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1956-02-02 第24回国会 参議院 本会議 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十一年二月二日(木曜日)    午後六時十三分開議     ━━━━━━━━━━━━━  議事日程 第七号   昭和三十一年二月二日    午前十時開議  第一 国務大臣演説に関する件   (第三日)     ━━━━━━━━━━━━━
  2. 重宗雄三

    ○副議長(重宗雄三君) 諸般の報告は、朗読を省略いたします。      —————・—————
  3. 重宗雄三

    ○副議長(重宗雄三君) これより本日の会議を開きます。  日程第一、国務大臣演説に関する件(第三日)  鳩山内閣総理大臣から発言を求められました。この際、発言を許します。鳩山内閣総理大臣。   〔国務大臣鳩山一郎登壇拍手
  4. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 一昨日の佐多君の御質問に対する私の答弁のうちに、言葉の不足から、私の真意を尽し得なかったことについては遺憾の意を表します。従いまして、この部分に関する私の発言はこれを取り消しまして、あらためてこの点について釈明をいたします。  自分といたしましては、自衛力としての部隊をも全然持てないという憲法解釈には反対だという言葉意味のことを申したのでありまして、もちろん、憲法第九十九条に基き、現行憲法を順守しなければならないことは当然に思っております。(拍手
  5. 重宗雄三

    ○副議長(重宗雄三君) 一昨日に引き続いて、これより順次質疑を許します。永井純一郎君。   〔永井純一郎登壇拍手
  6. 永井純一郎

    永井純一郎君 私は日本社会党を代表いたしまして、先日総理並びにそれぞれの閣僚がいたしました施設方針演説に対し、特に重要と思われる憲法改正問題、財政経済政策における基本的なる方針、重要なる農業問題等について質疑をいたしたいと存ずるのであります。  私はまず第一に、現行民主平和憲法は、断じてこれを改変してはならない、これをこそ世界に向って高々と掲げて、いかなる国の強要、干渉があろうとも、日本国家国民の手によってこれを守り抜くべきものであるということをまず指摘するものであります。(拍手)  今や、世界の諸国家が好むと好まざるとにかかわらず、原水爆下の今日、世界の諸国民は理性に基く話し合いにより、主義、主張のいかんにかかわらず、平和の中に共存すべきものなることを知悉するに至っておるのであります。特に西欧諸国に隷属せしめられてきたアジアアフリカ有色国民は、今やダレスとブルガーニンの自己防衛と安全のための軍事ブロック強化政策に基く、弱小諸国に対する威嚇演説、ないしは自国軍事力を誇示するはったりの宣伝に対しましては、もはやこれに右顧左眄することなく、自己立場に立ち、自主独立立場に立って、みずからの平和と独立の道を選び、かつ着実にこの道を歩き始むるに至っていることを、われわれは見のがしてはならないと思うのであります。日本がこのアジアアフリカ等有色国民のこの意思と動きをとらえ得ず、孤立した存在になるならば、私はそこには、もはや日本の完全なる独立の道はなくなると信ずるものであります。  原爆の非人道性残虐性をみずから体験した日本こそが、原水爆下最も現実的と思われるところの「憲法第九条」を持つ、この平和憲法を高々と掲げ、国際紛争を解決する手段としては、一切戦争と武力威嚇武力の行使を今日世界不可とするということを強調する最も適切なる立場にあり、かつ、日本の安全のためにも一番適切なりと信じて疑わないのでありまするが、ここにおいて私が総理にただしたい点は、第一に私は日本のこの平和憲法は、単にわが国一国の基本法たるにとどまらず、原爆により終了した第二次大戦後の連合国わが国とが、国際平和維持のための積極的な意図に基き、なしたところの一つ国際間の合意であると見なければならないと信ずるものであります。すなわち原爆のあの非人道性残虐性を知った日本国民が、上述のごとき意思をもって、昭和二十一年十一月当時、正当に選挙され、自由に表明された国会意思と、占領下米英ソを初めとする連合諸国との間に話し合いが行われ、了解し合って作り上げられたところのこの憲法は、原爆以前の一国の基本法とは、その性格と趣きをおのずから異にすると見なければならないと信ずるのであります。すなわちフランスの革命に当って発せられた人権宣言米国独立に当って発せられた独立宣言とともに、いな、さらに百尺竿頭一歩を進めて、原爆以後の世界平和方途確立の大道をここに明らかにし、日本連合国が平和と人権を求めてやまない世界の諸国民と諸民族に対して約束したところの、近世における一大民主平和宣言であるからであります。すなわちここにおいて日本国憲法は、一つの新しい私は国際間の合意であり、かつ、これを合意として世界各国日本政府みずからが強調すべきものであると思う。すなわち総理みずからが自国憲法反対であるなどと、非常識なことを言うのではなく、お互いが尊重して擁護すべきものなることを強調すべきものと思うが、総理のこれに対する所信を伺いたいのであります。もっとも、この答弁に当直ましては、事務的な技術的な法律論などは無用、無価値でありまして、もちろんそのようなものを私は総理に求めようとするものではなく、日本総理として世界の諸国民に対するあなたの所信をここに述べていただきたい、かように存ずるのであります。  第二に、昨日来、日本国民が重大なる注視を集めた総理憲法擁護義務についてただしたいのでありまするが、  一国の総理がその国の議会において、自分の国の憲法自分反対であるなどと言うごときは、全く前代未開と言わなければなりません。(拍手)失礼ながら私はその近代政治家としての素養を疑わざるを得ないのであります。しかるところその釈明において、先刻なされましたが、解釈反対であるが、現行憲法を守らないというのではなく、守ることはどこまでも守りますと釈明をされました。まさかこの釈明にまで私はうそ偽りはあるまいと存ずるのであります。そこで私は、総理にただしたいのであります。一般国民憲法を守る義務のあることは当然でありまするが、憲法九十九条は特に天皇を初め国務大臣国会議員、裁判官並びに公務員に対しては、この憲法尊重し、かつ積極的に擁護する義務を負わしているのであります。すなわち総理大臣こそは、憲法擁護義務第一人者といわなければならないと存ずるのであります。そこであなたにただしたいのでありまするが、あなたはこの憲法擁護のため、いかなる努力をしておられるか、具体的にこれを国民の前に例示されたいのであります。(拍手)  次に、あなたの与党は、憲法調査会法案なるものを提案いたしまして、憲法擁護積極的義務を負うところの政府部内に、この憲法改正のための調査会を設けんとしておるのでありまするが、もし総理釈明において述べられたごとく、平和憲法を守るということに忠実であるならば、あなたは当然政治的責任の上からも、道義の上からも、これを断わって、政府部内に置くことを退けるべきものと思われるのでありますが、この点総理はどのようにお考えになっているのか、明確に承わりたいわけであります。もちろん法律上のへ理屈や技術的な解釈論などを今ここに求めんとするものではありません。