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1956-04-24 第24回国会 参議院 法務委員会 第17号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十一年四月二十四日(火曜日)    午前十一時九分開会     —————————————   委員の異動 四月十九日委員加藤武徳君、佐野廣 君、菊田七平君、新谷寅三郎君、笹森 順道君、井上清一君、亀田得治君及び 奥むめお辞任につき、その補欠とし て泉山三六君、岩沢忠恭君、西郷吉之 幼君、上原正吉君、松野鶴平君、秋山 俊一郎君、江田三郎君及び井野碩哉君議長において指名した。 四月二十日委員秋山俊一郎君、西郷吉 之助君及び石坂豊一辞任につき、そ の補欠として小幡治和君、中山壽彦君 及び大屋晋三君を議長において指名し た。 四月二十一日委員小幡治和辞任につ き、その補欠として小柳牧衛君を議長 において指名した。 本日委員江田三郎辞任につき、その 補欠として亀田得治君を議長において 指名した。     —————————————  出席者は左の通り。    委員長     高田なほ子君    理事            一松 定吉君            小林 亦治君            宮城タマヨ君    委員            中山 壽彦君            松野 鶴平君            亀田 得治君            羽仁 五郎君            市川 房枝君   政府委員    警察庁刑事部長 中川 董治君    法務政務次官  松原 一彦君    法務省刑事局  長戸 寛美君    長事務代理    法務省入国管理 内田 藤雄君    局長   事務局側    常任委員会専門    員       西村 高兄君   説明員    法務省刑事局刑    事課長     横井 大三君    最高裁判所長官    代理者    (事務総局家庭    局長)    宇田川潤四郎君     —————————————     本日の会議に付した案件 ○検察及び裁判運営等に関する調査  の件  (京都市における傷害致死事件に関  する件) ○外国人登録法の一部を改正する法律  案(内閣提出衆議院送付)     —————————————
  2. 高田なほ子

    委員長高田なほ子君) ただいまより法務委員会を開会いたします。  議事に入る前に委員変更について御報告を申し上げます。  四月十九日、井上清一さん、亀田得治さん、奥むめおさん加藤武徳さん、佐野廣さん、菊田七平さん、新谷寅三郎さん、笹森順造さん、以上の方々辞任せられまして、次の方々が選任せられました。秋山俊一郎さん、江田三郎さん、井野碩哉さん、泉山三六さん、岩沢忠恭さん、西郷吉之助さん、上原正吉さん、松野鶴平さん、以上の方々補欠に当られたわけでございます。  四月二十日の委員変更の御報告をいたします。石坂豊一さん、同じく西郷吉之助さん、秋山俊一郎さん、このお三人が辞任せられまして、これらの方々補欠として、大屋晋三さん、中山壽彦さん、小幡治和さん、以上の方々が選任せられました。  四月二十一日、小幡治和さんが辞任せられまして、小柳牧衛さんが選任されました。  四月二十四日江田三郎さんが辞任せられまして、亀田得治さんが選任せられました。以上御報告を申し上げます。     —————————————
  3. 高田なほ子

    委員長高田なほ子君) まず、検察及び裁判運営等に関する調査を議題に供します。  京都市における傷害致死事件について、法務省及び検察当局から報告書が提出されておりますので、一応御説明をお願いいたします。
  4. 横井大三

    説明員横井大三君) それでは、いわゆる京都五番事件と申しますか、この事件につきまして、四月十二日に調査に参りましたその結果の概要を御説明申し上げます。  調査いたしましたのは四月十二日でございまして、真犯人と称する佐藤久夫なる者が検察庁へ出て参りました日が四月四日でございますので、約八日後でございます。で、調査いたしました場所は、京都地方検察庁及び犯行現場付近でございます。主として関係された方々から事情を聴取するという方法でいたしました。お話を伺いましたのは、第一に地検関係で、検事正の熊沢孝平氏、次席の泉政憲氏、公判部長検事中沢良一氏、この中沢検事はこの最初の少年四名を起訴いたしました事件捜査を担当されたのでございますが、これは少年事件でございますので、本来少年係検事が担当するのが通常でございますが、少年係検事でありました山中検事が欠勤をしておられましたので、前少年係という形で中沢検事が担当されたそうであります。次は、京都地検検事早川勝夫氏でありますが、これは真犯人と称する佐藤久夫事件を担当しておられました。それから少年四名の公判を担当されました森島検事、以上が検察庁関係でございますが、警察からは刑事部長の揚子氏と、監察課長の黒田氏、なお、特にこの四名の少年は、家庭裁判所へ一たん送られまして、それから逆送になっておりますので、家庭裁判所調査官にもお目にかかりましてお話を伺ったわけでございますが、この三名の調査官でございますが、淵上、塩見、川口の二氏でございます。なお、公判記録と、保護事件記録等をざっと見て参りました。何分一日でございますので、詳細に検討する余裕はございませんでしたが、とにかく一応は目を通すということで調査して参りました。私が参りましたときの調査の焦点と申しますのは、現在佐藤久夫が、自分がやったと言って検察庁へ出て参りました。現在から見まして、宋ほか三名の者を傷害致死犯人として起訴したのは、結果的には間違っておったのでありますが、一体その事情はどうであったか。もちろんこれに関係しまして、人権じゅうりんの点にも触れてくる、こういうつもりでございました。  第二点は、西村外二名偽証疑いで調べまして、そうして、うち二人を逮捕したということがわかっておりましたので、その事情、大きく分けますとこの二点、それを中心に調べて参ったわけでございます。  で、調査の結果は、まず第一の点でございますが、私が参りましたときには、佐藤久夫傷害致死犯人であるということを申し出て参りまして、一応検察庁で調べた段階でございますが、そのときには、その担当をした検察官の心証によりますと、佐藤久夫真犯人に間違いないであろう、こういうことでございました。その当時は、なお凶器に付いております血痕とか、その他の裏づけ捜査ができておりません段階でございましたので、まだ捜査が完了しておったわけではございませんが、大体当時の段階で、佐藤久夫真犯人であるということは間違いないだろう、こう申しておりました。  なお、これに関連しまして、佐藤につきましては、その後、四月十九日でございますが、傷害致死犯人として起訴した、こういう報告が参っております。従いまして宋外三名を傷害致死犯人として、ことに宋が傷をつけたんだ、現実に傷をつけたのは宋であるということで起訴いたしました捜査機関検察官判断は、結果的には確かに間違いであったということになるわけであります。  しからば、なぜ一体そういう事情が生じたのかという点でございますが、私の聞きました範囲におきましては、まず宋ほか三名の者が、犯行現場におったということ、これは間違いない事実、現在でも間違いない事実でございます。さらに宋外三名が、被害者として傷をつけられました木下治外三名の者と犯行現場において格闘をしたということも、これも間違いない事実であります。それから宋ほか三名の、当時少年でごさいますが、のうち二人が、傷害行為をしたのは、どうも宋と思うというようなことを供述しておるのでありまして、この供述は、家庭裁判所におきますその少年供述調書にも出ておるわけであります。従いましてこの傷害を起した犯人が、この四名の少年のうちにある、ことに宋ではなかろうかという疑いをかけるのは無理がなかったのだというような感じがするわけであります。なお、宋の肩衣には血痕が付着しておりまして、そうしてその血は被害者木下治の血液型と同じであったということもあるのであります。さらに宋が警察におきまして自白をしておるということであります。これらの事情、当時の状況を総合いたしまして、検察官といたしましては、宋外三名が一緒になって木下治外三名の者とけんかをいたしまして、その機会に宋が傷害を与えた、こういうふうに認定したようであります。  ただ、当時の検察官の気持といたしまして、凶器が出ておらない。しかも宋が自白いたしましたあと兇器の所在につきましていろいろ尋ねますというと、その供述がひんぱんに変るおけであります。で、変るつど裏づけ捜査のために、そこへ行って兇器を発見しようといたしましたが、それが見つからないわけであります。最後まで凶器が見つからないままに事件は終っておるわけでありますが、その点は検察官としまして非常な心残りであったようであります。  ただ先ほど申し上げましたいろいろな事情から、どうもこの四人の少年犯人である。ことに宋が傷害を加えたものであるというふうに考えるだけの十分な理由がある。こう考えまして、刑事処分相当の意見を付して事件家庭裁判所に送ったわけであります。家庭裁判所は、調査官に聞きますというと、主として四少年の性格とか環境などを調査したようでありまして、事実関係につきましては特に新らしい証人を呼ぶとか、その点を中心として調べるということはなさらなかったようであります。しかしながら四人の少年供述被害者供述、従来の記録等を検討されました結果、凶器が出ない点になるほど一まつの疑問はあるけれども、しかしながら客観的な事情から見まして、相当この四少年疑いをかける理由がある。しかもこの四少年につきましては前歴等を考えまして、刑事裁判所におきまして審判をしてもらうのが適当である。こういうことから検察庁事件を逆送して参ったということであります。  そこで検察官は、この次庭裁判所調査の結果と、従来の捜査機関捜査の結果等を総合いたしまして、宋外三名を傷害致死の共犯として起訴するに至った。こういうような状況になっております。  起訴事実はお手元にお配りいたしました書面に書いてございますが、この四人の少年につきましては、傷害致死の事実と、それ以外に宋少年につきましては十数回の暴行罪、あるいは恐喝罪等がございまして、これらをあわせて起訴しております。なおそのほか二人の山田、山本両少年につきましては窃盗あるいは道路交通取締法の余罪があるというので、それもあわせて起訴しておるようであります。  これがまあ起訴に至りました経過でございまするが、この経過と、それから佐藤久夫真犯人らしいということの確定いたしました現在の状況から判断いたしますと、まあいろいろ捜査に欠陥があったということが考えられるのでありますが、そのおもなものを私の判断であげて見ますと、まず第一に、事件発生直前現場付近において被害者木下治と、佐藤久夫とがけんかをいたしまして、仲裁人が入って一応おさまっているという事実があるのであります。このおさまったあとで、もう一度けんかがあるわけでありますが、そのけんかのある一つ前に、被害者と、それから真犯人と称せられる佐藤久夫とが実はけんかをいたしておりまして、そういう事実が捜査の上に現われておらなかった。従って佐藤久夫という人物が、もしこの事実が明らかになっておりますというと、くっきり浮び上っておったのではなかろうかと思われるのですが、その点には捜査が及んでおらなかった。この点が一つと、それから犯行直前及び直後に佐藤久大現場付近の酒場に立ち寄りまして、そこの女中に事件現場を見にやっている事実が、佐藤久夫供述から出てくるわけであります。それがもしわかっておりますというと、やはりこの場合におきましても、佐藤久夫という人物が浮び上ってくるはずであったわけでありますが、その点が前の捜査には現われておらないということ。それから木下らと、宋らとのけんか仲裁人がいたということが、捜査過程に現われておりますが、これがいつの間にか消えているわけです。この追及がもう少し行われれば、あるいは真犯人なるものが浮び上ってきただろうと、こう思われるわけであります。  で、これらの事情は、これは真犯人が現われましての現在から推測いたしますと、そういう点にやはり不十分な点があったのではなかろうかと思われるのでございます。当時の状況としてどうであったかという点は、これまた別個の判断になろうかと思います。  次に宋が自白しております。警察で……。この点において人権じゅうりんがあったのではなかろうか、こういう疑問が当然持たれるわけであります。で、私の調べました範囲では、少くとも検察庁取調べ段階におきましては、そういうことはなかったように思われるのであります。警察における取調べ段階でございますが、この点につきましては、直接取調べをいたしました方々に私はお目にかかることをいたしませんで、現在警察におきまして、この捜査過程における人権じゅうりん問題を調査しているということでございましたので、その調査をしておられる方にお目にかかって伺ったのでありますが、私の伺いました当時におきましては、被告人らの主張しておりますような、そういう暴行脅迫等の事実は、具体的には現われておらない。ただ、しかしながらこういう事件があるから、徹底的にその点を調べる。で、遠からず結果がわかると思う。こういうお話でございました。私はその程度で、警察捜査調査の結果を伺うということで、警察関係の調へは、それで打ち切って参ったのであります。  以上がこの第一の問題、つまり宋外三名を傷害致死犯人として起訴した事情でございます。  次は偽証の点でございます。検察官昭和三十年の、昨年の十一月十七日に行われました佐藤和代公判廷における証言、これがございますが、これに一応虚偽ではないかという疑いを持ちまして、さらに本年の二月十六日に行われました村松泰子という証人証言に至りまして偽証疑いを濃くいたしました。そこで二月二十四日村松証言の行われました後約八日たっておりますが、西村というものを偽証教唆で逮捕いたしました。それから三月二日に村松偽証で逮捕するに至った、こういう日時の経過になっております。  しからば、どういう意に、どういうところから偽証疑いを持つに至ったかということでございますが、佐藤和代公判廷でどう述べておるかといいますと、事件の当夜鍋町通り七本松角、これは犯行現場のかどでございますが、で七本松通りを南から北に走って行った男に突き当った、京都南北東西に碁盤の目のように道がなっておりますが、そのかどを南から北に走って行った男にそのかどでぶつかった。その男は白い上着を着て帽子をかぶって、黒か紺の上市を着ておった、突き当った後、その男は鍋町通りを東に行った、つまりかどから右に曲って行った、その直前鍋町通り六軒町のかどの公衆便所で人が手を洗っているのを見た友人から、刃物を洗っていたと聞いた、しかしながらその友人の氏名はわからない、こういったような供述をしたわけであります。ちょうど何か真犯人らしい本件被告人以外の人物に会ったというような印象を与える供述でありました。ただ、この佐藤和代証言につきましては、その供述調書公判記録を見ますと、それ自体それほどはっきり出ているわけではございません。この程度のことでありましたので検察官としては疑いを持ちましたが、そのままにしておったようです。ところが本年の、一月十六日に行われました村松証人証言かございました。この証、言では、実にはっきり真犯人らしい者を見たという供述になって参るわけであります。村松証人法廷で、事件当夜六軒町通り下長者町西南かどの公衆便所——これはかなり犯行現場から離れます——で、白いアンダーシャツか白い毛糸トックリシャツを着ておって、濃い紺の背広を着て中折帽左斜めにかむっていたようでありますが、右側の前の頭の毛が縮れておって、パーマをかけたように見えた。雨ぐつの短いのをはいておって、ズボンのすそをその中に入れた男に会った、その男が自分を押しのけるようにして手を洗いに来た。その男の洗っておるのを見ると、二本筋の入った日本手拭を洗っており、さらに何かぴかっと光るものを洗っておる、その男はそこから南の方に行って自分北の方に行った。そうして鍋町のかどで佐藤和代に会った。先ほど出て参りました佐藤和代証言では知らない人だといっており、村松証言では自分が会ったということで村松佐藤とは親しい間柄であったわけですが、そういう供述をいたしたわけであります。村松証言は非常に明確であります。ことに、ここには書いてございませんが、手や手拭いを洗っておった状況をこと細かに述べておる、村松証言があった直後、その日のうちに裁判所現場検証をいたしております。それで、村松証人証言によりますと、六軒町通り下長者町のかどということになっておりますが、そこへ行きましても便所はございません。それでその付近に二つございまして、北の方に鍋町通り六軒町かどに便所がありますが、これは先ほどの佐藤和代証言に出て参ります便所であります。それからそれより西の方に七本松通り下長者町かどの便所がございます。これはかなり離れております。村松を連れて参りますと証言した所には便所がない。そこでまず鍋町通り六軒町通り便所へ連れていきましたら、これは違う。実はここが後に真犯人が手を洗った所でありますが、違う、でそれよりもずっと西の方になりまする七本松通り下長者町通りのかどの便所である。こういうふうにはっきり言ったようでありまして、そこで一体その村松証人の明確に否定いたしました便所で、果して当時の照明の工合から、そんなに詳しくはっきり見えるかという点に非常な疑問を持ったようであります。しかも佐藤和代は名前を知らない人から何か光るものを洗っておったという供述を受けておりますが、それは村松証言では村松である。村松佐藤はよく知った間柄である。その他服装等の点について多少の食い違いが見られる。こういうような状況から、検察官としては偽証疑いを深めまして、村松証言のありました後、しばらくたちましてから、佐藤和代を調べたようであります。そうしますと佐藤和代はもちろんはっきり偽証だということではございませんが、その調べの結果によりますというと、佐藤は、西村正美という者に頼まれて、自分と突き当った男の服装について、記憶に反する供述をした。それから村松から頼まれて公衆便所で洗っていたのは刃物であると聞いたと記憶すると供述するように頼まれた。こういうようなことを述べております。そこで、少くとも佐藤が、証言の一部ではございますが、記憶に反する供述をしておるということで、しかもそれは西村から頼まれた、こういうことで西村偽証教唆で逮捕いたしました。それで次いで村松泰子を逮捕するに至ったのでありますが、村松はこう言っております。自分の見た男はえりの分厚な白えりトックリシャツを着て、マフラーを前から首に巻きつけていた。佐藤和代から上着を着ていたと法廷で述べたので、それに合わせてもらいたいと言われてそう述べた。先ほど申し上げましたように濃紺の背広を着ておるという法廷証言でありますが、マフラーを前から首に巻きつけておった、白のトックリシャツを着ておった。これはその後村松証人につきまして検察官が聞きましても、この供述は変っておらないようであります。さらに西村も、浜田——これはこの四少年のうちの一人でございますが、浜田の母親から、現場付近真犯人らしい人を見かけた人があったらば教えてもらいたい、こういうふうに言われて、佐藤和代トックリ白シャツ中折帽子の男にすれ違ったということであったので、裁判官にはっきりわからせるために衝突、突き当ったというふうに述べてくれ、こう言われた、こう申した。それで佐藤和代証言は先ほども申し上げましたように突き当ったという証言になっております。しかしながらこの村松佐藤西村等を調べましてそれ以上の証言は得られなかったのであります。そこで偽証事件の性質上、これ以上追及しても追及することは困難であろうというところから、村松を逮捕をしました即日西村村松を釈放いたしておりますのであります。  以上の証言と、それから佐藤久夫が出て参りまして当時の服装を述べましたところといろいろ検討いたしてみまするというと、村松法廷供述しました男の服装というのは、佐藤久夫の当夜の服装ときわめて類似しておるのであります。その点に関する限り虚偽ではなかった。客観的事実には合っておったということになるのでありますが、一体なぜそのような一致したのか。私が調べて参りました覇時の状況では、はっきりいたさないのであります。で、ただ私が、これらの状況から想像いたしましたところによりますと、佐藤久夫服装というのは、この佐藤久夫浜田らと、つまり宋ほか三名の少年と、木下治あるいは木下治兄等が、犯行現場で相対峙して、今にもなぐり合いを始めようというその現場へ立ち現われまして、そうしてけんかの中に入っておるわけであります。従いまして浜田自分のすぐ目の前でこの仲裁人として現われた佐藤久夫を見ておるわけであります。それがいろいろ伝わり伝わりまして、佐藤村松供述になったのではなかろうかと、こう推測されるのであります。これは推測の範囲を出ません。  ただ西村佐藤村松間に供述の一致をはかるためにある程度の打ち合せの行われたということは、これらの関係者供述からうかがえるのであります。それを検察庁偽証工作、こういうふうに考えたと思われるのであります。以上が偽証罪として事件捜査した経過でございます。  最後佐藤久夫検察庁へ出頭するに至った事情でございますが、佐藤久夫は母と姉、妹各一人とおりまして、姉は谷口義弘弁護士事務員をしておられる方のところへ嫁しておられますが、佐藤事件直後非常に沈みがちであって、今年になってから特にひどかったようであります。三月二十日過ぎごろ「真昼の暗黒」という映画を見まして、その煩悶を特に強めまして、三月二十日に至ってこの姉の主人であります高木氏に犯行を打ちあけ、直木氏から母に伝わりまして、そして母が自首を勧めるというような経過をたどりまして、そうして四月四日に当時の服装——白い毛糸トックリシャツと紺の背広の上下、皮の半長靴とナイフ、中折帽を持参しまして検察庁へ出頭したという結果になっております。  私が調査して参りました段階におきまする当時の模様というのは以上でございます。
  5. 中川董治

