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1956-05-15 第24回国会 参議院 法務委員会 第19号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十一年五月十五日(火曜日)    午前十一時二十七分開会     —————————————    委員の異動 四月二十七日委員松野鶴平君及び中山 福藏辞任につき、その補欠として新 谷寅三郎君及び小林政夫君を議長にお いて指名した。 四月二十八日委員中山壽彦君辞任につ き、その補欠として草葉隆圓君を議長 において指名した。 四月三十日委員草葉隆圓辞任につ き、その補欠として中山壽彦君議長 において指名した。 五月二日委員赤松常子辞任につき、 その補欠として相馬助治君を議長にお いて指名した。 五月四日委員木下源吾君、相馬助治君 及び小林亦治君辞任につき、その補欠 として田畑金光君、赤松常子君及び亀 田得治君を議長において指名した。 五月七日委員田畑金光辞任につき、 その補欠として小林亦治君を議長にお いて指名した。 五月八日委員大屋晋三君及び小林政夫辞任につき、その補欠として井上知 治君及び中山福藏君を議長において指 名した。 五月九日委員小柳牧衞辞任につき、 その補欠として植竹春彦君を議長にお いて指名した。 五月十日委員新谷寅三郎君及び植竹春 彦君辞任につき、その補欠として松野 鶴平君及び小柳牧衞君を議長において 指名した。 五月十一日委員亀田得治辞任につ き、その補欠として菊川孝夫君を議長 において指名した。 本日委員泉山三六君及び菊川孝夫辞任につき、その補欠として川村松助 君及び藤原道子君を議長において指名 した。     —————————————  出席者は左の通り。    委員長     高田なほ子君    理事      宮城タマヨ君    委員            井上 知治君            川村 松助君            小柳 牧衞君            赤松 常子君            小林 亦治君            藤原 道子君            羽仁 五郎君            市川 房枝君   衆議院議員    法務委員長   高橋 禎一君            武藤運十郎君   政府委員    法務政務次官  松原 一彦君    法務省刑事局長    事務代理    長戸 寛美君    文部省社会教育    局長      内藤誉三郎君   事務局側    常任委員会専門    員       西村 高兄君   説明員    厚生省社会局生    活課長     河角 泰助君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○刑事補償法の一部を改正する法律案  (衆議院送付予備審査) ○罹災都市借地借家臨時処理法の一部  を改正する法律案衆議院提出) ○検察及び裁判運営等に関する調査  の件  (ひん発する大火災の原因究明とそ  の対策樹立に関する決議) ○売春防止法案内閣送付予備審  査)     —————————————
  2. 高田なほ子

    委員長高田なほ子君) これより法務委員会を開会いたします。  議事に入る前に委員の変更について御報告をいたします。四月二十七日付中山福藏さん、松野鶴平さんが辞任され、その補欠として小林政夫さん、新谷寅二郎さんが選任されました。四月二十八日付中山壽彦さんが辞任され、その補欠として草葉隆圓さんが選任せられました。四月三十日付草葉隆圓さんが辞任され、その補欠として中山壽彦さんが選任されました。五月二日付赤松常子さんが辞任され、その補欠として相馬助治さんが選任されました。五月四日付木下源吾さん、相馬助治さん、小林亦治さんが辞任され、その補欠として田畑金光さん、赤松常子さん、亀田得治さんが選任されました。五月七日付田畑金光さんが辞任され、その補欠として小林亦治さんが選任されました。五月八日付大屋晋三さん、小林政夫さんが辞任され、その補欠として井上知治さん、中山福藏さんが選任されました。五月九日付小柳牧衞さんが辞任され、その補欠として植竹春彦さんが選任されました。五月十日付新谷寅三郎さん、植竹春彦さんが辞任され、その補欠として松野鶴平さん、小柳牧衞さんが選任されました。五月十一日付亀田得治さんが辞任され、その補欠として菊川孝夫さんが選任されました。以上御報告いたします。     —————————————
  3. 高田なほ子

    委員長高田なほ子君) 次に刑事補償法の一部を改正する法律案議題に供します。まず発議者から提案理由説明をお願いいたします。
  4. 武藤運十郎

    衆議院議員武藤運十郎君) 刑事補償法の一部を改正する法律案提案理由を御説明申し上げます。  最近、京都事件を初めとして、中国留学生殺し、銀座の雑貨商殺しなど、しばしば、警察検察当局による間違った逮捕勾留が行われ、疑われたものは物心両面において、重大な被害を受けております。おそらく類似な事案は全国を通じて非常に多いと思われるのであります。しかも、これらの事案は、憲法並びに刑事補償法にいわゆる無罪裁判を受けたものではないゆえをもって、刑事補償のらち外に放置され、多くは切り捨ごめんであり、泣き寝入りに終らざるを得ない状態にあるのであります。このような恐るべき人権じゅうりんを防ぐために、あるいは抑留せずに調べろとか、抑留期間を短くせよとか、科学的捜査によれとか、逮捕状勾留状の出し方を慎重にせよとか、いろいろの意見が出ております。いずれももっともな意見ではありますが、あるいは刑事訴訟制度根本に触れるものがあり、あるいはわが国の捜査陣容能力では、言うべくして行い得ないものがあります。また、最近の犯罪は著しく知能的なものが多く、物的証拠をつかむことがはなはだ困難になってきたので、一応状況証拠が揃えば、逮捕もまたやむを得ないという捜査当局側の弁解や意見にも同情すベきものがないことはありません。しかしながら、制度根本を変えることも、捜査能力を変えることも、一朝一夕には困難でありましょう。そこで、私は、差し当って、まず、刑事補償法のワクを拡げて、無罪裁判を受けた者だけではなく、不起訴処分に付せられた者にも刑事補償を与えることが、応急先決の方法であると思うのであります。  今や世論は相次ぐ警察検察当局の不当な抑留拘禁をごうごうとして非難し、その救済を要求してやまないのであります。本案は実にこの正当な世論の要請にこたえんとするものにほかなりません。  改正案の起草に当り産しては、昨年末、自民社会両党による刑事補償法改正に関する合同委員会が設けられました。この委員会においては、以来十数回にわたって検討を続けたのでありますが、不幸にして意見の一致が得られず、ついに共同提案となるに至らなかったことは、まことに遺憾のきわみであります。  自民党側意見大要は、「趣旨には賛成であるが、かかる法案は、第一には政府提出とすべきものであり、第二には技術的に幾多の困難がある」というにあるようであります。しかしながら、われわれ社会党は、そうは考えません。政府に仕える役人の不法行為に対する救済立法をその政府に求めることは、あたかも木によって魚を求むるがごとく、又百年河清を待つに等しいものと考えるのであります。かかる人権擁護立法こそ、進んで議員提出とすべきものであり、技術的な困難に至っては、この道に練達堪能な法務委員の克服すべき、また容易に克服し得る枝葉の問題と考えるのであります。  万一にも国会政府提出法案審議のみをもって能事終れりとするならば、国会は、各常任委員会は、ついに政府下請機関と化し、国権の最高機関たるに値いしないのみならず、行政府と対立する立法府の名をもみずから放棄することになるのでありましょう。  刑事補償法改正に関する両党合同委員会は、その審議の過程において、法務省当川の意見を徴しました。その意見大要は、「趣旨には賛成であるが、その立法刑事補償法改正によることなく、単独立法を可とし、補償を与えるか否かを任意とし、かつ、その決定当該検察官にゆだねんとするもの」であります。しかしながら、刑事補償の本質は、国家権力の間違った発動によって身柄の拘束を受けた人民に対して、国家が特に無過失賠償を与えんとするものであります。従いまして、無罪裁判があった場合と、無罪となるべき理由によって不起訴処分があった場合とを区別すべき理由はごうまつもないのであります。果してしかりとすれば、不起訴処分の場合の刑事補償も、無罪裁判があった場合の刑事補償と同じく、国家義務人民の権利)とすべきものであって、不起訴の場合の補償だけを恩恵的なものとする理由は少しもないと申さなければなりません。いわんや、その補償を与えるか否かの決定当該検察官にまかせるがごときは、あたかも刑事被告人口分裁判をやらせるようなものであり、その不合理なることはもちろん、人は、かかる意見の根底に、単なる官僚のセクショナリズムだけではなく、検察権裁判権のいまだ分離しない、封建的専制的な体臭をすら感ずるのであります。  以上の観点に立って、われわれ社会党は、あえて議員提案として、本改正案提出に及んだのであります。なお、本法案に関する逐条説明参考資料として皆様のお手元にお配りいたしました。何とぞ慎重御審議の上、速かに御可決せられんことを望んで、提案理由説明とする次第であります。
  5. 高田なほ子

    委員長高田なほ子君) どうぞ逐条説明も……。
  6. 武藤運十郎

    衆議院議員武藤運十郎君) いかがいたしましょうか。逐条説明がございますのですが……。
  7. 高田なほ子

    委員長高田なほ子君) この際提案者から逐条説明もあるがということでございますが、委員長としては、この際御説明をいただいた方がけっこうと存じますので、御了解いただきたいと存じます。よろしうございますか……。ではどうぞお願いいたします。
  8. 武藤運十郎

