の一つとして、しばしば社会保障の推進を口にされたのである。しかるに、総理の口は、またしても事実と相違するのであります。達者なのは口先ばかりであります。推進とは前へ進むということである。前へ進むといいながらあとへあとへすさるというものは、天下広しといえども、鳩山内閣と猫のかん袋だけであります。(笑声、拍手)私はこの際、鳩山内閣に真の社会保障計画ありやなしやを尋ねたいのでございます。おそらくないのであると思う。しかし、あるというのであるならば、はっきりとお示しが願いたい。同時にこれが実行のプログラムをもあわせてお見せ願いたいのであります。  次に、わが国の社会保障制度を改悪するということは、単にわが国だけの問題でなく、アジア全体にとって、まことに不幸なできごとであるということであります。貧困のアジアにおいて、社会保障未発達のこれらの地域において、わが国社会保障制度の持つ役割というものは、相当重大なるものがありまして、わずかな財政の都合ぐらいでこの制度の重大性を無視し、軽率な改悪などをしてはならないのであります。さきに東南アジアの国々から多くの人々が調査のために来朝したのであります。そしてアジアを守る最大の平和政策は、社会保障のほかなしと考えられているのであります。このときにおきまして、かくのごとき改悪をなすということは、いかにも再軍備政策に急であって、バター政策に緩であるとの印象を与え、その影響おもしろからずと考えますので、この点特に総理の御信念を承わりたいと思うのであります。  次は大蔵大臣にお尋ねいたします。大蔵大臣は、全体としての社会保障についての今後の見通しと、これに対する財政当局としての方針、またそれらの使途、効率等に対する御見解をもあわせて承わりたいのであります。健保の国庫負担論につきましては、先ほどの質問者がいろいろに申されましたが、私ども社会党といたしましては、医療の社会性、疾病の責任の国家性健康保険の強制的制度であるというその性格、経営の責任が国にあるということ、保険財政の現状等からいたしましても、少くとも医療給付の二割負担を主張する者であります。しかるに、往々にして国保とのアンバランスをもってこれを否定せんとする者があるようでありますが、謬見もはなはだしいと言わなければなりません。詳細なことは、また別の機会で論争いたしたいと思いますが、そこで、国庫負担につきまして、政府の考えをこの際明らかにしていただきますためには、本改正案に出された第七十条の三につきまして聞くのが一番よいと思うのであります。ここでは、国庫負担の性格を明確にされたいのであります。この法文は、前質問者がお読みになりましたから省略いたしますが、この費用は、負担でなくして補助ということになっております。負担と補助とはどういう区別を財政当局は使っておるのであるかという点であります。同時に、一体この補助は赤字がなくなっても継続するというお考えであるかどうかということであります。もし赤字がなくても補助をするというならば、組合管掌の健康保険にも補助をしなくちゃならぬという道理になりますが、この点はいかがでありますか。また定額負担をいたさないこのたびの措置によりますと、三十二年度以降の補助額のその額を決定するのは、いかなる基準によって決定するというお考えであるか。その基準をお示しが願いたいのであります。何がゆえに定額負担をしなかったかということの理由を明らかにせられたい。しかし好むと好まざるとにかかわらず、やがて定額国庫負担を早晩しなくちゃならぬと考えておりますが、財政当局はあくまでこれをなさらないという御方針であるかどうか。これらの点につきまして大蔵大臣からその御所見を承わりたいのであります。  所管大臣たる厚相に対しましては、内容に立ち至りまして具体的に伺いますから明瞭にお答え下さい。  第一は、改悪中の改悪である一部負担ということであるが、なぜかような措置をとったかということが明白でありません。先ほどの御答弁では、何をおっしゃっているのかわけがわからぬ。赤字のためにこういう措置をとったというならば、赤字がなくなったらやめますか。簡単にお答え下さい。もし恒久制度にするんだというのならば、いかなる特徴があって、いかなる利益があって、この制度をとるということがどれだけいい意味があって、これを恒久制度になさるのであるかということを明白にしていただきたい。  第二は、この一部負担というものの支払いの責任はだれにあるか。患者にこれだけの額を払えというのか、医者に払えというのか、患者が払わなかったらば、それはだれが責任を持つのであるか。この改正案においては、その責任がきわめて不明確である。たとえば、国民保険においては一部負担を被保険者に命ずる。もしこれを払わなかったらば、国民健康保険をやっている市町村が責任をもって療養担当者に払うことになっておる。しかるにこのたびの改正では、政府は一向責任を持とうとしないのである。なぜ責任を持たないのであるか。だれがこの最終の支払いの責任を持つのであるかということを明らかにしていただきたいのである。すなわち結局は医者の負担になるのでしょう。結局は医者の負担に押しつけるという考えでしょう。そうでなかったらば、だれが責任を持つのであるかということを明らかにされたい。それから患者に五十円払え、十円払え、そのつど三十円払えということが命じてある。払わなかったらどうする。払おうと払うまいと、法律ではこの健康保険の経営責任者である政府は、患者に対しては療養の給付をする義務がある。一部負担を払わなかったら、治療してやらないのですか。そういうことにはなっていないでしょう。一部負担を払おうと払うまいと、政府は療養給付をする義務がある。言い換えたならば、この一部負担は払わなくてもいいんですね、払わない者は治療をしないというおきてがないが、どうするのであるか。  第三は、この一部負担はきわめて過重であります。ただいま過重でないなんというような議論がされたようでございますが、どこをもってそういう議論をなさるのか。私どもは非常に過重であると考える。この一部負担は、一体患者一人当りにどれだけの負担になりますか、お示しを下さい。いろいろ諸外国の例などをお示しになっておられますが、諸外国の例なぞというものは、これは非常に事情が違うのである。国民所得においても違うのである。また被保険者の収入においても違うのである。また給付の内容においても違うのである。また国が持っておるところのその補助においても莫大な相違があるのでありまして、一律にこれを論ずるということはできません。ことにわれわれが過重な負担であると論じまするのは、これらの一部負担をする者は、すなわち労働者の病気にかかった者であります。病気にかかれば収入がない。収入のない者から取るということが過重であるとわれわれは言うのであります。(拍手)収入のない者から取るというのは、五十円が重いのじゃない、三十円が重いのじゃないのであって、一円取ることも重いと言うのである。河となれば無収入であるからであります。しかも日雇労働者から取るに至っては、過重の最もはなはだしいものと言わなければなりません。日雇労働者は失業者であります。失業者から取るとは何事であるか、これでも過重でないというのでありますか。私どもは、この一部負担はきわめて過重であると考えておる。厚生大臣は、かかる欠点の多い一部負担制について、これを再考し、これを改めるという意思がないかどうかということをお尋ねいたすのである。  