私は憲法一般の手続的な法規などとは異なって、国民の最高の常識であり、また最も普遍的な良識であると考えるのであります。すなわち一部少数のものの勝手な解釈などにゆだねるべきものではなく、国民のものそのものであると信ずるのであります。従って文字通りすなおにこの条文を読んで守るべきものと信ずるのであります。すなわちこの意味から擁護義務第一人者たる総理は、当然政治的、道義的立場から、政府部内に憲法調査会を設置することは断わって、国民の前に憲法擁護の最大の義務者としての筋を私はここで通すべきものであると思うのでありまするが、ここに政治家としてのあなたの所見をただすものであります。  第三に、私は日本民主平和憲法は、単に占領下押しつけられて作ったというごとき、安易な、低い国民感情に訴えるごとき軽々しいものにあらずして、長い間封建的、軍事的、保守的諸制度のもとに苦しんで参りました勤労国民大衆が願ってやまなかった自由と人権尊重と平和のための民主平和憲法であり、国民の大多数が求めてやまないものであり、現に求めつつあるものであります。しかるに何ぞや、鳩山総理憲法改正理由として第一に口にされることは、占領下押しつけられた憲法である、マッカーサー憲法であるというごとき安っぽい国民感情に訴えるお粗末な言辞であることは、まことに無責任であり、遺憾と存ずるのであります。(拍手勤労国民大衆は、現行憲法が持つ平和と人権尊重を心から支持し、国民の幸福と福祉が憲法の条章に従って実現され、これを享受することを待ち望んでいると思うのであります。これらは軍国化された憲法のもとでは、断じて求めて得られざるものであるからであります。  すなわち総理にただしたい点は、国民の大部分をもってなる勤労大衆が求めてやまないこれらの点に対して、憲法を改正することによって、いかに具体的にこれにこたえんとするものであるか、詳細にこの点お伺いいたしたいのであります。  次に、私は財政経済についての基本的な問題について、大蔵経済企画の各大臣質問をいたします。  財政経済演説において、政府は、通貨価値の安定、インフレの回避、輸出の振興、経済外交推進、民生の安定といったことを、まるで唱え文句のごとくにただ述べ立てたが、果して三十一年度予算が、底のいまだ浅い日本経済の再建に基本的に必要な以上のごときことができ得るような性格を持った予算であるや否やというふうに見れば、遺憾ながらいなと断ぜざるを得ないのであります。それは明らかに軍事費を中心とするむだな不生産的経費を多分に含んだ不健全にして放漫なる予算案であると言わざるを得ないのであります。かくのごとき軍事費優先性格を持たされた予算の編成に当って、一方におきましては、参議院選挙を控えて、放漫なる総花予算を組んで、国民生活実情からする種々の要求に多少なりとも迎合しようとして、財源あさり政府与党が血眼になった痕跡がまざまざと残っているのを見るのであります。  すなわち一兆円のワクを大きく破り、前年に比し四百三十四億に及ぶ膨張であり、しかも実質的には、三十年度一般会計からの財政投融資繰り入れ百七億並びに民間資本利用分増加七百四十六億を考慮すれば、明らかに三十年度に比し、実におよそ千三百億に及ぶ増加となると思うのであります。また経済外交推進をうたいながら、賠償費の削減をなし、予備費も削減し、国鉄運賃の一割五分値上げ、米価問題等の重大なる国民生活上の問題を、すべて参議院選挙のあとに引き延ばしておるのであります。さらには、軍事費優先防衛費増大のあふりと、無理な総花予算との結果は、財政投融資市中肩がわりの増炭となり、そのしわを民間に寄せたが、これを消化すべき市中の金融緩慢現象なるものは、主として、輸出の好調と豊作による資金の散布と、設備投資の停滞による資金需要減少によって行われるものと見られるが、もし輸出減少し、しこうしてこれについては、すでに政府みずからが経済計画書において輸出減少することを認めておるのでありまするが、輸出減少し、入超がふえ、国際競争の激化に備えて設備投資増大等が起れば、銀行は引き受けた公債、公団債等は当然日銀に持ち込まざるを得ないので、明らかにインフレ要因となる危険を含んだ、安易に過ぎたものであると見られるのであります。  翻って、わが国経済現状を見ますれば、明らかにそのような性格を持った財政なり経済計画を許さない現状にあると私は思考いたすのであります。すなわち、現在は輸出が昨年九月以降毎月一億七、八千万ドル台に達し、三割方上回る活況を呈し、順調に推移してきましたが、その原因が諸外国、特に軍事予算にささえられた米国景気上昇のためであって、真のわが国経済の力の強さによるものではないことは周知のところであります。真の輸出増大による拡大均衡をはからんとするならば、底の浅いわが国経済はますます通貨価値の安定、物価引き下げ基調として、企業合理化をはかり、終局の目標たる生産コスト引き下げを達せねばならない重要な段階に今こそあると思われるのであります。しかるに、前述予算性格の点について言及したごとく、今日ようやく通貨価値の安定が緒につき、物価引き下げ段階に進まんとするとき、本年度予算の自由党、民主党共同修正以来、財政経済政策は放漫安易に流れ、不生産的経費増大し、物価上昇要因をいたずらに作りつつある現状であります。  しかるに反面、輸出の好調をささえた海外景気は、今では逆に、海外運賃高騰を通じて、輸入原料高コスト高となり、輸出減少させる要因となってすでに現われつつあるのであります。すなわち現に銑鉄、鋼材、銅、鉛、錫等については、最近大幅な国内建値の引上げが行われ、また繊維、化学製品燃料等が軒並みに値上りを示し、卸売物価指数は強調の一途をたどっておる現状にあります。  ここにおいて大蔵経済企画庁の各大臣にただしたいのでありまするが、基本方針としての今まで言っておりましたいわゆる経済地固め政策は、これはもはや放棄したのであるか。私はコスト引き下げまで到達した地固め策確立なくしては、インフレなき経済拡大不可能と思うのであるが、この根本方針について大蔵経済企画庁長官、両大臣に詳細にその所見を伺いたいのであります。  次に、地固め策は、今日ようやく物価引き下げ段階にあると思うが、この点いかように認識しておるのであるか。経済計画書によれば、ただ物価は横ばいするであろうという見通しをうたっておるにすぎず、今までのように、何割の引き下げをするというような積極的な意図は何ら表明されてはおらないのであります。物価引き下げ段階はすでに終ったと見ておるのであるか。この点、経済企画庁長官より答弁をいたされたいのであります。  次には、米国自身も言っておるごとく、援助よりも貿易をというこの傾向は、漸次顕著となることは容易に見やすいところであり、かつ世界貿易自由化通貨自由交換性回復は、それが完全には行われないにしても、その方向に行くことは見のがせないところではないかと思われます。各国とも、その場合の準備に怠りなきを期しつつあると認められるのでありまするが、この点につきましては、先日も意見が出たようでありまするが、政府のこれに対する見通しはどうかということと、あわせて同時にまた欧米諸国景気の行き過ぎを是正し、公定歩合の引き上げとか、関税の引き上げ信用販売抑制策等景気調整策をとって輸入抑制策を講ぜんとしておりまするが、これに対する見通し、並びにこの両者の場合に対する政府方策いかんということをここに伺っておきたいのであります。  次に第五番目に、私は、農林大臣農業政策基調政府はどこに置くのかという点についてただしたいのであります。