    衆議院議員武藤運十郎君) それではお指図に従いまして刑事補償法の一部を改正する法律案逐条説明を申し上げます。しばらくお聞き取りのほどをお願いを申し上げます。  一、第三条第二号の改正点及び第三条に新たに第三号として一号を加えた点について。  このたびの改正案においては、第二十五条の二において、刑事訴訟法によって未決抑留または拘禁を受けた者につき、検察官が罪とならないことまたは公訴提起するに足りる犯罪嫌疑がないことを理由として公訴提起しない処分をした場合に、その者は、無罪裁判があった場合に準じ、刑事補償請求をすることができることとするとともに、第二十五条の三において、他の被疑事実について、有罪裁判を受け、または罪とならないこと及び公訴提起するに足りる犯罪嫌疑がないこと以外の理由により公訴提起しない処分を受けた場合には、その補償の一部又は全部をしないことができることとしたのとのバランス上、一個の裁判によって併合罪の一部について無罪裁判を受け、かつ、他の部分について免訴または公訴棄却裁判を受けた場合においても、当該免訴または公訴棄却裁判を受けた部分について、第二十五条の規定により刑事補償請求することができる事由がない場合には、有罪裁判を受けた場合と同じく補償の一部または全部をしないことができることとし、また、刑事訴訟法によって未決抑留または拘禁を受けた者が、当該抑留または拘禁理由となった数個の罪にかかわる被疑事実につき、当該数個のうち一部について無罪裁判を受けても、他の部分について罪とならないこと及び公訴提起するに足りる犯罪嫌疑がないこと以外の理由により、公訴提起しない処分を受けた場合には、無罪裁判を受けたことにより払い渡されるべき補償の一部または全部を、裁判所の健全な裁量により、併合罪の場合に準じて減額することができるようにしたのであります。  二、第三条に新たに第二項として一項を加えた点について。  前に述べましたこのたびの改正案の第二十五条の二の規定趣旨によれば、刑事訴訟法によって未決抑留または拘禁を受けた者が、当該抑留または拘禁理由となった数個の罪にかかる被疑事実につき、当該数個のうち一部について無罪裁判を受け、他の部分について罪とならないことまたは公訴提起するに足りる犯罪嫌疑がないことを理由として、公訴提起しない処分を受けた場合には、その者は、第一条の規定によっても刑事補償請求をすることができ、第二十五条の二の規定によっても刑事補償請求をすることができることとなります。これでは、一つ抑留または拘禁につき二重に刑事補償請求をなし得ることになり、不当であると言わざるを得ません。そこで、先に第二十五条の二の規定による刑事補償を受けたときは、あとで他の部分につき無罪裁判を受けても、先に第二十五条の二の規定によって刑事補償を受けた抑留または拘禁については、補償をしないこととし、一つ抑留または拘禁につき二重に刑事補償請求がたし得ないようにいたしました。  三、第四条第一項の改正点について。  第三条に新しく第二項の規定を加えたことによる条文の整理であります。  四、第二十五条の二の規定について。  このたびの改正案の最重点は、本条に置かれております。この規定を設けた趣旨は、提案理由説明において述べました通りでありますが、公訴提起しない処分のうち、罪とならないことまたは公訴提起するに足りる犯罪嫌疑がないことを理由として公訴提起しない処分を受けた場合に限って補償することといたしました。理論的に言えば、すべての不起訴処分につき、裁判所がその処分内容を審査して、事実、罪とならないことまたは犯罪嫌疑がないことが判明すれば補償すべきであるかもしれませんが、不起訴処分内容を一々審査することは、捜査内容に立ち入ることになり、必ずしも妥当ではありません。そこで本案においては、検察官みずからが罪とならないことまたは公訴提起するに足りる犯罪嫌疑がないことを理由として公訴提起しない処分をした場合に限って、補償することといたしました。なお、先に罪とならないことまたは公訴提起するに足りる犯罪嫌疑がないことを理由として公訴提起しない処分を受けた場合でも、あとになって公訴提起され、かつ、有罪裁判を受けたときは、当該有罪裁判を受けた部分については、刑事補償請求することができないのけ当然であるから、ただし書きでその旨を規定いたしました。  五、第二十五条の三の規定について。  本条は、無罪裁判を受けた者に対し刑事補償をしないことができる場合を規定した現行法第三条に対応する規定でありまして、罪とならないことまたは公訴提起するに足りる犯罪嫌疑がないことを理由として公訴提起しない処分を受けた者に対し、刑事補償をしないことができる場合を規定したものであります。  第一項は、刑事訴訟法によって未決抑留または拘禁を受けた者が、当該抑留または拘禁理由となった数個の罪にかかる被疑事実につき、当該数個のうち一部について、罪とならないことまたは公訴提起するに足りる犯罪嫌疑がないことを理由として公訴提起しない処分を受けても、他の部分について公訴提起され、かつ、有罪裁判を受け、または罪とならないこと及び公訴提起するに足りる犯罪嫌疑がないこと以外の理由により公訴提起しない処分を受けた場合には、裁判所の健全な裁量により、刑事補償の一部または全部をしないことができることといたしました。  第二項は、刑事訴訟法によって未決抑留または拘禁を受けた者が、当該抑留または拘禁理由となった数個の罪にかかる被疑事実につき、その一部について無罪裁判を受け、第一条の規定による補償を受けた場合、またはその一部について罪とならないことまたは公訴提起するに足りる犯罪嫌疑がないことを理由として公訴提起しない処分を受け、第二十五条の二の規定による補償を受けた場合においては、一つ抑留または拘禁につき二重に刑事補償請求をなし得る不当を避けるため、他の部分について罪とならないことまたは公訴提起するに足りる犯罪嫌疑がないことを理由として公訴提起しない処分を受けても、当該他部分については、第二十五条の二の規定による補償をしないことといたしました。  六、第山二十五条の四の規定について。  本条は、公訴提起しない処分にかかる刑事補償管轄裁判所を定めたものでありますが、公訴提起しない処分検察庁でなされるため、当該事件についての判断資料裁判所にないことを考慮して、当該公訴提起しない処分をした検察官の属する検察庁を経由して、当該検察庁の対応する裁判所に対して補償請求をしなければならないことといたしました。この公訴提起しない処分をした検察官の属する検察庁を経由することにより、第二十五条の五第二項の検察官補償請求にかかる被疑事実に関する記録を添えて補償請求書管轄裁判所に送付しなければならないという規正が生きてくるのであります。更に第二十五条の六の裁判所検察官に対する書類提出の要求の規定と相持って、裁判所も、検察官公訴提起しない処分をした事件についての判断資料を得、適正妥当な刑事補償決定をなし得ることになるのであります。  七、第二十五条の五の規定について。  第一項は、公訴提起しない処分にかかる刑事補償請求期間及び請求書提出に関する規定であります。  このたびの改正案附則第三項において、刑事訴訟法第二百五十九条の規定改正され、罪とならないことまたは公訴提起するに足りる犯罪嫌疑がないことを理由として公訴提起しない処分をしたときは、検察官は、すみやかにその旨及びその理由書面当該被疑者通知しなければならないこととなりました。よって、この検察官通知があった日から一年以内に刑事補償請求をしなければならないこととし、また、第二十五条の四の規定と関連して、刑事補償請求書は、公訴提起しない処分をした検察官の属する検察庁提出しなければならないことといたしたのであります。  第二項は、次の第二十五条の六の規定とあい待って、検察官裁判所判断資料を与えるようにしなければならないという趣旨規定であります。  八、第二十五条の六の規定について。  本条趣旨は、第二十五条の五第二項の趣旨と同様でございます。  九、第二十五条の七の規定について。  本条は、補償決定手続停止及び続行に関する規定であります。前にも述べましたように、公訴提起しない処分検察官のする処分であって、裁判におけるように既判力というようなものがないから、検察官は、先に公訴提起しない処分をした事件につき、あとにたって公訴提起することもできるのであります。また、抑留または拘禁理由となった数個の罪にかかる被疑事実につき、当該数個のうち一部について第二十五条の二の規定による補償請求に関する事件の係属中、他の部分について公訴提起されることもあり得るわけであります。このような場合には、その公訴提起があった事件についての裁判の結果を見なければ、補償すべきかどうか、また、補償するとしてその額をいかに定めるべきか判明しませんから、このような場合には、それぞれ、補償決定手続停止し、また、当該公訴提起があった事件にかかる裁判が確定した場合には、補償請求をした者の申し立てによりまたは職権で、補償決定手続を続行することとしたのであります。  十、第二十五条の八の規定について。  これは、第二十五条の七の規定と関連する規定であります。すなわち、同条の規定により裁判所補償決定手続停止をきせるため、検察官通知義務を負わせることにいたしました。  十一、第二十五条の九の規定について。  本条は、第二十五条の七の規定趣旨をさらに拡張した規定であります。すなわち、第二十五条の七のような場合が発生したとき、すでに補償決定があり、補償の払い渡し手続中であったというような場合には、公訴提起があった事件につき裁判が確定するまで、当該補償の払い渡し手続は、これを停止させることにし、かつ、有罪裁判があれば、先になされた補償決定は、その効力を失うことにいたしました。  十二、第二十五条の十の規定について。  本条は、第二十五条の九第二項の規定によって補償決定がその効力を失った場合において、すでに払い渡しがなされた補償金返還を命ずるものであります。なお、返還命令の執行につきましては、刑事訴訟法第四百九十条及び第四百九十一条の規定を準用することといたしました。  十三、第二十五条の十一の規定について。  本条は、公訴提起しない処分にかかる第二十五条の二の規定による補償につき、無罪裁判による補償に関する現行法規定の準用を定めたものであります。  十四、附則第一項について。  本項は、施行期日に関する規定でありますが、本法施行に際する諸般の準備を考慮して、公布の日から起算して一カ月を経過した日から施行することといたしました。  十五、附則第二項について。  本項は、遡及適用をしないという趣旨規定いたしました。  十六、附則第三項について。  本項は、刑事訴訟法第二百五十九条を改正したものであります。すなわち、検察官は、事件につき公訴提起しない処分をしたときは、被疑者請求を待たず、すみやかにその旨を被疑者に告げることとし、なお、抑留または拘禁された被疑者当該抑留または拘禁理由となった被疑事実につき、罪とならないことまたは公訴提起するに足りる犯罪嫌疑がないことを理由として公訴提起しない処分をしたときは、このたびの刑事補償法改正案の第二十五条の五の請求期間との関係上、特にその旨及びその理由書面当該被疑者通知しなければならないことといたした次第でございます。  以上、刑事補償法の一部を改正する法律案提案理由並びに逐条説明を申し上げた次第でございます。
  9. 高田なほ子