次に、今回いろいろの制限を設けて被保険者を圧迫しようとすることは、結局医療費の増大を防いで受診率の低下をはかって、レベル・ダウンをしようとする考えが真の目的であることは言うまでもないことで、私は、受診率の低下を望むならば、予防活動、公衆衛生活動を盛んにすることが本筋であって、これが近道であると考える。(拍手)かくのごとき邪道をとることは誤まりであると思いますが、厚生大臣はどう考えているか。政府は、公衆衛生活動、特に保健所行政について将来いかなる施策をなさんとするか。その方針を示されたいのであります。  先ほどから国民皆保険、国民皆保険を実施して三千万の未加入者、これを保険に入れるなんというようなことをしきりに言われまするが、砂上にどうして楼閣を築くことができるのでありますか。無責任なことを言ってはならぬのであります。国民皆保険の前に、まず公衆衛生の普及徹底が絶対不可欠の条件でありまして、その前提なくしては、保険の実施は不可能であるからであります。  公衆衛生のことを申しましたから、どうしても結核対策のことを聞いておかなければなりません。健康保険の解決は結核の解決なること、すでに定論であります。政府はなぜこの根本対策に手をつけなかったのであるか、実にけしからぬ話であります。結核対策は開店休業のありさまである。それで健保の建て直しということがよくも言えたものです。厚顔無恥もはなはだしい。政府の結核対策には早期発見、早期治療ということが十分なされていないのである。百三十五億円の予算を取っておるが、予防とか治療とかということには、わずかにそのうち二十億円しか使っていない。それがために年々六十三万人の新しい患者が発生しつつあるのである。結核患者の減らない結核対策をとっているのである。これが保険財政の三分の一、すなわち百五十億円以上を食っておる。国民全体としては七百億円の結核治療費の損害をこうむりつつあるのである。わが党はこの盲点をつきまして、今回の予算組みかえ案で、百二十億円を投じまして、百万人の対象者に無料注射をやって、三カ年間でわが国から結核病を一掃するという政策を立てたのです。(拍手)まことにすばらしい政策です。これはわが党の政策なんです。私は、政府にどんな新しい結核対策を持っておいでになるか、ここで承わりたいと思うのであります。  次に通産大臣に伺いますが、中小企業育成の見地から、健康保険のこのたびの改正をいかにお感じになっておるか、このことに関連いたしまして何かお考えはないかということを承わりたいのであります。  政府管掌の被保険者五百万人、これは言うまでもなく弱体の中小企業及びその従業員でありまして、半数以上は月収一万円以下の低額所得者、五千円以下の者だけでも実に百万をこえております。そしてその家族は八百万人に及んでおる。一カ月の収入が一万円とか五千円とかという者は、むしろ生活保護の階層である。それでも保険料はフラットで払っておる。その上、一部負担を同じようにかけようとするのであるか。いかにしてもこの改正案は無理である。今日までこれらの中小企業の日の当らぬ人々が、健庫保険を唯一のたよりとして、どれだけこの医療保障を喜んでいるかは通産大臣御承知の通りであります。今回こり改悪、後退に対し、中小企業育成の見地からしていかに対処されんとするか。特に通産大臣の御所見を伺う次第であります。  次に労働大臣に伺います。  われわれがこの改正案につきまして奇異に感じますことは、保険財政の行き詰りをことごとく労働者側にのみ背負わせて、事業主側の負担というものがどこを探してみても見つからないということであります。これはすこぶる穏やかでない。標準報酬の引き上げに難色を示したのも彼らである、一部負担の強い主張も彼らの要請するところでありまして、政府はことごとくこれに盲従したのである。本案は、その正体は日経連の案である。私は、事業者側も、健康保険を目のかたきにしないで、何らかの形でその負担を公平にすべきであると存じます。なるほど医療費は増大しました。しかしそれにもまして生産性は上昇のカーブをたどっておるのであります。健康保険が果す労務管理への貢献、労基法が要求する健康保持の支柱、そのいずれの観点からいたしましても、国はもっと強力に補助し、その援助を惜しむべきではないと思うのであります。一方において労使協調を説き、また生産性向上運動を推進しようとする政府が、他方においてこれを阻害するがごとき施策をいたしますことは、まさに政策の分裂ではありませんか。また労働大臣の御関係におきまして、ただいま申しましたように日雇労務者から一部負担を取ることは行き過ぎではないかと思うのであります。失業者に負担させるという考え方は、労働大臣においていかに考えられるでありましょうか。以上賢明なる倉石労相の御所見を求めます。  次に保険医対策のお話がありましたから、私からも厚生大臣に伺いたいと思います。  われわれ社会党の保険医対策は、保険医を信頼し、その能力と社会的地位を高く評価し、保険医、同歯科医師、同薬剤師等療養担当者を運営機能に参加させるという考え方であります。しかるに政府の対策は、一から十まですべて取締り主義でありまして、これは寺本君も御指摘のように全部の医師を不正医とみなし、これを向うに回して威嚇するという態度である。保険医を威嚇すれば、彼らは萎縮しましょう。萎縮させて、さてどれだけの利益があるというのでしょう。そうして萎縮するという医師というのはだれでしょう。気の弱い善良な医師のみが萎縮するのであります。善良な医師が萎縮すれば、不正医は横行するのであります。こういう愚策はすみやかにやめて保険医との協力態勢を作るべきでありますが、政府はどのようにそれを具体化する考えであるか承わりたい。それがために相手方の団体につきましても、どうあるべきかということを考えなくちゃなりませんが、それらの実行方法等につきまして、お考えがあれば承わりたいと思います。  最後に締めくくりの質問鳩山総理にいたしたいと思います。ちょうど健康保険法の審議をいたしますこの機会に、総理の御健康をお見舞申し上げたいと思います。総理の健康につきましては諸説ふんぷん、昨今、このことが政局の話題でもありますし、国民が心配しておる点でございます。果して国務担当に支障なきやいなやということをお伺いしたいと思います。ついで本法律案結論として総理の御所信を伺いたいことがあります。それは人命尊重についてでございます。わが党の千葉議員がこの壇上で申しましたように、最近の親子心中、殺人、自殺、いたいけな少年少女の事もなげに命を捨て、わけもなく人の命をとる。この社会事象、この人命軽視の風潮を総理はいかに見、いかにお感じになるでありましょうか。一体この風潮はどこから出たものでありましょうか。私はあえて伺います。人命以上に尊重すべきものが他にあるでございましょうか。下世話に金より大事な忠兵衛さんと申します。金も大事でありますが、金以上に人命はより尊重せられなければなりますまい。あなた方の内閣は、ともすれば人命よりは金を大事にざれる風潮があります。(拍手)人命を軽視するきらいがあります。すなわち本案のごときはその一例です。なおる病気、死なないでも済む病人を、金ゆえに殺すことになるかもしれぬ法律がすなわちこれであります。政府は赤字をおそれておる。しかしながら、赤字よりもおそるべきは、人命を軽視する政治であります。どう考えても、この法案は、総理の心から賛成されたものとは信じられません。いまわのきわの善政として、政府へなり、与党へなり、この法案の毎検討を御命じになるとお考えはありませんか。  以上で私の質問を終ります。   〔国務大臣鳩山一郎君登壇拍手
  25. 鳩山一郎

