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1956-05-14 第24回国会 参議院 文教・地方行政委員会連合審査会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十一年五月十四日(月曜日)    午前十時五十八分開会   —————————————  委員氏名   文教委員    委員長     加賀山之雄君    理事      有馬 英二君    理事      吉田 萬次君    理事      湯山  勇君            雨森 常夫君            川口爲之助君            剱木 亨弘君            白井  勇君            田中 啓一君            中川 幸平君            三浦 義男君            三木與吉郎君            秋山 長造君            安部キミ子君            荒木正三郎君            村尾 重雄君            矢嶋 三義君            河井 彌八君            高橋 道男君            竹下 豐次君   地方行政委員    委員長     松岡 平市君    理事      伊能 芳雄君    理事      宮澤 喜一君    理事      森下 政一君    理事      小林 武治君            大谷 贇雄君            小幡 治和君            川村 松助君            佐野  廣君            堀  末治君            横川 信夫君           小笠原二三男君            加瀬  完君            中田 吉雄君            松澤 兼人君            森崎  隆君            岸  良一君            高瀬荘太郎君            野田 俊作君            鈴木  一君   —————————————  出席者は左の通り。   文教委員    委員長     加賀山之雄君    理事            有馬 英二君            吉田 萬次君            湯山  勇君    委員            雨森 常夫君            川口爲之助君            白井  勇君            田中 啓一君            中川 幸平君            三浦 義男君            三木與吉郎君            秋山 長造君            安部キミ子君            荒木正三郎君            矢嶋 三義君            高橋 道男君            竹下 豐次君   地方行政委員    委員長     松岡 平市君    理事            伊能 芳雄君            宮澤 喜一君            森下 政一君            小林 武治君    委員            大谷 贇雄君            川村 松助君            佐野  廣君            堀  末治君            横川 信夫君           小笠原二三男君            加瀬  完君            松澤 兼人君            森崎  隆君   国務大臣    文 部 大 臣 清瀬 一郎君   政府委員    自治政務次官  早川  崇君    自治庁行政部長 小林與三次君    文部省初等中等    教育局長    緒方 信一君   事務局側    常任委員会専門    員       工楽 英司君    常任委員会専門    員       福永与一郎君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○地方教育行政組織及び運営に関す  る法律案内閣提出衆議院送付) ○地方教育行政組織及び運営に関す  る法律施行に伴う関係法律整理  に関する法律案内閣提出衆議院  送付)   —————————————   〔文教委員長加賀山之雄君委員長席に着く〕
  2. 加賀山之雄

    委員長加賀山之雄君) これより文教地方行政委員会連合審査会を開会いたします。  慣例によりまして、私が連合審査会委員長職務を行います。  地方教育行政組織及び運営に関する法律案及び同法律施行に伴う関係法律整理に関する法律案を議題といたします。  なお、本連合審査会は本日午前中ということになっておりますので、そのことをお含みの上質疑されるようお願いいたします。それでは質疑のある方は順次御発言を願います。
  3. 森下政一

    森下政一君 ちょっと速記をとめてもらえぬですか。
  4. 加賀山之雄

    委員長加賀山之雄君) 速記をとめて。    午前十時五十九分速記中止    ————————    午前十一時二十一分速記開始
  5. 加賀山之雄

    委員長加賀山之雄君) 速記を始めて。
  6. 加瀬完

    加瀬完君 文部大臣に伺いますが、今度のいわゆる教育委員会法改正によりますると一番問題になります第一条の目的が全然削除されておるわけでありますが、これはどういう理由でございますか。
  7. 清瀬一郎

    国務大臣清瀬一郎君) 現行法では第一条に教育基本法等の語句を引用しましてあの通り規定ができておりまするが、教育に関することは教育委員会法であろうと学校教育法であろうとすべて教育基本法全体を前提とし、いわばこれをかぶっておるので、再びここに表現する必要はなかろうと思ってこのような規定になっておるのでございます。決して、現行法と違った意味で作った法律というわけじゃございません。
  8. 加瀬完

    加瀬完君 この教育委員会法が制定されますときに、これはたびたび衆参両院において問題になっておるようでございますが、教育が不当な支配に服する云々の問題が論議されたわけであります。それからさらに第一条によりますると、「地方実情に即して」ということが、強く憲法規定されておりまする地方自治尊重立場から論議され、強調されたわけであります。今度の地方教育行政の全般にわたるいわば新法とも言うべきものでありますのに、それに対しまして地方実情に即するというふうな基本的な性格、それからいかなる理由があろうとも不当な支配に服させないというところの教育中立性、この教育中立性ということを大臣はたびたび強調しておるのでありますが、中立性の侵されるような原因を作るがごとき条文というものをそのまま認めていくといおうか、あるいはそれらを十二分に牽制するような保護規定というものを削除してしまうということでは、非常におかしいと思う。これは意見に触りますけれどももこのごろの政府地方行財政に対するやり方は、地方行政あるいは財政というものに対するはっきりとした地方自治尊重という目的を、あらゆる点で削除していくような傾向がある。今度のいわゆる教育委員会法改正におきましても、この一番肝心の目的というものを削除しておりまして、それが教育基本法にあるからといいますけれども、先般の臨教審の中の御提案では、教育基本法も改訂するのだ、その改訂の一つ理由としては、国家責任といいますか、国家監督権というものを強化するのだということを文部大臣は明言しておる。そういたしますと、当時心配をされました、たとえば一党一派教育に対する支配あるいは文部官僚のかつてのような復活、こういったようなことが一番憂えられておりまして、そういうことのないために、地方実情に即するということが一つ基本線として貫かられなければならないという配慮がありましたものが、これらを欠くということは、少くともいわゆる世論が非常に心配をしておりまする文部行政権限復活といいますか、あるいは中央集権化といいますか、こういう心配をぬぐうことができないということに私はどうしてもなりがちだと思う、この点どうですか。
  9. 清瀬一郎

    国務大臣清瀬一郎君) この案は、教育行政中立は非常に注意をいたして、これを保持しようと思っております。それから教育中央集権化するという考えはございません。
  10. 加瀬完

    加瀬完君 中央集権化しないようにしようと思うなら、なぜ地方実情に即してという肝心な地方自治立場をはっきりと主張した目的というものを削除されてしまったか、あるいは中立性をどこまでも確保しようというならば、教育が不当な支配に服することなく、という条項を抜かなければならない理由がどこにあるか。
  11. 清瀬一郎

    国務大臣清瀬一郎君) それは教育基本法に明確に書いてありますので、現に教育についてはなお直接な学校教育法でも、あの当時の立法の仕方で、教育基本法によってという文字は省いておるのであります。日本法律一体として見る時分には、一々憲法関係条文教育基本法関係条文をここに書くことは必ずしも必要でないと、こう考えております。法文作成方針の問題でありまして、教育基本法なりあるいは地方分権精神などは寸毫なりとも侵すつもりはございません。
  12. 加瀬完

    加瀬完君 教育の不当なる支配の問題はたびたび論議されておりますから、私は割愛をいたします。地方実情に即してという項目を寸毫も侵すつもりはない、地方分権といいますか地方自治というものは尊重しておる、こういう御説明であります。しかしこの法文を見ますと、国家監督権といいますか、文部省行政権強化といいますか、そういう個条は所々に見られますけれども、なるべく地方実情に即して、一そう忠実に現行教育委員会法よりも改正案によりますと、さらにこれは地方自治というものが尊重されて教育行政に及んでおるのだ、及ぼすべきだといったような条項がどこにございますか、全体を通じましてそのウエイトがありますか。
  13. 清瀬一郎

    国務大臣清瀬一郎君) 全体を通じてこの案は教育基本法精神——基本法それ自身がそれを言うておるのであります。この案になくても、この案の前提となる基本法それ自身がそれを言うておるのであります。
  14. 加瀬完

    加瀬完君 あなたは法律家でありますから、そういう法理的な錯誤というものは私は言い得ないと思って、尊重して法理的な解釈を伺っておった。ところが大きな錯誤がある。教育基本法というものがあって、その教育基本法というものを具体的に表わす行政面基準として教育委員会法があるというならば、その教育委員会法は、あくまでも、いかなる個所においても、教育基本法精神が具体的になるほどこう出ておるのだということが明瞭になっておらなければならぬ。現行法においてはそれが非常に明瞭になっておりましたものを、改正法によっては、それを非常に稀薄にしておる。稀薄にしておってですね、教育基本法にきめられておるものを的確にやることにしておるのだという理由は、どこにも成り立たないと思う。なおですよ、なお教育基本法すらですよ、臨教審の御提案の御説明によりますと、文部大臣は、これは変えなければならないものだ、しかもそれの監督権といいますか、責任というものを明確にするためには、これはあくまでも変えていくべきものだということを御明言なさっておられる。教育基本法基準にとったって、その基準にとっておる教育基本法をも、この地方教育行政法案と同様の趣旨で変えようとなさっておるという御説明にしか今までの御説明では受け取れない。その間のですね、地方実情あるいは地方自治というものを尊重しておるのだ、この法案ではここにもある、ここにもそういう点があるじゃないかという具体的な個条をお示しいただきたい。
  15. 清瀬一郎

    国務大臣清瀬一郎君) 法文に書いてない、道理は別でありまするが、戦後の日本法律組織憲法が一番であります。これに平和主義人権尊重主義も含んでおるので、これは当然教育にも適用がある。教育基本法の十一カ条もすべての日本教育行政には含んでおるのであります。それゆえにこれらと同じ法文をこの地方行政組織並びに運営のうちに再び繰り返して入れることは必ずしも必要でないと政府考えたんでございます。もしもこの法律教育基本法を侵犯し、または地方自治を害するとおっしゃるんであったら、その法文について私どもお答えした方が便利かと思います。私はこれ全体としては地方自治を侵犯する考えなく、教育基本法並びに憲法精神に違反する考えはないんであります。
  16. 松澤兼人

    松澤兼人君 議事進行。今の加瀬君の質問はですね、まあ教育基本法を変えるという文部大臣の御意向のことについて一点聞いておるんですね。これは臨教審の問題に関連して文部大臣はそういうことをおっしゃったということを加瀬君は聞いておる。この点が一点だと思うのです。それからもう一点は、改正教育委員会法、簡単に教育委員会法といいますけれども、改正教育委員会法では、以前の旧法に「地方実情に即した教育行政」ということをうたってあるのに、今度の新法ではそれをうたってない、うたってないということは地方実情に即した教育ということを無視するんじゃないかという疑いが起ってくるが、新しい法律の中においてそれを無視するんじゃないという条文を指摘して、文部大臣はこういう条文があるから地方実情に即した教育行政というものが行われるのだというその説明加瀬君は求めているんだと思うんです。(加瀬完君「その通り」と述ぶ)その二点に分けて御説明を下されば加瀬君は納得するのじゃないかと、こう思います。
  17. 清瀬一郎

    国務大臣清瀬一郎君) 今お尋ねの前段のことも私は実は答えたかったのです。私が別の委員会教育基本法改正するんだ、国の責任強化するんだといったようなことを言うたとおっしゃるんで、引用が少し正確でないんですけれども、それまでも言ってはあまり話が枝葉になり、おっしゃる言葉をとがめるようになると思って、私も説明をしたかったんですが省略したんです。私が臨教審説明その他で言ったのは、わが国道徳等について世間でこれでいいかという議論も起っておる、今の教育基本法は全部それで私は賛成なんだ、けれども、このほかにもなお基本としてつけ加えることがありはせぬかという議論が起っているから、それは重大な問題じゃからして、そこで臨時教育制度審議会でお調べを願うという答弁をしているので、私がこれにつけ加えるということを言うた覚えはないのであります。それからして国の権限をこれを強化するといったような意味じゃなくして、現行法現行教育関係規定では、一体国教育に関する責任がどこまであるのか、私立学校に関する法規その他でも、いまだこれは明確になっておらぬから、これを一つ御調査を願いたい、こういうふうなことを私は言っているので、国の監督権強化する方針だといったようなことは、私は言うておらぬのであります。しかしながらあまりに事がこまかくなりますから、そこを抜けて、お問いの基本だけを答えたのでありますから、どうぞ御了承を願いたいと思います。  それからその次の問題は、全く法案を書く技術の問題で、ロジカルに一旦基本法として書いてあるから、もし書くとすれば第十条だけじゃなく、私は第一条も必要なことじゃと思うんです。学校それ自身使命人格の完成にあり、自主的精神を持った心身ともに健康な国民を作る、こういうことは全部必要なことであります。そうして教育委員会はその学校またその教員の身分までも、それから教科内容までも見ていくところでありますから、教育委員会使命ということを書こうと思ったら、十条だけを引用しては少し足りないんです。ほんとうに引用するなれば、第一条、第二条、すなわち教育はいかなる機会においてもこれをやるといったような重要なこともまたあるのであります。現行法を起草せられた方は、どうしてこれをお書きになったか、その当時の日本国内事情教育に関する観点等から第十条第一項を必要なりとしてお書きになったんでありましょうけれども、これは私は書かないでも全部かぶっているものと思うんです。それからまた地域社会の状況によって教育をするということも、教育基本法には、その文字はありませんけれども、全体からいって当然のことであります。当然のことであります。それゆえに第一条にいわば宣言的、訓辞的のことを書くのに反対じゃございませんけれども、なるべく法文は簡をたっとぶので、このようにしたのであります。現に学校教育法自体が引用しておらないのですね。学校教育法自体学校教育ですからして、教育基本法の第一条、第二条を引用してもよかったんだが、当然のこととしてやっておらない。そういう意味で事を簡にしたということも御了解願いたいのであります。単独の文教委員会においてもその趣意はたびたび説明いたしております。
  18. 加瀬完

    加瀬完君 質問の時間でありますから……。大臣のただいまの御説明速記録を読めば御自分がどういうことをおっしゃっているかわかりますので、臨教審にはあなたが三点はっきりおっしゃっているのでございますが、その中には、今言ったような、基本法にアルファを加えるのだ、それは忠孝ということだ、しかも国の責任明確化、あるいは監督権強化というふうな、こういうものをはっきりさせる、大学の改革をする、こうおっしゃっているのでありますが、それは本問題とはやや離れますから、私もその問題で追及することはやめます。そこで具体的にどの条項一体地方自治尊重しておらないのだ、あるいはまた地方実情に即してということと相反するんだ、こういうふうなお話でございますので、重ねて具体的な問題を伺いたいと思います。この法案提案の御説明によりますと、「教育政治的中立」、あるいは「教育行政の安定を確保」ということを御主張なさっておられ、その通りだと私どもも了承いたします。そこで政治的中立のために、あるいは教育行政を安定させるために、合議制機関を持たなければならないということも御説明なさっておられる。そこでより中立のために、より教育行政を安定させるために、合議制機関任命制にしなければならないというのは一体どういうわけだ、これが一点。  もう一つは、今度の任命制による委員、その他委員会権限なり、性格なりというものを見ますると、他の地方行政関係行政委員、あるいは議会関係と比べて、教育委員権限というものが私ははなはだしく制限されていると言おうか、制圧されていると言おうか、そういう傾きがあると思う。たとえば委員長任期を一年にしたり、副委員長をなくしたり、あるいはまた教育長というものを特殊な性格のものに置きかえたり、これは委員会強化ではないと思う。で、そういう改革をすることがより今までよりも中立性確保になるし、あるいは教育行政の安定になるという理由をもあわせて御説明いただきたい。
  19. 清瀬一郎