    委員長高田なほ子君) 別に御発言がなければ、質疑は次の機会にお願いすることにいたしまして、次の議題に移りたいと思います。
  10. 小林亦治

    小林亦治君 ごく簡単に二、三分お開きできませんか。これは研究する前提に、ちょっと提案者にただしたいことがあるのですが、よろしゅうございますか。
  11. 高田なほ子

    委員長高田なほ子君) どうぞ。
  12. 小林亦治

    小林亦治君 提案者に伺いたいのですが、この内容趣旨立法単行法で出すという話を伺っておったのです。とこうがそうではなくて、補償法の一部改正と相なった。この間の事情はどういうことでありますか。  それかう第二は、本法遡及しない、こういう法案なんですが、補償賠償あるいは一つ状態治癒目的とする立法の場合には、従来の例では、おおむね、ある程度遡及しておったのです、補償賠償といったような場合は……。本法のは申すまでもなく補償であり賠償であり、与えた被害に対する治癒目的とする立法なんですから、当然若干の遡及があってしかるべきではないか。しかるに本法案については、それが全然ないという御提案なんですが、これはもし従来の例に徴すれば、予算が膨大になるとかいったような財政上の御考慮から、遡及する通例を破って、遡及しないという趣旨法案をお考えになられたのですか。この二点を……。こまかな点については、これから内容も検討し、研究をしましてあらためて伺いたいのでありますが、その前に今日はまずこの二点だけについて、提案者からお考えを伺っておきたいと思います。
  13. 武藤運十郎

    衆議院議員武藤運十郎君) 簡単に申し上げます。まず第一点の、単行法で同じような内容法案を出すということであったが、それが変って、刑事補償法の一部改正という形で出たのは、その経過はどういうわけであるかというお尋ねでございます。実は最初に提案理由の御説明の際に申し上げました通り、この刑事補償法改正問題につきましては、自民社会両党による刑事補償法改正に関する合同委員会を設けたのでございます。その合同委員会の途中において、法務省当局意見を徴しました。法務省当局ではいろいろこの不起訴処分に対する賠償を与えることについて御意見がございまして、法務省の意向では刑事補償法改正ということではなくして、単独立法でほぼ同一の内容を盛ったものにした方がよいのではないかと考えますということでありました。そこで私どもが、それならば私どもはあえて刑事補償法改正でなければ絶対にいけないということではありません。内容がほぼ同じであって、要するに被害者を早急に救済することができれば目的を達するわけでありますので、法務省のような第一線を担当しておる官庁の希望はなるべくいれて、成立を期そうというふうに考えたのであります。そこで法務省からその案の具体的なものの提案を求めましたところが、法務省から提出をされました。それを見ますると、ほぼ刑事補償法の私どもの企図しておる改正内容と同一に近いものでありました。ただ違うところは、第一に補償を与えるかいなかを検察庁の任意としたことであります。与えることができるという規定にしようとしておることであります。第二は、その補償を与えるか与えないかの決定をする機関が裁判所ではなくして、当該検察庁にやらせてもらいたいという二点であります。私どもは合同委員会審議いたしました結果、どうも与えるかいなかを任意とするということはこれは困る。いやしくも検察官が全く人違いその他間違った抑留をいたしまして、その結果被害を受けた者に対しては国家は無過失賠償として補償をしなければならないものであるという建前から、これは困ります。しかし一方におきまして検察庁でやった処分裁判所でやらせるということになりましては、あるいはいろいろな点で差しつかえも起るのではないかというふうに考慮しまして、その点は単独立法であれば検察庁でやらせてもよかろうというふうに考えたのであります。この意見に基きまして、両党合同委員会は、主として私が起早をいたしまして単独立法として案を作りました。そうしてそれを大体合同委員会の最終案のようなものとして両党に持ち帰りまして、最終的な決定を求めたのでございます。わが日本社会党におきましては、はなはだ不十分ではあるけれども、一歩前進であるからして、それが自民党並びに法務省によって受け入れられて成立をするというのであるならば、この案でもやむを得なかろう。刑事補償法の一部改正ということを取りやめてもよろしいという決定になったのであります。ところが自民党の方でどうも党議がまとまらない。技術的にも困難があるし、こういうものは政府提案とすべきものであって、議員提案に適しないというようなお説があったのでございます。そこでどうもこの案は自民党としては受け入れられないという御回答でございました。私はここで、高橋法務委員長も政務次官もおられますが、はなはだ遺憾に考えました。この刑事補償法改正に関する問題について合同委員会を持たれましたのは昨年の暮でございます。そのときに合同委員会を作ることについて私が確認を求めました。この合同委員会を作ることには私は異議はない。非常にけっこうでございますが、刑事補償法改正するかいなかを協議するのではなくして、刑事補償法改正をするという建前でその技術的な面、具体的な面を共同作業をやろうじゃないか、両方から別の案が出ても、別の作業が行われてもむだがあるかもしれないから、一緒の共同作業で仕上げようじゃないかという趣旨で了解してよろしいかということを確認を求めましたところが、そういう趣旨であるということでやってきたのであります。ところがいよいよ最終段階になりまして、これが成案になるときになりまして、これは政府提案によるべきものであって議員提案では不適当であるというお説でありました。私どもの方から言わせるならば、もしこの刑事補償法改正というものが、政府提案によるべきものであって、議員提案に適しないというふうな御意向であるならば、そのことは案の内容を検討して、言うまでもなく合同委員会を作る最初においてわかっておったことでございます。従って合同委員会を作るときに、これは政府提案にすべきものであって、議員提案に適しないから、われわれは合同委員会には参加しないというふうに、お断わりがあってしかるべきだと思うのであります。しかるに議員提案をすべき建前のもとに、合同作業を十数回にわたってやって参りまして、いよいよ成案ができ、しかも社会党とすれば非常に不満足なものでございますけれども、一歩前進という意味で、法務省案をほとんどのんだ形で成案にしたのであります。それが遂に受け入れられないというふうな形になった次第でございまして、はなはだこの点は遺憾でございました。そこで元の振り出しに戻りまして、刑事補償法改正ということで、社会党全員の賛成によって社会党議員の提出案ということの次第になったわけでございます。経過というお尋ねでございまして、少し長くなりましてまことに恐縮でございますが、そういう経過をたどったのでございます。しかしながら私どもは決して合同委員会の案が自民党に受け入れられなかったといたしましても、それによってこの意図を捨てるものではございませんし、また今後さらに自民党諸君とともに協力をしていただきまして、ぜひともこの案を成立させたいというふうに考えておる次第でございます。  それから第二のお尋ねでございますが、遡及しないのはどういうわけかというお尋ねでございます。これはお説の通りでございますが、まあいろいろ予算の関係もありますし、この案が法務省、その他でも多少の難色を示している事情もございましたので、なるべく簡単に施行ができるように、いろいろ問題をその間にこんがらかせないでできるようにしたい。遡及しなくても、今後のものからでも非常に一歩、二歩前進でございますので、何しろはれものにさわるように、なるべくこう問題を少くしてやろうというふうに考えて、こういうふうにいたした次第でございます。  以上の通りであります。
  14. 高田なほ子

    委員長高田なほ子君) 他に御発言がなければ質疑は次の機会にお願いすることにいたします。
  15. 高田なほ子

    委員長高田なほ子君) 続いて罹災都市借地借家臨時処理法の一部を改正する法律案議題に供します。  提出者から提案理由説明をお願いいたします。
  16. 高橋禎一

    衆議院議員(高橋禎一君) ただいま議題となりました罹災都市借地借家臨時処理法の一部を改正する法律案提案理由を御説明申し上げます。  御承知のように、昭和二十一年罹災都市借地借家臨時処理法が制定され、戦災地における借地、借家人保護の措置がとられることになり、翌二十二年、火災、風水害等の災害にもその適用を見ることになり、自来、宮崎県延岡市の風水害を初め、福井市の地震、最近新潟市の火災等に至るまで、本法の適用を発動すること十九回に及んでおるのであります。  ところで、同法によりますれば、火災、風水害のあるごとに、そのつど、矛、の地区及び災害を、法律をもって、一々指定する建前になっておりますため、過去の事例におきましても、たとえば、新潟市について見ましても、災害が国会閉会中であったため、時間的に手おくれになり、本法目的達成が不十分に終ったような事例もあるのであります。  当委員会におきましては、これらの経験にかんがみ、この際、地区及び災害の指定を政令に委任しようとするものであります。すなわち、災害発生地の借地、借家関係の処理は、罹災住民の応急救助と同様に、きわめて急速を要する問題でありますので、罹災都市借地借家臨時処理法の災害及び地区の指定は、現実に災害の調査に当る政府が、すみやかに政令をもって定めることが、同法の趣旨に合致し、借地借家関係の迅速適切な調整をはかるために最も適当な方法であると考えるのであります。  法案内容は「法律」を「政令」と改めるだけできわめて簡単でありますから、省略させていただきます。  以上が提案理由でございます。何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御可決あらんことを御願いいたします。
  17. 高田なほ子

