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1956-02-20 第24回国会 参議院 本会議 第12号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十一年二月二十日(月曜日)    午前十一時十九分開議   ━━━━━━━━━━━━━  議事日程 第十二号   昭和三十一年二月二十日    午前十時開議  第一 憲法調査会法案趣旨説明)  第二 昭和三十年度一般会計予算   補正(第1号) (委員長報告)  第三 昭和三十年度特別会計予算、   補正(特第4号)(委員長報告)  第四 昭和三十年度政府関係機関   予算補正(機第1号)           (委員長報告)  第五 捕獲審検所の検定の再審査   に関する法律の一部を改正する   法律案内閣提出)(委員長報   告)   ━━━━━━━━━━━━━
  2. 河井彌八

    議長河井彌八君) 諸般の報告は、朗読を省略いたします。    ————・————
  3. 河井彌八

    議長河井彌八君) これより本日の会議を開きます。  日程第一、憲法調査会法案趣旨説明)  本案について、国会法第五十六条の二の規定により、衆議院発議者からその趣旨説明を求めます。衆議院議員山崎巖君。   〔衆議院議員山崎巖登壇拍手
  4. 山崎巖

    衆議院議員山崎巖君) ただいま議題となりました憲法調査会法案につきまして、提案理由と本法律案の概要について御説明を申し上げたいと存じます。  現行憲法民主主義平和主義並びに基本的人権尊重に、その基本的原則を貫く点におきましては、何人もこれを不可とするものはないと信じます。しかしながら現行憲法昭和二十一年占領初期において、連合国最高司令官要請に基き、きわめて短期間に立案制定せられたものであり、真に国民自由意思によるものにあらざることは否定しがたき事実であります。さらにまた、過去約九カ年におけるこれが実施経験にかんがみまして、わが国情に照らし種々検討を要すべき点の存することも、これを認めなければならないことと存ずるのであります。  ここにおきまして、この際、新たなる国民的立場に立って現行日本国憲法全面的検討を加えますことは、わが国独立の完成のためにも、はたまた再建日本将来の繁栄国民福祉向上のためにも、きわめて緊要なことであり、そのためには、すみやかに有力なる憲法調査審議機関を設けることが必要であると考えまして、ここに本法律案提出いたしました次第であります。  本法律案は、右の趣旨に基き日本国憲法検討を加え、関係諸問題を調査審議するための機関として憲法調査会を設けんとするものでございまするが、その構成につきましては、憲法問題の重大性にかんがみまして、広く衆知を集め、公正なる世論を反映せしむるために、国会議員三十名及び学識経験ある者二十名、合計五十名以内の委員をもって組織することといたしておるのであります。また調査会には会長一名、副会長二名を置くことになっておりまするが、いずれも委員の互選によることといたしております。右のほか調査会には、専門委員及び幹事を置くとともに事務局を設くることとし、事務局長以下の職員をして事務を処理することといたしておるのでございます。この調査会は、これを内閣に置くのでありまするが、その運営につきましては、特別の諮問を待つことなく、あくまで自主的な立場において調査審議せんとするものであり、その結果については、内閣または内閣を通じて国会報告することといたしておるのであります。  以上が、本法律案提出理由並びに法律案の要旨であります。  何とぞ慎重御審議の上、すみやかに可決せられんことを切望いたす次第でございます。(拍手
  5. 河井彌八

    議長河井彌八君) ただいまの趣旨説明に対し、質疑の通告がございます。順次発言を許します。青木一男君。   〔青木一男登壇拍手
  6. 青木一男

    青木一男君 ただいま憲法調査会法案提案理由を伺ったのでありますが、その説明がいささか簡単であったので、私は提案者に対し若干の質疑をいたします。  第一は、現行憲法制定の沿革とその性格についてである。旧自由党憲法調査会松本烝治博士の講演を聴取したが、それによると、幣原内閣成立直後、マッカーサーから憲法改正案提出を命ぜられた。内閣は、松本博士担当国務大臣として原案を作成し、司令部提出したところ、マッカーサーは、一顧の価値なしとしてこれを却下し、あらためて自分の手で作成した日本憲法改正要綱を交付し、約十日の猶予期間内に政府賛否の回答を求めたのである。これを受け取った内閣諸公は、内容の峻厳なるに色を失ったということであります。松本国務大臣の手で急遽修正案を作り提出したところ、わずかに国会の一院制を二院制に改めること、土地の国有を取りやめることの二点の修正が認められただけで、その他の修正は全部一蹴され、マッカーサー原案をそのまま法文化することを命ぜられたのである。要するに、降伏文書において、日本の国権の発動はすべて占領軍司令官命令下に置かれることを約束した結果、右の命令にも服せざるを得なかったものであります。従って憲法改正案は、政府の案として発表されたけれども内容において、マッカーサー原案そのままであります。  社会党諸君は、国会が何か月もかけて審議し、可決したものであるから、押しつけられた憲法ではないと主張しているようであります。しかし国会審議には大きな制約があって、修正案提出にはすべて司令部の同意が必要とされ、またマッカーサー原案の骨子には、一指を染めることも許されなかったのであります。従って国会は、問題の核心に触れない枝葉末節の点や用語の詮議に日数をかけたわけでありまして、私はこれをもって、議員自由意思によって審議決定したものとは解し得ないのであります。(拍手)  また社会党諸君は、原案賛否までも命令を受けたものではないから、当時の賛成議員政治的責任があると主張されているようであります。しかし、当時もし国会憲法改正案を否決したならば、占領軍はあるいは日本の直接統治を企図したかもしれませんし、また当時の議員諸君は、憲法改正によって、ポツダム宣言で要求された民主化の形を整え、一日も早く占領を脱却したいという念願から、心ならずも賛成した人が少くなかったと思われるのであります。その意味で彼らは責任を果しており、今日ではわれわれに責任が引き継がれているのであります。自分の意に満たない案に賛成するということは不思議に思われますけれども、当時は、一国の総理大臣司令部に伺候して、一大佐の指示を受けて国政を処理するというような異例の時代であったことを忘れてはならないのであります。  西ドイツにおいても、わが国と同じ憲法改正問題が起ったのであるが、政治家学者も一致して、国家独立もなく、国民自由意思もなき占領下において、永久憲法を制定するがごときことは思いもよらないと言って反対した。そこで憲法にかえて、占領期間だけ効力のある基本法を制定したのであるが、この基本法の中には、本法は西ドイツ独立を回復し、みずからの手で憲法を制定したときに、その効力を失うと規定しているのであります。これが憲法の正しき姿を示したものであります。しかるにわが国では、占領下永久憲法が制定され、かつ改正手続をきわめて困難にしているのは、不幸であったと申さねばなりません。しかしわれわれは、この困難に屈してはならない。憲法は、国家統治基本であるから、独立を回復した今日、これに全面的な再検討を加え、国民の自由な意思に基いて改むべきは改めるのが憲法の本質上、はたまた国民感情からも当然の措置であり、また子孫に対するわれわれの責務であると思うが、提案者の御所見を伺いたいのであります。  第二は、憲法内容についてであります。擁護論者は、占領憲法であっても、内容がよいから改正反対だと言う。われわれも現行憲法長所の存することを認めるにやぶさかではありません。しかし日本国情に通じない外国の軍人が短期間に立案したものが、完全無欠であったならば、それこそ一大奇跡であります。新憲法実施十年の経験に徴し、わが国情に適しない点があることは、良識ある国民のひとしく認めておるところであります。  社会党左派が、昨年五月公表した綱領の二十六ページには、中央議会では安定した絶対多数の上に立って、社会主義原則に従って、憲法改正し、基本的な産業の国有化または公有化を確立し、行政、司法の諸機関や、教育新聞出版放送などの諸機構社会主義方向に適応させる、と述べている。これは社会党諸君も、現行憲法を完全なものと思っていない証拠である。(拍手)ただ、自分たち天下を取ったならば思い切って改正する、それまでは反対だということは、まことに得手勝手の主張であり、社会党改正反対は、要するに党利党略便宜論であることを自白しているものである。(拍手)われわれは真に国家民族百年の計のために、憲法の再検討をしようとしているのであります。  この見地に立って、まず考うべきは、憲法制定当時の占領軍の対日政策方向である。マッカーサー本国政府から受けた最初の訓令には、司令官の任務は、戦勝国利益をはかるにあって、日本利益をはかることではない、という趣旨が明らかにされております。日本に対する憎悪、懲罰、警戒の気持の強かった占領初期政策基調が、日本弱体化にあったことは、今日では公知の事実であります。この弱体化政策は、国家権力分散弱化教育における国家観念と愛国心の希薄化、機械の封印による日本工業抑圧等、いろいろの方面に具体化されたけれども、その根本は、憲法改正にあったのであります。日本弱体化指導理念とした憲法が、そのままで、日本国家興隆繁栄国民福祉目的に完全に合致することは、本来期待しがたいところであります。われわれはこの弱体化政策の旧套を脱ぎ捨て、真に国利民福に合致するように憲法を再検討すべきであると思うが、提案者のこの点の認識を伺いたいのであります。(拍手)  第三は、調査及び改正方向についてである。近来学界や政界で盛んに憲法の研究が行われ、改正私案が続々発表されている。しかし政党の党議として定めたようなものは一つもありません。旧自由党でも憲法調査会を作ったが、その調査の主力は、問題点所在を明らかにすることに注がれたのであります。委員意見交換は活発に行われたけれども具体案調査会の総会に付議したものではない。いわんや、党議決定などあるはずはない。旧民主党でも同様であったと思います。従って、党員個人意見はあっても、党としては白紙である。しかるがゆえに、本調査会設置の意義が存するのであります。しかるに憲法擁護論者は、すでに結論が出ているものと勝手に予断し、これを根拠として反対論を展開している。中には、われわれの党内で何人も考えたことのないような改正方向をすらでっち上げて、反対の口実にしているのは、迷惑しごくであります。  一例を天皇地位にとると、第一条は、天皇日本国象徴であると規定している。ところが、「象徴」という翻訳語意味が、今もってはっきりいたしておりません。先日も数人の専門学者見解を徴したところ、外国には物について国の象徴という観念はあるが、人についての用例は存しないとのことで、依然要領を得なかったのであります。そこでわれわれの間では、そんなあいまいな象徴よりも、元首の方がはっきりしてよいではないかという問題がはっきりいたしております。元首は対外的に国を代表するものをさし、各国共通用語であるからであります。もちろんわが党内にも象徴のままでよいという論者もございます。ただ、ここではっきり申し上げておきたいのは、わが党内には、憲法前文中の「主権国民に存することを宣言し、」とある民主国家基本について、疑義反対を抱く論者は一人も存しないという一事であります。また天皇に、政治上の実権を与えるような改正を考えている者もございません。しかるに擁護論者が、元首説天皇主権につながるとして反対しているのは、不可解であります。これらの論者は、民主国にも元首があり、元首主権所在とは無関係観念であることを知らないのか、さもなければ、故意に改正論を傷つけるための悪意宣伝であると断ぜざるを得ないのであります。  次に、第九条の戦争放棄条文についてである。この条文の解釈については、世上いろいろの説があり、わが党内でも見解が必ずしも一致していないことは事実であります。私は、本条文自衛のための戦力保持を禁じたものでないと解している。しかしマッカーサーが本条を考案したのは、世界の平和を乱した日本に対する懲罰として、また同じことを繰り返すことのない保障として、換言すれば、日本弱体化のために戦力保持を禁じたものと考えるほかはありません。あるいは世界平和擾乱者日本とドイツであるから、この両者を再起できないようにしておけば、世界の平和が維持されると考えたのかもしれません。しかりとすれば、それはあまりにも甘い考え方であります。わが憲法前文に、「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した。」と述べているけれども世界現状を直視するとき、このわが国民の大悲願の達成がいかに至難であるかを思わざるを得ないのであります。今や国際共産主義世界制覇の脅威は、ひしひしとわれわれの近くに迫りつつあります。世界の強国は、国力を傾けて軍備増強に狂奔している。かかる現実に直面して、日本だけがまる裸でいて、どうしてその安全を保ち得るでありましょうか。憲法条文だけで平和を守ることは困難であります。  そもそも国家自衛は、動物の自衛と同じく、国家の本能であって、憲法以前の存在である。いやしくも国家という以上、自衛機構を備えることは必然の要求であり、現代国家にして軍隊を持たない国は一つもなく、また古来そんな国は一つもなかった。しかるに日本だけ、どうして唯一の例外となり得るか、私はその理由を発見することはできません。  この点について憲法擁護論者は、いろいろの説明をしております。まず、日本には暴動、内乱や外敵のおそれがないから、防衛力を持つ必要がないと説く者があるけれども、私はその論者の保証に信頼し、安心することはできない。むしろ、この点を力説されればされるほど、ある意味の薄気味悪さを感ずるものであります。また、わが国軍隊を持てば、かえって外敵の侵入を誘発すると説く人があるが、これは戸締りをすると、かえってどろぼうにねらわれるという論と同じで、常識では理解できません。次に、現代防衛は、共同防衛体制下に行われるものであるから、みずから軍隊を持たなくともよいと説く者がある。しかし共同防衛といっても、ある期間は自力でささえることを前提とするものであり、論者の説は、会費を出さずにごちそうだけを食べようとする虫のよい案であります。  次に、原子兵器現代において、わずかばかりの軍隊を持っても意味がないと説く者がある。これは一応考えさせるものを含んでいる。われわれも国力に応じて防衛力をきめるべきであると考えるし、わが国力はきわめて貧弱なことも認めざるを得ません。従って、わが国防衛力が微力なものであることは当然であるけれども、しかるがゆえに、防衛力が無用なりとの結論を生むものではありません。わが国防衛力につき、ある外国評論家は、日本防衛力は、ショーウインドーガラスのようなものだ、暴力に対し安全とはいえないが、それなりに役目を果していると批評した。まことにうがち得て妙なりと思います。微力な防衛力は無用だという論は、ショーウインドーガラスをすべて取り払えと主張するにひとしいのであります。  最後に、われわれがどうしても承服し得ないのは、日本軍備を持てば再び侵略戦争を始めるかもしれないという宣伝であります。われわれは憲法前文に掲げた恒久の平和を念願するという平和主義、第九条の「日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、」という平和主義理念に対しては、党をあげて絶対の支持を表明するものであります。わが党内に限らず、侵略戦争などということを考えている国民は今日一人もないことを確信します。客観的に見ても、国防資源の極度に貧弱なわが国力で、かようなことのあり得ないことは自明のことであります。しかるに、憲法改正は、戦争に直結するごとく説いて、戦争恐怖感からまだ脱していない国民感情に訴えているのは、改正論者の真意を曲げた悪意宣伝であります。  要するに国家存立基本につき憲法上の疑義を残しておくのはよろしくない。憲法改正案審議に当り、野坂参三君は、防衛力なき国家はあり得ないとして反対した。ソ連の全権は、サンフランシスコの講和会議で、日本がある程度の軍隊を持つべきことを主張した。中共の周恩来首相は、社会党を含むわが国議員団に対し、日本独立を回復した以上、軍隊を持つのは当然であると演説した。私は社会党や共産党の諸君が、進んで憲法第九条の再検討に参加されんことを希望するものであります。(「それは無理だ」と呼ぶ者あり)  次に、第三章の国民権利義務については、わが国憲法のように国民権利のみを盛りだくさんに並べ、義務については、納税の義務等をわずかに規定しているのは、世界に例がありません。これは国家軽視占領政策に基一因するのであるが、しかし憲法中に、文化国家福祉国家の理想をにぎやかに担げても、国家の安全と国力の増進なくしては、何一つ達成しがたいことも明白であります。この見地に立って、国民権利義務につき再検討を加えるのは当然である。反対論者が第三章の改正によって、国民人権や自由に対し、不当な制限を企図しているごとく説いているのは、これまた根拠なき宣伝であります。共産主義国と異なり、われわれはあくまでも国民人権と自由を尊重すべきものと考えている。前述のごとく社会党綱領によると、社会党は、憲法改正して新聞出版放送などの言論までも統制する意図を示しているのであるが、私どもはさようなことは毛頭考えていないのであります。  国土の防衛は、憲法以前から存する国民の当然の義務であって、世界憲法で、これを規定していないのは、わが国憲法だけである。従ってこの点の再検討を要するけれども、私は徴兵制度はとるべきでないと考えている。旧自由党調査会でも、この説が圧倒的でありました。しかるに反対論者が、憲法改正すれば、すぐ徴兵制度に戻るごとく宣伝し、民心にこびようとしているのは、われわれをしいるのはなはだしいものであります。  家族制度についても、現行憲法が家の観念を否認し、親子の関係を軽視している点で再検討を要すると考えるけれども、しかしわが党においても、男女同権理念反対したり、戸主権の復活を夢みているような者は一人もありません。反対論者が、憲法改正すれば、従来の家族制度そのものが復活するごとく説くのも、これまた事実を曲げた独断であります。そこで私は、憲法を全面的に再検討するとはいっても、現行憲法のすぐれた点はもちろん残すべきであり、ことに主権在民民主主義平和主義人権尊重主義のごとき長所は、あくまで維持尊重する建前で進むべきものと考えるが、この点、提案者の信念をお伺いします。  第四に、調査会においては今申し上げた根本方針のもとに、国家興隆国民福祉を永久に増進するという見地から、白紙立場憲法を再検討すべきであると思う。その場合、従来各方面で研究された私案参考資料としては大いに利用すべきであるが、しかし予断や先入観をもって臨んではならない。改正反対論者意見も十分反映させて、公正妥当な結論を生むことを念願とすべきである。従って委員の中には、社会党諸君を初め改正反対論者も加えて、国家の将来のため率直活発な論議を戦わすべきであると考えるが、この点についての提案者の腹案を伺いたい。  昨日社会党鈴木委員長は、憲法擁護運動憲法改悪反対運動に切りかえると言明した。社会党天下を取ったときは、憲法の大改正を行うと声明した以上、従来のように憲法改正反対というのでは、筋の通らないことをお認めになったのでありましょう。改悪反対ということなら、私ども同感であります。しかし、何が改悪か、何が改善かということで、依然意見は分れるでありましょう。しかし一致するものもありましょう。その点をじっくり話し合うために、調査会はまことによき機会であります。社会党諸君も、本調査会法案に賛成するとともに、進んで本調査会に参加されんことを希望して、私の質問を終ります。(拍手)   〔衆議院議員山崎巖登壇拍手
  7. 山崎巖