本年度予算における農業予算は二十九年度に比し七十五億、三十年度に比し六十六億という巨額の減少であります。これが農業生産が向上し、農家生活が向上した結果によるものであるならばとにかく、今日農業者国民所得の上において占むる割合は非常に低く、かつ年々減少していく傾向にあるのであります。本年の大豊作もかえって実質所得の面からは減少し、いわゆる豊作貧乏に農村と農民は見舞われている実情にあるのであります。今日企業としてりっぱに成り立っている米国農業に対してさえ、その政府はこれに手厚い保護を加えている実情でありまするが、今日、日本農業が過小農形態の上にあって、業としては成り立っておらず、低所得生活の困窮に困難を来たしておる実情でありまするが、この日本農業に対して鳩山内閣はいかなる農政をとらんとしておるのかというふうに見てみますると、その一つは、自給度の向上ということはすでに言葉の上では消え去っております。また二つには、農業流通部面からのみ見た適地適作主義という言葉が使われ始め、食糧増産政策は大きく後退をいたしておるのであります。三番目には、米安価はすでに引き下げられようとしており、また四番目には、戦時下以来強権発動のもとにむち打たれて、低米価で強制供出せしめられてきた農民にも、ようやくその統制制度保護政策の色彩が濃くなりかけてきた今日に至るや、この統制をなしくずしに農民が気がつかないうちに撤廃をして、農民保護に対する国の責任からのがれようとしているずるさにあると思います。さらに、また五番目には、農業所得課税方法の変更と農業事業税の創設を意図し、あまつさえ大量の米国余剰農産物まで持ち込んで、米麦作農家を圧迫せんとしておるのであります。かくのごとき鳩山内閣農政は、農民にとって何を意味するか、それは過小農経営という日本農民の宿命に苦しむ弱い農家を、まるはだかのそのまま資本主義経済の中に、何らの思慮も保護もなく、ほうり出すことであり、将来ますます農業所得減少し、その生活が低下することを意味するのであります。  すなわち、ここに農相にただしたいことは、第一には、あなたは農政基調日本農民保護に置くのか、あるいは農業を単に流通部面からのみ見た適地適作主義というようなものに置くのか、その基本方針を承わりたいのであります。  新聞等で見ておりますると、農相はどうも肥料であるとか飼料であるとか、砂糖でありまするとか、カン詰輸出でありますとか、そういう流通部面にみみあなたは非常な興味を持たれて、日本農業基本についての私は考え方が間違っておられるのではないかという不安を持つものであります。従いまして、農民保護があなたの基本方針か、あるいは適地適作というような流通部面から見たかよ五な商業主義的なものをあなたは農政基本とされるのか、この点を明らかに承わりたいのであります。  第二には、農業所得課税方法を、なぜ反当を基礎とすることに改めたのかということについて私は説明を求めたいのであります。  また、第三番目には、農業事業税はこれを創設するつもりであるのか、また日本農業が業として成り立つと思っておられるのかどうか。今日すでに果実等に対して府県の特別税を課しておる県があります。それがその事業の発展を著しく阻害している事例が多々あるのでありまするが、しかも今後農業政策自由主義経済化に伴って、一そう農家経済はシェーレに苦しむことになり、困難をきわむると思考されるのであります。私は農業事業税は断じて不可であると思うが、これらの諸点について、農相から明快にその所見を承わりたいと存ずるのであります。  以上の諸点をただしまして、私の質問を終るものであります。(拍手)   〔国務大臣鳩山一郎登壇拍手
  7. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) ただいまの御質疑に対してお答えをいたします。  現行憲法は、それに現われておりまする民主主義だとか平和主義、あるいは基本的人権尊重の原則なぞは、もとより尊重すべきものでありますが、国際的な合意というべきものとは考えておりません。先刻申し述べました通りに、現行憲法がある限り尊重をし、これを擁護する義務のあることは当然でありますけれども、これと憲法改正についての意見を論議するのとは別であると、私は考えております。(拍手)  憲法についても再検討を行うために、内閣憲法調査会を設けることは別に差しつかえのないことと考えております。慎重に具体的に審議をいたしまして、いい案を得たいと考えております。(拍手、「憲法擁護の具体的な点を述べてないじゃないか」と呼ぶ者あり)   〔国務大臣萬田尚登登壇拍手
  8. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) お答えします。  私に対しまする質問の第一で、財政経済について、今こそ一そう健全化政策をとるべきではないかというお言葉に対しましては、私は衷心敬意を表しますし、ありがたく拝聴いたしました。われわれは、決してこの地固め政策を放棄しておりません。政府の今とっておりまする政策は、御承知のように財政経済について一そう健全な政策をとって、そうして経済正常化をはかって、安定した貨幣、通貨価値の上に経済拡大をはかっていこう、この趣旨を貫いておるのでありまして、その基本方針に基きまして、三十一年度の予算も編成いたしたわけでございます。  いろいろと、ただいまそういう点について御質疑がありました。たとえば一兆円が破れたのではないか、こうおっしゃいますが、若干、むろん数百億超過しておるのでありますが、しかし国民所得に対する割合等から見ると、昨年の一兆円の予算と同じであるのでありまして、常に一兆円でなくてはならないという理由はないのでありまして、この程度の予算規模増大は決して私は大きいものではないと、かように考えておるわけであります。  なお、西欧の、世界の今日の貿易自由化あるいは通貨交換性についてどう見ておるかと、こういうお話でありましたのですが、御承知のように今日貿易自由化は一そう進んでおります。特に欧州では経済協力機構を通じまして、この自由化が進みまして、たとえば西ドイツでは九二%、これは一九四七年に世界が非常に貿易制限しておった、その制限を今日九二%まで戻しておるわけであります。イギリスはそれが八五%、オランダが九三%、こういうふうな状態に自由化が今日進んでおります。これに基きまして通貨交換性もやはり私は進んでおると思うのでありますが、ただ御承知のように、イギリス経済の状況からいたしまして、イギリス金ドルが非常に減少いたしておる。それで今日イギリス政府としては、いろいろとこの景気抑制政策をとっておるのは御承知通りであるのでありますが、こういうふうなところ、並びに今回は通貨交換性を回復した場合に、再びこれが失敗しないようにするために、各国でも慎重な態度をとっておりますので、われわれが考えておるよりも通貨交換性は若干伸びるだろう、こういうふうに考えておりまして、いつそれが実現するかはちょっと申し上げかねるのであります。  ただここで申し上げたいことは、御質疑の後段にありました欧州等におきまして、景気抑制政策をとっておる、この見通しはどうか。私はイギリスを初めとして、欧州各国景気抑制政策をとっておりますが、これは非常に悪いからとるというのとは違う。現在すでにインフレであるから非常にやるというよりも、むしろインフレになることを防ごうという意味において、いろいろと政策をとっておる、こういうふうな見方をいたしておりますから、景気が非常に悪くなるとは、私の財政演説でも申しましたが、私は、軽々に断言ができない。ただ、世界景気がそういうふうに健全化に進んでおりますから、貿易面において非常に競争が激しくなる。景気が非常に今までよかったということは、投資が非常に行われたということを意味する。そうすると、その投資によっていい機械も据えつけたい、設備も……。それが貿易面競争に現われるから、日本としてはこれに備えていかなくちゃならぬ、こういう意味におきましてわれわれも一そう経済合理化を進めていかなくちゃならない。こういうふうな施策を今とって、これに対応しよう、決して楽観はいたしておりません。今後の世界貿易上の競争は激しいから、これに対処することに意を用いておるということを申し上げまして、御答弁にいたします。(拍手)   〔国務大臣高碕達之助登壇、拍   手〕