    ○国務大臣(鳩山一郎君) ただいまの山下さんの御質問に対してお答えをいたします。  政府としては、社会保障制度の確立を推進することにつきまして、つとに重点を置きまして、これが諸施策の進展に努めて参ったのでありますが、特に医療保障の達成が当面最も緊要な問題を考えられるので、昭和三十五年実施と目途として、全国民を対象とする医療保障の確立をはかるために検討をさせている次第であります。  なお今後の人口の老齢化現象に対処するため、老齢者対策についても特に慎重に研究をしている次第であります。  政府が社会保障制度に関して冷淡なようなことをおっしゃいましたけれども、政府としても社会保障制度の推進、拡充については、特に重点を置きまして、明年度予算においては本年度に比して約百二十億円を増額をいたし、社会保障関係費は千百三十四億円を計上しておるのでありまして、施策の推進を期しておる次第であります。  なお最後に、人命軽視の風潮についてお話がありましたが、全く同感でございます。  なお、私の健康についてお尋ねがありましたが、最近私の健康は減退しておるとは考えておりません。(拍手)   〔国務大臣一萬田尚登君登壇拍手
  26. 一萬田尚登

    ○国務大臣(一萬田尚登君) 一つの御質問は、社会保障費の増減が財政規模とどういう割合になるか、あるいは絶対額はどうか、こういうような御質問であったと思います。三十一年度の予算について具体的に申しますと、社会保障費関係予算額は千百三十四億円でありまして、前年度に比べまして約一割、一〇%の増額であります。一般会計の歳出の総額が約二・一先の増加にすぎません点等をあわせ考えますると、先ほどもお話がありましたように、政府は社会保障についてできるだけの配慮を加えていることを御了承願いたいのであります。  なお、今後一そう生活保護、社会保障、保健衛生対策等、社会保障関係費の充実に努めていきたいと考えておりまするが、財政規模との関係につきましては、今後の社会経済の情勢がどういうふうになるか、あるいはまた財政的な見地、いろいろな点から前もってどうというわけには参りませんので、それらの情勢に対応して適切にやって参りたい。しかし今申しましたように、社会保障費に重点を置くことは申すまでもありません。  それから今回の政府管掌健康保険に三十億の国庫補助をしたその理由はどうかという御質問でありますが、これはすでに御答弁申し上げましたように、社会保障制度の確立を促進する見地に立ちまして、政府管掌の保険事業の促進発達をはかるために特に国が財政援助をする、こういうふうなためからであるのであります。  なお政府管掌の健康保険に赤字が解消して後まで、なお補助するなら健康保険組合にも補助するのかと、こういう御質問であったと思いますが、御承知のように健康保険組合は概して平均標準報酬も高うあります。衛生管理も行き届いておりますし、また関係事業費との結びつきも強うございます。保険事業運営が円滑に行われております。財政的基盤も強固でありますので、政府管掌健康保険のみを対象といたしたわけであります。この問題につきましては、今後全国民を対象といたします医療保障制度確立の構想の上に立ちまして取扱いを検討して参りたいと、かように考えているわけであります。(拍手)   〔国務大臣小林英三君登壇拍手
  27. 小林英三

    ○国務大臣(小林英三君) 山下さんからいろいろの点につきまして御質問があったようでありまするが、健康保険の改正というものにつきましては、先ほどもちょっと申し上げましたように、現在財政上の危機に立っておりまして、もし放置しておきますると崩壊の一途をたどり、ひいてはこれが勤労者の生活に非常な大きな打撃を与えるおそれがある、従いまして今回の改正というものは、国庫負担、一部負担、標準報酬等級の引き上げというような、単に財政的なものがこれが主体となっておりまするけれども、これら改正点は、単に赤字対策として財政効果のみを目的としたのではないのでございまして、やはり高度の医療制度を保ちながら、将来に向いまして健康保険そのものを健全に発展せしめていくというために必要な措置として改正をいたしている次第でございます。  それから一部負担の支払いの責任はだれにあるかというような御質問でありましたが、これは患者にあるのでございます。それから払わない場合はどうするかというような御質問でございました。(「払えない場合だ」と呼ぶ者あり)なお日雇い労働者の問題にも言及されたようでございますが、これはちょっと、山下さんにお考え違いがあったのではないかと思う点は、日雇い労働者の健康保険では、今回の一部負担、健保のような一部負担の拡大はいたしておらないのでございます。もし、一般の場合におきまして、今回の程度の一部負担であれば、私どもはこれは患者が支払い得るものというように考えておりまして、万一支払えない場合におきましては、やはり生活保護等によりまして、生活保護の活用によりましてやっていくべきものだと考えております。  それから一部負担というものは、患者一人当り平均どのくらいな負担になるだろうかというような御質問でございましたが、この計算は、非常にめんどうな計算になると思いますけれども、私どもの推算によりますれば、一般の外来につきまして申し上げまするというと、平均一人当り二百十七円と推定をいたしております。歯科の場合におきましては、百二十八円と推定をいたしております。入院の場合につきましては、千五百二十二円と推定をいたしております。  それから受診率の低下を来たすのじゃないかという御質問でございます。一部負担によりまして、ただいま申し上げましたように、三十一年度におきましては二十三億六千百万円の保険財政の負担軽減を予定しているのでございますが、この実施によりまして乱診乱療というものを防止することはあり得るといたしましても、正当な受診を抑制しようというような考えはないのでありまして、そのことは来年度の医療費の算定の数字をごらんいただけばわかると思います。来年度の医療費の算定の数字というものは、大体におきまして今年度よりも一割余分に見てあるのでありまして、むしろ私は正しい受診を制限することのないように配慮して、そうしてその他の方法につきましても決定している次第でございます。  それから公衆衛生施策の問題についてり御質問でございまするが、健康の向上をはかりますためには、もちろん公衆衛生施策というものは最も必要な問題でございまして、政府といたしましても、今日まで公衆衛生の向上発展に非常な努力をいたしておるのでありまするが、そのことは、結核による死亡率の減少であるとか、あるいは国民の平均寿命の延長であるとかいうようなことにも現われて参っておるのでありまして、三十一年度の予算におきましても、保健所の人的あるいは物的の整備、結核対策の強化、精神衛生対策、あるいは上下水道等の環境衛生施設の整備にも重点を置きまして、また、わずかではございまするけれども、ハエや蚊のいない生活実践運動等につきましても、保健所を中心として、広く地域社会の住民の衛生活動にも呼びかけておるような次第でございます。  なお結核対策につきましての御質問でございまするが、これは幸いにいたしまして、この死亡率は非常に減少をいたしておるのであります。今日千人につきまして大体八・二人という状況でございまして、従来から考えますと、非常に少くなっております。患者数は依然として多いのでございまして、これにつきましては、まず第一番に必要なことは予防の問題であると思いまするので、これに重点を置きまして、健康診断につきましても、本年度は昨年度より一千万人多く六千二百六十五万人、それから予防注射にいたしましても昨年より七十五万人多く、千六百五十一万人を予定いたしておるのでありまして、その他結核の医療費の公費負担制度につきましても、三十一年度は対象人員を昨年度より四万人を多く見込んでおるのでありまして、今後社会保険あるいは生活保護あるいは医療扶助等につきまして、十分推進して参りたいと思っておるのであります。  なおただいま仰せになりました山下さんの属する党派におかれまして、お企てになっておる問題でございますけれども、私どもといたしましては、現実のこの国家の財政に即しまして、そうして社会保障という問題につきましても、国家の財政において前進していくべきものである。そしてこの今回の健康保険の一部負担という問題につきましても、これはいろいろ御議論があるかもしれません。しかしながら、先ほど申し上げましたように、二十四年におきましても、初診科程度の五十円の一部負担をいたしておりまして、今日社会保障制度の発達しておる国々は、いずれも一部負担をしておるのでございまして、私は今日のような健康保険の進歩向上した状態におきまして、国も負担し、また被保険者も今日の初診料相当額の負担よりもさらに一歩進んで負担をしていただいて、健康保険を健全な軌道に乗せていくことが必要であると考えておるのであります。(拍手)   〔国務大臣石橋湛山君登壇拍手
  28. 石橋湛山