    衆議院議員山崎巖君) 青木さんの提案者に対しまする御質疑に対して、御答弁を申し述べたいと存じます。  先ほど提案理由説明において申し上げました通りに、私どもが本調査会を設置せんとするゆえんのものは、現行憲法占領初期におきまして、連合国最高司令官の強力なる要請によって、しかも、きわめて短期間に制定されました事情にかんがみましても、また、その後施行の経験から申し上げてみましても、新たなる国民的立場に立って、現行憲法に再検討を加えますることは、きわめて緊要なりと考えたからであります。しこうして憲法検討に当りましては、提案理由に申し上げましたように、国家繁栄国民福祉向上をはかることを主目的とすべきことは、ただいま青木さんの御主張通りだと思います。  また、青木さんは天皇地位、あるいは戦争放棄の第九条の問題、あるいは国民権利義務問題等につきまして、種々御所見がございましたが、大体において私ども同感であり、この趣旨よりいたしまして、民主主義平和主義、並びに基本的人権尊重の三原則は、憲法検討の際、われわれの堅持すべき基本原則であるのみならず、私どもといたしましては、ますますこの精神を伸長さしていきたいと考えている次第であります。  本調査会におきましては、憲法改正の要否、すなわち憲法改正是か否かの点をも慎重検討せらるべきものと考えますので、憲法改正反対人々意見をも十分に傾聴すべしとの御見解に対しましては、全く同感であります。委員の委嘱に当りましては、社会党議員諸君はもちろん、憲法改正反対学識経験者意見をも十分に尊重いたし、これが網羅できるように最善を尽すべきであると考えております。衆議院においても申し上げましたのでありますが、社会党におかれましても、本調査会憲法検討共通の広場として欣然参加せられることを私どもは期待し、かつこれを切に望むものであります。(拍手)   —————————————
  8. 河井彌八

