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1956-01-31 第24回国会 参議院 本会議 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十一年一月三十一日(火曜日)    午前十時三十八分開議     ━━━━━━━━━━━━━  議事日程 第五号   昭和三十一年一月三十一日    午前十時開議  第一 国務大臣演説に関する件(第二日)     ━━━━━━━━━━━━━
  2. 河井彌八

    議長河井彌八君) 諸般の報告は、朗読を省略いたします。      ——————————
  3. 河井彌八

    議長河井彌八君) これより本日の会議を開きます。
  4. 岡田宗司

    岡田宗司君 去る二十八日わが国民主政治発展のため力を尽されました衆議院議員緒方竹虎君が逝去されました。まことに痛惜哀悼の至りにたえません。つきましては、この際、参議院は同君に対し院議をもって弔詞を贈ることとし、なお弔詞文議長に一件することの動議を提出いたします。(拍手
  5. 村上義一

    村上義一君 私は、ただいまの岡田君の動議賛成いたします。
  6. 河井彌八

    議長河井彌八君) 岡田君の動議に御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  7. 河井彌八

    議長河井彌八君) 御異議ないと認めます。議長において起草いたしました緒方竹虎君に対する弔詞を朗読いたします。  参議院わが国民主政治発展のため力を尽されました衆議院議員正三位勲一等緒方竹虎君の長逝に対しまして、つつしんで哀悼の意を表し、特に院議をもってうやうやしく弔詞をささげます。      ——————————
  8. 河井彌八

    議長河井彌八君) この際、日程に追加して、人事官の任命に関する件を議題とすることに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  9. 河井彌八

    議長河井彌八君) 御異議ないと認めます。  内閣総理大臣から、国家公務員法第五条第一項の規定により入江誠一郎君を人事官に任命することについて本院の同意を得たい旨の申し出がございました。本件同意することに賛成諸君起立を求めます。    〔賛成者起立
  10. 河井彌八