    ○国務大臣(石橋湛山君) お答え申し上げます。  健康保険法の今回の改正によりまして、中小企業に与える影響でありますが、これは御指摘のように、何がしかの負担を増加することは、これは事実であります。しかし私どもの見るところによりますれば、その負担増は、決して中小企業者ないしその従業者に非常な重荷になってたえられないというようなものではございません。ただいま厚生大臣から申し上げました通り、健康保険等の全体の観点の上からやむを得ない、かように考えております。   〔国務大臣倉石志雄君登壇拍手
  29. 倉石忠雄

    ○国務大臣(倉石忠雄君) 労働大臣といたしましては、このたびの健康保険法の改正につきましては、労働行政という立場から、きわめて重大な関心を持っている次第でございますが、今度の改正が先ほど御説明申し上げましたように、この保険財政を確立するという建前でございますので、労働者の負担が少ければ少いほどけっこうだという建前から申せば、御不満の点もよくわかるのでありますが、先ほど御説明申し上げましたような趣旨で、このたびの措置は適当な措置ではないかと存じておる次第でございます。  なお労働省のことにつきまして、労働者の保健保持のことでございますが、労働者の保健保持のことにつきましては、私どもは御承知のように、常に重大なる関心を持っておる次第でございまして、今回の健康保険法の改正は、今申し上げましたように必要とは認めますが、その他労働者の立場から、職場の安全、健康という点については、御承知のように、従来しばしばいろいろな施設をいたしまして、安心して働くことのできるような、災害の防止あるいはまた職業病、その他職業性疾患の予防につきましては、御承知のように、監督と指導をかね合せて、従来も種々の手当をいたして参りました。なお業務上の負傷、疾病に対しましては、労災保険等による補償あるいはまた先般の国会で御決定願いましたけい肺法等を施行することによりまして、当該患者には手厚い保護を国家がいたしておることも御承知の通りでございます。  なお、近く御審議を願います法律の中に、労働衛生に関します科学的研究の向上、充実をはかるために、労働衛生研究所を設置して、この方面について、政府といたしましては万全の措置をとって参るつもりでございます。  なお、健康保険を実施することによって、政府の努めている生産性向上運動に影響を来たすのでなないかという御懸念のお話でございましたが、生産性向上運動はよく御承知の通りに、最終的に商品の価値を上げ、そうして製品のコストを下げるということで、日本の国際経済力の競争力を増していこう、このことによって日本の経済規模の底を深くいたして参ろうということでございますから、その結果生ずる利益というものは、労働者の賃金値上げや経営者の利潤分配を多くするということでなくして、一般の国民に対しその恩典に浴せしめるということでございますが、さらに私どもは、生産性向上運動の結果招来する利益につきましては、もちろん労働者の福利施設の増進という方に向けていくわけでございますからして、一部の少額なる負担はやむを得ないといたしまして、生産性同上運動は、そういう趣旨でこれに協力いたしていただくことが労働者の利益ではないかと、このように存じておる次第であります。(拍手
  30. 山下義信

    ○山下義信君 再質問いたしたいと存じます。御許可を得たいと存じます。
  31. 重宗雄三

    ○副議長(重宗雄三君) 山下義信君。   〔山下義信君登壇拍手
  32. 山下義信

    ○山下義信君 ただいま鳩山総理以下各閣僚の御答弁を承わったのでありますが、非常に私は不満足に存じます。厚生大臣に対する質問の中で、お答え漏れがありますから、これを願うのでありますが、私は保険医との協力態勢についてどう考えるか、これらの団体との団体交渉等について何か考えておるところがあるかということを承わったのでありますが、その点の御答弁を願いたい。  先ほどから厚生大臣初め大蔵大臣各閣僚とも、保険経済のために万やむを得ない、万やむを得ない措置であるということをしばしば政府は繰り返されるのでありますが、ほんとうに保険経済はそんなに赤字になっておりますか。三十一年度の赤字の見込みを一応お出しになっておられますが、現実に今進行中の昭和三十年度の保険経済も私どもでは、非常に改善せられた跡があると考えておるのであります。それから推して考えますと、三十一年度の赤字は、政府がこれを申しておるような、そういう赤字額にはならないと考えておるのであります。従って三十一年度におきましては、三十年度においてもそうでありますが、赤字の額がぐっと減ってくる。たとえば昨年の秋から冬にかけまして健康保険の医療費は支払いが減ってきているという事実がありますから、今年の三十年度だけでも赤字の見込みはだいぶ減ってきたと思いますが、いわんや三十一年度におきましては、私どもは政府が言うがごとき赤字は出ないのではないか。何かここに一つ手品の種があるのではないか。もし赤字が出ないということになれば、今政府が提案しておるところのこの一部負担とその他において修正の余地がある。修正の余地があるということが政府や与党の首脳部にわかっておるのじゃないか。でありまするから、政府はこういう原案を出して世間がわっと騒いでくるというと、あるいは与党の方でどこか修正するかもしれぬ、どこかいじくって、そしてそれはいじくることはできる、赤字がそんなにないという見通しがあるとすれば。そうして世間の反対運動を緩和するといって、参議院選挙にこれを利用しようとする魂胆があるのではないかということを私どもは思う。こういうまじめな健康保険とか、あるいは人の病気というような弱点につけ込んで、これらの法案に対して参議院の選挙対策などにこれを利用するなんという悪い量見はおやめ願いたいと思う。三十年度の赤字の見込み、三十一年度の赤字の見込み、最近が保険経済のその状況について、明確に数字をもってお示しを願いたいと思います。(拍手)   〔国務大臣小林英三君登壇拍手
  33. 小林英三

    ○国務大臣(小林英三君) 山下さんの再質問にお答えいたします。  三十一年度の保険の財政に何か種があるのではないかというように聞えました御質問でございましたが、これは決してそういうような種も何もないのであります。現実の問題といたしまして、私どもが非常に慎重に作業いたしました結果、収入総額が五百五十六億でございまして、これに対する支出が六百二十二億円でございまして、約六十六億円余の収支の不足ができて参るのでございます。  それから全国の医療担当者に対して政府はどういうふうな態度をとるかというような意味の御質問だったようでございますが、私どもは、新医療費体系の問題につきましては、これは先ほどもちょっと申し上げましたように、政府といたしましては四月一日から発足いたすことになっておりまする医薬分業に対しまして、現実の問題として、物と技術とを分けるのでありまするから、新しい医療報酬の建前といたしまして新点数表を発表いたしたのであります。この発表いたしましたものも、もちろんこれが最もよろしい、よろしいことであるということで発表いたしたのでございます。しかしながら、私どもといたしましては、(山下義信君「そんなことじゃありません。将来の協力態勢をどうするかということを聞いているのです」と述ぶ)それでありますから、私どもといたしましては、この問題につきましては、十分に関係者各位の御意見も徴しまして、そうして慎重に参りたいと思っているのでございます。(拍手)   —————————————
  34. 重宗雄三