    委員長高田なほ子君) ありがとうございました。本案について御質疑のおありの方は御発言をお願いいたします。
  18. 小林亦治

    小林亦治君 これは当然なことで、前に両三回、高橋委員長の御提案の際に申し上げたことですが、とうからこれをやるべきことなんです。もう異議ありません。賛成です。これはもうほとんどの委員の方々が前に、こういう立法をしたらよかろうという念を押されておったのが、今出たのでありますから、問題ないと私は考えます。
  19. 赤松常子

    赤松常子君 この問題については賛成でございますが、この前も、たしか新潟の場合も、この問題に関連して法律を問題にしたときに、火災の予防について当局の処置がどうなっているかというようなことに対しての御報告と申しましょうか、そういう点の御報告をいただくということが、一応各委員から御発言があったと思うのですけれども、それはその後どういうような機会にここで御報告されたのでしょうか、まだでございましょうか。そういうことはどういうふうにお取り計らいいただけるものでしょうか。
  20. 小林亦治

    小林亦治君 今、赤松委員のおっしゃることは、私どもも予定しておったことでありますし、なお究明せにゃならぬということは、本委員会の懸案になっておりますので、本法案が採決になりますと同時に、今赤松委員のおっしゃった意味の決議をしたいと思います。あらためて採決になった瞬間に、私から一つ発議したいと思うのであります。
  21. 高田なほ子

    委員長高田なほ子君) ちょっとこの際、政務次官もおいででございますから、御質問申し上げたいと思います。  前回の罹災都市借地借家臨時処理法の一部を改正する法律案、この審議の際に、今赤松委員からも御発言になりましたが、火災の原因の究明等については、きわめて大切な問題である、こういうことで委員会としても、この問題を非常に重く実は考えておったのであります。実はその後、委員会の御意見もありましたので、私は警視庁に参りまして、火災の原因を究明するための科学捜査のその姿を実は見て参ったのでありますが、中に働いておられる方々は非常に熱心に、またオーバー・ワークをしてまでも、そのことのために非常な努力をされておりました。けれども、拝見いたしますところによると、まことに狭い、言葉をかえていうならば、全く設備の整い切らぬ所で非常に苦労をして仕事をしておられました。これでは幾ら科学捜査をしてその原因を除去すべきであるということを言っても、これではあまりまずいのではないかというふうに考えられますが、松原さんも現場をごらんになったことがおありかと存じますが、この点についてどうお考えにおなりになっておられますか、お尋ねいたします。
  22. 高橋禎一

    衆議院議員(高橋禎一君) 政務次官がお答えになると思うのですが、その前に、今衆議院の方でこの問題について論議のあったことを御参考に申し上げたらと思いますが、お聞き下されば申し上げますが。
  23. 高田なほ子

    委員長高田なほ子君) どうぞ。
  24. 高橋禎一

    衆議院議員(高橋禎一君) 実はただいま赤松委員等からお話のございました点について、やはり衆議院の法務委員会においても、この災害発生の原因を明らかにして、その除去に努める、あるいはその災害の防止のいろいろの対策を政府が確立していかなければならないということについて強い発言があったわけであります。ところが御存じのようにその問題は、これはひとり災害を犯罪捜査の面からのみ考えて、たとえば警察あるいは検察庁等において捜査さして、その原因を明らかにするというだけでは問題が解決しないわけでありますので、たとえば建設の関係とか、あるいはまた消防の関係とか、非常に広範囲にわたるわけでありまして、法務委員会においてその問題を調査検討する分野に属さない面も相当あるのであります。これは法務委員会関連の問題については、今後国政調査等を通じて一つ徹底的に検討しよう、その他の問題については、やはり政府に十分警告しようということで、実はこの法案提案いたしました理由を衆議院本会議において説明いたしました際に、そのことを私は特に申し上げておいたわけであります。そうして、なおこの法案の運用をすることによりまして、すなわち今まで法律を制定して、地区及び災害を指定するということは、国会だけの仕事で、政府は比較的これについて、この法制定ということに関連して関係される場合が少かったわけでありますが、政令をもってそれを指定するということになりますと、これは法務省なり建設省等がいろいろ災害の原因なり規模なりを検討して、そうして閣議にかけるわけであります。そういたしますというと、閣議において関係閣僚がこの災害に関する問題をいろいろ検討される、すなわち政府がこれにタッチされる場面が非常に広くなって参るというようなことも考えまして、すなわち原因の探求なり、その除去方法及び災害拡大の防止対策について、各関係閣僚が非常に熱心になられるのじゃないかというような、副産物的な、非常な効果もあるのじゃないかというようなことも考えられたようなわけでございまして、まあ衆議院法務委員会はそういう態度で将来に処していこう、こういう考えであるということを、御参考までに申し上げておきます。
  25. 高田なほ子

    委員長高田なほ子君) 松原政務次官にお答えをお願いします。
  26. 松原一彦

    政府塾員(松原一彦君) 日本の火災がいかにおびただしい損害を与えておるかということにかんがみましても、火災の原因の探求は、私ども担当の法務省におきまして、検察方面からも非常に大切に考えておるところでございます。従って今衆議院の方の御提案もありましたように、この問題を将来にわたって各方面から総合的に研究することにつきましては、もちろん賛成でございまするし、協力を惜しまないものでございます。
  27. 高田なほ子

    委員長高田なほ子君) 重ねてお尋ねをいたしますが、協力を惜しまないというお言葉を了とするわけでありますが、それには当局みずからが、現在の警視庁内にある失火原因を研究するための科学捜査陣というものをごらんになる必要があると思うのでございます。わずかに三坪に足らないような所に施設を置いて、科学捜査というものが果してできるかというと、非常に私はまずいのではないかということを痛感して参ったわけであります。これは相当の予算措置も伴う問題ではありましょうけれども、やはり法務当局としてはそうした方面に重点を置いて、この原因の究明と、その除去のために特段の努力が必要ではないか、こういうふうに考えるわけです。  私がここで発言いたしましたのは、しかるべき早い機会にみずからこの現場をごらんになって、どういうところに科学捜査の欠陥があるのかということを十分に一つ御研究になっていただきたいということを、強く要望するわけでありますが、再度これについてお答えを願いたいと思います。
  28. 松原一彦

    政府委員(松原一彦君) 委員長の御希望ごもっともに思います。十二分に協力し、調査し、その実現を期したいと思います。
  29. 高田なほ子

    委員長高田なほ子君) 他に御質疑はございませんか。
  30. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 この前のときにも申し述べたのですが、やはりこの機会に松原さんから伺っておきたいのですが、火災の多い根本的な原因は、もう調べるまでもなく、都市計画の全くないということですよ。それからそれがなぜないのかといえば、現在の政府に政策がないということなんです。最近の火災ばかりではありませんね。霜害でもそうです。ごく最近の、ちょっと気温の下ったということで、群馬県、埼玉県、長野県、あるいは近畿方面において、霜のために桑が枯れて、受けた損害はおそらく数百億円でしょう。不経済きわまる政府です、現在の政府は。その数百億を、あらかじめかりにその十分の一の数十億の費用をもって霜害対策を立てていれば、ちょっと気温が下ったくらいで、たちまち国民の税金を数百億円も枯らしてしまうという悲しいことは起らないはずです。同じように、火災が起って非常に多くの財産が一時に破壊されてしまうということは、都市計画が全くないということ。それからまた耐火建築の奨励の政策もゼロだということがあるのでしょうが、これは法務委員会の問題ではございませんけれども、その点において、政府においては第一にはやはり都市計画の確立ということが特に重要でしょう。そうして耐火建築の奨励ということを具体化され、それによってあらかじめ投ぜられる国の費用というものは、そういうことをされないために失われる国の財産の損失とは、比較にならないと思うんですが、そういう点について次官が政府において関係方面に十分御尽力をぜひいただきたいと思うんですが、いかがでしょうか。
  31. 松原一彦

    政府委員(松原一彦君) 霜害対策は私にもわかりかねますし、法務省にはどうもあまり近い関係もないようですが、霜害対策の方は専門家の方で十二分に御研究もしていただきたいと思いますが……。
  32. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 私の質問の要旨を御了解にならないらしいのでずが、政策がないために、国民に非常に損害を与える。そのあとに少しばかりそれを救うというそういうことをやめるというために、このわれわれが審議法律案について、直接の関係でその都市計画の実現ということに御尽力をいただけないかということなんです。
  33. 松原一彦