    議長河井彌八君) 総員起立と認めます。よって本件は、全会一致をもって同意することに決しました。      ——————————
  11. 河井彌八

    議長河井彌八君) 日程第一、国務大臣演説に関する件(第二日)  昨日の国務大臣演説に対し、これより順次質疑を許します。佐多忠隆君。    〔佐多忠隆登壇拍手
  12. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 昨日、ここで行われました鳩山総理大臣重光外務大臣、一萬田大蔵大臣、高碕経済企画庁長官演説について、私は日本社会党代表して、各閣僚質問いたします。  鳩山総理大臣は、世界平和の確保をうたい、重光外務大臣は、平和外交推進を強調されましたが、肝心の具体的方策になると、芒洋としてつかみどころのないお念仏に消え失せるか、たまたま具体策があれば、それはむしろ国際緊張を激化するものにほかなりません。  そこで私はまず第一に「世界平冠を実現する最も具体的な方途について鳩山総理大臣お尋ねをいたします。戦争による破滅を避け、世界平和を確立するには、軍縮をおいてほかに道はありません。原子兵器生産が増加し、大陸間の弾導兵器が発達した今日こそ、効果的な軍縮協定を成立させることがいよいよ必要となったと言えましょう。軍縮は、今やアメリカイギリスソ連もこれに賛成をし、世界の世論はあげてこれを支持しております。世界に最初のそして唯一の非武装憲法を持つわが国は、今こそアメリカイギリスソ連中国等の大国に向って、早急に軍縮を実現すべく提唱をし、要求すべきであります。(拍手鳩山総理大臣はどうお考えですか。さらに手近には、日本におけるアメリカ軍事基地の拡張に反対をし、基地の縮小、廃止を要求をする。日本における再軍備増強をやめてこれを縮小し、日本憲法が命ずる本然の平和日本の姿に帰るようにほんとう勇気をふるい起すことです。アメリカを最もよく理解し、アメリカと一番よく協力しておられることを昨日自負された重光外務大臣が、アメリカに対してこの勇気をふるわれることが、日本独立極東の平和を確保する何よりの近道です。アメリカをこの方向に導くことが世界平和を招来する唯一の道です。日本外務大臣は、あえてこれをやらなければならないのです。重光さんどうですか。ことに原水爆実験の競争がこの春からはいよいよ激しくなろうとしております。これは原子力の平和利用という明るい面に暗い影を投げかけます。世界の人心に不安と恐怖を与え、世界の平和を乱るものであります。またこの実験のために、広大な航海禁止区域を設け、航行や漁業を制限することは、国際法上からも明らかに違反と言えましょう。きのうきょう行われております英米会談でも、原水爆実験を制限する問題が討議されると伝えられて’おります。原水爆の被害を二たび三たび身をもって体験した唯一民族として、唯一国民としてわが国は、アメリカイギリスソ連に対して、原水爆実験禁止協定を実現すべく迫るべきでしょう。(拍手)わが党は近くこれを提唱し、国会の決議とするつもりであります。鳩山総理大臣は、重光外務大臣は、これに応ずる用意があるかどうかお答えを願いたい。  第二に、日ソ交渉についてお尋ねします。日ソ交渉方針については、いろいろ抗弁をされておるが、今日でもなお、鳩山総理大臣考え方と重光外務大臣のそれとは非常に違っておるとしか思えません。そうして二人の間には何らの連絡もなく、てんでんばらばらに交渉が進められつつあります。しかもその中に河野農林大臣までのこのこと介在して、事態をいよいよ混迷に陥れております。防衛分担金折衝の場合にも同じでありました。一体鳩山内閣では、だれが外交上の責任をとるのですか。だれが外交折衝をやっておるのですか。鳩山総理大臣は、これらの重大な問題をどう統率しておられるのかお答えを願いたい。  鳩山首相は、去る二十六日の新聞記者会見では、ソ連との間で早く戦争状態を終らせ、南千島をも含めて未解決の領土問題は、後日解決するということで話し合いをつけたいという趣旨を話されました。しかるに自分が党首として所属しておる自民党から反撃されるや直ちに前言を取り消して、南千島の無条件返還をあくまでも要求する既定方針交渉をすると、簡単に訂正をされておる。しかし真実の事態は、はなはだしく複雑であり、重大であるように見受けられます。鳩山総理大臣の偽わらない確固たる信念はどこにあるのか。この席で、はっきりお答えを願いたい。舌の根の乾かないうちにあたふたと取り消すような軽口でなくて、熟慮断行すべき確信を断言していただきたい。ここ二、三日は在日ソ連通商代表部のドムニッキー氏が、戦争終結宣言による国交回復提案をしたとか、あるいは情報を流したとか騒がれております。このいきさつ内容、その処理の仕方を鳩山総理大臣重光外務大臣から、そうしてまたこれに関与しておると称される河野農林大臣から、このおのおのから詳細にお答えを願いたい。(拍手)この案が本日三十一日の、あるいはまたこの次のロンドン会談議題となり、日本最終態度を決定いたさなければならぬ事態となるとも伝えられておりますが、それらの事情はどうなっておるのか。ソ連ロンドン会談で正式に戦争終結宣言による国交回復提案をした場合に、政府はどんな措置をとろうとするのであるか。あるいはまた政府はすでに松本全権に対して、平和条約締結による国交回復をすみやかにやる、その際在ソ抑留邦人即時送還、歯舞、色丹の無条件返還要求する。懸案の南千島の帰属は、北千島、南樺太帰属と合せて、インドの仲介に委任をするという含みを伝えたと言われておりますが、政府は、少くとも鳩山総理大臣は、このような早期妥結の決心を固められたのかどうか、はっきりお答えを願いたい。  第三に、アジア外交についてお尋ねをいたします。鳩山内閣重光外務大臣が、アジア外交を重視し、アジアアフリカ諸国との親善関係を進めることに着目をし始めたことは、おそきに失するのではありますが、われわれもまた賛同を惜しまないものであります。しかし、そのために日比賠償の八億ドルを無批判にうのみにしようとする政府態度には、にわかに賛成することができません。民間借款を含む八億ドルの負担は、その他の対外債務支払いと合せれば、将来の日本国民に過大なるものとなることは明らかであります。この点を重光外務大臣は、高碕長官や一萬田大蔵大臣と十分に検討をされたのかどうか。一萬田大蔵大臣は、どんな計数的根拠からこれを応諾されたのか。現金賠償民間借款に対する政府保証はどうなっておるのか。八億ドル案を御破算にして大野・ガルシア協定の四億ドル案を協議の土台とし出発点とすべきだと思うのでありますが、どうか、詳細にして明確な答弁要求いたします。  アジアアフリカ諸国との親善関係を進めようと思うならば、東西両陣営のいずれにも属さず、中立外交政策を堅持しつつ、アジアアフリカ・グループの中核となり、それを指導しているところのインド、ビルマ、インドネシア、エジプト等と特に友好関係を確立しなければなりません。これらの国々の反植民地主義民族独立運動支援をし、その社会主義的経済開発計画協力をするという覚悟が必要であります。(拍手)わが党は、近く数人の代表をこれらの国々に派遣をして、それを実践いたすつもりでおります。鳩山総理大臣は、重光外務大臣は、この点について、わが社会党にならう謙虚さ、襟度がおありになるかどうか、お答えを願いたい。(拍手)  第四に、隣邦中国の問題についてお尋ねをいたします。鳩山内閣重光外父は、アジア外交を重視すると言いなから、隣邦中国との国交回復について、なんら積極的な手を打っておりません。いな、最近は、むしろこれを妨害し始めた数々の事実があります。私はこれを非常に遺憾に思います。政府のこの妨害にもかかわらず、昨年中は、日中の交流は各方面に広範に及び、東京、大阪で開かれた中国見本市は、非常な成功を収め、日中両国友好親善は大いに進められました。この自然の大勢日中両国人民大衆の熱烈な願いを政府は、なぜ事ごとに阻止しようとするのであるか。一説によれば、アメリカの圧力に屈して、心ならずもこうせざるを得ないとも言われておりますが、その真相はどうなのか。あるいは保守合同を契機として自民党が国内の反動態勢を押し進めるために、かつての鳩山民主党選挙公約中国との国交調整公約をほごにするのだとも言われておりますけれども、果してどうなのか。  わが国経済自立達成し、経済基盤拡大をするには、隣邦中国との交易を発展させる以外に道はありません。さればこそ重光外務大臣も、中国貿易推進には努力を惜しまないと、きのうも言われたのでありましょう。しかし鳩山内閣重光外務大臣になってから、その実を示されたことは全くありません。中国への輸出禁止は近年若干緩和されましたが、これは鳩山内閣以前の実績にすぎないのです。一九五三年に朝鮮休戦が実現をしてから、すでに三年近くになった現在、中共に対する輸出禁止だけを特にきびしくしておくことは、全く非現実的であります。それは中国に実害を与えるよりも、むしろ中国をめぐる諸国発展の自由を束縛し、困難に陥れる結果を生じているだけです。イギリスイーデン首相は、今行われている米英会談で、アメリカに対中共禁輸緩和同意要求することは確実であると見られております。アメリカはことしの秋の大統領選挙をひかえて今、中国に対する政策を転換することはなかなかむずかしい。従ってイギリス要求に直ちに同意する可能性は少いでありましょう。しかしイギリスは、場合によっては単独でも禁輸緩和を断行しかねない意気込みを示しております。またアメリカは、中共の国連代表権問題をもう一年見送ることをイギリスにのみ込ます交換条件として、禁輸緩和は、ある程度譲らねばならない事情にもあります。今度の会談を通じて、対中共禁輸委員会、いわゆるチンコムによる現在の中共貿易制限をある程度緩和する問題について、ハリで関係国会議を開くことにアメリカ同意をせざるを得なくなるでしょう。世界大勢がすでにこうであるときに、中国の隣国に位し、中国との貿易がその死活問題であるわが国が、この禁輸緩和について、アメリカに対して積極的な執拗な要求をしない理由は絶対にありません。(拍手)なぜ重光外務大臣は、この問題を取り上げないのですか。中国との国交調整をうたった鳩山総理大臣は、なぜ重光外務大臣にこれを厳重に命令をしないのですか。今日はもはや、中国市場日本に開くべきだという主張は、イギリスのエコノミストもこれを唱え、アメリカ上院ジョージ外交委員長賛成をしております。日本は、みずから立ってこれを強く主張すべきです。これについて、日本イギリスとともにイニシアチブをとるならば、フランスも、西ドイツも、カナダも、この方向について行くと言っているではありませんか。鳩山総理大臣重光外務大臣の明確なお答えを求めます。  日中貿易については、近く第四次協定交渉せねばなりません。ことしは中国で、日本見本市を開く問題もあります、日中両国の首都に開く見本市を常設の機関とし、双方貿易に対する連絡事務処理することも必要になって参りました。