    国務大臣清瀬一郎君) 中立性のためにこの案は、加瀬さん、こういうふうに見ておるのであります。現在の日本情勢として、だんだん政党主義というのが発達しつつあるのです。これは政治の上においてはいいことと思います。そこでこのままで直接選挙一本やりで参りますると、やはり教育委員会選挙というものは、政党本位で行われるように進むと、こういう見方でおるのであります。これは私は、そうこの前提には反対はあるまいと思うのです。そうすると、政党本位で社会党の候補公認であろうと、推薦であろうと、またわれわれ自由民主党の候補、これも公認であろうと非公認であろうと、それで争うということになるというと、選挙当時の争いが教育委員会に持ち込まれるということにもなる。それからして選挙は勝つのが目的でありまするから、政党本位でやっていきますると、二人よりは三人とりたい、三人よりは五人とりたい、全部とってしもうたら一番大勝利であります。そういう情勢に馴致されまするという、政党から出た教育委員じゃからといって、職務中立でやるべしというのは当然でありまするけれども、そこが人間界のことでありまするからして、多数の教育委員会の中で一会派がマジョリティを持ってやるというと、教育党派偏向ということになるおそれは濃厚である、まあこう見ておる、一方では。その情勢を、今まあ雨降らざるにゆう戸を綢繆すというのでその情勢が起ってしもうてからでは非常にこれは改正もむずかしいが、今どうすればいいかといえば、直接選挙というものをやめても、直接選挙で出てきた長というものがあり、直接選挙で出てきた議会というものがあるから、長が議会の同意を得て委員を作りまするというと、必ずしもこれが民主主義に反するということも言えまい。そうして人格が高潔で文教には識見を持っている人、これもまあ精神的の条文じゃありまするけれども、そういうことにして五人の委員のうちで二人だけは同党派でいいけれども、それをこえて三人ということになると、——五人の委員会だけについて言います——そうすると、政党偏向ということになるから、選任には消極的に二人をこえてはいけないということを一つ入れておこう。もう一つはその二人の方でも、政党に属する委員でありましても、政党幹部職員になったり、積極的運動が、できぬような制限を置く、これは直接選挙の場合にはそんなことは適当じゃなかろうと思います。直接選挙であれば幹部であろうと何であろうと政党員がやるのですが、任命の際にはその条件をつけて、積極的の政治運動をせず政党幹部にならず、これは十一条の五項に書いております、そういうことでやっていく。そうしてそれでもよくよく工合の悪いものがあればリコールをやる、これは八条に書いております、それでもやはり悪いものがあれば第八条でリコールをする、こういういろいろな制限でやはり中立を保ち得られる。中立の問題とは離れまするけれども、りっぱな人を選ぶというのは、今日のわが国現状から見ると、ごくいい人であっても、選挙というものをきらってお出ましにならぬことがあるのです。ことに県の選挙区は変えられまするけれども、現行から言えば一県一区です。参議院の選挙と同じことです。相当の人でも教育委員になるために立候補されるということがはばまれて、ごく適切な人が得られないこともあるから、適切な人を見て、それを任命する方がいいだろう。これについて文教委員会でも質問が起って、今の知事あるいは県会議員政党人だ、そうすると政党びいきにやるだろうといったようなことも起りましたが、そこはまた限度があることで、法律に違反しまたは違反せんばかりに、まずこれをもぐるような委員任命をすれば、その知事なりその県会、その党派は、世間から指弾を受けるからして、やはり知事県会議員も県内における自分の信用を維持しなければなりませんから、第四条のような規定はやはり相当の拘制作用ですね、ディテレントになるだろう。うまくやれはこの方が中立を保ち得るのだ、こういう見解でこの案ができているのでございます。
  20. 加瀬完

    加瀬完君 あとの方の質問の答えがまだございませんが。
  21. 緒方信一

    政府委員緒方信一君) この具体的な問題で、委員長任期を一年にしたというお話がありましたが、その点が一つあったと思います……。
  22. 加瀬完

    加瀬完君 一年にしたり、それから市町村教委から専任教育長を廃したり、あるいはまた副委員長という制度が今まであったのをそれを置かなかったり、その委員の人数を削ったり、こういうものは委員会強化ということにはならないし、合議機関強化ということにはならないだろうと思うのです。これによって現状より合議機関の効率を上げたのだという理由があれば伺いたい。
  23. 緒方信一

    政府委員緒方信一君) 現状委員長任期を……。(「大臣から、大臣から」と呼ぶ者あり)
  24. 加賀山之雄

    委員長加賀山之雄君) 一応政府委員から答弁して、それで足りなければまた大臣から……。(「政府委員答弁することではない」と呼ぶ者あり)
  25. 清瀬一郎

    国務大臣清瀬一郎君) 任期のこととか、それから副委員長等のことですが、一応政府委員からお聞き願いまして、事実に関することですからその方が正確な詳しい答弁が得られると思いますから、お聞き願って、後にまたお答えしまするから、順序を変えただけでお答えしないというわけではございませんから……。
  26. 緒方信一

    政府委員緒方信一君) ただいま御指摘のうちに、委員長任期につきましては、これは現行法も一年でございますから……。それからまたほかの公安委員会におきましても一年になっておるようでございます。ほかの行政委員会よりもこれを変えたというわけではございません。それから副委員長につきましては、従来ございましたけれども、今お話の中にありましたように、従来は都道府県におけましては七名であるのを五名にした、これは確かに委員数を減らしておりますが、これは全般の総合的な検討からいたしまして、機構の簡素化という趣旨もとり入れましてやったことでございますし、それから合議制のこれは執行機関でございますから、やはり委員数は相当な数を確保することは必要でございますけれども、事務の能率的な運営等から申しますと、やはり五人くらいで適当じゃないかという結論に到達いたしまして、五人にいたしました。かように委員数も七人から五人に落ちたりいたしましたこともございまして、副委員長を必ずしも置く必要はないのじゃないか、委員長の事故のある場合に職務を執行する委員をあらかじめ定めておくという規定を入れておりますので、運営につきましては支障がないのじゃないか、かように考えておる次第でございます。それからなお教育長教育委員会の中から選任をする、かようなことになったわけでございますけれども、これも機構の簡素化という観点からいたしましてそういう立場をとったわけでございます。
  27. 加瀬完

    加瀬完君 だから……。大臣続いて……。
  28. 清瀬一郎

    国務大臣清瀬一郎君) 今、局長の答えたところは、答えた問題については、その通りでございます。もう一つ補充いたしますれば、この案は全体を通じて今日の行政を簡素化しようということがあるのであります。それで委員の七名を五名にいたしましたり、それから県の方の教育長はやはり専任を選びまするが、地方教育長はその委員のうちでだれかが兼任するといったようなことにいたしましたり、それからして選挙をやめて選任にしたのは、今言った中立の方の要求からきておりまするけれども、やはりこれは簡素化ということにもなるのであります。後にいずれ御質問が出ようと思いまするが、二本立予算をやめたことも、別の理由もありまするけれども、やはり簡素という方にも適しまするので、この法案を通じてどうかして行政を簡素化できまいかという念願がこもっておるのでございます。あなたの方から御質問がなかったが……。
  29. 加瀬完

    加瀬完君 質問しただけ答えてくれればあとは質問するから……。
  30. 清瀬一郎

    国務大臣清瀬一郎君) 幾らかあなたの言葉のうちにありましたが、権限のことですね。長の権限のことは、ちょっとふえたことは事実でございます。二十三条と二十四条をごらん下さるというと、二十四条の方で長の権限が、財産の取得とか、あるいは契約の締結といったようなことはふえておりまするけれども、これは教育の自治ということには関係なく、この方が日本法律の全般と調和を得ておる、こう考えたのでございます。
  31. 加瀬完

    加瀬完君 政府委員並びに大臣の御説明を伺いますと、結局ねらいは機構の簡素化ということだということに落ちつくと思う。機構の簡素化ということは、これは抽象的には異議を差しはさむ余地のない言葉でございますが、しかしながらいかに機構が簡素化されようとも、それは大臣が御提案の中で御説明されておりますように、教育委員会の機能といいますか、目的といいますか、任務といいますか、こういうことにマイナスの面を生ずるような、あるいは教育委員会の行政機能というものを消滅させるような簡素化ということは成り立たないわけなんです。今私の質問しておる点は、一体こういうような簡素化という美名のもとに行われる一連の改変が、今までの、現行法教育委員会法による教育行政の機構というもの、あるいは目的というものとは、はなはだ矛盾する場面があるのではないかという点を伺っておるのであります。たとえば大臣は今非常に現行法をそのまま見のがしておると、これは政党本位に陥りがちである、こうおっしゃっております。しかし政党本位に傾きたがるというのであるならば、この法案の中にもありますように政党活動の制限とか、政党所属の制限ということだけでも事足りるわけなんです。長なりあるいは議会なりというものは、初めからこれは大臣の御説明の中にも引例されたように、政党的な傾向を多分に持っておる、こういう傾向のあるものによって任命されるものが、現行選挙による委員よりもはるかに政治的傾向が薄らいでいくということは成り立たないと思う。また成り立つとしても、そういう判断を一体文部大臣なり長なりというものがすることが正しいのか、地方自治の建前ではそうではなくて、中立的な、または教育行政の安定に適する人かということは住民自身が判断をするのが適切だ。地方自治精神というものは住民自治でありますから、住民が選ぶ。その人が四人同一の傾向であろうというものが出ても、住民がそれでいいということならそれで許さるべきことなんです。一々文部大臣なり地方の首長なりが、それは自分立場から見ると偏向だとか、これは不適格だという判断を下す下し方というものは、現在の自治法の性格から、はなはだ相反することであると私どもは認識をしておる。選挙によりますると、結局教育行政目的から、はなはだいろいろはずれてくるものが出てくるといいますけれども、住民は教育行政を担当させる教育委員にはだれがいいだろうという自己の判断によりまして、そういう目的によりまして、現行法選挙をいたしておるわけであります。この選挙方法やあるいはその他について、いろいろの修正、改革をするということは成り立ちましょうとも、この住民が自分たちの教育行政の代表を選ぶという基本線はくずすべきではないと思う。これを長や議会権限にゆだねるということは、私は少し自治の本旨というものとは違ってくる、こういうふうに考えるわけであります。機構の簡素化ということのために、こういう地方自治の根本でありますところの住民の判断をするところの権限というものまでも奪うようなやり方というものは、私は少くもそういうことが議員立法や何かによって出たというならばわかりますけれども、文部省自身が、政府自身がこういう立案をする権限はないと思う。たとえば文部省設置法によりましても、文部省権限というものはそういうものを立案したり作成したりする権限というものは与えられておらないわけです。与えられておらないのではなくて、そういうことをしないような建前というものをとらせられておると私は解釈しておる。この点は大臣はいかがにお考えですか。
  32. 森下政一

    森下政一君 ちょっとそれに関連してお尋ねしたい。先刻文部大臣の御説明を聞きましたが、選挙がだんだん政党を中心にした選挙になりつつある。従ってこの情勢が進んでいくと、教育委員を公選制にすれば、政党的な争いというものがだんだん色彩を濃厚にするであろうというふうなお言葉がありました。ところで私考えますのに、教育委員選挙にもまして、より一そう政党色が濃厚であって、政党を中心とした激烈な競争になりつつあるのは長の選挙だと思うのです。そこで、まあこれは、文部大臣も否定はなさるまいと思う。そこで、かりに社会党に党籍を持ち、社会党から公認された長が当選するということになりますると、必ずその議会というものは、その長を支持する与党を多数たらしめなければ運営上困るというので、長は、何にも先んじてまずその努力をするに違いない。これはまあそうあるべきことであって、かりに私が長に選ばれたといたしましても、議会運営上与党を多数に作るという、多数派工作というものを必ずやるであろうということが考えられる。それは、すべてそうだと私は思う。そうなってくると、社会党に所属している長が当選して、その者が教育委員任命します場合にです。五人の中の三人まで同じ党に属しておってもかまわんというならば、おそらく三人とも社会党に所属している者を選ぶことに少くともなりがちだと私は思う。あとの、自余の二人につきましては、同一の党籍を持つ者は回避しなければならぬということになりましても、だからというて、それは反対党に所属しておる者を必ず選ばなければならぬというわけではないと、従って、党籍は持たぬが、社会党系の人だと思われるような人を任命しましても、これを違法だとは言うことができないということになりまするということです。五名の委員があげてほとんど社会党一色に塗りつぶされてしまうことに相なるのでありまして、教育委員を公選にゆだねておくことによって、政党的な色彩が濃厚になる、そのことによって生ずる弊害よりも、任命制によって、私はあなたの憂えられることが如実に現われやすいというふうに考えまするので、先刻の、公選制をやめるのは政党的にへんぱなことになることをおそれると言われるのは逆じゃないかと、任命制の場合に、そういうことが多く行われる懸念が多分にあって、いわゆる教育中立制というものが阻害されやすいということになるのではないかと、こう考えますが、その点も合せてお答えを願えればけっこうだと思います。
  33. 清瀬一郎

    国務大臣清瀬一郎君) 加瀬さんのおっしゃったことから先にお答えしましょう。  一番初めに、加瀬さんの仰せられた簡素化ということです。あなたのお説の通り、簡素化にも限度はございます。簡素化だといって、むやみに何もかもやめてしまうという意味じゃございませんので、他のほかの要求の限度内においての簡素化ですから、これは私は、非常に大きな要求とも考えておりませんので、私がこの案の説明には、それはあまり重点を置きませんでしたが、さっきのお問いについて、丁寧に答えるという意味で補充したのであります。しかしながら、今日の日本全体の行政、また地方行政について、世間の要求は、やはりもっと簡単にしてくれいということはあるんです。この法律にきめた委員会のほかに、いろんな委員会、協議会というものは、もう役場にたくさんございまして、それをひとつ兼任にでもするか、簡素にせいということは、私は選挙区にいる人に教わっておりますから、ある限度においてという意味に御解釈を願いたいのであります。  それからして、地方住民の要求によるということもあなたのお説の通りであって、やはり任命にしたところがへその地方の人を採用するのがこれは当然であります。選挙の方はむろん地方住民の権利ですから。それとこの政党組織の交渉ということですね。政党はあなたの方の政党も、われわれの政党も、国家全体を負うた政党ですから、で政党の応援と公認ということになりますると、党はどうしてもたくさんの議員を取りたいという気が起るんですね。これは教育に関することじゃから、そういう心持で選挙すべきじゃないという論も立ちまするけれども、やはり党となってみると、教育委員県会の議員も農会も、すべてあの議員などは自分の党にたくさん取りたいという気が起ることで、これを制御するわけにはいかぬ、いくまいと、そこで大っぴらに直接選挙だけやりますると、たくさん取ろうという気が起る。選挙が苛烈になる。中には、選挙違反をやっても当選しよう。そういうものまで起るんで、品のいい教育委員の方はそれはするなと言っても、勢いのおもむくところ、やはりそういうことになり、選挙で敵味方になれば、やはりその争いは、まあ一両年たてば解けるのでありますが、選挙の翌日ということになると、敵と対面ということになる。まあこういう意味から、必ずしも教育委員には選挙が一番いいのではないのだ。外国の例を見ても、どこも皆選挙をやっておるというわけではないのですね。やはり任命なり、あるいは協議してきめるところもある。私はよく調べておりませんけれども、アメリカあたりでは、教育の経費を独立に税金を取っておりますわな、教育税を。そうするとアメリカ人は、選挙のないところに納税の義務なしということは、アメリカの独立のときからの考え方で、教育税を取るところでは、やはり選挙による委員が道理上必要になってくる。しかしわが国においては、教育に対する特別の税金を課するわけでもないから、まあ間接選挙でありませんけれども、性格が。じゃけれども、町村長が町村の議員の同意でやる。これが先例がないことじゃないのですね。  加瀬さん御承知の、公安委員のような、いやしくも不公平になってはならぬ、警察のことですから、もう寸毫の私を入れませんよ。人身に関することですから。それがやっぱりこの流儀でやって、公安委員会は、知事県会の同意を得てやったんだから、不公平なことをしたという非難はあまり耳にしないのです。日本四十六府県、やはりその流儀でやって、公平が保てておるんだから、そのよき先例に見習って、長と委員と協議をすれば、そこでまあ公平なものが得られるんじゃないか。  それからして第三に、文部省のことについてちょっと私聞き損ったかもわかりませんけれども、これはまあ私が担当しておりまするけれども、この法案内閣提出法案で、内閣全体の責任の案として提出いたしておるんであります。あるいはお問い合わせにちょっと誤解して答えておるかもわかりません。  それからして、関連でお聞き下すった町村長の選挙です。これが苛烈なことは私も知っております。これはまあ限度ということですけれども、どこまでが苛烈かということですけれども、小さい町村長の選挙でも、実は何百万という金を使って、ほんとに血みどろの選挙をしておることは事実です。あなたの御指摘の通りです。何とか地方自治のために、これがやまんことを望んでおりまするが、どの長と言わないけれども、町村長の選挙が苛烈で、町村長に落選した、落選したのが、今度は教育委員会選挙をして、そして教育委員長などになって、ことごとくまたその争いを町村長と教育委員長の間にもっていく、こういう嘆かわしいこともないではございません。これらから考えてみますと、やはり長と議会との同意を得たといいまするけれども、提案前にもいろいろ協議もあることでありまするからして、それでやったらよかろう。それでも不公平な人事のあることをおそれまして、この案では、一党がマジョリティをとらぬようにしたのです。五人のうちで二人まではいい、三人以上はいけないのです。ちょっとあなたのお言葉に三人とるということがあったけれども、三人はとれない、二人しかとれないという制限がされている。以上という言葉の解釈ですね。三人以上はいけない、二人でないといけないと、そういう制限をつけてあるのであります。  それからもう一つは、一たん就任する以上は、政党幹部にはなれない。役員にはなれない。それからして積極的な政治運動はできない。なお、それでも政党くさいことをやって、住民がいけないと思うならばリコールもできる、こういうことでやってみれば、教育行政中立は保てるのだろう、少し繁雑な方法でございまするけれども、直接選挙よりは、この方が中立は保てるだろうという見方がこの案の本旨でございます。言葉は悪いが、趣意をどうぞ……。
  34. 森下政一