    政府委員(松原一彦君) 現政府への御要求でございまするならば、まことにごもっとも千万でございます。ただいま私も申し上げたのですけれども、火災の対策などに私どもはもっと力を入れさえすれば、この半分なり十分の一にも減るものだと思います。焼けない家を作ろうという研究、それから燃やさない工夫をするということ……、一挙に数百数十億の尊い財産が灰になっている現状はまことに悲しいことだと思います。御要望の点は私は議員の一人としてもふだん考えておりますが、なお政府に対しましての御要望として強く私どもこれが実現に対する進言をいたしたいと思います。御了解願います。
  34. 高田なほ子

    委員長高田なほ子君) 他に御質疑ございませんか。——なければ質疑は終局したものと認めます。  これより本法案の討論に入ります。御意見のおありの方はそれぞれ賛否を明らかにしてお述べを願います。
  35. 小林亦治

    小林亦治君 私は本法案賛成なんです。理由は先ほど申し上げた通りでございまして、前二回の立法の際にも申し上げました通り、これは幸いに国会が開かれているから、今回のような立法というような作業でもって救済できるのでありますが、国会が開かれておらない間に、災害をこうむった都市においては、臨時国会を待つなり、通常国会というようなことになって、はなはだこれでは緩慢であり、急に応ずるの行政ができないのでございます。幸いにして、政令に譲るという法案が今日出まして、その憂いも除かれるのでございますから、むろん賛成なんであります。ただ心配な点を蛇足ながら申し上げますれば、その認定とか、範囲、幅というものを、今後行政官の手にゆだねることに相なります。まあ乱用ということはございませんでしょうが、権力ざたでもって、認定を二、三にするというようなことなきにしもあらず、この点十分行政当局におかれて良識をもって、国会からの委任による完全な行政をなされるように御当局に要望しまして、本法案賛成したいと思います。
  36. 高田なほ子

    委員長高田なほ子君) 他に御発言がなければ討論を終局いたします。     —————————————
  37. 高田なほ子

    委員長高田なほ子君) 法案審議の中途でございますが、委員の変更がございましたから御報告をいたします。  泉山三六さんが辞任せられまして、その補欠として川村松助さんが選任されました。  ちょっと速記をとめて。   [速記中止〕
  38. 高田なほ子

    委員長高田なほ子君) 速記を起して。  これより本案の採決を行います。本案賛成の方の挙手を願います。   [賛成者挙手〕
  39. 高田なほ子

    委員長高田なほ子君) 多数でございます。よって本案は多数をもって原案通り可決すべきものと決定いたしました。  なお本院規則第百四条による本会議における口頭報告の内容、第七十二条により議長提出すべき報告書の作成、その他自後の手続につきましては、慣例によりこれを委員長に御一任願いたいと存じます。御異議ございませんか。   [「異議なし」と呼ぶ者あり]
  40. 高田なほ子

    委員長高田なほ子君) 御異議ないと認めます。よってさように決定いたします。  それから報告書には多数意見者の署名を付することになっておりますから、本案を可とされた方は順次御署名をお願いいたします。   多数意見者署名     市川 房江  川村松助     井上 知治  小柳 牧衞     赤松 常子  宮城タマヨ     小林亦治     —————————————
  41. 小林亦治

    小林亦治君 ずっと以前から本法案に関連する問題として、一松委員から、火災の原因の究明が足らない、ことに捜査の設備が不完全である、こういうことは当該法案には直接関係がないが、国会としてはかかる法案を通す際には、これをチャンスとして十分当局を究明して、その足らざる点を鞭撻し、要望しなくちゃならないという御意見がありました。当委員会の全員の空気もこれにほぼ同調であります。ただいまは赤松委員からも同様御趣旨の御要望があった、そこで私はでき得るならば捜査の究明と相持って、科学的なるところの設備の拡充強化、こういうものを付帯決議としてなり、あるいは別個の決議として、政府に要望したいと思うのでありますが、ただいまのところでは三十一年度予算も実施中なのであります、予算を伴うような決議は、これはどうかと思われます、アドバルーンに終ってしまうような懸念もございますので、とりあえず予算に関係なく、現在の施設を十分に活用し、捜査上の良識をもってすればなお予防が十分可能であり、損害が最小限度に食いとめられると思いますので、その趣旨の決議を、これは形式の上では本法案とは全然別個でございますが、この際にそういう決議をしたいと存じますので、一つ動議として本委員会提出いたしたいと思います。
  42. 高田なほ子

    委員長高田なほ子君) ただいまの小林委員からの動議に御賛成いただけますでしょうか。
  43. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 私大体において賛成なんですが、ただやはり火災の原因の刑事的な、警察的な面だけの調査というのも、事実やはり私は根本的にはそういう点よりも、都市計画関係の不十分ということからくるのが多いのじゃないか、で、火災の原因の究明ということからも、また警察的な活動の方ばかりが強くなってしまって、犯人をつかまえるというようなことにばかりなってしまっては非常に残念だ、もちろん一松委員小林委員の御趣旨も、そういった方にあるのではないということはお察しをしておりますが、その実際の火災の原因である都市計画というものが全くないということ、そちして建築その他がそういう耐火になることが当然であるような、そういうことにあると思いますので、どうかそういう方面にも重点を置く点において、十分そういうような点を御留意願いたいというように考える次第であります。
  44. 高田なほ子

    委員長高田なほ子君) 速記をとめて。   〔速記中止〕
  45. 高田なほ子

    委員長高田なほ子君) 速記を起して。  ただいま小林委員からの動議は御賛成がございまして、成立をいたしました。どうぞ小林さんから案文を御披露下さい。
  46. 小林亦治

    小林亦治君 それでは決議の案文を朗読します。   最近、罹災都市借地借家臨時処理  法の適用を要する大火災のひん発す  る状況にかんがみ、都市計画の発展  と相待ってその原因の捜査究明に科  学的施設を十分操作することによっ  て、同一又は類似の原因による災害  のたび重なる発生を防止し、またそ  の被害を最小限度にくいとめること  ができると思われるが、政府は、災  害防止のためのこの施設の完備に、他  の抜本的諸施策の実施とあわせて、  努力すべきである。  右決議する。以上であります。
  47. 高田なほ子

    委員長高田なほ子君) ただいまの小林委員の都市直面の発展とともに頻発する大火災の原因究明とその対策についての決議案を、本委員会の決議とすることに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  48. 高田なほ子

    委員長高田なほ子君) 御異議ないと認め、本委員会の決議とすることに決定いたします。
  49. 高田なほ子

    委員長高田なほ子君) この際、午前中の議事を一応終りたいと思いますが、特に大阪、また各地から売春禁止法制定に関する請願書が当法務委員会委員長の手元に届いておりますので、この際御披露申し上げたいと存じます。  一、私どもは、私どもの国をすべての国民が、すこやかな勤労にいそしみ、生活を喜び、この国の民たることを誇りとするような国に仕上げねばならぬと思い詰めています。  二、こうした理想に近い国はいまだないかもしれません。しかし、それに近い国はあります。デンマークやスエーデンはそうでしょう。国民一人当り日本の十倍も二十倍も社会保障費を出している米、英、仏、独の国民も、その国民たることを誇りとしているでしょう。こうした国々は、単純売春の禁止に峻厳であるか寛大であるかの差はありますが、いずれも売春禁止国です。私たちの国、日本のように公然たる組織売春制度を持っているのは、そのいずれの国にもありません。どうか、この国の国民のだれもが、この国の民たることを誇りとすることができるように、私どもの国を売春禁止国にして下さい。今回国会提出された売春禁止法をぜひ通過さして下さい。  三、わが国の売春制度は古くかつ強い。日本の権力の中心である東京都のまん中に、東京都条例で売春が禁止されているのに、公然たる組織売春街が存在しているほど強いのです。売春制度とは何ぞや、申すまでもなく女体を商品として売りさばくのです。わが国の女性には、こうした国の制度のもとに蔑視と凌辱が行われているのです。この国の津々浦々に満ちあふれている女性の悲しみ、母の嘆き、妻の苦しみ、そして全国民の過半数を占める女の願いをいれて、この売春禁止法案の通過に最善を尽して下さい。お願いします。   四、この売春禁止法案を完全とは  思っていません。北欧の小国である  デンマークやスエーデン、または世  界の強国を誇る米、英、仏、独のよ  うな社会保障の裏打ちがぜひ必要で  す。しかしそれは、この法案に次ぐ  ものとして、後日に完成を期するこ  ともできます。どうかぜひこの国会  で、この売春禁止法案を成立さして  下さい。お願い申します。    昭和三十一年五月十五日   参議院法務委員長高田なほ子殿なお、この請願書をお出しになりました団体は、新大阪婦人会古野しくさん。大阪YWCA広岡貞子さん。環境浄化委員会山本君代さん。大阪府婦人団体連絡協議会田中尚子さん。大学婦人協会大阪支部木下薫さん。婦人民主クラブ藤田寿さん。それから婦人団体連絡協議会辻元八重さん。大阪市婦人有権者連盟佐々木キクヨさん。関西主婦連合会比嘉正子さん。大阪府豊能郡婦人協議会河盛カイさん。茨木市婦人団体連絡協議会田村歌子さん。泉北郡婦人団体連絡協議会関戸貞子さん。大阪市婦人団体協議会会、長須藤隆子さん。大阪市城東区婦人団体協議会会長松葉静子さん。キリスト教婦人矯風会小橋カツヱさん。大阪市天王子婦人団体協議会森口千代さん。大阪市東淀川区婦人団体協議会島田光枝さん。大阪市福島区婦人団体協議会佐藤芳子さん。大阪友の会水島照子さん。以上の方々でございます。  特に本日遠路ここにこのためにお見えになりましたので、私より請願の趣旨を朗読いたしまして御披露申し上げておきします。以上です。  ちょっと速記とめて下さい。   〔速記中止〕
  50. 高田なほ子

