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1956-03-27 第24回国会 参議院 法務委員会 第9号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十一年三月二十七日(火曜日)    午後二時四十三分開会     ―――――――――――――    委員の異動 三月十三日委員石井桂君、野本品吉 君、中川幸平君、青柳秀夫君、西川平治君、井上清一君及び中山福藏君辞 任につき、その補欠として泉山三六 君、大谷贇雄君大屋晋三君、西郷吉 之助君、松野鶴平君、秋山俊一郎君及 び岸良一君を議長において指名した。 三月十四日委員秋山俊一郎君及び岸良 一君辞任につき、その補欠として井上 清一君及び中山福藏君を議長において 指名した。 三月十五日委員泉山三六君辞任につ き、その補欠として小幡治和君を議長 において指名した。 三月十九日委員大谷贇雄君辞任につ き、その補欠として中川以良君議長 において指名した。 三月二十三日委員井上清一辞任につ き、その補欠として長島銀藏君を議長 において指名した。 三月二十四日委員小幡治和君及び長島 銀藏辞任につき、その補欠として泉 山三六君及び井上清一君を議長におい て指名した。     ―――――――――――――  出席者は左の通り。    委員長     高田なほ子君    理事            井上 清一君            一松 定吉君            亀田 得治君            宮城タマヨ君    委員            岩沢 忠恭君            小林 亦治君            中山 福藏君            羽仁 五郎君            市川 房枝君   政府委員    警察庁刑事部長 中川 董治君    法務政務次官  松原 一彦君    法務省刑事局    長事務代理   長戸 寛美君    法務省人権擁護    局長      戸田 正直君    法務省入国管理    局長      内田 藤雄君   事務局側    常任委員会専門    員       西村 高兄君   説明員    法務省刑事局公    安課長     桃澤 全司君    最高裁判所長官    代理者    (事務総局総務    局総務課長)  海部 安昌君     ―――――――――――――   本日の会議に付した案件 ○本委員会運営に関する件 ○参考人出席要求に関する件 ○理事補欠互選訴訟費用等臨時措置法の一部を改正  する法律案内閣提出、衆議院送  付) ○派遣委員報告下級裁判所設立及び管轄区域に関  する法律の一部を改正する法律案  (内閣提出衆議院送付)     ―――――――――――――
  2. 高田なほ子

    委員長高田なほ子君) ただいまから法務委員会を開会いたします。  議事に入る前に委員変更について御報告を申し上げます。三月十三日付法務委員変更通知がございました。辞任せられました委員の方々は石井桂さん、野本品吉さん、中川幸平さん、青柳秀夫さん、西川平治さん、井上清一さん、中山福藏さん、以上です。続いてこれに対して次の方が選任せられました。泉山三六さん、大谷贇雄さん、大屋晋三さん、西郷吉之助さん、松野鶴平さん、秋山俊一郎さん、岸良さんでございます。同じく三月十四日辞任ぜられました岸良一さんに代りまして、中山福藏さんが選任せられました。同じく十四日秋山俊一郎さんが辞任ぜられまして、井上清一さんが選任せられました。同じく三月十五日、泉山三六さんが辞任せられまして、小幡治和さんが選任せられました。同じく三月十九日大谷贇雄さんが辞任せられまして、中川以良さんが選任せられました。同じく三月二十三日井上清一さんが辞任せられまして、長島銀藏さんが選任せられました。三月二十四日長島銀藏さん、小幡治和さんが辞任せられまして、井上溝一さん、泉山三六さんが選任せられました。以上御報告申し上げます。     ―――――――――――――
  3. 高田なほ子

    委員長高田なほ子君) なお本日の委員長及び理事打合会の経過について簡単に御報告をいたします。本日の委員会運営について御相談がございましたが、その第一は理事補欠互選でございますが、これは事務的な問題であります。続いて訴訟費用等臨時措置法の一部を改正する法律案提案理由説明を聴取することになっております。明後日の二十九日には、同法案に対して討論採決の予定、こういうことにお話し合いをいたしました、  第二番目に下級裁判所設立及び管轄区域に関する法律の一部を改正する法律案採決を本日したいと思っております。  第三番目に派遣委員報告、これは諸般の事務的な手続が残っておりますために、第一班のみ本日報告をとることにいたしました。  第四に検察及び裁判の運営等に関する調査、これは立正交成会の問題について概括を御質問申し上げたい、こういうふうに考えております。  続いて家事審判法の一部を改正する法律案は、四月の三日に委員会を開きまして、午後一時から採決をしたい、こういうふうにお話し合いをいたしました。  同じ四月三日の委員会に、午前中に幼児誘かい等処罰法案審査のために参考人出席を求める、こういうことをお話し合いしました。  さらに能代市の大火についての借地借家臨時措置法案が提出されておりますが、これは本院に送付され次第委員会審議をして採決をする、こういうことを委員長及び理事打合会といたしましては、お話し合いをして決定したようなわけでございますが、以上御報告を申し上げまして委員皆さん方に御了解を願いたいと存じます。  続きまして幼児誘拐等処罰刑法案についての参考人出席要求に関する件についてお諮りをいたします。幼児誘拐等処罰法案審査のため参考人から意見を聴取することとし、人選及びその他の手続につきましては委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 高田なほ子

    委員長高田なほ子君) 御異議ないと認めます。よってさよう決定いたしました。     ―――――――――――――
  5. 高田なほ子

    委員長高田なほ子君) それでは次に理事補欠互選の件を議題に供します。理事井上清一さんが一時委員辞任されましたので、理事が一名欠員になっております。これより補欠互選を行いたいと存じます。互選の方法といたしましては、その指名を委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 高田なほ子

    委員長高田なほ子君) 御異議ないと認めます。委員長理事井上清一さんを指名いたします。     ―――――――――――――
  7. 高田なほ子

    委員長高田なほ子君) 次に訴訟費用等臨時設置法の一部を改正する法律案議題に供します。まず政府から提案理由説明をお願いいたします。
  8. 松原一彦

    政府委員松原一彦君) 訴訟費用等臨時措置法の一部を改正する法律案について提案理由を御説明申し上げます。  この法律案は、国家公務員に対して支給する旅費定額の改訂に応じ、民事訴訟刑事訴訟等証人鑑定人等日当及び宿泊料を約三割増額しようとするものであります。  御承知の通り民事訴訟刑事訴訟等における証人鑑定人等日当及び宿泊料の額は、訴訟費用等臨時措置法により定められているのでありますが、これらの額は、その性質上、国家公務員が出張した場合の旅費の額を基準として定められております。  今回、政府におきましては、旅費についての支出の適正化を図り、旅行等実情に即するようにするため、国家公務員が出張した場合にこれに対して支給する旅費定額を改訂して、日当及び宿泊料については、その額を約三割引き上げることとし、別に今国会に国家公務員等旅費に関する法律の一部を改正する法律案を提出いたしましたが、これに応じまして、民事訴訟及び刑事訴訟における証人鑑定人等日当及び、宿泊料執行吏の取り扱う執行事件における証人及び鑑定人日当並びに執行吏宿泊料につきましても、国家公務員の場合と同程度の増額を行うことによりまして、現在の実情に即応させ、関係者の負担の適正化を図るようにするため、この法律案を提出いたした次第であります。  何とぞよろしく御審議のほどお願いいたします。
  9. 高田なほ子

    委員長高田なほ子君) 別に御発言がなければ、本案につきましてはこの程度にいたしまして、次の議題に移りたいと存じます。     ―――――――――――――
  10. 高田なほ子