    議長河井彌八君) 千葉信君。   〔千葉信登壇拍手
  9. 千葉信

    千葉信君 私は日本社会党を代表して、ただいま提案されました憲法調査会法案に対し、首相並びに提案者にその疑義をたださんとするものであります。  鳩山首相は、口に友愛精神を説かれる。しかし、鳩山内閣の施策に果して友愛精神を見出すことができるか。政府はその防衛力増強に当っても、国力の許す限度にこれを行う、果してそうであるか。今日経済の正常化が叫ばれ、企業の好転、貿易の黒字が謳歌されている一方において、国民生活はいかなる現状にあるでありましようか。国警本部調査するところによりましても、二十九年度における国内の自殺者総数は二万九千七百九十四人、しかもその六割は、生活苦と病苦によるものであります。換言すれば、われわれの同胞が、日本の国のどこかで毎日八十二人ずつみずからの手で、貧困のために病苦のために、次々と自分自分の命を縮めていっているのであります。同じように、貧困によるゆえに、家庭不和病弱等のために六万七千六百十人が家出人として街頭にさまよい出ているのであります。一日百八十五人もの人々が、毎日毎日、次から次と不仕合せな人生の第一歩に踏み迷い、悪と犯罪の温床となっているのであります。一日平均十五件に上る強盗事件、一日八人ずつが殺されている殺人事件、窃盗やあき巣ねらいや身売り等々、悲しむべき今日の日本の状態というものは、これこそまさに日本象徴であります。今日の国民生活象徴であります。(拍手国力に相当する増強と言いながら、自分の意のままにならない、アメリカの強要する軍備増強が行われ、そのために一切の民生に対する施策が犠牲になっているところにその原因があるのであります。生活困窮者千二百万人と言われ、完全失業七十万以上、半失業三百四万と政府みずから発表し、その生活困窮者に対する救済いかん。その失業対策いかん。老人、児童の保護、疾病、結核対策の貧困、焼け石に水の住宅対策、政府は、社会保障費をちょっぴり増額したと言うけれども、実態は対象人員の増加分さえまかない切れないのが真相であります。一体音羽の御殿からは、このみじめな暗たんとした国民の生活が見えないのか。しかもこの国民生活現状には目もくれずに、さらにその増強と合法化と戦争の危険を冒して、憲法改正が企てられているとしたら、これこそまさに日本の悲劇であります。(拍手首相国民生活現状をどう見ているかお伺いしたい。  今回の提案はその理由として、現憲法占領中に制定されたものであり、立案過程にも問題があるとしているのであります。占領下憲法だからという言い方は、再軍備論争における戸締り論と同工異曲、きわめて低い常識をねらった性悪なものと言わなければなりません。(拍手)かりに占領下その制圧のもとにあったとしても、国会における賛否の自由まで拘束されていた事実はないのであります。しかるに今日なお衆議院議員として現存する自由民主党代行委員大野伴睦氏を初め、八十二名の現議員を含む保守党が、当時一人の反対もなく、進んで賛成した事実は何とこれを釈明するか。(拍手)かかる態度が、国民の代表として許されるものかどうか。問題は占領中であったなどということではなく、憲法そのものの持つ原理が正しいかどうか、社会の進化に適するかどうか、国民の幸福と安寧を守り得るものかどうかということでなくてはなりません。(拍手)なるほど現憲法は、アメリカの草案によったものであることは、私も否定はしない。しかしながら同時にその憲法は、日本の侵略を事とした軍隊と帝国主義、日本の根強い封建性を打破して、あくまでも平和と自由と民主主義に徹する高邁なるものであったことも、また否定すべくもないことであります。(拍手)それだからして保守党の諸君は賛成したのではないか。もしそうでないというならば、今回の改正に当っても、また再び不平等条約のもとで押しつけられて制定したという釈明が用意されておるのではないか。節度のない保守党の人々が相手では、そこまで確かめておく必要がある。首相並びに山崎君の御答弁を承わりたい。  また首相は、自主憲法の制定を主張されておられますが、今日の日本の状態において、果してそれが可能であるかどうかという点であります。今回の改正の企図は、ニクソン副大統領の来日によって明らかにされたように、アメリカの意思、アメリカの要望であることは、もはやおおうべくもないところであります。すなわち朝鮮戦争を契機として、警察予備隊、保安隊、自衛隊と経過した歴史的事実、封じ込め作戦から、アメリカは今日いわゆるニュールック戦略体制と呼ばれる大量報復爆撃戦術に切りかえられました。その実施に当ってのアイゼンハワー大統領の教書や、ダレスの談話によってもすでに明らかなごとく、その新しい戦略体制のもとに、アメリカの陸軍の大幅削減が行われ、日本の命ぜられた役割は、アメリカの陸軍にかわることであり、すなわち日本地上軍の増強であった。ニクソンの言うアメリカの誤まりは、実は誤まりではなくて、アメリカの世界政策、戦略体制の変化そのものである。この背景が、政府の意図する憲法改正の背景であることは、今日多くを語る必要もないのであります。(拍手)ことにこの四つの島に点在する六百五十三カ所の軍事基地、ことに立川、横田、ジョンソンを初め、原爆、ジェット機、飛行場の拡張による原爆戦略基地化、原爆搭載機の持ち込み、オネスト・ジョンの持ち込み、しかも日本防衛庁の長官が、日本防衛について全くつんぼさじきにいるという事実、防衛分担金の折衝、防衛力増強に歪曲される日本の予算編成へのアメリカの容喙、ドルに羽がい締めされた日本の経済、これらは基本的には安保条約、行政協定によって完全に従属せしめられた日本が、なお独立国であり、独立国としての自主的憲法改正が行えるなどという、あられもない幻想を国民に与えることは、国民を欺くもはなはだしいと言わなければならない。首相の御答弁を承わりたい。  また一月十六日ライフ誌に報道されましたいわゆるせとぎわ政策、翌十七日、ダレス長官自身があらためて記者会見で語ったところによりますと、せとぎわ政策なるものは、今までアメリカがやってきたやり方を単に言葉をかえて言ったに過ぎないのだというのであります。力の政策と呼ばれる戦争に券き込まれないで、戦争のせとぎわまでいくことの必要な政策なるものは、きわめて危険なものであり、一たん、もし事志と違っても、そこにはもはや何ら戦争を回避できるという保証もないものである。すなわちプラウダによれば、休戦中の朝鮮でも、またはインドシナでも、近くは台湾水域等においても、しかけられたその戦争が回避されたのは、原爆の脅威のためではなくして、国際緊張緩和を望むがためであったのだと言われているのであります。私の言いたいのは、かねてわれわれの指摘したように、日本の持つ軍備が、かかる危険な力の政策の支柱として利用されるためのものであり、従ってこのことは、再びわれわれをわれわれの意に反して戦争に引きずり込まれるおそれのあることであります。伝えられるところによりますと、アメリカにおいては、東北アジア防衛機構の構想があるといわれております。すなわち日本、朝鮮、台湾を含むこの構想は、日本憲法改正をしない限り、あくまでも構想にとどまらざるを得ないというのであります。吉田前首相がある席上で、憲法改正しなかったために日本は朝鮮出兵を押しつけられずに済んだじゃないかといって手柄話をされたという。吉田前首相の功罪は別として、これはまさに傾聴に値する話である。すなわち現憲法下でも軍隊を持てると主張する政府が、さらに進んで改正を強行した結果出てくるものは、海外派兵、防衛機構への参加である。首相がもし真にその言う通り独立国にふさわしい自主憲法を念とされるならば、日本の今日置かれている立場を直視し、まずその隷属せる状態を断ち切ることに全努力を傾注すべきである。(拍手)これなくして行われる憲法改正への第一歩は、国民が断じて侵すまいと決意している戦争に再びかり立てられる道を開くものである。自主憲法は、まず日本の完全独立から、日本独立は、まず不平等な講和条約の改訂、安保、行政協定の廃棄である。あえて首相の所信をお尋ねします。(拍手)  さらに私は、提案者並びに総理にお尋ねをいたします。元来憲法は、国民政府を制約する目的をもって制定するものであり、そのことは憲法前文におきまして、「政府の行為によって再び戦争の惨禍が起ることのないやうにすることを決意し、ここに主権国民に存することを宣言し、この憲法を確定する。」とあることを見ても明らかであります。しかるに今回提案せられた法案によれば、「調査会はこれを内閣に設置する」とあり、しかもその委員内閣が任命するとなっているのであります。その任命に当ってみずからの恣意によってその結論をみずからの志向するところに拉致する任命が行えるのであります。立案そのものが国会結論に影響を与えることについては、経験上何人もこれを否定し得ない事実からすれば、この内閣に設けられるということ自体に重大な誤まりを持つものであり、本調査会は諮問を待たず審議を進めるものであるなどという政府説明を、単なる見せかけだけであると言わなければなりません。この点について、提案者並びに首相の御答弁を承わりたい。  私は想起する。かつて日本が太平洋戦争遂行中、鳩山首相は、時の権力に抗し、翼賛政治に屈せず、最後の一人となるとも、きぜんとして節操を守り抜いた態度、心ある国民の讃仰の的であった。しかるに今日の鳩山首相は、在野時代は、自衛隊は憲法違反であると言い、憲法改正を要すると言いながら、首相地位につくや、軍隊を持つことは憲法違反にあらずと変節をあえてした。鳩山首相はこの変節にについて、現在の憲法下で、自衛隊の法律国会を通過したのだから、憲法違反にはならないと解釈するに至ったと言われるのである。これほど国民を愚弄し、これほどみずからを卑下した言葉はないのであります。もっとも、日ソ国交回復についての談話、憲法反対だと言い切ったあとで、問責決議案を突きつけられるや、こともなげに取り消したりする、一体一国の総理ともあるものが、あぜんとするほどあっさりと取り消しをやり、豹変をやり、陳謝して省みない姿は、何のことはない、初代総裁になりたいためばかりと国民は見ているのである。(拍手)一体この態度は、眼中国家国民ある態度だといえるでありましょうか。お家芸が、立身出世を事とすることは自由である。しかしそのために起る国家国民の不幸は看過できないのであります。首相今日までの失言と取り消しは、まさしく首相の座に居すわる資格なしと申し上げても、あえて過言ではあるまい。首相の釈明をお伺いしたい。(拍手)   〔国務大臣鳩山一郎君登壇拍手
  10. 鳩山一郎

    ○国務大臣(鳩山一郎君) ただいまの御質問に対してお答えをいたします。  第一に、現内閣は社会保障制度に力をあまり注がないようなお話がございましたけれども、現内閣はたびたび議場で説明をいたします通りに、社会保障制度にも十分の力を注いでいるつもりでございます。(「つもりじゃだめだ」と呼ぶ者あり)  第二に、憲法改正は、独立完成後は自由に国民意思によってきめた方がいいと考えておりますので、独立完成後に憲法改正案を提出したわけでございます。  ただいまの御質問の千葉君のお話は、安保条約ができ、行政協定がある場合においては、その検討の自由がないようなお話がありましたが、安保条約あるいは行政協定は、憲法改正について少しの自由も制限をしておりません。そうしてアメリカから憲法改正につき何らの要請もございません。  第四に、東北アジア防衛機構というようなお話がありましたが、日本が、朝鮮、台湾等に対しての防衛参加への道を開くことになりはしないかというようなお話がありましたが、こういうような考え方は全くないのであります。全然これは杞憂のお考えでございます。  最後に、自衛隊についてお話がありましたが、たびたび申し上げておりますから、自衛隊についての弁明はいたしません。   〔衆議院議員山崎巖登壇拍手
  11. 山崎巖

    衆議院議員山崎巖君) 千葉さんのただいまの御質問に対しましてお答えをいたしたいと存じます。  現行憲法の制定の際に、これに賛成せられました方々の御批判がございましたが、その当時のことにつきましては、相当の理由があったことと拝察をいたすのであります。しかも今回は、現行憲法をその後の国情に応じ、民主主義平和主義並びに基本的人権尊重と、その長所は、これを尊重、擁護しつつ検討を加えんとするものでございまして、何ら差しつかえのないことであると信じます。本調査会を設置し、憲法検討を加えますることは、鳩山首相から御説明のございましたように、アメリカの要請や強制によって憲法改正しようとするものでは断じてございません。(「改正案を出したと言っているぞ」と呼ぶ者あり)自主独立に対する私どもの押えがたい熱情から憲法を全面的に検討せんとするものであります。御所見のごとく安保条約や行政協定をやめてかからなければ、憲法を再検討してならぬということは理由のないことであると思います。  本調査会国会に置かずして、これを内閣に置きましたことについての御質問でございましたが、このことにつきましては、提案理由に申し上げましたように、今回の調査会委員は、国会議員のほかに、学識経験者を同列として組織することに相なっております。こういう調査会は、これを内閣に置くことがもっとも適切であり、また前例から見ましても、妥当なやり方であると考えたからであります。しこうして、これを内閣に置きましても、提案理由説明で申し上げましたように、広く国内の衆知を集め、自主的に、かつ民主的ルールに従ってこれを運営することに相なっておりまするし、また調査審議の結果も国会報告することに相なっているのであります。従いまして、特に行政府の意向がこの調査会に強く反映するようなことは絶対にないものと確信をいたしております。  以上をもってお答えといたします。(拍手
  12. 鳩山一郎

    ○国務大臣(鳩山一郎君) ただいま私の発言中に、憲法改正案を出したということは間違いでありまして、そのことは憲法調査会法を出したということであります。誤解を、言い間違いがありましたから、訂正をしておきます。   —————————————
  13. 河井彌八