    委員長高田なほ子君) 速記を起して下さい。  それでは午前中の議事を一たん終了いたしまして、休憩いたします。一時半から再開をいたします。よろしくお願いいたします。    午後零時四十八分休憩      —————・—————    午後三時二十分開会
  51. 宮城タマヨ

    ○理事(宮城タマヨ君) 休憩前に引き続き委員会を再開いたします。  委員長が御都合で午後出席ができませんので、私がかわって委員長の職務を行いたいと思います。  なお、法務大臣の本委員会御出席の要求をしておりましたが、少しおからだが悪いそうで、明後日出席するからよろしくというおことずけがございました。  それでは売春防止法案議題に供します。政府から提案理由説明をお願いいたします。
  52. 松原一彦

    政府委員(松原一彦君) ただいま議題となりました売春防止法案につきまして、その提案理由を御説明申し上げます。  終戦後の世相の混乱と道義の頽廃並びに性道徳の低下によりまして、売春を行う女子の数が著しく増加いたしましたばかりでなく、それがすこぶる露骨となって参りましたことはすでに御承知の通りと存じますが、さらに、最も遺憾にたえないことは、日本国憲法が侵すべからざる基本的人権の存在を確認し、個人の自由と尊厳とを明らかにし、その奴隷的拘束を除去すべきことを宣言しているにもかかわらず、売春に関連してこれに反する事態のますます増加の傾向にあることであります。このような状況を黙過することは、善良の風俗の維持、保健衛生、女子の基本的人権の確保等の観点からとうてい許されないところでありまして、すみやかにこれが対策を樹立してその実効を期さなければならないものと考えるのであります。  しこうして、これが対策といたしましては、国民一般の民主主義的自覚、道徳観念の高揚、衛生思想の普及向上を要請されることはもとよりでありますが、これと同時に、売春を助長する行為等を処罰する諸規定を整備強化するとともに、社会政策的見地から、その性格、行状または環境に照らして売春を行うおそれのある女子に対し、保護更生の措置を講ずべき総合的文化立法制定の必要が痛感される次第であります。  従来のこれに対する立法措置といたしましては、「ポツダム宣言の受諾に伴い発する命令に関する件に基く法務府関係諸命令の措置に関する法律」によります「婦女子に売淫をさせた者等の処罰に関する勅令」、刑法、児童福祉法、労働基準法、職業安定法、風俗常業取締法、性病予防法等があり、さらに地方公共団体が各地の状況に応じそれぞれ制定した取締条例があって、それらの運用によって、これに対処して参ったのでありますが、これらの法令は、その制定の時期、立法目的等を異にしているため、これを総合的、統一的に運用することには事実上少からぬ困難があって、十分その実をあげているとは申せない状態であります。そのため、かねてから総合的立法措置の必要が叫ばれていたのでありますが、遂にその実現を見ず、昨昭和三十年第二十二回国会においては、売春等処罰法案が重ねて衆議院において提出されましたが、同年七月十九日の同法務委員会において否決され、その際「いわゆる売春等に関する諸問題につき、すみやかに抜本的総合施策を樹立し、これを実施する必要があり、政府としては内閣に強力なる審議機関を設け、その議を経て行政措置、立法的措置、予算的措置等総合対策を策定し、国会審議を要するものについては次の通常国会提出すべきである」との決議がなされたのであります。  他方、政府としては、昭和二十八年十二月当時の内閣の閣議決定により設けられたる売春問題対策協議会から、昨年九月二日、内閣にいわゆる売春問題対策について答申がなされ、さらに上述いたしました衆議院法務委員会の決議もありましたので、緊急に法律案を立案する必要があるため、十月二十八日閣議決定をもって内閣に売春問題連絡協議会を設け、前記答申内容を検討する一方、法律案作成の準備を進め、次いで売春に関する諸問題がきわめて重要であり、かつ、複雑な問題であることにかんがみ、内閣総理大臣または関係各大臣の諮問に応じ、売春対策に関する重要事項を調査審議するための恒久的機関として、新たなる構想のもとに、売春対策審議会を設けることとし、今国会に総理府設置法の一部を改正する法律案提出し、その成立後、同法律に基く審議会の発足と同時に、立法措置を含めて総合対策を諮問いたしましたところ、去る四月九日答申第一号として、売春等の防止及び処分に関する立法措置について適切な答申を得ましたので、これに基きまして関係各機関相協力して慎重に立案に当り、ここにこの法律案提出する運びに至ったのであります。  次に、この法律案の骨子ともいうべきものについて御説明申し上げます。  第一、この法律案におきましては、法律の目的を明らかにし、売春の反社会性を明確にするとともに、これが防止の対策としては、売春を行うおそれのある女子に対する保護更生の措置を講じ、他方、単なる売春行為それ自体はこれを刑罰の対象とせず、主として、売春の周旋、困惑等による売春、売春をさせる契約、場所の提供、対償の収受、前貸し、いわゆる管理売春、資金提供など、売春を助長する各種の行為を刑罰をもって取締ることとし、  第二、保護更生措置としましては、既存の公共の福祉に関する施設の活用、現行法令の適切な運用をはかるほかに、新たに都道府県に性格、行状または環境に照らして売春を行うおそれのある女子及びその家庭につき必要な調査指導を行い、あるいは相談に応ずるための婦人相談所を設置することとし、このような女子を発見し、その相談に応じ、必要な指導を行う婦人相談員を都道府県には置くこととし、市には置くことができることとし、なお、都道府県は、右の要保護女子のうち必要と認める者につきましては、収容保護を行うための婦人保護施設を設置することができることとし、  第三、婦人相談所、婦人相談員あるいは婦人保護施設の設置、その他都道府県または市の支弁する所要費用については、国が一定額を負担または補助することとし、  第四、この法律の適用に当りましては、国民の権利を不当に侵害しないように留意すべきことを明らかにし、  第五、最後に、いわゆる売春婦あるいは売春業者の保護更生または転廃業のための一定の猶予期間を設け、保護更生に関する規定を刑事処分に関する規定より先に施行するものとし、また売春に関する地方条例との関係を明確にいたしました。  以上立法趣旨及び本法案の要点につき御説明申し上げました。もとより、法律のみをもって直ちによく売春防止の目的を達成し得るものとは考えませんが、関係行政措置の推進と国民の協力のもとに、この法律の適切な運用を行うならば、必ずや見るべき効果をあげ得ることと確信いたす次第であります。何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御可決あらんことを希望する次第であります。
  53. 宮城タマヨ

    ○理事(宮城タマヨ君) ありがとうございました。     —————————————
  54. 宮城タマヨ

    ○理事(宮城タマヨ君) 審議の中途でございますが、委員の変更について御報告いたします。本日付をもって菊川孝夫さんが辞任され、その補欠として藤原道子さんが選任されたした。以上御報告申し上げます。     —————————————
  55. 宮城タマヨ