またいまだ中国に捕われている戦犯の処遇、残留邦人の帰国、日中両国双方の居留民が自由にその本国に往来する問題など、早急に解決せねばならぬ問題も山積しております。これらはもはや、民間だけでは解決のつかない段階に参りました。中国側は、毛沢東首席周恩来総理がみずから、今後はこれらの問題を政府間で公式に外交問題として話し合いたいと、しばしば訴え、呼びかけていることは御承知の通りです。中国政府は、昨年の八月十七日と十一月四日と、そしてきのう、きのうですよ、きのうと、すでに三回にわたって日本政府に対して、両国国交正常化について話し合うことを提案をして参っております。われわれは直ちにこれに応ずべきだと思いましたから、いろいろ手を尽しましたが、政府はこれに応じようとしません。なぜ話し合いができないのか、その理由を詳しく承わりたい。ジュネーヴで総領事会談をやっていると言われるでしょうが、あれはほんの事務的な折衝にすぎません。なぜ大使級会談ができないのか。鳩山総理大臣重光外務大臣がみすから出かけるなり、あるいは周恩来総理を呼ぶなりして、国交回復話し合いをすべきときじゃないでしょうか。そのときは、わが社会党もその会談成功のために側面からの支援を惜しむものではありません。そういう状態になって初めてわが国でも、超党派外交が可能になります。わが社会党は、それを切望しております。鳩山総理大臣はどうお考えになっておるか。  中華人民共和国が今や大陸中国に確固たる基礎を築き、経済建設を着々と進めつつある現実を冷厳に認識するならば、この政府中国実力者として、わが国の相手方とし、なるべく速やかなる機会に、この政府との間に、戦争状態を正式に終結せしめ、平和条約を結び、国交回復をはかることを具体的に措置せねばならない時期に参ったのであります。(拍手)日中の国交回復は、無条件にやれます。日華条約を結んだことは、吉田内閣の最大の失策の一つであります。しかしこの日華条約処理の問題も、国交回復前提条件として考える必要はないのです。国交回復の結果として将来の措置にゆだねればいいのです。そうだとすれば、わが国が、日中国交回復に今直ちに乗り出すことも不可能ではありません。わが国が自主的に決意するかどうかにかかっております。そしてわれわれは、その決意をすべきときだと思うのであります。鳩山総理大臣国民とともにその決意をすべきときでしょう。帰山総理大臣は、その決意ができないのですか。あえてお尋ねをいたします。  第五に、経済計画について高碕国務大臣お尋ねをいたします。日本経済について長期見通しをつけ、総合的な計画を立てることは不可能である、経済計画的に運営しようとする者は、赤に通ずるものだとうそぶきながら、惰眠をむさぼっておった保守党が、わが社会党主張に押されて、ここに総合的かつ長期にわたる計画を立てたことに対しては、われわれも賛意を表します。ことにその作業に当った官僚諸君の労苦を多といたします。しかし官僚諸君経済計画は、彼らの消極的性格のゆえに、見通しが常に過小であり、その誤算が救うべからざるあやまちに導くことは、すでに私がしばしば論難した通りであります。今度の計画は、それをかなり訂正したために、一年前の計画と比べれば、数字に関する限り全く新しい計画とも言えます。わが国経済の実勢力、ことにその成長力については十分の自信を持つべきでしょう。  そこで計画目標について、まずお尋ねいたします。計画は旧態依然として、経済自立完全雇用達成という二律背反を目標にしております。いな、経済自立を主目標にしていることが無意識のうちに現われて、計画経済自立五カ年計画とうたわれております。経済自立計画とうたわれております。経済自立正常貿易による国際収支の均衡を意味するならば、これはすでに昭和二十九年度以来達せられた目標であります。確保すべき事態ではありますが、もはや達成すべき目標とはいえません。経済自立を依然として目標に固執するために、計画が消極的に堕し、経済規模拡大が大胆に試みられないのです。公共事業失業対策社会保障等対策が十分に講ぜられないのです。雇用増大ほんとうに真剣に第一義的に考えられないで、完全雇用達成などという言葉がむぞうさに使われるのであります。ふざけるにもほどがある、国民を欺瞞するもはなはだしいと言わなければなりません。経済の実態を冷静に認識をし直して目標雇用増大なる一点に集中をして、計画を組み直すべきです。高碕国務大臣は、そうお考えにならないのかどうか、お答えを願います。  次に、生活水準についてお尋ねをいたします。この計画では、国民生産昭和三十五年度までに三四%上げ、民間資本形成を五七%上げにするにかかわらず、消費水準の上昇を意識的に押えて二三%にとどめております。これは資本家の意向を忠実に、しかも露骨に代弁したものにすぎません。生活水準の引き上げをもっと考えるべきでしょう。もし生産規模拡大生産質的改善のためには消費の押えもやむを得ないというのならば、その成果資本家経営者だけに帰属する経済体制を改めて、その恵沢があまねく国民大衆に及ぶように、すなわち社会主義的体制へ進めなければなりません。それは国民大衆消費を、生活を犠牲にして得られた成果にはほかならないのですから。高碕国務大臣に、果してそれだけの勇断がおありかどうか、お答えを願いたい。  計画国民全般協力を得て前進していかなければならないとうたい上げております。どういう体制の下で、その協力を得ようとされるのか。計画作成に当っては、いわゆる財界のお歴々と、おおむねその代弁を勤めるにすぎない、いわゆる学識者だけと相談をしながら、その実施だけを一般国民に要請をされても、国民大衆はそっぽを向くのがむしろ当然でしょう。政府が真に一般国民協力を願うのであるならば、計画作成の当初から、その代表者の参加を求めるように経済体制を変えてかからなければなりません。ここでも経済体制の変革の問題にぶつかります。高碕国務大臣は、果してそこまで考えてこの経済計画を作り、これを実施しようとしておられるのかどうか、明確な答弁を願います。  第六に、昭和三十一年度予算について一萬田大蔵大臣お尋ねをいたします。平和憲法によって非武装を国是としているわが国財政は、あくまでも平和予算を貫かなければなりません。(拍手近代国家としての我が国の財政施策社会保障産業発展施策に重点を置くべきことはもちろんであります。しかるに、ここに提案されました予算案の歳出は、防衛費恩給費地方交付金など、非生産的支出だけが特にふえております。社会保障文教費ふえ方は、対象人員や学童の自然的な増加を賄うにすぎません。公共事業費住宅費建設資などは削られ、財政投融資計画は全く別ワクの方に押しやられております。これでも平和国家予算であり、近代国家財政であると、一萬田大蔵大臣はどのつら下げて言えるのか、お答えを願いたい。各費目にわたって大なたがふるわれているときに、防衛費だけは要求額の九七%、ほとんど全額が大手を振ってまかり通っているありさまであります。全く手に負えない別格予算とも言うべきものになっております。防衛庁費が大蔵省の最終査定額九百六十七億円から一千二億円にはね上ったのは、結局、日米折衝の結果という至上命令によったものにほかなりません。日本防衛費日本考えだけではどうにもならないで、アメリカ極東戦略計画の重要な一環になってしまっているのであります。アメリカ軍の意図に直結してしまった防衛関係費は、もはや政府も与党も手のつけられないタブーになりつつあります。これで果して独立国予算と言えるでありましょうか。この経費に関する日米折衝いきさつと結果を、詳細に、重光外務大臣、一萬田大蔵大臣船田防衛庁長官から、そしてこの折衝に特に当られたと言われる河野農林大臣からお答えを願いたい。(拍手)  日本経済発展が確実に拡大方向に転じた今年からこそ、財政投融資によって積極的な経済施策を展開すべき時期であります。一般産業は自力で相当発展する予想ができますが、電力、石炭、海運、陸運等公益事業基幹産業は、国の財政力を加えなければ拡充できません。中小企業農林漁業は、国の財政力の支持がなければ、その維持すら困難です。この積極的施策は、失業者、半失業者の吸収、雇用増大のためにも必要であります。雇用拡大のためには、公共事業失業対策とともに、新技術の振興、金利引き下げによる民間投資拡大を促進をすべきです。人の面はもちろん、物の面からもその積極政策が可能であり、必要な時期になっておるのです。しかるに、その施策がほとんどなされておりません。これでは七十万に及ぶ失業者も六百万をこえる半失業者も、五十万に達しようとする日雇い労働者も決して救われないのです。これでも日本経済安泰なりとして、一萬田大蔵大臣はうそぶいておられるのかどうか。この勤労大衆の悲痛な真剣な叫びに、まじめな答弁要求します。(拍手)  最後に、私は質問に答えられるべき各閣僚に要望します。私は、内外にわたった緊要な数個の問題に対する政府態度施策批判をし、わが党のこれに対する態度根本方針施策の大綱を対置しながら質問をしたのです。各閣僚は、あなた方の忠実な下僚を通じて、私の質問内容をすでにあらかじめよく察知をしておられるはずです。そこで、どうかこれまでのおざなりな、その場逃れ答弁でなくて、的確にして具体的な責任のある答弁を誠意をもって尽されるように切望をいたします。(拍手)    〔国務大臣鳩山一郎登壇
  13. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 佐多君の御質問お答えをいたします。  第一は、軍縮についてでございました。軍縮については、国連で目下討議中であるのでありまして、これはもちろん実を結ぶことを望むのは当然であります。世界の国のいずれの国民も、世界の平和をこいねがっておる事態でありまするから、どうか軍縮目的達成できるように希望するのは当然でございます。原爆の禁止についてお話がございましたが、これらにつきましても、何らか国際的機関によってこの目的達成できることをこいねがっておる次第でございます。日本だけが無抵抗主義では、世界の平和というものは持ちきたすことはできないのでありますから、これはやはり世界大勢が、そういうようになるように日本努力をすることが必要だと考えております。  第二には、日ソ交渉について御質問がございましたが、これは何べんも申しました通りに、当初から私は日ソ間の関係早期妥結を見ることを願っておるのであります。  アジア外交につきましては、外務大臣からお話をいたしますが、日中、日本中国との国交回復につきましては、これは日本としては、とにかく禁輸緩和にできるだけの努力をするということが必要だと考えております。国際情勢の推移とにらみ合せまして、日本中国との関係が、国交が、正常化するように努力をすべきは当然な日本の責務であると考えております。あとは外務大臣から答弁をしていただきます。    〔国務大臣重光葵君登壇
  14. 重光葵