  9. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) お答え申し上げます。  地固めができたかどうかと、こういうことですが、ただいま大蔵大臣がお答えいたしました通りでございまして、三十年度は輸出が幸いに増進し、鉱工業生産も予定以上ふえたわけでありますが、やはりわれわれが予定いたしておりましたよりも失業者は多いと、こういう現状でありまして、ここにおきましてわれわれは、今後金利の水準を引き下げるとか、あるいは産業基盤を強化するとか、あるいは雇用関係を考えなければならぬと、こういうふうなことを今後政策としてとっていきたいと考えまして、従いまして今日は、まだ地固めは完成していないと、こういうふうに考えているわけでございます。  物価の問題につきましては、お説のごとく現在非鉄金属、鉄を中心といたしまして大幅に値上りはいたしておりますが、これはこの原料をどうして得るかという原料政策をただいま専心考究いたしまして、これの引き下げ策を講じたいと存じております。  繊維製品の方は、これは大体化学繊維というものの増産をはかりまして、一般の衣類とか、これの引き下げを行いたい、それから米価その他につきましては、公共物価のことにつきましては、全体的にこれは引き下げていきたいと、こういう考えでありますから、積極的にうんと引き下げるということの見込みは今日は立ちませんが、少くとも横ばいにこの物価を押えていきたいと、との方針で進みたいと思います。なお世界の趨勢は、貿易自由化通貨交換性ということが強調されておりますが、実際は、また一部分にはこれと反対の方向に動いているところがあるということは、ただいま大蔵大臣の説明いたしました通りでございますが、これに対応して、わが国といたしましてはガットそのほかに加入いたしまして、この輸出を振興するために貿易自由化通貨交換性について十分猛進していきたい、こういうつもりでございます。(拍手)   〔国務大臣河野一郎君登壇拍手
  10. 河野一郎

    国務大臣(河野一郎君) お答えをいたします。  農業生産基調をどこに置くかというお尋ねでございますが、もちろん現在のわが国農業の実態から考えまして、ある程度の保護政策をとっていかなければなりませんことは申すまでもございません。しかし私は、どこまでも保護を続けていかなければならない農業の実態であってはならないのであって、何らかの施策を講じて、できる限りここに保護を必要としない健全なる農家経済確立と、農家の幸福なる生活を期待できるようなふうにもっていくことが必要であると考えるのでございます。その意味におきまして、生産の拡充、農産物の生産費の引き下げでございますとか、農産物の流通の改善でありますとかというところに意を用いておるのでございまして、その点は御了解を願いたいと思うのでございます。  第二に、農業事業税でございますが、これはとらないことにいたしたのでございますから、その点も御了承願います。米の課税を反当り課税にしたのはどういうわけかということでございますが、これも、その節発表いたしましたように、従来の課税方法でございますと、とかく、やみ売りが盛んになりまして、昨年のごとき実態からみまして、予約をしたものには税金がかかる、予約をしなければ税金がかからないというようなふうに誤解をしておられますので、そこでこれを全部反当り収穫量に対して課税をするということに直したのでございますが、さればと申して、これによって増税になるというようなことは絶対にないようにいたしたいということは十分注意をはらっておる次第でございます。(拍手)   〔永井純一郎登壇拍手
  11. 永井純一郎

    永井純一郎君 少し時間がございまするので、総理にさらにお伺いしたいと思うのでありまするが、現在、国民は、この憲法が改正されたと同じような結果にあるということを非常に遺憾に思っておるわけです。さらにそれを、総理は、みずから憲法の擁護の第一人者であるべきあなたがそういう結果を生んでいる上に、さらにそれを実現しようとして、たとえば共立講堂において憲法改正の大会に、みずから出て総理がこれを推進される、こういうことになりますると、農民強権発動のもとで苦しんで供出を法を守ってやっております。また労働者もストを法を守りながら、困難を感じながら、これを守って一生懸命にやっておるわけです。ところが総理憲法擁護の第一の義務者でありながら、共立講堂で大会をやってみずからこれを推進される、こういうことは国民が納得しない。そこで私は、あなたが現実に憲法擁護第一人者としてどういう努力をされておるのか。これを具体的に国民の前に、こういう私は擁護の努力をいたしておりますという具体的な例示を特に国民の前にしていただきたい。こういうふうに私は申し上げたのでありまするので、ぜひ一つ、この点を具体的に国民にお示し願いたいと存ずるのであります。(拍手)   〔国務大臣鳩山一郎登壇拍手
  12. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) お答えをいたします。  政府のやっておることは、すべてみな憲法に従ってやっております(拍手)     —————————————
  13. 重宗雄三

    ○副議長(重宗雄三君) 片柳眞吉君。   〔片柳眞吉君登壇拍手
  14. 片柳眞吉

    ○片柳眞吉君 私は緑風会を代表いたしまして、すでに三日前に行われました鳩山総理大臣の施政方針演説並びに大蔵大臣経済企画庁長官財政経済演説に対しまして、民主政治のあり方、農業、食糧問題を中心といたしまして質問をいたすものであります。  まずわが国の民主政治の今後のあり方についてでありまして、総理に御所見を伺いたいのであります。多年の宿望が実現いたしまして、昨年保守党と社会党それぞれの合同がなりまして、自由民主党、日本社会党の二大政党が対立し、政策を中心といたしまして国会の審議を尽し政治を推進することになりましたことは、御同慶にたえないところでありますが、他面両党の主義主張が根本的に相違する点が少くないために、場合によりましては、両党の激突となり、容易ならぬ事態の発生することを憂うるものであります。国会における民主主義は、言うまでもなく言論の尊重であり、暴力の排除であり、数によるとともに質による政治であると申さなければなりませんが、鳩山総理は、二大政党対立下におきまする国会民主主義のルールを確立する上におきまして、いかなる構想をお持ちでありましょうか。