    政府委員中川董治君) 警察庁刑事部長ですが、本件につきまして警察関係者につきましての非行その他の状況の点につきまして厳重調査いたしました。そういった状況等につきまして御報告申し上げたいと思います。  まず、本件事件は、ただいまも御説明ございましたように、昨年の四月十日の夜おそく十時半ごろの事件でございますが、当時の警察状況は、昨年の四月でございますので、現行の制度でなしに、当時は京都市は京都警察管轄区域に属しておったのであります。京都警察はその後六月三十日をもって廃止され、七月一日からは京都府一円を管轄する京都府警察に統合されたのでございますが、本件事件を取り扱った当時におきましては、京都警察管轄に属しておった事件でございます。従いまして本件事件関係者その他につきまして厳重に調査をいたしたのでありますが、調査方法といたしましては、事務所を大阪に持っております近畿管区警察局というのがございますが、近畿管区警察局部長課長並びに統合後の京都府警察本部にこういう警察職員非行その他の摘発を主なる任務としております監察課というものがあるのでございますが、京都府警察本部警務部監察課というものがありまして、課長以下の職員が直接、関係その他について厳重に調査されたのであります。  まず事犯の内容は、ただいまも御説明あったのでございますが、一口に申せば、京都のあの盛り場で深夜、今にして思えばこの宋外数名の者と木下らとのけんかが、第一現場第二現場という形で行われ、ほかにももう一つ佐藤久夫と大下とのけんかが時間を接近して競合して行われて、その佐藤木下けんかについて、そこまで捜査が伸びていなかったという欠陥があるということが一つの大きな根本問題でございますけれども、そうして宋以下山本らと木下とのけんけが行われたことも事実でございますし、それに対して木下を死に至らしめるという致命傷を与えたる者の識別に、確かに欠陥があったという、こういう事件でございます。そうしてわれわれが警察関係者といたしまして特に力点を置きましたのは、宋以下数名の者と木下——被害者とのけんかが行われたことは事実であり、そのけんかにおいて宋以下は初めから警察に対してけんかが行われた事実はもちろん供述している、ところが直接致命傷を与えた点につきましては、最初否認しておったのでございますが、十日の事件でございますが、十八日に至り、宋が自分が刺したのである、この旨の供述があった、こういう点に私たち調査中心を置いたのであります。一番私たち調査中心を置きましたのは、こういう供述するに至ったのは、結果において間違っておったので、供述を行うという段階等に関連して、あるいは関係警察官等に暴行その他の不当な捜査方式があったのではなかろうか、こういう点に調査中心を赴いたのでございます。  それで、本件調査に当りましては、その関係者、そういう問題が起りましたところの関係者、宋以下の関係者が健在しておりますので、その関係者から言い分を聞くということはもちろんでございますし、当時関係いたしました警察官の職員は大部分統合せられて京都府警察職員でございますが、警察の統合でございますので、待命等によって現に警察の職務に従事していない者もあるのでございますが、そういった人たちの調査もあわせて行いまして、その両関係者調査はもとよりでございますけれども、それだけでは調査は十分でございませんので、そういう事柄の状況を知り得る状態にある者、またその状況を推知する状態の者の一切の関係者につきましていろいろ調査を進めたのであります。たとえて申すと、宋以下が逮捕されまして、留置されまして、そこに同居しておるところの留置人の方々に、当時の留置人の方々に、その当時の状況等を詳しく聞く、こういう作業もいたしました。そのほかにその事件のそういう供述があったことに伴って、もちろん本件事件検察官にも送致しており、ことに家庭裁判所に送られておる事件でございますので、その当時の比較的被疑者の心境等に対して接触されました検察官方々裁判所調査官方々、こういう方々からも事情を聴取いたしました。その他、当時の状況等を勘案いたしまして、厳重に調査をいたしたのであります。そして現段階として私どもは調査の一応の結論を持っておりまして、以下申し上げたいと思いますけれども、私ども警察関係者といたしましては、犯罪捜査に当り証拠を中心に、証拠と申しますのは釈迦に説法でございますが、物的証拠はもちろんでございますが、目撃者その他の供述を含めての証拠を中心に、犯罪捜査をやるという建前で推進いたした次第であります。言葉をかえて申せば、科学的、合理的な捜査を推進いたしたいという熱意を持っておりますし、取りわけ捜査に当り暴行傷害等のことがあれば大へん申しわけない、こういうことを全国の警察から絶滅したいと、こういう強い信念を持っており、強い熱意を持っておりますので、本件につきましても厳重に調査いたしたのでございますが、さらにそういう熱意に基く調査は永久にやる考えでございますけれども、ひとり京都に限りませんが、そういう考えを持っておりますので、皆さん初め関係者方々の協力を得て、りっぱな警察を作り上げたいと、こういう熱意を持っておりますので、本件調査につきましても、そういう角度から、ともすると警察の仲間は警察が庇護するというようなことになっては、ほんとうの犯罪捜査というものを合理的にできないと、こう思いますので、そういう角度から本件事件調査いたしましたが、今後あらゆる事件もそういう角度から厳重にいたしたい。本件につきましてもそういった、ただいまの問題の真実の発見のためには永久に努力する覚悟でございますけれども、いろいろ資料に基いて、あるいは関係者供述に基き、そのときの状況を勘案して、一応の結論を出すと、こういう建前をとっておるのでございます。  以下申し上げますが、まず最初は、十一日の口にそれぞれ関係者の身柄は警察に来たのでございますが、そのときはけんかが行われた状況等についての陳述もありますし、それを疑うにたる資料は十分あったのでございます。たとえば宋が被害者の返り血を浴びている、今にして思えば刺したことは間違いなかったんでございますけれども、そのけんかに関与しておりましたので返り血を浴びている。それからただいま法務省の方の御説明にございましたトックリシャツのあの問題とか、そういった問題、十分にあったのでございますが、直接手を下して、すなわち刃物をもって、飛び出しナイフをもって被害者木下を刺したという点につきましては、関係者はいずれも否認しております。否認しておったのでございますが、ちょうど十八日の日に至り、当時取調べに従事しておりました、一番現実に取調べに従事しておりました筆頭と申しますのは広瀬という警部なんでございますが、広瀬警部さんに申し上げたいことがあると、こういう申し出に基いて広瀬警部に対して初めて自供が行われたのであります。その広瀬警部に対する自供は、警察にいろいろなことを言ったけれども、ほんとうは自分がやったんであると、こういう旨の陳述をいたしたのでございます。それでまたそのときの状況はと、こう聞いて参ると、一応状況説明したんでございますが、問題の飛び出しナイフの所在につきましては少しあいまいであったと、その後だんだん聞いて参りますと、隠した場所その他につきましては供述をしたのでありますが、供述の都度その飛び出しナイフの所在を調査その他によって発見に努めたんだけれども、それが見つからない、そういうことが十数回に及んだのでございますが、それでナイフが見つからぬという点につきましては、捜査当局といたしましては、ただいまもお話がありましたごとく不審に思っておったのでありますが、だんだんそういう状況で進めましたところ、四月二十六日に至りまして、これは飛び出しナイフが見つからないということにも関係したのでありますが、二十六日に至って、たまたま最初に自供しました広瀬警部が当該西陣署におらないで、京都市内に他の事件がございまして、山科警察署という警察署がございますが、山科警察署で今申した広瀬警部が他の捜査事務に従事中のときに、もう一ぺん広瀬警部に会わしてもらいたいという申し出が宋被疑者からございましたので、山科署に勤務中で仕事をしておりました広瀬警部は、さっそくその西陣警察に帰って会いましたところ、いろいろ自分がやったと、育ったけれども、それは違っておると、こういう陳述を再び広瀬警部にいたしておるのであります。それでそれを聞きました広瀬警部は、なぜそういううそを言うのかと尋ねたのであります。そうすると宋は、実のところ四人の中で誰かが刺したのに違いないと思っていたので男気を出してわたしがやったように言ったのだと、こういう陳述を二十六日にいたしておるのであります。自分がその当時けんかをしておったので、そのけんかの仲間、自分たちと一緒の仲間のだれかが刺したのである、こういうふうに思い、自分が一番その問題の中心人物であって、おれが男気を出してそういうことを言った。こういう陳述をいたしておるのであります。そしてそういう陳述もございますし、それからそのほかに関係者、ただいま申し上げましたように、たまたま時を同じゅうして宋被疑者と留置場におりました関係者についてこれを状況を別の角度からいたしますと、今判明したことでございますが、宋は留置場の同居者に対して、喧嘩をしてその相手が死んでしまい、仲間四人でやったので、そのうちのだれがやったのかわからぬが、なぐったことは間違いないので、仲間がかわいそうだったので、僕が殺したと言ったが、どのようになるだろうと、留置場の同居者に話したのでございます。同居者は、自分がやらぬのなら、そんなことを言わずに、正直に言った方がよいぞと、こういうふうに同居者も、これまた当然でございますが、そう申した。で、ほんならそういうわと言っている事実が、その二十六日前後にあった。こういう状況があるのでございます。そういう状況もございますし、また留置場の同居者について調べましたところ、その宋以外の関係者が、留置場の同居者に、主犯がナイフの行方を十何回もでたらめを言うのでわしらまで困ると、こういうふうな不平を留置場の内部で漏らしているという事情等も判明いたしたのであります。これは考えてみますと、宋以下の四人の関係者けんかを行なって、相手が死んだと、こういうことでございますので、四人のうちのだれかがやったという認識を当時の関係者が持っておったので、こういうことが起ったのではなかろうかと、こういうふうに推定できるのでございます。  ただいま申しましたごとく、警察の取調方式は証拠に基いて、物的、人的の証拠に基いて、合理的に推進しようと、こういう立場で大いに推進しなければならない当然の責務もございますし、ことに暴行傷害のこともあれば大問題でございますし、こういうことにつきましては徹底的にこれを摘発して善処いたしたい、こういういろいろな角度から本件事件の真実の発見に努めておるのでございますけれども、ただいま申しました留置場の同居人の関係者それからその調べに関連いたされました検察官家庭裁判所調査官等にお聞きいたしましても、当時警察からさらに暴行傷害を受けたのでこういうことを言ったという話は、当時はいたしていないのでございます。そういう状況でございますので、本件事件としては一応関係者がこれはもちろんよくないことでございますが、いわゆる男気に基いてこういう供述をしたのではなかろうかと、こういう推察をいたしておるのであります。  最後に申し上げたいのでありますが、われわれ犯罪捜査と申しますのは、何と申しましても犯罪の真実の発見という作業であります。四月十日行われたけんかにつきましては、たまたま町場のけんかでございました関係等もございましたので、その現場には警察官は居合せておらなかったのであります。その後民間の方で目撃した方々からの状況を聞き、うまく目撃した方々がそのけんかの仲間の一人を任意同行して警察に出頭する措置を講じていただいた、こういう事柄から事案を認知いたしまして、だんだん真実の発見に努めて参ったのであります。その真実の発見の作業におきまして、一つけんかが行われたことは確かに事実であったのでありますが、その間隙と申しますか、その直前と申しますか、そういうことについて行われた佐藤とのけんかということについて捜査が至らなかった、そこまで捜査が進まなかったという点は、真実の発見の努力の成果があがらなかったと、結果においてはそういう状況でございますので、こういった点で、今後の捜査に当りましても十分検討を加えて、真実発見が完全にできるように努力して参りたいと思うのでございますが、何と申しましても、被疑事件は、疑いから始まりましてだんだん真実発見に努めて参るのでございますので、真実発見の作業において、そのときの状況けんかをした人間の片割から始まりまして、証拠物に基いて供述が出ておる、ことにトックリシャツ云々というような供述、あるいはそれからくつ等に関連して、本件宋以下が致命傷を与えたと、こういう結論づけるような捜査に相なりました点につきましては深く反省し、今後の真実発見に大いに努力して参りたい、当時の状況としてはいろいろ合理的に判断して思量したと思うのでございますが、結果において間違っておったという点は非常に反省しなければならぬと、こういうふうに考えておるのであります。
  6. 高田なほ子

    委員長高田なほ子君) 家庭裁判所本件検察庁に逆送したことになっておりますので、そのいきさつについて宇田川家庭局長から御説明を願いたいと思います。
  7. 宇田川潤四郎

    説明員宇田川潤四郎君) 本件事件経過につきましては、先ほど横井課長並びに中川部長より詳細な報告がございましたので、家庭裁判所事件を受理してから審判いたしました今までの経過について、簡単に御報告申し上げます。  事件を受理いたしましたのは三十年の五月の二十五日でございます。この事件の担当裁判官は野田裁判官という裁判官でございますが、宋、浜田、山本この二人の少年につきましては、川口調査官という調査官調査に当っております。調在官のその後の調査によりますると、被害者木下治に直接死傷を与えたことは四人とも否認しておる、しかしお互いに他の仲間が刺したのではなかろうかというような疑いを持っておったようでございます。しかしながら調査官といたしましては、一番のきめ手になる凶器が発見されていなかったために、非常に苦心をしたようでございますが、最後まで真相が把握できなかったようでございます。そこで川口調査官は、初めこの事件を宋、浜田、山田については、この宋について特別に少年院送致の意見を出しております。それから浜田につきまして保護観察、それから山本につきまして試験観察、こういうような意見を出しておったのでございます。ところが出したあとでまたいろいろ研究して、また別な意見書も本人は出しているようでございますが、それによりますと、この事件関係が明確でないし、いま一つ証拠を収集する必要がある、また被害者の親とか近親は事件の措置に重大な関心をもっておる、従ってかような場合には家庭裁判所で密行主義の調査のもとに最後の断定を下すのは不適当だ、そこで検察官に送致して、刑事訴訟による刑事手続を踏むことが適当であるというような意見を裁判官に提出しておるのであります。  次に山田治男の事件につきましては、塩見調査官という調査官調査しておりますが、これもまた死傷の行為について、四人こぞって否認しておりますので、確信を持てなかったというので、むしろ検察庁に送致して、そうして捜査を遂げた上、地方裁判所の公開法廷で慎重な証拠調べを経て終結するのが相当であるという意見のもとに、検察官送致の意見を付して裁判官の方に提出しております。この事件の担当裁判官は先ほど申し上げましたように野田裁判官でございますが、野田裁判官は本件はいわゆる被疑事件ではあるが、まあ共同暴行の意思と行為があって、かつ傷害致死の結果が認められる、その間の因果関係も、一応一件記録並びに裁判所調査の結果によって存在するとの嫌疑が濃厚であるというような観点からいたしまして、この事件家庭裁判所で終結をするより、むしろ検察官捜査を経て地方裁判所の審理にゆだねることが適当であるというような考え方をいたしまして、検察官に送致したのでございます。これが家庭裁判所における事件経過でございます。
  8. 高田なほ子

    委員長高田なほ子君) ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  9. 高田なほ子

    委員長高田なほ子君) 速記をつけて。  本件について御質疑のおありの方は御発言をお願いいたします。
  10. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 一番初めに伺いたいのは、佐藤久夫とそれから、事件証人たちは、この事件以前に交渉があったかないかというような調査をなさっておりませんでしょうか。これは警察でも検察でもどちらでもよろしゅうございますが。
  11. 横井大三

    説明員横井大三君) 私の調べて参りました範囲では、関係はなかったようでございます。佐藤久夫とそれから宋外三名なり、木下外三名なり、これらの人々の間に親しい交渉があったということは聞いておりません。名前もおそらく知らない、顔も知らないというような状況ではなかったかと思います。
  12. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 いや、そこは大事なところで、なかったかと思うのでなく、その点をお突きにはならなかったのですか。ふだんからの交友関係があったのかどうか。
  13. 横井大三

    説明員横井大三君) なかったと聞いております。
  14. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 なかった。それから、この傷害致死という罪名は、警察から検察庁に送るときにおつけになったのですか、警察の方に伺います。
  15. 中川董治

    政府委員中川董治君) 警察から検察官に送致するときに、傷害致死の罪に当ると思量いたしまして、傷害致死被疑事件として送致いたしたのでございます。
  16. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 それから、今度検察庁から家庭裁判所に送られるときはどうなりましたか、罪名は。
  17. 横井大三

    説明員横井大三君) 傷害致死で送っております。
  18. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 傷害致死。それから宇田川局長に伺いますが、この家庭裁判所の方から逆送するときはどういうことで送られているのですか。
  19. 宇田川潤四郎