    委員長高田なほ子君) 次に派遣委員報告の件を議題に供します。  過日本委員会の決議に基づきまして派遣されました調査班のうち、第一班の板付基地勤務者の人権擁護問題、及び大村収容所収容管理状況調査について御報告を願いたいと存じます。  同報告につきましては、調査の一員として参加いたしました関係上、私から御報告を申し上げたいと存じます。  派遣委員の第一班は、一松理事と私が岡田調査員を伴いまして、福岡県の板付空軍基地長崎県の大村入国者収容所調査をいたしました。詳細は調査報告書として資料とともに調査室に備えおきますから、ごらんいただくことといたしまして、要約して御報告を申し上げますと、まず第一に板付基地における調査でございますが、昨年十二月二十日と二十一日に基地特別調査事務所俗称OSIが、日本政府によって間接雇用されて基地に勤務する日本人労務者九名に対し、その加入している全駐留軍労働組合文化活動等について調査を行い、本年一月二十日軍は保安上の理由によって、そのうち七名を含む十八名の間接雇用労務者出勤停止処分にし、また軍の直接雇用する日本人労務者国名即時解雇処分にするという事件が起りました。組合側は、軍は日米行政協定十二条五項及び十五条四項により、労働基本権については日本法令に従うべきであるのに、OSI調査は正常な組合活動に対する支配介入であるから、労働組合法七条違反不当労働行為であり、ひいては思想の自由を保障する憲法十九条を侵すものであると主張し、県当局といたしましては、今回の処分労組法七条違反のおそれがあり、日本側保安上の危険容疑調査するまで処分を撤回してほしい旨申し入れ、十八名の間接雇用労務者については、日米基本労務契約付属協定六十九号に従い、労務管理事務所長としての意見を軍に提出するため調査中であり、四名の軍直用労務者につきましては、県が雇用主立場にはないので、労働行政立場から間接雇用と同じ措置を与えられるよう要望いたしましたが、軍側調査の結果、日米行政協定三条の基地管理権基本労務契約七条及びその付属協定六十九号一条a項(3)に基き、保安上の危険容疑確実と考えての処分であるから撤回できない、組合活動したから処分したのではないと説明している次第でございます。  この件につきましては、板付業地司令官労務連絡将校に直接面会いたしましたが、憲法上もまた国際的にも思想が自由であることは認めながらも、OSI調査内容、それが思想調査であったかどうかについては、終始ノー・コメントという態度で、今回の処分はもっぱら保安上の理由によるものであり、組合文化活動などについては知ってもおらず、また興味もない。処分の撤回は付属協定六十九号に従い、日本側調査報告が提出されて、保安上危険がないと認められでもしなければ行われないということでございました。  しかしながら県当局及び当事者意見等を総合的に聴取の結果、本件については憲法違反及び労働組合法七条違反の疑いが濃厚でありますので、日本政府として至急に通句措置を講ずる必要があると考えます。  結局のところ日米行政協定によれば、第三条で基地管理権駐留軍が持っておりますが、それも「管理のため必要な又は適当な」と限定されており、同じく第十二条第五項の労働基本権については、日本法令に従う旨の規定に違反しない範囲においてのみ行使されるべきものと思われ、日本労働法規が無視されてはなりませず、また日米基本労務契約付属協定六十九号による保安解雇の乱用によって、労働非本権が侵され組合活動が封じられてはならないものと存ぜられます。  第二に、大村入国者収容所における調査でございますが、ここは元海軍の施設を応急改造した旧収容舎に女子を、昭和二十八年新設の新収容舎に男子をそれぞれ分離収容して、昭和二十五年の末から九千五百余りの人をもっばら韓国に向け強制送還いたしましたが、登録手続違反者の逆送還、一時は受入れの全面拒否、さらに不法入国者のみの送還再開などのいきさつがあったのち、日韓関係の悪化により昨年四月で送還中止となったまま現在に至り、本来船待ちのための収容がかなり長期化し、現在千四百七十名余り収容しており、うち四百名余り刑罰法令違反者、中でも殺人、強盗麻薬覚醒剤密造販売などの悪質累犯者となっております。韓国側はかねて李承晩ラインを侵した罪で抑留中の日本人漁夫を釈放するのと引きかえに、大村刑罰法令違反者日本国内に釈放せよという要求を続けておりますが、すでに昨年の初めの送還再開に伴う特別措置として、刑罰法令違反者の一部を仮放免したほか、不法入国者であって自費帰国を希望し、確実な身元引受人のある者は、韓国代表部入国許可が得られる場合に限り、また病状により収容不適と診断された患者は、確実な身元引受人がある場合には、医師を指定してそれぞれ仮放免しております。問題は、戦前あるいは戦時中に徴用その他で内地に渡り、そのまま定住している夫や父や親戚を頼って不法入国して収容された婦女子の取扱いで、女性代表に面接いたしました際も身寄りや当てのある者は一日も早く出してほしいと切望されましたが、当局は人情としては気の毒に思われるが、不法入国者を釈放したということになると、今後ますます不法入国を誘致するのは過去の経験からも明らかで、現に四、五万と推定される未登録の不法入国者をかかえ、国費で移民まで奨励しているわが国としては、容易ならぬこととして反対をしております。  次に今回の調査一つ動機ともなりました張東根傷害致死事件についてでございますが、これは昨年十一月十七日、同室の少年との口論から、少年と同郷の李万徳という者に難詰されました張東根という者が、翌日仕返しをして、逆に季外一名の加害被疑者から、顔をなぐり腹部を強くけるという暴行を受け、大村市丘病院に入れられましたが、小腸の穿孔により化膿し、急性腹膜炎で二十日ついに死亡したというもので、班に長崎地方裁判所系属中であり、北鮮系の在日本朝鮮人連合会などでは、被害者北鮮帰国希望者で、所内に潜入した李承晩系特務分子によって虐殺されたとしておりますが、北鮮帰国希望許吉松氏と面接し、またその報告書を読みましても、被害者北鮮帰国希望著ではなく善良な密航者で、南北鮮思想的対立に関連した事件ではないと言い、当局説明によれば朝鮮総連議長団の一人である金性律氏が慰問に行きました昨年九月中旬ごろから、北鮮帰国希望者が続出し、これに伴い各棟階下収容密航者北鮮派排斥運動が起り、一方仮放免に期待をつなぐ階上悪質犯罪者は、階下に対する自派の勢力の強化上、進んで北鮮派の庇護に当り、当事者収容されていた第五棟においても、階上は完全に悪質犯罪者勢力下にあったので、少くとも南北対立による不祥事を階上において引き起すおそれはなかったようで、結局単なる個人的、偶発的な事件であったようでございます。  しかしながらこの事件を契機として、各棟の北鮮派は、南鮮派との分離収容による身辺の保護方を強く、要求したということでございますし、その後昨年末には北鮮派に対する南鮮派暴行事件が発生しております。この事件は、昨年十二月二十八日、前に述べました朝鮮総連長崎本部議長が、在日朝鮮人から集められた救援物資の差し入れに来訪しましたので、その配分を各棟代表及び許吉松氏にはかったところ、三十一日に至り許吉松氏が第一棟にも五十名くらい希望者があると漏らしたことから、一棟の南鮮派内部分裂をはかる陰謀であるとして、一棟十一号室の計外八名に手当り次第の集団泰行を加えましたので、当局も実力を行使して南鮮派加害者十二名及びその後のすわり込み首謀者ら十六名を隔離したとのことで、被害者側から告訴の申し出もありましたが、当局並びに各棟代表の説得により同民族間の事件であるので大乗的見地に立って和解し、告訴しない旨誓約が行われました。  なお南北派両を混合収容するときは両派の摩擦は避けがたい客観情勢にありましたので、本年一月七一に至り北鮮帰国希望者六十二名を一棟階下に集結収容することになり、その後も昨年末に行われた帰国希望を歓迎する旨の南日北鮮外相の声明、本年二月に入っての日赤代表出朝鮮赤十字会との平壌会談など外部の情勢によって北鮮派は増し、現在八十二名に達しているとのことで、今後も南北対立は必ずしも楽観を許しませんし、また当局連絡折衝の相手としている各棟代表強盗、窃盗、麻薬収締法違反などの前科を持つ者であることは、自主的に選出されたものとは言え適当とは考えられず、大村収容所も、結局は今後の国交回復南北鮮の統一など外交ないし国際政治によらなければ、根本的には解決されない問題をはらんでおります。  以上で第一班の報告を終ります。  速記をとめて。   〔速記中止
  11. 高田なほ子

    委員長高田なほ子君) それでは速記をつけて下さい。  本件につきましては御質疑もあろうかと存じますが、一時中止をいたしまして、下級裁判所設立及び管轄区域に関する法律の一部を改正する法律案審議を行いたいと存じますが、御異議はございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  12. 高田なほ子

    委員長高田なほ子君) 御異議ないと認めます。下級裁判所設立及び管轄区域に関する法律の一部を改正する法律案議題に供します。本案について御質疑のおありの方は御発言をお願いいたします。御質疑ございませんか……。では御質疑がなければ質疑は終了したものと認めまして、これより討論に入ります。御意見のおありの方は賛否を明らかにしてお述べを願います。御意見はございませんか……。なければ討論は終局したものと認めまして、これより採決に入ります。  下級裁判所設立及び管轄区域に関する法律の一部を改正する法律案を問題に供します。本案を原案通り可決することに賛成の力の挙手を願います。   〔賛成者挙手
  13. 高田なほ子

    委員長高田なほ子君) 全会一致でございます。よって本案全会一致をもって原案通り可決すべきものと決定いたしました。  なお本院規則第百四条により本会議における口頭報告内容、第七十二条により議長に提出すべき報告書作成等につきましては、慣例によりこれを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  14. 高田なほ子

    委員長高田なほ子君) 御異議ないと認めます。よってさように決定いたしました。  それから報告書には多数意見者署名を付することになっておりますから、本案を可とされた方は順次御属名を願います。   多数意見者署名     亀田 得治  羽仁 五郎     岩沢 忠恭  市川 房校     中山 福藏  井上 清一     一松 定吉  小林 亦治     ―――――――――――――
  15. 高田なほ子

    委員長高田なほ子君) 速記をとめて下さい。   〔速記中止
  16. 高田なほ子

    委員長高田なほ子君) 速記をつけて下さい。  先刻に引き続いて派遣委員報告の件を議題に供します。先ほどの報告に基き御質疑がございましたら順次御発言をいたんだきます。
  17. 亀田得治

    亀田得治君 若干板付報告事項に関連して政府側に質問いたします。こういう事件が起きた根本は板付関係アメリカ軍日本法律を尊重しない、そういうところに私は根本的な問題が横たわっておると思うのです。事実関係といたしましては、この基地労働者が一般の日本労働組合の人がやっておるような、労働組合員としての活動をやっていた。それだけに過ぎないのである。この問題をもっと追及するには、しからばどういう行動をやったかというところまで明確にしていかなくちゃならないわけですが、単にそれだけの点に対してアメリカ軍の方でこれを曲げて、そういう行動を観察する。こういうことがおそらくなされたのだと私どもは考えます。あるいは何らかほかの理由、たとえば労働組合活動に非常に熱心だとか、あいつは気に食わぬといったことがあるいは動機であったかもしれませんが、ともかく普通行われておる行動しかやっておらぬということは、これは福岡県当局だって認めておることなんだし、人間の行動ですから、これを色めがねで見ればどのようにだって解釈できる。問題はこういうことなのです。従ってそういう問題で日本労働者が首を切られたということになれば、調達庁などのその直接の関係日本の機関というものは、これは強くアメリカ当局に対しそれはけしからぬという立場から、問題の解決に積極的に乗り出すべきものだと考えております。私はまあ調達関係責任者が本日はおりませんので、そういう面の討議は後ほど少しするかもしれませんが、一応第二段に本日はしたいと思います。  そこで法務当局一つこの問題に関連してお尋ねしたいのは、この事件裁判所事件に発展いたしました。不当にアメリカ軍から解雇された四名ですね、山口、船越、中尾、小倉、この四名が一月三十一日に福岡地方裁判所に対して身分の仮処分申請をいたしました。つまりことしの一月二十日付で解雇されたその解雇意思表示の効力を停止してくれ、こういう仮処分申請福岡地裁に出したわけです。これは当然行政協定等から考えましても、日本民事裁判所が扱い得る問題であります。で、こういう事件を出しまして従って裁判所からは、米軍側レーマン大佐、この人に対して口頭弁論を開くから出頭してもらいたい、こういう通知を出しておるわけです。ところが第一回目にはその裁判所から来る書類自身を受け取らない、こういう問題が起きておるわけなんです。書類自身を受け付けない。このやったことに対してこれをどう見るかということは、これは別個の問題として、日本の正規の裁判所から来るその口頭弁論通知書自身を受け付けない。こういう態度に出られたわけです。これははなはだ私もってのほかだと思うのですね。それははなはだ行き過ぎだったと思ったのか、第二回目のその呼び出しに対しましては、書類は受け取ったようであります。しかしながらこの口頭弁論期日に出ていくことは拒絶する、書類は受け取った、そういう態度に出て来たわけです。私はこれはもう米軍自身日本法律、ひいては日本の主権ですね、これを破壊する行為に出ておるものである、こら考えるのです。私は法務関係の直接の問題だと思いますので、法務当局ではこういうことをされて一体これで引き下るのかどうか、この点についてまず一つお尋ねをしてみたいと思います。
  18. 松原一彦