    議長河井彌八君) 廣瀬久忠君。   〔廣瀬久忠君登壇拍手
  14. 廣瀬久忠

    ○廣瀬久忠君 憲法調査会法案は、前国会、本議場において私も質問をいたしたのでありますから、本法案に対しては、本日は一言だけ希望を述べるにとどめておきます。  本調査会は、国会国民に対して発議する憲法改正原案の資料となるべきものを作成するというのでありますから、調査会内閣に置くことが適当と思いまするが、しかし調査及びその資料は精密でなくちゃならぬ。また広範囲にわたっておらなければならぬ。ことに大切なことは、それが公正でなければならぬということであります。で、委員会の組織及び運営は、国民の納得を得るように、遺憾なきを期してもらいたい。まずこれを切望しておきます。  この機会に、私は鳩山首相に対して、憲法改正に関する所見を伺いたいのであります。首相憲法に関する御意見は、断片的にはこれを承知いたしておりまするが、本日は、今世間で問題になっている重要なるものにつきまして、私の議員としての意見をもってこれを質問し、これをはっきりとしていただきたいのであります。一体現行の日本国憲法の基礎となりましてマッカーサー司令部の草案作成、その基本方針というものは、日本の非武装化でありました。憲法の第九条は、議会の修正を受けましたが、今日においても自衛隊の合憲、違憲の議論が絶えずあります。元来、日本無防備を目的とするところの憲法前文及び憲法第九条の基調は、これは平和主義の行き過ぎであると存じます。今やその是正は当然であると思います。平和主義の付き過ぎ是正、これについて首相に対し、まず自衛軍備についてお尋ねをいたします。私は、世界の平和を念願とするものであります。原水爆の禁止であるとかあるいは軍備の縮小が、国際法及び国際条約によって実現する日の一日もすみやかならんことを熱望いたします。しかしながら遺憾でありますけれども、国際紛争は常に現実であります。われわれの政治は、この現実を無視することはできません。世界独立国が自衛権の裏づけとして自衛軍備を持つのは、独立国の政治の常識でありまして、独立日本も、この政治常識を逸脱すべきではありません。いわんやわが国は、国連への加盟を希望すること久しい。国連への加盟はわが国外交上及び貿易上の利益をもたらすことでありましょう。しからば非常時に当りまして、国連当局がわが国に力の分担を要求する場合、これに応ずるの態度と準備の軍を持つのは当然であります。国連の規約が、力の分担を強制せざるを理由として、力の分担の免除を予定するがごときことはわが国としてなすべきことではありません。かく考えてきますと、わが国独立国としても、また国連加盟を予定する国としても、自衛の軍を持つのは当然であると信じます。私は憲法改正に当り前文の一部及び第九条を改めまして、侵略戦争は放棄するが、自衛の軍はこれを持つのだということを憲法上はっきりとすべきであると思いまするが、首相所見を伺います。  次に、自衛の軍の性格について伺いたい。私の考えている自衛の軍は、国民の軍であって、天皇の軍ではない。国民の軍とは、国会及びその監督下の内閣が、軍に関する一切の事項を掌理する建前の軍であります。政治優先の原則に従いまして、民主的管理に服する軍であります。すなわち、軍令も軍政も、ともに内閣に属するを建前として、最も重大な事項は、国会の決定を先に受くることとし、その他は内閣に行わしめ、すべて文官大臣をしてこれを所管せしむるのであります。もちろん内閣は、国会に対し全責任を負担する建前であります。かくのごとき構想のもとに軍を作るならば、世間が憂慮するがごとき事態は起り得ないのであります。世間は、軍によって政治が撹乱せられるであろうとか、あるいは軍によって経済が破壊せられるであろうとか、軍によって国民戦争に引きずり込まれるであろうとか、これを心配しておるのでありまするが、国民の軍として、国会内閣がしっかりしておって、軍を制御しておる以上は、断じてさようの心配はないと信ずるのであります。もしこれを疑う者は、国会及び内閣に信を置かない者であります。私は信を国会及び内閣に置いて、国民の軍の組織を遺憾なからしめたいと思います。首相所見を伺います。  次に、徴兵問題についてお尋ねをする。私は、日本国民全部が国家防衛義務を負うべきことを憲法上明らかにすべきであるとしておるものであります。しこうして徴兵の問題は、国会の判断によって、国の内外の情勢がこれを必要とする場合に、国会法律をもって定むべきものであると信ずるのであります。徴兵問題は、憲法改正後の問題であります。でありますから憲法第九条を改正し、自衛軍を持つこととしても、国家防衛義務憲法上設けても、必然的に徴兵制度をしくものではなく、徴兵制度存否の問題は、一に将来の国会の判断にまかすべきであると信じます。当分その必要を私は認めません。首相所見を伺いたい。  次に、憲法改正民主主義との関係についてお尋ねする。改正反対論者改正論者を非難して、天皇主権改正論者は返すであろうとか、民主主義を軽んずるであろうとか、基本的人権をじゅうりんするであろうなどと申すのでありまするが、改正論者である私は、さようなことを一度も考えたことはありません、鳩山首相も民主政治家として、国民主権を堅持するとともに、民主主義及び基本的人権尊重すること、問うまでもないことでありまするが、世間には不幸にして誤まり伝えられるところが多いのであります。どうかこの誤まりを一掃するために、念のために所信をお漏らしを願いたい。  次に、私は憲法改正民主主義の行き過ぎについてお尋ねをする。現行憲法の基礎であるところの草案をマッカーサー司令部が作成するに当って、国民権利保障に非常に力を注いだのであります。そのために基本的人権のわが憲法上の条章は、諸外国憲法にその例を見ないほど高度のものであります。基本的人権尊重は、民主主義実現のために大いに喜ぶべきことであり、もとより私も大賛成であります。しかしながら、基本的人権憲法上に書いただけでは意味をなさぬのであります。要は、基本的人権の保護並びに実現に万全を期さなければならないのであります。これがためには、まず憲法上に、基本的人権に秩序あらしめる規定を設けなければなりません。すなわち、何人も他人の権利の享有を尊重し、社会の平和を保持し、公共の福祉の維持及び増進に協力せなければならないとするがごときであります。しかるにこの憲法は、人権の乱用の防止、公共の福祉のための人権の制約等に関し、すこぶる明断を欠いております。また具体性を持っておらないのであります。これが民主主義の行き過ぎであります。数多くの基本権利に保護を与え、なおその満足なる実現を期するには、この責任を果すべき国家に、責任遂行の能力を与えなければなりません。これがためには国民は、国家の能力を向上せしめ、国家の健全をはかるために多くの基本義務を負担すべきであります。たとえば法律を守るの義務、他人の権利享有を尊重するの義務、公共福祉の維持増進に協力するの義務、国に忠誠なるの義務国家防衛義務等がこれであります。しかるに現行憲法は、この種の義務一つだに明記しておらぬのであります。これまた民主主義の行き過ぎと私は断じます。憲法改正に当っては、私は基本的人権の乱用の防止を明確にするとともに、基本義務を明示して、よって基本権利の保護及び充実を期し、個人の幸福と国家の健全をはかり、民主主義有終の美をおさめたいと思うのであります。民主主義行き過ぎ是正に関する首相見解を伺いたい。  次に、国民主権に関連して、天皇の性格に関して首相所見をただします。日本国憲法は、天皇日本国象徴であるといたしました。わが国において最も古くかつ尊重すべき天皇の存在を、翻訳語である象徴なる文字をもって現わすがごときことは、わが国情にふさわしいと言い得るでありましょうか。しかも象徴なる文字が天皇の性格を現わすのに不適当であるがために、わが国憲法学者象徴に関する意見は、区々にして帰一いたしません。かくのごとく天皇憲法上の性格について定説がないということは、天皇の性格をあいまいならしめ、その影響は、憲法上及び政治上重大であると思います。私は、憲法改正に当っては、天皇を現わすのに象徴なる文字をもってすべきではないと思う。天皇主権者でないことは言うまでもないが、天皇は、わが国外国に向って代表する元首とすべきであると思います。かくしてこそわが国情に達するばかりでなく、わが国の一体性を確保するゆえんであると信じます。私は、日本国の性格を、日本国天皇元首とする国民主権国家であるとして、国民主権天皇の存在との調和をはかって、わが国の特色を維持せんとするものであります。天皇に関する首相所見を伺います。  次に、家族制度について首相意見をただします。私は民主主義を奉ずるものでありますから、家庭の内部に、法の前の不平等を持ち込むがごとき考えは毛頭ありません。従って戸主権の復活だとか、夫権の復活だとか考えたこともありません。しかしながら、現行憲法の家族に関する規定二十四条のごとく、個人主義に偏したる態度には賛成することはできないのであります。家庭は人類社会の自然の集団単位であり、しかもこの自然の集団単位が、民族及び国家の発展の自然の源泉となるのであります。でありますから、諸外国憲法は、家庭に対して積極的に保護を加えているものが多いのであります。私は、わが国家族制度についても、時代の変遷とともに欠点として排除すべきもの、すなわち戸主権、夫権のごときは排除するのが当然でありますが、しかしながら、社会の自然の集団単位としての家族の力、これはどこまでも保持していかなければならぬと思います。もし憲法が、かくのごとき考えを憲法上に明らかにするならば、憲法以下のいろいろな立法は、おのずからこれに順応して、家庭をして社会道徳の進展に寄与せしめ、かつ国民の幸福に貢献せしめ得ると思います。すなわち民族及び国家の発展を促すのであります。憲法改正に当って、二十四条を改正する際には、家族に関する事項については、法律は、個人の尊厳と両性の平等に立脚するとともに、家族の敬愛和親と、その維持発展とに役立つように法律を制定しなければならないと憲法に明記すべきであります。首相に、家族問題に関する意見を伺います。  最後に、参議院制度の改革についてただします。現行憲法が、議院内閣制をとる以上、二大政党主義によるのでなければ、政局の安定と政治の一貫性を確保し得ないのは当然であります。しかしながら、参議院が二大政党対立の姿となったなら、参議院は第二院としての使命を果し得ないことが多いと思います。私は、参議院が第二院として、いわゆる抑制均衡の作用によってその使命を果すためには、参議院はこれを非政党化することによって、絶対中立性を確保することが理想であると思います。しかし、現行日本国憲法の参議院の組織及び権限等より判断すれば、参議院は政党化するのが当然であって、中立性の維持などを望むのは、木によって魚を求むるの類であります。私は国政上、第二院の必要性を強く主張するものであります。かつ、主として公選の方式によりつつ、しかも、その参議院の中立性、非政党化を要件と信ずるものであります。現行憲法の参議院制度に対して私は満足いたしません。根本的の改革を望み、参議院制度の改革というものをもって、私の憲法改正の重大なる理由一つといたしております。首相は、憲法改正に当って、参議院制度についていかなる御意見を持っておられるか、お伺いをいたします。  以上をもって私の質問を終ります。(拍手)   〔国務大臣鳩山一郎君登壇拍手
  15. 鳩山一郎

    ○国務大臣(鳩山一郎君) 廣瀬君の御質疑に対して答弁をいたします。非常にたくさんの質問でありましたから少し抜かすことがあるかもしれませんが、そうしたら、再質問をお願いいたします。  第一の御質問は、自衛隊についての性格についてであったと思います。自衛隊が侵略を目的とするのではなく、自衛のためだということは当然なことであるが、その自衛軍の性格というものは、どういうようにするつもりなのかというような御質疑であったと思います。むろん私も廣瀬君と同じように、自衛隊を作りまして、それを侵略に使用するというような考え方は毛頭持っておりません。ただ、その自衛軍の性格、これを国民の軍として、軍令も軍政も、国会と、その監督のもとにある内閣とにおいて行う、国会内閣とが軍を完全に制御する主体、そういうようなやり方でいけば安全だというようなお考え方であったと聞いたのでありますが、全く同感であります。ただし、これらのことは、どういうように書くかという書き方などについては、憲法調査会において万遺憾なきを期すべきものだと思いますから、今日ここで私は、どういうような書き方をすればいいという点までお答えをするわけには参りません。  第三に、民主主義人権尊重は、改正の意はもちろんないが、基本的人権の中には、尊重すべきものはもちろんあるけれども、しかしながら、それは乱用せらるる危険があるというように、私は聞いたのでありますが、そういうような点につきましては、これは憲法の書き方なのでありまして、これは憲法調査会において詳細に検討して、御返事をしなければならないと思いまして、ここでにわかに御返事はできません。  次に、天皇の資格についてのお話がありました。国の代表について明確を欠くことがあるから、して、天皇元首とするがいいというような御意見がありました。これについても非常な重大な問題でありまして、憲法調査会において慎重に審議をしてもらう以外に道はないと考えます。  家族制度についてのお話がございました。家族制度の個人をも尊重する、あるいは男女の、両性の平等を主張するというようなことは当然であるけれども、この男女の平等は当然で、個人の尊厳も尊重する。だが何かそこで、どこかに訂正する必要があるのではないかというようなお話であったのですが、私ちょっと聞き違えたかもしれません。ただし家族制度改正については、詳細に憲法調査会において審議をして決定をする以外にはないと思います。  最後に、参議院制度に対する御意見がございましたが、これもまた非常な重大な問題でございまして、にわかに御返事はできないのであり、これはやはり憲法調査会において慎重な審議を待つよりしかたがないと思います。  以上、御答弁いたします。   〔廣瀬久忠君発言の許可を求む〕
  16. 河井彌八