    説明員宇田川潤四郎君) やはり傷害致死という罪名でございます。
  20. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 傷害致死。それで、宇田川家庭局長に伺いますが、この四人のうちで、三人は川口調査官が調べ、山田治男だけを塩見調査官が取り扱っているというような説明に伺ったのですが、そうでございますか。
  21. 宇田川潤四郎

    説明員宇田川潤四郎君) さようでございます。宋、浜田、山本三少年については川口調査官、それから山田少年については塩見調査官ということになっておりますが、共同して調査をしたのではなかろうかと思っております。
  22. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 事件を分けたのではなくて、共同調査で……。
  23. 宇田川潤四郎

    説明員宇田川潤四郎君) じゃなかろうかと思いますが。
  24. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 これはおかしいことですね。しかし、さっきの御説明の中に、川口さんの意見としては宋だけを少年院送致で、あとは保護観察と家庭に帰すというくらいの意見だとおっしゃったでございましょう。
  25. 宇田川潤四郎

    説明員宇田川潤四郎君) 最初の調査記録の意見によりますと、初め宋少年を特別少年院、それから浜田少年を保護観察、山本少年を試験観察、こういうことになったのでございますが、その後この意見が変りまして、結局二十条送致、言いかえますと、検察官送致というように変ったように聞き及んでおります。
  26. 高田なほ子

    委員長高田なほ子君) 発言の許可を求めてから御発言下さるようにお願いいたします。
  27. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 それが、四人のものを三人と一人にやっぱり分けて責任を負っていらっしゃるわけじゃないでございましょうか。三人だけに対する意見はそうで、それから塩見調査官が山田少年に対して意見をつけていらっしゃるのでございましょう。
  28. 宇田川潤四郎

    説明員宇田川潤四郎君) はあ。
  29. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 もしも一括してやっていらっしゃるのだったら、四人に対して意見がまとまらなければならないと思いますけどね。その点いかがでございますか。
  30. 宇田川潤四郎

    説明員宇田川潤四郎君) 実際の調査をどうやったかわかりませんけれども、宮城委員のお説のように、結果的には別に調査して、そうして意見を付しておるようなことになっております。まあ一般的にはこういう調査のし方はあまり適当じゃないというふうに考えておりますが、どういうかげんか、かようなことになった。今のところちょっと私どもわかりません。
  31. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 まあ結果から言ったら傷害致死、致死でございますから、これは少年事件としたら大きいと思っておりますが、この点をもう一ぺんお教え願いたいと思います。
  32. 宇田川潤四郎

    説明員宇田川潤四郎君) 私の想像では、山田治男少年は、かねてから塩見調査官の試験観察中のものでございます。従って、試験観察中の調査官が多くその事件を担当することが普通でありますので、おそらく、山田少年に関する事件のみ、塩見調査官が試験観察をやっておった関係上、調査したのじゃなかろうか、こういうように考えられます。
  33. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 それでは納得できますが、そこで、この四人に対する保護の保護歴というものはどういうことになっておりますか。簡単でよろしゅうございます。
  34. 宇田川潤四郎

    説明員宇田川潤四郎君) 宋少年につきましては、保護観察、試験観察、不処分、三回家庭裁判所に参っております。浜田少年につきましては、保護観察があり、ついで不開始処分がございます。それから山本少年につきましては、二回不処分になっております。山田少年につきましては先ほど申しましたように試験観察。
  35. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 山田少年は保護観察じゃなしに試験観察ですか。
  36. 宇田川潤四郎

    説明員宇田川潤四郎君) はあ。
  37. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 みんなそうするとこれは窃盗事件でございますか、四人とも、その処分を受けておりますのは……。
  38. 宇田川潤四郎

    説明員宇田川潤四郎君) いろいろございまして、宋少年は窃盗もございますし、恐喝もございます。それから窃盗、暴行傷害というようなたくさんの犯罪を犯しております。山本少年暴行事件もございますが、窃盗二件でございます。それから山田少年は窃盗一件、それから浜田少年ぱ窃盗それから道路交通違反なるものもございます。
  39. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 これはじゃ少年院の生活をした少年はありませんね、四人とも。
  40. 宇田川潤四郎

    説明員宇田川潤四郎君) さようでございます。
  41. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 それではもう一度ですが、この四人の者について、ことに宋についての精神鑑定は指数なんか調べられておりますか。
  42. 宇田川潤四郎

    説明員宇田川潤四郎君) 宋少年については五月の十四日に鑑別結果通知が家庭裁判所に提出されております。その結果によりますと、知能は大体正常に近い、抽象的な思考能力は乏しく、その方法は全く主観的で、社会事象の正しい認識はむずかしい、それからはなはだしい注意散漫、自己中心性、意思不安定性、感情の興奮性、高度の情操の欠除など、主として精神病質者と考えられるというような結論が出ております。
  43. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 あとはわかりませんか。あと少年は出ておれば一通り伺いたいのですが。
  44. 宇田川潤四郎

    説明員宇田川潤四郎君) 浜田少年につきましては三十年五月の十四日に鑑別結果通知書が家庭裁判所に提出されておりますが、これによりますと、少年はいろいろな性質が書いてありまして、上気したような性質を持ち、ろうばい性反応を起し、感情に走りやすい点があり、また家庭の経済が良好なためか、また少年に甘いためか、やや放任と思われる点もあり、少年が金銭の消費によって自己の虚栄を満たしているような生活と相待って少年の今日をあらしめ、かつ今回のことも少年友人や他に対する虚勢が相当の影響を及ぼしているといってもよいように思われる云々というようなことがございます。別段大した精神的な異常は認められないようでございます、浜田少年につきまして。山本少年につきましては五月の十四日に鑑別結果通知書が家庭裁判所に提出されておりますが、これによりますと知能は平均よりやや劣り、みずからを内省し得ず、その場限りの気分によって行動する少年である云々というような細かい鑑別の結果が出ております。それから山田少年につきましては五月の十四日に家庭裁判所の方に鑑別結果通知書が出ております。これによりますと、やはり別段の精神的な異常はないようでございます。
  45. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 それで警察の方に伺いたいのでございますが、この検察庁に送るまでの身柄は、警察にお置きになったんでございますね。
  46. 中川董治

    政府委員中川董治君) これは逮捕いたしまして警察へ留置いたしまして、それから身柄つきで送致いたしたのでございます。送致後も勾留場所は警察署になっておったようでございます。
  47. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 宇田川局長に伺いますが、今度家庭裁判所に参りましてからは鑑別所に参りましたのでございますね、身柄は。
  48. 宇田川潤四郎

    説明員宇田川潤四郎君) さようでございます。観護措置がとられまして鑑別所に一時収容されておりました。
  49. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 それからその前に何回かそれぞれ事件を起しておりますね、そういうときに身柄をどこに入れてどういう鑑別がされたというようなことも記録の上に出ておりますか、どうでございますか。
  50. 宇田川潤四郎

    説明員宇田川潤四郎君) 私ども手持ちのこれは記録の写しの写しのようなものでございまして、メモみたいなものでございますが、これによりますと、前回の鑑別結果の入っておるのもございますし、それから全然ないのもございますので、実際においておそらく身柄事件ですと必ず鑑別所に収容されますので、その際鑑別は必ずなされておりますので、まあ数回おそらくどの少年も鑑別がなされておるものと考えます。
  51. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 もう一つ、この少年たちはどこかで、この事件を起す前に一緒になったようなことはございませんのですか。何か不良仲間といったようなものではございませんでしたか。
  52. 宇田川潤四郎

    説明員宇田川潤四郎君) その点ははっきりは申し上げかねますけれども、この事件経過などを考えますと、もちろん宋、浜田、山本、山田、四少年は不良仲間だということは確信できるわけでございます。
  53. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 不良仲間で、今まで仲間として付き合っておったかどうかというような調べが出ているかどうかということを伺いたいのでございますが、それはわかっておりませんか。それは大事なところなんですけれどもね。
  54. 宇田川潤四郎

    説明員宇田川潤四郎君) 大体調査記録にはさような点が詳細には書いてありませんけれども、出ております。けれども、調査官が一々その点についてこまかい調査をいたしておりますけれども、調査記録に多く残らないのが普通でございますので、この事件もさような次第で、そう詳しくは交友関係が出ておりません。
  55. 高田なほ子

    委員長高田なほ子君) ちょっとお諮りをいたしますが、政務次官はまだ法務省に着いておらないので、今行方がわからないそうです。それで、十二時半になっておりますが、どういうふうにいたしたらよろしいか、議事の進行についてお諮りをいたします。  ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  56. 高田なほ子

    委員長高田なほ子君) 速記を始めて。
  57. 亀田得治

    亀田得治君 私、法務省の記録並びに警察庁の記録を拝見いたしました。それで法務省調査のねらいですね、これは私非常に正鵠を得ていると思うんです。まず第一に起訴という取扱い、それが妥当であったかどうか。それから取調べ過程における人権じゅうりんの事実、ここに重点を置いてやられた、これは私非常に正鵠を得ていると思うんですが、ただ報告の結果は、私どもがやはり危惧していたように、何といっても検察官の立場、あるいは警察の立場が擁護され過ぎている、こういう感じをまず私は抱いております。で、もちろん皆さんの方はそういうお気持でやっているんじゃないでしょう。それは正当に公平なる立場でということでしょうが、結果は決してそういうふうになっておらぬという結論です。  そこで、そういう立場から一、二点大事な点だけをお伺いするんですが、本件の一番の問題といいますか、失敗をした原因は、宋という少年が逮捕された、これは午前の、朝まだ暗いうちの逮捕ですが、最初に逮捕されてすぐ作った調書ですね、これは木脇という刑事がとっている調書ですが、これにはあとからわかった第五の人物——佐藤なる者ですね、そういう人物が現われているわけなんです、この調書に。で、もちろん佐藤という人を、この四人の少年は知らぬ人ですから、真犯人は知らぬ人ですから、どんな名前の人で、どういう者という、そんな名前なんかはもちろん述べておりません。しかし自分らがやっているときにそういうのが現われたということが、最初の調書に書いてあるんです。これは私は自分自身で、まあ在野法曹の立場からいろいろ調べるまでは、そこまではわからなかったのですが、その調書を私見せてもらって、これは何もそんなやぶから棒のように出てきた真犯人じゃないんじゃないかという感じを非常に強く持っているんです。で、もう一回、翌日、宋が調書を取られて、その中にも書いております。ところが三回目からこれが変ってきた、つまりここから拷問が始まるおけです。刑事も変るわけなんです。で、その点を一体警察庁なり法務省の方では、どういうふうに見ておられるか、ほかのことをたくさん書いてありますけれども、問題の別れ目はそこにあるわけなんです。この調書をちゃんと、ごらんになったかどうか、そういったような点について両方からまず一つお聞きしたいと思います。
  58. 横井大三

    説明員横井大三君) 捜査の初めの段階に、仲裁人という形で別の男が入りまして、それが調書に現われておるということは、私も調書自体は見ておりませんけれども、そういう事実があるということは聞いて参りました。で、その事実はなぜ追及しなかったかということなのでありますが、三回目から消えたとかいうお話でございますが、確かに途中で消えておるわけです。で、現在考えますと、その追及が足りなかったという点は、これは認めざるを得ないわけなのですが、その消えた過程におきまして、人権じゅうりんがあったかどうかという点が、やはり私どもあるいは警察の方におきます調査一つの焦点であろう、少くとも検察官の方におきましては、その捜査過程におきまして、暴行、凌虐等の人権じゅうりんが行われた様子が見えない、警察捜査過程におきまして、果して暴行があったかどうかということは監察課、長の方で取調べ中であるという程度で、私は調査を打切って帰って参りました。
  59. 中川董治

    政府委員中川董治君) 本件調査に当りまして、最初仲裁人という人物捜査の線上に出ております。仲裁人という人物も出ておるのですけれども、それが、そいつを突き詰める、確認する適切な方式が当時見つからなかった、見つからなかったというのは能力が足りなかったか、努力が足りなかったかということになるのですけれども、その点は確かに結果から見れば、そのことを努力すること、ないしは、そういうことによって、真実を発見し得たかどうかということが問題だと思うのです。その点につきましては最初私が申し上げましたように、真実の発見の作業においてもちろん欠くるところがあった、失敗だった。ところがその間に拷問とか脅迫とか、ないしはそういう不当な圧力を加える方式があったかどうかという点を力点にして調べてみたのでありますが、その点につきましてはいろいろ各方面、もちろん両当事者の言い分はもちろん聞いたわけですけれども、両当事者の言い分だけでは真実の発見はできませんので、いろいろだだいま申しました、当時の同居人の状況とかその後被疑者に直接にお会いになった検察官とか、あるいは家庭裁判所調査官とか、こういう方々に聞くよりほかに方法がございませんので、さらにまたいい方法がありますれば研究いたしたいと思いますが、そういう考えられる方法を全部尽しまして、その間に拷問とか脅迫とかいう事実を、現段階においては認めることができない。そこで亀田さんにお答えいたしますが、本事件が真実の発見という捜査目的からいえば、確かに結果において間違っておったのでありますから、仲裁人という人物が浮んだことは事実であります。最初にそういう者が浮んだのでございますけれども、その確認とかいう方式が不徹底であった。もっと合理的な方法があったか、なかったかという問題が、捜査の技術の問題なんでございますが、あるいは何回も聞いたって、本人はおそらく記憶がないでございましょうから、それ以外の方法でいろいろ現場状況もさらにつまびらかにしておったら、それがわかっておったのではなかろうかと私は思いますけれども。そこは拙劣であったと、こう申し上げておるのです。
  60. 亀田得治

    亀田得治君 そんな単なる拙劣とかでは済まされない、重大なこれは過失なんです。それで宋が最初の供述調書で、われわれと違った一人の人が現われた、これも仲裁人であるということははっきり言っていないのですよ。ただその第五の人物が何のために来たのか、宋らはわからぬわけですからね。わからぬままにただこういう人もおりました、自分らはどうも何か仲裁に来たのではないかと、そんな程度の話でした。だから何も仲裁人とこう言ってしまうと、これはまた少し間違うわけです。そこでその宋の申し出に基いて若干でも第五の人物という者について、調べたのかせぬのかそこを聞きたいわけなんです。先ほどの法務省報告ですと、どうもそちらの方には伸びなかったようですが、若干でもやってなおかつどうもはっきりせぬということで打ち切られたのか、あるいは全然そういう宋の申し立てというものを問題にしなかったのかどうか、ここなんです、問題は。そこはどうです。
  61. 中川董治

    政府委員中川董治君) これは、犯罪捜査は私ども現実にやりましたが、最初あるいは逮捕した被疑者でなくても、参考人等はいろいろ陳述しているわけです。その中でいろいろデータを調べまして、データに基いて作業を続けるのでございます。そうしてただいま亀田先生の御指摘になりました、そこに第五の人物、別の人物が現われたという状況に基いて、そういうものをいろいろ気を配って、いろいろなことを研究をし、関係供述等も聞いたのだけれども、その点突っ込み方が下手といいますか、不徹底であったと、こういう点は確かに私認められると思うのです。   〔委員長退席、理事小林亦治君着席〕
  62. 亀田得治

    亀田得治君 ただいま中川さんのお答えですと、若干第五の人物について捜査をしたような言い分ですが、その点間違いないですか、あなたずっとこういう正確な報告に基いてのそういう御答弁でしょうか。
  63. 中川董治

    政府委員中川董治君) お答えいたします。その問題につきまして、今から申せば完全な捜査をしてなかったことは事実でございます。ところがそのときそういう状況に基いて現場におった人間等について、まだそのけんかした人間以外にも現場におりましたものですから、現場におった人間等について事情を聴取いたしたところが、その現場におった人間は、その人物は見てないと、こういう供述等がありましたので、それでそのことに関する捜査をそれ以上進めなかった。それ以上進めなかったことが私は突っ込み方が足りなかったという言葉で言い現わしたのですが、全然調べないで聞きっ放しということではない。現場におり合せた人間等について、そういう状況を目撃者と認められる者についてそういう事情を聞いた、こういうことは確かでございます。
  64. 亀田得治

    亀田得治君 それは現場にいた目撃者というものは通行人とかそういう人でしょう。それは何人ぐらいそういうことを確めたのですか。どんな程度です。
  65. 中川董治

    政府委員中川董治君) 現場に居合せた通行人とかそういう人ですが、人間の数字はちょっと記録を取り寄せて参りませんと正確にお答えできませんが、後ほど記録を取り寄せましてお答えいたします。
  66. 亀田得治

    亀田得治君 この点が非常に大事なんでね。たとえば一つのことがあったと、それを見たか見ぬかという場合に、たくさんの人が見ないと、しかし一人でも見たと言えばこれは真実になってくる、一人でも見たと言えば。だからそれを少し通行人などに確かめてみて、それで見ないと言うから打ち切ったというと、ちょっと納得いかぬですね。一番接触しておる宋らが見たと言っておるのですから、これは簡単にいかぬわけです。そういうほかの人を確かめたというような記録等、あるいはメモ等でもいいが、そういうものがあなたの方にあるわけでしょうが、警察等にそういう関係の証拠等はないのですか。
  67. 中川董治

    政府委員中川董治君) ただいま申しましたごとく、そういう供述もありましたので、そこに居合せた通行人といいますか、現場の近くにおった人間の供述を聞いたことは事実でございますが、それ以上に各方面、近辺一帯をシラミつぶしにもっとやっておったらば、あるいはわかったであろうとこう申しておるのです。その点は拙劣であったと私は申し上げておるのであります。
  68. 亀田得治

    亀田得治君 若干でも調べた第五の人物についての、そういう者についての記録などはなかったということですか。
  69. 中川董治

    政府委員中川董治君) 本件は先ほど申しましたごとく、近畿管区警察局と統合後の京都本部等の係官等が詳細に調べたことが一つと、その場合に刑事事件でございますから、事後調査された以前の調書等があるわけでございますが、これは東京に送付せしめるのが適当でございませんので、現地にこまかい記録がございますので、その現地の記録に基いてお答えすると、こういうことにいたしたいと思います。それで私たちの報告を受けておりますのは、第一線の、ことに近畿管区警察局とか京都府警察本部において厳重に調査した経過の大要並びにその結果の報告を求めまして、それに基いてここでお答えしておる次第でございます。
  70. 亀田得治