    国務大臣重光葵君) 御答弁を申し上げます。  最初に、ただいま佐多君から社会党外交政策に関する御意見をるる承わりました。まことに私はそれをありがたく思います。それから趣旨として、十分社会党の意見を聞く意向があるかというお話の一句もございました。私は、十分に御意見を拝聴したいと常に考えております。それで、今の御質問の最後の部分から申し上げます。  中国問題について、これまたるるお話がございました。その結論から私は申し上げたいと思います。政治的には、私は御意見に賛成することが困難でございます。貿易の問題は、御説に私は全然御同感でございます。政治的には、昨日私の外交演説にも申し上げておる通りに、中国政府として、今日国民政府を承認しておる現状から見、また国際関係の現状から見て、日本が直ちに中共政府中国政府として承認するような政策をとることは、今日適当でないと考えております。日本はさようなことによって、日本の国際的の信用を害することはできないと考えております。それから貿易の問題については、国際義務に反しない範囲内において、これを増すということは適当であると考えております。そのために政府も、いろいろな手段をとっておる、現に見本市の許可までいたしておるのであります。しかしそれは、何も共産党の主義の問題ではないのであります。共産党の主義の問題は、国内の治安の問題に関係をいたしますから、この問題については十分に考慮しなければなりません。貿易の問題は貿易の問題として取り扱って差しつかえない、こう考えております。  それからアジア外交について、大局上の御賛同を得ましたことをありがたく思うのであります。(拍手)しかしその詳細につきまして、御意見として中立政策賛成しろというような御意見には、御賛同申し上げるわけには参りません。これは日本の置かれた国際的の地位からかんがみ、世界の情勢から見て、そういうことはできないということを申し上げます。  次には、そのアジア外交の中において日比賠償のことの御質問がございました。日比賠償につきましては、最初の案、大野・ガルシア協定に置けというお話もございました。これは交渉の段階においてそういうふうなことから始まってきたのでございます。前内閣のことでございます。決して八億ドルをうのみにしておるわけではございません。しかしながら、日比賠償の問題は、今日交渉中でございます。不日結末がつきました上は、詳細に申し上げることにいたします。  次は日ソ交渉の問題でございます。日ソ交渉は、ロンドンで交渉をいたしております。何人の仲介をも、他国の仲介をも、依頼することはやりません。ロンドンで日本側とソ連側との全権の間で一本で交渉を進めて参ります。それから日本内地において、ソ連側の人々から漁業者に対していろいろな話し合いがあったということは、私は農林大臣からも報告を受けております。受けておりますが、いずれにいたしましても、日ソ交渉はロンドンにおいてやっておるのであります。ロンドンにおいてやっておる、この一本筋でやるのであります。そこでかような国内において、漁業者を通じて話をしてきたというようなことに対しては、一切これは受け付けないことになっており、またそういたしておるのであります。  それから次に原水爆の問題がございました。原水爆の使用は、むろんわが国として反対でございます。ただ原水爆禁止ということが、今国際的に決定していないのみならず、不幸にして原子力の使用については、各国とも競争して研究をしておるような状態でございますので、この原水爆実験については、あくまで予防措置を講じてもらわなければなりません。被害のないようにしてもらわなければなりません。さような方針をもって進んでおります。これが国際会議において論じられる場合においては、原水爆の問題については、日本はあくまでそれに反対する方針でもって進んでおります。  さらに最初の御質問でございました軍縮の問題でございます。軍縮の問題については、これは世界の平和を守るために軍備を縮小するということは、これは当然やるべき平和外交の重要問題でございます。従いまして、国際会議、特に国際連合において今軍縮の問題が一番大きな問題でございます。これにはその精神において日本側はむろん同調をするのであります。しかるに今国際連合におきましては、ソ連側とそれから米国側と申しますか、連合国側と申しますか、その方において正面衝突をしておって、どうしても解決ができません。これは遺憾なことでございます。かようなことがだんだん解決をされて、さらに世界の平和に進んでいくということが望ましいのでございますが、これがゼネバ会談においてもできなかった。そこで今、さらに緊張した情勢が生じているということは、まことに遺憾なことでございます。むろんかような問題は、先ほど指摘されましたが、日本の軍備の問題とは関係はございません。日本の軍備は、独立の完成のために単に必要な自衛軍を整備するということで、それでなければ、日本独立した国として国際間において物を言うことができないのでございます。かようなわけでございますから、これは決して国際的に軍縮の問題の対象になっておらぬ現状であるということを申し上げまして、私の答弁を終ります。(拍手)    〔国務大臣一萬田尚登君登壇拍手
  15. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 三十一年度の予算案におきまして、防衛庁費の計上が過大で他の民生安定の費用の計上が少ないではないかという御質疑だと思うのでありますが、これは一つには、私の考えでは防衛ということに関しまする考え方の基本的な相違からもくるのではなかろうかと思うのでありまして、あるいは若干御理解がしにくいかと思うのであります。しかしながら昨年の防衛に関係する経費の総額は千三百二十七億でありますが、これに八十億今回ふやしまして千四百七億計上いたしたのであります。しかし今日、日本の防衛の現状からみまして、さらにまた国民所得等の増加からみますと、八十億程度の増加は、まあ私やむを得ない、こういうふうに考えます。それというのも私どもの基本的方針は、国力に応じまして防衛費を増強していくという方針をとっているのでありますから、これは一つこの方針を御了承を願いたいのであります。そうして、それなら民生安定の方に計上していないかと申し上げますれば、これは社会保障にも、今回、なかなか苦しい予算でありまするが、百二十二億円これを増加いたしている。さらにまた特に皆さん方から、この給与所得者の月二万円は、税を免じてやるようにぜひしろという要求がしばしばありまして、それを受けまして、今回私、この給与所得者に対しまして控除額を引き上げまして、月二万余の人は税がかからない、こういうふうになって参りました。これに本年度で約百五十億程度のやはり金を入れております。その他失業対策にいたしましても、六十億以上の増額をいたしている。特に中小企業につきましては、こういう過程におきまして、やはり失業とか雇用とか、特に中小企業等には影響が大きいのであります。そういう点については、金融面におきましても、予算上の措置においても、特に意を用いてありますということを申し上げまして、そう御心配はなさらなくても、私は必ずこの予算がこのままで通過していきますれば、いわゆるインフレなきこの経済拡大発展をしていくということを確信いたしております。(拍手)    〔国務大臣高碕逹之助君登壇拍手
  16. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) 佐多さんの御質問お答え申し上げます。  佐多さんは、経済自立完全雇用とが一致しない、こういう御意見でございますが、五カ年計画目標は、輸出を増大する、輸出を伸張する、そうすると経済拡大する、経済拡大すれば、雇用増大する、これが根本の方針でございまして、もっとも輸出を伸張せしめるためには、原価を引き下げなければならぬ。そのためには、合理化をし、あるいは生産性を向上する。そのときには、一時は失業者は出るでしょうが、これは一時でありまして長期に見たとき、これは忍ばなければならぬ。そのときには失業対策を別途に講ずると、こういう方法で進みたいと存じます。従いまして、経済自立計画完全雇用とは相ともに並行して進むべきものだと存じます。  また第二の御質問として、国民所得の伸びに比して消費が非常に低いじゃないか。まさにその通りでございまして、これは五カ年計画を立てます上におきましては、大体国民の所得は三四%ふえていくと計画しておりますが、消費は二三%半にとどめたい。これは忍ぶべきところは忍んで、そうして国力を充実しなければならぬ。このためにこの方針をとっておるわけでありまして、審議会はできるだけ多数の方々の御意見を聞きまして、これを実行に移すわけでありまして、ひとり政府だけでやったわけではありません。できるだけ国民諸君にも、このことを知っていただいて、消費を節約して、将来よくなったときにはこうなる、そのときには国民生活は向上するということを、できるだけ国民諸君に知らしめるように、今後の方針をとっていきたい所存でございます。(拍手)    〔国務大臣船田中君登壇拍手
  17. 船田中