    森下政一君 私の申しますのは、おっしやる通り、長が任命するについては、単独の意思でやるだけではない、議会の同意を得なければならぬ、そこにチェックされるものがあるとおっしゃるが、先刻私の申しましたように、社会党に所属しておる長は、必ず多数派工作をして、自分の与党というものを作るに違いない。そうすると、その多数派工作の行われた議会が同意を与えるということは、社会党の長のもとにおいては、社会党色の強い議会が同意をするというのだから、これはきわめて簡単なことなんですね。チェックがチェックにならぬと私は思う。同時に五人の中の二人が社会党で、あとの三人が反対党でなければならぬということはないのだから、社会党系のものが、社会党に近いなあと思われるようなものが選ばれやすいことになると思う。そうなると、私の最も憂えることは、任命制であることは、結局社会党の長の出ておりまするところでは社会党が教育を牛耳ってしまう、地方教育というものを一手に掌握してしまうという懸念がある。そういうことはよくないじゃないですか。中立性の保持にはならぬと、こう私は申しておるわけなんです。そうではございませんか。
  35. 清瀬一郎

    国務大臣清瀬一郎君) あなたのおっしゃることもよくわかりました。社会党なり、自由党が党員を二人は任命できるが、あとの三人は世間でいう何々系というやつを使いはせぬかという意味だろうと思います。その心配はむろんございます。しかしながら、人間界のことで、どうしても絶対にというわけにいきませんが、しかし、党員を二人までということを制限すれば、あとの方はやはり何々系ということになる。それから党員にしても系のものでも、積極的の政治運動ができないという制限もつけておりまするし、党の幹部にはなれぬ、役員にはなれぬという制限もつけております。それでもなおやるという場合には、リコールの方法もついておりまするし、もう一つは、精神的のことを言うようでありまするが、あまりひどい人事をいたしまするというと、そこが民主主義の作用で、人格高潔というのに高潔ならざるものを選ぶ、あるいは教育文化についてといっても、まるきりそうでないというものも入るのです。そういう場合にはおのずから世論の制裁というものもありまするからして、今の日本の法規では、政党に属するということは禁ぜられてない、裁判官でも政党に属しておるのです。ですから、この現在の日本情勢、それから教育委員会以外のほかの法律の立て方をずっと見ても、この限度より以上にやるというと、例の統制主義になりますから、自由主義制度を維持しながら、教育委員会中立を保ち、その地方の世論を反映せしめるものとしては、このくらいが限度だろうと、こうわれわれは考えたのであります。もっとも国民の良識に訴えて、教育委員は中正なものでなければならぬということを知って、国民が選挙してくれるというように、国民自身に全幅の信頼が持てれば、それは選挙でもいいのですけれども、そこが実際問題としては、私は何も住民が誤っておるというようなことは言いませんけれども、選挙の実際としては、政党組織選挙が行われそうな現状からかんがみまして、この案をベターなりと、こう考えたのであります。
  36. 加瀬完

    加瀬完君 それは、非常に論理が矛盾しておると思うのです。最後の結局チッェクをどこに求めておるかというと、住民がリコールするだろう、あるいは、いかがわしい教育委員が出れば、これは世論の反撃によっていたたまれなくなるだろうと言って、結局住民の世論、あるいは住民の見識というものに待っておるわけです。ところが、この法案の立て方そのものは、今、最後に大臣が触れましたけれども、国民の良識というものを否定して、その上に立っておる。そして矛盾して、どうにもならなくなると、最後は国民が何とかしてくれるだろう、住民が何とかしてくれるだろう、こういう法の前提というものは私は成り立たないと思う。はなはだ不備だと思う。しかし私が伺っておるのは、そういう点よりも、今度の任命制による教育委員会というものの新しい構成が、はるかに今までの教育委員会法よりも政治的の中立が維持溶き、教育行政の安定を確保することができるのだという積極的の理由というものをあげてもらいたいということを言っておるわです。この点、もう一回明確にお答えいただきます。
  37. 清瀬一郎

    国務大臣清瀬一郎君) 私どもの物の考え方は、どの理論も絶対的のものとして一本でいくということではないのであって、実際を見てのことでありますから、一つの論理で言っておるのではございません。言葉には矛盾はなくても、二つの観念を継ぎ合せておりますから、あなたのおっしゃるようなお聞き取りもやむを得ないと思います。一方においては国民の良識で、よくよく悪ければリコールするだろう。これはよくよくということがついておるのです。(笑声)しかしながら、選挙する時分には、やはり政党が強力になりますと、必ずしも教育委員に適せぬものでも、公職をたくさん自分党派に取ろうということも行われるだろうということは、根底においては二つ違った命題ですよ。しかしながら、現在の世の中をにらんでいきますと、このくらいでいいだろうというのは、選挙尊重しておるのです。けれども直接選挙じゃなくして、間接にやるということで、民主主義にいけぬことはないだろう。それからして、人格高潔な、教育及び文化に識見のある者と、選挙の場合には何ら書けませんわね。選挙法に人格高潔な者を選べ、それから教育文化に経験のある者を選べということは、選挙法には書けないです。これは選挙民の自由です。けれども、こういう規則というものは、ちょっと見るというと、抽象的なようですけれども、やはり相当な刺激になるだろう。これだけのことがありますから、町会なり県会なりで選ぶ時分には、みすみすの者はこれは選べない、こういうことになるであろう、これも不徹底なことでなく……。あなたの御論で、それはそういうことをも、それに矛盾があるとおっしゃられても仕方がありませんが、現に公安委員会でも人事委員会でも、某政党の強いところでも、公安委員会が不公平な警察行政をやったということは聞かないのです。あるいはあるかもしれませんが、それならば世論になって、公安委員の選任も、あれじゃ不公平になるという世論が起きるのです。公安委員というのは、それこそ公平にしなければならぬ。人事委員会もその通り。これを数年間日本でやってみて、間接の、この任命方法でやったのが相当効果を上げておるのです。もっともその論に対しては、過日文教委員会反対があったのです。それは教育に非常に大切なものである。予算も非常にたくさん使う。人事委員会などと違うのだということもありましたけれども、人事委員会で公平にいけたのだったら教育でもいけるだろう、こう私は説明しておるわけなんです。くだくだ長くなりましたけれども……。
  38. 加瀬完

    加瀬完君 大臣の御説明は、御自分の方の都合のいいときには、政党というものも認め、民主主義というものも認め、それから委員会行政というものも認めておりますけれども、今度は、都合の悪いときになりますと、政党はもう悪いことをするものだ、民主主義というような原則というものは、野放しにしておけば、現状においては適合しないと、こういうふうな御議論ですけれども、もっと前提というものをきちんと立てて、私はこの法案というものに対していかなければならないと思うのです。第一に、公安委員会や人事委員会の行政事務と教育委員会の行政事務というのはまるきり違っているのです。(「その通りだ」と呼ぶ者あり)公安委員というのを率直に言うと、公安委員会がなくても、警察行政は十二分に運転できるようになっている、警察法の改正によりまして……。あなた方がそれを意図しておったから、だれよりもこれは御存じのはずなんです。ところが、教育委員会の行政事務というものは、教育委員会法がきめでおりますように、あるいはあなたがたびたび言明するように、教育基本法がきめておりますように、その構成のとり方によりましては、はなはだ目的を遂行し得ないような状態も出てくるわけです。そこで、教育委員会の構成というものを非常に問題にしておるわけなんです。だから、公安委員会がやれるから、教育委員会もやれるだろう、こういうものの考え方というものは、少くとも教育行政を担当する文部大臣の発言としては、私ははなはだどうも正しい見識だとは言えないと思う。無礼な言葉ですけれども、申し上げたいと思う。  それから、はっきりとさしていただきたいもう一点は、一体民主主義の原則というものを認めれば、これは現状におきましては、ある程度の政党の活動というものを認めなければならない。選挙というものを認めなければならない。教育委員会の構成が非常に政党的に偏向を来たすということはいけないから、それをいろいろチェックするということはけっこうだ。しかし、それに対しまして、その判断が市町村長や府県知事や、あるいはそれらの議会、こういうものによらなければできないのだ、住民によりまして選挙すると、それは人格高潔という条項で選ばないかもしれない、あるいは教育行政に適合するという立場で選ばないかもしれない。こういうものの見方をすることに大きな間違いがあると思う。そうであるならば、あなた方自身選挙されて出てきて、自分自身を自己否定しているものだと思う。住民が人格高潔だと思うから、教育委員会委員として適任であると思うから選挙するのです。この選挙をやる住民の意思というものを尊重するという立場をとらなければ、少しも地方自治を認め、民主主義の原則を認めるという立場にならないと思う。今、政府のお考えになっていることは、行政事務の便宜のために民主主義の原則というものも、地方自治の原則というものも、ある程度これは改変をしてゆくのだ、こういう立場ですか。
  39. 清瀬一郎

    国務大臣清瀬一郎君) 行政便宜のために、あるいは行政事務のためにといったようなことは重きを置いておりません。さっき簡素ということを言いましたが、簡素は非常に重要じゃないとお断わりしておいたのであります。ただ、教育委員会の本質といたしまして、政党勢力が濃厚であることはよくない。いわゆる中立を保つのにはどうしたらよかろうかということをつらつら考えましたけれども、直接選挙でやるよりも、選挙で選ばれた長がこの選挙で選ばれた委員の同意を得て、しかも重要な制限のもとに、すなわち同党派が多数を占めないような制限のもとに、また一たん選ばれた以上は、積極的ね政治活動をなすべからずといったような制限のもとにやるというと、穏健、妥当な委員会ができるであろう、こう考えたのでございます。これに対して、そうするとちっとも気力のない、何もようせぬよう血委員会ができはせんかという御反対もありましたけれども、私は、必ずしもそうじゃない、人格高潔で活動力のある人が選ばれるだろう、こういうふうにそれに対してはお答えをいたしておるのであります。
  40. 加瀬完

    加瀬完君 そのことを繰り返して言うのはやめておきます。  問題は、そういう方法で構成される新しい教育委員会が、新法による教育委員会が、一体教育委員会としての権限強化されたかどうかという問題なんです。それらの点も検討いたしますと、これはさっき言ったように、政府委員の御答弁もありましたけれども、一応機構そのものも縮小されており、さらに権限は、教育委員会よりはむしろ教育長に移っているという傾きがある。さらに五十二条によりますと、教育本来の目的達成を阻害するという理由によりましては、文部大臣のこれは措置権といいますか、監督権といいますか、こういうものも非常に強化されておる。そうすると、教育委員会地方自治によります独立の権限というものよりは、むしろこれは、国家監督権というものによりまして教育委員会が制約を受ける形になってくる。これは、明らかに教育委員権限縮小というふうな認定を下さざるを得ない。これは、午後お答えしていただいてもけっこうです。
  41. 清瀬一郎

    国務大臣清瀬一郎君) 今のお問いは、非常に大きな問題を含んでおります。教育地方地域社会のために行われるということ、これも一つあります。もう一つは、しかし教育は国民全体のためなんです。教育基本法にもあります通り、その地方だけじゃなくて、日本全体のために行われるということも大きなことであります。ことに日本のような単民族の国家、言語も一つ国家、長い歴史のある国の教育は、今、日本の主権は、全体としての国民にあるのです。十条をよく読んで見ますると、その国民全体のためにやれ、こういうことなんです。そういう建前において、地方の自治、地方地域社会のためにも適合しなければなりませんが、国民全体のための教育、これを考えなければならぬ。教育の水準維持という言葉も生まれておるのであります。この水準を維持し、それからピープル・アズ・エ・ホール、主権者たる国民全体のために教育が行われておるかおらぬかということを見る者がだれかなくちゃいくまいと思うのです。それで、教育委員会はその地方々々の人なんです。日本に五千以上の教育委員会ができるということです。その全体がよく歩調が合うて、教育基本法を守り、それから偏向もなしによくいけておるかどうかということをだれか見る者がななくちゃなるまいと思います。あなたの方の案では、教科委員会というものをお作りになっております、衆議院で……。ああいうものをだれか、上下と言っちゃいけませんけれども、横からでも全体の教育の行き方を見る者がなければなるまい。それは社会党の案にあることですから、お認めになると思います。私どもは、教科委員会を作りませずに、今までの文部大臣がやるだけの違いです。結局今の制度では、やはり国会に向って責任を負うのは内閣の閣員でありますから、ああいうふうな文部省の外郭団体で、教科委員会でこれを見るよりも、やはり文部大臣がこれを見て、そうして国民に対して、結局ここで国会が責任を負うてやろう。この組織というものは、日本のような議院内閣制をとった国ではこの方がいいのだろう、こういう考え方であります。これは結論は、あなたの方の案と私の方の案との違いですから、非常に重大な問題でありますけれども、問題はそこへきておると思います。あなたの方だって、きっとこれと同じものをお作りになると思います。文部大臣か教科委員会でやる。たれかがやらなければならない、ばらばらになるから……。
  42. 加瀬完

    加瀬完君 午後も質問さしていただくという点を委員長にお認めいただきまして、いろいろ御催促もあるようでございますから、私の質問を一応保留いたします。
  43. 松澤兼人