    議長河井彌八君) 再質問の時間はありません。   —————————————
  17. 河井彌八

    議長河井彌八君) 堀眞琴君。   〔堀眞琴君登壇拍手
  18. 堀眞琴

    ○堀眞琴君 私は、ただいま上程になっております憲法調査会法案について、次の一、二の点について質問をいたしたいのであります。  提案者は、現在の憲法占領下において、しかもマッカーサー草案を基礎にして作られたものである。従ってこれを検討し、改正すべきである。日本の実情に即した憲法を作らなければならぬというのが提案理由説明であります。私はこれらの問題、この提案者理由とするところについては、いろいろ質問をいたしたいのでありますが、時間が五分と限られておりまするので、それらの問題は、いずれ委員会に譲ることといたしまして、私はここでは、憲法改正には一定の限界があるのではないかということについて質問をするのであります。青木君、廣瀬君、それぞれ天皇の性格について質問をされました。私は、これを主権在民との関係において述べてみたいと思うのであります。御承知のように、憲法前文には「ここに主権国民に存することを宣言し、」云々、また「その権威は国民に由来し、その権力は国民の代表者がこれを行使し、」云々とあります。主権者が国民であることは提案者も、それからまた自民党の質問者も、緑風会の質問者もこれを認めておるようでありまするが、しかし天皇地位元首という名前に変えてしまおうという点には、非常に大きな問題が存するのであります。ただいまも鳩山首相は、この問題は重要であるからして、憲法調査会にいずれ諮って、その上できめたいと思うという返事をしております。現在の憲法は、天皇の性格を国民象徴として規定しております。青木君は一番先の質問において、シンボル、象徴という言葉は、いまだかつて使われておらないという話でありました。しかしながら、憲法解釈上、国王の地位がシンボルとして認められていることは、これは外国では一般でありまして、たとえばシドニー・ウェッブが書いておりますところの大英国家の構成に関する著書の中で、国王の地位について、大英国を構成する諸民族の象徴が国王である、このように述べております。日本でもシンボルという言葉は、今度の憲法で初めて使われたのではありません。伊藤博文が編さんいたしました憲法資料に載っております甲案試草によりまするというと、国王は国権のシンボルなり、国王は一切の諸般の政権を総撹し云々と書いているのであります。従ってシンボルという言葉は、決して現行憲法において初めて使われたのではなくて、しかもこのシンボルという言葉は二つの意味を持っております。一つは、単に民族結合の象徴としてこれを用いる、もう一つは、政権を総擁する地位において、それが国民のシンボルになる、こういう二つの意味であります。  明治憲法の草案となった最初の甲案試草は、これはその後廃棄されまして、乙案試草となり、さらに明治憲法の草案が確定して明治憲法が制定されたのでありまして、その確定において、国王は国権のシンボルなりという言葉は削除されております。しかし一切の諸般の政権を総撹する地位というものは、明治憲法の第四条に「天皇ハ国ノ元首ニシテ統治権を総撹シ」云々という文章になっているのであります。その憲法義解における伊藤博文のこれに対する解釈によりましても、この間の事情をわれわれは十分に見ることができると思うのであります。現行憲法天皇に与えた性格としてのシンボルというのは、シドニー・ウェッブ夫妻が書いているところのイギリス国王の地位を表明した言葉と同じだと申さなければなりません。  時間がありませんので、その点についての説明をこれ以上申し上げることはできないのでありますが、しからば現行憲法において、天皇国民のシンボルであるということに関して、どういう国家機能があるかということが問題になるのであります。現在のシンボルの意味が、ウェッブ夫妻の言うような意味であるとするならば、当然国政に関する機能を国王が持たないことは、これはもちろんであります。国事に関する機能をのみ持つものであるということに規定したのはその意味であります。国事に関する機能という意味は、要するに国の機関によって決定されたところのものを表示する地位であるというだけであります。しかもこれには内閣の助言と承認という条件がついているのであります。天皇元首にするということは、甲案試草に述べられた国王は国権の象徴であるという地位、さらに明治憲法に言うところの「天皇ハ国ノ元首ニシテ統治権」云々という、その地位に戻そうとするものでありまして、主権在民の思想とまっこうから反するものだと申さなければなりません。
  19. 河井彌八

    議長河井彌八君) 堀君、時間が来ました。
  20. 堀眞琴

    ○堀眞琴君(続) 私はその意味におきまして、この憲法調査会法案憲法改正を意図し、しかも民主主義人権尊重平和主義を貫くなどというような詭弁を弄する改悪意図に対しましては、まっこうから反対せざるを得ないのであります。この点に関しまして、提案者並びに鳩山首相の御答弁をお願いする次第であります。(拍手)   〔衆議院議員山崎巖登壇拍手
  21. 山崎巖

    衆議院議員山崎巖君) 堀さんのただいまの御質疑に対しましてお答えを申し上げたいと存じます。  日本国憲法改正の限界、すなわち日本国憲法をどの程度に改正できるかという問題につきましては、いろいろ議論のあることでございまするが、私どもといたしましては、先にも申し上げましたように、現行憲法が掲げておりますところのいわゆる三原則は堅持していきたいという考えを持っておりまするので、何らその点については差しつかえないと考えております。ことに、限界の問題につきましては、天皇地位に関連していろいろ御所論がございましたが、私どもといたしましては、往時の天皇制の復活のようなことは全然考えておりません。あくまで主権在民原則を堅持するものでございまして、天皇地位をいかにするかという問題も、これはきわめて重大な問題でございまするから、憲法調査会におきまして、慎重審議をわずらわしたい問題であろうかと考えております。  以上をもってお答えといたします。(拍手)   〔国務大臣鳩山一郎君登壇
  22. 鳩山一郎

    ○国務大臣(鳩山一郎君) 堀君の御質問にお答えをいたします。  ただいま山崎君が答えたので十分だと思いますが、山崎君の言われた通り平和主義民主主義基本的人権、これらの三原則を順守して憲法改正をやりたいということを説明の中で申しておりますので、その範囲内において憲法調査会は進行していくものと、ただいま考えております。(拍手)   —————————————
  23. 河井彌八

    議長河井彌八君) 八木幸吉君。   〔八木幸吉君登壇
  24. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 まず発議者にお伺いいたします。  この法案は、内閣よりの提出をやめて、議員提案とするくらいの配慮がなされておるのに、何がゆえに調査会憲法改正の発議権のない内閣に設置して、国会内に設けなかったのであるか、承わりたいのであります。私は内閣憲法改正発議原案国会への提出権がないとは必ずしも考えないのでありますが、原案は、改正方向を示すものでありますから、国会がこれを起草するのが妥当であり、ことさらに国会を避けて、調査会内閣に設ける必要を認めません。いわんや改正反対立場にある社会党に、本案の賛成を求められましたいきさつから考えてみても、超党派的に調査会を運営せんとするのでありますから、なおさらのことであります。学識経験者の参加を容易ならしむるなどということは理由になりません。明快な御説明を求めたいのであります。  次に、総理にお尋ねをいたします。第一は、政府調査会関係であります。昭和三十一年度の予算に調査会の費用が一千万円計上されております。法律も通っておらないのに、なぜ予算を計上したのか、これは行き過ぎではないか。  第二点は、予算にその経費を計上するくらいであれば、なぜ本案を政府提案にしなかったのか、条理一貫せぬではないかと思うのであります。  第三に伺いたいのは、自民党と調査会との関係であります。大政党としては、内閣調査会を置くなどということをやめて、年間五千万円の立法事務費を活用して、自党内に一大憲法調査機関を設けて、朝野の権威を集めて改正の理想案を作って、正々堂々と国会提案するのがよかろうと思うのでありますが、お考えはいかがでありますか。  最後に第四点としてお尋ねいたしたいのは、憲法改正に対する総理の信念であります。現行憲法世界永遠の平和を念願する崇高な精神のもとに、戦争放棄の条項を掲げて、わが国の安全は諸国民の公正と信義とにこれをゆだねたのでありますけれども、不幸にして国際情勢の厳しい現実は、これをもってしてはわが国の安全を保持し得ない状態となって、ついに自衛隊の出現となりましたが、いかに強弁しましても、自衛隊は憲法違反であります。(拍手)順法精神の上から、一日もすみやかに第九条は改正せねばならぬと思うのであります。鳩山総理の考え方も同様であると考えますが、その言動はきわめてあいまいであります。しかし、憲法改正のごとき大事業は、指導者に確固たる信念が必要であって、ふらふら腰ではとうていその実現は困難であります。憲法調査会目的は、憲法の再検討となっておりますが、改正がその目的であることは、きわめて明瞭でありますから、率直に改正の必要を強調して問題点を明らかにすべきであります。また改正の時期も三年後ではなしに、目睫に迫る参議院改選を機として、もっと勇敢に努力すべきものであると思います。国民の啓発運動に対しましても、一そう積極的でなければなりません。  私はこれらの点について、総理の確固たる信念を国会を通じて国民に披瀝せられんことを希望して、私の質問を終ります。   〔衆議院議員山崎巖登壇
  25. 山崎巖

    衆議院議員山崎巖君) 八木さんのただいまの提案者に対しまするお尋ねに対しまして、お答え申し上げたいと存じます。  憲法調査会国会に置くべしという御見解に対しましては、先ほど千葉さんにお答えを申し上げました通りに、この調査会は、国会議員のほかに学識経験者を同列として組織する審議調査機関でございまして、この種の機関は、内閣部内に置くというのが前例でもございまするし、妥当であろうと考えたからであります。また先にも申し上げましたように、調査会調査審議の結果が、つぶさに国会報告されることに相なっておりますので、別段不都合はなかろうかと考えます。なお憲法調査会法案は、第二十二回国会におきましても議員提案でございまして、その際、衆議院ではすでに可決をみた次第で、今回も議員提案が適当であろうと思ったからであります。  予算案の点につきまして、総理にお尋ねがございましたが、この予算案、三十一年度予算の中に計上いたされておりまするのは、政府が、憲法調査会法案の成立を見越されて計上せられたものと考えております。憲法改正というような重要な事項は、政党自身が積極的な活動をなすべしとの御所見に対しましては、全く同感であります。わが自由民主党におきましては、立党早々、鳩山総裁の意図によりまして、党内憲法調査会を設置し、熱心に現行憲法全面的検討に努力を傾倒いたしておりますることを御了承いただきたいと存じます。(拍手)   〔国務大臣鳩山一郎君登壇拍手
  26. 鳩山一郎