    亀田得治君 その第五の人物についての調査ですね、その点に関しての特別詳細な一つ報告を出してもらいたいと思うのです。全部といったら大へんですから、その部分だけでいいですから、そこが焦点なんです。ともかく宋らはあまりいい人じゃない。そういう先入観でものを考えておるからそういう人が真実のことを言っておってもそれを押えつけていっておるから。(「その通り」と呼ぶ者あり)実際問題は大して調べていやせぬのですよ。三日目からともかく拷問で翻えさせておる。  それから警察関係で重要な拷問ですね。これはこの報告書によりますと、少年らは拷問の事実があった、こういうふうに調べ官に申しておるようですね。その点は信用ができないわけですか。
  71. 中川董治

    政府委員中川董治君) 要するに、まず傷害致死事件の犯罪の容疑で調べたのでありますが、こうした拷問があったかなかったかという点も、同様の趣旨によりまして関係者供述ももちろん聞きました。ただし関係者供述は御指摘のごとく関係少年は拷問ありと主張いたします。それから関係警察官について厳重に調査いたしましたところ、全然そういうことはないと強力に否定いたします。それでその点だけ、供述ばかりやっておりますと、供述中心捜査になりますので、供述中心捜査では真実を発見できませんので、その間の状況を知ることに恵まれるであろう人物供述の御協力をお願いして事情を聞く。またその他いろいろな状況を経験則に基いて判定するよりほかに方法がございませんので、少年の言い分を蔑視するものではございませんが、少年供述を有力な参考にいたします。警察官の供述も有力な参考にいたしますが、それ以外の関係者等において状況を知り得るのに役立つであろういろいろな資料を集める、こういう捜査でございますから、いろいろいい資料があったらお願いしたいと思うのでございますが、今日としてはただいま申し上げましたような状況を御報告いだした次第でございます。
  72. 亀田得治

    亀田得治君 これは真犯人が出たから拷問ということが問題になってきているのです。これは出ないと拷問あるいは脅迫等に基く陳述等がさせられても、その場、その場で過ぎちゃってしまう、裁判所が幾らやっても。私は、こういう誤認与件というものがあったからこれが浮かび出ておるので、その点では一つ警察庁においてもやはりもっと真剣な立場で取っ組んでほしいと思う。その一つの参考にしてほしいのですが、私はぜひ拷問事件に対する調べ方をやはりもう少し考え直してほしいと思う。私のお願いしたいのは、拷問されたという少年とそれから前堀弁護人ですね、これは前に京都の次席検事をせられた人ですし、決して一方的にどうこういう人でありません。前堀弁護人をつけてもらって、そうして拷問をしないといって否認しておる警察官ですね、それをぜひ対決させてもらいたいのです。これを別々に言うておったんではそれは警察官は必ずそんなことありませんと言うにきまっていますよ。裁判所へ出てきたってそんなことをしゃあしゃあ言うのですから、だからとてもこれはだめですよ。そのことを私は地元の警察とかそういう所にまかさないで、地元に行けば何といっても個人的なつながりも多いし、やはりこういうことは警察の本庁がみずから乗り出してその少年に当ってもらいたい。これだけ重要な問題になってくれば対決させるのが一番早いと思うのです。そのときての印象でほんとうの心証というものはつかめるはずです。少年が私どもにいろいろな説明をしてくれましたが、私どもは口先だけではだめだからあなたがやられた通りにやってごらんなさいというと、おのおの自分がやられた通りのことをやって見せてくれますよ。こんなことはとても作りごとでできるものではありません。私はそういうふうに端的に一つ中川さんみずからでもいいです、真相をつかむためにそういう方法を工夫してほしいと思う。これはどうですか。一番いい方法だと思うのです。(「やるかやらないか」と呼ぶ者あり)
  73. 中川董治

    政府委員中川董治君) こういう事件は真相を発見するために努力するという点は全く同感でございます。それで本庁からたとえば私自身が出かけて行って自分でやればいいじゃないか、こういう御意見もまことによくわかるのですけれども、私どもは本事件で出かけることは拒否するわけではございませんけれども、東京におきまして全国のいろいろな点について、そういう大筋の点において報告をまとめて毎日こうやっておりますので、私が出かけて行くことが許されるかどうかという問題もございますが、それで確かに身内のものに調べさせることはいけないということはよくわかりますが、そういう点も十分考えまして、本件捜査につきましては、当時は京都警察の時代でございますので、今度は機構が変りまして府警察という組織になって、府が市よりはえらいというのでは決してございませんけれども、組織が変っているということが一つ。  それからそういうことを調べるについては、警察官の非行ということを調べることを主たる任務としております監察官というものを持っておりまして、監察官というのはそういう身内の者といいますか、警察官の非行を調べるということを職務としておるものでございますから、そういう心配はまず私はないと思いますし、特に京都の監察官だけでは、また慎重にしなければならぬという点もございますので、その上部機構でございます、上部というのはえらいという意味じゃなしに、そういうことを職務としております近畿管区警察局というのがございますが、近畿管区警察局及び監察官の職員をしてやらしめる方が、本件真実発見について最も格好だと、こう考えてそういたしたのであります。そういうことが第一点。  第二点は、亀田さんの御意見によれば、関係警察官とそこの少年の方と対決させるのが一番いい方法ではないかという御提案でございますが、それも考えはいたしますけれども、私は要するに、本件の事案で最もよく真実を発見する方法は、その方法がいいと必ずしも思えない点もある。対決させるというとお互いに否定するだけということになってもいけないから、いろんな総合的な各面のそういう問題について見聞するであろう人物その他について、十分事情調査してやる、こういうことが事案の真相を把握する上において最も合理的だと認めまして、そういう方法をやっておるのでございます。ただしかしそういう対決の方法一つ方法でございますから、さらに真実発見に一番いいということにつきましては、一番いい方法を発見したいとは努力しておりますので、十分御意見の点も検討して参りたいと思います。  それからもう一点は、亀田さんもお聞きになったそうでございますが、私は監察官からの報告を見たのでございますが、監察官は、当該少年暴行されたと主張しておりますので、暴行されたということを抽象的に聞くだけでなしに、どういう方法でどうだということをやってみていただくという意味合いで、今亀田さんの御指摘になったような方法で調べているということもよく知っております。そういう方法を用いて具体的な状況に基いて具体的事件を発見する、こういう態度で直接少年に面接いたしました監察官がやっております。同様に警察官につきましても厳重にそういう点について同様な方式でやっております。  従って本件事件の真実を発見するという方法は、どういう方法がいいかという問題でございますが、そういう点は私ども知恵が足らんのかもしれませんが、真実発見について最も合理的であるという方法を私ども常に考えたつもりでございますけれども、亀田さんの御提案も確かに真実発見の方法でいいという点で、よく検討いたしまして、われわれは真実発見のために努力するという熱意は大いに持っておるのでございますので、そういう点は研究して参りたいと思います。私自身にちょっと行けとおっしゃいましてもこれはいろんな、本件も重要な事件でございますけれども、決して蔑視するわけではございませんが、他にもいろいろの用を仰せつかっておりますので、そういう点はちょっと困難かと思っております。   〔理事小林亦治君退席、委員長着席〕
  74. 小林亦治

    ○小林亦治君 中川さんの、せっかく国会の法務委員会があなたに乗り出すことを要請しているのだから、他にお忙しいこともたくさんおありであること、これは年がら年じゅうでしょうから、問題がかようになってくれば今亀田委員がおっしゃったように地元の担当者では信憑性がない。地方のいろんな事情にかんがみて見てももうたいがいこれは擁護結論に終わっている。そういうことが頼りがないのでせっかく亀田委員がそういう真実発見の方法を考えられたと思うのですけれども私も同感なんです。ですから地元のそれらの各機関を動員すると同時に、あなたがおいでになってそれを統裁せられることがこれは大事だろうと思う。私も同感でありますがゆえに亀田君の方法に賛成したいと思うのでお願いしたいと思うのです。
  75. 一松定吉

    ○一松定吉君 今亀田君の御意見はまあ御意見として、その決定をなさる前に私ちょっとお尋ねしたいことがあるがね。この宋の衣類に血がついておった。その血と被害者木下の血との血液型が同じだ、こういうことを言いましたね。それは間違いなく鑑定の結果そういうことになったのですか。いいかげんな鑑定じゃいかんわね。
  76. 中川董治

    政府委員中川董治君) 宋が返り血を浴びております血と、被害者の、もちろん死亡をいたしておりますがその血とを鑑定をいたしております。鑑定の結果同一である、こう認定いたしております。
  77. 一松定吉

    ○一松定吉君 それでは今日宋がやったものではなくて、やったものは佐藤がやったのだということになったらば、その宋の血液と被害者木下の血液とはやはり同じですか。そこはどうなんです。
  78. 横井大三

    説明員横井大三君) 実は先ほどもちょっと申し上げましたが、被害者木下治が傷を受けました後にも、宋ほか数名の少年被害者をなぐる、けるということをやっておりました。くつに血がついたり衣類に血がついた。従いましてその血液型が同じであることは、真犯人が出て参りましてもそれと矛盾しないわけでございます。
  79. 一松定吉

    ○一松定吉君 それでは、宋が木下をけったりいろいろなことをして、その木下の血液が宋のくつ等についた、くつですか、衣類ですか。
  80. 横井大三

    説明員横井大三君) 宋の衣類にも、それから浜田だと思いましたが、浜田少年のくつにもついておったようです。
  81. 一松定吉

    ○一松定吉君 それでは、宋などが木下に対してそういう暴行を加えたという事実の起訴はしてあるわけですか。
  82. 横井大三

    説明員横井大三君) 検察官起訴は、宋ほか三名の者が暴行いたしまして、そして宋が傷をつけた、こういう起訴になっております。
  83. 一松定吉

    ○一松定吉君 その起訴は、木下が臀部刺傷、腸管刺創の傷害を受けて死んだ。そうすると、その血のついておったのが宋のどこの所に血がついておったのか。木下の臀部を刺したために出た血ならば、くつの裏側につくはずはないじゃありませんか。そういう点はどういうふうに検事は見たか。
  84. 横井大三

    説明員横井大三君) 被害者が傷を受けまして倒れましたあと、血がべったりついておるわけでございますが、それをけったりそれをなぐったりいたしましたので、あるいはくつに血がついておった……。
  85. 一松定吉

    ○一松定吉君 凶器を発見しなかったというのであるが、それは発見しなかったとしてよろしいが、この凶器はどこから出たかということを聞きたい。(「関連じゃなくなってきた」と呼ぶ者あり)いや、これが重大な問題なんです。
  86. 高田なほ子

    委員長高田なほ子君) ちょっと速記をやめて下さい。   〔速記中止〕
  87. 高田なほ子

    委員長高田なほ子君) 速記を始めて。
  88. 一松定吉

    ○一松定吉君 そこで凶器の点ですが、凶器の出所は調べましたか。宋に向って、お前が木下を刺して傷つけたという凶器はどこから出たかと、それを調べておるのですか。凶器の出所もわからないし、凶器をどこに置いたかもわからないということになってくるとだ、宋の供述がうそだということが当然捜査官の頭に響いて、当然起訴などできぬはずだがその点どうか。凶器の出所を宋に調べましたか、検事が。
  89. 中川董治

    政府委員中川董治君) これは先ほどもお答えしたつもりですが、十八日の日に、(「要点だけ述べた方がいい」「簡単に」と呼ぶ者あり)出所を調べました。何回も調べたが、その供述の言うところは十数回にわたって調べましたところが十数回とも違ったところはなかった。
  90. 一松定吉

    ○一松定吉君 私の言うのはそうじゃない。捨てたことじゃない。この凶器はどこで買ったのだ。どこそこにあったのだ。だれから買ったのだという出所を調べたか。捨てた所を聞くんじゃない。そうして、凶器を買ったのと捨てたのと相一致することによって、この宋の言うことが信を置けるかどうかを捜査官は判断しなければならない。ただ凶器を捨てた所だけを十数回かかってそれを調べておるからといって、起訴した凶器の出所を調べないという責任は、宋の言うことがうそを言っておるということは捜査官はすぐわからなければならぬ。その点はどうだと聞くんだが、おそらく調べていないでしょう、出所を。
  91. 中川董治

    政府委員中川董治君) 凶器を買った店は、それは供述したわけです。供述したが、買った店についていきましたところが、ようわからぬ。こういう事実が当時の調査において明らかになっております。
  92. 一松定吉

    ○一松定吉君 そうすると結局凶器を買った所もあいまいだし、捨てた所もあいまいだしということでは、これは当然宋のやったことではないということが解されなければならぬ。それを自白したということで、すぐこれを起訴するのが間違いであると同時に、その自白は後日取り消しておる。取り消しているのに、それが凶器の出所もわからない、捨てた所もわからない、本当は臀部を刺したならばぱっとその血が自分に来て着物につくわけです。刺すと同時にその血が宋の着物につくわけで、くつの底についたということだけ調べて、着物なら着物の、宋の着ている着物、これは木下を刺したときにその血がぱっと自分に返ってくるのですから、その血がたとえば宋のももについておったとか、あるいは帯の所についておったとか何とかということになってくると直ちにそれは信憑されますが、くつの底についておったということだけで、出所はどこから出たかわからない、凶器の捨てた所もわからない、そうしてあとで自白を取り消したというようなことは、これはよく調べれば何も起訴はできぬはずである。しかもそういうことを調べないでやったことについては、捜査の不十分であるのみならず、そういうような一体自白に至ったことについては、脅迫だとか暴行したというようなことがあることは当然だ。だからそういう点があなた方の方で調べていなかったならば、これは中川さんがやったって同じことですよ。われわれ法務委員会として一人か二人を特にやってそういうものを調べた方がよく事実の真相が把握できる。そういうことを私は申し上げます。
  93. 小林亦治

    ○小林亦治君 私もそういうふうに考えるので特に部長に注文したのですが、部長はまだ乗り出してお調べになるともならぬとも言っておりません。もし、あなたがおいでになって力が及ばぬとか発見がむずかしいとかということになってくるならば、今、一松委員がおっしゃったようにわれわれみずから乗り出す、どうですか。(「はっきり答弁しなさい。」と呼ぶ者あり)
  94. 中川董治

    政府委員中川董治君) 私たち警察当局といたしましては、こういった点について厳重に調査いたしたつもりでございます。(「当り前だ」と呼ぶ者あり)私自身が行くことが一番いいと思いますが、私自身としては国家公務員の身分でございますので、私が行くことについてはおそらく困難であろうと思うわけです。
  95. 小林亦治

    ○小林亦治君 さっきから君は擁護論ばかりやっているから私はがまんできないということを言っているのです。さっきからそうじゃないか。説明の中にも人権じゅうりんはない、われわれはこうだということばかりおっしゃるから私も亀田委員の発言に同意をして君の出馬を求めているのだ。今これをやる誠意があるかどうか、まずそれを聞きたい、やらないならわれわれやるから。
  96. 中川董治

    政府委員中川董治君) 私は誠意は持っておりますが、具体的な国家公務員でございますのでおそらく困難だろうと申し上げたのであります。
  97. 亀田得治

    亀田得治君 法務省はどうですか、その直接捜査をやる熱意があるかどうか。
  98. 横井大三

    説明員横井大三君) 私は一応調査して参りましたが、私の調べでは検察官の方面にはそういう事実はない、こういう結果になっております。問題は警察の方でございますが、その警察の方に人権じゅうりんがあったかどうかということを検察庁が調べますには、犯罪捜査として調べる以外に方法はない。従いましてそういう疑いが濃厚ならば検察庁で調べますが、中央から参りまして直接その人権じゅうりんがあったかどうかということの調べを警察に対していたしますということは、現在の段階では適当でなくて、むしろ警察の調べを待ちまして、もし疑いが濃くなれば別個に考える、こういうことになろうと思うのであります。
  99. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 ちょっと関連。これは大へんなことになりますよ。警察では人権じゅうりんという事実はないと、法務省でもないということになり、もしこれが国会の法務委員会が調べてあったということになるとどういう責任をとるか。それは中川さんの責任だけにはとどまらない、法務省でも横井君の責任などにはとどまらない。ですからこれは重大なところだから、この亀田委員の御質問に対するお答えは一つ腹をきめてお答えを願います。警察がそれを今の態度、人権じゅうりんなし、法務省も今の態度で、なしということで、法務委員会が調べたらあったということになったら、どうです。警察担当の国務相並びに人権擁護の責任のある国務相、場合によれば政府そのものの責任です。そういうことになるのだから、まずまず順序としては、警察御自身が御自身を正しくせられて責任を明らかにされることが第一でしょう。それから次には法務省がなさる。われわれはなるべく乗り出したくないのです。それだから亀田君の御質問に対してはっきり……。
  100. 小林亦治

    ○小林亦治君 今羽仁さんに関連して部長が言い張っておられるので、かような部長をやったってとてもだめです。こういうふうに司直と考えが対立すると、部長は官僚なんだからしっぽを出さないことに一生懸命になるに相違ない。これは信用できない。そこでこの問題は、かように渦を巻いてきた以上はここで一応お打ち切り願って、委員会で方法をもう一ぺん相談したいと思うのです。その上でわれわれも各担当なり方法を発見して、もう一ぺんこの構想を練り直したい、せっかく発言して要求してそんなにけられていられるものではない。こっちは究明しておるのです。単純なる調査でないのです。これは本質が究明なんだから、そんな不誠意な答弁をされてさようでございますかというわけにはいかない、国民を代表して開いておる委員会で。ぜひそういうふうに願いたい。むだでしょう、これ以上質問しても。
  101. 亀田得治