    松澤兼人君 今の問題が、今度の新しい教育委員会制度の根幹の問題である。この問題を掘り下げていけば、それは加瀬君がきょう午後ということを言われましたけれども、一日かかると思うのです。きょうは加瀬君先発で、まあ二、三関連があった程度で、まだ十分に審議をし尽しておりませんししますから、われわれも質問があるということをここで申し上げ、質問の保留といいますか、どういう形式になるかわかりませんけれども、この点をお含み下さいまして、委員長において適当に善処せられんことをお願いいたします。
  44. 松岡平市

    松岡平市君 議事進行について。私は委員長にお願い申し上げますが、申すまでもなく、文教委員長にお願い申しまして、お許しを願って合同審査をするのは本日午前中で、もう十二時半になって参りました。お聞き及びの通り、先ほど来、特に地方行政委員のうち多数から、合同審査の時間をさらに延長しろという要求が先ほど開会前に開陳されております。今も一、二の委員からそういう趣旨の話がございまするが、私はこの機会に委員長にお願いしたいと思いますことは、一応委員会を休憩していただきまして、私の方の委員会におきましては、適当な形で意見をまとめましで、お願いすべきものはお願いしたい、こう考えますし、文教委員会におきましても、できますれば私の方の委員会の希望に添えるようにお話し合いを願いたい。そういうお話し合いをするためにも、散会していただかないで、一時休憩のまま願うようにいたしたいと思います。
  45. 加賀山之雄

    委員長加賀山之雄君) ただいま、松岡地方行政委員長からの議事進行に関する御発言がございましたが、そのようにはからいまして御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  46. 加賀山之雄

    委員長加賀山之雄君) 御異議ないと認めます。  午前中の審査会をこれで休憩いたします。    午後零時三十六分休憩    ————————    午後三時五十四分開会
  47. 加賀山之雄

    委員長加賀山之雄君) これより文教地方行政委員会連合審査会を再開いたします。  連合審査会は、当初、本日の午前中ということで開会したわけでございますが、それを地方行政委員会から、その継続方について御希望がありましたので、文教委員会においても協議の上、再開することになった次第であります。午前に引き続き、質疑を続行いたします。
  48. 加瀬完

    加瀬完君 続いて文部大臣にお伺いをいたしますが、今度の教育委員会法改正一つの大きな面は、予算送付権といいましょうか、もっと広くいうならば、今まで持っておった教育委員会の財政権というものが一応オミットされたわけであります。私どもの見解をもってするならば、非常に教育予算が他の条件から圧迫を受けておりますのに、さらに教育委員会の財政権限というものを縮圧いたしますことは、教育予算そのものが守れないという結果になるのじゃないかということを非常に憂うるものであります。この点を、文部省は初めから教育予算の全般にわたってある程度の制限が加えられるのじゃないかと思われる面をもお認めになっておられるのかどうか、この点まず伺います。
  49. 清瀬一郎

    国務大臣清瀬一郎君) そのことは、わが国では、一つの公共団体の予算は一本で提出するということでございまして、二本立てにすることは、わが国従来のやり方とも違いまするし、公共団体が一つのエンティティだということから考えて、世論に顧み、二本立制は廃止しました。そうして法案第二十九条と思いまするが、町村長または知事が予算を出す際に、教育関係することは教育委員会の意見を聞いて、その上で出すというので、教育委員会は予算に容喙すべからずということじゃないのであります。今の場合によれば、気に入らなければ別に出すという制度とは違って参ります。
  50. 加瀬完

    加瀬完君 それでは、重ねて伺いますが、文部大臣は、最近地方団体に対して施行されておりますいろいろの財政関係あるいは行政関係の諸法案教育予算をプラスしておるか、あるいは教育予算を縮減の方向をたどらしておるか、いずれだとお考えになっておりますか。
  51. 清瀬一郎

    国務大臣清瀬一郎君) ちょっと、少し聞き取れませんでしたので……。
  52. 加瀬完

    加瀬完君 最近地方団体に対しまして、たとえば地方財政再建法でありますとか、あるいは今度の国会で出されておりますところの地方自治法の一部改正法案、あるいは公務員法の一部改正法案、あるいはまた、これは法案ではございませんが、政府が示しました地方財政計画、こういった一連の傾向が教育予算の拡帳を強化しておるか、あるいは制圧の方向をたどらされておるか、いずれの方向に国の方針があるとお考えになりますか。
  53. 清瀬一郎

    国務大臣清瀬一郎君) この教育のことは、大学等、国でもやることがありますが、ただいま論議の的となっておるのは地方教育行政であります。で、地方教育行政は大体、地方分権という言葉は感心しませんが、大体地方でおやりになることになっておって、国でもって教育予算をふやすべしとか減すべしとかいうまでの方針は立っておりませんです。ただしかし、わが国は、敗戦後まだ十年たつやたたずでありますからわずかなる経費は能率的にお使いになる方がいいと、かように考えております。
  54. 加瀬完

    加瀬完君 昨年来非常に問題になっておる、この五月一ぱいで再建団体の申し出をするとかしないとか、地方の大きな問題になっておりますいわゆる再建法、これによりますと、この施行令といいますか、あるいは再建計画の作成要領、こういう政府の指示したものを見ますと、第一にあげておりますのは、最低行政規模に基いて給与、物件費の節減計画というものを第一にあげなければならないことになっておる。さらに、それについてですね。説明を加えまして、人件費については給与単価、職員数及び構成の合理化により、その増加の抑制また総額を落す、こういう指示がある。それから物件費については、類似団体の最低水準にとどめる、あるいはまた、再建期間中の地方債は必要最少限度にとどめる、こういう方針をはっきりと打ち出しておるわけであります。さらにですね、三十一年度の地方財政計画によりますと、政府が指示されました点は、特に行政制度上の前提事項といたしまして、地方団体の先ほど大臣がお述べになった機構の簡素合理化、教育委員会の廃止統合、停年制、待命制等の実施、こういう項目をうたいまして、さらにですね、自主財源の増強、それから受益者負担の拡充、こういう要項を掲げておるわけであります。で、自主財源の増強というのを見ますと、本年度財政計画が伸びまして、五百三十一億かになりました。しかし、そのうち政府が実質的に出しておりますのはたった五十六億、あとの四百七十四億というものは自己負担といいますか、地方の方の財源強化による増加分ということになっておるわけであります。さらに、この計画が具体的になりますと、たとえば義務教育職員などの計画にいたしましても、これは文部省が十二分に御承知のように、三十年度の教員数は、小学校が三十四万三百五十八、中学校が十九万六千九十、本年度、三十一年度は、これに対して小学校が五千九百十九学級、中学校が千二百九十九学級増加しておるにもかかわらず、三十一年度の小学校の教員定数は、三十三万六千四百八十一、中学校十九万二百七十六というふうに削減されておるわけであります。こういった一連の地方財政に対する計画というものが、国の計画というものが、実際におきまして特に教育の中心をなす教員定数までを切り下げをしておる。こういうふうな事態にありますのにかかわらず、さらに一体、今度の地方教育行政運営に関する法律案、現在審議しておるような内容が実際行われるといたしますと、教育予算は守られるかどうか、教育予算はさらに削減の方向に拍車をかけられるのかどうか。私どもは、前に申し上げましたような教育予算削減の傾向というものを文部省こそこれは押えていかなければならないのに、とめていかなければならないのに、むしろ削減の方向に拍車をかけるような法案文部省自身が出しておる。今度の法案を見て、そういうふうに断定せざるを得ない。この点、大臣の御見解はいかがでございますか。
  55. 清瀬一郎

    国務大臣清瀬一郎君) この法案は、文教予算を削減すべしといったようなことを直接にも間接にも意味しておるものじゃございません。しかしながら、私が文教担当ということを離れまして、大局から見ますれば、地方財政が今非常に苦境にあることは事実でございます。再建整備法もそれから生まれたんであります。それゆえに、総合的の観点から、ある公共団体においては減縮方針、オーステリティでやろうといったような公共団体も出ましょうけれども、それは教育だけを削減しろという意味では私なかろうと思います。わけてもわが国の町村長、これらの方は教育に非常に熱心で、職権があったかなかったか知りませんけれども、あの六三制の校舎建設といったようなことでも、戦争に敗けてから、日本が盛んであった時分よりもなお大きな学校を作る、だれがその骨を折ったかとえば、むろん委員会も骨を折りましたが、実際地方の様子を見ると、町村長がもう夜の目も寝ずに働いておるのでありまするから、この法案が輝きましても、地方において教育費だけが削減されるということは私なかろうと、かように思っておるんであります。
  56. 加瀬完

    加瀬完君 私が伺っておりますのは、先ほど言ったように、少なくとも政府の示した三十一年度の地方財政計画によれば、義務教育職員の定数というものは、はるかに削減されている、こういう事実を文部大臣はお認めになるかならないか。
  57. 清瀬一郎

    国務大臣清瀬一郎君) その計数等の点、局長より答えてもらいまして、そのあとで私の意見を申し上げます。
  58. 加瀬完

    加瀬完君 大臣地方教育予算が削減されているという御認識に立っているかおらないかということは、今後の質問を続けていく上に重要な問題でございますから、一体そういう御認識をお持ちかお持ちでないか。計数が合っているとか合っていないということは別として、削減されているということは事実です。削減の傾向をたどっているということは事実です。これをお認めになるか、お認めにならないか、この点をまず大臣から伺います。
  59. 清瀬一郎

    国務大臣清瀬一郎君) その案は、地方に向って教育予算を削減しろという案ではございません。日本四十六の府県において計数的に削減になっておるかおらぬかは、担当の局長から発言を願いまして、もし足らなかったら私から補足したい。この方が審議が進むかと思いますので……。
  60. 緒方信一

    政府委員緒方信一君) ただいま、地方財政計画の上で、昨年の数よりも教員数が今年は減っている、こういうお話であるかと存じますけれども、御承知のように、これは定数と申しましても、教員の地方の定数を国がきめるわけじゃございません。地方財政計画なり、あるいは義務教育費国庫負担法の予算としましてこの数を一応きめるわけでございますが、今年の地方財政計画あるいは国庫負担金の予算におきましては、昨年の実績の上に、三十一年度五十一万人の小中学校を合わせまして児童生徒がふえますから、それに対応した増員を見込んでおります。従いまして、昨年の実績よりも削減されて、いるという事実は、少なくとも今仰せになりました地方財政計画の上には出ておりません。
  61. 加瀬完

    加瀬完君 出ているんですよ。あなた方が実員として押えたのは、一体昭和三十一年何月ですか。地方教育委員会は、四月の増員分を見越して、欠員がありましても、そのまま新年度の増員分と見合う意味において、欠員をそのまま埋めないでおった。その実数を押えて、それに学級増分を足したに過ぎない。これは、文部省に私が問い合せての調査でありますから、あなたの方の資料で私は言っているんです。
  62. 緒方信一

    政府委員緒方信一君) 今のお話は、三十年度の地方財政計画と三十一年度の計画と比較してみた場合に、三十一年度の方が少くなっているという御指摘でございましょうか。
  63. 加瀬完

    加瀬完君 そうです。
  64. 緒方信一

    政府委員緒方信一君) もしそうであるとすれば、これは明らかにふえております。今お話のように、私ども予算を立てます場合に、これは信憑すべき前年度の実績をとりますためには、指定統計が一番確かなんでございますから、前年度の指定統計の上に積み重ねて参ります。これは毎年、今までそういう方法をとっておりました。これでもし、国庫負担金について申しますれば、実績負担でございますから、その年度を経過して、それで予算が足りないということでございますると、翌年度におきましてその補正をいたしまして、追加いたしまして、そうして清算をしていくという形式を従来もずっととっている次第でございます。
  65. 加瀬完

    加瀬完君 文部省の国庫負担金の分配はさようでございましょう。しかし、地方財政計画として今まで示されたものは、計画定員に学級増分の増加定員というものを加えて財政計画というものは立てておった。今年はそうじゃない。実員を押えて、実員に増加分だけを加えて計画定員にしている。前年度の計画定員に増加学級の増加教員分だけを加えたという方式をとらない、今年からは。というのは今までよりも予算的に相当制約を受けて縮減されていることになるのです。これは認められないわけにはいかないだろうと思う。これはどうです。
  66. 緒方信一

    政府委員緒方信一君) 計数の上で申しましても、三十年度の地方財政計画で上げられております数は小学校について三十三万五千八百六十六人だと思います。それが三十一年度は三十四万二千四百五十三人で八千五百八十七人のプラス。それから中学校におきましては三十年度が十八万九千二百四十三、三十一年度十九万一千七百二十二、二千四百七十九のプラス、かように相なっております。
  67. 加瀬完

    加瀬完君 先ほど私が申し上げた通り、その文部省の統計というのはこれは実員に対する国庫負担をやった統計なんです、与えた統計なんです。今までの地方財政計画というものは計画定員というものをもって、その計画定員に増加定員を加えている。そういう方法を今年からおやめになった。おやめになるということは結局教育予算が今までより幅が狭められたということにはならないか、こういう点なんであります。
  68. 緒方信一

    政府委員緒方信一君) ただいま私読み上げましたのは財政計画の数そのままだと思いますけれども、三十年度、三十一年度の数は明らかに今申しましたように加わっております。計算の仕方はともかくといたしましても実数、定数は確かにプラスになったように私は存じております。
  69. 加瀬完

    加瀬完君 数はあとで照し合せるとしても、今年の地方財政に対する大蔵省の原案というものが新聞によって報道された。これはその通りにはなりませんでしたけれども、そのときの給与費の適正化という項目の大蔵省の示したものを見ますると、今までの実員実額というものから定員定額、ことに教職員は定数基準というものを設けて、定数基準に標準本俸と申しましょうか、定額を作って、これで総予算のワクというものを押えていこう、こういう方向をとっておる。これはいろいろの経過から今年はこういう方法がとられませんでしたけれども、結局この中間の方法がとられてきたということは、これは自治庁、文部省も打ち合せをしたのですから、その通りだと思う。しかも定員定額という方向をとられようとしていることは、これは大蔵省の方がそういう見解をもつているということはいなめない事実だと思う。こういう方向で予算定員というもの、あるいは標準俸給というものを押えられていったときに、一体教育予算というものは拡大されてくるのか、あるいは縮小されてくるのか、そういう点を私は伺いたいのです。たとえば今年は是正本俸というものを設けまして、これは交付団体と不交付団体では違いまするけれども、かりに極端に不交付団体をあげますと、小学校の実態調査は本俸は一万九千八百五円、これに対して是正本俸は一万五千九百四十六円であるという、実に三千八百五十九円の差のあるものを是正本俸といたしております。中学校は実態調査によりますと、一万八千三百七十四円、是正本俸は一万六千七百八十三円、千五百九十一円違います。この通り予算は組まれないにいたしましても、是正本俸というものを一応押えて、実態調査とのアンバランスを直そうとしている方向をとっているということは事実であります。そうするとこれは当然定員にひっかかってくる。総額というものを落していくには、平均本俸が高ければ定員を落すという以外にない。定員を落すという以外にないということになりますと、現行教育委員会法の方であるならば、地教委なり県教委というものががんばっておりますれば、定員というものは削減されない。しかし今度の教育委員会法の是正によりますれば、定員というものは知事がきめますから、自由に削減されてくるというおそれがある。こういうおそれのあるようなことを、こういうような教育予算が危険な状態に置かれているのに文部省たるものが、さらにこの削減の方向に拍車をかけるような条項を、この改正法案の中に盛り込んだというのは、一体どういうわけなんだ。こういう御認識がおありかおありでないかということを大臣に伺っている。
  70. 緒方信一