過般の施政方針におきましても、首相は、政党責任政治の確立国会の品位の向上を強調せられておりますが、言論の尊重、暴力の排除等の本質的な問題を解決、実現する上におきましての具体的な構想をお伺いいたしたいのであります。  民主政治のあり方に関連いたしまして、次に御質問いたしたい点は、予算の編成権の問題であるのであります。民主政治は同時に責任政治であると思いますが、わが国は議院内閣制でありまして、予算案の作成の責任は、あくまで内閣にあることは言うまでもないところであります。しかるに三十一年度の予算案編成の経過を見ておりますると、政府がその責任におきまして実体的に予算案を編成したかどうか疑問とすべき点があるようであります。与党の政調会がその主導権を握り、各部会がそれぞれの主張を強行いたしまして、ぶんどり戦に終始したような感がしてならないのであります。総理大臣はその間、ほとんど調整の労をとりませず、大蔵大臣が孤軍奮闘し、河野農林大臣の応援を得てようやく処理したような感じを受けますることは、きわめて遺憾でありまするが、一体これでよろしいのでありましょうか、総理の御所見を承わりたいのであります。  その三は、民主政治の確立と参議院の機能との関係であります。衆議院が全面的に政党の基盤に立ちます以上、どうしても最後には党議に従いまする数による政治となることは否定し得ないところでありまして、かるがゆえにこそ参議院の第二院としての存在理由があるものと思います。しかるに最近の参議院の動向を見ておりますると、次第にその政党の色彩を濃くしておるようであります。これは憲法改正の問題にも関連するのでありまするが、この政党化の傾向に対しまして、総理の御所見をお聞かせを願いたいのであります。国会における民主政治の円滑な運営をはかる上から見まして、参議院が過度に政党化することは好ましくないと思いまするが、いかがでありましょうか。  次に、私は国内の産業問題中、農業政策、食糧政策を中心といたしまして、関係大臣に御質問をいたしたいのであります。その一は、食糧問題でありまするが、明年度の食糧管理特別会計の予算案を見まするに、米の統制は原則としてこれを存続いたし、消費者米価はこれを据え置き、外米、麦類の政府売却価格を引き下げるという方向は、現状におきましてこれに賛意を表するものでありまするが、外米の自由販売は、結局配給制度を破壊することにならないかを心配するものでありまするが、外米の自由販売の具体的構想とともに、農林大臣の御所見承知したいのであります。また外米、麦類の政府売却価格引き下げは、今申し上げましたように賛成でありまするが、その結果食管会計のやりくりが次第に苦しくなりまして、ひいては生産者価格を圧迫することになるのではないかということを特に心配をいたすものでありますが、この点につきまして、農林大臣、特に大蔵大臣がさような見解を持つというようなことも聞いておりまするが、大蔵大臣の見解を求めたいのであります。  その二は、本年の生産者米価の問題でございまして、三十年産米価は、稀有の豊作に恵まれまして、まず全体的には文句のなかったところでありましょうが、本年の三十一年産の米価は、予算上九千九百六十円とされているのであります。これは昨年の米価農業パリティの低下にスライドしたものでありまして、一応の理屈であると考えまするが、昨年のごとき豊作を連続して期待するわけには参らぬことは申すまでもありません。農家の心理なり、農家の希望にこたえる意味におきまして、端的に昨年の米価審議会が答申いたしました生産費及び所得補償方式をとる御意思はないでしょうか。普通の農家の生産費を補償するということがはっきりいたしますれば、農家の生産目標もはっきりして参りまするし、また米価が政治的に決定されるという非難も解消されると存じます。また生産費方式をとりましても、昨今の生産資材の値下り状況から見て参りまして、米価は大した値上りにはならないと思うのであります。しかも生産費低下の今後の見通しからいたしまして、生産者米価は漸次低下するものと考えられます。この辺の事情をくみましての農林大臣の御答弁を得たいのであります。  その二は、新農村建設という新しい構想についてでございまして、天下り農政を排して、下からの盛り上る農政に切りかえるということは、理論的には異議がございません。また零細な補助金を個々ばらばらに出すよりも、これを包括して有効に使い得るようにするということもけっこうだと思います。またその結果として適地適産主義、天下り的食糧増産の排除ということになるわけだと存じまするが、ここで疑問となりまする点は、経済自立五カ年計画と適地通産主義との関係であります。この計画によりますれば、主要食糧につきましては、昭和三十五年度における主食の輸入量を、おおむね現状程度にとどめ、人口増加に基く需要増と、農地の壊廃等による減産分を充足することを目途として増産計画が予定されておりまするが、これは適地適産主義との関係がいかがになるのでありましょうか、農林大臣経済企画庁長官の説明を願いたいのであります。  もう一つは、適地適産の方針でありまするが、狭い視野に立つ農村の適地通産主義が、結果においては同種農産物の生産過剰となり、価格の暴落を来たすことがないかをおそれるのであります。米麦は、何といたしましても、政府買い入れという保障がありまするが、蔬菜、果樹等になりますると、これらの保障もなく、昨年のごとき、野菜等については、いわゆる豊作飢饉を招来したのであります。従って、適地適産と申しましても、大所高所からの総合的指導が必要であり、また農業保険、農業共済制度の拡充、農産物価格支持政策の裏づけが必要であり、また農業手形等の利便にもできるだけ均霑せしめるだけの用意が必要だと思いまするが、その用意があるのでありましょうか、農林大臣方針を承わりたいのであります。  その四は、新農村の建設と関連いたしまするところのいわゆる農業団体再編成の問題でございまして、本日、自由民主党の政調会の意見も新聞に発表されておりまするが、第十九国会で成立いたしました農業団体再編成の結論は、都道府県段階以上の再編成でありまして、肝心の末端の再編成は何ら触れていなかったのでありまするから、上下を一貫した再編成は、参議院の修正案通り、きわめて必要のことと思っておるのであります。ただ、いわゆる平野試案の示すごとくでありますれば、農村の実情なり農民の希望と相当広く離れておることを憂うるものであります。なかんずく、町村農業協同組合の事業から信用事業を分離せんとする構想に対しましては、きわめて問題でございまして、もしこれを実現いたしますれば、町村農業協同組合の存立は、大半が危険に瀕するに至るでありましょう。農業協同組合の組織は、沿革の古い、固定的な組織でありまして、決して戦後派的なものではないのであります。農業協同組合は農家の生産を保育助成するものであり、この基本的な生産を助成する意味の金融、生産の結果生ずる所得を貯金として受け入れするという業務は、生産事業と直結する販売購買事業と密接不可分な関係にあるものであります。従いまして、都道府県以上の金融業務を簡素化いたしまして、金利の低下をはかり、農村金融を合理化しようとする考え方は、これは別途十分考究の余地があると存じまするが、町村の農業協同組合の機能から信用事業を分離するということは、鳥の翼を奪うにひとしい重大な問題だと思うのであります。農林大臣は、世論の動向を見てこれをきめると言われておりまするし、また与党自民党におきましても慎重論が強くなってきておるようでありまするが、ぜひとも慎重な考慮をわずらわしたいのでありまして、これに対する責任大臣農林大臣所見をお伺いいたしたいのであります。  