    ○副議長(重宗雄三君) 梶原茂嘉君。   〔梶原茂嘉君登壇拍手
  35. 梶原茂嘉

    ○梶原茂嘉君 私は、ただいま上程されておりまする健康保険法等の一部を改正する法律案について、若干の質問をせんとするものであります。すでに寺本、山下両氏によって質問された点と多少重複するのであります。しかしながら、関係大臣の御答弁で納得のできかねるところもありまするので、重ねてお伺いをいたしたい、こう思うのであります。  医療保障制度は、国民生活安定の基盤でありまして、従ってまた社会保障制度の中核的の存在をなしておりますることは、これは多言を要しないところであります。政府は今回の改正法案を提出するに当りまして、その趣旨説明において、社会保障制度、特に全国民を対象とする医療保障制度の完全実施を前提としつつ、その一環としてこれを実施すると述べているのであります。もちろんわが国が、全国民を対象とする医療保障制度の完全実施に向って、まさに邁進すべき時期に際会しておりますことは、もはや論議の余地はないと思うのであります。  しかるに、現状はどうかと申しますれば、御承知の通り、現行の医療保障制度は、政府管掌及び組合管掌の健康保険制度、国民健康保険制度、その他各種の部門に分れておるのであります。それに公的扶助の制度もつけ加わって実行されているのでありますが、これらはそれぞれ発達の歴史、沿革を異にしております。被保険者の負担関係におきましても、あるいは医療給付の程度、内容におきましても種々の相違があるのであります。また、国家の責任のあり方という点につきましても、これは一様ではない。また、社会保障としての理念という点からいいましても、必ずしも一貫しているわけではないのでありまして、相当の効果はそれぞれ上げておりまするけれども、いずれもその内部には、きわめて困難な問題を包蔵しながら、しかも相互に関連しつつきわめて複雑な様相を呈しておるのが現状であります。加うるに、五人未満の零細な事業所におきまする勤労者の大衆、さらにまた農山漁村におきまする多数の人々、かれこれ全国民の半数近い大衆は、現在なお社会保障制度の圏外に放置されておるのが現状であります。従って体系的に見まするというと、これは社会保障制度として総合的な体系をなしておらないように思われるのであります。そこで問題は、先ほど総理も、山下さんの御質問に対してお答えになったのでありまするが、昭和三十五年を期して全国民を医療保障制度の対象にすることを実施するという計画であります。問題は、全国民を対象にしての医療保障制度の場合において、それは一体どういうふうな構想、どういうふうな構図の制度であるかというところに、私重要な問題があると思うのであります。それぞれ現在複雑をきわめております各部門の制度をそのまま整備拡充していくとい今のも、これは一つの行き方でありましょう。あるいはその間に相当の調整、統合をはかりながら、新しい一つの構図を将来において作り上げるというのも一つの考え方、さらにまた、英国のように、一元的な医療保障制度を作り上げるということも考え得る構想と思うのであります。一体厚生大臣は現在において、将来全部国民が入った場合における社会保障制度としての医療保障制度、それは一体どういう構図といいますか、設計図といいますかを想定されておるのか、これを一つ伺いたいと思う。ただ現在やっているのをそのまま延ばしていくということでは、相当私はロスが多く、国民経済上としても、また財政上にも問題があるのではないかと思う。現在において少くとも、最後の一つ構図をまとめ上げるということが大事だと思うのであります。第一に伺う点はそれであります。  その次に、新医療費体系について伺いたい。  先ほど来この問題は論議になって、質疑応答が重なっているのでありますけれども、私自身も十分納得をし得ない点があるのであります。新医療費の体系の特質は、大臣も言われておるように、従来のわが国の医療報酬の立て方が、物と技術とを不可分として、むしろ物に重点を置いておったのを、今回はこれを分けて、技術にウエートを置いていくという立て方に切りかえるわけでありますが、そのこと自体は、医療報酬のあり方から見て、私は多分に合理性があろうと思うのであります。また、この新しい制度が将来のわが国の医療費のあり方の上に、相当大きな重要な意味合いを持つものと思うのであります。しかしながら遺憾なことは、この新医療費体系を立てる上において最も重要な役割を果すべき基礎的な資料、基礎的な調査ということが必ずしも十分とは言い得ないように思うのであります。しかも、この新体系は従来の医療費総額のワクをそのままとして、そのワクの中で点数の再配分が行われたにすぎないという点であります。今日の医療費の総ワクには、しばしば指摘されるように医療保険制度の乱用、あるいは悪用によって、相当多額のいわゆる水増しというものが包蔵されておるであろうということは、これは周知のところであります。従って総ワクが内容の検討を得ることなしに、そのまま新体系の基礎になるということは、これらの水増しが合理化された結果になるのでありまして、これは被保険者である国民の立場としては納得し得ない点ではなかろうかと思うのであります。しかも患者の一部負担の問題につきましても、もちろん一部負担は、受益の均衡の問題その他から合理的な理由のある場合においては、これは肯定し得る問題と私も思うのでありまするけれども、単に医療費がかさんだとか、あるいは政府管掌の保険事業の管理が不十分であったとかいうふうなことのために、ただ医療費がかさむということだけのために、十分なる根拠の上に立たずに一部負担を要請するということは、これまた急に納得ができない感じがするのであります。一方において、またこの新医療費体系において、その医療費について最近の経済事情その他に基きまするところの医療費の適正な原価計算というものが行われておらない。そういうところに保険医のこの新しい体系に対する不満の一つが私あるのじゃないかと想像するのであります。  健康保険事業の運営は、被保険者及び保険医の共同の責任であって、保険事業の健全な発達というものは、この両者の保険事業に対する協力なくしてはとうてい期待することが困難であります。また、いうまでもなく、この基礎調査とか基礎資料の的確を期するということ、これは保険事業において本質的に重要な事項であります。先ほど厚生大臣は、この新しい体系について慎重な善処をするというお答えがあったのであります。慎重な善処の意味するところをはっきり理解はできないのでありますけれども、政府は少くともこの医療費体系の重要性にかんがみ、今後特別な調査会なり委員会等を設けて十分調査検討して、この医療費体系の適正を期するという用意が私はあってしかるべしと思うのであります。その用意があるかどうか、これを伺いたい。  それから新医療費体系に関連いたしまして、先ほど来いろいろ今後の見通しについての応答があったのであります。どうも近時の情勢から見ますると、今回の新医療費体系及び一連のこの改正案に基きまする施策をもっていたしましても、遠からず保険財政には赤字を招来することは免れ得ないように私は思うのであります。それは結局、現在の政府管掌の管理の方法一つの問題があるからと思うのでありますけれども、私は将来の見通しについて、言いかえますと、これで大体赤字は出ないのか、あるいは遠からずやはり赤字の危険があるのかという点について、厚生大臣の率直な見通しを伺いたいと思うのであります。  次は医療保険制度と医療制度との関連でございます。医療保険制度は、これは言うまでもなく医療及び医療制度と不可分であります。医療保険制度の健全な発達ということは、当然これも、それと、うらはらをなしまする関係にありまする医療、医療制度の適正なあり方というものと、私は相応するものでなければならぬと思うのであります。このことは医療保険事業というものがわが国の医療の大宗を占めるに至りました現在において特に意味があると思う。今、全国民を対象とする医療保険制度を考えるというふうな場合においては、なおさらこの社会保険の性格に相応する性格の医療なり医療制度というものの整備が当然前提とされなければならないのであります。従来この両者の間に歩調がよく合っていなかったのではないかという疑問を私は持つのであります。厚相の所見を伺いたい。  また医療そのものに対する関連におきましても重要な問題があると思う。最近の医療給付の額は急激に上昇して参りました。これはその上昇の線は、国民所得の上昇線をはるかに越しておる。また賃金の上昇の率よりもさらに上回っておるのであります。こういうことを、単にこれは医療の内容の向上であるといって喜んでいるわけにはいかないと思うのであります。医学の進歩に伴って医療の実質的内容の向上することはもとより当然であります。もとよりこれは喜ぶべきことであります。しかしながら、それが常に、医療の向上というものは常に医療費の増大を伴うのだ、それは必然であって当然だというふうに考えることは、これは妥当ではないと私は思う。健康保険が社会保障の一環である観点より見ましても、医療の向上と同時に、医療のコストの引き下げ、医療資材、薬品等の価格の適正、低廉をはかるという努力と施策が当然必要と思う。今回の改正に関連いたしましても、何らこういう点について十分な考慮が払われておらないことを遺憾に思うのであります。政府はこの医療保険制度の今後の重要性から見て、この医療制度と特に医療との関連について施策を誤まらない責任があるものと私は信ずるのであります。大臣の所見を伺いたい。  最後に結核の問題であります。先ほども質疑に出たのでありますが、私の聞かんといたしまする点は、保険との関係であります。わが国におきまする健康保険事業の上において最も困難な問題を提供しておりまするのは、やはり健康保険における結核の問題であります。一般的に結核対策がいろいろ行われております。それがさらに積極的に拡充されることは、必要であり、適当でありまするけれども、現在の保険の実情を見まするというと、あたかも健康保険の仕事自体が結核にかかっておるような観を呈しておるのであります。これをこのままでは、とうてい健全な健康保険の事業というものは伸び得ない。一般の保険におきましても、異常な事故に対しては、これはその対象から除くとか、あるいは料率を特別にするとか、とにもかくにも特段な措置が講ぜられることは当然である。そいうことがなければ、保険というものは成り立つものではないのであります。従って、一般的な面は面として、健康保険の仕事の上において、結核対策というものを特別に考えることが大事と思うのであります。その点についての大臣の所見を承わりたいのであります。(拍手)   〔国務大臣小林英三君登壇拍手
  36. 小林英三