    政府委員緒方信一君) ちょっと(「大臣、たまには答えなさいよ」と呼ぶ者あり)具体的なことがございましたので、その点を申し上げます。  おっしゃいましたように予算の編成の過程におきまして、いろいろえ考え方があったのは事実であります。しかしこれは全く事務的な折衝の間の話でございまして、結論といたしましては、今の実績負担の義務教育費国庫負担法の建前は少しも変更いたしておりません。従いまして今年度組みました予算につきましても、二十八年度、二十九年度と同じような、三十年度とも同じようなこれは予算でございますので、あとで実支出額と異なって参りました場合には、あるいは予算を追加し、あるいはその反対のこともあり得ることはもう当然でございまして、もし赤字を出しました場合にはさらに追加をいたしまして、これを補正をいたすわけでございます。従来もそれを十分やって参りまして、地方の支出いたしました半額は国庫負担金として清算いたしております。従いましてそういう前提で予算は組まれているわけでございます。そうして今年度の予算におきましては、文部省で組みます国庫負担金の予算と、地方財政の上におきまする計数とは合わしてあります。ただ地方財政計画の上におきましては、不交付団体の部分が若干違いまして、これは文部省の予算は不交付団体におきましては最高額を押えておりますから、その分は少し違っておりますけれども、実体的には同じものを計上してあるわけであります。従いまして人員におきましても、それから今単価のお話もございましたけれども、単価におきましても同じものが両方に計上されているわけでございまして、この教員費の単価の計上の仕方は、前年の十月一日の実績をとりましてそれに昇給財源を加えた、これは年間四%の昇給をいたしまして、その半額の昇給財源として二%をつけておりますが、これを国庫負担金に計上しましたものを、そのまま地方財政計画もとっているわけでございまして、ただいまおっしゃいました点とは若干違うと存じます。
  71. 加瀬完

    加瀬完君 一体文部省文教予算関係確保する折衝においても、あなたのおっしゃるように、大幅に文部省の要求というものが大蔵省に入れられておったかどうか、ということを御反省いただければ、あなたのおっしやるようなことが実現するかどうかということもはっきりわかると思う。それよりも私の心配なのは、是正本俸というものが押えられて、特に赤字をかかえているところの府県などは、再建団体になれば、再建団体の第一条件としてこれは給与費の節減ということをしなければならない。給与費の節減ということを第一条件として、しかも是正本俸はこれこれだと押えられているときに、是正本俸をはるかに上回るような給与の支給というものができるはずのものではない。第一できておるかおらないかということは、昇給昇格などがどんなふうに運用されているかという実情、三十数府県にわたりまして、昇給昇格は完全にストップであります。この実情を見ればあなたのおっしゃるように、是正本俸にかかわりなく、標準俸給というものを府県がきめても、その通り学校職員給与が支給されるのだという、そういう安易な見通しというものは、私は立たないだろうと思う。具体的に数字を申し上げますと、今までは少くとも三十年度の計画におきましては、小学校は押えられましても、一学級について一、中学校は一学級について一・四という定数を持っている。ところが本年度はこれは不交付団体は別ですが、交付団体にいたしますと、小中学校いずれも一学級増加について教員一の増加率しか持たせていない。しかもこれだけで正確なものとは言い切れませんけれども、児童増に伴うところの学級増、それに対する教員増という比率を見ますと、小学校は六十六人について一人の教員、中学校は八十三人について一人の教員、こういう定数が出てくるのです。この定数でこの通り学級編成しているというわけではない。しかし予算編成ではこういうふうになっている。はるかに二十九年度、三十年度、三十一年度と比べますと削減をされておる。こういう実情一体文部省はどうお考えになるのですか。それでも教育予算が国の方針で非常に大幅に拡大されてきたのだ、教育委員会なんかの心配の必要もない、地方団体が教育予算を心配する必要はない、もう義務教育費国庫負担をしないでも教育予算の御心配はございませんと言い切れますか。大臣大臣答えなさい。
  72. 緒方信一

    政府委員緒方信一君) 具体的な計数をおあげになりましたので私からお答え申し上げます。
  73. 加瀬完

    加瀬完君 そのくらいの大臣、認識あるでしょう、たとえば教育予算は。
  74. 加賀山之雄

    委員長加賀山之雄君) 計数的な面、緒方政府委員から答弁させます。それからすぐ……。
  75. 緒方信一

    政府委員緒方信一君) 今是正本俸というお話でございますけれども、これはおそらく地方公務員と国家公務員の給与実態調査の結果そういうことであろうというお話でございますけれども、先ほど申し上げましたように、国庫負担金、財政計画におきまして教員費につきましては昨年の、前年の実績を基準にいたしまして、それに対しまして昇給財源をつけた、こういう方法をとっておりますので、それは方法が違います。  それからなお予算の組み方としまして、学級編成の基準でございますが、今の計数をおあげになりましたのは……
  76. 加瀬完

    加瀬完君 本年度の増加分の比率はそうなる……
  77. 緒方信一

    政府委員緒方信一君) これは増加分ではございません。本年の予算を組みますにつきまして、これは政令県別につきまして一般県を申しますと、小学校におきましては四三・六……
  78. 加瀬完

    加瀬完君 それは一般にならした場合です。
  79. 緒方信一

    政府委員緒方信一君) それから中学校には四六・二、これを一学級当りの生徒児童数としまして学級数を計算しました。そうして学級増を推定して、そうしてこの増加学級に対する教員の比率は先ほどお話通り小、中学校とも一名、こういうことにいたしました。中学校は特に来年度から生徒の増加率がむしろ減って参ります。そういうこともございますし、それからこれはやはり財政一般の現状から見まして、できるだけ財成縮減に協力するという態度はこれはとらなければならんと存じます。かような観点からいたしましても中学校一人ということはお話通りでございます。地方におきましては、これは最近の地方財政がこれはもう御承知の通り異常な状態でございますので、昇給昇格等が所によって延伸等のあることはこれは事実でございますけれども、これは教育費だけのことではございません。先般からもお話大臣からもございましたように、総合的に勘案して財政の健全化という努力の一つの現われだろうと思うのであります。  それからなお先ほどちょっとお話のございました、本法案におきまして、教員定数を県の条例できめることになっておるというお話でございますが、これは従来と変りないのでございます。従来も県の条例できめるということになっております。
  80. 清瀬一郎

    国務大臣清瀬一郎君) ただいま政府委員から答えました通りわが国の財政方針として、健全予算必ずしも一兆とは固執しませんでしたけれども、健全予算の方針をとれ、わけても地方においては地方財政の赤字解消という方針をとりましたがゆえに、今加瀬さんのおっしゃる数字等がそのままかどうか知りませんが、潤沢にはいっておらんことはこれは事実でございまするが、これは教育だけが窮屈になったというのじゃなく、ほかのものも一律でございます。そこでそれでありましても本年度の、三十一年度の地方予算及び国の予算が窮屈であるということは、この案を実行したのではございませんので、この案前のことであります。しからばこの案になればなお窮屈になるかというと、この案は予算を節約すべしといったようなことは、間接にも直接にも申しておりません。ただ二十九条で今までの二本立て予算をやめて、そのかわりに予算を出す以前に教育委員会の方の意見を聞いて出すと、こういうことでありまして、道理のある教育委員会の意見なり、提案者たる知事市町村長も、またそれを承認する市町村会においても、これはやぶさかでなかろうと思うのです。まあこういうことを言っちゃかえっていけないかもしれませんが、教育予算の原案を町村長、知事自分で出すという全責任を負いまするというと、人間はどうしても自分責任を負うたことを大事にするようになるのですから、こういうふうな教育予算を作る全責任を彼らに負わすというと、彼らの方も教育をかえって大切にする傾向も、ある場合においては行われるのであって、今回の案が、教育予算を県の段階においても、地方の段階においても縮減してしぼるという方向には、これでもってなることはなかろうと私は存じておるのでございます。政府委員の答えにそれだけ補充をいたします。
  81. 加瀬完

    加瀬完君 政府委員の御説明の数字は私の言っているあげたものとは取り方が違う。私の言っているのは、たとえば昭和二十九年の教員増を見ると、小学校ならば五十三について一、中学校ならば三十六について一、三十年は五十八について一、四十八について一、こういう比率できたものが、本年度になりますと六十六、八十三というよりな比率になっている。だんだんだんだん結局ならしても一人の学級定員というものはふえるようになっている。逆に言うならば今までの文部省が示しておりました標準というものからははるかにだんだんだんだんと下されている。こういう事実をどう御認識になるかという点であります。  さらに大臣のお言葉で伺いたいのは、財政方針は健全予算でなければならない。そこで地方の赤字解消という意味が今大きな問題になっておるところであるから、教育予算だけをそれからはずすわけにいかないから、相対的に教育予算も縮減をするのはやむを得ない、こういうことでございますが、それは赤字解消というものの全部のしわが、教育予算にしわ寄せられておるという実体を一体御認識になっておるかどうか。それは先ほど私が申し述べましたいろいろな数字から見で、だんだんだんだんと国の文教予算、特に義務教育予算そのものの縮減の方式、あるいは財政計画の立て方、こういうものは非常に財政権があっても、予算送付権があっても現在の教育委員会ではどうにもならないように圧迫されておる。こういうことをおわかりかというのです。たとえば三十年度の財政計画で見ますと教育費が四十一億、昇給昇格分が七十一億六千九百万というふうにあがっております。この財源捻出は財政計数でどういうふうに違ったか。行政整理に伴う減として五十五億七千万、そのほか節減に伴う経費減という項目を設けて、旅費等の減ということで八十四億も節減をして、タコ配みたいに自分たちのとっておった予算を節減して、結局増加分に回しておるという方法をとっておる。これをそのまま認めていったら、さらに再建計画が強行され、あるいは財政計画の方針で進められる。さらにあとで質問をいたしますけれども、今度の自治法の改正によりますと、相当、長の権限が強くなっておるわけですから、委員会権限というものは弱くなっておるわけですから、こういう方向で責められると教育予算が守り切れるか、こういう点を大臣一体御認識になっておるかどうか。要は数字の問題じゃない。現状において昇給昇格もストップしているほど教育予算は圧迫されておる。校舎を建てたのは市町村長の非常な教育に対する熱愛からだというお話でありましたけれども、今度は再建団体などは新校舎を建てようとしても、起債なんというものは、地方債などというものは許されない、新規事業というものは削減される。こうなって参りましたら、教育予算というものは圧迫される一方じゃありませんか。それを一体新しい教育委員会法によってどう教育予算を確保するかという点について御考慮があったか。現状は、われわれが国や文部省に期待していることと逆に、さらにこの押し寄せてくる一連の地方財政に対する圧迫、教育予算に対するしわ寄せというものを助長するような内容しかないじゃありませんか。この点は一体、どうなんだ、その前提の御認識があるのかどうか。こういう点を伺いたいんです。
  82. 清瀬一郎

    国務大臣清瀬一郎君) 先刻以来繰返しました通り、この法案はどこにも教育予算の圧縮を直接にも間接にも希望した規定はないのでございます。その前の最後の……(「そんなことは書いておらん。」「そんな愚答をやめて下さい。」と呼ぶ者あり)ちょっと待って下さい。(「そんなことは書くはずがない、冗談じゃない。」と呼ぶ者あり)お問いじゃったから答えているんでしょう。(「問わないことまで答えるから言うんだ。」と呼ぶ者あり)この法案はあなたのお問いの最後にある、教育予算の圧縮を目的とした規定はちっともないんです。現在はしかしながら、教育予算は、実はこの法律のない以前のことであります。現行法のことであります。現行法のもとで教育予算が不当に圧縮されておるという認識を持つかということでございまするが、私は現行法のもとにおいても不当に圧縮はされておらないと。なるほど教育予算も窮屈じゃございます、これは日本の今日置かれた状態によるのであります。ほかの土木でも、建築でも、すべて今日政府の経済方針と赤字財政の解消の必要からしてみんな窮屈なんです。ほかの方は窮屈でもいいと、教育だけは確保するというようなことは、これは少し無理がかかると存ずるのであります。全体をですね、一旦虚心に私の言うことを聞いてから批評なさらんというと、言っておる最中にそうおっしゃられては議論が乱れますから、(「やじにはかまわないで答弁しなさい」と呼ぶ者あり)お聞き下さったと思いますするからこれを善意にひとつ、言葉というのはどうしても思うたことをそのまま言えませんが、私の言う心持を補充して、あなた方のお力で補充した上で御解釈願いたいと思います。
  83. 加瀬完

    加瀬完君 この新しく出される法案のどこの条項に、教育予算を削減するということが書いてあるか、ということでございますから、書いてあると私は思いまするので、次の点を伺います。  予算送付権というものがなくなっているんです。予算送付権というものがなくなっておれば、予算送付権があっても削減されておりまする現状教育予算というものは、はるかに、府県にたとえれば知事のもう独裁という形で赤字のしわ寄せというものをここにもってこられるというのは当然であります。  さらに定数の問題が政府委員から御説明がありましたが、今までも定数というものを教育委員会と協議が整わない場合は、ここに教育委員会の主張というものを残せた、今度は一応協議をすることになっておりますけれども権限知事に移っておる。しかも附則の十九条には、臨時待命の条項というものがある。臨時待命の条項というものを見ますと、地方公務員法の第二条の三項に、「地方公共団体は、職制若しくは定数の改廃又は予算の減少により廃職又は過員となった職員については、当分の間、条例で定めるところにより、職員にその意に反して臨時待命を命じ、」と書いてある。この臨時待命を命ずる権限教育委員会と一応協議をしてもだ、決定権は知事にあるということになれば、先ほどからたびたび例を引く再建団体の多い府県におきましては、当然この臨時待命制度というものを使って教育定員というものを削減するという方法がとられてくる。これでも今度の改正法の中には予算が削減される条項というものがどこにもないとおっしゃるのですか。
  84. 清瀬一郎

    国務大臣清瀬一郎君) 臨時待命のことは地方公務員共通のことであって、教員だけにそれを命ずるのじゃございません。それからまた予算を作るときはですね、第二十九条を見て下さい。「議案を作成する場合においては、教育委員会の意見をきかなければならない。」こういう保障があるんであります。それからして議するのは県会議員あるいは町村会議員でありまするが、これらの人々もわが国では教育を非常に大切なものと思っております。しかし教育だけ大切なものだとはそうは考えない、バランスを得た討論が行われるのであります。その背後にはまた地域社会の世論というものがありまするから、この案は教育をゆるがせにする案だということは私は決して思ってはおらんのであります。私も文部大臣でありまするからほかの所よりも実は教育の方はひいきめにしたいというのは、私の念願です。教育委員の方もみねそうだと思うのです。しかしながらこれを二本に立てておくということはどうもいろいろな弊害も生じますし、そこで今回はやめたんです。
  85. 加瀬完