    国務大臣(船田中君) 防衛分担金の削減についての御答弁は、むしろ外務大臣からその経過について申し上げた方が適当と存じますが、私の承知いたしておりますることをここに御答弁申し上げます。  今回の防衛分担金の削減の交渉は、昨年の末から開始されまして、本年の一月中旬に終了いたしたのでありますが、交渉に当りましては、従来の方針を踏襲いたしまして、三十一年度防衛力の増強計画は、わが国財政経済力の許す範囲内において行うことといたしました。このために、わが方が防衛力を増強することによって経費が増加する場合には分担金の減額が考慮されるという行政協定の公式議事録の趣旨に基いて、折衝いたしたのであります。その結果、防衛分担金においては、昨年に比較いたしまして八十億円が削減せられて三百億円となりました。防衛庁費が千二億円、施設等提供費が約百五億円、従いまして、ただいま大蔵大臣からお話のありましたように、防衛費全体では一千四百七億円、前年に比較いたしまして約八十億円増額しておるということ、こういうことになっておる次第であります。(拍手)    [国務大臣河野一郎君登壇拍手
  18. 河野一郎

    国務大臣(河野一郎君) ドムニツキー氏から、いろいろ話のありましたことにつきましてお尋ねでございますから、それに関する私の知る範囲のことを御説明申し上げます。  昨年の夏の終りだったと記憶いたしますが、ドムニッキー氏とかねて交際のあるある漁業者が農林省の水産庁に参りまして、ドムニツキー氏から日ソ合弁の漁業会社を作って北洋において漁業をやりたいという提案があったが、いかがでございましょうかという話がございましたという話を当時水産庁長官から報告を受けました。もちろん、これはそれについてとかくの意見を述ぶべきでもございませんし、そのまま聞きおくことにして、そのままにいたしておったのであります。しばらくいたしますと、また再びその人が見えられまして、一体先般のソ連側の申し出はやるのかやらないのか、もしお前さんがやらないならば、社会党を通じてこの話をやろうと思うがどうだという話があったという報告があったのでございます。しかし社会党を通じてお話があろうが、どこを通じてお話があろうが、これについてとやかく言うべき筋合いのものでございませんから、そのまま聞き流しにいたしておきました。そういたしますると、その後ロンドン交渉が一時中絶いたしておりまする間は、何の話もありませんでした。当時新聞を見ておりますと、鈴木委員長の車中談かなんかに、水産交渉から始めたら、漁業交渉から始めたらどうだというようなお話を新聞で拝見いたしまして、ははあ、やっぱり社会党さんの方にお話があったのかなと私は考えました。しかし、その後経過いたしまして、昨年末でございましたか、またその業者を通じて話が何かあったように記憶いたしましたが、たびたびそういうことはありますけれども、一度も、ただその報告を受けるとか、もしくはそういう話を聞くとかいうことで、別にこれを問題にする必要もございませんし、取り上げてとやかくする必要もございませんから、私はそれを聞けば聞き流しにして参ったのでございます。  そういたしますると、その後本年になりまして、十五、六日ごろだと記憶いたしますが、またその人を通じての話だということで、(「だれだ、それは」「はっきり言え」と呼ぶ者あり)はっきりは新聞に出ております通りでございます。(笑声、自信を持って言え」と呼ぶ者あり)新聞に出ておりまする大西という水産業者でございます。私の聞いたのはその人でございまして、ほかにもあるかもしれませんが、私はその大西さんという人からの話を水産庁長官を通じて伺ったのでございます。その後、本年の正月の十五、六日ごろだったと記憶いたしますが、終戦宣言をやるようなことを言うておりますというような話があったのでございます。そこで私は、これはなかなか、もし事実とすればめんどうなことかもしれぬということで、たまたま二十一日の日に鳩山総理のお宅でわが党の幹部会がございました際に、一緒になりました幹部と、幹部会の終了後に、そういう話がありますということをそこで話をしたのでございます。で、またその翌日が閣議でございましたから、その話を重光外務大臣にも申し上げた。  これが、このドムニツキー氏のいろいろ話が新聞等に出ておりまする、私に関する限り一切でございます。私はこれを聞いたときに、人に話す必要のないときにはだれにも申し上げませんし、今申し上げる通り、最後の問題は、万一終戦宣言というような事態があったらば、それがどういうふうになるだろうかということを考えましたので、私は自分の聞き流しよりも、申し上げた方がよかろうと思って、総理にお会いした機会に、総理にお話をし、その翌日外務大臣にこの話を遅滞なくいたしたということがすべてでございます。御了承願います。(「分担金の交渉はどうした」と呼ぶ者あり)  防衛分担金に関する話は、御承知の通り、閣内に防衛閣僚懇談会という懇談会がございまして、関係閣僚で防衛問題に対するしばしば懇談をいたしております。たまたま、この防衛分担金の問題につきましていろいろなお話し合いをいたしておりましたときに、私が昨年アメリカに参りました際に、アメリカ大使と非常に御懇意になりましたので、アリソン大使にお目にかかる機会もございましたので、そのときにこの防衛分担金のことについて私は発言したことがある、これが私の防衛分担金に関することでございます。これは先ほど防衛庁長官からお話のありました通りに、交渉は、そのほうで交渉いたしておるということでございます。(拍手)    〔佐多忠隆登壇拍手
  19. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 総理大臣にお尋ねをしますが、私は総理大臣に対して相当具体的に、従ってその質問に対して的確な御答弁を願いたいということを特に申し上げました。しかるにただいまの御答弁を聞いておりますと、何かお祈りでも、しかもぼうばくとしたお祈りでもしておられるような人ごとのような答弁に過ぎません。しかも軍縮提案について、あるいは原水爆実験禁止協定提案について、私は具体的に、国際的な動きもさることながら、この問題については、平和憲法を持ち非武装を国是としておる日本が、先頭に立って最も強く主張をし得る立場にあるのだから、軍縮については今この機会に具体的に提唱をし、特にアメリカに働きかけられることが時宜を得たものである。これに対して、一体総理はどういうふうにお考えであるかということをお尋ねしている。従ってこれは、国際情勢の推移とか何とかという人ごととしてでなしに、その国際情勢の推移を的確につかむと同時に、わが国はどうすべきか。わが国は私の提案をしたようなことをすべき地位にあり、時期にあると思うが、総理はどうお考えになるか、その所信を的確に御説明を願いたいのであります。その点は原水爆実験禁止協定についても同様であります。今、きのうきょう米英会談でも、この問題が問題になっておるのであります。しかもこの問題で被害を受ける唯一の国と言っていいのがわが日本であることを思うならば、単に外務大臣が言っておられるように、その被害ができたときの予防措置、あるいはそれの補償措置の結果の問題としてでなしに、その原因をいかに取り除くかということを真剣に考究しなければならないし、これもまた日本が最も主張し得る責任と権利のある国であるということを私たちは十分に考え主張をしなければならない。そういうことを背景にして私は提案をし要求をしておるのでありますから、その質問に対して、的確に一つお答えを願いたいと思うのであります。  さらに第二の中共との問題でございますが、中共の問題についても、総理はほとんど触れておられませんが、この問題こそ、われわれはことしの最大の課題であると思うのであります。しかも国際情勢も非常に動いて参っております。重光外務大臣は、国際的な義務の範囲においては、この問題を推進することにやぶさかでないと言っておられるにかかわらず、そしてこれは繰り返し言われましたけれども、先ほども詳しく申し上げたように、その実績は何ら上っておりません。少しもその措置をしておられないのみならず、最近の日中の間の具体的な進展に照応するどころか、むしろこれを妨害をしようとしておられるから、この点をわれわれはやかましく追及をし、もっとその点を積極的に打開の道をおやりになるべきだということを主張をしておるのであります。それをお答えを願いたい。さらに、政治的には結論としてできませんということをおっしゃっておるが、そのやれないような状態を作った日華条約が最大の過誤であったのであり、しかもそれは今変え得るような状態に来つつある。しかも先ほど詳しく説明をしましたように、正式にそれを表から変えるといような態度でなしに、問題の処理ができる事態に進んできておるし、中国側もこれを主張をし、具体的に提案をしておる。先ほども申しましたように、昨日も周恩来は、はっきり提案をいたしております。その提案をどう受け取ろうとされるか、それに対してどう処置されるか、そこを一つ、はっきり御答弁を願いたいと思うのであります。  同時に鳩山総理に、最後にはっきりお答えを願いたいのですが、日ソ交渉の問題については、事態はもっと進んでおるのじゃありませんか。それを何ら口をぬぐって語らない。昨日ここで御説明になったよりも、もっと、あいまいな言葉で濁しておられることは何としても聞き捨てがならない。この点は明瞭にお答えを願いたいのであります。    〔国務大臣鳩山一郎登壇拍手
  20. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 軍縮問題について再度の御質問がございましたけれども、軍縮問題について私としては、先刻申しました以上にお答えをすることができないのであります。自分としては日本が、日本の憲法にある通りに、陸軍を持たない、海軍を持たない、飛行機も持たない、自分はみずからこういうようにするから、あなた方も軍縮をしろというような主張は私はできないのであります。私としては軍縮を、日本が陸軍を持たない、海軍を持たない、飛行機を持たないというその憲法には反対なのでありまして、日本自身は自衛軍を持つ方がいいと思うのであります。(「憲法に反対とは何だ」「取り消せ」と呼ぶ者あり)無抵抗主義というものは、決して平和を持ち来たすゆえんにはならないのであります。そういうわけでありますから、私はあなたの言うような趣旨によって軍縮主張することはできないのであります。軍縮問題は、やはり国際連合の力によって、国際協議の結果軍縮はできる以外にはないのであります。その国際連合によって軍縮のできるように、日本努力をいたしますということを言ったのであります。それ以上に、私は答弁することはできません。(「だからそれを守るのが法治国だろう」「取り消せ」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し)  日本中国との関係ですが、日本中国との国交回復ですが、この国交回復を私はできるだけすみやかにいたしたいと思っております。それには努力をするということを申したのであります。  それ以上答弁することはございません。(「憲法に反対だなんてそんなことがあるか」「失言を取り消せ」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し)
  21. 河井彌八

    議長河井彌八君) 議場の静粛を望みます。
  22. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) (続) 日本国民が、現在の憲法を順守しなくてはいけないということは、私もよく承知をしております。それでありますけれども、日本の憲法に書いてある日本自身が、陸軍を持たない、海軍を持たない、飛行機を持たないということを理由として、世界軍縮主張するわけには参りませんということを言っておるのであります。(拍手、「だめだそれじゃ」「憲法反対だとさっき言ったじゃないか」「取り消せ」と呼ぶ者あり)
  23. 河井彌八

    議長河井彌八君) 諸君に一言いたします。ただいま鳩山総理大臣のお言葉のうちに、もし不穏当なことがありまするならば、速記録を取り調べまして善処いたします。(「取り消すまで休憩しろ」「暫時休憩」と呼ぶ者あり)    〔国務大臣重光葵君登壇
  24. 重光葵

    国務大臣重光葵君) お答えを申し上げます。  中国問題についての御質問に対しましてお答えするのでありますが、私もこの中国問題に関連をして、世界情勢が最近十年間に非常に変化をしておるということは、私は認めます。しかしながらお話日華条約は、これはいかなる内閣がこしらえたものにいたしましても、これは日本が当事者となってこしらえたものでございます。これを今すぐ変更をするということは、これはなかなか容易なことではないと私は思います。また容易にやるべき問題ではない。そこまで世界情勢が変化しておるということは認めることはできません。この点は御意見と相違をすると思います。  中国側において、さようなわけでありますから、日本政府をしてやっぱり中共承認の方にしむけようというために、いろいろな手段を尽しておる。これはなしくずし承認の政策をとっておると言われておる。それはその通りでございます。私はそれに応ずる時期ではまだないと、こう申し上げておるのでございます。  これで私の答弁を終ります。     —————————————
  25. 河井彌八