要するにわれわれは、農業団体再編成の急務を知るものでありまするが、この際、農民に迷惑のかからないよう、農村のために不変の組織であるところの農村団体の再編成を望むものであります。ここ数年間に農業団体の改変は実に目まぐるしいものがあるのでございまして、農業委員会制度の制定がありましたが、次には都道府県の農業会議、中央農業会議所、都道府県の農業協同組合中央会、全国の農協の中央会の設立となりましたけれども、いずれも所期した実効を上げておらないようであります。その意味におきまして、農業団体の真の意味の再編成を期待するものでありまするが、その目的は、あくまで簡素にして強力な、特に農民生活に直結した団体の確立であると思うのであります。この際、政府は思いつきに堕せず、ほんとうに農民意思に立脚いたしました確固不動の農村団体の再編成をされんことを望むものでありまするが、これに対しまする農林大臣所見をお伺いいたしたいのであります。  私の質問は以上で終ったのでありまするが、関係大臣から懇切明快な答弁を期待をいたすものであります。(拍手)   〔国務大臣鳩山一郎登壇拍手
  15. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 第一に、民主政治のあり方についての御質問がございましたが、これはお互いに、寛容互譲の精神をもって、だんだんといい先例を作っていく以外には、よき方法はないように思います。  第二に、予算編成に対しての責任について御質問がございましたが、もとより政府全体が連帯の責任において予算を作るよりほかに道はございません。  第三に、参議院における行き方というのですか、御質問がございましたが、これは賢明なる参議院議員諸君が事物に対処して、だんだんといい先例を作っていただく以外よき方法はないと思います。   〔国務大臣河野一郎君登壇拍手
  16. 河野一郎

    国務大臣(河野一郎君) お答えをいたします。  外米の自由販売の結果、配給制度にどういう影響があるかということのようでございますが、今回政府の考えておりまする外米の配給を自由にしようということは、やみ米をなるべく防除したいということと、あわせて従来内地米、外米、外麦、内麦の価格差が不均衡でございましたので、とかくその間にいろいろありましたのを順次これを適正化して、そして国民食糧を安定していくようにしていきたいということにほかならないのであります。  第二に、生産者価格の決定をするに当って、外米の価格を引き下げたりその他の結果、生産者価格を決定する財源がなくなるから、これに影響しはせぬかというようなお尋ねでございましたが、生産者価格の決定をいたすに当りましては、どこまでも御承知通り決定の方式にのっとって決定するのでございまして、財源があるとかないとかいうことによって影響さるべきものではないのでございます。この点は明瞭にお答えを申し上げておきます。  さらに、米価の決定方式を生産費主義にしたらどうかということでございますが、これはただいま御指摘になりました九千九百六十円は予算米価でございまして、一応予算米価の決定をいたしまするには、ただいま御指摘になりましたようにパリティ方式にのっとって二の程度にきめておくことが最も妥当であるというふうに考えてきめておるのでございまして、さらに的確に本年度の米価を決定するに当りましては、米価審議会その他の議を経て、政府といたしましては諸般の情勢を勘案して決定して参る、前年度同様にやって参りたいと、こう考えております。  次に新農村建設運動を起した際に、適地適産の結果、生産物が偏重して、それによって悪い影響を及ぼすようなことはないかというようなことでございますが、この点は御指摘の点十分注意して参らなければならぬと思います。自発的に農村青年の生産意欲によってこれらの設計に基いて新農村建設運動を推進するのでございますけれども中央に、もしくは府県等にそれぞれ適当な委員会を作って、この委員会の指導のもとにいくということも必要ではなかろうか、これら御注意の点は、十分考慮いたしまして、いやしくもそういう点に支障のないようにいたしていきたいということはもちろんでございますが、なお従来とかく試験研究の仕事がばらばらになっておりましたのを、これを今回の予算におきまして、試験研究に関する最高会議を開きまして、その会議によって全国の適地適産もしくは指導方法等についても十分考えていきたい、これらを主宰すると同時に、地元青年の発意によってやっていくようにしたいと、こう考えております。  団体再編成の問題につきましては、御注意の点、十分考慮しなければならないと思っております。御指摘の通りに早野君の案が新聞に出ましたために、いろいろ全国で御意見のありますことは十分承知いたしております。これらも十分考慮して、そうしていやしくも農民諸君に迷惑のかからぬように、しかも既設の団体、特に単位協同組合等につきましては、将来食糧政策、特に農産物の協同販売等について重要な組織でございますから、これを整備拡充することによって、初めて一般農産物の価格の安定を期することができるのでございますから、この面にいやしくも支障のあるようなことは、一つ十分注意しなければならないと考えておる次第でございます。がしかし、団体再編成の必要なことは、ただいまお話の通り私といたしましては諸般の点を十分考慮いたしました上で、適当な案を作って御審議を願いたいと考えておる次第でございます。(拍手)   〔国務大臣萬田尚登登壇拍手
  17. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 外米等の売却価格を下げると、食管内の損益の操作がむずかしくなって、自然生産者価格に圧迫を加えないかと、こういうようなことについての私の見解をお尋ねになったように思うのでありますが、これはむろん、この外米、麦等の売却価格というものは、今日市場の自主性を考えまして、これを下げておるのでありまして、生産者価格の方はパリティ指数等を織り込んでこれを算定いたしておりまして、特に直接の相関関係はないと言っていいだろうと思います。従いまして、そういう意味からすれば、別にこの生産者価格を圧迫することにはならぬと思います。ただこの生産者価格と消費者価格の開きがあまりに大きくなると、どうしても食管内の操作がむずかしくなることは、これはまあ言うまでもないのでして、その辺は十分この実情にも即しまして弾力性を持って一つやってほしいと、かように考えております。(拍手)   〔国務大臣高碕達之助登壇拍手
  18. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) 経済五カ年計画におきましては、米穀換算一千三百万石を増産する、これは確保してゆきたいと存じております。一面、米の偏食ということを是正しつつ、農業の多角経営等も考えまして、増産したる食糧に対しては、輸入しておる食糧をそれだけ輸入を阻止してゆきたい、こういう考えで進んでおります。なお、適地適作主義による新農村建設計画との関係でございますが、これは密接なる連携をもちまして、全体の方針とよく連絡をとりつつ実施してゆきたいと存じますから、これは何ら矛盾を来たさない、経済五カ年計画でやっております米穀増産計画とは、何ら矛盾を来たさないと考えております。     —————————————