    加瀬完君 二本立そのものには議論はあるいは大臣のような御意見もあるでしょう。これは別に見ます。私は文部大臣ともあろうものが教育予算を削減するような法案を作るということは、だれが考えてもあり得ないことです。そういう認識を私は持っておる。しかしその認識をはなはだ裏切るようなやり方をいたしておりますので伺うんです。というのは相対の問題ですよ。今まで現行法改正法案とを比べるときに、たとえば予算送付権というものがありましても、なかなか教育予算というものは取れなかった。それを意見を聞かなければならないというくらいの条項で、教育委員会送付権があるわけでもなければ、またその予算が認められないわけでもない。で現状地方財政の状態というものを見ると、どうしても給与費というものにしわが寄ってくる。給与費のしわというものはほとんど県庁の職員よりは教職員にくる。場が広いのです。そうなってくると現行法よりも意見を聞かなければならないくらいの程度の、予算送付権や財政権限というものをなくした教育委員会では、その主張を通すことが困難になってくるのではないかと、相対、比べたときの意見を言っておるんであります。  それからですね、大臣は何か工合が悪くなると市町村長であろうが知事であろうが議会であろうが、これは教育をみた大切にするんだから、当然それは教育委員会の意見を聞くであろうというような逃げを打っておりまするけれども、現在の教育予算がですよ、どういうふうに形成されておるかということを見れば、現在の議会あるいは教育委員会があってすら、現在の首長において取り行われる教育予算の作成というものは、そうあまいものではないというふうなくらいのことは御認識にならなければならない。また人のことはいいですよ。文部省自身が義務教育に対してとってきている予算というものは、先ほどの数字でも示しておりますように完全なものではない、ということはおわかりのはずなんだ。だけれども行政簡素化といいますか、あるいはまた地方財政の赤字解消というためにはやむを得ないというけれども、それにも限度があると思う。地方財政の赤字を解消するというそのしわが、そのしわを一番防がなければならない教育予算だけに寄せられるという傾向があるのに、それを防ぎとめるような条項もないということは、はなはだおかしいのではないか。さらにですよ、地方公務員法の一部を改正する法律の審議の中においてもだ、前の文部省のとった態度と今度の文部省のとった態度とは違うんだ。それで一般地方公務員にも停年制や待命制があるんだから教員も仕方がないというけれども、停年制はおきます、待命制がだ、一番適用されるとすればだ、どこに適用されるかということをわれわれはおそれる。そうすれば三倍も四倍も一般の職員よりは多い教育職員にしわが寄せられてくるということは当然だ。文部大臣ともあろうものが、地方公務員一般に寄せられてくるものだから、何も教育職員だけに寄せられるはずはあるまいという考えは、私ははなはだ浅薄だと思う。また停年制でなく待命制をしかなければ教員に対する予算削減ができない。当然やりますよ、これは府県知事は。そういうおそれがあるにもかかわらず、当然の権限のごとくこの臨時待命の条項というものをやすやすと知事に与えておる。これではどこにも定員というものを守れないじゃないか、守っている条項というものはないじゃないか。まあこういう点を伺っておるのです。
  86. 清瀬一郎

    国務大臣清瀬一郎君) わかりました。この停年制とかあるいは臨時待命とかいうのは、この教育委員会法でこしらえたものではございません。あなた方の方の委員会一つ十分御審議を願いたいと思います。私は越権かしれませんが、ほかの公務員についてあるならばやはり教育公務員もやむを得まい。ただ教育公務員は特殊の立場にあるから、その立場をよく考慮するようにということを、自治庁長官なり大蔵大臣には申しまして、その適用には慎重を期したいと思っておるのであります。それがしかし、今回御審議願いまする教育委員会法の結果ではございませんことは、私が申すまでもございません。  それからして先刻委員会の意見を聞くだろうかとおっしゃったけれども、この委員会の意見を聞かねばならぬということはここに書いてあるのです。これに反して知事が聞かないで教育予算を出せませんよ。(「それは形式だけだよ」と呼ぶ者あり)何ぼ形式だけだといっても、教育委員会の意見を聞かないで教育予算を出すなんていうことはできません。そこまで疑ったら法律というものは作れません。私は必ずそれは聞くものと思います。
  87. 加瀬完

    加瀬完君 私の質問は、教育予算なり教育財政というものが、この新しい法案によっては現行法よりも保護されておらないじゃないかという点が出発なんです。そこでこの法案の中に、どこにも現行教育委員会法よりも、教育の予算あるいは財政というものを制圧しているという条項はないじゃないかという、こういう大臣の御反駁でございますから、たとえば今あげたいろいろの例、たとえば臨時待命の条項というものも付則の中の十九条に認めておる。今大臣の言うように、少しも臨時待命制度というようなものは行わせたくないというならば、行わせたくないというものをこの新法案の中に盛られているならば、大臣のおっしゃることももっともだ。しかし一番おそれる待命制度というものが寄ってくるところは教職員である。ところがそれすらも守っておらないということです。あなたが自治庁長官に何を言おうとも、大蔵大臣に何を話そうとも、その御意思というものは法案の中に盛られておらない。そうすると、現在の法によれば定員というものを教育委員会権限によりまして守られておりますけれども、今度の改正法によりますれば守られなくなってきますので、今度の法案の方がはるかに教育予算というものあるいは教育条件というものに制圧を加えるということになるのじゃないかと、こういう点の御検討というものは一体どんなようなお立場で行われておったかということを伺っておるのですよ。
  88. 清瀬一郎

    国務大臣清瀬一郎君) この臨時待命にしろ、教員の定数にしろ、今合同審議を願っておるこの案にはそういうことはないのです。この案を実行したら教育予算が削減されるという証拠としてそれをお持ち出しになりましても、それは違うのです。それはむしろあなたの方に付託されておる案の結果ですから、どうか地方行政委員会において十分に御検討願いたいのであります。それゆえに私は断わって、越権のようであるけれどもといって余分のことを言っておるのです。この案が教員の定員を作ったりあるいは臨時待命を作るということはないのですから、それを持ち出してこれを実行したら教育予算が削減されるであろうとおっしゃるのは、私はロジックが少し違いはせぬかと思うのです。
  89. 加瀬完

    加瀬完君 そうじゃないのですよ。現行法によれば定員というものは教育委員会によって確保されるから、かりに待命制というものがしかれても、知事だけの独自の権限で予算定員が余ったからといってやたらにやるわけにはいかなく触るけれども、そういう権限というものまで全然留保されておらなければ、現行法よりは改正法の方がはるかに待命制度施行されやすくなってきておるのではないか。そういう点を一体どう考えるのだと、こういうことなんですよ。よく勉強して答えて下さい。
  90. 清瀬一郎

    国務大臣清瀬一郎君) 前に答えたことと同じであって、今度この法律が通過するがために、この法律権限で、定員をきめ出すということでありましたならば、あなたの御論の通りであります。けれども現在でも教員の定数は県の条例でやっておることは、専門家の加瀬さん御承知の通りです。今度そういうことを仕出すのではございません。この案で、今まで定数をきめる権限のなかった知事がやってもよろしい、ということが誓いであるのであったら、よしあしは別としてあなたの御論も筋が通るけれども、しかしながら知事は現在でも県の条例でやっておる。これで始まったのではございません。理屈を言うようで失礼ですけれども、この案ではそういうことは何らないことを一つ御承知願います。(「文部大臣はわかっていないのだよ」と呼ぶ者あり)私は事柄をはっきりするために何度も繰り返しましたので、ちょっと言葉は直截簡明に言い過ぎておりますが、あなたが誤解なさっておるようなあげ足をとっておるわけではございません。けれども定員のことをおっしゃいますというと、この案で知事に定員決定権をあげたというのではないのであります。
  91. 加瀬完

    加瀬完君 今の文部大臣答弁通りでよろしいかどうか、政府委員答えて下さい。
  92. 緒方信一

    政府委員緒方信一君) 定員のきめ方につきましては、従来市町村立学校職員給与負担法第三条におきまして、県の定数につきましては、店これは県の教育委員会できめる。(「知事でなく、教育委員会だろう」と呼ぶ者あり)これは県の条例できめるのです。教育委員会できめるのでなく県の条例できめるのです。
  93. 加瀬完

    加瀬完君 今政府委員の答えた通り教育委員会に実質的の権限がある。知事には実質的の権限はない。ところが今度はどうなりますか、文部大臣さっきの答弁を訂正して下さい。
  94. 清瀬一郎

    国務大臣清瀬一郎君) この法律通りましても、従前通り義務教育の教員の定数は県条例できめます。
  95. 加瀬完

    加瀬完君 そういうことは、私も専門家ではありませんが、承知しておるのです。しかしくどいようですが、実質的には定員は教育委員会によってきめられておったわけです。ところが、今度の法案によりますと、実質的の権限というものは、これは府県知事に移行します。そうなって参りますと、府県知事の定員の誉め方というものは、定員削減の方向をとらざるを得ないから、待命制やあるいは停年制というものがその便宜のために使われるおそれがある。これをどう防ぐかということが一点と、現行法よりもそういう点において、非常に教員の身分なり、あるいは教育条件なりというものを弱めておるけれども、そういう点に対して弱めておるという事実をお認めにならないか。もっと言うならば、弱めるようなことをわざと一体法案の中に盛り込んでおるというのは、どういうわけか。文部大臣のやり方としては、いろいろ御熱心な教育に対するお話とは食い違いますから伺っておるのです。
  96. 清瀬一郎

    国務大臣清瀬一郎君) 先刻答えました通り、やはり県の条例で、定員は現在もきめておりますし、今ここでもって審議を願っておる法案には、定員のきめ方はどこにもありません。それが関係するのはここじゃなくして、あなたがやっておられる地方教育……
  97. 加瀬完

    加瀬完君 私は自治庁長官じゃないから、私のことは引き合いに出さなくてもいい。
  98. 清瀬一郎

    国務大臣清瀬一郎君) 地方行政の方でおやりになることであって、現在もそのことは違いはしません。現在でも知事がきめるということはないのです。条例は県会の議を経るのです。これは今後も県会の議を経るのです。そこは同じことです。
  99. 加瀬完

    加瀬完君 たびたび同じことを繰り返して申しわけありませんが、聞いて下さいよ。そんな聞かないでろくでもない話をしているから質問がピントはずれになる。いいですか。現行法によりましては、県の条例で出るにしても、実質的のその定数というものは、教育委員会に非常な権限があって、教育委員会がうんと言わなければ定数というものはきまらないというふうに保護されておる。ところが、今度の法案によりますると、そうではなく、この教育委員会のウエートというものが知事に移るのじゃないか。そうすれば、現行法よりは比較して知事はその定員削減の方針というものを教育の方の関係に押し及ぼしてくるということは、これは自明なことです。またそういうふうに政府が指示しているのだ。給与費を削減している。教育予算を削減している。そうなってくると、待命制などということが一番使われやすくなる。それでは教育の条件というものが守れないじゃないか。これを文部大臣はどうお考えになるのか。こういう点ですよ。
  100. 清瀬一郎

    国務大臣清瀬一郎君) それは予算条例の二本立制度、そこのところをおっしゃるのかと思います。それはよく、わかりました。それは現在の教育委員会の方が力と言えば大きな力を持っておると思います。まかり違えば委員会責任県会に条例制定も要求ができる。今度はその以前に、知事がそれを提案する際に教育委員会と相談する、意見を求める、そこの相違はございます。そのことをおっしゃるのだったらよくわかっております。それは、しかしながら、あらかじめ相談してやる方が行政の連絡をとっていい、こういう考えであります。なるほど教育委員会の力ということになったら、加瀬さん御承知の通り少しくそこは後退しておりますけれども、一歩教育委員会の力が強いばかりが能じゃないのです。強いばかりが能じゃなくて、一般行政と争いを少くしてよく連携するということがまず一つの要求でございます。この二つの要求の調和をとった結果、今回は二本立予算、二本立条例請求権ということのかわりに、二十九条で提案以前によく意見を聞くということにかえたのでございます。(「聞きっぱなしか」「「よく」とは書いてない」と呼ぶ者あり)「よく」の二字は削りまして、それは言葉のあやというものでありまして、(笑声)協議する以上よく納得するというのは、これは日本の言葉のあやというので、お気にさわれば「よく」は消します。意見を求めて協議すると、こういうことでございます。その方が一つの公法人の中に二つのものがおって、別別に条例予算を出すよりも、出す前に一つにして県会に諮るという方が他の方の要求に合致する。世の中はたった一つの原理でそればかりやる、それがよかったら政治ぐらい容易なことはない。行政も容易です。だけれども二つ三つの要求からある調和をとって、最後の終局点は目的達成にあるのであります。それでありまするから、民主主義の要求とか直接請求の要求とかといったようなことも、一つの原理でありまするが、しかしながら行政が平和によくいろいろ連携をとっていくということも、これも一つの要求である。二つまたは三つの要求を調和して法を立てる以上は、その一つだけをとらえておっしゃるというと、そこは全体ということにはならぬのです。
  101. 加瀬完

    加瀬完君 いろいろの御説はわかりました。その全般ではっきりと受け取ったのは、結局現行法教育委員会よりも新しい法案による教育委員会は弱まったんだ、なぜ弱めなければならないか、どういう点のどういう必要で弱めたのかという点を、弱めたということはお認めになっておるのだから重ねて伺います。
  102. 清瀬一郎

    国務大臣清瀬一郎君) それがこの案の大きな目的一つであります。それは一般の地方行政教育行政との連携、調和をとるということが世の中の要求でもあり、またこれに耳を傾ける価値があることであります。このことは文教委員会でも非常に論じたことであって、あなたのようにおっしやる方もあるのです。しかし二本立予算、二本立条例が始まってからは、やはり相当の事件も起っておるのでございます。最近起った事件のごときは、ついに予算が成立せずして知事の専決予算をやったところまで進んでおるのです。だからそれらを勘案いたしまして、二つの要求を調和して勘案して提案したのです。御了解を願います。
  103. 森崎隆

    森崎隆君 関連して。今の文部大臣の言葉でございますが、二本立予算の場合に大けんかになる場合ですね、これは文部関係教育関係の予算の提出がいつもこれは不当だということをあなたの方ではっきりおっしゃったわけですね、そう解釈してよろしゅうございますね。
  104. 清瀬一郎

    国務大臣清瀬一郎君) その点も文教委員会で問題になった点ですが、私は教育委員会提案が悪いとは言わないのです。また県の方の主張が悪いとも言わないのです。それはおそらくは県の方は財政の方に重きを置いて主張するでありましょう。教育委員会の方は教育の方に重きを置いて主張なさるでありましょう。尺度が二つあるのだからどっちがいいとも悪いとも私は判断はできません。問題は紛糾が起きたということだけは事実なんです。紛糾がどっから起きるかといえば結局二本立制度から起きているのだ、こう言うのです。私の忌むべきこととしたのは紛糾の二字であるので、たくさん事件がありまするが、それが知事の方がよかったのだ、委員会の方が悪かったのだということを私はここで断定はいたしません。矢嶋委員も御承知の通り、(矢嶋三義君「私のことは言いなさんな、なぜ私のことを言うのです。」と述ぶ)数時間論争したのは、これであります。
  105. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 議事進行について。確かに大臣答弁されたように文教委員会で若干やったのでありますけれども、地方行政と非常に関係がありますので連合審査をやっているわけでありまして、決して無関係のことを加瀬君が質問しているのじゃございません。先ほどから地方行政の諸君から質問なさるのを静聴しておりますと、加瀬君の質問せんとすることを把握されるのに、文部大臣は三、四十分かかりますようですね。非常にきょうはお疲れになっているようで、いつもよりは答弁もさえておりません。ついては本日はこの程度で私は散会されて、あらためて大臣がお疲れになっていないときに私は精力的に審議されるのがいいと思います。どうも大臣答弁を承わっていますと、今矢嶋の名前を何で出すのですか、必要のないことであって、非常にお疲れになっているようですから、きょうはここで散会してはどうかと思いますので、お諮り願いたいと思います。
  106. 加賀山之雄

    委員長加賀山之雄君) 大臣は別にお疲れじゃないです。
  107. 清瀬一郎

    国務大臣清瀬一郎君) ちょっと発言をお許し願いたい。私は本日は非常に元気で精力旺盛です。しかし今あなたの名前を出したのは、先刻のお問いに対して、私が知事が悪いともあるいは委員会が悪いとも、別に言うのじゃないといったようなことを思いつきで言ったのだと誤解されてはいけませんので、これは私が矢嶋委員との質問応答で、たびたび言ったことを考えて言うておるのです。
  108. 森崎隆