    ○国務大臣(小林英三君) 梶原さんの御質問にお答えいたしますが、現行の各種の医療保険制度というものは、非常にばらばらであって、これには国保あり、健保あり、あるいは適用を受けていない三千万人の国民あり、あるいは五人以下の事業場で未加入者もあるというようなわけであって、これに対する総合的な考え方はどうかというような御質問であったように拝聴いたしておるのでありまするが、まず、この政府管掌の保険と組合の関係でございますが、同じ健康保険でも、組合管掌に対しまする考え方といたしましては、組合というものは、今日自主的な運営にゆだねられておりまする関係からいたしまして、相互共済の精神が徹底いたしております。また給付につきましても、効率的な実施が確保されておりまして、事業主の労務管理とも表裏一体をなしている利点があるのでございまして、健康保険制度創立以来今日まで三十年の長い間の歴史もございまして、今日におきましては、現在のまま存することが適当と考えているのでございます。しかしながら厚生省といたしましては、先ほどもちょっと申し上げましたように、数年のうちには、三千万人の夫適用人口に対しまして、医療保険の機会を与えるべく調査研究中でございまするので、その暁におきましては、その医療保障をどういう形で実施するかというようなことも、組合関係もあわせて再検討していくべきものでないかと考えているのでございます。  それから、新医療費体系が実施された暁において、医療費の今日算定の基礎となった問題、こういう問題についての御質疑であったようでございまするが、この新医療費体系というのは、旧体系との切りかえの時期におきましては、総医療費に変動を来たさないように作業をしてきたものでございまするから、私は増減はないものと考えております。また水増しというようなことにつきましては、新医療費体系は、現在得られまする最も新しい適正な資料を用いたわけでございまして、そのような心配はないものだと考えております。  それから新医療費体系につきましては、今申し上げた通りでございますけれども、今後医療内容の向上、国民経済の発展等によりまして、医療の実態にかなりの変動が起りました場合、あるいは実施いたしまして非常にある点に不都合等のことがありました場合には、実態に照応いたしまして所要の調整をいたすべきものだと考えております。  それから健康保険の運営の機構にロスがあるのではないか、そのために管理の体系について検討すべき要があるのではないかというような御質問であったのでございまするが、健保の赤字というものは、運営のロスではないのでございまして、政府管掌が賃金水準が低く、保険料収入が支出に追いつかないためでありまして、従いまして、臨時体系整備だけでは私は赤字の解決にはならないと考えております。しかしながら、今の御質問内容につきましては、相当検討すべき点も確かにあると存じまするから、このような問題につきましては将来十分検討してみたいと考えております。  それからこの一部負担したことによって、また今回の健康保険法等の一部改正によって、将来赤字は出ないだろうかというような御質問のようでございましたが、私はここ当分、きわめて大きな支障の起らない限りにおきましては赤字は出てこないものだと確信をいたしております。  それから医療保険と医療制度はうらはらであるから、わが国の医療の設備がはなはだ不十分であると思うからして、それらの対策についてはどうかというような御質問であったようでございますが、昭和二十五年の二月に医療機関整備中央審議会に諮りまして、これらの整備計画を決定いたしまして、今日まで実施に努力してきているのでありますが、特に全国の病院網の基幹となるべきところの一般病院の整備につきましては、都道府県単位を区域といたしまして、中央病院あるいは地方病院、あるいは地区病院の別に整備いたしまする基幹病院整備計画に基きまして、それらの機能が発揮し得るように指導して参っておるのでございまして、無医村等の問題につきましても、都道府県立病院に協力させまして、無医村に対しましても、そこから人間を交代に出張させて、それらの弊害を除去いたしたいと考えておるのでございます。  それから薬品の引き下げという問題でございますが、これは厚生省といたしましても、医療薬品の最も重要なるものにつきましては、お互いに自由競争をさせまして、今日まで、数年前から考えまするとほとんど、パスにいたしましても、ストレプトマイシンにいたしましても半額、よほど安くなっておるのでございまして、なお健康保険の赤字対策の一環といたしましても、薬価の値上げというものに対しまして、約三億円の数字を見込んでいるわけでございます。  それから結核の問題が健保の赤字に非常な大きな重大なウエートをもっている、この結核の問題については、何か別途に考究すべきではないかというようなお考えでございまして、これはまことにもっともな御意見だと存じます。厚生省といたしましては、今後、先ほど申し上げました社会保障五カ年計画によりまする国民皆保険というものを目途といたしまして、検討中でございまして、健康保険に対する結核の赤字を及ぼす重要な観点につきましても、これらとあわせて検討いたしまして、近い将来に方策があれば別途に考えたいと思っておりまするが、ただ何と申しましても現実の問題といたしましては、健康保険の赤字が累年出ておりまして、これらの問題を解決をいだし、そして将来の問題といたしましては、国保、健保あるいは未適用者三千万人の問題、あるいはただいま御質問のありました健康保険と結核対策の問題等もあわせて検討いたしてみるべきものと考えております。(拍手)   —————————————
  37. 重宗雄三