    ○理事(宮城タマヨ君) では続いて逐条説明をお願いいたします。
  56. 長戸寛美

    政府委員(長戸寛美君) 私から法務省所管部分について逐条説明を申し上げます。お手元に売春防止法案逐条説明書というのが差し上げてございますので、それをごらんになりながら御聴取願いたいと思います。  第一条はこの法律の目的を明らかにしたものでございます。特に説明の要はないと思います。  第二条は売春の定義を定めたものでございます。売春という言葉がすでに社会通念として熟しておるということで、特に定義の要はないのではないかというふうな御意見もあるようでございますが、この法律におきまする構成要件の重要な基礎的な用語でございますので、第二条におきまして特に定義を設けた次第でございます。「対償」と申しますのは、売春をすることに対する反対給付としての経済的利益であり、対価または報酬と同じ意味であります。なお、対償は、売春の相手方自身から直接に受ける場合はもちろん、第三者から間接に受けても、あるいは、相手方にかわってこれを負担する第三者から受けても、対償であることに変りはありません。従いまして松元事件のような場合におきましても、対償を受けたというふうにあるいは言い得るかと思います。  「不特定」の相手方とは、性交するときに不特定であるという意味ではなく、不特定の人間の中の任意の一人という意味でありまして、大ざっぱに申しますと、対償さえ受ければ不特定な範囲の中から相手を選ばないで性交するのが売春であるということになります。従って、特定した相手方と性交することは、売春の中には含まれないわけであります。  いわゆる性交類似行為は、例えば男娼あるいは獣姦と称するようなものはここにいう売春の中に含まれておりません。売春の主体は女性に限らず、男性であっても差しつかえない。最近におきまして男が有閑マダムなどにこびを売るというものがあるようでありまして、そういうふうな男性を主体とする売春もここに言う売春であります。その実態は必ずしも明らかではないのでありますけれども、社会の善良の風俗を乱すという点においては女性の場合と変らないというふうに考えられますので、特に主体を制限しなかったわけでございます。しかしながら刑罰の関係においては男性を含むのでありますけれども、保護厚生の措置はもっぱら女性に限定しておるわけでございます。  第二条は、売春をし、またはその相手方となる行為の禁止を宣言したものであります。ただ、この規定に違反した場合の罰則は定めてありません。これを処罰すべきであるというふうな見解にも相当の理由はあると思われますが、第六条から策十五条までにおきまして売春を助長する行為を厳重に処罰することといたしまして、他方第三章において女子に対する保護更生の措置を講ずることにいたしました結果、売春をする者の数は相当減少するものと予想されるわけであります。しかも、第五条の勧誘等の規定の活用によりまして、「売春をし、又はその相手方となる行為」それ自体を処罰することによって達成しようとする目的を相当程度まで達成し得るとかように思っております。さらに、売春をし、またはその相手方となる行為のように、立証が極度に困難であり、かつ、徹底的な立証をしようとすれば、人権侵害の非難さえ生じ得る行為につきましては、この際は立法政策上これを除外するのが妥当であるというような観点から、これを処罰しないといち態度をとったのであります。  第四条は、第二章の罪の捜査に当る警察及び検察庁の職員等この法律の実施に携わる者に対する注意規定を特に置いた次第であります。  第五条は、売春をしようとする者がみずからその相手方を勧誘する行為等のうちで、社会の風紀を害し、一般市民に迷惑を及ぼすものを取り締る趣旨であります。これによりまして、常習として売春をするような悪質な者をかなりの程度まで処罰することができると、かように考えております。第五条の主体は売春を行う者自体でございます。  第一号は、売春をする者がみずから勧誘する行為を規定しております。「勧誘」と申しますのは、特定の人に対して、積極的に、売春の相手方となるように勧めることであります。言葉によって勧誘するのが普通でありますけれども、身ぶり、動作によって行う場合も考えられます。「公衆の目にふれるような方法で」と申しますのは、第二号にあります「道路その他公共の場所で」というよりもやや広い概念でありまして、たとえば、室内から路上の人を勧誘するようないわゆる呼び込みも含まれるのであります。  第二号は、勧誘の準備行為のうちで、特に公衆の迷惑になるような行為を規定したものであります。「公共」の場所と申しますのは、軽犯罪法第一条第五号の、「公共の会堂、劇場、飲食店、ダンスホールその他公共の娯楽場」という言葉があり、あるいは第一条の第十三号には、「公共の場所において多数の人に対して著しく粗野もしくは乱暴な言動で」という言葉がありますように、「公衆の利用し得る」場所を意味するのでありまして、広場とか公園などはもとより、興業場のようなものも、やはり、これに入る、かように考えております。  第三号は、勧誘のように積極的に人に勧めるのではありませんが、みずから売春をする意思のあることを多数の人に表示し、相手方となる者の申し込みを待つ行為を規定したものであります。前段の方は、売春をする者自身の動作によってこれをする場合であり、売春をする目的のあることを明らかにするような態度で、公共の場所をうろついたり、公衆の目に触れる場所に立ちどまっていたりすることがこれに当ります。後段は、広告とか看板とか拡声器その他多数の人に意思を表示し得るような方法による場合を規定したものであります。「誘引」と申しますのは民法学上契約の申し込みを誘うことに使われているのでありまして、本号では、「広告その他これに類似する方法により」という制限があるので、事案上は、不特定または多数の人に対する場合だけが本号に当る、かように考えられます。  第六条は、いわゆる客引きとか、ポン引きとかいうものの処罰規定であります。第一項は、周旋行為を規定しております。「周旋」と申しますのは、売春をする者とその相手方となる者との間で売春行為が行われるように仲介をすることであります。  次に第二項は、第一項の準備行為のうちで、風紀を害し、公衆に迷惑を及ぼす行為を規定したものであり、第一号ないし第三号は、それぞれ、前条第一号ないし第三号とパラレルになっております。ただこの第六条の卵二号におきましては、前条の一号のような「公衆の目にふれるような方法で、」という制限がございません。従いまして客引きが勧誘する以上は、公衆の目に触れるような方法にようない場合でも処罰されるというふうになるわけであります。  それから第七条は、人に何らかの不法な圧力を加えて売春をさせた者の処罰規定であります。  第一項前段は「勅令」第九号の第一条と同じであります。  後段は、親族の情誼を利用し、やむを得ず売春をせざるを得ないようにしむける場合を規定したものでありまして、多くは、父母とか兄とか姉とかの年長者が行為者となるものと思われます。このような行為を特別に処罰の対象といたしましたのは、従来の実情から見て、これによって売春の行われることが非常に多く、しかも、親族関係という人倫関係を利用して売春という不法な行為をさせることは、社会道徳上特に強く非難さるべきことと考えられたからであります。子のために親を罰するということは、その子のためにならないのではないかというふうな考え方があろうと思いますけれども、農村等における封建的なものの考え方というものは、なかなかに抜き難いものがあるわけでございまして、それを是正する意味からも、かかる規定を特に設けた次第であります。  第二項は、暴行または脅迫を手段とした場合であり、刑法の強要罪特別罪として、刑法よりも重く処罰し得ることにいたしました。強要罪は「三年以下の懲役」というふうにされております。  第三項は一、二項の未遂を規定しております。  第八条は、売春によって得られた利益の分け前にあずかる行為の処罰規定であります。  第一項は、前条の罪を犯した者に関する場合でありまして、前条の罪の加重犯ということができます。前条の罪によって行われた売春がここにいう「その売春」に当るわけでありますからして、後になってその一部をでも収受すれば、新たに不法な圧力を加えなくても、本項の罪が成立いたすわけであります。  第二項は、売春行為自体があるいは自由意志によって行われた場合でも、親族関係による情誼を悪用して売春の対償を要求し、その結果として売春を続けることとなることを防止するために、これを規定しているわけであります。  第九条は前貸し等の禁止規定であります。本条は、売春をさせる目的で、人に財産上の利益を供与する行為の処罰規定であります。このような行為は、経済的な利益によって人の自由を拘束し、心ならずも売春をさせるおそれが多い上に、従来も、売春と密接な関係を保っておりましたので、本条によってこれを防止しようとしたわけであります。供与する「財産上の利益」には、何らの制限もありません。金銭、動産等を交付することはもとより、債務を免除することその他金銭に見積ることのできるあらゆる利益を包含しております。ただ、「前貸その他の方法により」という制限が置いてありますので、売春をする意思のある者とする経済的取引がすべてこれに当るのではなく、相手方に対して何らかの影響力を及ぼし、これに売春をする意思を生じさせ、またはこれを強めるような方法を用いた場合に限られるのでありまして、その最も普通の方法として、前貸しを例示しているわけであります。で、無償で利益を与える行為なども、これを受ける者に心理的な拘束力を持つことが多いわけでございますから、ここにいう「その他の方法」に入ることがあると思います。利益の供与は、売春をする者に対してするときだけでなく、第三に対してする場合であっても含まれます。従って子に売春させるために親に前貸しをする行為は、本条によって処罰されます。かように考えております。  第十条は勅令九号の第二条及び第三条と同じであります。売春をさせようとする者と売春をする者の父母などとの間ではもとより、売春をさせようとする者と売春をする者との間でも、本条の契約が成立すると解しております。たとえば楼主と女の親と契約する、こういうことが考えられます。楼主と女自身と契約するということも考えられます。前の場合には双方が処罰されます。楼主も親も処罰されるのでありますが、後の場合には売春をさせようとする者、楼主だけが処罰される趣旨であります。これは女は売春をさせられる対象となるわけでありますからして、処罰から除外されるという考え方に立っております。  第二項で未遂を罰することにいたしております。これは契約の申し込みまたは承諾の段階から処罰ができることとしているわけであります。  第十一条は、売春を助長するおそれのある行為のうち、最も行われ易い場所の提供を処罰する規定であります。  第一項は、単純な場所の提供であります。「売春を行う場所」というのは、売春行為に使用される場所のことでありまして、主として、建物またはその一部がこれに当ると思いますが、その他の建造物やあるいは自動車などもこれに入る。「提供」と申しまするのは、売春に利用し得る状態に置くことでありまして、貸与その他の処分をする権限のある者が占有権を移す場合はもとより、場所を事実上占有している者が、一時的に使用を許可するような場合も含まれるのであります。で、建物または部屋を貸しました後に事情を知った場合に、これを理由として賃貸料を引き上げをしたり、あるいは容易にその部屋の返還を求めることができるのに、賃貸期限後契約の更新をしたりするなどは、実質的に見て新たな契約提供があったと認められるわけでございますから、本項の罪が成立する、かように考えております。  第二項は、場所の提供を業とした場合の処罰規定であります。業とすると申しますのは、単に継続的に行う意思をもってするだけでなくて、一個の業体としてする必要があると考えております。ここのしまいの方に、「旅館業等を憎む者がたまたま売春の場所を提供したときは、その回数が多くても、前項の罪」——すなわち単純な場所の提供罪——「が成立するのは格別、本項にはあたりません。」こう書いてありますが、これはたまたま行われるならば、たとえその回数が多くても第一項の単純な場所提供罪であって、この二項の方には当らないという趣旨でございますが、しかしその回数が非常に多くなってくるという場合におきましては、二項の業体犯が成立する場合もあろうかと考えております。  第十二条は、人に売春をさせることを業とする者の処罰に関する規定であります。この種の行為は、売春を助長する行為のうちで最も悪質なものとして、特に処罰の必要が痛感されるものであります。自己の占有する場所と申しますのは、所有権、賃借権その他の権利に基いて占有する場所をいい、管理する場所と申しますのは、事実上その場所の使用について相当程度の発言権を持っている場合、たとえば自分では賃借人にはなっていないけれども、賃貸人との間の特殊な関係によってその場所にだれが居住するかについてある程度指図ができる場合などをいうのであります。自己の指定する場所と申しますのは、売春をする者との連絡を容易にするために指定した一定の場所のことであります。これらの場所に人を居住させ、これに売春させることを業とすれば本条の罪が成立する。いわゆる貸座敷業はもちろん、娼婦置屋といわれておるものの多くはこの自己の占有する場所に人を居住させてこれに売春をさせているといえるわけでございますが、今後はアパート等に人を居住させ、呼び出し等の方法によってこれに売春をさせる場合、すなわち管理しまたは指定する場所に居住きせて売春をさせる方法のとられる場合が多い、かように考えております。売春をさせられる者の数には別段の制限がありません。なお売春をさせる場所についても制限がございませんからして、自己の占有する場所で行わせる場合でも、また他の場所に行って行わせる場合でも本条が成立する。従っていわゆる派出するというような状態もこの十二条によって処罰の対象となるわけでございます。  第十三条は、第一条第二項の場所の提供を業とする者及び前条の売春をさせることを業とする者を幇助する行為のうち特に悪質なものを通常の幇助犯よりも特に重く処罰する趣旨規定であります。本条規定する行為は資金、土地または建物の提供であります。提供した資金が売春に関する営業に用いられていることを知った後、容易に回収できるのに手形の書きかえ等をした場合には、新たな提供として処罰の対象となる、かように考えます。  第十四条は両罰規定、第十五条は併科の規定でございます。  付則に飛びまして、第一項は施行期日を定めた規定でございます。この法律は本来ならば直ちに実施し、一挙にその目的を達することが望ましいのではありますけれども、第三章に規定する保護更生の措置を講ずるには、施設、人員配置その他の面で相当の準備を必要といたしますので、第一章及び第三章、すなわち総則、それから保護更正の規定は、昭和三十二年四月一日から実施することとし、また第二章の刑事処分に関する規定は、売春に関係している者が自発的に転業その他の措置を講じ得るための猶予期間を設ける趣旨で、一年おいた昭和三十三年四月一日から施行することにいたしてあります。  第二項は勅令九号の廃止の規定でございます。  第三項はその経過規定であります。第四項は地方条例との関係を規定いたしております。第四項はこの法律の施行が地方公共団体の条例に及ぼす効力を明らかにした宣言的な規定であります。従来は地方条例が出ておったわけでございますが、この法律では売春を助長する行為を初め、売春をする者の勧誘行為等を広く処罰することにいたしましたので、これによりましてこの法律に規定する行為はもちろん売春をし、またはその相手方となる行為、その他売春に関係する一切の行為は、すべてこの法律によって規律しようとする国の意思が明らかとなるわけでございます。ここに二十一ページに「取締ろうとする国の意見」とございますが、これは規律しようとする国の意思というふうに訂正いたしたいと思います。従って国の意思に反することとなるいわゆる売春条例の規定は当然無効となるわけでありますので、本項におきましてその趣旨を明らかにしたのであります。これによって初めて条例を廃止するこういう創設的な効力規定したものではない、いわゆる宣言的な規定にすぎないわけであります。なお性交類似行為を取締りの対象とする条例は、この法律の施行によって何らの影響をも受けないと、かように考えております。売春及び売春助長行為に関する処罰規定のみが失効するのでありまして、性交類似行為を取締りの対象とする条例及びその罰則規定は影響を受けない、かように考えております。  第五項はその経過規定を定めたものでございます。  私どもの関係の部面を申し上げました。
  57. 宮城タマヨ