    森崎隆君 今の大臣のお言葉に続いてちょっとお聞きしますが、紛糾しさえしなければいいというようなお考えでございます。私たちは二本立の条例という形はやはり教育予算の優先的な確保、少くとも教育を守るということは、教育関係する文部大臣初めすべての教育関係、その他教育関係者は必死になっている。極端に言いますと、建設関係につきましても、農林関係につきましても、どこの省につきましても、本省でも御存じの通りみな必死になって、自分の部門に忠実なるがゆえ自分の部門の予算をやはり公正に出してそれで戦う、という言葉を使えば文部大臣はいやでございましょうけれども、これを獲得するに努力しておるわけでございます。その中で知事の意見と教育委員会との意見がそごを来たしてまとまらない。それで紛糾が起る。ですからその際すべての経験を、一応意見を聞くということの美辞麗句を、載せまして、知事の最終的な権限にゆだねるというような行き方は、ほんとうに文教予算を守る文部大臣として、信念として、それを申されておるのかどうか、はっきり承わりたい。これは重大な御発言だと私は考えておりますから。
  109. 清瀬一郎

    国務大臣清瀬一郎君) 私は、教育行政、また教育予算の成立及び実行については不必要な紛糾はよくないと思っておるのです。ことにこれが紛糾をしたがために波及して県のすること、ほかの予算までも不成立になるといったようなことは望ましいことじゃないとほんとうに考えております。
  110. 森崎隆

    森崎隆君 今の問題は文部大臣の信念を聞いているわけです。ほかの一般関係の予算との紛糾はいやだということじゃなくて、紛糾が起るおそれがあるからとにかく紛糾を解消したい、そのためには文部関係の予算は一歩も二歩も三歩も後退していいというお考えであるかどうか、その信念を聞いているわけです。と申しますのは、現状といたしましては、各府県の教育委員会で予算を出します。ほんとうは二本立条例でも戦うこともできるのでありますが、いろいろ実質的な話し合いをして結局後退々々の現状なんです。二本立の制度がありましても後退しておるという現実、この最終的な決定権というものを、もちろん議会に出す提案権というものを知事の方で一方的にきめるということになりますると、これはもう完全な教育予算関係につきましては教育委員会側の敗北になる、その点をどう考えていますか。予算をそこへ、知事におまかせして、今までより悪くなってもなおかつ紛糾は避けたいとおっしゃる敗北主義者でございますか、どうなんですか、その点をはっきりお聞きしたい。私の申したことがわかりましたか。もう一ぺん言いましょうか。
  111. 清瀬一郎

    国務大臣清瀬一郎君) 紛糾は避けたいということは私の信念でございます。それ以上私の信念を披瀝する言葉はないのです。教育予算とほかの予算と、これを二本に立てるといったようなこと、またその制度があるということが原因して紛糾を生じ、はなはだしきに至っては一カ年の間予算が成立せぬといったような事態を生ずることは望ましくないと私は思っておるのです。教育の尊ぶべきことは私も知っております。しかしながらまたほかの行政も大事なこともたくさんあります。これを総合的に知事が出しまして、そうして県会は一本として大所高所から決議なさる、このことが私は健全なやり方である、かように考えておるのであります。
  112. 加瀬完

    加瀬完君 今の問題について、紛糾は避けたい、それだけなら、ごもっともなのです。しかしながら紛糾を避けたいということと、教育予算を確保したいということが競合した場合に、一体どちらを文部大臣はお考えになっておるのですか。どちらを重点的にお考えになってお進みなさろうとお考えですか。
  113. 清瀬一郎

    国務大臣清瀬一郎君) 紛糾を避け、かつまた必要な予算を確保したい、かように思っておるのでございます。
  114. 加瀬完

    加瀬完君 問題は、二本立予算が出されますのは、教育委員会において二本立予算を出すということは、教育委員会自身も避けたいけれども、教育予算というものを、ある最低限度確保するためにはこういう方法もやむを得ないとして出されるわけです。この二本立予算というものに対して、当然文部大臣はお立場から全面的な協力、賛成をすべきものだと私どもは考えておった。ところが、いや、そういう場合は紛糾を避けることが第一で、教育予算が後退してもいいのだ、こういう性格が今度の法案の中にも諸所に見られる、このように了解してよろしゅうございますか。
  115. 清瀬一郎

    国務大臣清瀬一郎君) 紛糾は避け、かつ必要なる予算が確保できるということが一番いいので、それができるような案をここに出しておるのであります。
  116. 松澤兼人

    松澤兼人君 関連して。ただいまのお話を承わっておりますと、教育予算を確保するということと、それから紛糾を避けるということとが競合した場合に、文部大臣は、教育を守るという教育委員会の要求する予算を守るという立場に立つのが当然ではないか。こう考えるのに、文部大臣は紛糾を避けるということに重点を置いて、そのために教育委員会権限を後退せしめてもかまわない、こういうことが文部大臣のねらいではないかというふうに考えるのですが、そういうふうに了解してよろしゅうございますか。
  117. 清瀬一郎

    国務大臣清瀬一郎君) 少し違います。私は文部大臣であるからといって、国家のほかの必要を顧みず、文部予算一本やりで進むといったようなふうには今までやっておりません。文教のことも大事でありますけれども、国家全体が進歩発達しませんというと、長きにわたって考えれば、文教にも影響するのであります。一番大切なのは国全体であります。それゆえに紛糾を避け、国の進歩もいたし、また、地方行政といえば県のためによろしい……。今の県の問題は、赤字が大きな問題でありましょう。破産状態にある。公けの公共団体が債務の不支払いを生ずる、月給も払わなければならぬが。……こういうようなことは非常に大問題です。そのことも考えつつ、また教育が差しつかえがないように、これもまた子供の育成でありまするから、国家将来に非常に関係する。国の段階で言えば今日インフレでも起って、また日本の経済が動乱になっても困る。私は経済の専門家ではありませんが、一萬田君は長い間の経験で、少しよくなったけれども、もう一年これは緊縮予算だといって心配をされていますので、実は今年の教育予算をもう少しほしかったのでありますけれども、それもくれぬというと絶対反対である、身体を賭して争うといったようなそういう態度はとらないで、やはり国家全体のこともながめつつ、教育のことも大切にしなければねらぬ、両立てであります。今度私の方が両立てになったのです。
  118. 松澤兼人

    松澤兼人君 大へんに地方における紛糾ということを御心配になっていらっしゃるようであります。実際文部大臣心配されているところの実例というものは、あるいは福岡県の場合かもしれません。しかし各年度を通じまして、全国の教育委員会で予算を作る。そういうたくさんの実例があるのでありますが、ことごとくの教育委員会地方の間に紛糾が起っているのが、たまたま最近三十一年度予算が成立しなかったという福岡県の実例があったというだけであるのか。もしも福岡県の場合をおあげになるだけならば、あまり心配は過ぎるのではないかというふうに考える。この点はいかがですか。
  119. 清瀬一郎

    国務大臣清瀬一郎君) 福岡県だけではございませんので、二本立て予算で争った事例は都道府県だけでも十六ございます。市では三件、町では四件、こういうのが出ております。調べたものがありまするが、長くなりまするから申し上げません。福岡の隣りの佐賀でもやっておりまするし、滋賀県でもやっておる。奈良県でもやっております。島根でも京都でも岡山でも、こういうことで紛糾が相当起きておるのです。私自身は参議院ではなく衆議院におりまするが、各県から選ばれました友人代議士諸君がおっしゃることでも、どうもこの二本立が原因して困るという意見もあるのであります。でありまするから、われわれは独断で、何にもなしに紛糾して困ると言うのじゃございません。この二本立予算を十年も続けてやったら、私は全くたくさんな問題が生ずるだろう、こう思っております。
  120. 秋山長造

    秋山長造君 今のに関連して。岡山のことを言われたからちょっと関連して。文部大臣は、今教育予算の二本立の問題をめぐって、紛糾した例として岡山のことをおっしゃったですね。それは何年ですか、ちょっとお伺いしたい。
  121. 清瀬一郎

    国務大臣清瀬一郎君) 二十四年でございます。
  122. 秋山長造

    秋山長造君 実は二十四年当時、私、岡山で県会議員をしておったのです。文教委員をやっていたのです。それで今紛糾したという例にあげられたのですけれども、これは全然大うそです。紛糾も何にもしていない、ただしかし、形式的に県会に授業料値上げの問題がかかったのです。授業料値上げの問題、それで知事の方は上げるという、そうして教育委員会の方は現状据え置きといって、それでなかなか話がまとまらなかったのですけれども、これはしごく静かに論議されたことで、決して紛糾でも混乱でもなかったことは、これはもう私自身がはっきり断言する。きわめて静かに、もの静かに県会に並行して出されている。そうして県会がその中をとったのです。県側の案と教育委員会側の案の中をとって、そうしてそれでもうきれいさっぱりに片付いて、きわめてなごやかに円満にあとは済んでいるのです。だから、そういうことまでたてにとって、だから紛糾したのだということを形式的に持ち出して、皆さんが実情をお知りにならぬのをいいことにして、そうして岡山県で紛糾したなんというのはもってのほかです。取り消して下さい。
  123. 清瀬一郎

    国務大臣清瀬一郎君) その当時の岡山で県会議員をなさっておった秋山さんがそうおっしゃるのでありまするから、秋山さんのおっしゃることをほんとうとして、私が紛糾したという形容詞を使ったのは取り消します。しかしながら、問題が相当起ったことはあなたの言葉のうちにもちょっとございましたので、あなたの言葉を引用いたします。
  124. 小笠原二三男

    小笠原二三男君 ちょっと関連して。大臣は先ほどから紛糾々々と言っていますがね、紛糾とは何ぞやということをまた聞かなくちゃならない。が、概括的に紛糾とおっしゃっておるのは、教育委員会知事側とが意見の対立を来たす、こういうことをおっしゃっておるように思われるのです。しかし現行法教育委員会制度を発足せしめたときの趣意は、やはり公選による直接国民に責任を負う委員による教育に対する独立執行権を確保するというところから、それはある場合においては二本立提案権というものも認められる、これは相関的な切り離せない問題なんです。従ってこの独立執行権を確保するために二本立提案権があるとしますが、しかし何か二本立二本立というと、教育委員会も予算書を出し、知事も予算書を出して、両方審議されるような形に大臣はお考えのようですが、知事の出す予算なら予算書に、単に教育予算関係のところで、教育委員会の意見が概括的に付記されるだけなんです。付記されるだけのこと並んです。そうして県議会なり、あるいは町村議会のやはり直接選挙せられた議員によって構成せられる議会の判定を待つということなんです。従って教育水準を高め、直接国民に責任を負おうとする教育委員会が、その水準維持のために教育的な見地からだけ教育財政の問題について主張し、また知事なり、市町村長は財政的な見地かう総合判断でこれを主張し、お互いが対立して議会の公正な判、定に待つという手続は、一面からいえば、これはまことに民主的な手続なんです。対立して対立しっぱなしのことであれば紛糾ということもありますけれども、それがために裁断を下す民主的な議会というものがまた別にあるわけなんです。だから私はそういう対立は、おのおのが直接選ばれた国民なり、地域社会の人々に対して責任を負おうという良心的な自覚があればあるほど、そういう場合というものは起ると思う。しかしながら、最終的には議会がこれについて公正な結論を出してくれるんです。それにまで反対して紛糾するという事例はどこにもないんです。先ほど福岡県の例の場合を言いましたが、専決処分をしたといいますけれども、それは議会が会期を延長して審議することを避けた、あるいは知事が暫定的に、あるいは区割り的な予算を出して審議することを避けたり、これは議会なり、知事なりが自分の自由裁量で行なったことであって、このことが教育委員会責任がありとは言えないところなんです。それをみんなごちゃごちゃにして、紛糾は全部悪である、こういう考え方そのものが、私は自治庁長官あたりから言われるならば、また議論があるところですが、文部大臣からそういうことを聞くことは奇異の感にたえない。そういうおのおのが国民に対して責任を負うという熱意がそういう形に現われる場合があっていい。そうでなかったら、何で教育の諸条件というものは守られて行くか、私は民主的な手続として現行法があったものと考えておる。またこういうところが妙味があって教育委員会というものは発足したはずなんです。あなたは紛糾々々と言っていますが、その紛糾ということは、けんか、なぐり合いしたという事実でもない、意見の対立なんです。お互いがおのおのの主張をして意見が対立することそれ自身はあって何ら悪いことではないんです。どうですか、それがいかぬという理由が私にはわからぬのです。
  125. 清瀬一郎

    国務大臣清瀬一郎君) 今のお問いのうちにあったことで、私が言ったことと違うことが一つだけあるんです。私は福岡県の事例においても、教育委員会のしたことが悪かったという判断は下しておらぬです。また知事のしたことが悪かったということも申しておらぬです。現行法のもとにおいては、いわゆる簡単に言えば二本建であります。あなたの御説明下さったように、教育委員会法五十八条の手続で意見をつけて出すということです。そういうことがあるがために、なかなか議事がむずかしくなったということは事実でございます。そうして今の法律はそれを許しておるんでありまするから、それゆえに、私は先日来どっちが悪かったということは言っておりませんです。福岡県の委員会が悪かったということは毛頭私は言っておりませんから、それを御了承願います。そこであなたのおっしゃる通り、両方ともが権限に基いてやっておるのでございます。議事法に従ってやる以上は、審議が延びるくらいは私は違法だとは思っておりませんです。しかし世の中のことというものは、そう一こくな議論ばかりではいけないのであって、やっぱり目的達成が第一であります。何しろ二つの意見が対立して、それに関係のない県の予算が不成立に終るというのは、合法は合法であるけれども、やはり行き過ぎておるのじゃないか。そういうことを避けて、円満に地方行政がいける方がいいというのが私の感覚でございます。今までやっておることを私は非難はどっちもしておりません。それから紛糾という言葉も、漢字はむずかしいことですけれども、もつれるということです、紛糾は。人間界であまりもつれはなくして行く方がいいんじゃございませんか。ぎりぎりのところは、この国会でもいろいろありますが、もつれがないように、よくさばける方がいいと私は考えておるのでございます。(「もつれも程度問題だよ」と呼ぶ者あり)
  126. 加瀬完

    加瀬完君 今、大臣の御説明で、目的達成のためになるべくもつれのないようにさして行くのはけっこうなことなんです。ところが教育予算の拡充といいますか、確立といいますか、こういう目的のために二本建予算の送付権というものを認められておった方がその目的達成に役立った、あるいはこれを今、文部大臣のお考えのように、もつれがあるからといって二本建送付権その他の財政の権限というものをなくしてしまった方が、教育予算を獲得する、あるいは確立するという目的の達成を早めるか、こういう点を私は先ほどから伺っておるのです、この点いかがですか。二本建予算をいろいろ問題にしておりますけれども、二本建の送付権というものがあったがために、私は結論を申し上げますけれども、ある程度の教育予算というものが獲得されてきた、こういうのが現状だと思う。地方の財政状態というものは、文部大臣のようなお考えで十二分に教育委員会も意見を述べられるんだから、それを聞いて適当な満足すべき予算が作られるだろうという状態にはないからこそ、二本建はどうしてももつれが生ずるということではないのですか。そういうふうに私どもは地方実情というものを認識しておるんです。文部大臣は御見解が違いますか。
  127. 清瀬一郎

    国務大臣清瀬一郎君) 少し違います。やはりもつれを生じて時間を空費し、とうとうしまいには予算が不成立、これでいけるかというと結局いけないので、今現に福岡県では実態調査などしておりまして、最後にはやはり人間界のことで、どっかで妥協点を見出さなければならないのですよ。そういう運命にあるものとすれば、初めから意見を聞いて調整して、一本の案を出した方が私はよくなるんだと思う。これはいろいろな経験からそうです。争いをして、もつれを出して得をしたことはないんです。この国会においても、分を尽そうと思ってわれわれが争うというと、もつれが生じてかえっておそくなるのです。従ってそれはやはりもつれがない方がいいと私は考えるのです。(「従って二法案もつれているから出直した方がいいですよ」と呼ぶ者あり)
  128. 加瀬完