    ○副議長(重宗雄三君) 長谷部廣子君。   〔長谷部廣子君登壇拍手
  38. 長谷部廣子

    ○長谷部廣子君 私は無所属クラブを代表いたしまして、ただいま議題となっております問題につきまして、次の三つの点につきまして、鳩山総理大臣並びに小林厚生大臣にお伺い申し上げたいと存じます。  第一に、この健康保険を改正することによりまして、国民の健康保険制度は進歩向上するとお思いになりますかどうかをお伺い申し上げたいと存じます。お医者さんも被保険者も、このたびの改正を健康保険の改悪であると申しておられます。健康保険制度は国民に適正な医療を行い、国民を疾病から解放し、明るい勤労生活を実現する方策として、わが国の社会保障制度中、きわめて重要なものでございます。ところがこのたびの改正案におきましては、赤字補綴のために非常にその実質がゆがめられてきたのでございます。たとえばこの赤字対策といたしまして、健康保険医療費の患者一部負担の増額をしたり、また保険料の算出の基礎になる標準報酬を引き上げてみたり、その他被扶養者の範囲を三親等内に制限するとか、審査の強化をするとか、診療報酬請求書を官給制にするとか、全く複雑怪奇な条件を打ち出しておりますが、これではほんとうに健康保険を国民大衆から遠ざけてしまいますから、私も改悪だと思いますが、それでも大臣は改正することによって、健康保険制度は進歩向上するとお思いになりますか。  第二に、健康保険の赤字が年ごとに増加しておりますが、その原因はどこにあるとお思いになりますか。先ほどの御説明の中にもあったように存じますが、近代医学の進歩と国民の衛生思想の普及に伴い、医療費が年々増加することは当然でございますが、私はまず第一に、病気にかかる者が多くなったからだと存じます。それには労働強化ということもあり、また罹病率を高める社会的な悪条件が多くなったこと、そして長期療養を要する結核などが増加していることなどが、その大きな原因だと私は思っております。大臣はどうお考えになるでしょうか。そしてそのような原因によってできた健康保険の赤字なら、当然国の責任において、一切国庫負担になさるべきだと存じますが、大臣のお考えをお伺い申し上げとう存じます。  第三に、鳩山総理大臣にお伺い申し上げます。総理も御承知のように、全国的に市民大会、住民大会などが開かれております。そこで、私もその状況の中で感じたことでございますが、もはや国民のだれもが、国民の社会保障費を圧迫しているのが防衛関係費であるということを知っているということでございます。ところが、さらに考えてみますと、その防衛費を増加しなければならないのと同じ理由で、つまり鳩山内閣の政治目標から来る国民生活水準の低下、ことに低賃金、労働強化、失業こそ、国民の健康を破壊する根本なのでございます。国民は、自民党が次々にお出しになります政策の間に、息苦しく押しつぶされ、厚生大臣がおっしゃられるような近代医学の発達の恩恵などはおろか、その日の生活にも追われ、病気でも働きに出なければならない状態ではございませんでしょうか。本問題は、もはや一厚生省の部分的な弥縫策では、解決暮れるものではないと存じます。鳩山総理は、いたずらにダレスさんなどに御遠慮なさらないで、日本国民の仕合せを第一にお考え下すって、この際、その政策の大転換をなさる御意思はございませんでしょうか。そうすれば、うそだと申し上げたくなるような公約をなさいましたり、たびたびの失言などは、必ずおなくなりになると私は信じております。(拍手)その点を、特に総理大臣にお伺い申し上げるのでございます。  以上三つの点につきましての私の質問を終りますが、総理大臣のお答えは、御自席からでけっこうでございます。   〔国務大臣鳩山一郎君登壇拍手
  39. 鳩山一郎

    ○国務大臣(鳩山一郎君) 長谷部さんの御質疑に対してお答えをいたします。  長谷部さんが御指摘になりました防衛関係費は、健康保険費と同じように、国政上重要のものでございまして、これを削減転用することはできないものと私は感じております。(拍手)   〔国務大臣小林英三君登壇拍手
  40. 小林英三

    ○国務大臣(小林英三君) 長谷部さんにお答えいたします。  健康保険がなぜ赤字になったかという問題につきましては、先ほどどなたかに御答弁申し上げましたから、それによって御了承を願いたいと思います。ただ私は、いろいろの御批判もあると思うのでありまするが、政治は現実の問題でございまするから、私は、このたびの改正というものにつきましては、いわゆる健康保険のために高度の医療水準を推持しつつ、これを発展向上さしていくことが必要であると思っておりますから、どうか御了承を願います。
  41. 重宗雄三

    ○副議長(重宗雄三君) これにて質疑の通告者発言は、全部終了いたしました。質疑は終了したものと認めます。    ————————
  42. 重宗雄三

    ○副議長(重宗雄三君) 日程第二、在外公館の名称及び位置を定める法律等の一部を改正する法律案内閣提出衆議院送付)を議題といたします。  まず委員長の報告を求めます。外務委員長山川良一君。   —————————————   〔山川良一登壇拍手
  43. 山川良一

    ○山川良一君 ただいま議題となりました在外公館の名称及び位置を定める法律等の一部を改正する法律案の外務委員会における審議の経過と結果を御報告いたします。  政府の説明によりますと、外務省としては貿易の促進、移住の振興等の見地から、昭和三十一年度において、パラグァイ及びギリシャに公使館、ウイニペッグ及びメルボルンに領事館を新設し、また、ハイティ、エクアドル、サウディ・アラビア、ジョルダン及びスーダンに対し、近隣国に駐在する大公使に兼轄せしめる公使館を設置し、並びにシアトル及びベレーンの領事館を総領事館に昇格せしめることになり、これに伴う法律措置としまして、在外公館の名称及び位置を定める法律の一部を改正して、前述の公館の新設並びに昇格を行い、また、在外公館に勤務する外務公務員の給与に関する法律の一部を改正して、前述の各館に勤務する外務公務員の在勤俸を定めるのが本法律案趣旨でございます。  委員会の質疑におきましては、曾祢、加藤、鶴見、初生の各委員より、現下の国際情勢にかんがみ、中近東における在外公館は、人員並びに経済調査の面において十分充実せしめる要あること、在外公館の設置に当っては、一そう重点的配置に意を用うべきこと、その他外務省予算の決定事情等につき、熱心な質問並びに要望がありましたが、詳細は会議録を御参照願いたいと存じます。  委員会は、二月二十八日、質疑に引き続き、討論を経て本案の採決を行いましたところ、全会一致をもって政府原案の通り可決いたした次第でございます。  以上、報告いたします。(拍手
  44. 重宗雄三

    ○副議長(重宗雄三君) 別に御発言もなければ、これより本案の採決をいたします。  本案全部を問題に供します。本案賛成諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  45. 重宗雄三

    ○副議長(重宗雄三君) 総員起立と認めます。よって本案は、全会一致をもって可決せられました。    ————————
  46. 重宗雄三

    ○副議長(重宗雄三君) 日程第三、鉄道抵当法の一部を改正する法律案内閣提出)を議題といたします。  まず委員長の報告を求めます。運輸委員会理事早川慎一君。   —————————————   〔早川愼一君登壇拍手
  47. 早川愼一