    ○理事(宮城タマヨ君) ありがとうございました。本案について御質疑のおありの方は順次御発言願います。  厚生省の社会同生活課長河角さんが見えておりますから、引き続きましてこの売春防止法の第三章の関係の逐条説明をお願いいたします。
  58. 河角泰助

    説明員河角泰助君) それでは第三章の保護更正の部面について補足的に説明させていただきます。  第十六条は婦人相談所の設置並びに業務に関する規定でございます。提案理由の御説明の中にもございました通り、要保護女子の保護更生の措置につきましては、既存の関係諸法例の適切な適用と、それから公共の福祉に関する諾施設の十分な活用に待つところが大でございますが、その統一的な窓口機関といたしまして、婦人相談所というものを設けることにしたのでございます。  第一項は、都道府県に婦人相談所の設置義務を課した規定でございます。  二項は、業務に関する規定でございまして、婦人相談所の対象となります女子は、性行または環境に照して死存を行うおそれのある女子でございまして、いわゆる売春婦であった人々はもちろん、売春の経験のない、放置しておけばそういった環境に転落するというおそれのある家出娘のようなもの、そういったものを考えております。従って売春の有無の経験は問わないわけでございます。これらの要保護女子に関しまして、保護更生の中心機関となりまして、相談、調査、判定、指導あるいは一時保護の業務を行うわけでございます。  三項は、婦人相談所の職員に関する規定でございますが、職員の資格要件等につきましては、後段の政令で定めるつもりでございます。  四項は、一時保護施設の設置に関する規定でございまして、婦人相談所が相談業務を行うに当りまして、要保護女子のうちには、適当な宿所のないものもございましょうし、あるいは緊急に収容、保護する必要もありますので、相談所で措置がきまる間、一時保護施設を設けましてこれに入れておく、そのために婦人相談所に一時保護施設を設置しなければならないとされているわけでございます。  第五項は、政令に委任いたしました政令委任の規定でございまして、婦人相談所の設備、運営に関する基準でありますとか、職員の資格要件、こういったようなものを考えております。  第十七条は、婦人相談員に関する規定でございます。婦人相談員につきましては、都道府県につきましては義務設置、市につきましては任意設置とされております。要保護女子につきまして、その発見あるいは生活の問題、職業の問題、健康の問題、婦人保護施設入所の問題等々の問題について相談に応じ、また関係施設へのあっせんその他必要な指導を行うことを業務といたします。  十八条は、婦人保護施設に関する規定でございます。婦人保護施設は、要保護女子のうち、生活指導でありますとか、職業訓練、授産、就職の助成等を行う必要がありますものを収容する施設でございます。もちろん婦人保護施設の設置につきましては、必要なことはもちろんでございますけれども、各府県の売春環境の相違等からいたしまして、一律に設けることが困難でございますので、一応各府県の任意設置といたしたわけでございます。  十九条は、民生委員等の協力を規定いたしましたものでございますが、もちろん福祉事務所であるとか職業安定所、あるいは婦人少年室といいましたような公共の福祉に関しまする諸機関、諸施設も、それぞれその本来の職務の線に沿って、こういった女子の保護史生に携わっているわけでございますが、そういった公共の諸機関については従いまして特に規定いたしておりませんが、ここにあげられておりますのは、民間篤志者、奉仕的なものについて、その協力を期待することが大きいので、念のために規定したわけでございます。  二十二条は、これらの仕事を行いますにつきまして、それぞれ都道府県及び市が費用を支弁するという規定でございます。婦人相談所の設置あるいは職員の配置、それから婦人相談員の設置、収容施設を設置する費用、それから一時保護施設や、あるいは収容保護施設に収容いたします費用を規定いたしております。  二十一条は、都道府県が、市町村または社会福祉法人に対する補助に関する規定でございまして、負担率は、生活保護法の保護施設と同一といたしております。  二十二条、これは国が、これらの費用を支弁いたします都道府県並びに市の費用に対しまして、負担ないし補助をするという規定でございます。相談所の設置、相談所の職員の費用、それから婦人相談員の設置の費用につきましては、それぞれ二分の一を国が負担いたします。それから相談所に付置されます一時保護施設、これにいれます収容費につきましては、十分の八を負担いたします。婦人保護施設の設置並びにこれの収容に伴う費用につきましては、それぞれ十分の五ないし十分の八以内を補助することができると規定しております。  付則に移りますが、保護更正の部面は昭和三十二年四月一日から施行になるわけでございます。  それから付則の六項、社会福祉事業法の一部を改正いたしまして、要保護女子の保護更生に関する事業のうち、収容保護施設を経営する事業を、その性格にかんがみまして、社会福祉事業法の第一種社会福祉事業に加えることにいたしたものでございます。  付則の七項は、婦人相談所及び婦人相談員に対しまする国の負担規定の関係で、地方財政法に所要の改正を加えたものでございます。  簡単でございますが、説明といたします。
  59. 宮城タマヨ

    ○理事(宮城タマヨ君) ありがとうございました。  ここに文部省から内藤社会教育局長が見えておりますから、どうぞ御質疑のおありの方は御発言願います。
  60. 藤原道子

    藤原道子君 質疑は次回に譲られてはいかがでございましょうか、時間も四時過ぎておりますし、五時から売春会議もあるのじゃないでしょうか。
  61. 宮城タマヨ

    ○理事(宮城タマヨ君) 皆さんいかがでございますか。  ちょっと速記をとめて……。   [速記中止〕
  62. 宮城タマヨ

    ○理事(宮城タマヨ君) 速記をつけて下さい。  それでは本案につきましては次回に続行することにいたしまして、本日はこれをもって散会いたします。    午後四時十三分散会      —————・—————