    亀田得治君 小林委員の御意見の通り一つまた委員会で御相談願いたいと思います。ただ政務次官が来ておられまするから、これは一番最後でいいのですが、その点に関する点を念のために御意見を聞かしてもらいたいと思うのです。これは検察関係のことを、重要な点一、二点これから聞きますから、その際に、先ほど法務省の方では、検察関係の方は少くとも不当なことがなかった、こういうことです。しかしこれも警察と同じようにはなはだこの調査はだめなんです。それでまず不当なことが二つある。  一つはこの第五の真犯人佐藤なる者について、前堀弁護人が検察官にたびたび忠告しておるのです。この事件についてはこういう人物があるのだよということを。そしてその第五の人物を見た人を証人に出す前に、これは証人に出すと、その証人に圧迫が加わったりいろいろして工合が悪いこともある、だからほんとうに検察官がともかく真相をつかみたいというのだという気持であれば、あなたの方でこっそりと調べてもらったらどうかという意味の忠告をしておるのですよ。そういう事実をあなたはお調べになって聞いておりますか。おそらく検察官だけ聞いておってはそんなことは出てこぬでしょう。証人申請を正式にする前にそういう忠告をしておるのです。あなたの方で積極的に調べたらどうか。前堀弁護人としても何も事実を曲げてどうこう言うのじゃないと、こういう正確な情報がおれの方に人っておるのだ、かたがた最初の検察供述調書には、そういう第五の人物が現われておるのだから、そういう勧告をしておるのですよ。このことはあなた調査に行かれてそういうことは聞きましたか。
  102. 横井大三

    説明員横井大三君) 今お尋ねのは公判段階でございますか。それとも捜査段階でございますか。私どもが聞きましたところでは、直接前堀弁護人からそういう具体的に人を上げてこういう人間がおるということを聞いた、お話があったということは聞いておりません。
  103. 亀田得治

    亀田得治君 これは正式に明確に言ったのは、公判になってからの段階だと思います。私がメモをずっと調べておったのですが、その前の段階は知りませんが、ともかく第五の人物が自首するまでに、非常に良心的に弁護人は努力して注意しておるのです。そんなことも全然拒絶してやっておるのです。これは一つ重大な点ですから、あなたの方でやっぱり調査してもらいたい。  それからこの偽証の点ですけれども、これも全くあなたの御報告を見ても、こんな程度証言の食い違いで証人をつかまえていいものかどうか、はなはだ疑わしいのです。問題は村松という人がこの第五の人物真犯人を、共同便所に入って刃物を洗っているのを見たことは、これは間違いないのです。これは絶対間違いないのです。その人がずっと歩いてきて、途中で佐藤という人に会うた。会うたので佐藤自分が見たことを話したことも間違いないのです。そこで法廷に出て村松自分の見たままを言う。佐藤も聞いたままを言うておるだけなのです。ただ佐藤の方は、これは村松から聞いたことを言うておるので伝聞です、これは。だからそれでそういう伝聞ならむしろそのことを見たという村松を次に呼んだらいいじゃないかということで、佐藤証人は途中で尋問を終っているわけです。そういういきさつです。それから村松法廷に出てきて見たままを語る。それから検証にも行った。行ったところが、たとえば村松にしても佐藤にしても、共同便所であるということは間違いないのです、そういう記憶のあることは。しかし自分の思っておる町名と現実の場所が違ったりしておるわけです。村松の言うたのを佐藤が聞き違えたのか、それだけのことなのです。私はこまかく説明せよといえば、これはここに地図も持っております。なぜそういう聞き違えがあるかということは、村松の見たのはここの共同便所です。ずっと歩いてきて佐藤に会うた。佐藤に話したのはこの辺です。だから佐藤は、自分が聞いた場合には自分の立っておった近くの共同便所だと、こう思っておるわけなんです。そういうことなのでして、見たこともない、聞いたこともない、それをしゃべっているのでは全然ないのですよ。それから西村という人から、佐藤証人に出てくれぬかと和まれたのも事実です。しかし弁護人が証人を出すのはみんなそういうものです。自分が、今裁判になっている、あれは事実と違う。事実はこうなんだ、知っておったって今の警察検察を相手にして、だれもそんなに出たがりませんよ、実際のところ。それはやはりあんたほんとうに知っているのなら行ってやってくれぬかと言うのは当り前です。こんなものがどうして偽証教唆になりますか。この犯人のお母さんがそういうことを聞きつけて西村に頼んだわけです。ぜひ行ってくれぬか。それから西村に頼んだ。友人である佐藤にまたそう言うた。あんたそういうことを村松から聞いたのなら聞いたと行うてやってくれぬか。ただしそれなれば佐藤村松自分記憶を思い出してみなければならぬから、それは若干合わないこともあるでしょう。そんなことを偽証だとか何とか言っておったら、真相というものはとても、裁判所にしゃべっていける人はおりませんよ。どんな立派な人だって、そんなことは、町名の違いとか共同便所の場所の思い違いとか、そんなことはあることなのです。それからここでは、村松がそういう人物を見たはずがない。照明の工合からいって共同便所が暗いとか言っておりますが、そういうことを私、新聞で見たので、関係者に、弁護人に聞いてもみました。そうしたら外にちゃんと街燈があって、それは見れる程度の照明が届いているわけなのです。だから法務省のそういう検事側だけの調査でそういう結論を出されては、これははなはだまずいです。だから偽証として逮捕されたのは、何と言ったってこれは重大なミスです。そういう詳しい調査を、おそらく反対のを聞かなければわかりませんよ。これはもう一度詳細に検討してほしいと思う。  それからもう一つは、西村という人を偽証教唆で逮捕する場合に、午前二時まで調べておるんです、午前二時まで。これは午前三時に留置場に入れられたという記録が弁護人の方でつかんでおるんです。それでその点は物的にもこれは明確になるわけですが、十二時を過ぎて午前二時まで、お前が偽証教唆をやったのだろう、こういうことを、偽証事件というものはあっても、もっと紳士的にやるべきですよ、事件というものは。結果からみても実際ほんとうのことを言うておる証人たちなんで、証言がちょっと違うというだけなんです。それほど形容詞なんかに理屈をつけて、そうしてぎゅうぎゅういじめて、そうして前の公判廷における証言を取り消させたりしているでしょう、佐藤なんかに対しては。佐藤なんか実にこれはくやしがっていますよ。ちょうど女の何かからだの調子の悪い口で非常に困っているときなんです。そのときぎゅうぎゅう言わして証言を取り消させたりしている。それまでは言いませんが、西村なんかを午前二時まで調べたのは、これはもう間違いない。記録もはっきりしておる。この点を一体法務省の方はどういうふうにごらんになるかお聞きしたい。検察側の方は大したことはなかったという報告ですが、とてもそんなことじゃない。
  104. 横井大三

    説明員横井大三君) ただいま御質問の西村を午前二時まで調べたかどうかにつきましては、なお私の方で調査いたしましてお答えいたします。なお村松証言と、それから真犯人が出て参りまして佐藤が述べましたところと比べてみますと、便所の位置が非常に違うことと、それから佐藤久夫自分は共同便所で手を洗った、そのときにはだれもおらなかった。血のついたナイフを洗いまして、それをハンカチでふいた。で右のポケットへ入れたと言うので持って参りました。服装の右のズボンのポケットには血痕があるようです。ところが村松証言は、便所の場所が違うばかりでございませんで、その当時洗っていたものは日本手ぬぐいで、非常に黒くなっておった、そして二本の筋が入っておる、そういうものをすすぐような形で洗っていた、こういう証言をしております。さらに村松証人自分が手を洗っておりましたら、マフラーをかけて、白いシャツを着て、これは上着を着ておったということは法廷での証言でございますが、のちに上着は着ておらない。真犯人上着を着ておった、そういう男が自分を押しのけるようにしてその便所の手洗いのところへ来ました、そして洗った、こう言っております。この村松証言、ことに上着を着ておらなかったという点、それからその他の点は現在においても変ってはおらないようであります、現在において変ってはおらない。この村松泰子供述佐藤供述、現在明らかになりました事実関係とを比べてみますと、いまだにこの一致しない点が多々あるわけです。これはなぜ村松証人法廷でそういう証言をしたかという点は、これはなお糾明しなければわからない問題でございます。(「そういうことを聞いているんじゃないんだ」と呼ぶ者あり)とにかく村松証人証言は真実にぴったり合っておったかどうかというような趣旨の御質問でございますが、そうではないということを申し上げます。(「そんなことを聞いているんじゃないんですよ」と呼ぶ者あり)
  105. 亀田得治

    亀田得治君 午前二時はどうしました。
  106. 横井大三

    説明員横井大三君) それは調べた上でお答えいたします。
  107. 亀田得治

    亀田得治君 ともかく偽証という問題を扱う一つのケースがここへ出てきておると思うのです。それはどういう事件を立証する場合だって、一つ証人で全部合うわけはないんでしょう、それはその人の感じを言うわけなんですから、気持を。すでにあなた、事件が起きてから七、八カ月たっているわけでしょう。若干違ってくるのは当りまえですよ、こんなことは。そこを見たこともない、聞いたこともない人が言うておるんなら別なんです、私はそんなことは言わない、それは間違いないんですから。それを実際に違っておるとか違っておらぬとか、そんな一体追及の仕方は証人に対してしていいんでしょうか、実際。そういう一般的な問題としてどういうふうにお考えでしょうか。
  108. 横井大三

    説明員横井大三君) 現在真犯人が現われましたところを基礎にして追及したわけではございません。その当時その証人証言が食い違っておるとか、あるいは照明の工合でそれほどはっきり見えるわけないじゃないかというような点、その他の点から疑いを持ちまして調べたというのでございまして、それを現在の状態から見ますと、なお村松証人証言に、もし真犯人をほんとうに見ておりまするならば、もう少し一致する点があるべきではなかったかと思うのでありますが、依然としてなお供述佐藤久夫供述との間には食い違いがある、こういう関係になっております。
  109. 亀田得治

    亀田得治君 ともかくそういう点の調査ははなはだ一方的です。だから私はこの証人の扱いの問題につきましても、先ほど申し上げたように、一体二人の証人と教唆したという西村、これがどういう扱いを検察官から受けたか、これを直接一つ調べてほしい。必ずそれには弁護人を立ち会わしてもらいたい。これは弁護人を立ち会わさないでやると、結局それは押しつけになってしまう。理屈で言い負けしてしまうわけです。だからぜひそういうふうにして、そうしてその不当な取調べをした検察官、これ一つ検察関係ですから法務省直接やれるはずです。内部の機構からいってもやれるわけです。そこまで私はやってほしい。そうすればこの真相はっきりしますよ。別々に調べて何か両方違った言い分を新聞等に発表する、ああいうことは、はなはだ、それはもう世人に対して、国というものに対して不信の念を抱かせます。間違いがあったら直接みずから本省の者が乗り出してきて明確にする、悪いなら悪いということをはっきりする、これがむしろ国として尊敬されるゆえんなんです。あんなことをやっておったらますます、なんだ、それだったら適当に言いっぱなしにしておけばいいのだ、こういう印象を与えて、はなはだいかぬです。これはだから検察の拷問の問題と同じように、この点について一つそういう直接調査ですね、弁護人も入れた、対決さしてもらいたい。その点についての一つ明確な気持を聞いておきたいと思います。
  110. 長戸寛美

    政府委員(長戸寛美君) ただいまの件につきましては法務省といたしましても重大な関心を持っておりますので、横井事課長参りまして、わずかに一日でございましたので調べの足りない点もあろうかと思います。その点につきましてはさらに調査を進めたい、かように考えます。なお法務省人権擁護局におきましてはこの問題の調査に乗り出しておりますので、われわれといたしましても、われわれの入手し得た資料を人権擁護の方に提供しまして、十分な調査をしてもらいたい、かように考えておる次第であります。
  111. 亀田得治

    亀田得治君 私の質問に対する松原政務次官の御見解ですね、それを承わりたい。
  112. 松原一彦

    政府委員(松原一彦君) 取扱いのこまかい技術的な点は私よくわかりかねますけれども、大局から見てこの問題は非常にむずかしいものが含まれておるということをこの間うち本会議でも申し上げておきました。まだ私どもの調査は完全に終ったわけではございませんし、ただいま承わっているところだけでも調べなければならぬ点がたくさんあるように思いますから、法務省の方からも刑事局長代理が申しましたように、こちら側からも調べ、人権擁護局長の方からも調べまして真相を明らかにして、負うべき責任は負いたいと思います。
  113. 亀田得治

    亀田得治君 それでは一つ、きょうの質疑で明確になった点は、警察側では拷問の点ですね、その点についての再検討をお願いする点と、それから裁判所の宋の調書に出ておる第五の人物真犯人、これに関する調査が実際にその当時どこまでされたのか、その意の詳細な一つ報告をあらためてお願いしたいと思います。  それから法務省の方にも私きょう申し上げたような検察側の不備な点ですね、これはもっと徹底的に調査をして、一つその点にしぼった詳細な報告をしてほしいと思うです。まあいろいろあるのですが、時間もずいぶんだっておるからこの程度にしておきます。
  114. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 関連して。これ、人権問題や拷問の問題なんか、この法務委員会としても非常に重大な問題をはらんでおりますので、取扱いを慎重にしなければならないと思いますが、一方少年法や少年院法に対しましてこれは根本的に検討して、たくさんのメスを入れなければならない問題が出てきておると思っております。だからこの取扱いについて、たとえば私ども直接行って調べたいような問題もなくさんございますが、その取扱いは理事会や委員会において慎重に協議していただきたいと思っております。
  115. 小林亦治

    ○小林亦治君 関連して。先ほど提案したように、もう一ぺんこれは理事会で練ってもらいたいと思います。
  116. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 これは、警察の方は中川さんが今おいでになっているし、法務省の方は松原次官にぜひ申し上げておきたいのですが、最近の人権じゅうりんの事実ですね、しかも真犯人が出て、自首せられて、自由な意思でね、そうして初めてその警察及び検察及び裁判まででたらめをやっていたということがわかってきたという事実は、私は法務委員会として国民におわびのしようもないように思っております。警察はほんとうにただ飯を食っている。検察もほんとうに月給をただもらっている。裁判所も全く国民の厳粛なる信託を裏切っている。われわれ法務委員会もその責任を全くないがしろにしておる。主権在民の国民に対してどんなにおわびしても許しようがないのです。そうして続々と毎日のように真犯人がお出になる。そうでない方を警察も、検事裁判所もこれを有罪にしている。秩序の紊乱これより大なることはないのですよ。民主的な秩序がこんなに紊乱しておる。それも真犯人がお出下すったからわずかにそれが救われる。検察みずから救えない、警察みずから救えない、裁判所みずから救えない、こういう重大な問題ですから、検察においてもこの際重大な決意をせられて、もう一ぺん……私はもう新聞を朝見るのがこわいくらいです。きょうもまた真犯人がお出になるのじゃないかというふうです。これは全く、つまりただ国民が、しかも真犯人が名乗って出られるというのは容易じゃないだろうと思う。自分が名乗って出れば自分が暗い刑罰を受ける。国民の方では刑罰をおそれていない。罪をおそれて自首してお出になっている。そういう方があるのでわずかに非常な不幸な方が救われている。そんなことでいいのですか。警察は、検察はそんなことでいいのですか。裁判所は今ここにお見えになっていないけれども、そんなことでいいのでしょうか。真犯人さえ出なければでたらめなことをやっていいのですか。それが憲法の前文に書いてある厳粛なる国民の信託にこたえる点ですか。私はどうかそれぞれの責任を、人間であるならば、公務員であるならば十分自覚せられて、今、亀田委員から御質疑のあったような点、また先ほど一松委員からも御質疑のあったような重大な点について、即刻最高の調査をせられて、そして今までわれわれにお出しになっておったようないいかげんな調査書、報告書というものじゃないものを出していただきたい。同時に私はやはり亀田委員なり皆さんのお考えで、法務委員会としても十分に考えていただきたいと思う。
  117. 高田なほ子

    委員長高田なほ子君) お答えがありますか……。  それでは一応まとめてお諮りをいたします。ただいま当局からの調査資料に基きまして、各委員から熱心な質問が開陳されたわけでありますが、しぼってみますと、第一番目に、第五の人物が登場した際に、前堀弁護人は証人申請の前に当局に対して忠告をしているにかかわらず、これがうやむやのうちにいろいろな問題が起ってきている。従ってこの間の経過については十分信憑性を持った調査がされるようにという第一の亀田委員からの御発言であります。  第二の問題は、第三回目に宋少年は第五の人物が登場したことを取り消して自白をしておる。この間における拷問の事実があるように考えられる。この点については十分に調査をして、この経過についても再度報告をしてもらいたい。  第三番目に、証人村松泰子さんがかなりの信憑性を持つ証言をしているにかかわらず、現場との食い違いで偽証容疑という点で逮捕している。これは明らかにミスである。従って村松佐藤二人の証人西村証人を一体どういう状態で調べたのか、この際は必ず弁護人を同道して調べてほしい。  こういう三つの要点にしぼられておるわけですから、当同としてはこの間を再度調査を進めて文書をもって御報告をいただきたいと、これを確認をしていただきます。  それから第二にお諮りいたしたいことは、先ほど小林委員から亀田委員の質問に対して関連された問題でございますが、当局は当局の擁護の調査に尽きているように思う。こういうことであってはその信憑性をつかむことはできない。真実性を発見するためにどのような調査法務委員会としてするか、こういうような御発言がありましたので、本問題について調査方法等について、二十六日の委員会開会前の理事会でお諮りをしたいと思いますが、御異議がなければそのようにしたいと思いますがいかがでございますか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  118. 高田なほ子

    委員長高田なほ子君) 御異議ないと認めましてさように決定さしていただきます。  続いてお諮りをいたしますが、本日の議題はさらに外国人登録と死刑廃止法の逐条についての御説明をいただくことになっておりますが、若干の休憩をいたしまして、二時十五分から再会いたしたいと思います。御異議がなければそのようにさしていただきます。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  119. 高田なほ子

    委員長高田なほ子君) 御異議ないと認めます。二時十五分から再開をいたします。    午後一時三十九分休憩      —————・—————    午後三時四十八分開会
  120. 高田なほ子

    委員長高田なほ子君) 午前中に引き続きまして委員会を開会いたします。  まず外国人登録法の一部を改正する法律案を議題に供します。本案について御質疑のおありの方は御発言をお願いいたします。
  121. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 第一に伺いたいのは、今回の改正について、本法の適用を受けられることが予想されるような方々の中にいろいろな不安がございますので、そういう不安に根拠があるのか、ないのかを明らかにしていただきたい。  それでその第一は、今回の改正の目的をはっきりお答えを願いたい。
  122. 内田藤雄