    議長河井彌八君) 加藤正人君。    〔加藤正人君登壇拍手
  26. 加藤正人

    ○加藤正人君 私は、緑風会を代表いたしまして、当面の諸問題について関係各大臣の見解をたださんとするものであります。  まず鳩山総理大臣に対し、当面の日ソ交渉に関してお伺いをいたしたいと思います。もちろんこの問題につきましては、すでに論議し尽され、世論の動向もほぼ確定されているところでありますから、今日は時間もないことでもあり、今さらその交渉内容に触れんとするものではないのでありますが、ただ、総理の本問題取扱いについて、憂慮にたえない点があるように感ぜられるので、この問題にのみ焦点をしぼりたいと思うのであります。  真偽のほどは必ずしも明確ではないのでありまするが、新聞紙の報ずるところによりますと、最近ソ連側より非公式の線を通じて、いわゆる終戦宣言に関連する何らかの申し入れがあったやに伝えられているのであります。もちろん現在までのところでは、それが総理あてのものであったのかなかったのか、あるいは正式の提案といえるような性質のものであるかどうか、われわれはこれはわからぬのであります。けれども、少くともソ連側にそのような動きのあったことだけは間違いないところであります。現在ロンドンにおいてそのための日ソ正式交渉が持たれておるにもかかわらず、わざわざ非公式の線を通じて、そのような働きかけがなされるということに、われわれ国民はひとしく疑惑の念を禁じ得ないのであります。一種の謀略であるとすらきめつける者もあるくらいであります。  そこで伺いたいことは、ソ連側の提案そのものの是非は別といたしまして、このようなソ連側の動きを、一体政府はどのように受け取っているのであるか、そうしてこれに対して政府はどのような措置をとらんとするつもりでありますか。ただいま総理大臣その他から、この間からのいきさつについて承わったのでありますが、事、はなはだ重大でありますから、特に総理としてのお考えを伺いたいと思うのであります。  さらには、ソ連側のかかる不明朗な動きを誘発している原因は、むしろわが方の国内事情、つまり二元外交が云々されておるような国内事情にあるのではないか。果して米英等の国家に対しても、ソ連はかかる正式の外交ルートを無視した方途に出ることができるでありましょうか。かつてわが国にも二元外交が云々されたことがありました。しかしそれは軍部の横暴時代のことでありました。そうして今や再び二元外交が云々されておるのであります。これは当時と全く事情が異なり、同一内閣の閣内のことでありまするが、ともに国を誤まるおそれのあることについては同一であります。この点こそ国民の憂慮している点であると私は思います。常に民意を尊重し、民心を安んずることが政治の要諦であるにかんがみまして、この際、一国の総理として、率直に御反省あることを切望するものであります。以上、三点について御見解を承わりたい。  次に、経済外交の問題へ入りまするが、実は賠償問題の進め方について、若干の提案を申し上げて、外務大臣からその見解を伺う予定であったのでありまするが、時間の関係で、本日はそれを割愛してただ一点、西欧通貨の自由化に関連して、経済外交上必要な措置をとる要はないかということを、大蔵、外務両大臣に伺いたいのであります。西欧通貨の自由化は、肝心の英国経済の悪化によって一時遠のいた格好にあることは否定し得ないのでありますが、しかしいずれにいたしましても、それは単に時間の問題であって、遠からず実現するものと予想しておかねばならないのではないかと思うのであります。そこでこれに対する対策でありますが、西欧通貨の交換性が回復された場合、実際上の問題として交換性を回復した国々の間には、自然の成り行きとして、一つの経済圏、ブロックのようなものが形成されることとなり、その圏外にある国々は非常に不利な立場におかれるのではないかと考えられるのでありまするが、わが国等は、さしあたりこの趨勢に追随し得るだけの実力はとうてい持ち合わさない、まして東南アジア諸国は、一そうしかりというべきであります。従いましてわれわれといたしましては、このようなアジア諸国間において何らかの経済的な組織体を持たねばならないのではないかと、私はひそかに考えるものでありまするが、政府の見解は果してどうでありましょうか。かつて小笠原大蔵大臣は、正式な国際会議において、欧州決済同盟と同じような構想のもとに、アジア決済同盟の結成を提案したことがありました。このA・P・Uともいうべき構想は、当時の財界の一部が考えた単なる思いつきの程度にすぎなかったのでありまするが、小笠原蔵相はこれを取り上げたのでありました。西欧通貨の自由化に対する対策として、このA・P・Uの考え方がいいというのではないのでありますが、少くともエカフェの機構を通ずるなり、あるいはアジア経済会議を提唱するなりして、何らかの対策を検討すべきではないか、政府は果してこの問題をどのように考えておられるか。  次に、経済問題について伺いたいのであります。最初に大蔵大臣に、経済政策の基調は果して堅実なものであるかどうかということについて伺いたいのであります。過去二年にわたるデフレ政策の効果を一挙にしてふいにするか、あるいはよく有終の美を飾り得るか、今後の経済政策のあり方、特に三十一年度予算の持つ意義は、ひとしお重大であります。この意味において、予算案編成途上に見られた総理の無関心というか、あまりにも無責任態度は強く批判さるべきでありまして各省大臣が予算のぶんどりのみに狂奔したり、また自民党内部の無統制ぶりを天下にさらけだしたのも決してゆえなしとしないのであります。このような経過を経て編成された予算案について、政府はその財政演説においても健全政策を堅持したと自称しており、事実一般会計の収支が一応償っている点から見て、一般的にもまあまあといった程度に受け取られているようであります。しかしながら冒頭申し上げたように、デフレ政策の効果をふいにするかどうかという観点から見ますれば、必ずしも堅実なものとは申せないのではないかと思うのであります。すなわち、わが国経済は一昨年来健全なる発展を遂げ、生産は戦前の二倍近くにも達する盛況でありまするが、このことは、デフレ政策の効果というよりは、むしろ未曾有とも称せられるほどの海外の好景気に負うところが多かったとは、今日一般の常識であります。たとえば昨年におけるわが国の輸出の特徴は、地域的にはアメリカ向けの輸出が好調であったことと、品目別には鉄鋼の輸出が非常に増したことでありましたが、これは従来鉄鋼の大手輸出国であった西欧諸国では、好況のためにその国内需要を満たすのに精一ぱいであったためで、この一事が端的にその間の事情を物語っているのであります。このように一昨年来のデフレ政策は、いまだ十分にその成果をおさめ得たとは申せないのであります。かかる状態のままに、経済の基調そのものは輸出ブームの影響によって事実上変貌を遂げつつあるのであります。ここにいわゆる拡大均衡論が根強く胚胎する理由もあるわけでありますが、経済の地固めがいまだしとすれば、功をあせることの禁物であることは論を待たないところであり、あくまでも地固めのための政策は堅持されねばならないはずであります。  そこで予算編成に当って十分配慮されねばならない問題は二つあると思うのであります。その一つは、いうまでもなく現在日本経済に潜在しているインフレ要因であります。三十一年度の輸出もおそらく本年並みあるいは若干これを上回ることが予想されるのでありますが、このように二年、三年と、かなりの輸出超過が続けば、特に底の浅い日本経済がインフレ化しないとはだれしも保証し得ないところであります。現に英国はおろか、さしも堅実と思われた西インド経済すら、そのためにインフレ化しつつあると伝えられているのでありまするが、わが国にもこのような根強いインフレ要因が明らかに存在しているということ。これに反してもう一つは、現在の金融はもはやインフレを調節する機能を著しく喪失しつつあるということ、すなわち現在の市中銀行の日銀依存度は皆無に近く、従って今までのようなインフレ調節機能を喪失しているという事実であります。これら一連の事実を考慮しつつ、地固め政策を堅持するとせば、財政面にかなりの緊縮的性格がなければならないことは自明の理であります。収支だけ償えば足れりとするわけには参らないのであります。  しかるに現在提案されている予算案を見ると、その規模においては前年度に比べて、実質的には八百億程度、すなわち一般会計において約四百億、これに財政投融資を削減して、これを民間資金に肩がわりしているやりくりを合算すれば、実に八百億程度の膨張となっており、しかもこれらは、あげて防衛、恩給、社会保障等消費的支出に充当されているのであります。