    政府委員松原一彦君) 先般この問題に関しては、牧野法務大臣から若干のお答えを申し上げたかと聞いておりますが、私は直接おりませんでした。ただいま入院中でございまして牧野法相意見を私まだその後ただしておりません。ただ法理上の解釈につきましては、政府委員の側から答えさせていただきたいと思います。以上申し上げます。
  19. 桃澤全司

    説明員桃澤全司君) 私からお答えするのが適当かどうか、また私にわからない点もございますので、いずれ機会を改めてこの問題に対する法務省としてのいろいろの解釈を申し上げることになるかと思うのでございますが、結局は行政協定解釈の問題でありまして、この点アメリカ側日本側との間にこれまでも数次折衝を重ねておると開いております。直接のこの解釈の問題につきましては、単に法務省ばかりではなくて、あるいは外務省、またこの問題のもとは先ほど亀田委員からお話のありましたように直接雇用の問題でございます。その関係から申しますと労働省も関係がある、かようないきさつになっております。私の聞いておりますところでは、大体日本側の方では、やはりアメリカ側裁判所には出なければならないというような解釈になっておると聞いておりますが、アメリカ側の方はそうではないということで、ただいま申し上げましたように相当折衝がなされているということでございまして、あるいはその辺の事情は外務省の方からお聞き願えれば非常にわかりやすい問題ではないかと考えられます。なお冒頭に申し上げましたように、本日主管の者がおりませんので、その点よく打ち合せまして次の機会に述べさせていただきたいと、かように考えます。
  20. 亀田得治

    亀田得治君 これははなはだたよりない御答弁になるわけですが、そんなに私はむずかしい問題ではなかろうと思うのです。これはきわめて明確に板付基地の米軍の諸君が横車を押しておる、こう考えるんです。でもう一歩進んでその仮処分の申請がありまして、その結果三月二十三日に福岡地方裁判所がこの仮処分の判決をいたしております。その判決によりますと、結局これは不当労働行為のにおいが強いということで、解雇の恩恵表示の効力を停止する、こういう判決をいたしました。で、ここまで事態が進んできますると、一体これをどう取扱うか、送達を受け取る受け取らないとか、口頭弁論に出る出ないという段階であればまだいいんですが、同じよらなゴリ押しを判決自身に対してなされるということになりますと、これはもう日本の裁判機構そのものを無視していくと、こういう結果になりますよ。こういう判決がおりておることはおそらくすでに御存じでしょうが、どのようにこの判決と今までの米軍の横車との関係をお考えになりますか。
  21. 桃澤全司

    説明員桃澤全司君) おそらくそういう非常にむずかしい問題が起きてくることは想像されるのでありますが、私どもといたしましてはまだ刑事事件になっておりませんので、刑事局としては三月二十三日にそのような判決があったことも存じておりません。しかしこの裁判権問題ということになりますと、法務省全体として考えますならば、これに対する措置も考えなければなりませんし、またこれまでよりより関係当局との間でいろいろ話し合いが行われているということは私も聞いております。従いましてお話のような判決があったといたしますると、その後の取扱いをどうするかということは早急にまた関係省が集まりましていろいろ討議するということになると思います。結論的に申し上げますと、結局はこれは外交問題ということで、外交折衝、これも私うろ覚えで正確に申し上げかねますが、合同委員会で大いにもまれる問題ではなかろうか、かように考えております。
  22. 亀田得治

    亀田得治君 これは桃澤さんを相手にして議論をしても仕方ないかと思うのですが、あなただけしかおられないし、それから首切りされてもう数ヵ月たって非常に困っておる人もたくさんおるわけですよ。そういう意味で私は、本来ならばあさってでもいいかも知れませんが、もう少し申し上げたいのですが、外交問題というふうにおっしゃるのでずが、私はそういう考え方で処理されたら困ると思う。これはもうはっきりした法律問題ですよ、相手がゴリ押しをする、ゴリ押しをするとそこに紛争的な状態になるから、じゃそれを日米合同委員会等で取扱うということで、ほかへ送ってしまう。こういう態度に出られるということは、そういう態度自身が、私ははっきり言えばみずから日本の主権というものをないがしろにするものだと思う。そんな私は不明確な問題ではなかろうと思う。もしそういうことなら、一体福岡の地方裁判所というものは何をしているかということになる。これはどうせそういう関係が出てくるおそれがある問題ですから、裁判所自身としたって相当これは慎重にやっておりますよ。しかし法律的にとにかくこういう訴えがあればいたし方がないということで、やはり決断をして判決しておる。それを肝心の法務当局の人がそういう弱い態度をとられたのでは、日本法律を守ろうという信念でやっておられる裁判官というものは立つ瀬がないですよ。だからそんな政治問題とかそういう考え方では私はいかんと思う。法律的に考えて、これが日本裁判所が取扱う事件じゃないということが明確なら明確にして下さい、仕方ないから、それなら。しかしあくまでもこれは福岡地裁なり、みな同じような意見です。これは当然こちらに裁判管轄権がある。そういうことになれば、これは法律問題でしょう、単なる。外交折衝とか、政治折衝等にまかすべき問題ではない。そういうことが許されたら、またほかに波及しますよ、この問題は。日本裁判所ではどうもうやむやになるそうだというふうな気持を相手方に与えたのでは、ほかでまた類似の事件が起ってくる。実際はこれに類似した事件が相当たくさん起きておるのです。ここだけでない。ここの組織が非常に強いですから、これに対して訴訟費用等を使っても一つ反発しようという態度に出てきておるだけなんですよ、これは。これはそういう意味で、今桃澤さんがおっしゃったそういう考え方で、法務大臣等にいろいろな知識等を与えてもらっては困ると思う。どうですか。松原さんも一つ答弁して下さい、重大問題ですから。
  23. 高田なほ子

    委員長高田なほ子君) 松原さんはあとでなさいますか……。
  24. 桃澤全司

    説明員桃澤全司君) 亀田先生のおっしゃることは私もよくわかるのでございますが、問題は日本の裁判権の問題ではなくて、行政協定解釈問題がアメリカ側日本側と違っておるということなんでございまして、この解釈をどうするかという点で、おそらく合同委員会で大いに論議しなければならないという関係になっております。かように考えます。
  25. 松原一彦

    政府委員松原一彦君) 亀田さんにお願いしますが、実は大臣も入院後のことで、今のあなたのお話によるというと、判決があったということは聞いておらんと思うのです。結論も今申し上げるのは早過ぎる。どうして解決するかというほどのことまでには、省内でまだ研究しておりません、卒直に申し上げて。それでもう少し時間をかしていただいて、今のような、二十三日に判決があったということでありますならぱ、省内において十分研究した上で御答弁申したいから、きょうはどうぞ一つお延ばしを願いとうございます。
  26. 亀田得治

    亀田得治君 これは十分一つ検討してもらいたいと思う、今の判決も一つ取り寄せてもらって。私ども非常に重大視しましてれ、判決の送達がしからば一体どうなったかという点も調べておるのです。それで本日の電話連絡によると、きょう福岡地裁の判事は、執行吏に命じて送達をざせる手続をとったということです。しかしながらその相手方は、その判決を受け取ったかどうかという点についてはまだ報告がございません。だからともかくこういう段階ですからね、これは一歩取扱いを誤まると、非常な問題に私はなってくると思うのです。それから同時にこの問題はそういう法律的な点だけじゃなしに、一方ではともかく首切りをされて、給料がもらえんで困っておる人がおるわけなんだ。この人の立場も考えて、そして裁判所としては、争いのもう少し決定的な判決は最後にするが、とりあえずどうもこれは不当労働行為の疑いが強いから、一応身分回復をやれ、ということは給料も払うべきだ、こういうことなんですね。だからよほどじゃないとこんな判決までしませんよ。これは実際のこと、常識で考えたってね、気の毒だということできているわけです。だからそこの実際の解決も早くできるように、これは法律的な問題と同時に、やはり考えてほしいと思うのです。そろいう立場から、一つこれは法務当局だけではいかないかもしれませんが、法務省並びに労働調達関係等ともよく御連絡願って対策を考えてほしいと思うのです。で、あさってふたたびこれは質問いたしますから、それまでにほかの省とも御連絡を願って、十分一つ日本の主権を守る、そういう立場でよく一つ検討してきてもらいたい。このことを要請いたしておきます。
  27. 中山福藏

    中山福藏君 これは非常に重大な問題だと思うのですがね。しかしその裁判があったという、今の竜田委員からの仰せですが、私どもはできるならば委員長の手を通じて、その裁判の記録というものの謄写を、資料として私ども各委員に与えてほしいのです。これは単に一事件として見ることはできないと思いますね。日本の司法権というものがどれくらい尊重せられているかという問題も、やはりこれに牽連してくると思いますから、できるならばその資料を一つ私どもに配付していただけば大へんけっこうだと思いますから、そのことだけお願いしておきます。
  28. 高田なほ子

    委員長高田なほ子君) 中山委員からのただいまのお申し出はまことに御もっとも、かつ重要な問題であると思いますので、即刻各委員のお手元に御配付いたしますように善処いたします。
  29. 亀田得治