    ○国務大臣(鳩山一郎君) 八木さんの御質問に対しましては、山崎君の答弁でもって御了承願いたいのでありますけれども、特に私に対して第九条に対しての御質問がありましたから、その点についてだけ私から申し上げます。  自衛のために軍隊を持つということは、憲法がああいうように書いてありましても、現在はできるとは思います。けれども、とにかくあの憲法は、成文において、陸軍は持てない、海軍は持てない、空軍は持てないと書いてあるのでありまするから、自衛のために陸軍を持ち、海軍を持ち、空軍を持つというのは、憲法の成文から見ますると、ちょっとおかしいのです。それですから、それを正確に持てるように訂正するということが、当然に日本国民としてとるべき道だと私は考えているのです。(拍手、「それでいいのか」「今憲法に違反しているということじゃないか」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し)
  27. 河井彌八

    議長河井彌八君) 静粛に願います。議員諸君の静粛を希望いたします。  これにて質疑の通告者の発言は、全部終了いたしました。質疑は終了したものと認めます。    ————・————
  28. 河井彌八

    議長河井彌八君) 日程第二、昭和三十年度一般会計予算補正(第1号)  日程第三、昭和三十年度特別会計予算補正(特第4号)  日程第四、昭和三十年度政府関係機関予算補正(機第1号)  以上、三案を一括して議題とすることに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  29. 河井彌八

    議長河井彌八君) 御異議ないと認めます。まず、委員長の報告を求めます。予算委員長西郷吉之助君。   〔西郷吉之助君登壇拍手
  30. 西郷吉之助

    ○西郷吉之助君 ただいま議題となりました昭和三十年度一般会計予算補正(第1号)、昭和三十年度特別会計予算補正(特第4号)及び昭和三十年度政府関係機関予算補正(機第1号)の、予算委員会におきまする審査の経過並びに結果を御報告申し上げます。  これら三案は、さきに実施いたしました地方財政についての臨時措置に伴う財源の補てん、食糧管理特別会計の赤字補てん、生活保護費、義務教育費国庫負担金、旧軍人遺族等恩給費の不足補てん等のため、一般会計、特別会計及び政府関係機関の予算を補正しようとするものであります。  まず、一般会計予算補正におきまする歳出の追加額は、三百五十四億円でありまして、その財源といたしましては、租税等の増収二百十八億円のほか、公共事業費等既定経費の節約繰り延べ等により、百三十六億円を捻出いたすことといたしております。これによりまして、一般会計歳入歳出予算の総額は、当初の九千九百十四億円から二百十八億円増加いたし、一兆百三十三億円となるのであります。  歳出の追加額のうちおもなものについて申し上げますると、まず第一に、地方財政に関する経費であります。地方財政の窮状に対処し、とりあえずの措置といたしまして、さきに交付税及び譲与税配付金特別会計におきまして百六十億円の借り入れを行い、これを臨時地方財政特別交付金といたしまして地方団体に交付したのでありまするが、今回この特別会計の借入金相当額百六十億円を一般会計から補てんすることといたしておるのであります。  なお、地方財政に対しましては、このほかに地方交付税交付金の追加がございます。すなわち所得税及び法人税の増収見込額九十五億円の二二%に当る二十億九千万円が追加されますので、本年度の交付税及び譲与税配付金特別会計における一般会計よりの受け入れば、百八十億九千万円を増加して、千五百八十億円と相なるのであります。  第二に、食糧管理特別会計の赤字補てんであります。豊作による三十年産米の買入数量増加に伴い、食糧買入費等の歳出予算を増額する必要があるため、さきにこの特別会計の補正を行なったのでありまするが、そのとき予定しておりました通り、この会計の三十年度末におきまする赤字百六十七億円のうち、インベントリー・ファイナンスに見合う百億円を除く残余の六十七億円を補てんするため、今回一般会計からの繰り入れを行うことをきめておるのであります。  第三に、生活保護費等の不足補てんであります。生活保護費につきましては、実績に基く所要見込額が予算を上回るに至りましたので、不足額二十三億円を追加計上し、また義務教育費国庫負担金につきましては、二十九年度の清算に基く不足額十二億円と、三十年度の年末手当〇・二五カ月分の増額に伴う不足見込額十二億円と、合せまして二十四億円を追加計上いたし、さらに旧軍人遺族等恩給費につきましては、受給見込人員の増加に伴う本年度内の不足額一七億円を追加計上いたしておるのであります。  第四に、その他の経費といたしまして、戦時中、政府日本銀行から借り入れた金額を償還するための国債費十二億五千万円、国際金融公社出資金九億九千万円、日本電信電話公社交付金八億九千万円等を追加計上いたしております。  以上の歳出の追加に必要な財源といたしましては、すでに申し上げましたように、歳入の増加二百十八億円と、歳出の節約繰り延べ等百三十六億円、合せまして三百五十四億円でございますが、その内容は大体次の通りであります。  まず第一に、歳入の増加であります。経済の好転等に伴いまして、租税及び印紙収入については百六十億円の増収を見込んでおりまするが、その内訳は、所得税八十五億円、法人税十億円、砂糖消費税十五億円、物品税三十五億円、関税十五億円であります。  砂糖等の特殊物資の輸入差益につきましては、当初予算におきまして、特殊物資納付金処理特別会計を創設いたし、これに吸収する予定でありましたところ、関係法律案審議未了によりまして、この特別会計は成立いたしませんでしたので、今回、これを一般会計の歳入に寄付金として受け入れることとし、その金額を三十億円と予定いたしたのであります。その他の歳入につきましては、国際電信電話会社の株式の売払代約八億九千万円、旧タイ国特別円債権返償金十六億一千万円、金融機関調整勘定利益分配金十七億九千万円、その他合せまして七十八億円の増加を見込んでおります。  以上、歳入の追加額は二百六十八億円となりまするが、上級たばこの売れ行き不振によりまして、専売納付金が約五十億円減少する見込みでありますので、差引歳入の増加額は二百十八億円となるのであります。  第二に、歳出の節約繰り延べ等でありまするが、まず公共事業系統費につきまして、事業の執行状況等を勘案いたし、無理のない限度を目途として節約繰り延べ等を行うこととし、六十四億円を減額いたしております。  なお、このほか賠償等特殊債務処理費において三十億円、農業保険費において二十八億円、外航船舶建造融資利子補給その他において十四億円、合せて七十二億円の歳出の節約不用等を見込んでおるのであります。  特別会計及び政府関係機関の予算につきましても、以上申し述べました一般会計予算補正に伴い、交付税及び譲与税配付金特別会計、同債整理基金特別会計、日本専売公社等の予算の補正を行うほか、それ以外のものについても若干の補正を行なっておる次第であります。以上が昭和三十年度予算補正の概略の内容でございます。  予算委員会におきましては、十五日、一萬田大蔵大臣より提案理由説明を聞き、引き続き鳩山内閣総理大臣並びに関係閣僚に対しまして質疑を行なったのでありまするが、ここではそのうち一点だけ簡単に御報告いたしておきたいと存じます。  すなわち、昭和三十年度予算の規模についてでありまするが、今回の補正の結果、昭和三十年度予算は一兆百三十三億円となり、一兆円のワクを突破するに至った。このことは予算の補正を行わないという当初の言明に反するばかりでなく、いわゆる一兆円予算の公約にもそむくものではないか。もし少しぐらいなら一兆円を超過しても差しつかえないというのであれば、その限度はどのくらいであるか、などの質疑に対しまして、鳩山内閣総理大臣及び一萬田大蔵大臣より、「一兆円の数字そのものにも意義がないわけではないが、最も肝要な点は、財政の健全性を貫くということである。今回の補正で一兆円を百数十億円超過したとはいえ、一般歳入の限度内ですべての歳出をまかなっており、本質的には健全財政を一貫して堅持している」との答弁がありました。  以上のほか、広く内外の重要問題、ことに日ソ交渉、対比賠償等、当面の外交問題並びに労働政策、中小企業対策、農業及び食糧政策等の内政諸問題につきましても活発な質疑が行われましたが、その詳細につきましては、会議録によって御承知を願いたいと存ずる次第でございます。  かくいたしまして、十八日をもちまして質疑を終局いたし、直ちに討論に入りましたところ、まず日本社会党を代表して、秋山委員は、補正予算を組まぬことを繰り返し言明し、しかも一兆円予算を確約した鳩山内閣は、その公約に反し、今回の補正によって、一般会計予算を一兆百三十三億円としたこと、地方財政に対する措置について、地方交付税率の引き上げによらず、臨時地方財政特別交付金というようなこそくな手段によったこと、教育公務員以外の地方公務員に対する期末手当の財源捻出不能分については、必要な財政措置を講ずべきであるとの国会の付帯決議を黙殺したこと、食管の赤字補てんは、食管特別会計に対しては一般会計からの繰り入れを行わないというかねての言明に反し、かつ食管の経理内容に疑問の点があり、また砂糖差益金の吸収を法律で明確に規定せず、寄付金という形で受け入れていること、公共事業費の繰り延べは、さきに八十八億円と予定しながら、与党の復活要求に屈し、六十四億円に減額し、しかもこの額について、すでに行政措置をもって天引きを行なっておるがごときは、国会の予算審議権を軽視するものであることなどの理由をもって反対の旨を述べられ、次いで、自由民主党を代表して安井委員は、今回の補正の眼目たる地方財政措置については、さきの特別会計予算補正に伴う当然の締めくくりであり、その財源の一部たる公共事業費の繰り延べについても、当初予定の八十八億円から六十四億円に減額しており、事業の実施に実質的に支障を来たさないため、万全の措置を講ずるようとの要望にも十分沿うたものであると認められること、食管特別会計の赤字補てん、生活保護費、義務教育費国庫負担金、旧軍人遺族等恩給費の増額など、すべての実情に即した適切な措置であること、今回の補正によって政府の財政方針には何ら根本的な変化はないことなどの理由によって賛成の旨を述べられ、最後に緑風会を代表して、豊田委員は、今回の補正はすでに実施済みの地方財政措置、食管の赤字補てん等避けることのできない経費に対し、租税の自然増収のほかは、極力歳出の繰り延べ、節約等でまかなっており、現下の実情より見て必要かつやむを得ない措置と認めざるを得ない。しかしながら政府は、三十年度補正予算を組まないとしばしば言明しながら、続々と補正予算を提案したのは言行不一致であるから、今後政府はかかることのないよう、その発言に対して十分に責任を持つべきこと、また今回の補正に際し、砂糖差益金三十億円を業界の申し出によって寄付金として受け入れることとしておるが、これは公明なるべき国家財政の措置としては、不明朗かつ不安定である。ことに、どの業者から幾らずつ出すかについて協議中であるというに至っては、なおさらしかりであるから、政府としては、かような方法によることなく、適切、明確な法律措置をとるべきことの二点を強く要望して賛成の旨を述べられました。  これをもちまして討論を終りまして、採決の結果、予算委員会に付託されました昭和三十年度予算補正三案は、多数をもって原案通り可決すべきものと決定した次第であります。  以上、御報告申し上げます。(拍手
  31. 河井彌八

    議長河井彌八君) 別に御発言もなければ、これより三案の採決をいたします。  三案全部を問題に供します。三案に賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  32. 河井彌八