  19. 重宗雄三

    ○副議長(重宗雄三君) 木村禧八郎君。   〔木村禧八郎君登壇拍手
  20. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 私は、第一に憲法改正に関する鳩山首相の真意について、質問いたしたいのであります。  憲法改正の中心が、再軍備を可能ならしめようとすることにあることは言うまでもないのですが、この現憲法と再軍備との関係についての鳩山首相の解釈は支離滅裂であります。この間は、陸軍あるいは軍艦、飛行機を持つことを現憲法は禁じているように言うかと思うと、先ほどの釈明では、自衛のためならば軍備を持ってもいいのだ、こういうふうに言われておる。どちらの説を根拠にして質問したらいいか迷うのでありますが、先ほど、とにかく自衛のためならば軍隊を持ってもいいのだ、こういう釈明をされましたから、その解釈に基いて質問をいたしたいのであります。  自衛のために軍隊を持ってよろしいのだというならば、なぜ憲法を改正する必要があるのでありましょうか、なぜ憲法の改正を、保守合同以後積極的に進めようとしておられるか。私はその点の解釈に苦しむのでありますが、実は鳩山首相は、ほんとうにこの憲法を改正する意図がどこにあるかを隠しているのだ、国民に隠している。再軍備を進めるためには、現憲法を改正しなくても、すでにこれを犯してやっておるのでありますから、そのほかにどうしても憲法を改正しなければならなくなってきている事情があるわけでございます。それは昨年五月、アメリカのウィルソン国防長官がすでに指摘していますように、アメリカでは、いわゆる原子兵器と空軍に戦略転換しておりまして、日本もこの線に沿うて、いわゆるこれまでの自衛型の軍備から攻撃型の軍備に変えざるを得なくなってきておる。自衛型から攻撃型、従って自衛型から攻撃型に再軍備を転換するためには、どうしてもここに海外派兵の問題が起ってくるのであります。攻撃するためには、海外派兵が必要である。  さらにもう一つ財政面から、アメリカから要求する昭和三十五年三十二万五千までに軍備を拡張するには、どうしても今の志願兵制度では財政がもたない。現在の給与は、朝の七時から午後四時半まで訓練して、食べて寝て着て六千円、自衛隊の給与は。さらに自衛隊員一人を作るには百万円かかる。これからますます再軍備を進めるためには財政がもたないので、その面からも強制徴兵を採用せざるを得なくなってきた、財政面から。この強制徴兵と海外派兵は、現在の憲法では、鳩山首相がいかに解釈しようともできない。しかし、ただ再軍備を進める、軍備を拡張するということだけは、先ほどのいわゆる清瀬理論の解釈によって、これは国民はごまかせますが、しかしながら、海外派兵と徴兵制度は、どうしてもこれはごまかせない。これが現憲法を改正せざるを得なくなってきている、そうしてアメリカから強く要請されている、懇望されている点ではないかと私は思う。(拍手)この点をはっきりとなぜ国民に説明しないのか、私は国民をごまかすものであろうと思う。  最近の日本の軍備は、御承知のようにB57が来る。原爆搭載爆撃機であります。立川の飛行場二千メートル拡張。オネスト・ジョンが来る。三十一年度に盛られた今度の防衛費の内容を見ますれば、F86F戦闘機、攻撃型の飛行機をどんどん拡充しておる。日本の再軍備は今や明確に、サンフランシスコ当時に約束された自衛型から攻撃型に、アメリカ戦略の転換に呼応して転換されようとしている。これが憲法改正の私は真意だと思う。そうであるかどうか、この点についても、私はそうだと思うが、首相の明快な御答弁をわずらわしたい。  それから第二の質問は、三十一年度予算の基礎になっている二つの点、すなわち現在の日本経済の実態の認識、もう一つは、これに基く政府の根本的な経済基本方針、二つについて伺いたいのであります。  第一の経済実態の認識には、鳩山首相も大蔵大臣も、高碕企画庁長官も日本国民経済は安定した、経済正常化したと言っておりますけれども、しかしながら、少くとも三つの点で、これまでのいわゆる好景気とは非常に違う点があります。その第一は、これは労働省でも発表しております。景気がいいのに失業者が逆にふえるということは、これまでの好景気にないことであります。好況であるのに昨年の失業者が前年度より二五。五%増の六十九万、職安の申し込み求職者が一一・七%増の百三十万人、昨年の就労できない者が延べ人員で三五。九%増の百五十四万人、このような、景気がいいのに失業者が逆にふえるということは、これまでの好景気にはない現象であります。しかも雇用の内容が著しく悪くなってきております。これは労働大臣に私は承わりたい。ただ失業者を救済すればいいというだけじゃありません。最近の雇用の内容は、たとえば臨時職員とか、臨時工とか、零細企業に吸収される、失業者が吸収されても、これまでより雇用の内容は著しく悪くなってきている。労働政策を考える場合に、私はただ人数を就職させればいいというのではない。雇用の内容を改善しなければならん。これが著しく悪くなってきております。これはこれまでの好景気と違います。第二の点は、好景気の場合には、低額所得者の数が減るのであります。低額所得者の数は減って、高額所得者の数が多くなるのに、これは経済企画庁の報告にもあります通り、一万二千円以下の低額所得者がふえてきている。一万二千円から二万円までの所得者は変らない。二万円から四万八千円までの中間所得層が減ってきている。四万八千円以上の所得者がふえておる。高額所得者と低額所得者が非常にふえてきて、貧富の差が著しくなってきているのです。こういう経済の実態について着目しなければならないのでありますが、これで私は経済が安定しているといえるかどうか。第三には、一萬田大蔵大臣も御存じのように、不渡り手形が月に十五万件ということは、これまでにないことであります。最高記録なんです。ですから経済が好転したといいながら失業者増大し、所得の分配が、貧富の差が非常にはなはだしくなり、賃金差が大きくなる。そうして中小業者の不渡り手形が激増しておる。非常に貧困が増大しているんです。また貧困の幅は深くなっておる。その上に立っての好況であります。経済正常化とどうして言えます。輸出増大、農村の豊作に基くこれは好況であって、経済正常化ではないのであります。鳩山内閣輸出の増進と農村の豊作を、経済政策によって経済正常化までにこれをこなすことができなかったのであります。輸出の増進や農村の豊作鳩山内閣政策によったものではないんです。外部から与えられた条件、これを経済正常化までに持っていかなければならないのに、拱手傍観してやっておらない。ですから経済内容が実にゆがんでおるんです。これで経済が安定、あるいは経済正常化したとは絶対に言えません。この点についての大蔵大臣あるいは高碕長官、労働大臣の御所見を承わりたい。  最後に、こういう経済実態の認識に基いて、政府の根本政策として鳩山首相はこう言っております。今後は生産基盤の強化と輸出の振興、雇用の増大に施策の重点を置くといっておりますが、これは、これまでの政策と非常に違った点が一つあります。それは経済自給度を向上させるという点が抜けているのであります。経済基盤の拡充というのは何かといえば、鳩山首相の説明によれば、これは産業の近代化、あるいは合理化、あるいはオートメーション等による、いわゆる生産性の向上、それでコストを下げて輸出をふやす、こういうのであります。ところがすでに三十年度、あんなに輸出がふえ、農村は景気がよくてさえ、失業者は吸収できない。最近は、いわゆる生産年令人口が高碕さんも御承知のように異常な現象です。人口百万人増加に対して百六十万も生産年令人口はふえておる。そのために、これは今後においても、この新しくふえてくる生産年令人口を吸収することは大へんなことです。ところが、オートメーションあるいは生産性向上でどんどん、一番大切な第二次産業部面に失業者を吸収しなければならないのに、そこから失業者が出てきておる。これでは今後重大な問題になります。それを救う道は、自給度の向上になければならないのです……