    亀田得治君 ちょっと速記をとめて下さい。
  30. 高田なほ子

    委員長高田なほ子君) 速記をとめて下さい。   〔速記中止
  31. 高田なほ子

    委員長高田なほ子君) じゃ速記を続けて下さい。ただいまの問題に、質問に関連して、ちょっと法務当局の御意見か伺わしていただきたいと思います。今回の福岡地裁の救済命令は、当然に日本政府として遵守せらるべきものだというふうに亀田さんも非常に強い御意見があり、私もまた当然だと思うわけです。それでお伺いしたいことは、日米合同委員会では各種の分科会がございますが、法務当局意見を日米合同委員会に反映させるために、当問題は別としても、今日までの経過はどういう経過を歩んで来たものか、その点を説明していただきたいと思うのです。ちょっと速記をとめて下さい。   〔速記中止
  32. 高田なほ子

    委員長高田なほ子君) 速記をつけて下さい。
  33. 長戸寛美

    政府委員(長戸寛美君) 日米合同委員会の分科会には、私どもり法務省の秘書課序である津田實が委員長として出ておりまして、そのほかに私あるいは勝尾参事官等が省側として出ておるわけでございます。この問題についてはまだ分科会にはかかっておりません。
  34. 高田なほ子

    委員長高田なほ子君) さらに質問いたしますが、法務当局からもそれぞれの方が出られて、アメリカ側日本側意見を反映していられるように伺っておりますが、私のお伺いしたい点は、日本側の主張というものは相当に強く反映され、全面的にこれが受け入れられて来ていたものかいないものか、今日までの二、三の経過を説明していただきたいと思うのです。
  35. 長戸寛美

    政府委員(長戸寛美君) 分科会におきましては、日本側としては主張すべきものは強く主張いたしまして、その貫徹をはかるように努めて参っております。ただその主張を通すためには、あるいは日時が相当かかるというふうた問題もございますが、その間も折衝を続けまして、こちらが大事な点は折れるというふうなことのないようにいたしております。
  36. 高田なほ子

    委員長高田なほ子君) さらに質問いたします。各分科会における今日までの経過を見ましても、なかなか分科会に問題が入り込みますと、事件の解決が遷延される傾向があります。法務当局の問題ではありませんが、労務問題等については長きにわたって、もう一年またはそれ以上の年月を要しながら何らの解決もされておらない、こういう状態をみることが実際問題としてあるわけですが、法務当局として今日まで年を要してなおかつ貫徹できてない、日本側の主張が通らない、そういうふうな経過がございましたならば、その原因等について説明をしてもらいたいと思います。
  37. 長戸寛美

    政府委員(長戸寛美君) 先ほども申し上げましたように、日米合同委員会の分科会におきましてかなりの年月を要するものはございます。これは軍の方でも陸海空三軍というふうなものがあります関係から、それぞれの徹底をはかる、たとえばある事項をきめましても、それをこちらでもまた先方でも末端まで流すというふうな措置を、合せとるような場合におきましては、若干かかるというものがございます。しかし日数がかかるからといってこちらの主張を折れる、早くするために折れるということは、これは大事な問題で避けなければならぬというふうなことで、われわれとしては、こちらがどうしてもあくまでも主張すべきものであるというふうなものには、日にちをかけてもその間の妥結をはかりたい、こういうわれわれの態度でございます。今現在一年をこえるものがあるかどうかというお話でございますが、これは今頭には記憶ございません。
  38. 高田なほ子

    委員長高田なほ子君) 席には松原政務次官もお見えになっておりますので、強く御要望申し上げたいことは、日米合同委員会においての分科会にかかっておる問題というものは、松原政務次官も御承知のように、教育問題にしてもなかなかその解決は遷延に遷延を重ねて、日本側の主張というものは必ずしも対等の寸場で通っておりません。ぜひただいまのこの福岡地裁の救済命令というものは、私どもの立場から考えるときにまことに重大な問題でありますから、ぜひ法務当局においては一刻も早く省内の意見を調整せられ、合同委員会アメリカ側に対しましても強く今日のわれわれの発言が反映できるように、特段の御努力を強く懇請いたしまして、私はこれで質問を終ります。   〔委員長退席、理事井上清一君着席〕
  39. 中山福藏

    中山福藏君 ちょっとお伺いしておきますが、法務省の方々に。これと同じような場合がこれまでしばしばあったんじゃございませんか。全然これは初めてですか、ちょっとお伺いしておきます。
  40. 井上清一

    理事井上清一君)ちょっと速記をとめて。   〔速記中止
  41. 井上清一

    理事井上清一君) 速記を始めて下さい。
  42. 桃澤全司

    説明員桃澤全司君) これと同様な事件はございませんが、似通った例が一つございます。私もここに詳細記憶はいたしておりませんが、青森県の三沢基地で、やはり直接雇用を受けていた雇い人でありますが、これがエビのなま煮えを出したということで解雇された事件があります。これに対して、たしか不当労働行為であるということで、青森県の労働委員会に対して救済の申し立てをいたしました。労働委員会ではこれに対して救済命令を出したのでありますが、これに対してアメリカ軍側の方で、軍と申しますか、はっきりしない点がございますが、アメリカ側の機関でこれに承服しない。そのために、承服しないだけで、中央委員会に上げる手続きもとらないために、そのまま確定して、確定に従わなかったというので裁判所にその旨の通告があり、裁判所でこれに対して科料に付するかどうかという裁判をいたしたのでありますが、たしか本年一月あるいは二月に入っておったかと思いますが、日本側にはこの点の裁判権はないんだということで科料に付さないという裁判があった例が一つございます。
  43. 中山福藏

    中山福藏君 非常に参考になると思うのですね、それは。今のお話の場合も、管轄権があるかどうかということが、これが第一にきまらなければならぬ問題であって、管轄権の有無によって判決をなし得るかどうかという問題が起ってくるわけです、第二次的に。それは非常に参考になる問題だと思うのですがね。それを取り調べて次回に一つ明確にその原因、経過を御報告願えんでしょうか、いかがですか。管轄権の問題がこれに含んでおりますから、それは非常に私ども参考になると思うのです。
  44. 桃澤全司

    説明員桃澤全司君) 先ほど申し上げましたように、次回に私ども法務省としての見解をよくまとめまして答弁申し上げたいと存じます。
  45. 中山福藏

    中山福藏君 それは私の今申し上げたのは、青森県のこともを申し上げたのですよ。それをはっきりとお示しを願いたいということをお尋ねしたのですが、できますか、次回に。
  46. 桃澤全司

    説明員桃澤全司君) 承知いたしました。
  47. 高田なほ子

    高田なほ子君 お尋ねをいたします。私どもは実際に参りまして調査をした者の考え方として、OSI思想調査は、まことに常識では考えられない、度を過ぎた以上の状態であることを確認してきたわけであります。なかんずく三十分も繰り返し繰り返しカン詰のようにして調査をした結果、最後になって、今回の調査のことは絶対に他言してはいけないということを言われた者もあるし、そのことをほかにもし漏らしたならばすぐ私の方にわかるからしゃべらないようにと、こういう工合にして調査をしたあとに、むしろ脅迫的な言葉でとどめを刺されておるようでありますが、しかもその調査した内容は、いずれも組合文化活動とか、それから役員の名前だとか、あなたは何党を支持するとか、はなはだしきに至っては、松本治一郎を知っているかとかというような、私どもの常識としてはとうてい了解することのできないような調査が行なわれております。これは明らかに基本的な人権というものを無視されているということを考えられるわけでございますが、こうした日本人の基本的な人権が極度に押えられているというこの事実に対しましては、政府当局としても相当立ち上らなければならないのではないか。なかんずく、当法務委員会の主たる目的は、人権を守り抜くというこの一点をはずしたたらば、私は参議院の法務委員会としてもあるいはまた法務当局としても何の面目があるかというように言いたいわけであります。こうした不当な人権じゅうりんに対して政府の所信を伺いたいと思います。松原さんにお答えを願います。
  48. 松原一彦

    政府委員松原一彦君) お話の通りに、すでに法務大臣も先般衆議院の社労委員会で、まことに不愉快なことだとお答えを申しております。私どもも、承わりますまでもなく、まことに遺憾なことだと思います。ただし、御承知のような複雑した関係を持っておりますので、今回裁判でそのような判決もあってみれば、ここに一つの解決の糸口もあるのじゃないかと思いますので、せいぜい御質問の御趣旨に沿うように内部におきましても努力して解決に努めたいと思います。今日は責任者が参り合しておりませんので、どうか次回までお待ちを願いとうございます。
  49. 高田なほ子

    高田なほ子君 次回までお待ちを願いますという御答弁でございますが、これは待つ待たないの問題ではなくして、政府当局の所信を尋ねておるわけでありますから、松原政務次官は法務大臣に代られまして、こうした人権じゅうりんの立場に置かれている人たちのため、広く言えば日本人の人権を守り抜くというその建前における松原政務次官の所信を質しておるわけでありますから、再度御答弁願いたいと思います。
  50. 松原一彦

    政府委員松原一彦君) 申し上げるまでもなく、日本人の人権を守りますことにつきましては、私どもは全責任を負うつもりでおります。
  51. 高田なほ子

    高田なほ子君 重ねて申し上げますが、組合活動に対するアメリカ軍側のこうした不当介入、不当弾圧に対しまして、当然これは排除しなければならない。しかし、これは単なる空論ではなくして、日米行政協定の第十二条及び第十五条には、明らかに正当な労働組合運動というものについても認めておることが規定されておりますにかかわらず、こうした現実問題が起っていることに対して、日本政府としては当然この軍側の不当な労働組合に対する弾圧というものを排除するように具体的に進めていただきたいということを強く念願するわけでありますが、これに対しての政府の御所信を一応承わっておきたいと思います。
  52. 松原一彦

    政府委員松原一彦君) 組合であるなしにかかわらず、あらゆる日本人の人権が不当にゆがめられるといったような場合におきましては、私どもは全責任をもってこれを排除することに努力いたしますことをば申し上げておきます。
  53. 高田なほ子