    議長河井彌八君) 過半数と認めます。よって三案は可決せられました。(拍手)    ————・————
  33. 山田節男

    ○山田節男君 私はこの際、英連邦軍の引き揚げに伴う諸問題に関する緊急質問の動議を提出いたします。
  34. 寺本廣作

    ○寺本広作君 私は、ただいまの山田節男君の動議に賛成いたします。
  35. 河井彌八

    議長河井彌八君) 山田君の動議に御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  36. 河井彌八

    議長河井彌八君) 御異議ないと認めます。よってこれより発言を許します。山田節男君。   〔山田節男君登壇拍手
  37. 山田節男

    ○山田節男君 去る十四日オーストラリアのメルボルン放送によりまして、英連邦軍が、来たる三月から起算いたしまして十二週間以内に撤退さするという放送が行われたのでございました。去る十六日広島県の呉市長並びに県知事等が、呉におりまする英連邦軍司令官にこれを確かめましたところ、その放送がほんとうであるということがわかったのでございまするが、これに関しまする幾多の労働問題、社会問題、産業問題等が生ずることは必至でございまして、この点に関し、鳩山内閣の所信を確かめたいと存じます。  まず第一に、鳩山首相に対してでございますが、これはすでに御承知の通りに、日本占領軍政下にありまして、占領軍に対しまする労務者、これは半ば公務員的なものでございまして、現に第五国会と思いまするが、国家公務員法が制定されまする際に、GHQにおきましては、この駐留軍の労務者は公務員として扱うということになっておったのでございますが、これは国会におきまして特別職ということにいたしたのでございまするが、その経過からいたしましても、この駐留軍の労務者、もちろんこれは国連軍の労務者も含めてでございますが、そういったような一つ地位を与えられ、ことに労働条件におきましては言語、風俗、習慣等を異にしているまことに困難な、一般官公労、あるいは産業労働者とは非常に違った労働条件のもとに働いておったのでございます。しかも、これらの労務者はすでに十年余にわたりまして勤務をいたしているという者もあるのでございまして、これらの人々に対しましては、政府として当然いろいろな特恵的とは申しませんけれども、この特殊な労務者に対し、半ば公けの労務者であり、なおまた、これは行政協定によりましても、あるいは国連協定に基きましても、すべて間接雇用でございまして、日本政府がこれを調達する、役務を調達するという義務を負っているものでございます。かような立場からいたしまして、今回のように英連邦軍が撤退をすることによりまして、きわめて短期日間に約八千三百名という労務者が解雇されるという運命に逢着いたしているのであります。なおまた、アメリカの駐留軍の労務者に対しましても、すでに青森県、鳥取県、あるいは宮城県等におきまして、計数千名の解雇者をすでに出さんとしている状況にあるのでございますからして、当然鳩山内閣としましてこれに対する対策をおきめになる必要があると思うのでございますが、この点に関しまする鳩山総理は内閣の首班として、どういったような所信と対策を持たれるか。ことに、昨年の七月にこれは民主党内閣、民主党の時代でございますが、すでに民主党におきましては、この国連軍の引き揚げに対する対策の特別委員会、あるいは田中官房副長官が、これは主管とされるところの特需等対策連絡協議会というのをお持ちになりまして、相当具体的な案をこれによって作られていたのであります、民主、自由両党か合同されました後におきましては、石田博英君がこの方の特別対策委員会の委員長としておられるのであります。こういう点からみまして、私はこの重要なる労働問題、あるいは失業対策問題、産業問題等につきまして、鳩山総理が全般的にこれをいかに効果を上げるようなお考えをお持ちになるか、この点についてお伺いしたいと存じます。  以下、各所管大臣について御質問を申し上げたいと存じます。  外務大臣に対しましては、今回のこの国連車が撤退するということにつきましては、一九五四年の二月に署名されました日本国における国際連合の軍隊地位に関する協定、その二十四条を見ますというと、「すべての国際連合の軍隊は、すべての国際連合の軍隊が朝鮮から撤退していなければならない日の後九十日以内に日本国から撤退しなければならない。この協定の当事者は、すべての国際連合の軍隊日本国からの撤退期限として前記の期日前のいずれかの日を合意することができる。」こういう協定があるのでございますが、これによりまするならば、当然外務省といたしましては、国際外交上の措置といたしまして、メルボルンの放送を聞くまでもなく、国連の所管者からは、当然外務省に通知がなくてはならぬと思うのでございます。これによりますと、朝鮮から撤退しなければならない日から九十日以内ということでございまするが、国連軍の朝鮮から撤退する期日について外務大臣に正式な通告があったのかどうか。また、その撤退の時期につきまして外務大臣に、これまた英連邦軍の代表者から、あるいはアメリカ大使館を通じまして明示があって、これに対する外務大臣は合意されておるのかどうか、この点についてお伺いいたしたいと存じます。  なお、これは労働大臣に対する質問と関連いたしまするが、この行政協定に基きまする合同委員会におきまして、駐留軍の労務者は、あるいは国連協定によりまして当然これは適用されるのでありまするが、例のマスター・レーバー・コントラクト、労務基本契約でございますが、これはすでに足かけ四年になっておるにもかかわらず、これがいまだに先方において調印しない。これがために退職の問題、あるいは雇用条件の、あるいは賃金の査定等につきましては、いろいろな問題を起しておるのでありまするが、私はこの外務省が主管いたしまする協定にからみ、労務基本契約というものが一体どういう過程にあるのか、政府はこれに対してどうしても一日も早くこれを調印せしめるような努力をしておられるかどうかということを伺いたいと思います。  次に、労働大臣でございまするが、労働大臣は調達庁を所管の大臣でございまするから、その二つの任務を持たれる労働大臣に御質問をいたしたいと存じます。先ほど申し上げましたように、この英連邦軍の労務者は、国連協定に基きまして間接雇用であります。この雇用によって生ずる幾多の問題については、これに対して政府責任を持つという建前になっておるのでありまするが、そういう観点からいたしまして、この英連邦軍の急遽撤退いたしますることによって生ずる労働問題につきましては、いろいろな具体的な案をお持ちだろうと存ずるのでありまするが、まず第一には、これは昨年の六月からのことでございまするが、第二十二国会以来のことでございまするが、この駐留軍の労務者に対する特別退職手当の法制化の問題でございますが、議員立法として本国会提出されまして、その内容といたしますることは、要するにこれらの労務者に対しまする退職金を一般公務員並みにしてくれという趣旨なのでございまするが、これが今日まで依然として具体化しないのでありまするが、この点に関しまする労働大臣の所信をお伺いしたいと存じます。なお、これは当面の問題としては八千数百名の英連邦軍の労務者が解雇されることになるのでございまするが、この問題に対しましては、すでに先ほど申し上げましたように、自民党の特別対策委員会並びに本年の二月三日の閣議のこれは了解事項といたしまして、これらの解雇による失業対策につきまして、いろいろな案が政府の案として、もうでき上っておるわけであります。たとえば全額の国庫負担による特別の失対事業、この問題につきましては、労働大臣としては閣議の了解事項となっておりまするし、来年度の予算にこれは組まれるものと了解しておったのでありまするけれども、こういうものは含まれていない。その他与党の特別委員会できめられましたところの解雇者の職業補導の問題であるとか、あるいは転業資金の問題でございますが、これ等につきましても、やはり一つの企業組合、こういったようなものを設けて、そして特別の融資をしようという、こういうことにつきまして、すでに与党の特別委員会がきめ、閣議が了解しておるのであります。今後いかようにこれが取扱われるかということについてお伺いいたしたいと存じます。  次は、大蔵大臣でございまするが、先ほども申し上げましたように、全額国庫負担によって特別の失対事業というものを起してもらいたいということは、これは労働大臣からも特別なる要望があったと存じますが、これが予算化しないということは、どういうようなことに経過がなっておるのか、この点をお伺いしたいと存じます。また今回の、かように一カ所において八千名というような労務者が解雇されるのでございますが、これに対しましてのいろいろの失対事業でございますけれども、いたずらに不生産的なものでなくいたしまして、たとえば今日のこの呉市なら呉市におきまする多数の旧軍用財産が英連邦軍によってこれを接収されておった、これが解除されるのでございますが、これを国有財産法あるいは国有財産特別措置法というようなものを一部改正いたしまして、これを地方自治団体において一つの管理委託と申しまするか、失業の救済、就業の機会を与えるために、これらの国有財産を一時時限的に無償貸与して、あるいは時価よりも安くこれを譲り受けて、そして産業の発展と失業の救済に充てるというようなことも、これは考えるべきじゃないかと思うのですが、この点に対する大蔵大臣の所信をお伺いしたいと思います。  なおまた、これは労働大臣にも申し上げましたが、転業資金の問題、これは与党の対策委員会においては、これらの企業組合を作らせて、これに対する特別融資をするということになっておりまするけれども、現行法におきましては、たとえば中小企業金融公庫あるいは国民金融公庫あるいは商工組合中央金庫法によりましては、融資の対象にならないのであります。どうしてもこれは一つの特別のワクを設けるということにしなければ、融通の道がないということに現実にぶつかっておるのでありますが、この点に関しまする私は大蔵大臣の所見一つ確かめたいと存ずるのでございます。もしこれが行われないというようになりますならば、一人当り最高四万円の更生資金ということになるのでございますが、これでは現実的にはどうにもならないという状況でございますので、この点に対する大蔵大臣の所見をお伺いしたいと存じます。  次は、防衛庁長官に対してでございますが、こうして旧軍用財産を接収しておりましたところの英連邦軍が撤退することになりまするというと、それを目当てに防衛庁、ことに呉におきましては、海上自衛隊がいろいろの施設を使いたがっておるのであります。たとえば旧鎮守府であるとか、あるいは海軍病院あるいは繋船堀等を使いたいということを防衛庁に申請しておるやに私は伺うのでございますが、これは昭和二十五年の四月に旧軍港市転換法というものが通過しておりまして二これによって呉市ならば呉市におきまして、一つの平和産業としてそのプランを持っておるわけであります。しかしながら今申しましたように、海上自衛隊がいろいろな施設を使うということになりますれば、その特別法に基きます産業都市転換というものが不可能になってくる、こういう点につきまして、どうしてもやはり市が企図します企業の誘致と防衛庁の施設をいかにするかということを調整しなければならぬかと思うのでありますが、この点に対する防衛庁長官の所見を伺いたいと思う。なおまた、こういったような急激な、しかも大きな失業問題をひかえますことになれば、いきおい将来、海上自衛隊があそこを基地として使うといたしますならば、産業の誘致ももとよりでありますけれども、たとえば船艇の建造あるいは修理、需品の購入等につきましても、私は特別の考慮をしていただかなければならぬと思うのであります。この点に対する御意見を伺いたいと存じます。  さらに、太田自治庁長官でございますが、これは昨日本院に出されました国有資産等所在市町村交付金及び納付金に関する法律案でございますが、これは三公社の所在地市町村に対しまして交付金を与えるという法律でございますが、これは呉市のみでなく、他の旧軍港都市においてもしかりでありますが、非常に旧軍港用地が市の中心地の膨大な地域を占めている、こういうものに対して、私はことに自治庁といたしましては、それがために市の産業の発展というものを阻害されるということになれば、当然これは一種の交付金のようなものを出すべきだと考えるのでございますが、太田長官はこの点についてどういうふうなお考えであるか。  時間がございませんが、もう一つは運輸大臣に対するお願いでございます。以上申し上げましたように、非常に大きな失業問題が起きておりますので、幸い呉線の本線の電化の問題、これが一つ失業対策をかねて、早急にこういうことを実現していただきたいと思うのであります。この点に関して運輸大臣はいかがお考えになるか。また港湾の問題にいたしましても、先ほど申し上げました産業の発展という意味から、重要港湾として指定されている呉の問題につきましての御所信をお聞きいたしたいと存じます。(拍手)   〔国務大臣鳩山一郎君登壇拍手
  38. 鳩山一郎

    ○国務大臣(鳩山一郎君) ただいまの御質問に対して、私からもお答えをいたします。  駐留軍関係労務者の対策は、非常なめんどうな問題でございますが、各地方の実情に応じた具体案を推進してゆくように努力をしている次第でございます。詳細な内容は、担当の者からお聞き願います。   〔政府委員森下國雄君登壇拍手
  39. 森下國雄