蔵相の孤軍奮闘は、まことに同情に値し、また財政規模も一兆三百億程度に押えた努力は多とするものでありまするが、これでは明らかに経済の引き締め、産業基盤の地固めを貫徹せんとする意思はゆがめられていると申さねばならないのではないかと思います。単に一般会計だけでなく、前述のもろもろの経済事情を勘案して、財政経済政策は果して真に健全であると言えるかどうか、この見解を伺いたいのであります。  次に、公団方式の是非について伺いたい。公債発行をめぐる論議が、今度の予算編成上の大きな論点の一つであったと思いまするが、今回は一応これを取りやめることになったことは、前述した意味において、はなはだけっこうなことであったのであります。しかしながら、最近の財政のやりくりを見ておりますと、住宅公団、道路公団あるいは北海道開発公団等々、特に昨年ごろからこの傾向が強いように感ぜられるのでありまするが、これはまことに憂慮すべき傾向であります。すなわち、これらの事業の多くは本来一般会計において見るべき性質のものであると思うが、一般会計を一兆円に押え、また公債を発行しないという、いわば表面をつくろうためにわざわざ公団を作り、公団債という形で資金を集めるというやり方でありまして、実質的には、いわゆる公債政策と何ら選ぶところがないばかりでなく、しかもこれらの公団には多数の役職員が必要となるわけで、その弊害は決して看過し得ないところであります。この点に関する蔵相の見解はどうでありますか。  次に、経済五カ年計画について高碕企画庁長官に伺いたいのであります。昨日の経済演説においても御説明のあったごとく、五カ年計画とは、要するに昭和三十五年度において完全雇用達成し、特需に頼らない、いわゆる自立経済達成するためには日本経済はかくなくてはならないという、いわば単なる希望図であり、まず最終目標を定めて、これに合わせるように個々の計画を逆算的に作り出したという関係もあり、かつはまた、ちょうど内外景気の最も好況なときに立案されたという関係もあって、たとえば労働率の設定の根拠もあいまいであったり、あるいはまた年率五%という経済の成長率の見込み方にも疑問が感ぜられる等々、要するにいいかげんにつじつまを合わしているという感がはなはだ強いのでありまするが、しかしながら、この計画も要するにわれわれの努力目標を示したという点にその意義があるのでありまするから、ここではその個々の内容に触れることは避けて、ただ次の一点だけについて伺いたいのであります。すなわち、この計画には、あたかも仏を作って魂を入れないように、計画の裏づけとなる肝心の資金計画が全然なされていないという点であります。なるほど五カ年全体として要する資金の総ワクは一応算出されているのであります。けれども、われわれの最も重要だと考える年次計画、すなわち初年度はどの部門に幾ら、二年度、三年度にはどの部門に幾らという資金の配分計画がなされておらぬ。過日発表された五カ年計画の初年度計画にも、この資金計画の裏づけがなかったのであります。これでは予算計画はマッチし得ないのは当然であり、致命的な計画の盲点となっていると思うのでありまするが、あえて年次別に資金計画を立てなかった理由、及びそのようなことで果して計画達成が期待し得るかどうか、この点について見解を伺いたいのであります。  次に、貿易の問題について通産大臣にただしたいのであります。前述したように、通貨の自由化とその前提となる貿易及び為替の自由化は、現在国際的に着々推進されつつあるのでありまするが、このことは言うまでもなく国際抗争が文字通り真剣勝負の時代に入ることを意味するものであります。わが国に課せられるところの本格的な試練とも言うべきでありまして、この意義はまことに重大であると思うのであります。わが国においてもこの国際趨勢に対処するため、出血補償リンクの廃止、あるいは商社の外貨保有制の実施等、若干の自由化がはかられて参りましたが、なお為替管理の面、外貨予算の編成の面、あるいは二国間の双務協定貿易の面等に、なお問題が多く存在しておるようであります。近く開かれまする日英通商会談においても、英国はわが方の特別外貨制度、あるいは船舶に対する利子補給制度の撤廃を要求してくるのではないかと見られているようでありまするが、この意味において現在の国際的な動きとにらみ合せて、わが国においても、今後果してどのような面からどのような順序で検討が加えられ、この国際的な趨勢に伍して行かんとするか、その構想を具体的に承わりたいのであります。なお、このような自由化と連関して問題となるのは国内の産業政策についてであります。すなわち現在は設備の制限や、あるいは操業度の調整等の産業政策は、為替管理による輸入数量、つまり原料面から調整を加えている面がかなり多いのであります。従って為替管理が今後自由化の方向をたどるとせば、よほど国内問題の処理をうまくやらなければ、産業界に相当の混乱が起るのではないかと思うのであります。この点通産大臣の所見を承わりたいのであります。  最後に、労働大臣から当面の賃金問題について、政府の見解をただしたいのであります。総評においては恒例のごとく、しかしその規模においては、いまだかつてない大がかりな春季攻勢を展開すべく着々と準備が進められつつあると伝えられておるのであります。業種も業態も全く異なるいろいろの企業の労組が一斉に歩調をそろえて立ち上るというふうなことは、全く世界にその類例を見ないのであります。思うにわが国の労働運動が、このようにして戦後十年間、国民経済のワクも企業経営のワクも、すべてこれを乗り越えて、年中行事のごとく賃上げを戦って来たというような不健全な様相を呈して来たゆえんのものは、ひっきょう戦後の日本経済が、アメリカ経済援助と朝鮮特需という僥幸によってささえられて来た結果、温室経済になれて、当事者たる労使はもちろん、国民全体の自立精神が弛緩し、あえて経済の実体に眼をおおうてやすきについて来たことに、その根本的な原因があったのではないかと思うのであります。一昨年からとられて来たデフレ政策の意義も、単に当面の国際収支の改善というだけにあったのではなく、国民全体の自立精神を喚起するということに大きな意義があったと申すべきであったのであります。しかるに、このような意義を持つデフレ政策そのものもいまだ十分その成果をおさめないままに、経済の基調が変貌して来ている。こういう情勢のもとにおいて、われわれは今や戦後かってなき大規模な春季労働攻勢に当面しつつあるわけでありまして、それだけに今回の賃金問題はひとしお重大なる意義を持つものであると私は考えるのであります。なるほどデフレ政策の効果もある程度上り、これが海外景気にうまく便乗して日本経済は予想外の好転をみましたが、それでもなおかつわが国の物価は全般的に割高であり、また、海外の景気も西欧諸国においてはすでに頭打ちとなり、特に国際貿易の前途には通貨の自由化という、真に日本の産業が果してこの試練に耐え得るかどうか、はなはだ憂慮にたえないような試練が前途に待ちかまえておるのであります。しかして国内産業の実体は、その後多少の改善を見たというものの、なおきわめて弱体であり、資本構成を見ましても、今なおその六割は借入金に依存し、収益率も戦前の六分の一、減価償却も戦前の二分の一しか行なっていないありさまである。このことをもって私はその責任を賃金問題にのみ転嫁するつもりは毛頭ないのでありまするが、しかしながら過去の賃金問題がきわめて安易に取り扱われ、生産性向上の利益も、あげて賃上げに吸収されてきた事実は、これは否定し得ないところであります。戦後のこの多い人口を養っていかねばならない日本の産業に課せられた社会的責務が、戦前とは比較にならぬほど重くなっているということと、国際経済の趨勢に思いをいたせば、今こそこのせっかくのチャンスを逸することなく、資本の蓄積と設備の近代化に努めるべきときであり、結局このことこそ、真に労働者の福祉の増進と雇用拡大に通ずる唯一の道であることを銘記せねばならぬと思うのであります。総評の賃上げ行動綱領によれば、賃金は労使の力関係によって獲得すべきであるとしているようであるが、なるほど短期間の問題としてはあり得ないことではない。しかし大局的に見れば、そのように企業の支払い能力を越した賃上げが獲得されたとしても、結局はコストの上昇から営業不振を招き、ひいては経営規模の縮小を通じて賃金の引き下げ、企業整備を余儀なくせしめ、真の意味の労働者の福祉には反する結果に陥るのみであります。(拍手)  賃金問題は、以上のような諸点から考慮されなければならないが、特に当面問題となるべきベース・アップという考え方そのものが、インフレ時代の産物であり現在のように物価は安定し、賃金は戦前を上回り、かつ昇給制度というものが行われている現況下にあっては、果してその考え方自身が成り立つものであるかどうか。政府は果して当面の賃金問題をどのように考えておるか……。
  27. 河井彌八