    高田なほ子君 強い御所信に燃えた御答弁を了といたしますが、重ねて人権擁護局にお尋ねをしたいと思います。福岡人権擁護局の方々とも本問題についてお話し合いをいたしました。しかし、人権擁護局当局のお答えによれば、私どもとしてはなんにもまだ当事者から訴えがありませんので、手をつけておりません。こういうような御答弁でありました。しかしこの御答弁は、なるほど何らの申し出がないからやむを得ないというふうに一応受け取れるのでありますが、実際問題としては県当局としてはすでにこの問題を重視されて、本問題の解決のために相当の努力を払っておられる、そういう渦中にありながら、こうした人権じゅうりんの立場を訴えがないとか、申し出がないという単なる理由でこれを取り上げなかったということは、怠慢のそしりを免れないのではないかというふうに私は考えます。で、私ども委員の者が視察してから後、ようやくにして人権擁護局がこの問題に立ち上ったやに承わっておるわけでありますが、なぜ人権擁護の責務を果たさなければならない福岡の擁護局の方々が、手をつかねておられるのか、私はまことに了解に苦しむところでありますが、あなたは中央におられまして遠い福岡の御事情等については一々御報告がないかもしれませんが、もう少し活発な活動ができないものか、なぜ手をつかねなければならないのか、その原因などについて、私の了解するような御答弁をわずらわしたいと思います。
  54. 戸田正直

    政府委員(戸田正直君) お答えいたします。福岡の法務局でこの事件が申告がないから調査しなかった、こういうふうには実は私ども考えておりませんので、福岡法務局におきましてもこの事件の情報を入手いたしまして、情報を私の方に送って参っております。そこで私どもの方から、今までは情報の収集でございましたが、人権侵害にかかわる点について調査するようにということで指示をいたしまして、ただいま一意調査中でございます。
  55. 高田なほ子

    高田なほ子君 私も人権擁護局の活動というものについては、寡聞にしてよく存じませんのですが、巷間必ずしも人権擁護局がその使命のために万全の措置をとられたという高い評価がされておらないことをまことに私は遺憾に思うのです。これは機構の問題等あるかもしれませんですが、この際もっともっと人権擁護局がほんとうにその使命達成に何らかのこれを阻害する幾多の事情等でもあれば承わらしてもらいたいと思う。これは決して擁護局の欠陥をここで指摘しようというのではないのであります。もっと活動しなければならない擁護局が、なかなか活動でき得ないという原因、それらのものを私は知りたいと思うのです。そうしてその使命がほんとうに達成できるように、こういう気持の上から、この問題を通してあなたに質問を申し上げているのです。どうぞ真意を了解されて御答弁願いたいと思います。
  56. 戸田正直

    政府委員(戸田正直君) 大へんありがたい御忠告をいただきましてありがとうございます。御承知のように国民の基本的人権の擁護の問題というものはきわめて重大な問題であります。人権擁護局としましてもこの問題に対しましては誠心誠意全力をあげて仕事をいたしておりますが、ただ人権擁護局の仕事につきましても、機構、予算等からおのずから限界がございまして、機構、予算も大体御承知と思いますが、きわめて貧弱であります。この貧弱な予算と機構でございますが、その範囲内において、できる限りの努力を実はいたして参っておる次第であります。なお、もちろんそのような今の状態で万全であるとは決して考えておりません。今後機構、予算の面についてもできる限りの獲得をいたし、この国民の重大な人権の問題について、できる限りの努力をいたしたいと、かように考えております。幸いに今度の法務大臣も政務次官も、人権擁護につきましては非常に熱心でありまして、われわれも御指導を願っておりまして、この機構、予算等につきましても率直に申し上げると、大臣から、できるだけ力をかすから考えてもらいたいというようなことまで実は言っていただいておりまして、私としてもできる限りこれらの問題についても検討を加えまして、努力をいたしたいと、かように考えております。
  57. 高田なほ子

    高田なほ子君 予算並びに機構等の問題については、だんだん承わっておりますが、福岡で感じたことは、ひが目ではありませんが、やはり機構、予算も問題でありましょうが、問題は人による運営であります。従って人権擁護に当る方は、情熱を持ってこれに対処し得る人がこの任に当らなければ、予算や機構が改革されたとしても、それでは十分ではないように考えられます。  なお、この板付基地の問題、人権じゅうりんの問題に対しては、今回の米当局による思想調査だけの問題ではありません。この前にも遺憾ながら婦人に対しての相当の弾圧が加えられたやに私は承知しております。この際における擁護局の活動についても若干非難があるやに聞き及んでおります。従って人による運営という面においても十分に留意せられまして、情熱をもってこれに対処されるよう、中央においてもこの面を一つ御留意賜わりたいということを、強く念願するわけでございます。以上でございます。
  58. 松原一彦

    政府委員松原一彦君) 御承知の通りに人権擁護局はほとんど存在は認められないほどの微々たるものであります。法務省の一隅に辛うじてあるという程度にすぎません。課であった時代すらもありますので、ようやく局となって、私どもはこれを最も重く見て、特に牧野法務大臣は、今回の行政整理にも小さい局に三つの課がある、その三つの課すらも縮小するなと言うて叱咤しているような工合で、もっともっと強化しなければならぬということにつきましては、かねて私どもは力説いたしているのでありますが、不幸にしてまだ現状を脱し得ないのでございます、どうか御声援をいただきまして、日本の国民の人権がすみずみまで完全に擁護せられまするように努力いたしたいと思いますから、なおこの上の御支援を願いとうございます。
  59. 高田なほ子

    高田なほ子君 きょうは関係当局の方もお見えが少く、特に問題の焦点である調達庁の方からはお見えになっておりませんので問題を保留いたしましてここで終ります。  大村収容所のことについてお尋ねいたします。大村収容所に参りまして特に深く考えさせられましたことは、収容された婦女子並びに子供の問題でございました。その他の方々を差しおいて言うわけではございませんけれども、同じ母親という立場に立ってものを見るせいでございますか、強く感じられたので以下二、三の点について尋ねてみたいと思います。  婦人の方々はなぜこういう所に入られたかということについては、先ほども御報告申し上げたように、戦前からおりました夫、その夫に一時別れて朝鮮に帰った、その後夫のあとを慕ってやって来てここに入ったけれども、今私の夫はまじめに日ごと日ごとの生活を営んで、私の帰るのを待っておるという訴えがございました。その訴えられた御婦人の方々の気持を思い、この御婦人の方々が釈放せられて、国内において悪いことをするなどいうことは、露にも私には考えられない。もちろんこれは外交問題等が残っておるわけでありますけれども、特にこれらの人が声を低めて訴えられたことは、非常に私どもは恥かしく言えないのだけれども、婦人病的な疾患も多い、これはやはりこういう狭い所に入れられ、そろして精神的にも大へんな不自由を忍んでいる、言うならば、忍苦の生活がこういう異状をも来たしておるのではないだろうかというようなお話もございました。どらかせっかくこの妻や子の自分の手に帰るのを待つ善良な内地におる夫の方たちにも、またここにおる妻や子供の方のためにも、何とかして確実な身元引受人がある以上は、どうぞこれらの人たちが優先的にこの夫の手に婦られるようなそういう方法が講じられないものか、こういう点について、当局としてはどういうながめ方をしていられるのか、こういう点についてどうぞ御答弁をわずらわしたいと思うのです。
  60. 内田藤雄

    政府委員(内田藤雄君) ただいまの御質問の一つは、そういう人々に在留許可を与えて日本におらせることはできないだろうかという御趣旨の点と、もう一つは、ある程度収容が長期化しておるという現実を見た場合に、許可にしないまでも家庭においての生活ができるような道を開く余地はないか、こういう大体二つの点が要点になっておるやに拝察いたしますので、第一段の方からお答え申し上げます。  われわれ密入国の事件を多数取り扱っておりますと、ただいま御質問のように人情的と申しますか、あるいは人道的と申しますか、そういう角度から見ました場合には、非常に気の毒だ、あるいは何とかいたしたいと考えるケースが相当多いことは事実でございます。また現にわれわれといたしましても、ついこの間まで、少くとも戦争の終るまで同じく日本国民であった人々が、偶然の機会と申しますか、二つの国に分れて、そのために家族が別れ別れになってしまったというような場合の処理につきましては、ある程度はそういった人情的なものを顧慮して処置しておるのでございます。しかしながら、原則論といたしましては、やはり韓国も独立国になり、おのおのが独立国としてやっていくということになりました以上、これは日本法律はもちろんでございますが、国際慣行といたしましても、日本に来る場合には成規の旅券を持ち、日本政府から認められたところの査証を持って日本に来ていただきたい、この原則を曲げることはできないと考えております。そこでその原則が、ただ現実問題としていろいろ困難な事情にあるということは、われわれも考えておりますので、先ほど申し上げましたように、その原則は原則としながら、その事情がいかにも気の毒であるという場合には考慮いたしております。しかしただいま大村に現実入っております人々を、ことに婦女子の場合の、おそらくはこれは正確に事情を調べてみませんとわかれませんが、私の取り扱いました大体のことから申し上げますと、ほとんどその大部分は現行犯として船の中、あるいは上陸いたしましたとたんに逮捕されたような人々でございます。この現行犯の場合においても、背後にある事情が、これは確かにほかの場合と大差はないと思いますが、現行犯のケースまでとれをただいま申しましたいろいろな事情を顧慮して、在留を許可するというようなことになりますと、これは極端な言い方でございますが、何のためにいろいろ海上保安庁あるいは警察の方々なども一生懸命になって密入国を防止しようとして努力しておられるのか、意味をなさなくなって参るのでございまして、また国際慣例といたしましても、現行犯で逮捕された者が許可されるというような例は、各国を通じましてほとんどないのでございます。そういう点から、われわれとしましては事情は事情として考慮いたしますが、やはりこういった問題の処理の一つの線といたしまして、現行犯の場合にはこれは逮捕に付する、大体こういう線をくずざないようにいたしております。と申しますのは、この線までくずして参りますと、大体個々の事情を当って参りますと、気の毒だということが多いのでございまして、現行犯の場合までその事情によって許可するのだということになりますと、ほとんどもら密入国の管理というものの基本がくずれてしまうのではないか、こう考えておりますので、いろいろ陳情などに参ります個々のケースを取り扱います方から見ると、いかにもわれわれのやっていることは不人情であるとか非人情であるというふうにお考えになるかもしれませんが、われわれこういう任務を扱っておりますものといたしましては、この一線はくずしたくはない、こういう考えでおる次第でございます。  それから第二の点の、この収容の長期化の問題でございますが、これは私ども自身はなはだ遺憾に思っております。ただわれわれの考え方といたしましては、本来密入国の者を受け取らない、その送還を拒否するというようなこと自体が、およそ国際常識に反した態度なんでございまして、こういう韓国側の非常識的な態度に負けてしまって、密入国でもどんどん実際上人って来たら日本におれるのだ、こういう事態を作り上げて参りますことは、結局相手方の政略的な意図から出ておる措置に負けてしまったことになり、またひいては密入国者の今入っておる人々だけの問題じゃなくて、将来日本という国は、入れば何とかなるのだというような観念が広まりましては、これは将来どんどん密入国者を呼び寄せるような結果に終ってしまう。で、これほごく常識的な問題でございますが、今日本日本人自身の人口過剰に悩み、政府が相当な予算まで出して海外への移民を奨励しておるときに、外国人の密入国者に対しては非常なルーズな態度をとるということでは、これはもう国家の意思は分裂するとしか申せないわけでございまして、そういう角度から見ましても、密入国で来た者はやはり帰されるべきであり、またその帰すということを確保するためには、収容ということもやむを得ない。その長期化の主たる責任は、やはり相手方にある、こういう考え方で私どもとしては参らざるを得ないのであります。ただ実際問題として、これは私どもも実は非常に頭を悩ましておるのでございますが、お説のようにあまり長期化いたすということは、はなはだ不愉快――われわれ自身にとっても不愉快な問題でございますし、また中の方にも非常にお気の毒でございますので、事情によりまして、その仮放免ということも相当程度やって参っております。この暮ころから特に事情によりまして相当――おそらく二百名をこしたと思いますが、仮放免をいたしました。その基準は原則といたしましては自費で帰るということを原則といたしておりますのと、いま一つは病気等の理由による場合に、その考え方を少し甘くすると申しますか、多少せんをゆるめるというようなことがおもな理由だと思いますが、大体そういうことで二百名余りの仮放免をいたしました。今後もその収容所の状況に応じまして、また収容期間の長さ等も勘案いたしまして、そういうことは今後ともやって参るつもりでございます。
  61. 高田なほ子