    政府委員(内田藤雄君) 今回の改正の直接の動機になりましたのは、御承知のごとく二年ごとに切りかえをいたしまして、この秋がその切りかえの時期になっております。で、相当多数の方々が登録を切りかえをいたし、その際に昨年四月二十九日以降指紋をとることを含んだ登録の切りかえということになりますので、相当窓口になります市町村の係におきまして非常に事務が錯綜いたすことが予想されるのでございます。もちろんこれはそれを受けて立って参ります市町村側の方の問題でもございますが、同時にこの法律に基きまして義務を課せられておられますところの方にも、不測のいろいろごめんどうをおかけするようなことになってはおもしろくないのでございますので、かたがたそうしたことを両者にとって手ぎわよくいくようにというふうにいたしたい、というのが一番大きなねらいでございます。しかし同時にかねてこの法律につきまして不必要にめんどうくさいような条項などもございますので、そういったことをこの機会に整理いたしましてこの事務を取り扱います者、またこの法律によって義務を課せられておる方、双方にとってなるべく円滑にこの法律を実施して参りたい、こういう趣旨で法律を改正したのでございます。
  123. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 ただいまの御説明にございました、従来のような繁雑な手続をしていたと考えられるようなものを削ったというのは、どういう点がありましょうか。簡単に列挙していただきたいと思います。
  124. 内田藤雄

    政府委員(内田藤雄君) 一つはこの法律が幸いにして通過いたしますならば、従来二年でやっておりましたものを三年ということにいたしたいと思っておるのでございますが、これも一つの大きな点でございますが、そのほかいろいろこまかいことになりますが、居住地変更の場合の事前届出制度というようなものを廃止いたしたのが一つ。それから新規、変更登録の申請期間の延長、あるいは再交付につきまして知事の承認を必要といたしたのでございますが、これも廃止いたしまして窓口限りでできるようにいたしたのでございます。それから自治体の名称が変更されました場合に、本人の申請を必要といたしましたのを職権でやり得るというようなことにいたしたことが一つ。それから再交付申請の書類などを簡略化いたしました。大体こういうようなことでございます。
  125. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 今度の改正によって従来の手続は簡略にせられたということは、そのやはり日本に長く滞在せられる外国の方々に、無用にして繁雑な、そしてそれらの方々の人権を侵害するようなおそれがあるようなことが起らないようにする。それが御趣旨である。それ以外の御趣旨はないというふうに伺ってよろしゅうございますね。
  126. 内田藤雄

    政府委員(内田藤雄君) ただいま申し上げましたように、この事務を扱っおります方々の負担を軽くしたいということも、確かに一つのねらいでございますが、同時に先ほども申し上げましたように、この法律によって義務を課せられておる方々の御便宜もはかりたいということが一つの考えでございます。
  127. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 その点がちょっとやはり問題になってくると思うのですが、その、国民あるいは日本に滞在せられる外国の方々の人権の尊重ということを第一に考えられるという国であって、初めて民主国家ということができると思う。その取締りの方の便宜ということを第一に考えれば、これは警察国家ということになる。私は、日本が現在国際的に名誉ある地位を占めるためには、やはり日本が過去のような警察国家の形態というものを全く脱却して、民主国家の方向に向っていくということが、外国にも認めていただけるようにならなければならないというふうに思います。今回の改正も、今までの現行法よりも、この改正によってどういう点をよけい得るのかという点で、私はこの改正法律案そのもの、並びにその運用の面において、ただいま申し上げたような意味で、人権尊重という面を常に第一に考えられていかれるべきものだ、というふうに期待をするのでありますが、その点はいかがですか。
  128. 内田藤雄

    政府委員(内田藤雄君) 御趣旨には私どもも同感でございまして、日本が再び過去の警察国家のような国になるのではないかというような不安は極力防がなければならないと考えております。従いまして、こういう制度を警察で行わせるというような説も一部にはないではなかったのでありますが、われわれといたしましては、そういうことは絶対避けるべきであるというような考えで、いろいろ市町村にはごめんどうをかけるということも重々了解いたしながら、やはり市町村の窓口でやっていただきたいというふうに考えておりますのも、全く趣旨はそういったことによるものでございます。従って私どもこの法律の運用によりまして、そういった誤解を生ずるようなことがないようにということについては、十分留意いたしたいと考えております。
  129. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 次に伺いたいのは、この改正法律案には市町村に対する訓令的といいますか、何といいますか、指示的な規定が大へん多い。これが一面において不安を与えておるようです。これはどういう意味でありますか。その外人登録関係について中央集権的なことを考えておられるのか。それともそうでなく、従来政令あるいは施行規則などによって処理されておったものを、丁重に法律の中にしるしたという趣旨で、そういう意味においては丁重という方が趣旨であって、決して中央集権的な、権力的な考えではないということであるのかどうか。  それからそれに続けては、こういう改正によって市町村自治体の自治権に対する侵害あるいは圧迫、いやしくも圧迫というようなことは起るおそれが全くない、こういう確信を持っておられるかどうか、その三点を伺いたい。
  130. 内田藤雄

    政府委員(内田藤雄君) 法律の条文につきまして、今私自身も、どの条文をお考えでございますからょっと了解いたしかねますが、少くともわれわれの考えといたしまして、特に中央が不必要に市町村を指揮監督いたしまして、中央集権的にやって参ろうというような考えは全然持っておりません。むしろ私どもの考えといたしまして、いろいろ規定も今、羽仁委員の御指摘のような規定がたとえあるにいたしましても、それは市町村自身がこの本件の仕事をやって参ります場合のやり方を、むしろ政令とかあるいはわれわれの訓令とかでなくて、法律自体の中で明らかにいたしまして、この適用を受けます方々の権利も十分守れるように、ということが趣旨であると了解いたします。また従いまして、この法律によりまして不当にその人権を圧迫するとかそういうような考えは、全然持っておらぬのであります。その運営につきましては、これは当然のことでございますが、十分常識的にあやまちなきを期したいと考えておる次第でございます。
  131. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 そうすると、お答えのようでありますと、改正案によって市町村あるいは市町村長に対してかなりこまかい規定がありますのは、それによって市町村なり市町村長が十分の権限をもって処置せられ、行動せられることができるようにしたということであって、決して中央から指示しようということじゃない。それは先ほどのお答えで知事の承認ということを必要としないようになってきたということも関係して、そういうように解釈してよろしいというお答えであろうと思うのです。それはそれでよろしゅうございますね。その通りでございますね。それでこれはその市町村あるいは市町村長が、一々中央に聞いてこなければならないようなことが起らない、と考えてよろしゅうございますね。
  132. 内田藤雄

    政府委員(内田藤雄君) こういう法律を施行いたします場合に、やはり市町村の窓口の能力と申しますか、いろいろ制約がございますので、どうしても法律の解釈運用というようなことについて、中央にいろいろ聞いて参るということは過去においてもございましたし、今後もそれはあろうかと存じます。しかしそれは、その趣旨はただいま申し上げましたような、格別不当にこの法律の適用を受けます人を圧迫するとか、そいう意味でのことでは全然ないのでございまして、正当にこの法律が運用されますための、まあやむを得ないことかと存じます次第でございまして、繰り返し申し上げますが、そういう事実を利用いたしまして、中央集権的にコントロールして参ろうというようなことは毛頭考えておらないわけでございます。
  133. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 ただいまのお答えは、これは技術的なことだけであって、政策とか判断とかということに関しては全くない……。
  134. 内田藤雄

    政府委員(内田藤雄君) それは自治体は十分尊重いたすつもりでおります。
  135. 高田なほ子

    委員長高田なほ子君) ちょっと関連してお尋ねします。市町村の窓口の事務が非常に大きくなっています。特に解釈を聞く場合に中央にその意向を質すことがあるが、決してそれは中央集権的な考えでもないし、また申請をしている方々を圧迫しようというような意味はいささかも持っていない、こういう御答弁で、それは了といたします。  それでそのお考えと十五条の二の関連をお尋ねしたいのですが、十五条の二の規定は、「(事実の調査)」という調査権の内容について規定してあるところです。この十五条の二を読んでみますと、「申請の内容について事実に反することを疑うに足りる相当な理由があるときは、」云々、この職員に事実の調査をさせることができると、こういうふうにですね、登録の正確な実施を期するために調査権を持つということが規定してあるわけですが、これは一歩あやまると、調査権の乱用になり得る場合も出てくる可能性があるわけです。そこで一体この職員に事実の調査をさせる場合に具体的にどういう方法でさせるのか。また「事実に反することを疑うに足りる相当な理由がある」とだれが認めるのか、そこらの関連ですね、詳しく説明して下さい。
  136. 内田藤雄

    政府委員(内田藤雄君) この規定は非常に新しい規定のように見えるのでございますが、実は前から、改正前の法律の第四条にいろいろ規定がございますが、その中に大体同趣旨のことはすでに規定されておるのでございます。たとえば前の四条の第五項を読み上げますが、「市町村の長は、第一項の登録原票を作成する場合において、外国人登録の正確な実施を図るため、同項各号に掲げる事項について、事実に反することを疑うに足りる相当な理由があるときは、当該職員をして事実の調査をさせることができる。」と、こういうような規定はもうすでにあるのでございます。それを今回の改正に当りまして、こういった規定をいろいろまとめまして、この十五条の二という規定を置いたのでございまして、一見新しい法律規定のようでございますが、実は内容的に申しますとそうではないわけでございます。それでこの規定はこれは当然のことなんでございまして、登録のいろいろ書き入れて参るとか、申請などに書いてくるとか、あるいはいろいろ説明をするなどということが受け入れられる、もっともだと思えばもちろんそれで済んでしまいますが、どうも言っておることが非常にほかの言っておることと矛盾しておるとか、特に何か疑うに足りるような理由がある場合に、一体それがほんとうかどうかということを確かめるということは、これは実はこういう事態に限らず、いかなる場合においても行政事務において当然行われておることだとわれわれは信じておるのでございまして、日本人の対象になりました住民登録法にも全然同趣旨の規定があるのでございます。従いまして過去においてもそうでございましたが、こういった規定を悪用と申しますか、利用いたしまして、警察などを使って、まあいわゆる人権を侵害するような行為をやろうとか、そういうことは全然考えておらないのでございます。
  137. 高田なほ子

    委員長高田なほ子君) そこで全然考えておらないということは一応説明としてはわかるのですが、いろいろな事務を簡略するために、現実的には窓口に、その事務に強い責任を持たせなければならないことになってくるわけです。その責任が調査権の内容にまでも伸びるということはこれは当然考えられるので、この第十五条の二の規定を適用して、一方的に「事実に反することを疑うに足りる相当な理由がある」と認めて、どんどん調査させることもまた可能だと思うのです。で、こういうことは私どもは決して悪意に解釈するわけではありませんが、窓口の事務の権限が拡大されると、その権限を乱用して、調査権を拡大させるというおそれが考えられますが、これを是正するためには、当然調査権を持つ窓口の職員の教養とか、この法案に対する十分な理解というものを浸透させなければ、その乱用を防ぐことはできないと私は考えますが、いかがでありましょうか。
  138. 内田藤雄

    政府委員(内田藤雄君) ただいまも申し上げたことでございますが、同趣旨の規定は過去にもございまして、いまだ私の承知しております限り、この条項によりまして何か非常に不愉快な事態が起ったということを全然聞いておりません。われわれといたしましては、繰り返し申し上げますように、この規定によりまして、特に新たな権限が与えられたとか、市町村の窓口の権限が拡張せられたとは考えておりません。従いまして従来でもそうであったごとく、今後におきましてもこの規定の運用によりまして、不当にめんどうなことをかけるというような事態は起らないと信じておるのでございまして、御懸念のように市町村の窓口の吏員の執務態度から見まして、無用の不安と申しますか、不愉快な感じを、この法律によって義務づけられておる方が受けられるというようなことは、私どもとして予想しておらないわけでございます。しかしながらそういう御懸念の趣旨は、十分われわれといたしましても注意いたしまして、この条項によりましてそういう事態が起らないように、できる限り善処いたしたいと考える次第であります。
  139. 高田なほ子

    委員長高田なほ子君) 実はこの外国人登録法の実施に当って、先ほどどういう効果があるのか、またいろいろな不安を持っている点があるがということで、羽仁委員からは実は御指摘があった点でありますが、私も仄聞するところによると、この調査権の拡大というようなことがもしあった場合に、本人並びにその他の関係の人に対しても質問をし、または文書の提示を求めることができるという規定がありますから、御本人のほかにもその他の関係人にまでも累を及ぼす調査権がここに規定されてあるので、解釈のしようによってはいかようにでも拡大して調査をすることができるというところに、非常な不安を持っておると考えられる。今まではこの都道府県の中央にいろいろな権限があったようですが、特に今回の改正で事務簡素化のために、窓口にこういつたような権能を与えておるわけでありますから、一そう不安をお持ちになるのもまた当然ではないかというふうに考えられるのでありまして、今、局長は責任をもってそういうことはあり得ないとこういうふうにまあおっしゃっておられるわけですから、これ以上御質問を申し上げる必要はないかと思いますが、私が心配するのは単に調査をするということだけではなく、この調査にからんで第十九条では罰則規定が設けられて、過料に処すというような強い罰則規定が設けられてあるのですから、第十五条の二の調査権は単なる調査権ではなくて、ひいては五千円という罰則も適用するところにまで及ぶという危険性がございますので、私は質問しておるわけであります。重ねて御答弁をいただきたいと思います。
  140. 内田藤雄

    政府委員(内田藤雄君) その点は全く御懸念がないと考えますのは、実はこの十五条の二は罰則の規定からはずされておるのでございます。従いましてこういうことはできるということにはなっておりますが、実際上これに応じない人がありましても、実は強制力がない規定でございます。私どもはもちろんこの規定によりましてそういったことが行われないと信じておりますが、もし万一吏員の中にこの規定を悪用と申しますか、そういう趣旨に使おうといたしましても、実は今申し上げますように強制力を伴っておりませんし、また制裁もないのでございますから、そういうふうには使い得ないのではないかと考える次第であります。
  141. 高田なほ子

    委員長高田なほ子君) ええ、わかりました。  それではもう一点お尋ねをいたしますが、これは第十五条の二の二項になりますが、「前項の調査のため必要があるときは、市町村の職員は、当該申請をした外国人その他の関係人に対し質問をし、」となっていますが、具体的にいうと、その他の関係人というのは限定されているものでしょうか、無限に拡大されて解釈されるものでしょうか。そこの解釈はどういうふうになっておりますか。
  142. 内田藤雄

    政府委員(内田藤雄君) これは非常に読み方によると広い意味にも読めますが、われわれが実際念頭に置いておりますことは、たとえばある人がそこに住んでいるかどうかというようなことに疑いがあった場合に、その近所の者に聞いてみるとかあるいは親子、親類、夫婦といったような関係の人に聞くとか、そういう程度のことを考えておるのでございまして、その調査のために非常に広くいろいろ調べるというようなことは実は考えておらないのでございます。この実際の運用は、過去におきましても、先ほどから繰り返して申し上げておりますように、これによって市町村の実力を考えましても、われわれとしてはそういう実は心配を持っておらんのでありますが、市町村自身にそんな余裕もございませんので、こういう規定があるからといって非常に広い範囲の人をむやみに呼び出して調べるとか質問するとか、そういうことは実際上はもうないと私どもは信じておるわけでございます。
  143. 高田なほ子

    委員長高田なほ子君) 局長は大へん善意を持っておる方ですから、あなたはいつもそういうふうに解釈をしておるのですが、こういう規定がなくとも、何らかのひっかけがあると、人の思想を調べてみたり、その人の私生活までも調べる悪い癖がございます。特に国交未回復あるいはまた日韓関係が正常な立場に立ち至っていない場合に、かりにも保護規定としてこの調査権が認められておる場合でも、場合によってはこれを悪用して、どこどこまでもこの関係人の解釈を拡大をして、質問をするというよりはむしろ尋問するというような形が行われる危険性を伴うわけであります。特に職員が事実の調査をすることができない場合には、ややともすると警官の介入するような危険性をも私どもは考えて質問をしているわけで、そういうことがないように万全の注意を払ってもらうとともに、この法文の解釈を明確に一つここで局長にもう二便答弁をしてもらいたい。
  144. 内田藤雄

    政府委員(内田藤雄君) 私の了解いたします限り、繰り返すようでございますが、過去におきましてもこういった条文を利用いたしまして、警察調査を依頼するとか、警察官がこういった条文にからんで何か不当なことをいたした、というようなことは実は全然耳にいたしておりません。今後におきましても、これは市町村、先ほど来申し上げておりますように、申請書等が出ましたときに、何かその中にふに落ちないことがある場合に、それを確かめるような意味で聞いてみる、そういうことを調べることができるというぐらいの規定であるとわれわれ自身考えておりますので、万が一にもそういうことはないと信じますが、しかし御趣旨のようなことは十分われわれといたしましても気をつけまして、そういうことのないようにいたしたいと考えます。
  145. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 前にはよくそういうことがあったようですが、外人登録票を持たないでおふろに入りに行ったらば、おまわりさんに聞かれてそれで引っ張っていかれたというふうなこと、あれは最近はもうそういうことは絶無でしょうか。
  146. 内田藤雄

    政府委員(内田藤雄君) その事例は実は私自身も抗議を受けたことがございますが、これは一昨年の秋ごろのことであったと思うのでございますが、それ以後ただいまお話のように不携帯によって逮捕されたという例は、むろんその後もあろうかと思いますが、ただおふろにいく、ほんのちょっとしたときに持っていなかったということのために引っ張られたという話は、その後は聞いておりません。おそらくなくなっておるものだろうと考えております。
  147. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 その点を、まあなくなっていると思うという程度でなく、やはり善意でもってそのとき偶然持っていなかったというようなことを法律上規則違反というように取り上げるということがないように、ことにこれは外国の方でもあることですから、何か格段の措置をお考えになっていませんか。
  148. 内田藤雄

