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羽仁五郎君 私はただいま
宮城委員より
緑風会を
代表して
提出せられました
修正案に
賛成の
討論をなさんとするものであります。ただその
賛成をなすに当りまして、重要な点でありますので二、三の点を明らかにしでおきたいと思うのであります。
その第一は、この
政治全般が
福祉国家の
方向に向っていないために起っております事実を、
法律によって
修正するということには危険があります。ただいま
修正案の御
提出の御
説明の中にもございましたように、この
家事審判の結果の
履行を怠っているものがあります。多くの場合は、私は、
日本の現在の
社会の全体からくるのであって、
法律の不備からくるのではなかろうと思うのであります。不平にして現在の
政府が、
日本の現在の
社会において何が第一であるかということについての
判断をあるいは誤らせているのではないか。そして先にすべきものを
あとにして、
あとにすべきものを先にしておる。防衛などには多額の費用を使いながら、
国民の
生活を救うという方についてははなはだ欠けるところが多い。そういうように
社会の
経済状態に対する
一般的な政治的な欠陥があるために、
履行の
義務を実行しようとしても、なかなか困難な
事情があるのではないか。でありますから、私は
本法、ただいまの
修正案が成立いたしました場合にも、
政府としましてはやはりこの
法律を
適用すること以上に、その
福祉国家の実を実現して、
審判の結果を
履行しようとしてもそれがなかなかむずかしいという人がないようにする
努力をせられることが当然であるというように考えるのが第一点であります。
第二点は、従って
政治全般の上においてそういう
条件がないのに、こういう
法律を作ります場合に起ってくる弊害を
政府は絶対に侵してはならない。その第一は
家事瀞判という新しい
制度によっていわば法によらずして
愛情によって問題が解決されることが期待されているものが、再び逆行して、その
愛情によらないで法によって解決するというような
方向を開いてはならないという点であります。これは場合によってはこの第十五条の二によって
調査を
裁判所が行う、この
調査というものについてはもちろん
政府は厳格にその
権限を守って、いやしくも行き過ぎたような
調査をせられるべきではないと思う。しかしながら残念なことに、
日本の
行政権においては、この
調査がしばしば乱用せられています。しかし
司法権においてもこういう
調査が乱用せられることがあってはならないと思います。で、人を
調査するということは軽々しくなし得ることではないのであります。もし人のことを軽々しく
調査するようなことがあるならば、
主権在民はくつがえり、
司法権の
独立もくつがえってしまうのであります。
裁判所は決してそういうことをなさってはならない、これが第二点。
それから第三点は、ただいまの
修正案の御
説明にもございましたように、
日本の
女性が不幸にしてまだ男性と対等の
立場に立っておられないということがありますが、しかしそれはやはりだれよりも
女性自身の
不断の
努力によって解決せられるべきであって、
女性が弱いから
裁判所なりあるいは
政府なりがその世話をしてやるということであるならば、それは
権利の上に眠るものを保護する
裁判所ないし
政府であって、そういうものは
民主主義の
政府でもなければ
民主主義の
裁判所でもない。
パタアナリズムの
裁判所であり、
パタアナリズムの
政府である。そういうことになっては絶対にならない。やはり
女性は自己の
権利を対等にしようとするならば、みずから
不断の
努力によって、戦ってその
権利を実現すべきであります。決して
裁判所あるいは
政府に頼るというような考えを持たれるべきではない。
修正案がそういう
方向を助長せられるものであってはならないということも明らかであります。
第四の点は、
一般的な
条件の解決によらないで、
本法のような
法律上の
手続によって問題を解決しようとする結果は、他の
法律との
関係において、
国民が持っているところの
基本的権利というものを侵害するおそれがあります。これは先ほど
政府に向って
質問をいたしまして、
政府がそういう意思がない、従って
裁判所においてもそういう
方向においてこの
修正案を
適用せられるということがないことが明らかになっておるのであります。すなわち
生活保護の
関係においてこの
原案ないし
修正案の十五条の二ならびに三及び二十八条が不当に
適用せられるということは絶対にあってはならないのであります。
生活保護を受けるということは、今日
福祉国家の
原則においては、
国民の
基本的権利であります。
政府は
国民から税金を取っておる以上は、
国民の中に
生活に困窮する人があることを放置していることは、
政府みずからその
義務を放棄していることであって、許すべからざることである。その
義務を
政府が怠るということがあってはならない。この点は先ほど
政府からの
お答えによりまして、そういうことは絶対に起らないということを確言しておられるこの
趣旨を、
本法適用の場合に、
裁判所においても必ず厳格に守られるものであると考えます。
以上要しますのに、結論としまして、法を厳格にすることによって
国民の
基本的権利というものを圧迫することがあってはならないということを明らかにいたしまして、ただいまの
修正案に
賛成をいたすものでございます。