    高田なほ子君 まことに法は厳にして侵すべからずという、その原則について何ら私も異議を差しはさむものではないのです。けれども夫を尋ねて参った妻がその夫の家に着いて、その夫がこれは法に反するから届け出をしなければならないといちので届け出た、ところがとたんに引っぱりに来て、連れて行ってしまったという、そういう現状もあるわけなんです。これはまあ現行犯としてお取り扱いになっているのだと思うのですが、そういう本人の方から無断で来てはいけないというので届け出たものに対してまでも引っぱっていって長く入れておくということについては、これはいかに法であろうとも人道的に見て考慮しなければならない問題ではないか、こういう例はそうたくさんはないものかとも思いますけれども、こういう場合ほどんなふうになっておりますか。
  62. 内田藤雄

    政府委員(内田藤雄君) 密入国者がこちらに潜在しておりましたあとで自首したというのでございましたならば、それは私先ほど申し上げました現行犯のカテゴリーには入りません。しかし自首したから当然許可というわけにもむろん参らないわけでございます。もちろん自首して出たというような場合におきましては、いわゆる逃亡の危険と申しますか、そういう点の角度から見ました場合には、まあ事情のいい方に入ると思いますが、ただ自首してきた以上は当然許可というようなことになりますと、これまた実はわれわれの方の立場から申しますと相当問題なのでございます。と申しますのは、最近は密入国して参る者の数もまあごく大ざっぱな話でございますが、朝鮮動乱の直後などに比べますと漸次下ってきておると考えておりますが、しかし相当過去におきまして密入国をしてもぐってしまっておる、そういうものの数ほかなり大きいとわれわれは見ております。そこでこの問題はいろいろまあ考えなければならぬと思いますし、また現に相当そのいわゆる潜在の間に実際上家庭生活をこしらえてしまい、子供もできてしまっているというような事情の場合には、それを顧慮はいたしますが、しかし自首して出れば密入国者でもみんな許可になるということになりますと、これは実際上いわゆる潜在で密入国しておりまず数万の者に結果的には在留許可を与えてしまうことにもなりますので、自首してきたから許可ということはわれわれとしてはやれないのでございます。ただ、今の高田委員のおっしゃいましたようなケースで、具体的にわれわれの方にお申し出がございまして、われわれの方で調査いたしました結果、これは仮放免してもいいケースではないかというふうに認定いたします十分の理由があります場合には、先ほど申しましたような趣旨で仮放免も考慮いたしたいと考える次第でございます。
  63. 高田なほ子

    高田なほ子君 続いてお尋ねをしたいことは子供の教育の問題です。相当長期間あそこに収容されておりますが、子供たちは年ごとに育っていきます。なるほど密入国者の子供ではありましょうけれども、私は子供には罪はないと思うです。この子供に完全な教育施設をと、そこまで私は言い切れませんけれども、でき得べくんばあの中で子供のある程度の基礎教育というものは、これは考慮されていいのではないか、そうそう温情主義にばかり走ってはいられないではないかというそれは反論があるかもしれません。けれど子供には私は国境はないと思う。そうして子供には密入国の直接の責任はないと思う。ほんとうに世界の人類が、こうした意思を持たない子供たちのために、何とかして善意をもってその成長を助けるということが、文明国人の任務として課せられた私は義務であるように考えるわけなんです。伺うところによると、教育の問題等についても考慮される段階に至っておらないようであります。現在の日韓交渉の状態から見ても、その収容がそうそう短時日に解決されるように私には考えられない、日一日と成長する子供たちのために何らかの措置が講ぜられないものか、特に私は教育家として長い体験をお持ちになっている松原政務次官から本問題についての御所信、またかくあるべきという御意見、そうしたものを伺わしていただきたいと思うのです。それから内田局長に御答弁していただきたい。
  64. 松原一彦

    政府委員松原一彦君) この朝鮮の諸君の密入国の大村収容所は実は私も見ておりまして、御同感でございます。もう遺憾千万、ああいうことが長く続くというのはまことに不思議なことでございます。先日まで同じ国民であったものが戦争の結果かような絶縁状態になっておる。あれはもともと長く置くはずのものじゃないんです。即時に引き取ってもらうはずのものであります。そんなに長く置かれる理由もなし置くべきものでもございませんから、実はもうきょうにも全部引き取ってもらうつもりでおるのであります。それがどうしても解決しません。千数百人の人間がいつまでもああしてせまい所に監視つきでおるなどということはお互い様、まことに不愉快千万でございます。従って子供などほんとうに行って見てかわいそうでならないのでございますが、これは学校を作っていつまでも置くという性質のものでないために、そういう組織的な計画はしておりませんけれどもが、当路者に聞きますというと、内部でそれぞれ教えられるというか、幼少年に対しては指導いたしておるということでございますから、せいぜいその便宜を助けてやるといようなことにしまして、それよりも何よりも、まあ実は一日も早く朝鮮の諸君は朝鮮に帰ってもらい、日本の抑留者は日本に帰してもらう、この二つをばほんとうに一日も早く実現するようにということを希望いたしまして、外務省ともたびたび折衝いたしておるような次第でございまして、どうか一つ皆様からもこの実現に対して御援助いただきたいものでございます。
  65. 内田藤雄

    政府委員(内田藤雄君) 全くこの子供の問題というのは実際われわれも一番頭の痛い問題なのでございます。ただ考え方の根本といたしましては、ただいま政務次官からもお話がございましたように、われわれとしましては、ああいう所に長期収容というようなことは、本来望んでもおりませんし、そういう前提の施設ではないわけでございまして、これが相手も通常な国際常識を持った国であり、密入国くらいは当然引き取るということでございますならば、大体一カ月に一回ぐらい送還船が運航さえされますならば、ほとんどあらゆる問題は実は解消してしまうわけなんでございます。ただ実情はそれがそう参らないために長引いておりますが、われわれといたしましては、もう何とか解決するだろう、もう解決するだろうというようなことで、つい延び延びになっておりまして、そういうほんとうにどうも長期に収容していくのだなんていうことは、少くとも将来に対してわれわれはいつも考えないということで今まで参っておったのであります。しかし、実際上内部におきましてこれはその密入国者の中に適当な人がおりましたような場合には、なかなかうまくリークしておったようでありますが。ある先生ができまして、子供たちが毎日のように学校へ行ったと同じような形で教育が行われておった時代がございます。ところがその先生であった人が先般仮放免になってしまいまして、先生がいなくなったために一時とだえておったようでございますが、最近また、前ほどうまくではないかもしれませんが、ぼちぼちそういうことも行われておるような報告も受けております。われわれの方といたしましては、教料書というようなものは韓国語のものはございませんので、これば日本政府で支給いたすということはできないのでございますが、黒板とか、クレヨンとか、あるいはノートというようなものは、われわれの方でもこれを配付してやっておりますし、また教料書などにつきまして、朝鮮居留民の、朝鮮人の人から差し入れがありましたはうな場合には、これをむろん差し入れを認めまして、そういう教育の便宜に供している次第でございます。ただこの点一言付言さしていただきたいと存じますのは、この教育の問題につきまして、割合に北鮮系と申しますか、総連合の方は割合に熱心なのでございますが、韓国系の方はあまり熱意がないというか、少くとも今までのところそういう積極的な態度がないのでございます。ところが総連合系の教科書ということになりますと、何か思想的なにおいが強いものでございますし、これを一般に配付するというようなことをいたしますと、今度は南鮮側と申しますか、韓国側から、日本はそういう北鮮系の宣伝思想工作に協力をするのかというような非難を受けることにもなりますので、この教料書の差し入れにつきましては、実はわれわれとしましては、痛しかゆしと申しますか、ちょっと処置に困っておるような点もございますことを付言させていただきます。
  66. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 ちょっとそれに関連して。内田管理局長のお答えをさっきから伺っておる間に、二度そういうことをおっしゃるので、これはどうもお取り消しを願っておいた方がいいのじゃないかと思いますが、いやしくも外国に向って相手方が健全なる外交常識を持たないというお言葉は、一つお取り消しを願いたいと思います。少くともわれわれ法務委員会において、そういうお言葉を聞き流すわけにはいかない、どうか一つお取り消しを願いたい。どの国をお指しになってそういうことをおっしゃったかわかりませんが、先ほどもそういうようなことをおっしゃり、今もまた重ねてそういうことをおっしゃった。
  67. 内田藤雄