    政府委員(内田藤雄君) その当時、私が先ほど申し上げましたように一昨年の秋そういった抗議を受けました当時には、私もこういうような不満があるのだということは警察の首脳部の方にお話をいたしまして、その当時も十分了解されておったと思うのでございます。幸いその後そういう御不満も聞いておりませんので、ことさら何もいたしてはありませんが、大体そういう趣旨において行われて実際に運用されておるというふうに私は了解いたしております。
  149. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 今の登録票を携帯しているかしていないかという場合、それからそのほか本法あるいは改正案で規定されているいろいろな規定の履行ですね、実際に適用する場合いろいろな場合について、もちろん法律で規定されていることはその通り運用されるということは当然でありますけれども、しかしその運用の仕方にはやはりただいまの偶然、そのときにごく短い時間持っていなかったというような場合を逮捕したというような、そういうふうに訴えられている実際の事情から考えてみますと、その規定の運用が行き過ぎている場合がどうもあるのじゃないかというように考える。たとえば滞在期間につきましても六十日というのを一日越えたとか、あるいは間もなく日本を立ち去られるのに、あるいは間もなく別の処置がとられるのにそこに悪意でもってその六十日なり何なりという規定を越えてもそれを無視しているのじゃない、いろいろな事情のある場合もあると思う。その他一々あげませんけれども、そういう法律に規定されていることであっても、それをあまりに厳格に適用して、そしてかなり無理な処置をするということがないように、この改正案がもし成立した場合には、関係の市町村はもちろんでしょうが、関係の政府機関にそういう趣行を通達されることが私は必要じゃないかと思うのです。どうでしょう。
  150. 内田藤雄

    政府委員(内田藤雄君) 少くとも私どもといたしましては、この法律の運用に当りまして先ほど来申し上げておりますように、その義務を負っておる方々を不当に圧迫しようとかいじめようとかという考えは全然持っておりません。ただ法律がありますのに、私から法律に違反してもいいのではないかというような疑念を起させるような御答弁はいたしかねるわけでございますが、しかし私どもの気持といたしましては、こういう法律の運用というものは、当然お説のように外国人に対する関係でもございまするし、円満な良識をもって運営せらるべきであると考えておる次第でございます。
  151. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 常識から考えて無理なことを強行しないという御答弁と伺ってよろしいですか。
  152. 内田藤雄

    政府委員(内田藤雄君) ええ。
  153. 高田なほ子

    委員長高田なほ子君) それに関連してのことですが、常識的に無理なことをしないということでそれで了とするわけですが、もし無理なことがあった場合にはどういうふうになさるのですか。
  154. 内田藤雄

    政府委員(内田藤雄君) その常識的に無理だということがどういう場合かちょっと具体的にならないで、あるいはそれはそういう無理なことはやめなさいとか、そこまでせぬでもいいだろうということを申す場合もあるだろうと思いますし、ちょっとその今のような抽象的な御質問に対してどういたしますというような御答弁もいたしかねるわけでございますが、われわれといたしましてはなるべく先ほどから申しておりますように、良識ある運用をいたすようにわれわれ自身も努めますし、またその線におきまして関係の人々を指導して参りたいと考えておる次第でございます。
  155. 高田なほ子

    委員長高田なほ子君) 先ほど私的な席で申し上げたことですが、これは入管の方で御了解を得て、その日に帰ることにきまって、今晩の八時に立つという飛行機の切符を持っているにかかわらず、警官がやって来て有無を言わさず連行して、しかも机の引き出しまであけて、必要と思われる書類をひったくって持って行って数時間取調べをして、飛行機に乗るぎりぎりまぎわになって出してよこすということは、これは私は非常な非常識だと思う。こういう事実は架空の事実でなくて、きわめて最近あった事実だと思うのです。もちろん野放図に滞留期間を延ばしておくということについては、これは法律的に許されないことですが、現に切符を持って今晩帰るという者までも警官が連行して文書までも調べるということは、どう考えてもこれは常識外のことのように私には考えられる。そうだとすると、事実の調査というこの項目があるから、これでいいのだという主張も成り立つかもしれませんが、今申し上げた事実はきわめて常識的に解釈に苦しむ非常識だと思うのですが、こういったような一部の行き過ぎがある場合についてはどういう処置をおとりになるのですか、こういうことです。
  156. 内田藤雄

    政府委員(内田藤雄君) 先ほどもそのお話を伺いましたが、私の想像でございますので、正確に申し上げかねますが、おそらくそれは外国人登録法の問題でなくて、出入国管理令のいわゆる不法残留と申しますか、そういったケースではなかろうかと考えます。その場合におきましても私どもといたしましては、すぐ帰るようなことが明らかでありますような場合には、勧告という措置によりまして実際上正規の在留資格を持たなくても、別にトラブルなしに帰国できるような措置をとっておるのでございます。問題は、これは、私はそのケースを調べてみませんとわかりませんが、ひょっとしますとたまたまそれがほかの刑事事件に直接かあるいは関係者として手配でもせられておったような方であったのではなかろうか……。
  157. 高田なほ子

    委員長高田なほ子君) それは違います。
  158. 内田藤雄

    政府委員(内田藤雄君) これも私想像でございますからわかりませんが、そういうことでなければ私どもとそういう警察、治安御当局との間には話ができておるのでございまして、勧告の期間中に日本の国外に出国しようとする場合には、それは実際上正当な在留期間中に帰るのと同様に扱うということについては打ち合せができておるのでありまして、それをどうしてそういう事態が起りましたか、私には了解いたしかねるわけでございます。具体的にその事件を伺いまして、私どもの方に手落ちがございましたら、むろん反省もいたしますし、また、必要ございましたら、注意を喚起いたしたいと考えます。
  159. 高田なほ子

    委員長高田なほ子君) 私がたびたび十五条の二の「事実の調査」というところに執拗に質問を重ねておりますのは、何ら刑事事件に関連のない者、つまり当局からの勧告に従って行動している者に対してまでも、こういう調査が行われたという事実を知っておりますので、この十五条の二の規定について、先ほどから繰り返して質問しておるわけです。ただいまの御答弁で、そのようなことがあり得ないことであり、また、あった場合には十分注意する、こういう確約をして下さいましたので、この項についての質問はこれ以上いたしません。
  160. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 今の委員長の御質問のような場合、そのほか不当な処置をされたんじゃないかと思うときに、その思った方がどこかへ行って訴えるというのは、どこへ行って訴えればよろしいのですか。
  161. 内田藤雄

    政府委員(内田藤雄君) その内容性質にもよると存じますが、もしわれわれの方の直接関係いたしたことでございまして、われわれ自身が指導なり監督なりをいたす範囲のことでございましたならば、われわれの方にお申し出いただきましたならば、それに従いまして善処いたしたいと考えますし、場合によりまして、それが人権の侵害というようなことでございますならば、あるいは人権擁護局の方にでもお申し出いただきまして、善処していただくというようなことになるのではなかろうかと考えます。
  162. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 そういう場合に、市町村長に訴えるということが一番手っとり早いのですが、そういうことにもなり得るわけですか。
  163. 内田藤雄

    政府委員(内田藤雄君) 市町村長にお申し出いただくのも一つでございましょうし、また場合によって、府県知事の方にお申し出いただくのも一つ方法かと思います。また場合によって、あわせてわれわれの方にお申し出いただきましてもりけっこうかと思います。
  164. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 最後に、指紋の点について伺っておきたいのですが、今回の改正によって、指紋をとるということも今まで二年であったのが三年に延ばされた。そうすると、予定ではこの秋ですかになされるのは、一年延びるわけですか。
  165. 内田藤雄

    政府委員(内田藤雄君) そうではございません。この秋は実行いたしまして、この秋に実行いたしましたあとは三年にいたしたい、こういう考えでございます。
  166. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 ここにも二つ問題がありますので、松原政務次官にもお答え願いたいと思うのですが、一つは、外人登録あるいは出入国管理の講和発効と同時にこういう法律ができますときに、日本と朝鮮の場合には、歴史的に特別の考慮をしなければならぬ理由があるということは、当時の岡崎外相の答弁の中にもありましたですし、速記にも載っておることだと思う。すなわち日本には、かなり長いこと日本国民として生活しておられた朝鮮の方々がある。かつまた、朝鮮と日本との外交関係というものは正常な関係に復することが一刻も早いことを私ども希望しているのですけれども、まだそうならないまでの状態というものがある。この二つの特殊な事情がありますために、この外人登録法あるいは出入国管理令というようなものの適用の面で、あるいは人情に反するようなそういう措置が起るのじゃないかというような心配があったので、質疑をしたわけですが、そういう人情に反するような処置は絶対にしないというお答えがあったのです。しかし、その後朝鮮と日本との国交回復ということがなかなか不幸にして早く実現されないために、今日まで、長くなっておりますので、実際上においては、外国人として取り扱われるということにだんだんなってきたのですけれども、その点で、具体的に申すと、指紋をとられるということについて、朝鮮の方々が特にそれを不愉快に感ぜられるという理由が幾分そういうところにあるのではないかということが想像されるのです。  それから第二は、朝鮮の方々だけでなく、一般の外国人の方々が長く滞在される場合に指紋をとる。これは、まずいわゆる文明国にはあまりない法律でありまして、ヨーロッパの文明国には少くともない。アメリカと日本、それから植民地の国々、そのほかに幾つかございますけれども、しかし、イギリスなりフランスなり何なり、そういうような国々にはない。アメリカでこういうことをやっております。いわゆるマッカラン・ウォルター・イミグレーション・アクトというのは、当時大統領トルーマンに拒否された経緯もある。それから最近も、昨年のジュネーブにおける巨頭会談の際などにも、それがやはり問題となって、それでアイゼンハワー、ダレスがアメリカに帰られて、そうしてこのマッカラン・ウォルター・イミグレーション・アクトというものについて再検討しなければならないというようなことになっている。具体的に申すと、たとえば私の友人で、世界的に著名なマンフレッド・グルリットという方などもずい分長く日本に滞在せられ、そうして日本を愛し、また日本国民からも愛されて、そうして音楽家として、芸術家として活動しておられるのですが、やはりこういう方々に対しても、今までですと二年目、今度改正されると三年目に指紋をとられる。そういう芸術家の方々に対して指紋をとるということは、決して好ましい待遇の仕方だとは思えない。芸術家は特にそういう点で敏感でありましょうし、しかし芸術家でなくても、およそ人間として、指紋をとられるということを愉快に考えられる方はないです。従って、一般の外国人が日本に長く滞在せられることが、あるいは観光の面からも、あるいは学問芸術などの文化の交流の面からも、場合によればそういう指紋までとられて、日本にいるということを不愉快に感ぜられる方々があると、そういう方々が日本に滞在せられて、あるいは観光、あるいは学問芸術の交流の上で貢献していただくということに妨げになる面もございます。以上のような点を総合して、果して指紋をとるということによって、どういうような利益があるか、それによって守られる法益というものがどういうものがあるかというと、やはりこれは、犯罪の取締りとか、あるいは予見とか、登録証の偽造とか、そういうような、つまり警察取締りの面からは確かに得るところが多いと思うけれども、それによって失われるところがまた非常に大きい。それによって失われるところは、外国の方々の人権を傷つける、あるいは感情を傷つける、そういう意味で、人権尊重という面からは、失うところが非常に大きい。警察取締りの面からは、多少得るところがある。けれども、警察取締りの面で、指紋をとることによって、とらないことよりも幾分の便宜はありましょうけれども、それで非常に、ただ犯罪とか何とかを防ぐということは私はむずかしかろうと思うのです。指紋をとったくらいで、そういうものを大して、悪質なものを防止するということはなかなかむずかしかろうと思うのです。ですから、結論的には、この指紋ということを日本がやっていることによって、日本がやはり警察国家的な傾向を持っていると判断されるおそれが多分にある。日本が国際的に名誉ある地位を占め、あるいは国際連合に加入を承認せられるということをわれわれは非常に希望するのであって、その意味から、日本が警察国家的な傾向などを少しも持たない、民主主義的な国家として世界に認めていただくことを希望するのであります。従って、ここで現在、この本法あるいはその改正法律案が成立しました場合に、この指紋をとるということをやっていかれる場合にも、その現在の法あるいは改正をした場合、運用する態度としても、その法の運用の上でも、今のような面を十分お考え下さって、その指紋をとるということについては、実は日本の国内の警察取締りの面からそういうことをお願いするのであって、相手方に対しては、その相手方の人権の尊重の面では、はなはだ遺憾であるという態度をもって運用せられることが当然だと思うのですが、その点をどういうふうにお考えになられるか。  第二には、政府は一そう深く検討せられて、外国人に対して指紋をとるということをやめるということをお考えになれないでしょうか。あるいはそういう点を御研究下さるということができないでありましょうか。場合によりますと、これは外国人に対して指紋をとるということから、ひいてはわれわれ国民に対しても指紋をとるという考え方にいくおそれが多分にある。これは松原次官もよく御承知のように、かつては東京警視庁などで、東京都民の指紋をとろうというふうなお考えになったことがあります。そうしてその一等最初に私はしばしば引く例でありますが鷹司平通君のところに行って、指紋を押して下さいませんか、そういう方が押して下さいますと、東京都民の皆さんが押して下さる。そうしたら、鷹司君が家へ帰って妻に相談して、それでいいということになれば押しましょう。それはなおけっこうだ。御夫婦でいただけるということで、警視庁の方がお家に行ったところが、その夫人は、私の父母もやはり押すのでございましょうかというふうにお聞きになった。警視庁は非常に驚いて、天皇、皇后の指紋をとるということなどは考えていなかったことですから、とんでもないことをお願いいたしたと言って引き下ったという実例がございます。やはり外国人に対して指紋をとるならば、国民に対しても指紋をとらなければならぬ。国民に対して指紋をとるならば、天皇であろうと皇后であろうと、そのやはり指紋をとらなければならないということになる。人間の平等という面からも、これはなかなか重大な問題である。私は、絶えずこの問題を本委員会で、政府に向ってその所見をただしているのですが、幸い現在は、法相といい、政務次官といい、まれに見る識見の高い方でありますから、この際指紋問題を再検討せられる御意向がないかどうかを伺わしていただきたいと思うのであります。
  167. 松原一彦

    政府委員(松原一彦君) 指紋というものの私どもに与える印象は、決していいものではございません。犯罪者の指紋をとっておるのでありますから、指紋台帳は即犯罪者の台帳のような感じを持ちます。連想を持ちますので、私ども決していいものとは思いませんが、不幸にして私は、羽仁委員のように、深い歴史的なあるいは世界的な事例を知りません。できることならば、御所見のごとくに、私は指紋などをとらないで済むようにありたいと思います。しかし、事務当局の方に聞いてみますというと、この法案は、ようやく最近にこれが実施せられるようになったのだそうでございまして、六十万人に余る最大多数の朝鮮の諸君の中には、そうでなくても相当もぐって参って、そうしてそのまま、登録していない者が登録した者の書類をば売り買いをしたりしている者があって、大へん困っているといったようなことを聞いておるのでございます。できる限りこういう制度のないことは望ましいことにきまっておりますが、しかし、あるにはあるだけの理由があって、講じてきたものと思われますので、私もほんの浅い考えでございますから、このいきさつ等につきましては、幸い最初からこれに携わっております入管局長からお聞きを願いたいと思うのであります。研究することにつきましては、私も今後法相にも御趣旨は申し入れまして、精一ぱい研究さしていただきたいということの希望を持っているものでございます。詳しいことは、一つ入管局長からお聞きを願いとうございます。
  168. 内田藤雄

    政府委員(内田藤雄君) こういう制度は、本来ない状態であることが望ましいということにつきましては、私も全然同感でございます。少くとも私自身がその立場に立って考えますならば、あまり愉快な感じを持たないであろうということは、想像ができますのでありますから、できますなら、そういう不快な、程度の問題もあろうと存じますが、不快な感じを与えることは避けるべきじゃないか、こういう御趣旨には必ずしも反対いたすものではございません。先ほど政務次官もちょっとお話になりましたように、遺憾ながら、今われわれが当面いたしております今日の情勢におきましては、まだいろいろのことが政治上と申しますか、密入国の例をまつまでもなく、いろいろ問題がございまして、やはり羽仁委員のおっしゃいますように理想的な状態と、また現実との間をいかなる点で調和させるかという点に、いろいろ線の引き方につきましては意見もいろいろあり得るかと存じますが、まあ最小限度の指紋ということで、なるべくその義務を受けられる方の負担なり不愉快なりを避けつつ、しかし、やはりわれわれが企図しておりますような、公正な外国人の管理ということのために必要最小限度であるというふうに、現段階においてはそう考えておるわけでございます。将来こういう基本的な事態が漸次改善せられますあかつきには、御趣旨のような線でわれわれといたしましても検討いたしたいと考える次第でございます。
  169. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 私の申し上げている趣旨は、次官も局長もよく御了解下さったことと思いますので、重ねて強く申しませんが、ただいまの密入国というものも、両方に外交機関が交換されていないために、人情上、あるいは妻が夫のところに行きたいと考える、そういう場合もあるいはあろうかと思う。両方に外交機関が交換されていないということからくる密入国は、これはクリミナルな密入国とは性質がかなり違うということは、申し上げるまでもないと思う。是非これは、松原政務次官と法相にお考え願いたいと思います。日本がこの際これによって得ることは、警察的な取締りの面だけで、しかも、私は大した実効があるものじゃないと思うのです。悪質な犯罪を指紋だけで防止するということもできない。もちろん指紋だけで防止するというお考えでもないでしょうが、それによって大して得るところがない。ただ与える感じは、警察国家的な感じである。むしろ大胆に、こういうものを撤廃されることによって、場合によっては、それによって人権を尊重される。大体人間はだれでも自分の人権を尊重されれば、それだけ自重心も出ることでありますし、そしてまた、国際的に日本の民主的な決意というものをそれによって認識せられることもあるのですから、一つぜひ十分にお考えを願いたい。お考え下さるということであったので満足しますが、現在の運用の面でも、できるだけ一つ緩和されたいと思うのです。それで現在は、これが除外されている場合が幾つかございますが、その現在除外されている場合を今少し拡大されているのかどうか、また拡大される御意思がおありかどうか、局長から御説明願いたい。
  170. 松原一彦

