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梶原茂嘉君 私は
緑風会を代表いたしまして、ただいま上程されておりまする
原水爆の
実験禁止に関する
決議案に
賛成の
討論を試みるものであります。
わが国は
原爆によりまする
被害を受けたただ
一つの国であります。さらにまた、
水爆の
実験による
脅威を受け、
被害を受けた
唯一の国であります。従って、
原水爆を保有する国に対し、さらにまた
原水爆の
実験を試みんとする国に対し、さらにまた広く
世界に向って
原水爆に関して常に正しく
発言し得る
権利を有するのであります。と同時にまた、
発言をすべき
責任をになうものと信ずるのであります。
一昨年の四月、
ビキニ環礁におきまする
アメリカの
水爆実験に関連して、われわれは、
原子力の
国際管理並びに
原子兵器の
禁止に関する
決議を行なったのであります。当時は
諸般の
情勢によって、
原子兵器の
実験については、それに伴いまする
被害の
防止について言及したにとどまって、
実験の
中止、
禁止そのものには触れなかったのであります。自来今日まで約二年、その間
原水爆をめぐりまする
世界の様相は、われわれの行いました
決議の
趣旨に必ずしも沿わずに、むしろ漸次深刻の度を加えつつありますることは、遺憾ながら否定し得ない事実であります。かかる
情勢のもとにおいて、
わが国は昨年の四月、
バンドンにおきまする
アジア・
アフリカ会議において、率先して
原水爆の
禁止に関する
決議を
提案したのであります。また、
アジア・
アフリカを通じまする二十八の
独立国とともに、
原水爆の
実験の
禁止についても、すでに
決議を行なって
世界に訴えたのであります。ただいま上程されておりまする本
決議案は、
ひとりわが国のみの
立場からの主張、
要請ではないのでありまして、
アジア、
アフリカを通じまするすべての
独立国の共通した、
共同の
決意の表明であることを私は指摘いたしたいと思うのであります。
今日、
原水爆の
兵器としての
性格は、単に
戦争当事国のみにその
対象を限定することはできないのでありまして、全
人類をその
対象とする
性格に漸次変貌しつつありますることは、疑いをいれないところであります。従って
原水爆を保有いたしておりまする国は、その
意味において、その範囲においては、全
人類の
運命に
関係を持つと言わざるを得ないのであります。従って、
原水爆に関しまする
実験といえども、もはやその国のみのほしいままなる行動にこれを許すわけには参らないと私は思うのであります。本
決議案におきまして、
国連以外に、英、米、
ソ連等、
原水爆の
実験を行い、または行わんとする国を
対象として、直接それらの国の善処を
要請せんとしておりますることは、私は正しいことであって、
意味のあることと信ずるのであります。
原水爆に関する
実験は、もはや
実験それ
自体で、すでに
人類に対する
脅威であります。
実験より生じまするあらゆる災厄に対しては、あらかじめ現在の科学をもってしてこれを予知し、これを防除することはできないのであります。
実験それ
自体、ある
意味においては
原子兵器の
使用と相通ずるものがあるようにも感ぜられるのであります。
昨年七月、
ジュネーヴにおきまする四
巨頭の
会談を初めとして、
世界の
緊張緩和に関しまして、あるいは
安全保障、あるいは
軍備縮小等、各問題が種種の角度から、熱心に検討され、論議され、施策され、また
努力が傾倒されておるのでありまするけれども、しかしながら将来にわたって
世界の
冷戦が
緩和して、
世界の
緊張が
緩和したという何らの証左が、現在残念ながらまだこれをつかむことができないのであります。しかもこの間、
原水爆の
保有自体が
戦争を回避する
役割を果すものであるという
見解も行われております。また実力を
背景としてぎりぎりの瀬戸際まで
事態を持っていくこと
自体が
戦争を回避する道であるとの
見解も行われておるのであります。私は今ここで、これらの
見解を批判するつもりはありません。今日まで、あるいはこれらの所論の
通りであったかもわかりません。しかしながら決してこのことは、明日の平和を保障するものではないと私は思うのであります。
人類を
破滅せしめる
原水爆が
戦争を回避する最大の力であると、これに依存しなければならないとするほど、おそるべき
考え方は私はないと思うのであります。しかもかかる
考え方のもとに、漸次
規模を拡大しながら
原水爆の
実験が行われ、また近く行われんとしておるのであります。かかる
実験は、
実験それ
自体において、私は
人類とその
文明に対して、極めて大なる
脅威を与えるものであると信じます。しかも
人類の
運命にかかるそれらの
実験が、われわれの目を離れて
秘密のうちに行われんとしているのであります。私はかかる
実験は、
実験そのものがすでに
人類に対する償い得ざる犯罪とさえ感ぜられるのでありまして、
人間の理知は、
兵器を制御し、
兵器を支配し得ることはもちろんであります。しかしながら
兵器の質なり量が、ある限度以上になりますると、
兵器自体が
人間の理性を支配し、コントロールするということがあり得ることを私はひそかに憂慮するものであります。いかなる平和の論が盛んに行われましても、いかに
平和確保に関する施策が具体化いたしましても、
原水爆の
実験が別途行われる限りにおいては、また
原水爆が
製造され、それが保有されておりまする限りにおいては、私は決して
世界の
緊張の
緩和はあり得ないと思います。
世界平和の
確保の
第一歩は、何としても
原水爆の
実験の
中止に初めてその真実の
第一歩があり得ると信ずるものであります。これなくしては私は
世界の
緊張の
緩和、
世界の平和の
確保はあり得ないと信ずるのであります。かかる観点から、私は
緑風会を代表いたしまして、この
決議案に全幅の賛意を表するものであります。(
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