    政府委員(内田藤雄君) 私は密入国を引き取らないということは常識に反するという意味で申したのですが、その言葉が行き過ぎでございましたら喜んで取り消します。
  68. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 今政務次官からも御説明がありましたように、本問題は出入国管理に関して起っておる問題ではない、外交上の問題です。ですから、管理局長が御所管以外の点について批判的な判断をせられるということは、私はやめていただきたいと思う。それは外交上有害です、極めて……。そういうことをおっしゃるから、相手からも日本に対する非難というものをなさって、永久に解決しない。それで今高田委員から切々訴えられるような子供たちにまで悲しい思いをさせておるということになっちゃうのですから、これはあなたの御職務を円滑に御遂行なさる上からも、どうかそういう態度一つやめていただきたいと思う。  それからなお、先ほどからおっしゃっておりますが、要するにこの出入国管理令というものは朝鮮の方に対してはワークしないのですね。この法律が動かない。あなたもまさか動かない法律を無理に動かすのが官吏の職務だとはお考えになっていらっしゃらないと思う。出入国管理法規というものが朝鮮の方々に関する限りスムースに運営されることができないということは、あすこに千何百人もの方々が非常に長期にわたって押し込められて、そのために人情、教育その他がことごとく踏みにじられておるという現実がこれを証明しているのです。それにもかかわらず、無理にでも何とかワークしない法規でも何とかワークさしていけば、その結果はどういうような非惨な結果が現われてもそれはおれの知ったことではないと言われるのが、管理局長ともある商い地位にあるあなたのお考えとも伺えないのです。ですから、その点については、どうもこの法律はスムースに運営されがたいのではないかという御意見をお立ていただくことは、非常に期待にたえないところなんです。今差しあたっての問題は、外交上の問題が、あるいはお名前は差し控えますが、どなたの御発言であるとか何とか、あるいは最近のイギリスの新閥などを見ても、日本はやはり数十年前のポーツマス条約時代の考えが抜けないらしいということを批判されております。そういうはなはだ失敬な批判を受けるというのは、こちらにもまたいずれかの国に対して別に特に……、それぞれ私は国家は自分の国家を見ておればよいので、他の国家に対して批判がましいことを言わない方がよいと思いますので、どうか本問題が外交的にスムースに解決せられ、従って局長の所管の事務が円滑に進行せられることを希望する意味から、今のことをお願いした次第であります。
  69. 高田なほ子

    高田なほ子君 北鮮系在日朝鮮人総連合というふうに、大へん色をつけてしまっておられるようでありますが、これはむしろ私どもの方の側でそうした南北対立を深めておるような傾向もあるのではないかということを私は六感として危倶しておるわけなんです。特に朝鮮人総連合の方に伺いますと、私どもは南北朝鮮の統一ということを絶えず念願しておるので、決して一部に誤伝されておるような教唆扇動をするというような、そんな気持はいささかもないということを、私も再三お目にかかりながらこの点を強く了としておるわけであります。政府の側の方としては、一方の朝鮮人総巡合の善意というものをもう少し了解されて、そうして配給物資の分配等についても、決して北鮮系の者にあげたいという気持ではなかったというようなことを言っておるのですから、あまり色めがねで見ないで、融和をはかるような方法をとることこそが私は管理局としての使命であるように考えますが、在日朝鮮人総連合の考えというものを十分に内田局長は把握しておられるものかどうか、この点について伺いたい。
  70. 内田藤雄

    政府委員(内田藤雄君) 私が十分に把握しておりますかどうかは、これは他の御批判を伺いませんと、私の口からは申しても意味がないかとも存じますが、われわれも総連合の方々とは非常にしばしばお会いいたしております。それで、もちろんこの方々のお話を何べんも伺っておりますし、またわれわれの方の考え方も申し上げておるのでございまして、われわれ自身がいやしくも北鮮と南鮮、あるいは総連合の人々とそうでない人々の間の摩擦を誘発すると申しますか、それを助長するような態度というものは全然とっておらないつもりでございます。大村におきましても、私の承知しております限りでは、何とかその融和をしたいと思って、いろいろ運動会とかあるいはダンス・パーティー、演芸会というようなことで、一緒に融和するような機会を作るために努力しているように聞いておりますのですが、現にわれわれがなるべくならそういう区画をして、分けて収容するようなことは避けたいと考えておりました理由は、実はできるならそういうことによって対立がかえって激化してしまっては困るというような顧慮からだったのでございます。しかし先ほど委員長の御報告でもございましたように、昨年の秋ごろから北鮮系と称す人々の数が漸次ふえて参りますにつれまして、南鮮側と申しますか、韓国側の人々の団結というものもそれに応じて固まって参り、その間にいろいろなもんちゃく、暴行事件とまではいかないまでも、いろいろなもんちゃくが起りまして、その結果ついに年末にはある種の暴行事件というところまで発展してしまったわけであります。それでやはり私の聞いておりますところでは、北鮮系の人々の希望もございまして、ああいうふうに分離して収容するということになったのでございまして、われわれ自身の気持といたしましては、そういうことが望ましいとか、あるいはそういう対立を挑撥するとかいうようなことは毛頭考えておりません。むしろ何とかして内部においての秩序が円満に維持され、お互いに融和してやっていってくれということを切望しておる次第でございます。
  71. 高田なほ子

    高田なほ子君 私の報告大村収容所からの御説明に基いて何らの修飾もつけずに忠実に報告したわけであります。従って昨秋九月中旬ごろから、朝鮮総連議長団金性律氏が訪問されたころから北鮮帰国希望者が続出したというふうに報告しておりますが、これは金性律氏が慰問に参って教唆扇動をした結果こうなったというふうには私は考えておらない。たまたま国際的な情勢がそういう方向に行ったというところにこういう問題があったのではないか、こういうふうに私はとっておるわけでありますから、その点は私の真意をよくくみ取ってもらいたいと思う。それで実は大へん時間が少くございまして、十分に北鮮、南鮮側のそれぞれの代表というわけではございますまいが、自治組織の中の代表者からお話を聞くはずでございましたが、ついに時間がないために、一松理事と御相談をして、十分伺うことができないので、さらに私どもの方に書面でいろいろの点を回答してもらいたいと、こういうことでお約束をして参りましたところ、今日まで参りましたお手紙はいずれも南鮮系と思われる立場の方の手紙が四通、北鮮系の方からはいまだ一通も回答に接しておりません。これは偶然にそういうふうになったのか、あるいはそこらに手心が加えられているものか、これは私は若干の疑義を持ちながら、十分尋ねたいという意向を箇条昔にしてさらにこちらから質問状を出しておりますが、この質問に対する回答がいまだにありません。この点についてとくと大村収容所の方にも御連絡下さいまして、向山な回答のできるような方法が講じられることを私は望んでおるわけです。これは希望です。  それから、もう一つお伺いしたいことがあります。それは南鮮系と言われるいわゆる自治組織の代表者は、どういう経歴をお持ちになった方かをお尋ねしてみました。ところが先般の御報告にもありますように、相当の前科をお持ちになっているれっきとした方々がずらりと顔を並べておられる。とりょうによっては出入国のこの管理が相当困難であるために、いわゆる昔の牢名主のような屈強な方が代表に選ばれて、しかもこれらの方を使ってと言っては語弊があるかもしれませんが、それらの方を通してこの中を丸くしておられるのではないかというふうにも受取れるのですが、この点ほどうも私の了解に苦しむところです。これについてどういうふうにお考えになっておられますか。お承ねをしたいと思います。
  72. 内田藤雄

    政府委員(内田藤雄君) 前段に高田委員のおっしゃいましたことは、われわれもほかの機会にも御答弁申し上げた際に申したことで、ございますが、金性律氏の大村訪問によってふえたというふうには私どもも考えておりません。もしそういう御趣旨に問えましたならばわれわれはそういう考えでないということを申し上げておきます、それから御希望の点は早速今大村収容所の所長も参っておりますので、よく事情を確かめておきます。もちろん高田委員のおっしゃいましたようにいたします。  それから最後の各棟の代表者の問題でございますが、これは実はわれわれ自身の方の希望といたしましても、あまり前科のあるような人が代表者であるということは決しておもしろい事態とは考えておらぬのでございますが、われわれの方であの各棟の代表者を選ぶ問題につきましては、全く自由にその被収容者の人々の意思を尊重するということでやっておるのでございまして、従いましてどういう事情でそういう人が選ばれておるかということは、われわれ的確に申し得ないのでありますが、しいて想像を申し上げますならば、密入国の人々といいますと、どうしても女、子供あるいは比較的年輩なども若いような者、男子の場合でも若い者が多いのでございます。それに引きかえまして、刑務所の方から送られて参りました者には年長者がやはりどうしても、これも必ずしも多いとは申しませんがそういう人が相当おりますし、あるいは高田委員のおっしゃいますように収容所に長くいるというようなことで顔をきかせておるということもあるいはあり得るかも存じませんが、おそらくはそういったやはり年輩の人であるというようなことが理由ではないかと想像いたしておりますが、実際上各線の代表には密入国の者よりはそういった前科のある人がなっておるということは事実のようでございます。決してしかしこれがわれわれの方の干渉でそういうふうになったということではございません。
  73. 高田なほ子