    議長河井彌八君) 時間ですから……。
  28. 加藤正人

    ○加藤正人君(続) 経営者努力もさることながら、政府においても、もっともっと啓蒙、指導面の活動を強化すべきではないかと思うのであります。(拍手)    〔国務大臣鳩山一郎登壇拍手
  29. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 加藤君にお答えいたします。  日ソ交渉はロンドンにおいて、松本全権によって一本でソ連交渉しておりますので、決して二元外交にはなっておりませんから、どうぞ御安心下さらんことをお願いいたします。(拍手)    〔国務大臣重光葵君登壇拍手
  30. 重光葵

    国務大臣重光葵君) 私に対する御質問として、ソ連の問題は、ただいま総理大臣からのお答えで御了承を願いたいと思います。ただ、つけ加えて申し上げたいことは、いろいろこの交渉についてソ連の意思がどこにあるというようなことがうわさされております。これはあるいはお話のような、ソ連のいろいろな外交上の武器をもって謀略的にやっておるのかもしれませんが、これは、私にはわかりません。しかしながら、さようなことがもしありましても、わが方は正規のルートをもって来たる申し出の以外は、これを受け付ける理由はございませんので、今、総理の言われた通りに、ロンドンの正式の交渉によって、すべてこれを処理していく、こういう方針でございます。  それから次に、西欧通貨の自由化のことについて、私の意見をお尋ねでごさいました。通貨の自由化は、私は貿易の自由化を促進するものであると思って、これは歓迎すべきことであると考えます。しかしながら、これは局地的にやるべき問題ではなくして、国際的に世界的にこれが取り扱わるべき問題だと考えます。さような方針でもって国際会議等に対して対処しておる次第でございます。以上。(拍手)    〔国務大臣一萬田尚登君登壇拍手
  31. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 加藤さんの御意見は、多く私やはり同感いたしております。ありがたく拝聴いたしました。  二カ年間デフレ政策をやって、せっかく日本経済の基調がいわゆる数量景気といわれる程度によくなっているのに、この今回の予算で悪くしはしないかという御心配のようでありますが、非常にごもっともなので、何でも、家でも三代目がまずくなるとか、従来の財政史をひもといても、デフレ政策を二回やって、三回やらなかったために、やはり失敗した例はあるのであります。たとえば三年続けてやった松方さんのあたりは、非常に成功しており、多くの考えるべき点もあると思う。これは何でも、二カ年こういうような苦しいことをやると、養生をすると、すべてがよくなる。相当よくなりますから、わがままが出る、そこに失敗が存する、こういうことに結局なると思うのでありますが、そういう意味におきまして、非常に注意をしまして、今回は予算を組みまして、当初から歳入の範囲内において歳出をまかなっていく、これは政府の根本原則といたしまして、御承知のように一兆三百億台にとどめることができたのでありまして、これは予算規模からいえば、昨年度の一四・八のパーセント、大体昨年度の国民所得に対する割合と同じでありまして、私はこの程度でありますれば、いろいろ問題もないことはありませんが、決してインフレになる心配はなくて、いわゆるインフレなき経済拡大、今日の経済のよさが、いろいろ、もろもろの点で注意を要しまするが、すなおに伸びていく、こういうふうに確信いたしておるわけであります。さよう御了承いただきたいのであります。(拍手)    〔国務大臣高碕逹之助君登壇拍手
  32. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) 加藤さんの御質問に答えます。  加藤さんは、五カ年計画の中に資金計画がないということは、致命的盲点だ、こういう御意見でございましたが、これは私どもはやはりこの計画を立てますときに、最初そういうふうな感じはいたしたことは事実であります、率直に申しますと。しかしながらこの天然資源を持っておる国が自給自足の経済を立てるといって五カ年計画を立てる場合には、もちろんこの資金計画は絶対的必要でありますが、現在日本計画経済を立てます上におきましては、第一に輸出を根底といたしております。輸出は主として海外の市況によるわけであります。それで海外の依存の度がはなはだ多いのであります。従いまして、この計画の数字を確実にきめるということはなかなか困難でありまして、五カ年先の大体の目標と資金の総ワクというものはきめますが、それをただ机上の空論によって年次計画の資金計画を立てるということは、これはかえって間違いを起すもとであります。これはようやく私どもは今日悟ったのであります。そういたしまして少くともこの資金計画は最近における経済の情勢を判断いたしまして、その判断のもとに積み立て式に立てる、そうして三十五年度の計画を、全体の計画を立てますが、三十一年度の初年度は、三十年度の実数を基礎といたしまして数字を立て、これによって予算を組んでいくという、この方針を持っていきたいと存じております。(拍手)    〔国務大臣石橋湛山君登壇拍手
  33. 石橋湛山

    国務大臣(石橋湛山君) 加藤君の私に対する御質問貿易に関することでありますが、これは御承知の通り日本の現在の貿易には、二つの大きな困難があると思います。  その一つは対外関係でありますが、先ほどお話もありましたように、ほとんど現在日本貿易は双務協定的な貿易であります。多角貿易でない。これは国際経済の情勢が、日本が好んでやっておるわけではなくして、日本としては多角貿易にいきたいのでありますが、できない。やむを得ず双務協定でやらざるを得ないような状況にある。従って、もし幸いに通貨の交換性が世界的に行われて、ことに日本としてはスターリングの交換性が回復いたしますると、非常に助かるのでありますが、日本としてはそれをむしろ望んでおる。通貨の交換性が回復すれば、なるほど貿易の競争も激しくなりますが、しかしその競争が激しくなるよりも以上に、日本としては利益すると思う。ただし先ほど外務大臣が言われたように、ただ一部のブロック的な回復では困るのでありまして、ことに日本としてはスターリングの交換性が回復するということが最も望ましいのであります。  もう一つの困難は国内でありまして、国内の産業との関係であります。農業あるいはそのほかの工業、たとえば輸入について、私どもは今できるだけ自由化するために、少くともAA制の拡張を大いにやりたいと思って調査をし、努力しておるのでありますが、さてそのAA制を実行するとなると、国内の産業に対する関係が非常に複雑でありまして、原料の輸入を自由にされちゃ困るというようなことが至るところにある。たとえば加藤君の直接御関係の紡績方面でさえも、あれだけの大きな力のある産業でありながらも、綿花のAA制には賛成がされないというようなありさまでありまして、実は非常に困っておる。そこでわれわれとしてはぜひ、この自由な貿易になりましても、国内の産業の基盤がゆるがないような状態を至急に作り上げなければならぬ。こう考えまして、そのために、たとえば機械の問題、あるいは繊維産業の問題、今度の国会においても御審議をわずらわすつもりでありますが、繊維産業についても一つの整備をする、あるいは中小企業の機械の近代化を大いにはかるというようなことをもちまして、国内の産業の基盤を確立して、海外の競争が来ましても、それに一々びくびくしないで済むというだけの一つ日本の産業の体質を改善する方向に全努力を傾けたいという考えをいたしておるわけであります。  以上をもってお答えといたします。(拍手)    〔国務大臣倉石忠雄君登壇拍手
  34. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) お答えいたします。  御指摘のように、過去におきまして賃金問題がとかく安易に取扱われて参りましたことは、確かに事実であります。御承知のように従来、インフレの時代は、いわゆるしばしばベース・アップによりまして名目賃金は年々上昇いたしました。しかしそれと並行して物価がやはり高騰いたして参るのでありますから、せっかく名目賃金を上げてもらいましても、それを追い越し、やはり生活苦がくるといったようなことでありまして、インフレ時代においては従ってただいま御指摘のように、比較的安易には扱われましたが、さらにその上にベース・アップが行われ、そうしてまたさらに物価が上るということで、かけっこいたしておったような状態であります。幸いにして先ほど来ここで御論議のありましたように、三十年度の外国の好景気及びその他のよい事情が加わりまして、物価は横ばいでございます。こういうようなときにベース・アップの闘争をすることはおもしろくないではないかという御意見でありましたが、私は必ずしも、常にこのベース・アップの要求に対して反対することはどうかと思いますが、ただいま世の中に伝えられておりますような、ああいう形式のいわゆるスケジュール闘争といったようなことで、御指摘のように、業種、産業別が全然違っておるのを、比率をそろえてのベース・アップ闘争というものについては、私はせっかく今日まで発達いたして参りました日本の労働運動に対して、一般国民諸君から同情を失う結果になっては困ると思っておるのであります。(拍手)私どもの鳩山内閣の労働政策は、経営者のみのことを考えるわけにはいきませんし、労働組合側の方々の御意向だけ尊重いたすわけにはいかないのでありまして、政府のうしろにおります八千万国民の利害休戚に即して、どういうふうに労働運動はあってもらいたいかということを考えるわけでございまして、従って本年度は御承知のように、三十一年度予算の編成に当りましては、鉄道運賃は上げない、また消費者米価は上げない、しかもなお、やりくりの苦しい財政の中であるにもかかわらず、勤労者階級に対する税の軽減をいたしておるような次第でございますから、私は、労働大臣兼給与担当大臣といたしまして政府代表してこの際申し上げますが、公務員のベース・アップは三十一年度予算考えておりません。ただ、公務員法に認めてある定期昇給の原資は確保いたしてございますから、定期昇給はわれわれはいたすつもりでございます。そほこで先どの御指摘のように、この総評という方々の半分以上は、官公吏及び公労協の人々でありまして、こういう方々が中心になってベース・アップ闘争というような形でおやりになることについては、私はどうか、静かにもう一ぺん反省をして、そうして違法のようなことのないようにと希望いたしておる次第でありますが、民間産業についても、私はこの際申し上げたいと思いますのは、とかくこういう大きな争議行為などの話が出ますというと、法律を改正しろといったようなことを申される方がございますが、私ども政府は、目下その点については鋭意検討中ではございますけれども、現在の法規の範囲内において、経営者側が、十分にとらるべき態度すらおとりにならない卑屈なる経営者側の態度にも、私どもとしては警告を発しなければならないと思っておるような次第であります。(拍手)従って三月、いわゆる春季闘争ということについて取締るとか云々というようなことは、違法な行為がない限り政府といたしましてはいたしませんが、どうぞ一つ、そういう私どもの考えを、ただいま御指摘のように、労使とも理解をせられて、十分に慎重なる態度をもってやっていただくようにお願いをいたしたいのでありますが、私ども政府考えております賃金に対する当面の考え方は、ただいま申し上げました通りであります。なお、私どもの政府といたしましては、先ほどいろいろ御指摘の中にありましたのでございますが、違法なる行動がありましたならば、これは厳として処断をする考えであることを申し述べます。(拍手
  35. 河井彌八

    議長河井彌八君) 質疑は、なおございますが、これを次会に譲りたいと存じます。御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  36. 河井彌八

    議長河井彌八君) 御異議ないと認めます。  次会は、明日午前十時より開会いたします。議事日程は、決定次第公報をもって御通知いたします。  本日は、これにて散会いたします。    午後零時四十一分散会      ─────・───── ○本日の会議に付した案件  一、故衆議院議員緒方竹虎君に対し弔詞贈呈の件  一、人事官の任命に関する件  一、日程第一 国務大臣演説に関する件(第二日)