    ○早川愼一君 ただいま上程になりました鉄道抵当法の一部を改正する法律案につきまして、運輸委員会における審議の経過ならびに結果を御報告申し上げます。  まずおもなる改正点について申し上げます。その第一点は、現行法では、鉄道財団を目的として設定された抵当権が消滅すると、財団も同時に消滅することとなっておりますため、抵当権消滅後、その財団を再び抵当権の目的とするためには、あらためて新規に鉄道財団を組成する手続を進めなくてはならぬ不便がありますので、それを除くため、改正案では、抵当権消滅後もなお六カ月間は、鉄道財団を存続させることとしたことであります。  第二点は、鉄道が延長されました場合、現在はその延長部分については、別に鉄道財団を組成して元の債権の追加担保としているのでありますが、今回の改正案では、追加部分を元の財団と一体として拡張できるようにしたことであります。  第三点は、現在は鉄道財団の分割の制度がないため、債権の一部償還により余剰担保価値が生じましても、財団の一部を抵当権の目的から除くことができず、また合併の制度がないため、数個の財団を共同担保にしてその不備を補っておりましたが、改正案では、新たに鉄道財団の分割及び合併の制度を設けたことであります。  委員会におきましては、大倉委員より、鉄道財団の分割、合併に関する第十三条の三及び第十三条の四の規定について具体的にその説明を求められたのに対し、政府委員より詳細な説明郷あり、財団の分割、合併の制度のない現制度のもとにおきましては、鉄道の区間開業ごとに設定せられるので、本来一体でありたい鉄道施設が多くの鉄道財団に分れ、それが共同担保の形をとっており、その分割、合併のできないことは金融の円滑も欠き、またその手続もきわめて煩瑣であり、かつこれに伴う謄本、抄本の交付の際も手数を増すのみであるので、今回工場財団と同様その分割、合併ができることにした旨、詳細な答弁がありました。  その他、地方鉄道事業者がバス事業を兼業している場合のバスは、鉄道財団組成物件の車両に含まれるかとの質疑のほか、解釈につきまして若干の質疑がなされましたが、地方鉄道事業者が兼業しているバスは、鉄道財団組成物件には当然含まれない旨の答弁があり、その他の事項につきましても明らかにせられました。これらの点につきましては、委員会速記録により御承知を願いたいと存じます。  以上で質疑を終り、討論に入りましたところ、別に発言もなく、直ちに採決に入りましたところ、全会一致をもちまして、本法律案は、原案通り可決すべきものと決定いたしました。  右、御報告申し上げます。(拍手
  48. 重宗雄三

    ○副議長(重宗雄三君) 別に御発言もなければ、これより本案の採決をいたします。  本案全部を問題に供します。本案賛成諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  49. 重宗雄三

    ○副議長(重宗雄三君) 総員起立と認めます。よって本案は、全会一致をもって可決せられました。    ————————
  50. 重宗雄三

    ○副議長(重宗雄三君) 日程第四、高圧ガス取締法の一部を改正する法律案内閣提出)を議題といたします。  まず委員長の報告を求めます。商工委員長三輪貞治君。   —————————————   〔三輪貞治君登壇拍手
  51. 三輪貞治

    ○三輪貞治君 ただいま議題となりました高圧ガス取締法の一部を改正する法律案につきまして、商工委員会における審議の経過と結果を御報告いたします。  御承知の通り高圧ガス取締法は、昭和二十六年に制定されたものでありますが、最近、高圧ガス工業の発展がいちじるしく、新しい種類の高圧ガスが出回るようになって参りました。特に災害発生の危険度が増大しておりまするので、その消費規制を強化する必要が生じましたことと、その他実施の経験に基きまして、若干の規定を整備する必要を認めましたので、本改正法案の提出を見た次第であります。  改正の要点を申し上げますと、第一に、昨年あたりから製鉄や造船方面で使用量が増大しております液化酸素に関しまして、特に取り扱いを厳重にするため、その消費の施設や消費の方法などの規制を強化せんとしております。第二に、プロパンガスを含めました一般高圧ガスの販売業者並びに液化酸素の消費者に対しまして、いわば現場監督に相当する取扱主任者を選任せしめ、これに保安上の責任を持たせるようにしたことであります。第三に、高圧ガスを充てんするボンベなどの容器に関しまして、その色彩別による表示の義務を徹底せしめるようにしたことであります。最後に、現行法の施行時である昭和二十六年末以降の物価の変動に応じまして、各種の手数料を約二割ないし三割引き上げることにいたしております。  以上が本改正の要点でありまして、本委員会では、審議に際して慎重を期するため、特に実地視察等をも行い、質疑を重ねましたが、その詳細につきましては速記録をごらんのほどお願い申し上げます。  次いで討論に入りましたところ、まず阿具根委員より、次の希望条件を付して賛成意見が述べられました。  第一に、政府は物価の値上りを理由として、手数料を引上げることにより、需要者の負担を増大せしめぬように行政的に措置すべきである。第二に、プロパンガスの家庭使用につき、将来都市ガスとの競合の場面が多くなるから、その調整を深く考慮すべきであるということであります。次に、河野委員よりも、プロパンガスに関しては事前の危険防止だけでなく、今後大衆が使用しやすいように価格の面でも配慮すべきであるという希望条件をつけて、同様に賛成意見が開陳されました。かくして採決に入りましたが、本改正法案は、全会一致をもちまして、原案通り可決すべきものと決定いたした次第であります。  右、御報告いたします。(拍手
  52. 重宗雄三

    ○副議長(重宗雄三君) 別に御発言もなければ、これより本案の採決をいたします。  本案全部を問題に供します。本案賛成諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  53. 重宗雄三

    ○副議長(重宗雄三君) 総員起立と認めます。よって本案は、全会一致をもって可決せられました。   —————————————
  54. 重宗雄三

    ○副議長(重宗雄三君) 日程第五、総理府設置法の一部を改正する法律案内閣提出衆議院送付)を議題といたします。  まず委員長の報告を求めます。内閣委員長小柳牧衞君。   —————————————   〔小柳牧衞登壇拍手
  55. 小柳牧衞

    ○小柳牧衞君 ただいま議題となりました総理府設置法の一部を改正する法律案につきまして、内閣委員会における審議の経過並びに結果を御報告申し上げます。  本法律案は、売春に関する諸問題がきわめて重要かつ複雑であるのにかんがみまして、政府は、内閣総理大臣または関係各大臣の諮問に応じて、売春対策に関する重要事項を調査せしめるため、総理府の付属機関として売春対策審議会を設置せんとするものであります。  内閣委員会は、委員会を二回、また法務委員会と連合審査会を一回開き、審議に当ったのでありまするが、その審議によって明らかになった点は、閣議決定によって現在設けられておる売春問題連絡協議会において、売春防止に関する試案ができ上っておるので、本審議会においては、この案を早急に審議して政府に答申することを当面の任務とし、政府はこの答申に基き、できるだけすみやかに売春防止に関する法律案国会に提出したい方針であること、なお、本審議会に、売春婦の保護、更生等に関する立法、行政及び予算上の措置についても引き続いて調査審議すること等でありますが、その審議の詳細は、委員会会議録に譲りたいと存じます。  去る一日、質疑を終り、討論に入りましたところ、日本社会党を代表して千葉委員より、「売春を防止するための審議機関それ自体には必ずしも反対するものではないけれども、政府のとった売春対策についての来年度の予算措置より見て、売春防止の実効をおさめ得るやいなや疑いがあると同時に、売春対策審議会を設けることによって問題の解決が遷延するおそれがあるので、本法律案反対である」旨の発言があり、次いで本法律案について採決いたしましたところ、多数をもって原案通り可決すべきものと議決せられました。  以上、御報告申し上げます。(拍手
  56. 重宗雄三

    ○副議長(重宗雄三君) 別に御発言もなければ、これより本案の採決をいたします。  本案全部を問題に供します。本案賛成諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  57. 重宗雄三

    ○副議長(重宗雄三君) 過半数と認めます。よって本案は可決せられました。  本日の議事日程は、これにて終了いたしました。次会の議事日程は、決定次第公報をもって御通知いたします。  本日は、これにて散会いたします。    午後六時四十三分散会    ————————