    加瀬完君 それはもつれというものだけを取り上げれば、もつれがあった方がいいというのは、これは私語が出ておりますけれども、もつれを商売にする者以外は、もつれというものはみなこれはいやがる、これは当然です。しかしもつれさせるということを目的にしておるのじゃないけれども、二本建の権限というものをもって、大臣の言うようないろいろと協議をしておりますから、ある程度教育予算がとれてきたという事例の方がはるかに多い。福岡県のような例はただ福岡にとどまる。それがそういう権限をなくしてしまって、協議をすればできるだろうというふうな形で放置しておいて一体できるかという問題なんです、問題というのは。政府地方財政なり、地方行政なりに臨んで計画いたしておりまする法案、あるいはすでに施行をいたしております法、こういうものを検討いたしますときに、そういう大臣のようなことは言えないと思う。そこで問題をさらに進めて申し上げますが、今度政府地方自治法の一部改正を出しております。この地方自治法の一部改正を見ますと、地方行政に対しまして、地方自治を育成するという立場よりも、国の監督権というものを非常に強化している。たとえば内閣総理大臣が主務大臣の請求に基いて一般行政事務について監督権を持つような形をとっている。あるいは今までわれわれは地方団体の首長というものを住民の監視のもとに置いた。われわれの代表が議会によってこれを監督させておった。ところが議会も首長もひっくるめて政府が監督するような方針に移りつつある。こういうやり方で地方行政というものに臨んでおる。さらに今度、ほかに地方の財政計画に対してどんなような方針で臨んでいるかということは、先ほどたびたび申し上げてありますけれども、再建法によりましても、財政計画によりましても、あるいは大臣は当然御責任ですから、だれよりもよく御理解だと思います、予算の編成方針がどんなような形になっておりますか。たとえば一例をあげれば、二十八年を一〇〇と押えますよと、一般会計は三十一年度一〇一%と、たった一%しかふえていない。ところが防衛庁関係の費用というものは、二十八年を一〇〇とすれば一五七%にふえている。防衛関係は五七%もふえている。それで健全財政で一兆円をあまり上回らないように押えていったら、そのしわはどこによります。これは地方交付税とか、あるいは文教予算とか、この防衛費に競合するようなところに結局しわが寄ってこれらを削減されるという方法を現在とってきておる。こういう財政計画で中央が臨んでおって、しかも行政そのものはさらに監督権強化する。これで教育予算そのものの幅が、国の保護を受けないで、地方独自の財源も与えられないで伸ばせと言ったって伸びられますか。こういう状況に現在の地方財政の上から教育条件は置かれておるわけでございますが、これをそのまま助長するような法案というものを政府みずからが、あるいは文部大臣みずからがお認めになるということは私どもふに落ちない、こう考えております。この点についていかがでございますか。
  129. 清瀬一郎

    国務大臣清瀬一郎君) 非常に広範なお問いでありましたが、なるほど防衛費は、二十八、九年ころ、すでにわが国ではまだ国防について世論が定まっておらなんだ時代とはふえておることは事実であります。しかしながら、教育についても、やはり戦争に負けておりながら戦前よりはたくさんの学校を作り、たくさんの教師を雇うておるのであります。教育のことは、今回敗戦以後決してゆるがせにされておりません。今、日本の総予算を見まするというと、一千億以上の経費を使っているのは文部省と防衛庁及び厚生省でございます。文部、厚生ではよほどわが国独立以後注意いたしておるのです。しかしながら、これをもって決して私は十分とは思っておりませんが、しかしそのことを言い出しまするというと、しまいには憲法九条の問題になったり、いろいろいたしまするけれども、やはり全般のことについて私は考えなければならぬと思っておるのです。それからまた、ちょっとあとに戻りますが、お問いの初めにありましたが、この二本建予算のことも、日本の特殊状況として、やはり町村長も知事も非常に教育に熱心な人が多いという日本現状をわかっていただきたいのであります。これを二本を廃したら、町村長あたりが教育をぺしゃんこにするだろうという予想は私ども持っておりませんです。どこの村へ行っても、やはり町長さん、村長さんは教育の熱心家が多いと思います。さればこそ、どんな小さい村でも、小学校二つ、中学校二つ、ほかの方はそれほど回復しておりません。まだ国民はあなたバラックに住んでおるのですよ。それでもちゃんとあれだけのものができたということは、何かといえば、日本国民の特色であります。昔から学問を大切にする、教育を大切にする。やはり教育は子供の平和心を育成するところでありまするから、そう紛糾してとるといったようなことでなくして、やはり村長の方も町長の方も、委員会の諸君の意見を聞いて適当に出るということが好ましい。昔から和をもって尊しとなす、平和をもってやろう、こういうことでやっておるのであります。それを紛糾してもかまわぬ、たくさんとったらいい、こういうのじゃ教育上よくないと、こう思っているのです。実際通俗なことを申し上げて、はなはだ失礼でありましたけれども、実際は紛糾を重ねて一万円とるよりも、平和のうちに八千円で教育をやるといった方が、私は教育的効果は大と思っております。
  130. 加瀬完

    加瀬完君 それでは、これは事務的なことになりますから政府委員に伺いますが、政府委員は、今、文部大臣の言われるように、現在において文部関係教育予算、たとえば義務教育費国庫負担金にいたしましても、あるいは義務教育職員の定員にいたしましても、その他の教育の諸条件にいたしましても、あるいは危険校舎その他いろいろの施設関係の補助金にいたしましても、十二分である、この程度国の予算を配分してもらえるならば、もう文教行政はまことに満足であると、こういう御見解でございますか。
  131. 緒方信一

    政府委員緒方信一君) 大臣の御答弁も、これでは十分ではないと思うがというように言われたように私も今拝聴いたしましたが、ただいまおあげになりましたような予算につきましても、私ども事務当局といたしましても、今後ますます努力をいたしまして、十分拡大して行きたいと、かように存じております。
  132. 加瀬完

    加瀬完君 政府委員は、今後ますます拡大をして行かなければ現状においては不満足だ、また拡大をして行くところの義務を感じておると、こういうような御見解のように拝されます。私どもが見ても、たとえば義務教育職員だけに限っても、地方におきましては赤字財政のしわ寄せで時期がきても昇給昇格がさせられない、これが現在の府県知事なんかの地方教職員に対する、まあせっぱつまったとは言い条、やり方なんです。文部大臣の言うように、十二分に教育委員会文部大臣考えるような配慮のもとに行われておらない。あるいは危険校舎その他の学校施設にいたしましても、教育施設にいたしましても、御存じの通りです。予算をそちらの方に流して行くどころか、人そのものを抱えて行く予算すらも切って行こうというような現状なんです。こういう現状にありながら、この教育条件の最低限度も押えられないような教育委員会法改正をいたしました場合には、現行法ですらも押えられないようなものを、改正法のようにしてしまった場合には、教育条件の切り下げというものが当然行われることに触る、こういう心配文部大臣としては当然なされてしかるべきものだと私は思うのでありますが、教育条件の切り下げが、ほとんどもう教育委員会行政権限というものを地方団体の首長に移してしまって、私の心配しているような切り下げがなくて、大臣の言っているような楽観的な、いや、切り上げになるであろうというような証拠はどこからでございましょうか。
  133. 清瀬一郎

    国務大臣清瀬一郎君) 私もあなたとともに、今の国の教育予算も、地方教育予算も、これで十分じゃとは決して思うておりませんです。国の予算は、今期国会へ出すまでにも、なお大きな予算を要求しましたが、これは削られたのであります。これをもって十二分なりと決して考えておりませんけれども、日本の財政経済政策のあり方からして、やむを得ずと思ってこの程度にしたんであります。地方教育予算についても、私は一々、各府県、各町村のことを一つ一つ検討はいたしておりませんけれども、今日赤字財政解消ということで相当の切り詰めを余儀なくされておろうと思います。これをもって十分とは考えておらぬので、教育は大切なことであるからして十分にとりたいでありまするけれども、何しろ地方の財政はあなた御承知の通りでありまするから、将来には、なおたくさんの予算をとるべきものだと思うております。しかし、ちょうど病気と同じことで、今病体でありまするから、地方は……、赤字解消をして、ほんとうに地方に力がつくときを楽しむとして、待つのほかはないのであります。(「政府が病気にしているんだよ」と呼ぶ者あり)政府もその通りです。しかしながら、幸いにして経済状態はやや回復しておるので、御承知の通り、貿易もよくなっておりますし、鉱工業生産も、戦争に負けたが、負けておらぬ前の倍になりましたですね。この日本人の勤勉をもってすれば、やはり数年後には財政状態もよくなって、わが国学校のために施設はできるようになろうと思います。また、地方もその通りであります。けれども、その病院が回復しないうちに、直ちにやれ、まだ熱がある時分に運動せい、運動の方がよいのだと、そういうふうな一律のわけには行きませんです。伸びんと欲するものはまず縮まなければなりませんので、今縮んでおるところなのであります。
  134. 森下政一

    森下政一君 議事進行について。きょうは地方行政、文部両委員会の連合審査が午前中と予定されておったのを委員長のお計らいで午後も続行していただいて、これは大へんありがたいことでございました。ところが、せっかくのお計らいにもかかわらず、あいにく文部大臣に御要務の差しつかえがありました関係で、午後はこの時間まで質疑を重ねても、なおかつ二時間くらいしか質疑ができなかったという状態でありまするが、やがて本会議も開かれるかと思いまするので、きょうのところは、この連合審査をひとまずこの程度で閉ずることにして、ただしこれで打ち切りということでなしに、こういうことにしていただきたいと思うのです。地方行政委員会でさらに協議をいたしまして、その結論がどうなるかわかりませんが、おそらくは、なお野党側の委員である社会党に多くの質疑が残っておるかと思いまするので、せめてもう一回は連合審査を持ってもらいたいというような協議が整うのではないかと思いまするが、もしさような場合に、地方行政委員長から連合審査の申し入れをいたしました場合には、文教委員諸君にお諮り願いまして、ぜひどうぞそれを受け入れていただくというふうにお手配を願いたい、会期も延長されるということがほとんど確定的でありますので、さようなことをこの際強くお願いをいたしまして、きょうのところ、ひとまず連合審査をこの程度で閉ずることにしていただきたいと、かように存じます。
  135. 加賀山之雄

    委員長加賀山之雄君) ただいま森下君から議事進行に関して御発言がございましたが、この点についで御異議はありませんか。
  136. 吉田萬次

    吉田萬次君 私ども文教委員といたしまして一言お願いしておきたいと思いまするのは、非常に重大なる法案について、われわれも近ごろは非常に勉強してやっております。しかしながら、なおまだ思うように進みません。従って御要求の点は当然と考えまするけれども、私は時日もないと考えますのと、この問題は非常に研究を要すると言いながら、なお遅々として進みません。従ってせっかくこういうひまのあるときでありますから、文部大臣もますます健全である、また意気壮であるというようなことを言っておられるときでありますから、この機会においてさらに続行して、十分な御審議をわずらわした方がいいと思いますから、さような点をお願いいたします。続行をお願いします。(「このままですか」と呼ぶ者あり)このまま……。
  137. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 この法案は、先ほど来審議が行われておりますように、文教委員会に付託されておるものの、地方行政委員会の所管事項と非常に密接不可分でございます。それでわれわれ文教委員会としては、確かに自民党の吉田理事が言われるように、精力的に審議をしておるわけですが、これに関連のある他の常任委員会から、ぜひ審議したいと御要望があれば、それにこたえるのが本義であるし、大体この連合審査なるものというものは、五時以後までやったという例もないのですから、きょうのところは、地方行政委員の方から、ああいう議事進行の御発言があれば、まあ礼儀から言っても、ここらあたりで同調なさるのがいいと思います。お互い同士の場合は別として、お客さんを迎えて審議するときに、あまり無理をしない方が私はいいと思います。
  138. 加賀山之雄

    委員長加賀山之雄君) 加瀬君にお伺いいたしますが、今御質疑の点はまだ相当時間がおかかりでしょうか、文部大臣に対する……。もし途中でございましたら、この際御質疑をお続け願ったらというように考えますが。
  139. 加瀬完

    加瀬完君 しかし私だけで質疑を続けるのもいけませんから、あとの議事の運営は私の方の理事の発言もありますから、おまかせをしたいと思います。
  140. 吉田萬次

    吉田萬次君 十分に私は意見を尽してもらう必要があると思います。お互いにその委員会、その委員会には、大体心がまえというものもある。によって、われわれから考えますると、この重大法案に対して、せっかくお申し越しでありますによって、敬意を表して私は今日さらに続行していただいて、十分な意を尽していただきたい。かような点におきまして、われわれは何時に触りましても辛抱いたしまするから、さような御進行をお願いいたしたい。
  141. 加賀山之雄

    委員長加賀山之雄君) ほかに何か御意見がある方……。
  142. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 資料要求。きょうは地方行政委員の方が文部省側に質問なされたわけですが、次の機会には文教委員の方から自治庁関係に御質疑をするところの機会を与えられることと信じますが、そのときの準備として自治庁側に資料を要求いたしておきたいと思います。それは、先ほど来議論になりましたこの予算の原案送付権を削除されたということが、地方財政再建計画との関連で、要するにこの教育予算にしわ寄せしているおそれがあるというような立場から質問がなされているわけですが、私は資料として出していただきたい点は、この再建団体としての承認方を申請したところの地方公共団体の件数並びにその承認を与えたところの件数を表として出していただきたい。それからその再建計画の中に盛られている教育関係の内容、これをプリントして出していただきたいと思います。これは都道府県別に願いたいと思います。  なおもう一点は、待命制をここ数分年の間に実施した都道府県名並びにその内容の概括がわかるところの資料を出していただきたいことを要求しておきます。
  143. 加賀山之雄

    委員長加賀山之雄君) 自治庁行政部長、ただいまの資料要求、よろしゅうございますね。
  144. 小林與三次

    政府委員小林與三次君) はい。
  145. 吉田萬次

    吉田萬次君 せっかく地方行政の方からの申し入れ、御要求によって委員長におまかせしたいと思います。
  146. 加賀山之雄

    委員長加賀山之雄君) 先ほどの第二点でございますが、これにつきまして別に御発言はございませんか。森下君からの第二点について……。
  147. 田中啓一

    田中啓一君 地方行政の方で、また御協議の上でお申し込みがあるやもしれないということは、まさに了承いたしましたが、本委員会といたしましては、その際あらためて考慮をいたしますということでお進めを願いたいと思います。
  148. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 連合審査の申し入れに対しては、やはり先ほどから述べられたように、当委員会としても、その申し入れがあれば、すぐに受けるように、われわれとしては進めたい、こういうふうに考えていますので、大体この点は了解しておいた方がいいと思います。
  149. 加賀山之雄

    委員長加賀山之雄君) それでは第二点につきましては、先ほどの森下君の御発言でございますが、これはまだ地方行政委員会でよく相談した上ということでございますので、従って今日まだ地方行政委員会の御意見もきまっておりませんし、正式のお申し出もいただいておりませんので、先ほど申し上げた通り文教委員会の事情は文教委員会の各委員は御存じの通りであるし、なおかつ地方行政委員会の各委員の方方にも、文教委員会の状態を先ほど御了察いただいたのでございますので、その点をお含みの上おきめになって、当委員会へお申し出があれば、あらためて理事会並びに委員会においてこれを受けていく、こういうことにいたしたいと思いますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  150. 加賀山之雄

    委員長加賀山之雄君) それでは本日の地方行政文教連合審査会はこれをもって終了いたします。  散会いたします。    牛後五時四十八分散会