    高田なほ子君 なるほど干渉はそれはしていらっしゃらないだろうと常識的に思うのですけれども、とっさに受けた印象としては、私とそれから一松理事南北代表と思われる方々に会ったときに、まっ先に口をきいたのは南鮮の方であり、張東級傷害致死事件のことを、まっ先にこれは誤解であるということを、非常に強い口調で言っておられました。だいぶこれは私も非常にきつい印象を受けたし、また収容所側の方でこんなことを特に言うようにでも連絡でもあったのではないかしらんというような感じを受けたのですが、これはあくまでひがめでありますから、これはここで問題にしようとは思いませんが、できるならばこうした屈強の前科何犯というような方々を代表にして中をまるくしていかれるということについては、まだまだ研究の余地があるのではないかということを、これは意見として申し添えておきます。  それから次にお尋ねしたいことは、千何回名の収容者の中で十四名の精神異常者がおります。この十四名の精神異常者は、一般の健康な生活環境の中にある者の率に比べると非常に高度な率を示しているのではないかと思うのです。これは当然肉体、精神ともに自由を拘束された中でこうした異常な状況が起ることは考えられますが、これによっても、どのようにあの方々は耐えがたきを耐えておられるかということを考えて、思い半ばに過ぐるものがございますが、お尋ねしたいことは、この十四名の精神異常者は今どうなっているのか、この精神異常者はついに不治の精神異常者として日本に残られる場合、一体これをどういう処置をされるのか。私はすでに精神異常を呈されて責任能力のない方々をまで、十四名も永久にここに置かれるということについては、非常な疑義を持っておる一人です。従ってただいまお尋ねしたことは、収容者の現状はどうなっておるのか、時間がないままに調べることができませんでしたから、これを御説明いただくとともに、今後の措置、それらについて御答弁をわずらわしたいと思います。
  74. 内田藤雄

    政府委員(内田藤雄君) この問題は確かにわれわれ自身もきわめて不愉快に感じておる問題でございます。ただ実際を申し上げますと、密入国で参りましてそのときから精神異常者であるというような場合もございます。それで実ば退去強制の理由に列挙してあります中には、精神異常者であるものは退去強制ができることになっておるのでありますが、この条項は実際上発動いたしておりません。現に日本の厚生省の方でやっておられます病院に、正規の、もちろんこれは在留資格を持っておる方でございますが、精神病者として入院しておる数は相当大きな数でございます。われわれの方として実際上どう処置しておるかと申しますと、もちろん精神輿常者であるという認定を医者がいたしました場合には、精神病院にこれを入れておるわけでございまして、実はわれわれの方の立場から申しますならば、先ほど申し上げましたように精神異常者として送還したという例はまだないのでございますので、これはやむを得ないから何とか厚生省の方で引き取っていただく方法はないものかということで、実は厚生省の方ともいろいろ御相談申し上げておるのでございます。ただ精神異常者であるから在留許可にするということまで踏み切るというのは、また入管令の建前とまるで相反したようなことをいたすことになりますのでございますが、さらばといって、退令を発付したままで日本の厚生省関係の方の病院に収容していただくということには、これまた厚生省の方で法律的にいろいろ問題を持っておられるようでございまして、実際上は精神病院に入りまして、ほかの内地において精神病になって病院に入っておる人と、何ら区別された扱いはしていないのでございますが、法律的な関係だけが依然退令発付のままで精神病院におる、こういうことになっております。それでわれわれといたしましても万一にも収容が長期化したためにそういうふうになった人がいるのではないかということで、われわれとしても常にその点は関心と申しますか、関心以上に非常に気にいたしておるのでございますが、現在までわれわれがあそこの医者から聞きましたところでは、その前の事情によるものが、たとえば性病とかあるいは先天的なものであるとかいうようなことで、あそこに収容されておったがために精神病になったというものは、これはないとは申せないかもしれませんが、非常に少いように聞いております。また先ほど高田委員が数の比例をおっしゃいましたが、なるほど現在の収容人員とその精神病者の比例をとりますと高いかもしれませんが、これは先ほど申しましたように、精神病者の送還ということは実際上やっておりませんのでございますから、これは大村収容されました長い期間の人々を基準にしていただきませんと、現存の収容者の数ということから比例を出されますのは、ちょっと妥当ではないのではないかと考える次第でございます。
  75. 亀田得治

    亀田得治君 ちょっと関連しまして。この大村収容所収容された延べ人員というのは大よそどの程度なんでしょうか。比率の問題が出ましたからちょっと参考に……。
  76. 内田藤雄

    政府委員(内田藤雄君) 九千三百ですから約二万足らずだろうと思います。
  77. 高田なほ子

    高田なほ子君 これはあくまで希望になりますし、意見になりますが、質問が長くなりますからこれで終りたいと思いますが、厚生省ともせっかく相談中であるけれども、なかなかうまい考えも出ておらないようでありますが、私としては、責任能力のないこうした精神病者を長期にわたって収容しておくということについては、人道的な立場から見ても相当問題が残るのではないか、これは法務当局としてもどうぞ具体的に御相談下すって、これが解決が一日も早くあることを特に望むものでございます。大へん管理局長としてもお役目御苦労なことではございましょうけれども、これはあくまで同じアジア民族としての問題でありますから、人道的な立場に立ち、お互いにいたわり合うという態度をもって、国際情勢の両国間の円満な妥結がとにもかくにも一日も早くありますように、この問題を中心にしてでもですね。積極的に法務当局はやはり体当りをしてもらいたいと思う。おそらくその他の方も大村収容されておられる方々のあの気の毒な実情というものについて御神じないのではないかと思う。もっともっと法務当局はあくまで人道的な立場に立って、体当り的に一つこれを解決してもらいたい。けれどもこれが解決の即刻はかれないような危惧もあるわけでありますから、私が前から申しておりますように、子供の教育の問題、これは何も学校を一つ作れなどとそんなばかなことは言っていません。収容所の中で最低でもいいんです。子供の向学心、それが押えられたり、満たされないようなことがないように、クレヨンとか、ノートとか、絵本とか、そういったようなものは、これはもうごくわずかな予算でできることなんです。愛情さえあればこんなことは解決できるんです。どうかこういう点についても冷血動物のような気持にならないで、温情をもって、国内におられる間だけでも、ああ日本におったときには日本の人たちにこういうあたたかいお世話になったと、いつの日にかこの人たちが故郷に帰られたときに、日本収容所の生活がよいものであるように私は念願してやまないのです。大へん無理な注文であるかもしれませんけれども、これは決して一高田が申し上げておるのではありません。おそらく日本中の母親があの収容所を見たならば、おそらく私と同じこういう意見を持つに違いないだろうと思うのです。どうぞ一つ、これは法務大臣が本日お見えになられませんが、特に条理を尽し、事をわけて、深い人情をお持ちになる松原政務次官の敏腕を深く期待して質問を終りたいと思いますが、できれば御所信を伺わしていただきたいと思います。
  78. 松原一彦

    政府委員松原一彦君) 全く御同感でございます。実は私もあそこを見ましたが、あれは刑務所でも何でもない。単に一時仮の収容所に過ぎかいいものが、監視所が高い所にあってまことにものものしく、刑務所式の高塀の中に置いてあることを見てすらも胸のつぶれる思いがする、われわれの同胞であった、この間まで日本人であった仲間が、今ああいうふうにして引き離されようとしているのでありますから、一日も早く解決して、おのおのりての所を得ざすことが……。実は森下政務次官がきのう帰ってきてたはずです。まだ会いませんが、現地を見に行っております。私にも一緒に行こうということを誘われましたが、どうしても今御承知のように法務大臣が病気でございますので、私一緒に行けませんでしたが、それはお互いで、何とか努力してあれを解決しようじゃないかということで、外務省の方でも真剣に言っております。私ども好んで少しもああいうふうなことをやっておるわけではございません。小さい子供までもいつまでもああしておきたくないのでございますが、というて、引き取ってくれない。これはまあ国交の正常化がまだ行われないところから参っておりますので、その方面では精一ぱい外務省の方に理解も求め、手段も尽してもらいたいと思う。森下君が行ってきましたのも、実はそういうところからだろうと思っておるのでございます。  高田さんも御承知の通りに朝鮮の学童の諸君の教育は、私どもの手は出されない。東京でも御承知の通りに十ばかりの学校ができましたけれども、日本人の教員が日本語の教育及び日本の教科書をもってする教育は希望しないのであります。費用は要求します。けれどもが、教科書その他言葉等も朝鮮の諸君自身にまかしてくれというのが熱望で、ついにただいま御承知のように日本の学校から分離したいと言っておる。あの諸君には決して無理とは思いません。祖国の言葉で祖国の教育をせられることを、何もあの由であり準ずから拒否しはしませんから、ただいま内田局長に聞きましても百人以上の学童がおるそうでございますから、私もなるべく早く見て、教科書は日本にありませんけれども、ノートとかその他のものの差し入れ等についてはせいぜい努力をいたしたいと思いますが、何よりも急務は、どうか同国の国交が回復して、そうして自由に往復のできるように、おりたい者はおられるように、帰りたい者は帰される時期の一日も早くきますることをば熱望するものでございます。
  79. 内田藤雄

    政府委員(内田藤雄君) ただいまの年齢構成、ちょっと申し上げますと、十四才以下、これは赤ん坊まで入りますので、学令が何名かということははっきり申し上げかねるのでございますが、十四才以下が二百三十三ということになっております。  それから一言私からも申し上げたいのですが、高田委員から今も申され幸した、非常に無理な注文かもしれないがと申されましたが、実は私ども決して御無理な注文とは考えておりません。私ども自身が内部におきまして大村収容所に参りました際、あるいはこちらに責任者が参りました際に、中央としていっでも注文をつけておりますことは、全くただいま高田委員の申しましたことと同じようなことを申しております。どうかわれわれとしては、渋いことをやらなければならないだけに、無理に帰されるような人に、できるならばこういういやな生活をさせられているにもかかわらず、なお日本に対して一片の愛情を持って帰るようにやってもらいたい。その点はもうくれぐれも常に収容所に関係しておる人々に申しておることでございまして、われわれ自身お言葉のようにやって参りたいと念願いたしておる次第でございます。   〔理事井上清一君退席、委員長着席〕
  80. 高田なほ子

    委員長高田なほ子君) ちょっと速記をとめて下さい。   〔速記中止
  81. 高田なほ子

    委員長高田なほ子君) 速記をつけて下さい。  それじゃ別に御発言がなければ、委員会はこれをもって散会いたします。    午後五時九分散会