    政府委員(松原一彦君) 羽仁委員のお考えのように、実は私も、隣接国の間柄で、こういうやかましいことをしないで済む時代が一日も早くくるようにということを希望しております。というのは、スカンジナヴィアに行ってみますと、スカンジナヴィア三国の間は旅券が要らないのです。ちょっと酒飲みに、夕方三十分、海峡を渡れば行けるのですから。スエーデンは酒を飲ませない制限がある、時間に。そうしてちょっと船に乗って、デンマークに行って酒を飲んで帰る、映画を見て帰るというようなことをやっておる。その間に旅券が要らない。通貨は少し違っておるけれども、ほとんど同じような通貨で通っておる。あれを見て、私はしみじみうらやましく思う。日本と朝鮮及び中国などは、私どもは、多年旅券なしに旅行して参った人間です。今さら水くさいことを言って、一々旅券を取ったり、指紋を取ったりするということは、まことに耐えがたい不快を感ずるのです。だから、今回の日韓問題が、今度の糸口が、重光さんの言われることには、相当無理があると私どもは思いましても、できるならば、あらゆるがまんはしても、どうかして国交を正常化したいと思うのです。軌道に乗せて、こういう不愉快な問題がないようにいたしたいというのが念願で、まあ糸口をあけることについては、国内法を曲げるわけにはいかないけれども、国内法の解釈を最大限にして、仮放免というものはあるし、そういうことをやって、どうか糸口をあける、正常化のすみやかならんことを希望して参っておるわけでございます。私、かつて南洋の方面に参った時分に、戦前でありますが、あそこでは外国人を二つ、土人を一つにして、ユーロッピヤンと東洋外国人と別に分けておった。これは、私は不愉快だと思うのです。日本人はもっともヨーロッパ人の中に入っておりました。御承知でしょうが、東洋では、日本人はヨーロッパ人であったのです。というのは、一等国民であるからというのですが、それにしても、私は不愉快だと思う。東洋外国人というものと、土人というものと、ヨーロッパ人というものをまるで差別をして扱うというようなことはよろしくない。従って、今お話の便法としましては、指紋を取ることを免除するのをば拡充するという考え方も、それはもちろんあっていいと思うのでありますけれども、やはり希望は、こういう不愉快なことは、なるべくない時期が一日も早くくるようにいたしたい、そのためにも、国交の正常化を急ぎたいということを念願するものでございます。詳しいことは、一つ入管局長から、今の拡充できるものかどうかはよく私も知りませんので、お答えを願います。
  171. 内田藤雄

    政府委員(内田藤雄君) ただいまの御質問の点は、登録法上の例外の拡充という御趣旨でありますならば、現在やっておりますことからちょっと御説明申し上げたいのでございますが、外国人登録法の規定そのものの中には、例外を規定したような条文はないのでございます。ただ外交上の儀礼と申しますか、国際慣行とでも申しますか、そういう角度から、外交官の旅券を持っております者及び「日本国政府の承認した外国政府又は国際機関の公務を帯びる者」、これを技術的な表現で申しますと、入管令の第四条第一項の第一号及び第二号でございますが、この人々につきましては、実際上指紋を含めまして、外国人登録というのをやっておりません。で、拡充いたすといたしますと、これ以外にもこれを及ぼすかということでございますが、われわれといたしましても、個々の場合は、こういう人については登録をやらんでもいいじゃないかというふうに考える場合がむろんないことはないのでございますが、しかし、やはり法律の本質と申しますか、人によって差別をしないという趣旨から、一般的にこの法律を今の旅券というようなことで形式的に区別いたします以外には、一律に行なっているわけでございます。  拡充のもう一つの問題は、先般、現に問題になりましたのですが、この条文によりますと、「日本国政府の承認した」というふうになっておりますので、まだ承認していない国の政府の方の場合は、一体拡充できるだろうかどうかということが一つの問題になるわけでございます。これは、私どもの立場といたしましては、本来その問題は、大きく申しますれば、一つの国策的な問題でございまして、われわれが入管限りでそういうことをいたすことはいかがかと思っているのでございますが、日本政府全般の方針といたしまして、まだ正規の承認はしておらないけれども、これに準じた扱いをするのだというような方針でもきまりました場合には、もちろんわれわれもそれに従って善処いたしたい、そう考えている次第でございます。
  172. 松原一彦

    政府委員(松原一彦君) 羽仁さん、国際間の問題では、非常に手心というものがあると私は思うのですね。たとえば、御承知の通り、お互いに旅行しても、われわれのトランクをあけやしません。あけて検査すべきものなんです。しかしあけやしません。あれには指紋を取らなかった、はなはだけしからんと言われぬような国民の心がまえが一つできないものでしょうか。たとえば今あなたのおっしゃるような有名な芸術家ですね。最高の国賓にも値するような人に、それが一年六カ月以上滞在するから指紋を取れと言わなくても、矛のあれを甘くして、これを辛くしたといったようなふうに国民が責めないだけの余裕が、私は心がまえのうちにあってほしいのです。ただし、これまた今すぐできるかできないかは、入管局長の御返答のように、国交の回復しない国から来た外交官は、それはどうするかわからんといったように、まあむずかしくなってしまうのですね。そういうのも、閣議決定というものもなく、常識的に取り扱われるようなことは、政治常識というものが国民にもあり、それをまた根を掘り立ててやかましく言わぬような襟度がお互いの間にあってほしい。政府はけしからんと、お互いが、やかましく言って下さるというと、ついできなくなってしまう。こういうところは、私どもはわずかな経験しかないのですけれども、それでも、南洋に行っても、中国に行っても、他の欧米諸国に行っても、それぞれやはり豊かなる一つの常識の上に取扱いがあると思うのです。先に上げてくれるとか、旅券は見ないとか、通関をやかましく言わぬということがありますのですから、どうかそういう常識が行き届いて、あげ足とりでない襟度のできる日のくることをお互いに一つ期待したいと思うのですが、いかがなものでしょうか。
  173. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 ただいま、局長並びに次官からお述べ下さったような見解が、本法あるいは改正法律案が通過しました際にも、市町村などでこの事務を取り扱われる場合にも、そういう態度でいかれることと私は確信するのですが、先ほどの外交官並びにその相互に承認した国の公務あるいはそういう公務的な機関の用務で滞在せられるという方の場合でもそれに準ぜられるという場合を、もう少し拡大して考えられることが私は必要だろうと思うのです。その準ぜられるということは、かなり拡大することができると思うのです。どこまで拡大することができるかといえば、指紋をとらないことによって実害が発生してくるというところまで拡大できると私は思うのです。これはやはり、特に政務次官が政治的な血からも考慮して、御研究を願いたいというふうに思うのですが、その点はどうでしょうか。
  174. 松原一彦

    政府委員(松原一彦君) それを理屈で文書に書いて、ここまではというふうに筋を引かれると、さっきの手心というものも、それを筋を引いてしまうと、さらに窮屈になってしまう。そうすると、もう一寸伸ばせということになると、大へんむずかしい問題だと思いますが、国交が正常に回復してくれば、おのずからそういう面におきましても、外交官だけはせんでもいいという規則はないのですから、ないにもかかわらず、それが常識で通っておると、私はそういうふうに常識が豊かに伸びていくことが政治の理想じゃないかと思うのです。法三章にして、法をわずらわしくするといよいよ窮屈になってしまう、すぐできるかといえば、それが自然にかもし出されるものであって、今、急に一足飛びにいくものじゃないと思います。一々あげ足とりをやっている間は、永久にそういうことはできてません。今お話の、外交官に準ずるものとして、世界的にまあその程度ならば国賓あるいは重要なるまろうどとしてお迎えするような人々にまでも、手きびしい指紋の証拠をとらなければといったようなことのないように心がけたいと思います。その程度一つお許しを願いたいと思います。
  175. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 最後に、今のような御努力を願うことにして、やはりこういうことは双方的な関係がありますね。日本でこういう取扱いをすれば、今日本人に対してこういう取扱いをしていないイギリス人が日本に長く滞在する者に対してこういう措置をかりにせられるならば、イギリスのような大国がそんなことはなさらないと思いますが、なされても、何も抗議の余地はありませんね、双方的なものですから。イギリスに日本人がどんなに長く滞在しても指紋をとらない。イギリス人が日本に滞在して長くおれば、外交官なり公務関係以外の方々は、どんな芸術家でも指紋をとるということを上刻も早く私は除いてもらいたいと思う。それで、やはり政治をよくするという方向に向って進むべきであって、警察取締りというふうな区々たる点に拘泥して、そうして国の品位を下げるべきでないというふうに考えますので、特に現在牧野法相、松原次官に一つ格段の御考慮をお願いして、私の質問を終ります。
  176. 高田なほ子

    委員長高田なほ子君) 一つ伺っておきます。十四才の基準をつけたことですが、私の意見としては、十四才の基準をどういうわけでこういうふうにつけたかということについて、十分にその意を解することができないので、考えてみれば、十四才一カ月でもこれは指紋をとられるということになりますが、どうもお話のように、この指紋をつける制度がいいか悪いかということについては十分論ぜられたのですが、犯罪を未然に防ごう、こういうような意味で指紋を残されるということであれば、十四才というこの年令については、若干私は疑義を持つのですが、どういう意味で十四というふうにきめられたのでしょうか、この点をお尋ねをいたします。
  177. 内田藤雄

    政府委員(内田藤雄君) 先ほど、こういう制度を設けます理由を申し土けたわけでございますが、かりに密入国に関連して考えますと、実は密入国は子供にもあるのでございまして、場合によっては、もっと広げたらいいじゃないかという意見も一方においてはあり得るわけでございます。しかし他方、先ほど羽仁委員の御質問にもお答えいたしましたように、こういう制度が多かれ少なかれ、相手にとりまして不快な感じを与えるものであるといたしまするならば、やはりおのずから必要な最小限度に限るべきであるということも当然考えなければならぬことでございまして、そういった双方の考えを一応調和いたしました線として、満十四才という線を引いておるのでございます。で、満十四才であるならば、その指紋を押すということのどういうことであるかということも理解できるでございましょうし、また、満十四才になっておるならば、その程度の者から登録を実施して参るということが、やはり外国人管理の目的を達成するために必要である、こういうわけでございまして、十四才をこしてすぐというわけでもないことは御承知の通りでございますので、十四才をこした以後、その登録をなさなければならない時期でございますから、早い場合には満十四才をちょっとこした場合であるかもしれませんし、遅い場合には満十四才からほぼ三年を経たような場合であるかもしれないのでございまして、われわれといたしましては、一応十四才という線を引くのが妥当だと考えておるわけでございます。
  178. 高田なほ子

    委員長高田なほ子君) あれでしょう。譲渡や転売を防ぐためにも指紋をとるのだということですが、しかし、それは最低限度にとどめるので、この第一指だけ指紋をとるということになっておるわけです。必要最低限度ということになると、やはり年令の点についても必要最低限度ということが考えられなければならないので、私も人の子の親として、十四の子供の指紋をとられるということになってくれば、まことに心穏かならざるものがあるし、先ほどちらりと、外国人の入っておられる統計を見せてもらったのですが、十四才くらいの子供が単独で密入国をするなんということがあり得ますか、こういうことが。そういう統計や実績はどういうふうになっておるでしょうか。
  179. 内田藤雄

    政府委員(内田藤雄君) 今ちょっと数字を申し上げますが、抽象的に申し上げますと、十四才未満の子供が単独で参るということはございませんというか、非常に少いのでございますが、同伴して参る例は非常に多いのでございます。現に、現在大村の状況を申し上げましても、おそらく満十四才未満くらいのものが四分の一くらいを占めておるのじゃないですか。
  180. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 それはクリミナルなものじゃない。
  181. 内田藤雄

    政府委員(内田藤雄君) クリミナルという意味で申し上げるのではございませんけれども、事実そういうものは相当の数があるということだけでございますが、例は多いのでございます。しかし十四才でなくちゃいかぬ、じゃ幾つかということになりますと、これはいろいろな御意見があり得るということは決して否定いたすものじゃございませんが、まあ十四才くらいをこしたところで、一応登録などもはっきりしていくということがやはり必要じゃないかと考えておるのでございまして、十五でもいいじゃないか、十六ではどうだというふうに言われますと、どうしても十四でなければならぬという根拠は、これはちょっと申し上げにくいかもしれませんが、一応先ほど申し上げましたような、プラス、マイナスを一応調和したつもりで、十四というところに線を引いておるわけでございます。
  182. 高田なほ子

    委員長高田なほ子君) これは、政務次官に私は意見として申し上げるのですが、単独で十四才未満の子が来るなんということは、これはあり得ないので、親としては、たとえ犯罪を犯す……これは密入国ということになれば犯罪を構成するわけですが、その場合といえども子供を捨て切れぬので、同伴して来るということがあり得るので、これは、親子の情としては罪が、いいとか悪いとかいうことは別問題としても、親子の情としては切り離すことができないので、まあ内田さんには十四才のお子さんがおありになるかどうかわかりませんけれども、私どもの考え方としては、十四才の子供に指紋をとる意味を理解させるということは、非常に困難だろうと思うのです。この登録の権利を譲り渡すとか、転売を防ぐのだ、犯罪を未然に防ぐのだからこういうふうにするのだよと言っても、それは理解のつかない年ごろだと思うのであります。こういう政治的な、社会的な責任を負うことのできない年代に、こういう基準を置いたということについては、私は非常に遺憾の意を表するのであります。できるならば、われわれ日本の国民の間でも、十四才くらいの子供は、これは犯罪の対象にされておらないのです。また処罰の対象にされないのです。そういうようなことも勘案されて、この十四才という基準は、必ずしも妥当な線でないと考えられますので、これについても、さらに御研究になる意思をお持ちになりますか、いかがでございますか、松原政務次官にお尋ねをいたします。
  183. 松原一彦

    政府委員(松原一彦君) 委員長のおっしゃることもわからぬじゃございませんが、大体どこに線を引けばいいですかね、あなたのお考えから申しますと……。
  184. 高田なほ子

    委員長高田なほ子君) 私はそういう御質問にお答えするためには、やはり少年法なら少年法という規定がございますね。二十才なら二十才、日本ならば、二十才という線が引いてありましょう。それ以上の者は、成人としてのあらゆる処罰の対象にされるわけですね、正式に……。ですから十四才ではなくて、むしろ二十才くらいの線を引いたらいいのです。最近法務省は、二十才では年代が大き過ぎるから、十八に線を引こうというお話が出ておるのですから、もし二十才でその線が悪ければ、法務省の考える十八才、すなわち刑罰の対象になり得る、責任を負う人格として取り扱う年代、その年代に線を引いたらいいと思うのです。私は、自分の十四の子供に指紋をつけさせる勇気がありませんよ。これは、自分の子のみならず、よそ様の子供に対してもそうだと思うのです。
  185. 松原一彦

    政府委員(松原一彦君) 人情的に申せばその通りで、ほんとうを言ううと、こんなことをせぬ方が一番いいのです。せぬ方がいいが、どこかで区切りをつけるというと、━━━━━━━━━━十五才と仮に切っても、十八才までは空白のものがあり得るのですね、三年目ですから。仮に二十才と切ったら、二十三才まではあり得る、空白のものが。毎年やるのではないのですから……。どこかで切るとするならば、お説の通りに十五才にしてもよろしいでしょう。また十八才にしてもいいでしょう、少年法の範囲ということにしてもいいでしょうが、まあ少しこれは常識的に一つ研究さしていただきたいですね、御批判はありましょうけれどもね。━━━━━━━━さっき羽仁さんが、歴史的に見て、朝鮮の人々に対する態度を全然外国人として扱わないというお話があった。絶対にというお話もあったけれども、絶対にということには私はいかぬと思うのです。というのは、先方がすでにみずから称して独立の国民であると言っておられるのでありますけれども、私どもは、御承知のように、公共団体の補助を受けておる者は、入管令によれば強制退去をできるのですがね。けれども、十三万人の生活保護者を引き受けて、二十五億の生活保護費も払ってやっており、指紋をとるということに対して大へん御同情のあるお言葉もありますが、━━━━━━━━朝鮮の諸君を差別待遇する意味は毛頭ないのですよ。六十万の朝鮮の諸君が、そうして御承知の通りの生活状態、これに対して私どもは決して帰そうとしておりはしません。最大限度で、ごく若干をああして国際慣例によって一帰ってもらおうとしておるというぐらいなことでありまして、━━━━━━━━十四才がいいか、十五才がいいかは研究しますが、十八才と切ったところで、三年目には二十一才になっておるのですからね。━━━━━━━━。
  186. 高田なほ子

    委員長高田なほ子君) ━━━━━━━━━━私もそういう考えでなくしておるから、十四才という基準というものには、多少酷な点があるのではないかという意見をしたのです。━━━━━━━━━━━━━━━━━従って、この十四才という子供、何の能力も持たない子供を基準として指紋をとる意味も、まあ十四才ぐらいならば無理はないと言っておりますけれども、私をして言わしむるならば、教育者という立場で言うならば、これははなはだしく無理があると解せざるを得ない。とても指紋制度を理解させるに足る年令ではない。責任を負わせるに足る年令ではありません。これはどうぞ円考慮していただきたいと思う。
  187. 松原一彦

    政府委員(松原一彦君) 理解させるというあなたの御見解ですが、私は、本来言うと、これはないがいいとさっきも申し上げておる。が、今やめられないという入管局長の意見も聞いておるのです。そうして、一番多く今案ぜられるのは、旅券その他が売り買いせられたり、登録してないものが売り買いせられたりしておって、そうして管理の上に非常に支障があるというところからやっていっておるが、だんだん、二年を三年に延ばし、だんだんゆるめていこうとしておる事実を御了承いただけるだろうと思う。できるならば、一日も早くこういうことを撤廃いたしたい。撤廃いたしたいが、現実としては、相当困った事実も多いということを客観的に申し上げておるのであります。研究もいたしますが、十四才というのは、入管局長がさっきも申した通りに、鉄則ではないのでありますから、まあ御意見を承わりまして、私どもの方にも考えさしていただきたいと思います。
  188. 高田なほ子

    委員長高田なほ子君) もう一点お伺いしますが、指紋制度の除外例の中には、相互に承認を受けた国の公務に従事する者、それは指紋をとらないということがありますね。
  189. 松原一彦

    政府委員(松原一彦君) ちょっとお待ち下さい。
  190. 高田なほ子

    委員長高田なほ子君) 速記をとめて。   〔速記中止〕
  191. 高田なほ子

    委員長高田なほ子君) 速記を起して下さい。  本日の委員会は、これをもって散会いたします。    午後五時三十一分散会      —————・—————