  21. 重宗雄三

    ○副議長(重宗雄三君) 時間が参りました。
  22. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君(続) それは農業投資増大し、あるいはまた船舶、合成繊維、あるいは石炭、鉄鋼、その方面の財政投資を十分にして、国内の自給化計画、これをやらなければ失業者を吸収できない。ところがこれを落して、再軍備するために、あるいはアメリカの余剰農産物輸入するために、この点がはずされている。今までの政策からはずされているのです。それはアメリカの余剰農産物受け入れと、防衛費の増加に基いて、自給化政策がなくなっている。これでは……
  23. 重宗雄三

    ○副議長(重宗雄三君) 時間が参っております。
  24. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君(続) これでは私は、日本経済安定ができないと思う。時間が参りましたので、私の質問はこれをもって終りといたします。(拍手)   〔国務大臣鳩山一郎登壇拍手
  25. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 木村君にお答えをいたします。  憲法解釈につきましては、先ほど申し上げた通りで、自衛のため、必要相当な限度において自衛力を持つことはできると考えております。しかしあの憲法の九条の書き方を、もう少し明瞭にした方がいいとは考えております。憲法の再検討をしたいというのは、九条だけの問題にはなく、やはり全般的に審議会において審査した方がいいと考えております。  それからアメリカの注文で、何か戦闘が自衛以上に発展しそうだというようなお疑いを持って質問がございましたが、そういうようなことは全然考えておりません。第九条は、やはり自衛の目的の範囲内において日本は防備する必要がある、それ以上に発展する必要はないと私は考えております。(拍手)   〔国務大臣萬田尚登登壇拍手
  26. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 御質問一つは、経済が安定をし、好況というのに失業者がふえておるじゃないかというのが一つの御質問であります。これは雇用の問題は、どうしても日本の場合は貿易を盛んにして経済拡大していくということを、どうしても基本に置かなければなりません。ここまで持っていくのには、いろいろな過程がやはり必要であるのでありまして、従来いろいろと紆余曲折を経て、やっと貿易面についてもまあ見通しが将来立つというところにきたわけであります。従いまして、単にこの現状だけをつかまえると、いろいろな指数で失業者がふえておるようでありますが、ごく最近の、たとえばこの完全失業者の数とか、あるいは企業整備による失業者の数とか、あるいはまた失業保険の離職票の受付件数、こういうのを見ますと、ややこれは、やはり失業状態の好転を示しておる。それで私どもの考えは、今失業がないというんじゃなくて、その峠を、最悪の状況はこえて、ややよくなりつつあるんだ、こういうふうに申すので、今後やはり日本経済拡大につれて雇用はよくなる、こういうふうに考えてよろしいと思うのであります。  それからもう一つの問題は、貧富の差がだんだんと激しくなりゃせんか、こういうような御質問であったのでありますが、今日の日本経済の状況からみまして、私は国民所得も総じてふえておると思います。なお生活水準も上ってきておると思います。また労働者の賃金をみましても、前年と比べましても平均の賃金で四・四%、それから実質賃金で六・六%くらいは上昇をいたしておりまして、決して悪い方じゃないのであります。従いまして、私は現状において、貧富の差がますます激しくなるであろうというような見方には賛成しかねるわけであります。  それからもう一つの不渡り手形の問題でありますが、なるほど不渡り手形はこれは件数においてはふえております。しかし金額においては、これは減少いたしております。なお不渡り手形という問題は、ひとりこれは経済面ばかりからも御承知のようにくるわけでもないのであります。しかしながら、中小企業等がどうしても社会構成の上の勢力関係から、しわが寄り過ぎるとか、こういうことはあると思うのです。従いまして、できるだけ中小企業に対する対策を講じ、特に今回の予算におきましては、中小企業の金融については格段の配慮を加えてあるわけでありまして、さよう御了承を得たいと思います。(拍手)   〔国務大臣高碕達之助登壇拍手
  27. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) お答え申し上げます。  生産面での人口が、ほんとうに百三十万人という大きな数字がふえておるということは、これは非常に大きな問題でございまして、これはお説のごとく深刻に考慮せねばならぬ問題だと考えております。どうしてもこれを吸収いたしまするには、絶対生産量をふやして行かなければならぬ。生産量をふやせば、販路ということを考えなければならぬ。販路を考えれば、生産原価を切り下げなければならない。生産原価を切り下げるということになれば、どうしても産業を合理化しなければならない。合理化すれば一時、たとえば十人でやっているところを五人でやれば原価が切り下げになりますけれども、五人の失業者が出る、これはやむを得ませんが、しかしながら、製造する人と同時に、かりに一つの工場でも、物を作ると同時に、これは倉庫係もあれば運搬係もあり、仕入係もあれば販売係もある。その方は減りませんから、そちらの方に人を回しまして、つまり第三次産業に回しまして、そうして絶対の数字をだんだんふやして行こう。これが経営の合理化なのであります。この合理化をするということが最も必要でありますから、この意味におきまして、一時あるいは失業者はふえましょうが、これは終局においてはその失業者を吸収するというのが、政府のとらんとする方針でございます。(拍手)   〔国務大臣倉石忠雄君登壇拍手
  28. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) 私に対するお尋ねのお答えは、大蔵大臣と高碕長官の申し上げた通りで、他につけ加える何ものもございません。(拍手
  29. 重宗雄三

    ○副議長(重宗雄三君) これにて質疑の通告者の発言は、全部終了いたしました。質疑は、終了したものと認めます。  本日の議事日程は、これにて終了いたしました。次会の議事日程は、決定次第公報をもって御通知いたします。  本日は、これにて散会いたします。    午後七時四十五分散会      —————・————— ○本日の会議に付した案件  一、日程第一 国務大臣演説に関する件(第三日)