    政府委員(森下國雄君) お答え申し上げます。  外国軍隊の撤退に伴う失業問題に対する失業対策を容易化するために、従来合同委員会並びに国連関係による合同会議を通じて、撤退ないし移動に伴う人員の整理については、でき得る限り事前に余裕をもって日本側に通告するよう要請をしております。相手方も、失業問題の重要性を十分認識して、このような要請にはでき得る限り協力を惜しまない態度を示しておるのでございます。今回の国連軍の撤退についても、突然の発表と言われるが、政府が今月十六日通報を受けたところでは、撤退は三月の中旬に始まりまして、撤退の完了までには数カ月を要すると予想されておるのでございます。従って今般の通報はわが方のかねてからの事前通告の要請に応じたものであります。必ずしも突然の通告とは考えておりません。  今後具体的撤退に伴う人員の整理については、現地、及び必要に応じ中央にあって協議をいたし、これによって政府の対策を講じたいと考えておる次第でございます。   〔国務大臣倉石忠雄君登壇拍手
  40. 倉石忠雄

    ○国務大臣(倉石忠雄君) 山田さんのお尋ねでございますが、英連邦軍が引き揚げますことにつきましては、このほど東京渉外事務所から正式に発表がございまして、その通りでございます。現在英連邦軍に使用されておりまする労務者は、広島県呉地区七千九百六十八名、東京の恵比寿地区六百四十七名、山口県岩国地区二百四十九名、合計八千八百六十四名でございます。ただ英連邦軍の撤退の時期は、ただいま外務省の方からも申し上げましたが、調達庁において種々連絡いたしておりますが、大体実際には七月以降となる模様でございまして、月別の労務者の解雇状況も、詳細はただいま判明いたしておりませんので、私の方と外務省と通じて、現地軍との間に詳報を得るべくただいま緊密な連絡をいたしておる次第でございます。政府といたしましては、従来より駐留軍の撤退に伴いまして離職いたします方々に対しましては、先般閣議了解をもって決定いたしました、特需の減少及び駐留軍、国連軍の引き揚げに伴う対策に基きまして、他の駐留軍部隊、または自衛隊の部隊職員などへの配置転換や、それからまた自営業をなさる方々に対する援助や、その職業のあっせん及び職業補導等の適切な実施に努めますと同時に、高率補助による失業対策事業を実施する等、所要の手続を講じて参ったのでございますが、今回の英連邦軍労務者の解雇問題につきましては、きわめて事の重要性にかんがみまして、内閣に設けられておりまする特需対策連絡協議会におきましては、これをさっそく取り上げまして、関係各省とともに、具体的対策の樹立、実施に当る予定でございますが、この際、ただいまお話のような点につきましても、十分検討を加えて参りたいと思いますが、お話の中でお触れになりました労務基本契約のことは、外務省の方からお答えがありませんでしたから、私から申し上げます。  労務基本契約につきましては、こちらと先方との間に、日米合同委員会をしばしば開催いたしました機会に、この改訂について折衝を続けておるのでありまするが、何と申しますか、いわゆる前文の方は大体話がつきまして、細目の協定につきまして、まだ彼我の間に意見の一致を見ない次第でございまして、関係各省とも連絡をいたしまして、促進するように政府は努力を続けておる最中でございます。  それから、ただいまの失業者多発地帯、呉市のようなところに全額国庫負担による失業対策をやるべきであるという御意見でございました。三十年度予算におきましても、私どもは地元のお話もございますし、いろいろ努力をいたしましたが、国家財政の都合もあり、かたがたそういうわけに参りませんで、御承知のように前年度より引き上げまして、五分の四の負担率ということにいたした次第でございます。  それから退職金法のことでございますが、駐留軍に対する労務者の提供は、お説のように日本政府とアメリカ政府との間に締結されました日米労務基本契約に基くものでございます。この契約による労務提供に要する経費は、すべてアメリカ政府、国連軍はすべて国連側の負担となっておる次第でございまして、従って退職金につきましても米軍と、つまり先方と、軍との間に協議がととのいませんというと、増額ができない次第でございます。もし協議がととのわないままに増額の立法措置をかりに講ずるといたしますならば、日本政府は行政協定の原則とは離れて、日本政府が駐留軍のために経費を負担するということになるのでございまして、これは現在の段階で適当ではないと存じます。軍との協議は、昨年以来行なっておりますけれども、いまだ妥結点に至っておらない次第でございます。   〔国務大臣一萬田尚登君登壇拍手
  41. 一萬田尚登

    ○国務大臣(一萬田尚登君) 駐留軍の引き揚げに伴いまして返還を受けます国有財産の管理、処分でありますが、これにつきましては昨年の、駐留軍及び国連軍の引き揚げに伴う対策についてという、閣議了解事項に従いまして、なるべくこの引き揚げに伴いまして離職される方々を吸収するということを特に重んじまして、これらの国有財産が、たとえば工場誘致に使って、こういうふうな離職者の吸収に最も効果的である、こういう事業をなさる、こういうことに貸与または譲渡する、こういうふうな考えを今いたしております。それからまた、こういう離職者が新しい事業を興す、そういう場合の資金関係でありますが、これにつきましては、たとえば組合等をお作りになって新しい事業を営む、あるいはまた、その他事業を営みましょうが、そういう場合には、中小企業金融公庫、国民金融公庫あるいは商工組合中央金庫等から、昨年末から特に資金を出すようにという指示をいたしてありまして、特別に親切に見ることになっておるわけであります。なおまた、お話もありますので、そういう点については、一そう注意をいたすよういたしたいと思います。   〔国務大臣船田中君登壇拍手
  42. 船田中

    ○国務大臣(船田中君) 防衛関係についての御質問にお答え申し上げたいと存じます。  英連邦軍の撤退に伴いまして、呉地区にありまする諸施設については、海上自衛隊の施設として使用いたしたいという希望を持っております。しかしその具体的の計画につきましては、今なお検討中でありまして、関係当局とも十分協議をいたして参りたいと考えます。もちろん呉市当局とも十分調整をはかっていきたいと考えておる次第であります。(拍手)   〔国務大臣太田正孝君登壇拍手
  43. 太田正孝

    ○国務大臣(太田正孝君) 山田君にお答え申し上げます。  今度政府が、国有資産等所在市町村交付金及び納付金に関する法律案によって、呉など旧軍港にあります国有資産に対して交付金を出すようにさすかと、こういう問題でございますが、出すようにさす案でございます。すなわち国有の貸付資産は、公用、公共用のものを除きまして、すべてこの新法律案による交付金交付の対象としておるのでございます。御承知の通り呉におきましては、すでに固定資産使用税をかけておりますが、今回この新しい法律によりまして、今まで数千万円あったかと思いますが、評価等が違って参りまするから、相当ふえるのではないかと見込まれております。もっともこの法律案にありまする通り、いわゆる行政協定の実施に伴う国有の財産の管理に関する法律第二条の規定によりまして、アメリカ合衆国等に使用させておる固定資産は、防衛庁において使用しておる公用資産との関係もありまして、交付金の対象となっておりません。しかしお言葉にありました通り、呉等におきましては、駐留軍が接収する、駐留軍が駐在する等に伴って非常に経費を要しております。また駐留関係の失業者に対する失業対策費の多いことも御指摘の通りと思います。渉外経費も多いのでございますから、これらの点につきましては、特別交付税を配分するに当りまして、算定の基礎として配分いたしたい考えでございます。   〔国務大臣吉野信次君登壇拍手
  44. 吉野信次

    ○国務大臣(吉野信次君) お話にありました呉線の電化計画は、今すぐというわけには参りかねる国鉄の経営状況でありますが、しかしお話がございましたから、失業対策の見地からよく私も検討してみたいと思います。  それから呉の港湾施設につきましては、私どもといたしましても、返還を米軍側にかねてから要望しておりますので、今回一そう、その一つの機会だと思いますから、強くその返還を要望したいと思います。幸いにわれわれの要望がいれられました場合には、これはもちろん重要港湾として、いろいろの施設を整備して参りたいと、かように考えております。    ————・————
  45. 河井彌八

    議長河井彌八君) 日程第五、捕獲審検所の検定の再審査に関する法律の一部を改正する法律案内閣提出)を議題といたします。  まず委員長の報告を求めます。運輸委員長左藤義詮君。   〔左藤義詮君登壇拍手
  46. 左藤義詮

    ○左藤義詮君 ただいま議題となりました捕獲審検所の検定の再審査に関する法律の一部を改正する法律案につきまして、運輸委員会における審議の経過並びに結果について御報告申し上げます。  現行法は、日本国との平和条約第十七条に規定する義務を履行するため、旧捕獲審検所が検定いたしました事件に対して、連合国から要請がありました場合に、国際法に従って再審査することを目的とするものであります。この法律の存続期間は、条約発効後、当初三年と定められておりましたところ、さきに第三十二回特別国会において「三年」を「四年」に改め、一年延長いたしましたので、本法は本年四月二十七日限りで失効することになっております。しかしながら、連合国の再審査の要求については、条約上期限がなく、また一方連合国の再審査の要請状況を見ましても、現に連合国より補償請求に関連して照会のある事実にもかんがみまして、今後もなお再審査の要請があるものと予想されますので、この際その要請に応ずる受け入れ態勢を継続するために、本法の存続期間をさらに一年延長しようとするものであります。  本委員会におきましては、質疑に入りましたところ、片岡委員より、「この改正案では、連合国より捕獲審検の再審査の要請に応じるため一年延長しようとするものであるが、平和条約に再審査についての期限がないので、一年の延長で足りるかどうか」さらに、「この再審査の要請について、平和条約で無期限の取りきめをしたことは遺憾であるが、早期解決に事務的努力をなすべきではないか」というような趣旨の御質疑がありましたのに対し、運輸大臣並びに政府委員より、「平和条約に期限はなかったが、再審査の処理は早く解決したいことを期待しており、差しあたり一年の延期をなし、善処したい」旨の答弁、さらに、「フィリピン、インドネシア等の諸国との平和条約の批准も近く期待され、また再審査の要請に関する照会のある状況からして、延期された一年間に連合国側が再審査の要請を行うことを期待したい」との答弁がございました。  討論に移りましたところ、片岡委員より、「平和条約締結の際において、日本政府に慎重を欠くところがあった結果、捕獲審検の再審査期間について無期限の負担を課せられていることは遺憾であるが、現実の事実については最善の処置をとるべきであり、なるべく早く外交交渉により再審査の要請がなされるよう努力されたい」旨の希望を付して、本法案に賛成の意見が開陳されました。これにて討論を終り、採決に入りましたところ、本法律案は、全会一致をもって可決すべきものと決定いたしました。  以上、御報告申し上げます。(拍手
  47. 河井彌八

    議長河井彌八君) 別に御発言もなければ、これより本案の採決をいたします。  本案全部を問題に供します。本案に賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  48. 河井彌八

    議長河井彌八君) 総員起立と認めます。よって本案は、全会一致をもって可決せられました。  本日の議事日程は、これにて終了いたしました。次会の議事日程は、決定次第公報をもって御通知いたします。  本日は、これにて散会いたします。    午後一時五十七分散会    ————・———— ○本日の会議に付した案件   一、日程第一 憲法調査会法案(趣    旨説明)   一、日程第二 昭和三十年度一般会    計予算補正(第1号)   一、日程第三 昭和三十年度特別会    計予算補正(特第4号)   一、日程第四.昭和三十年度政府関    係機関予算補正(機第1号)   一、英連邦軍の引き揚げに伴う諸問    題に関する緊急質問   一、日程第五 捕獲審検所の検定の    再審査に関する法律の一部を改正    する法律案    ————・————